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海と空を劈くもの

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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●海賊の危機
 ズパァンッ!
 蒼く鋭い剣の様なものが、中より海を刺し貫き天を衝く。
 次いで海の中から現れたのは蒼白い力の奔流。揺らめきは炎の様であり、その形は魚の背びれにも似ている。
 それもその筈だ。蒼白い力の下では、巨大な魚が泳いでいるのだから。
 魔旗魚――巨大な旗魚(カジキ)の化物である。
 そして、とある海賊の末路でもあった。
「でけえカジキになっちまいやがって……」
 巨大な魚影を船の上から見下ろし、深海人の船長が寂しげに呟く。
 波を斬り裂く蒼い剣がもし直撃すれば、船もそう長くは耐えられまい。だが、引くわけにはいかない。それが海賊の掟だ。
「俺らの子分になり損ねたヤツのケツを持つのは俺達だ。いつもの様に釣り上げて、盛大な宴で送ってやりてえが……」
 ――バサバサバサッ!
 船長の声をかき消すのは、幾つもの羽撃きの音。
 船上を飛び交う丸々としたカラフルな鳥の群れ。その金剛色の嘴に啄まれ、マグロ印の海賊旗はボロボロになっていた。

●掟とメガリス
「グリードオーシャンに、『フィッシャーマンズ』と言う海賊団がいる。彼らの部下がメガリスの試練に失敗してコンキスタドールとなってしまう事が予知できた」
 集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は、そう話を切り出した。
 海洋世界の各地に存在する呪いの秘宝、メガリス。
 手にした者がその試練に打ち勝てばユーベルコードに覚醒する力を持っているが、失敗すれば死してオブリビオン――コンキスタドールになる運命が待っている。
「それでも、海賊達はまだ覚醒していない部下にメガリスを与える事がある」
 グリードオーシャンの海賊の大半は、覚醒者だ。
 異常な海流や気象で常に荒れ狂うグリードオーシャンの海は、覚醒者でなければとても航海することなどできないからだ。
 故にメガリスを与えた部下がコンキスタドールになってしまった時は、その海賊団が責任を持ってケリをつけるのが『海賊の掟』だ。
「今回は、海賊の部下が『壊遊魚・魔旗魚』になってしまう」
 壊遊魚・魔旗魚。
 背に蒼白いエネルギーを撒き散らし、大海も空も泳ぎ回る巨大な旗魚(カジキ)の化物である。剣の様に鋭い吻(ふん)は、例え鉄甲船でも脅威となろう。
「それに加えて、部下が飼っていたインコもメガリスの影響を受けて『コンゴウさま』となってしまう」
 もっふりと丸い外見に反して、嘴はクルミ程度なら余裕で砕く強靭さを誇る。
「この『魔旗魚とコンゴウさま』と言う組み合わせはね。件の海賊団にとっては、およそ最悪と言って良い組み合わせなんだ」
 『フィッシャーマンズ』と言う海賊団は、この海に釣れぬ魚はないと豪語する、全員が釣りに長けた海賊団である。
 だが反面――彼らが鳥を相手にした経験は、皆無だった。
 彼らが鳥との戦いに慣れる時間を、コンキスタドールが与えてくれる筈もない。海の藻屑となるのは時間の問題だ。
「グリードオーシャンの海賊は多くの場合、島の統治者でもある」
 『フィッシャーマンズ』は釣った魚を主とした交易に力を入れる事で拠点のある島を納めている。彼らの統治と交易力がなくなれば、島の未来は明るくないだろう。
「ちなみに『フィッシャーマンズ』が拠点としている島は、恐らくアルダワ魔法学園から落ちて来た島だ」
 新たな蒸気機械を開発する技術は既に失われているが、幾つか修繕を重ねて奇跡的に使い続けられている蒸気機械もある。
 その1つが、巨大な蒸し焼き機だ。
「無事に事が済めば、客分として迎えてくれる筈さ。交易に力を入れている彼らの島には様々な食材があるようだから、南の島でバーベキューなんて良いんじゃないかな?」
 私も混ざりたいくらいだ――なんて笑って、ルシルは鉄甲船への転移を始めた。


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 カジキマグロと良く言われますが、マグロと同じ種類の魚ではないんですよね。

 さて、今回はグリードオーシャンで、壊滅の危機にある海賊を救うお仕事です。
 1章はコンゴウさまとの集団戦。
 2章は壊遊魚・魔旗魚とのボス戦です。
 ここで1章の結果次第では、海賊達の助けがあるかもしれません。
 そんなに強くないので、なくても問題ない範囲のちょっとしたお助け程度ですが。
 3章は、日常。南の島でバーベキューでっす。拠点の島の名前など、OPにない島の詳細については3章開始時に追記します。(1,2章の戦闘には関係ない情報なので)

 1章のプレイングは公開後からの受付です。締め切りは、ツイッター、マスターページ等で告知の形となります。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 集団戦 『コンゴウさま』

POW   :    オウムじゃねぇ。インコだ
【嘴】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    回転尾羽斬り
【ふさっと伸びた尾羽】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    鮮烈なる絶叫
【耳を劈く叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:橡こりす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●オウムじゃねえ!
 釣れぬ魚はないと豪語する海賊『フィッシャーマンズ』。
 彼らを嘲笑うかの様に、バサバサバサッと幾つもの羽撃きの音が響いている。
「あいつ……鳥好きだったな、そういえば」
「しかし船長……ありゃあ、やべぇですな」
「ああ……こいつは、滅茶苦茶やべぇ。オウムってどう釣ればいいんだ?」
 カラフルな翼で飛び回る、海賊帽子被った赤い鳥の群れを見上げて、海賊が呟く。
 困惑した海賊達の――主に船長が口走った一言が、いけなかった。
『オレタチヲ、オウムトヨブンジャネエ!』
『オレタチハ! コンゴウインコダッッ!』
 インコの誇りを刺激された鳥――コンゴウさまは、何かガチギレして声を上げた。
 喋るんかい。

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 軽く状況の捕捉になります。
 海賊がコンゴウさまの群れに襲われている状況に、鉄甲船『燧丸』で近づいた所からのスタートとなります。
 猟兵側の鉄甲船は念の為に少し離れて停まります。
 鉄甲船からの遠距離攻撃は、相応の射程があるものならば届くものとします。
 その他、海賊船に乗り移る、飛んで戦う。自由にどうぞ。
 必要な事は、海賊船が沈む前にコンゴウさまの群れを倒す事、です。
 今回はスピード勝負!

 なお、コンゴウさまはもっふもふです。
 でもクルミ程度余裕で砕ける嘴を持つきょうあくなてきですよ。
 あと、インコである事をとても誇りに思っているようです。
============================
アトシュ・スカーレット
あわわ、可愛いインコさんだ!
もふもふしてる!!
でもでも、倒さないとなぁ…

海の上ではメーアに乗って行動するよ
【空中戦】も得意だから安心してね
Joyeuseと村雨を銃形態で、腐敗の【呪詛】をかけた【呪殺弾】を【乱れ撃ち】していくよ!
【空中浮遊】術式展開してメーアから離れた方がいいならそうするね

「あ、海賊の皆さーん!!なるべく射線から逸れて!!解呪出来るけど危ないよー。」
「むむ、もふもふ…可愛い…。」

隙ができれば【転移術・剣撃式】で背後に回り込んで攻撃するよ!
魔力で構成した短剣を【槍投げ】の要領で投げていくよー!

「ごめんね!!でも海賊さん達のためにここで倒れて!」


アメリア・イアハッター
大変な状況だけど、今私ワクワクしてる
だって初めて海を翔べるんだもの!

UCを発動し鉄甲船から飛び降り、海賊船に辿り着くまで海面を翔び、果てしなく加速を続ける
海賊船に辿り着いた所で高く跳躍
滞空中に敵を蹴り落とし続け、着水すればまた加速、跳躍、蹴り落としを繰り返していく

また、敢えてオウムと呼んで敵を海賊達から引き離し、海を駆ける自分を追わせる
味方がいれば、自分を追って隙だらけの敵を攻撃して貰えるかな

正直オウムとインコの違いってよくわかんないや
だってインコって名前ついてるオウムだっているじゃない!

それにしても赤い丸いのが海に浮いてると、なんだか浮きみたいだね
この子達を餌に、カジキ釣れたりしないかなー



●竜の背に乗って
「よっと」
 鉄甲船の左舷の縁に手をかけて、アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)がひらりと飛び越える。
 当然、その先に足元はない。
「おいで、メーア」
 アトシュの指で小さな指輪『Cattleya』が輝きを放ち、中の空間から海竜メーアが眼下に広がる青い海に飛び出した。
「頼むよ」
 アトシュがふわりと背中に降り立つと、メーアは短く一声鳴いて、故郷の海を海賊船目掛けてぐんぐん泳いでいく。
 やがて――船の周りを飛び交う赤い姿が、アトシュの目に飛び込んできた。
「あわわ、可愛いインコさんだ! もふもふしてる!!」
 はっきり見えた真ん丸なコンゴウさまに、アトシュの目が輝いた。

●海を翔ぶ
「んん? あの赤いのが、全部そうなの?」
 鉄甲船の甲板の上で。海賊船と思しき船の周りを飛び回る赤い点を見て、アメリア・イアハッター(想空流・f01896)は目を丸くしていた。
 赤は全てコンゴウさまだとしたら、これは大変な状況だ。
 なのに――なのに、アメリアの口元には楽し気な笑みが浮かんでいた。
(「うん、今私ワクワクしてる」)
 こんな状況なのに?
 だって――仕方がないじゃないか。
(「初めて海を翔べるんだもの!」)
 抑えきれない興奮を口元に笑みと浮かべて、アメリアは甲板を蹴って右舷から船の外へ飛び出した。重力に従って、海へと落ちていく。

「空を飛べるなら、海も飛べる!」

 『Kick Starter』の黒い靴底が海に触れたその瞬間、アメリアは海の上で跳んだ。
 パシャンッ、パシャンッ!
 水音立てて、波を蹴散らし、アメリアは海を蹴って翔んでいく。
 Fly Splash――フライスプラッシュ。
 その身にトビウオの持つ海面跳躍と滑空の力得る、アメリアの新たな業であった。

●翔んで、跳んで
 パァンッ!パァンッ!
 『Joyeuse』と『村雨』。アトシュが掲げた二丁の大型拳銃から響く銃声が、コンゴウさまが飛び交う海に木霊する。
 剣でもあり銃でもある2つの武器を、アトシュは銃形態で両手に構えて海からコンゴウさまを撃ち抜いていた。
『ウゲゴ……』
『チカラガ……デネー……』
 アトシュが込めたのは呪殺の弾丸。撃たれたコンゴウさまは、その呪詛の力に蝕まれ、力なく海へ落ちていく。
「ごめんね!! でも海賊さん達のためにここで倒れて!」
 まずは海賊船に近いコンゴウさまから、アトシュは撃ち落としていく。
「むむ。やっぱり、もふもふ……可愛い……でもでも、倒さないとなぁ……」
 海に漂う真っ赤なもふもふ羽毛の塊に手を伸ばしたくなる衝動を抑えて、アトシュは引き金を引き続け――。

「あれ? レティくん?」
 その背中に、少し驚いたアメリアの声がかかった。
「ん? あ、アメリアも来てたのか――」
 聞こえた声に振り向いたアトシュが、声の主がアメリアだと確かめた瞬間――その姿が消えた。
「え?」
 驚きつつも、アトシュは空を仰ぐ。
 アメリアは消えたのではない。海を蹴って跳び上がったのだ。すさまじい速度で。
 【Fly Splash】でトビウオの力を得たアメリアは、海面を一蹴りするごとに、海を駆ける速度を上げ続けていた。
 その速度を殺す事なく海を蹴って翔んだアメリアは、一気にコンゴウさまの群れの只中に飛び込んでいた。
「はっ!」
 アメリアの振り上げた足がコンゴウさまの一羽を蹴り飛ばす。
『コノッ!』
「おっと」
 尾羽で斬りつけようとしてきたコンゴウさまを返す足で蹴り落としつつ跳躍すると、アメリアは更に別のコンゴウさまに蹴りを叩き込んだ。
「うーん。近くで見ても正直、オウムとインコの違いって、よくわかんないや」
 空中戦の最中、アメリアはわざと周りに聞こえる様に告げる。
『アァ? ナンダトコラ!』
『モウ一度イッテミヤガレ!』
 あっさりと挑発に乗ってクワッと片目を見開いたコンゴウさまの数羽が、跳躍限界に達して落下していくアメリアを追って急降下し始めた。
『オウムト言ウンジャネエ!』
「だってインコって名前ついてるオウムだっているじゃない!」
 着水するなり海を駆けだしたアメリアは、追ってくるコンゴウさまを更に挑発しながらぐんぐん加速して行く。
『待チヤガ――!』
 アメリアを追う事に夢中になっていたコンゴウさまを、アトシュが撃ち落とした。

「剣よ、この一撃を手向けとすべく、その力を奮え!」
 アトシュの周りに、幾つもの短剣が生まれる。
 魔力で作り出したその刃を指の間に挟むように掴むと、アトシュは槍投げの要領で上空へと投げ放った。
 トスッと、コンゴウさまの数羽に刃が突き刺さる。
『ケッ、コノ程度デヤラレルコンゴウサマジャネーゾ!』
 囀るコンゴウさまに構わず、アトシュは刃を投げ続ける。
『イイカゲンニシヤガ――アレ?』
 業を煮やしたコンゴウさまが嘴から突っ込んで行った瞬間、アトシュの姿がメーアの上から消えた。
「こっちだよ」
 驚くコンゴウさまの背中にアトシュの声がして、突き付けられた銃口から放たれた呪詛の弾丸がコンゴウさまを撃ち抜いた。
『コノ――ッ!?』
 次の瞬間には、アトシュの姿は別のコンゴウさまのすぐ後ろにいた。
 転移術・剣撃式――テレポート・シュヴェーアト。
 アトシュが投げた短剣は、攻撃の為のものではなく、空間転移術の為の楔だ。短剣を受けた時点で、敵はアトシュに背後を取られたに等しい。
 アトシュも空中浮遊を併用しつつ瞬間移動しコンゴウさまの中を飛び交う方が、アメリアを巻き込まない射線を取り易かった。
 アメリアもそれを察して、短剣が刺さっていないコンゴウさまを蹴り落としていく。
 次第に海の上には、2人に落とされたコンゴウさまが増えていく。
「赤い丸いのが海に浮いてると、なんだか浮きみたいだね……この子達を餌に、カジキ釣れたりしないかなー?」
 後で試そうかとアメリアが考えた、その時だった。
「2人ともすげえな!」
「いいぞー! 姉ちゃんたち!」
 海賊船の上から歓声が上がったのは。
 だが――彼らは知らなかった。
「海賊の皆さーん!! まだいるから、なるべく射線から逸れて!!」
 アメリアは確かに女性だが、注意を促して来るアトシュは女性に見えるだけで男性である事を。
「解呪出来るけど危ないよー」
 わざと海賊達に当たりそうで当たらない射線でコンゴウさまを撃ち落とす銃弾を放ったアトシュの目は、笑っていなかったそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黎・飛藍
キサラ(f22432)と

とりあえず俺を変な呼び方して、薬品の匂いがする奴はキサラしか知らない
あと、素なのかわからない芝居がかった話し方と声

あんなに派手な鳥は見たことが無い。山に居た時に見た鳥は青か地味な色をしていた…アレは毒は無いのか?
まぁ、食えそうならばいい。肉が多いと更に良い
…部位的にはぼんじりが美味い

何だか大分喧しい奴らだな
インコだろうがオウムだろうが、鳥は鳥だろう
更に喧しくなった気がするが、多分気のせいだ
キサラが呼び寄せた赤い鳥達が射程内に入ったならば【睡蓮香】でまとめて眠らせる
大人しく寝ない鳥の始末はキサラがつける

手近に落ちてきた鳥が居たならしれっともふってみる
これは…羽毛団子か


空目・キサラ
藍々君(f16744)と

おや、鳥だ
僕は好きだよ、鳥。勿論、食べるのも愛でるのもだ
いやぁ、あの鳥達は随分とご機嫌な色をしているじゃあないか
多分毒は無いよ。いや、僕の場合毒があってもある程度平気なんだけれど

へぇ、そうか。あの鳥達はオウムと呼ばれると怒ると
ならば思いっきり、其処な赤いオウム達と呼び掛ける
鳥達の意識をこちらに向け、誘き寄せる事が目的だ
何せ僕は動きたくない、というより水に触れたくない
向こうから来てもらう方が色々手っ取り早いのだよ

藍々君の香でも眠らないコンゴウさま達がいたならば【泡沫心中】
嘴を開けたならばぽーいって睡眠薬を投げ込むよ。安眠妨害はいけない
そのまま海にぼちゃんとしてくれ



●赤い毒カエルはいるね
「おや、鳥だ」
「鳥だな」
 ボロボロの海賊旗の上を飛び交う赤い影を、空目・キサラ(時雨夜想・f22432)と黎・飛藍(視界はまだらに世界を映す・f16744)が離れて眺めていた。
「随分と派手な鳥だな。あんな派手な鳥は見た事がない」
「いやぁ、派手の一言で片づけてやるなよ。あの鳥達は随分とご機嫌な色をしているじゃあないか。藍々君」
 丸々とした赤い鳥を目で追いながら呟いた飛藍に、キサラも鳥たちから視線を外さずに口を開く。
「山に居た時に見た鳥は青か地味な色をしてい――藍々?」
 キサラが口走った名称が自分を指したものだと気づいて、飛藍の脳裏に浮かびかけていた山鳥の姿が霧散する。
「……その藍々ってのは俺の事か?」
「そうだよ?」
 念のためにと問い返してみれば、さらりと答えが返ってきた。
「……」
 かつて受けた実験の後遺症で他者の相貌が上手く判らぬ飛藍だが、例え表情を読めずとも口調と声の調子で、やめろと言ってもキサラが聞きそうにないのは察していた。
(「まあ、芝居がかった話し方で、俺を変な呼び方して、薬品の匂いがする。そんな奴はキサラしかいない。そう思えば判り易いか」)
 キサラに着けられた呼称を変なものだとは思いながらも、飛藍は敢えて追及せずに視線を頭上を飛び交う鳥たちへと戻す。
「……アレは毒は無いのか?」
「毒? 多分ないと思うけど……食べる気かい?」
 飛藍が鳥に戻した――と言うかやや変わった話題に、キサラは内心で首を傾げつつその意図を問い返す。
「鳥は美味いからな。部位的には、特にぼんじりが美味い」
 飛藍が言う『ぼんじり』とは、尻尾の付け根の肉を指す言葉である。一羽から僅かにしか取れない希少部位だが――。
「ぼんじりかぁ……どこだ?」
 空を仰いで、キサラは思わずそう口走っていた。
 飛び交う赤い鳥たちは、いずれも丸々としたボディである。尾羽はあるが、何と言うか球体に翼が生えている感じだ。
 ぼんじり――あるのだろうか。
「まあ食えそうなら良い。中々肉も多そうだし更に良い」
 飛藍、ぼんじりがあろうがなかろうが、食う気だった。
「そうか。僕も好きだよ、鳥。勿論、食べるのも愛でるのもだ」
 そしてキサラも、満更でもなかった。
 それを止めるものは――今回、この場にはいない。
(「あいつがいたら、食う気かと突っ込んできそうだな」)
(「彼がいたら、食べるのかと騒ぎそうだなぁ」)
 飛藍とキサラは、止めそうな誰かの事を同時に思い浮かべていた。それが同じ人物であるか否かは、定かではないと言う事にしておく。

●睡毒
「さて。向こうから来てもらう方が色々手っ取り早いね」
「そこまで寄せんでも、届くぞ」
 大きく息を吸い込もうとしたキサラに、飛藍が開きかけの掌を示しながら告げる。
「いや。海に落とすのではなく、この船の上に落とすのがいい。僕は動きたくない、というより水に触れたくないからね」
 本音を隠そうともせず、キサラはしゃあしゃあと返す。
「それとも藍々君が泳いで取って来るかい?」
「……任せた」
 そう問われれば、飛藍は首を横に振った。
 かくして、方針は決まった。キサラは大きく息を吸い込み――。

「其処な赤いオウム諸君!」

 空に向かって大きく声を張り上げた。
『アァァンッ!?』
『ダレガオウムダコラ!!』
『オレタチハコンゴウさまダゾ!』
 キサラの挑発に、ギャーギャーと騒がしく鳴き、叫び出すコンゴウさま達。
「何だか大分喧しい奴らだな。インコだろうがオウムだろうが、鳥は鳥だろう」
『鳥トカヒトククリニスルンジャネー!』
『インコハインコダー!』
 ギャーギャーギャーッ!
「何かまた喧しくなったような……まあ気のせいか」
「藍々君も中々いい性格してるな」
 ますます喧しくなったコンゴウさまを気のせいで片づけ、飛藍はキサラの評も構わず、閉じていた掌を開いて軽く腕を掲げた。
「面倒だな。寝とけ」
 飛藍の広げた掌から、ふわりと香が広がる。
 どこか涼し気ながら甘くもあるような、花の香が。
『ンァ? ナンダコノ香』
『森ノ花ミテーナ……』
 その香りは、上空で喧しくしていたコンゴウさまの元へ立ち昇っていき――。
『zzzzzz』
 ポトッ。
 ボトボトボトッ。
 空中で深い眠りに落ちたコンゴウさまが、船の上にボテボテと落ちてくる。
 ――睡蓮香。
 眠りの力を持つ睡蓮の香を放つ、飛藍の業。睡蓮は、ヒツジグサとも呼ばれる。
「これは……」
 落ちて来たコンゴウさまの一羽を、飛藍が掴み上げる。触られても、コンゴウさまは深い眠りに落ちたまま、ピクリとも動かない。
「……羽毛団子だな」
「何しれっともふってるんだい?」
 ぼんじりでも探すのかと思いきや、羽毛の手触りを確かめている飛藍にキサラが思わず突っ込んだ、そこに。

『ケェェェェェェェェェェッ!!!』

 空から絶叫が降ってきた。
 睡蓮の香がまだ届いていなかったコンゴウさまが上げた鮮烈なる絶叫である。
「ぐぁぁぁぁっ」
「み、耳がー!?」
 両手で耳を塞いで、のたうち回る海賊達。そればかりか、船の甲板がミシッと軋みを上げていた。コンゴウさまの絶叫は、それ自体が、無差別に敵を撃つ音の衝撃だ。
 だが――絶叫は、口を開けていなければ発せられない。
「全く、安眠妨害はいけないな。一緒に死んでくれよ」
 喧しく叫び続けるコンゴウさまの口を狙って、キサラは薬瓶から取り出した錠剤を、ぽーいっと放り投げた。
 スポンッと飛び込んだ錠剤は、高濃度に成分濃縮された睡眠薬――泡沫心中。
『ェェェェ――……』
 錠剤を放り込まれたコンゴウさまの絶叫が、途絶えていく。
「そのまま海にぼちゃんとしてくれ」
 眠ると言うより意識を失ったコンゴウさまは、キサラの言う通り真っ逆さまに海にぽちゃんと落ちていった。
「……あの鳥、口から泡吹いてたみたいだが。引き揚げても食えるもんか?」
「まあ僕の場合は、毒があってもある程度なら平気だからね」
 食える鳥を減らすなと言いたげな飛藍に、キサラは悪びれもせず返していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
こいつらも元々はただのインコだったのかー…
何か巻き込み事故って感じで可哀想だな…
とはいえ、なっちまったもんはもう仕方ない!
海賊団の為にも!この島の為にも!
そして美味しいBBQタイムの為にも!
やるぞニコーーー!!

まずは羽根でピュッと移動して
コンゴウさまの前に現れ注意を引く!
おうお前ら!オウムのくせに
なにいっちょ前に格好いい海賊帽子と眼帯してんだ!
オウムという地雷ワードで挑発して時間を稼ぐ!

…ってギャーー!うるせー!
UCで夏を先取りなせみっち集団を召喚!
負けじとせみっちもけたたましく鳴いて
大絶叫大会を繰り広げながら
わらわら纏わりついてやるぜっ
ニコ!今がチャーンス!


ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)と】
此れはまた…随分と立派な鳥になったものだな、驚いたぞ
うさみも珍しく仕事に対して意欲的に取り組んでいて良い事だ
ん? ああ…粗方片付けた後のご褒美が楽しみなのか、そうか…

迅速に決着を付けろと申すか、承知した
うさみが飛べる身体である事を活かして敵に接近している間に
双剣を交差させ念じよう、「範囲攻撃」により花弁の攻撃が
離れた距離のコンゴウさまにも届くよう――【花冠の幻】よ!

す ご く う る さ い !
何をやらかしたのだ、うさみよ!
集中力が切れそうになりながらも「継戦能力」で堪える
ああ、言われるまでもない、任せておけ
奇跡の虹の花よ、我が敵を切り裂け! せみっちごと良いぞ!



●鍵は食欲
 ――バサバサバサッ!
 海賊船へ向かうニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)と榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)の耳に、幾つもの羽撃きの音が聞こえて来た。
 音の正体は探すまでもない。
 まだ咄嗟に数えきれない程いる、コンゴウさまの群れだ。
「此れはまた……随分と立派な鳥になったものだな、驚いたぞ」
「こいつらも元々はただのインコだったのかー……」
 真っ赤な真ん丸ボディに感心したように呟くニコの隣で、うさみっちが普段より声のトーンを落として言いながら、ぶーんと海賊船へ降りて行った。
 ニコも箒の先を傾けて、その後に続く。
「何か巻き込み事故って感じで可哀想だが、なっちまったもんはもう仕方ない!」
「ほう? うさみも珍しく仕事に対して意欲的に取り組んでいるな」
 何か言う前に気を引き締めキリッとした表情を見せたうさみっちに、ニコは良い事だと小さな笑みを浮かべて頷き――。
「海賊団の為にも! この島の為にも! そして美味しいBBQタイムの為にも!」
「ああ……粗方片付けた後のご褒美が楽しみなのか、そうか……」
 直後、ただ漏れなうさみっちの欲望に、ニコは内心で顔を覆っていた。別に気にするような動機でもないのだが、気になってしまうのはニコの性分であろう。
「やるぞニコーーー!!」
「うむ。ぬかるな、うさみよ!」
 そして何だかんだ言ってうさみっちに甘いのもまた、ニコである。

●自然界の掟――食物連鎖
「じゃあ行ってくるぜ!」
 背中の羽根をぶーんと羽搏かせ、うさみっちが上昇していく。
「おう、お前ら!」
 コンゴウさまの群れの中に飛び込むと、うさみっちはそこでホバリングしたまま偉そうに腕を組んで、コンゴウさま達を見回し――。
「オウムのくせに、なにいっちょ前に格好いい海賊帽子と眼帯してんだ!」
 いきなり、地雷を踏み抜いた。(空だけど)
『オウムッテノハオレサマ達ノ事カー!』
『オレタチヲ、オウムトヨブンジャネエ!』
『ツツクゾコラ!!!』
 これは作戦である。
 ぶんぶん飛べるうさみっちがコンゴウさまの注意を引いて、その間にニコが船の上から攻撃の準備を整え一網打尽にするのだ。
 ――あれ?地雷ワードを踏み抜いてコンゴウさま達ガチギレさせると言うのは、作戦になくないかな?
「いきなりうるさいな……何をやらかしたのだ、うさみよ」
 船の上のニコは、騒がしくなった空を見上げ眉間に皺を寄せていた。
『ケェェェェェェェェェェッ!!!』
「ってギャーー! うるせー!」
「迅速に決着を付けろ……だったな。うさみが突かれぬ為にも、遠慮は無しだ」
 空から響いてきた、コンゴウさまの絶叫とうさみっちの声。それで大体察したニコは、時刻みの双剣を頭上に掲げた。
 時計の長針と短針を模した剣が、交差する。
「夢は虹色、現は鈍色――」
 ニコの言葉に呼応して、時刻みの双剣から炎と氷の輝きが消えていく。
「奇跡の花を此処に紡がん」
 代わりに剣を包む輝きは、虹色。
 花冠の幻――レインボー・フラワーズ。
 武器を無数の虹色の薔薇と変えて敵を切り刻むニコの業である。その発動までの時間を稼ぐのが、うさみっちの担当だった筈なのだが――。

「くっそ、うるせー!」
 コンゴウさまの絶叫に耳を塞いで耐えていたうさみっちは、黙っていられなかった。
「こうなったら、夏を先取りのせみっち軍団だー!」
 ぶぅぅぅぅぅん!
 喧しい空に加わったのは、どこからともなく現れた『きょうふときょうきのせみっち』315体の羽音。
『み―っちみっちみっち』『み―っちみっちみっち』
『み―っちみっちみっち』『み―っちみっちみっち』
『み―っちみっちみっち』『み―っちみっちみっち』
 そして始まる、せみっちの大合唱!

「す ご く う る さ い !」

 双剣を掲げているがために耳を塞げないニコは、コンゴウさまの鳴き声に加わったせみっちの大合唱の爆音に、耐えるしかなかった。
 あと、海賊達の『兄ちゃんの連れ、何で更にうるさくしてるんだい?』と言いたげな視線も、耐えるしかなかった。
「まさか……ここでせみっちとは……くっ!」
 双剣を包んでいる虹色の輝きの明滅に自身の集中力が揺らぎかけていることを悟り、ニコは瞬時に鋼の精神力で己を取り戻す。
 輝きが剣を花弁と変えるまで、あと僅か――。
「負けるな、せみっち! へばりつけ! けたたましく鳴きまくって、大絶叫大会を繰り広げろー!」
 うさみっちもせみっちをけしかけて、その時間を稼ごうとしている。
 このままいけば、コンゴウさまの群れの数を一気に減らせる。
 ――そう思っていた。
 そんな時だ。
『……セミ……ムシ……』
 とある一羽のコンゴウさまの片目が、キラーンッと輝いたのは。
 せみっちは妙にリアルにせみなのである。
 そして――バサバサッと羽撃いたコンゴウさまの、クルミも砕く嘴がせみっちに突き立てられた。

 インコは基本種子食――果実やナッツなどの種を食べるとされていますが、個体によっては虫を捕食することもあります。(※都合によりお見せ出来ません)

『ウメェ……』
 せみっちをバリムシャァと美味しく頂いたコンゴウさまが、うっとりと呟く。
『オイ皆ー! クッチマエ!!!!!』
『イタダキマス!』
 そして始まる弱肉強食。
「せ、せみっちが……こうなったら、せみっちファイナルで……って、死んだふりしても食われるだけじゃねーか!?」
『ン……?』
『アイツモ、セミ……?』
 目の当たりにした弱肉強食に頭を抱えるうさみっちに、コンゴウさまの一部が捕食者の視線を向けていた。
「ぴゃぁぁぁぁぁっ! オレはせみっちじゃねー!」
 流石に慌てて高度を下げる、うさみっち。
「ニコー! まだかー! 今がチャンスだー!」
「言われるまでもない、任せておけ!」
 うさみっちに応えるニコの手には、もう何も握られていなかった。代わりに周囲に舞うは虹色の薔薇。
(「せみっちはともかく、うさみは食わせん!」)
「【花冠の幻】よ! 奇跡の虹の花よ、我が敵を切り裂け!」
 ニコの決意を乗せた無数の虹色の薔薇の花弁が、うさみっちを狙ったコンゴウさまを斬り裂いて、そのまませみっちに夢中なコンゴウさま達に襲い掛かる。
「せみっちごと良いぞ!」
 ニコの固い意志に応えて、虹色の花は嵐の如く吹き荒れて、コンゴウさまもせみっちも区別なく斬り裂いていく。
 花弁が再び双剣に戻ると、空から赤い羽根とセミの羽が降ってきた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

司・千尋
連携、アドリブ可

さて鳥退治だ
ついでに海賊救助も出来て一石二鳥だな


近接や投擲等の手持ちの武器も使いつつ『翠色冷光』で攻撃
弾道をある程度操作して追尾させ範囲内の敵を全て攻撃する
範囲外なら海賊船に乗り込んで戦う

ついでに海賊に助言っぽい事でも言ってみようか
どんな敵でも釣りに例えて考えてみたらどうだ?
敵は空中を泳ぐ新種の魚だ!
魚の動きをよんだり駆け引きなんかは得意だろ?
…なんてな
コンゴウさまは心が広いから魚に例えられても怒らないよなぁ?等挑発してみる


敵の攻撃は細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
手数が足りなければ武器や『翠色冷光』を使い迎撃

世の中可愛いだけじゃ生き残れないんだぜ



●空を泳ぐ魚は後で出てきます
 ――バサバサバサッ!
 虹色の花嵐が治まった空に、再び羽撃きの音が響く。
「さて、鳥退治だ」
 海賊船に乗り込んだ司・千尋(ヤドリガミの人形遣い・f01891)は、数を減らした赤い鳥の群れに向けて掌を開いて片手を掲げた。
「消えろ」
 短く告げた千尋の掌から、青い輝きが放たれる。
『ン? ナンダ――グピャッ!』
 光弾はのこのこ近づいてきたコンゴウさまを、あっさりと吹っ飛ばした。
『コウゲキダ!』
「ほう。中々判断が早い鳥だな。だが――」
 千尋は光弾放った掌を閉じ、二本の指だけ立てて伸ばす。そのまま手首を返して指を振れば、空中の光も追従するようにくんっと向きを変えた。
『ンナッ!?』
 驚くコンゴウさまを、光弾が撃ち抜いた。

 翠色冷光。
 そこが何処だろうが周囲の影響を受けず、千尋の意に従って敵を撃つ青い光が、直線や曲線、様々な軌道を描いて、コンゴウさまを撃ち落としていく。

「すげえな……」
「俺達じゃ鳥は釣れねえ……」
 それを見ていた海賊達から上がる、簡単と諦観の声。
「そんな事ないだろう。どんな敵でも釣りに例えて考えてみたらどうだ?」
 そんな海賊たちに助言の一つもしてみようかと、千尋は口を開いた。
「釣りに?」
「ああ。餌はもう判っているだろ? 虫」
 弱肉強食は、千尋にも見えていた。
「あとは空中を泳ぐ新種の魚だと思えば、どうだ? 魚の動きを読んだり駆け引きなんかは得意だろ?」
 ――なんてな。
 その一言は胸中で呑み込んで、千尋は海賊達から空に視線を戻す。
 千尋も判っていた。同じようには出来ない。どんな餌を使うにせよ、釣り竿の先を空に向けて放つのは、重力に逆らう手段がなければまず不可能なのだから。
 だが――。
「取り合えずぶん投げてみるか?」
「一瞬に賭けるんですかい、船長」
「それよりフライロッドを使ってみたら――」
 一部の海賊たちは、なんだか乗り気になっているようだった。
「ついでに海賊救助も出来て、一石二鳥ならぬ一光二鳥と言ったところか」
 思わぬ効果に驚く内心を浮かべた笑みで隠して、千尋は光弾を操りコンゴウさまを一体ずつ撃ち落としていく。
 真っすぐ進んだかと思えば、突然曲がったり反転したりする光弾は、空を自在に飛ぶコンゴウさま達でも避けられるものではない。
 とは言え――。
 翠色冷光に、何の代償がないわけではない。
 光を操る度に、千尋の頭にチクリ、チクリと、小さな痛みが走っていた。今は何とか無視できる程度だが、細かく操作しようとすれば酷い頭痛が千尋を襲う。
(「あまり長くはかけたくないな――」)
「コンゴウさまは心が広いから、魚に例えられても怒らないよなぁ?」
 スッと目を細めた千尋が、敢えてコンゴウさまを挑発する。
『サカナデモネエ!』
『コンゴウインコノ嘴ダ!!!』
 挑発に乗った二羽のコンゴウさまが、千尋目掛けて急降下を始めた。向けられている小さくも鋭い嘴が、キラーンと輝く。
「突っ込んで来るなら、こうだ」
 千尋は顔色一つ変えずに落ちついた素振りで、翠色冷光を操る手はそのままに、反対の手で光の盾――鳥威を分割展開した。
 カシャンッと軽い音を立てて、光の盾が砕け散る。
『『ドーヨッ!』』
「ああ、すごいな――でも、世の中可愛いだけじゃ生き残れないんだぜ」
 鳥威を砕いて尾羽ピーンとなってドヤるコンゴウさま達の背後に、千尋の翠色冷光が迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
さて…今回も海賊の掟絡みの事件か。
釣りを得意とする海の男たち…是非とも
ガーネット商会と協力関係を築きたいな。今助けに行くぞ!

鳥が相手ならこちらも鳥を出すしかあるまい。
いけ、メカたまこEX!空中から敵の動きを<撮影>しながら、
奴らの会話を<聞き耳>で盗聴せよ。
たまこの護衛には、ランブルフィッシュをつける。
得意の<決闘>でたまこを守ってやってくれよ。

敵は飛行するから、攻撃が届かないかもしれない。
クロスグレイブを装備し、<砲撃>をメイン攻撃としよう。
敵がピーピー鳴き出したら、【パイロキネシスα】を発動。
<念動力>で火球を操りバラバラに飛ばし、炎の<属性攻撃>で<焼却>。
インコの丸焼きにしてやるわっ!


鈍・小太刀
そこのオウム!
ちょっとぐらいもふもふだからっていい気にならないでよね?

仁王立ちでオウムと連呼し挑発
猟兵側に誘き寄せ海賊達から引き離す作戦よ
どさくさ紛れにモフモフしようとか思ってないからね?(超思ってる目

ふふ、オウムなんて空と陸の生き物じゃない
海のもふもふといえばやっぱり彼ら、アザラシよ!

まるまるもふっとしたアザラシさん達召喚
ペンギンも食べちゃう大型肉食獣な彼らだけど
今日はかわいいウサミミも付けちゃうからね♪
空も泳いでお腹いっぱい食べといでー!

私も参戦
糸雨で捕まえながらもふぅ

耳を劈く叫び?
ふふふ、対策は万全よ
私もアザラシ達も船員達も皆
ちゃーんと耳栓(オーラ防御)してるから!(どやぁ

※アドリブ歓迎


木元・杏
海賊の人、コンキスタドールになっ…………かじき?
……バターしょう(頭ふるふる)
ん、何でもない
海賊の掟
貴方達の仲間に対する想い、見届けさせて欲しい

まずコンゴウさま
まるっと可愛カッコイイ…(きゅん
でも、元はもっとすらっとしてた?
丸いもふもとてもとてもいいけど
雄叫ぶ時の首元のしゅっとした姿こそザ・インコ

さあ、思い切り雄叫んで
あの凛々しい姿に戻って?

煽ってる間にうさみん☆、帆をジャンプで飛び昇り、飛んでるコンゴウさまに近付き
雄叫ぶ瞬間にリボンで嘴を縛り上げて?
その隙にえいっとUC

叫ぶタイミングがわかれば対処もしやすい、高度な駆け引き

ふふ、飛べないと落ちてくる
もふもふし放題
ん、あっちでご主人様待っててね



●本当にこの順番でプレイングが来たんですよね
 ――弱肉強食が起こる、少し前の事。
「さて……今回も海賊の掟絡みの事件か」
 燧丸に転移してきたガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は、海面に反射する陽光に目を細めながら、海賊船に視線を向ける。
 先行した猟兵達が、海賊船を取り巻くコンゴウさまを撃ち落としている所だ。
「私も急いで――ん?」
 海賊船まで向かおうとしたガーネットが、後ろに感じた気配に気づく。
「「あ」」
 ガーネットが振り向くと、丁度転移してきた鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)と目が合った。
「ガーネットも来てたのね」
「ああ。奇遇だな」
 見知った間ながら偶然の出会いに目を丸くする2人だが、そこにもう1人、転移してきた者がいた。
「「「あ」」」
 木元・杏(食い倒れますたーあんさんぽ・f16565)である。
「ガーネット、小太刀。来てたの」
「私達も今ばったり会ったところだ」
「杏も来るなんてねぇ」
 とてて、と駆け寄る杏をガーネットと小太刀が迎える。
 3人がいつもの仲間と共に、この燧丸がグリードオーシャンに辿り着く航海に乗り込んでいたのは記憶に新しい所だ。
 今回は示し合わせてもないのに集まれた偶然に、3人は笑顔で顔を見合わせた。

「杏はやっぱり、お魚狙い?」
「ん。……バターしょう」
 海賊船へ向かう中、小太刀の問いかけに杏の口から食欲が言葉となって零れ出る。
「……なんでもない」
 自分で気づいた杏は、フルフルと首を横に振った。
「海賊の掟。海賊達の仲間に対する想い、見届けたくて来たの」
「いつもの杏ね」
「いつもの杏だな」
 取り繕う杏に、小太刀とガーネットが顔を見合わせる。
「まあ、いいじゃないか。私もガーネット商会として、釣りと交易を得意とする彼らとの協力関係を築きたくて来てるのもあるからな」
 聞かれる前に、ガーネットも己の目的を口にする。
 ガーネットの経営する会社には、最近になって、グリードオーシャンの海上交易も事業に加わっている。
「2人とも、しょうがないわね。私は海賊達を一番に――」
 なんて口では言ってる小太刀だが、目と顔に書いてあった。
 モフりたい――と。
「小太刀は、鳥もふもふ狙い」
「だな」
「どさくさ紛れにモフモフしようとか、思ってないからね? ほら! 早く海賊船に行くわよ!」
 杏とガーネットにあっさりと読み取られた小太刀は、赤くなった顔を悟られないようくるっと振り向き、間近に迫った海賊船をびしっと指さした。

●三人寄れば何とやら
 海賊船に乗り移ってみれば、コンゴウさまとの彼我の距離は近くなる。
「コンゴウさま……」
 更に大分群れの数が減ったの手伝って、コンゴウさまの真っ赤な真ん丸ボディも、懸命に羽撃く短いカラフルな翼も、良く見える様になった。
「まるっと可愛カッコイイ……」
 飛び交うコンゴウさま達の姿に、杏がきゅんっと心を奪われかける。
「あの翼で良く飛べるな……どうなってるんだ」
 航空力学とかその辺を無視してるような姿に、ガーネットも目を奪われていた。
「私があのオウムたちを誘き寄せるから、2人とも、よろしく!」
 そんな2人の肩を叩いて小声で告げながら、小太刀は2人の前に出る。
「そこのオウム達!」
 そして小太刀は、わざと目立つ様に腰に手を当てて仁王立ちして、声を張り上げる。
『オウムオウムト、テメエモカ!』
『オレタチヲ、オウムトヨブンジャネェ!』
 小太刀の狙い通り、ギャーギャーと叫び出すコンゴウさまの群れ。
 碌に打ち合わせもしていないが――3人ならきっと何とかなる。
「ちょっとぐらいもふもふなオウムだからって、いい気にならないでよね?」
 そんな確信を抱いて、小太刀は更にコンゴウさまを煽る声を上げた。

「鳥が相手ならこちらも鳥を出すしかあるまい」
 目には目を、鳥には鳥を。
 騒がしくなった空を仰ぐガーネットが、鉄色のにわとりを掲げる。
「いけ、メカたまこEX!」
『コケッコー!』
 ガーネットの手から、『メカたまこEX』が翼を広げ大空へ飛んで行った。
『ナンダ、コノヤロー!』
『コノ空ハコンゴウサマノ縄張リダゾ!』
 コンゴウさま達も、メカたまこEXにすぐに気づいて、更に騒ぎ出す。
 メカたまこEXは元々、ガーネットが宇宙船の艦内用に用意したドローンだ。色々機能はあるとは言え、オブリビオンが本気で攻撃して来たら。あのつぶらながらも鋭い嘴で突かれたら――長くは耐えられないだろう。
「縄張りか。縄張りにうるさいのが、自分達だけだと思うなよ?」
 だからガーネットは、メカたまこEXに続けて青い魚も飛ばしていた。
「ランブルフィッシュ、たまこを守ってやってくれよ」
 ガーネットがランブルフィッシュと呼んだ青い巨大熱帯魚が、鬣の様に風になびく青い大きな背びれを揺らして、コンゴウさまを押しのけメカたまこEXに追従する。
 ランブルフィッシュは、ペタと言う熱帯魚だ。
 またの名を闘魚とも言う、非常に縄張り意識の強い魚である。
 メカたまこEXの護衛にはもってこいだ。

『ナンダコノサカナ!』
『ソッチジャネエ、オウムトヨンダアッチダ!』
 メカたまこEXを狙うか、オウムと呼んだ小太刀を狙うか。
 意見が割れるコンゴウさま達の様子を、杏はじっと見上げていた。
「元はもっとすらっとしてた?」
「ああ、あんな丸い鳥じゃなかったぜ」
 杏の疑問に、海賊の一人が答える。
 それを聞いた杏は、思った。
 ――見たい、と。
「今のその、丸い『もふ』もとてもとてもいいけれど。雄叫ぶ時の首元のしゅっとした姿こそ、ザ・インコ」
 杏の脳裏に浮かんでいたのは、昔アフリカで見た野生のインコたち。
「さあ、思い切り雄叫んで。あの凛々しい姿に戻って?」
『ヤッタレ、ヤッタレ!』
『耳カッポジッテキキナ!』
 無茶を宣い煽る杏に、コンゴウさま達が騒ぎ出す。またあれが来るのかと、海賊たちが耳を塞いでその場に蹲る。

『『『ケェェェェェェェェェェッ!!!』』』

 そして響き渡る、数羽のコンゴウさまの絶叫の合唱。
 だが――。
「あれ?」
「どうし……あれ、そんなにうるさくない」
 急に耳に来なくなった衝撃に、海賊たちが目を丸くする。
『キカネェ!?』
『ドウナッテルンダ!?』
「ふふふー!」
 戸惑うコンゴウさまを、小太刀がドヤ顔で見上げていた。
「ちゃーんとオーラの耳栓してるんだから! 対策は万全よ!」
 小太刀はオーラ防御を耳栓の様にして、海賊達にまで広げていたのだ。
 コンゴウさまの絶叫を完全に防ぐには至らないし、音の衝撃の緩和の方が弱くはなっているが、耳を塞がなくとも音を我慢できる程度には抑える事が出来ていた。
「オウムなんて空と陸の生き物じゃない!」
『ダカラオウムジャネエ!』
 そこまで気づかせないように、小太刀はまたオウムと呼んで、敢えてコンゴウさま達をキレさせる。
「ここは海のもふもふの出番ね。海のもふもふと言えばやっぱり彼ら、アザラシよ!」
 小太刀がその名を告げると、海の中からアザラシの群れが飛び出して来た。
「彼らはペンギンも食べちゃう大型肉食獣なのよ!」
 アザラシを漢字で描くと、海の豹と書く。立派な獣なのである。
 なのだが――。
「でも今日はかわいいウサミミも付けちゃうからね♪」
 小太刀が喚んだアザラシたちは、何故かウサミミ付きであった。
「空も泳いでお腹いっぱい食べといでー!」
 小太刀の声に背中を押され、ウサミミ生えたアザラシたちは、まるで海の中の様に空をすいすい泳いでいく。
 ウサミミな海の仲間達――何故か海の仲間にウサミミ着けて召喚すると飛行能力を得ると言う、小太刀の召喚術である。
 何故ウサミミなのかは、小太刀が召喚したからとしか言えない。
 海賊の皆さんも『え、どういう事?』って顔してるけれど、そういうものなのだ。
『ギャーッ!?』
『コッチクンジャネエ!?』
 そして空で始まる弱肉強食パート2。
 但し今度は、コンゴウさまが食われる側である。

 一方その頃。
「……む。インコ、凛々しくならない」
 杏は、ちょっぴり残念そうだった。
 コンゴウさま達が、丸モフのままだったからである。
 だが杏とて、凛々しいインコなコンゴウさまを見たいと言うだけで、雄叫べと煽ったわけではなかった。
 既に海賊旗のなくなった帆柱を、うさ耳付きメイドさん人形・うさみん☆が駆け上がっていく。
 柱の先を蹴って跳び上がると、うさみん☆は小太刀のウサミミアザラシの背中も足場にして、コンゴウさまの群れの中に飛び込んだ。
『コンドハナンダ?』
『コイツモ落トシテヤレ』
 うさみん☆を警戒したコンゴウさまが、絶叫を上げようと嘴を開いた。
「杏、今だ」
 同時に甲板の上でガーネットが短く告げる。
「そこで、リボンで縛り上げて?」
 杏が一言告げて糸を手繰れば、うさみん☆の袖からリボンが飛び出した。
 シュルルッ!
『モガッ!?』
 コンゴウサマの真ん丸ボディにリボンが巻き付き、嘴を抑え込む。うさみみの様に大きめの輪っかにした蝶々結びで、ラッピング完成。
「叫ぶタイミングがわかれば対処もしやすい、高度な駆け引き」
 嘴を開かずに囀る鳥もいるが、あれほどの絶叫となれば嘴は開かれる。先の絶叫合唱で全てのコンゴウさまが嘴を開いたのを、杏はちゃんと見ていた。
 そして――あの真ん丸ボディである。嘴を封じれば、翼も一緒に抑え込む事になる。翼がなければ、鳥は飛べない。コンゴウさまだって、落ちる。
「えいっ」
 落ちるコンゴウさまに向けた杏の指先で、桜の花弁のような光が散った。
 同時に放たれた白銀の光は、華灯の舞。
 光の弾丸が、落ちるコンゴウさまを海へと撃ち落とす。
「ふふ、飛べないと落ちてくる。小太刀、もふもふし放題だよ」
「その手があったわね!」
 杏の一言で、小太刀が目を輝かせて苦無を投げる。
『ドコネラッテヤガ――』
 コンゴウさまの横を通り過ぎたかに見えた苦無が、くいっと曲がる。苦無に付いた極細の鋼糸――『糸雨』をコンゴウさまに巻き付け、小太刀はぐいぐいと引き寄せた。
「もふぅ……」
 鋼糸で捕らえたコンゴウさまに、小太刀の両手が伸びた。

「やれやれ」
 その様子に、ガーネットが苦笑を浮かべる。
 ウサミミアザラシ達はまだコンゴウさまを追っているが、小太刀のあの指示では、お腹いっぱいになったら止まってしまいかねない。
 残るコンゴウさまを駆逐するには、ガーネットも動くしかない。
「やはり、私も撃ち落とさないとな」
 ガーネットが構えたのは、巨大な十字架型の携行型砲塔『クロスグレイブ』。
 その砲塔を、ガーネットはコンゴウさまが舞う空に向けた。
「私の前に立ち塞がるものは、すべて焼き払ってやろう」
 ガーネットが引き金を引いた瞬間、クロスグレイブの砲塔が、文字通り火を噴いた。
 パイロキネシス・α。
 離れた砲弾は、ガーネットのサイキックエナジーで燃え上がる炎。
 更に炎の砲弾は75の炎弾に分裂し、それぞれ別々の軌道を描いて飛んで行く。的確にコンゴウさまを狙って。
 メカたまこEXは、ガーネットに空からの視点の映像を送っていた。先に杏にタイミングを告げたのも、その視点からによるものだ。
「インコの丸焼きにしてやるわっ!」
 船上と空中。二つの視点を得たガーネットには、飛び回るコンゴウさま達に照準を合わせるのは難しくなかった。

 こうして――空から、羽撃きの音が消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『壊遊魚・魔旗魚』

POW   :    吶喊旗魚
全身を【蒼白いエネルギー】で覆い、自身の【戦意】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    狂乱旗魚
自身の【蒼輝鰭】が輝く間、【自身】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    飛翔旗魚
召喚したレベル×1体の【旗魚】に【魔剣】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:鴇田ケイ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は死之宮・謡です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●フィッシャーマンズ
「何処の海賊団か知らねえが、助かった! 恩に着る!」
 鳥の気配がなくなった海賊船の上で、海賊団『フィッシャーマンズ』の船長が猟兵達に深海魚の頭を下げていた。
「ああ、この頭か? 普通の人間種からすりゃ、珍しいだろうな」
 頭を上げた船長は、猟兵達の視線に気づいて漆黒の魚の頭部を指でかく。ギョロリとした目と、凶悪そうな牙が特徴的な魚ヘッドだが、物腰は話のわかる相手の様だ。
「俺はオニキンメって深海魚の深海人だ」
 オニキンメ。幼魚の頃に頭部にある鬼の角のような突起からその名が付いた、キンメダイの仲間に分類される深海魚である。
「まあ、のんびり自己紹介をしてる暇はねえ。不甲斐ないが……アレを討伐するのも、手伝っちゃ貰えねえだろうか。どうも俺達だけじゃ勝てそうにねえ」
 船長がアレ、と指したのは他でもない。
 丁度海から突き出ている蒼白いエネルギーの主――『壊遊魚・魔旗魚』である。
「アレはうちの部下だったヤツだが、ああなっちまったらもう戻れねえ。ならせめて、この海で葬ってやりてえ」
 蒼白い輝きを遠い目で見やり、船長は猟兵達に再び頭を下げた。
「船長! 帆は半分くらいやられちまってますが、外輪は無事でさぁ! 船は何とか動かせますぜ!」
 そこに、船の奥から船員と思しき声が響く。と同時に、船の後方でドルンッと重低音が響いて、蒸気が噴き上がった。
 次いで、船の左右両舷にある巨大な水車のようなものが、重たい音を立てて着水し、ゆっくりと回転し始める。
「俺らの船は、うちの島に残っていた蒸気機関を使った動力がある。まあ、風がなくて帆が使えねえ時なんかの補助って程度に使ってんだが――」
 所謂、外輪船と言うタイプだ。
 動けないままでは、魔旗魚の良い的だったが、少なくともその心配はないだろう。
「よーし! 野郎ども、釣り竿を持て! 投網を構えろ! 無理に釣り上げようとすんな、あの野郎の邪魔をしてやれ!」
 ――オォォォォォッ!
 船長の檄に、海賊達が鬨の声を上げる。彼らの手には、いつの間にか釣り竿か投網が構えられていた。船長のユーベルコードだろう。
「すまねえがトドメの方は、頼むぜ」
 自身も投網を肩に担ぎながら、船長はギョロリとした目を猟兵達に向けていた。

============================
 と言うわけで、2章です。『壊遊魚・魔旗魚』とのボス戦です。
 海賊船の被害は最小限で済みました。
 ある程度動かせますので、魔旗魚の攻撃を海賊達が一方的に受ける事はないです。

 そして、海賊たちは釣り竿や投網で魔旗魚の妨害をしてくれます。
 具体的には、皆さんの行動の成功率が少し上がります。
 特に何もなくても海賊たちは勝手に行動しますが、自身の行動に対してこのタイミングで投網を投げて欲しい、とかプレイングにあると上昇率が良くなります。
 また周囲の海や海賊船の上には、さっき倒したコンゴウさまが転がってます。何かに使えるかもしれません。

 魔旗魚は、視界内で動くモノ全てに襲い掛かる凶暴な魚です。
 どれだけ傷付いても退くことはありません。

 状況は以上です。今回はシンプルにボスを倒せばOK。
 プレイングは、この導入公開から受付開始です。締切は今回も成功度到達のタイミングとなる予定です。おそらく、4/26(日)頃までは受付にできると思います。
(また別途ツイッター、マスターページ等で告知します)
============================
空目・キサラ
藍々君(f16744)と
おやおやカジキだ。照り焼きにしても煮付けにしても、美味なのだよなぁ
ほう?藍々君はカジキは初めて見るのかい

睡眠薬を盛…使ったら藍々君に睨まれてしまいそうだな
ここは薬には頼らず行こうか
って事で、薬瓶を取り出す

あくまで相手に使うという意味では頼らないだけで、僕自身が頼らないとは一言も言っていないよ?
そうだ、海賊の衆。釣り糸の先にコンゴウさまをくくり、振り回して囮にしてくれないか

…という訳で、魔旗魚が僕の鋼糸の射程に入る直前に【過剰摂取による副次効果、及びその代償】
タイミングを計って手早く鋼糸で魔剣カジキ達ごと魔旗魚を雁字搦めにして、行動を阻害する

後は頼んだ。藍々君
僕は少し寝る


黎・飛藍
キサラ(f22432)と
あの活きのいい魚は…良く分からないが美味いのか
川に住む魚ならば少し分かる。だが海に住む魚は殆ど知らない

魚は鮮度が命だというのに、瞬間凍結担当が居ないことが悔やまれるな
まぁ悔やんでも仕方ない

錠剤がガラス瓶の中で擦れ合う音と、少し強くなった薬品の匂いで顔をしかめる
薬に頼らないと言っていなかったか。魚の味が落ちるかもしれない

キサラと入れ替わるようにして行動
…戦闘中に寝るとか、リスクが大きすぎると思うんだが
まだ魚達が自由に動けていない内に【睡蓮は微睡む】でエラを狙って攻撃
エラ呼吸が上手くできなくなれば、酸素が回らなくなって多少は時間稼ぎになるだろう
その間にキサラが起きればいいか


司・千尋
連携、アドリブ可

最近魚運があるなぁ…
まぁ今回は元ヒトなんだし
食おうって奴はいないだろう多分


近接武器や投擲での攻撃も混ぜつつ
基本的には攻防に『怪誕不経』を使用
召喚された旗魚も魔旗魚もまとめて分解してやるぜ
魚に魔剣が生えてるとバランス悪そうだし見た目も良くないと思うぜ
俺が整えてやるよ


敵の攻撃は細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
手数が足りなければ近接武器や投擲、『怪誕不経』で迎撃する


可愛がってた鳥の事は、覚えてるのかな…
コンゴウさまでも突きつけたら何か反応するんだろうか

今更助ける事なんて出来ないし
本人の意思でやった事の結果だから
受け入れてもらうしかないけど

あの世で仲良く暮らせよ



●デジャヴ
 蒼く硬そうな槍のようなものが、波を貫き海を穿つ。
「カジキか……最近、魚運があるなぁ……」
 海賊船の甲板から巨大なカジキの化物の実物を目にしても、司・千尋はあまり驚いていなかった。
(「まぁここは海だしな。海に旗魚がいるのはおかしくないしな」)
 千尋は胸中で、そう独り言ちる。
 背びれが蒼白く輝いている事くらいは、些細な事だ。
 いつの間にか海から上がって平然と空中を泳いでいるのも些細な――。
「またおかしな魚だったか」
 千尋が今度は声に出して、小さな溜息を零した。
 とは言え、だ。何処だか判らない空間で鰹が分裂したり、挙句にトマトに変化したりする事に比べれば、まだ普通の絵面であろう。
「それに今回はあれ以上は変化しないだろ。元ヒト、なんだし」
 それは千尋にとっては、結構大きな意味を持っていた。
 あれ以上の変化がない事ではない。
「元ヒトを食おうって奴はいないだろう――多分」
 そう独り言ちた直後だった。

 ――カジキはね。照り焼きにしても煮付けにしても、美味なのだよなぁ。

 そんな誰かの声が、千尋の耳に届いたのは。

●ニンニク醤油も合うと思います
 話は少しだけ遡る。
「なんだ、あの活きのいい魚は……」
「ほう? 藍々君はカジキは初めて見るのかい」
 海賊船の甲板上で、空を飛び出した魔旗魚に首を傾げる黎・飛藍に、空目・キサラが意外そうに返す。
「川に住む魚ならば少し分かる。だが海に住む魚は殆ど知らない」
 意外と思われているのに気付いた風もなく、飛藍は淡々と返す。
 海より川と言うより、山に慣れているのだろう。コンゴウさまの時も、山鳥を比較対象にしていたくらいだ。
「良く判らないが……美味いのか」
「カジキはね。照り焼きにしても煮付けにしても、美味なのだよなぁ」
 生態よりも食べてどうなのかと言う事を気にする飛藍にキサラも迷わず返す。
「なら、食えるように倒すか」
「食えるように、か」
 飛藍の呟きを反芻し、キサラが腕を組む。
 キサラも別段、オブリビオンを食材とみる事に抵抗はないタイプだ。そんな扱いをした事だってあった。問題はそこではない。
(「……睡眠薬を盛ったら、藍々君に睨まれてしまいそうだな」)
「ここは薬には頼らず行こうか」
 胸中で溜息を吐いたキサラは、組んだ腕を解くと懐から薬瓶を取り出す。
「おい、薬に頼らないと言いながら薬を出すな」
「……何故、気づいたんだい」
 即座に気付いて顔を顰めた飛藍に、キサラも眉間に皺を寄せた。
「錠剤がガラス瓶の中で擦れ合う音と、少し強くなった薬品の匂いだ」
「まるで探知犬だな、藍々君は。隠し事は出来ないね」
 音と匂いだと、さらりと告げる飛藍に、キサラが少なからず驚きを露わにする。
 まだ薬瓶を取り出しただけで、蓋を開けてもいないのに。
(「まあ、当然の帰結と言うやつか」)
 だが、キサラはすぐにある可能性に思い至った。
 飛藍は他人の表情が判らない。それはつまり他人を――敵と味方を顔で区別できないと言う事だ。そこを考えれば、視覚以外の五感が鋭いのも頷ける。
「けれど、薬に頼らないと言うのはね。あくまで相手に使うという意味では頼らないだけで、僕自身が頼らないとは一言も言っていないよ?」
「……まあ、魚の味が落ちるかもしれない使い方じゃなければいいが」
 しれっと言ってきたキサラに、飛藍は渋面で返した。
「魚は鮮度が命だというのに、瞬間凍結担当が居ないことが悔やまれるところなんだ。まぁ、悔やんでも仕方ないが」
「なに。鮮度ならきっと海賊の衆が、上手くやってくれるさ」
 なぁ、とキサラが視線を向ければ、頷く海賊達。
 表情は判らずとも気配で自信を察して、飛藍も頷いた。

(「……味? 鮮度? ……まさか、食べる気なのか?」)
 そんな彼らを、千尋は『マジか』と言う目で見ていたのだが――飛藍は彼がどんな表情をしているか気づく筈もなく、キサラは気づいて気づかぬふりをしていた。

●カジキ、増える
「さて、海賊の衆」
 甲板に幾つも転がる赤い鳥の1つを、キサラが拾い上げる。
「釣り糸の先にコンゴウさまを括り付けて、振り回して囮にしてくれないか? 奴は動くものに反応するんだろう?」
『いいぜ! 釣りなら任せてくれ!』
 キサラの頼みに応えて、船長自ら竿を取った。
(「可愛がっていた鳥の事は、覚えてるのかな……」)
 船長が釣り糸の先にコンゴウさまの赤い真ん丸ボディを結びつけるのを眺め、千尋が胸中で呟く。
 コンゴウさまを突きつけでもしたら、何か反応するんだろうかと思っていたのだ。
『そんじゃあ、行くぜ!』
 やがて、船長が竿を振るう。釣り糸の先でコンゴウさまがまるで飛んでるみたいに振り回されれば、その軌跡に釣られて魔旗魚も首を動かし始めた。
「あれは……もう覚えていないのか」
 その動きを見た千尋が、どこか寂し気に呟く。魔旗魚の動きは、コンゴウさまを餌としか見ていないように思えたのだ。
(「本人の意思すら、もう残っていないのか」)
 千尋が胸中で呟いたその事は、実の所、誰にも確かめようがない。オブリビオンにも色々いるのは、どの世界でも同じことだ。
 千尋がかつて出会ったように、鍋の癖に喋ったり鰹の癖に思念を飛ばして来るのもいれば、魚類の本能に突き動かされているように思えるものもいる。
 今更助ける事は出来ないし、本人の意思でやった事の結果なのだ。
 それは千尋も判っている。判っているが――確かめたかった。
(「受け入れてもらうしかないな。せめて、あの世で仲良く暮らせよ」)
 倒すしかないのだと、千尋は改めて決意を固める。
(「と言うか――」)
 その間も、釣り竿の先の赤い真ん丸ボディは飛んでいるように空を舞っていて。
「それが出来て、何故、鳥そのものは釣れないんだ……?」
 水を差さないように小声で、千尋が思わずつっこんだその時だ。
 魔旗魚の目がキラーンッと輝いたかと思うと、海の中へと飛び込んだ。丸見えの空中ではなく水中から狩ろうと言うだろう。それは、魚の本能か。
「あれで隠れたつもりなのか?」
 目を細めて、飛藍が海面を見つめる。
 他の誰にも、船の上からでも海の中にぼんやりとした蒼白い輝きが見えていた。
 その背中に輝いていた背鰭代わりの蒼白いエネルギーが、海の中に完全に隠れる事を魔旗魚に許さなかった。
 だが――そこに、蒼白く輝かない魚の背鰭が混ざり出す。
「ん?」
 なんだかどす黒い禍々しいオーラを纏った、蒼黒い剣の様なものも見えて、千尋が首を傾げる。
「おいおい、魔剣カジキが多すぎないかい」
 それが魔剣の生えたカジキだと気づいて、キサラが赤い目を丸くした。
 その数は文字通り数えきれない程。下手をすれば、千を超えているかもしれない。

●魔剣と光槍
「少し間引くぜ」
 それを見た千尋が、手から光を広げる。
 光盾『鳥威』を限界まで分裂させて、千尋は魔剣カジキの群れの前へと展開した。
 禍々しい剣と光盾がぶつかる。
 光が砕け散ったが、盾とぶつかった魔剣カジキも勢いが削がれる。
 千尋は砕けた鳥威をすぐに再展開し――何度か繰り返す内に、勢いが落ちたカジキの魔剣が『鳥威』に刺さって抜けなくなった。
「悪いな」
 そしてそこに――光が迸る。
 千尋の放った光槍。それに触れると、今度はカジキに生えた禍々しい剣だけが音もなく消え去る。そればかりか、魔剣が生えていたカジキ自体も。
 怪誕不経。

 でたらめで怪しい、道理に合わない――そんな意味合いの四文字を名とする光の業。
 その光は触れたものを分解させる。カジキの魔剣も、カジキすらも。そのものが、まるで最初から存在すらしていなかったかのように。
 まさに道理に合わぬ、埒外の力だ。
「魚に魔剣が生えてるとバランス悪そうだし、禍々しくて見た目も良くないと思うぜ。まとめて分解して、整えてやるよ」
(「何か、視線を感じるような……」)
 魚まで消すのは勿体ない、と言いたげな飛藍の視線を背中に浴びながら、千尋は三百本を超える光槍を次々と放っていく。
 光が魔剣を消し、カジキの群れを減らしていくが、それでも群れの全てを分解させるには足りない。
 だが――。

●薬と睡蓮と魚の弱点
 魔旗魚を中心とした魔剣カジキの群れ。キサラはその群れと海賊船の距離を、目視でずっと測っていた。仕掛ける機会を逃さぬ為に。
(「うん、そろそろいいだろう」)
 胸中で呟いて、キサラが薬瓶の蓋を開けた。
 常人には毒となる錠剤を一気に口に流し込み、ボリボリと噛み砕く。
 その行為こそが、キサラの業。
 過剰摂取による副次効果、及びその代償。
 薬の大量摂取により、一時的に自身の身体能力を6倍に増強したキサラの目には、派手な水音を立てて飛び出した魔旗魚も、後に続いた普通サイズのカジキの群れも、全てがスローモーションに映っていた。
 増強した動体視力ならば、空を泳ぐ旗魚の群れも十二分に捉えられる。

「藍々君、そんな顔をするな。まだカジキは大漁だよ」
 キサラの声と共に、鋼の糸が空を舞いヒュゥンッと風を切る小さな音が幾つも鳴る。
 数が減った旗魚の群れならば、今のキサラには可能だった。
 鋼糸を放って、魔剣カジキ達ごと魔旗魚を雁字搦めにする事が。
「後は頼んだ。藍々……君。僕は……少し……寝る」
 魔旗魚たちを絡め取った鋼糸の箸を握ったまま、キサラの身体がぷっつりと糸が切れたように倒れ込む。
「……戦闘中に寝るとか、リスクが大きすぎると思うんだが」
「ただの……副次効果さ」
 甲板に頭を打たないようキサラを、飛藍が受け止めた。
 事前に聞いていた。キサラの過剰摂取の強化には60秒をほんの僅かに超える程度の制限時間があり、それを過ぎれば眠りに落ちると。
 だからこそ――キサラは距離を測り、飛藍は動かなかったのだ。
「念のためだ。少しだけ、誰も俺の前には出るなよ」
 低い声で告げて、飛藍が船の縁のギリギリまで出る。
 飛藍一人では他の猟兵と海賊との区別もつかないが、人と魚なら区別はつく。
「俺の前にいて、人の手足を持たない魚は全部敵とみなすからな」
 そう告げた飛藍が、刃を仕込んだ和傘と短刀を、両手に構えた。

「埋もれて、眠れ」

 飛藍が告げた直後、その手に構えた武器は睡蓮の花弁と散華する。
 和傘も短刀も、水晶の睡蓮も。
 睡蓮は微睡む――シュイリィェン。
 武器を無数の睡蓮の花弁に変えて、敵を裂く飛藍の業。
「往け」
 飛藍が放った色とりどりの睡蓮の花弁は、鋼糸に縛られ自由に動けない魔剣カジキと魔旗魚の塊に向かって吹き荒れる。
 飛藍はそれをただ放っただけではない。
「魚がエラ呼吸が上手くできなくなれば、水中では酸素が回らなくなる。行動制限と時間稼ぎにはなるだろう」
 飛藍が狙ったのは、海の魚でも川の魚でもほぼ必ずあるであろう部位。エラだ。
 それは魚にとっての生命線の1つと言っても良いだろう。
 事実、鋼糸が緩むとエラと魔剣を失ったカジキは海へと落ちていき――程なく満足な呼吸が出来ず、ぷかりと浮かび上がってきたのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アメリア・イアハッター
わー!
外輪船、っていうの?
かーっこいい!
折角だからちょっと乗船させてね!

で、あの魚さんは、無差別に動くものに襲いかかる系なんだね?
それならこういうのはどうかな
海賊さん達にお願いして、海賊船の上にあるコンゴウさまを撒き餌のように海へと投げてもらう
なるべく遠く、高く投げてもらえれば船の方に食いつく危険は減らせるかな
それに敵が食いついたところを、UCで撃ち抜く
食いついたところに投網を投げてもらって動きを鈍らせることができれば、さらに追撃しやすくなるかも

船の上のコンゴウさまが少なくなれば、投網で回収してもらおう
回収している間は、海上のコンゴウさまを飛び移って囮になる
また餌が撒かれたらどんどん撃ち抜こう


アトシュ・スカーレット
んー……
厄介なのは突撃攻撃かな…

メーアの上に乗り直そうかな
なるべく海賊の人たちには離れてもらいたいなぁ…流石に今回はやることが大掛かりだし

コンゴウ様を障害物にして追いかけっこしようかな
浮き上がる必要があるなら【空中浮遊】の術式を展開するよ

【暴走術式・気候学式】を発動させて、海に干渉して水の大竜巻を発生させるよ!
召喚してきたお供も巻き込まれる規模にするから離れてもらいたかったんだよね…

竜巻を一気に加熱させて熱湯にしたいけど…やれるかな?


アリアケ・ヴィオレータ
アドリブ・連携歓迎
【POW】
噂に聞くフィッシャーマンズの危機に、遅れたが駆けつけた。
メガリスの試練を乗り越えられなかった奴とはいえ、
変じたは見るも見事な大旗魚、相手にとって不足なし!
「漁(ト)るぜ『不知火』!」
突っ込んでくる相手に対して『覇気』の『オーラ防御』に回す。
多少の負傷は承知の上で『怪力』をもって受け止めに行くぜ。
動きを止められたらフィッシャーマンズに投網を投げてもらう。
そっちに旗魚が捕まるか、気を反らすかで隙ができたら
海神殺し発動。『不知火』で『串刺し』にしてやる!
漁師の間合いに自ら突っ込んできたのは悪手だったな!
このままできる限り銛を差し続けて『継続ダメージ』と足止めを狙うぜ。



●吶喊旗魚
 ――ッ!!
 空気が震える、海の波が乱れる。
 空に浮かぶ魔旗魚の上げた、声なき雄叫び。その背中から、炎の様に揺らめいていた蒼白いエネルギーが轟々と猛り始めた。
 蒼白い輝きが魔旗魚の全身を覆っていく。
 召喚した魔剣カジキの群れを一掃され、魔旗魚は自身で攻めようと言うのだろう。
 その姿が、一瞬で空高くまで上昇していった。
「ううん、いつまでも外輪船に見とれてる場合じゃないね!」
 回るパドルに惹かれたか、かーっこいい、と海賊船に乗り込んでいたアメリア・イアハッターが、魔旗魚が飛んで行った空を見上げる。
 その視線は、明らかに輝いていた。
(「すごいなぁ、速いなぁ……!」)
 海賊船に向けたものとは、異なる輝き。
 蒼白い光の尾を引いて、さながら流星の様な速度で空を飛んだ魔旗魚は、アメリアの中にある空への想いを刺激するのに充分すぎた。
 ただ魔旗魚を倒せばいいのなら、アメリアは衝動のままに飛んでいたかもしれない。
 だが今は、海賊たちを守ると言う目的がある。

「んー……あんな上まで飛べるのか。上から突撃されるのは厄介だなぁ」
 アメリアと同じ空を見上げて、アトシュ・スカーレットが困ったように呟く。真上を取られては、船をどう動かしても狙い撃ちだ。
「なるべく海賊の人たちから、離れて欲しいとこだけど……」
 距離だけで言えば今も離れているのだが、空はアトシュが望む方向ではない。
「何とか海の方に誘導出来ないかな」
 視線を空から海に戻して、アトシュは思案する。
「レティくん、何するつもり?」
「ちょっと大掛かりな事をやろうと思って」
 海に向けた視線と思案顔に気づいて訊ねてきたアメリアに、アトシュは口の端に笑みを浮かべて返す。
「それなら、こういうのはどうかな?」
 アメリアは甲板に落ちていたコンゴウさまの亡骸の一つを掴む。
「海賊の皆も手伝って貰える? 魔旗魚が降ってきたら、コンゴウさまを海の方に、なるべく遠く、高くに投げて欲しいの」
『投げる? さっきみたいに、釣り竿につけるんじゃなくてか?』
「空中に撒き餌にするのよ。そうすれば、船の方に食いつく危険は減らせる筈。足りないなら、海に落ちてるコンゴウさまを」
 首を傾げた船長に、アメリアは自身の意図を伝えた。
 成程と頷き、海賊達がコンゴウさまを拾ったり、アメリアが言うように長いタモで海からコンゴウさまを引き揚げていく。

●魔旗魚の本能
 そこに、新たな猟兵が乗り込んできた。
「アンタ達が、噂に聞くフィッシャーマンズかい!」
『さてはそういうアンタも……』
 アリアケ・ヴィオレータ(夜明けの漁り人・f26240)が肩に担ぐ様にして持つ、武骨ながら鍛え上げられた銛に船長が目を細める。
「ああ。オレも漁師さ!」
 鰭のある腕をアリアケが差し出す。船長の様に頭が魚そのものではないが、アリアケも魚の特徴を身体に持つ深海人だ。その魚は――ワラスボ。
『やはりか……良い銛じゃねえか』
 釣り人と漁師。何か通じるものがあったのか、アリアケが差し出した手を船長の手がガシッと掴む。
「フィッシャーマンズの危機と聞いてねぇ。どうやら間に合ったようだな!」
 その手を離して、アリアケが空を見上げる。
 蒼白い輝きが、空から向かってきていた。

「来たわ!」
『よーし、投げろ!』
 アメリアと海賊達が、手にしたコンゴウさまを一気に投げた。
 その幾つかが魔旗魚の横を通った瞬間、魔旗魚が動いた。
 魔旗魚の蒼輝鰭が輝きを放った刹那、一瞬の連続刺突で、剣のように鋭い吻に九匹のコンゴウさまが刺し貫かれる。
「やっぱり!」
 それを見たアメリアが狙い通りと声を上げた。
 船に真っすぐ向いていた魔旗魚の向きが、少し海に向いていた。
 だがまだ魔旗魚との距離があった為、海賊の投げたコンゴウさまは、魔旗魚まで届いた方が少なかった。
 届かなかったコンゴウさまが、高度の限界を迎えて落ちていく。
『!!!』
 魔旗魚の視線は、そちらに向いてしまった。
『すまねぇ! 届かなかった』
「ううん、もう一度やってみましょ! それできっと――」
 届かず詫びる海賊に、アメリアは気にしていないと首を横に振る。魔旗魚が反応を見せたのは事実だ。全員が届く高さで、もう一度試せば。
 だが、魔旗魚のあの勢いでは、そのタイミングはかなりシビアになる。
「ここは任せな!」
 意図に気づいたアリアケは船を見回し――物見の付いた柱を見つけると、一気に物見まで登って行った。

●漁火
 物見の上で、アリアケは銛を構え距離を測る。
「そこから跳んで! 手伝うよ!」
 その意図を察したアメリアが、下から声を上げる。
 促されるままに物見から跳んだアリアケを、甲板から飛び上がったアメリアが空中戦の応用で押し上げた。
「跳ぶのなら、手伝うぞ」
 更に声がして、飛ぶ箒に乗った赤い魔法使い姿の猟兵もアリアケを押し上げる。アリアケは片手の親指を立てて2人に礼を示すと、魔旗魚に向き直る。
 メガリスの試練を乗り越えられなかった奴とはいえ、変じたは空も自在に飛ぶ見るも見事な大旗魚。
 ――相手にとって不足なし!
「漁(ト)るぜ『不知火』!」
 『鋭銛:不知火』と自身にオーラを纏って、アリアケは銛を突き込んだ。
 鋭い銛と魔旗魚の剣が、空中でぶつかる。
 魔旗魚の勢いが――止まっていた。
 その代償に、魔旗魚が纏う炎のような蒼白い輝きが、アリアケが纏った光を溶かしてその肌を焼いている。
 今のアリアケの技量では、魔旗魚のオーラを完全に抑えるには届いていない。
「……っ!」
 だがその痛みに耐えて、アリアケは『不知火』の柄を握り締めた。
 元より負傷は覚悟の上だ。
「こ、のぉっ!」
 『不知火』を押し込むようにして、アリアケは魔旗魚の巨体を受け流した。
 跳躍の勢いは完全に失われ、アリアケはこのまま落ちていくばかり。だが、落ちる前にまだ一つ、漁師としてやる事がある。
「漁師の間合いに自ら突っ込んできたのは悪手だったな!」
 間近を通り過ぎていく蒼白い輝きに焼かれる痛みを耐えながら、アリアケは『不知火』を構え直し――突き立てた。
 ずぶりと刺さった『不知火』の刃が、魔旗魚の体内で無数の針に変化する。かえしどころの話ではない。完全に抜けなくなっていた。
 抜けなくなった『不知火』を掴んで、アリアケはもう一度力を込めた。
 その傷口から、血が滴る。魔旗魚の巨体からすれば、小さな傷だが、銛が抜けない限り決して塞がらない。その穴から血が流れ続ける。
 それ以上に大きいのが、海賊船に向いていた魔旗魚の剣先の角度がこれで変わり、完全に海へ向いたと言う事だ。
「くそっ……でけぇなぁ……」
 漁りきれなかった事を悔やみながら、アリアケは甲板に落ちた。

●氷飛び、海が逆巻く
「この高さと角度なら――魔旗魚の顔の前を通る様に投げて!」
 向きが変わった魔旗魚を見て、アメリアが海賊達に声を上げる。
『けど、まだ届くかどうか――』
「大丈夫、私に任せて!」
 躊躇う海賊達の背を押すように、アメリアが告げた。
「私の風が運んであげる!」
 アメリアの身体から放出された風と氷の魔力が、冷たい風となって吹き上がる。海賊達が投げたコンゴウさまは、アメリアの放つ風に乗って空高くまで飛んでいく。
「オレたちも行くよ、メーア! 飛ぶ!」
 赤い群れの中に混ざる形で、アトシュも海竜メーアに乗って飛び出した。

 目の前を通り過ぎた大量のコンゴウさまに、魔旗魚がついっと向きを変える。
 その巨体へ、アメリアは指を伸ばした手をそっと掲げた。
「ブリッツ! シュート!」
 アメリアの声が甲板に響いた瞬間、その指先から鋭い氷が放たれる。

 Ice Ice Blitz――アイスアイスブリッツ。

 風と氷の魔力を瞬間的に大量放出し、氷の矢を風に乗せて放つ業。アメリアがコンゴウさまを乗せた冷たい風は、その副産物にすぎない。
 アメリアが次々と放った氷の矢は風の勢いに乗って、魔旗魚の腹に突き刺さった。
「お中に臓器が多いのよね? 腸っていうくらいだし」
 氷の矢は突き刺さって終わりではない。アメリアが込めた魔力が、内部からじわじわと魔戒魚の腹の中を凍らせ始めていた。

 そこに海竜に乗ったアトシュが通り過ぎていく。
 目の前を大量に通り過ぎて行った『動くもの』に完全に目を奪われた魔旗魚は、腹の中の異変に気付かず、ぐりんっと勢い良く回頭した。
『――!』
 更に、魔剣カジキが再び召喚される。
 その半数ほどが、魔旗魚と共にアトシュを追っていった。獲物が多いなら、群れで纏めて狩ろうと言うのか。
「よし、メーア! もういいぞ、海に戻るんだ!」
 魔戒魚の視線と圧のみならず魔剣カジキの群れの圧も背中に感じて、アトシュはやや焦った声でメーアを海に促した。
 空中浮遊の力があるとは言え、今の魔旗魚相手では空は分が悪い。
 海が本分なのは向こうも同じだが――そこは、エラが傷つけられていると言う点で、魔旗魚は本領を出し切れない。
「オレはこっちだ、着いて来い!」
 着水したメーアの上で大仰に手を振って、アトシュは魔旗魚の気を引く。海面すれすれを飛ぶ魔旗魚から、逃げるメーアとアトシュ。
 それでも、距離はどんどん縮まって来て――。
「よし。ここまで距離を取れば大丈夫かな」
 メーアの背で屈んだアトシュは、海面に指先を触れた。
「原初の鼓動、我が手の内に! 起源たる力にてこじ開けろ!」

 暴走術式・気候学式――エルガー・クリーマ。

 アトシュの干渉によって、海が逆巻き水の大竜巻が巻き起こる。
『――ッ!?』
 異変を感じた魔旗魚が、魔剣を生やしたカジキの群れを周囲に呼び寄せるする。
「魔剣が生えただけのカジキじゃ、この温度は耐えられないだろ!」
 だが、アトシュは更に水に干渉し、その温度を上げた。制御が難しい術式が故、温度を刻むような細かな調整は出来ないが、一気に上げられるだけ上げるならそこまで難しい事ではない。
 湯気を立てる水の竜巻に、魔剣カジキの群れと魔旗魚が飲み込まれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)と】
力を欲してメガリスに手を出した代償がカジキ化とは何という恐怖よ…
うさみも此れを機に、強欲ぶりを少しは鎮めてくれると良いのだが

先のせみっちは犠牲になったが、今回こそは上手くやってくれるだろう
戦法は同じだ、うさみが敵を引き付けている隙に俺が攻め込む
飛ぶ?カジキが?…は、良かろうならば此方も飛んでやる
【時計の針は逆さに回る】発動、うさみよ!俺の雄姿をしかと其の目に――
アッ、取り込み中か、申し訳無い

大人しく箒で宙を舞いうさみとカジキ軍団の様子を窺い
機を見て一気に箒を駆り突撃して攻め込むぞ
強化した杖で殴打したり、炎の「属性攻撃」で精霊の力を借りて
カジキに引導を渡…せれば良いな


榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
せみっちよ、お前達の犠牲は無駄にはしない…
と、せみっちを弔った所で気を取り直して!
いかなる魚も釣り上げる海賊が
釣られる側になっちまうとはな…
俺が慈悲を込めてBBQにしてやるぜ!

せみっちの時はうっかり相性最悪だったけど
今回は不覚は取らないぜ!
いでよデビみっち軍団!!
こいつらの三叉槍は旗魚の魔剣にも負けん!!なんちて
…え、今回の報酬?
あとでBBQ会場に呼んでやるから!
捕れたてピチピチの海鮮食べ放題!

デビみっちの槍で魔剣を受け止め抑え込んで
ニコが本体へ接近する隙を作るぜ!
それでも掻い潜ってくる旗魚には
転がってるコンゴウ様を念動力で盾にする!
エグいけどこの世は弱肉強食なのだ



●強欲は罪と言うけれど
 ――飛ぶ? カジキが?
 魔旗魚は空も泳ぐとかしれっと言われた時は、ニコ・ベルクシュタインは内心で首を傾げたものだ。それもそうだろう。
 魚は本来、水の中を泳ぐものだ。
 ところがどうだ。目にした現実は。
 空を飛ぶなんて、そんな生易しいものではないではないか。
「力を欲してメガリスに手を出した代償が、飛ぶカジキ化とは何という恐怖よ……」
 恐ろしい勢いで飛んでった魔旗魚に、ニコが嘆息交じりに呟く。
「いかなる魚も釣り上げる海賊が、釣られる側になっちまうとはな……」
 同じ姿を隣で眺めていた榎・うさみっちが、感慨深げに呟く。
(「うさみも此れを教訓として、強欲ぶりを少しは鎮めてくれると良いのだが」)
 胸中で呟いて、ニコは隣に漂ううさみっちに視線を送る。
「俺が慈悲を込めてBBQにしてやるぜ!」
 うさみっちは、今日も己の欲望に忠実だった。
 ですよねー。

「せみっちよ、お前達の犠牲は無駄にはしない……」
 羽根を残してすっかり消えてしまったせみっちを弔い、うさみっちは手を合わせる。
「よし! 弔い終わり! 気を取り直して――!」
「それでいいのか、せみっちの扱い」
 さらっと弔い完了させたうさみっちに、思わずニコがつっこむ。
「だって今は戦闘中だろ――来い、極悪軍団デビみっち!」
 尤もな事を言って、うさみっちは掲げたものをシャカシャカと振ってみせた。
 『うさみっちゆたんぽ』から、もくもくと黒い煙が立ち昇っていき――煙の中から、悪魔の羽をもつデビみっち軍団が現れる。
「せみっちの時はうっかり相性最悪だったけど、今回は不覚は取らないぜ!」
 デビみっちは、せみっちの様に弱くはない。
 むしろ、うさみっちの召喚するみっちシリーズの中でも強い方ではなかろうか。
 だが――。
『はぁーん?』
『まず今回の報酬の話だろーが』
「……え、今回の報酬?」
『え、じゃねーーー!! ただ働きなんて言う筈がねーよなー? あー?』
 デビみっちは、みっちシリーズの中でもガラが悪いと言うか――召喚してからの交渉が中々大変な強欲な連中であった。
 悪魔だからね。仕方がないね。
「こいつらが来たか……」
 うさみっちの強欲ぶりが鎮まってくれるどころか、強欲の権化のようなデビみっちの発生に、ニコは思わず両手で顔を覆っていた。

●空舞う、魚と悪魔と魔法使い
 とは言え、いつまでもそうしている場合ではない。
 魔旗魚は真っすぐ空から迫って来ていた。
「良かろう。ならば此方も飛んでやる」
 ニコの手が、自身の本体である懐中時計を掴む。
「百年の時を経て今此処に甦れ、我が力の根源よ!」
 高らかに告げたニコの周囲に、銀色の光で出来た時計が幾つも浮かび上がった。その全ての針がぐるぐると逆時計回りに回転し、銀色の輝きがニコの全身を包み込む。

 時計の針は逆さに回る――リメンバランス・クロックワークス。

 銀光は、ニコの姿は赤い魔法使いと変えていた。
 或いは――戻したと言った方が、正しいのかもしれない。
 そしてその姿は、伊達ではない。
「良かろう、ならば此方も飛んでやる」
 ニコが片手に持った箒に足をかけると、箒がふわりと浮かび上がった。
「跳ぶのなら、手伝うぞ」
 そのままぐんっと上昇し、物見から銛を手に跳んだ深海人の猟兵の靴底を押して、魔旗魚が迫る方へと押し上げる。
「うさみよ! 此れから飛ぶ故、俺の雄姿をしかと其の目に――」
 そのまま魔旗魚に仕掛ける事も出来たが、一度甲板の上まで下がると、ニコはうさみっちの方に顔を向け――。
「わかった! あとでBBQ会場に呼んでやるから!」
『BBQー? なーにあるんだよ!』
「捕れたてピチピチの海鮮食べ放題!」
『もう一声あると、やる気出そうなんだけどなぁぁぁぁぁぁぁ』
 うさみっちは、デビみっち軍団との交渉が佳境だった。
「アッ……取り込み中か」
 タイミングが悪かったと、ニコは赤いとんがり帽子をそっと目深に被る。
「もう一声ってもなー……じゃあ、デザートだ! 島のフルーツもつけてやるよ!」
(「フルーツがあるのか知らないけど、ないってことはないだろ!」)
 そうあまり深く考えずに胸中で呟きながら、うさみっちがデビみっちとの交渉を成立させるべく条件を追加していく。
『よーし、よしよし!』
『良いだろう!』
 デザートが効いたのか、デビみっち軍団が悪魔の槍を振り上げる。
「あ、ニコ。さっきなんか言ってなかったか?」
 呼ばれた事には気付いていたうさみっちが、交渉を終えて振り向く。
「いやその……俺の雄姿を、とだな……」
 だが――ニコはまたしても、改めて言い直す事が出来なかった。
 そうこうしている間に、魔旗魚が魔剣カジキを再び召喚したのである。その半数ほどはコンゴウさまと、ニコとうさみっちも知った顔の海竜に乗った猟兵を追っていったが、海賊船の周りに残っている魔剣カジキもいた。
「カジキが増えたか……だが、一々相手していては埒が明かんな」
「よーし、デビみっち軍団! まずはニコの道を開いてやれ!」
 その呟きでニコの意図を察したうさみっちが、デビみっち軍団を魔剣カジキの群れにけしかける。
『ウケケケケッ!』
『BBQとデザート分は働いてやるぜー!』
 喧しく叫びながら、デビみっち達が飛んで行く。
『はーんっ? 邪魔だ魚ドモ!』
『デビみっち軍団のお通りだぜー!』
 ガキーンッと、鈍い金属音が響く。
 デビみっち達の持つ槍が、カジキに生えた魔剣を受け止めていた。
「行け、ニコ! こいつらの三叉槍は旗魚の魔剣にも負けん!! なんちて」
「うさみよ、何故ここでダジャレを……!」
 ツッコミたいのを我慢して、ニコは箒に乗って飛び出し、デビみっちが魔剣カジキの群れに空けた空隙を、一気に突き抜けて行った。

「よし! よくやったデビみっち軍団!」
 ニコが魔剣カジキの群れを突破したのを見て、うさみっちが告げる。
 だが、まだ油断は禁物だ。
「デビみっち軍団! 後はこの船を守れ! この船が沈んだら、BBQなしだぞ!」
 だからうさみっちは、新たな指示を出す。
『はーーーーーー???』
『聞いてねーんですけどぉぉお?』
『労働条件詐欺かよーー!』
 喧しく文句を垂れながらも、船を守る様に陣取るデビみっち軍団。
 うさみっちの告げた報酬なしが効いたのだろう。
「俺もちょっとはやるか。コンゴウさまに反応するんだろ」
 うさみっち自身も、念動力でコンゴウさまの亡骸を盾にする。
「エグいけどこの世は弱肉強食なのだ」
 それをうさみっちに思い出させたのは、他ならぬコンゴウさまであった。

「うさみが作った好機、逃すわけにはいかないな」
 空飛ぶ箒の上に立って、ニコが柊の杖『Bloom Star』を掲げる。
 杖に一輪咲いた星型の花が輝きを放ち、光が杖を覆っていく。光が杖全体を完全に覆ったのを確認すると、ニコは両手で持って顔のすぐ横の高さで身構えた。
 構えたその態勢のまま、ニコを乗せた箒は速度を上げる。
 目指すは魔旗魚。
 幸い、激しく逆巻いた海によって、魔剣カジキはその周囲からいなくなっている。
 守るものなき魔旗魚の巨体へと、ニコは突っ込んでいく。
 魔旗魚のあの巨体だ。ちまちまと小技を何度も当てるよりも、一撃に賭けた方が良いと判断したのだ。
(「狙うは一点!」)
 顔なじみの同じヤドリガミの少女が氷の矢を当てた、腹部。
「おぉぉぉぉっ!」
 一直線に突っ込んだニコは、魔旗魚の腹に『Bloom Star』を叩き込んだ。突き抜けた衝撃で、魔旗魚の腹の中で凍っていた腸が砕け散る。
『ッ!?!?!?』
 声もなく口から血を吐いて、魔旗魚がまだ波の荒い海に落ちていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
【かんさつにっき】
オニキンメ船長かっこいい
ここでいいとこ見せねばならぬ乙女の本能
いでよ、うさみみメイドさんズ
女子力(数)を増し増しにし魔旗魚に挑む

船の揺れは環境耐性で耐える
灯る陽光は幅広の大剣にして盾替わり
ん、魔旗魚光る
戦闘知識と第六感で攻撃手段を察知し初手を受け止め
下がったらうさみみメイドさんズ(半分)、残りの攻撃を身軽にジャンプしていなしていって?

転がってるコンゴウさまは守る
寿命もあるけど…
かわいがってインコを攻撃させるのはしのびない

船長達、お願い
網にうさみん☆とメイドさんズ(半分)を乗せて魔旗魚目掛けて網投げて?
名付けて、メイドさんアターック

ん、鰭を集中攻撃
光ると面倒だからひっぺがしてね


木元・祭莉
出遅れたー!?(手漕ぎボートで猛追)

こういうときこそ、新ゆべこ!
出でよー、三騎士あーんど、おいら!!

知り合いの近くへぴょーん☆
お待たせしました、木元祭莉、到着でっす♪(コケゆらワォーン)

へぇ、外輪船っていうんだー。カッコイイ!
船長さん……顔、むっちゃ怖いね!?(びく)

よっし。
ぴよこ(雌鶏)ひなこ(向日葵)まっきー(狼)、行くよ!

近接で戦ってる誰かの傍へ、ぴょーん!
踊るひなこを足場に、まっきーがジャンプで体当たり!
おいらは、ぴよこを投げつける!(嘴と蹴爪攻撃)

カジキがこっち向いたら、すぐに別のところへ、ぴょーん!
ヒットアンドアウェイで、顔見知りに挨拶して回る♪

へへ、おいらはドコにでもいるのだー♪


ガーネット・グレイローズ
【かんさつにっき】

ふふ、結局いつものメンバーが揃ったな…。

はじめまして、オニキンメ船長。
…うわ、結構な強面だな。いや、こう見えて
人情味あふれる人物なのだろう。
私はガーネット商会の代表ガーネット・グレイローズ。
あなた方とは、よき関係を結びたいものですね。

ランブルフィッシュに騎乗して出撃。
【妖刀の導き】で強化した二刀を振るって切り込む。
…まつりん、その愉快な仲間は何なんだ!?
三騎士? あ、そう…。

敵の攻撃は魚の<決闘>能力を頼りに避けるか、
ブレイドウイングによる<武器受け>で防御。
十分近づけたら躯丸を<念動力>で投げ、
刺さった部分から呪いを流して<マヒ攻撃>で
動きを止める。
今だ、投網と銛の準備を!


シリン・カービン
【かんさつにっき】
【WIZ】

遅くなりました、と甲板上にフワリと転送。
周りを見渡し状況を把握。
今度の獲物は、アレと言うわけですね。

召喚される旗魚は皆に任せて船首へ走ります。
戦闘は最小限。襲って来たら精霊猟刀で斬り伏せて進みます。
船首に着いたら海賊の銛をロープで船首と繋ぎ、精霊猟銃の先端に装着。
「獲物を我が手に」
新UC【ハンティング・ソウル】を発動し射撃体勢を取りつつ待機します。

皆の攻撃で弱った頃を見計らい海賊たちに声を掛けます。
「船長、今です」
タイミングを測って船首を魔旗魚に向けさせ、動きを見切って発射。
雷の精霊を宿らせた銛はダメージを与え続けます。

…元部下ですけど、食べるんでしょうか、アレ。


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

あれが魔旗魚ね
旗魚仲間を召喚して魔剣を生やすなんて面白いじゃない
メガリスに挑戦する気概を持ってるんだもの
遠慮なんていらないわよね
ウサミミと魔剣、どっちが強いか勝負よ!(びしぃっ!

海の殺し屋シャチ達を召喚し
ウサミミを生やして強化
魔旗魚と飛翔旗魚の群れに勝負を挑む

シャチの強さはね
速さや大きさだけじゃないのよ
仲間と会話し臨機応変に連携出来る
この狩猟技術こそ真骨頂

旗魚は確かに速いけど
小回りは効かずその動きは読み易い
海中でも空中でも
シャチ達が後れを取る道理はないわ

それでも魔旗魚に勇猛果敢な海賊の戦いぶりを見たならば
私も応えない訳にはいかないわよね

シャチの背に乗り大空へ
刀で渾身の一刀を!



●いいや、まだだ
 痛烈な一撃をくらった魔旗魚が、海に落ちてそのまま沈んでいく。
『やったか!?』
 遠眼鏡でその様子を見ていた船長が、甲板の上でググッと拳を握った。
「船長ー! それフラグ! 言っちゃダメなやつー!」
 鈍・小太刀が思わずツッコミの声を上げた直後、海の中からザバァッと魔旗魚の巨体が飛び出して来た。
 ほーらな。
「流石にしぶとい、魔旗魚」
 その姿を見止めて木元・杏が、きりっと表情を引き締める。
「ま、まあ当然よね」
 あまりにも予想通り過ぎた展開に、小太刀の声が若干震える。
「失敗したとは言え、メガリスに挑戦する気概を持ってるんだもの」
 だが小太刀はその辺を抑えて、小さな笑みを浮かべてみせた。
「当然――と言う程でもなさそうだぞ?」
 ガーネット・グレイローズも魔旗魚の方に視線を向けたまま、口を開く。
 注意深く見てみれば、魔旗魚はエラが開きっぱなしで、人間で言えばゼェゼェと息切れでもしているかのような様子だった。
 まあ、エラが傷ついて腸も大分失った挙句に、海に落ちたのだ。
 もしかしたら、満足に呼吸できない息苦しさで目を覚まし、海から飛び出して来たのかもしれない。
「とはいえ、弱ってるとしてもまだ飛べるのは間違いない。乗せて貰うぞ、ランブルフィッシュ」
 ガーネットの手が、傍らの青い巨大熱帯魚の背をポンと叩く。
 その時、彼らの背後に山吹色の輝きが現れた。

●頑張ってた
 海賊船を中心として、猟兵達が魔旗魚と戦っている最中。
 燧丸と海賊船の間の海の上を、一艘の小舟が漂っていた。
「出遅れたー!?」
 せっせと櫂を押して舟を漕いでいるのは、木元・祭莉(とっとこまつさんぽ?・f16554)である。だが何というか――舟はあんまり進んでいなかった。
 とは言え、別に祭莉の漕ぎ方が悪いとかそういう事ではない。周りの海は、倒されたコンゴウさまや魔剣カジキだったものがあちこち漂っているし、遠くで海が逆巻いたりしている影響で、波もすごい事になっている。
 手漕ぎの小舟で転覆もせずにいるだけでも、賞賛されてもいいくらいだ。
「間に合いますかね」
 だが、同乗しているシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)が口にした懸念も、尤もな状況であるのもまた事実。
 グリモアの転移が自由に行かないこの世界ならではの苦労。
 だが――転移の力は何も、それだけではない。
「心配御無用!」
 祭莉は櫂を漕いでいた手を離すと、シリンに手を差し出した。
「こう言う時こそ、おいらの新技がある!」
「ほほう。新技ですか」
 興味深そうに言いながら、シリンが祭莉の手を取る。

「出でよー、三騎士あーんど、おいら!!」

 祭莉が叫んだ次の瞬間、祭莉とシリンの姿が向日葵の花の色に似た山吹色の輝きに包まれて――小舟の上から、2人が消えた。

●そしてまた、この5人
「お待たせしました、木元祭莉、到着でっす♪」
「遅くなりました」
 突如現れた山吹色の輝きの中から祭莉がぴょーんと飛び出してきて、シリンはふわりと甲板に降り立つ。
「あ、まつりんとシリンも来たのね」
 気づいて振り向いた小太刀が、目を丸くする。
『うおっ!? 何だ、そりゃあ!』
 そこに響く、船長の驚いた声。2人が転移してきた事に驚いたのではない。
 転移してきたのは、2人だけではなかった。
『コケッ』
『……(無言でゆらゆら揺れている)』
『ワォーン』
 祭莉の背後には、雌鶏と向日葵と狼の3体のロボが付き従っていた。
『まあ、危ねえもんじゃないなら構わんぜ』
「うん、ありがと船長さ――」
 にぱっと笑って告げた祭莉の顔が、海賊の船長の方を向いた所でびくっと固まる。
「船長さん……顔、むっちゃ怖いね!?」
『はっはっはっ! 良く言われらぁ!」
 思わず言ってしまった祭莉の一言を、船長は慣れた様子で笑い飛ばした。
「まつりん」
 だが――駆け寄った杏が、祭莉の頬を両手でぺしんと挟む。
「アンちゃん?」
「オニキンメ船長はかっこいいの。いい?」
「え? うん」
(「何でアンちゃん、目を輝かせてるのー?」)
 キラキラとした目で告げてくる杏に頷きながら、祭莉は内心で困惑していた。
 双子だとは言っても、通じない事もある。
(「ここはいいとこ見せないと――」)
 杏の乙女の本能に気づくには、祭莉は何と言うか――まだ少年だった。

「今度の獲物は、アレと言うわけですね」
 そんな中、周囲に視線を巡らせていたシリンは、ゆっくりとこちらの方に向かってくる魔旗魚の巨体に目を向けていた。
「そうそう。旗魚仲間を召喚して更に魔剣を生やす、面白いやつよ」
 状況を把握したシリンに、小太刀が魔旗魚の能力を説明する。
 その声が聞こえた訳ではないだろうが、こっちへ向かってくる魔旗魚の周りに大量のカジキが海の中から現れた。
「言った傍から召喚して来ましたね」
「私もフラグ踏んだー!?」
 魔剣カジキの群れを指さすシリンの隣で、小太刀が思わず顔を覆っていた。
「ふふ、結局いつものメンバーが揃ったな……」
 魔旗魚が迫る中でもいつもの調子のやり取りに、ガーネットは妙な安心感を感じて小さな笑みを浮かべていた。

●カジキとシャチと闘魚の空中戦
「いいわ、ウサミミと魔剣、どっちが強いか勝負よ!」
 顔を上げた小太刀が、海からシャチを召喚する。
 当然、ウサミミ付きである。
「数で来るなら、私も女子力増し増しで。いでよ、うさみみメイドさんズ!」
 杏の背後に、複製されたうさ耳付きメイドさん人形がずらっと並ぶ。
 ウサミミな海の仲間達とうさみみメイドさんΩで、一気に上がるウサミミ率!
『またウサミミだ……』
『シャチもウサミミ……』
『メイドもウサミミ……』
 海賊の皆さんもざわつきはするが、そういうものかと受け入れつつあった。

「行くわよ、ウサミミシャチさん!」
 小太刀自身も群れの一頭の背に乗って、ウサミミシャチの群れがまず先陣を切って飛び出していく。
 気づいた魔旗魚も、魔剣カジキをけしかけてくる。
 空中でぶつかるウサミミシャチと魔剣カジキ――そんな状況に、もう誰もツッコミもしないのが、この空間の一番の異常かもしれない。
 閑話休題。
 小太刀が召喚したシャチの群れは、70頭少々。群れの規模としては、魔剣カジキの方が圧倒的に上である。
「海の殺し屋と呼ばれるシャチの強さはね。速さや大きさだけじゃないのよ」
 だが、小太刀は自信があった。
 シャチは海の生物ではあるが、魚類ではない。
 イルカに近い、海の生物である。
 鮫よりも大きく早く泳げるシャチには、(地球の海に於いてだが)これと言った天敵もいない、海の食物連鎖の頂点の生物とされている。
 そして――。
「魔剣に気を付けて。でもその分、小回りは効きにくい筈よ」
 小太刀がそう告げれば、小太刀を乗せたウサミミシャチが辛うじて聞こえるようなか細い鳴き声を上げた。
 だが、それは人の耳にはそう聞こえる、と言うだけである。
 この空には、シャチ達が上げる鳴き声が飛び交っていた。
「仲間と会話し臨機応変に連携出来る。この狩猟技術こそ、シャチの真骨頂よ!」
 声で会話し、群れで連携を取る。
 それは、いくら魔剣が生えてもカジキには出来ない芸当だ。
「更にウサミミも生えてるシャチ達が、後れを取る道理はないわ」
 小太刀の視点からの指示も加わって、ウサミミシャチは魔剣カジキを翻弄するように四方八方から襲い掛かり、もりもり食らいついていった。

 小太刀のウサミミシャチが魔剣カジキを減らす中、ガーネットは『朱月』と『骸丸』の二刀を抜いて、海賊船の上で佇んでいた。
 朱と白の二色の刃に、地に満ちた邪気を纏わせていく。
 海の上故に、幾らか時間がかかっていた。
「よし――行くぞ、ランブルフィッシュ!」
 ガーネットがひらりと背中に飛び乗ると、青いベタは魔剣カジキの群れに向かって飛び出していった。
「突っ切るぞ!」
 小太刀のウサミミシャチに狩られて、魔剣カジキの群れの薄くなった箇所へ、ガーネットはランブルフィッシュに乗ったまま突っ込んで行く。
 薄くなったとはいえ、魔剣カジキはまだまだ残っている。
 だが、向けられる魔剣は、邪気を纏った『朱月』と『骸丸』、更には背中から伸びた液体金属の翼刃――ブレイドウイングによって叩き折られ、ガーネットに届かない。
 ランブルフィッシュも尾鰭で、魔剣カジキを叩いて弾き飛ばしながら――魔剣カジキの群れを突き進んでいった。

●戦闘用らしい
「あ、ガーネット姉ちゃんが群れ抜けた」
 ガーネットが魔剣カジキの群れを抜けるのを、祭莉は海賊船の甲板から見ていた。
「よっし。ぴよこ、ひなこ、まっきー、行くよ!」
 祭莉が背後のロボ達に呼びかけた、次の瞬間。
 次の瞬間、祭莉とロボ達の姿は山吹色の光に包まれ、船の上から忽然と消えた。

「うわっ!?」
「へへ、おいらはドコにでもいるのだー♪」
 突然隣に現れた祭莉に驚いたガーネットに、祭莉がちょっと誇らしげに笑う。
 守護神来臨。
 三騎士と共に、いつでもどこでも、仲間の元に転移する祭莉の新しい業。小舟から海賊船まで転移したのも、この業だ。
「まつりん、その愉快な仲間は……何なんだ? 戦えるのか?」
「おいらの三騎士! 戦闘用ロボ!」
「あ、そ、そう……」
 さらっと祭莉に返されて、ガーネットは一瞬言葉を失う。
 雌鶏は、ガーネットも良く使うメカたまこEXに似ている気がする。狼ロボも、まあ戦えそうな雰囲気はある。でも向日葵ロボは――何だろう。
 植木鉢部分から何か噴射していて飛んでいるのはわかる。祭莉が掴まって、乗り物代わりになっているのも判る。
 だが、向日葵部分は、相変わらず踊る様にゆらゆらしてるだけだった。
「まっきー、ひなこを足場に体当たりだ!」
 まっきーと呼ばれた狼ロボが、ひなこと呼ばれた向日葵ロボの花部を蹴って跳躍し、魔旗魚に向かって飛び掛かる。
「ぴよこも、行ってこーい!」
 さらに祭莉はぴよこと呼んだ雌鶏ロボの首を掴んで――ぶん投げた。
 狼ロボマッキーの体当たりからの噛みつきに、ぶん投げられた雌鶏ロボぴよこの嘴と蹴爪が、魔旗魚の巨体に突き刺さる。
 見た目はシュールだが衝撃はかなりだったようで、魔旗魚の身体に跡が残る。
「成程、三騎士か」
 感心しながら、ガーネットは魔旗魚が態勢を崩した隙を逃さずに、ランブルフィッシュを駆り魔旗魚の背後へと回り込んでいた。
「アヤカシよ――その力、見せてみろ」
 揺れ動く魔旗魚の尾鰭に、ガーネットが投げた骸丸が突き刺さる。
 直後、骸丸から呪いの力が染み出した。
 屍骨呪剣「骸丸」。
 一見ただの白い太刀だが、怪<アヤカシ>と呼ばれるUDCの屍骨から造られた、呪いの力を秘めた刃である。
 屍骨に残された呪いの力だけでも、発揮すれば貫いた相手の動きを鈍らせるくらいの効果は期待できる。
「今だ、銛を!」
 骸丸がしっかりと突き刺さったのを見届けたガーネットは、海賊船に置いてきたメカたまこEXに繋がっている通信機に向かって、そう告げた。

●雷鳴
 ――今だ、銛を!
 船から離れたガーネットの声が、甲板に響く。
「船長、今です」
『おお。主舵だ。船を回せー!』
 聞こえて来たガーネットの声とシリンの指示で、海賊船が向きを変えていく。
 シリンの立つ船首が、魔旗魚の方に向くように。
「これ、このまま離れる様に言って、ガーネットに聞こえるんですかね?」
「む。どうだろう……」
 シリンと船に残っていた杏は、メカたまこEXを見下ろし首を傾げる。
 丁度そこに、山吹色の輝きと三騎士と共に、祭莉が船に戻って来た。
「伝言あるなら、おいらが言ってくるよ? おいらはドコにでもいるのだー♪」
「では、ガーネットに少し離れておくようにと」
「おっけー!」
 シリンの言葉を聞き終えて、祭莉は再びガーネットの方へと転移する。

「さてと」
 シリンは足元に置いていた海賊の銛を手に取る。
 そして背負っていた精霊猟銃を背中から降ろすと、シリンは海賊の銛を精霊猟銃の銃口へと突っ込んだ。
 水中銃のような恰好になった精霊猟銃を手に、シリンは船首の先に向き直る。
「獲物を我が手に」
 告げてシリンが引き金を引けば、銛が精霊猟銃から撃ち出された。
 ――ハンティング・ソウル。
 武器と狩猟道具を組み合わせる事で威力を上げる、シリンの新たな業。
 新たな業を引っ提げてきたのは、祭莉だけではない。シリンもまた、新たなる狩猟の業を身に着けていた。
 その業によって撃ち出された銛は、手投げではまず出ない速度で飛んでいく。
 既に動きが鈍っていた魔旗魚にそれを避ける術はなく、シリンが撃った銛は魔旗魚の腹部に深々と突き刺さった。
「精霊よ!」
 シリンが声を上げれば、銛に宿していた雷の精霊の力が解放される。

 それを見ていないシリンが知る筈もなかったが、魔旗魚には既に他の猟兵が突き刺した銛が、まだそのまま突き刺さっていた。
 そしてその腹の中は、凍って打ち砕かれた腸の残骸と言う氷も存在していた。
 二つの銛は電極に。
 そして、魔旗魚た動き回った事で氷の粒の摩擦による静電気。
 バヂバヂヂヂヂヂィッッッッ!
「――おや?」
 いくつかの要素が絡み合ったことで、発生した雷は、シリンの予想以上の威力で魔旗魚の中で暴れ回った。

●うさみん☆はメイド長
 プスプスと、魔旗魚の身体中から煙が上がる。
『そろそろ引き揚げられそうだな』
 それを見た船長が、船首に結ばれたロープを掴もうと手を伸ばす。ロープの先は、魔旗魚に突き刺さった銛に結ばれていた。シリンが結んでおいたのだ。
 だが――。
「待って」
 ロープに伸びかけた船長の手を、杏が制した。
「船長達、お願い。私がこれをこう掲げたら、さっきお願いしたことして?」
 そう言い残すと、杏はロープの上に飛び乗り、揺れるロープの上と言う環境に適応しながら駆けていく。
 直後、魔旗魚の蒼輝鰭が再び輝いた。
「ん、魔旗魚光った」
 杏はこれを察していたのだ。
「船も、コンゴウさまも。攻撃させない」
 他の猟兵達が囮に使ったりするのを見ても、杏はまだコンゴウさまを気にしていた。
 もう元のインコには戻せないのだとしても――可愛がっていたインコを攻撃させるのは忍びないと。
 そして、杏は幅広の大剣状にした『灯る陽光』を、刃を立てずに振り下ろした。
 ロープを狙った魔旗魚の剣のような吻と、杏が振り下ろした白銀の光がぶつかり、どちらも互いに弾かれた。
 環境に適応したと言っても、ロープの上では踏ん張りは効かない。
「うさみみメイドさんズ、ゴー」
 だから杏は弾かれた勢いに逆らわず、代わりにうさみみメイドさんをけしかけた。
 杏を跳び越え、身軽にロープの上を跳ぶうさみみメイドさんズが、魔旗魚がロープを切ろうと剣を振るう攻撃を、3,4体が一丸となってぶつかっていなし続ける。
「ん、今」
 ロープの上で態勢を立て直した杏は、『灯る陽光』を掲げて強く光らせた。
『よし、今だお前らぁ! 投げろ!』
 それを見た船長の指示で、海賊たちが投網を投げる。
 空中でぶわっと広がった網の中から出てきたのは、杏が船に残しておいた約半数のうさみみメイドさんズと、うさみん☆である。
「名付けて、メイドさんアターック」
 空を飛んだメイドさん達とうさみん☆が、連撃を止められた魔旗魚の背に張り付く。
「光ると面倒だから、鰭ひっぺがしてね?」
 すちゃっと包丁を構えたうさみん☆以下メイドさんズは、杏の言うように、魔旗魚の背鰭の周りに包丁を突き立てた。
 蒼白い光に焦がされながら、メイドさんズはゴリゴリ包丁を入れて――数の力で魔旗魚の背中から、背鰭の半分以上が斬り落とされた。
 それでも――。
『っ!!!』
 蒼白いエネルギーと化していた背鰭を半ば失い、尾鰭も最早満足に動かず。
 それでも、魔旗魚は上顎の剣を船に向けていた。
「本当に、退くことを知らないのね」
 そこにウサミミシャチの背に乗って、小太刀が飛んでくる。
「そこまでされたら、私も応えない訳にはいかないわよね」
 小太刀はシャチの背の上で、鞘から抜いた『片時雨』を構える。
「おいらも! みんないっけー」
 そこに祭莉も三騎士と共に転移してきた。今度はぴよこだけでなく、まっきーが踏み台にし終えたひなこまでも、ぶん投げる。
 そして――小太刀がすれ違いざまに刃を振り上げ、祭莉の三騎士アタックが決まる。
 魔旗魚の目から光が消えて――海に落ちていく。
 銛に結ばれたロープで船と繋がっている魔旗魚は、海に沈み切る事もなく――そして海から上がって来る事も、もうなかった。

●島へ
『改めて、感謝する!』
 海賊船の上で猟兵達に、船長が頭を下げる。
『おかげでアレを葬ってやれた』
「なに。他の者は判らんが、私には私の打算もあってな」
 顔を上げた船長の前に、ガーネットが進み出た。
(「改めて間近で見ると……結構な強面だな。まつりんが驚くのも判る」)
 顔に出さないよう胸中だけで、ガーネットは呟く。とは言え、見た目とは裏腹に人情味あふれる人物なのは、言葉の端々に現れていた。
「私はガーネット商会の代表ガーネット・グレイローズ。あなた方とは、よき関係を結びたいものです」
『あんなに強いのに、商人でもあるってのかい』
 商会を名乗ったガーネットに、船長が元々丸い目を更に丸くする。
『まあそういう話は――こんな状態の船の上でするのもなんだ』
 ガーネットが差し出した手を握り返しながら、船長は一つ頷き――こう告げた。
『うちの島に寄ってってくれ』
 そして、海賊船はすぐ近くの拠点の島へと帰っていく。
「……元部下ですけど、食べるんでしょうか、アレ」
 その甲板から係留されている魔旗魚を見下ろして、シリンがぽつりと呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『南国BBQフェスティバル!』

POW   :    肉を焼く

SPD   :    魚介類を焼く

WIZ   :    何かこう、珍味的なものを焼く

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●島へ
 そこは、元々は大きな山があったのだろう。
 風雨や嵐で山の天頂が、押し寄せる波で山の麓が侵食された山は、その島の一角に半分だけのドームのような形で残っていた。
 天然のドームを背中に構える形で、港があった。水を掻き分ける大きな音を響かせ、ゆっくりとパドルを回す『フィッシャーマンズ』の船が入っていく。
『お帰りなせえ!』
『妙に遅いんで、何かあったのかと思いましたぜ!』
『まあそう騒ぐな。客人の前だぞ!』
 遅かった口々に言ってくる下っ端を、甲板の上からオニキンメの船長が黙らせる。
『遅くなったのは、大漁だからだ。今日は忙しくなるぞ!
 船の上から船長が返すと同時に、海賊船の船尾から旗魚が溢れ出た。
 魔旗魚ではない。
 そっちはロープで曳いてきている。
 魔剣付きで召喚された旗魚の方だ。魔剣が消えればただの旗魚である。フィッシャーマンズが見逃す筈がない。
 そして、コンゴウさまも忘れちゃいない。
 港への到着にが遅くなった理由が、魚と鳥(どちらもほぼ未加工)を積めるだけ積んでいたからである。その上魔旗魚の巨体を曳いていれば、本来の速度が出る筈もない。
『いやー、どう考えても重量オーバーだこれ』
 と、オニキンメの船長が言い出したのは船を出して少ししてからの事。
 先に気づけよ海賊。

●もうすぐ、陽が暮れる
『お客さん! どうだい、島の海で採った貝だよ!』
『カジキだよ、カジキ! 良いカジキが入ったから、今なら捌きた――え、おたくらがセンチョと一緒に取ってきた? こりゃ失礼』
『他所の島から入った、米の酒だよー! 魚にゃピッタリさ!』
『今朝取ったばかりの鶏の卵、いらんかね!』
『こっちも朝採りのオレンジだ! 甘いよ、甘いよー!』
 敷物を敷いて簡単な庇を立てただけの露天に思い思いの商品を並べた人々の声が、まさに四方八方から聞こえてくる。
 フィッシャーマンズの船を降りてみれば、港は船着き場の周辺を除く区画の多くが、露天商が並ぶ市場となっていた。
『見ない顔じゃのう? この島は初めてか?』
 物珍し気な猟兵達に、嗄れた声の老爺が声をかけてくる。
『この島はフィッシャーマンズの縄張りじゃ。この島に入って来る船の大半は、交易目当てじゃからの』
 何かを売りに来る者、逆に何かを買いに来る者も。
 島を訪れるものは、必ず船でやって来る。
 だからいつしか港そのものが、市場を兼ねる様になったのだと言う。
 食料品に偏っているのは、元々漁で得た魚から始まった交易だからなのだろう。
『この港が、この島の名物の一つじゃ。もう一つの名物は――ほれ』
 老爺はプルプルと震える手で杖を掲げ、港の向こうを指し示す。
 砂浜が続く広い海岸線の端に、黒いものが見えた。小屋だろうか。いわゆるドーム形の屋根で、遠目には黒い蒲鉾のようにも見える。
『蒸し焼き機じゃ』
 アルダワの遺産と言うべき蒸し焼き機が、あの倉庫の中にあるのか――。
『お主ら、あの中に蒸し焼き機があると思うとらんか?』
 そんな猟兵達の想いを見透かしたかの様に、老爺が言葉を続ける。
『あれが、蒸し焼き機じゃ!』
『驚いたかい、客人』
 いつの間にか、老爺の後ろにオニキンメの船長が立っている。
『あの蒸し焼き機なら、さっきの魔旗魚だってぶつ切りにすりゃ焼けらあ』
 確かに。小屋ほどの大きさの蒸し焼き機――巨大なスチームグリルであれば、規格外の魚であっても捌き方次第で焼けない事はないだろう。

『コンキスタドールになっちまったやつの末路ってのは、色々だ』
 オニキンメの船長の言葉は、猟兵達も良く知っていた。オブリビオンは倒した傍から何も残さず消えていくものもいれば、今回の魔旗魚の様に亡骸が残るものもいる。
『海に沈めても他の魚が食うだけだ。だから――あれは俺らで食ってやるつもりだ』
 それは、彼らなりの弔いの形なのだろう。
 そこに乗るも乗らないも、自由だ。
 港を見れば、他の魚を中心に様々な食材が売られているのだから。
『今夜はバーベキューだ。蒸し焼き機使ってもいいし、浜で火焚いても良いぜ。船燃やす意外だったら、好きに過ごしてくれや』
 長い牙をガチガチ打ち鳴らす船長のそれは――笑っているのだろうか。
『改めて、ようこそ客人! フム・アル島――魚の口の島へ!』
 フム・アル。
 とある言葉で、魚の口を意味する言葉――港の背にある天然のドームは成程、言われてみれば魚が大きく開けた口に見えなくもなかった。

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 3章です。バーベキューです!

 すんません。導入ですが長いですね。以下、要約!

・色んなお店があるよ! 南の海にありそうな大概の食材は、言えばあるよ!
・魔旗魚は食えます! 食べてもいいし食べなくてもいい!
・巨大蒸し焼き機は大概なんでも焼けるよ!
・蒸し焼き機使わないで、海辺で焚火してもいいよ! 船は焼くな!
・時間は夜です! お酒呑みたい人はどうぞ! 年齢的なアレソレはほどほどに!

 大体そんな感じの、フム・アル島の夜のバーベキュータイムです。
 好きな様にお過ごしください。
 プレイング受付は、5/1(金)8:30~とさせて頂きます。締切は今回も成功度到達したタイミングでの予定ですが、日常章で必要成功度低めの為、もしかしたら一部の方には一度再送をお願いする事になるかもしれません。
(また別途ツイッター、マスターページ等で告知します)
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ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)と】
に……ニコと!うさみの!3分クッキング……!
まだどうしても照れは入るが、一応言えるようにはなったぞ

魔旗魚はムニエルにして美味しく頂こう
料理の腕が一向に上がらぬ俺は大人しくうさみのアシスタントだ
小さな身体でこの器用さ…良いよめみっちになれるな…
などとぼんやり妄想していたら真面目にやれと怒られる
怒るうさみも愛らしい…

して、うさみよ
デビみっちに報酬を忘れぬようにな、労働には対価が必要だ
フルーツはセルフで切れと言わんばかりに置きっぱなしで
まあ、此れではデビみっち達も怒るよな
ならば任せろ、カット程度なら俺にも出来よう

海と島の恵みに感謝しつつ、皆で仲良く食べよう
お疲れ様だ


榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
ニコと!うさみの!3分クッキング~!
フッ、ニコもだいぶサマになってきたな

俺が慈悲を込めて食ってやると言ったからな
というわけで本日のメニューは魔旗魚のムニエル!
魔旗魚の切り身に塩胡椒を振り
小麦粉を薄くつける!
バターを溶かしたフライパンでじっくり焼く!
ニコ、盛り付け用の皿を…
ゴルァ!腑抜けてないでちゃんと働けぃ!
フライパンに余った油に
レモン汁と乾燥パセリを入れてレモンソースに!
さっぱり美味しくてシャレオツなムニエル完成!

もちろん約束通りデビみっちも呼んでやんよ!
追加報酬のフルーツも用意したぞ!
市場で買ったのを丸ごとどんと置く
うるせー!調理するには文字数足りないんだよ!



●3分クッキング、南国編
「ニ、ニコと……!」
「うさみの!」
「「3分クッキング~!」」
 いくらか表情の硬いニコ・ベルクシュタインの掌に、ぶーんと飛び上がった榎・うさみっちが笑顔で掌をぺちっと合わせる。
「照れが入らないわけではないが、一応言えるようにはなったぞ」
「フッ、ニコもだいぶサマになってきたな」
 ニコ自身が言うようにまだ若干の照れは残っているが、そのタイトルコールは、うさみっちも認めるレベルになって来ていた。
 まあ、人間、物事に慣れる速度は個人差があると言うものだ。
 そしてそれは、状況にもよる。
『お、なんだなんだ?』
『おお、あのセミとか悪魔出してた2人が、また何かやるんだってよ』
 ニコがまだ若干照れていたのは、フィッシャーマンズの海賊達と言うギャラリーが若干名集まっていたからかもしれない。

「では先生、今日のメニューは?」
「今日のメインは魔旗魚だ。俺が慈悲を込めて食ってやると言ったからな」
 タイトルコールには慣れても、料理の腕はどうにも一向に上がらないニコは、今回もうさみっちを先生役にアシスタントに徹する構えだ。
「というわけで本日のメニューは魔旗魚のムニエル!」
「こちらが魔旗魚の切り身です、先生」
 フライパンを掲げるうさみっちの横から、ニコが魔旗魚の切り身の乗った皿を置く。
 綺麗なサシが入った、ぷりぷりのサクだ。こうなってしまうと、普通の、所謂カジキマグロと呼ばれる魚類の肉と変わりはないように見える。
 まあ普通は三枚におろしてから切り分けるものだが、このサイズのサクが大量に取れたりして、一部はデビみっち達に刺身にて提供されたりしたのだが。
「まずは切り身に塩胡椒を振る!」
 魔旗魚の切り身の上をぶんぶん飛んで、うさみっちが塩と胡椒を振っていく。下味をつけるとともに、魚の臭みも取る大事な工程だ。
「そして小麦粉を付ける!」
 ボウルの上に浮かんだうさみっちが、小麦粉の袋を開けて逆さまにする。
「ぶへっ、舞い上がっ――」
 ドバッとボウルに落ちて舞い上がった小麦粉で白くなったうさみっちの顔を、ニコがすかさず横から拭いてあげる。
『オウオウオウ!』
『ちょっとコッチ来いやー!』
 そんな2人に、横から罵声が浴びせられた。
「「ん?」」
 ニコとうさみっちが声のした方を向くと、お刺身で黙っていた筈のデビみっち軍団がぷんすこしていた。
「うさみよ、あのフルーツを出し忘れてたりは……?」
「いやいや! ちゃんと追加報酬のフルーツ置いといたって!」
 ニコがぢっと向けてきた訝しむ視線に、うさみっちが首を横に振る。

「よし、ニコ! 次はあっちだ!」
「む。まだフルーツ買うのか?」
「おう! デビみっちの食欲すごいからな!」
 そんなやり取りをしながら、頭に乗ったうさみっちの指示でフム・アル島の市場で果物を買って回ったのはニコも一緒だ。と言うか、殆どニコが運んだ。
 途中で、見覚えのある冷気を纏う猟兵とすれ違ったりもしたっけ。

『食えねーんだよ!!!』
『ちゃんと切って出せやコラー!』
『自分で皮むくなんて労働させんじゃねー!』
『手が汚れるだろー!』
 そんなことを思い出す2人に、デビみっち軍団は好き勝手宣ってくる。
 ニコがどれどれとデビみっちの後ろを覗き込むと、確かにフルーツは置かれていた。
 『セルフで切れ』と言わんばかりに、そのままで。
「まあ、此れではデビみっち達も怒るよな」
「じゃあニコが切ってくれよー!」
 しみじみ頷くニコに、うさみっちは魔旗魚の身に小麦粉をまぶせながら、ぶーっと頬を膨らませる。
「良かろう。フルーツをカットするくらいなら出来るぞ」
 果物ナイフを手に、ニコはデビみっち達の元へ向かい――。
「うっ!?」
 フルーツの山の中に見つけた丸い物体を見て、ニコは眉を顰めた。
(「うさみよ……何故ココナッツを混ぜた!」)
 市場でお店の人に勧められるままに買ったんだろう。
『どうした、ニコ!』
『早く切れー!』
「仕方ない……!」
 デビみっち達の容赦なく急かす声に、ニコはぐっと拳を握り締めた。

●ここからなら3分で終わった
「よし、焼いていくぞー! まず、フライパンにバターを溶かして――」
 さっき構えていたフライパンにバターを入れ、うさみっちは火にかける。
 うさみっちは体の小ささを物ともせず、器用にフライパンをカチャカチャ振ってバターが焦げないように全体に伸ばしていく。
「ちなみにここでバターを溶かす時にスライスしたニンニクを一緒に炒めると、ガーリックバター風味になるぜ! 今回はさっぱりを目指すからやらないけどな!」
 主に海賊達と言うギャラリーに向けて、うさみっちはワンポイントを告げる。
(「小さな身体でこの器用さ……良いよめみっちになれるな……」)
 デビみっち達のフルーツ処理を終えたニコは、手を拭きながらその姿に感心と妄想を膨らませていた。
 その間にも、うさみっちは魔旗魚の切り身から軽く小麦粉を落として、フライパンに並べて中火でじっくり焼き始める。
「そろそろ焼けるぞ、ニコ。盛り付け用の皿を……」
 そしてうさみっちは見た。
 まだ妄想の世界から帰って来てないニコを。
「ゴルァ!」
 うさみっちの小さな手が、ニコの額をぺちっと叩く。
「腑抜けてないでちゃんと働けぃ!」
「す、すまないうさみよ」
 額をさすりながら、ニコは慌てて新しい皿を並べる。
(「怒られてしまったが、怒るうさみも愛らしい……」)
 内心ではまだデレまくりながら、ニコは皿の上に焼き上がった魔旗魚の切り身が並べられるのを眺め――ふと、ある事に気づいた。
「む? うさみよ。まだ火を止めていないのだな?」
「ああ、それはフライパンに余った溶けたバターを使うからな」
 首を傾げたニコの前で、うさみっちはフライパンにレモン汁と少量の白ワインをぱぱっと入れ、乾燥パセリをパラパラ振りかける。
 そして一煮立ちさせれば、レモンソースの完成だ。
「さっぱり美味しくてシャレオツなムニエル完成だぜ!」
「おお。余ったバターも使うとは、さすがうさみ」
 ドヤ顔のうさみっちに、隣のニコが拍手を送る。
 だが今回は、パチパチと手を叩く音は複数響いていた。
『おー、いいぞちっこいの!』
『銀髪の兄ちゃんも、ヤシの実を拳で割ったのすごかったぜー!』
 2人に浴びせられた音と声は、ギャラリーの海賊達からも上がっていた。

「お疲れ様だ。うさみ。今回も美味いぞ」
「へへ、当然だぜ!」
 食卓についても、ニコの一言でうさみっちは再びドヤ顔になっていた。
 絶妙な火加減で焼かれた魔旗魚の身は、肉厚でしっかりとした歯ごたえながらも固すぎずに口に旨味が広がる。
 バターで焼かれた小麦粉のカリカリな食感も、バターとレモンを合わせたソースも相性ばっちりだ。
『うめーじゃねーか』
『まーまーだな!』
『また次も美味い報酬用意しとけよ!』
 デビみっち達も、満足気である。この調子なら、程なく帰ってくれるだろう。
(「今日は、平和に食べられそうだな……」)
 いつかの砂漠の鍋を巡る争いを思い出して、ニコがしみじみと胸中で呟く。どうやら今回は、落ち着いてうさみっちとのディナーを楽しめそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黎・飛藍
【鈴蘭トリオ】

処理?
山に居た時にある程度自分で覚えたから出来なくはないが、それでいいなら
彼…って、誰だ?

とりあえず赤くて丸いのを引っ掴んで、見せられない光景の後に店でよく見る鳥肉の姿にする
多分、尾羽の辺りにぼんじりが…

周りの気温が少し下がった事と、聞き慣れた声が聞こえてルイが来た事を理解
ルイに調理は丸投げして問題ないだろう
魚と鳥肉は海で…

いきなり草大福突っ込まれたから、とりあえず食う
あ、ぼんじりは俺が食う
…俺は美味いものが食えればそれで

柑橘…レモンか。それと香草の類の匂いがする
これは美味いやつの匂いだ

ルイ…だから成長期が今になって来ているのか
もっと魚類を食え。成長促進の効果があるかもしれない


空目・キサラ
【鈴蘭トリオ】

なぁ藍々君よ、鳥の羽諸々の処理は出来るかね?
僕は手や服を汚したくない。だから彼を呼んで彼に料理を作らせる
だがコンゴウさまそのままとなると多分…見たら即回れ右しかねないだろうから
…うん?我らが台所番の事だよ

藍々君の口には懐にあった草大福を突っ込んで少し黙らせる
お小夜よお小夜。縁あって手に入れたこの食材を美味しくできるのは君だけなのだ
…という訳で買い出しに行ってきたまえ
そして調理だ。食材が傷まぬ内に
藍々君と期待して待っているからね

やはり料理は慣れている者が作るに限る
そういえばさ、何故にお小夜はぽんと調理法が思いつくんだい?

へぇ…お小夜は元は身体が弱かったのか
今の姿から想像できないな


小夜啼・ルイ
【鈴蘭トリオ】

もうどっからツッコんでいいのかわからねぇな
何だよこのカジキと鳥肉…これ何処で手に入れて来たんだ?
おい…何か隠してんだろ
つかお小夜って呼ぶんじゃねぇ!!
あーもうツッコミが色々追いつかねぇ…

ちーっと島の店に、気分転換兼材料を買いに行ってくる
鳥は香草使って蒸し焼きにするとして、カジキは…
レモン…レモンソテーにでもするか
作るの決めたら直ぐ買い物は終わらせて調理だ
十中八九フェイが匂いに気が付くだろうとか思いつつ

入院していた頃に…退院出来たら、美味いものを自分で作るって決めてた
それで小説以外にもレシピ集読んでたりしてただけだ
うるせー、色々あったんだよ

あぁ?!!
フェイてめぇしばくぞコラァ!!



●買い出し係
『お、そこの少年。どうだい、良いカジキがあるよ! 今日、大漁だったんだ』
『他所の島から仕入れた小麦で焼いた、パンだよー! 魚に合うよー!』
「ふーん。まあまあ面白い所じゃねえか」
 商人たちの活気ある声が飛び交うフム・アル島の市場を、小夜啼・ルイ(xeno・f18236)は1人歩いていた。
 こうなったのはやや不本意ではあるが、こうしてブラリと歩き回って、気になった店を気楽に覗いていける時間は悪くない。
「バジルに近い香りだな。鳥はこれで香草焼きにすればいいとして……」
 何軒かの店で、ルイは独特ながら強すぎない香りを放つハーブを購入する。
 ルイはただ観光をしているわけではなかった。必要な食材の買い出しだ。メインの食材は決まっている。
 他に何か合う良い食材がないかと、食材探しを再会して歩き出したルイの耳に、聞き覚えのある声が響いてきた。

 ――う、うさみよ。まだフルーツ買うのか?
 ――おう! デビみっちの食欲すごいからな!

 声に釣られて顔を上げれば、前方から山盛りのフルーツを抱えている銀髪の眼鏡の青年と、その頭上のピンク髪のフェアリーの2人連れが歩いてくる。
(「あいつら……前に別の世界で見たような?」)
 その横を通り過ぎる時、ルイの鼻に柑橘類の爽やかな香りが届いていた。
(「あれはレモンか……さっき覗いた店に、オリーブオイルがあったな。よし、カジキはレモンソテーにするか」)
 その香りに残りの買い物を決めると、ルイは目的のものを買いに歩き出した。

●彼が買い出しに出た理由
 何故ルイが1人買い物をしていたのか。
 それは、少し時間を遡る。

「ん……」
 深い深い眠りに沈んでいた空目・キサラの意識が、急速に浮上していく。
 何か重たいものが回る音が聞こえる。まどろみの中に身体に感じる揺れは、波のように規則的で、背中に感じるのは板の――。
「む……ここは船の中か」
 身を起こしたキサラが周囲を見回すと、すぐ近くで黎・飛藍が海風に吹かれてぼーっと海を眺めていた。
「起きたか」
 僅かな声と気配で目覚めたのを察し、飛藍は振り向かずにキサラに声をかける。
「寝過ぎだ。もう海賊の島に着く所だぞ」
「あれからどうなったんだい?」
 キサラに問われ、飛藍はキサラが薬の副作用で眠りに落ちてから今までの顛末を掻い摘んで伝えた。
 ほぼ他人を判別できない飛藍の説明ゆえに、誰がどう、と言う部分こそすっぽりと抜けてはいるが、それ以外は良く纏まっていた。
「と言うわけだ。島に着いたら夜は諸々食える。キサラ。お前料理は出来――」
「なぁ藍々君よ」
 料理は出来るのか、と訊いてくる飛藍の声をキサラが遮る。
「鳥の羽諸々の処理は出来るかね?」
「処理? 山に居た時にある程度は自分で覚えたから出来なくはないが」
 逆に訊かれた事に、飛藍が首を傾げた。
「僕は手や服を汚したくない」
「おい。だから俺にやれって――」
「違う、そうではない」
 その言い分に顔を顰めた飛藍をキサラは指を1つ立てて遮った。
「彼だよ。彼を呼んで彼に料理を作らせる」
「彼……って、誰だ?」
 キサラの言う人物が誰か判らず、飛藍が再び首を傾げた。
「うん? 我らが料理番だよ。氷の彼だよ」
「ルイか。なら調理は丸投げして問題ないだろう」
 キサラの答えに、飛藍は脳裏に冷気の感覚を思い起こし、ひとつ頷く。
「ルイか。なら調理は丸投げして問題ないだろう」
「だが、彼の事だ。コンゴウさまがそのままとなると多分……見たら即回れ右しかねないだろうから」
「あー……またうるさいだろうな」
 キサラの言わんとする事が、そろそろ飛藍にも判ってきた。
「要は見た目をただの鳥肉にすると。判った」
「ああ、よろしく頼――いや、島についておろしてからで」
 いきなり赤くて丸いコンゴウさまを引っ掴んで羽根を毟り出そうとした飛藍を、キサラが流石に止める。
 こうして――。

「何だよこれ。どういう状況だ」
 いいからおいでと、キサラに半ば拉致気味に連れてこられたルイが到着した時には、大漁の魚の切り身と、妙に丸々とした鳥肉が転がっていた。
 羽根もすっかりなく、頭や足も落として、丸焼き用にお店で売られている鳥肉と遜色は無いように見える――その丸み以外は。
 飛藍が無心でむしむしと羽根を向き続け、更にちょっとお見せ出来ない工程を幾つか経た成果である。
「何だこのやけに丸い鳥肉は。こっちは……カジキか? 何処で手に入れて来た?」
「魚と鳥肉は海で――もごっ」
 訝しむルイの表情に気づかず喋りかけた飛藍の口に、キサラが草大福を突っ込む。
「おい……何でフェイを黙らせた。何か隠してんだろ」
「いやいや、縁あって手に入れただけさ」
 その行為にルイが向けるぢとりとした視線を、キサラは素知らぬ顔で受け流す。
「それよりも、お小夜よお小夜」
「お小夜って呼ぶんじゃねぇ!!」
 キサラの呼び方にルイの周囲の気温が下がったのを感じながら、飛藍は無言で口に突っ込まれた草大福をもぐもぐしていた。
(「ふっ――ちょろい」)
 一方キサラは、予想通りのルイの反応にこっそり胸中で笑みを浮かべる。
「ともあれ、この食材を美味しくできるのは君だけなのだ。という訳で、買い出しに行ってきたまえ。市場はあっち。なるべく早くね。食材が傷まぬ内に」
 そんな胸中をおくびにも出さず、キサラはルイに財布を握らせた。
 食材を持たせるだけなら、ルイの能力で凍らせればどうにでもなる。だが冷凍させて解凍するよりも、釣りたて捌き立ての方が新鮮なものだ。
「ぼんじりだ。俺はぼんじりが美味く食えればいいぞ」
 草大福もぐもぐし終えた飛藍も、すっかり調理丸投げの構えである。まあ、ルイは知らないが飛藍は結構働いたのだが。
「はぁ……わかったわかった。適当に見てくる」
 そんな2人の様子に、ルイは大きなため息を零して歩き出した。
 結局自分が作るのなら、自分で買い出しもした方が何かとやり易いと言うものだ。

●所謂ガーリックレモンソテー
 買い出しを終えたルイは、早速調理を始めていた。
 たっぷりオリーブオイルを注いだフライパンを、火にかける。
 じゅぅっと熱せられたオイルが爆ぜる音が鳴り出したフライパンに、ルイはスライスしたガーリックをパラパラと振らせた。
 数分炒めてカリカリになったガーリックを、ルイは箸で摘まんで取り上げる。
 ガーリックは風味付けだ。
 ルイは空になったフライパンに、切り分けたカジキ――とルイは信じている魔旗魚の切り身を並べていく。
 まずは皮から焼いて、皮をパリッとしたらひっくり返す。
 皮つきの身の方が実は少ないのだと、ルイは知る由もない。
「良い匂いだ」
「やはり料理は慣れている者が作るに限るね」
 立ち昇った匂いに釣られ、いつの間にか飛藍とキサラが後ろから覗き込む。
「フェイは十中八九匂いで気づくと思ったが、お前もか、キサ」
 溜息を零しながら、ルイは手際よく魔旗魚と鳥肉が焦げないように返していく。
「……む。ルイ」
 フライパンをじっと眺めていた飛藍が、徐々に眉根を寄せていた。
「鳥肉がないぞ。俺が獲ったぼんじりはどうした」
「ああ、それならあっちで――獲った?」
「よーし、藍々君。お小夜は忙しいようだから、あっちで大人しく待っていようか!」
 ぼんじりに拘るあまりまたうっかり口走った飛藍を、その言葉を聞き逃さなかったルイの前から、キサラが引きずって離れていた。
「……まぁ……いいか」
 何となく追及しない方がいい気がして、ルイは塩胡椒と香草で味付けして蒸し焼きにしている鳥を取りに、巨大蒸し焼き機の方へ向かっていった。

●骨まで食べるといいと思います
 パリッと焼かれた皮と、肉厚な身の歯応え。オリーブとレモンの香りが爽やかなソースも、魔旗魚と良く合っている。
「美味いものだ。カジキとレモンがこんなに合うんだね」
 その組み合わせに、キサラも素直に賞賛を口にする。
「ぼんじり美味い」
 飛藍も、鳥の香草焼きを口いっぱいに頬張り、もっぎゅもっぎゅと租借している。塩胡椒と香草で味付けされた鳥肉は、肉の味が存分に活かされていた。
「そういえばさ、何故にお小夜はぽんと調理法が思いつくんだい?」
 ふと気になって、キサラはルイに視線を向ける。
「入院していた頃に……退院出来たら、美味いものを自分で作るって決めてた。それで小説以外にも、レシピ集とか読んでたりしてただけだ」
 もうキサラにお小夜と呼ばれるのにつっこむのは諦めたのか、ルイは自分の皿から目を離さずに返した。
 とは言え、レシピを読めば誰でも作れるようになるものでもない。まして、食材からレシピが浮かんでくるなど、相当読み込んだのではないか。
「へぇ……お小夜は元は身体が弱かったのか、今の姿から想像できないな」
「うるせー、色々あったんだよ」
 意外そうなキサラに憮然として返しながら、ルイはカジキを口に入れる。
「ルイ。魚はお前が食え。俺はぼんじりが食えたからい」
 すると、ルイの皿の空いた所に、飛藍が自分の皿から魔旗魚をそっと取り分けた。
「どうした、フェイ。お前らしくもな――」
「成長期が今になって来ているんだろ。だからもっと魚類を食え。成長促進の効果があるかもしれないぞ。俺の背丈を越えるかもしれないぞ」
 つまり飛藍は、こう言いたいのだ。ルイの背丈は、まだ伸びるかもしれないと。
 ルイだって、そう信じている。信じているが――言われるのは、腹が立つ。
 なお、飛藍の方がまだ大きい。
「あぁ?!! フェイてめぇしばくぞコラァ!!」
 お小夜の呼び名以上に許せないポイントをナチュラルに踏み抜いた飛藍にルイが食って掛かるのを、キサラは止める気なさそうに黙って眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

司・千尋
アドリブ他者との絡み可

働いた後の飯は美味い!
…と言うことで、遠慮なく食っていこうかな

やっぱりこういう島だと魚介が美味そうだよなぁ
フラフラ物色しながら歩く
色んな店があって目移りしちゃうぜ
オススメって何がある?等聞きながら買い食いしよう


魔旗魚も食うのか…
弔い、か…
これも何かの『縁』だし
俺も食って弔おう
こういう魚ってどの部位がオススメなんだ?

食べるからには美味しく残さず食べるのが礼儀だろう
…いただきます

サイズがサイズなだけに大味なのかと思ったけど普通に美味いな


まぁアレだ
魚からトマトになったりおでんになったりしないから良いよなぁ
アレはアレでおでん美味かったけど

…意外と食べたら美味いヤツが多いんだろうか



●食べ歩き
 フム・アル島の市場は、船乗りの為の要素が大きいようだ。
 港に近い区域には未加工の食材や、日持ちする形に加工されたものを扱う露天が多く並んでいる。島の奥の方に行けば、調理された品を扱う店が増えていた。
 そんな区域を、司・千尋はのんびりと歩いていた。他の猟兵は食材の方を探しているのが多いようで、今は一人である。
「やっぱりこういう島だと魚介が多いな。どれも美味そうだ」
 時に足を止め、時に軽く受け流しながら、千尋は特に目的もなく歩いて行く。
 こう色々あると目移りもしてしまうが、そんな中を物色しながら歩く事自体を、千尋は楽しんでいた。
「オススメを訊くと、どこも自分の所を言って来るのは少し困るが――ん?」
 何処からか漂う香ばしい匂いに、千尋の鼻腔がくすぐられる。
「この匂い――」
 千尋が匂いに釣られて視線を向けると、何やら丸い穴が空いた鉄板の上で、小麦を水に溶いたものを流して焼いている。
「タコ焼き?」
『ここのタコ焼きは、そこらのタコ焼きとは違うぜ。毎日島で取れたタコに、タネは他所の島から仕入れたエルフの小麦に島で作った魚粉を混ぜ込んでるんだ』
「へえ。言われてみると確かに香りが違うな……じゃあ、1つくれ」
『毎度あり!』
 木製の器にたこ焼きが並べられ、青のりをかけ、醤油を煮詰めたソースが塗られて、千尋の前に出てくる。
「あふっ……確かに美味い!」
 別段奇を衒っているわけではないが、確かに良くあるたこ焼きとは違う味わいが、千尋の口の中に広がった。
 素材がいいのだろう。それでなくても、働いた後の飯は美味いものだ。
「さて。もう少し食べ歩くか」
 千尋は新たな名物を探しながら、巨大蒸し焼き機のある浜辺の方へ向かって行った。

●新たな扉、開いてない?
「本当に魔旗魚も食べるんだな……」
 小屋のような大きさの蒸し焼き機。その屋根の中に隠れていた網の上に、海賊達によって丁寧に下ろされた魔旗魚の身が並べられていく。
『ま、これが俺達の弔いだからな』
 笑って告げるオニキンメの船長の後ろで、蒸し焼き機の蓋が閉じられる。
 ゴォォォッと中から音が響き続けて、次第に蒸気が漏れ出てくる。数分後、蒸し焼き機の蓋が開くと、むわっと広がった蒸気に焼けた魚の匂いが混ざっていた。
「……これも何かの『縁』だし、俺も一皿食って弔わせて貰おうか」
『お、そうか! その気になったなら、食って行ってくれ』
 その匂いに釣られたか。
 皿を手に取った千尋に、オニキンメの船長が笑って答える。
「こういう魚ってどの部位がオススメなんだ?」
『魚の身は大きく背中側と腹側に分類される。背側は身が詰まっていて脂が少ない。調理の仕方次第では硬くなってしまう事もあるが、さっぱりと食べられる。一方腹側の身は脂が多いのが特徴だ。マグロのトロは基本的に腹側だな』
 千尋の問いに、船長は流れる様に説明してきた。
(「魚の頭で言われると何か……いや、言うまい」)
 喉元まで出かかった言葉を飲み込んで、千尋は両方を少しずつもらう事にした。
「……いただきます」
 さっと醤油をかけて恐る恐る口に入れてみれば、身がほろりと口の中で崩れる。
「普通に美味いな」
 サイズがサイズなだけに大味なのかと思ったいた千尋だが、そんな事はなかった。
 むしろ、とても魚だ。もう魚に変わり切ってしまっていたと言う事だろう。
(「まぁアレだ。魚からトマトになったりおでんになったりしないから良いよなぁ……アレはアレでおでん美味かったけど」)
 魔旗魚の身に舌鼓を打つ千尋の脳裏を、鰹が泳いで行ってトマトが転がって来て赤い鍋が浮かんでは消えていく。
「オブリビオン……意外と食べたら美味いヤツが多いんだろうか」
 空になった皿を手に呟く千尋の視線の先には、見覚えのあるグループが楽しそうに蒸し焼きに舌鼓を打っている姿があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
オニキンメ船長の後をとてとて歩いて
ん、エラ顎かっこいい…
船長はご結婚されてる?
わたし、船長のためならお肉を捨て去るのもやぶさかではな…な……
(BBQのお肉のいい匂い)
む、恋はむずかしい……

やはり魚多めでお肉は少なめ
でもどれもおいしい
コンゴウさま、悪さしたら海に帰す、しなかったらピーナッツあげる、いい?
ここは海賊の島、掟をしっかり教え込む

フルーツもたくさん。椰子の実ジュースで至福のひととき

お菓子はない?わたし作ってきた(山吹色のお菓子を出して)
これは燧島という場所に伝わるお菓子
その島にも商人がいて交易も盛況
何より海賊の心意気、しっかり持ってる
燧島との交易の利点を伝える

島同士の交流が深まればいいな


シリン・カービン
仲間を弔う風習はその土地によって様々ですが…
「なるほど、死んだ仲間の血肉を体に取り入れて、
その魂を自身に迎えるということなのですか」

私の森では、死者は自然に還すのが習わしでした。
森で生まれたものは森へ還す。
生命は次の生命の糧となり、永遠に循環する…

静かに語りながら差しつ差されつ、
オニキンメ船長と酒杯を交わします。
良いですね、モルト・カリーナ… 
(肉に惹かれる杏の様子に)ふふ、行きましょうか。

蒸し焼きにされた魔旗魚の切り身を前に瞑目。
ならばとばかりに、遠慮なくガブリと行きます。
生命の循環に戻り、私の血肉となり、
次の生命に繋がるよう祈りをこめて。
…あ、美味しいですね。


ガーネット・グレイローズ
まずは、メガリスに挑んだ海の男に哀悼を。そして、海賊達の絆に敬意を表して黙祷。
さあ、区切りがついたら宴を始めよう!【ガーネット商会】の船員を呼び出して、船から沢山の酒や料理、果物を調達。さあ皆、遠慮はいらないよ。
海鮮BBQを楽しみつつ、オニキンメ船長には改めて挨拶しておこうか。自分が冒険商人であること、コンキスタドールから人々を護るために協力者を求めていることを語る。もちろん商売人なので、利益を得ることも大事。この島に、支店を出す許可をもらえませんか?お茶にコーヒー、煙草もありますよ。それからこの白ワイン。モルト・カリーナという島で造られたものです。魚料理によく合いますよ。


木元・祭莉
一緒に戦ったみんなと宴会ー♪

へえー、フム・アル? 魚人語かなあ?
ふむふむ。あるある。
へへへ、コダちゃんうつっちゃった♪

アンちゃん、鳥さんより魚さんがいいんだ……
おいら、顔のコワイ弟、やだなあ……

でっかい蒸し焼き器、カッコイイ!
やっぱ大物よく獲れるのー?

いいなあ、食べても食べても減らない、でっかいカマ焼き!
おいらもココに住もうかなあ♪

木元村はね、内陸だからね。
タマゴと牛乳はいっぱいあるケド、お魚は干物が多いんだよー。

みんなにもお給仕するよー。
さあ、弔い飯だぜぃ、食いねえ食いねえ♪

あ。ガーネット商会のすみっこに、木元村駐在おいていい?
美味しいお米と手に負えないコンキスタドール御用達、って!(にぱ)


鈍・小太刀
魔旗魚……海に生きた男の最期か
全力で生き全力で戦った命だからこそ
その血肉の一片も無駄にはしない
仲間でも、仲間だからこそ
それが彼らなりの敬意、なんだね
うん、そういうの嫌いじゃないよ

海賊達の絆を強く感じつつ
手には数々の料理
べ、別に、ご馳走に釣られた訳じゃないからね?(ちょっとだけ目逸らし
さあ、思いっきり食べるわよ!

海賊達の流儀に則ってもぐもぐ
旗魚のステーキだ!煮物もいいね
でもやっぱりお刺身美味しい♪
こっちの海老も、こっちの貝も
ふわ、何このとろける甘味♪

そしてメインはやっぱり魔旗魚の蒸し焼き
深い旨みを確りと味わいながら
骸の海を泳ぐ彼の魂へと
海賊達の想いが届く様に、祈る

ごちそうさま!

※アドリブ大歓迎!



●この世に捌けぬ魚などない
 フム・アル島の浜辺には、水揚げされた魔旗魚が鎮座していた。
 巨大蒸し焼き機があるのは、すぐそこだ。
 解体したらそのまま焼きに行く構えである。
 まな板に乗り切らない――と言うよりも下手な船よりデカい魚が乗り切るまな板がある筈もなく――まな板替わりに、海賊達は浜辺に板を並べていた。
「魔旗魚……海に生きた男の最期か」
 今まさに捌かれ出している魔旗魚を眺め、鈍・小太刀がぽつりと呟く。
 その周りには、まるで建築現場みたいな足場が即興で組み上がっていた。海賊達はその足場を使って、魔旗魚の巨体に乗って行く。
 まずは左右の胸鰭だ。数人がかりで胸鰭を持ち上げ根元から斬り落とす。蒼白い輝きを失った背鰭も同じようにぐっと持ち上げ、斬り落とす。
 彼らはそこから、大きな身を幾つかの塊に切り分けていく。
 通常の魚であれば、鰭を落とした後は三枚に下ろすのが定石だろうが、このサイズではそのまま三枚に下ろす方が大変だ。
 とは言え、そんなイレギュラーに巨大な魚も、フィッシャーマンズにかかれば、捌くのは難しい事ではなさそうだ。
「手慣れてますね」
 小太刀の隣で様子を眺めていたシリン・カービンが、その手際に感心したように呟く。
「なるほど。死んだ仲間の血肉を体に取り入れて、その魂を自身に迎えるというのは、彼らにとって慣れている事なのですね」
 シリンの目には、彼らは手際が良い以上に躊躇いなく見えたのだ。
「全力で生き全力で戦った命だからこそ、かしらね」
 小太刀も彼らの手際の中に、海賊なりの絆が籠っているのを感じていた。
「仲間でも――ううん、仲間だからこそ、その血肉の一片も無駄にはしないのね」
「食べられない部分は海に還そうと言うのですね」
 小太刀の言葉に、シリンも頷く。
 そも砂浜で捌いているのは、水揚げが一番楽だったとか、切った身をすぐに海で洗えるからとか色々あるだろうが、ここが一番無駄にならないと言うのもあるのだ。
 どれだけ手際よく捌いても、身の切れ端が落ちたり、流れる血は出てくる。砂浜ならばそのままにしても、やがて波にさらわれ海に帰り魚に食われるか、砂の中の小さな生き物たちが消化していくだろう。
「うん、そういうの嫌いじゃないよ」
 小さく呟く小太刀の目の前で、魔旗魚の身はどんどん切り分けられていく。
 そのまま巨大蒸し焼き機に入れられるものもあれば、幾つかの塊はさらに小さく柵に切り分けられて他の猟兵や露天商へと運ばれて行くのだった。

「お、やってるやってる」
 そこに商会の船乗りを連れたガーネット・グレイローズと、木元・祭莉が現れた。
「コダちゃん、市場で見ないと思ったらこっちに来てたんだ」
「べ、別に、ご馳走の気配に釣られた訳じゃないからね?」
 祭莉の言葉に、小太刀は明後日の方向に目を逸らす。
「おいら、コダちゃんの持ってるのと同じ串を屋台で見た気がするんだけどなー?」
「……」
 祭莉の追及に、押し黙る小太刀。
「そ、それより祭莉ん。杏は?」
「アンちゃんなら……」
 話題を変えようとした小太刀に問われると、今度は祭莉は珍しく言葉を濁して、魔旗魚解体現場の方を指さした。
『おー! 順調だな皆。まだまだ普通の旗魚もあるから、どんどん捌いてくれよ!』
『オーケー、船長!』
 魔旗魚解体中の海賊たちに声をかけて回るオニキンメ船長。
「……」
 その後ろを、木元・杏がとてとてと着いて歩いていた。
(「ん、エラ顎かっこいい……!」)
 その瞳は、乙女の本能でキラキラと輝いている。
「杏、そこまで……」
「アンちゃん、鳥さんより魚さんがいいんだ……おいら、顔のコワイ弟、やだなあ」
 何やら頑張っている杏に、小太刀と祭莉が何とも言えない表情になっていた。
 双子と幼馴染としては応援して見守りたいところだろうが――何せ相手はオニキンメ船長である。さもありなん。

●魔旗魚の調理の行方と少女の恋の行方
「……」
 解体された魔旗魚の前で、ガーネットが目を閉じている。
 海の男への哀悼と、、海賊達の絆に敬意の表れ。
「――よし。商会の諸君。宴の準備を始めよう!」
 ガーネットの指示で、幾つもの荷箱が運び込まれてくる。今、港にはガーネットの所有する商船『シルバーホエール』号が、ボトルから外に出ている。
 ガーネット商会の船員達が運び込んでいるのは、その中に蓄えていた積み荷だ。
 まあ、一部は船から降ろすなり、周りの商人たちによって物々交換を求められたりしたのだが。

 ――ゴゴゴゴゴッ!
 そこに、何か重たいものが動く音が響いた。
 小屋ほども大きな巨大蒸し焼き機。その蓋と言うか屋根と言うか、まあとにかく普段は中の焼き網を隠している金属製の覆いが開いていく音だ。
 ゆっくりと開く傍から、ジュゥッと音を立てて蒸気が溢れてくる。
「カ――カッコイイ!」
 まるで変形のような光景に、祭莉は目を輝かせた。
「でもすごい大きいね。やっぱ大物よく獲れるのー?」
『ああ。今回みたいに、こいつでも一度に焼ききれない大物も珍しくないぜ』
 祭莉の問いに答えながら、海賊達は開いて中の骨を取ったばかりの魔旗魚の身を巨大蒸し焼き機の中に並べていく。
 それで、魔旗魚の身の何分の一だろう。他の猟兵達や商人に分ける分を引いても、まだまだ焼き待ちの魔旗魚の身は沢山あるのだ。
 それが全部蒸し焼き機で焼かれるまでには、まだまだ時間がかかるだろう。
 だが――この島で、魚を捌けるのは海賊達だけではない。

「あの骨はどうするのかしら」
「流石に食べられないのでは?」
「頭はカマ焼きにするのかなぁ」
 まだ終わらない魔旗魚の解体を、小太刀とシリンと祭莉はのんびり見守っていた。
 ガーネットは自身の商会に運搬指示を出し、杏は相変わらず船長の後をとてとて着いて回っている。
『すまないねぇ。まだしばらくかかりそうなんだよ』
 解体を見守る3人に、島民のおばちゃんが声をかけて来た。
『若い人たちはお腹もすくだろう。これを食べてておくれ』
 そう言い残しておばちゃんが置いていったのは、海老やホタテに似た貝類とかお肉とか野菜を使った様々な串焼きの乗った大皿だった。
 それは島民からの善意である。悪気は何もなかったのだ。
 その皿を見た瞬間、小太刀は真っ先に2つの串を手に取った。
「ね、ねえ。シリン、祭莉ん。残りは全部、2人で食べていいわよ。私は、ほら。あの魔旗魚を後でたっぷり食べたいから……ね?」
 言葉だけを見れば、小太刀はすごい殊勝なことを言っている。
 だが、その声は端々が震えて目が泳いでいた。
 あったのだ。残る串焼きの中に、緑の野菜が。
 ピーマンが。
「小太刀、好き嫌いはいけませんよ」
「コダちゃん、がんばれ」
 目を逸らす小太刀の両肩を、シリンと祭莉がぽむ、と叩いた。

 船長が進めば、杏も進む。
 船長が止まれば、杏も止まる。
『何か用かい、嬢ちゃん?』
 オニキンメ船長が気付かない筈もなかった。
「せ、船長はご結婚されてる?」
 振り向いた船長に、杏は乙女の本能に従って思い切って質問を投げかける。
「わたし、船長のためならお肉を捨て去るのもやぶさかではな……な……」
 そこに漂ってきたのは、焼かれたお肉の香ばしい匂い。鼻腔をくすぐる匂いに杏のお腹が、きゅぅと小さく鳴った。
『いやいや、食え食え。子供はたくさん食うもんだ』
 その音が聞こえていたのか、船長は笑って杏の頭を撫でた。
「む、恋はむずかしい……」
 ごつごつとした船長の手を頭に感じながら、食欲と恋の間で杏が眉間に皺を寄せる。
「ふふ、串焼きがありますよ。行きましょうか」
 そんな杏の肩に手を置いて、シリンが小太刀と祭莉の待つ方へ連れて行く。
 顔のコワイ弟が出来そうになくて、祭莉はほっと胸をなでおろしていた。

(『結婚、なぁ……』)
 シリンに促されて遠ざかる杏の背中を見送り、オニキンメの船長は胸中で呟く。
(『うちのカミさん、外に出たがらねえんだよなぁ。頭がユメナマコだから』)
 ユメナマコ。
 オニキンメと同じく深海魚である。その体はほとんどが透明。
 船長が何も言わなかったのは、大人の優しさと家庭の事情もあったのだった。

●いつの間にやら宴
 島の人々が捌いた旗魚。
 元々島で売られていたものと、ガーネットが持ち込んだ食材。それだけの材料が集まれば、魔旗魚が焼き上がるまでバーベキューを待つ理由はない。
 いつの間にか炎が焚かれ、宴が始まっていた。
「煮物もいいね。でもやっぱりお刺身美味しい♪」
 船長の頭に似たぎょろめの魚の煮物。
 船を模した器に乗った、イカや貝も混ざったお刺身。
 小太刀はフム・アル島の海の幸に、次々と箸を伸ばしていく。
「こちらは何でしょう?」
 何やら白いソースが掛かったエビと貝を掬って、シリンは口に入れる。
「ふわ、何このとろける甘味♪ このの海老も、こっちの貝も」
 同じものを口に運んだ小太刀も、その舌触りと味わいに目を丸くする。
『それは白子をベースにしたホワイトソースだよ』
 白子を炙りながら潰して伸ばしてルゥの代わりにしてソースに使っているようだ。魚介同士、合わない筈がない。
 そして――順メインと言って良さそうなのが、普通の旗魚。
 小太刀と杏は、バターで焦んがり焼かれた肉厚の旗魚に、刻んだ玉ねぎを煮詰めたシャリアピンと呼ばれるものに似たソースのかかった皿を同時に手に取る。
「すごい。旗魚もこんなに肉厚だと、ステーキみたいになるのね」
「ん。やはり魚が多めで、お肉は少なめ。でもここのお魚、どれも美味しい」
 ステーキを思わせる食べ応えに、小太刀もお肉大好きな杏も笑顔で顔を見合わせる。
『オイ』
 そんな杏の背中に、何者かの声がかけられた。
「ん。どうしたの?」
『ピーナッツ、モット』
 振り向いた杏は、求められるままに屈んでピーナッツを差し出す。
 コンゴウさまに。
 まだ島から飛び出さずにいたのが、発見されたのだ。
「悪さしたら海に還す。しなかったらピーナッツあげる。いい?」
『マ、仕方ネーナ』
 多分頷いているのだろう。全身を上下に振って、コンゴウさまは海賊の掟を仕込もうとする杏は追加のピーナッツを差し出した。
「さあ、皆。弔い飯だぜぃ」
 そこに、楽し気な祭莉の声が響いた。

●魔旗魚の宴
「魔旗魚が焼けたよ♪ 食いねえ食いねえ♪」
 誰に言われるでもなくお給仕を買って出ていた祭莉が、両手に巨大魔旗魚の乗った皿を持って仲間たちの元へ運んでいた。
 魔旗魚なのだろう。
 魚と言うより、ブロック肉か鳥の丸焼きと言う迫力だが。
「大きいですね」
 そのサイズに瞠目するシリンの耳に、賑やかな声が聞こえて来た。

『かーっ! あいつこんなに美味くなっちまいやがって』
『脂の乗りもいいなぁ』
『なにしろ、あの人たちが腹斬らないで腸を砕くなんて離れ業してくれたからな。お陰で新鮮なまま運んで来れたし』
 周りを見回せば、海賊達も焼けた身に舌鼓を打っている。
 なんだか、知らない間に猟兵達がまた一役買っていたようだが。
「本当に、自分達で食べるのですね」
 悲壮感などほとんどない様子を横目に、シリンはフォークを手に取る。
(「生命の循環に戻り、私の血肉となり、次の生命に繋がるように――」)
 胸中で祈りを込めて。
 シリンは、ふかふかに蒸し焼きにされた魔旗魚の分厚い身にブスリとフォークを突き立てると、遠慮なくガブリと言った。
 フォークを入れた時も抵抗なかったが、口に入れれば見た目を裏切る柔らかさ。
 ほろりと身が崩れながらも、しっかりとした旨味が広がる。
 それは、シリンが馴染みのある森の生き物では感じたことがない味わいだった。
「あ、美味しい」
「深い旨みね……魚でこんな味わいがあるなんて」
 思わず声に出ていたシリンの言葉に、小太刀も同調するように呟く。
 コンキスタドール――オブリビオンとなってしまった今、その魂は骸の海を泳いでいるのだろう。その魂へ、海賊達の想いが届くように祈りながら、小太刀は魔旗魚の身を口に運んだ。

「いいなあ、食べても食べても減らない、でっかいカマ焼き!」
 お給仕タイムを終えた祭莉の皿には、塊ではなく、ほぐした身が山と盛られている。
 カマと言うのは、魚のエラの裏にある部分の身の事だ。
 限定的な部位ゆえに、一匹の魚から取れる量は限られている。そんなカマ焼きを山盛りに食べられるなど、そうそうある事ではない。
「おいらも、ココに住もうかなあ♪」
『お。うちの島の魚気に入ったのかい?』
 にぱっと笑って祭莉が口走った言葉に、近くを通りがかった海賊が反応する。
「おいらの木元村って、内陸でさ。タマゴと牛乳はいっぱいあるケド、お魚は干物が多いんだよー」
「ん。タマコの卵は美味しい」
 祭莉の隣で、ヤシの実片手に杏もコクコク頷く。
「そう言えば、ここなんでフム・アルって言うんだろ? 魚人語?」
『いや。古い言葉らしいぜ。船長は深海人って決まってるわけじゃないしな』
 島の由来が気になっていた事を思い出した祭莉に、訊ねられた海賊はそう返す。
『何でかって由来を覚えてる人は、もう誰もいないんじゃねえかな』
「「ふむふむ。あるある」」
 海賊が続けた言葉に、祭莉と小太刀が同時に同じ反応を返して、顔を見合わせる。
「あ、祭莉んもそう思った?」
「へへへ、コダちゃんうつっちゃった♪」
 そういう意味ではない。多分、きっと。
「あの、ちょっと、いい?」
 そんな2人の向かいで、杏が手を伸ばして海賊の袖を引いた。
「椰子の実ジュースも美味しい。フルーツもたくさん。でもここ――お菓子はない?」
 オニキンメ船長の後をとてとてしながら見た限りではあるが、杏はこの島でまだお菓子の類を見ていなかった。
『菓子か。ないわけじゃないが、あまり多くはないな』
 船出用に好まれる日持ちするものならあるけれど。
「なら、わたし作ってきたのがある」
 その海賊の答えに、杏は取り出した。かつて違う世界で製法を得た、いつもの山吹色のお菓子を。
「これは燧島という場所に伝わるお菓子。どうぞ」
『ふむ。――おお、こいつは美味えじゃねえか』
「その島にも船乗りと商人がいる。交易も盛況。海賊の心意気、しっかり持ってるし、交易相手に、どう? このお菓子も入ってくる」
 山吹色のお菓子が海賊に好評なのを確かめた杏は、燧島との交易の利点を海賊に滔々と伝える。
 それは、純粋に交流が深まればと思っての事なのだが。
「杏、杏」
 杏の肩を後ろからそっと叩いて、小太刀が小声で囁く。
「どうしたの?」
「その……多分、燧島とこの島とじゃ、交易は難しいわ」
 首を傾げた杏に、小太刀は言いにくそうに告げた。
 燧島はサムライエンパイアにある。今の所、ではあるがグリードオーシャンに他の世界から落ちて来た島があるのみのなのだから。

●大人の時間
 すっかり夜も更けた頃、浜辺に焚かれた焚き火を囲んでいるのは、自然とお酒が飲める年代の者だけになっていた。
「良いお酒ですね」
『だろう? 交易のある島で、ドワーフが作った酒だ。アンタの口に合うと思ったぜ』
 オニキンメ船長が進めた蒸留酒を、シリンがこくんと飲み干す。
「ふぅ……」
 吐息を零し、シリンの視線が横に向いた。
 揺らめく炎に照らされているのは、魔旗魚の骨。さすがに食べようがなかった。
『やっぱり気になるか?』
 シリンの視線に気づいて、オニキンメ船長が口を開く。
「気になる――と言いますか。私の森では、死者は自然に還すのが習わしでした」
 シリンが猟兵になる前は、森から糧を得るハンターであった。
 森で生まれたものは森へ還す。それがシリンの故郷の弔い方だ。
『その習わしだと海に還す方が――ってところになるか?』
「いえ。この島の弔い方を否定する気はありません。仲間を弔う風習はその土地によって様々ですから」
 弔いの形が一つではないことくらい、シリンも良く判っている。
「持ってきたぞ、シリン」
 そこに、酒瓶を片手にガーネットが現れた。
 キュポッとコルクが抜ける音がして、ガーネットの傾けた瓶から薄い白金色の液体がシリンのグラスに注がれる。
「船長も良かったらどうです? モルト・カリーナという島で造られた白ワインで、魚料理によく合いますよ」
『ほう。そいつは頂こうか』
 ガーネットが瓶の口を向ければ、オニキンメの船長も空いたグラスを傾ける
「良いですね、モルト・カリーナ……」
 薄味の魚に良く合う白ワインに、シリンはあっさりと2杯目を飲み干した。

「改めて、商売の話もしたいのですが」
 空き瓶が2つになった頃、船長ののグラスに白ワインを注ぎながら、ガーネットは商人としての話を始めた。
「どうでしょう。この島に、ガーネット商会の支点を出す許可を頂きたいのですが」
『……すまんが、聞いた事がない商会だな? どんなもん扱ってんだい?』
 要件を切り出したガーネットに、オニキンメ船長の声色が変わった。
 僅かに含まれたのは警戒の響き。
「最近立ち上げたばかりですからね。お茶にコーヒー、煙草もありますよ」
 しかしガーネットは声色を変えず、迷わず返した。猟兵がこの世界に辿り着いた事自体が、まだ最近の事だ。嘘は言っていない。
『拠点にしてる島はあるのかい?』
 まだ僅かな警戒を完全に解かず、船長はガーネットに訊ねる。
(「ああ――彼が警戒していたのはそこか」)
 その一言で、ガーネットは合点がいっていた。
 海賊であれ商会であれ拠点を持つものならば、余程の勢力を持たない限りは敢えて他の島を支配しようとはする事は少ないだろう。
 島以外は海が広がるこのグリードオーシャンでは、島々の移動は船に限られる。支配する島が増えれば、拠点間の移動だけでもかなりの時間がかかるし、リスクもある。
 だが――拠点を持たない者ならばどうだ。
 何かの機会に乗じて乗っ取ると言う可能性は、ないとは言えまい。
 例えば、親切者を装って、とか。
「2人とも、グラスが空ですよ」
 無言で視線を交わすガーネットとオニキンメ船長のグラスに、顔を少し赤くしたシリンが白ワインを注ぎ、残りで手酌を始めた。
「私はコンキスタドールから人々を護るために活動しています」
 重くなったグラスを掲げ、ガーネットは隠さずに本当の目的を告げる。
『――っ!?』
「だから、そう警戒しなくても大丈夫ですよ」
 その一言で元々丸い目を大きく見開いたオニキンメの船長に、ガーネットは営業スマイルを浮かべて頷き返す。
『バレてたかい。すまねえな。一応、この島を治める立場なもんでな』
 船長はオニキンメ頭の頬を掻いているが、今更ガーネットを警戒してみせたのも、それを気づかせたのもわざとだろう。それで態度を変えるかどうか見たと言うところか。
『ま、あんたらの実力なら可能だろうさ』
「いえいえ。まだ知らない事ばかりですから。協力者となって頂きたい」
 ガーネットが支店営業と共にもう一つ求めていたものが、それだ。現地協力者。情報を得る上でも、欠かせない。
『協力って言っても、大した事は出来そうにねえが……まあ構わねえよ。支店も好きにしてくれ。港の露天商たちにも、好評だったと聞いてるからな』
 ガーネットが差し出した手を、オニキンメ船長がしっかりと握る。
 ガーネット商会の交易品が、更に充実するのは間違いなさそうだ。

 大人の話がまとまったところに、ひょこりと祭莉と杏が顔を見せた。2人とも、何か思いついた事を言いたそうな顔をしている。
「ガーネット商会のすみっこに、木元村駐在おいていい? 美味しいお米と手に負えないコンキスタドール御用達、って!」
「燧島駐在も。山吹色のお菓子御用達。わたし、やる!」
 祭莉がにぱっと笑顔で提案し、杏はぐっと拳を握って伝える。
「2人とも、静かだと思ったらそんな事考えてたのね」
 祭莉と杏の言い出した事に、その後ろで小太刀が軽く驚いていた。
 グリモア猟兵の力で持って来るにも、その転移は猟兵以外は出来ない。だが、猟兵が自分で持ち込める範囲であれば、お米だろうがお菓子だろうが持ち込めるのだ。
『ガーネット商会さんに支店の許可は出したんだ。その中の事は、ウチが関知することじゃねえよ』
 オニキンメ船長の言葉を意訳すると、好きにしろ、と言う事だった。

 縁を深める者、新たな扉を開きそうな者、新たな縁を紡ぐ者。
 猟兵達はそれぞれに過ごしたフム・アルの夜は、こうして更けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月07日


挿絵イラスト