●
バチン。薄暗い空間に甲高い音が響く。
ブゥン、ブゥン、ブゥン、と、途切れ途切れの低い響きが壁を振るわせる。
ちかちかと明滅を繰り返すランプは所々焼き切れ、並んでいるアームも半分ほどが折れたり曲がったりしてはいたが、まだその動きを止めてはいない。
いつになったらこの修理は終わるのだろうか。
それはわからないが再出撃の日までは、このドックを守り切らなくてはいけない。たとえどんな相手が来ようとも。
●
「みんな、集まってくれてありがとっ」
ブリーフィングルームに集まっている猟兵にぺこりと頭をさげる菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)だったが、その表情がどことなく冴えない。
「今回はね。なんていうか、後片づけになるのかな?」
様々な世界の一部が空から降ってきて島になっている世界。グリードオーシャン。そこでコンキスタドールの行動が見えたのだが、どうにも困った感じだった。
「場所はここなんだけど、スペースシップワールドから落ちてきた航宙艦のドックが、そのまま島みたいになっちゃったところでね、そこにたまたまメガリスがあって、そのとき改修で入港していた駆逐艦とその乗組員がそのままコンキスタドール化しちゃったんだよ」
言いながら理緒がモニターに海図を映し出す。
「彼らは島になっちゃったドックを守っているだけで、周りに侵攻しようとかそういう感じはないんだけど、自分たちの決めた防衛ラインを越えた相手には問答無用で攻撃してくるんだ」
これが防衛ライン、と理緒が島の周囲を赤いラインで囲む。
周囲の島の人も注意はしているが、運悪く流されたり、迷い込んだりしてしまった船がすでに何隻も沈められてしまっている。
「ドックが落ちてからもうだいぶ経つから、メンテナンスも満足にはできていないと思うけど、それでも航宙駆逐艦だし、船員もビームライフルとビームシールドで武装しているし、まだまだ攻撃力は高いと思う」
それにね。と、理緒が続ける。
「船体もAIもかなり老朽化が進んでしまっていて、このままだとどちらも暴走する可能性があるんだ。そうなると被害がとんでもないことになっちゃうから、いまのうちになんとかしてもらいたいんだよ。駆逐艦のAIをなんとかすれば、それに連なって、乗組員もドックも活動は停止すると思う」
残念ながらドックへの直接転送が阻害されているので、まずは船やその他移動手段があるならそれを使ってドックへ接近し、そこで防衛にあたっている乗組員を排除して突入口を確保。
内部へ突入後、ドック内にいる駆逐艦の活動を止めてもらう感じになる。
ただ、と理緒は続けた。
そこは元軍事施設。ドックの活動停止とともに自壊装置が作動する可能性が大きいという。
「脱出まで気が抜けない厳しい依頼になると思うけど、どうかよろしくお願いします」
必ず生きて帰ってきてくださいね。と言いながら、理緒がタブレットに指を滑らせ、ゲートを開いた。
すい
みなさまおはようございます。
2本目のシナリオは、海になりました。
第1章は海上からドックへの突入口を確保する集団戦。
第2章はドック内での航宙駆逐艦とのボス戦。
第3章は島からの脱出になります。
POW/SPD/WIZは参考程度でおっけーです!
2章、3章は断章後にプレイングを受け付けたいと思っています。
みなさま、よろしければお願いいたします。
●お願い
あわせプレイングの場合は【相手のお名前(愛称可)とID】グループあわせの場合は【グループ名】のご記入をお願いします。
リプレイ執筆は週末が多いため、金曜日~土曜日朝くらいにいただけますと喜びます。
第1章 集団戦
『ビームライフル『八咫烏』』
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POW : 広範囲ビームグレネードランチャーモード
単純で重い【周囲を破壊するビームグレネード弾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 高精度ディスプレイ付きスコープ&スナイパーモード
【空中に浮遊する高精度ディスプレイを覗く事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【貫通力の高いビーム弾】で攻撃する。
WIZ : ビームシールド&アサルトライフルモード
【高い連射率を誇るアサルトライフルに変形】【全身を覆うビームシールド】【通常弾・延焼弾・凍結弾の何れかの銃弾】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
イラスト:ゆりちかお
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
彩波・いちご
アイさんと
「ええ、これ以上放置するわけにもいきませんね。行きましょう、アイさん」
戦車オベイロンに同乗させてもらいます
ちょっと狭いですね…操縦するアイさんの集中乱さないようにしないと
…と思っても、海底を進む際の揺れで身体がふらついて、ついついアイさんに抱きついてしまったり
「ごめんなさい…!」
このまま抱きしめていたいけど、そういうわけにもいかないですし、戦闘に頭切り替えます
いくらオベイロンの装甲が熱くても集中攻撃受けたら大変ですし
【異界の守り】展開
尻尾が3本に増えた依代体の力で、オベイロンを守る防御結界を展開します
「守りは任せて、アイさんは攻撃に専念してくださいねっ」
全ての攻撃受け止めて見せますっ
アイ・リスパー
いちごさんと
「周囲の船の航行に支障が出ているとなると放っておくわけにはいきません!
これ以上被害が出る前に、あの島を止めなくては!」
とはいえ、まずはドックに近づかなければなりませんね。
水陸両用の『機動戦車オベイロン』に乗って海底を進み、ドックへと侵入しましょう。
……ハッチから浸水しませんよね?
上陸してドックに着いたら、守ってる兵士と戦闘です!
【チューリングの神託機械】で電脳空間を通してオベイロンのAIと接続。
「オベイロン、全武装発射です!」
ミサイル、ロケット、ビームガトリングで攻撃です。
敵の攻撃は装甲で防ぎましょう。
「そのような攻撃は効きません!」
とどめに主砲の荷電粒子砲を発射です。
フォルティス・ワーライン
【アサルトリベルタ隊】
さて、任務を果たしに行くとするか。今回は脱出までやらなきゃいけないらしいから俺の航宙駆逐艦『鬼やらい』をつれていくぞ。もう相手にはばれてるみたいだな。幸い早々壊れるような艦船じゃない。さて、機動装甲テクニカル「ベアー」を使っていく。俺は運転手を務めるとするか。リーダー(コミュニのこと)、機銃を使え!ヨウ、助手席から援護を頼む。
さぁ、船から出るぞ。準備はいいな!
なかなかスピードが出るから振り落とされるなよ?
ドックの入口まで被弾を抑えるように、運転していくとするか。いくら頑丈とはいえ、コミュニとヨウの被弾も抑えなきゃな。
メカニカルガーディアンは俺達が突入する援護をしろ!
コミュニ・セラフ
【アサルトリベルタ隊】
フォルティス、どうやらこの艦と同型艦が眠っているようですに。出所はわかったりしないのかに。まぁいいに。
なに、同じ大きさのが来ればさすがにわかるでしょうに。相手は敵対勢力として見てそうですがに。敵の航宙艦が始動するまでに叩き潰す必要がありそうですに。
さて、フォルティス。運転は任せるに。私はベアーの機銃を貸してもらうに!機銃も呪縛砥石で研いでやれば一撃一撃が私の体力となるに。まず、狙わなきゃいけないのはグレネードランチャーを準備している敵ですに。爆発させられれば横転しかねぬに。次にアサルトライフルで特攻を仕掛けてくる敵に射撃するに。多少ビームシールドがあれど威嚇にはなるに。
ヨウ・ツイナ
【アサルトリベルタ隊】
敵の武装はなかなか多くの武装を持っているでござるな・・・。
なかなか遠くから私達を狙っている敵もいるようでござるな・・・!
しかし、居場所がわかるならば私の精霊弓・雪之蝶を構えそこに向かってい駆けるでござる!相手と違って私はフォルティス殿が運転をしてくれる。しかし、私が射掛けた矢は敵に誘導し、周囲を凍らせるでござる。以下に防御に強くとも寒さにはそう勝てないでござろう!
後ろから追ってくる敵にはフリーズグレネードを足元に投げ、凍結させてやるでござるよ。これでだいぶ動きにくいはずでござる。そして私も更に矢を射かけるでござる。コミュニ殿も狙えたら狙って欲しいでござる!
緋薙・冬香
メガリスって厄介なのね
…なんかこう、遠い、遠い過去から『そんなの当たり前でしょ』って言われた気がするけど
ま、何はともあれ、お仕事いきましょうか
血統覚醒で底上げしてからの
スカイステッパーで空から強襲よ
メインウェポンはわ・た・し♪
「空への警戒が甘いんじゃないかしら?」
『魅せる脚』で急降下攻撃するわ
敵陣に飛び込めたら
ダッシュ&スライディングで攻撃を回避しながら撹乱
手近なところから蹴り倒していくわね
大技のグレネードは空に飛び上がって回避
スカイステッパーのジグザグ軌道でね
直撃しなければ全然平気よ
お返しは落下の勢いを乗せたかかと落としで
「冬の香りがもたらすのは、終戦の兆しよ?」
ゆっくり、眠るといいわ
●
ドック島沖、上空2000m。
「そろそろ相手の防空圏内に入るに。みんな準備はどうだに?」
航宙駆逐艦『鬼やらい』のブリッジで猟兵から提供された地図を広げ、コミュニ・セラフ(奪取の明星・f12530)がメンバーを見回す。
「ああ。『ベアー』の準備はばっちりできてるぜ。『鬼やらい』お前もいけるな?」
フォルティス・ワーライン(宇宙を駆けるセンチュリオン・f18278)がそれに答え、AIに声をかけると、『鬼やらい』のホロディスプレイに“Ready”の文字が浮かんだ。
隣を見れば、ヨウ・ツイナ(絶対守護の女武者・f18276)も静かに頷いている。
「どうやらこの艦と同型艦が眠っているようですに。出所や弱点とかはわかったりしないのかに?」
コミュニがフォルティスとヨウに問うも、同型艦やバージョン違いも多い駆逐艦だけに艦番でもわからなければなんとも……という感じだった。
「行ってみればわかるかに」
さすがに同型艦の接近は感知するだろうし、倒さなければならない相手なのだから。
できれば敵の航宙艦が始動するまでに叩き潰せれば……と、思案していると通信モニターが開いた。
『こちらの準備も完了です、お待たせしました!』
アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)の機動戦車『オベイロン』から連絡が入る。
『気密作業にちょっと手間取ってしまいましたが、もう大丈夫です』
サブシートから見えるの彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)は、ふう、と息をついていた。つい先ほどまで作業していた、という感じだが2人の表情からして不安はなさそうだ。
『それでは』
『アイ・リスパー』
『彩波いちご』
『『いきます』』
綺麗にユニゾンした2人の声にあわせて、『オベイロン』が格納庫のハッチから発艦し、災魔の防衛圏ギリギリへと降下していく。
『こっちもいつでもいいわよ』
降下用デッキから返答した、緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)は、すでにハッチを開いているのかマントが風にはためいている。だがモニターに見える範囲では降下用具などは見えないのだが……。
「そのままいくのかに?」
いっしょに戦う仲間を信じないわけではないが、この高さからとなるとさすがに不安を感じコミュニが聞き返すと、
『これがあるからね』
と、冬香はレガリアスシューズを見せながら、形のいい足首をぽんと叩いた。
「まだ敵がみえていないので、もうちょっとまって欲しいでござる」
レーダーを見ていたヨウが、冬香へと指示を出す。
「ある程度引き付けてから出撃、だったよね」
冬香は頭の中で今一度作戦を確かめ、レガリアスシューズのつま先で、デッキをとんとん叩き感触を確かめた。
作戦準備の完了を全員が確認したその瞬間、『鬼やらい』のレーダーが敵を捉えアラートを発する。
「きたな。シールド展開、『鬼やらい』最大戦速で突撃戦闘モード。」
フォルティスがコンソールを操作しながら、AIに指示を送るとブリッジが戦闘照明に切り替わる。
「敵の接近を確認したでござる。作戦開始。発艦タイミング、お任せするでござるよ」
『了解』
ヨウの作戦開始の連絡に、冬香が短く了承の意を返す。
「それではわたしたちも『ベアー』で出るに。」
コミュニの言葉に頷いて、フォルティスとヨウも格納庫へ続くエレベーターへと乗り込む。無人になった『鬼やらい』のブリッジでは猟兵達を送り出すようにホロディスプレイが明滅していた。
●
格納庫に弾けるような蒸発音と対人レーザーの鈍い連射音が響く。どうやら本格的に戦闘が始まったようだ。
敵の数は多いが、ビームライフルといえど所詮は個人装備。そう簡単に駆逐艦のシールドを破れるものではない。
しかし3人が機動装甲車『ベアー』へと乗り込み、手早く発進準備を整えていたそのとき、ずどん、という重い衝撃が艦体を揺らした。
「敵の武装もなかなかでござるな……」
連射ができない分、威力を増して放つビームグレネード。1発2発ならどうということはないが、連続で喰らえばダメージにはなりかねない。
「のんびりはしていられないな。よし出るぞ! リーダー、機銃を使え! ヨウ、助手席から援護を頼む」
発艦準備を整えたフォルティスがメンバーへ指示を飛ばす。
「了解したに。フォルティス。運転は任せるに!」
そういうとコミュニがベアーの銃座へとつきロックを外す。ヨウもナビシートに乗り込んで『雪之蝶』の準備を整えた。
3人の視線が一瞬絡み合う。瞳で準備の完了を確かめ合うと、フォルティスがハッチから『ベアー』を降下させた。
『鬼やらい』からの援護射撃を受けながら、対空砲火のようなビームとグレネードをくぐり抜け、『ベアー』がバーニアを噴かして着地する。軟着陸とまでは言いがたかったが、とりあえず降下には成功したようだった。
そこへ着地を狙ったグレネードが至近で炸裂した。片輪が浮くほどの爆風に振り回さながら立て直せたのは、フォルティスの技術と経験あってこそだっただろう。
「まずはあいつからですに!」
やはり最も危険なのはグレネードランチャーを準備している敵だと確認し、コミュニが機銃の引き金を引くと、呪縛砥石で研がれた弾丸が狙い違わずグレネード八咫烏へと飛んでいく。
咄嗟にビームシールドを展開し弾丸そのものは防いでも、音速の衝撃までは逃がすことはできない。吹き飛ばされた八咫烏に、こんどこそ弾丸が突き刺さった。
ゲートへの最短距離を駆け抜けていく『ベアー』のフロントでビームが弾ける。厚い装甲に阻まれはしたものの正確にフォルティスを狙った一撃だった。
「なかなか遠くから私達を狙っている敵もいるようでござるな……!」
黒い点のようにしかみえない距離からの狙撃。敵にもなかなかの腕を持った射手がいるようだ。
だが遠距離戦ならば負けはしない。ヨウはフォルティスを見て頷き、ナビシートから立ち上がると『雪之蝶』を引き絞った。精霊の祝福を受けた弓に外れはない。
放たれた矢が糸を引くように吸いこまれると、動きを止めた黒点が白く染まり砕け散って欠片が舞った。
「ビームは大気中では威力が減衰するものでござる。射程も威力も本来のものではないでござるよ!」
ヨウが告げると、喚び出された守護明神が大きく頷き大いなる加護が周囲を包み込みライフルのエネルギーを吸い上げた。
「フォルティス殿、いまでござる!」
「思いっきり飛ばすから振り落とされるなよ?」
ヨウの言葉に、フォルティスがアクセルをめいっぱいまで踏み込むと『ベアー』がタイヤを鳴らして急加速し、攻撃手段を奪われた八咫烏の間を駆け抜ける。再チャージまでのわずかな時間ではあるが、今はその時間こそが貴重。
ヨウの狙撃が道を示し、コミュニが機銃の掃射が道を開く。八咫烏たちを撃ち倒しながら『ベアー』はゲートへと全速力で突き抜けていった。
●
(それにしてもメガリスって厄介なのね)
あらためて冬香はメガリスのめんどくささを感じていた。いつからあるものなのかはわからないが、昔からこんなにめんどくさかったのだろうか。いやきっとめんどくさかったのだろう。
メガリスを知っているわけではないが、冬香はそう確信していた。
シールドが数発のビームを弾いた音で、冬香の意識が現実へと引き戻された。開いたハッチから見れば、外には敵に姿が確認できる。
「そろそろいいかな?」
眼鏡を外した瞳が、すぅ、と深紅に染まる。内なる夜王の力に身を任せ、冬香がデッキから身を躍らせた。
自由落下していく冬香が、その勢いのまま一つの弾丸となって八咫烏を撃ち抜く。ライフルを構えていた八咫烏は、なにが起こったのか理解できないうちに、神速の蹴りに意識を刈り取られた。
「空への警戒が甘いんじゃないかしら?」
悲鳴をあげない相手にちょっと残念そうに呟いた冬香の横を、ライフルから放たれたビームが抜けていく。大気を焦がす熱をほのかに感じ、冬香は薄く微笑むと滑るようなダッシュで駆け込んでいった。
放たれたビームライフルの斉射をスライディングで躱し、敵陣の中へと突っ込むと、そのまま手近な相手の脛を蹴り折り、勢いのまま周囲をなぎ払うような回し蹴りを叩き込む。
文字通り蹴散らされた仲間を見て、一瞬遠巻きに囲んだ八咫烏たちに、
「メインウェポンはわ・た・し♪」
なんてね、と浮かべた微笑みはまさに死の女神のそれだった。
●
時間が少しだけ巻き戻る
着水した『オベイロン』はそのまま深海モードへと移行し、海底を進んでいた。
心配していたハッチからの浸水もいまのところ問題はないようだ。
「し、周囲の船の航行に支障が出ているとなると放っておくわけにはいきません!」
『オベイロン』の操縦桿を握るアイの手に力が籠もる。
「ええ、これ以上放置するわけにもいきませんね」
その言葉にアイに抱きついたいちごがしっかりと頷く。
サブシートもあるにはあるのだがハーネスが弱く、決して平坦ではない海底を進んでいると、どうしても身体が跳ねてしまう。
そこでいちごはシートを真後ろへずらし、タンデムのような格好でアイに抱きつくことにしたのだ。この方がバランスが安定する。
「ここ、これ以上被害が出る前に、あの島を止めなくてはっ!」
「行きましょう、アイさん」
言った途端に車体が大きく跳ね、いちごがまたぎゅっとアイに抱きついた。
「ごめんなさい……!」
いいながらも、なんとなく離れがたいのかいちごの抱き締める手は緩まない。
操縦桿を握るアイの手にさらに力が籠もる。アイの心が安定しているかどうかは、わからない。
「前方にドック島の基部を確認」
アイの言葉に、2人のスイッチが切り替わる。目標が見えればここからは仕事の時間。いろいろあってもそこは歴戦の猟兵、切り替えは早い。
「上陸と同時に突撃。メインゲートを確保します!」
アイが作戦を確認する。
小さな違和感。正面のモニターから目を離していないので表情はよく見えないが、いつもとほんの少し違うトーンにいちごは気づく。
「わかりました。守りは任せて、アイさんは攻撃に専念してくださいねっ」
アイの緊張を感じたのか、いちごがことさらに柔らかい声で返すと、アイは自分の両ほおをぺちんと叩いた。
『オベイロン』に乗るときは一人が多いが、今日は一人ではない。安心して背中を任せられる人がいる。アイはいつもよりすこしだけ温かい背中を心強く思いながら『オベイロン』を浮上させた。
ドック島の至近距離にいきなり姿を見せた『オベイロン』に驚いた八咫烏達ではあったが、その対応は早かった。即座に発砲が開始される。警告や威嚇などはない。すべてが破壊のための攻撃だ。
(いくら『オベイロン』の装甲が熱くても集中攻撃を受けるのは危険ですね)
「いあ…いあ…、無限無窮の最奥にて見る夢の力を我らが守りに」
3本目の尻尾を発現させたいちごがの結界が『オベイロン』を包み込み、破壊の力を吸収する。
アイを抱き締めていたときのいちごはもうそこにはいない。敵とアイをしっかりと見据え、自らを律する凜とした表情は歴戦の猟兵にふさわしい。
そんないちごをちらりと見たアイも表情を引き締め、チューリングの神託機械を起動させると、意識を『オベイロン』のAIと直接接続させる。
「アイさん、ゲート前の確保を!」
「『オベイロン』、全武装発射です!」
アイが口元をつたう血の糸を拭いながら八咫烏を視る。あらためて狙う必要はない。リンクした視界はそのまま射界であり、見えている敵は捉えた的だ。
ミサイルがロケットがビームガトリングが、内蔵されている全武装が八咫烏へと降り注ぎ、八咫烏たちを撃ち倒していく。
圧倒的な火力で奇襲をかけられ、攻撃はすべての攻撃を吸収する結界に阻まれ、八咫烏たちはなすすべもない。
雪崩のような勢いで突撃をかけた『オベイロン』は、メインゲート前の八咫烏を蹴散らすと、ゲート前を塞ぐように車体をつけて信号弾を打ち上げた。
●
(敵の攻撃が弱まったに?)
数刻前に比べ、あきらかに飛んでくるビームの数が減っている。敵が乱れている。
「合図でござる!」
ゲート前に上がった煙を確認し、ヨウが叫ぶ。いちばんにゲートを確保できなかったのは少し悔しいが、
「ここだな。メカニカルガーディアン、俺達が突入する援護をしろ!」
機と見たフォルティスが切り札を切る。
喚びだされた陸戦艇から出撃した245体のガーディアンがサブマシンガンを斉射しながら突撃をかける。予備兵力というにはいささか多すぎる気もするが、戦いにおいて数は力だ。
見る間に駆逐されていく八咫烏たちの間に、ゲートまでの道が開いた。
●
大きく飛んだ冬香の目に、ゲート前に煙が上がったのが見えた。くすり、と笑みがこぼれる。
それを一瞬の隙と見た八咫烏が、宙に浮いた冬香にグレネードをロックオン――したはずだったが、次の瞬間、その姿が消えた。
ありえないはずの空中での真横への移動。そしてもっとありえないはずの上空への移動。虚空を蹴って舞い上がる冬香に魅せられた八咫烏の脳天に、無慈悲な踵が叩き込まれた。
「冬の香りがもたらすのは、終戦の兆しよ?」
あいかわらず悲鳴も上げない八咫烏を見下ろし、冬香はゲートへ向かって走り出した。
●
「冬香さんこっちです!」
メインゲート前で盾になっている『オベイロン』の影に冬香が滑り込むと、冬香を追ってきた八咫烏をアイがガトリングの斉射で一掃する。
「お待たせ♪」
にこりと笑った笑顔は、いちごとアイも知る柔らかいものだ。
そこへ数分遅れて『ベアー』も飛び込んでくる。
「悪い、遅くなったな!」
「八咫烏はあらかたかたづけたでござる」
『ベアー』はノーダメージとはいかなかったが、3人に怪我などはないようだ。
「あとはここを開ければ突入できるに」
メインゲートは金属製の分厚い扉で閉じられ猟兵の突入を阻んでいた。
「ここは任せてくださいっ!」
チューリングの神託機械での計算結果によれば『オベイロン』の主砲である荷電粒子砲なら、扉を破れるはずなのだ。
ただ、とアイが続ける、主砲のチャージ中は攻撃力が低下する。その間だけなんとか持ちこたえられれば、ということだった。
だがこれまで鉄壁を誇っていたいちごの防御結界もさすがにそろそろ限界だ。
八咫烏の数は減っているが攻撃が止んでいるわけではなく、むしろ死兵になり攻撃を仕掛けてきている。
全員が目をあわせ、こくりと頷きあう。いちごがアイの目をしっかりと見据えた。
「アイさん、頼みます」
「『オベイロン』主砲充填!」
弾幕の薄くなったことを隙と見た八咫烏たちがビームライフルを連射しながら突撃をかけてくる。
「近づけさせないでござるよ!」
仕掛けようとしていた八咫烏の足下へ、ヨウがフリーズグレネードを投げ込んだ。地面ごと凍らされ、動きを封じられた災魔をコミュニの機銃とフォルティスのブラスターが撃ち倒していく。それでも抜けてきた相手はいちごと冬香が蹴り倒し『オベイロン』までは近づけさせない。
「主砲発射まで、カウントダウン。3、2、1……」
光が爆発した。
猟兵も八咫烏たちも視界を奪われ、一瞬動きが止まる。
光が収まり回復した視界に見えたのは、荷電粒子砲で焼かれ、融け落ちた扉。
猟兵達は『ベアー』と『オベイロン』を橋頭堡に、格納庫へと突入していくのだった。
大成功
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第2章 ボス戦
『航宙駆逐艦『レコンキスタ』』
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POW : 亜光速加速砲
自身の装備武器に【亜光速にまで物体を加速させる装置】を搭載し、破壊力を増加する。
SPD : 大気圏突入シールド展開
全身を【多重装甲のシールドで包む大気圏突入モード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ : 『アーマー・レコンキスタ』の出撃
【敵の動きを強制的に止めるビームガン】で武装した【超装甲のロボットに登場する特殊隊員】の幽霊をレベル×5体乗せた【吶喊用ドリルがついた強襲揚陸艇】を召喚する。
イラスト:ゆりちかお
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「クリスタル・ファイアヘッズ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
“intruder in the hangar”
無人のブリッジにアラートメッセージが発せられ、スリープ状態だったシステムがアクティブに切り替わっていく。
修理中で動けなくても戦闘能力がなくなったわけではない。戦闘艦である以上、敵を倒すのが任務。そしてそのための拠点を守ることもまた、戦闘艦としての任務のひとつだ。
まだ船体中央部のハッチを閉めることができず、艦内の保安システムも停止しているが、外部火器の使用および防衛部隊は出撃可能。
“system armed”
艦に取りつかれる前に敵の排除は十分に可能。
メガリスの力を得たAIの計算に従って戦闘態勢へと移行し、主砲に火が入り、防衛隊を出撃させる。
問題はない。敵を艦内に侵入させなければいい。それだけのこと。今は侵入者を排除し出撃の日を待とうではないか。
強襲揚陸型駆逐艦レコンキスタは態勢を整え、ドック内で猟兵達を迎え撃つ。
フォルティス・ワーライン
【アサルトリベルタ隊】
やはり、敵の兵士もガチガチに固めてきてるな。
こちらもメカニカルガーディアンで対抗するとするか。
だが、相手のビーム弾は火傷や機械をショートさせることによって動きを止めるビームガンのはずだ。どこまでこちらの軍勢が戦えるかだが。
まぁいい、俺は手袋式粒子フィールド展開して一応身を護るとする。それでも万全ではないが、味方のメカニカルガーディアンが敵の注目を集めている間に俺の手持ちの武器で攻撃する。近未来肩撃ち式ガトリングガン(右肩仕様)と携行型粒子ブラスターでアーマー・レコンキスタを出来る限り数多く撃破することに専念するとしよう。
(一旦フォルティスだけでアクション投稿します。)
彩波・いちご
アイさんと
引き続きオベイロンの中でアイさんを背後から抱きしめるようにタンデムしています
「了解です。私なら大丈夫ですから、やってください!」
オベイロンを変形させると、ますます密着して抱きしめることになりますけど…アイさんの温もりを味わってる場合じゃありません
火力はアイさんに任せて、私は引き続きオベイロンを守り続けます
アイさんが主砲の準備をしている間、近づいてくる強襲揚陸艇を止めるのは私の役目
オベイロンの外、敵の足元に【異界の抱擁】の触手を召喚
揚陸艇もロボットも全て絡み取り近づけないよう封じ込めます
「私がここにいる限り、アイさんの邪魔はさせません」
最後はアイさんに任せます
「やってください!」
アイ・リスパー
いちごさんと
「こんな世界で航宙駆逐艦と戦うことになるとは思いませんでした。
……いちごさん、オベイロンを変形させます!
ちょっと狭くなりますけど我慢してくださいね!」
【ビルドロボット】でオベイロンをパワードスーツに変形させます。
この形態だとコックピットが狭くなって、いちごさんと密着して抱きしめられるような体勢になってしまい身体が熱くなりますが……
「ちょっと揺れますよ!」
大声を出して、心臓の鼓動を誤魔化します。
「オベイロン、マスドライバー展開!」
パワードスーツ肩部の【超伝導リニアカタパルト】を展開し、質量弾体を発射!
「その主砲とどっちが上か勝負ですっ!」
加速砲は大気圏内では全力がだせないはずですっ!
緋薙・冬香
さって、流石に駆逐艦の対空防御を突破できる気はしないし
だったらここから貫かせてもらうわ!
駆逐艦の装甲だろうと超装甲だろうと!
『美女の花言葉』の貫通属性ニードル弾なら!
揚陸艇がこちらに届く前に、仕留める
「鉄の雪で全て貫いてあげるわ!」
弾幕展開、当たればタダじゃ済まないわよ?
反撃のビームガンは見切って回避か
シュピーゲルを丸盾サイズで展開して弾いていくわ
掌の開閉でオンオフ切替とか我ながら天才♪
さすがにドリルの吶喊は躱さないとヤバそうね
揚陸艇の軌道を見切ってジャンプで回避
空中から駆逐艦本体を狙うわ
「暴走する前に、ここで終わらせてあげるわ!」
手加減なしの『美女花言葉』食らいなさい!
※アドリブ連携OK
セナ・レッドスピア
【恋華荘】
遅くなっちゃってごめんなさい!
今からになっちゃいますけど
みんなの事、しっかり助けていきますっ!
と、推盾形態に変えた血槍を構え、みんなを庇うように現場に急行!
そのまま敵の攻撃から守り、そこから反撃へ!
アーマー・レコンキスタが現れたら
特殊隊員を猟銃形態に変えた血槍で牽制しつつ
すかさず槍形態に変えて、刻印での攻撃も交えつつ追撃!
そのまま揚陸艇へも攻撃を加え、部隊を撃破します!
そこで【吸血】して得られた血で
錬血解放「融血浸獣形態」を発動!
強化した武器で駆逐艦へ攻撃を!
加速装置を優先的に破壊しつつ
本体も攻撃していきます!
また、強化後も引き続き
仲間への攻撃はできる限り推進盾形態で守っていきます!
●
「高エネルギー感知!」
「散れっ!」
『オベイロン』 から発せられた警告に、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)が声をあげると、フォルティス・ワーライン(宇宙を駆けるセンチュリオン・f18278)は考えるよりも早くそう叫び、飛んでいた。
ほかの猟兵達も半瞬遅れてそれに続き、そのさらに半瞬、亜高速にまで加速されたエネルギー弾が、一瞬前まで猟兵たちがいた場所を抉りとった。
予想はしていたが実際に目の当たりにすると、猟兵といえど鳥肌の立つ威力だ。
●
通路を抜けてドックに辿りついた猟兵たちを出迎えたのは、レコンキスタの主砲だった。
散開してそれを躱した猟兵たちの前に装備を固めた兵士たちが防衛戦を張り、強襲揚陸艇が姿を見せる。
「やはり、敵もガチガチに固めてきてるな」
折れたクレーンの影に身を隠したフォルティスが言うと、
「ま、来るのが解ってるんだから、当たり前ではあるわよね」
と、隣で同じく身を隠している緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)が微笑みとも苦笑ともとれる笑みを浮かべる。
「とりあえず数を減らすところからかしら?」
隙間を抜けてくるビームを赤く輝く掌で受け止めながら機をうかがっていると、
「数だってそう負けたものじゃないぜ」
フォルティスがメカニカル・ガーディアンを発動し、喚び出した部隊に隊列を組ませる。
「仕事だ。今回も頼むぞお前たち!」
相手の防衛線に沿うように陣取ったガーディアンたちが、しっかりと兵士たちを抑え込む。
「なら、潰すのはアイツね」
冬香の瞳が見つめた先では大型の揚陸艇が、恐竜の角ようなドリルを回転させ突撃の準備に入っていた。
●
「こんな世界で航宙駆逐艦と戦うことになるとは思いませんでした……」
『オベイロン』のコックピットでアイが呟く。スペースシップワールドで生まれたアイに航宙艦は見慣れたものだ。修理・整備中とはいえ、その攻撃力の高さは熟知している。しかもメガリスの力を得ているとなれば、その力は予想がつかない。
航宙艦に対抗するにはこれしかない、と、 アイが『オベイロン』を人型機動モードに変形させる。
「いちごさん、オベイロンを変形させます! ちょっと狭くなりますけど我慢してくださいね!」
「了解です。私なら大丈夫ですから、やってください!」
彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)がアイを抱きしめ、ぎゅっと密着する。トランスフォームで狭くなるコックピットの壁に押されてのこととわかっていても、お互いの体温を強く意識し、跳ね上がった鼓動がアイの動きを一瞬止めた。
そこへ揚陸艇と兵士たちの攻撃が殺到する。
「ちょっと揺れますよ!」
アイが操縦桿とペダルを少し強めに操作しながら、ビームを避ける。ことさら大きな声を出したのは、衝撃への注意喚起なのか、気合いの再注入なのか、それともいちごに心臓の鼓動を悟られないためなのか。最後ならば成功したとは言いがたかった。
だけどいちごは、それには気づかぬふりをして次元の裂け目から触手を喚び出し『オベイロン』を囲もうとしていた兵士たちの足元を薙ぎ払い、吹き飛ばしていく。
●
冬香の目に、荒っぽく機動する『オベイロン』が映った。
「なんだか一瞬、動きが止まったわね」
あの2人なにしてるのかしら? という疑問が頭をよぎるがそこは考えても仕方ない。今は目の前、駆逐艦の前に恐竜退治、と意識を集中する。
触手の発現を感知し、標的が冬香たちへと変更されたようだ。
ドリルを唸らせ揚陸艇が冬香とフォルティスの隠れるクレーンへと方向を変え突撃をかけてきていた。メカニカル・ガーディアンを蹴散らしながら迫り来る姿は、まさに恐竜の突進を思わせる。
フォルティスが横へ、冬香は上へと飛んで、獰猛な衝角の一撃から逃れた……かにみえた。だが直後、クレーンをへし折ったドリルが角度を変え、上空にいる冬香を狙って撃ち出された。
「え?」
さすがの冬香も予想外だったのか、反応が一瞬遅れ空を蹴ったが間に合わない。揚陸艇から射出されたドリルが冬香を貫こうとしたそのとき、紅銀の風が吹き抜ける。
「させませんっ!」
ランスチャージ、いやシールドチャージとでも言おうか。セナ・レッドスピア(blood to blood・f03195)の大盾での突撃がドリルを弾き飛ばた。
そのまま『狩罰の血槍』を猟銃形態へと変形させ、冬香に迫ろうとしていた兵士を撃ち抜いていく。
「遅くなっちゃってごめんなさい。 調整終わりましたっ!」
セナが運んできた銀色に光る巨大なニードルガトリングガン『ラヴィーネ』 冬香の「切り札」 セナはこれの調整と輸送で到着が遅れたのだが、それが幸いしたようだ。
セナは冬香がこちらに走ってくるのを確認すると、『狩罰の血槍』を槍へと戻し『ラヴィーネ』へ攻撃を加えようとする敵を今度こそ全力のランスチャージで刺し貫く。
セナの援護を受けた冬香が『ラヴィーネ』の起動スイッチを入れ、構える。
「鉄の雪で全て貫いてあげるわ!」
どんなに装甲が厚かろうとすべてを貫く針の前では意味をなさない。狙いを定め引き金を引くと、鈍い駆動音が響きだし、その音を感じたセナが素早く横へ飛ぶ。
銃身が高速で回りだすと、降り注ぐ蒼炎が揚陸艦を中心とした一帯を飲み込み、雪崩のような勢いをもって通り過ぎたあとには、細かな塵が舞っているだけだった。
「わたしのとっておき、どうだったかしら?」
●
揚陸艇が塵と消え、戦線は一気に動いた。
冬香の護衛に回っていたセナが頬についた血を拭い、口に含んで駆け出す。
身体が熱い。どくん、と心臓が大きく跳ね、セナの中を力が駆け巡る。
溢れる力の流れに身を任せ、セナが走り、残っている兵士を貫くと、槍もまたそれに呼応し浸獣の封印が解放される。
それを見たフォルティスも右手に手袋式粒子フィールドを展開して前へ出る。
いままでは仲間たちの援護のため、ガーディアンの指揮を執り兵士たちを抑えてきたが、相手の要ともいうべき突撃揚陸艇が落ちたことで、戦局は猟兵側に傾いている。
数で勝りだしたガーディアンたちに退路を断たせ、自分は右肩のガトリングガンと左手にブラスターを構えて突撃をかけた。
前を走るセナの死角に回り込もうとする敵を見極め、ガトリングとブラスターがそれぞれに敵を撃ち倒していく。
冬香の『ラヴィーネ』が消し飛ばして作ったスペースにセナが突撃し、封印を解かれた槍で周囲を蹴散らして、散った兵士をフォルティスガトリングガンの銃撃が撃ち倒していく。
周囲はガーディアンに囲まれ、逃げようのない連携にさらされて、兵士たちはたちまちその数を減らしていく。
●
ドック内の兵士たちの抵抗はほぼ制した。しかし、それでもまだ戦いは終わっていない。
レコンキスタはまだ戦える。主砲もシールドも健在だ。
「みんな避けて! 暴走する前に、ここで終わらせてあげるわ!」
機動防衛戦力を失ったレコンキスタに冬香のニードルガトリングが撃ち込まれる。しかしすべてを塵へと変えるはずの蒼炎はシールドに弾かれ船体に届くことはなかった。
「それならっ!」
「これでどうだ!」
セナの槍とフォルティスのガトリングガンが、狙い違わず同時に艦首に叩き込まれる。が、それすらも駆逐艦のシールドははね返してしまう。
さすがの猟兵たちもその光景にあぜんとした。
「おいおい、マジかよ……」
航宙駆逐艦とメガリスの組み合わせの力に、フォルティスの頬をひとすじの汗が伝う。この分では全員で一斉に攻撃をしたとしても、シールドを突破できるかどうかというところだろう。
「方法がないわけではありません……が……」
チューリングの神託機械での予測結果なのだろうが、アイにしては歯切れが悪い。
「主砲を撃たせるんです。そのときは必ず主砲正面のシールドは解除されます」
そこに攻撃を撃ち込めば、ということだった。
ただしそれは亜光速加速砲の正面に身をさらすということだ。さらにこちらの攻撃でレコンキスタのエネルギー弾を弾き飛ばし、砲口にこちらの攻撃を叩き込むということだ。
賭けに近いうえに、失敗すればいくら猟兵といえどただではすまない。
「アイさん、やってください!」
沈黙を破ったのは、いちごの言葉だった。アイが振り向くと信頼した笑顔がそこにある。
「それしかないわね」
「頼んだぜ」
「お願いしますっ!」
3人の返事を聞いてアイが大きく頷く。
「オベイロン、マスドライバー展開!」
アイがマックスウェルの悪魔を起動させると、『オベイロン』肩部の超伝導リニアカタパルトが展開され、質量弾体が装填されて、砲身がもやをあげながら極低温まで冷却されていく。
「サポートはまかせろ、お前たち、最後の仕事だ!」
フォルティスがガトリングを斉射し、ガーディアンとともに残っている兵士たちを蹴散らしていく。
「こっちもいいわよ」
冬香も『ラヴィーネ』を再起動させると射撃準備を整え、トリガータイミングをアイへと渡す。
「私たちがここにいる限り、アイさんの邪魔はさせません」
いちごの触手が『オベイロン』のコックピットを包むように巻きつく。
(出力ではこちらの負けですが、加速砲は大気圏内では全力がだせないはず……)
「冬香さんの『ラヴィーネ』とわたしの『リニアレールガン』……そちらの主砲とどっちが上か勝負ですっ!」
アイが『オベイロン』でレコンキスタの正面へたつ。
数瞬の沈黙の後、主砲のエネルギーを充填する甲高い音がドックに響く。
これは決闘と同じだ。ここまで正面から来られては策を弄する隙もない。お互い全力での撃ち合いしかないのだ。
シールド解除から砲撃まで、タイミングはコンマの単位だっただろう。
『ラヴィーネ』のニードルがレコンキスタのエネルギー弾の威力を削ぎ、刹那というにも躊躇われる瞬間遅れて撃たれた『リニアレールガン』の質量弾がエネルギーを食い破り、駆逐艦主砲の発射口を貫いて、艦首を爆砕させた。
「セナさん、フォルティスさんお願いします!」
オーバーヒートにぐったりしたアイを抱きかかえていちごが叫んだ。
フォルティスのビームキャノンが艦首の傷を広げ、セナのランスチャージがとどめとばかりに艦首を抉り折り、2人はその勢いのまま開放されたままのハッチへと飛び込んだ。
真っ赤な非常照明と艦内に響くアラートが、強襲駆逐艦レコンキスタの大破を示していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 冒険
『宇宙船島に残ったトラップ群を突破せよ!』
|
POW : 力づくでトラップ群を突破する!
SPD : スピードでトラップ群を突破する!
WIZ : 知恵を持ってトラップ群を突破する!
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
“Serious damage to the hull”
レコンキスタのブリッジへと突入した猟兵たちが見たのは、真っ赤に染まったホロディスプレイだった。
非常照明に包まれたレコンキスタのブリッジにアラートメッセージが溢れている。
“Start the final program”
修復不能なダメージを負ったと判断したレコンキスタのAIは、戦闘艦として最後の命令を起動させる。
拠点として戦闘艦として最後の任務。それは情報を残さず、できるならば敵を道連れにすることだ。
そのためにはすべてを消し去ってしまうのが最良の手段である。
“Erase sequence start”
けたたましいサイレンがブリッジに鳴り響いた。
ドック内のパーツがパージされていく。各所で小さな爆発が起こり、それは次第に大きな爆発へと連鎖し、高温のガスが猟兵たちの視界を遮る。
崩れだした床からは海水が流れ込み、すべてを海へと没せんと迫ってきていた。
“600 seconds remaining. 599 598 597...”
ドック崩壊まで600秒。残された時間は多くはない。
崩れる壁を、堕ちてくる天井をを、噴き出すガスと海水を、そしていまだ生きているかもしれない防衛システムをくぐり抜け、猟兵たちはゲートを目指す。
ヨウ・ツイナ
【アサルトリベルタ隊】
合流遅くなり申し訳ないでござる。
退路の確保の為、敵兵の駆除は手近なところから行ったでござる。とはいえ、まだまだいるかもしれぬでござるが・・・。
フォルティス殿、さっさとここから退避せねばならぬでござるよ。
核融合炉で動いている航宙駆逐艦とドッグの自爆シーケンスが始まっているでござる。しかし、異常なほどのダメージを受けているようでござるな。これは早まるやも。万が一爆発したとなればこの辺は1000万度以上の温度になるでござるよ。そうなれば脱出は敵わぬでござるな。
精霊弓・雪之蝶やフリーズグレネードで崩れそうな箇所に対して縫い留めるでござる。フォルティス殿、早く駆け抜けられよ!
コミュニ・セラフ
【アサルトリベルタ隊】
どうやって帰れるか考えこんでたらもう母艦が壊されてましたに。それなら
急いで逃げるに!ヨウ!フォルティスのベアーに乗るに。私も銃座に乗るに。急いで駆け抜けて、鬼やらいの格納庫に退避してさっさと出すに!
銃座を使って落ちてくる破片や残存してる敵兵に対してひたすら撃ちまくって退路を作るに!万が一車が横転したり、壁にはばまれた場合は力のオーラと怒りのエネルギーで無理やり起こし、どかし。それでもままならないなら
グラウンドクラッシャーを撃ち込んで道を作ってやるに!
フォルティス、私達が乗り込んだらすぐにブースターに点火するに。
急いで離れなければキノコ雲の餌食になるに!
フォルティス・ワーライン
【アサルトリベルタ隊】
少しやり過ぎたかもしれんな。急いで脱出するぞ!ベアーは俺が運転する!乗れ!そして捕まれ!スピードは落とせん!
自爆シーケンスは刻々と迫ってるはずだ。あとどれくらいだ。何分で自爆する?ベアー、鬼やらいのコンピュータシステムと連結して帰路のルートと自爆シーケンスを割り出せ!効率よく逃げる必要があるな。残ってる敵兵がいるなら弾き倒してでも前に進むぞ。
鬼やらいの近くまできたら一気にエンジンをふかしてそのまま格納庫に突っ込むぜ。さぁ、出すぞ。航宙駆逐艦用ロケットブースターを吹かせ、そのまま空中に脱出する!
他に生き残った者はいるか?
彩波・いちご
【恋華荘】
引き続きアイさんのオベイロンに同乗中
皆を先に脱出させ、コンピュータにアクセスして皆の援護をするというアイさんに最後まで付き添います
「私がアイさんを守ります。だから作業に集中してください」
狭い中、アイさんに抱きつくようにして体を支えながら
【異界の守り】の防御結界を展開、オベイロンに迫る危機から守り続けます
崩れる瓦礫を、近付く爆発を、全て結界で受け止め続け
…結界張りで消耗してるので、アイさんに寄り掛かるくらいは勘弁してくださいね…変なところ触ったりはしないので…(フラグ?
オベイロンの砲撃で脱出口が空いたら、結界を最大展開して爆発から私たちを守りつつ脱出です
最悪アイさんだけでも…!(ぎゅっ
アイ・リスパー
【恋華荘】
「皆さん、ここは先に退避してください!
私はブリッジのコンピュータをハッキングして、少しでも自爆を遅らせるようにします!」
【チューリングの神託機械】で電脳空間の万能コンピュータにログイン。
艦のAIにハッキングをしかけ、仲間が脱出する援護をします。
「私のことなら心配しないでください。
オベイロンで後から強行脱出しますから!」
防衛システムを妨害したり、自爆を遅らせる他にも、艦のAIから拠点やメガリスの情報を得られないか探りましょう。
……くっ、これが限界ですね!
「オベイロン、急速発進!」
荷電粒子砲で壁を撃ち抜きながら、一直線に外へと向かいます!
爆発に巻き込まれても、オベイロンの装甲なら……!
セナ・レッドスピア
【恋華荘】
自爆装置が作動しました!
急いで脱出しないと…誰1人欠かすことなく…!
道を切り開く為、血槍を推盾形態に変え
爆発や高熱ガスや崩れる壁等からみんなや自分の身を守りながら進みます!
海水が浸水してる所は推盾形態のジェット噴射【ダッシュ】で
ちょっと強引に突破!
また、その時に武器を持ってない手で仲間の手を繋いだり
場合によってはぎゅっとしたりして
一緒に脱出できるようにしていきます
道を塞ぐ障害物は「血は血へ・暴喰者形態」で取り除き
防衛システムが邪魔してきたら
それに加え、血槍を猟銃形態に変えて迎撃して排除!
また、全員が脱出できるまではしっかり手助けして
全員脱出できたのを確認してから私も急いで脱出します!
緋薙・冬香
結局、自爆なのねぇ(大きなため息
仕方ない
文字通り、『くぐり抜ける』としますか
私の本気、みせてあげる♪
血統覚醒からスカイステッパーのコンビネーション
ジャンプ、見切り、第六感を駆使して
崩れ落ちてくる瓦礫や岩を相手に空中戦よ!
オーラ防御を展開して小さな瓦礫はそのまま弾き飛ばしながら空中を駆けつつ
仲間の退路を確保
進路を防ぎそうな大きな岩は『魅せる脚』で砕くか蹴りつけて軌道を変える
ついでに着地してステッパーのジャンプ回数リセットしちゃうわ
どこまでいっても手数が足りない分は『血筋に眠る浄化の炎』を叩きつけて軌道を変えましょう
そうそう、対空射撃の邪魔にならないようにしないとね?
※アドリブ連携OK
●
「少しやり過ぎたか」
あらためてレコンキスタの艦首を見て言うフォルティス・ワーライン(宇宙を駆けるセンチュリオン・f18278)に、
「フォルティス殿、さっさとここから退避せねばならぬでござるよ」
「急いで逃げるに!」
『ベアー』で退路を確保していたヨウ・ツイナ(絶対守護の女武者・f18276)とコミュニ・セラフ(女傑なる狂天使・f12530)がフォルティスに叫んだ。
自爆プログラム作動の警報はドック内にも流れたようで、すでに2人は『ベアー』の発進体勢を整えている。
それを見たフォルティスがシートに滑り込み、エンジンを吹かしたところへ、
「お邪魔させてね」
と、緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)も『ベアー』に飛び乗ると、
「結局、自爆なのねぇ」
と、溜息交じりに呟いた。
「残りの3人はどうしたでござる?」
訪ねたヨウに冬香が答えようとしたとき、
『こちらは気にせずいってください。先に離脱の準備をお願いしますっ!』
『ベアー』の通信機から声が聞こえた。
「だって」
冬香が3人に笑いながら言う。それは数々の修羅場を共にくぐり抜けてきた友人への信頼の笑み。
それを見たコミュニがフォルティスとヨウを見て小さく頷き、2人もしっかりと頷き返す。
「わかった、急いで脱出するぞ! しっかり捕まってろよ! スピードは落とせん!」
コミュニが銃座に、ヨウがナビシートにつくのを確認して、フォルティスはめいっぱいアクセルを踏み込んだ。
●
「わたしは、少しでも自爆を遅らせるようにしますので!」
データの引き出しは無理でも、入力はできる。
そのことに気づいたアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)は、チューリングの神託機械にアクセスし、電脳空間を介してレコンキスタのコンピュータにハッキングをかけていた。
無意味なコマンドを間断なく送り込み、負荷をかけて処理を遅らせ、クラッキングプログラムを流し込んで防衛システムを暴走させる。
「皆さん、ここは先に退避してください!」
「私のことなら心配しないでください。『オベイロン』で後から強行脱出しますから!」
「できるんですか?」
彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)がアイをしっかりと見て問うと、アイは、計算結果も出ています、と笑顔で答えた。
そんなアイを見ていちごもにっこりと笑いかける。
「なら、それまでは私がアイさんを守ります。だから作業に集中してください」
ハッチを開こうとしたアイの手を、いちごがそっと押さえた。
「帰りましょう……誰1人欠かすことなく……!」
セナ・レッドスピア(blood to blood・f03195)も『オベイロン』の隣で推盾形態に変えた血槍を構えている。
セナもまた、恋華荘の仲間ととして共にいることを選んだのだ。いちごがコックピット内でアイをサポートするのなら、セナは外で『オベイロン』自体をサポートしていた。
推盾形態の血槍を操り、流れ込む海水の上を滑るように移動しながら崩れ落ちる瓦礫を弾き飛ばし、暴食の顎へと変化させた右手で、暴走した兵士と防衛ユニットを喰らい『オベイロン』へ近づけさせない。
「脱出はアイさんがなんとかしてくれます!」
どんな方法かはわからないが、アイさんの立ててくれる作戦なら大丈夫。
それなら3人でぎりぎりまで時間を稼ぐ。それが今やるべきことと決めたのだ。
●
駆逐艦は小さいとはいえ、それは戦艦や空母と比べてのこと。個人レベルの話ではなく、そしてやはり戦闘艦なのだ。自爆シークエンスが完了してしまえば、激しい爆発がドックの周囲を吹き飛ばすだろう。
“452 seconds remaining”
『ベアー』のディスプレイに爆発までのカウントダウンが表示される。
システムを『鬼やらい』のAIとリンクさせて割り出した脱出コースを、フォルティスはアクセルはべた踏みのまま、ハンドリングとギアアクションだけで通路を駆け抜ける
だがそれは、最短コースを示してくれるだけで崩れる床や落ちてくる天井までは計算できない。落ちてくる瓦礫と敵の防衛システムをコミュニと冬香の銃撃が撃ち倒し、ヨウのフリーズグレネードが通路を凍らせ、穴を塞ぎ、海水と追撃を阻む。
不意にいっそう大きな警報が耳を打った。小さな爆発が連鎖し、落ちた隔壁がコミュニの銃撃を弾き返した。
「おいおいマジか!」
“242 seconds remaining”
迂回している時間も考えている時間もない。とはいえこのまま突っ込むわけにもいかず、フォルティスがブレーキを踏み書けたそのとき、
「そのまま突っ込むでござる」
ヨウが『雪之蝶』を構えていた。弓が引かれると、その矢は隔壁を白く染め上げる。
「コミュニ殿、冬香殿頼むでござるよ!」
一瞬のアイコンタクトで、2人はすべてを理解した。
「わかったに!」
「おっけー! 私の本気、魅せてあげる♪」
『ベアー』から二対の風が吹く。『ベアー』のスピードもパワーに変えてオーラを纏ったコミュニのチェイン・ハンマーと冬香の蹴りが隔壁を粉々に粉砕した。
「ゲートが見えたに!」
崩れる通路を凍らせ固めて足場を作りながら進む『ベアー』の先で、ガスに煙った光が揺れた。
「『鬼やらい』ハッチ開けとけ!」
フォルティスの指示に
“hatch open”
と返信を返し、ゲート前を確保していた『鬼やらい』の格納庫のハッチが開く。
「フォルティス殿、そのままいくでござる!」
フリーズグレネードの連射で最後の道を作ったヨウの叫びに、フォルティスが最後のブーストを叩き込んだ。急加速した『ベアー』が、ゲート前に布陣したシステムを弾き飛ばしながら、そのまま『鬼やらい』の格納庫へと飛び込んだ。
●
「……くっ、これが限界ですね!」
残り180秒。脱出にかかる時間を考えれば、ここが限界だ。
「脱出には、荷電粒子砲を使います!」
アイの作戦は荷電粒子砲発射の反動を利用して一気に脱出するというものだった。『オベイロン』の装甲にいちごの結界、それにセナの血槍が推盾形態で加われば脱出にかかる負荷にも十分すぎる耐久力を得られると計算結果も出ている。
とんでもない脱出作戦だったが、それを聞いたいちごにもセナにも不安はない。ただひとこと、ではそれで、と笑顔で了承した。
「荷電粒子砲、急速充填!」
『オベイロン』のシステムが主砲発射モードに切り替わる。いちごが3本目の尻尾を顕現させ、解除されたシールドの代わりに防御結界を展開し、セナが『オベイロン』の前部で大盾を構えて主砲の発射に備える。
『鬼やらい』の座標データを確認したアイが姿勢制御に微調整をかけていると、ニューロンへの過負荷に、つ……と、アイの口の端から赤い筋が零れた。それを拭おうとしたいちごの意識も一瞬揺らぎ、倒れ込むようにアイを抱きしめてしまう。
やり直す時間も余力ももうない。ほんとうの一発勝負だ。
「リコイルキャンセラー解除……! いちごさん、セナさん、いきますっ!」
アイの言葉に、2人が静かに頷く。
「主砲、発射!」
目も眩むような光と凄まじい重力が3人を襲った。いままで経験したことのない加速に3人は息をすることもままならない。
マスドライバーで撃ち出される荷物というのはこんな感覚なのだろうか。セナの大盾が摩擦熱で真っ赤に染まり、盾に触れた瓦礫が溶け落ちる。それを支えるセナの両腕も軋んでいるのが解る。
とんでもない加速のまま凍った通路を滑るように突き抜け『オベイロン』はカタパルトから撃ち出されるように射出された。
直後轟音と共にゲートから炎が吹き上がる。『オベイロン』を追い、龍のように昇った炎は、だがほんのわずか届く前にその顎を閉じた。
●
『鬼やらい』の格納庫へ向かって撃ち出された『オベイロン』の眼下では、ドック島が崩れ落ちその姿を海へと没しようとしていた。だが……。
「ポイントにズレがでてるでござる!」
ブリッジに戻り、モニターしていたヨウが叫ぶ。
ハッチに飛び込むはずの『オベイロン』は激しい爆風に流されて、『鬼やらい』の真横に打ち上げられてしまっていた。
コミュニとフォルティスが慌ててコンソールを操作し姿勢制御をかけるが間に合わない。
『オベイロン』も主砲を全力で撃った直後で、バーニアに回すエネルギーが残っていなかった。
このままでは――落ちる。
ブリッジの全員がそう思った時、格納庫ハッチからひとつの影が飛び出し空を蹴って渡ると『オベイロン』に取りついた。
「迎えに来たわよ」
冬香は『オベイロン』にしっかりと係留索を結ぶと、ブリッジに向かって親指を立てた。
ドックでは、荷電粒子砲でブリッジを破壊されたレコンキスタが、ゆっくりと海に沈んでいく。
AIの沈黙により、核融合炉の自爆プログラムはキャンセルされたようだが、ドック自体の爆発と船体の損傷はもう回復する術もない。
宇宙の海で生まれた艦は、グリードオーシャンの海で静かな眠りに落ちていく。
大成功
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