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未知を既知とする者は救済者なりや?

#UDCアース #感染型UDC

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「どーもー。ポッケの実験ちゃんねるでーす」
 動画配信者の女性(20歳前後)が独り、カメラを自分に向けながら撮影をしていた。
 彼女がいるのは、UDCアース日本の真夜中、神奈川県西部の箱根に近い山間。
 ここに経営難で廃業した小さなテーマパークが、解体されずに手付かずのまま錆び付いていた。当然、立入禁止区域なのだが、フェンスは何者かの悪戯で穴が空いており、誰でも出入りができるようになっていた。

「実はですねー、私の古い友人が失踪してしまいましてー。その子も一緒に動画やってたんですけどー。今回はチャンネルの本来の趣旨とは違うのですが、人探しにお付き合いくださーい」

 テンション低めのまま、廃墟のテーマパーク内を徘徊する動画配信者のポッケ。
 彼女は友人の事をマイクへ零し始める。

「その友人は些細な事がキッカケで、SNSでアンチ達に炎上させられちゃいましてねー、その時、このテーマパークの噂を聞いたそうですよー。なんでもー、『生まれ変わって人生やり直せる』ってー。普通なら意味不明ですけどー、あの子、マジで追い詰められてガチで行っちゃいましてー。それからかれこれ1週間も音信不通で……あれ?」

 突然、ポッケの目の前のメリーゴーラウンドの照明が明るくなった。

 そして、そこには木馬ではなく……。
「やぁ、君も、私が『生まれ変わらせて』あげようか?」

 サイボーグの白衣の男と、異形の戦車が優美な音楽とともに回転していた。

「ぎゃあああっ!?」

 血相を変えて逃げてゆくポッケ。
 だがカメラはしっかりメリーゴーラウンドを撮影したままだ。
 その背中を、一基の戦車が眺めていた。

『ポッ……ゲ……ぢゃ……ん?』

「蛇神オロチヒメの神託である。猟兵よ、余の元へ集え」
 蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)の裏人格こと憑依している白き蛇神オロチヒメ。両目を赤く輝かせながら、予知の内容を集まった猟兵へ説明し始めた。
「UDCアースで、感染型UDCが確認された。現在、噂の第一目撃者である動画配信者の女性が、UDCを目撃した動画をアップしてしまっておるのだ。感染型UDCは、噂の中心となるUDCを見た人間、それを噂話やSNSで広めた人間、その広まった噂を知った人間全ての『精神エネルギー』を餌として、大量の配下を生み出すのだ。このままでは世界的パンデミックを引き起こしかねぬ。動画のアーカイヴはUDC組織の圧力で削除したが、配信自体はLIVEだったため、既に噂は広まりつつあるぞ。配下が誕生するのも時間の問題であろうな」

 今回の任務内容は3つ。
 1つ、噂を知った人々並びに第一目撃者である動画配信者ポッケの周囲に発生するUDC配下の撃破。一般人は現地のUDC組織が保護するため、猟兵達は戦闘に集中してほしい。

 2つ、白衣のサイボーグの男の居場所を特定してほしい。男は関東近辺の数カ所を拠点としているらしい。そして、その拠点の共通点は、『SNSイジメの被害者が救済される噂が付き纏っている』事なんだとか。

 3つ、主犯格である白衣のサイボーグ男の抹殺である。

「予知を視る限り、噂を信じて『生まれ変わった』者の末路は……いや、余から言うのは野暮というものであろう。今は現世に生ける者を守り、幽世の異形を討ち果たす事が肝心なりや」
 オロチヒメはUDCアースへ猟兵を転送する準備を整える。
「さぁ、征け、猟兵達よ。これ以上、虐げられた者の生命を犠牲にさせぬためにも」
 猟兵達はUDCアースの『闇』に挑んでゆく……。


七転 十五起
 予知にオロチヒメが出てきた場合は、かなりのガチシリアスである証です。
 なぎてんはねおきです。
 本シナリオは全体的に重い話が続きますので、お覚悟を。

 必要な情報はオープニングに詰め込みました。
 よく読み解き、適切な行動を模索してくださいませ。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。
 闇に、挑め。
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第1章 集団戦 『鬼戦車』

POW   :    レッド・ウェーブ
【自身と同じUCが使用可能な同型戦車をLv】【×1体の増援として召喚する。また、増援の】【戦車と連携して攻撃(戦車砲や機銃)する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    タンク・コルホーズ
自身が戦闘で瀕死になると【自身と同じUCが使用可能な同型戦車】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    マルクスの亡霊達
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自身と同じUCが使用可能な同型戦車】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。

イラスト:FMI

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 動画配信者のポッケは、この日、所謂ファンミーティングのイベントに赴いていた。
 先日の動画アーカイブは運営から削除されてしまったけれども、心配した古参のファンたち数名がポッケを励まそうと企画したのだ。昨今の感染症を鑑みて、広いスペースで催される運びとなった。
 ファンも、失踪した友人のことはよく存じており、皆が心配の声をあげていた。

 と、その時だった。
 イベント会場のあちらこちらから、肉と戦車が融合したUDCが発生したではないか!
 参加者はパニックになる中、猟兵たちはイベント会場へ突入!
 避難誘導をUDC組織の者たちに任せ、出現した『鬼戦車』の群れへと猟兵たちは斬りかかっていった!
 ただ、群れの中の一基が悲しそうな呻き声を漏らした。

『まっ……て、ポッケ……ちゃ……! あ、た、し……こ、こだ、よ……!』
河原崎・修羅雪姫
【モミジ連合】アドリブ歓迎。

「我が全サ連の大事な団員である、智華さんの一大事。見逃すわけにはいかないわぁ!」
 この事件に対してこう感じ、猟兵として参加します。

 戦闘中、敵の注意を引きつけるオトリ役になります。
「森羅万象、あらゆる機械は私に跪く。行け、電脳ゴースト!」
 鬼戦車の「レッド・ウェーブ(POW)」に対し、UC「グレムリン・エフェクト」を「範囲攻撃」で使うことで、
鬼戦車軍団の機能を狂わして同士討ちさせると共に、
「ポッケの友人」を助け出そうとします。

そして愛用の【アンチマテリアルライフル・ドラグーン】で生き残りの鬼戦車(T34?)を「スナイパー、鎧無視攻撃」で撃破しようとします。


草野・千秋
【モミジ連合】
話は聞きましたよ智華さん
大丈夫です、僕らが来たからには
姫さんや皆さんもついてます、大丈夫です

生まれ変わらなくても人生はやり直せるはずなのに
人の心の痛みに漬け込む、なんて卑劣な行為なのでしょうか

「人間」を本意に反して同意なく改造するのは非人道的行為
断罪戦士ダムナーティオー、これより罪を断つ
……変身!

勇気をもって戦いに挑む
智華さんと妹さんは前線に駆け出していきましたか
なら力付けていきましょう
歌唱、楽器演奏、鼓舞、UC【Vivere est militare!】を使用して味方全軍にバフを付与
強化されたようなら次はスナイパー、一斉発射、範囲攻撃で敵を薙ぎ払う
味方は徹底してかばう


バスティオン・ヴェクターライン
【モミジ連合】アドリブ絡み歓迎
「…趣味悪ぃな、こりゃ」
おじさんは最前線に立つ。敵陣に突っ込んで注意を惹きつつ、UCで連中に【恐怖を与える】よ。死亡でも気絶でもなく恐怖による戦意喪失なら再利用出来ないだろう。
これで折れずに向かってきたとしても、注意は一気にこっちに向く。戦車で1か所を一斉に攻撃して見ろ、流れ弾で同士討ちさせられる。こっちは【武器受け(剣)】【盾受け(盾群付右義腕)】【激痛耐性】で粘り強く前線に立つ。味方が戦いやすい様、1体でも多く敵の注意を惹かないとね。
…それにしてもなーんか声が聞こえるような…何処からだ?戦いながら少し探してみようかな…。


リズ・ルシーズ
【モミジ連合】で参加、アドリブ・連携歓迎だよ!

【SPD】

「智華、華織、手伝いに来たよ!」

【指定UC】を使い量産型を召喚し、疑似刻印のレーザーによる光【属性攻撃】で【スナイパー】として突撃した人の【援護射撃】だよ

「一般人の心配をしなくて良いなら少し動きやすいね。元が『何』であれ、オブリビオンを倒すのにボクは躊躇しないよ!」

瀕死になりかけの敵がいたら、【集団戦術】で集中砲火して確実に仕留めていこうかな。

「リーダー、時間稼ぎは任せて!」

あとは【制圧射撃】でリーダー(修羅雪姫)の行動のための【時間稼ぎ】だね

「救いたい人がいるなら、敢えてその邪魔をする理由もないしね?」


紅葉・智華
【モミジ連合】
※アドリブ・連携歓迎

任務内容の2つ目ないし3つ目。その為の【情報収集】としての【ハッキング】で件の動画を見て――懐かしい声を聴いた。華織から事情も聞いた。なら、これは私が持ち得る全てを使って屠らなければ――。

「皆さん、来て下さってありがとうございます。それじゃあ、まずはこの場を片付けましょう、であります!」(眼鏡を電脳空間に収納しつつ)

一般人はUDC組織が保護するとの事だし、戦闘に専念。【ダッシュ】で敵陣に突っ込み、攻撃を【おびき寄せ】つつ【見切り】、『刹那』や『[K's]Sirius』で【カウンター】、【足止め】。トドメはお任せする。


紅葉・華織
【モミジ連合】
※アドリブ・連携歓迎

お姉ちゃんが見つけた動画。その声。間違いない。お姉ちゃんが行方不明になったと知った直後、お姉ちゃんとあの人の家には、あの人が拉致と改造の犯人であろう証拠があった。何故かは知らないけど――お姉ちゃんが行くのなら、華織も行く。

「みんなは、お姉ちゃんのとこの――はい、今回は一緒に宜しくお願いします!」

お姉ちゃん同様【ダッシュ】で戦場の中心に突入するよ! 攻撃を【見切り】ながら、各種手裏剣を【投擲】。足を中心的に潰しつつ、隙の出来た敵に対して、『月華』(鎧無視攻撃)を用いた【選択UC】で一刀両断。しっかりと、トドメを刺す。


佐倉・理仁
【モミジ連合】

人を勝手にバケモノに改造するよーな奴は、俺としても放っておきたくないんでね……手ェ貸すぜ。
いやまあ俺は大体見てるだけ、なんだけども。
紅葉も妹ちゃんも、あまり熱くなりすぎんなよー?


【旅は道連れ】
どうにも奇怪な形だな?視界に入る敵に片端から亡霊を叩き込む。『なぎ払い』
狙いをずらして歩行を止めて、足並み揃えず砲塔はおっかねぇから戦車同士で向き合っててくれよ。突撃を仕掛ける姉妹らに狙いをつけるなんざ、許さねーよ?『呪詛』


最新の犠牲者がどいつか、探しておこう。残す言葉もあるかもしれない。それにそいつは、せめて一撃で眠らせてやらねぇとよ。



 紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)はUDCアースへ転送された直後、削除された動画のアーカイヴを確認するべく、電脳魔術を駆使してポッケのスマートフォンをハッキングした。
 すると、すぐに件の動画を収集することが出来た。
 先んじて、黒幕の男の情報を得ようと試みた智華であったが、動画を視聴して彼女は目と耳を疑った。
「……父さん……!」
 動画から聞こえた声は、紛れもなく智華の父の声だった。
 姿こそ豹変しているが顔立ちは面影があり、何より紅葉印の白衣に見覚えがあった。
「そうなんだね……この事件は、父さんの仕業……!」
「そうみたいだね、お姉ちゃん」
 不意に後ろから声が聞こえた。
 智華は振り返ると、そこには見覚えのある面々が勢揃いしていた。
「華織……!? それに、なんで、全サ連の皆さんが!?」
 妹の紅葉・華織(奇跡の武術少女/シスコン師範代・f12932)の後ろには、『全世界サイボーグ連盟』の連盟長である河原崎・修羅雪姫(プリンセス・スノーブラッド・f00298)は、マッシブでグラマラスなサイバネボディを漆黒の全身ラバースーツに身を包んで不敵な笑みを浮かべていた。
「聞いたわよぉ? 我が全サ連の大事な団員である、智華さんの一大事。見逃すわけにはいかないわぁ!」
 長いサイバー舌をぬらりと出して唇を舐める。
「妹さんとは、そこで偶然、同タイミングで転送されてきたわぁ。よろしくね、華織さん?」
「みんなは、お姉ちゃんのとこの――はい、今回は一緒に宜しくお願いします!」
 華織が頭を下げると、無気力な中年男性が目を細める。
「おやおや、利発な妹さんだねぇ? スッとする飴ちゃん要るかい?」
 バスティオン・ヴェクターライン(戦場の錆色城塞・f06298)は華織に持っていたレモン味ののど飴を手渡すと、燻らせていた煙草の火を携帯灰皿で消した。副流煙が向かわないように華織に気を遣ったのだろう。
「おじさんも協力するよ。普段は依頼なんて敬遠したいくらいだけど、今回は流石におじさんも思う処があるからねぇ……」
 そう呟くバスティオンは、まだ見ぬ敵に思いを馳せるかのごとく遠くへ目を向ける。
 その隣には、眼鏡を掛けた気の優しそうな青年こと草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)が心配そうに智華を見詰めていた。
「話は聞きましたよ、智華さん……。大丈夫です、僕らが来たからには安心してください。姫さんや皆さんもついてます、大丈夫です」
 智華の手を取り、懸命に言葉を掛ける草野の紳士な姿勢に、智華は思わず目尻に涙を浮かべた。
 更に、助っ人は彼らだけに留まらない
「人を勝手にバケモノに改造するよーな奴は、俺としても放っておきたくないんでね……手ェ貸すぜ。まあ邪魔にゃならんハズだぜ?」
 佐倉・理仁(死霊使い・f14517)は被っていたパーカーのフードを取り外して告げた。
「智華、華織、手伝いに来たよ!」
「佐倉さんに、リズさんまで! ありがとうございます!」
 心強い援軍に、智華の表情が安堵に満ちる。
 そして華織は、姉に向かって意気込みを語る。
「お姉ちゃんが見つけたその動画。その声。間違いない。3年前、お姉ちゃんが行方不明になったと知った直後、華織は家出をしてまでお姉ちゃんを探した。その過程で、お姉ちゃんとあの人の家には、あの人がお姉ちゃんを拉致してサイボーグへ改造した犯人であろう証拠があった。何故かは知らないけど――」
 華織にとって、これまでの3年間は地獄の日々であった。
 失踪した姉と父にまつわる謎の組織(今となってはUDC組織だったのだろうと推測される)に、拾った妖剣による度重なる神隠しと世界転移。そして猟兵化。オブリビオンを殺す日々。姉を焦がれて割れたことは1秒とてなかった。今でこそ再会してひとつ屋根の下で暮らせているが、再会した最初は互いに気付くことすら出来なかった(ただし諸事情で互いに容姿がだいぶ変化していたことも原因なのだが)。
 だから、今回の事件は、華織にとっても、智華にとっても猟兵としてのひとつの区切りとなることは明白である。
 華織は姉を優しく抱き締めると、その耳元で堅く誓った。
「お姉ちゃんが行くのなら、華織も行く。あの人と決着を付けなくちゃ」
「そう、なんだね。なら、これは私が持ち得る全てを使って屠らなければ――」
 智華が妹から離れると、彼女は駆け付けてくれた面々へ向き直った。
「皆さん、来て下さってありがとうございます。それじゃあ、まずはこの場を片付けましょう、であります!」
 智華は赤いフレームの眼鏡を外し、電脳空間へ押し込んだ。
 その瞬間、智華は猟兵としてのスイッチが入り、軍人口調へと変わるのだ。
「そろそろ定刻かしら? イベント会場へ乗り込みましょ?」
 河原崎の言葉に、一同は揃って頷く。
 予知によるオブリビオンはいかが出現する時刻まであと少し。
 猟兵達は現場へ急行するのだった。

「きゃああああっ!?」
「バ、バケモノが出たぞー!」
「ポッケさん、逃げて!!」
「あわわわわ……!」
 既にイベント会場はパニックになっていた。
 虚空から湧き出るUDCこと鬼戦車は、砲口を一般人へ向けながら異形の四足で近寄ってきた。
 しかし猟兵達の連絡を受けて先行していたUDC職員が、一般人達とポッケを素早く保護して退避させてゆく。
「ブリーフィング通り、一般人はUDC組織が保護するとの事だし、戦闘に専念できるであります!」
「華織も行くよ、お姉ちゃん!」
 紅葉姉妹が鬼戦車の群れへダッシュで飛び込んでいった。
 手裏剣をばら撒く華織は、動きが止まった鬼戦車から攻撃を仕掛けていった。
 これに続けと河原崎が号令を掛けた。
「私が敵を引きつけるわぁ! その間に、みんなもイイ感じにお願いね?」
 河原崎は自身の電力3ジグワットを代償に、ユーベルコード『グレムリン・エフェクト』を起動させる。
「森羅万象、あらゆる機械は私に跪く。行け、電脳ゴースト!」
 彼女の脳に焼き付いている電脳ゴーストが出現すると、周囲の鬼戦車へ向けて一斉サイバー攻撃を仕掛けてゆく。
 すると、たちまち鬼戦車達の挙動がおかしくなる。
「電脳ゴーストで一時的に戦車の視界を遮ったわぁ!」
「なら、おじさんも頑張るよ」
 バスティオンが大型右義腕『フォーティファイド・ライト』に付属された積み重なった大量の盾『スケイリー・シールド』を押し出して前線へ進む。鬼戦車達を沈めてゆく紅葉姉妹の援護に向かう。
 だが彼の目の前で、死に絶えたはずの鬼戦車が突如立ち上がって襲い掛かってきたではないか。
「あぶない!」
 そこへ放たれる智華の魔弾!
「紅眼の射手(クリムゾン・シューター)! これは、単に私の技量。特別な力は働いてないでありますよ!」
 自身の二つ名と同じユーベルコードを敢行し、必中必殺の一射を鬼戦車の脚部関節へ叩き込んだ!
「大丈夫でありますか、バスティオンさん!」
「ああ、ちょっと驚いたけどね。……趣味悪ぃな、こりゃ。死んだ僚機を復活させるユーベルコードってとこだろうね」
「ならば無力化するに留めるべきでありますね!」
 愛銃04-MV[P/MC]マルチロールアサルトウェポン【刹那】と肺レーザーライフルWH04HL[K's]Siriusを使い分け、鬼戦車達の砲塔や足を破壊して無力化を図る智華。
 智華のアシストのおかげで、バスティオンはすぐさま態勢を立て直す。
「おい、あんまり怒らせるなよ……!」
 凄まじい鬼気を放つことで、周囲の鬼戦車へ恐怖心を植え付ける攻撃――ユーベルコード『テリトリー・オブ・テラー』を発動させる。
 視界が不明瞭の中、突如、正体不明の鬼気に当てられた戦車達はたちまち大混乱に陥る。その場で戦意喪失して停止する機体もあれば、同士討ちを初めて自滅し合う機体も出現し始めた。
 バスティオンは紅葉姉妹への攻撃をその盾と大型の装甲長剣『ソード・ウィズ・ガード』で庇って前線を維持してゆく。
「智華さんと妹さんは前線に駆け出していきましたか。今が攻めどきですね」
 草野も勇気を振り絞り、果敢に的中へ飛び込んでゆく。
「……変身!」
 変身ベルト『tonitrus transformatio』のギミックを作動すれば、その業は雷光のごとく速度で変身シークエンスへ突入する!
「生まれ変わらなくても人生はやり直せるはずなのに、人の心の痛みに漬け込む、なんて卑劣な行為なのでしょうか! 『人間』を本意に反して同意なく改造するのは非人道的行為そのもの、許せません!」
 草野の全身にメタリックな装甲が転送され、次々と合身装着!
「断罪戦士ダムナーティオー、これより罪を断つ! はぁぁっ!!」
 正義の拳が、華織へ飛びかからんとしていた鬼戦車を粉砕!
「大丈夫ですか、おふたりとも? 僕の歌声で力付けていきましょう!」
 ダムナーティオーは力強い歌声で味方を鼓舞し始めた。

 ♪生きて、抗い、戦うんだ、沈黙したままでは空に羽ばたく自由は得られない
 ♪生きることは戦いだ、Vivere est militare!

 生きる者のための歌の力の加護が猟兵達に宿り、その戦闘力を底上げしてゆく。
「きれいな歌声……ありがとうございます! これなら行ける!」
 華織は妖刀【月華】の刃を煌めかせると、鬼戦車の足の関節部を辻斬りしていった。
「まずは機動力を削ぐよ! 援護お願いします!」
「オッケー! 任せて!」
 リズがすぐさま連携を取るべく敵中へ飛び込んできた。
「一般人の心配をしなくて良いなら少し動きやすいね。元が『何』であれ、オブリビオンを倒すのにボクは躊躇しないよ!」
 すかさずリズはユーベルコード『R-Series(ルシーズ)』を発動!
「『アーカイブ接続、ブループリント読込、圧縮展開』ボクはルシーズ、ボク達はルシーズ。ボク達の本質、見せてあげるよ!」
 65体の無数の鏡面体を伴うリズと同性能の簡易複製機体が出現!
 数には数をと言わんばかりに敵集団を抑え込んでゆく。
「ボク達の性能を見せつけるよ! 疑似刻印、起動!」
 65体の複製体とオリジナルのリズは、一斉に疑似刻印からレーザー光線を放ち、鬼戦車達を撃ち抜いていった。
 敵の大半が撃沈するも、僚機のユーベルコードによって復活されそうになる。
「させないよ!」
「リズさん、そっちの押さえは任せるわぁ!」
 河原崎はリズに背中を向けたまま、鬼戦車達をハッキングで操作して同士討ちを仕向けている。
 また、増援を延々と召喚されるため、河原崎自身も愛銃の99mm口径アンチマテリアルライフル・ドラグーンを休みなく撃ちまくっていた。
 その状況を瞬時に判断・把握したリズは背中越しに答えた。
「リーダー、時間稼ぎは任せて!」
 復活する機体を片っ端からレーザーで再殺してゆくリズ。
 その中で、明らかにおかしな挙動を見せる鬼戦車がいた。
「イヤァア……! 助ケテ、怖イヨ……!」
 ひたすら逃げ回るその個体に気が付いたリズは、河原崎へすかさず報告する。
「救いたい人がいるなら、敢えてその邪魔をする理由もないしね? どうする、リーダー?」
「あれがポッケさんのお友達かもしれないわねぇ?」
「なーんか声が聞こえるような気がしたら、あれか……注意深く探しておかないと倒してしまいそうだね」
 バスティオンは混乱する僚機の砲口を、逃げ惑う鬼戦車から鬼気をぶつけて標的を自身へ惹きつける。
「いい子だ、おじさんが相手になってやろう」
 そのまま半狂乱で迫りくる鬼戦車を、バスティオンは装甲長剣で一思いに一断してみせた。
「おーい、そっちへ行ったよ?」
 バスティオンが戦場で立ち尽くす佐倉へ注意勧告。
 元ポッケの友人の鬼戦車が佐倉の前を通過してゆく。
「いやまあ俺は大体見てるだけ、なんだけども。紅葉も妹ちゃんも、あまり熱くなりすぎんなよー?」
 そう告げると、佐倉は再びユーベルコードの制御に集中する。
「そら、お迎えのご到着だ。……今お前の中にいる奴らだよ」
 死霊の憑依による一時的な身体の支配により、視界に入った鬼戦車が此方でも同士討ちを開始。
「……どうにも奇怪な形だな? おっと、あの最新の被害者っぽい機体はなるべく傷付けないようにしねぇと。てか、砲塔はおっかねぇから戦車同士で向き合っててくれよ」
 佐倉が敵を見詰めた瞬間、隣り合った鬼戦車の砲塔が向かい合い、同時に榴弾が互いに炸裂して沈黙してしまった。
 だが、再び僚機によって復活すると、再び同士討ちを初めて阿鼻叫喚の光景を繰り広げていった。
「さて、逃げ惑うあいつ、残す言葉もあるかもしれない。それにそいつは、せめて一撃で眠らせてやらねぇとよ」
 イベント会場の片隅で狼狽える鬼戦車。
 そこへ河原崎も駆け付け、なんとか救出が出来ないか画策する。
「こっちは片付いたであります!」
「でもお姉ちゃん、トドメを刺さないんだもの」
 華織の言葉通り、智華は鬼戦車を撃ちはせど、どれも殺すまで至らない。
 死亡と気絶がトリガーの敵ユーベルコード対策も兼ねているが、なにより元の人間の事を智華はちらついてしまう。
「ごめん、華織……。助からないとは判ってるし、あれはオブリビオンだって判っているけど」
「大丈夫、お姉ちゃん。代わりに華織が斬り殺すから!」
 快活かつ無邪気に華織は妖刀を振るってきた。
 その身体は返り血で至る部分が赤く染まっている。
「残り1体、迷わず逝けばいいよ!」
「待って? UDC-Pみたく、あの子を救えないかしら?」
 河原崎が華織を制止すると、鬼戦車へ会話を試みた。
「ポッケさんのお友達かしらぁ? 貴女を改造した人物について、教えてほしいのだけれども」
『りょ……へ、い……てき、てき、てきは、ころ、さな、くちゃ……』
 ぐるんっと砲塔を紅葉姉妹へ向けるポッケの友人!
 もう既にオブリビオンの思考に魂が染まりきっていたのだ。
「おいおい、紅葉姉妹らに狙いをつけるなんざ、許さねーよ?」
 佐倉の視線がポッケの友人に死霊の憑依を促し、自壊が始まってゆく。
『あぎッ!? あぎゃががががががッ!?』
「残念ね、人体だけではなく、その人の魂さえも改造してしまっているんだわぁ」
 おぞましいものを見たと言わんばかりに、河原崎は顔をしかめた。
『イタ、イ、イタイ、ワタシはタダ、だれにも、嫌われたくなかった……』
「なんだか、正気を取り戻していませんか?」
 ダムナーティオーが恐る恐る『彼女』に接近する。
 だが、もはや自動的に呂兵を殺す兵器としてプログラムされているためか、ダムナーティオーが数歩接近しただけで、再び砲門を仲間に向ける。しかも今度は砲火が瞬いた!
「危ない!」
 超至近距離からのダイビングガード!
 ダムナーティオーの装甲パーツが一部破損して吹き飛ぶも、彼のとっさの判断が仲間の生命を戦車榴弾から守ってみせたのだ。
「駄目だ、もうこいつは人間として救えねぇよ」
 佐倉がキッパリ言い切った。
「人の弱みに付け込んで、魂も有り様も怪物に作り変えるなんて、酷いねぇ……」
 バスティオンが伏し目がちに奥歯を噛み締めた。
「もうこれ以上は時間の無駄だよ。さっさとトドメを刺してあげようよ?」
 リズはいつでもレーザー光線をぶっ放す準備ができている。
 河原崎も溜息を吐くと、仲間に告げた。
「現時点をもって、この個体からは黒幕の情報は引き出せないと判断。援軍を呼ばれる前に殲滅するわぁ」
「だったら、僕がやります……!」
「ボクはいつでも行けるよ!」
 ダムナーティオーとリズが攻撃態勢に入る。
 そして、佐倉のユーベルコード自壊してゆくポッケの友人を、2本のレーザー光線が容赦なく貫いた。
 血反吐を吐く鬼戦車が金属音とともに倒れる。
『ポッケ、ちゃん……ごめ、ん、ね……』
 最期に『彼女』は友人への謝罪の言葉を口にして死んでいった。
 無事に民間人への被害を出さずにUDC集団を駆除できた猟兵達だったが、その胸中に過るものは、決して晴れやかな勝利の余韻ではなく、むしろ被害者たちへの哀悼が去来していったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『SNSイジメの被害者を追え!』

POW   :    SNS苛めの主犯格を脅し、被害者の情報を聞き出す

SPD   :    ハッキングなどを行い、履歴等から被害者の潜伏先を特定する

WIZ   :    SNSを使い被害者に接触と説得を試み、居場所を探る

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 手掛かりを得られなかった猟兵達は、襲われたポッケ本人とのコンタクトを図る。
 彼女は黒幕の男と接触できたの情報の出処を知るためだ。

 襲撃後、UDC組織に軟禁されていたポッケは、今や完全に世界の裏側を知ってしまった。
 実は一度、UDC絡みの事件に巻き込まれており、その際は記憶処理だけで済んだ。
 だが、今回ばかりはそうもいかない。
 ポッケは今後、おびただしい数の誓約書の記入としつこい身辺調査を経て、正式にUDC職員として採用される見通しらしい。

「ああ、チャンネル登録10万人まであと少しだったんですけどねー」

 彼女の開設している動画配信チャンネルは当分の間は凍結されることとなった。
 少なくとも、今回の事件が解決されるまでは日の目を見ることはないだろう。

「そうでしたー。あの噂の出処ですねー。ほら、このSNSのアカウントですよ。SNSイジメに遭った人達の駆け込み寺になっているようですね」

 そこのコメント欄には、まことしやかに『生まれ変われる場所』という話題が昇っている。但し、場所と日時はバラバラで法則性は見当たらなさそうだ。
 だが、ポッケはあることに気が付いたそうだ。

「これ、噂を広めて書き込んでいるのって、実はイジメている側なんですよー。意外ですよねー? 失踪事件も幾つか報道されていますし、自殺スポットと勘違いしているらしく、面白がって被害者達へけしかけているらしいですよー」

 ポッケ自身もイジメの加害者にコンタクトを取って、あの場所に辿り着いたのだとか。

「あいつらが何処で情報を得ているのかは謎ですけどー、この世界って怪しい奴らが世界征服を企むような事が横行しているそうじゃないですかー。だったら、この際、大本の噂の出処なんて気にせずに、こいつらからちゃちゃっと情報を漁ってみたらどうですかー? でも簡単に口は割らないので、対価を払うか、強硬手段を用いるとかしたほうが良いですよー。ちな、私は動画配信への出演権で交渉したらホイホイ教えてくれましたー。承認欲求の塊のアホばっかで助かりましたー」

 間接的に友人を殺された怒りを、イジメの加害者へ滲ませるポッケ。
 相当、相手は捻くれた連中なのであろう。
 うまく情報を引き出すために、方策を編み出さえばならないだろう。
 猟兵は早速、情報を引き出すべく行動を開始した。
 ◆
 同時刻、某SNSにて。
 ここに、駆け込み寺のアカウントを縋って書き込みをする青年がいた。
 彼もまた、些細なことで周囲に貶められ、風評被害と無数の悪意に叩きのめされた被害者の1人である。見ず知らずの第三者からの罵詈雑言、身に覚えのない事実無根のレッテル、自身の個人情報のリーク、それによる実生活の侵害……。
 警察は動いてくれず、いよいよ困窮した彼は、駆け込み寺のアカウントを検索で発見し、その発言内容を一通り閲覧している最中に、それを見付けた。
「これは……?」
 コメント欄にチラホラ出てくる『生まれ変われる場所』という単語。
 その場所は関東・関西・中部などの大都市が指定されていたり、聞いたことのないような寒村あるいは廃墟だったりと法則性は見当たらなさそうだ。
 興味を持った青年は、このコメントに返信をしてみることにした。
『その場所は、一体何処にあるのですか?』
 すると、すぐに英数字ランダム羅列のアカウント名からダイレクトメールが届く。
 恐らく、身元を隠すためのダミーアカウントだ。
 そこに書かれていたのは、次に『救済者』が訪れる場所の詳細であった。
「ここにいけば……もう炎上や毎日の誹謗中傷から解放される……?」
 青年の心は、既に目の前の事柄が怪しいかどうかを判断する余裕を持っていない。
 地図アプリで目的地を設定すると、彼はすぐさま荷物をまとめて出立していった。

 ――待っているのは、救済ではなく理不尽なエゴだとも知らぬまま。
 ◆
 猟兵が動き出したか。
 私の“未来視”が正確ならば、このアカウントもそろそろ嗅ぎ付かれた頃だな。
 まぁいい。早く私のところへやってくると良いさ、猟兵よ。
 そのときこそ、私の悲願が成就する時だ。
『邪神を殺す最強の兵器』の完成という、私の悲願がね?
 
主・役(サポート)
ゲームアバターと人格と同期させて戦う多重人格者のバトルゲーマー。
同期したゲームアバターの技をその身で再現するべくエクストリームスポーツ(地形の利用/地形耐性/環境耐性/空中戦/パフォーマンス)を習得しておりスタミナ(継戦能力)も高いです。
調査系は勘(第六感/野生の勘/見切り)頼り。同期したアバターの人格次第では探偵の真似事ぐらいはできるかも?
基本的には行動はアバター依存。

素の一人称はえにっちゃん。
人格はアバターによります。
アバターと人格の同期の演出は憑依でも変身でもお好きなように。ゲームアバターにはTRPGやPBWも含みます。


池葉・雉乃(サポート)
『私は、歌の力で皆さんを支えたい。』
 スペースノイドのサウンドソルジャー×バトルゲーマー、15歳の女です。
 普段の口調は「お仕事モード(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)」、リラックス中は「砕ける(わたし、~君、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




 因縁を辿る者達がいる中で、今回の事件の手助けになればと動くサポート猟兵の姿があった。
「いじめられっ子の捜索だね? 手がかりを探して、他の猟兵と共有したいよね☆」
 主・役(エクストリームアーティスト・f05138)はゲームキャラクターのアバターと同期することで、自身のスペックをフルに活用することが出来る。
 今回はミステリーADVジャンルの主人公のアバターらしく、探偵スキルに特化しているようだ。
 同じく行動をともにする池葉・雉乃(音楽の裏方さん・f05834)もまた、バトルゲーマーのひとりとして何か出来ることがないかと模索している。
「私は役さんと違って、主に自作のゲームキャラクターを使用した音楽配信を得意としていますので、ハッキングの類は不得手なのですよね……」
「えにっちゃんでいいよー? せやかて雉乃? えにっちゃん自身もハッキングはさっぱりなんだよねHAHAHA!」
 快活に笑い声を上げる主に、池葉は表情を曇らせた。
「では、どうしましょうか? 一刻を争う事態ですし、何か方策は……?」
「うーん、ひとまず、えにっちゃん達に出来ることは、件のアカウントの最新コメントから、被害者を割り出すことかな? そっちはこっちでやっておくよ♪」
「では、私は……?」
 首を傾げる池葉へ、主はニンマリ微笑む。
「雉乃の得意なことで、情報提供を募れば良いんだよ!」
「……なるほど、配信で情報を呼びかければ良いのですね?」
 話はまとまった。
 早速、2人は手早く準備を進めてゆき、情報をかき集めてゆく。
 主はコメント欄から『生まれ変わる場所』へ興味を示すアカウントをピックアップ。
 その中から、炎上具合で切羽詰まっているアカウントを1つまで絞り込んだ。
「この人のアカウントは酷いなー。容姿や個人情報が全部第三者の手で晒されているし、リアルタイムで罵詈雑言ぶつけられているみたいだねー? 通知を切ってないと正気を保っていられなさそう~☆」
「えにっちゃん……さん、その方の情報を今からリスナーに呼び掛けてみますね?」
「よろしくおなっしゃーす、雉乃~♪」
 主が集めた情報を元に、池葉はライブ配信を開始した。
 唐突に始まった池葉の配信に、ファンたちはすぐさま食いついた。
『ゲリラ配信キタ!』
『まさか新曲発表?』
『一体何が始まるんです?』
 リスナーたちは池葉が重大な発表をすると思い込んでおり、コメント欄が濁流のように流れてゆく。
「ええと、突然の配信で驚かせてごめんなさい。実は、みんなの協力が必要なんです」
 池葉の自作したゲームキャラクターのアバターが、動画内で会釈する。
「……私は今、ある人を探しています。この人を今日、何処で見掛けたかご存知ありませんか? もしかしたら、彼は今、危険な目に晒されているかもしれません。なにか情報をお持ちの方は、些細なことでもいいので私までご連絡下さい」
 そうして、画面は件の青年の情報を映し出す。
 すると、コメント欄がにわかに騒がしくなった。
『コイツ最悪』
『もしかして身内だったの? ショックだわー』
『おれファンやめようかな?』
『危険な目って全部すっぱ抜かれてるんだから残当』
 否定的かつ悪意に満ちたコメントが湧き上がり、情報のかけらなど見当たらない。
「わーお、雉乃、これマジヤバくね? 配信中断すべきなんじゃ??」
 主の制止の声を、池葉は首を横に振って断った。
 画面が切り替わり、再び池葉のゲームキャラが映し出される。
「私も、彼との直接の面識はありません。ですが、彼は今、もしかしたら生命の危機に瀕しているかもしれません。詳しくは言えませんが、私は、彼を思い止まらせたいんです」
『なに彼氏なの??』
『タヒんで、どうぞ』
『ないわーあのゴミと通じてたなんて萎える』
『ふざけんなよ謝罪しろ!』
 だが、悪意は目の前で膨れ上がり、リスナーは勝手に青年はおろか池葉にまでその鋒先を突き付けてきた。
 これに池葉は我慢ならずに訴えかける。
「人の命がかかってます! ありもしない噂に振り回されて、誰かを見殺しにすると貴方達は言うのですか……!?」
 真剣な語気にリスナーたちのコメントが一瞬止んだ。
 池葉は更に畳み掛ける。
「確かに、見ず知らずの他人が死ぬかもしれないと聞いて、こうやって情報提供を呼びかけるのは大げさかもしれません。ですが、貴方達は『ネットに書いてあったから』といって真偽も確かめずに、救える生命すら足蹴にするのですか? 彼の炎上の原因は言いがかりです。これは第三者が検証しても明らかです。誤解が広まっているだけなんです。ですが、未だに彼は苦しんでます。思い詰めて、遂に死の間際にいます! 私は、見ず知らずの彼を助けたいんです……!」
 真剣な口調に対して、リアルタイムの視聴者数がみるみるうちに減少してゆく。
 呆れられたのか、それとも図星を突かれて居た堪れなくなったのかは定かではない。ネットの悪意というのは、そう簡単に覆らないのだろうか。
 諦めかけた、その時だった。
『そういやさっき、俺のバイトしているコンビニにコイツ来たよ』
 情報が、出てきた。
 コメント主いわく、携帯電話のバッテリーを買ってたらしい。
 あとATMでお金をおろしていたという。
 青年が落としたスマートフォンの液晶画面を見たようで、地図アプリで北関東を指し示していたとか。
 まだ30分も経過していないらしい。
「北関東……ですか。群馬や栃木、茨木だと主要な都市まで概ね2時間以上はかかりますね。まだ間に合うでしょうか……」
「いやぁ~、これは雉乃の熱意の勝利だね~☆」
 主と池葉は、アイコンタクトで手応えを感じていた。
 その後も、ポツポツと情報が集まってくるではないか。
『虚ろな目でレンタカーを借りていた』
『ひとりで寂しく牛丼をテイクアウトしていた』
『●●で肩がぶつかったからぶん殴ってやった』
『そのレンタカーのナンバーなら、さっき●●でフラフラ蛇行運転してたぜ』
 ひとりが呟けば、堰を切ったように情報が集まってくる。
「皆さん、ありがとうございます。現地には私の仲間が向かいますので、引き続き情報をお待ちしています……!」
 こうして、サポート猟兵2人の後押しにより、被害者の足取りをかなり辿りやすい下地が出来上がったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

草野・千秋
【モミジ連合】
僕もね、一応SNSや歌の動画配信をしている身なのですけれど
僕の所も炎上、とか考えるだけで恐ろしい
今からでも、一人でも少しでも人を多く救わねば

SNSを虱潰しに情報収集で青年の居場所を探す
他にも『生まれ変われる場所』について知る人がいたり
何か確信的なものがあれば都度スクショを撮っておく
衝撃的な事を書き込む人が
後からつぶやきとかアカウントを消すとかあるあるなので
場所の件について知っている方は次の被害者になってしまう
あなたはまだ狂気の世界に堕ちなくてもいいんです
黒幕の場所に辿りつけそうな情報を聞き出せたら
その人物をUC【Pluvia amor】で眠らせる


河原崎・修羅雪姫
【モミジ連合】で参加。アドリブ歓迎

「さて、洗いざらい話してもらいましょうかぁ?」
 主犯格に美人局をしかけ、猟兵として参加します。

「SNS苛めの主犯格を脅し、被害者の情報を聞き出す(POW)」に挑戦します。

得意の【誘惑】技能を使い、SNSで主犯格に色仕掛けをします。
その肥大した自尊心を、くすぐって、くすぐって。
「直接会って、お話が聞きたいわぁ」と、UDC組織の息がかかったホテルのレストランに誘い出す。

「ねぇ。ホテルの部屋を予約しているの」
勝負服の赤いドレスで、耳元に甘く囁く。

相手がまんまと部屋に来たら、強面のお兄さん役(モミジ連合の仲間)で取り囲み、
脅して今回の件の情報を聞き出そうとします。


リズ・ルシーズ
【モミジ連合】で参加、アドリブ・連携歓迎だよ!

【SPD】

承認欲求って、色々面倒そうだよね

ハッキングを行う智華の後ろで呟き、小さく欠伸をする。
場所の特定が終わったら、バスティオンの尋問の手伝いだよ

対象に接触後、【情報収集】として【指定UC】でリーデ姉さん作の機械式の拷問器具を辺に配置しながらバスティオンの後ろから対象をチラチラ見て、【恐怖を与える】【援護射撃】かな

バスティオンの次はボクの手番かな?

情報入手後、メンバーによって眠らされた相手を高分子ワイヤーによる【ロープワーク】で動けないように縛り上げておくよ

起きた後、元凶の解決の前に動かれると面倒だし、仕方ないよね?


佐倉・理仁
【モミジ連合】
アドリブ絡み歓迎
「生まれ変わり」の地へ向かう青年の足止め
紅葉(f07893)と千秋(f01504)の情報を頼りに彼を追う。

追跡は妹ちゃん(f12932)、千秋と。
止められて帰れるほど気楽じゃねぇよな。……彼に救いは無いかもしれない。でも黙って死なせるワケにゃ行かないんだよ。
力押しだが、先に人と繋がる気持を叩き込んでしまう。何を思うかは賭けだが【天下恋鎖】

顔も知らない連中より、アンタが想うべきものがあるはずだろ。なあ……生きるしかないだろ。



眠らせUCと安全圏への移動は仲間に任せる。

俺に出来る助けはこっち側だけだ。二度と会わんよう、願ってるよ。


バスティオン・ヴェクターライン
【モミジ連合】アドリブ絡み歓迎
今回は団長さん(f00298)と協力して美人局作戦だ。おじさんは団長さんが釣ってきた相手を部屋で待ち受ける。
相手は非戦闘員、無論下手に手は出さないさ。ただおじさんは思い知らせるだけだ。こんなことをしたって事実を加害者の氏名やら何やらと一緒に拡散すればどうなるか、かといってここで下手に反抗したらどんな目に会うのか…(機械化右義腕を見せながら)。【恐怖を与える】手段は単純な暴力だけじゃないのさ。
「それが嫌なら洗いざらい吐いてもらおうか…自分の身の為にも、ね?」
最後に駄目押しでUCを発動して完全に心をへし折れば、どんな強情でも必要な情報を教えてくれるだろうさ。


紅葉・智華
【モミジ連合】
※アドリブ・連携歓迎

駆け込み寺になってる――つまり、今この瞬間も一般人が被害者になろうとしている可能性があるって事。なら、それを食い止めつつ黒幕の場所を暴かないと。
「――さて、私から逃れられると思うなで――こほん――思うなよ!」(華織に語尾について叱られつつ)

【ハッキング】による【情報収集】で問題のSNSについて、新たに出るだろう被害者に狙いを絞り、特定。その向かう場所には仲間に急行してもらい、被害者を唆した黒幕に狙いを切り替えて場所等を暴く。

黒幕の場所が判明次第、敵拠点or合流地点まで愛車『RX-9』を【運転】して急行する。


紅葉・華織
【モミジ連合】
※アドリブ・連携歓迎

「――それにしても、お姉ちゃん、その口調(~であります)、やめよ?」
さっきはそのまま戦闘開始しちゃったから、今のうちに注意しておかなくっちゃ。

それはそれとして、新たな被害者は出したくないよね。お姉ちゃん(f07893)や草野さん(f01504)の情報収集の結果を受けて、縮地(選択UC,ダッシュ)で急行。
みんなが眠らせたり気絶させたりした方々を、片っ端から安全地帯まで運んでいく。

その後、黒幕の位置が分かった時に目標地点から遠い場合はお姉ちゃんのクルマに飛び乗って合流。一緒に向かうよ!



 一方、その頃。
 紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)と全世界サイボーグ連盟の面々、そして妹の紅葉・華織(奇跡の武術少女/シスコン師範代・f12932)は、配信者ポッケの情報から、SNSイジメの加害者へのコンタクトを取るべく作戦会議を行っていた。
 河原崎・修羅雪姫(プリンセス・スノーブラッド・f00298)は、件の駆け込み寺アカウントをスマートフォンで眺めながら、執拗に暴言をふっかけてくるアカウントに注目した。
「ねぇ? この人、やたら不自然に煽っているように見えるのだけど、みんなはどう思うかしら?」
「どれどれ……?」
 液晶画面を覗き込むのはバスティオン・ヴェクターライン(戦場の錆色城塞・f06298)。
 目を細め、ふむ、と小さく唸った。
「ざっと見たところ、被害者への誹謗中傷を行う割には、噂の『生まれ変われる場所』へは一切触れていないあたり怪しいねぇ?」
「むしろ話題を誘導しているようにもみえるな、これ……」
 佐倉・理仁(死霊使い・f14517)も自身の持つスマートフォンで、そのアカウントの発言を確認している。
「こいつ、この駆け込み寺アカウントの主とグルなのか……? 加害者にとって、一番叩き甲斐ありそうなアカウント主にも全く手を出していないようだぜ?」
「ますます怪しいね! でも、こんな目立つことして何になるの?」
 リズ・ルシーズ(Re-Z・f11009)は不思議そうに発言主の言葉に目を通していた。
 これに草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)が苦笑いしながら答えた。
「多分、承認欲求っていうものですね。誰かにすごいと言われたい。自分は他人より優れている。そう思いたい欲求が歪んでしまっているのでしょう」
「ふーん、承認欲求って、色々面倒そうだね」
「ですが、それは人それぞれですよ、リズさん。僕だって、自分の音楽をたくさんの人達に聞いてもらいたから、自分のチャンネルで歌や演奏の動画をアップし続けています。承認欲求自体は、決して悪いものではない、と僕は思いますが」
「そういうものなの? でも、文句を言ってくる人もいるでしょ?」
 リズの言葉に、草野は肩を竦めてしまう。
「残念ですが、心無い言葉をぶつける方もいます。一応SNSや歌の動画配信をしている身なのですけから、僕の所も炎上、とか考えるだけで恐ろしいです……」
「あっ! 皆さん、これを見てほしいであります!」
 智華が指し示したのは、他の猟兵が呼び掛けた行方不明の被害者の情報のまとめサイトであった。
「既に動いてくださった方がいたようであります! そして、事態は思っていたよりも一刻を争うようでありますね?」
「それって、つまり……?」
 河原崎の言葉に、智華が頷いた。
「このアカウントは、SNSイジメの被害者達の駆け込み寺になってる――つまり、今この瞬間も一般人が被害者になろうとしている可能性があるって事であります。なら、それを食い止めつつ黒幕の場所を暴かないと、不測の事態を引き起こしかねないでありますよ!」
「後味の悪い話は御免だからな……出来ることはやろうぜ?」
 佐倉が顔をしかめて思案する。
「そのとおりですね! 今からでも、一人でも少しでも人を多く救わねば!」
 正義の心を宿す草野も、智華の仮説に賛同する。
「おじさんも賛成だが、今回はそちらの方はやりたい人に任せるよ」
 バスティオンは手をひらひらと振ってみせる。
「なので、おじさんは悪ガキの説教に向かうよ」
「ボクはどうしようかな……?」
 リズが行動の指針に迷っている間、今まで静観していた華織が姉へ具申した。
「お姉ちゃんのやりたいことは判った。――それにしても、お姉ちゃん、そのエセ軍人口調、やめよ?」
「う゛っ……!?」
 妹は姉のキャラ作りに前々から難色を見せていたのだ。
「さっきはそのまま戦闘に突入しちゃって訂正するタイミングを逃しちゃったから、釘を挿せる今、きちんと言っておこうと思って」
「ご、ごめんなさい、華織……」
 ごほん、と空咳ひとつした智華は、皆に向けて指針をまとめた。
「河原崎さん達は、加害者側からの情報収集をお願いするでありま――」
「じーっ」
 妹の視線が冷たい。
「……お願いします。私は、このまとめサイトの情報から、被害者の居場所を特定してみようと思……います」
「じーっ」
 妹は姉を監視している。
「メッセージアプリで皆さんのグループチャットを作成して、そこで何かあったら情報のやり取りをしましょう! それじゃあ、ここからは別行動ということで」
「判ったわぁ。お互い、頑張りましょうねぇ?」
「被害者の方は、よろしく頼んだよ」
 こうして河原崎はバスティオンとともに、UDC施設をあとにした。
 残った智華、華織、佐倉、草野、そしてリズは、被害者の青年の足取りを追う。
「――さて、私から逃れられると思うなで――こほん――思うなよ!」
「うんうん。お姉ちゃん、そっちの口調のほうが華織は好きだよ」
「でさー、具体的にどうやって探すの?」
 事務椅子に座って体を伸ばしながら、リズは欠伸混じりに尋ねた。
 すると、智華は電脳魔術により、目の前の空間にARモニタを多数出現させる。
 そして、UDC組織のパソコンと併用し、高速タイピングを開始する!
「す、すごい処理速度……!」
 姉の実力を目の当たりにした華織が唖然とする。
「智華さん、僕もSNSを巡回して、手掛かりをもう一度探してみますね」
 草野は件のアカウントから少し離れ、炎上の渦中にある人物のアカウントを虱潰しに巡回しては、気になる発言をスクリーンショットにおさめてゆく。
「衝動的な事を書き込む人が、後から発言とかアカウントを消すとかあるあるですから、直感で気になったものは画像として保存していきますね。それに、この発言者達の示す『生まれ変わる場所』が実在するなら、これを見た人が当たらな被害者になりかねません」
 草野は念の為、グループチャットへ画像を何枚か提示しておいた。
「俺と妹ちゃんは先に北へ向かっておく。詳細が判ったら教えてくれ」
 手持ち無沙汰の佐倉が華織を連れて先行しようとドアノブへ手を掛ける。
 それとほぼ同時に、智華が叫んだ。
「見付けました!」
「はえーなオイ……!?」
 驚く佐倉。その隣で何故か誇らしげの華織。
「今、彼が居るのって、もしかして高速道路のパーキングエリアですか?」
 草野の指摘に、今度は智華が驚いた。
「そうですよ! 草野さんもすごいですね!」
「ちょうど、新しい目撃情報が上がってきました。まとめサイトさまさまですね。被害者の最新発言に掲載されている画像にも、ちらっとパーキングエリアの名前が写り込んでました」
 画像を確認すると、都内から1時間も経たない場所に位置するサービスエリアの名前が半分見切れていた。
「意外と遠いね? ユーベルコードの縮地を何回使えばいいかな?」
 華織のユーベルコードの剣術による足運びは、直線距離ならば一気に3.6kmもの距離をものの数秒で移動できる。
 だが、それは直線距離に限った話であり、実際は迂回したり何なりでユーベルコードの連続使用を強いられる。大切な戦闘を前にして体力を消耗させるのは避けるべきだろう。また、UDCアースで白昼堂々ユーベルコードを使用するのは、UDC組織的にアウトだと苦言を呈されてしまった。
「となると、ボクのマシンで皆を運搬するのも良くない感じ? 一応、光学迷彩は使えるけど?」
 職員から念の為NGと言われ、リズは小さく肩を竦めた。
「仕方がないね。ボクはこっちではなく、リーダーの方を手伝うよ」
「お気持ちだけ受け取っておきます、リズさん」
「それじゃあ、頑張って!」
 リズは急いで河原崎とバスティオンが向かった渋谷へ急行する。
 残された4人は、智華の運転する多用途車両RX-9[MOMIJI'S CUSTOM]で、目撃情報のあった高速道路を更に北上していった。

「さて、洗いざらい話してもらいましょうかぁ?」
 河原崎の赤いパンプスが、半裸の男の腹を踏みにじる。
「ぎゃあああーっ!? いてててててて!?」
「おいおい、男の子だろう? これくらい我慢しなって?」
 バスティオンは暴れる半裸の男の喉輪を、巨大な右の義腕で抑え込む。
「ぅぐ、ぇ……!」
「おっと、ごめんよ。ちょっと力加減が難しくてねえ?」
「ゲホゲホゲホッ! ……な、何なんだよ、テメェ等……!」
 バスティオンに抑えつけられたまま、2人を睨み付ける半裸の男。
 どうしてこんな事になったのか?
 時間を少しだけ遡ると、こういう事だ。

 河原崎は、猟兵達が注目した暴言アカウントの主とのダイレクトメッセージを試みた。
 装うは、少々世の中をナメきった19歳の裕福で自意識過剰な小娘。
 偽装アカウントのヘッダー画像に、適当な水着姿のグラビアアイドルの画像を掲載し、アイコンは真っ赤なルージュを引いた口元で妖艶さを醸し出す。
 まずは男の暴言について、河原崎は自尊心をくすぐるように褒め称えた。
『あれ、よくぞ言ってくれたわぁってカンジ! あなたは私の知りたいことを知ってるようだし、できればもっと教えてくれないかしら?』
 ちなみに、嘘は言っていない。
 男には猟兵の利する情報を【よくぞ言ってくれた】と河原崎は感謝しているし、【被害者の情報をもっと知りたい】と願っているのだから。
 すると、男は最初こそ怪しんだが、河原崎が立て続けに自身(※本当は無関係のセクシーアイドルの画像)の水着姿をメッセージに流して、女性の武器で攻めてゆく。
『ヒメちゃんって、自分の身体に自信あるの?』
 その後も、下心丸見えのメッセージの連続に、河原崎は思わず顔をしかめて嘔吐をする真似をする。
「……おえぇ、流石に身の毛がよだちましたわぁ」
「頼れる我等が団長さんも、やっぱり乙女だねえ」
「バスティオンさん? それってどういう意味かしらぁ?」
「いやいや、他意はないよ? でも、この調子だとあっさり釣れそうだねぇ?」
「ええ、脳味噌が精巣で出来ているようなお猿さんで助かったわぁ」
 メッセージのやり取りも大幅に脱線してきたので、ここらで殺し文句を放つことにした。
『ねぇ……このあと、時間あるかしら?』
『今からあなたと直接会って、色々と楽しみたいの……』
『さっきのお話の続きも、聞かせてほしい……』
『いいホテルがあるわぁ。そこで落ち合いましょう?』
 そして、河原崎の赤いドレス姿(ただし顔は隠れたまま)の画像を男に送ると、数秒で返事が来た。
『いいのかい? 今夜は寝かせねぇよ?』
「ちょっと、急にガツガツきすぎじゃないかしらぁ?」
 大笑いする河原崎、そしてバスティオンも呆れ返って冷笑を浮かべる。
「いやぁ、若いって身の程知らずだねぇ? さて、と……」
「ええ、UDC組織が手配したホテルへ向かいましょう?」
「若人には良いお灸になるだろうねぇ……」

 で、現在に至る。
 河原崎と一緒に部屋の中へ入った男が、ウキウキしながらシャワーを浴び終えて戻ってくると、部屋のベッドの上で見知らぬオッサンが殺気を放っていたのだ。
「なあ、あんまりおじさんを怒らせるなよ……!」
 バスティオンのユーベルコード『テリトリー・オブ・テラー』は、こういった一般人への尋問にも活用できる。
「だ、誰だよォ!?」
 恐怖心からか、声が上ずりながら男が尻餅をついたところへ、河原崎の赤いパンプスがパンツ1枚の男の腹を踏みにじり、その喉をバスティオンの右の義腕が抑え込んでいる状況だ。
「えっと、悪いけど、私達があなたに名乗る義理はないわぁ。ここでわざわざご足労を願ったのは、あなたがSNSでいじめていた人達へ教えている『生まれ変われる場所』について知りたいからよ」
「君は非戦闘員だ、無論、これ以上、下手に手は出さないさ」
 バスティオンは右の義腕を見せつけるように言葉を継ぐ。
「ただ、おじさんは君に思い知らせるだけだ。こんなことをしたって事実を、加害者の氏名やら何やらと一緒に拡散すればどうなるか? かといって、ここで下手に反抗したらどんな目に会うのか……わかるよねぇ?」
「な、なんだよ……? 誰かに、頼まれたのか……?」
「ごめんなさい、言えないのよね。でもおとなしく情報元を吐いてもらうわぁ」
「それが嫌なら、今度は君が被害者を追体験してみるかい? 団長さんに吐き捨てた下劣な発言の数々、こっちは保存済みなんだ。諦めて、洗いざらい吐いてもらおうか……自分の身の為にも、ね?」
「くそ……ハメやがって!」
 男は意固地になって口を割ろうとしない。
 どうするべきかと2人は思案していると、そこへリズが遅れて到着した。
「遅れてごめん! バスティオンの次はボクの手番かな? 早速、拷問器具を召喚するね!」
 リズは開口一番に物騒なことを言い放つと、ユーベルコード『義姉からの贈り物(メカニックウェポン・パーティ)』により、多種多様な拷問器具を具現化させた。
 それらを部屋中に並べまくれば、遂に男の心がポッキリと折れた。
「あぁ……ぁぁ……ッ!」
「完全に心をへし折れば、どんな強情でも必要な情報を教えてくれるだろうさ」
 バスティオンがニヤリと口元を歪ませた。
 こうして、正確な『生まれ変われる場所』を聞き出すことに成功した3人は、すぐさまグループチャットへ情報をアップするのだった。
「あ、今日あった記憶は、UDC職員が消去してくれるから安心して?」
 リズがギロチンの刃を上下にガションガションといじりながら笑顔で男へ告げる。
 男は恐怖で気絶してしまった事をいいことに、リズはすぐさま高分子ワイヤーで男を簀巻きにしてしまった。
「逃げ出されて記憶処理ができなくなると面倒だしね?」
 用意周到なリズのアフターケアにより、UDCアースの秩序が守られた。

「群馬県の廃テーマパーク?」
 華織はスマートフォンで住所を確認していた。
「赤城山の麓にあった、西欧の文化を体験できる施設だったようだな。今は解体されずに放置されているらしい。黒幕……親父さんは、そこにいる」
「そうですか……」
 智華は抑揚なく答えた。冷静さを保つように意識しているのだろう。
 佐倉が検索ワードで引っかかった施設の情報を閲覧する。
「お、美味そうなソーセージ。昔はバーベキューも出来たみたいだぜ?」
「いいですねぇ、バーベキュー。このご時世じゃなかったら、全サ連の皆さんと一緒に行きたかったです」
 草野は悔しそうに言葉を漏らした。
 運転している智華は、義眼と情報を連動させながら青年の足取りを追っている真っ最中だ。
「近いですね……! 下道を行きますよ!」
 智華は高速道路を降りると、迷うことなく一般道を突き進んでゆく。
 すると、わナンバーの白いレンタカーを発見。
「土地勘がないせいか、道に迷っていたようですね。おかげで追い付きました!」
 智華はハンドルを切ると、レンタカーの前に回り込んで車体で道を塞いだ。
 すぐにレンタカーは急停止すると、中から件の青年が降りてきた。
「危ないだろうが! 何考えてんだ!?」
 猟兵達もすぐに車から降りると、開口一番、佐倉が叫んだ。
「そっちこそ、何考えてんだ……!? 探したぞ、アンタのこと」
「え……?」
 青年の顔が恐怖で歪む。
 猟兵達を加害者だと思いこんでいるようだ。
 だから佐倉はすぐさま誤解をさせないように言葉を選ぶ。
「俺達は敵じゃねぇよ。むしろ、アンタがこれから向かうところは、その……あまりいい噂を聞かなくてな? もしかしたら、大怪我じゃすまねぇ可能性だってある」
「嘘だ、そうやって俺を苦しめやがって、いい加減にしてくれよ!」
 激昂する青年の元へ、佐倉はゆっくりと歩み寄る。
「止められて帰れるほど気楽じゃねぇよな。……アンタに救いは無いかもしれない。でも黙って死なせるワケにゃ行かないんだよ」
「お前、何なんだよ……? 赤の他人がでしゃばんなよ!」
「でしゃばっちゃ悪いのかよ?」
 佐倉の機械喉から漏れる声に魔力が混じる。
 その声を聞いた途端、青年はパペットのように糸で吊られたようにふわふわと身体をまっすぐ伸ばして視線を泳がせる。
「こころは繋がり世界は今、愛の円環に囚われる。……惚れ薬ならぬ惚れ呪術ってな。何を思うかは賭けだが、上手く行ってくれ。『呪言・天下恋鎖(ラブ・アンド・ピース)』……」
 ユーベルコードによって、青年の心を愛情と慈しみで満たす呪言が放たれた。
 但し、この効果は音声が届く範囲ならば無差別に効果を及ぼすため、仲間を巻き込まないように青年の耳元で佐倉は囁いた。
「……どうだ? 思い出したか?」
「ああ……母さん……」
 唐突に涙を流し始める青年。
 聞けば、幼い頃に両親が離婚後、母親と2人で今まで生活してきたのだとか。
 この春、一人暮らしのために地元を離れて動画配信を始めたものの、アップした動画ネタが意図せず同じ日に投稿された有名配信者の動画内容と、運悪くネタが被ってしまい、そこから自己弁護と反論を繰り返しているうちに炎上してしまったのだという。
「女手一つで育ててくれた母親がこのことを知ったら、悲しむんじゃねぇか?」
「……そうかもな」
 青年は涙をこぼしながら、先程とはうってかわってしょげかえっていた。
 佐倉は青年の肩を叩き、慰めの言葉を掛けた。
「顔も知らない連中より、アンタが想うべきものがあるはずだろ。なあ……生きるしかないだろ」
「……そんなに、そこは危険な場所なのか?」
「はい、残念ですが、行方不明者が急増しているんです」
 草野は、かき集めた情報のスクリーンショットをスマートフォンで青年に見せた。
 大々的な報道はされていないものの、確かに間隔を置いて廃テーマパーク周辺での失踪者が跡を絶たない。
「あなたはまだ狂気の世界に堕ちなくてもいいんです。ここから先は、あなたが知らなくていい世界です」
「それは、どういう意味……?」
 青年の問い掛けは、果たされることはなかった。
『♪静かに聞こえるのは、恋に恋する花びらの雨の歌声――』
 マグノリアの花のようにに甘い歌声が青年の耳に届いたときには、彼は深い睡眠の海へと堕ちてゆく。
 草野のユーベルコード『Pluvia amor(コイサメ)』は、指定した対象を昏睡させる事ができる。
「よっと! それじゃあ、縮地で安全な場所へこの人を退避させるね!」
 華織は青年を俵担ぎしたまま、何処かへすっ飛んでいった。
「レンタカーは近くのコインパーキングに駐車しておきましょう」
 智華はUDC職員にレンタカーを任せると、他の猟兵を連れて群馬県の赤城山麓へ急行する。
 いよいよ、運命の歯車が動き出す――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『未知を既知とする者』紅葉・公英』

POW   :    観測器具に依る短期未来演算
【周囲の観測機を用いた正確な未来演算で】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    作業用腕部投棄に伴う純戦闘特化形態への移行
【背中のロボットアームを捨て、純戦闘形態】に変形し、自身の【精密作業の精密さ】を代償に、自身の【未来演算の精度と戦闘行動の練度】を強化する。
WIZ   :    機械化兵団援護射撃及びトリモチランチャー
【人体改造により作り出したサイボーグ傭兵を】【召喚し、その援護射撃に合わせて背中の】【ロボットアームから特殊なトリモチ】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。

イラスト:純志

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠紅葉・智華です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 群馬県、赤城山麓。
 かつては賑わいを見せていた西欧風のテーマパークも、積み重なった赤字が原因で解体工事すらままならずに、幾年もの年月が過ぎ去っていた。
 このまま廃墟としてくちてゆくのを待つばかり。
 ――本来であれば。

「ふむ、定刻通り。流石は私の未来演算。完璧な精度だ……」
 ボロボロの白衣を纏ったサイボーグ……『未知を既知とする者』紅葉・公英。
 猟兵達は遂に、彼の研究所(ラボ)に辿り着いた。
「遂に、この日が来たか……。我が身を改造しても、娘を実験素材に差し出してもなお実現しなかった……『対邪神抹殺最終兵器』の完成の日が、遂に目の前に……!」
 紅葉・公英は大仰な素振りで天を仰ぐ。
 時刻は既に日が暮れ、頭上には山麓特有の満天の星空が広がっていた。
 施設の僅かな該当だけがぼんやりと紅葉・公英と猟兵たちを照らしているため、接近しなければ互いの顔をよく視認することは出来ないだろう。
「私はかつて失敗した。邪神を屠るため、最高のスペックを誇る兵器を自身の身体に埋め込んだ。だが勝てなかった。素体が悪かったと判断し、今度は若年者……つまり私の娘を素体とした。これが上手く適合したはいいが、本人の自我が私の計画を邪魔した。だから、私は考えた……【自我は不要。だが、誰かへの叛逆心を持った若い肉体の素体】が、一番適しているのではないか、とね?」
 闇の中で蠢く、大量のオブリビオンの気配。
 これは、鬼戦車……? しかもありえない数がひしめき合っている!?
 この男は既に、行方不明者達を改造し、自我を取り去り、虐められた事による他人への害意だけ残したまま、異形の兵器へと作り変えていたのだ!
「ああ、そうだ。未来演算の観測機は、彼らに仕込んである。今まで製造した無尽蔵の機体数をここに集結させてあるのでね、完全破壊は無駄だと思いたまえ」
 文字通り、闇雲に周囲の敵を薙ぎ払うよりも、目の前の黒幕を叩くほうが最善策なのだろう。ここまで猟兵へ手の内を貸すということは、つまり、相当の自信があるということだ。
「実験は成功だ。鬼戦車は一定の効果を上げた。あとは、君たち猟兵の肉体を手に入れ、素体として利用させてもらおう。そうすれば、私はこの世界を邪神から解放できる……!」
 目の前の男の狂信を食い止めなければ、被害者は増え続けるだろう。
 さもなくば、ここで運命の決着を付け、未来を切り開け、猟兵達!
天宮院・雪斗(サポート)
『なせば大抵なんとかなる』
 妖狐の陰陽師×ビーストマスター、7歳の男です。
 普段の口調は「子供(ぼく、相手の名前+ちゃん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」、怒った時は「子供(ぼく、呼び捨て、だね、だよ、だよね、なのかな? )」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


桑原・こがね(サポート)
あたしを見ろォ!
登場は雷鳴と共に、派手に演出していきたいわね!
名乗りを上げて注目されたいわね!
囮役とかも嫌いじゃないわ。

こそこそしたり駆け引きするのは苦手だし、何事も正面突破の力技で解決したい!

戦うときは大体斬りかかるか、武器を投げつけるか、雷出すかのどれかね。徒手空拳も心得が無くもないわ!

さーて、雷鳴を轟かせるわよ!



 無尽蔵に出現する鬼戦車の特性は厄介だ。
 いちいち相手にしていれば、紅葉・公英に背後を突かれてしまいかねない。
 故に、救援に駆け付けた猟兵2名は、取り巻きを無視して黒幕を直接狙っていく。
「敵の数は多いけど、なせば大抵なんとかなる!」
 子供用の狩衣に袖を通した天宮院・雪斗(妖狐の陰陽師・f00482)は、霊符を携えて鬼戦車の頭を飛び渡ってゆく。
 その姿は、まるで伝説の武将の偉業を彷彿とさせる身のこなしだ。
「八艘飛びを実際にお目に掛かれるとは、猟兵の身体能力はやはり素晴らしい!」
 公英は背中のロボットアームを捨て、純戦闘形態へ移行する。
「この姿では精密な動きは出来ないが、代わりに私の本命である未来演算の精度と戦闘行動の練度が強化される! 君の攻撃は読み切っ……」
「神狐扇! 大きくなあれ!」
 天宮院は懐から取り出した扇を巨大化させたかと思えば、妖力を籠めた大風を公英へぶつけた!
「ぐわぁっ!? 飛ばされるっ!?」
「いくら予測できても、耐えきれなければ無意味じゃないかな?」
 そのまま風に乗って加速した天宮院は、怯んだ公英の背中に霊符をぺったりと貼り付けた。
「七星七縛符! これでしばらく大人しくなってよ」
「なんだと……私の体が動かない! それに未来演算が停止した、だと?」
 ユーベルコードの効果で、その場に釘付けになってしまう公英。
 この好機を逃さんと満を持して登場したのは、金色の女侍こと桑原・こがね(銀雷・f03679)であった。
「雷鳴を――ッ」
 女侍はいつの間にか登っていた売店の屋根から高々と跳躍!
 白銀の雷光を纏いながら、空中で一回転!
 着地とともに大音量の雷鳴を周囲に轟かせる!
「轟かせろォーッ!!」
 勿論、着地はアメコミヒーロー系膝立ちでキメていた。
(正直めちゃくちゃこの態勢で着地すると膝が痛い……!)
 内心、ちょっと泣きそうになる桑原。
 しかし、これこそが彼女のユーベルコードの真髄なのだ。
「雷鳴団団長、桑原・こがね、推して参る! さぁ、あたしを見ろォッ!」
 闇の中で輝くサムライブレイドを星空高く掲げ、オブリビオン達の注目を一気に浴びる。
 目立つためならどんな不利なことを押しても構わない。
 その心意気が彼女の身体能力向上に繋がる。
 ユーベルコード『轟雷』は、自身の目立ちたがり屋の性格を遺憾なく発揮する手段と目的なのだ!
「というか、元々小細工するつもりはなかったし、最初から正面切って突撃するつもりだったわ!」
 そう告げると、桑原は目の前を遮る鬼戦車達を足蹴にしつつ、猛ダッシュで公英へ肉薄!
「最速で一直線に! あたしの豪雷の一撃、受けてみろッ!!」
「まずい! 未来演算で剣筋は読めているのに体が動かない!」
「でりゃあぁーッ!!」
 目立つことで最大限まで強化された膂力から繰り出された斬撃が、公英の鈍色の体表を切り裂く!
「ぐはッ!? やはり……猟兵は未来演算を超えてくるのか!」
「ごめん、お姉さん。ぼく、もう限界……」
 しかし、ここで天宮院がユーベルコードを解除してしまった。
 七星七縛符の使用中は、術者の寿命を毎秒縮めてゆく代償を伴う。
 疲労の色が濃く出た天宮院を支える桑原は、他の猟兵達へ告げる。
「一太刀は入れてやったわ! あとは、しっかりとどめを刺しなさい!」
 そう告げると、再び轟音を撒き散らしながら天宮院を抱えて戦場から離脱してゆくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

河原崎・修羅雪姫
【モミジ連合】アドリブ歓迎。
「智華さんと華織さんが、自らの因縁に決着を付けようとしている。その邪魔はさせないわよぉ!」
この事件に対してこう感じ、猟兵として参加します。

戦闘中、戦いながらも、戦場全体や仲間の状態に常に気を配ります。
鬼戦車は、倒すと増える。だから「範囲攻撃」で使ったUC「グレムリン・エフェクト」で行動不能にさせるのが効果的なのは、第1章でわかっているわ。

バスティオンさんが作った簡易コロセウムの周囲を死守します。
『未知を既知とする者』紅葉・公英と二人の姉妹の対決を、
何人にも邪魔させないわぁ!


草野・千秋
【モミジ連合】
アドリブ歓迎

智華さんと妹さんの因縁、
なら僕らも黙っていられませんね
何故かって?
僕たち鋼の絆、仲間の智華さんとその妹さんの危機だからですよ

勇気を持ってすべての行動をします

歌唱、楽器演奏、【Fabulous Fabula】で味方を鼓舞
召喚されたサイボーグ傭兵を蹴散らし
範囲攻撃、スナイパー、一斉発射で敵戦力を削りを優先
姉妹が父親の元へ向かう道を作る

未来演算?そんなの関係ない!
僕たち猟兵は未来を変えてみせるッ!
この姉妹にはもっと素敵な未来があるはずです
第六感、戦闘知識、視力で敵攻撃を観察しかわそうとする
被弾するようなら盾受け+激痛耐性で耐えつつ味方はかばう

さぁ!あとはあなた方のその手で!


バスティオン・ヴェクターライン
【モミジ連合】アドリブ絡み歓迎
「親と子でケリつけようってんなら、おじさんに任しときな。」

敵の親玉の男と、同じモミジ連合の智華君(f07893)、華織君(f12932)の二人、計三人だけをUCで囲って簡易的なコロセウムを作る。鬼戦車が乗り越えられないようにちょっとしたネズミ返しみたいな構造にしようかな。

鬼戦車共はこっちで受け持つ。【武器受け(剣)】【盾受け(盾群付義腕)】で敵の攻撃を防ぎつつ前線で奴らを相手取る。一台一台砲身を【ドーピング】で強化した【怪力】でひしゃげてやれば戦車として戦う事は出来ないだろうさ。

「あのクソッタレをぶっ飛ばしてきな、二人とも。」


リズ・ルシーズ
【モミジ連合】で参加、アドリブ・連携歓迎だよ!

【SPD】

親子の邪魔はさせないよ?

バスティオンの作った外壁のさらに外側に、【ロープワーク・罠使い】を活用し高分子ワイヤーで近づくものを邪魔する即席のトラップを準備だよ。

1つ、2つ、3つっと!

光学【迷彩】を施し、動きをさとられないように立ち回りながら、似刻印による光【属性攻撃】のレーザーによる【援護射撃】を【スナイパー】として行うつもり

智華達のお父さんの思想ね……被造物の立場としては、ボクを作った研究者たちも同じようなことを思ってたのかもね

城壁を見上げ呟き、皆の傷を癒やすべく【指定UC】を使用だね。防壁の補修と皆の回復を行うよ。


紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

「――やっと会えたよ、父さん」
どうしてこうなったのかはもういい。今は、周りに害を出す貴方を屠る。
バスティオンさん(f06298)の城壁で、私と華織(f12932)、父さんの2対1に。他を皆さんにお任せする分、私達で敵を倒す。

佐倉さん(f14517)から渡された手榴弾を適当なタイミングで敵の足元へ【投擲】して隙を作れたら理想。

未来演算とは後出しじゃんけん。【第六感】や【見切る】事が重要。『ラプラス』に補助してもらい、最後は私の勘。少しの負傷は受け入れ、【選択UC】を叩き込む。
「――バイバイ、父さん」
研究熱心だけど家族想い。そんな父さんはもう死んだのだから。ちゃんと別れないと。


紅葉・華織
【モミジ連合】
※アドリブ・連携歓迎

「アンタだけは許さない」
私達の父親。もぬけの殻となったかつてのお姉ちゃんの家には、色んな証拠があった。どこで狂ったかは知らない。でも、あの私にも優しくしてくれたあの人の身体でこれ以上の悪事は許せない。

バスティオンさん(f06298)の城壁の中で、私達対敵の2対1。これ以上は望めない。持ち前の【選択UC】で【見切り】、『秘鞘』で【盾受け】しつつ、敵が簡単に攻勢に出てこれないように、積極的に前に出て『月華』斬り込む。なんか月華が脳内に直接語りかけてるケド、そんなんどうでもいい。隙を作ったらお姉ちゃんが前に出る。
「――行っけええぇっ! お姉ちゃん!!」


佐倉・理仁
【モミジ連合】
決戦のための雑魚散らしを引き受けるぜ。
とりあえず邪魔な機械化兵団・鬼戦車群を取っ払ってやらんとな。

【生命を願うもの】
親父さんまでの道を切り開く。+バスティオン(f06298)が結界をはるスペース造りも。たまにゃ力任せって手段もあるよな!『なぎ払い』

俺の得意じゃねーけど、この程度蹴っ飛ばしてやるさ。
ダメージを与えるよりも行動封じを意識しつつ暴れてやる。防壁の維持に大事なバスティオン周りは念を入れて。


足でも滑らせろっておまじない『呪詛』かけといたから、持ってけよ!(ペイント手榴弾を紅葉(f07893)へ



 決戦は闇の中。
 蠢く無数の鬼戦車が、黒幕までの道程を阻んでいる。
「智華さんと華織さんが、自らの因縁に決着を付けようとしている。その邪魔はさせないわよぉ!」
 河原崎・修羅雪姫(プリンセス・スノーブラッド・f00298)の号令を皮切りに、紅葉・華織(奇跡の武術少女/シスコン師範代・f12932)と紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)の因縁を見届けるべく集結した仲間が動き出す。
 草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)はすかさず変身して戦闘形態へと移行。しかし、その姿は日中に見せた銀と青の装甲ではなく、黒と赤の禍々しい装甲であった。これは草野が真の姿がところどころ発現している証拠だ。
「この戦いは智華さんと妹さんの因縁。なら僕らも黙っていられませんね」
 半ば白髪に染まってゆく自分の前髪を掻き上げながら、草野は好戦的な笑みを浮かべた。
「何故かって? 僕たち鋼の絆、仲間の智華さんとその妹さんの危機だからですよ!」
 鬼戦車の最奥で控える黒幕へ聞こえるように、わざと大声で叫んでみせた。
 バスティオン・ヴェクターライン(戦場の錆色城塞・f06298)は鱗盾めいた右の巨腕を掲げながら、紅葉姉妹へニタリと微笑む。
「親と子でケリつけようってんなら、おじさんに任しときな」
「そうだぜ。決戦のための雑魚散らしなら、俺達が引き受けるぜ」
 佐倉・理仁(死霊使い・f14517)が目の前の鬼戦車の群れをじっと見据えながら告げた。
 と、その前に、佐倉は智華へ『あるもの』を手渡す。
「俺からの『お守り』だ。足でも滑らせろっておまじないをかけといたから、持ってけよ!」
「佐倉さん、感謝します!」
「ボクも頑張るよ! だから、2人はお父さんのところへ行って!」
 完全武装のリズ・ルシーズ(Re-Z・f11009)もまた、これからの激戦に語気を強める。
 仲間の激励と支援に、智華は小さく頭を垂れる。
「……ありがとうございます」
「お姉ちゃん、そろそろ行こう?」
 華織の双眸に漆黒の殺意が宿っていた。
「アイツを殺す。――そのために、私達はここまで来たんだから」
 妹の強い決意は本物だ。
 だが、姉である智華の心中は複雑だ。
「……うん、これ以上、父さんの姿をした『怪物』を野放しに出来ない」
 智華は進んで父親を『怪物』と定義することで、自分の気持ちを一旦の折り合いをつけた。
 再度、智華は河原崎達へ向き直ると、華織の手を握って一礼した。
「……いってきます。皆さん、よろしくお願いします!」
「了解よぉ。全サ連の底力、見せつけてやるわぁ!」
 河原崎を筆頭に、猟兵達が鬼戦車の集団の中へ飛び込んでいった。

 戦闘が始まって10分弱が経過しようとしていた。
「鬼戦車は殺しちゃ駄目よ! 殺せばユーベルコードで増殖するわぁ!」
 河原崎は警告を発するものの、バスティオンは最奥から飛んでくるトリモチ弾と鬼戦車の援護射撃を交わすべく、目の前の鬼戦車を盾にせざるを得なかった。
「判っちゃいるが、あの黒幕からの攻撃も飛んでくるのは想定外だねぇ?」
 破壊された鬼戦車は、しばらくしてから復活し、更に増殖していった。
「バスティオン! 早く2人とあのお父さんを鬼戦車から隔離してよ!」
 リズも思わぬ援護射撃に防戦一方を強いられる。
 彼女の行動は、バスティオンの行動が起点となっているため、今ここで動いては敵に動きを気取られてしまう。
 故に、重力制御装置による敵の弾幕の防壁を展開し、接近する敵には高分子ネイルから高圧電流を流して動きを鈍らせるに留まっていた。
 だが、想定外の敵の数と妨害によって、バスティオンの目論見はなかなか実行できない。
「黒幕の周りの鬼戦車を殲滅しないと、作戦通りに隔離なんて無理だねこりゃ……!」
「チッ! だったら俺がやる! たまにゃ力任せって手段もあるよな!」
 佐倉は自身の胸元に宿るUDC『擬神心臓』を呼び覚ます。
「この鼓動を止めない為によ、頼むぜ。俺に、力を。ハートビートッ、俺たちは『生命を願うもの』だ!」
 ユーベルコードを発動させた佐倉の肉体が急変してゆく。
 全身の筋肉が膨張し動脈と静脈は剥き出しに透け、その皮膚の色は黄金であった。
 UDC『擬神心臓』と融合した佐倉は、頑強さと超再生力を持つ侵食変異の首無し巨人に変身した!
「俺の得意じゃねーけど、この程度、蹴っ飛ばしてやるさ! おら退け! バスティオンのおっさんがそこに用があるんだ、キリキリ動けよ!」
 足止めの呪詛が籠められた蹴りを喰らった鬼戦車達は、吹き飛ばされてそのまま意識を保ったまま身体を硬直させてしまう。これならば増殖と復活をすることはないだろう。
 そこへ浴びせられるトリモチ弾と砲弾の嵐!
 佐倉の身体に尽く浴びせられてゆく!
 だがしかし、全身の銃創は数秒で治癒し、身体に纏わり付くトリモチも、単純に常識外れな剛力を持ってして身から引き剥がしてしまった!
「ってぇーなぁ!? だが、生命の塊と化した今の俺なら、この程度の弾幕とトリモチは効かねぇんだよ!」
「佐倉さんが奮戦している間に、2人とも、早く!」
 河原崎はユーベルコード『グレムリン・エフェクト』を発動させ、鬼戦車達の大群を怯ませることで無力化させてゆく。日中での戦闘経験で対処法をすでに学んでいたのだ。
「僕の勇気のすべてを奮って、皆さんを援護します!」
 真の姿へと変貌を遂げつつある草野は、己の歌で仲間を鼓舞し始めた。
 この瞬間のために用意していた群青色のギターこと『horizon indicum』を小型アンプと接続すると、願いを籠めた歌声を高らかに戦場に響かせ始めた。
「♪これは僕の小さな物語、この歌を聴いている人だけに教えてあげる」
 それは『誰よりも強くなる』という願いを籠めた歌だ。草野の歌声を聞いた猟兵達は、その歌とメロディーに自分自身を投影する。仲間を含めた草野の戦闘力が、この瞬間、一時的に超強化される!
「このギターは戦闘にも活用できるのです! こんなふうに!」
 歪んだ金属の音色を轟かせると、音波による気絶攻撃が鬼戦車達を苦しめる。
「完全に気絶させたら復活してしまいますから、加減をしないと……!」
 全力で威力をぶつけないように調節しながら、草野もまた鬼戦車達の無力化を進めてゆく。
 紅葉姉妹が乱戦の合間を掻い潜って前進してゆくと、目の前から弾幕が襲い掛かってきた!
「危ないっ!」
 草野が背中で弾幕を受け止め、トリモチを体中に浴びてしまう。完全にユーベルコードが封じられてしまう前に草野は身体を藻掻きながら、後ろを振り返って黒幕へ想いをぶつけた。
「未来演算? そんなの関係ない! 僕たち猟兵は未来を変えてみせるッ! この姉妹にはもっと素敵な未来があるはずです!」
 トリモチで動きが多少鈍りはするものの、草野は負けじと姉妹の肉盾となりながらギターを掻き鳴らす。
 爆音は鬼戦車達を吹き飛ばし、黒幕までの血路を開かせた。
「さぁ! あとはあなた方のその手で!」
「ありがとうございます、草野さん! 皆さん!!」
「あとはよろしくお願いします!」
 紅葉姉妹が、黒幕の前まで進み出たのを確認したバスティオン。
 その周囲が完全にクリアされた瞬間、ようやく作戦通りにユーベルコードを発動させた。
「あのクソッタレをぶっ飛ばしてきな、二人とも! さぁて、おじさんも仕事をしようか。ここからは、斃されなきゃ負けじゃないのさ」
 バスティオンはすかさず右義腕に内蔵された機構が地面や床を変質・変形。
 ユーベルコード『フオーティテュード・フォートレス』!
 ようやく、紅葉姉妹と黒幕の周囲に頑強な城壁を出現させて鬼戦車達と隔絶させることに成功した。

 場外では、全サ連のメンバーたちが無尽蔵の鬼戦車達と対峙していた。
「鬼戦車共はこっちで受け持つ。ここから先は通すわけには行かないね」
 バスティオンは右義手を振り上げ、鬼戦車達を威圧する。
 リズもようやく役目を果たせると勢いを取り戻す。
「親子の邪魔はさせないよ? 外野は大人しくしてて!」
「バスティオン! さっきの弾幕でだいぶやられていただろ? 無茶すんなよ?」
 佐倉がユーベルコード発動者であるバスティオンを庇うように前へ進む。
 だがバスティオンも負けじと佐倉の横に並び立った。
「こういうときくらい、おじさんもカッコつけさせてほしいな」
「ハッ……おっさん、無気力キャラじゃなかったのかよ?」
 佐倉の言葉に、横で静かに笑うバスティオン。
「全サ連、いや今はモミジ連合と呼ぶべきかな? 智華君と華織君が命を懸けているんだ、大人がそれを守らないでどうする?」
「そういうことよぉ! さぁ、全サ連の誇りにかけて……『未知を既知とする者』紅葉・公英と2人の姉妹の対決を、誰にも邪魔させないわぁ!」
 この啖呵が合図となり、両陣営が激突する!
「1つ、2つ、3つっと! ようやくボクの作ったトラップの効果を発揮できるね!」
 リズは味方の攻防に紛れて光学迷彩を発動。
 城壁の周囲に高分子ワイヤー製の簡易トラップをばら撒き始める。
 密集した戦場の中で、足止め用のトラップは効果絶大だった。
 将棋倒しになったり、互いが衝突しあって足並みが大幅に崩れてゆく鬼戦車達。
 そこへ、周囲の景色に溶け込んだリズの擬似刻印からレーザーが発射されれば、鬼戦車達の脚を射抜いてその場に釘付けにしてゆく。
 狙撃手の定石通り、城壁の周囲をぐるっと一周しつつ、罠をバラ撒いては敵影の影から狙撃を繰り返していった。
 ふと、リズは城壁を見上げて呟く。
「智華達のお父さんの思想ね……被造物の立場としては、ボクを作った研究者たちも同じようなことを思ってたのかもね」
 リズもまたサイボーグという被造物としての立場から、己を生み出した者への思想を推測する。
「本来、ボクは戦闘用じゃないけどね。けれど、それでも大切な仲間を守ることは出来るよ!」
 押し寄せる鬼戦車達の攻撃で亀裂の入る城壁へむけて、リズはユーベルコード『Re-Generate(リジェネレイト)』を起動させる。
「『接続、解析、再構築』全てのものは在るべき形にだよ!」
 放たれたナノマシンが、瞬時に城壁を完璧に補修していった。
「みんな、怪我してない? ボクが治してあげるからね!」
 自分に出来ることを今、懸命に行うべく、リズは戦場を駆け巡る。
 その間、前線で戦うバスティオンと佐倉は、まさに獅子奮迅の働きを発揮していた。
「殺さないで無力化するって、案外、大変なんだな……!」
 佐倉は鬼戦車を投げ飛ばしたり蹴り飛ばして、城壁へと寄せ付けないように暴れまわる。
 対してバスティオンは、鬼戦車達の脚や砲身をへし折ることで、移動と攻撃が出来ないように動いていた。
「肝心な部分がひしゃげてやれば戦車として戦う事は出来ないだろうさ」
 バスティオンは紅い潤滑油を噴出させながら、何度も右義腕を振るってゆく。
「でも、このままだと消耗戦……僕達のほうが圧倒的不利です……!」
 ムードたっぷりな楽曲から、次第に激しいロックテイストへ音色が変わってゆく草野のギター音。
 音波という範囲攻撃は大量の鬼戦車達を押し止めるのに一役買っていた。
 全身の勇気でくさのは立ち向かうが、同時に冷静に戦況を分析していたのだ。
 しかし、撤退は許されない。
 全ては紅葉姉妹に託されているのだから。
「ここからが正念場よぉ! あの2人をみんなで信じてあげましょ!?」
 99mm口径アンチマテリアルライフル・ドラグーンの援護射撃で、河原崎もまた鬼戦車達の脚を潰してゆく。
 ユーベルコードによって怯む個体はあれど、彼女のユーベルコードは広域に発揮できる効果ではない。
 故に効果の対象外となった個体からの襲撃を許す結果となった。
「もっと、もっと強くならないと! 響け! 『Fabulous Fabula(チイサナモノガタリ)』!」
 草野の歌声が城壁の外に響く。
 終わりの見えない防衛戦に、全サ連メンバーは徐々に削り取られてゆくのだった……。

「……と、今頃はお友達は苦戦を強いられているだろうな」
 黒幕である『未知を既知とする者』紅葉・公英は、自分の娘達へ如何に自分の未来演算が正確かを誇っていたのだ。
 そして、草野の歌声とギター音が城壁の外から聞こえると、その内容は一致していると紅葉姉妹は思い知らされてしまう。
「2人にはがっかりだ。兵器ならば、お仲間と一緒に私への飽和火力をぶつければいいだけの話だ。それを行わずに宿縁を重視するとは、やはり兵器に自我は不要だ」
「父さん……」
 智華はたじろいでいた。
 目の前の敵は、智華の未来演算器官である義眼『虚構の神脳(ラプラス)』の性能を遥かに上回っていたからだ。
(未来演算とは後出しじゃんけんだ。父さんに勝つには、父さんの予測した未来を更に演算し直せば勝てると思っていた)
 だが、現実は違った。
(もはや父さんの未来演算は『未来決定』に近い……! 決定された未来は、何度演算しても揺るぎようがない! これは観測機を鬼戦車達に搭載させることで、演算精度を極限まで高めてるからこそなせる業……! しかも倒しても復活・分裂する性質を持つのなら、城壁の外にいる全サ連に勝ち目はない……!)
 青ざめる智華を見た妹の華織は、殺意を隠さずに公英へと歩み寄る。
「アンタだけは許さない」
 秘刀【月華】を黄金の鞘から抜き払い、その蒼く輝く刃を闇夜に浮かび上がらせる。
「アンタは、私達の父親の姿を借りた悪魔だ。もぬけの殻となったかつてのお姉ちゃんの家には、色んな証拠があった。アンタが勝手にお姉ちゃんを機械の体にしたこと、アンタの野望のための道具にお姉ちゃんが改造されたこと、そして、その野望はお姉ちゃんの自我の覚醒で失敗に終わったこと、そのままお姉ちゃんが逃亡・失踪したこと! あれからずっと、私はお姉ちゃんとアンタを探していた! どこで狂ったかは知らない。でも、あの私にも優しくしてくれたあの人……父さんの身体で、これ以上の悪事は許せない……!」
 ギリギリと奥歯を噛み締め、姉を庇うように仇敵を睨み付ける華織。
 公英はそんな華織に言葉を投げかけた。
「華織……久しぶりだ。大きくなったな。本当、母さんにそっくりだ」
「っ!? いまさら……父親面するなぁアアアーッ!!」
 怒声! 咆哮!
 華織が振るう剣撃に、公英は背中の作業用アームを破棄して対処する。
「クソッ! 当たれ! 当たれよこのぉッ!!」
「無駄だ、華織。父さんの未来演算で、華織の太刀筋は完全に見切った。そして……」
 振りかぶられる公英の拳。
「これでおしまいだ」
 それに華織は素早く反応する。
「その気配、危険だね!?」
 華織のユーベルコード『天性の超直感(ナチュナルセンス)』により、放たれた拳を黄金の鞘こと秘鞘【月煌】で受け止めることに成功する。
 そのままカウンターを打ち込もうとする華織。
 だが、次の瞬間、華織の身体は強烈な衝撃を浴びて空中を舞っていた。
「かハッ!?」
 何が起きたのか理解できなかった。
 空中で混乱する華織へ、公英の身体が肉薄する!
「ハッ! セッ! フンッ!」
 素早い体捌きからの3連撃!
「そんな、この動き……父さん、八極拳なんて何処で!?」
 愕然とする智華は、妹へ鉄山靠をぶちかます光景に息を呑んだ。
「ゲハッ!? おぇえぇ……!!」
 アスファルトの地面に叩き付けられ、バウンドする華織の身体。
 思わぬ大打撃に、しばらく復帰が出来そうにない。
 公英は長女の疑問に答えた。
「智華、父さんの悲願は邪神の抹殺だ。そのために、父さんはありとあらゆる殺人術や武術を習得してきた。だが、どれも邪神相手には通用しなかった。相手の強さが規格外すぎたのさ」
「でも、生身の人間ひとりを殺すには十分過ぎる攻撃力を誇るってこと……?」
「その通りだよ、智華。さすがだ。智華は小さい頃から頭が良かったね。すぐに父さんと同じレベルの思考に辿り着く。その頭脳は神童そのものだったよ。……私の野望も、あの時までは理解してくれると思っていたんだけどな……」
 あの時――智華が改造手術を施された直後のことを指すのだろう。
「実の娘を対邪神用兵器に改造する父親の考えに賛同しろというのが無理があるよ、父さん……!」
「だが、智華はその得られた力で何をしてきた? 傭兵団で戦果を上げ、猟兵として私に立ちはだかるまでの間、ラプラスの世話になったんだろう?」
「それは……!」
 思わず二の句が継げない智華。
 今や智華はグリモア猟兵として数々の難事件を予知し、自らも戦闘に身を投げて奮戦してきた。
 それもこれも、改造されて手に入れた『虚構の神脳(ラプラス)』の恩恵だった。
 震える手で智華は04-MV[P/MC]マルチロールアサルトウェポン【刹那】を構える。
 ガタガタと奥歯を震わせ、目の前の怪物に立ち向かおうとする。
 しかし、次の一歩が踏み出せない。引き金を引くことが出来ない。
 敵から得た力で世界を救ってきた智華は、自己矛盾に気が付き動揺を隠せない。
 その時、不意に、公英が智華へ手を差し伸べる。
「父さんはオブリビオンかもしれない。だが智華の父親であることも事実なんだ。邪神抹殺は猟兵の本分だろう? だったら、利害は一致している」
「だ、め……おね、ちゃ……」
 嗚咽とともに声を絞り出す華織が制止する。
 だが、智華は差し出された手をじっと見詰めている。
「智華。小さいときからお父さんっ子だった智華なら、この手を取ってくれるはずだ。さぁ……」
「だめ……! 行っちゃ、いやだっ!!」
 満身創痍の身体を無理矢理に起き上がらせた華織の身体が爆ぜた。
 神速の縮地めいた足捌きで仁英に飛び掛かる!
「大好きなお姉ちゃんを、また奪わないで!!」
 大上段から繰り出される一撃を、公英は難なく回避。
「華織……? 昔からそうだった、お姉ちゃんがいなければ何も出来ない、全然あの頃から成長していない甘えん坊さんだ!」
 公英は身体を反転させると、後ろ回し蹴りを放つ!
 今度はムエタイだ!
 蹴りの軌道は華織の側頭部(テンプル)を完全に捉えており、直撃すれば命の保証はない!
 途端、華織は周囲がスローモーションで動くように感じ取れていた。
(走馬灯……? ああ、私、殺されちゃうのかな……)
 自分の体がうまく動かない。
 全身が石になったかのように重く、硬い。
 迫りくる蹴りだけが無情に死のカウントダウンを刻む。
(ごめん、みんな……ここまでだったよ……)
 華織が諦めかけたその時、誰かが肩を叩いた。
(え、誰?)
 華織が当然振り向けない。
 しかし、肩を叩いた人物は、華織の目の前を自在に動いてみせた。
(嘘……私自身?)
『主殿、あと2秒で死ぬが、それで良いのか?』
 ケケケと嘲笑う、華織の顔をした別人。
 その少女は告げた。
『この月華に身体を預けよ。さすれば主殿を見事、この窮地から救って差し上げましょうぞ』
(脳内へ語りかけるだけじゃなく、私の身体を模して目の前に現れるなんて……!)
 目の前の少女は、華織の持つ妖刀の化身であった。
 今までも事あるごとに何かを語り掛けていたが、その都度に無視をしてきた。
 だが、今回ばかりは月華も切羽詰まっているようだ。
『せっかく主殿のような優秀な剣の腕の持ち主を失うのは惜しい。あと1秒で死ぬぞ? 早くしなされ?』
(ああ、もう! 恩着せがましいなぁ!! いいよ、お願い!!)
 バチンッ!
 華織の中で何かが弾けた感覚があった。
 そして時間の感覚が戻ってゆく!
「今度こそ……!」
「終わるのはそっちだ、クソ親父!」
 智華の剣閃が、公英の脚を斬り裂いだ!
「ぐわぁッ!? なんだと……? この未来は、一体!?」
「うわ、こういう事ができるのなら早く言ってよ、月華?」
 自動的に刀を繰り出す感覚に驚く華織は、脳内の声に抗議する。
『主殿が無視し続けていたのであろう? 自業自得よ、ケケケ!』
「うわ、やっぱり今後も無視しようかな……」
 愛刀の性格の悪さに辟易しつつも、『彼女』の助力を得て全身の神経を極限まで研ぎ澄ました華織が復活する。
「これが明鏡止水の境地ってやつ? 今の私なら、どんな未来だってぶった斬れるよ!」
「まぐれ当たりでいい気になるな、華織!」
「気安く名前を呼ぶなァッ!!」
 拳と刀が交錯すれば、公英の身体が袈裟斬りにされる!
「馬鹿な!? 私の見た未来が! 斬り捨てられただとォ!?」
 飛び散る赤黒いオイルを返り血めいて浴びる華織!
 妹は振り返ると、姉へ向かって叫んだ。
「――行っけええぇっ! お姉ちゃん!!」
「……判った、華織!」
 智華が駆け出す。
 愛銃【刹那】のブレード部分を突き出しながら、絶叫とともに突貫!
「うわああああああああああーっ!!!」
 発砲に次ぐ発砲!
「こういう事も出来る。そう、赤枝流と私の合わせ技ならね!」
 ユーベルコード『赤枝流武術・改【落葉】』!
 姉妹で編み出したユーベルコードを義眼ラプラスを許容限度を超過して稼働させ、確定した未来を乗り越えようと智華は足掻く。
「ラプラス……未来を予測するな、観測するな。今だけは……!」
「智華ァーッ!!」
 公英の拳が迫る!
「そう! 今だけは!!」
 その起動を独特の歩調で回避すると、ブレード部分で公英の胸元を刺突!
 一瞬だけ止まった動きを見逃さず、智華はガラ空きになった右拳を公英の顔面に叩き込んだ!
「未来を! 打ち砕け!! ラプラァァースッ!!」
 智華の顔の半分が、公英のように鈍色となって露出する。
 許容限度を超過した力が、智華を真の姿へと近付けているのだ。
 右拳をまともに喰らった公英の動きが更に怯む。
 智華はトドメを刺すべく、最後の力を振り絞った。
「そして、私達の未来を!! 一緒に作る……であります!!!」
 左手で公英に突き刺さった愛銃を引き抜き、その銃口を敵の眉間に突き付ける智華。
「――バイバイ、父さん」
 銃のトリガーに掛かる左人差し指に力を込めた。
 城壁内に銃声が轟いた。

 倒れる公英にはまだ意識があった。
「さすがはサイボーグ……。これは首を落とさないと駄目かな?」
「待って、華織!」
 華織が愛刀を振り上げようとするのを、智華が制止した。
「……研究熱心だけど家族想い。そんな父さんはもう死んだ。目の前の存在は父さんじゃないけれど、……私達の父さんなんだ」
「お姉ちゃんが何を言ってるか分からないんだけど……」
「だから、ちゃんとお別れしないと。言葉を交わせるのは、これが最期なんだから」
 智華はしゃがみ込むと、公英に告げた。
「この力と身体を勝手に私へ押し付けた事は許されない。『猟兵』に裁かれて当然だ。けど、これからはこの力を、誰かを守るために私は使うよ。約束するね、父さん」
「そうか……なら、もう、野望は、叶っていたんだな……」
 公英のメカアイの光が弱まってゆく。
 その表情は安堵に満ちていた。
 完全に停止した公英の身体は、自然と風化するように自壊を始めてゆく。
「おわった、ね……」
 華織は公英の姐への偏愛ぶりにドン引きしつつ、因縁の決着と新たな力の覚醒を実感していた。
「ラプラス……まさか、これが父さんの残した形見になるなんてね」
 自身の義眼のある方のこめかみを押さえながら、智華は消滅した父親へ哀悼の念を籠めた。
「そういえば、さっき、また軍人口調になったでしょ?」
 華織が姉に突っかかってゆく。
 しかし、姉は萎縮することなく胸を張って言った。
「この口調こそ、私が紅葉智華という『人間性』の証左であります! あの人は、私を最後まで『兵器』として扱っていたのを薄々感じてたからね……。キャラ付けでもしないと、一矢報いてやれないでありますよ! なにせ、この口調は父さんがプログラムしたものではなくて、私自身が考案したオリジナルであります!」
「うへー……」
 げんなりする妹に、めげずに姉は笑ってみせた。
 その時、周囲の城壁が徐々に地鳴りとともに低くなってゆく。
「鬼戦車がいきなり慌てふためいて蜘蛛の子散らすように逃走を始めたわぁ。もしやと思って、城壁を解除してもらったんだけど……」
 河原崎は、紅葉姉妹の姿を見て、長い舌を出して微笑む。
「終わったんだな。おつかされさん」
 ボロボロの右義腕が戦闘の激しさを物語るバスティオンもまた、安堵の笑みを浮かべた。
「ちょっと、華織!? 全身真っ赤だよ!! 血を吐いたでしょ? 肋骨折れてない??」
 リズが慌てて華織を治療しようと駆け寄ってくる。
「大丈夫だよ、これは返り血と言うか返りオイルで……あ、そういえば八極拳をまともに食らってたっけ、あいたたた!!」
 華織は思い出したかのように痛覚が蘇り、その場にうずくまるのであった。
「親父さん、八極拳使ってたのかよマジか……」
 乾いた笑い声をあげる佐倉だが、紅葉に歩み寄った。
「なんだよ。守り、使わなかったのかよ?」
 智華が佐倉に渡されたのはペイント手榴弾であった。
 元々は智華が作成した代物である。
 智華はあっと目を丸くすると、気恥ずかしそうに弁解した。
「あはは……面目ないであります。すっかり、やり込められてしまって投げる機会を逸していたであります」
「その口調、また戻したんだな。おもしれー奴だな、紅葉ってさ」
 呆れているのか愉快のもっているのか分からない佐倉の口調に、智華は眉間にシワを寄せて抗議した。
「そっちこそ、私に手渡すくらいならば、佐倉さんが有効活用すべきだったのではありませんか!? 元はと言えば、私が佐倉さんに使ってもらいたくて贈ったものでありますし……」
「ほほう? おふたりはいつの間にやらプレゼントを贈ったり受け取ったりする仲だったのですね?」
 すっかり戦闘形態を解除した草野は、眼鏡の奥をキラリと輝かせて2人を見詰めていた。
「え、思わぬところにライバルがいたの?」
 華織の目のハイライトが消える!
 佐倉が思わず3歩後ろに下がった。
「妹ちゃん、怖えーよ!? まずは刀を置いて話し合おうぜ、誤解だからな!?」
「大丈夫だよ、佐倉お義兄(にい)ちゃん。ユーベルコードで剣筋を受け切れば死なないから」
「俺、斬られること確定かよ!? つーかお義兄ちゃん!? おい紅葉、なんとかしろよ!?」
「あー、華織? 本当に、誤解なのでありますが……」
「その口調、華織きらーいっ!!」
 あれだけ重苦しい戦闘の空気が、あっという間に日常へと変わる。
 猟兵達は新たな夜明けとともに、進むべき道を見出して進んでゆく。
 未来は、分からないからこそ自分で掴むのだと、胸に言い聞かせながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年05月05日
宿敵 『『未知を既知とする者』紅葉・公英』 を撃破!


挿絵イラスト