#アポカリプスヘル
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「てめえッ!まだそんなもん作ろうとしてやがったのか!」
「きゃあッ!」
粗末な作業服の男が、女を蹴飛ばした。倒れた女の手の中からガラス瓶がこぼれ落ち、白い粉が溢れ出る。
「やめてよ、これはあたしがつくった大事な……!」
「何が『オシロイ』だ!食うにも困るこんな世界で、そんなもんになんの意味がある!」
激昂する男が、女へと掴みかかろうとした。その時である。
「あらァん……。まァたやってるのねぇ?」
それを遮る男の声とともに差し伸ばされた丸太のような隆々とした力強い腕が、激昂する男の暴力を諌める。
「て、テメェ……ゴードン!」
「ゴードンじゃないわ。アタシのことは『ローズ』と呼んで頂戴。……これ言うのももう5回目ね?」
『ローズ』と呼ばれたのは、190センチにも届く身の丈に恵まれた体格を持つ男であった。分厚い胸板がはち切れんばかりにジャケットの内側からその力強さを主張している。
その一方で『ローズ』の顔は精悍な美丈夫でありながら、拠点の倉庫に残されていた遺物である『オシロイ』や『ホーベニ』、『リップ』などを用いて見る者を畏怖させる見事な戦化粧が施されていた。
「いいかしらァ?この世界の未来を考えるなら、美しさは武器よ」
威圧的なウインク!向けられた男はすくみ上がり、後ずさる。
「ふざけやがって……なにが美しさだ!」
「あらァ……言う割には、アタシの美しさに感動して震えちゃってるじゃないの?」
「ウワッ」
ローズは更に男に迫った。男は恐れをなして逃げ出してゆく!
「ホホホ。恥ずかしがっちゃってェ」
「すみません、ゴー……ローズさん。せっかく作ってたオシロイ、ダメにしちゃって」
「いいのよ。また作りましょ?」
「はい!」
「……お、みんな集まったな?」
九条・救助(f17275)はグリモアベースにて猟兵たちの姿を見渡す。
「仕事だよ。アポカリプスヘルに行ってくれ」
救助は手元の端末を操作し、モニターへと映像を映し出した。
「『アンローズ』。かつてショッピングモールとして使われていた施設を利用して作られた拠点だね。今、ここがピンチみたいなんだ」
曰く。
『アンローズ』はそこそこの規模の拠点であるのだが、現在住民の中で不和が広がっている。人々の間で、意見の相違が生まれているのだ。いくつかの派閥に分かれた住民たちの結束は崩壊しつつあり、このままでは予期されたオブリビオンの襲撃で完全に全滅させられてしまうことまで考えられる。
「……ってことで、みんなにはここに行って、今の状況を変えてほしいのさ。なに、みんなだけでやるんじゃない。ここの拠点にはさ、すごい才能をもってる奴がいるみたいなんだ」
モニターに男の顔が映し出される。威圧的な戦化粧。筋骨隆々とした美丈夫。ゴードン・アームストロング。自称『ローズ』。拠点の奥から見つけ出した化粧品を手にしたことで、死の吹き荒れるアポカリプスに『美しさ』の概念を見出した男である。
「不屈のガッツとポジティブシンキング。そして強烈なバイタリティ。リーダーの資質っていうのかな。そういうのを備えた奴だ」
彼がこの拠点の人々をまとめ上げ、指導者として旗振り役になれば、『アンローズ』は強く重要な拠点になるだろう。
「が、そのためにはまずここの連中の不和を解決しなくちゃならない。……ゴードン……じゃなくてローズは『皆が美しくあれば人々はもっと愛を交わすようになり、未来の発展に繋がる』っつー持論でいるんだけど、まあ、生きるか死ぬかで飯の種にも困ってる奴らは当然反発してるってわけでね」
ここに介入して、人々の不和をローズとともに仲裁してまとめ上げてほしい、と救助は付け加えた。
「でもって、ついでに敵のオブリビオンもここに迫ってきてるみたいなんだ。拠点の人たちをバシッとまとめたら、ローズと協力して敵を退治してくれ」
リーダーとしての活躍を見せれば、きっと拠点の人々もローズを認めてくれるはずだ。
「というわけで、やることおさらいな。ひとつ。拠点に入って、住民たちの不和をおさめる。ふたつ。そのあと襲ってくるオブリビオンをやっつける。以上だ」
拠点の倉庫にはショッピングモールだった頃の遺物として、様々なコスメが残されているのだという。ローズの主張を通すなら、それらを活用するのもいいかもしれない。
「……あ、そうそう。それから、ローズについてきてる何人かは、遺物だけじゃなくて自分たちで化粧品を作れないかってのも試してるんだって。解決した後で手が空いてたら、みんなも手伝ってあげてくれよ」
そこまで言ったところで救助は言葉を切り、そしてグリモアを掲げた。
「んじゃ、よろしく頼むね」
無限宇宙人 カノー星人
ごきげんよう、イェーガー。カノー星人です。
引き続き侵略作戦を進めてまいります。
この度も、あなたがたと共に旅路をゆけることを幸福に思います。
楽しんでいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『拠点内部での対立』
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POW : ●『威圧』:こちらの実力を示せば、随分話がしやすくなる。
SPD : ●『解決』:必要な用向きを素早く、効果的に解決すれば、話を聞いてくれる。
WIZ : ●『説得』:宥め、賺し、彼らに寄り添えば、きっとこちらに耳を傾けてくれる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「なにが化粧だ!いいかゴードン、そんなことにかまけてる暇があったら俺たちは少しでも食糧を確保しなくちゃならねえ!生きてくので手一杯だ!」
「アタシは『ローズ』だって言ってるでしょ!」
「やめろって言ってんだろうが!お前、自分がどれだけバカやってるかわからねえのか!客観的に自分を見れねーのか!バーカ!」
「なんですってェ!」
口論!
拠点『アンローズ』。その中でもかつてショッピングモールのフードコートとして用いられていたスペースを利用した集会所で、集まった拠点の人々の対立する声が響く。かたや中年以上の年代の男性を中心にしたグループ。もう一方はローズを中心に集まった女たちだ。
「たしかに生きていくのは大事よ……。でもね、こんな時代だからこそ。こんな世界だからこそなのよォ。……『化粧』で人は美しくなるわ。そして、美しさという武器を得た心はこの荒野でも力強く美しく花のように咲き誇り、そして強く生きてゆけるの」
「テメーのどこが美しいっつーんだ!マヌケッ!」
「なんですってェ!」
男たちはローズの主張に聞く耳をもたない!このままでは人々の不和は広がるばかりだ。オブリビオンの襲撃までもあと数日の猶予しか残されてはいない。一刻も早く事態を収拾しなくては!
穂照・朱海
ごおどん……否、ろおず様の考え方に心より賛同致します
ここまで共感できる方に出会えるとは
この出会いに感謝を
わたくしにお任せ下さいまし
まず対立する集団に対して舞を披露致します
『冷静になつて相手の言い分を聞け』といふ暗示を込めて
暗示が聞いたらあとは説得の内容次第でございますね
こう説得します
「確かに身体を満たすものは必要ですね、それが一番大事です
しかし、その後を考えたことはおありか?
例えば美しくなりたい、美しいものを愛でたい。そう思うのが人の性なのです
男性の皆様、女性を見て美しいと思ったことは?
花を見て心和ませたことはおありか?
そういう気持ちは自然です
人が生きるのに『必要』なものなのです」
アリソン・リンドベルイ
【WIZ】
部外者が深く立ち入って良い話題か解りませんので恐縮ですけれど、このままだと不毛ですので差し出口をさせていただきますね?
【コミュ力、礼儀作法】で間に入り、緩衝材に。双方の理を折らず、互いの意志を曲げず、妥協点を探しましょう。個人的な意見は、議論が煮詰まるまで挟みません。
そう…例え話ですが。花が己を着飾るのは実を結ぶためですが、それを美しいと思うのは人の心です。それに、花を目当てに集まった蜜蜂を利用することもできます。 花は美しく咲こうとするのが摂理ですから、『お前は二度と咲くな』と言い募るよりも、蜂蜜を得る方が建設的だと思うのです。…心と感情ではなく、理と利で納得していただけませんか?
「お待ちください、双方とも」
「誰だ!」
「わたくしたちは、旅の者でございます」
口論の場に割って入ったのは、アリソン・リンドベルイ(f21599)と穂照・朱海(f21686)の2人であった。
「まあ、まあ――。皆様、落ち着いてくださいまし」
「はい。部外者が深く立ち入って良いお話かわかりませんので恐縮ですけれど……ですが、話は聞かせていただきました。このままだと不毛ですので、差し出口をさせていただきます」
「……なァにぃ?仲裁してくれるってことぉ?」
やや怪訝そうな顔をして、ローズが首を傾いだ。
「然様でございます。ごおどん……否、ろおず様。まずはわたくしにお任せ下さいまし」
ばら、と音を立てて、朱海が扇子を開いた。――優雅な足運び。しゃ、と音をたてて足首で鈴が音を鳴らした。一歩踏み出し、流れるような所作で扇を動かす。集まっていた拠点の人々は何事かと目を開きながら、しかして朱海が舞うための舞台を形作るように離れ、空間を形作った。
「梨花一枝、雨を帯びたるよそほひの……」
――【傾城天津狐】。朱海の演舞は、アポカリプスヘルの世界には絶えて久しい『美』の文化。その極致だ。その所作のひとつひとつが、それを見る人々の胸の奥に今まで感じたことのないなにかを呼び起こしていく。――舞う朱海自身の女形としての妖艶な美しさもまた、人々の感情を揺さぶる一手としてはたらいていた。
「……なんて素晴らしいの」
「綺麗……」
「…………」
ローズと女たちは、まなじりに涙さえ湛えてそれを見ていた。対立する男たちも息を吐く。
「……お粗末」
ひとさし舞い終えた朱海は、静かに一礼。集会場は先までとは打って変わって静まり返り、厳かな空気に満たされる。
「これが本物の『美』よ……。感動が抑えきれないわ……!」
感涙に滂沱しながらローズは朱海へと拍手を送った。
「こ、これがなんだって……」
反対する男たちは空気に圧倒されながらも、やっとの思いで絞り出すように反論の言葉を口に出そうとする。
「うつくしい、と思いませんでしたか……?」
しかし、アリソンがその言葉を遮った。
「いまの舞をご覧になって……皆さんの心にも感じるものがあったはずです」
「ぬ……」
男たちが気勢を削がれる。彼女が言うとおり、この世界では既に失われたといっていい文化的概念――『美しさ』は、たしかに彼らの心を揺さぶっていたのである。
「皆様がおっしゃっていた通り、確かに身体を満たすものは必要ですね。それが一番大事です」
扇を仕舞いながら、朱海が再び口を開く。
「しかし、その後を考えたことはおありか?」
「その後……?」
「……そうよ。そうなのよ。アタシたちは、ただ生きるだけじゃいけないの……!」
ここでローズもまた口を挟む。
「ええ」
朱海は一度ローズの方をちらと見てから頷くと、更に言葉をつづけた。
「例えば美しくなりたい、美しいものを愛でたい。そう思うのが人の性なのです。……。わたくしも、女形ですから。そのための化粧がどれだけ大事なものかはわかります」
そうして、朱海は静かに拠点の人々の顔を見回した。
「……まあ!美人の女の子だとばっかり思ってたけど、アナタ、男の子なのね!」
ローズが素っ頓狂な声を上げた。周りの女たちはその声を聞いて、恐る恐る朱海の顔を覗き込みに来る。
「ええ。わたくし、これを生業としておりますので」
「生業だと……!?」
男たちは動揺する。『化粧で飾り立てる』などという愚かしい行為は無駄なだけだと思っていた。だが、目の前の旅人はそれを生きる手段としているのだという。男たちの常識を、朱海が崩し始めたのだ。
「美しい、ということは、人の心を動かします。先ほどの皆さんがそうだったように。……花が己を着飾るのは実を結ぶためですが、それを美しいと思うのは人の心なんですよ」
加えて、アリソンが畳みかけた。『さっきの舞を、あなたたちも美しいと思ったはずだ』と。
「花を……」
「男性の皆様、女性を見て美しいと思ったことは?花を見て心和ませたことはおありか?」
「そりゃ、あ……」
言い淀む男達の前に、朱海は更に一歩進み出た。
「そういう気持ちは自然です。決して、無駄ではありません。人が生きるのに『必要』なものなのです」
「それに、花を目当てに集まった蜜蜂を利用することもできます。花は美しく咲こうとするのが摂理ですから、『お前は二度と咲くな』と言い募るよりも、蜂蜜を得る方が建設的だと思うのです」
――『美しさ』に惹かれて集まる人を相手に、交渉や商売のチャンスだってある。無駄だと切り捨てようとしていたその『美しさ』という概念は、決して無価値なものではないと、アリソンが更に付け加えた。
「確かに今のこの世界では、食べ物を集めたり暮らしのことを考えるのは大事で、化粧なんで無駄なものだ……なんて、そう思うことも仕方ないかもしれません」
アリソンは対立する男たちへと対峙し、言葉を重ねてゆく。
「ですが……心と感情ではなく、理と利で納得していただけませんか?」
彼女は理にて詰める。『美しさ』は、利になるのだと。
「…………」
「……嬢ちゃんたちの言うことは、わかった」
「俺もだ」
男たちは顔を見合わせ――その内の何人かが、静かにその場へと座り込んだ。
「お前ら……!まやかされてんじゃねえ!くだらねえ詭弁だ!ペテンだ!」
だが、男たちの半数以上はまだ納得しきらぬ様子で語気を荒げる。――たしかに、大きな成果はあった。朱海とアリソンの言葉は、間違いなく彼らの心を動かしていた。だが、それだけで対立する男たち全員が納得できるほど彼らとローズたちの溝は浅くはなかったのだ。
「2人とも、アリガト……。見ず知らずの旅人さんたちに口喧嘩を助けてもらうなんてねぇ。アタシ、どんなお礼したらいいのかしらァ?」
2人を庇って矢面に立つように、ローズが前へと出る。
「いいえ。わたくしはお話を聞いて、ろおず様の考え方に心より賛同致しましたのでこうして口出しさせていただいたまでです。……このあぽかりぷすへるという世界で、ここまで共感できる方に出会えるとは思ってもいませんでした」
「私も……この世界のひとたちに、きれいなものをとりもどしてほしいから」
2人はローズと頷きあい、そして再び対立する男たちへと向かい合う。
「とっても心強いわ……。じゃあ、もう少しアタシたちの話に付き合ってくれるかしら?」
「はい」
「無論です」
「こいつ……急に味方が増えたからって強気になりやがって!」
「俺たちは絶対に納得しねえからな!」
男たちが気炎を吐いた。
――かくして、『アンローズ』の人々の不和を解決するため、猟兵たちを交えて話し合いは続くのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リカルド・マスケラス
WIZ
問題なのは……どちらの主張も決して間違っているわけではないんすよね
「実際、ゴー……ローズに腕っぷして勝てた奴っているんすかね?」
ゴードンの強さこそ、化粧の有用性を証明しているのではないか。そう言う論調で説得してみるっすね。
更には、若年層の男性が浮遊票となっていのであれば、そのあたりも【コミュ力】を使って抱き込みにかかる
「ローズの言っていることに一理あると思っている人もいるんじゃないっすか?」
そこで更に【世界知識】などを応用して戦化粧の重要性を説く
「自身を強いものへ変え、奮い立たせるために戦士が化粧をする文化は色々なところにあるっす。これでもし、奪還がうまくいけば万々歳っすよね?」
黒木・摩那
【WIZ】
化粧品より明日のご飯というのは確かにその通り。
ですが、人はパンのみに生きるにあらず、とも言います。
ここはローズにも考えてもらわねばいけないですね。
説得を試みます。
美を求めるには化粧は大事です。
ですが、化粧が映えるには土台あってこそ。
その土台がボロボロでは化粧の乗りも悪くなるというものです。
そして、土台たる皮膚や髪を守るには、風雨から守る住や服であり、つやはりを維持するための栄養が必要。
つまりはご飯の確保や拠点の防衛は美と対立すべきものではなく、どちらも大事なことなんです【言いくるめ】。
今、この拠点に脅威が迫ってます。
美とご飯も守るためにもローズにはこの拠点を率いてもらいたいです。
ルカ・ウェンズ
美丈夫でタフガイそのうえ善良そうなローズさんを見にきたわよ~
そして最初に、うどんをローズさんにプレゼント。
それはそれとして『オシロイ』を持ってた女の人を蹴飛ばした男を蹴飛す。
腹が減って怒りやすくなってるのはわかるけど、それはそれ!これはこれ!
謝罪に…うどんを渡すわ。うどんの【誘惑】に勝てるかしら?オブリビオン・ストームが発生するから食うに困らなくなるほどの量はないけど他の人達にも食べさせるぐらいはあるから、みんなにもプレゼントして誘惑するわよ。
みんなが食べ終わったら「私好み…美しいローズさんがいたからプレゼントしたのよ!」と言って後は農業用の本を読んだら変身を使い、みんなで畑でも耕すわ。
「化粧品より明日のご飯というのは、たしかにその通りかもしれません」
黒木・摩那(f06233)はきわめて冷静に口を差し挟む。
そう。――男たちが言うように、まずは命を繋いでこそ。生きるための糧を得ることは、何よりもこの世界においてやらなくてはならないことなのだ。
「そうッスねぇ。……食わなきゃ生きていけないっつーことも、現実問題その通りではあるんすよね」
バイクのエンジン音。摩那と共に集会所に姿を見せたのはリカルド・マスケラス(f12160)である。ヒーローマスクであるリカルドはバイクのフロント部に結び付ける形で設置されており、機体をかりそめの身体として機能させている状態であった。
「……そうだろう。あんたたちだって、そう思うだろう!」
ローズに対峙する男たちから何人かが声を上げ、猟兵たちへと視線を向ける。
「そう思います。――ですが、いいえ。人はパンのみに生きるにあらず、とも言います」
「そうなんすよね……。どちらの主張も決して間違っているわけではないんすよ」
「なんだと……?」
「お前ら、急に口出ししてきやがって……一体どっちの味方なんだ!」
男たちが激昂した。
「どっちの味方、ではありませんよ。私たちは、皆さんの言い争う声が聞こえたので――」
「そうなんす。どっちの意見も正しいんすから、よく話し合って和解できるようにと思ってきたんすよ」
「そうです。いわば『両方の味方』でしょうか?」
激昂する男たちに対して、摩那とリカルドはあくまで冷静だ。落ち着いた声音で、話し合うべきだと主張して静かに語りかける。
「ですから、ローズさんにも落ち着いて他の皆さんの話をきいていただきたいんです」
「そんなこと、できるかしら……アタシたち、ずっと言い争ってばかりだったし……」
摩那の声に、ローズは考え込む表情を見せた。
「ハ!そいつがまともに俺たちの話なんか聞くもんかよ!」
だが、揶揄するように男たちが嘲り交じりでヤジを飛ばす。そうだそうだ、とシュプレヒコールめいて男たちが腕を振り上げた。
「あら随分ヒートアップしちゃってるわね。ちょっと落ち着いたらどう?」
――そんな時である。
唐突に、乾いた風に乗って出汁の匂いが香った。
「なんだ、この匂い……?」
それは、アポカリプスヘルの世界においては殆ど流通することのないものである。この世界における食事とは、奪還者が回収した缶詰や保存食か、獣を狩って得た肉に適当に火を通した程度の料理とも呼べぬ粗末なものばかりだ。――故に、アース世界線において供されるような文明的な料理の香りを、彼らは知らない。
「うどんよ」
ルカ・ウェンズ(f03582)は熱く煮立った鍋と、スチロール製のカップを台車で運び込みながら当然のように言い、頷いた。
「それは……食い物、なのか……?」
拠点の人々が困惑する。しかし、誘惑される。知らない匂いだ。しかし、鼻孔をくすぐるこの香りは、今まで彼らが口にしたことのあるどんな食事よりも魅惑的に人々のすきっ腹を刺激した。
「ええ、そうよ。これはねぇ、ぜひローズさんに食べてもらおうと思って持ってきたのよ」
「……アタシに?」
急に名指しにされたローズはきょとりと不思議そうな顔をして首を傾ぐ。
「そう。あなたに。噂を聞いてね、美丈夫でタフガイ。そのうえ善良な美の探究者……ぜひ会ってみたいと思って、見にきたのよ~」
ルカはカップに湯切りしたうどんの麺とだしつゆをそそぎ、箸を添えてローズへと差し出した。
「食べて頂戴」
「……いいのかしら」
「いいのよ」
やや困惑した表情を浮かべるローズに、ルカは頷く。
「なんだ、お前……いきなり出てきたかと思ったらわけのわからねえことを!」
しかし、その様子を遠巻きに見ていた男たちのうち一人が、激昂しながらルカへと掴みかかろうと手を伸ばした。人間、腹が空いていれば気が立つものだ。その上、目の前でお預けをくらえば。――奇しくもその男は、先刻『オシロイ』づくりを邪魔した者であった。
「あらごめんなさい」
しかしてルカはあしらうように男を躱し、同時にカウンターめいて蹴り足を叩き込む。ぐえ、と男が悲鳴を上げて倒れた。
「腹が減って怒りやすくなってるのはわかるけど、それはそれ!これはこれ!」
そうしてから、ルカは視線を巡らせる。――そうして、ひと呼吸置いてから。
「失礼したわね。お騒がせしたお詫びに、このおうどんを振舞わせてもらうわ。はい、順番に並びにきてちょうだーい」
――配給めいて、ルカはカップにおうどんをよそい始める。
「そこにいる人、猟兵よね?手伝ってくれる?」
「え?あ、はい」
「わかったっすよー」
ルカのペースに巻き込まれるように摩耶とリカルドがおうどん配給に駆り出される。ここで話し合いは一時中断。猟兵たちによる突発的な食事会がなし崩し的に開催される運びとなったのである。
――ずず、と音をたててローズがおうどんを啜る。熱い出汁つゆの味に、身体が芯から温められるようであった。
「……こんな美味しいもの食べたの、はじめてね」
ローズは湯気とともに吐息を白く吐き出した。
「それも……生きていくのには大事なことですからね」
摩耶はその隣に立って、ローズへと声をかけた。
「美しさを求めるのは、人間として自然なことなのかもしれません。そして、美を求めるには化粧は大事……確かにその通りですね」
ひと呼吸置いて、摩耶は続ける。
「ですが、化粧が映えるには土台あってこそ。その土台がボロボロでは化粧の乗りも悪くなるというものです」
「うんうん。健康美ってやつっすね」
リカルドもそこに混ざって口を挟んだ。
「そうです。そして、土台たる皮膚や髪を守るには、風雨から守る住や服であり、つやはりを維持するための栄養が必要……つまりはご飯の確保や拠点の防衛は美と対立すべきものではなく、どちらも大事なことなんです」
「そうね……たしかに、アナタの言う通りだわ。『生』か『美』か……じゃないのよね。『生きてこそ、美しく在れる』……美を求めるにはその前提として、生きることを疎かにしてはならない。そういうことでしょう?」
ローズはその言葉に納得した様子で頷いた。空になったおうどんの容器を置いて、立ち上がる。
「そうっすそうっす。本当はみんなゴー……ローズみたいになりたいはずなんすよ。身体も健康で、やる気もあって、しかも意志が強い」
リカルドは言葉を繰りながら視線を向ける。その先は、ここまで対立する2つの集団にやや距離を置いて見守っていた、比較的若い年代の男たちだ。
「実際、『生きるだけ』じゃなく、その上で目標を定めて信念を通そうとしてるローズは『強い』っすよ。実際、ローズの言っていることに一理あると思っている人もいるんじゃないっすか?」
「あらぁ。おほめにあずかり光栄よぉ」
リカルドの言葉に、何人かの男が逡巡するような様子を見せた。その反応に、リカルドは更に畳みかける。
「ローズのことを見てりゃわかるっすよ。化粧は美しく飾り立てるだけのものじゃなく、自分の意志を強くするための鎧でもあるんでしょう。自身を強いものへ変え、奮い立たせるために戦士が化粧をする文化は色々なところにあるっす」
実際のところ、化粧をして見た目を変えるということは、別の自分へと変わるための行為でもあるのだ。化粧をすることで勇気や自信を得ることができることもある。リカルドは化粧の有用性を説いた。
――余談であるが、導入部でローズの化粧について『見事な戦化粧』との描写を行っていたが、それは『本人は美しくしているつもりであったがメイクの腕がよくないために戦化粧めいた威圧的な装いになっている――有体に言えば下手な化粧』ということをここで付け加えておく。
「そうそう。それにね、このうどんだって私好み…………美しいローズさんがいたからプレゼントしたのよ」
「…………」
三者三様のアプローチが、拠点の人々を説得してゆく。
リカルドとルカは化粧や美しさの有用性を説き、ローズの主張する美と化粧へのこだわりを補強した。その一方、摩耶はローズにただ自分の主張を通すのみではなく、反発する派閥の声も聞き入れるように進言し、彼がリーダーとしてバランスの取れた拠点運営ができる人材になれるように導いた。
拠点の人々に響いたのは、言葉だけではない。ルカの用意したおうどんは、人々にたしかな満足感を与えることで彼らのささくれ立った気持ちを宥め、拠点内の言い争いめいた刺々しいムードを和らげるのに大いに貢献していた。
猟兵たちの介入により、緩やかに、そして確実に、拠点内の空気は変わっていたのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
四季乃・瑠璃
瑠璃「荒廃した世界でも身だしなみは大事だよね」
緋瑪「でも、わたしも化粧って最低限だけで疎いけどね~」
【ダブル】で分身
双子の旅の奪還者として接触。
一時的な居住権と引き換えにアクセスリングに仕入れて来た食糧や武器弾薬等の物資を提供するよ
あ、力づくで奪おうとした場合は容赦しないよ。
確かに、化粧ばかりで必要な事が疎かに、っていうならともかくそうじゃなければ良いんじゃないかな?
それに、男の人達にしても一緒に過ごす女性が美しかったら嬉しくない?
これから先、恋人・夫婦になって子供も残していくのに彼女や奥さんが綺麗な方が良いでしょ?
といった感じに反発派の人の意見も汲み取りつつ、ローズさん達を擁護。
説得するよ。
「なになに、どうしたの?」
「もめごと~?」
「ああ……あんたたちか」
四季乃・瑠璃(f09675)――と、彼女の別人格である緋瑪は人々の集まる集会所に顔を出す。
瑠璃は【オルタナティブ・ダブル】によって実体を得た緋瑪と共に双子の奪還者として『アンローズ』を訪れていた。先んじて拠点に入り込んでいた彼女“たち”は、既に拠点の人々に挨拶を済ませていたのである。一時的な居住の許可を求めるかわりとして食糧などの物資提供を行っていたため、2人は拠点の人々には歓迎されていた。
「……聞いてくれ。あんたたちはどう思う」
集会所の男たちの中から何人かが振り返って、瑠璃と緋瑪を見た。
「どう思う、って言ったって――」
瑠璃は視線を巡らせて、男たちに対峙するローズの姿を見る。
「化粧品の話でしょ~?」
かくりと首を傾いで、緋瑪が瑠璃に続いて視線を向けた。
「ああ……。お化粧。そうだね、こんな荒廃した世界でも、身だしなみは大事だよね」
「あら。わかるぅ?」
口を開いた瑠璃に、ローズがばちりとウインクを飛ばした。圧が強い。瑠璃はちょっと視線を逸らす。
「でも、わたしも化粧って最低限だけで疎いけどね~」
けらけら、と面白がるように笑いながら緋瑪は集会所のソファに腰かけた。
「ちっ……やっぱり女か!」
苛立つ様子で男たちが声をあげる。
「それもあるけど……とはいえ、確かに、化粧ばかりで必要な事が疎かに、っていうならともかく。そうじゃなければ良いんじゃないかな?」
瑠璃は緋瑪の隣へと腰を下ろして、男たちへと視線を返しながらひるむことなく言葉を続ける。
「他の人たちだって言ってたけど、お化粧とか……綺麗になろうとしたりとか、そういうことだって、生活とか、人生の一部だと思うよ」
「だよね~。ご飯食べて寝るだけじゃ、動物とおんなじだし」
「動物……ッ!?」
瑠璃と緋瑪は一度頷きあい、ローズの姿を一瞥してから更に言葉を続ける。
「きれいなものを見て、いい気持ちになるのが人間じゃない?あなたたちだって、一緒に過ごす女性が美しかったら嬉しくない?」
「そうそう。恋人・夫婦になって子供も残していくのに、彼女や奥さんが綺麗な方が良いでしょ~?」
実際、自分たちも最低限のものではあるものの、化粧はちゃんと整えている。
アポカリプスヘルとは異なる世界に育ち、見た目を整えることが当然の文化である世界で生きてきた彼女たちの容姿は、たしかにアポカリプスヘルの余力のない世界でひたすらに生きてきた同じ女性と比べれば、その違いは一目瞭然だ。
「ぬぐ……ッ」
反対する男たちも、今や大きく気持ちを揺さぶられていた。先ほどから話し合いに口を出す猟兵の女性たちの容姿は、確かにアンローズの拠点に暮らし日々を必死に生きる女性たちに比べ、遥かに整っている。それは間違いなく、美への追求を無駄と言い切っていたはずの彼らの考え方に影響を与え始めていたのである。
「……ねぇ」
拠点の女たちが、瑠璃と緋瑪へと視線を注ぐ。
「私たちも……ちゃんとお化粧すれば、あなたたちみたいに綺麗になれるかな」
そして、恐る恐る口を開いた。
「さあ?」
緋瑪がソファの上で頬杖をつきながら、首を傾げた。
「でも、した方が綺麗になれると思うよ~?」
「…………」
そして、わずかな沈黙。
「だからね、アタシはみんながそうなったらいいと思うのよぉ」
その静寂を破り、ローズが口を開いた。
「アタシは、生きることも、美しくあることも、どちらもこの拠点の皆で目指していければいいと思うの」
「そうだね。私も、そう思うな」
瑠璃が言い添えて、ローズと共に男たちに対峙する。
拠点内の空気が、ローズたちの側に傾きつつあることを猟兵たちは感じ取っていた。――あと一押し、といったところだろう。猟兵たちと頷きあってから、ローズは笑った。
成功
🔵🔵🔴
バンリ・ガリャンテ
生きてくので手一杯だなんてそんなの皆分かってる。
だったらば、住民同士で癇癪起こして争うなんていっとう『なんの意味もない』
ローズさんが仰りてぇのは、人間性を失うなって事でもあるんじゃねぇかな。
人の尊厳を踏み躙られる様な逆境でも、人は人であり続けられる。
綺麗で在りたい。誰かの為に。
誰かと生きる未来のために。
あなたの為にそう願う女性がいたとしても、否定するのか?
戦化粧って死に際に恥を晒さん為のもんでもあるらしいが
俺にはローズさんの生き様が、決意が、このお顔に描かれてる気がすんだ。
下らねぇ観念に囚われて諍い起こすなよ。
皆で一緒に前を向いてよ。
って感じで温度高めに語ってみるぜ。
フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎
SPD判定
・行動
コミュ力、魅了、医術などを駆使して化粧の有用性を説きながら
手早くローズに化粧の手ほどきをする
・セリフ
(テキパキと手を動かしながら)
古来、戦士は化粧をすることで自分を高揚させたと聞きます
化粧は女の鎧とも言いますし、
己の精神を支える手段としては有用だと思いますよ
それを抜きにしても
荒野の強烈な紫外線や汚染物質を含んだ粉塵から肌を守るために
UVカットクリームだけでも塗っておくといいでしょう
一度やり方を覚えてしまえば後は慣れるだけですし
最初は細い筆などを使用して塗りすぎないことを心がけましょう
……さあ、これで出来上がりです(ナチュラル風メイクで仕上げて見せる)
「生きてくので手一杯だなんて、そんなの皆わかってる」
バンリ・ガリャンテ(f10655)は理不尽を知っている。しかして、ひとはそれに抗う強さをもっていることを、強く在れることを知っている。
「だったらば、住民同士で癇癪起こして争うなんていっとう『なんの意味もない』じゃねぇか」
話に加わったバンリは、拠点の人々の前に出ながらそう声を上げた。
「……だが」
「ああ、言いたいことはわかるさ。何もかも『生きてこそ』だもんな」
反論しようとした男の声を遮って、バンリは続ける。その言葉は熱を帯び始める。
「だけど、生きる“だけ”じゃなくて、その先を見ようってことなんだよ」
「その先……」
「ああ。ローズさんが仰りてぇのは、人間性を失うなって事でもあるんじゃねぇかな」
人間性。
獲物を探し、喰い、子を成し、生きる。――それのみでは、獣の生と変わりはしない。
人間性とは、情動と知性から生まれる言葉やコミュニケーションによって、意志を伝えあい、教え、伝え、文化を育むことだ。
「人の尊厳を踏み躙られる様な逆境でも、人は人であり続けられる。……ローズさんは、『人』であるために、化粧っていう『文化』を瓦礫の中から拾い上げたんだ」
この世界に於いて、それができる『人間』はほんの一握りかもしれない。――ローズは、そうした数少ない中の一人なのだ。
「――化粧については、それだけではありませんよ」
フローラ・ソイレント(f24473)が口を挟む。
「この世界の空気はひどく汚れていますからね。汚染された空気や粉塵は健康に害を及ぼします」
医療的な知識の観点から、フローラは化粧の実利的な有用性を説く。
「ローズさん、少々お顔を拝借しますね?」
「え、なになに?」
その最中、フローラは荷物の中からコスメグッズを引っ張り出すとローズの顔を掴んだ。
はっきり言ってしまえば、ローズの化粧の技術はひどく拙い。有体に言えば、下手なのである。それもそのはず、この世界においては失われつつある文化だ。それを独学で始め、正しいやり方を知らないままに続けてきたが故の結果であった。
「私の学んだ化粧の技術をお伝えします。……これを見れば、きっと周りの方の見る目も変わりますよ」
そして、見かねたフローラは他世界の一般的な化粧の技術を伝えようと決めてここまで来たのだ。
「あら……じゃあお願いするわ。今まで教えてくれる人なんていなかったから、とっても助かっちゃう」
「では、しっかり覚えてください。ああ、見たい方はぜひご一緒に」
フローラはコスメグッズの中からローションタイプの化粧落としを引っ張り出す。コットンシートに吸わせ、フローラは戦化粧めいたローズのメイクを落とした。ローズに賛同する女たちを中心に、拠点の人々が集まり、フローラの施すメイクアップの様子をじっと見つめていた。
「では、ここからあらためてメイクをしていきます。まず下地から……」
――化粧には、ある程度正しい方法が存在する。ただ塗ればいいというわけではない。化粧水と乳液を用いたスキンケア。それからベースメイク。ファンデーション。顔全体を整え、顔面をキャンバスへと変える。そこにアイシャドウやチーク、リップで彩りを加え、最後に鏡を見ながらバランスを整えた。魔法のように描かれ美しく磨かれてゆくローズの顔立ちを、人々が固唾をのんで見守っていた。
「……さあ、これで出来上がりです。どうですか?」
そして、フローラはコンパクトを開き、完成したローズの顔を鏡面に映して見せた。
「これが……アタシ……?」
正しい手順のメイクによって変貌したローズの容貌に、本人を含めて拠点の人々がどよめく。
素材を生かしたナチュラル風メイクだ。元々ローズは目鼻立ちのくっきりとした美丈夫である。正しく施された化粧は、これまで下手な化粧で隠されていた彼の魅力を存分に引き出す新たな武器となっていた。
「こ、これが……本物の『化粧』……!!」
「な、わかったろ。……『綺麗』ってさ、結構いいものだと思わねぇか」
ローズの容姿のあまりの変わりように驚愕する男たちへと、バンリが声を投げかける。
「綺麗で在りたい。誰かの為に。誰かと生きる未来のために。あなたの為にそう願う女性がいたとしても、否定するのか?」
「……むう」
「それだけではありません。古来、戦士は化粧をすることで自分を高揚させたと聞きます。……化粧は女の鎧とも言いますし、己の精神を支える手段としては有用だと思いますよ」
コスメグッズをしまいながら、更にフローラが口を挟んだ。
「ああ。戦化粧ってやつだな。元々、死に際に恥を晒さん為のもんでもあるらしいが……この化粧を通してさ、俺にはローズさんの生き様が、決意が、このお顔に描かれてる気がすんだ」
「それを抜きにしても、この世界の環境は苛烈です。荒野の強烈な紫外線や汚染物質を含んだ粉塵は人体にとっても有害ですから、肌を守るためにUVカットクリームだけでも塗っておくといいでしょう」
幸いにして、この『アンローズ』にはいくらかの在庫が残されているという。まずは、それを用いて化粧の有用性を活用していくといい、とフローラは言い添えた。
「……」
「無駄なものなんかじゃないんだ。少なくとも俺や、ローズさんや、ローズさんについてきた女の人たちだってそう思ってる。……自分たちには必要ないからって、下らねぇ観念に囚われて諍い起こすなよ」
バンリは対峙する男たちへと、重ねて声を投げた。
「認めてやってくれよ。それで、協力していけばいいじゃねぇか。……皆で一緒に前を向いてよ」
熱のこもった言葉が、最後の一押しとなる。
――静まり返った集会場の中で、男たちの中の何人かが、ゆっくりをかぶりを振った。
「……わかった」
「そこまで言うなら……な」
「実際にここまで見せられちゃ、たしかに無駄だとかは言えねえよなァ」
緩く笑みさえ浮かべながら、男たちは頷く。
それは、理解を示す言葉であった。
「ゴードン……じゃなくてローズ。今まで悪かった」
「いいのよ。アンタたちの言ってることだって間違っちゃいなかったわ。まず生き抜いてこそ……それが一番大事なのは、間違いないものね」
代表らしい男が、ローズに握手を求める。ローズはその手を握り返して、穏やかに微笑んだ。
「ああ。そこは変えられねえ。だから、頑張ってお前らが化粧品づくりができるように、まずその余裕を持てる生活を目指そう」
「同感よ。……ホホホ。こんな簡単な話なのに、ここに来るまで随分かかっちゃったわねぇ」
「ははは……。いやぁ、悪かった!あんたたちも、色々とありがとうな!」
拠点の人々が振り返り、猟兵たちへと礼を叫ぶ。猟兵たちは顔を見合わせて頷きあった。
――かくして、拠点『アンローズ』の人々の不和はおさまり、いくつかに分かれていた人々の派閥は和解を迎える。
だが、本当に忙しくなるのはこれからだ。この拠点には今まさに目を付けたオブリビオンの群れが迫りつつあったのである。外で見張りをしていた者たちが声を上げて危機を知らせる。ここから先は、戦いの時間だ!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『キルドーザーズ』
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POW : キルドーザーズ鉄の掟『遅ェ奴はクソ!』
【敵に向けてチキンレースのような集団突進】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : キルドーザーズ鉄の掟『雑魚は死ね!』
自身の【モヒカン】が輝く間、【同士討ちを全く厭わぬ突進】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : キルドーザーズ鉄の掟『敵は轢き殺せ!』
【ドーザーブレードを振り回しながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【雄叫びを上げながら無秩序に走り回る仲間】の協力があれば威力が倍増する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ゲハハハハハ!!」
「潰せ潰せぇ!」
「ヒャーッハハハハ!皆殺しだぜえ!」
――荒野に舞い上がる砂塵。砂礫とともにアポカリプスヘルの大地を、異形の輩が疾走する。
キルドーザー軍団。彼らは肉体をマシンに置き換え、強力な馬力と加速力。そして圧倒的な制圧力を得たレイダーたちである。
「来たわね」
そして、敵を迎え撃つべく『アンローズ』の人々が防衛線を敷いていた。
先頭に立つローズは7.62口径自動小銃を担ぎながら迫りくる敵影の群れを見据える。
「皆、準備はいいかしら?……手筈はわかってるわよね。アンソニー、ベルナルド。狙撃班はもう撃ち始めてちょうだい。クロム、バギーのエンジン入れて。アタシが乗るわ。あなたのドラテク信じてるわよぉ。追っつかれないように気合い入れてね?」
そしてローズは拠点の人々で構成した防衛部隊のメンバーに指示を出してゆく。
彼らの士気は高まっている。不和が解消され、協力し合うことを確認しあった彼らは、ローズを中心として誓いも新たに一丸となって拠点を守るための戦いへ取り組もうとしていた。
――そして銃声。敵軍団は既に目視可能距離。狙撃班が攻撃を開始したのである。次いで武装バギーに乗り込んだ機動戦闘部隊が動き出す。
「さあ、ブッ飛ばすわよぉ!ロックンロール!」
バギー後部の銃座についたローズが景気づけに声を張り上げる。拠点の人々もまた声をあげ、かくして戦いの火蓋は切って落とされた。
アリソン・リンドベルイ
【WIZ 侵略繁茂する葛蔓】
鉄砲とか、暴走する車とか…。そういった物は、正直苦手ですので…。最初は拠点の防衛線、狙撃班さんの上空に『空中浮遊』で浮かんで、『侵略繁茂する葛蔓、オーラ防御、範囲攻撃、拠点防御、地形の利用』……緑指の杖を振るって、葛蔓によるバリケードを構築。侵入阻止ないし時間を稼ぐ壁を築きます。もし敵を絡め取れたら、『生命力吸収』で吸います。
『医術、救助活動、奉仕』で、もし近くで負傷者が出た場合は、応急の対応。……拠点に戻るまでの辛抱よ。だから、どうかそれまで…持ち堪えて。 一応、空中を飛べますので、救護兵のように動いて、戦線が突破されそうな箇所の支援にあたります。
四季乃・瑠璃
緋瑪「アレは容赦しなくて良いよね、瑠璃」
瑠璃「別に良いよ。緋瑪」
「「さぁ、私達の破壊を始めよう」」
【破壊の姫君】で分身。
二人で飛翔翼を展開し、敵の射程外の空中からK100による敵の頭部や心臓を狙った銃撃及び接触式ジェノサイドボム(以下ボム)による空爆で攻撃。
同時に地雷代わりに感知式ボムも地面にばら撒き、敵の車体の下や車輪を爆破。
そのまま車体ごとスクラップに。
また、敵の突進に合わせ、機巧大鎌の炸裂機巧を利用した加速で一気に敵の半身を両断する等、各個撃破するよ
緋瑪「下半身を車にするとか馬鹿だね~。背後取られたら切り返さないといけないから対応し難いし」
瑠璃「何より空中からの攻撃に対応できないよね」
「ゲハハハハハ!」
轟音。砂塵を撒き上げながら荒野を走るドーザー軍団!悪辣な笑い声を響かせながら防衛線へと迫る!
「お客様がいらしたわよォ!さァさあ、ご丁重にお迎えしたげて!」
手を振って攻撃開始の合図を送りながら、ローズは武装バギーの銃座に乗って前線へと打って出る。同型の戦闘車両数台が、続けて前へと飛び出していった。
「かしこまりィ!」
瓦礫を積み上げた防衛陣地から身を乗り出し、拠点防衛チームの中の狙撃班がライフルを構える。射撃開始!弾丸がドーザー軍団の表面で爆ぜた。
「来たね」
「だね」
四季乃・瑠璃(f09675)――そして、彼女の別側面である“緋瑪”は顔を見合わせて頷きあう。
「アレは容赦しなくて良いよね、瑠璃」
「別に良いよ。緋瑪」
瑠璃はその手に銃把を握る。UDC-K100カスタム。対UDC戦闘を想定し、術的な強化を施された拳銃である。瑠璃は手の中でその感触を確かめながら、更に背面に翼を背負う。
【破壊の姫君/ジェノサイド・プリンセス】。瑠璃と緋瑪は同時に翼を展開し、迫りつつある敵群の姿を見据えた。
「「さぁ、私達の破壊を始めよう」」
そして、飛び立つ。
「気をつけてね……」
アリソン・リンドベルイ(f21599)は飛翔する2人の姿を見送ってから、
防衛線を構築する狙撃班のメンバーの方を振り返った。
「……じゃあ、こっちも準備しようね」
アリソンは拠点の人々と視線を交わして頷きあい、それから靴底でとん、と土を蹴った。
ふわりと浮かび上がる身体はそのまま中空へとのぼってゆく――視線を下へと向ければ、見渡す限りに芽吹く花もない、荒れた大地。アリソンはアポカリプスヘルの現実に目を細める。
「いつか……ここにも、ちゃんと花が咲くといいな」
取り出した杖を掲げて、指揮棒のように振る。向ける先のひび割れた地面へと、緑指の杖が術式を放つ。【侵略繁茂する葛蔓/エイリアンプラント・バイオニックインベンション】。ユーべルコードによって仮初の命を与えられた葛が一瞬にして爆発的な成長を遂げ、防衛ラインを囲みこむように緑のバリケードを構築する。
「すっげえ……魔法みたいだ」
「惚けてないで撃て撃て!前に出た連中を援護しろ!」
狙撃班はバリケード越しに更に射撃。弾丸を浴びるドーザー軍団は、しかしその進撃の速度を落とさない。
「……私も、いってきます」
「ああ、よろしく頼む!」
アリソンは浮遊した状態から身体を捻り、前方へと出て行った。空中機動の利点を生かし、遊撃と救護に回るのだ。
「――オラオラーッ!!」
「クロム!もっと飛ばして!アクセルめいっぱいよォ!」
「もうやってる!」
エンジン音と銃声が重なり合って荒野に響く。前線に出た戦闘車両隊は、車体に据え付けた銃座から弾丸を撒き散らしドーザー軍団を迎撃!しかし文字通り鋼鉄の肉体をもつドーザー軍団にとっては致命傷には至らぬ攻撃だ。嘲笑すらしながら、防衛部隊の戦闘車両へと追いすがった!
「このままひき潰して――」
「なーんて、させないけどね!」
「なんだァ!?」
だが、その道を遮るように空中から光る塊が投げ込まれた。車は急に止まれない!回避機動をとることもできず、ドーザー軍団の一台がそれを真正面から浴びる。接触起爆!それは瑠璃の投げ放ったジェノサイドボムだ。術者の魔力を糧として火力に変換する魔力爆弾!炸裂!
「グアーッ爆発事故!!」
爆散!ドーザーは爆発に飲み込まれたちまちスクラップと化して骸の海へと還る!
「なんだと!?なんだ、何が起こったァ!?」
「大丈夫大丈夫!わかったって無駄だからね!」
突如起きた爆発に困惑するドーザーの目の前に、空中から急降下する緋瑪が現れる。その手に握った大鎌を素早く振るい、交錯!すれ違い様の斬撃一閃!鉄を断ち切り、ドーザーを両断する!
「グアーッ当たり屋!!」
寸断されたドーザーは悲鳴を上げながら爆発四散!緋瑪は一旦瑠璃に合流し、次の獲物を定めた。
「よりによって、足を車にするとか馬鹿だね~。切り返さないといけないから後ろに対応し難いし」
「それに……砲台でも積んでるならまだしも。あれじゃ上からの攻撃に対応できないよね」
瑠璃は静かに目を細めながら次の獲物へとターゲッティング。K100の引き金を引き、術式弾頭がまた一体ドーザーを撃ち抜いて粉砕した。
「このクソゴミどもがアーッ!」
一方、味方を次々に破壊されてゆくことに激昂したドーザー軍団は更に戦意を高めるウォークライ!車体がスピードを上げて防衛部隊の戦闘車両に襲い掛かる!いままさに一台が追いつかれた!
「うわ……ッ!」
「やられる……!」
キルドーザーの腕が並走するように戦闘車両の横に並び、伸ばした腕が銃座についた戦闘員を掴んだ!ハンギングツリーめいて車両から引きはがされ、掴まれた身体がみしみしと音を立てる。危うし!
「ゲハハハハハ!このままブッ殺して……」
「――だめ」
――だが、それを遮る声。ともに伸びる緑!ヘデラの緑蔓。空中より降下して割り込んだアリソンが、その蔦を放ってキルドーザーを絡め取ったのである!
「ヌオ……!なんだとォ!?」
動きを封じられたドーザーは身悶えするも、絡みついた蔓は逃さない。その隙にアリソンは掴まれていた拠点の戦闘員を解放した。
「……大丈夫?」
「げほ……ッ。くそ、腕が……」
オブリビオンの腕力に締め上げられたのだ。致命傷には至るまいが、骨折程度はさせられた可能性がある。
「戻るまで、私が守る……拠点に戻るまでの辛抱よ。だから、どうかそれまで……持ち堪えて」
アリソンは負傷した戦闘員を一旦後退させる判断を下した。戦闘車両の運転手へと声をかけ、転進。防衛線の後ろまで下がるように指示をする。
「逃がすかよォ!」
「へへへ、なんだァありゃ救護兵かァ?」
「ゲハハハ!足手まといと一緒じゃあ戦いづらいだろうなあ!」
「ヒヒヒ!囲んでブッ潰せぇ!」
しかし、悪辣なオブリビオン軍団はそれを見逃さない!負傷者がいると見るや否や、アリソンのもとへ集ろうとし始めたのだ!
「あっははは!わかりやすすぎ!」
「グアーッ地雷原!!」
だが、移動を開始したドーザー軍団の車両がまたも爆発を始める。――ドーザー軍団の転進を見るや否や、瑠璃と緋瑪が妨害に入ったのである。ジェノサイドボムを撒き散らし、ドーザー軍団を次々に爆破してゆく!
「集まってくれるなら、やりやすいよね。……こっちは任せて」
「……ありがとう」
アリソンは瑠璃と視線を交わし、そして負傷者を防衛線へと送ってゆく。その背後で、再び爆発音が響き渡った。
――かくして、拠点『アンローズ』を巡るオブリビオンとの戦いはここに幕を開けたのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
穂照・朱海
ろおず様は指導者の素質を見せ始めているようで御座いますね
善き哉……
ではわたくしも
いざ、美を愛する者達の為に
ろつくんろおる!
地上で迎え撃ち、敵が近づいてきたら空間を跳躍して跳び越えます
空中で輪入道と寛永通宝を飛ばして隙を作り、そこから跳躍して斬りつけにいきます
攻撃が終わったら敢えて地上に降りて攻撃を誘います
その際敵の多い所に着地し、同士討ちを誘います
攻撃は跳躍して回避、先のように空中での攻撃に移ります
纏めると敵の頭上を跳躍して避けつつ攻撃する形になります
危険になつたら赤ゑいを呼んで逃げます
ほほほ……わたくしは強く美しく舞う!
さうして美しく生きようとする人々を護り
世界を彩るのです
黒木・摩那
『アンローズ』の皆さんに説得が通じ、団結が固まってよかったです。
あとは拠点の皆さんと攻めてくるオブリビオンを片づけるだけです。
相手はブルドーザーとの合体オブリビオンですか。
これはそのまま突進されてはダメですね。
妨害を計ります。
ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
ヨーヨーをキルドーザーに絡ませ【ジャンプ】して、飛び乗ります。
そして、キルドーザーの腕や足、機械部分などに都度ワイヤーを絡ませて
【敵を盾にする】ように、ドーザーを操作します。
うまく衝突する形になったところで次のドーザーに飛び移ります。
こうして多重事故を誘発したところでUC【風舞雷花】を発動して、
一網打尽にします。
フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎、共闘可
POW判定
・行動
UCで集団突進してくる相手の装甲の無い部分に
電磁覇気を纏わせた針を次々に投擲
敵に磁力の鎖を繋いだら相互に引き寄せて
敵同士が衝突する様に進路を誘導して味方部隊への攻撃を防害し続ける
(見切り、鎧無視攻撃、投擲、怪力)
・セリフ
(機動部隊バギーに同乗させてもらい前線へ)
敵が突進してくる目の前に出たら私は降りますから
あなたたちは止まらずに走り抜けてください!
(敵の前に飛び降り)
行ってきます!
(攻撃後)
ブンブンブンブンうるせえぞ、雑魚ども!
一人で走れもしねえで群れている奴らなんざ
アタシがぶっ潰してやらあ!とっとと纏めてかかって来やがれ!
以降は同士討ちを誘いつつ戦闘続行
「グヘヘヘヘヘ!死ねーッ!」
「やだもう!乱暴なんだから!」
ダダダダダッ!ローズが銃座でトリガーを引く。機関砲から吐き出される弾丸が、武装バギーに追いすがるドーザーに叩き込まれた。ドーザーの車体が弾頭の雨に叩かれその動きを鈍らせる。
「――今よォ!ブチ込んで!」
「了解ッ!」
ここで側面に回り込んでいた武装車両から、戦闘員が対戦車用のバズーカを構えてブッ放す!――命中!爆発、炎上!ドーザーの車体が燃え上がり、悲鳴と共に機能を停止!そして停止する。
「オッケー!よく仕留めたわね。この調子で次行くわよ次!」
「おおっ!」
鬨の声!――人の身でオブリビオンに相対するは困難であるが、100パーセントの不可能ではない。ローズ率いる拠点の人々がそれをここに証明する!歓声とともに拳をあげ、戦意を高めながら彼らは引き続き防衛戦に臨む。
「団結が固まったようですね……よかったです」
戦闘機動を続ける武装車両隊に同乗する黒木・摩那(f06233)は、その戦いの様子を見守って安心したように息を吐いた。
「ええ。それに、ろおず様は指導者の素質を見せ始めているようで御座いますね」
善き哉。同じく車上の穂照・朱海(f21686)は人々を指揮するローズの姿に感心して頷いた。拠点の人々は勢いづいている。だが、それでいて決して無茶な戦いをすることもなく、動き方は慎重だ。
「これならここの拠点もいい方向に変わっていくことでしょうね――では、私たちもそのお手伝いをするとしましょう!」
フローラ・ソイレント(f24473)は拳を掌に打ち付けて戦闘態勢に入る。武装車両のシートから立ち上がると、眼前に展開したドーザー軍団の進撃を正面に見据えた。
「ええ。あとは片づけるだけです」
摩那も同時に座席から立ち、その手の中に握りこんだヨーヨー、エクリプスの感触を確かめる。
「では、わたくしも参りましょう。――いざ、美を愛する者達の為に」
かちり。鍔鳴りの音。朱海が鯉口を切る。
「それでは、私たちは降りて戦います。あなたたちは止まらずに走り抜けてください!」
フローラは戦闘車両の運転手へと声をかけ、そのままバギーの車体から身を乗り出す。そして、車体を蹴って荒野へと飛び出した。
「ああ、わかった!悪いが任せたぜ」
「大船に乗った気持ちでどうぞ!では――行ってきます!」
「はい!行きましょう!」
「ろつくんろおる!」
同時に跳んだ朱海と摩耶。フローラとあわせて3人の猟兵たちが荒野へと飛び込んだ。戦闘車両は道を反れるようにドーザー軍団との激突コースを躱しながら、一旦敵群と距離を取る。
「オラオラーッ!」
「ゲヘヒャヒャヒャヒャ!生身で出てきやがるとはなァ!」
「ブッつぶれろやァ!」
そして猟兵たちを正面から襲う、がなりたてる駆動音!大気を汚す排気ガスを吐き散らしながら、ドーザー軍団が荒野に砂塵を撒き上げて迫る。
「なるほど、パワーと質量はかなりのもの……これはそのまま突進されてはダメですね」
「では、その勢いを削いでしまいましょう――」
機先を制するように飛び出したのは朱海である。演舞のように優雅な所作で、朱海は地を蹴り宙へと舞った。【スカイステッパー】。更に空を蹴って朱海は上方を取る。
「輪入道」
『あいさァ姐さん!」
その傍らに火が生まれた。その火は瞬く間に回転し炎の輪を形成すると、その中に顔が浮かび上がる。輪入道である。
「よしなに」
『おまかせあれよ!』
朱海の呼びかけに従い、妖が高速で回転しながら荒野を走った!ドーザー軍団に正面衝突!激突の衝撃に炎が爆ぜる!
「ぬおお!!」
「――失礼」
輪入道との激突に怯んだドーザーの正面へ、生じた隙を逃すことなく朱海が飛び込んでゆく。しゃ、と滑らかな金属音。朱天狗の刃が閃いた。一閃。ドーザーの首がごろりと落ちる。
「クソォ!ガキどもめがァ!」
目の前で仲間を屠られた後続のドーザーが激昂の雄たけびをあげる!仲間の残骸を踏み越えて走るドーザー軍団!躯体が更に駆け抜ける!
「ほほほ……わたくしは強く美しく舞う!」
『さあさあ、千両役者のお通りだ!恐れ多いぜドサンピンども!』
しかして朱海は宙を駆けながら間合いを取り直す。同時に空中から寛永通宝銭を指弾めいて打ち出した。銅銭に宿る付喪たちが飛び出す勢いのままドーザーたちを襲い、更に注意を引く。ドーザー軍団は誘われるように朱海を追って集まり始めた。
「このガキ――」
「視野が狭いですよ――あなたの敵は、こちらにもいます!」
がいんッ!激突音!朱海を追っていた先頭のドーザーが突如揺らいだ。側面に回り込んだ摩那が仕掛けたのである。投げ放たれたヨーヨーが命中し、その衝撃に揺れるドーザーが歯を食いしばり視線を向ける。
「こいつら……!」
「あなたたちを野放しにはできませんからね!」
摩耶はそのまま荒野の土を蹴立てて跳んだ。ドーザーの迎撃を躱しながら、機体に取り付くようにしがみつき、そのまま身体を跳ね上げるように宙を舞いながら糸を繰る。奔るヨーヨー。エクリプスの糸がドーザーの腕に絡みついた。摩耶は更に糸を引く。
「な、なにィ!?」
「どうぞどうぞ、さあこちらへ!」
操り人形のように摩耶の糸がドーザーの身体を支配する。急激な方向転換!強引に反転させられたドーザーは暴走状態に陥りながらあらぬ方向へ向けて急発進する!向かう先はまた別のドーザーである。このままでは正面衝突だ!
「では失礼!」
摩耶はそこからちゃっかり跳んで離脱!しかして車は急に止まれない。加速の勢いのままにドーザーは激突コースを全力疾走!
「グアーッ身体が勝手に!!」
「グアーッ危険運転!!」
そしてクラッシュ!たちまち爆散!
「こいつら、よくもオレたちコケに!」
ヴォンッ!残存するドーザーたちが、激昂するように排気筒で咆哮する。次々と破壊されてゆく仲間たちの姿にドーザー軍団は怒髪天であった。怒りに満ちてマシン出力を更に上昇する!
「――ブンブンブンブンうるせえぞ、雑魚ども!」
「ぬお――ぐ、ッ!」
しかし、ここでまた更に突然の衝撃がそのエンジン音を遮った!唸りを上げるヴォルテックエンジン!フローラである!隙をついて敵の眼前に飛び込んだ彼女は、電光を纏う拳を放つ。磁極流活殺拳!その妙技がドーザーを叩き、その動きを押しとどめた!
「一人で走れもしねえで群れている奴らなんざアタシがぶっ潰してやらあ!」
フローラは更に電磁針を引き抜くと、そこにエネルギーを収束させながら放つ!投げ放った針は電光を帯び、光の軌跡を残しながらドーザーへと突き刺さった。
「グオオ……!!な、んだ、こいつは!」
「捉えたぞッ!」
その電光を通じ、電磁の力が鎖めいてフローラとドーザーを繋ぐ!【磁極流:陰陽縛鎖/パーシャ】!さながらチェーンデスマッチ。フローラは磁力鎖に力をこめ、とらえたドーザーの躯体を引きずり倒す!
「グオ……!」
「こっちです、こっち!集めちゃってください!」
「ええ、ええ。かしこまりました。そちらへ、そちらへ追い立てましょう」
「わかった、ぜ……おらァッ!ブッ飛べぇッ!」
フローラは磁力鎖で引きずったドーザーを放り投げた。――かくして。朱海が誘導し、摩耶が糸で繰り、フローラが引き込んだドーザー軍団は一か所へ一塊になって集められた格好となる。
「励起。昇圧、帯電を確認。敵味方識別良し……では、これで一網打尽といきましょう!」
そこに生じる電光!摩耶のサイキック能力の発露である。引き抜く魔法剣が絢爛に輝きを放つ。摩耶は意識を集中させ、ルーンの光を燐光を放つ花びらへと変えた。【風舞雷花/フルール・デ・フルール】!激しく放射される電撃とともにドーザー軍団を包み込む電光花吹雪!
「グアーッ感電死!!!」
「グアーッ爆死!!!」
そして、爆発!十数台のドーザー軍団を一気に巻き込みながら連鎖爆発を引き起こし、最終益に生まれた巨大な爆轟が荒野を揺るがし篝火めいて巨大な火柱をあげた!
「悪党どもでも散るときは綺麗なものでございますね」
かちり。納刀の仕草。朱海は朱天狗を鞘に納めながら熱風に髪をなびかせる。
「まだ残ってる連中がいるみたいです。最後まで気は抜かずにいきましょう」
フローラは態勢を立て直しながら、尚も砂塵の向こうより迫りくる敵軍団の姿を遠目に捉える。
「はい。ローズさんたちもうまくやっているみたいですからね。このまま完全勝利といきましょう」
そして、摩耶は頷き返しながら手にした得物の状態を確かめ、更なる迎撃のための態勢を整えた。
――戦いは猟兵たちと拠点の人々が大きく優勢を保ったまま佳境に入りつつあった。
戦いも、間もなく大詰めである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ルカ・ウェンズ
うるさいのがきたわね。陸戦の王者発動!悪いモヒカン野郎は死ね。
昆虫戦車に頼んで【一斉発射】攻撃!これで敵をスクラップにしてもらって【恐怖を与える】わよ。私も宇宙昆虫に【騎乗して空中戦】を仕掛けるわ。オーラ刀を銃に変形させて空から攻撃。地上と空から一方的に攻撃するのは楽しいな~
これでもまだ生き残った敵がいたら私の【怪力】で攻撃!とどめを刺さないと仕事人の拷問具を使ったり叩いたり蹴ったりしてちゃんとスクラップにしないと。ところでモヒカン野郎の歯は金歯なのかしら?金歯だったら貰っていいか聞いてみないと。それはそれとして、いらない部分は江戸モンゴリアンデスワームに食べてもらいましょう~そうしましょう~
リカルド・マスケラス
「それじゃ、自分も協力しちゃうっすよ!」
そう言って【仮面憑きの舞闘会】でローズ達に憑依。リカルドの能力と技能を与えて超強化。仮面で顔を隠したくないなら、横にズラして
「自分、色々な場所を旅してきたんすよ。そこで学んだ事をちょっとだけの間、使えるようにするっすよ」
狙撃班は【視力】で命中を上げて弾丸に魔力を込めて風の【属性攻撃】で貫通力を高める
機動部隊は【操縦】の腕を上げ、【集団戦術】で連携し、敵を引きつけてもらう。機関銃も炎の【属性攻撃】あたりで火力を上げる
後は、弾幕で【挑発】して、敵が同士討ちするようにルートを誘導
「どんなもんっすか!」
このUCを使うと代償はきついが、素振りは見せないっす
バンリ・ガリャンテ
ローズさん。皆さんにとってあなたは光だよ。
そして皆さんは、あなたのよすがだ。
駆け出した皆に届くよう歌おう。
奴らの姿を見なよ。ふざけてやがる。
あなた方の心も身体もこの地も、あれが轢き荒らそうとするそばから俺がスクラップにして焼き捨てる。
だから共に。勝てるよ。
やって来る一台の前に仁王立ち、真正面で受け止めてブレードを切断し、離断した刃でお首を切断。地獄炎纏わせたブレードを他の標的目掛けてぶん投げる。挑発しながら派手に暴れ数台を撃破。連中の注意を引いて誘い込むように走り、突っ込ませて回避。衝突を促す。地獄炎で撒いて複数台を一纏めに焼却よ。
希望が芽吹こうとしてんだ。
此処で、花は咲くんだ。
「チクショウ!よくも俺達の仲間(ダチ)をブッ殺してくれやがったな!」
ヴォンヴォンヴォンヴォン!唸るエンジン。荒野を駆けるドーザー軍団!残存するオブリビオンどもはもはや20体ほどを残すのみとなっている。しかして敵群は激昂の叫びと共に最後の一体まで玉砕覚悟のブッコミを仕掛けてくる覚悟だ!
「うるさいのがきてるわね」
ルカ・ウェンズ(f03582)は、砂塵の向こうに迫りくる敵の姿を見据えながら傍らにはべる昆虫戦車を撫ぜる。
『ぎちぎち』
「ええ。よろしく頼むわね」
昆虫戦車が音をたてながら生体砲塔に火を入れる。既に敵群は射程内。号砲。生体砲弾の射出。炸裂する弾頭が迫りくるドーザーを怯ませた。凄まじい威力。爆轟!さながら【陸戦の王者】。昆虫戦車の砲撃がドーザーどもを吹っ飛ばす。
「グアーッ爆撃!」
「悪いモヒカン野郎は死ね」
ルカは更に昆虫戦車の上に乗ってその背を叩く。ぶぅん。生じる羽音。昆虫戦車はその翅を開いて地を蹴った。その身体が地面を離れて宙を舞う。高さの優位性を取って情報から空爆めいた攻撃を仕掛ける算段だ。ルカを乗せた昆虫戦車は、荒野の空を羽ばたいた。
「ひゅう――。派手にやるわね、あっちは。……みんな、任せっきりじゃいけないわよ!アタシたちの拠点は、アタシたちの手で守るのよ!」
「おおッ!」
その一方、荒野を走る武装車両の銃座でローズが叫ぶ。拠点の男たちが士気を高揚させながら鬨の声を響かせた。
「それじゃ、自分も協力しちゃうっすよ!」
「あらお面」
「どうもどうも」
リカルド・マスケラス(f12160)がその傍らにふわと浮かぶ。――ローズのそばだけではない。リカルドの面は無数に現れ、拠点の防衛部隊の人々のもとで浮かんでいた。【仮面憑きの舞闘会/マスカレイドパーティ】。それは面として自身と自分の分身たちを人々にかぶせることで、力を分け与え強化するユーベルコードである。
「――自分、色々な場所を旅してきたんすよ」
「まあ。歴戦なのね?」
「そこそこっすかね。……なんで、そこで学んだ事をちょっとだけの間、使えるようにするっすよ。力を合わせるっす」
「……じゃあ、頼らせてもらおうかしら!」
ローズはリカルドの面を手に取り、被った。――ローズの身体に、力が漲る感覚。しかして顔を隠すのはせっかくの化粧が役立たない。すいっと横にずらして視界を確保しながら、ローズ/リカルドは視線の先に敵性オブリビオンの姿を捉えた。
「……」
その姿を遠く見つめながら、バンリ・ガリャンテ(f10655)は短く息を吸って――歌声とともに、吐き出す。
「ローズさん。皆さんにとってあなたは光だよ」
バンリはアポカリプスヘルの荒れ果てた世界に於いて、それでも尚と文化を取り戻そうとするローズの姿に、希望を見た気がしていた。
故に、その背を押したい、と思ったのだ。
「そして皆さんは、あなたのよすがだ」
バンリの歌う声が、荒野を渡る。【HERE WITH ME/ヒアウィズミー】。荒野に吹き荒れる乾いた風に負けじと響く歌声が、今この瞬間に戦い続けている『アンローズ』の人々の耳朶を揺さぶり、その心へと届いた。
「これは……」
「歌、っすね」
「ええ、ええ……。聞こえるわ。聞こえるわよ。……綺麗ね」
世界が滅んだりしていなければ、きっとこうした歌が世界には満ちていたのだろう。ローズは僅か瞑目してから、視線を上げた。その腕には、更なる力が宿っている。それは、文化の火を再びこの世界に灯そうという決意と覚悟の籠る強い灯火の光だ。
「……行きましょ。一緒に来てくれるのよね?」
「喜んで」
ローズ/リカルドは車上の銃座を立ち、荒野へと身を躍らせた。
「グオオオオオオオオオ!!」
ガァンッ!ガァンッ!ドーザーの機体の表面で弾頭が爆ぜる!防衛線に座す狙撃部隊からの精密射撃だ。リカルドとバンリの助力によって能力を大きく引き上げられた狙撃班の攻撃は、数百メートルの距離をものともせずに関節部や駆動系などのドーザーの急所を叩く!人間どもの弱々しい抵抗、とたかを括っていたドーザー軍団は想像を超えて致命傷に近い打撃を与えてくる狙撃に困惑しながら態勢の立て直しを図る!
「駄目駄目。そのまま死んでもらうわよ~」
「ヌウーッ!?」
上方より降る声へと、逃れようとしたドーザーの一体が視線を向けたその瞬間である。空中より飛来するオーラの光刃!貫く閃光が息の根を止める。爆発するドーザーの残骸には目もくれず、ルカと宇宙昆虫は更なる獲物を目指して飛んだ。
「任せっきりにはしないわよォ!」
駆動音!ざり、と砂塵を撒き上げながら戦場を駆ける武装バギーの車上から、機関銃を構えたローズ/リカルドが飛び降りる。その眼前には迫りくるドーザー!だが、ローズ/リカルドは僅かばかりも怯むことなく銃口を向け、そして口の端に笑みを浮かべる。恐れる必要はない。化粧という名の心の鎧がその背を支える。真正面から接近するドーザーの顔面めがけて向けた銃の筒先!トリガー!トリガー!トリガー!叩きつける7.62口径がドーザーの頭を破壊し、機能停止へと追いやる!たちまち爆散!
「さすがっすね、いい腕してるっすよ!」
「あら、手伝ってもらってるからじゃないかしらぁ?」
ローズとリカルドは軽口めいたやり取りを交わしながらも油断なく視線を巡らせ、次なる敵へと相対する!
「ッザケやがってぇ!」
――轟音!2人のやり取りの間に割って入るように、撒きあがる砂塵と爆発の噴煙に紛れてドーザーが疾走する!奇襲めいた突貫だ!不意を打ってローズを轢き潰そうと鋼鉄が吼える!
「希望が芽吹こうとしてんだよ」
しかして、その瞬間である。
閃く刃が、鉄を切り裂いた。――ここに掲げる、わたしとわれらの物語。それは荒廃と滅びに満ちたこの世界に革命をもたらす輝きだ。その剣は、暴虐を断つ。
「此処で、花は咲くんだ」
その邪魔はさせまいと、そこに飛び込んだバンリが返す刀で更に一閃!
「グアアーッ!ば、バカな……こんな、こんなことがアッ!!」
両断。断ち切られたドーザーは断末魔を響かせながら爆発し、そして骸の海へと還ってゆく。
「さあ、これで終わらせよう」
バンリは振り返ってローズを見る。ローズはリカルドの面をかぶり直し、頷いてからその手に銃を携えた。
「があああああああああッ!」
リカルドの助力で優勢の状況を更に押し込んだ拠点の防衛部隊や、昆虫戦車とともに宙を舞うルカ。そして戦場を駆けるバンリの活躍があって、残存する敵オブリビオンは残り1体。しかして残ったたった1体のドーザーは、狂乱の雄たけびと共にまっすぐに突っ込んだ!ローズと猟兵たちは恐れることもなく、真正面から視線を返す。
「――勝てるよ」
「そうそう。自分らがついてるっすからね!」
「じゃあ、これで決着にしましょう~」
そして、猟兵たちが迎撃する。
炎が奔り、光刃が断ち、そして銃声が吼えた。鋭く放たれる力が、次々に最後のドーザーの躯体へと吸い込まれるように叩き込まれてゆく。
「グアアアアーーーーッ!!爆散!!」
そうして――爆発。
かくして、『アンローズ』を狙っていたオブリビオンの軍団は最後の1体までもが滅ぼされ、壊滅するのであった。
「……お、お…………やったっすよぉ!」
周囲に残存する敵はなく、荒野にはただ乾いた風が吹き抜けるのみだ。戦いの終わりを感じて、リカルドはユーベルコードを解いた。――そして、わずかに揺らぐ。他者に力を貸す代償に、存在核を蝕む呪詛めいた痛苦が彼を苛むのだ。――しかして、マスクである身体が幸いしてか。リカルドはその痛みを表に出すことなく気丈にふるまう。声を張り上げ、拠点の戦士たちと勝利を祝って快哉を叫んだ。
「もう生き残りはいないかしらね~?……拾えるものはないかしら。ちょっと見に行きましょう~」
『ぐもももも』
一方、ルカは戦いの爪痕残る荒野に向けてゆっくりと歩きだす。敵の残骸の中に何か拾えるものはないか――例えば金歯とか。あるいは金品や宝石だとか。生きていたら貰っていいか聞くところだが、どうせ返事できるオブリビオンなど残っちゃいない。――ついでに、いらないものは食べて処分してしまおう。ルカは江戸モンゴリアンデスワームを引き連れながら、荒野に残る敵の残骸を検分しに向かった。
「……これで、ひと段落かしらね」
「はい。……お疲れさま」
バンリは戦いを終えて一息つくローズを見ながら頷きあう。――猟兵たちの助力があったとはいえ、負傷者は少なく、拠点の損害もほとんどゼロ。拠点を率いるリーダーの初陣としては、きっと上等な結果だったのだろう。バンリはローズを激励し、讃えるように微笑んだ。
「ええ、お疲れ様だったわねぇ……それにしてもアナタたちには本当にお世話になったわ」
旅の人たちにこんなに助けてもらえるなんて。――先の拠点内での口論のときから、手を貸してくれていた猟兵たちへ、ローズはあらためて頭を下げた。
「せっかくだから、アタシたちの拠点で少し休んでいってちょうだい」
これくらいしか、できるお礼はないけれど、少し気恥ずかし気に頷いてから、ローズは歓声と共に防衛部隊を引き連れて拠点へと帰還する路を辿り始める。
それは小さな歩みであったが、明日の『アンローズ』を支えるリーダーとしての道を歩き始めたローズにとっての、大きな一歩でもあった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 日常
『化粧品を作ろう!』
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POW : 力仕事で貢献する
SPD : 精密作業で貢献する
WIZ : 分析や知識で貢献する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「――さあて!」
オブリビオンたちとの戦いから一夜明け、戦勝会もそこそこにローズが足を運んでいたのは拠点の裏につくられた畑である。
拠点『アンローズ』。その裏手はかつてショッピングモール内のホームセンターとして使われていた区画から発掘された植物の種を用いた、簡易的な農耕スペースとして使用されている。
その一角において、ローズと女たちは化粧品の原料に用いようと栽培していた紅花やオシロイバナといった作物がいくらか咲いていた。――かつての人々が残した文献を辿り、ローズたちは自らの手で化粧の文化を復活させようと日夜研究を行っていたのだ。
「ローズさん、あとはどうしたらいいでしょう……?」
「ちょっと待ってちょうだい。調べてくるわ」
ローズは仲間の女性といくらか言葉を交わしてから、『研究室』へと向かった。そこは化粧品に関する文献や、フラスコやビーカーといった科学実験用の器材を集めた彼のラボだ。スキンケア用の化粧水。肌を白く見せる白粉。彩を加える紅。ローズはそうした化粧品の数々を、先人の残した遺産を消費するだけであってはならないと考えて日夜実験を繰り返し、生産にこぎつけるべく試作化粧品の開発にいそしんでいたのである。
これまでは反対する人々との不和もあり、その歩みは遅々としたものであったが――その障害もなくなった今であれば、その研究もやりやすくなってゆくことだろう。
知識も技術も材料も無いない尽くしの中、それでも彼らは美しさを誇れる未来を夢見て、一歩一歩は小さな足取りでこそあるが――前を目指して、進んでいる。
とはいえ、何もかもが不足しているのは依然として厳然たる事実なのである。
猟兵たちよ。どんなことでも彼らの助けになるのであれば、君たちの知識を、技術を、力を貸してほしい。
ギャレット・ディマージオ(サポート)
●設定等
ダークセイヴァー出身の冷静沈着な黒騎士です。
鎧の着用が一般的でない世界では、サングラスやヘルメットに黒いスーツを着ているように見られます。
●行動方針
🏠日常では、基本的に現地の人々のためになるような行動を取ろうとします。
絶望の世界で日々の食料にも事欠く旅を送っていた経験から、美味しいものがあるとつい余計に買ってしまう癖があります。余った分は人にあげます。
年長者には経緯を持って行動しますが、年長者でも明らかに間違ったことを言っている場合は適当にあしらいます。
他は全てお任せします。
別の猟兵との交流や連携等も自由に行ってください。
どうぞよろしくお願いします。
リカルド・マスケラス
「まーなんというか、丁度いい技があるんすよね」
農耕スペースで開拓中のところとかあれば、ローズの体を借りて、そこに魔法陣を描いてゆく。
「ここに悪しきを払い、恵みをもたらせ! 【森羅穣霊陣】!」
【破魔】と火や風の【属性攻撃】で大地の汚染を払い、水と土の【属性攻撃】で大地に潤いと滋養を与える。アルダワの属性魔法やサムエンの祈祷や神楽など、色々なところの魔術を学び習得したUC。浄化した大地の作物の成長を促進してくれる
「化粧のことで細かいアドバイスは出来ないっすけど、こういうのでお手伝いさせてもらうっすよ」
そう言って素材収穫
あとはローズの体を借りて力を行使することで、力を使う感覚を覚えて何か役立つかも
アリソン・リンドベルイ
【WIZ 庭園迷宮・四季彩の匣】
ーーー良いお庭ね。
私の庭から植物をお分けしたい気もしてしまうのですが…その、植物によっては増え過ぎたり環境を変えてしまいますし…(例:葛 下手をすると拠点を呑み込む)
何名かを庭園迷宮にご招待して、お話を伺いたいと思います。今咲いている花や、香草や薬草の葉をサンプルとしてお渡しするのは良いのだけれど…根ごと移植するのはちょっと怖いですね。土中の微生物も、あんまり他地域に持ち出すのは宜しくないものでして…。
…もし渡すとしたら、糸瓜の種…とかでしょうか。食べられますし、化粧水になりますし、繊維も取れるので…でも、可能な限り慎重に、連作障害など懸案についてお話します。
「うーん……それにしても、もうちょっと元気に育ってくれないかしらねえ」
ローズは作業着に麦わら帽子のいでたちで農耕スペースに来ていた。屈みこんで作物の咲き具合を確かめる。
「やっぱり、土の質かしら……」
ため息と共にローズは軍手を外して土に触れた。
「――良いお庭ね」
訪れたアリソン・リンドベルイ(f21599)が、ほのかに微笑みながら見渡す。――アポカリプスヘルの環境下においては、よく頑張った方だ。他世界の農場に比較すれば貧相なものであったが、そこにはしっかりと草花が息衝いている。
「おほめにあずかり光栄ねぇ。……でも、まだまだよ」
「そうですね……もっとよくする方法は、たくさんあると思います。私も、お庭をつくるのが好きなので」
アリソンは、庭園で草花に囲われて過ごす時間を何よりの幸福としている。それだけあって、植物についての知識も豊富だ。その知識をアンローズの復興に活かせないかと思案する。
「あら、得意分野なら助かるわ。ぜひ教えていただけないかしら?」
「ええ、お力添えできればいいんだけど……」
「失礼する。作業はこちらで良かったか?」
ここで、ギャレット・ディマージオ(f02429)が通りがかる。彼は別の任務でたまたまアポカリプスヘルを訪れていたのであるが、偶然にも猟兵たちが拠点での作業に取り掛かった折にたどり着いたのである。
『化粧品の生産を目指す』拠点アンローズは、現在敷地内に作り上げられた農耕スペースの一角で化粧品の原料に使えそうな作物を育てているところである。そのため農具や肥料の運搬や水やりのための水源との往復といった力仕事の手は重宝されている。ギャレットはそうした働き手の手伝いとして仕事を拠点の人々から依頼されていた。
「あらいい男。ええ、助かるわ。そこに置いといてちょうだい」
「わかった。……ここは、作物が育っているのか」
ギャレットは運び込んだ肥料を地面に下ろしながら、兜越しに農耕スペースに育った作物を見渡した。彼の出身であるダークセイヴァーもまた、アポカリプスヘルと同様に絶望に覆われた世界である。――いつか、ダークセイヴァーでもこうして作物が育つ環境が整うようになればいい。日々の糧にも事欠き空腹を抱えながら過ごした頃を思い出しながら、ギャレットは密かに願った。
「ええ、だけどまだまだ満足なほどじゃないわ。なんとか賄えてるけど……もっと余裕ができるくらいにして、化粧品づくりもはやく捗らせなくちゃねぇ」
「なら、ちょうどよく自分がいーい仕事ができるっすよぉ?」
思案するローズのもとに、ふわりと狐面が浮かんだ。リカルド・マスケラス(f12160)である。
「あら、さっきのお面」
「どうも、リカルドっすよ。まーなんというか、丁度いい技があるんすよね」
まあ、ちょっと任せてくださいっすよ。言いながらリカルドはローズの頭に乗りながら、ヒーローマスクとしての力で身体を借り受ける。
「ちょっと時間をもらうっすよ」
「いいテがあるなら任せるわ」
「なら、その間に私から」
リカルド/ローズが農耕スペースの端、開拓中の区画へと向かう。その間にアリソンは別のエリアに移動しながら、拠点の人々を何人か呼び集めた。【庭園迷宮・四季彩の匣/メイズガーデン・フラワーボックス】ユーベルコードを起動し、アリソンはそこに自らの領域を展開する。即ち、彼女の庭園である。
「どうぞ、私の庭にいらしてください」
「まあ素敵。ジーナ、ファム。お話を聞いておいてちょうだい」
「「はーい」」
リカルド/ローズは作業へと移りながら、拠点の女たちに声をかける。それに従って何人かがアリソンの庭園へと招かれた。
一方、リカルド/ローズは荒れ地の上に線を引き、魔法陣を描いてゆく。静かに息を吸い込んで、精神を集中。土地に描かれた陣の中へと、力を注ぎ入れるイメージ。
「ここに悪しきを払い、恵みをもたらせ!【森羅穣霊陣】!」
術式が起動する。破魔の力。火と風の魔法力。それは穢れを払う力となって、地面を走る。大地に蓄積した有害な汚染物質を焼き払うように、熱い風が吹き抜けた。
「そして、こうっす」
更に、炎に乾いたその地を潤すように大気の中から水分が収束。大きな水球をかたちづくり、そして弾けた。農地の地面にいきわたるように、祝福の祈りを込めた水が満ちる。
「あらまあ……すごいわね」
見ただけでわかるほどに肥沃な地面と化した農地を見て、ローズが感嘆の声を漏らす。
「化粧のことで細かいアドバイスは出来ないっすけど、こういうのでお手伝いさせてもらうっすよ。さあ、そしたらここも耕していい感じにするっす!」
「では、私も手伝おう」
作物を植えるには、まず土を耕さねばなるまい。鍬を抱えたギャレットはリカルド/ローズの横に並んだ。戦いで鍛えられた肉体にとって、農具など羽のようなものだ。軽々と振るいながら、ギャレットは手際よく土地を耕し始める。
「今咲いている花や、香草や薬草の葉をサンプルとしてお渡しするのは良いのだけれど……根ごと移植するのはちょっと怖いですね」
「どうしてですか?」
「そうですね……植物によっては増え過ぎたり環境を変えてしまうんです。たとえは、あそこの葛なんかはすごく強い植物なんですけど……」
その頃、庭園の中ではアリソンと拠点の女たちが話を進めていた。知識のないところから歩き出した拠点の人々にとって、アリソンは良い教師役となっている。
「土中の微生物も、あんまり他地域に持ち出すのは宜しくないものでして」
「微生物?」
「知っています。ばいきんとかですよね?」
「それだけではないんですよ」
女たちはアリソンの話を熱心に聞きながら、植物についての知識を得てゆく。――話をするアリソンも、説明に熱が入った。終えてみれば十数分。短い時間ではあったが、彼女たちの過ごした時間はとても濃密で、実りのあるものとなったのである。
「……最後に、これを」
そうして話を終えたアリソンは、作物の種をひと掴み拠点の女たちへと手渡す。
「これは……?」
「糸瓜です。食べられますし、化粧水になりますし、繊維も取れるので……きっと、役に立つと思います」
「へちま……」
種を受け取る女たちへ、但し、とアリソンは更に言い添える。草花を育ててゆくことには、様々な懸念事項が存在するのだ。アリソンはそれをひとつひとつ慎重に拠点の女たちへと言い聞かせた。
「……あら、そちらのお話も終わったみたいね?」
「次は種まきか?」
「じゃあ、どんどんやっちゃうっすよー!」
拠点の女たちとアリソンは庭園の外で待っていた猟兵たちと合流し、そして拠点の人々と共に耕された農地での作業を開始する。
――糸瓜はちょうど種蒔きの時期。うまくいけば、夏にはきっと良い糸瓜が取れるはずだ。それはきっと、アンローズの人々の生活を助けるとともに美容や化粧品の技術の進歩に役立つことだろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
四季乃・瑠璃
瑠璃「使い掛けで悪いけど、私達の持ってるので良ければ提供するよ。化粧品の成分表示とかも参考になったりするんじゃないかな」
緋瑪「前にも言った通り、わたしは普段最低限しかしないから、持ってるのも最低限だけどね~」
アクセスリングに入れてた自身の身だしなみ用の化粧品を提供したり、ローズさんの研究室で【毒使い】の薬学や調合技術を使ってローズさんに調合技術を伝授したり。
まぁ、畑が違うからあくまで調合の基礎技術って事で…。
後はスマホ(魔術回路内蔵)を使って調合・成分分析【情報収集】を行ったりしつつ、ローズさんの実験のお手伝いをしようかな。
緋瑪「毒とか爆薬作るのは得意なんだけどねー」
瑠璃「偏ってるよね、私達」
ルカ・ウェンズ
化粧品の作り方で検索するわよ。
何々、化粧水に入れるグリセリンには、保湿効果とともに吸水性がある。
10%前後の濃度が限度あまり欲張って入れすぎると、元々肌にあった水分まで奪い取ってしまう!香りづけに使う精油も、柑橘系は紫外線に当たると炎症を引き起こしたり、濃いシミを作ったりする光毒性を持つものがある……助けて美白の女王!
美白の女王がいれば!美白の女王がいれば!万事解決なのに…ここは真っ黒な方の真の姿になって何か力仕事で貢献するわ!
何も手伝えることがなさそうなら、畑を耕したり、悪党から色々な物をもらってくるわ。物をもらったら、お礼に地獄に送るわよ。
黒木・摩那
これは立派な研究室ですね。
化粧品に対する並々ならぬ探求心が伺えるというものです。
化粧品の成果物の中にはできた物が何なのか、自分たちでもわかってない謎物質もありそうです。
そういうものをスマートグラスのセンサーで分析して、正体や用途を明らかにしていきます。
正体が分かれば、また違った使い道もできるかもしれませんし。
お肌に悪いものを塗って、肌荒れしてしまったら本末転倒ですから。
これで拠点がさらに華やぐと良いですね。
穂照・朱海
わたくし化粧はできますが作る方の知識は御座いませぬ
申し訳ありませぬ……
代わりと言ふては何ですが
化粧品の完成品をお披露目する時にお役に立ちませう
その化粧品を使ってどれだけ奇麗になるか、皆様にお見せするのです
具体的には
拠点の方(女性の方が良いでせう)から希望者を募り、
化粧前・化粧を施している最中・化粧後、この3つの姿を皆様に見ていただく
いかに化粧が凄いものか、皆様におわかりいただくのです
仲間内にその価値を認められたら、次はこの拠点の外に目を向けませう
将来的に別の拠点にも広められるように「広告塔」となる方を選んでおくのです
「化粧品と言えば、あんろおず」と、この世界全体に知らしめる準備をしておきませう
バンリ・ガリャンテ
ぬぬう。任されよう!とは言えん分野だな…コスメにはめちゃくちゃ関心あんだけどさ。
でもよ、まぁ調べてみたのよ。
こんな環境だし肌を清潔に保つのって難しかろう。そう。石鹸作りに俺の炎を役立ててみよう。
まずは雑草かき集めて地獄炎で燃やし、大量の灰をこさえるぜ。そいつを水ん中で撹拌して数分後、上澄み掬えば炭酸カリウムさ。
それからお次に石灰岩をご用意。こいつも高温で焼いて水を加えて出来んのが水酸化カルシウムだ。
コイツらを混ぜて強アルカリを作る。危ねぇから退いててね。
最後。ここに予め用意した種油がありまーす。こいつと強アルカリを混ぜれば…(暫くの間)石鹸の出来上がり!
…ど、どうかな…使えればいいんだが。
――ところ変わって。
「これは立派な研究室ですね」
黒木・摩那(f06233)は、アンローズ内に設けられたローズの研究室へと足を踏み入れる。
室内を満たすのはハーブや薬品など、化粧品の原料にしていたのだろう様々な物質の香りである。
「……文献の見よう見まねよぉ。そんなに大した設備じゃないわ」
ローズは肩を竦めながら備蓄庫から引き出した草花や薬品をデスク上へと移動し、器具の準備を始める。
「いえいえ。ゼロから始めてここまで揃える、というのも、化粧品に対する並々ならぬ探求心が伺えるというものです」
摩那は机上の器具を確認し、また、部屋の中に保存された実験の成果物――試作の化粧品へと目をやった。
「ぬぬう。任されよう!とは言えん分野だな……コスメにはめちゃくちゃ関心あんだけどさ」
バンリ・ガリャンテ(f10655)は眉根に皺を寄せながら、研究室内の器具や素材を順繰り確認していく。
化粧品を作りだす行程というのは、多くは難解な化学反応や組成などの専門的な知識を下敷きにしたうえで実験を繰り返し完成へと近づけてゆく――端的に言えば非常にケミカルかつアカデミックな分野なのだ。その知識を持つ者は、猟兵と言えどそう多くはない。
「それじゃ、使い掛けで悪いけど、私達の持ってるので良ければ提供するよ。化粧品の成分表示とかも参考になったりするんじゃないかな」
「前にも言った通り、わたしは普段最低限しかしないから、持ってるのも最低限だけどね~」
そこで話に加わったのは四季乃・瑠璃(f09675)と、彼女の別人格の緋瑪である。何かの参考になるのではないか、と、2人は自分たちが使っている化粧品をサンプルとしてローズへと提供した。
「あらヤダ。本当にいいの?」
「いいよいいよ。こっちの世界じゃそんなに珍しいものじゃないしね」
ローズはぱちりと目を瞬かせながらコスメグッズを受け取る。
「でも、こういうちゃんとした化粧品を作るにはしっかりした設備と技術が必要ですからね。どうやってそこにたどり着くかが勝負ですよ」
摩那は試作の化粧品を手に取り、スマートグラスを起動。ウェアラブルデバイスの情報処理機能をオンにすると、成分分析を開始する。
「このオシロイは大丈夫そうでしょうか……」
穂照・朱海(f21686)は、研究室の棚に置かれた瓶詰めの『オシロイ』を手に取る。
かつての歴史に学べば、古代に用いられていた白粉は水銀や鉛を用いて生成していたのである。長い間使われ続けていたが、鉛中毒などの健康被害にも繋がっていた。美容のために身体を崩しては本末転倒である。
「そうねぇ。えーっと……化粧品の材料って、気を付けないと毒になるのも多いのね?」
ルカ・ウェンズ(f03582)は情報端末からデータライブラリにアクセスし情報を確認する。
「化粧水に使うグリセリンは、保湿効果と吸水性があるけど……濃度が高すぎると、肌の水分まで奪ってしまう……。香りづけにつかう精油も、、柑橘系は紫外線に当たると炎症を引き起こしたり、濃いシミを作ったりする光毒性を持つものがある……」
「化学的な調合なんかは毒をつくるのと一緒だからねー」
「調合の基礎技術は応用できるから、あとでローズさんに教えてあげるね」
瑠璃と緋瑪が調合用の器具の状態を確かめる。欠けやひび割れなどの不備があれば、調合の精度が落ちて正しい成果物が得られなくなるが――とりあえず、器具に問題はなさそうだ。2人は実験の準備を始める。
「助かるわ。……そっちはどう?」
「そうですね……そのオシロイは大丈夫そうです。植物と鉱物由来ですね?」
摩那は試作白粉粉末を手に取り、成分分析にかける。恐らく花の種や石灰岩などを挽いて粉状にしたものだ。検分した結果では、健康被害を生じされる成分も含まれてはいないようだった。
「石灰があるのか」
バンリは研究室内の素材保管スペースの中に石灰岩を見つけた。これなら役立てる、とバンリは石灰岩を持って立ち上がる。
「ローズさん、これ使わせてもらうよ。俺にいい考えがあるんだ」
「石灰で?」
「ああ。……誰か、手を貸してくれないか?ちょっと力仕事になるから、体力のある人がいると助かるんだけど」
「それなら、私が行きましょう。力仕事で貢献するわ!」
「それじゃあ、任せるわ」
バンリの呼びかけにルカが手を上げた。よろしく頼むと言い添えて、バンリとルカは連れだって研究室を出ていった。
「そしたら、あっちが作業してる間に私たちで実験やろっか」
「うんうん。色々作ってみよ!精油の抽出とかもしたいし、グリセリンだっけ?あれも作りたいね」
「では、出来上がったものはこちらで成分分析をしましょう。お肌に悪いものを塗って、肌荒れしてしまったら本末転倒ですから。ものによっては、違った使い道もできるかもしれませんし」
「わたくし、作る方の知識は御座いませぬから……出来上がった後で、お役に立ちましょう」
「素敵ね。本当に助かるわ。こんなにはかどるなんて、夢みたい……」
猟兵たちの協力に、ローズが目頭を押さえる。これまではマンパワーもなく、反対する派閥の妨害などもあり、研究は遅々として進んでいなかった。この一日だけで、化粧品作りは大きな進歩を得るだろう。
一方、外に出たルカとバンリは農耕スペースの隅で作業を行っていた。
「これくらい集めればいいかしら?」
「ああ、まずはそいつを燃やす」
バンリはブレイズキャリバーとしての力を励起し、掌に火をともす。その炎で集めた雑草に火を付け、一気に焼いて灰を確保。それをバケツの中で水と撹拌し――炭酸カリウムを生成する。
「次はこいつを焼いていくぞ」
続けてバンリは石灰岩を焼いた。これもまた焼いた後に水を加え、水酸化カルシウムを作り出すのである。
「危ねぇから退いててね」
「はいはい」
できあがった2つの生成物を混ぜ合わせた化合物は強アルカリ。バンリはそこにあらかじめ準備しておいた精油を注ぎ込む。
「そして、これを撹拌して固まれば……」
「石鹸の完成ね?」
これは灰から生成するアルカリ物質と油を混ぜ合わせることで石鹸を作り出す方法だ。なお、焼いている最中の煙や途中で生成される強アルカリ物質などは人体にとって有害なので、この作業を行うときは細心の注意を払ってほしい。
「そういうことさ。それじゃ、頑張って固めていこうか」
「ええ、力仕事なら役に立つわ」
かくして、アンローズに石鹸づくりの技術が伝来する。
肌をきれいに保つ、というのは、美容であると同時に病を防ぐ衛生の観点からしても非常に重要な要素だ。この技術がアポカリプスヘルに普及すれば、人々のQOLも劇的な向上が見込めるだろう。
「……では、実践をして参りましょう」
数時間後。
ローズと猟兵たちは、研究室で生成した試作化粧品とバンリたちが作り上げた石鹸をもって拠点の人々を集会場に集めていた。
「よ、よろしくお願いします」
「ええ」
中央には朱海と、拠点の女たちの中から選ばれたモデルたちが立つ。
「……なんだ、もうずいぶんきれいじゃねえか」
周りの人々が声を漏らす。モデルの女たちは、既に石鹸を用いて洗顔を済ませていたのである。一般的なアポカリプスヘルでの生活の中では、美容どころか衛生管理にすら目を向ける余裕はない。石鹸で汚れを落としただけでも、それは拠点の人々にとっては見たこともない美しい姿として映るのだ。色よい反応に、ローズがバンリへと向けて「グッジョブよ!」と親指を立てた。
「これよりもっと綺麗になっていただきます……。では、お披露目といきましょう」
「まず化粧水ですね」
「白粉はこっちに用意してあるよー」
「パフとブラシ、必要になったら言ってね」
アシスタント役として摩那と瑠璃、緋瑪の3人がついて朱海に試作化粧品を渡してゆく。
「では、ご照覧くださいませ……」
朱海は手際よく化粧水をモデルの肌に馴染ませ、続けて生成された幾つかのコスメを用いてベースメイクを整える。そこから白粉を薄く乗せ、メイクブラシで紅を差して化粧を仕上げた。それに倣って摩那や瑠璃も同様にモデルたちの化粧を整えてゆく。
「まあ……」
「これは……凄い」
この世界における化粧の文化は途絶えて久しいものだったのである。たしかな技術をもつ朱海の手で彩られたモデルの表情は、それを見ていた拠点の人々に強い衝撃と感銘を与えた。女たちのみならず、拠点の男たちもモデルの女たちのあまりの変わりように驚きを隠せない。
「これが、化粧でございます……。おわかりいただけましたでしょうか」
「あの……わ、私にもしてもらえませんか!」
「あたしも!」
「お願いします!」
空気が熱を帯びるのを感じた。周りで見ていた拠点の人々の中から、女たちが次々に声をあげて立ち上がる。猟兵たちとローズは頷きあい、名乗り出た女たちに化粧の手ほどきをしてゆくのであった。
「これで拠点がさらに華やぐといいですね」
「だね。うまくいってよかったー……化粧品なんて作ったことなかったけど、意外といけるものだね。毒とか爆薬作るのは得意なんだけどねー」
「偏ってるよね、私達」
「石鹸もちゃんと役に立ったみたいだし……良かった」
「そうね、頑張った甲斐があったわ」
猟兵たちは、活気づき始めた拠点内の雰囲気の中で人々の笑顔に触れ、その成果を確かめる。
「みんな……本当にありがとう。なんてお礼を言ったらいいのかしら」
その光景に、ローズはまたも目頭を押さえて涙を堪えた。
「――次はこの拠点の外にも目を向けませう」
その中に在って、朱海は更にその先を見据えていた。――ここで生まれた化粧と美の概念を、ここだけに留まらずアポカリプスヘルに広げてゆく。それは文化の再生である。
「将来的に別の拠点にも広められるように『広告塔』となる方を選んでおくのです。『化粧品と言えば、あんろおず』と、この世界全体に知らしめる準備をしておきませう」
「それ、とってもいい考えね。その案いただくわ」
素晴らしいわ、と叫んでローズが頷く。この世界に再び文化を生み出すことこそ、ここまでそれを主導し続けてきたローズの願いでもあった。
「交易を目指すってことね?じゃあ今のうちから道を綺麗にしておかなきゃ……。私、ちょっと『掃除』してくるわ」
それを聞いてルカは集会場を飛び出してゆく。――小一時間もすれば、拠点の近くから悪党どもが一掃されていることだろう。
かくして。
『アンローズ』は、リーダーであるローズを中心として石鹸や化粧品などと美容用品を生産する拠点として活動していくこととなる。
猟兵たちの協力によって立て直されたこの場所は、以前とは比べ物にならぬほど強力な拠点として機能するだろう。
ここに再び咲いた美という名の花は、この荒野の世界においても、きっと、枯れたりはしない。
成功
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