歪んだぶどう踏み
●人類砦
「人類砦」それはオブリビオンであるヴァンパイアの支配盤石なダークセイヴァー世界に置いて、彼らの支配が及ばない人類の活動圏である。
闇の救済者、ヴァンパイアの圧政を逃れ、人知れず密かに、虐げられた人々を救う活動をする者たちである。その秘密組織が自称するのが「闇の救済者」という名前なのだ。
彼らはヴァンパイア支配下にあるダークセイヴァーにおいて、未だ彼らの砦はどれも小さなものであるが、いずれ大規模な反撃の礎となることは確かである。
これら人類砦を守り、成長させていくことこそがダークセイヴァー世界をヴァンパイアの支配から奪い返す一歩になるだろう。
だが、そんな、か細い希望であっても摘み取ろうとするのがオブリビオンであり、ヴァンパイアである。少しの反抗の芽も潰さんとするヴァンパイアの侵攻が始まっている。
●ぶどうたち
悲鳴が遠く聞こえる。
混乱に飲み込まれ、恐怖に飲み込まれ、逃げ惑う人間たち。それを見ていると一方的な虐殺であることがわかる。
だが、それを止めようとすることはなかった。
己は騎士である。強者たる己に立ち向かってくる者でなければ、己の剣を振るうに値せず。
「我ラ『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツ、此処ニアリ。我ラト剣ヲ交エントスルモノハ何処カ!」
ガタガタと鎧が嗤うように動く。6本腕を持つ異形の騎士が己の得物をそれぞれに打ち鳴らして強者を待つ。
だが、一向に彼に立ち向かうものたちはいなかった。
それもそのはずである。移動する悪魔頭の飾りの付いた蹂躙魔法兵器『ウォールゴーレム』が人間砦の人間たちを一人残らず石化して取り込んでいるのだ。
石化された人々は悲哀に満ちた表情でウォールゴーレムの内部に取り込まれている。
それを見ても湧き上がるのは苛立ちである。
「脆弱!脆弱!貧弱極マリナイ!!我ラガ欲スルハ、強者ノ血!唯、踏マレ潰レ滴ル血肉ニハ興味ナシ!」
怒りに震える異形の騎士。
ヴァンパイア支配に抗う人間たちに気骨を見出したつもりであるというのに、誰も彼も逃げ惑うばかりで己へと向かってこない。
立ち向かう姿をすりつぶしてこその勝利の美酒だというのに!
●闇の救済者
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件はダークセイヴァー。ヴァンパイアの支配する闇の世界です」
ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)がグリモアベースに集まってきた猟兵たちに頭を下げて出迎えた。
彼女の表情は緊張に強張っている。それがこの事件の緊急性を物語っているようだった。
「皆さんは『人類砦』はご存知でしょうか?ダークセイヴァー世界において、ヴァンパイア支配に抗う人々によって結成された秘密組織『闇の救済者』……彼らが支配下を逃れた場所に構えた拠点なのですが……」
そう、ダークセイヴァーはヴァンパイアの支配が盤石な世界である。ヴァンパイアたちは圧政を敷き、人々を苦しめている。
そんな圧政から逃れ、人間たちの反抗の礎となる拠点を構える者たちがいるのだ。
その拠点『人類砦』は岩山の上に存在し、堅牢なバリケードに囲われていた小さな砦であった。だが、その人類砦を反抗の芽としてヴァンパイアが侵攻を始めたのだ。
「その人類砦は今、危機にひんしています。『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツという異形の騎士に率いられた蹂躙魔法兵器『ウォールゴーレム』によって一方的な虐殺が行われているのです」
すでに虐殺はじまってしまっているのだという。予知がもう少し早ければ犠牲は少なかったのだが、これから急ぎ救援に向かわないわけにはいかない。
どんなに小さな砦であっても、これらは後に来るであろう大規模な反抗に置いて重要な意味を持ってくるはずだからだ。
「はい、勿論そのとおりです。今後のことを考えれば、この砦の救援は急務です。敵は非常に手強いです。石化しとりこむ攻撃を放つウォールゴーレムは厄介極まりない上に数も多いのです」
彼のオブリビオンが放つ攻撃はどれも石化を伴うものである。
この攻撃を受けては猟兵と言えども取り込まれてしまう可能性もあり、苦戦は必死であろう。だが、いずれの攻撃も初撃を躱してしまえば、次なる攻撃は当たることはなくなる。
どうにかして初撃をいなさなければならないだろう。
「そして、この集団を率いている者……『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツは六本腕の異形なる騎士です。嘗ては領主に反抗して闘いを挑んだ誇りある騎士たちであるのですが……」
そう、オブリビオンには勝つことはできなかったのだろう。敗北し、5人の騎士の亡骸はツギハギにされ操られるようになってしまった。
5つの脳を持ち、あらゆる状況に判断が速い。騎士としての技量も十分な上に腕が6本もあるので、どんな四角を突いた攻撃にも対応してくる。
まさに戦うための傀儡である。
「ただ、生前の騎士としての誇りは残っているのです。彼らは虐殺に加わってはいませんが、己に立ち向かってくる者には容赦をせず、真っ向から攻撃を加えるようなのです。しかし、どれだけ生前の誇りが残っていようとも、今はオブリビオンです。彼らの魂を開放するためにも、どうか皆さんの力を貸していただきたいのです……!」
ナイアルテが再び頭を深く下げる。
虐殺を止めるには猟兵の力でなければならない。かの暴虐を許すわけにはいかないと猟兵たちは次々と転移していく。
その姿を見送るナイアルテ。どうか、と祈らずにはいられない。一つでも多くの生命を救うために、猟兵達の戦いは始まったのだから!
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はダークセイヴァーに存在する秘密組織『闇の救済者』たちの築いた『人類砦』を守るシナリオとなります。
人類砦を襲うオブリビオンたちを退け、一人でも多くの人々を救わねばなりません。
●第一章
蹂躙魔法兵器『ウォールゴーレム』との集団戦になります。
すでに彼らの体内に石化され取り込まれた人々がいます。石化しているだけで彼らはまだ生存しています。頭部が弱点であり、そこを破壊できれば、石化しとりこまれた人々を救うことができるでしょう。
数が多く、石化攻撃も強力です。これをどうにかして初撃を躱し、取り込まれた人々を開放するのが目的となります。
●第二章
ボス戦です。『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツとの戦闘になります。
ヴァンパイアに戦いを挑み破れた5人の騎士たちの屍をパッチワークして生み出された異形の騎士です。
戦いを挑む者だけを相手にする武人、騎士としての誇りは残っているので虐殺に参加していませんが倒さねばならない敵です。
猟兵に対しては強者として戦いを挑んできます。彼らの呪縛を晴らすためにも、戦い勝利しなければなりません。
●第三章
日常です。戦いが終わり、砦は散々に破壊されてしまっているでしょう。これらの復興を手伝ったり、負傷した彼らを癒やしたり、もしくは何か催しを行って彼らの傷ついた心を癒やしてあげるのも良いでしょう。
今回のことで打ちのめされている人類砦の彼らに、生きていればまた希望が芽吹くのだと、そう思えるようなことをしてあげるのも猟兵の務めだと思います。
闇に負けない希望の光を人々の心に取り戻してあげましょう!
それでは闇に支配された世界、ダークセイヴァーに新たな希望を灯す戦いを皆さんの物語の一片とできますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『蹂躙魔法兵器『ウォールゴーレム』』
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POW : ウォール・キャプチャー
【ウォールゴーレム本体】が命中した対象に対し、高威力高命中の【本体へ取り込みと石化同化】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ウォール・キャプチャー
【ウォールゴーレム本体】が命中した対象に対し、高威力高命中の【本体へ取り込みと石化同化】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : ウォール・キャプチャー
【ウォールゴーレム本体】が命中した対象に対し、高威力高命中の【本体へ取り込みと石化同化】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
イラスト:保志乃シホ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
逃げ惑う人々の悲鳴が響く人類砦。
蹂躙魔法兵器『ウォールゴーレム』は次々と人々を石化させ、その身の内へと取り込んでいく。
取り込まれた人々の生命が石化されているだけにとどまっているのは、ウォールゴーレムの主であるヴァンパイアへの供物とするためである。
きっとこのままゴーレムたちを逃してしまえば、体内に取り込まれた彼らの運命は……言うまでもないだろう。
物言わぬゴーレムの進撃は止まらない。
希望を絶望へと突き落とすかのような悲鳴の連鎖は断ち切らなければならない!
ウォールゴーレムを打倒し、体内に取り込まれた人々を救い出すのだ!
リーヴァルディ・カーライル
…ん。石になっても、まだ生きている?
ならば私が足を止める理由にはならない。
…彼らは闇に覆われたこの世界を変えうる希望の光よ。
お前達の好きにはさせない。必ず、取り戻してみせる。
両眼に魔力を溜めて【血の赫眼】を発動し敵の能力や弱点を見切り、
今までの戦闘知識からUCで召喚した多数の影兵を囮に、
殺気や気合いを絶ち存在感を消して闇に紛れて切り込み、
怪力任せに呪詛を纏う大鎌をなぎ払い頭部を破壊する
…触れた者を取り込もうとするならば触れさせれば良い。
どの道、この兵士達は一度触れれば消え去るもの。
…むしろ、隙を生むのに丁度良いわ
…敵は私達が討つ。貴方達は影兵が囮になっている間に、
助け出した人達を連れて避難して
希望という名の光があるのならば、絶望という名の闇があるのもまた然りである。
人類砦に集まる人間たちは、その力のあるなしに関わらず、ダークセイヴァー世界においては希望の光なのだ。一つ一つが小さな光であろうとも、それが集まり大きな光になる。
故にそれらが大きくなる前に希望の光を摘もうとするのが、この世界の支配者たるヴァンパイア。
彼らの放った絶望をもたらす者たちは、疾く人類砦へと殺到する。戦う準備を整えるよりも早く襲撃されてしまった人間たちは散り散りになってしまう。
そうなってしまえば、後はもう蹂躙魔法兵器『ウォールゴーレム』の餌食である。
迫りくる壁の恐怖に慄きながら石化されてしまった人々の悲哀なる表情がいたたまれない。
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は混乱の最中にある人類砦へと降り立つ。
ここはあまりにも混乱がひどすぎる。今、下手に逃げ惑う人々に指示を出そうものなら、さらなる混乱が引き起こされてしまうことはわかっていた。
「……ん。石になっても、まだ生きている?ならば、私が足を止める理由にはならない」
そう、石化され取り込まれてしまっているとは言え、彼らはまだ生きている。ウォールゴーレムを倒し、彼らを救出することができれば、この混乱も次第に収まっていくことだろう。
今はまだ人間砦の人々は敵に対する知識があまりにも少ないのだ。石化され、取り込まれたとしても救出できると示せば、彼らの恐怖は払拭できる。ならば!
「光を灯せ、血の赫眼……!」
彼女の瞳が真紅に染まる。それは彼女自身の力の一端を開放するもの。赫眼が輝き、その瞳が捉えるのはウォールゴーレムの悪魔頭。
あれだ。と確信が持てる。あの頭部こそがウォールゴーレムの弱点であり、石化しとりこんだ人間たちを開放する鍵なのだ。
それがわかれば、後は容易いことだ。
「……彼らは闇に覆われたこの世界を変えうる希望の光よ。お前達の好きにはさせない。必ず、取り戻してみせる」
リーヴァルディの宣言は高らかに人間砦に響き渡った。その言葉に人々は誰しもが希望を瞳に宿したことだろう。
だが、まだ足りない。灯った光は絶えず希望を与え続けなければ、燃え盛ることすらできないのだから。
彼女のユーベルコード、影絵の兵団(タイプ・レギオン)が発動する。兵団の名を冠するに相応しい圧倒的な数の影絵の兵士たち。
それらが一斉にウォールゴーレームへと殺到する。
「……触れた者を取り込もうとするならば、触れさせれば良い」
リーヴァルディの気配が闇夜に紛れていく。それは闇に溶けることと同義であり、彼女の存在はあっという間に隠蔽される。
ただ、昏き闇夜に赫眼の残光だけが走る。
影絵の兵士たちはウォールゴーレムにあたっては取り込まれる前に消えていく。目標を見失ったウォールゴーレムは、再び影絵の兵士へと殺到するも、また消える。
それは一撃を受ければ消えるという性質を持つユーベルコードにて生み出された存在故、囮として最適解なのである。
「どの道、この兵士たちは一度触れれば消え去るもの……むしろ、隙を生むのにちょうど良いわ」
赫眼が煌めく。
影より這い出たかのように一瞬で現れるリーヴァルディ。彼女の呪詛をまとう大鎌がウォールゴーレムの悪魔頭を一瞬の内に薙ぎ払えば、取り込まれていた人間たちの石化が次々と解除されて放り出される。
それを影絵の兵士たちが抱え、即座に戦線を離脱していく。
「敵は私達が討つ。貴方達は影兵が囮になっている間に、助け出した人達を連れて避難して」
ウォールゴーレム数体の悪魔頭を大鎌によって切り落とし、次々と囚われた人々を開放するリーヴァルディが声を高らかに上げる。
彼女の姿は人類砦の新たな希望の灯火となる。闇夜にあっても輝く銀髪は月光の如く煌めく。
その姿に人々は勇気づけられ、開放された人間たちを連れ、避難していく。
それを満足気に見送って、リーヴァルディは大鎌を構える。
「さあ、いらっしゃい。此処より先は希望持つものしか通れない……貴方達のように絶望振りまく木偶は通れない。そう思いなさい―――!」
成功
🔵🔵🔴
アリス・ラーヴァ
※アドリブ・連携歓迎
たいへーん、『人類砦』の人たちが石にされているのー
ナイアルテさんのお話だとまだ生きているみたいだし早く助けてあげましょー!
でも、触ったら石にされちゃうのねー?どーしよー?
うーん、初撃を外すと次も当たらないそうだし得意の【団体行動】でかわしてみよー
妹たちを沢山呼んで【集団戦術】で戦うのよー
皆で接近して、攻撃の対象になった妹を別の妹が【かばう】のー
壁役は、糸を吹き付けて束縛しながら【ダッシュ】で体当たりして進路をずらすのよー
一人を取り込んでいる間に【ジャンプ】で飛び上がって『ウォールゴーレム』の頭部を破壊するのー
幼虫達は助け出した人達の【運搬】をお願いねー
さー、みんなー突撃よー
異形である。そのことと、その身に宿る魂の善悪については別物である。
名は体を表す、健全な精神は健全な肉体に宿る、その言葉が事実なのであるとすれば、それは唯の側面でしかない。
重要なのは、何を成すかである。猟兵であってもそれは、当てはまるのである。猟兵にとって真の姿もまた側面でしか無い。
種族も違えば、その姿も千差万別である。猟兵を猟兵たらしめるのは、容姿ではなく、その魂。
ぬばたまの瞳。濡羽色の甲殻。細くとも強靭な肢。鋼鉄すらも切り裂く顎。それは見るものに取ってみれば、異形であったかもしれない。
だが、彼女の魂は依然、堕したものではない。
アリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)はギチギチと音を立てながら、人間砦へと、人々を救わんと駆けつけた猟兵の一人である。
「ギチギチ……!」
その発声器官から漏れ出るのは奇怪な音。だが、その心の内側においては、清らかなるものであった。
たいへーん、『人類砦』の人達が石にされてるのー!
バイオモンスターであるアリスの精神性は未だ7歳を越えておらず、それがゆえに世界平和のために猟兵としてがんばっているのだ。
グリモア猟兵の言葉を信じるなら、石化されても未だに囚われの人々は生きている。
必ず助けてあげなければならない!でもでも、触ったら石にされちゃうのねー?どうしよー?と思案するアリス。
ウォールゴーレムは彼女に気がついて、迫ってくる。
流石にアリスと言えど、かのゴーレムの攻撃にあたってしまえば石化は免れないだろう。
それにグリモア猟兵の言葉では初撃はなんとしても避けないとならないと言われていたのを思い出す。
「ギチギチギチギチ~♪(みんな~全速前進よ~♪)」
彼女のユーベルコード、ぜんそくぜんしん~と号令のように現れたのは、大地を埋め尽くさんばかりの数の彼女の妹である。
妹たちとは即ちアリスと同様の成虫だ。彼女たちの助けを受けて、一斉にウォールゴーレムへと突撃する。
ウォールゴーレムが襲う人々から、妹たちに標的が変わったのを察知すると、別の妹がかばい、カバーする。
「ギチギチギチギチ~!(壁役は糸を吹き付けて拘束してー!そしたら、体当たりー!)」
アリスの指示に妹たちは次々とウォールゴーレムを糸で拘束し、押し倒していく。アリスが跳躍し、横転しているウォールゴーレムの悪魔頭を鋭い肢で貫き破壊する。
それを見た妹たちも、姉に続けと言わんばかりに大地を埋め尽くし、ウォールゴーレムを撃滅していく。
徐々に開放されていく人々が多くなってきたのを感じると、アリスは次なる指示を飛ばすのだ。
「ギチギチ、ギチギチギチ~!(幼虫のみんなは助け出した人達の運搬をお願いねー!さー、みんなー突撃よー)」
アリスの号令は一斉に妹たちへと伝わる。
それは彼女がバイオモンスターであるが故の意思伝達速度であったのかも知れない。きっとどんな高度に訓練された軍隊であっても、彼女たちのような連携は取れないだろう。
圧倒的な数と連携によってウォールゴーレムたちは打倒されていく。
それはまるで虫の女王たるかのような威厳すらアリスが放つようでもあった―――。
大成功
🔵🔵🔵
レパイア・グラスボトル
回収した怪我人は任せておきな。
危険なヤツらだけでも治したら、他のヤツらも回収するぞ。
【SPD】
囮を使ってその間に撃破、ね。
つまり、取り込まれても、誰かが壊せばそれでいいんだろう?
オマエら、征くぞ。
今回は本当にヒーロー役だぞ。
馬鹿が何考えずに突撃。
レパイア達は仲間を囮、踏み台にして頭に近寄り破壊する。
犠牲者は回収して危険そうな者はレパイアが応急処置。
何人来たかな?
ヒーロー役はしてもワタシらは英雄じゃないんだ、間抜けにならないうちに戻れよ。
石のまま土産にするなよ。あれはワタシの趣味じゃないし。
ワタシが取り込まれたら助けろよ。
オブリビオン相手に治療役がいないとオマエらは本当に危ないんだからな。
寄り添うということは、互いに助け合うということだ。
この夜と闇の世界であるダークセイヴァーにおいて、人間はそうしなければ生きていくことすら困難であるからだ。
ヴァンパイア支配の盤石な世界において、彼らは虐げられるだけの生き物である。そんな希望もない世界。
だが、闇の救済者たちによって築かれた人類砦は違う。彼らはヴァンパイアの支配下を逃れ、自分たちの活動圏を構築しはじめたのだ。
それは驚嘆すべき事実であり、またそれ故に反抗の芽を摘んとヴァンパイ配下のオブリビオンが殺到する。
蹂躙魔法兵器『ウォールゴーレム』もまた、その一つである。蹂躙魔法兵器の名に恥じぬ圧倒的な蹂躙。石化し、体内に取り込む。生命は失われてはいないが、彼らが主であるヴァンパイアの元へ帰れば、取り込まれた人々がどうなるか……それは想像に難くないであろう。
ごっ!と岩を砕く音が響いた。それは不意打ちのように放たれた一撃がウォールゴーレムの急所である悪魔頭を貫いた音だった。
レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)がウォールゴーレムの悪魔頭をけとばす。
「回収した怪我人は任せておきな。危険なヤツらはその場で治療してやるから」
ぶっきらぼうに言い放つレパイア。開放された人間たちの症状をつぶさに観察する。石化される前に抵抗し、怪我をしているのであれば、治療が必要だからだ。
彼女のユーベルコード、レイダーズ・マーチ(リャクダツリョダン)によって呼び出された彼女の仲間であるレイダーたちが戦場へと躍り出る。
「オマエら、征くぞ。今回は本当にヒーロー役だぞ」
ヒャッハー!掛け声のようにレイダーたちわらわらと突撃していく。石化され取り込まれるのも関係がないというようにウォールゴーレムたちに取り付いていくレイダーたち。
そう、彼らは囮である。ウォールゴーレムの体が触れた者を石化し取り込むというのであれば、取り込まれたとしても誰かがウォールゴーレムの悪魔頭を壊せば、開放される。
ならば、馬鹿は馬鹿なりに数で相手を圧倒するべく突撃するのだ。
「馬鹿?違うね!サイッコーにクールなやり口だろう!」
仲間を囮にしつつ、踏み台にしてウォールゴーレムの悪魔頭へと取りつくレパイア。医療ノコギリで悪魔頭を落としては、蹴り飛ばし、開放されるまで仲間と共にウォールゴーレムの頭を散々に砕く。
粗野にして粗暴であるが、この混乱を極める戦場においては呆れるほどに有効な手段であった。
幸いに開放された人間たちは抵抗らしい抵抗もできぬままに石化され取り込まれている。
瞬時に治療の必要がないとわかれば、即座にその場を離れて次なる得物を狙うのだ。
「ヒーロー役はしてもワタシらは英雄じゃないんだ、間抜けにならない内に戻れよ」
そう言ってレパイアは仲間たちに指示を飛ばす。
仲間のレイダーはレパイアと違って一般人程度の能力しかない。だが、それでも多くの仲間たちが彼女の元に集うのだ。それはカリスマと言っていいものである。
それが人と人とが寄り添うというものである。自身が危なければ、助けてもらう。他者が危なければ助ける。
たったそれだけのことで、こんなにもレパイアと仲間たちの間には強力な結束が産まれているのだ。
「おっと、石のまま土産にするなよ。あれはワタシの趣味じゃないし……っていうか、ワタシが取り込まれたら助けろよ!オブリビオン相手に治療役がいないと、オマエらは本当に危なんだからな!」
歓声を上げながら、仲間たちは次々と突撃を繰り返す。
怖いもの知らずというのは、こういう時にとても役立つが、何も取り返しのつかない所までいかなくていいのだ。
それをたしなめるのもまた彼らの頭目たるレパイアの仕事である。次々と開放されていく人間たち。
「ったく……本当に無茶苦茶する連中だな!」
ウォールゴーレムの砕けた悪魔頭を尻に敷いて、レパイアはため息を一つ。それはとても誇らしいため息だった。
成功
🔵🔵🔴
黄葉・契次
(他猟兵との連携・アドリブ歓迎です)
石像にしか見えねえが、生きてるのか
助けられるってんなら、助けなきゃな
まだ生きてるんだもんな
死んだらそこでおしまいだ…はは、それは俺が言う事じゃないか
物陰に隠れる・他の猟兵の動きに紛れるなどして
敵に気付かれないように動き回り、【ヘッドショット】使用
アサルトライフルで、弱点だという頭部を狙う
近くで石像が破壊されたら、取り込まれていた人を救出して
安全な所まで誘導、動けないようなら運ぶ
生憎、あんまりお行儀のいい方じゃないんだ
狡っからく立ち回らせてもらうぜ
生に意味を見出すのだとしたら、それは誰しもが死に向かって歩いているという事実に気がつくということである。
死があるからこそ、生を感じる。ならば、すでに喪われた生命の後に続く生に何の意味を見出すというのだろうか。
それを知ることができるのは、失われた禁断の技術により、死から蘇生した人間……デッドマンだけであろう。死を克服した者と言っても過言ではない。だが、その新たな生命に意味を見出すのだとしたら、それは彼ら自身の生き方にしか答えはない。
闇と夜の世界であるダークセイヴァー。あまりにも人間の生命が軽い世界である。この世界の支配者たるヴァンパイアにとって人間とは餌であり、駒であり、玩具である。
それ故に人間の生命は軽んじられ、次から次に湧いてくる消費されるべき生命である。そんな価値観を押し付けられた人間たちが、己の活動圏を築いたのが人類砦である。それはダークセイヴァー世界において、一縷の望み、希望であった。
そんな人類砦の一つもまたヴァンパイアに寄って摘み取られようとしてた。だが、何も恐れることはない。闇の中に煌めく星があるように、絶望の中にもまた希望があるのだから。
「石像にしか見えねえが、生きてるのか」
何かが炸裂する音が響く。砕けるウォールゴーレムの悪魔頭。転がり落ちるそれを足蹴にするのは、黄葉・契次(牙折りクロムイエロー・f25437)である。
彼の手にしたアサルトライフルの銃弾がウォールゴーレムの悪魔頭を吹き飛ばしたのだ。
「助けられるってんなら、助けなきゃな。まだ生きてるんだもんな……」
そう、石化され体内に取り込まれた人間たちはまだ生きている。生きているのは、捕らえた彼らをウォールゴーレムの主であるヴァンパイアへと供物として献上するためである。
醜悪な行いである。だが、その目論見のおかげで、こうして捕らえられた人間たちはまだ生きているのだから僥倖であった。
「……死んだらそこでおしまいだ……」
物陰に潜み、息を殺す。敵に気が付かれる前にアサルトライフルを放ち、ポイントを即座に捨てる判断が求められる。
それはウォールゴーレムの撃破にばかり気を取られていてはいけないからだ。悪魔頭を狙撃し、撃破する。その後に開放される人間たちを安全な場所まで誘導しなければならない。
開放したというのに、また取り込まれてしまっては意味がないからだ。
「生憎、あんまりお行儀のいい方じゃないんだ。狡っ辛く立ち回らせてもらぜう」
彼のユーベルコード、ヘッドショットが炸裂する。アサルトライフルから放たれた一撃は過たずにウォールゴーレムの悪魔頭を討ち貫く。
悪魔頭が砕かれ、ウォールゴーレムの活動が停止すると、石化が解かれた人々が雪崩のように溢れ出てくる。
それを更に狙って別のウォールゴーレムがやってくるのを見計らって、再び契次のアサルトライフルから放たれた銃弾がウォールゴーレムを砕く。
「動けるやつは手を貸してやってくれ!皆で生きているんだから、手を貸しあえ!」
契次の言葉に開放された人々が次々と誘導されていく。肩を貸し、子供は抱え、契次もまた彼らを保護するように立ち回る。走れ、走れ!とお互いを鼓舞しながら、戦場から離れていく。
よくがんばったな、と小さな子供の頭をなでてから契次は再び戦場に戻る。
「死んだらそこでおしまいだ……か」
己の生命は一度終わっている。だが、再びデッドマンとして蘇ったのは、何のためか。
それを己が言うことではない。わかっている。けれど、やるべきこともまたわかっている。
己の一度終わった生が再び与えられた意味。今を生きる人々を守る。それが今、契次が銃を取るたった一つの真理―――!
大成功
🔵🔵🔵
レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ連携歓迎
意外と早く、里帰りしてしまったわね……
ずっと暗闇に覆われたままの故郷だと思っていたけど、
まさかこの闇が晴れるように動き出した人達がいたなんてね
それなら、私も協力を惜しまないわ
■戦闘
私も人の事は言えないけど、悪趣味なゴーレム……
ここは【UC】を使用、大量のスケルトンを召喚したら
ゴーレムに向けて突撃、集団で抑えつけて足止めをさせる
動きを止める事が出来た個体がいたら、そのままヒルデに
頭部を破壊させる事で被害者を救出しましょう
後は自分を含め、狙われている人がいたら付近のスケルトンに庇わせるわ
スケルトンが幾ら取り込まれても問題はないし、寧ろ許容量一杯まで
取り込ませれば安全になるかしら?
闇夜に包まれし世界に生まれる者は、光あふれる世界に憧憬を抱くのだとすれば、再び闇と夜の世界であるダークセイヴァーに降り立ったのは因果である。
ヴァンパイア支配が盤石である世界に置いて、人間とは支配者の玩具であり、糧であり、贄である。それを最もよく知っているからこそ、再び降り立ったダークセイヴァーの世界は、その瞳に如何様に映ったことだろう。
嘗てのこの世界であれば、彼女の瞳に映ったのは灰色の世界であろう。
―――だが。だが、今は違う景色を彼女に、レナーテ・フレンベルク(幽玄のフロイライン・f25873)に見せていた。
それは彼女が見ていた今までのダークセイヴァー世界とは異なる彩り。
「意外と早く、里帰りしてしまったわね……」
彼女の出身世界であるダークセイヴァー。どの世界よりも光の少ない世界。様々な世界を見てみたいと思い願った彼女からすれば、この里帰りとも言うべきダークセイヴァーへの来訪は意外な光景を見せた。
「ずっと暗闇に覆われたままの故郷だと思っていたけど、まさかこの闇が晴れるように動き出した人達がいたなんてね」
駆けつけた馬車から優雅に降りる所作。それは正しくこの世界において名家の出であることは疑いようがない。背後に控える巨骸が彼女をエスコートするように人間砦へといざなう。
「それなら、私も強力を惜しまないわ。ヒルデ―――……今一度貴方の力を此処でふるいましょう」
レナーテが降り立った人類砦は、まさに混乱の渦中にある。蹂躙魔法兵器『ウォールゴーレム』が逃げ惑う人々を襲い、石化して体内に取り込んでいるのだ。
なんとも悪趣味なゴーレムである。彼女は自身のことは言えないけれど、と自嘲するが、それでも使い方次第である。
悪意あるものが使えば、どんなに素晴らしいものであっても、悪意に染まってしまうものである。ならば、レナーテの振るう力は他者を救う力である。彼女の自嘲はきっと誰かの救いになるであろう。
「集え、骸よ。この地を覆い尽くし、汝らの領域へと変えよ」
彼女の瞳が闇夜に輝く。レナーテのユーベルコード、今より此処は死者の町(ファルシュ・ネクロポーレ)によって呼び出された大量のスケルトンは、正に小規模な町にも匹敵する数であった。
彼らをゴーレムへ向けて突撃させる。逃げ惑う人々を庇うようにしながら、進むスケルトンたち。一体一体の能力は然程ではない。だが、数で圧するのであれば、こちらに歩があるのだ。
「さあ、進みなさい。恐れもなく、貴方達の力は今此処に結実する。捕らえ、抑え、人々の魂を簒奪せしめようとする輩の企みを砕きなさい―――……ヒルデ」
彼女の言葉に動き出す巨骸ヒルデ。スケルトン達によって抑え込まれたウォールゴーレムの悪魔頭を巨骸の手が鷲掴みにする。
軋む音。それが聞こえた次の瞬間には、粉々に砕け散る。雪崩れるように石化が解除された人々が倒れ込むも、それを支えるのはスケルトンたち。
レナーテは即座に彼らを安全な場所まで運ばせる。
「立ち止まっている暇はないわ。闇の救済者たち……貴方達にはこれからまだやってもらうことがたくさんあるのだから。希望という名の光……どうかこの暗闇に覆われた世界を晴らして頂戴」
その所作はあまりにも美麗であった。おおよそ、戦いの場には似つかわしい日傘。透き通るような白い肌。瞳の色は煌々と闇夜に輝く。
それを見た人々は語るだろう。幽玄のフロイライン。そして、その傍らにある巨骸ヒルデの名を。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
施設被害は甚大
ですが、石化からの解放が可能なのは幸いでした
人命を救う責務、騎士として果たすことが出来ます
あのゴーレム
血を欲する吸血鬼が運用するならば中々合理的な兵器ですね
人々が再度石化されるのを防ぐ為、一気に数を減らします
センサーでの●情報収集で移動速度を計測
脚部スラスターでの●スライディング移動で攻撃を回避しつつ敵群牽き付け
十分集まった時点でUC使用
未来予測演算で包囲攻撃を●見切って回避
同時にワイヤーアンカーを装着した剣と盾を●怪力で●投擲
●操縦するアンカーの●ロープワークで鞭と鉄球の様に操り敵群頭部を精密攻撃、一掃
人々を解放
ご無事ですか?
今から退避の護衛を務めさせて頂きます、こちらへ
人類砦は闇夜に包まれた世界、ダークセイヴァーにおいて一つの希望の光であった。ヴァンパイア支配下にない人類の生存圏。それは、きっとこれからのダークセイヴァーにおいて、人類にとっては反抗の礎に。ヴァンパイアにとっては、反抗の楔に。
故に人類砦はヴァンパイアの支配を脅かすと判断され襲撃されているのだ。だが、逆に考えれば、それだけ闇の救済者を彼らは脅威と見ているという事実でもあった。
悲鳴と恐怖が蔓延している。そう感じるのは、彼の人ならざる身である機械の体であってもわかる。
それが己の記憶データに唯一残されていた騎士道物語群に依るものであると理解していあっとしても、そう感じるのだ。支配者たる強者を挫き、弱者を守る。
その清廉なる生き方を己は模倣する。それがまがい物であろうと言われたとしても、懊悩する姿は正に騎士であった。
だが、今この戦場において彼、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は悩みなき騎士の一人である。
「施設被害は甚大。ですが、石化からの開放が可能なのは幸いでした。人命を救う責務、騎士として果たすことが出来ます」
トリテレイアの体は誇らしい物でいっぱいであった。騎士としての務め。それを十全に果たせるという喜び。
「あのゴーレム。血を欲する吸血鬼が運用するならば、中々合理的な兵器ですね」
蹂躙魔法兵器『ウォールゴーレム』。それは吸血鬼が支配するゴーレムであり、人間を生きたまま石化し、取り込む恐るべきゴーレムである。
何故生きたまま、と考えるのは簡単なことであった。生き血の方が美味いから。生きている人間をすり潰すのが楽しいから。ただそれだけのことであった。
故に、彼らの人命を損なわずに救えるというのは皮肉であったが。
「ですが、これほどよい条件、他にはないでしょう。一気に殲滅します……!」
トリテレイアの脚部スラスターが火を噴く。急加速によって土煙が上がる。ウォールゴーレムが反応し、思った通りにトリテレイアへと惹きつけられる。
襲い来るゴーレムたちの間隙を縫って疾走し、敵群の追走を誘発しているのだ。他の猟兵たちに助けられた人々を避け、十分に開けた場所までゴーレムたちを惹きつける。
状況的に見て、これが最後の敵群である。彼の青白いアイセンサーが輝きを放つ。
「コード入力【ディアブロ】、戦域全体の未来予測演算を開始」
彼の中のユーベルコードが発現する。
白騎士の背、未だ届かず(ホワイトライト・トゥルーライト・リミテッド)……!それは彼の記憶演算装置が生み出す驚異なる未来予測演算。7秒先の未来を予測する人智を超えた演算は正に未来予報である。
ワイヤーアンカーに接続された剣と盾が射出される。凄まじい勢いで放たれたそれらは、ウォールゴーレムの悪魔頭を次々と粉砕していく。一度の投擲で倒せるのは、2体が限度。
だが、それを超えるのが猟兵であり、トリテレイアという騎士である。
「―――第二撃」
ワイヤーを手繰る腕部が軋む。火花散るアクチュエーター!だが、構わない。遠心力を利用したワイヤーワークは投擲によって破砕せしめた勢いを殺さずに軌道を変え、別のウォールゴーレムの悪魔頭を粉砕する。
「第三撃―――」
脚部スラスターで跳躍し、ワイヤーを引き上げ己の脚部の踵でもって軌道を変え、直上より剣と盾の質量で持って残るウォールゴーレムを撃滅する。
トリテレイアが地上へと降り立つ一瞬で全てのウォールゴーレムたちが骸の海へと還されたのだ。
人々が開放され、倒れ込む。恐怖と不安に疲弊した彼らの傍にトリテレイアは寄り添う。膝を折り、彼らに手を差し伸べる姿はまさに理想の騎士たる姿であった。
その鋼鉄の体に人々は騎士の姿を見出す。
「ご無事ですか?今から退避の護衛を務めさせていただきます、こちらへ」
もはや誰にも彼の騎士像が模倣であると言えようか。
まがい物であると理想と現実の間でもがき苦しんだのは、彼らを救うための一歩でもあった。
闇夜に包まれたダークセイヴァーにまた一つ、機械騎士トリテレイアの名が人々の心に騎士道物語として刻まれたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツ』
|
POW : ブラッドスピットナイツ……ソノ栄光ハ永遠ナリ!
自身の【五つある脳の一つ 】を代償に、【脳の深層に残る『過去』の呪い】を籠めた一撃を放つ。自分にとって五つある脳の一つ を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : コノ騎獣コソ、ワレラガ最強ノ騎士団デアル証
自身の身長の2倍の【空を翔ける怪馬・スレイプニル 】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : ワレラ騎士団ノ全身全霊、ウケテミヨ!
【全方位へ全武装による一斉攻撃 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:FMI
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ナギ・ヌドゥー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
屍塊驍騎は歓喜した。
ウォールゴーレムを撃滅せしめた敵!
あれこそが我らが求めた強者!ツギハギにされた骸が震える。武者震いとでも言うべき震え。
ああ!ああ!あれこそが、我らの怨敵!
騎士たる我らを下す敵!
ならば、我らはこの剣に誓おう。
強者に死を!
今、かつての騎士たちの残滓が動き出す。ヴァンパイアに支配され、狂気に満ちた傀儡とされた騎士たちの、歪な力が、猟兵たちへと向けられる―――!
黄葉・契次
(他猟兵との連携・アドリブ歓迎)
自分が強いのか弱いのかも、ホントのところはわからねえんだ
ただ、生き延びてきた、それだけだった
騎士様ってのも縁がないからよくわからねえな
泥臭い野良犬に食われるのは好みじゃなかったりするか?
まあ、そう言われても「我儘言うな」って返すけどよ
動き回って敵を観察、隙を窺って【デッドマンズ・スパーク】を叩き込む
狙うは頭(脳)か、武器を持つ腕
足りなければもう片方の腕もくれてやる
その後は…まあ、斬られようが刺されようが、俺の身体はなんとかなる
他の猟兵が攻める隙を作れればラッキーって奴だ
一度くたばったモン同士、仲良くやろうぜ
強者!強者!と継ぎ接ぎだらけの異形の騎士が吠える。
それは渇望していたもの対する飢えそのものであったのかもしれない。もしくは生前の彼らの持つ何らかの矜持であったのかもしれない。
しかし、その矜持と誇りはヴァンパイアによって怪我され、哀れなる傀儡と成り果てた。それにどのような感傷を持つのかは、正直なところ分からない。黄葉・契次(牙折りクロムイエロー・f25437)はそう思った。
強者、と言われた所で本当に自分が強いのか弱いのかも、本当のところはわからないのだと自嘲する契次。ただただ、生き延びてきた、それだけだったのだと。
だが、世界にはあらゆる生命を侵す危険がそこかしこに潜んでいる。目の前にする異形の騎士の巨躯は、まさにそれだ。
「強者!アア、ヤハリ強者デアル!我ラヲ前ニシテ怯マヌ!恐怖セヌ!アア!我ラ此処ニ至レリ!」
その咆哮はまさに生の謳歌であった。その生き様、矜持、その何もかもが契次にとっては、理解の範疇の外にあった。
「騎士様ってのも縁がないからよくわからねぇな。泥臭い野良犬に食われるのは好みじゃなかったりするか?まあ、そう言われても『我儘言うな』って返すけどよッ!」
轟、と音を立てて異形の六本腕から繰り出される斬撃。
既で避けたが、その攻撃は大地を割るほどの威力。あれを受けては無事では済まない。直感に近い回避行動は、そのまま次なる攻撃の回避行動へと変わる。
動き回る。今はこれしかできない。
よく見ろ。よく!相手の動きを!
「避ケル!ヨク避ケル!アア、コレゾ強者トノヒリツクヨウナ戦イ!!」
異形の騎士の武器が風を斬る音が凄まじい。
あの六本腕が厄介すぎる。あの腕をかいくぐって攻撃を叩き込まねば有効打にもなりはしないだろう。
舌打ちする。アレしかねぇよな!と。覚悟を決めるまでもない。なぜなら、己の身はデッドマンである。ならば―――
「来ルカ、強者!ソノ身ヲ顧ミズ!受ケテ立トウデハナイカ!!」
ブラッドスピットナイツの5つの脳の内の一つがオーバーロードを起こして弾け飛ぶ。それは外側からはわからないが、確かに脳を一つ代償にして過去の記憶を込めた一撃を放つ。
それは必殺の一撃。屠るべき敵を屠れなかったが故に、悔恨の記憶と共に放たれる!
ごっ!と契次の胴に穴を穿つほどの一撃。だが、彼はデッドマン。一度死して尚、二度目の生を受けし不死身の男である。
血反吐を吐きながら、契次は進む。己の片腕を代償として放つ一撃。
「ゴホッ!お、ぅ……漸く近づけた、ぜ……!片腕くらい持っていけよ!!」
彼のユーベルコード、デッドマンズ・スパークが放たれる!それは彼の生体電流を込めた膨大なる電流を込めた一撃。片腕を代償にして放たれた一撃はブラッドスピットナイツの弾けた脳を焼き飛ばす。
だが、それでは終わらない。こちらが腕一本をくれてやったのだ!もう一本位もらわねば割にあわない。
「ゴアッ、ァ―――!?」
「足りなければ、もう片方の腕もくれてやる―――!なぁ!一度くたばったモン同士、仲良くやろうぜ―――!!」
さらにもう片方の腕を犠牲にして放たれるデッドマンズ・スパーク。それは一撃目と遜色のない雷撃を放ち、ブラッドスピットナイツの異形の腕を焼く。
ユーベルコードの衝撃によって契次の体は吹き飛ばされる。だが、彼は最後まで倒れ伏さなかった。
彼の攻撃は確かにブラッドスピットナイツの力を削いだのだった。
両腕は最早使い物にならない。胴には風穴が空いている。だが、彼はデッドマンである。一度死して二度目の生を受けて蘇った者。放っておけば、再び体は復元され、意識を取り戻すことだろう。
そう、二本の足が残る限り、彼は倒れ伏すことはないのだ―――!
成功
🔵🔵🔴
アリス・ラーヴァ
※アドリブ・連携歓迎
わー、腕が沢山あって強そー
あんなに沢山の武器で攻撃されたら自慢のお肌(甲殻)に傷がついちゃうー
でも黄葉さんが腕を減らしてくれたしどーにかなるかなー?
とりあえずアリスは【迷彩】で【目立たない】よーに隠れて、妹達を呼びましょー
みんなー、得意の【集団戦術】で『ブラッドスピットナイツ』を取り囲んで切り裂くのよー
(【野生の勘】で)あ、『呪いを籠めた一撃』が来るわねー
あれは痛そーだし、全周囲からアリスの糸を吹き付けて動きを止めるのよー
動きが鈍ったら、アリスは焼けた腕の方から【ダッシュ】で一気に距離を詰めて前肢で攻撃してみよー
アリスの前肢は鎧も貫く(【鎧砕き】)のよー
目の前の敵は真に強者である。そう認めざるを得なかった。『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツは異形の片腕と5つある内の一つの脳を失っていた。
しかし、我は未だ健在である。負けるわけにはいかない。強者には挑まれるべき強さがあるからこそ、強者足り得るのである。思考がまとまらなくなってきていた。
継ぎ接ぎのパッチワークとなった傀儡の体躯。そして、目の前にはさらなる異形の徒が迫る。
アリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)は、その姿とは裏腹の思考をしていた。
目の前のオブリビオン『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツの姿はアリスと似ているかもとのんびり考えていた。
わー、腕が沢山あって強そー。ギチギチと顎が鳴る。それは相手との意思疎通が不可能であることを告げていた。
だが、アリスとて猟兵である。故にオブリビオンと対峙する以上、敵同士であるという認識以上のものはない。
「ギチギチギチギチ(あんなに沢山の武器で攻撃された自慢のお肌に傷がついちゃうー。でも腕を減らしてもらっているし、どーにかなるかなー?)」
彼女の甲殻は独自のパターンによって闇夜の世界であるダークセイヴァーにおいては視認性を著しく低くすることが可能である。
妹たちを呼び寄せ、ブラッドスピットナイツを即座に取り囲む。それは野生の動物と同じように狩りをする姿に似ていた。
「ギイィィィ!ギチギチギチ!(ガブっとしちゃえ~)」
彼女の手繰るユーベルコードによって、妹たちがブラッドスピットナイツに殺到する。前肢や牙がブラッドスピットナイツの盾や鎧を貫いていく。
しかし、6本腕は1本減ったとは言え、その剣戟は妹たちの前肢や牙を打ち払う。重たい金属同士がぶつかるような音が砦の中に響き渡る。
「蟲風情ガ!ブラッドスピットナイツ……ソノ栄光ハ永遠ナリ!」
激情に駆られたブラッドスピットナイツの脳を代償にした呪いを籠めた一撃が放たれる。
だが、アリスにはわかっていた。野生の勘とも言うべき恐るべき勝負勘によって、一撃を全方位から放ったアリスの糸によって動きを止めるのだ。
だが呪いを込めた一撃は糸で完全に止めきれずに、けれど、アリスから大きく逸れて放たれた。巨岩をも討ち穿つ一撃はまさに野生の勘がなければ、アリスの甲殻と言えど融解されるほどの一撃であった。
「ギチギチギチー(あぶなーい)」
しかし、糸を吹き付けて動きを鈍らせたのは、彼女にとって好機であった。他の猟兵が付けた腕は動かない。ならば、そこはブラッドスピットナイツにとって攻撃を防ぐ壁が薄いということである。
一瞬で距離を詰め、アリスの前肢がブラッドスピットナイツの鎧を砕く!
ひび割れ、その鎧の下にあった継ぎ接ぎの肉塊とも言うべき傀儡の姿を無防備にさらけ出させる。
それは確実に彼女たちの攻撃がブラッドスピットナイツを追い詰めている証であった―――!
大成功
🔵🔵🔵
リカルド・アヴリール
アドリブ・連携歓迎
少し遅れたが間に合ったか?
それにしても……戦う為の傀儡、異形か
そんな状態でも尚、誇りを失わずにいる事には敬意を表する
敵の攻撃は【第六感】で察知
それでも避け切れない様ならば
機械の腕『代』を使って【盾受け】を
踏み躙られる生命に興味は無い、と
生前のお前達が聞いたら、どんな顔をするだろうな
……いや、戻らない過去に感傷を抱いても仕方がないか
止まれないならば、壊してでも止めさせてもらうぞ
【リミッター解除】
黒剣を槍斧に変化させて、UC:虐を発動
【2回攻撃】【範囲攻撃】を併用して
向かってくる腕をすべて、砕き尽くそうと試みる
依頼遂行の為だ、恨むなら恨めばいい
……せめて、安らかに眠れ
戦うためだけに己の意義を見出す。戦場だけが自己の証明。そう思えるのならば、それは一つの幸せでったのかもしれない。
他者にとって見れば不幸であったかもしれない。だが、己はそれでよかったのだと思わなければ救われなかった者たちすら救われない。死して尚、その誇りを胸に抱くのであれば、それはすでに歪んだ誇りであると言わざるを得ないだろう。
何故ならば、本当に彼らが抱いていた誇りは、弱者のための誇りであるからだ。
今の彼らは『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツは、弱者を見ず強者の傀儡としてだけ存在しているからだ。
胸に抱いたはずの嘗ての誇りは無残にも汚され堕ちたのだ。
「間に合ったな……それにしても……戦うための傀儡、異形か。そんな状態でも尚、誇りを失わずに居ることには敬意を表する」
リカルド・アヴリール(遂行機構・f15138)が人類砦へと急行した時、すでに戦いは始まっていた。ゴーレムの残骸があちらこちらに砕け散り、どうやら砦の人間たちの救出は無事に終わっているようだった。
それに一息つく気はなかった。
なぜなら、目の前に存在する『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツを前にして、そんな悠長な構えはできない。
肌で感じる相手の力量。すでに狂気に堕ちているとは言え、その技量は圧倒的なものである。気を抜けば、己もまた砕け散ったゴーレムたちと同じ躯をさらすことになるだろう。
「強者……!我ラガ望ムハ、強者トノ戦イ!我ラハ、強者ト戦ウ運命ナレバ!!踏ミ躙ラレル弱者ニハ興味ナシ!強者!強者ノミガ我ガ渇望ヲ癒ヤシテクレル!!」
すでに猟兵達の攻撃によって鎧にはひび割れ、異形の六本腕の一本っは機能を果たしていない。
それでもなお、その斬撃を繰り出す一撃は早く、気を抜けばあっという間に連撃に巻き込まれてしまう。
リカルドは第六感とも言うべき感覚でもって攻撃を躱す。体捌きで、時に機械腕を使い受け流す。
「踏み躙られる生命に興味はない、と。生前のお前たちが聞いたら、どんな顔をするだろうな……いや、戻らない過去に感傷を抱いても仕方ないか」
機械腕と斧が火花を散らして交錯する。リカルドの体が軋む。一撃一撃が重たく速い。これだけの技量を持ってしても、オブリビオンであるヴァンパイアには叶わなかったのだろう。
その無念、感傷として受け取るには、あまりにも時は残酷すぎた。
「止まれないならば、壊してでも止めさせてもらうぞ」
かつての守護者としての矜持。誉れ。己が失った全て。その全霊を掛けてリカルドはブラッドスピットナイツを止めなければならない。
その覚悟は、己のユーベルコード、虐(ディストラクション)を発動する。
手にした黒剣がハルバードへと姿を変える。サイボーグであるリカルドの体のリミッターが次々と解除されていく。機体が軋む。それは軋みではなく、己の体の咆哮である。
「依頼遂行の為だ、恨むなら恨めばいい」
その全てをリカルドは受け止める。それが彼らを打倒する己責務であるというかのように。
迫る異形の腕。放たれる一撃は呪いを込めた一撃。悔恨と贖罪を歪められたオブリビオンとしての一撃。
それを迎え撃つのは己の体の全機能の制限を解除した至高の一撃。武器と武器とがぶつかり合い、衝撃波が周囲のゴーレムの瓦礫を吹き飛ばす。
風切り音が闇夜の空に響く。それは高く高く切り上げられた腕。
ど、と重い音を立てて、それが地面へと墜ちる。それは、ブラッドスピットナイツの腕。武器ごと切り上げられたそれは、リカルドの一撃を受けて、もはや原型を留めていなかった。
「……誉れ高き騎士の腕だ……せめて、安らかに眠れ」
お前たちが守りたかったものは、なんであるか。そう問いかけることはしない。
この剣戟にて全てわかっている。
彼らが守りたかったもの。守れなかったもの。狂気に堕とされても尚、失われなかった誇りにかけて、リカルドは誓うのだった。
成功
🔵🔵🔴
レパイア・グラスボトル
アイツは、ワタシらと同じ不治の病持ちだね。
方向性は違うけどな。…騎士馬鹿?
残念だけどワタシらは強者じゃないんでね。
ま、あれだ騎士様?雑魚の厭らしさを知ってくれよ。
そして、馬鹿共が空を飛ぶ。
【POW】
取りつき相手の躰へ【部位破壊】を行う。
相手の一撃を受けた場合諸共に爆発する。
そうして相手の手数を減らす。
共闘などでの巻き込み歓迎
おい、なんでワタシも一緒に飛んでるんだ?
いやいや、今はオブリビオン相手なんだからワタシが仕切るのが当たり前だろ?
馬鹿には上下関係は分からないのだ。
近くで見ると、アンタ。
趣味の悪いな。
(製品仕様として死体のオブジェクトには生理的嫌悪感)
さっさとこの出来の悪いオブジェ壊すぞ。
死して尚残るものがあるのだとすれば、それは妄執と呼ばれるものであったのかもしれない。あるいは病。
病だというのであれば処置するべき患部があり、切除するなりすればいい。だが、目の前の『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツには、もはや切除すべき場所もなければ、治療すべき場所もない。
それらはとうに喪われてしまっているのだから。
レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)は彼らを見て処置なしと判断する。アレは自身と同じ不治の病である。方向性は真逆であるが。
「強者……!我ラヲ打倒スル強者……!立チ向カウ意思アル者、ソレ即チ強者デアル!」
あーぁ、とレパイアはため息をつく。
それは安堵でもあり、落胆でもあった。ここまで歪められるというのは、一体どんな醜悪な処置を施せばできるのかと。やった連中の顔が見てみたい。そうであれば、安心してアレを壊せる。どうにも趣味ではない。
「残念だけどワタシらは強者じゃないんでね。ま、あれだ。騎士様?雑魚の厭らしさを知ってくれよ」
ショウタイム・オン・ザ・ファイアワーク(ミグルシイハナビ)!彼女のユーベルコードによって召喚されたレイダー……彼女曰く馬鹿共が一斉に空を舞う。
彼らの肩パッドやモヒカンが爆薬と化し、導火線に火が灯る。次々とブラッドスピットナイツに張り付き、爆発していく。
正に花火である。振り払われても即座に爆発し、ブラッドスピットナイツの手数を奪っていく。あまりにも強烈な爆発にレパイアは目を眩しそうに細める。
「たーまーやー……じゃないか。見苦しい花火だな……って、おい!なんでワタシも一緒に飛んでる!?」
気がつけば、召喚されたレイダーたちと同様にレパイア自身も空を舞っているではないか。どういうことだ?と振り返れば、レパイアを投げたレイダーがはてな顔をしている。
いやいや、今はオブリビオン相手なんだから、ワタシが仕切るのが当たり前だろ?と思う間もない。ブラッドスピットナイツの巨躯に張り付くレパイア。
「たくもー……馬鹿には上下関係っていうのがわらかない……近くで見ると、アンタ趣味悪いな」
遠目で見てもわかっていたことだが、間近で見ると余計に、その醜悪なる所業が様々と見せつけられる。
継ぎ接ぎのパッチワークの死体。レパイアが感じる生理的嫌悪。それは彼女の心の内より現れ、溢れる根源的な嫌悪であった。
生きているのならば、治せる。だが、死した者は直せない。ならば、この死した者を継ぎ接ぎにした所業は、到底彼女には許容できないものであった。
「オマエラ―――!」
レパイアは渾身の声を張り上げる。喉が張り裂けそうなほどに大声を上げる。許せない。どうしたってこの趣味の悪い体は許せない。
「さっさとこの出来の悪いオブジェ壊すぞ」
その声に応えるようにレイダーたちが次々とブラッドスピットナイツの巨躯に張り付く。もう投げ飛ばす者も張り付く者も関係がない。
いっせいに張り付き、いっせに起爆する。膨大な量の火薬が爆ぜ、周囲一体に爆風が吹き荒れる。
どこかで、この戦いを見ているかもしれない哀れな傀儡の主へ向けて、レパイアは、
「クソ喰らえだ―――」
中指を立てるのだった。
成功
🔵🔵🔴
リーヴァルディ・カーライル
…ん。そんな姿になるまで亡骸を弄ばれて…
護るべき者が何かすら見失って…憐れな
…私が相手よ、屍塊驍騎。その呪わしき命運を終わらせてあげる
左眼の聖痕に生命力(魂)を吸収してUC発動
残像が生じる早業で空中戦を行う黒刃を操り、
第六感が捉えた殺気に感応して敵を乱れ撃つカウンターを行う
…小手先で私の黒刃を捉えられると思うな
…その剣に最強の証を賭して打ち込むが良い
お前達の全霊を、私の剣が絶ち切る…!
過去の戦闘知識が敵のUCの発動を見切れば、大鎌と黒刃を合体して武器改造
限界突破した神剣を怪力任せになぎ払い、
時間を断つ斬撃のオーラで防御を無視する時間属性攻撃を放つ
…この一撃を手向けとする。眠りなさい、安らかに…
嘗ての記憶の残滓が誇りであるとするのならば、それは何たる皮肉であったか。守るべき者のない刃は、だたの暴力である。強き者への情念とも言うべき妄執の彼方にあるのが、この結末であるというのなら、ますます救われない。
それがこの世界であるダークセイヴァーだというのならば、その闇は払わなければならない。
かの『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツが、その成れの果てである。
支配者たるオブリビオン、ヴァンパイアに挑み、破れ、その亡骸を弄ばれたパッチワーク。その姿こそが、この世界のいびつさを物語っていよう。
「……ん。そんな姿になるまで亡骸を弄ばれて……護るべき者が何かすら見失って……憐れな」
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の銀髪が闇夜に煌めく。流れるそれは、ひときわ闇夜においてきらめいたであろう。
ブラッドスピットナイツにとって、その銀髪は闇夜に浮かぶ月のようであり、彼らが破れ亡骸を弄んだヴァンパイアを想起させた。
「強者デアル!圧倒的強者!此度ハ、ソノ刃ヲ粉砕セシメン!」
軋む鎧はひび割れ、六本腕の異形は欠け、それでも尚彼らは戦い続けることを望む。その姿は憐憫を催さずにはいられなかったことだろう。
しかし、その憐憫と、これからこの世界に生きる人々の生命を天秤にかけるまでもない。
「……私が相手よ、屍塊驍騎。その呪わしき命運を終わらせてあげる」
彼女の紫瞳が煌々と輝く。それは左眼に秘された聖痕輝く光。彼女の生命力が、そこへと集中していく。
「……聖痕解放。その呪わしき刃にて、生と死を断ち切る―――」
彼女のユーベルコード、代行者の羈束・生と死を分かつもの(レムナント・カースブレイド)が発動する。三対六刃の黒刃が宙を舞う。それは彼女の生命力を担保に呼び出された兵装。
リーヴァルディの姿が消える。否、残像を残し、紫電思わせる瞳の残光が闇夜に線を描く。黒刃が空を舞い、空中からの斬撃がブラッドスピットナイツを襲う。
すでに副腕を失っているとは言え、未だその剣戟は冴え渡る。
黒刃と手にした得物がぶつかり火花が散る。受けるだけではなく、リヴァールディへとカウンターを放つ。その一撃一撃は必殺の斬撃だったが、互いに一歩も譲らずに攻撃を交わし、受け流す。
「……小手先で私の黒刃を捉えられると思うな」
紫瞳が輝きを増す。生命力を吸って尚開放された姿が真なる姿に近づいていく。それはまるで互いの実力を引き出すかのような輪舞曲。
剣戟の音が砦の中に響き渡る。何度も何度も、打ち据える。ガタガタとブラッドスピットナイツの鎧が震える。
それは強者との戦いに悦びを見出したからかもしれない。薄暗い感情。それは傀儡とした主であるヴァンパイアの影響でもあったのかもしれない。
互いに距離を取る。
此処より先は必殺の間合い。互いの最大の一撃を放つ間合いである。
「……その剣に最強の証を賭して打ち込むが良い。お前達の全霊を、私の剣が断ち切る……!」
三対六刃の黒刃がリヴァールディの大鎌へと集結する。大鎌が姿を変える。黒刃に囲まれ、長大な黒剣へと姿を変ずるのだ。
過去を刻むもの。それは時間すらも断裂せしめる神剣が一振り。
対するは5つある脳の一つを代償にして放たれるブラッドスピットナイツの栄光たる一撃。呪いと悔恨の込めれられた悲哀なる一撃である。
「……この一撃を手向けとする。眠りなさい、安らかに……」
何が合図となったのかはわからない。当人たちだけにしかわからぬ時間。武人と武人との最大の一撃にして、最大の相互理解。
放たれた一撃は空間と時間を断絶させる。呪いと悔恨を込められた一撃すらも、横薙ぎに振るわれたリーヴァルディの神剣が薙ぎ払う。
大鎌に纏った黒刃が砕け散る。それほどの一撃。
「……灰は灰に。塵は塵に。過去の栄光たる騎士よ」
リーヴァルディの声は称賛であった。ヴァンパイアに傀儡とされ玩具とされようとも、彼らの研鑽たる剣は侵されていなかった。呪いに塗れていたとしても、その技量に称賛を送らねばならない。
だが、過去は過去にならなければならない。今を生きる人々の障害になってはならない。
それがブラッドスピットナイツの栄光であるのだとすれば、これ以上彼女は彼らを今に留めてはおけない。
グリムリーパーが弾けた脳の一つ……死者の想念を取り込み、未来を閉ざした―――。
大成功
🔵🔵🔵
レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ連携歓迎
……なるほど
大分歪んでしまっているみたいだけど
あの状態になっても騎士としての誇りを持ち続けてるなんて、
元々は本当に良き騎士たちだったんでしょうね
■戦闘
騎士には騎士を、強者には強者を
強者を望むというのなら連れてきてあげる
貴方達が焦がれる、誇りある戦いが出来る相手をね
【UC】によって、強力な魔剣を持ったデスナイトとその愛馬を召喚
さぁ、ここからは彼らが主役よ
堕ちて尚、騎士としての誇りを持ち続けた彼らの意思を私は尊重するわ
攻撃の余波を受けない様に死霊障壁とヒルデで守りを固めたら、
後はデスナイトへの魔力供給に全力を注ぎましょうか
存分に戦いなさい
せめて最期に、貴方達に良き戦いがあらん事を
夜の闇と狂気が人の魂を染め上げる。それは支配者たるオブリビオン、ヴァンパイアにとっては至高の遊戯であったのかもしれない。
戯れに奪える人の生命は、絶対的強者である彼らにとって、あまりにも脆すぎるものであったからだ。それを残酷であると咎めるものはダークセイヴァーにはいない。
いや、いなくなった、が正しいであろう。
かつて、ブラッドスピットナイツの彼らがそうであったように、彼らもまた嘗ては正しさを持っていたのだろう。底なしの善性。闇夜にあってなお、その善性を喪わず。そうすることが、正しさであると言わんばかりに、己の身を顧みずに戦い―――そして、敗れたのだ。
「弱キ者ハ、去ラネバナラナイ!強キ者ノ前ニハ、屈スル他ナイノダカラ!死モ生モ、強者ノ前デハ全て無意味!!無意味デアッタノダ!!」
咆哮するは、己達の敗北を恥じるからか。
それとも継ぎ接ぎの体にされてなお、傀儡として貶められた自身への悔恨か。
「……なるほど。大分歪んでしまっているみたいだけど……あの状態になっても、騎士としての誇りを持ち続けているなんて、元々は本当に良き騎士たちだったんでしょうね」
レナーテ・フレンベルク(幽玄のフロイライン・f25873)は哀悼の意を示した。それは、彼らの人生の果てを思ってのことだろう。白い日傘が満月のように闇夜に包まれた世界に咲く。
彼らかつての騎士たちへと想いを馳せる。掲げる手は何に伸ばされたものであろうか。
静かに彼女は告げる。玲瓏なる声を響かせ、その名を呼ぶ。
「死して尚、戦いを求め続ける強き魂よ。我が呼びかけに答え、躯の海より此処へ来たれ……永劫の戦を求める者(グローセ・ヘルト)」
彼女のユーベルコードに導かれ、死霊馬にまたがる死の騎士が召喚される。携えたるは持ち主に死の運命を齎す呪われた魔剣。
幽玄なる主に喚ばれた騎士は、異形の騎士と相まみえる。
騎士には騎士を。強者には強者を。
ブラッドスピットナイツが強者との死合を望むというのであれば、それを叶えるのが持つ者の務めである。
死霊馬が嘶く。蹄の音が砦に響く。
「さぁ、堕ちて尚、騎士としての誇りを持ちづけたのなら、ここからは貴方達が主役よ」
レナーテは尊重する。騎士としての誇りを持つ彼らの意思を。それが唯の慰めにしかならぬとしても、過去を慰撫することに何の咎があろうか。
彼女の後方を固めた巨躯ヒルデが戦いの余波から護るように腕を広げる。レナーテがすべきことは一つである。
見届けること。そのために全力でデスナイトへと魔力を供給し続ける。彼らの戦いがどのような結果に至ろうとも、それは彼らの戦いの結末である。
「存分に戦いなさい」
それが合図となって、ブラッドスピットナイツとデスナイトの苛烈を極める戦いが始まる。
剣戟の音は正に交響曲。交わり、互いの音が混ざっていく。それを瞳を伏せて聞きいるようにレナーテは静かに口を噤む。
視界を介さなくてもわかる。彼の剣戟は、彼らだけの言語である。
魔剣と斧や剣が打ち合う音。
それを心地よいと思うか、それとも目を塞ぎたくなるような惨状と取るか。その観客たる者はレナーテ一人である。
異形の騎士の腕が飛ぶ。鎧がさらに砕け、その鎧の下に在る醜悪なるパッチワークをさらけ出す。だが、その姿を見る者はいない。
闇夜に包まれた世界。それがダークセイヴァーである。ならば、この闇夜と闘争こそが彼らブラッドスピットナイツの癒やしである。
「せめて最期に、貴方達に良き戦いがあらんことを」
レナーテの言葉は祈りであった。
哀切を含んだ最期であったとしても、彼らの持つ誇りこそが人類にとって新たな灯火を灯す切っ掛けにになる。
どれだけ歪められようと、貶められようとも、人は決してヴァンパイアに負けない。
それを傀儡と変えられようとも、騎士の誇りを持ち続けた彼ら―――ブラッドスピットナイツは持っていたのだから。
「そう、人は負けない。例え殺されてしまうかもしれないけれど、負けはしない。人とはそういう生き物であるのだから―――」
レナーテの言葉は静かに、闇夜に消える。彼女の姿が闇夜を切り裂く月光のように戦場に咲いていた。
大成功
🔵🔵🔵
雨宮・いつき
…その騎士としての誇りは、人々を護るために得た物でありましょう
それを歪められ、あまつさえ護るべき人々へ刃を向けるよう仕向けるなど
彼らを生み出した者は余程の悪趣味と見えます
…彼らの魂をこれ以上汚さぬためにも、ここで終わらせましょう
召喚した白虎に跨り、流体金属で空中回廊を作り出します
天馬の如く天翔けることは出来ませんが、地を駆け抜けるが如く空を往く事は出来ます
冷撃符で生み出した氷の矢と、白虎の力で生み出した鋼の弾丸で弾幕を張りながら接近
磁力操作で騎士が持つ武具や鎧の動きを阻害して、
その隙に白虎を怪馬に喰らいつかせ地面へと叩き落し、
鋼の刃と弾丸の連撃で一気に攻め立てましょう!
※アドリブ・連携歓迎です
人が持つ誇りとは、授けられるものではない。手を伸ばし、差し伸べ、そしてその人生に冠するものである。
それ故に人々は彼自身だけの冠を戴くのだ。勇猛さを称える者もあれば、精錬であることを称える者ある。
騎士とは、その生き様において騎士道を貫く者であるのだとしたら、彼ら―――『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツを貶めた者は、真に邪悪なものであると言えよう。
それが闇と夜の世界であるダークセイヴァーの支配者たるオブリビオン、ヴァンパイアというものである。
徹底的なまでに、己へと歯向かった者への仕打ちは熾烈なものであった。彼らの持つ誇り、それを散々に打ち砕いた上で彼らの護るべき者たちを手にかけさせる。
「その騎士としての誇りは、人々を護るために得たものでありましょう。それを歪められ、あまつさえ護るべき人々へ刃を向けるよう仕向けるなど……」
雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)は、ブラッドスピットナイツの姿に憐憫の眼差しを向ける。
それは彼らの嘗ての姿を想起させる。彼らは打ち倒された者たちである。ヴァンパイア支配に抵抗し、敗北し、敗者の責務と言わんばかりの仕打ちを受け、傀儡とされた者達。余程の悪趣味であるとさえ言える。
その姿は継ぎ接ぎの異形の騎士。鎧は砕け、異形腕は機能を果たさないものがぶら下がるばかり。
「……彼らの魂をこれ以上汚さぬためにも、ここで終わらせましょう」
いつきの決意は固く紡がれる。
彼のユーベルコード、四獣招来『白虎』(ペネトレイション・グリント)が発動する。召喚された白虎。白く美しい虎にまたがり、いつきは駆ける。
彼の呼び出した白虎は磁力と流体金属を操る霊獣である。操る流体金属によって生み出されたるは空中回廊。
そこはただの空中回廊ではない。いつの駆る霊獣白虎の庭と同義である。天馬の如く天駆けるとはいかないものの、地を疾駆するが如く空を征くことはできる。
「コノ騎獣コソ、ワレラガ最強ノ騎士団デアル証!」
その白虎へ対抗するようにブラッドスピットナイツもまた空を翔ける怪馬・スレイプニルを呼び出し対抗する。
互いに騎乗した状態での戦闘は、その機動力の差が勝敗を決する。空を駆ける怪馬は空中回廊の隙間を縫うようにして空を駆ける。
「西方を司りし勇猛なる獣よ。その稲妻が如き牙を以って遍く障害を穿ち給え!」
いつきは冷撃符から生み出される氷の矢を放つ。同時に白虎もまた鋼の弾丸が彼らの眼前に分厚い弾幕を生む。
だが、ブラッドスピットナイツもまた歴戦の強者である。氷の矢と鋼の弾丸の尽くを残る異形の腕によって打ち払う。
その姿は異形であれど、その技量は美しさすら感じさせる練度。彼らが生前如何に優れた騎士であったかは、推し量れよう。
それが故にいつきは悲しいと思ってしまう。その技量は護るためのものである。それが今は傀儡にされたことによって歪められているのだ。
一刻も早く、その所業を止めなければならない。
「動きを止めます……!白虎!」
いつきの言葉に霊獣白虎が咆哮で持って応える。かの咆哮は磁力を操り、ブラッドスピットナイツの持つ武具と鎧に強力な磁場を持って動きを鈍らせる。
わずかにしか磁力で縛れぬほどの膂力。それは驚嘆に値する。だが、いつきにとっては僅かな時間でよかったのだ。
白虎がブラッドスピットナイツの駆る怪馬の巨躯を押し倒し、地面へと押さえつける。
勝機はそこにある。押さえつけた白虎と共に大地へとくくりつける磁力。生み出された鋼の刃と弾丸が怪馬の体を内貫き霧散させる。
振り払われるブラッドスピットナイツの腕によって押さえつけることは叶わなくなったが、いつきと白虎は健在。
さらに放たれる鋼の弾丸と氷の矢。
それは傀儡へと堕ちた騎士への手向けの雨であったかもしれない。
「これ以上、貴方たちが護るべきはずだった人々を傷つけることがないように……せめて、それだけは護らなければなりません。それが貴方達の誇りであるのならば!」
さんざめくように降り注ぐ氷と鋼の雨。
それはまさに慈雨であったのかもしれない。歪められた騎士たちの足を止める優しくも悲しい雨。
いつきは、己の力の限界を振り絞る。そうしなければ、彼らを止めることなどできないと知っていたからだ。
だからこそ、雨は降り注ぐ。彼らの罪を洗い流すように。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
継ぎ接ぎの外観
『見せしめ』という意図であれば設計者、いえ術者は間違いなく優秀なのでしょう
生前のその誇り、これ以上貶められる訳には参りません
紛い物ではありますが、同じ騎士として討たせて頂きます
複腕の攻撃を●武器受け●盾受けで凌ぎ、敵の挙動や体躯を●情報収集
「目」の所在確認
処理装置(脳)を並列化し処理速度を上げようと取得情報は其処だより
敵UCに身体各部の格納銃器での●だまし討ち●目潰し
正確性を削ぎ●見切った攻撃を剣での●武器落としの一撃で阻止
自己●ハッキングし限界突破した●怪力シールドバッシュ
制御系が分散した相手に面での圧壊狙い
…かつての貴方方のように人々を護る為
この一撃、手向けとさせて頂きます!
砕かれた鎧から見える継ぎ接ぎの体は痛ましさを覚えるかもしれない。その醜悪なるパッチワークの所業は、戯れであることを感じさせた。
ただの遊戯である。そう、ダークセイヴァーに置いての支配者であるヴァンパイアにとっては、児戯と同じである。己に歯向かう愚かなる人間の騎士の体を使った見せしめなのだ。
その姿に人々は絶望を覚えただろう。あまりの惨劇に抵抗の芽を引き抜くことなど容易かったのだろう。そう思えるほどに、彼ら、『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツの姿は見るも無残であった。
『見せしめ』の意図はあまりにも効果的で、その意図を持ってトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は施術者を優秀と位置づけたのだろう。
だが、その行いを褒めるわけではない。唾棄すべき思想。トリテレイアの記憶回路の中にあるものとは相容れぬものであった。
故に―――。
「生前のその誇り、これ以上貶められる訳には参りません。紛い物である身ではありますが、同じ騎士として討たせて頂きます」
すでに幾多もの猟兵の攻撃を受けてブラッドスピットナイツの体は損壊激しく。しかし、その機能と実力は未だに伯仲であるとわかる。
それは如何に生前の彼ら、騎士たちの技量と誇りがあったかということを明白にした。
「我ラガ前ニ騎士ガ!騎士ガ!アア!我ラヲ終ワラセル騎士―――!」
吠えるブラッドスピットナイツ。その咆哮は狂える何かによって呼び出された過去の残滓が成すものか。
ビリビリと鋼鉄の鎧をも震わせる咆哮に真っ向からトリテレイアは進む。その咆哮が哀愁に満ちたものであれば、それを砕かねばならない。己の記憶データに唯一残された騎士道物語が、そう吼えている。
討たねばならぬ!あの騎士を!
ブラッドスピットナイツの副腕から放たれる斬撃は変幻自在。あらゆる角度から襲い来る斬撃は、トリテレイアの剣や盾でもって漸く流せるほどの攻撃。
あれほどの損壊を受けて尚、この気迫。巨躯はまさに相対するものに絶望を与える作り。その体の内に宿した脳はすでにいくつも喪われていたとしても、並列処理する速度は常人以上である。
だが―――。
「如何に処理速度をあげようと、視界の情報習得は一つ!其処だより……!」
放たれようとしていた怨恨そのものの一撃の初動を挫くのはトリテレイアに格納された銃火器による銃撃に依る目くらまし。
敵の精密精緻なる一撃を剣で見切り叩き落とす。一撃の衝撃が地面をえぐり穿つ。あれ程の威力であれば己の鎧は即座に飴のように溶けていただろうことが予見される。
その強大な一撃を潰し、距離を取るトリテレイア。アイセンサーが輝く。フェイスガードの内より溢れたる光は、その輝きを増していく。
彼のユーベルコード、機械騎士の傀儡舞(マシンナイツ・パペットダンス)が発動する。己を自己ハッキングし、限界を超えていく。リミッターを次々と解除していき、駆動系が悲鳴を上げるのもお構いなしに出力を上げる。
瞬時に跳ね上がった処理速度と負荷に悲鳴を上げる機体。
だが、この痛みなどあの騎士の受けた屈辱と悲哀、痛みに比べれば大したものではない。
機体が軋む。分解する。エラー音が鳴り響く。だが、関係ない。己が猟兵であるのだとすれば、トリテレイアは常に己の限界を越えていかねばならない。
その先に打倒すべきオブリビオンがいるのだとすれば、剣を届かせるために必要なことであるからだ。
「押し通らせて頂く―――!」
トリテレイアの盾ごとブラッドスピットナイツの巨躯を押し込む。軋む音はどちらから聞こえた来たものか。
わからない。己の機体ですら、このエラー音の数々。視界が明滅するワーニングセンサーなど知ったことではない。
「……かつての貴方方のように人々を護る為……!」
そう、この一撃は誰にためでもない彼らのため。その誇りを汚した全てを拭うための一撃。
怨恨、哀切、悔恨、ありとあらゆる物で汚された彼の魂を救済するための一撃。
火花散る体。焼ききれそうになる回路。
限界をとうに越えているというのに、己の体を突き動かす者は何か。
「この一撃、手向けとさせていだきます!」
ひしゃげる音が聞こえる。己の腕ではない。シールドのそこで圧潰していくブラッドスピットナイツの巨躯。
もうひと押し。まだ足りない。脚部スラスターが火を噴く。爆炎を上げながら、それでも尚、押し込む。
そう、此の機体を突き動かすのは、一つの誇り。
かつて彼らが持ち、ヴァンパイアがどれだけかき捨てようとしかたわからぬもの。
今、トリテレイアを突き動かすのは、そのたった一つ。
かくて、たった一つの誇りを抱え、屍塊驍騎は骸の海へと還る―――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『闇に閉ざされた世界に、癒しの光を……』
|
POW : 力仕事を手伝ったり、勇壮な英雄談を語る。
SPD : 破壊させた施設を修復したり、軽妙な話術や曲芸で楽しませる。
WIZ : 怪我や病気を癒したり、美しい歌や芸術で感動させる。
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
人類砦を襲ったオブリビオンの襲来は、猟兵達の手によって救われた。
だが、彼らを襲った災難はオブリビオンだけではない。破壊された砦の再建という問題は残っている。
物的損害は、立て直すことによって持ち直すことは出来る。
だが、人類砦にいた人間たちの心はどうだろうか。
あのオブリビオンたちの恐怖は、彼らの心の中へと消えぬ傷跡を残したことだろう。
猟兵は敵を倒すことが出来る。それは彼らにしか出来ないことである。
だが、猟兵にはまた別のやるべきことが残っている。傷跡が残ったのが心であるというのなら、猟兵が持つ心もまた配ることによって傷を癒やすこともできるであろう。
各々のできること、やるべきこと、思いつくことを成す。それがこのダークセイヴァー世界を少しずつだが変えていく。
希望の光が潰えたのならば、また灯せば良いのだ。
アリス・ラーヴァ
※アドリブ・連携歓迎
砦が壊れちゃったしけが人が沢山なのー
アリス達で何かお手伝いできないかなー?
そーだ、アリス達の糸で砦の建物を補修しましょー!
まずは幼い妹達は【運搬】で皆のお手伝いよー
重い物や瓦礫の撤去をお願いするのー
大きな妹達は付近の石を前肢で切り出してねー
アリス達は【力持ち】だから、幼虫達にお願いして石材を糸で引っ張って運びましょー
それから外壁の破損部分に石材を積み上げて糸で補強して塞ぐのよー
きっと前より頑丈になったと思うのー
後は家が壊れた人や怪我人が眠れるよーにしないとねー
アリスの糸を編みこんで即席の広いテントを作るのよー
糸を綿状にしてお布団も作りましょー
うん、これで大丈夫かなー
猟兵というものは、その姿が千差万別である。様々な世界から選ばれた戦士であるから、それもそのはずなのであるが、中には特異な姿の者もいる。
だが、彼らの姿を見て世界の人間たちは誰しもが違和感を抱かない。そうである、と受け入れる。そもそも猟兵達の真の姿もまた多くが謎に包まれている。
そのためだろうか。本質的なモノで人々は、猟兵という存在の姿を認識しているのかも知れない。
アリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)の姿もまた一般的な人間とは異なる姿である。だが、その心根が姿と同様であるかというと、それは違う。
人の年齢に換算したのと同じような精神性と善性を持ち合わせている。今もそうだ。
「ギチギチギチギチ(砦が壊れちゃったしけが人がたくさんなのー。アリスたちでなにかお手伝いできないかなー?)」
彼女の顎を鳴らす音が響く。それはダークセイヴァーの世界に生きる人々には理解できない音ではあったが、彼女に対して恐怖や嫌悪を抱くものはいなかった。
見上げる幼い生命達を見て首をかしげる様子は、愛嬌すら感じられるのだ。
彼女の善性は疑うまでもない。何か手伝うことを、と思案するのは、きっとこの砦の人間たちを思ってのことだ。
思いついたように体が跳ねる。
「ギチ!ギチギチギチギチギチ!(そーだ!アリスたちの糸で砦の建物を補修しましょー!)」
彼女の吐き出す糸は丈夫で砦の建造物を補修するにはもってこいであった。ユーベルコードによって呼び出された彼女の妹たち。
アリスと同等のサイズの妹たちとは違う幼い妹たちは瓦礫や、ウォールゴーレムの破片を運び出していく。
幼い妹たちと共に砦内の幼い子どもたちもまた手伝うように瓦礫を運び出していく。時には妹たちと子どもたちが協力して運び出す姿もあり、微笑ましいと思う者もいたのだ。
大きな妹たちは強靭な前肢で付近にあった岩を切り出していく。それはどんな石工たちよりも素早く正確に岩を切り出していく。
人間の手であれば、相当な時間を要する作業も、彼女たちにかかれば一瞬である。
「ギチギチギチギチギチー!(外壁の破損部分に石材を積み上げて糸で補強して塞ぐのよー!)」
アリスの号令が飛ぶ。そう、妹たちが切り出した石材をオブリビオンの襲来によって破壊された外壁を補修に使うのだ。
以前のバリケードを組み上げたような壁は、たちまちに強靭な岩壁へと変わっていく。組み上げ、アリスたちの吐き出す糸によって強固な外壁へと姿を変えていく。
どんどん砦らしくなり、襲撃される前よりもずっと頑丈なものへと変わっていくのがわかる。
良い出来栄えだとアリスがうなずく。これならば、多少の襲撃があったとしても、今回のように予知が間に合わず人間たちに被害が出るようなことは起こらないだろう。
「ギチギチギチギチギチギチ(後は家が壊れた人やけが人が眠れるよーにしないとねー)」
まだまだやれることはあると、彼女の吐き出した糸を器用に編み上げて即席ではあるが、広いテントを造っていく。
糸であるため通気性も良いテントが組み上がっていく。さらに糸を綿状にして布団もできあがっていくものだから、彼女の生物としての凄まじさが垣間見える。
子供らも、大人も感謝の声に絶え間がない。
言葉は通じなくても、表情で分かる。
アリスはそれを感じ取れるだけの感受性を持っているのだから。だから、同じ発声ができなくても、心で交流ができる。
彼女のつややかな甲殻に触れ、子どもたちが笑顔で見上げる。
その音の響きをアリスは忘れることはないだろう。ただの音の響きだと言われたそうであるのかもしれない。あっているかどうかもわからない。
けれど、確かにアリスにはこう聞こえたのだ。
「ぎちぎちぎちぎち!ギチ!」
―――ありがとう!アリス!
成功
🔵🔵🔴
レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ連携歓迎
――あの騎士たちは、満足して還る事ができたかしら
また何処かの戦場に現れるのかもしれないけれど、
今この瞬間だけでも彼らの心に平穏が訪れますように
■行動
正直、死霊を扱う私が何かしたところで、この人達を無駄に
恐怖させるだけじゃないか心配ではあるけど……
ただ、死霊術は何も戦ったり敵を殺す為だけの力ではないわ
既に死した人と、今を生きる人を繋ぐ術でもあるの
今ここに居る人たちの、嘗ての仲間、家族、友人……
志半ばで逝った彼らを呼び寄せ、姿を実体化させる事で
最後に伝えたかった言葉、激励、助言を伝えさせましょう
彼らが抱いた想い、それを今を生きる人達に繋ぐ事で
その心に少しでも希望の光を灯せるかしら
オブリビオンは骸の海へと還る。それは過去の化身が過去へと本来の姿を取り戻すことである。過去は過去に。ただそれだけのことではあるが、ブラッドスピットナイツが満足したのかどうかはわからない。
そのことに思いを馳せるのが人の感傷だとしても、それは誰にも咎める権利などありはしないのだ。
骸の海へと還る以上、また何処かの世界、戦場で相まみえることがあるかもしれない。その時は別の存在である。だからこそ、今この瞬間だけでも彼らの心に平穏が訪れることを切に願うのは、レナーテ・フレンベルク(幽玄のフロイライン・f25873)。
彼女の日傘がくるりくるりと闇夜の世界で廻る。
それはまた再び巡り巡って彼らと相まみえるかもしれないというオブリビオンと猟兵との定めであるかのようにも思えたかも知れない。
戦いの痕残る砦は散々な様相だった。外壁は崩れ、家屋はなぎ倒されている。
人的な被害が少なかったことが幸いではあるが、この人類砦へと逃れたきた者たちは皆、多かれ少なかれ家族を、親類を、親しい者たちを失ってきた者たちだ。
そんな彼らに対してレナーテは何ができるかを考える。
彼女が扱うのは死霊術。死者の魂、躯を触媒に使う術である。
「正直、死霊を扱う私が何かをした所で、この人達を無駄に恐怖させるだけじゃないか心配ではあるけど……」
その心配も最もなことだろう。この闇夜の世界であるダークセイヴァーに置いて、死霊術を扱う者はヴァンパイアの眷属であったりマイナスのイメージがつきまとうものである。
だが、彼女は前を向く。彼女の瞳は見てきたはずだ。闇夜だけが全ての世界ではないことを知っている。彼女の瞳は様々な世界を見てきたはずだ。世界はこんなにも癒やしと祝福に満ち溢れている。
「さぁ、行きなさい」
彼女の声は彼女自身が思う以上に優しく世界に響いた。ユーベルコード、迫り来る死霊の嵐(ヴィルデ・ヤークト)。本来であれば、周辺の霊を召喚し、攻撃の手段とするものである。
だが、彼女自身がそう確信するように、死霊術は何も戦ったり、敵を殺す為だけの力ではない。
既に死した人と、今を生きる人を繋ぐ術でもあるのだ。それは彼女の心に深く刻まれたものである。使い方を誤らなければ、どんな術も正しい行いに使うことができる。
彼女は呼び出す。それは、この人類砦にいる人間たちの嘗ての仲間、家族、友人……志半ばで逝った彼らを呼び寄せる。レナーテは縛らない。彼らには彼らの言葉と想いがある。
実体化していく霊たち。
彼らと束の間ではあるが、再会を果たすのは人類砦のすべての人々。彼らにとってはもう二度と会うことのできない、言葉をかわすことも出来ない、そう思っていた人々との再会であった。
涙と嗚咽が響く。それは悲しみだけの涙ではない。その涙を美しいと思う。
このダークセイヴァーにおいて、あの涙の美しさは、まさに陽光照らさぬ地の月光。
レナーテは巨骸ヒルデの腕の中に収まる。もしも、次に彼らと会う時は涙を浮かべた表情ではない表情で出会いたい。
「そう思うのは私の我儘かしらね、ヒルデ」
語りかけるヒルデは答えない。そういうものだとわかっているが、今はただ、彼らの涙に報いる方法がわからない。つかの間でも良い、仮初でも良い。レナーテの持つ術は確かに彼らの心を癒やすだろう。
彼女の想いは、きっと彼らに届いている。彼女を介することによって、彼らが抱いた想い、それを今を生きる人達に繋ぐことで、その心に少しでも希望の光を灯せるのだ。
「上を向いて涙を堪えて進むよりも、涙を流して前を向いて進む方がいい。こぼれた涙は拭えばいい……そんな風に生きる人々を見てみたいの」
レナーテは日傘を傾ける。
眩しいと思った。
陽光は未だ大地を照らさない。けれど、彼女の持つ力は今、まさに傷ついた心を持つ人々の心を癒やしている。
彼らの流す涙は、陽光にも勝る希望の光となって、レナーテを照らし続けていた。
成功
🔵🔵🔴
雨宮・いつき
どうか安らかに…と言えるほど生易しい戦ではありませんでしたが
それでも、彼らの魂にひと時の安寧が訪れる事を、願わずにはいられません
…さて、感傷はここまでです
今を生きている人達の為に、為せる事を探しましょう
心に傷を負った方々が多いのであれば、少しでもそれを癒したいです
その為に僕が出来る事は…舞と、音楽
怯える心に寄り添うように音楽を奏でましょう
曇天の下でも淡く輝く焔の蝶を御見せしましょう
美しいものを見て、震える心を静めるのです
今しばらく辛く苦しい時が続くかもしれません
けれど、苦しい事ばかりではないと知ってもらいたい
彼らにも、どうかひと時の安らぎを
※アドリブ・連携歓迎です
人類砦を巡る戦いは厳しいものであった。ウォールゴーレム、ブラッドスピットナイツ……彼らとの戦闘は苛烈極まりないものであったことは確かだった。
猟兵達の消耗も激しいものであり、彼らの活躍がなければ、今頃この人類砦の人間たちは全てオブリビオンであるヴァンパイアによって鏖殺されていたことであろう。
それを未然に防げたことをは大きい。しかし、ブラッドスピットナイツもまたダークセイヴァー世界の支配者であるヴァンパイアの凶行の被害者であることもまた事実であった。
彼らの魂は安らかに、と願わずにはいられない。だが、過去の化身となったオブリビオンは骸の海へと還っていく。またいつかのどこかで相まみえることがあるかもしれない。
雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)は、それでも彼らの魂に一時の安寧が訪れることを願わずにはいられなかった。
「……さて、感傷はここまでです。いまを生きている人達のために、為せることを探しましょう」
いつきは人類砦を見回す。あちこちにウォールゴーレムの破片や砦の中の居住区や建物が崩されている残骸が残っている。
人類砦はずたずたにされてしまったと感じてしまってもあながち間違いではない。人的被害がすくなかったことが幸いであるが、これでは彼らの心は散々に打ちのめされているであろう。
それは心の傷と言っても良い。いつきはそれを少しでも癒やしたいと思っていた。自分にできることはなんであろうかと考える。
自身にできること、それは舞と音楽。自然と彼の声が砦の中に響き渡る。
「捧げまするは慈しみの調べ。月読の夢見鳥よ、果てぬ希望を与え給え」
怯える心に寄り添うように音楽を奏でよう。曇天の下でも淡く輝く焔の蝶を御見せしよう。
彼のユーベルコード、月光蝶・朧望月(イモータル・ホープス)によって生み出された光を放つ蒼白い焔の蝶達。それは闇夜に包まれた世界に光を灯す。
ひらひらと舞うのは、いつきと焔の蝶たち。淡い光はダークセイヴァーに住まう人々にとって初めて見るものであったかも知れない。
彼らは己の声が震えるのを感じたかも知れない。その感情の名前を知らずに生きてきた者もいたであろう。
それは美しいという感情である。
いつきの舞は確かに美しいものを見て湧き上がる感情を想起させるものであった。
彼らの恐怖と不安に震える心を鎮める舞は続く。
光る青白い焔の蝶たちは、砦の中の人々それぞれに行き渡っていく。怪我は見る見る間にふさがっていく。それが彼のユーベルコードの優しい力である。
「今しばらく辛く苦しい時が続くかも知れません。けれど、苦しいことばかりではないと知ってもらいたい」
いつきの声は優しかった。確かにダークセイヴァーの世界は人類に今だ生存することでさえ、困難を強いる。
だが、闇の救済者として抗うことを決めた彼らには、さらなる困難が訪れる。今回のようなことがまた起こるかもしれない。
「僕が皆さんにできることは、これくらいです……癒やしになるかどうかもわかりません。ですが、この苦しみの先に、きっと陽光の溢れるような安らぎがあるはずなのです」
いつきの言葉はまだ実感できるものではないかもしれない。けれど、彼の舞は彼らの心の鎹になる。
この日見た、彼の舞が一時の安らぎではなく、彼らの人生に暖かな焔を宿したのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
レパイア・グラスボトル
事が済んだし略奪を、と思っていたが、
物資や人の有様を見て止める。
育っていない拠点は美味しくないのだ。
育つ前に奪っていいのは種籾だけなのだ。様式美的に。
だから、怪我人病人の面倒を診る事にする。
体の傷なら、バラバラでも生きていれば治してやるよ。ワタシの技術はこの世界のレベルとは違うしな。心配するなキチンと人の形にしてやるよ。
ただ心の傷は治せないけどな。
ま、無理でも飯を食って酒を飲んで笑ってろ。
ワタシらの世界も地獄なんて言われているけど、
人じゃない化け物が蔓延する世界と、人の手による化け物がいる世界。
どっちがマシなのかね。
詮無き事を考えていたら家族が呼んでいる。
怪我人病人を見つけたらしい。
太く肥えたものだけが収穫たりえるものなのだとすれば、この人類砦はまさにやせ細り育っていない収穫物にほかならない。
それでは意味がない。略奪する意味も、旨味も何もない。それは彼女、レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)にとっては、あまりにも無意味な行動であった。
だから、やめる。
この人類砦は物資、人を見てもやせ細っている。建物は瓦解し、人々はオブリビオンの襲来によって傷ついている。そんな育っていない拠点が美味しいわけがない。絶対に美味しくない。旨味も雑味もあったもんではないのだ。
だから―――
「体の傷なら、バラバラでも生きていれば治してやるよ。ワタシの技術はこの世界のレベルとは違うしな。心配するなキチンと人の形にしてやるよ」
怪我人、病人の面倒を診ることにしたのだ。ただ心の傷は癒せない。それは彼女の領分ではない。
体の傷ならばいくらでも治せる。患者が拒否したとしても治す。どうあってもだ。それが医療特化型として製造されたフラスコチャイルドであるが故。
それが彼女の製品仕様なのである。変えようがない生き方であると言ってもいいのかもしれない。
だからこそ、彼女は人の心の傷に容易に触れようとしない。それは自分自身で癒やすものである。
誰かの介添が必要であることであったのかもしれないが、少なくともその役割は自分ではない、そうレパイアは自覚している。
「ま、無理でも飯を食って酒を飲んで笑ってろ」
そうすることが一番の栄養であり、薬である。腹に食べ物を詰め込んで、酒で押し流して笑う。そうすれば、大抵の心の傷は癒える。人間とはわりかしタフなのである。
レパイアにとって、彼女の世界は荒廃そのものであった。彼女の家族ともに過ごす世界とこの世界、どちらがマシかなんて言われたら、どちらにとってもその世界の地獄が在るだけの話だ。
「ワタシらの世界も地獄なんて言われているけど、人じゃない化け物が蔓延する世界と、人の手による化け物がいる世界。どっちがマシなのかね……」
詮無きことを考えれば、自ずと声が漏れ出てしまう。
そうどちらがマシか。詮無きことである。だが、そんな考えも今は必要ないことだ。レパイアにはレパイアの成すべきことがある。
今はそれが略奪ではないだけだ。略奪すべきと思えば、一切の容赦なく彼女は奪っていく。彼女の家族だってそうだ。
今はそうでないから、こうして診ている。
遠くで彼女の家族が呼んでいる。じゃあな、達者でいろよ、とレパイアは患者の肩を叩いて立ち去る。
大声でレパイアを呼ぶ家族。なんだなんだと思えば、あっちにもこっちも怪我人病人である。忙しない。だが、不思議な充足感はあるのかもしれない。
「―――ったく。本当にオブリビオンってのは余計なことばっかりしやがる。大忙しじゃないか―――!」
レパイアは駆け出す。どこだどこだ!ワタシの前で病人、怪我人はそのままにしていられると思うなよ!そう騒々しく叫びながら彼女は砦の中を駆けずり回るのだった。
大成功
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リーヴァルディ・カーライル
…ん。貴方達は吸血鬼の支配に否を突き付ける為に、
この地に集ったようだけど…現実は甘くない。
…今の貴方達の力では吸血鬼を討つ事は不可能よ。
それは石にされた貴方達自身が骨身に染みて理解したはず…。
…貴方達は弱い。そんな貴方達がこのまま武器を置いて、
以前の生活に戻ったとしても、私は決して非難しない。
…その上で問おう。貴方達はどうしたい?
…それでもなお、闘う意志があるならば。
強くなりたいと願うのならば…この手を取るが良い。
吸血鬼狩りの業、その一端を教えてあげる。
“洗脳の呪詛”の魔力を溜めた手を繋いだ対象の第六感に干渉してUCを発動
自身の戦闘知識や経験の一部の残像を暗視させて鍛練方法を脳髄に刻み付ける
闇の救済者。それはヴァンパイア支配から逃れた人々が組織した人類希望の光である。圧政を敷くヴァンパイアの支配者としての気質は傍若無人そのものである。残虐非道、悪逆無道。どんな言葉を尽くしても言い足りない位の仕打ちを彼らは受けてきた。
そんな仕打ちを受けても尚、彼らはヴァンパイア支配への抵抗を続ける。
しれが勇気ではなく唯の蛮勇であった事実を突きつけられていた。
猟兵が間に合ったからよかっただけの話である。もしも、予知が間に合わなかったのなら、さらなる惨劇となっていた事は疑いようがない。
物的な被害は甚大であっても、人的な被害は奇跡的に軽微である。だが、肉体的には無事であっても心はどうであろうか。
心折れた人間の脆さは言うまでもない。
だからこそ、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は言う。
「……ん。貴方達は吸血鬼の支配に否を突きつけるためにこの地に集ったようだけど……現実は甘くない」
彼女の言うとおりである。砦を構築し壁を作っただけではヴァンパイア、オブリビオンの襲撃には耐えられない。それは今回のことで骨身に染みたことだろう。
猟兵の助け無くば、全滅していたことはわかりきっている。
だからこそ、彼の心が折れていてもおかしくない。それを見極めるために厳しい言葉を投げかけるリーヴァルディ。
「……今の貴方達のちからでは吸血鬼を討つ事は不可能よ。それは石にされた貴方達自身が骨身に染みて理解したはず……」
そう、成すすべもなく、抗う術もなくウォールゴーレムに石化され取り込まれた人々。救うこともままならず、一方的に搾取されるだけだった生命である。
「……貴方達は齢。そんな貴方達がこのまま武器を置いて、以前の生活に戻ったとしても、私は決して非難しない」
リーヴァルディはわかっている。彼らがそれを望まないことを。避難されようが、されまいが彼らは一度立ち上がったのだ。
心が折られても、また人は立ち上がる。何度でも何度でもだ。それが容易な未知ではないことを、この闇夜の世界で生きているからこそ知っている。
故にリーヴァルディは問いかけるのだ。貴方達はどうしたい?と。
「……それでもなお、闘う意思があるならば。強くなりたいと願うのならば……この手を取るが良い。吸血鬼狩りの業。その一端を教えてあげる」
彼女の言葉はまさに天啓であり、未だ見ぬ困難の道への誘いであった。
わかる。この手を取ってしまえば、後戻りはできなかくなってしまう。だが、後戻りをする?
振り返ってどうするというのだ。またヴァンパイアの支配下に戻るだけだ。虐げられ、無意味に生命を脅かされる。
そんなことが嫌だと思ったから彼らは決意したのだ。誰も彼もが戦士であった。リーヴァルディの手を掴むものは後を絶たなかった。
彼女のユーベルコード、吸血鬼狩りの業・正伝(カーライル)。その真髄を脳髄に刻み込まれる。ただの一端であるかもしれない。その共有は彼らの体にどのような変化をもたらすのかわからない。
けれど、彼らは決意を新たにしたのだ。
負けてなるものかと。
その決意をリーヴァルディは買ったのだ。決意無き者に力は宿らない。意思なきものに強さは宿らない。
リーヴァルディ自身がよくわかっていることだった。
「……ん。進みなさい。貴方達の道を。その道が途絶えようとも、あとに続く誰かがその道を継いでいくのだと信じて進みなさい。人の歩みの速度が吸血鬼と違うのならば、奴らに届くまでつないで進みなさい」
リーヴァルディの言葉は呪詛でもなければ、彼女のユーベルコードの効果でもない。ただの言葉である。
「貴方達は楔にして鎹なのだから」
だが、感じられるのであれば、それは言葉ではなく力だ。
彼女の言葉が力に変わるまで、きっとそう遠くない未来であることを予感させた―――。
大成功
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黄葉・契次
(他猟兵との連携・アドリブ歓迎)
あー…いけねえ、意識飛んでたか?
でも大丈夫、体は修復されてる
あの騎士様を吹っ飛ばすのに使った腕も、なんとか動く
動けるようになったら、力仕事を手伝おう
荷物を運んだり砦を修理したり、なんでもやるぜ
この通り、多少壊れてもすぐ治る身体だ。好きなだけ使ってくれ
人を治すとか慰めるとかフォローするとかは、あんまり得意じゃないが
…まあ、その、なんだ
アンタらが諦めなかったから、この砦は死ななかったんだ
一緒に生きられるように、立て直していこうぜ
アンタらが安心して過ごせるように、頑丈に修理しておくから
猟兵の戦いは死力を尽くしたからと言って必ずしも勝利できるものとは限らない。それはどれだけの努力を積んだとしても、必ず勝てるものではないということと同じである。
積み上げた力はどれだけあっても、し足りることがない。それでも届かぬ領域があるのもまた事実である。
だが、彼は違う。死力を尽くして尚、その先がある者。それを人はデッドマンと呼ぶ。死の先へ向かう、二度目の生を受けし蘇生者。
黄葉・契次(牙折りクロムイエロー・f25437)は、まさにその一人である。
『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツとの戦いは、己の身を省みぬ戦い方で彼は体に甚大なる損傷を受けいていた。
それは多大なる戦果の代償であると言えば、それまでである。だが、彼は通常の生命の埒外に在る。デッドマンであるが故にどれだけの肉体的損壊を受けたとしても、復元するのだ。
「あー……いけねえ、意識飛んでいたか?」
漸く戻った発声器官。声が出るのと同時に彼は覚醒した。胴に空いた穴はふさがっている。あの騎士を吹き飛ばすために払った両腕の損傷もなんとか動かせるほどに回復していた。
視界が回復した時、契次が目にした光景は、彼を下から覗き込む心配そうな子供らの顔であった。
お互い視線が交わり、驚愕の表情を浮かべ声を上げる。
子供らはまさか彼が急に目を覚ますとは思っていなかったのだろう、手にした包帯を思わず取り落していた。
ああ、と気がつく。己の体を思ってくれたのかと。
「驚かせちまってすまねえな。俺は大丈夫だから、そいつは他の連中に使ってやんな」
よく見れば、その子供らは彼がウォールゴーレムから助けた者たちだった。だから、こうやってよってきていたのかと納得する。ありがとな、と不器用に微笑んで彼らの頭を撫でる。よくがんばったな、と助けた時と同じように。
体の損壊は、すっかり元通りになったことを確認すると瓦礫の除去など力仕事を契次は手伝う。
今は少しでも人手がほしいことだろう。どれだけ男手があっても足りないことのほうが多い。何せ、オブリビオンの襲撃によって砦内の建物は軒並み破壊されているからだ。
外壁も修復されているが、まだまだやるべきことは多そうだ。
「なんでもやるぜ。この通り、多少壊れてもすぐに治る身体だ。好きなだけ使ってくれ」
彼なりの軽口のつもりだったのだろう。人類砦の者たちに気を使わせまいとしたのだが、あんまり受けがよくなかった。しかし、彼の手助けは確かに必要で、力仕事や復旧を手伝う内にお互い打ち解けてきたようだった。
しばらく力仕事を手伝っていたが、契次と違い、彼らは生身の一般人である。疲労も蓄積される。一休みしよう、と座り込む彼らを前に契次は口ごもる。
なんと言ったらいいのだろうか。人を慰めるだとか、治すだとか、フォローだとか、そういうのはあまり得意ではない。
それは己自身が一番わかっていることであるし、自覚もある。変に言葉をかけるのもおかしいと思ってしまう。けれど、言わずには居られない。
彼らはきっと自分たち猟兵のおかげで助かったと思っている。
だが、それは違うのだと言いたい。
「……まあ、その、なんだ。アンタらが諦めなかったから、この砦は死ななかったんんだ」
契次の言葉は、不器用なものだった。なんと言って良いかもわかわらないが、彼の心の内側から溢れるようにしてこぼれた言葉は、人類砦の彼らに届いたことだろう。
それは間違いない。
「一緒に生きられるように、立て直していこうぜ。子供らが心配しなくて済むようにさ。アンタらが安心して過ごせるように、頑丈に修理しておくから」
だから、不安に思わなくていい。心配しなくていい。心を配るのは己達の仕事である。そういうかのように契次は言葉を紡いだ。
契次はまだわからなかったかもしれないが、それがどれだけ人々の心を救ったかはわからない。
こんなふうにして世界は少しづつ良い方向に向かっていく。どれだけオブリビオンが人々の心を陰らせたとしても、それを猟兵は尽く拭っていくのだから。
大成功
🔵🔵🔵