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ホホジロ島サメサメパニック!

#グリードオーシャン #鮫

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#グリードオーシャン
#鮫


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●砂浜ランナウェイ
 輝く太陽。白い砂浜。
 そして、全力疾走する島民たち。
「ぎゃー!」
「こっち来んなー!」
 彼らの後ろを大きめのサメが猛スピードで追っていた。地上で。
 黒い背ビレを突き出し、砂を蹴立てて何処までも。
 つい数分前まで静かだった海岸のあちこちで悲鳴が上がり、砂煙がもうもうと立ち込めはじめた。
「あのサメ跳ねてる! てか飛んでる!」
 ヤシの木によじ登った島民にもサメは飛び付き、その鋭い牙がズボンの生地だけを引きちぎって行った。
「ホホジロ海賊団、助けに来たぜ! 俺の留守中を狙うたぁ」
 かぷっ。
「ぎょえーっ!?」
「ああっ、船長がフライングザメの餌食に!」
「逃げろーっ!」

●鉄甲船にて
 グリードオーシャンの蒼い海を行く鉄甲船。
 乗り込んだ猟兵たちが水平線に目をやれば、そこには小島が一つ浮かんでいた。
 手紙の入ったボトルを胸に抱いたクララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)が近寄り、猟兵たちに向けて話を切り出す。
「あの島はオブリビオンに支配されているようです。このビンの中には島への海図と……現地の海賊からの救援要請が入っていました。その内容をもう一度、確認させていただきます。島の名は『ホホジロ島』です」
 かつてダークセイヴァーから落ちて来た島らしい。島の中心には石造りの大きな洋館が聳え立っている。名前の由来ははっきりしない。今でも洋館の廊下を歩くと首元に冷たいものを感じたり、読めない血文字で書かれた書籍を見つけたりして、頬から血の気が引く機会に恵まれるからとも、館内で生活する住民の肌が日照時間に比して白いからだとも言われる。
 ともかく、島が落下した当時を知る者が一人もいなくなった現在、あの不気味な館も、のどかな南島の風景に溶け込みつつあるのは確かなようだ。少し前に島を海賊たちが占拠したが、その規模は自警団レベル。人柄も善人の範疇であり、緩やかな統治を行っていた。戦乱に明け暮れる世界の中にあっては、平和な島と言える。

 ところが最近コンキスタドールが上陸。館を占拠してしまった。
「コンキスタドールの首領は『餌になれ』とだけ言い残して館内に消えて行ったそうです」
 館の正門から不定期で放たれる殺人ザメの、である。
 現在、島の住人は館の外にいる。いつ放たれるとも知れぬ殺人サメの恐怖に怯え、かといって暗い密林に逃げ込む勇気も荒海を渡る術も持ち合わせない彼らである。広い砂浜で身を寄せ合う他ない。
「まずは住民の皆さんを救助し、殺人ザメを迎え撃ちましょう。コンキスタドールは館から住民を追い出す際にもサメを使ったようで、おおまかな生態も書いてあります」
 食欲旺盛。地中を高速で泳ぐ事ができる。ヒレの力が強く、地面を叩いてジャンプで獲物に飛び付く事も出来る。これを応用してか、数秒程度の短時間なら空だって飛べる……。
 もはやサメに魔改造を施した何かだが、対抗策はきっとあるはずだ。
 手紙をくれた海賊たちは寡兵。個々の能力も猟兵に劣る。だが洋館に攻め込む機会を掴む頃には、勝算ありと見て協力してくれるかも知れない。
「サメが放たれるタイミングがわかりません。迎撃の準備を整えるだけの時間があるのかもわかりませんが、島の人々を守る為にも、速やかな討伐を。宜しくお願いします……」

 頭を下げようとしたクララだが、はっとした表情で凍りついた。
 いつしか目前に迫っていた島の砂浜から、悲鳴が聞こえて来たからだ。


白妙
 白妙と申します。宜しくお願い致します。
 今回の舞台はグリードオーシャン。島の人々を救い、『悪の掟』を課すコンキスタドールたちを倒すのが目的です。

●ホホジロ島(ほほじろとう)
 島面積の大部分を占める石の洋館があります。
 洋館の正門前には何もない広い砂浜があり、なんとなく『庭園』と呼ばれています。
 残りの土地はヤシの木とシダの密林です。

●第1章【冒険】
『庭園』に放たれた殺人ザメを撃退したり、人々を守ったりします。
 急いで駆け付ければOPの状況に出くわすでしょう。
 船長が怪我を負っていますが、今のところ島民に犠牲者は居ません。

●第2章【集団戦】
 突入した洋館の中で『???????』と対決します。
 第1章で助けた人々の中に海賊がいれば、UCで支援してくれる事もあるかも知れません。ただし猟兵のものより弱体化しており、その種類も限られます。

●第3章【ボス戦】
 『???????』と決着を付けます。
 島の海賊は猟兵とは別行動を取るでしょう。

 1章のプレイングはシナリオ公開次第どうぞ。その後はマスターページを参照くださいませ。
 拙いですが、もしプレイングをかけて頂けるのであれば幸いです。
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第1章 冒険 『鮫・鮫・鮫』

POW   :    真正面から鮫を受け止めて、投げ飛ばすなど、力技で撃退する

SPD   :    素早く回り込んで鮫に攻撃、次々と無力化していく

WIZ   :    鮫の動きを予測して人々を避難させたり、罠を仕掛けたりする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

レイ・オブライト
荒野を泳ぐ魚もいた
わかったわかった。もう何も言わねえ
そういうもんだと思っとく

【POW】

一応聞いとくが
殺して構わねえんだな?
誰のペットだか知らねえが特急で食いついてくる奴の勢いも利用し【一撃必殺】でぶち抜くぞ
地中に潜ってる奴はヒレが飛び出してたりすんじゃねえか。でなくとも振動か音かは皆無じゃねえ筈。気配に地へ拳を打ち付け『衝撃波』を送り込み、跳ね上がったとこを叩く
まあ食いつかれた瞬間に『属性攻撃』の電流伝わすでも。ぼーっとしてる逃げ遅れを咄嗟に庇う必要がありゃその方法でもいい。痛覚は無いようなもんなので構わず目的地へ向かう
そういや
お前ら食糧は間に合ってんのか?
やるよ、お近付きのなんたらだ(さめ)




 ホホジロ島。この地の住民は今、絶体絶命の危機に直面していた。島民たちはあまねく殺人ザメの脅威に晒されている。それは子供たちですら例外ではない。
 白い砂を蹴立てて必死で逃げ回る数人の少年たち。彼らを一匹の殺人ザメが猛スピードで追跡していた
「あっ!」
 子供たちの最後尾を走る大荷物を背負った少年が、不意に転倒した。石にでも躓いたのだろうか。好機とばかりに大跳躍を見せる殺人ザメ。鋭い牙が少年に迫る。
(「もうだめだ!」)
 咄嗟に少年が目を瞑ろうとした刹那。
 ドゴォ、と。鈍い音。
 サメの鼻面に、鉄拳が叩き込まれた。
「えっ!?」
 驚きの表情と共に少年が顔を上げれば。
「殺していいのか聞く前に手が出ちまったが」
 そこには襤褸にも似た服を磯風に靡かせて立つ、レイ・オブライト(steel・f25854)の姿があった。
「構わねえんだよな?」
 殴りつけた方の手で何かを指差すレイ。少年が恐る恐る視線をレイの指先の方向に向ければ……そこには息絶えたサメ。
 その凄まじい飛距離と急所である鼻先に出来た大きなへこみが、相手の突進の勢いも利用して倍加されたであろうレイの拳の威力を、この上なく雄弁に物語っていた。
「は、はい。……たぶん」
 へたりこんだままおずおずと答える少年の様子をレイはじっと観察する。服はよく見れば布や革で出来た動き易いもの、加えてあちこちに散乱した荷物の中には、きらりと光るナイフが数本。その肌も白いとは言えない。おそらくは海賊団員だろう。
「いけない、みんなが!」
 突然、少年がはっとした表情で振り返れば。
 そこには逃げた筈の子供たちが居た。彼らの後ろには三匹ほどのサメがぴったりと貼り付いている。
 どうやら先回りされたものらしい。子供たちは助けを求めるようにレイの元に駆けて来る。
「わかったわかった。もう何も言わねえ」
 レイは軽く肩を竦め、目の前で繰り広げられる光景に対してあっさりと割り切りを見せる。荒れた大地を泳ぎ渡る魚も居た。ならば地上を集団で狩りをするサメだって居るだろう。あれはそういうもの。それ以上でもそれ以下でもない。
 そしてその対処法もまた同様に、自身の経験と分析によって導き出せる範囲のもの。そんな直覚が、レイの態度に落ち着きを生んでもいた。
 砂の中を自在に泳ぐ殺人ザメはレイと少年たちの周囲をしばし取り巻き、ぐるぐると回遊していたが、やがてヒレを砂中に沈め、その姿を完全に消した。
「……」
 対するレイは地に向けて拳を打ち下ろすような構えを見せ、瞳を閉じた。
 地中を泳ぐ。
 それがどのようなメカニズムで行われているのであれ、砂を掻き分け進む以上、砂粒が動く事で生じる微細な音や振動までは消しようがない。
 故にレイは今この場で役に立たない視覚を敢えて遮断し、代わりにそれ以外の感覚を研ぎ澄ます。サメたちの気配を察知し、最適の場所とタイミングを捉えるために。
 単調に繰り返される波の音と、視界を覆う暗闇。
 その暗闇の片隅で……光が瞬いた。
(「――ここだ」)
 レイが地面に向けて渾身の拳を叩き込めば。
 衝撃波が砂浜を放射状に奔り抜け、大地を深く深く揺らす。
 同時に全てのサメが勢い良く地面から叩き出され、砂に塗れたその姿を晒した。
 跳ね上げられた身体は無防備そのもの。
 抜く手も見せずに放たれたレイの連撃はサメたちの体を空中でまともに捉え、次々吹き飛ばした。
 訪れる静寂。
 やがて脱力し、構えを解くレイ。
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「誰のペットだか知らねえが」
 レイは仕留めたばかりのサメの元に歩いて行き、その亡骸を片手でひょいと掴み上げ。
「やるよ。お近づきのなんたらだ。煮るなり焼くなり好きにしな」
 ぽい、と少年の方に放った。肉、肝、ヒレ。利用価値のある鮫の身体が、どさりと音を立てて砂浜に転がる。
「ひぃ……ありがとうございます」
 さっきまで動いていた巨大なさめを前に、思わず上ずった声を上げる少年。
 そんな彼に構わず、しかし彼を含めた子供たちに目立った怪我が無さそうな事を一瞥で確認したレイは、さらに多くの人々を救うべく踵を巡らすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


・『武装商人』救出
シャーロット・クリームアイス
ストーップ!
ここから先は通行止めです!

跳ぶのも飛ぶのも泳ぐのも、サメらしくてもちろん結構!
しかし、むやみやたらと人を襲うのはいただけません。
っていうかアレですよ、サメや鮫魔術の評判が悪くなるんですよ……わたしのためにご遠慮いただきたいところ。
分かったらさっさと立ち去りなさい……死にたいならば止めませんがね……!

むむ、残念ながらお話が通じないサメたちの様子。
ならば実力行使――出でよ、◈消す術のないイルカ!

たとえ噛みつこうが体当たりしようが、概念防御のイルカを崩すなど不可能ですとも!
格の違いがわかったなら、ケガをしないうちに家に帰ることです。

いやいや、殺したりしませんよ? そんな物騒な。




 ざざーん。
 グリードオーシャンの荒波打ち寄せる砕ける磯辺。そこの大きな岩の上に、沢山の島民たちが避難していた。
「頭を低くして、下がってくださいっ!」
 彼らを守るように砂浜に向けて立つ女性の海賊団員。そして彼女の視線の先には……砂浜を越えて磯に乗り上げ、白い水煙に包まれながら島民の方へと驀進して来る殺人ザメの群れ。
 元より高所の利など無きに等しい。そして何よりも数。一人で食い止めるにはいささか分が悪い。風前の灯。そんな言葉が彼女の脳裏をちらついたが、退くわけにはいかない。銛をぎゅっと握り締め、覚悟を決めた、その時。
「ストーップ! ここから先は通行止めです!」
 ……制止の声が掛かった。
 サメたちが磯に突っ込み包囲を開始しようとしたまさに寸前。打ち寄せる波に脚を絡ませざばざばと割って入ったのは、ソーダ水の身体に美しい薄絹を纏ったセイレーン、シャーロット・クリームアイス(Gleam Eyes・f26268)だった。
 何だ何だといった様子で動きを止め、岩と海水から顔だけ出して固まるサメたち。
「跳ぶのも飛ぶのも泳ぐのも、サメらしくてもちろん結構! しかし、むやみやたらと人を襲うのはいただけません」
 その思わず魅せられるような藍色の瞳で殺人ザメたちを真摯に見据え、彼らを説得にかかるシャーロット。
 跳ぶのはともかく飛ぶのはサメらしいのかと後ろの島民が突っ込もうとした気もしたが、そこは由緒正しきグリードオーシャンの鮫魔術。そしてその体得者である彼女の言葉から滲み出る説得力だった。
「っていうかアレですよ、サメや鮫魔術の評判が悪くなるんですよ……! わたしの営業にも差し支えますし、ここはご遠慮いただきたいところ!」
 もしそうなったら商売あがったりだ。独自の通信ネットワークを確立することによりある程度までは様々な障害を克服したシャーロットからしても、それはあまり想像したくない未来であった。
 とりわけ発見されたばかりのこの離島において、サメおよび鮫魔術の権威はまさにシャーロットの双肩にかかっていると言っても過言ではない。
「分かったらさっさと立ち去りなさい……死にたいならば止めませんがね……!」
『……』
 神妙に話を聞くような素振りを見せていたサメたちだったが、シャーロットが話し終えるや、互いに顔を見合わせた。
 ……そして咆哮と共にシャーロットに向き直り、白く尖った歯を剥き出しにした。
 交渉決裂。
 思い悩んだ末に結局食欲が勝ったのか、それとも自分達の邪魔をされた怒りが先に立ったのか、そもそもシャーロットの説得を理解出来なかったのかは分からないが。
「むむ、残念ながらお話が通じないサメたちの様子」
 だがそれはシャーロットの想定内。
「ならば実力行使――出でよ! 消す術のないイルカ」
 ぽわん。ぽちゃん。
 蒼い光と共に、何かが数体水辺に召喚された。
 イルカ。
 見る限りにおいて、それは本当にただの可愛いイルカに見えた。
 無防備にもシャーロットに向けて接近するイルカたち。
 殺人ザメはターゲットをそちらに切り替え、猛スピードでイルカに接近。そのまま大口を開けて噛みつこうとして――手応えなくすりぬけた。
 呆気に取られるサメたち。
「たとえ噛みつこうが体当たりしようが、概念防御のイルカを崩すなど不可能ですとも!」
 イルカたちが反撃を始めた。ごつごつと体当たりを繰り返すイルカたちを前に、サメたちは均衡状態を保つ術もなく後退を始める。
 あらゆる攻撃が通らない事が確定している以上、このイルカたちはサメの側を一方的に攻撃し得るのだ。
 海の殺し屋と呼ばれる彼らが本来弱者たるイルカに翻弄されるその光景は、絶対防御への畏敬を島民たちに感じさせるに十分なものだった。
「ケガをしないうちに家に帰ることです……いやいや、殺したりしませんよ? そんな物騒な」
 格の違う相手に見逃して貰えたのならば、やることはただ一つ。
 それは尻尾を捲いて逃げ帰る事だ。
 戦意を失ったサメたちは慌てて踵を返すや、漆黒の魔法陣を一瞬だけ宙に残し、元居た場所に送還されるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​


・『武装商人』救出
・『甲板長』救出
雨宮・いつき
ははぁなるほど、地を泳ぎ空を飛ぶ鮫が島民の方達を脅かしていると…
…どこでも泳げる加護か何かでも受けてるんでしょうか?
何であれ、そんな危険な生き物を人々にけしかけるなど言語道断
すぐに助けに参りましょう!

うわぁホントに空飛んでますね…
けど空を飛べるのは僅かな時間だけ
そして飛ぶ直前には背びれが見える浅さまで地面に浮かんでくる
となれば、狙うのはその時です

土行の力で鮫の周囲の砂を爆ぜるように吹き上げさせます!
そうして空中へ打ち上げて、体制を立て直される前に雷撃符の雷を放ちましょう
仕留めきれなくても再び泳ぐことが出来ないよう、【マヒ攻撃】を与えて確実に数を減らしていきます!

※アドリブ・連携歓迎です


天道・あや
ホホジロ……ホウジロ?…ま、まあ、島の名前は置いといて、とにかく、今は島の人達助けなきゃ!…右よし!左よし!……あたし、よしっ!…いざ、レスキュー!

初っぱなから【レガリアス】をフル稼働…【ダッシュ】!!島の人達と鮫の間に介入!そして鮫を【挑発】して【おびき寄せ】る!

へいへい!こっちの方が美味しいよ!……多分!

あ、島の人達はその船長さんは連れてどっかに隠れて下さい!!

そしておびき寄せた鮫をあたしは屋敷の門を背にして…迎え撃つ!これで背後からの不意打ちはない筈!

そしてそして…!鮫の動きを【見切り】…今だ!籠手を着けた片手を大きく口の開いた鮫の中に…!そして捕まえた鮫に…UCをお見舞い!(属性攻撃雷




 鉄甲船から猟兵達が救出活動に向かい始めた事で、砂浜には徐々に安全地帯が形成されつつあった。だが殺人ザメは砂浜のあちこちで襲撃を仕掛けている。未だ犠牲者は出ていないものの、この状況が長続きすれば危険だ。
「ははぁなるほど、地を泳ぎ空を飛ぶ鮫が島民の方達を脅かしていると……そう伺いましたが」
 目の前で繰り広げられるB級映画さながらの光景を前に、深い青色の瞳を眼鏡越しにぱちくりさせるのは雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)だ。
「ホントに空飛んでますね……どこでも泳げる加護か何かでも受けてるんでしょうか?」
 空飛ぶ殺人ザメを興味深そうに観察するいつき。既に対策を立てている彼の面持ちは、あくまでも柔和で落ち着いたものだった。
 そして彼の傍には……スタァがいた。天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)だ。
「う~ん……ホホジロ……ホウジロ……?」
 彼女は島の名前が気になっていた。奉じろ、封じろ、それとも。あやが連想したのは、果たしてどの辺りだっただろうか。案外本当の由来もその近くにあったりするのかも知れない。それにしてもホホジロ島。変わった響きの島名ではある。
 まぁ、それは置いておいて。
「……とにかく、今は島の人達を助けなきゃ!」
「そうですね。あんな危険な生き物を人々にけしかけるなど言語道断。すぐに助けに参りましょう!」
 改めてお互いの方針を確認し合ういつきとあや。
「……右よし! 左よし! ……あたし、よしっ!」
 安全確認を済ませたあやはスタートダッシュの構えを取る。
「どうかお気をつけて」
「了解っ! ……いざ、レスキュー!」
 微笑み手を振るいつきを残し、あやは最大最速全速力のダッシュを見せた。甲板を鋭く駆け、勢い殺さず島に上陸。足下のレガリアス内で圧縮された大気が砂を割り、白い庭園に綺麗な一直線を描いた。
 遠くあやを見送ったいつき。
「……さて、僕も行きましょうか」
 纏った羽衣を潮風にふわりとたなびかせながら、彼もまた甲板を下るのだった。

 砂浜を自在に駆け回るあや。彼女は島民たちからサメを引き離していた。
 サメの進路を妨害するように動き、時に砂をかけて挑発。繰り返していくうちに、あやの後ろを追うサメの数は一匹また一匹と増えていく。
 ふとあやがシダの茂みに視線を移せば、辛うじて確認出来る位置に身を隠すように、何人かの島民が集まっていた。見れば横たわった船長に応急手当を施している。
 近くには何匹かのサメ。
「へいへい!こっちの方が美味しいよ! ……多分!」
 遠くからサメたちを挑発するあや。おびき寄せられた殺人ザメたちが船長と島民をターゲットから外す。
「あ、島の人達はその船長さんを連れてどっかに隠れて下さい!!」
「俺はまだ戦える!」
「下がった方が良いって船長!」
 あやのアドバイスに従い、島民たちは船長を移動させようとする。負傷してなおも旺盛な戦意を見せる船長だが、そこは怪我人の悲しさ。大した抵抗も出来ずに鉄甲船の方角へ引き摺られていくのだった。

 海岸沿いに向けて避難しようとする島民たちにもサメたちは容赦なく襲い掛かる。行く手を阻むのは、いつき。
 立ち回りの巧みさ故だろうか。周囲の者達はいつきがただその場に存在するだけで時を忘れるかのような感覚を幾度も覚えた。その作用は主にサメたちに向けられたもの。島民を追っていた筈が、何故かいつきの真正面に出てしまうのだ。
 やがて一箇所に集められたサメたちはもはや島民には目もくれず、いつきだけを狙い周囲を円状に回り始めた。
 その存在を察知する唯一の手掛かりである背ビレが、一斉に砂の中に潜った。
「……」
 訪れる静寂。息を詰めて遠巻きに眺める島の人々。
 そして、ひとり砂浜に立ついつき。
(「飛翔は彼らの最大の武器。僕を警戒していれば使って来るでしょう」)
 それもおそらくは、一斉に。
(「そして飛ぶ直前には地面に浮かんでくる。となれば、狙うのはその時です」)
 分析を重ね、結論を出す。
 慌てず、騒がず、冷静にその時を待つ。
 時間にして数分の後。
 いつきの数間離れた位置で、むくりと、地面が盛り上がった――瞬間。
(「――今です!」)
 いつきの周囲の土砂が高く噴出した。
 飛び付こうとした所をあらぬ方向に打ち上げられたサメたち。そのまま体勢を崩し、舞い上がる砂の中に無防備な姿を晒した。
 間髪入れずにいつきが、その指の間に手挟んだ何かを放った。
 それは――真新しい護符。
 込められていたのは、雷の霊力。
 符が貼り付くと同時に、紫紺の閃光が閃いた。
 衝撃をまともに受け、体を麻痺させられるサメたち。
 その身体は地面に落ちるや、赤茶けた粉と化して次々消滅していった。
「――!!」
 ふと我に返れば、周囲から上がる歓声。
 いつきは気恥ずかしさを覚え、思わず頬を染めるだった。

 風の如く浜を駆け抜け、島の中央にある灰色の洋館へと進路を取ったあや。
 その門前で、ざざぁ、とブレーキをかけて停まれば。
 あやの目の前に聳え立っていたのは石の大扉。
 脆い自然物ばかりのこの島で、最も安定している物質はと言えばこれだろう。
「よーし……!」
 扉を背にして迎撃の態勢に入るあや。振り返ればそこには夥しい数のサメたち。その全てがあやが引き付けたサメたちだ。
 怒り狂ったサメたちがあやに殺到すれば。
「よっ!」
 繰り出される噛みつきを、あやは身体を捻って大きく避ける。
 強固なガードを背負い、前面からの回避に集中することが出来るあや。対するサメたちは包囲することはおろか、飛び付く事もままならない。
「今だ……!」
 単調な動きを繰り返すサメたちの動きを見切り、あやは超鋼度の籠手を、その巨大な口の中に突っ込む。
『――!』
 籠手の帯びる熱が急速に高まりを見せ、同時に電流が黒色の表面を彩る。
「これが! あたしの…私の…! 想いが乗った──!」
 雷撃。
 周囲のサメも巻き込み、あやの想いが敵の体内で炸裂した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


・『武装商人』救出
・『甲板長』救出
・『海賊船長』救出


 後方で大声が上がった。
 猟兵達が海岸を振り返れば……そこでは海賊団員達が島民を守るように殺人ザメと小競り合いを始めていた。
 戦力の再結集に成功したことを示す、海賊船長による鬨の声だった。
 サメたちが猟兵によって駆逐される時は、そう遠くない。
アリアケ・ヴィオレータ
アドリブ・連携歓迎
【SPD】

こりゃうちの島の大ババ様も使ってた鮫魔術の類か?
飛んだり潜ったり、好き勝手しやがってよぉ。
島民を餌にするような鮫に、容赦はいらねぇよな?

「鮫漁といくぜ、『不知火』」
「滄海の王魚よ、大海原進むその一息をお借りする!」

UC【ホエール・スプラッシュ】を発動。
背後に集った海水の強力な噴射を推進力にし、
メガリスである銛の『不知火』を構えて
高速で鮫共に突っ込む!
どんどん『串刺し』にしてやるぜ!
倒した鮫共は『怪力』と『念動力』で
銛から引っこ抜いて砂浜に。
オレにゃこんなには要らねぇからな、
島の奴らが有効活用してくれりゃいい。




 向かって来る背ビレを大きく避ける。
 一瞬の後、小さめのサメの上体が砂の上に現れ、再び地面に潜っていった。
「こりゃうちの島の大ババ様も使ってた鮫魔術の類か?」
 グリードオーシャン由来の鮫魔術。南方にあるアリアケ・ヴィオレータ(夜明けの漁り人・f26240)の故郷においても、それは知られているものであった。ならばこれも鮫魔術師の力の一端なのだろうか。もしそうならアリアケは、味方としては頼もしいであろう彼らと今は敵として対峙している事になる。
「飛んだり潜ったり、好き勝手しやがってよぉ」
 サメが砂の中を泳ぎ、空を飛ぶ。B級映画さながらの絵面だが、襲撃される側としてはなかなかに厄介な相手だ。変幻自在なサメの動きを見切る為に、アリアケはしばらく回避に専念していた。
「島民を餌にするような鮫に、容赦はいらねぇよな?」
 時に漁師は生計の為ではなく、人々を脅かす存在を討つ為に動く。彼らこそは目の前のサメという存在に対し、最も有効な手を打てる者であるが故に。などと小難しい事を考えるアリアケではないが、その前に体が動いていた。
「――鮫漁といくぜ」
 なぁ『不知火』。
 背中に背負った自慢のメガリス――巨大な銛――を掴み、向かって来るサメたちに狙いを定めれば。
「滄海の王魚よ、大海原進むその一息をお借りする!」
 朗々と歌い上げるようにそう言うアリアケの背後に、大量の海水が収束し始めた。
 轟音と共に増していく水量。同時に蓄えられる力。
 瞬間、アリアケの身体が打ち出された。
 大鯨の潮吹きもかくやという噴射。その推進力を利用した、高速の体当たりだ。
 彼女が腰溜めに構えていた『不知火』。その手元に、確かな手応え。
 砂浜を一直線に切り裂き終えたアリアケ。銛の切先には急所を貫かれてバタつく大小さまざまのサメが居た。
 慣れた手つきで素早く数体をその場に置き捨て、ざ、と振り返る。
 再び迫り来る背ビレに向けて、彼女は銛を向け直すのだった。

 数分後、海岸で一人立ち働くアリアケの姿があった。彼女は銛から引き抜いたサメを砂浜に並べていた。島民たちに配布するためだ。
「オレにゃこんなには要らねぇからな」
 おそるおそる近づいて来る島民に向けて、アリアケは喋りつつも作業を続ける。重いサメの体から滴る鮮血に服を汚す事なく続けられる一連の動作は、確かな熟練を感じさせるものだった。
 島の救世主にして漁師。彼女が狩ったものとなれば、島民たちはどの部位も無駄にはしないだろう。
「ん?」
 アリアケはふと周囲に耳を澄ませば、静寂。
 狩りからの仕分け作業。その自然な流れに、アリアケも周囲の者も、殺人ザメを全滅させた事に今更ながら気付く。
「全部漁(ト)っちまったか」
 ホホジロ島の砂浜に、豪快な笑い声が響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『殺戮オウムガイ』

POW   :    念動衝撃波
見えない【衝撃波】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    賢者の触手
質問と共に【無数の触手】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
WIZ   :    オウムガイ粘液
【粘液】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:りょうま

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 島民たちから一人の犠牲も出さず、見事殺人ザメを退けた猟兵たち。
 現地の海賊たちとコンタクトを取った彼らは、洋館の攻略へと乗り出した。
 海賊たちが重々しい音と共にその巨大な扉を開けば、広い玄関ロビーが姿を現す。
 柱、階段、調度品……その全てが石造り。
 落下当時そのままの重苦しい雰囲気を、窓から差し込む南国の陽射しが微かに和らげていた。

 ふと一人の猟兵の視界の端で、何かが青白く瞬く。
 反射的に身を捻って避ければ、凄まじい冷気と共に光線が駆け抜けた。
 着弾地点に盛り上がる氷柱。
 ……冷凍ビームだ。
『避けたか』
 あちこちの物陰から、ふよふよと空中を漂う、透明な巻貝のような存在が姿を現した。
 これは「殺戮オウムガイ」だ。メガリスによって死亡し、オウムガイの姿で蘇ったコンキスタドール。
『あの小娘に魔術を教えてやると言われ、ここまで来たが』
『今のところ収穫はこれだけか』
『やめておけ。ここに来て我々は着実に力をつけている』
 人語を話し、高い知能を持つ彼らの中には、高度な魔術を操る個体も居る。今のはダークセイヴァー由来の氷魔術だろうか。
『地上の者に深海以上の暗黒を究められるものか。元より屍肉を操る術などくれてやれ』
『いずれ我々があの小娘に取って代わり、島を支配してくれる』
『それまでは貴様らを分解し、知識の糧とするとしよう』
 殺戮オウムガイたちがその光る眼をぎょろりと向けるよりも一歩早く、猟兵達は館内に散開した。


「うわぁ始まったよ……冷気が此処まで」
 その後方では海賊たちが待機していた。小形のナイフを指に挟んだ少年が扉に身を隠し、館内を窺う。
「野郎ども。手筈通りだ。わかってるな?」
 鍔広の海賊帽に貴族服。若いながらも風格を漂わせる船長の言葉に。
「はいっ! 突貫ですねっ!」
 銛を携えた軽装の少女が快活に応じる。
「ちげーよ! いいか。あのオウムガイ共は俺たちだけなら到底敵わねえ。だがあの客人は違う! 指示があれば各自支援に徹して、指示が無けりゃ足手纏いにならないよう待機してるんだよ!」
「了解ですっ! つまり、突貫ですねっ!」
「聞けよ!!」
「心配だなぁ……」

※後方に海賊が控えています。
 もし指定すれば武器やUCで支援してくれるかも知れません。
(戦力としては猟兵に劣り、行動できるのも1プレイング一人のみとなります)

・ライオネル 海賊船長 男 豪快
使用メガリス:投げ舵輪
使用可能UC:海賊王の怒り

・ナギサ 甲板長 女 猪突猛進
使用メガリス:銛
使用可能UC:海神殺し

・ルカ 武装商人 男 少し気弱
使用メガリス:投げナイフ
使用可能UC:千里眼射ち
シャーロット・クリームアイス
※アドリブ等お任せ

(遠方から観察)
オウムガイなのに、なんか人間っぽい雰囲気のひとたちですね……。
でも、横暴なのはいけません。人里をわざわざ襲いにくるなんて、もうほとんど山賊じゃないですか!

さて、わたしが相手をしても、もちろん構いませんが。
今後の営業のためにも、島のひとびとと友好を築きたいところ。
ですので、むしろ主役を譲りましょう。

みなさん!
相手は身勝手な侵略者です!
今後にわたって生活を守るには、みなさん自身の力が必要です!

と駆り立てて、そうですね……ルカさんにお願いしましょう。
戦う意志さえあれば、わたしのカスザメはそれを叶えます。
粘液など届かぬ長距離からでも、有効打を命中させられるハズです!




 館の内部を重く垂れこめる冷気は石の床面を這い、門を抜けて砂浜へと。
 ひやりとした感触は繁茂するシダ植物の狭間で機を窺うシャーロットの肌すらも撫でた。
「オウムガイなのに、なんか人間っぽい雰囲気のひとたちですね……」
 言葉も通じる。学ぶことも出来る。人間離れした姿にも拘らず、彼らが纏う空気はヒトのそれに近いものをシャーロットには感じさせた。
 しかし。
「横暴なのはいけません」
 ぐ、とシャーロットは拳を握り締める。
「人里をわざわざ襲いにくるなんて、もうほとんど山賊じゃないですか!」
 知性があるのならば彼らなりの倫理もまた存する。シャーロットとしてはそこに期待をかける気持ちも無くは無かったが。彼らは未だに、自分等と同じく知性あるものへの最低限の敬意すら示していない。
 よって、殺戮。
 目的の為ならば手段としての殺戮を躊躇わない。
 ――あまりに無法。あまりに身勝手。
 人々の繋がりを大事に生きて来たシャーロットとは根本から相容れないもので。
 軽く溜息をつき、気分を切り替える。
「さて」
 耳を澄ませば――戦いの音はやや遠く。
 シャーロットがオウムガイを射程に収めるには、今一歩踏み込む必要があった。
(「もちろんそれでも構いませんが」)
 シャーロットは前に出ない。代わりにすすーっと視線を移動させれば……後方で岩陰から顔を出し、猟兵たちの戦いを見守る島民たちの姿が。
(「ここは島の人々と友好を築きたいところ」)
 今後の営業のためにも。
 島民たちに軽くウインクを送れば、島民の男の子が顔を赤らめた、気がした。
(「ですので、ここは彼らと……彼に主役を譲りましょう」)
 島民たちがオウムガイの射程から大きく外れていることを確認したシャーロットは、門の陰で様子を窺う海賊のうち一人……ナイフ使いの少年、ルカを手招きした。
「? は、はい。呼びました?」
 彼女は営業スマイルを湛えたまま、ルカの手を引き引き島民たちの元に向かう。
「~♪」
「えっえっ」
 どうしたんだろう。戻って来たぞ。ざわつく島民たちを前に。
「みなさん! 相手は身勝手な侵略者です!」
 シャーロットは熱弁を始めた。島民たちを奮い立たせるために。
「今後にわたって生活を守るには、みなさん自身の力が必要です!」
 彼女の真摯な熱意は島民たちの心を打ち、先程の戦いで信頼を得ていたこともあり、早速幾人かが彼女に拍手を送った。

 一方のオウムガイたちである。
 今や彼らの注目は門の外に集まっていた。
 宙をひらひらと漂う褐色の生物たちを捉えたからだ。
 その魚の正体をオウムガイたちが看破した時、細めたその眼に滲ませた感情は――嘲笑だった。
 オウムガイたちは知っている。あの地味な平たい魚の正式名称を、分類を、習性を。そして自身らと引き比べた際の存在の他愛無さを。
 だがオウムガイたちは知るまい。人々が彼らに与えた別の名を。たったそれだけの理由で、彼らが今までどれほどの願いを託されて来たのかを。
 なおも嗤うように脚を揺らすオウムガイたちに。
 こ、と乾いた音を立てて投げナイフが次々突き立つ。
 硬質の殻を貫き通す最低限の力で放られ、致命的な部位を数ミリ抉れば即ち有効打。意識をふつりと断ち切られ、石の床にゴトゴトと音を立てて落下したオウムガイたちは、そのまま館の奥へと転がって行き、見えなくなった。
「すごい……!」
 シャーロットが灯し、人々が望み、天上に御座す七大天使が聞き届けたその願い。
 それは一人の少年を英雄と化し、本来の実力を超えた距離から放たれた精密射撃として顕現した。
「求めれば与えられる。戦う意志さえあれば、彼らはそれを叶えます」
 肯くシャーロット。人々の間から喝采が上がる。

 なおも人々の頭上で願いをかき集めるその鮫の名はカスザメ。
 またの名をジャパニーズ・エンゼルフィッシュ。

 天使であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト
水遊びとおしゃべりが上手えじゃねえか
次は何を覚えとく? よく考えろよ。最後の機会になるからよ

さて、【選択UC】で殴りかかろうと粘液でそうはいかねえと
余談だがオレはよく手足がもげてな
そういうとき、どうやってお前らを捌くかっつうと
――やりな
後方の武装商人へ呼び掛ける。あの投擲はオレとしても都合が良い
奴のナイフ自体の刺さりは甘くとも、こっちでヴォルテックエンジン製属性攻撃(電気)+衝撃波を伝わせりゃ導体として働いて直撃雷に早変わりする読みだ
と、こうやる。まあ導体なくたっていけんだが、誰だっててめえの島ならてめえで守りてえもんだ

分相応に深海泳いでりゃ感電死なんざ縁もなかった
ってのが最後の学びで、いいな




 オウムガイの体表に青と黒の縞模様が明滅し、口元に冷気が収束する。
 そこへ向けて、瞬速のジャブが叩き込まれた。ぱん。とオウムガイは音を立てて爆ぜ、氷の霧と化してきらきらと散る。
「水遊びが上手えじゃねえか」
 左拳を開き、氷の粉を払う。
「次は何を覚えとく? よく考えろよ。最後の機会になるからよ」
 達人級(マスタークラス)の格闘術の前には、付け焼刃の魔法など児戯に等しい。
 場所は洋館ロビー。重苦しい空気が漂うこの場所で、レイは殺戮オウムガイたちを正面から相手取っていた。オウムガイたちは構えを取ったレイの周りを値踏みするように浮遊している。
『被検体、体温が著しく低いようだ』
『死霊術? 違うな。猟兵どもの成り立ちは一様ではない』
「おしゃべりもな」
 そう返したレイに向けて、オウムガイたちが一斉に何かを吐き出した。
 山なりに撃ち出された液体をレイが体を引いて躱せば、後ろで、じゅん、と何かが融ける音。振り返ると、後ろの床が白煙を上げていた。
「溶解液か」
『貴様にアイスビームは有効ではない』
『方針変更だ。このまま分解してくれる』
「……」
 レイ・オブライトはゴッドハンド。己の手足こそが最大の武器。『替わり』のツテこそあれ、今此処でという訳にもいかない。溶解液の直撃に対しては慎重だ。
「生憎俺の手足はよくもげてな」
『組織を癒着。素晴らしい』
『自己再生は高度だが、時間もエネルギーもかかる』
『ますます貴様を分析したくなったぞ』
(「時間は稼いだ。――やりな」)
 目配せするレイ。オウムガイたちが再び酸を吐き出す為に、その不格好な口を開けた。
 その時。

 ひゅん。

 風を切る音がした。
 乾いた音を立てて、柳葉のような小さな刃が、オウムガイの身体に次々突き立つ。
 ルカの放った投げナイフだ。
 オウムガイたちは衝撃に体を僅かに揺らしたものの、再び体勢を立て直した。
 ――浅い。
 ナイフを投げた本人も含め、その場に居た誰もがそう感じただろう。
 だが、充分。
 レイは軽く片足を上げるような動作をする。その足に電流が迸ったかと思えば。
 大地を凄まじい衝撃が奔り抜けた。
 震脚。地形を破壊する威力の。
 同時にレイの『魂の衝動』を変換して生まれた逆さ雷は、その悉くが鉄を撃ち込まれたオウムガイたちを呑み込む形で発生していた。
 目の前で巻き起こる凄まじい現象に目を輝かせる少年。
(「まあ、導体なくたっていけたんだが、誰だっててめえの島ならてめえで守りてえもんだ」)
 横目で見つつ、レイは胸の内でそう独り言つのだった。

 その場のオウムガイたちは殻も残さず灰と化したが、一匹だけが地形破壊に押し出される形で逃げ延びていた。
 こっそり這って隠れようとするオウムガイを、白い足指が掴んで止めた。
「……」
『……』
 レイだった。
「分相応に深海泳いでりゃ感電死なんざ縁もなかった……ってのが最後の学びで、いいな」
『……!』
 身勝手な知識欲に駆られ、地上を目指したオウムガイたち。
 その授業料は高くついた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天道・あや
で、デカい…貝!?……さ、流石、グリードオーシャン、オブリビオンもオーシャンな生き物…!…しかーし!だからと言って特に何かあるわけでもないし、別にやる事は変わらない!…右よし!左よし!…あたしよし!それじゃ、いっく…うおっ!?と、突貫?…あ、そうだ!なら…おーい!そこの銛持った人ー!ちょっとお願いがあるんだけどー!

……と、言うわけでまずはあたしは敵の攻撃を【ジャンプやスライディング】で【見切り】って、敵を【おびき寄せ】る!そしてそして、敵があたしの近くに集まってきたら…天井へと跳躍してUC発動!【歌唱、楽器演奏、属性攻撃雷】

……これで舞台は整った!それじゃ、ナギサさん!突貫よろしく!!


アリアケ・ヴィオレータ
アドリブ・連携歓迎
【WIZ】
生憎、テメェらに分解されるつもりは微塵もねぇ。
漁(ト)られるのはテメェらの方だぜ頭でっかち共!

「あの粘液が曲者みてぇだが……体に当たんなきゃいいんだろ、多分」

「金剛杵相似の長角魚よ、その劇毒をお借りする」

『覇気』の『オーラ防御』に回し、身体へ覇気と粘毒を二重にまとう。
これで奴らが飛ばしてくる粘液を防げるといいが。
あとは冷凍光線に当たらないよう物陰に潜んだり気を付けながら接近。
『怪力』をもって『不知火』で頭でっかち共の殻の『鎧砕き』、
脳天から『串刺し』にしてやる!




「で、デカい……貝!?」
 凄まじい存在感を発散するコンキスタドール『殺戮オウムガイ』。
 目の前を浮遊する彼らを前に、あやは思わず驚嘆の声を上げた。
「さ、流石、グリードオーシャン、オブリビオンもオーシャンな生き物……!」
 海洋に覆われたこの世界に相応しいオブリビオンと言える。
「しかーし! だからと言って特に何かあるわけでもないし、別にやる事は変わらない!」
 何処に居ようと、如何なる姿をしていようと、彼らオブリビオンの存在する先に訪れるのは世界の破滅。あやは猟兵として、彼らを打ち倒すべく選ばれたのだ。
 そしてもう一人。
「生憎、テメェらに分解されるつもりは微塵もねぇ」
 鍛え抜かれた無骨な銛『不知火』を担いであやの隣に立つのは、アリアケ・ヴィオレータ。
「漁(ト)られるのはテメェらの方だぜ! 頭でっかち共!」
 彼女は猟兵であると同時に漁師でもある。知性と威容を兼ね備えたオウムガイの群れに対しても、一歩も退かない……否、獲物を前にその意気が一層高まりを見せているようにすら見える。
 自信に溢れた二人の声が石造りの館内に反響すれば、敵が寄って来た。
「……右よし! 左よし! ……あたし良し!」
 あやは左右を指差し確認。スタートダッシュの姿勢を取る。
「行ってきます!」
「おう、気を付けて行けよ!」
「了解ですっ! それじゃ、いっく……うおっ!?」
 アリアケに見送られてあやは地面を蹴り抜き……数歩駆けたところで近くの人影に気付いて突撃を中断させた。
「……あ、そうだ! おーい!そこの銛持った人ー!ちょっとお願いがあるんだけどー!」
 急いで方向転換するあや。にっこりハテナを浮かべて振り返った誰かさんに声をかけ、何やら打ち合わせにかかるのだった。
 オウムガイたちはその場に残された筈のアリアケを相手取ろうとしたが……居ない。
「おらっ!」
 突如、石柱の陰から繰り出された銛が一体を貫けば、ぱりん、と派手な破砕音を響かせ、オウムガイは塩水と化して骸の海に還る。
 あや達がやりとりをしている間に、アリアケは物陰から距離を詰めていた。
 反撃とばかりに撃ち出された、仄蒼い無数の光条。アリアケが再び石柱の陰に姿を消せばたちまち冷気が辺りを覆う。
『魔導射線が見切られている』
『溶解液で燻り出せ』
「……」
 アリアケは石柱伝いに移動し、傍にあった家具の陰に退避していた。
(「あの粘液が曲者みてぇだが……」)
 木板を背にオウムガイたちの会話を聞いたアリアケは、銛に身を寄せながら言葉を紡ぎ始めた。
(「――金剛杵相似の長角魚よ」)
 とろり、とアリアケの体表で何かが揺れた。

 山なりの軌道を描いて吐かれた黄緑色の液体をスライディングで避ける。
 じゅ、と石の床が溶ける音を後方に聞きつつ体勢を立て直し、迫る青白い光線を風の如く縫う。
 溶解液と氷魔法が乱れ飛ぶ館内を、あやは再び駆けていた。
『撹乱が目的か』
 お洒落もバッチリなあやが激しく動き回れば否応無しに注目が集まる。
『奴の突撃はじきに限界に達する。そこを狙うのだ』
 オウムガイたちはあやとの距離を適度に保ちつつ、集団で追跡を行う素振りを見せ始めた。
 だが、それこそがあやの狙い。
「待たせたな」
 先程とは別の物陰からふらりと現れた人影。アリアケだ。
 挟み撃ち。
 オウムガイたちは四方八方からアリアケに粘液を吐き始めた。
 溶解液はばしゃばしゃと降り注ぎ、みるみるうちにアリアケの身体が白煙に包まれる。
 あわや分解――かと思われたが、なんとアリアケは無事。
「幾ら強力な溶解液でも、体に触れなきゃ良いんだろ?」
 彼女の体表は、覇気と毒の粘液で二重にコーティングされていた。
 動揺を見せるオウムガイたち。よく見ればその幾体かが宙で体をふらつかせていた。どうやらアリアケの体表から跳ねた毒に触れてしまったらしい。
 その間あやは階段を一気に駆け昇る。迫る天井へ向けて、跳躍。
 サウンドウエポンの上で、電流が爆ぜた。
「心が痺れるようなあたしの思い! 聴かせてあげる! いぇ~い!」
 魂の芯から痺れさせるあやの歌声。それは演奏と共に玄関ロビー全体に驟雨の如く浴びせかけられ、おびき寄せられたオウムガイたちを纏めて硬直させた。
『……』
 脚を殻に引っ込めた姿勢で墜落していくオウムガイたち。
「……これで舞台は整った!それじゃ、ナギサさん! 突貫よろしく!!」
「はいっ! 突貫ですねっ! わかりましたっ!」
 あやが声を張り上げれば、階下から応じる声の主は、ナギサだ。
 猟兵たちの作り出した絶好のチャンスを逃さず、ナギサは駆ける。
 彼女が頭上に向けて繰り出した鋼の銛は、無防備に落下して来るオウムガイの殻を、数体纏めて貫いた。
「粉砕しますっ!」
 気合を込めれば銛の先端が無数の棘と化し、オウムガイたちを内側から破砕した。
 その時、地面に落下したオウムガイのうち数体が再起動。撤退するナギサを追えば。
 待ち構えていたのは、アリアケ。
「大丈夫か?」
「はいっ! ありがとうございます!」
 門の外へたたたと駆け去るナギサを背に、アリアケは不知火を大きく引く。
「散々好き勝手しやがってよぉ。これでも食らいやがれ!」
 被弾による戦闘力増強と彼女の剛力で以て突き出された、不知火の一撃。
 先程のナギサのものとは比べ物にならない重さのそれが、オウムガイの脳天を殻ごと串刺しにした。
「いっけ~っ!!」
 追撃とばかりに二階から降り注いだあやの演奏が、陰鬱な石造りの戦場を暫し明るく照らし出すのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雨宮・いつき
鮫の次は蛸なのか貝なのかはっきりしない物の怪が相手とは
まるで海の底に訪れた気分です
さしずめこの館は竜宮城といったところですか
…いえ、竜宮の民はこのような狼藉は働きませんね。失言でした

冷気を操り粘液を飛ばす…なかなかに厄介です
柱や階段を遮蔽にして身を隠し、雷撃符の雷で牽制を行いましょう
一か所に留まっていては狙い撃ちされますので、
機を見計らって冷撃符で生んだ氷の壁で冷凍光線を防ぎながら、別の遮蔽へ移動を

さて、充分に敵を引き付けて…
移動する際に遮蔽に仕掛けていた起爆符を操作して敵の傍で爆破、
そちらに気を取らせた隙に狐火を一斉に放ちます
冷気も粘液も蒸発させて、諸共仕留めますよ

※アドリブ・連携歓迎です




 戦いの音が響く館内。
 いつきは石造りの列柱の陰に隠れ、殺戮オウムガイたちの様子を観察していた。
「鮫の次は蛸なのか貝なのかはっきりしない物の怪が相手とは、まるで海の底に訪れた気分です」
 本来は海底でしか拝めないオウムガイ。
 超常の存在とはいえ彼らを地上で相手取る状況に対して、いつきは自身の素直な感想を漏らす。
「さしずめこの館は竜宮城といったところですか」
 かつて『島』の存在していた世界。その建築様式も相俟って、この場所は元々が海底で育まれた別世界のようにも思える。館を見回せば随所に刻まれた華麗なレリーフや装飾の数々。だがそれらはオウムガイたちの攻撃によりあちこちで溶かされ、氷に覆われていた。
「……いえ、竜宮の民はこのような狼藉は働きませんね」
 館を物の怪から解放する。そう決意を新たにしたいつきは、手元の雷撃符をオウムガイたちに向けて放る。
 符がひらひらと飛んでいき、ぺたりとオウムガイに張り付けばたちまち迸る電流。空中でその体を一瞬麻痺させつつも、オウムガイたちがいつきのほうに意識を向けた。
 符と雷、青い光線、そして溶解液。身を隠したいつきとオウムガイの間で牽制の応酬が続く。
「そろそろ、ですね」
 丁度敵が狙撃を思い立つ頃合い――その直前のタイミングを見計らい、いつきは移動を開始する。
 懐から先程とは違った符を取り出すいつき。
 ――冷撃符。
 いつきが柱に張り付ければたちまち澄んだ氷が生成され、石柱を繋ぐ氷の壁となった。
 冷凍光線が撃ち込まれるたびに壁は厚みを増すばかり。それに気づいたオウムガイたちが溶解液を使って壁を破った頃には、いつきは姿を消していた。
 すいー、と。オウムガイたちがいつきの居場所を探るように、溶けた氷壁に近寄り、乗り越えた、その時。
(「――今です」)
 爆音。
 今は別の石柱に身を隠すいつきが、元居た石柱の陰に仕掛けた符を発動させたのだ。
 ――起爆符。
 爆発に巻き込まれ一体が燃え落ちるも、それはいつきの真の狙いではない。
 彼の狙い通り、オウムガイたちは続々と集まり始めた。その全員が何が起こったのかを理解しようと、爆心地である柱に注意を向けている。
 柱の周囲を踊る、青白い無数の火。
(「集い爆ぜるは幽幻の炎――」)
 オウムガイたちが気配に気付いた時、彼らは既に狐火に包囲されていた。
 陽動――ようやく気付くも、時既に遅し。
 いつきの意思に従い、一斉に襲い掛かる高熱の狐火。
 周囲の粘液と氷を蒸発させつつ、オウムガイに纏わり付き、灼き尽くす。
 やがて残らず消し炭と化したオウムガイたちはその体をぼろりと崩し、窓から差し込む陽射しに融けるように消えていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『暗黒鮫魔術師『ルル・クラドセラキー』』

POW   :    ロドリゲスちゃん……おいで……
自身の身長の2倍の【飛翔能力を持つ巨大なゾンビ鮫】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD   :    あいつを……やっつけて……
【魔杖の髑髏から放つ、マヒ効果の暗黒ビーム】が命中した対象に対し、高威力高命中の【巨大ゾンビ鮫『ロドリゲスちゃん』】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    深淵より来たれ……混沌の使徒……
召喚したレベル×1体の【ゾンビ鮫】に【禍々しき触手】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:TFJ,

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 見事殺戮オウムガイたちを駆逐した猟兵たち。
 コンキスタドールの首魁が待つと思しき二階に向かう。
「掃討戦ですっ! 各小部屋に突貫しますっ!」
「魔導書がどれだけ使われたか確認しないと」
「食糧庫と酒蔵が先だ! これが終われば宴会ですぜ!」
 海賊たちは館内に散って行った。
 どうやら全員が猟兵たちと別行動を取るようだ。
 彼らを見送り、猟兵達は正面の大扉を押し開く。
 
 そこは灯り一つない玉座の広間だった。
 広い空間の奥に、ぽつんと置かれた石の玉座。
 座る一人の少女。

『だいぶ……派手に暴れてくれたみたいだね……』

 少女が玉座から立ち上がり、髑髏の杖を構えれば。

『おいで……ロドリゲスちゃん……』

 言葉と共に、ずん、と地響き。
 呼び出されたのは空飛ぶ巨大ゾンビ鮫。

『あなたたちも島民も……鮫の餌にしてあげる……』

 死霊術士にして鮫魔術師のコンキスタドール『ルル・クラドセラキー』
 島を守る為の最後の戦いが、今始まる。
天道・あや
到着!youがこの屋敷を独り占めしてるっていうコンスタ……一人と一匹……?…ま、まあ、とにかく!独占はこれ以上、ナッシング!この島、この屋敷がメインなんだしね!それじゃ、…右よし!左よし!あたしよ……うお!?な、名乗りの途中で鮫にのって攻撃してくる!?

れ、レガリアスをフル稼働させて、【ダッシュ】で敵から距離を取って……あ、二回の他の部屋は島の皆さんがいるんだった……【ジャンプ】で一階へ!そしてさっき戦ったから屋敷の構造は多少把握済み……!真っ直ぐ、長い廊下までダッシュ!ダッシュ!ダーシュッ!【おびき寄せ】

たどり着いたら…敵と向き合って拳を構えて、サメに突っ込む!【鎧砕き、限界突破、属性攻撃雷】




 暗闇に一番星。
「到着!」
 星型ヘアピン輝かせながら、あやが玉座の間に到着した。
 明るさを振り撒きながら、正面から暗黒鮫魔術師『ルル・クラドセラキー』と対峙する。
「youがこの屋敷を独り占めしてるっていうコンスタ……」
『コンキスタドール……』
「そ、そうそれ!」
 思わず詰まるあや。普段はあまり聞かない単語である。
「ま、まあ、とにかく! そこの一人と一匹! 独占はこれ以上、ナッシング!」
 ずびし! とあやはルルにまっすぐ指差し宣言する。
「この島、この屋敷がメインなんだしね!」
 ホホジロ島の住民の住処であり、心の拠り所でもある。ここから侵略者を追い出さない限り、島に平和は訪れないのだ。
『……』
 その間ルルはと言えば、傍にいる巨大ゾンビ鮫『ロドリゲスちゃん』に跨ろうとしていた。
「それじゃ……右よし! 左よし! あたしよ……」
 あやがレガリアスで地面を蹴ろうとした一歩手前で。
『ロドリゲスちゃん……あいつやっつけて……』
 ルルが空気を読まずに騎乗突撃を敢行した。
「うお!? な、名乗りの途中で攻撃してくる!?」
 タイミングを崩され驚きの表情を浮かべるあやだが、それでも咄嗟の判断は素早かった。
 予定通りレガリアスをフル稼働。少しだけ進行方向を変え、地面を踏み抜く。
 ぐんと加速し、ルルの騎乗したロドリゲスちゃんに正面からぶち当たる……と見せかけて、脇をすり抜けた。
 そのまま玉座の間の広さを活かし、ぐるりと大きく一周しながら方向転換。
 再びルルの傍を駆け去ると……風の如く部屋を出た。
『……』
 逆に呆気に取られたルルだったが、ハッと気付いた様子を見せ、遅れてあやを追跡にかかる。
 勢いのままにあやは廊下を疾駆する。さらに距離を稼ごうと二階の廊下に踏み出そうとして。
「……あ、二階の他の部屋は島の皆さんがいるんだった……」
 思い止まる。海賊たちが館内二階を中心に散っていたはずだ。彼らを巻き込む訳にはいかない。
「……ならばっ……!」
 あやは手すりを越えて、大ジャンプ。
 先程オウムガイたちと戦った一階大広間に、見事着地した。
 頭上で音が響く。見上げれば、巨体を揺らしながらロドリゲスちゃんが階段を滑り下りようとするのが見えた。
 島中を駆け回って来たあやは、館の構造をある程度まで把握していた。
 あやが大広間の両サイドに視線を向ければ、案の定そこには、先も見えない程に長い長い廊下。
 レガリアスを全速力で駆動させ、廊下に向けて飛び込んだ。
(「ダッシュ! ダッシュ! ダーシュッ!」)
 真っ直ぐ。ただ真っ直ぐ。ただひたすらに最奥へと向けて突き進む。
 遅れて廊下に踏み込んだルルとロドリゲスちゃんが見たのは――此方に向けて迫る、一本の雷。
 廊下の突き当りで折り返し、今まさに長い長い助走を終えようとしたあやだった。
 猛スピードで視界の中を大きくなるゾンビ鮫を前に、あやは雷を纏った拳を溜め、来るべき瞬間に備える。
「いっくよーー!」
 正面衝突。
 ずん、という衝撃音と共に、迸る閃光が館内を再び闇を照らし出す。
 思いを込めた彼女のパンチは、ロドリゲスちゃんの横面を打ち据え、そのまま大広間へと後退させる。
『……!』
 凄まじい衝撃に踏ん張ろうとしたルルだが、ロドリゲスちゃんの身体を掴む手脚に強烈な痺れが走る。
 どうやらロドリゲスちゃんの身体を介して、かなりの電流が駆け抜けたらしい。
 たまらず床に落馬……ならぬ落鮫するルル。
『うぐっ……』
 一時的とはいえ立つこともままならない状況に、ルルは一時撤退を決める。
 ロドリゲスちゃんに背負われながら階段を上るルル。
「どう? 私の思い、受け取った?」
 そんな一人と一匹を、あやは勝ち誇る表情で見送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリアケ・ヴィオレータ
アドリブ・連携歓迎
【POW】
出やがったな、テメェが親玉か。
この島はテメェの漁場じゃねえ、躯の海に叩き返してやる!
あの鮫の攻撃手段はどうやら空中からの突進みてえだな。
『不知火』を『投擲』し、『串刺し』にして地面に叩き落とせないかやってみるぜ。
避けられても『不知火』を『念動力』で動かして方向転換。
『誘導弾』みたいに使うぜ。
「曲折(マガ)るんだよ、『不知火』は!」
投げてる間に突っ込んでくるのは『覇気』の『オーラ防御』に回してダメージの軽減を試みるぜ。
突き刺さった『不知火』が抜けないことで『継続ダメージ』を与えられりゃいいんだが。


シャーロット・クリームアイス
※アドリブ等お任せ

これは――大量! いえ、大漁と言うべきでしょうか!
たくさんのゾンビシャーク!
何とも美しい光景です。
あなたちょっとお友達になりません? ならない? もしかしておこですか? ――それは残念!

でしたらサメで雌雄を決する他にはありませんね……!
出でよ!

デンキウナギ属デンキウナギ!
すなわちデンキウナギ!

サメじゃないのか、ですって?
わたしは鮫魔術でデンキウナギを呼ぶ。
あなたは鮫魔術でゾンビシャークを呼ぶ。
そこに何の違いもあるものですか!

触手が生えているようですが、手であれヒレであれ、触れたらビリビリっといきますよ。
まぁ触れなくてもいきますけどね!

いざ尋常に……シャーク!


雨宮・いつき
彼女が、あの奇怪な鮫達の親玉ですね…
過去の残滓が今を生きる人々を糧にしようなど、不届き千万
餌になどさせませんよ

麻痺の光線と巨大鮫の連携は非常に厄介です
ならばこちらも一人ではなく、呼び出した白虎と共に連携で挑むとしましょう
白虎の機動力を活かして光線を避けつつ、
牽制の雷を放って狙いを定めさせないようにします
避けきれない攻撃は流体金属の盾で受け止め、
盾に大鮫を喰らいつかせましょう
飲み込ませた盾を体内で刃物に変化させ、内側から斬り裂きます

その隙に流体金属から作られた矢を大量に放ち、魔術師の逃げ道を制限
雷撃符から【全力魔法】の雷を放って仕留めさせて頂きます!


レイ・オブライト
余所に来てまで動く死体に会えるたぁな
他に猟兵がいて共闘できる場合、主にサメゾンビの対応で立ち回る

既に騎乗解除された状況なら、そのまま側面や下取るよう格闘で削ってく。そのへんの瓦礫をぶち込み噛ませてもいいな
騎乗中なら『覇気』を乗せた衝撃波で殴りつけサメの気を引く。怒りで向かってくるようなら御の字だ
口を開けて来たところに腕を突っ込み
片腕か半身か。喰わせた箇所ごと【Vortex】で吹き飛ばすとする
餌には足りただろ?
オレの方はそうだな、足が二本くっついてりゃいい。絵面的に島の奴らをまた騒がせそうだ
宴会が始まる前には出ていこう

……あの男(船長)、怪我してた気がしたんだがな
海賊ってのも中々面白え奴らだ




 漆黒の魔法陣が地に描かれ、玉座の間はたちまち死の気配に満ちていく。
 再召喚されたのは空飛ぶ巨大ゾンビ鮫『ロドリゲスちゃん』。
『ロドリゲスちゃん……乗せて……』
 暗黒鮫魔術師『ルル・クラドセラキー』はこの強力な召喚獣に跨り、集結しつつある猟兵たちを蹂躙しようとしていた。
「出やがったな、テメェが親玉か」
 島を恐怖に陥れたコンキスタドールの首魁であるルル・クラドセラキーに、アリアケは正面から対峙していた。
「この島はテメェの漁場じゃねえ、骸の海に叩き返してやる!」
 無慈悲にも島民を餌にしようとしたルルに対して、自慢の相棒『不知火』で肩をとんとんと叩きながら言い放つ。
 大鮫の存在も彼女を威圧するどころか、却って戦意を燃え立たせたようにすら見える。
 面倒だとばかりにルルがアリアケに向けてロドリゲスちゃんを嗾けようとした……その時。
 ロドリゲスちゃんの横面に、割り込むようにレイの拳が叩き込まれた。
 覇気を乗せた拳が鮫の巨体を大きく揺らし、纏う衝撃波が屍肉に傷を残す。
「余所に来てまで動く死体に会えるたぁな」
 オブリビオンの使役獣として、ではあったが。
『動く……死体……』
 体勢を立て直したロドリゲスちゃんが、レイに向けて怒りを示すかのように吠えれば。
『ターゲット……変更……』
 ルルもまたレイを指差し、ロドリゲスちゃんを大きく空中に舞い上がらせた。
 滑空突撃の構え。そこへ。
「おらっ!」
 びゅん、と。
 風を切る音と共にアリアケが『不知火』を突き出せば、ロドリゲスちゃんは体を捻って回避。その先端は体ではなく、背ビレにヒットする。
 一足先に交戦を開始した彼らの姿を、大扉を潜ったばかりのいつきとシャーロットが視認した。
「彼女が、あの奇怪な鮫達の親玉ですね……」
 おそらくルルはオーソドックスな鮫魔術にも通じているのだろう。砂浜での騒ぎも彼女の仕業に違いない。いつきはここに来るまでの間に、事の経緯を正確に掴んでいた。
「過去の残滓が今を生きる人々を糧にしようなど、不届き千万。餌になどさせませんよ」
 いつもと変わらぬ穏やかな様子で、しかし確かな口調で紡ぐいつき。
 島が再び彼女の狩場に変貌してしまう前に、何としても止めなければならない。それが出来るのは、自分たち猟兵だけなのだから。
 前線ではルルが動きを見せ始めた。アリアケの猛攻に晒されながらもロドリゲスちゃんにレイを追跡させ、自身は詠唱を続けている。
 次の瞬間、触手を生やしたサメが大量に召喚され、戦場を制圧した。
 一旦後退し、サメたちの噛みつきを避けるアリアケとレイ。
「これは――大量! いえ、大漁と言うべきでしょうか!」
 禍々しい触手を生やしたサメがびちびちと蠢く光景を前に、シャーロットは興奮を隠せない。
「たくさんのゾンビシャーク! 何とも美しい光景です」
 少なくとも滅多に見られる光景ではない事は確かだ。
 鮫魔術師であるシャーロットは鮫にかけてはプロである。彼女が美しいというのなら間違いないだろう。たぶん。
 そんなシャーロットはルルとコンタクトを試みる。空を翔ける触手ザメの触手と牙を掻い潜り、ようやっと真下に接近。
「あなた、ちょっとお友達になりません?」
 瞳をキラキラさせながらルルを口説きにかかるシャーロット。さあ友誼を結ぼう。
『あいつも……鮫の餌……』
 しかし、友好的なシャーロットの態度に対し、ルルとロドリゲスちゃんの反応はすげないものだった。
「ならない? もしかしておこですか?」
 残念ながらシャーロットの好意は、一人と一匹には届かなかったようだ。
「――それは残念! でしたらサメで雌雄を決しましょう! 後ほど!」
 しゅたっと別れの挨拶を済ませ、シャーロットもまた触手ザメの嵐から距離を取るのだった。


 出血を強い続ければいつかは殺せる。巨大な鮫とてそれは同じ。
 元より細かい事を考えるのは性に合わない。大事なのは、必殺への執念。
 牽制を繰り返すレイに業を煮やしたのか、ルルとロドリゲスちゃんの動きは空中からの突進を繰り返す単調なものになっていた。
 チャンスを逃すまいとアリアケは『不知火』を肩に構え、呼吸を整える。
 ロドリゲスちゃんが無防備な腹を晒した瞬間。
「――おらぁっ!!」
 アリアケは身体全体をバネにして『不知火』を全力で放り投げた。
 ルルの反応は素早かった。急いでロドリゲスちゃんを旋回させる。
 避けた。そう確信した瞬間。
 どす。
 太腿越しに伝わる、振動。
 嫌な予感に目を見開いたルルが大きく体を捻り、ロドリゲスちゃんの身体を覗き込めば……銛は致命的な位置にクリーンヒットしていた。
『な……なんで……』
「曲折(マガ)るんだよ、『不知火』は!」
 手から離れた銛を、アリアケは念動力で操作していた。
 いかにゾンビとはいえ、海神殺しで無数の針を生やした大銛をぶら下げたまま突進を続ければ、消耗は避けられない。
『くっ……!』
 急いでロドリゲスちゃんから降りるルル。どうやら落馬のリスクを避け、純粋な前衛として運用する事を選んだようだ。
『深淵より来たれ……混沌の使徒……』
 穴埋めとばかりにルルは、再び触手鮫の海嘯を生み出そうとする。
「また来ます!」
 いちはやくルルの動きを看破したいつきは、シャーロットに目配せする。
「お任せ下さい! ――出でよ!」
 ルルに合わせるように、シャーロットが何かを大量に召喚した。
 ただしそれは鮫ではなく、ほんのりオレンジみを帯びた細長いぬるぬるとした生き物。
 全長231インチの……デンキウナギだった。
『それ……デンキウナギじゃ……』
 鮫じゃない。そう言いたげな表情を浮かべるルル。
「そうです! デンキウナギ属デンキウナギ! すなわちデンキウナギ!」
 どーん。
『鮫で雌雄を決するって……言ったじゃん……』
「わたしは鮫魔術でデンキウナギを呼ぶ。あなたは鮫魔術でゾンビシャークを呼ぶ。そこに何の違いもあるものですか!」
 どどーん。
 一応分類上はデンキウナギは鮫と違うどころか孤高とすら言える存在なのだが、彼らの使役もシャーロットの鮫魔術の範疇なのだろう。
『無茶苦茶すぎる……』
「問答無用! いざ尋常に……シャーク!」
 触手ゾンビザメとデンキウナギが正面からぶつかり合うB級映画めいた光景。
 触れればバチバチと放電するデンキウナギたちの群れに、触手ゾンビザメたちは思わぬ苦戦を強いられていた。
 徐々にデンキウナギたちは触手ザメを押し返していく。
「逃げますか。まぁそれでもいきますけどね!」
 空飛ぶスタンガンとした彼らは、雷撃と共に触手ザメを包囲していくのだった。


 魔杖の髑髏が瞳を輝かせる。
 次の瞬間、暗黒の光線が戦場を迸った。
 騎乗を諦めたルルは後衛に徹し、肉壁のロドリゲスちゃんと緊密に連携することで、互いが攻撃するタイミングを作り出していた。
「こっちも手を変えなきゃな」
 ロドリゲスちゃんの噛みつきを回避し、すり抜けざまに拳を側面に見舞うレイ。既に彼は挑発を中断し、その拳で前衛の体力を削る方針に切り替えていた。
「ならばこちらも連携で挑むとしましょう」
 レイに続いて、いつきもまた動きを見せる。
「――西方を司りし勇猛なる獣よ」
 いつきがそう唱えると、周囲の気配は急速に清浄なものへと。
「その稲妻が如き牙を以って遍く障害を穿ち給え――」
 傍らに姿を現したのは、巨大な霊獣、白虎。
「宜しくお願いしますね」
 穏やかな声色でいつきがそう言えば、白虎はその言葉に応えるように流体金属で前面をカバーするような盾を作り上げると、いつきを乗せて力強く地を蹴った。
『あいつを……やっつけて……』
 襲い来る暗黒の光線をジグザグに動いて躱し、幾条かを金属の盾が防ぐ。
 ぐんぐんと距離を詰める白虎。
 魔杖を掲げ、なおも白虎に狙いを定めるルル――彼女の傍に吸い寄せられるように、符がひらりと舞い落ちた。
 閃光と、衝撃。
 いつきの放った、牽制の雷撃符だ。
 かろうじて魔杖を支えたルルだが、白虎は目前に迫っていた。
 タックル。
 ロドリゲスちゃんが前に出て白虎に噛みつくも、盾に防がれ噛み切ることが出来ない。
 盾だけを半ば飲み込ませ、しなやかにその身を引く白虎は、同時に流体金属の形を鋭利な刃へと変える。
 ロドリゲスちゃんの体の内側を刃が切り裂けば、たまらずロドリゲスちゃんが咆哮を上げる。
 その赤く開けた口に、瓦礫が放り込まれた。レイだ。
 未だ突き刺さっているアリアケの『不知火』により、ロドリゲスちゃんは著しく消耗している。
 ロドリゲスちゃんも自身に残された時間が少ないことを悟っていたのか、レイに向けて乾坤一擲の突撃を敢行した。
「今です!」
 前衛の不在。その間隙を突いたいつきは、白虎に流体金属で出来た矢をルルに向けて放たせる。
『……!』
 ルルはローブをはためかせて回避しようとするも、幾本かをその身に受ける。
 痛みに魔杖を取り落とし、よろけた先で背中になにやらひやりとした感触を感じた瞬間、ルルの身体に凄まじい衝撃が走った。
『!?』
 弾かれるように前方に倒れ込んだルル。彼女の足元にぴちゃりと落ちたのは……デンキウナギだ。
「お待たせしました!」
 触手ゾンビ鮫を完全に駆逐したシャーロットが、包囲に加わったのだ。
『うぐ……』
 痺れと、痛み。うつ伏せのまま動けないルルの額に、一枚の符が貼り付いた。
「安らかに」
 刹那、轟音。
 暗黒鮫魔術師『ルル・クラドセラキー』。その体は巨大な落雷に呑み込まれ、いつきの祈りと共に跡形も無く霧散したのだった。

 残されたロドリゲスちゃんは巨大な口を開け、レイに襲い掛かる。
 ロドリゲスちゃんの突進に合わせるようにレイは――右腕を自分から差し出した。
 みしり。
 レイの身体にまともに噛みつくロドリゲスちゃん。
(『捕まえた――』)
 ロドリゲスちゃんが顎に力を籠める寸前。
 バァン! という音と共に、ロドリゲスちゃんの身体が跳ね上がった。
 レイのユーベルコード、【Vortex】。
 自身の肉体の一部――あるいは一部を除く全て――を代償に、膨大な電流を放つ。
 そのハイリスクハイリターンな技が、ロドリゲスちゃんの体内で炸裂した。
「餌には足りただろ?」
 自由を取り戻したレイだが、右肩を付け根から持って行かれた。引き換えに放たれた電流の破壊力はかなりのものだっただろう。
 体中の穴と言う穴から黒い煙を立ち上らせ、口をぱくつかせるロドリゲスちゃん。
 右腕を失ったレイと入れ替わるようにアリアケが追い付き、強引に銛を引き抜く。
 傷口から立ち昇る焼け焦げた匂いにも構わず、銛を振り上げ。
「これで終わりだ、化け鮫!」
 渾身の振り下ろしを、鮫の急所である鼻面に突き立てた。
 そのままの姿勢で動きを止めたロドリゲスちゃんだったが、やがてその身体は黒い影と化し、どろりと溶けるように地に吸い込まれ、消えて行った。
 カラン、と音を立て地に落ちる『不知火』。
 ホホジロ島を脅威に晒したコンキスタドールたちは、今ここに全て打ち倒されたのだった。


 数時間後、浜辺のあちこちで焚火が上がっていた。
 島の救世主である猟兵たちをもてなすため、島民たちと海賊たちが、総出で宴会を開いてくれたのだった。
 空には満天の星空が輝き、細波の代わりに楽器の音が響き始める。
 甲板長をはじめとした島の女性たちが忙しく立ち働き、沢山の料理が乗った大皿を並べていく。
「いっぱい食べて下さいねっ!」
「おう、頂くぜ!」
 料理には勿論、アリアケが漁(ト)った新鮮なサメが使われていた。
 豪放磊落なアリアケの雰囲気は海賊の宴にはよく似合う。みるみるうちに彼女の周りには人が集まり、辺りは笑いと活気に包まれた。
 あやもまた、祭りを心から楽しんでいた。
「いえ~い!」 
 とりわけノリの良い彼女は注目の的だ。島民たちと会話を交わすたびに祭りは盛り上がり、テンションは最高潮へ。
 頃合いを見計らい、彼女がひとたび歌を披露すれば周囲からは感嘆の声が上がる。
 あやの迸る情熱から放たれる魂の音楽は、星空へ向けて響き渡るのだった。
 隅の席にはいつきが座っていた。馴れた場でもないが、それでも何とか柔和に立ち振る舞おうとする。
「今日はありがとうございました」
 そんな彼に声を掛けたのは、武装商人の少年。
「僕たち、海賊としても規模が小さいから、大したお礼も出来なくて」
 俯きがちに言う少年に向けて。
「良いんです。皆の笑顔が、何よりの報酬ですから」
 瞳を輝かせる少年。いつきはふわりと微笑んだ。
 その間、シャーロットは忙しそうに島民たちの間を動き回っていた。
「ふふふふふ」
 表情を見ればホクホク顔。どうやら早速取引を成功させたものらしい。
「今後ともご贔屓に!」
 島での商売はこれから。シャーロットは笑顔を振り撒きながら、なおも喧噪の中を立ち働くのだった。
 祭りの喧噪をやや遠くに聞きながら、レイはひとり木陰に立っていた。
 ややバランスの悪くなった身体を島民の目に触れさせない為に、彼は一足先に島を去ることに決めていた。
「……あの男、怪我してた気がしたんだがな」
 残された左手の指で頬を掻くレイの視線の先には、体に包帯を巻き、何事も無かったかのように祭りを楽しむ、船長の姿。
「海賊ってのも中々面白え奴らだ」
 興が湧いたかのような声色を呟きに滲ませ、それでもレイは鉄甲船に向けて踵を返す。
 厳かに聳え立つ洋館だけが、彼の背中をいつまでも見送っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月03日


挿絵イラスト