イェーガーVSゾンビシャーク! 暗黒鮫魔術師を討て!
●
「助けて……誰か助けて……」
「あぁ神様……どうかお慈悲を……」
煌々と満月が照らす夜の海に、柱に鎖で縛りつけられた幾人かの人々がいる。
満ちていく潮によって身体は腰の上まで水に浸かり、瞳からは涙を、唇からは救いを求める言葉をぽろぽろと零す。若い女性や、まだ幼い子供までもがそこに含まれていた。
――彼らはこの島の"掟"に従って選ばれた生贄。
島の支配者の機嫌を取り、滅ぼされないための犠牲。
月に一度、もう何度も繰り返されてきた陰惨なる儀式。
「ひっ……来た……!!」
縛られた人間のひとりが、水面下からぷかりと浮かび上がるヒレに気付く。
それは腐臭を漂わせながら生贄達の元に迫ると、血塗られた牙を剥き――。
「サメだーーーーーーっ!!!!!」
――この島の名はガレオス島。
人よりも、サメの命が重い島。
●
「グリードオーシャンで新しい島を発見しました。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「この島は現在コンキスタドールの支配下にあり、島民は理不尽な掟に縛られています」
呪われた秘宝「メガリス」を手にし、オブリビオンと化した者、コンキスタドール。
彼らは欲望のままにこの海を荒らしまわり、生ける者達から略奪と殺戮を繰り返す。
そんな怪物に支配された島を救うのも、この世界における猟兵の使命のひとつだ。
「『ガレオス島』と呼ばれる地を支配するコンキスタドールの名は『ルル・クラドセラキー』。グリードオーシャンの伝統的魔法体系、鮫魔術と死霊魔術を操る魔術師です」
彼女は己の使役するサメを溺愛しており、人間はサメの餌くらいにしか思っていない。
容姿は可憐な人間の少女のようだが、本性は極めて凶悪なコンキスタドールである。
「彼女に支配されたガレオス島の人々は、月に一度、潮が最も満ちる日に十名ほどの人間をサメの生贄に捧げる"掟"を課せられています。従わなければ当然、島民は皆殺しです」
あまりに理不尽で残酷な掟だが、無力な島民にそれを拒むという選択肢は無かった。
そして、次の生贄の時はもう目前に迫っており、救出には一刻の猶予もない状況だ。
「生贄に選ばれた島民は海岸に立てられた柱に縛り付けられています。満潮になると柱はほぼ水面下に沈み、そこにサメがやって来て生贄を食い殺す――という手筈のようです」
今回の依頼はまず生贄の現場に向かい、人食い鮫を撃退して島民を救出することだ。
ただ、コンキスタドールに使役されているだけあって、相手はただのサメではない。
「どうやらそのサメはルルの死霊魔術によって蘇生されたゾンビ鮫のようです」
ゾンビに食餌が必要なのか、というもっともな疑問が浮かんでくるが、コンキスタドールのやることに必然性を問うても無駄ということだろう。質の悪いパニック映画さながらにゾンビ鮫は生贄を食い殺し、海辺はゾンビの腐臭と血と臓物で惨憺に染まるという。
「とは言え、一般人には恐るべきゾンビ鮫の大群も、猟兵にとってはさしたる脅威とはならないでしょう。ですが生贄を妨害された敵の鮫魔術師が黙っているとは思えません」
大事なペットを殺されたルルは、報復のために配下を率いて猟兵に襲い掛かってくる。
彼女の下にいるのはゾンビ鮫だけではなく、より戦闘力の高いオブリビオンもいる。
そしてルル自身も優れた鮫魔術師であり、特に『ロドリゲスちゃん』と名付けて溺愛している空飛ぶ巨大ゾンビ鮫の戦闘力は強大だ。なぜサメが空を飛ぶのか疑問に思うのは置いておこう。
「事態は緊急を要します。恐るべきゾンビ鮫の魔の手からどうか島民を救ってください」
この島をコンキスタドールから解放できれば、新たな島への調査も可能となるだろう。グリモアの予知可能範囲に制限がかかっている現状、こうした活動の積み重ねがいずれグリードオーシャン全体の危機を救うための布石となる。
説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、鉄甲船へと猟兵達を転送する。羅針盤は正常、目指すべき進路は鮫魔術師とゾンビ鮫に支配された島、ガレオス島。
「出港準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
サメを殴りましょう。こんにちは、戌です。
今回の依頼はグリードオーシャンにて、わるい鮫魔術師をやっつけて、理不尽な生贄の掟に縛られた人々を解放するのが目的となります。
第一章ではガレオス島の海岸線上にて、サメの生贄にされた人々を救出します。
人々は海中に半ば身体が浸かった状態で柱に括り付けられており、身体が半分腐ったゾンビ鮫の大群が沖から押し寄せてきています。
鉄甲船に乗って海側から対処するもよし、上陸して岸側から対処するもよし、陸と海のどちらからでもアプローチ可能です。
無事に島民を救出できれば、第二章以降はコンキスタドールとの戦闘です。
二章では島の支配者に従う配下オブリビオンとの集団戦。そして第三章では全ての元凶である暗黒鮫魔術師『ルル・クラドセラキー』との決戦になります。
外見はトップの画像を参照。一緒に映っているのは使役する巨大ゾンビ鮫『ロドリゲスちゃん』です。
あんまり難しい事情とかは無く、とりあえず悪いやつとサメを全部殴れば解決するノリのシナリオです。サメを殴れ。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『鮫・鮫・鮫』
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POW : 真正面から鮫を受け止めて、投げ飛ばすなど、力技で撃退する
SPD : 素早く回り込んで鮫に攻撃、次々と無力化していく
WIZ : 鮫の動きを予測して人々を避難させたり、罠を仕掛けたりする
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
ゾンビ鮫とは何ともまぁ…
新世界が出るたびに新しい驚きで退屈はしないな、まったく
とは言え現実の人々に手を出すというなら残らず狩らせてもらおう
動きやすいように水着で行動、海中を泳ぐゾンビ鮫にはナガクニで攻撃し、囚われた人々の鎖も断ち切って解放しよう
鋼鉄程度ならナガクニで簡単に切り裂けるからな
さらにUCを発動し、呼び出したドローン達を合体させて数機の小型無人潜水機へと変化
囚われた人々を救出しつつ魚雷や爆雷で水中の鮫を攻撃し、自分も潜水機に掴まって水中を高速で移動しながら鮫を倒していく
これだけ腐っていてはカマボコもフカヒレも期待出来そうにないか
フン、まぁ人食い鮫を食う気にはなれんがな
緋神・美麗
ゾンビ鮫ねぇ。どうせゾンビならもう何の遠慮も手加減も無しで吹っ飛ばしてもいいのよね。一匹残らず駆逐してやるわよ。
超巨大電磁砲を誘導弾・衝撃波・2回攻撃・属性攻撃・気合い・力溜めで強化してぶっ放す
「ゾンビのくせにお腹が減ってるっていうんならこれでも食べてなさいな」
鮫を駆逐したら島民を助けに行くわね。
「ゾンビ鮫とは何ともまぁ……新世界が出るたびに新しい驚きで退屈はしないな、まったく」
水中戦を想定して黒の水着に身を包んだキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は、沖合いから迫る敵を眺めながら感嘆とも呆れともつかないため息を吐く。
海面から姿を覗かせるのはパニック映画ではおなじみの三角のヒレ。同時に漂ってくる腐臭の原因は、ただの鮫ではなくゾンビの鮫、すなわちゾンビシャークである。
「とは言え現実の人々に手を出すというなら残らず狩らせてもらおう」
B級映画のような血みどろスプラッタな展開は、銀幕の中だけで間に合っている。
キリカはビキニに引っ掛けた鞘から短刀「ナガクニ」を抜き放つと、生贄にされた人々を救うべく行動を開始する。
「ゾンビ鮫ねぇ。どうせゾンビならもう何の遠慮も手加減も無しで吹っ飛ばしてもいいのよね。一匹残らず駆逐してやるわよ」
戦いの火蓋を切ったのは、緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)の【超巨大電磁砲】。
増幅された強大なサイキックエナジーを電磁力に変換し、電磁加速によって巨大な鉄塊を射出する超能力のレールガン。その破壊力は凄まじく、着弾点には天まで届くような巨大な水柱が上がり、ふっ飛ばされたゾンビ鮫の巨体が宙を舞う。
「チャージ、セット、いっせーのっ‼」
威勢のいい掛け声と共にぶっ放される砲弾は一発限りではなく、即座に再装填の完了した電磁レールから二発目が発射される。誘導によって的確に群れの密集したポイントに着弾した鉄塊は、再び水飛沫を散らしてゾンビ鮫をコナゴナに吹き飛ばす。
「なっ、なに、何が起こってるの?!」
「心配しなくていい。私達は味方だ」
柱に縛り付けられて放置されていた生贄達は、怒涛の砲撃音に何事かと慌てだす。
そこにすいすいと泳いで来たのはキリカ。美麗の砲撃がゾンビ鮫を食い止めている間に、囚われた人々に手早く自分達の立場と目的を説明し、縛めから解き放っていく。
「ここは私達に任せて逃げろ。なるべく海辺から離れているんだ」
「は、はいっ! あの、ありがとうございますっ!」
竜の骨粉と特殊粉末鋼を混ぜ合わせて鍛えられたナガクニの切れ味をもってすれば、ただの鋼鉄の鎖など簡単に切り裂ける。自由になった人々は口々にお礼を言いながら、死臭の満ちる海から必死に逃げていった。
「『猟兵』より『猟犬』に告ぐ、速やかに眼前の獲物を狩れ」
人々が逃げていくのを見送ると、キリカは【シアン・ド・シャッス】を発動する。
召喚されるのは69機の水陸両用戦闘ドローン群。指揮官の命令を受けたそれは直ちに数機の小型無人潜水機に合体変形すると、押し寄せるゾンビ鮫の迎撃を開始する。
投下された爆雷や魚雷が水中に気泡の軌跡を描き、海中から襲いかからんとするゾンビ鮫のもとで爆発。たちまち海面は浮かんできたサメの骸と血で染まっていく。
(これだけ腐っていてはカマボコもフカヒレも期待出来そうにないか。フン、まぁ人食い鮫を食う気にはなれんがな)
キリカは鼻をつまみたくなるのをぐっと堪え、潜水機に掴まって海中を移動する。
その遊泳速度はサメよりも速く、振るう刃はサメの牙よりも鋭い。スクリュー音と気泡の軌跡が通り過ぎた後には、ナガクニに斬り刻まれたゾンビ鮫の骸だけが残る。
「ゾンビのくせにお腹が減ってるっていうんならこれでも食べてなさいな」
水中の攻撃から逃れようとゾンビ鮫が水面に上がってくれば、再び美麗が超巨大電磁砲をお見舞いする。轟音と雷光を纏って撃ち出される鉄塊は、直撃すれば勿論のこと、掠めるだけでも衝撃波によって致命的な破壊をサメ達にもたらした。
「第一波は凌いだか」
「島民を助けるなら今のうちね」
やがて近海からサメの影を一時的に駆逐したふたりは、囚われた島民の救出を急ぐ。
敵の攻勢はこれで終わりではないだろう。暗黒鮫魔術師率いるゾンビ鮫との戦いは、まだまだ始まったばかりだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
朱酉・逢真
人助けは向いてねえンでね。サメの対処に勤しむとすっか。死霊魔術ってこたぁ呪詛で魂を此岸に結びつけてンだろ。そぉいうの困ンだよなァ。死んだ奴はちゃんと死んで魂を彼岸に飛ばしてくれンと、此岸がぎゅうぎゅうになっちまわぁ。だから俺が来たワケだが、仕事増えっから勘弁してくれや。
でけぇ《虫》に乗ってサメどもの上空へ。できっ限り近づいて《十六の一番》を叩きつける。縛る呪詛さえくたばりゃ、こいつらもただのしかばねに戻ンだろ。ただの屍体になったら、他のサメどもが寄ってくるかねェ? 寄ってきたら続けてぶっつける。こなきゃァこっちから行くだけサ。
「人助けは向いてねえンでね。サメの対処に勤しむとすっか」
病毒を媒介する巨大な"虫"に乗って、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は海上を行く。
眼下を泳ぎまわるのは数え切れないほどのサメの群れ。この高度からでもよく目を凝らせば、腐り落ちた皮膚や剥き出しになった骨や臓腑といった不自然な特徴が分かる。
まともなサメは一匹もいない。ここにいるのは全てルル・クラドセラキーの魔術によって現世に呼び戻された生ける屍――おぞましきゾンビシャークであった。
「死霊魔術ってこたぁ呪詛で魂を此岸に結びつけてンだろ。そぉいうの困ンだよなァ」
ゾンビ鮫の真上に位置取りながら、毒と病、そして死の神である逢真は嘆息する。
例えその対象がヒトではなかろうとも、徒に生死の理を乱す行為は見過ごせない。
「死んだ奴はちゃんと死んで魂を彼岸に飛ばしてくれンと、此岸がぎゅうぎゅうになっちまわぁ」
生と死のバランスが乱れれば、此岸と彼岸のどちらにとっても困った事態が起こる。
生命とは、減らし過ぎてもいけないが、だからと言って増え過ぎても駄目なのだ。
「だから俺が来たワケだが、仕事増えっから勘弁してくれや」
サメ共に噛みつかれないぎりぎりの高度まで近付くと、逢真は己が神威を解放する。
其は死者の未練や呪詛を喰らう【十六の一番】。海の青さとは対照的な赤黒いオーラに包まれたゾンビ鮫は、びくり、と痙攣した後に海面に浮かんで動かなくなった。
「縛る呪詛さえくたばりゃ、こいつらもただのしかばねに戻ンだろ」
呪縛を解き、輪廻に戻す。それこそが死を司る神がまつろわぬ死者に与える慈悲。
甘くしてやったぜ、と三日月のように笑う青年の下で、ゾンビ鮫の魂は骸の海に還る。
「ただの屍体になったら、他のサメどもが寄ってくるかねェ?」
そのまま屍の上空で待機していると、果たして逢真の目論み通り、死臭を嗅ぎつけたゾンビ鮫が集まってくる。本能のままに行動する彼らにとっては、喰えるのであれば生贄の人間でも敵対する猟兵でも、そして仲間の死骸でも見境は無いのだろう。
「ほい来た、お連れサンもご案内、っと」
逢真は寄ってきたサメ共へと立て続けに神威を叩きつけ、呪詛の縛鎖を解いていく。
海面は動かなくなったサメの亡骸で埋まっていき、強まる死臭がさらなるゾンビ鮫を呼び集める。こうなればもう彼はこっちから行く必要もなく、ただ待っていればいい。
「一匹残らず帰してやンよ。面倒だがそれが仕事なンでねェ」
輪廻に反するゾンビの群れを相手に、生と死の"帳尻合わせ"に勤しむ逢真。
こんな事件を起こす輩が居るからこそ、彼は猟兵としてオブリビオンと戦うのだ。
大成功
🔵🔵🔵
パリジャード・シャチー
●心情
・わぁい、合法的にサメ魔術師を抹殺できるんだね。やったー!
(サメの魔の手から人々を女神として守らないとね)
・じゃあ、殺そう、さあ殺そう、めっちゃ殺そう。
・うちはサメ魔術という魔術体系が死ぬほど嫌いなんだ。
・それじゃやるよ愛羅。サメは鏖だ!シャチを崇めろ!シャチを崇めろ!
●戦闘
・UCで巨大化させた愛羅を使ってサメを踏みつぶしながら進むよ。
・敵味方?知らんなぁ。今宵のうちは暴虐の化身だよ。踏みつぶされたくなかったら近づかないことだね。
・逃げようとする敵については、範囲拡大した風属性の刃で暗殺をして切り刻むよ。サメは逃がさない。死んだサメだけがいいサメだよ。ゾンビ?うるせえ死んどけ。
「わぁい、合法的にサメ魔術師を抹殺できるんだね。やったー!(サメの魔の手から人々を女神として守らないとね)」
デフォルメされたシャチの着ぐるみを被り、ニッコニコの笑顔で闘志を燃やすパリジャード・シャチー(因達羅神のハナヨメイド・f17808)。その口にする建前と本音が逆になっているのにツッコミを入れる人間は、幸か不幸かここには居なかった。
「じゃあ、殺そう、さあ殺そう、めっちゃ殺そう」
表情こそニッコニコだが、その言動はサメと鮫魔術師へのヘイトがやたら高い。
まあ相手は生物ですらないゾンビとオブリビオン、文句を言う者はいなかったが。
「うちはサメ魔術という魔術体系が死ぬほど嫌いなんだ」
一体何がパリジャードを駆り立てるのか。理由はさっぱり不明だが、召喚された【巨大なる女神の騎獣】、白象の神獣パイラーヴァタが彼女の殺る気を物語っている。
「それじゃやるよ愛羅。サメは鏖だ! シャチを崇めろ! シャチを崇めろ!」
今日のパリジャードは雷神の花嫁にして、メイドにして、母にして、シャチにして、サメを殺す者――属性過多ここに極まれりだがそれはさておき、雲を突かんばかりに巨大化した白象も彼女の威に応えて咆哮し、ゾンビ鮫の大群に突っ込んでいく。
「サメがシャチに勝てるわけないんだよ!」
愛羅が一歩海上に足を踏み出すたび、逃げ遅れたゾンビ鮫がぐしゃりと潰される。
その背中の上でめっちゃ楽しそうにしているシャチぐるみの女神は、肉片の一欠片もこの世に残すまいと、丹念に、丁寧に、執拗に、徹底的に、サメどもを蹂躙する。
映画などではやたらとサメが海の捕食者として持て囃されがちだが、真なる海の頂点捕食者はシャチなのだ。この様子を目にすれば誰もがそう実感せずにはいられまい。
「今宵のうちは暴虐の化身だよ。踏みつぶされたくなかったら近づかないことだね」
海のギャングさながらに暴れ回るパリジャードと愛羅の周りには、味方の猟兵すら近寄れない。波しぶきを蹴立てながら海を踏み鳴らし、ぶんぶんと鼻を振り回す神獣の猛進に太刀打ちできる者はおらず、たちまち海面はサメの血で真っ赤に染まった。
(なんだアレ怖い近づかんとこ)
と思考できるだけの知能が、腐った脳味噌に残っていたのかどうかは不明だが。
パリジャードの殺意を思い知ったゾンビ鮫は、散り散りになって沖に逃げていく。
だが勿論、そんなシャチ前逃亡をかますようなサメに彼女が容赦するわけがない。
「死んだサメだけがいいサメだよ。ゾンビ? うるせえ死んどけ」
シャチのヒレを模した着ぐるみの手で器用に振るうは風神扇・ルドラ。ひと扇ぎすれば真夏の台風を思わせる暴風が吹き荒れ、無数の風の刃となって戦場を一掃する。
憐れバラバラに切り刻まれたゾンビ鮫の肉片は海に沈み、それきり浮かんでくることは無い。かくしてサメvsシャチ(withゾウ)の緒戦はシャチ側の圧勝となった。
成功
🔵🔵🔴
雛菊・璃奈
…残念だけど、チェーンソー型の魔剣は持って無いんだよね…。探せばあるかな…?
ミラ達を連れて参加…。
【呪法・海王竜進化】でミラ達を水中では無敵の海王竜へ進化させ、自身はミラに乗って人柱にされた人達の救出に…。
クリュウとアイは鮫達の迎撃をお願いするよ…。
自身はミラに乗って島民の下へ向かい、縛られた鎖を魔剣で両断して解放…。
ミラの背中に乗せて救出…。
アイ達が漏らした鮫がいたらミラが始末するかわたしの方で素早く斬り倒すよ…。
アイ達は二匹で迎撃…。
高圧水流のブレスや水を操る力で海水を操り押し潰したり、純粋に爪や牙で叩き潰したり…。
強化されたゾンビ鮫だろうと、所詮は鮫…。
何匹いようと海の王には勝てないよ…
「……残念だけど、チェーンソー型の魔剣は持って無いんだよね……。探せばあるかな……?」
神でもサメでもバラバラにできるような魔剣ならぬ魔チェーンソーも何処かにはあるかもしれない。そんなことをぼんやり考える雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)。
その傍らには彼女の家族である3匹の仔竜、ミラ、クリュウ、アイが小さな牙を剥いてゾンビ鮫を威嚇している。魔剣探しの前に、まずはこの群れを撃退しなければ。
「我が家族たる竜達……海の王となりて仮初の進化を得よ……。お願いみんな、わたしに力を貸して……」
璃奈が唱えたのは仔竜達に新たな力を与える【呪法・海王竜進化】。幼き竜は巫女の呪力によって一時的な成長を遂げ、水を自在に操る竜として海原の戦場に降臨する。
「クリュウとアイは鮫達の迎撃をお願い……ミラはわたしと一緒に人柱にされた人達の救出に……」
璃奈が指示を出すと、三匹の海王竜はその巨躯をうねらせながら直ちに行動する。
二匹がゾンビ鮫の群れに猛然と襲い掛かる中、残る一匹は璃奈を背中に乗せて、囚われている島民の下に向かった。
「ど、ドラゴン!? た、食べないで……!」
「大丈夫……この子は人間を食べたりしない……」
サメに食われる時を待つばかりだった人々は、突如現れた海王竜に目を丸くする。
思わず命乞いをする彼らを宥めつつ、璃奈は腰の魔剣に手をかけると抜刀一閃、人々を縛りつけている鎖を断ち切った。
「貴方達を助けに来た……さあ、はやく乗って……」
「ほ、本当なの……? ありがとう!」
解放された人々は歓喜に沸きながら、海竜王となったミラの背中によじ昇る。
皆が乗り込んだのを確認すると、ミラは波飛沫を上げながら海原を疾走し、安全な場所まで彼らを運んでいく。
順調に救出が捗る一方、沖ではクリュウとアイがゾンビ鮫との激闘を繰り広げていた。
否、激闘と呼ぶには語弊があるか。水を思うがままに操る海竜王は、こと水中においては無敵の存在であり、たかがゾンビ鮫ごときが太刀打ちできる存在では無い。
放射される高圧水流のブレスが大群を薙ぎ払い、海水の塊が跡形もなく押し潰す。
そして仮に水を操る能力を抜きにしても、純粋に研ぎ澄まされた竜の爪牙は、それだけで敵を叩き潰すのに十分な威力を有していた。
「強化されたゾンビ鮫だろうと、所詮は鮫……。何匹いようと海の王には勝てないよ……」
家族の勇姿をどこか誇らしげに眺めながら、璃奈は魔剣を海に向けて一閃する。アイ達が討ち漏らし、生贄の下までやってきたサメも、その一太刀で海の藻屑となった。
彼女とミラがいる限り、救出された人々に危害が及ぶことはない。海竜王の咆哮が戦場に轟き、捕食者の座を転げ落ちたゾンビ鮫は為すすべなく駆逐されていく。
大成功
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シャーロット・クリームアイス
人質さんたちを、陸までお届けすればいいんですね。
わかりました、サメール・ネットワーキングにお任せを!
さて、くだんのサメたちの種類は……ふむ、人喰いなどと称されるだけあって、血の匂いに敏感そうです。
では、そこで買ってきた生肉を――あ、ふつーの食肉ですよ食肉。ノットヒューマン!
ともかく! 生肉をそぉい!
これに釣られてくれれば、人質さんたちの危険は減ります!
といっても、縛られてるんでしったけ。ではサメを召喚して、ざくっとやっちゃいましょう。もちろん縄だけをですとも!
さあ、そのサメに乗って……え、難しい? じゃあ捕まってください、浮き輪みたいな感じで! ヒレを数えている間に陸に着きますので!
「人質さんたちを、陸までお届けすればいいんですね。わかりました、サメール・ネットワーキングにお任せを!」
自信たっぷりに胸を張ってガレオス島にやって来たのはシャーロット・クリームアイス(Gleam Eyes・f26268)。独自の通信ネットワークを利用した流通サービス〈サメール〉を運営する彼女にとって、ヒトでもモノでも何かを運ぶ依頼はお手のものだ。
「さて、くだんのサメたちの種類は……ふむ、人喰いなどと称されるだけあって、血の匂いに敏感そうです」
沖から押し寄せるゾンビ鮫を見やり、さてどう対処するかと考えるシャーロット。
危険に満ちたグリードオーシャンで流通業を営んでいれば、これしきの業務妨害などよくあること。寧ろ、いかにスマートに解決できるかが腕の見せどころと言えよう。
「では、そこで買ってきた生肉を――あ、ふつーの食肉ですよ食肉。ノットヒューマン!」
取り出したるは新鮮なお肉。このタイミングだと嫌な連想をされそうなので先に断っておく。サービス業もいろいろとイメージとか守らないといけなくて大変なのだ。
「ともかく! そぉい!」
勢いを付けて投げ込まれた生肉はぽちゃんと海に落ち、飢えたゾンビ鮫の注意を引く。サメの嗅覚は非常に優れていると言うが、ゾンビとなってもそれは同じらしい。
「これに釣られてくれれば、人質さんたちの危険は減ります!」
目論み通りにゾンビ鮫が生肉に殺到している隙を突いて、シャーロットは囚われている人々の元に向かう。救出は相手がエサを食い尽くすまでのスピード勝負だ。
「といっても、縛られてるんでしたっけ。では、ざくっとやっちゃいましょう」
「ひぇっ!? さささサメがぁっ!?」
すいっと島民の所まで泳ぎついたシャーロットは、おもむろに鮫魔術でサメを喚ぶ。
今まさにサメの生贄にされる瀬戸際な人々は、当然ながら恐怖で青ざめるが――。
「もちろん縄だけをですとも!」
がぶり、と柱に齧りついたサメは、器用に生贄を縛る縄や鎖だけを噛み千切る。
縛めを解かれてほっと胸を撫で下ろす島民に、シャーロットは避難を促していく。
「さあ、そのサメに乗って……」
「え、こ、これに乗るんですか?」
「え、難しい? じゃあ捕まってください、浮き輪みたいな感じで!」
怖がる島民を強引にサメにしがみつかせると、シャーロットは全速力で陸を目指す。
サメール・ネットワーキングが誇る快速便は、ゾンビ鮫ごときに追いつけはしない。
「ヒレを数えている間に陸に着きますので!」
快調に白波を立てながら、矢のように海を駆けるシャーロットとサメと島民。
傷一つなく安全地帯への配達が完了するまで、さほどの時間はかからなかった。
大成功
🔵🔵🔵
ブルース・カルカロドン
口調:『映画』以外の漢字はカタカナ
アドリブ、共闘歓迎
「サメをゾンビにしてまでシエキするなんて、ゆるせないね」
このオブリビオンの愛の形は完全に間違っている
サメにも安らかな眠りは必要だよ
海側から泳いでアプローチ、巨大化UCを使う
叫びとともに怒りを爆発させ、ちょっとしたクルーザー並みのサイズになる
そのまま海中を泳ぎまわり、ひたすらゾンビシャークを食い殺していくよ
とにかくサメ達を一刻も早く楽にしてあげる
そのためなら多少の怪我は厭わないし、ボクをみて生贄の人々がドン引いてることも気にしない
とにかくボクはおこってるんだ!
待っていろ、ルル・クラドセラキー!
「サメをゾンビにしてまでシエキするなんて、ゆるせないね」
ヒレをパタパタと振って憤激を表現するのはホオジロザメのバイオモンスター、ブルース・カルカロドン(全米が恐怖した史上最悪のモンスター・f21590)。腐り果てたゾンビとなって尚人々を襲う同胞らを前にして、彼の魂は怒りに震えていた。
「このオブリビオンのアイのカタチはカンゼンにまちがっている。サメにもヤスらかなネムりはヒツヨウだよ」
彼がこの依頼に参加した理由は、安息を妨げられた同胞を眠らせてやること。
そして、同胞の生命を弄んだ暗黒鮫魔術師に、報いを受けさせてやることだ。
「ガオォォォォォォッ!!!!!」
ブルースはサメ映画の冒頭よろしく沖合から戦場に泳ぎ着くと、叫びとともに怒りを爆発させ【バイオミック・オーバーロード】を発動する。一瞬にしてちょっとしたクルーザー並みのサイズに巨大化したホオジロザメは、王の如き威容で海中を馳せる。
(とにかくサメたちをイッコクもハヤくラクにしてあげないと)
海を沸騰させんばかりの憤怒の中で、彼が考えることはその一点のみだった。
同じサメとはいえ、ブルースとただのゾンビシャークとではサメとしての格が違う。サイズも違う。大群相手にも恐れを成さず突っ込んでいく大鮫の牙は、腐敗した肉を噛みちぎり骨を砕き、血潮の一滴も余さず胃袋に収めていく。
「もうおやすみ。キミたちのカタキはカナラずボクがとるから」
なりふり構わず次々とゾンビ鮫を食い殺していくうちに、反撃を受けたブルースのサメ肌も血に染まっていく――だがそれでも彼は止まらない。波と鮮血の飛沫を上げて荒れ狂うその姿を見て、生贄の人々が恐怖でドン引いていることも気にしない。
恐れられることは苦ではない。それよりも目の前でまつろわぬ亡者と化した同胞を見るほうが、よほど彼にとっては我慢ならないことで。言葉にし尽くせないほどの激情が全身の神経と血管を駆け巡り、その巨体を躍動させていた。
「とにかくボクはおこってるんだ! マっていろ、ルル・クラドセラキー!」
全ての元凶たる暗黒鮫魔術師に向けて、怒れるモンスターシャークは咆哮する。
人間ごときの浅知恵では使役できない、真なるサメの力と恐怖を、その時人々は目撃することになるだろう。ブルース・カルカロドンの逆襲――Coming soon.
成功
🔵🔵🔴
フレミア・レイブラッド
人の趣味はそれぞれとは言うけど、ゾンビの鮫なんて趣味が良いとは言えないわね…まして、島民を犠牲になんて悪趣味が過ぎるわ…。
レクスを先行させ、海上から水中の鮫へ竜巻を放って吹き飛ばさせつつ、【ブラッディ・フォール】で「侍帝国海神譚」の「レディ・オーシャン」の力を使用(レディの衣服と髪型へ変化)。
島民の救出に向かい、救出中は【邪魔が入らないようにしちゃいますね〜☆】で防壁を展開。
救出後は【ディープシー・ストーム】で海流で押し潰し、【ウォータージャベリン】で海の藻屑に消してあげるわ
確か、レディはこの世界出身なのよね。なら、ちょうど良かったわ♪
彼女も力だけでもこの世界に戻れて本望じゃないかしらね
「人の趣味はそれぞれとは言うけど、ゾンビの鮫なんて趣味が良いとは言えないわね……まして、島民を犠牲になんて悪趣味が過ぎるわ……」
人と鮫の生命を等しく冒涜する暗黒鮫魔術師の所業を前にして、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は不快感を露わにして眉をひそめた。
これ以上、不条理な掟による犠牲を増やすわけにはいかない。生贄とされた人々を守るために、吸血姫の娘は押し寄せるゾンビ鮫の大群と対峙する。
「行きなさい、レクス」
フレミアが号令を発すると、レクスと呼ばれたワイバーンの仔竜が先行して魚群に襲い掛かった。その羽ばたきは竜巻となって海を薙ぎ、ゾンビ鮫を上空へと吹き飛ばす。
その間にフレミアは【ブラッディ・フォール】の詠唱を紡ぎ、過去に倒したオブリビオンのひとり、ヒーローズアースで海神と謳われた『レディ・オーシャン』の力を纏う。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
水飛沫が彼女の身体を包みこんだ直後、その身を包んでいた真紅のドレスは青いタイトな衣装に変わり、髪型もふんわりとウェーブのかかったものに変化していた。
「大丈夫かしら? 助けに来たわ」
「あ、ありがとう……っ、危ない!」
変身を遂げたフレミアが生贄とされた人々の元に向かうと、彼らはほっと安堵の表情を浮かべ――そしてすぐに表情を強ばらせる。見ればレクスの竜巻から逃れたゾンビ鮫の一頭が、鋭い牙を剥き出しにしてフレミアの背後より襲い掛からんとしていた。
「まずは邪魔が入らないようにしちゃいましょうか」
だがフレミアは優雅な微笑みを浮かべながら海水の防壁を展開し、自らと要救助者の周囲を覆う。透明な水のドームのようなそれはあらゆる攻撃を跳ね除け、ゾンビ鮫を含めた害意ある一切の侵入を許さない。
「さあ、これで安心ね」
救助作業の安全を確保したフレミアは順番に島民らの縛めを解いて、防壁を展開したまま安全な所まで避難させていく。海辺から離れて波の押し寄せてこないところまで行けば、海から出られないゾンビ鮫に襲われる心配はもう無いだろう。
「助かりました。この御恩は必ず!」
「気にしないでいいわ。しばらく離れていなさい」
島民からの感謝の言葉を背に受けながら、向き直る先にいるのは大量のゾンビ鮫。
救出さえ完了すればもう遠慮はいらない。すっと手をかざせば周囲の波が渦を巻き、冷たくも激しい海水の奔流となって敵陣に押し寄せていく。
「確か、レディはこの世界出身なのよね。なら、ちょうど良かったわ♪」
かの海神の力の一端、【ディープシー・ストーム】。荒ぶる海流がゾンビ鮫の群れを押し潰し、水面がサメの血肉で真っ赤に染まる。さらにフレミアは楽しげな笑みを浮かべながら海水を操り、数百本にも及ぶ【ウォータージャベリン】を形成する。
「彼女も力だけでもこの世界に戻れて本望じゃないかしらね」
道半ばにしてエンパイアで倒れたレディの供養――という訳ではないのだろうが。
放たれる水槍に貫かれたゾンビ鮫の肉体は、海水に変換されて海の藻屑と消え去っていった。
空を舞うはワイバーンの仔竜。海上にて君臨するは海神の力を宿した吸血姫。
逃げ場のない攻勢を受けたゾンビ鮫は、次々と骸の海へと還っていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
うむ……サメと言えば空を飛ぶしゾンビになる……何も不思議は無いね…
…まずは生贄にされてる人の救出……
…改造装甲車【エンバール】でゾンビシャークを跳ね飛ばしつつ海上を走行して生贄達の元に急行…
…浄化復元術式【ハラエド】で周囲のゾンビシャークたちを片っ端から浄化していくよ…
…これはゾンビでむしろ助かった…サメだったらもうちょっと考えないといけなかったからね…
…生贄の元に辿り着いたら鎖を切って救出後、車の荷台に生贄の人達を乗せるとするよ…
…海に浸かってるなら体力も落ちてるだろうから…荷台内にある【旅人招く御伽宿】の扉型魔法陣から宿に避難させよう…
さて、あらかた浄化されたらあちらはどう出るかな……?
「うむ……サメと言えば空を飛ぶしゾンビになる……何も不思議は無いね……」
サメとはなんぞやと言いたくなるようなことを呟いて、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はこくりと頷く。あるいはグリードオーシャンではこの手のサメは普通なのだろうか――だとしてもB級パニック映画並みに異常な常識だが。
「……まずは生贄にされてる人の救出……」
気を取り直して彼女が乗り込むのは改造装甲車【エンバール】。陸上水上水中のあらゆる状況を走破するかの車両は、波飛沫を上げながら囚われた人々の元に急行する。
「……ちょっと退いてて……」
進路上にいる邪魔なゾンビ鮫は跳ね飛ばす。未踏宙域の巨大怪生物・マインドミナVBAの特殊装甲を使用したエンバールの車体は、状況に応じて変形して海上走行さえも可能とし、サメを轢こうが噛みつかれようが傷一つ付かない異常な頑丈さを誇る。
さらにメンカルはあらゆる汚染や穢れ、毒、呪詛、汚れ、侵食等を消し去る浄化復元術式【ハラエド】を起動し、周囲のゾンビシャークたちを片っ端から浄化していく。
「……これはゾンビでむしろ助かった……サメだったらもうちょっと考えないといけなかったからね……」
ゾンビ化したサメは並みのサメよりも強いが、ゾンビとしての弱みも備わってしまう。
期せずして手持ちの術式でその弱点を突けたお陰で、彼女はそのまま邪魔者を突破して生贄達の元まで辿り着くことができた。
「……これに乗ればもう安心だから……」
「ありがとう……本当にありがとう……!」
メンカルは黎明剣【アウローラ】で生贄を縛り付けている鎖を切ると、自由になった人々を改造装甲車の荷台に収容する。みなサメに食われる恐怖と疲労から衰弱している様子だが、幸いにも生命に別状はなさそうだ。
「……海に浸かってるなら体力も落ちてるだろうから……」
十分に心身の疲れを癒せるようにと、メンカルは荷台に設置した扉型の魔法陣から、彼らを【旅人招く御伽宿】に誘う。魔法陣をくぐり抜けた先はガジェットが歓待する立派な宿屋となっており、来客が望む限りゆるりと滞在し寛げる環境が整っている。
「あぁ……地獄から天国とはこのことか……」
宿屋に備えつけられた温泉に浸かって、生き返ったようにほっと人心地つく島民達。
メンカルは魔法陣の外からその様子を見守りつつ、エンバールで海上を駆け巡り、まだ残っているゾンビシャークを【ハラエド】で徹底的に跡形もなく浄化していく。
「さて、あらかた浄化されたらあちらはどう出るかな……?」
大事なペットをここまで滅ぼし尽くされれば、敵の暗黒鮫魔術師も黙ってはいまい。
いつ報復が来てもすぐに対応できるよう、術式の準備は怠らないメンカルであった。
大成功
🔵🔵🔵
ニィエン・バハムート
鮫魔術…私も昔は真面目に学んでいたのでよく知っていますとも。ゾンビタイプの改造鮫……ふふふ、オーソドックスですわね。これがアストラル体のゴーストシャークでしたら単純な物理攻撃が効かず厄介だったのですが。
でしたら鮫には鮫…じゃなくてナマズ…でもなくて…我が竜の軍勢でお相手してあげますの!
岸からUCを発動して竜の1体に【騎乗】し飛んで行きますわ。
島民たちのところに着いたら一部の竜たちに鮫の相手をさせつつ、私は【水上歩行】で海面に立ち、爪で拘束を切って島民たちを助け出します。そして助けた島民を【鼓舞】しながら乗せられるだけ残りの竜たちに乗せて陸まで飛ばして逃がします。
鮫では竜に勝てないんですのよ!
「鮫魔術……私も昔は真面目に学んでいたのでよく知っていますとも。ゾンビタイプの改造鮫……ふふふ、オーソドックスですわね」
押し寄せるゾンビシャークの大群に対して、訳知り顔で微笑むのはニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)。異世界人にとっては馴染みのない鮫魔術も、グリードオーシャン出身の彼女にとってはよく知る魔法体系のひとつだ。
「これがアストラル体のゴーストシャークでしたら単純な物理攻撃が効かず厄介だったのですが」
屍とはいえ実体を持つゾンビシャークなら、肉体を物理的に破壊すれば活動停止する。
つまるところはボコボコに殴って叩いて壊して粉砕すればオーケーということだ。
「でしたら鮫には鮫……じゃなくてナマズ……でもなくて……我が竜の軍勢でお相手してあげますの!」
何度か言い直した末に、高らかな宣言と共に発動するのは【ナマズシャーク・トルネード】。喚び出されたのは鋭い爪が生えた手足と大きな翼を持つナマズのようなサメの群れ――否、竜である。召喚者が竜の軍勢だと言い張っているのだから恐らくは。
「行きますわよ、バハムート・レギオン!」
ニィエンはそのうちの1体に騎乗して、囚われの身となっている島民の元に飛んで行く。残る53体の魔竜は主の身を守るように、渦を巻きながらゾンビ鮫に襲い掛かった。
「私が来たからにはもう安心ですのよ!」
「あ、ありがとう……でもあの変なナマズみたいなのは一体……?」
「ナマズじゃなくてバハムート! 竜の軍勢だっつってんですの!」
すたっと海面に降り立ったニィエンは島民を前にして優雅に見得を張るも、使役するナマズザメもといバハムートについて困惑気味に問われて思わずキレ気味になる。
バハムートは魚ではなく竜なのだ、少なくとも彼女の頭の中では。そのために我が身に竜化のメガリスを移植してメガリスボーグになったほど、その情熱は並々ならない。
「もう、さっさと逃げますわよ! そんな不満を言えるなら体力も余っているでしょう!」
ご機嫌ナナメながらも自称ドラゴニアンは手に移植した「バハムート・ガントレット」の爪で拘束を切ると、助けた島民を鼓舞しながら待機させておいた竜の背に乗せる。
「飛ばしますわ! しっかり掴まっていなさい!」
ニィエンがぱんっと手を叩くと、島民を乗せた竜達は安全な陸を目指して飛んでいく。
残りの竜は島民や猟兵を襲うゾンビ鮫の迎撃が役目だ。いささか奇妙な見た目ではあっても、竜の軍勢はその名に相応しいだけの強さを誇るのも事実であり、鋭い爪と飛行能力を存分に活かして泳ぐしか能のないサメどもを屠り倒していく。
「鮫では竜に勝てないんですのよ!」
得意げな笑みを浮かべながら、海面に仁王立ちして竜の軍勢を指揮するニィエン。
それが本当に竜なのかはさておき、戦いの形勢はもはや完全に定まりつつあった。
成功
🔵🔵🔴
天王寺・七海
サメ…それがゾンビになっているって、厄介ですわ。
只でさえ、見境がない連中なのに、死んで頭が更に腐っていそうですわね。
なら、倒して海に還すしかないですね。
今回のサメは、空飛ばなそう。
なので、近くに身を潜んでサメの出現を待つ。
出た瞬間、一気に飛んでサメに急襲。
【2回攻撃】でダメージを与え、その後は遠距離から【属性攻撃】で真空の刃をサメの群れに連打する。
そして、仲間としているリーダーや仲間のシャチ(子供であるマリン除く)と共に【集団戦術】【水中戦】【水中機動】でサメを蹴散らしていく。
時折、UC使用してサメを拘束する
そして、逃げ遅れていた人々を助け出して仲間に安全なところに避難させていく。
アドリブ歓迎
「サメ……それがゾンビになっているって、厄介ですわ。只でさえ、見境がない連中なのに、死んで頭が更に腐っていそうですわね」
天王寺・七海(大海の覇者・f26687)は頬に手を当て、ふうと物憂げに溜息を吐く。
妙にサメに対する評価が辛辣なのは、彼女がシャチの身体に記憶を移植されたバイオモンスターだからかもしれない。海の生物にも縄張り争いとか色々あるだろうし。
とはいえ今回のゾンビシャークが対話で和解できるような手合いでは無いことも事実。
「なら、倒して海に還すしかないですね」
今回のサメは空は飛ばなそうだ。なので七海は海岸の近くにある岩場の影に身を潜めると、愚かなサメが生贄を求めてやって来るのをじっと待つことにした。
「――来たわね」
やがて、海面に映画でおなじみのあのヒレが浮かび上がったのを見た瞬間、七海は一気に飛び上がってゾンビシャークを急襲する。不意打ちを喰らった敵は鋭い牙と尾びれによる連続攻撃に打ちのめされ、為す術もないまま海の藻屑と消える。
「ここから先は通さないわよ」
機先を制した後、七海は攻撃手段を遠距離からの超能力に切り替え、空中から真空の刃を連打してサメの群れを切り刻む。ジャンプしても届かない高度となれば、飛行能力を持たないゾンビシャークには反撃する術が無かった。
「皆も協力よろしくお願いね」
さらに七海が呼びかけると、彼女が属する群れのシャチ達がどこからともなくやって来てゾンビシャークに襲い掛かる。超音波による会話と高度な社会性を持ったシャチの狩りは、巧みなチームワークによる集団戦術が特徴のひとつだ。
「あ、マリンは待機しててね」
養育中の愛しい我が子だけは危険から遠ざけつつ、七海とシャチ仲間は一致団結して敵を蹴散らしていく。浮かび上がったゾンビシャークの死骸で、たちまち海面はドス黒く染まった。
「これでもう大丈夫です。すぐに安全なところまでお送りします」
「ま、まさかシャチに助けられるなんて……でも、ありがとう!」
激しい狩りが繰り広げられる中、七海は逃げ遅れた人々にもヒレを差し伸べ、仲間と共に岸辺まで避難させるのも忘れない。今回の依頼はあくまで人命救助が目的だ。
避難を邪魔するような無粋なサメは、頭上の呼吸器に溜め込んだ大量の空気を放ち、【エアロストーム】の乱気流で拘束しておく。
「それにしてもしつこいわね」
サメの駆逐も島民の避難も順調に進んでいる。だがまだ気を抜くことはできない。
暗黒鮫魔術師率いるゾンビ鮫の大群は、今だに絶えることなく出現を続けていた。
成功
🔵🔵🔴
ウーラ・エベッサ
※アドリブ歓迎
WIZ判定
・行動
岸側の海岸線からUC【トツカの針】を使用
丘で釣り糸を垂れると地面に吸い込まれる様に針が沈み
海で括りつけられた生贄まで伸びていく
UCで糸の先を探りながら柱に針をひっかけ
括りつけられている島民ごと一気に引っこ抜き手繰り寄せて救出
・セリフ
死んでるサメじゃあ釣っても食えやしないねぇ……
だが、生きた人間をエサにしようたぁ不釣り合いな話じゃないかい
アタシら海の民はいつか海に還る覚悟はしているが
それも次の命につながるのが前提だ
死んでるサメにくれてやるのはまっぴらごめんだね!
(そこまで言い切った後一気に生贄の柱を釣り上げる)
だからこいつらはアタシたちの方で取り戻させてもらうよっ!
「死んでるサメじゃあ釣っても食えやしないねぇ……だが、生きた人間をエサにしようたぁ不釣り合いな話じゃないかい」
相棒たるメガリス「ワダツミの竿」を肩に担ぎ、沖から攻め寄せるゾンビ鮫の大群を睨めつけるはウーラ・エベッサ(海竜一本釣り・f26246)。漁師として食えない獲物を釣るのは趣味ではないが、だからと言って大人しく食わせてやるつもりも無い。
海岸線の陸から【トツカの針】を仕掛けた釣り糸を垂らすと、メガリスの針は地面に吸い込まれるように沈み込み、まるで意思を持っているかのようにウーラの望んだ場所へ――生贄が括りつけられた海上の柱に向かって伸びていく。
「アタシら海の民はいつか海に還る覚悟はしているが、それも次の命につながるのが前提だ」
ゾンビ鮫共に通じるかは分からないが、それでもウーラは堂々と己が矜持を語る。
あるいはそれは、この戦いを見ているであろう暗黒鮫魔術師に向けたものだろうか。
目を閉じて、釣り竿を持つ手と指の感覚に意識を集中させる。瞼の裏に浮かび上がるのは釣り糸を伸ばした先の景色。針の先端が、突き立てられた柱の根本に引っ掛かる。
「死んでるサメにくれてやるのはまっぴらごめんだね!」
そこまで言い切った直後、ウーラはありったけの膂力を込めてワダツミの竿を引く。
巨人の中でも特に力持ちで鳴らした彼女の豪腕、そしてその怪力に耐えうるメガリスの釣具は、生贄が括りつけられた太い柱を根本から一気に引っこ抜いてみせた。
「だからこいつらはアタシたちの方で取り戻させてもらうよっ!」
「うわあぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
柱ごと釣り上げられた島民が目を白黒させて絶叫する。巨人に一本釣りされる経験など人生に一度あるか無いかといったところだろうし、その反応も当然かもしれない。
ウーラはにぃっと白い歯を見せて笑いながら、釣り糸を手繰り寄せて柱と生贄を陸に引き上げる。それは彼女の腕前と腕力がなければできない唯一無二の救助法だった。
「驚かせちまったかい? 悪かったね、でももう安心だ」
「ふぅ……はぁ……いえ、助けてくれてありがとうございます」
柱の縛めを解いてもらった島民は、まだすこし青い顔ながらもウーラに礼を言う。
予想だにしない手段だったが、彼女は紛れもなくサメから救ってくれた命の恩人だ。
「礼なんて良いさ。さあ、ここはまだ危ないから離れてな!」
ウーラは豪快な笑みを浮かべて島民を海辺から安全な場所まで送り出すと、再びワダツミの竿にトツカの針を仕掛け直す。釣り上げるべき生贄は、まだ何人も残っていた。
「この調子で一人残らず釣り上げてやろうじゃないか!」
命を喰らうことの意味もわからぬゾンビ鮫に、生贄など勿体ないにも程がある。
巨人漁師の豪腕が、死の瀬戸際にあった島民達をサメの猛威から救い上げていく。
成功
🔵🔵🔴
セルマ・エンフィールド
この世界、サメに並々ならぬこだわりがある人やコンキスタドール多くありません……?
おっと、危機には違いありませんし、まずは排除しましょうか。
岸からフィンブルヴェトでスコープ越しにこちらへ向かってくるゾンビ鮫を狙いつつ、偵察用のドローン「ペレグリーネ」を飛ばしておきます。
数が多い……蘇生されたということでしたが、元々はどこからこんなに連れてきたんでしょうね? 水面に近いものを一体ずつ撃っても埒があきませんか。
では……こちらで。
荷物から弓を取り出し、偵察ドローンで得た視界を頼りに【霜天弓】を。
降り注ぐ冷気を纏った矢の雨でまとめて射抜きます。
「この世界、サメに並々ならぬこだわりがある人やコンキスタドール多くありません……?」
いったいサメの何が彼らをそんなに惹きつけるのかと、首を傾げるセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)。サメよりよっぽどホラーでパニックな怪物が跋扈する世界出身の彼女からすると、ただの(ゾンビの)魚としか思えないようだ。
「おっと、危機には違いありませんし、まずは排除しましょうか」
愛用のマスケット銃「フィンブルヴェト」のスコープ越しに、沖からこちらに向かって来るゾンビシャークの大群を捉え、少女は岸辺から狙撃体勢に入った。
「数が多い……蘇生されたということでしたが、元々はどこからこんなに連れてきたんでしょうね?」
目視で確認できたサメはざっと数えても両手両足の指より多い。上空に飛ばした偵察用ドローン「ペレグリーネ」の視界からは、さらに倍はあろうかという敵影が見える。
すでに撃退された個体も合わせれば既に百体以上のゾンビ鮫がこの海岸に押し寄せているのでは無いだろうか。恐るべきは暗黒鮫魔術師のサメへの執着の強さ。案外、倒されたサメの死骸をまた蘇らせているのではないかと言われても納得してしまいそうだ。
「水面に近いものを一体ずつ撃っても埒があきませんか。では……こちらで」
弾丸とサメの数を比べて不利を感じたセルマは、マスケットを下ろすと荷物の中から一張の弓を取り出す。それは「天弓姫」と謳われた弓の名手が使っていたと言う、いわく付きのロングボウである。
セルマはその弓に矢を番えると、サメの群れではなく空に向かって弦を引き絞る。彼女の魔力を受けた矢には冷気が宿り、局所的な気温の低下がつむじ風を巻き起こす。
「霜天を切り裂くは無尽の流星……!」
ひょう、と風を切る音と共に放たれた技の名は【霜天弓】。雲を射抜けとばかりに空高く飛んだ矢は、冷気を纏った矢の雨となってゾンビシャークの群れに降り注いだ。
偵察ドローンの視界補助に加えて、とある手練れの冒険者から学んだというセルマ自身の技量もあいまって、その照準は正確無比。海上のサメ達は避ける間もなく射抜かれたうえで骨の髄まで凍らされ、冷凍ゾンビシャークとなって水底に沈んでいった。
「数こそ多いですが、一匹一匹は大したことは無いようですね」
そのままセルマは文字通りの矢継ぎ早に冷気の矢を放ち、無尽の氷雨を降らせ続ける。
ゾンビシャーク恐れるに足らず。海の捕食者たるサメも彼女の前ではもはや、ただの海上の的でしか無かった。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
腐ったサメに生贄を食わせる?ふざけた掟です!
跡形もなくぶち壊してやりましょう!
(「急いで!もうすぐにでも食べられてしまいそうよ!」と頭の中の教導虫が急かす)
はい!もちろん!『衝撃波』を推進力に
全速力で救助に向かってます!
そして俺より早い強襲兵の皆さん!
サメの踊り食いです!
貪りつくしてください!
(黒影の周りに白煙のように羽虫の幽体が現れたかと思うと海中のサメに向かって攻撃を始めた)
海だろうが宇宙だろうが
死んだ皆さんに敵うやつなどいないのです!
死にぞこないのサメゾンビ共は
敗北者らしく肉になってな!
「腐ったサメに生贄を食わせる? ふざけた掟です!」
あまりにも生命を蔑ろにした暗黒鮫魔術師の掟を聞いて、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は怒りに拳を震わせる。ただ人間を生贄にするだけではなく、それを喰らうのが生きてすらいないゾンビのサメというのが、益々理不尽さを強く感じさせる。
「跡形もなくぶち壊してやりましょう!」
激情を露わに咆哮し、少年はまっすぐに生贄の縛られた柱に向かって猛進する。
倒しても倒しても湧いてくるゾンビ鮫共は、またもや生贄の元に迫りつつあった。
『急いで! もうすぐにでも食べられてしまいそうよ!』
「はい! もちろん! 全速力で救助に向かってます!」
脳内に寄生する「せんせー」こと教導虫スクイリアが頭の中で兵庫を急き立てる。
足が付かないほど深くはないが、海水の抵抗がかかる動きづらい戦場。後方に衝撃波を推進力として後方に放つことで加速しているが、やはり陸上ほどの速度は出せない。
「強襲兵の皆さん!」
この環境下では自分よりも空を飛べる彼らのほうが速い。そう判断した兵庫が一声叫ぶと、彼の周りに白煙のように羽虫の幽体が現れたかと思うと、海中のサメに向かって襲い掛かった。
「サメの踊り食いです! 貪りつくしてください!」
それは戦死した後も亡霊となって兵庫の為に戦う【蠢く霊】。生前の戦闘力はそのままに、霊体としての特製も備えた強襲兵たちは、鋼鉄をも砕く牙でゾンビシャークの肉体に齧りつき、腐りきった肉も骨も皮も血も、跡形も残さず喰らい尽くしていく。
「今のうちです! さあ、逃げてください!」
「あ、ありがとう! 助かったわ!」
虫達がサメの群れを食い止めている間に、生贄の元に辿り着いた兵庫は「蜂皇の牙」のナイフで彼らの縛めを断ち切り、海辺から遠くに離れるよう誘導する。人々は口々に感謝の言葉を告げながら、ばちゃばちゃと水音を立てて一目散に逃げていった。
「海だろうが宇宙だろうが、死んだ皆さんに敵うやつなどいないのです!」
無事に生贄達を解放すると、兵庫は軍隊虫の戦闘指揮者として蠢く霊に号令する。
彼の脳内の教導虫にルーツを持つ強襲兵は、それゆえに彼の指示に従い最大の戦果をもたらすべく行動する。死して霊体となったその身はただのサメの牙では貫けず、死を恐れる必要のない虫達の猛攻はゾンビシャークの群れを容赦なく蹂躙していく。
「死にぞこないのサメゾンビ共は、敗北者らしく肉になってな!」
生命を愚弄する者への怒りのあまり、語調を荒げる兵庫にスクイリアも『口が悪いわよ』と形ばかりはたしなめつつも制する様子はなく。その激情に呼応した蠢く霊の攻勢はさらに激しさを増し――サメゾンビ共は肉片も余さず彼らの胃袋に収まっていった。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
「どこよ、ここ?」
目覚めたら見知らぬ場所。柱に鎖で縛りつけられていた。
カビパンは鉄甲船へと転送された後、船酔いで船から落っこちて気絶した挙句に運良く流れ着いた海岸で、これまた運良く生贄に選ばれた島民と、合流を果たし仲良く柱に縛り付けられていた。
「助けて…」
「あぁ神様…」
救いを求める人々の言葉が聞こえる。
「サメだっ!」
サメが襲い掛かってきた、その時…
【本人はただ便利な光と思っている】がサメの殺意に反応し、女神の聖なる光が自動追尾して攻撃する。ついでにこちらからも殺意を出し攻撃する。
ある意味B級パニック映画のスプラッターシーンのように、海辺はゾンビシャークの腐臭と血と臓物で紅く染まっていく。
「どこよ、ここ?」
カビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)がふと目覚めると、そこは見知らぬ場所だった。視界にはどこまでも続く海原が広がり、身体には鎖のようなもので縛り付けられている感覚。そして腰のあたりまで水に浸かっている冷たい感触がある。
彼女は鉄甲船に転送された後、船酔いで船から落っこちて気絶した挙句に偶然にも流れ着いた海岸で、これまた偶然にも生贄に選ばれた島民と仲良く柱に縛り付けられていた。良いのか悪いのか評価に迷うが、どちらにせよ極まった運気の持ち主である。
「助けて…」
「あぁ神様…」
救いを求める人々の言葉が聞こえる。周囲からは戦闘の音。どうやらカビパンが気絶している間にもうサメと猟兵の戦いは始まっていたようだ。見たところ戦況は猟兵側の優勢だが、とにかくサメ側の数が多いために今だ完全な撃退には至らないままだ。
「サメだっ!」
そして遂に、数匹のゾンビ鮫が戦線の隙間をくぐり抜けて、生贄に襲い掛かってくる。
腐臭を撒き散らす顎をぐわっと開き、ナイフなような牙が人々に突き立てられる、その時――。
(あぁ……めんどくさい……めんどくさい)
生贄達と共に括り付けられていたカビパンの身体から閃光が放たれたかと思うと、血まみれになったゾンビシャークが海中に沈んでいく。【本人はただ便利な光と思っている】女神の力がサメの殺意に反応し、自動追尾する光の矢となって標的を射抜いたのだ。
「な、なにが起こったの……?」
どうして助かっのた分からずにぽかんとする人々。それをやった当のカビパンは(やってらんねー、帰りてー)とでも言いたげな顔で、鬱陶しいサメどもに殺意を向ける。
すると女神の加護は輝きを増して戦場を照らす。穢れた存在にとっては天敵とも言える聖光を前にして、もはやゾンビシャークの群れはカビパンと生贄に近付くことさえできずに、ある者は灼かれ、ある者は貫かれ、海の藻屑と化して散らばっていく。
(誰か早くこれ解いてくれないかなー……)
いい加減同じ姿勢で縛られているのも辛くなってきた、なんてことを考えながら近付いてくる敵を光で薙ぎ払うカビパン。ある意味B級パニック映画のスプラッターシーンのように、海辺はゾンビシャークの腐臭と血と臓物で紅く染まっていく。
そのおかげで生贄達の安全が同時に守られているのを考えると、やはり彼女の漂流は幸運だったのかもしれない。本人がそれを自覚しているかどうかはさておくとして。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
UC装着
鉄甲船『星錬』から飛び立ち最大速力で現場に急行
減速しながらセンサーで●情報収集を行い生贄やサメの位置情報
水中での体力消耗の関係で危険と思われる生贄(サメが近い>子供>女性>男性)を●見切りスラスタで炙らぬよう接近
銃器の●スナイパー射撃や剣で拘束解除
身体各部のワイヤーアンカーでの●ロープワークや●怪力で回収
外套装甲内側に保護
数人が限界でしょうが、安全圏まで移送
大変恐ろしかったことでしょう
もう大丈夫、ご安心ください
…治療は陸上の島民か他猟兵に任せる他ありませんね
鮫殲滅は味方に任せ生贄救助と運搬に専念
飛び上がり攻撃する鮫?
全サ連の装甲
後れを取るなどありえません
飛行シールドバッシュで跳ね飛ばし
「流石の全世界サイボーグ連盟メカニック班の技術力、良い仕事ぶりですね……」
ジェット噴射の炎を流星の尾のようになびかせ、海原の上空を飛翔する白装の騎士。
【全サ連メカニック班謹製 追加機動装甲】を装着したトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、鉄甲船『星錬』から最大速力で現場に急行中だった。
最短かつ最速で一直線に、ゾンビ鮫の魔の手から救いを求める人々の元に辿り着くために。
「最優先で救出すべき対象は……」
騎士兜を模した頭部のセンサーが光り、見渡せる範囲の生物や動体をスキャンする。
海中のゾンビ鮫の分布に、生贄の人々の所在。そこから水中での体力消耗の関係で危険と思われる人物を、サメから近い者、子供、女性、男性の順にピックアップする。
目標を見定めたトリテレイアは減速と降下を始めると、スラスターの熱で相手を炙らぬよう、慎重に出力を抑えて対象に接近する。
「大変恐ろしかったことでしょう。もう大丈夫、ご安心ください」
「ああ、かみさま……! ほんとうに助けが来てくれるなんて!」
絶体絶命の窮地に舞い降りた機械仕掛けの騎士は、島民にとってはお伽噺の1ページのように感じられたことだろう。トリテレイアは涙を流す人々の拘束を格納銃器や儀礼剣で解除し、力強い機械の腕と身体各部のワイヤーアンカーで回収していく。
「さあ、この中に。しっかり掴まっていてください」
「は、はいっ」
外套のような形状をした追加装甲の内側に彼らを保護すると、スラスターの出力を上げて再浮上。向かうのはゾンビ鮫に襲われる心配のない、海辺から離れた安全圏だ。
「だ、だいじょうぶだよね? もうサメにたべられないよね?」
「この高度なら鮫の攻撃はほぼ届きません。もし襲ってくる者がいても――」
幼い子供とトリテレイアの会話を遮るように、海面から一頭のゾンビシャークが水飛沫を上げて飛び上がってくる。上空にいれば安心だと油断した者を食い散らかす、パニック映画さながらの跳躍力だ――しかし、今回ばかりは獲物にした相手が悪かった。
「――全サ連の装甲、後れを取るなどありえません」
シールドと追加スラスターが一体化した追加機動装甲の強度は折り紙付きで、ゾンビ鮫の牙では傷一つ付けられない。鉄壁と機動力を両立させたフルアーマー・トリテレイアは、そのままシールドをサメの鼻面に叩きつけ、海面へと勢いよく跳ね飛ばした。
「ここまで来れば一安心でしょう」
「あぁ、よかった……感謝します!」
邪魔者を退けて陸地に降り立つと、移送された人々はほっと安堵の吐息を漏らす。
救出した人々の中は低体温症などで衰弱している者もいるが、迅速な救助の甲斐もあって、重篤な生命の危険はないようだ。これなら手当てすればすぐ快復するだろう。
「……治療は島民か他の猟兵に任せる他ありませんね」
生贄に選ばれなかった島民の中にも、医療に関する知識のある者はいるだろう。
後のことは彼らに任せ、トリテレイアはすぐさま次の要救助者の元に取って返す。
彼の行動方針は一人でも多くの生贄救助と運搬に専念すること。スペースの関係で一度に運べるのは数人ずつが限界だが、その分は機動力と往復回数で補うつもりだ。
「私達が来たからには、これ以上一人も生贄になどさせません」
サメの殲滅を味方に任せ、機械仕掛けの騎士は海上を翔ける。戦場にて敵を討つ華々しい活躍とは異なれども、その行動はまさしく騎士の誉れと言うべきだろう。
成功
🔵🔵🔴
南雲・深波
【恋華荘】
サメを悪用など、鮫魔術師として許せないでありますな
キネマならともかく、現実にこれはダメであります
いちご殿と理緒殿と共に船上から
って、お二人とも、なに抱き合ってるでありますか?!
戦闘中に破廉恥でありますよ!
(思わず赤面ツッコミ
うる殿、生贄救助は任せたであります
って、今お金の話してる場合でありますかー?!
いいからぐだぐだ言ってないで、さっさと行くでありますっ!(うるを蹴り落とす
ともあれ私は【シャーク・トルネード】発動であります
我が可愛い回転ノコ鮫を呼び出して、敵性鮫を切り裂いてうる殿を守るでありますよ!
戻ってきたうる殿が腕を差し出しますが
「また蹴り落とされたいでありますか?」(にこっ
菫宮・理緒
【恋華荘】
サメでゾンビに生贄なったかー。
なんだろいろんな要素てんこ盛りって感じだね。
映画なら楽しめるところなんだけど、実際にされちゃうと、ね。
とりあえずは、
生贄にされてるみんなを助けないとだよね。
わたしはいちごさんといっしょ鉄甲船の上から、
サメゾンビを撃退していくね。
でも、バランス感覚悪いから、
転ばないようにいちごさんに抱きついて、支えてもらって戦うよ。
フリじゃないからね? 離したら転んじゃうから!
顔が赤い? そこはツッコむなー!
攻撃は、いちごさんが動きをとめたサメを【Nimrud lens】を使って焼いていくよ。
「フカヒレは煮たほうが美味しいんだけどっ」
って、腐ってるからもともとダメか!
彩波・いちご
【恋華荘】
まさにリアルサメ映画って感じですね
笑い事ではないですけどっ
サテの泳ぐ海で動ける用意はないので、私たちは鉄甲船の上から戦いましょう
波で揺れるから気を付けて……って、理緒さん、そんなしがみつかなくてもっ?!
いえいいですけど
……深波さんっ、破廉恥なことはしてませんからっ?!
ともあれ船の上から呪文をとなえ、【異界の抱擁】水中に触手を呼び出してサメを絡みとっていきましょう
無数の触手を制御してサメをとらえ締め上げて、仲間の攻撃に繋げたり、あるいは可能なら触手でそのまま絞め潰したり
生贄の人や救助中のうるさんもいるので、巻き込まないよう触手の制御に集中しないと
…だからあまりしがみつかないで?!
月灘・うる
【恋華荘】
サメゾンビ……?
まだまだうーちゃんのしらない海がたくさんあるね。
みんながサメの撃退してくれてるし、
わたしは海へ飛び込み、【オックスブラッド】で鎖を壊して、
生贄になってる人を助けていこう。
救助もしておけば、より印象いいよね!
「……終わったら、お礼とかもらえたりして……にへ」
なんて呟きを深波さんに聞かれて、海に突き落とされます。
「い、いってきます-!。みなみん援護よろしくね-!」
と、あわてて救助にむかいます。
うう、久しぶりの海とみなみんの視線が冷たい。
救助が終わって船上に戻ってきたら、
いちごさんと理緒さんにツッコんでいた深波さんを思い出し、
「みなみんもする?」
と、腕を差し出してみよう
「サメでゾンビに生贄なったかー。なんだろいろんな要素てんこ盛りって感じだね」
「まさにリアルサメ映画って感じですね。笑い事ではないですけどっ」
海原に跋扈するゾンビシャークの大群を鉄甲船から見渡すのは【恋華荘】の面々。
なんともはやといった調子で菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)が呟くと、彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)が苦笑交じりに応じる。ゾンビシャークだの暗黒鮫魔術師だの実にB級感の漂う展開だが、これは銀幕の中の出来事ではない。
「映画なら楽しめるところなんだけど、実際にされちゃうと、ね」
「サメを悪用など、鮫魔術師として許せないでありますな。キネマならともかく、現実にこれはダメであります」
理緒は琥珀色の瞳を細めながら肩をすくめ、南雲・深波(鮫機動部隊司令官🦈・f26628)も軍人らしい生真面目さで憤慨する。鮫魔術の力を悪事のために利用するばかりか、そのサメで無辜の民衆を虐げるなど言語道断の所業である。
「サメゾンビ……? まだまだうーちゃんのしらない海がたくさんあるね」
恋華荘から来た最後のひとり、月灘・うる(salvage of a treasure・f26690)は興味深そうに敵を眺めつつも、ラッパ銃「オックスブラッド」を持って準備運動を始める。
「みんながサメの撃退してくれるし、救助もしておけば、より印象いいよね!」
彼女の役目は生贄にされた島民を救い出すこと。残る3人はゾンビ鮫の殲滅担当だ。
「とりあえずは、生贄にされてるみんなを助けないとだよね」
「サメの泳ぐ海で動ける用意はないので、私たちは鉄甲船の上から戦いましょう」
「理緒殿といちご殿と共に戦えるのなら、心強いであります!」
理緒は大気の加護を宿したハシバミ製のミニワンドを取り出し、いちごは狂気の魔導書を片手に呪文の詠唱を始める。そして深波がバブルワンドを指揮杖のように掲げると、鉄甲船の周りからゾンビではない生きたサメの群れが続々と姿を現した。
「ふんぐるいふんぐるい……、星海の館にて微睡む我が眷属よ!」
先陣を切ったのはいちごの【異界の抱擁】――甲板から海面に落ちた彼の影から、異界より召喚されし大量の触手が海中に現れる。正気を削る外観をしたそれはゾンビ鮫の群れに殺到すると手当たり次第に絡みつき、身動きが取れないよう締め上げていく。
「屈折率、固定……収斂」
動きの止まった敵に放たれるのは、理緒の【Nimrud lens】。魔杖「Craobhoga an whirlwind」の力で生成された大気のレンズが光を屈折させ、収束された太陽光が熱線と化す。標的になったゾンビ鮫が消し炭になるまでに、ものの数秒とかからなかった。
やはりゾンビ化してもサメはサメ。連携の取れた猟兵の戦闘力に敵う相手ではない。
とはいえ恋華荘の面々も不安定な船上での戦いという、一抹の懸念材料もありはする。
「波で揺れるから気を付けて……って、理緒さん、そんなしがみつかなくてもっ?!」
「でも私、バランス感覚悪いから、転ばないようにいちごさんに支えてもらわないと」
ふらつく足場で照準が狂わないようにと、理緒はいちごの身体にぎゅっと抱きついてバランスを取っていた。触手を使役するいちごはこの体勢でも戦闘に支障は無いが、それでも何というかこう、つい戦闘以外のことに気が散りそうな状態ではある。
「フリじゃないからね? 離したら転んじゃうから!」
「いえいいですけど……」
「って、良くないであります! お二人とも、なに抱き合ってるでありますか?!」
傍目には船上でいちゃついているようにしか見えない2人に、思わず赤面しながらツッコミを入れたのは深波。潔癖な気質ゆえにこういった事にあまり免疫がないようだ。
「戦闘中に破廉恥でありますよ!」
「深波さんっ、破廉恥なことはしてませんからっ?! ですよね理緒さんっ!」
いちごは慌てて弁解しようと理緒のほうを見るが、よく見るとこちらの顔も赤い。
その視線は敵のいる海原をじっと見据えているが、言い換えるといちごと顔を合わせないようにもしている。
「理緒さん、顔が赤いような……」
「そこはツッコむなー!」
理緒は自分の頬がかあっと熱くなるのを自覚しながら、頑なな意志で追求を拒む。
それでも熱線の狙いはブレていない辺り、恥じらいを堪えてしがみついた効果はあったようだ。
「まったく……うる殿、生贄救助は任せたであります」
いちごと理緒のふたりから目を逸らし、深波は待機中のうるの方の様子を見る。なんだかんだでゾンビ鮫の撃退は順調に進んでいるし、そろそろ突入できそうだが――。
「……終わったら、お礼とかもらえたりして……にへ」
「って、今お金の話してる場合でありますかー?!」
商人根性から漏れ出た呟きがうっかり耳に入り、本日二度目のツッコミが船上に響く。
取らぬ狸の――もとい鮫の皮算用をしてにへら笑いを浮かべていたうるは、眉を釣り上げた深波にずいずいっと詰め寄られ、あれよという間に甲板の端まで追いやられ。
「いいからぐだぐだ言ってないで、さっさと行くでありますっ!」
「きゃーっ!?」
そのまま海に蹴り落とされ、ぼちゃーんっ、と大きな水柱を上げる羽目になった。
「い、いってきます-! みなみん援護よろしくね-!」
海面から顔を出したうるは、これ以上怒られないようにと慌てて島民の救助に向かう。
深海人である彼女にとって海の中は自らのホーム。セーラー服を着たままでも泳ぎには何の支障もない――のだが、それを心地よいと感じる余裕はいろいろと無かった。
(うう、久しぶりの海とみなみんの視線が冷たい)
落ち込んだ評価を挽回するためにも、ここはきっちりと役目を果たさなければ。
生贄が縛り付けられた柱へと急ぐうるの元に、B級映画さながらにサメの影が迫る。
「我が可愛い鮫機動部隊よ、敵性鮫からうる殿を守るでありますよ!」
うるが襲われるよりも早くゾンビ鮫に襲い掛かったのは、深波が【シャーク・トルネード】で呼び出した回転ノコ鮫の群れ。唸りを上げて高速回転するノコギリの刃が、敵をズタズタに切り裂いて海の藻屑へと変える。
「ありがとうみなみん!」
回転ノコ鮫がゾンビ鮫を食い止めている間に、うるは生贄達の元に辿り着くと、装填済みのオックスブラッドを構えてトリガーを引き絞る。放たれた散弾は生贄に傷ひとつ付けることなく、彼らを柱に縛りつけている鎖だけに命中し、破壊した。
「さあ今のうちだよ! はやく逃げて!」
「あ、ありがとう。このお礼は必ず……」
「えっ! ……こほん、それは後でね!」
お礼という言葉に思わず目が輝きかけたものの、後方から深波の視線を感じて気を取り直す。解放した人々をゾンビ鮫の襲って来ないところに連れて行くまでが救助活動だ。
「フカヒレは煮たほうが美味しいんだけどっ。って、腐ってるからもともとダメか!」
救助中のうるを援護するように、理緒も大気のレンズから次々と熱線を放射する。
そもそもアレが食用になるサメかも分からないし、挑戦しないほうが賢明だろう。
一方のいちごも無数の触手を自在に操り、海中を逃げまわるゾンビ鮫を捕らえては、二度と現世に彷徨い出てこないようギリギリと締め潰していく。
「生贄の人やうるさんを巻き込まないよう制御に集中しないと……だからあまりしがみつかないで?!」
「だからこれは仕方ないんだってば!」
ぎゅぅ、と転ばないよう抱きついてくる同年代の少女の感触にあたふたしながらも、触手達のコントロールだけは決して手放さないのは流石の技量と言えるだろう。
「まったくあのお二人は……」
やれやれと頭を振りつつ、深波はそれ以上ツッコむのを諦めて回転ノコ鮫の指揮に専念することにする。触手が捕らえ、熱線が焼き、サメが刻む。三者三様の戦法は実のところピタリと息が合っており、次第に周囲の海域からゾンビ鮫は駆逐されつつあった。
「ただいまー!」
やがて救助を終えたうるも鉄甲船に戻ってくる。援護もあったお陰で島民への被害はゼロ、彼女自身も濡れただけで傷ひとつ無く、作戦は万事成功と言っていいだろう。
「うーん……」
「どうかしたのでありますか?」
甲板に上がって来たうるが何かを考えているのに気付き、深波が声をかける。まだ懸念や不安材料でもあるのかと気にしてのことだったが――その実うるが思い出していたのは先刻、船上で抱き合ういちごと理緒にツッコんでいた深波のこと。
「みなみんもする?」
「また蹴り落とされたいでありますか?」
すっ、とハグのように腕を差し出してみたうるに、にこっ、と目が笑っていない笑顔で深波は応じ――本日二度目の水柱が上がったかどうかは、本人達のみぞ知ることである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
泉・火華流
目には目を…
歯には歯を…
鮫には鮫で対抗…
小型戦闘機隊…絶対にみんなには近づけないでね…
…と、指定UCを使用(機銃&投下式水中魚雷装備)、生贄にされた人達の周りを飛びつつ近づく鮫を撃退【制圧射撃・爆撃・拠点防御】
本人はレガリアス・エアシューズで【ダッシュ+水上歩行】で潮の流れを見極めつつ、《血が滴る生肉》を持って自分の方に誘導(血が溶けた海水が鮫の方に向かい、自分の方に来るように仕向ける)
近づいてきた鮫の攻撃を水中の影に注意しつつも【野生の勘・第六感】も頼りに【ジャンプ】で回避して、装備『FBC』や『グラビティ・アンカーチェーン』で頭や腹に攻撃…もしくは捕縛して陸へ投げ飛ばす
鳴海・静音
鮫だァ?そんなもんよくある事ってのは俺が海賊だからかねェ
ま、鮫なんかにやられる訳には行かねぇな
海側の足場が鉄甲船だけってのも大変だろ
錨を上げろ野郎共!『亡霊の船出』!
まぁ他にやってる奴もいるかもしれねぇが…足場に使っていいぞ
野郎共!まだまだ出てくる奴は雑魚だ、数を頼りにさっさと倒すぞ!
助けんのは誰かがやるだろうが…必要なら俺も行くさ
※協力・アドリブ歓迎
手下共の言動等はお好きにどうぞ
「鮫だァ? そんなもんよくある事ってのは俺が海賊だからかねェ」
苦境と荒波に慣れ親しんだアリスラビリンスの海賊、鳴海・静音(不思議の国の亡霊船長・f19460)は首を傾げる。オウガと不思議の国に比べれば、たかがゾンビになったサメくらい可愛いもの。恐るるに足らずといったところだ。
「ま、鮫なんかにやられる訳には行かねぇな。錨を上げろ野郎共!」
海賊旗を掲げて高らかに【亡霊の船出】を叫べば荒波をかき分けて、亡者となった彼女の手下達と、名もなき亡霊船と化した海賊船が現れる。さあ、海戦の始まりだ。
「目には目を……歯には歯を……鮫には鮫で対抗……」
亡霊船の出現と時を同じくして、泉・火華流(人間のガジェッティア・f11305)は【Shark小型戦闘機隊・テイクオフ】を宣言する。空間に開いた穴より出撃するのはシャークペイントを施された戦闘機型ガジェットを隊長機とした、空翔ける翼の部隊だ。
「小型戦闘機隊……絶対にみんなには近づけないでね……」
火華流の指示の下、Shark戦闘機隊は生贄にされた人々の元に急行し、襲い掛からんとする敵影目掛けて搭載された水中魚雷を投下する。水中から激しい爆発と水柱が次々と上がり、吹き飛ばされたゾンビシャークの肉片が宙を舞った。
「野郎共! まだまだ出てくる奴は雑魚だ、数を頼りにさっさと倒すぞ!」
『ヘイ、お頭! 腐れサメどもに目にもの見せてやりますぜ!』
空からの攻撃にサメ共が右往左往している隙を突き、海からは静音率いる海賊船が白波を上げて急接近する。死してなお意気軒昂な手下共は、海賊のトレードマークとも言えるカットラスとピストルを振りかざして、威勢よくゾンビ鮫の群れに襲い掛かった。
『同じ死者だろうが、こんなゾンビに俺達が負けるわけねぇってなァ!』
こと海と船の上での集団戦において、彼らほど秀でた者はそうはいない。呪いを帯びた刃と銃弾を受けた敵は、屍体を動かす仮初の生命力を奪われて、ただの骸に還っていく。
「海側の足場が鉄甲船だけってのも大変だろ。足場に使っていいぞ」
「ありがとう……じゃあ、行ってくる……」
静音の手下達がゾンビ鮫と奮戦する中、海賊船の甲板を蹴って火華流が海に躍り出た。
両足に装着したレガリアス・エアシューズが大気のホイールを形成し、水上を駆ける力を彼女に与える。潮の流れを見極めて駆けまわりながら、取り出すのは血が滴る生肉――海水に溶けた血の匂いが、辺りにいるゾンビ鮫どもの嗅覚と食欲を引きつける。
「こっちこっち……」
敵が自分の方に向かって来ればしめたもの。火華流は野性の勘と第六感を研ぎ澄ませてサメの攻撃を躱し、味方が攻撃しやすいポジションに誘導していく。水中から襲ってくる影にも注意しつつ、トビウオのように水上を跳ねまわる彼女に、誰も触れることはできない。
「今だよ……」
「行け、野郎共!」
躍起になったサメ共がおびき寄せられた先で待っていたのは、Shark小型戦闘機隊からの機銃掃射と、亡霊海賊団による一斉射撃。機銃とピストルの弾丸が敵を蜂の巣にし、海上はゾンビの腐肉と血で真っ赤に染まる。
「さようなら。もう出てこないでね」
運良く弾幕から免れたゾンビ鮫も、逃げる間もなく火華流が放った「グラビティ・アンカーチェーン」に絡め取られる。捕縛された連中の末路は「随伴式 FlyingBeamCannon」のビーム砲撃で蒸発するか、縛られたまま陸に放り投げられるかのどちらかだ。
「助けんのは誰かがやるだろうと思ったが……まだ人手が必要みたいだったしな」
「ありがとう、可愛らしい海賊さん……! この御恩は一生忘れません!」
付近のゾンビ鮫が一掃されたのを見計らうと、静音は囚われていた人々の縛めを解いて船上に保護していく。もともと海賊が当たり前に存在する世界だからだろうか、島民は自分らを助けてくれた静音のことを「良い海賊」と好意的に認識したようだ。
「気分はヒーローだな。ま、悪くはねえか」
肩をすくめながら静音は笑い、すぐに次なる敵襲に備えて部下達に指示を飛ばす。
相手もこのままやられっぱなしではいないだろう。"めでたしめでたし"で事件を締めくくる前には、もう一波乱あるはずだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
祇条・結月
ゾンビ鮫……なんかの映画みたいだ
……なんて。
コンキスタドール。理不尽な侵略者。居たい場所を壊される「誰か」を見捨てたりしたくない
絶対に
【目立たない】ように【水泳】でこっそり下準備をしながら現場に接近
苦無で手早くロープを切って生贄にされそうな人たちを助けていく
ゾンビ鮫が迫ってきても落ち着いて対処
下準備、してあるっていったでしょ。
【ロープワーク】【罠使い】で張り巡らせた銀の糸が泳いで接近してきた鮫たちを捕縛、あるいは締め上げて両断していく
開放した人たちに≪鍵ノ悪魔≫を降ろして万が一の被害を避けてもらって
痛みは、僕が肩代わり
【覚悟】の上だ、【激痛耐性】で堪える
鮫たちは落ち着いて銀の弓で狙撃していくよ
「ゾンビ鮫……なんかの映画みたいだ……なんて」
劇場で、あるいはテレビの前で見たような、B級映画のワンシーン。それを思い出しての冗談を口にするも、すぐに祇条・結月(キーメイカー・f02067)は表情を引き締める。
(コンキスタドール。理不尽な侵略者。居たい場所を壊される「誰か」を見捨てたりしたくない――絶対に)
この島で虐げられている人々も、不条理に奪われようとしている命も、全ては現実。
彼らを救わんという決意を胸に秘め、水着姿の少年は波音を立てぬよう海に飛び込んだ。
「助けに来たよ」
ゾンビ鮫の群れを避けて、目立たぬように生贄の現場まで泳いでいく結月。彼が声をかけると、食われるのを待つばかりだった人々の顔にはほっと安堵の表情が浮かぶ。
「た、助かった……で、でもサメが、もうすぐ傍まで」
「こっそり下準備をしてきたから、大丈夫」
結月は衣服から苦無を取り出すと、手早くロープや鎖を切って人々を解放していく。
その後ろから迫るは、水面に浮かんだ三角のヒレ。もしこれが映画だったなら、次のシーンは海中に引きずり込まれる少年の悲劇で確定だろう。
「き、来たぁッ!!?」
ざばんと波しぶきを上げてゾンビ鮫が牙を剥く。島民達の恐怖の絶叫が響き渡る。
だが、その中でただ一人結月だけが落ち着き払った様子で、後ろを振り返りもせず。
「下準備、してあるっていったでしょ」
彼の胸元の「銀の鍵」から伸びるのは銀の糸。ここまで泳ぎ着く間に海中に張り巡らされたそれは、極めて視認が難しく、さらには頑丈かつ切れ味にも優れた極小の刃。
気付かぬまま襲い掛かったゾンビ鮫は、蜘蛛の巣に飛び込む羽虫のごとく銀糸に絡め取られ、そのまま締め上げられて真っ二つになった。
「今のうちに陸まで逃げて」
銀糸の罠でゾンビ鮫を足止めしながら、結月は解放した人々の避難を促す。万が一の被害を避けるために、その身の安全を守護する【鍵ノ悪魔・分霊】を降ろしながら。
「少しくすぐったいかも。ごめんね」
銀の鍵を回してカチリと錠をかければ、彼らの身体は物質はもとよりあらゆる攻撃や障壁を透過するようになる。凶暴なゾンビ鮫の牙もこれでもう傷一つ付けられない。
ただし術者である結月自身は、守護者を降ろした分の代償をその身に支払うことになる。掛けた「合鍵」ひとつにつき相応の激痛が、猛毒や呪詛のように彼を蝕んでいく。
(覚悟の上だ)
結月はぐっと歯を食いしばって堪えながら、無事に避難していく人々を見守る。
彼らが傷つくくらいなら、その痛みは自分が肩代わりする。もう十分に苦しみ抜いたであろう彼らに、これ以上の痛みは必要ないはずだから。
「絶対に、僕は見捨てない」
その覚悟に応えるかのように、銀の鍵は少年の手の中で一張の弓へと形を変えた。
同時に現れたエネルギーの矢を弦につがえ、銀の糸に絡まったゾンビ鮫に狙いをつける。
「だから、さよなら」
落ち着いて深呼吸をひとつ――放たれた銀の矢はまっすぐにサメの心臓を射抜く。
断末魔の声もなく水底に沈んでいく骸をよそに、結月は休みなくエネルギーの矢を現出させ、残ったサメの群れを狙撃していくのだった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『ウォーマシン・タイプマリン』
|
POW : 襲撃は速やかに
【急速接近からの超高温ヒートカトラス 】による素早い一撃を放つ。また、【水中から船・陸上へ強襲出来る推進機構起動】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD : 障害は燃やし沈めて
【機敏な動きで右腕に担いだマルチランチャー】を向けた対象に、【通常炸裂弾頭か高速誘導魚雷】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 命と宝は根こそぎに
自身の【頭部(メガリス探知用センサーユニット)】が輝く間、【敵位置を常に補足し】放つ【銛型高速徹甲弾】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
イラスト:良之助
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ああ、助かった……ほんとうに、夢じゃないんだよな……!」
「もう助けなんて来ないものとばかり……ありがとうございます!」
猟兵達の活躍によって、ガレオス島を襲ったゾンビシャークの群れは撃退される。
生贄として囚われていた島民達も、無事に全員怪我もなく救出することができた。
浜辺ではもう二度と生きて会えないと思っていた親や子、友や恋人が抱き合って喜びを伝えあい、猟兵達に心からの感謝を告げる。
だが猟兵達はまだ警戒を緩めない。この戦いはまだ終わってはいないからだ。
今のゾンビ鮫はしょせんコンキスタドールのペットに過ぎない。猟兵という厄介者を認識した敵が次に差し向けてくるのは、それ相応の実力を持った配下――。
「――"掟"を妨害する異分子を確認。これより排除します」
果たしてそれは、昏い海の底より、微かな機械の駆動音と共に浮上してきた。
この世界に漂着したスペースシップワールドの島で生産された機体だろうか。
蒼海を思わせる青い装甲のカラーリングが特徴的な、水陸両用型の人型戦闘兵器――さしずめ『ウォーマシン・タイプマリン』と言ったところか。
「戦闘モード、起動」
感情を排した無機質な調子で、彼らは赤熱するカトラスとランチャーを構える。
ここにいる彼らはルル・クラドセラキーに従う兵器としてガレオス島の支配に加担してきた。命令とあらばいかなる非道をも実行する、冷徹なる機械のオブリビオンだ。
ルル本人を戦場に引きずり出すには、まずはこの機械兵士を一掃せねばなるまい。
ゾンビ鮫との戦いの熱も冷めやらぬまま、猟兵達はウォーマシンとの戦闘に臨む。
黒影・兵庫
腐ったサメの次は機械人形ですか
多種多様な戦力をお持ちの様で!
(『第六感』で敵の攻撃を予測し『オーラ防御』壁で防いだ後『衝撃波』で敵を弾き飛ばす)
素早くて硬くて数が多いのは厄介ですね
救援お願いします!せんせー!
(黒影の掛け声が発せられたと同時に「まっかせなさい!」の言葉と共に教導虫の抜け殻が敵に飛び蹴りしながら現れる)
せんせーは攻撃を!
俺は{皇糸虫}や粘着性の{蠢く水}を『念動力』で操作して敵に絡ませて動きを封じます!
倒した敵はバラバラにして『衝撃波』で別の敵へぶつけちゃいましょう!
「腐ったサメの次は機械人形ですか。多種多様な戦力をお持ちの様で!」
水面下より現れた新たな敵と対峙しながら、兵庫はどこかにいる親玉に向けて叫ぶ。
ゾンビ鮫よりも余程手強そうな、全身装甲と武装を携えたウォーマシン。鮫魔術師が擁する戦力の要であろう彼らは、波を切り裂いて急速にこちらに近付いてくる。
「襲撃は速やかに。目標を排除します」
推進機構による凄まじい移動速度で距離を詰めながら、無機質な声と共に振り下ろされるヒートカトラス。鋼鉄さえも溶かし斬るほどに赤熱化された刃の軌跡を、兵庫は研ぎ澄まされた第六感――"虫の知らせ"で予測してオーラの防御壁で受け止める。
「排除されるのはお前達の方です!」
アホ毛をぴこぴこと揺らしながら、オーラの防壁を衝撃波に変えて敵を弾き飛ばす。
ざぁっと波打ち際に押し返されたウォーマシン・タイプマリンであったが、その装甲にさしたる損傷はないようで、さらに海中にはまだ幾つもの気配が潜んでいるのが分かる。
「素早くて硬くて数が多いのは厄介ですね」
流石にさっきのサメのようにはいかないかと、敵の戦闘力を再認識する兵庫。だが、相手がどんなに手強い増援を出して来ようと、こちらにはもっと頼れる味方がついている。
「救援お願いします! せんせー!」
「まっかせなさい!」
黒影の掛け声が発せられたと同時に、気合いたっぷりの言葉と共に、蜂の触覚を持った長髪の女性が、クールな笑みを浮かべてウォーマシンに飛び蹴りしながら現れた。
彼女は兵庫の脳内にいる教導虫スクイリアのかつての肉体。現在は抜け殻となったそれを教導虫が遠隔操作しており、ある種のラジコンか操り人形のようなものに近い。
「せんせーは攻撃を!」
「ええ! こんな奴らすぐにスクラップにしてあげるわ!」
それは【教導姫の再動】。蜂蜜色の髪をなびかせながら、スクイリアの肉体は兵庫が持つのと同じ誘導灯型警棒と体術を駆使して、ウォーマシンの大軍に真っ向から挑む。
元は自分の身体とはいえ、今や可愛い教え子とひとつとなっている「せんせー」は抜け殻に未練は無いようで、反撃や負傷も辞さない苛烈な攻めで敵を追いやっていく。
「敵の増援を確認。攻撃を集中し、各個撃破を――」
スクイリアの脅威を悟ったウォーマシン部隊は直ちに包囲陣形を敷かんとするが、そうはさせじと兵庫が放った糸状の寄生虫「皇糸虫」が彼らを絡めとり、さらに粘着性の「蠢く水」が叩きつけられた。
「援護は俺に任せてください!」
念動力によって球状に固めた粘着液の塊を、トリモチ玉のように敵陣に投げ込む兵庫。
関節部に絡みついた糸虫と粘液は、ウォーマシンの運動性能を大幅に低下させる。それを見逃すような「せんせー」では無い。
「よくやったわ!」
賛辞を口にしながら繰り出される猛打の連撃が、動けない機械人形をスクラップの塊に変えていく。さらにバラバラにした残骸は衝撃波の一閃で吹き飛ばし、周囲の敵に対する武器としても利用するオマケつきだ。
「敵戦力、想定以上……」
鋼鉄と機械の飛礫から逃れるために後退しながら、ウォーマシン部隊は猟兵の戦力評価を改める。この戦い、どちらの勝利に終わるにせよ、長引くであろうことは間違いなかった。
大成功
🔵🔵🔵
朱酉・逢真
おいでやす。では死ねどす。これ絶対ェ間違ってンよな、どぉでもいいけど。クラドセラキーだかミルクセーキだかしらねえが、サメ以外の部下もいンのな。こいつらも過去の骸ってんならハナシは早ぇや。お還りくださいってなァ。
トンボ系のでけぇ《虫》に乗って高速移動しながら、《鳥》の群れを盾にして徹甲弾を防ぐ。ンで、強烈な酸の雨を降らせてあいつらを腐食させる。あいつらの上だけに降るように調整するし、終わったあと海に流れ出した毒は引き取るからよぅ。ちょいとガマンしてくれや。
「おいでやす。では死ねどす。これ絶対ェ間違ってンよな、どぉでもいいけど」
雑な感じが否めない京言葉(?)でウォーマシン・タイプマリン部隊を出迎えたのは、大きなトンボに似た"虫"に腰掛ける逢真。血肉の通わない機械兵器が相手だろうとも、病毒の神は別け隔てをしない。
「クラドセラキーだかミルクセーキだかしらねえが、サメ以外の部下もいンのな」
先刻のゾンビ鮫がペットだとすれば、この連中はさしずめ傭兵といったところか。
上に立つ者の趣味嗜好に関係なく、ただ命令を実行するオブリビオンの機械兵士だ。
「こいつらも過去の骸ってんならハナシは早ぇや。お還りくださいってなァ」
にいと笑みを浮かべる逢真に対する、ウォーマシンの返答は無言の銃弾の嵐だった。
【命と宝は根こそぎに】。輝く頭部のセンサーユニットの探知性能を頼りに放たれる銛型高速徹甲弾の一斉射撃は、ターゲットを無惨な蜂の巣に変えるのに十分な威力だ。
逢真は巨大トンボの機動性を活かして空を飛びまわるが、一度補足されたが最後彼らの照準は容易には振りほどけない。移動先を先読みしたうえで撃ち出される無数の徹甲弾が、"虫"ごと病毒の神を射落とさんとする――。
「おっと、危ねェ」
しかしその刹那、バサバサと騒々しい羽ばたきの音を立てて、無数の翼が射線を遮る。
逢真が使役する眷属は虫だけにあらず。その翼に乗せて海や山を越え、隔てた土地へと病を媒介する"鳥"の眷属達が、盾となってウォーマシン部隊の攻撃を防いだのだ。
「それじゃあ次はこっちの番だ。鉄の塊に効く毒といやァ、コイツだろう」
身代わりとなって散った羽吹雪の中、病毒と死の神は変わらぬ笑みを浮かべていて。
ふっと烟管から一吹き、放たれた煙は【エレメンタル・ファンタジア】によって空を覆う黒雲となり、鉄をも溶かす強烈な酸の雨を敵部隊の頭上に降らせはじめた。
「異常な気象変動を確認。警戒を――!!」
酸性雨などという言葉では生易しすぎる強酸の豪雨に打たれたウォーマシン達の機体は、たちまち腐食して朽ちていく。海中行動のために施された耐蝕性など、神の権能の前には何の役にも立たない。
「逃がしゃしねェよ」
逢真はその様を高みより眺めつつ、豪雨が敵の上にだけ降るように雨雲の位置と形を調整する。これだけ強力な酸が、万一にも味方である猟兵まで巻き込んで融かしてしまったら大惨事だ。
「中枢機関、侵食……機能、停止……」
ウォーマシン部隊をボロボロに腐食させた酸の雨は、自然のままに海へと流れて溶けていく。これを放置すれば近海の生物や生態系に悪影響が出るだろう、それは逢真にとってあまり宜しい事とは言えなかったが、オブリビオンを倒すためには致し方ない。
「終わったあと海に流れ出した毒も引き取るからよぅ。ちょいとガマンしてくれや」
彼の役割はあくまで生と死の帳尻合わせ。巻き込んでしまった海の生き物に詫びを入れつつ、さりとて敵に容赦することもなく、強酸の雨は戦場に降り続けるのだった。
成功
🔵🔵🔴
天王寺・七海
今回は、群れの仲間は待機。むしろ、相手がロボットということで、今回は、遠隔操作ユニット「シャチホコファンネルシステム」2つを起動して接近。
「あ、こいつら、ウォーマシンかよ。」
というわけで、奴らの近くまで飛行で接近、確認次第ファンネル2つで遠距離から【蹂躙】【鎧無視攻撃】【制圧射撃】【一斉発射】【先制攻撃】、熱線の【属性攻撃】で一気に殲滅を行う。
それでも残っていれば、超音波を利用した【衝撃波】(音の【属性攻撃】)で機械を内部からショートさせる。
まだ動くものがいれば、【エアロストーム】で空に固定して尾びれのドルフィンキックでふっ飛ばす。
アドリブ歓迎
「アンタ達は一旦待機。むしろ、相手がロボットなら今回はこっちでしょう」
仲間であるシャチの群れを控えさせて、七海が起動したのは1対2砲の遠隔操作ユニット「シャチホコファンネル」。その名の通り鯱を模した大型砲を随伴させ、再び空に舞い上がった彼女は、海中より新たに現れた機械兵士の部隊に近付いていく。
「あ、こいつら、ウォーマシンかよ」
敵影を確認できる距離まで近付けば、そのフォルムは確かに別の世界で似たようなものを見た覚えがある。猟兵としても一定の機体数が活躍しているウォーマシンだが、ここにいる水陸両用機「タイプマリン」は既にオブリビオンと化しているようだ。
「それじゃ、一気に殲滅しましょうか」
七海は超能力で風を操って空中に身体を固定すると、シャチホコファンネルの砲口を地上に向ける。敵の銃弾が届かない高空からの遠距離攻撃は、敵集団を制圧するための最適解のひとつだ。
「発射!」
ドォンッ、と大気を震わせる砲声。1対の片割れたるシャチホコから撃ち出された砲弾はその弾速と質量を遺憾なく発揮し、凄まじい衝撃と爆風を伴って大地を穿つ。
「砲撃確認。迎撃困難」
ウォーマシン部隊は頭部のセンサーユニットで砲手の位置を即座に補足するが、この距離ではいかんせん反撃の仕様がない。飛来する砲弾から逃れようと回避機動に専念するので精一杯だが、そこにもう一機のシャチホコから熱線が発射される。
「回避―――!?」
眩い閃光がウォーマシンを貫き、胸に大穴を空けた機体がばたりと地に倒れ伏す。
実弾と砲弾を併用したシャチホコファンネルの猛射は、戦場に土煙と水蒸気を巻き上げながら、次々と敵機を殲滅していった。
「まだ残ってるのがいるし」
それでも遠距離攻撃のみで全ての敵を駆逐することはできなかった。煙に紛れて砲弾の雨から逃げ延びたウォーマシンを視認すると、七海は頭部のメロンブレインから超音波を発する。
「だったら次は中からブッ壊す」
本来はシャチ同士が会話するためのそれも、超能力で強化されれば立派な武器となる。強烈な音の衝撃波を浴びたウォーマシンの機体は内部からショートしていき、バチバチと音を立てて膝から崩れ落ちた。
「被害甚大。一時後退を――」
続々と仲間が大破していく中、しぶとく残ったウォーマシンは海に逃れようとする。
だが潜航するよりも早く、ふいに巻き起こった乱気流の嵐が、彼らを空に舞い上げる。
「水陸両用でも、空ならどう?」
それは七海の操る【エアロストーム】。飛行性能を持たない敵を空中に固定した彼女は空を泳ぐように悠々と近付いていき、尾びれをしならせドルフィンキックで一蹴。
「ガ―――ッ」
ふっ飛ばされたウォーマシンは放物線を描いて地に叩きつけられ、それきり立ち上がって来ることは無い。たった一頭のシャチによって、戦闘兵器の一部隊が壊滅した瞬間であった。
成功
🔵🔵🔴
カビパン・カピパン
島民達は無事に救出されたが、カピパンは誰も助けてくれなかった。
「…私さぁ、疲れたからマジで帰りたいんだけど、帰っていい?」
と思ったら機械兵が現れて周りの猟兵達もドンパチ始まった。
柱に鎖で縛りつけられていたままで八方塞がり。
…なんだかムカついてきた。ああそう、そういう事。私には活躍シーンが用意されていないと言うなら上等よ。いらないわよそんなモン。逆らってやるわ!
便利な【リバレート】
全身が白い光が輝いたと思いきや、縛り付けられた柱ごと地面から持ち上げる。柱を背負ったシュールな光景。
機械兵士の思考回路も意味不明の理解不能でショート寸前。
背中の柱を振りまわり、ピカピカ戦う女教皇(笑)であった。
「……私さぁ、疲れたからマジで帰りたいんだけど、帰っていい?」
海から現れた機械兵士と猟兵がドンパチ始める中、ボソッとぼやいたのはカビパン。
島民の救出はすでに完了し、安全な所まで退避しているというのに――なぜか彼女だけは、今だに鎖で柱に縛り付けられたままだった。
「なんで誰も助けてくれないんだろ……」
カビパンとて猟兵のひとり、恐らくその気になれば自力で脱出できると思われていたのだろうか。そうこうしている内に戦いが再開されてしまい、皆それどころではなくなってしまったわけだ。
「……なんだかムカついてきた。ああそう、そういう事」
八方塞がりに等しい状況に陥っていても、オブリビオンはそんなことを斟酌しない。
動けないカビパンの元にじわりじわりとウォーマシン・タイプマリンの1部隊が迫る中、当の彼女はそれに目もくれずに、なんか勝手にキレ始めていた。
「私には活躍シーンが用意されていないと言うなら上等よ。いらないわよそんなモン。逆らってやるわ!」
誰に対するものか不明なままに燃え上がる反骨心。ちょっとだけやる気を出す気になった彼女は【リバレート】を発動し、女神の加護による力を思いっきり解き放った。
「命と宝は根こそぎに。敵、殲滅……?!」
カビパンの全身が白い光で輝き、銃口を向けていたウォーマシン部隊のセンサーユニットを灼く。その直後、彼女は縛り付けられた柱ごと身体を動かし、柱を地面から引っこ抜きながら敵に襲い掛かった。
「てめぇら全員ぶっ飛ばしてやる! 覚悟しろ!」
聖女らしからぬアレな言葉使いに、柱を背負ったままのシュールな光景。だが女神の加護によって全能力が飛躍的に強化された今のカビパンはそんな状態でも俊敏に動きまわり、重たい柱をブンブンと振り回して敵部隊を薙ぎ払っていく。
「意味不明。理解不能」
あまりにもあまりな格好で大立ち回りを見せるカビパンに、さしものウォーマシンも困惑を隠せない。独特すぎる戦闘スタイルに対処法が分からず、思考回路はショート寸前である。
「うおりゃー!!」
敵が混乱しているのをいいことに、ドスの効いた雄叫びを上げてピカピカ戦う女教皇。その肩書の後ろには(笑)が付きそうな有様だが、その勇戦ぶりは本物だった。
縛めから武器へと役割を変えた最終兵器・柱の力で目についた敵をことごとくなぎ倒し、ぶっ叩いて海の藻屑にする。時間にしてわずか1分少々、その間に彼女が倒したウォーマシンの数は両手の指に収まらないほどであった。
「ふぅ、スッキリした!」
さんざ暴れるだけ暴れて付近の敵を壊滅させたカビパンは、満足そうに笑みを浮かべ。
それじゃ後はよろしく――と、柱と一緒にばったりとその場に倒れ込み、ユーベルコードの反動による昏睡状態に陥るのであった。
成功
🔵🔵🔴
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
ほう?見た目だけはそれなりだが…
掟を口にして動く辺り中身は随分と黴臭いと見えるな、このオモチャは
装備銃器と念動力で動くオーヴァル・レイによる銃撃を敵に行う
さらに敵のマルチランチャーの銃口を狙撃し、誘爆させ広範囲の敵を巻き込む
なんだ、水遊びがしたいのか?
フッ…なら付き合ってやろう
UCを発動
ドローン達を合体させ、「シーブリーチャー」とも呼ばれる一人乗りの武装高速潜水艇に変えて乗り込み、高速移動で敵集団を強襲
動き回りつつ水中では魚雷や機雷を発射し、水上ではハッチを開けて装備銃器で攻撃し、敵を殲滅する
どうした?先程の鮫よりも歯応えが無いぞ?
フン…数だけは多いようだが、使えんオモチャだな
緋神・美麗
アドリブ・絡み歓迎
ゾンビ鮫の次はウォーマシンかぁ。機械系ならこっちの方が有利かしらねぇ。
「機械なら雷には弱いでしょ」
出力可変式極光砲を属性攻撃で雷に変換し、攻撃回数重視で誘導弾・衝撃波・2回攻撃・鎧無視攻撃・気合い・力溜め・先制攻撃・範囲攻撃を重ね、広域殲滅していく
敵の攻撃は見切り・第六感・野生の勘・学習力・戦闘知識を駆使して回避する
「いい加減モブの相手もうんざりねぇ。これでやっと親玉の顔が拝めるのかしら」
「ほう?見た目だけはそれなりだが……掟を口にして動く辺り中身は随分と黴臭いと見えるな、このオモチャは」
浮上するウォーマシンの大部隊と対峙しながら、キリカは不敵な笑みを浮かべる。いかに高性能だろうとボスの命令に従っているだけの兵器など、恐れるには値しないと言わんばかりの態度だ。
「目標確認。襲撃は速やかに」
蒼き機械兵士は淡々と無機質なトーンのまま、推進機構を起動して強襲を仕掛けてくる。即座にキリカは手にしたVDz-C24神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"のトリガーを引き、浮遊砲台"オーヴァル・レイ"と共に銃弾とビームを浴びせて応戦する。
「障害は燃やし沈めて」
水陸に適応したウォーマシン・マリンタイプはサメをも上回る速さで機敏に銃撃を躱しながら、右腕に担いだマルチランチャーの発射口を向ける。だが、燃料を満載した炸裂弾頭が発射される刹那、大気を引き裂くような轟音と共に閃光が彼らを貫いた。
「―――!?」
「ゾンビ鮫の次はウォーマシンかぁ。機械系ならこっちの方が有利かしらねぇ」
それは美麗の放った【出力可変式極光砲】。サイキックエナジーを変換した雷のエネルギーを電球として発射する、対単体にも対集団にも調整可能なユーベルコードだ。
「機械なら雷には弱いでしょ」
鋼の装甲を纏った敵には【超巨大電磁砲】よりも電力を直接ぶつけるほうが有効。
そう考えた美麗は幾つもの電球を広域に拡散させ、敵陣を一掃する手に打って出た。
「緊急回避……」
敵ウォーマシンは即座に回避機動を取るが、誘導弾の性質を併せ持った無数の電球すべてを避け切ることは不可能であり、電撃を浴びてショートする機体が続出する。
その機を逃さずキリカは小銃の照準をマルチランチャーの発射口に合わせ、装填済みの炸裂弾に銃弾を叩き込む。感電により動きの鈍くなったウォーマシン部隊は、誘爆したランチャーの爆発に巻き込まれ、四方八方にふっ飛ばされていった。
「なんだ、水遊びがしたいのか? フッ……なら付き合ってやろう」
吹き飛んだ敵が海に落ちたのを見ると、キリカは【シアン・ド・シャッス】の戦闘ドローン群を再び合体させ、イルカやサメに似たフォルムの船体をした「シーブリーチャー」とも呼ばれる一人乗りの武装高速潜水艇に変形させる。
「そちらは浜辺からの援護を頼む」
「分かったわ。任せておきなさい」
七海はシーブリーチャーに乗って海上に出ていくキリカを見送ると、さらなる電力をチャージしては速射砲のような勢いで雷球を連射する。海にいる敵は勿論のこと、浜に上がってきた敵も、彼女の弾幕は決して逃さない。
「敵機再接近。迎撃を――」
海中に潜ることで雷撃を免れたウォーマシン部隊は、マルチランチャーの弾種を高速誘導魚雷に切り替え、接近する船体を沈めようとする。しかしキリカの潜水艇はそのフォルムに違わぬ水中での快速性を発揮し、機敏な動きで魚雷群をくぐり抜けていく。
「どうした? 先程の鮫よりも歯応えが無いぞ?」
コックピットのキリカは挑発的な笑みを浮かべながら水中で動きまわり、敵とのすれ違いざまに魚雷や機雷を発射。水上まで達するほどの爆発と水柱が上がり、爆砕されたウォーマシンの残骸が辺りに散らばった。
「フン……数だけは多いようだが、使えんオモチャだな」
潜水艇と共に一頭の猛魚となり、本物のサメよりも何倍も恐ろしい苛烈さと機敏さで敵を攻め立てるキリカ。追い詰められた敵が海上に浮上すると、待っていたとばかりにハッチを開き、手にした銃器とオーヴァル・レイの一斉射撃で殲滅する。
水陸両用のお株を奪うその戦闘力に、もはやウォーマシン部隊は為す術がなかった。
「あっちも派手にやってるわねぇ」
水面下での攻防を爆音や水柱といった形で見やりながら、一方の美麗も戦いを続けている。ヒートカトラスを振るって白兵戦を挑んでくる敵の動きを見切り、研ぎ澄まされた直感と経験を元に躱しざま、チャージ完了した極光砲を至近距離で撃ち放つ。
「中枢回路に深刻なダメージ。戦闘続行不能……」
雷球を叩き込まれたウォーマシンはバチッと火花を散らした後、プスプスと全身から黒煙を上げて機能を停止する。どうやら彼女の付近にいる敵はそれで最後だった。
「いい加減モブの相手もうんざりねぇ。これでやっと親玉の顔が拝めるのかしら」
表情とサイキックエナジーにまだまだ余裕を残しつつ、ぐるりと周囲を見渡す美麗。
この連中を操っている鮫魔術師の姿はまだ見えない。だが着実に、決戦の時は近付いているはずだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
パリジャード・シャチー
●心情
・ちっ。まだ出てこないのかサメ魔術師。まあいいや。くるまで暴れてやるもんねーだ。てめーの配下はぜーんぶスクラップに変えてやるぜい。
・じゃあ、やるか。サメじゃないからテンション上がらないけど。邪魔する奴には神罰を与えないとね。そんじゃ、シャチ裁判スタート。サメの味方はギルティー。ペナルティはスクラップだ
●戦闘
・巨大化させた愛羅で叩き潰すよ。敵の撃って来るミサイルは、うちが風を操って叩き落とすよ。攻撃見切って暗殺・スナイパーでミサイルを風属性の刃でばしーんと叩き落とす。うちの騎乗スキルならば、暴れまわる愛羅の上でも問題なく狙撃できるよん。
・さあ、うちに近づくと怪我するぜい。ま、近づくんだけど
「ちっ。まだ出てこないのかサメ魔術師」
凄みをきかせた低い声音で舌打ちするパリジャード。此度の元凶たるルル・クラドセラキーに対する殺気を全身からありありと放ちつつ、表情だけが笑顔なのが逆に怖い。
「まあいいや。くるまで暴れてやるもんねーだ。てめーの配下はぜーんぶスクラップに変えてやるぜい」
軽い調子で物騒なことを言いつつ、手にするのは水風神の権能の証たる風神扇・ルドラ。【巨大なる女神の騎獣】に跨りながら、彼女は敵のウォーマシン部隊を迎え撃つ。
「目標確認。障害は燃やし沈めて」
前方に立ちはだかる巨大な白象アイラーヴァタの姿を捉えたウォーマシン群は、右腕に担いだマルチランチャーの照準を合わせ、炸裂する通常弾頭を一斉に発射する。
炎の尾を引きながら飛来するそれは、着弾すれば神獣といえど無傷では済むまい。だがパリジャードが扇をひと煽ぎすると、ひゅっと吹いた旋風がミサイルを切断する。
「じゃあ、やるか。サメじゃないからテンション上がらないけど。邪魔する奴には神罰を与えないとね」
風の刃にてミサイルを叩き落とす、白象に乗ったシャチの着ぐるみの女。脳がこんがらがりそうになる外見だが、彼女がその物言いに相応しい力を持つのは事実だった。
「そんじゃ、シャチ裁判スタート。サメの味方はギルティー。ペナルティはスクラップだ」
弁護人も陪審員もない一方的な罪状と判決が下り、その刑罰は直ちに執行される。
咆哮を上げて進撃を開始する、パリジャードの騎獣アイラーヴァタ。ユーベルコードの力で平時の3倍まで巨大化したその体躯は、ただそれだけで他を圧倒する武器だ。
「脅威接近。至急、後退を……」
迫りくる威圧的な巨体から離れようとウォーマシン達は後ずさるが、ゾウというのは意外と本気で走れば速い。牽制のために放たれるランチャーの弾幕も、背中の上に乗ったパリジャードに一つ残らずばしーんと撃墜されてしまう。
「さあ、うちに近づくと怪我するぜい。ま、近づくんだけど」
猛進する巨象の上でもまったくバランスを崩さない騎乗技術で、風を操りながらにっこり微笑みかけるパリジャード。そして爆風と風刃の中を駆け抜けたアイラーヴァタは、ついに敵のウォーマシン部隊を射程内に捉える。
「防御体制―――!!!!」
鼻のひと薙ぎ、あるいは足のひと蹴りで、決着はついた。鋼鉄の装甲がアルミ板のようにぐしゃりと凹み、四肢は変な方向にひん曲がり、海までふっ飛ばされた機体は二度と浮いてこない。それはまさしく神罰という名の蹂躙であった。
「その調子その調子。全部叩き潰していいよ愛羅」
算を乱して散っていく敵を見下ろしながら、パリジャードはにこやかに騎獣に命じる。
忌まわしき鮫魔術師の手下どもが視界から一掃されるまで、女神の怒りは収まることを知らず、戦場には原型のなくなったスクラップの破片が散らばるのであった。
成功
🔵🔵🔴
メンカル・プルモーサ
……ふむ、水上・浜辺で対処出来る猟兵は多いだろうから……
水中に居るウォーマシンの対処をしようか…
…改造装甲車【エンバール】を潜水モードに変更して海中へと移動…
…海中から陸上・水上へと攻撃を仕掛けようとしているウォーマシンへと攻撃を仕掛けるよ…
…重奏強化術式【エコー】により持続時間を延長させた【狩り立てる嵐の魔犬】を発動…魔法陣を多数設置…
…魔法陣からの高速誘導弾により炸裂弾頭や高速誘導魚雷を迎撃しつつ…
…ウォーマシンの位置をサーチ…迎撃の爆発に紛れて【撃ち貫く魔弾の射手】により一体ずつ武器や頭部を狙撃して無力化していくよ……
「……ふむ、水上・浜辺で対処出来る猟兵は多いみたいだから……水中に居るウォーマシンの対処をしようか……」
推移していく戦闘の模様を眺めながら、装甲車の操縦席でメンカルはぽつりと呟く。
猟兵各自の奮戦によって、ウォーマシン・タイプマリンの強襲は文字通りの水際で食い止められている形だ。だがまだ、どれだけの敵が海中に潜んでいるかはわからない。
「……エンバール、潜水モードに変更……」
メンカルがコンソールを操作すると、マインドミナVBAから切り出された増設装甲が気密性を保持するように変形し、海中移動用のスクリューが展開される。空中と宇宙を除いた環境を選ばない脅威の走破性が活かされるのは、まさにこの時だ。
「高速誘導魚雷、装填完了」
「目標ロックオン」
海中では岩礁付近に隠れて潜航したウォーマシンの1部隊が、陸上・水上の猟兵達に奇襲を仕掛けようと、右腕のマルチランチャーの発射準備を整えている最中だった。
まさにそのタイミングで【エンバール】に乗って潜水して来たメンカルは、攻撃を阻止すべく即座に術式を起動させた。
「紡がれし魔弾よ、追え、喰らえ、汝は猛追、汝は捕捉。魔女が望むは追い立て喰らう魔の猟犬」
発動するのは【狩り立てる嵐の魔犬】。海中に設置された多数の魔法陣から魔弾が発射されるのと、ウォーマシン部隊が魚雷を一斉発射するタイミングはほぼ同時だった。
「誘導正常、着弾まであと――?」
水上の目標に命中するはずだった高速魚雷は、その途上で飛来した魔弾に撃ち抜かれ、海中で爆散する。猟犬の名に恥じぬ高い追尾性能を発揮するメンカルの魔弾は、高速の魚雷やミサイル群だろうと余さず撃ち落とすほどの精密性と弾幕密度を誇る。
「我が魔唱よ、重なり、奏でよ。汝は反復、汝は強調……」
メンカルは重奏強化術式【エコー】によって魔法陣の持続時間を延長させ、ガトリング砲さながらの弾幕でランチャーを迎撃しつつ、敵をサーチする術式も同時展開。
爆音が響く海中では彼我の位置を正確に把握することは難しい。彼女はその機に乗じて装甲車の駆動音を紛れさせ、岩礁に潜む敵に気付かれないように近付いていく。
「駆け抜ける魔弾よ、穿て、貫け。汝は徹甲、汝は貫通。魔女が望むは阻める物無き魔の一閃」
射線上に標的を捕捉した瞬間、メンカルが紡いだ術式は【撃ち貫く魔弾の射手】。高追尾高密度の弾幕を展開する嵐の猟犬に対し、こちらは一点貫通型の超高速狙撃であり、海中に閃いた魔弾の軌跡は敵ウォーマシンの頭部や武装を一体ずつ的確に貫く。
「――――!!」
仲間に警告を発する暇もなく、頭部に風穴を開けて沈黙していくウォーマシン達。
魔女と機械兵士の水中戦はかくしてメンカルが制し、それからこの海域内の敵が一掃されるまでに、さほどの時間はかからなかった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
魔術師の配下にウォーマシン…ある意味、様々な世界の島が存在するこの世界らしい光景だね…。
でも、助けた島の人達を身勝手の犠牲になんてさせない…。
一体残らず叩き壊すよ、みんな…。
引き続きミラ達を海王竜に進化させて戦闘…。
敵のクリュウが海中に巨大な渦潮を発生させ、敵の動きを封じ、アイが敵の魚雷や炸裂弾、ランチャー自体を水圧を操って圧潰…。
敵の動きも武装も封じたところで、【unlimited】を展開し、【呪詛】で強化…。
黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、早業】とミラの水のブレスと併せ、【unlimited】を一斉掃射して一気に水中・水上の敵を仕留めていくよ…。
命令されて動くだけの相手にわたし達は負けない…
「魔術師の配下にウォーマシン……ある意味、様々な世界の島が存在するこの世界らしい光景だね……」
他世界ではそうそう見ることは無い取り合わせに、璃奈はすこし興味深そうに呟く。
"島"という単位でグリードオーシャンに降ってきた異世界の文物。それらが共存し混じり合うような事象は、この世界では他にも数多く起こっているのかもしれない。
「でも、助けた島の人達を身勝手の犠牲になんてさせない……」
コンキスタドールの悪行に加担し、理不尽な掟を人々に強いると言うなら何者であろうと許すわけにはいかない。迫り来る蒼のウォーマシン部隊を前に、魔剣の巫女は家族たる竜達と共に立ち向かう。
「一体残らず叩き壊すよ、みんな……」
【呪法・海王竜進化】によって成長したままのミラ、クリュウ、アイの三匹は、璃奈の呼びかけに応えて勇ましく咆哮を上げ、波のうねりと共に敵に挑み掛かっていく。
その先鋒を務めるはクリュウ。水を自在に操る海王竜の能力にて海流を制御し、海中に巨大な渦潮を発生させて、付近にいる敵をこちらの土俵に引きずり込んでいく。
「海流に異常発生。脱出困難」
渦潮に巻き込まれたウォーマシン部隊は荒れ狂う海流によって機動力を封じられ、ただ流れに翻弄されるまま海中を漂う。しかし同時に渦潮の発生源であるクリュウの姿を捉えた彼らは、右腕のマルチランチャーの発射口を向ける。
「高速誘導魚雷、発射準備完了」
「そうはさせない……アイ……!」
魚雷が撃ち出される直前、二匹目の海王竜がひと声鳴くと、凄まじい重圧が敵にのしかかる。海流を操るクリュウに続いてアイが操ったのは水圧――深海のそれにも匹敵しようかという水の負荷が、ウォーマシンの機体と武装を押し潰さんとする。
水陸両用仕様として耐圧性も備えている本体はまだしも、このような高負荷での使用を想定されていない武装は耐えられない。ぐしゃりと見えない巨人の手に握り潰されたようにマルチランチャーが圧潰し、巻き込まれた魚雷と炸裂弾が暴発する。
「武装使用不可能……早く、脱出を……」
ランチャーを失ったウォーマシン部隊は推進機構をフル稼働させて渦潮から逃れようとするが、そうはさせじとクリュウとアイも水流や水圧を強める。ここはもはや機械兵士達の主戦場ではなく、無敵の海王竜が支配する絶対領域であった。
「呪われし剣達……わたしに、力を……」
敵の動きも武装も封じたところで、璃奈は【unlimited curse blades】を展開し、顕現した魔剣・妖刀の現身達を呪力で強化していく。同時に彼女を背中に乗せた三匹目の海王竜――ミラは口内に水の魔力を集め、ブレスの発射体制に入っている。
「高エネルギー反応を検知……出力、計測不能……!!」
璃奈と竜達の間にあるのは種族を超えた家族の絆。その強固な信頼がもたらした力と連携は、ただの機械人形には決して到達しえない、驚愕すべきスペックを発揮する。
「命令されて動くだけの相手にわたし達は負けない……」
海王竜と想いを一つにして璃奈が呪槍・黒桜を一閃すると、乱れ舞う黒い呪力の花吹雪と共に無数の魔剣が掃射され、併せてミラが津波のごとき海水のブレスを放つ。
魔剣の巫女と海王竜の力を合わせた一斉攻撃は、水中と海上にいたウォーマシンを残らず呑み込み、もう二度と浮上してこれぬよう完膚なきまでに粉砕したのだった。
成功
🔵🔵🔴
フレミア・レイブラッド
わたしの氷の軍勢、さぁ、いらっしゃい♪
【ブラッド・オブリビオン】で「荒野に飛来する氷鳥達」の「氷雪の鷲獅子」を召喚。
更に【虜の軍勢】で雪花、「氷雪の外洋を越えて」の『雪女』雪華を召喚し【吸血姫の契り】で強化。
わたしの可愛い眷属達による氷の軍勢、たっぷり味わわせてあげるわ♪
鷲獅子に雪花達と共に【騎乗】し、鷲獅子の背から氷の魔力弾【属性攻撃、高速・多重詠唱】を放ちつつ、鷲獅子の【凍てつく息吹】や【極寒の風】、雪花の吹雪と雪華の【氷柱散華や雪華輪】と共に海ごと一気に凍結させ、海の中や海上に出て来た敵をまとめて凍らせて一掃するわ。
人々を鮫の犠牲にするなんて…少し冷やすと良いわ。その身体も魂までも、ね。
「わたしの氷の軍勢、さぁ、いらっしゃい♪」
海より現れる機械の兵団に対抗すべく、フレミアは歌うような口ぶりで詠唱を紡ぐ。
【ブラッド・オブリビオン】にて召喚されるのは、凍てつく風を纏う氷雪の鷲獅子。
更に【虜の軍勢】によって招集された、雪女の雪華とその見習いである雪花が続く。
彼女達はかつてフレミアと敵として相見え、血の隷属と臣従の誓いを交わした者達。その中でも冷気の属性を強く有する、愛しき氷雪の眷属達だ。
「フレミア・レイブラッドが血の契約を交わします。汝等、我が剣となるならば、吸血姫の名において我が力を与えましょう」
フレミアは召喚した眷属ひとりひとりと【吸血姫の契り】を交わし、彼女らを一時的に吸血鬼化させて能力を引き上げる。瞳が真紅に染まった雪女達の身体からは真冬の雪山のような冷気が発せられ、南国さながらだった島の気温は急激に下がっていく。
「熱エネルギーの急激な低下を観測。警戒レベルを引き上げ」
ウォーマシン・タイプマリン部隊は頭部のセンサーユニットを輝かせながら、冷気の発生源に照準を合わせる。機械仕掛けの冷徹な殺気を向けられながら、しかしフレミアは恐れるふうもなく優雅に微笑むと、鷲獅子の背から配下に号令を下した。
「わたしの可愛い眷属達による氷の軍勢、たっぷり味わわせてあげるわ♪」
フレミアと雪女達を乗せて、空に舞い上がる氷雪の鷲獅子。逃すまいとウォーマシン部隊は対空射撃を開始するが、放たれた銛型の高速徹甲弾は全て鷲獅子の両翼から巻き起こる【極寒の風】に吹き散らされるか、氷の魔力弾によって撃ち落とされる。
「さぁ貴女達、遠慮はいらないわよ」
「はいなの、おねぇさまー」
「全力でご期待に応えてみせます」
魔力弾を放ったフレミアに続いて雪花は吹雪を起こし、雪華は巨大な氷柱や冷気を吹き出す雪結晶を降らせる。雪の眷属達によるユーベルコードの共演はさらなる気温の低下をもたらし、波立っていた海面が凪いだかのように急速に凍りついていく。
「異常事態発生、異常事態発生―――!?!?」
自然では有り得ない規模と速度の海洋凍結に巻き込まれたのは、海上や海中にいたウォーマシン部隊だ。陸海での機敏な戦闘を得意としていた彼らは、今や分厚い氷の枷と化した海そのものに捕らえられ、身動きひとつできない有様となっていた。
「人々を鮫の犠牲にするなんて……少し冷やすと良いわ。その身体も魂までも、ね」
フレミアは氷海の中でもがく敵に氷よりもなお冷たい視線を投げかけると、配下の軍勢に一斉攻撃を命じた。鷲獅子の発する【凍てつく息吹】が、雪花と雪華が放つ極寒の吹雪と雪華輪の嵐が、ひとつの莫大な凍気の奔流となって敵のいる海上を一掃する。
「――――!!!!」
その後に残されたのは、氷河期のような一面の銀世界と化した海原と、物言わぬ氷像に成り果てたウォーマシンの群れ。吸血姫とその眷属らの契りの力が作り上げた絶対零度の世界に、身動きできるものは皆無であった。
成功
🔵🔵🔴
ウーラ・エベッサ
※アドリブ歓迎
POW判定
・行動
敵がUCの【水中から船・陸上へ強襲出来る推進機構起動】で
接近してきた所を投網のアイテム「ラーンの網」で迎撃
包み込んだ相手をUC【ネットランディング】で振り回しながら
別の機体へ叩きつけて双方を破壊する
・セリフ
ゾンビ鮫の次はガラクタのおもちゃと来たかい
ルルってやつは生き物が嫌いなのかねぇ?
(網を投げ)
釣っても食えない外道ばかりだ、
掬ってまとめて燃えないゴミにしてやるよ!
「ゾンビ鮫の次はガラクタのおもちゃと来たかい。ルルってやつは生き物が嫌いなのかねぇ?」
生気のない無機質なウォーマシン部隊を眺めながら、そんなことをふと呟くウーラ。
この配下がルルの趣味嗜好を反映してのものかは分からないが、かの暗黒鮫魔術師に生命を尊ぶ気持ちが欠片でもあれば、島民は理不尽な掟に縛られてなどいないだろう。
「目標を確認。襲撃は速やかに」
浜辺に立つウーラの姿を捉えたウォーマシン部隊は赤熱するカトラスを抜き放つと、推進機構を起動してまっすぐに向かってくる。食欲ではなく与えられた命令を果たすためだけに猟兵を狩らんとする彼らは、どこまでも冷徹な殺戮マシンであった。
「釣っても食えない外道ばかりだ、掬ってまとめて燃えないゴミにしてやるよ!」
サメを上回る速度で急接近してくる敵に対し、ウーラが投げつけたのは投網のメガリス「ラーンの網」。小さく畳まれていたそれは空中で大きく広がり、あっという間に迫りくるウォーマシンの大群をまとめて捕まえられるほどのサイズとなった。
「メガリス反応を検知。回避を……」
敵は急いで身を翻そうとするが時既に遅し、頭上からばさりと覆い被さったメガリスの網はいかな怪力でも千切れず刃物でも切れず。文字通りに一網打尽となった彼らはこの瞬間、狩る側から狩られる側となった。
「暴れるんじゃないよっ!」
網から脱出しようともがく獲物に引っ張られないよう、巨人の膂力を総動員して浜辺に引きずり上げるウーラ。そのまま彼女は投網をぐっと握り締めると、包み込んだ連中を【ネットランディング】で勢いよく振り回す。
「脱出、不能。危険、危険、危険――!」
無機質な口調に焦りを滲ませながら、ぶおんぶおんと宙を舞うウォーマシン部隊。常人では一機でも持ち上げられないであろう鋼鉄のロボットが、袋詰めにされた小石のように振り回される様は圧巻ですらあった。
「そらよっ、ブッ壊れなっ!」
十分に勢いをつけたところで、ウーラは威勢よく叫びながらぱっと投網を手放す。
網に包まったウォーマシン達は遠心力に従ってすっ飛んでいき、綺麗な放物線を描きながら――今まさに島に上陸せんとしていた、別のウォーマシン部隊の元に着弾する。
「!?!?」
向こうもまさか味方が上から降ってくるとは思いもよらなかったろう。凄まじい轟音と共に衝撃波が辺りに巻き起こり、激突したウォーマシン同士は互いの質量と衝撃に耐えきれず、コナゴナに砕けて爆発四散するのであった。
「一丁上がり! さあ次はどいつだ!」
ウーラは砂浜に散らばった残骸の中から網を回収すると、新たな獲物を求めて海を見る。サメだろうがメカだろうが、この海で彼女に獲れないものなどありはしない。
成功
🔵🔵🔴
シャーロット・クリームアイス
高性能センサーとか、イイもの持ってますねぇ。お給料いくらですか?
さて、センサーの欺瞞を図ったりの、慎重な作戦もアリですが。この敵は先鋒に過ぎません。あまり時間をかけずにやっちゃいましょう!
召喚! クラーケン先生!
たしかにあなたがたの索敵能力・射撃能力はすばらしい……しかーし!
そもそものサイズの違いを教えてあげますとも。
質量攻撃(※つまりただの打撃)をくらえ!
相手の銛は、クラーケン先生に守ってもらいます。
徹甲銛とはいえ、蟹属性でなければそれなりに保つハズですし、そもそも先生の触腕がいっぱいありますから、狙うのも簡単ではないかと!
逃げても構いませんよ。それともまだ、その大砲でわたしと戦いますか!?
「命と宝は根こそぎに。索敵を開始します」
海中から発光する頭部のセンサーユニットを浮かび上がらせ、周辺にいる敵の位置を補足せんとするウォーマシン・タイプマリン部隊。すでに猟兵の迎撃によって多くの損害が出ているものの、彼らは今だ侵攻を諦めることなく逆襲の一手を探っている。
「高性能センサーとか、イイもの持ってますねぇ。お給料いくらですか?」
そんな彼らの索敵網に掛かったのはシャーロット。からかうような口調で笑みを浮かべた彼女は、逃げも隠れもすることなく、正面から海上の敵部隊と対峙する。
「センサーの欺瞞を図ったりの、慎重な作戦もアリですが。この敵は先鋒に過ぎません。あまり時間をかけずにやっちゃいましょう!」
敵部隊のロックオンの対象になりながらも、このくらい余裕だと言わんばかりの態度を見せるシャーロット。その自信のワケを示すべく、彼女はさっと手をかざして叫ぶ。
「召喚! クラーケン先生!」
その瞬間、彼女の真下の海面がぐわっと大きく盛り上がり、水柱と波飛沫を上げて巨大な海魔が現れる。これぞ【海魔の手も借りたい】というシャーロットの要請に応じたサメール・ネットワーキングの用心棒、クラーケン先生である。
「新たな敵性生物を確認。至急排除を」
ウォーマシン部隊は右腕のランチャーを構え、銛型の高速徹甲弾を次々と発射する。
だが、鉄板すら貫くはずの銛はクラーケンの軟体ボディによって跳ね返されるか、衝撃を吸収されて深くまで刺さらずに止まってしまう。
「たしかにあなたがたの索敵能力・射撃能力はすばらしい……しかーし!」
いかに高性能を詰め込もうと、この先生を仕留めるには彼らの武装は火力が足りない。
シャーロットはびしりと敵に指を突きつけながら、海魔の巨体を盾にして隠れる。
「そもそものサイズの違いを教えてあげますとも。質量攻撃をくらえ!」
召喚主の号令のもと、クラーケン先生はその身から生えた無数の触腕を振り回す。
つまりはただの打撃なのだが、圧倒的な質量と手数にものを言わせた暴力は紛れもなく脅威であり、周囲にいたウォーマシンは次々としばき倒されて海に沈んでいく。
「この対象は撃破困難。召喚者を優先して排除する」
海魔の猛威を思い知った敵は再びシャーロットに攻撃の矛先を変えるが、うねうね蠢く触腕は攻撃だけでなく防御にも役立っており、その隙間を突いて召喚者を狙うのは非常に困難であった。
「逃げても構いませんよ。それともまだ、その大砲でわたしと戦いますか!?」
先生の触腕ガードに守られたシャーロットは、ふふんと強気な態度で敵を挑発する。
だが、命令を遵守するウォーマシン部隊に撤退の二文字はない。マルチランチャーの装填を変更し、貫通力よりも純粋な破壊力を優先した弾に切り替える。
「通常炸裂弾頭、発射」
一斉に撃ち出されたロケット弾が、立ちはだかる巨大クラーケンに着弾し爆発する。
だが、ウォーマシン部隊の持ちうる最大火力を持ってしても、海魔の身体はいくらか焦げただけで、その場から一歩も退かせることさえできなかった。
「蟹属性だったら危ないところでした」
あらゆる攻撃に耐性を有するクラーケンが苦手とするものは、この世で唯一蟹のみ。
徹甲銛の雨も爆炎の嵐も耐え抜いた巨いなる海魔は、シャーロットを庇いながらお返しだとばかりにブンブン触腕を振り回し、その範囲内にいる全てをなぎ倒していく。
こうなればもはや撤退どころではない。海中に逃れようとする者も根こそぎ触腕に絡め取られ、この付近にいたウォーマシン部隊は全滅したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ニィエン・バハムート
こちらから幾分【先制攻撃】気味に動き、敵が撃ってきた攻撃に対して【カウンター】するように全身のメガリスから【衝撃波】を放って着弾前に爆破させますわ。
そして攻撃してきた1体に【空中浮遊】からの【空中戦】で急接近して頭上を取り、そのまま【踏みつけ】にしてUCの地震の力を直接叩き込みます。大地を揺るがす力を受けて無事ということはないはずですの。
他の敵にも似たように超接近戦を仕掛けていきますわ。そうすれば向こうも味方を巻き込むことを嫌がって迂闊に攻撃しづらくなるでしょうし、いくら誘導魚雷でも私が攻撃行動をする度に地震が起きてれば狙いをつけづらいはずですの。
島民の皆さん…津波が来たらごめんなさいですの。
「陸に上がってくるのを待つことはありませんわね。こちらから仕掛けますわ」
海上から接近する新たな敵影を捉えたニィエンは、機先を制するべく飛び出した。
その背に移植した竜翼のメガリス、バハムート・ウイングを羽ばたかせて浮かび上がり、泳ぐような軽やかさで空を舞う。敵のウォーマシンも接近する彼女に気付いたか、右腕に装備したマルチランチャーを持ち上げ、ロケット弾の発射体制を取り始めた。
「通常炸裂弾頭、装填よし――障害は燃やし沈めて」
迅速かつ正確な照準から放たれる一斉射撃。まっすぐに自分をロックオンして向かってくる弾頭を捉えたニィエンは、ぐっと力を溜めるように両腕をクロスさせて身構え。
「この程度で私を止められると思わないことですわ!」
手足に尾に翼に角に、全身に移植したメガリスの力を一斉解放。巻き起こる衝撃波の嵐が飛来するロケット弾を吹き飛ばし、ニィエンに着弾する前に爆発させていく。
「今度はこちらの番ですの!」
炸裂弾を凌いだニィエンは、そのまま速度を緩めることなく攻撃を仕掛けてきたウォーマシン部隊に急接近。飛行能力を持たない敵の頭上を取るや否や、竜翼を畳んで弾丸のような速度で降下していく。
「世界を揺るがす竜王の鉄槌! バハムート・デストラクション!」
叩き込むのは【ナマズのグラグラ大地震】。義足型メガリス「人魚姫の飲み薬」に踏みつけられたウォーマシンが、巨人に揺さぶられたかのようにガタガタと振動する。
「マグニチュード、計測、不能。ダメージ、限界、突破――」
ノイズ混じりのメッセージを遺し、ウォーマシンの機体はそのまま砕け散っていく。
自らを竜人と改造したニィエンだが、本来の種族はナマズ目の深海人。その身に受け継がれし血と力は、大地震を起こすという本来なら空想上の能力をユーベルコードとして実現する。もちろん彼女はそれを竜王バハムートの力だと言い張るだろうが。
「大地を揺るがす力を受けて、無事ということはないはずですの」
粉砕された敵の残骸を踏み台にして、ニィエンは海面すれすれを滑るように翔ける。
仕掛けるのは互いの手が触れあうほどの超近接戦。その足が海面に触れれば大波が起こり、爪を振るえば暴風が吹き荒れる。攻撃動作の全てに地震のエネルギーを纏った今の彼女は、近付くだけでも危険な生きた震災だ。
「対象の危険性は想定以上。早急な排除を――」
反撃しようとするウォーマシン部隊ではあるが、この乱戦下で迂闊にランチャーを撃てば味方まで巻き込んでしまう。弾種を魚雷に切り替えて水中からの攻撃を目論むにしても、地震の影響で海が荒れ、まともに誘導や照準が機能しない有様だ。
せいぜい近接武器のヒートカトラスで応戦するしかなく、それさえも地震の力を纏ったメガリスの振動爪にあっさりとへし折られ、バラバラに引き裂かれていく。
(島民の皆さん……津波が来たらごめんなさいですの)
圧倒的パワーで敵部隊を粉砕しながら、ニィエンはひっそりと心の中で謝罪する。
幸いにも、救出された島民はほとんどが戦いに巻き込まれないよう内陸のほうに避難しているので、津波が起こっても一般人が巻き込まれる心配はないだろう。
ともあれ手を抜くわけにもいかない。鳴動する戦場がさらなる波乱を予感させる中、鯰の――もとい竜王のドラゴニアンは島を脅かす連中を海の藻屑にするのだった。
成功
🔵🔵🔴
泉・火華流
まったく…今度はロボット…節操がないわね…
色んな世界の要素が集まっているとはいえ、ホラー物の次はSF…と、どこか疲れたような呆れたような表情で言う
みんな下がってっ!!
一般人を海から離れて島の内側へ逃げるように呼び掛ける
相手は水陸両用の人型兵器…下手に海上で戦うよりも海辺か水深の浅い場所(深くても相手の腰ぐらいまで)で戦う
ダッシュ(+水上歩行)で移動、基本的に動きを止めない
ハイスチームミニガンやFBC…場合によってはアームドフォートも使用
相手の上半身が水から出ている敵は狙い目(腰まで水に浸かってる為、水中ほど動きも速くなく、水の抵抗で陸上ほども速くはないだろう)
「みんな下がってっ!!」
接近する敵のウォーマシンを捉えた瞬間、火華流は付近にいた島民に警告を発する。
両手にはハイスチームミニガンを構え、随伴するビームキャノンと共に皆をかばうように前へ。これ以上彼らに危害は加えさせないと、確かな決意がその瞳に宿っている。
「海から離れて、島の内側へ逃げて!」
「あ、ああ、分かった! あんた達も気をつけてな!」
島民らは生贄にされていた人々を支えながら、急いで内陸のほうへ逃げ去っていく。
その後を追うように、海中から蒼い装甲のウォーマシン部隊が浜辺に上がってきた。
「まったく……今度はロボット……節操がないわね……」
火華流は遠ざかっていく人々に背を向けると、上陸してきた敵にミニガンを向ける。
相手は水陸両用の人型兵器。下手に海上で戦うよりも、いつもどおりの動きができる浜辺や水深の浅い場所で戦えるほうが、こちらにとっては都合がいい。
「色んな世界の要素が集まっているとはいえ、ホラー物の次はSF……」
と、どこか疲れたような呆れたような表情で言いつつも、敵の頭部が輝きだすのを見ると気を引き締めなおし――たっ、と砂を蹴って駆け出しながら、ミニガンのトリガーを引き絞る。
「"掟"を妨害する者に、死を」
降り注ぐ銃弾の雨を装甲で防ぎながら、ウォーマシン部隊はランチャーから銛型の高速徹甲弾を射出する。センサーユニットによる標的捕捉機能もあってその照準は正確、火華流はエアシューズのホイールも使った全力疾走で降り注ぐ銛の雨から逃れる。
「映画みたいな相手はもうお腹いっぱいよ……」
休まずに足を動かし続けながら、こちらからもミニガンで弾幕を張る。搭載した【スチームエンジン】の改良によって火力を高めつつも取り回しを良くした改良型蒸気ガトリングガンは、海洋世界のウォーマシンの装甲にも有効打を与えつつあった。
「予測以上の反撃、目標の脅威度を更新」
鉛玉の嵐に晒された敵部隊は、その猛威に押されるようにじりじりと海側に後退していく。すかさず火華流は腰のバックパックから次元格納式アームドフォートを出現させ、さらなる追撃に打って出た。
「そこ……!」
狙い定めるのは半ばまで水に機体を浸からせた相手。腰部に装着した大砲が火を噴くと同時、随伴するビームキャノン【FBC】が閃光を放ち、砲弾とビームが襲い掛かる。
(腰まで水に浸かってる為、水中ほど動きも速くなく、水の抵抗で陸上ほども速くはないだろう)
という火華流の見立ては正しく、機動性を発揮できない状態に陥ったウォーマシンは為す術なく胸部と頭部を撃ち抜かれ、機能を停止する。にわかに敵陣に動揺がはしる中、途切れることのない弾幕と砲撃が、ウォーマシン部隊に追い撃ちをかけていく。
「ここから先には進ませない……」
その宣言通り、波間と浅瀬に追い詰められた敵はそこから一歩も前に出ることはできなかった。破壊されたウォーマシンの残骸が、波打ち際と砂浜に散らばっていく。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
(推進剤切れ全サ連アーマーを外し、水中へ)
相手に有利な地形ですが逃走の危険を鑑みれば叩く必要がありますね
異界の同族の性能に興味が無いと言えば嘘になりますが
その力、見せて頂きましょう!
(珍しく対抗意識剥き出し)
●水中戦も幾度も経験済み、遅れは取りません
センサーの●情報収集で位置と移動速度計測
一斉攻撃に合わせUC使用
素早くとも攻撃が直線過ぎますよ
●見切った攻撃の間隙を縫うような細かい●水中機動による●ランスチャージでの●串刺しや●怪力シールドバッシュでの殴打圧壊で複数機を一気に制圧
推進機構のオンオフ方向転換に慣性制御はSSW『戦闘』の基礎
GOの海の『略奪』に最適化され過ぎた…それが貴方達の敗因です
「ここまでよく役に立ってくれました」
推進剤の切れた全サ連製追加機動装甲を外して、トリテレイアは水中戦に移行する。
透明度の高いグリードオーシャンの海は視界良好で、スラスターで機動力も確保。
だがそれは敵のウォーマシン部隊にとっても同様。この世界で製造された機体であることを考えれば、単純な水中戦のスペックではあちらに分があると見ていいだろう。
「相手に有利な地形ですが、逃走の危険を鑑みれば叩く必要がありますね」
コンキスタドールに従い、破壊や殺戮といった命令を無慈悲に遂行するウォーマシン。
そんなものをここで討ち漏らせば、いずれまた新たな脅威になることは確実だろう。
「異界の同族の性能に興味が無いと言えば嘘になりますが。その力、見せて頂きましょう!」
接近してくる敵部隊をあえて水中で迎え撃つ姿勢を見せ、大盾とランスを構えるトリテレイア。常日頃から清廉で謙虚な彼にしては珍しく、対抗意識が剥き出しである。
その意気を汲んだわけでは無いだろうが、ウォーマシン・タイプマリン部隊もまた推進機構の出力を最大に上げて、ロケットのような勢いで急速に距離を詰めてくる。
「識別不明のウォーマシンを確認。敵性機体であると断定」
「襲撃は速やかに。異分子は排除されなければなりません」
冷徹な宣言と共に振りかざされるのは超高温のヒートカトラス。海中であっても冷めることのない赤熱した刃は、これまでにもあらゆる障害を一太刀にて排除してきた。
――だが、此度の相手は彼らが切り捨ててきた者達とは、ひと味もふた味も違う。
「素早くとも攻撃が直線過ぎますよ」
トリテレイアは機体各部のスラスターを小刻みに噴かせ、刃の間隙を縫うような細かな水中機動で敵の一斉攻撃をすり抜けていく。精密な出力調整はもちろんのこと、敵の攻撃のタイミングやモーションを完全に見切っていなければできない芸当だ。
【白騎士の背、未だ届かず】。各種センサーによる位置情報の把握と移動速度計測、加えて蓄積した戦闘経験に基づいた未来予測演算が、その行為を可能にした。
「水中戦も幾度も経験済み、遅れは取りません」
トリテレイアは全方位から繰り出される攻撃を悠々と躱しながら、すれ違っていく敵にランスを突き出す。彼我の相対速度を乗せた一撃は、蒼の装甲を容易く貫通した。
その言葉通りに水中での彼の機体制御は実に慣れたもので、水の抵抗や海流の影響にも惑わされることなく、故郷での宇宙遊泳のように自在に水中を泳ぎ回っている。
「何故……」
水陸両用機として設計された自分達が水中戦で一方的に撃破される事態を受けて、敵ウォーマシンの電脳に疑問というノイズが走る。水中でのスペックと数的優位も鑑みれば、こうも彼我の戦力は開かないはずだ。少なくとも、計算上においては。
「推進機構のオンオフ方向転換に慣性制御はスペースシップワールド『戦闘』の基礎」
無重力の世界で培った経験を海中戦に応用し、巧みな機動でトリテレイアは敵を追い詰めていく。最高速度での直線的な強襲を仕掛けるのではない、あえて出力を絞りながら行う微細な機体コントロール技術は、敵のウォーマシン部隊には無いものだ。
略奪者たるコンキスタドールの手先である彼らには、対等以上の実力を持った戦力との『戦闘』の経験や、それを想定したプログラミングがあまりにも不足していた。
「グリードオーシャンの海の『略奪』に最適化され過ぎた……それが貴方達の敗因です」
実直に指摘しながら叩きつけられる大盾の一撃が、蒼のウォーマシンを圧砕する。
略奪者の尖兵と守護者たる騎士。機械仕掛けの同族対決はかくしてトリテレイアに軍配が上がり、制圧された敵ウォーマシン部隊は水底へと沈んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
南雲・深波
【恋華荘】
鮫魔導士の配下になったロボでありますか
青い色で水中活動できるロボ…ははぁん、これもサメの一種でありますな?
ですが、機械のサメなど、それは私も通った道であります!
【最強幻想鮫軍団】出ませい!
ロボには機械のサメ、メカシャーク軍団で対抗でありますよ!
理緒殿の呼び出したマシンと連携して、我が召喚したメカシャーク軍団が一斉に突撃し、体当たりや機械の歯での噛みつきで攻撃していくであります
守りはいちご殿に任せ、私は攻撃に専念、次々とサメを召喚し、物量鮫作戦で押し通すでありますよ
…って、いちご殿?!
守ってくれるのはありがたいですが、理緒殿に何しているでありますか?!
押し倒したりするなど破廉恥な?!
彩波・いちご
【恋華荘】
サメの次はロボですか…なんというかB級映画っぽいですねぇ
攻撃は深波さんと理緒さんに任せて、私は3人を守ることに専念しましょう
…うるさんが戦闘向けでないので、フォローしないとですしね
三尾の邪神の依代体に変化して【異界の守り】を展開
3人を守る防御結界を張りつつ、召喚攻撃する深波さん理緒さんの直衛につきます
…うるさんはまぁ、結界で守っていれば、大丈夫かなぁと…?
攻撃は任せた分、3人は絶対に傷つけませんよ
結界を操り敵の攻撃はシャットアウト
追い付かないようなら、この身を盾にして庇う事も考えます
その際勢い余って理緒さんとぶつかり押し倒すような事に…(今唇が?)
…破廉恥じゃないですからね?!
菫宮・理緒
【恋華荘】
ゾンビ、サメときて、メカですかっ。
いろいろ要素がてんこ盛りだね。
「残念でした。『掟』を『妨害』しにきたんじゃないよ。なくしに来たの」
【E.C.O.M.S】を発動して【Octagonal Pyramid】を展開。
深波さんのサメ機動部隊と連携させて、ウォーマシンを数で圧倒していこう。
こっちに近づかれる前に、突撃させて落としていきたいと思うよ。
接近されそうなときは、ユニットをぶつけて止めちゃうことにするよ。
「そっちにはいかせないよっ」
うるさんのフォローをしようとしたら、
同じをことを考えてたいちごさんとぶつかって……。
(い、いま、唇……!?)
え、えっとね。破廉恥では、ない、と思うの。たぶん。
月灘・うる
【恋華荘】
こんどはロボ? ここの自称支配者って節操ないね。
せめてメカシャークじゃないんだ。
って、わわわっ!つっこんでくるー!?
びっくりして【オックスブラッド】を【乱れ打ち】しちゃうよ。
「うーちゃん、戦闘向いてないんだってばー!?」
味方にも敵にもあたらず、あわあわしていたら、
いちごさんの【異界の守り】に守られて、なんとか逃げ回るね。
少し落ち着いたら【ガイデッドスラッグ】を使って援護。
ダメージくらいは与えられてる、かな?
すこしコツを掴んできたかなーと思ったら、
調子に乗っちゃうのがダメなところ。
隙ができたところをロボに襲われ、
いちごさんと理緒さんに助けられ……たのはいいけど、
あ、みなみん、怒ってる?
「サメの次はロボですか……なんというかB級映画っぽいですねぇ」
「ゾンビ、サメときて、メカですかっ。いろいろ要素がてんこ盛りだね」
ゾンビシャークの群れを撃退した【恋華荘】の面々は、新たな敵集団と対峙する。
感心するやら呆れるやらといった調子で語り合うのはいちごと理緒。試しにヒーローズアースあたりでこの事件を映画化すれば、ひょっとしたらウケるかもしれない。
「こんどはロボ? ここの自称支配者って節操ないね」
せめてメカシャークじゃないんだ、と呟くのはうる。配下としての戦力を重視したのだろうが、鮫魔術師がSF的なロボットを従えるのはなかなかシュールな気もする。
そして深波はと言うと、何やら思案するような表情を浮かべながら、海中から浮上してくるウォーマシン・タイプマリンの部隊をじぃっと見つめていて。
「鮫魔導士の配下になったロボでありますか。青い色で水中活動できるロボ……ははぁん、これもサメの一種でありますな?」
「それは無理があるんじゃないかな?」
うるの冷静なツッコミは残念ながら聞き届けられなかった。鮫魔術士が使役するものは須らくサメ。水陸両用のサメも、二足歩行のサメも、機械のサメも、このグリードオーシャンでは決して有り得ないものでは無いのだ。たぶん。おそらく。
「ですが、機械のサメなど、それは私も通った道であります! 【最強幻想鮫軍団】出ませい!」
対抗心を燃やした深波が威勢よく叫ぶと、ざっぱーん、と水飛沫を上げて新たなサメの群れが召喚される。それはいかにもメカメカしい金属製のパーツを露出させた機械のサメ。深波の豊かな想像力はおよそあらゆる形態のサメを現実に具現化し得るのだ。
「ロボには機械のサメ、メカシャーク軍団で対抗でありますよ!」
「やる気まんまんだね深波さん。じゃあわたしも」
鮫機動部隊を展開した深波に合わせて、理緒は【E.C.O.M.S】を発動。正八角形の小型戦闘用ユニット【Octagonal Pyramid】の大群が召喚され、戦闘陣形を展開する。
「作戦行動、開始」
「突撃であります!」
ふたりが号令を発すれば、幾何学的なユニット群はふわりと宙を舞い、機械仕掛けのサメ達は波を切り裂きながら、一斉に敵のウォーマシン部隊に襲い掛かっていく。
「外部の人間がこの島の"掟"を妨害することは許されません」
「残念でした。『掟』を『妨害』しにきたんじゃないよ。なくしに来たの」
まるで条文を読み上げているように無機質なウォーマシンの言葉に、静かな微笑みを浮かべながら理緒が言い返す。理不尽な"掟"を敷いる暗黒鮫魔術師も、それを強制する配下共も一人残らずこの島から消し去る――そのために自分達は来たのだと。
「そちらも中々の性能のようですが、理緒殿のマシンと我がメカシャーク軍団には敵いますまい!」
自信たっぷりに語る深波の指揮の下、サメ軍団は鋼鉄のボディを活かした体当たりで相手を突き飛ばし、機械の牙で齧りついて敵ウォーマシンの体勢を崩す。そこに理緒が率いる数百機の戦闘ユニットが飛来し、豪雨のような一斉攻撃でトドメを刺した。
「敵戦力、100、200、300、400……なおも増加中……」
巧みな連携と数を武器としたメカシャーク軍団と【Octagonal Pyramid】の攻勢に圧倒されて、ウォーマシン部隊は猟兵達に近付くことさえできない。ならばと手数で対抗することにした彼らは、頭部のセンサーユニットを点灯させ、右腕のマルチランチャーから銛型の高速徹甲弾を射出する。
「命と宝は根こそぎに」
散弾のようにばら撒かれる無数の銛は、装甲の厚い機械鮫には大した効果は無かったが、耐久性の低い小型戦闘ユニットを破壊するのには十分だった。前線の一角が崩れた隙を突いて、数機のウォーマシンが推進機構を起動させ、猟兵への接近を試みる。
「わわわっ! つっこんでくるー!?」
こちらに向かってくる敵影に気付いたうるは、びっくりしながらオックスブラッドの引き金を引きまくる。だがパニックのあまり照準も定まらぬまま乱射された散弾では高速航行するウォーマシンを捉えることはできず、水面を無為に波立たせるばかり。
「うーちゃん、戦闘向いてないんだってばー!?」
敵にも味方にも弾が当たらずあわあわしていると、ふいに彼女の周りを薄っすらと輝く結界が包みこむ。それは仲間を守るためにいちごが発動した【異界の守り】だ。
「安心してくださいうるさん。もう大丈夫です」
邪神の依代体たる三本の尻尾を増やした姿に変化した彼は、穏やかな微笑を浮かべてうるを落ち着かせる。自らの理性と正気度を対価として、邪神の力を守護の力に。それはひとえに、大切な人たちをあらゆる危害から守るためのユーベルコードだ。
「攻撃は任せた分、3人は絶対に傷つけませんよ」
堅守の誓いを胸に秘め、召喚を行う理緒と深波の所にやって来たいちごは、ふたりの直衛として防御に徹する。揺れる三尾の動きに合わせて操作される結界の盾は、飛来する銛の雨だろうと、強襲する敵の刃だろうと全ての攻撃をシャットアウトする。
「……うるさんはまぁ、結界で守っていれば、大丈夫かなぁと……?」
「後ろのほうにいるし、大丈夫ー! ありがとういちごさん!」
守られているという安心感で落ち着きを取り戻したうるも、今度こそちゃんと狙いをつけて【ガイデッドスラッグ】を発射する。ラッパ状に広がるブランダーバスの銃口から放たれた散弾は見事敵陣に命中し、蒼いウォーマシン達の装甲に傷を付ける。
「ダメージくらいは与えられてる、かな?」
多少なりともこれで気を散らせれば、前線で戦っている味方の援護になるだろう。
軽快な銃声を響かせて、少女商人は一生懸命オックスブラッドを乱れ撃ちする。
「守りはいちご殿に任せ、私達は攻撃に専念。物量鮫作戦で押し通すでありますよ」
「わたしのほうはサメじゃないけど、そうだね。このまま数で圧倒していこう」
異界の守りを得た深波と理緒は、敵部隊を殲滅すべくさらなるサメとユニットを召喚する。倒されても倒されても、彼女達が健在である限りすぐに戦力は補充できる。敵対する者達からすればまさしく悪夢のような光景だろう。
「敵戦力、さらに増加。総個体数、計測不能」
「召喚者を撃破しなければ、状況打開は困難」
メカシャークに食いちぎられ【Octagonal Pyramid】の数に圧し潰されながら、それでもウォーマシン部隊は反撃の機を窺うが、いちごが直衛についている限りそれは至難の業だ。苦し紛れに放たれた炸裂弾頭の爆発も結界によって阻まれ、正面から防御を突破する手段が無いことを露呈した彼らはいよいよ追い詰められていく。
「すこしコツを掴んできたかなー」
後方から援護射撃を行ううるも、前線の優勢ムードを感じて緩んだ笑みを浮かべる。
狙いもだんだん正確になってきたし、この調子なら楽勝かも――そんな風にすぐ調子に乗ってしまうところが、まだ彼女が戦いに慣れていない証なのかもしれない。
「目標を確認。排除します」
「えっ? いつの間にっ?!」
サメとマシンの防衛線を大きく迂回してきた一機のウォーマシンが、推進機を稼働させて凄まじい速度で迫ってくる。前線の戦いに巻き込まれないようにと後ろに下がりすぎた結果、うるは逆に他の味方から孤立する立ち位置になってしまっていたのだ。
「危ない、うるさん!」
「そっちにはいかせないよっ」
うるが狙われていることに気付いたいちごと理緒は、すかさず彼女のフォローに回る。
緊急召喚された八角形のユニットが接近するウォーマシンにぶつかって妨害を仕掛け、その間にいちごが異界の守りを張り巡らせる。咄嗟のことながらも見事な対応だが、なにしろ相談する猶予も無かったために、予期せぬことは連鎖するもので――。
「(追い付かないようなら、この身を盾にしてでも……)うわっ?!」
「きゃっ!?」
うるを庇うために駆け出そうとしたいちごは、同じタイミングで同じことを考えていた理緒と勢い余ってぶつかり合い、そのままもつれあって押し倒すような格好になってしまう。しかもその際、お互いの顔になにか柔らかいものが触れたような。
(今、唇が?)
(い、いま、唇……!?)
奇しくも脳内でまったく同じことを考えながら、ぴたっと硬直するいちごと理緒。
至近距離で見つめあう形になったふたりの頬が、だんだん赤く染まっていき――。
「……って、いちご殿?! 守ってくれるのはありがたいですが、理緒殿に何しているでありますか?!」
一瞬流れかけた甘い雰囲気をふっとばしたのは、深波の渾身のツッコミであった。
いや、こちらもふたりに負けず劣らず、ほっぺたのほうは赤く染まっているが。
「ふう、危なかったあ……いちごさんも理緒さんもありがとって、あれ?」
一方、直前のフォローによって無事にピンチから逃れていたうるは、また独りのところを襲われないようにと皆のところに駆け寄ったところで、おかしな空気に気付く。
「あ、みなみん、怒ってる?」
「怒りますとも! 押し倒したりするなど破廉恥な?!」
ちょっと目を離した隙になぜか理緒はいちごに押し倒されているし、深波は頭から湯気を吹き出さんばかりだし。とりあえず戦闘中といった雰囲気では無い気がする。
「……破廉恥じゃないですからね?!」
ようやく硬直の解けたいちごが慌てて起き上がり反論するも、あまり説得力はない。
理緒のほうもゆっくりと身体を起こして、乱れた前髪を整えつつ反論するのだが。
「え、えっとね。破廉恥では、ない、と思うの。たぶん」
なぜかどもっているし、視線は泳いでいるし、やっぱり説得力はない気がする。
少なくとも深波はそれで納得しなかったようで、まだぷんぷん湯気が出ている。
(なんだか面白いことになったような、困ったことになったような)
思わぬ事態のトリガーとなってしまったうるは少し考えてから、とりあえず様子を見ていることにした。恩人であるいちごと同じ寮仲間の理緒がこれを機にどうにかなるのか、興味深いと言えば興味深いし。
「あ、そういえばロボのほうは……だいじょうぶっぽいね」
猟兵達がトラブルに見舞われていても、サメとユニットは元気に暴れまわっていたし、結界のほうも健在である。気付けば彼女らの周辺からウォーマシン部隊は一掃され、海原に残っていたのは機械の残骸をがじがじと齧るメカシャークだけだった。
大成功
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セルマ・エンフィールド
この島のもののようには見えませんね。このウォーマシンも一体どこから連れてきているのやら。
まぁ、どこから来ていようと構いません。骸の海に還すだけです。
こちらの位置を常に捕捉するといってもこの状況で隠れれば住民たちに被害が及ぶ可能性もありますし、元より隠れる選択肢はありません。そして、その必要もありません。
私に徹甲弾を放ってきたなら【吹雪の支配者】を。徹甲弾のほとんどは無機物、吹雪へと変換します。
海水もありますし変換元に困ることはありません。吹雪で半径75m内の敵を凍てつかせます。
機械ですし、氷が融ければまだ動けるかもしれませんので、フィンブルヴェトからの射撃で凍てついた敵は砕いておきましょう。
鳴海・静音
ここにきて鮫じゃねぇのかよォ!?
しかも…どうも相性最悪っぽいってのがなァ…
あー…船に接近されんのが怖ェから動きを止めるか
『亡霊の錨綱』ッ!空中より多数のアンカーを射出し、機械共を貫いて宙に吊り下げて拘束させてもらうぜ
そしたら後は簡単だ、誰でもいいからやっちまいなァ!
野郎共ッ!お前等も手を休めるなよォ!
相性が悪い事には変わりはねぇんだ、油断するんじゃねェぞ!
※協力・アドリブ歓迎
手下共の言動等はお好きにどうぞ
「ここにきて鮫じゃねぇのかよォ!?」
先刻撃退したゾンビ鮫とはがらりと趣の変わる敵に、思わずツッコミを入れる静音。
あれだけサメ推しだった暗黒鮫魔術師の配下に、まさかウォーマシンがいようとは予想できた者はいるのだろうか。異常とまでは言わずともまさかのチョイスである。
「しかも……どうも相性最悪っぽいってのがなァ……」
コンキスタドールの配下たるウォーマシン・タイプマリンはグリードオーシャンでの『略奪』に最適化された機体。航行する海賊船への強襲も彼らにはお手のものだろう。対処を謝ればかわいい手下達も船に積んだお宝も根こそぎに蹂躙されかねない。
「あー……船に接近されんのが怖ェから動きを止めるか」
静音は海賊船に向かってくる数機のウォーマシンの敵影に気付くと迎撃体勢に入る。呪われたカットラスの切っ先で空中を示すと空間に歪みが生じ、その向こうから幾つもの【亡霊の錨綱】が現れた。
「さっさと捕まえちまうぞッ!」
可憐な容姿でドスをきかせた号令一下、一斉に射出されたアンカーは海上の標的目掛けて飛んでいき、それに気付いたウォーマシン部隊は即座に回避運動を取る。
だが静音が率いる亡霊海賊団はもはや船員から船体、そしてロープの一本に至るまで亡霊仕様。一度狙った獲物はけして諦めない執念深さをもって、逃げる機械共を貫いた。
「この攻撃は拘束を目的とした……回避失敗、脱出困難」
太いアンカーの突き刺さったウォーマシン達は、そのまま空中の射出地点に引き寄せられる形で海から引きずり出され、宙に吊り下げられる。水中では高い敏捷性を誇る機体も、こうなってしまってはもう手も足も出ない。
「後は簡単だ、誰でもいいからやっちまいなァ!」
「ありがとうございます。これなら狙いやすい」
静音の叫びに応えて、島側から飛んできた銃弾が捕われのウォーマシンを撃ち抜く。
振り向けばそこにはクールな表情のセルマが、硝煙たなびくマスケット銃を構えて狙撃姿勢を取っていた。
「この島のもののようには見えませんね。このウォーマシンも一体どこから連れてきているのやら」
慣れた手付きで排莢と装填を行いつつ、敵の出所にふとした疑問を抱くセルマ。この世界は猟兵にとって未知の領域が多く、コンキスタドールの勢力図についても不明なところが多い。恐らくはまだ猟兵が見つけていないどこかの島の産物だろう。
「まぁ、どこから来ていようと構いません。骸の海に還すだけです」
敵がオブリビオンであるならやることは一つ。思考をシンプルに切り替えて、絶対零度の射手は宙吊りにされた標的を次々と撃ち抜いていく。向こう側からも狙撃するこちらの位置が分かるのを承知で、遮蔽物のない砂浜に位置取りながら。
(こちらの位置を常に捕捉するといってもこの状況で隠れれば住民たちに被害が及ぶ可能性もありますし、元より隠れる選択肢はありません。そして、その必要もありません)
スコープ越しにセルマが敵の動向を見張るなか、ウォーマシン部隊は頭部のセンサーユニットを輝かせ、宙吊りの体勢から右腕のマルチランチャーを構える。不自然な体勢ゆえに狙いは定めづらいが、まだトリガーを引く指先は動かせたようだ。
「目標捕捉。命と宝は根こそぎに……」
「ッ、やべッ」
発射口から大量の銛型高速徹甲弾が散弾のようにばら撒かれるのを見て、静音が思わず顔をしかめる。雑な狙いとはいえ手数が多すぎる、このままでは自分達も海賊船もまとめて被弾しかねない。
「問題ありません」
だが、一方のセルマはクールな態度を崩さないまま【吹雪の支配者】を発動する。
彼女を中心とした戦場の空気が急速に冷えていき、空から降り注ぐ徹甲弾の豪雨は全て、その空間に入った瞬間に凍りつく。
「この領域に足を踏み入れたが最後です……逃しません」
それは術者の周囲にある無機物を吹雪に変換するユーベルコード。徹甲弾の素材もほぼ無機物である以上、能力の対象からは逃れられず、吹き荒ぶ雪と風の一部となる。
(海水もありますし変換元に困ることはありません)
またたく間にセルマの周囲から半径75mは視界が真っ白に染まるほどの猛吹雪となり、凍てつく風雪の全ては空中のウォーマシン部隊に吹き付けられる。海水で濡れた機体は瞬時に凍結し、頭部のセンサーも徹甲弾の発射口も氷に覆われ、もはや機能しなくなった。
「ふう、危ないところだったな……野郎共ッ! お前等も手を休めるなよォ!」
冷えた汗を拭いつつ、手下達ならびにロープの亡霊に号令を発するのは静音。今度こそ反撃の隙は与えまいと錨綱ががっちり縛り上げ、「へいお頭!」と威勢よく叫びながら手下達が一斉攻撃を仕掛ける。
「相性が悪い事には変わりはねぇんだ、油断するんじゃねェぞ!」
「分かってまさぁ! こんな機械に負けて死ぬなんざ海賊の恥だ!」
「そんときゃぁもういっぺん化けて出るしかねェな!」
船長の怒鳴り声にギャハハと軽口を叩いて笑いつつも、その連携を乱すような者はひとりも居ない。たとえ動けない敵にも決して容赦はしないのが海賊流というものか。
「機械ですし、氷が融ければまだ動けるかもしれませんので」
油断も容赦もしないのはセルマもまた同じだった。味方を凍らせないように吹雪の流れをコントロールしつつ、愛銃フィンブルヴェトのスコープを覗きこみ、凍結したウォーマシンを狙い撃つ。
「―――!!」
耳障りな電子音の悲鳴と共に砕け散った機械の残骸は海に落ち、二度と浮かんでくることはない。氷雪と海賊の領域から全てのウォーマシンが一掃されたのは、それから程なくしてのことだった。
大成功
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祇条・結月
悪法も法……なんて物わかりよくはなれないよね
僕は日本の、ただの学生
「普通」を失うことが怖いって、知ってるから
救助した島民の人たちは避難しきれてるのかな?
まだなら、巻き添えにしたくない
出来るだけ波打ち際までで迎撃に出るよ
敵の攻撃の兆候や彼我の距離を【見切り】、全力の【ダッシュ】で常になるべくいい位置取りを心掛けるよ
ウォーマシンだけあって、搭載火器には不自由しないって感じ?
この手の武器だと厄介なのは爆風。
下手な迎撃じゃ意味がないから……僕だって【スナイパー】、攻撃のタイミングを見落とすへまはしないから。
銀の光の刃で削り取って、爆発自体を起こさせないまま消滅させて、返す刀で本体を攻撃するよ
返す刀で
「救助した島民の人たちは避難しきれてるのかな?」
戦いも佳境に差し掛かる中、結月は逃げ遅れた者はいないかと確認に回っていた。
ほとんどの島民は海辺から遠ざかるように島の内地へ避難したはずだが、万が一ということもある。やっと自分の居場所に戻れた「彼ら」を巻き添えにはしたくない。
「近付けさせるわけには、いかないよね」
確認を終えた彼は波打ち際のぎりぎりに陣取り、迫りくるウォーマシンを迎え撃つ。攻撃の兆候や彼我の距離を見極めるべく、全身の神経と意識を研ぎ澄ませながら。
「悪法も法……なんて物わかりよくはなれないよね」
家族や隣人を生贄に差し出させる理不尽な掟に、少年は静かな憤りを感じていた。
この島の人々は生き延びるために犠牲を選択したのかもしれないが、唯々諾々とそれまでの暮らしや生命が破壊される様を受け入れるのは、彼にはできそうもない。
「僕は日本の、ただの学生。『普通』を失うことが怖いって、知ってるから」
猟兵だろうと、すこし特殊な力を持っていようと、自分はごく普通のただの学生。
だからこそ『普通』の大切さを知っていて、奪われたくないと強く願う。そんな決意を受けて銀の鍵は眩く輝き、銀色の光で結月の身体を包みこむ。
「障害は燃やし沈めて」
立ちはだかる銀の光を視認したウォーマシン部隊は、機敏な動きで右腕に担いだマルチランチャーを構える。対する結月は即座に砂浜を蹴り、敵の照準を散らすように駆け回る。
「ウォーマシンだけあって、搭載火器には不自由しないって感じ?」
SFか戦争映画に出てくるような物騒な兵器を向けられ、肩をすくめながら軽口をひとつ。これまでの戦いを見る限り相手の弾種は炸裂弾、この手の武器で厄介なのは直撃を避けても襲い掛かってくる爆風だ。
(下手な迎撃じゃ意味がないから……)
銀色の軌跡を描いて素早く戦場を移動しながら、結月はなるべく迎え撃つのにいい位置取りを探る。うっかりタイミングを見誤れば、待っているのは黒焦げになった自分だ。
「目標をロックオン。発射」
ウォーマシン部隊も高速移動する標的の捕捉に手間取っていたものの、ついに照準の合わさったマルチランチャーが火を噴く。発射された炸裂弾がまっすぐ自分の元に飛んでくるのを見た結月は、その手元に銀の光を集束させて――。
「……僕だってスナイパー、攻撃のタイミングを見落とすへまはしないから」
【是、呪わしき銀の鍵】。時空を裂く銀の輝きを束ねた光刃が、飛来する炸裂弾を切断――否、空間ごと"削り取る"。爆風が厄介なら爆発自体を起こさせないまま消滅させる、それが彼の考えた迎撃の最適解だった。
「攻撃失敗。不発弾……?」
標的を焼き焦がすはずだった爆発が起こらないのに困惑を示すウォーマシン部隊。
すかさず結月は返す刀で銀の光刃を放射し、炸裂弾に続いてその本体を薙ぎ払う。
「これが繋がり。これが意地」
『普通』の守り手が振るった一閃は、蒼い機械装甲に銀の軌跡を刻み――それから一拍遅れて、機体中枢を削り取られたウォーマシン達の半身が浜辺に崩れ落ちる。
それを最後に、ガレオス島を襲った機械兵士は一機残らず機能を停止したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『暗黒鮫魔術師『ルル・クラドセラキー』』
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POW : ロドリゲスちゃん……おいで……
自身の身長の2倍の【飛翔能力を持つ巨大なゾンビ鮫】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD : あいつを……やっつけて……
【魔杖の髑髏から放つ、マヒ効果の暗黒ビーム】が命中した対象に対し、高威力高命中の【巨大ゾンビ鮫『ロドリゲスちゃん』】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 深淵より来たれ……混沌の使徒……
召喚したレベル×1体の【ゾンビ鮫】に【禍々しき触手】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
イラスト:TFJ,
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠天御鏡・百々」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ゾンビ鮫の大群に続いて、ウォーマシン・タイプマリン部隊の襲撃も退けた猟兵達。
島にひとときの静寂が戻るなか、しかし彼らは油断なく海原の向こうを見ていた。
"何か"がこちらに近付いてくる。それは、これまでの敵とは比べようも無いほどに邪悪で悍ましい、死と闇の気配。
「私の可愛いみんなと部下を……こんなにして……絶対に許さない……」
打ち寄せる波の音に紛れて聞こえてくるのは、鬱々とした怨念の籠もった少女の声。
そして、ザッパーンッ!! と水飛沫を上げて、海中から巨大なゾンビ鮫が現れる。
その背に跨るのは長い紫の髪をツインテールにした、水着にマントという奇矯な格好の娘――彼女こそこの島の支配者たる暗黒鮫魔術師『ルル・クラドセラキー』だ。
「あなたたち……一人残らず……サメの餌にする……」
容貌こそ可憐ではあるが、猟兵達を睨めつけるその瞳には底知れぬ闇が宿っている。
サメを愛し、人間をサメの餌と断ずる理不尽な掟を強いた狂気のコンキスタドール。
その精神性を常人に推し量ることは不可能だが、彼女が鮫魔術と死霊魔術の双方に精通した、強大な魔術師であることは紛れもない事実だ。
「ロドリゲスちゃん……あいつを……やっつけて……」
ルルが暗黒のオーラを纏った魔杖を掲げると、『ロドリゲスちゃん』と呼ばれた巨大ゾンビ鮫は当然のように空中に浮かび上がり、海原を波打たせるほどの咆哮を上げる。
対話の余地など始めからなく、彼女らは猟兵を八つ裂きにしてサメの餌にするつもりだ。そして猟兵達も、邪なるコンキスタドールに情けをかける理由はないだろう。
ガレオス島の明日を巡る猟兵とサメの戦いは、ついに最終局面を迎える。
敵は暗黒鮫魔術師ルル・クラドセラキー。島民の未来はこの一戦に掛けられた。
パリジャード・シャチー
●心情
・ついに出たなサメ魔術師。うちが神罰をくれてやるからなー覚悟すると良いんだよ。うちの怒りは有頂天だよ。うっかりシャチから竜に。
・と言う訳で妾の本気を見せてやろう。
・サメの餌にするなどとほざいたな、小娘。たんと苦しんで死ぬがいい。
●戦闘
・真の姿を開放。巨大な弓を持つ紫竜へと変身。風属性を纏い、空中戦。風神扇で風を起こして敵の動きを阻害しつつ、狙撃ポイントへと移動する。ヘブンソースとヘルソースの2種類のソースをたっぷり塗った鏃を敵の動きを見切ってスナイパー技能で打ち抜く。妾の料理技能を無駄に込めた2種のソースは、相乗効果で更なる辛みを生み出し、神経を焼き尽くすだろう。
「ついに出たなサメ魔術師。うちが神罰をくれてやるからなー覚悟すると良いんだよ」
いよいよ待ちわびた敵と相見え、真っ先に決戦の先陣を切ったのはパリジャード。
緒戦からサメへのヘイトが増し増しだった彼女はシャチの着ぐるみを脱ぎ捨て、荒ぶる風水神としての真の姿と力をここに顕現させる。
「うちの怒りは有頂天だよ。うっかりシャチから竜に」
その姿はもはや人でもシャチでもなく、紫の鱗に覆われた美しき竜神に。全身には烈風を纏い、手には神気を宿した巨大な弓を携え、紫紺の龍眼にて射抜くべき敵を睨めつける。
「と言う訳で妾の本気を見せてやろう」
「上等……私も……本気でいく……」
口ぶりまで威厳溢れるものに変わった竜神パリジャードに対して、敵も一歩も怯みはしない。最愛のペットである巨大ゾンビ鮫『ロドリゲスちゃん』に跨り、自在に空中を飛翔しながら襲い掛かってくる。
「ロドリゲスちゃん……食べていいよ……」
腐臭の漂う顎を大きく開き、柔らかそうな獲物の腹に喰らいつこうとするゾンビ鮫。しかしパリジャードは空いているほうの手に風神扇を構えてさっとひと煽ぎ。その瞬間、波が逆巻き、雲が消し飛ぶほどの暴風が巻き起こる。
「サメごときが妾を喰らうなど烏滸がましい」
「くっ……この……うっとうしい風……」
パリジャードの威のままに荒ぶる神風は戦場に予測困難な乱気流を発生させ、ゾンビ鮫の飛翔を阻害する。ルルは吹き飛ばされないようヒレにしがみつきながらロドリゲスを操作するが、どうしてもパリジャードに齧り付ける距離まで近付けない。
「サメの餌にするなどとほざいたな、小娘。たんと苦しんで死ぬがいい」
暴風の障壁にて敵の動きを制しつつ、パリジャードは狙撃ポイントに移動する。大弓に番えられた破魔矢の先端は毒などを仕込めるようになっており、ポタポタと真っ赤な雫が鏃から滴り落ちるほどの何かが今、そこにはたっぷり塗り込まれていた。
「溢れ出るサメへの殺意をこの矢に込めて!」
【神宮流弓術・禁技・赤竜乃吐息】。放たれた矢はひょうと獣の鳴き声のように風を切り、暴風の中であろうと狙いを過たず真っ直ぐに飛んでいく。完全に標的の動きを見切っていたパリジャードの技量もあって、渾身の一矢は見事にルルを撃ち抜いた。
「ぐ……な、に……これ……ッ!?」
最初に感じた負傷の痛みはほんの序の口。直後、ルルは傷口から全身が焼け爛れていくような激痛を感じ、矮躯をよじりながらサメの背中でのたうち回る。これまでの人生で彼女が味わったことのないその痛みの正体は、極限まで高められた"辛さ"だった。
「さあ、絶望的な辛さに神経を焼かれるがいい!」
風雨と雷の神であり、メイドであり、シャチであるパリジャードには、さらに絶望的な辛党という特徴もあった。その求める辛さのレベルたるや常人であれば悶絶必至。そんな彼女が作った激辛調味料がなんと2種類も先の鏃には塗られていたのだ。
1滴入れればどんな料理も地獄の辛さに仕上がるヘルソース。1口舐めれば耐性の無いものは気絶するというヘブンソース。もはや調味料という粋を逸脱した劇物を直接体内に撃ち込まれればどうなるか――。
「…………ッ!! ………ッ!!!!?!?!」
ルルにはもはや言葉を発する余裕すらなかった。実は料理上手なパリジャードがその腕前を(無駄に)込めた2種のソースの相乗効果はさらなる次元の辛みを生み出し、神経の末端から脳髄まで焼き焦がすほどの激痛をもたらした。
「し……しぬ……からすぎて……しぬ……!!!」
矢を引き抜こうにも、一度刺さった鏃は無数の返しのついた針に変化して抜けない仕掛けになっている。超絶激辛地獄の中を彷徨うルルは、悶絶しながらずるりとサメの背中から滑り落ち、ぼちゃーん、と海に落ちていった。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
目覚めたカビパンがルルに抱いた感情は
『この子恥ずかしくないのかしら』
水着にマントという体を張ったファッションセンスの敵はきっとお笑い芸人なんだろう。
「ロドリゲスちゃん」
「私の名前もロドリゲス」
「…えっ?」
「私がロドリゲスでも気にしないで。貴女のロドリゲスがロドリゲスの私を食べたらロドリゲスがロドリゲスを餌にするというロドリゲス愛がモドリゲスよ」
ハリセンで海面をバシバシ叩き熱弁する。
【ハリセンで叩かずにはいられない女】が発動。
ルルはカビパンワールドに招かれてしまった。
鮫達とルルは苦しみ出した。
そりゃあゾンビ鮫と闇を宿した狂気のコンキスタドールじゃ、こんなギャグ世界に適応できないだろうとばかりに。
(この子恥ずかしくないのかしら)
やる気を出して【リバレート】した反動から目覚めたカビパンが、今回の事件の元凶たる暗黒鮫魔術師ルル・クラドセラキーを目にして、最初に抱いた感想がそれだった。
水着にマントという体を張ったファッションセンスの敵はきっとお笑い芸人なんだろう。そう結論付けた彼女は愛用するハリセンをすっ、と教皇服の中から取り出した。
「ぅ……ぐ……ひどいめにあった……」
一方のルルは猟兵から受けた猛毒を海水で洗い流し、どうにか戦線に復帰を果たす。
顔色の悪い彼女を気遣うように、巨大ゾンビ鮫の『ロドリゲスちゃん』が寄り添う。
「うう……ありがとう……ロドリゲスちゃん……」
「私の名前もロドリゲス」
「……えっ?」
そこに壇上にあがる芸人のようにひょっこりと姿を現したカビパン。開口一発わけのわからない発言にサメと魔術師がぽかんとするなか、彼女はバシンとハリセンで海面を叩くと畳み掛けるように言葉の嵐を降らせはじめた。
「私がロドリゲスでも気にしないで。貴女のロドリゲスがロドリゲスの私を食べたらロドリゲスがロドリゲスを餌にするというロドリゲス愛がモドリゲスよ」
「………????」
さて彼女は今何回ロドリゲスと言ったでしょう。ハリセンで海面をバシバシ叩きまくりながらロドリゲスがゲシュタルト崩壊を起こしそうな熱弁を振るうカビパンを前にして、ルルの脳内はたちまちクエスチョンマークでいっぱいになる。
【ハリセンで叩かずにはいられない女】の魔の手によって、ルルはもうカビパンワールドに招かれてしまった。ここはカビパンのペースに合わせたギャグの世界。脱出するためには彼女のノリに合わせるしかない――それができる者がいるかはさておいて。
「さあ貴女のロドリゲスでロドリゲスの私を食べて、そうすればロドリゲスとロドリゲスがあわさりマザリゲスに。ロドリゲスがロドリゲスを食らいあうロド輪廻が完成してしまい、貴女のロドリゲス愛は一巻のオワリゲス」
本人曰くナウなヤングにバカウケと思っているギャグを散弾銃のようにばら撒きながら、だんだん調子に乗ってきたカビパンはルルやロドリゲスのこともハリセンでバシバシ叩きはじめた。
「う……あたまが……おかしくなりそう……」
女神の癒やしの力を宿しているとはいえ、そのハリセン自体にさほどの威力は無さそうだが、ツッコミを喰らったルル達は頭を抱えて苦しみだす。そりゃあゾンビ鮫と闇を宿した狂気のコンキスタドールじゃ、こんなギャグ世界に適応できないだろう。
「どうしましたロドリゲス、ゲンキデスか?」
「もう……やめて……それ……」
べしんべしんとハリセンで叩かれるたび、ぴくぴくと悶絶するルルとロドリゲス。
このままではボスキャラの威厳を破壊され、強制的にギャグキャラにされてしまう。
止まらないカビパンワールドから逃げ出すように、彼女らはバシャバシャと波飛沫を蹴立てて、ほうほうの体で遠ざかっていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳴海・静音
ハッ!やっと出てきやがったなァ!
最初にも言ったが…鮫程度にやられるようじゃ海賊の名が廃るってなァ!
…いや、今の俺はあくまで海賊の記憶があるだけで正確には推定ヒーローなアリスなんだけどなァ…
前のは条件に当てはまらねェ機械だったから相性が悪かったが…得意な奴もいるんだぜ
…ゾンビを集団でけしかけてくる奴もその内の一つでなァ
相手はすでに死んでんだ、さっさと乗っ取っちまいな野郎共ッ!『亡霊の呼声』!
ついでにそれを足場に俺も斬りかかに行くぜ!
人を鮫の餌ってのは…海賊としては何も言えねェな…処刑方法的な意味で
むしろオウガに喰われかけた身としてはちっとなァ…
※協力・アドリブ歓迎
手下共の言動等はお好きにどうぞ
「ハッ! やっと出てきやがったなァ!」
ようやく現れた全ての元凶を前にして、にぃっと白い歯を見せて威勢よく笑う静音。
右手には亡霊の海賊旗、左手には呪われたカットラスを構え、亡霊海賊船の甲板から数百名の手下達を従え。決戦の準備はすでに万端に整っている様子だ。
「最初にも言ったが……鮫程度にやられるようじゃ海賊の名が廃るってなァ! ……いや、今の俺はあくまで海賊の記憶があるだけで正確には推定ヒーローなアリスなんだけどなァ……」
ギラリと刃を突きつけ宣戦布告した彼女は、それからちょっとだけ自信のなさそうな表情になり。前世の記憶と現世の境遇が混ざり合う己のアイデンティティに悩む我らが船長を、幽霊の手下達がぽんと肩を叩いて励ます。
「大丈夫ですよ船長。船長が何者になろうとも、俺らはついていきますから!」
「お、おう、ありがとよお前ら! ならいくぜ、鮫狩りの時間だッ!」
「「オォォォーーーーーッ!!!!」」
少しだけ照れたような静音船長の号令一下、帆を広げて白波を上げる亡霊海賊船。
対する暗黒鮫魔術師ルル・クラドセラキーは、髑髏の杖を構えて呪文を唱え始める。
「深淵より来たれ……混沌の使徒……」
鬱々と海原に響く詠唱が召喚するのは、禍々しき触手を生やしたゾンビ鮫の大群。
先だって倒したサメ共をまた呼び出したのか――それも今度はユーベルコードによって強化されているようで、猟兵が相手でも数相応の脅威となりえる戦闘力がある。
「調子に乗っていられるのも……ここまで……」
散々に猟兵にしてやられた怒りを昏い瞳に宿し、指揮杖のように杖を振るうルル。
その意に応じた異形のゾンビ鮫達は、おぞましい咆哮と共に海賊船に襲い掛かった。
「前のは条件に当てはまらねェ機械だったから相性が悪かったが……得意な奴もいるんだぜ」
無数の敵が船を包囲するのを見やりながら、されど静音は一向に慌てることはない。
彼女には先の戦闘では発動できなかったとあるユーベルコードがある。その威力を発揮するためには、こちらと相性のいい敵が必要だった。
「……ゾンビを集団でけしかけてくる奴もその内の一つでなァ」
にやりと笑った海賊少女は、鮫魔術師に対抗するように海賊旗の杖を掲げて【亡霊の呼声】を発動する。その瞬間、幽霊の手下たちが一斉に海賊船から飛び出すと、燃える人魂となってゾンビ鮫の群れに突っ込んでいく。
「相手はすでに死んでんだ、さっさと乗っ取っちまいな野郎共ッ!」
【亡霊の呼声】は死体や気絶した対象に手下の霊魂を乗り移らせ、肉体の主導権を奪うユーベルコードだ。ルルの死霊魔術によってかりそめの生を得ているに過ぎないゾンビ鮫に憑依に抗うほどの自我はなく、まさに格好の標的と言えた。
「やっぱり人間の身体とは勝手が違うな」
「なあに、気合いで制御して動かしてみせらぁ!」
たちまちゾンビ鮫の肉体を群れごと乗っ取った手下達は、ぐるりと身体の向きを反転させる。その光景を目の当たりにして、ぎょっと目を丸くしたのはルルのほうだ。
「みんな……どうしたの……?」
愛するゾンビ鮫が自分のコントロールから離れ、一斉に自分のほうに殺到してくる。予想だにしない裏切りを受けたルルの困惑ぶりは逃げることさえ忘れるほどだった。
「ぼうっとしてんじゃねぇよ!」
その好機を見逃さず、静音は乗っ取らせたサメの背中を足場にして、ひょいひょいと身軽に飛び移りながらカットラスで斬りかかる。手下達の祝福という名の呪いがかかった刃は鮫魔術師の身体をざっくりと斬り裂き、その血肉と生命力を啜り喰らう。
「いた……ぃ……っ」
痛みに怯んだルルにすかさず追撃を仕掛けるのは、禍々しき異形のゾンビ鮫軍団。
静音の手下に乗っ取られた彼らはかつての主人に容赦なく牙を剥き、触手を振るう。
「この触手動かし辛いな!」
「とにかく噛め! ブッ叩け!」
挙動はややぎこちないとはいえ、数の暴力に晒されればいかに強大なコンキスタドールと言えど堪らない。ルルは鮫魔術で懸命に配下のコントロールを取り戻そうとするが、その間にも噛み傷や殴打の痕が全身に増えていく。
「人を鮫の餌ってのは……海賊としては何も言えねェな……処刑方法的な意味で。むしろオウガに喰われかけた身としてはちっとなァ……」
サメに襲われるルルを見やる静音の気分はやや複雑な様子。逆らう奴をサメに喰わせるのは海賊の常套手段だが、あわや化物に喰われかけて寸でのところで助かった今生の経験もあいまって、他人事とは割り切れないようだ。
「まぁ、てめぇに限っては因果応報ってヤツだし、容赦はいらねぇよな」
「よく……も……っ」
愛するサメを奪われた怒りと苦痛と屈辱に、身を震わせながら後退していくルル。
海上に点々と散らばる血の跡を追って、静音の手下はさらなる追撃を仕掛けていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
緋神・美麗
絡み・アドリブ歓迎
ようやく親玉の登場ねぇ。全く、ゾンビ鮫とか悪趣味極まりないってのよ。あんたの大好きなロドリゲスちゃん諸共うち滅ぼしてあげるわ。
「ゾンビ鮫とか盛り過ぎなのよ。所詮B級なんだからあっけなく滅ぼされなさい。」
ロドリゲスに全力全開で超巨大電磁砲を撃ち込む
「無駄にでかい図体のおかげで避けられないでしょ。ミンチにしてあげるわ。」
これでこの島も安泰かしら。他にもこんな面倒なのがいっぱいいるのかしらねぇ。
「ゾンビでなければ他の魚の餌にもなったでしょうに。ほんと百害あって一利もないわねぇ。」
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
親玉の登場か…
この美しい海には些か不釣り合いな輩だな
UCを発動
ドローン達30機をモーターボート、10機を電動ジェットボードにそれぞれ変える
電動ジェットボードに乗ったらエギーユ・アメティストをモーターボートに巻き付け高速移動しつつ、残り30機のドローン達と共に攻撃を行う
ドローン達が動き回れば暗黒ビームの照準もぶれるだろう
敵がモーターボートを狙いだしたらエギーユ・アメティストを外し、電動ジェットボードを動作させる
油断したな、コイツは単体でも水上移動が可能なウェイクボードだ
高速で移動しつつ敵を狙う事など訳はないさ
そのまま残りのドローン達を戦闘ヘリに変え、一斉射撃で敵を鮫ごと攻撃する
「親玉の登場か……この美しい海には些か不釣り合いな輩だな」
「ようやく親玉の登場ねぇ。全く、ゾンビ鮫とか悪趣味極まりないってのよ」
叛逆したサメの群れから逃げてきた暗黒鮫魔術師ルルを迎え撃つのはキリカと美麗。
キリカの指揮する【シアン・ド・シャッス】は、今度は30機合体のモーターボートと10機合体の電動ジェットボードに形を変え、ふたりの猟兵を乗せて海上を駆ける。
「あんたの大好きなロドリゲスちゃん諸共うち滅ぼしてあげるわ」
ボートの上から居丈高に放たれる美麗の挑発に、ルルは青白い肌にさっと血の気を昇らせて。その怒りを体現するように最愛の相棒たる『ロドリゲスちゃん』が牙を剥く。
「ゾンビ鮫とか盛り過ぎなのよ。所詮B級なんだからあっけなく滅ぼされなさい」
「この子達を……バカにするのは……許さない……」
ぎろりと猟兵達を睨めつけながら、魔杖の髑髏からマヒ効果のある暗黒ビームを放つルル。もしもこの攻撃が掠りでもすれば、動きを止められた獲物は直後に『ロドリゲスちゃん』の牙に食い散らかされるだろう。
連携の起点となるビームの照準を散らすために、キリカは純白の革鞭「エギーユ・アメティスト」を巻きつけたモーターボートに自身が乗るジェットボードを牽かせ、ボートと共に海上を高速で移動しながらシルコン・シジョンを構える。
「所詮B級というのは同感だな。さっさとご退場願おうか」
洗礼されし小銃が火を噴くのに併せ、乗り物の作成に使われなかった残り30機のドローン達も上空より攻撃を仕掛け、連なる銃声が聖歌隊の合唱のように戦場に響き渡った。
「ちょこまか……と……」
ルルは飛翔するゾンビ鮫の巨体を盾として銃撃を防ぎながら、動きまわる標的を捉えようと躍起になっていた。そのためには相手の足を潰すことが先決だと考えたか、まずはモーターボートのほうに狙いを定める。
「将を射んと欲すれば……先ず馬を射よ……」
どこで聞きかじったのかそんな故事を口にしながら、撃ち放たれる漆黒のマヒ光線。
だがその刹那、キリカは手綱のように握っていたエギーユ・アメティストを手放し、ボートとボードを分離させた。
「……!?」
牽引するものが無くなったことで軽くなったモーターボートは加速し、暗黒ビームの狙いが逸れる。そして置いていかれる形となったキリカのボードは――なんと、ひとりでに水飛沫を噴き上げて、独力で海上を滑り始めたではないか。
「油断したな、コイツは単体でも水上移動が可能なウェイクボードだ」
優れたバランス感覚で電動ボードを乗りこなしながら、にやりと笑みを浮かべるキリカ。思わぬ挙動に虚を突かれたルルが隙を見せる、その一瞬を彼女らは見逃さない。
「無駄にでかい図体のおかげで避けられないでしょ。ミンチにしてあげるわ」
仕掛けたのは美麗。モーターボートの上で巨大な鉄塊を浮かび上がらせ、ありったけのサイキックエナジーを電力に変換した全力全開の【超巨大電磁砲】を撃ち込む。
ほとばしるサイキックの雷光を纏うその姿は海上に降りた稲妻の化身のごとく、空へと打ち上がる砲弾の軌跡は青白い閃光となり――音速を超えた鉄塊は見事に『ロドリゲスちゃん』の土手っ腹に直撃した。
「ロドリゲスちゃん……ッ!!!?!」
巨大ゾンビ鮫の胴体に大きな風穴が開くのと同時に、ルルの顔が驚愕と苦痛で歪む。魔術的に密接に繋がりあったふたりは互いの生命力を共有しており、一方が受けたダメージはそのままもう一方の痛みとして伝わるのだ。
「今だ。『猟兵』より『猟犬』に告ぐ、眼前の獲物を全力で狩り獲れ」
力なく高度を落としてゆくルル達を追い打つのはキリカと【シアン・ド・シャッス】。
空中にいた30機のドローンは瞬時に大型の戦闘ヘリに変形合体し、搭載されたありったけの武装による攻撃を開始。海上からはシルコン・シジョンと機関拳銃"シガールQ1210"の二丁持ちに切り替えたキリカが、海上を移動しながら一斉射撃を仕掛ける。
「くぅ……っ!!!」
激しい火力の猛襲に耐えかねたルルとロドリゲスは、鮮血を撒き散らしながら墜落していき、ドボンと大きな水柱を上げて海中に没する。まだ息の根があるかは定かではないが、少なくともあの傷で軽傷ということはあるまい。
「これでこの島も安泰かしら。他にもこんな面倒なのがいっぱいいるのかしらねぇ」
海中に向けて次弾の発射準備を整えながら美麗が呟く。グリードオーシャンの調査はまだ始まったばかり、このルルよりも凶悪なコンキスタドールもこの先に待ち受けているだろう。逆に言えばこの程度の相手に足止めされている暇はないというとだ。
「ゾンビでなければ他の魚の餌にもなったでしょうに。ほんと百害あって一利もないわねぇ」
せめて海を汚すゴミにもならず跡形もなく消し飛ばしてやろうと、再びの雷光と共に鉄塊が射出される。ズドォンッ!! と鼓膜をつんざくほどの爆音と大量の水飛沫が上がる中に紛れて、サメと鮫魔術師の悲鳴が確かに聞こえた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
残念だけど…人を鮫の餌としか考えられない貴女とは理解する事はできないかしらね…。
2章で呼び出した鷲獅子に引き続き騎乗。
【ブラッディ・フォール】で「黒竜を駆る者」の「ドラゴンテイマー」の姿(フレミアがテイマーの黒衣と剣を装備し、翼が生えた姿)へ変化。
浜辺の流木や石ころ、2章で倒した敵の残骸等を【文明侵略】で全て黒竜へ変化させ、一斉にルルとゾンビ鮫へ突撃。
更に【ギガンティックダイウルゴス】を全て合体させて召喚。本命として突撃させてゾンビ鮫達を蹂躙させつつ、鷲獅子には【凍てつく息吹】や【極寒の風】で支援させるわ。
最後通告よ。観念して投降する様なら命だけは助けてあげるわ(【念動力】で拘束しつつ)
「残念だけど……人を鮫の餌としか考えられない貴女とは理解する事はできないかしらね……」
引き続き氷雪の鷲獅子の背に跨りながら、フレミアは海上の暗黒鮫魔術師を見やる。
猟兵とコンキスタドールという差異以前に、サメを至上のものとするルルの思考は他人と相容れない。そして彼女自身もサメ以外の生物に歩み寄るつもりはないだろう。
「私のサメを傷つけるやつは……みんな死ねばいい……」
傷ついた少女は怒りの籠もった目で上空のフレミアを睨みつけると、ぶつぶつと召喚の呪文を唱える。再び深淵より喚び出された混沌の使徒――ゾンビ鮫の大群は、禍々しき触手を振りかざしながら徹底抗戦の構えを示した。
「そちらがその気なら、やるしか無いわね」
フレミアは吠え猛るサメの群れを見下ろしながら【ブラッディ・フォール】を発動する。先程ゾンビ鮫の大群を駆逐した『レディ・オーシャン』の力に続いて彼女が纏うのは、キマイラフューチャーの深奥で交戦した『ドラゴンテイマー』の能力と姿。
「今度はもう生贄もいないし、最初から全力で行かせてもらうわ」
背には異形の翼を、身体には漆黒の衣を、そして手には真紅の剣を帯びた彼女が放つのは【文明侵略(フロンティア・ライン)】の波動。浜辺に散らばる流木や石ころ、さらには先だって破壊されたウォーマシンの残骸までもが吸血姫の威を受けて、異形の黒竜『ダイウルゴス』の群れに変異していく。
「さあ、行きなさい」
「っ……負けない……!」
女王のごとく号令するフレミアの麾下で、一斉に突撃を開始するダイウルゴス軍団。
ルルもまた対抗してゾンビ鮫の大群を指揮し、真っ向から敵軍団の攻撃を迎え撃つ。
竜の咆哮が轟き、サメの触手がうねり、牙と牙が互いを喰らい合う熾烈な戦いが繰り広げられる。ダイウルゴスも強大だが、ルルのユーベルコードによってゾンビ鮫も以前とは大幅に強化されており、互いの戦力はほぼ互角のように見えた。
――だが、ルルが一度に召喚可能な全サメを投入して応戦しているのに対し、フレミアはまだ手札を残している。その違いが戦いの拮抗状態を破る決定打となった。
「今よ、蹂躙しなさい!」
戦線の膠着を見計らってフレミアが召喚したのは【ギガンティックダイウルゴス】。通常の黒竜を上回る大型ダイウルゴスの群れがひとつに合体し、雲を突くような超巨大な黒竜となって戦場に降臨する。
「な……え……?!」
あまりにもスケールの違う新手の出現に、ルルもサメ達も動揺を隠せない。本命として喚び出された超巨大ダイウルゴスは黒曜石のような眼で彼女らを睥睨すると、その両翼で嵐のような暴風を巻き起こしながら前線に突撃した。
「ウオォォォォォォォォォッ!!!!!」
物理的な衝撃すら感じるほどの咆哮と山のような巨体を前にして、進路上にいたゾンビ鮫は障害物にすらなれなかった。ただ大海に漂う木の葉のように、圧倒的な個の力によって蹂躙されるのみ。
「そん……な……」
悪夢のような光景を呆然と眺めながら、残された仲間達と共に後退しようとするルル。だがそこに上空から降り注いだ【凍てつく息吹】と【極寒の風】が、生き残りのサメを海ごと凍てつかせ、ルルの足を封じる。
「しまっ……うごけない……っ!?」
配下を失った鮫魔術師は、冷気と共に降下してくる鷲獅子とフレミアを見上げることしかできなかった。凍結に加えてフレミアの放つ念動力の枷が、彼女の身体をがっちりと拘束している。
「最後通告よ。観念して投降する様なら命だけは助けてあげるわ」
「っ……誰が……あなたたちなんかに……命乞いなんか……!」
この窮地においてもなお、ルルがフレミア達猟兵に向けるのは激しい敵意と憎悪だった。愛するサメを傷つけた者を絶対に許さないというその怒りは、極めて歪んで醜悪ではあったが、皮肉にもそれゆえに一途だった。
「……なら、仕方ないわね」
最後の慈悲を跳ね除けた相手に、もはやフレミアも容赦はしない。冷気と念動力による二重拘束を維持したまま、ゾンビ鮫を駆逐したダイウルゴスをルルの元に差し向ける。
「っ……ぎ……あぁぁぁぁ……っ!!!!!」
裂けた漆黒の大地を思わせる巨大な顎が、暗黒鮫魔術師を噛み砕いて放り捨てる。
全身の骨が砕ける嫌な音を聞きながら、ルルの身体は力なく海中に沈んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
許さないのはこちらも同じだよ…。多くの人達を犠牲にした貴女は決して許さない…。
【unlimitedΩ】を展開して黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】と共に一斉斉射…。
召喚されたゾンビ鮫の群れを終焉の呪力を込めた魔剣の群れで一掃し、呪力【呪詛、衝撃波】を込めたバルムンクの一刀【力溜め、早業】で巨大ゾンビ鮫を両断…。
邪魔者がいなくなったところで凶太刀に持ち替えて【神滅】を発動…。
彼女の力の核を破壊し、鮫魔術も死霊魔術も使えない無力なただのヒトになって貰うよ…。
貴女はもう二度と可愛い鮫に会う事はできない…。
それが貴女に科す贖罪…。
残された僅かな時、貴女が餌と見做した人として過ごすと良いよ…
「ゆる……さない……あなたたち……ぜったいに……!」
深手を負った暗黒鮫魔術師ルル・クラドセラキーであるが、歪んだサメへの愛ゆえか、猟兵に対する憎しみゆえか、その命運は未だ尽きてはいなかった。大海の深淵より一度は藻屑と散ったゾンビ鮫達を再び喚び集め、戦力を整えなおして再浮上する。
「許さないのはこちらも同じだよ……。多くの人達を犠牲にした貴女は決して許さない……」
だが、海上に出てきたゾンビ鮫軍団を待ち構えていたのは、怒りの感情を呪力に変えて発散する璃奈と、彼女が顕現させた呪われし魔剣・妖刀の現身の数々であった。
「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……!」
手にした呪槍・黒桜を大きく振りかぶりながら、巫女の力で魔剣達の呪力を極限まで強化し、あらゆる存在に終わりを与える"終焉"の属性を込めたうえで解き放つ。それは魔剣の巫女たる璃奈が行使する大技のひとつ。
「『unlimited curse blades 』……!!」
一斉斉射された魔剣の群れと、槍より放たれる漆黒の桜吹雪は、海原を埋め尽くす嵐となってゾンビ鮫の群れに降り注ぐ。死霊魔術と鮫魔術によって現世に留められた彼らは、その禍々しきかりそめの生を終焉の呪力に断ち切られ、再び骸の海に還っていった。
「わ……わたしの可愛いみんなが……また……っ!!」
せっかく喚び戻したサメ達を、一瞬で一掃された惨劇に愕然とするルル。彼女の傍らに残っている配下はもはや最愛の巨大ゾンビ鮫『ロドリゲスちゃん』しかいない。その最後の一頭の元にも、魔剣の巫女の刃は容赦なく迫っていた。
「どいて……!」
滑るような歩法で間合いを詰めながら、呪槍から持ち替えるのは竜殺しの魔剣「バルムンク」。龍鱗さえも断つその刀身に呪力を込めて振り下ろせば、放たれた斬撃の衝撃波は『ロドリゲスちゃん』を一刀のもとに両断し、物言わぬただの骸に変えた。
「これで邪魔者はいなくなったね……」
「ひ……っ」
全てのサメを屠り尽くした璃奈は、冷たい銀の眼差しで暗黒鮫魔術師を射すくめる。
刃にも劣らぬ鋭い視線に貫かれたルルは、釘付けになったようにその場から動けない。
怯える敵を正面に捉えつつ、魔剣の巫女が持ち替えるのは妖刀・九尾乃凶太刀。その呪力によって彼女の速さは音を超え、迅雷の踏み込みと共に必殺の一閃が放たれる。
「神をも滅ぼす呪殺の刃……あらゆる敵に滅びを……」
【妖刀魔剣術・神滅】。莫大な呪力と共にルルの身体を斬り抜けていった斬撃は、しかし物理的にはなんの外傷ももたらさない。神滅の刃が斬るのは対象の肉体ではなく、対象に宿っている存在の核や力の根源だ。
「ぁ……なに……を……したの……!?」
例えようもないほど大きな喪失感が、ルルの心に湧き上がる。なにをされたのかは分からない、だが「暗黒鮫魔術師ルル・クラドセラキー」として最も重要な根源が、たった今破壊されたことを本能が感じ取っていた。
「貴女はもう二度と可愛い鮫に会う事はできない……。それが貴女に科す贖罪……」
璃奈が斬ったのはルルの能力の核。鮫魔術も死霊魔術も使えないただの無力なヒトになって貰うのが、璃奈の与える断罪。己のエゴのために多くの人々の生命を奪ってきた彼女には、己の最も大事なものを奪われる末路こそが相応しかろう。
「残された僅かな時、貴女が餌と見做した人として過ごすと良いよ……」
「い……嫌……この力を失うなんて……みんなに会えないなんて……」
いやいやと頭を振って現実を拒絶しようとするルル。だが既に神滅の一撃は魂に刻まれており、その心身からは恐ろしいほどの速さで魔力が失われていく。彼女が暗黒鮫魔術師としての力を使える時間はもう幾許もあるまい。
「ただのヒトとして生きるなんて……絶対に嫌……!」
ほとんど悲鳴に近い叫びを上げながら、ルル・クラドセラキーは髑髏の魔杖を構える。
無力な人間に戻されるくらいなら、いっそその前に抵抗して、ひとりでも多くの道連れを作って死ぬ。そんな悲壮な決意と絶望が、彼女の昏い瞳に浮かんでいた。
大成功
🔵🔵🔵
ウーラ・エベッサ
※アドリブ歓迎
POW判定
・行動
ロングキャストの構えで「ワダツミの竿」を振り
ロドリゲスちゃんに「トツカの針」を投げる
その口に引っかける様に針を食い込ませたら
UC【海神一本釣り】でしっかりと合わせて一気に引き寄せる
(スキル:釣り、おびき寄せ、串刺し、継続ダメージ)
・セリフ
こいつは死んでるくせに活きがいいねえっ!
こちとらアンタに食わせるエサは無いんだ、
死んでるならそれらしく腹を上にして海で浮かんじまいなっ!
(暴れる巨大ゾンビ鮫を地面に向けて引き釣り落とす)
生憎この糸は決して切れないし
針も獲物を釣り上げるまでは外れないよ!
さあ、弱り切るまで思う存分に暴れて見せな!
(もがく敵に向かって)
「う……ぐ……ロドリゲスちゃん……おいで……」
劣勢に立たされた鮫魔術師ルルは力を振り絞り、一度は倒された愛鮫『ロドリゲス』ちゃんを復活させる。大海の深淵より現れるは飛翔する巨大ゾンビ鮫、その傷は未だ癒えているとは言い難いが、主人を守らんと大顎を開いて怒りの咆哮を上げる。
「こいつは死んでるくせに活きがいいねえっ!」
そんな大物を前にして漁師としての血が騒いだのか、豪快な笑みを浮かべるウーラ。
これまでの雑魚どもとは比べ物にならない威容と凶暴性。コイツがルルが使役するサメの中でも最強の一匹ならば、相手にとって不足はなしだ。
「行っ……て……!」
『ガオオオォォォォォォッ!!』
召喚の消耗でふらついているルルを背中に乗せ、怪獣のような雄叫びを上げながら空を翔ける巨大ゾンビ鮫。対するウーラはロングキャストの構えでワダツミの竿を振り、腕と竿を大きくしならせながらトツカの針を投げこんだ。
「そらよっ!」
狙いは完璧。ひゅぅと風を切って飛んでいった釣り針は、綺麗な放物線を描いて大きく開かれたゾンビ鮫の口内にヒット。一度引っ掛かったメガリスの針は、即座に対象に最適な形状に変化して深々と腐肉に食い込んだ。
『グゥゥッ!?』
口の中に異物感を覚えた『ロドリゲスちゃん』はブンブンと首を振って針を外そうとするが、そうはさせじとウーラは素早く竿を引いて、しっかりと針を獲物に合わせる。
「こちとらアンタに食わせるエサは無いんだ、死んでるならそれらしく腹を上にして海で浮かんじまいなっ!」
ウーラがぐいっと力を込めて竿を引けば、ゾンビ鮫の巨体が一気に岸に引き寄せられる。相手も釣り上げられまいと身をよじり、ガチガチと牙を鳴らして糸を千切ろうとするのだが、海竜すら釣り上げるというメガリスの釣具はその程度では壊せない。
「生憎この糸は決して切れないし、針も獲物を釣り上げるまでは外れないよ! さあ、弱り切るまで思う存分に暴れて見せな!」
もがく敵に向かって挑発するようにウーラが叫ぶと、ならば貴様のほうを海に引きずり込んでくれようと言わんばかりに、巨大ゾンビ鮫も渾身の力で抵抗してくる。
漁師とサメの熾烈な一騎打ち。背中に乗っているルルはと言えば、もはや振り落とされないように『ロドリゲスちゃん』のヒレにしがみついているだけで精一杯だ。
「わ……わわわ……きゃぁ……っ」
巨人と巨大魚、両者一歩も譲らぬ戦いは次第に根比べの様相となる。そうなれば明暗を分けるのはスタミナの差――島民の救出と雑魚戦を経ても体力を残していたウーラに対し、他の猟兵との戦いでダメージを受けているサメとでは粘り強さが違う。
「今だっ!」
相手の引きが弱くなってきたのを見逃さず、ウーラは全力でワダツミの竿を引く。
巨人のパワーとメガリスの力、そして漁師の技量全てをひとつにした【海神一本釣り】が、ついに巨大ゾンビ鮫を地面に釣り落とした。
「きゃああぁぁぁぁ……っ!!!」
生命力を共有したサメへのダメージはそのまま鮫魔術師へのダメージにもなる――悲鳴を上げながら背中から振り落とされ、ドボンと海に沈むルル・クラドセラキー。
そして『ロドリゲスちゃん』は白い腹を上向きにして、精根尽き果てた様子で波打ち際に横たわっている。釣り対決を制したウーラは竿を高々と掲げ、勝利の笑みを浮かべるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シャーロット・クリームアイス
※アドリブなどお任せ
大量の、しかもゾンビ鮫。おまけに触手までついてくる……お得ですね!
ルルさん、あなたは卓越したサメ魔術師とお見受けしました。
死霊魔術とのコラボも、じつにすばらしい。
ですが、そんなあなたの技にも、ひとつ欠けているものがあるのです!
それは……多様性っ!
(巨大サメ、飛行サメ、異常気象の中を泳ぐサメ、悪魔めいたサメ、頭部がたくさんあるサメ、手足があるサメ、etc.etc.を召喚)
無二の相棒を持つのは素敵なコトです。
大量のサメを召喚するのもよろしいでしょう。にぎやかですし。
しかし、その両方とも同じ属性だったのが――あなたの敗因!
さぁ、二百五十を超える多種多様なサメに対抗できますか!?
黒影・兵庫
ふざけた掟を叩きつぶすためにも!
アンタにはここで骸の海へ還ってもらう!
(「手下のサメを召喚したようね!うわ!何あの触手!めっちゃキモイ!」と頭の中の教導虫が囁く)
数には数で対抗するとしましょう!
対UC兵の皆さん!よろしくお願いします!
(黒影の影の中から大量の天牛が出現する)
イケメンぞろいの対UC兵の皆さん!あの気持ち悪い触手サメを貪りつくしてください!
皆さんが敵の気を引き付けている間に俺は{皇糸虫}と粘着性の{蠢く水}を『念動力』で
操作して敵の魔術師に絡ませて身動きできないようにした後『衝撃波』で直接攻撃を仕掛けます!
骸の海にはアンタの大事な仲間が待ってるよ!
さっさと逝きな!
「う……く……よくも……ロドリゲスちゃんを……」
当初の居丈高な様相はどこへやら、愛鮫を失ったルル・クラドセラキーは明らかに衰弱した様子だった。度重なる負傷に失われゆく鮫魔術師としての力――猟兵達の攻勢は着実に彼女を追い詰めつつあると見ていいだろう。
「深淵より来たれ……混沌の使徒……あいつらに……復讐を……!!」
それでもルルは力を振り絞り、大海原から異形なる触手ゾンビ鮫の群れを召喚する。
今や猟兵に対する逆恨みと復讐心の業火が、彼女を衝き動かしているすべてだった。
『手下のサメを召喚したようね! うわ! 何あの触手! めっちゃキモイ!』
兵庫の頭の中で教導虫が囁く。混沌の使徒を謳うだけのことはあり、腐り果てたサメから禍々しい触手が生えた様は、免疫のない人間にはいささかグロテスクな絵面だ。
だが、どんなキモい相手だろうと怯んでいる暇はない。全ての元凶はもう目前にいる。
「ふざけた掟を叩きつぶすためにも! アンタにはここで骸の海へ還ってもらう!」
烈火のごとく滾る怒りを握りしめ、兵庫は誘導灯型の警棒をびしりと敵に突きつける。この島の人々を縛りつける理不尽は跡形もなくぶち壊すと、彼はそう誓ったのだ。
「大量の、しかもゾンビ鮫。おまけに触手までついてくる……お得ですね!」
その一方で、自身も鮫魔術士であるシャーロットは立ちはだかるサメの群れを見て感嘆の声を上げる。その所業を認めるわけにはいかないとはいえ、これだけのサメを自在に改造・召喚・使役するルル・クラドセラキーの技量は認めざるを得なかった。
「ルルさん、あなたは卓越したサメ魔術師とお見受けしました。死霊魔術とのコラボも、じつにすばらしい」
敵ながらも惜しみない賛辞を送りながら、ですが、とシャーロットは言葉を続ける。
「そんなあなたの技にも、ひとつ欠けているものがあるのです!」
「なん……ですって……?」
ふたりの鮫魔術士の間にピリッとひりつくような空気が流れる。闇に堕ちたとはいえ――否、だからこそ己の術に高いプライドを持つルルが、その指摘を無視できるわけが無かった。
「私の鮫魔術に……いったい何が不足だっていうの……?」
「あなたに欠けているもの、それは……多様性っ!」
怒れる暗黒鮫魔術師と対峙しながら、堂々たる宣言と共にシャーロットが召喚したもの――それは別の世界で目にしたサメ映画から再現された多種多様なるサメの群れ。
巨大サメ、飛行サメ、異常気象の中を泳ぐサメ、悪魔めいたサメ、頭部がたくさんあるサメ、手足があるサメ、etc.etc――一体一体が姿も能力もそれぞれ異なるどころか、コレはもうサメなのかと疑ってしまうようなものまでそこには含まれている。
「な……!?」
目の前に現出したあまりにも個性豊かすぎる光景には、さしものルルさえたじろがざるを得ない。その動揺に拍車をかけるように、さらなる援軍が猟兵達の側に現れた。
「数には数で対抗するとしましょう! 対UC兵の皆さん! よろしくお願いします!」
兵庫の影の中から飛び出すのは【異能喰らう異物】。天牛(カミキリムシ)によく似たこの軍隊虫の大群はユーベルコードを喰らうという他にない特性を持っている。その捕食対象には当然、ユーベルコードで召喚されたものも含まれていた。
「イケメンぞろいの皆さん! あの気持ち悪い触手サメを貪りつくしてください!」
警棒で敵群を指し示して号令する兵庫に応え、黒い雲霞のごとく一斉に飛び立つ対UC兵の群れ。それと同時にシャーロットが召喚した多様性のサメ軍団も、あるものは海から、あるものは空から、怒涛の勢いで触手ゾンビ鮫軍団に押し寄せていく。
「無二の相棒を持つのは素敵なコトです。大量のサメを召喚するのもよろしいでしょう。にぎやかですし」
シャーロットにはルルの気持ちがちょっとだけ分かる。実際、彼女が召喚したサメの中にも触手の生えてるヤツはいるしゾンビのヤツもいる。なんなら幽霊やタコみたいなサメだっている。
「しかし、その両方とも同じ属性だったのが――あなたの敗因!」
【みんなちがってみんないい】。多様性を受け入れる寛容さと、どこまでも増えるサメへの無限大の想像力こそが彼女の武器。いかに属性を盛り込んだところで、ただ一種のサメだけに偏った集団に、このユニバーサルならサメ軍団が負けるはずが無い。
「さぁ、二百五十を超える多種多様なサメに対抗できますか!?」
「対UC兵の皆さんも負けていませんよ! カッコいいですし!」
「こんな……ばかなことが……あるわけ……っ!!」
ルルからしてみればそれは悪夢の光景だった。鮫魔術士である自分が見たこともないようなサメの群れが、愛する我がサメ達を打ちのめしていく。さらには飛来する大量の天牛が、その自慢の大顎でゾンビ鮫を噛み切り、貪り喰らっているのだから。
『親玉は動揺してるみたいね。今よ黒影!』
「はい、せんせー!」
教導虫の言葉にこくりと頷きながら、兵庫はウォーマシン部隊を捕らえるのにも使った皇糸虫と蠢く水を念動力で操り、敵軍の指揮官であるルルに直接攻撃を仕掛けた。
「な……しまった……!!」
皇糸虫と蠢く水の正体は、それぞれが生きた糸状の寄生虫と粘着性の微生物の集合体。一度捕らえた獲物は絶対に逃すまいと、主たる兵庫の意のままにルルを拘束する。
召喚主を助けるはずのゾンビ鮫達は、異能喰らう異物と多様性のサメに引きつけられており、とても救援に向かえるような状況ではないどころか全滅しそうな有様だ。
「骸の海にはアンタの大事な仲間が待ってるよ! さっさと逝きな!」
邪魔な奴らが戻ってくる前にと、兵庫は身動きできなくなった敵に怒声を浴びせ、烈帛の気合いを込めて得物を振り下ろす。ぶおん、と空を切った警棒からは凄まじい衝撃波が放たれ、邪悪なる鮫魔術師を打ちのめした。
「あぎ……ぐあ……っ!!!!」
見えない巨人に殴りつけられたようにルルの矮躯は宙にふっ飛ばされ、水切り石のごとく海面を跳ねる。その後に点々と残る血の量が、彼女の負ったダメージの深さを物語っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
もはや語るべき口は持ちません
島民へのこれまでの非道、骸の海に行くことで償って頂きましょう
自由にサメを可愛がることが出来ぬこと…それが人の痛み知らぬ貴女への最大級の罰です
飛翔からの噛み付きや体当たりを騎乗者狙いの格納銃器●スナイパー射撃で牽制ししつつ回避しつつ速度や運動性能を●情報収集
大口を開けた噛み付きのタイミングを●見切り、口に突っ込む形で●盾受け防御
盾を半壊、流石と言わせて頂きますが…動きを止めましたね
UCを●だまし討ち射出し鮫を拘束、チェーンソーの取っ手を握り一本釣りから頭上で竜巻の如く振り回し
返して欲しいですか……わかりました
では遠慮なく
投げ出された鮫魔術師に鉄球宜しく何度も叩きつけ
メンカル・プルモーサ
……あれって鮫魔術師の基本コスチュームなのかな……
…取り合えず飛行触手ゾンビ鮫はちょっと属性盛りすぎだと思うんだよねぇ…
…まあ、ゾンビである事に代わりは無し、と…となれば…
…復元浄化術式【ハラエド】により黎明剣【アウローラ】に破魔の術式を付与…
…そして【暁天踊る集い星】によりまずは周囲に迫った触手付きゾンビ鮫を薙ぎ払うよ…
…薙ぎ払った後はロドリゲスちゃん…は仲間に任せて…
…追加で呼び出されるゾンビ鮫は対ゾンビ、対鮫と言えばこれ…
…極小の刃を束ねて作ったチェーンソーのように刻むことが出来る数本の剣で切りながらルルに接近…
…再び極小の刃に分解して全方位からルルへと攻撃を仕掛けるとしよう…
「……あれって鮫魔術師の基本コスチュームなのかな……」
激戦が繰り広げられる中でメンカルの思考をふとよぎるのは、敵である暗黒鮫魔術師ルルの奇矯な格好についての疑問だった。今回の作戦に参加している猟兵の中にも鮫魔術師はいるが、あんな服を着ている者もいないので恐らくは違うと思われるが。
「……だとすればアレは本人のセンスということに……?」
それはそれでどうなのかという気もするが――彼女はそっとしておくことにする。どうせここで倒すことになる相手だ、死装束くらいは向こうにも選ぶ権利はあるだろう。
「もはや語るべき口は持ちません。島民へのこれまでの非道、骸の海に行くことで償って頂きましょう」
マイペースなメンカルとは対照的に、トリテレイアは厳格なる騎士として宣言する。
敵は人々を理不尽なルールで虐げる"悪い魔法使い"。まさしく騎士が討つべき敵役であり、彼女の手で奪われた生命の数も顧みれば、もはや慈悲を与える余地はない。
「自由にサメを可愛がることが出来ぬこと……それが人の痛み知らぬ貴女への最大級の罰です」
「それだけは……絶対に嫌……っ!!」
自分とサメの楽園を守らんと、弱々しく立ち上がったルルは髑髏の魔杖を掲げる。失われつつある力を絞り出して三度召喚するのは愛鮫『ロドリゲスちゃん』。さらに禍々しい触手を生やした混沌のゾンビ鮫が、彼女を守るように群れをなして立ち塞がった。
「……取り合えず飛行触手ゾンビ鮫はちょっと属性盛りすぎだと思うんだよねぇ……まあ、ゾンビである事に代わりは無し、と……となれば……」
メンカルは再び浄化復元術式【ハラエド】を起動して、術式制御具でもある黎明剣【アウローラ】に破魔の術式を付与する。前と比べてサメの戦闘力は鮫魔術師のユーベルコードで強化されているようだが、根本的な性質が変わらないなら対処法は同じだ。
「我が剣よ、歌え、踊れ。汝は残星、汝は晨明。魔女が望むは彼誰煌めく星嵐」
発動するのは【暁天踊る集い星】。濃紺から夜明けの東雲色を経て、白色に輝く長剣を掲げれば、その刀身は極小の花弁となって無数に散り、煌めく刃の花吹雪を戦場に巻き起こした。
「……まずは、この邪魔なやつから薙ぎ払う……」
海風と共に舞い踊る刃の花弁は、ルルの敵を排除すべく押し寄せてくるゾンビ鮫の群れと衝突し、腐り果てた肉体を切り刻んでいく。無数に分割された状態でも黎明剣に付与された【ハラエド】の破魔属性は保持されており、その一片一片がゾンビにとっては致命的な凶器だ。
『グギャアアァァァァァァァァッ!?』
牙と触手を交えるまでもなく、断末魔の悲鳴を上げて消滅していくゾンビ鮫の群れ。
シュレッダーにかけられる紙片のような恐るべき駆逐ペースに、鮫魔術師ルルの表情がさあっと青ざめる。
「……召喚される群れはこれでいいとして……ロドリゲスちゃん……はそっちに任せる……」
「任されました。あの魔術師をサメから引きずり下ろしてみせましょう」
大群が消え去ったた好機に前進するのはトリテレイア。対して護衛部隊を失ったルルは唯一残った配下である巨大ゾンビ鮫の背中に乗り、重力を無視して空中を翔ける。
「まだ……ロドリゲスちゃんがいれば……私は戦える……!」
術者の期待に応えるべく、猟兵どもを八つ裂きにせんと飛び掛かっていくロドリゲス。だがトリテレイアは機体各部の格納銃器を展開して牽制射撃を仕掛け、容易には敵を近付けさせない。
『シャァァァァ……ッ』
苛立ちを露わにして唸る『ロドリゲスちゃん』。もしも銃撃を受けるのがサメ自身であれば強引に距離を詰める手もあっただろう。しかしトリテレイアの銃口は騎乗するルルの方をピタリと正確に捕捉しており、迂闊に迫れば術者を危険に晒すことになる。
「飛び道具……ずるい……っ、深淵より来たれ……!」
なんとか狙撃をかいくぐる隙を見計らおうと、騎乗中のルルは再び召喚呪文を唱える。だが追加で呼び出されたゾンビ鮫は、待機していたメンカルに即座に対処される。
「……対ゾンビ、対鮫と言えばこれ……」
極小の刃を束ねて作りあげたのは、チェーンソーのように振動回転する刃身を備えた数本の剣。これなら肉厚なゾンビ鮫のボディを骨までばっさり刻むことが出来る。
魔女の術式によって自律稼働の特性も付与されたその剣達は、ひとりでに空を飛び回っては標的たるゾンビ鮫に襲い掛かり、バラバラの肉片に刻み尽くすのであった。
「よくも……よくも……っ!!」
愛鮫達を幾度となく薙ぎ払われ、ルル・クラドセラキーの怒りはついに心頭に達した。
もはや我が身をも顧みまいと捨て身の攻撃を命じれば、『ロドリゲスちゃん』は大きく口を開いて牙をむき出しにし、ロケットのような速度で突撃を仕掛けてきた。
「みんなみんな……サメの餌にしてやる……!」
守りを捨てた鮫魔術師と巨大ゾンビ鮫の猛攻。だがそれは猟兵達にも好機となりうる。
ここまで牽制と回避に徹しながら敵の動きを分析していたトリテレイアは、大鮫の牙が自身を貫くまさにそのタイミングで、構えていた大盾を前に突き出した。
『ゴガ……ッ!!!』
「ロドリゲスちゃん……!?」
サメは急には止まれない。騎士と正面から激突した巨大ゾンビ鮫は口内に突っ込まれた盾を咥え込んでしまった。大鮫の顎力は工業用プレス機のように強靭な大盾をひしゃげさせるが、サメのほうもまた顎を閉じることのできない状態となる。
「盾を半壊、流石と言わせて頂きますが……動きを止めましたね」
間髪入れずトリテレイアが起動したのは【両腰部稼働装甲格納型 隠し腕(通常拘束モード)】。伸長するワイヤー仕掛けの腕が『ロドリゲスちゃん』を瞬時に拘束し、その頭部に突き刺さっていたチェーンソーの取っ手を握りしめる。
「騎士の戦法としては行儀が少々悪いのですが……!」
「な……なにを……きゃああ……っ!!?!」
ルルが困惑する間もなく、捕らえられたサメは一本釣りの要領で持ち上げられ、そのまま竜巻のごとく振り回される。ウォーマシンの怪力が相手では矮躯のルルはそれ以上しがみついていることもできず、無理やり愛鮫の背中から宙に投げ出されてしまった。
「か……返し……て……っ」
「返して欲しいですか……わかりました。では遠慮なく」
使役する全てのサメを失った鮫魔術師ほど脆弱なものはない。それまでの威勢はどこへやら、縋るように叫ぶルルに、トリテレイアは淡々とした調子でそう言うや否や――掴んでいた『ロドリゲスちゃん』をルルの頭上目掛けて勢いよく振り下ろした。
「え……違……待……っ!!!!!?!?!」
抗議も回避の余地もなく、鉄球のように叩きつけられたゾンビ鮫の巨体は、主人であるはずのルルの身体を押し潰す。そこに追討ちをかけるように降り注ぐのは白刃の嵐。
「……鮫魔術と死霊魔術に能力全振りしたのが仇になったね……」
そう呟くメンカルの黎明剣は、チェーンソー剣から再び極小の刃に分解され、全方位から敵に襲い掛かっていく。白の花吹雪はあっという間に血の赤に染まり、鮫魔術師の悲鳴が戦場に木霊した。
「よく……も……ぎゃッ!!」
ボロボロのルルにさらに何度と叩きつけられる『ロドリゲスちゃん』のハンマー。
この悪しき鮫魔術師が骸の海に還るその瞬間まで、猟兵達は一切の容赦をしない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
彩波・いちご
【恋華荘】
深波さんが燃えている
相手も鮫魔術師なので仕方ないですかね…?
熱くなっている深波さんを私達でフォローしましょう
それでいいですよね、うるさん、理緒さん
うるさん、心配なのはわかりますが、私たちにできることをしましょう
(頭をぽんぽんと撫でて
では行きますよ
【幻想よりきたる魔法の演者】
せっかくなので、噛みつき切り裂く魔力を込めたサメのオブジェクトを召喚
深波さんの鮫機動部隊と連携して一斉攻撃ですっ
戦いの後、深波さんに抗議しに行くうるさんを
私も一緒に宥めますね
ともあれ涙を拭いてくださいな?(よしよしと頭撫で
…あの、理緒さん、別に放置してるわけではないので、うーっと唸ったりしないでもらえます?(撫で
南雲・深波
【恋華荘】
現れたでありますな、鮫魔術師の風上にも置けぬ邪悪!
鮫を友とする者として、その所業断じて許すわけにはいかないであります!
行きますよ、あかぎ君!
確かに私は貴君の部下を殲滅してきたでありますが、それを咎めるのは筋違いというもの
鮫と共に生きる者の責務として、人に迷惑をかける鮫には責任を持って対処するのが、正しい鮫軍人なのであります!
ゆえに、鮫を悪用するものには、我が鮫でお仕置きするであります
巨大ゾンビ鮫なにするものぞ!
【鮫機動部隊抜錨】!
鮫艦載機による絨毯爆撃と集団噛みつきが暗黒ビームなど潜り抜けて、全てを討ち滅ぼすでありますよ!
鮫たちよ、我に続け―!
…心配はすまないであります(うる殿宥めて
菫宮・理緒
【恋華荘】
最後はしっかりゾンビなのか。
それはいいとして、なぜスク水ツインテ……。
見てる分にはありだけど、どこターゲットなんだろ?
とか思ってたら深波さん!? 普段冷静なのに、わりと熱いね!
まぁ、鮫魔術師としてはサメを悪用されたらしかたないか。
うん。ここは先輩としてフォローしないとだよね♪
【等価具現】を使って相手の攻撃を無効化していこう。
「後ろは心配しないでいいよ。深波さん、いっちゃえー!」
戦闘後は、涙目で抗議しているうるさんを見て、
「あー、深波さん、泣ーかーせーたー!」
って、えー……泣くと撫でてもらえるんだ……?
え、えっと、えっと……。
(まばたきを無理やり止めて瞳に涙溜めて)
「うー……」
月灘・うる
【恋華荘】
ゾンビサメなのかー……残念。
これじゃ捕まえても売れそうにないし、退治しちゃうしかないかな。
助けた島民は、将来のお客さんだしね!
おおっ、みなみんのサメ愛と気合いがすごい!
……って、え? みなみん!? 突っ込みすぎー!?
「み、みなみん、ちょっと待って待って!?」
止まってくれ……そうもないから
ここは【プレシジョンファイア】で援護していこう。
みなみんに攻撃をしようとする瞬間を狙って、
相手を邪魔する感じでフォローしていきたいな。
倒し終わったら、みなみんのところに行って、
「みなみん……もー、心配したんだからね!」
ちょっと涙目でみなみんに抗議しよう。
……半分は演技だけど、もう半分は本気だよ?
「最後はしっかりゾンビなのか。それはいいとして、なぜスク水ツインテ……。見てる分にはありだけど、どこターゲットなんだろ?」
仲間達と共にガレオス島の決戦に挑みつつ、敵の奇矯な格好に首を傾げるのは理緒。
中身の邪悪さはともかくとして見た目には可愛いと言えなくもない相手だが、海でも陸でも微妙そうなそのファッションチョイスの意図は聞いても教えてくれそうもない。
「ゾンビサメなのかー……残念。これじゃ捕まえても売れそうにないし、退治しちゃうしかないかな。助けた島民は、将来のお客さんだしね!」
一方のうるはいかにも商売人らしい視点から、商品価値のなさそうな敵にがっかりしたものの、すぐに気を取り直す。ここで連中をやっつけて島に平和を取り戻したヒーローになれば、きっと島民達もお得意様になってくれるはずだ。
――だが、そんな彼女達よりも熱く激しく闘志を燃やす仲間がここにひとり居た。
「現れたでありますな、鮫魔術師の風上にも置けぬ邪悪!」
海上の暗黒鮫魔術師にびしりと指を突きつけるその者こそは鮫機動部隊司令官、南雲・深波。軍人らしい生真面目さとまっすぐな心根を持つ彼女にとって、悪事のために鮫魔術の力を利用するなどまさに言語道断であった。
「鮫を友とする者として、その所業断じて許すわけにはいかないであります!」
「おおっ、みなみんのサメ愛と気合いがすごい!」
「普段冷静なのに、わりと熱いね!」
目に見えそうなほど激しいその怒りの気迫は、彼女と親しいうると理緒も驚くほど。
が、その気合いの強さはけして良い方向に作用するとも限らない。言ってしまえば今の彼女は、倒すべき敵以外のものが目に入っていない状態である。
「行きますよ、あかぎ君!」
深波はいつも傍にいる相棒のサメに乗って、一目散に敵陣に突っ込んでいってしまう。
相手は再びゾンビ鮫の群れを召喚しているというのに、単騎駆けはあまりに危険だ。
「……って、え? みなみん!? 突っ込みすぎー!?」
驚くうるの制止も届かず、深波の姿はあっという間に遠ざかっていく。仲間達の声すらも聞こえない程とは、よっぽどあの暗黒鮫魔術師の所業が腹に据え兼ねたのか。
「深波さんが燃えている……相手も鮫魔術師なので仕方ないですかね……?」
真っ先に深波の後を追って走り出したのはいちご。その後に続いて理緒が、さらにうるが続く。彼らも同じ旅団の仲間として、深波が怒る気持ちはちゃんと理解している。
「熱くなっている深波さんを私達でフォローしましょう。それでいいですよね、うるさん、理緒さん」
「まぁ、鮫魔術師としてはサメを悪用されたらしかたないか。うん、ここは先輩としてフォローしないとだよね♪」
【恋華荘】管理人としていちごが皆のまとめ役となり、その意を汲んだ理緒はこくりと頷く。不安そうな顔をしているうるには、頭をぽんぽんと撫でて諭すように微笑み。
「うるさん、心配なのはわかりますが、私たちにできることをしましょう」
「うー……わかった。みなみん、後でひとこと言わせてもらうからねっ」
前しか見えなくなっている友人にちょっぴり怒りを込めつつ、青珊瑚の少女はオックスブラッドに弾を込める。こうなった以上は全力で彼女が暴れられるよう努めるのも、仲間というものだろう。
「では行きますよ」
いちご達が行動を開始する一方で、深波はあかぎ君と共にサメがひしめく戦いの最前線にいた。その青き瞳が睨みつける相手は、ゾンビ鮫に守られた悪の鮫魔術師ルル。
「わたしの大事なみんなを殺した罪……この命に代えてでも償わせてやる……」
「確かに私は貴君の部下を殲滅してきたでありますが、それを咎めるのは筋違いというもの」
巨大ゾンビ鮫『ロドリゲスちゃん』の背中から凄まじい憎悪を込めて睨み返してくる少女に、深波もまた毅然とした態度で言い返す。元はといえばこの戦いはルルが島で行った暴虐に端を発するもので、猟兵達に配下を倒されたのはその報いに過ぎない。
「鮫と共に生きる者の責務として、人に迷惑をかける鮫には責任を持って対処するのが、正しい鮫軍人なのであります!」
たとえ怒りに心を灼かれていても、軍人としての力ある者の義務と使命を深波は忘れない。彼女にとってサメは隣人であり、部下であり、友であり、相棒であり、だからこそサメの行いには鮫魔術師自身の責任が問われるのだ。
「ゆえに、鮫を悪用するものには、我が鮫でお仕置きするであります」
「そんなただのサメが……私のサメに勝てると思わないで……」
深波は腰から退魔の霊刀を抜き放つと、その切っ先を突きつけながら猛進する。対するルルは暗黒のオーラを纏った魔杖を掲げ、触手の生えたゾンビ鮫の軍団に号令する。
ユーベルコードの力で強化されたゾンビ鮫の戦力は先の比ではない。なれど深波が臆することなど有り得ない。指揮官の怯懦はそのまま部隊全体の萎縮に繋がるのだから。
「巨大ゾンビ鮫なにするものぞ! 鮫機動部隊抜錨!」
堂々たる号令と共に召喚されたのは、全長十メートルをゆうに超えるメガロドン級の大型サメの群れ。機動部隊の母艦たる彼らがグワッと大きく口を開けると、その中からピラニア級の小型艦載機鮫が次々と発艦し、敵ゾンビ鮫部隊との交戦状態に入る。
「我が勇猛なる鮫機動部隊の諸君! 今こそその力を見せるとき!」
「鮫魔術で私が負けるわけがない……絶対に……負けない……!」
深波の指揮の元で艦載機鮫は絨毯爆撃と集団噛みつきを仕掛け、ルルのゾンビ鮫は屍体のタフネスで耐えながら触手を振るって敵機を叩き落とさんとする。かくしてガレオス島近海にて勃発したサメvsサメの海戦は、両者一歩も譲らぬ構えであった。
「み、みなみん、ちょっと待って待って!?」
もはや戦争のような様相を呈してきた前線の有様を見て、若干困惑気味なうるの叫びは、爆弾と機銃の音に遮られて届かない。待ってと言っても止まってくれそうにない気配を察し、彼女はともかく仲間と一緒に深波のフォローに徹することにする。
「みなみんを攻撃するやつは邪魔しちゃうよ!」
【プレシジョンファイア】で威力と射程を増幅したオックスブラッドのトリガーを引けば、通常時の3倍はあろうかという散弾が前線に降り注ぐ。後方から飛んできた予期せぬ攻撃に敵のゾンビ鮫は虚を突かれ、深波に攻撃するタイミングを逸した。
「ここからは私の……いえ、私達の魔法のステージです! Object Stand-up!!」
さらに敵が動揺した機を突いて、いちごが【幻想よりきたる魔法の演者】を発動する。
ほとばしる魔力がビジョンを描き、具現化されるのは噛みつき切り裂く属性を込めたサメのオブジェクト。せっかくなのでサメにはサメをという彼なりの粋な計らいだ。
「一斉攻撃ですっ」
前線に到達したサメオブジェクトは深波の鮫機動部隊と連携し、敵のゾンビ鮫に喰らいつく。魔力によって形成されたその牙は腐肉や骨をやすやすと噛みちぎり、鮫艦載機が攻撃を命中させるチャンスを作り出した。
「うる殿……いちご殿……」
仲間達からの援護を受けた深波は、ようやく自分が突出しすぎていたのに気付く。
冷静さを欠いて危険を犯した自分を、恋華荘の皆は連れ戻すのではなくサポートに回ってくれた。それは皆が深波の想いを汲み、同時に深波を信頼している証である。
「どいつもこいつも私の邪魔をして……みんなサメの餌にしてやる……!」
徐々に鮫機動部隊の優勢に傾いていく戦況を目にして、ルルは苛立ちを隠せない。
逆恨みも甚だしい罵声を吐きながら、一発逆転を目論んで放つは暗黒の麻痺光線。
指揮官たる深波を狙ったその一撃は、しかし寸前で飛来した純白のビームに弾かれた。
「同位、検索……具現化シークエンス起動成功」
ルルの暗黒ビームを相殺したそれは、理緒の【等価具現】の成果だった。電脳世界の情報を元に具現化した等価存在をぶつけることで、ユーベルコードを無効化したのだ。
「後ろは心配しないでいいよ。深波さん、いっちゃえー!」
休みなくデバイスを操作して電脳空間と現実空間を同時にモニタリングしながら、理緒は最前線の仲間に呼びかける。彼女もまた深波の想いと勝利を信じる者のひとり。
「理緒殿……皆、感謝するであります!」
恋華荘の面々による支援攻撃によって、敵部隊の防衛線は瓦解しつつある。指揮官たるルル・クラドセラキー本人に攻撃を仕掛けようとするなら、まさに今こそが好機。
「鮫たちよ、我に続け―!」
皆の想いに背中を押され、あかぎ君に乗って勇壮に海上を翔ける深波。その後から続く鮫機動部隊の全戦力が、ルル・クラドセラキーただひとりに火力を集中させる。
「そんな……私が……鮫魔術で負ける……!?」
ルルは暗黒ビームを連射して敵を撃ち落とそうとするが、艦載機鮫達はひらりひらりと巧みな空中機動でそれをくぐり抜け、ありったけの銃弾と爆弾を叩き込んでいく。
轟音、そして爆発。島の中心からでもはっきりと見えるほどの爆煙が起こるなか、悲鳴を上げるルルと『ロドリゲスちゃん』そしてゾンビ鮫部隊の姿は炎の中に消えていった。
「やったでありますか?! すぐに追撃を――」
「みなみん、すとーっぷ!!」
なおも勇み足になりかけた深波を引き止めたのは、後方から飛んできたうるだった。その瞳がすこし涙で潤んでいるのに気付くと、昂ぶる心がすっと落ち着いてくる。
爆煙ではっきりと敵の生死は確認できなかったが、あの状況で無傷ということはあるまい。追撃は他の猟兵に任せて、自分達はここで一旦足並みを整えるべきだろう。
「みなみん……もー、心配したんだからね!」
ちょっと涙目でじぃーっと深波のことを睨みつけながら、ぽこぽこと抗議するうる。
半分は演技だが、もう半分は本気だ。深波もそれが分かっているのか、叩かれても文句は言わず、どこかバツが悪そうに彼女を宥める。
「……心配はすまないであります」
「あー、深波さん、泣ーかーせーたー!」
そんな様子を見て「いけないんだー」と指を差すのは理緒。こちらも本気で抗議しているというよりは、からかい混じりのようにも見える。このふたりの仲なら別に心配はいらないだろうと、信頼している部分が大きいのだろう。
「……皆の援護にも心から感謝するであります。本当に助かったであります」
「ほら、深波さんもこう言ってますし。ともあれ涙を拭いてくださいな?」
「うー……」
一緒に宥めに来たいちごからもよしよしと頭を撫でられて、ようやくうるは少し機嫌を戻す。「みんなも居るのに1人で突っ込んじゃだめだよ!」と、きっちり深波に釘を刺すのも忘れなかったが。
(って、えー……泣くと撫でてもらえるんだ……?)
が、いちごがうるを撫でるところを見た理緒のほうは、それまでの表情を一変させる。ちょっと聡いものが見れば、自分も撫でて欲しいという感情があからさまである。
(え、えっと、えっと……)
どうすれば泣けるのか考えた結果、理緒はまばたきを無理やり止めて瞳に涙を溜めて。
「うー……」
「……あの、理緒さん、別に放置してるわけではないので、うーっと唸ったりしないでもらえます?」
その真意が相手に伝わったかどうかは微妙なラインだが、ともあれ目的を果たすことはできた。理緒にまばたきもせず見つめられているのに気付いたいちごは困ったような顔をして、ぽん、と彼女の頭を撫でる。
「うー……♪」
照れくさそうに頬を染めつつも、涙目理緒の口元にはほんのりと笑みが。
激戦をくぐり抜けてもなお、恋華荘の面々は今日もいつも通りであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
天王寺・七海
こいつが、今回の元凶っと。
状況的に、この巨大サメをどうにかしないとね。
しかし、それにしても、頭にチェーンソーぶっ刺さっているし。
よく、それで動いてるわね。
でも、敵は1体+一人。
まぁ、魔術師の方は他人に任せて七海ちゃん達はサメに専念させてもらうわ。
昔いたらしいメガロドンの再来っぽいし。
ということで、今回は自分とこの群れだけではなく、別にいる群れを召喚(オルカライヴ(UC)使用)して、みんなでサメをどうにかしようってことだ。
まぁ、鮫魔術師の暗黒ビーム食らったところで奴が突っ込んでも、その間に群れの仲間が一斉に鮫に突っ込んだらやつもそれどころじゃなくなるし。
一気に鮫をぶっ倒すのさ。
アドリブ連携歓迎
泉・火華流
ロドリゲスちゃん相手に
それじゃあ、私もとっておきを使わせてもらうわ…
指定UCを使用(武装:機銃&翼下ミサイル)
シャーク様っ…あいつをお願いねっ!!
ロドリゲスちゃんの牽制をお願いする
【空中戦・制圧射撃・爆撃】
ルルとの戦闘
ルルの姿を(よーく)見てみて
…アンタ…その水着どこで手に入れたのよ…(グリードオーシャンに元々あった…とは思えない)
レガリアス・エアシューズでの【ダッシュ+水上歩行】で移動しつつ、ハイスチームミニガン&FBCでの回避主体の高機動戦闘
たまに【ジャンプ+踏みつけ】の飛び蹴りを放ったり、グラビティ・アンカーチェーンで捕縛してぶん回したり水上を引きずり回したりする
「うぅぅ……やってくれた……ね……」
ざざーん、と潮騒の音が響く島の入り江に身を寄せる、深手を負った1人の鮫魔術師と1匹のサメ。猟兵達の猛攻を受けたルル・クラドセラキーは辛くも健在であった。
そのしぶとさは単純な頑健さと言うよりももはや執念に近い。愛するサメを傷つけた者達への復讐という、逆恨みに等しい情念が今の彼女の心身を支えているのだ。
「こいつが、今回の元凶っと」
「ようやく会えたわね……」
敵の休息をみすみす見逃す猟兵ではない。後退したルルを追ってきたのは七海と火華流。
海上を滑るような速さで接近してくるふたりに気付いたルルは、髑髏の魔杖を握りなおすと、愛鮫の『ロドリゲスちゃん』をけしかける。
「あいつらを……やっつけて……」
その命令に従い、咆哮を上げる巨大ゾンビ鮫。海上にそびえ立つ巨体はルルを守る盾のようでもあり、ギラリと紅く輝く眼光はまっすぐに猟兵を睨みつけている。
「状況的に、この巨大サメをどうにかしないとね」
将を射んと欲すれば馬ならぬサメを射よ。群れのシャチ仲間たちと共に前線にやって来た七海は、正面に立ちはだかる『ロドリゲスちゃん』の様子をじぃっと観察する。
「しかし、それにしても、頭にチェーンソーぶっ刺さっているし。よく、それで動いてるわね」
「ロドリゲスちゃんは……すごいんだから……!」
ゾンビゆえに肉体の負傷をものともせずに戦闘を継続できる特性。並みのサメを遥かに上回る巨体がもたらすパワー。猟兵とも対等の戦いができるほどの力を持ったこのサメこそが、ルルの死霊魔術と鮫魔術が作りあげた最高傑作なのだろう。
「でも、敵は1体+1人。全力で協力して狩りましょう」
「それじゃあ、私もとっておきを使わせてもらうわ……」
仲間と連携しての戦いはなにもサメだけの専売特許ではない。七海の超音波が【オルカライブ】の開演を告げ、火華流のガジェットが【GadgetSharkTime】を起動する。
海中より現れるのは七海の群れとは異なる新たなシャチの大群。そして空を見上げれば空間に穴が開き、シャークペイントに彩られた戦闘機型ガジェット「GatgetShark様」が飛び出してくる。
「魔術師の方はそっちに任せて、七海ちゃん達はサメに専念させてもらうわ。昔いたらしいメガロドンの再来っぽいし」
「わかった。シャチさんたち、シャーク様っ……あいつをお願いねっ!!」
七海が一声鳴くと召喚されたシャチの群れは一斉に巨大ゾンビ鮫に襲い掛かり、上空から海戦用装備に換装されたGatgetShark様が急降下爆撃と機銃掃射を仕掛ける。その隙に火華流はレガリアス・エアシューズのホイールをフル回転させ、全速力で海上を駆けた。
「う……こっちに来た……!!」
波飛沫を蹴立てて近付いてくる火華流を見て、ルルの表情には焦りが浮かぶ。頼みの『ロドリゲスちゃん』はシャチの群れとGatgetShark様に足止めされ、こちらの援護ができる状況ではない。
「……アンタ……その水着どこで手に入れたのよ……」
ルルとの間合いを詰めた火華流は、彼女の格好を改めてよーく見てみて呟く。デザインといい材質といいグリードオーシャンに元々あったとは思えないが、UDCアースあたりから落ちてきた島から略奪したのか、あるいは元々そちらの出身だったのか。
「教えたところで意味はない……あなたはここで死ぬんだから……!」
"るる"と胸に書かれたその水着も今やボロボロの有様。怒りの形相を浮かべたルルは魔杖の髑髏から暗黒ビームを発射するが、火華流は機敏なターンで身をかわすと、携行したミニガンと随伴式FBCでお返しとばかりに銃弾とビームの雨を降らせる。
「なら、無理には聞かないけど。死ぬのはどちらかしらね……」
レガリアスシューズによる高速走行と弾幕による牽制。回避を主体とした高機動戦闘を繰り広げ、火華流は敵をきりきり舞いさせていく。
「あっちは上手く抑えててくれてるみたいね。じゃあこっちも集中っと」
一方の七海は火華流とルルの戦いを横目に見つつ、シャチの群れを率いて『ロドリゲスちゃん』相手に大乱闘を繰り広げていた。いかにデカくて強かろうと敵は1体。そういう獲物を集団で狩るのが"海のギャング"とも称されるシャチのスタイルだ。
「一気に鮫をぶっ倒すのさ」
『グオォォォォォォッ!?』
鮫魔術師の援護を受けられないサメは襲ってくる敵を蹴散らそうと孤軍奮闘しているが、次から次へと突っ込んでくるシャチ相手に圧され気味である。さらに空からもGatgetShark様が爆撃を仕掛けてくるため、一時たりとも体勢を立て直す暇がない。
『グゥゥゥゥゥゥ……ッ』
破れかぶれでリーダーの七海を襲おうとしても、その間に群れの仲間達が一斉に突っ込んで行く手を阻む。来ると分かってさえいれば、サメ単独の攻撃はどうとでもなる。
ルルが暗黒ビームで動きを止め、サメがトドメを刺すという彼女らの常套戦術は、両者が分断されたことで完全に破綻していた。
「ロドリゲスちゃん……っ!!」
「よそ見してる暇はないわよ……」
シャチの群れに追い詰められていく愛鮫の姿に思わず悲鳴じみた声を上げるルル。彼女がそちらに気を取られた隙を見逃さず、火華流はたんっと水面を蹴って跳び上がった。
「せいっ!」
「がふ……っ!」
踏みつけるような高角度からの飛び蹴りがルルの身体をくの字に曲げる。そのまま火華流はバックパックの中から「グラビティ・アンカーチェーン」を伸ばして彼女をぐるぐる巻きにする。
「捕まえたわ……」
「は……はなし……ぎゃぅ……ッ?!」
重力制御装置を内蔵した錨と鎖がをぶんぶんと振り回されるたびに、ルルの身体は宙を舞い、水上を引きずり回される。飛び散る鮮血が辺りの海を真っ赤に染めていく。
「腐ったサメは海に還れー、ってね」
『ギャオォォオォォッ!?』
一方の『ロドリゲスちゃん』も絶え間なく攻め掛かってくる七海とシャチを相手に防戦一方の有様であり、主従ともどもその命運はもはや決まったも同然であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱酉・逢真
おいでなすったなァ、サメフリークめ。そんなに好きならおうちで遊んでりゃよかったのによぅ。ペットの頭にチェーンソー刺そうが、いい年こいてスクール水着だろうが、個人で楽しむ分には俺も手を出さねえっての。
でッかくなってくれてありがとさん。的がでけぇと当てやすくっていいや。《恙》を弓矢の形に整えて、狙ったらさくっと三連射だ。元から腐りかけなんだ、どんと後押ししてやらァ。俺の《宿》は筋力がねぇから、切った張ったは苦手でね。直接殺すのも主義に合わねえンで、ほかのお人の手助けに回りますよっと。
「おいでなすったなァ、サメフリークめ。そんなに好きならおうちで遊んでりゃよかったのによぅ」
皮肉げな笑みを口元に張り付かせながら、手負いの鮫魔術師ルルを見下すのは逢真。
あいも変わらず病運ぶ鳥を海上での足場にしつつ、その手には"恙"と名付けられた、蠱物で出来た鎌が握られている。
「ペットの頭にチェーンソー刺そうが、いい年こいてスクール水着だろうが、個人で楽しむ分には俺も手を出さねえっての」
「それなら……あなたたちよそ者が……この島のことに口を出す権利もない……!」
このガレオス島はもはや自分のもの。そこに住む人間を生かすも殺すも自分の勝手だと、死の神を相手にして傲慢にもルルは言い放つ。その身からは暗黒のオーラがあふれ出し、傷だらけの巨大ゾンビ鮫がおぞましい咆哮を上げる。
「ロドリゲスちゃん……いくよ……!」
愛鮫の背に飛び乗ったルルは、今にも失われそうな力を振り絞りながら号令を発する。
鮫魔術によって飛翔能力を与えられた巨大ゾンビ鮫は泳ぐように宙に舞い上がると、目前の敵目掛けて襲い掛かる。だが、人間程度ならひと呑みにできそうな大顎に迫られてもなお、逢真の表情は微塵も変わらなかった。
「でッかくなってくれてありがとさん。的がでけぇと当てやすくっていいや」
そう嘯く彼の手の中で【恙】が鎌から一張の弓に形を変える。その意匠は翼を広げた朱色の鳥にも似て、血の糸のような弦に番える矢は、かの神の権能を現す疫病の矢だ。
「ご息災で何より」
ぽつりと投げかけられた言葉と共に、狙い澄まして放たれる一射。ひょうと風を切った疫病の矢は、まっすぐこちらに近付いてきていたソンビ鮫の鼻先に見事的中する。
『グ……ウゥゥオオォォォォォォッ』
「ロドリゲスちゃん……どうしたの……!?」
突き刺さった鏃から疫病の呪いが侵食し、苦しげに身悶えだした愛鮫にルルが心配そうな声をかける。すかさず逢真は新たに三本の矢を取り出し、恙の弓から立て続けに三連射する。
「元から腐りかけなんだ、どんと後押ししてやらァ」
どすどすどすと大鮫を射抜く疫神の矢。それに込められた力はそれぞれ腐食毒、壊死毒、ユーベルコード封じ。矢傷を負った箇所からじくじくと呪いが広がっていくように、ゾンビ鮫の巨体は恐ろしいほどの速さで朽ち果てていく。
「そんな……ロドリゲスちゃんが……っ!!?!」
ルルは必死に崩れゆく愛鮫を現世に留めようとするが、すでに彼女自身も相当のダメージを負っており、神の毒を凌駕するほどの魔術を行使する力はもはや失われている。
「ああ……ああああああ……ッ!?!」
彼女の目の前で『ロドリゲスちゃん』は壊死した肉と皮とボロボロの骨だけの存在となり、それさえも海風に吹かれて崩れ消えていく。絶望の叫びを上げながら、騎獣を失ったルルの身体は再び海の中へ。
「俺の《宿》は筋力がねぇから、切った張ったは苦手でね」
ドボンと水面に落ちた波紋を見下ろしながら、逢真はひょいと弓を元の形に戻す。
宿とは病と毒と「軛」によって形作られた彼の肉体のこと。常人とは異質な作りをしているぶん、単純な腕力で力自慢の猟兵に劣るというのは彼の言う通りだった。
「直接殺すのも主義に合わねえンで、ほかのお人の手助けに回りますよっと」
最強の相棒である騎獣を失ったルルの心身への影響は計り知れないだろう。援護はこれで十分とみて、逢真はあとの成り行きをじっと見定めるように目を細めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ニィエン・バハムート
シンプルに行きましょう。あなたのゾンビ鮫と私の竜。どちらが強いか勝負!!
そちらのゾンビ鮫に生えてるのは触手ですが、私の竜に生えているのは鋭い爪を持った手足!あなたのゾンビ鮫の触手を【部位破壊】しながら攻撃するように竜たちを指揮(※【動物と話す】【鼓舞】)しますわ。
そして私自身も竜の1体に【騎乗】し鮫と竜の【空中戦】に参戦して、メガリスから発する【衝撃波】による【範囲攻撃】で竜たちを援護しますの。
そしてタイミングを見計らい、ルルがUC同士の戦いに気を取られ隙を晒した瞬間に竜から飛び降り、ルルを【踏みつけ】るように飛び蹴り!
ふっ、鮫魔術師としての力は私の方が上だったようですわね!(どこらへんが?)
「シンプルに行きましょう。あなたのゾンビ鮫と私の竜。どちらが強いか勝負!!」
海中に落ちたルルにびしりと指を突きつけ、高らかにそう言い放ったのはニィエン。
闇に染まりしゾンビ鮫と偉大なる竜王(自称)の軍勢とで雌雄を決し、生き残った者が勝者となる。互いに鮫魔術師としてのプライドを賭けた一戦ということだ。
「もちろん、この私の竜が負けるはずがありませんが!」
「バカなことを……竜なんてサメの前ではただのエサ……」
こうも真っ向から挑戦されてはルルも逃げるわけにはいかない。ゆらりと海面に立ち上がって魔杖を構えると、流れる自らの血を贄として下僕召喚の呪文を唱えはじめた。
「深淵より来たれ……混沌の使徒……」
「現れよ! 竜の群勢! バハムート・レギオン!」
ふたつの詠唱が海上に木霊し、暗黒鮫魔術師の眷属と【ナマズシャーク・トルネード】が現出する。かたや禍々しき混沌の触手を生やしたゾンビ鮫、かたや手足と翼の生えたナマズザメ。どちらか一方でもお腹いっぱいになりそうな超常のサメ達が、雌雄を決するべく正面から激突する。
「そちらのゾンビ鮫に生えてるのは触手ですが、私の竜に生えているのは鋭い爪を持った手足!」
武器の切れ味ならばこちらが上だと、ニィエンは配下の軍勢にゾンビ鮫の触手を切り裂くように命令を出す。自らも1体の竜の背に跨り、移植したメガリスから放つ衝撃波で敵を撃墜していく勇姿は、竜の指揮官として士気を鼓舞するのに十分なものだ。
「サメに手足なんてただの蛇足……絡め取ってしまえばあとはこちらのもの……」
一方のルルもまた負けじとサメ達に檄を飛ばし、うねうねと伸びる触手で竜の四肢や翼を拘束しようとする。自在に動く触手の柔軟性とゾンビのタフさが此方の武器だ。
両軍一歩も譲らぬサメ対サメの空中戦は熾烈を極め、サメなら海で戦わないのかという疑問も置き去りに、千切れた触手と翼片が舞い散り、竜とサメの血潮が雨のように降り注ぐ、地獄のような光景となった。
「絶対に……負けられない……」
すでに猟兵の鮫魔術師を相手に何度か手痛い敗北を喫しているルル。今度こそは勝利してみせるという意気込みは非常に強く、ゾンビ鮫の指揮を執る手にも熱が籠もる。
だが、彼女は鮫魔術のユーベルコード同士の戦いに固執するあまり、自ら戦術の視野を狭めてしまっていた。それこそニィエンにとっては格好の隙だとも気付かずに。
「今ですわ!」
ばっ、と竜の背から飛び降りたニィエンは、バハムート・ウイングを畳んで急降下。落着点にいる敵の無防備な頭上目掛けて、渾身の飛び蹴りをお見舞いする。
「必殺! バハムート・キック!」
「な……がふ……ッ!!?」
ハッと上を見上げたときにはもう遅く、竜王の御足がルルの顔面をしたたかに踏みつける。ウォーマシンの軍勢を屠った「バハムート・デストラクション」に比べれば威力は劣るのもの、落下速度に自己とメガリスの質量を加えた一撃の重さは十二分。
「ふっ、鮫魔術師としての力は私の方が上だったようですわね!」
「どこらへん……が……?」
悠々と笑みを浮かべて勝ち誇るニィエンに対し、納得いかないといった表情を浮かべながら、鮫魔術とはまったく関係のない個人技で決着をつけられたルルはぶくぶくと水底に沈んでいくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
祇条・結月
鮫のエサになる気はないし、君を黙って帰すつもりもない
……ここで決着をつける、なんて言いかたは柄じゃないんだけど
行くよ、できることをする
ゾンビ鮫……やっぱり、何回みても視覚的に慣れれるもんじゃないけど、【覚悟】を決めて立ち回る
妙な触手も持ってて、近づかなければ安全ってもんじゃないよね
でも、小回りを利かして飛び込んで
向かってくる鮫の群れの動きを【見切り】、【敵を盾にする】ように凌いで距離を詰めてく
いくら超常の鮫でも、触手まで生えててこの数じゃ小回りは利かないでしょ
同士討ちを誘って
……鮫が傷ついたら怒るんだ?
じゃあ……喚ぶのは止めて、しまっておけば?
≪術式封鎖≫で後続を断って、咎人の鍵でルルを刺すよ
「ぐ……ぅ……おとなしく……喰べられていれば……いいものを……っ」
「鮫のエサになる気はないし、君を黙って帰すつもりもない」
今や満身創痍といった有様の鮫魔術師と対峙しながら、毅然と言い放ったのは結月。
万が一ここで取り逃しても、ここまで力を失った彼女がまた別の島で再起できる可能性は低い。だが、億が一でもこの島のような惨劇の可能性を残すわけにはいかない。
「……ここで決着をつける、なんて言いかたは柄じゃないんだけど。行くよ、できることをする」
手には基底形態に戻った銀の鍵を握りしめ。胸には勇気と決意の炎を灯し。
邪悪なるコンキスタドールの野望を、ここに施錠するために少年は駆け出した。
「決着をつける……それは私のセリフ……!」
憎悪の籠もった陰鬱な視線でルルが結月を睨みつけると、ゾンビ鮫の大群が殺到する。召喚者のユーベルコードによって禍々しい触手を生やされたそれらは、先刻戦った個体よりも凶暴かつ強力で、そしておぞましい見た目をしている。
「ゾンビ鮫……やっぱり、何回みても視覚的に慣れれるもんじゃないけど」
たとえどんな異形が相手だろうとも、覚悟を決めて結月は立ち向かう。咆哮渦巻くサメの群れへと、敢えて自ら一歩前へ。立ち止まってしまえばそれこそ末路はサメの餌だ。
(妙な触手も持ってて、近づかなければ安全ってもんじゃないよね)
うねうねと伸びてくる触手に対し、結月は小回りを利かせて立ち回る。捕まらないよう身体を低くしてかいくぐり、あるいはひょいと跳び越えて、飛び込む先は群れの中。
『オォォォォッ!』
獲物が自らやって来てくれたと、ゾンビ鮫たちは一斉に襲い掛かるが――たったひとりの標的に何百匹ものサメが同時に殺到すれば、何が起こるのかは目に見えている。
「いくら超常の鮫でも、触手まで生えててこの数じゃ小回りは利かないでしょ」
『グゴゥッ?!』
『ギャウッ!!』
向かってくるサメの群れの動きを素早く見切り、ひらりと身を躱す結月。獲物を捉えそこなったサメは逆側から迫っていた別のサメと正面衝突し、凄絶に互いを喰らい合う羽目になった。
「あああっ……みんな……ストップ……!」
ルルは慌ててゾンビ鮫の統制を取り戻そうとするが、一度乱戦状態になった群れの同士討ちを阻止するのは、もはや当の召喚者にすら不可能なことだった。傍目には敵中で孤立しているかのように見える結月は、その実うまく敵を盾にするよう群れの中を動き回ることで、同士討ちの連鎖を加速させていく。
「私の大切なみんなを……よくも……!」
「……鮫が傷ついたら怒るんだ?」
すいすいと泳ぐようにサメの猛攻を凌ぎきり、少年は怒りに震える鮫魔術師と距離を詰める。その怒りを、大切な者をサメに喰われた人々も感じていたとは思わないのか――ただ己のエゴのみを主張する姿に、このコンキスタドールの本性を見た気がした。
「じゃあ……喚ぶのは止めて、しまっておけば?」
結月が突き出すのは銀の鍵。眼を刺すような鋭い輝きと共に現れた錠前が、ルルの鮫魔術を【術式封鎖】する。これでもう、彼女は新しいゾンビ鮫を喚ぶことはできない。
「助けてみんな……っ、どうして来てくれないの……!?」
とっさに身を守ろうと叫んでも、その呼びかけに応えるものは誰も居ない。後続を断たれ無防備となった少女の前で、キーメイカーの少年は銀の鍵を魔鍵の形態に変え。
「さようなら」
ルルの胸に突き立てられる「咎人の鍵」。それは人の心を刺す鍵にして剣。物理的には血の一滴も流れぬまま、少女の表情は苦痛と恐怖、焦燥と絶望に染まっていき――。
「う……あ……あぁぁぁ……ッ!!!」
結月が魔鍵を引き抜くと、ルルはがくり、と糸が切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
鮫に対する愛情はともかく、死者に生者を喰らわせるのは看過できません。
ゾンビとはいえ鮫ならば陸上にいれば……と思っていましたが。
なんで飛ぶんでしょうね、この世界の鮫は。
フィンブルヴェトを手に氷の弾丸を用いた遠距離戦闘を。
大きいと見合った生命力があると言いますが、やはりしぶとい……死んでいるのに生命力も何もありませんか。
まずは距離を取りつつ敵の杖に注意し、『見切り』避けることに比重を置いて戦います。
敵の攻撃を見切ったら敢えて脱力した状態で暗黒ビームを受け、【柳弾】により無効化しましょう。こちらがマヒしたと思い仕掛けて来たら『カウンター』を。術者を狙い銃剣による『串刺し』『零距離射撃』を。
「鮫に対する愛情はともかく、死者に生者を喰らわせるのは看過できません」
海面に膝を突いたルルの姿を、セルマは愛銃フィンブルヴェトのスコープ越しに覗いていた。射抜くような眼差しと共に告げられる言葉は、けして逃さぬという必殺の意志。
「愛する鮫ともども、ここで仕留めさせてもらいましょう」
「いやだ……私は……まだ……助けてロドリゲスちゃん……!!」
髑髏の魔杖を支えとして立ち上がったルルが、フラフラとよろめきながら呼びかける相手は最愛の愛鮫。爆発でも起きたような水飛沫を上げて、巨大なゾンビ鮫が姿を現した。
「ゾンビとはいえ鮫ならば陸上にいれば……と思っていましたが。なんで飛ぶんでしょうね、この世界の鮫は」
ルルを背中に乗せながら翼もなしに空中に浮かぶ『ロドリゲスちゃん』とやらを見上げ、小さく嘆息するセルマ。世界が異なれば常識も異なるのも当たり前ではあるが、それにしたって意味不明すぎやしないかと思う。
「まあ、獲物が海にいようと空にいようとやることは変わりません」
岸辺で狙撃体勢を取り、フィンブルヴェトのトリガーを引く。放たれた氷の弾丸は狙い過たずに標的を捉えるが、それはゾンビ鮫の巨体の一部を氷結させただけで、致命傷には至っていない。
「いくよ……ロドリゲスちゃん……!」
『ウウウゥオォォォォォォッ!!!!』
ルルの魔杖の先端の髑髏に闇のオーラが灯ると、大鮫は咆哮を上げながら身体に張り付いた氷を振り払い、岸辺に向かって突っ込んでいく。その腐臭漂う顎に喰らいつかれれば、何者であろうと無事では済むまい。
「くらえ……!!」
大鮫の突撃に先んじて掲げられる魔杖。その先端の髑髏の瞳が怪しく光ったのを見たセルマは、冷静かつ素早く身を翻す。直後、杖から発射された暗黒ビームが、彼女のいた場所を貫いていった。
(あれに当たると動きを止められれますか)
杖の動きを注視して避けることに比重を起きつつ、セルマは装填を終えた氷弾を再び撃ち放つ。いくら飛んでいようともあれだけの巨体だ、彼女にとっては外すほうが難しい相手だが――命中しても敵の動きはいくらか鈍る程度。
「大きいと見合った生命力があると言いますが、やはりしぶとい……死んでいるのに生命力も何もありませんか」
通常の生物であれば致命傷となり得る銃撃も冷気も、ゾンビの身体には関係ないと言わんばかり。このままでは決定打に欠くと感じたセルマは一計を案じ、敵の視界でだらん、と銃口を下げてみせた。
「隙あり……!!」
既に後がないルルにとって、それはまさに千載一遇の好機。残された魔力を振り絞って放たれた暗黒ビームが、無防備に脱力したセルマの身体を撃ち抜く。
「ぅ……」
セルマの口から小さな呻き声が漏れ、その場に棒立ちになる。それでビームの効果により相手がマヒしたと思ったルルは、会心の笑みを浮かべながら愛鮫に号令を出した。
「あいつを……やっつけて……!」
『オォォォォォォォォォォッ!!』
仕掛けるならばここしかないと、動かない獲物に向かって猛然と突撃する巨大ゾンビ鮫。大きく開かれたその顎が、銀髪の少女をひと呑みにせんとする――まさにその刹那、少女の指先がぴくりと動いた。
「え……!?」
必殺を企図した大顎の一撃は紙一重で虚空を噛み、ルルの瞳が驚愕に見開かれる。
なぜ、マヒさせたはずの相手が動いているのか。大鮫の攻撃を躱し、自分に銃口を突きつけているのか――彼女が現実を理解する時間はあまりにも少なすぎた。
「かかりましたね」
対するセルマは動揺ひとつない静かな口調でカウンターを仕掛ける。自分から突っ込んできてくれた敵の動きに合わせてフィンブルヴェトを突き出せば、その先端に装着された銃剣「アルマス」が、槍のように大鮫の騎手を串刺しにする。
「かは……ッ!!!」
胸を貫かれたルルの口から鮮血があふれ出す。彼女と生命力を共有する大鮫も同様に。
その体勢のままセルマが放つは【柳弾】。先ほどルルから受けたビームはこのユーベルコードによって無効化され、その魔力は銃弾となって彼女の銃に装填されている。
「お返しします」
冷たい宣告と共に轟く発砲音。自らの魔力をゼロ距離から撃ち込まれたルルの身体は、衝撃によって『ロドリゲスちゃん』の背中から弾き飛ばされ、海上へと落下する。
「ぎ……いぃぃ……ッ!!!?!」
絞り出すような悲鳴が波音に紛れて消える。べったりと血に染まった銃剣と銃身から、セルマは獲物の心の臓を貫いたという確かな手応えを感じていた。
大成功
🔵🔵🔵
ブルース・カルカロドン
口調:『映画』以外の漢字はカタカナ
アドリブ、共闘歓迎
ルル・クラドセラキーには怒りを覚えずにはいられない
彼女も彼女で何か事情があるのかも知れない
ロドリゲスちゃんを死後も縛り付け、そばに置いておかずにはいられない理由があるのかも知れない
だけど、どれだけ大切な相手でも死んだらお別れなんだ
お別れして、前を向いていかなくちゃ
そうしなきゃ死んだ相手もあの世で安心できないだろう
「さあ、サメ映画をハジめよう……そしてオわらせよう」
変身するは巨大なサメ、サメ映画のサメとして最もシンプルな脅威の形
ロドリゲスちゃん相手に正面から立ち向かう
さあ、サメ映画のサメと鮫魔術のサメ
どちらがより優れているか、勝負といこうか
「う……うぅ……」
海に落とされたルルの身体には、即座に立ち上がるだけの力さえ残っていなかった。
肉体的にも魔力的にもとうに限界を超えている。鮫魔術師としての力を使えなくなれば、彼女自身はもはや無力なヒトだ――そしてその瞬間はもう間近に迫っている。
「いや……このまま死ぬなんて……絶対いや……!」
その前にせめて猟兵に一矢報いようという恩讐の念が、ボロボロの身体に力を与える。
血の匂いを海中に漂わせながら、その身一つで浮上するルル――そんな彼女の元に近付いてくる一頭のサメの影があった。
「ロドリゲスちゃ……!?」
ルルは最初それを自分の愛鮫かと思ったが、違う。そのサメの名はブルース・カルカロドン。悪しき鮫魔術師に引導を渡すべく、再びこの戦場に舞い戻ったサメである。
(ルル・クラドセラキーにはイカりをオボえずにはいられない)
彼女も彼女で何か事情があるのかも知れない。『ロドリゲスちゃん』達を死後も縛り付け、そばに置いておかずにはいられない理由があるのかも知れない。だが、その上でなお、ブルースは彼女の所業を赦すことはできなかった。
「さあ、サメ映画をハジめよう……そしてオわらせよう」
三角形のヒレから順番に、水面から姿を現すその威容。人間など容易くひと呑みにするであろうその巨体と、鋼をも引き裂く鋭い歯は、【サメ映画のサメ】として最もシンプルな脅威の形を再現したもの。
「ひ……っ!?」
彼と遭遇したルルの心に、これまでにない感情が押し寄せる。おそらくはこれが生涯最初で最後であろう――鮫魔術師である彼女が、他ならぬサメに恐怖を抱いたのは。
「ろ……ロドリゲスちゃん……たすけて……!」
『グウウゥゥゥゥオォォォォォッ!!!!』
悲鳴じみた声に応じて駆けつけたのはルルが最も愛するゾンビ鮫。巨大化したブルースにもゆめゆめ劣らぬ巨体持つそれは、腐臭に満ちた大顎から凄まじい咆哮を上げる。
常人であれば恐怖に震え上がるところだが、同胞たるブルースがその程度の威嚇に怯むことはない。むしろその意気やよしとばかりに、対抗心と闘争心が燃え上がる。
「さあ、サメ映画のサメと鮫魔術のサメ。どちらがより優れているか、勝負といこうか」
挑むは小細工なしの真っ向勝負。海の脅威と恐怖、そして死を体現せし二頭のサメは正面から激突し、剥き出しの牙と牙とで互いを喰らいあう壮絶な戦いが始まった。
「ロドリゲスちゃん……負けないで……!」
もはや単独で戦う力の残されていないルルは、ただゾンビ鮫に声を送ることしかできない。どんよりと昏く濁ったその眼に宿る必死さは、ひどく歪んではいるが彼女の愛鮫への想いの深さを覗わせるものだった。
「やっぱりキミはこのサメがタイセツなんだね」
ゾンビ鮫との血みどろの攻防を繰り広げながら、ブルースは彼女のサメにかける感情の一端を理解した。暗黒に堕ちても――あるいは暗黒に堕ちるだけの理由が、そこにはあったということだろう。
「だけど、どれだけタイセツなアイテでもシんだらおワカれなんだ。おワカれして、マエをムいていかなくちゃ」
そうしなきゃ死んだ相手もあの世で安心できないだろう――このサメも、もう眠る時間だ。すでに何度も斃されては蘇生を繰り返した屍体は、とうに限界を超えている。
互いに一歩も譲らぬ戦いの果て、遂にブルースの牙が『ロドリゲスちゃん』の首を噛み千切り、二度と蘇らせることのできないよう、完膚無きまでに食らい付くした。
「あ……ああ……あああああああああ……っ!!!!」
無惨な肉片となった愛鮫の残骸を前にして、ルルが上げたのは絶望の絶叫だった。
これでもう彼女を守るサメは全ていなくなった。サメのいない鮫魔術師はもはや死んだも同然。ここにいるのは無力な小娘と――怒れる一頭のサメだけだ。
「…………」
「ひ……こ……来ないで……っ!!」
ブルースは無言のままルルに近付いていく。これ以上は何も語ることはない。沈黙こそが恐怖を煽り立てる最高のスパイスになりえることを、彼はよく知っている。
「来ないで……いや……イヤああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ!!!!!」
大顎を開いて飛び掛かったブルースと、真っ青になったルルの姿が海中に消える。
聞こえてくるのは絹を裂くような少女の悲鳴と、バシャバシャともがくような水音。合間に獣の唸るような音が混ざるなか、悲鳴と水音はやがて小さくなっていき――やがてなにも聞こえなくなると、じわぁ、と、水面が真っ赤に染まっていく。
それが、残虐なるガレオス島の支配者、暗黒鮫魔術師ルル・クラドセラキーの最期。
罪なき人々をサメの餌にしてきた彼女にとっては、まさに因果応報の末路であった。
かくして、忌まわしき生贄の掟に縛られていたガレオス島に平和が戻ってくる。
圧政より解き放たれた人々は口々に感謝を述べ、島中は喜びの声で満ち溢れる。
希望の足跡をこの島に残し、猟兵達は新たな冒険を求めて、広大なるグリードオーシャンの航海を続けるのだった――。
大成功
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