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異端の森守

#ダークセイヴァー #異端の神々

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#異端の神々


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●微睡む森
 孤独が苛むのは、心であるというのならば、体を蝕むものは一体何であろうか。
 朽ちゆくこともなく、だが、堅牢でもない体。
 その体を蝕んでいくのは狂気。
「寂しくて寂しくて、どうしようもないから、自分以外の誰かが欲しかったのに」
 その娘はそうつぶやいた。
 鬱蒼と木々が茂る光差すことのない森の奥で、ただ一人座して森守たる役目を果たしていた。
 いつから自身がそこに発生したのかという記憶はない。
 ただ、この森は自身であり、森は自身であるという事実だけが頭の奥底に沈泥している。何故そう思うのかわからない。
 だが、わからないからと言って、それを無視してもいいかと言われたら、それは違う。

「ここには私ばかり。私と同じものばかり。違うものが欲しい。私と違うもの。違う。違う。違う。違う。違う。違わない」
 その言葉はうつろ。虚の中より溢れ出る言葉は孤独と狂気によって歪みきっていた。

 ああ、どうしてこんなにもこの森は寂しいのだろう。
 こんなにも森は豊かに茂っているというのに、誰も寄り付かない。人間が来て欲しい。仲良くしたい。孤独を癒やして欲しい。
 その忸怩たる想いは、赤裸々に叫ばれる。その叫び声に呼応するように森は広がっていく。
 まるで此処ではない何処かに手を伸ばすように。

 辺境はすでに徐々に侵食し、版図を広げる森によって飲み込まれた。

●辺境殺神
 ダークセイヴァーの辺境の殆どは「異端の神々」と呼ばれる超存在が跋扈する未開の地である。
 そこにはダークセイヴァーの支配者であるヴァンパイアの手が入らない土地が存在する。異端の神々とヴァンパイアは敵対を続け、神々は屠られた。
 だが、屠られたはずの神々はヴァンパイの肉体と魂を乗っ取り、次々と同士討ちを始めてしまう。そのことによりヴァンパイアは辺境支配を諦めたのだった。

 故に、その辺境に目をつけたのだ。ダークセイヴァーは未だヴァンパイアの支配が強い世界である。その世界においてヴァンパイアの手の届かぬ土地というのは、開放を目指す人間たちにとってヴァンパイア支配下ではない土地を作り出せるという可能性に満ちているのだ。

「はい。そのとおりです。ダークセイヴァー。ヴァンパイアの支配する闇の世界。その世界の辺境には、ヴァンパイアの手の届かぬ土地が存在するのです」
 ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)がグリモアベースに集まってきた猟兵たちに頭を下げて出迎えた。

「今回皆さんのお願いしたいのは、まさにその辺境の地へと赴き、狂えるオブリビオンを打倒し、その土地を開放することです」
 そう、狂えるオブリビオン。それはヴァンパイアによって討たれ、逆にヴァンパイアの体と魂を乗っ取った異端の神々のことである。
 彼らは一切の理性をもたないことから、ヴァンパイアからもそう呼ばれているのだ。

「皆さんが赴くのは、現在進行系で版図を広げている辺境のある森です。不自然に森の侵食スピードが上がっていることから、この森の奥に狂えるオブリビオン……異端の神々の一柱が存在しているのです」
 これを討ち滅ぼし、豊かな土壌である森を手に入れることができれば、ダークセイヴァーにおいてヴァンパイアの支配に苦しむ人々の安住の地を手に入れることができるかもしれないのだ。
 だが、異端の神々の存在する森は危険そのものである。彼ら狂えるオブリビオンのもたらす狂気は、猟兵であっても一歩間違えれば、狂気に魂を支配されてしまうかもしれない。

「はい……とても危険な旅になります。まずは荒野を侵食し続ける森へと入っていただきます。この森は入った途端、耳元で囁く声が響いてくるようです。その声の主はわかりませんが……ひどく孤独を嫌うものであるように思えます。何らかの対策が必要であるのですが……皆さんのユーベルコード、精神力だけが頼りです」
 森の中を旅する以上、常に声がつきまとってくる、ということなのだ。これに対する対策を考えねばならないが、さらに難題が積み重なる。

「森の道中で狂えるオブリビオン……つまりは、異端の神々に魂と体を乗っ取られたヴァンパイアの集団と遭遇します。彼らはもはや、元のヴァンパイアの記憶や感情はありませんが、皆さんもまた狂気の犠牲者に陥れようと襲いかかってきますので、これを撃破してください」
 同じオブリビオンでありながら、狂気に飲まれた存在。理性は存在せず、猟兵と見ればためらわず襲いかかってくるのだ。
 見通しの悪い森の中での戦闘である。こちらも重々対策を取らねばならないだろう。

「最後は異端の神々であるオブリビオンとの対決になります。これを撃破することを持って、今回の旅の目的は完遂されるのですが……この異端の神々もまた狂気にとらわれているようです。この狂気の理由が判明すれば、戦いを有利に進められると思うのですが……」
 ナイアルテの顔色は優れない。
 非常に危険な戦いである以上に、この狂気飲み込まれた森の存在が恐ろしいのである。異端の神々が狂気飲まれた理由。その理由さえ判明できればいいのだが、予知ではそこまでわからないようだった。

「狂気の理由はわかりませんが……それでもダークセイヴァーに生きる人々のためにヴァンパイアの支配下にない居住区を手に入れることは、有意義なことだと思います。どうか、彼らのためにも異端の神々であるオブリビオンを打倒してください……!」
 再び頭を下げ、ナイアルテは猟兵たちを送り出す。

 深き闇とヴァンパイアが支配する闇の世界、ダークセイヴァーへ―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はダークセイヴァーの辺境を旅するシナリオとなります。辺境の広がり続ける森。その最奥に存在する異端の神々を討伐し、ダークセイヴァーの人々の居住区を獲得しなければなりません。

●第一章
 辺境の荒野を侵食し続け、広がる森へと踏み込みます。
 森の中へと入った途端、みなさんの耳には、常に狂えるオブリビオンの声が聞こえてきます。その声が誰のものであるかはわかりませんが、その声が最奥に存在するオブリビオンの狂気の原因の断片であるのは間違いありません。

●第二章
 集団戦になります。異端の神々に魂と肉体を乗っ取られたヴァンパイアの群体との戦闘です。彼らもまた狂気に飲まれていますが、第一章で常に聞こえてきた狂えるオブリビオンの声と同じ狂気をはらんでいるようです。
 彼らは理性を失っており、呼びかけにも一切応えようとしませんが、猟兵と見れば襲いかかってきますので、これを撃破していただきます。

●第三章
 ボス戦になります。異端の神々と呼ばれるオブリビオンとの戦いです。このオブリビオンもまた理性はなく、何の説得も通じません。
 ですが、第一章、第二章の中での狂えるオブリビオンの声から推察される「理由」を指摘し、説得に利用することができれば、戦闘を有利に進めることができるでしょう。

 それでは闇に支配された世界、ダークセイヴァーに新たなる希望を灯す旅路を皆さんと共に綴れるように、いっぱいがんばります!
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第1章 冒険 『迷い森の夜鳴き』

POW   :    灯りをともして進む。

SPD   :    暗闇をみとおし進む。

WIZ   :    耳をすまして進む。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 森の中にて暗澹たる声が響く。
 足を踏み入れた者たちに平等に降り注ぐように、囁くように、傍らにあるように響く声。

「痛いのはキライ」
「怖いのはキライ」
「悲しいのはキライ」
「キライキライキライキライキライキライ」

 耳鳴りを起こさんばかりに鳴り響く、「キライ」の数々。
 尋常ならざる精神力を保たねば、この狂気に苛まれ、飲み込まれることだろう。
 それでも猟兵は進まねばならぬ。

「独りは―――」

「もっとキライ」
祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ・支援・協力は可能な範囲で

『フェアリーランド』の壺の中から光/風/火/土/闇の精霊を出して、聖霊も月霊も出して周囲を警戒しながら捜索・探索をして逐次教えてもらいます♪
同時に『グレムリン・ブラウニー・ルーナ』で召喚した小妖精たちには虫や小動物や土の中の生き物にも聴いてもらい此方も逐次教えてもらいながら、チビノートとチビ鉛筆でメモを取りながら纏めた後に他の猟兵との情報交換の為に用意して回せる準備をして置きます☆彡

聲に「何が痛いの?何が怖いの?何が悲しいの?彼方の助力になって協力したいの、だからお願い教えてくれませんか?☆彡」と優しく慈愛と加護をもって宥め話しかけてみます☆彡



 夜と闇に覆われし常闇の世界。そのダークセイヴァーにあってもなお、さらに光届かぬ辺境の地。
 暗闇よりいと暗き森は、足を踏み入れる者たちを拒むでもなく、ただ版図を粛々と広げ続けていた。荒野はすでに森に侵食され、その様子は上空から見る者あれば、まるで手を伸ばすようでもあった。
 
 声が聞こえる。
 一歩、森の中に足を踏み出した途端に耳をふさごうとも、まるで関係が居ないかのように頭に響いてくる声。
 娘の声だと分かる程度には、声色がわかろう。
「キライ。暗いのはキライ。貧しいのはキライ。豊かではないのはキライ」
 その声に、言葉に耳を傾けるのは、祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)。その小さき体はふわりと森の中を漂うように舞う。

「どうしたのかな、この声の子……何がそんなにキライなんだろう」
 この声の主は救いを求めているような、助けを求めているような、それでいて拒絶するような、矛盾したものを感じたのかもしれない。
 彼女のユーベルコード、フェアリーランドより現れたるは、それぞれの精霊たち。ティファーナの周囲を飛び回り、警戒し、探索している。
 だが、何も見つからない。ただただ、声が聞こえるのだ。もっと何か微細なものなのであろうかと、さらなる捜索を精霊たちに願い出るも、何も変わらない。
 声が聞こえる。
 声が。声が。声が。頭の中で反響するように「キライ」という単語だけが、くわんくわんと鳴り響く。

「頭がクラクラしてくる……何が痛いの?何が怖いの?何が悲しいの?彼方の助力になって協力したいの。だからお願い教えてくれませんか」
 ティファーナの声は優しく慈愛に満ちていた。
 キライと拒絶するばかりでは、誰も手を差し伸べることはない。故に窘め、話を聞いてもらいたい。
 声の主は森の最奥であろう。だが、それでも声が返ってこない。理性なき狂えるオブリビオンである異端の神々。その声は、彼女には届かない。

 精霊たちが周囲に集まってくる。ティファーナは用意していたノートにメモを取りまとめ始める。
 土壌は豊潤。木々は実りを見せている。ぞっとするくらいに森の豊かさは誇るべきものであるが、あまりにも豊かすぎるのだと、精霊たちはティファーナに囁く。

 豊かであることは喜ぶべきことである。
 だが、あまりにも不自然な豊かさは、何を代償にしてのことだろう。

 声だけが木霊のようにティファーナの脳裏にこびり着いて離れないのであった……。

成功 🔵​🔵​🔴​

春乃・結希
一振りの大剣を胸に抱きしめて、森を進みます

あなたは、世界の全てが嫌いなのかな…
あなたの気持ち、私にもわかります
独りも
暗いのも
怖いのも
痛いのも
別れるのも
嫌われるのも
それに…私自身も
私が嫌な気持ちになるものは全部嫌いだし、
そう思ってしまう私自身は一番嫌い

…でも、今の私には『with』がいる
『with』を世界中の誰よりも愛して、何よりも信じて…
自己嫌悪の深みに嵌まりそうな私を『with』か引き止めてくれた
共にある限り、何も怖くない、何にも負けない、最強の私でいられる

あなたの声なんかで、『with』と私の絆は絶対に切れたりしない
…ひとりは、寂しいよね
待ってて、すぐ行くから



 常闇の世界を歩くには、孤独であるということはあまりにも重い足枷となることだろう。ダークセイヴァーはヴァンパイアに支配された世界。辺境は異端の神々が跋扈し、人間の生存圏はあまりにも狭い。
 人は身を寄せ合い、それでもなお支配を受け入れなければ生命を存続させることすら難しい。
 誰かと共にある。
 その事実だけでダークセイヴァーを生き抜くことができる。それはどの世界においても真理なのかもしれない。他者がいるからこそ自己があり。自己があるからこそ他者がある。それを共依存と呼ぶものもあるだろう。
 だが、人は憂いに寄り添うことができるからこそ、優しいのだ。

 辺境の森は、鬱屈した茂りを見せていた。
 一歩踏み出すのもためらわれる程の暗闇。その一歩を踏み出した者―――春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は、一振りの大剣を胸に抱きしめて進む。
 途端に頭の内に反響するのは、娘の声。
「キライキライ。独りに慣れてしまう自分がキライ。あんなにキライな孤独にも慣れようとする心がキライ。誰かに近くに居てほしいのに、誰も近くに寄っては来てくれないのがキライ」
 キライキライキライ。その言葉だけが彼女の頭のうちで木霊のように響き渡る。

「あなたは、世界のすべてがキライなのかな……」
 結希は木霊する声の主へと語りかけるように、自身にもまた言い聞かせる。
 それは彼女自身もまた孤独を感じるものであるからかもしれない。
 その言葉は慰めではないのかもしれない。

「あなたの気持ち、私にもわかります。独りも、暗いのも、怖いのも、痛いのも、別れるのも、嫌われるのも。それに……私自身も」
 それは独白に近い。
 彼女自身も狂気に飲まれたオブリビオンと同じものを抱えているのかも知れない。
 自身が嫌だと感じるものは全てキライだと感じる。しかし、そう想ってしまう自身が最もキライなのだと。

 だが、彼女はオブリビオンと違う者がある。
 それは他者を、彼女の抱える大剣―――『with』。彼女の想いは何者にも変えがたいものである。大事に抱える大剣が、彼女の寄る辺である。
 故に、この森の中に蔓延する狂気に彼女が飲み込まれることはない。その大剣を手放すことがない以上、彼女に狂気は訪れない。
「……でも、今の私には『with』がいる。『with』を世界中の誰よりも愛して、何よりも信じて……」

 彼女の言葉は頭に響く言葉すらも凌駕していく。彼女の『with』に捧げる想いは、狂気よりも重い。森を包む狂気すらも、彼女と『with』の絆は断ち切ることができないのだ。
 そのことを、彼女自身が一番よく解っている。
 だからこそ、彼女の心は強く鎧われているのだ。一分の隙もないほどに、絆によって覆われている。
 だからこそ、彼女の言葉は力強く森の中へと吸い込まれていく。

「……ひとりは、寂しいよね。待ってて、すぐ行くから」
 二人の歩みは止まらない。侵食続く森の奥へ、奥へ……暗闇より昏き闇の中へと進んでいくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィノラ・シュレミール
アドリブ連携歓迎

荒野を侵食する森ですか、とんでもない生命力ですね
人が暮らすなら荒野より森の方が有難いとは思いますが……
流石にこの様子は異常ですね
しっかりと目的を果たしましょう

森の中は歩きにくいかもしれません
適宜翼を使って飛行しつつ進みます

しかしこの声はなかなか……
とりあえず【オーラ防御・狂気耐性】で正気を守りましょう
その上でこの声に少し耳を傾けてみます

痛いの、怖いの、悲しいの
ええ、私も嫌いですよ
大多数の人が嫌いだと思いますが……
そして独りはもっとキライ、と
これだけ豊かな森なのに異端の神はひとりぼっちなのでしょうか
むしろ豊かだからひとりぼっち……?
何にせよ、あなたに会いに行ってはあげますよ



 狂気渦巻く森は、すでに荒野を侵食し続ける。それはまるでなにかに手を伸ばすようでもあり、また、伸ばす先に何もないことを悟っていながらも諦めきれないかのような……そんなことさえ思えてしまうほどに伸びていた。
 ダークセイヴァーの荒野においてさえも、ヴァンパイアはその森の侵食を止めようがなかった。何故ならば、その侵食の中心にあるのが異端の神々であることは明白。
 異端の神々を討たんとしても、逆に肉体と魂を奪い取られてしまう始末である。事実、ヴァンパイア配下のオブリビオンの相当な数が異端の神々に奪い取られ、狂気を孕んだ存在へと変わってしまっているのだ。

 猟兵であったとしても、その狂気に晒されて耐えるのは難しいことであったかも知れない。だが、ダークセイヴァー世界の人々の安寧のため、人間の生活圏を広げるためには避けては通れぬ道である。
 その道の一歩をまた、踏み出す猟兵がいた。ウィノラ・シュレミール(天蓋花の人形劇・f26014)である。
 白い翼を持つ、彼岸花のオラトリオ……彼女は、ゆっくりと森の中へと足を踏みれる。
「荒野を侵食する森ですか、とんでもない生命力ですね。人が暮らすなら荒野より森の方がありがたいとは思いますが……」
 だが、この森の雰囲気は以上である。目的を果たすためとは言え、森に一歩を踏み入れた瞬間から頭の内に響いてくる声は堪える。

「痛いのはキライ。怖いのはキライ。悲しいのはキライ。キライキライキライキライ。キライなものが多すぎてキライ。キライはキライを読んでくるからキライキライキライ」
 声は木霊のように頭の内側へと張り付いていくようだった。常人であれば、即座に発狂するほどの言葉の大合唱。頭が割れ、精神に異常をきたす。
 だが、ウィノラは違う。彼女の持つ狂気への耐性は、この森に蔓延するものを越えていた。
 白い翼をはためかせ、森の中を進む。進む度に声の大きさがましていくような錯覚さえ覚えてしまう。
「痛いの、怖いの、悲しいの……ええ、私もキライですよ。大多数の人がキライだと思いますが……」
 ウィノラはゆっくりと森の中を進む。常闇の世界であっても、それよりもさらに昏き場所というものは確かに存在するのだと確信できてしまう。それがこの森だ。

「独りはもっとキライ。一番キライ。キライなのに、避けようがないのがキライ。どうしても独りになってしまうからキライ」
 声の反響は益々強くなってしくようだった。足取りが重くなる。それほどまでの狂気。だが、ウィノラは顔を上げる。
「独りはもっとキライ、と……これだけ豊かな森なのに異端の神はひとりぼっちなのでしょうか。むしろ豊かだからひとりぼっち……?」
 考えがまとまらない。どれが正解なのか、未だ答えはでない。
 それでも足を止める理由にはならない。進まねばならない。この狂気の理由を知らなければならない。

 彼女の顔は未だ狂気に飲み込まれていない。彼女の表情は一片たりとも狂気に奪われることがない。故に、彼女のすべきことはたった一つである。
 そう―――。

「何にせよ、あなたに会いに行ってはあげますよ」
 会わなければならない。この狂気の根源たる異端の神々に―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

アウル・トールフォレスト
(※好きにお任せします)
緑が沢山生い茂っていて、豊かな森だね
でもそれだけ。ここでは声が一つしか聞こえない
それじゃあ、素敵な森とは言えないよ?

【SPD】で判定
わたしは目がいいからね、それに森は私の住処でもあるから慣れてもいる
感覚を研ぎ澄ませて、暗闇の先を見通しながら森を進んでいくよ

キライ、キライ
なんでそんなにキライなんだろう?そっちの方が気になっちゃった
早く会いに行って確かめないと

――だって、声が聞こえたから
ううん、ここに来る前から、ずっと遠くで
わたしを呼ぶ声が聞こえたから
だから会いに行かなくちゃ

きっと、わたし達おともだちになれるだろうから
はやく行ってあげなないとね



 夜と闇に覆われた世界であるダークセイヴァーにおいてなお、辺境の荒野を侵食し続ける森。
 それは異常な事態を示していた。植物に必要不可欠な光。その光が圧倒的に足りないというのに、この緑の侵食の速度は異常だと言わざるを得なかった。
 かの森の最奥にして中心である場所に異端の神々の一柱が存在することは確かであり、疑いようのない事実である。
 この異端の神々の森に一歩踏み出せば、人間であれ、オブリビオンであれ、狂気に飲まれてしまう。猟兵であっても狂気に対する対策を取らねば、同様なのである。それほどの異質な声が響いてくるのだ。

 何かを拒絶するようでもあり、何かを求めるようでもある矛盾を孕んだ声。森の中心に座す一柱が何を求めているのかはわからない。
 しかし、最初の一歩を踏み出さなければ、ヴァンパイアに支配された領域を抜け出し、手つかずの人類生存圏を獲得できないのだ。

「緑が沢山生い茂っていて、豊かな森だね」
 かの深き森へと一歩を踏み出したのは、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)である。
 人間の身長を優に超える体躯を持つ彼女が一歩を踏み出す瞬間に、頭に鳴り響くのは狂気の声。
 頭の内側にこびりつくような声色に、彼女は顔色一つ変えずに歩み始める。

「でもそれだけ。ここでは声が一つしか聞こえない。それじゃあ、素敵な森とは言えないよ?」
 アウルの声が静かに響き渡る。その問いかけに答える声はない。ただただ、頭の家へと響き渡る声。
 常人であれば、即座に発狂するであろう声の連鎖。それを真っ向から受け止めながらも、意に解せずに……それどころか感覚を鋭敏にして暗闇の先を、森の中心を見通しながら進んでいくアウル。
 その強靭なる精神は一体どこから来るのだろうか。

「怖いのはキライ。痛いのはキライ。暗いのはキライ。でも独りはキライ。独りがキライ。誰か誰か誰か。誰も居ないのに、誰か居ることを求めてしまうからキライ。孤独ばかりでキライ。誰かのために誰かのために誰かのために、キライになれないことがキライ」
 キライ、キライ。その言葉ばかりた頭の内側へと入り込んでくるようだった。まるでその単語だけが洪水となって頭に雪崩込んでくるような、そんな気配。
 だがそれでもアウルは歩みを止めない。
 彼女の頭の家を支配しているのは「キライ」ではない。「何故?」だった。

「なんでそんなにキライなんだろう?そっちの方がきになっちゃった。早く会いに行って確かめないと」
 そう、アウルにとっての関心事はそこであった。
 そう思うことに対しても、他者であれば疑問を抱いたであろう。理解を示すのではなく、回答を求めるのだ。
 何故―――。狂気の声の主からは、その問は返ってこないことだろう。わかっている。なぜなら。

「―――だって、声が聞こえたから。ううん、此処に来る前から、ずっと遠くで。私を呼ぶ声が聞こえたから。だから―――」
 そう―――だから。
 だから、アウルは足を止めない。止める理由がない。暗闇よりも昏き森の中を進む。躊躇いなく、迷いなく、淀みなく足を進める。
 進むべき道はもうわかっている。何も惑うことはない。

「だから、会いにいなくちゃ」
 会わなければならない。この邂逅に意味があるのか。ないのか。その判断をする者は誰も居ない。
 この森の、最奥で待つであろう宿縁を頼りに彼女は進む。

「きっと、わたし達おともだちになれるだろうから。はやく行ってあげないとね?」
 未だ見ぬ狂気に飲まれたオブリビオン―――異端の神々の一柱。
 その姿を緑の瞳は捉えていただろうか。

 ―――高き森の怪物は、邂逅せねばならない。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。私も痛い事や恐い事は嫌よ。悲しい事も辛い事も…
それでも為すべき事があるからこそ、私は今ここにいる

事前に自我の存在感を増幅する“調律の呪詛”を付与
精神属性攻撃を狂気耐性を強化するオーラで防御して軽減し、
救世の祈りを捧げて気合いを入れて狂気に耐える

…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を。
それが私が大切な人達から託された誓い、祈り…
私は独りじゃない。だから、孤独な貴女の狂気に飲まれはしないわ

…いつか闇の時代が終わる日が来る事を夢見て、
今日という日を必死に生きている人達がいる。
…この森は、そんな人達の為に使わせてもらう。

UCを発動し実体の無い霧に変身し、
森の障害物を無視して一直線に進む



 光差さぬダークセイヴァーにおいて、ヴァンパイアの支配は盤石である。だが、それでも尚、辺境には彼らは手を出さない。
 なぜならば、辺境にあるのは異端の神々。かつて彼らを討ち滅ぼすために多大な犠牲を払ったことをヴァンパイアたちは忘れていない。
 滅ぼしたはずの異端の神々に次々と乗っ取られる同胞の魂と肉体。狂えるオブリビオンとして同士討ちが始まる恐ろしさを彼らは知っているのだ。

 故に、猟兵たちが足を踏み入れた辺境の森。この森にも異端の神々の一柱が存在している。
 その森はまるで手を伸ばし何かを求めるように版図を広げていく。闇と夜の世界であるダークセイヴァーであっても異常な速度の木々の侵食率。その原因は言うまでもなく異端の神々。
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)もまた、狂気に包まれた森へと足を踏み入れた猟兵の一人である。
 彼女の持つ調律の呪詛によって狂気への耐性は産まれている。確かに耐性を獲得し、オーラによってさらなる強化を施されて尚、彼女の耳に、頭の中に直接鳴り響くのは狂気の主の声。

「キライ。キライ。こんな暗澹たる世はキライ。夜はキライなのに、夜しかない世界にしか生きられないからキライ。キライキライ。星のきらめきも届かない空がキライ」
 べったりと脳内に張り付くような「キライ」の洪水。憎悪でもない。なのに、こんなにもリーヴァルディの頭の中をかき乱すような狂気が渦巻いていく。
「……ん。私も痛い事や怖いことは嫌いよ。悲しいことも、辛いことも……それでも成すべきことがあるからこそ、私は今ここにいる」
 事前に準備をしていなければ、この狂気に飲まれていたかも知れない。そう思うほどの圧倒的な狂気の渦。
 だが、彼女は屈しない。救世の祈りは彼女の精神を固く鎧う。
 そう、人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を。それが彼女が、彼女自身の大切な人達から託された誓いであり、祈りである。
 その祈りが彼女の身を如何なる距離が離れようとも、世界が違えども守るのだ。

「私は独りじゃない。だから、孤独な貴女の狂気にまれはしないわ」
 反響する声に、きっぱりと言い放つ。惨禍たる狂気に飲まれることはないと告げる。だが、その宣誓に応える声はない。
 ただただ、狂気の言葉だけが鳴り響く。
 歩みを止めない。止めるわけにはいかない。彼女にはなさねばならないことがあるのだ。

「……いつか闇の時代が終わる日が来る事を夢見て、今日という日を必死に生きている人達がいる」
 そんなダークセイヴァーの世界に生きる人々のため、足をすすめる。森の中心、その最奥に座すであろう異端の神々の一柱へと向かうのだ。
「……限定解放。伝承に謳われる吸血鬼の力を此処に…血の変生……」
 彼女のユーベルコード、限定解放・血の変生(リミテッド・ブラッドヴァンプ)によって、彼女の体は実態のない霧へと変じ、森の障害物を無視して一直線に森の中心へと駆ける。
 止まらない。止められない。なんとしてでも―――!

「……この森は、明日を生きる……そんな人達の為に使わせてもらう」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『混血の落とし子』

POW   :    落とし子の牙
【自らの血液で作られた矢】が命中した対象に対し、高威力高命中の【牙による噛み付き攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    血の盟約
【主人である吸血鬼に自らの血を捧げる】事で【黒き祝福を受けた決戦モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    落とし子への祝福
【邪悪な黒き光】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。

イラスト:i-mixs

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 狂気の声が頭に鳴り響く。
 声は止まることを知らぬ壊れたレコーダーのように何度も何度も猟兵達の精神を侵さんと雪崩込んでくる。
 森を進めば進むほどに、声は張り上げられるようにして頭に響くのだ。

 だが、狂気に耐えたとしても猟兵達の前には、狂えるオブリビオン……異端の神々に魂と肉体を乗っ取られたヴァンパイアの群体が襲いかかる。
 それは理性無き者たち。
 かつてのヴァンパイアとしての有り様は最早形骸と化している。
 言葉は届かないことだろう。魂まで乗っ取られた体は、もはやヴァンパイアのそれとは別次元にあるのだから。

「キライキライキライキライキライキライキキキキキキキキキキキッ!」
 ヴァンパイアの群体たちの口から一様に漏れ出る単語。
 それだけしか言葉は発せないかのように、頭に響く声と同調するように昏き森の中に木霊するのだった―――!
春乃・結希
頭に響き続ける声に加えて、ヴァンパイア達の『嫌い』の感情…
気を抜いてしまえば、狂気に侵され自己嫌悪に陥ってしまいそうな心を
『with』を構える手から伝わる、確かな重みで繋ぎ止める

UC発動
『withと共に在る私は最強』という自己暗示を根元に焔の翼を広げ
相手の『嫌い』の感情を焔の光で振り払い
【怪力】で振るうwithを叩き付ける【重量攻撃】
あなた達の嫌いの気持ちと、withを信じる私の気持ち、どちらが強いかな?

…そんなにこの世界が嫌いなら、早く骸の海に還れば良いんですよ。手伝ってあげます
次に生まれてくる時は何かひとつでも、好きなものがあると良いですね



 嫌悪の感情は頭の内側から外側へと食い破るような、かきむしるような……そんなざわついた感情を生み出す。
 ひっかいた裂傷はジクジクと新たに雪崩込んでくる「嫌い」という感情を染み込ませ、さらなる傷を広げていくような感覚さえあった。
 この深き森の中にあって、いよいよ狂気に飲み込まんとする声は大きくなっていく。それでも進まねばならない。そうしなければたどり着けないのであれば、歩を止める理由にはならないのだから。
 鬱蒼とした森の中に現れる理性無きオブリビオン……異端の神々に魂と肉体を乗っ取られた狂気に飲まれし者たち。その瞳は陰って見えないものの、狂気に彩られていることだけは確かであり、動くもの全てが彼女たちの敵であるといわんばかりに、その凶暴性を発露させるのだ。

「そんなにこの世界が嫌いなら、早く骸の海へと還れば良いんですよ……」
 頭の中に響き渡る声と対峙するヴァンパイアたちの言葉によって、ともすれば狂気に飲まれ、自己嫌悪という負のスパイラルに飲み込まれてしまいそうな心を繋ぎ止めるのは、手にした大剣『with』。
 その確かな重みを感じるからこそ、彼女の―――春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)の心は狂気の襲い来る波を防いでいた。
 彼女の抱える大剣こそが波止場である。

「withと共に在る私は最強……」
 念じるのは自分自身への暗示。
 絶対不変たる気持ちを抱くからこそ、彼女は彼女自身の存在を他者に証明できる。他に何もいらない。『with』さえあればいい。居てくれればいい。
 その暗示は彼女の根源である。その感情は狂気よりも迸る焔によって燃え上がり、頭に雪崩込んでくる狂気の感情を焔の光が振り払うのだ。

 結希のユーベルコードによって、彼女の姿は真の姿へと近づいていく。燃え盛る焔の翼を広げた姿こそが、彼女の真の姿に近しい姿。
 この世界が嫌いだというのなら、嫌だというのなら、『with』と共に自身が骸の海へと還す手伝いをしてあげよう。
 広がる焔翼は、裂帛の衝撃を生む。振りかざした大剣が焔を受けて煌めく。
「あなた達の嫌いの気持ちと、withを信じる私の気持ち、どちらが強いかな?」
 大地を蹴る音が重く響いた。
 ヴァンパイア、狂えるオブリビオンである混血の落とし子たちもまた血の盟約によりその姿を変えていた。結希とは対照的な昏き闇を湛えた姿が強化された身体能力を跳ね上げさせ、彼女へと襲いかかる。

 だが、彼女の想いはそんなものを敵とすらみなさないだろう。
 大剣『with』の柄を握る手に力がこみ上げてくる。自己暗示故に、彼女の身体的限界はすでに外されている。制限など無い。大剣の重量すらも気にならぬほどに強化された能力は、その一撃を持って混血の落とし子たちを一刀のもとに両断する。
「withと共に在る私は最強……!」
 焔翼はさらに輝きを増し、その存在を誇示するように暗き闇に輝きをもたらす。
 次々と襲い来る混血の落とし子たちを圧倒的なスピードと膂力でもって骸の海へと還していく。
 彼女の『with』を愛する気持ちが、嫌いという感情程度に侵される道理などない。

「次に生まれてくる時はなにか一つでも、好きなものがあると良いですね」
 彼女に在るのはたった一つの気持ち。その一つがあるからこそ、彼女は狂気に飲まれることはない。
 大剣を振り、結希はまた森の中心へと一歩を踏み出す。
 異端の神々の一柱が座す最奥へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。どうやら話は通じそうにない…か。
こんな場所でさ迷うお前達に同情する気は無いけど…。
行き掛けの駄賃よ。その呪わしき生から解放してあげる。

“調律の呪詛”を維持(存在感、属性攻撃、狂気耐性)しつつ、
殺気や気合いを絶ち闇に紛れる早業で気配を遮断して、
今までの戦闘知識から敵の死角を暗視して見切り、
脚に魔力を溜めて高速で切り込みUCを発動

…私の影を捉えたければ、せめて素面になってから出直してきなさい。

…反撃の時間なんて与えない。速攻で片付ける。

怪力の掌打と同時に生命力を吸収する呪詛を纏う血杭を放ち武器改造
限界突破した血杭から無数の棘を放つ2回攻撃で傷口を抉り、
離脱して次の敵の死角へ向かいUCを放つ



 異端の神々に、その魂と肉体を奪い取られたヴァンパイアたち。その姿は哀れみを誘うものであったかもしれない。
 ダークセイヴァー世界の支配を盤石のものとしているオブリビオンであるヴァンパイアたちであっても、彼女たち狂えるオブリビオンとなった者を救う手立てはない。
 それほどまでに異端の神々の持つ狂気とは強烈なものであるのだ。それは猟兵であっても例外ではない。
 森の中央へと近づくにつれて、頭の内側に鳴り響くような嫌な声は頭の中身を裏返してかきむしるような感覚さえ覚えさせる。
 何の対策もなしに付か付けば、猟兵とてヴァンパイアたちと同じ道をたどったことであろう。

 森に一歩を踏み出した時から、彼女―――リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は“調律の呪詛”による自我の増幅を行っていなければ、自身もまた今退治しているヴァンパイア……混血の落し子と同様の運命をたどっていたかも知れない。
「ア―――ァ、あーあー……キ、キ、キラ、キラ、キライキライキライキライキライキライキライ!!!」
 もはや言葉らしい言葉も紡げぬほどの狂気の侵食。リーヴァルディは、静かに戦闘を避けることは不可能であることを悟った。

「……ん。どうやら話は通じそうにない……か。こんな場所でさ迷うお前達に同情する気はないけど……行きがけの駄賃よ。その呪わしき生から開放してあげる」
 彼女の気配が闇に溶け消えていく。
 それは正に闇夜に紛れ消える靄のように、彼女の存在は知覚されることなくヴァンパイア……混血の落し子たちの知覚の外へと消える。

 瞬時に数を把握。位置を頭に叩き込み、イメージするのは刹那の攻勢。リーヴァルディの足に魔力が溜まる。その魔力を感知したかどうかはわからないが、理性無きオブリビオンであるヴァンパイアの赤き瞳がリーヴァルディを捉え……―――ることができぬままに過去を刻むもの―――グリムリーパーにて切り伏せられる。
「……限定解放。…刺し貫け、血の聖槍…!」
 彼女のユーベルコード、限定解放・血の聖槍(リミテッド・ヴラッドパイル)が発動する。
 斬り伏せたヴァンパイアを土台に宙を舞うリーヴァルディ。その姿は、正に彼女たちの主であるヴァンパイアを思わせた。
 目にも留まらぬ速度で暗き森を滑走する。
 次なるヴァンパイアに向けて放たれた右の掌打。返す左の掌打はもう一体のヴァンパイアへと放たれる。目にも留まらぬ連撃。

「……私の影を捉えたければ、せめて素面になってから出直してきなさい」
 掌打によって打ち込まれた呪詛。生命吸収の呪詛と共に彼女の姿がヴァンパイアから人の姿に戻った瞬間、高圧縮された魔力の杭が打ち込まれる。
 真紅の血杭がヴァンパイアを一瞬で2体打ち貫く。その血杭が顕現するも一瞬の出来事。それに見惚れる時間すらもなく、リーヴァルディは流れるように、踊るようにヴァンパイアたちを打倒していく。

「……反撃の時間なんて与えない。速攻で片付ける」
 あとに残るのは、掌打撃ち抜く音のみ。実に放たれた連撃の数は一瞬の内に数合。だが、そのどれも目で追う事叶わず。
 ただただ、暗き森に走るは紫電思わせる紫の瞳の残光。後に残るは、真紅の血杭のみ。

「先を急ぎましょう……これ以上狂気の渦中にあることも……異端の神々を放置することも一刻の猶予もないのだから」
 降りかかる障害は全て取り払う。
 中央に座したる異端の神々の一柱。その打倒を持って、この土地を開放する。その目的のためだけに彼女は森を疾駆するのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウル・トールフォレスト
(※好きに(ry)
吸血鬼…でもみんな狂っちゃってるみたい
かわいそう…

すぐに殺してあげるね
それに、あなた達はとても丁度いいから

【深緑、底知れぬ恐怖を育め】を発動
何よりも大きな『高き森の怪物』に変身して進んでいくよ

わたしのする事は単純
踏んづけたり、吹き飛ばしたり、薙ぎ払ったり
血の矢も噛み付きも、今のわたしにはあまりにも些細なもの
近づいてくる子を逆に捕食したりもするよ

早く、はやく、会いたいなぁ
けれど、その時の為に少しでも力を溜めておかなきゃね

まだ足りない。今のままではまだまだ足りない
あの子と会うには、まだまだ“小さい”

だから
その血の一滴、肉の一欠片まで
わたしにしっかり捧げてね、吸血鬼さん



 理性苛む声が聞こえる。狂える声は、常なる者たちを惑わし、一瞬の内に狂気の渦へと引きずり込む。
 ヴァンパイアたちもまたその犠牲者の一つである。魂と肉体を奪われた理性無きオブリビオンと化した彼女たちの口から漏れ出るのは狂える声と同じ言葉。
 頭の内側から響くような、溢れ出るような、そんな狂える声。この声は他者のものなのか、自身のものなのかも判別がつかなくなっていく。
 常人であれば、発狂を繰り返すことだろう。だが、耐性ある者にはそれに耐えることができるだろう。ならば、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)もまた耐性ある者の一人なのだろうか。

 悠々と森の中を進むアウル。その足取りは軽い。軽やかすぎると言っても良いかもしれない。迷うこと無く昏き森の中を一歩一歩進んでいくのだ。
 その様子を他のものが見れば、奇異におもったかも知れない。何かしらの対策を取っているのかわからないからだ。
「吸血鬼……でもみんな狂っちゃってるみたい。かわいそう……」
 目の前には混沌の落し子。ヴァンパイアでありながら、その魂と肉体を異端の神々に奪い取られた哀れなるオブリビオン群体。
 そのどれもが理性などない赤い瞳をアウルに向けている。彼女たちの血液から作られた矢が問答無用にアウルに放たれる!

「すぐに殺してあげるね。それに……あなた達はとても丁度いいから」
 血矢の迫るアウルの体が変異していく。
 彼女のユーベルコード、深緑、底知れぬ恐怖を育め(スケアリーロード・フワワ)である。
 元より常人よりも恵まれた体躯。だが、それがさらなる膨張を見せる。踏み出す足は重く、地鳴りが響くようだった。
 血矢がアウルの皮膚に到達するも、その外皮を削ることは能わず。弾かれて地面へと落ちていく。
 混沌の落し子たちがアウルの巨躯に群がる。その爪を、牙を突き立てんとして―――そのどれもが尽く砕け散った。

「早く、はやく、会いたいなぁ……」
 彼女の緑の瞳は金色の輝きを爛々と放っていた。その瞳に宿るのは果たして理性か。わからない。わからない……だが、彼女の持つ力がさらなる増幅を見せたことだけがわかる。
 混沌の落し子たちは例外なく、彼女の尋常ならざる膂力によって打倒される。
 昏き森の内にて嫌な音が響き渡る。
 気持ちが逸る。早く。早く。早く。とても早く。会いたい。
「けれど、その時の為に少しでも力を溜めておかなきゃね……」
 音が。音が。響く。骨が砕ける音。何かが滴る音。悲鳴も何もかもが捕食される世界となってしまった昏き森の中で微笑むは誰か。

「まだ足りない。今のままではまだまだ……足りない。あの子と会うには、まだまだ“小さい”」
 何かを渇望するようにアウルは首をもたげる。次なる獲物を捕らえんと伸ばす手から逃れる術はない。
 狂える理性無きオブリビオンに恐怖はない。故にそれが命取りであり、群体である以上そうせざるを得ないほどにアウルへと襲いかかるのだ。
 だが、彼女には届かない。牙も爪も何もかも。
「だから、その血の一滴、肉の一片までわたしにしっかり捧げてね、吸血鬼さん」
 その顔を誰も見ていなかった。見れなかった。凄絶なる微笑みの内側にはらむものは何か。

 そこに居たのは―――。

 もはや、ただの猟兵ではない。

 在るのは―――“高き森の怪物”。

成功 🔵​🔵​🔴​

祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ・支援・協力は可能な範囲で

様子を伺いながら『フェアリーランド』の壺の中から光/火/風(雷)の精霊を出して警戒しながら様子をみて攻撃を仕掛けられたら『月世界の英霊』で空間飛翔して避けながら『エレメンタル・ピクシィーズ』で属性攻撃を『神罰の聖矢』で聖属性攻撃を仕掛けます♪
攻撃を仕掛けて来なければ様子見を。攻撃をされたら『月霊覚醒』で敵のUCを封印/弱体化させながら『クリスタライズ』で姿を隠しながら何をキライ何を怖がっているのか見て見ます☆彡

「今、“神様の庭園”へと送って差し上げますね、怖がらないで安らかに…」
と慈愛と平穏を願って聖霊に「安寧を齎してね♪」とお願いします☆彡



 昏き森の中は、闇と夜の世界であるダークセイヴァー以上に闇深き場所である。
 光差さぬ場所においても、それ以上に異常な速度でもって荒野を侵食し続ける森。その森にあっては、狂気の声が途切れることはなかった。
 頭のうちより響き渡るのは、「キライ」という単語のみ。何がそんなに気に入らないのか。何もかもがキライだというのなら、何故この世界にしがみつくのか。
 その理由を探る者もまた、その深淵の淵に立っているのだ。

 祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)の周囲に漂うのは精霊たち。
 暗き森の中に蔓延る狂気を払拭するためには、彼女たちの力は必要不可欠であり、この森の中心に座すであろう声の主……異端の神々の一柱の狂気の原因を知るために彼女はこうして森の中を進むのだ。

「何をキライ、何を怖がっているのか……」
 その理由は未だに判別がつかない。ただ、頭の内側より響き渡る狂気の声は、次第に強くなっている。
 その証拠に中心に近づけば、狂気の声に魂と肉体を乗ったられたヴァンパイアのオブリビオン群体、混血の落し子たちが幽鬼のように現れ出る。
 彼女たちの口から漏れ出る言葉も狂気に彩られている。
「キライキライキライ。何もかもがキライ。受け入れてくれない者がキライ。利用する者がキライ。キライ」
 理性無きオブリビオンへと身を堕とした彼女たちに言葉は通じないだろう。
 ティファーナにとって、オブリビオンとは打倒すべきものではあるが、せめて安寧を齎して骸の海へと還すことをしなければと思うのだ。

「利用されていいとおもっていたのに、利用されると怒りに狂ってしまうのがキライ。ワタシ自身は私自身がキライ」
 頭のうちより違う声が混じる。
 ティファーナに襲いかかるオブリビオンの攻撃を交わしながら、彼女の頭には声が響くのだ。
 言わんとしていることを理解しようとするには、あまりにもオブリビオンである混血の落し子たちの攻撃は苛烈を極めていた。
 中心には行かせまいとするかのような攻撃の数々。

「今、“神様の庭園”へと送って差し上げますね、怖がらないで安らかに……」
 ティファーナは祈る。慈愛と平穏を精霊に願うのだ。せめて、魂と肉体を狂わされたヴァンパイアにも安寧がもたらされるようにと。

 昏き闇の中を飛ぶティファーナの瞳には、森の中心に座す異端の神々の一柱の姿が捉えられるだろう。
 傷だらけの体。やせ細った体躯。
 その体に刻まれたものが一体なんのためのものであるかまではわからない。
 だが、確実にこの狂気の声の主であることはわかる。その狂気は、過去の化身たるオブリビオンになってからのものであることは明白。
 ならば、声の主の言葉は他者を憎むものではない。
 自身を苛む言葉であるのだ。
 キライという言葉は全て自身へと向けられている。それ故の狂気。あらゆる者たちが共有してしまう自身への呵責。
 それがこの狂気の正体―――!

成功 🔵​🔵​🔴​

ウィノラ・シュレミール
なるほど、この狂気の根源にあるのは自己嫌悪……でしょうか
その正体の一端が見えたとしてもやるべき事は変わりませんね
急ぎましょう

文庫本を鈴蘭の花へと変えて嵐にします
さあ、この狂気に侵された過去を滅しましょう
邪悪な黒い光を白い花弁で遮るように
どんどん嵐を展開しつつ、敵を薙ぎ払います

余裕があれば親友達にも鋏を持たせて敵を切り裂いていきましょう
二人合わせて【2回攻撃】
ばっさばっさと切って千切っていきましょうね

【傷口をえぐる】ように鈴蘭の花を押し付けてもいきましょうか
花の毒が理性なき者の身体を壊していくように
吸血鬼は大嫌いですけど……今の状態は単純に見ていられないですからね

……異端の神も止めてあげましょう



 狂気の惨禍に飲まれた森の中は、もはや何が正常で何が異常であるのか判別することすら困難であった。
 頭の中からかきむしられるような狂気の声が鳴り響き、昏き森の中においては、進む度にそれが強くなるようでもあった。
 これが森の中心に座す異端の神々の一柱である者の声である。その狂気は森の中に足を踏み入れる者たちがどんなものであれ、侵食していくような強さがあった。
 
 ウィノラ・シュレミール(天蓋花の人形劇・f26014)の目の前に現れたヴァンパイア群体である混血の落し子と呼ばれる狂えるオブリビオンもまた狂気の犠牲者である。
 鳴り止まぬ声はウィノラの未だに頭の中に鳴り響いている。これが戦いに影響しないかと言われたら、影響しないわけがない。
 だが、彼女は理解をやめない。
「なるほど、この狂気の根源にあるのは自己嫌悪……でしょうか」
 キライ、キライ、と数珠つなぎのように溢れ出る言葉は、結局の所声の主自身へと向かっているように思えてならないのだ。
 それ故に、この声に触れたものたちは例外なく自身への呵責によって魂と肉体を乗っ取られてしまうのだろう。
「その正体の一端が見えたとしてもやるべきことは変わりませんね……急ぎましょう」

 目の前には異端の神々に魂と肉体を乗っ取られたヴァンパイア群体。やるべきことは一つである。
「さあ、この狂気に侵された過去を滅しましょう」
 彼女のユーベルコード、鈴蘭の嵐によって彼女の持つ文庫本が鈴蘭の花弁へと姿を変える。無数の鈴蘭の花弁へと変じたそれは、まるで嵐のように暗き闇に包まれた森を遮る。

「吸血鬼は大嫌いですけど……今の状態は単純に見ていられないですからね」
 そう、ヴァンパイアはダークセイヴァー世界を支配するオブリビオンである。
 現状の姿を見ても、哀れみはあれど当然の報いであるとも思えてしまう。それに同意するように、彼女の持つ人形……彼女にとって大切な親友たちが鋏を構えて、混沌の落し子たちを切り裂いていく。

 千切っては投げ捨て、花の嵐がヴァンパイアたちの体を滅していく。
 鋏に寄って付けられた裂傷を抉るように鈴蘭の花弁が舞い上がり、花の毒が理性無き者たちの体を散り散りにするように引き裂き、壊していく。
 その様は、まさに暗き闇の中に咲き乱れる花の嵐であった。混血の落し子たちは、傷を癒やす暇もなく次々と骸の海へと返されていく。
 断末魔のように、狂気に飲まれた声を上げながら、消えていくのだ。
「……本当に見ていられないですね」
 ウィノラは親友たちを両手に抱える。
 彼女には彼らがいた。だから孤独にも耐えられたし、今のような明るく朗らかな性格なのである。
 もしも、と思う。
 もしも、親友である人形たち。彼らが自分の腕の中にいなかったとしたら。もしも、そうであったとしたのなら、自分は狂気に飲まれなかったであろうか。

 悲劇を喜劇に。そんな風に思うことができなかったかもしれない。
 だからこそ、ウィノラは思うのだ。

「……異端の神々も止めてあげましょう」
 そうすることが、この狂気を救う……悲劇を喜劇に変える一つの方法であるように思えたからだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『高き森の怪物』

POW   :    いたいのは、キライ
対象のユーベルコードに対し【夥しい呪いの魔草】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
SPD   :    こわいのも、キライ
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【傷を刻みつけた大地】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    ひとりは、もっとキライ
対象のユーベルコードを防御すると、それを【取り込み、果実の眷属を生みだす事で】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:草間たかと

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アウル・トールフォレストです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 “高き森の怪物”は森の中心の座す。
 異端の神々の一柱である彼女の脳内に繰り返し繰り返し問われるのは、「何故」。
 だが、彼女の口より溢れ出る言葉は「キライ」。

 全てを拒絶しようとしながらも、何かを求めて止まない。
 自分以外の他者を求めてしまう。寂しさ故に、恋しさ故に。自身が神々の一柱であろうとも、他者……「人間」を求めてしまうのは何故か。
 自身にもわからない「何故」。

「どうして。どうして。どうして。私はこんなにも寂しいのに。恋しいのに。誰かに隣りにいてほしいのに。どうしてこんなにも」
 裏切られても良い、恐れられても良い、ただ隣にいさせてほしかったのに。
 だから、死して過去になったとしても、人間の傍にいられるのならと……

「なのになのになのになのになのに!私は私自身がこんなにもキライになってキライキライキライキライキライキライキライ!!!!」

 立ち上がる巨躯。溢れ出る想いは狂気となって咆哮する。
 暗き森が震撼する。絶望と虚無と狂気が、世界を震わせる―――!
リーヴァルディ・カーライル
…ん。自分とは違う他者を求めながら、
その誰かを己が狂気で染め上げてしまう。

…異端の神よ。真に“キライ”なのは自分自身だというならば。
待っていなさい。今、その狂気を絶ち切ってあげる。

“調律の呪詛”を維持して今までの戦闘知識から攻撃を先読みして見切り、
“血の翼”を広げ残像が生じる早業で空中戦を行い回避しつつ、
第六感が好機を捉えたら、吸血鬼化した自身の生命力を吸収してUCを二重発動(2回攻撃)

…全魔解放。この一閃、防ぎきれると思うな。

両掌に“闇の重力”の魔力を溜めて怪力任せに両手を繋ぎ、
限界突破した重力をさらに圧縮した“闇の結晶”剣で切り込み、
超重力のオーラで防御ごと敵をなぎ払う重力属性攻撃を行う



 己自身に向けられた狂気は、己自身を苛む刃となるとわかっていても、それを受け入れることしかできない体というものはある意味で死よりも重き枷となることだろう。
 異端の神々の一柱がどうして、そのような事態に陥ったのかは想像するしかない。
 その姿に猟兵は何を思うのか。
「…ん。自分とは違う他者を求めながら、その誰かを己が狂気で染め上げてしまう」
 声は静かに暗き森の闇より出る。銀髪は闇の中でも煌々と輝くことだろう。紫の瞳は狂えるオブリビオンである高き森の怪物を見据える。
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は一歩を踏み出した。彼女はこの森に渦巻く狂気に侵されない。
 自我の拡大は滞りなく行われている。己という存在を証明する。
「キライ。キライはキライ。キライだから、私はキライになりたくないから、キライになる。キライだと思っていても、キライなのだから、キライは消えない」
 高き森の怪物は、未だ狂気に囚われたままの声で一歩をすすめる。ゆらりと、幽鬼のようにリーヴァルディへと足を向ける。

 それは荒野を侵食する森が手を伸ばすように。自分とは違う他者に手を伸ばすように。オブリビオンと猟兵であるが故に伸ばされる手!
「……異端の神よ。真に“キライ”なのは自分自身だと言うならば。待っていなさい。今、その狂気を断ち切って上げる」
 彼女の背より顕現されたるは、“血の翼”。限定的に開放された吸血鬼としての姿。空を舞う姿は、正に赤き翼の者。その速度は目に追えるものではない。
 圧倒的速度でもって、森の中を駆ける。赤い残像が残るほどの超スピードに翻弄されて、高き森の怪物の隙を突く!

「……限定解放。テンカウント。吸血鬼のオドと精霊のマナ。それを今、一つに……!」
 彼女のユーベルコード、限定解放・血の教義(リミテッド・ブラッドドグマ)によって両掌に溜め込まれた“闇の重力”。それを強引に圧縮することに寄って生み出されたるは、闇の結晶を思わせる剣。
 超重力の塊となった剣を振り下ろす。凄まじい音と衝撃がリーヴァルディを襲う。
 高き森の怪物の腕がそれを防御する。ギシギシと嫌な音が鳴り響く。これほどまでの高威力の攻撃を受けきるというのか。
 リーヴァルディの攻撃を両手で受けきった高き森の怪物の掌に現れるのは、果実。それは高き森の眷属であり―――それを、一口で咀嚼する高き森の怪物。

「―――っ!」
 背筋が凍る。リーヴァルディは即座に理解した。アレは、自身の放ったユーベルコードによる一撃を取り込んで借用するのだ!
 高き森の怪物の掌に現れたるは、リーヴァルディと同じ超重力の剣。だが、その力は諸刃の刃。リーヴァルディですら、制御には困難を伴うものなのだ。暴発しかける重力剣。
 暴走する前にリーヴァルディに叩きつけようと振りかぶる。リーヴァルディもまた瞬時に判断する。
 受けてはならない。放たせてはならない。超重力の一撃は安々と地形を変えるほどの威力を持つ。ならば、彼女のやるべきことは一つ。

「……全魔開放……」
 彼女の紫の瞳が輝く。限界を超える。限界を超えろ!己の生命力を吸収させてでも放つ一撃。否。

 制御するのも困難な超重力の剣を。さらにもう一閃。両の手がそれを重ねる。ここで限界を越えねば、あの一撃を迎え撃つことなど不可能。
「この一閃……防ぎきれると思うな」
 二重発動したユーベルコードの、超重力剣が高き森の怪物の放った一撃諸共に粉砕する。超重力の衝突は空間を歪め、高き森の怪物の防御をも剥ぎ取り、傷を負わせる。
 暗き森の上空に血の翼が広がる。
 リーヴァルディが闇夜の世界の空へと浮かぶ。膨大な力を使用し、放った一撃。確かな手応えを感じた。
「異端の神の狂気……確かに」
 確かにリーヴァルディの剣は届いた。
 狂気に飲まれぬ存在。それは確かに独りを嫌う高き森の怪物の心に刻み込まれたのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
会いに来たよ
他の誰でもない、あなたに会いに来たよ

世界の全てが嫌いなのかと思ったけど、違うんだね
あなたは、人間が好きで好きで、大好きで…
その気持ちは、私より強いと思う
凄いね
私なんて、未だに人と関わるのは怖いんだよ
こんな私なんかと、どうして仲良くしてくれるんだろうって…

それなのに…独りになるのは嫌だよね
なんて自分勝手な考えなんだろうって思う
誰かと一緒にいないと、私は弱くて、独りでは何も出来なくて…

でも、私は見つけたんだ
私が骸の海に還るまで、一緒に居てくれる存在
…私の心は、この大剣が護ってくれる

UC発動
私の『with』への想いを込めた一撃
あなたの『嫌い』を叩き潰してあげる
【勇気】【怪力】【重量攻撃】



 ―――会いに来たよ。
 その言葉は他の誰でもない高き森の怪物へと向けられた言葉だった。敵意のない言葉。往年の友人へと会いに来たのかのような気軽さで、その言葉は森の中へと響いた。
 大剣を抱えた少女。
 きっとそれはお互いがオブリビオンと猟兵でなければ、ただの友人として出会えたでろう邂逅であった。だが、彼女と彼女はそうではない。
 オブリビオンと猟兵である。消して通じ合うことはない。お互いがお互いを敵として認識してしまう。
 どれだけ意思を通わせようとも、オブリビオンが過去の化身である以上、骸の海へと還さねばならない。それが世界が未来へと進んでいく証であるのだから。

 一歩を先に踏み出したのは、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)であった。
 会いに来たよ。その瞳は真っ直ぐに高き森の怪物へと注がれていた。
 視線が交わる気がした。
「世界のすべてがキライなのかと思ったけど、違うんだね。あなたは、人間が好きで好きで、大好きで……その気持は、私より強いと思う。すごいね。私なんて未だに人と関わるのは怖いんだよ」
 彼女の抱えた大剣『with』を持つ手が震える。彼女の言葉の通り、未だに彼女は他者と関わることを恐れている。それ故に、高き森の怪物の狂気に陥っているとは言え、彼女の言葉には感じるものが在る。
 他者を求め、他者とのふれあいを求めてしまう。それは結希にとっては明らかに、すごい、と思わせるものであった。情熱と言っていいのかもしれない。

 彼女の自身が言う。こんな私なんかと、どうして仲良くしてくれるんだろう、と。
 他者の気持ちが分からない。他者の考えがわからない。邪推してしまう。だが、それ以上に独りになるのは嫌だと思う。
 自分勝手な考えだと、自己嫌悪に陥ってしまうのは当然かも知れない。
「誰かと一緒にいないと、私は弱くて、独りでは何も出来なくて……」
 抱えた大剣を握り直す。『with』の感触が彼女にやすらぎをもたらしてくれる。
「独りはキライ。キライ。独りでいると耐えられないからキライ。耐えられないと思う私もキライ。キライになるのにキライになっては、痛いからキライ。キライの輪の中でずっと独りでいないといけないのがキライ」
 高き森の怪物の言葉が連鎖する。
 未だ狂気の声は頭蓋を通り抜けて頭の内側へと蝕んでくる。けれど、結希はひるまない。ひるむわけにはいかない。

「でも、私は見つけたんだ。私が骸の海に還るまで、一緒にいてくれる存在……私の心は、『with』が護ってくれる」
 彼女の内側より溢れる狂気の声は、尽く霧散するだろう。彼女にとって何よりも大切なものを、その腕に抱えているからだ。
 彼女のユーベルコードが発動する。それに合わせるように高き森の怪物のユーベルコードが相殺せんと夥しい呪いの魔草を放つ。
 だが、その呪いは届かない。何故ならば、彼女は信じているからだ。己の持つ大剣『with』の力を。自分ではない何かに心を寄せる力を。

 それ故に結希は大剣『with』を最上段に振り上げる。この一撃は、彼女の想いの一撃である。込められた想いは何であるか。
 それは―――。

「あなたの『嫌い』を叩き潰してあげる―――!」
 誰がための一撃。
 結希が前に進むための勇気を力に変えて振りかぶられた大剣によって放たれた一撃は周辺の地形を一撃で破壊するほどの威力。

 暗き森の中に土煙が上がる。
 呪いも、嫌悪も、何もかも叩き潰して結希は前に進む。それができる。
 そう、withと一緒なら……!

成功 🔵​🔵​🔴​

祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ・支援・協力は可能な範囲で

『クリスタライズ』で姿を隠しながら『フェアリーランド』から精霊と聖霊と月霊を出して『神罰の聖矢』で聖攻撃を『エレメンタル・ピクシィーズ』で光/風造成攻撃を仕掛けます♪
敵の攻撃を『月世界の英霊』で空間飛翔して避けて敵のUCを『月霊覚醒』で封印/弱体化させて『叡智富める精霊』と『神聖天罰刺突』を織り交ぜて浄化・救済をします☆彡

「神様の“楽園の箱庭”で苦しみも怖さも無い次の“来世”へと旅立ってください♪」

猟兵に『祝聖嬢なる光輝精』で怪我を治し『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒します♪

「怖がらないで、大丈夫ですから清らかに良い旅を☆彡」



 昏き森に溢れる狂気は、その中心に向かえば向かうほどに瘴気のように色濃くなっていく。その中心に座すは高き森の怪物。彼女がこの森の主にして狂気の声の主なのである。
 その姿は真に怪物と呼ぶべき姿。異端の神々の一柱であることは疑いようがない。
「ア、ア、ア―――、キライ。キライ。キライ。光が差さない。光が降り注がない。キライキライキライ」
 壊れたレコードのように『キライ』という感情を言葉に変えて吐き出すだけの怪物。その姿を祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)はユーベルコード、クリスタライズで姿を隠しながら見ていた。
 その姿に同情を覚えることはあっただろう。憐憫ささえ感じさえる姿は、彼女に何をもたらすのか。
 フェアリーランドから精霊と聖霊、月霊をダサい、神罰の聖矢で攻撃を加える。
 輝く天からの光が高き森の怪物へと降り注ぐ。
 それは光の雨のようであり、昏き闇に包まれた森を明るく照らす。

 さらにエレメンタル・ピクシィーズによって放たれた魔法の矢は、高き森の怪物を貫くが、その掌に現れたのは果実。
 それは高き森の怪物のユーベルコード。果物の眷属によって受けたユーベルコードを借用するのだ。
 掲げた果実が光の矢となって天上から降り注ぐ。
 それは避けようのない全面攻撃であり、如何にティファーナが小さく、的を絞れないとしても関係がない。

「キライキライ!暗闇を照らす光がキライ。私の醜さを照らす光がキライ!キライ!見ないで!キライキライ!」
 しかし、その光の矢による面攻撃をティファーナは、月世界の英霊による空間飛翔によって躱しきる。
 降り注ぐ雨のような攻撃もテレポートする彼女には遠く届かないのだ。光の矢によって暗闇が晴らされる。
 最大の攻撃の後には必ず隙ができるのと同じように、高き森の怪物もまた、その姿を光の雨の元にさらけ出す。
 それを嫌がるように頭を振る高き森の怪物。その姿を醜悪と呼ぶだろうか。それとも―――。

「神様の“楽園の箱庭”で苦しみも怖さもない次の“来世”へと旅立ってください♪」
 歌うようにティファーナの声が聞こえる。見えぬ姿のまま神聖天罰刺突を放つ。
 それは一度刺されば引き抜けぬ楔となって高き森の怪物を苦しめることだろう。絶叫が暗き森の中に響き渡る。
「痛いのはキライ。キライ。キライなのに、痛いのが心地よく感じてしまう私がキライ。ア、ア、ア―――ァ、この痛みがキライキライキライキライ!!!」
 悲鳴でもなければ哀切を含んだ声でもない。
 ただただ、何かを拒絶する絶叫だけが、森の闇へと吸い込まれていく―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ウィノラ・シュレミール
こんにちは、会いに来ましたよ
今終わらせますからね

文庫本を開き神に問います
「あなたはどうしたいですか?」
勿論彼女の望みが人と共にある事なのは分かっています
けれど、そこから先について考えたことはありますか?
誰かと一緒に話したり遊んだりしてみたい
そういう願いを抱いた事はありますか?
……彼女がどう答えようと満足は出来ません
だってこれは悲劇じゃないですか
この神様は決して願いを叶えられない
だから、私がこの物語を喜劇に変えます
情念の獣に囮を頼みつつ幕引きへと向かいましょう

翼を使って大地から飛び立ち【オーラ防御】で損害を減らす
そして鋏を持たせた親友達に神を切り裂いてもらいます
あなたの願いは未来で叶いますように



 叶わぬ望みが在るのだとしたら、それは悲劇だろうか。叶う望みの全てが喜劇へと展示ずるのであれば、それは希望足り得るのか。
 その答えは誰にも持ち得ないものであろう。喜劇と悲劇はスケールの違いと視点の違いなのであると、いつかの誰かが言う。
 縮小してみれば悲劇であるが、拡大すれば喜劇である。

 だが、そんなことはどうでもいいのだと、ウィノラ・シュレミール(天蓋花の人形劇・f26014)は思う。
 なるほど、物語であるのならばそれもそうであろう。悲劇の連続が喜劇であると。物語であるのならば!
 彼女は思う。悲劇も喜劇も愛することはできよう。だが、それが現実の悲劇であるというのならば、彼女は彼女自身の望みと共に喜劇へと変えてみせよう。

「こんにちは、会いに来ましたよ。今終わらせますからね」
 文庫本を開く。ページが風にさらわれてめくられていく。紙の開かれる音が暗き森の中へと吸い込まれていくように響く。
 高き森の怪物が、首をもたげてウィノラを見やる。反応した。だが、彼の者の口から漏れ出たのは狂気の言葉。
「キライ。出会いはキライ。別れが必ず来るからキライ。でも会いに来てくれないのはキライ。すぐに終わってしまうのはキライ。長引くのがキライ。足を止め続けてもいつかは終わりが着てしまうとわかってしまうからキライ」
 その狂気の言葉はウィノラの頭の内側から湧き上がってくる。キライという感情の濁流。それがウィノラの頭の内側から溢れてくるような錯覚。
 これが狂気の奔流なのだとしたら―――
「あなたはどうしたいですか?」

 ウィノラにはもうわかっている。高き森の怪物……彼女の望みが人と共にあることだということは。だが、高き森の怪物は、そこから先について考えたことはないのだろう。
 誰かと一緒に離したり、遊んだりしてみたい。
 そんなごくありふれた願いを抱いたことがないのだ。だからこその「キライ」という言葉。高き森の怪物は過去の化身、オブリビオンである。
 だが、彼女自身を過去に縛り付けているのは、永遠に続く現在という呪い。
「流れるものがキライ。過ぎ去っていくものがキライ。ずっとずっとがいいのに、ずっとはできないものがキライキライキライキライ!!!」
 だらり、と両手が下がる。完全なる無防備。口からは狂気の声が漏れ出るばかりである。
 
 その問いにウィノラのユーベルコード、其の答えを識るまで、僕は死ぬ事もままならぬによって生み出された情念の獣が呼び出される。
 ウィノラの問いかけに対する満足の行く解答を得るまで、その獣は高き森の怪物へと襲いかかることだろう。
 きっとウィノラもわかっていた。どんな答えが還ってこようとも、どんな狂気が還ってこようとも、自身は満足など出来ない。

「だって!これは悲劇じゃないですか!この神様は決して願いを叶えられない!」
 ウィノラが命ずる。情念の獣が駆け、高き森の怪物へと牙を立てようとして、そのユーベルコードがかき消される。
 高き森の怪物の両手が大地を穿つ。無効化されたユーベルコードを、地割れの起こった亀裂から力に変えて排出するのだ。
 轟くエネルギーの奔流は牙のようになったウィノラを襲う。だが、その牙はウィノラの親友たちの鋏によって防がれる。
「だから、私がこの物語を喜劇に変えます!」
 ウィノラが大地から飛び立ち、その純白の翼を広げる。暗き闇から見上げる高き森の怪物。その眼を見やることはできなかったが、ウィノラは確かに感じた。
 その顔の奥にある視線。異端の神々と呼ばれた怪物の残滓。

「あなたの願いは未来で叶いますように……だから、私が!」
 彼女の人形……親友たちが一斉に手に持つ鋏を開く。オーラによって守られた彼らが割れた大地から報酬されるエネルギーの牙を避け、ぶつかりながら高き森の怪物へと殺到する。
 切り裂き、削ぎ、高き森の怪物の願いを、今ではない未来へと昇華するのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウル・トールフォレスト
ようやく会えた
はじめまして、名も知らぬあなた
わたしはアウル。『高き森』のアウル
あなたとおともだちになりにきたよ

真の姿を開放
同時に【深緑、畏れ多き大樹と成りて】を発動
穢れを弾く光輝を纏って、真正面からぶつかっていく

会ってみて、ひと目見て、何となく分かった
あの子は、心が人に寄り過ぎたんだと思う
…それは私には、あまりにも眩しく見えて…

ううん、駄目
これ以上はお互いが苦しくなるだけ

問いかけも嫌悪も終わりにしなきゃ
だって【怪物はいつか倒されるもの】

腕を、手を、爪を、思い切り伸ばす
例えば、心臓を抉り出そうとするような勢いで

せめてあなたを、おともだちを怪物たらしめる魔性くらいは
わたしが貰って/奪ってあげるから



 高き森の怪物と名付けられた異端の神々の一柱は孤独である。
 神々であったとしても孤独に耐えられる者は存在しない。己が孤高の者であると思えるのは、他者が存在するからこそである。他者が存在しない世界に己を保つ自我など存在しない。
 自我があるがゆえに、他者がある。他者が在るがゆえに自我が在る。かつて、誰かがそうかく語った。
 ならば、高き森の怪物にとっての他者とは一体何か。同じく異端の神々であろうか。否。彼女にとっての他者とは人間である。
 どうあっても相容れぬ存在である人間に彼女は惹かれ、そして近づき、その身を森へと変じた。その過程がどうあれ、彼女の真実は一つしかない。
 孤独を死よりも恐れたが故に、人間の行いに対して憤ることはない。

 そして、そんな彼女にもまた終焉が訪れる。それを運ぶものが来た。

「ようやく会えた。はじめまして、名も知らぬあなた。わたしは―――。『高き森』の―――……」
 目の前にいる者の存在を『高き森』の怪物は正しく認識できなかったのかも知れない。アレはなんだ。胸が張り裂けそうなほどの、強烈な想いが溢れてくる。この虚のような虚無にあってもなお、溢れ出るもの。
 その名前を知らぬ怪物は、一歩を踏み出す。互いが引き合うように。

「あなたとおともだちになりにきたよ」
 目の前のソレは、真なる姿を開放する。深緑、畏れ多き大樹と成りて(メラム・エンリル)……巨躯そのもの。見上げる。
 この暗き森の中にあってなお、その光輝はまばゆい。目が潰れてしまいそうな感覚。それでも見上げずにはいられない。
 まるで磁石が引き合うように巨躯同士がぶつかる。額と額とがぶつかり割れる音が響く。

「会ってみて、ひと目見て、なんとなくわかあった……あなたは心が人に寄り過ぎたんだと思う……それは私には、あまりにも眩しく見えて……」
 その声は憐憫を伴っていた。
 至近で視線が絡まる。光輝に包まれたソレの輝きは眩すぎて、狂気すらも霞む。
「ア、―――ァ、アー!!!!眩しい!眩しい!キライキライキライキライキライ!!!」
 絶叫する。それは悲鳴であったのかもしれない。初めて高き森の怪物の中に溢れたのは何故、という感情。何故自分はああではないのだ。何故自分はこんなにも昏き者なのだ。何故。何故。何故。何故―――!

「ううん、駄目。これ以上はお互いが苦しくなるだけ。問いかけも嫌悪も終わりにしなきゃ……」
 高き森の怪物が放つ夥しい呪いの魔草が光輝の巨躯に絡みつく。だが、それは何の効果も放てずに枯れ果てる。
 光輝の巨躯は手を伸ばす。それは高き森の怪物を肩を掴む。爪が食い込む。ギシギシと嫌な音が響く。痛い。痛い。痛い。
 なのになんでこんなにも、自分の体には力が入らないのだ。
 そこに至って漸く高き森の怪物は気がつく。そう、力が入らないのではない。力を込めていないのだ。

「だって、“怪物はいつか倒されるもの”」
 その“いつか”が今なのだ。今この時をおいて、今この眼前にいる光輝の巨躯の前をおいて他にはない。
 それがわかってしまう。それが運命なのだと。

「せめてあなたを、おともだちを怪物たらしめる魔性くらいはわたしが」
 微笑むような気配すら感じた。
 ああ、と。なんだ。目の前にいるソレは、おともだちなんだ。はらり、はらりと頬を伝うものがあった。 
 暖かくて、それでいて物寂しいような、嬉しいような。感情が綯い交ぜになっていく。けれど、それを不快だとは思わなかった。これで―――。

「わたしが……貰って」「奪って」「あげるから」
 断片的に聞こえてきた言葉。いいよ。あげる。みんなみんなお友達にあげる。だから、最後に名前―――。

 高き森の怪物はこうして看取られた。

 昏き森は、豊かな森へと姿を変えている。これでヴァンパイアの支配の届かぬ人類の活動圏を一つ手に入れたことになる。
 その森を静かに振り返る者が一人。

 その名は。アウル・トールフォレスト―――高き森の怪物。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月09日
宿敵 『高き森の怪物』 を撃破!


挿絵イラスト