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商港旅街、イサナノオオゼ

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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 暗い洞窟を照らすのは、小さな蝋燭の明かりだけ。
「……ッ」
 猿轡を噛まされ、縛られた手足でもがこうとも体が自由になることはない。
 腿に開けられた傷口から鮮血が岩肌の床に刻まれた溝へと流れていく。
 徐々に冷えていく体に反して、皮膚は徐々に熱を帯びて燃えゆくようですらあった。
「この前は逃げられたけど、今度は逃がさない」
 そんな数人の男達の耳に、若い声が響く。
「これで俺たちだって、強くなれる」
「海で勝てないやつなんていなくなる」
 これは僅かに上ずっている。興奮が隠しきれていない、というよりも興奮に流されていると言うべきか。
 未熟。転がる俺達は自らの経験にそう断じる。
 今回ばかりは運が悪かったのだ、と。死ぬ仲間も殺した敵の数ももう覚えていない彼らは、今度は自分の番だ、と達観の境地にすら達し、目を瞑っていた。
 ただ、暗い洞を、期待に満ちた声が跳ねる。

「海神さま……俺達に加護を……ッ」

 波がうねるような、音が聞こえた気がした。


「UDCアースの世界に近い島だ」
 とは言っても時代は少し古い建物が多い。現在のUDCアースなら何らかの文化遺産として町ごと登録されていそうな街並み、というあたりか。
「平和な島だ。いさかいは堪えないかもしれないが、紛争や、絶対的な統治者による圧政などもない」
 方々の海賊達の交流の場となっているこの場所は、いわば暗黙の非武装地帯か。
 港から街道が延び、切り立った山で千切れるように海へと戻るこの島に、資源的価値が薄いというのもあるかもしれない。
「だが、コンキスタドールがこの島で怪しげな儀式を行っている」
 生け贄を用いた、何かの召喚。
 何がもたらされるのかは分からないが、何かが起こるだろうことは確か。
「これを止めてほしいんだよね」
 ただし。
「混乱を起こすのは忍びない」
 平和に慣れたこの島の住民がパニックになれば、収集のつかない事態へと陥る可能性もある。
「まずは、観光客として街を散策して、情報を集めてほしい」
 まあ、気負わずとも良いだろう、とルーダスは言う。
「島の危機、だとしても、君達にとっての脅威には届かないだろう」
 そう告げて、ルーダスは説明を切り上げた。

 


オーガ

 海のお話、難易度は軽い感じです。

 各章ごとに断章を挟みます。

 宜しくお願いします。
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第1章 日常 『自由気ままにショッピング』

POW   :    端から端までぜーんぶ買う

SPD   :    掘り出し物を探して買う

WIZ   :    値切りながらお買い物

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 鮫の深海人、ナガハマは言う。
「逃げた時? いや、知らねえよ」
 どうにも、死にものぐるいに逃げたらしく、港までの記憶はないのだという。
 共に捕まっていた他の奴らの安否は知らない。ただ途中で出会った少年と少女を連れて小舟で逃げ出した。
 随分とまあ、無茶を、と語れば、気まずそうに肩を竦める。それだけだった。
「てなわけだ。イサナノオオゼ」
 彼は島の名を告げる。
「神がいた島、だそうだ」
 そして。
「俺が妙な儀式の人質として捕まりかけた、やな島だ」


 イサナノオオゼ。
 元々存在した信仰と海賊文化の交わった伝承の語り継がれる島。
 この島で作られるお守りは、確かな効力がある等と言われ、寄る海賊たちの間で東宝されている。
 海賊たちの交わる場所だからか、武器屋の隣に、安全を祈願するお守りなどが売ってあるのは、いかにも奇妙ではあるが、それも風情というのであればそうなのだろう。
 目立つのは、お守りのほかに、海鮮物やそれを使った飲食店、海賊の腕試しか、甲難易度の射的などなど。
 さて、猟兵達に任されるのは、住民たちの疑念を高めぬように観光を楽しみながら伝承の詳細やコンキスタドールの動向を探る、という事だ。
 


 基本的に自由行動です。
 
 適宜フレーバーを追加して、お返しする形になるかと思われます。
 よろしくお願いします。 
フィルマリナ・ガラクシア
文化的かつ風光明媚な島ね、嫌いじゃないわ。
コンキスタドールが暗躍しているそうだけれど、まずは掘り出し物を探さないとね!
懐具合?気にしない気にしない、本当に良い物は安価だろうと欲するべき人の所に転がり込むのだわ。

【SPD】価値のある物が欲しいかどうかは置いておいて、こう見えても一人前の海賊なの。
【宝探し】で良さげな物品を探して買うのだわ。よければその品にまつわる話も聞かせてくれないかしら。
海賊にとって品物の高価さよりも、品物の持つエピソードの方が魅力的なのだわ。



 燦燦と降り注ぐ陽光が彼女を迎え入れる。
 朗々とうねり上げる波音が彼女を歓迎する。
「へえ、良い島じゃない」
 元は和洋が重なり、そして今は複数世界が交わり、しかし、元の世界、時代の姿を残す町並み。
 その入り口、港から街道を見上げた少女は、活気あふれる往来に満足げに頷いた。
「嫌いじゃないわ」
 文化的でありながら、一つの絵に収まっているかのような風光明媚。空気を肺に流し込んで、にいと口角を上げるフィルマリナ・ガラクシア(銀河の落とし子・f26612)は、街へと足を踏み出した。
 マントに白い体にフィットした衣装。例えば、この島が元の世界にあったのであればきっと『スク水少女』と衆目を集めたやもしれないが、この世界においてその程度の露出は珍しいものでは無かったりもする。
 猟兵である彼女は、そもそも、そう振舞わなければさほど目立つことはないのだが。
「賑わってるのね」
 コンキスタドールの影すら感じられないような、長閑で、そして喧々とした賑わいだ。
 全身に傷を入れた海賊風の男の横を擦り抜けながら、人の間をするすると抜けていきながら、彼女の目は通りの露天商や店舗を流し見る。
 幼い姿に侮られては困る。選別眼には自信があるのだ。
「……あら?」
 そうして、フィルマリナが足を止めたのは、茣蓙の上にクッションを置いてそれにもたれかかって鼻提灯を揺らす老人の露天だった。
 並べられているのは、絶対にここで大口を開けていびきをかく彼が作ったのじゃないだろうと断言できるような繊細な仕上がりのお守りだった。
「もしもし、おじいさん?」
 一つ、小袋の形をしたお守りを摘まみ上げて、声をかける。
「ん、ぉお、お客さんか」
「どうかしら、これってどんなお守りなの?」
 問いかけたフィルマリナに老人は、ふんむ、と顎を摩り、答える。
「結ぶんじゃよ」
「結ぶ……ね」
 それは、色鮮やかな糸で縫われた袋の上からでも、触ればよく分かった。
 小さな木の平たい棒を、割らぬよう捻じり一つ結びにしている。
「自分と他人、この島とあの島、海と空。両端にあるものを結びつけるんじゃ」
「何でもありじゃない、それ?」
「はは、お守りなんてそんなものじゃ」
 パシパシ、とクッションに腰かける老人は、細い膝を叩いて笑う。
「さて、どれが本来の結びと思うかの?」
 もはや、この老人、クイズ大会でもしているような心地か。飄々と三つのお守りを手に取っていた。
「これは体と魂。これは財布と金、これは己の想いと恋人の想い」
「……三つめ。成程、縁結びの神様ってことだね」
「ほー」
 と諸手を上げて降参、とポーズを示した老人は、にいと少し勝ち誇ったように。
「正解じゃが、惜しいなあ」
 そう言った。
「あら、どこが違ったのかしらね?」
「よしよし、これを買ってくれたら教えて進ぜよう?」
「まあ、なんて商売上手」
 欠片もそうは思っていないようにフィルマリナは、老人に小銭を握らせる、と彼はうんうんと頷く。
 彼女にとって、その出費は痛くも痒くも無い。お宝というのは、換金価値にではなく、秘めた物語にこそ真髄にあるのだから。
 その後の老人の言葉出しは、フィルマリナの興味を確かに引くものだった。
「ここの山の社はな、――神様を祀ってはないんじゃよ」
 と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト
万一騒ぎが起きてもやりやすい裏の通りを歩く。あるならだが
御守りやそれっぽいもんを並べてる露天商がいりゃ覗く。その道長そうな老人がいい
神頼み、か
余所者がどうこう言うつもりはない。持ち歩く気もしねえが

【SPD】

オレもひとつ荒波を越えてきたところでな
それで
このちっさいのにどの程度ご利益とやらがあるんだ
主の売り込みから『神』の在り様を下調べ。大体神ってのはどこにでもいるもんで、荒れる海を鎮めたり恵みの雨を降らせたり、死んだ奴をまた動かしたり
何にせよ。無償で働いたためしは憶えがない
そりゃあさぞ立派な風体だろうよ
何を願った?
会ってみてえもんだな。爺さん

話の礼に
御守りよりか役立ちそうなガラクタでも買ってこう



「神、か」
 表通りから少し離れた裏の通り。
 暗いという程ではないが、落ち着いた空気の流れる道を歩く。観光向きと住民向きの店と住宅が並ぶ、商売と生活の合間のような場所で、全身に傷を引いた男が露天の前にしゃがみこんでいた。
 そんな彼に、その店の店主が少し興味深そうに、帽子の鍔の影に隠れた金の瞳を見上げて言う。
「なんじゃ、神が嫌いか?」
「いいや」
 レイ・オブライト(steel・f25854)は手に取ったお守りの軽さに、自らの運や命を預ける気にもなれず、差し戻して首を振った。
「好きも、嫌いもないな」
 そもそも、神様なんてものは珍しくもなんともない。少し世界をめぐれば、どこにでもいるものだ。
 荒れる海を鎮めた。
 恵みの雨をもたらした。
 死者を甦らせ。
 そして。
「無償で働いたためしはない」
「それは、まあ、そうだの」
 どんな願いだろうと、そこには代償が存在する。そう呆れる様に吐き出した言葉に、妙に実感の籠る声を返した店主に、レイはいぶかし気に視線を向けてみた。
 その視線に、いやな、と彼は言う。
「この島も、そういう話が伝わっておってなあ」
 文献じゃとな、と彼は語り出した。
「まあ、昔、この島がどっかしらの大きな島から、こう、べりっと剥がされてな。そうして、島になった頃」
 混乱の嵐、だった。
 生活インフラが断絶し、例えば、水一杯にしても大暴動。
「まあ、湧き水はあるし、海水から真水を作れば問題なかったんじゃが」
 ともあれ、比較的早期に解決した水問題以外にも、様々な問題が畳み掛けてくる混乱。
 そんな中で、今もこの島に残る小さな社の管理者が、何を思ったか古い文献を引っ張ってきて、こう言ったわけだ。
 ――困ったときの、神様頼りだ、と。
「……それで?」
 そこで言葉を止めた主人へと向けたレイの問いかけに、彼は老いた頬の皴をくぬくぬと揉みながら、肩を竦めた。
「さあ、儀式をした人間がどうなったかは知らんな」
 何せ、儀式を行った本流の人間は、そこで途絶えてしもうたもんでな。
「残ったのが儂のご先祖、傍流の人間だけじゃ」
 と、自慢げに笑みを見せた老人は、数秒沈黙を堪えた後、眉を困ったようにしかめて見せた。
「驚かんのか?」
「驚いたぞ」
 ただ当事者でなく、血縁というだけなら衝撃的、とはとても言えないだけだった。
「なんじゃつまらん」
 と、口を尖らせる老人を横目に。
「神、か」
 再度、レイは呟いた。
 結局、その儀式は神とやらを呼び出して、何かを叶えたのだろうか。
「会ってみてえもんだな。爺さん」
「儂もなあ、会ってみたいもんじゃ」
 話は終わりかとレイは、降りたその沈黙に思う。「まあ」と老人に言った。
「話の礼だ。何か買おう」
「ほお。それじゃあ、どのお守りがいい?」
「……いや、もっと役立ちそうなガラクタにしてくれ」
 なんじゃ、と拗ねる老人へと苦い顔を返すレイに、それでも彼は何かを見繕う。
「そうな、それじゃあ、これなぞどうじゃ」
「……これは」
 木の板が複数枚重なったような棒状の何か。
「扇子と言ってな、まあ、こうやって」
 その棒を円を描くように、文字どおり扇状に開けば、油を引いたような光沢のある紙がピンと張り膜を作る。羽か、もしくは鰭のような形状。
 老人は、レイの目の前でハタハタと上下に動かして見せた。
「風が吹くんじゃ」
「成程、……御守りよりは役に立ちそうなガラクタだな」
「じゃろう?」
 風を起こすのが自分の労力という事だけは、中々に琴線に触れるものがあった。
 レイは受け取った扇子を閉じて、ぱちん、と音を鳴らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガイ・アンカー
アドリブ・絡み◎

神がいた島で生贄を使った儀式、ねえ…「いた」ってことは今はいないのか
…妙なもんじゃなけりゃいいんだが
ま、そこら辺も何かしらの形で伝わってそうだし
気楽に探ってみるか

折角だからうちの海賊団用に食料でも…いや、邪魔になるか
しっかし至る所にお守りがあるな
…これだけあるくらいならご利益とやらもあるんだろう
どれ、航海安全祈願だ
一つ買ってみようかね
ついでに世間話程度に伝承…この島の神とやらはどういう神なのかも聞いてみるか

あとは適当にブラブラと…
お、腕試しとは面白そうだ
つっても俺は銃はそんなに使わねえしなあ
あ、腕相撲ならどうだ?
こっちなら自信がある…俺は『錨』だからな
やるなら怪力で本気で行くぜ



「神を崇めてはいない?」
 そりゃあ、また。
 神が『いた』なんて話とはかみ合わないような気がする。
「神様はいたらしいよ、海と山にそれぞれ社があって」
 という男性の言葉と共に、ジュウ、と糖分が泡となって無数に弾ける音が湧き立った。
 途端に空気を満たした甘辛いタレが焦げる匂いが、鼻腔をくすぐっている。
 串に通された一口に切った肉が艶のある鼈甲色を纏う瞬間を、眼前に見せつけられながら、ガイ・アンカー(Weigh Anchor!・f26515)は思わずに、舌下から溢れ出た唾液を呑み込んでいた。
「おっちゃん。明らかに狙い撃ちで焼き始めるの、ずるくねえ?」
「何を言ってる、営業戦略ってやつだ」
 炭火を突っ込んだ釜戸に網を敷いて、その上でタレに浸けた鶏肉を炙るだけの料理。
 店先もベンチが一つあるだけの簡素なものだ。だが、それでもその魅力は抗いきれないものがあり。
「一本」
 ガイは、指を一つ立てていた。
「まいどー。実はモモとムネでタレを変えててだなあ、それと塩ダレも自慢だー」
 あんどと言いつつ、何やら他にも違う部位の串やらタレを取り出している出店の主人を軽く睨みつけてみる。
 焼き鳥屋。それに似合わない御守りの飾り棚に釣られてきてみれば、一杯食わされたようだ。
「おいおい、食わすのは今からだ」
「うるせえよ、おっちゃん」
 睨みつける視線も慣れたとばかりに受け流し、ちゃんと焼かないとダメだからなあ。とクイと主人は陳列した御守りを指差す。
 何かと問えば『胃と健康』を結びつけるとかなんとか。
「残念、もう航海安全祈願を買ってる」
「ちぇ」
「ちょっとは商売欲、隠せよおっちゃん」
「うるせえ、ほら、焼けたぞ」
 手渡された串を受け取って、肩を竦めて二人で笑う。険のあるやり取りも海賊らしい小突きあいと思えば随分と子供じみて感じるものだ。
「それで?」
「あん」
「神様の話」
 ああ、と串を回しながら店主は、島に伝わる伝承とやらを話す。
「険しい山と荒れやすい海に挟まれた場所だったんだと」
 今は穏やかな海に囲まれて、山も一つが残るだけではあるが。
 そうして、山の獣神と海の竜神にそれぞれ社を立てて、鎮めようとしたらしい。
「……それで生贄ってか?」
「うん? さあ……まあ、あったかもしれんが」
 そこはよく知らん、とガイの質問に店主は首を傾げた。
 ともかく、二柱の社を建立したわけだが、問題はそれで収まらなかった。この二柱、小競り合いを始めたのだ。
 海賊の挨拶、のような可愛げのある物じゃない。神様同士の喧嘩だ。
 山に拝めば海は荒れ、海に拝めば山が崩れ。
「もうこりゃ、大変だって時に立ち上がる奴がいたんだ」
 だが、それは人ではなく。
 近くの海で泳いでいた大魚だという。事あるごとに波に揺られ、流れてきた土砂に殴られ、辛抱たまらんと、浜に出て言った。
「私が、二柱の間を繋ぐ連絡役になろう」と。
 元々、人が住まうよりも前から、山と海にいたこの二柱。反りが合わないようで、隣神でい続けた同士。人の信仰という、いわば業績のようなもので躍起になっていただけ。
 要するに面を合わせて謝れないだけで、仲介役があれば大荒れする事はなかったのだ。
「それで、神を崇めると片方が拗ねるし、実質救ってくれたのがその大魚ってことで俺たちが直接崇めてるのはそのただの大魚、ってことだ」
 そうして、山と海に信仰を捧げる為の仲介役。その大魚の為の社がこの島に残った唯一の社なのだという。
「山の獣神と海の竜神の社はこの海に落ちずに、それで神が『いた』島って事か」
 はー、と鶏肉を噛み締めながら買った御守りを、指先に引っかけて仰ぎ見る。
 結ばれたような形の木の板のような何か。
「今じゃ、あこぎなおっちゃんに、胃と健康の仲を取り持たされてんのか。大変だなあ」
「ほら、他も焼けたぞ」
 そう言って渡された、やはり注文していない分まで入った鳥串の袋を持って、さて適当にぶらつくか、とガイはベンチを立ち上がった。
 ひとまず、安くしといた、とか言ってるが、そういう問題じゃねえと返しておこう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリエ・イヴ
アドリブ◎

こういう賑やかなのはキライじゃねぇな
人の多い場所を好んで歩く
潮の音も人の話し声も心地いい
ご機嫌でお守りを売ってる場所へ
効くっつー話だが、何かの加護でもついてんのか?
ほら、あんまり効きすぎて俺の女神が妬いても困るだろ
冗談めかして話を聞く
信仰…つーのが何か関係してっかもしんねぇし

なかなか面白そうな、ある意味でお宝と言えるもんなら
女神もきっと許してくれるだろと1つ購入

他は…ああ、腕試しか
そりゃぁ、参加しねぇわけにはいかねぇよなぁ
楽しげに喉をならして
獲物を狙う獣のような目で
試練だなんだは乗り越えてこその海賊だ
きっちり勝ってやろうじゃねぇか
まあ、今の俺には
女神と海の愛と…このお守りがあるからな



「結びつける神遣い、か」
 褪せた赤銅の髪を潮風に晒しながら、男は賑わう人交いをみつめていた。
「ま、拗ねないでいてくれよな」
 と、果たして赦しを請うているのかいないのか、分からない口調で、アリエ・イヴ(Le miel est sucré・f26383)は呟く。
 腰かけた細い丸太の柵を少し揺らしながら膝に肘ついた腕で顎を支え、手に収まった小さな御守りをぽんぽんと跳ねさせている。
 それを買ったから、と言って、彼の女神への想いが消えるわけじゃない。
 それだけ聞くと、浮気性な男の言い分でしかないが。
「んで、これがどう、……ソレに繋がんのか」
  零れ出そうになったコンキスタドール、という言葉を喉奥へと飲み込みながら、呟いた。
 信仰の話は、まあ、理解した。
 だが、店の主人の話で分かったのは、何を崇めているか程度だ。
「……」
 既に島に潜んでいるはずのコンキスタドール。その手懸かりを掴むことは、まだ出来ていない。
「ま、どうにかなるか」
 一つ伸びをして、アリエは町の活気を眺める。
 波の音とも雑踏の音ともつかぬ、さんざとざわめく賑わいを瞼を閉じて聞く。
 波の音すら遠退くような死んだ静寂よりも、こっちの方がアリエには余程心地の良いものだ。
 呼び込みの声やら話し声、時折怒声も上がって、無二のさざ波のような喧騒が溢れている。
「……ん?」
 と、ふとその中で聞こえた歓声に、アリエは興味を引かれて、その目を開けた。 
「オオーッ!」
「クッソ、いい加減負けてくれよ!」
「畜生、強えな兄ちゃん」
 アリエの対面に座る男が、腕を押さえ悔しげに顔を歪めた。
「いや、危なかったぜ。ちょっと汗で滑りそうだった」
「あー、攻め時逃したか……」
「勝負は時の運ってな」
 正体は、海賊達の腕相撲だった。周囲では賭けが行われていて、アリエの意識に引っ掛かったのは、その一喜一憂の声だったのだ。
 連戦連勝を繰り広げるアリエの敗けは、数十倍のレート。大賭けでまた一人アリエに恨み言を言う奴が増えていた。
「なんだぁ、やけに騒がしいな」
 アリエが時の人となっていた、なぜか木屑と破片が転がる酒場によく通る声がしわがれ声が響いていた。
「お、やっと来たか! 待ってたぜ旦那。この兄ちゃんの腕がつええの」
「ああ? てっきりあのゴミどもが戻ってきたのかと思ったぜ」
 わら、と回りを囲んでいた海賊が、その巨漢に道を作る。
 当然、その先はアリエの向かい側。
「ゴミ?」
 と歩み寄る男へと、アリエは問いかけた。
「ここでエラそうに絡んできやがった海賊だよ」
「そういや船はあんだけど、少し前から姿が見えねえって」
 酒に酔って、暴れたのだろう。散らばる破片はその時の喧嘩の名残かもしれない。
 と、ふと残骸に目を向けたアリエは。
「……ほぉん」
 そう、笑んでいた。野生を秘めた瞳をキツく細めて、その男を睨め上げる。
 これは運が良い。
 女神と海の愛に祝福されて、今日もツいている。
「いや、御守りのお陰もあるか?」
「あん?」
「いいや、なんでもねえよ。それより」
 姿の消えた海賊。
 随分とタイミングの良い雲隠れだ。果たして、生け贄にされているのか、生贄を使って儀式を行おうとしているのか。
 どっちかは分からないが、兎も角、探れば何かが分かる。とアリエの勘が告げている。
「勝ったらその話聞かせてくれよ」
 ドガリ、と対面の椅子に座った海賊が、髭むくじゃらの面を歪ませてた。
「ほお、なら負けたらどうする? 俺の話は高えぞ」
「身ぐるみ全部くれてやる」
 海賊の目が、冷静な色を帯びて細められた。こちらを値踏みするような目。何かしらの事情があると見て、利害があるか、または無いかを思考する目。
 見た目に反して頭は回るようだ。
「……で?」
 アリエは、先んじて机に腕を出して構える。逃げないよな? と挑発するその視線に、海賊は勘定を終えたのか、その腕を差し出しアリエの手を掴みとった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
頼み事。うーんどうするのがスマートかなー。
まあ動いてみて流れで行っちゃえば何とかなるだろう。
やれる事は限られる、だから最善と思う事をやればそれでよし。

到着後ショッピング楽しみつつ情報収集。
お守りが重宝される位にいいものらしいしその辺りを中心に。
UDCアースだと交通安全だとか商売繁盛とか色んなお守りあったからここにも色んな種類のがあるのかなーと。
やっぱり海周りのお守りが多いねえ。
お守り探しに来てる海賊達に旅人装い気安い感じに話しかけてみる。
ここは平和でいいねーとか煽てつつ、もしかして知らないだけで危ない所とかあったり?とか聞いてみる。
危険な所は避けたいからねーとか付け加え。

※アドリブ絡み等お任せ



「コイツら、人拐いに遭ってここまで連れてこられたらしくてな」
 ナガハマはそう言う。少年はショウ、少女は言葉を発さないらしく、ただユウキと少年は呼んでいる。
 経緯としては、儀式の隙をついて逃げ出したナガハマとその他数名はばらばらに別れ、ナガハマが自分の小舟を出そうとした所に、人拐いの海賊の隙を見て逃げ出した少年少女に出会ったと。
 こういうことらしい。
「んで俺らは、コイツらの元の島知ってるだろうその海賊探してみっから」
 とナガハマは慣れた足取りで街を歩いていった。
「頼み、ねえ」
 かの鮫の深海人が頼んできたのは、少年達を元の島に送り届けること、であった。
 シャチのキマイラ、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は、その丸いお腹に手を当てて、うーん、と見送った喧騒を見つめていた。
 人が行き交っている。その三人の背を瞬く間に覆い隠していく人、人、人。
「この場合、どうするのがスマートかなあ」
 彼らの情報も探したいし、猟兵としての責務も果たさなければいけない。という事だ。
「まあ」
 少し迷う素振りを見せながら、しかしヴィクトルはほんの数秒で、うん、と一つ頷いた。
「歩いてみれば、なんかしらいい話聞けるかもね」
 そう、ここで立ち竦んでいても何も起こりはしないのだ。
 というわけで、ヴィクトルは街の散策を行う事にしていた。
「わあ、やっぱりいろんな御守りがあるんだねえ」
 そうして、棚に並んだ様々な種類のお守りを前に、ヴィクトルは感心を露わにしていた。
「なーんで俺に声かけるのか」
「だって、詳しそうだから? 店の人とも懇意にしてたしろ?」
「そりゃあ、まあ……」
 何度も来てるわけだしな、とヴィクトルが話しかけた海賊は、店先から覗いた子供から振られた手に、軽く手を振り返している。
 随分と懐いている。本当に結構な頻度で訪れていて、あの子にとっては常連、というより身内にも近いのだろう。
「平和だもんねえ。いいよね、こんな平和」
「そうだな」
 もう、隠さなくなったのか、仏頂面ながらも諦めて頷いた気のいい海賊に、ヴィクトルはその彼の言葉なら問題なさそうだと、少しだけ声を潜めて本命の質問をぶつけてみた。
「……それでも、知らないだけで危ない所とかあったり?」
「危険ん?」
 ど、と店先に置かれていた丸太椅子に腰かけた彼は、言う。
「さあ、結局危なくねえ場所なんざないんだろうけどな」
「というと?」
「ここでアンタに銃を突き付けて引き金を引いたらどうなる?」
 ヴィクトルは、腰に引っ提げた銃へと手を伸ばしながら言う海賊の言葉に、数回、ぱちくりと瞬きを返した。
「そうだなあ。キミが、……俺に?」
 ヴィクトルは、ほんの少し考えてその質問の意図を考えた。
 それはただの威嚇じゃない。もし本当に彼が銃口をこちらへと差し向けたのなら、その体に後遺症を残す事など無く制圧する事すら簡単だろう。
 いや、無傷はどうだろうか。もしかしたら、力加減で危ういかもしれないけれども、まあ、無力化自体は確実だ。
 それを目の前の海賊も分かっているような気がした。
 威嚇というよりも、純粋な問いかけ。
「うん、分かんないな」だからこそ、ヴィクトルは肩を竦める。ヴィクトル自身は無力化したあと、特に何を起こす気も起こらないだろう。だから、何かが起きるとしたら、他の何かが起こす現象だ。「何が起こるんだい」
「さあ、俺にも分かんねえな」
 何かを知っている。
 そう問いかけたヴィクトルの思惑に反して、海賊は、銃から手を離して肩を竦めて笑った。
「まあ、あんまりこの島で暴れるとその後いい噂は聞かねえって事か」
 そりゃまあ、強い海賊なんかは壮健な話を聞くが、そんな海賊はこの島にそこまで魅力を覚えない。
 ヴィクトルは、そんな風に言う男に、ふと思いついた言葉をぶつけてみた。
「暴れる、っていうと……、例えば人攫いとか?」
「ああ」
 もし、この島の人を攫おうっていうなら。と海賊は胡乱な目を中空へと飛ばしながら。
 何かを思い出すように。
「そりゃあ、島が怒るんじゃねえかな」
 そう言った。
 何せ、人の信仰の中で、何でもかんでも結び付けてご利益を振り撒く。
 神様だ、何を報復にされるか分かったものじゃない、と。
「んで、なんだっけ」海賊は、ああそうだ、と手を打って答える。「危険な場所か」
 うん、と頷いたヴィクトルに、海賊はす、とその指を街道の先、切り立った山を指し示していた。
「まあ、普通にあの山だろうな。旧い地下につながる穴が結構あるらしいから、一回転んだらそのまま全身打撲で死ぬ」
 最終的に、めちゃくちゃ現実的な答えが返ってきたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セゲル・スヴェアボルグ
腕試し?
何を試すか知らんが、果たしてこの俺を試すことができるかな?
そうだな……勝った方が負けた方を一日好きにできるってのはどうだ?
それなりの人数も欲しいからな。
何人でも相手になるぞ。
なに、取って食おうなんてしないから安心しろ。
何?負ける前提で話をするなって?
そいつは悪かったな。
まぁ、俺を使役出来るだけの実力があることを期待しておこう。
結局何をさせるかって?
そりゃあ勿論、情報集めの使いっぱしりに決まってるだろう。
俺みたいな他所者より、ここに顔が利く連中の方が怪しまれることもない。
面倒くさい?
そうか、それなら今日一日でお前さんたち全員、そこら辺の商人にでも売り払っちまうってのもありだな。



 海賊、という生き物は集まれば、諍い争いを起こす生態をしているらしい。
「約束は覚えてるだろ?」
 とはいっても、騒ぎが起きていたのは腕相撲という何とも平和なものではあったのだが。
 しかもその勝負の内容は、この店の看板娘にどちらが先に夜までのデートを誘うか、なんてものだったりする。
 ともかく、そんな腕相撲の賑わいへと、酒の一杯を担保に飛び込んだ竜人一人。
 あれよあれよと言う間に、周囲の血気盛んな負けず嫌いが、服の一枚までその青い竜人に所有権を奪われて、床に鎮座しているのだった。
「……一日、負けた奴を好きにできるってやつか」
 渋々と目の前に座る海賊が代表して言うセリフを聞きながら、セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)は想定以上に事の運びが早い事に、思わず唸る。
 一度のリベンジで全財産を賭け、二度目のリベンジで服もへそくりも全て賭け、泣きの三度目をセゲルのその申し出で受けたのだ。十何人と連戦したとはいえ、財産を放り出すスピードが刹那過ぎる。酒が入っていたのもあっただろうが、全員がそうなる前に途中で気付け、とも思う。
 いや、途中でセゲルに酒を奢ったりしたので、本人たち的には勝つ見込みがあったという事ではあるのだろうけど。
 ちなみに最初の『看板娘を誘う』という目的は早々に『この竜人を倒す』事に塗り替えられて、看板娘は店の手伝いを終え、迎えに来た彼氏とデートに繰り出していった。
「それで、俺たちに何させようってんだ」
 勝つつもりでしかなかった彼らは、セゲルの目的を何一つ知らないのだ。
 よく、海で生きていられるものだとセゲルは思う。もしかしたらここにいない彼らの仲間がめちゃくちゃに苦労人なのかもしれない。
「何、お前さんら全員で俺を満足させてもらうだけだ」
 こんもりと海賊たちの武器やら服やらが山になった机の僅かな空きスペースに肘をつきながら、セゲルは彼らを見下ろし、そう言う。
 海賊たちの顔が僅かにぴりと、強張った。
「つまり使いっぱしりだ。」
 それも、情報収集の。
 最近変な奴を見かけていないか、探らせることだった。
 セゲルのような初顔よりも、ある程度顔の効く連中のほうが怪しまれず、情報も得やすいだろう。
 と説明すれば、床に座った男どもは虚を突かれたような、きょとんとした表情を浮かべている。
「は、なんだ、腹踊りでもさせられると思ったか」
「い、いや」
 そういうわけじゃあ、という海賊の後ろで、不意に一人が立ち上がった。
 下着と小さなナイフだけは賭けなかった、幾らか利口な海賊だ。
「け、めんどくせえ。付き合う義理はねえな」
 と、彼は約束を反故に、立ち去ろうと背を向ける。
 そして。
「そうか」セゲルは短く一言、残念だと口にした。「それなら、まあ、仕方ない」
 その瞬間。
 去ろうとした男の首に、いつのまにか錨の様にも見える斧が添えられていた。
 刃の内側、弧を描く峰ではあっても、明らかに重量のある塊。軽くセゲルが力を抜くか、振り抜けば、男の首など意図も容易く砕け折れるだろう。
「……っ」
 息が詰まる。
 その瞬間、彼が感じていたのは恐怖ではなく、ただ背中から感じる膨大な威圧感だった。さながら、まさに今自分の体を圧し潰さんとする波が時間を止めて聳えているかのような。
「商人にでも売っぱらっちまうか」
 男はただ、奴隷をいじくるのが好きな好事家にでも流してもらえんじゃあねえかな。と告げる声色に、ただ背に流れる冷や汗に促されるまま首をコクコクと振るしかできない。
 セゲルは、一先ずその首肯に免じて刃を引いてやる。電脳存在へと書き換える残滓の光が瞬く間にその武器をかき消していく。
「ひ、ひぁ……!」
 震えて強張った足で動けないらしい男の尻を軽く蹴飛ばしてやれば、たたらを踏みながら哀れな見せしめになった海賊は、ばたばたと逃げるように町の中へと消えていく。
 少し灸が効きすぎたやもしれんな、とセゲルは顎の髭をわしわしと掻きながらも、硬直した他の敗者たちへと、ずいと視線を向けた。
 びく、と跳ねる彼らは、視線を合わせまいと一様に遠くを見る。
 一つ、溜息を吐いて。
「ケツ蹴られたかないなら、とっとと散れ散れ」
「了解っす!!」
 払うように振った手に、蜘蛛の子を散らすように海賊たちは方々へと走り去っていった。
「さて」
 あいつらの何人が戻ってくるか。
「さあ、最初の一人にそれだけ報酬があるか、でしょうね」
 一部始終を見ていた店の店主に聞いてみても、そう肩を竦めただけだった。せめて先払いでズボンくらいは返しても良かったかもしれない。
「ま、果報は寝て待て、とも言うわけだ」
 海賊の一人がジョッキに大部分を呑み残していった酒を勝手に呷り、セゲルがその重い尻を椅子から上げる事はないのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

あ―…カミサマ絡みかぁ…
正直ヤな予感しかしないけど、これも乗り掛かった舟よねぇ。

へぇ、射的があるのねぇ。
せっかくだし、ちょっとやってこうかしら。●射殺でガンガンブチ貫いてくわよぉ。
…そういえば、自前の銃って使えるのかしらぁ?ま、使えなかったらその時考えましょ。
ただ当てるだけじゃ面白くないし、○クイックドロウからガンプレイの○パフォーマンスも織り交ぜてド派手にやりましょうか。
これでも、そっち方面はそこそこ自信あるのよぉ?

ついでに伝承についても○情報収集しましょうか。
この島、随分変わった名前だけど、イサナって勇魚…クジラのこと?
クジラが何か関係あるのかしらぁ?



 カミサマ絡み。
 そう聞いて、正直にいえばあまりいい印象を覚えることはないのだ。
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、何か企んでいると邪推されがちな微笑みに、落胆じみた消沈を混ぜながら、地面に引かれた枠線の中へと踏み入れた。
「でも、今はそれは、まあ……置いておこうかしらぁ?」
 握る銃の重みを確かめながら、彼女は言う。
 ここは射的の広場。
 UDCアースでよく見る、空気銃でコルクを撃ち出して景品を落とす、という形式ではなく。
 使う銃は火薬で鉛を飛ばす実弾。恐らく威力は抑えられているだろうが、それを人に向ければ、殺されようと文句は言えないようなれっきとした凶器での射撃遊戯。
 扇状に広がった範囲の中に投げ込まれる、フリスビー状の的板を渡された銃で撃ち落とす。
 そういうものであった。
 恐らく、元々あった射的の屋台と海賊文化が混ざり、スコア制の商品交換システムになったのだろう。
 という考察をしながら、ティオレンシアはさっそく投げ込まれた板へ向かって、引き金を引いた。
 照準を合わせてから引き金を引く、という悠長なことはしない。引き金を引きながら照準を合わせ、動きを見切り修正し、的を穿つ。
「ほ、ほう」
 もはや命中するまでが一連の流れ、とも言うべき速度と精度で第一射を終えたティオレンシアに、彼女の傍で採点する老人が感嘆の声を上げた。
「慣れない銃は難しいわね」
 そんな彼の反応に反してティオレンシアは自らの弾丸の結果に、いまいち納得いかないような様子であった。
 照準を合わせる一瞬、引き金、銃身の重さの違いに、修正の幅を大きくしていたのだ。微細な躊躇いも、ティオレンシアの日ごろを知らない採点者は首を傾げるばかり。
 最初の一発は、試し打ちという意味もあったのだろう。数秒を置いて、射的の本番が始まった。
 次々と宙を舞う的を、正確に中心を穿ち砕く。
 いや、ただ打ち抜くだけはなく、次弾の装填、反動の制御、それらを舞うように行い、傍目には地味な競技である、射的というものを、人の目を惹きつける芸術の域にまで引き上げているのだ。
 弾丸を正確無比に吐き出しながら、くるくると宙とティオレンシアの手の中で踊る拳銃が、はしゃいでいるようですらあった。
「あらあら、人気者かしらねえ」
 フリスビーの群れが途切れて、次の段階へと進む。その間隙にいつの間にか集まっている観客たちから拍手が送られて、胸に手を当て礼を返してみる。
「凄い腕前じゃな、お嬢さん」
「お嬢さんだなんて、お上手ね」
 ほほ、とそう言って肩を揺らす老人は、
「ハイレートの勝負、してみんかの?」
 と、老人が提案すれば、知っているのだろう観客の何人かが、小さくおぉ、と声を漏らした。
 どうにも、撃ち損じの失点や、有効判定が厳しい代わりに、得られるスコアが高い、らしい。
 堅実、といえばこのままの継続だろうが、しかし、このティオレンシア。ゆるゆるふわふわな口調に反し、自信のある腕を腐らせるという選択肢は浮かびすらしない性格であったりする。
 一も二もなく、彼女はレベルを上げる事を選択したのだった。
「この島、随分と変わった名前よねえ」
 準備の開いた時間に、ティオレンシアが採点者の老人にそう尋ねていた。
「ふん? そうかの、儂らにとってはこの島こそが普通じゃしな」
「UDCアース……この島に似た場所だとね、イサナってクジラの事なの」
 勇める魚と書いてイサナ。鯨の古名でもあるそれが名付けられた島がここだ。
「ふむ、まあ、『勇める』というより『諫める』が近いんじゃないかの」
「……? 喧嘩を諫める、のイサって事かしら?」
「そうじゃな」
 二柱の諍いを止めた大魚。それがこの島に残る信仰、そして伝承だ。
 それがイサナ、と呼ばれたのであれば、その大魚というのは、クジラであるのだろう。
『諫魚のオオゼ』であるならば『オオゼ』とは何か。
 大いなる背、瀬、もしくは世。はたまた多いなる、かもしれない。
 いや、神話の中にあるイサナの言葉を『仰せ』としたのかもしれない。
「いずれにせよ、この世で流されず、しっかりと結びついて生きておれるのも、イサナ様のご加護のおかげというわけじゃ」
 神様ではない、と言いつつも、その在り方は、神そのもの。
 ティオレンシアは、手の中で拳銃を操りながら集まる人々へと視線を送っていた。
 これだけ集まったのなら、もっといろいろと話を聞けるかもしれない。
「なら、張り切らないといけないわね」
 準備が出来た、と倍以上に増えた投擲係を見、老人が言う。
 笛が鳴る。
 跳ね上げた銃口。噴き上がった硝煙を揺らす快活な射撃音が、ティオレンシアの耳を撫でる髪の一房を弾くように揺らしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェフィーネス・ダイアクロイト
アドリブ◎
連携×

人身を何かの儀式に
神とやらに捧げる供物、か
悪しき風習が残る島だ
歴史を遡れば島の名の由来なども識れそうな

今は住民に警戒されぬようメガリス(眼鏡)で島全体を見渡すに留めておこう
何処に何がある程度は把握しておく
住民が多く賑わいを見せる処へ
友好的な好青年を演じ信用を得る
私は誰も信ずる事は無いが

ほう…甲難易度の射的
面白い
腕鳴らしさせてもらおうか

玩具の銃を器用に回し標的定め
連続で同じ箇所に当て落とす
二丁拳銃出来れば技披露
観客いたらその者へ渡し好感度を上げておくか

銃を物色する為、武器屋へ
仕入れ先を参考迄に聞く
この島を知るなら何処へ行くべきかも

後に海鮮料理に舌鼓
美味だ
店員に何処で獲ったのか聞く



 生贄の儀式。
 それを聞いた時は、悪しき風習があるものだ、と感じたものだが、蓋を開けてみれば何とも拍子抜けがするものだった。
「だからね、この島はイサナ様のせなか、なんだよー!」
 大地を割り海を砕き、そうして荒れる山の神と海の神の仲を繋いで、仲介役として半島という形になった大魚。
 神話らしい大雑把な成り立ちと、読み聞かせで聞いたのだろう子供向けな童話風の伝承。
 射的で得たスコアを商品に変えて、集まっていた観客に配っていた彼は代わりにとこの島の信仰についてを尋ねていたのだ。
「ほんとにいいの?」
「ああ、話の礼だ。好きに持っていくといい」
 シェフィーネス・ダイアクロイト(孤高のアイオライト・f26369)は、子供の語り口を聞きながら、ただそれを鵜呑みにしているわけでもなかった。
「兄ちゃんかっこよかったなあ、俺もあんな風に出来るかな」
 たとえ、後ろ暗い慣習があったとしても、口を滑らせやすい子供にはあまり広めるものでは無いだろう。もし、何かを知らされていて隠しているとしても、その不審さを見逃すようなシェフィーネスでは無い。
「だって、バンバンっ! って全部ど真ん中!」
「最高得点だってさ!」
 故に、子供表情に偽りがないのを確認しながら、彼が主に観察していたのは、その周囲の大人たちだ。
 見られていないと考えているときの表情程、雄弁に語るものはない。陽光に照らされるような無垢な言葉に、笑みを浮かべるのでなく陰りを見せるようであるならば、そこから情報を辿ろうとも考えていたのだが。
「お兄ちゃん! ありがと!」とシェフィーネスの腕前に盛り上がっていた彼らは、興奮したままに手を振りながら走っていく。
 それを見送る周りの大人たちにも、そういった陰りは無い。まるで平和そのもの。
 それは、奪い奪われ、他者を喰らうのが当たり前の世界で生きてきたシェフィーネスにとってはただ、只管に。
 ――気味が悪い。
 そういうものであった。
 手を振り返しながら、彼は、一つため息を吐く。悪意の捜索という意味では空振りに終わったわけだ。あとは、この労力に見合う効果を発揮してくれるならいいが。
「……さて」と彼は脚を向けるのは、すぐ傍にあった武器屋だ。この射的の主催もしているらしい主人へ彼は歩を進める。
 子供の相手など面倒だ。
 論理立てた行動を理解する事は少ないし、感情で体を動かす。行動を思いつきで変え、かと思えば妙な所で意固地になる。
 純粋に利己で動く大人と、子供どちらがより信用から遠い生き物かと言えば、彼にとっては断然に後者であった。
 だが、それでも、いやそれだからこそ上手く利用する事も出来るのだ。例えば、こんな迷信がある。
 無邪気な子供は無意識に危険な大人を嫌う。
「やあ、あんたいい人だな。スコア全部譲っちまうなんて」
 故に子供に好かれている場面を目にすれば、その人物に対しての警戒が無意識に薄まる。
 店先で先ほどの光景を見ていた店主は、シェフィーネスの思惑通りに、そう気楽そうに声をかけていた。
「すげえ腕前だったな」
「そうでもないさ」
「んなわけあるか、アンタみたいなのばかりなら、ひと月も持たずに破産してるさ」
 手放しに誉める言葉も彼の耳を素通りしていく。
 正直彼にとって、全断命中理論的な最高得点だったとして、当然の結果でしかない。やる前からそうなると分かっていたことを今更に言われても面倒なだけだ。
「随分種類が多いな」
「ん? ああ、まあな」
 色んな島からくる商人やら海賊やらから仕入れているもんでな。と聞いてもいない事を教えてくれる。
 あの億劫だった子供の相手も無駄にはなっていないようだ。
「俺はこの島に来るのは初めてなんだが」
 シェフィーネスは、先ほど聞いた伝承に興味が沸いたと、舌先三寸に乗せていた。
「ほー、それなら図書館にでも行ってみるといいんじゃないかな」
 結構色んな話がある、と彼は言う。やはり時代によって変化しているのだろう、研究書なども現存しているらしい。
「成程」
 告げる男が向けた視線の先に、港から街を見回したときに、それらしい建造物がある事は把握している。
「ならば、そこに行くとしよう。感謝する」
 俺の思惑通りに懐柔されてくれて、という本心は隠し、彼は次の目的地へと歩いていく。
 途中、空いた小腹を海鮮料理で満たしながら、彼は冷えたその青い瞳で、街の喧騒を薄く睨むように眺めているのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ドロップアウト・ルーキーズ』

POW   :    初歩的な斬撃
【大剣】が命中した対象を切断する。
SPD   :    未熟な第六感
【山勘で】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    軽率な限界突破
【闘志】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。

イラスト:ももんにょ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「面白い話が聞けて良かったわ」
 フィルマリナは、立ち上がって少し冷えたお尻に着いた砂を叩きながら、老人へと礼を告げた。
「いいや、こちらこそいい商売じゃったよ」
 それで、これからどこに行くんじゃ? と老人は彼女へと問いかける。
「そうね、これからちょっとお仕事があるのだわ」
 答えた彼女に、老人はそうかそうか、と頷いた。
「気に食わん相手もおるじゃろうが、この島を楽しんでくれたら嬉しいの」
 と、そう言って彼は彼女を見送った。

 レイは、扇を懐へと入れながら山へと目を向ける。
「儀式は社の地下で行われたらしいんじゃが、結構洞窟が崩れてたりじゃからな。ま、そんなとこ行こうとは思わんじゃろうが」
 と、老人の残した忠告を思い返し、少し日の落ち始めた冷ややかな風に「そうか」と返事をする。
「ならば十分気を付けるとしよう」

「繋ぐ儀式か」
 ならコンキスタドールは、その結ぶ力を使った儀式によって、何かと自分たちを繋ぎ、力を得ようとしている、という事なのだろう。
 問題は、それがどこで行われているのか、という部分なのだが。
 ガイが伝承の話を聞いた後、思考しながらぶらぶらと街を歩いていると、ふと耳に留まった騒がしい酒場を見つけて、寄ってみた。
 どうにも、腕相撲で連勝する猛者が現れて、盛り上がっているとの事だった。
「へえ、そりゃどんな――」
 大男何だろうな、と尋ねた男の指の先に、見た覚えのある感じの赤銅色が見えた気がした。

 でかい仕事が上手く行ったとやらで、ガラの悪い、あまりこの近辺で見かけない海賊がこの酒場で、調子に乗っていたと。
 アリエが『旦那』と呼ばれた海賊の腕を捻り上げて聞いたのはそういう話だった。
 この店を追い出した後は聞かないが、船は残っているからこの島のどこかにいるんだろう、という話だった。
「どっかで騒ぎ起こしてるか、それか、くたばってんのかもな」
 と笑う海賊たちに、アリエは、それは現場を見ないと分からないなと心中で呟いた。

「そういえば」
「うん?」
 ヴィクトルは、ふとそう告げた海賊の男性の言葉に少し首をひねった。
「少し前に、酔った海賊が閉じ込めてた、どっかの島の人間が逃げ出したとかで騒いでたけど」
 あれからとんと聞かねえな、と。
 他所の人間でも、島が怒ったのかも知れねえなと。冗談めかして彼は笑っていた。

「若い海賊?」
 セゲルは、戻ってきた裸の男どものむさ苦しさに嘆息を返し、衣服と装備もついでに返しながら報告を聞いていた。
「それが、そいつらのらしい船が無いってんで。深海人でもなさそうで、まるで海の底から来たみてえな」
「ほお」
 そりゃあ、海の底から上がってきたんだろ。とその言葉に首を傾げる海賊を置いて、セゲルは勝ち取った財布からそれまでの代金を支払ってから、漸くにその重い尻を上げた。

 社の地下。
 シェフィーネスが幾つかの資料を探った結果として、この世界へと切り取られた後に、山の中腹の洞窟から進んだ先、枯れた地下湖に当時の社の管理者が、祈りを捧げていた、という記述が見つかった。
 コンキスタドールが潜む場所は、もはやそこしかない。
 シェフィーネスは書を閉じ、山の社へと向かうのだった。




 そうして、洞窟の奥。
 枯れた地下湖。とはいえ、水が岩を溶かした凹凸に水たまりがいくつも生まれている、暗い洞窟の中。
 不気味な光が揺蕩っていた。
 水に溶けた血が、辛うじて残っている陣のように刻まれた溝へと伝い、青白い光を波模様を描き発しているのだ。
 拘束され倒れ伏す男達、それを囲うように、若者の剣士たちの姿があった。
「……っ、誰だ!!」
 気配に振り返った彼らが一斉に、剣を抜いた。
 猟兵達。その接近に気付いたのは、彼らがこの儀式場に辿り着いてから。
 無防備ではあるが、そこに罠の気配も感じられない。
「邪魔はさせない!!」
 構えも我流、その我流もまだ定まり切っていないような、ルーキーズ。
 だが、その意気は無謀ともいえる程に強い。
 ただ儀式を止めるにも、転がっている海賊たちを救うにも、邪魔をしてくることは確実だろう。


 ドロップアウト・ルーキーズとの戦闘です。

 よろしくお願いします。
レイ・オブライト
ただの人間か?
いや、違えな
爺さんの家系ってわけでもなさそうだ

剣を振り下ろされるってのはわざわざ近寄ってきてくれてることになる。覇気で制御する『枷』の鎖を間に噛ませ勢いを殺す間に
大剣の腹を拳で殴りつけ、叩き折るか弾き落とすかを狙う
【Crucifixion】
持ち主の方には杭を撃ち込んで転がすとする。手足、特に膝蓋骨らへんを砕けば逃げを打ち辛くっていいだろう
ちょいと落ち着いておしゃべりをしてえだけだ
今すぐ楽にしてください、と頼みの神に祈り直したっていいがな――此処に来て「邪魔されたくない」ってのは、つまりそういうこったろう?

『何を願ったか』
次こそ"当事者"に聞いてみたいもんだが、さて



 人間。
「じゃあ、ないな」
 一見若い人間のような姿。だが、纏う死の匂いは、骸の海の残滓か。
 いずれにせよ明確な敵意を隠す事無く、駆けてくるその姿が、友好的な相手だとは到底思えない。
「爺さんの家系、ってわけでもなさそうだ」
 勝手に敷地に入って、儀式だ何だとやっている。若気の至り、という言葉が似合う状況。大剣の間合に入って尚、脅威というよりも呆れが先に来る。
 故にレイ・オブライト(steel・f25854)は、大仰に振り上げ、落とされる大剣の一撃に対して起こしたアクションは、ごく最小限の物だった。
 すなわち、袈裟に振られる大刃に対して左腕を振り上げる。
 それだけ。
「お、ラァ!!!」
 裂帛。そのままでは、その刃に腕の肉を削がれるばかりだが、しかし、そうはならない。振るう腕に銀の蛇が多重に巻き付くように、何かが舞う。
 ギ、ギャ、と音を重ねるそれは、レイの纏う覇気に操られる鎖だった。凹凸が刃を潰したチェーンソー如く、己を砕きながら振り下ろされた刃を巻き込んで、食い縛り。
「なん……っ」
 ゴギャ、ッと重量で押し潰すその攻撃を弾き飛ばした。
 砕けた銀の鎖が光と舞う中を、レイの右の拳が突き抜けた。狙うは、弾いた大剣の腹。鎖との衝突で刃を毀すルーキーの武器に、轟ッ、と走った拳が突き刺さり。
 さながら、大砲の弾丸を受けたかのような轟音を響かせ、半ばから大剣が砕け散っていた。
「さて」
 だが、それだけでは終わらない。砕け散った銀の鎖、その光は消えることなく瞬いて。
 次の瞬間には、白銀の杭へと変じてルーキーを穿ち抜いていたのだ!
「――ア」
 全身、四肢を潰される痛みに、まだ若い声が吠え猛る。
「ギ、いああッ!!」
 耳障りだ。
「ちょいと落ち着いておしゃべりをしてえだけだ」
 レイは、崩れ落ちたルーキーの叫びをその顎を掴んで留めると、突き放す。
「何を願った?」
 転がる海賊たち、それを生贄に、もういない神に何を祈ったのか。
 その答えは、渋るかという予想に反して、そのルーキーの口からいとも簡単に零れ出た。
「……お、まえ、みたいな」
 ひゅう、ひゅうと擦れた喉が鳴らす音に、確かな憎しみを滲ませたルーキーは、痛みに歪む瞳をレイへと向けた。
「お前、みたいな俺を見下す奴を……殺す力だよッ!」
 グ、ォ!! とルーキーはレイへと猛り、その体を伸ばそうとし――。
「そうか」
 砕けた膝が、跳ね上げた体を支え切れるはずもなく、半ばに伸び上がったルーキーの体は、その砕けた大剣の先をレイへと突き出す事すらもままならず途中で失速して落ちる。
「……ッ」
 思い通りに動けないルーキーが呑んだ息。それが喉を通り抜けるその瞬間に。
 ゴ、ァ。風が爆ぜる。振り抜かれた剛蹴が、丁度良い高さに膝付いたその少年の頭蓋を捉えていた。
 畳んだ足指の先、その鎚の如き一撃がルーキーの首をへし折る音は、衝撃に吹き飛んだ体が岩壁へと激突し、粉塵を上げる音に瞬く間にかき消されていた。
 容赦ない力量差に、正しく塵を払うようにルーキーの一人を葬ったレイは、まだ残るルーキーへと拳を握っていた。
「ならば、叶えてやろう」
 届かぬ力を悔いるのでなく、それをただ他力にて埋め合わせようとする。その願いの根源が、見下される事への嫌悪だというのなら。
 その為に、弱者を害し、死を徒に振り撒くというのなら、是非もない。
 見下されたくないのなら、その願いは叶えよう。
「刹那に潰してやる」
 見下される暇も与えはしない。
 言葉を聞くために殺さぬよう加減していたレイの足が、ただの踏み込みで地面を砕いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリエ・イヴ
【⚓】
アドリブ◎

そこに転がってるヤツらも海賊だってんなら
無理に助ける必要はねぇだろうが
見捨てる理由もねぇな
運がよかったなぁ
そんでお前らは…運が悪いぜ
敵に覇気を向けて不敵に笑い
避るつもりなら避けられないようにしてやればいい
なあ、ガイ
隣の男に楽しげに話しかける

ガイが動いても俺自身は動かない
追い込み漁には追い込む先が必要だろう?
どっしり構えてガイに追いたてられたヤツらを待ち受けてやる
来る方向がわかってる攻撃を恐れる必要はどこにもねぇだろ
見切り武器で受けたら手首を返して斬りつけ蹴飛ばして

追い込みが正確でありがたい話だが
ちょっと一気に寄越しすぎじゃねぇか?
まあ、期待には応えねぇとなぁ!
さぁこいよ、ハニー


ガイ・アンカー
【⚓️】
アドリブ◎

ったく。こんなのまで寄ってきて大魚様も大変だな?
捕まえてた所悪いが、そこの奴らは逃させてもらうぞ

はは、そうだな
アリエの肩に腕を置いて
俺が追い込んでやるから、お前が狩りな
追い込み漁、ってな
狙い澄ますように獰猛に笑う
さあ――抜錨だ

【錬成カミヤドリ】で複製するのは己の本体である錨
俺も錨を手に錨の嵐と派手に行こうじゃねえか
避けられても構わねえ、誘導だしな
当たれば運がいいが
転がってる奴らは踏まれねえように掴んで端にやっとくか
そぉら、逃げろ逃げろ!

アリエの方に敵を誘導したら今度は逃げないように錨で囲む
なに、腕相撲だけじゃ足りねえと思ってな
メガリスの鎖で援護してやるからよ
一網打尽と行こうぜ



 何かが起きている。
「……っ」
 途端に、男の手足に鈍い衝撃が走って、拘束が緩んだのを感じていた。
「捕まえてた所悪いが、そこの奴らは逃させてもらうぞ」
 残る拘束を千切りながら海賊の男が声に振り向けば、二人の男がそこにいた。
「運が良いなあ、あんたら」
 黒鉄の髪の男、錨を肩に担ぎ、言葉をルーキーズへと投げていた彼の隣に立っている赤錆の髪を揺らす男が、彼を見下ろして言い捨てた。
「……は」
 そも、ルーキーズに捕まった事自体不運ではあるが、それでも、確かに、彼らに助けてもらえたことが幸運だ、と思わざるを得なかった。
 ここで、何が運がいいだ、などと噛み付くほど、生きる事に絶望しているわけではない。助かる道があるのなら、悪魔にでも頭を下げる、それが彼らだ。
「ま、俺は無理に助ける必要はねぇと思うけどな」
 手足が自由になれば応急処置程度なら勝手にするだろう。
 言葉を噤み、そそくさと全身を確かめ始めた海賊から目を離した赤い男、アリエ・イヴ(Le miel est sucré・f26383)がそう言えば、鎖を操って他の海賊の拘束を削った黒髪の男が肩を竦めて返す。
「見捨てる理由もねえだろ?」
「まあな」
「……っこの!!」
 ガイ・アンカー(Weigh Anchor!・f26515)が返す瞬間に、ルーキーズの一人が、大剣を振りかざし、飛び掛かる!
 その剣が、落とされるその直前、飛び掛かってきたはずのルーキーは、その体を真横へと跳ねる様に転がす。
 直後、その背後から波打つ鎖が空間を薙いでいた。
 ガイの攻撃だ。
「チ」
 背後の死角からの一撃だったというのに、思いついたように躱したルーキーに、ガイが舌打ちを放てば、傍でアリエが肩を揺らす。
「はずれたなあ、ガイ」
「うるせえ」
 楽しげなアリエに、短く返してやれば、彼はなら、と言葉を続けた。
「避けれねえようにしてやりゃいい、だろ?」
「はは、そうだな」
 ガイが返し、錨を担いだままにアリエの肩に腕を回す。
 ド、と途端に、肩に重みがのしかかって、アリエの体が揺らぐも気にする様子はない。
「そんじゃ、俺が追いこんでやるから、お前が狩りな」
 追い込み漁ってな、と。
 重みに傾げたアリエの肩をぽんぽんと叩いて、ガイはアリエから離れてルーキーズに、錨の先を差し向けていた。
「そら」
 ルーキーズにも彼らの会話は聞こえていた。嘗めやがってと、睨むルーキーズたちは。
「抜錨だ」
 次に、ただ息を呑む。
 途端、ガイの周囲から立ち上るのは、彼が握る錨そのものであった。ガイ自身よりも大きな大型船をつなぎ止める錨。
 鎖を纏うそれが、五十を超える数で顕現し、ズ――、と海底から離れるが如く宙へと浮かび上がるのだ。
 直前、海賊を解放した場面を見ていれば、それが示す次の事象を想像する事は難しくもないだろう。
 追い込み漁、と詰られた憤慨など、瞬時に冷めて沈む。
「……っ、ゥおあああ!」
 ゴ、と引く鎖の尾をかき鳴らし、超重量の暴虐が嵐と化す。初めの一つが足を硬直させていたルーキーの体を泥人形のように引き裂いて、血だまりに変えた瞬間、ルーキーたちは一斉に叫びと共に走り出していた。
「そぉら、逃げろ逃げろ!」
 逃げ惑う。
 脳内を走る危険信号に従って体を投げ出せば、どうにかその攻撃を躱し切れる。自在に操るとはいえ、いや自在に操るが故か、五十もの錨は雑味を帯びている。
 だからといって、対処できるわけではない。掠れば、動きが鈍り、瞬く間に重量に殺到されて潰れるだけだ。逃げるばかりではどうにもならない。
 アイツを、黒い髪の男を止めなければ、どうしようもない、それが分かっていながらも近づくことができない。
 他のルーキーが囮にでも何でもなってくれれば、チャンスもあるはずなのに、と。
 ガイを睨み、舌を打つルーキー。
 その彼の肩へと、まるで恋人にそうするように肩を抱く腕があった。
「余所見はいけねえが、熱い視線向け過ぎんのもいけねえよなあ?」
 ぐ、と胸に寄せる様にルーキーを引いた赤銅の髪の男は、その手に合った刃をルーキーの胸の中心へと無造作に突き立てる。
「な、いい勉強になったろ」
 肋骨をこじ開ける様に刃を捻じりながら引き抜けば、胸の中に仕舞われていた肉ごと鮮血が引きずりだされて、力を失うルーキーはそのままアリエの腕から崩れ落ちていった。
 いつの間にか、アリエがルーキーズの間近に立っていたのだ。いや、アリエが移動したのではなく、ルーキーズのが錨の嵐に巻かれ、アリエの周囲に集められていたのだ。
 ゴガっ!! と慌てて距離を離そうとしたルーキーズの前方に、これまでは彼らを追い駆けていた錨が床を砕き突き立った。
 まるで、もう逃げる時間は終わり、とばかりに。
「ちょいと寄越しすぎじゃねえか?」
 自暴自棄にも切りかかってきたルーキーの斬撃を躱し、すれ違いざまにカトラスを振るったアリエは、傍観している間に追い込まれた獲物の数に、呆れを吐いた。
「何言ってんだ、運がいいんだろ」
 と追い詰めていた錨と鎖の群れで、今度はアリエとルーキーズの周囲に敷き詰め、檻を作り出して笑う。
「腕相撲だけじゃ鈍っちまうだろ」
 信じてるよ、クソガキ。と嘯くそれは、日ごろ運だけで生きているようなアリエへの意趣返しか。ガイ自身は、波のように揺らめく鎖に繋がる錨たちの一つに体重を預け、放逐の構えだ。
「一網打尽と行こうぜ。ああ、でもまあ、助けてくださいって泣いて言えば、手伝ってやるが?」
「は、冗談」
 血糊を纏わせた刃を担いで、アリエはそのガイの挑発を一笑に伏せる。
 じりじり、といつ飛び掛かるかとタイミングを図っているルーキーズにアリエは不敵に笑んだ。
 互いに連携を繋ごうという意思も感じられない。逃げ場のない状態で、自分がアリエを殺す、という考えしかないのだろう。
 負ける気がしない。ガイ自身もあとはアリエが片付けると、言葉通り信じてもいるのだろう。
「運が悪いなあ、ハニー達」
 期待に応えてやって、存分に煽ってやろう。
 さあ、こいよ、とアリエは指を折る。
「全員、俺が大事に、綺麗に、刻んでやる」
 途端に、他に先んじて飛び出してきたルーキーを一刀に斬り捨て、一歩、追い詰めていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

力を求めること自体は別にどうでもいいし、好きにしたら、が正直な感想ではあるけれど。
妙な儀式で折角鎮まってるのに余計な波風立てられると面倒ねぇ。
変なこと起きる前に潰したいとこだけど。

主武装が大剣なら、基本は寄ってこないと攻撃できないわよねぇ。
なら、●鏖殺とグレネードの〇投擲で○範囲攻撃して寄せ付けないように立ち回りましょうか。
〇目潰し・足止め・武器落とし、ルーンの〇捕縛に精神攻撃。手札はいろいろあるわよぉ?
もし寄られたら斬撃の軌道〇見切って○グラップルなりでカウンター喰らわせましょ。
大剣みたいな長重武装って、当たれば相応に強力なのよねぇ。
…あくまでも当たれば、だけど。



 ふう、と。
 体の前、へその上あたりで指を組んだティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、聞こえる若人の言葉にそうやって息を吐いた。
 まあ、力が欲しいなら好きにしたらいいんじゃないかしら? と思うばかりだ。
 望むならそうすればいいし、その為に努力をするなら別にどうでもいい。その努力がいかに生贄を捕まえるかというものであっても、どうでもいい。とすら彼女は考える。
 とはいえ。
 一つの形で納まっているこの島を、下手をすれば、打ち砕いてしまいそうな彼らを承服する、という事も、どうにも気が進まないのだ。
「……だって、それはそれで、面倒よねえ?」
 故に。
 ティオレンシアへと狙いを定めたルーキーが駆けよってくる。その大剣で彼女の体を裂こうというのだろう。
 大剣、という武器は刃を鈍らせようとその重量が、その軌道にあるものを潰し、割り、そしてその結果として斬るような武器だ。
 極論、当てるだけでその最大効率を発揮するようなもの。
 だが、だからこそ、その扱いには相当の慣れが必要になる。持ち上げるにしてもワンアクションを基本的に必要とする重量だ。自らの剛力によってナイフのように扱う者も存在するが、少なくとも目の前の若者の姿をしたオブリビオンがそうであるとは、とても思えない。
 その立ち回りは、愚直、というばかりの直線軌道に則っている。
 故に。
 ティオレンシアの取った行動というのは、至極単純だった。
 バ、ガガッ!!
 音が重なり弾ける。
 駆けるルーキーへとほぼ同時に放たれた六連装リボルバーの全弾が吸い込まれていく。
 瞬間。正しく瞬きの間。いや瞬きすら間に合わないその刹那。
「コ……ッ」
 その六発。首、鼻頭、下腹、両膝、右肩。それぞれを穿たれたルーキーが、即座に絶命し、もんどりうって地面へと崩れ落ちていた。
「はッ!」
 彼らは見抜いていた
 ティオレンシアが持つリボルバーが6発装填のものであると。六発吐き出したのであればその腹の中に弾丸を詰め込まなければいけない。
 ならば、その神業めいた早業で六発の弾丸を使い切った今こそ、彼女が武器を失った瞬間なのだ。
 ガッ、!! と彼らは脚を踏み出した。
「正解ねえ」
 ティオレンシアは、彼らの見出した勝機を、是とする。
 だから、と彼女は、す、とその唇で弧を描いた。
「手札はいろいろ、用意してるわよぉ」
 彼女へと迫ったルーキーズは、同時にその動きを乱す。
 濡れた地面が氷を伸ばし、脚を絡めとっている。
 ヒュバ、ッ、と投じたダガーの一つが目を潰している。
 揺れたそのルーキーの振り上げた大剣が後ろを抜けようとした他のルーキーとぶつかり合っていた。
 ティオレンシアの放った札。それが稼いだ時間はほんの1秒未満の時間。
 それで何ができるのか。
 弾丸を装填し、三発ずつ近い二人の頭蓋へと発砲し、そして、再度弾丸を六発装填する。それだけ。
「……」
 ――十分だ。
 残った一人が体勢を立て直して、ティオレンシアへと駆けようとした時。その時には既にティオレンシアの掲げた銃口が、その眉間を捉えていた。
 落ちた撃鉄を即座に起こす。スナップと手先の力、柔軟。すべてが重なり、一つの発砲音に重なる弾丸が六つ。銃口から吐き出される。
 渦を描き、旋回し進む弾丸は、その全てが足並みを揃えてルーキーの眉間へと順着していき。
「残念ねえ」
 標的がティオレンシアを間合に捉えるよりも前に、頭の上半分を無くして崩れ落とすのだった。
「接近戦だって、私、自信があったのよ?」
 見せてあげられなくって残念、と硝煙揺らす銃を下ろした彼女は、辛うじて息の残る周りの他のルーキーへと弾丸を叩き込んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セゲル・スヴェアボルグ
最近の深海人ってのは割と普通のなりをしてるんだな……冗談だ。
というかだ、ドロップアウトにはちと若すぎたんじゃねぇか?
まぁ、それはそれだな。
能力が6倍だか何だか知らんが、元が貧弱なら話にならんぞ?
まぁ、最悪ブレスは当たらんでも周りの環境さえ変えられれば問題ないな。
俺自身が滑ったりしないかって?
なに、俺は飛べるから影響など皆無だ。
闘志だけが一丁前でも話にならん。
そもそも、ドロップアウトするようなルーキーにどれだけの投資があるかがよくわからんのだがな。
適当にそのあたりを滑ってる間に、おねんねタイムに移行してもらうとしよう。



 船の姿もない、海賊。
 セゲルの代わりに島を駆けずり回った男たちが言うには、深海人くらいしか思いつかない。との事だったが。果たして。
「最近の深海人ってのは割と普通のなりをしてるんだな」
 まるで人間の子供の様だ。
 と、召喚した剣で、振り落とされた大剣を軽く受け支えながら、呵々と笑う。
「……こ、のッ!」
 ぎり、と柄を握るルーキーの両の手が軋みを上げる。
 重量と衝撃を重ねた初撃こそ受け止められたが、能力を飛躍的に向上させた状態であれば、静止した状態に加える圧力は、それにすらも上回る。
 一度、均衡を崩し天秤を傾ければ、涼しい様子で髭を揺らす竜など、瞬く間に切り刻んでみせる。
 その脳裏に浮かぶのは、全身を拉げさせ、血と涙を流し許しを請う眼前の敵の姿だった。
 だが。
「そう怒るな、冗談だ」
 その光景が、現実となることは無かった。
 セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)は、増したはずの圧力に眦一つ動かさずに、変わらぬままにルーキーの刃を支えている。
 セゲルは、退くという選択肢を取れずにいる眼前のルーキーから、周囲から隙を突こうとしているのだろう他の若人たちを見回した。
「……」
 どいつもこいつも、若い。見た目が、ではない、その立ち居振る舞いそのものが年相応に若い。ならば、それが熟せば見込みのあるものもいたのだろうに。蛮勇も時を経れば剛勇ともなっただろうに。
 ドロップアウトするには若すぎた。僅かに惜しみながら、一つ吐いた溜息まじりに呟く。
「いくら強化しようと、元が貧弱なら話にならんぞ」
 そして、吐いた言葉の代わりに、す、と呼気がその咢の奥。喉を通り肺へと至り、渦巻く。
「……っ!!」
 その言葉は、ルーキーズの願いを正面から打ち崩すものであった。
 力を願ったのだ。己に力を与える事を祈った。祈るための儀式。
 セゲルへとルーキーたちは激昂する。刃を直接合わせたその一人が、猛り吠える。その直前に。
 霜が、その眼球を覆い。
 キュ、ガパ――ッ!!!!
 絶対零度のブレスが全てを凍てつかせていた。
 豪風。
「これ、は……ぅわっ」
 視界を一変させる白い暴流。セゲルの口から吐き出されたそれは、間近にいたルーキーの体を氷像へと変え、ブレスに触れた周辺の地表をも氷に覆わせている。
 ブレスの直撃を免れながら、しかし、煙る冷霧の中でルーキーズはその大剣の重さもあってか、脚を取られ立ち上がるのが精一杯。
「闘志だけが一丁前でも話にならんが――」
 ゴ、と霧を翼の一振りが吹き飛ばし、白の晴れた先に、セゲルが告げた。
 翼を広げ、僅かに滑る台地から足を浮かせる彼は、握る刃をゆるく脇へと構え。
「そら、その闘志とやらの力、見せてみろ」
 彼らのはるか高みから、彼はそう睥睨してのけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィルマリナ・ガラクシア
お爺さんの言ってた気に食わない相手ってアンタ達の事?
何でもいいけど、海賊相手に剣を抜いたなら後は倒すか倒されるかなのだわ。

何は無くとも数が多いのが厄介そう。
見たところ飛び道具は無さそうだし、バトルアンカーを使って【怪力】【なぎ払い】【範囲攻撃】で暴れてやるのだわ!
所でこの儀式って何の儀式なのかしら?神様を奉っていないってどういうこと?
何て問うてみるけれども、当然目的は拘束されてる海賊からこっちに意識を向ける為よ。



「それで、……これって何の儀式なのかしら?」
 白い尾羽をあしらう海賊帽を被りなおし、フィルマリナ・ガラクシア(銀河の落とし子・f26612)は、鎖を鳴らしながら問いかけた。
 戦地にあるとは思えない気楽さに、視線が集まる。痛い程の沈黙の中心にありながら、フィルマリアは、首をこくんと傾げて、再度問い直す。
「誰か答えてくれないかしら?」
 返事は、すぐには返らず。
 ご、ダンッ!! と背負っていた大剣を握り、ルーキーは一斉にフィルマリナへと駆けだした。揺れた岩を蹴る音が弾け、その中の一人が一喝し、吐き捨てる。
「お前に、言う事なんて何もない!!」
 成程、あのおじいさんが言ってた、気に食わない相手、というのは彼らのことかもしれない。
 焦っているのか、それとも、ただフィルマリナの言葉に一切の価値を考えていないのか。
 さて、それは分からないが、確実に即物的な価値でのみ財宝を鑑みるような性格なのだろう。
「そう」
 元より、その質問も人質になっていた海賊から、意識を引きはがす為の工作がメインの目的。
 故に、フィルマリナの落胆は、ほんの僅かなものだった。
「ならいいけど」
 にい、とどこか無邪気に、幼げにも映る笑みに、唇が弧を描く。
 全ての感覚が聴覚に吸い込まれたような、一瞬。時間をも引き千切るような暴圧。
 直後、周囲に襲い掛かったのは、暴風か流星か。
 ゴパ、ッ! と、轟音が駆け抜けた。前後左右から同時に襲いかかろうとしたルーキーは、超質量の暴力に文字通りに薙ぎ払われていたのだ。
 まるでゴムボールを打ち返すように、触れた先から人間大の肉の塊を弾丸と変えて岩壁へと叩きつけたそれは、グ、とフィルマリナが引いた鎖に、従順に彼女の腕へと舞い戻っていく。
「海賊相手に剣を抜いたなら、後は倒すか――」
 見た目で言えば、暴れる大質量に抵抗の暇もなく轢き潰されるだけであるはずの彼女の腕が、しかし、衝突の衝撃を振り撒きながらもそれをしっかりと受け止めていた。
 その正体は、巨大な錨だ。鎖に振り回され、容易くルーキーを吹き飛ばしたそれを難なく受け止めた彼女は、海賊としても未熟なまま死したのだろうコンキスタドールへと口を開き。

 ――倒されるかなのだわ。

 地面を下した錨に砕き、海賊の流儀を説いたのだった。
「……それで」
 薙ぎ払いの範囲外にいたルーキーたちへとフィルマリナは、直前の所業とはまるで似合わぬ、快活な笑みに問いかける。
「あなたたちは、答えてくれるのかしら?」
 何より、その笑みが海賊の何たるかを、彼女の何たるかを、――示す。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
んーもう少し暑ければホラーにぴったりな状況じゃない?
元の世界が元の世界だけにね。やろうとしてる事も似てるし。
だからそっちと同じように、この儀式も台無しにさせて貰おうか。

人質の救出に動く。
UCで空シャチ召喚、半数に拘束されてる人達を咥え回収して洞窟の外へと逃がさせる。
残りは二体にまで合体させてルーキー蹴散らして貰おう。
暴れたら危ないから注意ねー。安定悪いけど背鰭の方に引っ掛けて乗せてくのでもいいけど。
生贄ならそれがなくなれば儀式は成立しない、よね。
合体したシャチ達は避難の護衛を。
邪魔するルーキーは尾びれでひっぱたいてお引き取り願おう。
ヤマカンとシャチの勘、どっちが上かなー。

※アドリブ絡み等お任せ



 暗闇に、冷えた光が不気味に漂っている。
「もう少し暑ければ、ホラーにぴったりな状況、かな?」
 真下から上る光に照らされる光景は、どこか背筋を震わせる不穏な空気を孕んで、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は腹の底の方が冷える感覚にそう零していた。
 さて、周囲で巻き起こる猟兵達の蹂躙に、ホラーはホラーでもスプラッタな方かもしれないけれど。と巻き起こる嵐の如き戦力に隠れる様に、静かに力を広げる。
「……うん。皆が相手してくれる、今のうちに」
 力の水面が波打ち、大量のシャチが洞窟内へと、次々と鰭を伸ばし顕現する。
 数秒、空を泳いだ彼らは、各々に海賊たちへと散らばっていき。
「もらっちゃおうか」
「……ぅお、え、あぁッな!?」
 直後、応急手当を終えた海賊たちの絶叫が、洞窟中を震わせんばかりに響き渡っていた。
 ルーキーズが、流石に気付いて声を荒げる。
「お前、何を!」
「……、うん、まあ叫ぶよね」
 愛らしい姿と合わせてよく知られている通り、シャチは肉食獣だ。しかも結構なパワーファイターな生態ゆえに、体もそれに合わせて進化している。
 要するに、ぐわ、と開けられた口は、肉を食らう為の鋭い牙が並び、間近で見ると結構怖い。それに咥えられよう物なら恐怖し、なお運ばれよう物なら理解が追い付かず困惑するのも頷ける。
 というより、ヴィクトルはうんと、頷いていた。
「まあ、いっか」
 だが、慌てない。目的は人質の海賊たちを移動させる事。彼らは、既に確保済み。あとは、彼らを咥えさせた空シャチが洞窟の外へと向かうまで、妨害させなければいい。
 一度逃げられた後で、もう一度人質を捕えた。つまりは、人質さえいなければ、儀式を完遂することは出来ない、という事に他ならない。
「残った子たち集めて、ひと暴れだ」
 十数体、海賊を咥えたシャチの数はそれだけ。召還した数七十に対し、五十強のシャチたちが合体していく。
「させるっ、――ガ!?」
 海賊を運ぶシャチへと、大剣を振り上げたルーキーは、その剣を振り下ろすよりも前に、天井が落ちたかのような重圧に、その体を圧し潰されていた。
 ゴ、……と低く響く轟音にルーキーの声をかき消したのは、二体にまで合体し数を減らしたシャチの片方の腹であった。
 もう一体、尾鰭に二十幾つと刻印を持つシャチが、楽し気にキューと嘶いて、宙を泳ぐ。
「あ、暴れないでね」
 思わず噛んじゃったら大変だから。と傍を通って避難させられゆく海賊に声をかけると、過ぎていった方向から、ひょ、と変な声が聞こえてくるが、ヴィクトルは元気そうだと気にしない。
 シャチとは前述のとおり、パワーファイターな肉食獣だ。ギャングだのハンターだの言われる程度にはアグレッシブな性格と、それに似合う知性と感性を持っている。
 鋭いヤマカンに頼るルーキーたちと、ハンターたる素養を持つシャチの勘。
「さあ、どっちが上かなー」
 好きに狩っていい玩具を与えられたシャチ達の、遊びが始まった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『うみなりさま』

POW   :    生まれ故郷
【海水のブレス】を降らせる事で、戦場全体が【太古の海】と同じ環境に変化する。[太古の海]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD   :    至る道
戦場全体に、【激しい海流】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ   :    加護の歌
【加護を与える鳴き声】を披露した指定の全対象に【この声を聴き続けていたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。

イラスト:あおくら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はサフィリア・ラズワルドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 人質は消え、そして、猟兵達によってルーキーズたちは瞬く間にその数を減らし。
「グ、ぎぁ!!」
 最後の一人の断末魔を以て、その一人残らずが殲滅された。
 だが。
 どこか漂う、妙な寒気は消えない。
 まだ、地面から発せられる光が途絶えていないのだ。
 陣の殆どが壊され、砕けているのにも関わらず。人質がもう既にいないのにも関わらず。
 いや、もしかしたら、生贄は事足りたのかもしれない。
 既に流れていた海賊の生者の血と、ルーキーズの妄念の血。神のいないはずの島に呼び出され、結び付けられようとした力ある何か。

 竜。
 
 それは、加護を与える存在だった。

 だが、歪に望まれた存在だった。

 故に、それが与える加護は、身を内から焼くように蝕み、物から呼吸を奪い、苦痛と共に死を与えるものだった。
 壊れた陣、歪な望、過去の術式。それらによって紡がれた力は、ただただ厄災を生む。
 暴れ狂う力の奔流は、瞬く間に地下湖を埋め尽くし。

 神域を生み出した。

 その時。
『血と土地を結ぶ儀』
『メガリスと伝承を結ぶ儀』
『かつて、ここで行われたのは、そういった儀式じゃったそうじゃ』
 唐突に、声が響く。
 さて、それはどこから響いているのか、発信源が複数あるような、奇妙な震えがあった。
『まあ、本当の所は知らん』
『じゃが、この島に於いて、結ぶ伝承は実在しておる』
 結びつける、メガリス。島から離れてもご利益がある、と言われるのはそれゆえか。
 地上へとこの脅威を逃しはしない、とその老人の声は告げる。
 白い繊維の束が、竜の体を纏う。さながら羽衣の如く、しかし、確かにそれは竜の動きを抑えている。神に等しい力をすら、この場に結び付ける。
『それが限界じゃから、後は頑張っておくれ』
 さながら他人事のように。
 声は、最後に声を残し、沈黙する。
『まあ、多少は手助けも出来るじゃろうて』

 水のような力場に満ちた地下湖。
 青白い光が揺蕩う疑似的な神域。
 緩慢に沈む体は、水中のように軽く重い。

「キ、――ッ!!」

 荒れ狂う竜が吠える。


 第三章。

 水のような力場に満ちた地下湖での戦闘です。
 呼吸が難しかったりします。

 球体の大きな空間を好きに泳いで移動できるようなイメージ。

 第一章にて御守りなど(扇子もOK)を手に入れるプレイングがあれば『何かと何かを結びつける』行動が可能になります。
 空気と肺、とか、敵と自分の武器、とか。
 もしかしたら描写できない事もあるかもしれません。その時はすみません。

 もちろん使わず、プレイングいただいても、全く構いません。
 好きにプレイング下さい、好きに書きます。

 ではよろしくお願いします。
レイ・オブライト
水死ってのは体験したことあったろうかな
そもそもこの身体どうなってんだか
何度か死ぬかもしれんがヴォルテックエンジンが回り続けてる限り電気ショックなりで意識が戻るんじゃねえか。限界突破つってよ
じゃあ戦う他ねえだろう
水流に高く打ち上げられた際に『重力と肉体』が繋がれば、竜へ蹴りを叩き込みがてら背への着地を狙う
鎖を角へ放ち命綱兼楔代わり、蹴りつけて起こす衝撃波に身を乗せ一息にその脳天か鼻先まですっ飛べたなら
重力と属性攻撃(電気)を込めた【一撃必殺】を叩き込む
結局
アンタらを歪めるのは、いつも人間なのかもな

あとは野となれ山となれ、だ
しかし、御守りか。……戻ったら、あの爺さんに酒の一杯でも奢るとしよう



 声の発信源の一つを身近に感じて、探ってみればそれは、扇子であった。
 いや、もっと細かく言えば扇子の要。板を繋ぎ合わせる糸のようなそれから発せられているのだ。
「……は、結局御守り買わされてたってか」
 レイ・オブライト(steel・f25854)は謀られた自覚に、思わず笑いを返していた。
 暴れ泳ぐそれを見上げる。
「声は出るのか」
 試しに、発した声は確かに己の声で、何も変わりは無いが、しかし吸い上げた息の息苦ししさにレイは思わずに眉をしかめていた。
 水を吸い込んだように咽ることも無いが、空気を吸ったように肺が酸素を吸収した感覚も少ない。
 息をするほどに疲弊していくような感覚に、レイは『窒息死』という単語が脳裏をよぎった。
「……」
 さて、この体は、力場に死ぬのか。彼自身、死んだはずの自らがどう死を感じるのかを図り切れずにいる。
 だが――。その思考を遮るように、不可視の何かがレイの体を襲っていた。
 ドボ、ァ!!! と強烈な衝撃と共に舞った体に、乱れる髪、千切られんばかりに揺らぐ四肢に、指の間を抜けていく何かの感覚。
(水流、と言ったところか……っ)
 暴れる水に揉まれる体から瞬く間に空気が抜け、意識が遠のいていく。
 この体は、一体どうすれば死ぬのだろうか。
 いや、死ぬ、死に続けるという事が、許されるのか。
 答えは、きっと、否だ。
 動けと、叫んでいる。
 生きろと、叫ぶヴォルテックエンジンが、全身に強力な電流を垂れ流して、静かに死ぬことを許さない。
「……っ!!」
 肺から吐き出される空気に苦しむ暇もないと、体内に埋め込んだそれが急かす。動けと。止まるなと!
(分かってるさ)
 ああ、気付けば随分と水流に巻き上げられたようだ。眼下に、泳ぐように体をうねらせる水竜が見える。
(力を貸すと言ったからには)
 扇子を握ると、同時に体に巻いた鎖を周囲へと広げる。
(きちんと働けよ、爺さん!!)
 グン、とレイの体が刹那、直下方向へと加速した。まるで見えぬ網に引き抜かれたように、重力という鎖が彼を巻き込み、駆ける!
 鎖を流星の尾の様にズ、バンッ! と力場を裂いて、墜ちるレイは、瞬きの間に水竜の背中へと到達する。ゴ、と衝撃波が弾ける。伸ばした両足を着地と同時に畳んだレイの体は、さながら砲弾の如く水竜の背をのけぞらせていた。
「ギ――ッ!!!!」
 力場全てを震わせる悲鳴がレイの身を震わせるも、もう、彼を止める事などは出来ない。死の恐怖など、この数秒で、幾度と対面した過程でしかない。
 幾度、死を迎えようと、この体が動く限り闘うしかないのだ。仰け反った水竜の背で、着弾と同時打ち放っていた鎖を引き、周囲を揺らす直前の衝撃波に体を乗せる。
 重力と身体を結んだこの体に、軽く重い揺らぐ力場の粘性は然程、問題にならない。角へと引っかけた鎖を辿り、角へと到達。
「……はっ!」
 終わらぬ。
 全身を雷撃が貫く。昂る感情が絶えず雷轟を体内に滾らせている。鎖を巻いた角を蹴り、宙返り、重力を得て加速して、レイすら一口で呑み込めそうな竜の咢の前に躍り出た。
 足場は無い。
 掴む場所もない両手両足がX字に浮き開いたままに、レイは狂う竜眼と視線を交わす。
 消えぬ理知と歪む暴虐の混在する濁流。
 レイは、重力に落ちる体をそのままに、振り上げた両手を重ね互いを握りつなぐ。ズバ、ヂ、と全身を廻る電雷が拳へと集う、その瞬間。

 ――爆轟。

 雷撃の鎚と化した拳が、竜の咢を打ち抜いて、竜の体が真下へと打ち落とされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリエ・イヴ
【⚓】
アドリブ◎

神域ね
相手が神だろうが…俺のものを奪われるのは好きじゃねぇんだ
自由を縛る、動きづらいこの空間は
俺の海じゃない

ああ、それならさっさと終わらせよう
―ガイ、勝つぞ
短く告げて【王者の牙】
胸に黄金の花を
それと一緒に買ったお守りに願うのは
俺の船の、ガイの自由を返してもらうこと
ガイの肺と空気を結び付け
…奪われるのは好きじゃねぇからな
自分の事は隠せるとこまで激痛耐性で隠して

さぁ、狩りといこうか
覇気を正面からぶつけて切り込んで
敵をガイの方へ追いたてる
無理でもこっちの存在感に気をとられてくれりゃぁそれでいいだろう

ガイに気付かれたら
俺ばっか働かせ過ぎなんだよとニヤリと笑い
きっちり働けよオニーチャン?


ガイ・アンカー
【⚓】
アドリブ◎

錨として海底にいた頃の感覚を思い出すが…人の身じゃ呼吸し難いのは厄介だ
ったく、海賊から何かを奪おうだなんていい度胸だな

アリエの言葉に
応よ、と同意を
お守りに願うは航海安全…じゃねえ
俺と地面を結びつける
錨らしく敵を海底に繋ぎ止めてやろう
鎖を三叉槍に繋ぎ
追い立てられた敵に向かって螺旋に回転させながら【海神殺し】
暴れたって鎖を離すかよ
ここがどんな海でも逃さねえぜ

…ふと、気づいた
息ができる
…お前か、アリエ
ははあ…さっきの仕返しもあるな
何が働けだ阿呆
だったらよく見てな、クソガキ
お望み通りやってやるさ――『海神殺し』

引きずり込むように怪力で引き
三叉槍目掛けて錨で金の闘気を叩き込む
そら、沈め



「全く」
 ガイ・アンカー(Weigh Anchor!・f26515)は思わずに人の身の不便を嘆く。息をしなければ、満足に動けない。
 錨としてただ海に沈んでいた時代を思えば、それもまた自由である代償なのかもしれないが。
「海賊から何かを奪おうだなんていい度胸だな」
「は、それもそうおだ」
 ゴ、ォ!! とうねる力場を突き抜けて、竜の巨体が迫りくる。
「そら、来たぜ」
 猟兵の一撃に、猛烈な勢いを持ちながらも、しかし、既に体勢を整えんと水流をその鰭で掴んでいる。
 攻めるならば今。
「ガイ、勝つぞ」
 ブーツの先を、僅かに滑る岩に擦りつける。
 一声放つ度に緩慢に酸素を求める苦しみが蟠っていく。戦闘行動に移れば、これは更に険しいものになるだろう。
 ただの海に放り込まれるのとは、具合が違う。溜息を吐く、その息すら惜しい。
 神の力場が混ざった海は、アリエの知る、アリエと共にある海ではない。
 故に、手早くこの海を脱する、と言外に隣のガイへと腕を上げた。
「応よ」
 ガツン、と互いに遠慮のない力加減で打ち付けた拳が鈍い音を発てる。
 さながらそれは、火打石の如く。バツン、と弾け飛んだ黄蜜色の火花が、その境からガイの腕へと蔓巻き、全身を揺らぐ闘気で包み込んでいた。
「……ッ!」
 同じ闘気を纏いアリエは、物理的に浮足の立つ体で、床を蹴り飛ばした。重い空気を裂く感覚は不思議なものだが、それに気を取られている暇はない。
 肺が瞬く間に、空気を求めて軋み上げる。
(結ぶ、か……。上等だ、返してもらおうじゃねえか)
 結ぶ願いは、『ガイの』肺と空気。アリエに一切の得の無い願いを胸元に仕舞い、握ったお守りに放り投げるように託し、窒息に苦痛を叫ぶ体を更に前へと弾き出す。
「さあ、狩りといこうか……っ」
 丁度良く、相手もアリエを捕捉したらしく、泡の如く濁る眼差しで睨みつけた。
 力場に、黄金の残滓を渦巻いて、ゾ、ゴア! と放たれたブレスを躱したアリエが竜の体へと肉薄する様を、ガイは見上げていた。
「……はあ」
 右腕に蒼く銀の光沢を放つ三叉槍を、左腕を床を罅割る錨の柄に添えた彼は、思わずに溜息を吐いていた。
 吸い込む肺は、軽く満ちて血中へと酸素を取り込んでいく。息が出来る。
「自分差し置いて何やってんだ、あの阿呆」
 黄金の輝きを纏い、壁を蹴り、床を蹴り、力場を泳いで竜と対峙する男へと執心する竜。
 追い立てる。等と言っていたが、狂暴化したアレが逃げを取るとは思えず、息もまともにできない状態であの体をここまで吹き飛ばせる、等と大言を吐くほどの馬鹿だとは思いたくない。
 であれば。
「じゃあ、きっちり働けよ、オニーチャン!」
「……よく言うぜ」
 計画通りとはいえ、絵面は完全に逃げ帰ってきただけのアリエが、挑発の為だけになけなしの息を吐ききる声。やはり馬鹿というアリエに評価を貼りなおしながら、ガイは右手の武器を握り締める。
「――お望み通り」
 地を足で踏み締める。結ぶは、己と大地。
 錨である己の本質を最大限に引き出し、高め。
「ギ――!!」
「やってやるさッ!」
 ギュ、ゴ――ッ!
 アリエを追って迫る竜へと、ガイの放った三叉槍が螺旋を描き、その胴体へと深々と突き刺さる!
「――ッ!?」
 アリエを追っていた最中に、唐突に腹を抉り貫いたその痛みに驚く暇もなく、竜へと更なる激痛が齎される。
 体内へと侵入した槍の穂先。三叉に別れたそれぞれが、ゴズリ、と無数の針へと変じて体内を刻む。
「……ッ、離すか、よッ」
 突進の勢いに槍に繋がった鎖が張り詰め、更に腹の中身をかき混ぜるその激痛に、暴れ狂う巨体に鎖を引く。ガイは引きちぎられそうな腕を辛うじて黄金の闘気でつなぎ止めながら、錨を掴み取る。
 見れば、アリエはもう十分に動けもしない状態で、どうにか漂っている。やせ我慢のしすぎだ。が。
「クソガキが、気張りやがって」
 その成果は認めざるを得ない。放たれた錨に闘気が滾り、竜を薙ぐように大きく弧を描いた錨が直撃したのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
この声…霊験あらたか?
いなくなってなかった?神様の助勢もあるようだし、暴れる前にここで仕留めたいよね。
頼まれ事はきっちりと最後まで果たさないと。
さあ、やろうか。

基本援護、可能な範囲で連携。
自在に泳げるみたいなので水泳で移動。
環境塗り替えられても海ならば大して違いはないし。
泳ぎ回り突撃を回避しつつ、他の猟兵の攻撃に対する反応で急所を探る。
タイミング見計らい銛と急所、見つからなければうみなりさまの背中側の首に発動。
明後日の方向に銛を投げて油断させ奇襲気味に銛をぶち当てる。
そして命中と同時にUC発動、水のシャチに喰らいつかせるよ。
撃破後は神様にお礼を。お供え買ってこないとねー。

※アドリブ絡み等お任せ



 いなくなってなかったって事かな、と響いた声に思いながらヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は、体を泳がせていた。
 水のようで水ではない力場の海、そんな環境に放り出されても、太古の海へと順応しえる彼にとっては、ちょっとは息しづらいか、程度のものだった。
 海に潜るように、肺に空気を循環させ、僅かに鼻孔から泡を零す。
「まあ、頼まれちゃったものは仕方がないし」
 錨の攻撃に、突き立っていた槍が、ごっそりと抉り取っている。
「ゴ、ギュ――アッ!!」
 叫ぶ声が岩を震わせる。
 太い尾で力場を蹴り出して、他の猟兵へと集中しかける攻撃を逸らしていた彼は、どこかに誘導しようとしていた猟兵に任せ、その様子を具に観察していた。
「やっぱり、ねらい目は、そこだよね」
 白い骨と赤黒い肉。
 前鰭の間、部位としては胸となるのだろう場所の傷。槍が空けた心臓へと近道。ヴィクトルは、重量のある金属でできた三叉銛を投擲する。
 だが、擲った銛は、暴れるその竜の鼻先を掠りもせず過ぎていった。
「っと、うんうん、こっちおいで」
 外れた銛を竜の視線が追うことなく、竜は、ただ攻撃を行っヴィクトルへと慨然と迫りくる。
 その狙いを定めたヴィクトルが幾度となく注意を引き、攻撃を躱しぬいていたせいか。竜派ブレスを離れたままに放つ事は無い。
 外す事無くブレスを放たんと、咢を開き突っ込んでくる竜に、ヴィクトルは、静かにその尾で波を掻く。それが迫りくることは、彼にとってはむしろ歓迎すべきことで。
「飛び込んできてくれるとはね、……じゃあ」
「っゴ、ギュぁッ!?」
 御守りに願うは、竜の意識外へと離れていった三叉銛の先端と、傷。もはやミサイルの如く、重量を持つ三叉銛が唸りを上げる。不可視の糸に導かれるようにしてその先端が過たず、傷へと飛び込み、鈍く、そして鋭い衝撃が弾ける。
 その着弾と、ほぼ、同時。
 ギュ、ゾブ、とヴィクトルの背後で膨大量の水塊が唸りを上げた。
 それは渦を巻き、生物的な輪郭を描いては、巨大なシャチが大顎を開く。明確な脅威。津波、等よりも恐ろしい水流の怪物。
 だが、それと相対した竜は逃げることも無く、ヴィクトルへとブレスを打ち放たんとする。狂う思考にも、いや、本能的な恐怖に駆られるからこそか。
 それを、打ち破る以外に、己が生き残る方法など無いと、理解しているのだ。
 だが、その決死の攻撃が、標的を貫く事は無く。
「さあ、――食い千切れ」
 水の咢が、ヴィクトルの背から彼ごと飲み込むように、竜の体をその咢に閉ざす。
 暴圧とも言える水塊が術者自身であるヴィクトルを押し潰すことはない。彼に触れる巨大なシャチの体は、冷えた心地の良い水となり彼の体を潤すばかり。
 だが、獰猛な水の王者は、敵に容赦などはしない。
 無数の牙が、攻撃せんと迫る竜を捉えヴィクトルから引き離し、その機能を十全に発揮していく。
 ゴ、ギュガリ。と連続する。
 咀嚼。
 大げさにも聞こえる咀嚼音が、ただ無情に神域を満たしていた。
 引き裂かれ、千切り取られ、振り撒かれ、ひしゃげ、潰れていく。
 歪んだ凶災を振り撒かんとした竜は、無残な肉塊へと姿を変えていった。


 暮れかけていた空は、すっかりと陽が落ち。
 しかし、それでもこの街は騒がしいままに夜を迎えていた。
「……無事か、」その安穏とした騒々しさにレイは頷く「随分と助けられたな」
 と、老人から受け取った、扇子を眺めながら何気なく声に出す。そうすればひょっこり誘い出されてくれそうば気がする。
「……酒の一杯でも奢ってやろう」
「あの声の人、知ってるんだ?」
 問いかけるヴィクトルに、レイは扇子を買った老人の飄々とした声色と、あの声が同じものだと確信しながら頷いた。
「ああ、昼に……なんだ?」
 とレイは、ふと視界に映ったものにいぶかし気に声を上げる。
 ヴィクトルも釣られてそれを見ると、確か助けたはずの海賊が、随分と傷を増やして転がっているのだ。
「……、無事だったかアンタら」
「うん。それで、なにしてるの?」
 もはや虫の息に等しい程に、打ちのめされた海賊たちの中で、一人立っている鮫の深海人にヴィクトルは声をかけた。
 ひとまず、後で診療所に運び込めば死なない程度の傷だったからか、ヴィクトルの優先度は、知り合いの深海人の表情の理由に軍配を上げていた。
「ガキの家族の場所が分かった」
 朗報であるはずの手掛かりに、鮫の深海人ナガハマは吐き捨てる様に言った。
「ヨモツアミオリ、……奴隷の地獄だ」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月11日


挿絵イラスト