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再来・倒怪道中膝栗毛~九十九の恩返し~

#サムライエンパイア #戦後

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#戦後


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●とある家のとある片隅にて
 ――カタカタ、カタカタ。
 ――カタ、カタカタ。

●とある家にて
「あらま、またお箸が少なくなっている」
 戸を開けた女が怪訝そうに眉を潜めた。
「まぁ、たまにしか来ない客人用に多めに置いている箸だからいいんだけどさ」
 それほど高価な箸でもないし盗まれるものではない。きっと転がして何処かへやってしまったのだろう。
 ――でも、先日も箸が少なくなって、そしてその後また戻ってきたような。
「盗んで使って律儀に返しにくる泥棒でもいるのかね」
 女は困ったように呟いた後、己の言葉にくすくすと笑って戸をそっと閉めた。

●江戸の端にて
 関所を越えて少し着物が汚れた男二人組が、はぁーっと大きなため息を吐く。
「やぁれやれ、ようやく江戸だねぇ八二さん」
「全くだよ亀田さん、出た時は必死だったせいかそれほど気にならなかったけどこんなに関所って面倒だったかねぇ。それともやっぱり先日の大戦のせいか」
「ほんと世知辛いもんだねぇ八二さん」
 この二人、八二六兵衛と亀田鉢は、先日訳あって江戸の職場をクビになり、滞納していた家賃に構うことなく退職金で酒をかっくらい、それを嫗と呼んでも差し支えのない年齢の大家に見咎められたのを大の大人が本気で撒いて江戸を飛び出したどうしようもない男達であったが、飛び出した先でオブリビオンに襲われそれを猟兵達に助けられて改心し大家さんに謝ろうと再び江戸に戻ってきたのである。
「いやぁ、やっぱり仕事探すなら江戸だな江戸。
 あの宿場町も人の出入りは多いが賃金がちとなぁ」
「あと三食に一回は素麺食うのが風習ってお腹がもたないよねぇ八二さん」
「いくら名産といえあそこまで来ると狂気を感じるよ亀田さん」
 ……恐らくきっと江戸に戻ってきたのは改心が故である、そうであってほしい。
「あーぁ、とは言え取り敢えず飯だよ飯。
 旅路の分ぎりぎり稼いで出てきたのはいいものの、ずっと歩き通しだったからまともなまんまが食べたいねぇ」
「違いないよ、……ってあれ、八二さん彼所を見てごらんよ」
「何だってぇんだ、って、おぉ……?」

●グリモアベースにて
「初めましての方は『こんにちにゃ』、二度目ましての方は『結局あいつらに改心は無理だったんだにゃ諦めろ』なんだにゃ」
 肩を竦めてやれやれだぜといった様子の八角鷹・瓊色(無限の想像・夢幻の創造・f14709)は近くに集まった猟兵達へ予知を告げる。
「まぁどうしようもない八二亀田という二人組が久しぶりに戻ってきた江戸でどうやらオブリビオンが関わる騒動に巻き込まれるみたいなのにゃ」
 今までの語り口から興味を失いかけていた猟兵達もオブリビオンに関する騒動と言われればその目を真剣なものへと変える。
「ざっくり予知できている範囲で言えば、とある女の人が大事に使い続けていた箸がツクモガミ化しかけているみたいなんにゃけど、その箸が女の人へのご恩返ししたいとあれこれ行動するのが江戸の町中にオブリビオンを呼び出す事態になるみたいなんだにゃ」
 一体何がどうなればそんな事態になるのかと、ある猟兵は遠い目をして、またある猟兵は頭を抱える。
「その気持ちは分かるんにゃけどこのままオブリビオンが江戸で大暴れしたら大変なのにゃ。
 何しろその体はとってもめっちゃ大きくて……食べればとってもめっちゃばりばり美味しいそうなんだにゃ」
 瓊色の方からじゅるりとよだれをすする音が聞こえた気がするが、それはさておき話は続く。
「取り敢えずその騒動が起きる場所の近くで食べ放題のイベントがあるみたいでそこに八二亀田もいるみたいだし、皆には一足先にそこへ行ってもらって依頼がてら是非楽しんできてほしいんだにゃ。
 何やらその大きいオブリビオン以外にもちらほら敵が出てくるみたいだから『腹が減っては戦ができぬ』みたいなことにならないように、頑張って行ってらっしゃいにゃー!」


梅法師
 今回この依頼を目に留めてくださった皆様ありがとうございます!
 まだ試行錯誤の身ではありますが、皆様に楽しんでいただけるように頑張って執筆したいと思います。
 また、この依頼は拙作『倒怪道中膝栗毛』の続きではありますが、そちらを参加していなくとも楽しめると思いますのでどうぞお気軽にご参加ください。

●アドリブ・絡みについて
 アドリブを入れる傾向があると思います。
 そのため、アドリブ不可の場合はプレイング冒頭に「×」(「」は無しで記号のみで大丈夫です)を記入していただけると嬉しいです。なるべくアドリブを入れないように気を付けます。
 また、他の方のプレイングとこちらの方で勝手に組み合わせてリプレイ執筆させていただく場合もございます。特別「他の人と一緒のリプレイがいい」とか「単独希望」などご希望があれば同じく冒頭に記入していただけると嬉しいです。

●判定方法について
 基本、実際にダイスを振ることで判定を行っております。そのため、プレイング内容に関わらず判定が悪くなってしまうこともございます。
 場合によって、プレイングボーナスやプレイングを組み合わせることで判定を良いものに変えるなども行うようにはしますが、もし判定が良くなくとも「あぁ…ダイスの女神が悪ふざけしたんだな」と思っていただければありがたいです。

●執筆速度・再送について
 こまめに覗いて早めの執筆を心掛けますが、背後事情により土日祝日は執筆作業が出来ない可能性がございます。
 なるべく無いようにしたいとは思うのですが、再送をお願いすることもあるかもしれません。その際は大変申し訳ありませんがご協力いただけるとありがたいです。

●プレイング募集期間について
 基本的に各章冒頭に導入を上げさせていただき、それが反映されると同時に募集開始とさせていただきます。
 〆切についてはMSページの自己紹介の文章内またTwitterアカウントでも随時記入・更新を行っておりますので、お手数をお掛けして申し訳ありませんがプレイング送信前にそちらをご確認いただけると嬉しいです。
 プレイング募集期間外に送っていただいたプレイングに関しましてはなるべく判定を行いたいとは思っておりますが確約は出来ないのでご了承ください。

 なるべくご期待に沿えられるように努力しますので、どうぞ見捨てずに温かい目で見てやってください。
 どうぞよろしくお願いします!
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第1章 日常 『たくさん食べる君が好き』

POW   :    とにかく食べる。ひたすら食べまくる。

SPD   :    味を変えたり切り刻んだりして食べやすくなる工夫をする

WIZ   :    アイテムやユーベルコードを上手く活用する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「いやぁ、団子の大食い大会をやってるなんてちょうどよかったねぇ、八二さん」
「いろんな味も用意されていて自分でも好きに味を変えていいんだもんなぁ。
 大食い大会なんて銘打ってはいるが、お上から娯楽もかねて食べ物を俺たちに腹いっぱい食べられるようにとこんな行事を催してくれたようだ」
 老若男女集う人混みの中、八二亀田の二人は立ったまま団子をつまみつつ久しぶりの江戸の様子を眺める。
 先日の戦で江戸の様子が変わっていたらと不安もあったが、相変わらずの活気に八二六兵衛はカラカラと笑った。
「ほんと人が多くて敵わんなぁ、っとごめんよ」
 不意に子供が己の方へ飛び込んできたのを受け止めた八二六兵衛のもとへその子の親が謝りに来る。それを気にすんなと手をひらひら振ってあしらった彼の手元を見て亀田鉢が「あれま」と呟いた。
「八二さん、お箸落としちゃったよ。ちょいと拾って洗ってくるかい」
「おお、うっかりうっかり。そうするか」
 亀田鉢が足元に落ちた箸を拾い上げようとしたそのときであった。

 ――ぐにゃり。

 持ち上げようとした箸がそれにあるまじき柔らかさで曲がる。それはまるで意思をもって亀田鉢の手から逃げるようで……。
 ひょい、と不意に起き上がった箸がたったかと逃げるように跳ねていく。
 一瞬呆気に取られた八二亀田であったが、ハッとして慌てて箸を追いかけた。
「おい、待て、箸!! まだ団子が皿に残ってんだから箸がいないと困るんだよ!」
「というかまさかあれ、前みたいな妖の類いなんじゃあ……」
「そいつぁ尚更逃がしてやれねぇな! おぉい、待てって!!」
 必死に人混みを掻き分けて追いかける八二亀田をよそに箸は何処かへ逃げていくのだった。


 この章では猟兵の皆さまに好きなだけ団子を食べていただけます。
 その際、猟兵さま方に団子と一緒に渡される箸が何の因縁か件のツクモガミ化した箸を渡されます。どうやら他の一般人に配られる箸は普通の箸のようですが……。
 八二亀田と一緒に箸を追いかける、また、自分の箸となんとかコミュニケーションを取ってみる、またまた、それを気にすることなく団子を食べる、等々ご自由に楽しんでください。
御剣・刀也
ステラ・エヴァンズ(f01935)と一緒に参加

POW行動

団子か。この季節は桜を見ながら食べるのが風流だよなぁ
で、付喪神の箸か。なぁ、お前、頼むから団子食べ終わるまでどっかいかないでくれよ?
いや、素手で食ってもいいけど、熱いのはさすがに嫌だからさ

箸とコミュニケーションをとりながら団子を食べていく
箸がほかのところに行こうとしてると第六感で感じたら、少し握る力を強めて逃がさない。
食べ終わるまではいてほしいから
「ステラは巫女さんだから、こういう神様との会話とかできないのか?できるなら逃げないように言ってくれないか?俺はどうも実力行使になっちまう


ステラ・エヴァンズ
刀也さん(f00225)と参加

あのお二人懲りないと言うか…また難儀な事に巻き込まれて…
月日星で友人達に八二亀田さんを追跡してもらいつつ私達はお団子を楽しむとしましょう
少しずつ色々食べたいですねぇ

神様との会話、ですか?…声は届けられると思いますが、応えてくれるかは神様次第でしょうか

と言いつつ箸にお団子を供えるよう奉仕して挑戦
逃げると言うか何か目的あっての行動だろうと思うのでそのお手伝いをする代わりに今はこの団子を楽しむ時間を恵んでいただけないかお願いしてみます

箸が箸のお役目を放棄したらそれはもはやただの棒切れでございます。ですので、食べ終わるまではそのお役目を全うしていただけないものでしょうか?



 快晴の青空の下に桜吹雪が舞う中、一組の男女が毛氈の敷かれた縁台に座って桜を見上げる。
「団子か。この季節は桜を見ながら食べるのが風流だよなぁ」
 男、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は傍らに座るステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)へ団子の載った皿と箸を手渡す。
 ステラは瞳を輝かせながら微笑んでそれを受け取り、代わりにお茶を刀也へと渡した。
「ええ、本当に。
 まさかあんなにたくさんの種類のお団子があると思っていませんでした。せっかくですから少しずつ色々食べたいですねぇ」
 朗らかな春の陽気に負けず劣らずほのぼのとした空気がやわらかく二人を包む。

 ――ちょうどその時。
「おぉい、待て、箸!!」
「こちとら腹ぺこでようやく団子がつまめると思ってた時にこりゃあ無いよ、ねえ八二さん!」
「全くだっての亀田さん!
 先にちょっとつまんで胃の腑が動いてきたばかりの時に……ああ、かえってなんか腹が空いてきてるような……」

 二人の後ろを春一番に負けぬほどの風を巻き起こし騒がしさを引き連れて八二亀田の二人が駆け抜ける。
 一瞬刀也とステラは呆気に取られてそちらに目を遣るも、嗚呼懐かしくも騒がしいあの二人かと分かると、刀也はため息を吐き、ステラは苦笑交じりの笑みを浮かべた。
「あのお二人懲りないと言うか……、また難儀な事に巻き込まれて……」
 まあ、あの八二亀田であれば難儀なことに巻き込まれても(ギャグ補正で)大したことにはなるまいという予感はあるものの、それでも何か騒ぎがあった様子。
 念の為とステラがユーベルコード「月日星」を発動すれば、美しい白色のカワリサンコウチョウが現れ彼女の指先にとまる。
「お願いしますね、私の愛しい友人達」
 ステラの言葉に応えるように囀れば、カワリサンコウチョウは空高く舞い上がりその姿を捉えることは出来なくなった。

「じゃあ俺達は団子を食べているとするか」
 改めて湯呑を手に取った刀也はお茶に口を付けてステラへと声を掛ける。それに笑顔で「はい!」と微笑んでそれぞれ団子の皿と箸を手に取ろうとしたその時であった。
 刀也の箸が不意にぐにゃりと身を捩るように曲がったかと思うと、ひょいと飛び上がった。
 突然の動きに驚くものの、慌てて箸の落下する先に手を伸ばして逃がすことなく捕まえる。
「なんだ、これ……箸、だよな?」
「まさか件の付喪神化した箸が混じり込んでいるのでしょうか」
 刀也の手の中にしっかり握り込まれた箸を二人で覗き込みながら冷静な言葉を交わし、状況を把握する。
「もしかして、箸云々で騒いでいたあの八二亀田もこんな感じの箸が原因だったのか?」
 刀也の言葉に、カワリサンコウチョウと視覚を共有したステラが八二亀田の追いかける先を見れば、確かにたったかと不可思議に駆ける箸の姿がそこにあった。
「そうみたいです……って、きゃっ!?」
 不意にもぞもぞと動いた自身の箸に慌ててステラは取り落としそうになるが、それを察知した刀也が地に落ちる前に彼女の箸も捕まえる。
「付喪神の箸か……。
 なぁ、お前、頼むから団子食べ終わるまでどっかいかないでくれよ? いや、素手で食ってもいいけど、熱いのはさすがに嫌だからさ」
 特に今彼が持っている団子はまだ出来立てで熱い餡が載った団子である。冷めるのもまだ先になりそうだし、せっかくであれば出来立てを食べたいところ。
 語り掛けられたその言葉に、長年使われてきた箸として思うところがあるのか箸の動きが弱くなる。しかし箸同士が顔を見合わせるように曲がると、やはり逃げ出したいとばかりにじたばたと暴れ出した。
 それを事前に察知した刀也の手に込められた力によって箸を逃がすことは無かったものの、とても団子を食べるどころではない。
 ――せめて食べるまではいてほしい、そのためにも食べさせてくれ……。
 刀也は困ったようにステラへ視線を向ける。
「ステラは巫女さんだから、こういう神様との会話とかできないのか?
 できるなら逃げないように言ってくれないか? 俺はどうも実力行使になっちまう」
「神様との会話、ですか?
 ……声は届けられると思いますが、応えてくれるかは神様次第でしょうか」
 何とか彼の期待に応えたいと思うものの、神様……特に付喪神になりかけの箸との会話の経験は無いステラは眉を下げる。

 しかし、先程刀也が箸として使いたいと言葉を投げかけた時、確かに一瞬箸の動きは弱くなった。それであれば、箸としての役割を説けば話を聞いてもらえるのではないか。
 それに八二亀田の箸が向かおうとしている先へ己らの箸も飛び出そうとしていたように思い、ただ単に逃げたいというよりかは何か目的がある為にそこへ向かいたいのではないかと考えを巡らせる。

 そうとなればステラは気合を入れるために、ふう、と小さく息を吐き、己の団子の皿を献饌のように箸へと捧げる。
「長年人に愛されその命を宿された付喪神様、どうか私達の願いを聞き入れていただけはしないでしょうか」
 不意に己に向けられた真摯な言葉と貢物に箸は驚いたように固まった後、そわそわと動きを小さくする。
「その様子を拝見すれば目的がある故に此処から離れたい様子。であれば、その目的について私達も協力いたします。
 その代わり、今この時はお団子を楽しむ時間を恵んでいただけないでしょうか」
 ……どうしよっか、どうしようねぇ、とでも言うように顔を見合わせた箸に、手ごたえを感じたステラは最後の一押しとばかりに言葉に力を入れて刀也の手の中でほぼ抵抗を無くした箸たちへ語り掛けた。
「箸が箸のお役目を放棄したらそれはもはやただの棒切れでございます。
 ですので、食べ終わるまではそのお役目を全うしていただけないものでしょうか?」
 そこまで言われれば箸も致し方ないと感じたのか、その身をぴん、と伸ばして箸本来の真っ直ぐな姿に戻る。
 その様子を見て微笑んで顔を見合わせた刀也とステラは、それぞれの箸を持ち直してまだ温かい団子へとそれを伸ばすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
八二亀田さんか、懐かしいなぁ
俺が初めてサムライエンパイアに来た時に
お世話してあげた人達だよ
ちゃんと真面目に仕事してたのかな
俺が寝首掻きに行くかもねって
言ったこと覚えてるかなぁ

ドラゴンも団子食べられるの?
食べすぎて喉に詰まらせないようにね
冗談交じりで焔に注意喚起しつつ
じゃあ、俺は桜団子がいいな
と梓から団子を受け取ってさぁ食べようと…

……。
箸が逃げたね

あれが例のツクモガミ化した箸…?
ヤドリガミ化なら人間になれたのにねぇ
などと呑気に感想言いつつ
箸と戯れる零を眺めながら団子を嗜む
ん、この桜団子も美味しいよ
梓と焔も食べてみる?
手掴みではいあーんと団子を差し出す
何だかお花見みたいで良いね


乱獅子・梓
【不死蝶】
ほう、八二亀田と知り合いなのか綾
寝首を掻きに行くとかいったい
何をやらかしたんだそいつらは…
思い出話を綾から聞きつつ団子を貰いに行く

大量の団子を前にドラゴンの焔が目を輝かせている
これだけあるならこいつらにも食わせていいだろう
折角だからと零も呼び出す
みたらしに餡に三色団子に…綾はどうする?
一通りの味を皿に取りさぁ食べようと…

……。
箸が逃げたな

あ、零が追いかけだした
箸の行方は気になるが、まぁ零が相手してるならいいか
手掴みで団子を食べたり焔に食べさせたり
なかなか美味いな
しつこくない優しい味付けで
なるほど大食い大会に適しているな
そうか、焔も気に入ったか
綾から差し出された団子もありがたく受け取る



「八二亀田さんか、懐かしいなぁ」
 団子を受け取る為に並んだ列で、隣の男、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)が愉快そうに笑ったのを見て、彼と一緒に並んでいた乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)はサングラス越しに興味深そうに瞳を綾へと向けた。
「ほう、八二亀田と知り合いなのか綾」
 少なくとも自身は予知でしか話を聞いていない八二亀田について、散々な言われようへの興味半分、依頼に関わる人物として知識を身に付けておくべきという義務感半分で、綾に話の続きを促す。
「俺が初めてサムライエンパイアに来た時にお世話してあげた人達だよ。
 ちゃんと真面目に仕事してたのかな、俺が寝首掻きに行くかもねって言ったこと覚えてるかなぁ」
「……寝首を掻きに行くとか、いったい何をやらかしたんだそいつらは……」
 眉を顰めた梓の反応と懐かしい記憶に笑みを深めた綾の後ろを、不意にサムライエンパイアの男二人組が「おい、待て箸!!」「もうお腹空いたよぉ」と人混みを無理矢理掻き分けて騒ぎながら駆け抜ける。
 本来の気質故か男二人とぶつからないよう咄嗟に綾を庇った梓がムッとした顔で「騒がしいな、何だあいつらは」と零したのを聞いて綾はこらえきれないというように吹き出した。
「さっきのが件の八二亀田だよ」

 綾の言葉を聞いて更に顔を顰めた梓へからからと笑いながら、かつての依頼の流れやその中で受けた八二亀田の印象を語った。
 ――己の失敗を省みず無責任な奴かと思えば、いざとなればその身を呈して宿場町の人々を安全な場所へ導いて守ろうとしたり。
 ――綾のことを韋駄天の化身と呼んで拝まれたり。それを否定すれば謙遜するな、いやいや人に正体がバレてはいけない決まりなのではないかと早合点して他人の話を聞かないし。
 ――猟兵達によるオブリビオンの騒動の解決をまるで自身たちが最大の功労者であるように振る舞って、騒動に巻き込まれた人々からちゃっかりお礼を貰ったり。
 「思い返せば思い返すほど、俺とは違う意味でろくでもないどうしようもない人達だったよ」と笑い交じりに締めくくられた昔語りに、梓は溜息を吐く。
「それで今回場合によってはそいつらを護衛しながら依頼をこなすという訳か」
「うーん、まぁ正直あの二人なら殺しても死ななさそうな感じあるけど。
 ……というかたくさん団子貰ったねぇ」
 あれこれ話している間に列が進み、団子と箸を受け取った二人は近くの縁台へ腰掛ける。
 不意に向けられた綾の言葉に、呼ばれずとも姿を現して目を輝かせながらぶんぶんと尻尾を振る炎竜【焔】の姿へ視線を向けつつ梓は「まあこいつらがいるからな」と呟いた。
 ……一通りの味を貰ってきたが、この内どれだけ焔の胃の中に納まるのか。
 せっかくだしと氷竜【零】も呼び出せば、焔と違って表立って食べたいアピールをするわけではないものの、ちらちらと団子を覗いてきた。
「ドラゴンも団子食べられるの?
 食べすぎて喉に詰まらせないようにね」
 ――サムライエンパイアで毎年一定数の人命を奪ってきてるんだよ、と揶揄うように付け足せば、それを聞いた焔はがっつきそうになった動きを一瞬止めて少しずつ団子を食べ始める。
 それを見た梓は「あまり揶揄って遊ぶな」と綾を嗜めつつ、団子の皿から食べたいものを取り分けていく。
「みたらしに餡に三色団子に……綾はどうする?」
「ごめんごめん。
 じゃあ、俺は桜団子がいいな」
 それぞれ団子を自分の皿に取り、箸を構えて食べようとした、その時であった。

 二人の箸がタイミングを合わせたかのように同時に飛び上がり手から滑り抜ける。
「「……」」
「箸が逃げたな」「箸が逃げたね」
 ぴょんぴょんと飛び跳ねる箸に、零が興味を惹かれて飛び掛かって戯れる。
「あれが例のツクモガミ化した箸……?
 ヤドリガミ化なら人間になれたのにねぇ」
 のほほんとした空気を纏って呟いた綾の暢気な声に、梓は箸を捕まえるべきか立ち上がりかけて少し迷ったものの改めて座り直す。
 目を離しても少し離れた所から聞こえてくる零の「ガウ、ガウ」という声で大体の箸の行方も分かるし、零なら何かあっても箸を氷漬けにする程度だろう。
 それならばと手掴みで団子を取り己の口に運べば、口の中に団子そのものの優しい甘さとみたらしや餡の味が広がる。
 満足そうに思わず顔を綻ばせれば、焔が自分も欲しいと言うように「キュー」と鳴いた。
「なかなか美味いな。
 しつこくない優しい味付けで、なるほど大食い大会に適している」
「ん、この桜団子も美味しいよ」
 綾と梓から差し出された団子を焔が頬張れば、もごもごと団子を頬張る口から時折満足そうに「キュウキュウ」という鳴き声を上げる。

 穏やかな春の日差しの下、暖かな風に桜の花びらが舞う。
「そうか、焔も気に入ったか」
 ――サングラス越しに緩めた梓の瞳を、今はただ綾一人だけが知っている。
 そう思うと胸の内まで日差しに温められたようにほかほかとしてきた気がして、そのどこかむず痒しくも感じる心を誤魔化すように、綾は団子を手に取る。
「桜団子、梓も食べてみる?」
 差し出した団子を梓が頷いて受け取れば、綾の瞳もサングラスの奥でそっと緩められた。
 ひらり、と桜の花びらが皿の上にのったのを見て、綾は小さく「何だかお花見みたいで良いね」と呟いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神樹・桜花
お団子……大食い大会……ですか。ふむ……
うん、丁度いいですね。頂きましょう。
という訳でひたすらお団子もぐもぐします。いっそ食滅する勢いでもぐもぐします。(POW行動)

何しろ職場(UDCアース)で事務仕事ばかりでしたし、徹夜もありましたし……、はぁ。(疲労の色濃いため息)
久々の甘味は心癒されますね……、ん?今、箸が動いたような……?
……やっぱり疲れてるんですね、うん。帰ったら速攻寝ましょう。



 桜色の髪の女性がふと周囲を取り囲む人々の喧騒へと目を遣り、それにつられて己も浮き足立つ心を穏やかな笑みとたおやかな雰囲気でそっと隠す。
「お団子……大食い大会……ですか。ふむ……。
 うん、丁度いいですね。頂きましょう」
 彼女のにっこりと浮かべていた春の陽気のような笑みが、とある一角――団子を配る屋台へ向いた瞬間どこか挑戦的なものに変わる。

 その数分後のことであった。
「お嬢さん、ほ、本当にそんなたくさん食べるんで……??」
 団子を配っていた菓子屋の旦那の驚きを滲ませた声を前に、神樹・桜花(神桜の一振り・f01584)は至極当然とばかりに頷く。
「ええ、ええ。
 今日はひたすらお団子もぐもぐしたい気分なので。いっそ食滅する勢いでもぐもぐします」
 確りと言い切った桜花の様子に旦那は「お、おう……」と頷き、彼女が口にする種類の団子を皿にこれでもかというほど盛りまくる。
 ――つぶ餡、こし餡、みたらし、桜、おろし、くるみ、ずんだ……などなど。
 様々な種類の団子が山盛りと、それでいて見映えよくなるように盛られているのは流石天下の江戸で商売を続ける菓子屋の旦那の腕前だろうか。
 手渡された皿を見て満足げに微笑んだ桜花に、「重くないかい? ちゃんと持てるか?」と不安げな声と共にさらに箸と茶が渡される。
「たくさん豪快に食べてくれるのは嬉しいけどよ、喉詰まらせたりすんなよ」
 猟兵の己にとってその心配は不要であるものの、己を案じてくれるその気持ちはありがたい。
 旦那の声に会釈して返し、桜花はふらりと食べる場所を求めて行くのだった。

「はぁ、久々の甘味は癒されますね……」
 満開の桜の下、ほっこりと微笑みながら団子を箸でつつきつつ、それぞれの味を楽しむ。
「団子が出来立てだというのもありますが、この餡も作りたてだというのが何とも高ポイントです。くるみなど素材の風味が際立っていていくらでも食べられますね」
 そして何より最大の調味料が彼女の空腹と疲労感だろうか。実は桜花はこの依頼の前まで別世界の職場で徹夜も含んだ事務作業をしていたのである。ここ数日で自前のUDC記録ファイルが分厚くなったのも気のせいではないだろう。
 しかし、はぁ……と仕事上がりの疲労の色濃い吐息も、この甘味があればうっとりとしたため息に変わるというもの。
 少し休憩にお茶を啜って、また団子に箸を伸ばそうとしたその時であった。

 ――もぞり。
 手の内の箸が何やら動いた気がして、桜花は思わずその手を止める。
 一瞬の困惑の後、まじまじと箸を見ればそれが確かにもぞもぞと動いて手から逃れようとしているように見える。
「――いやいやいや、いえいえ、まさか」
 気のせい気のせい、と箸をしっかり握り込めば箸がぐえぇと力尽きたように伸びた気がしたがきっとこれも気のせいだろう。

「おい、箸!
 お前足が速すぎるんだよ……!!」
「八二さん、箸に足って言うのもなんか変な感じするよぉ」
 彼女の前を長い距離を走ってきたのか息も絶え絶えな男二人が通り過ぎ、彼らの前を箸らしきものがたったかと奇妙な動きをしていた……ような気もするが。

「……気のせいでしょう」
 そう結論付けた桜花はみたらし団子を、やけにぐったりした様子に見える箸でつまむ。
「……やっぱり疲れてるんですね、うん。
 帰ったら速攻寝ましょう」
 せめて、その前の一休み。
 桜の花弁が舞う下、それと同じ色の髪を春風にそよがせて、傍らにある団子の山をゆっくりとけれど着実に低くしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ススワタリ』

POW   :    まっくろくろすけの通り道
【対象が煤だらけになる集団無差別体当たり 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    かつての住処
【ススワタリがかつて住んでいた巨大な屋敷 】の霊を召喚する。これは【扉から射出した大量のミニススワタリ達】や【窓から射出した巨大ススワタリ】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    煤だらけ
【対象に煤が付くフンワリあたっく 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を煤で黒く塗りつぶし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――猟兵達がそれぞれ団子を楽しんでいたその頃、ところ変わって団子の大食い大会の会場の隅っこに八二亀田の二人は地面に這いつくばっていた。

「ったく、ようやく捕まえたぜ……」
「……一体どれだけ走ってきたんだろうねぇ」

 ぜぇ、ぜぇ、と息を吐きながら必死の思いで捕まえた箸をむんずと掴み、疲労でぐったりとだれたそれを掲げる。
「おうおう、散々手間をかけさせやがってこの箸はよぉ。
 全くどういうつもりで逃げたのか話を聞かせてもらおうじゃねえか。なぁ、亀田さん」
「本当だよぉ……って話ってどう聞くんだい、八二さん」
「えぇ……それは、その、身振り手振りとかでよぉ」
「箸には口も手も無いよぉ」
 達成感も束の間に、訪れた沈黙と共に八二亀田は互いに顔を見合わせて箸へと視線を落とした。

『実はわたくし、今まで大事に使ってくださった主へ恩返しがしたくて、仲間と共に美味しい食材を探していたのですよぉ』
「へぇへぇ、最近食が細くなって……しかも女の人なんだろう? 確かにそいつぁ心配だなぁ」
『元々外で活発に動くような方ではなかったのですが最近はますますお体がつらいのか外に出られることも無くなってしまって。
 いや、共に家にいられる時間が増えるのは嬉しいのですが、もしこのまま体調を崩されたらと思うと少しでも健康であってほしいと思うのが親心ならぬ付喪神心というもんで』
「話を聞けば聞くほど病弱なお屋敷のお嬢さまって感じだなぁ」
「聞くというか見るという方が正しいけどねぇ。にしてもまさか箸が自分で文字を書けると思ってなかったよ」
『伊達に長生きして付喪神になりかけている訳ではないのですよぉ』

 先ほどの沈黙から半刻後、そこには地面に己の身で文字をかりかりと書く箸とそれを見て相槌をうつ八二亀田の姿があった。
 思わぬ形で意思疏通をして話を聞けば、勝手に動く箸は人を害する怪異ではなく、持ち主へ恩返ししたいがために家を抜け出したところを何の因果か八二亀田(そして本人たちはまだ知らぬことだが猟兵達も)の手に渡ってしまった様子。
「そういうことなら仕方ねぇ! 健気な付喪神のささやかな願いじゃねぇか、俺達も手伝ってやるか」
「そうだね八二さん!
 ……にしてもその主さんに振る舞いたい美味しい食材に心当たりはあるのかい?」
 その問いかけに胸を張るように身をそらした箸が文字を地面に綴る。
『ええ、それはもちろん!
 かつては見ると恋愛成就の御利益があると謳われた大鯨、妖と身を落とした今でもその肉は美味であると大江戸箸瓦版でも有名なアレならば』
 そこまで書いた瞬間、箸を八二六兵衛の手が遮るように止めた。
「ちょちょ、ちょっと待て。
大江戸箸瓦版とやらも気になるが、今なんて?」
「妖と身を落とした云々って書かなかったかい?」
 二人の疑問にきょとんとした箸は平然と頷く素振りを見せる。
『ええ、確かに先ほど書きましたが?』
 八二六兵衛に捕まった箸の片割れが同意するように書き記す。
 それを見て天を仰いで「なんでぇ、結局またこのパターンかい」と涙まじりに亀田鉢が呟いたその時。

 ――ボンッ!!
 大きな爆発音と共に会場の一角から酷い煤煙が舞い上がった。
「おぉい、菓子屋の見習い小僧があんこ焦がして爆発させたとよぉ」
「……おいおい、なんかあの煤煙、様子が変じゃねぇか」
「風向き逆なのにこっちに向かって来るよ!」

『おや、あれはどうやらススワタリ。
 大江戸箸瓦版ではススワタリが出た後のかの鯨は特に美味だとか、……知らんけど』
「なんでそこ大坂っぽくなってるんだい」
 箸のボケと亀田鉢のツッコミを他所に、瞬く間にススワタリは会場一帯を包み込む。
 周りの人がげほげほと咳き込む中、呆然としていた八二六兵衛はハッとして手を口元へ当てて天へと叫ぶのだった。

「おぉーい、神様仏様猟兵様ぁ! お願いだから助けておくれよぉ」
灰神楽・綾
【不死蝶】
おや、八二亀田さん…のどっちかの叫び声だ
そういえば予知の話では
ツクモガミ化した箸の行動で
オブリビオンを呼び出してると言ってたけど
このススワタリも偶然の産物じゃなくて
あの箸が関わってるのかなぁ…?
と気になるけどまぁ今はとりあえず倒そうか
全く、あの二人が関わると退屈しないねぇ

梓、一人だけ空に避難するのはズルいよ
俺だって煤まみれになりたくないし
と言って焔の背に一緒に乗る

UC使用し風と水のオーラを纏ったナイフ生成
風のナイフを投げつけ
ダメージを与えると同時に煤を吹き飛ばす
地形を塗り潰されたら水のナイフを放ち
洗い流せるか試みる

もし地上にいる八二亀田さんと
目が合ったらやっほーと手とか振ってみたり


乱獅子・梓
【不死蝶】
あいつら、ナチュラルに猟兵に頼ってるな…?
この状況で八二亀田の希望通りに
颯爽と登場するのは若干癪な気もしつつ
オブリビオンが出てきてしまったからには仕方ない
それに美味い団子を煤まみれにするわけにはいかない

まずは焔を成竜に変身させ、その背に乗り上空へ移動
会場一帯は既に煤に包まれているから
空からの方が視界も良くて戦いやすいだろう
そして何より俺の白いコートを汚したくない
…ってお前も乗るのか綾

UC使用し炎と風の属性のドラゴンを召喚
まずはススワタリを生み出す屋敷の霊を
炎のドラゴンのブレスで燃やす
燃えると余計に煤が発生しそうな気もするが
すかさず風のドラゴンのブレスや羽ばたきで
吹き飛ばし霧散させるぞ



 ――おぉーい、神様仏様猟兵様ぁ! お願いだから助けておくれよぉ

「おや、八二亀田さん……のどっちかの叫び声だ」
 突然の爆発音と周囲一帯を包み込んだ煤煙で生じた人々の喧騒の中で、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)の耳は確かに八二亀田の声を捉えていた。
 隣で同じくその声を聞いていた乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は「あいつら、ナチュラルに猟兵に頼ってるな……?」とぼやきつつ、周りの空気の変化に彼らの傍でそわそわとしていた焔を呼び寄せる。
「この状況で八二亀田の希望通りに颯爽と登場するのは若干癪な気もするが、オブリビオンが出てきてしまったからには仕方ない。
 ……それに美味い団子を煤まみれにするわけにはいかないからな」
 その梓の言葉に綾はにこにこと微笑ましい目で見つめて「素直じゃないなぁ」と揶揄うが、梓はそれに対して「心の底から本心だ」とばっさりと返した。
 焔は相棒である梓へと視線を向けて様子を窺っていたが、それに気付いて無言で促した梓の意思を汲み取ってその姿を成竜のものへと変えた。
 背中を向けて伏せた焔に歩み寄って梓はその背に飛び乗る。
「(――この煤じゃまともに周囲を窺うことも難しいな)
 空からの方が視界も良くて戦いやすいだろう。飛べ、焔」
 冷静に告げられた相棒の言葉に梓はその身を起こし、大きく翼を羽ばたかせて周囲の煤を払い除けて飛び上がった。
「……そして何より俺の白いコートを汚したくない」
 静かに付け足された梓の言葉に焔は「キュウ……」と戸惑う様な声を上げるが、それはともかく煤煙で視界が遮られない程の高さまで舞い上がり、背中の相棒を落とさない程度に身震いしてその身の煤を落とす。
 それによって微かに周囲に舞った煤に片眉を上げて「まあ、焔も汚れたくないだろうな」と言いつつコートに薄く纏った煤を払った。

 その瞬間、不意に焔の体――尻尾、背中、と続けて小さな衝撃があり、何かと思ってそちらへ視線を向ければ、少し拗ねたように口を尖らせた綾が梓のすぐ後ろにさりげなく跨っていた。
「……ってお前も乗るのか、綾」
「梓、一人だけ空に避難するのはズルいよ。
 俺だって煤まみれになりたくないし」
 白よりかは汚れが目立たないとはいえ、コートが煤まみれになるのはよろしくない。
 ……今まで戦闘の際に丁寧に扱ってきたかと聞かれれば、さり気なく話題を逸らすくらいには何だかんだ雑に扱ってきたこともあったことはあるが、それはまた別である。
 梓が焔に乗って空へと避難しようとしたのを察知した時に、瞬時に近くの建物の壁に足を掛けて屋根に飛び乗り、そこから焔の尻尾へと跳躍した綾であるが、何だかんだ綾が跳躍して飛び上がれるほどの高さに梓が焔を止めていてくれたのを察していた。
「(素直じゃないなぁ)」
 どこか嬉しく思いつつ、再びこの言葉を口にしたらげんなりと口を結んだ梓の顔が目に浮かぶようで、綾は少しの笑みに代えて心のうちに留めておくことにした。

「さて、煤煙は撒けたとして肝心のススワタリはっと……ああ、いた」
 軽快な声の後に続いた冷静な、それでいてこれから始まる戦闘への高揚を隠せない綾の声に、梓はそっと息を呑みながら言葉が向けられた先へと視線を向ける。
 梓の後ろで声と同様に高揚した笑みを浮かべた綾は、すっと手を翳す。すると同時にユーベルコード「マスカレード・ブレード」が発動して、彼の周囲が歪み風のオーラを纏ったナイフと水のオーラを纏ったナイフが生成された。
「殺し合いって感じじゃないけど、……まあ他人に迷惑かけちゃ駄目だよ」
 どこか優しく諭すような言葉と裏腹に、風のナイフが鋭い音を立てて人々に襲い掛かろうとしたススワタリへ放たれる。的確に命中したそれは、ススワタリの身を斬り裂き風に流れる微量の煤へと変えた。
 目の前でススワタリが消えたのを見た男が驚きに目を見張って、綾たちの姿をみとめ歓声を上げる。
「魔法の真似事――いや、手妻みたいなものだよ」
 その声のもとへ人畜無害そうな笑顔で手を振る綾に、梓の鋭い声が向けられる。
「おい、他のススワタリに気付かれたぞ」
 注意喚起と共に焔へ合図し更に天高く逃げる。その瞬間、彼らが元いた場所でススワタリが密集したと思いきや爆ぜた。
「……っ! 危ないな」
 攻撃を避けて梓が一息吐いたと思ったのも束の間、綾の「そこ、もうちょい右、避けた方いいかも」という言葉に疑問符を浮かべながらも問いただすことなくその言葉に従う。
 すると彼らのいた場所へ大きな屋敷の霊が召喚されたと思うと、その扉が大きな音を立てて開きたくさんのススワタリが放たれた。
 屋敷の霊の直撃は避けたものの瞬時にススワタリの集団で二人の視界が奪われる。
 「おやぁ」とどこか気が抜ける綾の言葉がすぐ後ろから聞こえるが、梓の視界は真黒に染められてまともに彼の姿が見えもしない。
「ススワタリ……っ、こんな一気に集まるほど強力なやつだったか……っげほっ」
 思わず疑問が口に出た梓が煤を吸い込み咳込む。それに対して綾は口元をコートの袖で塞ぎつつ、「ああ、あれが原因かなぁ」と小さく呟いた。
「さっきススワタリが俺達が直前までいたところで爆発したでしょ。
 そいつらが爆発した後の煤が地面に落ちて黒くなってたんだよね」
「……その上に屋敷の霊が呼び出されたことで、屋敷から放たれたススワタリの量がこんな増えたと」
 「多分ね」と頷く綾の言葉に、小さくため息を吐きながらも「それならやるべきことは決まったな」と梓は不敵な笑みを浮かべる。

「――集え、そして思うが侭に舞え!」

 彼が高らかに声を上げると共に、ユーベルコード「竜飛鳳舞」が発動し二匹のドラゴンが召喚された。
 そのうちの一匹、風属性のドラゴンが大きくその翼をはためかせ瞬時にススワタリを吹き飛ばす。そうして姿を現した屋敷の霊へ炎属性のドラゴンが炎のブレスを吹きかけ見事に焼き尽くした。
 屋敷が燃えて生み出された煤も、風属性のドラゴンが生み出す強風にあっという間に流されて掻き消える。
 ――そしてススワタリと屋敷が消えた先には真黒に染まった地面が現れた。
 しかし一気に攻勢を覆されたススワタリもせめて一矢報いようと、その地面の上に集まろうとする。

「そうはさせないよ」
 予想外に楽しめたと綾は笑うものの、だからといって易々と相手に主導権を渡すのは面白くない。
 彼は水のオーラを纏ったナイフを大量に生成して手品師のようにそっと指先を動かせば、それらが大雨のように地面に降り注ぎ、地面を塗りつぶした煤を洗い流す。
 そして地面の煤と共にススワタリも大雨にかき消されていくのであった。

「おいおいおい、何だってんだ。急に業火に包まれたと思いきや、大雨降りやがって」
 げっほげっほと大きく咳込みながら八二六兵衛は突然流れてきた煤の流れからなんとか逃れて地面に這いつくばる。
 同じ様にばったりと仰向けに倒れ込んだ亀田鉢も「今日、別に雨降りそうな空模様じゃなかったと思うんだけどねえ」と八二六兵衛に返事を返し、ぼんやりと見上げた空に綾と梓の姿を見つけ、驚いて八二六兵衛に呼びかけた。
「ねえねえねえ、八二さん!
 あれ、韋駄天様じゃないかい?」
 亀田鉢に急に袖を引っ張られて「何でい」と文句を零した八二六兵衛もその言葉にはっと天を見上げてその姿を捉えた。
「――本当だ。
 おおい、やったぞ。俺達の願いが届いたんだ、亀田さん!」
 亀田鉢の腕を引っ張って立ち上がった八二六兵衛が「おおい、おおい!」と大きく声を上げて二人へ呼びかける。
 その声の方を見下ろした綾は「やっほー」と手を振り応えた。
「梓は手を振らなくていいの?」
 綾の冗談を滲ませた問いかけに「いや、そんなの要らないだろ」と梓は冷静にツッコミを入れて呆れたように腕を組んだ。

「――不動明王様だ」
 ふと零れた八二六兵衛の言葉に亀田鉢は「へ?」と小さく疑問の声と共に言葉の主の方へ目を向ける。
「違いねえ、あの威厳溢れたお姿。
 それに屋敷を燃やし尽くしたのはかの倶利伽羅竜王の力だよ、きっと! 口から吐き出された息の音で魔性の者は滅びる、その加護が顕れた時に俺達は立ち会ってしまったんだよお、亀田さん!」
「ええぇっ、かつて韋駄天様たちのお力を見た時もまさかこんなこと生涯に何度も会いはしないって思ってたのに、まさかまたこんな風に加護を目の当たりにするなんて……。
 本当に有難いことだねえ、八二さん」
「いやいやいや、よく考えてみたらさっきの大雨も加護だったんじゃ……。
 おい亀田さん、俺今凄いことを閃いちまったんだが、もしかして綾様は韋駄天様じゃなくて、雨乞いの御本尊――娑羯羅龍王様だったんじゃないか!?」
「ああ、だからもしかして韋駄天様の化身って拝んだ時に微妙な反応だったのかな、八二さん!」
「だとしたら大分罰当たりなことしちまったんじゃないか、俺達は。
……そうとなれば仕方ねえ、拝みなおすぞ、亀田さん!」
「そうだね、八二さん!」

「……おい、あの二人何だかすごく拝んでるんだが」
「よく分からないけど後々めんどくさそうだなぁ」
 急に地上で平身低頭しだした八二亀田の姿に、ちょっと困ったように眉を顰めながら綾と梓は目を合わせるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ステラ・エヴァンズ
刀也さん(f00225)と参加

ススワタリ…!またお可愛らしい…こんな状況でなければ少し戯れてみたかったです
しかし、箸様とのお約束もありますのできちんと致しませんと
声を聞く限りあちらもお元気そうですし…これもまたある種の悪運なのでしょうか

箸様を懐に仕舞、代わりに流双星を出しては星剣にて花弁に変え、周囲に舞わすようにします
これで少しは刀也さんのお手間も取れるといいですが
自身はそのまま周囲を警戒しつつ天津星にて風を纏わせた衝撃波で吹き飛ばしてゆきましょう

一通り終えましたら
刀也さんの衣服なんかの煤を払い、肌についたりしてましたら手拭きで拭っておきましょうね
守っていただいたのですからそのくらいは当然です


御剣・刀也
ステラ・エヴァンズ(f01935)と一緒に参加

ススワタリね。昔なんかの映画で見た覚えがあるんが………煤だらけにされるのはたまらん
ま、そんなもんで怯むわけじゃないが、俺の大事な女と相棒が汚れるのは好かんな
獅子吼は後ですすを払ってやるか

集団無差別体当たりなので、軌道を読むのは難しいので第六感で来た。と感じた奴からカウンターで切り捨てる
ステラの方に向かうのも、自分が斬り捨てるつもりで闘う
カウンターが間に合わず、ステラにあたりそうだったら、体を盾にして受け止める
「やれやれ。あの二人はほんと騒動に事欠かないな。さて、お前らの相手は俺たちだ。ちょっと相手してもらうぜ」



 箸を宥めてほのぼのと団子をつつくステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)の視界を黒い何かが風に漂うように横切った。ふとそちらへ目を向ければ、ススワタリのきょとんとした瞳と目が合う。
「ススワタリ……!またお可愛らしい……」
 思わず微笑んだステラからススワタリを払うように手で扇いだ御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は団子の皿を縁台に置き、考え込むように顎に手を当てながら立ち上がる。
「ススワタリね。昔なんかの映画で見た覚えがあるんだが……、……煤だらけにされるのはたまらん」
「ええ。……でもこんな状況でなければ少し戯れてみたかったです」
 彼と同じく立ち上がりステラはススワタリが流れてきた方向へと目を遣る。
 その先には突然の爆発音と異様な煤煙に騒めく人々の姿と――。

 ――おぉーい、神様仏様猟兵様ぁ! お願いだから助けておくれよぉ

 会場の何処か遠くから聞こえてきた八二亀田のどちらかの声に、困ったように笑ったステラが箸を懐にしまう。
「しかし、箸様とのお約束もありますのできちんと致しませんと。
 声を聞く限りあちらもお元気そうですし……これもまたある種の悪運なのでしょうか」
「やれやれ、あの二人はほんと騒動に事欠かないな」
 呆れ交じりの溜息と共に零した刀也は、濃くなっていく煤煙に瞳を鋭く光らせながら日本刀「獅子吼」を抜き放ち、煤煙の合間から差し込む春の陽にその刃を煌めかせた。
「ま、煤だらけ程度で怯むわけじゃないが、俺の大事な女と相棒が汚れるのは好かんな。
 ……獅子吼は後で煤を払ってやるか」
 力強い彼の言葉に頬を染めたステラであったが、若干照れの様子が混じりつつも鉄扇「流双星」をするりと取り出し優雅に開く。
「――大地に花開く星よ、我が敵を穿つ刃となれ!」
 静かに、それでいて周囲の者の気を惹くステラの声と共に、ユーベルコード「星剣」を発動する。
 彼女の声に、周囲の人々はまるで舞台で舞が始まる直前の高揚とした……同時に静寂に支配される瞬間のように彼らの目をステラへ向けたが、その瞬間、彼女が掲げる夜明け前の瑠璃色の扇が紫苑の花びらへと変わるのを目の当たりにする。
 その花弁は刀也とステラ、そしてその周囲を舞い、煤煙ごとススワタリを包み込み斬り裂いた。
 ステラ達の近くにいた小さな娘が思わずそっと手を伸ばして花びらへ触れたが、その手を傷つけることなく柔らかく舞う花びらが娘に襲い掛かろうとしたススワタリを静かに煤へと変えて地面を黒く染める。
「(これで少しは刀也さんのお手間も取れるといいのですが……)」
 娘の母親らしき人が慌てて手を引いて逃げるのを見て、それでもまだこちらが気になる様子の娘へ安心させるようにステラは笑みを向けながら、そっと傍らの刀也へ視線を向ける。

 その瞬間、刀也はハッと何かに気付いたように目を見開いてステラを庇うように前へと躍り出た。
 獅子吼の鋭い煌めきと共に放たれた一閃が、花びらの合間を縫ってステラへと襲い掛かろうとしたススワタリを斬り裂く。それを皮切りに続々と周囲を舞うススワタリが無差別に襲い掛かってきた。
「……ちっ、集団で無差別体当たりか。軌道を読むのは難しいな」
 ――となれば、考えて動くのではなく第六感でぴんときたものを斬り捨てる。
 今までの戦闘経験から瞬時にどうすべきか判断を下し、刀也は刀を構え直す。歴戦の猟兵だからこその判断はすぐに功を成した。
 彼らを取り巻くアスターの花びらである程度数を減らしたススワタリの襲撃を彼の直感は正確に悟り必要最低限の動きで刃で捉える。
 僅かに掠めて取り逃したススワタリがステラへと迫るも、残像が残るほどの速さで瞬時に追いつき捨て身で彼女を庇う。
 愛用のジャケットが煤で黒く染まるが、それに構うことなくススワタリと視線をかち合わせて獰猛な笑みを浮かべた。

「――お前らの相手は俺たちだ。ちょっと相手してもらうぜ」

 その笑みに動揺したのか僅かに動きを止めたススワタリが次の瞬間獅子吼の煌めきの餌食になっていた。

 人々の目を奪う獅子吼の鋭さと修羅の如き気迫に、ステラも思わず目が惹かれながらもふとした違和感に気付く。
「(……一部のススワタリだけ、やけに強いといいますか、刀也さんの刃をすり抜ける確率が高いような)」
 違和感を確かめるように目を凝らせば、それは確かなものであることに気付いた。
 そしてそれらのススワタリの周囲を見渡すと、彼らが通過する下の地面が煤で黒く染まっている。
「――さっきのススワタリが消えた跡の部分ですね……!」
 考えを巡らせ瞬時に答えをたたき出したステラは、舞うように薙刀「天津星」を構え、その刀身に風を纏わせて地面を覆う煤ごと上を通過するススワタリを薙ぎ払う。
 それによって大きく斬り裂かれた煤煙の合間を縫って刀也は強く踏み込んでその勢いの下にススワタリたちを一気に斬り捨てた。
 阿吽の呼吸で次々とススワタリを退治していく二人の姿はまさしく――。

「――いやあ、まるで木曽義仲と巴御前の如く!」

「『色白く髪長く、容顔まことに優れたり。強弓精兵、一人当千のつわものなり』ってやつだね、八二さん!
 刀也様も実直で豪快な太刀裁き、そして息もつかせぬ戦いの合間に感じる互いの絆、……まさにまさにって感じだよお」
「ああ、本当にここに幕の内があれば最高なんだがなあ……ってちょうどいい団子があるじゃねえか」
 やんややんやと騒ぐ八二亀田の様子に、周囲の人々も彼らに感化されたのか刀也とステラの華々しい殺陣の如き戦いに拍手歓声を送る。

「……なんだかとてもやりづらいものがありますね、刀也さん」
 思わず顔を顰めつつも頬を染めたステラの言葉に、刀也も何とも言えない顔で頷きつつそれでも正確に最後のススワタリを斬り捨てる。
 紫苑の花吹雪の中、美しくも勇猛な立ち回りは人々の歓声に包まれて幕を下ろしたのであった。

「――刀也さん」
 かけられた声に刀也が振り向けば、その頬に手ぬぐいが当てられる。
 彼の頬に手ぬぐいを当てた当人、ステラがそっと微笑めば、刀也は僅かに染めた頬を掻きつつ「……手ぬぐいが汚れるだろ」と諭すように言った。
 その言葉に笑みを深くしながら首を横に振ったステラは「守っていただいたのですからそのくらいは当然です」と囁いた。
 まだ強敵との戦いが残っている。それでも戦闘が一段落した束の間の平穏を楽しむ二人を柔らかな春の風が包み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『白鯨斎髭長ノ進』

POW   :    白鯨の魔力(物理)
単純で重い【体当たり】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    びちびちヒレアタック🐋
【胸ビレ】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    らぶすぷれ~🐳
【顔】を向けた対象に、【愛の潮吹き】でダメージを与える。命中率が高い。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠掻巻・紙衾です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「猟兵様方! 相変わらず見事な立ち回り!!」
「よっ、流石神仏の化身や名の通った武者の生まれ変わり!
 ……え、違う? いやいやいや、もうこの俺達の目は誤魔化されないぜ」
 やんややんやと囃し立てながら猟兵達を挟む八二亀田達であったが、その懐から突如箸が飛び出す。
 その箸はしゅたりと着地したかと思うと、その身を使って地面にざりざりと文字を書きつけた。

『い い 加 減 先 に 進 み ま せ ん か !?』

 顔が無いにもかかわらず、ぷんすこと怒っているのが何故か理解できてしまう様子の箸に、既に猟兵達によって確保されていた箸もそうだそうだと言わんばかりに頷くようなそぶりを見せる。
 八二亀田の絡みにうんざりし始めていた猟兵も同意する様子に、八二亀田は「おっといけねえ」と居住まいを正した。
『先程現れたススワタリは私達の仲間が本命の鯨肉を召喚しようとして失敗してしまったものでしょう。
 だとすれば私達は再び召喚するのみ! 箸たち、全員集合!!』
 そう文字が地面に刻まれた瞬間、どこからともなくわらわらと複数の箸が姿を現して、文字を書き記した箸を取り囲むようにその身を横たえる。

 とある猟兵はその様子を見てこう思ったかもしれない――この箸の並び方、まるで魔法陣みたいだな、と。

『さあ、今こそ我らの本領発揮、そして我が主のお琴様への恩返しの時!』
「お琴……? 大家の婆さんと同じ名前じゃねえか」
「あれ、本当だね八二さん」
 箸が書き記した言葉にふと気付いたように八二亀田が呟いた瞬間、全ての箸がぐるりと八二亀田の方を向き、沈黙が流れる。
『ああぁああぁあぁ、よく見たらアンタら長屋の家賃踏み倒して逃げた八二亀田じゃないか!!
 アンタらのせいで心労祟ってお琴様は体調崩されたんだぞ!』
 沈黙ののちに怒涛の勢いで地面に刻まれた言葉に、八二亀田は思わず「げぇっ!?」と声を上げる。
「お琴って同名じゃなくて同一人物かよ!」
「やばいよ、そんなことになってただなんて。しかも箸達とても怒ってるよぉ!」
『お琴様が体調崩された怨み!
 行け、白鯨斎髭長ノ進! 食材になる前にこの不届き者達をぼっこぼこにしてしまえ!!』
 その瞬間、箸達による魔法陣が光り輝き、八二亀田や猟兵――いや、それだけにとどまらない――団子の大食い会場を覆うほどの影がよぎる。
 何だ何だと人々が見上げればそこにはオブリビオン「白鯨斎髭長ノ進」が宙に浮かぶ姿があった。
 全ては八二亀田の自業自得が招いたことじゃないかと呆れて見ていた猟兵もいるかもしれない。しかし、これほどの大きさのオブリビオンが暴れれば関係ない人達にも被害が及ぶのは明白だった。

「頼む、助けてくれたら鯨肉持って婆さんのとこ謝りに行くからよお、許してくれよお」
『問答無用!』
「そんなぁ、猟兵様、猟兵様助けておくれよぉ」
 箸へ謝ってもどうにもならないと判断した八二亀田は猟兵達に縋ってその影に隠れる。

 ――仕方ない、少なくともここはオブリビオンを倒さない事にはどうしようもないのだから。
 人々を助ける情か、八二亀田への呆れか、あるいは鯨肉の味への興味か。
 そこにある思いは何であれ、猟兵達はそれぞれの得物を構えるのであった。
アウル・トールフォレスト(サポート)
(基本好きにお任せします)
「今日はどんなところに行けるのかな?」

楽観的で感情豊か、夢見る乙女な性格の少女
年相応に無邪気であり、根本が人でない故に残酷

神出鬼没に出現し、気まぐれに歩き回り、楽しげに爪を振るう
猟兵の役割は理解し依頼も一応遵守しようとするが、それはそれとして楽しそう、面白そうで物事を判断し、それを優先して行動する

バイオモンスターの特徴として、肉体は植物の性質を持つ

戦闘では怪力の発揮や身体の巨大化、鋭い爪での引き裂き、捕食等の野性味溢れる攻撃スタイル
理力の扱いも得意で、体表で自生する蔓や苔植物を操り、防御や隠密に罠等サポートも行わせる



『お琴様が体調崩された怨み! 行け、白鯨斎髭長ノ進! 食材になる前にこの不届き者達をぼっこぼこにしてしまえ!!』
 謎の魔法陣から出現した巨大オブリビオン『白鯨斎髭長ノ進』。
 巨体であるにも関わらず、可愛らしい姿であったが、騙されてはいけない。
 かつては『その姿を見ると恋愛が成就すると言われていた長生きの鯨』であったようだが、オブリビオンとなった現在は、誰からレ構わず攻撃して破壊し尽くす、破壊の権化であるのだ。

 この事件の切っ掛けを作った、八二六兵衛と亀田鉢の2人が無責任にも、寄らば大樹とばかりに猟兵の足に縋りつき、白鯨斎髭長ノ進から逃れようとアワアワすると、オブリビオンを召喚した箸達は、カチカチカチカチと箸を打ち鳴らして、怒りをあらわにする。

 その盾にされた猟兵……アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)は、その状況を面白そうに眺めていた。
 八二亀田に盾にされた理由は、アウルの影に隠れられると安全そうだからだろうが、バイオモンスターの巨体だからといって、13歳の少女を盾にするのは、いかがなものかと思われる。

「今日は、サムライエンパイアの江戸にきてみたんだけど、とっても面白い事になってるよ!」
 両足に縋りつく八二亀田が、ちょっとくすぐったいなと思いつつ、アウルは浮遊する巨大なオブリビオンを仰ぎ見る。

「恋愛成就のクジラくんなんだよね。恋って良くわからないけど、甘くて酸っぱくて不思議な味がするんだよね?」
 アウルはワクワクするように、理性を失った鯨に話しかける。
「もしかして、クジラくんのお肉は恋の味なのかな?」
 恋の味のクジラ肉、とっても興味があるし、美味しそう。
 きっときっと、眷属の果実よりも、もっともっと美味しいのではなかろうか。

『たーのーしー!』
 恋の味のクジラ肉へのワクワク感が、アウルをとても楽しい気持ちにさせると、その気持ちに応じるように、アウルの体がムクムクと巨大化していくでは無いか。
 その身長はグングンと伸びて、そして遂に、手を伸ばせば宙に浮く白鯨斎髭長ノ進に届く程にまで大きくなる。

「「ひぃぃおたすけー」」
 八二亀田は、すがりついていた13歳少女の太股が、みるみる巨大化するのに腰を抜かしつつ、慌てて逃げ出していく。
 今のアウルは、盾にするにも大きすぎたのだ。

 そして、巨大化したアウルは、
「えいやっ!」
 と、楽し気に爪を振るって、白鯨斎髭長ノ進の本皮を引き裂くと、尻尾を掴んで振り回し最高級尾の身の部位に齧りつき、大ダメージを与えてみせたのだった。

「うーん、思ったより、普通?」

 ただし、味は、普通であったらしい。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルナリリス・シュヴァリエ(サポート)
何かお困りですか? 私は旅の聖剣使いです
誰かの力になりたい、そんな思いから猟兵活動をしています
私で良ければ力になりましょう。

お人好しな性格で、並みいる敵を聖剣でなぎ払い、罠やトラブルは体当たりで乗り越えていく
そんな突撃隊長的なキャラクターです。

あとはお任せで、よろしくおねがいします。



「「ひぃぃおたすけー」」
 一方、巨大化アウルから逃げ出した、八二亀田の2人は、とても優しそうで美人でスタイルがボインボインで、更に肌色成分が多いという、男の夢と希望が詰まったような女性猟兵に左右から抱き着いて助けを求めていた。
 胸に顔をうずめるようにして助けを求める2人は、オブリビオンの危機に合っても幸せそうに見える。

「何かお困りですか? 私は旅の聖剣使いです。誰かの力になりたい、そんな思いから猟兵活動をしています。私で良ければ力になりましょう」
 抱き着いて胸に顔をうずめる不審者な八二亀田に対しても笑顔で話を聞いてあげる、ルナリリス・シュヴァリエ(剣姫サキュバス・f25397)は、まさに聖女であったろう。
 その彼女の慈愛の笑顔に絆されて、かくかくしかじかと、包み隠さず告白する八二亀田。
 その2人の告白を聞いたルナリリスは、
「では、あなた達が八二六兵衛様と、亀田鉢様で良いのですね。では……あなた達2人を捕縛させていただきます」
 と、にっこり微笑みながらヒロインオーラで2人に向けて解放した。
 八二亀田の2人は、ヒロインオーラに圧倒されると、鼻血をまきちらしながら、幸せそうに気絶していった。

「私、ここに来る前に江戸の町で情報を集めてきたのです。それによると、悪いのは、八二亀田様の2人で間違いないようです。ですので……奉行所に引き渡させて貰いますね」
 善を助け悪を挫く、聖剣使いのルナリリスは、正しい事を為す。
 こうして二人は、お縄になって年貢の納め時と相成ったのだった。
 この采配に、集まった箸達からやんやの喝采を受けたルナリリス。だが、これで事件解決とはなりはしない。
 ルナリリスの頭上には、理性を失ったオブリビオン、白鯨斎髭長ノ進の巨体が浮かび、今まさに、町を破壊しようと暴れようとしていたのだから。

 敵は空を飛ぶ巨大オブリビオン。
 守るべき町人たちがまだ多数残っている。
 状況は決して良くはない。
 だが、ルナリリスは、怯む事も揺らぐことも無く、その脅威に立ち向かう。
 それが、聖剣使いの……いや、超絶美少女の生きる道なのだ。

「どんなに険しい道のりも、過酷な運命も、私を阻む事はできません」
 ルナリリスの体が超自然的な力のほとばしりによって、光をまとい、神々しいまでの輝きに満ちる。
 そして、彼女は舞い踊るように地を蹴ってジャンプすると、聖剣アストライアを振るって、今まさに町を破壊しようとしていた白鯨斎髭長ノ進を正面から受け止め、斬り裂き、そして、押し戻してみせたのだ。
 その後、すっかり、ルナリリスのファンと化してしまった箸達が、やんややんやとあげる歓声を効果音に、ルナリリスは華麗に着地してみせた。

 それは、まさに、超絶美少女の真骨頂であっただろう。

成功 🔵​🔵​🔴​


※トミーウォーカーからのお知らせ
 このシナリオは、第三章からトミーウォーカーの「一本三三七」が代筆しています。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
鳩麦・灰色(サポート)
「ウチ、やなくて私も手伝わせてもらうよ」
「アンタ(敵)はそこで黙ってて」

◆特徴
独り言は関西弁
話言葉はほぼ標準語
脱力した口調
『敵さん』の行動の意図を考える傾向があるが内容に関わらず容赦しない

◆行動
【ダッシュ】【クライミング】【地形の利用】で場所を問わず速く動く事が得意

戦闘は速さで回避重視
味方が居れば武器の音で【存在感】を出し率先して狙われにいく

攻撃は主に【衝撃波】を込めた鉄パイプを使用、空砲銃は場合に合わせて使用

◆UC
索敵、回避特化ではUC『三番』
集団戦では『四番』
敵単体では『一番』か『二番』を使用する

◆日常
日常は何かしつつ寝落ちる事が多い


協力絡みセリフ自由
他おまかせ。よろしくおねがいします!



 華麗な着地を決めたルナリリス。
 しかし、一度は押し戻された白鯨斎髭長ノ進は、怒りと狂乱と共に再度、襲い掛かってくる。
 このままでは再び町が危険に晒される。
 その危機に駆け付けたのは、鳩麦・灰色(音使いおおかみ・f04170)だった。
 灰色は、改造空砲用拳銃を構えると、白鯨斎髭長ノ進に向けて撃ち放った。
『鎮まれ、"裏二番"!』
 改造空砲用拳銃から放たれた特殊な空砲が、白鯨斎髭長ノ進の体を穿つ事無く、その精神に痛撃を与える。
 白鯨斎髭長ノ進は、一瞬、自分が何をしているか忘れたような呆けた表情を浮かべると、前進を止めて、空中にプカプカと浮遊しはじめた。
 灰色の攻撃が、白鯨斎髭長ノ進の戦闘意欲を奪い取ったのだ。

 再び、やんややんやと箸たちが盛り上げる。
 自分達が召喚したオブリビオンであるが、既に目的の2人がルナリリスに捕縛されており、ルナリリスのファン化している箸達は、その場のノリで猟兵達を応援しているようだ。

 いや、本当にそうなのか?

「アンタらは、そこで黙ってて」
 その疑問に答えるように、自分に声援を送ってくれた箸達を、灰色は冷たい声で掣肘すると、武器を手製の音波振動鉄パイプに持ち変えて、その切っ先を箸達に向けてみせた。

「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」

 箸達は、その灰色の行動に虚をつかれて、間抜けな声をあげたが、灰色はその挙動に騙される事も無い。

「少し考えればわかる事だよね。あのオブリビオンを召喚したツクモガミが、オブリビオンでない筈がないって事がね」
 普通のツクモガミが、魔術陣を操ってオブリビオンを召喚する?
 ツクモガミにそんな力は無い。
 なんらかの偶然で、オブリビオンが召喚されてしまうような事故はあるかもしれないが、この箸達は『オブリビオンがオブリビオンである事を理解して召喚』しているので、その可能性も無い。

「つまり、今回の事件の元凶はアンタらなわけだよ」
 灰色はそう宣言すると、鉄パイプを持つ手に力を込める。
『広がれ、"四番"!』
 灰色の宣告と同時に、鉄パイプが激しく振動を始め……。

「「「「「「「「「「いやー」」」」」」」」」」

 正体が露見した箸達が逃げようと慌てふためくが、それよりも鉄パイプから衝撃波が放たれるのが早く、箸達は、衝撃波によって木端微塵に破壊されていった。

「これで元凶は撃破完了だね。あとは、あのデカブツだけだよ」
 灰色はそういうと、未だに混乱して宙に浮いている白鯨斎髭長ノ進に対して、武器を持ち換えて追撃を加えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鬼桐・相馬(サポート)
羅刹の黒騎士×ブレイズキャリバー(26歳男)
口調:冷静な男性口調(語尾に「!」がつく喋り方はしません)
「来い」
「この程度の傷、炎で補える」

冷静で感情が表に出ない為、喜怒哀楽が分かりづらいです。戦闘時も淡々としています。

[冥府の槍]全体を使った突き・抉るような攻撃法です。槍の炎は相馬が負傷した場合に滲む炎と同じ青黒い色をしています。
攻撃は主に[怪力]をのせ[部位破壊][串刺し][傷口をえぐる]。必要があれば[ヘヴィクロスボウ]で遠隔攻撃します。防御は[戦闘知識]から相手の攻撃を[見切り][武器受け]します。
苦戦している味方は[かばう]。炎が補うので怪我をする事に無頓着で、逆に威力上昇を狙います。



 灰色の追撃を受けて戦闘意欲を失い、ぷかぷかと浮かぶだけの白鯨斎髭長ノ進を前にして、鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)は、油断なく冥府の槍を構えていた。
 敵の戦闘意欲が消えた今が、攻撃の絶好の機会なのは間違いない。
 だが、この好機であっても、迂闊に攻撃する事は出来ない。

「灰色が使ったユーベルコードの効果は、時間の経過かダメージを与える事で解除されるだろう。つまり、町に被害を出さずに確実に撃破するには、一撃であの巨体を燃やし尽くさねばならい」
 相馬は、戦況をそう分析すると、自らの力の全てを燃やし尽くすように力を高めはじめる。
 手にした冥府の槍が歓喜の雄叫びをあげた。
 だが、相馬は、この程度で満足しない。

「冥府と天獄の力。侵食されていても逆に利用するだけだ」
 自らの力を限界まで引き出した相馬は、更なる力を求めて、生と死を分つ狭間の力へと手を伸ばす。
 額の角が赤黒く輝き、金の瞳の奥底に恐ろしい怪物の影が映り込み、所有者の悪意を喰らい力に変える冥府の槍ですら、その強大な力に翻弄され、苦悶の叫びをあげつづける。

「まだだ、お前の力にはまだ先がある。そうだろう?」
 苦悶の叫びをあげる冥府の槍を愛撫するように撫でつけた相馬は、更に、力を高めていく。
 冥府の槍からは、悪意と共に群青炎が相馬を焼き尽くさんと燃え上がり、生あるもの全てが畏怖せざるを得ない、狂相を映し出した。

「この技は、本来は市街地では使用できないモノだ。だが、お前程の巨体であれば……、市街地を破壊し尽くす、この一撃を全て、その身で受け止めてくれるだろうよ」
 そして、最大までに力を高めた相馬は、その悪意の炎と共に地を蹴り、白鯨斎髭長ノ進の頭上高く舞い上がると、その悪意の炎を振り下ろした。
 戦意を失い呆けていた筈の白鯨斎髭長ノ進は、この攻撃で狂乱を取り戻したが、己の狂乱さえも上回ろうとする、群青の悪意に魅入られるように、相馬の前に身を投げ出す。
 それはまるで、自ら燃え尽きる事を望んでいるかのように……。

『その命脈の火、落としてやろう』
 白鯨斎髭長ノ進の覚悟を受け取った相馬は、極限にまで至った冥府の槍を悪意で、かのオブリビオンを貫き通す。
 そして、槍に宿った悪意とオブリビオンの狂乱が核融合したかのような轟音が轟き、宙に浮いていた白鯨斎髭長ノ進が爆散。その身は、千々のクジラ肉と化して、町に降り注いでいった。

「できうれば、理性を失う前のお前に会いたかったな」
 力を出し尽くし、膝を着いて荒い息を整えた相馬は、クジラ肉を拾おうとする平和な町民達の様子を眺めながら、今は亡き強敵に思いを馳せたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年07月08日


挿絵イラスト