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再来・倒怪道中膝栗毛~九十九の恩返し~(作者 梅法師
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●とある家のとある片隅にて
 ――カタカタ、カタカタ。
 ――カタ、カタカタ。

●とある家にて
「あらま、またお箸が少なくなっている」
 戸を開けた女が怪訝そうに眉を潜めた。
「まぁ、たまにしか来ない客人用に多めに置いている箸だからいいんだけどさ」
 それほど高価な箸でもないし盗まれるものではない。きっと転がして何処かへやってしまったのだろう。
 ――でも、先日も箸が少なくなって、そしてその後また戻ってきたような。
「盗んで使って律儀に返しにくる泥棒でもいるのかね」
 女は困ったように呟いた後、己の言葉にくすくすと笑って戸をそっと閉めた。

●江戸の端にて
 関所を越えて少し着物が汚れた男二人組が、はぁーっと大きなため息を吐く。
「やぁれやれ、ようやく江戸だねぇ八二さん」
「全くだよ亀田さん、出た時は必死だったせいかそれほど気にならなかったけどこんなに関所って面倒だったかねぇ。それともやっぱり先日の大戦のせいか」
「ほんと世知辛いもんだねぇ八二さん」
 この二人、八二六兵衛と亀田鉢は、先日訳あって江戸の職場をクビになり、滞納していた家賃に構うことなく退職金で酒をかっくらい、それを嫗と呼んでも差し支えのない年齢の大家に見咎められたのを大の大人が本気で撒いて江戸を飛び出したどうしようもない男達であったが、飛び出した先でオブリビオンに襲われそれを猟兵達に助けられて改心し大家さんに謝ろうと再び江戸に戻ってきたのである。
「いやぁ、やっぱり仕事探すなら江戸だな江戸。
 あの宿場町も人の出入りは多いが賃金がちとなぁ」
「あと三食に一回は素麺食うのが風習ってお腹がもたないよねぇ八二さん」
「いくら名産といえあそこまで来ると狂気を感じるよ亀田さん」
 ……恐らくきっと江戸に戻ってきたのは改心が故である、そうであってほしい。
「あーぁ、とは言え取り敢えず飯だよ飯。
 旅路の分ぎりぎり稼いで出てきたのはいいものの、ずっと歩き通しだったからまともなまんまが食べたいねぇ」
「違いないよ、……ってあれ、八二さん彼所を見てごらんよ」
「何だってぇんだ、って、おぉ……?」

●グリモアベースにて
「初めましての方は『こんにちにゃ』、二度目ましての方は『結局あいつらに改心は無理だったんだにゃ諦めろ』なんだにゃ」
 肩を竦めてやれやれだぜといった様子の八角鷹・瓊色(無限の想像・夢幻の創造・f14709)は近くに集まった猟兵達へ予知を告げる。
「まぁどうしようもない八二亀田という二人組が久しぶりに戻ってきた江戸でどうやらオブリビオンが関わる騒動に巻き込まれるみたいなのにゃ」
 今までの語り口から興味を失いかけていた猟兵達もオブリビオンに関する騒動と言われればその目を真剣なものへと変える。
「ざっくり予知できている範囲で言えば、とある女の人が大事に使い続けていた箸がツクモガミ化しかけているみたいなんにゃけど、その箸が女の人へのご恩返ししたいとあれこれ行動するのが江戸の町中にオブリビオンを呼び出す事態になるみたいなんだにゃ」
 一体何がどうなればそんな事態になるのかと、ある猟兵は遠い目をして、またある猟兵は頭を抱える。
「その気持ちは分かるんにゃけどこのままオブリビオンが江戸で大暴れしたら大変なのにゃ。
 何しろその体はとってもめっちゃ大きくて……食べればとってもめっちゃばりばり美味しいそうなんだにゃ」
 瓊色の方からじゅるりとよだれをすする音が聞こえた気がするが、それはさておき話は続く。
「取り敢えずその騒動が起きる場所の近くで食べ放題のイベントがあるみたいでそこに八二亀田もいるみたいだし、皆には一足先にそこへ行ってもらって依頼がてら是非楽しんできてほしいんだにゃ。
 何やらその大きいオブリビオン以外にもちらほら敵が出てくるみたいだから『腹が減っては戦ができぬ』みたいなことにならないように、頑張って行ってらっしゃいにゃー!」





第3章 ボス戦 『白鯨斎髭長ノ進』

POW ●白鯨の魔力(物理)
単純で重い【体当たり】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD ●びちびちヒレアタック🐋
【胸ビレ】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ ●らぶすぷれ~🐳
【顔】を向けた対象に、【愛の潮吹き】でダメージを与える。命中率が高い。
👑7

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠掻巻・紙衾です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「猟兵様方! 相変わらず見事な立ち回り!!」
「よっ、流石神仏の化身や名の通った武者の生まれ変わり!
 ……え、違う? いやいやいや、もうこの俺達の目は誤魔化されないぜ」
 やんややんやと囃し立てながら猟兵達を挟む八二亀田達であったが、その懐から突如箸が飛び出す。
 その箸はしゅたりと着地したかと思うと、その身を使って地面にざりざりと文字を書きつけた。

『い い 加 減 先 に 進 み ま せ ん か !?』

 顔が無いにもかかわらず、ぷんすこと怒っているのが何故か理解できてしまう様子の箸に、既に猟兵達によって確保されていた箸もそうだそうだと言わんばかりに頷くようなそぶりを見せる。
 八二亀田の絡みにうんざりし始めていた猟兵も同意する様子に、八二亀田は「おっといけねえ」と居住まいを正した。
『先程現れたススワタリは私達の仲間が本命の鯨肉を召喚しようとして失敗してしまったものでしょう。
 だとすれば私達は再び召喚するのみ! 箸たち、全員集合!!』
 そう文字が地面に刻まれた瞬間、どこからともなくわらわらと複数の箸が姿を現して、文字を書き記した箸を取り囲むようにその身を横たえる。

 とある猟兵はその様子を見てこう思ったかもしれない――この箸の並び方、まるで魔法陣みたいだな、と。

『さあ、今こそ我らの本領発揮、そして我が主のお琴様への恩返しの時!』
「お琴……? 大家の婆さんと同じ名前じゃねえか」
「あれ、本当だね八二さん」
 箸が書き記した言葉にふと気付いたように八二亀田が呟いた瞬間、全ての箸がぐるりと八二亀田の方を向き、沈黙が流れる。
『ああぁああぁあぁ、よく見たらアンタら長屋の家賃踏み倒して逃げた八二亀田じゃないか!!
 アンタらのせいで心労祟ってお琴様は体調崩されたんだぞ!』
 沈黙ののちに怒涛の勢いで地面に刻まれた言葉に、八二亀田は思わず「げぇっ!?」と声を上げる。
「お琴って同名じゃなくて同一人物かよ!」
「やばいよ、そんなことになってただなんて。しかも箸達とても怒ってるよぉ!」
『お琴様が体調崩された怨み!
 行け、白鯨斎髭長ノ進! 食材になる前にこの不届き者達をぼっこぼこにしてしまえ!!』
 その瞬間、箸達による魔法陣が光り輝き、八二亀田や猟兵――いや、それだけにとどまらない――団子の大食い会場を覆うほどの影がよぎる。
 何だ何だと人々が見上げればそこにはオブリビオン「白鯨斎髭長ノ進」が宙に浮かぶ姿があった。
 全ては八二亀田の自業自得が招いたことじゃないかと呆れて見ていた猟兵もいるかもしれない。しかし、これほどの大きさのオブリビオンが暴れれば関係ない人達にも被害が及ぶのは明白だった。

「頼む、助けてくれたら鯨肉持って婆さんのとこ謝りに行くからよお、許してくれよお」
『問答無用!』
「そんなぁ、猟兵様、猟兵様助けておくれよぉ」
 箸へ謝ってもどうにもならないと判断した八二亀田は猟兵達に縋ってその影に隠れる。

 ――仕方ない、少なくともここはオブリビオンを倒さない事にはどうしようもないのだから。
 人々を助ける情か、八二亀田への呆れか、あるいは鯨肉の味への興味か。
 そこにある思いは何であれ、猟兵達はそれぞれの得物を構えるのであった。