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十二時を過ぎても(作者 ミチ
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●十二時の鐘を鳴らさないで
 舞踏会が開かれるのは、いつも夜。
 だから、ずっと朝が来ないようにするの。
 ずっと夜なら、いつまでも舞踏会を開いていられる。十二時を過ぎたって帰らなくてもいいの。だって、明けない夜なのだから。
 いつまでも、いつまでも、終わらない舞踏会を開くの。きっと、きっと王子様が私を迎えに来てくれるわ。
 そうしたら。
 王子様なんて、引き裂いてあげるの。
 私を助けてくれなかった役立たずの王子様!

 願いはすでに歪み、自らがオウガと化していることも気づかず、彼女は踊り続ける。

●グリモアベースにて
 集まった猟兵達を見て、フラム・フロラシオン(the locked heaven・f25875)は頭を下げた。
「来てくれてありがとう。……あのね、オウガのゆりかごって呼ばれるところを知ってる?」
 訊ねる顔はどこか言い辛そうに歪んでいて。
「アリスラビリンスのとある国にね、オウガになってしまったアリスがいるんだ」
 夜の終わらない国と呼ばれる場所に、そのオウガが居るのだという。それだけなら悲しいけれどままあること。
 しかし、問題はそれだけではなかった。フラムが語る事には、どうやらそのオウガになったアリスが、その国を絶望の国へと作り変えてしまったのだという。
 アリスもその国も絶望に染まりきり、もう二度と戻る事はできない。
「そのアリス…いやオウガ、かな。彼女は嫉妬のシンデレラと呼ばれてる」
 国の中央、かつては自分の扉があったところに城を築き、終わらない舞踏会を開いて『王子様』を待っているのだという。
 元は内気で努力家なただの少女だったそうだ。だが、彼女を襲った不運とこの国の持つ狂気が、彼女の持っていた『嫉妬』を増幅させ、オウガへと変えた。
 そう、この国は厄介な性質を持っている。空にいつも浮かんでいる月の光が、立ち入った者をすべて狂気へといざなうのだ。
「今は、オウガの持つ性質が色濃く出ているみたいだけど…大切なひとや、もの。これまでの自分。…そういうものへの、嫉妬や疑念を生む幻が見えるようになっちゃうみたいなんだ」
 抗うのも良いだろう。幻と割り切って、思う様吐き捨ててしまうのもいいかもしれない。とにかく、何らかの対策は必要だろう。
「つらい思いをさせてしまう事になるかも知れないけれど」
 フラムはもう一度、深々と頭を下げた。
「どうか、彼女と絶望の国を、終わらせてあげてくれないかな」


ミチ
 はじめまして、もしくはこんにちは。ミチと申します。
 お目にとめて頂きありがとうございます。
 皆さまの物語を彩るお手伝いが出来ればと。頑張ります。

●流れ 
 1章:冒険(狂気に抗い、城へ向かう)
 2章:ボス戦(嫉妬のシンデレラ)
 3章:集団戦(???)

●第1章
 『夜の終わらない国』と呼ばれる、花に溢れた元は美しかった国。空にはいつも満月が浮かんでいます。
 人に狂気をもたらすその月は、猟兵に様々な幻影を見せます。
 が、現在はこの国の主のオウガ『嫉妬のシンデレラ』の影響を強く受け、大切な人やもの、自分自身に関する嫉妬や疑念などの感情を増幅します。それに関する幻影が目の前に姿を見せる事もあるでしょう。
 耐えるも感情を発散するも自由です。抗いつつお城まで向かってください。

●第2章
 オウガとなったアリスを救う事は出来ませんが、戦いの中で絶望を少しでも和らげることができれば、第3章の敵戦力に影響を与えます。

●第3章
 オウガのゆりかごから生まれたオウガの群れとの戦いとなります。

●その他
 2章以降、冒頭に断章を挟んでからプレイング受付となります。
 また、章途中からの参加も歓迎です。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております!
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第1章 冒険 『狂気に満ちた満月の下』

POW狂気にただひたすら耐える。
SPD狂気を紛らわせたり軽減するような方法を取る。
WIZ狂気に陥っても問題ないような対策をとっておく。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


リグ・アシュリーズ
戻れなくなった元アリス。止めてあげたいけれど。
困ったわね……満月は、相性悪いのよ。

城へ向かう道中、ただでさえ狂気を呼ぶ月と、
人狼への変化の二重奏に耐えなくちゃ。
元から人を羨ましいとは思わないけど、一つだけ。
私がもし、人狼病の感染者じゃなかったら?
満月を見るたび、私が私でなくなる恐怖に
耐えなくてもいいのかしら。そして、何より――。

危うく獣の姿になりかけた所で、
友だちから貰った狼と猫のチャームが揺れて。
ううん、ちがうわ。私は私。
どんな姿になっても皆の友だちって、認めてくれたじゃない。

自分の頬に、弱気に張り手をかまして前を向く。
これくらい、なんだっていうの。
待ってて。あなたの絶望、終わらせに行くわ!



 空から差し、辺りを青く染める光。
 それに照らされ一斉に咲き誇る花々。
 本来ならば美しい景色だっただろう。しかし、リグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)は辺りを見回し嘆息した。
「戻れなくなった元アリス。止めてあげたいけれど……」
 快活で笑顔の似合う彼女らしからぬその様子は、紛れもなくこの空に浮かぶ白い月のせいだ。
「困ったわね……満月は、相性悪いのよ」
 人狼の病をその身に宿す彼女にとって、満月は喜ばしいものではなかった。この光を浴びている間、人狼への変化とこの国のもたらす狂気、その二つに耐えなければならない。
 城へ向かう道のりは苦しいものになりそうだと思いつつも、それでもリグは足を止めなかった。
 リグは元々人を羨むたちではない。それでも、この月に照らされていると、心に浮かぶことがある。
(「私がもし、人狼病の感染者じゃなかったら?」)
 それは、普段はあまり意識に上らない問い。それが意識的なものであれ無意識的なものであれ、思い悩んでもどうにもならないことだと彼女は知っていた。時間をそれに費やすよりも、愛する旅に出かけ、まだ見ぬ景色をもっと目にしたい。そう思っているはずなのに――満月が空に浮かぶ度、時折心を過る問い。
(「満月を見るたび、私が私でなくなる恐怖に、耐えなくてもいいのかしら」)
 獣と化し、誰かを傷つける恐怖。今までに向けられたことのある、あの目。
 そして、何より――
 目を伏せたリグの身体を淡い違和感が覆い始める。覚えのある感覚だ。耳が、爪が伸び、身体が毛皮で覆われていくそれは、リグをひどく落ち着かない気持ちにさせた。
 抗おうにも、月の狂気に心はかき乱されままならない。苦しみの中必死に耐えていたが、それでも身体は獣へと変わっていこうとする。
 引き返すべきだろうか、それとも、いっそ身を委ねてしまったら。
 一瞬浮かんだ思考に染められそうになる彼女を引き留めるように、ちり、と小さく何かが鳴る。
 目を向ければ、そこには友人から貰った小さなチャームがあった。跳ねる銀狼に戯れる紅猫がリグを見つめている。その姿に、赤い髪の少女の姿がだぶって見えた。
「そうだ、私は……」
 どんな姿になっても、リグはリグで、友だちなのだと。そう認めてくれた大切な友人達の顔が浮かぶ。黒い狐耳の青年、猫のように愛らしい紅の少女、鈴蘭を宿した小鳥、それから、それから――。
 思い起こすたびに胸の内に浮かぶ安らぎとあたたかさが、狂気を打ち払う。
 気付けば、獣への変化は収まりつつあった。 ふと触ってみた耳も元通りだ。
 ぺち、と両頬を叩いて、リグは気合を入れ直す。
「そうよ、これくらい、なんだっていうの」
 上げた顔に、もう先程までの暗い色はなかった。大切な人達のことを思えば、苦しい道でも進んでいける。それを改めて感じたからだ。
 リグは力強い足取りで、月光の中を進んで行く。オウガと化してしまった少女を思いながら。
「待ってて。あなたの絶望、終わらせに行くわ!」
大成功 🔵🔵🔵

ガルディエ・ワールレイド
◆嫉妬の対象(選択UC)について
選択UCは実際には使用せず
UC設定にある騎士が嫉妬の対象
それは竜殺しの騎士、魔王を討伐せし勇者、幾多の死地を乗り越えた英雄

嫉妬を完璧とは言えないまでも、受け入れつつ進む

◆心情
(嫉妬の対象の騎士が見える)
おいおい、そいつは卑怯だろ
その騎士には勝てねぇよ

……
変だな……そう思っていた筈なのに……
俺は嫉妬しているのか……?

どうやら、そのようだ。
確かに、俺では勝てなかった敵を斬り伏せ続けた、その力が妬ましいらしい

この気持ちは決して心地よいものじゃねぇが……
絶対に自分では届かないと諦めよりは前向きかもな
嫉妬も含めての俺だ
今は難しくとも、いつか克つ
自分の心にも、理想の騎士にも



 甘い花の香が漂い、静かに月光差す中を、ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)は歩く。
 嫉妬、と聞いた時、ガルディエの心の内に浮かぶものはそう多くなかった。あまりそういった感情を抱いた事がそもそもあまりなかったからだ。
 それゆえに、何が見えるのだろうと彼は想いを巡らせる。
 歩いても歩いても、何も現れる気配はない。このまま城に着いてしまうのだろうか…段々とそう思い始めるも、月の光は確かに彼を蝕んでいたようで。
 ふと、目の前が歪む。空間を捻じ曲げるように景色が一瞬ひしゃげ、そしてそこに立っていたのは――白銀の鎧を纏った『だれか』。
「おいおい、そいつは卑怯だろ」
 ガルディエは彼を目にしたことはなかった。しかし、彼の事はとてもよく知っていた。
 それは、かつての故郷で。誰かが語ってくれた物語の中で。竜殺しの騎士、魔王を討伐せし勇者、幾多の死地を乗り越えた英雄。
「そいつには……その騎士には、勝てねぇよ」
 ガルディエは思わず皮肉めいた、観念したような笑みを浮かべる。
 胸に抱くそれへの想いは、憧れや理想であって、決して嫉妬などではない。そのはずだ。
 それなのに、心の内に小さく燻るような奇妙な感覚を覚える。ガルディエには、初めその正体が分からなかった。
 しかしこの状況下、ひとつの答えに行き当たる――白い月の光が、あまりにもしらじらと、その心の内を照らし出しているのだと。
(「………」)
 その事実に気づき、ガルディエは不思議そうに目を伏せる。自らの理想。そう思っていたはずなのに。
「変だな……」
「俺は、嫉妬しているのか……?」
 それは、普段の彼からすれば思いもよらない答えだった。
 ガルディエの抱く理想の騎士は、ただの夢や幻の存在ではない。
 ワールレイドの騎士。
 それは、伝説に語られる騎士の名前だ。
 彼と同じ家名を頂いたその騎士の物語は、今では御伽噺として彼の故郷に残っている。ガルディエは昔から、その物語が好きだった。
 白銀の鎧を纏い、青い光を操る騎士。例えそれが御伽話だとしても、幼い頃から繰り返し聞いたならば、それは現実と心に根付いたものへと育つのだ。
 だから、彼にとって「御伽噺の騎士」は、ただの物語の中の存在ではない。
 追い求める彼の標。
 だからこそ、嫉妬などという感情を抱くはずがないと、そう思っていたのだ。
 伝説に残る英雄、ガルディエには勝てなかった敵を切り伏せた、その力に憧れた。そこに嫉妬が芽生えていたなどと、思いもしなかった。
 じりじりと痛むこの感情は、決して心地よいものではない。しかし――
「絶対に自分では届かないと諦めよりは前向きかもな」
 ふ、と諦めたようにガルディエは笑む。そう、この想いは彼が剣を手にし理想の騎士となるべく戦い、前に進んでいる証だ。
 遠くから憧れを抱くだけなら、嫉妬などするべくもない。近い存在だと理解するからこそ、嫉妬が生まれるのだ。
「嫉妬も含めての俺だ。今は難しくとも、いつか克つ」
 自分の心にも、理想の騎士にも。
 そう言い放つと、目の前の騎士の幻は月光に溶けて霧散する。
 その姿が消えた後の道を踏みしめ、ガルディエは先へ進むのだった。
大成功 🔵🔵🔵

子犬丸・陽菜
年齢的にあたしとおなじくらいなのかな?
だから気持ちはわからなくはないよ、でも、そういう道を選んだんだね。

うん、嫉妬。
あたしがもし普通だったら?
こんな道を選ばなかったら、ただの女の子として生きていたのかな?
こんな、拷問具で、相手を、う…。
でも、それは…。

この思考は危ないね。
依代の宝珠を強めに発動して苦痛で自分を保つよ。
内臓を掻き回される痛み、感覚、音で自分を見失わないように。
これこそが、あたし、だから。
わざと激しく内臓を掻き回します。
さらに枷を自分にかけ、増幅。
苦しくても前へ!


あなたのぶんまで苦しんであげる、だから。
もう夢から覚める時間だって教えてあげなくちゃね。

アドリブ等歓迎です。



 花畑の向こう、月明かりに照らされる城を眺めて、子犬丸・陽菜(倒錯の聖女・f24580)は思う。
 そこに居るであろう、今はオウガとなったアリスの事を。
(「年齢的にあたしとおなじくらいなのかな?」)
 だから、気持ちは分からなくはない。けれど、彼女はそういう道を選んだんだね、と陽菜は目を伏せる。ただただその事実が哀しかった。
 しかし、そんな彼女の心を、じわじわと蝕むものがあった。
 この国に足を踏み入れた時から、彼女の心と思考を染めようとする月の狂気――嫉妬の情。ここまでの道のりを何とか耐えて来たが、それでもその影響からは逃れられない。
(「あたしがもし普通だったら?」)
 その問いは、陽菜の心に浮かんでは彼女を苛んだ。
(「こんな道を選ばなかったら、ただの女の子として生きていたのかな?」)
 こんな拷問具で、相手を、自分を、苦しめる事もなかったのだろうか。
 その時の苦痛を思い出し、陽菜は自分の身体を抱きしめた。
(「でも、それは…。」)
 それは、本当に自分なのだろうか?
 陽菜はかぶりをふる。考えてみても答えは出ない。拷問の痛みは、彼女を形作る大きなものだ。それがない自分は、どこか遠いところのもののように感じられた。
 だからこそ思う。もし自分がそうであったなら、ごく普通の平和で平凡な少女として生きられていたのだろうか、と。
「この思考は、危ないね」
 そんな空想に思考がもっていかれそうになる。いくら考えても、夢想しても、それはどうにもならないことだ。
 陽菜にとって、現在の自分こそが自分なのだから。
 そう強く心に念じて、依代の宝珠を発動させる。宝珠がきらりと光ると、陽菜の体内を言葉にしがたい痛みが襲った。
 内臓を掻き回される痛みと音。それは、陽菜にとってはすっかり馴染んだものの、耐えきるには辛い痛み。
 けれど、この痛みが自分を自分でいさせてくれる。
「これこそが、あたし、だから」
 もっと強く。幻に蝕まれる頭を覆う霧を痛みで追い払う様に、より強い痛みを求めて、陽菜は宝珠に力をこめる。
 視線を自分自身に向け「知られざる枷」を発動すると、倍加した痛みが彼女を襲った。
「ん、ぐ……ぐぅ……っ!!」
 苦し気な声を漏らしながら、それでも陽菜は進む。
 苦痛にふらつく足取り、けれども確かに前へと。
「あなたのぶんまで苦しんであげる、だから」
 徐々に近づく城、その塔の上。おそらくそこに彼女はいるのだろう。
 それを見上げる陽菜の微笑みは、どこまでも優しかった。
「もう夢から覚める時間だって教えてあげなくちゃね」
大成功 🔵🔵🔵