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十二時を過ぎても

#アリスラビリンス

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#アリスラビリンス


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●十二時の鐘を鳴らさないで
 舞踏会が開かれるのは、いつも夜。
 だから、ずっと朝が来ないようにするの。
 ずっと夜なら、いつまでも舞踏会を開いていられる。十二時を過ぎたって帰らなくてもいいの。だって、明けない夜なのだから。
 いつまでも、いつまでも、終わらない舞踏会を開くの。きっと、きっと王子様が私を迎えに来てくれるわ。
 そうしたら。
 王子様なんて、引き裂いてあげるの。
 私を助けてくれなかった役立たずの王子様!

 願いはすでに歪み、自らがオウガと化していることも気づかず、彼女は踊り続ける。

●グリモアベースにて
 集まった猟兵達を見て、フラム・フロラシオン(the locked heaven・f25875)は頭を下げた。
「来てくれてありがとう。……あのね、オウガのゆりかごって呼ばれるところを知ってる?」
 訊ねる顔はどこか言い辛そうに歪んでいて。
「アリスラビリンスのとある国にね、オウガになってしまったアリスがいるんだ」
 夜の終わらない国と呼ばれる場所に、そのオウガが居るのだという。それだけなら悲しいけれどままあること。
 しかし、問題はそれだけではなかった。フラムが語る事には、どうやらそのオウガになったアリスが、その国を絶望の国へと作り変えてしまったのだという。
 アリスもその国も絶望に染まりきり、もう二度と戻る事はできない。
「そのアリス…いやオウガ、かな。彼女は嫉妬のシンデレラと呼ばれてる」
 国の中央、かつては自分の扉があったところに城を築き、終わらない舞踏会を開いて『王子様』を待っているのだという。
 元は内気で努力家なただの少女だったそうだ。だが、彼女を襲った不運とこの国の持つ狂気が、彼女の持っていた『嫉妬』を増幅させ、オウガへと変えた。
 そう、この国は厄介な性質を持っている。空にいつも浮かんでいる月の光が、立ち入った者をすべて狂気へといざなうのだ。
「今は、オウガの持つ性質が色濃く出ているみたいだけど…大切なひとや、もの。これまでの自分。…そういうものへの、嫉妬や疑念を生む幻が見えるようになっちゃうみたいなんだ」
 抗うのも良いだろう。幻と割り切って、思う様吐き捨ててしまうのもいいかもしれない。とにかく、何らかの対策は必要だろう。
「つらい思いをさせてしまう事になるかも知れないけれど」
 フラムはもう一度、深々と頭を下げた。
「どうか、彼女と絶望の国を、終わらせてあげてくれないかな」


ミチ
 はじめまして、もしくはこんにちは。ミチと申します。
 お目にとめて頂きありがとうございます。
 皆さまの物語を彩るお手伝いが出来ればと。頑張ります。

●流れ 
 1章:冒険(狂気に抗い、城へ向かう)
 2章:ボス戦(嫉妬のシンデレラ)
 3章:集団戦(???)

●第1章
 『夜の終わらない国』と呼ばれる、花に溢れた元は美しかった国。空にはいつも満月が浮かんでいます。
 人に狂気をもたらすその月は、猟兵に様々な幻影を見せます。
 が、現在はこの国の主のオウガ『嫉妬のシンデレラ』の影響を強く受け、大切な人やもの、自分自身に関する嫉妬や疑念などの感情を増幅します。それに関する幻影が目の前に姿を見せる事もあるでしょう。
 耐えるも感情を発散するも自由です。抗いつつお城まで向かってください。

●第2章
 オウガとなったアリスを救う事は出来ませんが、戦いの中で絶望を少しでも和らげることができれば、第3章の敵戦力に影響を与えます。

●第3章
 オウガのゆりかごから生まれたオウガの群れとの戦いとなります。

●その他
 2章以降、冒頭に断章を挟んでからプレイング受付となります。
 また、章途中からの参加も歓迎です。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております!
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第1章 冒険 『狂気に満ちた満月の下』

POW   :    狂気にただひたすら耐える。

SPD   :    狂気を紛らわせたり軽減するような方法を取る。

WIZ   :    狂気に陥っても問題ないような対策をとっておく。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リグ・アシュリーズ
戻れなくなった元アリス。止めてあげたいけれど。
困ったわね……満月は、相性悪いのよ。

城へ向かう道中、ただでさえ狂気を呼ぶ月と、
人狼への変化の二重奏に耐えなくちゃ。
元から人を羨ましいとは思わないけど、一つだけ。
私がもし、人狼病の感染者じゃなかったら?
満月を見るたび、私が私でなくなる恐怖に
耐えなくてもいいのかしら。そして、何より――。

危うく獣の姿になりかけた所で、
友だちから貰った狼と猫のチャームが揺れて。
ううん、ちがうわ。私は私。
どんな姿になっても皆の友だちって、認めてくれたじゃない。

自分の頬に、弱気に張り手をかまして前を向く。
これくらい、なんだっていうの。
待ってて。あなたの絶望、終わらせに行くわ!




 空から差し、辺りを青く染める光。
 それに照らされ一斉に咲き誇る花々。
 本来ならば美しい景色だっただろう。しかし、リグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)は辺りを見回し嘆息した。
「戻れなくなった元アリス。止めてあげたいけれど……」
 快活で笑顔の似合う彼女らしからぬその様子は、紛れもなくこの空に浮かぶ白い月のせいだ。
「困ったわね……満月は、相性悪いのよ」
 人狼の病をその身に宿す彼女にとって、満月は喜ばしいものではなかった。この光を浴びている間、人狼への変化とこの国のもたらす狂気、その二つに耐えなければならない。
 城へ向かう道のりは苦しいものになりそうだと思いつつも、それでもリグは足を止めなかった。
 リグは元々人を羨むたちではない。それでも、この月に照らされていると、心に浮かぶことがある。
(「私がもし、人狼病の感染者じゃなかったら?」)
 それは、普段はあまり意識に上らない問い。それが意識的なものであれ無意識的なものであれ、思い悩んでもどうにもならないことだと彼女は知っていた。時間をそれに費やすよりも、愛する旅に出かけ、まだ見ぬ景色をもっと目にしたい。そう思っているはずなのに――満月が空に浮かぶ度、時折心を過る問い。
(「満月を見るたび、私が私でなくなる恐怖に、耐えなくてもいいのかしら」)
 獣と化し、誰かを傷つける恐怖。今までに向けられたことのある、あの目。
 そして、何より――
 目を伏せたリグの身体を淡い違和感が覆い始める。覚えのある感覚だ。耳が、爪が伸び、身体が毛皮で覆われていくそれは、リグをひどく落ち着かない気持ちにさせた。
 抗おうにも、月の狂気に心はかき乱されままならない。苦しみの中必死に耐えていたが、それでも身体は獣へと変わっていこうとする。
 引き返すべきだろうか、それとも、いっそ身を委ねてしまったら。
 一瞬浮かんだ思考に染められそうになる彼女を引き留めるように、ちり、と小さく何かが鳴る。
 目を向ければ、そこには友人から貰った小さなチャームがあった。跳ねる銀狼に戯れる紅猫がリグを見つめている。その姿に、赤い髪の少女の姿がだぶって見えた。
「そうだ、私は……」
 どんな姿になっても、リグはリグで、友だちなのだと。そう認めてくれた大切な友人達の顔が浮かぶ。黒い狐耳の青年、猫のように愛らしい紅の少女、鈴蘭を宿した小鳥、それから、それから――。
 思い起こすたびに胸の内に浮かぶ安らぎとあたたかさが、狂気を打ち払う。
 気付けば、獣への変化は収まりつつあった。 ふと触ってみた耳も元通りだ。
 ぺち、と両頬を叩いて、リグは気合を入れ直す。
「そうよ、これくらい、なんだっていうの」
 上げた顔に、もう先程までの暗い色はなかった。大切な人達のことを思えば、苦しい道でも進んでいける。それを改めて感じたからだ。
 リグは力強い足取りで、月光の中を進んで行く。オウガと化してしまった少女を思いながら。
「待ってて。あなたの絶望、終わらせに行くわ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガルディエ・ワールレイド
◆嫉妬の対象(選択UC)について
選択UCは実際には使用せず
UC設定にある騎士が嫉妬の対象
それは竜殺しの騎士、魔王を討伐せし勇者、幾多の死地を乗り越えた英雄

嫉妬を完璧とは言えないまでも、受け入れつつ進む

◆心情
(嫉妬の対象の騎士が見える)
おいおい、そいつは卑怯だろ
その騎士には勝てねぇよ

……
変だな……そう思っていた筈なのに……
俺は嫉妬しているのか……?

どうやら、そのようだ。
確かに、俺では勝てなかった敵を斬り伏せ続けた、その力が妬ましいらしい

この気持ちは決して心地よいものじゃねぇが……
絶対に自分では届かないと諦めよりは前向きかもな
嫉妬も含めての俺だ
今は難しくとも、いつか克つ
自分の心にも、理想の騎士にも




 甘い花の香が漂い、静かに月光差す中を、ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)は歩く。
 嫉妬、と聞いた時、ガルディエの心の内に浮かぶものはそう多くなかった。あまりそういった感情を抱いた事がそもそもあまりなかったからだ。
 それゆえに、何が見えるのだろうと彼は想いを巡らせる。
 歩いても歩いても、何も現れる気配はない。このまま城に着いてしまうのだろうか…段々とそう思い始めるも、月の光は確かに彼を蝕んでいたようで。
 ふと、目の前が歪む。空間を捻じ曲げるように景色が一瞬ひしゃげ、そしてそこに立っていたのは――白銀の鎧を纏った『だれか』。
「おいおい、そいつは卑怯だろ」
 ガルディエは彼を目にしたことはなかった。しかし、彼の事はとてもよく知っていた。
 それは、かつての故郷で。誰かが語ってくれた物語の中で。竜殺しの騎士、魔王を討伐せし勇者、幾多の死地を乗り越えた英雄。
「そいつには……その騎士には、勝てねぇよ」
 ガルディエは思わず皮肉めいた、観念したような笑みを浮かべる。
 胸に抱くそれへの想いは、憧れや理想であって、決して嫉妬などではない。そのはずだ。
 それなのに、心の内に小さく燻るような奇妙な感覚を覚える。ガルディエには、初めその正体が分からなかった。
 しかしこの状況下、ひとつの答えに行き当たる――白い月の光が、あまりにもしらじらと、その心の内を照らし出しているのだと。
(「………」)
 その事実に気づき、ガルディエは不思議そうに目を伏せる。自らの理想。そう思っていたはずなのに。
「変だな……」
「俺は、嫉妬しているのか……?」
 それは、普段の彼からすれば思いもよらない答えだった。
 ガルディエの抱く理想の騎士は、ただの夢や幻の存在ではない。
 ワールレイドの騎士。
 それは、伝説に語られる騎士の名前だ。
 彼と同じ家名を頂いたその騎士の物語は、今では御伽噺として彼の故郷に残っている。ガルディエは昔から、その物語が好きだった。
 白銀の鎧を纏い、青い光を操る騎士。例えそれが御伽話だとしても、幼い頃から繰り返し聞いたならば、それは現実と心に根付いたものへと育つのだ。
 だから、彼にとって「御伽噺の騎士」は、ただの物語の中の存在ではない。
 追い求める彼の標。
 だからこそ、嫉妬などという感情を抱くはずがないと、そう思っていたのだ。
 伝説に残る英雄、ガルディエには勝てなかった敵を切り伏せた、その力に憧れた。そこに嫉妬が芽生えていたなどと、思いもしなかった。
 じりじりと痛むこの感情は、決して心地よいものではない。しかし――
「絶対に自分では届かないと諦めよりは前向きかもな」
 ふ、と諦めたようにガルディエは笑む。そう、この想いは彼が剣を手にし理想の騎士となるべく戦い、前に進んでいる証だ。
 遠くから憧れを抱くだけなら、嫉妬などするべくもない。近い存在だと理解するからこそ、嫉妬が生まれるのだ。
「嫉妬も含めての俺だ。今は難しくとも、いつか克つ」
 自分の心にも、理想の騎士にも。
 そう言い放つと、目の前の騎士の幻は月光に溶けて霧散する。
 その姿が消えた後の道を踏みしめ、ガルディエは先へ進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

子犬丸・陽菜
年齢的にあたしとおなじくらいなのかな?
だから気持ちはわからなくはないよ、でも、そういう道を選んだんだね。

うん、嫉妬。
あたしがもし普通だったら?
こんな道を選ばなかったら、ただの女の子として生きていたのかな?
こんな、拷問具で、相手を、う…。
でも、それは…。

この思考は危ないね。
依代の宝珠を強めに発動して苦痛で自分を保つよ。
内臓を掻き回される痛み、感覚、音で自分を見失わないように。
これこそが、あたし、だから。
わざと激しく内臓を掻き回します。
さらに枷を自分にかけ、増幅。
苦しくても前へ!


あなたのぶんまで苦しんであげる、だから。
もう夢から覚める時間だって教えてあげなくちゃね。

アドリブ等歓迎です。




 花畑の向こう、月明かりに照らされる城を眺めて、子犬丸・陽菜(倒錯の聖女・f24580)は思う。
 そこに居るであろう、今はオウガとなったアリスの事を。
(「年齢的にあたしとおなじくらいなのかな?」)
 だから、気持ちは分からなくはない。けれど、彼女はそういう道を選んだんだね、と陽菜は目を伏せる。ただただその事実が哀しかった。
 しかし、そんな彼女の心を、じわじわと蝕むものがあった。
 この国に足を踏み入れた時から、彼女の心と思考を染めようとする月の狂気――嫉妬の情。ここまでの道のりを何とか耐えて来たが、それでもその影響からは逃れられない。
(「あたしがもし普通だったら?」)
 その問いは、陽菜の心に浮かんでは彼女を苛んだ。
(「こんな道を選ばなかったら、ただの女の子として生きていたのかな?」)
 こんな拷問具で、相手を、自分を、苦しめる事もなかったのだろうか。
 その時の苦痛を思い出し、陽菜は自分の身体を抱きしめた。
(「でも、それは…。」)
 それは、本当に自分なのだろうか?
 陽菜はかぶりをふる。考えてみても答えは出ない。拷問の痛みは、彼女を形作る大きなものだ。それがない自分は、どこか遠いところのもののように感じられた。
 だからこそ思う。もし自分がそうであったなら、ごく普通の平和で平凡な少女として生きられていたのだろうか、と。
「この思考は、危ないね」
 そんな空想に思考がもっていかれそうになる。いくら考えても、夢想しても、それはどうにもならないことだ。
 陽菜にとって、現在の自分こそが自分なのだから。
 そう強く心に念じて、依代の宝珠を発動させる。宝珠がきらりと光ると、陽菜の体内を言葉にしがたい痛みが襲った。
 内臓を掻き回される痛みと音。それは、陽菜にとってはすっかり馴染んだものの、耐えきるには辛い痛み。
 けれど、この痛みが自分を自分でいさせてくれる。
「これこそが、あたし、だから」
 もっと強く。幻に蝕まれる頭を覆う霧を痛みで追い払う様に、より強い痛みを求めて、陽菜は宝珠に力をこめる。
 視線を自分自身に向け「知られざる枷」を発動すると、倍加した痛みが彼女を襲った。
「ん、ぐ……ぐぅ……っ!!」
 苦し気な声を漏らしながら、それでも陽菜は進む。
 苦痛にふらつく足取り、けれども確かに前へと。
「あなたのぶんまで苦しんであげる、だから」
 徐々に近づく城、その塔の上。おそらくそこに彼女はいるのだろう。
 それを見上げる陽菜の微笑みは、どこまでも優しかった。
「もう夢から覚める時間だって教えてあげなくちゃね」

大成功 🔵​🔵​🔵​


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※トミーウォーカーからのお知らせ
 ここからはトミーウォーカーの「猫目みなも」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
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上野・イオナ(サポート)
『英雄イオナ 希望を描きにただいま参上!』
英雄憧れてる系男子です。悪いやつ許せないです。ケツアコアトル虐めたこと許せなくてコルテス3回殴りました。
でもカッコイイもの好きで直接助ける対象が見えてない場合はそちらを優先することがあります。崩れる遺跡で誰か巻き込まれる人が居ないか探さずにカッコイイ剣を集めてました。
正統派英雄を憧れてますがクールなダークヒーロー系も好きです。
ユーベルコードは指定しているものはどれも使いますが。【バトルキャラクターズ】は気づいたら多用してます。色んなゲームキャラ召喚します。
なんか年齢に比べて行動や喋り方が少し幼い気がします。



 一歩、また一歩、走る度に上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)は自身の跳ねるような鼓動を感じていた。それは、単に城へ至る道をひたすら走り続けてきたからだけではなくて。
「……っだぁ、クソ!!」
 思わず荒げた声を吐き出し、すぐにぶんぶんと首を横に何度も振って、イオナは左手をきつく握り締める。
 煌々と降り注ぐ満月の光は、今や狂気を誘う呪いの輝きだ。自らの裡にむくむくと膨れ上がる黒い感情におののくように歯を食い縛り、ぎっと視線を持ち上げれば、眼前には白亜の城が迫りつつあった。かつては『アリス』だった――そして今やオウガに成り果てた哀しき少女の居城を、しばし足を止めてじっと見つめて、ふと彼は独りごちる。
「……王子様、か」
 それは、予知の中で少女が口にしていたヒーローの呼び名。彼女を救ってはくれなかった、どこにもいない虚像の名。物語の中でなら、きっと仲間達と助け合い、悪い化け物を退治して、お姫様を颯爽と助け出していただろう『彼』はどこにもいない。『彼』になれた者はいない。そのことが――少女を救えなかったことが無性に悔しい。否、異様にと言うべきか。
 ゆっくりと息を吐き出し、冷えた夜風を吸い込む。
 英雄たるもの、カッコよくなければ。塔の上で待ち受けるお姫様を救う手立てがなかったことは、彼女のヒーローになれなかったことは、やっぱり苦しいけれど、それでも。
「希望を描いてやれないなら、せめて絶望を終わらせに行かなきゃな!」
 自らに喝を入れるようにして両の頬を打ち、英雄志望の青年は再び走り出す。そうして眩い月がじっと見下ろす中、古めかしい門扉が重苦しい音と共に押し開けられた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『七罪』嫉妬のシンデレラ』

POW   :    シンデレラ・ストーリー(シンデレラの物語)
【理想とする美しさと強さを備えたプリンセス】に変身し、武器「【全てを破壊し、全てを防ぐガラスの靴】」の威力増強と、【無敵の美しさと魔法の加護を得る魔法ドレス】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD   :    戦略級空中機動要塞・パンプキンフォートレス
自身が操縦する【超重火力のカボチャ型空中機動要塞】の【45cmカノン砲、多連装ミサイルの威力】と【対物理・魔法装甲及び対電子プロテクト】を増強する。
WIZ   :    常時発動型UC『恵まれし者達への嫉妬』
【嫉妬の闇の魔力を纏った自身の肉体や武器】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、嫉妬の闇の魔力を纏った自身の肉体や武器から何度でも発動できる。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフレミア・レイブラッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィッダ・ヨクセム
なるべく敬語と、紳士的態度を心かける
なんならフォーマルにキメた恰好でいこう

普段は粗暴寄りなんで、即席になるんで滑稽だろうけどな
語尾が片言寄りになるだろう
下手くそ芝居でも何も言いッこなしだぞ、レディ?

言いたい事があるなら聞こう
ただ…ぐだぐだ長いと飽きるんで手短に、端的に頼む
無機物が側になければ、魔法の万年筆で実体化させた線を使う
あればいいに越したことはないが、嫉妬を驚きに変えた方が
なあに、愉快だなハズだ

友人に習ったUC(詠唱はしない)を発動
不馴れのUCで寒さも苦手な俺様だが
お前の嫉妬は自分にも寒さを与えるものと学べ

今からでも遅くないデスよ、存分に声に出して喚けよ
捨てる神あらば声を拾うカミ、ありだ



 月を衝くようにそびえる塔の上に、その少女は待っていた。黒いドレスの『姫君』の前に現れたフィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は、舞踏会に相応しいようあつらえた礼服姿でまずは彼女に一礼してみせる。
 慣れぬ所作で頭を下げたまま、目だけを動かしてちらりと少女の表情を窺えば、一見彼女は儚げに微笑んでいるように見えた。けれど。
(「下手くそ芝居でも何も言いッこなしだぞ、レディ?」)
 心の裡で呟き、面を上げる。凍り付いたような赤い瞳が、目の前で細められるのが分かった。
「先に言いたいことがあるなら聞こ……聞きマショウ、か」
 ただし手短に。付け加えられたその一言に、少女の瞳孔が微かに開く。ややあって彼女は薄く息を吐き、細い指先を組んで唇を開いた。
「……今更来て下さったのね、王子様」
 誰とも知れない他のお姫様のことは、もっと早く助けたくせに。泣きそうに笑う彼女の瞳は、恐らくフィッダ自身を見てはいない。
 そこにいない、否、世界のどこにもいない、ただ彼女の想像の中だけにいる『救われた誰か』への羨望が、少女の苦い声音にはありありと滲んでいた。ある意味で、それは猟兵達にとっては真実でもありうるのだけれど。
 けれどそのことは指摘せず、ただ彼女の言葉に一度だけ頷いて、フィッダは軽く手をかざす。その動きに誘われるように浮き上がった周囲の燭台が、小棚が、白くほどけて六花へと変じ、踊り始める。少女が息を呑んだのは吹き荒れ始めた雪の温度に対してか、それとも。
「今からでも遅くないデスよ、存分に声に出して喚けよ。捨てる神あらば声を拾うカミ、ありだ」
 その命を拾ってやることは、もうできない。けれど、その声であれば、まだ。香らぬ花の乱舞する中、そうしてフィッダは今一度促すように少女に目を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

上野・イオナ
「この絶望を終わらせに来たよ!」
心の準備は出来た……たぶん!
やるべきことはシンプル
思ったことをそのまま口にしながら城に突っ込んでこう!
まずは、とりあえず、彩虹の剣で描く虹で目くらましをして少しでも威力を減らした『シンデレラ・ストーリー(シンデレラの物語)』攻撃を受ける!あとは気合いで耐える!
そして、それを参考に僕も変身だ!
UC『チートリフレクター』
変身するプリンセスの姿はイオナのセンスが入り中性的で可愛いとカッコイイのどちらとも取れるものになる。
彩虹の剣の攻撃とガラスの靴の蹴りを合わせて城内を虹で彩り踊るように
絶望を終わらせる輝きを!
※アドリブ歓迎です



 螺旋階段を駆け上がり、半ば飛び蹴りを入れるような姿勢で上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)が少女の立つ部屋へと飛び込んだ。朗々と、その声が石造りの空間に響き渡る。
「この絶望を終わらせに来たよ!」
「……!」
 振り返ると同時、少女は動いていた。ユーベルコードの力でより豪奢なドレス姿に一瞬で変身し、何重にも布地とレースの重なる裾を軽々と翻して、『姫君』は強靭なガラスの靴で包んだ足をイオナ目掛けて振り抜こうとする。その動きに合わせてイオナが彩虹の剣を抜き放ったのは、彼女を斬るためではない。
 鞘から放たれたその剣の正体は、虹色の絵を描き出すペイントブキだ。輝くばかりの尾を引く抜刀の軌跡を目くらましにして軽く飛び退り、少しでも威力を殺した蹴撃を、けれどイオナは完全にかわすことはせずに敢えてその身で受け止める。鋭く突き刺さるような痛みが、肉体よりもむしろ心に苦しい。けれど先の叫びを決意に変えて、彼はポケットから引っ張り出した端末をさながら変身ヒーローのように構えて、そして。
「こんな感じで……どうかな!」
 端末の画面に映し出されるのは、他ならぬオウガの少女の姿。そこから溢れ出した閃光がイオナの全身を包み込み、瞬く間に彼の姿をも目の前の『姫君』と似たそれに切り替えた。
 ガラスの靴の踵を鳴らし、少女の纏うそれより少しだけ活動的でスタイリッシュなシルエットの裾をなびかせ、イオナは深く踏み込んでいく。せめて少女の絶望を断ち切れるようにと構えた彩虹の剣が、七色の軌跡を確かに宙に描き切った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリウス・ストランツィーニ
助けが必要と聞いて馳せ参じた!

どんな理由であっても人々に害為す敵は許さん!いや、理由によっては許すかもしれないがとにかく全力で戦う!
我が一族の誇りに懸けて、私の剣で成敗してやる!もしくは銃で成敗してやる!

もちろん敵とは正面から堂々と戦う!
しかし必要とあらば隙を伺って死角から襲ったりもするぞ!これは戦いだからな!

はあはあ、どうだ……!まいったか!
……まいったよね?

(アドリブ連携等歓迎)



「助けが必要と聞いて馳せ参じた!」
 抜身の剣をオウガに向けて、マリウス・ストランツィーニ(没落華族・f26734)は高らかに名乗りを上げる。凛々しく立ちはだかるその姿に、当のオウガは溶けかかった氷のような目を向けて。
「貴女が助けに来たのは、誰?」
「え?」
 不意打ち気味にそう問われ、思わずマリウスはぽかんと口を開ける。けれど数秒かけて軍人らしく表情を引き締め、彼女はぐっと胸を張ってみせた。
「決まっている! どんな理由であっても人々に害為す敵は許さん!」
「……そう。なら」
「だが勘違いするな! 我が一族の誇りにかけて、『嫉妬のシンデレラ』。私はお前のことも助けに来た!」
 黒いドレスを飾るレースを嫉妬の闇に変えてざわめかせる姫君の言葉を遮り、マリウスは大音声でそう続ける。今度は、オウガの方が口を閉じ損ねる番だった。
「……何を言っているの? 貴女は、貴女達は」
「私は正々堂々、お前とこの剣で戦い抜こう。だから、お前も」
 その嫉妬、その無念、全て我らにぶつけてこい。誘うように剣先を下げれば、少女は絶叫と共に自身を包む闇の魔力をうねらせ、猟兵へとその黒々とした情念を叩き付けてくる。致命的になりそうな一撃だけを巧みに見抜き、八重霞ノ太刀を振るって相殺しながら、マリウスは少女の放つ闇に紛らせるようにして微かに目を伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

子犬丸・陽菜
気付け代わりに使った宝珠で内臓が…うくっ…

来てあげたよ、あー…王子様じゃなくてごめん
気持ちはわからなくもないけど、世の中そんなもんだよ、なーんて
あたしもそんなに知ってるわけじゃないけど!

力を得るために宝珠を起するよ
もう結構内臓グチュって言ってるけど
その苦痛を与えます
早く終わらせてあげたいから多少無理するかも
跳ね返されるのは経験ないけど増幅されたら内臓やばいかな…

終わらないものはないし、自分の思い通りにならないことなんていっぱいあるよ
あたしもそうだしね
でもそれを押し付けちゃいけないよ
もう遅いけど…軽くはしてあげられる
一人でなんて言わないから
あたしも一緒に苦しんであげるね
せめて何も感じなくなるまで



 痛む身体を叱り飛ばすようにして、子犬丸・陽菜(倒錯の聖女・f24580)はオウガに相対する。ここへ至るまでの道程で気付け代わりに自身に苦痛を浴びせてきた反動は、重い。
「あー……王子様じゃなくてごめん。気持ちはわからなくもないけど、世の中そんなもんだよ、なーんて」
 敢えて軽い調子でそう言って、陽菜は依代の宝珠に念を込める。途端、内臓を握り潰されるような痛みが腹腔を埋め尽くした。
「ぐ……うぅっ」
 呻きながら視線を上げる。その視線を媒介として投げ渡された痛みの深さに、オウガの少女もやはり獣のような唸り声を上げ、ドレスの布地を握り締めた。彼女を包む闇がのたうつ。おそらくは、この知られざる枷を飲み込んで、だ。同じユーベルコードを返されれば、この痛みは倍になるのだろうか。それは厳しいかもしれないな、と頭の片隅でどこか冷静に考えながら、陽菜は武器を収めたまま、ごく緩やかな歩調で少女に歩み寄る。
「あのさ。終わらないものはないし、自分の思い通りにならないことなんていっぱいあるよ。あたしもそうだしね」
「今更お説教をしに来たの?」
「違うよ」
 後ずさる少女に追いつくべく歩幅を広げれば、臓腑が一層おぞましく痛む。それでも少女に手を伸ばし、嫉妬の闇に掌が冷たく焼かれることも厭わず、陽菜は彼女の見目よりさらに痩せた胴を抱きしめた。
「一人でなんて言わないから。あたしも一緒に苦しんであげるね」
「――!」
 耳元で、少女が言葉にならない言葉を吐くのが聞こえた。彼女の目元から零れた雫の温度が、陽菜の首筋に音もなくかかる。頷き、陽菜は宝珠に今一度注げるだけの力を注ぎ込んだ。違和感が熱を持って膨れ上がり、掻き回すような痛みに変じて――意識が一瞬焼き切れかけた刹那、オウガの『姫君』の口元から生命の証がどろりと零れ、床に静かに広がっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『ミミクリープラント』

POW   :    噛み付く
【球根部分に存在する大きな顎】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【習性と味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    突撃捕食
【根を高速で動かして、突進攻撃を放つ。それ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    振り回す
【根や舌を伸ばして振り回しての攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 がらがらと音を立て、塔が、城が、崩れ落ちていく。
 主たるオウガを失った今、この絶望の国もまた崩壊を始めているのだ。
 崩落に巻き込まれまいと走る猟兵達の足元が、不意にぼこぼこと盛り上がる。それは、球根の形をしたオウガの群れだった。
 恐らくはこの国というゆりかごで生まれるのを待っていた個体が、異変に反応して襲い掛かってきたのだろう。
 幸い、その数は無数というわけでもない。恐らくは戦いの中で、猟兵の行動が嫉妬のシンデレラの心を動かしたためなのだろう。
 ともあれ猟兵のすべきことはひとつ。敵群を切り抜け、崩壊する国から脱出するのだ。
上野・イオナ
僕はうまく寄り添ってあげることは出来なかったけど、あのアリスが最後になにか絶望以外の物が見れてたら良いな……。


それはそれとして初めて女性っぽい格好したけどなかなか良くない!?
男でもカッコイイと可愛いは両立出来る!よく分かりました!イイネ!
という訳で、あとやる事は脱出だけ!
せっかくお姫様だし騎士団を招集!
UC【バトルキャラクターズ】
騎士のゲームキャラクター達を召喚するよ
騎士団を率いるお姫様はこれはこれで多分ヒーロー
「みんなー、僕に続けー!」
騎士団と一緒に数の力で突破しよう!



 崩落していく階段を段飛ばしに駆け下りる間に、後ろを振り向く暇はない。目指す出口へ続く方だけを見据えながら、それでも上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)は振り返るように息をつく。
(「あのアリスが、最後になにか絶望以外の物を見れてたら良いな……」)
 上手く彼女に寄り添ってあげられたかどうかと問われれば、イオナ自身はあまり自信がないと答えるだろう。けれど猟兵達の働きかけに意味があったということは、進む先にも生えてこようとするオウガの数を見れば確信できた。誰にともなく頷き、青年は思考を前向きに切り替える。かん、と変身したままの足元で硬質なガラスが高く音を立て、更にもう三段分をまとめて飛び降りた。
「それはそれとして初めて女性っぽい格好したけどなかなか良くない!?」
 カッコイイと可愛いを両立したお姫様姿は、イオナ本人にとっても満足いく出来だった。ならばこの姿に合わせて、と彼は再びデバイスを操作し、RPGの世界から揃いの鎧を身に付けた騎士軍団を『招集』して。
「みんなー、僕に続けー!」
 右手を高く突き上げて号令をかけ、騎士達の先陣を切る『姫』の姿は、これもさながら絵物語に現れる英雄のよう。彼に続いてランスを構えた騎士達が、無数の根を足代わりにして突進してきた球根の群れを豪快に撥ね飛ばしながら駆けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリウス・ストランツィーニ
よし、あとは脱出するだけだな!

最大限に「気合い」を高める!
うおおおおお!
襲ってくる根を剣で斬り伏せながら、多少の傷は気合いで耐えて突破するぞ!

あ、気合が入っていても噛みつかれると痛いものは痛い!
だがここは耐えきって退路を切り開かなければ!

どけ!植物ども!うおおおお!



「うおおおおお!」
 階段を駆け下りる足音に、鬨の声が重なる。声の主は、マリウス・ストランツィーニ(没落華族・f26734)。あとは脱出するだけとなった猟兵を阻むべく高速で走って来る球根達めがけて剣を振り回しながら、彼女は全力で走っていた。
 振り抜いては斬り払い、また返す刃で次の根を斬り飛ばす。決して足を止めることなく駆けるマリウスの剣閃は、まるで煌く嵐のようだ。その軌跡をすり抜けて体当たりしてきた球根の体重に転びかけ、マリウスは悲鳴を飲み込んでぐっと足元を踏みしめる。踊り場まで転がり落ちれば球根達に囲まれていただろうところを辛うじて踏み止まったマリウスの腕に、オウガのばっくりと開けた口が迫った。かわす間もなく突き立てられた牙が、深々と肉に食い込んでくる。
 どれだけ気合を高めたところで痛いものは痛い。けれどここで泣き言を言っても解決しないし、何よりそれは華族の当主としても軍人としても格好がつかない。未だ齧り付いてくる球根を腕を強く振るって払い落とし、マリウスは再び己を鼓舞するように叫びを上げた。
「どけ! 植物ども! うおおおお!」
 気魄と共に振り下ろした剣が、先ほどの球根を両断する。それが床に落ち、一瞬で朽ちるように消えていくのも見届けることなく、マリウスの足音は階下へと消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蛇塚・レモン
救援に駆け付けたよっ!
退路を切り開くから、付いてきてっ!

ユーベルコード発動のため、御神楽【ダンス】を躍りながら、【念動力】で【空中浮遊】、そのまま【空中戦】で敵の上空から蛇腹剣と鋒先神楽鈴の【二回攻撃】からの【衝撃波】を【範囲攻撃】【貫通攻撃】【爆撃】して敵を【なぎ倒す】よっ!

ユーベルコードの効果と【オーラ防御】【継戦能力】【激痛耐性】【盾受け】で敵の攻撃を受け止め、回避できるなら攻撃を【見切り】で空へ逃げ、敵の攻撃の射程から外れるよっ!
また、攻撃には【マヒ攻撃】【呪詛】を込めて【乱れ撃ち】して、敵の動きを鈍らせたうえで【捨て身の一撃】でトドメを刺して、血路を切り開くねっ!



「退路を切り開くから、付いてきてっ!」
 後方にそう呼びかけながら、蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)は石床を軽く蹴る。そう遠くない場所まで近づいてきた出口を一直線に潜り抜けに行くためではない。その身を翻し、神楽を舞うためだ。
 待ち構えていた球根が、レモンの足を狙って長い根と舌を振り回す。けれどその乱閃が彼女の体勢を崩すことは叶わず、土に汚れた根の鞭はただ空だけを切り裂いた。敵の攻撃を飛び越える形で宙に舞い上がったレモンは、その名をも連想させる明るい金色の霊力をその身に纏い、今も崩れ続ける塔を背にして更に蛇神への舞踏を続けていく。
(「お願い、蛇神様」)
 神楽舞の動きに合わせて獲物を振り下ろし、或いは振り上げる度、放たれた衝撃波が地を揺らす。重い衝撃を根元から受け、宙に打ち上げられた球根が、それでも彼女を、猟兵達を行かせまいと長い舌を伸ばしてくる。その舌先を蛇腹剣で絡め取り、引き寄せて、レモンは鋒先神楽鈴の柄に手を触れた。
「どいてっ!」
 りんと空間を満たすように響き渡った鈴の音が、清浄なる『呪詛』と化してオウガ達を飲み込み、その身を爆ぜさせる。地に降り、城門のすぐ手前にもまだ跳ねている球根の姿を認めて、レモンは小さく呟いた。
「あと少し……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルドヴィーノ・バティスタ
(アドリブ・連携歓迎)
なんだなんだ、来てみりゃもうボスは倒され済みで国は崩落真っ只中、後はそいつら振り切って帰るだけってか?
んじゃオレの出番だな!逃走脱出は得意分野だ、さっさと蹴散らしてずらかろうぜ!

【刹那に夢を、永劫に別れを】、突進を引き付けたら当たる直前に<第六感>で避ける!
そら、こっちは噛まれりゃ終わりの獲物だぜ?一匹と言わず複数で囲んで狩りに来いよ!
…追い詰めたつもりが追い込まれてンのかもしれねェけどな?
突進攻撃の先に他の球根が来るよう誘導してやりゃ、一度で複数殺れてお得だよなァ!

さぁて分かりやすく囮になったンだ、走れ走れ!
逃走劇なんてのは後ろを気にした瞬間おしまいなンだからよォ!



「なんだなんだ、来てみりゃもうボスは倒され済みで国は崩落真っ只中、後はそいつら振り切って帰るだけってか?」
 ぐるりと周囲を見回して、即座にバルドヴィーノ・バティスタ(脱獄狼・f05898)は周囲の状況を把握した。そしてそれを興醒めとも出遅れたとも評することはなく、にやりと八重歯を見せて彼は笑って。
「んじゃオレの出番だな!」
 逃走、脱出、大いに結構。それこそはバルドヴィーノがお手の物とするところだ。いよいよ残りも少なくなってきた追っ手どもと足止めどもを蹴散らして、さっさとずらかるとしようではないか。敢えて城門に背を向け、塔の方へと向き直って、脱獄の常習犯は器用に根で走って来る球根達へと『遊び』の誘いをかける。
「そら、こっちは噛まれりゃ終わりの獲物だぜ? 一匹と言わず複数で囲んで狩りに来いよ!」
 それは自身の生存率を代償に、あらゆる行動を成功に導くユーベルコード。その効果を敢えて明かしてみせれば、前後に蠢く球根たちはこぞって口から涎を飛ばし、楽な獲物を見つけたとばかりに突進してくる。その軌跡を見据えるでもなくゆるりと一度目を閉じて、そしてバルドヴィーノはごく軽く身を翻した。
 噛まれれば終わり。ならば、噛まれなければいい。言うだけならば簡単と評されそうなその言葉を、男は軽やかに現実にしてみせる。直線的な突進による挟み撃ちを紙一重の所で回避された球根達の辿る道は、当然。
「おら、一丁上がり!」
 強かにぶつかり合い、無防備に足元に転げた球根達にざくざくとダガーを振り下ろして、バルドヴィーノは吼える。別の方向から突っ込んできたオウガの一撃をも振り返らずにダガーで受け流し、更に一閃。既に他の猟兵との戦いで手傷を負っていたのか、その一撃で球根と根の束を切り離され、オウガは宙に溶けていく。見渡せば、走り回る球根達は他もあらかた片付いてきたようだった。
 殿を引き受けるべくしばしその場に留まり、もう数体のオウガを斬り捨てた後、ようやく静寂を取り戻した夜の終わらない国で男はひとり塔のあった場所を振り返る。今や姫君の座した城は跡形もなく崩れ去り、崩壊は不思議の国の大地にまで及びつつあった。
 何も言わず、ただ携行していた酒をひとくち口に含んで、バルドヴィーノもまた他の猟兵達の後を走り出す。そうして終わりを迎えゆく絶望の国を、月だけが変わらず見下ろしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月14日


挿絵イラスト