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猟兵と龍とデートスポット

#UDCアース

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#UDCアース


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 色とりどりのLEDが装飾された草花のアーチが辺りを優しく照らす。頭上で淡く輝く月明かりを受け、見渡せば都会の光が足元にどこまでも広がる。
 そこは立ち並ぶオフィスビルの中でも頭一つ飛び抜けた高層ビルの屋上に開かれた空中庭園。昼過ぎから終電間際まで開園しているそこは人気デートスポットの一つだった。
 旬の花を飾る花壇。可愛らしい噴水とそれを囲むように設置された草花のアーチ。片隅には屋内エリアとして温室もあり季節外れの花も楽しめる。
 夜になればライトアップされ、見渡す夜景は都会の光がまるで地上の星空のように出迎える。恋人だけに限らず友人達と撮影に訪れたり、中には家族で観光に来る者もいる。
 だが、その賑わいを利用する謎多き者共が現れる。闇に紛れひっそりと、しかし着実に人々を洗脳し生贄にすべく地下から湧き上がり審判の日を待ちわびていた。

「っていうわけで、UDCアースで大神霊尊敬教団の拠点が見つかったの。しかもこれから事件を起こそうとしてるみたいだから、その前にやっつけてほしいな~」
 場所は都会のオフィスビル地下。災害時用の倉庫として作られた巨大地下区画に大神霊尊敬教団が居付き生贄を集めるべく準備をしている。
 UDC組織の情報ではUDC召喚に要する祭具は信者の手に渡り、各地の拠点から充分な生贄も捧げ、既に大型UDCが召喚されていてもおかしくないとのことだ。
「そいじゃ作戦を説明するね~」
 要領を得ない説明をまとめると、現在問題のオフィスビルはUDC組織による多大な努力によって無人となっている。民間人の避難や情報統制の心配はなく、また大神霊尊敬教団信者の避難と後始末もUDC組織が全面協力してくれる。
 猟兵達は拠点へ直接転送され、全てのUDCを撃破し拠点を壊滅させればUDC組織が事後処理を行い、作戦は終了となる。
「わたしが予知った感じだと~なんか骨っぽいのがいたよ~」
 予知した記憶を頼りにペイントブキで敵の姿を描くゆいはさておき、転送された猟兵達を出迎える敵はシャーマンズゴースト・ボーン・リボーンと呼ばれる骨だけとなったシャーマンズゴースト型のUDCだ。
 シャーマンの名前に違わず呪術のような戦い方を得意とし、純粋な破壊力を持つ白骨馬召喚の能力が驚異であることは勿論。多彩な攻撃を実現するサイキック能力。そして対象を石化させ動きを封じる呪術は猟兵とて無視できないだろう。
 それが群れでひしめいているというのだから厄介この上ない。しかし幸いなことに戦場となる広場には戦闘を妨げるものはなく自由に戦えるそうだ。
「あと~UDC組織の人はなんも言ってなかったんだけどぉ……なんかやばーい敵もいるっぽいんだよね」
 ゆいの予知の中には拠点の奥底に潜む巨大な影があった。その正体までは不明だが見間違いでなければこれも撃破しなければならないだろう。
「あとねあとね~ビルの屋上にめっちゃ人気の空中庭園があるんだって」
 今回の作戦が実行されなければ空中庭園に集まる恋人達も洗脳され生贄にされてしまうだろう。既に人払いによって無人となっているが、ここが再び人気デートスポットとして賑わう為にも今回の作戦は成功させなければならないと、ゆいは意気込んだ。
 何より恋人達の逢瀬をUDC復活の生贄に利用するなど許されるものではないのだ。
「それで~UDC組織の人からお願いがあったんだけど、戦いが終わったら空中庭園にお客さんが戻ってくるように、みんなに遊んでいってほしいんだって」
 UDC組織がどのような人払いを行ったのかはともかく、一度遠ざかった客足を確保する為にも猟兵達がその第一号となって賑わいを作ってほしい。つまりサクラを演じてもらいたいとの要請だった。
 そのまま観光客になるも良し、家族を装うも良し、恋人を演じるも良し。もしも相手がいるなら本物の恋人として訪れることもできるだろう。
「人の恋路を邪魔する悪い子はおしおきしないとね! んじゃ頑張ってね~!」
 転送先は戦場。日常を取り戻す戦いが始まる。


空飛ぶ毬藻
 このような毬藻でございます。
 三章で空中庭園のデートスポットをお楽しみいただけるシナリオとなっております。

 三章について補足致します。
 まず共同プレイングはお相手様の名前かIDを明記ください。
 団体様の場合は共通のチーム名などを明記ください。
 お二人の関係を位置づけるとても大切なリプレイとなりますのでNG行動や留めておきたい関係等がございましたら明記いただけますと助かります。
 またご来園の時間は自由に指定いただけます。オープニングに存在しない設備なども用意致しますのでお好みのものをご要望ください。
 単独でのご来園もお待ちしております。
 NPC東雲ゆいは登場致しません。ご了承ください。

 二章について補足致します。
 本シナリオでは恋人や家族等の絆を守りたいと願う心境、または魂の叫びを添えていただきますと判定ボーナスが発生します。

 お楽しみいただけましたら幸いです。
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第1章 集団戦 『シャーマンズゴースト・ボーン・リボーン』

POW   :    クロウボーン・ライダー
自身の身長の2倍の【白骨化した馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD   :    サイキックボーン・パレード
【念力で操った自分自身の骨】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    ストーンエイジ
【杖の先端に嵌った宝玉】から【物体を石化させる光線】を放ち、【石化】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

霄・花雫
えー……これマンゴーカウントするのやだなあ、あたし……。
愛とか恋とかまだあたしにはわかんないけど、素敵なコトだよね。パパとママが年取っても熱々だから、それはあたしにも何となく。
なら尚更、素敵な恋の為のスポットを台無しになんてさせらんないよね!

ってワケで、やっちゃお姫ねえさま!

喚ぶは水。
召しませ、召しませ。

溢れる津波の如き水の奔流で、骨を全て押し流して押し潰してしまおう。【全力魔法】
骨は骨だし、関節とか剥き出しだから少しは弱いんじゃないかな。弱点とか探してみよ。【第六感】【情報収集】【野生の勘】
自分への攻撃は【空中戦】【見切り】【スライディング】【ダッシュ】【フェイント】【早業】駆使で避けるよ。




 キマイラの少女、霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)が転送されたその広場は災害時用の倉庫として様々な用途に対応できるよう設計された為、充分な明かりがあってもその奥は視界が霞んで見えなくなるほど広く、地上で暮らす人々は都会の下にこのような場所があるなどとは考えもしないほどに現実離れした光景だった。
 しかし今では大神霊尊敬教団が非人道的な儀式を行う呪われた地となり、花雫の視界には数え切れない骨の群れ……シャーマンズゴースト・ボーン・リボーンがひしめいている。
「えー……これシャーマンズゴーストカウントするのやだなあ、あたし……」
 猟兵達が知るシャーマンズゴーストもまたUDCであったが彼らは人類に味方する頼もしい存在だった。それを知ってか知らでか花雫は目の前で武器を取り襲いかかろうとする悪しき骨共をシャーマンズゴーストとして認識することをためらっていた。
 しかしその迷いはすぐに断ち切られる。命を生贄にUDC召喚を目論む連中に手を貸す存在が人類と共に歩むシャーマンズゴーストと同一のはずがない。こいつらは人類の敵なのだ。
 骨の化け物が杖を怪しく輝かせる。しかしそれ以上の煌びやかな光が地下の広場を晴れ晴れと照らす。花雫が携えるエレメンタルロッドの光だった。
 喚ぶは水。召しませ、召しませ。
 花雫の呼びかけに応え水の精霊姫が溢れる津波の如き水の奔流となり目に映る全てを押し流す!
 攻撃準備に入っていた骨の化け物も一掃され、勢いと水圧に耐えきれない骨はその関節部分から脆く砕け生命力が果てる。一度に多くの敵を撃破した花雫は未だ溢れる水流の上に立ち、その小さな身体で荒波を操り、一体となっていた。
「まだまだこれからだよ! やっちゃお、姫ねえさま!」
 水の精霊姫と心を通わせ思うがままに水流を司るその姿はまさに荒れ狂う海そのもの。宙を貫く水流が骨の化け物を骨片へと還す。その横では水流に押し流されながらも抗い反撃に出る骨の化け物がいた。
 片方では念力によって自分自身の骨を操り花雫を取り囲むように乱雑な攻撃を繰り出そうとし、もう片方では二倍ほどはある白骨化した馬を召喚し、騎乗して荒波をかき分け襲いかかろうとしていた。
 だが骨共は知らないのだ。
「さあ! 飛ぶよ!」
 あの日、窓から見上げるだけだった高い空は、もう手の中にあった。
 レガリアスシューズが輝きヒレのような薄翅が浮かび上がる。同時に掛け声に合わせて水の精霊姫は地面を覆っていた水を数多の水流に変え空中戦に適した舞台を作り上げた。
 水の柱を蹴り上がり花雫が飛ぶ。それは空を泳ぐ人魚のように華やかで自由だった。飛び交う骨は水流の狭間を舞う花雫に追いつくことはなく、頭上を見上げる白骨化した馬は花雫の青い瞳が向けられた途端に地面から突き上げる水流に打ち砕かれ粉々に散る。
 コンクリートの天井で覆われたそこに大空はない。しかし花雫が宙を翔ければそこは空に憧れ続けた少女のステージへと変わる。
 ようやく骨の化け物は知る。花雫は空を泳ぐスカイダンサーなのだ!
 敵も負けじと知恵を振り絞った。花雫が空を舞うなら動きを奪えばいい。そして杖の先端に嵌った宝玉が禍々しく濁ると花雫に向けて怪光線が放たれる。
 その異様な気配を察知した花雫は咄嗟に身を翻し怪光線を回避した。怪光線に僅かに触れた服の袖が石化する……。触れたものを石化させ身動きを封じる呪術、ストーンエイジだった。
 しかし水流が味方して先読みを困難にさせる軌道で敵を翻弄する花雫を撃ち落とす者などいなかった。絶え間なく放たれる怪光線は虚しく天井を照らすのみ。
 花雫は骨の群れを一網打尽にすべく狙いを定める。まだ恋を悟るほど大人にはなっていない。それでも仲の良い両親と兄達に惜しみなく注がれた愛情が、その感情が特別なものであると、守りたいと、心を滾らせるのだ!
「ねえ姫ねえさま……素敵な恋の為のスポットを台無しになんて、させらんないよね!」
 先程まで唸っていた水流が消え去り全ての水が花雫の足元に集まる。花雫と心を通わせた水の精霊姫が、人々の思いを守りたいと願うその純粋な心に応え……天井すら覆うほどの大海嘯となり悪しき骨共を洗い流す!!
 骨の化け物は次々と水圧に押し潰されその生命力を失っていく。海と空の狭間を泳ぐ者、霄・花雫は健闘し多くのシャーマンズゴースト・ボーン・リボーンを撃破したのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジーマ・アヴェスター
バットエンドは嫌いだ
創作でも現実でも幸せな者には幸せなままでいるべきだと俺は思う

つまり、存在するだけで不幸をばら撒くオブリビオンは死すべし。慈悲などなし


骨相手なら打撃が効くだろう
蒸気圧を高め【力溜め】をしつつ相手の出方を伺うとしよう

攻撃は【フェイント】をかけて手持ちの大楯でぶん殴ろう
隙が出来れば補助腕の【二回攻撃】でパイルバンカーによる追撃を

仕掛けてくるようなら【盾受け】【武器受け】で叩き落とし【カウンター】でまとめて叩き潰そう
守りこそ我が本懐なのでな!
まぁ、その、地味でモテない立ち回りではあるのだけれども…

行き場のない怒りを蒸気に変えつつ、鉄の圧力で、圧し潰す!
※アドリブ、ネタ、絡み歓迎


ルフトゥ・カメリア
別にデートスポットとかどうでも良いけど、オブリビオンは始末しねぇと。それが俺の仕事だからな。

はッ、骨なら脆くなって崩れるまで、よぉく燃やして火葬してやるよ!
両手首の古傷を掻っ捌いて、溢れる地獄の炎で敵を燃やして行く。バスターソードにも纏わせて、骨ごと叩き斬ってやろうじゃねぇか。
それに、鎧よか柔いだろ骨なんだから。
どうしても大振りになるバスターソードの動きは地獄の炎でカバーし、近付かれればガラの悪い蹴りを入れて足首の傷からも炎の追撃。

悪ぃな!足癖良くねぇんだわ。

翼の付け根からも吹き出す地獄の炎をブースター代わりにしつつ、第六感を働かせて背面からの奇襲はオーラで防御しつつ翼でぶっ叩く荒業を。


襲祢・八咫
……器物の成れの果てのおれには愛や恋はとんとわからぬものだが、人の子にとっては大切なものなのだろう?
つまり、この場は、人の子の営みになくてはならぬもの。そういうことだな。
ならば、おれがそれを護らぬ道理はあるまいよ。

ちりぃん、と鈴の音鳴らせば現れる赤鳥居の魔法陣。
溢れるように現れる、ひとつ目烏の群れ。それらに【属性攻撃】と【破魔】で日輪の炎による浄化を付与する。

……さあ、お往き。人の子の愛すべき場所を取り戻せ。

【誘惑】で敵を集め、【2回攻撃】【なぎ払い】【衝撃波】で広範囲を露払いと行こう。
おれ自身への攻撃は【第六感】【目立たない】【空中戦】【オーラ防御】で緩和する。

烏が減ったらまた喚ぶさ。




 先程の戦闘で骨の化け物も随分と姿を消し広場は見晴らしが良くなっていた。しかしまだ教団を壊滅させるには至らない。安全圏から後方支援を行うUDC組織は降伏した信者を外へ誘導している。
 そんな中に転送されたジーマ・アヴェスター(姿持たぬ粘体・f11882)は組み上げられた魔導蒸気機械の鎧の内部から戦場を覗き状況を把握する。一見機械の塊にしか見えないその姿はあくまで鎧。その中に流れる黒き液体こそジーマ。ブラックタールの男である。
「不幸をばら撒くオブリビオンにはこの世界からご退場願おうか」
 魔導蒸気機械が音を立て動き出す。外からはジーマが鎧のどこにいるのかは窺い知れないがジーマは広場の奥で蠢く骨の化け物の姿を見据え、既に戦闘準備は済んでいた。
「別にデートスポットとかどうでも良いけど、オブリビオンは始末しねぇと」
 蒸気の湯気の向こうから黒く大きな翼を従え現れたのはオラトリオの少年、ルフトゥ・カメリア(Cry for the moon.・f12649)だった。薄藤の髪を揺らしジーマの横に並ぶと群れをなす骨の化け物を一瞥してバスターソードを抜き構える。
 全身を流れるように走る傷痕からは今にも噴き出しそうな地獄の炎がちらつきルフトゥの戦意を表していた。
「……器物の成れの果てのおれには愛や恋はとんとわからぬものだが」
 上等な着物を纏い気付けばそこに佇んでいた青年。烏を模した根付のヤドリガミ、襲祢・八咫(導烏・f09103)もまた藍色の瞳に敵の姿を捉える。どこか独特な空気で静かに構えた八咫は人あらざる者の器を感じさせる。人々の歴史をその身に宿し意思を持ったその佇まいは神と呼ばれるに相応しい趣があった。
 それぞれの戦う理由を胸に三人の猟兵が立ち向かう。視線の先にはこちらを敵と認め走り出す悪しき骨共。
 ルフトゥがその白い肌につけられた両手首の古傷を荒々しく掻っ捌き開いた傷からは蒼き地獄の炎が噴き出し迫りくる骨の群れを飲み込んだ。瑠璃唐草の熾火……それはルフトゥが持つ燃え盛るユーベルコード。業火に焼かれた骨は脆く崩れすぐに原型を留めない骨片と化す。その様は火葬そのものだ。
 しかし炎を逃れた骨の化け物が白骨化した馬に騎乗し雄々しく突進した。地獄の炎の隙間をかいくぐりルフトゥへ振り下ろされる強靭な前足。刹那、けたたましい蒸気の音を鳴らしジーマの鎧がその間に飛び出し流れるような蒸気槍壁の盾捌きで白骨化した馬の前足を受け押し出す。姿勢を崩された白骨馬は容易く倒れ崩れ去ると、振り落とされた骨の化け物に蒸気槍壁から撃ち出されるパイルバンカーが貫き粉砕する!
 数で圧倒せんと同じようにして白骨化した馬を駆り大量の骨共が迫る。
「いいぜ、骨ごと叩き斬ってやろうじゃねぇか!」
 蒼き地獄の炎がルフトゥのバスターソードへ燃え移りそれは炎の剣となる。飛びかかる白骨馬の群れ目掛けて業火の剣を振りかぶる。横一閃……バスターソードは重い一撃で白骨馬を打ち崩し、騎乗していた骨の化け物には剣から燃え移る炎がまたたく間に焼き尽くし絶命させた。
 だがその攻撃はあくまで近接。更に奥から駆け寄る敵にまでは届かず接近を許してしまう。
「オブリビオンに慈悲など無し」
 地面を跳び蒸気による速度上昇で蒸気槍壁を叩きつけたジーマが撃ち漏らした骨の化け物を一撃で粉砕し、その横から飛びかかる別の骨には人体では不可能な第三の補助腕から繰り出される蒸気と魔道の複合式パイルバンカーが打ち出されその衝撃で骨片へと還す。
 瑠璃色の火花が舞い散る中、魔導蒸気機械に一羽の鳥が降りる。地下の広場にはコンクリートの天井に覆われ大空などなく、その場に到底似合わない意外性にジーマは目を奪われていた。
 しかしそれはただの鳥ではない。
 どこからか……鈴の音が響く。一つ、また一つ。歩みのような一定のリズムで無骨な壁に反響し広がるその音もまた地下という場所には不釣り合いのものだった。
 だがジーマもルフトゥも、そして未だ群がる骨の化け物も、誰もその鈴の音の出処を探ろうとする者はいない。なぜなら突如現れた赤き鳥居の魔法陣が周囲に展開され、そこから溢れ出る黒の嵐が全ての視界を覆い尽くしたからだ。
 その正体は八咫が持つ鈴の音。そして湧き上がる黒き嵐は『招き鈴』によって召喚されるひとつ目烏の群れ。
「……さあ、お往き。人の子の愛すべき場所を取り戻せ」
 ひとつ目烏の群れは一度天井へ到達すると思い思いに散開し遠距離から呪術を発動させようとしていた骨共に急降下による突進を繰り出し、そして鋭い爪とくちばしでその攻撃を妨害していた。
 突如として地下はひとつ目烏の狩場と化す。骨の化け物の怒りを集めた八咫に辺りの敵が一斉に攻撃を仕掛ける。しかし八咫が醸し出す浮世離れした空気に魅了され冷静な判断を失った骨共は決して八咫の元へ辿り着くことはないのだ。
 空を飛ぶのは鳥だけではない。
 視界を覆う黒が蒸気で霞む。ジーマが魔導蒸気機械の中で手足のように巧みな部位を無限に生成し内部からガジェットの砦を操作し敵のど真ん中に躍り出る。ただの蒸気による移動では説明がつかないその跳躍はまさに空を翔ける城。振り子のように大きく円周を描き大楯を叩きつける。
「守りこそ我が本懐なのでな!」
 八咫を囲い守るようにその円周軌道は展開し、攻撃を弾かれた敵は体勢を大きく崩す。そこへひとつ目烏の群れに紛れ一際大きい黒き翼を広げたルフトゥが蒼き地獄の炎を噴出させ地面を抉る瑠璃色の蹴撃を叩き込んだ!
「悪ぃな! 足癖良くねぇんだわ」
 直撃を受けた骨の化け物は跡形もなく吹き飛び、その衝撃に周囲の骨共も砕け、そして地獄の炎が焼き尽くした。
「面白ぇ戦い方してくれてんじゃねえの」
 バスターソードを振りかざしたルフトゥがネモフィラの花を揺らして魔導蒸気機械の鎧へ言い放つ。
「お主ほど色はないがな。俺の立ち回りはいまいち地味でな」
「よく言うぜ。あんなガジェットの扱いは初めて見たぜ」
 鎧の中から響くジーマの声は落ち着いたものだったが、その兵器そのもの姿、そして戦場を蒸気と未だ正体の掴めない軌道で飛び交う戦術のどこが地味なのだとルフトゥは意地悪く笑った。しかしそれは同じ猟兵としての誇り、そして実力を認めた信頼が含まれ、言葉以上の絆が生まれるのだ。
 二人の会話を他人事のように聞き入っていた八咫も心なしか表情が和らいでいた。今日出会ったばかりの猟兵。己の命とこの世界の明日を賭けた戦いに身を投じ生まれた絆。八咫はこれまで自身を手にした者達の半生を思い返し彼らに重ねていた。
「さてさて、君達の談笑に混じりたい客が現れたようだ」
 広場の奥からひしめき迫る悪しき骨の群れに向き直り八咫が言う。
「招かれざる客だぜ」
 蒼き地獄の炎をチリチリと纏いルフトゥが骨の群れを睨みつける。
「この世界にも招かれていない客だな」
 蒸気圧を高めエネルギーを溜めつつジーマが合わせると、そのやりとりを見て八咫が静かに言い捨てる。
「未来に拒絶された奴らこそ招かれざる客でよろしい」
 言い終わると鈴の音が鳴り、赤鳥居の魔法陣が限界まで拡大し神々しさを増し更なるひとつ目烏を召喚する。それを合図にジーマとルフトゥも敵を迎え撃つ!
 八咫は自身の過去を思い返す。かつての持ち主と垣間見た世界の姿。営みからは様々な人の強さ、そして弱さが窺い知れたが、そこには必ず命としての本能……愛情を感じ取れたのだろう。
 自身は愛も恋も自覚できぬ身であったが、人々が生きる上で必要な、かけがえのないものと知る。そして自身もまた人の子にかけがえのないものとして扱われ、その果てに意思を宿した。
 ならば……。
「……おれがそれを護らぬ道理はあるまいよ」
 藍色の瞳に灯火が宿る。赤鳥居の魔法陣は日輪の光を放ち地下をあまねく照らす太陽となる! 闇を打ち払う破魔の光は溢れ出るひとつ目烏に灼熱の炎を纏わせ、まさに不死鳥が如き煌めきが戦場を飛び交う!
 浄化の炎が悪しき骨共を照らし生命力を奪い本来の骸へと還す。その中を時には蒸気による気流で跳び、しかし何かに操られるようにして翔けるジーマの魔導蒸気機械があった。
 赤鳥居の光に照らされ僅かにちらつくもの……それは大量のからくり糸。これまで骨の化け物を翻弄し続けた軌道は戦場に張り巡らされた糸による反動と振り子移動の軌道だったのだ!
 誰かが不幸に染まる姿は見たくない。創作であっても、現実であっても……! 不幸を呼ぶオブリビオンに行き場のない怒りを抱き、ジーマの蒸気圧は極限まで高まる!
 仲間に迫る骨を、白黒馬を、その蒸気槍壁で! ガジェットで! 圧し潰す!
 バスターソードを振り回し地獄の炎を撒き散らすルフトゥの背後にジーマから逃れた敵が殺到したが、その黒き翼の付け根からも蒼き地獄の炎が噴き出し迫る敵を圧倒する!
 遠くの骨の化け物から放たれる石化の呪術は八咫のひとつ目烏が封じ、倒し損ねた敵はその鋭いくちばしがトドメを刺す。
 そしてルフトゥが背中に瑠璃色の炎の翼を生成する。炎は身体を押し出し撃ち漏らした敵へ飛びかかりバスターソードの一撃が次々と敵を葬った!
 自分の過去に他人の愛を垣間見た瞬間は僅かだったかも知れない。それでも今、人々の未来を奪おうとする悪しき者共を生かしておく理由はない。
 なぜなら!
「それが俺達の仕事だからな!」
 戦場は蒸気と糸、そして日輪の炎と瑠璃色の炎に包まれ激闘の最中。三人の猟兵は奮闘し骨の化け物は残り僅か!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

大河・回
いっや~、愛とか恋とか幸せなのっていいよね~。私には関係ないし必要ないことだけどさ。でさ、そういうのをさ、あんなことやこんなことするのはこっちの領分なんだよね。だからさ……消えろ。

そんな感じだけど、私はなるべく直接戦いたくなんてないんだよね
だから【戦闘員召喚】しちゃってそっちに戦わせるわ
私自身は【迷彩】で隠れて戦闘員達に指示を出すね
素手でボコりに行くくらいしかできない戦闘員だけじゃ倒せないかもしれないけどちゃんと指示出ししてやれば多少はマシになるでしょ

※戦闘員は黒い全身タイツの昭和特撮な感じです
アドリブ歓迎です




 都会の地下に作られた広場にひしめいていた骨の化け物、シャーマンズゴースト・ボーン・リボーンもその数を減らし戦況は猟兵達が優勢だ。
 それでもまだ制圧したとは言い切れず、どこかに避難しているであろう戦闘力を持たない教団信者を救出する為にも残った骨の化け物を倒し切る必要がある。
 そこに現れた新たな猟兵は一風変わった、奇抜というにはどこか違う独特なバーチャルレイヤーを纏い骨の化け物と対峙する。バーチャルキャラクターの少女、大河・回(プロフェッサーT・f12917)は自身に課せられた設定という名の使命を背負っていた。
 回の冷たい視線が残った骨の化け物を数える。同時に回が合図を送るとその背後に全身黒タイツの戦闘員達が現れる。
「ほらほら、働く時間だよっと」
 何を隠そう。大河・回が背負う設定とは世界征服を企む悪の組織「デスペア」の幹部「プロフェッサーT」だったのだ。
 その声に総勢五十人の戦闘員達は甲高い声を上げ敬礼をし忠誠心を示した。そして骨共の群れへ一目散に駆け出し、ある者は殴り蹴り、ある者は飛びかかり、まるで乱闘といった具合に各々攻撃を繰り出した。
 戦闘員一人の力は決して強くない。むしろ骨の化け物にも劣るかも知れないだろう。しかし骨共も大量の戦闘員達に組み敷かれては力差があろうと身動きも取れず、無残に砕かれ果てていく。
 だがそれは戦闘員達も同じで雑多な攻撃一つで容易く力を使い果たし消滅していく。戦闘員達は乱雑に戦っているように見えてその実は統制された集団戦のセオリーによって効率的に戦闘を展開させていた。
 迷彩技能によって姿を隠した回が随時指示を出し、武器を持たず格闘術も持たない戦闘員達に的確な戦法を伝えていたからだ。
「ほらしっかりやってよね。そこの骨がガラ空きでしょ」
 指示を受けた戦闘員達は一撃で消える定めにも臆せず次々と悪しき骨へ飛びかかる。程なくして骨は戦闘員達の重さに耐えきれず崩れ去り降り注ぐ拳の雨に粉砕され絶命する。
「ほら次はあっちだよ!」
 だが敵も知性がある。迷彩によって姿を隠しているとはいえ声を出し続ければその場所は気付かれてしまう。回の潜伏場所を確認した骨共が杖を掲げるとその先端に嵌った宝玉が禍々しく濁り回に向けて怪光線が放たれる。
 戦闘員達への指示に気を取られていた回は直前まで迫る怪光線に気付かなかった。しかしその視界を影が覆う。回の危機を察知した一人の戦闘員が飛び出し回をかばったのだ。
 その戦闘員の身体はまたたく間に石化し、力を使い果たし消滅する……。
 消え行く際に戦闘員が絞り出した甲高い声に、普段は冷酷な回も心を抉られるような悲壮感に襲われる。
 設定とはいえ、回は悪の組織「デスペア」の幹部プロフェッサーT。回がバーチャルキャラクターとして生まれ落ちた世界では当然「デスペア」は存在しなかった。それでも己の使命を胸に世界征服を目指し、同じく世界征服を目論むオブリビオンを壊滅させ世界を独り占めにすべく立ち上がった。
 存在しない組織。ならば自分に付き従う彼ら戦闘員とは何か。それは異能のユーベルコードであったがそんなことはどうでもいい。
 設定という使命だけの自分に従い戦う彼らの姿に、回は心を奮わせ……プロフェッサーTとなる!!
 その指示は正確性を高め、残りの戦闘員達は骨共の攻撃動作を見ればすぐさま妨害に走り、体勢を崩した敵には総攻撃を仕掛け確実に撃破する。
 プロフェッサーTは語る。
「いっや~、愛とか恋とか幸せなのっていいよね~。私には関係ないし必要ないことだけどさ」
 その語りは決して無駄ではない。余興でもなければ伊達や酔狂でもない。
「でさ、そういうのをさ、あんなことやこんなことするのはこっちの領分なんだよね。だからさ……消えろ!」
 悪として誇り高く。教団よりも遥かな悪。そして世界征服への断固たる意志!
 その一言一句が同じ世界征服を志す戦闘員達を奮い立たせ士気を高めた!
 再び骨の化け物が怪光線を放つ。今度はプロフェッサーTを守る戦闘員はいない。だがプロフェッサーTは避けない。
 組織を持たない自分に付き従う戦闘員がいるというのに、そのボスである自分が逃げるわけにはいかないのだ!
 怪光線を受け半身が石化するがプロフェッサーTは残り僅かの戦闘員達へ指示を飛ばす。戦闘員達も奮闘したがもはや数で圧倒することもかなわない状況だった。
 プロフェッサーTも片足が石化し身動きが取れず迫りくる骨の化け物に抵抗ができない!
 そのとき……プロフェッサーTの背後から……全身黒タイツ、倒れたはずの戦闘員達が現れたのだ!
「お、お前達……」
 それは奇跡か、あるいは不思議なことが起きたのか。ともかく再び召喚された戦闘員達は戦意に燃え骨共へ襲いかかる!
 戦闘員達の闘志が燃え上がり、拳は骨を軽々と粉砕し蹴りはその関節を打ち砕いた。そして複数人によって繰り出される飛び蹴りは石化の呪術を防ぎ、取り囲んだ戦闘員達によって骨の化け物は見事に撃破される!
 断じて奇跡などではない……。己の設定、そして使命が果たせない現実という名の世界においてもその意志を貫くプロフェッサーTの姿に、同じ悪を貫く戦闘員達が応えたのだ!
 それはもはや虚構ではない。プロフェッサーTと彼らこそが、世界征服を企む悪の組織「デスペア」なのだ!!
 その戦闘は力が尽きるまで続いた。戦闘員達は苦戦しつつも多くのシャーマンズゴースト・ボーン・リボーンを蹴散らし、地下世界に悪の旗を突き立てたのだ!

苦戦 🔵​🔴​🔴​

砂月・深影
大切な人が過ごす場所をこんな形で利用されるわけにはいかないから。……ましてや大切な人を失う悲しみは他の人達に味わってほしくないよ

フェイントや残像も入れながら迎撃しつつ、相手の隙を見てとっておきの一撃を叩き込んでいくよ。お前達に利用される命はないよ!

戦闘中も可能な限り相手を観察しながら戦うよ。弱点とかがわかれば有利に立ち回れるかもしれないから。骨だから固そうに見えるけど、関節とかは弱そうかな?あまり常識で考えない方がいいかもしれないけど

相手の攻撃は武器受けで受け流したり、オーラ防御で防御する。まだボスがいるから消耗はしたくないしね




 地下の広場にひしめくシャーマンズゴースト・ボーン・リボーンもその数を減らし、戦力を失った大神霊尊敬教団は間もなく壊滅するのだろう。この場にいる者はその支部に当たるのかも知れないが、少なくとも後もう一押しで日常を脅かす儀式も終わりを告げるのだ。
 しかし骨の化け物もただの雑魚ではない。ほんの一匹でも逃してしまえば新たな信者を増やし似たような事件を繰り返すに違いなかった。
 少年のような風貌のオラトリオの少女。銀髪に赤い山茶花を咲かせる砂月・深影(寒空に光る銀刀・f01237)も固い決意を胸に戦場に降り立つ。凛々しい表情は強さの他にどこか哀愁を漂わせ、その心に落ちる影を物語っていた。
 しかしそれすらも未来へ踏み出す力に変え、深影は刀を抜いた。
 未だ数では優位に立つ悪しき骨共は新たな猟兵へ襲いかかる。杖が禍々しく輝くと骨共の身長の二倍ほどはある白骨化した馬が召喚され、次々と騎乗した骨の化け物は静かに刀を構える深影を押し潰さんと駆け出した。
 白骨馬が目前へと迫る。微動だにしない深影は白骨馬の前足が踏み込む一瞬のリズムを狙いその眉間に太刀筋を流し込む。それは攻撃ではなく、フェイント。白骨化していても馬としての警戒心が仇となり冷静さを失い、騎乗した骨共の指示も聞かずにその場でいななき姿勢を崩す。
 その一瞬の隙こそ深影の狙い。携えた刀……凍てつく白銀を輝かせる【白銀氷刃】が統制を乱した骨共を斬り捨てた。太刀筋は光を反射し、まるで雪のような白き残光を纏い触れた骨全てを美しいほどに一刀両断にする。
 砕けることすらかなわず切断された白骨馬と骨の化け物は一瞬で絶命し、後ろに控える骨共も深影が放った能力、剣刃一閃に威圧され正面からの攻撃を断念する。
 今度は深影を取り囲み包囲戦に持ち込もうとする骨の化け物だったが、散開しようと孤立したところを深影が見逃すはずもなく容易く刀の餌食となる。それでも数で圧倒する骨共は深影を囲い死角からの攻撃を繰り出そうと迫った。
 白骨馬の蹴り上がる前足が深影の腹部を捉え深くめり込んだ……ように骨の化け物には見えているのだろう。その愚かな思考も、視界も、全てが横一線に分断され、崩れ落ちる。
 繰り出される攻撃を受けたのは深影の残像だった。その隙のない動きが目の錯覚を生み攻撃を空振らせる。そして白銀の太刀筋が白き帯を引くと先程まで荒ぶっていた骨共は容易く真っ二つに分かれ乾いた骨の音と共に地面に転がるのだ。
 それでも全ての攻撃を回避し続けることは困難であり、上手くフェイントも使いこなし迎撃する深影だったが包囲戦からの混戦となれば徐々に回避行動も強引なものが要求されていく。それは硬直を生み敵に付け入る隙を与えてしまう。
 銀色の短髪を乱し地面を滑るように攻撃を回避した深影は背後から振り下ろされる白骨馬の前足を避けきれない。
 いや、避ける必要などなかったのだ。深影の翼がオーラを放ち背後に迫る白骨馬を押し出しその攻撃を阻止する。同時に横から杖で殴りかかる骨の化け物は構えた刀で受け、すかさず打ち返しその後ろにいる骨共ごと押し返した。
 そして混戦から一転、敵の隙をついた深影は舞うように【白銀氷刃】を振るう。白銀が空間を彩ると、周囲を取り囲んでいた骨共は音もなく一刀両断されたのだ。
 もはや深影を止められる者はいないのか。深影の冷静な観察眼の前では浅はかな戦法など赤子の手をひねるように逆手に取られてしまう。
 しかしそれは当然だ。大切な人同士が過ごす場所を呪われた儀式に利用するなど深影は見過ごせなかった。ただの人助けではない……かつて、自身も大切な人を失った悲しみに打ちひしがれ、今もなおその過去を背負う深影だからこそ到る決意。この場に立つに相応しい覚悟となるのだ!
「大切な人を失う悲しみは他の人達に味わってほしくない……お前達に利用される命はないよ!」
 戦闘でも落ち着いた表情を崩さなかった深影が、悲痛にも似た叫びと共に感情を見せる。その銀を携えた瞳が見た過去を……未来を守る力に変える。
 飛びかかる骨の化け物を刀で受け下段を斬り抜けると、その奥で杖を構える最後のシャーマンズゴースト・ボーン・リボーンへ白銀の太刀を浴びせた。

 刀についた汚れを拭き、深影は広場を見渡すと奥へ繋がる細い道を発見する。それは岩肌が剥き出しになった洞窟のようなものだった。
 どうやら教団は災害時用の倉庫として作られた巨大地下区画だけでは飽き足らず、その奥に新たな道を掘り進んでいたようだ。
 光のない洞窟の先で猟兵達を待つ者とは何か……教団の壊滅にはまだ時間がかかりそうだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『雷穹龍グローレール』

POW   :    雷霆光輪
【超高熱のプラズマリング】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    撃ち砕く紫電
レベル×5本の【雷】属性の【破壊光線】を放つ。
WIZ   :    ドラゴニック・サンダーボルト
【口から吐き出す電撃のブレス】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠神楽火・皇士朗です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 僅かな光源を頼りに洞窟を進むと前方から人の声が聞こえた。それは歌だった。
 虚ろな歌声は賛美歌のようにも聴こえたが紛れもない呪歌だ。天空に漂う雷神を崇める呪歌はやがて二十人ほどの女性によって歌われるものだとわかる。
 洞窟を抜けた先では……その呪歌の主役が、今まさに復活の時を迎えようとしていた。
 女性は誰もが正気を失っていた。恐らく洗脳を受けているのだろう。
 猟兵達は事前の情報から彼女達が各地で起きているカップル失踪事件の被害者であることを知る。
 そしてその指揮をとっていた者……教団の中でも特別趣味の悪い衣を纏った女が振り返り、枯れた笑い声を響かせた。
「もう遅い……雷穹龍様は我らが呼びかけに応え降臨される。お前達が何者かは知らぬが……残念だったな。今宵、人の世は終わりを迎える」
 言い終えた女は雷穹龍と呼ばれたUDCが眠る闇へ身を投げた……。
 最後の生贄だったのだろう。闇の塊は大きく広がる。呪歌は尚も止まらず、やがて闇は雷鳴を轟かせ、一筋の雷撃が天井を突き破った。
 そこに闇はもうない。代わりに……。
『……久々の下界は十六夜か』
 月を飲み込むほどの巨大な……龍が見下ろしていた。
 戦場は地下から地上へ、雷穹龍の加護により呪歌を謳う女性達も地上へ召喚されていた。
 月明かりに浮かび上がる雷穹龍は帯電しているのか雷光を纏い、その姿は神と呼ばれるに相応しい禍々しさと神々しさを証明していた。
『弱き者、猟兵よ。我を滅ぼせると思い上がるか』
 大地を振動させるおどろおどろしい声。それはまさしく邪神と呼ぶべきUDCなのだろう。
 しかしそれはかつての話。雷穹龍が支配する夜空には高層ビルが建ち並び、空が絶対的優位を示すものではない。
 猟兵の中には同じく空中戦を得意とする者もいるだろう。
 敵はこれまでの雑魚とは違う。考えうる全ての手段を用いて立ち向かわねば勝機は無いと知れ!


 雷穹龍は強敵だが、更に呪歌の効果によって全盛期の力を取り戻している。呪歌を謳う女性達は洗脳されているが、その心に秘められた恋心から生まれる感情エネルギーを呪歌に込めることで効果を高めている。
 ならば感情を逆手に取れば女性達を正気に戻せるかも知れない。なお雷穹龍の加護により女性達へは近寄れない為注意されたし。
 周囲には高層ビルが建ち並び、ビル内にも周囲にも一般人はいない。高層ビルを利用した戦術も空中戦への対抗手段になるだろう。
 また空中戦を得意としない猟兵も地上からの戦闘は有効である為、【必ずしも空中戦を想定する必要は無い】だろう。
 雷穹龍が纏う雷撃は強力だが猟兵ならば対策をせずとも充分に戦えるはずだ。当然対策をすればより効果的であることは間違いない。
 しかしながら上記の作戦は絶対ではない。猟兵ならば戦闘にのみ専念しても倒せるはずなのだ。

 全盛期の力を取り戻した雷穹龍は強敵だ。呪歌の効果により【神の賽は厳しく】なる。
 しかし【呪歌を打ち消すほどの思いの力、魂の叫び】があれば未来は開かれるだろう。
霄・花雫
……こんなの、あたし嫌だ。
このヒトたちの恋心はこんな風に利用される為のモノじゃない。
その気持ちは!好きなヒトの為のあったかいものでしょ!?こんな奴の為に使うモノじゃないよ!

早く目を覚まさせなきゃ。
だって、……だって、好きなヒトがいるってすごいコトなんだよ。貴女たちの宝物をこれ以上こんな奴に使わせない!
貴女たちの宝物も、この世界もあたしたちが守るから!早く日常に帰って、好きなヒトに抱き締めて貰お。ね。

風の姫ねぇさまに頼んで空を駆けるよ!【空中戦、全力魔法、見切り、パフォーマンス、野生の勘、早業、ダッシュ、フェイント】
道が途切れても何度でも繋ぎ直す!その頭に蹴り入れてやんなきゃ気が済まない!




 月と都会の明かりに照らされ夜空を泳ぐ雷穹龍の巨大なシルエットが浮かび上がる。その姿は雷光を纏い、放電の衝撃が大気へ干渉し波動を生む。
 紛うことなき邪神。UDC組織が神格級と恐れていたUDCなのだ。
 立ち向かうキマイラの少女、霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)は荒れ狂う大気に白い髪を押さえ、雷穹龍を見上げる。
 あまりに強大な龍を前にすれば花雫は小さく、そしてか弱い存在に見えた。しかし小さな胸にはいくら敵が強大であろうと、それを跳ね除けるほどの感情の波が渦巻いていた。
 怒り、慈しみ、そうではない。簡単な言葉で片付けるにはとても足りない犠牲の上にこの血塗られた事件はある。ならば花雫が抱く感情は、純粋な否定。
「……こんなの、あたし嫌だ」
 言葉は暗く、重い。今も傍らでは洗脳された女性達の呪歌が響く。
 このヒトたちの恋心はこんな風に利用される為のモノじゃない。花雫の感情が湧き上がる。あの日、生まれて初めて自立を志した時のように、呪われた彼女達を救いたいと願う思いがユーベルコードにこれまでにない輝きを灯す!
「飛ぶよ、姫ねぇさま」
 エレメンタルロッドはひとりでに光を宿し風の形態を作る。呼び出された風の精霊姫は荒れ狂う大気を瞬時に静止させた。
 異変を察知した雷穹龍も花雫の存在に気付き容赦のない先制攻撃を仕掛けた。一瞬の動作すらなく巨大な口から吐き出された雷撃のブレスは視界の全てを巻き込み花雫は雷鳴に包まれてしまう。地面に吹き付けられたブレスは広範囲に拡散し一面を焼き尽くした。
 圧倒的な力を見せつけた雷穹龍だったがその警戒は解かれず、むしろ強まる一方だった。
『……風の異能』
 雷撃が過ぎ去った後には、暴風の渦に守られた花雫がいた。その幼い姿はいくつもの鰭のような薄翅に包まれ、風の精霊姫も一転攻勢と言わんばかりに雷穹龍の元へ続く風の道を作り出し、花雫のステージが完成する。
 呪歌が響き渡る中、花雫は嵐に乗り月夜を翔けた。雷穹龍は撃ち落とさんと雷撃のブレスをばら撒いたが、そのどれもが風の壁に阻まれ弾道を捻じ曲げられる。
 ならば、と巨体を振るい更なる暴風を巻き起こし相殺を狙う雷穹龍だが、風の精霊姫の力は既に大気中に浸透し月夜の全てを支配していたのだ。相殺されたのは雷穹龍が放った衝撃。
 そしてその頭部まで風が届き花雫が舞い上がる。月を背に、その小さい身体から、風の蹴撃が突き上げられる!
 上昇気流の勢いを乗せた蹴りはまるでアッパーカットのように雷穹龍の頭部を打ち上げ、もたげる。更に空中で姿勢を回転させた花雫がもたげた頭部に鞭のようにしなるかかと落としを叩きつけた!
 雷穹龍の巨体がぐらりと揺れ、月明かりの影も大きく揺らいだかと思えば尾の横薙ぎが花雫を襲った。雷撃を伴う直接攻撃だが直前に風に押され急降下した花雫には触れることもなかった。
 風の精霊姫が大気の僅かな揺らぎも感知し、あらゆる攻撃を見抜いていたのだ。この月夜は花雫だけのステージではない。花雫と風の精霊姫が織りなすエレメンタル・ファンタジア。
 そこにはかつて天空を支配した雷穹龍の空など、どこにもないのだ。
 続けて繰り出される雷撃のブレス、荒ぶる直接攻撃を尽く回避し夜空を舞う花雫はまるで空を泳ぐ人魚のようだった。
 巨体が纏う放電は全力の暴風で防ぎ、尾の薙ぎ払いは急加速により全て回避しその度に月明かりに照らされ美しい舞いを魅せた。雷撃のブレスが迫ればその呼吸すら察知し背後に回り込み素早い蹴撃を叩き込んだ。
 しかし雷穹龍もこれまでの雑魚とは桁違いだ。いかに翻弄されようともその無尽蔵な体力を削り切るには到らない。
 そしてその戦いの間も鳴り響く呪歌が雷穹龍に無限の力を与えていた。その呪歌は花雫の耳にも届いていた。
 心のない歌声。しかしそこには恋心の感情エネルギーを強制的に込めさせ効力を増幅させる洗脳が施され、花雫にはそれが悲痛な叫び声に聴こえたのだ。
「早く目を覚まさせなきゃ」
 花雫の声もまた心の叫びだった。このような呪われた現実を受け入れるには、少女の心はあまりにも幼く、過酷だった。
 その声に応えた風の精霊姫は極限まで魔力を暴走させ雷穹龍を縛り上げる風の檻を作り出した。そして呪歌を謳う女性達の元へ風の道が架けられた。
 花雫は溢れる感情を抑え空を翔けた。女性達もまた雷の檻に閉ざされ近寄ることはできなかったが声が届く場所まで花雫は辿り着く。
「貴女たちの気持ちは! 好きなヒトの為のあったかいものでしょ!? こんな奴の為に使うモノじゃないよ!」
 虚ろな瞳で雷穹龍に祈りを捧げる女性達を目の当たりにし、花雫は声を荒げた。
「だって……だって、好きなヒトがいるってすごいコトなんだよ」
 言葉は途切れ途切れだった。涙声だった。溢れる感情を抑えられずにいた。
「貴女たちの宝物も、この世界もあたしたちが守るから!」
 花雫の声もまた祈りだった。その祈りが彼女達に届いたのだろうか……呪歌は先程よりも弱々しく聞こえる。
『……何をした。猟兵ッ!』
 しかし狼狽える雷穹龍が何よりもの証明となる。花雫の声は呪歌を謳う女性達の心に届き、その洗脳を少しずつだが消滅させたのだ。
「早く日常に帰って、好きなヒトに抱き締めて貰お。……ね」
 涙をこらえる花雫の後ろでは怒り狂う雷穹龍が周囲全体を覆うほどの雷撃のブレスを轟かせていた。その瞬間、雷穹龍を縛り上げていた全ての風が消え去り花雫の元へ集結する。
 そして女性達を守るように何十メートルもの暴風の壁を作り出す。
 はたして風が雷撃を防げるのか。自然界においてはその結論は既に導き出されているのだろう。しかしこの風は自然の風ではない。花雫と精霊姫が作り出した希望の風。心から溢れる願いの奔流なのだ!
 世界を守る強き意志が迫り来る雷撃を打ち消す! 果てなき力があるのなら、果てなき思いで押し返す。それが花雫の答えだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



 呪歌の効力は薄れ神の賽も闇を払いつつある。
 雷穹龍が全盛期の力を失いさえすれば、猟兵達はいつも通りの戦いができるはずだ。
大河・回
声で場所がばれるなんて凡ミスをするとは……「私」はもっとうまくやれるはずなのに。半身は石か、けど逃げるなんて選択肢はありえないね!

ろくに動けないし【迷彩】を使った上でビルの陰に隠れて距離を取る
目的は呪歌をなんとかすること
UDC組織に問い合わせたりネットを使って色々な情報源を【ハッキング】したりして女性達の想い人を特定する
特定したら彼らのスマホを【ハッキング】して【グッドナイス・ブレイヴァー】で撮影した映像を送って彼女達に正気に戻るよう訴えてもらうんだ
近づけなくても音なら届くからね
ドローンを落されないよう常に手動で【操縦】だ

認めたくないけどこういう王道に「我々」は敗れてきたからね
今度は君の番さ!




 雷鳴が轟く裏では悪の組織【デスペア】の幹部【プロフェッサーT】を名乗るバーチャルキャラクターの少女、大河・回(プロフェッサーT・f12917)が迷彩により姿を消し活動していた。
 先の戦闘の傷痕が残る回は半身の石化が回復しきっておらず満足に身動きがとれない。回には撤退という選択肢もあった。それでもこの戦場に残った理由。
「逃げるなんて選択肢はありえないね!」
 それは悪の組織としてのプライドか、あるいは猟兵という使命が成すものか、それは本人にしかわからない。
 しかし雷穹龍グローレールが暴れ回る危険地帯に圧倒的不利な条件を背負ってでも立ち向かうその姿には、悪というプライドだけでは説明できない誇りにも似た志が見て取れただろう。
 石化が解けない以上、雷穹龍との交戦は困難だ。回は高層ビルの陰に隠れできる限り敵との距離を取った。
 このまま戦っても勝機は薄いと判断した回が出した作戦とは、雷穹龍に力を与えている呪歌を止めることだった。
 その方法も既に練っており、更には下準備としてUDC組織に洗脳されている女性達の情報を問い合わせていた。
 程なくしてUDC組織から女性達の個人情報が送信され、それを受け取ると回はこの世界には到底似つかわしくない遥か未来の技術、電脳魔術を展開し得た情報を転送し解析する。
 呪歌が恋心を利用しているのならば、その恋心を逆手に取り洗脳を解く。それが回の作戦だった。
 個人情報から女性達が利用していたSNSのアカウントを割り出し、電脳魔術により容易く侵入、そして彼女達の交際相手を特定していく。
 その時、雷穹龍も獲物を探し月夜を泳ぐ。いくら迷彩によって隠れていても視界に入れば発見されてしまうだろう。回は石化した足を引きずりビルに隠れやり過ごした。
 逃げ場を探している間にも裏で走らせていたハッキングプログラムが女性達の交際相手の携帯端末を割り出す。
 この瞬間を待っていた回は、すかさず動画撮影ドローンを女性達の元へ飛ばす。同時に交際相手の携帯端末をハッキングし、その画面にメッセージを表示した。
 それは失踪した彼女達へ、今この瞬間に動画メッセージを届けるという無茶な要望だったが、動画撮影ドローンが捉えた彼女達の虚ろな姿を端末越しに見た交際相手もそれぞれ事態を察し始めた。
 まだUDCの存在を知らないこの世界の住人は、彼女達の姿を見てもいまいち事態を理解できないだろう。ある者は事件に巻き込まれたと察し、ある者は犯人からの要求かと身構えた。
 しかし回が繰り返し送ったメッセージ。彼女達を正気に戻してほしいという言葉が交際相手の心を動かしていた。
 ハッキングした携帯端末が撮影を開始する。彼、あるいは彼女らは思い思いの心の叫びを動画に込めた。それは回の動画撮影ドローンを介し電脳空間へ送られる。
 集めた動画はすぐにでも再生可能だ。しかし呪歌を謳う女性達へ送るにはどうすればいいのか。洗脳され自由を奪われた彼女達にも動画を見せる方法……。
 思考に行き詰まる回は空を仰いだ。悲しくなるほど見事な月夜だった。戦場の背景に収めるにはもったいない夜だった。
 そして回の視線の先には偶然にもビルの巨大モニターがあった。これだ、と回は巨大モニターにアクセスする。しかしモニターは主電源が落とされていて高層ビルそのものをハッキングしなければならない。
 だがそれも算段がないわけではなかった。回はこれまで回線の中継に徹していた動画撮影ドローンをビル内部へ侵入させ手頃な端末と接続。
 この世界ならば、主電源を立ち上げる為にビル内を駆け回り手動で起動するものだと誰もが想像しただろう。しかしこれは電脳魔術。そこに回のハッキング技能が加われば、巨大モニターは容易く起動する!

 ……巨大モニターには、愛の声が映し出されていた。
 日常の中にいた者。失踪した彼女を探し続ける者。事件性を知り世界の裏を覗いた者。彼女の帰宅を待ち続ける者。中には産まれた子供と彼女の帰りを待つ者もいる。
 回も、彼らの全てが呼びかけに応えてくれるとは思っていなかったのかも知れない。なぜなら回は悪の組織の幹部だ。このような真似は回の敵が得意とするものだった。
 しかし実際はメッセージを受け取った全員が声を届けていた。
 その愛の声は雷穹龍の檻に閉ざされた女性達にも、届く。
『……何が、起きているッ』
 呪歌に込められていた感情エネルギーが薄れていく。恋心が届けるべき相手へ向けられる。彼女達の心に日常が戻り始める。
 不意に力を失い始めた雷穹龍は憤りに任せて雷撃のブレスを放射した。巨大モニターは強力な放電により破壊されてしまう。
 再び静寂と、そこに混ざる呪歌が戦場を支配する。
 しかし突如、消えたはずの愛の声が、彼女達の目の前に映し出された。
 それは回が電脳魔術によって展開した未来のスクリーンだった。そしてそれは回の存在を雷穹龍に悟られる諸刃の剣でもある。
 雷穹龍は空を這いずり、ついに回は発見されてしまう。
 互いに睨み合う。その時間は一瞬だったが、回は不敵に笑った。
 回が知る悪の組織は強く、冷酷で、そして残虐だった。しかしいつだって正義の前に敗れる定めにある。
 力でも戦術でも上位に立っていたはずの悪の組織が負ける唯一の理由。それこそが……今、回の目の前で起きている。
 あれほど呪いを帯びていた歌が……いつしか温かく、慈しむメロディに移り変わっていた。
 彼女達の洗脳は解けているが呪いにより歌を止められずにいた。それでも交際相手が送った愛の声に応えようと、その呪歌を愛の歌に変え、世界を塗り替えていく。
『我が力が、抜けていくだとッ……!』
 そうだ。これまでも悪の組織は、たった一つの小さな奇跡によって覆されてきたのだ!
「こういう王道に【我々】は敗れてきたからね」
 半身が石化したままでは勝ち目はないとわかっているのに、回は一歩も退かず、その人差し指で雷穹龍を指差した。
「今度は君の番さ!」
 決して見栄でもハッタリでもない。回が背負う設定の中で起きた奇跡が、現実にも起きたのだ。
『ふざけるなッ!! 人類など信仰心の入れ物に過ぎぬッ!』
 容赦なく雷撃のブレスが放たれる。死を覚悟した回だったが……その身体を覆っていた石化はいつの間にか消えていて、上手くビルを盾にしてブレスをやり過ごしていた。
 回は意図していなかったが、動画撮影ドローンは回の活躍の一部始終を同じ戦場を支えるUDC組織の元へ届けていたのだ。その英雄が如し活躍に誰もが声援を送っていた。
 そのエールが回の装備を強化し、更に石化の呪術までも解いていたのだ。
 回がいかに悪の組織の幹部であろうと、彼らにとって今の回はスーパーヒロイン。
 愛の歌を背に戦うイェーガーなのだ!
 悪の組織も、正義を成していい。回が言う王道の名の下に呪歌は消え去り、雷穹龍はもはや神格なきUDCへと成り下がったのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​



 呪歌は消え去り神の賽は猟兵の元へ戻った。戦場には愛の歌が響き、奏でられるメロディとリズムが猟兵達を加護する。
 未だ夜空を支配する雷穹龍グローレールだが、その全盛期の力は失われている。今こそ反撃の時!
グロリア・グルッグ
恋とか愛とかよく分からない私ですが、それを大事に思う人がいるというのは分かりますよ。
その人たちを守るのが騎兵さんの宿命であり使命なので張り切って参りましょう。

「邪神を狩れば騎兵的な箔が付きますよね」

騎兵走法とジャンプを組み合わせた空中戦を仕掛けます。
着地が必要となれば地形の利用で高層ビルの壁を蹴り、騎兵走法で空を飛び続けましょう。
攻撃には誘導弾や鎧無視攻撃の徹甲弾を使い、電脳魔術に組み込んだ戦闘知識やスナイパー技能等で命中率を高めます。
敵の電撃には電撃耐性や激痛耐性と覚悟で乗り切ります。
好機があれば力溜めから一斉発射を行い、大火力をお見舞いしてやりましょう!




 呪歌を奪われ全盛期の力を失った雷穹龍グローレールが月明かりの中で咆哮する。高層ビルの狭間で呻くそれはかつての時代だったならば絶対的神格の元に君臨する存在だっただろう。
 しかし時は現代。古の神は文明社会の元に下り、その神通力も文明が作り出した絆の繋がりによって打ち破られた。
 だが、果たして雷穹龍を狩る力は現代だけだろうか。
 否。高速展開する電脳空間を携え、高層ビルの間を駆け抜けるその異能は紛れもなく宇宙時代の力。
 ピンクの髪のなびかせ雷穹龍の頭上に陣取るスペースノイドの女性。グロリア・グルッグ(電脳ハッカー・f00603)のアームドフォートが即座に展開。照準シーケンスは一秒もかからずに完了し直上からの徹甲弾が撃ち出される。
 交戦開始を告げる砲撃は奇襲の形となったが、呪歌を失ったとしても神格級UDCの名に違いはなく、雷穹龍は五感以上の感知能力でグロリアの攻撃を察知すると鋼のような尾が空を斬り徹甲弾を真っ二つに切り裂いた。
 尾の薙ぎ払いによって生じた風力を利用しグロリアの飛翔は更に加速する。雷穹龍はグロリアの姿を捉えると巨体をうねらせ攻撃態勢に入る。その全身が紫の光に包まれた途端、空に無限とも思える数の紫電が走りグロリアを襲った。
 だがそれは所詮放電。雷は予測が困難な現象ではあるが未来の技術の前では予測も容易なのだ。グロリアは電脳魔術に組み込まれた知識を元に空を貫く紫電の攻撃位置を割り出すと、回避ルートを作り出し空中を蹴り巧みにかいくぐる。
『人類如きが、我が天空を侮辱するかッ!』
 一向に被弾しないグロリアにしびれを切らした雷穹龍は全身から紫電を放射したままグロリアに向けて突進する。しかし空中戦においてもグロリアに軍配が上がる今、直線的な動きはアームドフォートの的に他ならない。
「邪神を狩れば!」
 アームドフォート・アルファが撃ち出した砲弾は誘導弾。それは雷穹龍の横をすり抜け一見外れたように見えた。だがグロリアの背後にはもう一機……。アームドフォート・ブラボーが徹甲弾を装填し待ち構えていた。
 外れたように見えた誘導弾は言うなれば見せ球。
「騎兵的な箔が付きますよね!」
 誘導弾によって弾道のど真ん中に誘き出された雷穹龍の眉間目掛けて無慈悲な徹甲弾が撃ち込まれる。今度は防御する時間もない。まさに近距離砲撃!
 装甲を削る徹甲弾が雷光によって守られた鱗を粉砕し、その顔に傷痕を作った。
 しかし雷穹龍の勢いは止まるどころか、怒りに身を任せ加速しグロリアを喰らおうと突進する。騎兵走法の飛翔回数を使い果たしたグロリアはもう空を蹴れず逃げ場がなかった。
 だが鎧装騎兵としての戦闘知識が戦場での閃きを生み出す。背後に迫った高層ビルの壁を蹴り、グロリアは再び夜空へ舞い上がる。
 雷穹龍は勢いのままビルに衝突し、ビルに穴を開け通り抜けると再び撃ち砕く紫電を放射した。
『墜ちろッ!』
 咆哮も虚しく紫電は一発たりとも当たりはしない。仮に被弾してもグロリアが持つ防御技能が被害を最小限に留めるだろう。いかに強大なUDCであれ経験と知識で武装したグロリアには届かない。
 見下すはずの人類に天空すら奪われた雷穹龍に降り注ぐものはアームドフォートが放つ誘導弾の嵐だった。
 今度は見せ球ではない。息の根を止める為の砲撃だ。誘導弾が着弾する度に雷穹龍は装甲を失い爆煙に包まれる。それでも巨体を振るいいくつかの誘導弾を避け、あるいは叩き落としながらグロリアを追い、紫電の集中砲火を浴びせた。
 しかしグロリアの三次元機動は騎兵走法により空中を上下左右自在に跳躍し、制限のない自由な飛翔は被弾する気配すらなかった。
『本来の力があれば猟兵など』
 誘導弾を避け続けようやくグロリアを正面に捉えた雷穹龍は、それすらも誘導させられていたとは到底気付かない。
 待ち伏せていたかのようにグロリアの砲撃が直撃し、今度は胴体を徹甲弾が抉りダメージを与える。
 巨体が揺らぎ、雷穹龍はついに地に落ちる。

 呪歌は奪われ、戦場には愛の歌が響き、天空までも支配された。
 無限とも思われる紫電は一撃たりとも命中せず、グロリアが放つ砲撃はその思惑通りに着弾していた。
 一方的とも思われる戦闘……それは星船電脳騎兵の狩り。
 雷穹龍は邪神でもUDCでもない。もはや狩りの獲物なのだ。
「恋とか愛とかよく分からない私ですが」
 グロリアは月明かりと愛の歌を背に、地に落ちた龍に照準を合わせる。
「それを大事に思う人たちを守るのが、騎兵さんの宿命であり使命です」
 二機のアームドフォートから放たれる一斉射撃が遥か上空より降り注いだ!
 雨のような徹甲弾を受け、もはや光沢を失った巨体を這わせ、それでも空へと逃げおおせた雷穹龍だったがそのダメージは甚大だ。
 グロリアの狩りは見事に成功し、雷穹龍グローレールの体力は大幅に削られた。
 この戦いも夜明け前には決着を迎えるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霄・花雫
誰だかわかんないけどお姉さんえらい!最っ高の解呪方法じゃん!
よっし、あとはアイツをぶっ飛ばすだけっ!守ってみせるって約束したもん、まだまだ行くよ!

もうちょっと手を貸してね、姫ねぇさま。飛ぶよ!
レガリアスシューズに大気の爆発力と魔力を込めて、風の道で流れに勢いを貰って。
その牙、蹴り砕いてあげる!【空中戦、全力魔法、見切り、パフォーマンス、誘惑、野生の勘、早業、ダッシュ、フェイント】
空がアンタだけのものだなんて思わないでよねっ、この空の上ならあたしは誰より自由なんだから!
アンタから見ていくらヒトがちっぽけで、いくらあたしがちっちゃくったって、アンタを蹴り飛ばすくらい出来るのよ。
あたしは負けない。




『耳障りな歌をやめろォッ!!』
 呪歌だったそれは最愛の者へ送る歌へと変わり雷穹龍グローレールを苦しめていた。
 その様子を眺めていた空を泳ぐキマイラの少女、霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)は、まるで物語の中で起きる奇跡のような出来事に心を奪われていた。
 愛の応酬が歌となり戦場を見えない力で包み、未来をかけて戦う猟兵達を押し上げていた。
「よっし、あとは……アイツをぶっ飛ばすだけっ!」
 花雫の周りを風が包み込んだ。それは花雫が呼び出した風の精霊姫によるもの。輝きを失い血を流す雷穹龍を見上げ、リング型レガリアスシューズに大気の爆発力とありったけの魔力を込めた。
 鰭のような薄翅が現れると花雫を取り巻いていた優しい風は鋭く吹き荒れ、雷穹龍と同じ高度までの通り道を作り出した。
「もうちょっと手を貸してね、姫ねぇさま」
 祈るように声をかける。もしかすると花雫と精霊姫の間に言葉はいらないのかも知れない。二人は思考も感情も高い水準で通わせ、一心同体の動きを実現しているからだ。
 それでも言葉を紡ぐ理由。それは信頼以上に、心を通わせたいと願うから。そしてその感情こそが、今戦場に響く愛の歌そのもの!
 風の道を駆け上がる花雫に、追い詰められ後のない雷穹龍が容赦なく雷撃のブレスを浴びせたが、焦りから予備動作もその攻撃方法も看破され、花雫と精霊姫は流れる風を自在に操り泳ぐようにブレスを回避していく。
 やがて雷穹龍と同じ高度に達すると、花雫の背後に厚い風の壁が生成され、レガリアスシューズの魔力も合わせて壁を蹴り、風すらも貫く勢いからの蹴撃を繰り出した。
 花雫の蹴りは空を引き裂く音と衝撃波と共に雷穹龍の眉間に突き刺さった。雷穹龍は衝撃に後退しながらも牙を剥き雷撃を生み出そうとしたが、続けて繰り出された花雫のかかと落としが口元に叩き込まれ雷撃は放散されていく。
『定命風情がッ! 身の程を知れ!』
 雷穹龍は傷だらけの巨体をうねらせ暴風を巻き起こす。しかし風ならば風の精霊姫の支配力が勝り、吹き流れる上昇気流が花雫を運び、鞭のように撃ち出される尾撃を尽く回避する。
「アンタから見ていくらヒトがちっぽけで!」
 同時に花雫は風を渡り雷穹龍の頭上へ躍り出た。追うように雷撃のブレスが放射されるが雷穹龍の動きを上回る速度の花雫にまるで追いつかず避けるまでもなかった。
「いくらあたしがちっちゃくったって!」
 そして風の精霊姫が花雫を取り巻く風向きを変えると、雷穹龍の頭部目掛けて急降下し両足の蹴りを浴びせた!
「アンタを蹴り飛ばすくらい出来るのよ!」
 その鋭い蹴りは深く食い込み雷穹龍は再び地に落とされる。更に追撃を仕掛ける花雫に雷穹龍も全身に雷光を纏い応戦する。
 巨大な尾が撃ち出されれば風が花雫を押し出し反撃を繰り出し、放射される雷撃のブレスに包まれようとも僅かな隙間を縫うように空を泳ぎ回避した。
 今、花雫は風の精霊姫との信頼、未来を夢見る女性達、そしてその最愛の人達の想いを背に、あの日窓から見上げた空を縦横無尽に泳ぐ。
 全身に愛を受け育った花雫だからこそ、愛の歌をその心いっぱいに受け、溜め込んだ想いが導くままに月夜を翔ける!
「空がアンタだけのものだなんて思わないでよねっ! この空の上ならあたしは誰より自由なんだから!」
 事実を突きつけられ雷穹龍は怒りに震えた。
 教団に召喚され、蘇ればそこは現代日本。唯一の神通力だった異能は猟兵に及ばず、信仰心も奪われ、そして最後の誇りだった天空までも猟兵に支配されている。
 雷穹龍の体力も残り少ない。追い込まれた悪は最後の足掻きを見せる。
『ならば……せめて貴様らが守る未来を奪い去ってくれようぞッ!!』
 怒りの矛先……それは、今も雷穹龍の檻に閉ざされたままの女性達。愛の歌を謳う彼女達。
「……! 姫ねぇさま! 飛ぶよ!」
 雷穹龍の歪んだ思惑を察した花雫は彼女達の前へ翔ける。それよりも早く風の精霊姫は乱気流が如し風の奔流を作り出し花雫を押し出していた。
 彼女達を守るように前に出た花雫はエレメンタルロッドを煌めかせ精霊姫の魔力を極限まで高める。応えるように花雫の前に暴風の壁が作り出される!
 雷穹龍も己の最期を悟ったのか、正真正銘最後の雷撃のブレスを放った。それは蓄えていた全ての力、そして自身の命すら捧げた雷神の咆哮だった!
 二つの力がぶつかり合う! どちらも互角、いや雷穹龍の力が若干勝るのか。暴風の壁を貫き始めていた。
「守ってみせるって約束したもん!!」
 花雫の心の叫びに愛の歌が共鳴する! 暴風の壁は光り輝き雷撃を押し返す!
 未来を守ろうとする花雫の想いと、同じく未来を紡ごうと夢見る彼女達の想いが、同じ一つの願いとなり過去を打ち破る力となる!
 この夜空を翔けるのは花雫だけではない。愛を誓う女性達、その最愛の人々、戦場を支えるUDC組織。全員の想いが花雫の心に宿り、その姿を輝かせた!
「あたしは負けない!!」
 煌めく暴風の壁は雷撃を飲み込むほどに膨張し、雷穹龍に向けて吹き荒ぶ!
 その中心に台風の目が如し風の道が生まれる。愛の輝きと共に花雫が飛び込むと急加速し、最期のブレスを放射する雷穹龍の口元へ直撃、その牙を蹴り砕いた!
 刹那、轟く雷撃は放散し、夜を照らすものは月明かりだけとなる。
『おのれ……おのれ……ッ』
 全てを失った龍が、音もなく塵となり骸へと還る……。
 月夜には愛の輝きを纏い空を泳ぐスカイダンサー。やがて女性達の呪いが解け始めると愛の歌も役目を終え、ようやく鳴り止む。
 花雫の心に宿っていた愛の力も彼女達の心へと帰り、その愛の輝きも月明かりに溶けていく。
「みんな、ありがとう……」
 朝日が登る頃には記憶を消されてしまう彼女達に、花雫は心からの感謝を告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『空中庭園』

POW   :    散策する

SPD   :    観察する

WIZ   :    景色を見る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 激戦を終えたオフィスビル街は痛々しい傷痕ばかりだったが、UDC組織の協力で工事の手はずは整っており、日常に戻るまでそう時間はかからないだろう。
 しかし問題の高層ビルから人を避難させる口実に、空中庭園の閉鎖という噂を流してしまったUDC組織は、再び客足が戻るように猟兵達にも空中庭園のサクラとして参加して欲しいと協力を要請した。
 勝利の余韻を味わうも良し。現代日本の夜景を楽しむも良し。相手がいるならば甘いひと時を過ごすのも良いだろう。
ヘンリエッタ・モリアーティ
こういう場所、初めて。
UDCアースも知らないうちに発展したものね……。
それにしても、遅い時間にアンバーをつれてきちゃった……ごめんね、他にお仕事について来てくれそうな人が居なくて……。

眠っても大丈夫よ、ほら、抱っこしましょう。
大丈夫、私こう見えても怪力だから、立派な尻尾も翼も抱っこできるの。
あら、本当。ちゃんと夜空なんて見たことなかったわ。
……綺麗ね、あなたも。

さ、そろそろ帰りましょうか。歩ける?難しいなら家まで――。
……もう、おませさんね。「お母さん」に気をつかわなくてもいいのに。
手を握って、あたたかいままで。額の熱はきっと、嬉しくて、恥ずかしくて。そのせいね。
本当に、……熱があるかも。


アンバー・ホワイト
ヘンリエッタ/f07026と一緒に

夜のお散歩、わくわくするな!
苦手な夜更かしも楽しさで眠気なんか吹き飛んでしまうよ

手を繋いで空中庭園をお散歩
周りのカップルたちを見ながら、握る手にぎゅっと力が篭もって

ふわり抱き上げられたなら、にっこりと微笑んで
わあ、空がこんなにも近くなった!えへへ、ありがとうヘンリエッタ

帰る間際に、抱き降ろされることにほんの少しの躊躇い
手が離れる一足先に、ヘンリエッタの額にキスを落として

お母さんへのありがとうは、こうするんだろう?
はにかみながらの満面の笑みで、再び彼女の手を取って
あたたかな家族の時間をほんとうに愛おしいと嬉しいと感じながら
冬空に負けない温もりを手のひらから感じて




 夜。オフィスビル街の一角。一際高いビルの屋上では一時期閉鎖の噂が囁かれた空中庭園が淡い光に包まれ、その噂が根も葉もないものであると人々を迎える支度を整えていた。
「UDCアースも知らないうちに発展したものね……」
 そう、ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)は控えめに呟いていた。自身の漆黒の髪、そして黒で揃えられた衣服は色とりどりの照明を飲み込むように。
「夜のお散歩、わくわくするな!」
 ヘンリエッタの手を引くアンバー・ホワイト(Snow・f08886)もまた黒い衣服で、艶のある尊厳なるドラゴニアンの翼と尾は照明に当てられその美しさが際立つ。乳白色の髪だけが光を反射し、色彩に染まる。
 UDC組織の要請でこの場を訪れた二人だったが、二人を見る人々は誰もそうは思わなかっただろう。誰から見ても、二人は親子か、あるいは年の離れた姉妹にしか見えなかったからだ。
 それにヘンリエッタは仕事として訪れていたが、純粋に空中庭園を物珍しそうに見渡すアンバーを見ては、誰もこの世界の裏側に蔓延る宿命など気付くはずもないからだ。
「ごめんね、他について来てくれそうな人が居なくて……」
 申し訳なさそうに言うヘンリエッタ。しかしその情けない表情も目を輝かせるアンバーを見れば和らぎ、連れてきてよかったと胸をなでおろした。
 普段は夜更かしが苦手なアンバーも空中庭園とそこから見下ろす都会の夜景に眠気など吹き飛んでいた。
 アンバーに手を引かれるように、二人は花のアーチを抜けて小さな噴水の前までやってきた。
 小さな照明が二人を淡く照らした。
 アンバーは、周りで同じように思い思いの時間を過ごすカップル達を見る。彼女らのやりとりにはそれぞれの事情があったが、そのどれもが愛と優しさに満ちていた。
 目頭にこみ上げる熱を感じて、アンバーは繋ぐ手に力を込めた。
「眠くない?」
 ヘンリエッタがそっと声をかけるとアンバーは首を横に振り、平気だと返す。
 それでもこの時間になれば眠気に襲われ、うとうとしてしまうアンバーを知っているヘンリエッタは、アンバーと同じ目線まで屈むと、小さな黒竜を抱きかかえた。
「眠っても大丈夫よ」
 ヘンリエッタの暖かい声。あの日からすっかり気を許したアンバーは慣れたように翼と尾をたたむ。
「大丈夫、私こう見えても怪力だから」
「本当か?」
 言葉通り、ヘンリエッタの腕はまったく震えることもなくアンバーを優しく包んでいた。アンバーもすがるように抱き返し、ヘンリエッタの顔を覗き込んでにっこりと微笑む。
 年相応の笑みを向けられたヘンリエッタは、この子の笑顔はこんなにも柔らかいのね、と出会ったあの日から互いの心が触れ合うまでの時間を思い返していた。
「ほら、平気でしょう?」
 優しい笑み。それは周りのカップル達から溢れるものと同じだった。アンバーも気付く。もうわたし達は家族なのだと。そこに到るまでの記憶がシャボン玉のように心を通り過ぎ、潤む瞳を隠すように空を見上げた。
「わあ……」
 アンバーが見上げた先には、いつもより暗い夜空があった。都会の光を浴びた夜空はそのほとんどの星々を隠してしまったが、冬の夜空には地上の光に負けない一等星が多く登り、出迎えていた。
 その中でも一際輝く星にアンバーは目を奪われた。
「シリウスね」
 その視線の先にある星の名をヘンリエッタは言い当てた。それはもしかすると別人格の知識だったのかも知れないが、二人の間では日常のやりとりに違いなかった。
「空がこんなにも近くなった!」
 地平線すら見える空中庭園から見上げる空は地上のそれよりも近く、そして迫る星々にアンバーは思わず感動し、声も明るくなった。
 釣られて見上げたヘンリエッタも小さく息を飲む。地上と空の境にあるこの場所は、夜空も心細くなるほど黒が深く、この地域ならば普段は見られない星まで薄っすらと輝いている。
「ちゃんと夜空なんて見たことなかったわ……」
 呟くヘンリエッタ。その腕の中で瞳を輝かせるアンバーは、普段見せる猟兵としての気高さも、彼女が背負う過去も感じさせない、どこにでもいる子供らしい反応を見せていた。
「……綺麗ね、あなたも」
 琥珀色の瞳には夜空の星々が映っている。どこまでもまっさらで、水のように透き通って。純真な心を象徴するかのようなアンバーの瞳に、ヘンリエッタは思わず言葉を紡いだ。
「えへへ……ありがとう、ヘンリエッタ」
 その声は明るく、アンバーの純白の心と、ヘンリエッタの心に潜む漆黒の境から滲み出た言葉の意味など知る由もないといった具合で、ヘンリエッタはむしろ安堵する。
 どこまでも広がる夜空の中で、淡い光が二人を包む。二人を見たカップルも、いつかは自分達にも子供が生まれるのだろうとまばゆい未来を夢見た。
 心地よい風が、同じくせっ毛を揺らす。二人は空と地上の星に挟まれた狭間の世界に暫し佇んだ。

「さ、そろそろ帰りましょうか」
 気付けば夜も遅くなっていた。周りのカップル達も数が減っていた。
 ヘンリエッタもあまり遅くまで付き合わせてしまってはいけないと、夜景を眺めるアンバーに促した。
「歩ける? 難しいなら家まで……」
 ヘンリエッタは抱きかかえたままのアンバーを降ろそうとした。その仕草にアンバーはほんの少しの躊躇いを感じる。
 まだ腕の中にいたかったのか、それとも心を離したくなかったのか……。手が離れようとする前に、アンバーの幼い唇がヘンリエッタの額にそっと触れる……。
「お母さんへのありがとうは、こうするんだろう?」
 すとん、と地に降り、はにかみ、満面の笑みを見せるアンバー。
「……もう、おませさんね。【お母さん】に気をつかわなくてもいいのに」
 ヘンリエッタは額に落ちたキスに慈しみを抱き、恥じらうように言った。
 その口づけにどのような意味があるのか。その明確な答えはきっとどちらも持ち合わせていないのかも知れない。ただはっきりしていることは、最初に手を差し伸べたのはヘンリエッタということ。
 そう。二人の家族はヘンリエッタから始まった。
 恐らく愛を知らぬまま育ったアンバーに、愛を与え、親という居場所となった。
 愛を求め彷徨うアンバーはまだ充分に甘え方も覚えてないのかも知れない。
 まだ感謝の駆け引きもわからないのかも知れない。与えられた愛に想いが溢れ、その表し方も手探りなのかも知れない。
 だから躊躇なく、最大の感謝と、最愛を込めたキスを落とし、愛を告げたのだろう。
 愛を受けたヘンリエッタも、自分が背負う過去、そして心に潜む漆黒が日常を妨げる時があるのかも知れない。
 いつか報いを受けるかも知れない。新たな事件を起こしてしまうかも知れない。その恐れを抱く日々の中に娘としてアンバーを招いた。
 アンバーは過去を背負い、ヘンリエッタは見通せぬ未来を背負う。
 二人の出会いは偶然だろうか。運命だろうか。どちらにせよ……。一度育まれた愛の連鎖は、今もこうして互いの過去と未来を暖かく照らし、不幸のレールから避けるようにその歩みを揃えさせる。
 この関係が、この時間が、いつまでも続くように。願いと呼ぶには尊い、儚い未来を互いの心の中に見据え……。
 そして二度と闇夜に足を踏み入れぬよう。光ある世界に留まるよう、互いの歩む道を支え合った。
 人はそれを、家族と呼ぶのだろう。

「帰りましょう?」
 ヘンリエッタの呼びかけに、アンバーは再び手を取る。
 強く握られた手は温かく、冬の風を通す隙間はない。
 ヘンリエッタは額に残るキスの熱に喜びを感じ。
 アンバーもやっと手に入れた、かけがえのない家族の時間を愛おしく、嬉しく感じ。心に残る熱を冷ますことなく冬空に別れを告げ、二人は帰路についた。
 二人の時間はこれで終わりではない。
 これからも永遠に、二人が愛を与え続ける限り、この幸せな時間は果てなく未来へ続いていく。
 暗い過去、暗い未来の先に輝くそれぞれのシリウス。二人が家族でありつづけるならば、互いの宿命も乗り越えられるのだろう。
 繋いだその手は、もう離さない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

大河・回
【単独で参加】
ふう、ガラでもない正義側の行動をしてしまったな。ま、サクラの仕事とはいえのんびりできるんだ。楽しませてもらうとしようかな。

夜に来店するとしよう
悪と言えば高い所だからね、こういう所は嫌いじゃない
それにしても今回は私がやったがやはり絆の力のような物は厄介だな
あれを破る手段を考えておかなくては
まあ、今は街を一望しながらいずれ私が征服する街を品定めと行こうかな
せっかくだし何かスイーツやドリンクがあればそれももらおうか
たとえカップル向けでも私はそんなの気にしないからね

※アドリブ歓迎




「ふう、ガラでもない正義側の行動をしてしまったな……」
 空中庭園の片隅。見下ろせば騒がしくチラつく都会の光がどこまでも広がっている。その全てがこの街に住む人々の営みと知ると、大河・回(プロフェッサーT・f12917)は眉間にシワを寄せて呟いた。
 まだ少女と呼ぶに相応しい外見。一房黒が差す白い髪は現代日本において視線を集めていたが、回はおおよそにおいて少女として扱われるのだろう。
 しかしその正体は世界征服を企む悪の組織【デスペア】の幹部【プロフェッサーT】……という設定の元に創造されたバーチャルキャラクターだった。
 悪と言えば高い所だと、下界を一望できるこの場所に悪の組織の一員として君臨していた。
 辺りには草花のアーチ、小さいが可愛らしい装飾が施された噴水。淡い照明を受け浮かび上がる花々は女性客に受けが良かった。
 それをのんびりと眺める回もまんざらでもないといった感じで、要請されたサクラとしての役割を充分に果たしていた。
 だが回は悪の存在。街を見下ろし今回の戦闘で自らが起こした奇跡の力について思考していた。
「やはり絆の力のような物は厄介だな……」
 絆。回は、これまで悪が苦しめられていた正義共の戦い方を真似て戦局を逆転させた。それは同時にこの世界においても正義は回の驚異であることを証明してしまっていた。
 作中では絆や友情、あるいは愛情といった正義の奇跡は物語の終盤に起きるもので、悪役は概ねその技で敗れる結末になる。
 ではそれを破る手段とは何か。回は真下に溢れる都会の光を目で追いながら思考する。
 回が知る悪の組織も決してただのやられ役ではない。いいところまで正義を追い詰めている。戦力や作戦ではむしろ正義に勝っていたはずなのだ。
 奇跡などご都合主義。絆で奇跡が起きるなどあり得ない。この世界の人々もそれはアニメや特撮の中の話だとわかっているだろう。
 しかし、今回は回が自らの手で奇跡を起こしてしまったのだ。その結果、この空中庭園も無事な姿で人々を迎えられている。
 回はスタッフからフリードリンクを受け取ると、周りのカップル達など気にもとめず街を見下ろした。
 ストローからは柑橘系の程よい酸味と甘味が口いっぱいに広がる。
「あ、美味しい」
 思いのほか上品な味と喉ごしに思わず感想を声に出してしまった回は、どこにでもいる十七歳の女子のようで、それを聞いた一組のカップルが同じようにフリードリンクを受け取っていた。
 回はそのカップルを横目で見つつ、思考する。
 人の繋がり、絆。それはほんの些細な言葉から連鎖する感情の波紋のようで、それは足元に広がる都会の光のように個別のものであっても人知れず繋がる。
 ならば世界を完全に孤立させてしまえば……。誰とも繋がれない世界にしてしまえば……。
 しかし回は頭を振る。
 それでも正義が成す奇跡は止められない。例え最後の一人になっても理不尽な希望が始まりの灯火となり、いつしか人々を導く篝火となり奇跡は起きてしまう。
「奇跡を破る手段を考えておかなくては」
 意味深な呟きは夜景に溶けゆく。
 回が掲げる悪の組織【デスペア】は、バーチャルキャラクターとして誕生したこの世界には存在しない。回の中での設定に過ぎなかった。
 しかし猟兵として世界を脅かすオブリビオンと戦い、世界征服を独占すべく暗躍するうちに、その野望は設定という夢物語から現実のものへと移り変わる。
 回が戦い続けるうちに、もしかすると同じ野望を志す仲間と出会うかも知れない。そしてその集いはやがて組織となり、悪の組織【デスペア】は現実のものとなるだろう。
 その為にも、と回はいずれ征服するこの街を品定めするように、下界に視線を這わせた。
 今はまだ孤独の組織。しかし正義共が平和を掲げるように、回も野望を持ち続ける限り、悪という名の奇跡を起こせるだろう。
 今回の勝利の余韻を味わいつつ。よもや自分達を救った存在に征服されるなどとは夢にも思わないカップル達を心の中であざ笑い、仮初めの平和を満喫させてやろうと、フリードリンクを味わう回だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霄・花雫
うーん、キレイに元通り!
あの捕まってた女のヒトたちも、好きなヒトのトコに無事に帰れたかな。
……此処、来てたりしないかなあ。

ひとりでのんびり、景色を眺めて散策を。風が気持ちよくて、空に近付くのが心地いい。
恋人同士に家族連れに若夫婦に恋人同士に恋人同士に……この場所が賑やかさを取り戻したことが嬉しい。

…………わー……右見ても左見てもいちゃいちゃしてていいなー……。
独り身にはなかなか眩しい。
恋も愛も経験したことはないけれど、初恋だってまだだけれど。
でも、誰かの恋や愛を守れたことが素直に嬉しかった。
もし見覚えのあるひとを見掛けたら、お幸せに、なんて小さく内心だけで囁いて、何食わぬ顔ですれ違おう。




 その日は綺麗に晴れ渡り、遠くの背の高い雲まで見通せるほど澄んだ空だった。
 穏やかな風が緩やかに過ぎ去り、草花はゆらりと流れ、霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)の白い髪もなびかせた。
 空中庭園には暖かい日差しが伸び、冬の寒さが嘘のような陽気に包まれていた。
 先の戦闘でこの場所を守り抜いた花雫は、この近辺では空に最も近い庭園をのんびりと散策していた。
 UDC組織の要請もあったが当の本人は別の目的があるようで、サクラという役割など忘れてすっかり客の一人になっていた。
 どの方角を向いても遮るものはなく、遠くの建物は地平線の向こうに小さく建っている。冬の空は澄み渡り山の稜線も鮮明に見通せた。
 通り過ぎる風に前髪をおさえて、一足早い春の風に心地よさを感じながら草花のアーチを抜けると、辺りを展望できる小さな広場に行き着く。
 周りは恋人達、家族連れ、中には夫婦の姿もあり、すっかり元の賑わいを取り戻した空中庭園に花雫はそっと微笑み、当たり前の日常に喜びを感じた。
 恋人達は幼く見える花雫が一人で訪れていることに驚きつつも、それぞれの時間を過ごしていた。
 花雫にとって、空は憧れであり、今では身近な場所だった。その気になればここよりも、もっと遥か高みへ、どこまでも飛んでいけるに違いなかった。
 それでも今この瞬間の空は、自分達の手で守り抜いたかけがえのない空。
 この空中庭園に訪れる全ての人へ送る、恋の空なのだ。
「わー……いいなー……」
 恋人達の優しい笑顔を見て花雫は思わず声を出す。それはうらやむものではなく、穏やかで優しい声だった。
 家族の愛を受けて育った花雫だからこそ、彼女達の微笑みが紛れもない愛情であると気付く。
 そしてたくさんの愛に包まれるこの場所を守れたことに嬉しくなり、釣られて花雫も笑みをこぼした。
 まだ恋い焦がれる経験も、愛を育む体験もない花雫だったが、誰かの恋、愛、そして絆を……そのユーベルコードで守り抜いた事実は、小さな胸に日差しよりも暖かい感情を宿らせた。

 ふと、花雫はここへ来た目的を思い出す。
 教団の洗脳を受け呪歌を謳わされていた女性達が、もしもこの空中庭園を訪れていたら。
 そんな小さな巡り合わせを求めていたことを思い出し、花雫は女性達の顔をさり気なく目で追う。
 あの戦闘の最中、猟兵達に無限とも思える愛の力を与えた彼女達。最後の戦いでも彼女達の応援がなければ、もしかしたらこの場所も守れていなかったかも知れない。
 そのことを思うと、花雫は彼女達が無事に日常に戻れているか確かめられずにはいられなかった。
 小さな身体を揺らし、草花のアーチを抜け、花壇の裏にある小さな噴水へ。
 通り過ぎる恋人達は幸せそうで、家族の元を離れて暮らす花雫には眩しく直視するには勇気が要る。
 何組かの恋人達の横を抜けて、花雫の視線は一人の女性に釘付けになる。
「あ……」
 丁度、男性と向き合い頬を赤らめる女性。花雫は覚えている。彼女こそあの戦場で愛の歌を謳い続けた女性達の一人。
 そして向き合う彼は、彼女を洗脳から解き放とうとメッセージを送った一人だった。
 放心して見つめる花雫の先で。彼は、指輪を渡した。

 花雫は視線を落とす。そして、心の中で囁く。
『おめでとう。お幸せに……』
 誰も覚えていない。世界の裏側を知る者達と、猟兵だけが知る物語。
 花雫は何食わぬ顔で、彼女達の横を通り過ぎる。
 守り抜いたものはかけがえのない未来。二人の門出に、やがて生まれくる命に、祝福あれ。

 女性は振り返る。暫し花雫の後ろ姿を見つめ、心配する男性に、なんでもない、と明るく笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月06日


挿絵イラスト