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鍛えて!イェーガー教官!!

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●教官依頼
「頼みたいことがある」
 新たな予知を見たらしい蓮賀・蓮也(人間のガジェッティア・f01921)が、声をかけた猟兵達に見せたのは、20センチほどのサイズの薄い板。
 どうやらそれは、アックス&ウィザーズ世界で出された、とある依頼の木札らしい。

「酒場に出された依頼のひとつに、『砦の新兵を鍛えてほしい』というものがあってな」

 依頼の主は砦を任された中間管理職的な兵士で、新たに赴任したものの、古びた砦は修繕も必要だし、周囲にはモンスターも出るしで忙しく、新兵の特訓まで手が回らないのだという。
 そこで、最近噂に聞くやたらと強い冒険者にぜひ新兵を鍛えてほしいという依頼だった。
 この『やたらと強い冒険者』というのは、恐らくは猟兵達のことを言っているのだろう。

「それだけなら、わざわざ俺たちが対処する必要もないんだが……どうもその最中にオブリビオンが出そうなんだ」

 依頼主から頼まれた大枠のカリキュラムは、通常の戦闘訓練と、近くの小規模ダンジョンでの実戦訓練の2つ。
 このダンジョンでの実戦訓練中に、オブリビオンに出くわすようだ。
 猟兵以外の普通の冒険者や、スケジュールを無理に捻りだした砦の兵士が教官を務めた場合、もろともに全滅する可能性が高い。
「そこで、依頼通りに新兵を鍛えつつ、ダンジョンでオブリビオンに出くわしたら討伐してもらえないか。新兵や砦の兵士には荷が重くても、猟兵ならそう苦も無く倒せると思う」
 ただし、新兵達の状態によっては足手まといになるため、充分注意してほしいと言い添えて、蓮也は依頼内容の書かれた木札を猟兵達に手渡した。


江戸川壱号
 こんにちは。江戸川壱号と申します。
 今回は割とほのぼのゆるっとした依頼をお送り致します。

<構成>
 ●第一章:新兵訓練(新兵を鍛えたり鍛えたり鍛えたり)
 ●第二章:ダンジョン実戦訓練(新兵を鍛えたり守ったり導いたり)
 ●第三章:オブリビオン戦(新兵を守りつつ撃破)
 といった形で進む予定です。

<新兵について>
 ●新兵A:名前はエース。POW型。難しいことは苦手。
 ●新兵B:名前はビーン。SPD型。すばしっこくて手先が器用。
 ●新兵C:名前はシーマ。WIZ型。そこそこ頭は良いが、力はない。
 この3人(いずれも18歳前後の男)を、それなりに戦える程度に鍛えてください。

<新兵育成方法>
 成功度の青丸に応じて、各新兵の育成度があがります。
 プレイング時に鍛える対象1人を指定すると、青丸分だけその1人の育成度があがります。
 複数、又は全員を対象とした場合、青丸は平均的に分配されます。(合算。端数切り捨てはなし)
 育成度に応じて、以降の章における3人の強さ、足手まとい度、死にやすさが変化します。
 特定の誰かを鍛える場合、ABC、もしくは名前でご指定ください。特に記載がない場合は3人全員を対象とします。
 ※新兵の育成状況や生死はシナリオの成否に関係しません。オブリビオン撃破が成功条件です。

 新兵達に、戦い方や鍛え方、戦場や兵士の心得などなど、どんなものでも構いませんので、教えてあげてください。
 それでは、ご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『兵士との訓練』

POW   :    突撃や力の使い方を体で教える

SPD   :    戦闘その場その場においてのテクニックやコツを教える

WIZ   :    集団戦術や、継続的な戦闘における戦術や知恵などを教える

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●訓練開始!
 新兵達は、既に砦の前の広場に集っていた。
「お初にお目に掛かります、自分、新入りのエースと申します。ご指導、よろしくお願い致します、教官殿!」
 必要以上にビシッと直立して敬礼するのは、新兵の一人のエース。腕力には自信があるが、不器用で考えて動くことが苦手らしい。
「ども、ビーンっす。手先は器用っすけど、力とか頭使うのとかは苦手なんで、そこんとこよろしくっす」
 ぺこりと頭を下げた猫背の男は、同じく新入りのビーン。足が速く手先も器用だが、力はあまりなく、深く考えることも苦手だそうだ。
「あの……僕、シーマって言います。その……一生懸命がんばるので、よろしくお願いします!」
 緊張した様子でつっかえながらも頭を下げるのが、新兵3人組の最後の一人、シーマ。頭も記憶力もいいが、非力で人見知りで引っ込み思案。ついでに不器用で足が遅い。
 それぞれに長所がありながらも短所も多いにある、この新兵三人組。
 最終的にはダンジョンの実戦で生きて帰って来させなければならない。
 鍛えるという依頼もだが、このままではオブリビオンと戦う時にかなりの足手まといになってしまうだろう。
 彼らがどこまで成長できるか、そして無事に全ての訓練を終えて帰ってくることができるのか。
 それは猟兵達の手腕にかかっていた――。
西院鬼・織久
【POW】
【心情】
訓練ですか、良い事です
例え手足が千切れようが
耳目が潰されようが
致命傷を負おうが
死んでいなければ戦える
そうなるよう心身に刻むのです

【行動】
対象:エース
斬る、突く、なぐる、蹴る等攻撃動作を見る
様々な武器を使わせる
尚「闇器」は「禍魂」と同化した西院鬼でなければ触ると危険なので一般の武器で
一通りやってもっとも相性の良いものを只管練習
どんな状況でも攻撃行動が自然と出切るまで只管反復練習

次は回避しながらやる
此方が「先制攻撃」「残像」「フェイント」を使って攻撃
避けられても攻撃されても動揺しない
攻撃動作を忘れるなと叩き込む
逃げようとしたら「影面」で捕まえる
恐怖を味わう訓練にもなるはず



●1時間目:西院鬼教官
「よろしくお願いします、教官! 徹底的にしごいてください!」
 やる気に満ちたエースをまず見てくれたのは、西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)だ。
 織久はまず、エースに基本的な攻撃動作を行うように指示した。
 殴る、蹴るは勿論、斬る、突く、払う、などの動きも、武器の種類をかえてやらせてみる。
 織久が用いるのは『闇器』と呼ばれる西院鬼一門の武器だが、残念ながらそれらは一門以外の者には触れるだけでも危険なので、一般的な武器との相性を見ることにしたのだ。
 力自慢というだけあって、エースはどうやら力任せに振るう大剣や斧、槌などと相性が良いようだった。
 年若くとも多くの戦闘経験と戦闘知識を培ってきた織久は、その中でももっとも向いているのは大剣だと見抜く。
 となれば次は大剣をある程度使いこなせるようにする訓練だ。
 これもまた、基本動作の繰り返しである。
「どんな状況でも、攻撃行動が自然とできるまで反復練習です」
 大事なことだと念を押したのは、基礎訓練というのは地味で辛いものだが、最も必要なものだからだ。
 飽きたり疲れたりしても許さず、ひたすらに繰り返させる。 
 まずは心身に刻みこまなければ。
 例え手足が千切れようが、耳目が潰されようが、致命傷を負おうが、死んでいなければ戦える――という境地まで。
 織久はどうやらだいぶスパルタ教官になりそうである。

 そしてエースが大剣の扱いが良くなってきたところで織久が行ったのは、1対1形式での『回避』訓練だ。
 やっと地味でない訓練ができると思ったのか、エースの表情は心なしか嬉しそうだったが――もちろん、織久の訓練はそんなに甘くない。
「訓練開始です」
 エースが大剣を構えたのを確認して宣言すると同時、織久が二人になった――ようにエースには見えた。
 だがそれは速さのあまりに生まれる残像で、本人は既にエースの目の前にいる。
 残像によるフェイント。
 そんな高度な技を見たこともなかった新兵が対応できるはずもなく、織久の模擬刀が容赦なくエースの胴を叩いた。
「どわぁ~っ!?」
 それだけでも衝撃に吹っ飛び、大剣を放り出して尻餅をついてしまったエースに織久の静かながらも厳しい叱責が飛ぶ。
「動揺してはいけません」
「し、しかし教官~!」
「言い訳も結構です。それに、どんな時でも攻撃動作を忘れてはいけません」
 これは回避訓練でもあるが、攻撃されても動揺せず、そして回避する時であっても攻撃への意識を忘れないことを体に叩き込むための訓練でもあるのだ。
 しかし何度か繰り返しても、素早さに欠けるエースはなかなか回避もできなければ、攻撃への切り替えもできない。
 遂には回避を通り越して攻撃から逃げるようになったので、織久は淡々と己の影を操ってエースのすぐ側を爆発させ――さらにその体を影で捕らえてみせる。
「ひぃ~! きょ、教官! お許しを~!」
「これも戦闘の恐怖に慣れる訓練です」
 
 こうして織久の徹底したスパルタ基礎訓練により、エースの基礎能力はかなり向上したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


【育成状況】
▼エース:●●●/耐久力、恐怖耐性、回避
▼ビーン:
▼シーマ:
茅場・榛名
POW:剣を振る際のコツなど、武器術の基礎を実演も交えて指導をする
エースさんに指導するよ。年上に指導するのは緊張するなぁ···。

「剣に限らず、近接武器を使う時は手首の動き、スナップを効かせる事が重要なんだ。
今から剣を振ってみせるから音に注目して見てみてね!」
実際にやってみせてから教えた方がお手本になるかな?
やる事自体は難しくないからきっと身に付けてくれる···はずだよ。



●2時間目:茅場教官
 次にエースの訓練を買って出てくれたのは、茅場・榛名(異界の傭兵・f12464)だった。
 元気いっぱいな少女教官に、エースもやや赤面しながら敬礼する。
 西院鬼教官のスパルタ授業の後のため、だいぶボロボロだがやる気は戻って来ているようだった。

 何しろ新兵はまっさらの素人らしいので、榛名もまずは基礎訓練から入ることにする。
「剣に限らず、近接武器を使う時は手首の動き、スナップを効かせる事が重要なんだ。今から剣を振ってみせるから音に注目して見てみてね!」
 そう言って、まずは自分が剣を振るう様を見せる。
 すっと太刀を構え、振り下ろす。
 たったそれだけの動作だが、流れるような美しさがあった。
 力強いのに、速い。
 振り下ろす瞬間に聞こえる、ヒュッという風を切る音は、エースの振るう大剣の鈍い音とはまるで違った。
「きょ、教官~! 自分が振ると、ぶぉおおん! みたいな音になってしまうのですが! どうしたら! 良いでしょう!」
「う、う~ん……。ちょーっと肩に力を入れすぎかな?」
 エースは動作のひとつひとつが、無駄に全力すぎるのだ。
 手首のスナップも効かせるどころかガチガチで、手首のスナップに意識をもっていくと、勢いよく手首を振りすぎて大剣がどこかへ飛んでいく始末。
 しかし榛名は根気よく笑顔で付き合ってやり、エースもその笑顔と元気に励まされ、めげずに訓練を繰り返した。

「もう少し手首を柔らかくしてみてね。……うん、そう。いい感じ!」
 その結果、なんとか及第点をもらい、剣を振る音もだいぶまともになったのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​


【育成状況】
▼エース:●●●●●/耐久力、恐怖耐性、回避、柔軟性、攻撃速度
▼ビーン:
▼シーマ:
ミア・ウィスタリア
【WIZ判定】
ふふーん、殊勝な心掛けじゃない?
人に教えるのってあんまりした事ないけど、
いいわ!アタシがアンタ達を歴戦の猛者にしてあげる!
訓練は厳しいわよ!発言の前と後にサーを付けろって奴よ!
(何故か持っているSM用の鞭で地面をピシッと叩く。何か勘違いしている様だ。)

教えるのは三人平等に。
【地形の利用】【罠使い】【誘惑】等を使って如何にして自分達に有利な状況を作り出すかを語る。
後は連携かしら。
一人一人弱っちいのは当たり前なんだから、それぞれの長所がどうしたら他の二人を補えるか考えなさい?
じゃないとあっと言う間にモンスターのご飯よ?



●3時間目:ウィスタリア教官
「ふふーん、殊勝な心掛けじゃない? いいわ、アタシがアンタ達を歴戦の猛者にしてあげる!」
 ミア・ウィスタリア(天上天下唯画独尊・f05179)は、その筋の方が使う専用の鞭でピシッっと地面を叩いて宣言する。
 人を教えたことがないと言うが、鞭を振るう姿はなかなか様になっていた。
「アタシの訓練は厳しいわよ! 発言の前と後にサーを付けろって奴よ!」
「サー、イエッサー!」
「サー、まー、適当によろしくっす、サー?」
「さ、さー! お願いします、さー!」
 全員平等に鍛えるというミアの前に三人が並ぶが、サーの使い方がなっていないのはご愛敬といったところか。
 ミアも有名な軍曹のようなスパルタを実際にやる気はなかったようで、鞭をピシピシさせながらも丁寧に説明に入る。
 ちなみにビーンはだいぶ興味深そうに鞭を見ていたが、幸いなことにミアが気付くことはなかった。
「ただ武器を振るうだけが戦いじゃないわ。使えるものを使えるだけ使って、自分達に有利な状況を作り出すことが重要よ」
 真面目に聞いているが全く分かってなさそうなエース、目を瞠って思わぬことを言われたといった表情のビーン、手にしたメモ帳に必死にメモを取るシーマと反応は様々。
「まずは地形の利用でしょ、罠を使うのもありだし、誘惑して敵の油断を誘う、なんて方法もあるわね」
「サー! 難しすぎて分かりません、サー!」
「へー、なるほど。別に正面から戦う必要もないんすねー。オレにはそっちのが向いてっかも」
「ゆ、誘惑なんて……僕にはとても……!」
 ミアが幾つかあげた具体例に対しての反応もそれぞれらしいが、ピシッとまた鞭を一振りして一喝する。
「今のはほんの一例。さぁ、自分達ならどうするか、何が使えるのか、よく考えなさい?」
 ミアは新兵三人に、有利な状況を作り出すためには、自分達に何ができるのかを考えさせた。
 エースには難しすぎたようだが、ビーンの性には合ったらしく、そしてシーマはもとより頭脳派だったこともあり、二人から特に意見が活発に出される。
「うんうん、やればできるじゃない。有利な状況を作り出せたら、あとは――連携かしら?」
「れんけい?」
 ド素人の三人は、連携訓練なども勿論したことがなく、その必要性も理解していなかった。
 はじめて聞いたと言わんばかりの反応に、ミアは呆れたようにひとつ溜息をつくと、またも鞭でピシリと地面を叩く。
 ビーンがどことなく地面を羨ましそうに見ていたことにミアが気付かなくて何よりだった。
「連携も、自分達を有利にするひとつよ。一人一人弱っちいのは当たり前なんだから、それぞれの長所がどうしたら他の二人を補えるか考えなさい? じゃないとあっと言う間にモンスターのご飯よ?」
 自分達が色々足りていないことは分かっているのだろう。ごくりと息を飲んだ三人は、ぎこちないながらもミアのアドバイスを受けつつ連携の訓練を行う。
 ミアの訓練は、ただ教えるだけではなく、彼らに考えさせるものだった。
 エースは苦戦していたけれど、助言を受けつつも自分達で自分達のことを見つめ直し、考え、活かす方法を考えることは、三人にとってとても良い経験になったことは間違いない。

 その結果――。
 エースは長所を活かして攻撃の主軸を。
 ビーンは素早さと器用さを活かして、エースの大ぶりな攻撃の隙を補うサポートを。
 シーマはその記憶力と頭脳を活かしてある程度の作戦をたて、時に二人に指示を飛ばし、時に弱いながらも使える魔法でサポートを。
 といったように、それぞれの長所を活かし、補い合う方法を見つけられたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


【育成状況】
▼エース:●●●●●●/耐久力、恐怖耐性、回避、柔軟性、攻撃速度
▼ビーン:●/発想力、被虐趣味、地形の利用、罠使い、攻撃補助
▼シーマ:●/地形の利用、罠使い、状況把握、作戦指示、行動補助、誘惑
ベルリリー・ベルベット
【SPD】

いいこと?
リリの指導は甘っちょろくないのよ。
しっかりついてらっしゃい。

はい、そこのお前!
ビーンと言ったかしら?
鍛えてあげるからこっちへいらっしゃい。

お前はその持ち前の素早さを伸ばしていくべきね。
まずは走り込みと反復横跳びで基礎的な機動力をつけるわよ。
はい、それじゃあスタート!
勝手に休んだらお仕置きだからね。

次は武器の扱い方を訓練しましょ。
力に自信がないなら、ある程度小型で扱いやすい武器がいいんじゃないかしら。
ナイフにマチェットにナックルダスターに……
色々用意したから、実際に使ってみながらビーンに合った武器を見つけるわよ。

よく最後までついてきたわね、偉いわよ。
ご褒美にキャンディあげる。



●4時間目:ベルベット教官
「はい、そこのお前! ビーンと言ったかしら? 鍛えてあげるからこっちへいらっしゃい」
 新兵三人の中でビーンを指名したのは、ベルリリー・ベルベット(ルーナフラウ・f01474)だ。
 猟兵であると同時にサーカスで空中ブランコを得意とする軽業師でもあるベルリリーは、素早さが特徴のビーンの教官にはうってつけだろう。
「お前はその持ち前の素早さを伸ばしていくべきね。まずは走り込みと反復横跳びで基礎的な機動力をつけるわよ」
「どもっす! やー、こんな可愛い教官なら大歓迎っすね~」
 白百合のような少女に指示され、でれでれとしまりのない顔で走りはじめたビーンだが、勿論いつまでもデレデレできるわけもない。
 ベルリリーの掛け声に従って走り込みを始めるが、休憩や次へ行くという指示がなかなか来ないのだ。
「ひぃ……はぁ……っ、あの、教官……ちょっと、休憩……」
 広場を何度も周回させられていたビーンがベルリリーの前へ来た時に訴え出るが、笑顔で却下される。
「いいこと? リリの指導は甘っちょろくないのよ。――勝手に休んだらお仕置きだからね」
 しかもこんな風に釘を刺されてしまえば、死にそうになりながらも走り続けるしかなかった。
 同じように反復横跳びも徹底的にやらされたビーンは、その時点で既に立ち上がる気力もないような有様だったが、ありがたいことにベルベット教官の訓練はまだ続く。
「次は武器の扱い方を訓練しましょ」
 そう言ってベルリリーが台の上に並べていくのは、ナイフやマチェット、ナックルダスターといった幾つもの小型武器だ。
 力に自信がないなら、小型で扱いやすい武器がいいのではないかと考えたのである。
「色々用意したから、実際に使ってみながらビーンに合った武器を見つけるわよ」
 もう勘弁してください。と言って逃げ出したかったビーンだが、適性を考えて合う武器を幾つも用意してくれたのを見ては、いい加減だと自認する男であっても逃げることなどできる筈もなく。
「……おこころづかい、感謝っす……」
 がくりと項垂れながらも、ひとつひとつを手にとってその扱い方を学んでいくのだった。

 へとへとになりながらもなんとか訓練を終えたビーンに、ベルリリーは手を差し出すように言う。
「よく最後までついてきたわね、偉いわよ。ご褒美にキャンディあげる」
 マメだらけになった手の上に落とされたのは、可愛らしい包み紙のキャンディだ。
 ベルリリーは決して甘い教官ではなかったが、厳しいだけでもない。
 慣れない武器を扱いかねるビーンに丁寧に扱い方を教えてくれたし、こうして訓練の最後にはご褒美もくれる、飴と鞭の使い方の上手い教官だったようである。
「……ども。……その、ご指導、ありがとーっした」
 笑顔で差し出されたキャンディは、訓練がきつかっただけにビーンの舌と心にはこの上なく甘く沁みたようで、らしくなく照れながら感謝を述べたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​


【育成状況】
▼エース:●●●●●●/耐久力、恐怖耐性、回避、柔軟性、攻撃速度
▼ビーン:●●●/発想力、被虐趣味、地形の利用、罠使い、攻撃補助、速度、瞬発力、持久力、武器知識(小型武器)
▼シーマ:●/地形の利用、罠使い、状況把握、作戦指示、行動補助、誘惑 

※エースは記憶力が悪いので、大剣以外の使い方は忘れました
ネージュ・ローラン
【SPD】を使用
なんというか、心配になる方々ですね。
特にビーンという軽そうな方が不安です。

ということで模造の短剣を借りて、ビーンさんを模擬戦形式で鍛えます。

舞に乗せて彼がギリギリ捌き切れないスピードを【見切って】連続攻撃を仕掛けます。
「頭を使うのが苦手だろうと容赦はしません。速いだけでもいけません。どうすれば良いのか考えて最適な対応をしなさい。」

徐々に速度を上げ、攻撃のバリエーションも増やしていきましょう。
「小手先だけでは駄目です。あらゆるものを活用するのです。」

疲れが出始めた時こそ踏ん張り時ということでラストスパートをかけます。
「まだまだテンポは上がりますよ!ついてきなさい!」



●5時間目:ローラン教官
 広場に並んだ新兵を観察して、ネージュ・ローラン(氷雪の綺羅星・f01285)はわずかに眉を顰めた。
(「なんというか、心配になる方々ですね」)
 既に何度か特訓をしているので最初に挨拶をした時よりは良くなっているものの、猟兵ではなく一般の兵士と比べてもまだまだ実戦に出すには無理がある。
 ネージュは軽いノリであまりやる気を見せないビーンが特に不安要素だと判断して、彼を鍛えることにした。

 これまでの訓練で基礎体力や速度はだいぶ鍛えられたようなので、ネージュが選んだのは模擬戦形式の訓練だ。
 こちらの攻撃を避け、さらに反撃を試みるように言う。
「模擬戦? え、まじでっすか?」
 ネージュは踊り子らしく戦闘も舞が基本だが、ビーンにはそれが攻撃に繋がる動作という認識がないのか、どうしたものかとわたわたしている有様だ。
 既に戦闘が始まっているという意識の足りないその眼前ギリギリにヴェール過ぎらせ目を覚まさせると、厳しい声で叱咤する。
「頭を使うのが苦手だろうと容赦はしません。速いだけでもいけません。どうすれば良いのか考えて、最適な対応をしなさい」
「対応って言われても……、っと!?」
 ネージュの舞は緩やかに見えて、その実ビーンの隙や動きを見切った鋭いものだった。
 ゆったりと舞っているように見えるのに、隙をみつけるとそこに斬り込んでくる。
 ようやく戦闘なのだとビーンが意識を切り替えても、ネージュの舞から繰り出される攻撃を避けるのに精一杯で、とても反撃をする余裕などない。
 そもそもネージュの動きは、ビーンが『全力で集中し全力で避けようとしたらなんとか』というレベルを読んだ上のものなのだ。
 避けられているというよりも、避けさせてもらっているとか、避けさせられていると言った方がいい状態なのである。
 ずっと緊張状態を保つのは厳しいが、気を抜いたり速度を緩めると指摘するかのように目の前を鋭い一閃が過ぎるので、とても気を抜いていられない。
「小手先だけでは駄目です。あらゆるものを活用するのです」
 それどころか、ビーンの目が慣れてきたとみるや少しずつ速度を上げていく上に、油断も慣れも許さないというように動きのバリエーションも増えていくのだ。
 だがそうしてネージュの緩急のある動きに合わせて動かされているうちに、段々とビーンの動きも良くなっていく。
 もちろんまだまだ拙くぎこちないけれど、最初の慌てたような動きではなく、少しずつだが見極め、対応しようという動きになっていっていた。
 くるりくるりと攻守を変えながら、避けて、打って、避けてを繰り返していく様は、離れたところから見ればネージュにダンスをリードしてもらいながら習っているように見えたかもしれない。
 ビーンからすれば、とてもそんな優雅な気分ではないだろうけれど。
 なにしろある程度スムーズに動けるようになったところで、さらにハードルを上げられるのだから。
「まだまだテンポは上がりますよ!ついてきなさい!」
「もう無理っすよ~っ、足がつるっす!」
「泣き言を言わない!」
 ネージュの舞の動きの中で行われた訓練により、ビーンはリズムのある攻撃と回避ができるようになったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​


【育成状況】
▼エース:●●●●●●/耐久力、恐怖耐性、回避、柔軟性、攻撃速度
▼ビーン:●●●●●/発想力、被虐趣味、地形の利用、罠使い、攻撃補助、速度、瞬発力、持久力、武器知識(小型武器)、回避、舞、緩急のある攻撃、身のこなし
▼シーマ:●/地形の利用、罠使い、状況把握、作戦指示、行動補助、誘惑 
ウルフシャ・オーゲツ
最初はエースも良いかと思ったが、結構集中しておるようじゃな。
ここは素早く器用というビーンと楽しませてもらおうかのう!
【騎乗、力溜め、二回攻撃、大食い】
……なんじゃろ、人によっては意味深に見える組み合わせかもしれんが、ようは簡単じゃ。
大食いでたくさん食べて体を鍛える。
何かあった時により素早くうごける騎乗技術。
そして、二回攻撃による手数の上昇。
通常の攻撃が通じぬ相手にも対応する力溜め!

そのためにもやることは!
食って!走る!
さぁうちが心を込めて準備したその胃袋に詰めたものを出すでないぞ、出すならば、その前に優しくこの手で押し込んでくれよう!
レッツ【ゴッドスビードライド】、さあ追いつかれるでないぞ!



●6時間目:オーゲツ教官
 3人並んだ新兵をじーっと一通り見つめた後でウルフシャ・オーゲツ(しょしんしゃ・f00046)が鍛えることにしたのは、ビーンであった。
「よし、ここはビーンと楽しませてもらおうかのう!」
「え……っ、オレっすか……!?」
 さすがのビーンもここ最近の訓練で学んだのだろう。どれだけ見た目かわいい女子だろうが、甘くはないと。
 だが新兵に拒否権などあるわけもなく、ビーンはウルフシャに引っ張られて訓練場の一角へと連れて行かれる。
「へ……?」
 辿りついた場所でビーンが目を丸くしたのもそのはずで、そこには屋外とはいえ大きなテーブルが置かれ、テーブルの上にはたくさんの料理が並んでいたのだ。
 野菜もあれば肉もある、焼き物があれば煮た物も炒め物もスープもある。
 ひとつひとつは普通の家庭料理だが、量がとんでもない。
 これはもしや、訓練という名目で休憩させてくれるのか? とビーンが目を輝かせかけたところで、ウルフシャの説明が入った。
「うちがビーンに必要と考えてるものが4つあってのう」
 ウルフシャは人差し指をピンと立ててから、要素をひとつあげる度に順番に立てる指を増やしていく。
 ひつと、まずは、たくさん食べて体を鍛えること。
 ひとつ、素早さを活かすならば、手数を増やすこと。
 ひとつ、何かあった時、より素早く動けるように騎乗技術を身につけること。
 ひとつ、それらが通じない敵に出会った時、力を溜めて強力な一撃を叩き込めるようすること。
 これらを出来るようになれとの言葉と身につけるものの多さに、輝きかけていたビーンの目があっという間に沈んだものに変わった。
「始める前から死んだ目になってどうする! なぁに、そのためにやることは簡単じゃから、安心するといいぞ」
 ニヤァリと笑ってウルフシャは用意した料理を勧める。
「あ、これほんとに食べていいんすか」
 うんざりしかけたところに、食事を食べていいと言われたビーンは喜んで食べ始めた。
 食べることが特訓のひとつなんて、オーゲツ教官はやっぱり優しいのでは?
 と思いながらのんきに食べていたビーンだったのだが、それから1時間後―――。
「う、うぷ……っ。も、もう無理っす……入らないっす……」
 割と死にそうな顔をしていた。
「何を言うてるんじゃ。もっとしっかり食べねば丈夫な体になれんぞ?」
 何故なら、もう要らないと言ってもなかなかウルフシャが許してくれないからである。
 最初に「ごちそうさま」と言ってから、既に何度かそんなやりとりを繰り返したので、ビーンのお腹いっぱいどころか、苦しいくらいだった。
 胃袋よりも口元を押さえる仕草に、さすがに限界かと見て取ったウルフシャは仕方なく次のフェーズに進むことにする。
「ふむ……仕方ない。では、本番といくかのう!」
「え。本番……すか?」
 嫌な予感がしたのかビーンの顔色が更に悪くなったが、ウルフシャは当然といった表情だ。
「あったりまえじゃ。ご飯食べただけで終わっては訓練にならんじゃろ」
「そりゃそうっすけど、ちょっと今、腹いっぱいで動けそうもないんで……」
 勘弁してくれと片手をあげるビーンに、安心しろとウルフシャは笑顔を見せる。
 にっこりと、あまり安心できない類の笑みを、だが。
「うちが心を込めて準備したその胃袋に詰めたものを出すならば、その前に優しくこの手で押し込んでくれよう!」
「げげぇ~っ!」
 叫んで逃げようとしたところで、もう遅い。というか、ちょうど良い。
「ふっふっふ。食って! 走る! これこそ速度と体力をお徳に身につけられる方法じゃあ~」
 逃げ出したビーンを、ウルフシャは呼びだした宇宙バイクに乗って追いかける。
 元からこうする予定だったので、ビーンの行動は好都合なだけだった。
「レッツ【ゴッドスビードライド】! さあ、追いつかれるでないぞ!」
「ひぃ~っ、無茶いうなっすー!!」
 止まることも食べた物を吐き出すことも許さず宇宙バイクで追いかけたウルフシャの手腕により、ビーンは速度と共に苦手な持久力も更に身につけられたようだった。

成功 🔵​🔵​🔴​


【育成状況】
▼エース:●●●●●●/耐久力、恐怖耐性、回避、柔軟性、攻撃速度
▼ビーン:●●●●●●●/発想力、被虐趣味、地形の利用、罠使い、攻撃補助、速度2、瞬発力、持久力2、武器知識(小型武器)、回避、舞、緩急のある攻撃、身のこなし、大食い、被騎乗
▼シーマ:●/地形の利用、罠使い、状況把握、作戦指示、行動補助、誘惑
ベリザリオ・ルナセルウス
●目的
織久(f10350)のスパルタで新兵の命が危ないので治療役を買って出る

●行動
基本的には新兵たちを【医術】【救助活動】【生まれながらの光】での治療と精神的なケアを担当しよう
ついでに戦場でもできる応急手当なども教えておこう
知っているのといないのでは対応の幅が段違いだからね

教官役の方はどうだろう?
私の戦い方は攻撃よりも守りに重きを置いた戦い方なんだが……敵を倒すより仲間を守りたいと言う思いが強い新兵がいたら教えてみよう
力と体力は勿論必要だけど、それ以上に仲間を守るためには仲間の動向をきちんと見て戦況を把握する事が大事だ。
やみくもに盾をもって前にでるだけだと逆に仲間の邪魔になってしまう



●7時間目:ルナセルウス教官
 ベリザリオ・ルナセルウス(この行いは贖罪のために・f11970)が新兵達に対してまず行ったのは、彼らを治療することだった。
「傷が治ったぞ!」
「うぅ~生き返る~神かよ~」
「あの、ありがとうございます!」
 第一教官と親交があるベリザリオは、西院鬼の尺度で一般人の……それも新兵を鍛えては命の危機まであるとエースを特に心配していたので、怪我が治り元気な様子を見て胸をなで下ろす。
 それからベリザリオは、慣れぬ訓練で心身共に疲労しているであろう彼らの心のケアも必要だろうと、訓練で辛かったことや戸惑ったこと、困ったことなどを丁寧に聞いていった。
 素直なシーマはもとより、無骨なエースや軽いノリであまり真剣さを見せないビーンも、ベリザリオに話を聞いてもらうことで随分と楽になったようで、表情が落ち着きを取り戻していく。

「では、ついでに戦場でもできる応急手当なども教えておきます」
 3人がだいぶリラックスしてきたのをみはからって次に始まったのは、応急処置教室だった。
 戦場に出て無傷で帰ってこられるということは少ない。
 応急処置ではさきほどベリザリオがしてみせたような治療はできないけれど、知っているのといないのとでは取り得る対応の幅も、その後の傷の経過も段違いになってくる。
 応急処置教室で一番覚えがよかったのは、やはり記憶力の良いシーマだった。
 本人の性質とも合ったのだろう。真剣な目でベリザリオが見せる手本の手元を見つめ、やり方をメモしたり、疑問に思ったことを聞いたりしていた。

 ここまでの行動だけでもベリザリオは随分と新兵のためになっていたのだが、どうやら教官としての行動とは考えていなかったようで、さてそちらでは何を訓練したものかと考えはじめる。
 共に戦いたいと思う相手が敵を狩ることに全てを懸けているような人だからなのか、ベリザリオの戦い方は攻撃よりも守りに重きを置いたものだ。
 そんな自分の戦い方を参考にしたいという者はいるだろうか?
「戦闘訓練の話ですが……。敵を倒すより、仲間を守りたいという方はいますか?」
「はい!」
 あまり期待はせずに投げた問いに、即座にシーマの手が上がる。
 いつも行動するのも声をあげるのも3人の中で一番最後だったシーマが、今回ばかりは真っ先に勢いよく手を上げたことに、ベリザリオも目を瞠った。
「あの、僕は兵士なのに戦うのが苦手で……。でも、みんなを守りたいって気持ちは、他の人にも負けないです!」
 その気持ちだけはあって兵士になったけれど、力も速さもないシーマは今までどうしていいのか分からなかったらしい。だがベリザリオのお陰で、それが分かったのだという。
「僕、ルナセルウス教官みたいになりたいので、教えてください!」
「もちろんです」
 胸元でぎゅっと両手を組んで訴えるシーマにベリザリオは笑みをみせて頷くと、さっそく講義を開始することにした。
 守るといっても、気持ちだけで守れるものではない。力と体力は当然のように必要になってくる。
 けれどそれ以上に仲間を守るために必要なのは、仲間の動向をきちんと見て、戦況を把握すること。
「やみくもに盾をもって前にでるだけだと、逆に仲間の邪魔になってしまうからね」
 それはミアが教えてくれたことにも通じていた。
 シーマが担うのは、記憶力と頭脳を活かして二人に指示を出したりサポートをするポジションである。そのためには、当然仲間の動向や戦況を把握しなければならない。
 やるべきことの基本は変わらないと知って更にやる気を出したシーマを、ベリザリオは根気よく指導する。
 コツを教え、心得を教え、注意すべき点を教え。
 一番の課題は筋力と体力をつけることだったけれど、よほどベリザリオに心酔しているのか、できないなりに泣き言ひとつ言わず必死に取り組んでいた。
 その結果、まだまだ合格には遠いながらも、シーマにも少しは力がついたようである。

成功 🔵​🔵​🔴​


【育成状況】
▼エース:●●●●●●/耐久力、恐怖耐性、回避、柔軟性、攻撃速度
▼ビーン:●●●●●●●/発想力、被虐趣味、地形の利用、罠使い、攻撃補助、速度2、瞬発力、持久力2、武器知識(小型武器)、回避、舞、緩急のある攻撃、身のこなし、大食い、被騎乗
▼シーマ:●●●/地形の利用、罠使い、状況把握、作戦指示、行動補助、誘惑、応急手当、救助活動、かばう、盾
婀鎖路・朔梛
あたしが教えるのは最後の方にしようかな。
朔椰も手伝ってね?「うん。お姉ちゃん‥僕に、任せて。」

WIZ:仕上げとして、徹底的に追い込むよ。
集団や戦闘が長続きした時に戸惑ってたら全滅する。

『逃げようとしても無駄だよ。』「手加減も…絶対に、しない」

朔椰は接近戦、あたしは後方から【エレクトロレギオン】も使用。
【だまし討ち、時間稼ぎ、気絶攻撃】をフルに使って二人で連携攻撃。
攻撃きたら回避。

一方だけ気にしてたら、直ぐ後ろが取られちゃうよ?

「視野を広げて。でないと、潰す‥。」

今自分が出来る事を考えて。仲間と一緒に戦ってる事を忘れないで!
死んでほしくないし、なにより君達の為だからね?

≪アドリブ大歓迎≫



●8時間目:婀鎖路教官
 ついに、訓練最終日がやってきた。
 8人目の教官として最後の仕上げを請け負った婀鎖路・朔梛(表裏一体の双子・f12701)は、己の内に住まう双子の妹・朔椰と共に訓練に臨む。
「朔椰も手伝ってね?」
「うん。お姉ちゃん……。僕に、任せて」
 訓練場に並ぶ新兵3人も、最後とあって緊張した面持ちだ。
 何しろ最後の仕上げとして行うのは、3人全員で連携し教官である朔梛に立ち向かうという実戦形式の訓練である。
 猟兵と一般人の新兵では例え3対1といえど戦力差は歴然としているが、朔梛はユーベルコードを用いて妹の朔椰を実体化させているので実質3対2。
 さらに戦力差を広げてどうするのかといえば、擬似的に集団戦を経験させようという計画なのだった。

 広い訓練場の端と端に立ち、合図と共に戦闘が開始される。
「手加減は……絶対に、しない」
 新兵達はエース、ビーン、シーマの並びで縦に連なり動きはじめるが、彼らが訓練場の中央へと辿り着くよりも朔梛達が襲いかかってくる方が遥かに速い。
「遅い……ね」
 とりあえず移動して攻撃しよう、くらいの気でいたエースは、予想以上の速度で目の前に現れた朔椰に反応できず、たたらを踏んで後ずさった。
 それを見て、少し距離を開けてついてきていたビーンが態勢を立て直すためか、はたまた単に己大事でか、慌てて方向転換し逃げようとする。
「逃げようとしても無駄だよ」
 だが朔椰を前に行かせて自分は後方で攻撃準備に入っていた朔梛がそれを許さない。
 まともに迎え撃つ態勢もとれないでいる三人に向けて、今度は召喚した幾つもの機械兵器を差し向けた。
「わぁああー!」
 すると悲鳴があがり、三人はまとまるどころかバラバラに逃げ出す始末である。

 それからも朔梛と朔椰は三人を容赦なく翻弄し、追い詰めていった。
 三人も少しずつ反応できるようになっていったものの、やはり2方向からの攻撃に対処するのは難しいようで、なかなか上手くいかない。
 頭では分かっていても、まだ不慣れな三人では実際の動きに結びつかないのだろう。

「一方だけ気にしてたら、直ぐに後ろを取られちゃうよ?」
「視野を広げて。でないと、潰す……」
 だが、できなくても朔梛と朔椰が根気よく続けてくれた甲斐があって、拙いなりに少しずつ、少しずつ、三人も成長していた。
 気付くまでが少し速くなり、武器を構えて攻撃に移るまでが少し短くなり、防ぐまではいかなくとも防御姿勢をとれるようになり、戦列を崩さず後退できるようになり……。

「今自分が出来る事を考えて。仲間と一緒に戦ってる事を忘れないで!」
 朔梛の言葉に、ボロボロの三人がしっかりと頷く。
 2方向からの攻撃に、一人ではとても対処なんてできない。
 まだまだ猟兵達のようにはもちろん、先輩兵士のようにもいかないけれど。三人はいつの間にか、互いに補い合って動けるようになっていた。
 シーマが気付いて指示し、エースが大剣で受けて、ビーンがその後ろからナイフを投げる――。
 それは朔梛には届かなかったし、エースは受けきれずに跳ね飛ばされて後ろにいたビーンとシーマもろともに転がりはしたが、遂に3人が連携をとった上で朔椰の攻撃を受けることができたのだ。

 これをひとつの区切りとして、朔梛は訓練の終了を告げる。
 新兵3人は一応返事はしたものの、転がった先で起き上がることもできず重なり合って倒れたままだ。
「かなり厳しくしてしまったけど、死んでほしくないし、なにより君達の為だからね?」
 少しばかり気まずそうに言う朔梛に、倒れたまま力なくではあるが、シーマが笑って頷く。
「わかってます。とてもためになりました」
「そっすね……。これでダンジョンも、怖くねー、かな?」
「我々が未熟ゆえですから!!」
 きちんと思いが伝わっていたことに朔梛と朔椰は安堵して、3人の新兵に次のダンジョン実戦訓練も頑張るようにと激励し、訓練を終了とした。



【育成状況】
▼エース:●●●●●●+0.6/耐久力、恐怖耐性、回避、柔軟性、攻撃速度、武器受け、連携、集団戦経験
▼ビーン:●●●●●●●+0.6/発想力、被虐趣味、地形の利用、罠使い、攻撃補助、速度2、瞬発力、持久力2、武器知識(小型武器)、回避、舞、緩急のある攻撃、身のこなし、大食い、被騎乗、連携、集団戦経験
▼シーマ:●●●+.6/地形の利用、罠使い、状況把握、作戦指示、行動補助、誘惑、応急手当、救助活動、かばう、盾、連携、集団戦経験

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『ダンジョンに挑め!』

POW   :    前衛に立って襲い来る敵の排除。罠にハマって踏み潰す役もあり。

SPD   :    罠の感知や気配察知などを行う。敵との戦闘回避も含む。

WIZ   :    後方支援。保存食やユーティリティツールの準備や回復、アイテムの補充などを行う。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ダンジョン日和
 猟兵達の訓練により、彼らなりにかなりの成長を遂げた新兵達。
 そして本日は、ついにダンジョン実戦訓練の日である。
 向かうのは、砦から数キロの位置にある小規模ダンジョン。
 既に探索は何度となくされており、砦の新兵の訓練によく使われる、かなり初心者向けのダンジョンだとは砦の責任者の談。
 砦の者達で作りあげてきた詳細な地図もあり、兵の訓練用に簡単は罠はそのままだが凶悪な罠は解除済みで、中には弱いモンスターが生息している程度だという。
 けれど猟兵達は知っている。
 その、大きな危険などないはずの初心者用ダンジョンに、今までいなかったはずのオブリビオンが潜んでいることを――。

 猟兵達の任務は、2つだ。
 砦からの依頼通り、新兵3人の引率として彼らを導くこと。
 そしてグリモア猟兵からのもう1つの依頼は、彼らに命の危険がないよう、助けつつオブリビオンを見つけ、撃破すること。

「ダンジョンでも、ご指導よろしくお願いします、教官殿!!」
 エースの挨拶を機に、一行はダンジョンへと足を踏み入れたのだった。

●初心者用ダンジョン
「ぬぉおおお!」
「お、おおおい~っ、しゃ、洒落になってねーっって!」
「こ、こんなことって……」
 石造りの通路に、三人の動揺に満ちた声が響く。
 それもその筈。
 危険などほとんどない、初心者用ダンジョン。
 そう言われてきたダンジョンには、今や未踏の謎だらけのダンジョンとなっていた。
 何故ならば――。
「いきなり床が抜けたと思ったら」
「地下に更にダンジョンがあるとか、嘘だろーっ!?」
「こんな場所、地図にないです……っ」
 ということなのだった。
 地図に記されていた最下層、最奥の部屋。
 訓練終了の証である砦の紋章が入った小さな旗を手に入れた後、せっかくだからと室内を調べ回っていたところ、突然床が抜け、猟兵達ごと地下へと落とされてしまったのである。
 穴はすぐに塞がり、今はもう天井にしか見えない。
 帰るには他の道を探した方が早いだろう。
 それに――きっと予知にあったオブリビオンは、この新階層にいるに違いない。

 初心者3人を連れたまま、猟兵達は未踏のダンジョンを進むことになったのだった。
【第一章の育成状況】
▼エース:●●●●●●+0.6/耐久力、恐怖耐性、回避、柔軟性、攻撃速度、武器受け、連携、集団戦経験
▼ビーン:●●●●●●●+0.6/発想力、被虐趣味、地形の利用、罠使い、攻撃補助、速度2、瞬発力、持久力2、武器知識(小型武器)、回避、舞、緩急のある攻撃、身のこなし、大食い、被騎乗、連携、集団戦経験
▼シーマ:●●●+.6/地形の利用、罠使い、状況把握、作戦指示、行動補助、誘惑、応急手当、救助活動、かばう、盾、連携、集団戦経験
.
 猟兵達が落とされた場所は、10メートル四方ほどの広い部屋のような場所だった。
 先程までいたダンジョンと作りは似ており、石を積み上げて作られているように見える。
 落とされた部屋に扉はなく、部屋の三分の一ほどの幅の通路がどこかへ伸びているだけだ。
 今のところ周囲にモンスターの気配はないが、ダンジョンの中に隠された新階層となれば、何もなく安全とはとても言えないだろう。
 ダンジョン内は魔法的な効果なのか薄暗くはあっても真っ暗ではなく、文字を読むには難儀するが室内を見渡したり、人の顔を死人できる程度の光度があることは救いだった。
西院鬼・織久
【POW】
【心情】
この先に敵がいるようですね
漸く本懐を遂げられるか
我等の狩を妨げる物全て焼き払ってくれる

【行動】
少しでも早くオブリビオンを狩りたい
罠はすべて破壊する勢い
「視力」「暗視」「第六感」を利用
「聞き耳」で足音や空気の流れを聞き空洞や反響の違和感を探る
新兵はベリザリオ(ID:f11970)がいるので何とかなると思っている

「ダッシュ」で駆け抜け吹き矢系は「見切り」で回避
回避が難しいなら「武器受け」で防ぐ
落とし穴系は「ダッシュ」で開く前に通るか武器を突き刺し登る、または「ジャンプ」で避ける
一度きりではなく繰り返し使える罠なら「怪力」で破壊
前もって違和感を覚える箇所があれば「殺意の炎」で破壊


ベリザリオ・ルナセルウス
●目的
織久(f10350)、自重しなさい!
まったく……ああなると簡単には止まらないからな……。
織久と新兵達の後方支援をしよう。
新兵の皆様はあの子の真似は絶対にしないように。いいですね?

●サポート
私は足が速くない。織久には追い付けない
それに織久は新兵を私に任せているのだと思う
ある程度は新兵の皆がどう動くか見るが、新兵では危険な被害がいきそうになったら【盾受け】【武器受け】【武器落とし】で守る
怪我をした時も深い傷でなければ【生まれながらの光】は使わない
応急手当や緊急時の対処がどれだけできるか見よう
休む時は【魔法のコテージ】の中で休んでもらう
ただし、交代で一人ずつ見張りに来ること。野営の実地訓練だ




 大きく予定が狂っても、織久は揺らがなかった。
 閉じてしまった天井には目もくれず、すぐに意識を切り替える。
 もとより目的はオブリビオンの撃破。であれば、この新しい階層こそが敵に繋がる道なのは間違いなく、ある意味で探す手間が減ったとも言えた。
 ようやく本懐を遂げられると思えば、安堵さえ覚えるというもの。
 ちらりと背後を見遣れば、戸惑って騒いでいる新兵と彼らの側に立つベリザリオの姿が見える。
 ベリザリオは既に織久がどう動くかの予想がついているのだろう。今にも説教じみた心配する声が聞こえそうな顔をしていた。
 けれどベリザリオが織久の行動を読めるように、織久にもまたベリザリオの行動が読める。
 新兵3人は不安だらけだが、ベリザリオがいるならなんとかなるだろう。任せておけばきっと上手く導くに違いないという考えがあった。
 確信、というほど強いものでもない。
 ただ当たり前のように知っている。わかっている。それだけだ。
 だから織久は、ベリザリオが実際に口を開くよりも前に動きだす。
 少しでも早く、オブリビオンを狩るために。

「織久、自重しなさい!」
 ベリザリオがかけた声は、ほんの一呼吸遅かった。
 名を呼びきる半ばで既に織久は動き出していて、言い終える頃には既に姿が見えないほど遠くへ行ってしまっている。
 数秒迷った末に、ベリザリオにできたのは溜息ひとつで諦め、気持ちを切り替えることだった。
「まったく……」
 ああなると織久が簡単に止まらないことは知っている。
 追いかけることも難しいだろう。織久のスピードについていけないことは、ベリザリオ自身がよくわかっていた。
 それでもベリザリオ一人だったならば追っただろうが、今は新兵3人がいる。
 他の猟兵はともかく、彼ら3人を放り出すわけにもいかない。
 それに――先程の一瞬の視線の交差で、わかってしまった。
 きっと織久は、ベリザリオに彼らを任せたのだろう。
 ならば自分の役目は、彼らを守りつつ導くことだ。
 ただ隣に立つだけが共に戦うということではない。任せてくれたことをしっかりとやり遂げることもまた、共に戦うということだろう。

「新兵の皆様は、あの子の真似は絶対にしないように。いいですね?」
 と釘をさしてから、ベリザリオはまだ戸惑い混乱している新兵たちに向き直る。
 こうしたトラブルもまたダンジョンにはつきもの。やることは先程までとは変わらないのだと諭し、習った通りのことをするようにと告げた。
 多少時間がかかっても、いざとなればベリザリオの持つ『魔法のコテージ』で休憩することもできる。
 見張りは必要だが、野営の訓練としてもちょうどいいだろう。
 ベリザリオの言葉に新兵達もやっと落ち着きを取り戻し、これもまた訓練なのだと表情を改めて立ち上がった。
 生きて帰るまでが訓練だ。ここでじっとしていても何も解決しない。
 ひとまず織久が通った後の道ならば、ある程度の罠は作動後だろうから比較的安全だろう。それに彼のオブリビオンに対する嗅覚のようなものを信じてもいる。
 ベリザリオは新兵達を連れ、織久が通ったとおぼしき道をゆっくりと追うことにした。
 弱いモンスターはなるべく新兵達に対応させ、本当に危険が迫った時はかばい守り、一戦ごとに戦い方がどうだったかを確認しつつ、治療も応急手当の実践だと自分達で行わせる。
 大怪我に繋がるような攻撃からは守っているので、新兵達が大きな傷を負うこともなく、一行はゆっくりながらも着実にダンジョンを進んでいったのだった。

 一方、先行する織久はといえば――。
 地図もなく、単独行ながら驚異的な速度でダンジョン内を進んでいた。
 音も立てずに走りながら、神経を研ぎ澄ませて周囲の音や空気の流れを感じ取り、罠や進むべき方向を判断し。
 通路の左右から飛ばされる吹き矢を、時に身を翻し、時に暗器で受け止めはじき返して通り抜け、足を下ろす感覚と地面を踏む音の違いで落とし穴を察して飛び越えていく。
 自分の後をベリザリオ達がやって来ると知っているから、危険が残りそうな罠は強引に殺意と怨念の炎で焼き、時には武器でもって叩き壊していった。
 狩りを妨げるものは全て焼き払う。
 その信条のままに進んでいった織久の前に――足を止めざるを得ないものが立ちはだかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


 ――扉だ。
 それも武器で斬りつけようが叩こうが燃やそうがビクともしない、壁一面と一体化したような巨大な扉である。
 オブリビオンがいるのなら、この先だろう。
 けれど、どうやらこの扉はユーベルコードを用いても壊れそうもない。
 扉の中央に鍵穴のようなものがあるので鍵があれば開くのだろうが、その鍵穴は2つあった。
 ここに辿りつくまでに織久が通ったルートの他に、主な分岐は2つ。
 分岐路となった十字路の北がこの扉に続くルート。
 南が最初に落とされた部屋へと通じる道。
 分岐路の前後にも幾つかの通路はあったが、それらは全て行き止まりになっているようだ。 
 となれば、分岐路の東西の道のどちらか、あるいは両方に鍵があるのかもしれない。
茅場・榛名
POW:分岐路の東西を調査するよ。その前にルーキーに声かけるけど。

「エースさん、ビーンさん、シーマさん。このような事態を予測できなくてごめん。ボクたちが全身を持って守るよ。でも、ボクらでも守りきれない時もあるかもしれない。だからいつでも、自分の身を自分で守れるように心掛けて。」
少し長いけど、大事な事だから。

もし東西の道中に罠があったら解除(物理)するよ。
壊せる罠があるなら壊しとかないと。
細かい異変、違和感を見つけるように鍵を探すよ。


婀鎖路・朔梛
WIZ:あたしは前衛は苦手だから後方支援。

道はまだあるし、地図があると便利だよね。
これでも電脳魔術士。
PCを空間に展開してマッピング形式で地図を作っていくよ。
集中してくまなく探り、アイテム補充や発見した敵や罠の数、種類も記録ね。
明かり?画面が光ってるから平気だよ。

三人にも分かりやすい地図の作り方を教えるね。
地図が無いなら自分で作るんだよ。
あ、勿論PC使わない方法で。

危険な物以外は三人に任し、見守りながら改善点や【だまし討ち、時間稼ぎ】の方法を教えつつ、危なくなったら状況に応じて魔法や朔椰と入れ替わって【気絶攻撃、怪力】止めは出来るだけ三人にさせる。
あたし達はあくまで支援。

≪アドリブ、絡み歓迎≫


ウルフシャ・オーゲツ
新兵の訓練にはちょうどよいトラブルじゃな。
「おぬしら、戦場では何が起こるかわからんとよくわかったじゃろ。さあ気を引き締めるんじゃ、抜くと死ぬぞ?」

ちょうど良さそうじゃから訓練をつけながら進んで行こうかのう。
「せっかくだからうちはこの赤い扉を……ん、そんなものはないじゃと?」
他の猟兵次第じゃが、特にないなら東を調べようかの。そっちにすでに人がいるようなら西じゃな。新兵は全員来てもいいし余ったやつがきても良いわ

「よいか、あのようなあからさまな罠の場合、罠が罠の可能性も高い、その場合、あえてわざと罠を発動させるとじゃな」
プスっと頭に矢が刺さる。
「このように、ものすごくいたい」

アドリブ連携歓迎じゃ


ベルリリー・ベルベット
他の猟兵と一緒に行動するつもり。

確かに予想外のことは起きたけれど、お前達にはリリ達がついてるんだから、しっかりなさい。
と新兵達に声をかけるわ。
可能ならシーマにマッピングしてもらう。

鍵穴に『鍵開け』を試してみてもいいけれど、それじゃあ訓練にならないから、最終手段にしておくわ。

西と東に道が分かれているのなら、二手に分かれて進むのも作戦の一つだと思うの。
でもその分戦力はダウンするから、安全を重視するなら片方の道に皆で進みましょう。
どちらの作戦がいいか、新兵や猟兵に聞いて、リリは決まった意見に従うわ。

基本は新兵達に主体的に動いて貰うけれど、危険があれば『見切り』『ジャンプ』を駆使してすかさず助けるわ。




 時は少し遡り――新階層に落とされ、まだ新兵達が混乱の中にいた時のこと。
「エースさん、ビーンさん、シーマさん。このような事態を予測できなくてごめん」
 天井が閉じてもはや上に戻れないことを見てとった榛名は、神妙な顔で新兵達の前に出て謝罪の言葉を口にした。
「教官殿のせいではありません!」
「そーそー。っていうか、お宝とかどっかに残ってないかなーって、しつこく探したオレのせいですし?」
「巻き込んでしまってごめんなさいって謝るのは、僕達の方です。あとビーン君はほんとに反省して」
 何も悪くない教官に謝らせてしまったと慌てて反論を言葉にしたことで、同時に頼りになる教官達が共に居ることも思い出せたのだろうか。新兵達から悲観的な空気が消える。
 その様子にほんの少しだけ安堵した様子を見せた榛名は、今度は決意に満ちた目で彼らを真っ直ぐに見つめ、言った。
「キミたちのことは、ボクたちが全身をもって守るよ。でも、ボクらでも守りきれない時もあるかもしれない。だからいつでも、自分の身を自分で守れるように心掛けて」
 教官達に従っていけば間違いないという信頼が既にあるのか、榛名の言葉に新兵達はしっかりと頷く。
「確かに予想外のことは起きたけれど、お前達にはリリ達がついてるんだから、しっかりなさい」
「うんうん。おぬしら、これで戦場では何が起こるかわからんとよくわかったじゃろ。さあ気を引き締めるんじゃ、気を抜くと死ぬぞ?」
 ベルリリーとウルフシャにそう発破をかけられ、ベリザリオにも諭された新兵達は気持ちを切り替えられたのか、ほどほどの緊張感とやる気に満ちた表情になった。
 これならばダンジョンに挑んでも萎縮して動けないということはないだろうと判断して、猟兵達は新兵を連れ、先行した織久の後を追うように進みはじめたのである。

 道中で朔梛とベルリリーが新兵達に教えこんだのは、マッピングだ。
 朔梛は自分でも空中にディスプレイを展開し、通った道の順路はもちろん遭遇した敵や罠についての情報など気が付いたことを次々と書き込んでいく。
「地図が無いなら自分で作るんだよ。……そうそう。後で何が必要になるか分からないから、気が付いたことはできるだけ書いておいた方がいい」
 新兵には電脳魔術士の真似などできないので、使うのは紙とペンだ。
 ベルリリーに推薦されたシーマが、二人の指導を受けながら必死に紙に色々な情報を書きこんでいく。
 他の新兵二人にも戦闘していない時は参加させ、ダンジョン内の調べ方を教えたり、分かったことをマッピング係たるシーマに伝えさせるなどして鍛えていった。

 新階層は上階よりも罠の数が多くモンスターが出てくる割合も高かったが、罠に関しては織久が軒並み作動させるか破壊させるかして進んでいったため、ほとんど引っ掛かることはなかった。
 モンスターに関しても、新兵達にとっては手強くとも猟兵達にかかれば雑魚といえるものばかりで、新兵に自力で対処させるにはちょうどよいくらいである。
 ただ数が多かったり少し強いモンスターに遭遇した時など、新兵達だけでは対処が追いつかない時に限っては、榛名もベリザリオと同じく身をもって守り、戦った。
 ベルリリーとウルフシャは、時に慌てたり泣き言をいう新兵を厳しくも優しく叱咤して、3人が自力で色々なことができるように促し。
 朔梛は一歩引いて3人の戦いぶりやダンジョン探索の様子見守りながら、時にマッピングについて助言し、戦闘での改善点を指摘して考えさせたりもする。
 基本ができてきたこともあって、ただ愚直に戦うだけではなく、だまし撃ちのようなことや次の手のための時間稼ぎなども役に立つと、より実践的な指導も混ぜ込んでみたのだ。

 猟兵達はそんな風にしてダンジョンを進み、2つの鍵が必要な扉の前に辿りついたのである。
 扉を開けるには、東西の道の先を探索して2つの鍵を手に入れてこなければならない。
 猟兵達ならば強引に突破できる可能性もあったかもしれないが、今回は新兵の訓練を兼ねていることもあり、定番通り鍵を探しにいくことにした。
 幸いここまでマッピングを行ってきたこともあり、分岐点まで戻ることは容易い。
 ただ東西の道は本来の目的地からすれば『ハズレ』とされるルートだったため、まだ誰も足を踏み入れていない場所だ。

「二手に分かれて進むのも作戦の一つだけれど、その分戦力はダウンするから、安全を重視するなら片方の道に皆で進みましょう」
 速度をとるか、安全をとるか。
 どちらでも構わないというベルリリーの提案に、二手に分かれることを選択したのはウルフシャだ。
「みんなで行くのも良いが、せっかくだからうちはこの赤い扉を選ぶぞ!」
 赤い扉もないが、扉そのものもない。
 だが選択を与えられた時、例えそこに赤い扉がなくとも人はつい赤い扉を選んだと宣言してしまうものなのだ。多分、きっと。
 定型句が理解できず首を傾げている周囲を余所に、つまり東へ向かうということじゃな、と無難に説明して話が再開される。
 さすがにウルフシャ一人を向かわせるのは危険なのでベルリリーがついていくことになり、新兵からはエースと、西へ行ったシーマの代わりに東のマッピングの練習をすることになったビーンの二人がついてくることになった。

 東の通路を進むと、中央の通路にもあった両方の壁から矢が飛び出してくるという古典的な罠が現れる。
「よいか、あのようなあからさまな罠の場合、罠が罠の可能性も高い、その場合、あえてわざと罠を発動させるとじゃな」  
 これも訓練。罠に対する知識も教えようと、ウルフシャが手本を見せるつもりで一歩通路へ足を踏み出すと――。
 当然のように矢は発射され、ブスッときれいにウルフシャの頭に刺さった。
「……」
 一瞬、誰もがどう反応したらいいか分からずに沈黙が落ちる。
「このように、ものすごくいたい」
 大真面目な顔でウルフシャは刺さった矢を抜いて通路に放り投げるが、頭からピューッと血が噴き出している。
「さぁ、罠の威力はわかったじゃろ。気をつけて進むんじゃ」
「いやいやいや、頭から血を噴きだしながらキリっと言われても」
 シーマもいないので見かねてビーンが応急処置を施すと、ウルフシャは頷きながら、これまた真面目な顔で言った。
「これも応急処置訓練のための、とうといギセイだったのじゃよ……!」
「なるほど、さすが教官!!」
「そんなわけないでしょ」
「信じんなよ」
 すかさずエースが信じ込んで褒め称えるのに、ベルリリーとビーンがツッコミを入れるのだった。
 ウルフシャの体を張った警告が功を奏したのか、エースもビーンもよくよく気をつけながら進み、あわやという時にはベルリリ-が罠を見切って助けに入ることで、無事に通路を進んでいく。
 この手の罠では足の遅いエースが不安材料だったが、織久にしごかれウルフシャに追い回されたお陰もあって、危なっかしいながら回避ができていた。
 ビーンはもともと素早かったこともあるが、罠の知識や身のこなしを身につけたこともあって、新兵の割りにという但し書きはつくものの、罠にはかなり対処できるようになっていた。
「けっこうやるじゃん、オレたち」
「リリ達が鍛えたんですもの。当然よ」
 着実に成長していることを実感したらしいビーンにそう答えるベルリリーは、澄まし顔だかどことなく嬉しそうに見えなくもない。
 ともあれ、こうしてウルフシャの体を張った頑張りと新兵達の成長、そしてベルリリーのフォローにより、東通路組は無事に鍵を手に入れることができたのだった。

 一方、西へ向かった他の面々はというと――。
「ボクたちが身をもって守るって、言っただろう?」
 罠とみるや榛名が飛び出し、強引に罠を解除――と書いて攻撃し破壊しまくることで進んでいた。
「頼もしいです、教官!」
 パチパチと拍手して榛名を褒め称えるシーマも、ただ見ているだけではない。
 通路をよく観察し調べて地図に書き込み、気になったところを榛名と朔梛に聞いてみたり意見を出したりと、最初の頃の弱々しさが嘘のように、かなり積極的に動いている。
 ダンジョンへ入ってから得た知識も貪欲に吸収しているようで、練習もかねて榛名が罠で負った小さな怪我を手当するのも手慣れてきていたし、罠に気付く回数も増えてきていた。
 事前訓練で得た知識と、榛名が飛び込み解除する度に罠の位置や種類を朔梛の指導に従って書き込んでいたおかげだろう。
 猟兵より先に発見するところまでは勿論いかないが、この中ならどこにあるか、という出題形式の問いを朔梛に出された時などは、かなり正解できるようになっていたのだ。
 ただ攻撃力はからっきしのため、そこは先程以上に猟兵の本領発揮といったところ。
 湧いてくる小型のモンスターは榛名が斬り込んで蹴散らし、朔梛は後方から援護し、時折は朔椰に代わってその怪力で攻撃を受け止めたりして、シーマは無傷のまま西側の鍵を手に入れて戻ってきたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『息吹の竜『グラスアボラス』』

POW   :    フラワリングブレス
【吐き出された息吹 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【咲き乱れるフラワーカッター】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ガーデン・オブ・ゲンティアナ
自身の装備武器を無数の【竜胆 】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    フラワーフィールド
【吐き出された息吹 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を花畑で埋め】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイツ・ディンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 手に入れた二つの鍵を差し込んで回すと、壁と一体化しているかのような巨大な扉が轟音をたてて左右に開いていく。
 長く開いていなかったのか、扉の向こうの様子は舞い上がる砂埃に遮られて見えなかった。
 新兵達を背後に下がらせた猟兵達は、油断なく扉の向こうを窺う。
 埃くさいはずのダンジョンの最奥。
 しかし砂埃を押しのけるように部屋の奥から降ってくるのは、ダンジョンに似つかわしくない色とりどりの花びらだった。
「フワァーッ」
 花と共に届くのは、石造りの壁を揺るがすような鳴き声。
 恐らくはこのダンジョンの真の主であろう息吹の竜『グラスアボラス』が、扉の動きに反応して雄叫びをあげた。
 竜はただのモンスターではなく、オブリビオン。
 ここからが猟兵達の本当の戦いとなる。
 猟兵達に鍛えられた新兵は随分とたくましくなったものの、オブリビオンを相手に戦う力は持っていない。
 これまでに得た力と、猟兵達の指示や立ち回りによって彼らの命運も決まるだろう。

 舞い散る花の中で、最後の戦いの幕があがろうとしていた――。
.

【第二章の育成状況】
▼エース:●●●●●●+0.6/
耐久力、恐怖耐性、回避、柔軟性、攻撃速度、武器受け、連携、集団戦経験、罠知識

▼ビーン:●●●●●●●+0.6/
発想力、被虐趣味、地形の利用、罠使い、攻撃補助、速度2、瞬発力、持久力2、武器知識(小型武器)、回避、舞、緩急のある攻撃、身のこなし、大食い、被騎乗、連携、集団戦経験、マッピング

▼シーマ:●●●+0.6/
地形の利用、罠使い、状況把握、作戦指示、行動補助、誘惑、応急手当2、救助活動、かばう、盾、連携、集団戦経験、マッピング2

.
西院鬼・織久
【POW】
【心情】
迷宮は前菜にはなりません
随分焦らされたお陰で餓えてしまいました
我等の怨念を慰めるに値する敵である事を祈ろう

【行動】
新兵の守りはベリザリオ(f11970)に任せる
攻撃に専念する事で敵を釘付け
新兵に攻撃が行かないようにする

【戦闘】
「先制攻撃」で「ダッシュ」の勢いを加え「串刺し」
敵の注意を引き新兵がいる場所と違う方向に回り込む
防御が高いなら「鎧砕き」「鎧無視攻撃」でダメージを与える
傷を負わせる事ができたら「傷口をえぐる」で損傷個所を広げる

物理的に対処できる攻撃は「見切り」回避か「なぎ払い」で落とす
物理対処が難しいものは敵ごと「殺意の炎」で焼き払う


ベリザリオ・ルナセルウス
●目的
織久(f10350)と新兵のサポートをする
新兵は無茶をするべき時としてはいけない時を見極める訓練としてもらおう

●新兵に
三人とも、敵と味方の動きと戦況をよく見て下さい
シーマさん、盾の心得は覚えていますね?
エースさんもビーンさんも逸ってはいけません
織久のような戦い方は自分も傷付く事を前提とした特攻です。真似したら死にますよ!

●サポート
新兵から離れすぎないように
織久を視界に納められる場所にいる
【鈴蘭の嵐】で敵のブレスや伊吹に対抗して直撃を防ぐ
【無敵要塞】は技能での防御では防げない時に
ボスの前で疲弊しすぎる訳にはいかない。技能での応急処置をして【生まれながらの光】は本当に危険な時に


柊・雄鷹
ハレちゃん(f00145)と

ワイ、教えるんは向いてないってよぉく分かったわ
じゃ、授業を活かしてサクっと倒そかー
よっしゃハレちゃーん、支援任せたで!
…あれっ、今ワイのことおっさん言うた!?反抗期!?

しかし竜退治かぁ、ジジの英雄伝思い出すなぁ
なんやっけ、第13章…いや、23?忘っせた!
ハレちゃんの攻撃の後、最近作ったお気に入りのダガーを【投擲】するで!
【鎧砕き】もあるけど、一応【力溜め】してから攻撃しとこかー
ハレちゃん、新兵への攻撃はワイが【かばう】でっ!!

よっしゃ、最後は近距離から『月下氷塵』で氷の【属性攻撃】
ハレちゃーん、ワイのカッコいい所しっかり見といてやー!!

折角見ててって言うたのに!><


夏目・晴夜
【f00985】

新兵達には自身を守る事を第一に動いて欲しいです
いくら力をつけても死んだら何も残りませんからね
この小うるさいおっさんみたいな思考停止型になりたくなければ
とにかく生きて学び続けるようにして下さい

戦闘では【憑く夜身】で操った竜の影でその動きを一時的に封じ、
新兵やユタカさんへの攻撃を防ぎつつ攻撃のチャンスを作ります
後でこのハレルヤの事をしっかり褒め称えて下さいね

ユタカさんのダガーで刺さりが浅いものは
操っている竜の影の腕で押し込み【傷口をえぐる】
陰湿だろうが勝てばいいんですよ、勝てば

竜の息吹は遠慮なく庇って貰うか【第六感】で交わしたく

あれ、ユタカさん今何かしましたか
地面の花畑を見てました


婀鎖路・朔梛
あたしは後方でみんなの援護に回るねよ。
でも状況に応じていつでも前衛の朔椰と変わって動けるように準備しておく。
今回は守らないといけない三人がいるしね!

戦闘力のないシーマは前線には出ないだろうから、すぐに守ったりかばえるように、なるべく側で気にかけておく。

敵の攻撃には【エレクトロレギオン】で対抗していき、相殺や破壊できない分は集中して回避する。
また【ジャッジメント・クルセイド】で仲間の動きに合わせて【だまし討ち】もするよ。

ただ敵の攻撃が仲間、特に自分の近くにいる三人の誰かに当たりそうになったら直ぐに朔椰と入れ変わり武器の棺で守るよ。【怪力、武器受け】
あと敵に隙があれば【気絶攻撃、怪力】で攻撃ね。


ウルフシャ・オーゲツ
ここまで面倒を見たこ奴らがやられてしまうのも忍びない。
幸い他の猟兵も多いようじゃ。ウチは新兵たちのお守りを重視。

 基本は流れ弾等でやられそうになるのを防いだり、恐慌状態になりそうならばぽこぺんして冷静さを保たせたりするのがメインじゃな。
 チャンスがあれば仲間の援護もせねばなるまい。
「さて、戦場とはあらゆるものを武器として扱うことも必要となってくる」
「ここにウチの弓がある。しかし矢がない」
「だが、そんな時には箸がある」
「ならば、箸を矢にすれば、敵を倒せる!」
という超越理論をかざしながら『流星』を矢とした『スプンタ・アールマティ』の一撃を、上質な干し肉をムシャムシャしながら力いっぱい放つとしよう!


茅場・榛名
「下がって!こいつ、さっきまでより数段強い!」
咄嗟に前進して新兵たちに叫ぶよ。
「こんなの、異界で散々戦ってきたんだから。
傭兵ハルナの力、見せたげる!」
え、声が震えてるって?き、気のせいじゃないかな?
···そうだよ怖いよ!

「この飛竜刀で、猛き竜を葬る!」
「こんなに綺麗な花を咲かすんだ。散り際も、さぞ美しいんだろうね!」
「力を溜める」為に敵の攻撃を一身に受けるよ。タフじゃないけど、
始めから食らう気でいれば一度は耐えられる!
そして「2回攻撃」の「紅蓮斬」を使う!

撃墜後
「この先が出口のはずだよ。今日はボク達がキミを守ったけど、
明日からはキミが砦を、市民を守ってね。
そう。ここからは、キミの物語だよ!」




「下がって! こいつ、さっきまでより数段ヤバい!」
 砂埃が落ち着くのも待たずに榛名が一歩前に出れば、雄鷹も背中の翼で宙へと体を飛ばし、織久は正面からでなく迂回するように竜に向かって飛び出していく。
「ふ、ふふん。こんなの、異界で散々戦ってきたんだから。いい機会だから、この傭兵ハルナの実力を見せたげる!」
 剣を構え、竜のいる方向を見据える榛名。
 その声と足がわずかに震えていたことに、気付いた者はいるだろうか。
 気のせいだと自分に言い聞かせても、心のどこかでそれを認めてしまっているものの正体を、榛名自身よく知っていた。
 それは――恐怖。
 (「……そうだよ、怖いよ!」)
 ビリビリと空気を伝播しているかのように感じる竜の鳴き声、その威容。対峙した瞬間に抱く反射的なそれ。
 傭兵として戦いの経験を積んで強くなっても、恐怖の全てを克服することは難しい。
 自信を持つことと、恐怖を感じないことは別なのだから。
 けれどきっと、悪いことばかりでもない。
 それは油断していないということでもあるし、恐怖を感じる人の心が分かるということでもある。
 特に今は新兵達がいるのだ。
 榛名の姿は、彼らに言葉で語る以上のものを伝えていた。

 彼らは見る。
 自分達とそう年の変わらぬ少女が、震える足を叱咤するようにぐっと力をいれて柄を握り、駆け出していく姿を。
 彼らが抱くのは失望などでは勿論なく、これまで以上の尊崇だ。
 竜の威容に圧され恐怖で一歩も動けない今だからこそ、その凄さが、強さが分かる。
 砦の先輩や上司よりよっぽど強くて頼りになる教官達は、想像もできない超人のような人達なのだろうと、どこかで思っていた節があって。
 ならば叶わないのも届かないのも当たり前で、それなら恐怖を克服しない理由になり得た。
 けれど、どれだけ強くて超人のように見えても、何も感じないわけではないなら。同じように恐怖を感じても乗り越え、立ち向かっているというのなら。新兵達がただ怯えて固まって教官達の教えを守ることもできない今の言い訳にはならない。
「戦場では気を抜くと死ぬ、と言ったじゃろ」
 恐怖で体が固まって声も出せずにいた新兵達は、榛名の姿に触発され、そして緊張を削ぐように気楽な口調でぽこぺんと頭を順に軽く叩いていくウルフシャのお陰で、強張りを解いていく。

「よっしゃ。ハレちゃーん、支援任せたで!」
 前方、宙へ飛び上がっていった雄鷹がこちらを振り返り、大きく手を振って叫んだのを晴夜が無視し。
「この小うるさいおっさんみたいな思考停止型になりたくなければ、自身を守ることを第一に考えて、とにかく生きて学び続けるようにして下さい」
「……あれっ、今ワイのことおっさん言うた!? 反抗期!?」
 代わりに淡々と冷めた顔でそう告げる晴夜に、雄鷹が悲痛な声をあげるというやりとりも、随分と新兵達の緊張を解したようだ。

 そんな新兵達の様子に、ベリザリオは目元を少しだけ緩める。
 闇雲に突っ込むのも問題だが、恐怖に固まり周囲も見えていないのでは、守るのも難しい。
 朔梛がいつでも朔椰へと変われるように少し前に立ち、ウルフシャと晴夜とベリザリオが周囲を固めているので、そうそう新兵達を危険に晒すことはないだろうが、何が起こるのか分からないのも戦場の常だ。
 真っ先に竜へと向かい走っていった織久の姿を目で追い、敵の動きと織久の動きを視界に収めたままベリザリオは新兵達に声をかける。
「三人とも、敵と味方の動きと戦況をよく見て下さい」
 戦場においては、敵の動きを見るのは勿論、味方の動きをよく見たりして把握しておくことも重要だ。
「シーマさん、盾の心得は覚えていますね?」
「はい!」
 疑問ではなく確認としての問いかけに、シーマの背が伸びた。
「エースさんもビーンさんも、逸ってはいけません。織久のような戦い方は、自分も傷付く事を前提とした特攻です。真似したら死にますよ!」
「イエス、サー! 胸に刻みます!」
「頼まれてもやりたくないっす!」

 この場で一番大切なのは、生き残ること。
 今より上を目指して少し無茶をしなければ成長は見込めない。けれど無茶をしすぎても、それは挑戦ではなく無謀となり、時には命を落とすことになる。
 だから、いま学ぶべきは『見極め』ることだ。
 例え治療を施して怪我が治っても、疲れすぎて治療側も治療される側も戦力から外れてしまっては意味がないように。
 敵を、味方を、戦況をよく見て、今の自分に何ができて、何ができないのかを把握する。
 無茶をするべき時としてはいけない時を見極めることこそが、訓練だけではなく、この戦場を生き残るために必要なことだとベリザリオは告げた。

 視線の先、花の竜は向かってくる猟兵達を鬱陶しそうに首を回して振り払うと、猟兵達に向けて息吹を吐いているところ。
 放たれたそれを前線の猟兵達は苦も無く避けているが、新兵達には難しいと思われた。
 シーマが震えながらも盾を構えたのを音で捉えると、ベリザリオはその勇気が散らされぬよう己の武器を無数の鈴蘭にかえて息吹を受け止め、相殺していく。
 1人で全員を守りきるのは難しくとも、晴夜の方へ向かうものは前方上空の雄鷹が、中央部では朔梛が小型の機械を操って息吹が及ばないようにしてるのは分かっていた。
 敵と味方と状況を見て、自分に出来ることをする。
 それを各自が行った結果として自然と生じた連携に、朔梛の口の端が僅かに上がって笑みに似た形をつくる。
「シーマ! いい動きだけど、無理に前に出ようとしないでいいからね!」
 油断なく機械を操りながらが言えば、了承の声が返ってきた。
 緊張はしているが、縮こまっているわけではない声だ。
 エースもビーンも、ちゃんと守られる位置の中で、それでも自分ができることをしようと、武器を構え真剣に戦場を見回している。
 だから朔梛も、しっかりと自分に課した役目を守るべく、戦場に視線を巡らせた。
(「朔椰、やばいのきたら頼むね」)
(「任せて」)
 遠距離からの援護なら朔梛の方が得意だが、近接攻撃や威力の大きな攻撃を受けたりするのは、朔椰の方が得手である。
 2人で1人。
 得意なことを任せ合い、補い合うのもまた、自分達にできることだった。

 晴夜も互いに任せ合っている中で己にできることをすべく、庇ってくれた雄鷹の背中越しに竜の姿を捉え、そちらへと指先を伸ばす。
 あまり動かない表情で敵を見据え、自信に溢れた態度で敵を指し示す姿は、まるで敵に命じているかのようだ。
 晴夜の指先からは影を操る力を持つ不可視の操り糸が放たれ、竜の動きを封じるべくその影に絡みついていくのだから、結果としては似たような物なのかもしれない。
「どうぞ存分に自分の影とお遊び下さい」
 にこりともせず晴夜がそう口にした瞬間、花の竜の動きが不自然に止まる。
 影を捉えることに成功したのだ。
「後でこのハレルヤの事を、しっかり褒め称えて下さいね」
 打合せ通りこの瞬間を好機として既に動き出している雄鷹の背中に、晴夜のあまり大きくはない声は届かなかったかもしれないが、きっと言いたいことは伝わっているだろう。

 晴夜の不可視の糸が竜の影を絡め取る、そのひと呼吸前から動きだしていた雄鷹は、気に入りの特製ダガー達を手に狙いを定めていた。
 ダガーが狙うは花の竜。
(「竜退治かぁ、ジジの英雄伝思い出すなぁ……」)
 ダガーに最大の力が乗るように調整する雄鷹の脳裏を、幼い頃に幾度となく飽きるほど聞かされたそれがよぎる。
(「なんやっけ、第13章……いや、23やったっけ? ……忘っせた!」)
 どれがどの話だったかなんて忘れてしまったけれど、そこは大した問題ではなくて。語られた話の詳細も、今はさほど重要ではない。
 何故ならこれは話聞かせられる英雄伝ではなく、今こうして竜と対峙しているのは雄鷹本人であり、現在進行形の冒険譚なのだから。
「さーって、いっくでー!」
 動きを止めた竜めがけて放ったダガーは、獲物を狙う鷹のように速く鋭く飛んでいく。
 竜の装甲に対し、スクラップから組み立てたダガーでは頼りなく見えるかもしれないが、そんな柔な武器には作っていない。
 渾身の力が乗るように投げられたダガーはいずれも狙った場所に命中し、1本はその身に託された意匠に恥じることなく竜の装甲の隙間から食らいつき、その一部を剥がしてみせた。
 それにどういうわけか、装甲を剥がすまでいかなかったはずの他のダガーがゆっくりと動き、じわりじわりと竜の体に食い込んでいく。
 まるで傷口を抉るようにダガーを押し込んでいるのは、竜の影を絡めとっていた不可視の糸――つまりは晴夜だった。
 ただ刺し貫くよりも痛みを与えるだろうその動きに、竜は苦悶の声をあげて暴れている。
「陰湿だろうが勝てばいいんですよ、勝てば」
 しれっとそう嘯いた晴夜は、動くダガーに目を瞠ってこちらを向き、なにやら嬉しげに笑っている雄鷹に、後で褒め言葉を追加注文しておこうと心に決めたのだった。
 
 竜の間近で戦う猟兵の影は2つ。
 最初に大きく回り込み、新兵達がいるのとは別方向へ竜の意識を誘導とした織久と、震えを抑え込み剣で果敢に竜へと斬りかかっていった榛名である。
「こんなに綺麗な花を咲かすんだ。散り際も、さぞ美しいんだろうね!」
 榛名が振るう『飛竜刀・焔』は華奢にも見える刀身の太刀。
 竜の鱗が相手では折れるか弾かれてしまいそうに見えるが、見た目に反した耐久性を誇るそれは、名前に相応しく竜を狩るために遺憾なくその切れ味を発揮していた。
「キィアァ……!」
 竜が傷ついた翼をはためかせてもがくのを、榛名の太刀が切り裂き、織久の闇器が貫いていく。
 オブリビオンを狩ることを至上目的とする織久にとって、弱いモンスターが時折湧き出るだけのダンジョンは前菜にもなりはしない。
 随分と焦らされたからだろうか。胸の内に蠢く怨念はいつにも増して轟々と唸りを上げて渦巻き、織久を内から焼かんばかりだった。
 けれどそれも織久には慣れた感覚なのだろう。
 敵を見つけたいま抑え込む必要のないそれらは解き放たれて、ひとつの『個』を越えた存在となった織久は連綿と続く怨念の糧とするため、竜との戦いを続けていた。

(「果たしてこの竜は、我等の怨念を慰めるに値する敵だろうか?」)
 既に初手、疾走からの跳躍を利用して串刺しにした傷は竜の背を深く抉っている。
 そこを起点として傷を広げ、抉り、鱗の剥がすと、また少し離れたところに闇器を打ち込み、傷口を広げていった。
 執拗にそれを繰り返すのは、巨体を覆う強固な鱗を少しでも剥がして弱らせるためだ。
 雄鷹と晴夜の連携によって剥がされた分を合わせれば、かなりの範囲で竜の防御力を下げることができたと言えよう。

 けれど、後方――ベリザリオや新兵達が居る方へ意識を向かわせぬため、あえて竜の視界に己の身を晒しながら戦う織久の傷は決して少なくも浅くもなかった。
 花が咲き、花を避け、花に裂かれて、花を裂く。
 淡い色の花の中に時折混ざる赤と黒は、織久の黒衣と、その身から流れ落ちる血が描く色だ。

 死んでいなければ戦える。

 そう新兵に教えたように、織久自身がその信条で戦っているのだろう。
 痛みを無視して周囲を埋める花を薙ぎ払うと同時、血の飛沫をわずかに飛ばす織久であったが――そこに聖なる光が降り注いだ。
 光は瞬く間に織久の傷をふさぎ、癒していく。
 誰がやったかなど、振り返って確認せずとも分かっていた。
 ほんの一瞬、織久の瞳に宿る殺意と狂気の炎が和らいだように見えたのは、降り注ぐ光が反射した揺らぎが見せた錯覚だろうか。
 ともかくも傷の癒えた織久は背後を振り返ることなく、竜を更に追い詰めるため、より正確に力強く振るえるようになった腕を振り上げた。

 装甲の多くを剥がされ数えきれぬ傷を負った竜の攻撃は、もはや余裕もないのか、いっそう激しいものになっている。
 攻撃と攻撃の狭間、防御と防御の狭間を抜けて襲い来る花の刃を、朔梛と交代した朔椰が巨大な柩を盾がわりとして受け止め、新兵達を守った。
 前線の攻防もめまぐるしいが、後方とて決して安穏とできるわけではない。
 前方の猟兵達はなるべくこちらへ攻撃がいかぬよう立ち回ってくれているが、なにしろ竜の攻撃は広範囲に影響を及ぼすものが多く、攻撃全てを防ぐことは不可能である。
 新兵達も微力ながら力になるべく、3人で協力し合って後方へ回りこんだ花びらを払う手伝いをしていた。
「あと、少し……だと思う」
 花の刃を受けきった朔椰が、柩越しに竜を見遣って呟く。
「ええ。この立て続けの攻撃は、あちらも追い詰められている証でしょう。……けれど、少し厳しいですね」
 同意しながらもベリザリオは眉を寄せて思案顔だ。
 こうも敵の攻撃が激しいと、前線の猟兵達は攻撃はできてもとどめに繋がる強力な一撃が放ちにくい。
 織久ならば我が身を気にせず実行するだろうが、させたくはなかった。
「ふむ。では、隙を作るしかないじゃろ」
 猛攻はこちらにも届いている。新兵達を守っている今、多少のダメージを覚悟してもそう何人も防御から割くことはできない。
 ウルフシャは一時的に防御を他の仲間に任せると、その小柄な身に余るほど大型の真紅の弓を取り出して構え、振り返らないまま新兵達へと声をかける。
「新兵たちよ。ここにウチの弓がある。しかし矢がない」
 そう。ウルフシャの手には巨大な弓があるが、何故か矢がなかった。
「だが、そんな時には箸がある」
 取り出したのは、さらに何故だか木刀サイズの箸である。
 星屑から鍛えられたり流星から作られたりと、かっこいい謂われはあるのだが、箸。
 そもそも木刀サイズの箸は、箸と言えるのだろうか?
「ならば、箸を矢にすれば、敵を倒せる!」
「なるほどー!」
「いやいやいや、そんなデカイ箸持ってくるなら普通に矢もってきた方が早いすよね!?」
 箸の概念が崩れそうになる中、エースの感嘆とビーンのツッコミをよそに、ウルフシャは大真面目に大型の箸『流星』を、これまた大型の弓『スプンタ・アールマティ』につがえて――さらに上質の干し肉をムシャムシャと食べながら、放ったのである。

 恐ろしいことに、弓から放たれた木刀サイズの箸『流星』は、その名が示す通り流星のように一直線に竜へと飛んでいき――ぐさりと、数多つけられた傷のひとつに深々と突き刺さった。
「ギ、ィェアァ……!」
 竜の巨体が大きく震え、傷ついた翼を立てて身を仰け反らせる。
 それは、これ以上猟兵達を近づけまいと必死に攻撃を続けていた竜がみせた、大きな隙であった。

 いち早く動いたのは織久だ。
「我等が怨念尽きる事なし」
 これ以上の花はいらないとばかり残り香のような花の群れごと竜を燃やすのは、己の身に宿る怨念と殺意の黒い炎。
 巨体の全てを包むように燃やしながら、織久は最初に突き立てた最も深い傷口へと両手の闇器を突き立てていく。

「ハレちゃーん、ワイのカッコいい所しっかり見といてやー!!」
 そして炎に巻かれた竜に向けて、相棒にそう求めながら落下するような勢いで向かっていくのは雄鷹だ。
 触れるもの全てを凍らせる刃を落下の勢いのままに突き刺して、己の身は激突する寸前に羽ばたきひとつで急制動をかけ引き戻す。
「ちょっと冷たいけど、堪忍な。――ま、この炎じゃ冷たがる暇もないかもしれんけど」
 黒い炎の中、竜の皮膚が雄鷹のダガーが刺さった部分を中心に音を立てて凍っていく。
 炎と氷。
 急激な温度差によってか、残っていた竜の装甲も内側から破砕するように割れていった。

 もはや花のひとつもまとえぬ炎と氷に包まれた竜が、それでも生き延びようと、敵を屠ろうと巨体を振り回す。
「この飛竜刀で、猛き竜を葬る!」
 暴れる竜の前に身を晒したのは、竜を屠る太刀を手にした榛名だった。
 素早さとそれを活かした攻撃力に自信はあれど、頑健にはほど遠いと言っていた榛名は、歯を食いしばって竜の最後の悪あがきを受け止める。
 吹き飛びはしなかったが衝撃は殺しきれず、竜の前脚を受け止めた太刀が掌に食い込んで自らの血で赤く染めた。
 ――痛い。
 それは最初に対峙して恐怖を得た時と同じように、慣れ切ることなどないものだけれど。
 元よりそのつもりだったなら、一度くらいは耐えられる。
 奥歯を噛みしめ、飛竜刀を握りしめて、前脚を払い跳躍した先にあるのは――竜の首。
「ボクの剣で灰となれ。――紅蓮斬!」
 黒い炎に焼かれ、凍刃によって凍らされた竜の首を、華奢な太刀が綺麗に切り落とし――その傷口を灼熱の炎でさらに焼いた。
 斬られた竜の首が、轟音と共にが床へと落ちる。
 そこにもはや竜を彩る花畑は存在せず、血と泥と亡骸があるだけであった。

 血が噴き上がることもなく炎に焼かれながら竜の亡骸が崩れ落ちていく中、雄鷹がいそいそと新兵達が固まっていた方へやってくる。
「ハレちゃーん! わいの超絶カッコイイところ、見とってくれた?」
 期待に満ちた目で聞いてくる雄鷹に対し、無表情のままハテと首を傾げてみせるのはもちろん晴夜で。
「あれ、ユタカさん何かしてましたっけ?」
「え!? 折角見ててって言うたのに! わいめっちゃ活躍しとったやろ!?」
「少々、地面の花畑を見ていたもので」
 しれっととぼける晴夜だが、しっかり雄鷹の活躍は見ていたはずだ。
 二人のじゃれ合いのようなやりとりを見て、ようやく戦いが終わったのだと実感したのか、新兵達3人が顔見合わせて笑い合う。

 ともあれダンジョンの奥に座していた花を降らせる竜は、こうして炎に焼かれ、灰となってダンジョンに降り注いだのであった。


 無事に竜を退治しダンジョンを踏破した一行は、砦の前で新兵達3人と別れることとなった。
 最後の挨拶をするために並んだ新兵達は、最初に挨拶をした頃に比べて随分とボロボロだけれど、その分だけ頼もしくなったように見える。
「教官達に教えていただいたこと、一生忘れぬよう心に刻みます!」
 相変わらず必要以上に力一杯に敬礼するエースは、鍛えられて少しは頭を使ったり周囲を見ることを覚えたようだ。
「あー……教官達には、マジ感謝してるんすよ、これでも。タメになったし、生きて帰ってこられたのも、教官達のおかげっすし。その……ご指導、有り難うございました」
 やる気が感じられなかったり軽いノリの多かったビーンが、最後には真剣な顔で涙さえ浮かべながら深く頭を下げる。
「教官達のおかげで、強くなれました。強くなるって、力だけじゃないってわかって、世界が変わった気がしたんですよ。――ボクに道を与えてくれて、ほんとうにありがとうございます」
 そして最後にシーマが、笑顔で丁寧に頭を下げた。

 鍛えられたといっても、彼らは砦の兵士としてもまだまだひよっこ。
 今日まではあくまで訓練で、これから彼らの兵士としての生活が始まるのだ。
「今日はボク達がキミを守ったけど、明日からはキミが砦を、市民を守ってね」
 榛名の言葉に、3人はしっかりと頷く。
 戸惑う瞳はもはやなく、その目はしっかりと目標と目的を見定めているように見えた。
 ならば彼らは、この経験を糧に強くなっていけるだろう。

「そう。ここからは、キミの物語だよ!」
 榛名が言ったとおり、新兵たちの兵士としての物語はここから始るのだから。

 そして猟兵達の物語もまた、それぞれに紡がれていくのだろう。
 キミだけの物語が、これからもずっと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月30日


挿絵イラスト