4
災厄に打ちのめされた村

#ダークセイヴァー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー


0




「猟兵のみんな、よく集まってくれたな! ダークセイヴァー世界で、オブリビオンの襲撃を受けている村を予知したぜ!」
 グリモアベースに集まる猟兵達へ『人間のガジェッティア』ロロック・ハーウェイが、事件の発生を告げる。
「でも、オブリビオンに襲われたその村はもう……手遅れなんだ」
 人口の少ない、山と川に挟まれた、小さな村だ。
 しかしオブリビオンの手にかかり住民達は殺され、家や建物は破壊され、田畑は踏みにじられた。
 全てが終わったそこはすでに、無惨な瓦礫の山。廃墟と呼んで差し支えないだろう。
「だけど、そんな地獄のような状況の中でも、わずかに生き残った人達がいるんだ!」
 壊された家屋の奥、積み上がった瓦礫の先、細い路地の物陰、家族の亡骸の下……至る所に、恐ろしい襲撃を運良く生き残った人々が隠れ潜んでいる。
 けれどもその多くは閉所に閉じ込められて出られない者や、親しい人達を殺され、自力で立ち上がる気力も湧かない者ばかり。
「このままじゃ、せっかく助かった命が、絶望に吹き消されちまう! そうなる前に、みんなにはその人達を見つけ出して、救い出して欲しい……!」
 とはいえ村は連日雨が降り続き、冷たい瓦礫とぬかるみに囲まれて取り残された人々は、寒空の下で心身共に衰弱しているはずだ。
 首尾良く救出できても、怪我をしたり病気を患っているかも知れず、その治療をしなければ命に関わるだろう。
 ろくに何も口にできていないだろうし、暖かい飲み物や食べ物、雨風をしのげる所だって必要になる。
 近くには山がある。そこから血の臭いをかぎつけた野獣が、降りてくるかも知れない。
 猟兵達には村へ赴き、そうした人達を捜し出して、安心して休める場所を提供して欲しい――ロロックはそう頷きかける。
 【POW】瓦礫や残骸を取り除き、動けない人の救助をしたり、狼や熊など村を襲おうとする獣を撃退する。
 【SPD】村内で怯えて隠れ潜んでいる人を捜索したり、テントを建てたり食事を作ったりして、休息できるキャンプ地を設営する。
 【WIZ】怪我人や病人の救護を行ったり、ショックで落ち込んでいる人を励ます。
 これらの作業は時間との勝負になるだろう。しかも雨は少しずつ勢力を増し、日が暮れて視界が悪くなればなるほど、救助活動はより困難なものになっていく。
 なるべく昼の内に重傷者だけでも無事に救い出し、できるだけの応急手当てを済ませておきたいところだ。
「村を襲った敵の正体は不明……だから助け出せた人達から、敵の情報も入手できるかも知れないぜ」
 襲撃からまだ大した時間は経過しておらず、ひょっとしたら異変を察知した敵が引き返して来る可能性もある。
 もしもの場合に備え、余裕ができたら話してくれそうな人から情報を集めたり、残骸などから敵の痕跡を探しておくのも手だろう。
「たとえ家が壊されても、絶望していても、生きている限り何度だってやり直せる……村の人々を救い、その事を教えてあげてくれ! 頼んだぜ!」


霧柄頼道
 霧柄頼道です。よろしくお願いします。

●周囲の状況
 200人くらいの住人が暮らしていた、辺境の貧しい村です。
 家屋は木造住宅が中心で、痩せた作物を収穫してなんとか生き延びていましたが、オブリビオンの襲来によって村の人員以外は全ての施設、備蓄、機能が破壊されました。

 屍や瓦礫で荒れ果てた村中央の広場には、数人の生き残りが何をするでもなく悲嘆に暮れ、今にも消えそうな焚き火を囲み身を寄せ合っています。
 ほとんどの住民は冷たい雨が流れ込む瓦礫の中に取り残され、気を失っていたり、怪我の度合いや衰弱の進行具合にも差があります。
 生存者の正確な人数は不明です。
35




第1章 冒険 『救助活動』

POW   :    力で瓦礫を退かしたり、治療の障害となるものを壊す

SPD   :    怪我人を見つけたりテントを建てたり、治療に必要なことを行う。

WIZ   :    患者の治療を行ったり、話を聞いてあげて安心させる。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エウロペ・マリウス
ボク達も万能ではないのだから、救えなかったと悲観に暮れるのは後回しだね
今できる最善を尽くし、救える者を救うべきだね

行動 WIZ【礼儀作法】【視力】【暗視】
使用ユーベルコード
【清浄なる魔力の調和(クラルス・コンコルディア)】

【暗視】と【視力】で瓦礫の中等の見えにくい場所を率先して詮索するよ
そして生存者には【清浄なる魔力の調和(クラルス・コンコルディア)】を使用して癒やすよ
後の戦闘に不安が残るけれど、疲れは度外視して倒れる覚悟で頑張るよ

ボクは人と接するのは苦手だから、叱咤激励は他の人にお任せするよ
話す体力があるなら、【清浄なる魔力の調和(クラルス・コンコルディア)】で使い潰すよ



 しとどに雨が降り続け、肌を刺すような寒々しさを覚えるのは、きっとこの天気のせいだからだけではないのだろう。
「ボク達も万能ではないのだから、救えなかったと悲観に暮れるのは後回しだね」
 人の声が途絶えた廃墟を見渡して、エウロペ・マリウス(揺り籠の氷姫・f11096)はそう呟く。
 力を振り絞って戦い続けても、手のひらからこぼれ落ちるものは存在する。でも、全てを振り落としてしまったのでないのなら、諦めて足を止めるのは間違いだ。
 猟兵ならなおの事、今できる最善を尽くして困難に立ち向かい、救える者を救うべき――エウロペは自らそれを実践するように、うずたかく積もった無数の瓦礫へと歩み寄って行く。
 下手に触ったり、よじ登ろうものなら瓦礫が崩れ落ちて巻き込まれてしまうだけでなく、もし内部に人が残っていたなら、その人の命まで危険にさらされる。
 だからエウロペは瓦礫の隙間へ目を凝らし、要救助者がいないか、暗闇の奥を一つ一つ確認していく。
 ずぶ濡れになりながら瓦礫と遺骸の間を行ったり来たり、捜し始めて10分程度。
「……良かった、生きている人だ」
 ようやく一人目の生存者の男性を発見し、思わず呟きが漏れる。
 しかしその男は、薄暗い残骸の下に座り込んでおり、足をかばっている風に見えた。
「その足、怪我しているのかい?」
 エウロペが問いかけると、男は驚いたようにこちらを見て、それから小さく頷いた。
「倒れてきた柱にぶつけちまってな……潰されはしなかったんだが、この有様だ」
 折れた足さえ治ればここから出られるんだがな、とぼやく男と瓦礫の狭間の距離を、エウロペは慎重に測る。
「我が癒し手の魔力(マナ)を贄に。かの者の傷よ、調和せよ、調和せよ、調和せよ」
 そしておもむろに魔力を集中させると、男の赤く染まっている足へと狙いを定め、一発の氷の結晶を撃ち出した。
「う、うわ……なにを……?」
 美しい氷の結晶はわずかなスペースをくぐるように男の足へと着弾し、ぎょっとしたような視線の先で、折れていた足が光に包まれ――瞬きした後には、その傷は消えてなくなっていたのである。
「もう痛みはない?」
「あ、ああ……あんた、凄いな。よし、俺もここから出るから、ちょっと離れてなよ」
 瓦礫を力強く横にどけて、男が自力で這い出して来る。
 ともあれ、まずは一人。
 だが延々と連なる瓦礫の山には、まだ幾人もの人が救助を待っているのだ。
 このペースで【清浄なる魔力の調和】を使い続けていくとなると、後に現れるかも知れない、この村を襲ったというオブリビオンとの戦闘にはいくばくかの不安が残る。
 でも、今は温存だのと言っていられる状況ではない。
(「疲れは度外視して、倒れる覚悟で頑張ろう……そのくらいでなきゃ、誰一人助けられはしないからね」)
 人と話して元気づけたり、他の事は仲間の猟兵に任せればいい。
 自分の役目は、傷に苦しむ少しでも多くの人を治療する事。
 エウロペはそう改めて確認すると、雨の中を歩き出し、再び捜索に戻るのだった――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ノワール・コルネイユ
起きてしまったことは決して覆りはしない
ならせめて、これから出来ることを成すべきだろう

【SPD】
隠れたり行き倒れたりしている怪我人の捜索に専念する
血痕や足跡、破れた服の切れ端など
何らかの痕跡を発見したら【追跡】で行先を辿ってみよう
幸い、生き血には目が無いんだ
生きてるなら見つけてやれるかもしれん

怪我人を見つけたら人の居る方へ運び、応急処置
一先ずは水、それと清潔な布があればいい
より専門的なことは出来る奴に任せるさ

救護場所が未設置なら設営を手伝うか、
最低限でも身体に負担がかかりにくい場所に寝かせてやろう

今の内に目一杯に落ち込んで、沈んでおけ
何れは落ち込む間もないぐらい、生きるのに忙しくなるだろうからな


アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

残念ですが死者への祈りや埋葬を後にし、今は生存者のために動きましょう。
衣食足りて礼節を知る。現状だと困窮している村人から話を聞くのは難しそうです。
早急に衣食住を用意し、次の困難に備えるために準備しないといけませんね。
私は食を得るために山へ向かいます。
ホワイトパスで野生動物の気配を探ったり、またホワイトナイトを駆使して山菜等の採取をメインに。
また食以外でも、余裕があれば野獣の駆逐や襲撃者の痕跡がないか『情報収集』します。
独りでできる事は少ないです。無理をせずに食料が集まり次第下山し、また入山。
襲撃者の痕跡が発見できた場合も一旦下山し、他の猟兵と情報交換を行います。
深追いは禁物です。



 起きてしまった事は決して覆りはしない。
 この村を見舞った悲劇をなかった事にはできないし、失われた命も戻っては来ない。
 だが、常闇の中においていまだなお、生きようとあがく意思が少しでも残っているのなら、せめてこれから出来る事を成すべきだろう。
 ノワール・コルネイユ(Le Chasseur・f11323)はぼろぼろになった村を歩き回り、隠れたり行き倒れたりしている怪我人の捜索に専念していた。
 そこら中から嗅ぎ慣れた血の臭いが漂っている。土の下までこびりついたこの臭いが落ちるには、どれだけかかるのだろう。
 とはいえ、時間をかければ雨のせいで要救助者の足跡や痕跡まで消えかねない。ノワールは薄れつつある手がかりを探し求め、十数分を費やした。
 そしてついに、ふと地面に落ちている衣服の切れ端が目に留まる。
 幸い、生き血には目がない。布地に付着した血痕はまだ新しい状態である事が分かり、生きた人間が近くにいたのだろうと目星をつける。
「辿ってみるか……持ち主を見つけた時には、冷たくなっていなければいいが」
 これまでに見て来た死体は数え切れない。こうしている間にもまた一つ増えてしまわないかという危惧を抱きつつ、ノワールは点々と残る痕跡を頼りに崩れた路地を進む。
 すると横転した馬車の裏に隠れるようにして、二人の男女がうずくまり……いや、もう一人、仰向けで動かない人間を発見した。
 恐らく兄妹と思われる若い二人だ。しかし奥の方に倒れている女は蒼白な表情で、一目で息がないものと見当がつく。
「どうした、大丈夫か?」
 ノワールが声をかけると、雨音にまぎれてすすり泣いていた二人が、びくりと肩を震わせて振り返った。
「母さんが……母さんが、俺達をかばって……!」
 その一言で、彼らの身に何が起きたのかは察しが付いた。
 見たところ怪我はなさそうだが、二人がいつまでもここから離れられない理由は、死んだ母親にあるのだろう。
「……そうか。だが、ここにいては何が起こるか分からん。ひとまず、人のいる方へ避難しろ」
「でも……でも……っ!」
「お前達を飢え死にさせるために、母は命を差し出したわけではないはずだ……さあ、立て。泣いていてもいい。涙は雨が洗い流してくれる」
 兄妹は立ち上がり、兄の方が母親の遺体を背負って、歩き出す。
 後できちんと葬るつもりなのだろう、その心がけにノワールも何も口出しするつもりはない。
 荒れた広場に行くと、わずかな生き残り達のどんよりした目と視線が合った。
「そんなところで座り込んでいないで、手を貸してくれ。一先ずは水、それと清潔な布があればいい」
 ノワールの呼びかけで、やっと彼らものろのろとだが動き始める。
 この広場には充分なスペースがあるから、もっと瓦礫の掃除や片付けが進めば、立派なキャンプ地として使えそうだ。
 今は兄妹の二人とも泣きじゃくっているが、近いうちに彼らにもこれらの作業に加わってもらわなければ……人手は多いに越した事はないのだから。
 とりあえずは簡易的なテントを張って兄妹を休ませ、隣にそっと母親の亡骸を横たえる。
「今の内に目一杯に落ち込んで、沈んでおけ。……何れは落ち込む間もないぐらい、生きるのに忙しくなるだろうからな」

 一方、アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)は悪天候の下、泥や草木を踏みしめて、長い山道を登っていた。
 オブリビオンによって多くの犠牲が生じ、今の状態では死者の亡骸を探す事も、弔う事も葬る事もろくにできはしない。
 それにオブリビオンとて倒されたわけではない。このまま手をこまねいていては、幸運にも生き残った生存者達までが、きっと危険にさらされる。
(「とはいえ、現状だと困窮している村人から話を聞くのは難しそうです……」)
 衣食足りて礼節を知る。まずは彼らが安心できるだけの衣食住を早急に用意し、次の困難に備えるのはその後だ。
 そのためにアリウムは山へと分け入り、食料を探し回っているのだった。
 もちろん、ただやみくもにさまよっているわけではない。
 ホワイトパスで五感を強化し、鋭敏になった視覚や聴覚、嗅覚を用いて野生動物の気配を探り、味覚で食べられそうな山菜、野草、キノコなどを判断する。
「こんな時は猫の手ではなく、騎士様の手をお借りしましょうか」
 そう呟いたアリウムの隣に、ホワイトナイト――白銀の騎士が現れた。
 雨に打たれながらも勇壮と佇むその甲冑姿はいかにも頼りがいがありそうだが、今回手分けして頼むのはこまごまとした山の幸の採取だったりする。
 アリウムは食料を獲りがてら、野獣の駆逐にもとりかかった。
 狼や熊の嗅覚は人間どころの騒ぎではない。例え雨で臭いが落ちていようが、彼らは村で流れた人の血をかぎ分け、ほどなくして山を下りていくだろうから。
「人々を守るためにも、動物たちに容赦してはいられません」
 アリウムは息を潜めて獰猛な獣の背後へ迫り、ホワイトファングを足下へ撃ち込み動きを止めて接近すると、氷華を頸椎へ突き立てて速やかに仕留めていく。
 逆に背後を取られた時は振り返りざまに短槍を投げつけ、灌木へ串刺しにして倒した。
「ですが、これだけ探索しても、襲撃者の手がかりはまったく見当たらないとは……」
 村を襲ったというオブリビオン。あれだけの惨状を作り出しておきながら、一体どこへ消えたのか。
 まだはっきりとは分からないが、ひょっとすると、山の方へ立ち去ったわけではないのかも知れない。
 別の場所を調べれば、また何か掴めそうな感触はあるのだが。
「……ともあれ、独りでできそうな事はこれくらいが限界ですね。騎士様と合流して、一旦村へ戻りましょうか」
 雨の降る山を歩くというのは、思ったよりも消耗する。
 だが動物の肉や山菜など、食べられそうな食料、食材は目標分集まっていた。

 アリウムが村へ戻ってくると、広場にはぽつぽつと人の姿が出て来ている。
「……山の方へ行っていたのか。何か成果はあったか?」
 瓦礫の撤去作業を手伝っていたノワールと目が合い、アリウムは頷いて担いでいた袋を置く。
「良ければ皆さんでどうぞ。私は休憩したら、また入山します」
 アリウムの持ち込んだ食料を見て、村人達にも少しは活気が戻って来たようだ。
 けれどもノワールの方は、今の所襲撃者に関する痕跡は見かけていないという。
「生存者捜しで、オブリビオンの調査どころじゃなかったからな。……無理はするなよ」
「承知しています、出会ったとしても深追いはしません。ノワールさんもお気をつけて」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

天星・零
シャオ(f00507)と連携


患者の治療を行ったり、話を聞いてあげて安心させる。
住民を助ける【覚悟】を持って住民を励ましながら【鼓舞】する
また、UC【生命を愛した赤い目の黒猫の魔法】で患者を治します



可能なら事前に毛布や服などを用意しておき現地で住民等に分け与える
もし、それが出来ないまたは足りなくなった場合は自分の着ているフードを一時的に貸す

また、怪我人を治す際出血や傷が激しい場合自身の服を破いてでも布を用意し【世界知識】や普段の【情報収集】で得た知識を用いて治療します

赤い目の黒猫(アッシュ)の口調‥一人称はアッシュ、二人称貴様、お前(零だけは名前)-だ、だにゃ、だぞ。『な』の発音がにゃ


シャオ・フィルナート
零(f02413)と連携
呼び方→天星さん

周辺に動物が居れば★蒼笛で呼び出し
【動物会話】で協力依頼

1人でも、守るため…
手伝って…

頼みたいのは
・聴覚や嗅覚での村人捜索
・野獣の気配察知
・襲撃者に見覚えが無いか

その間に複数人で雨風が凌げる空き家が無いか探し
見つけたら一時的に村人を集める
冷えきっている人には毛布やコートを
足りない人には動物に寄り添わせる

テント、出来るまで
少しだけ…我慢して

動物に共有された情報を元に自分でも捜索
命に関わる優先順位の高い村人から救助
但し下手に触れると崩れそうな場所は深追いせず
手伝いを求める

大丈夫…必ず、助けるから…

救助した村人は
UC(いい子だよ…)の背に乗せ
一旦天星さんの元へ


紫崎・宗田
澪(f03165)と連携

村人は人当たりのいいチビ(澪)に任せるとして
山があんなら木材には困らねぇ筈だな

剣先に火を灯した後柄を地面に突き刺し
暖取り兼料理の火元として置いて行く

脆くなってる木を見分け
頑丈そうな木を斧で必要分切り倒してから
【怪力】で持ち帰り
組みやすいよう加工しながらロープで固定
簡易テントの防水布を繋ぎ合わせ大きくしたものを被せ留めれば
大人数で集まれる救護テントの完成だ

料理が終わったら剣を回収
【属性攻撃】で火をつけた木材を中央に
簡易テントそのまま使うのもいいが
生き残り同士
顔突き合わせて飯食った方が安心すんだろ

一通り作業が終わっても避難が完了していない場合
力技が必要な救助を手伝うぜ


栗花落・澪
宗田(f03527)と連携

まずは少しでも落ち着いてもらわないとね
僕は今ある食材で【料理】するよ

飛行能力で川から水を汲み
鍋で山菜とキノコのスープを作る
お肉は叩いて簡易ハンバーグに
食器は家屋内から洗って拝借

さぁ、こっちで暖まって
救助完了した人は火の側に誘導
暖まらせながら料理を振る舞い
癒しが必要ならUCで定期回復

準備が出来たら
視認出来る村人の位置を確認しながら
空から皆に呼び掛けるね
食事の準備が出来たからこっちへ
動けない人は順番に助けに行くから

生きていてくれてありがとう
その繋いだ命…絶対に後悔させないよ

避難協力時
子供ならあやして大人しくさせてから
抱えて飛ぶね

※常に笑顔で
※宥める為なら雑談にも付き合う



「一人でも、守るため……手伝って……」
 シャオ・フィルナート(悪魔に魅入られし者・f00507)は広場から離れた山道近くで、青薔薇の紋様が入った篠笛を取り出し、静かに吹き始めた。
 振り続ける雨の中でも不思議と遠くまで響くその音色に、やがて周囲には、猫、リス、鹿といった数体の動物達が集まってくる。
「暇だから付き合ってやるニャ」
「リスに任せて下さいリス!」
「ご用事はなんでシカ?」
 シャオが頼んだのは、大きく分けて三点。
「みんなの耳や、鼻で……助けが必要そうな人を捜して。それと、危険な野獣がいたら、知らせて欲しい……。……もう一つは、この村を襲った犯人について、誰か見覚えがないかな」
「リス! リスが目撃したリス! おっかねぇサルのばけもんどもだったリス! ものすごい長い爪とでかい口とやべぇ跳躍力の持ち主で、40匹くらい……とにかぁくいっぱいいたリス!」
「なら……どこに、行ったんだろう」
「分からないリスが、川の上流に立ち去るのを見たリス。あの先には人間の作ったなんかがあったような気がしたリス」
 リスの証言通りなら、村を襲撃したのは恐らく猿の魔獣の群れだったという事になる。ならば村がこんな有様になるというのも特段おかしな話ではない。
(「命を奪うだけでなく、徹底的に建物まで破壊している……そして、そいつらは川の方までぞろぞろ向かった……そこに何かがある? ……何だか嫌な予感がする」)
 ともかく、他二つの仕事に関しては動物達が手分けしてとりかかってくれるようだ。
 その間に、シャオは村の広場まで戻り、天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)とともに雨風が凌げそうな空き家がないか探し始めた。
「天星さん……そっちはどう?」
「こことか良さそうじゃないでしょうか。多少雨漏りして傷んでいますが、壁や天井が崩れる心配もなさそうですし」
 優しく微笑みながら零も頷く。屋内の片付けなどは零に任せ、シャオは再び広場へ出て村人達に声をかけた。
「雨を遮れそうな空き家を見つけたから……怪我をしている人や、身体が冷えてる人は、こっちに来て……」
 そろそろと集まって来る住民には少しでも暖まれるよう、空き家で見つけた毛布やコートを渡す。それでもかなり冷え切ってしまっている人には、いち早く戻って来たシカに寄り添ってもらい、隅の方で睡眠を取ってもらった。
「とりあえず、急場で用意しただけだから……ちゃんとしたテント、出来るまで少しだけ……我慢して」
 後は零が治療してくれる。シャオは人々へそう頷きかけてから、相変わらず凍えるような寒さの外へ出た。
「こっちに倒れてる人を発見したニャ」
「い、今んところおっかねぇ肉食獣の気配はないリス……リスが生きて帰って来れた事がその証拠リス」
 動物達の協力を得ながら、シャオは一つ一つ家屋の残骸を見て回っていく。
 できれば全員助けたいところだが、瓦礫自体が崩れやすく、一朝一夕にはいかない。
 どうしても優先順位をつけなければ、要救助者を見つけられても取り返しの付かない判断を下してしまう事だってあるのだ。
 手の空いている村人や猟兵の助けを借りつつ、また一人、ひどく全身から出血している救助者を助け出す。
「うぅ……いてぇよぉ……」
「大丈夫……必ず、助けるから……」
 シャオは『黄金のライオン』を召喚し、そのふかふかした背の上に怪我人を乗せる。
 なるべく患者を揺らさないようライオンに言い含めてから、小さく頭を撫でて送り出すのだった。

 一方で零は、次から次へと怪我人が運び込まれてくる臨時の拠点で、さながら戦場のような慌ただしさを過ごしていた。
「その人はこっちに寝かせて、毛布をかけてあげて下さい。意識がなくならないように、できるだけ声をかけて……」
「ぐぅ……ちくしょう、ここは地獄だ……俺達、これからどうなるんだよ……」
「大丈夫です。きっと助かります。僕も最後まで力を尽くしますから」
 そう、見る者を安心させるような笑顔で励ます零は、明らかに足りなくなっている包帯の代わりにフードや服を破って人々の怪我の手当てに使い、毛布一枚だけ羽織ったほとんど半裸の状態だ。
 だが今はその身を削るような覚悟と行動が、逆に人々の信頼を集め、これ以上の諍いや混乱を抑えるファクターとなってくれている。
「まったく、こんなに働かされるとは思ってもなかったにゃ。ほら、そこの貴様、さっさと生きたいと願うにゃ。アッシュに無駄撃ちさせるにゃよ」
「うひ、ね、猫が喋ってる……死にたくねぇよぉ!」
 そんな感じで赤い目の黒猫『アッシュ』もせわしなく屋内を駆け回り、瀕死の重傷者の息を吹き返させたり、意識があり話せる相手なら生を願わせて回復の魔弾で癒していく。
 その時、半ば崩れた玄関からシャオの『黄金のライオン』が顔を覗かせた。
 びっくりする住民達をなだめつつ、零はライオンの背に乗せられた怪我人が、今までにない危険な容態であると一目で見て取る。
 暖かい暖炉の前へと運んで行き、血まみれになっている服を脱がせると、全身を引き裂かれたような傷口があらわになった。
 このままではどんな名医がいたとしても、彼を救う事はかなわなかっただろう……。
 でも。
「仕方ないにゃ……大盤振る舞いにゃ」
 ここにはアッシュがいる。零の目配せを受けた黒猫はぴょんと飛び跳ねて男の横へ立ち、さっそく能力を使用して危篤状態から脱出させた。
 でも予断は許されない。零はこれまでに得てきた医療知識を総動員させて、男が一刻も早く目を覚ましてアッシュの本格的な治療が行えるよう、そして傷の後遺症が残らないよう、手元を真っ赤に染めながら処置を施す。
「これで一段落ですね。……おっと?」
 振り返れば、またまた黄金のライオンが新しい患者を背へ乗せて現れている。
 どうやらまだまだ、一息つける時間は遠いようだ――。

 紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)は剣先に火を灯した『剛壊刃〜龍〜』の柄を、広場の中心へ豪快に突き刺していた。
「こいつで暖を取るなり、料理の火元に使うなりしてくれ。人の剣だからって遠慮はいらねぇよ」
 そう生存者達に告げてきびすを返し、その足で山を目指して歩き出す。
「村人は人当たりのいいチビに任せるとして……山があんなら木材には困らねぇ筈だな。薪とか木材とか、色々集めて来るか」
「頑張ってね、宗田」
 送り出した栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、まずは住民達に少しでも落ち着いてもらうため、猟兵達が集めてくれた食材を調理する事にした。
「何はなくとも、水は必要かな」
 空を飛んで近くの川から水を手に入れ、剣に灯った火を使って沸かし、山菜とキノコを鍋に投入してスープを作る。
「お肉は叩いてハンバーグにしよう。雨が入らないよう注意しないと……」
 動物肉をミンチにして固めて丸めて加熱処理し、他の家から拝借して煮沸消毒した食器へよそっていく。
 そして食事の準備が整うと、澪は空へ浮かび上がり、穏やかな声で周辺にいる生存者達へ呼び掛けた。
「さぁ、こっちで暖まって。暖かいスープとおいしいハンバーグがあるよ」
「うっ、うまそうだ! 本当に食ってもいいのか……?」
「またこんな美味しいものが食べられるなんて……生きてて良かったわ」
 消えかかっている焚き火を放り出し、みるみる人々が澪の周りへ集まってくる。
 頼もしい剣の火を囲み、まともな料理を口にしてようやく人心地ついてくれたようだ。
 けれど、傷や風邪で直接食べられない人も存在する。そういった場合は澪が余った食器に料理を分けて、彼らの元へ手渡しに行った。
 もちろん、ちゃんと口にできるよう【聖なる光】での定期的な治癒も忘れない。
「おお、ここは何だか暖かいのう……わしらも一緒してよいかの?」
 と、気がつけば料理の香りを辿って来たのか、小さな赤子を抱えた老人が、ふらふらと歩いて来ていた。
「もちろんだよ、おじいさん。大丈夫? 一人で歩けそう……?」
「わしは大丈夫じゃ……じゃがこの子は身体が冷えちまってのう。ご両親も見つからぬし、どうか暖かい場所へ、先に連れていってくれんかのう」
 澪は快く頷き、赤子を受け取る。
「ありがとうのう、お嬢ちゃん」
「あ、で、でも僕、男です……」
 弱々しく泣き始める腕の中の赤子を優しくあやしながら、澪はゆっくりした飛行で広場へと戻っていく。
「生きていてくれてありがとう。その繋いだ命……絶対に後悔させないよ」

 その頃宗田は漆黒の巨大斧を肩に担ぎ、山道を登りながら脆くなっている木を見分け、手頃で頑丈そうな木に斧をぶち込んでせっせと切り倒していた。
「雨だからな、しけっちまってるのには目をつむるとして……」
 次々と轟音を山に響かせつつ、切り株だらけになった空き地で目標分をしっかり数えてから【怪力】で担ぎ上げ、まとめて村の広場へと持ち帰る。
「ふぃー……けどここからが本番だよな」
 ろくに前も見えないようなひどい大降りの中、少しでも作業時間を短くするために村人の協力を得ながら木材を組みやすく加工し、一本ずつロープできつく固定していく。
「よし、後はこいつをつなぎ合わせて、被せるぜ。風に飛ばされるとやべぇ、誰かそっち持ってくれ」
 数人がかりで簡易テントの防水布を繋ぎ合わせ、大きくしたものを地面に打ち込んで被せ留めれば……。
 あら不思議、大人数で泊まれる救護テントの完成なのだ!
「すごいぞ、雨が入って来ない……風にも強いぞ……!」
「怪我人や病人はこの中に寝かせよう。静かに、あまり身体を揺らさないように」
 安定した新しい居住区に、少しずつ移動していく住民達。
 ひとまず彼らも、これでちゃんと身体を休める事ができるようになるだろう。
「お、うまそうな料理ができてるな。チビのか? 後でありがたくいただかせてもらうとして……」
 宗田は剣を回収し、ちょうど良さそうな木材に火をつけて、石を積んだかまどの中に新しい焚き火を作る。
「ま、テントをそのまま使うのもいいが、生き残り同士顔突き合わせて飯食った方が安心すんだろ」
 その時、こちらも一通りの仕事を終えた澪と行き会った。
「お疲れ様、宗田」
「おう。俺はこれから村を回って、生きてる奴を探すつもりだ。お前はどうする?」
「そうだね、なら僕も一緒に行くよ。空から人を探せると思うし、力仕事は宗田に任せるから」
 決まりだな、と宗田は頷き、要救助者の情報が届いた場所へと歩き出す。
 休むのは生存者達の仕事。動くのは自分達猟兵の仕事なのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『惨劇は豪雨と共に』

POW   :    身体を用いて惨劇に対応する

SPD   :    技術を用いて惨劇に対応する

WIZ   :    惨劇を予防する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「これで全員か……? 生きているのは……たったこれだけなのか……」
 猟兵達が広場に作成したテントを中心に、二十数名程度の生存者達が集まっている。
 大怪我を負っていた者、重病だった者、皆それぞれ疲れ切った顔をしているが、それでも助けられる者は助けられ、命に関わる状況は一旦脱したと言えるだろう。
「飯も食えたし、身体も休められた……けど、俺達これからどうすれば」
 途方に暮れたように一人が呟いた――直後。
「た、大変だー! か、川が、川が氾濫してる!」
 村の周辺を見回っていた若者の一人が、慌てふためきながら広場へと駆け戻って来たのである。
「なんだって……!? 一体どういう事だ!」
「村を襲った魔獣どもが、川にある堤防をぶっ壊しやがったんだ! 連日のどしゃぶりで川は増水してるから、すぐに村にも押し寄せてくるぞ!」
 雨の勢力もいよいよ最盛期、激しい雷雲が空を覆い、時刻も夜を指し示そうとしている。
 こんな状況で濁流が村を襲おうものなら、せっかく助かった命も皆、あえなく押し流されてしまうだろう――。
「や、山じゃ……山の頂上まで逃げるんじゃ! 生き延びるには、そこしかないぞ!」
「動けない奴は誰かに手を貸してもらえ! 浸水が始まる前に、できるだけ上へ登るんだ!」
 大急ぎで準備を始め、行列となって険しい頂を目指す生存者達。
 ……だが、彼らはまだ知らない。
 川を決壊させたオブリビオン達は、広場から立ち上る食事の煙に気づき、生き残りを皆殺しにするため、群れをなして猛追して来ている事を――。

 【POW】人々を運んだり、護衛について魔獣を撃退する。
 【SPD】道中に罠を仕掛けて魔獣の接近を食い止めたり、先行して山を偵察し、安全なルートを模索する。
 【WIZ】魔法や道具を駆使して避難の手助けをする。
 魔獣と浸水、豪雨に追い立てられながらの夜の強行軍は、危険な登山になるはずだ。
 血に飢えた魔獣達は山の木々に身を潜めつつ、無力な村人を優先して奇襲をかけ、最後の1匹になっても襲って来るだろう。
 また村人達も一命は取り留めているものの、皆疲労や怪我で弱り、その足は遅い。
 生き延びようと必死にあがく彼らを守りきれるかどうかは、猟兵達の手にかかっている……!
アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

独りでできる事は少ないです。
それが未熟な私なら尚更です。
それでも猟兵の義務として、私自身の意志として、ここで退くわけにはいきません。
迫りくる水の脅威に『全力魔法』の『属性攻撃』で『範囲攻撃』していきます。
私の氷魔法で、少しでも、ほんのちょっとでもいい、凍結によって水の勢いを弱める事ができれば、他の猟兵や避難民の時間稼ぎができるかもしれません。
私が『かばう』事で、他の猟兵の一助になれれば。
他の猟兵や避難民のこれからを『祈り』つつ、氷華に魔力を込めて自然の猛威に挑みます。

髪に泥が付こうが、水に足を取られようが、どうでもいい事です。
今ここでまた誰かに死なれる事の方が私にとって辛い事だから



 独りでできる事は少ない。
 犠牲になった人達の死を悼む時間も許されず、せっかくみんなで作り上げたキャンプ地も何もかも水に呑まれ、そして今また、九死に一生を得たはずの生存者達が、この上ない危機に陥っている。
 たった独りでできる事などたかが知れている。それが未熟な私なら尚更――とアリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)は、急勾配になった山道の入り口で、つぶてのような雨に打たれながら氷華を手に佇んでいた。
「……それでも猟兵の義務として、私自身の意志として、ここで退くわけにはいきません……!」
 じわりじわり、と真綿で首を絞めるかのように、無慈悲にも水かさを増していく地面。
 泥で濁り、確実に迫り来る脅威そのものの水面へ向けて、アリウムは持ちうる全ての力を集中させた氷魔法を発動させる!
 ホワイトファングで、ホワイトブレスで、降り注ぐ雨ごと手当たり次第に水を凍結させて、少しでも……ほんのちょっとでも、その勢いを弱めようと試みる。
 自然の前に人は無力だ。猟兵だってそうなのかも知れない。
 けれど、アリウムがここで踏ん張る事で、避難民の時間稼ぎとなれば。
 同じように困難へ立ち向かってくれている、仲間の猟兵達の一助となれれば。
 ――この恐ろしい水の猛威から、皆を『かばう』事ができれば!
「どうか無事に、一人も欠ける事なく、頂上へ……」
 周囲を結晶めいた氷の結界で固めるようにしながら、アリウムは一心に『祈り』の言葉を紡ぎつつ、その身に残るありったけの魔力を氷華から解放させていく。
 頭から靴の中まで泥まみれのずぶ濡れになろうが、指先がかじかんで柄から離れなくなろうが、些細な事だ。
 足下まで水に浸かろうと、この際腕が動いて魔法さえ放てればそれでいい。
(「――だって今ここで、また誰かに死なれる事の方が、私にとって何よりも辛い事だから……!」)

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノワール・コルネイユ
怪我人に休む間も与えんか…これは不味いな

【POW】
村人や猟兵と分担して怪我人を運ぶぞ
体格の良い者、怪我が軽い者は手を貸してやれ
女子供に老人は適度に荷物を持て
最悪の場合は荷物を捨てていい

私は状況次第では障害の排除に出る
連れる怪我人は他の者に途中で任せられる程度の者にしておく

この状況では仲間の情報と【第六感】ぐらいが頼りだ
敵性の危険が迫ってきた場合は応戦するぞ
応戦時は魔を祓う銀の剣を攻撃力重視で発動
一撃一撃で手早く数を減らそう
でなければ、いずれ押し切られる

相手は建造物を狙って壊す程度には知性のある奴らだ
応戦中も他方向を警戒し、必要あれば仲間に迎撃を促そう

諦めるんじゃない
一つでも前へ、歩を進めるんだ



「怪我人に休む間も与えんか……これは不味いな」
 端的に言って、状況は最悪。避難民達の命は風前の灯火だ。
 ノワール・コルネイユ(Le Chasseur・f11323)はそれが分かっているからこそ、迷う時間も惜しいとばかり迅速に行動へ移る。
「体格の良い者、怪我が軽い者は手を貸してやれ! 女子供に老人は適度に荷物を持て……最悪の場合は荷物を捨てていい、生き延びる事だけ考えろ!」
 この雷雨にも負けない声量を張り、人々に必要な指示を飛ばす。ノワール自身も遅れている者達の元まで戻り、肩を貸して少しでも先へ進んでいく。
 しかし、彼らを取り囲む災禍はあまりにも苛烈で、酷薄だった。
 木々の狭間、茂みの奥、坂の上――至るところから、赤い眼を転がしながら魔獣の姿が見え隠れする。
「おお、神様、お助け下さい……」
 がたがたと震えながら手を胸の前で組み、祈りの言葉を呟き続ける女の頭上に、木の枝葉よりもなお濃い、不吉な黒い影が飛びかかる――。
「させるか!」
 とっさに踏み出したノワールが魔を祓う銀の剣を抜き放ち、影めがけて鋭い斬り上げを浴びせる。
 少し浅かったか。手足が異様に細長い猿の魔獣は首筋から激しく出血しつつも、不快な金切り声を張り上げながら飛び退き、闇の中へ身を隠してしまう。
 途端、行列のあちこちで悲鳴が響き始めた。
 そこら中から現れた魔獣の群れが、人々に切迫しているのだ……!
「くっ……!」
 ノワールは連れていた怪我人を近くの者へ託し、ぬかるみを跳ね上げてひた走る。
 恐慌に陥っている行列へ飛び込むと、目に留まるや否や魔獣どもの胴体を斬り払い、頭から真っ二つに斬り下げ、肩ごと腕を斬り飛ばす。
 落ち着いて周辺をいちいち探知している暇もない。修羅場をくぐり抜けて来た経験、周囲から聞こえる人々の悲鳴、そして研ぎ澄まされて来た【第六感】を頼りに敵の位置を割り出し、暗闇の中を駆け抜けながら当たるを幸い斬って捨てる。
「奴ら、全力で殺しに来ているな……!」
 それもノワールのような強い者からではなく、女子供や老人といった無力な者から、まるで狩りのように――いや、これは狩りなのだろう。
 相手は建造物を狙って壊す程度には知性のある奴らだ。数に飽かせて潜伏と奇襲を繰り返し、持ち前の俊敏性と攻撃力を存分に活かす。なんともやりにくい。
 とにかく、二対の銀の剣を攻撃力重視で操り、一撃一撃で手早く数を減らす他はない。
 でなければ、いずれ押し切られる――そしてノワールが倒れれば、その時点で全滅は確定なのだ。
「うあぁぁぁぁ! 痛い、痛いいぃぃぃぃ……!」
「もう駄目だ、みんな死ぬんだ……ッ!」
「諦めるんじゃない!」
 目の前の魔獣を力任せに斬り伏せながら、全身に付着する返り血を拭う事なくノワールは叫ぶ。
「止まったら死ぬぞ! 振り返るな――一つでも前へ、歩を進めるんだ!」
 前へ、前へ。出血を強いられながら、行列は進む。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャオ・フィルナート
零(f02413)と連携
呼び方→天星さん

引き続き、【動物会話】で体の大きな動物には協力依頼
より重症な人や足に不都合のある老人などは
背中に乗せて歩いてもらう

危険が無いと判断したうえで…場合によっては
動物達に先に行かせる事も検討

零の事も信頼はしてるけど
取り零しや違う方面から攻めて来る敵がいないとも限らない
【見切り】で常に警戒し
近づいて来る敵や足を掬おうとする水があれば
★氷麗ノ剣による氷の【属性攻撃】で凍りつかせ
時には素早い立ち回りで敵の急所を狙い【暗殺】

万一囲まれたら
ちょっとごめんね…
★雹燕を形成し
動物の背を借り飛んでから身体ごと回転させつつ
氷の鎌鼬の【一斉発射】による【範囲攻撃】で一掃


天星・零
シャオと連携

敵を引き付ける為避難者をシャオさんに頼む

『生きて、ただ生きて下さい。諦めなければ道はあります』

笑顔は崩さず一言

前章で発動させた【生命を愛した赤い目の黒猫の魔法】付き添わせ先に行かせ自分は敵を迎え撃つ

(本来なら僕はオブリビオンの方が好きなので)
『生死はどうでもいいのですがね‥ただ理不尽に命を不幸にする行為はどうも許せなくて。だから何が言いたいかというと‥死ね、ただ死ね。必死に生きる者の邪魔はさせない』

【首狩り女王の死刑執行】を使いオブリビオンの数をできるだけ減らせるように

自身も【第六感・情報収集】で状況把握、万一に備えつつØやグレイヴ・ロウで戦闘

全ての場面において使える技能は使う


紫崎・宗田
澪(f03165)と連携

チッ、この馬鹿
心臓に負担かけんなってあれ程…

チビの癒しの力を感じたら軽く舌打ちし
少しでもチビのUC使用頻度を減らさせる為
護りに徹する

自力歩行が困難かつ体の重い村人は
【怪力】により片手で担ぎ上げ
もう片手は空けておく

クオン、反対側の見張り頼むぜ
黒い子龍をチビの頭に座らせ後ろ方向の監視をさせ
気配が近づいて来たら★炎龍〜貫〜に変化させ
空いた片手で構える
村人共に近付けさせないよう【薙ぎ払い、衝撃波】で吹き飛ばし
場合によっては村人を一度降ろし
雨でも消えない程の高火力による【属性攻撃】
一体を燃やした後他の敵の方に弾き飛ばし巻き込んでの【範囲攻撃】狙い

うちのチビの手間増やすんじゃねぇよ


栗花落・澪
宗田(f03527)と連携

これは…ちょっとヤバそうだね
敵の対処してくれる味方が多いのなら
赤ちゃんは大事に抱えながら
人々を癒す事に集中するよ

大丈夫…必ず守るから
僕達を信じて
絶対に笑顔は崩さず

紫崎君には後で怒られるかもしれないけど
全部終わってからいくらでも休めばいいんだから

歌は共感が必要だから
この状況じゃ皆混乱してて難しいだろうしね
倒れてでも守る覚悟で
UCで村人と周囲の猟兵の全体回復
継続は無理でも定期的に

なんで体張れるのかって?
信じてるからだよ
紫崎君を、皆を
幸せな未来を
それに僕は…皆の笑顔が見たいから
その為ならなんだって出来るよ

笑顔は力になるから
そして
笑顔を失わない人の所に
幸せは必ず来るから
信じて



 シャオ・フィルナート(悪魔に魅入られし者・f00507)は蒼笛を吹き、取り急ぎ動物達を集めていた。
「……山の上まで、この人達を運びたい……力を、貸して」
「ウマー」
「人を背中に乗せるのは初めてシカ」
「食っちゃ駄目シシ?」
「うん……後でごはん、あげるから……」
 今回協力してくれるのは鹿、馬、猪など、大型から中型程度の人間には比較的無害な動物達である。
 彼らは傷の重い者や身体の弱い老人などを背中に乗せ、嵐のような山中を進み始めた。
「どうしよう……彼らを先行させれば、それだけ守る人数が減って、楽にはなる……」
 とはいえそれは、この先に魔獣の待ち伏せがないと仮定して、である。
 果たしてどちらが有効なのか思案したシャオは、やはり危険だと思い直す。
 偵察を行っていればまだしも、どこに敵が潜んでいるか分からない現状、自分が護衛についていた方がより確実だ。
「天星さんの事も、信頼はしてるけど……」
「まあ零ならうまくやるにゃよ」
 こちらも付き添いで来てくれた黒猫アッシュが、適当な馬の尻に乗っかって怪我人を回復させながらそう漏らす。

 その天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)は、追って来る敵を迎え撃つためにしんがりへ向かい、襲撃に備えていた。
「生きて、ただ生きて下さい。諦めなければ道はあります」
 変わらずの笑顔でそう声をかけ、鼓舞しながら避難民達を送り出し、そして今は暗闇にただ一人だ。
「……生死はどうでもいいのですがね……ただ理不尽に命を不幸にする行為はどうも許せなくて」
 ぽつりと呟く零。彼が好きなのは、本来はオブリビオンの方である。
「……ふむ。ならば……どうする?」
 重々しい声とともに、その背後からゆっくりと現れたのは、骨の山羊の姿をした、鎌を握る巨大な人型。
 零の呼び出した首狩り女王――その名もディミオスだ。
「うん。だから何が言いたいかというと……」
 にこり、と零はディミオスに一瞥を投げて、それからあざ笑うような声を上げて接近して来る、魔獣達へと視線を戻し。
「――死ね、ただ死ね。必死に生きる者の邪魔はさせない」
 その言葉を契機としたみたいに、叫声を迸らせて魔獣の群れが飛びかかってくる!
「ディミオス」
「良かろう。さあ……誰から首を喪いたい?」
 前へ進み出たディミオスが大鎌を横薙ぎに一閃させると、その風圧だけで魔獣達は怯み。
 間合いにとどまっていた三匹程の首から上が、噴水の如く鮮血をまき散らして斬れ飛んだ。
「闇に潜むか……そうは、させぬ」
 乏しい知能でも正面対決はまずいと考えたのか、背を向けて逃げだそうとする魔獣にはすかさずもう片手で鎖を投げ込み、その圧倒的膂力で引き寄せながら腕へ抱くようにして、鎌で頸椎を切断する。
「……脆い、鈍い……貴様らが狩れるのは、所詮無抵抗な相手のみ……か?」
 ディミオスがつまらなそうに言いながら鎌を振るう度、魔獣の断末魔と血しぶきが夜の闇を染め上げ、頭の欠けた屍が坂道に転がる。
 しかし、ディミオスと違って特に動きを見せない零を、戦闘の意思がないものと見て取ったのか、魔獣どもは左右に散開しながら急襲の隙を窺う。
「キャシャアアアアアアッ!」
 切り裂くような喚声を張り上げ、零めがけて四方から突っ込んでくる魔獣達。
「愚かな……」
 ディミオスが振り返りもせず呟いた直後、零にもっとも近づいていた魔獣が、唐突に真下の地面から突き出して来た何かに、股下から脳天まで串刺しにされた!
 それは十字架を模した骨の武装――グレイヴ・ロウである。
「そう簡単には通さない」
 零が告げた刹那、グレイヴ・ロウはそのまま地面をえぐりながら周囲を旋回し、その軌道上にいた魔獣をことごとく砕き裂いて、赤い肉塊へと変えてのけたのだった。
 暴れ回るディミオスともども、凄まじい殺戮の光景に、魔獣達はさらに腰が引けていく。
 だが、こんなものでは終わらない。まだ戦いは始まったばかりだ――。

「うっとうしい奴らだにゃ! 猫の手も借りたいところにゃよ!」
 一方シャオとアッシュも、やって来た魔獣の対応に追われていた。
 前後を二人で警戒していた所に、顔を出してきた敵の大群。零が取りこぼしたわけではなく、ただ単に違うルートから回り込まれたせいで、出くわす羽目となったのだった。
 シャオの後背では負傷者や病人を乗せた動物達が頑張って歩いている。絶対に、ここを突破されるわけにはいかない。
「……やるしか、ない……」
 シャオは氷麗ノ剣を正眼に構え、そこに氷の力を帯びさせる。
 三次元的な動きで迫り来る魔獣へと素早く突き出し、手や足を凍り付かせる事で機動力を奪ってから、続けざまに斬撃を繰り出して斬り倒す。
「そこにゃ、チャンスにゃ、後ろにゃぞ!」
「……アッシュは、みんなのところに戻ってて、いいよ……」
 じりじりと後退しつつ、業を煮やして突撃して来た相手には逆に懐へ深々と飛び込み、急所へ鋭い一突きをお見舞いする。
 防御とカウンターに徹したシャオの柔軟な立ち回りで、動きを阻害されたり、倒されていく魔獣。
 少しずつ増えていく仲間の骸に焦りが広がったか、敵は散発的な攻撃から、四方から取り囲んでの連携攻撃に切り替えた!
 雨粒と強風を轟と弾き、魔獣達の影が凄まじいスピードでシャオの視界を埋め尽くす。
「ちょっとごめんね……」
 けれどそれも想定内と、シャオは空気中の水分から雹燕を形成。
 脇で一緒に戦ってくれていた猪に氷でできた燕の翼を生やし、軽々とその背へ乗り込むと、一息に跳躍しながら中空へ舞う。
「まとめて倒す……」
 敵の位置をしっかりと確認してから、猪ごとドリルみたいに回転しつつ、敵中へ突っ込む!
 そうして通り過ぎざまに一斉発射された氷の鎌鼬が、敵の反応と反射速度を凌駕する勢いで叩き込まれて。
 シャオが水溜まりの上に着地した後方では、全身氷づけになった魔獣の群れが一気に倒れ伏し、砕け散っていくのだった。

「これは……ちょっとヤバそうだね」
 怪我人や女子供が多い行列の先頭。栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は赤子を大事に抱え直しながら、後ろの方で行われている激しい戦闘の模様を見据えていた。
「みんなが戦ってくれてるけど……急がないと、追いつかれる」
 同様に、この強行軍で体力と神経をすり減らし続ける人々は、明らかに限界を迎えている。
 ここはやはり、できる限り彼らの怪我を治癒し、少しでも進行速度を上げてもらうほかはない。
 そのためにも――と澪は聖なる光を纏う。
 だがここまで【生まれながらの光】を使い続けて来た澪にも、疲労は蓄積し続けていた。
「大丈夫……必ず守るから、僕達を信じて」
 それでもなお精一杯の笑顔を浮かべて、生存者達の傷を治療し、励ましを続ける。
(「紫崎君には後で怒られるかもしれないけど……全部終わってからいくらでも休めばいいんだから」)
 せめて歌えればもっと広範囲に癒しの力を行き届かせられるのだが、混乱と恐慌が入り乱れるこの状況では共感を得るまでが厳しい。
 ならば倒れてでも守る覚悟で、継続は無理でも定期的に、この光を決して切らさぬように。
 そう――みんなが戦い、歩き続ける限りは。
「むう、お嬢ちゃ……少年よ、どうしてそこまでわしらのために……」
「信じてるからだよ……紫崎君を、皆を。……いつかきっと、幸せな未来を」
 額から脂汗を流しながら、それでも澪は穏やかに答える。
「それに僕は……皆の笑顔が見たいから。その為ならなんだって出来るよ……笑顔は力になるから」
 そして、笑顔を失わない人の所に、幸せは必ず来る――。
「だから、信じて。僕を……笑顔の持つ、奇跡みたいな力を」

「チッ、この馬鹿……心臓に負担かけんなってあれ程……」
 山登りをしながらも変わらぬペースでユーベルコードを使い続ける澪に、紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)は思わず振り返ったが、その決意を秘めた表情を見て、ため息混じりにやめた。
 代わりに軽く舌打ちを漏らしながら、澪の負担をわずかでも減らすため、黙々と人々の避難に手を貸していく。
「おい、立てるか? 頂上までもう少しだ、あと一踏ん張りしてくれや」
 ごほごほっ、と咳き込む村人を怪力で担ぎ上げ、先頭の列へ。
 そしてまた戻り、担いで先頭へ。
 何度も往復し、その度に顔色を悪くしていく澪を目にして、宗田にも焦りが募る。
「クオン、反対側の見張り頼むぜ」
 見かねて黒い子龍をぽんと澪の頭に乗せて、返事も聞かずに行列を駆け戻る。
「おお、神よ……神よ神よ神よ神よ」
「口じゃなくて足を動かしてくれって。……ったく」
 現実逃避めいて呟き続ける女を無造作に抱え上げると、宗田はまた先頭へ取って返し。
「……仕事だぜ、クオン」
 ひょいと澪から引きはがしたクオンを、巨大な漆黒の槍『炎龍〜貫〜』へと変化させつつ、女を抱えたまま半身をひねって背後へ突き出す!
 闇を這うようにして宗田達に肉薄していた魔獣は、その一撃だけで腹から背中まで貫かれた。
 宗田がついでのように槍を横薙ぎにすると、隣の樹上に身を潜めていた別の魔獣ごと薙ぎ払われ、彼方へと吹き飛ばす。
「とことんかかって来やがれ!」
 次から次へと切迫して来る魔獣を槍で打ち払い、踏み込みながら突き刺しては投げ捨て、行列が逃げるだけの時間を稼ぐ。
 一歩も退かない戦いぶりに怖じ気づいたのか、徐々に後退し始める魔獣の群れ。
「神よ神よ神よ神よ……」
「大丈夫かこいつ……ちょっと降りてろ」
 互いの距離が開いたインターバルに、宗田は抱えていた女を一旦下ろす。
「ただの炎じゃねぇ……雨でも消えねぇとっておきの大火力だ!」
 迷わず自身の腕を切り裂き、噴出した地獄の炎を槍に宿すと、宗田は魔獣の群れへ大きく踏み出す!
 大上段から叩きつけるように槍の穂先を敵の頭部へぶち込み、胸部まで斬り下げながらその場で半回転。
 燃え上がる魔獣は円を描いて振り回されてから盛大に弾け飛び、周囲にいた他の敵をピンみたいに巻き込んで赤々と大炎上。骨も残らず焼き尽くされる。
「……うちのチビの手間増やすんじゃねぇよ」
 低い声音で呟いた宗田は身を翻し、女を担ぎ上げて行列へ戻って行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『救済の代行者・プレアグレイス』

POW   :    黒死天使
【漆黒の翼】に覚醒して【黒死天使】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    鏡像の魔剣・反射
対象のユーベルコードを防御すると、それを【魔剣の刃に映しとり】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    鏡像の魔剣・投影
【魔剣の刃に姿が映った対象の偽物】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリーヴァルディ・カーライルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達の獅子奮迅の働きにより、全ての魔獣は倒された。
 その恐ろしい爪にさらされて新たな怪我をした者もいたが、奇跡的な事に死傷者はゼロ。
 助け合い、支え合いながら、長くも短い時を経て、避難民達は辿り着いたのである。
「水はもう、ここまで上がって来ないみたいだな……」
「魔獣達もみんな死んだのか……み、見ろよ、空が……!」
 広場のように開けた平らな頂上には、うっすらと木漏れ日のような朝の光が差し込み始めている。
 雨雲が過ぎ去った後の優しい光は、彼らを安らがせるように暖かく照らし出し。
 ――そしてつい数日前まで暮らしていた、変わり果てた村の様相を、残酷にも見せつけるのだった。
 冠水し、濁流に呑み込まれたかつての故郷。そこかしこに崩れた家屋の名残が見えて、猟兵達の作ったテントも千々に破れて流されてしまっている。
「あぁ……! 神は、まだ我らを試されるというか……っ!」
「いっそ、死にたい……」
 ここまで必死に生き延びた。だから全員がそう思っているわけではないのだろう。
 それでも、つい誰かがそう弱音を口にした瞬間。
 ――雲の上から一条の光の柱が漏れて、そこから少女の姿をした、何者かが姿を現したのである。
「……苦しかったでしょう。辛かったでしょう。でももう苦しむ必要はありません」
 その名は『救済の代行者・プレアグレイス』。
 全てを失った人々を救済するために降臨した、異端の神。
「今こそ、あなた達を救いましょう。さあ、その命を私に差し出すのです」
 しかし、プレアグレイスののたまう救済とは、彼女の持つ魔剣で得体の知れない偽物を創造し、その連中に新たな生活を行わせる事を指す。
 そして本物には、速やかで安息な死を与える事に他ならない。
「神よ、神よ神よ神よ……私は何もかも捧げます! だから早く、早く救ってえぇぇ!」
 けれど多くの人々には、その一方的で理不尽な死を拒み、抗う気力すらもう残されていない。
 プレアグレイスもまずは、邪魔な猟兵達から排除し、その後にじっくりと救済にとりかかるつもりだろう。
 絶海の孤島と化した山の頂で今、猟兵達とオブリビオンの、最後の戦いが始まろうとしている。
 夜明けは、すぐそこだ――。
紫崎・宗田
澪(f03165)と連携

澪がまた無理しないよう見張りも兼ねて
子龍のクオンを村人達の側に
今回お前は留守番だ
あいつを手伝ってやってくれ…頼んだぜ

俺は★破殲を手に前線へ
テメェのドレス…よく燃えそうじゃねぇか

ヤバそうな技は極力予備動作を【見切り】
他の仲間に共有

万一俺かチビの技を真似られても
花なら燃やし切ってやるまで
炎なら【火炎耐性、庇う】で守りつつ
その炎も巻き込み威力を増してのUCによるカウンター
炎使いに炎技が効くと思うなよ
傷を負わされてもその分火力増加

炎の【属性攻撃】で敵の視界を眩ましつつ
【薙ぎ払い】でまずは翼から叩っ斬ってやる
投影技は面倒だ…【範囲攻撃】も使って
異端の神とやらと纏めての撃破を狙うぜ


栗花落・澪
宗田(f03527)と連携

ちょっと…体力、使い過ぎたかな
村人の側で仲間の援護に回ります

早まりそうな村人は【手を繋ぎ】引き止め
死んじゃダメだ
お願い…側にいて

希望ならここにあるじゃない
赤子を優しく撫で

見せてやりなよ
いつか、何も知らないこの子に
復興した村の姿を
皆の生き様を
この希望を未来へ繋ぐこと
それはあんた達大人の義務だよ

【催眠】効果付与の【歌唱】で隙作り
氷の【全力魔法】で翼を狙い機動力低下狙い
援護、及び味方が取り零した攻撃の相殺法としてUCや
氷魔法を使用
クオンにも周囲を見張ってもらい
死角を作らないよう注意

可能であれば
UCを魔剣にぶつけた直後に氷魔法で追撃
張り付いた花弁で敵の投影技封印狙い


ノワール・コルネイユ
戯言に耳を貸すな…等と言っている場合ではなさそうだな
多分、こいつを片付ける方が話が早い

敵の行動を観察し【見切り】で攻撃に目を馴らしておく
相手の諸動作から攻撃を予測し深手を負わない様に立ち回ろう
分身体からの攻撃は【第六感】を頼りに凌ぎ、本体の相手に専念する

ユーベルコードを攻撃回数重視で発動
【2回攻撃】を駆使して、斬って斬って斬りまくる
とにかく手数で圧して、相手の自由を奪いこちらに気を惹こう
周囲が殴り付ける隙を作れれば充分だ

貴様がやろうとしていることは欺瞞だ
行き着く先は、救済の名を借りた虐殺に過ぎない

ヒトが皆、悲劇と向き合えるほど強い訳では無い
だが…だからこそ、私達が貴様らが生み出す痛みに抗うのさ


アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

人は弱い。
周りの環境に左右され迷い誤り、堕ちていく事もあるでしょう。
しかし、正しい絶望の最後には光を見つけ、再び歩き出すと信じています。
人の強さを、私は信じています。

敵の周りに水があるのは僥倖です。
もし敵が体の一部分を浸すことがあれば、そこを私の『属性攻撃』で凍らせて阻害することができるかもしれませんから。
それ以外では中衛に徹し、遠近攻撃を織り交ぜて戦いを進めていきたいですね。
ホワイトブレス、『槍投げ』の遠攻撃。
ホワイトパス、『激痛耐性』を併用しての近攻撃。
騎士と自称するからには、もう村人から犠牲者は出すわけにはいきません。
偽りの希望を拒否し、再生への一歩とさせていただきます。


天星・零
シャオさんと連携

『貴方達が生きているのは貴方達の希望が繋いだ結果です。だから、神に言う言葉は救いを求める言葉じゃない』


『こういう時は‥お前が救わなくても俺達は生きていけるって言うべきだな!』


露わになっている左胸の刻印に手を当てながら救う【覚悟】を決め【オルタナティブ・ダブル】で夕夜とも連携

戦闘は前章の戦法を基に、万が一不測の事態がないよう【第六感】、地形も【情報収集】で把握し利用しつつ戦う
視認してる情報は仲間に伝える

夕夜も、ØやPunishment Blasterを用いて戦う。戦況が悪い仲間がいれば後者で砲撃支援もする

【追跡】で敵本体は見失わないように

『貴方がいるのは天じゃない』『地の底だ』


シャオ・フィルナート
零(f02413)と連携
呼び方→天星さん

極力、いつでも村人を庇える距離を保ち
周囲のぬかるみは積極的に利用していく方針で
攻撃サポートに徹する

…俺達が、貴方達を救えたのは…
貴方達自身が、生きようとしたからだ
地獄の中でも、諦めず、藻搔いたからだ
それは、貴方達自身の意思…
俺達はただ…背中を、押しただけだよ

【動物会話】で、一緒に来た動物達に
村人の側に居てもらい
★氷麗ノ剣の【属性攻撃】で遠距離から
氷柱や水の刃で狙う

避けられても構わない
これは誘導であり…仕込みだ
敵の体と周囲地面を濡らすよう攻撃ついでに水を撒き
敵が地面に近付いたら即UC
濡れている箇所を地面ごと急速冷却し
伸びる霜で体を固定し動き封じ


エウロペ・マリウス
少々体力が尽きていたので前回は動けなかったけれど
体力も戻ったことだし、参戦させてもらうよ

行動 WIZ【全力魔法】【誘導弾】【高速詠唱】【属性攻撃】
使用ユーベルコード
【射殺す白銀の魔弾(ホワイト・フライクーゲル)】

【全力魔法】と氷の【属性攻撃】で火力を
【高速詠唱】で手数を
【誘導弾】で命中率を共に強化して攻撃するよ

救いなんてものは、不幸に抗い、自ら勝ち取るものだよ
自分から動こうともせずに境遇に悲観して、捧げるだけで得られるものなんてものは救いでもなんでもない
ただの現実逃避だよ

辛くて泣いてもいい、怒ってもいい
だけど、不器用だろうが強がりだろうと笑え
そうすれば、それらは過去になる
師匠の受け売りだけどね



「今回お前は留守番だ。あいつを手伝ってやってくれ……頼んだぜ」
 紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)が子龍のクオンを、村人達を守るように立つ栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の隣へ控えさせると、澪は少し苦笑いして。
「ちょっと……体力、使い過ぎたかな。まだいけるけど」
「あんま無茶すんな、できる事だけやりゃいい。俺ができんのは……そうだな、あの神様とやらをとっととぶちのめすくらいか」
 宗田はぶっきらぼうに破殲を持ち上げ、プレアグレイスの前へ進み出ると、ぎろっと睨み据える。
「よぉ。テメェのドレス……よく燃えそうじゃねぇか」
「私の邪魔をしないで頂けますか」
「そりゃ無理だな、こっちにも急がねぇとならねぇ事情があるんだよ!」
 気勢を上げて、宗田が突っ込む。
 堂々と真正面から肉薄し、極太の大斧を兜割りに振り下ろす――!
「野蛮ですね」
 プレアグレイスは翼をはためかせてひらりと下がりながら躱し、反撃とばかりに手にした魔剣を振りかぶってくる。
 宗田はあえてその刃に身をさらし、腕を切り裂かせながらも片手で斧を薙いで、プレアグレイスの横っ腹を打ち抜いた。
「ごぼっ!」
 端正な表情を引きつらせて吐血するプレアグレイスに、踏み込んだ宗田が得物の柄を両手で握り込み、傷口から噴出した炎を斧に纏わせて、追撃の猛打を見舞う。
「おらあぁ……ッ!」
 敵の頭部を粉砕せんとぶち込まれたその一撃は、すんでのところで掲げられた魔剣にガキンと火花を散らして抑え込まれ。
 ――魔剣の刃に映り込んだ火花が、なんとそのまま轟然と燃え上がり、宗田自身へ牙を剥いた!
「ぐ……反射か!」
 破殲と同じ恐るべき火力を帯びた魔剣が宗田を押し返し始め、のみならずちろちろと蛇のように伸びる炎が、宗田の身を蝕んでいく。
「あなたが地獄に落ちるのです」
「舐めんな……炎使いに炎技が効くと思うなよ!」
 しかし、宗田もまた一歩も退かずに炎に耐え、己の火焔をオーラのように逆巻かせると、逆に魔剣の炎を巻き込みながら奪い取ったのだ!
「これで終いだッ!」
 宗田が炎斧を振り上げ、袈裟懸けに叩きつけようとした刹那。
 その後背から、音もなく現れた偽物の宗田が、まったく同じフォルムで斧を掲げていて。
「紫崎君、後ろ!」
 とっさに澪が放った花嵐が偽宗田を吹っ飛ばし、一瞬動きを止めてしまった宗田も横っ飛びにステップする事で、プレアグレイスの反撃を皮一枚で回避する。
「チッ……いつの間にあんなもんを。――おい、奴の反射と偽物の奇襲に気をつけろ」
 宗田が事態を窺っていた仲間達に呼び掛け、自らも体勢を立て直し、戦いは仕切り直しへ。
「や、やっぱり駄目だ……強すぎる」
「俺達、ここで死ぬのか……」
「そうです。あなた達はここで永遠の眠りにつき、久遠の安らぎを得るのです」
 隙あらば生存者達の心を揺さぶりに来る、とノワール・コルネイユ(Le Chasseur・f11323)は舌打ちし、二本一対の銀の短剣を構える。
「戯言に耳を貸すな……等と言っている場合ではなさそうだな」
 多分、こいつを片付ける方が話が早い。細切れにしてしまえば、これ以上の虚言をほざく事もできなくなるだろう。
 元より、励ましよりもこういった荒事の方が向いている。それに先ほどの緒戦で、ノワールも敵の動きに目が馴れ始めた所だ。
(「奴の剣技も侮れんが、もっとも警戒すべきは反射と奇襲……深手だけは避けなければ」)
 思考を回転させながら一足飛びにダッシュし、プレアグレイスとの間合いを瞬時にゼロにする。
「はぁっ……!」
 それぞれ異なる軌道を描き、繰り出されるのは無数の斬撃。斜め斬り、払い、突き、返し、そして一閃、一閃一閃一閃……!
 二対の剣を縦横無尽に閃かせ、鋭い本命とフェイントを交えつつ、敵をバラバラに解体する勢いで叩き込んでいく。
 魔獣相手ならばそれだけで紙みたいに切れ飛んでいただろうが、敵もさるもの、落ち着いて魔剣を手繰り、流れるような必要最小限の動作でノワールの攻めを捌いてくる。
 その上これまた気配もなく作り出された己の偽物が死角を突いて襲って来るため、どうしても途中で攻撃を中断せざるを得なくなるのだ。
(「だが、構うものか……奴が私の対処に躍起になればなるほど、その分余所への注意は薄れていく。異端の神だろうと例外はない……!」)
「なぜ私の邪魔をするのですか。あなた方も、民衆の救済を望んでいるはずでしょう」
「ふざけた言い分だな。貴様がやろうとしていることはただの欺瞞だ。行き着く先は、救済の名を借りた虐殺に過ぎない……そんなものを誰が望む?」
 息つく暇もないおびただしい斬撃の嵐が飛び交う中、両者の間で交わされる会話は敵意と殺意を含みながらも、むしろ穏やかな程だ。
「私は望まれたからこそここにいるのです。彼らが私を呼んだのです」
「ヒトが皆、悲劇と向き合えるほど強い訳では無い。それこそ異端の神にすがってしまう事もあるだろう。――だが……だからこそ、私達は貴様らが生み出す痛みに抗うのさ」
 そう言ってノワールは垂直に飛び上がり、直後に背面から突っ込んで来た自分の偽物を足場代わりに蹴り上げて叩き落とすと、その勢いでもう一段上空へ跳躍し。
 驚きの目で見上げてくるプレアグレイスの顔めがけて、両の短剣を針の如く突き入れた!
 相手は魔剣の腹で防いでしまうものの、その一撃で大きくよろめき、がくりと体勢を崩す。
 そこへアリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)とシャオ・フィルナート(悪魔に魅入られし者・f00507)から幾多もの氷の弾丸、氷柱、水の刃が連発され、瞬く間にプレアグレイスの周囲を氷結させていく。
「……人は弱い。先行きの見えない展望に悲観する事もあれば、周りの環境に左右され迷い誤り、堕ちていく事もあるでしょう」
 アリウムは氷華の切っ先を異端の神へ向けながら、敵の足下にあるぬかるみへホワイトブレスを浴びせ、両の足先から凍てつかせていく。
「しかし、正しい絶望の最後には光を見つけ、再び歩き出すと信じています」
「世迷い言を。今楽にしてあげましょう」
 プレアグレイスが掲げた魔剣の刀身から、ホワイトファングと同様の氷塊が現れ、彗星のように撃ち出されてアリウムを穿つ……!
 だが、彼は倒れない。その背後に、村人達がいる事を知っているから。
 彼らが本当は生きていたいという望みを、理解しているから。
「人の強さを――私は信じています」
 何よりアリウム・ウォーグレイヴは、騎士を称しているのだから――!
「あ、あの人……」
「俺達を、かばって……怖く、ないのか……?」
 恐怖からか驚きからか、ごくりと生唾を呑み込む人々。
 そんな彼らの前に氷麗ノ剣を握って立ち、シャオもまた肩越しに静かな声をかける。
「……俺達が、貴方達を救えたのは……貴方達自身が、生きようとしたからだ」
「うぅ……で、でも、その結末がこれじゃ……」
「……地獄の中でも、諦めず、藻搔いたからだ。……それは、貴方達自身の意思……。俺達はただ……背中を、押しただけだよ。今までも……これからも」
 村人達の側には、共に道のりを歩んだ動物達も寄り添っている。
「ウマー」
「早く帰りたいシカ」
「おなかすいたシシ……」
「うん……ごめん、後で何か、ごちそうするから……」
 いつもと変わらぬ動物達のぬくもりが、息づかいが、人々に諦めという安息を選ばせない。
「この程度の拘束で……私を汚れた地上へ堕とせるとでも?」
 だがプレアグレイスは魔剣で足下の氷をたやすく削り砕き、シャオを討ち取らんとその足を踏み出してくる。
「……俺達の狙いは、ただ凍らせる事じゃない」
「え……」
「気づかなかった……? 自分の身体が、濡れている事に」
 それが一体、とプレアグレイスは呟き――目を見開いて硬直した。
「……もう足の踏み場もないくらいの、大きな水溜まりの上に立っている事に……」
 ――absolute zero。
 発生した絶対零度が、プレアグレイスの足下から凄まじいスピードで冷却し、先ほどとは比べものにならない程の霜が地面から伸びて、下半身を覆い固定していく。
「……最初の氷は、フェイク」
「本命は、こちらです……!」
 その隙に短槍を投げつけ、自らの偽物を貫いて撃破したアリウムが、続けざまにホワイトブレスをプレアグレイスへ直撃させる。
「あなたの掲げる偽りの希望を拒否し、再生への一歩とさせていただきます」
 かろうじて無事だった上半身までも氷の膜で覆いせしめ、破滅への道を示していたプレアグレイスこそを冷たく封じてのけた。
「く……ぐ! 神に逆らうとは、なんと愚かな者達……ならば裁きを執行します……!」
 その瞬間、かすかな日差しを受けて輝いていたプレアグレイスの純白の翼が、まるで夜へと時間を戻すかのような漆黒へと変じ、【黒死天使】に覚醒していく……!
「奴め……ここにおいてようやく本気と、なったようだな……」
 傍らに佇むディミオスの言葉に、うん、と天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)は頷き、一度だけ人々の方へ振り返る。
「貴方達が今ここに生きているのは、他ならぬ貴方達の希望が繋いだ結果です。……だから、神に言う言葉は救いを求める言葉じゃない」
 うろたえたような生存者達の前で、零は露わになっている左胸の刻印に手を当てて。
「……こういう時は……お前が救わなくても俺達は生きていけるって言うべきだな!」
 その隣に『オルタナティブ・ダブル』で現れた夕夜とともに、強き覚悟の一言を投げかける。
「よっし、神様相手に一暴れするか!」
「零は後衛を務めよ……夕夜、あまり力みすぎるな」
「さあ、始めようか」
 零が頷きかけると、ディミオスと夕夜は互いに息を合わせ、左右から同時にプレアグレイスへ切迫していく。
「神の首級か……断罪がてらにぜひとも挙げたいところ、であるが……」
 左方から大鎌で打ちかかるディミオスに、プレアグレイスは全身を包む氷を身体の肉ごと引きはがしつつ、がむしゃらに振り上げた魔剣でもってガードした。
「ならばこれは……どうだ?」
 首狩り女王の武装は鎌だけにあらず。懐から暗器を抜き出すように鎖を投げ放ち、ぐるぐるとプレアグレイスの首元へ巻き付かせ、奴が氷から抜け出した瞬間に地面へ引き倒す。
「もう最初の頃とは別人みたいだな、でも容赦しないぜ!」
 その上からØで切り裂こうとした夕夜だが、寸前に現れた夕夜の偽物に攻撃を阻まれる。
「む……夕夜が、二人……?」
「いや、俺が本物だから!」
 そちらを一瞥してちょっと戸惑ったようなディミオスに、本物の夕夜がツッコみながらも偽物と斬り結ぶ。
「夕夜、今から援護を……!」
「おう!」
 零が地中からグレイヴ・ロウを突き出させ、偽夕夜の背中から深々と突き刺す!
「零、そちらへ向かったぞ……!」
 しかし逆方向からはディミオスの鎖を引きちぎったプレアグレイスが、攻撃直後の零のすぐ近くまで接近しており。
 振り向いた鼻先にはすでに、どす黒い魔剣が振りかぶられ――。
「……貴方がいるのは天じゃない」
 けれど、零は避ける事もせず、逆にグレイヴ・ロウを構えた!
「――地の底だ!」
 刹那、夕夜が即座にPunishment Blasterを操作し、プレアグレイスの肩甲骨に凄まじい砲撃をぶち込んだのである。
 直後に正面からも零のグレイヴ・ロウが胸部をえぐり、プレアグレイスは目を剥いて後方へ吹き飛ぶ。
「土煙に紛れていますが、右端の方へ移動しました……!」
「見失うわけにはいかんぞ!」
「承知しています!」
 零の言葉を聞き、ホワイトパスを使用したアリウムと追跡するノワールが、肩を並べて追撃にかかる。
「わ、分からねぇ……俺達ゃ、どうすりゃいいんだ……」
「神様に従うべきなのか、それとも……っ」
「死んじゃダメだ」
 虚ろな表情でかぶりを振る村人。その冷たい手を澪が握り、じっと瞳を見つめる。
「お願い……側にいて。まだ何も、終わってなんかいないんだから」
「終わってるだろ……これから何にすがって生きればいいんだ……」
「希望ならここにあるじゃない」
 と、澪はずっと抱き続けている赤子を、優しく撫でて微笑む。
「この子、ずっと眠ってる……強い子なんだ。だから見せてやりなよ……いつか、何も知らないこの子に。……復興した、村の姿を」
「村の……復興」
 はっとしたように何人かが顔を上げ、澪の紡ぐセリフへ神妙に聞き入る。
「皆の生き様を……この希望を、未来へ繋ぐこと。それはあんた達大人の義務だよ」
 生きていいのかどうかではない。生きなければいけないのだ。
 子供だろうと大人だろうと等しく、命ある限り、未来へと。
「救いなんてものは、不幸に抗い、自ら勝ち取るものだよ」
 その時、エウロペ・マリウス(揺り籠の氷姫・f11096)が氷の魔弾を連射して仲間を支援しつつ、振り向かずに口にする。
「自分から動こうともせずに境遇に悲観して、捧げるだけで得られるものなんてものは救いでもなんでもない……ただの現実逃避だよ」
 彼らに必要なものは、寄り添い慰め、一緒に泣いてやるだけの暖かみではない。
 時には叱咤し、この理不尽な現実へ目を向けさせるだけの、厳しさと力も必要なのだ。
「辛くて泣いてもいい、怒ってもいい。だけど、不器用だろうが強がりだろうと笑え……そうすれば、それらは過去になる」
 師匠の受け売りだけどね、とエウロペはいつか旅した破天荒な日々を思い返し、そう告げる。
「そういう事だから、ここはボク達に任せて。何はなくとも、生き延びなければ始まらないからね」
 エウロペはとどまる事なく弾丸を撃ち続ける。休息した分スタミナは満杯だ。ここからまた空になるまで撃って撃って撃ちまくる心づもりである。
 あらん限りの魔力を注ぎ込み、見切りにくいよう大小大きさを変化させた魔弾を精製。
 さらにそれらの数を延々と増やし続け、プレアグレイスの頭部や四肢に誘導する特性を持たせて不規則に発射。
 もはや機関銃の如く氷弾をばらまき続け、その力強さと戦いぶりでも人々を奮い立たせる。
 敵は人の不幸、折れた心をかぎつけて現れた。
 だったら当の本人達の希望を今一度蘇らせれば、プレアグレイスは目的そのものを見失い、戦力が低下する可能性もあるのだ。
(「見せてあげるよ神様――彼らの、人の底力ってものを」)
「邪魔です、邪魔はやめて下さい、邪魔です、邪魔……!」
 黒死天使と化したプレアグレイスの猛攻を前に、近接戦闘を果敢に挑むノワールに宗田、零、そしてアリウム達は徐々に後退を余儀なくさせられ。
 遠距離ではエウロペとシャオの氷魔法、そして赤子を眠らせるように澪が歌い上げるも、相手は倒れない。
「許しません、救済の邪魔はさせません。救済こそ喜び、救済こそ悦び……」
 頭から足先まで、漆黒のドレスを血と凍傷で染め上げたプレアグレイスが、独り言めいた宣告をもたらし、魔剣を高々とかざす――。
 その腕に、一発の小石が投げつけられた。
「やめろぉ!」
 もう一発、今度は泥の塊。そして折れた小枝、剥がれ落ちた氷の欠片。
「帰れ、帰ってくれぇ!」
 足下にあるものを無我夢中で拾い上げては、プレアグレイスに向けて投げつけていたのは。
「俺達は……お前なんか必要ない! 生きるんだ!」
 腰が引けながらも立ち上がった、傷だらけの村人達だった。
「……あなた達……何を言っているのです。死は素晴らしいものです。そして新たな人生が、命が、この世界に救世の産声を上げるというのに……」
「うるせぇ、さっさと消えろ!」
 罵声と投石を浴びせられ、大きく動揺した風に立ちすくむプレアグレイス。
「……許しません……!」
 怒りのままに魔剣を振りかざそうとするせいか、空から見下ろしていたクオンにはその予備動作は丸見えで。
 ここぞとばかりに鳴き声を上げて、身構えていた澪へと合図を送る。
「香り高く舞い遊べ!」
 そうして放たれた花嵐が間に合い、張り付く花弁が魔剣の刀身を塞いでのける。
「みんな、今だよ!」
 立て続けに氷魔法をぶっ放すのを契機に、他の猟兵達も一斉に躍りかかる!
 短剣で切り裂き、大鎌で断ち割り、骨で叩き割り、全弾砲撃し、槍で串刺しにし、大量の氷の刃と魔弾が敵を蜂の巣にしていく。
「ごはっ……ごほ……! きゅ、救済を……絶望の終焉を……」
「へっ……御託はもういいってよ!」
 斧を担いで突撃する宗田の前に、偽宗田が立ちはだかる。
「テメェまだいたのかっ」
 実はいたのだ。プレアグレイスの最後の盾となる偽宗田が、自爆覚悟で突貫して来るが。
「だったらまとめて仕留めてやるぜ!」
 轟々と炎を宿した斧を振り抜き、偽物ごとプレアグレイスをぶち砕く!
 キィン、と音を立てて砕け散る魔剣の刀身と、千々に裂けるプレアグレイスの翼。
 そして宗田は返す刀で、軸足を元に半回転。
「あばよ神様!」
 満身込めたフルスイングをぶちかまし、プレアグレイスを村のあった方角へ盛大にかっ飛ばしたのだった。

「ようやく片付いたな……瓦礫の山に、災害に、魔獣に、神が相手と、まったく長い一日だった」
「ここから先へ進んでいけるかは、みなさんの心根次第……ですが、もしも必要ならば、私達もまたいつでも力を貸しに訪れます」
「すぐに前向き……とまではいかないだろうけれど、笑う事さえできれば、意外となんとかなるものだよ」
「水が引いたらみんな、近隣の村に移り住むんだね。それならこの子も……うん、親切な人が見つかるまで、一緒に僕も探そうかな」
「ったく、お人好しなチビだぜ。……ちょっとは付き合ってやるよ」
「動物のみんなも……ありがとう。……約束通り、おいしいごはんをあげる……」
「夜が明けますね。……さあ、戻りましょうか」
 太陽は昇る。天使が倒れた山のてっぺんに、この世界の陰鬱で儚い光が射し始める。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月20日
宿敵 『救済の代行者・プレアグレイス』 を撃破!


挿絵イラスト