からん、ころんと賽の音。
人々は皆綺麗な石や巻物を持ち、互いにそれを見つめては頷き、座り込む。
そうして、賭けるのだ。
賑やかに、賑やかに。桜の都を思わせるその島は、今日も活気づいていた。
●
「やあ皆、かの世界『グリードオーシャン』については把握しているかな?」
グリモアベースに猟兵を呼び出したネルウェザ・イェルドット(彼の娘・f21838)は、にこにこと笑みを浮かべて話を始める。
彼女は何やら古びた地図の右端に赤いバツ印を付け、それを胸の前に掲げた。
「皆には秘宝メガリスの眠る島、『ハリコマ島』に向かってもらいたい。この島はサクラミラージュの一部が落ちたものでね、どうやら賭博が盛んに行われているらしいんだ。例えば……」
そう言って、ネルウェザは地図を仕舞い三つのサイコロを取り出す。ひょいとそれらを宙に投げると、もう片手に白い椀をすっと持って。
ちりん、とサイコロが椀の中に転がる。その目は――全て、一で揃っていた。
念力、若しくはサイコロに細工をしていなければ、一発でこんな揃い方はしないだろう。現にネルウェザはけらけら笑って、当然イカサマだよと椀の中を指さした。
「こんな事までして賭け事をする理由……それはハリコマ島に少し特殊な『宝』が眠っているからだ。一人一つ、その人が一番大切だと思うものが見つかる。勿論それは偽物だけれど、それを賭ける遊びってのはかなりスリルがあって面白い、らしい」
――そして、その中に『メガリス』が混じることもあるのだ、と。
「皆には、島に着いたら先ずひとつ宝物を探してもらう。少々頼みにくい話だけれど、それを賭けて島の人々と賭け事をして『メガリス』を探し出してほしいんだ」
ネルウェザはそこまで告げると、サイコロの代わりにグリモアを浮かべて転送の準備を始める。ふわふわと光が回る中、彼女はもう一つ、と続けた。
「島のメガリスを狙う『コンキスタドール』。恐らく皆がメガリスを発見すれば、それを横取りしようと駆けつけてくるだろう。くれぐれも気をつけてくれ」
そして――健闘を祈るよ、という言葉を最後に、猟兵はグリードオーシャンの海へ転送されていくのであった。
●
波の音が響いては去っていく。猟兵達が降り立ったのは、ちらちらと桜のような花弁の舞う海岸であった。
広がる砂浜の中に、その花弁を舞わせる桜の木。
鮮やかな緑の茂る森の間に、汚れつつも立派な家の屋根。
――ふと、遠くから人の声が聞こえて。
「……あった!」
紺色の着物を着た少年が、きらきらとした宝石を持って喜びの声を上げる。その他にもひとり、もうひとり、人が現れては何かを見つけ、島の奥へと駆けていった。
周囲にあからさまに宝の眠っていそうな場所こそ無かったが、おそらくグリモア猟兵の言う通り『その人が一番大切だと思うもの』を思い浮かべれば見つかるのだろう。
――まずはこの海岸や森で、宝探しだ。
みかろっと
こんにちは、みかろっとと申します。
今回はグリードオーシャン『ハリコマ島』にて、宝探しとギャンブルをするシナリオです。
第一章、先ず皆様が『一番大切だと思うもの』を探して下さい。これは第二章にてギャンブルの元手となる、『本物のコピー』のようなものです。
※人や抽象的なものでは賭けられませんのでご注意ください。
第二章では宝物を賭け、島の人々とギャンブルをして頂きます。
但し皆イカサマをしてきますので、それを見破って指摘する、もしくは見破った上で利用し、こちらが勝つよう仕向ける等してください。
第三章では、島の人々が賭けるものの中に混じっていた『メガリス』を奪おうとコンキスタドールが襲い掛かってきます。それを撃破し、メガリスを確保できればシナリオクリアです。
皆様のプレイングお待ちしております!
第1章 日常
『宝探しをしよう』
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POW : とりあえず目の前から探してみる
SPD : 周りをよく見て探してみる
WIZ : 第六感に従って探してみる
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アリス・セカンドカラー
おまかせプレイング。
一番大切だと思うもの、ね。『あの子』から譲り受けた蘇芳色に輝く凧型二十四面体の結晶かしら?そのコピーが見つかる、と。
赤い糸で強化した技能での遠隔透視の超能力で探しましょうか。(第六感/情報収集/視力/聞き耳/盗み攻撃/ハッキング/封印を解く)。
アストラル界へと精神を投射し、マテリアルから解放されることで過去も未来も他人の思考すらも透視してみせるわ☆必要とあらばアカシックレコードさえ覗いてくれよう。
あ、無防備な肉体はシャーマンとして契約したUDC(呪詛/オーラ防御/各種耐性)を宿して操縦させてるから、最低限身を守るぐらいはできるわよ☆
「一番大切なもの、ね……」
自らの直感を信じ、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)が海岸を歩く。砂と岩ばかりのそこで彼女が思い浮かべるのは――『あの子』から譲り受けた大切なもの。
しかしそれが彼女にとって大切であるが故か、海岸を軽く見渡した程度では見つけられない。寧ろ周囲にはごつごつと岩や植物といった視界を遮るものが多く、その陰を確認しなければ『宝探し』は始まらないだろう。
「なら、これで探しましょうか」
微笑み、アリスはユーベルコードを発動する。
ふわりと彼女が喚び出すのは、魔術刻印からその姿を現した『固い絆の赤い糸』。手足にも等しい感覚を持つ糸は、アリスの意識へ佇む岩や揺れる植物の『向こう』を伝えていった。
アリスは一つ、また一つと隠されていた場所に目を凝らす。そんな中――精神をそちらへ集中させるアリスの肉体は、無防備に海風に吹かれていた。
「……嬢ちゃん、大丈夫かい?」
近くを通り掛かった男が、覗き込むようにそう声を掛ける。宝探しに集中しているアリスは茫然と――はせず、特に問題ない様子ではっきり頷き返した。
その正体は、アリスが契約しているUDC。幸い宝探しで賑わう周囲に危害を加えてきそうな怪物や人間は見当たらないものの、万が一に備えて彼女が自らに宿し、身を守るよう命じていたものだ。
――故に、心置きなく『宝』を探せる。
次々に物陰を暴いていくアリスの意識はすぐに岩場の端まで辿り着き、そして――きらりと、くすんだ赤の輝きを捉えた。
ふっ、とアリスの身体の主導権が彼女自身へ戻る。『それ』を見つけた場所まで足を進め、黒く大きな岩の後ろを覗き込めば。
そこに在ったのは、蘇芳色に輝く綺麗な結晶。見覚えのある凧型の二十四面体を拾い上げると、アリスはそれが探していた『大切なもの』であり、同時に見た目だけを模した紛い物であることを悟った。
それでも、その輝きは人々の欲を煽り『賭け事の元手』にするのは十分だ。
アリスは島の奥、宝を見つけた人々の向かう方を見遣ると、自身も結晶を持ってそちらへ踏み出して行くのであった。
成功
🔵🔵🔴
髪塚・鍬丸
大切な物を強く思い描きながら探索すればいいのかい?
……だったら、金塊かな。延べ棒辺りがイメージしやすいか。金目の物なら何でもいいが、通貨の類よりは信用出来る。
【第六感】で当たりを付けて、【視力】を凝らして探して回る。
桜舞い散る風情の中で宝探しってのも無粋だが、これも任務だ。まぁ、探索と散策を兼ねてそれなりに楽しもうか。
本当に一番大切なものは「自由」なんだがな。好き勝手に生きたいとまでは言わないが、選択肢は多い方がいいし、強制はされたくない。
そいつを手に入れ、維持する為の金品だ。
逆に金に縛られるのも御免だけどな。偽物なら気にする必要もない、派手に賭けさせて貰おうか。
海風に吹かれ、薄紅の花弁が舞い散る海岸。風情あるその場所で、無粋とは思いつつ髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)も『宝探し』を始める。
彼はこれも任務だと割り切って、ものが隠れていそうな岩場へと近づいていった。
――大切なもの。
此処でそれを手にする為には、ただ探すだけでは事足りない。
大岩の前で少し考え込み、鍬丸は頭の中で徐々にそのイメージを固めていく。
賭け事の元手として使える、ひと目で価値があると分かるもの。金目の物なら何でもいいが、通貨の類より信用出来るもの――
「……金塊、かな」
そう呟いて思い浮かべるのは、黄金色に輝くずっしりとした『金の延べ棒』。スリルや儲けを求めて物を賭け合う人々にそれを見せれば、間違いなくどんな勝負でも受けてくれることだろう。
ざりざりと砂浜を踏み、少し散策も兼ねて歩きながら。鍬丸は己の直感を信じて方向を変えては、岩陰や植物の根元に視線を巡らせ、目を凝らしていく。
求める金塊の姿を頭の中で強くイメージし、彼がごつごつとした岩の下を覗いたその時。
きらり、と陽の光が一瞬視界を奪う。
眩い黄金の光に一度目を瞑り、鍬丸が再びそこを覗けば。
「これか」
ゆっくりと手を伸ばし、鍬丸はそこに転がる長方形を掴む。引き寄せようとすれば手にずしっと確かな重みを感じ、それがすかすかの鉄くずや飾り付きの菓子などではないことを察せた。
表面に付いていた砂をぽんぽんと払い、鍬丸はそれが求めていた金の延べ棒であることを確認する。ここで見つかるものは全て偽物なのだとしても、その重みと輝きは賭け事の元手として十分な説得力を持っていた。
それを手に島の奥へと向かいながら、鍬丸はふと静かに口を開く。
「――本当に一番大切なものは、『自由』なんだがな」
しかし、それを賭けることはできない。彼が金塊を求めたのはそれ故――に、加えて。
金品が豊富にあればある程、進む選択肢は増える。好き勝手に生きたい、とまで言わなくとも、『仕方なく』『強制されて』道や方法を選んで生きることを望む彼ではないのだ。
自分で考え、選んで生きる。鍬丸が求めた『金品』とは、そういった自由を手に入れ、維持するためのものだ。
鍬丸はふと金の延べ棒に視線を落とす。
金品を得られても、逆に金に縛られるのは御免だ。しかし今手に握るそれは『偽物』であり、本当に金に替えられるかといえばそうではない。
――ならば。
「派手に賭けさせて貰おうか」
彼は笑みを浮かべ、島の奥――人々が宝を賭けて賑わうその場所へと、踏み出していくのであった。
成功
🔵🔵🔴
シウム・ジョイグルミット
[SPD]
おー、ついに新世界に来たぞー!
この島では1番大事なものが見つかるんだったね、面白そう
ボクの大事なものはそうだなぁ……やっぱり最高に美味しい食材かな
ひと口食べたら顔が緩みきっちゃう、そんな食材に出会いたい!
まー、もし見つけても食べちゃいけないのはツラいけどね……
でも大事なものには変わりないからね、あとで取られるつもりなんてないよ
さあ、島に着いたら海岸で宝探しをしよー
砂浜広いから見つけるの大変だろうけど頑張らなきゃね
【空中浮遊】でふわふわ浮きながら見て回って、怪しいものが転がってないか調べちゃおう
【野生の勘】に頼って、適当な場所を掘ったりもしてみようかな
面白いのが埋まってるかもしれないし
「おー、ついに新世界に来たぞー!」
桜花弁の浮かぶ広大な海を見渡して、シウム・ジョイグルミット(風の吹くまま気の向くまま・f20781)が新鮮な光景に胸を躍らせる。潮風に揺れる緑の髪がくるりと回れば、シウムは件の海岸へとその視線を映していた。
そこら中でわいわいと動き回るのは、『宝探し』に勤しむ島の人々。
この島では、探す人が一番大切だと思うものが見つかる――そんな話を思い出して、シウムは面白そう、と笑みを浮かべる。
――何を探すか、自分の『大切なもの』は何か。
この島に於ける宝探しは、まずそれを思い浮かべなくては始まらない。シウムは海岸に生い茂る草木の前で一度小さく考え込み、そのイメージを固めていった。
「そうだなぁ……やっぱり最高に美味しい食材かな」
彼女がそう呟けば――ふわり、とどこからともなく甘い香りが漂ってくる。
それが鼻を通るや否や、シウムの頭の中では『宝物』の姿がはっきりと輪郭を持ち始めていた。
――口に入れればすぐに溶けてしまう、ふわふわ可愛いアイスクリーム。いや、滑らかなカスタードがたっぷりと詰まったシュークリームも良いかもしれない。それに濃厚なチョコレートでも、ほんのり甘い焼き菓子でも――
ぽこぽこ浮かぶそれらは全て、ひと口食べれば顔が緩みきってしまうような、そんな食材。
「まー、もし見つけても食べちゃいけないのはツラいけどね……」
そう苦笑するが、シウムにとってそれが大事な『宝物』であることは間違いない。賭け事の元手にしようと、それを取られるつもりは更々無いのだ。
イメージの固まったシウムは早速、海岸に一歩踏み出す。とはいえ、ただでさえ広く、人や障害物の多いこの砂浜を歩いて探すのは骨が折れるだろう。
前に出たシウムの脚はふっと宙へ昇り、そのまま彼女の身を浮かばせていった。
ふわふわと跳ねるように空中を駆け、シウムは怪しいものが転がっていないか周囲を隈なく探す。何かを隠すような大きな岩、地面を覆う高い草木。どれも『宝物』の在り処としては十分思いつきそうなものではあるが――ふと、シウムは何もない砂浜の一点に目を留めた。
「面白いのが埋まってるかもしれないし……」
そんな興味とともに、ふわっとそちらへ飛んでいく。何もない場所に降り立ったシウムに気付き、人々が首を傾げて見つめる中。彼女がその一点をさくさく軽く掘り起こしてみれば。
――こつん。
細かい砂の中で、何か固いものが顔を出す。更に掘ればそれはカプセルらしき球体で、中に何かが入っている音が聞き取れた。
砂を払い、シウムはそのカプセルをぱかりと開いてみる。
途端に広がる甘い香り。ころころと転がる沢山の包み紙は、摘めばふんわりと柔らかな感触を指先に伝えた。
ぺらりと紙を捲れば、真っ白なふわふわのマシュマロが陽の光に輝く。見ているだけでも食欲をそそられるそれは、賭けると言えば沢山の人が食いつくことだろう。
シウムは沢山のマシュマロを抱えて、島の奥へと進んで行くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『イカサマを見破れ』
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POW : ●『プレッシャーをかける』:単純な話、イカサマをすればその後どうなるか、そう解らせればいい。
SPD : ●『イカサマし返す』:最早これもある意味ではゲームだ。相手の技術を上回れば、相手も文句は言えない。
WIZ : ●『見破る』:洞察力、記憶力、動体視力、話術…。それらを使えば、きっと相手の尻尾をつかめる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
少し森を進み、人の声のする方へ。
ぱっと視界が明るくなれば、そこは数え切れない程の桜が咲き乱れる街であった。
「そこの人、ウチで遊んでかないかい?」
「いんや、ウチは結構盛り上がるよ!」
街を歩けば、そんな声が猟兵の気を惹こうと飛び交う。
愛想の良さそうな彼等の目は、皆ぎらりと『宝物』を見つめて光っていた。
「この着物とか、どうだい!」
「この宝石はここでなきゃ手に入らないよ!」
そんな売り文句通り、街に並ぶ店は皆高値の付きそうな石や装飾品、書物や着物を並べて輝いている。しかしそこに値札はなく、人々の様子を見るにどうやら『賭け』をして手に入れるしかないということが伺えた。
●
ふと、街道の隅で座り込む二人が目に入る。どうやら椀にサイコロを三つ放り、出た目で争っているようだが――ちりん、と鳴った椀の中には、どういうわけか見事に『一』の目が三つ揃っていた。
「へへっ、またピンゾロだ。ほれ、お前さんの負けだよ」
「イカサマしてるんじゃないだろうなぁ?」
「まさかぁ」
けらけら笑う男の背には、サイコロが更に三つ握られている。
あれとすり替えることで何か細工をしているのかもしれない。
更にもう一組、少し離れた所でも。
「さ、丁方無いか、無いか――」
「半方無いか、無いか――」
こちらは人がわらわら集まり、口々に『丁』『半』と言っては『宝物』を賭けていく。
「アイ、勝負」
中心にいた男がぱかっと小さな筒状の椀を持ち上げると、そこにはふたつのサイコロが転がっていた。
「畜生」
「イカサマじゃねえか?」
そう言って人々の半分以上が悔しそうに散っていく。筒を持った男はにやりと笑い、サイコロ――の下、台にしていた木箱を撫でていた。
あれに何か仕掛けがあり、賭けた人が少ない方の目になるよう調整しているのかもしれない。
●
他にもあちらこちらで賭けが行われているが、どれも何やら怪しい『イカサマ』の気配がする。
皆『宝物』を賭けているのだから当然と言えば当然かもしれない。それにこの中には、秘宝メガリスが混じっている可能性もあるのだ。
彼等に惑わされることなく不正やその手段を暴き、景品となっている『宝物』を手に入れてしまおう。
アリス・セカンドカラー
おまかせプレイング。
小悪魔な真の姿の封印を解く。
アリスが導く不可思議な夜伽話でメルヘンでカートゥーンな不可思議で理不尽な狂気に満ちた精神世界を展開するわ。メルヘンやカートゥーンでは道具や現象が意思を持ちしゃべるのも普通のこと。ならば、私のリミッター解除して限界突破した催眠術による誘惑で味方にするのも容易いわ☆ええ、ルールさんとかゲーム展開さんとかの現象を味方につければルールなんか分からなくても勝利に導いて貰えるもの♡
ま、賭けの相手を篭絡してもいいけど、勝たせてくれたらご奉仕してあげるわ☆(くすくすくす)
さてさて、メガリスさん返事してくれると助かるわー、と。返事があれば賭けの相手も決まりね。
どの店も高価そうな宝物ばかり。この中からメガリスを探し当て、その上賭けにも確実に勝つというのは並の人間であれば中々難しいものだろう。
人混みの間をするすると抜け、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)は静かに自らの力を解き放つ。
現れるのは彼女が内に秘めていた『真の姿』、小悪魔めいた妖艶なる少女の姿であった。
街の人々はそれに惹かれてか、皆アリスを見るや否や『ウチはどうだい』『いやこっちが良いよ』と次々にこやかな笑顔で店へ招こうとする。
しかしアリスはそれらを微笑であしらいつつ、ユーベルコードを発動させていた。
――はらり、と桜吹雪を縫うように、彼女が紡ぐ物語の『原稿』が降り注ぐ。
「ようこそ♪ 私の私による私のための世界へ♡」
それは『アリスが導く不可思議な夜伽話』。はらはら舞う原稿は力を纏って街全体を包み込み、『アリスの望む世界』――幻想的にして狂気的な精神世界へと作り変えていった。
がやがや人の声に満ちていた街は、更にその密度を増す。
この一瞬で人が増えたのか――と思いきや、その正体は『先程まで喋らなかった者達』の声であった。
「な、何だ!?」
アリスに近付こうとしていた客引きの男が素っ頓狂な声を上げる。店先に飾られていた提灯、置かれていた見本のサイコロ――無機物である筈のそれらが、ぴょこぴょこと動き出し、そしてわぁっと声を上げ始めたのだ。
アリスの紡いだ世界に於いて、それはごく当然のこと。その上『真の姿』を解放した今の彼女であれば――意思を持ち始めた『もの』や『概念』を籠絡するのは容易いことであった。
「さてさて……」
くるり、と周囲を見渡して、アリスは呼び掛けるように声を上げる。
「メガリスさん、返事してくれると助かるわー」
――その声に反応してか、否か。
からころからん、と。少し向こうの店先で、来客を知らせる為の鈴がひとりでに鳴る。それはアリスに手招きでもするかのように、からん、からんと何度も揺れ続けていた。
アリスは小さく笑い、その鈴のある店へと歩いていく。
「ここで少し遊ばせて貰える?」
蘇芳の結晶をちらりと見せ、店先にいた男にそう声を掛ければ。男は目を丸くしてこくこく頷き、アリスを店の中へ導いた。
――店の中では複数人の男女が札を使った賭けをしている。その一番奥、最も価値の高い景品として置かれていた小さな宝石からは、明らかに強い力が放たれていた。
アリスは店で行われている遊戯のルールも知らぬまま、店員と思わしき男にとんと近づく。そして案内された通り席に着き、アリスの向かいにはすぐ賭けの相手となる人物が座った。
ぱらぱらと模様付きの札が配られる中、アリスはそっと相手の男に顔を近づける。
「……勝たせてくれたら、ご奉仕してあげるわ」
くすくす、と悪戯めいた笑みを見せ、甘い声で囁けば――男はびくりと肩を揺らし、変な冗談はよせ、と慌てて目を逸らした。
この場のものや事象全てがアリスに味方してくれる状況に加え、彼を籠絡すればアリスの勝利は確実なものとなるだろう。
現にゲームが始まり、アリスが当てずっぽうに札を場に出していくと。
「……ほら」
――机の下。男が一枚、何やらきらきらと金箔のついた札をこっそりアリスに手渡す。それを受け取り、またくすくすと笑いながらアリスがその札を出すと――余程強い役か何かが揃ったのか、近くにいた別の店員がおおっと目を見開いた。
そして突如、男は演技丸出しの様子で悔しそうな声を上げる。
「あーくそっ、嬢ちゃん、運良すぎんだろー!」
ほらよ、と男は奥にあった宝石をひょいとアリスに手渡す。
イカサマどころかそもそもルールにも縛られぬまま景品を手に入れたアリスは、ふっと男に目配せをして店を後にするのであった。
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
さて、メガリスはどこかね
【第六感】でそれらしい宝物を持ってそうな奴に当たりをつけて勝負をふっかけるとするか
イカサマが当たり前って事は、ゲームから運やランダムの要素が薄れてるって事だ。だったらこいつを使うか
【幻術】使用。幻覚を見せる技だが、前提として相手の思考や記憶を読む事が出来る
相手の手口を読み取れば、逆手に取って勝ちの目をもぎ取る事も出来るだろうさ
読心術だけじゃ勝てないなら幻術も使おう
ドローポーカーなら、高い役を屑札に見せて捨てさせたり、役が揃ってないのに高い役が揃った幻覚を見せて掛け金をレイズさせ自滅を誘う、とかかな
イカサマを暴いてやれば簡単だが、出来ればゲームのルール内で勝ちたいね
「さて、メガリスはどこかね」
桜咲く街の中、髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は店で『景品』として掲げられている宝物を見て回る。言葉通り彼が狙うは秘宝、島の何処かに潜んでいる『メガリス』だ。
いらっしゃい、いらっしゃいと手招く客引きをすり抜けつつ、鍬丸が道を歩いて行けば。
――ふと、道端でがやがやと賑わう集団が目を引いた。
やけに騒がしい人々の向こうからは、何となくただならぬ気配を感じる――そんな直感を信じ、鍬丸もそちらへ近づいていく。人の壁の間から見えた主催らしき男は、壁にぴったりと背をつけてにやにやと笑っていた。
「さ、負けたんなら宝物を寄越しな」
「くそっ……」
賭けで挑んでいたのであろう青年が、悔しそうに手に持っていたカードをばらりと地面へ棄てて小さな宝石を置いていく。そのカードの絵柄を見るに――少し和風にアレンジされていたが――ここで行われているゲームがポーカーの類だと予想がついた。
誰か挑む奴はいないか、と主催の男が人々に声を掛ける。男の手元には沢山の宝物が煌めいており、周囲の人々も無理だ、お前が行けよと参加を押し付けあっていた。
鍬丸は少し思考を巡らせたのち、人の間をすうと抜けて男の前へ出る。
「俺がやろう。賭けるのは――これだ」
そう、先程手に入れた金塊をきらりと光らせる。それを見た瞬間男はにやりと笑みを浮かべ、宝物をごそごそと漁って不思議な形の宝石を取り出した。
「良いねェ。兄ちゃん、ならアンタが勝ったらこれをやるよ。勝てれば、ね」
宝石からはこの集団を見つけた時と同じ気配。鍬丸はひとつ頷くと、とさりと男の向かいに座った。
ぱら、ぱら、ぱら。
表向きは『公平に』ということだろうか、勝負相手の男とは別の大男が、丁寧にカードを混ぜていく。特に怪しい様子こそないものの、あれだけ連勝するということはおそらく、この男もイカサマをしていたのだろう。
何せ、この島ではイカサマが当たり前。しかし――それ故に、このゲームからは運やランダムの要素が薄れているということだ。
ならば、相手の手を読んで逆手に取り、勝ちをもぎ取ってしまえば良い。
「……」
鍬丸がじっ、と向かいの男の目を見つめる。男や周囲の人々には、何か心理戦を繰り広げようとしているように見えたことだろう。
しかし、鍬丸は――ユーベルコード『幻術』を発動していた。
二人にそれぞれ五枚、カードが配られる。
鍬丸の手札は――クイーンのフォーカード。かなり強い役ではあるが、しかし鍬丸は単純に『運が良かった』わけではない事をすぐに理解した。
「(あっちは中途半端に強い役、俺は最強の手。何人もこれに引っかかってきたんだよなァ)」
にやにやと笑う男の顔を見れば、そんな声が鍬丸の頭に流れ込んでくる。そしてちらりと大男の方も見遣れば、彼等が手を組んでいることも容易に読み取れた。
「(……最強の役?)」
鍬丸は異変に気づく。
カードの枚数は五十二枚、つまりジョーカーは入っていない。その上で自分がクイーンを四枚とも持っているのに、『最強の役』――ロイヤルストレートフラッシュなど作れるだろうか?
成る程イカサマかと理解するも、これを指摘して不戦勝、よりは『ゲームのルールの上で勝ちたい』。鍬丸はユーベルコード、心を読むだけでなく『幻覚を見せる』力を男二人に向けた。
「良い役だ。……なら、もう一つ賭けるかな」
鍬丸は言葉通り金塊――否、幻術で金塊に見せかけた石ころを積み上げる。男はそれを信じ込み、馬鹿なやつだとけたけた笑った、のだが。
「…………ん?」
男は手元に視線を落とすや否や、目を丸くして首を傾げる。
それもそうだろう、大男に用意させた筈のロイヤルストレートフラッシュが、いつの間にか只のワンペアにすり替わっているのだから。
慌てて男は大男に何か目配せをして、手札を全て交換する。すると男は調子を取り戻したか、またにやりと笑って宝石を積み上げた。
――そんなやり取りの後。
「な、何だ……どういうことだこれ!?」
互いの手札が公開される。
鍬丸は変わらずクイーンのフォーカード。
幻覚の解けた男が握っているのは――ブタ、何の役も揃っていないノーペアの手札であった。
男は真っ先に鍬丸のイカサマを指摘しようとするも、自分もイカサマをしていたことを指摘されるのを恐れてかぐぬぬと黙り込む。
何せ沢山の人を騙し宝物を手に入れ、今もその中心で賭けを行っているのだ。ここで鍬丸が男のイカサマを暴けば、それはそれは大変なことになるだろう。
人々が拍手と歓声を浴びせる中、鍬丸は宝石と自分が賭けた金塊を拾い上げ、桜吹雪の街を歩いて行くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ジャスティス・ボトムズ(サポート)
★アドリブ大歓迎
正義を執行することに全力を注ぐぜ。
敵と認識した相手は叩き潰す。
それが俺の正義だ。
俺は闘争や探索などあらゆるものをシンプルに考えて行動するのを好む。
戦い方は武器での攻撃と素手での格闘を敵を見て使い分けている。
物事はシンプルに考えて動いた方が白黒ついて分かりやすくなるってもんさ。
正義を執行するという意志は俺にとって絶対だ。
何があっても絶対にこれだけは曲げないぜ。
やること決めたら後は全力で突っ込んでいくだけだぜ。
技能は怪力、鎧砕き、存在感を使って力で問題解決を目指す。
正義を執行するのにはパワーをフルで発揮するのが俺好みだぜ。
正義の力で敵を叩き潰して、優しさを持って民間人に接するぜ。
「……そこの人」
賑わう街中、小さな声の主が猟兵の背を追いかける。それに気付いたジャスティス・ボトムズ(正義の執行者・f22965)が振り向けば、其処には今にも泣きそうな顔をした少女が立っていた。
「どうしたんだ?」
「その、宝物……とられてしまって」
――少女の話によれば。
島で見つけた宝物、鳥の形をした桜色の宝石を持って街を歩いていたところ、とある店の男から賭け事を持ちかけられたのだという。しかしそのゲームはイカサマを疑ってもおかしくない程の流れで少女を追い詰め、最後には宝物も、持ち物の大半も持っていかれてしまったらしい。
「大切なものなんです。どうか、協力してもらえませんか」
そう懇願する少女に、ジャスティスは二つ返事で強く頷く。イカサマの横行する島といえど、幼い子供を罠に嵌めて財産を奪うなど『悪人』のすることだ。
――そう。悪は全力で叩き潰す。
ジャスティスは少女から情報を得るや否や、すぐにその男の店へと歩いていった。
●
「ここか」
ジャスティスが辿り着いたのは、沢山の人が出入りする大きな店。中はがやがやとかなり賑わっており、その中心にはこの店の主らしき男が床に座り、何やら筒と賽を持って話しているのが見えた。
「それでは――」
からん、と男が賽を筒に放り、そのまま床に叩きつける。すると周囲の人々は暗号のような掛け声とともに金品を置き、すうっと静かになっていった。
やがて静まりきった頃、中心の男はゆっくりと筒を上げる。
隠れていた賽の目が明らかになった瞬間、人々の大半は悔しそうな声を上げ、置いた金品を拾わぬまま渋々と店を出ていってしまった。
どうやら賽の目を当てるゲームらしい。腕を組んで眺めていたジャスティスは、それに気づくと同時、明らかに『負ける人』が多いことに気がつく。
何か細工、イカサマをしているのは間違いない。ジャスティスはゲームを観察――するのではなく、突如人混みを割るように堂々と正面から男の方へ進み出して行った。
「お、お客さん――!?」
「……ここに、何か仕掛けがあるんだよな?」
にっ、と笑ったジャスティスは、男の眼前に立った瞬間――ドゴッ!!! と床を思い切り殴りつけた。
「な、何だ!?」
「どうしたどうした!」
人々はその轟音に驚き、店の中心をじいっと見つめる。
そんな中ジャスティスはゆっくりと拳を上げ、破壊した床――の下から、何かを持ち上げた。
「ひぃぃっ!」
床の下にいたのは、小柄な男一人。その手元には細い棒が握られており、更にジャスティスの足元に転がる床の破片に沢山の穴が空いているのが見て取れた。
――大方、これで賽の目を調整していたのだろう。
イカサマが明らかになれば、当然。
騙しやがって、賭けた物を返せ、と人々は口々に喚き、店員や店主に詰め寄っていく。
敵と認識した相手は叩き潰す、がモットーのジャスティスだが、こうなれば彼が手を下さずとも店の人間たちは報いを受けることになるだろう。
ジャスティスは近くの物陰で隠れようとしていた店の男に近づき、少女の宝石の在り処を問う。男は竦み上がった様子で店の棚を漁ると、ジャスティスに宝石を渡し一目散に奥へと逃げていってしまった。
すんなりと返されたそれを手に、ジャスティスは店を後にする。
桜舞う街の中、正義を執行した彼は真っ直ぐに少女の元へ向かうのであった。
成功
🔵🔵🔴
シウム・ジョイグルミット
[SPD]
マシュマロはいっぱいあるし、何回かに分けて勝負かな
初戦は負けていいから仕掛けを見破らないと
ここで『Lucky Star』使っちゃおう!
話しかけて【読心術】も使ったり、手元とか道具を見て怪しい動きがないか確認したり
まあ、分かっても指摘しないけどねー
自己満足ってやつかな
最後には熱くなってるように見せかけて、マシュマロ全賭けするよ
ここからは勝つか負けるか、楽しい勝負の始まりだね♪
【念動力】を使って、サイコロなら相手の出目を変えちゃったり、
ルーレットなら玉の場所を1つずらしちゃうのは簡単
カードなら配られる前とかその最中に【早業】で入れ替えたりかな
こんな調子で、どんどん宝物を集めていきたいな!
沢山のマシュマロを抱えて、シウム・ジョイグルミット(風の吹くまま気の向くまま・f20781)は大きな店へと入っていく。
どうやら、店のあちこちで様々な賭けが行われているようだ。
サイコロの目を当てるもの、カードを使った心理戦。特に中心で目を引くのは、大きなルーレットを囲んで行われるゲーム。
どれもおそらく、こちらが勝てないような仕掛けを施されたイカサマだらけのゲームだろう。
幸い、シウムの手元にある宝物はひとつではない。何回も勝負を挑み、仕掛けを見破って勝ちにいく事も可能だ。
シウムはまずふらりと手前側のコーナー、ババ抜きの行われている一角へ赴くと、早速店員らしき男に軽い調子で話しかけた。
●
ぱらぱらと配られる和風のトランプ。
案の定というべきか、シウムは初戦でマシュマロをひとつ取られてしまっていた。
「お客さん、惜しかったですねぇ。もう一戦やっていきます?」
そうにやにやと笑う店員に、シウムはムキになった様子――を装って、食い気味にこくりと頷く。次は仕掛けを見破るため、持てる力を余さず使って勝負だ。
――店員の手元、机の表面。怪しい部分は無いか目を凝らしつつ、シウムはさり気なく言葉を紡ぐ。
「うーん、このままじゃ負けちゃうかもしれないなぁ……」
ちら、とシウムが店員の顔を見遣る。店員の動きに怪しい様子こそなかったが――シウムは、その思考を何となく読み取ることができた。
店員が注目しているのはシウムの手元でも、彼女の表情でもない。
――シウムの後ろ、小さな額縁に見せかけた鏡であった。
あれでこちらの手札を見ているのだろう。しかしシウムはそれを敢えて指摘せず、笑みを浮かべて店員の札を一枚引いた。
「……こうなってからが強いんだよねー、ボクって♪」
ぱら、とシウムが札を捨て、彼女の手札が二枚、店員の手札が一枚という状況になる。
あと一手。店員はにやりと笑い、シウムの後ろの鏡を見て――札を一枚、掴んだ。
――が、その瞬間。
「…………って、えええ!?」
店員は目を丸くする。ハートのエースだと思って掴んだ札が、見事に『ババ』、ケタケタ笑うジョーカーの札だったのだから。
ユーベルコード『Lucky Star』。シウムが発動させたその力は、彼女の技術を格段にレベルアップさせていた。
――彼女は目にも止まらぬ速さで、店員が手を触れる寸前に二枚の札の位置をすり替えていたのだ。
「それじゃ、ボクはこっち♪」
シウムはすかさずスペードのエースを摘み取り、そしてぱらりと札を捨てる。
ゲームに勝利した彼女は先程奪われたマシュマロに加え、宝石をひとつ手にすると、跳ねるように次のゲームへと向かっていった。
●
少しずつ、少しずつ。
シウムは仕掛けを見破っては勝負に勝ち、見事どんどん宝物を集めていた。
しかし店が勝つよう仕向けられている筈のゲームで連勝すれば――当然、店は何とか彼女を負かしてやろうと企み始め、負けていた客はその快勝ぶりにいいぞいいぞと歓声を上げる。
シウムが店の中心、一番大きなルーレットゲームへ参加する頃には、客も店員も関係なしに大勢の人が集まってきていた。
席に着いたシウムの元へ、進行役らしき店員が慇懃な態度で近づく。
「さてお客様。賭けるものと、賭ける目をどうぞ」
するとシウムは――手元のマシュマロとここまでで得た宝物を全て机に置いて。
「ボクはこれを全部賭けるよ。狙う目は……七で!」
そう堂々と宣言すれば、店員は笑みを浮かべ、客はどっと湧き上がる。
熱くなった――ように見せかけて、シウムは全神経をルーレットの玉に集中させていた。
「勝つか負けるか、楽しい勝負の始まりだね♪」
シウムがそう口にすると同時、ルーレットの回転が始まる。シウムと客達がしっと玉を見つめる中、店員達はざわざわと何やら慌ただしく後ろで動き回っていた。
からからから――、段々と玉の速度が緩まり、そして。
――ころん。
「当たりは……なっ、七!?」
進行役の男は信じられないといった様子で叫び、動いていた店員を睨みつける。
「(何で当たらせるんだよ!?)」
「(いやいや、違うって! 細工はしたんだ!)」
「(何だあれ、玉が勝手に――)」
こそこそ、ひそひそと店員は戸惑いと怒りの声を交わしていく。
細工が効かないのも無理はない。ルーレットの最中、玉はシウムの手――不可視の念動力によって、自然に七に止まるよう操られていたのだから。
シウムは賭けたマシュマロに宝物、そして更に景品の宝石や金塊を抱えて拍手を浴びる。悔しそうな店員達を他所目に、彼女は笑顔で街へ出ていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ダークプルティア『ダークパイレーツ』』
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POW : 頼りになる『仲間』だぜ!ダークネスオップファー!
全身を【自身への攻撃を防ぐ為の洗脳配下達の体】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【負傷、接触数、視線、声掛け数、精神干渉】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
SPD : それ、アタイに寄越せよ!ダークネスプリュンダラ!
装備中のアイテム「【対象の武器や強化効果を奪う強欲の闇雫】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ : これがアタイの艦隊だ!ダークネスゲシュペンスト!
【無念や恨みの籠ったカトラスとラッパ銃】で武装した【元配下の海賊や侵略し殺害し支配した被害者】の幽霊をレベル×5体乗せた【浮遊砲撃幽霊船レベル×1隻】を召喚する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「シズホ・トヒソズマ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
――宝物を得た猟兵達が街を歩いていると、やがて全員が中心の広場へと合流する。
一際大きな桜が聳えるその場所で、猟兵を待ち構える人影があった。
「アタイの仲間達を散々コケにしてくれたのは……アンタ達かい?」
そう声を発したのは、海賊のような姿をした一人の女性。その周囲にはぞろぞろと人――店や道端にいた、『イカサマ』で宝を奪おうとしていた人々が集まっていた。
しかし人々の顔は虚ろで、まるでゾンビのように足元がふらついている。恐らく最初から彼女の仲間だったわけではなく、洗脳され、操られているといったほうが正しいだろう。
「島を乗っ取りゲームを広めて、イカサマでも何でもさせて効率よくメガリスを探させようと思ったのに……アンタ達に取られちゃおしまいだ。仕方ないからアタイ、『ダークパイレーツ』が直々に相手してやるよ!」
びしっ、と剣の切っ先を猟兵に向け、ダークパイレーツはにやりと笑う。
「ゲームに勝って気分が良いところだろうけど……その宝、貰っていくよ!!」
勢いよく掲げられた剣が光を返すと同時、うぉぉぉぉ!! と無数の野太い声が上がった。
気配から察するに、彼女はコンキスタドールだ。故に『宝』というのは間違いなく――猟兵が手にしている宝物の中の、『メガリス』だろう。
コンキスタドールにメガリスを渡してしまうわけにはいかない。
メガリスを確保するため、そして島の人々を開放するため、一刻も早くダークパイレーツを倒さなければ。
アリス・セカンドカラー
ふぅん、洗脳された人達で身を護る、と。なるほどなるほど、しかも、その人質に干渉すればするほど強化される、と。
ま、関係ないわね。どれだけ強固な護りを誇ろうとも私の超能力はその内側に発生させられるのだから(鎧無視攻撃)。
目を閉じ背を向ける。オーラ防御で各種耐性を高め、第六感で見なくとも動きは見切れる。予知とテレパシーでの先読みは超能力戦の嗜みよ☆(第六感/見切り/ハッキング)
そして、ダークパイレーツの脳の電気信号をハッキングしての電圧を高める念動力での電撃属性攻撃で感電(マヒ攻撃)させるわ。その前に脳が焼き切れる(焼却)かもだけど(くすくすくす)。
私、約束は守る主義なの。だから、解放させて貰うわ。
操られた人々がわらわらと蠢き輪を作る。彼らは主たるダークパイレーツを護るためか、その身を固く合わせて壁を作り出していた。
「ふぅん……」
アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)は目を眇め、壁になる人々の気配に集中する。
――するとどうやら彼女の視線が人々の方へ向くその間、徐々に壁の護りが強固になっているように感じられた。
「フッ、無理矢理突っ込んでくるかい? 無駄さ、アタイの仲間達を退かそうとすればする程、アンタはこの壁を越えられなくなるからね!」
そう自信満々の様子で、壁の向こうからダークパイレーツが叫ぶ。
「(ま、関係ないわね)」
アリスはなるほどと頷きながらも、心でそう呟いて口元を緩ませた。
――どれだけ人々を壁にして強固な護りを誇ろうと、超能力者であるアリスはあの壁に触れることすら必要ないのだから。
「オールラウンダーサイキッカーの力、魅せてあげる♡」
目を閉じて小さく笑い、アリスはくるりとダークパイレーツに背を向ける。無防備にも見える彼女の体は、ユーベルコードを纏ってその能力を強めていた。
「……諦めたのかい? それとも……ナメてんじゃないだろうね?」
苛立ったようなダークパイレーツの声が響くとほぼ同時、壁を作っていた人々の間から数人の屈強な大男が飛び出してくる。
洗脳され単純な動きになっていると言えど、目を閉じ背を向けたアリスに飛び掛かるのは容易――く、なかった。
「うぉっ!?」
ひらり、とアリスは抜群のタイミングで身を躱す。まるで背中にも目が付いているかのような動きで難なく男達の突進を避け、彼女はそのままふわりと片手を上げた。
「私、秘密は守る主義なの。だから――」
そう、一瞬目を開けた先。
虚ろな目でアリスを追おうとしていたのは、宝物を賭けてゲームを挑んだあの男であった。
「――解放させて貰うわ」
ふっとアリスは遠方、蠢く人の壁――ではなく、その向こうのダークパイレーツの狙いを定める。
彼女が操るのは敵の頭部、その思考を形作る為に脳へ流れる、微かな『電気信号』。
余裕の笑みを浮かべるダークパイレーツの表情は、突如苦痛に歪んだ。
「う、ぐッ!!!?」
輪の中で呻き声が上がった直後、人の壁は徐々に崩れ始める。そしてアリスの周囲にいた男たちも、ダークパイレーツの洗脳が解けたか彼女を追うのを止め、呆然とした様子で目を瞬いていた。
くすくす、とアリスはゆっくり目を開きながら笑う。
壁を失いつつあるダークパイレーツの方へ一歩踏み出すと、彼女は放っていた力を更に強め、電圧を限界まで引き上げた。
「ぐ、ぁああああああッ!!!!!」
一際大きな悲鳴の後、ダークパイレーツは一瞬気を失って地面に倒れる。
アリスは力を解きながら、近くで目を瞬く男に小さくウインクを送るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
この姐さんが黒幕って訳か。だったら、こいつを渡す訳にはいかないな。
さて、操られてる連中を傷付けるのも何だな。
彼らに、手袋「土蜘蛛」に仕込んだ粘着性の網を投射。【捕縛】し【ダッシュ】して突破しボスに接近、斬りかかる。
武器を奪われた場合、UC【空蝉の術】を使用。武器を奪われた自分の残像を残したまま、攻撃を喰らう直前に時間を遡る。所謂「待った」って奴だ。
自身の残像に隠れる様に攻撃を回避し、死角から「フック付きワイヤー」を放ち【だまし討ち】【捕縛】【ロープワーク】で今しがた見た闇雫での強奪行動を縛って封じ、改めて斬りつける。
読心術や幻術は小手先。命懸けの勝負でしか使わない、これが俺の本気のイカサマさ。
「この姐さんが黒幕って訳か」
傷を負いつつも立ち上がるダークパイレーツに、髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)が呟きながら目を向ける。
しかし、二人の視線が合うことはなかった。
ダークパイレーツはただ鍬丸――の手元を見つめ、ぎらりと目を光らせて。
「……それ、アタイに寄越せよ」
その言葉に、鍬丸はゲームで手に入れた『宝』をすっと隠しつつ身構える。コンキスタドールである彼女に、これを渡すわけにはいかないのだ。
宝を渡す気がない鍬丸にダークパイレーツはチッ、と舌打ちし――周囲でふらふらと歩く人々に向かって、ぐるりと大きく剣を振り回す。そして未だ洗脳が解けず残る彼等を従えるように、彼女は鍬丸の方へ剣を向けながら大きく声を上げた。
「行きなッ!!」
途端、ウァァァァァッ!! と人々はまるで飢えたゾンビのような声を上げ、ふらつきながら鍬丸の方へ歩き出す。彼等は一心不乱に腕や脚を動かし、鍬丸を攻撃するべく一斉に彼の元へ向かってきていた。
しかし、それでも。
「……傷付けるのも何だな」
鍬丸はすかさず体勢を変え、手を真っ直ぐに前方の人々へ掲げる。
――襲ってくるとはいえ、彼等は本来倒すべき『敵』ではない。
彼はその手に纏う『土蜘蛛』から粘つく網を投げ放つと、目の前で蠢く人々の体を瞬時に縛り上げた。
網の中で藻掻く彼等の間を抜けて、鍬丸は一気にダークパイレーツの方へ駆けていく。
ダークパイレーツは接近してくる鍬丸に目を見開き――ニッ、と狂ったように笑った。
「――貰った!!!」
きらり、とダークパイレーツの胸部で宝石――彼女をコンキスタドールへと変えた秘宝が光を放つ。そのまま斬りかかった鍬丸の刃に手を伸ばし、武器を奪い取った――瞬間。
「そいつは影さ」
――ぐらり、と。
鍬丸の姿が揺れ、空へ溶けた。
「……!!?」
ダークパイレーツは奪い取った筈の武器に視線を落とす。
確かにそこにあった重みが無い。
それどころか、カウンターを仕掛けようとした自分の構えが、数秒前の体勢へ戻っていた。
「い、今、何が……ッ?」
――ユーベルコード『空蝉の術』。
鍬丸はその力で生み出した残像を囮に、敵の死角へと回り込んでいた。
思考の追い付かないダークパイレーツに、鍬丸は静かに狙いを定めて。
「ッ!?」
鉤爪がダークパイレーツの頬を掠める。
しかしそれに気づこうと、続く攻撃を回避する隙など無かった。
鍬丸は鉤爪を追うように放たれるワイヤーを操り、一度喰らいかけた秘宝の力ごとダークパイレーツの動きを封じる。
そのまま武器を構え直すと、彼は改めてダークパイレーツへその切っ先を向けた。
「これが俺の本気のイカサマさ」
――ぞぶり、と鋭い刃がダークパイレーツの身へ深く突き刺さる。
鍬丸が一気にそれを引き抜けば、ダークパイレーツは甲高い悲鳴を上げながら崩れ落ちるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ハルア・ガーラント(サポート)
オラトリオのバロックメイカー×シンフォニア(19歳女)
口調:丁寧
「よ、よろしくお願いします」
「うぅ……怖い、でも、やってやります!」
自らの力に懐疑的なため、自信なさげです。翼はかなり大型で出し入れできません。短時間であれば誰かを抱えて飛翔できます。
攻撃は背の翼に巻き付いた[咎人の鎖]を[念動力]で動かし、[マヒ攻撃]します。必要があれば[銀曜銃]を使います。防御は[第六感]で攻撃を予感し[オーラ防御]。
怖いけど頑張る……でも怖い!という思考回路です。
UCは味方をサポートするものを優先して使います。恐怖心の方が大きい場合はバロック・ハウリングが発動するかもしれません。
※絡み・アドリブ歓迎です
虎熊・月霞(サポート)
「まー焦らずのんびり行こー。とりあえず昼寝しよぉ」
面倒臭いけど、僕とーじょーってねぇ。いつもどーり野太刀でバッサリと斬り捨てちゃうよぉ?
伊吹流から派生した雷鳴を組み込んだ伊吹"雷切"流、僕の場合は『紫電』を利用した剣術を使ってー雷の速度で近付いてー敵さんを真っ二つにするよぉ。まぁ面倒臭くなったら首刎ねちゃえばいっかぁ、そうすれば大体の生き物って死んじゃうよねぇ?
首の無い敵さん?……うん、まぁそこは高度な柔軟かつ臨機応変に対応していこー。
あ、あとお願いされたら他の猟兵さん達と共闘もするしぃ、お手伝いもするよぉ。ご飯一回奢ってくれるならね!
アレンジ・共闘可
「うぅ……」
島へ駆けつけたハルア・ガーラント(オラトリオのバロックメイカー・f23517)は、先のコンキスタドールとの戦いを遠目に見て縮こまる。
――怖い。でも頑張らないと。――けど、怖い。
彼女がそんな葛藤をしつつ広場に足を踏み入れる中、その隣ではもう一人の猟兵が緩く笑みを浮かべていた。
ハルアより少し背の低い、羅刹の少女。
ふんわり、ゆったりと黒髪を揺らす彼女は、竦むハルアの顔をふっと覗き込んで。
「まーまー、のんびりいこーよ。どうしても怖いなら、ご飯奢ってくれたら手伝うよぉ」
冗談――か、本気か。虎熊・月霞(電紫幻霧・f00285)がそう声を掛ければ、ハルアの表情は心なしか少しばかり緊張を和らげて緩む。
――怖いけど、もう少し頑張ろう。
ハルアは心で頷くと、月霞と共にコンキスタドール『ダークパイレーツ』の元へと歩みだした。
●
ざり、と足音を立て、二人の猟兵がダークパイレーツの前へ出る。
宝を持っていないハルアと月霞に彼女は興味がない様子――かと思いきや、負傷の焦りや苛立ちもあってかぎろりと強く睨みつけるような視線を送っていた。
「アンタ達……邪魔をしに来たってのかい?」
息を荒くしてそう問うダークパイレーツに、ハルアはびくりと肩を揺らす。どうにか怖さを堪えようとする彼女に対し、月霞はするりと野太刀を抜いて。
「面倒臭いし、いつもどーりばっさり斬り捨てちゃっていいかな?」
「ナメた口を……フン、いい度胸だッ!!」
月霞の言葉に挑発されたか、ダークパイレーツは歪んだ笑みと共に剣を構え――勢いよく空へ掲げた。
「見せてやるよ、これがアタイの艦隊だ!!」
――現れたのは、広場を埋め尽くすような数の船。
うじゃうじゃと浮かぶそれらには呻く幽霊達が蠢いており、禍々しい雰囲気を放ちながら猟兵に狙いを定めようとしていた。
「う、うぅ……怖い……」
ダークパイレーツの『艦隊』を前に、ハルアは背の翼を震わせて呟く。
頑張らないと。仲間の力にならないと。そう心を震わせようとするハルアの意思は――ユーベルコード『バロック・ハウリング』を発動させていた。
ガチャン、と無数の船が銃口を二人に向ける中、ハルアの周囲に淡く白い光が浮かび出す。
「近寄らないで下さい!」
彼女が叫んだ瞬間、光は白鷲となって強く羽撃いた。
七十近い白鷲が艦隊――ハルアの心を恐怖に染めようとした者達の元へ向かう。銃撃や砲撃をその身で受け止めながら進む彼等は、艦隊を包むように翼を広げていった。
「……じゃ、僕は敵さん本体だね」
月霞はゆらりと身構えて、ダークパイレーツの方へ向き直る。『艦隊』の手が塞がっている今、月霞の行く手を阻むものは何も無かった。
「奔れ飛電、断ち斬れ紫電――」
そう、彼女が紡ぎ始めれば。
ダークパイレーツはギリ、と歯を軋らせて身構え、カウンターをと月霞の動きに目を凝らす。
見れば、月霞の武器は刀。
近づいてくる一瞬の隙を突けば勝てる――そう、思っていた。
「――雷切流の原点を魅せてあげるよぉ」
ぱり、と月霞の刀が紫電を纏ったかと思えば。
「ッ!!?」
ダークパイレーツは目を見開く。月霞の姿を捉えた瞬間、ぞわりと背筋の凍るような痛みを感じたのだ。
――『雷霆一閃』。
月霞の放ったユーベルコードの一撃は、ダークパイレーツの胴を真横に切り裂いて抜ける。
目にも止まらぬ――それこそ、雷の速度にも等しい斬撃に、ダークパイレーツはただ茫然としたまま口から朱を吐いていた。
そして、ダークパイレーツががくりと膝をつくと同時、空で光っていた白鷲達が一際強く光って。
「――」
無数の船が、幽霊の断末魔と共に消えていく。
白鷲の光が空へ溶けていく中、月霞はゆっくりと刀を納めて息をつくのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シウム・ジョイグルミット
[SPD]
やっと出てきたみたいだね、キミがこの世界のオウガかー
でも残念、宝物は渡さないよ
特にマシュマロは絶対に死守するからね!
さあ、いよいよ戦闘開始!
こっちから攻撃する時は、護身食器達を召喚
【念動力】で操って、色々な方向から狙ってあげるね
変則的に飛ばして、読みづらい動きで攻めていこー
敵の攻撃は【残像】【空中浮遊】でふわふわっと避けちゃおうかな
もし攻撃を避けられそうになかったり、仲間が危なそうだったら『Jack pot』の出番だね
攻撃が強化されてても意味ないよーって教えてあげちゃおう!
成功すればだけどね
……そういえば、どれが本物のメガリスだったんだろう?
食べ物だったら記念に貰っておきたかったなー
「キミがこの世界のオウガかー」
ようやく姿を現した敵の首領に、不思議の国の世界の呼称を口にして。シウム・ジョイグルミット(風の吹くまま気の向くまま・f20781)はダークパイレーツの眼前へと躍り出ると、自分――ではなく抱えている宝物を凝視されていることに気がつく。
ぎゅっと宝物を抱く手を引き締めて、シウムはその意思を言葉とともに表した。
「残念、宝物は渡さないよ。特にマシュマロは絶対にね!」
そう宣言すれば、ダークパイレーツはぎろりとシウムの瞳を睨みつけて。
「……どいつもこいつも生意気な。寄越す気が無いなら無理矢理奪うだけだ!」
ぎらん、とダークパイレーツの胸部で宝石が光を帯びる。
敵の気配がぐっと濃く禍々しく変化したのを感じると、シウムも迎え撃つ構えを見せた。
――ふわり、とシウムの周囲に金属が浮かびだす。
陽の光を返しきらきらと煌めくそれらは、ステーキナイフやカニフォーク、ハニーディッパー――それもシウムが食事に使うには大きめの、『護身用』の食器達であった。
「さあ、行くよ!」
シウムは宝物を抱えたまま、不可視の力で食器達の刃先や先端をダークパイレーツの方へ向ける。そのままふわふわと進む方向を変え、時に進む速度を変えて、シウムは敵を翻弄するように食器達を操った。
「邪魔、だッ!!」
変則的で読みづらい動きに、ダークパイレーツの苛立ちが露わになる。
ナイフを躱したかと思えば背後からカニフォークが。
ハニーディッパーを目で追ったかと思えば真逆の方向からナイフが。
食器達の相手をするのに手一杯で、シウム――否、彼女が持つ宝物に手が届かない。
ギリ、とダークパイレーツが歯を軋らせた直後、その胸の宝石が強い光を放った。
「ダークネス、プリュンダラッ!!」
途端、ダークパイレーツは食器達に裂かれ、殴られながらも――シウムの方へ直進する。
敵の捨て身とも言える攻撃に、シウムは食器達をぐいと自身の元へ引き戻した。
――しかし。
食器達がシウムの盾となる前に、ダークパイレーツが宝物へ手を伸ばす。
間に合わない。シウムはそう確信し――すうっ、と全身の力を抜いた。
「……!?」
突如体勢を崩したシウムに、ダークパイレーツは驚いたように目を見開く。だが諦めたのなら都合が良い、このまま根こそぎ宝物を、と笑みを浮かべたその時。
宝物を凝視していたダークパイレーツは気付いていなかった。
シウムのすぐ後ろで、高速で絵柄を回転させるスロットマシンがユーベルコード『Jack pot』の力で具現化していることに。
止まった絵柄は、『7』、『7』――『7』。
「は〜い、なんと奇跡の大当たり〜♪」
シウムが微笑むと同時、スロットマシンは大量のコイン――ではなく、包み紙でそれを模したチョコレートをどばあっと吐き出す。
ダークパイレーツは大波の如く流れ出すコインチョコに押し戻され、宝物を掴めぬままごろごろと地面へ転がっていってしまった。
シウムは隙だらけになったダークパイレーツに向けて、食器達を一斉に飛ばす。
満身創痍のダークパイレーツはいとも容易く食器に貫かれ――劈くような断末魔のあと、跡形もなくその場から消滅してしまうのであった。
●
コンキスタドールの消えたハリコマ島。
操られていた人々はしっかりと正気を取り戻し、広場の掃除や片付け、そして猟兵の勝利と島の解放を祝う宴の準備を始めていた。
そんな中でも、自分の仕事を終えた人やこっそりと抜けてきた人達が相も変わらず街の端で宝物を賭け、ゲームを行っている。
コンキスタドールやメガリスの存在があろうとなかろうと、この島の人々は娯楽としてそれが好きなのだろう。
シウムはその光景を眺めつつ、ふと。
「……そういえば、どれが本物のメガリスだったんだろう?」
そう首を傾げれば、ふわりと手元から甘い香りが広がる。沢山のマシュマロやゲームで手に入れた宝石、装飾品――島の海岸で見つけたもの全てがそうではないにしても、コンキスタドールが奪おうとしていたということは、猟兵が手にしたもののどれかは本物の『メガリス』だった筈だ。
食べ物だったら記念に貰っておきたかったな、と呟きつつ、シウムは宴の始まる街へと歩いて行くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2020年04月11日
宿敵
『ダークプルティア『ダークパイレーツ』』
を撃破!
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