桜の木の下にはメガリスが埋まっている
●突然だが。
「これは本当の事である!」
唐突に叫びをあげたのはゴッドオブザゴッド・ゴッドゴッドゴッド(黄金存在・f16449)だ。
これだけでは猟兵に何も伝わらない。それを察したのかこほんと一息、説明を開始する。
「諸君、グリードオーシャンにてメガリスの隠された無人島の存在を予知した!」
メガリス。この世界に眠る呪いの秘宝。手にした者はユーベルコードを手にするか、あるいはコンキスタドールになるか。いずれにせよ放置しておいていいものではない。
「向かってもらいたいのは桜の咲き乱れる島、『櫻樹島』! どうやらサクラミラージュから落ちてきたようだな!」
す、と海図を指さす。今はまだ地図には示されていない島だが、予知が正しいのならばこの島の名はいずれ記されることになるのだろう。
「さて、メガリス探索について説明しよう! 鉄甲船に乗り航海を進めるうち、諸君は無数の鳥居と咲き乱れる桜を目にする事となるだろう!」
どうやら目指すべき島の周りには小島が複数浮かんでおり、そのいずれにも鳥居と桜が存在するらしい。
それが何を意味するのかは分からないが、ひょっとしたらメガリス探索のヒントになるかもしれん、とゴッドは続ける。
「とはいえ、上陸までは気楽な旅。波も穏やかで気候もいい! 桜を眺めつつ、飲み食いや会話を弾ませるのもよかろう!」
ひょっとしたらそうする事が鍵になるかもしれない。何しろグリードオーシャンでの予知はあいまいで、明確な答えなどないのだから。
何より今は花見にちょうどいい季節でもある。
「しかし、上陸してからはそうはいかん! なにしろメガリスの眠る島。その影響を受けて多くの危険が待ち受けている! 予知によると咲き乱れる桜が諸君に死を想起させるとの事だが……それ以外にもあるかもしれん! 油断はせんでくれよ!」
桜は生と死の象徴、などという言葉もある。その誘惑に憑りつかれないよう、気を確かにしてメガリスを探索する必要があるだろう。
それまでと同様に桜と鳥居で埋め尽くされた島のどこかに、メガリスは必ず埋まっている。
「さらにもう一つ! 一人のコンキスタドールがメガリスを狙い、この島を目指している光景も予知している! 首尾よくメガリスを手に入れたとしても戦闘は避けられまい!」
コンキスタドールの襲撃は猟兵たちがメガリスを発見した直後。つまりは横取りに来るという事だ。
十分な準備をして返り討ちにしてやるがいい、とゴッドは告げた。
「散々脅かしはしたが諸君ならば必ずや困難に打ち勝ち、メガリスを見つけ出せると信じている! さあ行こうぞ、宝を探しに!」
納斗河 蔵人
お世話になっております。納斗河蔵人です。
今回はグリードオーシャンの無人島で宝探し。桜と鳥居で埋め尽くされた島を探索してメガリスを見つけ出しましょう。
一章は日常となり、島に向かう鉄甲船で花見を楽しみます。
飲んで騒いだりだけでも勿論OKですが、ここで鳥居や桜から何かフラグのようなものを見つけ出せれば二章に反映します。思いついたものがあればプレイングで指定してみてください。
二章は冒険となり、死を想起させる(+α)島の中でメガリスの探索を行います。
三章はボス戦となります。
以上、プレイングをお待ちしています。よろしくお願いします。
第1章 日常
『鳥居の数をかぞえて』
|
POW : 長い階段を駆け上る
SPD : 参道を歩く
WIZ : 本尊跡に御参りする
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鉄甲船は海を行く。彼方には目指す島。
目的地が近づくにつれ、小島の数が増えてきた。
そこにあるのはいずれも鳥居と、桜。
なにを祀っているのか、どんな意味があるのか、船の上からではわからない。
あるものはそこに隠された何かに気付くかもしれない。
あるいはそんなものを気にせずにただこの幻想的な光景を楽しむのもいいだろう。
この海はまだ、わからない事だらけなのだから。
ケルスティン・フレデリクション
あのねあのね、うみって、初めてなの!
ほんとうにぜんぶ、みずなのね。しょっぱいのも、ほんと?
ほんでみたとおり、あおくて、とてもきれい!
おはなみ!
白い小鳥の形をした精霊のルルと一緒に島へと上陸するね!
とりいをくぐって、本尊跡にお参りするよ。
ルル、周りに何かないか調べてくれる?
何か変わったものがあればそこに向かうね。
何も無ければ…のんびり桜の下で座って水筒に入った温かい紅茶を飲みながらお花見するね。
ルルを頭の上に乗せてのほほん。
【連携アドリブOK】
桜雨・カイ
どこの世界でもやはり桜はきれいですね。
普段ならお酒でしょうが、今は依頼中なのでやめておきます。
でも周囲の人と話をしながら花見は楽しみたいです
海上にも桜が浮かんでいて、海の一部も桜色になってますね
…おっと、依頼もきちんとこなさないと
敵がメガリスを狙ってここへくるという事は、もう島の近くにいるかもしれないですね。
人の姿がないか、また鳥居や桜に変わったところがないか、船上から確認してみます
鳥居もいっぱいありますね…普通は鳥居を通り抜けた先が目的地のはず
それぞれの道の先は同じ所にむかっているのでしょうか?
ざぱ、と波が鉄甲船に打ち付ける。
天候は快晴、波も穏やかで順調な航海だ。
「あのねあのね、うみって、初めてなの!」
船首近くでぐ、とこぶしを握り締めて声をあげるのはケルスティン・フレデリクション(始まりノオト・f23272)だ。
白い小鳥の精霊を肩に乗せ、驚きながらも興味津々。
「ほんとうにぜんぶ、みずなのね。しょっぱいのも、ほんと?」
「ええ、あとで確かめてみたらいいかも知れませんね。……ああ、危ないからそんなに身を乗り出さないで」」
桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)がいうのと同時。船とぶつかった波が大きくしぶきをあげた。
「わぷっ」
「はは、早速洗礼を受けてしまいましたか」
「ありがとう……うう、ほんとうにしょっぱいの」
穏やかな笑みと共に差し出された手拭いを受け取り、ケルスティンも少しはにかみながら笑った。
「それにしても、ほんでみたとおり、あおくて、とてもきれい!」
「そうですね、どこまでも続く海というのは心を洗われるような気分です」
とその時、二人はあるものに気付く。
「これ……」
手ぬぐいの中にあったのは、一枚の花びら。
どうやら目指す島は近いようだ。
「どこの世界でもやはり桜は綺麗ですね。花見を楽しみたい気分です」
「おはなみ! ふねのうえでなんて、すてきね!」
船が進むうち、だんだんと小島の姿が見え隠れ。
そのいずれにも鳥居が建てられ、桜の花が咲き誇る。
風と波に舞い上がる花びらは青い海を桜色に染め、それまでとは違った景色を見せていた。
「ルル! 私あのしまが気になるの! ちょっと見て来てくれる?」
小鳥はルル、と呼ばれた声に応え翼をはためかせる。
どうやら人の気配はないようだ。
ゆっくりと、鳥居を飛び越えて小島の中心へと向かったルルであったのだが――
「あれれ?」
いつの間にか姿を消してしまう。
「……おっと、あっちの方から帰ってきますよ」
コンキスタドールを警戒しつつ辺りを見渡していたカイはすぐに気付いた。
小鳥が向かったのとは逆の方から飛んでくるその姿に。
「本殿にお参りしたかったのに、むずかしそうね」
「きっと島にたどり着けばありますよ。……それにしても」
ルルを頭に乗せて、不思議そうな顔をするケルスティンを前に考え込む。
桜が死を想起させるという予知はされていたが、鳥居の方にも何かあるのかもしれない。
「……普通は鳥居を通り抜けた先が目的地のはず。それぞれの道の先は同じ所にむかっているのでしょうか?」
辺りに浮かぶ鳥居は一点を目指しているかのようにも見えるが、船の上から正確な方角を掴むのは難しそうだ。
とはいえ、島に上陸した後も同様に鳥居と桜は立ち並ぶはず。これはメガリス探索のヒントになるかもしれない。
そんな事を想いつつふと見上げると、島の方向、海上には巨大な鳥居が浮かんでいた。
「わ、おっきい」
「船でくぐることもできそうですね」
ゆっくりと、鉄甲船は櫻樹島へと近づきつつあった。
「さて、気を張ってばかりではいけない。せっかくの景色、私も桜を楽しみましょう」
普段ならお酒でしょうが、とのつぶやきに気付いたか。ケルスティンがすっ、とカップを差し出した。
「温かい紅茶を用意してきたの!」
「おっと、これはありがたいですね」
水筒を片手に彼女は自慢げだ。自身の分の紅茶をとくとくと注ぐと、甲板に腰を下ろした。
「すてきね、ルル。桜がたくさん、船の上からながめられるなんて」
頭の上のルルに語り掛けながらのほほんと笑う。そうするうちに鉄甲船に影が差す。
「こんな光景もめったに見られませんからね。楽しんでいきましょう」
「たからもの、みつかりますように!」
パンパン、と手を叩く音。
船は大鳥居をくぐり抜け、メガリスの眠る島を目指す。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジノーヴィー・マルス
アイシャ(f19187)と。
海、海、海。見渡す限り海。……あと鳥居と桜。
新しい世界…というより、ごった煮の世界って感じなんだろうな。
しかし、海と桜を同時に見るってのは、ちょっと新鮮だ。
色々と何かヒントがあるんだろうけど、まぁ…今はアイシャとこの風景を楽しむ事にしようか。
(後々でめんどくせえ事になるんだろうけどな…)
ほらアイシャ、肩乗りなよ。
俺は、桜も良いけど海は好きだな。水平線を眺めるのが特に。
…しかし、あの桜……綺麗なのはいいんだが…何か眺めてると妙な不安に駆られるな。
まぁ、漠然としてて何がどう不安なんだかは分かんねぇ。
直に見に行けば何か分かるだろ。このあと、嫌でもそうするんだから。
アイシャ・ラブラドライト
f17484ジノと
華やぐ風の口調
ジノの肩に座って潮風を感じながらお花見
サクラミラージュでお花見しようって約束がこんな形で叶うなんて思ってもみなかった
ジノ、海は好き?
私は好き…桜も、海も
好きなものを同時に見られるって、贅沢な気分
今はこの景色を一緒に楽しもう
楽しみにしすぎてお菓子沢山買ったから一緒に食べよう
フェアリーランドからプリンやチョコレートを取り出し
まだまだいっぱいあるからね
ジノは勘が鋭いね
私には今のところ穏やかで美しい風景にしか見えないよ
鳥居って神様と私たちの世界を区別するためのものって聞いたことがあるの
着いたら最初の鳥居をくぐる前にご挨拶しよう
そうすれば島の神様も悪い気はしないはずだから
「海、海、海。見渡す限り海。……あと鳥居と桜」
新しい世界。
だが、ジノーヴィー・マルス(ポケットの中は空虚と紙切れ・f17484)はその中に見覚えのある世界を感じ取る。
このグリードオーシャンに浮かぶ島々は異世界から落ちてきたものだという。
ビルの立ち並ぶ島、突き刺さった宇宙船、カラフルに彩られた島――
そして、目の前に咲き乱れる桜は、幻朧桜の咲くあの世界で見た光景だ。
「ごった煮の世界って感じなんだろうな」
「そうね。サクラミラージュでお花見しようって約束がこんな形で叶うなんて、思ってもみなかった」
傍らでフェアリーのアイシャ・ラブラドライト(煌めく風・f19187)がくすりと笑った。
「そうだな……」
無意識に、ジノーヴィーの手は懐のメモ帳へと触れる。
そこに刻まれていた約束が果たされた、という事実は記憶を失った彼らにとって大きな意味を持つ。
「波も穏やか、天気も良好。戦いに向かうとは思えないな」
そんな感慨を誤魔化すように話題を切り替え、アイシャへと手を伸ばす。
「ほらアイシャ、肩乗りなよ」
「うん、ありがと」
ふわりと座ったその重みを感じながら、ふうと一息。
「ねえジノ、海は好き?」
「桜も良いけど海は好きだな。水平線を眺めるのが特に」
桜色に染まる海の向こうへと視線を向けつつ、ジノーヴィーは答える。
アイシャは足をブラブラとさせながら、船のすぐそばまで延びる桜の枝を見つめながら続けた。
「私は好き……桜も、海も」
「しかし、海と桜を同時に見るってのは、ちょっと新鮮だ」
「わかる。好きなものを同時に見られるって、贅沢な気分」
波に花びらが舞う。
桜吹雪とはまた違う幻想的な光景だ。
「……しかし、あの桜……綺麗なのはいいんだが……何か眺めてると妙な不安に駆られるな」
「えっ、そうなの? ジノは勘が鋭いね。私には今のところ穏やかで美しい風景にしか見えないよ」
「まぁ、漠然としてて何がどう不安なんだかは分かんねぇ」
「ふぅん……」
小島に咲く桜と、鳥居。そこにはきっとメガリスにたどり着くヒントがあるのだろう。
だが。
「まぁ……今はアイシャと一緒にこの風景を楽しむ事にしようか」
「うん、この景色を一緒に楽しもう!」
後々でめんどくせえことになるんだろうけどな、と予感を感じながら。
そんな彼らを乗せて鉄甲船は島へと少しずつ近づいていく。
「わぁ、大きな鳥居!」
その行く手には海上にそびえる大鳥居。
何かに気付いたらしい他の猟兵が、その下をくぐり抜けるように針路を取ったらしい。
「へえ、小島だけじゃなくてこんなのもあるんだな」
「ジノ、最初の鳥居をくぐる前に、ちゃんとご挨拶しよう」
鳥居って神様と私たちの世界を区別するためのものって聞いたことがあるの、とアイシャは言う。
「そうすれば島の神様も悪い気はしないはずだから」
肩に乗ったまま、アイシャは一礼。
それに倣って、ジノーヴィーも彼女を落とさないように気をつけながら頭を下げる。
「……ま、こういうのは気持ちが大事っていうしな」
「うん、これできっと大丈夫」
と、そこでアイシャは何かを思い出したようにその手を壺へと伸ばす。
「いけない。楽しみにしすぎてお菓子沢山買ったのに、すっかり忘れてたよ」
「お、甘いものか? さすがに船じゃ吸えないからな、そういうのは助かる」
アイシャは次々とプリンやチョコレートを取り出し、台の上に並べていく。
壺の中、『フェアリーランド』にはどれほどの量が収められているのか、見当もつかない。
「まだまだいっぱいあるからね」
「おいおい、本当に食べきれるのか?」
「んー、向こうの人たちにもおすそ分けするし」
ひらりと宙を舞い、アイシャは甲板の反対側へ。
やり取りをしたかと思えば、何かを抱えて帰ってくる姿が見えた。
「へへ、紅茶貰っちゃった。これをお供に一緒に食べよう」
「お、ありがとさん」
海の風は春でも冷たい。
紅茶の温かさが染み渡るのを感じながら、二人は桜舞う海の旅を楽しむのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『桜の杜に潜むもの』
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POW : 武力で除霊
SPD : アイテムで除霊
WIZ : 祈りで除霊
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鉄甲船は桜吹雪の中を進み、ついに猟兵たちは『櫻樹島』へと上陸する。
ここに至るまでと同様、無数の桜が咲き、無数の鳥居が立ち並ぶ。
不規則に見えるそれは、どうやら島の中央へとその行く先を示しているらしい。
くぐり抜けていけば、メガリスへとたどり着けるのだろうか?
桜の樹の下には屍体が埋まっている。そんな言葉を耳にした事はあるだろうか。
猟兵たちは感じ取る。
桜の魔力を。その誘いを。
生命の母たる海に浮かぶこの島に存在する、『死』を。
それは自身の死か、大切な人の死か。あるいは、名前も知らない人の死なのか。
過去か、今か、未来か。訪れるのはいつなのか、それさえも分からない。
それでも、島を探索する者は誰であっても死の気配を感じずにはいられないだろう。
君の心に纏わりつき、どんなに頭を振っても離れてゆこうとはしない。
メガリスはこの島のどこかに必ず埋まっている。
どうかこの桜の美しさに魂を奪われる事の無いよう。
※
二章ではメガリスの力により猟兵たちは『死』の気配を感じ続けます。
不安になったり恐れを感じたりする人もいるかもしれません。
あるいは、知った事かと突き進む方もいるかもしれません。
死のイメージは目に見えても見えなくても構いませんので、皆様の思うようにどうぞ。
それらに屈することなく(あるいは屈しても立ち上がり)メガリスを探索してください。
プレイングをお待ちしています。
ケルスティン・フレデリクション
…なんだか、へんなかんじが、するの。
暗くて、苦しくて、もがきたくても、もがけない。
耳を塞いでしゃがみ込めば頭の上で小鳥の精霊のルルがピチチ、と鳴く。大丈夫?って。
「…だいじょうぶ」
だって私は頑張ってたからものを見つけるためにここに居るんだから。
立ち上がって、頑張って探すね
つらくても、くるしくても、ここに居る理由がある。
頑張らなきゃいけない理由がある。
だから私の精一杯を込めてここで頑張らなきゃ!
桜と鳥居の中心へ向かったら何か見つかるかな。ルル、お願いできる?
探索してもらいながら、自分も色々探索するね。
がんばる!
桜が舞い散る中、並ぶ鳥居の下をケルスティン・フレデリクション(始まりノオト・f23272)は通り抜けた。
その美しさは疑いようもない。しかし道を進むににつれて、彼女の表情はだんだんと持ち前の明るさを曇らせていく。
(……なんだか、へんなかんじが、するの)
暗くて、苦しくて、もがきたくても、もがけない。
ひらりと手のひらに花びらが舞い降りる。
そんな状態でも足は止まらず、また一つ鳥居をくぐり抜けた。
闇を、悲しみを。すすめ、我の下へ。
(いったい、どこへ? あなたはだあれ?)
聞こえてくる声は止むこともなく、ただその耳に響き続ける。
我の名は、汝の名は――
この島に渦巻くもの。その正体を幼い彼女はまだ知識としてしか知らない。
声と、その言葉が結びつかない。
無限に続く鳥居と桜。
どこまでもいけるようで、どこへも行けない。
いつしか彼女は何も聞こえないように耳を塞ぎ、しゃがみ込んでしまった。
それは、一瞬のことだったのか。それとも長い時間が過ぎていたのか。
ピチチ、と声がする。頭上で小鳥の精霊『ルル』が鳴く。
耳を塞いでいても聞こえたその声に、正気を取り戻す。
背中の汗が冷たい。心配そうなルルに向かって、ケルスティンはぎこちなく微笑んだ。
「……だいじょうぶ」
――だって、私は頑張ってたからものを見つけるためにここにいるんだから。
そう心に思い、膝についた砂を払う。
つらくても、くるしくても、ここに居る理由がある。
顔を上げ、空を仰ぐ。
頑張らなきゃいけない理由がある。
止まっていた足が一歩一歩、前へと進んでいく。
だから、私の精一杯を込めてここで頑張らなきゃ!
声は未だに聞こえ続けている。
桜色に染まった視界の中、朱色の門を潜り抜けて。
その小さな体を必死に前へと進めていく。
「ルル、お願いできる?」
目指すは桜と鳥居の中心。ピチチと鳴いて白い鳥が飛ぶ。
やはり空を行けば迷い、目指す地へはたどり着けない。
まるで――あの狭い部屋に居たときのように、どこへも飛んでいくことはできない。
誘う声はますます増え、その心に重くのしかかる。
だが、こうやって両の足で鳥居の下を進むことで、確かにメガリスへと近づいていると、彼女は確信する。
ルルの重さを頭に感じた。
その背に翼はないけれど。本には載っていないものを目指して。
「……がんばる!」
小さな決意を胸に、ケルスティンは『たからもの』へと歩み続けた。
大成功
🔵🔵🔵
ジノーヴィー・マルス
アイシャ(f19187)と。
さて、桜とご対面ってわけだが……こりゃまぁ。
綺麗は綺麗だけどよ、さっきの不安がデカくなりやがった。
大丈夫かアイシャ、胸ポケット入るか?
…しかし、この不安……分かってきた。
死ぬことの恐怖、ってやつか。
目の前に俺がいやがる。記憶を取り戻した俺だ。機械の様に敵を殺す俺だ。
記憶を取り戻したら『今の俺』が死んで、ああなるのかも知れない。
ああなったら今までの思い出全部忘れるんだとしたら……俺は嫌だ。
(無意識にメモ帳とアイシャが入っている胸ポケットを手で触れようとする)
……今は『お前』にどう言えばいいのか分からねえけど、大事なモンは奪わせねえ。
そう、誰にも。
アイシャ・ラブラドライト
f17484ジノの肩に乗って共に上陸
鳥居を抜ければ見つかるのかな
もしそんなに単純なものでなかったとしても
進んでいけばヒントが見つかるかも
無人島だけど動物は居ないかな
sakurairoで話すことができるから
見かけたら何か知らないか聞いてみよう
死の不安に確かな胸騒ぎを感じて
肩に乗せた両手にぎゅっと力を込めて
お言葉に甘えて胸ポケットに入れてもらう
戦争の時以来だね…ありがとう
あったかくて安心するよ
お礼に歌を歌うね
大丈夫だよって勇気付けるような歌を
こうすると私の気も紛れるの
どんな過去があっても
私はいつも今ここで何を選び取るかが大切だって思ってる
今のジノがそう強く思うなら誰にも奪えないから
ジノ、大丈夫だよ
風が吹く。舞い上がる花びらが二人を包んだ。
「さて、桜とご対面ってわけだが……こりゃまあ」
ジノーヴィー・マルス(ポケットの中は空虚と紙切れ・f17484)はその美しい景色にかすかな寒気を感じ取る。
「綺麗は綺麗だけどよ、さっきの不安がデカくなりやがった」
「私にもわかるよ。さっきまではわからなかったけれど、こうして島を進んでいるとわかる」
答えたのはアイシャ・ラブラドライト(煌めく風・f19187)だ。その身を抱きしめるように震わせ、ジノーヴィーの顔を見上げた。
彼の肩に置いた手に力がこもる。
「大丈夫かアイシャ、胸ポケット入るか?」
「うん……お言葉に甘えさせてもらうよ」
するりとポケットへ体を滑り込ませると、その中にはメモ帳。
手すり代わりにして外をのぞき込む。
「戦争の時以来だね……ありがとう」
その背から感じる体温と、鼓動。
脈を打つ早さがいつもより早い気がした。
彼も不安なのだろう。
しかしアイシャはそれを口には出さず、できる限りに明るい声で歌い出す。
この島に渦巻く何かを振り払うために。
「鳥居を抜ければ見つかるのかな」
「わからないが……他に手がかりもないしな」
まとわりつく重苦しい空気は消えることは無く増し続けているが、きっとメガリスを見つけ出せば止むはず。
そう考えて二人は目的である宝探しを続けていた。
「……またか」
「sakurairoの力でお話しできるかと思ったんだけど……」
アイシャの頭で白とピンクのリボンが揺れる。
だが、見つかるのは動物の死体ばかり。それらは皆、桜の木に寄り添うように倒れその命を終えている。
また一つ、鳥居をくぐった。
なお濃くなるその気配にジノーヴィーはついにその答えを目にすることになる。
「目の前に俺がいやがる」
「ジノ?」
どくん、と鼓動が大きくなったことを感じる。
アイシャの目には映らない。しかし彼の瞳には映る。
「記憶を取り戻した俺だ。機械の様に敵を殺す俺だ」
「どうしたの、何が見えているの?」
ぼんやりと浮かぶ幻影。
自身を『強化』した理由。自らの意思だったのか、あるいは誰かの野望のためだったのか。
だが、その未来にあったはずの姿が今、目の前で繰り広げられている。
二つの影が重なり合い、突き出した刃が互いの胸を貫いた。
「……しかし、この不安……分かってきた。死ぬことの恐怖、ってやつか」
失ったはずの記憶。それを取り戻したとき、自分は変わらずに居られるだろうか?
記憶を取り戻したら『今の俺』が死んで、ああなるのかもしれない。
ああなったら今までの思い出を全部忘れるのだとしたら――
「俺は……嫌だ」
無意識に、ジノーヴィーの手はポケットメモ帳へと伸びる。
その時だった。意識が、突然に覚醒する。
「ジノ、大丈夫だよ」
その手に触れていたのはアイシャの両手。
耳に入ってくるのは、彼女の歌声。
「どんな過去があっても、私はいつも今ここで何を選び取るかが大切だって思ってる」
アイシャは歌う。その思いを乗せて。『シンフォニックキュア』が癒やすのは怪我や病気だけではない。
傷ついた心だって。
「今のジノがそう強く思うなら誰にも奪えないから」
嫌だ、と言った。記憶を失ってから生きてきた時間を失いたくないと思った。
だから。
「大丈夫だよ、ジノ」
はっきりと前を見据えて口にする。
「……今は『お前』にどう言えばいいのか分からねえけど、大事なモンは奪わせねえ」
言葉と共に、幻影が震えた。
「そう、誰にも」
それが『お前』であろうとも。
ばっ、と桜が舞う。人を形取っていた花びらは風に巻き上げられて天へと散っていく。
「……ありがとう、アイシャ」
「私は何もしてないよ。それはジノの力」
それに、とアイシャは続ける。
「ポケットの中はあったかくて、安心するから」
死への誘いは終わったわけではない。
だが、もうその声に魅入られることは無いはずだ。
鳥居をくぐり抜けて、二人はメガリス探索を再開する。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
桜雨・カイ
満開の桜はやはりきれいですね。そして散る姿も。
かつて主とその家族と暮らしていた屋敷の桜を思い出します。
……その記憶にひっぱられ、やはりあの時(屋敷が襲われた時)の記憶も蘇ります
まだその時は人形でしたが、光景は……忘れられるはずがありません
泣き叫ぶ弥彦に抱きしめられている世一(息子)の身体
眠っている姿に近いけど、何か違う
よく分からないけれどざわざわざする
これが何を意味するか分からなくて知りたくなくて、でも動けなくて
自然と歩みが遅くなる
あれが自分のせいだと思うと、立ち止まりたくなる、進んで良いのか
ぐるぐると何度も迷ってしまいます
…それでも、行かないと
まだ弥彦を見つけられてない
せめてあの人だけは…
視界は桜色に染まり、朱色の鳥居が映える。
それはこの島に足を踏み入れた者たちに何を訴えようとしているのか。
「満開の桜はやはりきれいですね。そして散る姿も」
桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は降り注ぐ花びらの中を歩む。
美しさにため息を漏らしながらも、その表情は浮かない。
人形たる彼の、過去の記憶。
かつて主と、その家族と暮らしていたあの屋敷の桜を思い出さずにはいられない。
屋敷のことを思えば、もう一つ。どうしてもあのときの記憶が脳裏に浮かび上がる。
――いや、実際に目の前に。あの鳥居の向こうでその光景が繰り広げられているのだ。
そこには人形があった。
その手に息子を抱きしめ、泣き叫ぶ男の姿があった。
忘れられるはずもない。
「弥彦……世一……」
あのときの自分にはわからなかった。眠っている姿に近いけれど、何か違う。それだけしか。
あのときの自分は、ものも言わずにその光景を見つめるだけ。
よく分からないけれどざわざわする……そんな風に思っていた。
これが何を意味するか分からなくて知りたくなくて、でも動けなくて。
あのとき、動けたとしたら助けられたのだろうか?
助けられなかったとしても、泣き叫ぶその姿に何か言葉をかけられたのかもしれない。
一緒について行くこともできたのかもしれない。
だが、今そこに有るのは『死』だけだ。
どれほどに嘆こうと過去は戻らない。いつか骸の海へと押し流されていくだけの――
その歩みはいつしか鈍くなっていた。
あれが自分のせいだと思うと、立ち止まりたくなる。
メガリスは鳥居の先にある。そう確信しているはずなのに。
まっすぐに見ることができずに目をそらしてしまう。そうして進んだ先には、再び同じ光景。
桜の見せる『死』だけでは無かった。立ち並ぶ鳥居は『迷い』を現していたのかもしれない。
桜の木の下には死体が埋まっている。
覆い隠され、目には見えなくとも確かに心の奥底には『それ』がいるのだ。
「……それでも、行かないと」
迷い、傷つき、苦しんでも。
自分にはやることがある。
「まだ弥彦を見つけられてない。せめてあの人だけは……」
桜の雨が風に舞い、頬をなでた。
重い体を引きずり、繰り返される『死』を目の当たりにする。
過去は力だ。それがたとえ辛い思い出であったとしても。
猟兵として進み続ければ、きっとたどり着くことができる。
そう信じてカイは鳥居をくぐり抜けた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『寛容なる蛇神』
|
POW : 蛇神の抱擁
【蛇体での締め付け】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 縛られた献身
小さな【宝石で抵抗できないように暗示をかけ、口】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【胃。暗示を解ければ抵抗できるようになるの】で、いつでも外に出られる。
WIZ : 囚われし神僕
【神威の手鎖につながった鎖】で武装した【過去に喰らった人々】の幽霊をレベル×5体乗せた【大蛇】を召喚する。
イラスト:遡及
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠空葉・千種」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
かくして、猟兵たちは死の誘いを乗り越えて島の中心部へとたどり着いた。
数多くの鳥居をくぐり抜け、そこにあったのはこの島で最も大きな桜。
誰かがその樹に触れたとき、強い風と共に桜が散った。
不安に包まれていた心のよどみを吹き飛ばすような、花の嵐。
その中心に浮かぶのは桜の花をつけた、一本の杖であった。
「命は巡り、死と再生が輪廻する」
それと同時。猟兵ではない、ひとりの女の声が響く。
「救済の為に、そのメガリスの力が必要なのです」
蛇の半身をもつ『寛容なる蛇神』。
彼女はゆっくりと、猟兵たちの見つけだしたメガリスへ向けて手を伸ばした。
「さあ、おとなしく捧げなさい。救済を邪魔するというのならば力尽くでもいただいていきます」
もしコンキスタドールへとメガリスを渡してしまえば、それは数多の悲劇を生むことは間違いない。
海は命で満ちている。
この海に『死』を広げさせないためにもこのメガリスを渡すわけにはいかないのだ。
ジノーヴィー・マルス
アイシャ(f19187)と。
WIZ
メガリスが必要、っつわれてもなぁ。こっちも探して来いって言われてここに来てる訳だし。…交渉するつもりもねぇから。
あーめんどくせ。けど仕方ねぇか。
やるぞアイシャ、しっかりついて来な。
しかしまぁ、何か背中に変な人乗っけた蛇召喚してきたよ。手数増やそうってか。
まぁ、邪魔くせえし「刺を作ってみる」か。こう自然に囲まれてると一見使えなさそうだが、便利工具セットの中身をバラまけばこのとおり、無機物だから作れるって寸法よ。
アイシャの衝撃波に敵が対応している間、串刺しにした大蛇の影から【ダッシュ】【目立たない】【忍び足】を駆使して蛇神に近づいてダガーを使って【暗殺】を狙うぜ。
アイシャ・ラブラドライト
f19187ジノと
口調:ジノには華やぐ風 敵には通常口調
救済とは何を指すのでしょうか
何にせよ、コンキスタドールであるあなたに
このメガリスを正しく使う力があるとは思えない…
渡すわけにはいかないです
うん…ジノ、一緒にがんばろう
embraceでジノの全身を守る透明な盾を作る
戦っている時の流れるような身のこなしを見て
ジノはすごいね と声に出して褒める
それから心の中で
そういうジノのかっこいいところを一番近くで見て、手伝っていたい、と密かに思う
ジノが集中できるようにmuguetで衝撃波を撃って援護しながら
自分が手を貸せる最良の時を見極め
時がきたら、メガリスは渡さないという強い意志を乗せて
66秒間精一杯歌う
突然のコンキスタドールの出現。予知されていたとはいえここまでタイミングが良すぎると笑えてしまう。
苦笑しながらジノーヴィー・マルス(ポケットの中は空虚と紙切れ・f17484)はぽりぽりと頭をかいた。
「メガリスが必要、っつわれてもなぁ」
ここに至るまでにメガリスが見せた『死』の気配。
あれは気軽に扱っていいものではない……アイシャは自分の力だと言ってくれたが、一人でこの地を訪れていたならばどうなっていたことか。それに、何より。
「こっちも探して来いって言われてここに来てる訳だし」
「そもそも、救済とは何を指すのでしょうか」
ジノーヴィーが面倒くさそうにぼやくと、アイシャ・ラブラドライト(煌めく風・f19187)もポケットから顔を出し、疑問を投げかける。
その言葉に寛容なる蛇神は微笑み、告げる。
「先ほども言いましたが、死と再生の輪廻……苦しみから解き放ち、新たな命ヘの旅立ちへ誘う、それこそが救済です」
この島はサクラミラージュから落ちてきた島。
それは影朧が転生をするようなものかもしれない。だが。
「それってつまり、メガリスを使って人を殺すってことじゃねぇか」
「やはりコンキスタドールであるあなたに、このメガリスを正しく使う力があるとは思えない……」
生きている人間にその力が向けられたならば。
「……交渉するつもりもねぇから」
「……あなたに渡すわけにはいかないです」
アイシャの背で透き通る羽根が震えた。二人の猟兵は蛇神を見据え、宣言する。
「やるぞアイシャ」
「うん……ジノ、一緒にがんばろう」
「何故拒むのですか。そのメガリスの力は私のためにあるようなものだというのに」
蛇神は悲しそうな表情で目を伏せる。それはきっと本心から出た言葉なのだろう。
祈りを捧げるように手を組んだ。
「ならば、力尽くでも」
言葉と共に現れたのは巨大な蛇。その背には鎖に繋がれた人々の幽霊が所狭しと乗せられ、怨嗟の声を上げる。
「あの人たち……」
アイシャは気づく。彼らは蛇神が過去に喰らってきた人々だということに。
「なんか背中に変な人乗っけた蛇召喚してきたよ。手数増やそうってか」
ジノーヴィーはうごめく彼らを眺め、気だるげに便利工具セットのケースを担ぎ上げ――
「まぁ。邪魔くせえし……」
言葉と共に留め具が外され
「『刺を作ってみる』か」
詰められた工具がバラバラと散らばった。それらはみるみる姿を変え、茨の如く絡み合う。
念ずるままに這いずれば、その姿はまるで蛇のようでもあった。
「ひるまず進みなさい、神僕たちよ。それは救済の道です」
蛇神に言われるがまま、幽霊たちは進む。
鎖を振り回し、同様に囚われろと声を上げる。
しかし自在に操られた鉄の棘はその足を、鎖を絡め取り、その呪いが届くことはない。
「ん、上々。アイシャ、しっかりついて来な」
「ジノはすごいね」
手早く幽霊たちの動きを封じた姿にアイシャは感嘆の声を漏らす。
あの技は無機物しか操れない。アイシャには工具セットを使うという発想をとっさには出せなかった。
指先を彼へと向け、その手にはめられたembraceの力で盾を作り出す。
それを確認すると、素早い身のこなしでジノーヴィーは駆け出した。
その背を追いながらアイシャは心の中で思う。
そういうジノのかっこいいところを一番近くで見て、手伝っていたい、と。
リミットは、66秒。『Heartache(ハートエイク)』の鼓動がその身に宿る力を解き放った。
想いを乗せて彼女は歌う。精一杯に。
彼の進む道を示すように、アイシャは飛ぶ。
「ジノに手は出させないよ」
鈴蘭のベルを鳴らしmuguetを掲げると衝撃波が辺りを走る。
高められたその力はたやすく幽霊たちを吹き飛ばし、作り出された空白へと二人は飛び込む。
残り、43秒。
「やりますね。ですがその力、いつまでもつか」
蛇神は微笑みその余裕を崩さない。それには答えず、前へと進む。
振り回される鎖を寄せ付けず目指したその先にいたのは、大蛇。
尾を打ち付ければ大地が揺れ、木から花びらが舞った。
残り、11秒。
「大蛇よ、その小さきものをかみ砕きなさい!」
鋭い牙が迫り来る。
フェアリーの大きさでは一飲みにされてしまうだろう。
しかしその口が閉じることはない。
「メガリスは……渡さない!」
アイシャの内からあふれ出る力が顎の力と拮抗する。
残り、3秒。
大蛇の動きが、止まった。
「ようやく隙を見せたな」
ジノーヴィーの拳が突き刺さり、刻印が刃を打ち出す。
大蛇から悲鳴が上がる。ぐらりとその体が倒れ込み始めた。
それと同時、アイシャの歌声が止んだ。
「ジノ……」
ふわりとした浮遊感。力の代償に訪れる眠りだ。
その光景に蛇神は驚きもせず、笑った。
「大蛇を倒しましたか。しかしそれだけでは――」
「それだけじゃないんだよ」
言うが早いか、蛇神の背にはダガーが突き立てられている。
「な……!」
鮮血が吹き出し、信じられないという顔。当然だ。
まさかこの一瞬でここまで接近されるとは、彼女ですら気づくことはなかったのだ。
「アイシャが繋いでくれた道だ。チャンスを逃がすわけにはいかないんだよ」
右手には刃を、左手には妖精を。
ジノーヴィーは優しく、眠るアイシャの体をポケットの中へと導いた。
大成功
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火土金水・明
「ここに、邪神が居ると聞きました。悲劇を生まさせる訳にはいかないので、あなたの言う救済を邪魔させてもらいます。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃方法は、【先制攻撃】で【高速詠唱】し【破魔】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【サンダーボルト】を【範囲攻撃】にして、『寛容なる蛇神』と召喚されたもの達を巻き込めるようにして【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【見切り】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも、ダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
ケルスティン・フレデリクション
あれが、たからもの?きれい…
聞こえた声には反発をして
「だいじなものだもん!わたさない!」
渡したら大変な事になっちゃう。それは駄目だもん。
いくら優しそうな風貌でも、コンキスタドール、だから…敵。
短刀の【いのり】を構えて攻撃するね。
たくさんの幽霊には(全力魔法)(範囲攻撃)で攻撃するね。小鳥の姿をした精霊のルルにも氷の魔法で後押ししてもらうね
幽霊達を倒したら本体へ攻撃するよ
UC【ひかりのしらべ】で攻撃をするね。きらきらー
敵からの攻撃は避けたいな。
避けられなかったら(オーラ防御)と(激痛耐性)で我慢。
頑張って倒すよ!
【アドリブ&連携OK】
桜雨・カイ
救いたいという気持ちがあるのは理解出来ますが、救済とはいえ、人の命の行方を誰か一人で決めて行うというのは少し違う気がします。メガリスは渡せません
締め付けならばこちらも負けません
距離を取って【想撚糸】発動
蛇の身体は強力なようですが、上半身はどうでしょう
他の人が攻撃する間、逃げられないように結界を網のように編み、蛇神を締め付けます
命は巡る…その考え方は嫌いではありません。
(世一達を思い出しながら)たとえ会うことができなくてもいい。魂が巡り、もしかしてどこかで幸せになっている、そんな事があれば……
「あれが、たからもの? きれい……」
ほぅ、と息をつきながらケルスティン・フレデリクション(始まりノオト・f23272)はつぶやいた。
浮かぶ杖に咲く桜はけして枯れることなくその美しさを保ち続けるだろう。
同時に、その恐ろしさも。
「救いたいという気持ちがあるのは理解出来ますが、救済とはいえ人の命の行方を誰か一人で決めて行うというのは……少し違う気がします」
そんなメガリスを狙うコンキスタドール。
救済を謳う言葉に桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は同意を示しながらも、そのやり方を否定する。
「救済は望んで訪れぬもの……それを私が届けようというのです」
だが、蛇神がその狂気を揺らがせることはない。
彼女にも譲れぬものはあるのだろう。だが、それは滅びへと向かう道。
「これはだいじなものだもん! わたさない!」
「メガリスは渡せません」
猟兵の答えは、一つに決まっている。
「みためは優しそうだけど……」
蛇神の笑みはケルスティンの目から見ても優しさを感じさせる。
だが、彼女の呼び出した大蛇の背からわらわらと降り立つ幽霊たちの姿は、その評価を覆すのに十分だ。
鎖に繋がれ操られるその姿が、彼女の「救済」の結果であることは明らか。
命じられるままに鎖を振り回し猟兵へと襲いかかる姿は、とても救われたとは思えない。
ぎゅ、とその手の短刀を握りしめて、ケルスティンは言う。
「コンキスタドール、だから……敵」
ふわふわと、短刀――「いのり」が纏う光が浮かび上がり、幽霊の方へ漂っていく。
「ルル……いくよ!」
そして、彼女の頭上でピチチ、と小鳥が鳴く。
羽を広げて、もう一鳴き。辺りを舞う桜吹雪に、白いものが混じり始める。
「はじけて!」
その言葉と同時。振り回されていた鎖が凍り付き、その動きを止めた。ルルの放った氷の魔法だ。
突然封じられた鎖に戸惑う間もなく、幽霊の眼前で光がはじけた。
「……なんと」
流石の蛇神もこれには驚きの表情。
伸びた鎖の先、繋がれた幽霊が光と共に消え去り手枷が地に転がる。
こんな風に囚われることが救済であるはずがない。
祈りの力がその鎖を断ち切ったのだ。
「いけませんね。あなたたち、まずは彼女を……」
故に、その狙いはケルスティンに集中する。
ルルの魔法も、彼女の光も小さなものだ。無数の幽霊と鎖の前に徐々に追い詰められていく。
「きゃあ」
そしてついに、一撃が届いた。続いて、もう一撃。打ち付ける鎖。一度捕まってしまえば容易には逃れられない。
「いたくない、いたくないもん……!」
「いけない!」
カイの声が響くが阻まれ、届かない。
耐えるケルスティンに鎖が絡みつく――
「受けよ、天からの贈り物!」
――と、思われたその時。辺りに雷光が走った。
振り回される鎖を伝い、その衝撃は辺りへと広がっていく。
「うう、しびれるー」
ケルスティンも痛みに耐える。彼女だって猟兵だ。それに抗する術は心得ている。
ばたばたと幽霊は倒れ、桜の花びらが巻き上がる。
その向こうで手を掲げる女性。火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)がこの魔法『サンダーボルト』の主だった。
指先に雷の残滓を漂わせながら、危ないところでしたね、と微笑む。
「ここに、邪神が居ると聞きました」
そして、その指先を蛇神へと突きつけ、宣言するのだ。
「悲劇を生ませる訳にはいかないので、あなたの言う救済を邪魔させてもらいます」
再び、その指先から雷光が飛ぶ。
彼女は雷に破魔の力を宿らせ、幽霊たちにこの攻撃を阻ませない。
「もう一撃!」
しかも、これだけ広範囲に影響を及ぼす大魔法を短時間で幾度となく放つのだから、”荒廃の魔王”アゼル=イヴリスの落とし子を自称するのも伊達ではないということか。
「なるほど、見事です。しかし神僕はこれで終わりではありませんよ」
自らも雷に打たれながらそれでも余裕は崩さない。
言葉に違わず、伸びる鎖の数は増え、幽霊たちがずらりと並ぶ。
だが明だって同じだ。その笑みを変えることなく再び魔法を詠唱する。
「それは私もです。いつまでその余裕が続くか試してみましょう」
その足下に、輝く魔法陣が広がった。
雷が走り、桜と氷が舞う戦場をカイは駆ける。
数の多い幽霊たちは厄介だが、あくまで操っているのは蛇神だ。
その動きを封じることができれば、流れをこちらに引き寄せることができるだろう。
「それならば、私にも手があります」
そのためにも、まずは接近しなければ。指先で糸を操り、人形と共に幽霊たちを飛び越える。
「幽霊たちとちがって、その糸には、なんだかあったかいものがあるの」
その姿にケルスティンがそう言葉を漏らした。
本体だから、というだけではない。
カイと『カイ』の間に繋がれた糸には、蛇神が鎖で幽霊を縛り付けるのとは違う『何か』があった。彼女はそれを感じ取ったのだろう。
そんな中、幽霊を乗せてきた大蛇が崩れ落ちた。
「な……!」
時を同じくして、蛇神がうめき声を漏らす。回り込み、その隙を狙っていたアイシャとジノーヴィーが刃を届かせたのだ。
カイもその早業には驚きを隠さない。
「お見事です。私も続きますよ!」
隙を見逃すことなく蛇神へと接近する。人形の振るった蹴りが、その体に突き刺さった。
「……」
確かなダメージが通った。手応えはある。
だが余裕の表情を失った蛇神はそれを気にもとめず、怒りのままに叫びを上げた。
「ユルサナイ……!」
蛇神の下半身が大きくしなり、すさまじい勢いでその背に刃を突き立てた者を締め上げんと風が巻き起こる。
足下が大きく揺れ、眠りにつくアイシャをかばうジノーヴィーが姿勢を崩した。
「危ない!」
先ほどの、ケルスティンの時は間に合わなかった。
だが、目の前で人が傷つくことを見過ごすわけにはいかない。
「ぐっ……」
蛇の体は彼らに届くことなく、間に割り込んだカイを締め上げる。
「愚かな……お前たちに救済など与えない。そこにあるのは、『死』だけだ!」
別人のように怒りに震える蛇神。みちみちと音を立て、体に圧力がかかる。
だが、間に合った。二人の無事を確認するとカイは痛みよりも安堵の表情を見せる。
この状態では人形は動かせない。しかし。
「蛇の身体は強力なようですが、上半身はどうでしょう」
この腕は、動く。指先の念糸から熱を感じる。思いを、ここから紡ぐ。
「――痛みも記憶も、過去を全て抱えてその先へ進みます!」
この島の桜が、メガリスが見せた記憶。それは彼に新たな決意を生み出した。
撚糸がしゅるしゅると音を立て、蛇神へとまとわりつく。『想撚糸(ソウネンシ)』の結界が人の形をした上半身を縛り上げていく。
「コンナモノ……!」
「この糸は想いが紡ぐ糸。あなたには断ち切れません!」
締め上げられながらもカイは糸を操ることをやめない。蛇神の動きを封じれば、自分には仲間がいるのだ。
「さあ、今です!」
「展開、収束……」
最初に、明の雷光が届いた。ジノーヴィーの銃声が響く。
背中の傷から血が噴き出し、下半身の拘束が緩んだ。
「ガァァッ!」
「あと、少し……」
転がり落ちる体でカイはつぶやく。その眼前で、光があふれた。
「ぴかぴか、くるくる、ふわふわ」
ケルスティンの指し示す導きのままに。『ひかりのしらべ』が蛇神を飲み込んだのだ。
光が消えたあとには、桜が舞い散るだけだった。
「命は巡る……その考え方は嫌いではありません」
しかし、蛇神はそう言いながらも自らの神僕としてその魂を捕らえていた。メガリスを手にしてもそれは同じであっただろう。
「たとえ会うことができなくてもいい」
カイはこの島で思い起こされた、失われた命に願う。
「魂が巡り、もしかしてどこかで幸せになっている、そんな事があれば……」
回収したメガリスを乗せ、鉄鋼船は静かに櫻樹島を離れていく。
この島の桜が『死』を見せることはもうない。
いつか再びこの島を訪れることがあったならば、その時は美しく咲き誇る桜が彼らを迎えてくれることだろう。
大成功
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