温泉孤島、シラスナユグサ
●
「くっそ、舟が沈む! 流石にこれじゃ逃げ切れねえか。飛び込むぞ」
「と、飛び込む、って!」
荒れる海。暗い夜を湛える海原は影そのものが暴れ狂っているようですらあった。
そんな中、四人乗れば重量オーバーになってしまうだろう小舟が、最低限の食料などを乗せて航海していた。
とはいえ、既にその食料も波に流されて跡形もないわけだが、それを悲嘆する暇はその船に乗る彼らには与えられてはいなかった。
怪物に追われている。
人間の少年と、彼よりも幼い少女、そして、深海人の男性。
「捕まれってことだ! 一か八かだがな!」
船が割れる。その衝撃に飛び散った破片が少年の頬を叱咤するように叩く。それに急かされるように、少年は、鮫に似た深海人の腕を少女をしつける様に抱き着いていた。
暗い海へと身を投げる。
直後。海の上から放たれた無慈悲なる咆哮が舟を微塵に砕いて、海をうねらせた。
水闇の中に潜った巨大な竜影は、ただ赤い瞳を滾らせていた。
●
「小さな島を発見した」
ルーダスは、
まばらに林があり、湧き出る白砂の池が大小散らばり、周囲は岩礁と砂浜に囲まれている。
あとは細かい粒の珊瑚質な砂の上に柔らかな草原が広がっているだけ。
「まあ、なんの変哲もないただの無人島なんだけれどね」
少し含みのある言い方をして、ルーダスはその島最大の特色を告げる。
「水が全てお湯なんだ」
恐らく、海底火山の上にアックス&ウィザーズの岩山の一部のような土地が落とされたのか。地表に現れる水は、適温の湯なのだという。
白砂を泳がせる池も温泉で、岩礁の隙間を流れる海水も温泉水。砂床の風呂や、岩風呂。天然風呂の島。
軽く砂を掘れば、砂風呂にもなるだろう。
酒やら食料を持ち込んで楽しむもよし。一人温泉を満喫するも、誰かとくつろぐもよし。
なかなかない解放感だろう。まばらな林がパーテーション代わりにもなってくれる。
そう紹介したルーダスは、つまり、今回の収集はどういうことかという視線に、こう答えた。
「うん、存分に楽しんできてくれ、……と言えたならよかっただろうけどね」
残念ながら事件だ、とルーダスは耳を垂らす。
「この島に、漂流者が現れる。さて、どういった素性かは不明だが、コンキスタドールに襲われて漂着するようだ」
しかも、漂着した彼らを追って、この島に襲い来る。
「彼らがどういう素性かはともかく、一先ず助けてあげようじゃないか」
ついでにどういった事情があるのか、も聞けるならいいかもしれない。
「まあ、でもそれまでに時間はある」
とルーダスは、折角の機会だ、と言い、グリモアを輝かせる。
「温泉島も存分に楽しんでくれたまえ」
オーガ
●
温泉島の戦いです。
各章ごとに断章を挟みます。
よろしくお願いします。
第1章 日常
『島に温泉が沸いた』
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POW : いっそ温泉施設を作ってしまおうか?
SPD : 温泉を肴に宴会だ宴会。湯の中で飲む酒は美味しい。
WIZ : のんびりゆったりと温泉に浸かってただただ休もう。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「振り切った、か?」
「いや、んなわきゃねえか」
「……コイツらも限界だ」
「とっとと、陸見つけねえと」
●
暖かな、しかし、ずっと当たっていると体から熱を奪っていくような。
のどかな風がそよいでいた。
立ち上る湯気はそんな風に吹かれて、熱気は篭ることなく、晴れた空へと舞い上がっていく。
清らかな空気に、どことなく微睡むような心地よさを揺蕩わせて、小さな島は海に浮かんでいた。
●第一章:
温泉島を満喫する場面です。
平らな小さな島です。
林がまばらにあり、土は細かい白い砂。柔らかい芝のような草に覆われています。
OPで記載した通りです。
二章断章で漂流者と接触する感じです。
よろしくお願いします。
インディゴ・クロワッサン
アドリブ乱入大歓迎~
「温泉。いい響きだねぇ…」
去年の水着(金のライン入りの紺色のハーフパンツタイプ)を引っ張り出して着替えたら、長い髪は高めに結い留めて…
「さ、無人島の温泉を満喫しちゃうぞー!」
まずは岩風呂だー☆
各世界産の清酒やワインを持ち込んで、お酒を飲むよー♪
「ワインも良いけど、清酒も良いねぇ… 」
本当はおつまみか何かが欲しい所なんだけど…
「ま、風景をつまみに飲むのもまた一興、だよねぇ♪」
飲み終わったら、指定UCを使ってお酒の空き瓶とかを片付けてから岩風呂を満喫するよ☆
「はぁ… 極楽極楽…」
あ、そーだそーだ…上がったら湯冷めしない内にパーカー着とかないとね!
ふふん、と思わず咳き込むような笑いがこみ上げるのは、胃に溜まる酒精が肺を叩く音か、それとも、温泉というものへの享楽にか。
紺色のハーフパンツを履いて、暖かな湯の中へと体を浸けたインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は、澄んだグラスに注ぎこんだ清酒の水面に口づけし、まろやかな甘みと辛みを舌の上で転がして、思わずに綻ぶ頬を指で揉みしだくように包む。
藍色の髪は、高めに束ねて緩やかに肩へと流れている。
色白の肌が、僅かに朱を帯びているのは、酒にか温泉にか。ともかく、手頃な岩に腰を落ち着けて、これまた都合のいい感じの高さと平らさの岩の台の上に、彼が取り出したのは、廻ってきた各世界の清酒やワイン、果実酒などだ。
「んんー、ワインも良いけど、清酒もいいねえ」
朗らかに、広い岩風呂の中で足を伸ばす。
天然の広い浴槽は、彼が足を伸ばしてもぶつかる壁など無く、伸ばし切った足を泳がせて藍色の水着の裾の金色をそよがせようと誰の邪魔にもならない。
澄んだ湯の中で藍色に釣られて揺れ光る金色を眺め、ふと視界の端に映る人影に視線を上げてみる。
「どうもどうも。キミも岩風呂で一杯かい?」
インディゴの浸かっている岩風呂から少し見上げる様にしたそこにいたのは、シャチのキマイラであった。
彼は、話しかけられたインディゴに、軽く挨拶をしてから、柔らかい笑みを浮かべて見せた。
「うん」
といいつつ、シャチの彼は手に持った瓶を揺らして見せる。
「っていっても、俺のはジュースだよ」
「おっと、そうなのか。ちょっと申し訳ないねえ」
「いや、俺がそうしようって思っただけだからね」
どことなく老舗の洋酒を思わせるデザインの瓶に、アルコールの類かと思ったインディゴは、予想が外れた事を少しだけ恥ずかしく思いながらも、その視線がどことなく羨まし気だったことに、きっと彼も酒が嫌いなわけでもないのだろう、と予想する。
その彼は、インディゴにやんわりと気にしないように言ってから、視線を海へと流していた。
「俺はもうちょっと海に近い所に行こうかなって」
ああ、とインディゴはそういえば近くの海水まで温泉の状態になっているんだったか、と思い出す。
「なるほどねえ、確かに僕も気になるかな」
「だよね、てなわけで行ってくるよ」
「ああ、ごゆっくりー」
そんな風にのほほんと彼を見送ったインディゴは、再度、盃を傾ける。
「本当は、いつまみかなにか欲しい所なんだけど……」
少しばかり風が吹いて、湯から上げた上半身をほんのちょっと冷やしていく。とはいえ、湯に温まった体にはむしろちょうどいい風だ。
「景色をつまみに、なんていうのもまた一興、だよねぇ」
そうしてまた一献。透明な清酒を注ぎながら水平線に乾杯して、ふと、濡れたままに風に当たってると流石に湯冷めするかな、と考えた。
「パーカーが、確か入ってたはず」
酒を取り出した茨を纏う扉の向こう。空瓶やらを片付けようと思っていたその空間の中に保管してあるはずの衣服に思いを馳せていた。
温泉から上がったら、取り出して着ておこう。一先ず、風邪をひくことはないだろう。と。
計画を立てながらも、少し冷えた体を湯に深く浸けて、心底から染み出る吐息を湯気に混ぜて吐き出す。
「はあ、極楽極楽……」
そうして、鼻歌でも歌うような調子で、彼は長閑な時間を過ごしていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アルタ・ユーザック
「温泉があるなら、あれが作れる・・・」
普段、依頼をこなして美味しいものを買い食いしたり食べに行ったりはしているけど、温泉地でしか食べられない名物がある。
温泉卵、温泉饅頭、地獄蒸し・・・
温泉に入った後には、手持ちの冷たいミルクを一杯。
「うん、楽しそう」
温泉卵などが出来上がるまでの時間つぶしに、温泉に入ってゆっくり休むのもいいかもしれない。
あくまで、ごはんのついでだけど。
うん、楽しみになってきた
【他の人(特に男性)が近づいてきたらUCの「不可視領域」で隠れますので、お色気ハプニングなどはありません。】
「……もう、いない?」
アルタ・ユーザック(ダンピールの隠密魔法刀士・f26092)は、少し遠くを歩いていた猟兵の姿がもう見えない事を確認して、透明化状態を解除した。
生い立ちからか、人の気配敏く咄嗟の判断に優れる彼女は、誰かの気配に瞬時に姿を透明化して、誰かが視界からいなくなるまで身を隠している。
いつも、肌を露出しない服を。例えば彼女と同年代で、お洒落に青春をかけているような女子であれば、勿体ないと絶叫を上げそうな程、日ごろ肌を露出しない服ばかりを着ている彼女にとっては、他人に湯に浸かっている様を見られるというのは、結構なハードルの高さだった。
それに、羞恥心というか抵抗を感じないのであれば、それはそれで青少年男子には目に毒かもしれないので、幸いでもあったのだが。
別に、彼女の常の服装のセンスが壊滅的で絶叫が上がるわけではない。
ただ、彼女の顔立ちが、紛れもなく美少女であるから、お洒落をさせれば瞬く間に輝くだろうに、という絶叫だ。
要するに、青春時期の男子が頭がのぼせ上がる事を防いでいるとも言う。
「……」
とはいえ、彼女自身が美少女だろうと、しかし、彼女の興味がお洒落に向いていない今現在。その輝きは遠いといってもいいだろう。
体を溶かすような湯の揺らぎに、安らかに息を吸いながら彼女は持ち込んだ『お楽しみ』をじっと見つめる。
「まだ、少しかな」
それは、彼女が青春を費やすといってもいい物であり、趣味そのものだ。
そう、彼女の楽しみとは、今現在少し熱めの湯が湧く温泉の中に沈んでいるそれだった。
何分経っただろう。もう二十分は過ぎている。
白く丸い塊がいくつかネットに入れられて、湯を泳いでいる。
「温泉地、と言えば……温泉饅頭、地獄蒸し、……それから」
それから、とアルタはネットの中の球体の正体を、少しうきうきとした声色で詳らかにした。
「温泉卵」
である。
黄身の凝固点が白身のそれよりも低いという差を利用した料理の一種だ。
プルプルの柔らかい卵白と、まろやかに固まった黄身。卵の旨味や匂いがぎゅっと詰まったそこに出汁醤油などを絡めて、匙に掬って食べるあれだ。
アルタが事前に仕入れた情報では、色々なつくり方があって、味や触感が変わるのか興味があるが、この島でできそうなのは、70度弱の湯に30分程浸ける、というやり方だった。少し温度が低くても問題ないはず。
実に簡単。だが、少し時間がかかるというのが難点だ。早めに殻を開けてもいいんじゃないか、という悪魔の囁きと戦わざるを得ないのだから。
そう思えば、少し特殊な立地だからか、蒸気の噴き出す場所を見つけられなかったのは惜しかった。
けれども、残念と思う反面、例えば火山のあるような島なら地獄蒸しだって作れるだろう。アルタの中で、残念と言う気持ちを、どこか擽ったいような愉しみな心地がもくもくと包み隠していく。
「あと、少し」
アルタは、卵から少し離れた場所の温度の少し低い、体を温める湯に浸かりながら呟く。ほんの少しその言葉の端に笑みを浮かべて、彼女は僅かに風の吹く青い空を仰ぎ見ていた。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトル・サリヴァン
長閑な島だねー。長い旅路の後にこーいう息抜きとっても大切。
しっかり尾鰭とか伸ばしながらまったりしようかな。
木々が目隠しになってるけども服装とか温泉マナーはきちんと。
こういうのは形式大事。
持ち込みは果物のジュースとかで。流石にお酒はねー…無人島だしすぐ動けるようにはしとかないと。
楽しそうだけども我慢我慢。
島の各所を巡ってあちこちの温泉楽しみつつ、海水温泉に注目。
いつもはひんやりいい感じの海水だけど、温かいのも中々乙なもの。
他の来訪者見かけたら挨拶したり。
何となく早めのバカンス気分、ぐーっと体を伸ばして海の方を見たり。
こういう時こそ何か変わったもの見えちゃうかもしれないしね。
※アドリブ絡み等お任せ
「ああー」
なんて、思わずに声を漏らしてしまうのも、青空の下、温かな湯に揺られているせいだろうか。
白砂の窪みのような池に湧く澄んだ温水。
競泳タイプのタイトな水着に身を包みながら、ヴィクトルは、その大柄な体を誰に遠慮する必要も無く、ぐぐ、と湯の中に伸ばしていた。
俯せに湯に浸かりながら、泳ぐように体を頭から尾まで伸ばして寛ぐ。シャチ、似たイルカ等特有の、柔あらかくもゴムのような強い弾力の肌に水膜を纏いながら、徒に足を揺らして波を起こそうとも、迷惑する誰かもいない。
「長閑な島だねー」
この世界に辿り着くまでの鉄甲船航海が、嘘だったかのような平穏である。
「……さて、ここいらは満喫したし」
本命に行こうかな、とヴィクトルはその体を起こしていた。本命、と言うのは、海水の温泉だ。海棲動物のキマイラとしては見逃せないスポットであった。
そうして、彼は海へと足を進めていく。その最中。
「やあ」
とふとそんな声が聞こえて、周囲を見る。
「どうもどうも。キミも岩風呂で一杯かい?」
すると、少し下った場所から、藍色の髪をした男性が岩の合間の湯に浸かりながら、軽く手を上げていた。
その手にはグラスと、傍に酒瓶が数本立っている。
「うん」
お酒かあ、とヴィクトルは、朱に染まるような色白な彼の頬に、少し羨ましくなりながらも、我慢我慢、と言い聞かせる。
体の内を優しく燃やすような酔いの中で、この風と湯を満喫するのも楽しそうだ、という感情を抑えつつ、ヴィクトルは手に持った瓶を揺らして見せた。
「っていっても、俺のはジュースだよ」
と言っても、バーのマスターを生業にする彼の持ち込みだ。
いわゆる『プロ仕様』のジュースだった。深い輝きを秘めているような瓶に揺れる果汁は、鮮やかに透明ではないのにどこか澄んだような鮮やかさだ。
僅かにそれを見つめた男性は、すと目を細めてから、自分の手にある酒精を一目見て、少し照れたようにはにかんだ。
「おっと、そうなのか。ちょっと申し訳ないねえ」
「いや、俺がそうしようって思っただけだからね」
それから、一言二言、藍髪の彼と会話を交わして、ヴィクトルは海岸線の岩間へと降り立っていた。
そのまま山の岩が波に削られた、少し奇妙な形の岩にしゃがみこんで、その海水に手を触れる。
「へえ」
感触は、確かに海水。真水よりも粘度が僅かに高い。肌に馴染む感触。だが、彼が慣れた、ひんやりいい感じの海水は、少しぬるめの温水になっている。
たぷり、と脚を差し入れると、腕に感じたよりも温度が高く、ひたりと驚いて動きを留めるが、慌てる程ではない。
「うん、こういうのも、中々乙なものだね」
そのまま太い尾を伸ばして跨ぐように浅く腰掛け、体をぐ、と伸ばして、深く息を吐いて遠くを見つめる。
「うん?」
遠くの波間。きらきらと光を反射するその中に一瞬、何かがよぎったような気がして。
しかし、それは瞬いた間に消えていってしまった。
「んー、なんとなくバカンス気分だったけど」
忙しくはなりそうだな、とヴィクトルは、もう少しだけバカンスの気分を味わおうと、ジュースの蓋に手を伸ばすのだった。
大成功
🔵🔵🔵
松本・るり遥
●ジンガと
……
……カピバラが、入ってるな……。
ジンガに呼ばれるまま来るなり現れた温泉カピバラに、ジンガを見る。あちゃーって顔してる。もしかしてこの間アルダワにいたヤツ?
は、ジンガの隠したさよりカピバラ……しらはまちゃん?の風呂の入りたさの方が上だったってさ。
んじゃ、二番風呂貰い。
外風呂なんてどのくらいぶりだろ。開放感にすーすーする落ち着かなさもあるけど、青い空と青い海は心地良い。
グリードオーシャンに来て最初にする事が温泉なんて誰が思ったよ。呑気に手で水鉄砲作って、話しかけるついでにジンガに湯を飛ばしつつ、ひとときの平穏を呑気に過ごす。
……んはっ。ジンガとしらはま、今大体同じ顔。
ジンガ・ジンガ
●るり遥と
ンひひ、俺様ちゃん温泉大スキ
あんま人体のキューショ晒すのスキじゃねーんだけど、温泉は別ゥ!
るり遥こっちこっち!
ココんとこ、まだ誰も入ってな――あッ、ちょ、コラ、勝手に!
「ざぶざぶ!」という声と共に、温泉に惹かれ飛び出したのは
俺様ちゃんのキャラじゃねーって、契約して飼ってんの隠してた
アルダワ生まれのカピバラ(精霊)しらはまちゃん
ウソじゃん……勝手に出てきたどころか、イチバン風呂盗られたじゃんよ……
って、るり遥ヌケガケずるっけーの!
蕩けた顔で極楽に浸り
2人と1匹でだらだら平穏を楽しむ
ぶえっ、と水鉄砲をモロに食らえば、なんだか笑いが込み上げてきた
あー……シアワセ……ずっとこーしてたァい……
ジンガ・ジンガ(尋歌・f06126)は、松本・るり遥(乾青・f00727)と共に、この島に足を踏み入れ、手ごろな湯場を探していた。
希望条件は、なんといっても一番風呂である。
まあ、いくらでも一番風呂がある中でも景色を考えたりしていたのだが、その中の一つ。ぴんと来る場所を見つけたのは、果たしてジンガの方であった。
海も見え、他の猟兵の姿も見えない。
最高のロケーションと言わざるを得ない。
「るり遥こっちこっち!」
ジンガは、ここしかないと、るり遥を呼び寄せる。
振り向くのは、桃色の髪に角を生やした、まあ、派手な印象のジンガに比べて、記憶から数秒で攫われてしまうような希薄な印象の、いや、どこか根暗そうな、という印象だけが残るような男性、るり遥だ。
「お、ココんとこまだ誰も――」
と、るり遥にジンガが見つけた湯を指差したその時。
ザブン、という音。
ジンガの首が反射的にその音がした方へとぐるりと向けられた。そして、呼ばれたるり遥も、そちらへと目を向け、そして目にしたのは。
「……カピバラが、入ったな……」
一匹のカピバラが、広い砂の湯舟を独り占めするように波間に、すい、とその体を浮かせている光景だった。
「ざぶざぶ」
「しら……はま?」
一番風呂に浸かり、顔、というか鼻先と目を斜めに水面から覗かせているカピバラに、ジンガの口から思わず、言葉がこぼれ出ていた。
それを知らぬジンガではない。というか、よく知っている存在だ。
「あ、……」
いや、なんで、というよりも、理由はなんとなく分かる。
そもそも、そのカピバラ(的な精霊)と契約をしたのだって、相手から半ば押し付けられたものだったりするわけで。
「あぁー……」
そもそもが、それとの最初の約束がある。『後でとっておきの温泉に、たらふく連れてっちゃるからさァ?』と約束して懐柔したのは、他でもないジンガ自身だ。
そこからして契約の約定に含まれているのなら下手をすれば、温泉に関連した事象に対しては、一切の強制権限がない可能性すら見えてきた。
然し困ったものだ。ジンガとしては、自分のキャラにはあってないと、契約、というか飼育を隠していた存在だ。
そして、不幸なことに、るり遥もそれを見たことがある。というか、それを見たのは最近、ひと月前ほどだったりする。
「……あれって」
と、それに向けていた視線をジンガへと向けると、かち合った目を僅かに揺らしていた。目は口ほどに物を言う、と言うが、この時ほど、それを感じた事はないかもしれない。
「あちゃー」と物を言っている。
アルダワにいた奴? という質問を呑み込んだ。問いかけるまでもなく、そう、なんだろうから。
「……しらはまちゃん、か」
「はぁー……」
可愛い名前を付けるんだね、みたいな副音声まで聞こえる平坦な声がジンガを追い打っていた。
「ジンガの隠したさより、しらはまちゃんの温泉にはいりたさが勝ったってことだろ」
「ウソじゃん……」
と、ジンガはその顔を抑えて、しゃがみこんでいた。
なまじっか、隠していたという事実も丸ごと明るみに出たことで、ダメージが強い。
「勝手に出てきたどころか、イチバン風呂盗られたじゃんよ……」
「んじゃ、二番風呂もらい」
「って、ヌケガケ!?」
容赦ないじゃんよ! と顔を上げた先に、既に服を畳んでおいて、湯に足を差し入れるるり遥がいる。
「するっけーの!」
「あー、良い温度」
「聞いて!?」
一番湯は取られ、二番湯も取られ、ビリッケツである。
もういいやとばかりに、ジンガが服をぽぽいと脱ぎ捨てるのを視界の端で捉えながら、るり遥は、しらはまの泳ぐ湯に首まで浸かると、水圧に押し出されるままに息を吐き出した。
「外風呂なんてどのくらいぶりだろ」
それも開けた空に、開けた海。林やらで他の猟兵達の姿は見えないが、遠くに島の影か、雲の影か、はたまた蜃気楼か、そんなものが見える開放感は、すーすーするような、下着を履いていないような落ち着かなさがあるにはある。が、しかし、青色が身に染みるに心地いい。
青と青。蒼に蒼。ほとんどが青で表現できて、しかし一つとして同じ青の無い空間を仰ぎ見て、ほう、と息を吐いたるり遥の耳を、ジンガの体が水に浸かる音を捉える。
傍に入湯した音に、るり遥は、背を曲げながら浸かるジンガへと口を開く。。
「……この世界に来て、最初にすることが温泉に入る事なんてな」
誰が思ったよ。とるり遥が問いかけた声に、ジンガが半開きの口から返事を返していた。
「そーなあ……、ぁぶえッ」
手で作った水鉄砲でとろけた顔面にお湯をぶっかけてやった。
いや、適当極まる返事が気に食わなかったわけではない。どう返事をしようとぶっかけていたがなんというか、少し気持ちのいい水鉄砲になってしまった。
「なにすん……は、っひっひ」
ぶるる、と唇を震わせて顔に掛かった湯を振り払ったジンガの腹の底から、不意に笑いが湧いて出た。
「どした?」
「いや、なんか」
くつくつと笑うジンガは、ひとしきり笑うと、あー、と快い声を漏らして、言う。
「シアワセぁ……ずっとこーしてたァい……」
とジンガが発した言葉に、るり遥が咳き込むような声を吐き出していた。
今度はジンガが怪訝げに首を傾げる番だった。
「どしたァ」問う。
「……っ、いや、ふ、く」返す。
堪えた笑いをしかし堪え切れずに、弾きしめた口の端から僅かに転び出しながら、るり遥は顔をそむけた。
ふら、と蕩けた顔のカピバラが近くに流れてきたものだから、ますます笑いがこみ上げてくる。
「……ざぶぃ?」
揺蕩うしらはまと同じ顔をしている。と指摘するのは、あと数秒その顔を見てからにしてやろうと思うるり遥だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
はー…どこもかしこも温泉の島、ねぇ。
ホント、いろんな島があるのねぇ。
事件までは時間あるって話だし、せっかくの温泉島だもの。少し堪能してっても罰当たらないわよねぇ?
温泉入りながらお酒飲んでぽへーっとしてようかしらぁ。
持ち込んだキンキンに冷やしたお酒から始めて、温泉熱で温めた燗酒に繋げて。
中々の贅沢よねぇ、コレ。
(風呂で飲酒すると悪酔いする、とはよく言われるが。少なくとも彼女には不要な心配であろう。
…スピリタスやらアブサンやら、文字通りに火を噴く酒をストレートのまま10本単位で空けてなおシラフな女が、その程度でどうこうなるわけはないのだ)
「ホント、いろんな島があるのねぇ」
重ねた掌の盃に湛えた、温かく澄んだ湯にティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、その唇を微笑ませる。
細くすぼめられた瞼は笑みを崩さない。どことなく狙ったような蠱惑的すらも覚える彼女ではあるが。
「ほんとに、どこもかしこも温泉なのね」
ただ、結構温泉を楽しんでいるだけだったりする。
余裕を全身に満たしているように見えるのは、ただ、予知の時間までは堪能しきろうか寛いでいるためで、異性を誘うように無防備に見えるその様は、本当にただ無防備にお湯を楽しんでいるだけだったりする。
少し、体を泳がせるように腕を伸ばした先にあるのは、よく冷えたお酒だ。徳利を傾けて御猪口に透明な酒精を流し込んで、いつもにも増して血色の良くなった桃色の唇に沿わせる。
弾力のある口唇を少し開けた、その隙間に流れ込む液体は、喉を僅かに焼いて体の中へと染みわたっていく。
「はあ……贅沢ねえ」
と息を吐く。
風呂での飲酒は悪酔いを起こす。入浴自体が体内の水分を消費してしまう故に、脱水や血中のアルコール濃度が高まりやすい、というのはよく言われる事ではあるが。
温まる体に、冷えた酒を注ぐ彼女が、それを気にとめることはない。
どころか、冷えたそれらを飲み干して、彼女が起こした行動は、もし、彼女をよく知らない人間がみたら思わず止めに入るような行動であった。
ざ、ぱ。と。
湯の中から取り出したのは。
「冷酒の、お次は、熱燗……よねえ」
これまた、酒であった。
密閉し、湯の中へと浸けていたそれは、程よい温度に温まっていて、空気に触れさせた瞬間から、薄い湯気を立ち上らせている。
冷酒とは打って変わって、酒精の香りがティオレンシアの鼻腔をくすぐる。
冷酒が味の切れ、喉を通る感触を楽しむものであるとすれば、熱燗は香りと舌ざわりを楽しむもの、と言えるかもしれない。
同じ銘柄であるのにもかかわらず、その感じ方は全くの別物にすら感じる。
だが、既に普通の人間であれば、眼を回して倒れていてもおかしくないアルコール摂取ではあるが、しかし、彼女の笑みが崩れることはない。
彼女が鉄皮面だ、というわけではなく。
ティオレンシアは、いわゆるウワバミなどと言われるような分類の人間なのだ。
アルコール度数の高い酒(燃やせば燃える程までの物までを含める)をケース単位で空にするような彼女にとっては、まだまだ序の口も序の口。
「ふふ、一人は一人でいいものねぇ」
誰かが此処にいたのなら、酒を取り上げられていたかもしれない。
そう思えば、一人で来たかいがあったものだ、とティオレンシアは蒼天と蒼海に盃を掲げて、口へと運んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『流れ着いたもの』
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POW : 軽く殴ってみれば分かるだろ。ふんじばってでも正体を明かす。
SPD : 言葉や技術、異能等を駆使して、本質を表して正体を見極める。
WIZ : それによりどんな影響があるのか、周辺や状況から正体を探る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「……漸く、まともな島か」
「建物はねえ、か……無人、いや……?」
「ち、……何か、いやがるな」
「鉄の船に、……妙な感覚だ。クソ、アレが追ってきてるってのに」
●
朗らかな風を巻く波と共に、深海人が漂着した。
その胴体に、気を失った少年と少女を括り付け、疲労困憊のままに深海人は、無人島で出くわした猟兵達と対峙する。
「なんだ……てめえらは」
その手に持つ草臥れた銛を突きつけながら、彼は警戒をしている。
気力だけで立っているような状態。
少年たちも、すぐに処置をしなければ、命が危ない状況だというのは明白だった。
●
第二章。
警戒する鮫深海人を説得とかして、治療して話を聞いたり、彼らを追ってくる敵に準備したりする場面です。
よろしくお願いします。
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
あらあら酷い傷。
ひとまず話は後ねぇ。まずは手当てしないと。●忙殺で○早着替えして応急処置するわぁ。
えーと、ラグ(浄化)とシゲル(太陽エネルギー)をエオロー(結界)で纏めて。アンサズ(聖言)やギューフ(愛)も併用すれば効率良いかしらぁ?
○医療の知識はともかく、あたしじゃそれ以上の治療はできないし。そのテのUC持ってる人がいたらそっちに引き継ぐわねぇ。
落ち着いたらとりあえず○情報収集しましょ。
なんだってまたあんなにボロッボロになってたのぉ?
ただ単に嵐で難破した、ってふうでもなさそうだけど。
良ければ聞かせてくれなんないかしらぁ?なんなら治療のお代、ってことでもいいけど。
「あらあら、酷い傷」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、つい先程まで湯に浸かり酒豪のなんたるかを証明せしめていたはずではあるのに、いつの間にかいつものバーテンダーの服装に身を包んで、冷静に漂着者達を見つめていた。
流石というべきか、そこに酒の濁りは見当たらない。
「やあ、こんにちは。大丈夫?」
……じゃ、ないかな。と朗らかに彼らを気遣う声を発してコンタクトを取ったシャチのキマイラに警戒を和らげる役目を譲り、ティオレンシアは鮫深海人と、その腹に括りつけられた子供へと注意を向けていた。
服は擦りきれ、痛んでいる。全身の擦過傷を緩和したのだろう、それでも刻まれた傷は痛々しく血を滲ませているが、それはあまり問題ではない。
深刻なのは、低体温症だ。
唇は正気を感じない紫に染まり、既に気を失って数時間は経っているだろう。
「……」
警戒を解くように話すキマイラの男性の傍らで、ティオレンシアは静かにルーンを爪の先で刻む。
『ラグ』『シゲル』『エオロー』。『浄化』する『陽』光の『守護』。
劇的な変化を起こすのではなく、警戒する深海人の意識に反応させない程度で降る光に魔力を通す。
少しでも体を暖めるように。
「……」
「漂着者を襲うとか、人としてまずくない?」
いや、シャチだけど。と言葉を重ねながら歩み寄っていく猟兵に、深海人はようやく警戒を解いたのか、銛を落とした。
いや、それとも限界だっただけか、その場に崩れ落ちた。
「……っ」
ティオレンシア達は彼らへと素早く駆け寄り、即座に彼らを縛っていた縄をほどく。
そして、シャチのキマイラがふと伸ばした手を戸惑わせて、ティオレンシアへと視線を投げる。
「さっきの、お願いできる?」
というのは、ルーンの魔術か。ならば、と彼女は頷いて見せた。
「ええ、と言っても私はこれ以上は出来なさそうだけど」
「十分、どうも俺はそういう繊細なのは向いてなくってね」
彼の治癒は、一気に賦活させて治癒するようなやり方、と聞いて、ティオレンシアは深く頷く。
辛うじて動けていた鮫の深海人は、まだ大丈夫かもしれないが、子供二人にそれをいきなりやれば瞬く間に生命力を枯渇させていたかもしれない。
「分かったわ、それなら」
ティオレンシアは先程のルーンを再び刻み、そこに2つ、別のルーンを重ねる。
『サンサズ』『ギューフ』
それぞれ『知恵、聖言』『愛情、才能』を意味するルーン。
それを拡大解釈する。どちらも他者から与えられ、他者へと与えるもの。太陽エネルギーを生命力とする3つのルーンを効率化しながら、周囲からも生命力を彼らに分け与える流れを作る。
ここにあるのは海底火山の温泉、一面を覆う草。生命力に溢れた島だ。相性はいい。
「お話は、また後から聞かせてもらおうかしらねえ?」
次第に血色の良くなっていく三人の姿に、少し安堵しつつ、ティオレンシアはそんな風に一人ごちていた。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトル・サリヴァン
やっぱりお客さん…大変そうだね。
大変そうな時こそ助け合い、まずは落ち着いて貰わないとね。
怖がらせないよう武器は置きジュースだけ持って。
やあこんにちは。大丈夫?と気遣うようにご挨拶。
向こうに塩水じゃない温泉あるからまず濯がない?
疲れてるなら軽く手当てしてからでもいいけれど。
不審がるなら漂流者襲うって人としてまずくない?シャチだけど、と軽口。
同意得てからUCで三人を回復。本格的な治療は体洗ってからかな。
食べ物は生憎手持ちじゃないけどジュース飲む?と勧める。
お代はそうだね、いい感じの料理のレシピ教えてくれれば、と貸し借りなしで。
合間に漂流してきた原因や三人の関係を聞いてみよう。
※アドリブ絡み等お任せ
波間に見えたのは、彼らだったのか。
はたしてそれは分からないが、一先ず、やるべき事は明白だった。
ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は少し考えながら、一歩ずつ脚を踏み出す。
「やあこんにちは。大丈夫?」
優先は治療だ。
しかし警戒されたまま治療して、状況そのものが好転する可能性も低い。
本当なら、今すぐ深海人の胴体から子供達を引き剥がして治療したいが、抵抗されてしまうのはまずい。
疲弊しきっている。脳内麻薬にどうにか意識を保っているような困憊状態。戦闘なんてすれば身が持たない。
「……じゃ、ないか」
見たら分かるもんね。と警戒の視線が肌に突き刺さるのを感じながら、腕を広げて無害をアピールする。
水着姿。それも競泳型、中に何か仕込んでいてもシルエットで浮かぶようなそれだ。武器を隠し持っている、とは思わないだろう。
「向こうに塩水じゃない温泉あるからまず濯がない?」
「何モンだ、てめえら」
もちろん、手当てしてからだけど。と続けたヴィクトルの言葉を遮って、深海人は声を飛ばす。警戒が少し和らいだ。少なくとも話をする価値のある相手と思ってくれたようだ。
ほんの僅かに、側にいた女性が何かをした感覚があった。治癒、いや延命措置じみた魔法か何かのようだ。
意識をより自分に向けるように振る舞う。
「うーん、猟兵って言っても分かるのかな……うん、少なくとも悪い海賊じゃないよ」
「海賊を襲う悪い住民、だってか?」
「え、この島で?」
予想外の懸念にヴィクトルは思わず島を軽く見仰ぐ。とてもじゃないが、そういった用途には向かない島だ。
「ていうか、漂着者を襲うとか、人としてまずくない?」
いや、シャチだけど。とおどけたように冗談を言う。
「……、クソ」
いくら敵意を突きつけても、ゆったりとした喋りを揺らがせないヴィクトルに、深海人は諦めたようにため息を吐いて、銛を下ろした。
「どうにでも、なれ……だな」
「あ、」
吐き捨て、崩れ落ちた彼へとヴィクトルは駆けよりしゃがみこんだ。
やはり限界だったのだろう。
「縄ほどくよ」
と問いかけるヴィクトルに、鮫は僅かに頷くばかりだ。一時が抜けて、そのまま気を失っていこうとしている。
体は揺すらず、簡単な質問をかけながらヴィクトルは伸ばしかけた手を、すこし引っ込めた。
生命活動の速度を操作する雷撃による治癒。だが、今の状態でそれをして逆効果にもなり得る。
「さっきのお願いできる?」
「ええ、と言っても私はこれ以上は出来なさそうだけど」
それ以降は、ヴィクトルが受け持つ。そう頷いて、暫く。
彼女の術式に血色のよくなった彼らへと。
「ちょっと痺れるよ」
一言断って、掌から電流を迸らせた。
大成功
🔵🔵🔵
インディゴ・クロワッサン
(猫耳パーカー着用済)
「おや、お客さんかい?」
にしても、随分とお疲れみたいだねぇ
手当ては他の人がやるだろうし…僕はお話聞く側かなー
「でも、その前に小腹が空いたから何か作ろーっと」
何作ろうかなー… 思い付かないから他の猟兵さんのリクエストでも受けて作ろうかなー
「あ、キミ達も何か食べたいものあるなら言ってねー」
UC:無限収納 から他の猟兵のリクエストの品を取り出して【料理】を始めちゃうよー
まぁ、料理しつつ【聞き耳】そばだてたりして、お話は聞いてるけどね!(笑)
(…なんで、僕は自分の分作れないんだろーねぇ…?)
皆のリクエストが止むまで、僕は【空腹耐性】で耐えよーっと…
泳ぎ続けていたのなら、きっとお腹もすいているだろう。
と、インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は考えた。
というか、自分が小腹が空いていたから、というのは顔に出さずに、茨の纏う扉を彼は潜っていた。
先ほど、温泉に浸かりながら空いた空瓶などを収納していた空間へとつながる扉だ。
その中は、屋敷を模した空間になっている。そこに足を踏み入れながら、インディゴは目当ての物を探す。
大体なんでも入る。
故に、その利便性の反面、その屋敷のどこに何を置いたのかを忘れてしまったりするのが玉に瑕だ。
「いや、もっとこまめに整理しろって事なんだけどねぇ」
ついつい、手を遠ざけてしまうのだ。
「よいしょ、っと」
そういうわけで。
インディゴが、調理の準備を開始出来たのは、説得と応急処置が終わって、漂着者たちが目を覚ました辺りになってからだった。
「さ、何を作ろうか」
「あら、それならスモークチキンとかあればうれしいわねぇ」
「燻製の鶏肉か、それなら確か……ん?」
と、差し込まれた声に、材料を探しに行こうと自然に移る思考に、待ったをかける。
なんで、普通にリクエストきいてるんだ? と。
「……あら、どうかしたのかしら?」
目の前にほんわりと微笑むのは、確か鮫の深海人の説得へと向かっていた女性か。
「お、なんだ飯か! ああ、すまねえな、何から何まで!」
と、その背後から、さっきまで倒れこんでいたはずの鮫深海人がのしのしと近づいてきていた。
その後ろに、シャチのキマイラ、そして少年と少女がおずおずと付いてきている。
言葉を交わして幾らか打ち解けたのだろうか。
「あー……」
なんとなく、その空気を壊そう、なんて考えは浮かばず。
「うん、他に何が食いたい?」
そうして、インディゴはリクエストを集めていた。
というわけで。
「えっと、なんだったか。桜が咲いてる島の香辛料とドラゴン? とかの伝承がある島の魚を、ゲンダイシャカイ、とかそういう島の特産の野菜を、ごちゃっとした料理が、美味くてな」
「へえ、……聞く限り、凄い異世界混合料理だ。それは興味あるかも……」
と鮫と鯱の会話の中で、ちらりと向けられた視線に、インディゴは思わずに、ええ、とつぶやいていた。
「いやいや、……流石にそれだけだと……、えっと、どんなんだ?」
と言いつつ、それらしい材料を探そうとするのは、彼の性格からか。
合間に、妙な海賊の変な儀式を盗み見て、逃げ出したら、海竜に睨まれてここまで逃げてきた、という情報を聞きかじりながら、調理に専念せざるを得なかった。
くぅ、と鳴ったその腹の音を聞く者はだれもおらず。
「……なぁんで、こうなったかなあ」
もはや小腹が空いたではなく、お腹が空いて仕方ない、にまで達した欲求にも、インディゴは少し腹を抑えながら、熱する鉄板の前に立ち続けるのだった。
果たして、彼が空腹を満たす時は来るのだろうか。
それは、神のみぞ知る、というものなのかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・クロセ(サポート)
真紅の瞳。燃える炎。あふれる勇気。直情正義、元気全開、単純明快!
正しい心で悪しきを討ち、そして弱き者を救い、その盾とならん、我こそは義侠のスーパーセル!
スーパー純粋熱血、ハイパーテンプレ系ヒロイン、それがステラです。
一人称は「アタシ」ですが殆どの猟兵は先輩に相当するので話すときは「わたし、あなた」といった礼儀正しい振舞いとなります。
探索系はストレートな解決法を選び、
戦闘では正々堂々と敵の正面に立って攻撃を引き受け味方にチャンスを作る方が好みです。なお、近接戦闘派です。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
正義を大事にするので、他の猟兵の意図を阻害したり公序良俗に反する行動はしません。
「あ? ああ、あのガキどもか。さあ、事情は知らねえが」
岩に座って、皿の上の何というのか分からない、海鮮物をスパイスと一緒に葉で包んで蒸し焼きにした料理をがつがつと平らげる鮫の深海人は言う。
未だ猟兵達を警戒する少年と、どこか虚ろげな目をした少女の素性を問われて、だ。話したくない、というような雰囲気ではなく、本当に何も知らない、といった様子。
いや、演技であるかどうかを見抜くほどの慧眼を持っているとは、自分でも思ってはいないけれど。
「何かから逃げてるみたいだったから、攫ってやった」
その、最後の言葉だけが嘘だという事ははっきりと分かった。
隠れる少年の表情がそれを物語っている。
「そしたら、まあ、あの海竜に襲われて、こんなどこだか知らない島に流れ着いちまった」
「それでも、見捨てなかったんですね」
「……、いざという時の餌囮だ、つってもニマニマ笑うんだろうよ」
「ふふ、馬鹿にしてませんよ。嬉しいだけです」
返す言葉に気まずそうに顔をしかめる。鮫、いわゆる魚の顔をしているのに表情は豊かなものだ。
ともかく、と彼は腹に食料を詰め込んで、背をぐっと伸ばす。
「あの手合いは、諦めが悪い……、陽が落ちる前にアンタらも――」
「いいえ」
ステラ・クロセ(星の光は紅焔となる・f12371)は、烈火に燃えるような炎紅の瞳を輝かせていた。
楽しいのではなく、嬉しいだけだ。
猟兵の仕事として、ではなく、彼女が彼女として、彼らが助ける事に全力を尽くそうと思える相手で良かったと。
「ここで、倒してしまいましょう」
ステラは、周囲の猟兵達へと視線を巡らせる。
少し風が出てきた。海風に重い湿気が混ざる。嵐の前兆がステラの明るい楊梅の髪を揺らす。
鮫の彼は、静かに息を呑んだ。やはり思ったよりも感情が豊かだ。あまりに伝わる感情に、見開いた鋭い眼と空いた口の牙に危うさすら感じられない。
「は、……いや、アンタらがどんなメガリスを持ってんのか知らねえが、数人でどうにかできるような相手じゃねえぞ」
とは言うが、例えそうだったとして、彼女が言葉を翻すつもりはない。
まあ、もしステラたちが負けそうになるのであれば。
「その時は、わたしたちの鉄甲船で逃げましょう」
見捨てるつもりは一切ないと。
鮫の深海人と、そしてその影に隠れる様にする少年たちへと、ステラは一つウインクを放っていた。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『シーサーペント』
|
POW : 海神の咆哮
自身の【霊力】を代償に、【邪悪の咆哮】を籠めた一撃を放つ。自分にとって霊力を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : 大渦大回転
【体を高速回転させ、強力な水竜巻】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 深海の王者
【海竜の血】を降らせる事で、戦場全体が【グリードオーシャンの深海】と同じ環境に変化する。[グリードオーシャンの深海]に適応した者の行動成功率が上昇する。
イラスト:ハギワラ キョウヘイ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
狂える竜が、荒れる並みと共にその姿を、白浜の浅瀬へとその身を乗り出した。
聳える鎌首が、黒く空を閉ざす雲を従える様に、その目に定めた標的を捉え、そして、猟兵達を捉える。
波が揺れる。
竜に忠誠を誓い、その感情のままに委ねる様に、渦を巻き飛沫上げる。
青の巨体を前に、猟兵達は白い砂を踏みしめた。
●
第三章。
シーサーペントとの闘いです。
頑張ってください。
よろしくお願いします。
バスティオン・ヴェクターライン(サポート)
戦闘は盾群付右義腕による【盾受け】で敵の攻撃の受け止め+気迫と鬼気迫る眼力で【恐怖を与える】事による敵の注意の引きつけ
護りに徹し味方に攻撃が向かないように立ち回る
ボス戦では敵の大技を【ドーピング】によって引き出した【怪力】と右義腕の出力、【激痛耐性】による打たれ強さを活かした【グラップル】で受け止め、そのまま抑えて味方が大技を出す【時間稼ぎ】をしたり握りつぶして【破壊工作】したりする。
UCは【セイズ・アンド・ユーズ】によるUC封印、敢えて攻撃を受けて【ライオンズ・ハート】を発動させる、【タイガー・スープレックス】で敵の大型武器・兵器を奪って振り回す等。
その他お任せ・他猟兵との絡みやアレンジ歓迎
月夜・玲(サポート)
『さてと、I.S.T起動。お仕事お仕事。』
口調 元気(私、~君、だね、だよ、だよね、なのかな? )
お仕事ついでに研究も出来るんだから、この仕事良いよねぇ
さあ、私の研究成果の実験台になってもらうよ
模造神器という独自の兵器開発を生き甲斐とする研究者
誰にでも気さくに砕けた口調で話しかける
戦いは全て研究の為、楽しみながら戦闘を行う
全ては研究の為、研究と戦闘を楽しめる猟兵生活は結構気に入っている
戦闘スタイルは4本の模造神器から2本を選び、二刀流で敵と戦う形です
UCで遠距離戦闘にも対応したSF剣士
日常ではのんびりと景色を楽しんだり風情を楽しんだり
冒険では考察しながらじっくり進む
あとはお任せ!
奈々詩・空(サポート)
『気づいたら背後にいるガール』
妖狐の咎人殺し × グールドライバー
年齢 7歳 女
外見 107.8cm
特徴 だらしない ポニーテール 実は過去の記憶が無い うろちょろしてる お尻が大きい
口調 ランダム(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)
戦闘中は 何とか固定(オレ、キミ、か、だろ、かよ、~か?)
戦闘以外は口調はころころチェンジ
過去がないため基本的に知りたいことには積極的に行動する
機械城登場時には両腕を組んで出撃
虚偽・うつろぎ(サポート)
世界問わず大歓迎
世界を超えての自爆活動だよ
アドリブ連携等ご自由にどぞー
登場即自爆
とにもかくにも速攻で自爆
台詞よりも活躍よりも速攻で自爆することが最優先
1歩も動かず即自爆
自爆自爆自爆
何かいきなり自爆する動く怪奇現象
自爆という概念生物
技能:捨て身の一撃を用いてのオウサツモードによる広範囲自爆
対象は範囲内の敵全て
強化は攻撃力重視
射程範囲内に敵が1体でもいれば速攻で自爆
自爆することが最重要
なので敵がいなくても自爆するよ
近づかない動かない、即自爆
捨て身の一撃なので自爆は1回のみ
1回限りの大爆発
自爆後は爆発四散して退場さ
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
アレがあなたたちこんなにした元凶なのねぇ。
帆っぽっ得のもちょっと寝覚め悪いし。きっちり潰しときましょ。
…とは言うものの、あたしデカブツ相手はあんまり得意じゃないのよねぇ…
こいつの竜巻って攻防一体の防壁だし。なんとか止めないと面倒ねぇ。
初動を〇見切ってミッドナイトレースに○騎乗して突撃。○サーフィンの要領で竜巻のてっぺんに陣取って●的殺を撃ちこむわぁ。
UCを封じられたら御の字ってとこかしらぁ?
刻むルーンはイサ・アンサズ・ニイド。「氷結」の「聖言」にて「束縛」する…水は、あなただけの味方をするわけじゃないのよぉ?
ヴィクトル・サリヴァン
へえ、これに追われてきたんだね。
本当ここまで来れたのは奇跡だろう。
だから、もう一つくらい奇跡があってもいいよね。
海の仲間たちとして、困った人は見捨てないものだよ。
…そーいえば名前聞いてなかった、あとで教えてねーと三人に言ってから気軽に浅瀬へ。
相手の攻撃は寧ろうってつけ、マッコウまでは無理だけども潜水は得意だし。
と言っても戦闘は勝手違うので高速無酸素詠唱で水の壁作ったり水流操作して戦いやすいよう調整。
攻撃はUC、重力と渦潮合成して敵を圧し潰すように拘束。
そこから他の人への連携に繋がれば十全。
戦闘後は…三人にこれからどうするのか聞いてみるかな。
何か助けになれればいいんだけど。
※アドリブ絡み等お任せ
●
聳える竜体を見上げ、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は戦き震える三人へと、落ち着き払った調子で声をかけた。
「アレがあなたたちこんなにした元凶なのねぇ」
彼らの顔色はいくらか回復している。だが、血色が良くなった事でむしろ、その体に刻まれた傷や疲労がありありと浮かんでいる。今も、ただ命の危機に体を無理矢理に動かせているだけで、本来ならば体を横にして眠っているべき状態なのは、素人目にも分かる。
「あ、ああ……やっぱりあんなのに真っ正面から行くなんて」
「きっちり潰しときましょ」
放っぽって逃げて他に移っても目覚めが悪いしね。と穏やかにすら笑うティオレンシアに、鮫の深海人は思わずに閉口した。
●
さて、話は変わるが。
古今東西。
最大の攻撃となりえる策を探求されてきた歴史の中で、しかし、確実とされてきただろう攻撃方法がある。
それは何か、奇襲である。
背後から、味方から、宣戦布告前から、背を向けさせて、こちらを向けさせて、闇から、光から。
その次に、防御である。
相手を疲弊させ、戦況の指揮を掴み取るその千載一遇のチャンスを、確実に掴み取る余力を隠し、一斉にイニシアチブを掻っ攫う。
まるで相反するような裂くではあるが、しかし、それは互いに別種の物であり、そして両立が可能なものである。
――みたいな。
そんな話は虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)にとってはどうでもよくて。
「敵だね!!」
つまり。
「爆発だねッ!!!!」
そういう事である。
海を統べ、空を統べるかのように登場したその巨体へと、影が伸び上がる。ギュガ、ジッとまるでその体を武装するかのように黒い幾本もの線が奔る。
戦法とか、連携とか、そういうのは一旦置いておいて。
うつろぎは一も二もなく、その海竜へと海中から伸びあがったそれが螺旋状にその首へと絡みつき。
「な、んだぁ……!?」
鮫が驚愕の声をあげる、と同時。
ゴ、と黒いその影の中に光が溢れ、ゴ、――ァッ!! と爆炎が竜を諸ともに海面を激しく叩き、衝撃と共に巨大な水柱を作り出していた。
海竜を覆う白い柱に、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は一言。
「……わぁ」
と、一部始終を見ていた猟兵と漂流者三人の総意を口にしていた。
かの敵が姿を表した瞬間には、行動に移っていただろう速攻戦術に舌を巻きつつ、のしのしとヴィクトルは海へと踏み込み。
見た。
爆発で打ち上がった柱が渦を巻く。
「まあ、そうだよね」
あの一撃で倒されてくれるなら、それはそれで良かったけれど。
そう言うわけにもいくまいと。
「それじゃあ、そういうことで。宜しくね」
後ろの猟兵達を振り返り、飛び込んだ瞬間に。
――ギュ、ォアアアアッ!!
海の叫びが、渦巻き弾けた海水を裂いて、響き渡った。
●
「ええ宜しく、何て言うけど……私はデカブツ相手は得意じゃないのよね」
簡単な連携の共有だけして、後は適宜自己判断、という作戦もへったくれもない方針で始まる戦闘に、ティオレンシアは誰ともなく、呟いてみると。
「おや、私は好きだよ。大きな相手」
そんな声が返ってきた。
言葉通りどこか嬉しげに弾む声に振り返ってみると、二振りの武装を手にする女性が笑っている。
前髪に一房青いメッシュを流す彼女は言う。
「私の研究成果がどれ程通用するのか、気になって仕方ないからね」猟兵である以前に研究者である彼女、月夜・玲(頂の探究者・f01605)はその研究成果の一部である武装を揺らして見せた。
「それじゃあ、頼りにしてもいいかしらあ?」
「ああ、任されよう」
玲は、ティオレンシアが跨がったバイクのような乗り物へと興味深そうに視線を向ける。
「時に、それは……」
「頂き物なの」
ティオレンシアは、そう言いながらそれ、ミッドナイトレースを起動させる。沸き上がるのは超文明技術の駆動音。
「UFOなんだけどね」
●
玲は、駆け抜けていったバイクを見送り、雨のごとく降り注ぐ海水に眉を潜めた。
僅かに赤く染まるのは、かの海竜の血液か。
「……っ!」
直後、全身が巨大な手に握り潰される感覚に襲われた。その時自らに起こった異常に、玲の能は俊敏に仮定を組み立てる。
呼吸が上手くいかない。圧、そして、空気の変質。
「深海の環境……か」
咄嗟にオーラを纏い、影響を抑える玲の目に、高度を落とすティオレンシアとそれを狙いその顎を開く海竜が映っていた。
「いいや、私を相手にしてもらわねば困るよ」
その彷徨が発せられる前に、玲が握る武装の切っ先を、その開いたあぎとへと差し向ける。
●
ティオレンシアの目にそれは辛うじて映っていた。玲が向けた切っ先。
それに倣うように、海竜の口が不可視の刃が振るわれたように割き斬られたのだ。
――ゴ、ァアア!!
バイク型のUFOは、叫ぶ音を貫くように駆ける。
頂き物、といったが実際ヒーローズアースの敵勢力から鹵獲し、得たものであるそれは、しかしティオレンシアの意思に従っている。
玲が雷電を纏い海竜へと斬りかかると同時に、海竜が身を捩る。
いや、その身は旋回し、瞬く間に海水を巻き上げ水に質量を増した竜巻へと変じていたのだ。
「……っ」
肺が押し潰されて、呼気が持たない。空気が粘性を持つように重い。
速度を上げながら、朧気になる視界の端で玲が重量の暴力に押し負け弾き飛ばされたのが見える。
そうしてティオレンシアがその意識を手放しかけた、その時。
ふ、と体を縛っていた圧力が拭い去られた。
●
よく、生きていたものだ。と、ヴィクトルは感心する。
誰の事か、といえば当然、あの漂流者達だ。
このコンキスタドールに、子供二人連れた状態で追われ、五体満足で避難している。
(これはもう奇跡だろうねえ)
何かひとつ違えば、瞬く間に命を落としていただろう逃避行。
そしてその先に、猟兵達の予知できる範囲の島があった。
水流を操作し、時に妨害を、時に攻撃へと転用しながらヴィクトルは、その奇跡としかいえぬ幸運に、どことなく愉快さを感じて笑っていた。
(なら、もう一つの奇跡は、俺たちが起こすのかな?)
海面から見上げれば、バイクへと跨がり、竜巻へと挑まんとするティオレンシアが見える。
だが、彼女もこの水圧と海流のごとき重い空気に苦戦しているようだ。
深海の環境。
ヴィクトルにとって、それはただ忌避するだけのものではない。
シャチのキマイラである彼にとって、海の環境はむしろ心地良いまである。
(まあ、流石に深海ってのはしんどいけど)
マッコウクジラ等には流石に劣るが、しかし数十分息継ぎ無しに潜水することなどは容易いのだ。
言ってしまえば、彼は、生来この環境にある程度適応しているとも言える。
もう一つ。
ヴィクトルが、この環境に感謝する事がある。
(環境を作ってはいても、環境の掌握はされてない)
ならば、それを利用することは難しくはない。
(深海の水圧。――使わせてもらうよ)
無酸素下での高速詠唱。
本来混じりあわない、属性と現象が重なりあう。
ゾ、――ボ、ッ。と。
周囲に満ちた『圧』を集め、まとめ、渦潮と合成する。
酷く重く歪んだ効果音を響かせて、それは海面から巻き上がった水の渦と重なり、鈍重な音すらかき鳴らし、互いの制御を奪いあい始めていた。
押し潰す重力の渦と、弾き散らす暴水の渦が、海竜の動きを縛りつけている。
(さて、動きは緩めた。どうするつもりなんだろうね、彼女)
制御を完全に取り戻したらしいバイクをヴィクトルは興味深そうに見上げる。
ヴィクトルの作り上げた水の壁と竜巻をサーフィンのように波乗り、ティオレンシアの乗ったバイクが駆け上がっていく。
●
ヴィクトルと海竜、その両方の制御が入り交じる水流は、少しでも間違った場所の触れれば瞬く間に削り潰されそうな荒々しさを秘めていた。
それでも、やや強引に、というか、こちらも一歩間違えば機体ごとティオレンシアの体を打ち上げてしまいそうな勢いで立ち上がる水の壁を上り、せめぐ竜巻の上へと舞い上がっていた。
深海領域から離れたのか。空気の粘性も消え、思わずに新鮮な空気を深呼吸していた。
「繊細なのは向いてない、って、本当なのねえ」
漂流者の治癒の際聞いたヴィクトルの台詞を実感しながら、狙いを定める。
渦の頭上。つまり、海竜の真上へと飛び出したティオレンシアは、敵からも丸見えとなる。
ゴァ、と竜の顎が開く。そして、その咆哮は。
――白く瞬く薄氷に埋もれて消えた。
『イサ』『アンサズ』『ニイド』
『氷結』の『聖言』にて『束縛』する。
放たれたルーン魔法が、その体と周囲の水流を、強固な氷へと変化させたのだ。
漏れ発された、飛沫でできた薄氷を砕くだけの咆哮に耳を傾けながら、薄い目の奥に赤を光らせ、見下ろした。
「水は、あなただけの味方をするわけじゃないのよぉ?」
ぱき、りと氷が割れる。まだ倒せてはいない。それでも、深海領域へと戻る必要性を感じることなく、上空を漂っていた。
●
「おー、強引に行ったね」
ヴィクトルは、巨大な氷塔を見上げて感嘆の声をあげた。
深海の重力、水流の檻。それを中身を縛る氷塊の鎧へと変えたティオレンシアから、その視線は海ではなく陸。
浜へと向けられていた。
平たい無人島であるはずだった。
ならば、そこに聳える城壁と、その奥の人型の城は、紛れもなく猟兵の仕業だ。
まあ、事前に話だけは聞いていたのだが、実物を見るのちはやはり実感の差があるものだ。
「派手だねえ」
100mは越すだろうか。そんな巨大建造物に、しかし、のんびりとした口調を崩すことはないのだった。
●
さて。
一分にも満たぬ、そんな攻防を城壁の歩廊にて眺めるおっさんがいた。
バスティオン・ヴェクターライン(戦場の錆色城塞・f06298)である。
「俺の出番、あるのかねえ」
うねり、捻れる氷の塔に閉じ込められた海竜。
傍観と共にそれを見ていたバスティオンは嘆息する。
そもそも、深海領域がこの場に発生していないのは、周囲の砂粒までをも盾とし、その血の混ざる水滴を全て弾いた彼自身の功績ということを、失念している。
いや、事実、危なそうな雨が降るから傘を差した程度の認識でしかないので、守った等とは考えていないのだ。
せっかく現場へと出てきたのに、手持ち無沙汰にすら感じられていた。まさにその時。
ピシィッ!! と遠く、といっても数100m程の距離だが、氷の砕ける音が連鎖した。
音が花火のように、海を揺らし。
ゴッ、パ!! と白い塔を砕いて海竜が姿を現した、直後。
あぎとが開き。
――キュゴ、アアアア!!
咆哮の準備による呼気がいびつな音を立てる。
全身の傷から盛大に血飛沫を吹き上がらせながら、狙う邪悪の咆哮の矛先は、バスティオンの背後。
足場も悪いし、という理由で少し調整に時間がかかると自己申告のあった、この場の最大重量兵器。奈々詩・空(日々を過ごす・f00083)の超巨大機械城ダモクレス。
「もーちょっとだけ頼む!」
と柔い女の子の声が、些かがさつにバスティオンの耳に微かに届く。
「じゃ、まあ、やるか」
バスティオンは、右腕の義椀、その盾群を展開し、更に周囲の無機物、砂の一粒までかき集めて補強し。
――全霊を込めた悪意の咆哮が、世界から音を消し去った。
尋常ならざる衝撃が、広がった盾を襲う。
広げた盾群に威力を拡散し、僅かに反った面に受け流し、暴虐の叫びがバスティオンの耳をつんざく。
全ての盾の要とした右腕が軋み上げ、生身の接合部にひび割れるような痛みが走る。
「……ッ、だぁ! い、てえなあッ!!」
だが、それでも盾は砕けない。
ゴ、ガァッ、と最後の一撃とばかりに威力を増した咆哮の終わりすらも、広がった盾の群れを打ち砕くことは出来なかったのだ。
「はー、まあ」
血の滲む右腕に、顔をしかめつつもまさ余力を残す笑みを見せる。
「俺の盾は、それじゃあ抜けないよ」
海上の竜は見るからに疲弊している。
そうだろう。
うつろぎの開幕自爆から始まり、玲の斬撃、ヴィクトルの竜巻にティオレンシアの氷結。
そして、全霊の攻撃。
追い詰められているのは当然の結果でもある。
そうして、この局面において、ようやく猟兵が時間稼ぎをしたその理由が、動き出した。
「ありがと、おっさん!!」
「感謝してんなら、せめておじさんとかにならないかねえ」
「じゃあ、お兄ちゃん!」
「そりゃ、いきすぎだ」
空の軽口が頭上から降る。
影がバスティオンの頭上を過ぎる。
そして、その声に見上げれば。
いつの間のか城の腰部分で腕を組み、仁王立ちしている空がいた。
●
「ちゃんと無事みたいね、よかったわぁ」
とティオレンシアは、鉄甲船の近くで猟兵を待っていたらしい鮫の深海人へとのんびりと言う。
「大丈夫? 結構派手だったから揺れたりしたと思うけど」
とヴィクトルも、長閑な声色だ。
「……ああ、なんっつうか」
対して鮫の彼は、ただただ困惑した顔付きだった。
特に、最後の空の操る巨大人形城の一撃は、まさに白昼夢だと思うものだっただろう。
咆哮を防ぎきったバスティオンの頭上を跨いで進軍した城は、二歩進んだだけであった。
その巨大な歩幅で距離を詰め、腕に握った巨大なシャベルを振り下ろす。
そう、一撃だった。
猟兵達の攻撃に晒されていたとはいえ、その一撃で海竜を両断せしめた光景は、成す術なくどうにか逃げるだけだった彼にとっては衝撃でしかなかっただろう。
そんな空本人は「いやあ、あっしの城も棄てたもんじゃあねえでしょう?」と、そんな心境も露知らず、かっかっかと何故か時代がかった口調で笑っていたりしたのだが。
「ともかく、ありがとう、助かった」
「どういたしまして」
ヴィクトルは、素直に頭を下げた鮫の深海人にゆっくり頷いて、もしかして、といまだ混乱の坩堝にいるらしい彼の顔に、問いかけていた。
「それで、覚えてる?」
「ん? ああ」
やはり、あまりの出来事に、記憶の隅に追いやられたのだろう。
少し前に交わした約束があったこと。
そういえば治療しながらも、知らないことがあった、と避難の直前に気付いたのだ。
「名前、だったか」
「うん、俺はねえ。ヴィクトル・サリヴァンっていうんだ」
君は? と視線で問いかける。
言い渋ることはないだろう、とは思いつつ、なんとなくこちらも名乗っていた。
「ナガハマ」
簡潔に彼は答え、そして。
ヴィクトルがこれからどうするのか、と聞こうとしていたのを先んじるように、ナガハマはこう、続けた。
「頼みたい事があんだ」
「……へえ?」
そう、ヴィクトルは、目を真摯に見上げるナガハマに、少し首を傾げてみせるのだった。
成功
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