●敗者と勝者、男と女
「ぐぅっ……!!」
銃弾を腹に食らって、男が女の足元に崩れ落ちる。
女は酷薄に笑って、男の頭を踏み躙った。
「終わりだよ、弥三郎。アタシの勝ちさ。これでこの島も……アンタの部下も、そしてアンタも!アンタのものは全部、アタシのモンだ」
「ち……くしょうがッ……」
「アタシのモンになった以上は、どうしようとアタシの勝手さね。せいぜい一人ずつゆっくりと時間を掛けて処刑してやろうじゃァないか。アイツらがたっぷりと苦しんで死ぬ様を、アンタには最後まで特等席で見学させてやるよ」
「……やめろ、あいつらにゃぁ手を出すな、タツっ……!」
「その名を二度と口にするんじゃぁないよ!!」
女の靴底が男の角を蹴り飛ばす。
「アタシはキャプテン・ブラッディ・リリー。タツなんて女は、この世から消えたのさ」
●壊れた絆に終止符を
「皆様、最近発見されたばかりの世界「グリードオーシャン」の事はご存知でしょうか」
フェイト・ブラッドレイ(DOUBLE-DEAL・f10872)は集まった猟兵たちに早速そう切り出した。
――異世界から落ちてきた島を奪い合う、欲望の大海原。
この世界に眠る秘宝「メガリス」を手にした者たちはメガリスの試練を与えられ――生き残れば海賊としてユーベルコードの力を得、死ねばオブリビオン「コンキスタドール」と化す。
「メガリスを得た海賊は、部下にメガリスの試練を受けさせる事があるそうです。勿論、無事生き残ればユーベルコードの力を持つ仲間が増えるためですが、勿論、失敗するケースも十分にありえます」
その時は、海賊たちが責任を持ってかつての部下を始末するのが「海賊の掟」であるが、近年コンキスタドールの力が増している為、掟を履行できない海賊団が増えているらしい。
フェイトが予知したのも、そんな海賊たちの一つだった。
「サムライエンパイアの特色を色濃く残した島「富嶽島」。その島を根城とする海賊たちがいたのですが……一人の部下がメガリスの試練によって命を落とし、コンキスタドールとなってしまったのです」
元はタツという名前であった女海賊は、コンキスタドールとなってその姿と名前を変えた。今の彼女はキャプテン・ブラッディ・リリー。
彼女は一晩のうちにかつての仲間たちと、弥三郎という名の羅刹の海賊団団長を倒した。
今、弥三郎を始めとした海賊たちは彼らの海賊船の檻に捕らえられ、一人ずつ殺されていくのを待っているところだ。
「ブラッディ・リリーは弥三郎が所持していたものは勝者となった自分のものだと公言し、部下たちを弥三郎の目の前で一人ずつ凄惨な拷問にかけて殺そうと考えています。……戦いでは敗北を喫しましたが、弥三郎の心はまだ折れていない。リリーもまた、今の状態では弥三郎に完全に勝利できたとは思えておりません。故に、彼の部下たちを一人ずつ殺すことでその心を完全に折った上で、最後に処刑しようとしているのです」
故に海賊たちの処刑の準備には時間がかかり、幸い未だ一人の死者も出ていない。
「この隙に、海賊たちを助け出してほしいのです。先ずは海賊船で檻の中の海賊たちを見張っているリリーの配下と戦うことになるでしょう」
リリーは部下の海賊たちの処刑が全て終わり、弥三郎の心が完全に折れるまでは彼を手元で監視している。
彼を助け出すにはリリーに戦いを挑む必要があるが、それは部下たちを救出してからになるだろう。
「部下たちの中にはメガリスの試練に生き残ることによってユーベルコードを手にした者もいます。彼らは船長として弥三郎を慕っていますから、彼を助けるためならば、恐らくリリーとの戦いにも協力してくれることでしょう」
どうかご武運を、とフェイトは言った。
「富嶽島の島民、島の平和を守るためにも、弥三郎たち海賊を救出してくださいませ」
遊津
遊津です。
グリードオーシャン、海賊救出のシナリオをお届けいたします。
第一章集団戦、第二章ボス戦、第三章日常の構成となっております。
「富嶽島」(ふがくじま)
サムライエンパイアから落ちてきたと思われる島です。
人間の島民は勿論、羅刹などの島民も多く住んでいます。
全体的にエンパイア色が強いです。
「海賊団」
羅刹の海賊「弥三郎」を頭とした海賊団です。
海賊船の上に出された檻の中に閉じ込められています。、
乗組員たちは船長である弥三郎を慕っており、ユーベルコードを使える乗組員たちも数名ですが存在します。第一章の途中でも助け出すことが出来、指示次第では微力ながら戦闘に協力してくれるかもしれません。
「異形の海賊」
第一章の敵となっております。
参加をご検討くださる方は、MSページ上部で現在どのシナリオが受付中かどうかを常に表示しておりますので、そちらをご確認ください。
特に第二章・第三章では追記がございますので、その間MSページは受付停止中としております。この間に送られたプレイングは(PL間の情報量の差を鑑みて)全て流させて頂いております。申し訳ございませんがご了承ください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『異形の海賊』
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POW : 欲シイモノハ何時ダッテ早イ者勝チサ
レベル分の1秒で【防御が極めて困難なマスケット銃による魔弾】を発射できる。
SPD : 早速オ宝拝見サセテ貰オウカイ
【回避が極めて困難なカトラスの斬撃】による素早い一撃を放つ。また、【戦場の空気や褒美を約束された高揚感】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 残念ダケドアンタノ攻撃ハ効カナイヨ
全身を【物理攻撃を無効化する魔性の鱗】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【負の感情と負傷】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
イラスト:らぬき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御乃森・雪音
【WIZ】アドリブ連携歓迎
かつての部下とか、攻撃されても知ってる相手なら手を出しにくいわよねぇ。
その海賊団の団長も…本来のリリーも。仲間を殺して魂が傷つけられる前に解放してあげないとね。
処刑の準備なんてぶち壊しちゃおうかしら。
一気に駆け込んで、無力化しちゃった方が良いっぽいわねぇ。
【La danza della rosa blu】で外すことなく終わらせることにしましょうか。
「さぁ、相手してもらうわよ?まずは貴方……薔薇で飾ってあげる」
一寸ステージには狭いけど、出来るだけ攻撃を重ねましょ。
「……次は何を歌おうかしら。ノリのイイ曲セレクトしてね?」
●逆転の始まりを、今高らかに歌う
黒雲に覆われた空。砂浜を駆け、御乃森・雪音(La diva della rosa blu・f17695)は海賊船へと乗り込んだ。
(……やりにくい話よね)
コンキスタドールと化した部下を自分たちの手で殺すこと。それは海賊となった以上、絶対に守らなければならない掟の筈だ。
この富嶽島を根城とする海賊たちも、掟に基づいて、戦った筈だ。例えそれがかつての部下であっても、彼女にメガリスの試練を受けさせたことをどんなに悔いたとしても、時を戻すことは出来ない。
彼女は、コンキスタドールに、なってしまった。
そして、海賊たちは敗けた。敗けて死ぬその運命を、雪音は覆すために此処に来た。
(海賊たちの団長さんも、本来のリリー……タツと言ったかしら、も。仲間を殺して魂が傷つけられる前に、)
「……解放してあげないとね」
処刑の準備なんて、ぶち壊しちゃおうかしら。
Danzatoreが甲板を鳴らす。彼女の存在に気づいたキャプテン・リリーの配下――異形の海賊がカトラス剣を片手に雪音へと襲い来る。
「さぁ、相手してもらうわよ? まずは貴方……薔薇で飾ってあげる」
華麗なステップでその斬撃を躱した雪音の指先が指した異形を青薔薇の鎖で締め上げる。
檻の中で俯いていた海賊たちが何だなんだと騒ぎ始め、その叫びに異形が更に駆けつける。異形たちに囲まれ、ステージとしては狭い甲板の上、BGMは雪音自身の喉から迸る歌声。
彼女は異形たちに幾つも幾つも青薔薇を咲かせて踊る。ここに自分がいるのだと――ただ粛々と処刑を待つ時間は終わったのだと、己の存在を皆に示すように情熱的に、銃弾も斬撃も鎖で絡め取り、短剣を異形の海賊の喉に突き立て斬り裂いた。
汗が体を伝う。観客は少ないけれど、彼女の舞台は始まったばかりだ。
青薔薇の鎖を手繰り寄せ、ウィンクを一つ。最後の舞台は今から作り上げるのだ。
「さぁ、次は何を歌おうかしら。ノリのイイ歌、セレクトしてね?」
成功
🔵🔵🔴
アイン・セラフィナイト
早速の新世界!……なんだけど、事情が複雑そうだね。かつての仲間を相手にするなんて、割り切れないこともありそう。
コンキスタドールになってしまった以上、倒すしか方法はないし……弥三郎さんたちを救うためにも、ここは全力でやらないとね。
UC発動、【シルフ・リジェクト】で『白翼の杖』に風の結界を造り出す力を宿す。敵の攻撃は風の『オーラ防御』で受け流しながら、不可視の風の結界を配置して、まるで檻のように敵の全てを覆い尽くして拘束するよ。(属性攻撃・早業)
ボクの攻撃が効かないかどうか……試してみる?
『境界術式』発動、無数の魔書を喚び出して、無尽蔵の魔弾で『全力魔法・高速詠唱・多重詠唱・範囲攻撃・蹂躙』だ!
●全てを拒むその盾で
甲板に駆け上がったアイン・セラフィナイト(精霊の愛し子・f15171)の手の中、握りしめられた杖の先端で金環がしゃらりと音を立てる。
(早速の新世界、来てみたはいいけど……これは事情が複雑そうだ)
かつての仲間を手にかける、海賊たちの掟。
コンキスタドールになってしまった時点で、もうその仲間は絶対に元には戻らない。
そうなる可能性があると理解した上で、なおも生き延びてユーベルコードの力を得られるチャンスに賭けて海賊たちはメガリスの試練を受けさせた筈だ。
それでも、いざ対峙したならば割り切れない事もあったのかもしれない。
(とはいえ。弥三郎さんたちを救うためにも、ここは全力でやらないとね……!)
思いを馳せることをやめて、アインは白翼の杖を力強く掲げた。
「“渦巻く波濤、拒絶の大界、翠嵐の谷に斜光が満ちる――”」
彼の友たる大風精の聖らかなる風が、杖を中心にして渦を巻く。
全身に魔性の鱗を生やし、アインに斬りかかろうとした異形の海賊が勢いに押し流され、吹き飛ばされた。
「“――悪意を排せ、天変の祖よ”!!」
狂飆結界。全てを拒絶する絶対の防壁は、展開した場所に存在を許さないという意味で攻撃と変わらない。
物理攻撃を無効化する鱗と、絶対的な拒絶の結界。防御のための二つの力は、転じて巨大な盾で殴り合っているのと同じだ。
――そして、二つの盾ならばアインの持つ方が、強い!
見えない風の結界が檻のように甲板を断絶し、海賊たちは動きを阻害され、封じられる。、
「さぁ、ボクの攻撃が効かないかどうか……試してみる?」
にぃ、と口角を釣り上げたアインを囲むように魔導書が浮かび上がる。
千と二百二十の魔書が一斉に開かれ、そこから無数の魔弾が撃ち出される。
外れることのない魔弾が、結界の檻に捕らえられた海賊たちを灼き、貫いていった――。
大成功
🔵🔵🔵
サジー・パルザン
ここに新しいメガリスがあるってんで来てみたがどうやらもう使われた後のようだな。横取りした報いは果たさせて貰うか。どうやら身内の中で争ってるようだが、捕まえられた奴等を解放させたらいい戦力になりそうだ。ヨウ、解放してこい。ヴァイキングシップは正面からいく!メディウム、戦力を出せ!
敵にこっちを向いて貰わないとな。ヴァイキングの角笛で襲撃を相手に知らせてやるぜ。
デーンアックスで勝負を仕掛けにいくか。雷雨に乗じて、ヴァイキングの行進を行う!突撃を仕掛けろ!
俺には耐寒のルーンがある、寒さには強いんだぜ。この雷雨が有利な状況を作り出してるぜ。おら、付き合えよ!捨て身の一撃で頭から斧をたたき込んでやるぜ!
ヨウ・ツイナ
ふーむ。どうやら、サムライエンパイアの島でござるな。とは言え、どうやらもうメガリスは使われている様子でござる、サジー殿。如何いたす?
上陸する前に私のユーベルコードで豪雨と雷を振らせてやるとするでござる。寒くなる故、気をつけられよ。私も耐寒の指輪の効果で凌ぐでござる。
上陸直前には精霊弓・雪之蝶で露払いをするでござるよ。こちらを狙う敵に射てば敵の出鼻をくじけるやも。
ではサジー殿、メディウム殿。ここはお任せするでござるよ。
私はどうやら囚われてる者を解放し、反乱するように促すでござる。
雷雨に乗じれば近づくのも容易いやも。うまくいけば、精霊弓・雪之蝶で皆の援護を行うでござるよ。
メディウム・シャルフリヒター
どうやらあの海賊船で騒動が起きているようですね。
サジー、ヨウ。如何しましょうか。
わかりました。主、オーディンにお願いし。彼らの力をお借りしましょう。
彼らにとっても良い演習になるはずですから。雷雨になる前に、耐寒の薬も私は服用しておきます。
ロングシップの数はそれなりにありますから。これをもって海賊船を襲撃しましょう。さぁ、突っ込みなさい!四方八方から槍を刺し、海賊船に乗り込むのです!乗り込んだ後は身を捨てて、敵対者に攻撃を仕掛けなさい。
私自身も戦いに行きましょうか。
私の持つサブマシンガンで味方の援護射撃を行いましょう。ビームの純粋なエネルギーはそうガード出来るものではないでしょうし。
●北の海から来た海賊たち
「……どうやら騒動が起きているのは、あの船で間違いないようですね」
富嶽島の岸に停められた海賊船、それに海から近づく一隻の船があった。
富嶽島の海賊船とは趣が違うが、これもまた海賊――ヴァイキング達の船である。
「サジー、ヨウ。如何しましょうか」
船首から様子を窺っていたメディウム・シャルフリヒター(ヴィランヴァルキュリア・f20877)は、背後の二人を振り返った。
「ふーむ。どうやら、サムライエンパイアの島でござるなぁ」
「ここに新しいメガリスがあるってんで来てみたが……」
自らの顎髭を撫でる筋骨隆々の男、サジー・パルザン(ヴァイキングの生き様・f12550)に、甲冑の女武者ヨウ・ツイナ(絶対守護の女武者・f18276)が告げる。
「どうやらもうメガリスは使われてしまっている様子でござる、サジー殿」
「仕方がねぇ、横取りした報いは受けてもらうか……身内で争っているようだが、捕まえられてる奴らを解放すりゃあこっちの戦力にもなりそうだ。……行って来い、ヨウ」
「ではサジー殿、メディウム殿、此方はおまかせするでござるが……お二方とも、これより寒くなる故、気をつけられよ!」
そう言って、ヨウは彼らの船から飛び降りる。
しばらくして、ぽつり、ぽつりと降り出した雨が瞬く間に嵐へと変わる。雷が轟き、海が荒れ、冷たい豪雨が降りしきる。
ヨウのユーベルコード【水に愛されし者】は戦場の環境を変えるものだ。その効果は見ての通り。そしてヨウは耐寒の指輪を、サジーはルーンを刻み、メディウムが耐寒の薬を用いることにより彼ら三人はその極寒と雷雨の海の環境へと適応した状態となっている。
「さぁ、正面からぶちかますぞ!!メディウム、戦力を出せ!」
サジーの号令によりヴァイキングシップはゆっくりと富嶽島へと進みだす。
「主神オーディンよ、ヴァルハラの戦士たちの魂を、このひとときお借りいたします……彼らにとっても、きっとよい演習となるはずですから」
ヴァイキングシップの前方に、ヴァルハラの戦士――死してもなお戦い続ける勇猛なる戦士たちを乗せた神々しきロングシップが現れる。
「敵さんにゃぁこっちを向いて貰わねぇとなぁ!」
高らかに海賊の角笛が吹き鳴らされる。
ロングシップに乗り込んでいたヴァルハラの戦士たちが先鋒をつとめた。我先にと海を突き進み、砂浜で処刑の準備をしていた異形の海賊たちを槍衾にする。
船の中に入り込んだものはその身一つで海賊たちに特攻していった。
「突撃を仕掛けろ、行け、進め、欠片も残すな!!今こそ我らが待ち望んだ蹂躙の時だ!俺たちの戦い方を、この海の海賊共にも覚えさせてやろうやろうじゃねぇかぁ!!」
そうサジーが叫べば、黒雲の隙間から稲光が走る。ヴァルハラの戦士たちに続き、ヴァイキング達が戦いの喜びに雄叫びを上げた。
カトラス剣を構え、速度を上げた海賊たちをヴァイキングが物量で押し退け、圧倒し、その四肢を引き千切らんばかりにその名の通りの蹂躙を進めていく。サジーもまたデーンアックスを構えて海賊船に乗り移り、手近にいた海賊の身体を叩き潰すような勢いと重量で両断した。
「ハッハァ!!そうかそうかそう来るかぁ!!」
サジーが歓喜に破顔する。無数の鱗を全身に生やした海賊が、その体で彼の戦斧を受け止めてみせたからである。異形の海賊がニヤリと笑い、手にしたカトラス剣でサジーの脇腹を切り裂こうとしたその瞬間――。
「物理が効かないのでしたら、純粋なエネルギーの攻撃では如何でしょうか」
海賊の頭部が、メディウムのサブマシンガンから放たれたビームによって消滅した。
彼らを囲む海賊の中で、防御に特化した鱗を生やした者が倒れていく、凍りついた彼女らの背中には、ヨウの精霊弓・雪之蝶の矢が刺さっていた。
「サジー殿、メディウム殿!囚われた海賊たちの解放、成功し申した!」
「お頭を助けてくれるってんなら、いくらでも力を貸すぜ!」
「俺の力、存分に使ってくれや!!」
囚われていた海賊らしき男が二人、ヨウの後ろで戦っている。そして、檻の中に詰め込まれていた海賊たちが続々と助け出されていく――
ヴァルハラの戦士、ヴァイキング達、そして富嶽島の海賊団員と、サジー達……海賊船にいた異形の海賊たちは削り取られるように数を減らしていく。
物理攻撃に対抗するために鱗を生やした異形の海賊はビームを撃つメディウムのサブマシンガンと、精霊の祝福を受け、また解放した海賊のユーベルコードの助力を受けたヨウの矢によって次々と撃ち抜かれ、戦場の高揚に飲まれてカトラス剣を振り回す異形たちはヴァルハラの戦士とヴァイキングによって貫かれ、打ち砕かれ、蹂躙されてゆく。
「オラオラオラぁ!!これで、最後だァッ!!」
サジーのデーンアックスが、カトラス剣をその腕ごと吹き飛ばし、返す刃の重さで頭を叩き割る。
――それが、最後の一体だった。
その身体がぐらりと傾ぎ、どうと倒れた甲板の上で泡となって消え――異形の海賊たちは、彼らによって文字通り蹂躙され尽くしたのである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『キャプテン・ブラッディ・リリー』
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POW : 『麗しの黒竜』号、出航!
【日に焼けた強靭な筋肉】で武装した【飛行可能な荒くれ海賊】の幽霊をレベル×5体乗せた【幽霊海賊船『麗しの黒竜』号】を召喚する。
SPD : 海賊式我流格闘術
【型に捕らわれない格闘技】による素早い一撃を放つ。また、【海賊服を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 支配の海賊旗
【メガリス『支配の海賊旗』】から【反抗の意志を挫く威圧のオーラ】を放ち、【逆らえぬように屈服させる事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:森乃ゴリラ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠鏡繰・くるる」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「何だい、情けない。あれだけいたくせに一人残らずやられちまったってわけかい?」
じゃらり、じゃらり。鎖の音を鳴らしながら、海賊のコートを羽織った女が歩いてくる。
その足元で引き摺られている頑健な肉体を持った銀髪の羅刹の姿に、解放された海賊たちが「お頭」と悲痛な声を上げた。
富嶽島の海賊船長、羅刹の弥三郎。彼の首には革の首輪が巻き付けられ、その両手には枷が嵌められている。
その首輪から繋がる鎖は、メガリスらしき海賊旗を担いだ女――キャプテン・ブラッディ・リリーの手に握られていた。
リリーは弥三郎を鎖で繋いで引き摺りながら此処まで来たのだ。
折檻の末に腫れ上がった瞼の下で、弥三郎が口を開く。
「お、めぇら……」
「畜生、タツ!お頭になんてことしやがる!!」
「黙りな!言っただろう、アタシはブラッディ・リリーだ、タツなんて女はもういないんだよ!!」
リリーは解放された海賊たちと猟兵を見回し笑う。
「そうかい、アンタらがこいつらを解放してくれたわけだね? 余計な真似をしてくれたもんだ」
「黙りやがれ!今度こそテメェへのケジメ、つけさせてもらう……!」
「ははっ、!やってみなァ!もう一度、今度はもっと頑丈な檻の中に戻るだけの話だよ!」
笑うリリーの足元で、弥三郎が呻いた。
「ぐ、っ……」
彼の瞳を見た猟兵は気づくことだろう。
――弥三郎の心はまだ折れていない。故に、リリーはまだ勝てていない。
リリーを勝たせるわけにはいかない。
それは、この富嶽島の海賊たちの潰滅を意味するのだから!
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・「キャプテン・ブラッディ・リリー」が現れました。
猟兵たちの活躍により、彼女の配下であった異形の海賊たちは撃破されました。
戦闘の場所は砂浜となっております、それほど広い場所ではありませんが、普通に戦うぶんにはマイナスはありません。
同時に戦闘に利用できるような物もなく、プラス要素もありません。
戦闘において、種族の体格差は基本的に不利にも有利にも働きません。
・海賊たちの船長、羅刹の弥三郎は現在拘束されてリリーの元にいます。
リリーは巧妙に動き、海賊たちには弥三郎を解放するために近づくことは出来ませんが、猟兵であれば弥三郎を解放することが可能です。
弥三郎はリリーによって痛めつけられていますが、開放すれば、彼は戦闘を手助けしてくれます。
彼らにとってはこの戦いに助力することは「海賊の掟」のやり直しになる為、戦える海賊は積極的に戦いに参加します。
※猟兵が手を出すなと言えば(プレイングにそう書いてあれば)助けてくれた恩義があるためその戦いでは手を出しません。
・リリーへのとどめについて
海賊の掟を履行したことにするため、猟兵はリリーへの最後の止めを敢えて海賊たちに譲ることも可能です。
プレイングに特に指定がなければ、彼女と最後に戦った(最後の青丸を取得した)猟兵がとどめを刺すことになります。
最初の方の戦闘ではとどめを刺すことは出来ないため、プレイングへの記入は不要です。
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アイン・セラフィナイト
……まずは、弥三郎さんを救出しないとかな。
まだ戦う意志があるのなら、ボクは喜んで力を貸すよ!でも他の猟兵さんがどうかは分からないけどね。
『コミュ力』で、リリーを煽ってみる。「そうやって見せしめでしか自分の力を誇示できないなんて、三下以下だよ」っていう感じかな。
怒り狂ったその隙を見逃さない。UC発動、キミの出番だ『万象』!リリーの持つ鎖の『弱点』を創り出し光の刃で断ち切れ!
弥三郎さん救出後は、『暁ノ鴉羽』でリリーの視界と旗を遮ってメガリスの発動を阻害する。相手の位置を『第六感・見切り』で確認して、『属性攻撃・全力魔法』の魔弾で攻撃だ!
ボクみたいな子供に足元を掬われたのが、何よりの証拠だよ。
御乃森・雪音
【WIZ】アドリブ連携歓迎
いよいよ首領が出てきたわね。
何があっても戦い方を変えることはないわ、歌とダンスがアタシの武器。
【La danza della rosa blu】折角だから手向けの花をあげるわ。
(Rosa neraを一度手の中で回し、構える)「……踊れ。仮初の姿を、命を。燃やし尽くし骸の海へと還れ」
少しだけ真の姿に近付いた事で右の眼だけが紫に。赤を宿して色を変える。
言葉遣いも柔らかさを消して僅かに強めに。
「立ちなさい。貴方の誇りを守りたいなら」
手を出すな、とは言い難いわ。
海賊としての矜持の生き方もあるんでしょうし。戦うというなら止めないけれど、殺されそうなら助けるわね。
●神の祝福を受け、白鴉は暁に翔ぶ
「生意気なことを言っていられるのも今のうちだけだよ、三下どもが!!」
キャプテン・ブラッディ・リリー、彼女の持つメガリス「支配の海賊旗」が翻る。
メガリスの放つオーラによって、海賊たちが気圧されそうになっているのが感じられた。
彼らをせせら笑うと、リリィは鎖を手繰って呻く海賊の頭領、弥三郎の銀髪を掴み上げる。じゃらりと鎖が鳴り、弥三郎が小さく呻いたのが猟兵の耳にも届いた。
「お頭……ちくしょうっ……!」
上りかけていた気炎、その灯火が立ち消えそうになるその前に――。
「……そうやって、見せしめでしか自分の力を誇示できないのかい? そんなの、三下以下じゃあないか」
「……なんだって?」
ぎろりとリリーの視線が、言葉を発したアインに注がれる。
アインは挑発的に笑い返した。
「だからさぁ、人質なんて取ってないで。自分の力だけで彼らをちゃんと従わせてみろって言ってるんだよ、『タツさん』」
「……ッアタシを!その名前で呼ぶんじゃないよ、ガキがッ!」
リリィが怒りに頬を紅潮させる。その刹那、一羽の鴉が空に羽ばたいた。
「キミの出番だ、――“見透かせ、万象”」
空に舞い上がった白鴉の目が、リリィと弥三郎とを繋ぐ鎖を睨む。魔力の籠められた視線が鎖に『弱点』を創り出し。そしてその目から放たれた一条の光が、作り上げられた鎖の『弱点』を的確に破壊する。
がしゃりと音がして、鎖は断ち切られた。弥三郎が砂浜に投げ出される。
「ぐ、ぅッ……!」
「ちッ……弥三郎、」
「待ちなさい」
リリーの前に立ちはだかったのは雪音だった。
その青い双眸は真の姿へと近づいたことで赤を宿し、右目だけが紫色に輝いている。
Rosa neraを手の中で一度回し、背にした弥三郎に雪音は言った。
「……立ちなさい、貴方の誇りを守りたいなら」
手を出すな、とは、彼女には言えなかった。
彼らには海賊としての矜持がある、それは雪音にも理解の出来ることで。
たとえリリーがすでにコンキスタドールで、今度こそ殺される危険があるとしても、それでも……彼らには、海賊たちにとっては、立ち向かうことこそが誇りなのだと。
ならば自分がするべきは、彼らが殺されないように立ち回るだけだと、雪音は厳しい目でリリーを見据えた。
「まだあなたに戦う意志があるのなら、ボクは喜んで力を貸すよ」
弥三郎に駆け寄ったアインが、万象の目で彼にかけられた縄を切りながら解いていく。
弥三郎の切れた唇がわななき、小さく問いを投げかけた。
「あいつらは……無事か?」
あいつらとは。問い返す必要もない、アインはすぐに頷いた。
「うん、無事だよ」
「全員か?」
「勿論さ!」
最初に言われていた、未だ一人の死者も出てはいないと。そして、捕らえられていた者たちを、彼らは一人も余すこと無く助け出せたのだ。だから、だから――
「ああ、そうかい……有難うよ、だったら……俺ももう倒れちゃいられねえ……!!」
あらかたの自由を取り戻した海賊の頭領は、己の首に掛けられていた革の首輪を――アインが外そうとするのを制し、自らの手でむしり取る。それは一人の男の「示し」だった。
そして、腫れた顔のまま誰の力も借りずに弥三郎は立ち上がる。
ごう、と音がして、リリーの足元に炎が突き刺さった。
雪音が仕掛けた青薔薇の鎖を躱そうとしていた矢先の事だった。足元に打ち込まれた炎は弥三郎から放たれたもので、それに気を取られたリリーは華麗なステップで繰り出された蹴りを強かにくらってよろめく。
「ちくしょう、アイツ……!」
苦い顔をして海賊旗を振りかざそうとしたリリーの腕を追うように、さらに青薔薇が絡みついた。
「……踊れ。仮初の姿を、命を。燃やし尽くし、骸の海へと、還れ――」
低く、低く、ごうごうと燃える炎のように、雪音の唇から歌声が零れて砂浜を包み込む。海風を揺らすように響く歌声は形あるものとして編み上げられ、青色の薔薇――神の祝福を、願いの成就、その花言葉を冠した薔薇の鎖となる。
「アンタの相手はこのアタシ。このステージを途中で、降りさせたりはしないわよ」
「クソがっ……邪魔すんじゃないよ!」
旗が翻りながら、棍のように打ちかかってくる。それを軽やかに躱して、雪音は旋律を奏でる。
もう一度振りかざされたリリーの旗とその視界を、極光の如き光の羽根が遮る。それはアインの手によるもので、彼の背後には幾つもの魔弾が白色にひび割れた宙から放たれようとしていた。
「ちっくしょうが……!!」
その隙を見逃す雪音ではない。青薔薇の鎖はリリーの全身に巻き付いて、彼女が奥歯を噛み鳴らしたのもつかの間。
「今!!」
雪音の声に合わせて、アインの魔弾が発射された。幾つも、幾つもの魔弾が繋ぎ止められていた場所から吐き出され、リリーの元へと飛んでいく。幾条もの光が彼女を貫き、何重もの爆発が、彼女を灼き焦がしていく。
「ほら――」
青薔薇を撓らせる雪音の隣で、アインはリリーに聞こえるように態とらしく笑って言った。
「ボクみたいな子供に足元を掬われたのが、三下以下だって言う何よりの証拠だよ。ねぇ、『タツさん』」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
サジー・パルザン
続けて出ろ!お前達、あの女『キャプテン・ブラッディ・リリー』を捕まえてこい。捕まえて俺の前に引きずり出してやれ。犠牲は惜しむなよ?
ふん、強力な力はより大きい力によって捻じ伏せられる。生半可なメガリスに触っちまうもんだから哀れなもんだな。
力にも種類はあるが、この数には耐えられまい。
逃がすなよ、十分に弱らせて俺の前に持ってこい。奴には海賊流の報いを受ける時が来た。
最後のトドメは海賊達に任せるとするが。俺はしっかりケリがつくか見物させてもらうとするぜ。
メディウム・シャルフリヒター
承知しました、サジー。私も前線に出て彼女を捕まえてくるとしましょう。
さぁ、ヴァイキング達。全員出撃なさい。船の上まで登り、彼女を捕まえてくるのです。
私もヴァルキュリアの聖剣で相対するとしましょう。この暴風雨の中そう簡単に相手も逃げ切れないとは思いますが。残像を残した移動を行い、相手を翻弄して相手の足に対して剣を横にし、腹の部分で打撃を与えるとしましょう。私がトドメを刺すのはよろしくないでしょうから。
さぁ、観念して捕まりなさい。往生際が悪ければ主神オーディンには迎えられないでしょう。後は、この世界のルールに従って裁かれなさい。
ヨウ・ツイナ
先ほどと変わらず、雷を伴う暴風雨を発生させるでござる。
海賊共が風邪を引かぬか少々心配ではござるが彼らも海の男。問題は無いと思いたいでござる。フォルティス殿、自身の艦から周囲に敵が来ないか見張って欲しいでござる。
私はメディウム殿と敵の大将を捕獲を優先するでござるよ。この暴風雨では船も揺れてなかなかに近接攻撃がしにくいでござるな。であれば、まずは相手の動きを止めるのが良し。フリーズグレネードを敵の大将に投擲して周囲を凍結させるとするでござる。この寒さの中その薄着でどこまで耐えられるでござろうか。死ぬ程ではないとは思うでござるが・・・。
フォルティス・ワーライン
ふぅ、なかなか外気温は寒くなってきてるな。念のため、宇宙服とジェットアーマーを装備して正解だった。
ヨウ、俺は航宙駆逐艦鬼やらいを持ってきている。
奴が万が一、援軍を呼び出しても俺達が対処する。出ろ、メカニカルガーディアン!風が強い中じゃ空は飛べないが…。
敵も幽霊が乗船した海賊船を連れて来たようだな。駆逐艦に乗り込んできた奴はメカニカルガーディアンが対応しろ!地上戦だ!この艦の巨体では波ので艦が揺れることはない。近づかれる前に自分の持てる火力を全部ぶちこんでやれ。ブリッジにいれるなよ!
ふっ、たかが中世の海賊船の1つで何ができる。時代が違う、時代が!
この巨体で海の藻屑となるようにぶつけてみようか!
●富嶽島暴風戦
「続けて出ろ!!お前達、あの女を捕まえて俺の前に引きずり出して来い――!!」
サジーが叫んだ。
狂戦士達の雄叫びが響く。そして彼の傍らにあった戦乙女と女武者もまた、それぞれに動き出した。
「承知致した、サジー殿!」
「このアタシを、舐めるんじゃぁないよ!!」
ヨウとキャプテン・ブラッディ・リリーとがユーベルコードを発動させたのはほぼ同時。
リリーは狂戦士たちに対抗する新たな手駒として、屈強な幽霊海賊たちを乗せた幽霊船を呼び出した。リリーへと群がる狂戦士たちを、幽霊海賊たちが相手取る。
ヨウのユーベルコードによって、雷を伴う暴風雨、嵐が戦場に吹き荒れ始める。波は黒々と高くうねりだし、今にも砂浜を飲み込んでしまいそうだ。
(海賊どもが風邪を引かぬかは少々心配でござるが、彼らも海の男、問題は無いでござろう……!!)
ヨウの心配など確かに不要。海賊たちは嵐など文字通りどこ吹く風と意気込み、戦える者たちはサジーの狂戦士たちをサポートするように乱戦に参加している。
何よりも、嵐を受けても消えることのない炎――再び立ち上がった弥三郎こそが、海賊たちの心を凍える雨など寄せ付けはせずに燃え盛らせている!
「さぁ、野郎ども――動けるやつは加勢しろ!俺たち富嶽島の海賊たちもまだまだ落ちぶれちゃあいねぇってことを、見せつけてやりなァ!!」
「「「「うおおおおおぉぉ!!」」」」
「さて、それでは私も前線に出るとしましょう――ヴァイキングたちよ、全員出撃なさい」
メディウムの命を受けて、ロングシップに乗りこんでいたヴァイキング達が砂浜へと躍り出る。そして彼女は翼をはためかせると、海賊・ヴァイキング・幽霊海賊・狂戦士達がぶつかり合う戦場の中でリリィの目の前に降り立った。
「観念して捕まりなさい。往生際の悪い魂が、主神オーディンに迎えられることはないでしょう……もっとも、すでにあなたはコンキスタドール。主神の元にまでたどりつけるかどうかは、保証いたしかねますが」
「うるさいねぇ!アンタらの神の話なんざ、アタシには関係ないんだよ!」
リリィの旗――ポールと、メディウムの持つヴァルキュリアの聖剣がぶつかり合う。
メディウムはリリーを殺すつもりはない。なぜなら、サジーはこの女の『首を持ってこい』とは言わなかったからだ。彼は『捕まえて引きずり出せ』と言ったのだ。それがどういう意図を持つのか、理解できないメディウムではなかった。
首を刈るように振り抜かれたポールを紙一重で躱し、メディウムは剣の腹でリリーに打ち掛かる。足を高く上げて蹴りあげることで剣の軌道を変えたリリーはメディウムにニヤリと笑いかけた。
「わかっているよ、アンタ……、なんでかは知らないが、アタシを直接殺せはしないんだろう?」
「……!」
「だがね、アタシはアンタを殺せる!それが、アタシとアンタとの力の差さぁ!!」
リリーのケリがメディウムを吹き飛ばす。それとほぼ同時、鎧甲冑が素早くリリーへと斬り込んだ。
「ならば、私も助太刀に入ろうぞ!」
ヨウが氷刀・胡蝶を手にリリーの懐へと迫る。しかし、翻る旗によって微妙に目算を誤ったのか、それとも相手の手でそう誘われたのか、ヨウの氷刀はリリーに届く前にポールによって弾かれる。辛うじて刀を話すことこそ免れたものの、その衝撃はヨウの腕に重く響いた。
「く、さすが、一筋縄では行かぬ相手でござるか……!」
「――いいえ」
怜悧な声で戦乙女が言う。
「ヨウ。あなたが此処に来たということは、すでに《彼》の用意も整ったのでしょう」
「左様にござるが……」
「ならば、勝ちの目は私たちの方にあります」
「何を、ごちゃごちゃ話してるんだい!!」
リリーが打ちかかってくる。それをヨウは避け、メディウムは剣で受ける。
無数の幽霊海賊相手に海賊、狂戦士、ヴァイキング達が暴れまわる戦場の中で、彼女たちが戦う場だけは荒らされることなく。台風の目のように独立していた。
――時は、少し遡って。
ヨウが戦場を暴風雨に変えたすぐあとだった。
「ふぅ、なかなか外気温は寒くなってきてるな。念のため、宇宙服とジェットアーマーを装備して正解だった」
「フォルティス殿!」
新たに戦場に降り立ったのは、フォルティス・ワーライン(宇宙を駆けるセンチュリオン・f18278)。サジーとメディウムとヨウに引き続いて戦場へと現れた、新たなる援軍が到着したのだ。
「『鬼やらい』を持ってきてた。メカニカルガーディアンの準備も万全だ。ヨウ、お前は主力を叩く方に回れ。敵が仮に援軍を呼び出したとしても――それでも、俺達が勝てる目算は立っている」
「承知。では、ご武運を祈るでござるよ」
駆け出していったヨウを見送り、フォルティスは笑う。
「わかっているぜ、サジー。俺たちが武器にするのはシンプルな暴力だ。そうだろう? ――さあ、出ろ、メカニカルガーディアン!!」
サムライエンパイアの色濃いこの島には不釣り合いな近未来的フォルムの船舶が呼び出され、ジェットパックとサブマシンガンで武装した兵士たちが中から溢れ出てきた。
そして、フォルティスの手のボトルシップからもまた、巨大な駆逐艦が現れる。
航宙駆逐艦『鬼やらい』に乗り込んだフォルティスは、特殊部隊隊員たちに命じる。
「生きた海賊たちは味方だ、殺すなよ!後はサジーの狂戦士たち、メディウムのヴァイキング……ヒュゥ、なかなか揃いも揃ったもんじゃあないか!だが、殺すのは海賊幽霊たちだけだ!近づかれる前に自分の持てる火力を全部ぶちこんでやれ。ブリッジにいれるなよ!乗り込んできたやつには、遠慮なく弾丸を食らわせてやれ!!」
当初、彼らが予測していたのは海に浮かぶ海賊船、水上での戦いであった。しかし船の上にいた異形の海賊たちを一掃した後に、島の内側にいたリリーが弥三郎を引き連れて出てきたことで戦場は砂浜へと移行している。
「ふっ、たかが中世の海賊船――時代が違う、時代が!」
嵐の海に浮かぶ富嶽島の海賊船を見て、フォルティスは笑うのだった。
メカニカル・ガーディアンたちが砂浜での戦場に加わったことで、戦況は一気に傾き出した。
圧倒的な手数での攻撃に、とうとう海賊幽霊の手が足りなくなったのである。
富嶽島の海賊たちが、狂戦士が、ヴァイキングが、メカニカル・ガーディアンが――荒くれ者達が暴風荒れ狂う砂浜で戦いを繰り広げ、海賊幽霊たちは一体、また一体と姿を消してゆく。
そして。
ヨウのフリーズグレネードがリリーの傍らで爆ぜる。
「この寒さの中、その薄着でどこまで耐えられるでござろうか!!」
「うぐぅっ……!!」
動きが鈍ったのを、彼女たちは見逃さない。メディウムの剣によって、リリーの海賊旗が遂に彼女の手から落ちる。その隙を逃さず、ヨウが手早くリリーに組みついて彼女を砂浜に組み伏せた。
「敵将・キャプテン・ブラッディ・リリー、生け捕ったり!」
「くっ……ちくしょうが……!」
「後は、この世界のルールに従って裁かれなさい」
未だ嵐やまぬ砂浜、リリーの上に大柄な影がさす。
「サジー殿」
サジー・パルザンが女を見下ろしていた。
「ふん。強力な力はより大きい力によって捻じ伏せられる。生半可なメガリスに触っちまうから、哀れなもんだな」
メガリスである海賊旗にちらりと目をやって、サジーはリリーを見下ろしたまま言う。
「力にも種類はあるが、簡単なこった。……てめぇはな、俺達の圧倒的な『数の暴力』に敗けたんだよ」
数の暴力。それはとてもとてもシンプルで圧倒的だった。何せ、数え切れぬほどの手兵を投入する戦法の三倍重ねだ。そして、猟兵達が信頼を勝ち得た、海賊たちの手助けもある。
「さあ、頭領!いるんだろう、出てこい!」
「おうよっ!!」
サジーの声に、弥三郎の胴間声が返る。一歩進み出てきた弥三郎の手には、バトルアンカーが握られていた。
「ケリはてめぇたちがつけろ。俺はここで見物させてもらう」
「ああ、ありがとうよ」
岩場にもたれかかるサジーの両側にメディウムとヨウが、そして遅れてフォルティスもやってくる。
リリーを組み伏せるのはヨウから複数の海賊の手に代わっていた。
「ちくしょうがッ……猟兵ならともかく、テメェらなんかに!!」
「タツ、俺ぁ……いや。後悔も何もかも、今は全部後回しだ。この弥三郎、海賊の掟にかけててめぇの片をつけさせてもらうッ!!」
弥三郎の咆哮が砂浜に響いた後――錨が女の身体を貫く音がした。
リリーは身体を弓なりに反らせて、そして動かなくなる。
やがてその亡骸は、白い百合にも似た花と化して少しずつ、少しずつ、嵐に浚われていく。
花は落ちる。弥三郎は最後まで、それを見送っていた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『夜の浜辺で』
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POW : 足に波を感じながら散策
SPD : 貝殻等の漂流物を集める
WIZ : 波の音に耳を傾ける
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
嵐が過ぎ去った砂浜に、雨の残り香。
海賊たちは岩場で炎を囲み、捕らえられていた疲れもあるだろうに、銘々に飯を喰らい、酒を飲んでいる。
コンキスタドールによる騒ぎで静まり返っていた島民たちもようやく現れ、さながらそこは宴のようだ。
弥三郎はと言えば、一人離れた場所にどっかりと座り込み、海をずっと眺めていた。
========================================
猟兵の活躍によって、コンキスタドールは撃破されました。
第三章は日常となっております。
現在の時刻は夜。富嶽島では海賊たちが浜辺で宴を開いています。
宴に混ざるもよし、海賊たちに話を聞くもよしです。
酒(ステータスシート上での未成年はジュースとなります)や飲み物、食べ物などは島民や海賊が提供してくれますが、他になにか望みなどがありましたら、島を仕切っているのは海賊の頭領たる弥三郎です。
必要成功数が少ないため、お気をつけください。
========================================
サジー・パルザン
よし、けじめを見届けさせて貰ったぜ。
俺達も宴には参加させて貰うがー・・・。何分、全員酒が呑めねえ。
いや、呑まねえことにしてるんだ。悪いな。飯だけ頂くとするぜ。
バーサーカー共は酒は呑めるからよ。そいつらに奢ってやれや。
バーサーカー共は呑み過ぎるなよ?暴れるとそいつらじゃ手がつけられねえ。
俺には肉を寄こせ肉を!この島全部の肉を喰い散らかしてやるぜ!ところでこの島だと肉食は禁忌なんだっけか?サムライエンパイアのやつはとんでもねえデブ以外は皆痩せてるからな!肉を喰え肉を!肉を食べろ!
さて、ここにはメガリスは無さそうだな。1つ落ち着いたところでさっと出るとするか。フォルティス、鬼やらいはもう出れるのか?
フォルティス・ワーライン
俺は鬼やらいに食料品とかの資材を島から分けてもらうとするぜ。メカニカルガーディアン共は資材の搬入を急げ。
しっかし、やたらと魚が多い気がするな・・・。まぁ、飽きることはなさそうだ。保存の効くものだけもらっておくとしよう。刺身は今いただくとするか。やはり、サムライエンパイアは海鮮がうまいものだ。食にこだわれるのがサムライエンパイア由来の島のいいところだが・・・。ヨウ、そういえば米はあるのか?あれと食べるのは実はお気に入りなんだ。塩と刺身と米。あと熱い茶があると嬉しい、一緒に食べようぜ。
よし、次のメガリスを探すか。サジーを呼び戻さないとな。他の世界由来の島やメガリスも探しにいこうじゃないか。
ヨウ・ツイナ
ふむ、メディウム殿は先に帰られたようでござるな。主神とやらに報告しにいったのやも。
私も、鬼やらいにて物資の補充をフォルティス殿と行うとするでござる。
サジー殿にも手伝って貰いたいでござるが、宴に夢中になって帰ってこないでござるな。
保存食に良いものもなかなかいただけたでござるな。この世界、補給もままならぬ故、嬉しく思うでござる。
サムライエンパイアの面影がこの島にはいろいろなところにあって懐かしく。
これを眺めながらフォルティス殿と一服するでござるよ。米も炊き、魚を捌くのも私が担当するでござる。あとは熱く濃い目の茶も入れて・・・。
食べ終わり次第次のメガリスでござるか。なかなかせっかちでござるな。
●嵐のあとで
「メディウム殿は、先に帰られたようでござるな。主神とやらに報告に向かったのやも」
ヨウが見上げた夜空に、高く翔ぶ鳥の影が見えた。
フォルティスの船、『鬼やらい』に積み込むための物資を、富嶽島の島民たちは快く用意してくれた。
フォルティス、ヨウ、そしてフォルティスの呼び出したメカニカルガーディアンが手分けし、次の航海に向けて資材の搬入を急ぐ。
「しかし、やたらと魚が多い気がするな……」
フォルティスがそう言えば、食料を運んできた島民が苦笑しながら答える。
「そりゃ、ここは島なんだから周りはみんな海ばかりさぁ、海に獣は泳いじゃいねえよ」
「干し肉もあるでござるよ、フォルティス殿!」
「そいつは山の方で採れた兎だ、運が良かったもんでねぇ」
「まぁ、飽きることはなさそうだ。ヨウ、保存の効くものは積み込んでしまおう。それより、生の魚は今いただいてしまおうと思うんだが」
「休憩でござるな? 了解致した!」
「米はあるのか? あれと一緒に食べるのが実はお気に入りなんだ」
「勿論にござる!」
ヨウが飯を炊き、魚を捌いて刺身にする。フォルティスがもうひと仕事済ませる頃には熱々のお茶も入って、エンパイア式の簡単な夜食が出来上がっていた。
(この島には、サムライエンパイアの面影が色々なところにたくさん残っておるでござるなぁ……)
懐かしい面影を残す夜の富嶽島を眺めながら、ヨウはつかの間の郷愁に浸る。
「食べ終わったらそろそろ出航しようと思う。一休みして、サジーを呼びに行ってこよう。……他の世界由来の島や、メガリスも探しに行こうじゃないか」
「承知にござる。とは言え。なかなかせっかちな話でござるなぁ……」
もう少し、出来れば例えば晴天の下のこの島も見ておきたくもあった、などと思いながら、ヨウは濃い目に淹れられた茶を飲み、握り飯に手を伸ばすのであった。
●男たちの宴
「はっはっはっはっは!いやぁ兄ちゃん、いい食いっぷりだなぁ!!」
「どうだ、酒はいらねぇのかい!」
「ああ、すまん。飲めねえんでな。その分、飯はたっぷり食わせてもらうとするぜ!」
サジーは海賊たちに囲まれていた。
本当は飲めないではなく全員が呑まないことにしているのだが――余計な詮索をさせて宴の雰囲気を壊してしまっても良くない。それに、サジーは飲めずとも、彼の後ろのバーサーカー達は大いに喰らい、大いに呑んでいるのだから、問題もないだろう。
豪快な海賊たちに、サジーの豪気さはたちまちに気に入られていた。
「おい、お前らも飲みすぎるんじゃねぇぞ!お前らが暴れだしたら手がつけられねえ!」
そう背後に声をかけると、豪快な笑い声とともに了解の返事が返ってくる。
サジーもまたニヤリと笑って自らの器に盛られた鍋の汁を飲み干した。
「この島も肉食は禁忌なのか? 俺の知ってるサムライエンパイアの奴ぁ、とんでもないデブ以外は皆痩せてたからなぁ」
「別に禁忌って事ぁねぇよ!俺たちにゃあ遠いご先祖様の頃の話でピンとこねえが、海から遠い山の中じゃあ獣肉も普通に食うもんだ」
「まぁ、うちの島じゃ山でも罠にかかる獣はウサギくれぇだろう」
そう一人の海賊が言えば、いくらか年のいった女の島民がその海賊をべしりと杓文字で引っ叩く。
「毎日海に出てるあんたらにゃわかんないだろうがね、山のやつらを舐めんじゃぁないよ。そりゃあ大物が毎日ってわけじゃぁないが、うちの島だって鹿や猪くらい取れるんだよ!」
「よぉし、じゃあそれを持ってこい!俺がこの島の肉という肉を食い尽くしてやるぜぇ!」
そう言い放ったサジーに海賊たちがよく言ったと歓声を上げる。
「はぁ、そりゃあこの島にとっちゃあ恩人だからねぇ、出せと言われりゃ出しますがね、そいつを料理するあたしたちの身にもなっとくれよ!」
ぷりぷりとした風に装う女だったが、それでもその口調には本心からの怒りは感じられない。肉を全部くらい尽くすと言ったサジーの景気の良さに、快いものを感じているのだろう。ほどなくして、肉が大量に入った鍋が火にかけられ、焼いた鳥肉・獣肉が盛り合わせられ、酔いの回った海賊たちからもう幾たびかの喜びの声が上がった。
さて、そんな宴をサジーが堪能尽くした頃。いっぱいになった腹をさすっていると、後ろから声がかけられる。
「サジー」
「おう、フォルティスか。鬼やらいはもう出れるのか?」
「整備もばっちりだぜ。あとは乗組員だけだ」
「そうか、この島にはもう俺たちが得られるようなメガリスもなさそうだ。落ち着いたところで、さっさと出るとしようじゃないか」
「ああ、了解だ。ヨウも待っている」
島を出る準備をするサジーたちを、海賊の一人が呼び止めた。
「もういっちまうのかい、兄さんたち」
お日さんを拝んでからでも遅くはないぜ――そう言った海賊に、彼らは手を振った。
「俺たちにゃ、次の島が待ってるからな!」
そうして、未明。
航海者たちは船を率い、富嶽島を発ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御乃森・雪音
アドリブ連携歓迎
とりあえず、終わって良かったわ。
盛り上がってる人たちは放っといても大丈夫そうだし、弥三郎は色々考えることもあると思うし。
折角海に来たんだし少しくらいは楽しんでも良いわよねぇ。
夜だから波打ち際を裸足で散歩くらいかしら。
真珠が採れるところもあるみたいだし、綺麗な貝殻とかシーグラスとか探してみるわね。何かあるかしら。
「……一寸離れただけでも静かになるのねぇ」
星は見えないかしら。雲が切れればいいんだけど……こういう空に似合う歌ってどんなかしらねぇ。
「明日の朝には晴れるだろうし、この島に新しい朝が来るわね」
●きっと明日は
(せっかく海に来たんだから、少しくらい楽しんでも良いわよねぇ……)
雪音は砂浜を歩く。富嶽島のさらさらとした砂は彼女の裸足の足を傷つけることもなく、足の裏で崩れた。
岩場の上を見上げれば、篝火とともに宴を楽しむ男たちの姿が見える。
そのさらに上の方では、バトルアンカーを傍らに突き立てた弥三郎がずっと沖の方を眺めているようだった。
(楽しそうな男たちは放っておいても良さそうだし……弥三郎には、色々と考えることもあるんでしょうね)
そんな男たちを見上げてふっと息を吐きだし、また、しばらく歩みを続ける。
冷たい水が心地良かった。
波打ち際には、雪音の足跡が点々と、時折波にさらわれて途切れながらも続いている。
しばし歩いたところで、きらりと光るものを視界に入れた彼女はその場にしゃがみこんだ。
「ああ……シーグラスね、これ」
丸く角の取れたガラスはサムライエンパイアの色を強く残したこの富嶽島の土着のものではないだろう。
どこか他の島、あるいは船から流れ着いたのか、きらりと光るそれを曇る空にかざして、雪音はシーグラスの旅路に思いを寄せた、
(こんな海に、空に似合う歌ってどんなものがあるかしら)
思いついたフレーズを頭の中で二、三口ずさんで、雪音は立ち上がる。
空を見上げた彼女の目の前で雲が切れ、星が流れた。
「……明日の朝は晴れるわね。この島に、新しい朝が来るわ」
大成功
🔵🔵🔵
アイン・セラフィナイト
ひとまず一件落着みたいだね。
弥三郎さんに声をかけたいけど、何を言っていいか分からないなぁ。
……下手な言葉はただの同情になっちゃいそうだしね。
リリーさんってどんな人だったのって、周辺にいる海賊さんたちからちょっとだけ聞いてみようか。一応何かしらの『料理』を作って弥三郎さんにも渡すよ。こう見えて、料理は得意中の得意なんだよね。
これからの島の運営とか、人員補充とかどうするんだろう。まあ、心配するだけ無駄かもだけど……。
星が綺麗だなぁ。他の世界にも空はあるけど、凪の中の星空って初めてかも。
ここからまた、始まりだね。富嶽島の物語は。
ボク、本の編纂が趣味なんだ。キミ達の物語、綴らせてもらうね。
●祝福の賛美に
アインは岩場の上で沖を眺める弥三郎の姿を見ていた。
彼に声をかけたい、けれど、なんと言っていいのだろうか。
コンキスタドールと化したとはいえ、部下を一人、恐らくは彼の判断でメガリスの試練に挑ませ、そして亡くした。掟に従い、とどめは己の手で刺した。
それからずっと、彼は彼女を討ち取った得物を傍らにおき、宴に参加することもない。
キャプテン・ブラッディ・リリーに『なる前』の彼女のことも、彼にとっては大事な部下の一人であろう、そして弥三郎が部下想いの人間であることを、彼を助け出したアインは気づいている。
(……でも、下手な言葉はただの同情になっちゃいそうだしね)
炎を囲み、宴を開いている海賊たちに近づいていく。
(リリーさん……ううん、元の名前は……「タツ」さんだっけ)
「ねぇ、タツさんってどういうひとだったの?」
アインの声が通る。ほんの一秒だけ海賊は騒ぐのをやめた。
「タツは……あいつはな、この富嶽島とは別のところから船に乗り込んできたんだ」
「ありゃあ、どこの島だったかな……まだ、そんなに昔のことじゃあなかったよな」
「戦となりゃ真っ先に切り込んでいく、気風の良い女だったぜ。お頭もそんなところを気に入ったんだろうよ」
語らせれば、彼女を悪く言うものはひとりもいない。
これは、ただコンキスタドールを……敵を倒した祝勝会ではない。
夜通し続く宴の中で、呑んで、笑って、そうして彼女を悼む。共に航海をしてきた仲間を失った彼らの、彼ら流の弔い方なのだろうとアインは思った。
(これからの島の運営とか、人員補充とかどうするんだろうなんて思ってたけど……やっぱり、心配するだけ無駄だったみたいだね)
「ねえ、調理場を貸してくれる?」
煮炊きをしていた島民の女達にそう言い出せば、女達は戸惑う様子を見せたが、快くその場を貸してくれた。
そうして、アインはようやく弥三郎のもとへ行く。
「弥三郎さん。これ、ボクが作ったんだ」
「……おめぇさんがかい」
「そう。こう見えて、料理は得意中の得意なんだよ」
そう言って椀に盛った、島の食材で作った西洋風のスープを渡せば、弥三郎は一口飲んで、美味いな、と呟く。
アインは弥三郎の隣りに座った。
「……星が綺麗だね」
「……ああ、そうだな。生憎満天とは言えねえが……この島も、悪かァねぇだろう」
「うん、凪の中の星空って初めてかも」
そのまま互いの間に静かな風が流れる。それを破ったのは、弥三郎だった。
「心配してんだろう。タツがいなくなって、これから俺たちがどうなんのか、よ」
「……弥三郎さん」
「俺ァ、あいつらを率いる頭よ。これまでもこれからも、そうだ。俺たちはまた船を出す。メガリスを見つけりゃあ、また仲間に試練を受けさせる事もあるだろうよ。お前さんたちにどう映るかわからねぇが、それが俺たち海賊が強くなるための方法で、生き方だからだ。やめてくれなんて言われても困っちまわァ」
「……うん」
「また今回みたいな事も起こるんだろう。そん時もやっぱり、俺達ァそいつを始末するのがこの海の共通の掟なんだ。もしそこで俺たちが全員くたばっちまったら……悔しいが、それから先の航路は後の誰かに託していくしかねえ。……ああ、勿論、お前ェさんがたが今日来てくれたことが余計なことだなんざ思っちゃいねぇんだ。本当に、感謝しかねぇ。誤解しねぇでくれよ」
「うん、わかってる。……わかってるよ」
弥三郎の言葉に頷きながら、アインは思う。
……ここからがまた、富嶽島の物語の、始まりなのだと。彼らの航海は再び続いていくのだと。
「ねぇ。ボク、本の編纂が趣味なんだ。キミ達の物語、綴らせてもらうね」
「そりゃあ有難ぇ。機会があったら、是非読ませてくれや」
弥三郎は、笑う。
猟兵達によって、富嶽島に生まれた脅威は討たれ、危機は防がれた。
明日からも、海賊たちは海に出る。
きっと明日の朝は晴れて、海鳥たちが見送る中で、船は出ていくのだろう。
それでも弥三郎――この島の海賊の頭領は、この日いなくなった女のことを忘れはしないのだろう。彼女でなくとも、失った仲間のことも、すべて抱えて荒波に漕ぎ出すのだろう。
――賑やかな夜だった。
女一人を悼み、送るには、十分すぎるほどに。
大成功
🔵🔵🔵