未だ目覚めぬ夢とアリス(作者 佐和
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#アリスラビリンス  #はるの物語  #宿敵撃破 


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#アリスラビリンス
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#宿敵撃破


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 そこは全てがクッションでできた不思議の国。
 地面も、石も、草木も、花も。
 そこに住む愉快な仲間たちすらも、ふわもこなぬいぐるみ姿をしていて。
 柔らかな感触が、そこを訪れた者に眠りを誘う。
「昼寝最高~」
「別に昼じゃなくても眠るの最高~」
「みんなでゴロゴロしよ~」
「寝転がってふかふかに埋もれよ~」
 のんびりゆったりとした時間が流れる国。
 それはその国を訪れた者も例外ではなく。
「アリスも眠ろ~」
「まったりしよ~」
 世界を巡るアリスにも、穏やかな休息の時を与えていた。
 のだが。
「あ、オウガだ~」
「悪いオウガが来たよ~」
「起きてアリス。起きて~」
「……あれ?」
「ねえ、アリスが起きないよ~」
「お寝坊さん~」
「でも、このままだとオウガに食べられちゃうよ~」
「大変大変。どうしよう~」
「どうしよう~」
 おっとりと慌てる愉快な仲間たちの前で、眠り続けるアリス。
 その小麦色の長い髪を飾る鈴が、静かに鳴った。

 りりん。

「アリスのはるが、またオウガに狙われたようだ」
 久しぶりにその名を告げて、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は猟兵達をぐるりと見回す。
 それは、自分の『扉』を探してアリスラビリンスを巡っているアリスの1人。
 ふわもふな国で、喋る帽子達の国で、猟兵達が助けた、長い小麦色の髪と琥珀の瞳を持つ少女だった。
「はるが訪れていたのは、全てがクッションでできた昼寝には最適な国だ。
 まあ、見た目通り平和な国だったんだが、オウガがアリスの気配を察してやってきてしまったようでね」
 クッション達に誘われて眠っていたはるは、眠りに捕らわれ目覚める気配もなく。
 このままではオウガに食べられてしまうと予知されたのだという。
 はるが眠ったままなのも、どうやらオウガの仕業らしい。
「眠りをもたらしているオウガを倒せば、はるは目を覚ます。
 と、解決方法は分かっているわけだからね。
 戦いの前に、この不思議の国を堪能してみてもいいだろうさ」
 全てがクッションでできた国だから。
 座っても寝転がっても気持ちいいだろうし。
 愉快な仲間たちなど誰かに目覚ましを頼んで、戦いの前にひと眠りしてもいい。
 ふわもこな寝心地は、きっといい夢を見せてくれるだろう。
 もしかしたら、はるも、目覚めたくないくらい幸せな夢を見ているのかもしれない。
「まあ、どんなに気持ちよくても、ずっと眠っているわけにはいかないが」
 夏梅は苦笑を見せながら、猟兵達を送り出した。
「寝過ごさないように気を付けておいで」

 ふわふわ柔らかなクッションの国。
 地面は大きな大きな布団のようにふかふかと広がっていて。
 歩くその足も優しく包みこまれ、沈み込む。
 心地良い肌触りと、気持ちいい柔らかさ。
 だけれども。
「アリス、アリス、アリスって……馬鹿みたい!」
 灰色のウサギ耳を生やした少年は、そのふわもこな感触にすら苛立って。
 振り抜いたテーブルナイフが、木の形をしていたクッションを切り裂いた。
「君がアリスばかりを見るのなら、僕がアリスを殺してあげる」
 大好きな少年の姿を思い浮かべて。
 その少年が時計ウサギとしてアリスを案内する光景を思い出して。
 真紅の瞳が殺意に染まる。
「大丈夫。アリスは眠ったまま殺してあげるから。
 幸せな夢を見たまま、その夢から永遠に覚めなくなるだけだから」
 口元に浮かぶのは、歪んだ笑み。
「だから、アリスがいなくなったら僕を見てよ」
 妄執とも言える一途な想い。
「僕だけを見て」
 そして少年は……オウガは、アリスの元へと向かっていく。


佐和
 こんにちは。サワです。
 お布団には魔力があると常々思います。

 アリスの『はる』は、10歳程の少女で、鈴のついた髪飾りをつけています。
 歌声で癒すシンフォニック・キュアのようなユーベルコードが使えます。
 以下、過去の登場シナリオです。(未読でも問題ありません)
 七色のふわもふとアリス(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=11313)
 重ね茨のお茶会とアリス(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=13688)
 聖夜の愉快なクリスマス(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=18868)

 第1章は、クッションの国をお楽しみください。
 ふわもこぬいぐるみな愉快な仲間たちも、ごろごろ転がっていたり眠っていたり、大変だと言いながらもどこかのんびりまったりしています。
 思う存分ふわもこを堪能するもよし。
 早々に夢の世界に旅立つもよし。
 一緒に眠ったら、誰かと同じ夢を見れるかもしれません。
 尚、第1章ではるが目覚めることはありません。

 第2章は『夢喰いクラゲ』との集団戦です。
 人の見る夢を主食とする、空飛ぶクラゲが眠りを誘います。
 夢喰いクラゲを倒すことができれば、はるが目を覚まします。

 第3章は『『アリス殺し』のベルク・ナイフ』とのボス戦となります。
 アリスを殺そうと積極的に襲い掛かってきます。
 目覚めたはるを守ってあげてください。

 それでは、ふわもこな夢を、どうぞ。
110




第1章 冒険 『眠れるアリスと愉快な仲間たち』

POWアリスの心や身体に働きかけよう!
SPDオウガについて調べてみよう!
WIZ愉快な仲間に色々聞いてみよう!
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


セシル・バーナード
クッションと眠りの国か。ぼくらのためにあるみたいだね、プラチナちゃん。
さあ、一緒に寝よう。抱きしめたまま眠ってあげる。そして一緒に夢を見るんだ。

夢の中身はまあ、酒池肉林。全体にモザイクが必要?(苦笑)
まあ、みんなで楽しく気持ちよく過ごしてる感じ、としておこう。プラチナちゃんもその中にもちろんいるよ。

現実じゃ、みんなと一緒にって言うのはなかなか出来ないからね。
これはこれで、夢と分かってても思いっきり堪能しようじゃない。
プラチナちゃんは、こういうのどうかな?
そのうちこれは、夢じゃなく現実になるよ。それでもぼくの側にいてくれる?
愛してるよ、プラチナちゃんも、みんなのことも。

――さあ、目覚めの時間だ。


「へえ。クッションと眠りの国か」
 ふわふわ揺れる足元を確かめながら、何もかもが柔らかそうな周囲を軽く見回して、セシル・バーナード(セイレーン・f01207)はくすりと微笑んだ。
「ぼくらのためにあるみたいな国だね、プラチナちゃん」
 話しかけながら妖艶に差し出した繊手の先に、ユーベルコードにより現れたのは、身体を覆う程に長い銀髪の小柄な少女。
 手を重ね、そっと銀色の瞳を開いた少女は。
 不安定な足場にぐらっと身体を揺らし、すぐにセシルに支えられた。
『わっ!? え? 何ですかこれ。
 レアメタルどころか金属が全然ないですよ。これ私役立たずの予感!?』
 あわあわと落ち着きなく左右を見て慌てる少女に、セシルは笑みを深めると。
「さあ、一緒に寝よう。抱きしめたまま眠ってあげる」
『わわわ!?』
 握っていた手を引き寄せ、抱き止めながらその場に倒れ込む。
 ふわふわなクッションの地面は痛みどころか心地よく2人を受け止めて。
 傍に生えていたキノコのクッションがころんと転がってきた。
「そして一緒に夢を見よう」
『……どんな夢、ですか?』
 セシルの笑顔に、ふわふわな感触に、そして抱きしめられ近い身体に。
 少女は少し顔を赤らめながら、おずおずとセシルを見つめる。
 その様子を見た緑色の瞳に、艶やかな光が灯った。
「んー……みんなで楽しく気持ちよく過ごしてる夢、かな。
 もちろん、プラチナちゃんもその中にいるよ」
 抱き寄せる手の動きは艶めかしく。
 少女の白い肌を順に撫でていき。
「現実じゃ、みんなと一緒にって言うのはなかなか出来ないからね」
 狐耳を揺らしたセシルは、にっこりと笑って見せる。
 包み込まれるようなふわふわの地面と。
 優しく撫でるような愛おしい手。
 少女の銀瞳が次第に閉じられていく。
 可愛い寝顔にセシルはまた微笑んで、自身も緑瞳を閉じた。
 望む夢は、みんなと一緒の夢。
 みんなと一緒に愛し合う夢。
(「プラチナちゃんは、こういうのどうかな?」)
 セシルに愛され、セシル以外にも愛される。
 そしてセシルも、少女以外にも愛を注ぐ。
 みんなで愛を与え合い。
 みんなで愛に溺れていく。
(「そのうちこれは、夢じゃなくて現実になるよ。
 それでもプラチナちゃんはぼくの側にいてくれる?」)
 ふわふわ幸せな夢の中で。
 セシルの胸中を過ぎる少しの不安。
 でも、夢の中の少女は、愛に囲まれて、蕩けた銀瞳でセシルを見ていたから。
「愛してるよ。プラチナちゃんも、みんなのことも」
 セシルは妖艶に微笑み、少女に優しい口づけを贈ってから。
 再び、愛の夢を紡ぎ上げた。
大成功 🔵🔵🔵

黒鵺・瑞樹
アドリブOK

最近、夜も暑くなってきてるのもあって、若干寝不足気味。
さらに理由はわからんが何度か夜中に目が覚めたりしてるし、熟睡してるとはいいがたい。
(もしかしたら夜中とはいえ、誰か人が訪ねてきてるのかもしれないが)
だから昼寝して少しでも取り返そうかな、と。
何となくここだと短時間でも熟睡できそうな気がする。
というわけで愉快な仲間たちに目覚まし頼んで早々に寝る。
この間もアリスラビリンスで寝てた気がするが、まぁそれはそれで。

明るさで寝付けないなんてないように、複数のクッションで影を作りでも息苦しくない程度に埋もれるようにして寝よう。
夢は見るんだろうか。見るとしても疲れないものにしたいもんだ。


 ふわふわな地面を歩いて確かめた黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)は、丁度良さそうな木陰を見つけてそこにしゃがみ込んだ。
 太い幹も、覆い茂る葉も、根本に揺れる草も、全て柔らかそうなクッション製で。
 近くに生えていた傘の大きなキノコのクッションを引き寄せた瑞樹は、ぽんぽんっと軽く叩いて感触を確かめてから、それを枕にその場に寝転ぶ。
 草木が、地面が、程よく沈み込みながら全身を受け止めてくれた。
(「……ここだと短時間でも熟睡できそうな気がする」)
 包み込むような、抱くような、優しいその感覚にゆるりと青い瞳を閉じる。
 最近の瑞樹は、若干寝不足気味だった。
 夏の訪れで夜も暑くなってきているからか。
 夜中に何度か目が覚めたりして、熟睡しているとは言い難い。
(「もしかしたら夜中とはいえ、誰か人が訪ねてきてるのかもしれないが」)
 原因はともかく、寝足りない日々。
 そんな時に舞い込んだ、クッションでできた不思議の国での依頼。
 となれば、昼寝して、寝不足を少しでも取り戻そうと思うのは当然の流れだろう。
 予想通り、いやそれ以上の寝心地の良さに、瑞樹は小さく微笑んだ。
「あ、猟兵だ~」
「猟兵も眠る~?」
 そこに、のんびりとした声が降ってきて。
 ゆっくりと目を開けると、こちらを覗き込む白猫と茶虎猫のぬいぐるみが見える。
 さらにその後ろから、鯖虎の猫ぬいぐるみも転がるように近寄ってくると。
 3匹の愉快な仲間たちは、その柔らかな手で、もふもふと瑞樹を撫でた。
 小さなぬいぐるみの手がまた瑞樹の眠気を誘ったから。
「オウガが来たら、起こして……」
 何とかそれだけは伝えて、瑞樹はまた瞳を閉じる。
「わかった~」
「任せて~」
「おやすみ~」
 猫達ののんびりした返事も、すぐに遠くなっていく。
 やはり身体が眠りを欲していたのだろう。
 柔らかなクッションに抗うことなく、瑞樹は寝入っていった。
(「この間もアリスラビリンスで寝てた気がするが……」)
 あれは2つの月が優しく光る、不思議な夜の国でのこと。
 その新月の晩に、星だけがきらきらと瞬く夜に、夢を見た。
 大事な人達の側に居られる夢。
 大事な人の笑顔を見ていられる夢。
 それ以上は望まない、とても幸せな、夢。
 その夢から零れ落ちた欠片のような、穏やかな月光のような結晶は、勾玉型の根付として今も瑞樹の傍に在る。
 優しい願いと、優しい思い出と、共に。
(「……またあの幸せを夢に見れるんだろうか」)
 クッションの国は明るくて、月も星も見えないけれども。
 眠りへと誘うふわふわなクッションは柔らかくて優しいから。
 キノコのクッションをもう1つ、また1つと引き寄せて埋もれながら。
 瑞樹は穏やかな微笑を浮かべ、幸せな夢を紡ぎ上げた。
大成功 🔵🔵🔵

フリル・インレアン
ふわぁ、素敵なクッションがいっぱいですね。
横になっていたら眠ってしまいそうです。
アヒルさん、オウガさんが現れたら起こしてくださいね。

あれ、私今とんでもないことを言ってしまったような。
あのアヒルさんに起こしてくださいなんて言ったら絶対突かれるじゃないですか。
でも、起きてぬいぐるみさん達にお願いしなおすのは、このクッションの誘惑に抗うのは無理ですし。
そうです、自分で起きればいいんです。
そうすれば、アヒルさんに突かれずに済みます。
ということで、おやすみなさい。


「ふわぁ、素敵なクッションがいっぱいですね」
 ふわふわと歩くフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は全てがクッションで出来ている光景に大きな赤い瞳を瞬かせて。
 可愛いお花のクッションに目を留めると、その傍らに腰を下ろした。
 小柄な身体が沈んでいくかのように錯覚するほど、柔らかな地面に包み込まれ。
 手に取ったお花もふっかふか。
 他にも、草も木もキノコも全てがふっかふかなのを触って確かめてから。
 フリルは、すぐ横にあった切り株のクッションに、持っていたアヒルの形をしたガジェットをそっと置いた。
「アヒルさん、オウガさんが現れたら起こしてくださいね」
 そしてフリルは、ころんとその場に転がる。
 大きな大きなベッドになったふわふわな地面は、予想通りの心地良さで。
 フリルの全身を優しく受け止め、包み込み、眠りへと誘う。
 大きな帽子を被ったままの頭も、お花のクッションに埋もれて。
 もぞもぞと身体の位置を調整し、丁度いい場所を得たフリルは。
 まどろみの中でそっと赤い瞳を閉じた。
 すぐに睡魔がフリルを迎えにやって来るけれども。
(「あれ、私今とんでもないことを言ってしまったような……」)
 ふと、フリルは気付く。
(「あのアヒルさんに起こしてくださいなんて言ったら絶対突かれるじゃないですか」)
 やっぱり何もしないでいいとガジェットに伝え。
 ぬいぐるみ姿の愉快な仲間たちに改めてお願いし直さなければと。
 思い至り。
 そうしようと決意する。
 けれども。
(「……でも、このクッションの誘惑に抗うのは無理です」)
 包み込むようなふわふわの感触から、フリルは起き上がることすらできず。
 辛うじてコロンと寝返りが打てる程度。
(「どうしましょう……」)
 おろおろする心の動きは、もぞもぞとした身体の動きに反映され。
 近くにあったキノコのクッションが、ころころとフリルへ転がってきた。
 そっと抱きしめたそれすらもふわふわで気持ちよくて。
 フリルはさらに起き上がれなくなっていく。
 そして、フリルはやっと解決策を思いつく。
(「そうです、自分で起きればいいんです」)
 そうすれば、アヒルさんがフリルを起こす必要はなくなり。
 フリルはアヒルさんに突かれずに済む。
 これなら万事問題なし、とフリルは安堵して。
「ということで、おやすみなさい」
 心置きなく、赤い瞳を閉じて、誘いに来た睡魔に身を委ねる。
 そしてフリルは、見守るアヒルさんの前ですやすやと眠り。
 オウガの気配にはっと身を起こし、アヒルさんに突かれることなく自分で立ち上がる……そんな夢を紡ぎ上げた。
大成功 🔵🔵🔵

ラフィ・シザー
どこもかしこもふかふかのクッションだな。
確かにこんなところで寝たら気持ちいいだろうけど。
オウガが来てるならアリスを起こしてあげなくちゃ。
今日もアリスのために頑張ろう♪

あれはウサギのクッションかな?
あぁ、本当にいろんなクッションがあるな。
ふふっ。蜘蛛のクッションなんかもあるのかな?
あるのならちょっと欲しいかもしれない。

…それに…少しだけ胸騒ぎがする。
グリモアの猟兵さんが言ってた名前…。
ベルク・ナイフ…俺の『トモダチ』に居た気がするんだ。でもあいつは…。


 ふわふわの地面は途切れなくずっと続いていて。
 そこから生えたように置かれた木も、草も、花も、キノコも、全てがふわふわで。
「確かにこんなところで寝たら気持ちいいだろうけど」
 クッションの国をぐるりと見回したラフィ・シザー(【鋏ウサギ】・f19461)は、くすりと微笑んだ。
「オウガが来てるならアリスを起こしてあげなくちゃ」
 思わず眠りたくなってしまう国だけれども。
 時計ウサギである自分には役目があるから。
「今日もアリスのために頑張ろう♪」
 ラフィは、クッションな地面の上を、弾むように歩き続ける。
 行けども行けども世界はクッションだけに埋め尽くされていて。
 踏み出す足に、確かめるように伸ばした手に、心地よい感触を伝えてくるけれども。
 ラフィはその誘惑に負けることなく。
 眠っていると聞いたアリスを探していく。
「あ。ウサギのクッション」
 その途中で、気になる形を手に取れば。
「あ~。猟兵だ~」
「いらっしゃい~」
 のんびりと迎えてくれたのは白と茶色のウサギのぬいぐるみ。
「猟兵は寝ないの~?」
「猟兵も眠ろ~」
 無邪気にゆったりと誘ってくる愉快な仲間たちに、ラフィはにっこりと笑いかけ、首を横に振って答えて。
 ふと、思いついて、ぬいぐるみに抱き付くようにして抱え上げた。
「わ~」
「わ~」
「あぁ、本当にいろんなクッションがあるな」
 白と茶のふわふわに顔を埋めて笑うと、ぬいぐるみ達はのんびりとした悲鳴を上げ。
 じたばたする動きも逃れる気がないのではと思うくらいゆったりしていたから。
 ラフィはもう一度、ぎゅっと抱きしめてから。
 ウサギのぬいぐるみを手放した。
 ころんころんと転がるようにラフィから離れて行くその背中を見送って微笑むと。
 再びアリスを探して進み行く。
「蜘蛛のクッションなんかもあるのかな?」
 その合間に、好みのクッションを探していくのはご愛敬。
 ウサギは良くあるけれど、蜘蛛は珍しいからちょっと欲しいかもしれない、なんてお持ち帰りの検討まで脳裏で進めながら。
 ふわりふわりと歩き行く。
(「……それに」)
 そんな中で、ふと、微笑の下に過ぎる思い。
(「少しだけ、胸騒ぎがする」)
 それはグリモア猟兵から聞いた予知の内容。
 この国に現れるアリスを狙うオウガとして、言ってた名前。
(「ベルク・ナイフ」)
 同じ名が『トモダチ』に居た気がして。
(「でもあいつは……」)
 ぎゅっと胸元で手を握り、ラフィは銀の瞳を少しだけ曇らせた。
 さらりとした黒髪を撫で揺らし、さあっと風が通り行く。
 そこに、先ほど解放したウサギのぬいぐるみ達が戻ってきた。
「猟兵~。クモあったよ~」
「違うよ~。これは雲~」
 のんびりと差し出されるのは、真っ白い雲のクッション。
 確かに違うと、ラフィは元の微笑みを取り戻して。
 もう一度、ウサギのぬいぐるみ達を抱きしめた。
「わ~」
大成功 🔵🔵🔵

木元・杏
ふわもふクッションの国
初めてはるに会った時も、もふもふクッションに包まれていて…、ふふ、何だか懐かしい

沈み込み過ぎないように足元を軽くオーラで包んで、スキップするようにジャンプ移動
はる、何処?
耳を澄ませて鈴の音を探し
まだ起きてるぬいぐるみさんにも聞いてみて
はるの傍まで近付きたい

はる、ぐっすり寝てる
今の内に、とはるにそっと跳返の符を渡し
ん、これで危険なものが来ても跳ね返す

はるに防御を施せばほっとして
…ん、わたしも眠い
はるの隣でもふっとクッションに沈んで目を閉じる

…はる、どんな夢を見ているの?
今まで巡った国の夢?はるがアリスの国に迷い込む、もっと前の過去の夢?

わたしも同じ夢が見れるといいな


 ふわふわクッションな地面の上を、まるでトランポリンのように弾んで、木元・杏(食い倒れますたーあんさんぽ・f16565)は進んでいく。
 沈み込み過ぎないようにオーラを足元に纏い。
 さらにそれを推進力にも利用して。
 大きくスキップするように、ぽーんぽーんと跳んでいく。
「はる、何処?」
 その耳が探すのは、アリスが髪飾りにつけた鈴の音。
 その瞳が捜すのは、アリスの小麦色の長い髪。
 その口が問うのは、アリスの眠る場所。
「はる、知ってる?」
「ん~? アリスのこと~?」
「こっちだよ~」
 茶褐色の犬のぬいぐるみがこてんと首を傾げ、まるっこい鳥のぬいぐるみが飛んでいるのか転がっているのか分からない感じである方向へと進んだ。
 先導するぬいぐるみを見つめて。
 地を蹴る足に伝わるもふもふを感じて。
(「ふふ、何だか懐かしい」)
 杏は小さく微笑む。
(「初めてはるに会った時も、もふもふクッションに包まれてた」)
 あの時は、国の一角に広がるクッションの海で。
 沈んでしまっていた、というか、埋もれてしまっていたアリスを皆で引き揚げた。
 今回広がるのは、クッションの大地。
 だからあの時のように隠れてしまっていることはないだろうと。
 杏は目を凝らし、耳を澄まして進んでいった。
 そして、杏の思った通り。
「ほら~、ここだよ~」
「アリスはここにいるよ~」
 眠るその姿は、労することなくすぐに目の前に現れる。
「はる、ぐっすり寝てる」
 穏やかなその寝顔にほっとして。
 杏は、今のうちに、と跳返の符をその手に忍ばせた。
 にわとりの絵が描かれたトランプ型の護符は、攻撃も呪いも、あらゆるものを跳ね返して、きっとアリスを……はるを守ってくれるから。
 これで大丈夫、と安堵し微笑んだ杏は。
「……ん、わたしも眠い」
 はるの隣に、もふっとその身を沈める。
 大きな大きな大地のクッションは、小柄な杏も難なく迎え入れて。
 もふもふなその感触に、金色の瞳がそっと閉じられた。
(「はる……どんな夢を見ているの?」)
 七色のクッションの海が広がる、最初に会った国の夢?
 重なる茨に捕われてしまった国での、楽しかったお茶会の夢?
 ぬいぐるみと喋る帽子と過ごした、クリスマスの国の夢?
 他にも、杏が知らない、はるが巡ってきた国の夢?
(「……もしかしたら」)
 それよりも、もっと前。
 はるがアリスラビリンスに迷い込んだ時よりも前の。
 忘れてしまっている、はるの過去の夢?
 どんな夢だろうと考えながら。
 同じ夢が見れるといいな、と望みながら。
(「幸せな夢だと、いいな」)
 悲しい夢でないといい。
 辛い夢でないといい。
 そう優しく願いながら。
「おやすみ、はる」
 杏は、はるが紡いでいく夢の中へと沈んでいった。
大成功 🔵🔵🔵

 りりん。

 ふわふわ優しい夢の中。
 小麦色の髪の幼い少女が振り返る。
 満面の笑みを浮かべた少女は、おかあさん、と両手を伸ばして。
 ぎゅっと抱きしめられて、幸せそうに笑う。
 小麦色の髪の幼い少女が振り返る。
 抱きしめられたままの少女は、おとうさん、と片手を伸ばして。
 その手に可愛らしい絵本を渡され、幸せそうに笑う。
 読んで、と望む少女に頷きが返ってきて。
 優しく穏やかな声が。
 朗らかで楽しい声が。
 様々な物語を紡いでいく。
 王子様に呪いを解いてもらって幸せになるお姫様のお話。
 色んな人に助けてもらいながら冒険していく男の子のお話。
 魔女に願いを叶えてもらうために仲間と一緒に旅をする女の子のお話。
 力を合わせて望む地を目指して進む動物達のお話。
 優しく楽しい物語と共に過ごす幸せな時間。
 大好きな両親と笑い合ったかけがえのない時間。
 小麦色の髪の幼い少女は振り返る。
 大好きなおかあさんと。
 大好きなおとうさんを。
 その存在を確かめるように見上げて。
 ふわふわ優しい夢の中。
 小麦色の髪の幼い少女は、その姿を少し成長させて、幸せそうに笑う。
 大好きなおかあさんと。
 大好きなおとうさんを。
 その存在を確かめるように見つめて。
 一緒にいられるこの夢が、ずっと続けばいいのに、と……
寧宮・澪
ふわふわ、くっしょん……もこもこ、ばんざーい
これは、もう寝るしかないですねー……起きたらがんばりますので、今はおやすみなさーい、します……

ふわもこを堪能したい気持ちはありますが、まずは愛用の枕を抱えましてー……
気持ち良さげな空間を、なんかこう、勘で探しましてー……
見つけたら、ごろんと転がって、寝やすい感じにころころ……ああ、ふかふか……うん、堪能しながら、整えますね……
そのままクッションの感触を楽しみながら、愉快な仲間たちがしてるおしゃべりや、さやさや聞こえる布の音を子守唄に、夢の世界へー……
すんやり気持ちよく、眠りましょー……
どんな夢が、見られるんでしょか……楽しみ、ですねー……


「ふわふわ、くっしょん……もこもこ、ばんざーい」
 柔らかく揺れる地面以上にふわふわした様子で、寧宮・澪(澪標・f04690)はぼんやりした眠たげな瞳で、ふらふらと歩いていく。
 抱えているのは、星柄の夜色クッション……と思いきや、愛用の枕で。
 ふわふわとさ迷って辿り着いたのは、キノコ型クッションに囲まれつつもある程度の広さがあり、程よく木陰で、草型のクッションがよりふかふかした場所。
 そこにごろんと転がった澪は、しばしその場でころころして。
「ああ、ふかふか……しあわせ……」
 その感触を堪能しつつ、寝心地を追求していた。
 そして寝床が整うと。
「これは、もう寝るしかないですねー……」
 言うが早いか、とろんとしていた黒瞳が完全に隠されていく。
 身体全体を包み込むかのような、柔らかいなかに沈んでいくかのような、ふかふか。
 転がってきて背中や脚に当たるキノコクッションもふわふわで。
 腕の中にあるいつもの枕のいつもの感触がまた安堵を誘う。
 これで寝ずにどこで寝ろというのか、という環境で。
「起きたらがんばりますので、今はおやすみなさーい、します……」
 ふかふか地面に長い黒髪を広げた澪は、抗うことなく睡魔の誘いに乗っていった。
「あ~、猟兵だ~」
「気持ちよさそ~」
 ざわざわと周囲にのんびりした声が集ってきて。
 澪を覗き込む気配や、そっと腕をつんつんする柔らかい感覚があるけれども。
「寝てるね~」
「起きないね~」
 その声や動きはむしろ澪にとっては子守唄。
「ぼくらも寝よう~」
「一緒に転がろ~」
 ぽふんぽふんと地面にクッションが落ちてくるような緩い衝撃が伝わって。
 ごろごろ転がり、布がこすれるような音と共に、地面がふわふわと揺れる。
 その振動も心地よく。
 澪は、枕にぎゅっと顔を埋めた。
 すんやりすやすや、意識も柔らかく沈んでいくなかで。
(「どんな夢が、見られるんでしょか……」)
 ふわふわ、ふかふか。
 まるで雲の上に浮いているかのような、優しく不思議な感覚と同じように。
 柔らかく幸せな夢が、紡がれていく。
大成功 🔵🔵🔵

陽向・理玖
綾華兄さんf01194と

どんな夢見てんだろうな
夢見あんまよくねぇからちょい羨ましいぜ
まぁ覚えてねぇ事もあるけど
っていらねぇ

だな
マジふかふかだし
軽くジャンプし
うおっ埋もる!
やべぇ綾華兄さん一寸コレ楽しいかも
思いっきりジャンプし埋もれようと

ん?
おお、いいじゃんもっと高い場所!
木登り?
見上げ
記憶にはねぇな…
首傾げ
つーか綾華兄さんは何で木登りしたんだ?

おお…
すげぇな?
真似して登ろうとし
…登った事あったんかな…
いや何でもない
やっぱ猫か
花も何か可愛らしくね?
季節関係なく満開じゃん
目細め
…笑うなよ
膨れるが怒ってはなく

よーし!
思いっきり飛び降り
うおっすげぇ!柔らけぇ!
楽しげに転がり
表情緩め

…不思議な世界だなぁ


浮世・綾華
理玖(f22773)と

嫌な夢みたりすんの?
なんだ、添い寝でもして寝てやろっか。ふふ

ま。まだオウガはいないみたいだし
折角楽しそうな国なんだ
のんびり楽しも

マジで全部くっしょんなんだな
はしゃぐ理玖を微笑まし気に見守り

あ、ねえ
そんなら木から落ちたって怪我とかしないんじゃない
理玖、木登りとかしたことある?
俺はねえ。ここまででっかい木には
前のボランティアの時に一回だけ

ほら、登ってみよ
よっと
記憶のない彼にそれ以上問うことはせず

おお、いい眺め
あ。あっちにねこぐるみ君が
可愛い
だなぁ、フォルム可愛い
そんでそれみて可愛いっつってるお前も可愛い
あはは

よっと飛び降りればふかんと柔らかな心地
理玖もほら、なんて呼び込んで


「どんな夢見てんだろうな」
 陽向・理玖(夏疾風・f22773)がそっと覗き込んだ先に眠るのは、アリス。
 鈴飾りをつけた小麦色の長い髪を広げたその寝顔は穏やかで。
 黒髪の少女と、茶褐色の犬のぬいぐるみと、まるっこい鳥のぬいぐるみに囲まれて。
 ふわふわ地面に抱かれた幸せそうな姿に、理玖は小さく苦笑した。
「夢見あんまよくねぇからちょい羨ましいぜ」
「理玖、嫌な夢みたりすんの?」
 その呟きを拾い、浮世・綾華(千日紅・f01194)が問いかける。
 こちらを見つめる赤い双眸に心配の色が少し混ざっているのを見た理玖は、まぁ覚えてねぇ事もあるけど、と肩を竦めて、何でもないことのように振る舞い。
 その様子に、綾華は少し面白がるように、ふふ、と微笑んだ。
「なんだ、添い寝でもして寝てやろっか」
「いらねぇ」
 即答した理玖に、綾華の笑みが深まる。
 そして、話題を変えるように、ぐるりと大きく周囲を見回せば。
 広がるクッションの大地と、点在する様々な形のクッション。
「ま。まだオウガはいないみたいだし。折角楽しそうな国なんだ」
 綾華は誘うように理玖へ笑いかけた。
「のんびり楽しも」
「だな」
 頷いた理玖も、オレンジの髪の下でにっと笑い。
 そして、柔らかな地面を走り出した。
「マジふかふかだし」
 普段踏みしめている大地とは違う、足が沈んでいくかのようなふかふか具合に、驚き戸惑いそして楽しみながら駆けていき。
 思いついて、やっと少しついた勢いのまま、軽くジャンプ。
「うおっ、埋もる!」
 足どころか膝まで沈めた理玖は、嬉しそうにはしゃぎ笑った。
「マジで全部くっしょんなんだな」
 その様子を微笑まし気に見守りながら、綾華が歩いて近寄れば。
「やべぇ、綾華兄さん。一寸コレ楽しいかも」
 さらに勢いをつけて今度は思いっきりジャンプした理玖が、今度は腰近くまで埋もれているのを見て、また微笑む。
 次はもっと、と更なるジャンプに挑戦しようとする理玖の向こうに、綾華は大きな木を見つけて。
「あ、ねえ。理玖、木登りとかしたことある?」
 それを指差しながら、大木の根元へと向かっていった。
 これだけ柔らかい地面なら、あれだけジャンプして大丈夫なら、木から落ちたって怪我などないんじゃと考えながら。
 足元よりは断然硬いけれども、充分に柔らかい木の幹へと綾華は手を伸ばした。
「俺はねえ。ここまででっかい木には、前のボランティアの時に1回だけ」
 枝を確かめるように見上げる綾華の前で、ふわふわと木の葉が揺れる。
 もっさりした枝葉に、木漏れ日も少ないように感じながら。
 てっぺんが見えない大木に赤い瞳を細めた。
「木登り……? 記憶にはねぇな……」
 その傍らへと歩み寄ってきた理玖も、綾華と同じように大木を見上げ。
 しかし、その青い瞳には疑問符を浮かべて首を傾げる。
「つーか綾華兄さんは何で木登りしたんだ?」
 記憶のない理玖の問いに、綾華は微笑んだまま答えずに。
「ほら、理玖。登ってみよ」
 枝に手をかけ幹に足をかけ、よっと大木を登り始めた。
「高い所からのクッションも気持ちいいよ。きっと」
「おお、いいじゃんもっと高い場所!」
 誘いに理玖の疑問は吹き飛び、真似をするように後へ続く。
 ひょいひょいと登っていく綾華を追いかけながら、その動きを参考にして、上へ上へと向かっていけば、理玖はその感覚にどこか既視感を覚えて。
「……登った事、あったんかな……?」
「理玖?」
「いや、何でもない」
 でも、上からの声に首を振って、気にすることなく登っていった。
「おお、いい眺め」
 そこそこの高さまで到達した綾華は、視線を横や下へと移して。
 広がる柔らかな景色にまた目を細める。
「あ。あっちにねこぐるみ君が」
 可愛い、と地面の一点を指差し笑う綾華に。
「やっぱ猫か」
 追いついてきた理玖が苦笑して、すぐ横の枝に立つ。
「花も何か可愛らしくね? 季節関係なく満開じゃん」
 青瞳が見つめる先は、色とりどりの花のクッションが集まった花畑。
 普通の花よりもこもこして丸っこい、普通の花畑とは違う意味で飛び込みたくなるようなその光景に、綾華も同意するように頷いて見せ。
「だなぁ、フォルム可愛い」
 すぐにその青瞳を隣の理玖へと向けた。
「そんで、それ見て可愛いっつってるお前も可愛い」
「……笑うなよ」
 膨れる理玖に、本当に怒っているわけではなくどちらかと言うと照れているような気配を察し、あはは、と綾華の笑顔が弾ける。
 その笑みに、さらに理玖が膨れていくけれども。
「よっ、と」
 拗ねた言葉が続く前に、綾華は枝を蹴り、宙へと身を躍らせた。
 漆黒の髪を風が揺らし、落下感に包まれるのもわずか。
 すぐに、ふかんと柔らかな感触が、綾華を優しく受け止める。
 地面のクッションをその身で確かめた綾華は、笑顔のまま樹上を見上げて。
「理玖もほら」
 なんて呼び込めば。
「よーし!」
 思いっきり枝を蹴った理玖の姿が降ってきた。
 ぼふん! と大きく地面のクッションが揺れて。
「うおっすげぇ! 柔らけぇ!」
 埋もれたそこから理玖ははしゃいで、楽しげに転がっていく。
 ごろごろふかふかわたわたと、柔らか地面を堪能して動いていった理玖は。
 仰向けになった状態で、ぴたりとその動きを止めて。
「……不思議な世界だなぁ」
 目に映る柔らかな景色を。身体中で感じる優しい感覚を。
 受け止め、その表情を緩めると。
「本当にね」
 隣に並ぶように寝転がった綾華が、クッションよりも優しく柔らかな笑みを浮かべて、理玖を見つめていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第2章 集団戦 『夢喰いクラゲ』

POW ●おやすみなさい
いま戦っている対象に有効な【暗闇と、心地よい明かり】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD ●良い夢を
【頭部から眠りを誘う香り】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ ●気持ちよく眠って
【両手】から【気持ちいい振動】を放ち、【マッサージ】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ふかふかクッションに埋もれて眠る者達へ。
 ふわふわクッションを楽しみ遊ぶ者達へ。
 ふよりふよりと空飛ぶクラゲが近寄ってくる。
 眠る者達へは、起きたくなくなるほどに良い夢を導き。
 遊ぶ者達へは、心地良い眠りを誘って。
 ふよりふよりとクラゲが空飛び近寄ってくる。
 それはクラゲのぬいぐるみではなく。愉快な仲間たちですらなく。
「あ~、オウガだ~」
 空を見上げた馬のぬいぐるみがのんびりと指摘した。
 人に良い夢を見せ、その夢を食べる『夢喰いクラゲ』たち。
 そのために人を、アリスを眠らせ続けるオウガの群れ。
「オウガだよ~」
「起きてアリス。起きて~」
 白猫のぬいぐるみが、茶色兎のぬいぐるみが、もふもふとアリスを揺するけれど。
「アリスが起きないよ~」
「このままだとオウガに食べられちゃうよ~」
 茶褐色の犬のぬいぐるみがおろおろして。
 まるっこい鳥のぬいぐるみがくるくると空を回る。
 導かれた夢に捕らわれて、眠り続けるアリスに。
 ふよりふよりと夢喰いクラゲが近寄ってくる。

 りりん。

 ふわふわ優しい夢の中。
 小麦色の髪の少女が振り返る。
「……はる、ご飯よ」
 優しく笑って食卓を示すのは、大好きなおかあさん。
 いつものテーブルのいつもの席について。
 いただきます、と笑い合う。
「……はる、これ見つけたんだ」
 朗らかに笑って絵本を差し出すのは、大好きなおとうさん。
 いつものお土産をいつもの本棚に増やして。
 ありがとう、と笑い合う。
 ふわふわ優しい夢の中。
 小麦色の髪の少女は、幼い頃から過ごした家で、幸せそうに笑う。
 大好きなおかあさんと。
 大好きなおとうさんを。
 その存在を確かめるように見つめて。
 一緒にいられるこの夢が、ずっと続けばいいのに、と……

 アリスは。はるは。
 幸せな夢に捕われていく。
セシル・バーナード
……ふわぁ、いい夢見たな。
それでまずはクラゲ退治? よし、頑張ろう、プラチナちゃん。
近くの空間を割って腕を突っ込み、取りだしたものは鉄塊剣『プラチナファング』。これならプラチナちゃんも扱えるはずだよ。

あいにくとぐっすり眠ったんでね。今更眠らされたりはしないよ。
「全力魔法」「範囲攻撃」の空間裁断で、クラゲを微塵切りにしよう。

プラチナちゃんの方は、まず得物に慣れてもらうところからかな。
「鎧無視攻撃」「鎧砕き」「貫通攻撃」が使えるから、試してみて。

さあ、仕上げだ。一体ずつ空間断裂で切り裂いていこう。
次元障壁をぼくとプラチナちゃんの前に張って、事故を防ぎつつ、確実に数を減らしていく。
これでお終いっ!


「オウガだ~」
「オウガが来たよ~」
「起きて~起きて~」
 にわかに騒ぎ出した愉快な仲間たちの声に、セシル・バーナード(f01207)はその緑色の瞳をぱちりと開いた。
「……ふわぁ、いい夢見たな」
 大きく伸びをしながら見上げれば、確かに空を漂うクラゲが幾つか。
「まずはクラゲ退治? よし、頑張ろう、プラチナちゃん」
 傍らの少女を見下ろすと、銀の長い髪を広げたまま、まだすよすよと眠る姿。
 にっこりと微笑んだセシルは、その白い肌に妖しく手を伸ばして。
「プラチナちゃん。起きて、プラチナちゃん」
『ん……あっ……』
 びくっと身体を震わせた少女の耳元に口を近づけ、囁いた。
「早く起きないと悪戯しちゃうよ?」
『い、悪戯はダメです!』
 途端に少女はがばっと起き上がり。
『あ、あれっ?』
 寝起きの混乱できょろきょろと周囲を見回した。
 くすくす笑ったセシルは、そんな少女の視線を誘導するように空を指差し。
「ほら、オウガが来たよ。倒さなきゃ」
 夢喰いクラゲの姿を見せる。
 ユーベルコードで召喚された少女は、現れた敵に戦いの気配を察するけれども。
『でもでも金属が全然ないですから私また役立たず決定済というかっ』
「大丈夫、これを使って」
 慌てるその目の前で、セシルは近くの空間を割って腕を突っ込んだ。
 引き抜いたその手に握られていたのは、鉄塊剣プラチナファング。
「これならプラチナちゃんも扱えるはずだよ」
 白金と各種のレアメタルを配合して作られた、少女のための剣を手渡すと。
 受け取った少女の表情に力が籠る。
「さあ、頑張って。ぼくの可愛い女の子」
『はいっ! 私、超頑張ります!』
 やる気満々で飛び出そうとする少女の背中に。
「よくできたら、ご褒美だよ」
 セシルが甘い言葉を囁けば。
 真っ赤になった顔を誤魔化すかのように、少女はクラゲへ向かって地を蹴った。
 初めての得物に、しかし少女はすんなりと順応を見せ。
 剣として、そして金属として、見事に使いこなした戦いを見せる。
 砕かれ貫かれ、数を減らしていく夢喰いクラゲは。
 その中でもセシル達を眠りに誘おうと、不思議な香りを生み出すけれども。
「あいにくとぐっすり眠ったんでね。今更眠らされたりはしないよ」
 セシルはそれを払いのけ。
 また少女の振るう剣が霧散させて。
 効果を見せないままに消えていく。
 ゆえに、少女の独壇場となった戦いを見つめて。
「うん。お試しとしては充分かな」
 セシルは満足そうに微笑むと、さて、と周囲を見回しアリスを探し始めた。
成功 🔵🔵🔴

黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺(本体)の二刀流

幸せな夢をありがとうと言うべきか?ありえない悲しい夢を。

起きたらすぐさま存在感を消し目立たない様に立ち回る。
武装を確認しつつ手近なクラゲに接近しマヒ攻撃を乗せた暗殺のUC剣刃一閃で攻撃を。
マヒ攻撃は倒しきれない時の保険。
以降同様の攻撃を繰り返し、一体ずつ倒していく。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。
眠りは呪詛耐性でたえきれる、かな。

本当に。夢を現実にできたらいいのにな。
どうしたらいいかは今の俺にはわからないけど。


 その気配を感じた黒鵺・瑞樹(f17491)は、キノコのクッションに埋もれた中で、青い瞳を名残惜し気にゆっくりと開き。
 素早くその場に立ち上がる。
 あれもクッションなのだろうか、ふわふわと浮かぶ雲の間に。
 夢喰いクラゲがすぐそこまで迫ってきていた。
 何本もの長い触手が、ゆらりゆらりとバラバラに揺れ。
 ゆったりとした動きの中で、不思議な輝きを放っていく。
 それは眠りを誘う明かり。
 まだ少し離れているこの位置でさえ、瑞樹は眠気を感じて。
 ああ、とため息のような長い吐息を零して、思う。
 夢喰いクラゲ。
 人に眠りを与えて。
 人に夢を見せて。
 その夢を食べるオウガ。
「幸せな夢をありがとうと言うべきか?」
 だからきっと、瑞樹がさっき見た夢も、このクラゲに誘われたもの。
 このクラゲが見せたもの。
 だから。
「ありえない悲しい夢を」
 どこか泣き出しそうにも見える笑顔で、両手の二刀を強く握り締めた。
 左手に握るのは、刃が黒い大振りなナイフ。
 黒鵺瑞樹と名乗るヤドリガミの本体。
 右手に握るのは、摺り上げられ元の銘を失った打刀。
 今は瑞樹が名付けた胡という名を持ち瑞樹のためにある一振り。
 それらの存在を強く、感じて。
 それらが手にある現実を、しっかりと見つめて。
 瑞樹は柔らかな地面をそっと移動し、静かにクラゲへと接近した。
 こちらに気付いているのかも分からない。
 ただきらきらと、不思議な輝きを振り撒くだけの夢喰いクラゲは。
 しかし絶えず瑞樹を眠りへと誘って、また夢を見せようとする。
 大事な人達の側に居られる夢。
 大事な人の笑顔を見ていられる夢。
 それ以上は望まない、とても幸せな、夢を。
(「本当に。夢を現実にできたらいいのにな」)
 思わずそう願ってしまう程の夢だった。
 でも、瑞樹はそうできないことを知っている。
 だからこそ、夢に捕われることなく、夢に溺れることなく。
 瑞樹は剣刃一閃、手近なクラゲを切り断った。
(「どうしたらいいかは今の俺にはわからないけど」)
 それでも、夢に捕われるのは違うから。
 夢に溺れてはいられないから。
 瑞樹はまた次のクラゲへと向かい、夢ごと断ち切るかのように、二刀を振るった。
成功 🔵🔵🔴

フリル・インレアン
ふええ、アヒルさん、どうして起こしてくれなかったのですか?
あまりに気持ちよさそうに眠っていたからって、そんなことを言っている場合じゃないでしょ。
そんな傷だらけになって、こうなったら私がサイコキネシスであのクラゲのオウガさん達を倒します。

・・・、という夢を見ていた私は後でアヒルさんからこっぴどく突かれました。
ただ、眠りながらもサイコキネシスで支援をしていたと愉快な仲間さんも言っていましたし、アヒルさん許してください。


 はっと目を覚ましたフリル・インレアン(f19557)が最初に目にしたのは。
 単独で夢喰いクラゲと戦いボロボロになったアヒルちゃん型ガジェットで。
「ふええ、アヒルさん、どうして起こしてくれなかったのですか?」
 フリルは半泣きで、自身を庇っていてくれた存在に詰め寄る。
「あまりに気持ちよさそうに眠っていたからって……
 そんなことを言っている場合じゃないでしょ」
 こんなに傷だらけになって……と繊手を伸ばし。
 労わるように優しくガジェットを包み込み、抱くと。
 フリルは赤い瞳に決意を込め、キッとクラゲを睨み据えた。
「こうなったら私がサイコキネシスであのクラゲのオウガさん達を倒します」
 掲げた掌から迸るサイキックエナジー。
 それは夢喰いクラゲを捕まえてその動きを封じると共に。
 勢いよく動かしたクラゲ同士をぶつけて、壊していく。
 空を覆っていた夢喰いクラゲはあっという間にその数を減らし。
 最後の1体を、フリルがサイコキネシスで捉えたところで。
 腕の中のガジェットが、強くフリルを突っついた。
「痛っ」
 驚き見下ろすフリルに、だがガジェットはどこか怒った様子で、フリルの腕ばかりではなく、いたるところをつんつんと突き続けて。
「アヒルさん、何をするんですか。
 これじゃ戦えないです。やめてくださいアヒルさん」
 混乱しながらもガジェットを止めようと声をかけるけれども。
 フリルを突く衝撃は止まらぬまま。
「やめてくださいアヒルさん。やめて……」
 そこでようやく。
 フリルは本当に目を覚ました。
「……ふえ? 夢、ですか?」
 呆けたフリルの頭を、ガジェットがこつん、と突きました。
「あ~、やっと起きた~」
「おはよ~」
 寝ている間にだろう周囲に集まっていたぬいぐるみ達がフリルを見て笑い。
「でもすごいね~。眠りながら攻撃してたよ~」
「アヒルさんとの連携ばっちり~」
「寝てたのにね~」
 知らぬ間にフリルを褒め称えている。
 どうやら、眠りながらもサイコキネシスでガジェットの支援をしていた、らしい。
 それでも眠ったままだったのは事実なので。
 ガジェットは怒ったようにフリルを突き続けていたから。
「ほら、愉快な仲間さんもこう言ってますし、アヒルさん許してください」
 フリルは、帽子の縁をぎゅっと握って身体を縮め。
 夢喰いクラゲが消えた空の下で、必死に謝り続けた。
「ふええぇぇ……」
成功 🔵🔵🔴

ラフィ・シザー
早くアリスを起こしてあげないとオウガに食べられちゃう。
幸せな夢はやっぱり夢でしかないのだから…。
でも今なら幸せな夢に溺れていたいアリスの気持ちもわかってあげられるかもしれないけれど…。

けれどその前に。
あのオウガをなんとかしないと。

ッ眠くなる攻撃か…寝てる場合じゃないんでね!
(眠気を誤魔化すためにハサミで自分を傷付けて)
UC【Dancing Scissors】
踊れ!踊れ!

アリス早く目を覚まして…!


 ぽたり、とクッションの上に赤い染みが広がる。
 ラフィ・シザー(f19461)はそれを静かに見下ろしてから。
 眠りを誘う香りの中で、空へと振り返った。
 そこに浮かぶのは夢喰いクラゲ。
 長い長い触手を揺らし、人を眠りへと誘って、その夢を喰らうオウガ。
 アリスを狙い、現れた存在。
「早くアリスを起こしてあげないと、オウガに食べられちゃう」
 夢喰いクラゲは夢を食べるだけと言われているが。
 本当にアリス本人を食べないとは限らないし。
 他にもアリスを狙うオウガはいるから。
 眠ったままでは危なすぎると、ラフィはクラゲを睨むように見上げる。
 その動きはゆらゆらと穏やかで。
 香りで明かりで眠りを誘い続けるけれども。
「寝てる場合じゃないんでね!」
 掲げたラフィの腕には、赤い血が流れていた。
 反対側の手に持った、片手持ちの細身の鋏の刃にも、同じ赤が滴っていて。
 痛みと共に、ラフィを現実へと繋ぎ止める。
 そう。ラフィは鋏を自らへ突き立て傷つけることで、眠気に抗ったのだ。
 それはアリスを守るため。
 そして、そのためには。
「あのオウガをなんとかしないと」
 手にした鋏の血を振り払うと、ユーベルコードを発動させ。
 その鋏を複製して、念力で周囲に浮かび上がらせる。
「踊れ! 踊れ! 踊れ!」
 増えた鋏はラフィの言葉に飛び行きて。
 空を乱れ舞い、夢喰いクラゲを切り刻んでいった。
(「アリス……」)
 その間にちらりと見やれば、少し離れたところで、眠り続けるアリスの姿。
 穏やかなその様子から、見ている夢は幸せなものなのだろうと思う。
 でも。
(「幸せな夢はやっぱり夢でしかないのだから……」)
 夢に捕らわれてはいけない。
 夢に溺れ続けてはいけない。
 今を生き、現実をみつめなければ。
 未来はないのだから。
(「でも……」)
 それでも、少しだけラフィの心は揺らぐ。
 今なら、幸せな夢に溺れていたいアリスの気持ちが分かる気がするから。
 辛い現実よりも幸せな夢を望んでしまう、その心を、理解できる気がするから。
 でも。
 それでも。
 夢は、夢。
 アリスが生きる場所は別にあると。
 揺らいだ心を戻すように、ラフィは一度首を横に振ってから。
 声を上げる。
「アリス、早く目を覚まして……!」
 踊る鋏がまた、クラゲを迷いなく切り裂き、倒した。
成功 🔵🔵🔴

陽向・理玖
綾華兄さんf01194と

確かにめっちゃ気持ちよさそうに見えるな
でもあんま寝たくねぇなぁ…

綾華兄さんはどんな夢見てぇの?

さっきも言ったけど夢見はあんまいい方じゃないからよ

幸せな夢だって夢は夢でしかない
それくらいもう分かってるし
俺はもう
夢より仲間のいる現実の方がいい

それにほら楽しい事は
別に夢じゃなくても出来んじゃん?

別に強い訳じゃ
ただ
俺が惑わされて
他の誰かが傷つくのを見たくないだけ

つーか
綾華兄さんの方が優しいっつーの
…頼りにしてるぜ

まぁ少なくとも俺は
幸せな夢見せといて
アリス死なすのは許せねぇわ
手近な敵にグラップル

起きたら辛いかもだけどよ
帰れないまま死ぬより余程いい
…俺ならな
ダッシュで間合い詰めUC


浮世・綾華
理玖(f22773)と

――どんな夢、だろうなぁ

曖昧に返し彼の言葉を聞く
(ああ、お前はそうか
今を、生きてるんだな…
感心したように目を閉じて)

幸せな夢を見るのはいい
(思い出すことが辛くあるかもしれない
でもそこには本当に苦しみしかないわけじゃないはずだ)
お前が、俺が――夢の中で感じた幸せを…過去の、何かを
それだけ忘れずに大切に想ってるってことだから

強くて優しい理玖
無理に前を向こうとしなくてもいいよ
でもお前が望むなら
夢を見る前に俺がいつだって起こすから

複製した扇で甘やかな香りを吹き飛ばす
俺は守り、理玖に攻撃は任せよう

もし眠さが襲うなら
理玖に見えないよう己の足元を鍵刀で裂き痛みで覚醒

(約束、したからな)


 少し暗くなった空に、夢喰いクラゲの姿が浮かび上がる。
 大きな傘をぼんやりと淡く光らせて、長い幾本もの触手をきらきらと瞬かせて。
 ゆらり、ゆらりと穏やかに、どこかのんびりと浮かび、漂う。
「確かにめっちゃ気持ちよさそうに見えるな」
 見上げた陽向・理玖(f22773)は、不思議と心地良いその光景に青い瞳を細めた。
 そのまま目を閉じてと、眠りへの誘いを感じるけれども。
「でもあんま寝たくねぇなぁ……」
 夢見あんまよくねぇから、と先ほども言った理由を繰り返し。
 苦笑しながら、傍らの浮世・綾華(千日紅・f01194)へと矛先を向ける。
「綾華兄さんはどんな夢見てぇの?」
「……どんな夢、だろうなぁ」
 綾華も夢喰いクラゲを見上げて、曖昧な答えを返した。
 どんな夢を見たいかと問われれば。
 辛い夢よりも楽しい夢がいい、とは誰もが思うことだろう。
 叶わなかった願いが叶う夢。
 失ってしまったものが戻る夢。
 現実では決してあり得ないことも、夢でなら起こり得るから。
 幸せな夢を望むだろう、と思う。
 得られなかった幸せを得た、偽りの過去の夢を。
 戻りたい程に幸せだった、今と違う過去の夢を。
 人は望むのだろう、と。
 自分もそうなのだろうかと、どこか他人事のように考えていると。
「幸せな夢だって夢は夢でしかない。
 それくらいもう分かってるし」
 ぼんやりとした思考に、理玖の声が凛と響く。
「俺はもう、夢より仲間のいる現実の方がいい」
 迷いなく、むしろ迷うという選択肢すらなく、真っ直ぐに紡がれる言葉。
「それにほら、楽しい事は別に夢じゃなくても出来んじゃん?」
 そして、空を見上げる理玖の顔に浮かぶのは、晴れやかな笑み。
(「ああ、お前はそうか」)
 綾華は小さく口元を笑みの形に歪めて。
(「理玖は、今を、生きてるんだな……」)
 感心したように、赤い瞳を閉じた。
 幸せな夢に溺れるよりも。
 幸せな今を作っていこうと。
 過去を奪われた少年は、真っ直ぐに前を向いていたから。
「強いな、理玖は」
「別に強い訳じゃ……」
 ぽつりと零れた綾華の言葉に、理玖は照れたように口ごもりながら隣へと振り返り。
「ただ、俺が惑わされて他の誰かが傷つくのを見たくないだけ」
 それだけだ、とはにかみながら苦笑する。
 綾華もまた瞳を開き。
 隣へとその赤い瞳を向けると。
「強いよ、理玖は。それに優しい」
 柔和に微笑んだ。
 だから別に、とまた口ごもる理玖に、綾華の笑みは深くなり。
 そして、笑みの中にふっと違う色を混じらせる。
「幸せな夢を見るのはいい」
 夢の中で感じる幸せは、きっと、過去の何か。
 その何かを、それだけ忘れずに大切に想ってることの証明だから。
 例え、思い出したくない過去でも。
 思い出すことが辛いことでも。
 そこには本当に苦しみしかないわけじゃないはずで。
 きっとそれを、苦しみ以外の何かを、夢という形で大切にしているのだろうから。
 幸せな夢を見てもいい。
 幸せな過去だけを見てもいい。
「無理に前を向こうとしなくてもいいよ」
 心配するような、淋しがるような、そんな色を微かに見せて。
 告げる綾華を理玖が見つめる。
 照れ隠しの笑みではなく、少し困惑した、それでも綾華の言葉を受け止めようとする、真摯な表情で。
 理玖が、見つめていたから。
 綾華はまた柔らかで穏やかな微笑へと戻り。
「でもお前が望むなら、夢を見る前に俺がいつだって起こすから」
 その視線を空へと戻した。
 漂う夢喰いクラゲは、こちらのやり取りに配慮することなどなく、不思議に輝くふよふよした頭部から甘やかな香りを放ってくる。
 それは眠りを誘う芳香。
 望まぬ夢をもたらすもの。
 見上げる綾華の周囲に、黒色と金色の扇がふわりと浮かび上がり。
 ユーベルコードでその数を増やすと、香りを吹き飛ばし始めた。
 眠りを散らすように。
 望まぬ夢を遠ざけるように。
「……つーか、綾華兄さんの方が優しいっつーの」
 その様子に、理玖は仄かに顔を赤らめながら苦笑を見せ。
「でもまあ……頼りにしてるぜ」
 すぐににっと力強く笑うと、ふわふわの地面を蹴った。
 甘やかな芳香が散らされたそこを走り。
 向かうはちかちか瞬く夢喰いクラゲ。
 その輝きも心地よく、眠りを誘う灯りだけれども。
 夢よりも現実の方が理玖には幸いで。
 過去が気にならないわけではないけれど、それを夢見るのは今でなくてもいいから。
 誘いを退けるように、理玖は拳を握り締めた。
 皆が皆、自分と同じ考えではないと分かっている。
 幸せな夢を見たいと思う者がいることも。
 幸せな夢に溺れたいと願う者がいることも。
 でも。それでも。
「まぁ、少なくとも俺は、幸せな夢見せといてアリス死なすのは許せねぇわ」
 夢喰いクラゲが用意する、幸せな夢のその先は、違うと断言できるから。
 理玖は、クラゲへと拳を振るう。
 その拳撃の最中に、ふと視線を流し。
 少し離れた場所に見るのは、穏やかに眠るアリス。
「起きたら辛いかもだけどよ。帰れないまま死ぬより余程いい」
 ぽつり呟く理玖の口元に、自嘲気味の笑みが浮かび。
「……俺なら、な!」
 また力強く、素早い拳がクラゲを殴り飛ばした。
 幾つもの夢喰いクラゲが漂い、幾つもの扇が舞い踊る。
 先端に鋭い刃がついた鍵刀を握り締めた綾華は、金色煌めく扇を操り続け。
 闇夜に重なるようなその煌めきで、夢への誘いに抗う。
(「約束、したからな」)
 告げたばかりの誓いを思い出し。
 それを守るために、刃を足に添え。
 自身が眠りに負けるようならすぐにでも切り裂き、痛みで抗えるように。
 綾華は、黒鍵刀を握り締め、黄金の輝きを空に舞わせる。
 淡く燈り浮かぶ夢喰いクラゲが次々と殴り落とされていくのを見ながら。
 金の輝きを返して煌めくオレンジ色の髪を見つめながら。
 ふと、綾華はまた呟いた。
「……どんな夢、だろうなぁ」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

寧宮・澪
……ああ、きたん、ですねー……
うん、ちゃんとがんばりますよー……ふぁ
は、や、起きて、ますよー……?

霞草の舞風……はるさんのそばに行って、起動……
彼女を中心に、やってくるくらげを迎え撃ちましょー……
範囲攻撃で近づかせないように、近くの夢喰いクラゲを重点的に、狙いましょー……
はるさんへの攻撃は、かばいましょね……オーラ防御で、頑張りましょー

はるさん、なんだか幸せそうですし、幸せな夢なんですね……
寝るのは、幸せですけど……寝っぱなしは、多分、不幸なんですよね……夢だけじゃ、生きていけませんし
お家に帰るためにも、起きましょね
なんて、語りかけてみたり

あー……マッサージ気持ちいい……肩こりにきく……


 もふもふ、ぽふぽふ、と。
 柔らかな感触が眠る寧宮・澪(f04690)を揺らす。
「猟兵、起きて~」
 相変わらずどこかのんびりとした声で。
 彼らなりに必死に、ぬいぐるみ達は澪を起こそうとする。
 けれども、そのもふもふな手が生み出す衝撃はぽふぽふと柔らかく。
 クッションと共にゆらゆらと揺れる動きは心地良いから。
 澪の瞳は閉じられたまま。
 だったけれど。
「オウガだよ~」
「オウガがきたよ~」
「……ああ、きたん、ですねー……」
 その情報にゆっくりと、ぼんやりした黒瞳が開かれた。
 眠っていられるのはオウガが来るまでの間と決めていて。
 起きたらがんばる、と告げていたのだからと。
 澪は、夜色の星柄枕から顔を上げて。
「うん、ちゃんとがんばりますよー……ふぁ」
 しかし、目をこすってから大あくび。
「寝ちゃダメだよ~」
「起きて起きて~」
 そのまま顔が再び枕に沈みそうなのを見て、愉快な仲間たちが慌て出す。
 もふもふ、ぽふぽふ、と。
 また澪を必死に揺らして。
「は、や、起きて、ますよー……?」
 何とか立ち上がった澪に、ほっと安堵のため息が漏れた。
 そして、ゆるりと周囲を見回した澪は。
 少し離れた場所で、クッションに埋もれて眠るアリスを見つけ。
 そこへと流されていくかのように、クラゲが泳いでいくのを見て。
 ふらふらと、同じ方向へ歩き出す。
 ぽふぽふと、ぬいぐるみな愉快な仲間たちがついてきている気配も感じながら。
 柔らかな行進は、小麦色の髪のアリスを前に止まった。
「あなたが、はるさん……ですねー……」
 ぼーっと見下ろし、零した問いかけに答えは、ない。
 クッションの地面に横たわったアリス……はるは穏やかな寝顔を見せていて。
 澪の声にも、覗き込むぬいぐるみ達にも、目を覚ます気配を見せなかったから。
 こくんと首を傾げる澪の肩口から、長い黒髪がさらりと流れ。
「はるさん、なんだか幸せそうですし、幸せな夢なんですね……」
 見つめる黒瞳は微かに微笑みを見せていた。
 そのままゆっくり眠らせてあげたいような。
 隣で眠る短い黒髪の少女のように、自分も並んで横になりたいような。
 そんな思いが澪の脳裏をよぎるけれども。
 眠るアリスの上に漂うのは、夢喰いクラゲ。
 アリスを狙うオウガだから。
 戦わなければと澪は夢喰いクラゲを見据え。
 見上げた視線の先で、クラゲの触手のうち手の形をした2本が澪へと向けられた。
 そこから振動のユーベルコードが放たれるけれども。
「あー……マッサージ気持ちいい……肩こりにきく……」
 強烈どころか絶妙に丁度いいそれに、またしても澪の瞳がとろんとする。
「だから寝ちゃダメ~」
「あ、ええ、大丈夫、ですよー……」
 慌てるぬいぐるみ達に、澪は説得力に乏しい口調で答えながら。
 はらはらしている様子の彼らに、ふんわり微笑んで。 
「かすみが如くー……舞い踊れー」
 手にしていた枕を無数のかすみ草の花へと変化させた。
 白く小さく可憐な花は、風に乗って空へと舞い上がり。
 夢喰いクラゲを覆い尽くすかのように襲い掛かる。
「寝るのは、幸せですけど……寝っぱなしは、多分、不幸なんですよね……」
 枕を失くした両手をきゅっと引き寄せて。
 澪はそっと眠り続けるはるへとまた視線を落とす。
「夢だけじゃ、生きていけませんし……
 お家に帰るためにも、起きましょねー……なんて」
 のんびりとした口調で話しかけた先で、はるが小さく身じろぎをした。
 夢から現実へ向かってきてくれているのだろうかと思ったそこに。
 再び、空のクラゲから放たれる、丁度いい振動。
「やっぱり、マッサージ……あー、きく……」
「猟兵~」
 またまた慌てるぬいぐるみ達の前で、だがかすみ草はしっかりと舞い続けていた。
大成功 🔵🔵🔵

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と合流

…これははるの夢の中?
おいしいごはん、お土産は絵本
優しそうなおとうさん、おかあさんに囲まれた、幸せな時間
はるのこんなに嬉しそうな笑顔は初めて見る
…うん、わかる
わたしも家族と一緒の笑顔は一番幸せなもの

…はるは何故「アリス」になったの?
まだ思い出せない記憶、夢
はるがはるである、とても大事なピース
忘れちゃだめ、思い出して
ああだけど、とてもいい香りで、とても眠くてふわふわ……

む?このふわふわは知ってるふわふわ
何より暖かくて優しい、大好きなしっぽ!
まつりん!


…おはよ?
よっ、よだれ!?(口元ふきふき

はる起きて?幸せに溺れてはダメ
跳返の符ではるを守り
【鎌鼬】でクラゲを倒す


 りりん。

 聞こえた鈴の音に、木元・杏(f16565)は、はっとして顔を上げた。
 そこはUDCアースで見たような小さな家の中。
 中央に置かれたダイニングテーブルを囲むように椅子が並び。
 アリスを中心に幸せそうな家族が座って、笑い合っている。
「今日も美味しいね、おかあさん」
 豪華ではないけれども、愛情を感じられる丁寧な料理を示せば。
 女性の優しい笑顔が綻び。
「絵本はご飯の後でね、おとうさん」
 華美ではないけれども、可愛い絵の本を大事そうにそっと置けば。
 男性の朗らかな笑顔が弾む。
(「……これは、はるの夢の中?」)
 目の前の光景に、杏はじっとアリスを……はるを見る。
 長い小麦色の髪も、琥珀色の瞳も、見知ったものだけれども。
 こんなに嬉しそうな笑顔は初めて見るものだったから。
「……うん、わかる」
 杏は、こくりと頷いた。
 家族と一緒の笑顔は、一番幸せなもの。
 それは杏も同じだったから。
 おかあさんとおとうさんと、双子の兄、それと弟。
 揃って過ごした時間は杏の宝物だから。
 きっと、杏が見る『幸せな夢』も、家族との思い出だと思う。
 だけど。
「はる、起きて?」
 杏は、その『幸せ』を終わらせる言葉をはるにかける。
 ずっとずっと見ていたい夢。
 溺れてしまいたい夢。
 杏もきっと、今は会えない両親の夢を見たなら。
 一緒にいられるこの夢が続くように、と願ってしまうかもしれないけれど。
 その願いを叶えたら、会えなくなる友達がいる。
 両親の元を離れた後で出会った大切な人達。
 今の杏の傍に居てくれる、かけがえのない存在。
 おかあさんに会えないのは寂しいけれど。
 そんな人たちがいてくれるから。
 杏は、夢ではなく、現実を選ぶ。
 はるにもきっと、積み重ねてきた今があるはずだから。
「忘れちゃだめ、思い出して」
 杏ははるへと声を上げる。
「はるは、何故『アリス』になったの?」
 それは、はる自身がまだ思い出せない記憶。
 恐らくこの幸せな夢の先にある出来事。
 それが例えどんなに辛いものだったとしても、それはきっと、はるがはるであるとても大事なピースだと思うから。
「思い出して」
 杏は、夢の中ではるに近づき手を伸ばす。
 けれども、近づけば近づくほど、甘い香りが濃くなっていって。
 揺れる淡い輝きにも、杏の金瞳がとろんとしてくる。
(「ああ、だめ……」)
 とてもいい香りが。とても心地良い灯りが。
 そしてとても柔らかいふわふわが、杏を眠りへと誘った。
 温かくて。優しくて。
 安心するふわふわ。
(「……む?」)
 ぎゅっとそのふわふわを抱きしめた杏は気付く。
(「このふわふわは知ってるふわふわ」)
 柔らかくて。温かくて。優しくて。
 とっても安心する、大好きな……
(「しっぽ!」)
「まつりん!」
 思い出した杏は、ぱちっと金色の瞳を見開いた。
「アンちゃん、おはよー」
 思った通り、人狼である双子の兄のおひさま笑顔が、目覚めた杏を出迎える。
「……おはよ?」
 どこかぼんやりとあいさつを返せば。
「うん。ちゃんと起きてね。
 ほらココ。よだれ」
「よっ、よだれ!?」
 指し示された口元を、杏は慌てて拭う。
「ウソだよー、本気にした?」
「……!」
 けれども悪戯っぽく笑う兄に、杏は顔を真っ赤にした。
 いつもの他愛もないじゃれ合い。
 でもこれこそがかけがえのない現実だから。
 おかあさんと別れた先にある今だから。
 杏はぐるりと周囲を見回した。
 にぱっと笑う、兄の笑顔を。
 かすみ草が舞う中に立つ長い黒髪の後ろ姿を。
 心配そうに尻尾を振る、背中に羽を持つ犬を。
 順に、見てから。
 最後に未だ眠り続けるはるへと手を伸ばす。
「はる、起きて?」
 ゆらゆらと揺らした身体が小さく身じろぎして。
 現実へと戻ってこようとしているのを感じさせる。
「幸せに溺れてはダメ」
 杏は、にわとりの絵が描かれたトランプ型護符をはるに施した。
 攻撃や呪いを跳ね返してくれる、跳返の符ではるの目覚めを守りながら。
 キッと見上げた空に、揺蕩う夢喰いクラゲ。
 それは、夢の中でも見た心地良い灯りを揺らめかせ。
 眠りを誘う甘い香りを漂わせ続けていたから。
 うさ印の護身刀を構えた杏は、操るうさ耳付きメイドさん人形と共に襲い掛かった。
大成功 🔵🔵🔵

木元・祭莉
アンちゃん(f16565)探しに来たよー。

ぬいぐるみさんたちにきいてみる。
ウチの妹、知らない?
黒い髪に金色の目で、ウサ耳メイドさん人形連れてる。
あと……お菓子の匂いがするかも?

あー。探しに行くって言って、自分も寝てるじゃん?
起きてー。むう。
クッションとおいら、どっちがもふもふー?(尻尾でくすぐる)

ふっ。(もふもふ大勝利!)
ほらココ。よだれ。
ウソだよー、本気にした?(にぱにぱ)

え、はるちゃん?
この子かな、ぐっすり眠ってるケド。
ん、おっけー。クラゲが近寄らないように守らなきゃ!

闇の中、淡く照らされたクラゲさんに、舞扇をふわり。
絆で絡め捕ったら、アンちゃんにパス!
綺麗に片付けてねー♪


「ねえねえ、ウチの妹、知らない?」
 もふもふとクッションの地面を歩きながら、木元・祭莉(CCまつりん・f16554)は周囲のぬいぐるみたちに問いかける。
「黒い髪に金色の目で、ウサ耳メイドさん人形連れてるよ。
 あと……お菓子の匂いがするかも?」
 祭莉の思う特徴を並べて聞き込んでいけば。
「あの子かな~?」
「あの子~?」
「ほら、アリスと一緒の~」
「ああ、あの子~」
 心当たりがありそうな様子でのんびりと話し合った後、オオカミのぬいぐるみがひょいと振り返りながら走り出した。
「ついてきて~」
 先導する灰色のもふもふ後ろ姿を追いかけて、祭莉は、そして他のぬいぐるみたちはクッションの地面を、クッションの木々の間を、走り抜けて。
 小麦色の髪の少女と一緒に横に寝転がる、黒髪の少女の姿を見つける。
「あー。探しに行くって言って、自分も寝てるじゃん?」
 しかたないなぁ、と祭莉は大仰に肩を竦めて見せてから。
「起きてー」
 黒髪の少女をゆさゆさと揺らす。
 けれども、その金色の瞳は閉じられたままで、開く気配もなく。
 気持ちよさそうに眠り続ける妹に、祭莉は、むう、と腕を組んで考え込んだ。
 クッションの地面に寝転がり。
 キノコのクッションに囲まれて。
 もふもふと幸せそうに眠る妹。
 そうだ、と思いついた祭莉は、狼尻尾をふわりと揺らして、にっと笑うと。
「クッションとおいら、どっちがもふもふー?」
 もふもふ尻尾で妹をくすぐり始めた。
 妹は、この尻尾をもふるのが大好きなのだから。
 腕を、顔を、撫でるように、もふもふもふもふと動かせば。
 目は開かないままだけれども、その繊手が尻尾を探すように彷徨って。
 いつものようにぎゅっと抱き寄せた。
「ふっ。もふもふ大勝利!」
 クッションよりも選ばれた狼尻尾に、祭莉は嬉しそうに胸を張り。
 そして、もふもふ動かす尻尾に導かれるように、妹が金色の瞳を開いた。
「アンちゃん、おはよー」
「……おはよ?」
 笑顔で挨拶を送れば、どこかぼんやりとした返事が返ってきて。
 まだちょっと寝ぼけているかのような妹に、祭莉は、にまっと悪戯っぽく笑う。
「うん。ちゃんと起きてね。
 ほらココ。よだれ」
「よっ、よだれ!?」
「ウソだよー、本気にした?」
 慌てて口元を拭う妹に、にぱにぱと祭莉は楽し気に笑った。
 はっと驚き、ちょっとむっとしてから、顔を真っ赤にした妹の可愛らしい反応に、祭莉はより楽しそうに笑みを深めて。
 やったぁ、と周囲のぬいぐるみたちとハイタッチ。
 ここまで案内してくれたオオカミのぬいぐるみとも、もふっと手を合わせて。
 ふと気づくと、妹は、未だ眠ったままのもう1人の少女を揺すっていた。
「はる、起きて?」
「え、はるちゃん? この子のこと?」
 きょとんとして、祭莉は改めてその子を覗き込む。
 小麦色のさらりとした長い髪を広げて眠る、自分達兄妹と同じくらいの年頃の女の子。
「じゃあ、この子がアリスかぁ」
 改めてまじまじと見やる祭莉の横に、いつの間にか、背中に羽を揺らして帽子を被った褐色の大型犬が並んでいて。
 ひらひらと、小さな白い花が舞い、降り注いでくる。
 アリスを囲む守りの手に気付くと共に、祭莉は空を飛ぶクラゲを見上げた。
 少し薄暗くなった中で、心地良い瞬きを見せるそれの正体も察して。
 眠るアリスと、空飛ぶオウガ。
 そして心配そうな双子の妹。
 直感的に状況を理解した祭莉は、にぱっと笑いかけた。
「ん、おっけー。
 とりあえず、クラゲが近寄らないように守ればいいんだね!」
 簡単にやるべきことを纏めると、その周囲に生まれる舞扇の幻影。
 ひらりはらりとその扇は増えて、白い花と共に夢喰いクラゲへ襲い掛かる。
 暗がりの中で、クラゲの灯りに照らされた白花と扇は、淡く美しく浮かび上がり。
 幻想的な光景の中で、祭莉は舞扇をひらりはらりと操って。
 ゆらゆらと揺れて光る長い長い脚のような触手を、夢色の絆で絡め捕える。
「アンちゃん、パス!」
 声を上げるが早いか、妹はメイド人形と一緒に飛びかかり。
 その手にした刃で、祭莉の捕らえたクラゲを綺麗に切り裂いた。
大成功 🔵🔵🔵

 大好きなおかあさんがそばに居て。
 大好きなおとうさんが笑っている。
 とてもとても幸せな、夢。
 ずっとずっと、この幸せが続けばいい。
 ずっとずっと、ここにいたい。
 心の底からそう思って。
 でも。
「忘れちゃだめ、思い出して」
 響いた声に、アリスは振り向いた。
 そこに立っていたのは、短い黒髪を必死に揺らす、金色の瞳の女の子。
 見覚えがある気がしたけれども。
 おかあさんとおとうさんがいるこの夢では見たことのない子。
 アリスの過去には存在しない子だった。
『……知らない』
 幸せな夢が、アリスに告げる。
 この子はこの夢には要らない子。
 アリスには必要のない存在なのだと。
 おかあさんがアリスの手を取り。
 おとうさんがアリスに笑いかける。
 けれども。
「はるは、何故『アリス』になったの?」
 女の子は尚もアリスに告げる。
 忘れては駄目だ、と。
 思い出せ、と。
『あたし、は……』
 幸せな夢が、アリスに告げる。
 この幸せだけを見ていればいいと。
 辛い過去など思い出す必要はないと。
 おかあさんがアリスの手を取り。
 おとうさんがアリスに笑いかける。
 けれども。
『……どうして?』
 おかあさんが優しく手を握ってくれるから、はるは思う。
 おとうさんが柔らかく微笑んでくれるから、はるは思う。
 どうしてこれが幸せな夢なのか。
 いや、幸せなのは間違いない。
 そこではなくて。
 どうしてこの夢を見続けていたいと思うのか。
 何故この幸せの中に居たいと思うのか。
 それはつまり。
『もう、おかあさんとおとうさんに会えない、から……?』
 辿り着いた答えに、はるはその場に崩れるように座り込んだ。
 現実の自分には会えない家族。
 だからこそ、夢は紡いだ。
 幸せな家族を。
 笑顔に囲まれていた過去を。
 それが夢だというのなら。
 夢から覚めた現実は。
『誰も居ない、独りぼっちの、あたし……?』
 おかあさんがはるの手を取り、戻っておいでと引き寄せる。
 おとうさんがはるに笑いかけ、ずっとここにと呼び寄せる。
 けれども。
「寝るのは、幸せですけど……寝っぱなしは、多分、不幸なんですよね……」
 ぼんやりと響いた眠たげな声は。
 それこそが不幸だと告げて。
「現実が無くなってしまえば、夢だって見れなくなるもの」
 凛と響いた力強い声は。
 現実があるからこその夢だと諭す。
「はる、起きて?」
 そして、いつの間にか姿を消していた金色の瞳の女の子の声は。
「幸せに溺れてはダメ」
 現実で待っていると伝える。
 だから。
『ああ、そうだ……』
 はるの中に思い出が蘇る。
 幸せな夢に覆い隠されていた、はるの軌跡。
 アリスラビリンスの不思議な世界にいきなり連れてこられてから。
 助けてくれた沢山の優しい手を。
 一緒に過ごした沢山の笑顔を。
 幸せを失ったはずのはるが過ごした、新しい幸せを。
 思い出して。
『あたしは……』
 顔を上げたはるの背中を押すように、呪文のような言葉が響いてきて。
 またしても蘇る、紅茶の香りと幸せな時間。
『……誕生日、の……』
 ふわりと微笑んだはるは、夢の中で目を閉じて。
 おかあさんとおとうさんに静かに別れを告げた。
『ありがとう、です』
南雲・海莉
遅れたわ、ごめん!
(自分は敵の群れを睨み
リンデンは真っ先にハルの下へ)

夢は心を映すもの
なら夢を喰らう奴らも心に属す物
(Flammeを翳し)
魔導心療医学の理論を付与魔術の技術で具現化させる
この空間一帯の精神を在るべき姿へ
(UC発動。上空に心にも干渉する魔力の陣を描き、引き裂く)

現実が無くなってしまえば、夢だって見れなくなるもの
(向けられる両手を即座に紋朱で払い)
これまで喰らった夢、返してもらう!

「イード・ミラード・サイード」
義兄さんが教えてくれたお呪い
クラゲがいなくったって良い夢は見られるもの
(アラビア語で『誕生日おめでとう』
義兄はそこに『生まれてきてくれてありがとう』と言う意味を籠めていた)


(「約束したのよ。直ぐに駆けつけるって」)
 ふわふわな大地を駆け抜けながら、南雲・海莉(コーリングユウ・f00345)の漆黒の瞳は力強く前を見据えていた。
 そのすぐ横を、背中に小さな翼を持ち、帽子を被ったレトリーバーが並走する。
(「もう1人ぼっちで待つしかできない私じゃない。
 今の私には、迎えに行く力があるのだから」)
 友となった小麦色の髪のアリスの少女……はるを思い出しながら。
 海莉は、眠るはるの元へと真っ直ぐに進んでいく。
 場所は皮肉にもすぐ分かった。
 空を漂う夢喰いクラゲが一際集まっているところ。
 そこに、はるが眠っていたから。
「遅れたわ、ごめん!」
 眠り続けるはるには聞こえないかもしれないけれども。
 それでも海莉はそう告げて、足を止めるとクラゲの群れを見上げ睨んだ。
 その足元を、レトリーバーは逆に走り続け、はるの傍まで辿り着く。
 赤茶色の短い髪と狼耳の男の子と共にはるを覗き込み。
 心配そうに振る尻尾を見て、はるを揺する黒色の短い髪の女の子が淡く微笑んで。
 ふぁ、とあくびをした長い黒髪の少女が、気だるげながらもしっかりとはる達を守るように、小さな白い花を舞い上がらせて夢喰いクラゲを迎え撃っていた。
 夢喰いクラゲの淡く光る本体から伸びる、幾本もの触手のうち、手のような形をした2本が、海莉へも向けられ、気持ちいい振動を放ってくる。
 眠りを誘うように。
 幸せな夢を紡ぎ上げ、そして食べるために。
「夢は心を映すもの」
 海莉は、少女が手にするには武骨な野太刀を引き抜いて。
「なら夢を喰らう奴らも心に属す物」
 刃文に朱を差す刀身を夢喰いクラゲへと向けると、その誘いを断ち切るように、一度大きく横に振り抜いた。
 それは魔導心療医学の理論。
 夢喰いクラゲは実体として存在して見えるけれども。
 その本質は心であり、精神へと干渉してくるものだと判じて。
 すぐに野太刀を納めた海莉は、代わりにFlammeの名を持つ緋色のマン・ゴーシュを引き抜くと、翳すように掲げて。
 その刀身の火風水雷氷のルーンが、そしてガードに刻まれた月光と宿り木のルーンが持つ魔術の力を呼び起こし、ユーベルコードを紡ぎ上げる。
「陽よ、汝、希望を司るもの。月よ、汝、狂気を司るもの。
 対にして全、相克にして相生たる力以て、その心の形を映し出せ!」
 幾つもの燃え盛る陽光の欠片と凍てつく月光の欠片が生み出され、複雑な軌跡を刻んで飛翔すれば、描き出される幾何学模様。
 心にも干渉する陰陽相生心象陣。
 それは夢喰いクラゲ達を包み囲い、その長く揺れる触手を、淡く光る体を、次々と引き裂いていく。
「現実が無くなってしまえば、夢だって見れなくなるもの」
 辺り一帯の精神を在るべき姿へと願い。
 そのための魔力の陣を展開しながら。
「これまで喰らった夢、返してもらう!」
 海莉は、夢喰いクラゲから夢を取り戻していくかのように。
 1体、また1体とその淡く柔らかなクラゲを引き裂いていった。
 もう夢が喰われないように。
 これからもはるが良い夢を見られるように。
 そのために、はるが現実を取り戻せるように。
 肩越しに、レトリーバーが傍に寄りそうはるへとちらりと視線を向けながら。
 海莉は願い、そして、思い出す。
 かつて、行き場を失った幼い海莉を助け、共に暮らしていた義兄。
 海莉の元から姿を消し、今はどこに居るのかも分からない義兄との記憶。
 これはアラビア語なのだと彼は言った。
 誕生日おめでとう、という言葉だと。
(「義兄さんが、教えてくれた……」)
 そしてそこに。
 生まれてきてくれてありがとう、という意味が込められていたことを。
 今の海莉は知っているから。
「イード・ミラード・サイード」
 まるで呪文のように、思い出したその言葉を呟いて。
 小さく口の端で微笑むと。
 鋭く吠える相棒の、レトリーバーの声が響く。
 最後の夢喰いクラゲが倒せたことを確認してから振り向けば、猟兵達に囲まれたはるが目を覚まし、身体を起こしたところだった。
大成功 🔵🔵🔵


第3章 ボス戦 『『アリス殺し』のベルク・ナイフ』

POW ●僕はただのウサギじゃないよ
自身の身体部位ひとつを【狼】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD ●Dancing Knife
自身が装備する【テーブルナイフ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ ●僕がアリスを食べてあげる♪
【真紅の瞳】に覚醒して【狼型オウガ】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はラフィ・シザーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「また助けていただいた、ですね」
 長い小麦色の髪のアリス……はるは、周囲を囲む猟兵達を見回して、はにかむように、少し申し訳なさそうに苦笑して。
 でもすぐに晴れやかな笑顔で、告げる。
「ありがとうございますです」
 ぺこり、と下げた頭の動きで、髪に飾られた鈴がりりんと鳴った。
 眠り続けていた少女の目覚めに、猟兵達の間にどこかホッとしたような雰囲気が漂うけれども、まだ危機は去ったわけではなく。
「なんだ。アリス、起きちゃったの?」
 投げかけられた不機嫌な声に、皆の視線が向けられる。
 現れたのは、灰色の髪と同じ色のウサギ耳を揺らした、赤い瞳の時計ウサギ。
 燕尾服のような執事っぽい服装だけれども、短パンで白く細い脚を見せ。
 テーブルナイフを持っているけれども、その持ち方は給仕ではなくて。
 アリスを見てはいるけれども、その赤瞳に灯るのは殺意とも言える憎しみ。
 そう、時計ウサギのオウガ『アリス殺し』のベルク・ナイフ。
「眠っている間に殺してあげようと思ってたのに。
 幸せな夢の中に、ずっと居させてあげようと思ったのに」
 浮かべた笑みはどこか歪んでいて。
 怯えるはるを咄嗟に庇うように前に出た人影に、その苛立ちが強くなる。
「……いつもそうだ。皆、アリスの周りに集まってくる」
 強く強く、テーブルナイフを握り締めて。
 瞳を真紅の怒りに染めて。
「アリスばかり見て、アリスばかり心配して、アリスばかり助けて。
 アリス、アリス、アリスって……皆、みんな! 君だって!」
 頭を抱えたベルク・ナイフは、虚空に『誰か』の姿を見て叫んだ。
「君がアリスばかりを見るのなら、僕がアリスを殺してあげるよ!」

 そしてベルク・ナイフは嗤う。
 だから僕を見て。
 僕だけを、見て。
セシル・バーナード
おや、可愛い子だね。「誘惑」と「催眠術」で口説けるか、試してみよう。
ねえ、きみ。ナイフなんて捨てて、ぼくの恋人になってみない? ツンとしたところも気分をそそる。きみのアリスにだってなってあげるよ?

駄目? 仕方ないなぁ。プラチナちゃん、一緒に討滅しよう。
プラチナちゃんは引き続き鉄塊剣を使いつつ、ベルクが放ってくるテーブルナイフの制御権を奪って。
これが最後通告。降伏してもらえないかな?
うーん、無愛想な子も好きなんだけどな。
それじゃ空間転移でベルクの死角に飛んで、手刀で貫く「暗殺」の一撃を。

あーあ、もったいないことしちゃった。プラチナちゃんもそう思うでしょ?
まあ、帰ったらベッドで一杯ご褒美あげるね。


「おや、可愛い子だね」
 現れたオウガの姿を見て、セシル・バーナード(f01207)の緑瞳が艶やかに輝いた。
 妖狐であり、またその出自や家族環境から、恋愛倫理観が一般社会と根本的に異なっているセシルにとって、同性だとか年齢だとかは何ら関係なく。
 そして、オウガであることすらも何の障害ともならず。
 セシルは、自分が愛したいと思った相手に素直に愛を紡ぐ。
「ねえ、きみ。ナイフなんて捨てて、ぼくの恋人になってみない?」
 囁く言葉は、自然に誘惑と催眠の術を纏い。
 いくらか幼さの残る少年にもかかわらず、色気を溢れさせていたけれども。
 かけられた声にちらりと視線を向けていたベルク・ナイフは、すぐにそっぽを向いた。
「そのツンとしたところも気分をそそるね」
 しかしその反応すらもセシルには愛おしく。
 諦めることなく近寄れば。
「きみのアリスにだってなってあげるよ?」
「アリスなんかいらない」
 差し出した手は、強く叩き弾かれる。
「僕が欲しいのは……っ!」
 睨み付けながら叫びかけたベルク・ナイフだけれども、途中でその言葉を飲み込んで、再びぷいっとセシルから目を反らした。
「ぼくじゃ駄目?」
 セシルはひょいと肩を竦めながら後退し。
「仕方ないなぁ。プラチナちゃん、一緒に討滅しよう」
『はいっ! 討滅です絶対討滅します!』
 声をかけると、横に並んだ銀髪の少女が鉄塊剣を構えて見せる。
 ベルク・ナイフは煩わしそうにそれを見て、セシルを追い払うように手を振った。
「Dancing Knife」
 囁かれた言葉に、ベルク・ナイフが手にしていたものと同じテーブルナイフが、その周囲に無数に現れて。
 もう一度振った手の動きに合わせて、セシルへと襲い掛かる。
 だがその刃の群れがセシルを切り刻む前に。
 銀髪の少女が割り込むと、剣を振り抜き全て叩き落とした。
「うーん、無愛想な子も好きなんだけどな」
 拒絶されて尚、愛おしそうに誘うように笑いかけるセシルを背に。
 盾として立ち塞がっていた銀髪の少女がベルク・ナイフへ向けて地を蹴る。
 迫り来る敵にベルク・ナイフは再びナイフを飛ばしたけれども。
『残念ですがこれは金属です。金属ならば私の支配下です!』
 白銀の少女が微笑み、剣を振り抜くと、テーブルナイフは弾き返されたようにベルク・ナイフへと降り注いだ。
 剣が触れたナイフも、触れなかったナイフも、それこそ届くはずもない位置のものでさえ、全てが少女の意思によって元の主へと襲い掛かり。
 慌てて避けるその執事のような服を、幾つかのテーブルナイフが切り裂いた。
 痛みに歪む顔に、セシルは大仰にため息をついて見せ。
「あーあ、もったいない。プラチナちゃんもそう思うでしょ?」
『え、あ、私はちょっと気持ちが分かるっていうか恋敵が増えなくてよかったなんてっていうか何だか複雑ですけど私愛されてるのは分かってますし受け入れるって決めたばかりですから何も言いませんって決めました決めたんですですがやっぱりというか……』
 問いかければ、銀髪の少女は振り返り、しどろもどろにあわあわ。
 その様子を愛らしく思いながら、セシルは少女へと歩み寄ると、そっと抱き寄せてその額に口づけを落として囁いた。
「まあ、帰ったらベッドで一杯ご褒美あげるね」
成功 🔵🔵🔴

黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺(本体)の二刀流

ええとつまり、嫉妬とか独占欲か?
一般的にはよろしくない感情とは言われるが…俺は否定はできんな。
少なくとも感情面でいえばオブリビオンも生きてるものも同じだと思うし。

先程同様、存在感を消し目立たない様に立ち回る。
UC五月雨で複製したナイフでなるべくテーブルナイフを打ち落とす。
打ち漏らしたのは見切ることで胡と黒鵺で対処。
打ち落とす中で接近し、マヒを乗せた暗殺攻撃をする。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。


 無数のテーブルナイフが飛ぶ中へと駆け付けた黒鵺・瑞樹(f17491)は、目覚めたアリスを、そして猟兵達を睨み付けるベルク・ナイフを見て足を止めた。
「アリスなんかいらない。
 僕が欲しいのは……っ!」
 叫んだ言葉の途中で口を閉ざし、妖狐の少年から目を反らしたベルク・ナイフの顔には数多の表情が揺れている。
 大好きな『君』への恋慕にも似た想い。
 同じ想いが返されなかったことへの怒り。
 どうして分かってもらえないのかという焦燥感。
 好きと嫌いが混ざり合って、形作るその感情は。
「ええとつまり、嫉妬とか独占欲か?」
 一般的にはよろしくないと言われるもの。
 けれども、それは何かを一途に想うからこそであり。
 大切に思うものは、誰にでもあるものだから。
(「……俺は否定はできんな」)
 瑞樹は小さく苦笑する。
 かけがえのないものを大事に思うゆえの感情。
 そこに、オウガだから、オブリビオンだから、ということはない。
 少なくとも感情面でば、オブリビオンも生きてるものも同じだと考えるから。
 ベルク・ナイフの気持ちを、瑞樹は理解し、受け入れていた。
 それでも。
 その嫉妬が周囲への憎悪に変わるなら。
 独占欲がアリスへの殺意に変わるなら。
「止めなければいけない、な」
 瑞樹は二刀を手にベルク・ナイフへと迫った。
 真正面から突っ込んで行く銀髪の少女を横目に、そっと死角へと回り込み。
 暗殺を狙うけれども、目の前に立ちはだかるのはテーブルナイフの群れ。
 瑞樹の動きに気付いて向かってきたというよりも、無差別に全方位へと放たれていたその銀色の輝きを、慌てることなく見据えると。
 左手に握った黒鵺を掲げ、ユーベルコードを発動させる。
 途端、それと同じ大振りなナイフが数十も周囲に複製され。
 向かい来るテーブルナイフに黒い刃を重ね、打ち落としていった。
 舞い散るように弾かれていく刃の中を、瑞樹は駆け抜けて。
 ようやくこちらに気付いて振り向いたベルク・ナイフが閃かせたテーブルナイフを、今度は手にした黒い刃で受け流すと。
 その動きの流れをも利用して、右手の日本刀・胡をカウンターのように叩き込む。
 執事服に刻まれた幾つもの小さな傷よりも深く、胡はベルク・ナイフを傷つけて。
「アリス、なんか……!」
 与えられた痛みに少し顔を歪めながらも、色濃く残る憎悪。そして殺意。
 消えることのない一途な想い。
 瑞樹は間を空けるように後ろに飛び退きながら、尚もベルク・ナイフを見つめた。
 その想いの結末を見届けようとするかのように。
大成功 🔵🔵🔵

フリル・インレアン
ふええ、アヒルさん突くのはもうやめてください。
お、おかしいです。
はるさんは先ほど目を覚ましたはずなのに、同じアリスなのに、扱いが全然違いすぎませんか。
・・・、すみません、思ったことを口にしてしまいました。
私はアリスですが猟兵でもありますし、私の方が年上ですからしっかりしないといけないんですよね。

えっと、あの時計ウサギさんはアリスに嫉妬しているみたいですから
アヒルさん、私の代わりにベルクさんをいっぱい突いてあげてください。
私はベルクさんが逃げられないようにガラスのラビリンスを使います。

ふえええ、アヒルさんのお仕置きの対象を差し替えるのに失敗しました。


 アリスを狙うオウガが姿を現したものの。
 フリル・インレアン(f19557)の置かれた状況はあまり変わっていなかった。
「ふええ、アヒルさん突くのはもうやめてください」
 アヒルちゃん型ガジェットの愛らしくずんぐりむっくりなくちばしで、つんつんとフリルはひたすらに突かれ怒られ続けていて。
「お、おかしいです。
 はるさんは先ほど目を覚ましたはずなのに。
 ちゃんと起こせたなら怒られないはずなのに」
 ちらりと視線を向ければ、小麦色の長い髪をゆるりと風に揺られた少女が、猟兵達に護られながら、少し怯えたようにオウガの戦いを見つめていて。
「というか、同じアリスなのに、扱いが全然違いすぎませんか?」
 思ったことをつい口にしてしまえば、さらにつんっと突かれる始末。
 はうう、と帽子を抱えて困惑するフリルだけれども。
 さらなる突きに、ガジェットの鳴き声が重なれば。
「はい、そうですよね。私はアリスですが猟兵でもありますし、私の方が年上ですからしっかりしないといけないんですよね」
 こくこくと頷いて告げながら、改めてオウガへ……ベルク・ナイフへ向き直る。
 まあ、決意を込めて、というよりは、諦めて自分を何とか納得させるように、声に出して言ってみたという感じが強いですが。
 ともあれ。
 フリルの赤い瞳は、涙に滲みながらもベルク・ナイフを見つめて。
「えっと、あの時計ウサギさんはアリスに嫉妬しているみたいですから……」
 猟兵としてどうすればいいのか……というか、どうすればガジェットに突かれないで済むのかを必死で考える。
 考えて、考えて。
 そうだ、と思い至り、帽子の下で表情を輝かせた。
「アヒルさん、私の代わりにベルクさんをいっぱい突いてあげてください」
 これは名案と胸を張るフリルは、そのままユーベルコードを発動させる。
「私はベルクさんが逃げられないようにします」
 ベルク・ナイフを中心に展開されたのはガラスのラビリンス。
 透明なガラスはベルク・ナイフの逃げ道を塞ぎ、戦いの場へと留め置いて。
 そこにフリルはガジェットを放り込んだ。
 だがしかし。
「ふえええ、アヒルさんのお仕置きの対象を差し替えるのに失敗しました」
 ガジェットは、迷路をベルク・ナイフとは逆の方向へと抜けて。
 また怒ったような鳴き声を上げながら、フリルを追いかけ回していた。
成功 🔵🔵🔴

寧宮・澪
だめですよ、見てほしいって言っても……その人の心は、意思は、その人の、ですから
強制は、できるものじゃないんですよー……
どんなに寂しくても、どんなに欲しても、見てくれない人は、見ないものですから……
見切りをつけて、前を向けてたら……オウガには、なってなかったですかね?

謳え、謳函……さあ、強化しましょー……
狼に噛まれないように、ナイフを避けれますように……傷つかないように
寂しい、ウサギさんを眠らせるように……
あとは、飛び掛ってくる狼さんを、クッションでぽふんっと叩き落としましょか……
とどめは、お任せしましょー……

はるさんは、しっかりかばいますよー……迷子で不安なのに、怪我させちゃ、めーですよ


 幾つもの傷に執事服を少し乱したベルク・ナイフは、苛立ちの表情でその手のテーブルナイフを振るう。
 だがそれは、ガラスの壁にぶつかって。
 割り壊しながらも、迷宮として、ベルク・ナイフをその場に捕え止めていた。
 苛立ちがベルク・ナイフの怒りを彩る。
「こんなの、無駄だよ」
 けれども、周囲を睨み据えた瞳を真紅に輝かせたベルク・ナイフは、少年のような時計ウサギの外見をオオカミへと変身させて。
「僕はアリスを殺すんだから。
 アリスを殺して、僕を見てもらうんだから」
 増大した攻撃力そのままに、邪魔な迷宮を壊し始める。
「僕がアリスを食べてあげる」
「だめですよー……」
 その様子を眠たげな黒瞳でぼーっと見ていた寧宮・澪(f04690)が呟くように告げた。
「見てほしいって言っても……その人の心は、意思は、その人の、ですから。
 強制は、できるものじゃないんですよー……」
 アリスを殺したところで何も変わらないのだと。
 アリスを食べたところで見てもらえるとは限らないのだと。
 澪は訥々と、ベルク・ナイフへ語りかける。
「どんなに寂しくても、どんなに欲しても。
 見てくれない人は、見ないものですから……」
「うるさい!」
 オオカミの姿で、ベルク・ナイフは吠えた。
「僕だけしかいなくなれば……僕しか見るものがなくなれば!」
 ガラスと共に、信じたくない現実を壊すかのように。
 迷路の先に、望む現実があると妄信するように。
 オオカミはただひたすらに、アリスを求めて壊し進む。
 ふぅ、と澪は息を吐いて。
 静かに一度、目を伏せて。
(「見切りをつけて、前を向けてたら……オウガには、なってなかったですかね?」)
 一途に前だけを見続けるその姿を思い。
 そして、再び黒瞳を開いた。
「謳え、謳函……」
 そっと呼びかけながら差し出したのは、オルゴール型のシンフォニックデバイス。
 ガジェットの特徴である歯車が静かに動き出せば、小さな匣から歌声が流れ出した。
 それは、聞いて共感した者を強化する旋律。
 澪はどこか哀し気にも聞こえるその音へ、祈りも乗せていく。
 オオカミに噛まれないように。
 ナイフを避けられるように。
 傷つかないように。
 寂しいウサギさんを眠らせられるように。
 哀しいウサギさんの歪んでしまった欲望を終わらせられるように。
 これ以上傷つかないように。
 広がる歌声は、澪と同じ猟兵達を支援して。
 迷宮を壊し抜けたベルク・ナイフへと向かう拳を、蹴りを、強めていけば。
 いつしか、穏やかで優しい歌声が重なっていた。
 美しい旋律に、戦いの動きで揺れるクッションの大地に、澪は小さく欠伸をしながら、また瞳をこする。
 と、その目前に、傷だらけの灰色オオカミが襲い掛かってきた。
 ちらりと背後を見た澪は、ガジェットを掲げていたのとは逆の手を振り上げて。
 ぽふんっ。
 そこに握られていた愛用の枕で、無造作にオオカミを叩き落とす。
「迷子で不安なのに、怪我させちゃ、めーですよ……」
 もう一度、視線で示した背後に居るのは、小麦色の長髪を揺らすアリス。
 歌を紡ぐその姿に澪は黒瞳を細めて。
 気だるげな様子のまま、けれどもしっかりとガジェットを差し出して、再び、アリスを……はるを守るように立ちはだかった。
大成功 🔵🔵🔵

陽向・理玖
綾華兄さんf01194と

つーか…羨ましかったのか?
人の居場所奪ってどうすんだよ

そーかぁ?
いぶかしげに首傾げ
龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
背を押され軽く頷き
変身ッ!
ったく
…敵わねぇなぁ
衝撃波放ち鍵刀の助けも借りてダッシュで間合い詰めUC起動しグラップル
拳で殴る

夢の中じゃ本当の幸せなんて得られねぇよ
居場所が欲しいなら
夢の中じゃなく
現実で掴み取らねぇと
欲しいもんはこの手で掴む

俺は絶対に
綾華兄さんの期待には応える

呼ばれれば作ってくれた隙利用
この程度のナイフなら十分見切れる
暗殺も用い死角から攻撃
足元をなぎ払い
追い打ちで蹴りの乱れ撃ち

つーか何言ってんだよ
綾華兄さんの手助けあってだろ

えっ当たり前じゃん


浮世・綾華
理玖(f22773)と

あら、可愛いうさぎちゃんじゃない
いーよ。みんなアリスがって言うなら
おにーさんがうさぎちゃんに構ってあげよーじゃないの

そう煽って気を引こうか
理玖に頼んだ、と軽く背押し

複製には複製だ
自分と理玖の周りに鍵刀を浮かせ
操り攻撃を防ぐことに集中
ナイフさえ防げりゃ理玖の近づく隙もできんだろ

俺の可愛い友人は夢より現実がいいんだと
だからお前のやり方は合わない
望むんならお前が夢を見ればいいんだ
骸で、幸せな夢をさ

…嗚呼、悪いな
俺が構ってやる時間はおしまいだ。後は
――理玖

おお、かっこいいねえ
可愛くて強い理玖
うん、最強だなぁなんてひとり頷き
あは。そーなの?

じゃあさ、これからも一緒に戦ってくれよな


 ガラスのラビリンスを抜け出たベルク・ナイフは、灰色の毛並みのオオカミから、元の執事を思わせる服装の時計ウサギへと姿を戻す。
 その身体は、無理矢理ガラスを破ったことで、またオオカミとなる前に受けた攻撃から幾つもの傷を負っていたけれども。
「さあ、アリスを殺してあげる!」
 その赤い瞳に灯る殺意は変わることなく、小麦色の髪のアリスを睨んでいたから。
「あら、可愛いうさぎちゃんじゃない」
 浮世・綾華(f01194)はその気を引くように陽気に話しかけた。
「そーかぁ?」
 横に並ぶ陽向・理玖(f22773)は、どこか訝し気に首を傾げながらも、右手で龍珠を弄んで気のない様子を見せる。
 ちらりとこちらを振り向いたベルク・ナイフの視線が、2人を順に見てから綾華だけに向けられたのを見て。
「いーよ。みんなアリスがって言うなら、おにーさんがうさぎちゃんに構ってあげよーじゃないの」
 さらに綾華は煽るように笑いかけた。
 その様子にベルク・ナイフはまた苛立ちを増したようで。
「お前なんかに構ってなんて欲しくない」
 綾華へとテーブルナイフの切っ先を向けると、その周囲に同じナイフが生み出され。
「そう言わずにね、うさぎちゃん」
 応えるように綾華も黒鍵刀を掲げ、複製する。
「その呼び方も気に入らない」
「可愛いじゃないの」
 向かい合う刃物の群れと、敵意。
 ベルク・ナイフを完全に引き付けた綾華は、にっと笑ったまま理玖の背を軽く押した。
「頼んだ」
「……ったく」
 龍の横顔を模したバックルを腰にかざして装着した理玖は、弄んでいるように見えた龍珠をぎゅっと握り締めて。
「変身ッ!」
 ドライバーにセットしながら叫べば、その身は装甲に覆われる。
 アームドヒーローとしての装備に包まれた全身に力が漲る中で。
(「……敵わねぇなぁ」)
 そっと理玖は誰にも見えない苦笑を零した。
 ダッシュでベルク・ナイフとの間を詰めれば、無数のテーブルナイフへ突っ込むことになるけれども。
 ナイフが元々狙っていたのは綾華だったから、その標的変更に僅かに隙が生まれ。
 さらに、綾華の生み出した黒鍵刀が次々とテーブルナイフと撃ち合い、相殺していく。
 結果、恐らく綾華が狙った通りに、さしたる障害もないまま理玖はベルク・ナイフへと肉薄し、その小柄な身体を拳で殴り飛ばした。
 ベルク・ナイフは柔らかいクッションの大地を少し転がってから、しかしすぐに跳ね起きると、また周囲にテーブルナイフを展開して。
「お前達もアリスも……皆、みんな殺してやる!
 アリスも誰もいなくなれば、僕だけが傍にいれればいいんだから!」
 怒りをさらに強めて叫ぶ。
 どこか必死に縋るようにも見えるその姿に、理玖は全身装甲の下で青い瞳を細めて。
「つーか……アリスが羨ましかったのか?」
 静かに声を投げかけた。
「でも人の居場所奪ってどうすんだよ」
「そもそもアリスの居場所を奪えるなんて、まだ夢を見ているの?」
 くすりと笑って見せる綾華も、理玖の傍らに歩み寄りながら問いかける。
「アリスを眠らせたまま殺そうとしたのは、幸せな夢の中にずっと居たいと、お前自身が思ったから?」
 返って来たのはベルク・ナイフの鋭く睨む赤い視線だけだったけれども。
「夢の中じゃ本当の幸せなんて得られねぇよ」
 ぎゅっと両手を握り締めて、理玖は教えるように続ける。
「居場所が欲しいなら、自分勝手な夢の中じゃなく現実で掴み取らねぇと」
 欲しいもんには真っ直ぐに手を伸ばして。
 周囲に当たり散らすのではなく。
 自分以外をただ邪魔だと排除するのではなく。
 思いを歪ませずに、しっかりとこの手で掴まなければと。
 過去を失くした理玖は、その現実を受け入れて、そして得た居場所を握り締める。
 その様子に、綾華はふっと小さく微笑してから、再びベルク・ナイフへと笑いかけ。
「俺の可愛い友人は夢より現実がいいんだと。
 だからお前のやり方は合わない」
 理玖の肩にそっと手を置いた。
「それでも望むんなら、お前が夢を見ればいいんだ。
 骸で、幸せな夢をずっと、さ」
「うるさい!」
 ベルク・ナイフの叫びは、怒声というよりもどこか悲鳴に近い気がした。
「殺してやる! アリスもお前も皆……みんな!」
 そのまま綾華へ、いや、周囲の全てへとテーブルナイフを操り飛ばす。
 乱れ飛ぶナイフを、無差別に当たり散らす癇癪のようなそれを、綾華はまた複製した黒鍵刀で1つ1つ受け止め、叩き落としていたけれども。
 長く付き合う気はないというかのように、ひょいと肩を竦めて見せると。
「……嗚呼、悪いな。俺が構ってやる時間はおしまいだ。後は……」
 傍らの可愛い友人の名を、小さく呟くように呼ぶ。
 即座に、アームドヒーローは地を蹴った。
 黒鍵刀が生み出した隙を、寸分違わず駆け抜けて、残ったテーブルナイフを余裕で見切り避けながら、素早くベルク・ナイフの死角へと回り込む。
(「俺は絶対に綾華兄さんの期待には応える」)
 決意と共に放たれた蹴りは、ようやくこちらの動きに気付いたベルク・ナイフの足元を掬うように薙ぎ払い、体勢を崩しかけたそこへ理玖はさらなる蹴りを重ねた。
 微かに聞こえるオルゴールの音に乗せての乱れ撃ちのような蹴撃に、ベルク・ナイフの小柄な身体はまた大きく飛ばされていく。
「おお、かっこいいねえ」
 理玖の動きを眺めていた綾華は、ぱちぱちと拍手を送り。
「可愛くて強い理玖。うん、最強だなぁ」
 独り言のように、でもしっかり理玖に聞こえるように言いながら、頷いて見せる。
 だから理玖は、どこか照れたように視線を少し横に反らして。
「つーか、何言ってんだよ。
 綾華兄さんの手助けあってだろ」
「あは。そーなの?」
 告げれば綾華の笑みが深くなった。
「じゃあさ、これからも一緒に戦ってくれよな」
「えっ、当たり前じゃん」
 そして願った未来には、そうしない選択肢などないと思っていたかのような理玖の、半分驚いたような言葉が返ってきて。
 夢よりも幸せな現実に綾華はまた微笑んだ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と。

リンデンも来てたー♪(なでたい)

はるちゃん、目は覚めた?
ん。おいら、アンちゃんの兄ちゃん。
だから、はるちゃんにも兄ちゃんだね!(にぱ)

ウサちゃんは、心配してくれる人が欲しかったの?
違うよね。
キミはアリスを殺したいだけでしょ?

キミに、はるちゃんは渡さない。
もちろん、アンちゃんも、他の猟兵さんたちもね!

女の子たちを守るように、前に出る。
さあ、殺したいなら、殺してごらん?

ナイフじゃおいらは切れないよ?
右の如意な棒と左の綾帯でナイフを捌き、UCを誘う。

狼が噛み付く前に、開いた口へ棒を突き込み。
カウンターで灰燼拳!

ウサギが狼のマネしたって、ホンモノに敵うわけないじゃんー?


木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

はる、おはよ
見知った顔を見れば少しは落ち着くかな
わたしも、まつりんに海莉の姿も見れば勇気百倍

はる、跳返の符持っててね
はるを守るように布陣して

第六感働かせ、ベルクの動きや視線からナイフの飛ぶ方向を判断し
【うさみみメイドさんΩ】
沢山のナイフには沢山のメイドさんで対抗
メイドさんが捌き漏らした分は灯る陽光のオーラで防御

…はるを、アリスを殺したい?
アリスが死んだら、きっと皆、この先ずっとアリスを思って生きていく
死という過去に囚われて
決して、あなただけを見ることは無い

それは誰にとっても不幸なこと
わたしはそう思う

はる、歌って
はるの歌は癒し
わたし達の傷と、ベルクの心もきっと癒す


南雲・海莉
(ハルの目覚めにホッ)
そうね、私達にとって大切なのはハルさんとこの国の皆よ

愛されるために自分を責めるのも、他人を疎むのもきっと紙一重
けど、自分や他人への害意に変わる一線だけは
(今も希死念慮を抱える義兄の姿を脳裏に浮かべながら)
生きるものとして、決して、超えてはならない

(狼の頭にヤドリギの種を握り込んだままの左手を食わせる
油断した?
(そのまま内側から爆破させ、更に口を塞ぐように枝を絡み付かせる)

(先日に専攻となった学術の知識を反芻する)
執着は『思う』の暴走、思うは大地の魔力に属する感情
そして大地を剋するは樹木の魔力

……その病み、ヤドリギの魔力で削ぐ!

おはよう、ハルさん
良い夢、見れたかしら?


 琥珀色の瞳を開けたアリス……はるを覗き込んで、木元・祭莉(f16554)はにぱっと晴れやかなひまわり笑顔を見せた。
「はるちゃん、目は覚めた?」
 まだ少し寝ぼけているかのような様子のはるは、祭莉の問いかけに反応を見せず、どこかぼんやりと辺りを見つめていたけれども。
 そこに、ひょいっと覗き込むもう1つの顔。
「リンデンも来てたー♪」
 帽子を被ったレトリーバーは、気付いた祭莉に飛びかかられ、もふもふされて。
 少し困ったような顔で、でも嬉しそうに尻尾と、背中の小さな羽をぱたぱたさせる。
 楽し気なそのわちゃわちゃに目を瞬かせながら、はるがゆっくり起き上がると。
「おはよう、はるさん。良い夢、見れたかしら?」
 かけられた声を見上げれば、南雲・海莉(f00345)が微笑んではるを見下ろしていた。
「……南雲さん」
 以前出会ったその記憶が蘇り、その名を呼びかければ、レトリーバーが一声吠える。
 それに嬉しそうに祭莉がまたレトリーバーを撫でれば。
 その横から、木元・杏(f16565)も穏やかに笑いかけていた。
「はる、おはよ」
「木元さんも」
 見知った顔があれば安心できるだろうと杏が思った通り。
 ようやく、はるは笑顔を見せた。
 でも、その顔には疑問符も浮かんで。
 微笑む杏と、レトリーバーの毛だらけになった祭莉とを、はるは交互に見つめる。
 気付いた祭莉は、また、にぱっと笑いかけた。
「ん。おいら、アンちゃんの兄ちゃん。
 だから、はるちゃんにも兄ちゃんだね!」
「まつりん」
 自己紹介に添えるように、杏がその名を呼ぶ。
 ああ、と納得した様子のはるに、祭莉と杏も笑い合った。
 そしてはるは周囲を見回し、3人の他にも猟兵達が集っているのに気が付いて。
「また助けていただいた、ですね」
 状況を理解すると、はにかむように、少し申し訳なさそうな苦笑を見せる。
 でもすぐに笑みは晴れやかなものに変わって。
「ありがとうございますです」
 ぺこり、と下げた頭の動きで、小麦色の髪に飾られた鈴がりりんと鳴った。
 けれども、まだアリスを狙うオウガは残っていたから。
「はる、跳返の符持っててね」
 杏は、眠っていた間のはるを守っていたトランプ型の護符を、改めてその手に渡し。
「リンデン、そのままはるさんの傍に」
 海莉の指示にレトリーバーが勇ましく一声吠えて。
「さあ、殺したいなら、殺してごらん?」
 にっと笑った祭莉が前へと飛び出した。
 向かう先に居るのは、オウガ『アリス殺し』のベルク・ナイフ。
「殺してやる! アリスもお前も皆……みんな!」
 傷だらけの身体から溢れる殺意と共に、複製したテーブルナイフが幾重にも祭莉へ襲い掛かってきた。
 しかし祭莉は、慌てず騒がず、不敵に笑い。
「ナイフじゃおいらは切れないよ?」
 如意みたいな棒を右手で引っ張って伸ばしてくるくる回し。
 天地の綾帯を左手で腰から引き抜くと、端の白銀の玉を上手く使って振り回す。
 そしてさらに、杏のうさ耳付きメイドさん人形が何体も現れ。
 棒と帯の合間を埋めるように、テーブルナイフを捌いていった。
「ウサちゃんは、心配してくれる人が欲しかったの?」
 その最中に、祭莉は問いかける。
 大きくこちらへと蹴り飛ばされてきたベルク・ナイフは、クッションな大地から跳ね上がるように起き上がると、鋭く祭莉を睨み付けて。
「心配なんて要らない」
「ん、違うよね。キミはアリスを殺したいだけでしょ?」
 返って来た言葉に祭莉は笑みを消して重ねた。
「……はるを、アリスを殺したい?」
 杏もベルク・ナイフへ問いかけて。
 でも、答えを待たずにその首を横に振る。
「それは、だめ」
「キミに、はるちゃんは渡さない。
 もちろん、アンちゃんも、この国のみんなもね!」
「そうね、私達にとって大切なのははるさんとこの国の皆よ」
 ぐっと拳を握り締めて見せる祭莉に、海莉も微笑と共に頷いて見せて。
 あっ、と気づいた祭莉が、猟兵の皆も! と付け足すのに、その笑みを深くした。
 そして祭莉は、その決意を実行に移すかのように、杏や海莉、はるとその傍らに立つ長い黒髪の少女を守るようにまた前に出た。
「おいら、男の子だからね。女の子たちは守らなきゃ!」
 そして、オルゴールの音に乗せて、棒が、帯が、テーブルナイフを捌いていく。
 杏はその取りこぼしがないかを油断なく見据え。
 灯る陽光のオーラを広げて防御を固めながら。
「アリスが死んだら、きっと皆、この先ずっとアリスを思って生きていく。
 死という過去に囚われて、決して、あなただけを見ることは無い」
 静かに、ベルク・ナイフへと語りかける。
 例え誰を殺しても。
 望むものは得られないのだと。
 それに気づかないまま殺してしまうのは。
「それは誰にとっても不幸なこと。わたしはそう思う」
「うるさいうるさい!」
 けれども、ベルク・ナイフはその言葉を否定し、杏の言葉を跳ね除けるように強く首を振り、尚もテーブルナイフを放つばかりだから。
 杏は少し哀し気に表情を曇らせて、そっとはるへと振り向く。
「はる、歌って」
 呼びかけられたはるが、驚いたように顔を上げた。
 不思議そうな琥珀色の瞳を、杏の金色の瞳が見つめて、願う。
「はるの歌は癒し。わたし達の傷と、ベルクの心もきっと癒す」
 ささくれ立った心には、誰の言葉も届かないなら。
 その心が癒されれば、きっと誰かの言葉が届く。
 そう、祈るように告げた杏に、はるはしっかりと頷いて。
 息を吸い込むと、癒しの歌を奏で始めた。
 オルゴールの旋律に合わせて、その想いに杏の気持ちも乗せるように。
 紡がれていく音に、杏が柔らかく微笑んだ。
 その優しい音の中を海莉が駆け抜ける。
 棒と帯が、うさみみメイドさんが、テーブルナイフを捌く間を真っ直ぐに走り。
 ベルク・ナイフへと肉薄して、左手を強く握りしめる。
「愛されるために自分を責めるのも、他人を疎むのもきっと紙一重」
 それは、ベルク・ナイフに向けた言葉だったけれども、海莉自身へと言い聞かせるかのようでもあって。
「けど、自分や他人への害意に変わる一線だけは……」
 一瞬閉じた黒瞳の裏に、今も希死念慮を抱える義兄の姿を見ながら。
「その一線だけは、生きるものとして、決して、超えてはならない」
 義兄にも届けと願うかのように、開いた漆黒は真っ直ぐに前を見据えて。
 突き出した拳の先で、ベルク・ナイフがにやりと笑う。
 受け止めるかのように差し出された少年の左手は、瞬時にオオカミの頭部へ変形し、開いた指は牙となって海莉の左手を包むように喰い込んだ。
 痛みに顔を顰めて見せた海莉に、ベルク・ナイフは笑みを深くして、そこから自身の傷を癒すべく生命力を奪おうとするけれども。
「油断した?」
 海莉の表情が一変する。
 痛みから、不敵な笑みに。
 左手は食べられたのではなく、食わせたのだと言わんばかりの様子に、ベルク・ナイフが訝し気に眉を寄せたその時。
「汝、生けるものを聖別し、祝福するものよ。彼の者を炎にて清め、我と繋げ」
 海莉は左手を爆破した。
 いや、実際に爆破したのは、左手に握り込んでいたヤドリギの種。
 本来は指で弾き飛ばすものを、オオカミの口の中へと直接入れ込み。
 種から枝を、聖樹の鎖を伸ばしていく。
(「執着は『思う』の暴走、思うは大地の魔力に属する感情。
 そして大地を剋するは樹木の魔力」)
 反芻するのは専攻する学術の知識。
 未だ学びの日は浅いけれども、それでも身についた教えを繰り返して。
「……その病み、ヤドリギの力で削ぐ!」
 叫んだ声に合わせるように、ヤドリギの枝が狼の口を塞ぐように絡みついた。
 ヤドリギを残し、左手を引き抜いた海莉は後ろへと下がるように間を空けて。
 そこに飛び込んだのは、祭莉。
 如意の棒をくるんと回して突撃すれば。
 そのタイミングに合わせてベルク・ナイフは右足を振る。
 蹴りが祭莉を襲うように見えた刹那、その足もオオカミの頭部へと変わり。
 鋭い牙が並んだ大きな顎が、祭莉を食べようとするかのように開かれた。
 だが、その口に入って来たのは、長くなった棒。
「ウサギが狼のマネしたって、ホンモノに敵うわけないじゃんねー?」
 ぴこんと狼耳を立て、ふさふさな狼尻尾を揺らした人狼の少年は、にかっと笑って硬く握った拳を繰り出す。
 灰燼拳はカウンターとなって、ベルク・ナイフを殴り飛ばした。
 えっへんと胸を張り、拳を掲げる祭莉。
 杏がぱちぱちと拍手を送り、レトリーバーも褒めるように一吠えして。
 くすり、と海莉も微笑を零した。
 その一瞬の穏やかな中を。
 飛び起きたベルク・ナイフが、今度はその身体全てをオオカミに変えて走り抜ける。
 一気に祭莉と海莉を抜き去り、杏とは逆の方向へ回り込み。
 歌い続けるはるを狙う。
 けれども。
 ぽふんっ。
「迷子で不安なのに、怪我させちゃ、めーですよ……」
 はるの傍らに立っていた眠たげな様子の少女が、長い黒髪を揺らしながら、手にした枕の一振りでそれを撃墜した。
 そして差し出されたオルゴールの音は、はるの歌声と共に、再び辺りを満たす。
 ほっと息を吐いた杏は、改めてレトリーバーと共にはるの傍に寄り添い。
 祭莉と海莉の背中が守るように立ちはだかったその向こうで、こちらを睨みつけてくる灰色オオカミを見つめた。
「まだ、アリスを殺したい?」
 杏の静かな問いかけに、オオカミの耳がぴくりと動き。
「もう、やめよう?
 アリスを殺しても、何も変わらない。
 それは……あなたももう分かってる」
「うるさい! 黙れ黙れ!」
 ベルク・ナイフは元の時計ウサギの姿に戻りながら、やはり杏の言葉を否定する。
 けれどもその様子には、先ほどよりも余裕が無いように見えて。
 杏の言葉ではなく、杏の言葉に揺れている心を否定しているかのようで。
「僕はアリスを殺すんだ!
 僕の『トモダチ』が大切にしていた……僕より大切にしていたアリスを!」
 その考えが正しいのだと必死で自分に言い聞かせているようだったから。
 叫ぶベルク・ナイフの姿に、杏の表情が哀し気に曇った。
 それでも尚、杏が言葉を重ねようとした、その時。
 ベルク・ナイフは、はっとして横手へと振り向く。
 杏もつられるようにその視線を追った先には。
 ベルク・ナイフと同じ、執事のような服装の時計ウサギが立っていた……
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

 りりん。

 歌を、紡ぐ。
 優しい人たちが傷つかないように。
 哀しい人の傷が癒えるように。
 守ってくれる猟兵達のために。
 苦し気に向かってくる少年のために。
 歌を、紡ぐ。
『……だって、同じだものね』
 くすくすと。
 心の奥底から聞き覚えのある声が響いてくる。
『大切なものを奪うことで、大切な人を奪おうとする。
 それはアタシと……アナタと同じ』
 誰の声なのか、どころか、どこで聞いたのかすら思い出せないけれども。
 とてもとても不安にかられる声。
 くすくすと。
 愉し気に嗤う声。
『止められるといいわね』
 その声が聴こえなくなるように、歌を、紡ぐ。
 優しい人たちのために。
 大切なものを守れるように。
 癒しの歌を紡ぎ続ける。
『今度こそ』
 声が、聴こえないように。
ラフィ・シザー
あぁ、お前は確かに俺の『トモダチ』だったな。
時計ウサギの俺がアリスを案内するのは当たり前だろう?お前だってそうだっただろう?
それでもアリスよりも俺を選んでしまったのか?
…今なら少しだけわかるかもしれない…俺もアリス以外に大切なものができたから…。
そうしたらお前はアリスじゃなくてそっちを狙うのかい?
なら俺は止めなきゃ。アリスもその人も大事だけど。

UC【アリスの悪夢】
俺が、君に届かなかったアリス達の気持ちを届けてあげる。

俺がもっと早く気づけばいろいろ違ってたのかな?


 気配に気づいたベルク・ナイフは、はっとして横を振り向いた。
 そこに立っていたのは、ラフィ・シザー(f19461)。
 灰色と黒色の違いはあれど、ベルク・ナイフと同じ時計ウサギで。
 長く後ろに伸びた燕尾服の下は、ベストと蝶ネクタイ。
 短い丈のズボンから伸びた白く細い脚には、ガーターつきの靴下を履いて。
 執事を思わせるその服装も、ベルク・ナイフと似た印象を与える。
 けれども、嬉しそうに笑顔を浮かべるベルク・ナイフとは対照的に。
 ラフィは哀しそうな、どこか悲痛な顔を見せていた。
「あぁ、お前は確かに俺の『トモダチ』だったな」
 呟くように告げた言葉も、暗く重く。
「そうさ。僕と君とは『トモダチ』だから。
 だから、アリスなんかより僕を見て!
 邪魔なアリスは全部、殺してあげるから!」
 明るくまくしたてるベルク・ナイフとは正反対。
 にこやかに差し出されたベルク・ナイフの手を見つめたラフィは、銀色の瞳をそっと伏せると、首を横に振った。
 その反応に、ベルク・ナイフが困惑の色を見せ、その笑顔を曇らせると。
 再び顔を上げたラフィは、静かに問いかけた。
「時計ウサギの俺がアリスを案内するのは当たり前だろう?
 お前だってそうだっただろう?
 それでもアリスよりも俺を選んでしまったのか?」
「そうだよ。僕が選んだのは君。
 アリスなんかよりも君が大切なんだから。だから……」
 必死に訴えるように、説得するかのように答えるベルク・ナイフだけれども。
 ラフィの瞳の色は変わらぬままで。
 ようやく、ベルク・ナイフは気付く。
 ラフィが先ほど口にした言葉。
 ……俺の『トモダチ』だったな。
 それが過去形だったことに。
「あ……」
 気付いて、言葉を無くしたベルク・ナイフは立ち尽くす。
 オルゴールの小さくも美しい旋律が、アリスの優しい歌声が、2人の間を流れて。
 ラフィは、揺れる真紅の瞳を見つめながら、口の端で小さく苦笑した。
「……今なら少しだけわかるかもしれない……
 俺もアリス以外に大切なものができたから……」
「大切な、もの……?
 僕でもアリスでもない、君の大切な……?」
「そう。大事な人」
 繰り返すベルク・ナイフにはっきりとそう告げて。
 改めて、ラフィはその存在を感じる。
 血のつながりがなくとも家族になれると教えてくれた。
 可愛い息子だと迎え入れてくれた。
 大事な、大切な人。
 その人のためならば、時計ウサギとしての役目を放棄してしまうかもしれない。
 そう考えられるくらいには大切で。
 きっと、ベルク・ナイフも同じだったのだろう、と思う。
 だからラフィは、くしゃっと頭を撫でてくれた大きな手を思い出して、自嘲するかのように小さく苦笑する。
 けれども、その想いを殺意に変えてしまうことまでは認められないから。
「そうしたらお前はアリスじゃなくてそっちを狙うのかい?」
 ラフィは悲し気に、でも真っ直ぐにベルク・ナイフへ問いかけた。
 ベルク・ナイフは無言のまま、戸惑うようにラフィを見つめている。
 しかし、テーブルナイフを握る手には、殺意が消えていないことを示すように、強く強く力が込められていた。
 アリスを殺すために。
 ラフィの大切な人を殺すために。
「なら俺はお前を止めなきゃ」
 変えられない思いを感じたラフィは、ぎゅっと両手を握り締めると。
 声高にユーベルコードを紡ぎ上げた。
「さぁ、アリス。今、君の無念を晴らしておくれ」
 詠唱に応えて召喚されたのは、このアリスラビリンスで死んだアリスの霊。
 少年が。少女が。子供が。大人が。
 様々な姿形のアリス達が、ベルク・ナイフへ群がっていく。
「俺が、君に届かなかったアリス達の気持ちを届けてあげる」
 無数に伸びる手は、硝子の破片となって。
 無数に開いた口は、怨嗟の叫びを上げて。
 悪夢のような攻撃に、ベルク・ナイフは捕らわれ沈んでいく。
 けれども、その真紅の瞳は、アリス達ではなくラフィを見続けていて。
 銀色の瞳から零れた輝きに気付くと、目を見開いた。
「どうして君は泣いているの?」
 ラフィの頬を伝う雫。
 止まることなく、溢れ出る感情。
 それが何かの答えは、言葉ではなかったけれども。
 ラフィはベルク・ナイフだけを見ていて。
 また一筋、その頬を水滴が流れ落ちる。
「それは……僕のための涙……?」
 ベルク・ナイフは、驚いたように呟いた。
 そして、ベルク・ナイフは泣きそうな顔で微笑むと。
 ラフィに何かを言おうとしてか口を開き。
 そのまま、アリスの霊と共に、姿を消した。
 歌声が終わり、オルゴールの音色も消える。
 静かな中で、ラフィは長く長く、息を吐いてから。
 ゆっくりとベルク・ナイフが消えた場所へと歩み寄っていった。
 柔らかなクッションの地面は、微かにへこんでいたけれども。
 それ以外に、周囲と何ら変わりのないままで。
 近づくラフィの重みで、そのへこみすらもすぐに元通りに戻っていく。
 何も変わらない世界。
 でも、小さくとも確かに変わった世界。
 ラフィはじっと地面を見下ろして。
「俺がもっと早く気づけばいろいろ違ってたのかな?」
 ぽつりと呟いた言葉と共に、最後の一滴が、へこみの消えた地面に落ちた。
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年08月12日
宿敵 『『アリス殺し』のベルク・ナイフ』を撃破!
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