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未だ目覚めぬ夢とアリス(作者 佐和
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 そこは全てがクッションでできた不思議の国。
 地面も、石も、草木も、花も。
 そこに住む愉快な仲間たちすらも、ふわもこなぬいぐるみ姿をしていて。
 柔らかな感触が、そこを訪れた者に眠りを誘う。
「昼寝最高~」
「別に昼じゃなくても眠るの最高~」
「みんなでゴロゴロしよ~」
「寝転がってふかふかに埋もれよ~」
 のんびりゆったりとした時間が流れる国。
 それはその国を訪れた者も例外ではなく。
「アリスも眠ろ~」
「まったりしよ~」
 世界を巡るアリスにも、穏やかな休息の時を与えていた。
 のだが。
「あ、オウガだ~」
「悪いオウガが来たよ~」
「起きてアリス。起きて~」
「……あれ?」
「ねえ、アリスが起きないよ~」
「お寝坊さん~」
「でも、このままだとオウガに食べられちゃうよ~」
「大変大変。どうしよう~」
「どうしよう~」
 おっとりと慌てる愉快な仲間たちの前で、眠り続けるアリス。
 その小麦色の長い髪を飾る鈴が、静かに鳴った。

 りりん。

「アリスのはるが、またオウガに狙われたようだ」
 久しぶりにその名を告げて、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は猟兵達をぐるりと見回す。
 それは、自分の『扉』を探してアリスラビリンスを巡っているアリスの1人。
 ふわもふな国で、喋る帽子達の国で、猟兵達が助けた、長い小麦色の髪と琥珀の瞳を持つ少女だった。
「はるが訪れていたのは、全てがクッションでできた昼寝には最適な国だ。
 まあ、見た目通り平和な国だったんだが、オウガがアリスの気配を察してやってきてしまったようでね」
 クッション達に誘われて眠っていたはるは、眠りに捕らわれ目覚める気配もなく。
 このままではオウガに食べられてしまうと予知されたのだという。
 はるが眠ったままなのも、どうやらオウガの仕業らしい。
「眠りをもたらしているオウガを倒せば、はるは目を覚ます。
 と、解決方法は分かっているわけだからね。
 戦いの前に、この不思議の国を堪能してみてもいいだろうさ」
 全てがクッションでできた国だから。
 座っても寝転がっても気持ちいいだろうし。
 愉快な仲間たちなど誰かに目覚ましを頼んで、戦いの前にひと眠りしてもいい。
 ふわもこな寝心地は、きっといい夢を見せてくれるだろう。
 もしかしたら、はるも、目覚めたくないくらい幸せな夢を見ているのかもしれない。
「まあ、どんなに気持ちよくても、ずっと眠っているわけにはいかないが」
 夏梅は苦笑を見せながら、猟兵達を送り出した。
「寝過ごさないように気を付けておいで」

 ふわふわ柔らかなクッションの国。
 地面は大きな大きな布団のようにふかふかと広がっていて。
 歩くその足も優しく包みこまれ、沈み込む。
 心地良い肌触りと、気持ちいい柔らかさ。
 だけれども。
「アリス、アリス、アリスって……馬鹿みたい!」
 灰色のウサギ耳を生やした少年は、そのふわもこな感触にすら苛立って。
 振り抜いたテーブルナイフが、木の形をしていたクッションを切り裂いた。
「君がアリスばかりを見るのなら、僕がアリスを殺してあげる」
 大好きな少年の姿を思い浮かべて。
 その少年が時計ウサギとしてアリスを案内する光景を思い出して。
 真紅の瞳が殺意に染まる。
「大丈夫。アリスは眠ったまま殺してあげるから。
 幸せな夢を見たまま、その夢から永遠に覚めなくなるだけだから」
 口元に浮かぶのは、歪んだ笑み。
「だから、アリスがいなくなったら僕を見てよ」
 妄執とも言える一途な想い。
「僕だけを見て」
 そして少年は……オウガは、アリスの元へと向かっていく。





第3章 ボス戦 『『アリス殺し』のベルク・ナイフ』

POW ●僕はただのウサギじゃないよ
自身の身体部位ひとつを【狼】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD ●Dancing Knife
自身が装備する【テーブルナイフ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ ●僕がアリスを食べてあげる♪
【真紅の瞳】に覚醒して【狼型オウガ】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はラフィ・シザーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「また助けていただいた、ですね」
 長い小麦色の髪のアリス……はるは、周囲を囲む猟兵達を見回して、はにかむように、少し申し訳なさそうに苦笑して。
 でもすぐに晴れやかな笑顔で、告げる。
「ありがとうございますです」
 ぺこり、と下げた頭の動きで、髪に飾られた鈴がりりんと鳴った。
 眠り続けていた少女の目覚めに、猟兵達の間にどこかホッとしたような雰囲気が漂うけれども、まだ危機は去ったわけではなく。
「なんだ。アリス、起きちゃったの?」
 投げかけられた不機嫌な声に、皆の視線が向けられる。
 現れたのは、灰色の髪と同じ色のウサギ耳を揺らした、赤い瞳の時計ウサギ。
 燕尾服のような執事っぽい服装だけれども、短パンで白く細い脚を見せ。
 テーブルナイフを持っているけれども、その持ち方は給仕ではなくて。
 アリスを見てはいるけれども、その赤瞳に灯るのは殺意とも言える憎しみ。
 そう、時計ウサギのオウガ『アリス殺し』のベルク・ナイフ。
「眠っている間に殺してあげようと思ってたのに。
 幸せな夢の中に、ずっと居させてあげようと思ったのに」
 浮かべた笑みはどこか歪んでいて。
 怯えるはるを咄嗟に庇うように前に出た人影に、その苛立ちが強くなる。
「……いつもそうだ。皆、アリスの周りに集まってくる」
 強く強く、テーブルナイフを握り締めて。
 瞳を真紅の怒りに染めて。
「アリスばかり見て、アリスばかり心配して、アリスばかり助けて。
 アリス、アリス、アリスって……皆、みんな! 君だって!」
 頭を抱えたベルク・ナイフは、虚空に『誰か』の姿を見て叫んだ。
「君がアリスばかりを見るのなら、僕がアリスを殺してあげるよ!」

 そしてベルク・ナイフは嗤う。
 だから僕を見て。
 僕だけを、見て。