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常春を喰らう者

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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 その島の名はオーガシマ。誰が呼んだかその起源は知れないが、島のあちこちに年中桜が咲いていることからそう名付けられたらしい。
 いつからそこに在るのか、なぜ桜が年中咲いているのか、島に住まう者も知るものは少ないという。
 ただ、そこに生まれ、そこに流れ着き、桜と共に根を下ろして住まう者たちにとっては生活の一部として親しみあるものである。
 サクラミラージュの帝都によく似た文明をもつこの島には、その中央部に大きな桜の木があり、その樹には島のあちこちに咲く桜の呼び集める無念の魂を癒し鎮める精霊が住まうと云われている。
 グリードオーシャンという広大な海が占める世界には、海難事故はもとより、海賊やコンキスタドールといった脅威によって命を落とすものも少なくない。
 時には島を出て沖で漁をする者も、こういった憂き目に遭うことが日常とまでは言わぬが、それでも驚かれない程であろう。
 ゆえに、そういった悲劇の魂を癒すオーガシマの大桜は、神木として信仰の対象となっている。
 普通に漁をし、普通に島で作物を耕し、普通に交易する。
 そんな朗らかな島の港は、最近少々騒がしい。
 実は、大桜に春の作物を奉納する『収穫祭』が近いのである。
 島で育てた米や野菜、漁で得た魚介など、奉納品は様々だが、催しの中でも一番の目玉は、島を挙げた『釣り大会』だろう。
 島の内外を問わず、一番の獲物を釣り上げた者は表彰され、大桜に宿る桜の精より祝福を賜るという噂である。
 噂に聞こえる桜の精霊、その姿を一目見ようと、港は賑わいを見せているのである。
 そこに忍び寄る影があることに、島民はまだ誰一人と気付いていないのだが……。

「猟兵の皆さんの活躍によって、鉄甲船の示した光の先に新たな世界を見つけたのは、記憶に新しいお話ですね。今回は、その先のお話なんです」
 グリモアベースはその一角、案内役の疋田菊月は、集まった猟兵たちにお茶を振る舞いつつ、お盆を抱え込むようにして顎に手をやる。
「グリードオーシャンという世界は、今まで見つけた世界とはちょっと違ってですね。これまでにグリモアを持つ私のような者が行う、いわゆる転送や予知がうまいこと働かないみたいんです。
 ですので、ここで提供できる情報はほんの概要程度なんです。外洋だけに」
 ぽそっと漏らした親父ギャグは失言だったようで、誤魔化すように目をそらしつつ、菊月は説明を続ける。
「光を渡った先のグリードオーシャン、その先に見た私の出身地にそっくりの文化を持ったオーガシマという島があるのですが、近々そこでは収穫祭が開催されるそうです。
 島の挙げてのお祭りに乗じて、コンキスタドールという……オブリビオンが何かを狙って島を襲うようなんですけど……いやー、兆しくらいしか見えなくて、狙いがよくわからないんですよね。力不足で申し訳ありません」
 えへへ、と申し訳なさそうに力なく笑う菊月だが、すぐに笑みを収める。
 笑い事ではない。
「なので、お手数ですが、皆さんには鉄甲船で島に乗り込んで、まずは調査をしてもらうことになります。
 島は今、お祭りムードですので、あんまり物々しい雰囲気だとちょっと驚かれるかも……。
 せっかくですので、目玉イベントの『釣り大会』に参加しつつ、島の皆さんにお話を聞いてみてはいかがでしょう?
 え、そんなのんびりしてて平気か、ですか。大丈夫ですよ。
 先ほど言った通り、何かがやってくる兆しは掴めているんです」
 力強く拳を握りつつしたり顔を見せるが、詳細はやっぱりわからないらしい。
「タイムリミットは夕刻、陽が沈むまでの間です。それ以降に、コンキスタドールは何らかの手を打ってくる可能性が高いです。
 ですので、それまでに彼らの狙い……もしくは、潜伏するアジトを探し当てる必要があるでしょう。
 それが真実に近いほど、より人目につかない場所で戦う条件になり、島民を巻き込むことは少なくなるはずです」
 神妙な面持ちで考え込むような素振りを見せつつ、一通りの概要を話し終えると、菊月はハッとしたように顔を持ち上げ、
「あ、そうそう! 釣り大会に参加を促してはいますが、別段、優勝する必要は全然ないですよ! 熱中するあまり、お話を聞き流さないよう、気をつけてください!」
 目的はあくまでも調査であることを改めて念を押す。
 そうして、慌ただしく鉄甲船の待つ世界へと猟兵たちを送り出す準備をしながら、菊月はポツリと呟くのだった。
「それにしても、あんな朗らかな場所で何をするつもりなんでしょうかね。メガリス……お宝に相当するものなんて、あるのかな……。まさか、お花見をするわけでもないだろうし……」


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文章書き、みろりじと申します。
 新しい世界がやってきたから、ひとまずやってみようという感じで考えてみました。
 今回のお話は、日常→集団戦→ボス戦というフレームを使用させていただきました。
 日常フラグでは釣り大会を楽しみつつ、情報を集め、その度合いで次の戦場が変わったりするかもしれません。
 説明しそびれましたが、海釣りです。船を使ってもいいですし、埠頭などでのんびりやってもいいです。特に指定が無ければ、あれこれ考えます!
 釣り大会メインな感じとも受け取れそうですが、猟兵のお仕事はあくまでも裏方になる予定です。
 収穫祭で遊ぶ時間は残念ながらありません。戦いです。戦うしかない!
 というわけで、皆さんと一緒に楽しいリプレイを作ってまいりましょう。
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第1章 日常 『釣りは一生の趣味』

POW   :    大物を狙って、体力の続く限り釣り続ける。釣りは格闘技だ!

SPD   :    素早い釣り竿捌きとタイミングで、狙った魚を釣り上げろ! 外道はリリースするのがマナーです

WIZ   :    釣るべき魚の習性を理解し、餌の種類やポイントを工夫して、クレバーに釣りを楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 謎の光を抜け、視界が開けてくると、まぶしいほどの日差しと爽やかな潮風に迎えられる。
 暗雲立ち込めていた世界から一新されたかのような気候の変化に戸惑いながらも辺りを見回した一行の視界に入ったのは、島全体が桃色に見えるほど桜の木々に囲まれた島であった。
 情報に見合う条件を満たすそれがオーガシマに違いないと踏み、上陸を試みる一行の鼻先に桜の花びらが舞う。
 強い潮の香りに混じってほのかに柔らかな芳香を漂わす穏やかな空気は、なんとも優雅で穏やかな気持ちにさせてくれる。
 この空気と同じように、島の住民もまた穏やかな風土であればいいと、事件を予見されたことに一抹の不安を胸に抱きつつも、猟兵たちを乗せた鉄甲船は港に接舷するのであった。
佐伯・晶
故郷はちょうど桜の季節だけど
こっちも快適だといいな

港の堤防か岬か
船の往来が見張れる場所で釣りしつつ
おかしな動きや装備の船がいないか探そう
オブビリオンがいるなら勘付くかもしれないし

仕掛けを投げて竿を握りつつ
海や桜を眺めて過ごすよ
無粋な事をする輩がいなければ
釣りを楽しみたいんだけどね

優勝を狙うつもりは無いので
余裕あれば連れた魚を使い魔に
宿に持って行かせて昼食にして貰おうかな

怪しいのを見つけたら
使い魔やドローンを使って追跡

島の地図を予め手に入れるなり記録するなりして
潜伏場所や狙いを推測できるといいんだけど

そしてゴーグルの望遠機能で作業を覗いたり
イヤホンの集音機能で会話を盗み聞いたりして情報を集めるよ



「故郷はちょうど桜の季節だけど、こっちもなかなか快適だね」
 我先にと降り立った佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、鉄甲船に押し込められて曲がったままだった足腰をぐぐっと伸ばして身体の凝りをほぐす。
 港に吹く風はやや強く、晶の高く結った髪を揺らす。
 小柄な中高生女子のような体格をした晶だが、その恰好は少年と見紛うかのような動きやすいものを選んでいる。
 それもそのはず、今でこそ女性そのものの肉体を得ているとはいえ、その身の内は平凡な男性であったという。
 邪神の依代に選ばれ、いわば乗っ取られかけた末に融合という形を経て、晶は心はそのままに神の肉体を得てしまったのである。
 神と言うか、邪神と言うか……まぁ見たところは可憐な少女でしかないのだが。
「さてと、とにかく釣りをしながら情報収集しなきゃだね」
 船旅で凝り固まった体もほぐしたところで、晶は気軽な足取りで騒がしい港へと足を向ける。
 オーガシマ、昼間の港は、穏やかな気風を感じつつも喧噪に塗れていた。
 コンクリートに石畳で整地された漁港と言った様子で、ちょっと古めかしい印象はあるが、思ったよりも近代的で歩きやすい。
 情報収集とはいっても、色々騒がしいこの場所で聞き込みというのは、ちょっと面倒かもしれない。
 何しろ港のあちこちで、漁師や目利きなどが魚などの売買に威勢のいい声を上げたりしているので、話し声を聞き取るのも一苦労だ。
 だが、この喧噪もなかなか心地よく感じてしまうのだから不思議なものだ。
 海ばかりで寂しさも感じていた晶は、人の営み、その熱に触れて少しだけ上機嫌になっていた。
 そんなところで、ふと浜風になびくのぼりに目を向ければ、件の釣り大会の案内を見つけ、晶はその案内に習い、釣り大会にエントリーすることにした。
「あのー、部外者だけどいいのかな。それに、釣りはほぼ初心者なんだけど」
「ああ、いいのいいの! せっかく来たんだ。祭を楽しんでってくんな」
 素朴な疑問を投げかけると、受付をしてくれた気風のいい兄さんは快活に笑い、釣り具一式を貸してくれた。
 どうやら島の外の人間でも気軽に参加できるイベントらしく、島外の人間が一等をとることも珍しくはないらしい。
 貸し出し用の道具と知って、晶は気兼ねなく釣り具を借り受けて、どこか見晴らしのいい釣りポイントを聞いて、そこを目指すことにした。
 港の人間は、だいたい聞いた話の通り、朗らかでいい人ばかりのように思える。
 ちょっと祭の雰囲気で舞い上がっているようにも感じるが、それを含めても善人と言っていいだろう。
 悪人が紛れ込んだらすぐにわかりそうなものだ。
 考え事をしつつ、晶は釣りポイントとして教えてもらった港の隅っこ、堤防の一角へと陣取る。
「ふう、たしかに見晴らしがいい。潮風が気持ちいいな」
 思わず全身投げ出して寝転がりたくなるほど、陽気と風が心地よい。
 だが、あくまでもこれは仕事。
 見晴らしがいい場所を選んだのは、寄港する船の往来やおかしな動きや装備の船舶を見張るのに都合がいいからだ。
 海の様子を眺めるようにして、船の往来をチェックする。
 祭の時節、昼間の時分ともあって、寄港する船は思ったよりも多いが、それらは物騒な武器などを表立って積んでいるような様子のある武装船ではなかった。
 それらしいものをいくつか見つけても、商船の護衛についているのが明らかだったりで、特に怪しいものは見つけられなかった。
「あの船が向かう先には、また別の島があるんだろうなぁ……」
 釣り大会に参加するという名分もあるので、釣り竿に餌をつけて海にたらしつつ、晶は堤防の上でぼんやりと船の往来に目を向ける。
 その視界の端には、海にせり出して枝を垂れる桜があった。
 お仕事関係なく過ごせるならのんびり堪能したいところだが、今はあまり注意を散らす余裕がない。
 と、あちこち往来する船ばかりに注意を向けていたところ、手にしていた釣り竿に手ごたえがあり、晶は反射的に釣り竿を引くと、強く反発する引きに冷静に合わせ、着実にリールを巻いていく。
 やがて釣り上げたのは、マアジ……に見える魚であった。なかなか悪くないサイズでは?
 と、思わず魚を釣り上げた事に満足してしまいそうになった。
「いかんいかん。しかしホントに釣れちゃうもんだな……どうしよう」
 別に釣れなければそれでもよかったのだが、思いのほか真面目に楽しんでしまったことを少しばかり恥じつつ、一つの考えに思い至ると、晶はぱちんと指を鳴らしてユーベルコードを発動させる。
「ちょっと助けてくれるかな」
 【式神創造】で呼び出した妖精型の式神にマアジによく似た魚を託す。
 お腹がすいたので、近くの宿に持ち寄って昼食にしてきてほしい。そんなような名を下すと、式神はまだ活きのいいマアジによく似た魚を抱えて飛んでいく。
「さて、お昼の目途は立ったけど、こっちは相変わらず……ん?」
 見張りに戻った晶は、次の釣り餌を取り出そうとしたところで、視界の遠くの方の海原で、何かが光るのを見た。
 船舶だろうか。
 さすがに肉眼では厳しいので、首に下げた多機能ゴーグルを装着して見てみる。
 それは、一般の船舶にしてはやや小ぶりに見える。乗員がほとんどいないようだ。
 一目でなにかおかしい雰囲気なのは見て取れたが、それ以上に異様なのはその船舶の周囲にあがる飛沫だ。
 まるで海中に何か潜んでいるような……コンキスタドールの海洋類か何かだろうか。
 だとすれば、あの船舶は襲われているのか? しかしどうにもそんな様子はなく、むしろ、船の動きに迎合しているようにすら見える。
「怪しい。追って!」
 すぐさまその船舶に向かってドローンを発進させる。
 さすがに距離があるためすぐには追いつけないだろうが、追跡すればアジトに相当するものは見つかるかもしれない。
 釣り具を借りるついでに手に入れたこの島の大まかな地図に目を向ける。
 船舶が向かった先を予想する。
 港は他にもう一つあるが、どちらにも向かわない、島の裏手に回り込むような素振りを見せているようだ。
 地図を辿り、その行き先を推理する。
「島の裏手には……川が流れているんだ……そこかもしれない!」
 おおよその行き先に当たりをつけると、晶は丁寧に釣り具をしまい、現場へと駆けだす。
 ちなみに、堤防を出た辺りで使い魔と合流し、丁寧に炭火焼きされたマアジっぽい魚に舌鼓を打ち、補給も万全である!

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
私お魚食べられないから、あんまり釣りしたことないんですよね…
釣り人は教えたがりが多いって聞いたことありますし、仕掛けの作り方とかポイントとか、慣れてそうな人に聞いて教えて貰います!
あの、すみません…初心者なんですけど、どのあたりが釣れるか教えて貰えませんか…?変わりに、私が釣ったのはお譲りしますので!

慣れてきたらポイントを変えながら釣り糸を垂らし、隣の釣り人に暇つぶしがてら声を掛けます

調子どうですか?私はさっぱりで…
そういえば最近、島で怪しい人を見たとか、使われてない建物に人が出入りしてるとかいう噂を聞いたんですけど、何か知ってます?

んー、桜見ながらのんびり釣り糸を垂らすのも悪くないですねー



 鉄甲船から降り立つ猟兵たちが、皆一様に日差しと海風と、そして船旅の疲労感に体を伸ばしたりしている中、いつもと変わらぬ調子で船を降り、いつもと変わらぬ様子で愛しの大剣を背負い、首をこきりと軽く回した程度で辺りを見回すと、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は、マイペースに従うままのんびりと漁港を練り歩く。
 既に港は緩やかなお祭りムードで人がそこそこ多い状況であり、競り市などもあちこちで開催されている。
 お祭りがあるとはいえ、漁港としてのお仕事は変わりなく行われている。今はそれにちょっとだけ色が添えてあるという具合だろうか。
 人々の営みを感じられる騒がしさは、いくらマイペースで自己中心的を自負する結希とはいえ、なかなか嫌いな雰囲気ではない。
 ただ、毎日は辟易してしまうかもしれないなぁ。
 そんな風に益体もないことをぼんやりを考えていると、釣り大会の受付を発見する。
「どうもすいません。釣り大会にエントリーしたいんですが」
「お、どうぞどうぞ! お嬢さん、えらくごっついのを持ち歩いてるねぇ。ここいらの海でならしたクチかい?」
「まあなんというか……そうですね。名を上げるのは、これからかもしれません」
「なるほどなぁ。それで、手始めに釣りで一山って感じか。いいねぇ、粋だねぇ!」
 結希が曖昧に笑って見せると、良い風にとってくれたのか、受付のお兄さんは気前よく釣り具セットを貸してくれた。
 何が粋なのかはよくわからないが、気風のいい性格はまさに受付にぴったりの人材なのかも、と結希は勝手に納得しておくことにし、釣り具を受け取るとさっそく釣り場に……行く前に、
「あ、そうだ。私、ほとんど初心者なんですが、どこかいい場所ってあります?」
「おお! 釣りは初めてかい。恐れずなんにでも挑戦するってのぁ、いい心がけだねぇ。
 うーん、そうだなぁ……。ここいらでよく知られてるのは、すぐそこの砂州の辺りだろうなぁ。
 ここいらで釣りをやってる奴なら、ほぼ足を運ぶ場所さ」
「なるほど、ありがとうございます」
 話し始めたら止まらなそうな気配を感じとり、結希はそれだけ聞くと丁寧にお礼を言って、教えてもらった場所へと足を運ぶ。
 実際のところ、結希自身はお魚があんまり得意ではないため、さしあたって釣りの経験もほぼ無いのだが、経験者が沢山いる場所なら、教えてくれる人もいるかもしれない。
 それに、本来の調査のために聞き込みをするのには、ちょうどいい話題となってくれるだろう。
 釣りは孤独な趣味ともいえる。
 一人、のんびりと釣り糸を垂らすという人もいるだろうし、魚と一対一の真剣勝負のため、他を敢えて排すという人もいるだろう。
 だが、孤独な趣味なだけに、共有するという事になったとき、孤独に押し込まれていたものが漏れ出すかのように、饒舌になるものだ。
 つまりまぁ、何が言いたいかというと、釣り人は教えたがりなのだ。
 愛する剣と二人きり、ある意味で孤独な結希は、そういう釣り人の心理を突く手を思いついたのである。
 古びた石畳とコンクリートの漁港から外れていくと、固い金属製のブーツの靴底が、柔らかな砂を踏みしめる感触に変わっていく。
 長い時間をかけて島をほんの少しずつ侵食し、微細な砂を海へと運んでは押し戻して、そうやって積み上がったものが大きく湾曲し、潮だまりのような州を作る。
 それが砂州というものである。
 遠浅の波打ち際を見てみれば、浜釣りに勤しむ釣り人達が何人か見受けられた。
「あのー、釣れますか?」
 そんな中の一人、海原に釣り糸を伸ばす壮年のおじさんに近寄って、結希は定番の言葉を投げてみる。
「うん? ああ、まあぼちぼちかねぇ」
 真新しい釣り具を抱えて話しかけてきた結希の姿を見ると、おじさんは細い目元をさらにまぶしげに細めて答えた。
 おじさんからすれば娘ほど年の離れた結希の姿は、たとえ大剣を背負っていてもまぶしく感じるのである。
「あの、すいません……初心者なんですけど、どのあたりが釣れるか教えて貰えませんか……?」
「ああ、いいとも。といっても、この辺りは州になってるから、色々迷い込んでくるんだ。初めてでも釣れると思うよ」
 おずおずと尋ねる結希の姿をどう受け取ったのか、おじさんは姪っ子にでも接するかのように、釣り具の使い方などまでゆっくり丁寧に教えてくれた。
 そうしておじさんに教えられるまま、何度か竿を振るうち、結希も釣りに慣れてきたのか、その動作も堂に入ってくる。
「うーむ、やはり若いと覚えがいいねぇ。おじさんも頑張らなきゃなぁ」
「ありがとうございます。ご迷惑にならないよう、いろんな場所でもやってみます」
 にこやかに笑い合い、結希はそうやってひとまず場所を移動する。
 さて、おじさんから情報を引き出すのもすっかり忘れて、釣りを覚えるのに一生懸命になってしまったが、本来の目的を忘れてはいけない。
 ちょっとだけ慣れた様子で釣り餌を仕掛けると、水面に糸を垂らしつつ、近くの別の釣り人に話を聞いてみることに。
「調子はどうですか? 私はどうもさっぱりで……」
「ん? ああ、まあ気長に待つよ。お魚の起源次第だからね」
 今度の釣り人は、どうやら比較的若い。働き盛りと言った様子の男性だ。
 若いながら余裕を感じさせる佇まいは、ひょっとしたら何か知っているのかもしれない。
 話してみた感触は、どうやら釣りの合間の暇つぶし程度には付き合ってもらえそうだ。
「そういえば最近、島で怪しい人を見たとか、使われてない建物に人が出入りしてるとかいう噂を聞いたんですけど、何か知ってます?」
「ふーん、祭りのシーズンだしなぁ……人の出入りは増えてるとは思う。ただ、使われていない建物ねぇ。うん? ひょっとしてあれかな」
「あれとは?」
「神社だよ。君の噂っていうのがどういう物かは知らないけど、この時期にしか使われないといえば、神社の……それも本殿かなぁ。
 知っているかい? この島の中央に咲いている大桜の精を祀っていてね。大きな池の中にあるから、ボートじゃないと行けないんだ。
 この時期になると関係者が、清掃や祭りの準備で出入りするんだよ」
「はぁ……」
 それはそれで面白い話だったが、どうやらそこはオブリビオン……この世界でいうところのコンキスタドールのアジトにはなりそうもない。
 外れだったか。心中で毒づく結希の思惑など知らず、男性は話を続ける。
「本殿は基本的に小さな社の中に御神体が奉ってあるだけなんだけど、たまにそれがお宝なんじゃないかって外の人が噂するみたいだね。
 昔、小さな海賊が御神体を狙って、島の反対側の川から船で乗り込もうとしたこともあったよ。まあ、浅すぎて座礁しちゃったから、未然に終わったんだけど……って、かかってるよ!」
「……あっ、はい!」
 話の続きに引っかかるものが多かったせいだろうか、男性に指摘されるまで、竿が引いていることに気づかなかった。
 慌てて竿を引く結希は、苦闘の末に釣り上げたのは、やや赤みがかった地味な苔色の魚であった。
 そこそこの大物、なのかどうかはわからないが、釣り上げた事よりも結希にとっては男性から聞いた話の方が気になっていた。
「いやぁ、よかったねぇ。こっちはボウズだよ」
「あ、じゃあ良ければ貰ってください。ちょっと寄るところができてしまったので。それに、面白いお話のお礼です」
「へぇ? あ、ああ、いいのかなぁ……」
 戸惑う男性に釣れた魚を押し付けつつ、結希は釣り道具をまとめて早足でその場を後にする。
 アジトや怪しい人物を探すことに注力していたが、思わぬ話が聞けてしまった。
 もしかしたら、敵となる何かは、昔やってきたという海賊と同じことをやろうとしているのかもしれない。
 ちょっと動機としては弱いかもしれないが、この朗らかな雰囲気の島の中でお宝になりうるという話は、大きな意味があると見ていい。
 関係者とやらに話を聞いてみるべきか?
 いや……いきなり部外者にそんなことを聞かれても、敵に結び付くとは限らない。
 ならば、川を調べてみようか。
 もしかしたら、コンキスタドールともなれば、外部から川をさかのぼる手立てがあるかもしれない。
 調べてみる価値はあるかもしれない。
 早足が駆け足になるところで、ふと見上げた空の光景に桜が混じる。
 結局、ほんの少しの間熱中しただけで、本格的に釣りを楽しむ余裕はなかった。
 仕事が終わって一段落したら、桜を眺めながらのんびり釣り糸を垂らすのも悪くないかもしれない。
 釣った魚は食べられないので、どこかに提供することにはなりそうだが……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
SPDで判定
ミフェット(f09867)と一緒だよ♪

ようし、ボクも釣り大会に参加しながら情報収集だー♪
埠頭で釣り糸を垂らしながら近くにいるお爺さんに「コミュ力」で話しかけるよ♪

もうすぐお祭りだけどお爺さんは桜の精霊さんって見たことある?
ボクも頑張ったら桜の精霊さんに会えるかなーとかおしゃべりしてるね!

そんなこんなでお話していたら釣り竿に反応が!
むむむー、負けないぞーと「怪力」に任せて一気に引き上げるよ!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
WIZで判定
ティエル(f01244)と一緒に釣り大会!

釣りに行こう!って誘ったら、ちょうど行くつもりだったよ!と鉢合わせ
お祭り前の雰囲気に、なにかお土産買おうかなって
出店の準備をする人達を見ながら「コミュ力」で「情報収集」するね

・お祭りを見に来たの! でも、桜の精霊さんってどんなもの?
・どこがよく釣れますか?

ティエル、ティエル、あっちがよく釣れるって!!

釣り場所を定めたらティエルとそろって釣りをするね
はじめてだから、エサのつけ方、お魚の待ち方、お魚つかまえたあと、他の釣り師さんに教えてもらってのんびりと

げどーはリリース……わ、わるもののお魚がいるの?



 オーガシマ、その漁港は、昼過ぎともなれば通常の競り市としての役割も手伝って、卸売りの者や、直売に来た料理人などの姿、お祭りの準備に奔走する者や、お祭りを見に来た旅の者などであふれていた。
 この時期になると、お祭りを楽しみに来た観光客相手の商売も盛んなようで、食べ物の出店や、桜や魚をモチーフとしたこの島ならではのお土産を売る場所も増えるようである。
「わ、わ……人がいっぱいだねぇー!」
 鉄甲船に乗ってやってきた猟兵の中でも年齢が低めのお子様二人のうちの一人、ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)は、人の流れで潮流すらできるかのような人混みで、連れ立ってやってきたもう一人の猟兵の姿を探す。
 小さいとはいえ、人間の子供と同じような姿をとるブラックタールのミフェットは、人混みの中でも周囲が気を使って道を明けてくれるのだが、もう一人の方……。
 ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は、フェアリーの小さな体もあって、人混みはちょっとだけ飛びづらそうである。
 さすがのおてんば妖精とはいえ、人々の頭上を飛び回るのは、ちょっとだけはしたないと思うところがあるようである。
「受付ってどこだろ……」
 人混みに呑まれてすっかりはぐれてしまった二人は、しかし慌てることなく、目標としている場所で合流することを思い立ち、やがて一緒になるのなら今のうちにやれることを考えることにした。
 さしあたり、ミフェットは人混みの中でティエルの姿を探すのをひとまず諦め、釣り大会の受付を探しがてら、情報収集へ着手する。
 しかしこの人混みの中で話を聞くのは難しいだろうか。
 あちこちで競り市か何かの大声で呪文のような言葉を交わす男たちの声がする。
 威勢がいいのはいいが、近づくのはちょっと怖い。
 かといって、道行く人たちに声をかけようにも、流れができてしまっては立ち止まって話をするというのも難しいだろう。
 歩きながら考え込むミフェットは、ふと鼻先を掠める香ばしい匂いに誘われるようにふらふらと、人混みから外れていく。
 たどり着いたのは、出店の一つらしかったが、客足は無い。
 みれば、準備中の札が下がっていて、店頭に立つ男性店員と思しきねじり鉢巻きの男は、汗を流しつつ鉄板で何かを焼いている。
「あのー」
「今は準備中だよ。後できてくんな」
 おずおずと声をかけるミフェットを一瞥もせず、男は鉄板に集中しているようだった。
「そこをなんとか。お尋ねしたいのー!」
「ああ、うるせぇなーもー! 今仕込みの最中なんだよぉー!」
 頑張って声をかけるミフェットに、店員の男は鬱陶しそうな様子ながら、律儀に返答してくれる。
 客あしらいのなっていないぶっきらぼうな調子だが、なかなか邪険にできない付き合いのいいタイプなのかもしれない。
 ちょっとの間だけ大人しくしていたら、何かリアクションしてくれるかもしれない。
 コミュニケーションは目を目を合わせることから。と踏んだミフェットは、相手がこちらを意識する瞬間を待つことにした。
「……だぁー! なんだよ、ガキかよ! いったい、どうした?」
「ふふ、えーとね、お祭りを見に来たの!」
「はぁ? 祭は夕方からだよ。まだ随分早いぞ。もうちょっとしてから来な」
「そっかぁ……あ、でもでも、桜の妖精さんってどんなもの?」
「あぁん? 桜の妖精? そりゃお前……」
 口は悪いが、相手が子供とわかると、いくらか男の口調は柔らかいものになった。
 そして、けっこうな話の跳び方をしても、男は律儀に質問に答えてくれる。
 話によれば、桜の妖精というのは、サクラミラージュでいうところのそれと変わらず、桜から生まれた妖精に相違ないらしい。
 ともすればやはり、この島に生えている桜は、幻朧桜と同質のものとみて間違いないのだろう。
 実のところ、この島に桜の精をやっている者は多くはないが、珍しくはないらしい。
「ただ、大桜の精霊さまは、違うな。みんな特別だと思ってる。代替わりもせず、長いことこの島を見てきたって話だ」
「ふーん、そうなんだ……あ、焼きそば二皿下さい!」
「だーから、仕込みの途中……しょうがねぇなぁ! 腹減らしたガキはこれだからよォ、もー……イカ焼きそばだけど、イカ食えるか?」
 悪態をつきながらも、なんだかんだでミフェットの好みを聞いたりと、人の好さが見え隠れする店員を、これ以上は引き留めるのも心苦しいと感じ、ミフェットはお土産を購入しつつ、本来の目的に移ることにした。
 かくして、寄り道はしたものの釣り大会の受付は、すぐに見つかった。
 どうやらティエルは既に到着しており、ミフェットが来るのを待っていたらしい。
「よーし、釣りに行こう!」
「ちょうど行くつもりだったよ!」
 予定通りに合流し、ティエルと二人分の釣り道具を借り受けると、親切な受付の若者が埠頭の辺りをおススメしていたので、そちらへと向かうことに。
 釣り大会自体は、島を挙げたイベントでもあるが、実際に参加するものは島の外の人間の割合が多く占めるらしい。
 というのも、島民はお祭りの準備の方が忙しい家庭が多いとの話だ。
「ティエル、ティエル! あっちがよく釣れるって!」
 埠頭が見えてくると、いよいよ人混みばかりだった漁港とは違って視界も開けて開放的になったのか、自然と駆け足になる。
「待って待って、焼きそばこぼれちゃう!」
 上機嫌で走り始めるミフェットが、釣り具と一緒に擬態した髪で運ぶ焼きそばの包みがゆらゆら揺れる。
 すぐ後ろを飛んでいたティエルが慌ててのしかかるようにして抑え込んで事なきを得たが、代わりにソースの香りを胸いっぱいに吸い込んでしまった。
 もう我慢できない。
「お昼にしてからにしよっか」
「うん、食べよう、食べよう」
 そうして、二人して埠頭のふちに並んで座り、しばし焼きそばに舌鼓を打っていると、二人に近寄る姿があった。
「おや、可愛らしい先客だ。お隣よろしいかな?」
 二人同時にふり返ると、その人物は釣り竿を携えた老人だった。
 笑顔で了承しつつ、そうだこの人からも話を聞いてみよう! と、アイコンタクトすると、急いで焼きそばをかき込む。
 あつあつの焼きそばをはふはふと胃袋に詰め込むのも、また若さである。
 そうして、老人が埠頭の水面に釣り糸を垂らし、緩やかに浮きの漂う様を見つめる頃、元気よく「ごちそうさま」の声が響く。
「おじいさん、どれくらい釣りをやっているの?」
「んー……お嬢ちゃんと同じくらいの頃からかなぁ。夕方までさっぱり釣れなかったよ」
「それじゃあ、いろいろ教えてもらってもいい? エサのつけ方とか……持ち方とか!」
「いいよ。どれ、見せてごらん」
 手慣れた様子で竿を置いて、ティエルたちの釣り具を見定め始める老人は、やはりというか言葉の通り、釣り人として長いらしい。
 一から十まで、それを事細かにではなく、少ない言葉で、少ない手助けで、にもかかわらず、安心するような柔らかい調子と、不思議とやる気を見出させるような手取りで、基本的な釣りの作法を教える老人の見えざる教鞭は、子供の二人にもとてもわかりやすいものであった。
「なんだか、やれそうな気がしてきた!」
「ほほ、小さな体で釣れるかな?」
「ふふん、負けないぞー♪」
 すっかり老人の言葉に乗せられて、ティエルはその気になって釣り糸を垂らす。
 そして、埠頭に腰を落ち着けてから、あ、こっちが本題じゃなかった。と思い返すのだった。
 そうだ、話を聞かなくては。
「ねえ、お爺さん。もうすぐお祭りだけど、お爺さんは桜の精霊さんって、見たことあるの?」
「ああ、大桜の精霊さまか。それはあるとも。もう一度会いたくて、釣りを続けてるようなものだよ……」
 目を細めて水平線を見つめる老人の視線は、きっと水平線の彼方を見ているわけではない。
 ずいぶん昔に、釣り大会で優勝を経験した老人は、その栄誉として桜の精霊から祝福を得たという。
 その姿が忘れられず、それからずっと、釣りを続けているのだという。
「美しいお方だった……今でこそ、島の外まで知れることとなった祭りだが、こうまでなれたのもあのお方の存在あってのこと……」
 聞けば、桜の精霊の宿る大桜こそがメガリスであるという噂が、この周辺海域に流れたことがあった。
 島の者たちは確かに大桜を宝と思っているが、メガリスというものである認識はなかったためか、それを頑なに否定したという。
 ひとたびそれがメガリスであるとされれば、欲深な海賊たちやコンキスタドールの餌食となるのは目に見えていたからだ。
 そして、どこからかそんな噂を聞き付けた海賊が、島に攻め入ろうとした。
 あろうことか、海賊船で直接、大桜を囲う池から流れ出る川を遡ろうとしたのである。
「しかし、その企みは躓くことになった。川は船が通れるほど深くはなかったんだよ……。そしてそれは、大桜の精霊が、船を通さぬために川を浅くしたとも言われておる」
「ふうん……そんなに強い力を持っているんだね。ボクも頑張ったら、桜の精霊に逢えるかなー?」
「ほほ、きっとな……おっと、かかっているぞ!」
 穏やかな老人が注意を促すとほぼ同時に、ティエルの手にしている竿に負荷がかかった。
 がくん、と身体が強く引っ張られるが、ティエルは小さな体で精一杯踏ん張り、釣り竿を立てる。
 妖精の小さな体躯をしている少女であっても、ティエルは猟兵。
 その秘められた怪力は、小剣で厚い装甲をも貫く。
「むむむー! 負けないぞーっ!」
 裂帛の気合、そしてミフェットの触手によって体を支えられながら、やがてティエルは獲物を釣り上げた。
 黒ずんだ鱗。ずんぐりした体。クロダイに似た斑紋の魚は、しかし釣り上げた段階で、半ばから後ろにあたる尾びれが無くなっていた。
「釣れ、た……? なにこれ?」
 釣り針を外すのすら忘れ、埠頭に釣り上げられぐったりと動かない魚の無残な姿に、一同は呆気にとられる。
 しかし、いち早く平静を取り戻したミフェットが、すぐそばの水面に大きな影を見つける。
「ティエル! 何か居た!」
「え、どこ!?」
 猛スピードで去っていく黒い魚影。あれは、なんだろう。
「お爺さん、ああいうのって、いつもなの?」
「い、いや……あんなものは、ここ最近じゃ、見たことが無い……」
 いかにも食いちぎられたかのような魚の姿と、一瞬だけ見えた大きな魚影には、老人もショックを受けているようだった。
 長年、ここで釣りをしていた老人でも、あの魚影は見覚えが無いというのは、今までに存在しなかったもの。つまりは、
「わ、わるもののお魚もいるの……?」
 少し取り乱した様子のミフェットをはじめ、その視線は釣り上げた魚の骸に向けられていた。
 そうして何やら考え込んでいたティエルは、やがてその魚の傍らに座り込むと、釣り針を外し、短く祈りを捧げてからその遺骸を海へと返す。
「……行こう、ミフェット。あれが、もしそうだとしたら」
 トーンの下がったティエルの言葉を聞いて、ミフェットも平静さを取り戻した。
「そうだ。きっと川に来る!」
 向かい合って頷き合い、二人は老人に丁寧にお礼を言うと、釣り具をしまって川を目指す。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニレッド・アロウン
ヒャッハーです!釣りです!魚です!思いっきり食べてやります!……ちゃ、ちゃんと調べもしますよ?

さて、自前の釣り竿なんてないですし誰かからパクッ……借りさせてもらい、釣りが出来そうな橋とか埠頭で足を下ろして座り、いざ釣り始めです!

……
………
…………暇ですね。という事で、近くにいる他の参加者と談笑でもしながら釣りを続けましょうか。
ほう、ここは優勝よりものんびりと。それは悪くないですねー。
おおう、おじさん優勝したことあるんですかー、凄いです!美味しかったです?
え!お孫さんは生まれたんですって!おめでたいじゃないですか!これは釣らないとですね!

……しかし、一匹も釣れませんねー。なんででしょうねー。



 グリードオーシャンには様々な世界から陸地が落ちてくる。それ故に文明、その特色は実に様々である。
 ここオーガシマも、サクラミラージュの幻朧桜と同じものが年中咲き乱れている。
 その春色の光景についつい勘違いしてしまいそうになるが、グリードオーシャンの気候は、基本的に温暖である。
 それはもう、グルメと言えば南国風のものが引き合いに出される程度には温暖であるのだが、この気候というのがなかなか厄介なもので、現行の季節もまた春ならば、春一色のオーガシマの光景もまた常春である。
 それは何を意味するかというと、あっちも春、こっちも春、加えてぽかぽかと過ごしやすい気候なのである。
 そんな季節は、ついつい人を上機嫌にしてしまいがちだ。
 春の収穫祭お準備に賑わう漁港の雰囲気もまた、どこか春の陽気に浮ついているような気配だが、
「ヒャッハーです! 釣りです! 魚です! 思いっきり食べてやります!」
 鉄甲船から降り立ったニレッド・アロウン(水晶鋏の似非天使・f09465)もまた、この常春の雰囲気と陽気に中てられたのか、上機嫌で漁港を練り歩いていた。
 大きなアイマスクを常に着用しているニレッドは、別に失明しているという訳ではないのだが、その環境に慣れてしまっているせいか、他の感覚で十分に補っているためか、人混みの中でも足運びに迷いがない。
「さて、釣りをしながら情報を収集……ああ、情報を収集しなくてはいけないのでした」
 奴隷生活が長かったためか、はたまたダークセイヴァーで枯れた土地を渡り歩いていたためなのか、ニレッドには釣りという知識こそあれ、その経験は無かった。
 そのためか、本来の目的を軽く忘れかけるほど、釣りが楽しみだったわけだが、言われたことはきちんと覚えているし、仕事である以上はきちんとこなすつもりだ。
 まあでも、時間はたっぷりあるわけだし、幸いにしてこの島のほんわかした雰囲気を思えば、剣呑な手合いもなかろう。
 いつも通りと言えばいつも通りながら、調査に関しては楽観的なスタンスであった。
 それにしても、釣りか。
 書籍で読む限りでは、一生幸せになりたければ釣りを覚えろという言葉があるくらいには、奥が深いものであるというが、果たして初心者の自分にも幸福は訪れるのか。
 興味は尽きないがさしあたっては、
「ひとまず、道具を用意しなくては……自前の釣り竿なんて無いですし、誰かからパクッ……借り受ける必要がありそうですね」
 一瞬だけ蛮族の片鱗が顔をのぞかせるが、おっとこの島ではそんなものは必要ない。
 漁業が盛んな世界とも聞いているし、その辺りで聞いて回れば、釣り竿の一本や二本は都合できそうなものだが……。
 と、視界のふさがった顔であちこち見まわすニレッドは、気合で周囲の看板などを読み取る。
 それが本来の視力によるものなのか、魔術の類であるのか、はたまたオラトリオの奇跡によるものなのかはまぁ、その、なんだ。この際、どうでもいい。
 そうして目に留まったのは、釣り大会の受付所であった。
 渡しに舟とはこのことか。どうやら、釣り道具の貸し出しもやっているようだ。
 思わず鼻を鳴らして、上機嫌な足取りで受付に話をつけると、ニレッドは勇んで釣りのできそうなポイントを探すことにした。
「埠頭は、もうけっこう人がいるようですね……ほかに釣りができそうな場所は」
 そういえば、ふと、最近聞いたような話を思い出す。
 釣りの知識は一般人と同等といったところのニレッドだが、それだけにそこに拘らない領域の記憶からサルベージするのは、なんとなく聞き流しておいた世間話の一端である。
 それによれば、河口付近ではチョウザメが釣れるらしい。
 チョウザメと言えば、キャビアである。
 なるほど、優勝間違いなしだな!
 いつもよりややテンション高めで上陸したニレッドは、いつもよりもちょっとだけ短絡的な結論に至ったらしい。
 まあ、まさか本当にチョウザメなんて釣れなくても、場所を決める指標になればそれで充分である。
 漁港から少し外れた辺りにかかる橋を見つけると、海に近い場所を陣取ってニレッドはさっそく釣り糸を垂らしてみる。
 海と川との潮流が混じりあうなんとも不思議な地点では、果たしてどのような魚が釣れるのか。
 釣り糸を垂らしたまま、しばし待つ。
 退屈かと言われれば、普段の荒事と比較してみれば暇ではある。
 しかし、川の上流からしばしば流れてくる桜の花びらを眺めていると、不思議となごんでしまう。
 それにしても釣れない。
 釣りは忍耐というらしいが、これほど暇になるのも昔以来だろうか。尤も、鉄格子の中で過ごすのと比べたら、この陽気は少々毒とすら思えるほど穏やかなのだが。
「釣れますかな?」
「はうっ! ……いえいえ、これがさっぱりです」
 思わずまどろんでいたニレッドは、いきなり後ろから話しかけてくる声に思わず背筋が伸びる。
 どうやらニレッドと同じように、釣り目的でやってきた人がいるようである。
 話しかけてきたのは、ソフトハットに着流しという、なんとも気楽な装いの老人であった。
「河口は少々難しいですからね。お隣、よろしいですかな?」
「ええ、どうぞ」
 飄々とした佇まいで、ニレッドに促されるまま橋の近くに腰掛けると、老人も慣れた様子で釣り針に餌をつけ始める。
 ずいぶんと穏やかな老人のようだが、その居住まいのあちこちに散見されるのは、清潔な品の良さだろうか。
 これも何かのめぐりあわせかもしれない。そういえば、情報収集が本来の目的だった。
「こちらは、穴場なのでしょうか?」
「淡水と合流する場所ですからね。大物はなかなか出ないと思いますよ」
「あらら……当てが外れました。しかし、おじ様も大会に参加しているのでは?」
「はは、今夜の夕餉も兼ねた趣味のようなものです。優勝は他に譲って、のんびりと」
「なるほど、悪くないですねー」
 穏やかな雰囲気の老人と語らっていると、自然とニレッドもなんだか穏やかな気分になってくる。
 話を聞くところによると、ここの河口付近でその昔、キスという魚を釣って、それが家族に喜ばれたのに味をしめて、ついついここへ釣りに来てしまうらしい。
 なんとも微笑ましい話である。
 話すうち、ニレッドも徐々にその口調に遠慮がなくなっていく。
「おおう、おじさん優勝したことあるんですかー、凄いです! 美味しかったです?」
「美味しい? いえいえ、その時の魚はお供え物としてそのまま寄贈しましたよ。それよりも、私は大切なものを貰いましたから。実は娘がおめでたなのですよ」
「え! お孫さんは生まれたんですって! おめでたいじゃないですか! これは釣らないとですね!」
 孫ができたお祝いに、妻の好物を釣り上げに。泣かせる話である。
 が、こんな個人のお話でいいのだろうか。ニレッドは訝しんだ。
 話を聞く限りでは、ただの幸せなお話というだけだ。
 もっとこう、怪しい何かを感じさせるものが出てくるかと思ったのだが、人選を見誤っただろうか。
「……しかし、一匹も釣れませんねー。なんででしょうねー」
 ざばっと釣り針を引き上げてみるが、そこに獲物はかかっていない。
 糸を垂らせばかかるものと思っていたが、何か足りないのだろうか。
「おや、針だけでは、なかなか釣れるものも釣れませんよ。釣り餌などはもっておりますかな?」
 うん? と小首をかしげるニレッドに、老人は合点がいったように頬を緩める。
 釣りの経験の無いニレッドは、餌をつけるという事が頭からすっぽ抜けていたらしい。
「いやいや、これだけ綺麗な桜が流れてくるんですから、魚も寄ってくるかと……」
「ははは、なかなか詩的なお嬢さんですな」
 誤魔化すように頬をかくニレッドに、老人はしかし、と続ける。
「ここはまだ序の口ですよ。この島の裏手に流れる川は、中央の大桜から直接流れ出ている川ですから、そちらは壮観です。
 何しろ、この桜河島の名の由来となったほどですからな」
 穏やかな調子で話す老人の話に、この島の名前のルーツを見つける。
 なるほど、そこは言ってみる価値があるかもしれない。もしかしたら、こことは違う、大物がいるかも。
 ついでに敵の情報が得られるなら何よりだが……。
「わかりました、見に行ってみます!」
「あ、ちょっと……!」
 老人が制止するのも待たず、ニレッドは教えられた場所へと足を進めることにした。
「あそこは、禁漁区なのですが……まぁ、誰か教える人がいるでしょう……トラブルに巻き込まれんといいがなぁ……」
 困ったように嘆息する老人の言葉は、やはりニレッドには届いていなかったようである。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『巨大魚』

POW   :    船喰らい
【頭部からの体当たり】が命中した対象に対し、高威力高命中の【鋭い牙によるかみ砕き攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    テイルフィンインパクト
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    ウォータービーム
レベル×5本の【海水】属性の【水流弾】を放つ。

イラスト:傘魚

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オーガシマには大きく二つの港があり、それらは効率を求めて市街に面した立地となっている。
 つまりは、島の表半分と呼ばれる部分は市街地であり、その裏手にあたる島の反対側は、ほとんどが桜の森になっている。
 そこには森を割るように一本の太い川が流れている。
 島の中央に咲く大桜。それを囲う池から流れ出る直流であるが、その水深は浅く、大の大人の膝に届かぬ程度であるという。
 島からすればそこは保護区であり、猟兵たちの得た情報によると、かつては島の中央の大桜。それそのものか、桜の精霊を奉った御神体を奪うため、海賊が侵入しようと試みたものを精霊が阻んだことにより、船による渡航ができないほど浅くなったという話である。
 それが嘘か真かは定かではないが、大桜をはじめとした数々の桜の花びらが誰の手にもつかず流れ降りていく様は壮観であり、この島が桜河島(オーガシマ)と呼ばれる所以とも言われている。
 そんな、普段はただ人の居ない静かで広い川を、飛沫を上げて遡る魚影が複数。
 牛の一頭ほどもあろうかという巨大な魚が、何かを目指して一心不乱に駆け上がる様は、さながら川を遡るサケのようでもあるが、それにしては異質が過ぎる。
 彼らの狙いが何であろうとも、その先にあるのは、大桜をはじめとした人々の営みである。
 獰猛な歯を剥いて迫るそれらが一般人の手に負えるとは思えない。
 水面はこのコンキスタドールにとってのホームであるが、他に人がいないというのは好都合である。
 多少、景観を損なうようなことがあろうとも、人に危害が及ぶことを考慮にいれて戦う必要は、現状ではまだない。
 この場を逃さず、戦う限りは。
ニレッド・アロウン
ヒャッハーです!大物が大量です!優勝どころか宴会の肴にもちょうどいいですねー!
しかし良い風景ですねー、後で眺めとこ。

さて、大物がたくさんですのでまずは逃がさないように。
川を堰き止めるように水晶迷宮を展開、と同時に私の周りで氷結属性の魔力を纏って迷宮に魔力を付与、迷宮全体の温度を下げていきましょうか―。迷宮の素材は青水晶、氷への親和性はそれなりにある事でしょうしねー。

さて、魚たちを食べ……仕留めていきましょうかねー。
川からこの迷宮に打ち揚げられた事に温度を下げられて活動性を極限まで下げさせた状態でどんどん捌いていきましょうか。放たれた水流弾は氷の魔力で即座に氷結して盾として防いでから、ですねー。



 普段は静かなはずの桜の流れる川に、けたたましい飛沫が舞う。
 川面から半身を出した状態でも、その身を川底に擦っていても、巨大魚の駆け上がるスピードは大の大人の疾走する速度を超えている。
 それを脅威とするか、はたまたただの自然現象とするか、それはともかくとして、情報を得てこの川を訪れたニレッド・アウロンは、ちょっとだけ釣りに熱心になってしまったが故に、胸を熱くせざるを得なかった。
「ヒャッハーです! 大物が大量です! 優勝どころか宴会の肴にもちょうどいいですねー!」
 オラトリオの華やかな見た目の内に秘めた蛮勇と、漁業という歴史の長い狩猟文化とが結びつき、ニレッドは魚を獲ることに躍起になっていた。
 それが本題ではない筈だが、相手はコンキスタドールだ。問題ない!
 もはや一張羅である群青のローブが水に濡れることなどお構いなしに、川の上方まで先回りすると、ニレッドは川の中に躍り出て愛用の水晶鋏を構える。
 さすがに牛の如き巨大魚が相手では、ただの釣り竿ではもつまい。ということで、釣り竿は置いておいて肉弾戦を挑む腹積もりである。
 まったくもって関係ない話だが、川を囲うように生い茂る桜の色と、川に仁王立ちするニレッドの群青は、なんとも様になっていた。目的は少々残念だが。
 さて、正面から殴り合い……というのも悪くはないのだが、さすがに数が多い。
「まずは逃がさないようにしませんと……」
 笑みを収めて、迫りくる巨大魚との距離、そして川幅や流れの強さなどを大雑把に頭に入れつつ、ユーベルコードを発動させる。
「迷え迷え悪党よ。辿れ辿れ善き人よ」
 川底から、彼岸から、青く濁った氷のような壁が幾つも突きあがってくる。
 水晶でできた壁が通路を成し、行き止まりを成し、やがては迷宮を成す。
 【水晶迷宮】が構築された影響で、川の流れが幾つか制限され、水量が大幅に減る。
「びちびちっ、びちびちっ」
 川に浸かったように水が流れ込む迷宮の最中に、水の通らぬ高低差が生まれ、巨大魚の何体かは打ち揚げられた状態で迷宮の水晶の上を跳ね回る。
 しかしそれも徐々に動きが鈍くなっていく。
 迷宮のあちこちから霜が立ち始める。
 ニレッドにより構築された迷宮は、またその構築と同時に氷結の魔法を注ぎ込まれ、急激に温度が下がっているのだった。
 水温の高めなオーガシマの海域から、一気に氷点下の気温に対処しきれない巨大魚はその動きを鈍くせざるを得ない。
 水路や水路にすらなっていない迷路の通路を、ざぶざぶと踏み分ける足音。
「さて、魚たちを食べ……仕留めていきましょうかねー」
 白い吐息と共に、にこやかにやって来るその姿は、処刑人のそれに似た風格があった。
 苦し紛れに巨大魚はその周囲の水気を弾丸として撃ち出すも、最大の武器である機動力を奪われた今、その攻撃は巨大な鋏に阻まれ、弾かれたそばから氷結の魔力によって霰のように散ってしまう。
「まずは、兜を落とさなくては」
 ばちん、と巨大な頭の先を切り落とすべく鋏の顎を閉じれば、さしもの生命力をもった巨大魚も一撃で絶命する。
 そして、大概のオブリビオンは、絶命すれば黒い霧となって骸の海に還っていく。
 彼らも例外ではなかった。
「あれ……?」
 大物をとって優勝を目指す。あわよくば取り損ねた昼食を……なんて思っていたら、目の前で獲物が消えてしまっては、さしものニレッドも小首をかしげざるを得ない。
 オブリビオン……だったんだなぁ。
 この証左は、彼女にとって少なからずショックだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

春乃・結希
わぁ…川が桜色に…すごく綺麗…!
だから桜河島…こんな綺麗な名前をつけた人はきっと素敵な人ですね
もう少しのんびり眺めていたいけど…あとでのお楽しみにしよ!

川の真ん中くらいまでザブザブ進み、お魚達を迎え撃ちます
UC発動
巨大化したwithを【怪力】で振り回し
川を登ってくるお魚達を切り身にしてあげます!
足元はwandererが守ってくれる。近づいてきたら蹴り飛ばす!
私お魚苦手で…食べてあげられなくてごめんね…!

すり抜けられても気にしません
だってこの島を、桜を、護ろうとしてるのは私だけじゃない
一緒に船に乗ってきた猟兵さん達が絶対倒してくれます!
この島の人達が大事にしてる宝だって、絶対に渡しません!



 迷宮構築によって分断された巨大魚たちは、その数匹を迷宮のうちに留めることとなったが、そのうちいくつかは迷宮になり上がる前の壁を越えていた。
 上流にあたる池まではまだかなりの距離があるものの、それを放置する道理はない。
「わあ……川が桜色に……とても綺麗……!」
 調査のために先回りしていた春乃結希は、その川の美しさに息をのんでいた。
 辺りも桜が咲き乱れているが、きらめくような川面に流れる桜によって染め上げられた銀色の輝きを見てしまうと、また別の魅力があるようだった。
 これほど濃厚に桜の花が流れる川は、簡単には見られないかもしれない。
 この島の名前に成る程の川というだけはある。なるほど、だから桜河島なのだ。
 こんな綺麗な名前を付けたのは、きっと素敵な人に違いない。
 時間が許すならば、ずっと眺めて居たいような、そんな気分にもなってしまうところだが、そんな結希の感慨を打ち破るかのように、激しい飛沫が舞う音が遡ってくる。
「無粋だなあ」
 緩みかけた結希の瞳に、剣呑なものが宿る。
 どうやらあれが、敵という訳だ。
 なるほど、浅い川を無理矢理上ってくるのは、巨大な魚らしい。
「もう少しのんびり眺めていたいけど……あとでのお楽しみにしよ!」
 特に柵なども用意されていない、自然なままの状態の川を見やると、結希は愛しの大剣の重さを確かめるかのように担ぎなおして、ざぶざぶと川の中へと足を進める。
 蒸気魔導由来の技術が使用されている金属のブーツを履いている結希にとって、多少の足場の悪さなど、大した障害にはならない。
 とはいえ、巨大魚の泳ぐスピードは思った以上に速い。
「これは、確かに……荒事が必要みたいだ。行こう、with」
 広い川の中央に立ち、迫りくる魚群を迎え撃つようにして大剣の名を呼び構える。
 迎え波に乗る巨大魚達に対し、結希は流れを背にする。その背を押すかのように桜の花びらが風に乗る。
 濡れた空気を胸の内に吸い込み、腹の上に力を蓄えるようにして腰を低くすると、覚悟を決めてユーベルコードを発動させる。
 黒い刀身が光を放ち始め、脈動するように強く発光したかと思えば、その刀身が倍以上の長さに巨大化していた。
「うぐ、重っ……くない! 重くないぞーっ」
 普段から大剣を持ち歩き、あまつさえそれを力任せに振り回す人並み外れた怪力の持ち主である結希だが、それは剣というにはあまりにも巨大すぎた。
 一応、いたいけな少女であるその身には過ぎたサイズと重量。それでも完全に膂力で担ぎ上げているのは、もはや気合の賜物と言えた。
「さあ、こい……ッ」
 歯を食いしばって鉄筋のような質量と化した剣を掲げる姿は、おおよそいたいけな少女とは言い難い形相ではあったが、断じて重たいとは言わない。自分の気持ちの方が断然重たい。それに比べれば、物理的な重量など気合で乗り越えられずしてなんとするのか。
 川底に自重で沈みそうになるのは、ブーツの能力でカウンターウェイトと重力をアレすることで体勢を保つ。
 しかし巨大魚達は、巨大化した剣よりもそれを支える結希の方が狙いやすしとしたのか、身を低くしてその足元へと迫る。
 これでは川面ごと叩き切ることになるが、それは少し不格好……敵が巨大とはいえ、討ち損じる可能性がある。
「……こっちじゃない!」
 がぁん、と剣の切っ先が川に落ちる。それによりすこし軽くなった足で、迫ってくる巨大魚の鼻っ面を蹴りつけるように振り上げれば、金属のブーツの直撃を嫌った巨大魚が川面から飛び跳ねる。
 それにつられた巨大魚が次々と同じように空中を飛ぶ。
 凄まじい筋力でなければ、そんな芸当はできないだろう。しかし、水中の生物が空で動く手段など本来はもたない。
 空中に浮いた彼らを、結希は見逃すはずもなかった。
「まとめて、おろしてあげる……!」
 蹴り上げた足を戻す勢いで、宙に浮いた巨大魚をまとめて巨大化した剣で薙ぎ払う。
 もとから巨大な剣が、凄まじい膂力で以て振り払われると、その線上にいた巨大魚と一緒に舞い散る桜も切り裂かれ、さながら空間に隙間が空いたかのようにも見えた。
 巨大な質量の通貨に風が生まれ、飛沫と共に再び桜が吹き荒れる。
 やや遅れて、切り裂かれた巨大魚がぼたぼたとその残骸を振りまいて川に落ち、それらが黒い霧となって霧散していく。
「私、お魚苦手で……食べてあげられなくてごめんね……!」
 ただの一振りで冷や汗を浮かべる結希。それほどの大質量だったが、相手がコンキスタドール、オブリビオンと言えど、食べるためでなく魚を討つのには少なからず罪悪感があったらしい。
 それにしても、あまりにも大振り過ぎたのか、何体か逃してしまったらしい。
 だが、この島を、その宝を護ろうとしているのは、自分一人ではない。
 一緒にやってきた仲間たちが、同じように倒してくれるはずだ。
 そうして逃した魚のことはひとまず忘れることにして、結希は再び剣を担ぐ。
 下流からまだ巨大魚がやってこないとも限らない。自分もまた、この島の人たちが大切にする宝を護りたい。
「ふぅ……さて、もうひと頑張り、行ってみましょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
女神降臨を使用
空を飛んで現地に急ぐよ

近づく際に川の上流の地形や
その先の神社や桜の位置も覚えておこう

船の下にいたのがこいつらなら
主犯では無いだろうから
魚の配置や動きから本命の位置や狙いが
推測できるといいんだけど

それと他の猟兵と連携した方が上手くいきそうなら
協力して戦うよ

巨大魚の群れに追いついたら
ガトリングガンの掃射でまとめて攻撃したり
使い魔のマヒ攻撃で動きを止めたりして
数を減らしてこう

飛んでくる攻撃は飛行して回避
当たりそうなら神気で水流弾の時間を停めて防御
これは僕なりのオーラ防御だよ

コンキスタドールだから倒すと消えるんだろうけど
このサイズを釣れたら優勝できるのかなぁ
あんまり美味しくはなさそうだね


ティエル・ティエリエル
SPDで判定
ミフェット(f09867)と一緒だよ♪

あのお魚さん達が大桜の木を狙ってるんだね!
ミフェットと協力してここで全部やっつけちゃうぞ☆

ミフェットが放り込んだ石にびっくりして飛び出してきたお魚さんをレイピアでぐさーってするよ!
お魚さんがこっちに飛び掛かって来たら「見切り」でひらりと回避、飛び回って相手のジャンプ回数が尽きるまで引き付けちゃうね♪
ジャンプ回数が尽きて空中で身動きが取れなくなったら【ハイパーお姫様斬り】で3枚におろしちゃえー☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
WIZで判定
ティエル(f01244)と一緒にお魚を止めるよ!

「怪力」で持ち上げた大きめの石をぽーんと川に落として注意をひくね

UC【嵐に挑んだ騎士の歌】
いっぱいのわるもの魚を止めたいけど、攻撃するのは苦手だから、ティエルをはらはら見ながら川の縁から歌で応援をするよ
もし水流弾がとんできたら、触手で「盾受け」、「激痛耐性」で耐えて我慢!
他の猟兵さんにも歌が届いたら、もちろんいっしょに応援するよ!


飛沫を立てて 海からのぼってくる
外道のお魚コンキスタドール
みんなのお祭り守るため だいじな桜を守るため
外道のお魚はキャッチアンドアタック!



「船が向かった先は……やっぱり、川の方だ。でも……」
 佐伯晶の放ったドローンによって追尾した不審な船は、やはり地図で調べた川の方へ向かって行ったようだった。
 しかし、晶の方角から川の方へと向かうには、あらかじめ現地の民によって用意されていた順路を使えば遠回りになってしまう。
 桜の森を突っ切るというのも無理ではないだろうが、あれだけ同じ樹が生えている森を歩き回るのは、それなりの方向感覚を要求されるだろう。
 急ぎなら、より早い手段を選ぶべきだ。
 では、どこかから船舶を借り受けるか?
 いや、それよりも早い方法がある。ただ……それを使うのは、ちょっと憚られる理由があるというか……なんというか……。
 ここでもう一度説明しておくが、佐伯晶は可憐な美少女の肉体を得てはいるものの、その中身はごく普通の一般男性である。
 仮に有名人との結婚では名前も挙がらないほどの一般人が、何の因果か邪神の依代として肉体が変質し、気が付けば神(美少女)の身体である。
 当然感性は男性のままなので、普段はボーイッシュ(に見える)な恰好をしているのである。
 最近では大分、諦めというか順応してきたとはいえ、本来の神の能力を使うときには、よりその姿に近いものになっていく。
 そう、邪神の能力、言うなればユーベルコードを使用すれば、川の方角へなどひとっ飛びだ。
 だが、それにはちょっとばかり女の子プレイをしなくてはならないのである。
 いやまぁ、肉体は女の子だから、全然見た目には問題ないわけだが、そこの踏ん切りは、まだまだつかないというか、そこを折れてしまっては何かが変わってしまいそうなのである。
 だが、長々と悩んでいても仕方ない。紙幅にも限りがある。
「小っ恥ずかしいけど、我慢我慢……いくぞ!」
 そうして発動したユーベルコード【女神降臨】によって女神の能力をその身に降ろすと、闇の中から出でたその姿はいつの間にかフリルだらけのモノトーンコルセットドレスに変じていた。
 まるで魔法少女の変身シーンのようだが、神である。
 風をその身に帯びたかのような身軽さを覚え、その感覚を具現化するかのごとく魔力が翼を構築し、晶はその身を浮かべて島の反対側へと飛んでいく。
 島を飾るように並々と生える桜の木々だが、上方から見ると線を引いたかのように木々が割れている箇所が見て取れた。
 島の河口、そこから遡って線を目で辿れば、やがて巨大な桜の大木へと行きつく。
 つまりはそれが桜の川。この島の名の由来とも言われているそれに違いない。
 大桜を囲うだけあって池の規模も大したものだが、それにくらべて神社の本殿と目される桜の根元の社はとても小さく見える。
 陽は水平線へと傾き始め、空がオレンジ色から紫色にグラデーションを作り始めている中で、池の周りにはにわかに提灯のぼんやりとした灯りがつき始めていた。
「まずいな……もうお祭りの準備を始めちゃってるのか……」
 お宝と目されているのは、やはりこの島で一番目立つあの樹なのだろうか?
 それも今は、考えるまでもなく、あの魚影たちが既に川を遡っているというのなら、池に入る前に退治しないとまずい。
 人通りのある中でコンキスタドールとの戦いになったら、一般市民を巻き込んでしまいかねないからだ。
 なら狙うべきは……河口に停留している、あの船が先か?
 いや、どうやら既に戦いは始まっている。川を遡っていくと、その形跡がいくらか見受けられた。
 仲間の猟兵たちが戦っているんだ。
 ならば、先に川を遡ってくる巨大魚達を退治し、そのまま他の猟兵と協力して首謀者を片付けるほうが確実だ。
 敵の規模が正確にわからない以上、単独で突撃は危険だ。
 方針を決めた晶がさらに川を遡って視線を巡らすと、暗くなり始めた空に光るものを発見する。
 それは、夕日を反射して光る粉が帯を引いているような、何かの鱗粉のようにも見えた。
「あー! ミフェットー! いたー! こっちこっちー!」
 そして、その輝きの最先端を目で追えば、同時に広い川の中で猛然と水飛沫を上げる複数の魚影も目についた。
 急いで晶はその更に上流へと先回りしていく。
 一方、その魚影をいち早く見つけたティエル・ティエリエルとミフェット・マザーグースは、森を突っ切りながら川を遡り、小さな体と森育ちを活かしたティエル先導のもと、巨大魚の最後の群れに追いついていたところだった。
「まってー!」
「こっちだよー、どこいってたの?」
「ちょっと寄り道」
 発見者の妖精ティエルが振り向くと、追いついたミフェットは、髪に擬態した触手でその辺に転がっていた一抱えほどの大きな石を担いだままやって来ていた。
「わわ、どうするのそれ! ぶつける?」
「ううん、驚かせるの。お魚を獲る方法の一つなんだって! 見てて!」
 言うが早いか、ミフェットは液状の身体からは想像もつかない怪力で次々と巨大魚の魚影の先へと石を放っていく。
 水深の浅い川にその石は大きく、派手に水が飛び散る。それで巨大魚は目の前に石が放られて、驚いて飛び跳ね、或は避けきれずに岩にぶつかって交通事故のように弾かれて飛び上がった。
「ティエル! やっちゃえ!」
「ナイスだよっ! よーし☆」
 打ち揚げられた巨大魚達をティエルは見逃さず、愛用のレイピアを抜き放つと同時に突撃する。
 ティエルを一飲みにできそうなくらいの大物。しかし、魚介の弱点はだいたい相場が決まっている。
 目と目の間、眉間を集中的にレイピアで貫くと、巨大魚達はその巨体に似合わずひっくり返って落下してそのまま黒い霧となっていく。
 あまりにもあっさりしすぎている。ミフェットの奇襲が功を奏したのか。或は、ここまで遡ってくるだけでだいぶ消耗していたのか。
「ティエル、次が来るよ!」
 川べりの離れた位置から観察していたミフェットは、自由自在に空を飛ぶティエルを支援する。
 直接的に戦うことがあまり得意ではないミフェットは、水の流れる川で素早く戦い続けるのが難しいと判断したのだろう。
 それとも流水か泳ぐのが苦手なのだろうか。
 最初の奇襲はミフェットによる機転でうまくいったが、二人の存在に気づいた巨大魚達は、直接手を下せるティエルに狙いを定めたらしく、次々と自ら飛び上がり、その牙で以て責め立てる。
「うわわ、ちょ、さすがにちょっと……数が……!」
「あわわ……どうしよう、危ない!」
 牛一頭に匹敵するような巨大魚たちの猛攻に避けるのに手いっぱいな様子のティエルを遠くから何とかできないかと、ミフェットは思案する。
 持ってきた石はあらかた投げてしまって在庫が無い。触手を伸ばそうにも遠すぎて届きそうにない。
 だが、手も触手も届かなくたって、ミフェットには歌がある。
 直接手を下さないというのは歯がゆくもあるが、エールを送ることが最大の力になるという事を、ミフェットは知っている。
 今こそユーベルコード【嵐に挑んだ騎士の歌】の勇猛になぞらえ、ティエルを鼓舞すべきなのだ。
 弱気な心を追いやって、ミフェットは歌うことに集中する。
「飛沫を立てて 海からのぼってくる
 外道のお魚コンキスタドール
 みんなのお祭り守るため だいじな桜を守るため
 外道のお魚は キャッチアンドアタック!」
 人を象ったブラックタールの少女の唇が美しい歌声を奏でると、それは世界を揺るがす力と化し、その気にさせたのならば、心を動かしたのならば、それは万人の力となって勇気とパワーを与えるのである。
 そしてその歌声は、親友にだけ届くものでもない。
「お邪魔するよー!」
 夕暮れと桜の舞う空から黒い疾風がドレスのような形を成して、金切り声とともに吹き抜けてきた。
 金切り声の正体は、救援にやってきた晶の手にしたごっついガトリングガンである。
 いつの間にそんなものをと思われがちだが、最低限の機構部以外は神の生成パワーで補って弾も外装も作り放題という夢の兵器である。
 無論、神を降ろしている今ならその威力も格段に上がっている。
 急降下と共にばらまかれたガトリングの弾は、ティエルに襲い掛かっていた複数の巨大魚達に風穴を開け爆散させる。
「美魔女だ!」
「美魔女だー☆」
「あんまり言わないで……」
 鮮烈な登場を果たした晶だったが、お歌を歌ってテンションの上がった子供二人の賛辞を素直に喜べない。
 だが、彼……もとい彼女の登場により、風向きは確実に変わったのである。
「とにかく、残りを一掃するよ! こいつらで魚は最後だ」
「わかったー♪」
 晶の号令のもと、ティエルは加速し、ミフェットは歌を奏で続ける。
 晶の連れた妖精が痺れる電撃を川伝いに流せば、それに刺激されて飛び出した魚たちを晶のガトリングガンが襲う。
 負けじと水流弾で対抗する巨大魚たちだが、襲い掛かるその弾丸を晶は不自然なほどきわどい距離で回避する。
 神のオーラを纏う彼女の周囲には、時空の歪みが生じており、晶めがけて飛来する投射物はいずれも着弾の前に、まるでスローモーションのように到達が遅くなるのである。
 それだけの隙があれば、今の晶には造作もなく回避できるという訳である。
 そして晶の撃ち漏らした一体を、ティエルが追う。
 秘められた魚のパワーにより空中でさらに跳躍できる巨大魚を追うように、ティエルと抜きつ抜かれつの攻防が繰り広げられる。
 食うか食われるか。その攻防にもやがて終わりがやって来る。
 何しろ、もともと水の中の生物と、生まれた時から羽根を得ている種族とではアドバンテージが違い過ぎるのである。
 跳躍の限界により、空中でまごつくしかできなくなった巨大魚の上をとったティエルは、レイピアを掲げる。
 その鍔元から切っ先にかけて、可視化できるほどの風の魔力がオーラとなって纏う。
「いっくぞー! ハイパーお姫様斬りだー☆」
 まっすぐ振り下ろし、すぐさま返す刃で斬り上げる二段切り。その軌跡をなぞるように、オーラの刃が巨大魚の正中を捉えた。
 哀れ最後の巨大魚は、活き締めのまま三枚に卸されたのだった。
「終わったか……ふぅ」
 切り裂かれた巨大魚が川に落ちてそれが霧となって消えていく様を見つめながら、晶は何とはなしに口を開く。
「コンキスタドールだから消えちゃうんだろうけど……このサイズを釣れたら優勝できるのかなぁ」
「釣り竿が折れちゃうと思う」
 思いのほか冷静なミフェットの返答に苦笑しつつ、それ以前にお供え物にしてはあんまりおいしそうでもないな。とも思う。
 さて、残すはこの巨大魚達をけしかけてきたらしい、あの船の持ち主だ。
 そうして気持ちを引き締めなおすと、河口へ向かう事にした。
 おそらくは、失敗を悟れば自らの手で宝を獲りに来る。
 川下から感じる、どことなく嫌な気配。それは、最後の戦いを思わせるものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『女賞金稼ぎ』

POW   :    ハンタータイム
全身を【右目の義眼(メガリス)から放たれた青い光】で覆い、自身の【これまで殺した賞金首の賞金合計額】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    殺戮斧旋風
自身の【右目の義眼(メガリス)】が輝く間、【呪われた戦斧】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    カースバウンティ
【自分が過去に殺した賞金首】の霊を召喚する。これは【手にした武器】や【怨嗟の呻き声】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:藤乃原あきひら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ざぶりざぶりと、波の寄せる音に混じり、川を踏み分けるように歩いて上るのは、ひどく薄着の海賊であった。
 ほとんど下着と変わらぬ服に薄汚れた毛皮の外套を羽織り、熟れた果実のように豊満で曲線的な肢体を露わにしつつも、その露出した肌は青白く生気がない。
 何よりも彼女を異常足らしめているのは、その金髪に隠れた右目の異質な輝きと、長大な戦斧を軽々と担ぐ異形の右腕だろう。
「チッ……なんでぇ、せっかく餌付けして育てたやったってぇのに、お使いの一つもできやしねぇのか……」
 川を下ってくる気配が、自分の放った巨大魚達のそれでないことに気づいた賞金稼ぎは、その壊れた美貌にそぐわぬ汚い口調で悪態をつく。
 しかし、その口ぶり、余裕すら感じさせる横顔には、なんら苛立ちも落胆もなく、ただそうであったことをむしろ喜びすらしているようであった。
「まあでもよぅ……。あれを退ける力があるってこたぁ、だ。あたしの見立ては、間違ってなかったってぇわけだ」
 ざぶん、と、戦斧の石突を川底に打ち立てると、桜の流れる川に仁王立ちする賞金稼ぎの顔には、壊れた笑みが浮かぶ。
「なぁおい、メガリス……あるんだろ。そこにさぁ。あたしのモノになんなよぉ。次はどこがいいかなぁ? 左目かな? 左腕かな?」
 最早、自分を倒しに来るであろう猟兵たちのことなど見えていないかのように、賞金稼ぎの左目には、その視線のはるか向こうに見える大桜しか見えて居ないようだった。
ニレッド・アロウン
メガリスとかガメオベラだとか知らんです!
そんな事よりあの魚はお前が育てたのですね?ぶっ殺す!

飯や大会優勝に対しての(逆)恨み全開で殴り掛かります!あいつは生かしちゃおけねえです!
全力で硬化魔法を詠唱、同時に限界まで魔力を障壁として変換。鋏や服から、髪の毛一本まで全力で硬くして空へとスカイダイブです!

ほうほう、相手も同じようなのをしてくると?上等じゃねえですか!空中戦やったりますよ!
全力で硬化魔法掛けた水晶鋏を突き刺すようにして突進!相手もそれを読んで背を追ってくる?んなもん当たり前でも鬱陶しいんですよ!
翼で空気を強く打ちつけるようにして急旋回、背後に回って全力でブッ刺します!



 水面を打つ音が聞こえる。
 逸話に依れば、船の侵入を阻んだ際に川底が浅くなったとも言われているが、深いところでも大人のひざ下程度しかない大桜の川は、歩いて容易に渡ることができるし、歩いて遡ることもできる。
 だが、逆さに昇るコンキスタドールが迎え撃つように聞くのは、怒気を孕んだ足音である。
 水面を割るような激しい足音を響かせて川を下ってくるその姿は、淑やかなローブに天使のような羽の生えた姿……に似合わず、ずかずかと大股でコンキスタドール、女賞金首に向かって強い敵意を向ける。
 その顔を覆うアイマスクにベルトが二重にかかっているのも無視するかのように強い意志を投げつけてくるその猟兵、ニレッド・アウロンの意を受けて、女賞金首はその顔に浮かぶ笑みを強める。
「はは、いいツラしてるじゃねぇか。それに、いい得物だ」
 その視線は、ニレッドが手にしている巨大な水晶の鋏に向いていた。
「それもメガリスかぁ? くれよ、それ」
「メガリスとかガメオベラだとか知らんです! そんな事よりあの魚はお前が育てたのですね?」
 ゆるりと大斧を引き寄せて下卑た調子で直接的に値踏みするが、ニレッドはそんなことなどお構いなしに、ざくざくと歩を進めて詰め寄ってくる。
「あぁん? あの役立たずどもがお世話になりましたとでも言えゃいいのかぁ?」
「ぶっ殺す!」
「うおぉ!?」
 無造作に振るわれた水晶鋏の一撃を、賞金稼ぎは慌てて斧で受ける。
 激しいながら澄んだ衝突音と共に、水面に弾けるような波紋が飛沫を上げる。
「せっかちだなぁ? そんな殴り合いが好きかぁ? っはは!」
「やかましい!」
 けらけらと笑いながら負けじと大斧を振り回す賞金稼ぎに、ニレッドは会話を交わすことも苛立たしいとばかり同じように鋏を振り回して弾き返す。
 そのたびに水飛沫が上がり、舞い散る桜は武器同士のぶつかる衝撃で粉々に引き裂かれる。
 普段は大人しくしている……少なくとも淑やかな装いに則した言動や仕草を辛うじて意識しているニレッドだが、今だけは怒り心頭であった。
 どちらかといえば本性に近い蛮勇を隠すことなく、口調も荒っぽい片鱗を見せ、振るう得物にも技巧や打算など何もなかった。
「なーに怒ってんだァ? うちのペットが、おイタしちゃいましたぁ?」
「魚……飯……私の飯……、私の大会優勝……、お前だけは、許しちゃおけねぇです!」
「はぁ?」
 武器による全力の殴り合いを繰り広げつつ、一方通行な、たぶんそれは逆恨みなんじゃないかなぁというような理由で、ニレッドはとにもかくにも怒りのままオブリビオン退治にそれをぶつける。
 こいつがすぐ消える魚なんて連れてこなければ、ぬか喜びをすることもなかった。
 あんな大物を見て、腹を鳴らさない腹ペコなどいない。
 ぜんぶこいつのせいだ。だいたいこいつのせいだ。なんじゃないかなぁ。たぶん。
 とにかくムカつくから、こいつは生かして帰さない! 絶対にだ。
 とはいえ、怒りのままブン殴り続けても、相手は幾多の賞金首を実力で倒し、更にその身には複数のメガリスを帯びており、戦闘に関しては当たり前に素人ではない。
「チッ、なんで大人しくブッ潰れてくれやがらないんですかね?」
「元気なねーちゃんだねぇ。あったまってきたぜぇ。ハハァ!」
 舌打ちを漏らし、服の下が蒸れるくらいには全力の殴り合いを繰り広げても、ニレッドはただの力押しでは手傷の一つもつけられない。
 いつもよりも動転しているとはいえ、さすがに埒が明かないことには気づき始めていた。
 じゃー、しょうがないな! もっと力押し、しよう!
 何かのスイッチが入ってしまっているニレッドは、もはや賞金稼ぎを一発気持ちよくぶん殴らない事には気が済まなくなっていた。
「お、遊びはここまでかい? なんか、感じが変わったなぁ?」
 口中で何事かを小さく呟き始めるニレッドの様子が変わったことに気づいたらしいコンキスタドールがざばざばと波音を立ててやって来る。
「もっと速く、もっと固く……そしてもっと高く……」
 今のところ殴り合いしかしていないので勘違いされてしまいそうだが、ニレッドはマジックナイトでもある。
 小さく素早く構築した魔法式は、その身を守護する硬化の魔法と、あらゆる衝撃から身を護る魔法障壁。
 鋏や服、髪の毛一本に至るまで、練り込むように魔法を重ね掛けし、守りを固める。
 全力でブッ叩くなら、攻撃では? そうかもしれない。だが、大きく重く塗り固めた盾は、それだけで武器にもなる。
 それが武器になる条件は、振り回す筋力の他に、速さと、そして高さである。
「空すら超える強靭な翼を!」
 そうして翼を広げ、ユーベルコードを発動したニレッドは、川底を蹴って飛翔する。
 【加速飛翔】その感情の高ぶりがそのまま力と化したかのように、凄まじいスピードで飛び上がったニレッドを見上げた賞金稼ぎは、その顔に浮かんだままの笑みを強める。
「ははーん、上をとっていい気になったつもりみてぇだが、こっちも飛べるんだぜぇ?」
 その右の眼窩に埋め込まれたメガリスが輝くと、それまでに倒した賞金首の怨念が力を与えるかのようにその身を飛翔させる。
「ほうほう、私と同じようなのをしてくると? 上等じゃねえですか! 空中戦やったりますよ!」
「ハッハァ! こういう殴り合いってのも、久し振りだなぁ!!」
 桜の森を背景に、空中でぶつかり合う二つの人影。
 足場という概念がない分、上下左右、変幻自在に飛び交ってぶつかり合う様は、傍からすれば飛び散る火花が美しくも見えたかもしれない。
 暗くなり始めた空。眼下には淡く光を放つ幻朧桜。ぶつかり合う度に散る火花は祭囃子のようでもあるが、やってることは先ほどと大差ない。
 やはりこれも、埒が明かない。
 ただの殴り合いではだめなのだ。ならば、必殺の一撃を繰り出すほかない。
 ニレッドは直感的にそう判断すると、両手に握った鋏をわずかに開いて鋭い切っ先を構えると、一直線に飛び込んでいく。
 やや低めから高い位置にいる賞金稼ぎに向かって、まるで空に向かって落ちていくかのように。
 その速度は約時速6000キロ。マッハに換算すればだいたい4.8であるが、そんな数値など今はどうだっていい。
 とにかく一直線に行ってぶっ飛ばす! それしかないかのような愚直な突撃であった。
「ハッ、そんなもん、いくら速くたって当たんねぇよ!」
 そう、愚直な突進は、その軌道がわかっていれば、スピードがあっても避けられてしまう。
 それどころか、スピードが乗るほど方向転換は難しくなる。
 ニレッドの全力の突撃。しかし、その軌道を見切った賞金稼ぎは、空中で跳ねるように身を翻して衝突を避け、渾身のカウンターで側面から叩き落とすべく大斧を振りかぶる。
 だが、交錯の瞬間、ニレッドの羽が大きく広がる。
「鬱陶しいんですよ!」
 硬化をかけた翼に猛烈な風の負荷がかかると、音速で突撃する飛翔体と化したニレッドはまるで空を蹴りつけるかのように無理矢理軌道を変える。
 限界まで硬化と障壁をかけた状態でなければ過剰なGで押し潰されかねない衝撃を無理矢理別方向にベクトルを流し、宙返りを打ったニレッドの鋏は、賞金稼ぎの背を捉えていた。
 吸い込まれるように背に突き刺さる鋏は、そのまま二人諸共川面へと墜落する。
「ぐわぁあっ!?」
 川の水が一瞬だけ枯れたように吹き飛ぶ中、叩きつけられた二人は衝撃を殺しきれずに別々の方向にはじけ飛んだ。
「いったた……着地、失敗ですね」
「っへっへっへ……やるじゃねぇか……いてて」
 全身びしょびしょになりながら、二人して川の中で立ち上がる。
 殴り合い、刺し合い、一緒になって叩きつけられたことなど忘れたかのように。
 確かに、鋏が突き刺さった手ごたえがあったが、やはりオブリビオン。まともな存在はないという事か。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
お姉さんもお花見に来たんですか?
そんな危なそうな物持ってる人はお断りです
…withは私の恋人なので。セーフなので。

UC発動
高速で振るわれる戦斧に、増大した反応速度とスピード、一歩も引かない【勇気】と【覚悟】で対抗
ダメージを受けても地獄の炎で補完し
【カウンター】出来る隙を見つけられたら
withを【怪力】で叩きつけます

あなたの斧もカッコいいですね…
でも、withの方がずっと強くてカッコいいです
近接戦は私の唯一の取り柄…だから負けない
withと一緒なら、私は最強です

メガリスしか興味無いなんて勿体無いなぁ
こんな素敵な桜の河が流れているのに
早く終わらせて、私はのんびり釣りがしたいんです
…食べられないけど



「かっは、いってぇ……っへへ。そうこなくっちゃいけねぇなぁ」
 全身を強く打ち付けた賞金稼ぎは、それでも萎えることのない戦意も露わに、大斧を担ぎなおす。
 そこへやってきたのは、同じように黒い大剣を担いだ猟兵、春乃結希であった。
「あら、千鳥足。お姉さんもお花見に来たんですか?」
「そう見えるんなら、大したもんだなぁ。でもまぁ、あのでっかい桜って奴には、興味があるんだなぁ」
 ゆるり、と担いだ大斧を構えるように前に出す賞金稼ぎの殺意が膨れ上がるのを感じながら、なおも結希は涼しげにそれを受け流し、彼女もまた担いだ大剣の切っ先を浮かせる。
「そんな危なそうな物持ってる人はお断りです」
「おっと、抜身のモン持ち歩いてるねーちゃんに、そんなこと言われるたぁねぇ」
「…withは私の恋人なので。セーフなので」
「ハッハッハッ、得物が恋人たぁ、とんだスキモノだァ!」
 笑いながら振り下ろされる戦斧の一撃を、結希はややむっとした表情で構えたwithで受ける。
 メガリスを植え付けたことで異形と化した腕で振るわれる戦斧は、その重量も手伝って、まともに受け続けるのは危険である。
 だが、結希の手にあるのは、最愛の大剣のみ。いや、身につけたものでいえば他にもあるが、最大限に戦える得物でいえば、withを置いて他にないだろう。
 何よりも、得意科目で後れを取りたくない。
「はぁっ……!」
 体格、膂力では単純計算で分が悪い。
 小柄に大剣を背負うというのは、大きな障害が付きまとう。
 それでも、その道を往き続ければ、ある種の境地を見出すこととなる。
 無いものをねだったところで仕方ない。ならば、在るものを活かす事を考える。
 受けた戦斧を滑らせるようにしながら身を低く潜る様に踏み込んで、柄を打ち込む。
 戦斧も大剣も、その間合いの内側には死角が生まれる。
 それを埋めるのは研鑽からくる技術に他ならない。
「チッ」
 鳩尾を打たれた賞金稼ぎが舌打ちと共に身をよじるのと、結希が大剣を振り上げる動作が重なる。
 距離を取りながら斧を横に薙ぐのと、追撃に振り上げた大剣とがぶつかり合う。
 斧を振るうのは、異形の腕だけだ。
 それならば、本来は両手で使うような戦斧を振るう関係で、片腕で使えば内側に隙が生まれやすくなる。
 敢えて内側に踏み込めば、意外と何とかなるとは思っていたが、やはりこれでは決め手に欠ける。
「あなたの斧もカッコいいですね……」
「へぇ、そうかい。賞金首を殺し過ぎて、ちょいと呪われちまったがね」
「でも、withの方がずっと強くてカッコいいです」
「あぁ? なんなんだ、てめぇは」
 剣と斧、それを激しくぶつけ合い、そのたびに鈍い金属音を響かせながら二人は衝突し続ける。
 いずれもが必殺の一撃になりうるはずだが、そんなことなど気にせず、ただ、相手を打ち負かすためだけに得物を振るう。
 愛する大剣に、それを帯びた自分に敗北はあり得ない。そんな暗示を信念に剣を振り続ける結希は、その誓いゆえに一歩もひるまず。
 異形と化したメガリスの腕一本ながら、幾多の賞金首を狩ってきた斧を振るうコンキスタドールは、その経験ゆえかその太刀筋からは歴戦の風格を感じさせる。
 どれだけ打ち合っても、牽制を仕掛けても、力で圧倒しても、お互いに引き下がることが無い。
「っへへ、どうなってやがんだ、この島はぁ。こんだけ打ち合える相手が他にごまんといるのか。いやぁ……これが猟兵ってやつの力なのかねぇ?」
「こんな素敵な桜の河が流れているのに、メガリスしか興味無いなんて勿体無いなぁ」
 ぎらり、と金髪に隠れたメガリスの片目が光を放ち、賞金稼ぎが斧を担ぎなおすを見ると、それが技の発動の合図と受け取った結希は、踏み込む足が竦んだのを誤魔化すように口を開く。
 そして自身を恥じるのを一瞬で終えると、相手の技を正面から受けるため、結希もまたユーベルコードを発動させる。
 ちりちり、と目の奥で火が燃えるような感覚。大剣の、己の真の姿、その潜在的な能力を引き出す暗示を強めると、剣とその身に変化が訪れる。
「焔の力、少し借りますね……!」
 結希の黒い髪と、黒い大剣が火にあおられたかの如く白化していくと、その頭上に降りかかる桜の花びらが背負った炎の翼に炙られて塵と化す。
「ハッハァ、受けてみなぁっ!!」
 引き絞った弓を解き放ったかのように、凄まじい勢いで振り回される戦斧の乱舞が結希を襲う。
 だが、その威圧に圧される臆病な自分はもういない。
 どんなものが相手でも、この大剣と共にあるならば、負けはしない。
 呪われた斧と呼んだそれと、ある意味で似ているかもしれない呪いの暗示と共に、怒涛の速さで振り下ろされる斧を真正面から打ち返していく。
「おおおおっ!!」
 花が散るような剣戟。足元の川面が剣圧で飛沫を上げ、濡れた桜が炎にあおられて焦げた音を立てる。
 暴風のように叩きつけられる斧の攻撃、その全てを弾き返すことはかなわず、受けきれなかったいくつかが結希の体のあちこちを削ぎ飛ばすが、その傍から炎と化した傷口がそれらを補完して修復してしまう。
 だが、それを使い続けることは、彼女の肉体の寿命を縮める行為である。
 負荷を負い続ける肉体は、徐々に鈍化し、重みを覚えるようになっていくが、それでも、
 近接戦は唯一の取り柄だから負けない。
 withと一緒なら、私は最強。
「だから、負けない……!!」
 首と肩で受け止めた斧が一瞬だけ動きを止めた瞬間、結希の白い大剣が閃光のような奇跡と共に薙がれる。
「ぐがぁっ!」
 伸びきった異形の右腕をなぞるように伸びた切っ先が賞金稼ぎの脇腹を強打。
 そのまま断ち切らんとしたが、オブリビオンと化したその肉体は強靭でありその刃は深くは入らない。
 だが、渾身の力でカウンター気味に入った一撃は、そのあばらをいくつかへし折った手ごたえと共に、賞金稼ぎを吹き飛ばした。
「……はぁ……はぁ」
「っは、は……けはっ、ハハッ!」
 大きく息をつく結希が油断なく剣を構えなおす。
 それに応えるかのように、川面を何度かバウンドした賞金稼ぎが立ち上がる。
 その顔にはまだ戦意が落ちていない証拠か、勝気な笑みが浮かんでいる。
「効いたぜ、今のぁよ……ヒャヒャヒャ……」
 徐々にそれが、当初よりも歪みを持ち始めていることは、余裕がなくなってきているのか、それとも余力の表れなのか……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
SPDで判定
ミフェット(f09867)と一緒だよ♪

むむむー、大桜の精霊さんはメガリスなんかじゃないぞー!
それに大桜は島のみんなのものなんだから!一人占めなんて許さないぞ!

背中の翅で羽ばたいて、賞金稼ぎの周りを飛び回りながら戦うよ!
大振りな斧の攻撃なんて9倍になったって当たらないもんね!
ミフェットが敵の亡霊を打ち消してくれてるから攻撃する味方がいなくてどんどん寿命が削れてくはず!
斧をぶんぶん振り回して疲れてきたところで風を纏った「属性攻撃」の【妖精の一刺し】をお見舞だ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
メガリス、メガリス、たからもの 大桜の精霊さまがメガリス?
精霊さまは、たからものじゃないもん
だって、たからものは、島の人たちがもってたもの

WIZで判定
ティエルと一緒に戦うね。
ほかの、猟兵さんたちとも連携ができそうなら、アドリブで頑張るよ!

UDC【一人ぼっちの影あそびの歌】
少し下がって「歌唱」と「楽器演奏」でみんなを「鼓舞」するよ
海賊が霊を召喚したらオバケの歌で打ち消すよ
一対一ならティエルのレイピアの方が強いんだから!!


うらみうらまれむねんのオバケ
死んでも海賊のあやつり人形 むねんの剣をふりあげる
それでも刃先にかがやく光 その行き先を思い出せ
あやつる糸を断ち切って オバケとオバケの大乱戦!


佐伯・晶
話が通じそうな感じはしないかな
お祭りのためにも大過なく倒してしまいたいね
必要に応じて皆と協力して戦うよ

暗くて見えにくいなら
ゴーグルの暗視機能を使用

低空飛行しつつガトリングガンから
銀の弾丸を掃射して幽霊達を薙ぎ払おう
範囲攻撃でまとめて倒したいね

相手の攻撃は神気で防御したり
耐性で耐えたりして凌ぐよ

賞金稼ぎの攻撃も
躱したり防御したりしつつ射撃
仲間がいるなら牽制や援護も考えよう

隙をみて石から創った使い魔による石化を狙うよ
相手の動きが止まったら集中攻撃するなり
仲間の攻撃の準備時間を稼ぐなりしよう

戦闘が無事に終わったら
ゆっくりお祭りを楽しむ余裕があればいいんだけど
この時間でも屋台とか浜焼きとかあるのかなぁ



「へへへ、ヒャッハッハッハッハ!!」
 だらりと起き上がった賞金稼ぎが壊れたように笑い出す。
 猟兵との凄まじい殴り合いが、彼女の身体に埋め込まれたメガリスを活性化させ、限界を超えた戦闘を積み重ねた結果、それはもはや彼女の理性のみならず、自意識すらも破壊し始めていた。
「メガリス……メガリス……! あの樹を、あたしのものに……! へはっ、ヒャハハ……」
 それでも辛うじて残った賞金稼ぎの望みは潰えてはいない。
 川を昇るその足取りは、まるで体を引きずるようなものだが、尋常でない目のぎらつきは健在であり、おぞましいばかりのどす黒いオーラを纏う姿は、もはや常人の目にしていいものではない。
「メガリス、メガリス、たからもの 大桜の精霊さまがメガリス?
 精霊さまは、たからものじゃないもん。
 だって、たからものは、島の人たちがもってたもの」
 ブラックタールの少女が、歌を紡ぐようにその前に立ちはだかった。
 ミフェット・マザーグースは、もはや正気とも思えぬ賞金稼ぎの言葉をなぞるように用い、それを否定する。
 それが最も、コンキスタドールの興味を引くとわかっているかのように。
「そうだよ、大桜の精霊さんはメガリスなんかじゃないぞー!
 それに大桜は島のみんなのものなんだから! 一人占めなんて許さないぞ!」
 ミフェットの方を向いた賞金稼ぎ。そしてその間に割って入って、大声を張り上げるのは、ミフェットの親友、ティエル・ティエリエル。
 小さな妖精の彼女は、にわかに暗くなり始めた川原の中でもきらきらと光を帯びる鱗粉をまき散らしながら、愛用のレイピアを振り上げる。
「ヒヒヒ……邪魔ァ、すんのかぁ……お前らも、あたしに喰われろ」
 二人の猟兵の啖呵で、賞金稼ぎは目下の敵を定めたらしい。その身に纏うどす黒い気配が川面に広がると、あちこちからシミターやピストルを手にした海賊らしき亡霊が起き上がってくる。
 それらはかつて賞金稼ぎがその斧で屠ってきた賞金首たちの亡霊。呪われた斧で命を刈り取られ、その無念が形を成したものである。
 一気に数の面で不利となった二人だが、それでも臆することなくそれぞれの目元に強い意志を乗せる。
「やろう、ミフェット!」
「うん……やろう!」
 とはいえ、数を相手にどうしたものか。小さな体のティエルも、争いを好まぬミフェットも、多数を相手にするにはちょっとばかり装備に心許ない。
 ある程度の手傷は覚悟すべき。二人して視線を交わしたのは、その意思確認でもあったのだが、
 戦い抜くことを決意した二人の頭の上を、暴風のような銃弾が通り抜けていく。
 どこからともなくやってきた機関銃の掃射は、亡霊たちの足並みを崩し、横薙ぎにばたばたと崩れ落ちていく。
「僕も混ぜてほしいな。こういうの相手なら、わかりやすいのが必要でしょ?」
 そうして上空から降りてきたのは、先ほども共に巨大魚を退治した佐伯晶であった。
 既にユーベルコードにより女神の力をその身に宿した状態で、その手に握るのは創造魔法で部品をアップデートしたごっついガトリングガンである。
「わー! またお姉さんと一緒だ!」
「ありがとう、お姉さん!」
「お姉……まあいいや。頑張ろう!」
 見知った顔の登場に湧く二人に何か言おうとしたが、まあ体は完全に女の子なわけだし、と無理矢理納得する晶は、すぐに鋭い目つきを周囲に向ける。
 見れば、倒したはずの亡霊たちが次々と起き上がり始めていた。
「やっぱり、普通の弾じゃ効果が薄いみたいだな……」
 そうして晶は新たな弾倉を作り出してそれを込めなおす。
 銀で塗装されたそれは、やはり中身も銀製の銃弾だ。たぶん、効くだろう。
 魔法に必要なのは、効くかどうかではなく、通じると信じることだ。
「二人のオーダーは?」
 攻撃準備が整った晶は、ミフェットとティエルの行動を確認する。
「ミフェットは、亡霊を同じ方法で抑える」
「そして、ボクが賞金稼ぎを倒す!」
「オーライ。それじゃ、それがうまくいくよう、僕が女神さまを微笑ませてみよう!」
 二人の行動を確認すると、晶はニッとボーイッシュな笑みを浮かべてゴーグルを装着すると、再び飛翔する。
 それを目で送り、ミフェットは歌を紡ぎ始める。
「うらみうらまれむねんのオバケ
 死んでも海賊のあやつり人形 むねんの剣をふりあげる
 それでも刃先にかがやく光 その行き先を思い出せ
 あやつる糸を断ち切って オバケとオバケの大乱戦!」
 ミフェットの歌い上げる言葉は力を帯び、世界の法則にやんわりと牙を突き立てる。
 【一人ぼっちの影あそびの歌】は、賞金稼ぎの呼び出した召喚術を模倣し、同じ数、同じ姿の亡霊を呼び起こす。
 無論これは、ミフェットが倒してきた賞金首たちではないが、一度目にしてその成り立ちをおおよそ掴めさえすれば、それを真似ることは難しい事ではない。
 ただし、模倣はあくまでも模倣。その形を真似ることはできても、真に迫るにはまだまだ確実な精度とは言えない。
 模倣された亡霊たちは、しかしそれでも同じ数だけ用意された分だけ、押し留めることに成功する。
「頑張って、みんな」
 自分から呼び出した存在には、たとえそれが敵の模倣であり亡霊という存在であっても愛着がわく。
 心優しいブラックタールの少女は、劣勢を悟りながらも送り出す亡霊たちにエールを送らずにはいられなかった。
 だが、劣勢なのはミフェット単体で見ればこそ。
 今の彼女には頼れる味方がいるのである。
「動きが止まってるなら、撃ち抜くのは簡単さ。今度は効くぞ!」
 夜陰に染まり始めた川面に、晶の手にしたガトリングから溢れ出るマズルフラッシュが反射する。
 銀の銃弾が敵味方の亡霊を隔てなく撃ち抜き、命中した亡霊たちは油汚れに洗剤を落としたかの如く弾けて消えていく。
 そして、ガトリングガンの銃弾がばらまかれる中に混じって、道を作ってもらったティエルが一直線にその身体を躍らせる。
 その視線の先、レイピアの向く先には、コンキスタドールの賞金稼ぎ。
 風の魔法を纏って引き絞るレイピアが伸びるよりも先に、待ち受けていた賞金稼ぎの斧が空を裂く。
「ッハハ、なんだァ……来るのは、おチビ一人かぁ?」
「……一人じゃないぞ!」
 身体を開くようにして身を翻し、回り込むようにしながら突撃を繰り返すティエルに対し、賞金稼ぎは怒涛の9連撃を繰り出す。
 ぐわんぐわんと空気を撓ませるかのような大質量の戦斧の巻き起こす旋風に、さしものティエルも目を回しそうになるが、その軌道を見切り、風の魔法でその身を包めば、辛うじて針目を抜くような隙間を活路にできる。
 間違えても打ち合ってはいけない。
 体格が違い過ぎて、仮に身体や武器が無事でも、吹き飛ばされてしまうだろう。
 だから、当たらないように動き回り、怒涛の連撃をやり過ごした後の隙を待つ。
 賞金稼ぎだって、幾つもの召喚を行い疲弊している筈だ。
 ミフェットや晶が取り押さえている間にも、その負担はかかり続ける。
 だからこれを乗り切れば、致命的な隙が生じる。
 幾つもの牽制、振り終わりを見計らって突撃するのを阻まれ、それでも全力の攻勢は控え、ティエルはひたすら致命の一撃が入れられる隙を窺う。
「チィッ! ちょこまか、飛び回りやがってぇ……!」
 がくん、と明らかに賞金稼ぎの動きが鈍ったのを、ティエルは見逃さない。
「そこだぁっ!」
 意を決して、その身に風を纏って加速する。防御を顧みないその一撃は、体格差を補って余りある。
 だが、それがもし、相手の狙いでもあったなら、
「っへへ、わざと隙を見せたんだよォ!」
「っ!」
 ぎらり、と髪に隠れた青いメガリスの義眼が輝く。致命的な隙に見えたはずのその腕が再び斧を振りかぶる。
 気づいた時には、もう回避が間に合わない。
 ぶつかり合えば、重さのほとんどないティエルの分が悪い。
 全身がこわばるティエルだったが、斧を振りかぶろうとした賞金稼ぎの動きが再びがくりと止まる。
 戦斧を握るメガリスの右腕が、白く石化していくのが見えた。
「一人じゃないって言ったろ?」
 晶の声が響く。賞金稼ぎのその足元の川面には、晶が従えていた石の妖精が佇んでいた。
 攻撃の後の隙。それを狙っていたのはティエルだけではなかった。
 石から作り出された妖精の魔術は、そこまで強力なものではなかったが、それもティエルが空中からの攻勢に励んでいる間にかけ続ければ、効果は遅れてやって来る。
 つまりは、
「な、なんだとォ……!!」
「いっくぞーー☆!!」
 驚愕に歪ませた顔が一瞬の間のうちに見たのは、限界まで加速したティエルの【妖精の一刺し】その切っ先であった。
 輝く軌跡を残し、砲弾の如く賞金稼ぎを貫いたティエルは、しばらくその勢いを殺すために空中を無軌道に飛び回ったのち、ようやくゆるゆると降りてくる。
「くそ……こんなんで、終わりか……あたしの、メガリス……あたしの……」
 顔半分を失い、川の中に倒れるコンキスタドールの賞金稼ぎが、遠くに見える桜を見上げ、手を伸ばす。
 しかし、その指先が黒い煙に変じはじめ、はるか先に見える大桜の姿も歪んでゆく。
 やがて数を待たずして、賞金稼ぎの姿は霧と化し、この世からいなくなる。
 後に残ったのは、ほのかに光を発する桜の花びらが流れる、幻想的な川の景色だけだった。
「ふう、終わったか……ありがとう、よく頑張ってくれたね」
 敵の一掃を確認した晶は、ずっと影ながら石化魔法を敢行していた石の妖精を労ってやる。
「ティエル、大丈夫? どこかケガしてない?」
「大丈夫だよ☆ でも、いっぱい飛んだから、お腹減っちゃった」
「えへへ、ミフェットも」
 大きな敵の気配が掻き消えて、川面に静けさが戻ったのを確認した二人も、お互いの無事を確認する。
 どうやら当面の危機は去り、この島にコンキスタドールはもう居ないようである。
 川が静かになると、今度は川の随分上流の方から祭囃子が聞こえてくる。
 そうなってくると、他の猟兵たちもちょっとだけ色めき立ち始めた。

 ここから先は、ほんのおまけのお話である。
「お祭り……帰る前に、もうちょっと遊んでいけるかな。お腹もすいたし、この時間でも屋台とか浜焼きとかあるのかなぁ……」
 晶が変身を解いてぼんやりとそんなことを言えば、同じように変身を解いた春乃結希は、
「私はもう少しのんびり釣りをしたいですね。食べられないけど……」
「夜釣りかぁ。いいね! 釣った魚は僕が貰うよ。また地元の人に料理してもらおう」
 そんな二人の様子に気づいたらしいニレッド・アウロンは、元気よく手を上げる。
「はい、はーい! お腹すいてます! 私が一番、お腹すいてまーす! お昼も食べ損ねたので、すっごい空腹です。
 あと、大物釣りなら、私も負けたくないんですけど!」
 敵も倒して、行き場を失った気持ちを発散するようにはしゃぐ姿を見ていた子供二人はというと、
「釣りだって、どうするミフェットー?」
「うーん……お祭りも、見たいなぁ」
「あ、はーい! 私もお祭り見ていきたいです! ああ、なやむー!」
 ティエルとミフェットの話に割り込むようにやってきたニレッドが、しかし釣りか祭かどっちにしようか頭を抱え始める。
 そんな様子に、みんなして微笑ましげに目を細めていた。
 そうして、猟兵一同は、そんな暇はないよ! というお話など、まぁ、少しくらいいいじゃん精神で、お祭りや夜釣りを堪能してから、島を後にするのだった。
 まあまあ、せっかくのお祭りである。ちょっとくらいは見返りがないと、命がけのお仕事なんてやってられないのである。
 夜陰に祭囃子の人々の声。
 常春の景色の中で、なおも春を祝う人々の楽しげな声が、何よりの宝と言えた。
 それらを慈しむだけの時間が、猟兵たちにもあったっていい。
 星が見え始める宵の口、風に揺れる桜が、ほんのり明るく光を湛えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月04日


挿絵イラスト