「其方達の頭の上には何がある?」
エステシア・プライド(黄金竜の女王・f02772)はグリモアベースに集う猟兵たちに問い掛けた。
突然に頭の上と言われて、幾人かの猟兵が、不思議そうに顔を見合わせる。
エステシアは、猟兵たちの解答を待たずして言葉を続けた。
これ見よがしに、光り輝く黄金の長い頭髪をかきあげる。
「その通り。髪であるな。頭髪は単に人体の一部というだけでは無い。時に神聖視され、特別な意味合いを付与される事もある。髪の長さを美しさの基準とする文化もあれば、髪を切られた事で力を失った闘士の物語が聖書に記されている世界もある。ことほど左様に髪とは重要なものであるのだ。何? シャーマンズゴースト? たてがみとて髪の一部であろう。ウォーマシンにブラックタール? その者たちの心の中には立派な髪が生えておるのだ。多分な。かつては生えていたが今は頭髪を失った者? 猟兵で良かったな。髪を生やすユーベルコードに覚醒せよ。可能性は無限大だ。他には居ないか? 良し、それでは本題にはいるぞ」
エステシアは、とりあえず前提として、全ての生物にとって髪の毛ないし何らかの体毛は重要なものであるのだと念を押して、言葉を続けた。
「新たなる世界。グリードオーシャンにてコンキスタドールの支配下にある島の住人たちが、一方的に定められた悪法に苦しめられている姿を、余は予知した。その島の名を神無島(かんなとう)と言う」
エステシアの掌中にある黄金の宝珠という形状を持つグリモアに、ひとつの島の姿が映しだされた。
上空から俯瞰するような視点の映像。荒れ狂う大洋に浮かぶ小さな島の全容は、丁度、頭髪の無い人間の頭部のようにも見えた。
猟兵の誰かが、なるほど、カミの無い島かと呟いた。
その者の思考の中でカミという文字が、どのように変換されているか、誰もが言葉にださずとも理解できた。
「グリードオーシャンの島は、それぞれが異なる世界から落ちてきたという世界の断片だ。神無島は、もとはサムライエンパイアの世界に存在したらしいな。町並みや住人たちの服装に名残が見える」
エステシアのグリモアに映る像が揺らぎ変わる。
そこには木造の長屋や着物を纏う住人たちの姿が映しだされていた。
ただ一点だけサムライエンパイアと異なるのは住人たちの頭部である。
そこには本来、あるべき筈のものが無かった。即ち、豊かな頭髪である。
「神無島を支配するコンキスタドールは『名を忘れられ堕落した『髪の女神』』と言う。かの者が島に定めた法は唯ひとつ。髪の女神である自身を崇める事。その証として、神に、髪を供物として捧げなければならないというものだ。現在、神無島に豊かな頭髪の持ち主は殆ど存在しないと言っても良い」
エステシアは、なんと身勝手な法を敷く悪神かと嘆息した。
「定められた量の髪を捧げる事が出来なかった者は、コンキスタドールに自意識を奪われて残りの生涯を操り人形として生きていく事になる。しかも性質の悪い事に、この者達は『髪刈り』なる女神への供物を島民から強制的に奪う行いに従事させられるのだ」
想像するだに恐ろしい。髪と自意識を奪われた者が大挙して他者の髪の毛を刈り取っていくのだ。この世の地獄の具現とも呼べる光景が造りだされるであろう事は確実である。
「予知によれば、もうすぐ髪の女神が島民に新たな供物を要求するらしい。悪神の信徒とされてしまった者たちが神無島で『髪刈り』を開始するだろう。まだ己の髪を守り続けている島民と『髪刈り』たちの間で激しい戦となる事は、最早、避けられぬ事態である」
エステシアは、斯様な非道を黙って見過ごしてなるものかと、固く拳を握り締めた。
「余が其方らを島民と『髪刈り』たちの乱闘の場に転移させる。コンキスタドールの傀儡とはいえ、彼らも憐れな犠牲者である事に変わりは無い。余り傷付けぬように速やかに無力化するのだ。それと相手が『髪刈り』を目的とする以上、其方たち猟兵の髪も島民同様に刈り尽くさんと殺到してくるは確実である。自らの髪を大切と思う者は、細心の注意を払って己の頭髪を守るのだぞ」
エステシアの掌中でグリモアが眩い黄金の輝きを放つと、世界と世界を繋ぐ扉が開かれる。
「島民と『髪刈り』の乱闘を鎮めた後、悪法を敷く『名を忘れられ堕落した『髪の女神』』の社に強襲をかける。神を討ち果たし、苦しむ神無島の民を救いだすのだ」
黒猫白猫
黒猫白猫です。よろしく、お願いいたします。
第三作『髪を返せ!』を御届けします。
第一章は冒険。
舞台となる神無島の島民と『髪刈り』の乱闘を鎮圧して下さい。
相手は操られているだけの一般人ですから、手心をくわえてあげてください。
もっとも油断していると大切な髪を刈られてしまうかも知れません。
そもそも髪の無い種族や、髪が生えていない方は、髪が生えている方よりも狙われ難いのではないかと思います。
第二章は集団戦。
人語を理解し、高度な魔法や超能力を操るオウムガイの群れが相手です。
オウムガイの触手は髪の毛なのでしょうか。違うような気もします。むしろ違いますね。
しかし彼らにとっては大切な髪の毛という認識なのかも知れませんね。
第三章はボス戦。
神無島に悪法を敷くコンキスタドール『名を忘れられ堕落した『髪の女神』』が相手です。
髪の女神というだけあって見事な髪を用いたユーベルコードの数々を駆使します。
神業ならぬ髪業に注意して下さい。
彼女を倒せば神無島に平和と豊かな髪の毛が戻ってくる筈です。
この物語が僅かでも皆様の楽しみになれば幸いです。
それでは何卒、宜しくお願い致します。
第1章 冒険
『街角大乱闘』
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POW : 真正面から乱闘に飛び込み、次々に相手をぶっ飛ばす
SPD : 素早く相手の急所を突き、戦闘不能に追い込む
WIZ : 簡潔かつわかりやすい言葉で、乱闘を止めるように説得する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
神無島。
木造長屋の一角に、お菊と、その父親である留吉は暮らしていた。
留吉は若い頃は腕の良い大工として評判であったが、流行り病で妻を亡くし、自身もまた病魔に冒されて、碌に働く事が出来ない身体になっていた。
一人娘のお菊は、父親の看病をしながらも、真面目に良く働く気立ての良い娘として、近所でも評判であった。
「ごほっ、ごほっ……」
お菊の手が、何時ものように咳き込んだ留吉の背中を、優しく摩った。
「大丈夫? お父つぁん。今、お薬を用意するからね」
「ごほっ……すまないな、お菊……俺が、こんな身体で無かったらな……」
「もう。お父つぁんったら。それは言わない約束でしょ。はい。お薬よ」
お菊の手から薬を受け取る留吉。貧しくとも心温まる、仲睦まじい家族の景色がそこにはあった。
「おーい! てぇへんだ! てぇへんだー! てぇへんだよ、お菊ちゃん!」
同じ長屋に住む新三が、玄関の戸を開けて、大声を上げながら飛び込んできた。
「どうしたの? 新三さん。そんなに慌てて……」
新三は、息を切らせながら、不思議そうに首を傾げるお菊の言葉を遮った。
「俺の事はいい! お菊ちゃん。はやく逃げるんだ。奴らが来やがった! 髪刈りだよ、髪刈り! また、やって来たんだよ……!」
髪刈りという言葉を聞いて、お菊と、留吉は顔を蒼白にする。
「そんな……でも、お父つぁんを置いてはいけないわ……!」
「お菊ちゃん! 判ってるだろ! 奴らは女でも容赦しねぇ! 刈られちまうよ! 俺みたいになりたいのかい!」
新三は、まだ若いのに一本の髪の毛も生えていない自分の頭を指さした。
「でも、でも……!」
「ごほっ……! お菊、逃げな! 俺ぁいい! 娘が刈られるところを見るのは、耐えらんねぇ! 新三! お菊を……!」
「合点承知! お菊ちゃん、早く! こっちに!」
「いやぁ……! お父つぁん……!」
新三が、お菊の手を引いた。
悲痛な叫びに、心が引き裂かれる思いがする。
しかし今は一刻の猶予もならないのだ。
髪刈りは、すぐそこまで迫って来ているのだから。
新三は、心を鬼にして更に強く、お菊の手を引こうとした。
「――何処に行くのか」
「あぁっ……!」
二人の行く手を遮るようにして、非情な現実(はげ)が立ち塞がっていた。
「お待ちを……! お願いします、お願いします! あっしの髪なら幾らでも差し上げます……! ですから、どうか……どうか、この娘だけは……! いい子なんです! そんな惨い真似だけは、どうか……!」
留吉が、病に冒された体を引きずって、髪狩り達の前で懸命に頭を下げた。
「ならぬ、ならぬわ! これは我らが髪様の申し付けである! 神無島の地を踏む者、その頭部に一本の毛も残してはならぬ! 邪魔だてするとあらば、切り捨て御免! 刈れ! 刈ってしまえ!」
神無島を支配するコンキスタドールに、髪と共に心を奪われた者たちが、一斉に鋏を構えた。
無理矢理に髪を刈られる恐怖に、お菊が悲鳴を上げる。
娘への残酷な仕打ちに留吉が天を仰いだ。
この世には、神も仏も無いのかと。
せめて。せめて娘の髪だけは――。
ローズ・ベルシュタイン
【薔薇園の古城】メンバーで参加
WIZ判定の行動
アドリブや他猟兵との協力歓迎
■心情
髪を刈るですか、何とも面倒で迷惑な方々でしょうか?
私も髪を刈られない様に気を付けないといけませんわね。
■行動
不意に髪を刈られない様に【第六感】で常に周囲に気を配っておきますわね。
私は髪刈りに説得を試みますわね。
【優しさ】で穏やかに話しかけ、【言いくるめ】で相手の主張を丸め込みますわ。
「皆さん落ち着いて下さい。髪が欲しいなら近々散髪したい方を探して
その方の髪を刈れば良いでは無いですか」
「髪も手に入り、島民からも感謝されて、一石二鳥ですわ」
説得が通じない相手は、仕方ないですから【気絶攻撃】で気絶させますわ。
ミネルバ・アレキサンドリア
【薔薇園の古城】で参加
POW
髪の毛を欲しがるとは何とも奇妙な風習の島ですわね。髪は女の命と申します。わたくしの目が黒いうちは誰も殺させませんわ!(なんとなく格好いい台詞が言いたかっただけ) さあ、髪の毛が欲しければわたくしが相手になってあげますの!かかってくるといいですわ。手加減はしますが、打撃中心の華麗なプロレス技で島民達に応戦しますの。髪の毛を掴まれたら怒って巨大化します。これで物理的に触れませんわね。もしローズ様の髪の毛を狙う不届き者がいたらキツめにおしおきします。コブラツイストですわ!
――“ヒュン!”と、風を斬る鋭い音が聞こえた。
涙に曇る留吉の視界の端を横切ったのは夕焼けの如き鮮やかな橙の色彩。それが一輪の薔薇の花であったのだと気付くまでに時間がかかった。
――“ギィンッ!”と、髪刈りの手にした鋼の鋏を、硬質の音と共に薔薇の花が弾き落としたのだと、誰が信じる事が出来るであろう。
「おのれぇ! 何奴……! 姿を見せい!」
果たして髪刈りの誰何(すいか)の声に答えたのは、その立ち居振る舞いも薔薇の如き気高さに満ちた麗しき少女である。
「嫌がる者の髪を無理矢理に刈るとは。何とも面倒で、迷惑な方々でしょうか。とても見過ごす事は出来ませんわね」
ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)が、その髪と瞳に黄昏の陽射しの色を宿して、自信に満ちた微笑みを浮かべて佇んでいた。
「髪は女の命と申します。わたくしの目の黒いうちは誰も殺させませんわ!」
ローズが柔らかな夕陽の暖かさならば、次いで現れた竜の角を有する女性は、煌めく銀雪の美しさを持っていた。
紅玉の瞳を輝かせて、“ビシィッ!”と、背後に効果音がつきそうな勢いで、髪刈りに指を突きつけている。
ミネルバ・アレキサンドリア(自称「聖なる薔薇」のポンコツドラゴン・f17280)。薔薇園の古城より、コンキスタドールの悪法に苦しむ島民を救うために参上した、天下無敵の残念淑女である。
「女ども! 貴様らも邪魔だてするのか!」
「落ち着いて下さいませ。宜しいですか。髪が欲しいなら近々、散髪したい方を探して、その方の髪を刈れば良いではないですか。そうすれば髪も手に入り、島民からも感謝されて、一石二鳥ですわ」
ローズは、相手を刺激しないように、穏やかに論理を説いた。
包み込むような優しさに、髪刈り達は互いに顔を見合わせる。
しかし。
「それでは髪様に捧げる供物が散髪のついでになってしまうでは無いか! 身を削るからこそ信仰の証が立つのだ! 見よ! 我らが無毛の頭部を! 朝日の如き輝きを! この光こそ髪様が求めるものである。貴様らも坊主となれば我らの信仰が理解できよう! 夏でも涼しい! これが髪様の恩寵である!」
「いや。夏は涼しくても、冬は絶対に寒いでございましょう、その頭は」
ミネルバの指摘にも髪刈りは小動(こゆるぎ)もしない。堂々と胸を張って声を上げる。
「年中、快適では人は堕落するのみだ! 寒風は髪の試練である!」
「……ローズ様。これは駄目ですわ。馬鹿にと言いますか、禿につける薬はありませんわよ」
「そのようですわね。仕方がありませんわ。少しだけ大人しくして頂きましょうか」
ローズとミネルバは揃って嘆息すると、言葉を用いない説得に心を切り替えた。
二人の令嬢の豊かな髪を刈り取らんと、髪刈りが鋏を構えて包囲陣形を敷く。
「コンキスタドールに操られているだけの島民。この方たちも犠牲者ですわ。ミネルバ。余り傷付けないようにしますわよ」
「解っていますわ! ローズ様の御髪(おぐし)は、わたくしが守護(まも)りますの!」
「頼もしいですわね。それでは、私はミネルバの髪を。あなたの命を守護りますわね」
ローズとミネルバは互いに背中を預け合い、髪刈りと対峙する。
「髪様に逆らう愚か者共が! 尼にしてくれる! 刈(カ)ァッ――!」
背中合わせの令嬢の髪を目掛けて殺到する髪刈りの鋏、鋏、鋏の群れ。
“ザキザキ”と、鋼が噛み合う音を立てながら、多方向から同時に繰り出される。
ローズの腕が、髪刈りの鋏が到達する寸前に、一流の奇術師(マジシャン)めいて華麗に翻った。
鋭く風を斬る音と共に、ダーツの如くに、夕焼け色の薔薇が殺到する髪刈りの人数と同じ数だけ放たれる。
「薔薇よ、私を守ってくださいませ――《それは儚き不壊の薔薇》(インヴァルネラブル・ローズ)」
アナシュカ。ベビー・ロマンティカ。マリーナ。ラ・ドルチェ・ヴィータ。レディ・エマ・ハミルトン。
鮮烈にして華憐。優美にして気高き橙の薔薇の鏃には、一輪として同名の品種は存在しない。
ローズのユーベルコードは、髪刈りの鋏の、ことごとくを弾き飛ばして無力化せしめたのである。
「ローズ様は優雅ですわね。それでは、わたくしも。華麗に参りましょうか! それっ!」
ラリアット。アックス・ボンバー。オープン・ハンド・ブロー。エルボー・スタンプ。
ロー・キック。延髄蹴り。シャイニング・ウィザード。ヤクザ・キック。
ミネルバの繰り出すプロフェッショナル・レスリングの打撃技の数々が、髪刈りを蹴散らしていく。
「ミネルバは豪快ですわね。見ていて気持ちが良いですわ」
「ええ。古文書(マンガ)に乗っていた闘法を、わたくしなりにアレンジしましたの。おっと、逃がしませんわよ。ローズ様の御髪を狙う不届き者は……特にキツめにお仕置きですわ! 受けなさいませ! アレキサンドリア流格闘術を!」
コブラ・ツイスト。ボストン・クラブ。スピニング・トーホールド。スコーピオン・デスロック。
ドラゴン・スリーパー。ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロック。
ミネルバの闘法は、打撃技のみならず関節技も一流の冴えを見せた。
繰り出される髪刈りの鋏を掻い潜り、懐に飛び込んだかと思えば、一瞬にして業を決めて、絞め落とす。
その上で力加減を謝らずに、相手に後遺症を残さずに、意識を奪うだけに留めている。
ローズによる鉄壁の薔薇の守護。
ミネルバによる大胆にして華麗なる暴力。
これらを掻い潜り、薔薇の絆に結ばれた令嬢の髪を刈る事が出来る鋏は存在しない。
かくして二人は、危うげ無く髪刈りを制して見せたのである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ハロ・シエラ
これは内緒なのですが、私も内心髪には自信があったりします。
無くても生きては行けますが、奪われた際の喪失感は察するに余りあります。
何より、敵がオブリビオンであるなら見逃す事はできませんね。
さて、まずは毛刈りを止めさせなければなりません。
言葉よりは力の方が手っ取り早いでしょう。
私はこの髪を囮に敵を【おびき寄せ】髪に手を伸ばす者に【カウンター】を仕掛けます。
その際はワイヤーやその辺の縄などを使って【早業】で【捕縛】したり【グラップル】によって【マヒ攻撃】にて暴徒を鎮圧する事になるでしょう。
勿論、髪を奪われない様に【第六感】とユーベルコードにて全力で回避を行います。
指一本触れさせないつもりで行きます。
「刈れー! 刈れぇー! 髪様の掟に叛く者、皆、髪を刈ってしまえぃー!」
無慈悲なる髪刈りの声が響く。
「刈らせるなー! 俺たちの髪だー! 皆ー、立ち上がれー!」
コンキスタドールの横暴を良しとしない島民たちが怒りを爆発させる。
神無島は混乱の坩堝にあった。
「刈り捨て、御免である!」
「ちくしょうがっ……!」
乱戦の渦中にあって疲労の極みにある男が、遂に、地に倒れ臥した。
その頭部に残る髪に向かって、冷たく光る鋏が突き出される。
男が、一瞬の後には花の如くに散らされるであろう己の髪を思い、涙した。
その刹那。
“ギィンッ!”と、鋼の噛み合う澄んだ音色と共に、髪刈りの鋏が弾き飛ばされていた。
男と髪刈りの間に割り込んだ者は、漆黒の長い髪を靡かせる小柄な少女である。
「大丈夫ですか? 間に合って良かったです」
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)が、それぞれの手に携えた細剣と短剣を十字に交差させて、髪狩りを牽制していた。
「お嬢ちゃん……あんたは、いったい……?」
「あなたたちの気持ちを、理解できる者です。確かに髪は無くても生きてはいけますが、奪われた際の喪失感は、察するに余りあります。何より、この混乱の裏に潜むのがオブリビオンとあらば見逃す事は出来ません!」
ハロは、赤い瞳を決意に輝かせて、凛と声を張り上げた。
その背中に滝のように流れ落ちる見事な黒髪に、周囲の髪刈りたちが視線を奪われる。
「私が、私と剣達がお相手いたします! この髪、刈れるものならば、刈ってみせなさい!」
「ええい、構わん! その小娘から刈ってしまえ!」
他の島民たちには目もくれずに、ハロの髪に、一斉に殺到する髪刈りたち。
ハロの脚が、“トン”と、軽やかに大地を蹴った。
少女の身体が、宙を舞うように高く跳躍する。髪刈りの鋏は、その髪の毛先にさえ触れる事が出来ずに、虚しく空を切った。
ハロが反撃の二刀を振るうと、鋭い一撃が、髪刈りの身体を強かに打ち据える。
「ええい、何をしているか! 相手は子供一人だぞ!」
「駄目です……! こいつ、はやすぎ……ガ、ァッ……!?」
ハロは、時に跳躍し、時に物陰から物陰へと走り抜けながら、大勢の大人たちを翻弄する。
それは幾多の戦いの中で磨き抜かれた第六感と、その視界に未来を映しだすユーベルコードを併用した絶対的回避機動である。
ある者は、気付いた時には身体の自由を縄で戒められ、ある者は、首筋に衝撃を感じたと同時に、その意識を刈り取られた。
「しばらく、大人しくしていてください。オブリビオンを倒せば島に平和が戻ってきます。もう、髪を刈られる心配はなくなりますよ」
ハロは、目につく範囲の髪刈りを危うげなく鎮圧すると、茫然と、その様子を眺めていた島民たちに微笑みかけた。
大成功
🔵🔵🔵
地籠・凌牙
【乱入アドリブ連携諸々歓迎】
目立つ髪色から狙ってくるよな多分……白髪って割と目立つよな。てことは俺は嫌でも騒動のど真ん中に入らざるを得ないワケか!?
島民を逃がしつつ自分の頭も守りつつ、そんで操られてる奴らを沈静させる……流石に一対多数だと難しい一人ずつ誘き寄せて一対一に持ち込むか。
【ドラゴニアン・チェイン】!鎖で繋がった奴から片っ端引っ張って一人ずつ気絶させていくぜ!一応加減はしたがもしかしたらオーラの【爆破】の衝撃で既に気絶してるかもな……気絶したら安全そうなとこに投げとくぜ。……え、もうちょっと丁寧にしろって?……可能な限り努力はするが期待しないでくれると助かる!
「そこの貴様。実に見事な白髪であるな。我らが髪様の供物に相応しい。疾(と)く頭をだすがいい」
「あぁ?」
およせ礼節というものを欠いた髪刈りの言葉に剣呑な声音で振り向いたのは眼光鋭き粗野な若者である。
陽光を透かして煌めく真白き髪が髪刈りたちの興味を殊更に強く惹いたようだった。
荒々しさを身に纏う青年の肌を黒竜の鱗が鎧(よろ)っている。
地籠凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)は髪刈りの姿を視界に収めると、またかと言わんばかりに面倒臭そうな溜息を吐いた。
凌牙の衣服の袖を幼い少女が脅えた様子で引いた。
小柄な身体を凌牙の背に隠すようにして震えている。
「ったく。次から次へと湧いて出やがる。いい加減、飽き飽きしてきたぜ。どいつもこいつも髪、髪、髪だ。挙句に、こんな小さぇ子供(ガキ)を怖がらせやがって……」
震える少女を庇うようにして髪刈りの前に立ち塞がると、固く握りしめた拳をベキベキと鳴らす。
「恐怖を感じる者が島民としては不適格なのだ。神無島の平穏は髪様の加護あってのもの。むしろ自ら頭髪を剃り上げるべきである。不信心者が多い故に我ら髪刈りが存在するのだ」
傍若無人極まる髪刈りの言葉に、凌牙のこめかみに青筋が浮かぶ。
「そうかい。禿野郎。てめぇらも昔は、この娘みたいに髪が生えていただろうによ。操られているからとは言え、本当に救えねぇ。問答は無用だぜ。かかってきな」
凌牙が闘争の構えをとると、髪刈りたちは一斉に鋏を手に襲い掛かってきた。
「はっ、素人(トーシロ)が! なっちゃいねぇ!」
粗野な振る舞いに見合わず、凌牙の構えと身のこなしは洗練されて、最適化された暴力の型そのものである。
軽く地を蹴り、短い呼吸音と共に髪刈りの懐へと肉薄した。
こうまで接近されては数を頼みに包囲することも適わない。
仲間の身体が障害物となり多勢という利点を封殺されたも同然だからである。
「ちぃっ。素早い!」
慌てて背後へと距離を取ろうとする髪刈りの足に、ジャラリと鳴る物質化したオーラの鎖が絡み付いた。
「逃がすかよ。喧嘩ってのな。数じゃねぇんだぜ!」
「ぐぁぁっ……!?」
強烈な拳の一撃が突き刺さり、髪刈りの身体が宙に舞う。
「一応、加減はしといたぜ。気を失う程度で済むだろ。さて。次に吹き飛ばされてぇ奴ぁ、どこのどいつだ?」
鋭い眼光に射抜かれて、気圧されたように後退る髪刈りたちに拳を叩き込むと、次々に気を失わせていく。
無人の野を征くが如く大地には失神した髪刈りの身体が積み重なっていった。
「どうだ。大事な髪(もん)を奪われた奴らの痛み。ちったぁ身に沁みたかよ?」
凌牙は不機嫌そうに吐き捨てると物陰に隠れていた少女に、
「ほら。終わったぞ。あとちょっとの辛抱だ。親御さんの言ってた避難場所ってのはあっちか?」
と、先の粗野な振る舞いが悪い夢であったかのように優しく声をかけた。
少女は、こくりと小さく頷いて凌牙の元に駆け寄って来る。
「ったく。子守りなんざ俺の柄じゃねぇんだがな……」
凌牙は、照れ隠しに小声で悪態をつきながらも、最後まで、その小さな子供のみならず目についた島民達を護り通して見せたのである。
大成功
🔵🔵🔵
クラウン・アンダーウッド
フフッ、アハハハハッ!駄目だ。笑わずにはいられない!
腹を抱えてクラウンが嗤う。
相手を笑わせるのがボクのやりたいことだけど、ここまで誰かに笑わせられるのは初めてだ♪
キミ達が滑稽に見えて仕方がない......アハハハハッ!
『髪刈り』達の敵意を煽り注意をこちらに向けさせる。
さぁて、哀れなキミ達に贈り物をしようじゃないか♪
癒しの業火を『髪刈り』達の頭部に当てて燃やし、まるで火を灯したマッチ棒のような状態にする。頭に灯した業火の効果で『髪刈り』達の髪や意識を元通りにさせる。
どうだい?『髪刈り』だったキミ達もこれで一緒に笑えるかな♪
「おのれおのれおのれ! この髪を畏れぬ罰当たり共が。この島が突如として見知らぬ大洋の只中に放り出されてから幾星霜。平穏な暮らしを送ることが出来たのは誰のおかげと思うておるのか。全て偉大なる髪様の御力によるものぞ!」
神無島の広場には猟兵たちの活躍により拘束された髪刈りたちが集められていた。
かつては島民たちと同様に豊かな髪を蓄えていたであろう頭部は、今は地肌を曝して見事な輝きを放っている。
その様子を、島民たちは痛ましげに見詰めていた。
「フフ、アハハハハハッ! 駄目だ。笑われずにはいられない!」
「何者だ! 髪様の使いたる我らを笑う不届き者は!」
突如として群集の中から響いた笑い声に髪刈りが誰何(すいか)の声を上げた。
進み出てきた者は奇抜な色使いの衣装が嫌が応にでも人目を惹く道化師の青年である。
その周囲では喇叭(らっぱ)やタンバリンといった楽器を手にする絡繰り仕掛けの楽団人形たちが陽気で愉快な音楽を奏でている。
クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)は髪刈りの怒りも、島民の嘆きも何処吹く風といった様子で、お腹を抱えて笑っていた。
「相手を笑わせるのがボクのやりたい事だけど、ここまで誰かに笑わせられたのは初めてだ♪」
クラウンの周囲で楽器を鳴らす人形たちも、愉快、愉快というようにクルクルと踊る。
「おのれ! 大道芸人風情が。貴様ら。この縄を解け。その男の髪を刈りつくしてくれる!」
クラウンのパフォーマンスに敵意を煽られた髪刈りたちの剣呑な視線や言葉が次々と、彼一人に対して向けられた。
その場の観客たちの視線と興味とを一瞬で一人占めにした道化師は、まるで悪びれた様子もなく、頭に被っていた帽子を手に取り、胸元に当てると、大仰に一礼をしてみせた。
「さぁて。君たちには笑わせてもらった御礼をしようじゃないか。ボクからの素敵な贈り物だよ♪」
突如として色とりどりの紙吹雪が舞った。人形たちが奏でる軽快な音楽に合わせて真白な鳩が人々の間から次々に飛び立つ。
驚愕と歓声とが彩る不思議な光景が忽(たちま)ちの内に聴衆を虜とした。
道化師の奇術(まほう)は、それだけでは終わらない。
地肌を晒す髪借りたちの頭部が前触れもなく炎に包まれたのである。
「うわっ! は、はやく、はやく消せ! 消すのだ! 水を……!」
クラウンは、慌てふためく髪刈りや聴衆の前で、何時の間にか手にしていたマッチに火を灯すと、
「アハハハッ! そっくりだね。これは愉快♪」
と、笑い声を上げていた。
「はやく、水を! 熱い、あつ、い……?」
ふと髪刈りの一人が不思議そうに声を上げた。
燃え盛る炎に頭部を焙られている筈なのに、まるで熱さを感じない。
困惑した髪刈りの様子に島民たちも、これは如何した事かと顔を見合わせる。
「おい、あれ……!」
「髪が……!」
最初に気が付き声を上げたのは誰だったのだろう。
クラウンが灯した炎の中で、失われた筈の髪刈りの頭髪が活き活きと甦り靡いているでは無いか。
「これは? 我らに髪が……無くした筈の髪が……。うん? 俺たちはいったい、今まで何をしていたのだ?」
悪い夢から、あるいは不可思議な夢から覚めたように髪刈りたちがキョロキョロと周囲を見回した。
島民たちが一斉に歓声を上げる。
「ただ燃えるだけが炎じゃないのさ。どうだったかな? 髪刈りだったキミ達もこれで一緒に笑えるかな♪」
クラウンが、フッと手にしたマッチの火を吹き消した。再び帽子を被り直して微笑みを浮かべる。
道化師の癒しの魔法には種も仕掛けも存在しない。失われた物を再び取り戻した喜びは、例え意地悪な十二時の鐘が鳴り響いたとしても解ける事は無いだろう。
「アハハ。もっとも僕の時計は最初から十二時を指さないのだけれどもね♪」
クラウンは、煤けて動かない懐中時計の文字盤に目を落として、愉快そうにつぶやいた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『殺戮オウムガイ』
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POW : 念動衝撃波
見えない【衝撃波】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : 賢者の触手
質問と共に【無数の触手】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
WIZ : オウムガイ粘液
【粘液】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:りょうま
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
島民たちの歓声が神無島を震わせる。
その喜びの声の中には髪を取り戻した、髪刈りたちのものも混じっている。
奪われた髪が返ってきた。
もう自分たちは禿てはいないのだ。
祭りのような熱気が島を包み込んでいた。
それは、つまり。我らが偉大なる髪様への明確なる叛意である。
海の底から巨大な入道が顔を出すかの如くに巨影が浮上した。
百本近い触腕をウネウネと蠢かせたオウムガイが群れを成して神無島に上陸を果たす。
「古の契約は破られた。汝らは髪の加護を失ったのだ。神無島。かくなる上は海中へと没するべし! 髪ある者、すべての生命を捧げて、我らが女神の慰みとせん!」
コンキスタドールの命令を忠実に執行する殺戮の使徒が、神無島を包囲した。
ローズ・ベルシュタイン
【薔薇園の古城】メンバーで参加
WIZ判定
アドリブや他猟兵との共闘歓迎
■心情
神の使いがこの様なオウムガイとは、思ってもみませんでしたわ。
ともあれ、人々に危害が加わる前に、私たちで倒してしまいましょう。
■行動
夕暮れ時に薔薇は踊り咲く(UC)を使用して戦いますわ。
敵を水上から陸地へと【おびき寄せ】し、
敵が現れたところを【ダッシュ】で接近して
複数の敵を纏めて【範囲攻撃】しつつUCを使いますわね。
負傷して弱っている敵を優先的に狙いますわ。
仲間と連携を取りつつ、互いの死角をカバーし合う様に戦いますわ。
オウムガイ粘液に対しては【見切り】で避ける様にし
死角からの粘液は【第六感】で察知して回避。
ミネルバ・アレキサンドリア
【薔薇園の古城】 姿を現しましたわね、コンキスタドール。あれは......きっとクラーケンですわね!( アルダワの理科の授業はずっと寝てた子) 私の得意とする火炎魔法でイカ焼きにして差し上げますの! 敵の衝撃波は【地形の利用】で流木とかを盾にして防御。翼で空を飛んで敵に近づきます。 『この身に宿りし火竜の血脈よ。我が意志に応えて励起せよ。愚者達に灼熱の裁きを下せ!火竜滅焔陣(ドラゴンブレス)!』 (詠唱してから火を吐くが、実際にはドラゴニアンの生まれつきの生態由来の技で呪文は発動とは無関係)
ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)は海岸から波間に漂うオウムガイの群れを目視で捉えていた。
人間など蠢く触腕で容易く捕食してしまいそうな程に巨大なオウムガイだ。
それらが高度な知性のもとに言語を操り、統一された意思によって包囲陣を敷き、荒れ狂う波をものともせずに進軍を開始している。
「神の使いが、この様なオウムガイとは、思ってもみませんでしたわ」
確かに、あの風体ならば、そもそも頭髪は無いでしょうけれどもと、呆れたようにローズが呟く。
その隣で、ミネルバ・アレキサンドリア(自称「聖なる薔薇」のポンコツドラゴン・f17280)が、
「あれは……きっとクラーケンですわね!」
根拠もなく自信満々に断定した。アルダワ魔法学園においては理科の授業中は睡眠学習に余念がない彼女である。
記憶の引き出しの中から適当な名称を探り当てて口に出したのだった。
「クラーケンですか。確かにカール・フォン・リンネは未知の海洋生物としてのクラーケンを頭足類に分類していましたわね。それを思えば巨大なオウムガイもクラーケンと呼んで宜しいのでしょうか」
ミネルバの断定に至極、真面目な顔で思考するローズ。分類学の父と称される生物学者の著書の項(ページ)を頭の中で捲っていた。
「か、かーる・ふぉん……何でございますの……? ええと。この場合、お菓子が何の関係があるのかは分かりませんけれども、とにかく、あれはクラーケンですわね!」
ミネルバは耳慣れぬ学者の名前に玉蜀黍(トウモロコシ)を原料としたスナック菓を連想した。如何やら睡眠学習の成果が出るには、まだ幾許かの時を必要とする様だ。もしかしたら生涯に渡り成果は出ないかも知れない。
コンキスタドールの上陸を阻むように海岸に立ち塞がる華麗な二輪の薔薇の乙女の前に、ついに最初のオウムガイが上陸を果たす。
「おお。おお。髪に逆らう愚か者どもめ。我らが宿敵たる猟兵(イェーガー)め。貴様らが来なければ、この島の平穏は永劫不変であったものを。貴様らが女神と島民との間に結ばれた神聖な契約を土足で踏み荒らし、破壊したのだ。その罪、万死に値する。貴様らを地獄に送る我が名を知るが良い。雄武海之助(おうむ・かいのすけ)の名を!」
一体、体の、どの部位に発声器官を備えているのかは不明だが、コンキスタドールの名乗りによりローズとミネルバの中に共通した認識が新しく生まれた。
「……訂正いたしますわ。ローズ様。これ、オウムガイですわ」
「ええ。オウムガイですわね」
二人は顔を見合わせて頷くと、即座に、その場から同時に飛び退いた。
コンキスタドールの触腕が勢いよく振り降ろされて、一瞬前まで二人が立っていた場所を強かに打ち据える。
「ともあれ、人々に危害が加えられる前に、私たちで倒してしまいましょう。ミネルバさん」
「そうですわね。纏めて浜焼きにして差し上げますの!」
時間と共に海岸に上陸を果たすオウムガイたち。圧倒的な質量は押し潰されるような圧迫感さえ伴った。
ローズは、その手に、夕焼け色の剣身を持つ長剣を手にすると、軽やかなステップで砂浜を蹴った。
暖かなオレンジ色の髪と深紅のドレスを華麗に翻しながら、オウムガイの群れの中を踊るように駆け抜けていく。
ミネルバは背に竜翼を生やすと遮るものの無い天空を雄々しく飛翔した。
「おのれ、ちょこまかと。これでも食らえい」
足場の悪い砂地にも関わらず苦も無く華麗な足運びを見せるローズの動きを捕縛せんとオウムガイたちは次々と粘液を吐き出した。
しかしローズは四方八方から放たれる粘液を背中に目でもついているかのように一瞥すらくれる事はなく避けていく。
その様を、ミネルバは上空から俯瞰していた。
「流石はローズ様ですわ。あの優美さは是非とも見習いたいところですわね。それでは、わたくしも華麗に……おっと! よっと! ……ちょっとぉ!?」
優美さとも華麗さとも程遠い動きで空中を不規則に飛び跳ねるミネルバ。目視できない衝撃波の一斉掃射を最初こそ直観を頼りに回避していたものの、ついには見た目の美しさを捨てて海岸の流木を拾い上げると、それを盾に防御する。
「卑怯者ー! わたくしにも目で見える攻撃をなさいませー!」
「馬鹿め。髪ある者の言、聞き入れる筈もなし。頭髪を反り上げてから出直して参れ」
空の高みから文句をつけるミネルバを今度こそ迎撃せんと、更に衝撃波を放とうとするオウムガイたち。その視界を、突如として黄昏色の暗幕が厚く遮った。
「さぁ、数多に咲き誇りなさい! 夕暮れ時に薔薇は踊り咲く(ローズ・ワルツ)!」
ローズの手にした魔法の長剣が同色の薔薇の花弁に姿を転じると、オウムガイの群れを繭の如くに包み込んだのである。
剣の切れ味をそのままに幾千の花弁として舞い踊るローズのユーベルコードがオウムガイの触腕を切り裂き、視覚を封じて、その連携を瓦解させる。
「今ですわ、ミネルバさん」
「ローズ様。感謝いたしますわ。お逃げあそばせ」
手にした流木を、仕返しとばかりに薔薇の花に捕らわれたオウムガイの内の一体に投げつける。ゴイーンと、非常に良い音がした。
ミネルバが大きく息を吸うと、その口腔内に、赤熱する炎が見え隠れした。
意図を察したローズが、その場から飛び退く。
ミネルバは朗々と呪文を詠じながら、空中に大仰な仕草で五芒星を描いた。
「この身に宿りし火竜の血脈よ。我が意志に応えて励起せよ。愚者達に灼熱の裁きを下せ! 火竜滅焔陣(ドラゴンブレス)!」
荘厳な呪文の詠唱を必要とするにも関わらず、強大な魔力の高まりも、神秘の魔法陣の輝きも伴わない、ただ灼熱する吐息が令嬢の肺腑から迸る。
つまりは意味もなく格好をつけただけの火炎放射である。
しかし、その炎熱がローズの薔薇と融合せしめた時、地上に極小の太陽の顕現とも言うべき大爆発を巻き起こした。
ローズが手にし、幾千の薔薇に転じた剣の銘は、夕の憩い。あらゆる魔法属性との親和性が高い奇跡の一振りである。
敵陣の視界を奪い、衝撃波に晒されるミネルバを援護すると共に、周到な計算のもとに彼女の得意とする竜の吐息を最大限に増幅させる仕掛けを、ローズは完成させていたのである。
爆発による衝撃が収まった後、砂浜には巨大なクレーターが生み出され、その表面は膨大な熱量に晒されて溶けた硝子に転じていた。
オウムガイたちの堅固な殻も圧倒的な熱量と衝撃を前に意味をなさず、その軍勢は半壊していたのである。
「いえーい。大・勝・利! ですわ!」
「ええ。チームワークの勝利ですわね」
二人は笑い合うと、高い位置で、軽快に掌を叩き合わせたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
地籠・凌牙
【乱入アドリブ連携諸々歓迎】
なァ―――にが髪の加護だ、散々子供を泣かせた挙げ句髪の毛毟り取りやがって!!髪の加護だっつーんなら島の人らが禿げないように配慮してやれってんだ!!
その癖寄越しやがった眷属共はまあ丁寧に殻という名の兜で御大層に自分の髪の毛(※触手)護りやがって、毟り取ってきたからにはお前らも毟り取られる覚悟はできてんだろうなァ!!?
UCを使用する。まずはその鬱陶しい殻をブチ壊して引きずり出してやる!
貝の殻もどんだけ硬かろうが物質は物質、【鎧砕き】の容量で脆いとこを一点集中すればそこから砕けるハズだ!女神の供物にゃてめえの生命を使いやがれ!
ハロ・シエラ
やはり現れましたか。
乱闘の鎮圧よりも、こちらの方が私向きですね。
変な生き物ですが、わざわざ地上に出て来てくれるなら好都合です。
さて、まずは粘液の始末です。
液体を回避するのは難しいので、ユーベルコードを【カウンター】として放ち、風で粘液を押し返しましょう。
敵も風の【属性攻撃】に巻き込んでダメージを与えたいですね。
粘液や敵の動き、風向きを【見切り】、粘液を敵に返す事が出来れば、逆に【捕縛】する事も出来るかも知れません。
後は風に乗り、敵の殻の隙間を縫って【鎧無視攻撃】の突きを仕掛けます。
敵が多いので【早業】で次々と仕留めましょう。
「何が髪の加護だ。散々、子供を泣かせた挙句に髪の毛を毟りやがって。その癖、自分たちは御大層な殻で後生大事に髪の毛を守ってやがる。頭に来るぜ」
地籠凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)が怒りの視線で髪の眷属を名乗るコンキスタドールのオウムガイを睨み付けた。
「髪の毛……なのですか? あれは……」
その隣で、オウムガイの触腕を不思議そうに見やりながらハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)が首を傾げる。
「深く考えんな。奴らは毟り取ってきた。なら次は自分たちが毟り取られる番だって事を教えてやるんだよ」
「成る程。シンプルな考え方です。確かに乱闘の鎮圧よりも私向きの仕事ですね」
ハロは腰に帯びた双剣を、スラリと抜き放つ。
「あなたは武器を使わないのですか? あの殻、尋常でなく固いと思いますよ。わっ……!」
ハロの頭を丁寧とは言い難い手付きでクシャクシャと撫でて、凌牙は口元に不敵な笑みを浮かべて見せた。
「心配無用だ。黒竜の鱗が貝殻程度を砕けねぇ筈がねーだろ」
当然のように言ってのける白髪の若者の隣で、乱れた黒髪を手櫛で整えるハロ。丁寧では無いが乱暴とも違う、不器用な優しさの持ち主なのだと凌牙を見上げた。
「私の名前はハロです。ハロ・シエラ。貴方は?」
「地籠凌牙だ。自分より年下の奴と並び立つってのは、何だ。変な気分だな」
上手い言葉が見付からない様子で頬を掻く凌牙。やはり器用な人ではなさそうだとハロは笑った。
しかし一瞬の後には不穏な気配を感じて双剣を構える。
ゴウッと、オウムガイから放たれた不可視の衝撃波が大気を裂きながら近づいてくる。
「オラァッ!」
裂帛の気合と共に突き出された凌牙の拳が、その衝撃波を打ち抜いた。
パァンと紙鉄砲が弾ける様な音を立てて、衝撃波の残滓が周囲の大気をビリビリと揺らす。
「馬鹿正直に真正面から撃ちやがって。殺気も狙いも碌に隠せてねぇ。俺に効くかよ、そんな衝撃波(もん)」
フンと鼻を鳴らす凌牙の態度に自尊心を傷つけられたのか一匹のオウムガイが粘液を放出した。
攻撃ではなく捕獲、拘束を目的としたコンキスタドールのユーベルコードだ。これは単純な力押しでは破れまいと陰湿に目を細めるオウムガイの前で、今度は、年上の青年を庇う様に、ハロが長い黒髪を颯爽と靡かせて立ち塞がる。
真紅の瞳が鋭い輝きを宿して凛々しく煌めいた。
対処法を思考する時間は僅かに一刹那、瞬きよりもなお短い雷華の閃き。
散布される液体を回避することは困難を極めると判断したハロは両手の剣に渦巻く風を纏わせた。
まずは一太刀。短剣(ダガー)が振るわれる。解き放たれた風が粘液を空中で吹き散らす。
次いで一太刀。細剣(レイピア)が振るわれる。解き放たれた風が粘液を敵陣に向けて押し返した。
その巨体が邪魔をして俊敏な機動など望むべくも無いオウムガイの群れは、仲間の放った粘液に逆に絡め捕られてしまったのである。
「おのれ。何をしているか。貴様ら、それでも髪の眷属か。小娘如きの手妻(てづま)に、まんまとやられおってからに。愚図どもが」
群れを統率する個体らしきオウムガイが怒りの声を上げる。
「あの業を手妻としか見れねぇか。愚図はてめぇの方だぜ」
凌牙の侮蔑を込めた溜息が吐き出される。何時の間にか、その肉体は声を張り上げたオウムガイの統率個体の前に存在した。
短くも鋭い呼吸が鍛え上げた筋肉を隆起させ、武道の構えとして洗練された効率的暴力の型をとっている。
「ええい、愚図ども! 麿(まろ)を守護(まも)れ! 守護るのだ! 我は髪様への直接の目通りを許された髪刈り公家の御曹司なるぞ!」
何やらオウムガイというかコンキスタドールの間では通用するらしい謎の肩書を並べ立てる公家オウムガイ。しかし、その焦燥の声は、呆気なく驚愕の響きにとってかわった。
音を置き去りとした双剣の、斬(ザン)の刃音が、オウムガイたちの末期の叫びさえ斬って捨てる。
ハロが手にした細剣も、短剣も、その鋼の剣身に僅かの曇りもなく澄んでいる。
ヒョウと澄んだ笛の楽の音色が如きが響いた。それが余りにも鋭い電光石火の斬撃により断たれ、空隙となった真空の空間に大気が流れ込む音であると誰が知るだろう。
「嵐の出撃(ライディングオンザウィンド)……私と、私の剣達は音速を超えます」
ハロが音も無く双剣を鞘に納めた。一瞬の間をおいて、オウムガイの群れが総て十文字に斬断されて亡骸を地面に晒す。
「馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿な! 高貴なる麿が猟兵(イエーガー)如き下賤の輩に!」
「次はてめぇの番だぜ。あばよ! 女神の供物にゃ、てめぇの命を使いやがれ!」
恐慌状態に陥ったオウムガイの殻に真直ぐに突き出された凌牙の拳が突き刺さる。
銅鑼を鳴らすような轟音が響いた。ミシリ、ミシリと音を立てて、殻に叩き込まれた拳を中心に、蜘蛛の巣の如き罅割れが幾条にもはしる。
如何に堅固な殻で鎧(よろ)おうとも無駄な事だ。浸透する衝撃は内部から対象の肉体を破壊し、その器官の悉くを破裂させる。
続く攻撃を必要としない。ただ一度の暴力をもって全てを終わらせるが故の一撃必殺。
「へっ。やるじゃねぇか。ハロ」
「貴方も素晴らしい腕前でした。凌牙さん」
二人は完全無欠の勝利に互いを歴戦の勇士と認める信頼の微笑みをかわし合った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クラウン・アンダーウッド
オウムガイかぁ、確か食べられたハズ...そうだ!いいことを思い付いた♪キミ達を料理して島民たちと一緒に食べるとしよう!島民を食い物にしてきたコンキスタドールの使者を島民たちの食い物にする。我ながら中々の意趣返しだと思うなぁ。
今キミたちを解体するとコンキスタドールを倒す迄に鮮度が落ちそうだから無力化させるに止めよう。
さぁ、η。キミの出番だ!
η「ーーー♪」
ηから発する指向性の超音波の歌声で相手の脳の一部を破壊させ行動不能にする。
オウムガイの粘液は、クラウンや他のからくり人形たちがオーラで弾いてηに当たらないように立ち回る。
大味で味が淡白になってないか心配だけど...つぼ焼きにして食べようかな♪
潮騒の如き旋律が聴こえた。
美しく、軽やかで、どこか懐かしい響き。
海に生きる者が一度は聴いた事があるだろう音の波は、しかし、堅固な殻の奥に厳重に守護(まも)られた脳を揺さぶり、自分の意識を昏倒させた。
薄れゆく意識の中でオウムガイが最後に目にしたものは、大道芸人めいた服装の男と、彼の鍵盤楽器奏者(ピアニスト)の如きしなやかな指先に操られる可憐な人形だった。
「流石だねη(イータ)。今日も素敵な歌声だ♪」
絡繰り細工の喉から迸った旋律は、果たして何処で耳にしたものであったか。
揺蕩う意識が暗黒の海の底に沈む瞬間、その答えに行き着いた。
(嗚呼。そうか。この旋律(うた)は、たしか鯨の――)
眠るように気を失ったオウムガイの前でクラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)は、どこか軽薄な印象を見る者に与える微笑を浮かべていた。
クラウンの傍で、可憐な人形のηが、主人に褒めて貰いたそうにクルクルと回っている。
「さて。オウムガイか。確か食べられた筈だけどね♪」
硬そうな殻をコンコンと叩きながら、クラウンは、何事かを考えるように首をひねる。
ポンと、名案を閃いたかのように掌を叩いた。
「そうだ。いいことを思いついた。キミ達を調理して島民と一緒に食べる事にしよう。これは我ながら、なかなかの意趣返しだと思うなぁ♪」
永きに渡り島民たちを食い物としてきたコンキスタドールの使者を逆に食い物に――そのままの意味で――してやるのだ。
なかなかに良く出来た冗談(ジョーク)では無いかと思えた。
「でもねη。これだけ大きなオウムガイは僕も初めて見るから。大味になっていないかが心配だ♪」
クラウンの心配を受けて、トコトコと可愛らしい足音をたてるηが、横たわるオウムガイに近づいていく。
太い触腕のひとつに顔を近づけると、ガジガジと齧る素振りをしてみせた。
「アハハ。η。駄目だよ。はしたない真似は。せめて火を通してからにしようね♪」
ヒョイと、ηの身体を抱え上げるクラウン。持ち上げられたηは、主人の耳元に顔を寄せる。人形劇めいたコミカルな所作で頷いたり、両手を広げて見せたりする。
「うん。何だい? そうか。味の心配はなさそうかい。じゃあ、これは後から皆で美味しく頂くとしようか。今、解体しても鮮度が落ちてしまいそうだからね。そうだな。つぼ焼きなんてどうだろう♪」
クラウンの腕に抱かれた人形は、それは名案だと言うように頷いてみせた。
「アハハ。ηもそう思うかい。それじゃあ。後に残るのは髪様とやらだけかな。また素敵な歌声を聞かせておくれよ♪」
クラウンの言葉に、ηは任せろとでもいうように、エヘンと胸を張って見せたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『名を忘れられ堕落した『髪の女神』』
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POW : 髪鳴り(かみなり)
自身に【生えた髪の毛へ邪気で作られた雷】をまとい、高速移動と【髪に纏った超威力の雷】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 髪業(かみわざ)
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【無数に生えて来る髪の毛うちの一部】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ : 髪縛い(かみしばい)
【邪気で作られた雷】を籠めた【強靭かつ伸縮自在で自由に動く髪の巻き付き】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【意識や信仰心】のみを攻撃する。
イラスト:ekm
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠神永・衣乃」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
千億の昼があり、千億の夜があった。
遥かな古の時代。女神は荘厳な神殿に祀られ、数多の信徒たちが祈りを捧げていた。
彼方に過ぎ去りし時に思いを馳せれば今も鮮明に思い出せる幸福の時。
たとえ世界が女神を忘却の海に追い遣ろうとも、自分だけは永遠の光景として、栄光の時代を覚えている。
「何故じゃ。何故。誰も彼もが、わらわから離れていくのか」
此処では無い世界。此処では無い時代。
髪に力が宿ると信じられた場所で、女神は、常に人と、人の髪と共にあったのだ。
「人の子は、己が手にした幸福の価値には気付かぬ。持つ者は、決して持たざる者の気持ちを理解せぬ。わらわに祈りを捧げぬ。ならば……」
誰も彼もを、持たざる者とするしか無いではないか。
自分は最後まで人を捨てなかった。人の側が自分を捨てたのだから。
「誰もが髪を無くした世界であれば、わらわは、永遠に人の子に祈りを捧げられ、人と共にあれるものを……」
しかして、その願いは水泡に帰した。オブリビオンと呼ばれる過去の怪物と成り果ててまで求めた唯一の願いは怨敵たる猟兵に踏み躙られた。
「わらわは許さぬ。わらわから祈りを奪うもの。わらわから人の子を奪おうとするもの。わらわは髪の女神。髪ある子らの祈り無くしては生きてはいけぬ。たとえ、それが憎悪であろうとも。悲哀であろうとも。わらわが求めた人の祈り。髪への祈り。それは奪う者、全て塵埃(じんあい)に帰するが良い!」
神無島に雷が落ちた。天の咆哮か、さもなくば神の怒りとでも言うような。
閃光と共に地上に顕現を果たすのは、この世の暗黒の総てを糸にして束ねたかの如き闇色の髪を持つ妖艶なる邪神である。
「来るがいい。猟兵(イエーガー)ども。髪を司るわらわに、髪ある者が勝てる道理は無いと教えてくれる!」
ハロ・シエラ
神様もこうなってしまってはどうしようもありませんね。
どうせなら祈ると神がきれいになるとかそう言う方向で売れば良かったと思うのですが……今更仕方ありませんか。
そちらこそ、刃物に髪が勝てる道理は無いと知りなさい。
とは言っても、やはり巻き付きは厄介です。
【第六感】を働かせて回避し、隙を伺って行きましょう。
敵が焦れて、そして電気を通す剣では防御も出来ないと高を括った時が狙い目です。
【破魔】の力を込めたユーベルコードを【カウンター】的に展開し、一気に襲い掛かってきた髪の毛を邪気ごと焼き払ってしまいます。
後は炎を操作して髪から自分を守りつつ、敵に【早業】の突きを食らわせてやりましょう。
雷と共に降臨した髪の女神は想像を絶する神気を纏い、荒れ狂っていた。
艶やかな烏の濡れ羽色の髪に雷華を閃かせて、伸縮自在の鞭のように振り回している。
「神様もこうなってしまっては、どうしようもありませんね」
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は憐憫の眼差しを髪の女神に向けると、両方の手のそれぞれに細剣と短刀を携える。
「どうせなら祈ると髪が綺麗になるとか、そういう方向性で売れば良かったのではないですか?」
「ふん。小娘の浅知恵よな。その程度の宣伝戦略、わらわが思い付かなったとでも思うてか。人の子は、わらわの与える加護よりも、やれシャンプーだ、やれリンスだのの即物的な効果にはしるのだ」
「なるほど。それは確かに」
ハロも自慢の長い髪の手入れに際して寺社仏閣を訪れて神仏に熱心な祈りを捧げたりはしない。
ジメチルポリシロキサンの油分や陽イオン系界面活性剤の恩恵に浴して、髪の艶と張りを維持している。
「愚かなりしは人の子よ。わらわの加護あらば百年、いやさ千年先までキューティクルの痛みを防ぎ、髪のパサつきとは無縁でいられるものを」
「何だか貴女の存在は全ての女性にとって有益であるような気がしてきました。けれども、今更、仕方がありません」
信仰のために他者の頭髪を無理矢理に奪い、禿げあがらせよう等と考えた時点で、この女神と人間は分かたれてしまったのだ。
もはや相互理解は不可能である。
自在に動き、隙あらば身体に巻き付こうとしてくる髪の乱舞を、ハロは紙一重のところで華麗に回避していく。
雷を纏う髪の鞭を流石に鋼の剣で打ち払う訳にはいかないのか軽やかに地面を蹴りながら反撃の隙を伺っていた。
「おのれ、ちょこまかと。しかし追い詰めたぞ。やはり髪ある者は、わらわの前にひれ伏すのじゃ!」
漆黒の髪が邪気の雷を纏うと、獲物に飛び掛かる蛇の如き俊敏さで、ハロの身体に伸びてくる。
その刹那、ハロの携えた双剣が邪気を祓う破魔の炎の輝きを帯びた。
「そちらこそ、刃物に髪が勝てる道理はないと知りなさい」
白色の炎は漆黒の髪を相殺して焼き払うと、ハロの身体を護るように天体の衛星と化して周囲を浮遊する。
「嗚呼。髪が、わらわの髪が」
一部とは言え自慢の髪を焼き払われた女神の狼狽を付け入る隙と見て取ったハロは、真直ぐに破魔の双剣を突き出した。
「ぐっ、あぁ……! おのれっ、小娘が!」
咄嗟に身を翻した女神の肩に鋭い細剣の切先が突き刺さる。
剣身を濡らした血の色は朱く、女神の身体に流れる血が、人間のそれと変わらぬ事を言外に伝えていた。
大成功
🔵🔵🔵
地籠・凌牙
【乱入アドリブ連携諸々歓迎】
いよいよ黒幕のお出ましだ、どんな奴かと思ったら……ここまでくると哀れに思えてくるな。
だが、どんな理由であろうとてめえがこの島の人らにしてきたことは到底相殺できねえ程の業が積みに積もって戻れねえとこまできてるんだ。
罪のねえ島民を苦しめたその報いは神様だろうが何だろうが受けてもらうぜ!
【指定UC】を使用する。
憎悪の祈りでもいいっつったな、女神様?
じゃあお望み通りてめえがしてきたことに対する怒りを込めてぶっ放してやるよ!この島の人らの理不尽に髪を奪われてどんだけ苦しみ嘆いたか、やるせなさに憤ったか!この炎の熱で思い知りやがれ!!
肩に深手を負い、傷口から絶えず血を流す髪の女神の前に、粗野な雰囲気を纏う白髪の若者が立ち塞がった。
「黒幕がどんな奴かと思ったが……神様とやらも、ここまで来ると、いっそ哀れに思えてくるな」
地籠凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)の面(おもて)には人間の信仰を求めながらも恐怖による圧政という形でしか、それを得る事が出来なかった女神への憐憫の情が色濃く浮かんでいる。
「だが、どんな理由があろうと、てめえがこの島の人らにしてきたことは到底、相殺できねえ程の業が積みに積もって戻れねえとこまできてるんだ。罪のねえ島民を苦しめたその報いは神様だろうが何だろうが受けてもらうぜ」
本当は怪我した女を殴る拳を持ち合わせちゃいねえがなと独白しながら、凌牙は静かに武道の構えをとった。
「報いだと。何も知らぬ部外者が抜かしおるわ。元の世界から天災により切り離され、この強欲の海に落ちて来た島に庇護の手を差し伸べたのは他でも無い、わらわであるぞ。わらわは島民に庇護を与え、島民は代価として信仰を捧げる。それだけの事ぞ。島は、それで上手く回っておったのじゃ。貴様らが、わらわの信徒たちに手を上げて、島民たちを焚き付けるまではの」
凌牙の言に、女神は憎悪を込めた射貫くような眼差しを返す。
しかし、それで揺らぐような凌牙では無い。
「嗤わせるなよ。てめぇに都合の良い理屈ばかり並べやがって。じゃあ、なんで、他人の意思を奪って言いなりの人形に変えるような真似をした。てめぇが一番、他人の事を信じてねぇからだろうが。だから聞こえねぇんだ。大切なもんを無理矢理、奪われた奴の嘆きの声がな!」
黒竜の青年の一喝に気圧されたように髪の女神が後退る。
「憎悪の祈りでも言いつったな、女神様? じゃあ、お望み通り、てめぇがして来たことに対する怒りを込めてぶっ放してやるよ! この島の人らが理不尽に髪を奪われて、どんだけ苦しみ嘆いたか。やるせなさに憤ったか! この炎の熱で思い知りやがれ!!」
凌牙の身体を鎧(よろ)う黒竜の鱗が剥がれる。その下から溶岩の如くに噴き上がる紅蓮の炎は、若者の憤怒が苛烈な地獄の業火へと姿を変えたかのようだった。
「おのれ、小僧。時の彼方に忘却されし、わらわの千億の孤独。千億の嘆きが、貴様風情の嚇怒に劣る筈も無し! 髪鳴りよ、この痴れ者を打ち据えよ!」
女神が、漆黒の長い髪より呪詛の雷を放つ。
閃光と轟音が凌牙の肉体に直撃し、炸裂した。
しかし、紅蓮の炎はなおも勢いを衰えずに赤熱して燃え上がる。
「馬鹿な。直撃であった筈」
「はっ。呪詛だの何だのの穢れは俺の力の源だぜ。今度はこっちの番だ。受けやがれ。煉獄の黒き逆鱗(インフェルノ・ドラゴネスアウトレイジ)をなっ!!」
拳を真直ぐに突き出す動作と共に放たれた紅蓮の炎が、女神の身体を打ち抜いた。
大成功
🔵🔵🔵
ローズ・ベルシュタイン
【薔薇園の古城】メンバーで参加(計3名)
WIZ判定
アドリブ歓迎
■心情
ふう、とうとう髪の女神のお出ましですか。
私もいつも髪は大切にしていますわ、それを奪わせるわけにはいきません。
■行動
風が導く薔薇の舞踏(UC)を使用して戦いますわね。
ミネルバの巨大化した背中に乗って、敵へと接近しますわね。
敵が私の射程範囲に入ったらUCで攻撃。
【スナイパー】で狙いを定めた疾風を【衝撃波】も駆使して放ち
【マヒ攻撃】も織り交ぜて敵の動きを止めつつ戦いますわ。
薔薇の花弁が積もったら、その上に移動して戦闘しますわね。
髪縛いに対しては【電撃耐性】や【狂気耐性】で耐えつつ
避けられそうな攻撃は【見切り】で回避しますわ。
クラウン・アンダーウッド
【薔薇園の古城】で参加(計3名)
何とも可笑しな神様だねぇ。あぁ、信仰しているモノ(髪)のことじゃないよ。キミ(コンキスタドール)の在り方のことさ♪
ミネルバさん、この子(α)を貴女に預けます。α、しっかりお二人を援護するんだよ。
αはクラウンから預かった器物を首から下げ、味方と行動を共にする。
一人クラウンは相手を煽り、冷静さを失わせながら攻撃をオーラで反らして躱す。
過去の栄光にばかり固執する女神が今を生きる人を語り、あげく髪ある者の祈りを求めながら髪なき者を増やそうとする...何とも滑稽な女神様だねぇ♪
隙をみて相手を怪力で拘束し、仲間に自分ごと攻撃してもらう。
その後、器物から何食わぬ顔で復活する。
ミネルバ・アレキサンドリア
【薔薇園の古城】
ついに髪の神が出ましたわね。ハゲ頭にするのはラーメン屋さんだけで十分ですの。海の藻屑にして差し上げますの! 【聖竜降臨】!
ドラゴンオーブの封印を解いて聖なる竜に変身しますの(元々の身長の約150cmには尻尾は含まれていない)! ローズ様と、クラウン様のお人形を背中に載せて上空へと舞い上がり、【空中戦】で雷を避けながら敵に接近しますの。十分近づいたら【属性攻撃】。
ホーリーフレアブレスを吐いて髪(とクラウン様)ごと焼き尽くして差し上げますわ!
「ついに髪の神が出ましたわね。ハゲ頭にするのはラーメン屋さんだけで十分ですの」
ミネルバ・アレキサンドリア(自称「聖なる薔薇」のポンコツドラゴン・f17280)が猟兵の攻撃に傷付きながらも壮絶な神気を纏う髪の女神を見ながら呆れたように呟いた。彼女の贔屓にしているラーメン屋の店主は、如何やら頭髪が禿げ上がっているらしかった。
「何とも可笑しな在り方の神様だねぇ」
クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)が愉快でたまらないとでも言いたげな笑みを浮かべている。
道化師然とした青年の言葉に、ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)が静かに頷いた。
「確かに、そうですわね。長い間、支配されていた島の方々からすれば決して他人事では無いのでしょうけれども。私も髪を大切にしていますから。それを、奪わせるわけにはいきませんわ」
潮の香りを含んだ海風に、夕焼けの色を宿すローズの髪が軽やかに靡く。
「同感ですの。一刻も早く、あの髪の神とやらを海の藻屑にしてやりますわ」
ミネルバの掌中で、宝玉が不思議な光を放ち、輝いた。
それは彼女が自らの真の姿と力を封印した、ドラゴンオーブを解放した証である。
眩い光の奔流の中で、美しい銀髪の乙女の姿は、その頭部に二本の黒い角を持つ、優美なる銀色の竜に転じていた。
「我が背に乗るが良い。聖銀竜の翼が、汝らを戦場に導くであろう」
口調を尊大に改めたミネルバが、威厳たっぷりに翼を拡げて咆哮する。
「とても恰好良い御姿ですわね、ミネルバさん。それでは背中を御借りいたしますわ」
ローズが、軽やかに銀竜の背に跨った。
「キミたちが空から征くのであれば、ボクは地上からかな。せいぜい、道化師らしく振舞うとするよ♪」
クラウンは、自らがコンキスタドールに対する囮役を買って出ると、壊れた懐中時計の文字盤に視線を落とした。ふと何かを思いついたように手提げ鞄型の移動工房の中から一体のからくり人形を取り出す。
「そうだ。ミネルバさんに、この子を預けておくよ。α。しっかり二人を援護するんだよ♪」
クラウンの言いつけに特殊な機械装置を手にした可憐なからくり人形が、まるで人間そのものの所作で頷いた。
ミネルバは、鋭い爪の伸びた指先で器用に人形を受け取る。
「感謝しよう。では征くぞローズよ!」
「ええ。参りましょう。クラウンさん。御武運を」
薔薇騎士と銀竜と道化師の連携。薔薇園の古城が神殺しに挑戦する。
開戦の火蓋を切ったのはローズであった。
手にしたのは一輪の夕焼け色の薔薇。それは飛翔する銀竜の背にあって渦巻く大気に無数の花弁を可憐に散らした。
「薔薇よ、風に乗りて舞い踊りなさい!」
慎重に獲物に狙いを定めた熟練の狩人が放つ矢のように、薔薇の花弁と共に放たれた衝撃波が、地上から伸びてきた女神の髪を撃ち落とす。
「おのれ。神たるわらわを人間風情が見下ろすか。不敬者が!」
怒髪天を衝くの言葉の通りに髪を逆立たせて怒り狂う女神の一喝が、漆黒の髪に邪気の雷を纏わせた。
鎌首をもたげた大蛇のごとき雷が、ミネルバを空の高みより撃墜せんと放射される。
ミネルバは雷鳴響く空を巨大な翼で打ち据えながら飛行し、それを避けていく。
「たわけめ。雷の速度は音速の四四〇倍。何時までも躱し続けられる道理なし。墜落(おち)るが良いわ!」
幾条もの雷の間を縫うように飛翔する銀竜の巨躯。それを、ついに激しい閃光と轟音とが捉えるかに思えた瞬間。ミネルバの手の中に納まっていたαが、今こそ出番とばかりに機械装置を起動させた。
それは球形の障壁を展開することで、あらゆる攻撃を阻むバリア発生装置である。大気という厚い絶縁体をすら破壊する一億ボルトの電圧と、一ギガジュールにも及ぶエネルギーの塊をして、その障壁を破壊する事は出来なかった。
驚愕に身体を硬直させた女神の身体を、ローズの衝撃波が弾き飛ばす。
「ぐっ……おのれっ!」
雪のように降り積もる薔薇の花弁に埋もれるように倒れ伏す髪の女神。その前にクラウンが数多の人形たちを従えて、嘲るような笑みを浮かべながら立っていた。
「過去の栄光にばかり固執する女神が、今を生きる人を語り、あげく髪ある者の祈りを求めながら、髪なき者を増やそうとする。キミは何とも滑稽な女神様だねぇ♪」
クラウンの言葉に賛同するように楽団人形たちが明るくも調子外れな旋律を奏でる。
「おのれ。貴様も、わらわを愚弄するか!」
憤怒の叫びと共に伸びた黒髪が、身を翻そうともせずに佇んでいる薄ら笑いの道化師の身体を拘束した。
身体をきつく締め上げられている当人は、
「おや。捕まちゃった。これは大変♪」
と、他人事のように暢気に笑っている。人形たちは、大変、大変とでも言うように両手を挙げて周囲を走り回った。
「わらわを愚弄した報いを受けよ。このまま絞め殺してくれるわ。髪によって死ねるのじゃ。本望であろ?」
「そうだね。髪によって死ねるんだから。本望だよね♪」
「なっ、ぐっ……あっ……い、痛い……!」
女神が苦痛に顔を歪めた。彼女の意のままとなる筈の自慢の黒髪。無礼な道化師を絞め殺す筈のそれが、今はまるで自由とならずに、逆に強く引っ張られる形で女神の枷となっていた。
見れば、人形遣いの指から伸びた操り糸が、黒髪に複雑に絡み付いている。
怒りに我を忘れ、道化師の術策に陥った事に今更ながらに気付く女神の耳に、大気を裂く銀竜の咆哮が轟いた。
悠然と舞い降りるミネルバの口腔には銀色の光の粒子が収束している。
「決着、ですわね」
夕焼け色の薔薇が降り積もる地面へとローズが降り立った。その手には黄昏の輝きを剣身に秘めた魔法の長剣が握られている。
「せめて、あなたの魂に救いがありますように。心から祈りますわ」
深い憐憫の眼差しで女神を見つめた。
「待てっ。髪ある者が、髪の女神たるわらわを害そうなどとっ。呪われよ。貴様も禿になれ!」
「生憎だが我が真の姿は聖銀竜。角はあっても髪はない。髪の女神よ。そなたの呪いは我には効かぬ。さらばだ」
ミネルバが、その口腔内に凝縮し、収束した聖竜の吐息を解放した。
邪気を焼き払う聖性を帯びた灼熱の奔流が、女神の身体を包み込む。
当然のように髪に捕らわれたままのクラウンも一緒に巻き込まれた。
「おのれ、おのれぇぇぇ……!」
全身が焼け爛れながらも、なおも足掻く女神の生命を絶つ決着の一閃。ローズが振るった長剣の一撃が、女神の肉体を両断する。
聖なる銀竜の吐息と薔薇騎士の掲げる剣。それが永きに渡り神無島の住人を苦しめてきた女神を屠る解放の一撃だった。
女神との激闘の後。
「クラウン……いいえ。クラウン様。おもしろい方を亡くしましたの。わたくし、あなた様の事は忘れませんわ……」
ミネルバは女神を倒すために、その身を犠牲としたクラウンを思い、涙した。
地平線の彼方に太陽が没していく。暖かな夕焼けの空に、クラウンの笑顔が浮かんだ様な気がした。今、光った一番星は、もしかしたら天に昇っていく彼の美しい魂の
輝きなのかも知れなかった。
「さて。それじゃあ勝利の宴といこうか。そうだ。キミたちはオウムガイを食べたことがあるかい?」
「思えば髪の女神も悲しい存在でしたわね。ですが島民の皆さんが救われて良かったですわ。けれど、オウムガイ……? クラウンさん。もしかして、あの巨大なオウムガイを食べようというのですか?」
「大丈夫だよ。ちゃんとηが味見をしたし。毒も無いよ。あ、ところで。おーい。ミネルバさん。何時まで空を見てるんだい?」
何時の間にやら、クラウンは無傷で復活していた。ローズも特に気にした風もなく、勝利の報告を島民に届けるために歩き出している。
ミネルバは竜の力と姿を再び宝玉に封じ込めながら溜息をついた。
「まあ、最初から判ってはいたのですけれども。もうちょっと死闘の末に星になった戦友を思い涙する薄幸の美少女ヒロインの気持ちに浸らせて頂きたかったですの」
「アハハ。ごめんね。確かに良く考えると、宴が始まってからサプライズとして登場する方がショーとしては面白いかな。今度から、そうするとしよう♪」
三人は笑いながらお互いの無事を喜び、そして勝利の余韻を噛み締めた。
行く手からは、解放に沸く島民たちの歓声が聞こえる。
もう、この神無島において誰かが無理矢理に髪を奪われるという悲劇に見舞われる事は無いだろう。
猟兵たちはコンキスタドールに支配された島のひとつを見事に解放したのである。
大成功
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