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暗色の空から

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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 島がある。
 山なりのフォルムは森が多く残り、海に面した部分は魚港とするために拓かれている島だ。
 とはいえ、その他の部分は手付かずが多い。港に隣接する部分は石造りの町として体裁は整えてあるが、あとは小さな集落が点々としている閑散ぶりだった。
 それも、どことなく暗い。
 空には厚い雲が鈍く広がり、真昼だというのに太陽の光を地上に降ろさなかった。だがそれも珍しい事ではなく、この島ではそれが常なのだ。
 人々はその中で、遥か遠く、晴天の下の海面にきらめく太陽の反射を、羨望の視線で見る。
 いつか、あそこまでいけるだろうか。閉ざされた島から出立し、あの光を浴びれるだろうか。
 ──それは叶わない。
 視線の先にある光は、一隻の船に歪まされているのだから。
「……定めに従い沈める。反論など無駄だと、何故学ばない」
 あれこそが島を縛るコンキスタドール。
 目と鼻の先にあり、しかし、人々を襲わないおかしな存在だった。
「お前こそ学べよ町長。毎回毎回、適当に見繕った奴を海に流して生け贄にして、それで見逃してもらってるなんて……そんなの、生かされてるだけの死人と同じだろうが!」
 いや、正確には、人々を緩やかな速度で殺そうとしている存在だ。
 その気になれば半日と持たず島の生命は根こそぎ消せるコンキスタドールは、何時からか、少数の島民を犠牲とさせる事で多数の島民を見逃す動きを見せていた。
 そうして長い間を縛る事で生まれるのは、住人同士の軋轢だ。
「多くの命を優先して何が悪い!」
「それじゃあ何も変わらないだろ!」
 生け贄を出す、出さないで言い合う二グループはにらみあい、言葉で済まなくなると乱闘に発展する。
 そもそも、コンキスタドールが「生け贄が有る限り手を出さない」と定めた訳ではない。
 だが生け贄を出す限り襲われる事はなく、逆に生け贄を出さなかった時は、聞くもおぞましい声を上げる化け物が襲い掛かって来たこともあった。
 結局の所。
「このままじゃ、俺達ぁ、アイツに飼い馴らされ死んでいくだけだろう……!」
 相手の気分次第で、明日にも壊滅しておかしくない日々だった。
 それでも、一瞬先の生を求めて、人は助命の命を捧げようとする。
 そんな綱渡りを繰り返す場所は、ベルクト島と、そう名付けられていた。


「未開拓の島を見付けたら名付け人になってもいいと思うんだけどさぁ」
 そんな言葉を始まりにした肆陸・ミサキ(想いを貫く・f00415)は、グリモアベースに居た。
「まあ冗談は置いておくとして、オブリビオンの情報だよ。場所は、グリードオーシャンの小さな島だ」
 その島の海は凪いで、一年を通してジメッとした空気が続く、見た目も雰囲気も暗い島だという。
 今その島はオブリビオンである船に監視され、一時も緊張感を解けない状況にある。当然、人々の心は押し潰されそうな不安の渦中だろう。
「ほんとは、僕が直接、送り込んであげたいんだけど……なんか、今回はグリモアの調子が悪くてさ。島まで、鉄甲船で向かって欲しい」
 まず優先してやらなければならないことがある。
 いいかい? と、そう前置きしたミサキは人差し指を立てて言う。
「今、島の人たちが揉めてる。それこそ、何かのはずみで殺してしまいかねないくらいにね。それじゃあ島を解放したって意味が無いんだ」
 恨みや憎しみは消えない。
 どんな理由があって、それを正当化しようとしても、感情の部分で納得出来る訳がないのだから。
 だから。
「まず争いを止めて。それから、島を縛りつける敵をぶちのめす。そうすれば、晴れて、島は解放ってわけさ!」
 言うほど簡単ではないだろうが、しかし、無理なことではないはずだ。
 そう言ったミサキはクスッと微笑むと、
「じゃ、そういうことだから……よろしくね?」
 猟兵達を送り出す動きを始めた。


ぴょんぴょん跳び鯉丸
 新世界なので早速冒険と行きます。
 とりあえず島の人たちをなんやかんやでおとなしくさせることから始めましょう。
 敵は、島へ来るものは拒まないが去るものは決して許さないタイプなので、上陸するのに支障は無いでしょう。

 なのでまあ、とりあえず、目の前の問題から解決する、という感じで。
 よろしくお願い致します。
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第1章 冒険 『街角大乱闘』

POW   :    真正面から乱闘に飛び込み、次々に相手をぶっ飛ばす

SPD   :    素早く相手の急所を突き、戦闘不能に追い込む

WIZ   :    簡潔かつわかりやすい言葉で、乱闘を止めるように説得する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「誰も失わせねぇ! 絶対だ!」

「失うんだよ、このままでは、全員な!」

 主張のぶつかり合いは、鈍い響きのオーケストラになる。
 殴り、殴られ、蹴り蹴られ、端は凶器すら持ち出す始末だ。
 それがあちらこちらと、小さい漁港の街で起こる。

 狭いとはいえ街の広さ、なだめて止めるには、手分けした方がいいかもしれない。
橘・焔
〇心情
さて、荒れた人心を宥めるには…
結論:『物理で殴る、迅速かつ的確に』だ

〇行動
「まぁまぁ皆さん、文明人らしくまずは落ち着いて…」
緩い空気で混乱の渦に割って入るも多分聴いてはもらえない
「…いや、だから少し冷静に…」
お子様の堪忍袋の緒はそんなに長くないワケで
「……、もう怒った!」
早くない?もう少し文明的な解決を…

召喚したインフェルノに飛び乗り、思いっ切り空吹かしたエンジンの爆音を皮切りに群衆へ突入
まず揉み合いになった集団、次に武器を持った危険な奴、そして冷静さを欠いた者…
バイクに跨り、鈍器と化した鞄を担いで啖呵を切る
「話を聴かなかったあなた達が悪い。さて、話を聴くか打ちのめされるか、…どっち?」


節原・美愛
よーっし、喧嘩と聞いちゃ黙ってらんない!
乱闘だって上等よ、私が全員相手してやるわ!

…そんなわけで、【POW】で行くわよ。
乱闘が一番激しい所のど真ん中に飛びこんで、手あたり次第にぶっ飛ばす!
"見切り"と"野生の勘"で身を躱しながら、"怪力"でね!
さあ、次の相手は誰!?どんどんかかってきなさいな!!

まずは生贄賛成派VS反対派の構図を崩して、私VSみんなにする。
それで皆、思いっきり力いっぱい暴れてスッキリすれば、少しは話を聞く気になるでしょ。
(というのは建前で、実際は喧嘩・乱闘騒ぎに交じりたいのが一番の理由。
乱闘中は凄く楽しそうにしています。)


響・夜姫
※なんかよくわからないけどペンギンの行動そのものや、行動した結果が作用して理不尽に描写上勝利するユーベルコード

「ぺんぎんさん、参戦。じごくを、たのしみなー」
大乱闘でスマッシュな連中と拳で語り合ってブラザーになる。
ぺんぎんさんなら多分太極拳とか八極拳とかで制圧できる。
飛んできたキツツキが爆発したりするかもしれないけど、
とりあえず【念動力】とか【ロープワーク】で無力化して転がしていく。
時々私の銃とサバーニャも使って【制圧射撃/一斉発射】。
【気絶攻撃】だから誰も死なない。たぶん。
「ぺんぎんさん、サバゲーも強かったから」

私とメンチ(バディペットその2、どらごん)は近くでご飯食べたり飲み物飲んだり。


セフィリカ・ランブレイ
潮風はいいねえ、シェル姉、錆びたりしないでね?
喋る魔剣の相棒に軽口
お前のゴーレムにこそ防錆処理しておけ?
これは痛い返しを!

なんて言ってるうちに上陸!


【SPD】
犠牲を少なくしたいという判断も、そんな悪習に反発する気持ちも、わからないでもない

何とか怪我なしでお互い止めたいよね
魔剣を振るい、異次元の中に隠された巨大格納庫への穴を作る

これぞ全身に火砲を装備した超巨大要塞型ゴーレム!ヤバい殲滅力のうかつに使っちゃいけないアイツ!
空に向けて空砲!住民たちの注意を引く

「ね、話聞いてくれない?私、あなた達と敵対する気はないんだ。沖のアイツをやっつけに来たんだ、情報、くれない?」
と、人懐っこい笑顔で問いかける


ラザロ・マリーノ
【POW】
理由がなんであれ得物を持ち出す程こじれちまったら、そう簡単には収まらねえよな。
命が懸かってるなら、なおさらだ。

ここは一つ派手にいくか。
俺が標的になるよう挑発して、出来るだけ大勢を巻き込んで暴れるぜ(大声/挑発/おびき寄せ)。

向こうの攻撃は躱さず受ける。勝つのが目的じゃねえからな。
とはいえこっちも反撃はさせてもらうが…素手で殴るくらいなら死にゃあしないよな(怪力/継戦能力/オーラ防御/激痛耐性)。

まあ、力尽きるまで暴れて怪我の一つでもりゃ、少しは頭も冷えるだろ。




 上陸した面々は、思い思いに散っていく。
 桟橋は真っ直ぐに、石畳に均された陸地に至ってから、怒号が聞こえるあちらこちらに、だ。
「さてと」
 小走りに去っていく中、一人、緩い歩み真っ直ぐ歩き続けるのは、今は手ぶら状態の焔だ。
 正面、下ろした魚を仕分け等する作業場があり、今は人は居ないが、しかし声だけはうるさいくらいに聞こえてきている。
「奥かな」
 詰所か、もしくは休憩所や事務所だろうか。
 何れにせよ、
「荒れた人心を宥める方法……物理で殴る。迅速、かつ、的確に、だ」
 グッと握った拳を振って、焔は声の所在へと進んでいった。
「はぁー理解力の足りねぇ奴ぁ網も竿も銛も下手くそだもんなぁ!」
「漁に限らず社会なんてのはなぁ! 考えてる間に終わっちまうんだこのタコ!」
 まあ、結果から言えば、確かにそこに争いが起きている。ただし思っていたよりは話し合いの最中で、一触即発に変わり無いものの、どちらかと言えば普通の罵り合いだった。
 生け贄に賛成派、反対派に別れていて、どちらがどちらなのかは判断出来ない。する必要もないだろうが、ひとまず焔は中に割って入っていく。
「まぁまぁ皆さん、文明人らしくまずは落ち着いて──」
 やんわりとした笑みだ。警戒と怒りを解くにはまず雰囲気から崩さねばなるまい。
「なんだこのチビ、あっちいって遊んでろ!」
「すまんね娘さん、今難しい話しているから出ておいで」
「なぁんも難しくねぇよこのトンチキがよぉ!」
「ああ? そりゃテメェのこったろアホが!」
 やはりというか、聞く耳持たない集団に、焔は弾き飛ばされた。蚊帳の外へ放り出された、と言ってもいい。
「いや……だから……少しは冷静に……」
 それでも再アタックを掛けた彼女を褒めるべきだろう。近づくと弾かれ、後ろへ飛ばされる様に数歩を刻む。
 緩やかだった笑みを徐に真顔へ変えて、ふぅ、と一呼吸挟んだ少女は、赤いマフラーを口許まで引っ張り上げる。
「……インフェルノ、来て」
 おこ、である。
 召喚したバイクに備えた鞄を手に取り、流れる様に座へと跨がった少女は、足でブレーキを効かせながらアクセルを全開にする。
 計器がエンジンの回転数の上昇を知らせ、それに比例して大気を震わせる音は強まっていき、そして。
「──フンッ!」
 突撃した。
 真正面からではなく、斜めに。大きな迂回の軌道で走り、十分な加速を得てからの突撃だ。
 突っ込む直前で後輪を滑らせ車体を横向きにし、その体勢のまま行く事で巻き込む数を増やした。
「お、おいなにす」
 抗議の声は鞄の角でぶちのめす。
「てめぇいきなり」
 抗議の声を鞄の角で叩き潰す。
「き」
 ムカついたので殴り飛ばす。
「話を聞かなかったあなた達が悪い」
 焔の中では、既に正義は自分にある。だって私は文明的な解決をしようとしたもん。と。
 全く耳を貸さなかった大人達には力で示すしかない。
 だから彼女はそうして、結果静まり返った大人達にインフェルノの上から見下ろして一言。
「話を聞くか打ちのめされるか、選んで」
 返された答えは、言うまでもなかった。


「……ははっ」
 鈍い音のする広場だった。
 向かい合う人々は、目に映る相手が倒れ伏すまで、握った暴力を行使しようとしている連中だ。
 だから肉を殴る音がそこたら中から響いてきたし、時たま金属音がなっているのは武器の打ち合いによるものだろう。
 そんな中を、美愛はうすら笑みを浮かべて混じっていった。
「喧嘩と聞いちゃ黙ってらんないよ! 乱闘上等、私が全員纏めて相手してやるわ!」
 いやだって落ち着かせないといけないし。そう、これは攻撃する対象を自分に集めることで、結果的に争いを止められるという、そういう作戦なのだ。
「だからさっさとかかってきなさい!」
 まず一撃。
 軽く開いた手のひらを、適当な相手の腹へぶちこむ。腕は緩く曲げて溜めを作っておき、一拍入れてから前への踏み込みと同時に思いきり打ち伸ばす。
「ぉ……!」
 すると相手は、くの字に曲がった体を宙に踊らせて吹き飛んだ。それは殴り合う人々を巻き込んで倒れ、争いの中を掻き分けた。
「さあ、次は誰がぶっ飛ばされたい?」
「…………お、お前誰だよぉ!」
 人々からしたら、急に出てきた変な女だ。しかも、大の大人を軽く吹き飛ばしてもなお、有り余る力を持った化物みたいな。
「あはっ」
 しかも、賛成とか反対とか関係なく、見境ない暴力を振るう相手なのだ。
 必然、どちらかの仲間かもしれないが、まさか自分達の仲間では無いだろう。
 と、そんな心理が働き、そうなると。
「全員で来なさい……!」
 囲まれる。だが相手は連携なんて意識しない素人。前後左右から押し込めらたとしても、程度が知れていた。
 だから、美愛は跳んだ。
 跳躍は真っ直ぐに上へ。押し寄せる人達を軽く越す程の高さで、攻撃対象を見失った群れはぶつかり合って揉みくちゃになる。
「軽い軽い!」
 後はそのまま落下するに任せて人の頭を蹴り倒しながら包囲を抜けていく。
 外周まで逃げれば地上に立って、初撃と同じようにぶっ飛ばしの掌底をぶちこむだけでいい。
 それだけで、固まりあった人達は、自分達の密度のせいで絡み合って倒れてしまう。
「ふふ、計算通り!」
 難を逃れた住民達の拳を掻い潜りながら彼女は笑う。
 思惑通り、この場の全員と喧嘩出来る。そんな、ただ単に乱闘したかっただけという本心を、隠そうともしていなかった。


 夜姫は、建物の屋上で優雅に紅茶を啜る。
「うん、美味しい。紅茶には空気を含ませるといいらしいから」
 足元には、背伸びしてティーポットから注いだ際に弾け飛びまくった飛沫が残っているが、それはそれ。
「めんちも飲む?」
 対面に座るペットのドラゴンは、その提案を半目で見てから無視して、おやつであるジャーキーをもしゃもしゃと咀嚼していた。
 ふ、くーるな奴め。
 とは内心で告げ、不意に視線を縁から下へ覗き込む。
「なんなんだこい、つぅわー!」
 そこには、大柄な男を容易く吹き飛ばす謎のペンギンが居た。
 大振りな殴りかかりを、ヒレのような腕で内から外へ流すように弾き、その動きで懐へ入り込んだらそのまま、肩からぶつかるようにして一撃を見舞う。
「たぶん、あれだよ、太極拳とか八極拳とかそういうの。しらないけど」
 このペンギン、相当に強い。
 それもそのはずで、夜姫は何も怠惰やサボりで優雅なティータイムをしているわけではない。
 これは、代償なのだ。
 自身の戦闘力や、この戦闘においてなんの貢献もしないことに比例して、ペットであるペンギンの能力にプラスの補正が掛けられている。
 だからまあ、文字通りに高みの見物を決め込むのは仕方の無いことであり、ペンギンのために彼女は仕方無く紅茶を啜っているのだ。
 本当か?
「まあ、ふぁい、とー」
 夜姫は、応援と共に二丁の銃を雑に放り投げて落とす。
 それは、縦に回転しながら落下していく。地面に激突する寸前でキャッチしたペンギンは、持ち上げる流れでトリガーを引いた。
「ぐぁ……ッ」
 重音が響き、撃ち抜かれた男が倒れる。
 実弾ではない。ではないが、端から見る限りではまるで絶命したかのような倒れ方だった。
 故に、周りの住民は恐怖と怒りがまぜこぜになってしまう。身近にある死と、それを突き付けられた不条理に、だ。
 そうなると、人がとる行動は二つだ。
 殺られる前に殺る。つまり突撃行為と、逃走行為だ。
 だがペンギン側としては逃がすわけにはいかない。しかし夜姫の助力を期待するわけにもいかない。というか、夜姫側にその気がないのだ。
 割りと信頼されている。いい方向に解釈して、ペンギンはまず迫る男に向かい合う。
 今居る場所は一本の通路だ。そこそこ幅員は広く、相手が三人並んで立っても余裕がある。
 そして、相手は前後に配置されていて、逃げ勢と挟撃勢があり、回避しながら逃げる相手を仕留めなければならない。
「──!」
 大振りの拳は、体格差のために自然と振り下ろしになる。だからペンギンはそれに対して跳ぶ回避を行って、腕に乗って登り駆けた。
 足裏で相手の顔を踏みつけ、更に高く行き、体を逆さまにする縦の動きと横への回転を捻り込んで、
「ぎゃ!」
 弾丸をばらまく様に射撃した。
 前後へ走り去ろうとする背中だ。二丁を左右へ伸ばし、回る流れの中で撃ち倒す。
「ぺんぎんさん、サバゲーも強かったからね」
 鮮やかな手並みを見下ろしていた夜姫は、ぱちぱちと軽い音の拍手を送っていた。


 海から香る潮の気配に、セフィリカは体を伸ばす。
 ほわほわとした暢気な雰囲気は、荒々しい街の気配の中にあっても揺らぐことはない。
「潮風はいいねぇシャル姉。あ、錆びたりしないでね?」
 手入れは嫌いじゃないけれど、と、そんな軽口は、腰に下げた剣に向けられている。
 朗らか過ぎる言葉にその剣はため息を吐く様な声を発して言う。
「お前のゴーレムにこそ、防錆処理を施しておけ」
「ありゃりゃこれは痛い返し!」
 しかしまあ、街中で剣を活躍させるつもりはない。その点で言えば、気を使うべきは、使用予定があるゴーレムなのは間違いないだろうが。
「ちょっと使用はするから、一応ね」
 一息を入れて、今、街の広場で取っ組み合いに発展した人達を見た。
 まだ本気ではない。
 ……と、思う。
 でも時間の問題だよねとも思うので、これ以上はゆったりしていられない。
「犠牲を少なくしたい判断も、悪習に反発する感情も、わからないでもないし、ね」
 怪我無くこの場を納められるのが一番だ。そう考えていたセフィリカは、魔剣であるシェルファを抜いて、頭上を弧に切り開いた。
 そうして起こるのは空間の揺らぎだ。
 いや、時空の歪みと言っても良い。
 別次元に格納されていた、要塞型のゴーレム。其処と此処を繋ぐゲートをその場に作り上げたのだから。
 まあ作ったと言っても、要塞程の巨体故に全身を喚べるわけではないのが難点ではあるのだが。
「というか殲滅力に極振りし過ぎててここじゃ迂闊に使えないやーつ!」
 ではどうするのか。
「お空にどーん!」
 そうした。
 幾つもの砲身が次元の穴越しに空へ向けられ、一拍の後に炸裂する。
 空砲ではあるものの、大きさに比例した発砲の音は街そのものを震わせ、争っていた人々が目をまん丸にしながらセフィリカを見た。
「あー、あー、こほんこほん」
 注目を浴びた彼女は、軽く咳払いをした後ににっこりと笑顔を浮かべて、
「ね、話、聞いてくれない? あなた達と敵対する気はないんだ」
 むしろ沖の船をなんとかしたいと告げる。
 巨大要塞をバックに微笑むそんな相手に、人々は震えるように首を縦に振るしかなかった。


「理由がなんであれ、得物を持ち出す程こじれちまったら、そう簡単には収まらねえよな」
 突き付けた攻撃の意思を、静かに戻すことは難しい。いや、簡単な筈だ。しかし、感情や状況で、後に引けなくなるというのは多い。
 あちこちで戦闘の代役をこなすこともあるラザロとしては、よく見るタイプではあった。
「命が懸かってるなら、なおさらだろう」
 結局の所、問題を解決しない限り、この争いは終わらない。
 しかし問題を解決するのは彼らでは無理だ。
「つまりいつも通りだな」
 自分なら出来る。いつもと同じやり方で、問題の排除をしてしまえば、それで解決だ。
 だから、その提案をするためにまずは、目の前の相手達を鎮めることから始める。
 大きく息を吸い、仁王立ちすべく足を開いて立ったラザロは、
「うるせぇ腰抜けども!」
 ビリビリと空気を震わせて言った。
「ピーピー喚いても変わらねぇ、押さえ付けたって変わらねぇ、やりたきゃ行動しろ脳足りんどもが!」
 安い挑発だとは思う。
 だが、頭に血が上った相手にすれば、これほど分かりやすい事は無い。
 売られた喧嘩は買うのだ。
「なんだとてめぇ!」
 握った拳を向ける矛先をそちらに変える、それだけのこと。
 一斉に寄ってくるその姿にラザロは笑い、腰を落として待った。
 身体の、芯の部分から広げる様にオーラを充足。培った肉体を更に頑強へと変え、振るわれる暴力を迎える。
「──!」
 漁港という特徴から、この場には漁師が多い。常日頃から体を使う彼らは人並み以上の力を備えている。
 とは言え、尺度を人として、だ。
 ラザロの強さは人と比べるべくもない。
 故に。
「さて、反撃するぞ」
 雑に横へ腕を払う。それだけで寄ってきた男達をなぎ倒した彼は、一歩を重く、前へ出る。
 ……まあ、素手で殴るくらいなら死なない、だろうな?
 若干不安だ。だが多分大丈夫だろう。そのはずだ。いけるいける。
「力尽きて、頭冷えるまで付き合ってやる。ただし、怪我は自己責任でな」
 拳を額で砕いたラザロは、その場の全員とやり合うことになった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『呪われた船首像』

POW   :    まとわりつく触腕
【下半身の触腕】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    掻き毟る爪
【水かきのついた指先の爪】による素早い一撃を放つ。また、【自らの肉を削ぎ落す】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    呪われた舟唄
【恨みのこもった悲し気な歌声】を聞いて共感した対象全てを治療する。

イラスト:Kirsche

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「──」
 声がする。
 争いを止め、冷静になりかけていた人々の前に、それは響いた。

 甲高い音だ。

 重くて鈍い音だ。

 それらが混ざり合った不快な音だ。

「Aaaaa!」

 それは、異物に対して強い嫌悪を示していた。

 それは、つまり猟兵に対して、だ。

 奴等は、悪夢のサイクルを止める存在を排除するために、現れたのだ。
節原・美愛
うーん、烏賊のような蛸のような、妙ちきりんな姿。
歌もなんだか陰気な感じだけど、どうせなら楽しくやりましょ!

舟唄に合わせて妖弦"猫三味線"(偽)をかき鳴らし、「怨嗟の鳴き声」を発動!
激しい"パフォーマンス"で興味を引きながら"呪詛"の音色を届けて、
怒りに我を忘れた集団との殴り合いに持ち込むって寸法よ。
まあ、私は"狂気耐性"があるから平常心のままだけど。

恨みの歌に怨嗟の音色は相性がよさそうだし、与える怒りもきっとかなりのもの。
頭に血が上って突っ込んでくるだけの相手なんて、野生の猪よりも簡単な相手よね。
三味線で思いっきりぶっ叩いて、のしいかにしてやるわ!


セフィリカ・ランブレイ
《完全に黒船来訪者だったわよアンタ》
「はははシェル姉ってば褒めるのが上手!」

ぽかんと見上げる住人たちを思い出しながら、相棒の魔剣と軽口


こっちから出向く手間が省けたけど、街中にこられちゃゴーレムを暴れさせるのもちょっと不味いか
しゃあない、シェル姉!ここは私達の出番だよっ!

「ここは私たちが引き受けるから、皆は安全な所に逃げてね!」
まだ住民がいれば、避難を促すよ

【SPD】

魔剣を携え、敵の前へと立つ
相手は早いし、まだ早さの神髄を見せてもいない
そんなスピードの世界に付き合ってやる義理もない。【夕凪神無ー柳布式】

静かに深呼吸し、集中

これは受け流し、相手の力を利用して反撃する構え
さ、どこからでもどうぞ?



 軽く曲げた膝を伸ばす動きで、美愛は後ろへ跳んだ。
 その直ぐ後から、空を泳いだ何かが彼女の足元に激突する。
「うーん、烏賊……蛸……?」
 ぬるりと立ち上がる姿を見て呟く。首を傾げて見直してみると、上半身と下半身で種族が違う感じだと感じる。
 妙ちきりん。
 評価としてはそんな程度だ。
 蒼白な肌と滑らかな復脚、それから嘆きを吐き出す黒い口腔が見えて。
「なんだか陰気な見た目ね、どうせなら楽しくやりましょ?」
 ふっ、と息を吐いた美愛は、三味線を構える。軽く弦を上側で一本押さえ、爪弾きで震わせる。
「そっちも悲しげだけど、これも結構、鳴くわよ」
「Ghu……!」
 跳ぶ。
 方向は後ろへ、群れで泳ぎ寄ってくる敵と一定距離を開けるように意識する。
 そのぶつかりを拒否する最中に、指だけは忙しなく働かせ、相手の発する声に重ねた音を掻き鳴らした。
 後ろへ。
 離れ、追われ、背後に壁が迫って美愛は斜めに軌道を修正。
 小刻みにステップを刻むことで進路に丸みを与え、円になるようにする。
 焦れったいダンスだと、そう思う。
 しかし、そうしてまで続けるのは、理由がある。
 美愛の奏でる音色は、本人の技量によるモノではない。正確な所は、三味線の材料にされた猫の怨念が基にある。
 そしてその念は、聞かせた相手のメンタル部分に揺さぶりを掛け、沸き上がる感情に思考を支配させるのだ。

「A──!」
 あらゆるモノに対しての怒りが、そこにはあった。
 発端は、忘我の彼方に消えてしまったけれど、それでも確かに残っていて、だから暴力を振り撒く存在となってしまっていて、それから。

「!」
 衝突の音が鳴った。
 美愛が、振り上げた三味線の先を、敵の頭頂部にぶちこんだ音だ。
 上から下へと全力で、相手の顔面から地面にめり込ませる様にして叩き伏せる。
「単純な相手ほど叩きやすいのは居ないわ」
 振り上げて、ぶちこむ。
 測った距離を保ち、ただ処理していく。
 三味線の奏でる音は、震える波ではなく、鈍く潰れた音になっていた。


 前後に視線を感じながら、セフィリカは港へ続く階段の上に立っていた。
 目の前、踊り場を一つ設けた階段には、近寄ってくる敵の姿。
 後ろには、近寄ってくる恐怖の対象を窺う人々の怯える姿。
『さっきの、完全に黒船来訪者だったわよアンタ』
「え? ははは、シェル姉ってば褒めるのが上手!」
『ポジティブって美徳だと思うわよ、度が過ぎなければ』
 抜き身で持った魔剣のツッコミに笑って答え、彼女は段を降りていく。
「あ、ここは私達が引き受けるから、皆、安全な所に逃げててね!」
 ついでに振り返る横目で忠告を送り、挨拶変わりに片手を上げて行った。
 一定の速度で降りる彼女に気付いたコンキスタドールは、一直線の肉薄を最速で行う。
 ……速いなぁ。
 一息の間も無く到達するだろう相手に、冷静に考えた結果を思ったセフィリカは、だらりと両腕を垂らして待った。
 赤い爪を左右に広げ、十指の切り裂きをクロスさせる攻撃を、だ。
「いける?」
 当たる直前、ただ持ち上げた剣で受け止めた。
『誰に聞いてる』
 攻撃の威力に、腕が跳ね上がり、上体が後ろへ反れる。その瞬間、切っ先は地面へあった。
「すぅ」
 袈裟に両断した敵を跨いで降りて、踊り場へ。正面と左右から来る敵の気配に息を吸い、
「ふっ」
 先に来る左からの爪を肩に受ける。勢いに逆らわず、柔らかく、方向を合わせる様に体を回して、刃を水平に一閃させて右の相手を絶つ。
 右足を半歩下げて重心を傾け、上体が捻れた辺りで制止。戻す反動を付けて軌道をなぞる動きで正面を斬り裂いた。
「!?」
 攻撃したコンキスタドールは、自身をまるっきり無視した挙げ句に二体を斬り殺したセフィリカを見て困惑する。
 ゆらりと向き合う方向転換をしたソイツは、ゆるりと歩を進めて距離を詰めていく。
「どうしたの」
 後退りする間合いが縮まっていく。
 浅い笑みを浮かべた剣士は無防備に見せた臨戦態勢で言うのだ。
「さ、どこからでもどうぞ?」
 と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

響・夜姫
・POW
連携・アドリブOK

「何か出てきた。美味しくはなさそう」
船首像の胸部を凝視し「……ぎるてぃ」
判定は厳しめ。とりあえず、焼く。
「ふぁいやー」
二挺の銃と、16門の砲口を向け、
【範囲攻撃/2回攻撃/誘導弾/一斉発射/制圧射撃】といった広域殲滅できそうな技能全部乗せで華焔。
触腕攻撃は自分と言う拠点をサバーニャを盾にして【オーラ防御/武器受け/拠点防御】。
「お前が、泣くまでー。撃つのを、やめないー」

倒すまで撃つ。そんな感じ。
【援護射撃】で他の猟兵の為に牽制したり隙を作ったりもする。

倒したら、とりあえず触腕を食べられるか調べてみよう。
「めんち。食べられそう?」
……。
そっかー。


ラザロ・マリーノ
もう集まってきたのか、対応が早いな。
まあ、みんな揃って暴れたからなぁ…そりゃ目立つか。

雑魚はパッと片づけちまいたいところだが、数が揃うと面倒そうな能力を持ってやがるな。
この後メインディッシュも控えてることだし、多少の怪我は仕方ねえか。

タワーシールドを構えて敵の群れに突入(ダッシュ/盾受け/オーラ防御/激痛耐性)。
味方を巻き込まない位置まで来たら「竜の咆哮」で一網打尽にしてやるぜ!(おびき寄せ/衝撃波/大声)


橘・焔
〇心情
『…ッ!?お出ましか、こうしちゃいられない…!!』

〇行動
「とりあえず今は馬鹿騒ぎする前に自分の身を守った方が良いよ」
仲介を一旦中断し、音のした方へ愛機を走らせる
移動中遭遇した住民達には自分が来た方向へ逃げるよう強めの指示を飛ばす

「…アレか」
敵を視認したら距離を置きつつ観察し、一定程度動きの傾向を把握したらエンジンに炎を灯す
急加速から蛇行軌道で接近しつつ敵の触腕の攻撃に集中
可能な限り回避を狙いつつ接敵し、なるべく距離を詰める
こっちの“間合い”に入ったら詠唱を開始
魔力を練り上げ“光の刃”を召喚、射出する
「…その腕、全部大地へ縫い付けてやる!」
フィギュアヘッドが地面の上じゃ格好つかないだろう?



「とりあえず」
 アクセルを捻り、エンジンを噴かせた焔は呆然とする人達に背を向けた。
「今は喧嘩より先に、自分の身を守る事考えた方が良いよ」
 ゴーグルを装着し、街道に沿って港へと進んでいく。現れた敵の群れはまだ、街の奥に居た焔達の所には到達していない。
 だから仕掛ける為に自ら進みつつ、すれ違う住民を屋内へ逃げる様に吠えながら行って、
「……お出ましか!」
 加速する。
 直線の下り坂は漁港に直結していて、手前にある十字の交差点からは疎らに人が逃げ出していく。
「おい、早く逃げ──」
 そちらに目を向けた時、焔の逆側からコンキスタドールが泳ぎ出てきて、
「え」
 重い衝突の音がした。


 夜姫は、ティータイムをしていた屋上から屋根伝いに港に向かっていた。
 遠目に見える敵の姿はなんというか、魚……人間? よくわからない感じのフォルムで、それから。
「……ぎるてぃ」
 胸部の膨らみが生意気であると思う。コンキスタドール、オブリビオンの類いであろうとも、少女の判定は基本的に厳しめだ。
「それに美味しくなさそう」
 脚はぶつ切りにしてみたらワンチャン、とか考えなくはないが、うーん。
「とりあえず焼こう……、?」
 物は試し。結論付けた夜姫の視界に、街道を爆走する焔の姿が見える。行く先には十字路があって、交わりの部分に向かって敵の群れが迫っている状態だ。
 ……危険?
 敵は死角だ。間違いなく気付いていないだろう。
 しかし屋根から走っていては間に合わないし、叫んでも声は届かないだろう。
「サバーニャ」
 故に、出現させた砲門を背部にセット。進める足は止めずに、狙いだけは交差路へ絞る。
「……ん」
 と、敵に混じって緑肌の爬虫類っぽい存在を認めた。バカでかい盾を軽々持ち上げて、手当たり次第に敵へとぶちこみながら、彼もまた十字路に向かっている。
 多分、猟兵だ。多分。
 速度的には焔より少し早めに到着するだろう。上手く行けば、無防備な爆走娘を援護出来るかもしれない。
「いや出来るはず」
 信頼と信用は大事、めいびー。
 自答の頷きで空へ翔び、ドレスをはためかせて空中に自分をセット。計十六門のサバーニャと、ペンギンにスルーされた2丁拳銃を真っ直ぐ伸ばして照準を決める。
 そして。
「──ふぁいやー」


 ラザロは行く。
 タワーシールドの持ち手をしっかり握り、目の前を泳ぐ相手を叩き伏せながらだ。
 狭い路地を突っ切って、明るく広い路に出た瞬間、バイクに乗った女の子へ突撃する個体を見つけた。
 焔だ。
「もうこんなに集まってきたのか」
 随分と素早い対応だと感心する。まあ、自分を含め、各地で暴れまわっていたのだろうから、それも当然だろうと思い、前傾にした体を跳ばす為に地を蹴る。
「え」
 驚きに目を張る焔、そこに迫るコンキスタドールの脳天へと、振り上げたシールドを思い切り叩き付ける。
「ええ?」
 その瞬間、建造物を器用に避けた弾丸の雨が降り注いだ。着弾と同時に燃え盛りの炎が立ち上っていく。
 恐ろしい援護射撃だ、見た目が。
「お」
 とはいえ。
「おおお!」
 炎から離れようと、同じ逃げ筋へ固まった群れは狙いやすい。
 タワーシールドを横長に構えて、体当たりの要領でぶつかり押し込んでいくと、仲間から距離を取っていく。
 盾の影から無理矢理引っ張り出した爪が、腕や肩を容易く切り裂いて血を噴き出させた。
「多少は仕方ねぇ……!」
 押し込む。
 巻き込む数を増やして更に行き、空気を肺にたっぷりと取り込んで、それから。
「──!」
 白色の衝撃が波となって、円上の破砕をぶちこんだ。
「そういうこと」
 意図を察した焔は、加速を止めずに行く。宙を泳いで追い縋ってくる敵を横目にして、触腕の鋭い打ち据えを姿勢を屈めて避けながら走る。
 その途中、上を見ると、空に固定された夜姫も視認出来た。
「次は私、ってわけだ」
 速く。もっと速く。
 敵が追い付けない位の速度を出して引き離し、急反転して逆に詰め寄る。
 焔を追うため、纏まった形で泳いで居た群れは、散らばる事も出来ずその接近を許し、
「その腕、全部大地へ縫い付けてやる!」
 注がれた光の剣が、無遠慮に敵群を突き刺した。
 逃げる事も出来ないそれらは、夜姫が燃やした炎に炙られて焦げていく。
 そこへ、ペットを抱いてふわりと降り立った夜姫は、焼かれた臭いに眉をしかめ、
「めんち、食べる?」
 露骨に嫌そうな顔をするドラゴンの顔に察した。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『幽霊船』

POW   :    幽霊船一斉砲撃
【海賊船に搭載された全ての大砲】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    幽霊団の船出
レベル×1体の、【カトラスを装備した右手の甲】に1と刻印された戦闘用【幽霊海賊団員】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    聖エルモの炎
全身を【不気味な紫の光】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃回数】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:猫背

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 船があった。
 海に浮かぶ船だ。
 街を襲ったコンキスタドール達を殲滅した後、港に集まった猟兵の視線の先にそれはある。
「遠いね」
 誰かが言う。
 凪いだ海は静かで、その上に揺蕩う船こそが今回の黒幕であると解っているのに、そこへ届くための手段が難しい。
 乗ってきた鉄甲船を使えばなんとか行けそうだが、しかし。
「うぉ」
 断続的に放たれる大砲の弾が、目の前で水柱を立てる。
 近付く前に轟沈させられそうだ。
 そう思う猟兵達は、首を捻り、どうするかの答えが出ない。
「心配無い」
 だが、掛けられた声がそれを払拭しようとしていた。
「俺達が届ける」
 それは、住民達の声だった。
 争いを止められ、目の前で敵に抗う力を見せられた彼らは、持ちうる船を全て海に並べていく。
 更にそれらを鎖で繋いで、波の無い海上をエンジンで波紋を起こさせる。
「これであいつに近付ける。後は、アンタらに任せるぜ」
 接近までに、幾つかの船は大破するだろう。
 だが全てではない。
 敵船へ辿り着きさえすれば、戦闘により撃破が叶う。そうして自由を得れば、壊れた部分を直して再起も出来るだろう。
 というかそうしなければ、逆らったと見なされて滅ぼされるかもしれないのだ。
 だから、住民達は覚悟を決めた。
 解放の為に、戦うことを。



※戦闘は船上となります。
 自分で泳いでも浮いてもいいと思います。
 なんかそんな感じ。
ラザロ・マリーノ
幽霊船って船底に穴を開けたくらいじゃ沈んだりしないよなぁ…。
仕方ねぇ、その覚悟に乗らせてもらうか。

「極限の領域」を防御力重視で発動。
敵の砲撃がこっちの船や船員に当たらねえようにタワーシールドで受け止める(盾受け/オーラ防御)。
幽霊船に乗り込んだら、ハルバードを振り回してマストを全部叩き折ってやるぜ(怪力/なぎ払い)!

そういや、この幽霊船って解体して新しい船の材料に使えねえかな?
ちょっと不吉過ぎるか。

※アドリブ・連携・ギャグ・負傷描写歓迎


節原・美愛
うんうん。これぞ「雨降って地固まる」ってやつよね。
団結した島の人達の覚悟、私たちが届けるわよ!

借りた船に乗って幽霊船に向かうわよ。
飛べないし、なにより海の中に入って濡れるのは嫌だから。
砲弾は飛んでくるだろうけど…
軌道を"見切"って、無事な船に飛び移っていくしかないわね。
敵の喉元にたどり着くまでは我慢我慢。

幽霊船にたどり着いたら乗り込んで、我慢した分大暴れ!
幽霊海賊が武装してるなら、こっちだって刀を抜くわよ。
"妖剣解放"で纏うのは化け猫の怨念、"野生の勘"との相乗効果で幽霊団を引っ掻き回してやるわ!



 凪の海面を波立てるのは、エンジンで前進する船の舳先だ。上下に大きく、左右に微々と揺れるそれらは、横並びに固定されている。
 快適とは言い難い。
 だが、まだ遠い敵に近付く為の航海だ。文句は無いし、それに、やることが無いわけでもない。
「まあ、覚悟に相乗りしたわけだしな」
 タワーシールドを担いだラザロは、水を切る舳先に立っている。
 霞んだシルエットに見えた船は、距離を詰めるに連れ段々と明瞭化していき、それが幽霊船であることを判明させた。
「……来るかよ」
 と、唐突に音が来た。
 腹の底が震わされる様な轟音だ。
 それから遅れてすぐ、空気を切り裂く音がして、黒い砲弾の雨が届く。
「全砲門を使用した一斉射撃……!」
 盾を構え、受け止める。
 山なりの軌道で来るそれを、海面に向けて角度を傾けた面で、弾くようにして、だ。
 結果、砲弾は跳ね返る動きで着水する。
「──!」
 狙ってやったわけではない。技術を用いて戦うタイプでも無いラザロなのだ。自分自身への強化と、オーラを纏う形にして充足させた身体で受け止める、位にしか考えていない。
 それでも、経験が、盾の使い方を思考無しに選ばせている。
 だから、
「多いなぁ!」
 舳先の上がるタイミングで跳び、別の船を狙う弾を叩き落としに行く。
 軌道がくの字になるよう角度を付けてスイングし、船を移りながら防衛を為していく。
 だが、一に対して多、数の優劣は覆せない。
 じり貧になるラザロは、幽霊船を前にして歯を噛み、そして。
「じゃ、行くわよ」
 斉射された砲弾の群れが、一閃の後に爆発した。
 チンッ、という、高い音。そこへ視線を寄せた彼を、美愛は見る。
 にぃっと口角を上げた笑みを返した彼女は、ゆるい足取りで舳先へ向かい、
「先行くわ」
 再度の宣言をし、幽霊船までの10mを、一瞬でゼロにした。
「これでも我慢してたのよ、私」
 甲板に乗り込み、鞘に納めた刀を指で撫でる。
 その目の前には、床から溶け出す様に出現する海賊の大群がいた。
 得物はカトラス。湾曲した刀身は刃こぼれが多く、幽霊船の雰囲気に似合っている様に感じた。
「だからもう、我慢は止めにしたわ。だって、する必要無くなったもの、ね?」
 だがそんなことはどうでもいい。
 相手も、自分も、既に武器は抜かれているのだから。
 後はただぶつかるだけで。
「……はっ」
 前へ行く。
 前傾姿勢から飛ぶ動きで走り、初速からトップスピードに乗る。
 柄に手を添え、接敵と同時に抜き放った。
 行く。
 薙ぎの一撃は斬撃と衝撃を放ち、纏めて海賊団を吹き飛ばして両断する。
 次いで直上へ跳ね、背後から斬りかかって来る敵を回避。足を上に向ける反転をして、大きく振り上げた刀を思いきり振り下ろす衝撃でそれを斬り伏せる。
「……って、ちょっと」
 着地した美愛に影が射す。その目の前には大きく太く、巨大なものが立っていた。
「ヤバイわ」
 腰を引いて重心を下げ、大きく後ろへ下がる。その一瞬後、彼女が居た場所を、海賊団が合体して巨体化したカトラスが砕いた。
「──!」
 だが美愛はそれを見ていない。高速の移動は床を蹴って加速し、船内へ続く壁の影に避難。
 そして。
「お……!」
 船のマストが、巨体の海賊を押し潰して倒れてきた。
「お……らぁ!」
 さらにもう一本が倒れ、重なったマストの重さに海賊の身体は霧散する。
 それをしたのは、ハルバードを肩に担いだラザロだ。
 別に海賊を狙った訳ではないが、結果として倒したのだから結果オーライだろう。
 そんな事を思う彼の目に、半目の美愛が映った。
「……」
「……」
 謎の沈黙を終わらせたのは、どこからか響いてくる、軽快な音楽だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
住人の協力が得られたのは助かるね
期待に応えよう!

何があっても勝つから、絶対応援し続けてね!
住民に言い残し、幽霊船へ!

皆に期待させたんだしど派手に勝とう!

呼び出すは巨大な斧を携えた、青と白のカラー、勇壮なマスクと装飾の機械巨人
「主題歌を録音した音源をセットして、と」

幽霊船に響き渡る勇壮な歌!(UDCアースかぶれ)
「正義の―!嵐が―!爆発する―ぜ―!」
《お前アースのアニメ文化に毒されたよな…?》

機能性より格好良さ重視のその機体
だが外部からの特定感情…自らへのポジティブな感情に反応し、出力を増す機能が搭載された偶然の産物だ!
皆が勝利を信じる限り負けはない!

「いけーっ!ガイレツブーメランアーックス!」



「じゃーん じゃじゃじゃーん じゃじゃじゃーん しゅびどぅーびー」
 バックグラウンドにミュージックが流れていた。
 全体的に少しのモヤが混じった音楽は、それが機械を通して発せられる物だと理解させる。
「いくぞー、ガイレツオー!」
 それは、海上に現れた巨大ゴーレムのテーマソングだった。
 海中に半身を沈めてなお飛び出る上半身が、その大きさを物語っている。
「正義のー! 嵐がー! 爆発するーぜー!」
『……お前、アースのアニメ文化に毒されたよな……?』
「主題歌は必要だよ? 特に熱いバトルシーンに流れるオープニングとかね!」
 それに、
「住民の協力を得られたし、期待と応援にはド派手に応えないと!」
 特に今回のゴーレムは特殊だ。
 自分に向けられるポジティブな感情に応じて、出力が増すという機能が付いている。
 範囲とか、そもそもどうやって判断と感知をして、どこに作用して発動するのかとか、その辺り、完全に偶然の産物なのでなんとも言えないが。
「いけーっ! ガイレツブーメランアーックス!」
 振り上げた戦斧が、幽霊船に叩き込まれる。
 とてつもない重量に力を与えた一撃は、木製の船など一撃で木っ端微塵にするだろう。
 だが、相手は船の形をしたコンキスタドール。
 めりこんだ斧の衝撃は、海面を強く打震して津波を波紋させるが、それだけだ。
 さらに、その船は今までに砕かれた箇所から大量の紫炎を吹き上げさせていて。
「っ、逃がさないで、ガイレツオー!」
 横へのフルスイングを叩き込んだその時、幽霊船は、空を飛んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

響・夜姫
・SPD
連携・アドリブOK

対艦戦闘。ふむー。
「響だよ。その活躍ぶりから……ぺんぎんさん、痛い」
そのセリフはダメ?そんなー。

【空中浮遊】で【空中戦】。
「さて。やります、かー」
連結状態で道にしたり、飛び石状に配置したサバーニャを足場に、移動しつつら延々と砲撃。
当然足場からも撃つ。
敵の攻撃はサバーニャの【武器受け/オーラ防御】で角度をつけて反らす、盾にする等。壊れても再召喚。
幽霊海賊団員は二丁拳銃の【先制攻撃/クイックドロウ/誘導弾/2回攻撃】で出てくる傍からサクっと落とす。
「対艦戦闘のコツは、沈めるまで攻撃する。聖書にも、そう書いてある」



ぺんぎんとめんちは……あ、住人の船守ってる。任せた。


橘・焔
〇心情
…ここまで来てギャンブルだねぇ
でも島の人達の心意気を無駄にはしない!

〇行動
「私とインフェルノの命運、おっちゃん達に預ける!」
自分は愛機の跨っていつでも発進できる状態を維持しつつ、島民の船に乗って幽霊船へ
この砲撃、おそらく接敵は無理でもせめてギリギリまで…
直前に船が砲撃を受けて傷んだら、船頭の指示に従ってアクセル全開で幽霊船へダイブ
「あと…ッ、少し!」
届かないと思った刹那、ホイールが左右に開きバイクの浮遊機能が機動、水面を水切りのように跳ねて幽霊船の甲板へ飛び込む
「私という“炎”を届けたおっちゃん達の思い、受け取れぇ~ッ!」
真の姿を解放し、練り上げた魔力から無数の“光の剣”の豪雨を降らせる



 バイクが空を飛ぶのか。
 そんな話が出ると、大体にして話は不可能という結論に落ち着く。
 そもそもバイクは走る物であって飛ぶ物ではないのだと。
 それが例え、宇宙空間を走る物であっても。重力の有無に左右されているのだから、論ずるに値しない。
 そのやり取りを心中で思いながら、走者である焔は船を見上げていた。
 幽霊船だ。
 マストは折れて帆は無くなり、ひしゃげた甲板から溢れ落ちる木片が海に降る。
 それは、飛んでいた。
「そっちは飛ぶのかよ……!」
 重力下で船の上。バイクで距離を詰める方法が無いことに思考を割いていた焔は、その状況に歯を噛んだ。
 しかもそいつは、残った砲門の全てをこちらの船団に向けていて、一斉射による破壊を行ってきた。
「ちょっ……」
 避けられない。
 というか、避けた所で船が壊れたらその時点でこの戦いは終わりだ。
 幽霊船であるコンキスタドールが浮いたのは、自分達を倒す理由もあるだろうが、恐らくその後は島に向かって暴力の限りを尽くすつもりだろう。
 反逆に報復をするはずだ。
 だから、それを見逃す訳には行かない。
 しかし、それを止める手が、焔にはない。
 故に。
「サバーニャ」
 空中に喚び出された武装が、砲撃を止めた。
 入射角に対して直角に迎え、威力のままに跳ね返す受けだ。
「今のは」
「響だよ。その活躍ぶりかぺんぎんさん痛──痛い痛いほんとに」
 ペットのペンギンに側頭部を突つかれまくっている夜姫によるものだ。
 おふざけが過ぎた様だ。緊張感を見せない少女は、ひっぺがしたペンギンを甲板に下ろすと船を見上げてから、
「さて。やります、かー?」
「うん、やろう」
 焔と視線を交わし、行動を開始した。
 問題は、バイクで上に上がる方法だ。敵は既に、船首を島に向けて進軍している。
 空を行ける夜姫ならば行けるが、移動手段がバイクの焔では行けない。
 ではどうするかと言えば。
「……なるほど。構いやしねぇよ、この船、俺たちの命、好きに使え!」
 ゴニョゴニョと耳打ちをし、船長から了承を得た二人は行く。
「前へ」
 インフェルノに跨がった焔は船首へ。ペンギンとドラゴンが船の連結を破壊して自立させる。そして夜姫が、重ねたサバーニャの装甲を思いきり船首側に上からぶちこんだ。
「行くよッ!」
 船尾が跳ね上がり、角度が付けられた船上は、焔から見ればカタパルトだ。
 インフェルノのエンジンを回転させ、足でブレーキを掛けながらタイヤを空回しさせる。
「行け、小娘ェ!」
 欄干に必死こいてしがみついた船長が叫ぶのと同時に、バイクは全力の加速で走った。
「小娘じゃないけど任せろ!」
 目標は上空、幽霊船。砲門はこちらを見ておらず、道中の阻害は無い。
「──!」
 事も無かった。
 敵の船から空へ身を踊らせる存在がいる。
「海賊の幽霊たちか!」
 さながら弾幕の様に厚く広がるソイツらは、手にしたカトラスを振り上げ、中には投げつける事で焔を撃ち落とそうとしている。
「行かせない気だろうけどさ、それにしても……少なすぎでしょ」
 焔は笑った。
 一人なら対処に困ったかも知れないが、今は、共に行こうと言った仲間がいるからだ。
 だから、彼女は疑わない。
「ふぁい、やー」
 夜姫がぶちこんだ、幾条の射線がど真ん中をこじ開ける。その中をバイクは突っ切って、幽霊船を捉え、届くまでもう少し。
「あと、すこし……!」
 その時だ。
 ガクンと、バイクの軌道が下方に引き寄せられたのは。
「くそっ」
 タイヤのホイールを左右に開き、宇宙の航行モードに以降。空気の圧を受けて少しでも先へ辿り着こうと足掻く。
 だが、落下は止まらず、やはりバイクは空を飛ぶことなど出来ないのだと、そう理解する。
「あきらめない。あきらめたら終わりとなんかに書いてある」
 焔は、背後からの熱を感じた。
 じわっと汗が噴く様な高熱だ。
 それが後ろから、インフェルノの真下を通って幽霊船を穿つ。
「──!」
 瞬間、浮遊感がある。
 熱による上昇気流だとか、開いたホイールの面がそれを受けたとか、理由はその辺りかもしれないが、とにかく。
「届いたぞ!」
 前輪が、幽霊船の縁を削って前へ加速する。
 無理矢理な乗船に、直上へと弾かれる様に踊った焔は、分厚い雲を突き抜けていた。
「空だ」
 島を覆う暗色を越え、青い空から視線を落とす。曇りを挟んだ真下に、シルエットの敵が見える。
「対艦戦闘のコツは、沈めるまで攻撃する。こっちは聖書とかに書いてある」
 そして船の下、仰向け状態で空に浮かぶ夜姫は全武装を喚び、さらに複製した砲口の照準を合わせる。
「……私達という“炎”を届けたおっちゃん達の思い、今こそ受け取れ、コンキスタドールッ!」
 上下から、光の剣と筋が船を挟み込み、破砕し、貫いて。
「──」
 怨念の様な金切り音の後に残ったのは、光を射す雲の切れ間だった。

 それは、永く光を閉ざされていた島を照らす。

 空を覆う曇り空は変わらずそこにあってもなお。

 木漏れ日が降る島が、そこに産まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月05日


挿絵イラスト