嵐吹き荒ぶ洋上にて、威容を誇る帆船が一隻。随分と年季の入った船だが、波が荒れ、雷降り注ぐ中にあっても、真っ直ぐに立ち向かうその姿は、乗組員たる気高き海賊たちの魂を象徴している――はずだった。
歴戦の海賊船は今、嵐にその身を揺らしている。絶え間なく響く軋みは、船の悲鳴のようですらあった。
暗い嵐の海にあってなお、眩いばかりの光を放つ男――この海賊船の船長である――は、憂うように、船に掲げられた海賊旗を見上げている。
「いい子だから泣くのはおやめ、なんて言っても、そりゃ泣きたくもなるわよね」
「随分と余裕の態度じゃありませんか。船の前に自分の心配をしたらどうですか?」
船長の後ろに立つ男が苛立たしげにそういうと、船長の背中に押し付けた杖をぐいぐいと押す。
「そう焦るんじゃァないわよ。『服と旗は死んでも守れ』――ウチの船の掟よ。そんなことも忘れたの?」
「ええ、覚えちゃいませんね。それと、間違えないでください?……もうアンタの船じゃない、俺の船だ」
我慢の限界が来たというように、男は杖を強く突いた。不安定な足場――船の横あいから洋上にて突き出した細い木材の上に立っていた船長は、あえなく体勢を崩し、海へと体を投げ出していく。
――いつか死ぬものだとは思ってたけれど、船の上で死ねないっていうのは、思いの外悔しいものね。
そんなことを考える時間が、船長にあったのかなかったのか。光の軌跡が、船上から海へと刻まれていく。
●
「皆様、ようこそお越しくださいました」
グリモアベースに集った猟兵たちに、アルレクリア・ジャストロウが深々と一礼する。
「今回の冒険の舞台は新世界グリードオーシャン。未知に包まれた貪欲なる海と海賊の世界です」
かの海の嵐は、グリモアによる予知すら遮断するというが、幸いにして、予知可能な海域内での時間の発生が予測されたのだという。
「事件の舞台は桜雲島という島の近くの洋上。航海中の海賊船です。船の主は『千変海賊団』という桜雲島を支配する海賊団ですが、彼らが今絶体絶命の窮地に陥っています」
ラム酒(ラム酒“風”のノンアルコールドリンクも用意されている)と、香草の効いた肉料理を振る舞いつつ、説明を続けるグリモア猟兵。
「事の起こりは、彼らが自船の乗組員に対して、新しく手に入れたメガリスの儀式を受けさせようとしたことにあります」
この海で一人前の海賊になるということは、メガリスに触れて儀式を行い、ユーベルコードを身につけるということだ。それ故に、海賊たちは有望な己の部下に対してメガリスを与え、ユーベルコードへの覚醒を促すことがあった。
「ですが、メガリスの試練は簡単なものではありません。もし試練で命を落としたならば、オブリビオン、コンキスタドールと化し人々を襲うことになります」
それ故に、もし部下が試練を乗り越えることができなかったならば、新たに生まれるコンキスタドールをその場で屠るのが、『海賊の掟』なのだという。
「ですが、どうやら今回発生するコンキスタドールは、船に蓄積されていた怨念や姿なき死霊たちを取り込み、海賊団の予想を超える強大化を果たしてしまったようです」
あるいは、無事にユーベルコードに覚醒していたならば、ゴーストキャプテンとなる素養があったのかもしれない。もはや考えても詮ないことではあるが。
「コンキスタドールの討滅に失敗した海賊たちは処刑されようとしています。真っ先に海賊船長、“絢爛”のジェイコブが処刑されることになるでしょう」
誇りを持った海賊たちは、猟兵たちの現地協力者となる可能性が高い存在である。その救出に向かってほしいということらしい。
「亡霊を取り込んだコンキスタドールは、海賊船“ショウタイム号”と一体化し、幽霊船となっています。普通の手段で立ち向かうのは難しいでしょう。そこで皆様には、洋上戦を仕掛けていただきます」
嵐を突破できる鉄甲船の力を持って船に近づき、敵の攻撃をかい潜って乗り込む、あるいは船から船へと遠隔攻撃を仕掛ける。普段と勝手の違う戦いになるだろうが、猟兵の腕の見せ所だ。
「まず皆様の前に立ちはだかるのは、海賊船の船首像となります。永く船員たちを守護してきた船首像ですが、その分呪いや怨念が蓄積されており、船のコンキスタドール化に伴い、独立したコンキスタドールとなってしまったようです」
触腕による広いリーチを持ち、回復能力も備える彼女は、海賊船本体を攻める前の手強い門番となるだろう。
「また、皆様が海賊船に近づき、船首像との戦いを仕掛けるまさにその瞬間、海賊たちは処刑されようとしています。もし船首像との戦いを潜り抜け、彼らを救出することができれば、きっとそれ以降の戦いで大きく助力してくれることでしょう」
だが、鉄甲船は大型ゆえ、船首像の攻撃を避けて船の横あいに強行し海賊を救うというのは難しい。猟兵たちの力が必要になることだろう。
「そして、船首像との戦いを乗り越えれば、いよいよ海賊船本体と同化したコンキスタドールとの戦いとなります。手強い相手かとおもいますが、きっと皆様ならば勝てることでしょう」
ラム酒を乾杯し、猟兵たちの武運を祈ると、アルレクリアはグリモアゲートを開くのであった。
月光盗夜
お世話になっております、月光盗夜です。やってきましたね、グリードオーシャン!大海に漕ぎ出して行きましょう!
今回のシナリオは洋上船。船対船でドンパチです!
●第一章について
概ねオープニングで描写した通りではありますが、いくつかの補足を。
鉄甲船は海賊船の正面から接近することになりますが、海賊たちの処刑は、甲板の横あいで行われています。そのため、海賊を救出する場合、船首像の攻撃を退けながら、ぐるっと船の横までたどり着かねばなりません。船に乗り込んでから向かうも、海から向かうも方法は自由です。
また、猟兵のみなさんは鉄甲船で海賊船の側まで送り届けられますが、もし自前で海を渡る手段をお持ちでしたら、そちらを利用されても構いません。
●執筆期間について
書ける分を随時執筆しご案内する形になるかと思います。なお、🔵未達成状態でプレイングが返却された場合、執筆が間に合わなかった可能性が高いため、そのまま再送いただければ、採用し執筆させていただく可能性が高いです。
●プレイングについて
◇募集期間
断章の投稿後より受付開始。以降🔵達成まで、いつでもプレイングをお送りいただいて大丈夫です。
◇略式記号
アドリブ、連携描写などを多用する傾向にあります。
アドリブは大丈夫だけど知らない人との連携描写は苦手だよ、という場合は「▲」を、アドリブも連携描写もなるべく少なめで、という場合は「×」を、【プレイング冒頭に】お書き添えください。
なお、アドリブ連携大歓迎、という場合は「◎」を書いて頂いても構いませんが、そもそも記載のない場合は原則アドリブや連携多めになりますので、記載しなくても問題ありません。
◇合わせプレイングについて
お二人での合わせプレイングをお送りいただく場合は、プレイング冒頭にお相手様の呼び方とIDを記載頂くようお願いいたします。(例:「太郎くん(fxxxxx)と同行します」)
また、グループでお越しになる際は、プレイング冒頭にグループ名を【】で囲っての記述をお願いいたします。
なお、どちらの場合もなるべくタイミングを揃えて送信いただけると、迷子の危険性が減るかと思います。
長々と失礼いたしました。それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『呪われた船首像』
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POW : まとわりつく触腕
【下半身の触腕】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 掻き毟る爪
【水かきのついた指先の爪】による素早い一撃を放つ。また、【自らの肉を削ぎ落す】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 呪われた舟唄
【恨みのこもった悲し気な歌声】を聞いて共感した対象全てを治療する。
イラスト:Kirsche
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
嵐の海をかき分けて、鉄甲船にて進むこと暫し。ただでさえ異常気象に満ちていた海の波が高まり、雷が落ちる。
そう、呪われし海賊船の領域に出たのである。
嵐の中で待ち受けていたのは、純白の大理石の肌をした乙女。着物を思わせる意匠が施された美しい像は、これまで長きにわたって船員たちの航海を見守ってきたであろうことがわかる。
だが、船首にあるべきその身は船から独立し、本来存在しない下半身は、おぞましい粘性の黒い触腕で補われている。そう、もはやこの船首像は、コンキスタドールと化しているのだ。
本来穏やかな微笑みを浮かべていただろう麗しい顔には、涙を湛えるかのような哀しげな表情が浮かんでいる。
物言わぬ船首像ではあるが、猟兵たちには、彼女が助けを求めているかのように見えた。
「ハハハ!“絢爛”のジェイコブというものが無様な姿ですね!さあ、キリキリ歩けよ、板が開くのを待ってるのは何十人といるんですからね!」
船首像の立ちはだかる奥では、海賊たちが今にも処刑されようとしているのが見える。猟兵たちよ、武器をとれ。この哀れで慈悲深い像を救う方法は、それ以外存在しないのだから。
夷洞・みさき
◎
懐かしい潮の薫り。響く潮騒。
いやはやいやはや、帰郷した初仕事が咎人の救出になるなんてね。
今の僕達は現世の人には何の権限もないから、禊ぐ相手はオブリビオンになるから、君達は見逃してあげるよ。
【POW】
海に沈んで君達は忘却したかもしれないけれど帰ってきたよ。
咎人殺しの島、その残骸が。
鉄甲船から飛び降りて”涸れた波”号に乗り換える。
かつてこの海で咎人を捕え見削いできた咎人殺しの船に。
触腕に砲撃を行いどれだけ多くてもすべてを拘束する。
拘束した鎖を伝い、接近するための艦橋代わりにする。
忘れたなら思い出せ、知らないなら刮目しろ。
この紋章は咎人を逃しはしない。
さぁ、同胞達。ここに咎人が現れた。
シャルロット・クリスティア
なるほど、新世界と言うのも中々に刺激的なようで!
あまり余裕のない状況のようですが、やれることをやるとしましょう!
鉄甲船の船首付近に布陣、極力視界と射線の通る位置を陣取り、船上から援護射撃を飛ばします。
船を防衛するにせよ、海賊たちを救出するにせよ、敵の足を止めることが第一。
機関銃の斉射で近付こうとする相手を引き剥がしつつ、動きの癖を見切っていくとしましょう。
揺れる足場ですが、慣れてしまえばどうということは無い、誤射などしませんよ。
余裕があれば遠慮しませんが、欲を掻いてもいけないですし、あまり攻め急がないように。
私の一番の役目は、救出にしろ攻撃にしろ、他の猟兵が動きやすくなる状況づくりです!
エル・クーゴー
◎
●SPD
グリードオーシャン、指定座標に現着
『千変海賊団』に友軍マーカーを設定
これより狙撃支援を開始します
――躯体番号L-95
当機は、洋上狙撃にも高い適性を発揮します
・鉄甲船の甲板上に布陣
・使用火器はアンチマテリアルフライフルを採用
・船首像の行動に合わせた腕/指/爪の部位狙撃に専心
・敵の爪が攻撃に及ぼうとする都度の相殺を狙う(クイックドロウ+スナイパー+援護射撃)
・狙撃時の観測手としてサーチドローン『マネギ』を己の近場に飛ばし、射撃成果を常時評価させる(撮影+情報収集)
・狙撃に関わる気候条件や周辺の波による揺れをデータ化し火器管制システムにフィードバック、発砲都度の命中率向上を期す(学習力)
「潮の薫りや響く潮騒が懐かしい……というには、少し海が荒れているかな」
鉄甲船の甲板に立ち、コンキスタドールの象徴、荒れた海を眺める女が一人。骨ばった痩身に鱗角、翼ヒレ、魚面の尾。魚の相を強く持つ娘、夷洞・みさき(海に沈んだ六つと一人・f04147)である。
「いやはやいやはや、帰郷した初仕事が咎人の救出になるなんてね。縁というのは不思議なものだ」
彼女のいう所の咎人――海賊たちが処刑されようとしている姿を嵐の先に見やり、かつてこの海で暮らしていた頃の己の生業と比較してへらりと笑みを浮かべて肩を竦めるみさき。
「だけど、今の“僕達”は現世の咎人に対しての権限はない。だからといって、積極的に助けてあげようという気にもなれないし……僕達は、僕達の仕事をするとしよう」
そういうと、娘は鉄甲船の甲板からその身を投げ出した。無論、無策にそんな暴挙に出たわけではない。
「いざ征こう同胞たちよ――抜錨せよ!」
嵐の海を落下しながら、歌うようにみさきが唱えると、彼女の身を受け止めるように、嵐の中から船影が現れる。
みさきのユーベルコードによって生み出された、朽ちたガレオン船。かつてこの大海原で、海の賊徒、咎人たちを捕らえ、禊ぎ、身削いできた咎人殺しの船。“涸れた波”号である。
「忘却の果てから帰って来たよ。咎人殺しの島、その残骸が」
呪詛と怨嗟で生み出されたその船は、生前の役割をそのままに、今はオブリビオン――コンキスタドールをこそ狩る咎人殺し。元海賊船の一部で、現コンキスタドールの船首像にとっては、天敵といえる存在である。
本能的にそれを察知したか、悲痛な金切り声をあげて、触腕を振るう船首像。だが、咎人殺しの船はそれを許しはしない。船、そして砲弾そのものが意思を持っているかのような巧みな砲撃によって触腕を狙い撃つ。弾丸が炸裂すれば、弾丸を触媒として、骸交じりの異形の鎖が触腕と“涸れた波”号を結び付けていく。
「――!」
ソレが己の身にもたらす不利益を本能で察知したか、悲し気な金切り声を上げながら、鋭い爪によって触腕を縛る鎖を断ち切ろうとする船首像。高速で振るわれる爪は、次々に鎖を断ち切っていく。
「おや。存外素早いな……!」
“涸れた波”号による束縛は、砲撃というプロセスを要するために、どうしても攻撃の間隔は開かざるを得ない。拘束した傍から破られては、船首像の動きを戒めるのは難しいかと思われた。
――タァン!
だが、そんな時、嵐の中を貫く一筋の弾丸が、鎖を引きはがそうとする船首像の動きを止めた。
●
『命中を確認。誤差修正を行います』
鉄甲船の甲板前方で狙撃姿勢を取る女性型ミレナリィドール、エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)はそう呟いて、たった今己が放った弾丸についての情報収集を始める。情報収集を行うのは彼女の操るサーチドローン“マネギ”。自我が希薄で飾り気がないというようにも見えやすい彼女の雰囲気に反して、随分と愛嬌のある、まるで招き猫のような姿のドローンである。
だが、その見た目で侮るなかれ、マネギは非常に高性能なドローンである。嵐の中を安定して航行する飛行性能はもとより、敵の目につきそうなその外見を高性能な迷彩機能を搭載することで補い、空中からエルの狙撃を観測。その射撃成果をリアルタイムでエルにフィードバックし、射撃制度を向上させる補助を行うことが可能なのだ。
『誤差は13%と測定。逆風と船体の揺れによる影響が大きいと判断。波のパターンを収集し、風向の随時観測を行います』
マネギからの射撃評価と、周囲の観測データを己の火器管制システムにフィードバック。修正の適用された弾丸が、再び船首像の爪を襲う。
『>ファイア。――誤差3%まで現象。更なる命中精度の向上を測ります』
繰り返される都度に命中精度を高めていく射撃は、船首像から反撃の余裕を奪っていく。
援護射撃を行うエルをなんとかしなければどうしようもないと判断したのか、波打つ触腕で海をかき分け、鉄甲船へと迫る船首像。だが、もう少しで鉄甲船上にいるエルを爪の射程におさめられようかという所まで迫ったその時、連続する衝撃音が船首像を襲った。
「撃ち方始め! ……それ以上近づけはしませんよ!」
エルの程近く。より鉄甲船の選手に近い場所に陣取った、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)による機関銃射撃である。まだ幼さの残る少女が扱うには、幾分武骨に過ぎるように見える代物であるが、その扱いは慣れたもの。そして、扱うことができるならば、その性能も外見相応に高いものである。本体と呼ぶべき大理石の体への被弾こそ、体の周囲を覆った触腕で一定程度防いでいるものの、間断なく放たれる機関銃の弾丸は、船首像が鉄甲船へ近づくことを許さない。
「……そして、やっぱりあなたは上半身への被弾後、続く攻撃を警戒して触腕の何本かを防御に回す癖がある。それさえわかってしまえば、足止めも攻撃支援も容易い。――エルさん!」
『分析データを受領。狙撃への反映を行います』
狩人にとって、足止めというのはただの防御ではない。敵を知り、攻め落とし方を組み立てるための、攻撃の一環である。足止めを行ううちに、敵の防御パターンを見抜いたシャルロットは、その情報を共有する。
戦いの中で情報を分析し、確実に攻撃を組み立てる二人の銃手の前に、船首像は鎖を断ち切る余裕を奪われていった。
「感謝するよ。それにしても、この嵐の中で、見事な狙撃を行うものだね」
鉄甲船の眼前をゆくみさきが、船越しに振り返って語りかければ、シャルロットとエルは目を見合わせ首肯する。
「大丈夫です! このくらい、慣れてしまえばどうということはありません!」
『肯定します。環境データを万全に収集できれば、狙撃の難易度は平地と比較した場合に特筆するものではありません』
そう、彼女たちにとって、厳しい環境での戦闘は慣れっこであると言える。なぜなら、彼女たち自身が暴風の化身。ワイルドハントの一員であるがゆえに。
●
「さあ、彼女たちのおかげで、先程のように振り解くというわけにはいかないだろう」
行動を阻害された船首像に、次々にガレオン船から砲弾が叩き込まれる。次々と命中する弾丸は、ほどなく全ての触腕に鎖を結ぶ。それは、咎人を縛り上げる拘束であり、敵船へ乗り込むためのアンカーでもあった。
「忘れたなら思い出せ、知らないなら刮目しろ。この紋章は咎人を逃しはしない」
謳うように告げるみさきに呼応するように、“涸れた波”号の帆が翻る。そこに刻まれるのは、今となっては忘れ去られた、咎人殺しの島の紋章。
「――さぁ、同胞達。ここに咎人が現れた」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
シャーロット・クリームアイス
この歌……まさか船を沈めると云う、あの……!?
すぐ対処しなければ!
◈シャークスカリバー解放、いきなさいホホジロザメたち!
ホホジロザメの攻撃を治療なんてできるものですか!
なにせ一噛みで、腕や脚はもちろん、胴だってワンチャンばっさりです……我ながらクールな戦法ですね。
おっと、もちろん要救助者たちは攻撃しませんよ。
わたしはTPOを弁えるCEOですからね――コレ踏めてます?
ともあれ、パニックになれば処刑どころじゃないでしょう。
処刑、とくに板歩きなんて、デモンストレーションの一種ですからね。ギャラリーなしで強行してもイマイチです。
まぁもし処刑を続けるというなら、サメで殴りつけるしかないですね。暴力反対!
リヴィラ・エリヴィラ
皆でっていうのもそれはそれで大変ってことだね。
良いも悪いもどちらもあるけど、私は一人の気楽さも捨てがたいな。
ま、一緒する人も多いみたいだから協力はするよ。
折角だから私も船を使わせてね。
船首像へはシャーク・トルネードを使用して触腕や爪を迎撃。
これは欲張らずに動きを阻害して攻撃をかわすこと重視して。
他の人への援護もするよ。
船首像をいなして船の横へ、だね。
ここでもシャーク・トルネードを使用。
召喚した鮫を飛ばし、足場にして一気に進ませて貰おう。
目的地に着いたら早速海賊の救出へだね。
船長さん、ちょっと船荒らしちゃうけど怒らないでね?
咎人殺しの鎖によって全身を縛り付けられた船首像は、身を捩るようにのたうちながら、悲鳴を上げる。
♪ …………!
いや、それはただの悲鳴ではない。それは、悲痛なる声で紡がれる呪われた舟歌。正者への恨みを力に変えて己の傷を治療し、聖者の船は水底へと導く死の歌である。
「この歌……まさか船を沈めると云う、あの……!?」
だが、それにいち早く反応する娘がいた。シャーロット・クリームアイス(Gleam Eyes・f26268)。深海出身のセイレーンであり、世界を股に掛けた流通サービスを営む彼女は、仕事柄様々な知識を蓄えている。そんな彼女の脳裏で、船首像の奏でる舟歌と、恐るべき鮫、それを象徴するメロディが重なった。鮫魔術師たる彼女がその存在を想起したことで、嵐の海にその存在が生み出される。ネズミザメ目ネズミザメ科ホホジロザメ。名前の由来でもある白い腹部と、真っ黒な瞳が特徴的であり――一部の世界では、その鋭い牙を冠した名で、人食い鮫の代名詞として知られる、鮫の王者である。
「いきなさいホホジロザメたち! シャークス……ッ! カリバ――――!!」
シャーロットの号令とともに、ホホジロザメの奔流が船首像目掛けて殺到する。触腕や腕、更には胴体と、身体を次々に噛み裂かれる船首像は、舟歌による治癒も間に合わず、痛々しい悲鳴を上げる。
「んー。これはいいチャンスかな?船首像の動きを牽制するなら、ここは合わせとくのがよさそうだね」
シャーロットの呼び出したホホジロザメ軍団の蹂躙を好機と見て動いたのは、同じく鮫魔術を身に着けたリヴィラ・エリヴィラ(セイレーンのオーシャンハンター・f26311)である。爽やかで人当りのいい印象に反して、気ままな単独行動をこそ好む主義の彼女ではあるが、一方で冒険においては、機を読み状況に応じて周囲と協調することも苦手ではない。
そんな彼女は、同じく鮫魔術を扱う自分は、ここはシャーロットに合わせて動くべきだと判断したようだ。遅れること暫し、嵐の海の中から、鮫の群れが飛び上がってくる。リヴィラの操る改造鮫は、丸鋸を備えたオーソドックスなタイプの鮫であるが、それだけに性能はお墨付き。もがき苦しむように振り回される、船首像の爪や触腕を的確に切り刻んで行く。
「これだけ痛めつけてやれば、暫くはこっちの妨害はできないでしょう」
「そうだね、今のうちに海賊たちの方に!」
そうやって頷き交わすと、船首像への攻撃に差し向けていた鮫たちに別の指示を出す二人。ホホジロザメと丸鋸鮫。20に及ぶ改造鮫の軍団が、咎人殺しの鎖に寄り添うようにして、即席の階段を作り上げていた。二人の鮫魔術師たちは、サメ軍団を足場に、船首像をくぐりぬけて海賊船へ乗り込んでいく。
「さてそれでは、処刑なんてしていられなくなるように追い込んであげましょう!」
「オッケー、乗り込んじゃえばこっちのもの、ってね」
先程船首像を痛めつけたサメ軍団が、今度は幽霊船上で暴れ回る。船首像だけとの戦いだった船首での戦いとは違い、こちらは敵の本拠地といっていい。先程のように一方的な蹂躙とはいかないが、かといって、グリードオーシャン最古の魔術体系たる鮫魔術は、そう簡単に敗れるものではない。船体を、幽霊船員を、様々なものを巻き込み暴れ回り、船上を混乱の渦に叩き込んでゆく。
「バカな!お前たち、コイツを助けに来たんでしょう?こちらには人質が――!」
「心配いりませんよ」
コンキスタドールの本体たる男が焦ったように叫ぶが、シャーロットが遮るように言葉を重ねる。
「要救助者たちは攻撃しません。わたしはTPOを弁えるCEOですからね――」
自信ありげに言った後、これは韻を踏めているだろうか、などと首を傾げて見せる。ダジャレともライムともつかないそれは、コンキスタドールの男を挑発するために言ったのか、あるいは単純になんか言ってみたい気分だったのか。後者かもしれないが、それはさておき。
「結構船の上荒らしちゃったけど怒らないでね、船長さん。さて、あっちの準備は――」
船上をパニック状態に追い込んだ二人の鮫魔術師。あとは、救出対象の海賊たちを上手く幽霊船から降ろすことができればいいのだが――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アマニア・イェーガー
よーそろ~!
大型の鉄甲船じゃ近付けない?
それなら任せて!わたしの船ならなんのその
わたしは自分の船で海賊のみんなの救出に向かうよ
【逆巻く嵐の王】、出航ー!
あのコンキスタドールも、元は長きに渡って船と船員を守った船首像。出来ることなら助けたいんだけど……ああなっちゃったらわたしには救えないんだ。ごめんね
ある程度大砲で牽制しつつ、海賊達の救出を優先して戦うね
救出した海賊さんには出来ればわたしを守って欲しいかなー。船の操作で手が離せなくてさ
あ、わたしの船はオブリビオン以外は乗り込みokだから足場代わりに使ってくれて構わないよ!
グラニュエール・テウシス
◎
ぅぅ……野郎どもぉ………お酒ないですかぁ、お酒ぇ……
愛船を呼べない、主にコンディション的な意味で、のでこの辺りで沈んでいた船を幽霊船として、かつての部下と一緒に召喚
何をしに来たのかも忘れつつ、空の酒瓶を髪のように生えるイカの触手で抱きしめながら、お酒を求めてうだうだ
操舵から他の猟兵との足並みを合わせることまで部下に丸投げである
ぉぉ……なんて悲しげな歌なんですかぁ……お酒に見放された私の心を表したよう………うぇっ、あびえぇっ
歌声を聞けば、一方的に共感しだして泣き出す始末
海賊服でちーんと鼻をかみながら、おいおいと縁に寄りかかって泣いています
戦闘は頼れる部下たちが自己判断で頑張ってくれました
シノギ・リンダリンダリンダ
【幽玄な溟海の蝗害】で自前の海賊幽霊船を召喚し、鉄甲船とは別行動
船首像は他の方に任せるとして、電撃戦ができる身としてはやっておきましょう
他の猟兵の方が相乗りするのも許可しましょう
無敵の海賊幽霊船を「操縦」し、件の処刑場に横付けします
同じ海賊とあれば、手助けしないわけには行かないでしょう
さぁ、海賊の時間です!!!憐れなコンキスタドール…蹂躙してあげましょう、略奪してあげましょう!お前が今前にしているのは、大・海・賊!ですよ!!
【飽和埋葬】で死霊海賊を召喚し、そのまま船に飛び乗っていく
数の暴力で処刑の阻止を狙います
ある程度片付いたら、船の大砲で船首像を攻撃して「援護射撃」でもしましょうかね
幽霊船と化したショウタイム号より離れること少し。嵐の中に佇む、三人の人影があった。といっても、当然ながら、海の上に立っているわけではない。船上である。
だが、特筆すべきは、その船影が三隻存在することだろう。
「お膳立ては整ったようですね。さあ、それでは……私たちの海賊を始めましょうか」
シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)。普段は遊興船の案内役をしているものの、その正体は海賊船長。慇懃な物腰なれど、小柄な体躯に見合わぬ強欲を抱えた女。座するは、彼女が普段乗り込んでいる幽霊海賊船“しゃにむにー”の戦闘用コピー、“幽玄な溟海の蝗害”。
「あはは、わたしは海賊ってわけでもないんだけどー……ま、似たようなものかな? 即席海賊同盟ー、なんちゃって」
アマニア・イェーガー(謎の美女ヴィンテージコレクター・f00589)。懐古趣味の気質を持つこの電脳魔術師にとって、この世界はある意味、垂涎の品の宝庫でもあった。座するは彼女の電脳魔術によって世界を書き換え生み出した、“逆巻く嵐の王”。
「海賊どうめぇ~……? なんだか聞いたことがあるようなぁ……どこで聞いたんでしたっけぇ……お酒を飲めば思い出しますよね、お酒ぇ……」
グラニュエール・テウシス(クラーケン・f26386)。かつてはこの海に名を馳せた大海賊であったというが、今は見る影もないアルコール依存症のダメ海賊にしか他人には見えないことだろう。座する船も、彼女の代名詞であった巨大海賊船“クイーンズ・リベンジ”……ではなく、コンディション的にそれを呼び出すだけの力が出せなかったため、その辺で沈んでいた難破船をゴーストキャプテンとしての力で使役している。果たして、今ここに自分がいる目的がわかっているのやらいないのやら。
船首像がその動きを止められ、ショウタイム号上のコンキスタドールたちが混乱しているのを機と見て、彼女たちは動き出す。鉄甲船ではこれ以上近づくことができなくとも、己の分身といえる船に乗り込む彼女たちであれば、高い操船技術によって肉薄することも不可能ではない。
――♪ ……ッ!
そのことに気付いたのか、船首像が嘆くように、呪われた舟歌を奏でる。だが、普通の船ならいざ知らず、猟兵たちが操る船は、そのような呪いで沈むようなことはありはしない。
「ぉぉ……なんて悲しげな歌なんですかぁ……お酒に見放された私の心を表したよう……うぇっ、あびえぇっ」
「なんかめっちゃ心乱されてる人いるんだけど! 大丈夫かな、彼女!」
「明らかに大丈夫ではありませんが、部下の幽霊船員たちが操舵とかはなんとかしてるっぽいので大丈夫ということにしておきましょう……!」
ありはしないんだってば。舟歌に勝手な共感を覚え号泣を始めるグラニュエールに、流石にアマニアとシノギも戸惑うも、作戦に問題はなさそうと見て、海賊服で鼻をかむ彼女のことはひとまず放置することに決めたようだ。
「ともあれ、船首像との交戦は無意味です。重要なのは、この混乱に乗じての電撃戦。作戦通り、私とグラニュエールさんは左舷から、アマニアさんは右舷からお願いします」
「おっけー、任された! それじゃあいくよ、よーそろ~!」
シノギの指示に陽気に頷くと、アマニアは彼女たちと別方向に向かって舵を切って進んでいく。
「くっ……鮫魔術だと……? 一体何者の仕業だ!」
鮫魔術による撹乱で、自分の物としたはずの幽霊船が混乱に陥れられていることに、苛立たし気な雰囲気を隠せないコンキスタドール。だが、そこに彼の上司であった男から声がかけられる。
「余裕がないことね。窮地にこそ笑顔を忘れるな。ウチの船の掟でこそないけど、アタシは口を酸っぱくして教えなかったかしら?」
「うるせェ! ……いたぶって楽しむのはもうやめだ、落ちろ!」
半ば混乱した様子で、杖を突きだすコンキスタドール。だが、ジェイコブはその杖を躱し、自ら身を投げるようにして海へと飛び込んでいった。
「ハ、ハハハ! 馬鹿な奴だ! 自分から飛び降りやがった!」
だが、直後。コンキスタドールは、信じられないモノを目にすることになる。
「……残念。馬鹿なのはどちらでしょうね?」
「――!?」
サメ軍団に気を取られていた隙に、恐るべき速度で嵐の中より現れ肉薄していた、二隻の海賊船である。そのうちの一隻、物見台の上で仁王立ちする女が、虹色の瞳を爛々と輝かせて、コンキスタドールを射抜いた。
「それにしても、無茶をしますね。これで私達が援軍じゃなかったらどうされるつもりだったんです?」
「あら、そーお? どっちにしても死ぬんだもの。それなら、生き残る目がある方にかけるでしょ? それに後は……カンよ、カン。海賊だもの」
乗組員たる骸骨たちに胴上げのように抱えられた、嵐の中でも眩く光る男――“絢爛”のジェイコブの言葉に、鮫のように歯を剥いて笑うシノギ。己の船の甲板に降ろしていた視線を、再びコンキスタドールに向けると、彼女は歌うように叫ぶ。
「さぁ、海賊の時間です!! 憐れなコンキスタドール……蹂躙してあげましょう、略奪してあげましょう!」
号令一下、シノギの船とグラニュエールの船、それぞれの船員たる死霊たちが、幽霊船に乗り込んで近接戦を仕掛けていく。だが、敵もさるもの、コンキスタドール。幽霊船員を呼び出して、さながら幽霊同士の大戦争、というところであったが――。
「蹂躙、といったでしょう?この程度で済むとは思わないことです!リッチにいかせていただきますよ!」
追い打ちをかけるように、シノギが更なる幽霊戦闘員を呼び出す。飽和せんばかりの物量に、流石のコンキスタドールも押され始める。
「バ、バカな……!」
「お前が今前にしているのは、大・海・賊!ですよ!!」
攻撃的な笑みで勝ち誇るシノギ。そんな横から、ジェイコブの号令が飛ぶ。
「アンタたち……!逆よ!」
その号令の元、戸惑いながらも、人質にされていたジェイコブの部下たちが、戦いの影響が薄い甲板の逆側に走っていく。するとそこで待っていたのは――。
「はーい、ようこそ。さ、こっちの船に乗り移っておいで!」
戦闘の隙に、逆舷で待ち構えていたアマニアの船であった。
「さ、逃げるよ!操舵はみんなも手伝ってね!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティアー・ロード
◎【我らリクロウ海賊団】
「私こそは涙の支配者、ロード・ティアー!」
「乙女の味方にして……リクロウ海賊団が一人!」
ザブリバス二世号から海賊船の処刑場へ飛び込み
名乗りをするよ
「やぁ、絢爛のだったか。生きてるかい?」
「君が死んでは彼女が悲しむからね」
まずは処刑中の船長の救出だ
これ以上彼女を悲しませる訳にはいけない
船長を助けたら乙女を止める為に船首へ突貫だ!
「彼女を救いたいと願う、誇りある者のみに告げる!
私に続け!」
使用UCは【刻印「大義名分」】
今の私に肉体はない
だが同じ願いを持つ肉体はある
そうだろう、海賊諸君!
「よし、それでこそ我々の新団員候補だ」
私は念動力で乙女の動きを抑えるよ
「今だ、詩蒲くん!」
ジョン・ブラウン
◎【我らリクロウ海賊団】
<災厄を運ぶもの><悪魔と戦うもの>
地獄の代名詞――その名はザブリバス二世号
「ハァーッハッハッハァ!”史上最悪の世代”リクロウ海賊団様のお通りだぁー!」
魔改造されたザブリバス二世号、その船体に接続端子を突き刺し海上を滑らせるジョン
「シミズガワスゴクハヤイの急流に比べればこの程度……!あれ、結構難しいな(急ハンドル)」
過去に荒れ狂う急流を制したハンドリングで嵐の中を突き進む
「オーライ船長、進路、このまま真っすぐ!ショウタイム号真っ正面!」
「INU=KAKIシステム機動!唸れ!ソルティドッグスクリュードライバー!!!」
「それじゃあいつもの(轢き逃げ及び拉致)行ってみよう!」
リチャード・チェイス
◎【我らリクロウ海賊団】
伝説を語ろう。
神にも悪にも縛られぬ者。法を逸脱せし者。
畏怖の念を込めて語り継がれる、大海賊Leak・Lawの話を。
見えるか、あのバス停が。聞こえるか、あのエンジン音が。
刮目するがいい。伝説に語られし大海賊リクロウ。
船首に縛り付け……もとい、雄々しく立つその姿を。
と、無いこと無いこと語り、リクロウのパブリックイメージを作り上げるのである。
見るがよい、伝説が創造した私とバスの融合体ザブリバス二世号を。
暴れるでない大海賊リクロウよ。防御は万全故に正面衝突にも耐えられる。私は。
(船長に逃げ傷なし。船首に羽交い絞めする)
誇りたまえ、伝説に「美女をかっさらう」(意訳)が加筆される。
詩蒲・リクロウ
◎【我らリクロウ海賊団】
憐れな乙女を助けるのはティアーさん個人の信条で僕たちは関係ないんですけど、人助けは僕やぶさかではない……けど、これは聞いてないんですよねぇ!!!(船首像に対抗して船首リクロウにされている)
ねぇちょっとぉ!?聞いてますか!?
いやまあ確かにここが一番船首像に近づけますけど手段が雑過ぎじゃないですかね!?ってか操舵も雑い!!
恨みのこもった歌声?こちとら恨みのこもった怒声ですよ!
さて、今です!
UDC解放!このバスからは何人足りとも逃げれはしません!
貴女のその怨恨、拉致させてもらいますよ!
曾場八野・熊五郎
◎【我らリクロウ海賊団】
「みんな魚は持ったでごわすな!」
鮭を抱えて船の上に立つ茶色い毛玉、鮭は泣いている
リクロウ海賊団の1人にして人呼んで『ド畜生』の熊五郎
「そーら蛸は叩くと美味しくなるでごわすよー」
向かって来る触手を鮭で【びったんびったん】と叩いて叩き落とす、鮭は泣いている
「速さが足りない、我輩の株より遅いでごわす」
鮭にしがみついて海に飛び込む。鮭が泳いでバスの車体の後ろまで行く
「我輩は強いし速いのでイケる。110(ワンワンオ)ドライブ行くでごわす!」
バスの後ろに噛みついて【犬ドリル】を発動。頭が固定されてるので超級覇王電影弾のように体が回転しスクリューになる
「困った、犬は急に止まれない」
はてさて、かくして猟兵たちの船に乗り移る形で窮地を逃れた海賊団。一息つく彼らに、嵐の中でもよく通る声で呼びかける存在がいた。
「ハーッハッハ! 無事なようだね、海賊諸君! ならば話は速い、ともに彼女を救いに行こうじゃないか!」
「あれは……ヒーローマスクかしら。いや。それより……アレは、何?」
ジェイコブが戸惑うのも無理はない。そのヒーローマスクが乗ってくる船は、様々な世界の文化が入り乱れるこのグリードオーシャンにあってなお異彩を放つ、船とも呼びづらいナニカだったからだ。
それは奇妙な四角形をしていた。全長は船としてみるならばかなり小型であろう。一方で、随分と“厚み”がある。箱を思わせるその姿。それはいうなれば――バスであった。
本来ならば、地を駆けるのはともかく、海を奔るはずのないそんなバスの先端で、能面を思わせる顔をした二匹――もとい、二人のシャーマンズゴーストが取っ組み合っている。というよりも、大柄な人影の方が、小柄な人影によってバスの進行方向に向けて縛り付けられていた。
「ほう、この船の伝説を知らないと? ならば語ろう、伝説を。神にも悪にも縛られぬ者。法を逸脱せし者。畏怖の念を込めて語り継がれる、大海賊Leak・Lawの話を」
「いやあのリチャードさん? このバス別に水上バスでも何でもないんですけど今度は何するつもりですかっていいです説明しないでくださいその前に僕を解放し」
伝説が、始まる……!
●
~♪ 壮大なイントロ~
――何者にも縛られず、ただ自由であった男、大海賊Leak・Law。彼が死に際に放った言葉は、人々の欲望を駆り立てたのである。
『俺の夢は、終わらねェ!』
「いや僕何も言ってませんし、っていうか死んでませんけど!」
――猟兵たちは、欲望の海へと漕ぎ出した。そう、自由を求め選ぶべき大いなる海が、猟兵たちの前には横たわっている。終わらぬ夢を追い続けるならば、越えて行くがいい! 己が信念の旗の元に!
~♪ 無駄に美声な歌声~
――見えるか、あのバス停が。聞こえるか、あのエンジン音が。刮目するがいい。伝説に語られし大海賊リクロウ。
――船首に縛り付けられ……もとい、雄々しく立つその姿を。
●
じたばたと暴れる詩蒲・リクロウ(見習い戦士・f02986)本人をよそに、嵐の中を朗々と響くリチャード・チェイス(四月鹿・f03687)の歌声に、海賊たちだけではなく、ともに戦う猟兵たちやあるいは敵であるコンキスタドールすらも呆気に取られた様子を見せる。だが、ユーベルコードの力をもって紡がれる声は、いやがうえにも聞いたものに対して『大海賊リクロウ』というパブリックイメージを作り上げていく。
そして、聴衆に対してイメージを刻み付けたことによって、更なる変化が訪れる。なんとバスの上に立つリチャードが、その肉体を膨張させ、バスそのものに溶け込むように融合していくではないか。
「これこそ、伝説によって生み出された私とバスの融合体、ザブリバス二世号である!」
「ギャーッ! なんなんですかこれティアーさんと融合したときより生々しくてちょっと気持ち悪い!」
リチャードの存在、そして彼の語るリクロウ伝説を取り込んだことによって、リクロウのユーベルコードによって生み出されたUDCバスは、その姿を大きく変貌させていた。ルーフ部分が甲板を思わせる造りになったり、その中心にマストが生え帆が張られるなど、確かにまあなんとなく船っぽくはなっているのだが、それよりも“鹿っぽくなっている”という印象の方が強いことだろう。
バスと帆船と鹿の狂気の忌み子がここに誕生していた。なお大海賊リクロウは船首像よろしく船の船首に縛り付けられている。かわいそう。
「さあ、これにて準備は整った!」
「……アナタ。さっき、アタシたちにともに行こうって言ったわね。意味を聞かせてもらえるかしら?」
船上で高らかに言うティアー・ロード(ヒーローマスクのグールドライバー・f00536)に対して、“絢爛の”ジェイコブが訝し気に問いかける。
「――決まっているだろう? 救いに行くのさ、あの哀しき乙女をね!」
「……そう。助かるわ」
その言葉を聞いて、安堵と嬉しさ、悔しさが混ざったような複雑な表情で海賊船長は頷いた。彼が手を振り上げれば、嵐の中でも眩くその腕が光り、海賊たちの視線が彼に集まる。
「聞きなさいアンタたち! あの船はアタシたちの船。他のヤツらに任せっぱなしでいいのかしら! いいワケないわよね! 自分のケツを自分で拭けない男を乗せてた覚えはないわよ!」
ジェイコブの一括に雄たけびを上げる海賊たちを見て、小さく揺れた――おそらく頷いたのだろう――ティアーが、号令をかける。
「彼女を救いたいと願う、誇りある者のみに告げる! 私に続け!」
その叫びに呼応して、次々に海賊たちが、ザブリバス二世号に乗り込んでいく。
海賊たちを乗せて、幽霊船の横合いから、再び船首に向かって舵を切ったザブリバス二世号。しかし、その道行は平坦ではなかった。依然として嵐は深い所か、その強さを増しているようですらあり、その上、船首像が悲鳴を上げるように触腕を振り回している。
だが、ザブリバス二世号は轟音を立てながら、会場を滑るように進んでいた。
「ハァーッハッハッハァ! “史上最悪の世代”リクロウ海賊団様のお通りだぁー!」
船の前方で舵を握るのはジョン・ブラウン(ワンダーギーク・f00430)。なお、操舵手を気取っているものの、実際に舵によって船をコントロールしているわけではない。己の扱う携帯式コンピュータ“ワンダラー”の端子を接続することで、ハッキングの要領で船を操縦しているのである。
「シミズガワスゴクハヤイの急流に比べればこの程度……! あれ、結構難しいな」
「あの時に比べれば人に当てる心配がないだけ気が楽って思っちゃう自分が嫌でアアアアアアア! 今大岩掠めましたよ! 僕の顔!! 操舵雑じゃないですか!!?」
以前急流にてボートレースに参加したときのことを思い出しながら、上機嫌に舵を切るジョン。時折障害物を掠めるが、多少の損耗はコラテラル・ダメージである。リチャードと融合したことによって高い防御力を持つバスは正面衝突にすら耐えうる。少年の哀れな悲鳴が聞こえてくる気もするが、コラテラル・ダメージである。
順調に船首に向けて進んでいくザブリバス二世号だが、障害となるのは嵐だけではない。船首に近づくつれて、コンキスタドールと化した船首像の触腕が、近づく者を遮るように襲い掛かってくるのだ。鉄甲船からの支援射撃によってその脅威は減衰しているとはいえ、逆走する形になっているザブリバス二世号に対しては万全の支援とはなり難い。
海賊たちも慌ててカトラスを手に構えるが、コンキスタドールと化したとはいえ、長年ともに航海してきた船首像に刃を向けることが躊躇われるのか、刃が鈍い。
「ええい、狼狽えるなでごわす! みんな魚は持ったでごわすな!」
彼らを一喝する茶色い毛玉。その名は曾場八野・熊五郎(ロードオブ首輪・f24420)。リクロウ海賊団の1人にして人呼んで“ド畜生”の熊五郎である。その手に抱えるのは石狩鱒之助刻有午杉。山女の母と岩魚の父に育てられた運命の鮭児。サケだかマスだかヤマメだかイワナだかスケトウダラだかわからないがとにかく名魚だ。そんな名魚は犬畜生に武器とされる身の上を嘆いてか涙を湛えていた。かわいそう。
「そーら! 蛸は叩くと美味しくなるでごわすよー」
戦友といえる船首像に刃を向けることに躊躇っていた海賊たちを尻目に、容赦なくびったんびったんと触腕を鮭で叩いて叩いて叩き落す姿は正に畜生。でも刃じゃなくて鮭だからセーフです。その鮭が泣いてるからやっぱりセーフじゃないかもしれない。
「うわっ! 弾かれた触腕がこっち来たんですけど! ちょっと!」
●
ともあれ、数々の障害を潜り抜け、ザブリバス二世号、そしてリクロウ海賊団は船首へと辿り着いた。大理石の瞳から、形なき涙を流す船首像のいるその場所へ。
恨めし気な舟歌が周囲には響き、触腕による妨害も一層増している。
「さあ、辿り着いたぜ。ここからはどうする?」
「私こそは涙の支配者、ロード・ティアー! 涙の乙女を救うのみだ! 今の私に肉体はない。だが同じ願いを持つ肉体はある。そうだろう、海賊諸君!」
ティアーの声に、海賊たちが鬨の声を上げる。それに応じるように、船首に縛り付けられたリクロウも、肩を竦めるようにして頷いた。
「ええい、もう!憐れな乙女を助けるのはティアーさん個人の信条で、僕たちは関係ないんですけど、人助けは僕もやぶさかじゃないですから。やってやろうじゃないですか!」
「オーライ船長、進路、このまま真っすぐ!ショウタイム号真っ正面!」
幽霊船に衝突せんばかりの勢いでザブリバス二世号は滑り出す。勢いを増した触腕に、先程までの鮭による迎撃では追いつくまいと、ジョンと熊五郎が視線を交わした。
「このまま突っ切るよ! INU=KAKIシステム機動! 唸れ!! ソルティドッグスクリュードライバー!!!」
「我輩は強いし速いのでイケる。110(ワンワンオ)ドライブ行くでごわす!」
ジョンの号令の元、熊五郎が海に飛び込み、バスの車体後方に文字通り噛みついた。そしてそのまま、己のユーベルコードを発動する。『犬ドリる』。本来ならば、敵にタックルの要領で放たれるその業は、熊五郎の頭が固定されていることによって、その体のみが逆回転し、さながらスクリューのように働く業と変じていた。
「ちょっと、触腕を切り抜けるのはいいけど、このままだと正面衝突よ!? 大丈夫なんでしょうね、アタシたちはアナタに賭けたのよ!」
「任せたまえ!」
ただ真っ直ぐに迫りくる異形の船を恐れたか、防御姿勢を取ろうとする船首像。だが、船員たちの共感を得て力を増したティアーが、念動力でその動きを抑える。
「今だ、詩蒲くん!」
「それじゃあいつもの行ってみよう!」
「誇りたまえ。今ここに、新たな伝説が加筆される」
「UDC解放!貴女のその怨恨、拉致させてもらいますよ!」
衝突の瞬間、リクロウがカッと目を見開くと、ザブリバス二世号の――もとい、UDCバスの本来の能力を発動する。それは、乗り込んだものを連れ去ってしまうという都市伝説。
●
衝突から一瞬の後、ザブリバス二世号は、幽霊船をすり抜けるようにして、その船尾に辿り着いていた。リチャードのユーベルコードの力によって、“拉致”という伝説のもとに因果律を書き換えたためだ。
そして、その船上には、船首像が横たえられていた。
リクロウの宣言通り、怨恨を奪われたのか、相変わらず涙を湛えた瞳なれど、どこか穏やかな表情に見える。
船首像は、最後に小さく微笑むと、コンキスタドールとしての力を失ったのであろう。その動きを止める。
黒い触腕もまた消滅していき――最後には、穏やかな笑みを湛えた、ボロボロの船首像のみが残されるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『幽霊船』
|
POW : 幽霊船一斉砲撃
【海賊船に搭載された全ての大砲】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 幽霊団の船出
レベル×1体の、【カトラスを装備した右手の甲】に1と刻印された戦闘用【幽霊海賊団員】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 聖エルモの炎
全身を【不気味な紫の光】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃回数】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「――お疲れ様、長い間ありがとうね、アタシたちの最高の戦友」
船首像がコンキスタドールとしての命を終えたのを穏やかな笑みで見届けたジェイコブは、猟兵たちに向けて戦意に満ちた瞳を向ける。
「救援に感謝するわ。でも、まだ倒すべき敵は残ってる。悔しいけれど、アタシだけの力では敵わなかった。力を貸してくれる?」
猟兵たちの視線の先には、未だコンキスタドールの支配下にある幽霊船。海賊たちの救出にあたって一時的な混乱に陥っていた船上も、今となっては統率を取り戻している。むしろ、ジェイコブたちに意識を向けなくてよくなった分、ここからが彼にとっても本気と言えるだろう。
「一人では敵わなかったとはいえ、アタシもユーベルコードによって船を操作できる。一時的に支配を取り戻すこともできるはずよ。共同戦線と行きましょ」
「いいでしょう。多少計算は狂いましたが、この船を支配した私に敵うはずなどないのですから――!」
●第二章戦場ルール
本章では、コンキスタドールと化した幽霊船を舞台に敵と戦うことになります。
・幽霊船そのものに攻撃を行う
・“本体”といえる元海賊に対して攻撃を行う
主にこの二つの手段によって、敵にダメージを与えることができます。どちらの方法でも敵を倒すことが可能ですので、ご自身の攻撃手段などと合わせてお選びください。
また、この戦場ではジェイコブや配下の海賊たちの支援により、一時的に局所的な海賊船のコントロールを取り戻すことができます。必要に応じてプレイングにご利用ください。海賊船にどのような装置があるか等は、皆さんでご自由に考えていただいて構いません。
エル・クーゴー
◎
●POW
・幽霊船そのものに攻撃
【嵐の王・空中行軍】発動
高出力空戦モードに移行
――躯体番号L-95
当機は、空対海攻撃にも高い適性を発揮します
鉄甲船より離陸
洋上を飛翔し接近、敵船に対し【空中戦】を敢行します
照準を絞らせぬよう、敵船上空を高速の旋回滞空または往復航過で機動
二門一対(2回攻撃)アームドフォートによる【継戦能力】を活かした断続砲火――【誘導弾】の【一斉射撃】で敵の艦載武装を片端から【蹂躙】します
敵艦載武装の射角と発射緩急より致命的な被弾の危機を察知した際は、友軍の海賊へサーチドローン『マネギ』を伝令代わりに支援要請を
船より不意な投錨を行わせ、船体を傾がせることで命中精度の阻害を図ります
シノギ・リンダリンダリンダ
さぁ、幽霊船。幽霊船です
我が海賊幽霊船とコンキスタドールの幽霊船。どっちが上手か勝負ですね!
ジェイコブさんには申し訳ないですが、とことんまでボコッボコにしてあげます!!!
一章から引き続き自前の海賊船に乗って参戦
召喚した死霊を各ポジションにつけて海戦です
数多の海を駆けた「航海術」でポジション取りしつつ、死霊たちに大砲を撃たせます
弾には魔力をこめ、「属性攻撃」の「制圧射撃」、「乱れ撃ち」の「砲撃」
船自体に攻撃を与えるのも他の猟兵の方々への「援護射撃」にもなるでしょう
ジェイコブさん達には戦闘中に船の動きを止めたりしてもらえるよう頼みます
砲撃戦は海戦の華!
さぁさぁ、楽しい海賊の時間ですよっ!!!
「さぁ、幽霊船。幽霊船だそうですよ?」
どこか嬉々とした表情で、コンキスタドールの幽霊船を見据えるのは豪奢な赤マントの女海賊。シノギ・リンダリンダリンダである。日常では遊興船の案内人らしく、慇懃で面倒見の良い印象を与える彼女であるが、その本性は海賊らしく貪欲にして享楽的。そんな彼女の前に、殴り放題の敵が出てきたとなれば、この笑顔も致し方のないことだろう。
「我が海賊幽霊船とコンキスタドールの幽霊船。どっちが上手か勝負ですね!!ジェイコブさんには申し訳ないですが、とことんまでボコッボコにしてあげます!!!」
なにせ、彼女の乗船“シャニムニー”もまた海賊幽霊船。同業者として、対抗心も湧こうというものだ。
「さあ行きますよお前たち!全砲門、砲撃用意!」
「……チッ、何をやっているんですか、お前たち!はやくこちらも撃ち返すんですよ!」
苛立たし気に舌打ちをしたコンキスタドールが命じるままに、手下の幽霊海賊たちが大砲に付き、迎撃の準備を整えていく。このまま撃ち合いとなれば、十分にあの小癪な海賊船を撃沈せしめるだけの算段がコンキスタドールにはあった。だが、そうはさせじと、嵐の海域を切り裂く一筋の光があった。
「砲台が空中から狙撃されたぁ?ええい!ならばそいつを撃ち落としなさい!」
砲台の内数門の射角を上げ、空中を飛び回る襲撃者を撃ち落とさんとする幽霊船。だが、シノギのシャニムニーとの両取りを狙い、照準を分散したのが仇になったか。数門に狙われた程度では、嵐を統べる白い襲撃者には掠り傷も負わせることができない。
『――躯体番号L-95。当機は、空対海攻撃にも高い適性を発揮します』
鉄甲船からの狙撃を行っていた先ほどとは違い、高出力空戦モードへと換装したエル・クーゴーが空中でそう呟く声は、相変わらず機械的ながら、どこか自慢するようなものに聞こえたのは気のせいであろうか。
ともあれ、その言葉に恥じず、コンキスタドールの砲門は船上を旋回する彼女にまともに命中することすらできず、むしろ断続的に放たれる砲火によって次々に訪問を沈黙させられてゆくのであった。
「流石はおエル様。見事な撹乱です」
仲間からの支援に、サメのように牙を剥きだしにして笑うシノギ。なにせ、彼女にとっては仲間というのもお宝の内だ。己のお宝の価値を感じられると、どこか優越感に浸れてよいものである。
「さぁさぁ、同業者さん、身の丈に合わない強欲は身を滅ぼしますよ!この私が言うのですから間違いありません!」
世界全てのお宝を簒奪する蝗の親玉を自負する彼女にとって、眼前のコンキスタドールのような小物が、欲張った挙句に不利になっていく様は、色々な意味で愉快であった。
「こちらも負けていられません!魔力充填、滅多撃ちと行きましょう!」
『――照準の集中を確認。中度の危険が予測されます』
射撃戦を有利に運んでいた猟兵たちであったが、不意にエルのすぐそばを砲弾が掠める。ようやく砲撃の集中を決心したコンキスタドールによって、シノギを後回しに、エルに火力が集中し始めたのだ。しかし、彼女は冷静に、周囲を旋回していた猫型ドローンマネギを、幽霊船に乗り込む友軍海賊に向けて発進させる。
『>支援要請 友軍海賊に向けて射撃妨害を要請します』
「ははは!この調子で集中砲撃を行えば、あの程度の人形、木端――ぐっ!?」
数門の砲台が、緩急をつけた射撃でエルを攻撃しようとしたところで、不意に船が傾いだ。エルからタイミングの指示を受けた友軍海賊が、突然錨を降ろすことで、船体の安定を崩したのだ。
「俺たちの船がボロボロになってくのは嬉しかないが――ただ横で見てるよかよっぽどマシだ、やってやらあ!」
『支援に感謝します。』
「心配はいらないようで何よりですね。さあ、バランスを崩した今がチャンスです、じゃんじゃか撃っちゃいましょう!」
エルが依然として撹乱と射撃を十分に行っているのを見て満足げに頷くと、シノギもまた、己の部下たる死霊たちに号令を下す。
「砲撃船は海賊の華!さぁさぁ、楽しい海賊の時間はまだまだ始まったばかりですよっ!!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シャーロット・クリームアイス
この船、対艦ミサイルとかあります? ミサイルとは誘導弾で、要するに〈推進装置と誘導機能を持つ飛翔体〉、この場合は対船舶を想定した規模のものを指します。え? ない? それは仕方ありませんね……。
じゃあ大砲とか銛撃ち機とかでいいです。その傍で、イイ感じにスタンバっといてください。
よし、まずはわたしからですね! 出でよクラーケン!
クラーケン属性は帆船属性に有利がとれます。っていうかこのクラーケンは蟹属性以外にはだいたいアドいんですけども。てへぺろ。
とにかくタコ殴りにしましょうね(タコだけに)。
相手がバフったらそこで! 今です! 海賊さんたちに合図、バフの乗った兵器を利用してズドンしてもらいましょう!
グラニュエール・テウシス
◎
(先程までの戦いの最中、海へと落下していた海賊)
あぁん?
……なんだか頭がすっきりしたと思ったら海の中じゃねぇか
まぁ、いいわ
やることをまだ残ってるみたいだしよぉ
あのコンキスタドールを沈めりゃいいんだろぉ!
【水中機動】で幽霊船の真下へと潜水
そしたら、後はいつものようにやるだけさね!
ひよっこ海賊風情がちょっと上手いことやったくらいで調子に乗ってんじゃねぇよ
海中から触手を伸ばして四方八方から船へ取り付かせたら、そのまま引き千切りってやらぁな
幽霊共が触手を引き剥がそうとしだしたら、逆にそいつらを海へと引き摺り込んで海の中で仕留めていってやるわ
クラーケン舐めんじゃないわよ、クソガキが
「押してる……押してるぜ!」
「よし、俺たちもこの調子で……!」
猟兵たちの押せ押せムードに沸き立つ海賊団員たち。そんな彼らに、話しかける一人の娘がいた。
「あの、この船、対艦ミサイルとかあります?」
「対艦……は?」
唐突な問いかけに戸惑う海賊団員たちに、シャーロット・クリームアイスは至極真面目な様子で言葉を続ける。
「あ、ミサイルとは誘導弾で、要するに“推進装置と誘導機能を持つ飛翔体”……この場合は対船舶を想定した規模のものを指します」
「いや、ええと、うん?」
そういうことを聞いているわけではない、とでも言いたげな海賊団員たちであるが、シャーロットは有無を言わさぬ調子で言葉を続ける。周囲の空気を飲み込むようなその話しぶりは、ある意味彼女のコミュニケーション能力の高さのなせる業か。
「と、ともかく。ミサイルは話に聞いたことはあるが、この船には積んでねぇよ」
「ふむ、そうですか。それは仕方ありませんね……。じゃあ大砲とか銛撃ち機とかでいいです。その傍で、イイ感じにスタンバっといてください」
少し残念そうに頷くと、シャーロットは海賊たちに手短に指示を出し、甲板の縁の方へと向かっていく。
「それはいいが、嬢ちゃん、何を――」
「決まってますよ、戦うんですとも! さあ、出でよクラーケン!」
甲板の端で、手を掲げてその名を呼べば、航海の難敵たるその名に驚きを隠せない海賊団員たち。心なしか、コンキスタドール配下の幽霊船員たちも驚いているように見える。
「驚くことではありません! クラーケンとは即ち海の王者! 海の王者即ちサメ! サメ然るに鮫魔術師たる私が呼び出して何の不思議がありましょう!」
鮫魔術の存在を知らぬ者からすれば疑問を禁じえないようなロジックをまくし立てるシャーロットであったが、そんな彼女の号令通り、たしかにぬらりと巨大な影が幽霊船の傍に姿を現す。海魔クラーケン。“船を沈める”という伝承を背負った彼の魔獣は、存在するだけで船舶に対して概念的な有利に立つ。
「さあ! センセイ、やっちまってください!」
どこか小物臭い号令とともに、クラーケンの数十を数えようかという触腕による乱打が幽霊船を襲った。
「どんどんどんどん行きましょう! タコ殴りです!」
タコだけに、などと言って見せるシャーロットであったが、ふと気づく。船を乱打するセンセイ――彼女の使役するクラーケンの触腕に混じって、同じくらい巨大な、そして同様にイカやタコを思わせる触腕が、幽霊船の縁やら砲台やらを引き千切っていくではないか。
「友軍――いえ、これは……同属性の使い手……!」
さて、シャーロットのいう所の同属性――すなわちクラーケンの力の操り手が、何処より現れたかといえば、それは見ての通り、海中である。
海中から猟兵が現れたというのだろうか。いかにもその通り。その力の主、グラニュエール・テウシスは先程の船首像との戦闘の最中、アルコールに惑わされている内に、船から振り落とされてしまっていたのだ。
寝ぼけたような表情のまま海底へと沈んでいくかつての大海賊。だが、彼女は当然かっと目を見開いた。
「あぁん? ……なんだか頭がすっきりしたと思ったら海の中じゃねぇか」
嵐の海の持つ魔力が、彼女に往年の誇りを取り戻させたのだろうか。理屈は定かではないが大海賊“クラーケン”は、誰にもその復活の瞬間を悟らせることなく、海中にてひっそりと覚醒を遂げたのだ。
「……まぁ、いいわ。やることをまだ残ってるみたいだしよぉ。……あのコンキスタドールを沈めりゃいいんだろぉ!」
歴戦の勘か、あるいは泥酔状態でも一応グリモアベースでのブリーフィングは脳内にインプットされていたのか、ともかく瞬時に現状を察したグラニュエールは、獰猛な笑みを浮かべると、熟達した潜水泳法によって嵐の海をものともせずに、幽霊船の真下へと潜り込んだ。
「ワタシの名を言ってみなーーなんてね」
ユーベルコード発動。彼女の深海人たる特徴、髪の毛と一体化したイカの触腕が一気に巨大化し、船の側面を這うようにして海上に向かう。
クラーケン
“船喰い”。船すら残さず略奪すると言われた大海賊の異名にして、代名詞たるユーベルコードである。
「さあて、あそこにいるデカブツは食いでがありそうだが仮にも仲間同士。狙うはひよっこ海賊の幽霊船だね!」
自分とはまた違う形ではあるが、同じくクラーケンと呼ばれる海魔を一瞥してから、グラニュエールは己の触腕で幽霊船を攻撃し始める。縁や砲台に触腕を叩きつけて船を破壊していく。
このまま船を引き千切られてはたまったものではないとコンキスタドールの呼び出した幽霊船員たちが、武器を手に船縁に向かい触腕を引きはがそうとし始めるが、当然それも分かり切っていたこと。新しく海上に突き出した触腕を薙ぎ払えば、船の外に半ば身を乗り出していた幽霊船員たちは、面白いように海へと叩き落されていく。
そして、海中であれば、人間が海魔に敵うはずなし。呼び出された幽霊船員たちは、あっという間に面白いように殲滅されていった。
「はん、クラーケン舐めんじゃないわよ、クソガキが」
豊満な肢体を惜しげもなく晒しながら、整った顔立ちに獰猛な笑みを浮かべるその姿は、人によっては神か悪魔かと見えるであろう異様な迫力を持っていた。惜しむらくは、船底のその姿を目撃する者があまりにも少なかったことだ。
「センセイと友軍による攻撃は順調、さぁて、そろそろ……」
強烈な猛攻に晒されたコンキスタドールは、一旦船のコンディションを回復させる必要があると見たか、不気味な紫色の光をその船体に纏わせ、戦闘能力の強化を計る。だが、それはシャーロットの計算の内であった。
「今です!」
「お、おう!撃てーっ!」
号令一下、この一瞬のみ砲台の操作権を奪取した海賊たちによって、砲弾が次々と発射されていく。本来敵船に向くべきその照準は己に向けて。強化された砲弾の雨が幽霊船自身を襲った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
夷洞・みさき
海賊と向く先を揃えるなんて、ちょっと前までは思わなかったね。
だから、同胞達、”涸れた波”号の皆、咎人はあっちだけだからね。
接舷した後の白兵戦を行う為、船長には接舷が容易になるようにお願いする。
・舵を操作し並びを調整
・接舷用の橋を降ろさせる等
【WIZ】
攻撃回数が増えるのは許容。攻撃と拘束混在。
拘束した敵船員は”涸れた波”号に回収。
敵船員を襲うのは幽霊船員であり、生命力という物自体を持たない存在である。
みさき自身も七分の六は生命体としては中途半端。
ダメージは受けるかもしれないが、相手に対しての回復量は抑えられると判断。
そこ、海賊に助力は不本意だろうけどね。
僕達はもう、あちらの者なのだから、ね?
リヴィラ・エリヴィラ
さぁて本番かな!
乗り込んでるんだし、このまま本体の元海賊を狙っていきましょ
幽霊船を攻める人もしっかりいそうだし両方から攻めるが吉よね
ノリは乗り込む時と変わらず
敵の中で戦うようなものだし常に動いて攪乱狙いね
一人に構うのが面倒な程、敵も諸々漏れが出てくるでしょ
元より自分のものじゃないなら猶更ね
という感じでシャークステップで縦横無尽に飛び跳ねつつ攻撃重ねていくわ
幽霊海賊団員が邪魔しても足場の鮫を叩きつけたりして回避
聖エルモの炎は効果が切れるまで逃げ寄りに時間稼ぎ
それだけでも役には立つだろうし船長さん達が邪魔してくれると尚グー
他の事もしてる状態でずっとは使えないと思うんだけどな
切れた隙は逃さずに
さて、猟兵たちが幽霊船を襲撃する中で、幽霊船上にも猟兵の姿があった。
「さぁて、こっちはこっちでやらせてもらいましょ」
そう、前哨戦の中で既に船に乗り込んでいた、リヴィラ・エリヴィラである。猟兵たちによる襲撃で幽霊船員たちが対応に追われ始めたのを好機と見て、再び撹乱を始めたのだ。
「私のことも忘れてもらっちゃ困るわよ!」
そんなことを言いながら、オーシャンハンターの証たる銛を縦横無尽に振るい、幽霊船員たちを薙ぎ払っていく。幽霊船員は次々と呼び出されるが、限られた船上で、一人のセイレーンを相手に同時に戦うことのできる数は少なくない。その上、数を活かして追い込もうとしても、なかなかそうもさせてくれないのである。
「っと……さあ、並べ!」
船首像との戦いの折に召喚し船上を暴れ回る丸鋸ザメに号令をかけると、再びサメたちが隊列を組み、それを足場に駆け巡ることで立体的な機動が可能となる。
「ええい、一人相手に何をしているんです! サメを足場にするならお前たちも跳び乗りなさい!」
「残念、そうはいかないのよね……っと!」
これはたまらないと幽霊船員がサメの足場を利用しようとすれば、サメを逃散させて足場を崩す。リヴィラは船上の幽霊船員の少なくない数を引き付けることに成功していた。
「うん、船上は程々に混乱しているようだ。そろそろ攻め時かな」
“涸れた波”号の上から様子を伺っていた夷洞・みさきは、船首と船首を向かい合わせるようにしていた自船を嵐の波に乗せて漕ぎ出し、大回りして幽霊船のすぐ真横に船体を寄せる。
「さあ、咎人――海賊たち、よろしく頼むよ」
救出された後、自船に招いていた海賊たちに呼びかければ、海賊たちは頷いて、ユーベルコードを発動する。
「“海賊殺し”……昔一度だけ耳にしたことはあるけれど、実在したなんてね。……いいえ、今はそれよりも!アンタたち、やるわよ!」
「応!」
海賊たちはショウタイム号の操作権を奪取すると、丁度接舷しやすいように並びを揃え、そこに橋を降ろしていった。船と船は結び付けられ、戦闘員の行き来が可能となる。
「準備はできたわ! アタシたちはこのまま乗り込むわよ!」
「うん、上々だ。では行こうか、同胞達。……海賊達は襲わないように。咎人はあっちだけだからね」
みさきが呼びかければ、彼女の同胞、即ち死せる咎人殺したちが海の底より舞い戻る。海の断罪者、海賊殺しと恐れられた者たちが。
幽霊、ゾンビーといった言葉から受けるイメージとは裏腹に、生前の技を感じさせる、思いのほか機敏な動きで敵船に乗り込んだ咎人殺したちは、鞭や鉈、ロープといった、咎人殺しの象徴たる、拷問具や拘束具で次々に幽霊船員たちに襲い掛かっていく。
「拘束した船員は回収していこう。敵の呼び出せる船員も無尽蔵ではないはずだ」
「チッ……押されているだと!? お前たち、俺の船の上で好き勝手させるんじゃない、押し返せ!」
撹乱に業を煮やしたか、コンキスタドールが号令をかければ、幽霊船と、その支配下にある幽霊船員たちが、不気味な紫色の光を纏う。聖エルモの炎。嵐の海に立ち向かう、船乗り達の守護聖人の象徴たる灯火が、歪んだ形で再現されたユーベルコードだ。
この力を身に纏えば、コンキスタドールは立ち向かう困難、つまりは受けた攻撃の激しさに応じてその戦闘能力を増し、更には敵の生命力の吸収が可能となる。
「おっと……これはまずそう。でも……当たらなきゃ意味がなさそうね、それ!」
そう。攻撃力が増し、吸収能力を身に着けたとて、その攻撃が当たらなければ意味はない。即座に被弾を危険と判断したリヴィラは攻撃を捨て、逃げに徹することを決めたのだ。サメの足場を駆使して縦横無尽に逃げ回る彼女を捉えるのは容易なことではない。
「ええい、なら乗り込んできている木っ端船員たちから仕留めてしまいなさい!」
苛立たし気に目標を変えるコンキスタドール。確かに彼の指示通り、戦闘能力の増加した幽霊船員たちは、次々に咎人殺しの亡霊を撃破していく。
「一人一人の質では同胞達が上だとは思うけれど、流石に支援までかけられてはね。……でも、君たちと同じように、こちらも亡霊。亡霊に生命力はあるものかな」
不気味な笑みを口元に湛えてそう呟くみさきの言う通り。咎人殺し達は劣勢なものの、元より生命力を持たない彼らは、倒されたとて、その命を敵に分け与える恐れがなかった。
奥の手を解放したというのに場の流れを引き寄せられていないことに、コンキスタドールの焦りが強くなっていく。
「さて、この調子で……こら、そこ。海賊に助力は不本意だろうけどね。僕達はもう、あちらの者なのだから、ね?」
「時間稼ぎは十分、かな。そろそろ他の猟兵か、船長さんたちが上手くやってくれればいいんだけど……!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ティアー・ロード
◎【我らリクロウ海賊団】
私の目標は船のある程度の破壊だ
“本体”は狙わない
「全く、原始的な攻撃手段だ。
大砲の制御は持っていかれたな…
絢爛の、少しの間でいい。次の砲撃があったら船を止められるかい?」
使用UCは【刻印「仏心鬼手」】!
「さぁ、ここからは種も仕掛けもない…ショウタイムだ!」
撃ち出された砲弾を着弾前にUCによる念動力で掴んで砲身にお返しするよ!
カウンターの次はこちらの攻撃だ
ちょうどいい質量(mass)だし、曾場八野くんの鮭を
更に引き抜いてマストに特攻させよう
「この鱒を餞別としよう!マス・マスト・ゴー・オン!」
「さて、こんなものか
あとはどうする? 絢爛の」
「あの”船員”は、君次第だろう?」
リチャード・チェイス
◎【我らリクロウ海賊団】
私達の仕事はコンキスタドールを滅する事である。
しかして本質を見誤ってはならない。
結局のところ、発端は儀式の不始末によるものである。
見たまえ、聖なる鮭により浄化される船にこびりついた怨念を。
これらもまた君達の業であり、つけるべき始末なのだ。
悪巧みとて、責任は若きシャーマンズゴーストが全てとる。
良し悪しではない……行いとはそういうものである。
お膳立てはこの程度でよいだろうか、“絢爛”の?
では、有言を実行したまえ。
海の潮風に鬣をなびかせ、甲板で飲むコーヒーは一味違う。
船長にこそ"自分のケツを自分で拭かせる"ために滔々と語る。
ジョン・ブラウン
◎【我らリクロウ海賊団】
「さってレディの救出も終わったし」
「もう帰ってもいいかなーって気もするけど……あれ見ちゃうとねぇ」
幽霊船と化したショウタイム号を気の毒な目で見ながら
「流石にあのまま放っておくのも忍びない、もうひと頑張りしようか」
装備したスクーパーやクローラーを駆使してマストやロープを縦横無尽に飛び回り
敵の頭上から攻撃する
「ハッハァ!ジョン・スパロウと呼ん……っとぅおわ!?」
なんか降ってきた
「本日の天気は嵐のち晴れ、所により魚ァ!?」
必死こいて避けまわり、ワンダラーに追加でプラグインを起動
「急な旋風にも、ご注意ください!」
そのまま加速し、空中で高速回転しながら飛び込み
敵を文字通り蹴散らす
詩蒲・リクロウ
◎【我らリクロウ海賊団】
ああ、もう、沈んじゃっても知らないですからね!!
ティアーさん!その魚をこっちへ!
ジョンさん、熊五郎さんを確保、退避準備!
リチャードさんは……まあ大丈夫でしょう。
ジェイコブさん。
船も船員も丸ごと、この破魔鮭でぶちのめしてしまって良いんですね?
正直、耐えるか沈むかは五分五分ですよ?
オッケーです、ではあの船首像にでも祈っててください!
行きます!
うぉおおおおお!!
グランドォ………クラッシャァァア!
曾場八野・熊五郎
◎【我らリクロウ海賊団】
「うーん、幽霊の匂いがプンプンするでごわす。変な2人組とかいそう」
「ごーわごわ!ごーわごわ!……うーん威力が足らんでごわす」
『破魔』の力を持った鮭を『怪力』で船に叩きつけてダメージを与えるが、獣故にもっと派手さを欲しがる。鮭は泣いている。
「そーら一発除霊するでごわすよー。鱒之介、昇天させるでごわす」
船長に支配権を奪わせた船の大砲で空高く打ち上げた鮭に【キョダイケダマックス】を使用、上昇していくのに遠近感がバグったかのようにサイズの変わらない鮭。落下してくる頃には巨大魚が船に向かってくる
「おほー鱒之助元気でごわすなー」
仲間に使い回される鮭を見ながらヤシの実ジュースで一休み
「さって、レディの救出も終わったし。もう帰ってもいいかなーって気もするけど……あれ見ちゃうとねぇ」
「ええ、放っておくのも忍びないですね」
ユーベルコードの合わせ技によって生み出していたザブリバス二世号がなくなったため、他の猟兵の呼び出した船に相乗りしていたリクロウ海賊団の面々。一行の中でも特に道具やモノへの思い入れを強く持つジョンが、猟兵とコンキスタドールの戦いの只中にあるショウタイム号の様子を見て眉尻を下げて呟けば、リクロウも静かに同意する。
「これも彼女のためと思って、もうひと頑張りするとしようじゃないか!」
「やれやれ、新たなる伝説を紡がねばなるまい」
「へっへっへ……暴れてやるでごわす」
リクロウ海賊団の面々が口々に頷くと、彼らはショウタイム号に向けて乗り込んでいく。
「さあて、まずは頭数を減らしていかないとね!」
一行の中でまず動いたのはジョンである。彼は己の腕部に装着された装置からワイヤーを射出すると、幽霊船のマストに粘着させ、ローラーシューズで走り出す。ワイヤーを収納する勢いを利用してマストに向かって大きく加速しながら、道すがらにいた幽霊船員を体当たりで転がしていく。マストに辿り着いた彼を追って近づいてくる幽霊船員がいれば、今度はワイヤーを吊るされたロープ目掛けて伸ばすことで大きく跳びあがりながら、足元の幽霊船員にキックを放つ。
己の装備をフル活用した三次元軌道によって目まぐるしく駆け巡りながら、的確に敵を攻撃していくのであった。
「ごーわごわ! ごーわごわ! 負けていられんでごわすな!」
続いて、短い四足で必死に駆けてきた曾場八野・熊五郎が、名魚石狩鱒之助刻有午杉をびったんびったんと振り回す。恐るべき怪力で振り回される大ぶりの鮭は、それだけで高い破壊力を発揮するが、なんとこの鱒之助には破魔の力が宿っている。名魚ですもの。破魔の力ぐらい宿るさ。
「ごわすっ! ……うーん、威力が足らんでごわすな」
破魔の力は幽霊船には効果覿面のようで、命中した端から船が損壊していくが、彼は畜生ゆえにこの様な地味な破壊活動では満足できなかった。好き放題振り回された挙句に文句を言われた鮭は泣いている。かわいそう。
「砲門を内側に向けなさい! 奴らを黙らせろ!」
これはたまらない、とコンキスタドールは海賊船やクラーケンへの砲撃に回していた砲門を一時的に内側に向け、乗り込んだ猟兵たちを殲滅せんとする。
「おっと! 暴風雨だけじゃなくて砲弾の雨もなんてね、聞いてないぜ、ウィスパー!」
<聞かれておりませんので。天気予報アプリケーションを起動しますか?>
「ごわっ! 鱒之助ガードでごわす!」
高速機動でなんとか直撃を回避したジョンに、鮭を盾のようにして受け流すことでダメージを最小限に抑えた熊五郎。だが、紫の光を帯び強化された弾丸を受け続けては、長くはもたないだろう。鮭も泣いている。
「つまり、私の番というわけだ! とくと覧じろ、ここからが……ショウタイムだ!」
だが、満を持して現れたティアーが、かっと瞳を輝かせると、降り注ぐ砲弾がぴたりとその動きを止めたではないか。これこそは彼女のユーベルコード、目に見えない念動力を自在に操る力。そしてそれは勿論、砲弾を止めるだけなどというチャチなものではない。
「さあ、カウンターといこう!」
見えないサイキックの腕で掴んだ砲弾を投げ返す。その狙いはどこまでも正確に、砲台そのものに命中する。
「今だ、絢爛の!」
「任せてちょうだい!」
砲台がダメージを負い、コントロールが緩んだ隙に、再びジェイコブがユーベルコードを発動する。幽霊船の損耗が大きくなってきたことで、コンキスタドールが支配権を取り返すのも難しくなりつつあった。
「丁度いいでごわす! その砲台、借りるでごわすよ!」
そして、そんな砲台のもとに熊五郎が駆け寄ってきた。勢いよく砲台に飛び乗ると、何かを砲台に押し込む。
「え、ちょっと!? これ打ち上げて大丈夫なの!?」
「構わんでごわす! 派手に決めるでごわすよ!」
戸惑うジェイコブであったが、熊五郎に保証されると、砲台を真上に向けて打ち上げる。嵐の海を切り裂いて高く高く昇っていく鮭。鮭は泣いている。
「くっ、一体何を打ち上げ……鮭?」
天高く昇っていく鮭。戸惑ったように見上げるコンキスタドールであったが、おかしい。天に向かって上昇していくならば、そのサイズは遠近法によって次第に小さくなっていくのが道理。あるいは、落下してくるのならば、逆に大きくなるはずだ。だというのに、上昇しているはずなのにサイズの変わらない“アレ”はなんだ?
「まさか――!」
「そぉら、一発除霊するでごわすよ! 鱒之助、昇天させるでごわす!」
そう、鮭は上昇しながらどんどん巨大化していたのだ。そして、頂点に達した鮭は、重力に引かれて、恐るべき位置エネルギーの塊となって船に着弾する。轟音を立てて降り注いだ巨大鮭は、本体の持つ破魔の力を衝撃波に乗せて、幽霊船と乗組員に甚大な被害を与える。
「ほう、これは丁度いい。曾場八野くん、借りさせてもらうよ!」
そして、猛攻は止まらない。甲板に突き刺さった鱒之助を念動力で引き抜くと、マストに向けて射出する。
「この鱒を餞別としよう!マス・マスト・ゴー・オン!」
鮭は勢いよくマストに命中し、めしり、と音を立てて半ばほど圧し折る。だが、強大なコンキスタドールの一部と化した幽霊船のマストはなんとかその攻撃を凌ぎ切り、鮭による猛攻もいよいよここまで……とは、ならなかった。
「さあ、頼むよキャプテン!」
「ああ、もう、沈んじゃっても知らないですからね!」
そう、リクロウ海賊団長のお出ましである。彼はマストから鮭を抜き取ると、ジェイコブに向かって問いかける。
「ジェイコブさん、本当に船も船員も丸ごと、この破魔鮭でぶちのめしてしまって良いんですね? 正直、耐えるか沈むかは五分五分ですよ?」
「いいのよ、アナタたちに賭けるって言ったでしょ? それに……どのみち、もうこの子も長くはないもの。早いか遅いかだわ」
「……オッケーです。では、あの船首像にでも祈っててください」
静かに頷くと、リクロウは大きく巨大鮭を振りかぶる。
「行きます!」
大きく振りかぶり、叩きつける。それは何よりも単純で、だからこそ最も強力な攻撃。
「うぉおおおおお!! グランドォ………クラッシャァァア!!」
猿叫めいた吠声とともに叩きつけられた鮭が、嵐を切り裂く轟音を響かせた。
「な、な、な――ッ!」
「本日の天気は嵐のち晴れ、所により魚――」
これでもかと鮭を乱用して船を痛めつける猟兵たちに絶句するコンキスタドールの耳元に、静かな声が響く。
「何……?」
「急な旋風にも、ご注意ください!」
崩壊しつつある船体をワイヤーを使って疾駆するジョンが、駆け抜け様に、コンキスタドールを護衛する幽霊船員たちを文字通り蹴散らしていく。
「なんてね。そろそろ出番だぜ、ヒーロー」
「いやぁー、鱒之助は元気でごわすなー」
ニヒルに笑いながら幽霊船を脱出していくジョンの脇に抱えられた熊五郎は、呑気にヤシの実ジュースなど飲んでいた。
「さて、こんなものか。あとはどうする? 絢爛の」
幽霊船員の大半が消え、船体も崩壊しつつある船上で、ティアーがジェイコブに問いかける。
「……ええ、そうね。アナタたちに任せてるだけじゃ、いけないわよね」
「如何にも。コンキスタドールを滅する事は私たちの仕事だが、結局のところ、発端は儀式の不始末によるものである。本質を見誤ってはならない」
わかってはいたことだ、と頷きながらも、それでも後ろ髪を引かれるように、眉尻を落とすジェイコブ。そんな彼に、嵐の中でもよく響く声で、滔々と語りかける者がいた。口から先に生まれてきた鹿、リチャードである。
「見たまえ、聖なる鮭により浄化される船にこびりついた怨念を。これらもまた君達の業であり、つけるべき始末なのだ」
ゆったりとした袖で、舞台役者を思わせる仕草で大仰に船上を指す。視界の端では、ジョンと熊五郎が必死こいて脱出している最中であった。
「悪巧みとて、責任は若きシャーマンズゴーストが全てとる。良し悪しではない……行いとはそういうものである」
「さも当然のように言ってますけど、僕それに頷いたことありませんからね!!」
リチャードの語る責任論に何やら外野のツッコミが飛ぶが、些末事である。
「……ええ、わかってるわ。ふふ、そんな発破までかけさせちゃって、ごめんなさいね?」
「ふむ。お膳立てはこの程度でよいようであるな、“絢爛”の」
これ以上は無用、と手をあげて制止するジェイコブに、鬣をたなびかせながら頷くと、リチャードはどこから取り出したのか、一口コーヒーを飲んだ。
「行ってくるといい。あの“船員”は、君次第だろう?」
その声に背中を押されるように、ハイカラさんの海賊船長。“絢爛”のジェイコブは、拳銃を手に嵐の戦場を駆けだした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
「フン、満足ですか、俺を打ち負かして」
嵐の海。崩れ行く幽霊船。その船首、以前は船首像の姿がよく見えたその場所で、二人の男が対峙していた。一人はカトラスを手に。一人は拳銃を手に。
「満足なワケあるもんですか。――アタシはね、アナタしか、この子を託せる相手はいないと思ってたのよ」
「……なら、希望通りじゃないですか。俺がアンタの船を継いだ。メガリスに触れてアンタよりも強くなったこの俺が!」
悲し気に目を細めるジェイコブに、コンキスタドールと化したかつての部下は、苛立ったように叫ぶ。
「……アタシたちは、メガリスの試練に打ち勝ってきた。アナタは、メガリスの試練に勝てなかった。それだけの話なのよ」
「いつだって……いつだってアンタは俺を下に見ていた! 俺だってもう長くもたないことはわかってる。せめて――アンタだけでも道連れにさせてもらう!」
部下を失ったコンキスタドールが、カトラスを構えて突進する。損耗は激しいといえど、それでも強大なるコンキスタドール。相手が銃を持っているとはいえ、それを耐えて一人道連れにするのは訳もない――。
「あ――あ?」
だが、彼はジェイコブの元にたどり着くことはできなかった。嵐の中でも眩く輝く一陣の光がジェイコブの元から放たれ、彼を貫いたのだ。
「悪いわね。……アナタたちの前でも、使ったこと、なかったでしょ?」
彼を貫いた武器。それは、この船の船長に代々伝わる光線銃。並の武器とは、話が違う。
「最後まで――俺はアンタに勝てなかったってワケだ」
「……アタシだって、勝ててなんかないわよ。彼らの支援がなかったら、アナタのカトラスがアタシを貫く方が早かったでしょう」
恨みがましい視線を向けながら嵐の海に身を投げ出すコンキスタドールを悲し気に見送るジェイコブ。だが、彼らと心中するわけにもいかない、と、静かに幽霊船を脱出するのであった。
アマニア・イェーガー
【POW】
ユーベルコード【逆巻く嵐の王】を展開して砲撃を撃ち返しつつ様子見
うーん、砲撃戦はやっぱり不利っぽいなぁ
仕方ない、ちょっと『マニアックな手』を使わせてもらうね
海賊船を自分の海に"引き込んで"急速潜航!
この船にそんな機能はないけど、海に潜む魔物の『足』を借りて無理やり海中からショウタイム号の、船の弱点──竜骨目掛けてラムアタックを仕掛けるよ
真下には大砲は届かないからね!
絢爛のおじさま、錨を下ろして!船が固定出来ればいいけど、出来なくても目印になるから
錨の鎖を頼りに船底めがけて最大船速でぶちかますよー
さあ行こう、大いなる海の狩人たち!ワイルドハントの始まりだよ!
シャルロット・クリスティア
(甲高い鳴き声と共に鉄甲船へ飛来する翼竜。通り過ぎざまに飛び乗る)
良いところに来てくれましたね、レン。
大物相手です……食い破りますよ!
海賊船への直接攻撃を敢行します。狙うべきは船体下部。
翼竜を駆り、海面すれすれを高速飛行。流れ弾や風による波しぶきが目くらましになってくれるでしょう。
歩兵相手なら向こうの攻撃も届かないですし、大砲で高速飛行する相手を狙撃するのは難しいでしょうよ。
後は高貫通力の迅雷弾で撃ち抜くだけ。
舵でも潰せれば上出来ですし、小さくとも穴を開ければ、浸水の危険がある。
乗員の手は少なからず割ける筈。掻き回してやるとしましょう。
「さーて、本体は無事に絢爛のおじさまが倒したみたいだね」
「ええ、ですが……私たちももう一仕事する必要があるようです」
海賊達の救出を行った後、他の猟兵たちとともに幽霊船との砲撃戦を行っていたアマニア・イェーガーが、船上での戦いは一段落着いたとみて安堵の溜息を吐く。だが、彼女の“逆巻く嵐の王”に同乗して狙撃銃を構えていたシャルロット・クリスティアは、主を失った幽霊船の様子に警戒を崩さない。
その指摘通り、猟兵たちの猛攻によって相当な被害を受けていたはずの幽霊船は、纏っていた紫の光を煌々と輝かせ、破損した砲台を無理矢理起動して滅多矢鱈に砲弾の雨を降り注がせる。
「死の際に立たされて、暴走している、という所でしょうか。断末魔の叫びのようで、かわいそうでもありますが……」
「放っとくわけにもいかないか。とはいえ、砲撃戦は不利っぽいよね」
むむむ、と唸る二人の元に、暴風雨の奥から甲高い鳴き声が届く。そして、鳴き声から遅れること暫し、羽音とともにやって来たのは巨大な翼竜だ。
「わっ、恐竜?」
目を丸くするアマニアとは対照的に、飛んできた翼竜の“逆巻く嵐の王”の横を通り過ぎざまに、シャルロットは機敏な動きで翼竜に飛び乗った。
「良いところに来てくれましたね、レン」
首を撫でれば、上機嫌に鳴き声をあげる。この翼竜は、ヒーローズアースはパンゲア大空洞よりやって来た、シャルロットのバディペットであった。アースクライシスの折にすっかり彼女に懐いてしまった、食い意地の張った愛嬌のあるやつだ。
「アマニアさん、こちらで崩します。なので……」
「オーケー、トドメの一撃は任せておいて!」
シャルロットが翼竜の上から手短に告げれば、アマニアも直ぐに意図を察して頷いた。お互いが役割を果たすことを信じて、小さく微笑みを交わす。
「大物相手です……食い破りますよ!」
狙撃仕様の機関銃を接近戦用の散弾銃に持ち替えながら指示を出せば、翼竜は意気揚々と嵐の海を飛翔していく。食い破るという単語に一瞬目を輝かせたのはご愛敬だ。
「そうです、高度を落として……右っ!」
水飛沫をあげて海面すれすれを飛行しながら、自在に翼竜を駆る少女銃士。めくら撃ちの大砲など、彼女とその愛騎のコンビネーションの前では敵ではない。軽やかに砲弾を避けながら、船の傍まで接近すれば、彼女の魔導銃が火を噴く番だ。
「迅雷弾装填! ――撃ち抜きます!」
発射と同時に、魔導銃に施された術式が発動する。弾丸に込められた雷の魔力が銃身を帯電させ、銃口に磁界が発生。この磁界を通る物体、即ち弾丸にローレンツ力が働くことによって、弾丸が超高速に加速する――すなわちこれは、魔力を利用したレールガンであった。
高速で飛翔した弾丸は、充填された雷の魔力を炸裂させ、シャルロットの手に握られた小さな銃から放たれたとは思えない、強力な衝撃で幽霊船を震わせた。
「さあ、この調子でかき回していましょう、レン!」
ぐるあ、と鳴いて、嵐の海を翼竜が翔ける。
「よし、隙ができた……! さあ、いくよ。急速潜航!」
絶え間ない砲弾の雨が緩んだ一瞬の隙に、アマニアは己の乗る“逆巻く嵐の王”を海へと潜航させていく。本来ならばそのような機能の存在しえないはずのこの船だが、そのような芸当を可能としたのは、“海魔”の力でも借りたのか、あるいはこの船の周囲には、“大いなる海の怒り”なる海性フィールドが本来の海を浸食するように召喚されていたからか、はたまたその両方か。
「よぉし、上手くいった!海中には大砲は届かないからね!」
そういってガッツポーズを取ると、海面に比べれば幾分安全な海中から、海を伝って真下に船を突き進めていく。昏い海中からでも、シャルの放つ電磁弾の纏う曳航は、随分と目立つ目印になった。
「目標竜骨、最大船側! さあ行こう、ワイルドハントの始まりだ!」
まっすぐ、まっすぐ突き進んだアマニアの船は、そのまま一直線に、ショウタイム号の最大の弱点――船の脊椎とも言える、竜骨に向かってラムアタックを放った。
轟音とともにその身が揺らぐ。元より、猟兵たちの猛攻によって、生命線は断たれていたのだ。最後の悪あがきにも引導を渡された幽霊船は、バラバラに砕けながら、海の底へと沈んでいく。
「よく頑張ったね、もう休んでいいんだよ」
散っていくショウタイム号の姿に、彼の船に刻まれた時が霧散していくのを惜しみながら、アマニアは小さく呟いた。
こうして、永きに渡って海賊達の喜びや悲しみ、怒りに幸福、様々な思いを吸収してきた海賊船の成れの果ては、骸の海へと帰るのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『楽しい島の大宴会』
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POW : 宴会だ! 食って飲んで、騒ぎまくるぞ!
SPD : 宴会だ! 歌って踊って、盛り上げるぞ!
WIZ : 宴会で気が大きくなった人から話を聞いたり、噂話を流したり、探し物などをする
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
かくして、コンキスタドールの脅威を退けた猟兵たちは、ジェイコブに案内され、桜雲島へと連れてこられていた。彼らの拠点たるこの島は、サクラミラージュから切り離された島らしく、島中に桜の木が生えている。とはいえ、幻朧桜としての力は失ってしまったようで、一般的な桜と同様、咲いては散るのだが――そう、今は丁度桜の時期でもある。島には桜が咲き誇り、華やかな雰囲気を演出していた。街並みも、基本的にはグリードオーシャンの一般的なイメージに近いが、所々に、サクラミラージュ由来らしい建物等があり、どこかミスマッチな面白さや美しさを醸し出している。
そんな島の高台、桜に囲まれた絶景の広場で、猟兵たちは海賊に囲まれていた。彼らの宴に招待されたのである。
「戦勝祝いでもあるし、労いでもあるし、体力の回復でもあるわ。遠慮せず楽しんでちょうだい」
そういって、取り揃えられた豪華な食事を示しながら、ジェイコブは微笑む。
「アタシたちは、いつだって宴をするのよ。喜びも、怒りも、哀しみも。色々な出来事を、しっかりと胸に刻み、でも引きずらずに清算するために。それがアタシたちの船の流儀。……っていっても、今は陸だけどね」
ひたすら食事をとるもよし、島の文化や景色を楽しむもよし、一芸大会に飛び込むもよし、海賊と語らうもよし。宴を楽しむのは、困難を乗り越えた者の特権なのだから。
●備考
宴で出てくる料理、桜雲島について、海賊達の競っている内容、トークの話題。一切自由に決めていただいて構いません。全力で宴会を楽しんでいただければと思います。
シャルロット・クリスティア
少し、海を眺めたいですね。
引きずらずに清算するために……か。
きっと、遠くない未来にまた新しい船を用意して、この海に漕ぎ出していくんでしょうね。
……強いですね、この人たちは。
積極的に輪に入ったりはしませんが、誘われれば断るつもりもありません。
酒は飲めませんが、失ったものの分まで楽しむ……というのはわからなくもありませんし。
……いつか私も、こんな風に笑って先に進められるようになるんでしょうか。
……って、ちょっとレン?
なに口いっぱいに魚突っ込んでるんですか。まぁ、海魚好きなのは今に始まったことじゃないですけど……。
どんどん食べるから面白くなった?あんまりこの子甘やかさないでくださいよぉ!?
宴会の輪からは少し離れて、海が見下ろせる高台のはずれ。丘の斜面にもちらほらと桜が生え、まるで高台から麓へ桜の道が出来ているような景色を見下ろしながら、シャルロット・クリスティアは物思いに耽っていた。
その手には、機嫌のいい海賊から押し付けられた焼いた肉の串が握られているものの、食べる速度は速くない。
「引きずらずに清算するために……か」
桜の道の先を見る。沿岸、いつもはショウタイム号が停泊していた港には、ぽかんと大きな穴が開いている。
「でも、きっと遠くない未来にまた新しい船を用意して、この海に漕ぎ出していくんでしょうね」
ショウタイム号に捧げる歌などを歌っている海賊たちの姿を見ていると、そう思えた。
「……強いですね、この人たちは」
過酷な人生を歩んできたと言えど、まだ年若い少女。故郷について、家族について、宿敵について。様々なものについて消化しきれない思いを抱え込んでいる彼女にとって、ある種刹那的ですらある海賊の姿はどこか眩しく見えたのかもしれない。
「よう。嬢ちゃん!しっかり食ってるか!戦いの後は食わねえとな、肉を!」
「あ、あはは……ええ、いただいていますよ。香草が効いていて美味しいですね、このお肉」
外れにいる彼女へのお節介か、ちょっとしたからかいなのか。赤ら顔で話しかけてきた海賊に促されるようにして、シャルロットは串を食べるのを再開する。何もお世辞というわけではなく、香草による風味付は勿論のことながら、鶏肉のようでありながら良く引き締まってどこかコリコリとした食感のその肉には新鮮な美味しさがあった。
「ああ、それか、シーサーペントだよ!美味いだろ?」
「な、なるほど……ご当地ご飯という感じですか」
タフだなあ、と小さく苦笑して。けれど、そんな姿にどこか見習うべきものがあるようにも思うシャルロットであった。
(……いつか私も、こんな風に笑って先に進められるようになるんでしょうか)
串を食べ終えたシャルロットが、どこかしみじみと高台の上を見渡せば、視界の端に映るあんぐりと開けた口いっぱいに魚を頬張る翼竜。
「……て、ちょっとレン?なに口いっぱいに魚突っ込んでるんですか?」
そう、そのまま宴会についてきていた彼女のバディペットである。シャルロットの怪訝そうな顔にも、もごもごと口いっぱいに魚を頬張ったまま機嫌よく唸り声をあげる。
「っと、悪いな嬢ちゃん!こいつがどんどん食べるから面白くなっちまってよ!」
「ちょっと皆さん!あんまりこの子甘やかさないでくださいよぉ!?」
大成功
🔵🔵🔵
シノギ・リンダリンダリンダ
海賊と言えば宴
宴と言えば海賊
そりゃあもう存分に楽しみましょう。「宴会」を楽しむのもまた大海賊の流儀です
ひとしきりお酒や桜雲島に伝わる料理を食べたら、お酒のなみなみはいったカップ片手にジェイコブの元へ
お疲れ様でした、“絢爛”
船も失い、幾ばくかの配下も失い。しかして貴方はまだ生きている
ならば、これからもしっかりとこの海を駆けてくださいね
この世界は広大です。一つの海賊団じゃどうにもならないほどに
共に駆け、語り合い、飲み明かしましょう
同じ海賊同士、強欲の海を手中に収めましょう
世界中のお宝が我々を待っています
さて。話は変わりますが“絢爛”
今回の騒動。お手伝いの駄賃は当然ありますよね?
とニッコリ笑う
「あっはっは! まだまだですねぇ、それでも海賊ですか!」
「すげーぞ、あの姉ちゃん10人抜きだ……!」
「流石はあっちも海賊団のキャプテンってことか……!」
宴席の特に中心側の一角でどよめきが上がる。どよめく海賊達の注目を集めるのは、樽ジョッキを手に何やら勝ち誇っているシノギ・リンダリンダリンダであった。周囲には、顔を真っ赤に染めた海賊たちが幾人も膝をついている。
「やれやれ。私としたことが、勝ち過ぎてしまったようですね……」
そんなことを言いながら、周囲に敵なしと判断したシノギは、呆れた視線でこちらを眺めていたジェイコブの元へと移動する。
「今回はお疲れ様でした、“絢爛”」
「いえいえ、結局はアナタたちがいなかったら海の藻屑だもの。アナタたちこそお疲れ様だわ」
ジョッキを差し出せば、ジェイコブもジョッキを返し、こつん、とジョッキのぶつかる音が鳴る。
「それにしても……偉く盛り上がってたけど、何やってたの? 飲み比べ?」
「ん? あー、いえ。すみません、酔っぱらったノリで適当な遊びしてたら随分盛り上がっちゃって。ルールもよくわかってないまま遊んでたんですけど」
聞けば、不意打ちのように発せられるキーワードにいち早く反応して言葉を返した者が勝ち、という、反射神経を競う遊戯をしていたらしいのだが、本人の言う通り、随分適当に遊んでいたらしく、聞いてもよくわからないというのが本当の所であった。
「まあ、そうやってバカ騒ぎ出来るのも、命あっての物種って所ね」
「ええ、船も失い、幾ばくかの配下も失い。しかして貴方はまだ生きている。ならば、これからもしっかりとこの海を駆けてくださいね」
高台からずっと先に見える、嵐の立ち込める海を指さして。小柄なれど有り余る欲望の海賊船長は語る。
「この世界は広大です。一つの海賊団じゃどうにもならないほどに。共に駆け、語り合い、飲み明かしましょう」
「……ふふっ。ええ、そうね。危険を知ってなお、この海に漕ぎ出さずにはいられなかった。それがアタシたちだもの」
一度は座礁した船長も、果てなき海を見据えて頷く。
「同じ海賊同士、強欲の海を手中に収めましょう。その先には――」
「「世界中のお宝が我々を待っている!」」
再びコツン、とジョッキをぶつけ合い、笑顔をかわす二人の船長であった。
「――さて。話は変わりますが“絢爛”」
お互いジョッキを空にした後。シノギはあくどい笑みを浮かべて話しかける。
「今回の騒動。お手伝いの駄賃は当然ありますよね?」
「まったくもう。お名前に恥じなくて結構だこと、“強欲”」
苦笑するように笑うと、ジェイコブは懐から、レトロな意匠の拳銃を取り出した。
「光線銃。ウチの船に代々伝わる秘宝よ。性能だけじゃなく、意匠も結構なモノでしょう?――船もなくなったしね、アタシたちは一からやり直すもの、丁度いい機会だわ」
差し出された拳銃に、少し驚いたように目を丸くした後、シノギはサメのように歯を剥いて、拳銃を受け取った。
「ええ、確かに。――毎度あり!」
大成功
🔵🔵🔵
ジョン・ブラウン
◎【我らリクロウ海賊団】
海賊達とカードゲームに興じている
「やぁジェイコブ船長、ババ抜きやらないかい?」
「実はさ、今回僕らのモチベって殆ど船首像と船のためだったんだよね」
目線を合わさず、交わされるカードだけを見て淡々と話しかける
「海賊の掟ってのに正直イマイチ馴染めなくてね」
「だけどまぁ、尊重はするよ。だからさ」
「次は上手くやりなよ?」
「"ババ"は僕らが貰って行ってあげるからさ」
(ジョーカーを手にしてニッと笑う)
「あーあ負けた負けた!」
「これ以上ツキを持ってかれる前に僕らは尻尾まいて帰るとするよ」
「麗しき船長と乙女の新たな船出に幸運があらんことを!ってね」
熊五郎を抱えリクロウが変化した船に飛び乗る
曾場八野・熊五郎
◎【我らリクロウ海賊団】
持てる全能を使って食卓を蹂躙するでごわす
狩りには情報が必要でごわす
【知恵ある獣の牙】の甘噛みで調理役から何を作るのか情報を抜くでごわす。会場の下見も忘れない
始まったら『大声41』を出せる肺活量でトップスピードを維持しつつ『ダッシュ29・ジャンプ28』を使った3次元機動でご馳走を『捕食』るでごわす
覚えた料理の匂いを『追跡』し、『野生の勘』で邪魔のいない最適なルートを割り出すでごわ
食卓は戦場。動物なら誰でも知ってる
「はー動いた後のご飯がんまいでごわ」
「鱒之助も頑張ったからたくさん食べてもっと太るでごわすよ」
鮭は喜んでいる
「待つでごわ!まだデザートの肉が!あー」抱えられて退場
リチャード・チェイス
◎【我らリクロウ海賊団】
颯爽と船に乗り込んだリクロウ海賊団。
船首に立ち注目を集めるようにステッキをカカッと打ち鳴らす。
仰ぎ見よ、そして聞け。
「宴もたけなわ。楽しい時間はいずれ終わりを迎えるもの。
しかし、それは悲しい時間も等しいと心得るのである。
別れの悲しみは大きくとも、仲間と出会い育んだ
輝かしき日々の思い出は、必ずやそれを上回るであろう。
故に、我らはこの荒波へと漕ぎ出すのだ」
サイドステッキをカカッと打ち鳴らす。
スポットライトが当たるのは我らが船長。
「と、いう事で新しき出会いを紹介しよう。
我らがリクロウ海賊団の新団員、呪われし船首像(残留思念)である」
詩蒲・リクロウ
◎【我らリクロウ海賊団】
あぁ〜つっかれたぁ、でも無事一件落着して良かったです。
さあて、宴会はありますが自分は捕まえたUDC……いや、メガリスでしたっけ?の処理しないとですね。
(出される料理をはもはも食べながらバスで捕まえた怨念の処理に取り掛かる)
うーん、リチャードさん煩いですねぇ。まあ宴会ですしあの人もテンション上がるんでしょきっと(作業に集中して周りを見ていない)
<出航だ!
は?
(身体とグリモアとバスが光り輝き、立派な船舶となる)
……は?
あの、いや、色々言いたいことあるんですけど、これどうやって帰るつもりで?
今僕グリモア出せないですけど?
なんか海にでかいヒレ見えるんですけど?
ちょっと?
ティアー・ロード
◎【我らリクロウ海賊団】
仮面の裏で酒瓶をラッパ飲みしながら
ふらふらするよ
「宴といっても海賊ばかりでは桜があっても華が足りないね、他の猟兵にでも……
お、そうだ」
華ならば依頼主がいるじゃないか!
宴に参加してたらぜひ絡みたいな
お茶貰って絢爛のとジョンが遊んでるのを一緒に茶化しにいきたいね
「やぁーやぁー!ジャストロウくん。お茶貰えないかな?
ちょっと飲みすぎちゃってね!」
「今回も依頼の斡旋に感謝するよ、おかげで新しい面子を確保できそうだ」
「なんだ、いい年こいてババ抜きかい?」
「ああ、絢爛の。彼女こそは未来を予知してこの場に私たちを送り出した―
大依頼主Just・Lawくんだよ」
高笑いしながら飛んで逃げます
さて、事件解決に尽力した猟兵たちが、思い思いに宴を楽しむ中、大きく解決に貢献したチーム悪巧み、もとい、リクロウ海賊団の面々も宴を楽しんでいた。
といっても、その楽しみ方は、三者三様ならぬ五者五様なようで――。
「ごわわわわわ――ごわっ!」
「うおお! なんだこの犬! すげえ勢いでメシかっさらって行きやがる!」
「いや、ただ食い漁ってるだけじゃねえ! メイン所のご馳走ばっか狙ってるぞ!」
例えば熊五郎はといえば、恐るべきスピードで海賊たちの間を縫うように疾駆し、駆け抜けながら次々にご馳走を貪り食っている。海賊達も好きにはさせまいと熊五郎を阻もうとするが、熊五郎は野性の機動力を活かして潜り抜けていく。
「甘いでごわ! 我輩は既に、最適なルートを見抜いているでごわすよ!」
「何っ!」
「アレを見ろ! あそこで倒れてるのは料理長じゃねぇか!?」
一人の海賊が指さした先には、確かに海賊団の料理長が倒れていた。真っ白な白衣にびっしりと茶色い毛が擦りつけられ、腕の一部には甘噛みされたような痕がある。
「我輩は噛みつきを介して相手の情報を盗むことができるのでごわす! その料理長から会場内で狙うべき料理の位置はすっかり盗ませてもらったでごわ!」
「な、なんて非道な! 料理長は動物と触れ合ってたら我を忘れるほどの無類の動物好きだってのに!」
「ああ! 料理前は動物と触れ合えないからって料理後に思う存分犬猫を抱きしめるのが生きがいの料理長を! 許せん!」
――料理長は、大層幸せそうな顔で倒れていた。
「料理長の仇だ! あの犬を捕まえろォ!」
「まだまだ頂いていくでごわす。鱒之助も頑張ったからたくさん食べてもっと太るでごわすよ」
「あの野郎! ペットの鮭にまでたらふくご馳走を食わせるとは!」
やいのやいの。非常に熱く、そしてどうでもいい戦いが繰り広げられていた。鮭も喜んでいる。
「あぁ~……つっかれたぁ。でも無事一件落着して良かったですねぇ」
所変わって、盛り上がる宴からは少し離れた場所で、リクロウは己の所持するUDCオブジェクト“執着する箱”の調整に勤しんでいた。
「宴会はありますが、自分は捕まえたUDC……いや、メガリスでしたっけ? の処理しないとですね」
骨付き肉をむしゃむしゃと頬張りながら、不気味な箱を操作するリクロウ。なにせ、この箱の中には船首像から丸っと抜き取った怨念がそのまま詰め込まれている状態なのだ。放置しておいてはUDCとコンキスタドールが妙な反応を起こしかねないとなれば、対処は必須であった。
「それに、どうせ宴ではあの人たちが変なことしてるでしょうから、巻き込まれたくないですしね」
怨念の処理にかこつけて、宴から離れようという魂胆がなかったわけではない。日々の悪巧みによって育まれた危機察知能力が、宴会場は酷いことになっていると告げていたのだ。
――そんな少年の努力虚しく、彼が間もなく酷い目に合うのは言うまでもないことだろう。
「やれやれ、宴はいいものだが、周りは海賊だらけ、桜はあっても華がないと来たものだ。絢爛のは、華があるといえばあるが、私の求める華ではないし……」
酒瓶を豪快にラッパ飲みしながらふらふらと宴会場を歩き回るのは、真の姿を露わにしたティアーである。彼女は立派な大人ではあるが、うら若い少女の姿で酒瓶をラッパ飲みするのは、些か異様な迫力があった。
「華……華……。他の猟兵にでも……お、そうだ!」
ぽん、と手を叩いたティアーが宴会場を探せば、会場の片隅で静かに宴席を見守るグリモア猟兵の姿を発見した。
「やぁーやぁー! ジャストロウくん。お茶貰えないかな? ちょっと飲みすぎちゃってね!」
「これはロード様。かしこまりました、少々お待ちくださいませ」
にこやかに微笑むと、アルレクリアは宴席から拝借してきたティーポットで、手慣れた様子で紅茶を淹れる。
「こちらをどうぞ。ビタミンCにはアルコールの分解を助ける作用が、蜂蜜には内臓を守る作用があるとされておりますので、ハニーレモンティーをご用意させていただきました」
「あっはっは! さすがの手際だね、味もいい!」
紅茶を一口飲んで上機嫌に頷く仮面の乙女。
「今回も依頼の斡旋に感謝するよ、おかげで新しい面子を確保できそうだ」
「いえ。皆様に適切な依頼をご紹介するのが私の役目ですから。こちらこそ、いつもお世話になっております」
にこやかに礼を言えば、慇懃丁重な礼を以って言葉が返ってくる。
「それにしても、皆様に新しい仲間が増えるとなると、冒険譚を聞かせていただく楽しみがまた一つ増えそうですね」
「はっはっは! 勿論だ。今回の報告にも期待していてくれたまえ!」
紅茶を手にしばし語らうと、他の仲間の様子でも冷やかしに行こうかと、グリモア猟兵に見送られて歩き出すティアーであった。
さて、ジョンはといえば、ジェイコブの元を訪れトランプの束を取り出していた。
「やぁジェイコブ船長、ババ抜きやらないかい?」
「――あら。ええ、お誘いとあっちゃ断れないわね。喜んで受けて立ちましょ」
ジョンの姿を見て小さく頷くジェイコブ。周辺にいた数人の海賊たちを交えて、トランプが配られ、ババ抜きが始まった。
「実はさ、今回僕らのモチベって殆ど船首像と船のためだったんだよね」
「ええ、わかってたわ」
目線を合わさず、交わされるカードだけを見て淡々と話しかける少年の言葉に、海賊船長は多くを語らず、静かに頷く。
「アナタたちったら、隠してなかったでしょ。だからこそ、アタシはアナタたちを信頼できたけど」
「悪いね、海賊の掟ってのに正直イマイチ馴染めなくてさ」
カードを引きながら、小さく肩を竦めて見せるジョン。
「だけどまぁ、尊重はするよ。だからさ」
いつの間にか、他の海賊たちはアガっていて。ジェイコブの引き番、ジョンは彼に半ば強引に一枚のカードを押し付ける。
「――次はうまくやりなよ? “ババ”は僕らが貰って行ってあげるからさ」
ただ一枚、己の手元に残したジョーカーを見せ付けながら、歴戦の海賊に向かって少年は悪童のように笑って見せた。
「なんだいジョン、いい年してババ抜きかい?」
「残念、丁度今負けたところさ」
やってきたティアーがからかうように声をかければ、ジョンは手に持ったジョーカーを見せて肩を竦める。
「これ以上ツキを持ってかれる前に尻尾まいて帰ろうと思うんだけど、どうかな?」
「ああ、それがいい。リチャード!」
そう呼び掛ければ、これまで海賊達相手に謎の弁舌を振るっていたリチャードが、大仰に頷いて歩み出す。
「よかろう、では諸君、注目せよ、そして聞け」
ステッキを鳴らしながらそう告げるリチャードに、自然と海賊たちの視線が集まる。
「宴もたけなわ。楽しい時間はいずれ終わりを迎えるもの。しかし、それは悲しい時間も等しいと心得るのである。別れの悲しみは大きくとも、仲間と出会い育んだ輝かしき日々の思い出は、必ずやそれを上回るであろう。故に、我らはこの荒波へと漕ぎ出すのだ」
立て板に水のようにつらつらと、無駄にいい声と相まって聞く者によっては感動を覚え、聞く者によっては胡散臭い長口上と感じるであろう演説をしながら、リチャードは歩んでいく。よく聞けば実際わりといいことを言ってはいるのだが。
「うーん、リチャードさん煩いですねぇ。まあ宴会ですしあの人もテンション上がるんでしょう、きっと」
そして、ゆったりと歩み寄る鹿の手が迫るのは――そう、ご存知の通り、若きシャーマンズゴースト、リクロウである。おあつらえ向きに、丁度今は作業に没頭しており、リチャードが近づいてきていることにも気付いていないようだ。
「さあ、出航の時である!」
「は?」
再びステッキを打ち鳴らしながら、朗々と言葉が告げられたかと思うと、リクロウの全身が、UDCたる箱が光り輝き――。
そこには、喫水6mはあろうかという大層立派な船舶が鎮座していた。
「…………は?」
そこには、喫水6mはあり、船首にはどこか危うげながらも美しい乙女の像を生やした、大層立派な船舶が鎮座していた。
「紹介しよう。我らがリクロウ海賊団の新団員、呪われし船首像、その残留思念である」
「……いや、あの。色々言いたいことあるんですけど、これ、どうやって帰るつもりで?」
「無論、海路であるが?」
船と化したリクロウが、つとめて冷静に淡々と問いかければ、何を当然のことを、とでも言いたげに、リクロウに乗り込みながら返事をする。
「……ここ、バリバリに島の中心部で丘の上なんですけど?」
「――知らないのかね。船は飛ぶ。いわんや鹿をやである」
その言葉とともに、リチャードが己のユーベルコードでシャーマンズゴースト鹿化させた、高台の上のベンチや柵やといった公共物が集まってきて――。
どおん。思い切り突き飛ばす様にして、高台からリクロウ船を射出した。
「おおっと! それじゃ、ジェイコブ船長、お互いの新たな船出に幸運があらんことを! ってね、いくよ熊五郎」
「待つでごわ! まだデザートの肉が! あー!」
「はっはっは、さらばだ絢爛の!」
おいて行かれそうになったジョンが、熊五郎を抱えながら三次元軌道で船に飛び乗り、ティアーは真の姿を解いて仮面形態に戻りながら飛んでいき、嵐のような彼ら、リクロウ海賊団は宴の場から去っていった。
●
「全くもう、ババだなんて失礼しちゃうわ。――“泣かせたら”承知しないわよ、なんてね」
随分と破天荒な海賊団が、海へと向かって飛び出したのを見送りながら、“絢爛”のジェイコブは――否、一人の海賊は、長年の戦友の新たな船出の幸運を祈るのであった。
●
「あの! 飛び出したはいいんですが、このままだと着水しそうなあたりにやたらでかいヒレ見えるんですけど? ちょっと!?」
――彼らの船路に、幸あらんことを。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シャーロット・クリームアイス
お疲れ様でした!
まずは一杯……あ、話を聞いてもらわなければいけませんし、ノンアルですけども!
騒動はこれにて一件落着!
ですが、めでたしめでたしとはいかないものです。御伽噺ではなく、これはリアルですからね。
とどのつまり、今後の……具体的には、そう、みなさんの船についてです!
ほら、やっぱり火力はあると楽でしょう。ミサイルを積むべきでは?
えー、要らない? ざんねん!
でしたら無難に、修復や補強の資材などいかがでしょう。
わたしが直接お売りするワケではありませんが、買い付けと搬送をファストに済ませるお手伝いならできますので。
このサメの子機を携行してくだされば、離島でも海上でも、快適な通販ライフを送れるかと!
「やれやれ、ああ言われたからには、アタシたちも新しい船の準備、ちゃんとしないといけないわね」
口ぶりこそ仕方なくといった様子ではあるが、その表情は楽しそうに呟くジェイコブ。そんな彼の目の前に、ひょこっと現れて元気よく話しかける娘がいた。
「おやおや! お聞きしましたよ、新しい船をお考えですね!」
そう、年若くして世界を股にかける独自の流通サービスを展開する、セイレーンの少女、シャーロット・クリームアイスである。この年齢でそれだけの商売をするには、営業の機を見逃してはいられないということだろうか、軽快なセールストークを紡いでいく。
「ささ、ジェイコブ船長、お疲れさまでした。まずは一杯……」
「ふふ、いただきましょうか。それで? 船の話だったかしら、聞かせてちょうだい」
商魂たくましいのは嫌いじゃないわ、と言葉を促す海賊船長に、シャーロットは大きく頷く。
「はい、ありがとうございます! 今回新しい船をお考えになるということで、やはり海賊という仕事柄、火力が昼用になる機会が多いかと思うんですよ。そこで役立つのがこちら!」
ででん、とサメ型ポストバッグから取り出したのは、通販カタログらしきもの。表紙には何やらミサイルの写真がでかでかと掲載されており、派手な売り文句が並んでいる。
「ミサイル! 火力こそ正義ですよ! ちなみにミサイルと一口に言った場合、推進機能と誘導性能を備えた弾頭全般を指しますので、射程や破壊力などピンキリなんですが、わたしのお勧めはナパームミサイルでしょうか! なにせ派手です! 燃えますので!」
「あらあら、商売熱心で何よりね。……でも、そうね。コンキスタドールとの船対船も増えてるし、なにかしら対船兵器を用意しておくのもありかしら」
抑揚をつけつつ、巧みなセールストークを行うシャーロットに押されて、思案を始めるジェイコブ。好機と見たか、シャーロットは畳みかける。
「おや、興味がおありですか? それ以外にも、船の修復や新造のための資材なども取り扱っていますよ。わたしが直接お売りするワケではありませんが、買い付けと搬送をファストに済ませるお手伝いならできますので」
セットでご契約いただくと割引も入ります、などといいつつ、カタログをめくっていく流通商人。
「ふふ、そうね。勿論、今すぐにとはいかないけれど……せっかくのご縁ですもの。検討させてもらうわ?」
「ありがとうございます! ではでは、こちらを!」
セールストークへの社交辞令ではなく、本心からそういうジェイコブに、鮫魔術で呼び出された小さな鮫がふよふよと近づいていく。
「こちらのサメの子機を携行してくだされば、離島でも海上でも! どこでも快適な通販ライフを提供いたします! サメールをどうぞよろしくお願いいたしますね!」
そういって、瞳を輝かせるシャーロットであった。
大成功
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アマニア・イェーガー
私は自分の行いを後悔したりしない。勿論主観的、客観的に感想を述べることはあれど、結局のところは過去の観測に過ぎず、それを悔いることなどない。ないのだけれども──
あぁー……いい船だったのになぁ
沈んじゃった……いやわたしが沈めたんだけど
あれでよかった、よかったんだけどなー。うぅ、ショウタイム号……キミの雄姿は忘れないよ
というわけでもう1杯!
ん、酔ってるのかって?そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないね。まあこういうのは雰囲気だから、さ、まだまだ呑むよー!
あ、欠けた舵輪とか船側の破片とか拾ってきたけどいる?いらないならわたしがありがたく貰っちゃうけど。むしろいらないと言ってほしいなー、なんてね
――彼女は自分の行いに後悔などしない。勿論主観的、客観的に感想を述べることはあれど、結局のところはそれは過去の観測に過ぎず、それを悔いることなどない。
「ないのだけれど……ねぇー……」
アマニア・イェーガーは宴席で酒を飲みながら、憂うようにため息をついていた。
「あぁー……いい船だったのになぁ」
残念そうに懐かしむのは、そう、今回の戦いで、他ならぬ彼女が引導を渡すことになった、海賊船ショウタイム号についてだ。
「沈んじゃった……いやわたしが沈めたんだけど……」
あれだけ強靭なコンキスタドールと化すほどの情念が蓄積された海賊船。長い年月を戦い抜いてきたあの船を撃沈させたことは、アンティーク趣味を持つ彼女にとって、本来物事をデジタルに認識するバーチャルキャラクターの彼女に、珍しくどこかウェットな感情を抱かせた。
「悪かったな、姉ちゃん。俺たちの分まで、アイツのこと任せちまってよ」
「アレでよかったんだ。……俺らでなんとかしてやれれば、それがよかったんだろうけどな」
彼女の傍で酒を飲んでいた海賊達が、慰めるように声をかける。
「うぅ、ショウタイム号……キミの雄姿は忘れないよぉ。……というわけで、もう1杯!」
しんみりと涙していたかと思えば、ヤケクソなのか、勢いよくジョッキを突き上げてお代わりを所望するアマニア。
「おいおい、姉ちゃん、結構酔ってんのか?」
「ん~?そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないね」
少し心配気に問うてきた海賊に対し、くすくすと笑いながら言葉を返す。しっとりと静かに笑っていたかと思えば、コミカルで元気な姿を見せる。どこか掴みどころのない彼女に、海賊達もすっかり飲まれていた。
「まあこういうのは雰囲気だから、さ、まだまだ呑むよー!」
「……あ。ちなみに欠けた舵輪とか船側の破片とか拾ってきたけどいる? いらないならわたしがありがたく貰っちゃうけど。むしろいらないと言ってほしいなー、なんてね」
「……ああ、持ってってくれ。その方が船も喜ぶだろう」
海賊たちの新たな船出に、古い船の思い出は持って行っても、そのパーツなどを再利用することはしないのだという。聞けば、どうやらそれも、船乗りのジンクスらしい。
「なるほどねぇ、海賊って言うのも色々大変だね。……でも、そういうことならありがたく貰っちゃうね。大丈夫、大切にさせてもらうよ」
そう言って、時の蒐集家は、今回獲得したコレクションを大切にしまい込むのであった。
大成功
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グラニュエール・テウシス
◎
(戦いが終わった後、島の海岸に流れ着いた大海賊)
ぅっぷ……ふえ?
ぉぉー……いつの間にか、宴会ですかぁ?
……宴会? 宴会ならぁ……お酒ぇがたくさん、あるということですよねぇ!
お野郎どもぉ、どんどんお酒を持ってきなさーい、はりーはりー!
空にした酒瓶を抱えながら座り込めば、呼びだした部下たちの幽霊(主に船長の介護係、一緒に呼んだ船は海岸で停泊中)たちにお酒を運ばせます
ああああー! そっちのお酒の方が美味しそうじゃないれすかぁ?
そうら、しょうぶ! 飲み比べれっふ!
私が勝ったらそのお酒は私のものー、よーいどーん!
飲んだくれの酔っぱらい海賊と化し、酒を飲んでいる周囲へめんどうな感じで絡んでいきます
そろそろ日も暮れ始め、宴もたけなわという頃に、ふらふらとした足取りで宴会場にやってくる一人の人物がいた。
「ぅっぷ……ふえ? おぉー……、花が咲いてて綺麗ですねぇー」
グラニュエール・テウシスである。周りに見えぬ場所で戦っていた彼女は、戦いの後、人知れず桜雲島の海岸に流れ着いていたのだ。
ふらつく視界の中でも鮮やかに輝く桜並木に導かれるように、宴会場までやって来たらしい。
「いつの間にか、宴会ですかぁ? ……宴会? 宴会ならぁ……、お酒ぇがたくさん、あるということですよねぇ!」
「おおっと、姉ちゃん、威勢がいいな!」
焦点の合っていなかった瞳が、どんちゃん騒ぎする海賊達を目にとめてきらりと輝いた。海賊達に割り込むようにしてどかっと座り込み、元気に手を挙げる。
「はぁーい、お野郎どもぉ、どんどんお酒を持ってきなさーい、はりーはりー!」
彼女が号令をかけると、ユーベルコードによって、かつての部下たちの幽霊が続々と召喚される。先程まで幽霊船と戦っていた海賊たちは一瞬身構えるも、幽霊たちが忙しなくグラニュエールの介護に勤しんでいるのを見て、警戒するのも馬鹿らしいと肩の力を抜いた。
「れへへ、なんの宴かは知りませんがぁ、お酒が飲めるならなんでもおっけーれすねぇ!」
かぱかぱと、流石の海賊たちも心配になる泥酔具合でありながら、次々と酒をかっ喰らっていくグラニュエール。だが、酔いは深まれど、いつまで経っても撃沈する気配はない。酒に強いのやら弱いのやら。そんな彼女は、どうやら周囲にいた海賊の持っていた酒瓶に目を付けたらしい。がたっとその場で立ち上がる。
「ああああー! そっちのお酒の方が美味しそうじゃないれすかぁ?」
「えっ、いやこれアンタと同じ酒だぞ、同じ酒!」
彼女が酔っぱらいらしくハチャメチャな言動で絡み始めると、困ったように首を振る海賊。だが、その程度ではアルコール中毒の彼女はあきらめない。
「いーや、嘘ついてるんれすよ! 私にはわかります。 そうら、しょうぶ! 飲み比べれっふ! 私が勝ったらそのお酒は私のものー、よーいどーん!」
「え、えええええ!?」
それじゃあ結局今欲しがっているビールはその海賊が呑むことになるのでは、などという冷静なツッコミをするものはいなかったし、おそらくしたとて彼女には通じなかっただろう。ともかく、困ったように相手の海賊も酒を飲み始める。
「それにしても、イカの髪をした小柄な女海賊ねえ。昔、どっかでそんな有名な海賊の話を聞いたような……。でもま、そんなことはねぇか。随分昔の話だし……アイツが伝説の海賊って感じでもねえしな」
そうやって物思いにふける海賊もいたが、その背後では、酒を飲んで上機嫌になったグラニュエールの高笑いが響くのであった。
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かくして、宴は終わり、時は進んでゆく。かつての愛船の思い出を胸に、しかし未練は置き去りにして、海賊達は新たな海へと漕ぎ出していくことだろう。これだけの危険にあってなお、海を前にじっとしては居られないのが、かれら海賊なのだから。
そして、それは猟兵たちも同じことである。このグリードオーシャンには、数え切れぬほどのコンキスタドールが、未知の島々が、財宝が待っている。目的はそれぞれなれど、各々の目的で彼らはこの世界を冒険することだろう。欲望の大海が、彼らを待っている!
大成功
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