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青ヒゲの兄弟の店

#UDCアース #感染型UDC

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●かつての姿
 地下街のちょっと暗い、目立たないところ。
 青ヒゲの兄弟は、二人で店を切り盛りしていた。
「兄貴、七面鳥が焼き上がったぜ!」
「おう、こっちもボルシチが完成だ!」
 親しくやり取りする兄弟の人柄や、看板猫の『ドルバッキー』の存在。
 何より味の良い料理に、店は隠れた名店として地元では評判だった。

 ……かつては。

「やっぱり潰れちまってるよなあ……」
 地下街を歩く二人組の男性は溜息をつく。
 青ヒゲの兄弟の店は、定期的に黒い封筒でダイレクトメールを送っていた。
 ダイレクトメールが途絶え、どうしたのかと気になって店の前まで来てみた二人だが、
「電気もついてねえし、駄目みたいだな」
 店はすっかり寂れた雰囲気で、人気はない。
「店を畳むにしたって、連絡くらい寄越してくれたら良かったのに」
「ま、なにか事情があるんだろうよ」
 言い合いながらも名残惜しく、店の中を覗き込むと――、
「ひっ……!」
 店の中に、白く人影が浮かんでいた。
 この店の主である青ヒゲの兄弟とは違う姿。
 その者は小瓶を開けると、何かの液体を出来立ての料理に垂らす。
(――毒だ)
 視界は不明瞭。薬物に明るくない二人。
 だというのに、二人は直観的にそう感じ、
「ひっ、ひいいいい!!」
「助けて、助けてえ!!」
 一目散に地下街を抜けて、明るい地上へと逃げ出した。
 ――背後で、冬寂の紫毒『ウルフズヴェイン』が笑っていることにも気づかずに。


「よっ」
 集まった猟兵たちに笑いかけるタハニの手には、黒い封筒がひとつ。
「ダイレクトメールって知ってるか? 店の招待とか案内とか、そういうのに使う手紙らしいぜ」
 ダイレクトメールで人を集め、そこそこ人気もあったUDCアースの店がひとつ、不意に閉店してしまった……というのが、今回の事件の発端だ。
「閉店しちまったのは、店主の両親に何かあって、ってことらしい。閉店そのものに怪異は絡んでねえんだ」
 しかし、空き店舗になったその場所を冬寂の紫毒『ウルフズヴェイン』が占領したことで話は変わってくる。

「店の閉店は急で、ロクに挨拶もしねえで街を出ちまったらしい。そのせいで、店の様子を見に来る人が出てきたんだ」
 彼らは運悪く、店内にいる冬寂の紫毒『ウルフズヴェイン』を目撃してしまう。
 冬寂の紫毒『ウルフズヴェイン』は命までは取らなかったが、それも彼女自身の狙いによるもの。
「敵は、自分に関する噂を利用して精神エネルギーを集めているんだ」
 精神エネルギーを餌にして配下を作り出す冬寂の紫毒『ウルフズヴェイン』に急いで対処しなければ、パンデミックを引き起こす可能性も高い。

「ってことで、まずは現場に向かってほしい」
 第一発見者である男性二人は逃げながら知り合いに連絡を入れたようで、噂は既に広がり始めている。
 精神エネルギーは「にゃんドラボックス」というUDCに姿を変え、人々に問いを投げかけては惑わせ、隙をついて攻撃を仕掛けている。
「『所詮はキレイゴトだ』ってのがにゃんドラボックスの言い分みたいだな」
 猟兵たちの大切に思う何かを、『ごっこ遊びに過ぎない』『嘘ばっかり』と否定してくるだろう。
 無視して戦うことも出来るが、にゃんドラボックスの言葉を更に否定することで、敵の攻撃が弱まる可能性は高い、とタハニは言う。

「その後は、地下街に向かってもらう」
 本来ならそう広くはない地下街なのだが、既に異界化し、迷路のようになっているだろう。
「料理のにおいを辿っていけば行き着けるはずだが、なんだか嫌な仕掛けがありそうだぜ」
 力を合わせれば攻略は不可能ではないだろう。

「無事に店まで到着出来たら、冬寂の紫毒『ウルフズヴェイン』との戦闘だ」
 凍結と静寂の力に長けた相手は、毒物の扱いに優れている――油断できない相手だろう。

「どうか、気を付けて行ってきてくれよ!」
 そう言うと、タハニの手の中でグリモアが輝きだす――。


遠藤にんし
 遠藤にんしと申します。元ネタ? 知らない子ですね…。

 今回はUDCアースです

・1章 集団戦「にゃんドラボックス」
 地下街に続く道がある、地上の市街地です
 異常を察して一般人はほぼいませんが、目撃者である男性二人だけ取り残されてしまっているようです

 にゃんドラボックスは、皆さまの大切にしている「何か」を疑うような発言をします。
 恋人・配偶者がいると「恋愛ごっこを楽しんでいるだけ」、趣味に打ち込んでいると「現実から逃げているだけ」のような言い方です。
 どういったものを大切にしているかをプレイングに記載いただけると、にゃんドラボックスの言動に反映をさせていただきます。

・2章 冒険
 異界化した地下街の探索です。
 道がいくつもに分かれていますが、それぞれから食べ物のにおいが漂ってくるので、お好きな道をお選びください。

自己嫌悪のワインの香り:ご自分の在り方、生き方に疑問や嫌悪感が湧いてくるようです
怠けものの小ぶたの香り:怠惰な気持ちになり、自分の持つものを投げ出してしまいたくなるようです
愛されたいサラダの香り:愛情が足りないという渇望にかられ、愛されるためなら何でもしたくなる衝動にかられるようです

・3章 冬寂の紫毒『ウルフズヴェイン』戦闘
 店内での戦闘です。

皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
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第1章 集団戦 『にゃんドラボックス』

POW   :    しゅぱっ(スイッチが奥に引っ込む)
非戦闘行為に没頭している間、自身の【箱の中に引き篭もり、トグル式スイッチ】が【OFFになる。スイッチを引っ込めて】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD   :    しゅぱっ(音速を超えるスイッチOFF)
レベル分の1秒で【スイッチを瞬時にOFFにする神速の行動】を発射できる。
WIZ   :    しゅぱっ(しかし箱から伸びてきた手でOFFに)
【スイッチON以外絶対に開かない箱】を披露した指定の全対象に【トグル式スイッチをONにしたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。

イラスト:あおくら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 赫々とした夕焼けの中、にゃんドラボックスたちはカタカタと箱を震わせる。
「この世の真実を暴きにきたのにゃ!」
「嘘つきはどこにいるのかニャ~??」
 愛らしい見た目からは想像もつかない、悪意にみちた声で嗤うにゃんドラボックス。
「ひい……っ、ひいい……っ」
 地下街を抜け出た男たちはスマートフォンを手に怯えている。
 彼らを見て、にゃんドラボックスたちは。
「そんなに人との繋がりが大切なのかニャ? 一人で生きるのも死ぬのもおっかなくて仕方がないんだニャ~?」
「ひいいいっ!」
 怯える姿を楽しむように、嬲るように声をかけ続けている。

「この世のキレイごとを暴きにやってきたのニャ」
「オレサマの語る現実に耐えられるのかニャ~?」
 ニタニタと、にゃんドラボックスたちは嗤い続けている――。
檻神・百々女
んまートドメちゃんのやってることも偽物とか、そんなんなんだろうなぁ…
でもさ、本当の力ってなんだろね。トドメちゃんの技術で誰もかれも退魔術を扱えるようになったら、それって借り物で偽物の力なのかな
つかさ、だったらそれで良くない?
借りものでも取りあえず自分とか誰かを守れたら良くない?
本物にこだわって失って、それが正しいのかな
ま、どっちにしろトドメちゃんはトドメちゃんだから、やるんだけどね!

UCを使って攻撃を仕掛けつつ目撃者から分断しようかな
それが結界術の本懐ってやつだしさー
ほらほらおにーさん、トドメちゃんにまっかせなさーい

(技術の力で世界はいくらでも良くなる、と信じている少女です)



「おや?」
 にゃんドラボックスが顔を上げた先にいるのは、百々女。
「ニセモノの力を使うツクリモノが来たみたいだニャ?」
「しょせん弱っちい自分を隠すために、必死で技術を身に着けているに過ぎないのニャ~」
 猫の鳴き声のはずなのに、その声は深いな響きに満ちている。
「んまートドメちゃんのやってることも偽物とか、そんなんなんだろうなぁ……」
 にゃんドラボックスの言葉の全ては否定できないと感じる百々女だが、でもさ、と逆に問いかける。
「本当の力ってなんだろね」
「にゃ?」
「トドメちゃんの技術で誰もかれも退魔術を扱えるようになったら、それって借り物で偽物の力なのかな」
「そりゃそうだにゃ~。誰かの作った技術なんて、失う時はアッという間だニャ~」
 赤い夕陽を背負うにゃんドラボックスを見下ろす百々女の手にはヨリガミデバイス。
 才能も努力もいらない術式が、百々女の求めるものだ。
 トシキック・クラウドがいずれ総ての人に繋がって、技術が広がれば、世界はもっともっと良くなる――百々女は、そう信じている。
「だったらそれで良くない? 借りものでも取りあえず自分とか誰かを守れたら良くない?」
 本当であることにこだわって失うことが、正しいことだとは思えなくて。
 そんな想いを乗せた言葉に、にゃんドラボックスは包帯が巻かれた尾を揺らす。
「誰かを守るってのは、守られている相手を見下したいときに使う言葉だにゃ~」
「『誰かのため』って便利な言葉だにゃ、言いなりになるニンゲンを作りたい時にぴったりなのにゃ」 
 百々女がどんな風に伝えようとしても、悪意に満ちたにゃんドラボックスは歪めてしまう。
「ま、どっちにしろトドメちゃんはトドメちゃんだから、やるんだけどね!」
 言葉に、にゃんドラボックスは耳をピクリと動かす。
「SCRIPT ON」
 百々女の声に、空間が分断される。
 にゃんドラボックスが箱ごと分かたれ、目撃者である男性とにゃんドラボックスを切り離す。
「ほらほらおにーさん、トドメちゃんにまっかせなさーい」
 ひらひら手を振る百々女。
「たっ……助かる、ありがとう……!」
 フラフラしながらも、逃げ出す男性。
「無駄な努力、ご苦労さまだにゃ〜〜」
 にゃんドラボックスはそんな男性に背後から襲いかかろうとするが、空間が再び断たれる。
「させないからねー」
 告げて、百々女は緑の瞳で笑いかけるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スレイマン・コクマー
出たな断罪動物!
このスレイマンがバッキーバッキーにしてやろうッ! 理詰めで!

――その通りだ肉球小ネコども。
オレが身につけたこの魔術とこの性格は、正しくオレの鎧だ。
何よりも傷つきやすく、故に傷ついた僕の心を、人の形に押し込めて堅牢に守るためだけに作り上げた虚構の鋳型だ。
フン……だからどうしたにゃんドラボックス!
こうしてオレは、手に入れた力の余禄で!
オレの眼と手の届く人を救うことができるようになった!
ニセモノと笑われるその力の影で、誰かが明日も笑えるならば!
――それが戦士の、生きる意味ってものだろうぜ!

さって!
オレがスイッチを入れ、悪霊がoffにしてくる手を抑えて、焔霊が中身を燃やす作戦で行くか!



「出たな断罪動物!」
 にゃんドラボックスを前にして、スレイマンは声を上げる。
「このスレイマンがバッキーバッキーにしてやろうッ! 理詰めで!」
 スレイマンの叫びを受けるにゃんドラボックスは、ニタニタ笑いと共にスレイマンを見上げる。
「幽閉されていたせいで、現実が見えていないんだニャ?」
「憐れだにゃ~。弱い自分を必死に隠しているんだにゃ~」
 精神を逆なでするような声で、さかんに言い立てるにゃんドラボックスたち。
「――その通りだ肉球小ネコども」
 猫たちの言葉を、スレイマンは否定しない。
 何よりも傷つきやすく、故に傷ついたスレイマンの心。
「オレが身につけたこの魔術とこの性格は、正しくオレの鎧だ」
 それを人の形に押し込めて堅牢に守るためだけに作り上げた虚構の鋳型だ――と、肯定した上で。
「フン……だからどうしたにゃんドラボックス!」
「にゃ?」
「こうしてオレは、手に入れた力の余禄で! オレの眼と手の届く人を救うことができるようになった! ニセモノと笑われるその力の影で、誰かが明日も笑えるならば!」
 一揃えの指輪を嵌めた指に力が籠る。
「――それが戦士の、生きる意味ってものだろうぜ!」
「ニャハ、開き直りがお上手だニャ~!」
「他人に依存した生きる意味ほど脆いモノはないのににゃ~!!」
 ゲラゲラ笑うにゃんドラボックスたちへ迫るスレイマンは、にゃんドラボックスの箱のスイッチをONに。
 スイッチをONにした瞬間、しゅぱっ、と箱の中から飛んできた手によってスイッチはOFF。
 不毛に繰り返されるON/OFFの中で、スレイマンは喚ぶ。
「ジン! イフリート! ここに秘儀を以て双柱奉る!」
 声を上げると姿を見せる悪霊と焔霊。
 悪霊が閉まろうとする蓋を押さえつければ箱は軋み、金具が飛ぶ。
 箱の中に隠れたはずの猫の姿が暴かれる。猫の口から汚い言葉が出てくるよりも、焔神が猫を焼き尽くす方が早く。
「さって! どんどん行くか!」
 焔の中に汗をひとつ落とし。
 スレイマンの声が響き渡る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーア・ストリッツ
大切に思うもの:無くした記憶

キレイごとを暴きに来た、はぁ
そんな変態チックな真似をされてもドン引きするしかありませんが
キレイごととは服のようなものです
それを無理やり引っ剥がして「見ろ、裸の変態だ!これがこいつの真の姿だ!」とかやられましても……ねぇ?

私の譲れないものは失った記憶を取り戻すことですが
何をどう否定しようと無駄ですよ
この衝動がなんであるかは、取り戻した時に私が決めます

「ですので――とりあえず。後のことはお前を蹴り殺してから決めましょう」
【殺人キック】で箱ごと猫をげしげしします
箱にこもっていると無敵、だそうですが……
『本体は無敵』でも『箱は対象外』ですね?
開かなければ壊せば解決です



「キレイごとを暴きに来たのにゃ!」
「はぁ」
 にゃんドラボックスを前にして、フィーアは溜息をつく。
「そんな変態チックな真似をされてもドン引きするしかありませんが」
「んにゃ?」
「キレイごととは服のようなものです。それを無理やり引っ剥がして『見ろ、裸の変態だ!これがこいつの真の姿だ!』とかやられましても……ねぇ?」
 表情を浮かべないまま淡々と述べるフィーア。
 対するにゃんドラボックスは、ニタニタ笑いを浮かべて。
「着飾にしても、現実を知る必要はあるのにゃ」
「ま、キオクがない空っぽのニンゲンには難しすぎる話かもしれないにゃ〜」
 嘲られても、フィーアは平静の中。
「空っぽにゃ」「惨めにゃ」「孤独だにゃ」
「何をどう否定しようと無駄ですよ」
 どんな悪意をぶつけられようと、フィーアは揺らがず。
「この衝動がなんであるかは、取り戻した時に私が決めます」
「自分のことが可愛くて仕方ない、エゴのカタマリなんだにゃ〜」
 揶揄するにゃんドラボックスが箱の中に引っ込むと同時にボタンも引っ込み、猫は箱の中で無敵状態を作り出す。
「ですので――とりあえず。後のことはお前を蹴り殺してから決めましょう」
 言うと、フィーアは機械化された脚で箱を真上から潰すように蹴りつける。
「フギにゃ!?」
 箱の蓋が歪んで、にゃんドラボックスの目が覗く――殺人キックの威力に目を白黒させるにゃんドラボックスへと、フィーアはあくまで冷静に。
「一発で済むと思いましたか」
 薙ぐように側面を蹴り、かと思えば蹴り上げて箱を転がす。
 天地ひっくり返った箱を真上からげしげしと連撃して、十発も喰らわせたあたりでついに箱は自壊、板きれに戻ってしまった。
「ぼ……暴力に訴えでるなんて、ヒトのやることじゃないにゃあ……」
 そんな状況になっても憎まれ口を叩くにゃんドラボックスに、見事なキックが決まるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

伊美砂・アクアノート
【SPD オルタナティブ・ダブル】
にゃはは、アタシはアタシが大好き!でもオレはオレ自身が嫌いなんだよ、判るか? 【演技、物を隠す、フェイント】で胡乱に喋るよん。たくさんお腹いっぱい食べたいけど同時に痩せたい!みたいなのが我輩であるぞ、つまり全ては本気なのさ。私は滅びてしまう世界を愛してるし、死んでしまうヒトを大切に思ってる。価値とか思考なんて頭蓋骨の中を弄れば操作できるんだから楽しければ良いんじゃないかな?ボク自身の楽しさは悲しく無意味だけどね。 大事なのは自分自身! 我輩の自我、自意識こそが真理である! まあ拙者たちは脳内の電気信号に過ぎないのであるが。
 とりあえず無意味に銃の引金を引きます



 アクアノートの顔いっぱいに笑顔が広がる。
「にゃはは、アタシはアタシが大好き!」
「開き直りも大概にしてほしいのにゃ」
「でもオレはオレ自身が嫌いなんだよ、判るか?」
「んにゃ? ――なるほど、ちっぽけな自分が嫌で、自分をたくさん作りだしたのにゃ」
「たくさんお腹いっぱい食べたいけど同時に痩せたい! みたいなのが我輩であるぞ、つまり全ては本気なのさ」
 多弁な多重人格者であるアクアノートの口調はクルクル変わる。
 浮かべた笑みを即座に消し、クールに告げたかと思えば能面のようになる。その直後にはシニカルに笑っていた。
「くだらんお遊びだにゃ~。矛盾を開き直ることには何の意味もないのにゃ」
「たくさんお腹いっぱい食べたいけど同時に痩せたい! みたいなのが我輩であるぞ、つまり全ては本気なのさ」
 胡乱に喋り続けるアクアノートの手の中では、ショットガンリボルバー『バウロン』が弄ばれている。
 手の中から出し入れして、気まぐれに構えては解いて空へと撃つ。
 アクアノートが動くたびに戦いの気配に身構えるにゃんドラボックスは、ごくわずかではあっても疲労の色を滲ませている。
「私は滅びてしまう世界を愛してるし、死んでしまうヒトを大切に思ってる」
「刹那的な破壊衝動にゃ」
「価値とか思考なんて頭蓋骨の中を弄れば操作できるんだから楽しければ良いんじゃないかな? ボク自身の楽しさは悲しく無意味だけどね」
「頭蓋骨の中だけでよろしく生きていけるかにゃ~? 逃げ道を作るのがお得意みたいだにゃ」
「大事なのは自分自身! 我輩の自我、自意識こそが真理である!」
 気まぐれな発砲。
 笑い声が混じる。
 見開かれていた藍色の瞳が、ふ、と儚げに細められた瞬間。
「まあ拙者たちは脳内の電気信号に過ぎないのであるが」
 意味もなく。
 理由もなく。
 あったとしても『この』人格には分からないまま。
 弾丸が、にゃんドラボックスを破壊した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『夜道にお気をつけて』

POW   :    夜の中、目当てのものを探す。聞き込みをする。

SPD   :    音や言葉に耳をすます。

WIZ   :    横目に通り過ぎてしまう。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


*3/25 11:00~プレイング受付*

 にゃんドラボックスの制圧を経て、猟兵たちは地下へ潜る。
 地下街は異界化し、店のネオンだったはずの光がまばらに咲いて、眩い場所もあれば手元も見えないほどの場所もある。
 ちょっと暗いところを、目立たないところを進んでいくうち、猟兵たちは三叉路へ行きつく。

 左からはワインの香り。しかし、進めばきっと、己への疑問や嫌悪で脳がいっぱいになるだろう。
 中央からは子ぶたの焼ける香り。しかし、進めばきっと、自分の持つものを投げ出したい衝動が体を埋め尽くすだろう。
 右からはサラダの香り。しかし、進めばきっと、愛される欲求が胸を詰まらせることだろう。

 打倒すべき敵はここにはいない。
 しかし、己の内側を満たす情動と向き合う方法を考えなければ――あるいはそのすべを持たなければ――きっと、苦しみに自壊を迎えかねないだろう。
スレイマン・コクマー
フン……こうもやりきれない場所を歩いていると、気が滅入ってくるな。
自分の帰る場所が無くなったかのようだ――。
――まあ、実際に亡国だが。

中央の道を行く。王道だからだ。

落ち着けオレ……確かに、オレの魔術は魔導書と指輪に頼ったものばかりではない。ないが!
こいつは祖先からの大事な預かりモノだ!
捨てることまかりならんッ!

真にその衝動に耐え切れなくなったら、レプリカクラフトで指輪と魔導書の偽物を作り、それを投げ捨てる。

――正直に言うが。
確かに心は軽くなるのだよ、この無様な代償行動で。



「フン……こうもやりきれない場所を歩いていると、気が滅入ってくるな」
 呟きながら、スレイマンは歩を進める。
 気分はさながら自分の帰る場所がなくなったかのよう――実際に亡国だが、と思い、スレイマンの口の端には笑みが浮かぶ。
 目の前には三叉路。
「ここしかあるまい」
 選ぶ道は王道のみ。
 スレイマンが足を向けたのは中央。
 子ぶたの焼けるかぐわしさが周囲に満ちている。香りの煙に巻かれていると、スレイマンの頭の中には靄がかかったようになってきて。
「……、……」
 空気中にぶたの脂でも混じっているのだろうか、いやに体が重い。
 体の重みをすべて捨て去ってしまいたくなる。身につけた指輪も――手にした魔導書も。
「落ち着けオレ……確かに、オレの魔術は魔導書と指輪に頼ったものばかりではない」
 魔導書を持つ手が緩みかける。
 指の付け根、指輪の感触がいやに邪魔に感じられる。
「ないが! こいつは祖先からの大事な預かりモノだ! 捨てることまかりならんッ!」
 身震いをひとつ。
 腕が投げ出そうとする。脚が立ち止まろうとする。意識が、全てを捨て去ろうとする。
 膨らみ続ける衝動に耐えられなくて――スレイマンは、遂に放り捨てる。
 床に落ちた指輪は衝撃で真っ二つになり、書物は宙でばらける。
「レプリカは……造りが荒すぎたか」
 荒い息を吐くスレイマンの手には、依然として指輪と魔導書がある。
 捨てられたものは、急造のレプリカ。
 地面に落ちたそれらを捨て置いて、スレイマンは進む。
(――正直に言うが)
 足取りは、先程よりも軽く。
(確かに心は軽くなるのだよ、この無様な代償行動で)
 その事実が、何よりも苦い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーア・ストリッツ
なんとなくでワインの香りを辿ることに決めました
漂ってくるのは左の方ですか、ではそちらに

しかしさっきから、妙に頭が重いですね
胸もムカムカしてきますし

っていうか何なんですかね
私、正直自分のことなんて何も知らないのですが
猟兵になる以前の記憶ないですし
でも何か、すごい後悔があったようなイメージだけ胸に残っていて
いっつもスッキリしないと言うか、いやーな気分が抜けないんですよね
そんな自分がたまらなく嫌です

嫌ですが……
結局、このもやもやを取るためには昔の記憶を取り戻さないと行けないんです
そのために戦うと決めましたので、ここで立ち止まる法はないんですよ
「あと私、自分以上にオブリビオンは大嫌いなので」
行きます



 フィーアが進む方向を決めたのは、なんとなくでしかない。
「ではこちらに」
 ワインの香りが漂う左の道に入り、どれほど歩いた頃だろうか。
「さっきから、妙に頭が重いですね」
 胸がムカムカして、進むごとに気分が悪くなってくる。
 嫌な香り。嫌な気配。嫌な雰囲気。嫌な――自分。
「私、正直自分のことなんて何も知らないのですが」
 フィーアには、猟兵になる以前の記憶はない。
 思い出せることなどひとつも無いはずなのに、何かすごい後悔があったようなイメージだけが、胸に残されている。
 胸に残る靄はいつもフィーアを苛んで――赤い瞳が、グラリと揺れる。
「いやーな気分が抜けないんですよね。そんな自分がたまらなく嫌です」
 足が止まる。
 銀髪を揺らす風にもワインの香りがまとわりつく。
「嫌ですが……」
 視線は前へ。
「結局、このもやもやを取るためには昔の記憶を取り戻さないと行けないんです」
 赤い瞳は、もう揺らがない。
 記憶を取り戻すために戦うと決めたのだから、立ち止まる法はないと思いを改めて、フィーアは一歩踏み出す。
「あと私、自分以上にオブリビオンは大嫌いなので」
 ヒールの踵が地面を叩く。
 ――前へ進むために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

伊美砂・アクアノート
【WIZ 奇術札・紙馘剣】
左の道を行くとするかの。己への疑問…疑問? なんでアタイはタロットカードやコインを投げつけて武器にしてるんだ? 無駄にカードをシャッフルしつつ歩き、ぼんやりと思考するよ。【第六感、聞き耳、忍び足、暗視】薔薇が薔薇で薔薇なように、あたしはアタシで私たち。けれど、チーズクロワッサンになりたかった気持ちもある(美味しいよねチーズクロワッサン)(空の炭酸飲料のガラス瓶でも良い)まあ、幸いにしてワタシは幸福なので問題ないのでした。不幸が無いので幸せ。でも、他人を観測していると悲喜交々の悲喜劇がいっぱい、綺麗で美しくて届かないヒトたちがいっぱい。私はきっと誰かのようになりたかった



 アクアノートが選んだ道は、ワインの空気が充満している。
「おかしな道じゃの」
 独りごちるアクアノートは、そのまま進み続ける。
 空気は今やワインの香りに満ち、澱んでいるとすら感じられた。
 澱のように重たい空気の中を進んでいると、不意にアクアノートの脳裏には疑問が湧く。
「なんでアタイはタロットカードやコインを投げつけて武器にしてるんだ?」
 いつ取り出したものだったか、アクアノートの手の中にはカードの束。
 慣れた手つきで無意味なシャッフル。
 アクアノート自身にも分からなくなった順番がまたかき混ぜられて、アクアノートもぼんやり思考。
「薔薇が薔薇で薔薇なように、あたしはアタシで私たち」
 壁のシミを横目に見送って、何の音もない道に耳をそばだてる。
「けれど、チーズクロワッサンになりたかった気持ちもある」
 美味しいよねチーズクロワッサン――返答はアクアノート自身の中から。
(空の炭酸飲料のガラス瓶でも良い)
 つらつらと止まらない考えの中、まあ、とアクアノートはステップを踏んで。
「まあ、幸いにしてワタシは幸福なので問題ないのでした」
 不幸が無いから、幸せ。
「でも、他人を観測していると悲喜交々の悲喜劇がいっぱい、綺麗で美しくて届かないヒトたちがいっぱい」
 瞬いては消えるランプ。
 辺りに響き渡るシャッフルの音。
 手の中で躍るカードたちを、今一度かき混ぜて。
「私はきっと誰かのようになりたかった」
 その言葉の意味は。
 意味を知る人格は、既に引っ込んでしまっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メグ・ケッチャム


ずうっとずうっと、わからないことがあるんですよお

胸のペンダントがわたし、持主はもういない
なんであの娘<コ>は殺されたんですかあ?

あんなふうに、拷問まがいのことで殺されるほど、あの娘<コ>は悪いこだったんでしょうかあ?

わかりませんねえ、ちっともわかりませんねえ

――――でもイイんです、べつにどうでも
意味がない死でイイんですよねえ?
そういうのが、みなさんの大好きな殺人悲劇なんですからねえ!



うふふ笑い
見た目幼女
中身バケモノ



 うふふ、と笑い声を漏らしながら、メグは左の道を選ぶ。
 ワインの香りが鼻腔をくすぐる中を軽い足取りで進んでいたメグは、ふと疑問を覚えて。
「ずうっとずうっと、わからないことがあるんですよお」
 誰もいない廊下に、声を投げかける。
 ランプの明かりを受けて光るペンダントが、メグのヤドリガミとしての本体。
 持ち主の夫婦も、その娘も既に亡い――娘の非業の死を思い出して、メグは。
「なんであの娘<コ>は殺されたんですかあ?」
 答える者のいない問いを、虚空へ。
「あんなふうに、拷問まがいのことで殺されるほど、あの娘<コ>は悪いこだったんでしょうかあ?」
 問いをいくら重ねても、答えはない。
「わかりませんねえ、ちっともわかりませんねえ」
 呟くメグの口から、うふふと笑みが漏れる。
「――でもイイんです、べつにどうでも」
 緑色の瞳は笑みの形に歪んで。
「意味がない死でイイんですよねえ? そういうのが、みなさんの大好きな殺人悲劇なんですからねえ!」
 うふふ。
 うふふふふ。
 メグの笑い声は、いつまでも響き渡る――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『冬寂の紫毒『ウルフズヴェイン』』

POW   :    心も体も、凍えて終わる
【攻撃される前に強力な猛毒注射で刺した後、】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    この中では誰しもが静寂を守る
戦場全体に、【人外にも有効な毒ガスが充満する汚染物質】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ   :    呼吸すらも凍りつく
【複数の症状が発生するガスグレネードの範囲】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。

イラスト:鴇田ケイ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はヴィクティム・ウィンターミュートです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


*プレイング受付中*



 三叉路を抜けた先は繋がっていた。
 離れていた猟兵たちは全員合流し、視線を前へ向ける。
 ――うらぶれた様子の店が、一軒。
 おそるおそるドアに触れてみると、鍵はかかっていない。
 ゆっくりとノブを回して――顔を覗かせた猟兵たちに、声がかけられる。

「遅かったな」
 冬寂の紫毒『ウルフズヴェイン』の赤い瞳が、猟兵たちをじっと見つめる。
 手には小瓶とグレネード。
 全身に殺気を滾らせて、ウルフズヴェインは歩み寄る。
「凍らせてやろう――覚悟は良いな」
 告げるとともに、ウルフズヴェインは動き出す――
リリィ・カスタード(サポート)
ダンピールの女の子!
(あたし、呼び捨て、〜だよ!、〜だね)フレンドリーな喋り方で誰にでも馴れ馴れしい。
身体つきはセクシーでお洒落さんだけど中身は子供。胸は大きめ。ちょっと頭のネジが飛んでる。好奇心旺盛でポジティブ!
羞恥心が薄く下着姿でもへっちゃら。実は盗癖があるけど悪い事と思っていない。
背中には黒い天使の羽根(着脱可)。食べることが大好き!料理も好き(腕は普通)。戦闘の時も楽しそうな感じ。難しいことを考えるのが苦手なのであまりシリアスになれない。本能で戦う系。
恋愛にはまだ興味ナシ。
過度なエロ禁止。後はお任せ!何でも歓迎。


八幡・茜(サポート)
ふふふ、この美人のおねーさんに任せて!

基本何でも肯定するわね、殺人であっても一度は肯定しちゃうわ
その上で倒すべき敵であれば、「でも仕方が無いわよね」と割り切って普通に倒すけれど!
楽しそうなことや、笑いが取れそうなことは積極的にやるわ。ふふふ、泥は被ってなんぼじゃない?
男女問わず、人に触るのも触られるのも好きだわ! みんな大好きよ! あ、でも恋人以上な行為はしないし、させないけれどね!

戦うときは、いかに相手の手を掴んで恐怖を与えるかを考えて動くわ! 魅了はあまりしないけど、有効であったら考えるわ!
戦いで自分が傷つくのは仕方が無いわね! おねーさんも相手を倒そうとしているのだもの、当然の覚悟だわ。



 既に廃墟となった店内を満たす芳香を胸いっぱいに吸い込んで、茜は冬寂の紫毒『ウルフズヴェイン』を見つめる。
「美味しい香りがするわ! お料理が上手なのね!」
「うんうん、とっても美味しそう。食べちゃいたいな~っ!」
 にこにことリリィはうなずくが、ウルフズヴェインは表情を変えない。
「毒入りだ。食べるのか」
「毒入りはさすがに食べられないかな!」
「そうか、ならば――凍って貰おう」
 リリィの返答を受け、ウルフズヴェインはグレネードを天井めがけて投げつける。
 コン、と天井にグレネードが当たる軽い音。
 その瞬間起こる炸裂――茜は身を低め、ウルフズヴェインへと疾駆した。
 漂う香りは桃源の衣から。磨き抜かれたなぎなたの切っ先がウルフズヴェインの手に残っていた手榴弾のピンに引っかかり、二度目の炸裂はウルフズヴェインの手の中で起こった。
「……っ、」
 口許を覆うマスクがあっても、間近での炸裂は堪えたのか。
 ウルフズヴェインは赤い瞳を不快げにひそめるが、茜は退かず。
「リリィさん、お願いするわ!」
 猛毒がもたらす苦痛が茜を苛み、口の中に血の味が広がる。
 そんな中で張り上げられた茜の声に、ピンク色の髪を揺らしてリリィはうなずき。
「まかせてー!」
 ウルフズヴェインが右に避けようとする――先回りした茜のなぎなたが首元に突き付けられて動きを制され。
「やっちゃうよ!」
 飛び掛かったリリィがウルフズヴェインの胴に組み付いた。
「この程度――」
 振り払うウルフズヴェイン。
 もう一度グレネードによる攻撃を放とうとしたウルフズヴェインの動きが止まったのは――リリィの足元から伸びる、蔦のせい。
 赤薔薇を咲かせる蔦は鳥籠のようにウルフズヴェインの体を取り囲む。閉じ込められたウルフズヴェインは茜の攻撃を受け止めると、赤薔薇を思わせる鮮血を一筋垂らし。
「やむを得ないか――」
 自身もダメージを受けることを覚悟のうえで、グレネードによって蔦を破壊しようとするが。
「探し物はこれかな?」
 懐に隠していたはずのグレネードは、リリィの手の中。
「ふふ、覚悟しなさい!」
「もう一回、いくよー!」
 リリィの足元から、今一度蔦が顕れ。
 息を合わせて、茜は地を蹴った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

中村・裕美(サポート)
副人格・シルヴァーナ
『すぐに終わってしまってはもったいないですわね』
多重人格者の殺人鬼× 竜騎士
外見 赤の瞳 白の髪
特徴 長髪 のんびり 社交的 惨殺ナイフを愛用 実は胸が大きい
口調 (わたくし、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)

裕美のもう一つの人格で社交性と近接戦闘特化。
戦闘では【残像】が残るような優雅ステップで敵に近づき、惨殺ナイフによる【部位破壊】で急所や腱を狙い、更に【傷口をえぐる】。
槍を使うことがあれば、相手を【串刺し】にします
【瞬きの殺人鬼】使用後の昏睡状態はもう一つの人格に切り替えカバー

あと、虫が苦手


夜神・静流(サポート)
「夜神の剣は魔を討つ刃。悪しき魔物が出たならば、何時でもこの剣を振るいましょう」
破魔技能に特化した退魔剣士。あるいは悪い人外絶対殺す女。
妖怪や悪霊、魔物、邪神等を討つ事を得意としており、その手の依頼には積極的に参加する。
一般人や仲間、友好的な相手には礼儀正しく接するが、討つべき邪悪に対してはとことん冷徹非情で、一切の慈悲を持たない。

戦闘中は抜刀術と退魔の術を合わせた独自の剣術(ユーベルコード)を状況に合わせて使用。
逆に戦闘と退魔以外の事に関しては不得手で、機械や横文字が苦手。

シナリオ中の行動に関しては、魔を討ち、人々を護るという自分の使命を第一に考える点以外は全てお任せします。



 赤い視線が交錯する。
「――参りましょう」
 静流の手には十六夜が握られている。
 ウルフズヴェインにも殺気は伝わっているのか、その手には注射器が。
「警戒が必要ですわね」
 呟くのは裕美――否、今はシルヴァーナ。
 優雅なステップでウルフズヴェインとの距離を詰めるシルヴァーナは、惨殺ナイフ『 Zanne di squalo』を隠そうともしない。
「ゆっくりと、切り裂いて差し上げますわ」
 ナイフが閃く。
「フ、――」
 動きに合わせてウルフズヴェインは注射器をシルヴァーナの腕に突き立てた――と思ったが、それは残像で。
「わたくしに攻撃が出来ると思いまして?」
 優美に微笑んだ直後、シルヴァーナのナイフは腱に突き刺さる。
 痛みに目を見開くウルフズヴェインの前で、シルヴァーナはさらに深くナイフを突き入れる。
 とめどなく血があふれる中で、シルヴァーナは笑みをこぼしながら、何度も何度も抉り続ける。
「アハハハハ! いい色をしていますわね!」
 ――しかし、哄笑と共に一方的な攻撃を出来たのも僅かな時間のこと。
 力の代償として昏睡に陥ったシルヴァーナの手からナイフがこぼれ落ち、体も崩れ落ち――、
「大丈夫ですか」
 崩れ落ちかけたシルヴァーナの身体を支えるのは静流。
「……は、はい……」
 シルヴァーナは裕美に戻って、おどおどと返事をする。
 返答を受けた静流は軽くうなずくと、ウルフズヴェインに向き直る。
「我が剣は剛」
 身を低め、爆発的な力で跳躍。
「打ち砕く!」
 刃を振り下ろす――同時に注射器を向けるウルフズヴェイン。
 注射器の針は静流の手の甲に。
 猛毒を注がれ、静流は強い眩暈に襲われる。
 視界が歪む。刺すような痛みに苛まれて、剣を取り落しそうになる。
 ――それでも。
「五ノ太刀・穿!」
 切っ先はぶれず、ウルフズヴェインに向けられていた。
「っ…………」
 衝撃に伴って吹き荒れる風に、裕美は目を細める。
 ようやく収まった風に、視界を二人の方へ向けると。
 ――破壊されたテーブルの残骸の上に、無慈悲な殺気を募らせる静流が。
 斬り払われ、片膝をつくウルフズヴェインと対峙していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

スレイマン・コクマー
――知っているか?
この【青ヒゲの兄弟の店】は、それはそれは人気のある店だっんだ。
人生の節目、別れ別れになろうという二人が、いつか必ずこの店で落ち合おうと、約束するほどに――聞いた話だがな。

叶わなくなったのは、仕方のないことだ。
だがそれを! くだらぬ噂で汚すオブリビオンがオレの前にいる!
意味もなく、民草の思いを想いを踏みにじる者がいるッ!

昇古・幽歴繚乱(イール・アティカー)――共に、共に立ち向かえ!

フン、肉体を持たぬご先祖共に、どれだけ【症状】がでるか見ものだな、ウルフズヴェイン!
オレを含め、一人でもお前に辿りついたならば……このUDCアースに土下座でもしてもらおうか!



「――知っているか?」
 ウルフズヴェインを前にして、スレイマンは武器を取らずに問いかける。
「この【青ヒゲの兄弟の店】は、それはそれは人気のある店だっんだ」
 人生の節目、別れ別れになろうという二人が、いつか必ずこの店で落ち合おうと、約束するほどに――聞いた話だが、と言い添えるスレイマン。
「叶わなくなったのは、仕方のないことだ」
 黄金の双眸は、逸らされることなくウルフズヴェインを見据え。
「だがそれを! くだらぬ噂で汚すオブリビオンがオレの前にいる! 意味もなく、民草の思いを想いを踏みにじる者がいるッ!」
 途端に膨れ上がる闘気――応えるかのように、ウルフズヴェインもグレネードを手に。
 動き出すのはウルフズヴェインの方が早い。
 投擲されたグレネードの軌道は真っ直ぐだからこそ勢いがある。空中で炸裂する轟音の中で、スレイマンは声を張り上げる。
「昇古・幽歴繚乱(イール・アティカー)――共に、共に立ち向かえ!」
 スレイマンの声に呼応し、靄が揺らめく。
 形を得た靄は亡霊。轟音を伴う爆破にその姿は僅かに歪むが、それ以上に変化はない。
「フン、肉体を持たぬご先祖共に、どれだけ【症状】がでるか見ものだな、ウルフズヴェイン!」
 悲嘆を受け止める亡霊たちは、揺らぎ歪みながらもウルフズヴェインに追いすがる。
「――邪魔だ」
 ウルフズヴェインは亡霊を撒こうとするが、グレネードがほぼ効かない亡霊たちに効果は見えない。
 逃げ場を制限されながらも、間一髪のところで亡霊の魔手から逃れるウルフズヴェイン。
 そんなウルフズヴェインから視線を逸らさず、スレイマンは指輪を煌めかせながら駆け出す。
「オレを含め、一人でもお前に辿りついたならば……このUDCアースに土下座でもしてもらおうか!」
 爆風の吹き荒れる中、スレイマンはウルフズヴェインへと手を伸ばす――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

伊美砂・アクアノート
【SPD 羅漢銭・須臾打】
ちッ。アタイは毒を使うのは好きだが、相手に使われるのは好きじゃ無いんだけどね…! イヤな顔をしつつ、【毒使い10、毒耐性10】で可能な限り耐えよう。【早業10、投擲9】でコインを投げつけ射撃しつつ、【演技11】で毒にやられるタイミングを誤魔化す…当然。別にダメージが無い訳じゃないが、完全に毒で動けなくなる前によろめいて、見た目はフラフラになってるように偽装。【暗殺12、だまし討ち10】で、油断したところを叩くよ。…そして、もしそれが上手く行ったら、今度は毒なんて全然利いていないように演技する…余裕は無いけど、毒の効き目は外見で判断しづらいだろうからね。心理戦といこう。



 ウルフズヴェインの戦いは毒を伴うもの。
 毒の瘴気が漂う周囲を見渡して、アクアノートは舌打ちをひとつ。
「アタイは毒を使うのは好きだが、相手に使われるのは好きじゃ無いんだけどね……!」
 思い切り顔を歪めているアクアノートだが、それは不快さによるものであって毒によるものではない。
 羅漢銭・須臾打によるコインの早撃ちは絶え間ない。
 ひとつひとつの威力は強いものではない――しかし、何度も撃ち込まれればダメージは重なっていくもので、ウルフズヴェインの端正な顔には疲労の色が滲む。
 ――それに合わせるように、アクアノートもまた自身の顔に疲労の色を滲ませる。
 投擲するコインは疲れによって狙いがズレたかのよう。
 早撃ちの速度が落ちたのは疲れによるものかのよう。
 意図的に呼吸を荒くする。意図的に焦りの表情を浮かべる。意図的に不利を装う。
 ダメージを負っている演技をしているアクアノートではあるが、演技だけでないダメージの蓄積も無視はできない。
(でも平気)
 完全に毒で動けなくなるまではまだ時間がある――油断を誘うことが目的なのだと言い聞かせ、早鐘を打つ心臓を抑え込んで。
「ッ――」
 瞠目して、膝をついて倒れ込むアクアノート。
「呆気ないものだな」
 そんなアクアノートへ、ウルフズヴェインは歩み寄る。
 迷宮を作り上げていた汚染物質がウルフズヴェインの手中に集約される――確実なトドメを刺そうとして、ウルフズヴェインが手をかざした瞬間。
「油断したね?」
 アクアノートのコインが、至近から叩き込まれる。
 二度三度四度、散弾銃さながらに撃ち込まれる攻撃にウルフズヴェインは倒れ込み、逆にアクアノートは体勢を立て直し立ち上がる。
 熱を持ったような痛みは依然として体を苛むが、その苦痛はすべて内側に押し込んで。
「全然効かないよ」
 告げて、アクアノートは何度目か分からないコインを放つ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーア・ストリッツ
凍えて凍りつく、ですか
私の前でよくもまぁそんな口がきけたものです
割と惨たらしく殺しますので、そちらこそ覚悟して下さいね

ハルバードを振りかぶって攻撃をしかけます――フェイクですが
狙いは相手が後の先で仕掛けてくる猛毒注射
ハルバードを途中で手放し、それを両腕どちらかで受けます
なにせ私の腕は機械の義手、生身より毒に強いですし
「切り離しても直ちに問題は有りません。使い捨てにすると高くつくので普段はしないのですが」
毒を受けた腕をパージしても、私の反撃には一切支障ないですしね
「凍える恐怖、というのはこういう事です。さようなら」
残った腕で敵の首を掴みつつ、【氷雪竜砲】をブッパしてフィニッシュです



「凍えて凍りつく、ですか。私の前でよくもまぁそんな口がきけたものです」
 表情を変えることなく、フィーアはウルフズヴェインと向き合う。
「割と惨たらしく殺しますので、そちらこそ覚悟して下さいね」
 言うが早いか、フィーアはウルフズヴェインめがけ疾駆。
 ビキニアーマーがこすれ合う硬質な音を背景に手にしたハルバードを振りかぶると、空気がかき混ぜられて銀髪が揺れた。
 両手に持ったハルバードは見るからに重たげで、攻撃を受けてしまえばひとたまりもない――ウルフズヴェインもそう承知しているはずなのに、表情には余裕が滲んでいる。
「ふっ――」
 大きく振りかぶったことで隙が生じた胴。
 そこに目掛けて、ウルフズヴェインは猛毒注射を突きつける。
 ハルバードを振り捨てたフィーアは右腕で胴を庇い、注射針は胴ではなく右腕に刺さり、即座に薬液を注ぎ込む。
 注射器の中には、凍るような痛苦をもたらす猛毒がある。身体に回れば、ハルバードを拾うどころかこの場から退却することだって困難になるだろう。
 だからフィーアは。
 自ら腕をパージする。
「何っ……!?」
 瞠目するウルフズヴェインの動きが止まる。
「切り離しても直ちに問題は有りません。使い捨てにすると高くつくので普段はしないのですが」
「――愚かだな。それでは得物を持てまい?」
 冷笑を浮かべるウルフズヴェイン。
 嘲りを意に介さず、フィーアはウルフズヴェインの首を掴んで傍に引き寄せる。
「氷竜の息吹。竜騎士たる私の奥の手をご覧に入れましょう」
 首を掴まれたウルフズヴェインは気道を半ば塞がれて、くぐもった声を出す。
 ――フィーアの喉奥、魔法陣が淡く発光し、呼気に氷雪が混じる。
「凍える恐怖、というのはこういう事です」
 思い切り息を吐いた――吹雪が起こり、ウルフズヴェインを包み込み、凍結の中に閉じ込める。
「さようなら」
 五文字の言葉と共に吐き出された息によって、ウルフズヴェインの肉体は砕け散った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月08日


挿絵イラスト