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モフモフ、メルヘン、ラビリンス!

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●夢と現実の境界線
 その迷宮へ一歩足を踏み入れれば、そこはもう現実と空想の区別もつかないワンダーランド。
 右を向いても左を向いても、延々と続く無数の本棚。それらの棚に納められた本を一度でも開けば、本に仕込まれた数々の魔法が夢の世界へと人々を誘う。
 青い表紙の本を開けば、中からしゃぼん玉が溢れ出す。黄色い表紙の本を開けば甘い香りが周囲に漂い、桃色の表紙の本を開けば周囲に花が咲き乱れる。
 どれも、何の変哲もない初歩の魔術。しかし、それらが次々に繰り出されることで、迷い人はいつしか己の歩いた道を見失う。
 ここは何処だ? 出口はどちらだ? 代わり映えしない本棚の列が延々と続く中、夢に飲まれた迷い人は、二度と現実へ戻ることなど叶わない。

●迷宮図書館
「アルダワ魔法学園の地下迷宮で、フロアボスになったオブリビオンが、迷宮を変化させているみたいね。今のところ、そこまで危険はないみたいだけど……放っておくと、何が起こるか分からないし、早くなんとかした方が良さそうよ」
 そう言って、パトリシア・パープル(スカンクガール・f03038)が猟兵達に語り出したのは、魔法学園の地下に広がる書棚で作られた迷宮の話。
「今回の迷宮……フロアボスになったのは、ライブラリーマスター・シャルロットっていうオブリビオンみたいだわ。なんでも、貴重な本を護っているとか、いないとか……でも、今はそんなこと、関係ないわね」
 今回の目的は、フロアボスを撃破して迷宮の変異を止めること。しかし、そのためにはフロアボスの力によって変貌した迷宮を突破しなくては話にならない。
「迷宮の中に一歩でも足を踏み入れると、そこは壁が全部本棚になっているみたいなのよね。納められている本は、どこにでもあるような民話とか童話とか、殆ど児童書みたいなものばかりなんだけど……中にはトラップもあるから、気を付けた方がいいわよ」
 もっとも、そのトラップというのも、泡やら花やらが本から飛び出し、辺りをメルヘン色に染めて行く程度の代物だ。しかし、それらに気を許してのほほんとした空気を楽しんでいると、何処まで行っても同じ光景が続く迷宮の構造に惑わされ、帰り道が分からなくなってしまう。
 場合によっては本棚を押したり、上に乗ったり、本を退かして奥に隠れた道を見つけたりする必要もあるだろう。そんな本棚の迷宮を抜けると、その先に待っているのは謎かけ好きのスフィンクス……ではなく、なんとも眠そうな顔をしたモフィンクス。こちらか仕掛けない限りは無害だが、フロアボスの部屋の手前に陣取っているため、なんとかして退いてもらう他にない。
「モフィンクスは、あなた達のユーベルコードを脱力した身体で受けることで無力化したり、眠気を誘う欠伸して、自分達の体力を回復したりして来るわ。他にも、何か色々と質問して来ることもあるらしいんだけど……その時、自分が本当に思っていることを答えないと、大ダメージを受けちゃうみたいなのよね」
 それらの艱難辛苦……もとい、なんともほわほわした空間を抜けると、ようやくフロアボスの待つ部屋へと辿り着ける。が、今までの緩~いメルヘンワールドとは違い、ライブラリーマスター・シャルロットはなかなかの強敵なので気をつけねばならない。
「戦いになると、シャルロットは固い辞書で直接殴ったり、大量の子ヤギの霊を呼び出したりして来るわ。他にも、自分がピンチになると白馬に乗った王子様を呼び出して、一緒に戦わせるらしいわよ」
 そこまで危険な罠などはないが、しかし油断をすれば、二度と再び夢の世界からは戻れない。くれぐれも、楽しいメルヘンの世界に飲み込まれ、自分を見失わないように。
 そう言って、パトリシアは猟兵達を、魔法学園の地下へと転送した。


雷紋寺音弥
 こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。

 アルダワ魔法学園にて、なんともメルヘンチックな地下迷宮が発見されました。
 命に関わるトラップなどはありませんが、一度でも迷えば帰還は困難。
 行方不明者が出る前に、迷宮を攻略してフロアボスを撃破しましょう。

 第一章では、全ての壁が本棚と化した地下迷宮を踏破していただきます。
 各能力値で可能な行動は、以下の通り。
 本を開くとファンシーなトラップが発動する場合もありますが、特に珍しい本や高価なアイテムなどはありません。

 【POW】力ずくで全てを踏破。進み方は好きにしろ!
 【SPD】技術を駆使して出口の場所を推測だ!
 【WIZ】魔法や知識で出口を探し出すぞ!

 続く第二章で、フロアボスの部屋の前に陣取るモフィンクスの群れを退かしていただきます。
 その後、第三章でフロアボス:ライブラリーマスター・シャルロットと戦い、撃破していただきます。
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第1章 冒険 『迷宮大迷路』

POW   :    力ずくで全てを踏破。進み方は好きにしろ!

SPD   :    技術を駆使して出口の場所を推測だ!

WIZ   :    魔法や知識で出口を探し出すぞ!

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

神楽火・遥瑠
神楽火・夢瑪(f02079)と行動。

「おぉ、すっごい! これは夢の国なの!」
いくら見た目がメルヘンでもダンジョンはダンジョン。遊園地のつもりでいると痛い目を見そうね!
トリニティ・エンハンスで防御力を強化! これで罠にかかっても大丈夫!
さあレッツゴー!
「って、なんで止めるの夢瑪」
突っ込んだら危ないって? そりゃダンジョンだもん、危険が待ってるに決まってるの。大丈夫大丈夫。防御も固めたし行けるって!
……むぅ、そこまで言うなら仕方ないの。じゃあ夢瑪が探した最短ルートをボクが進む。これでオッケー?


神楽火・夢瑪
神楽火・遥瑠(f02078)と同行。

「あ、あれかわいい。……持って帰れないかな?」
オブリビオンの仕業って言っても、こんなにかわいい所を消しちゃうのはちょっともったいないかも。
「遥瑠ちゃん! 突っ込んだら危ないよ!?」
いくら補助が効いてるからって、何も考えずにまっすぐ進むなんて。ほんとに困った姉……。
「この後のことも考えようよ。迷宮の先には敵がいるんだよ?」
ガジェットショータイムで出てきた迷宮地図作成装置を背負って進む。途中の罠は遥瑠に任せて、夢瑪は出口への最短ルートを割り出すのに集中。
夢瑪が頑張ればそのぶん遥瑠の消耗が減る。頑張らなきゃ。


夜桜・雪風
本の迷宮ですか。いろいろな本を開いて遊ぶのも楽しそうですね。

やはり迷宮探索の基本は【第六感】とパワーだと思うんです。
道が無いなら作ればいいのです。
この向きに進めば行けると思ったら、
【高速詠唱】でユーベルコードを放って立ちふさがる壁を破壊していきましょう。
炎【属性攻撃】なので本が相手なら突破は簡単そうですね。

トラップがあるかもしれませんが【オーラ防御】で身を守りつつ、
トラップもユーベルコードで破壊していきましょう。

きっと私が歩いた後には道が残ると思うので、
迷子になってる方がいたら助けになるかもですね。

思う存分破壊を楽しみながら迷宮攻略です。
素敵な時間を過ごせそうです。素敵ですね。


ティエル・ティエリエル
「わー、本がいっぱいだよ☆面白そうな絵本があったら持って帰ってもいいよね♪」

まずは「第六感」を信じて、気になった方向にどんどん進んでいくよ。なるべく高い位置を飛んで移動するね。
本棚と天井の上に隙間があればスカイステッパーなんかも駆使して潜り込んで、隣の通路の様子を確認!
どっちの通路がいいか迷ったらまた「第六感」頼りだよ☆

「大丈夫、大丈夫♪ボクに任せておいてよ!」なんの根拠もなく小さな胸を張って先に進んでいくよ!


神久・紅玉
ローラさん(f01443)と一緒に迷宮を攻略していくのです
凄いですね……まるで本の森みたいな迷宮なのです

そういえば、この前『コミュ力』のお陰もあって仲良くなった魔法学園の先生がこんなお話を
木を隠すなら森の中、本当の魔法使いはそう簡単に魔法の種はばらさないって……
ローラさん、これってもしかして!そういう事じゃないんですか?

『トイピース』を『変幻自在の乗り物』でドローンを作製
ローラさんに怪しい本の位置や法則を教えて貰った場所を確認するのです
……やっぱり、繋げてみるとそれらが大きな魔法陣見えませんか?
怪しい本をどうにかしていけばきっと道が分かるはずです

行動の改変やアドリブ、他猟兵さんとの協力も大歓迎


キャロライン・ブラック
紅玉(f03420)さまとご一緒に探索いたします
迷宮でなければ、このご本を楽しめたかもしれませんが……残念です

さて、わたくしの魔法とは体系が違うかと存じますが
わたくしも魔法使いの端くれ
トラップの傾向や仕組みは見抜いて見せましょう
アルダワ魔法学園を巡って得た世界知識も判別に役立つはずですの

紅玉さまのお考えも、一理ありますわ
フロアボスの力によって変容なさったのですから
罠や本の配置に何らかの意図があるのも自然かもしれません

どうあれ、迷宮の仕組みを解明することは突破の近道かと存じます
罠や本のジャンル、色々な観点から法則を読み解きましょう

行動の改変やアドリブ、他猟兵さまとの協力も大歓迎いたします


ユキノ・サーメッティア
奇妙な場所というか、本好きにはいい場所なのかなー?
でも中身は白紙みたいだからそうでもないのかな

とりあえず、本には触れずに行けるだけ行ってみようか
本棚の上に行けそうなら【ジャンプ】で一番高そうな場所に飛び乗って
見渡せる範囲を見渡しみまようか

その場所を基点にして、見える範囲でなにかりそうなら
その場所に向かって
UC『スカイステッパー』でそこに向かってみようか
そうやって虱潰しに調べて行けばその内に先に進められそうな
何かを見つけられるんじゃないかな~



●楽しき世界への誘い
 地下迷宮へ一歩足を踏み入れると、そこに広がっていたのは無数の本棚。
 右を向いても、左を向いても本ばかり。しかも、ただの本ではない。
 童話の本に混ざって陳列されているのは、紛うことなき魔導書だった。どれも、開くと簡易的な魔法が発動するだけの代物だが、しかし中から現れるメルヘンチックな仕掛けの数々は、それだけで迷宮を訪れた猟兵達の心をくすぐった。
「おぉ、すっごい! これは夢の国なの!」
「わー、本がいっぱいだよ☆ 面白そうな絵本があったら持って帰ってもいいよね♪」
 神楽火・遥瑠(テンペストナイト・f02078)とティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は、早くも本の魔力に魅せられている模様。飛び出そうとする姉を止めようとした神楽火・夢瑪(シャイニングナイト・f02079)だったが、しかし彼女もまた開きっ放しの本から飛び出している、ぬいぐるみのような動物達に心を奪われていた。
「あ、あれかわいい。……持って帰れないかな?」
 魔導書から現れた小動物達は、それぞれが誘うような仕草をしつつ、迷宮の奥へと消えて行く。本当に、ただそれだけの仕掛けなのだが、しかし楽しい場所を好む者にとっては、この上ないトラップとも言えるわけで。
「本の迷宮ですか。いろいろな本を開いて遊ぶのも楽しそうですね」
 そう言って、夜桜・雪風(まったりデイズ・f00936)が近くにあった本を開いた途端、中から無数のしゃぼん玉が溢れ出した。
「凄いですね……まるで本の森みたいな迷宮なのです」
「そうですわね。ですが、これもオブリビオンの生み出した迷宮。油断せずに進みましょう」
 本棚の壁を見上げる神久・紅玉(つま先立ちの林檎・f03420)に、キャロライン・ブラック(色彩のコレクター・f01443)は促しつつも、先の小動物やしゃぼん玉を注意深く見つめていた。
 こんな楽しい場所を消してしまうのは、勿体ないと思う者もいることだろう。しかし、ここがオブリビオンの巣食う地下迷宮である以上、下手な油断は命取り。
 動物を追って迷宮の奥に迷い込んだら最後、再び帰ることは難しくなる。しゃぼん玉の幻想的な雰囲気に魅せられたまま歩き続ければ、その泡が割れる度に方向感覚を奪われて、自分がどこにいるのかも分からなくなる。
 そういう技術、そういう魔法なのだろうと納得し、キャロラインは自身の経験や魔法体型と照らし合わせつつ、迷宮を攻略するヒントはないかと目を光らせる。同じく、ユキノ・サーメッティア(空白・f00911)もまた、敢えて本には触れずに本棚の上へと目をやって。
「とりあえず、本には触れずに行けるだけ行ってみようかな」
 本棚の上から迷宮を見渡せば、何か判ることがあるかもしれない。それぞれの特技を生かしつつ、巨大なメルヘン図書館と化した迷宮の探索が始まった。

●甘々トラップ!?
 ずらりと並んだ本棚の先。夢と現実の交差する迷宮へ遥瑠は躊躇うことなく突っ込んだ。
「魔法で防御力も強化してあるし、これで罠にかかっても大丈夫! さあ、レッツゴー!」
 罠があるといっても、所詮は子どもを脅かすビックリ箱程度のものだろう。最初から準備して挑めば恐れるに足らずと進んで行く遥瑠を、慌てた様子で夢瑪が止めた。
「遥瑠ちゃん! 突っ込んだら危ないよ!?」
「……って、なんで止めるの夢瑪?」
 何も考えずに突っ込むのは危険だ。そんな当たり前のことを指摘され、しかし遥瑠は不満顔。
「そりゃダンジョンだもん、危険が待ってるに決まってるの。大丈夫、大丈夫。防御も固めたし行けるって!」
「それでも、この後のことも考えようよ。迷宮の先には敵がいるんだよ?」
 ファンシーなトラップは前座に過ぎず。最奥に待つフロアボスと戦うことを考えた場合、無駄な消耗は避けるに限る。
「……むぅ、そこまで言うなら仕方ないの。じゃあ、夢瑪が探した最短ルートをボクが進む。これでオッケー?」
「ええ、そうね。私はマッピングに集中するから、戦闘は任せてもいいかな?」
 迷宮の地図を作成する装置と化したガジェットを背負い、夢瑪は安堵の溜息を吐きながら遥瑠に尋ねた。
「よ~し! そういうことなら、罠は全部ボクが引き受けるよ! さあ、どこからでも来~い!!」
 突撃の許可を貰えたとばかりに、遥瑠は意気揚々と前に進んで行く。まあ、実際にそこまで危険な罠もなさそうであり、こちらの目の届く範囲にいるのであれば、問題はないと……そう、夢瑪が思った矢先、なにやら甘ったるい香りと共に姉の悲鳴が聞こえて来た。
「うわぁぁぁっ! ちょっ……な、なに、これぇっ!?」
「遥瑠ちゃん! ……って、なにあれ? もしかして……お菓子?」
 何気なく、その辺に転がっていた本を開いてしまったのだろう。遥瑠の開いたのはトラップを兼ねた魔導書であり、そこから召喚されているのは大量の生クリームやスポンジの山。要するに、お菓子の家の部品が洪水となって溢れ出して来たわけで。
「うぅ……で、でも、こんなことで負けないぞ! お菓子の罠なんて、全部食べてやる!」
 頭に特大のイチゴを乗せたまま進んで行く遥瑠の姿に、夢瑪が頭痛を覚えたのは言うまでもなかった。

●飛んで、跳ねて、挟まって!?
 遥瑠と夢瑪の二人が正攻法で攻める中、敢えて別の角度から迷宮の攻略に乗り出した者達もいた。
「ここから本棚の上に行けそうだね。上から眺めたら、何か判るかも……」
 地下迷宮とはいえ、本棚と天井の間には、僅かばかりの隙間がある。そこへ上がって、敢えて上から見下ろす形を取れば、道が開けるのではないかと踏んだのはユキノ
だ。
「そういうことなら、ボクに任せて! 狭いところも調べられるから、一緒に連れて行けば役に立つよ、きっと☆」
 本棚の間を跳び回るユキノの肩に、すかさずティエルが舞い降りて腰を下ろした。確かに、フェアリーである彼女であれば、普通の人間が入り込めないような、小さな隙間にも入れるかもしれない。
「う~ん……それにしても、凄い本の量だね。おまけに、本棚の高さもバラバラとか……これじゃ、一番上に上がるだけでも大変かも」
 もっとも、見上げる程に高い本棚を登りつつ、ユキノは早くも次に進むべき道を決めあぐねていた。
 気が付けば、随分と高いところまで登って来てしまったようだ。この高さから落ちれば、無事では済まない。足場にできそうな場所も減って来たが、しかし最上部までは、もう少しばかり距離がある。
「こういう時は、自分の直感を信じればいいんじゃない? なんか、あの隙間とか怪しそうだし♪」
 そんな中、今までユキノの肩に乗っていたティエルが、唐突に羽を広げて飛び出した。
「えぇっ! そ、そんな簡単に決めちゃって、平気なの!?」
「大丈夫、大丈夫♪ ボクに任せておいてよ!」
 心配するユキノを他所に、ティエルは何の根拠もなく、本と本の間に身体を滑り込ませて行く。案の定、本棚の奥は積み上がった本による迷宮ができており、薄暗い通路は怪しさ満載だった。
「うぅ……ああ言った手前、引き返すわけには行かないけど……」
 埃とカビの入り混じったような臭いに、ティエルは思わず鼻を摘まんで呟いた。そのまま積まれた本の角を曲がり、少しばかり開けた場所に出たところで、思わず安堵の溜息を吐いて天井を見上げた時だった。
「…………」
「うわぁぁぁっ! ボクは食べても美味しくないよぉぉぉっ!!」
 天井からこちらを見下ろす多数の瞳。特大サイズの蜘蛛が自分に向かって来たことで、ティエルは思わず全速力で逃げ出した。
 冗談じゃない。こんな場所で、大蜘蛛の餌になどされてたまるか。入り組んだ本の隙間を巧みに飛び回って逃げ回り、ティエルはその先に僅かばかりの光を見つけ。
「あっ! もしかして、あそこが出口……って、わぁぁぁっ!?」
 慌てて飛び出そうとしたのが拙かった。無造作に積まれた本の山はバランスが悪く、それに彼女の身体が触れたことで、本の迷宮は雪崩のように崩れ落ち。
「……むきゅっ!?」
 蜘蛛から逃げることには成功したが、しかし崩れ落ちる本の洪水に飲み込まれ、そのまま下敷きになってしまった。

●迷宮の意味するもの
 他の猟兵達がそれぞれに地下迷宮の攻略へと挑む中、紅玉とキャロラインの二人は、殆ど先に進んでいなかった。
 否、正確に言えば、先に進むことよりも、迷宮の構造を把握することに時間を掛けていた。
「見た目はなんでもない図書館みたいですけど……迷宮になっている以上、何らかの意味がありそうですね」
「紅玉さまのお考えも、一理ありますわ。フロアボスの力によって変容なさったのですから、罠や本の配置に、何らかの意図があるのも自然かもしれません」
 少しばかり開けた場所にて、紅玉とキャロラインは改めて迷宮の仕組みについて考えていた。
 ドローンを飛ばして周囲を探索させ、場合によっては怪しい本を回収して調べる。迷宮の作りや本の位置と照合して色々と考えてみるが、しかしこれと言った決め手が見つからない。
 やはり、この場に留まっているだけでは限界か。そう、二人が考えたところで、何やら迷宮の向こう側から人影が。
「……あれ? もしかして、元の場所に戻って来ちゃった!?」
「そう……みたいね。でも、おかげで随分と迷宮の地図は完成させられたけど」
 現れたのは、遥瑠と夢瑪の二人だった。どうやら、散々に迷宮を歩き回った結果、巡り巡って最初の場所の近くまで戻って来てしまったようだ。
「闇雲に歩き回っても、疲れるだけですわ。ですが、地図が作れたというのは収穫ですわね」
 残念そうに項垂れる二人に、キャロラインが労いの言葉をかける。確かに、探索は空振りに終わったかもしれないが、しかし双子の歩いて来た場所の地図が手に入ったとなれば、これからの探索で役に立つことは間違いない。
「えぇと……なるほど、なるほど。この迷宮の本棚は、どうやら放射状に並んでいるみたいですね」
 夢瑪から受け取った地図を眺め、紅玉が呟いた。未だ完全な地図は出来上がっていなかったが、それでも外観を把握するのには十分だった。
「放射状の迷宮……。お二人とも、真っ直ぐに進まれていると思っていたのでしょうけれど……」
 実際は緩やかなカーブを描いた道を歩かされ、振り出しに戻ってしまったのだろう。そう、キャロラインの見解を述べたところで、本棚の上から新たな影が舞い降りた。
「あっ……! キミ達、こんなところにいたんだ!」
 降りて来たのは、ユキノだった。彼女もまた迷宮を彷徨った結果、この広場に辿り着いたようだった。
「えっと……キミ達、ティエルを見なかった? 実は、途中ではぐれちゃって……って、うわっ!?」
 そこまで彼女が言いかけた時、唐突に近くの本棚が音を立てて揺れた。棚から多数の本が吹っ飛び、どこか焦げ臭い匂いが漂っている。
「あら? 皆さん、こんな場所で、何をされているのですか?」
 吹っ飛ばされた本の向こう側。半壊した本棚の奥から姿を現したのは雪風だった。
「実は、ちょっと道に迷っちゃって……。もう一度、皆で色々と考え直していたの」
「そういうこと……って、あぁっ! あれ、もしかして!!」
 夢瑪が状況を説明する傍らで、頷いていたユキノが唐突に叫んで走り出した。そのまま無造作に積まれた本の山を掻き分けると、果たして中から出て来たのは、他でもない行方不明になっていたティエルだった。
「うぅ……ひ、酷い目に遭ったんだよ……」
 頭に埃を被ったティエルが、目に涙を浮かべて訴える。彼女曰く、怪しい場所を見つけて潜ったはいいが、そこで待ち構えていた大きな蜘蛛に遭遇し、餌と間違われて追い掛けられる羽目になったのだと。
「放射状の迷宮……蜘蛛に追いかけられ……蜘蛛の巣……って、ちょっと待ってください!」
 そんな中、今まで地図を睨みつけていた紅玉が、何かに気付いたようにして顔を上げた。
「これ、見てください。魔導書が置かれていた場所を繋げてみると……迷宮全体が、大きな魔法陣見えませんか?」
 夢瑪の作った地図に示されている、メルヘンチックな世界を広げる魔導書の在処。その場所を繋ぎ、放射状の迷宮を改めて遠間から見ると、まるで何かを呼び出す魔法陣のように見えなくもない。
 あるいは、これは巨大な蜘蛛の巣か。どちらにせよ、円の中央に向かって進んで行けば、何かがあるのは間違いない。
「皆様の行動で、点と点が繋がったようですわね。蜘蛛の巣のように、侵入者を絡め取る迷宮の魔法陣。夢の国の正体としては、随分とおぞましいものですこと」
 楽しい夢の世界を餌に、侵入者を絡め取って死ぬまで迷わせる図書館迷宮。なんとも恐ろしい場所であるが、しかし正体が判った以上、もはや攻略は目と鼻の先だとキャロラインは仲間達に告げた。
 これが蜘蛛の巣を模した魔法陣だとすれば、進むべき道もまた見えてくる。蜘蛛の横糸は強い粘性を持ち獲物を捕らえるが、しかし蜘蛛自身が足場にする縦糸は、一切の粘性を持っていない。
 進むべき道は、蜘蛛の縦糸。地図を参考に、本棚に沿って横を回るのではなく、本を押してでも棚の向こう側へ、縦へ縦へと進むべき。
「よ~し! そういうことなら、今度こそ前進あるのみなの!」
「邪魔な本を退かすのは、私にお任せください。棚を壊すのに、炎の矢は効果的でしょう」
 やる気を取り戻して進んで行く遥瑠の後ろから、雪風が魔法の矢を放ち、本棚の壁に穴を開けて行く。道がなければ、作ればよい。迷宮の中央へと続く最短距離を蜘蛛の縦糸に見立てて直進すれば、フロアボスの待つ部屋は目前だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『モフィンクス』

POW   :    モフ~ン
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【気の抜けた鳴き声 】から排出する。失敗すると被害は2倍。
SPD   :    モフ~zzz
【眠気を誘うアクビ 】を聞いて共感した対象全てを治療する。
WIZ   :    モフッ、モフッ(実は今欲しい物)
質問と共に【質問の解答が具現化する靄 】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●モフモフな邪魔者
 放射状の迷宮を蜘蛛の巣に見立て、中央へ進む猟兵達。時折、邪魔な本棚の壁を破壊して進むと、そこから先は早かった。
 だが、問題なのは、ここからだ。迷宮の中央に辿り着いた猟兵達を待っていたのは、凶暴なモンスター……ではなく、なんとも愛くるしい姿をした、スフィンクスならぬモフィンクス。
「モフ~♪」
「モフモフ~ン♪」
 部屋の中央にあるレリーフの上に陣取る形で、モフィンクス達は集団で固まって眠っていた。こちらから仕掛けなければ無害だが、しかし目指すフロアボスの部屋は、恐らくあのレリーフの真下にある。
 多少、可哀想ではあるが、モフィンクス達には退いてもらう他にないだろう。しかし、大人しそうな見た目に反し、モフィンクス達は色々な意味で強敵である。
 彼らの得意技は、敵の攻撃を無効化すること。そのため、真正面から殴り掛かって排除しようとすれば、相応の消耗を強いられてしまう。おまけに、妙な謎かけをして質問の解答を具現化し、しかも正直な解答でない場合は大ダメージを与えてくるので、やってられない。
 戦うにしても、他の行動で退かすにしても、なかなか頭を使わされる相手だ。下手な遠慮は命取り。この先に待つフロアボスを討伐するため、猟兵達は心を鬼にして、モフィンクスの排除に挑むのであった。
ティエル・ティエリエル
「ふぅ、ようやく着いたね。えっと、あの子達を退かさないとダメなんだよね」
うーん、ただ寝てるだけなのにやっつけるのは気が引けるから……なんとか穏便に退かせないかな?

それじゃあ、【ライオンライド】で体長40cm程度の子ライオンを呼び出して「騎乗」したら
一緒にモフィンクス達をレリーフの上から追い立てるよ。

【モフ~zzz】ってアクビをしたら目を覚まさせるようにライオンくんにがぶっと噛んでもらうよ。
もふもふしてて一緒に寝たら気持ち良さそうだけど、
ボクのライオンくんの方がもふもふなんだから!って変な対抗心も燃やすよ♪


キャロライン・ブラック
見事に紅玉さまの読みが当たりましたわね
皆様のお力もお借り出来、何よりです

ええ、勿論ですわ、紅玉さま
眠っていらっしゃる所を襲うのも、気が引けますもの
優位を捨てる様で恐れ入りますが、穏当な手をお試ししましょう

先程の本の中に、甘い香りを漂わせるものがありましたから
それを用いて、部屋の端までおびき寄せることを狙いますの

上手くいかないのでしたら仕方ありません
時間をかけてはいられませんもの、攻撃いたしますわ
紅玉さまにお手を汚させるのも忍びないですから、全力で

戦闘では距離を取りながら、仲間の攻撃に合わせて技を放ち
気を緩める隙を与えませんわ

質問には、素直にフロアボスが護っている貴重な本とお答えしましょう


神久・紅玉
ローラさん、出来れば少しでも多くのモフィンクスを上手に誘導してあげたいのです
ですが……どうにかできないか、一緒にお願いできますか?

『変幻自在の道具箱』を使って、フックやロープなどの相手を引っかけたり捕まえたりする道具を制作するのです。
……出来るだけ危害をくわえないように誘導して上げられたらいいのですが
とびっきりの『コミュ力』で出来るだけ怪我をさせない様に移動させたいという事を、行動を通じて伝えることが出来ればいいんですが……

どうしても、どうしてもそれが無理であれば……
……他の猟兵さんの攻撃がしやすいように捕まえるのです。
時には心を鬼にですよね

行動の改変やアドリブ、他猟兵さんとの協力も大歓迎


神楽火・遥瑠
いやあ、スイーツトラップは強敵だったの……。この戦いが終わったらダイエット始めなきゃ。

まあ、それはともかく。
「もふもふさん、そこをどいてもらうの!」
どれだけかわいくても魔物は魔物! やっつけて先に進む!
「コール、ヘイトレッド・ジャイアント!!」
ユーベルコードで召喚したコワモテの巨人モンスターの軍団に混じって、ルーンソード二刀流で戦うの!
「ルーン解放! 嵐と炎よ、剣に宿れ!」
二つの属性の二回攻撃! これはユーベルコードじゃないから無効化できないよね!


神楽火・夢瑪
別に食べなくてもよかったのに……自業自得だよ、遥瑠。
モフィンクスかぁ……枕にしたら気持ちよさそう。……ダメダメ、あれは魔物、あれは魔物。

遥瑠ちゃんが真面目に戦ってるのに夢瑪がサボっているわけにはいきません。スチームエンジンを重ねて強化したフォースセイバーで二回攻撃!
「……え? 実は今ほしいもの?」
ど、どうしよう。正直に答えないとダメージを受けちゃうんですよね?
うう……遥瑠ちゃんにああ言った手前……答えないわけには……。
「……が欲しいです」
え、聞こえなかった? ……ああもう、どうにでもなれ!
「かわいいデザインの! メイド服が! 欲しいです!」
だって一回着てみたいんだもん!! 文句ありますか!?


ユキノ・サーメッティア
メルヘンな迷宮を抜けたら
そこにはなんとものんびりな者がいたとー
「よし、もふろうかっ」

眠ってるらしいのでチャンス!
UCを無効化…ただのモフリに行っただけなのでUCは
使ってはいないよ?
え?この下の災魔?どうでもよくない?(もふもふもふもふ…)
ビクンビクンさせるぐらいにモフるよっ

今、欲しい物だって…?
それはねー、『もふぃんくす』もふらせろー
(もふもふ大大大好きー)

迷宮から抜け出そうとしないなら
隅っこで眠っててもらえばいいんじゃないの…
ダメですか~?

技能【衝撃波】【なぎ払い】【全力魔法】
『ヴォ―ゲンレーレ』単純に暴風で纏めて吹き飛ばすか
毛並みがボロボロになっていくにつれ
「あぁ、もふもふがぁ」



●モフモフな番人!?
 幾重にも続く本棚の壁を破壊して、猟兵達は迷宮の中心部へと到達した。
 だが、そこに待っていたのは、なんとも愛らしい姿の番犬……もとい、モフモフな身体をしたモフィンクス。地下へと続く道を塞ぐレリーフの上に陣取って、彼らは集団で身を寄せ合いながら眠っていた。
「いやあ、スイーツトラップは強敵だったの……。この戦いが終わったらダイエット始めなきゃ」
「別に食べなくてもよかったのに……自業自得だよ、遥瑠」
 未だ口元に生クリームの欠片をつけたままの神楽火・遥瑠(テンペストナイト・f02078)へ、神楽火・夢瑪(シャイニングナイト・f02079)は半ば呆れ顔になりつつも、気を取り直してモフィンクスの集団へと目をやった。
「モフィンクスかぁ……枕にしたら気持ちよさそう。……ダメダメ、あれは魔物、あれは魔物……」
 可愛らしい見た目に騙されてはいけないと、夢瑪は懸命に自分へ言い聞かせる。
 そう、これは罠だ、モフモフの可愛さで侵入者から戦う力と気力を奪い、その毛並みで虜にすることで、永遠に迷宮の中に閉じ込めてしまおうという、恐ろしくも狡猾なオブリビオンの罠に違いない!
 もっとも、全員が全員、夢瑪のように考えられるはずもなく、中には早くもモフィンクスの可愛らしさに戦意を削がれている者達が。
「うーん……ただ寝てるだけなのにやっつけるのは気が引けるから……なんとか穏便に退かせないかな?」
 悪意のない相手を攻撃する気になれないのか、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は戦って倒す以外の方法を模索している。
「ローラさん、出来れば少しでも多くのモフィンクスを上手に誘導してあげたいのです。ですが……どうにかできないか、一緒にお願いできますか?」
「ええ、勿論ですわ、紅玉さま。眠っていらっしゃる所を襲うのも、気が引けますもの。優位を捨てる様で恐れ入りますが、穏当な手をお試ししましょう」
 神久・紅玉(つま先立ちの林檎・f03420)とキャロライン・ブラック(色彩のコレクター・f01443)の二人も、まずは戦闘以外の方法でモフィンクスを退かすことを考えている。そんな中、思案に暮れる彼女達の横を、颯爽と走り抜けてモフィンクスに突撃する影が。
「眠ってるらしいのでチャンス! よし、もふろうかっ!」
「あれは……ユキノさま、迂闊に近づいてはいけませんわ!」
 何の躊躇いもなくモフィンクスに突撃して行くユキノ・サーメッティア(空白・f00911)を、キャロラインが慌てて止めた。だが、早くもモフモフの魔力に魅せられてしまったユキノには、もはや仲間の声さえ届かない。
「んふふ~♪ モフモフ、気持ちいい~♪ ……え、この下の災魔? この際、もうどうでもよくない?」
 完全に呆けた表情のまま、モフィンクスの腹や首の下を撫でまくるユキノ。
 ああ、いかん。このままでは、彼女は完全にモフモフの虜にさせられて、死ぬまでモフモフすること以外の行動をしなくなってしまう。
 恐るべきは、可愛さを武器に用いるオブリビオン。心の奥底から湧き上がる欲求と戦いつつ、猟兵達はレリーフの上に陣取るモフィンクス達の排除を開始した。

●無敵のモフモフパワー!
 邂逅早々にユキノを別の意味で戦闘不能にさせられた猟兵達ではあったが、それでもモフィンクス達を武力で排除するのは未だ気が引けていた。
「こんなときはこれですね! ふふ、困ったときはお姉さんにお任せですよ」
 まずは紅玉が、特製のフック付きロープを作り出すと、それをモフィンクス達に引っ掛けて引っ張ろうとする。こちらに戦闘の意思はない。あくまで、そこを退いてもらいたいだけだ。そんな想いも込めて、ロープの先端を引っ掛けるべく、モフィンクス達に投げ付けるが。
「モフ~♪」
「モフモフ~ン♪」
 完全に脱力し切った体勢のまま、モフィンクス達は紅玉のロープを華麗に寝転びながら避けて行く。
「す、凄い……。でも、あれってどうやってるんだろう?」
 寝ながら攻撃を避けまくるモフィンクス達の姿に、ティエルが畏敬にも似た念を抱きつつ呟いた。
 当たりそうで当たらない、ぎりぎりのラインで回避する。その様は、まるで掴めば消える雲の如く。モフモフな身体つきも相俟って、本当に綿飴か何かを相手にしているように思えてくるわけで。
「よ~し……だったら、ボクのライオンくんで追い立ててやる!」
 自分のサイズに合わせて子ライオンを召喚し、ティエルはその上に跨ると、そのままモフィンクス達へと突撃して行く。少しばかり荒療治になるが、仕方がないと自分に言い聞かせ。しかし……。
「モッフモフ~ン♪」
「あぁっ!? こ、こら! 避けちゃ駄目だって!」
 子ライオンの突進を、モフィンクス達は寝たまま四方八方に飛び跳ねることで、華麗にスルーしてみせた。
「うわぁ……。なんか、風船の山に突撃した時みたいになってるよ……」
「でも、斜めにジャンプしたのも、時間撒き戻したみたいに元の位置に戻ってる……理解不能です」
 謎のモフモフパワーで定位置に居座るモフィンクス達を前にして、遥瑠も夢瑪も完全に言葉を失っている。
 恐るべきは敵の持つ謎のモフモフパワー。それらは『可愛いは正義!』とばかりに、時に物理法則さえも凌駕する。なんだか良く解らないが、このままユーベルコードでなんとかしようとしても、あまりに効率が悪過ぎる。
「このままでは埒が明きませんわね。先程の本の中に、甘い香りを漂わせるものがありましたから……それを用いて、部屋の端までおびき寄せてみましょうか」
 まともな方法では駄目だと察し、キャロラインが迷宮内で拾って来た魔道書のページを開いた。中には何も書かれてはいなかったが、文字の代わりに飛び出して来たのは、なんとも美味しそうな甘い香り。
「……!? モフフ~♪ モキュモキュ~ン♪」
「モッフン、タベラレニャイヨ……!」
 しかし、そんな香りを嗅がされたモフィンクス達の反応は、なんとも気の抜けたものだった。
 ああ、これはあれだ。きっと、寝ながら甘い香りを嗅いだことで、夢の中で特大のスイーツを食べまくっているとかいう、お約束の展開だ。
「モフフフ……ああ、もふもふ……もふもふぅぅぅ」
 薄く涎を垂らして喉を鳴らし始めたモフィンクス達の真ん中で、彼らの毛並みをモフモフするユキノの手が、更に激しさを増して行く。
「これ以上は、ユキノさまの精神が限界ですわね。……仕方ありません。攻撃しましょう」
「……そうですね。時には心を鬼に、ですよね」
 さすがに仲間を見捨てるわけにもいかず、キャロラインは覚悟を決めた。同じく、紅玉も心を鬼にする決意をし、実力行使でモフィンクスを捕まえようと身構えて。
「もふもふさん、そこをどいてもらうの!」
 どれだけ可愛い顔をしていても、魔物は魔物。二振りの剣を引き抜いて、遥瑠は躊躇うことなくモフィンクスの群れに突撃して行った。

●あなたの欲しいものは何ですか?
 あらゆる攻撃を脱力で受け流す、モフモフ可愛いモンスター。しかし、彼らを退かさねば先に進めない以上、ここは実力行使も已む無しだ。
「コール、ヘイトレッド・ジャイアント!!」
 強面な巨人モンスター軍団に混ざって、遥瑠は真正面から敵の群れに向かって行く。モフィンクス達も果敢に巨人の攻撃を避けて行くが……その程度のことは、織り込み済みだ。
「ルーン解放! 嵐と炎よ、剣に宿れ!」
 二振りの剣を引き抜いて、今度は小細工なしの実力勝負。さすがに、これは受け流せないのか、寝ていたモフィンクス達の間に動揺が走った。
「モフッ!?」
「モッフモフゥゥゥッ!!」
 安眠を妨げられ、慌てふためくモフィンクス達。それでも、欠伸によって体勢を整え、再び眠りにつこうとする個体もいるようだが。
「モフ~zzz……ッ!? モギャァァァッ!!」
「いい加減に、目を覚ましてもらうよ! それに、ボクのライオンくんの方が、ずっともふもふなんだから!」
 油断し切っていたモフィンクスの尻に、ティエルが子ライオンを噛み付かせたのだ。なにやら、変な対抗心も燃やしていたが、細かいことは気にしたら負けだ。
「フモォォォッ!!」
「フモモモモォォォォッ!!」
 散々に攻撃され、とうとうモフィンクス達も、眠ることを止めて猟兵達に向かって来た。もっとも、まともな攻撃手段を持たないモフィンクス達にとって、戦いに使える技とは謎かけ程度のものなのだが。
「モフッ、モフッ!」
「あの靄は……気をつけて下さい!」
 モフィンクス達から謎の靄が放たれたことで、紅玉がすかさず仲間達に告げた。放たれた靄は、まるで意思を持っているかの如く空中を漂い、まずはキャロラインの身体を包み込んだ。
「……なるほど、今、一番欲しいものですか? フロアボスが護っている貴重な本ですわ」
 躊躇いなく真実を答えたことで、キャロラインを包む靄は瞬く間に解除される。嘘さえ吐かなければダメージもないのだから、そういう意味では攻略し易い術であるが。
「……え? 実は今ほしいもの?」
 同じく、靄に包まれた夢瑪は、思わず動揺を隠し切れない様子だった。
(「ど、どうしよう。正直に答えないとダメージを受けちゃうんですよね? うう……遥瑠ちゃんにああ言った手前……答えないわけには……」)
 本当は、正直に答えるのが恥ずかしい。しかし、ここで答えなければ大ダメージ。この後、フロアボスとの戦いが待っているというのに、できればそれは避けたいわけで。
「……が欲しいです」
 顔を赤らめながら小声で呟いたが、反応は無し。どうやら、もう少し大きな声で言わないと、靄は認めてくれないらしい。
 こうなったら、もうどうにでもなれだ。背に腹は代えられないと、夢瑪は大きく息を吸い込んで。
「かわいいデザインの! メイド服が! 欲しいです!」
 言った! それも人前で、堂々と宣言してしまった!
 あまりの恥ずかしさに、夢瑪はしばしその場で身体を丸め、完全に動けなくなっていた。
 もっとも、これで良かったのかもしれない。下手に嘘を吐いたら最後、その妄想を具現化させられて別の意味で恥ずかしい思いをするかもしれず、おまけにダメージまで受けるなんて、やってられない。
「赤い、赤い、鮮やかな、血の色。とても綺麗で、美味しそうね?」
 切り札を破られたモフィンクス達へ、キャロラインが鮮血を模した塗料をブチ撒けた。そこまで大きなダメージを与えることはなかったが、それでもモフィンクス達にとっては十分な攻撃になったようで。
「モギャァァァッ!!」
 再び大パニックに陥り、あちこち右往左往して止まらない。そんな中、先の二人と同様、靄に包まれていたユキノが、逃げるモフィンクス達を追い立てる。
「今、欲しい物だって……? それはねー、『もふぃんくす』! もふらせろー!」
 ここに来て、モフィンクス達のモフモフトラップは、完全に裏目に出てしまったようだ。モフモフで相手を虜にしたはいいが、その相手から過剰に追い回されることになるとは、夢にも思っていなかったであろう。
「さて、そろそろ決めましょう。こんなところで、いつまでも遊んでいるわけには行きません」
「え~、勿体ない! 迷宮から抜け出そうとしないなら、隅っこで眠っててもらえばいいんじゃないの……」
 この機を逃さず一気に攻めようと告げる紅玉へ、モフィンクスを追い立てていたユキノは不満顔。仕方なく、暴風の力で部屋の隅まで吹き飛ばそうとするものの、この手の術は加減が難しいのが難点だ。
「「モッキュゥゥゥゥッ!!」」
 暴風というより、もはや竜巻に等しい一撃を受けて、吹っ飛んで行くモフィンクス達。部屋の床に落下した彼らは完全に目を回しており、二度と再び立ち上がろうとはしなかった。

●さらば、モフモフ達!
 戦いの終わった部屋の隅。ぐったりと伸びているモフィンクス達を前に、ユキノは涙を流していた。
「あぁ、もふもふ……もふもふがぁ……」
 先の戦いで、モフィンクス達のふわふわな毛並みは、見るも無残なボロボロに。これでは、仮にフロアボスを退治しても、この部屋にモフモフしに戻ることができないではないか!
「さて、片付いたね。それにしても……夢瑪、メイド服なんて欲しかったんだ?」
「だって一回着てみたいんだもん!! 文句ありますか!?」
 そんな中、先の靄に対する夢瑪の解答を、遥瑠がいじっていたが、それはそれ。
「さあ、先を急ぎましょう」
「このレリーフを退かせば、その下にはフロアボスへと続く道があるはずですわ」
 紅玉とキャロラインがレリーフを退かすと、果たしてその下には下の階へと続く階段が。
「ここまで来たら、もう少しだね! よ~し、出発~♪」
 子ライオンに跨ったまま、ティエルが意気揚々と階段を下って行く。部屋の隅で折り重なって倒れているモフィンクス達を横目に、他の者達も後へと続く。
 可愛さを罠とする、恐るべき迷宮。だが、ここまで来れば、フロアボスはもはや目と鼻の先だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ライブラリーマスター・シャルロット』

POW   :    おしおきディクショナリー
単純で重い【鋼で強化された分厚い辞典の角】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ふたりの夢の王子様
自身が戦闘で瀕死になると【白馬に乗った王子様】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    やぎさんゆうびん
【大量の子ヤギ】の霊を召喚する。これは【噛みつき】や【タックル】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミモザ・クルセイルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●図書館を護りし者
 螺旋に曲がった階段を下り、その下に設けられた扉を開けると、カビと埃の臭いが猟兵達の鼻を突いた。
 部屋の中に、ぼんやりと広がるオレンジ色の光。恐らく、蝋燭かランプの類だろう。迷宮と同じく、部屋は本棚で敷き詰められ、入り切らなかった本がそこら中に溢れて重なっている。
「あら? あなた達は……」
 部屋の真ん中で、本を広げて読んでいた少女が顔を上げた。その傍らには、何故かヤギが佇んで、不要になった本やメモ用紙などを食べている。
「ここは、立ち入り禁止なの。帰らないなら……図書館の番人として、お仕置きするわよ?」
 この部屋の本は、貸出禁止。ついでに言うなら、自分の読書の邪魔をするな。
 小さい身体に似合わず、少女は毅然とした態度で猟兵達と対峙する。だが、彼女こそが迷宮のフロアボスであるオブリビオン。ライブラリーマスター・シャルロットである以上、ここで退くという選択肢は無い。
「……ふうん、どうしても出て行かないのね? だったら……もう、どうなっても知らないわよ?」
 重たい腰を上げたシャルロットの命じるままに、分厚い辞典が不気味な光に包まれて宙を舞う。見た目は子どもでも、魔術師としては、かなりの力を持っているということか。
 図書館迷宮の下層にて、書庫を護りしオブリビオン。ライブラリーマスター・シャルロットの、最後の挑戦が幕を開けた。
ティエル・ティエリエル
「迷宮をあんなへんてこりんにして迷惑なんだよ!」
蜘蛛に食べられそうになったことを思い出して怒り心頭、レイピアを突きつけて宣戦布告だよ!

背中の翅で空を飛びまわりながら、シャルロットの攻撃を「見切り」で回避して、「カウンター」!
【大量の子ヤギ】の攻撃も空を飛んでいれば避けるの簡単だよね?
仲間がダメージを受けてピンチならみんなの周りを飛び回って【小さな妖精の輪舞】で傷を治していくよ!

無事、シャルロットを倒したら貴重な本の中に絵本がないか調べるね♪
面白そうな本があったら借りて帰るんだ☆


ユキノ・サーメッティア
あの子がメルヘンな迷宮を作った子かー
見た目だけだと迷宮の番人には見えないねー
おしおき…とは言ってたけど、さて、それはどちらになるのかな?

UC『トリニティ・エンハンス』で
炎の状態異常強化、属性攻撃でさらに強化

あいてのPOW攻撃を
ヴァシュトラルの浮遊盾で、真正面から受けるんじゃなく
受け流して逸らすようにして【盾受け】で防御しつつ

攻撃の動作【見切り】、それに合わせて【カウンター】
シャルドンナーで撃ち抜く!

銃に宿した雷の力で【マヒ攻撃】を狙いながらも
【衝撃波】を伴わせての銃撃で当たりを強くしておくっと

先に使ってたUCで
発熱に似た状態にもさせちゃうよー
熱で頭と身体がうまく動かないようにするつもりなの



●迷える童話の番人
 モフモフでファンタジーな迷宮を抜けると、そこに待っていたのはヤギを連れた少女のオブリビオン。情報によると、彼女がこの迷宮のフロアボスということらしいのだが……今までの流れから考えると、どうにも強敵といった雰囲気はない。
「あの子がメルヘンな迷宮を作った子かー。見た目だけだと迷宮の番人には見えないねー」
 お仕置きとは言っていたが、果たしてそれは、どちらが受けることになるのか。自身を炎の魔力で強化しつつ、ユキノ・サーメッティア(空白・f00911)は愛銃を構え。
「迷宮をあんなへんてこりんにして迷惑なんだよ! キミがお仕置きするんじゃなくて、ボクがキミにお仕置きしてやる!」
 レイピアを構え、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は堂々の宣戦布告。どうやら、先の探索で大蜘蛛に追いかけ回されたことで、かなりご立腹の様子である。
「……どうしても、出て行く気はないのね。だったら、仕方ないわ」
 だが、それを聞いてもシャルロットは、何ら動揺する素振りさえ見せず。迷宮のフロアボスとして、自分の好き勝手に構造を作り変えたことに関しては、欠片程の罪悪感も抱いていないのだろう。
「読書の邪魔をする人には、お仕置きよ」
 そう、シャルロットが告げると同時に、本の山から鉄製の表紙で強化された分厚い辞典が飛び出して来た。
「……っ! させないよ!」
 すかさず、ユキノが愛銃で撃ち落とさんと弾を連射したが、鉄の表紙で覆われた辞書は固く、重い。雷の力で加速した銃弾とはいえど、撃ち貫くことは容易ではなく、そのままユキノ目掛けて飛んでくる。
「あ、危なっ!? 盾がなかったら、死んでたかも……」
 仕方なく、盾で受け流しつつも応戦するユキノだったが、もしもあれが自分の頭にでも直撃したらと思うとぞっとする。可愛い見た目に反して、なかなかどうして、えげつない攻撃をしてくる相手だ。
「こらー! 本は投げるものじゃなくて、読むものなんだよ!」
 本の番人が、本を粗末に扱うとは何事か。流星の如く飛んで来る鋼の辞典を避けながら、ティエルはお返しとばかりに、レイピアの痛烈な一撃をお見舞いした。

●笑う白ヤギ
 見た目は可愛いらしい少女でも、その実体は危険なフロアボス。オブリビオンの例に漏れず、シャルロットの攻撃はモフィンクスなどとは比べ物にならない程に強烈だ。
 鋼の表紙を持った辞典は、時に鈍器として、時に盾として、変幻自在に用いることの可能な万能武器。おまけに、それらはシャルロットの魔法で不可思議な軌道を描き、上から下から飛んで来ては、危険な角で猟兵達の急所を狙って来る。
 このまま行けば、消耗戦は間違いない。さすがに、重傷者が出るのは拙いと思ったのか、ティエルは自らの翅から舞い散る妖精の粉で、仲間の傷を回復させんと飛び回り。
「ボクの翅の粉には傷を癒す力があるんだよ☆ それじゃあ、いっくよー! みんな治っちゃえ♪」
 粉を撒いた分だけ疲労する技だが、今の状況で背に腹は代えられず。飛んでいれば、敵の攻撃も多少は届かないだろうと踏んでの行動だったが……果たして、その考えは甘かった。
「……メヘへヘェ~♪」
 シャルロットの後ろで紙を食べていたヤギが、なんともいやらしい笑みを浮かべて鳴いた。その声に惹かれるようにして、本棚の隙間から現れたのは、無数の子ヤギの霊だった。
 高めに飛行していれば、こちらには攻撃も届かないはず。上から子ヤギの群れを見降ろすティエルだったが、しかし世の中そう甘くはなく。
「メッヘッヘェ~ン!!」
 なんと、子ヤギ達はやぐらを組むように互いの背中に乗って行き、ティエルに噛み付かんと迫って来たではないか!
「うわわ! ちょ、ちょっと、そんなのアリィ!?」
 下から歯を鳴らして突進して来る子ヤギの攻撃を、ティエルは間一髪のところで避けつつ叫ぶ。そういえば、何かの童話でこんな風に、動物達が背中に乗って悪者を追い払うような話があった気もするが……今は、それを突っ込んでいる場合でもない。
 その一方で、ユキノは先程からひたすらシャルロットの攻撃を捌きつつ応戦していたが、どうにも手応えが感じられていなかった。
「本を使う相手だから熱にも弱いと思ったのに……もしかして、あんまり効いてないのかな?」
 これは、いったいどういうことか。まさか、目の前の敵は見た目こそ幼い少女だが、実は悪魔も恐れる程の魔力を秘めた大魔法使いとでも言うのだろうか。
「メッヒッヒッヒッヒ~♪」
 翻弄される猟兵達の姿を見て、白ヤギが勝ち誇ったように笑いながら、不要なメモ紙を食べている。その、あまりに忌々しい姿に腹を立てたのか、ティエルが一気に急降下して距離を詰めた。
「この~っ! ヤギのくせに、変な技使うな~!!」
「……ッ! メギャァァァッ!!」
 死角から尻をレイピアで刺され、白ヤギが悲鳴を上げて跳び上がる。そこを逃さず、ユキノが銃弾をお見舞いしたことで、白ヤギは全身を痙攣させながら、部屋の奥まで吹っ飛んだ。
「あれ? なんか、今度は凄い効いてるっぽいね。……あ、もしかして!!」
 攻略の鍵は見えた。本棚にぶつかり、雪崩のように落下する本の下敷きになった白ヤギを見て、ユキノが思わず手を叩いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神久・紅玉
このままだと多くの人たちが困ることになるのです
ごめんなさいはいいません、事件を解決させて貰うのですよ

工房と魔法陣には術者の癖が出ると魔法学校の先生が言っていました
ええ、予想通り童話をなぞった魔法が得意のようですね
この場所を通じて貴方の事がちょっとだけわかってきましたよ

蜘蛛の巣を避けるなら横糸ではなく縦糸です。
信じていましたよ。ばっちりです、ローラさん!

回避を試みたシャルロットや山羊が狙い済ました位置に来たとき
『変幻自在のおもちゃ箱』で作製
大鎌を使って不意打ちを決めましょう

ローラさんとは何度も戦っていますもの
とっさの連携もばっちりお姉さんにお任せなのですよ

アドリブや行動の改変等歓迎なのです


キャロライン・ブラック
ごめんなさいね、この迷宮を放置するわけにはいきませんの
彼女の護る本も気にはなりますが……戦いの後、ですわね

戦闘では援護を中心に行いましょう
わたくしのユーベルコードで、敵の動きをお止めいたしますわ

初めはとにかく派手に技を放ち、わたくしの攻撃を印象付けますの
動きを封じられて愉快な人はおりませんから
厄介ぐらいに思って頂ければ十分ですわ

ある程度経ちましたら、今度は直線状に射出ですわ
あえて、横によけ易いように隙を作り、敵の動きを誘導いたします

意図に気づかれてはいけませんから、合図などは出せませんが……
申し上げずとも、察して動いてくださる方がいらっしゃいますもの
ねぇ、そうでしょう、紅玉さま?



●夢幻のプリンス
 迷宮の奥に待っていた、少女の姿をしたオブリビオン。フロアボスとしては、いささか可愛らし過ぎる気がしないでもないが、しかし神久・紅玉(つま先立ちの林檎・f03420)とキャロライン・ブラック(色彩のコレクター・f01443)は、共に攻撃の手を休めようとはせず。
「ごめんなさいはいいません、事件を解決させて貰うのですよ」
「この迷宮を放置するわけにはいきませんの。彼女の護る本も気にはなりますが……戦いの後、ですわね」
 迫り来る鋼の辞典や子ヤギの群れを避けながら、二人は反撃に転じる機会を抜け目なく探す。残念ながら、このままでは隙らしい隙も見つかりそうにないが、それならば自分たちの手で作ればよい。
「青い、透き通るような、氷河の色。冷たく固めてしまえば、ほら、綺麗なままでいられるわ?」
 杖先から氷河を模した塗料を盛大に放ち、まずはキャロラインが敵の動きを止めようと奮闘する。その攻撃は妙に直線的であり、なんとも避け易いものだったが、それも彼女達の計算の上。
「下手くそ……。ちゃんと狙わないと、当たらな……っ!?」
 あまりに単調なキャロラインの攻撃に、シャルロットは呆れながら辞典を飛ばそうと身構える。が、彼女が攻撃に移るよりも早く、その身体を巨大な鎌が真横から一文字に斬り裂いた。
「くっ……! い、いつの間に!?」
「蜘蛛の巣を避けるなら横糸ではなく縦糸です。信じていましたよ。ばっちりです、ローラさん!」
 奇襲に成功した紅玉が、大鎌を片手にキャロラインへと目配せしつつ叫んでいた。
 そう、キャロラインは別に、焦って狙いを見失っていたのではない。敢えて特定の動きで避け易い攻撃を連発することで、紅玉が奇襲を仕掛けやすい環境を整えていたのだ。
 攻撃を横に避けようと飛べば、いずれは図書室の隅に追いやられる。その一方で、自分は攻撃と共に縦に動けば、塗料に紛れて一気に相手との距離を詰められる。
「ただの玩具だと思って油断しましたか? ふふー、残念でしたね!」
 卑怯者と、笑わば笑え。戦いの最中、油断は禁物。大鎌を構え、再びシャルロットに仕掛けんとする紅玉だったが、しかしシャルロットもまた腐ってもフロアボス。
「メッヘ~ン! メッヘへ~ン!!」
 突然、背後で紙を食べていたヤギが泣き出したかと思うと、そこに現れたのは白馬に乗った王子様。
「お願い……私を守って。この人達、全部やっつけて」
 自分に代わり、目の前の敵を討って欲しい。そんなシャルロットの願いに応え、今度は王子が猟兵達の前に立ちはだかる。しかし、一転して不利な状況に持ち込まれても、紅玉やキャロラインは慌てた素振りを見せることもなく。
「工房と魔法陣には、術者の癖が出ると魔法学校の先生が言っていました。……ええ、予想通り童話をなぞった魔法が得意のようですね」
「ですが、それであれば話は早いですわ。既存の物語を基にした術であれば、その物語を参考に、突破する道を考えられますもの」
 いかに強力な増援を呼ばれたところで、こちらの成すべきことは変わらない。白馬の王子が繰り出す剣と紅玉の大鎌が激突し、書棚の並ぶダンジョンの奥に、甲高い音が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神楽火・夢瑪
遥瑠(f02078)ちゃんと協力して挑みます

オブリビオンを倒すことが夢瑪たちの使命です。それがどんな相手でも、それは変わりません。全力で叩き潰します。

王子様が出てきたってことは、敵はピンチね。行きましょう、遥瑠ちゃん。ここが攻め時ですよ!
ガジェットにパンチカードを挿入して、ユーベルコードを発動。PSI強化アーマーを高速突撃モードに変形させる。
「コードセット、チェンジ・ペガサス!」
遥瑠ちゃんを囮にして接近、フォースセイバーの二回攻撃でX字に切りつける。
「必殺、十文字流星剣!」


神楽火・遥瑠
神楽火・夢瑪(f02079)と協力して戦う!

ようやく見つけた、フロアボス! ボク達はオブリビオンなんかには絶対に負けない! 世界の未来を守ってみせるんだから!

オッケー、夢瑪! ボクらの必殺のコンビネーションを見せてやるの!
ゲームデバイスから引き出したデータと融合して、鋼鉄の勇者「グレイルカイザー」の姿に変身。敵の攻撃は勇気と気合いのオーラ防御で防ぎながら、夢瑪の盾になって突撃する!
夢瑪の攻撃が決まったら、ロボの胸部パーツからビームを発射して追撃!
「くらえっ! セレスト・ブラスターっ!!!」



●決戦、図書館迷宮!
 迷宮の奥底にて、貴重な書籍を護りしフロアボス。ライブラリーマスター・シャルロットとの戦いは、いよいよ混迷を極めていた。
 その儚げな見た目に反し、シャルロットの繰り出すユーベルコードの数々は、猟兵達のそれに勝るとも劣らない。加えて、先程から散々に攻撃を食らい続けているにも関わらず、彼女は平然とした様子で反撃を繰り出して来る。
 あの少女には、痛みの感覚が備わっていないのだろうか。それとも、彼女自身もまた童話の世界からやって来た、夢や幻の類とでも言うのだろうか。
「メッヘ~♪ メッヘへ~ン♪」
 白ヤギが不快な声で鳴き、それに合わせて無数の子ヤギが召喚される。少女を守る王子と合わせ、総力戦の構えだ。
「王子様が出てきたってことは、敵はピンチね。行きましょう、遥瑠ちゃん。ここが攻め時ですよ!」
「オッケー、夢瑪! ボクらの必殺のコンビネーションを見せてやるの!」
 色々と気になることはあるが、細かいことは後で考えればよい。互いに頷き、神楽火・夢瑪(シャイニングナイト・f02079)と神楽火・遥瑠(テンペストナイト・f02078)は、それぞれの切り札を発動させる。今までの探索や戦いでは使うことのなかった、勇者としての真の姿を。
「コードセット、チェンジ・ペガサス!」
「データロード! 来い、鋼鉄の勇者グレイルカイザー!」
 夢瑪がガジェットにパンチカードを挿入してPSI強化アーマーを突撃モードへと変形させれば、遥瑠もまたゲームデバイスから引き出したデータと融合し、鋼の勇者へと姿を変える。
 それは、さながら御伽の国に現れた、機械仕掛けの救世主。歪んだ童話に終止符を打つべく降臨した、デウス・エクス・マキナとも呼べる存在。
「遠き神話の世界より来たれ、大いなる力、煌めく勇姿! キミの名は、鋼の救世主!」
「輝く星に誓いを立てて、絆と明日を守るため。希望と勇気の神装乙女、今ここに参上です!」
 それぞれに名乗りを上げて、遥瑠と夢瑪は躊躇うことなく子ヤギの群れに飛び込んで行く。オブリビオンの作りだした夢と現実の境目に、真の終焉を与えるために。

●王子と勇者と書庫護り
 その身に鋼と機械を纏い、遥瑠と夢瑪はフロアボスであるシャルロット目掛けて突撃する。迎え撃つは、子ヤギの群れと白馬に乗った王子による童話世界の連合軍。なんともカオスな混成部隊だが、メルヘンな魔道書やモフモフのスフィンクスが出て来た時点で、この程度の混沌はもはや驚くに値しないものになっていた。
「夢瑪、今だ! 切り込んで!」
 飛来する鋼の辞典を片手で受け止めながら、遥瑠が叫んだ。その言葉が終わり切らない内に、一気に距離を詰めんと飛翔する夢瑪だったが、しかしそこに立ちはだかったのは白馬に乗った王子様。
「やらせんぞ! 我が姫君に仇成す者は、この私が成敗してくれる!」
「……っ!」
 長剣と光剣が激突し、その場に火花とも稲妻ともつかないエネルギーの奔流が迸る。見た目は金持ちの優男にしか見えないが、しかし剣術の腕前はなかなかのもの。
(「この人……強い……!」)
 動きの取り難い馬上にありながら、王子は的確に夢瑪の攻撃を捌きつつ、ともすれば反撃の一手を仕掛けてくる。下方からの斬り上げを済んでのところで受け止めた夢瑪だが、王子はそのまま力任せに刃を押し込んで、彼女の身体を吹き飛ばしてみせた。
「きゃぁっ!」
「夢瑪!? くっそー、邪魔するなよ、このヤギめ!」
 慌てて駆け付けようとする遥瑠だったが、しかし周りにいる子ヤギが邪魔をする。そうしている間にも、夢瑪が立ち上がるよりも早く、王子が剣を構えて突撃して来た。
「もらったぞ! 覚悟!」
 このままでは、夢瑪がやられてしまう。万策尽きたかと思われたが……しかし、運命の女神は二人を見放していなかった。
「わたくし達で、援護致しますわ」
「さあ、今の内に、早く離れて!」
 後方から飛んで来た稲妻や塗料が、王子の動きを阻害する。そう、この場で戦っているのは二人だけではない。子ヤギの群れを片付けた、他の猟兵達が援護に回ってくれたのだ。
「こらー! 王子様なんだったら、女の子には優しくしなきゃダメなんだよ!」
「くっ……小煩い妖精風情が……ぶはっ!?」
 執拗に纏わり付くフェアリーを払おうとした王子の顔面に、直撃する塗料の塊。続けて、視界が奪われた隙を狙って、今度は大鎌の形をしたガジェットが襲い掛かり。
「……っ! しまった、剣が!」
 激しい金属音を響かせて、王子の手から剣を叩き落とした。
「今です! 一気に決めて下さい!」
「は、はい!」
 赤髪の少女の叫びに合わせ、頷く夢瑪。このチャンスは逃さない。一気呵成に距離を詰め、光の剣を振り降ろし。
「必殺、十文字流星剣!」
「くっ……すまない、姫よ……」
 十字の軌跡にて斬り付ければ、王子は悔しそうな表情のまま、白馬と共に消え去った。
「はぁ……はぁ……。や、やりました……」
 強敵を撃破し、夢瑪は肩で息をしながら安堵の溜息を吐いた。これで残すは、オブリビオンの本体である少女と白ヤギだけだ。
「そ、そんな……私の王子様が……」
「メ、メヒィィィィッ!!」
 切り札を破られ、驚愕するシャルロット。というか、何故かヤギの方がビビっている感じなのは気のせいだろうか。
「あれ? なんか、女の子よりもヤギの方が脅えて……はっは~ん、そういうことか!」
 鋼の仮面の下で、遥瑠がにやりと笑った。そういえば、先程も何度かヤギが攻撃されたことがあったが、そちらの方が妙にリアクションが大きかった気がする。
「さては、お前が弱点なんだな! くらえっ! セレスト・ブラスターっ!!!」
 狙うは少女ではなく、その傍らにいる白いヤギ。遥瑠の胸から発射された強力なビームが、少女諸共に白ヤギを焼き払い。
「メッギャァァァァッ!!」
 断末魔の叫びを上げて、災魔のヤギは消えて行く。ふと、辺りを見回してみると、いつの間にか図書護りの少女もまた姿を消していた。

●夢の終わりに
 フロアボスが撃破され、部屋に残されたのは大量の古びた書物の山だった。
 その内容の大半は、子どもの寝物語に語られるような他愛もない話。時に楽しく、時に少しだけ恐ろしい、神話や童話を記したもの。
「あ! なんだか面白い絵本を見つけたよ! ちょっとくらい、借りて行ってもいいよね?」
「ダンジョンの奥に隠された貴重な本……。魔道書でなくとも、歴史的価値は高いのかもしれませんわね」
 フェアリーの少女が身の丈程の古びた絵本を取り出してみれば、色彩の魔術師もまた分厚い表紙の本を取り出し、めくって呟く。 
 折角の書物。こんなところで腐らせておくのは勿体ない。探索の報酬とばかりに、書庫を散策する仲間達。さすがに、伝説の魔道書に匹敵する本はないだろうが、色々探してみれば、思わぬ掘り出し物に遭遇する可能性もあるわけで。
「物語かぁ……。オブリビオンを倒して世界を救ったら、ボク達のことも1000年先の未来で伝説になるとか?」
「そうですね。そのためにも、今は少しでもたくさんの世界を守らないといけません」
 遥瑠の言葉に頷く夢瑪。果たして彼女達の冒険が、悠久の時の果てに新たなる勇者の伝説として語り継がれることになるのか。今日の冒険が、その序章となるのか。それは、まだ誰にも分からない。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月01日


挿絵イラスト