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クラウディ

#アルダワ魔法学園 #戦後

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#アルダワ魔法学園
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#戦後


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●クラウディ
 先日の戦争によって、アルダワ魔法学園の設立目的は達成されたが、此処がアルダワの最高水準の教育機関である事に変わりは無く、人材育成機関としての役目を、終えることは無い。
 魔王を退治した猟兵の名は世界中に勇者として轟き、在学生も、そうでない者も、学園の門を叩き、教師陣に同様の要望を申し出る。
 本物の勇者達から、教えを乞いたいと。
 責任者、経営者は要望の多さに頭を悩ませながら、使い魔や蒸気式のガジェットドローンを世界各所を巡らせる。また、アルダワに在住する猟兵には、感謝も込めて、頭を下げようと、自ら足を運ぶ。その波は、技術系の学科にも押し寄せている。
「猟兵には技術者も多かったんだってー」
「じゃあウチも要望出そ、出そ! ね、先生、良いよねー!」
「お前等……まあ、実際先生も興味は有るからね。書類は出しておこう」
 それに、と、黙々と何かの機械を修理している 一人の生徒に目を向けた。
(少々、あの子について、悩んでいたしね……良い切っ掛けを、期待したいよ)
「ロー、直りそう? それとさー、先生が、掛け合ってくれるって!」
「猟兵かあ……興味はあるけど。直るよ、大丈夫。でも、少し使い方が荒いんじゃない?」
「気を付ける」
「……ごめん。終わったよ、リィ」
 組み付け、外装を取り付ける。年季の入った彼女のお気に入りデバイス。誰が作ったのか最早定かではないが、思い出の品と言って良かった。使い続けている事自体は、彼にとっては好ましい。
「ありがと。勿体ないよねえ、ローは」
「……修理屋で良いんだよ、僕は」
 告げると、リィが、何となく寂しげに笑い、顔を伏せてしまう。彼女が見せるその表情は、好ましくない。させてしまう自分の不甲斐なさから、目を逸らす、いつもの悪癖だ。
 どんな物でも、持ち込めば修理するリペアラー、一転、一から組み上げれば不具合だらけのジャンク・メーカー。何方も、からかい半分に皆から言われる事だった。
(猟兵、色んな人が居るんだよね。確か)
 昔の記憶が蘇る。何時からか、代々家で受け継がれてきた、蒸気魔導式の懐中時計。それが、人の姿を取った事。幼少の時分に、その人と語らったこと、その時にはもう、機械弄りが好きだったこと、程なく、時計を持って、家を出て行ってしまったこと。
(何でだったんだろう……?)
 大した意味は無いのかもしれない。ただ、外に出たかったのかもしれない。然し、否応にも、物について向き合うことになった。
 まず、アルダワの魔導蒸気機械は、それ自体が魔力を持つ事が多い。人工精霊も、契約した精霊を撃ち出す魔法銃も有る。つまり、意識や肉体を持つイメージが、容易に想像出来てしまい、あの時のあの人の事が、頭に過る。
 それに、機械の実耐用年数はとても短い。作り出すその子の生が、儚いのでは無いかと考えると、作業中に手が震え、作業にならない。ローは、リィの笑顔が曇るのを知りながら、修理屋で良いのだと、自嘲する。

●グリモアベース
「アルダワ魔王戦争が終わって一段落なんじゃが、魔法学園の方はそうも行かんみてえでなあ。現地に住んどる人は知っとるかもしれんが、変わった要請が皆に来とる」
 興味があるなら、ちょっと聞いて行って欲しいと、海神・鎮(ヤドリガミ・f01026)は茶を煎れ、猟兵に差し出した。
「まずアルダワ魔法学園について、此処は大魔王の住処じゃった、地下迷宮を管理する為に設立された学園じゃな。この住民は猟兵の事を正しく、きちんと理解しとる。その上で、転校生として迎え入れてくれとった」
 過去形なのは、猟兵がファースト・ダンジョンを踏破し、先日大魔王を討伐した事で、正しく勇者となったからだと、資料を配りながら説明する。
「アルダワ魔法学園の本来の役目は終わったんじゃが、もう一つ、最高水準の人材育成機関としての役目が生きとんよ」
 元々勇者になりたい人材や、優秀な人材を多く受け入れている学園である。そして、皆が元々、魔王打倒の為に集められた。つまり、猟兵はアルダワにとって最高水準の人材と言っても良い。結果、アルダワの各国から、猟兵に教えを請いたいと、学園に人材が押し寄せている。
「それで、臨時教師をやって欲しいと、学園関係者が頭が下げて回っとってな。気が向いたら、受けてくれると嬉しい。儂の方から案内するのは、技術系の1クラスじゃな」
 授業はまず、図書室での交流を予定しているようだ。自己紹介や交流が軸となるだろう。
「担任の先生も同席するみたいでなあ。聞くと、少し協力して欲しい問題があるらしい」
 資料に挟まれた1枚の写真には、一人の少年の姿が映っている。名はロー。クラスではリペアラーと、ジャンク・メーカーの名で親しまれている様だ。
「修理屋で終わらせるのは勿体無えけど、発想力を鍛える意欲がねえらしい。先生も面談はしたらしいが、諦めてしもうとって、どうしてええか分からんらしい。出来りゃあ、力になってあげてな」
 自身も茶を飲んで、一つ頷く。
「修理には精を出すみてえじゃけー、もしかしたら、物に宿るのを、見てしもうたんかもしれんなあ……」
 湯呑みを見つめ、すぐに自身の役目を思い出し、鎮は猟兵を送る準備をし始めた。



●挨拶
 紫と申します。
 今回は戦後のアルダワで臨時教師です。

●シナリオについて
・1章毎にopを制作します。
・生徒は魔導機械系の技術科の1クラス、年齢は16前後で、人数は20人程です。
・psw気にせず、UC等を活かし、好きに動いてみて下さい。
 1章は図書室なので、お静かに。

●章構成
 日常→冒険→集団戦です。
 授業なので大まかなカリキュラムをお伝えします。
・1コマ目(章)は図書室での交流となっています。
・2~3コマ目(章)は引率しての迷宮探索、実地研修となっています。
 迷宮なので、何が起きるかまでは、教師にも分かりません。

●シナリオ目的
 臨時教師として生徒を導いて上げて下さい。
 まずは図書室での交流です。大半が技術書や研究所を探して読み漁りますが、今回主眼に置かれているローは、物語や御伽噺を読んでいます。リィは彼の側に何となく居ます。

●ギミック
 ローという少年の行く末が、猟兵に委ねられています。

●人物
・ローについて
 幼少の頃にヤドリガミと出会ってしまい、作る事が怖くなってしまいました。反面、何でも修理してしまう程に、機械も機械弄りも大好きです。リィというクラスメイトと仲が良いです。 

・リィについて
 ローの隣が心地良いので、何となくいつも側に居ます。修理屋と自分で言い切るローを心配しており、勿体ないとも思っています。ただ、どうしてそうであるかは知りません。

・他のクラスメイト
 全員魔導機械が好き。とてもアクティブかつクリエイティブ。知識欲の塊みたいな子達です。古い物は古いと言うし、武器を見れば改善や改造案を考え、新技術も他世界の技術にも、興味津々です。

・先生
 現場で長く働いていた魔導機械技術者です。
 技術者としては優秀ですが、教導役としてはまだまだ勉強中の身の様です。生徒からは結構慕われています。

●最後に
 なるべく一所懸命にシナリオ運営したいと思っております。
 宜しくお願い致します。
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第1章 日常 『本に親しむひととき』

POW   :    絵本や童話をほのぼの楽しもう

SPD   :    小説や物語の世界に心を委ねよう

WIZ   :    学術書や指南書で知識を蓄えよう

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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ソフィア・シュミット
ソフィアが先生ですか。お弟子さんはいますけど、たくさんの教え子はドキドキするのですよ。がんばるのです。

最低限の【礼儀作法】は心得てますから大丈夫でしょうか。
学校の図書館はどういうところで、みなさんどんな本がお好みなのでしょう。
ソフィアなどは、絵本や童話もとても面白いと思うのです。
絵と少ない文章で伝えるのはとても大変な作業ですから。学生の方が小さいときに使ってた教科書と今の教科書も結構表現が違うと思うのですよ。
年齢が違う方に伝えるということはそういうものなのです。

……はわ。結構熱中しまいました。
みなさんが好きな本も教えてくださいませ。


アネット・レインフォール
▼心情
臨時講師も久しぶりだな。

彼らの意思は尊重したいし、修理を極めるのも一つの道だろう。
そこに明確な目的や目指すべき姿があればいいんだが…。

…何にせよ、だ。
俺の役目は生徒達の視野と可能性を少しだけ広げる事だな

▼行動
先ずは教師・生徒達と交流。

先の戦争では気になる言動もあったし
史実や迷宮の情報を雑談がてら収集。

折を見てローに単車を見て貰えるよう話してみるか。
ブレーキの調子が悪い気がするし。
…いやいや、珍しいからと言って分解しないでくれよ?

(2人の本を確認し)世界は未知に溢れている。
まだ見ぬ未知や経験に想いを馳せる事は
何者であったとしても共通の願望だろう。

――人も物も魔王もな(笑)

連携、アドリブ歓迎


落浜・語

ちょっと気になったからなぁ。俺に出来る事があるかは解らないけれど

ローさんの所へ。
少しお邪魔していいかな?君はそういうの(物語とか)、好き?俺はあまり機械や技術には疎くてさ。寧ろ、そういうのを語るのが本質なんだ。
俺の正体はこれ。高座扇子って言って別の世界で噺を語る人が使う道具なんだ

俺はこの通り機械ではないから、ずれてるかもしれないけど。物としてはそこで生きた、大切にされたって事実はとても幸せな事だよ。その幸せは生んでもらわなければ知ることのできない事。
俺は、作った人にも感謝してる。置いて逝かれた悲しさはあっても、主様の側にいて幸せだったし、今幸せだから。それが儚かったとしても、きっとそう思うよ


七篠・コガネ

『学校』への憧れだけで胸が一杯なのに
こんなに沢山大好きな本が!わくわくしてくるです!
あ、静かにします…すいません…

絵本とか童話集とか何処にあるのでしょう?
あの2人組の生徒さん達に聞いてみましょうか
確か…ローさんとリィさん
あの~…すみません。僕、猟兵で臨時教師?のコガネと言います
本の場所を教えて欲しいのです
絵本や童話集やファンタジー小説とか!何処にあるか尋ねてみます

…あれ?皆難しそうな本読んでるのに君は僕の好きそうな本読んでるですね
せっかくなのでお勧めの本を教えて欲しいです
読書も好きなのですが物語を書くのも好きなんですよ
こんな僕でも新しいものを生み出せる、そんな気持ちにしてくれるんですよね



●職員室
「この度は依頼を受けて下さり、感謝致します。胸を貸りさせて頂きますよ」
 人の良い爽やかな笑みを浮かべ、担任教師は丁寧に頭を下げてから、首から提げる臨時教師用のタグと、授業や生徒の資料を手渡した。
「ソフィアが先生ですか。たくさんの教え子はドキドキするのですよ。がんばるのです」
 ソフィア・シュミット(邁進を志す・f10279)はタグを受け取ってから、教師に礼を返す。弟子は居るが、10を越える教え子と言うのは経験が無いのだろう。受け取った資料を幾つか捲ると、紫の瞳を軽く閉じて、一度深呼吸。それから、隣の弟子をちらりと見上げる。
 白色のフードを降ろし、七篠・コガネ(ひとりぼっちのコガネムシ・f01385)は嬉しそうにタグを提げ、資料はそのまま、金色の視覚センサを爛々と輝かせて、あちこちに視線をやっていた。
「コガネさんコガネさん」
「は、はいっ!? 何でしょう?」
 ソフィアが口元に人差し指を当てると、意味を理解したようで、落ち着き無く周囲を見渡していた視覚センサが、名残惜しさを残し、彷徨うのを止めた。
「少しの間、お世話になるよ。ええと、先生、で良いかな」
「ええ。私は皆さんに願い出た身ですから、好きにお呼び下さい」
「ありがと、先生もちょっと悩んでる感じ、で合ってるかな」
 落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)は、事前に渡されていた少年の写真と、資料にあったクラス名簿の少年を見比べる。間違いは無いようだ。資料の中には面談結果も書かれており、教師の質問には、ただ生み出す事が怖いとだけ答え、その通り、手が震えているのを確認した、と記載されている。
「はい……機械が好きなのは、私も現場に長く居ましたから、何となく伝わって来るんです。造るのもきっと、好きでしょうに。友人のお陰でしょうか、手が震える程、怖がりながらも造ろうとして、これがまた、痛ましい」
 教師は話しながら、見ていられないのだと首を振る。
「俺に出来る事があるかは分からないけれど、頑張ってみるよ」
「同じく。臨時講師は久しぶりだな」
 アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は受け取ったタグを首から提げ、真面目に話を聞いていく。彼等の意思は尊重したい、修理を極めるのも一つの道だ、明確な目的、将来像が有れば、それも良いと考えていたが、造ろうとするならば、本人もその様な事を望んではいない。
「皆で頑張りましょうね」
「はーい! 頑張りますです!」
「頼もしい。スケジュール等は渡した資料に記載しています。始まるまでまだ、時間はありますので、授業の準備をしていきましょう。」

●準備
 アルダワ魔法学園の校舎は魔導機械を取り扱っている事や、その規模も含め、非常に広い。図書室も幾つかに分けられている。その一室で、猟兵達と教師は授業をどう進めるか、問題を抱えている生徒についてどう応対するかを詰めていく。
 教師は、まず向学心の高い生徒の集まりで、質問を終えれば、後は皆読書に耽るだろうと、普段の授業風景から推測する。その際に、教えられる事があれば、少しずつ助言をしていけば良いだろうと提案する。
「学校の図書館はこういう所なのですねえ。自己紹介は皆で順番にするとして、その後ですね。言われた様に、ソフィアは全体を見ていきましょう。コガネさんは……」
「学校への憧れだけで胸が一杯なのに、こんなに沢山、大好きな本が! わくわくしてくるです!」
 司書が無邪気にはしゃぐ声に優しい微笑を浮かべ、すぐに顔を引き締めて、聞こえるように大きく、咳払いをする。
「あ、静かにします……すいません……」
 注意に巨体がしゅんと肩を落とすと、ソフィアがくすりと微笑を浮かべた。
「それどころじゃなくなりますよね。ソフィアも此処の蔵書には、とても興味がありますし……気持ちは分かります。なので、ローさんとのお話を、お願いしましょうか」
「分かりました!」
「俺も全体を見ていこう。折を見て、彼に仕事を頼もうと思う」
「じゃあ全体は二人に任せて、俺もコガネさんと動こうか」
 ぱちんと、高座扇子を閉じる。1限目の相談が終われば、次の授業は判明している迷宮の探索で、生徒に修理の実習を予定している様だ。
「点数は付けませんが、抜き打ちテストに近いでしょうか……こう言うことをやると冗談交じりに、意地が悪いと生徒から言われてしまいますが」
 冗談交じりに、遠慮無く言われるというなら、良く慕われている証拠なののだろう。

●自己紹介
「と言う訳で、今回来て下さった猟兵の皆さんです」
「初めまして、ソフィア・シュミットと申します。今日は、宜しくお願い致します」
 魔導文字が刺繍されたドレスの両端を摘まんで優雅に一礼、顔を上げると同時に、2色の蝶が身を光らせながら、交わる様に、彼女の周囲を舞う。それがファミリアであると、生徒達はすぐに気付く。
「アネット・レインフォールだ。事が起きた時の精神面や、使用者からの視点の助言になるだろう、宜しく頼む」
 愛用の一振り、銀翼の刻まれた剣を、瞬時に刀、大剣、槍、鋼糸へと変形させると、生徒達は、機構とその使用方法に興味津々と言った様子だ。随分と変わった戦闘方法だと、幾つかの声も聞こえて来る。
「落浜・語だ。宜しく。名前の通り、話す事が得意だな。まだ噺家としては半人前だけど、困ってる事があったら相談に乗るよ」
 小咄を披露すると、生徒からの受けは存外良く、優しげで陽気なキャラクターが、話しやすいと思われたようだ。それとなくローに視線を向けてみるが、他の生徒とは別に、露骨に目を反らす。
「初めまして、七篠・コガネです! 皆さんと一緒に過ごせると考えるだけでワクワクします!」
 屈託の無い笑顔は語と同様、親近感を湧かせるのに十分だが、それ以上に、鋼のボディとその巨躯とのギャップに、コガネは生徒の度肝を抜いていった。彼にとっては不本意かもしれないが、その機体構造にも、興味は持たれている様だ。

●好きな本の話
「皆さん、どんな本がお好みなのでしょう」
 自己紹介が終わり、図書室で本を取ろうとする生徒達に、ソフィアが質問を投げかける。返ってくる答えは、魔導科学系の技術書や尊敬する偉人の本、最近気になっている研究のレポート等が上がる。
「ソフィア先生は、どんな本がお好きなんですか?」
 ローの隣に居たリィが、何となくと言った感じで、質問を返す。
「ソフィアなどは、絵本や童話もとても面白いと思うのです。絵と少ない文章で伝えるのはとても大変な作業ですから。そうですねえ、小さな時に使っていた教科書を、皆さんは覚えていますか?」
 即答する返事が幾つかあるのは、流石最高水準の教育機関と言うべきだろう。
「答えられた方は、当然、今の教科書も思い返せる筈です。では、ざっくりでも良いので、比べてみましょう」
 表現の違い、単純な計算式から、例えばエネルギーの説明、化学式、数式、あらゆる表現の差異が生徒の中で思い返されていく。この時点で、何となく、ソフィアの言いたいことを生徒が察して、成程と頷く。
「はい、その通りです。表現が随分と違いますね。年齢が違う方に伝えるというのは、そういうものなのです」
 噛み砕き、分かりやすく、心情や社会情勢、道徳ならば抽象化、逆に生々しく描く事で人や物事を描く。それも、少ないページ数で実現するのだ。そう言った技術もあって、ソフィアは童話や絵本が好きなのだと。
「有難う御座いました」
 リィが、御伽噺を広げていたローを小突く。彼が図書室で読むのは専らそればかりだ。クラスメイトからは技術書を読まないのを不思議がられてばかりだったのだろう、その表情は、照れ臭そうだった。

●可変武器研究
 アネットはソフィアの講義の後、本を取った生徒達を満遍なく見て回っていく。知識も想像力も申し分無いが、欠けた視点、使用者からの視点を説いていく。また、新しい物ばかりが、必ずしも良い物ではないとも。単純に、慣れと安全性、資金の問題もある。古くとも、完成された形という物は有り、それは先人達の試行によって生み出された標準形式だとも。
「でも、アネット先生は変わった武器を使っています」
「昔の……仲間が使っていた物ばかりでな。それに、考えた上での選択でもある。そういう奴には、遠慮無く渡せば良い。押し付ける様な代物じゃない、と言うだけだ」
「なるほど! 有難う御座います。機構の再現、試しても良いですか?」
「あー狡ぃ。それ俺も参加してえ、プロジェクト立ち上げようぜ!」
「待って待って、ある程度、アネット先生の技術に頼ってる部分を自動化して一般化出来る様に頑張ってみようよ」
「それファミリアロッドとかの技術で魔導科学じゃないんじゃねえか? 変容系に指向性を与えるったって、あんな形態変化、どうやって魔力確保すんだよ」
「それを考えようよー!」
 あっという間にアネットの変形機構持ちの剣を汎用化しようプロジェクト員が集まり、立ち上がって、図書室で理論を展開し始める。活動的で良い子達だと、アネットは目を閉じて、微笑を浮かべた。
(考えた上で……決める。アネット先生の仲間はまだ、生きてるのかな)
 図書室で騒いで良い限度でクラスメイトが明るく話している中で考える。もし、命を落としたり、もう会えないのなら、それはきっと大切な物になるだろう。自分はまだ、足下すら覚束ない。諦めることも決める事も出来ない。それなのに、言われるまま、微かな光を、駄々を捏ねるように求めている。
「ちょっと良いですか」
「は、はいっ?」
 考え事をしていると、大きな影がしゃがみ込んで、自分に話し掛けていた。先程、子供の様に目を輝かせていた先生だ。名前は。
「コガネ……先生?」

●コガネの好きな事
「はいです! あ、でも、先生はちょっとくすぐったいですね。さんとか呼び捨てでも良いです。ああええと、そうではなくてです。絵本とか童話とか、幻想小説は、何処にあるのでしょう?」
「え、えっと。案内しますね」
 パタリと読んでいた童話を机に落とす。
「……あれ? 皆難しそうな本読んでるのに、君は僕の好きそうな本読んでるですね。じゃあ案内ついでに、お勧めの本を教えて欲しいです」
「……ええっと、僕の選んだ物で良ければ」
「あ、ロー、付いて行くから、私にも最近のお勧め教えて!」
「うん」
「仲が良いんですね」
「良く言われる、ねー」
 本で壁が埋め尽くされている中から、幻想小説、童話と言った少年向けが纏められているコーナーに迷い無く辿り着いて、2冊の本を抜く。
「リィにはこっち。コガネ……さんには僕の好きなのを一冊」
 リィは冒険譚を好むようで、最近面白かったのを一つローは寄越し、好みの分からないコガネには、自分の好きな一冊を渡す。中身は、長く長く使われ続けた懐中時計のお話。最後は、部品も図面も無くなって、呆気なく壊れてしまう。ただし、壊れた後も、その家で大事にされていく、優しくて、寂しいお話。
「本当にそれ好きだよねえ」
「リィが冒険譚ばかり読むのと一緒だよ」
 コガネはそれを読んで少しだけ、固まってしまった。彼は壊れてしまって大事にされず、仕舞われた。この物語とは丁度逆で、だから少し、視覚センサが曇った。
「コガネさん?」
「あ、すいませんです。こういった本に出会える瞬間が、とても好きです。読書は良いです。それに、物語を作るのも好きなんですよ。こんな僕でも、新しいものを生み出せる、そんな気持ちにしてくれるんですよね」
「ええと……コガネさんは、とても良い人だと思います。だから……そんな風に言うのは、良くないと思います。物語を造るのも、好きなんですね」
「……有難う御座います」
「僕も、本当に造るのは好きで、でも、どうして良いのか、分からないのです」
「……少し、お邪魔して良いかな?」

●懐中時計のお話
「語、先生?」
「君はそういうの好き? 俺はあまり機械や技術には疎くてさ。寧ろ、そういうのを語るのが本質なんだ」
 ぱっと高座扇子を開いて、コガネの読んでいた本を借り受ける。先程の小咄とはちょっと変わった様子で、寂しく優しい話を語る。何処かの国の、有ったかも分からない幻想童話。
 チクタククチクタク、ジリジリジリ。懐中時計は懐中時計、ある職人に造られて、気に入った夫婦に買われます。それはお母さんからの贈り物。送られたお父さんは、初めて、お母さんとなった人からの贈り物を、飛び跳ねんばかりに喜びました。今日から家族だ。君は僕達の家族だと。だから、生まれてくる子供にもこれを上げようと思い付きました。
 ジリジリジリ、子供は懐中時計を見て育ちます。お父さんがしきりに自慢をするので、自分もそれが欲しいと言うと、大人になった日に、お父さんから送られます。子供も同じように、その子供も同じように。長く、長く、そうして使われていきました。
 然し、次第に懐中時計は時計でなくなってしまいます。チク、タク、チク、タク、ギィ、ギィ、ギィ、ピタリ。
 時計職人はもういません。引き継ぐ人が居ませんでした。特別な懐中時計は、その職人の手作りで、図面も部品も、もうありません。眠る時が来たのです。
 最後の子供は、それを皆が持っていたのを知っていました。お爺さんも、お父さんも、仄かに笑って、嬉しそうに彼に語るのですから、知らない筈も無いのです。
 もう、次の子供に託すことは出来ません。だから、家の小さなベッドに、そっと疲れた身体を、横たえさせるのでした。あれはなあにと、子供が聞く度に、皆が優しく、思い出を聞かせるのです。懐中時計は懐中時計。役目を終えて、疲れた身体を今日も、小さなベッドに横たえて、そっと子供を見守るのです。
「いつもと勝手は違いますが、めでためでたしの、とある時計のお咄です。半端な芸では有りますが、お付き合い頂き、有難う御座います」
 扇子を閉じて、床に両手を付いて頭を深く下げ、顔を上げる。
「……俺はさ、人の姿だけど、正体はこっちなんだ」
 閉じた高座扇子を、ユーベルコードの要領で浮かし、指差した。
「……え?」

●もう一度
「高座扇子って言って、今みたいに、別の世界で噺を語る人が使う道具なんだ。まあ、さっき言ったとおり、童話を語る訳じゃないんだけどさ」
「物に、魂が宿ってる? 人工……精霊や、憑依や、契約でも、なくて?」
「そういうこと。大切にされてるとさ、そういうことも希に起きるらしいんだ。それで、俺はこの通り、機械ではないから、ずれているかもしれないけど、物としてはさ……そこで生きた、大切されたって事は、とても幸せな事だよ。でも、その幸せはさ、生んで貰わないと知ることも出来ないんだ」
 その言葉のどれにも嘘は無さそうだった。何より軽い口調でも、きちんと聡そうとする目が宿っている。あの時の先生と同じで、だから怖い事までは。打ち明けれた。
「俺は、作った人にも感謝してる。置いて逝かれた悲しさはあっても、主様の側にいて幸せだったし、今幸せだから。それが儚かったとしても、きっとそう思うよ」
「先生……じゃあ一つ、聞いて良い? 人の身体が出来て、大切にされていたのに、どうして、家を出たんだと思う?」
「……壊れかけていたのを悟られたくなかった……とかはどうだ?」
「なん……で」
「ローさんの進む道を、狭めたくなかったんじゃないか。話したこと、思い出せるかな? 出来たら、今だから、見えることも有ると思うし」
 ぐしゃぐしゃになり始めた頭で、会話の切れ端を思い出す。これはもう古くなってきていると言う度に、直すからと言うと、やりたいことはそうじゃないのだからと、寂しく笑って首を振る。クラスで、隣に居る誰かと同じ表情で、どうして、あんなに嫌だったのか、今更、腑に落ちた。
「……そっか、そっか。じゃあ、もう怖がらなくて、良いのかな」
「世界は未知に溢れている。まだ見ぬ未知や経験に想いを馳せる事は何者であったとしても共通の願望だろう。人も物も、それは変わらない。少し吹っ切れたなら、手始めに俺のバイクを見てくれないか? 最近ブレーキの調子が悪い気がしていてな、結構珍しいが、君は優秀と聞いている。あ、いや、だからといって分解はしないでくれよ?」
 アネットの言葉に、思わずその場の全員が吹き出した。何処か吹っ切れた様子でローが快く引き受ける。
「クラスの皆に任せると危ないですけど、僕はそんなことしませんって。リィ、手伝ってくれない」
「……うん! 良かったね、ロー」
 作業は他世界の技術、蒸気魔導系統でなく、純粋な機械であったために、少しばかり難航したが、ローはその手の詳しい者と縁があったらしい。其方の知識も有った様だ。晴れやかな笑顔で、ローはリィと共に、作業を終わらせる。アネットの武器を再現しようとしていたプロジェクトチームのクラスメイトから、部品を少し頼まれて幾つか作ってみると、手の震えは驚くほど簡単に消え去って、思わず笑みが零れた。
(どうか、僕の作る皆が、幸せに過ごせますように)
 使われなくなっても、誰かの手元に届けば良い。童話の様に、小さなベッドでのんびり過ごしてくれたなら、きっと幸せだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『ダンジョンの修理屋さん』

POW   :    大抵の物は叩けば直るだろ!

SPD   :    繊細な手付きで修理するぜ!

WIZ   :    今こそ専門知識を活かす時!

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ダンジョン研修
「次は猟兵の皆さんとダンジョン探索となります。各々準備をお願いしますね」
 はい、と生徒達の元気の良い声が響く。準備の指定は無く、必要な物から考えさせている様だ。
猟兵の武器を参考に、新しい物を作り出そうとしていたグループ等は合法的に実験が出来そうだと、武器を多めに、その他の生徒はバランス良く、所持品を決めていく。
「どうするの?」
「僕は武器とか、作って無いからさ。何時も通り」
「じゃあ前は任された!」
「……後で何か奢るよ」
 依頼された修理を終えて、リィとローも準備を進めて行く。ローは修理に必要な道具や探索用具、簡易食料等を大きめのバックパックや簡易収納に詰め込む。リィはその分、軽装で固めていく。
 猟兵が最前列と最後列を固め、教師の案内に従って、目的のダンジョン階層へと潜っていく。
「行き止まりだ」
「あれ、でもこれって……」
「マジかよ。騙された、点検と修理の実習……ってことは抜き打ちじゃん!?」
 その区画の状況をまずは何となく把握する。ざっと見ても、外側の修理でどうにかなる代物では無さそうだ。機関部に入る必要が有る。
「部品、足りるかしら」
 ローは指差しながら、まずは外側の不具合を丹念に調べ、リィに警戒を任せながら、広くは無いフロアの探索を終わらせ、機関室の位置を把握すると、他生徒に呼びに戻って来る。
「いっつも思うけど、お前等何でそんな淀みなく動けるんだよ」
「皆のお陰だよ。試すみたいに廃盤になった半端にレトロな機構とか、仕入所が怪しい他世界の”普通の”、しかも壊れた機械とか持ってきたよね。そっちに詳しい人探すの、大変だった。直したいって言ったら、半分くらい弟子入りになった。そのお爺さんには気に入られたけど」
「どれもこれもマジで直すと思わねーよ! 謝るし、凄かったよ! 勉強になったよ! マジ有難う!」
「どういたしまして」
 興味本位だったのだろう。悪意無く、彼が何処まで出来るのか、気になったらしい。話ながら、何時も通りに、リィ用の修理道具を取り出して渡すと、一緒に機関室に入っていく。
「点検キットを持って来る余裕は無かったし……皆で手探りかな」
 歯車、シャフト、ボイラにピストン。奥が見えぬ程にそれらが配置されている機関室。割り出したは良い物の、目眩がしそうな広さを有している。

●状況整理
 基本要項へは修理方法へのアプローチが3種記載されているが、必ずしも従う必要は無い。猟兵は、先程と同じく、生徒の成長を促す手助けをする事になる。
 大多数の生徒はダンジョンに入ると聞いてはいても、本格的な点検修理をするとは考えていなかったようだ。ローは視野に入れていたようだが、他の荷物で圧迫されたらしく、点検キットを誰も持っていない。そのため、物理点検をひたすら繰り返し、修理箇所をひたすら探っていく事になる。
 猟兵はこう言った場合にどうすべきか、色々な角度、方法から見本を示したり、助言を与えたりすると良い。
 効率化に言及したり、共同作業のやり方、こう言った場所の探索のコツ、実際の作業ペース、他にも色々有る筈だ。優秀ではあるが、学生の身分、まだまだ実地での経験値は少ない。ちょっとした事でも、生徒は糧にしていくだろう。
落浜・語
吹っ切れるきっかけが作れたならよかった。これから、いろいろ生み出してくれたらいいな。

この前さんざんやったダンジョン攻略か。点検修理って言っても、本当この手のことはあんまりにも縁がないからなぁ…。やっても人形の点検修理くらいだし、あれ術式交じりの木製絡繰だし。
でも、基本は一緒かな。音のおかしな所や、見た感じ違和感を感じるところまずは目視や耳で辺りを付ける。(【聞き耳】や【視力】、ついでに【第六感】)
それからその場所の確認、とか。実際の作業は生徒さんたちに任せる。細かい作業は嫌いじゃないが、門外漢が下手に手を出して悪化させるのはまずい。手伝いが必要であればもちろん手伝うけれど。


アネット・レインフォール
▼SPD
準備が不十分でも音・臭い・腐食具合など手掛かりは多いだろう。
(俺は技師ではないから方法は異なるが…)

【俯瞰ノ眼】で構造把握と周囲の警戒。

こっそり空気や場の流れを読み、
修理が必要な箇所をそれとなく伝えてサポートを。
敵の気配がないかも確認しておく。
必要なら葬剣を簡単な工具の形状にも変えよう。

危険な場所や限られた時間で結果を求められる場面は多い。
そんな時は優先度や計画を決めて動くといいと伝えよう。
例えば時間がかかる箇所とかな?

個の力で成しえないなら数の力も重要だが…これは必要ないかな。

…ぶっちゃけ今回の研修で全てを終える必要はないんだ。
彼らにとっては全てが糧となる筈だしな。

連携、アドリブ歓迎


七篠・コガネ
むむ~…同じ機械でも僕のいる世界のものとは
随分と毛色が違うと言いますか

さて。生徒の皆さん戸惑ってる様子ですね
どうすればいいか答えが分からない状況、僕も沢山経験してます
そういう時はまず何も考えないで
一番最初に思いついた事を行動に起こしてみるといいと思います!
だって動かなきゃ始まらないもの
そこは機械も人も一緒ですね。起動してなんぼです

…って言っても裏目に出ちゃう事もありますけど…
周りが敵か味方か分からなくなるエラーが起きた時は…
あ、なんでもないのです

僕もちょっとお手伝い出来ます
個の眼でスキャニングして機構内部の不安な箇所を言ってくです
それぐらいなら僕でも出来るから
出来る事見つけたら早速行動しなきゃ



●二の足
 機関室に入った生徒一同は広大さに目眩を覚えていた。先に確認した二人組も、無闇に少人数で動いても仕方ないと考えてはいるが、クラスメイトを先導する性質では無いが、ただ、ローがぽつりと呟いた。
「どうしようか?」
 今日の実技課題は本格的だ。クラス全員で動かなくてはならない。何時もなら嬉々として動く皆がどうもフリーズしているのは、何時もの規模を大きく超えている所為だろう。
「つってもなあ……これは文字通り手に余るだろ。一度戻るのが最善じゃね?」
「全員で? しかもダンジョンの中で? 先生がそれを見逃すと思う?」
「だよなあ……不足は知恵と現場で補えってタイプだし。あー!」
「嘆いても仕方ないよねー。でも……」
 生徒達が引っ掛かっているのは恐らく、現状の効率の悪さだ。この広さを物理的に点検修理していく等、効率が悪いにも程があると、頭を悩ませている。かといって、作るのは時間が掛かり過ぎるとも理解しており、二の足を踏んでいる。教師は数度頷きながら、その様子を静かに見守っている。こう言った傾向にあるのを、危うく思っている側面があったのだろう。加えて、物作りも少数のグループで動く傾向にあり、大きな人数で動く事はあまり無かった事も。良くクラスを見ている証拠だった。

●切っ掛け
(吹っ切れるきっかけが作れたなら、良かった)
 ローが元気になったのを見て、落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)は紫色の瞳を安堵させた。この授業で自身に出来る事は余り無く、隣の二人に、扇子を閉じてみせる。小気味良い音が響いて、それが相談の合図だと、意図を察した。まず、七篠・コガネ(ひとりぼっちのコガネムシ・f01385)が、お任せ下さいと、白のフードを軽く捲って、金色のアイセンサの片方を閉じて見せる。
「さて、皆さん戸惑ってる様子ですね。どうすればいいか分からない状況、僕も沢山経験してます」
 3メートル近い巨躯が、何処か子供の様なあどけなさを残した、落ち着いた声音で、自身を振り返る様に語り始める。
「そう言う時は、まず何も考えないで、一番最初に思いついた事を行動に起こしてみるといいと思います! だって動かなきゃ始まらないもの」
 目を輝かせて、そう言い放ったコガネに、生徒の大多数が少しコケそうになって、後半で少々持ち直した。静止していても何も始まらないのは確かだった。
「そこは機械も人も一緒ですね。起動してなんぼです……って言っても裏目に出ちゃう事もありますけど……」
 周囲が敵か味方か判別出来ないエラーが起きた時の事が、メモリを過り、僅かに俯く。そ助言が終わったのかどうか、疑問に思った生徒が首を傾げ、慌てて両手を左右に振る。
「あ、なんでもないのです。僕はスキャニングで探っていくですよ。それに、ほら」
 自分で知識の無いと言っていた語はいつの間にやら周囲を探っている。アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は集中して何かを見ているように、眼光が鋭くしていた。
「知覚出来る範囲を探ってみたが、この周辺に敵意は無い。安心して動くと良い。引き続き警戒はしていこう。コガネの言う通り、動かなければ始まらない。この設備での優先事項はどうだ、残っている時間は。門外漢ではあるが、何にせよ、計画性をもって行動することは重要だろう。何度も聞かされている筈だがな。適正の人員はどうだ?」
 クラスがアネットの助言に、顔を見合わせていく。猟兵達、特にアネットや語等は自分達程、知識など無い筈だ、或いは無いからこそとも考えられるが、この嫌になりそうな状況で、コガネの言う通り、途切れる事なく動いている。ローはそれらに素直に感心して、口を開く。
「有難う御座います。アネット先生。実働は僕とリィが重要度振り分けながら進めてみようか。すぐ直せそうなのは直しながら。二人で出来る所はやってく。他の全体管理や計画は他の人に任せたいけど」
「そうだな、うん、言う通りだ。ウダウダしてても仕方無えもんな。全体管理は俺がやろう。ただ、雑だからな、穴埋めを、あー、頼みてえ」
 先程の計画メンバーの一人にそれとなく視線をやると、クラスメイトの一人がにこりと微笑んだ。
「任せて任せてー! 補佐やるよー」
「材料調達は必要無いのかしら?」
「足りなかったら、猟兵の先生に任せて良い?」
「その判断が出て来るならば、良いでしょう。同時に、彼等は貴方達の盾であると自覚していますね?」
「勿論! だから頼めるのは一人かなあ……」
 切っ掛けさえ有ればあっという間だ。それぞれの分担があっという間に決まっていく。

●作業
「むむ~……先程からも思っていましたが、同じ機械でも僕のいる世界のものとは、随分と毛色が違うと言いますか……結果を皆さんに見て貰わないと、どうしようもないですね」
 まずは行動。マッピング作業を兼ねた点検修理だが、コガネの心臓部はスペースシップワールドの宇宙船で使われる物と同型の、小型コアマシン。星間物質を取り込んで無形のエネルギーに変換する科学的な理論で成り立っている。
 対してアルダワの現ダンジョンでは蒸気圧力と魔導を混合させて使用している、スキャニングの結果に不明瞭な数値が幾つもアイセンサ内に出力され、それらにxやyと言った適当な記号を付与し、書き出していく。生徒がコガネが見た物と数値からアタリを付け、それらに正式名称を書き加えた。それをベースに、地道にスキャニングを進め、不安な箇所を割り出していく。
 語は資材調達をその時が来れば請け負う形で、修理を進めていく二人組に付いて回る。リィが先遣で、ローが後を追う形の様で、2人の補佐に回る。2人に比べても語の目視や聴覚は頼りになる物で、異音のする方向や、異常の有る場所を見つけてはリィが確認し、チェックないし修理。その後、どうするかを決めていく。
 全体進行役はアネットがそれとなくカバーしていく。探索部隊との連絡を取りながら、チェック項目と場所、マッピングの結果を貼り合わせ、何処からどのように手を付けるか、また、把握した場から、修理必要箇所など、迷った時に、門外漢なりに手を差し伸べていく。

●スキャニング・マッピング
 明らかな異常数値検出、異音、腐食や漏れ等の原因による目視での部品劣化を統合する。ローとリィのコンビが、報せのあった軽傷部分はほぼ終わらせている事には、クラスメイトからも賞賛の声が上がる。
「でも、すぐには取り掛かれない部分もあったと言う訳ですね」
「ここ、結構痛んでるからね」
「ああ……本当にな、纏め終わったけど、予想以上だ……頭痛え」
 製図を終わらせた進行管理役の少年は頭を抱えていた。エネルギーの伝達経路をきっちりと把握し、各部停止の手順、破損度まで、事細かく書き出されている。
「結局全部やらなきゃいけねえ……ローは何となく分かってたからだろうが、細かい所さっさと済ませてくれて、頭が上がらねえよ。洗い出し終わったし、停止させるのと同時に人員の再配置だ。資材足りてる所を得意分野毎に分けて近場からやっていく。二人はどうする?」
「一番困る所に走るよ」
「じゃあボイラー、重傷なのリストアップしてるからそっちに行ってくれ。これ資材な。二人で良いのか?」
「余裕は?」
「無え。先生方は盾だって言われてるから、あんまり単独行動もさせれねえし。語先生には足りそうにない資材調達をお願いしたし、アネット先生は全域警戒を請け負って貰わねえと……ああ、試算してもギリッギリ! 一周回って楽しい気もするけど、これ良くねえヤツだ……実際の現場って何処もこんなの?」
「うんまあ、割と。じゃあ行って来るよ」
 
●修理工程
 語が戻って来たのと同じ時間に、総勢20名の生徒が、極めて安全な手順で、可動中の機関室の機能をダウンさせていく。手際の良さに、アネットは満足げに頷き、製図を見たコガネは、目を輝かせた。
「すっごいです!」
 他人が作った機構を把握するのは時間が掛かる。細かい規格や経路等は設計者によって癖が出ると言うのもある。彼等はこの規模の施設を、まるで自分が作った物であるかのように扱うことに成功している。
「流石に専門家って事なのかな。資材、持ってきたから此処に置いておくよ。人手足りないみたいだし、ついでに各所に運ぼうか?」
「あ、はい! お願いします。軽く仕分けしますんで! これ各班のメモと、此処の地図です」
「ありがとう……と、思ってたより多いな、アネットさんは警戒をお願いされてるよな。コガネさん、手空いてる?」
「はいです! 出来る事を頑張りますよ」
「二人とも済まない、頼む」
 進行管理の少年から手渡された諸々と見比べて、コガネと分担することにした。アネットは引き続き全域警戒を続行しつつ、一杯一杯になっていく進行役の補助に回る。歯車、シャフトは劣化品が多く、部品ごと、規格の合う物への取り替え作業、ボイラーや魔導シリンダは異常数値の原因を取り除く修繕作業。細やかで失敗の許されない作業に、ローが冷や汗を垂らしながら、作業を進めていく。
 そうして此処に居る一人一人が、宛がわれた役割をこなした後の試験稼働。今度は機能ダウンと反対の手順で熱を入れていく。怪しかった駆動音が、正常な物に戻り、快調な工業リズムを刻む。
「よっしゃあ! じゃあ最終点検、いくかあ!」
 起動の嬉しさに皆が声を上げ、その気持ちが萎えない間に、点検を行っていく。各部異常なし、正常可動を確認すると、もう一度歓喜の声を上げ、一斉にへたり込んだ。
「……疲れたあ……だから抜き打ちだって言われるんだよ。それから」
 疲れた身体をどうにか立ち上がらせ、臨時教師の猟兵、一人一人の名を挙げ、一斉に有難う御座いますと、頭を下げた。この結果は、貴方達が居なければ出せなかったと、皆が声を揃えて猟兵に感謝を述べた。生徒達にとって、猟兵達の行動とその助言は、とても心強いものだったと、言えるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『ラビリンスセンチネル』

POW   :    アクセルブースト
【脚部に内蔵した推進器で急接近し】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    マジックバーレッジ
【腕部に内蔵された魔術機関】から【多量の魔力の弾丸】を放ち、【弾幕を張ること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    コアスーサイド
【魔力炉を自壊させ暴走した魔力】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:ヤマトイヌル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●小休憩
 猟兵の指導と生徒の尽力によって、機関室の修理を終え、野外実習の一環と、一度休憩を挟む。生徒の内、ダンジョン内での野営用具を持ち込んだ者がそれを提供し、随伴した教師も含め、生徒に混じって設営作業を手伝う。食事は通常のダンジョン探索を想定したもので、固形食料、干し肉を始めとした保存食だが、それ等をどうすれば美味しく食べれるか、保存出来るか等が、会話の9割を占め、発展していった。その辺りは教師も興味があるのだろう、良く耳を傾けていた。そんな檻に、ふと、猟兵に近付いて、書類を渡す。
 あの先には、魔道ゴーレム型の災魔が居るらしいと、簡単に記載されていた。この子達に過度の実戦訓練は必要無いが、ダンジョン内で迷い込んだ時、少人数での緊急対処程度を、出来れば示して欲しいと書いてあった。
 一休みが終わった後、行き止まりとなっていた扉を開く。稼動している機関室からの供給により、扉がゆっくりと開いていく。
 先は大広間に繋がっており、魔道機械の番兵が、侵入者を知覚する。けたたましいレッドアラートで、増援を呼び寄せた。先頭に立っていた猟兵達は、目視で頭数を16と判断し、生徒達の方を一度振り返ったかも知れない。

●状況整理
 行き止まりの先は大広間だ。猟兵は何の制限も無く、自由に動き回る事が出来る。生徒達は猟兵の後方、視界は若干遮られ、詳細な状況把握は出来ていない。また、彼等は技術系学科であり、戦闘を本格的に教える必要は無い。
 ただ、少人数での緊急対処程度は示して欲しいと依頼されている。生徒の安全を確保しつつ、緊急時の立ち回りを指導すると良い。災魔の掃討が終わった後に、残骸をUCで操作しての講習や、終了後に猟兵が敵役を召喚しての講習でも良いだろう。裁量は猟兵に一任されている。
 敵影は16。災魔の正式名称はラビリンスセンチネル。
 蒸気技術と魔道技術を組み合わせて作られた迷宮の優秀な番兵だ。単体でも優れた性能を誇るが、その本領は集団戦にある。弾幕を張りつつ警戒、別機が近接戦闘に持ち込み、行動不能に陥れば、勝てずとも巻き添えに自爆する、と言った設計思想の様だ。
 この自爆、コアスーサイドについては、上手く防がなければ、生徒に被害が及ぶだろう。ユーベルコードの属性が被るならば、そうならない様に、工夫をするべきだ。
 猟兵は情報と現状を纏め終わると、行動を開始する。
ロバート・ブレイズ(サポート)
『崇拝。創造。選択は貴様等に』
人間の探索者 × アリスナイト
年齢 78歳 男
外見 184.6cm 黒い瞳 白い髪 色白の肌
特徴 立派な髭 投獄されていた 過去を夢に見る 実は凶暴 とんでもない甘党
口調 冒涜翁(邪神担当)(私、貴様、~である、だ、~であろう、~であるか?)
気にいったら 冒涜王(ダークネス)(俺、貴様、~である、だ、~であろう、~であるか?)

恐怖・発狂・誘惑などの精神的な攻撃に対しての異常な耐性を有しています。
否定する事で恐怖を与え、冒涜する事が多いです。実は凶暴なので近接戦闘が好み。
宜しくお願い致します。


虎熊・月霞(サポート)
「まー焦らずのんびり行こー。とりあえず昼寝しよぉ」

 面倒臭いけど、僕とーじょーってねぇ。いつもどーり野太刀でバッサリと斬り捨てちゃうよぉ?
 伊吹流から派生した雷鳴を組み込んだ伊吹"雷切"流、僕の場合は『紫電』を利用した剣術を使ってー雷の速度で近付いてー敵さんを真っ二つにするよぉ。まぁ面倒臭くなったら首刎ねちゃえばいっかぁ、そうすれば大体の生き物って死んじゃうよねぇ?
 首の無い敵さん?……うん、まぁそこは高度な柔軟かつ臨機応変に対応していこー。
 あ、あとお願いされたら他の猟兵さん達と共闘もするしぃ、お手伝いもするよぉ。ご飯一回奢ってくれるならね!

アレンジ・共闘可



●――皮紙の壁と紫電光
「私がすべきことはつまり、貴様等の保護か。恐怖の中で最も旧く最も強烈なものは未知なるものへの恐。兎角、此処には既知しか居らぬ。未知の探求者、貴様等がそれを知ることは無い。五月蠅い鉄屑の既知共だ。贄か、礎か。末路は既に決まっている。生命を啜るべきか。いいや、鉄屑には使い道が有る。心無き既知を食い散らかし、籠絡しよう。遍く愚物を否定せねば成らぬ。悉くが最悪ならば、早過ぎる埋葬――」
 黒の外套を纏った初老の男性、ロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)は、先ず背後の生徒達を一瞥し、目前の番兵達を目に入れ、すぐに持ち歩いていた赤い装丁の本に目を落とし、傍目からは正気とは思えない言葉を羅列していく。それ自体が、この老人の詠唱行為。16の敵影が腕部内蔵の魔術機関を起動し、多量の魔力弾が、ロバートに向かってばら撒かれる。
 手帳からパラパラと、多量の紙が老人、引いては学生達を守るように広がり、展開されていく。それ自体が壁となり、襲来する魔力塊を全て阻害する。
「おー、ありがとぉ。面倒臭いけど、僕とーじょーってねぇ。いつもどーり野太刀でバッサリと斬り捨てちゃうよぉ?」
 ロバートの壁の影から、虎熊・月霞(電紫幻霧・f00285)がのんびりとした口調とは裏腹に、紫電と見紛う速度で敵地へ切り込む。
「雷は良いよぉ。どんな敵さんでも相手は大体動かなくなるしぃ、後はお任せ~とかも出来るからねぇ。この内側は僕の間合いなんだよぉ。」
 雷鳴去りて月を見よ。一瞬で紡がれる力有る言葉、瞳と同じ色彩の雷光が野太刀に宿る。息吹雷切流は名の如く、迅雷の一撃必殺。それは、多対一でも変わらない。一太刀で面倒事が片付けば、彼女としては全て良しだ。
 水平に抜き放たれた雷刃、力に逆らわず、片足を軸として太刀で円月を描く。放たれた雷刃が、弾幕の中、目算した周囲の番兵を両断せんと迫る。
 逃げ遅れた4体の内、2体が胴から両断され、2体が活動継続が困難と、魔力炉を燃焼し、月霞に迫る。
「僕の仕事はおーわりっと。みんなー、後で御飯奢ってねぇ」
 野太刀を仕舞いながら、軽やかなバックステップ。入れ替わるように前に居たロバートの銀糸の栞が解かれ、界断つ剣へと変化し、既知の鉄屑を蹂躙する。蜘蛛の意図が有るか無きかの魂を啜り、溶かし、籠絡する。老紳士はそれをさして興味も無く見つめた。
「未知を愛せ。恐怖を知るが良い。只の人間に出来る事など、たかが知れている。気が触れてしまえば、造る事すら叶わぬと、まともな脳髄に刻むが良い。それ等を挿げ替え、盗むことすら容易な未知があると恐れるべきだ。鬼の娘、助力に感謝しよう。茶会で良ければ幾らでも」
「うーん、のんびり出来る気がしないんだけどぉ……」
 もう少し代案を考えるよう、この老人を説得すべきか、金髪混じりの黒髪を揺らし、月霞は労力と報酬と怠惰と相談しつつ、首を傾げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

落浜・語
厄介なのが出てきたな…。
前に一回やった方法だが、上手く行けばいいけど…。

仔龍の雷【属性攻撃】や深相円環で生徒や教師の方へ行かない様けん制。可能なら後退を指示する。
UC『人形行列』を使用。自爆で巻き込もうとしてくるならば、こちらも爆発による広【範囲攻撃】でもって、相殺してしまえばいい。一つの威力はあちらのほうが上かもしれないが、数なら負けはしないんでね。
相殺しきれない場合は【オーラ防御】の範囲を広げて守る。

危ないときは、三十六計逃げるに如かず。
何らかしらの方法でけん制なり足止めなりして逃げるってのも、手だと思うよ。
即席で設置できるトラップを予め用意しておくとかな。
あとはそれを過信せずに逃げる勇気


七篠・コガネ
こういう実技授業、あると思っていました
僕教えるの下手だけど…これならきっと得意

自分と同じだとか得意の中に入る存在が相手なら
シンプルに真っ向から挑むのが一番良かったりします
敵が向かってきたら【ダッシュ】してUCで突撃
でもただぶつかるだけじゃ場合によっては力負け
プラスαをしないとね
てわけで喰らうです!ぶつかる直前に【踏みつけ】飛び蹴り!

え?それでも相手が格上の場合、ですか…?
うーん…何となくかつて付き従った白騎士ディアブロ様を連想しちゃうです
そうですね、あの人は未来が視える人でした
場所を味方につけるのも手です
一矢報いるのは勇気が要るけど…小さい一矢かもしれないけど…
きっと大きな一歩になる筈だから


アネット・レインフォール
▼心情
成る程…緊急対処か。
だが、それを教えるにも先ずは敵の掃討を優先すべきだろうな。

もし生徒達に怪我人が出れば将来的な心の傷を残す事にもなり得る。

▼POW
事前に葬剣を無数の鋼糸状にして展開し
生徒達を守る簡単なバリケードに。

【流水戟】で霽刀や他の武器に換装しながら迎撃し、
敵が生徒や教師の方へ行こうとしたら優先して倒そう。

戦闘後は生徒達に少しレクチャーを。

本格的な戦闘要員ではないとの事なので敵と遭遇した時は、
身を隠すか遠距離からの足止めを考えるといいだろう。
瓦礫を使ったり、地面・天井など冷静に周囲を見れば
意外と使えるものは多い筈だからな。

連携、アドリブ歓迎



●機械式
(生徒に怪我人を出さないためにも、まずは敵の掃討を優先すべきだろう)
 途中から同行して来た二人が動く前に、アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は銀翼の刻まれた両刃を極黒の鋼糸へと変じさせ、簡易式の防護壁を作る。弾幕と雷光で視界が利かない中で、七篠・コガネ(ひとりぼっちのコガネムシ・f01385)の視覚センサがフードの下で光る。方式を粒子、感温へ移行。
(こういう実技授業、あると思っていました。僕、教えるの下手だけど……)
「これならきっと得意」
 まず、先の二人が行ったように、相手が多数の局面では一挙に行動不能に陥らせるのも一つの手だ。視界が塞がれた場合は退却か、交戦かを瞬時に判断しなければならない。敵が見えない以上は退却する方が良いだろう。
「ですが、僕みたいに、問題にならず、自分と同じだとか、得意の中に入る存在が相手なら、こんな風に」
 依然残った弾幕による目眩まし、感知されている事に気付かない番兵が推進力全開で向かってくるのを、背面の羽根を展開、プラズマエネルギーを伝達し、蒼炎を纏わせ、低空を恐るべき推力で真っ向から突撃し、迎え撃つ。
「これだけじゃあ場合によっては力負け、プラスαをしないとね……てなわけで食らうです!」
 ぶつかる直前に身体を捻り、真っ向から敵を踏みつける、反動と同時にスラスタを切る。スペースシップワールドで一般的に使用される超重金属を易々と突破する蹴撃が、爪型の破壊跡を、ゴーレムに刻む。拉げ、よろけた所に、再度、スラスタでの突進、回転を加えた飛び回し蹴りが、今度こそ機能停止へと追い込む。
「こんな感じですが、相手が自分達より多い時は、逃げた方が良いです。理由は、こうなるからですね!」
 残った11体の内、4体がすぐさま前方から包囲するように時間差で推進器を利用して突撃。まずは正面の2体、右腕にコアマシンからエネルギーを伝達。瞬時に装着されたブラスター砲が放たれ、粒子の光に番兵が焼き尽くされる。左前方、対応するように左腕のパイルバンカーを展開、重々しい音と共に超重金属製の杭が番兵の腹部に撃ち込まれ、機能を停止する。即座に二つの武装に回していたエネルギー供給をカット。羽根に回し、宙空へと逃れ、残った二体からの襲撃を躱す。追ってくる二体に対して、天井を蹴り、急降下、地上スレスレのホバリングから、右腕のブラスター砲を、二体目掛けて放射した。
「一先ずはここまでですね!」
 コガネさん、すいません。速すぎて何してたかさっぱり見えませんでした、という生徒の声が何処からか聞こえてきた。
「うん。ですよね! 終わったらちゃんと説明と再現しますです!」
 上がった声に生徒の無事を確認し、コガネは一先ず胸を撫で下ろした。

●ウェポン・マスター式
 コガネが前に出たのを利用して、アネットは霽刀でやや護衛に寄った迎撃という形を取る。案の定、コガネを避け、潜るように向かってくる敵を、まず霽刀で片足を断つ。番兵の重量バランスが崩れた所を、狐が刻まれた突撃槍で胴体に穴を開け、更に花の紋様が刻まれたウォーハンマーで横殴りに吹き飛ばす。機能停止を確認し、大体の予測位置へ片手で突撃槍を投げ飛ばす。もう片方で鎖を握り、飛行する様に移動すれば、すり抜けてきたもう一体とすれ違う。視認した所で更に翼が刻まれた大剣を、思い切り叩き付け、打ち落とす。落下中に焔の波紋が揺らめき、四肢を切断。まだ機能するかと、盾が刻まれた戦斧で胴体を切断する。
 もう2体ほどすり抜けてきた筈だがと、弾幕を抜け、目を凝らす。丁度2体がアネットを危険と判断し、奇襲。前後からの挟み撃ちを認識し、暁の星が刻まれた魔導書を開く。
「堕ちろ」
 頁を開き呪文をなぞる。媒介による記録式短編詠唱。出現した天井からの小さな双子星の流星が、ゴーレムの胴を貫く。青の漣、滄溟の結晶が、流麗な軌跡を描き、ゴーレムを元々そう言った機械部品であったかのように、分割する。

●爆発式(アルイミ・オヤクソク)
「厄介なのが出て来たなあ」
 弾幕で目が利かない中、落浜・語(ヤドリガミの天狗連・f03558)は手袋を填め、二言三言を紡ぐ。非実体の糸に伴うように、370にも及ぶ人形の群体が召喚された。更に防護の為に準備を進めていく。「ちょっとお願いして良いか?」
 襟巻から仔龍が顔を出し、語の意図を察して小さな雷を幾つか発生させる。ついでに雷球を罠のように張り巡らし、その間に、一対のチャクラムを放ち、操作する。370もの人形群に雷球、飛び交うチャクラム。必然、侵攻のエリアとして、語の居るエリアは効率が悪いと、其方に敵が向かう事は無かった。更にアネットの張った鋼糸へ、更に霊力を注ぎ込み、簡易の防壁を形作る。
 数を減らされた番兵は、いよいよ形振り構わずコアを暴走させながら、より多数の熱源を巻き込もうと活動を停止する。
「二人とも、危ないから後退を頼む。守れる様な物が有るなら、協力してくれないか」
 二人が頷き、アネットは魔導書を再び開き、覆うように防御壁を展開し、コガネはコアマシンの出力を絞り、更にもう一層、電磁式のバリアフィールドを作り出す。その上で語が、更に押し込む様に人形行列を行進させた。
 けたたましいレッドアラートと、無慈悲なオーバーロードまでのカウントダウン。4体のゴーレムがその機能を果たそうとする前に、語は人形の配置を終え、耳を澄ます。番兵のそれが0になったと同時、人形を一斉に爆破させる。指向性を持たせた広域化、全ての爆煙が内側に収束するよう、糸を手繰る。
「っ……マジか……!?」
 威力は7割ほど減じたと、語は考えたが、それでも敵の爆破は抑えきれず、二人の作った防御壁の内、一つが吹き飛び。爆風に身体が飛ばされそうになる。どうにか、ダンジョンの広間の倒壊は免れた。生徒達に怪我は無いが、皆、何が起こったか分からないと目を見開いていた。

●実技の後の講義の時間
 あちこちに焦げた跡の残る大部屋で、再度実技実習は行われた。生徒達は終始付いて行けなかったので、精神の均衡は保たれたようだ。
 取り敢えず猟兵達の戦闘行動は彼等の肉眼で追えるものでは無かった。彼等が何をやっていたのかすら、生徒達は把握できなかったので、改めて、きちんと把握できる速度で再現していく。
 コガネは先程の講義の通り、同格の相手ならば思い切った当て身が重要だとその時にどう言った体勢を取るかを示し、先程何をしていたかを見える速度で再現した。そちらに気を取られ始めた生徒には、自身と同じ程度の速度を得られないなら止めておいた方が良いと、確りと釘を刺した。
「数が多い場合は逃げるべきです」
「では、相手が個人であり、自分より強いと分かった場合はどうすべきでしょう?」
「うーん……その状況ですと、何となく、昔付き従っていた方を連想しちゃうです」
「どのような方だったのでしょう?」
「そうですね、あの人は未来が視える人でした。そう言う時は、周囲、自分の居る場所の特性を良く把握しておきましょう。地形や、周囲に使用出来そうな物が有れば使用しましょう。一矢報いるのは勇気が要るけど……小さい一矢かもしれないけど……きっと大きな一歩になる筈だから」
 だからそんな時は、思い切って欲しい。小さな勇気が未来を作り出す事も有るのだと、コガネが生徒に語る。少々実感の湧かない様な顔だが、コガネの真剣さに、その時が来れば分かるのだろうと、生徒は確りとそれを頭に刻み付けた。
「さて、今回語の方を見た者は居るか?」
 何方を見ても弾幕で碌に見えなかったと生徒が正直に感想を漏らす。
「ふむ、良い参考になると思ったが、緊急時にはまず、コガネが言うように、相手の力量を見極めた後、迅速な判断と行動が求められる。俺としては当て身が出来るならば、その後、すぐの逃走を進めたい」
「その理由は?」
「君達の役割は最後方からの支援だ。開発、制作、修理、何でも良いが、君達はそう言った事を任される。居なければ安心して戦う事など出来はしない。倒すのでは無く、如何に生存するかを考えるべきだ。実戦で動く敵は実験など、付き合ってくれないからな。試したいのは山々だろう。気持ちは察するが、実験は宛がわれた場所で、慣れた者に使って貰うべきだ。役に立つ場面では有ったが、あれに入っていける気はしないだろう?」
 多く武器を持ち込んでいた生徒の意図を察して、アネットが問いかけると、生徒は全くだと深く頷いた。
「以降は、然るべき人に預けます……」
「そうすると良い。何、足止めに便利なら使ってみると良い」
「アネット先生はああ言っていたけど語先生は何をしてたの?」
「俺は罠を張ってただけだよ。ほら」
 仔龍が呼ばれて、襟首からもぞもぞと動く。口を開き、小さな雷球を一つ吐き出した。少々疲れている様で、それきり、襟首に収まって目を瞑った。
「これと、持ってるこいつをな。後は爆発する人形を沢山置いておいた」
 バングル型の一対のチャクラムを、雷球の周囲で回して見せる。
「そうすると、特にああいう機械式だと、危険度が高いと思って、最初は避けてくれるだろ? 人だって怪しんで動きが止まるし、危なかったら近付かない。それでも対策無く突っ込んでくるなら予定通り、牽制や足止めに、こう言う罠は有効だよ」
「じゃあさっきの爆発は、語先生の……?」
「3割位はそうだなあ。相手が動力を暴走させて大規模爆発を狙ってたんだよ……合わせてこっちも爆風で相殺しようって。こういう事あるから、危ないときは三十六計逃げるに如かず。コガネさんの当て身もそうだけど、さっき言ったように罠を張って牽制するのも良い、その上で、過信せずに逃げる勇気を忘れないようにな。さあ、後は俺達ともう少し、この場所に限定して、やってみようか。危険なことはしないからさ」
 そう言って、火薬量を爆竹程度とした人形を一体召喚して、生徒との実技を始める。猟兵達は手加減した状態で20人の生徒相手に平気で立ち回る。3人相手に、生徒達は突破口を開く方法を考え、相手は限定されるが、格上への対処をパターン化していく。その上で逃走が如何に重要であるか、只、恐怖して逃走するだけでは意味が無い事を、短時間で叩き込まれた。立ち向かいながら少しずつ、少しずつ隙を作り、見出し、突破口を開く。その一つとしての逃走経路、逃走手段である。引いたと見せかけての反撃は有効であるし、その際の足止めや熱源のダミーも有効だ。ただし過信すれば容赦なく前に出るアネットか、コガネが捕獲する。要は適度で無ければいけない。そんな匙加減を、生徒達はきちんと学んでいった。
 教師は全てが終わった後、今日の授業は、生徒達にとって実りの有る物になったと心から頭を下げた。
「心配していたのは、ロー君の事、それから、他の生徒も、頭を回す事が優先される場所ですから、当たり前と言えばそうなのですが、行動力が心許なかった。同時に彼等は私よりも、ずっと頭が良い。ですから、ちょっとの切っ掛けと経験が有れば良かった。最後の実技指導は、私では手が及ばない所でした。来てくれた猟兵が、貴方達で、本当に良かった……心から御礼を、有難う御座います」
「此方こそ、少しの間ですが学園に居られて楽しかったです! 有難う御座います!」
「俺で良ければ何時でも教壇に立とう。何時でも呼んでくれ」
「俺でお役に立てたなら何より。それじゃあ、そろそろ帰りましょう」
 来た時と同じように、猟兵3人が前を、後が先生と猟兵2人でダンジョンを後にする。

●終幕
 コガネはもう少し学園で本を読みたいと頼み込んで暫く、読書に耽っていた。司書はそんな彼を気に入った様だ。余り本の虫をしていれば、師匠が迎えに来る事だろう。
 語はローと暫く語り合う、ヤドリガミという存在をもう少し詳細に、ただ、君には生み出して欲しいと、ローに伝えると、朗らかに微笑んだ。だが、やはり修理も好きなので、何方も出来る工房を建てたいと、夢を語ってくれた。
 アネットは制作された武器の幾つかを生徒に使って欲しいと頼まれた。どれも出来自体はとても良いのだが、彼の腕に見合うにはまだ遠く、可変を繰り返し過ぎて動力炉が壊れたり、部品が摩耗するという自体が多発し、生徒が匙を投げそうになっていたので、授業の時のように、フォローしつつ激励を送る。
 そうしてアルダワの日常は過ぎていき、猟兵達は自身の日常に戻って行く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月07日


挿絵イラスト