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そいつをマグロと呼ぶんじゃねぇ!!

#UDCアース

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#UDCアース


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「うーん、やっぱりお高いわねぇ。」
 とあるスーパーで。主婦らしき女性が鮮魚コーナーで唸っている。手にしたまま買い物かごに未だ入れる様子のないものは、柵どりされたクロマグロの切り身だ。
 ぺたりと右下に張り付けられた値札には、赤身で200グラムほどの切り身にも関わらず無情にもお札が複数枚必要となることが示されている。
 ちょっとばかり、いや結構な具合で、予算オーバーだ。
 ふと、横に並ぶ品に目をやる。
 手にした切り身よりは赤身が若干淡い赤色をした切り身は、迷っている品と比べれば同じ量にも関わらず値段は半分以下。3分の1にもなろうかという安さだ。こちらなら、庶民でしかない奥様でも手が出やすい。
「うん、それじゃあやっぱりこっちにしようかしら。『キハダマグロ』。」
 そう、彼女が呟いた時だ。
「そいつを……マグロと……呼ぶんじゃねぇ!!!」
 凄まじい怒号が、昼下がりのスーパーを襲った。

「…ああ、来てくれたか。」
 叢雲・秋星はグリモアベースにやってきた猟兵を見やり、手を止める。頁をめくるのをやめて、栞を挟んでテーブルに置いたその本は、麦わら帽子に白いシャツ、青いデニム姿でぐにゃりと曲がった釣竿を片足を上げてジャンプしながら快活な笑みを浮かべて掲げる少年が描かれている漫画だ。
 それが何かって?俺達(釣りバカ)の聖書だよ。
「今回、UDCアースでとある邪神教団の活動が確認された。皆には、それを阻止して欲しい。」
 そう告げると、冒頭の出来事を説明する。うん、マグロって呼ぶなーってスーパーで叫んだ奴がいるって件だ。
 一体どういうことなのか訳が分からないって顔をしているな?ああ、それはこれから説明しよう。
「さて、マグロという魚類をスーパー等で販売しているのを見たことのある人も多いだろう。マグロにもいくつかの種類があるが、大抵こういう表記をしていないか?『クロマグロ』或いは『本マグロ』、『キハダマグロ』、『メバチマグロ』、『カジキマグロ』などだ。」
 それにうんうんと頷く者もいれば頭にクエスチョンマークを浮かべる者も。それらを置いておき、説明を続ける。
「実は、正式な和名に置いて今あげたマグロでマグロと呼ばれる魚は『クロマグロ』だけなんだ。」
 標準和名で言えば、キハダ、メバチと呼ぶのが正しい。カジキマグロ?あれカジキだよ、マグロですらねーよ。
 名の後にマグロと付けるのは通称であり、正式なものではないのだ。勿論、通じるので間違いとは言い難いのではあるが。
 言い難いのではあるが。
「それを認めない連中がいる。『日本のマグロはクロマグロだけだ教団』だ…。」
 彼らは決してクロマグロ以外にマグロと付けて呼称することを認めず、それを力尽くで訂正しようとしている。そして彼らの崇める神こそが、『邪神マグロ』だ。
 彼らはその邪神の力を使い、日本中のマグロの呼称を変えようとしているのだ。それに大真面目なのだ。そして邪神マグロはオブリビオンなので倒さねばならないのだ。
 取り敢えずすべきは、教団の情報収集だろう。先に述べた事件は都市伝説になって広がっているようだ。聞き込みなり、SNSなり様々な手段がある。
「色々やりづらい相手かもしれんが、頑張ってくれ。」


宗嗣
 マグロ、釣りを嗜む身としては一度挑戦したいですねー。宗嗣です。
 主にターゲットにしてるのはシーバスやトラウトのルアーゲームです。
 今回、初のギャグシナリオになりますのでチャレンジです。頑張ってみますので宜しくお願いします。
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第1章 冒険 『都市伝説を追え』

POW   :    事件現場を調べる

SPD   :    SNSで情報を収集する

WIZ   :    マスコミに聞き込みを行う

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

コハル・ファインギフト
【POW】
おっさかーなー、おっさかーなー…
コハル、お魚大好きにゃ!

邪神の力で名前変えたら
クロマグロでない何かが混入する気が…

そうなる前に止めるにゃ!
邪神も教団も猫の手くらわすにゃー!


得た情報は
他の皆にも伝えたいにゃ


現場…お魚屋さんやスーパー等を
見回ったり聞きこんだりしてみるにゃ

お刺身買いつつ
店員さんやお客さん等にお話聞いてみるにゃ


もしかしたら、教団のせいで
マグロもマグロ以外のお魚も売れにくくなってるかもにゃ…

だって、マグロって呟いたら、突如怒られるにゃ?
関わりたくないから別の物食べようってなってもおかしくないにゃ…


【動物会話】で
付近の野良猫等からも話聞くにゃ
お魚大好きにゃんこもいるかもにゃー!


榎木・葵桜
マグロづくし!
ふっふっふー、最近マグロづいてるね、私♪

なんというか、秋星さんの説明で初めて本物マグロと偽?マグロ知ったわけなんだけど
本物以外認めたくないっていう教団の皆さんの気持ちはわからないでもないね
その愛、試させてもらおうか!



POW
やっぱり事件は現場で起こってるって思うんだよねー!てことで、
都市伝説の噂になった場所に行ってきます!
やっぱり色んなマグロが売ってるスーパーかな?

スーパー行くからお母さんから買ってきて欲しい夕食の材料も聞いておこうかな
現場に着いたら、ベテラン主婦な皆様に【コミュ力】で接触するよ
いい品物選ぶコツを教わる感じから入って、雑談も交えながら噂話について【情報収集】するね



「ふっふっふー、最近マグロづいてるね、私♪」
 マグロづくしマグロづくし、とにやける顔を抑えながら、榎木・葵桜(桜舞・f06218)は、例の事件があったというスーパーへとやってくる。
 同じくやってきた猟兵のコハル・ファインギフト(目指せ稀代のにゃーてぃすと・f00216)が隣にいる。
「おっさかーなー、おっさかーなー…コハル、お魚大好きにゃ!」
 キラキラと輝く瞳。やはりケットシーといえど、その外見に引きずられるのかネコのように魚には目が無いのだろうか。
 ちなみに、ネコが魚を好んで食べると認識されているのは日本のような一部地域だけらしいよ!世界的には肉らしいよ!日本のネコはグルメである。
「邪神の力で名前変えたらクロマグロでない何かが混入する気が…そうなる前に止めるにゃ!邪神も教団も猫の手くらわすにゃー!」
 コハルがぐっと手を握りしめる。小柄なケットシーの彼女がそうする仕草はとても愛らしく、葵桜もふにゃ、と相好を崩す。
「だねぇ。初めて本物マグロと偽?マグロ知ったわけなんだけど本物以外認めたくないっていう教団の皆さんの気持ちはわからないでもないねその愛、試させてもらおうか!」
 うんうんと頷くと、まずは情報収集のため二人で店員さんやお客さんへの聞き込みに行った。
 あ、キハダもメバチもちゃんとマグロの仲間だからね。偽者じゃないからね!だがイソマグロ、お前はイソマグロ属だからちょっと違うぞ!

「やっぱり事件は現場で起こってるって思うんだよねー。お、沢山マグロ売ってるじゃん。」
「本当にゃ、んー、どれも美味しそうだにゃー。」
 並んでお刺身を選んでいる様子は、とても事件解決に奔走する猟兵には見えない平和な光景だ。
「そうねぇ、ここのお刺身はどれも美味しいわよ。」
 それに声を掛けてきたのは、彼女らよりも三周り程年嵩の女性だ。朗らかに微笑みを浮かべ、かごには沢山の食材が入っている様子からはベテランの主婦らしきことが窺える。
「あ、やっぱりそうなんですかー!おば様のおすすめとかってありますか?」
 こちらから声を掛ける手間が省けたと、葵桜は持ち前の【コミュ力】を発揮。すぐさま仲良くなっていく様子は葵桜が主婦の女性のご近所さんであるかのように思えるほどだ。
「そうねぇ、このお店は先代の店長の時から市場と仲が良くてねぇ。良いマグロが入ってるんだけど…。」
「にゃー…お刺身だけじゃなくて煮ても焼いても揚げても美味しそうなのに…あんまり売れてなさそうだにゃ?」
 コハルも、得意とする【料理】の腕前と知識を活かし、その話へと入っていく。コハルの技術は主婦の方々にも通用するレベルであるらしく、嬉しそうに、しかし馴染みの店のピンチとあって少し寂し気に主婦の女性も応じてくれる。
 彼女らが聞いた話によれば、最近このスーパーでマグロを買おうとすると突然怒鳴られることがあるという。怒鳴り声の主をはっきり目撃した者はいない、とのことだが…。

『にゃー、マグロだったにゃ。』

 店の裏手に住んでいる野良猫に賄賂(お魚)と【動物会話】でコハルが聞き出したところによると、そういう事だった。
「うーん、やっぱり影響は出てるんだねぇ。」
「にゃ。タマ王さん(野良猫)によれば、マグロだけじゃなくてタコもいるらしいにゃ…。」
 得られた情報は有難く、しかし増えた海産物に悩み。取り敢えず、腹ごしらえにパックのお寿司を一口食べた。美味しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーファ・レイウォール
行動指針はWIZ

なにかしらね。この言語化しづらい何かは。
私としては、鮮度が同じ位良いなら安い方が良いのだけど。
濃いめ、辛めになるから、お魚だと勿体ないと思ってしまうけど。

そんなこんなで、マスコミへの聞き込み。
『都市伝説』とか、いかにもマスコミが好きそうじゃない?

技能は【大食い】と【誘惑】
テレビ関係者にとって、視聴率は魅力よね?
都市伝説の正体もグルメも、美味しいわよね。マスコミ的に。

先行組の情報を入手済なら、その情報もあわせて追っていきましょうか。

それにしても、マグロを崇めるなら
邪神じゃなくてキマイラさん探して崇めれば良いのにね。
一人くらいいるでしょ。一般人かもしれないけれど。邪神よりは、ねぇ?


河南・光
【SPD】
今邪神って聞こえ……は?邪神……マグロ?
え、何かのネタじゃなくて?……マジで?
個人的には
邪神風情がマグロ様を名乗るんじゃねぇ!!
って感じなんだけど。
ま、まぁいいわ。それが邪神教団のやる事なら例外なくぶっ潰してやる。
……どうも何というか、気が抜けるんだけど。

さて、それだけ派手にやらかしてるなら
SNSとかに目撃情報とか色々あるでしょ。
その辺の情報を集めて場所の傾向とか時間帯とか調べてみますか。
得た情報は他の猟兵にも共有しましょ。
別口で有力な情報もあるかもだしね。



●マスコミ聞き込みサイド
「なにかしらね。この言語化しづらい何かは。」
 参ったようにぽりぽりと、頬を掻いて何とも言い難い表情を浮かべ、ぼやくように呟いた。
 個人としては、同じような鮮度なら安い方がいいと思っている彼女だが、料理の癖でどうしても強い味付けになってしまうためあまり魚介向けではないと思っている。
 心配いらない、煮付けなら濃い味の方が米もお酒も進む。辛い味は魚に合わない?白身魚を柵のまま、醤油ベースの漬けダレに七味を加えて漬けてみると美味しいよ。
 天の声が聞こえたような聞こえなかったような、それはいいとしてリーファ・レイウォール(Scarlet Crimson・f06465)はマスコミへと聞き込みを行う。丁度やっていた大食い大会に参加して一石二鳥だ。
「ねぇお兄さん、最近この辺りでマグロがどうのって都市伝説、聞いたことない?」
 そういうのを調べてるのよねーと、ニコリと微笑みを浮かべリーファは大食い大会を取材していたクルーの一人に尋ねる。
 【大食い】大会でも活躍した女性から【誘惑】されるような笑みと共に話しかけられたその男性はやはりというべきかとても嬉しそうに応じる。
「やっぱり都市伝説とかそういうの、テレビ的に美味しいですよねー。」
「そうそう、だからこの間取材に行ってきたんだよ。マグロの邪神を崇めてる宗教がどうとかさ…。」
 スーパーでマグロの話題を出していたら、何かに怒鳴られた。そういった話を聞いたらしい。
 男性に礼を述べ、他メンバーの集めた情報と照らし合わせ同じものがやはり現れているらしい。
「それにしても、マグロを崇めるなら邪神じゃなくてキマイラさん探して崇めれば良いのにね。一人くらいいるでしょ。一般人かもしれないけれど。邪神よりは、ねぇ?」
 その方が面白いのに。

●SNS検索サイド
 スマートフォンを駆使し、情報を精査するのは河南・光(神殺し・f12216)だ。邪神の影を追い、その痕跡から事件を解決するUDCのエージェント。その彼女も今回の相手には辟易した様子を見せていた。
「個人的には邪神風情がマグロ様を名乗るんじゃねぇ!!って感じなんだけど。」
 決め台詞のようないつもの台詞も、『今邪神って聞こえ……は?邪神……マグロ?
え、何かのネタじゃなくて?……マジで?』って感じで混乱と脱力を混ぜて足して抜けていったような状態だ。
 勿論、そんな状態であっても彼女がデバイスを操作する手が止まることは無い。目撃情報や遭遇情報などを集め、その存在と遭遇する可能性の高い場所、時間帯を精査していく。
 無論、得た情報は他の猟兵との共有も忘れない。
「ふーむ、遭遇が多いのは例のスーパーか。他の場所もない訳じゃないけど…可能性はそこが一番ね。」
 時間帯は夜間。人が少なくなればその分確率が上がっている様だ。そこまでわかれば十分、後は実力行使も可能だろう。
 これまで全ての猟兵達が集めた情報を纏め上げ、それを集った全ての皆へと送信し。
 決意を新たに、スマートフォンを仕舞い込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『パープルテンタクルズ』

POW   :    押し寄せる狂気の触手
【触手群】が命中した対象に対し、高威力高命中の【太い触手による刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    束縛する恍惚の触手
【身体部位に絡みつく触手】【脱力をもたらす触手】【恍惚を与える触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    増殖する触手の嬰児
レベル×5体の、小型の戦闘用【触手塊】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

榎木・葵桜
タコだー!
うっわ、流石においしそうっては言い難いなぁ
主に見た目的なところで!

それにしても魚以外の魚介類って、見た目からして食べ物じゃないよね
アレ最初に食べようって思った人、ホントにチャレンジャーだと思うよ…!

ともあれ
メインの前の、前菜的なとこだし、頑張ってみるね!

WIZ
【サモニング・ガイスト】使用
田中さん(霊)、私が【衝撃波】と【なぎ払い】でタコ足切断試みるから
【炎】で炙っちゃってー!

これがホントのたこ焼き!なんてね!

…って、うわうわ!
たこ焼きにご不満だからって
いたいけな女子に触手でのお触り厳禁なんだよ?!
(きゃあきゃあ言いながらなぎなた振り回し)
ほら、田中さん、もっと頑張ってガードしてー?!


コハル・ファインギフト
タマ王さん(野良猫)の言う通りタコが…
「…って、あれはタコじゃなくて触手なのにゃー!?」

平和な触手ならじゃれたくなる所にゃけど
教団員?邪神の部下?…な触手は遠慮なく成敗ーにゃー!


【2回攻撃】【範囲攻撃】用い
『猫の手が飛ぶにゃ』で触手も触手塊も纏めて攻撃にゃ!

…え?
触手が猫に関する感情を持ってないかもにゃ?

なら…わざと色んな魚をマグロ呼ばわりするのにゃ
例の教団の関係触手?なら何らかの感情を抱くと思うのにゃ!
怒ったりした所で、猫の手飛んでけーにゃー!


「てっきり、教団員がマグロの姿をして怒っていると思っていたにゃけど…」
怒っていたのは教団員ではないのにゃ…?
もしや…邪神マグロ、もう出てるのにゃー!?



 得た情報を基に、探索を進める猟兵。共におばちゃんとの長期戦(おしゃべり)を戦い抜いた榎木・葵桜(桜舞・f06218)とコハル・ファインギフト(目指せ稀代のにゃーてぃすと・f00216)が疲れを癒しながらも戦いの予感を感じていた時、彼女らに迫る妖しい影があった。こう、うにょーんって感じで。
 うねうねと彼女らを取り囲んだのは、紫色に彩られた触…タコだ。うん、あれだよきっと、ヒョウモンダコとかそういう系。毒持ってるような色してるし、うん。
「タコだー!うっわ、流石においしそうっては言い難いなぁ、主に見た目的なところで!」
 なんか若干歓声っぽい声を上げ、葵桜が反応する。勿論、猟兵としての本能のように即座に『胡蝶楽刀』と『桜舞花』を構える姿に隙は無い。無いのだが、ちょっと楽しそうである。
「…って、あれはタコじゃなくて触手なのにゃー!?」
 ビシッと『コハルの絵筆』で律儀にツッコミが入る。こう、どう見ても友好的ではない。動きがなんかうねうねしてるし、色もこうぬらぬらしてるし。絡まれたらアウトだ。ZではなくR的に。
「と、とにかく。教団員?邪神の部下?…な触手は遠慮なく成敗ーにゃー!」
「ん、メイン前の前菜的なとこだし頑張ってみるね!」

「よし、まずは田中さんカモン!」
 舞うように『桜舞花』を振るう葵桜。それに応えるのは古き戦士、【サモニング・ガイスト】によって呼び出された英霊、『田中さん』だ。本名は非公開、内緒だぞ、と口元に人差し指を持ってきて指先に火を灯す。
 それを見て敵が増えたと理解したのだろう。タコの群れもまた、動きを見せる。【増殖する触手の嬰児】、召喚されたのは小型の触手塊…いや、小型のタコだ。紫色の。うねうねと這い寄るタコの群れ。このまま対象を拡散されるのは得策ではない、と判断したコハルは即座に横っ飛びしながら叫ぶ。
「にゃーっ、マグロがいっぱいにゃー!あれもこれもみんなマグロにゃー!」
 並んだアンコウ(鍋が絶品、皮のぷるぷるがたまらないよね。身のほくほく感もいいんだよね)、タラ(さっぱりした白身は煮ても焼いてもいいよね。白子とかポン酢で泊まらないよね)、ブリ(やっぱり寒ブリの脂の乗り方は凄いよね。醤油に付けたお刺身が醤油を弾いちゃうくらいだしね。口の中で蕩けるよね)を指してどれもこれもマグロだと言い張った。敵の一部でも注意をひければいいなーって思っていたのだ。
 うにょっと全部のタコがコハルに殺到した。
「にゃーっ!!?」
「きゃあーっ、いたいけな女子に触手でのお触り厳禁なんだよ?!」
 咄嗟に割って入った葵桜が『胡蝶楽刀』を振り回す。【薙ぎ払い】に付随し放たれた【衝撃波】で弾け飛んだタコ足が宙を舞った。
「にゃあ、びっくりしたにゃ!『猫の手が飛ぶにゃ』!爪は結構痛いのにゃー!」
 お陰で生まれた僅かな余裕で、コハルもユーベルコード【猫の手が飛ぶにゃ】を発動する。ぷにぷにの肉球が気持ちよさそうな猫の手だが、しゃきーんって伸びた爪は絶対痛い。そんなのが飛んでくれば、当然タコも切られてしまう。
 きゃいきゃ言いながら振り回される『胡蝶楽刀』と、にゃーにゃー言いながら飛んでくる【猫の手が飛ぶにゃ】によって瞬く間にタコが切り刻まれていく。わさびと合えればいい酒の肴になりそうだが、どう見ても毒持ってそうだなぁ。
 締めだ、とばかりにそれらを纏めて田中さんが焼却処分した。一か所に纏められたそれらに、炎を灯した指先を向ける。放たれた火の粉はタコの足に付くと、瞬く間に業火と化して全てを灰に還した。
「田中さん、もっと頑張ってガードしてー?!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーファ・レイウォール
正直、関わり合いになりたくない相手ね

【全力魔法】【高速詠唱】で『紫青焔を纏いし鎌鼬』を発動
「焼いても食べられそうもないし、炭になってもらうわ」
周囲の敵に炎を纏った圧縮した酸素の刃を飛ばすわ
敵に当たると同時に、爆発するわよ

遠距離からの炎での【2回攻撃】【属性攻撃】

近づいてきた触手は、可能な限り【オーラ防御】【残像】【地形の利用】で回避するけど
それで回避できない分は【カウンター】【なぎ払い】【衝撃波】で切り落とすわ
ついでに【傷口をえぐる】と同時に【生命力吸収】もさせてもらうわ
「女子に触手でのお触りは、厳禁って言われたでしょう?」
【恥ずかしさ耐性】で淡々と

それにしても『マグロ』とは関係ないじゃない



「正直、関わり合いになりたくない相手ね。」
 嘆息と共に、漆黒の柄に血のように紅い大鎌『Frisches Blut』を手にした小柄な女性は、その刃を振り抜いた。
 紫色のタコとは、しかし刃の届く距離ではない。それを理解してか否か、嘲笑うようにうねうねと踊るが如く体をくねらせるタコ。それを、紫青の炎刃が両断する。
「焼いても食べられそうもないし、炭になってもらうわ。」
 血振りでもするように払った大鎌を構え、リーファ・レイウォール(Scarlet Crimson・f06465)が呟く。それに彼女のユーベルコードが応えたかのように、両断したタコが爆散した。
「女子に触手でのお触りは、厳禁って言われたでしょう?だから、近づかないでね?」
 そう言いながら、『Frisches Blut』を振るって舞うリーファ。紡がれる魔法は全てが最大火力を発揮するべく、【全力魔法】【属性攻撃】を兼ね備えたもの。それが、【2回攻撃】により隙を見せることなく放たれる様は圧巻でさえある。
「紫青の焔を纏う鎌鼬。とくと味わいなさい。」
 厳かな宣言と共に彼女の放つユーベルコード【紫青焔を纏しい鎌鼬】は、圧縮酸素の刃に紫青の炎を纏わせた攻撃。風刃が敵を切断し、爆炎が汚らわしき怨敵を焼き尽くす。
 それにタコの群れは成すすべもなく。その数を大きく減じていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コハル・ファインギフト
「……うーにゃー!」
皆とっても頑張ってるのに
触手がしぶといのにゃ…まだ群れが残ってるのにゃ…

邪神マグロがもう出てるかもしれないのにゃ
一刻も早く倒さなきゃなのにゃ、早く倒れるにゃー!


【2回攻撃】【範囲攻撃】用い
『猫の手が飛ぶにゃ』で触手も触手塊も纏めて攻撃
…さっきもやったけど、他の手使うのめんどいのにゃー!

これだけだと芸がないから
【歌唱】で歌でも歌っておくにゃ
「まぐろーまぐろー、たこたこまぐろー…にゃ♪」
タコがマグロじゃないっていうなら
吹っ飛べタコ共にゃー!


「あー、空が青いにゃー…お絵かきしたいにゃー…」
…って、そんな事言ってる場合じゃないにゃ
早く邪神マグロを倒さないとにゃ家庭のピンチにゃー!?



「……うーにゃー!皆とっても頑張ってるのに…しぶとい奴らにゃ…。」
 これまでに一体何体のタコを斬り裂いてきたのだろうか。もう数えるのも億劫な程のタコを切り刻んできた手を休め、コハル・ファインギフト(目指せ稀代のにゃーてぃすと・f00216)が思わずぼやいた。
 きっと、これまで倒した敵を集めれば大きなお祭りでも食べきれないくらいのタコ焼きが出来るんじゃないだろうか。触手だけど。今更ながらイソギンチャクっぽくもあるけど。
 大丈夫!イソギンチャクにも食用のがいるから!
「そーゆー問題じゃないにゃ。」
 果たしてそれは誰に向けたものか。それは置いておき、敵の数にも限りが見えたのだ。再び手を動かさねばなるまいて。
 しかし、今使うに丁度いいユーベルコードは先程から継続している【猫の手が飛ぶにゃ】だとして、ただ使うだけでは芸が無い。せめてこの作業に彩りをと、【歌唱】で歌でも付随させてみる。
「まぐろーまぐろー、たこたこまぐろー…にゃ!」
 歌に合わせて、ぷにぷにの肉球が気持ちよさそうな猫の手が飛んでいく。そこから伸びた爪がスパスパと切り落としていく。
 残念ながらまだマグロは出てきていないのだ。寧ろタコ祭り…タコパ状態な現状だ。
「あー、空が青いにゃー…お絵かきしたいにゃー…。」
 現実逃避じみたことを口走る。そう、彼女はゴッドペインター。即ち神絵師様だ。きっと倒すべき敵を倒した後は、とあるサイトなどに素晴らしいイラストをアップして閲覧した人々の心と正気度を癒すに違いない。
 作業と化した敵の駆除。それも、最後となった一体を彼女の爪が捕らえる。どこが本体なのかもわからない姿なら、全てを刻んでしまえばよいとばかり。両の手で振るわれた爪が、紫の触手を裁断。バラバラと崩れ落ちるそれで、打ち止めだ。
「にゃー…はやく邪神マグロを倒さないと家庭のピンチにゃー…!?」
そう、彼女が呟いた時だ。猫の鼻が、嗅ぎ慣れた臭いを察知した。そう、それは―――

魚の臭いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『邪神マグロ』

POW   :    大地を穿てマグロ
単純で重い【突進 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    回遊魚の本気
【マグロ本気で泳ぎますモード 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    突撃する同胞達
レベル×5体の、小型の戦闘用【空を泳ぐマグロ 】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィーナ・ステラガーデンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リーファ・レイウォール
見事なまでにマグロね
邪神じゃなければ、競りでいい値段が付きそうよね

【全力魔法】と【高速詠唱】を乗せたUCで【先制攻撃】
多数のタコを相手にした時と違い、標的が一体なので顕現させるのは
紫青の炎を纏った旋風で作った焔の檻
「バリエーションがあるのよ」
徐々に狭めては、淡々と炎で焼くわ
いい感じの匂いがしそうだけど
「マグロでも邪神じゃ、食べられないわよね?」
遠慮なく炭化させて貰うわ

通常攻撃も炎の【属性攻撃】で【2回攻撃】よ
周囲にも気を払って他の猟兵仲間に【援護射撃】
味方の攻撃の軌道や範囲へ誘い込むわ(【おびき寄せ】)
こちらに数の利があれば、当てるだけが攻撃ではないのよ

炎は、すべて紫青色

※連携、アドリブ歓迎


河南・光
っとと、合流するの遅れちゃったわ……って何あれ。
いや、分かってるわ。マグロよね、うん。邪神マグロ。
や、マグロ頭に人間の体みたいなのじゃなくてまだよかったけど。
……ぇー……。

現実逃避しててもしょうがないか。
それが邪神であるなら狩るだけよ。

……食べようっていう人居ないわよね?
鉛玉撃ちこむからね?文句言わないでね?
邪神だからね?

……よし、全弾ぶち込む!

(食べるっていう人いたらちょっと加減)
(アドリブ、絡み歓迎)


榎木・葵桜
タコさん、あなたの犠牲は忘れない(合掌)

そして大ボス!のマグロ!
ところで、あなたはちゃんとしたマグロの…本マグロ…でいいんだよね?
(マグロのツッコミ待ち)

すごいね、立派!
スーパーのお客様が慄くほどの大音量!
(怒号響けば思わず拍手)
それじゃあ、ここからはスーパーマグロタイム!
張り切ってがんばろー!

引き続き【サモニング・ガイスト】使用
田中さん(霊)には【槍】攻撃お願い
私は【なぎ払い】と【衝撃波】で攻撃していくよ!

せっかくだから一本釣りっぽい事もしてみたいけど
私、釣りは全然わからないから流石に厳しいかー

ひとまず、マグロの動き見て、
エラを中心に攻撃当てていくね
うまく動きを止められたら御の字ってことで!


コハル・ファインギフト
「出たにゃー、諸悪の根源?めー!」
スーパーとかでお客さんに怒ったのもお前かにゃ!

「ご家庭の食卓と、美味しいお魚の為にも…邪神ぶちのめすにゃー!」
ここで倒して…その大きな体をいただくのにゃー!


【2回攻撃】【範囲攻撃】も用いて
『猫の手が飛ぶにゃ』で猫の手飛ばして
邪神マグロも小型マグロ達もまとめて攻撃にゃ!

敵の攻撃は【かばう】も用いてコハルが受けるにゃ
特に本気で泳いでるっぽい時の攻撃は危なそうにゃ、囮になるにゃ

でもただではやられないにゃ
【カウンター】で猫の手飛ばして攻撃試みるにゃ!
「かうんたーおてて、食らうにゃー…コハル達に喰らわれろマグロどもーにゃー!」


終わったら…
「…マグロ、食べれないかにゃ?」



 空中を遊泳するマグロ。胸鰭を左右に広げ、尾鰭だけを動かして口を開けたまま猟兵達の前へと進み出る。
「この秩序の飼い犬どもめ…この私の崇高な目的を阻むか…っ。」
 渋い声で四人の周囲をぐるぐる回る。口は開けたまま、喋っている。止まれって?それは無理な相談だ。止まったらマグロは呼吸が出来なくて死ぬからね!鰓を動かすことも出来ないから口開けたまま泳がないと駄目なんだよ。まぁ空中だから呼吸なんてそもそも出来ないだろうけどね!
「出たにゃー、諸悪の根源?めー!ご家庭の食卓と、美味しいお魚の為にも…邪神ぶちのめすにゃー!」
 ぐっと両手に力を籠め、コハル・ファインギフト(目指せ稀代のにゃーてぃすと・f00216)が宣言する。目がお魚マークになってるのはまぁ、猫だからねっ!仕方ないね。
 だがそれを見て、【バスタープリンセス】に弾を込めた河南・光(神殺し・f12216)がちょっとだけ目を逸らした。(まさか食べる人がいたなんてなー、ちょっと加減しないとなー、鉛玉だし。)タングステンだと環境や生物への汚染具合は少なくなるよ。高いけどね(釣り具的に鉛の数倍の価格がお財布に響く)。
「大ボス!のマグロ!ところで、あなたはちゃんとしたマグロの…本マグロ…でいいんだよね?」
 こっそりタコに合掌していた榎木・葵桜(桜舞・f06218)がマグロに問いかける。別に食べる為に合掌していたわけじゃない。…じゃないよね?【胡蝶楽刀】を構えていつでも捌けるようにしている彼女に、十字を額に浮かべるマグロ。
「当たり前だろう!鰭が黄色くもない(キハダ)し目がぱっちりもしてない(メバチ)し胸鰭も長く(ビンナガ)ない!私こそがマグロ、クロマグロだ!!」
 あ、タイセイヨウクロマグロさんとタイセイヨウマグロさんは別っすよー。って感じで、戦闘が始まった。

「先手は頂き!でも見事なまでにマグロね。邪神じゃなければ、競りでいい値段が付きそうよね」
 三億円くらい?あれはご祝儀もあるので…普段はあんなにしないよ?流石にね。
 【全力魔法】【高速詠唱】で一瞬で最大火力へと達したリーファ・レイウォール(Scarlet Crimson・f06465)のユーベルコード、【紫青焔を纏しい鎌鼬】が突進しようとしていたマグロの機先を制する形で放たれる。紫青の炎の檻は、タコの群れを焼き払った時とはまるで異なる運用の方法だ。一つの術式に複数の運用方法を練り込んだ彼女の特性のユーベルコードは、マグロを包んでじゅうじゅうと焼いていく。
「魚を焼くときは遠火で焼くのが基本ですよ、お姉さん。」
「え、そうなの?へー、ありがとうね。」
 【サモニング・ガイスト】を使用しながら、マグロへと向かいつつ葵桜がリーファに声を掛けていく。咄嗟の連携とはいえ、これまで幾度もの戦いを潜り抜けてきた彼女達だ。接敵の瞬間を見逃さず、攻撃のタイミングを譲渡する。
「それじゃあ、ここからはスーパーマグロタイム!張り切ってがんばろー、田中さん!」
 愛槍【胡蝶楽刀】を構えた葵桜と、無骨な槍を頭上で回転させて構えた田中さんが左右から同時に襲い掛かる。狙いは急所、鰓だ。
 ぶすぶすと燻るマグロ。クロマグロだからね、脂も乗ってるよね。冬は旬だし仕方ない。背びれとか腹びれが炭化しちゃってる。塩焼きの時はしっかりと塩を当てておくと形が残るよ。
 リン、と涼やかな鈴の音を響かせ、葵桜の【薙ぎ払い】一閃。対象に逆から田中さんは、刺突を狙う。銛かな?葵桜の一薙ぎが鰓に深々と太刀傷を与えたように、田中さんが狙うのは鰓の上。そこを斬ることで、魚は即死することなく出血多量で死に至る。所謂、血抜きだ。
「美味しく食べようとするんじゃない!!」
 すぱっとざくっと二人にやられ、マグロが急加速。正面にいたリーファがばっと跳び回避する。胸鰭をたたみ、尾びれを僅か数度振っただけで最大速度へ到達するのは魚類最速クラスのスピードの持ち主のなせる技だ。もしこれが水中なら、尾びれが水を叩く音がボンッという爆発音にもなって響くほどである。
 田中さん、自分の額をとんとん、と叩く。うん、血抜きした後に背骨に細い針金なんかを入れて神経抜きという技法を施すと美味しく食べれるよとアピールしてるらしい。
「田中さん、生前何をしていた人なんでしょう…。」
「さぁ…私は知らないにゃ。」
 それは秘密です、と口元に指を当てた。

 さて、マグロのトップスピードはおよそ100キロ以上にもなるという。水中で、となるとこれを凌駕しうるのはカジキ類くらいで、人類の技術でも軍用の技術でもなければこれを超えることは容易ではない。
 ただしあくまでそれは、水中に限った話である。
「流石にこれより早くはないでしょう?全部纏めて、弾け飛べ!」
 スコープを覗き込む光が呟く。照星越しに、マグロのどこみてるのかわからない目と視線が交わった。
「やー…マグロ頭に人の身体じゃなくて良かったわー。」
 多分そんなのもどっかにいる。是非倒してあげてね!
 【フルバースト】によって放たれた弾丸が、乱れ穿つ。血を流しながら泳ぐマグロが、瞬く間にぼろぼろになっていく。ダメージを受けたマグロに追いすがったのは、コハルだ。小型のマグロ(クロマグロの幼魚はヨコワと呼ばれているよ)と共に猟兵達へと攻撃を仕掛けようとするも、彼女の『手』から逃れる術はない。
「【猫の手が飛ぶにゃ】!!」
 【範囲攻撃】を乗せて放たれた攻撃は、小型マグロをまず解体。そのまま邪神マグロにもざっくりと深い傷を負わせる。傷は頭部と尾部に集中。食べる部分減らしたくないし。
 尻尾という生きるのにある意味最も大事な器官に傷を受けたマグロの動きが止まる。止まったら死ぬ。それを体現するように、死神が舞い降りた。
「これで止めよッ!」
 【Frisches Blut】を振り下ろすリーファ。頭を両断され、邪神マグロは食材へと変わった。

 流れるような手さばきで、田中さんがマグロを解体する。まずは背の部分、そこから腹を柵に取り、ここが中トロでここが大トロ、と分けてくれる。
「折角だから一本釣りとかしてみたかったんですけどねー。流石にそんなタイミングはなかったですね。」
「出来たとしても難しいんじゃにゃいかにゃ?ほら、マグロおっきいし。」
 中骨から身をスプーンでこそぎ取ったもの(ネギトロだ)をつまみ食いしながら、コハルと葵桜がお喋りに華を咲かせる。
 クロマグロ釣り?ルアーで狙う人達ってムッキムキだよ!重量挙げで100キロとかやるような人達。その為に体鍛えるような人種だからねっ。
「あー…焼いた時いい臭いはしたけど私はパスかなー。邪神だし。」
「うん、私もいいかなー。撃っちゃったし。」
 対して、リーファと光はあくまで解体ショーの見物。あくまで邪神、という思いを捨てきれなかったらしい。
 解体を終え、シビ切り包丁(日本刀みたいなマグロ捌き用の包丁)をタオルで拭う田中さん。本当はマグロは絞めて数日寝かせないと美味しくないのだが、そこは邪神。最初から最高の状態で泳いでいたらしい。
「にゃーっ、コハルお寿司が食べたいにゃ!大トロにゃ!」
「あ、それじゃあ私もお願いします!」
 楽しそうな二人を眺め、微笑むリーファと光。取り戻したスーパーの喧騒は、心地の良いものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月25日
宿敵 『邪神マグロ』 を撃破!


挿絵イラスト