5
満ちゆく月の下の怪

#サムライエンパイア

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア


0




●由なき殺戮
 一番近い城はと問えば鍋倉だが、それとて二昼夜歩いた先のこと。
 そのぐらい、周りを山野に囲まれた小さな村は鄙びていた。
 だからといって誰も困ってはいない。隣村までだって半日かかる山中の盆地にあっても、田舎を自覚はしていても、ただそれだけのこと。着くまで歩けばいいだけだ。
 だから、近隣の誰も気付かない。
 年が明けたばかりの寒空の中、黄昏時に美しい鬼火がどこからともなく現れることを。
 備蓄をおさめた蔵が焼かれ、村人たちが飛び出してくることを。
 蔵に駆けつけた村人たちがあるいは鬼火に焼かれ、あるいは見えない手に掴まれたように放られ、次々と屍を晒していくのを。
 燃え盛る鬼火をまとい跋扈するそれらに、頭がなかったことを。

 そうしてまともに抵抗できるものはおろか、身動きもままならなくなった村人たちは、焼けていく村の中で異形の影を見る。異形が携える、およそ人に使う物とも思われない巨大な刃が人々を屠っていく。
 魑魅魍魎を噂で聞いてはいても、初めて遭う村人たちには為す術もなかった。
 何故こんな田舎の村が、そして何故自分たちが真っ先に狙われたのかがわからない。
 答えはあまりにも理不尽だ。
 人を害さぬ物の怪たちの物語が残るこの土地が、しばしの平和を得ていたから。
 決して楽ではないにしろ、つましく生きて日々に満足し幸せに生きていたから。

 幸せだった者の血にまみれ、貪り喰らう鬼が立ちあがる。
 気まぐれすら起こせぬほどに、この村には美味い者しかいなかった。久しぶりのご馳走だったからうっかり全て喰らってしまった。
 ――さあ、次の餌はどこだ。幸せという甘い床に漬かった魂を探しにゆこう。

 せせら嗤う異形の鬼の顔は愉しげに、そして残忍に歪んだ。

●助け手を其処へ
 サムライエンパイアに現れ始めた魑魅魍魎たちは、徐々に人々の生活を脅かしつつある。治世は安定していても、全土に幕府の目が届くわけではない。
「幸せだから食べられるなんてひどい話、我慢ならないよ。予知できて良かった」
 憤然とした口調でテス・ヘンドリクス(人間のクレリック・f04950)が話し始める。
 虐殺が起こるのは盛岡藩の南にある小藩、鍋倉藩の領内だ。
 村人たち皆で力を合わせて水を引き、昨年はそこそこの作物を得て無事に年を越した。のんびりした気質の者が多いというその村が、日が暮れきらぬうちに鬼火に焼かれて燃え上がる。
「それは鬼の尖兵を務める頭のない妖狐たちの仕業なんだよ。鬼火や神通力も厄介だけど、心眼でこっちの攻撃を躱すから気をつけてね」
 祀られていたはずの妖狐たちに何があったのかはわからない。はっきりしているのは彼らが十匹ほどもいて、敵対的であるということだけ。
 彼らを打ち倒すと首魁が現れる。二本の角を生やした文字通りの鬼、巨大な斬馬刀を携え人を喰らう妖怪――つまるところオブリビオンであり、倒すべき敵だ。
「振り回してる斬馬刀も充分危ないんだけど、掌底打ちとかもかましてくるよ。こういう奴は私も受けて立ってやりたいところなんだけどなあ」
 ぷくりと頬を膨らませたテスは、そうそう、と手を打って笑顔を見せた。
「無事に犠牲を出さずに事を収められたら、村の人がお礼のご馳走で大歓迎してくれるよ! この村はお酒も作ってて、村の人たちもお酒に強いみたいだから、飲み比べなんかも楽しいかもね!」
 知らない土地の四方山話も村人たちを楽しませるに違いない。そんな穏やかな結末を迎えるためにも猟兵たちはかの地へ向かう。
 いざ、魑魅魍魎を退治てくれよう。


六堂ぱるな
 はじめまして、もしくはこんにちは。
 六堂ぱるなと申します。
 拙文をご覧下さいましてありがとうございます。

●状況
 世界はサムライエンパイア、東北のとある村でのことです。
 今から向かえば、村に火が放たれる少し前に到着できるでしょう。鍋倉藩の領主からは魑魅魍魎が出没しだしたという通達が領内にお触れとして出されていました。村人たちは板塀などを補強し備えていましたが、相手が人でないとは半信半疑だったようです。
 鍋倉藩に応援を頼めば侍を派遣してくれますが、今回の戦いには間に合いません。

 猟兵たちが村を守り切れば、彼らは蔵から米や餅、お酒を出して精一杯の歓迎とお礼をしてくれます。お祭り好きな人々で、彼らも猟兵たちと楽しく過ごしたいようです。

 皆さまのご参戦をお待ちしております。
57




第1章 集団戦 『憎しみに濡れた妖狐』

POW   :    神通力
見えない【波動】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    鬼火
【尻尾から放たれる怨嗟の炎】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    心眼
【常に相手の思考を読んでいるかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

コンラート・シェパード
(※アドリブ歓迎)

テスは予知お疲れ様。
それじゃあ、助太刀に行くとしようか。

◆戦闘
村人を最優先で【かばう】。
見えない波動は、【聞き耳】である程度どの方角から放たれたのか等判断出来ないだろうか。
ともかく【武器受け】で可能な限りドラゴンランスで敵の攻撃を受け流す。
当方の攻撃に関しては、【2回攻撃】で攻撃回数を増やし、
二撃目が当たる、もしくは私が陽動となって敵の気を引き付けているうちに誰かの攻撃が命中すれば上々。
此方の攻撃が敵に当たった場合、【串刺し】でより確実に仕留められるよう試みる。


神城・澪
なんで妖狐が手先になって襲ってるのか?って疑問はあるけど、まずは被害を出さないのが優先よね。

オブビリオン相手にも【誘惑】って効果あるのかな?
あるのならそれで引き付けつつなぎなたで【薙ぎ払い】。
強力な単体攻撃をもつ他の猟兵の方たちと協力したいところ。
そうでなければ【フォックスファイア】で攻撃兼誘導で敵が散開しないようにしたいわね。
こっちを狙ってくれればそれだけ村に被害は出にくくなると思うし。
誘導も引き付けも出来ないようならば、【護身刀:青狐】で各個撃破と行きましょうか。
間合いがは短いけど小回りはきくんだから。


ベール・ヌイ
「鬼の気配・・・それに心がざわめく・・・まさか?」

陰白・幽(f00662)と一緒に行動します
幽への呼び方は「ゆうゆう」一人称はボクです
復讐相手の気配を感じて最初から気が立ってますが、幽に心配されれば「大丈夫・・・」と微笑みます
内心、幽についてきてもらったことの嬉しさと申し訳なさを心に秘めてます

攻撃方法としては火鳥乱舞+双銃の二回攻撃+誘導弾+属性攻撃(氷)で逃げ場をなくしていきます
また、幽の攻撃に対して「援護射撃」で援護も行います


陰白・幽
ヌイ・ベール(f07989)と一緒に行動する。
「今日のぬいぬいは……なんだか様子がいつもと……違う、かな。ボクが、見ていてあげなくちゃ」いつもと違うヌイの事を案じながら行動する(呼び名はぬいぬい)
幸せな人を狙って食べてるのか……ボクはあんまりそういった考えは……好きじゃ無いかな~。
弱肉強食が常なのは知ってるけど……だったらボクたちが、強者が現れたら、結末が……良くなる、かな。

戦闘法は敵の近くを動き回っりつつ、味方の攻撃に合わせることで敵の隙を見つけ尻尾で足下を払うことや、ガントレットによる打撃で敵の集中を乱して、隙を突いてUCを使って敵に鎖をつけ【怪力】を使って敵を振り回して投げ飛ばします。



●夕暮れの稀びと
 この国ならばどこにでもある、山野の中に佇む村の趣だ。
 少しばかり開けた盆地の真ん中に、寄り添い合って建つ茅葺屋根の家々と彼らが一年かけて得た作物を納めた蔵がある。夏なら田畑に囲まれた村は緑の中にあるだろうが、今はさらっと積もった一面の雪で白い世界に浮き立つように見えた。
 日が傾いた山の裾、森の中からふわりふわりと舞うような足取りの一群が現れる。
 幾つも点った鬼火を見れば一目瞭然。
 ざっと十匹余り、さぞかし霊験あらたかな妖狐だったのだろう――なぜ推測かと言えば、いずれも首がないからだ。それでも体を見れば明白で、首なしの妖狐たちは真っ直ぐに、互いにじゃれあい遊ぶように、村へと向かってくる。
 冷え切り乾いた空気の中、ベール・ヌイ(桃から産まれぬ狐姫・f07989)は辺りに漂うものを敏感に感じ取っていた。
「鬼の気配……それに心がざわめく……まさか?」
 こちらへ向かってくる妖狐たちとは違う、神経をささくれ立たせる何かがいるはずだ。姿を見せないソレを燻りだせないことに苛立ちを覚える。そんな彼女の様子は、陰白・幽(無限の可能性を持つ永眠龍・f00662)を少しばかり不安にさせていた。
(「今日のぬいぬいは……なんだか様子がいつもと……違う、かな」)
 ボクが、見ていてあげなくちゃ。そう独りごちる。寄り添って顔を覗き込むと、心配をかけたと気がついたベールは顔をあげて微笑んだ。
「大丈夫……」
 幽がついてきてくれている。口にはできないけれど、申し訳ないと思う一方で嬉しさはもちろんあった。
 村の手前に展開する猟兵たちに、頭はないにしろもう妖狐たちも気づいているだろう。神城・澪(妖狐の戦巫女・f06764)はまだ解せぬという顔で首を捻っていた。
「なんで妖狐が手先になって襲ってるのか? って疑問はあるけど、まずは被害を出さないのが優先よね」
 自身も妖狐だけに見過ごし難い疑問ではあるが後回しだ。参戦できないグリモア猟兵のテスを労ったコンラート・シェパード(シリウスの鉾・f10201)が、猟兵たちの輪の中に加わった。
「そろそろやって来そうだな」
 しゃんと背筋を伸ばすと背の高さが際立つ。澪の言う通り、被害ゼロこそ優先事項だ。
 舞うようだった妖狐たちの動きが直線的なものへと変わる。目標を定めた狩りの動き。
 先頭の妖狐の尻尾がひと振りされると、群れはぱっと散開して地を蹴った。まず放たれた幾つもの鬼火は弧を描いて蔵へ向かって飛ぶ。
「散開しちゃったか……」
 懸念していた澪が薙刀を手に前へ駆けた。大丈夫、まだ手はある。魅力を如何なく発揮しながら突出すると、散りかけていた妖狐が三頭戻ってくる。長柄を利して薙ぎ払えば、毛皮ばかりか肉も裂かれた妖狐たちが後じさった。
「きゃああああ?!」
 妖孤たちに気づいた村の娘が叫ぶ。その頭上に放たれた鬼火が迫り、間一髪でコンラートは彼女を抱えて跳び退いた。
「大丈夫か? 村の反対側へ。火に気をつけるんだ」
 娘を立たせて走らせると、なお降り注ぐ炎を叩き落として転びかけた老人に手を貸す。
 彼の傍らを駆け抜けたベールは、躊躇なく妖孤たちのただ中へ身を躍らせた。
「火の鳥よ……敵を啄め……不死鳥よ……仇なすモノを……倒せ」
 鬼火を圧倒する熱量が凝集する。鳥の姿をした炎は、意思あるようにベールが敵とみなした妖狐を焼いた。苦悶に身悶えるも口はなく、地に爪をたてる体に氷火双銃が炎と氷の弾を叩きこむ。
 彼女について夏は畑だろう辺りを駆け、しなる尻尾で妖孤に足払いをかけながら、幽はベールから聞いたことを考えていた。件の鬼は幸せな人を狙って喰らうという。
(「……ボクはあんまりそういった考えは……好きじゃ無いかな~」)
 常に視界にベールを捉えつつ、村へ向かって鬼火を放とうとする妖孤にフックを食らわせて集中を乱す。世は弱肉強食が常だとは知っている、けれど。
「……だったらボクたちが、強者が現れたら、結末が……良くなる、かな」
 のんびりした口調ではあるが彼も猟兵。ベールに近づこうとする妖孤へドラゴンオーラを放ち、尻尾の一本を吹き飛ばしながら縛めると引き摺り回した。怪力にものをいわせて彼方へ放り投げる。
 妖孤たちは邪魔をされているから猟兵と戦っているが、本来の目的はあくまで村を襲うことのようだ。それは予想がついていたので、彼らの気を逸らさないよう十六もの狐火を操って、澪はなんとか散開の阻止を図っていた。それはおおむね村人の避難の手助けを終えたコンラートからもよく見えている。
「それじゃあ、助太刀に行くとしようか」
 竜槍グリィズルーンを携えて混戦の中を疾走する。澪が引きとめていた妖孤が向き直るより早く、ドラゴンランスはその胴をしたたか貫いた。頭があれば悲鳴をあげていたに違いない。もがいて槍から我が身を引き抜いた妖孤だったが、続けざまの【ドラゴニック・エンド】で吹き飛んだ。ちかちかと光って消えていく。
「助かったわ。単体攻撃が欲しかったの」
「それは何よりだ」
 コンラートが鬼火を槍でいなしながら笑う。人数が増えたこともあってか、妖孤たちが猟兵たちの方を向いた。こうなってくれればお誂えむきだ。大脇差を抜いた澪は首なしの妖孤へ斬りかかった。刃のような風となった神通力が肌を裂くが怯みはしない。一瞬の隙をついて懐へ踏み込み青狐を突きたてる。
 その刃が妖孤から抜けるより早く別の同族から鬼火が放たれた。回避行動が遅れた澪へ炎が殺到する――その前に。幽のドラゴンオーラが全てを爆ぜさせた。
 跳ねるように距離を取ろうとする妖孤には、既にオーラの鎖が絡みついている。失速して動きが止まったところへ、ベールの弾丸が立て続けに撃ち込まれた。みるまに毛皮を氷に侵食された妖孤は、わずかにもがいただけで淡い光となっていった。

 滑り出しは上々だ。妖孤たちをあまりばらけさせずに済んでいる。このまま村へ近づけずに殲滅できれば、被害はゼロで済ませられるだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

エウロペ・マリウス
戯れに命を弄ぶことは、許されないことだよ

行動 WIZ【全力魔法】【誘導弾】【高速詠唱】【属性攻撃】
使用ユーベルコード
【創造せし凍結の世界(ニヴルヘイム・ノヴァ)】

【全力魔法】と氷の【属性攻撃】で火力を
【高速詠唱】で手数を
【誘導弾】で命中率を共に強化して攻撃するよ

相手の心眼で避けられることも考慮して、ニヴルヘイム・ノヴァで攻撃するよ
そうすれば、仮に避けられてもボクの領域が増えて、攻撃の威力を増やせるだろうからね
悪いけれど、こういう輩に手心を加えるつもりはないよ
後悔も、懺悔もいらない
ただ静かに死という闇に沈んでいけばいい


ビスマス・テルマール
幸せな対象を取って喰う鬼
尖兵が祀られていた筈の妖狐

首が無いのも
……オブリビオンの鬼に
何かされた性で

手後れなのは予想が付きますが

幸せな人間を喰う話も含めて胸糞悪い話です

●POW
ビルド・なめろうビームウェポンでアボカドのなめろうビームフォードを生成

ディメイション・なめろうブレイカーと連結し

妖狐の放つ鬼火や神通力で
動かした物ごと
『誘導弾(心眼対策も兼ねて)』『一斉発射』の
併用で砲撃を発射

仲間と連携を考えながら動き
必要なら仲間をサポート
敵の挙動と攻撃には常に
気を付けます

元凶の鬼を引きずり出す為にも

妖狐さんも悪く思わないで
下さいね……鬼は必ず潰しますから。

※アドリブ掛け合い絡み大歓迎


ミスティ・ミッドナイト
例えどのような場所でも、善良な人々は守られるべきです。あらゆる手段を用いて必ずここで食い止めます。
…心を読んでくるようですが、逆に利用できるかもしれません。

ステップ1
【地形の利用】でなるべく隠れながら、サプレッサー(装備)付きのハンドガン(装備)で【暗殺】を試みます。頭部がないのは厄介ですね。臓器があるかは謎ですが、胸部を狙ってみましょう。

ステップ2
混戦時、もし皆様の心が読まれているようでしたら、【フェイント】で真逆の情報を与えてやりましょう。また、複数人で同時攻撃を仕掛ければ、いずれかの攻撃は当てられるかもしれません。

――では、迎撃開始といきましょう。


御剣・刀也
刀と拳を使うオブリビオンね
なんか親近感湧くな。が、そんなのと一緒にされちゃたまらねぇ
どっちが本当の鬼か、教えてやらないとな

神通力、鬼火は遠距離からの攻撃が可能だと思われるので、距離をとにかく取られないように気を付ける
距離を取られたらサムライブレイドではじくか避けるかしながら距離を詰める
詰めたら一気に、全力、全速で斬り捨てる
心眼で思考を読んでるかの様に避けようとするなら、其れすら間に合わない程の速さで斬り捨てる
「天武古砕流に小細工はねぇ。相手が避けようとするならそれより早く斬り捨てる。それだけだ」



 妖狐たちの【神通力】は直接ぶつけられても面倒だが、実は物をぶつけられるのも地味に厄介だ。視界を遮られる上に村にとっても損害となる。
 そんなわけで飛来する村人共用の物置小屋を、ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は砲撃で撃ち落とした。続けて既に放った誘導弾で回避は許さず、別の首なし妖狐へ砲弾を叩きこむ。
(「幸せな対象を取って喰う鬼……その尖兵が、祀られていた筈の妖狐」)
 考えずにいられない。首がないのもオブリビオンの鬼に何かされたようで、手遅れだということだけは予想がつくけれど。
「幸せな人間を喰う話も含めて、胸糞悪い話です」
 およそ理解しがたい行動論理に異を唱え、ビスマスはアボカドを取り出した。
「生成開始っ! なめろうビームウェポンっ!」
 アボカドとなめろうのマリアージュ。なめらかな果肉がビームフォードを生成し、ディメイション・なめろうブレイカーにマウントすると砲撃で仲間の支援を再開する。
 仲間の援護で敵の懐まで踏み込むと、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は獅子吼を抜いて一閃した。両断された妖狐の姿がぶれると小さな煌めきを残して消えて行く。
「刀と拳を使うオブリビオンね……なんか親近感湧くな。が、そんなのと一緒にされちゃたまらねぇ」
 妖狐は心眼だか心を読むんだかは知らないが、避けようとするなら其れすら間に合わない程の速さで斬り捨てればいい。
「天武古砕流に小細工はねぇ。相手が避けようとするならそれより早く斬り捨てる。それだけだ」
 声なき咆哮。群れの中へ踏み込んだ刀也めがけ、何匹かの妖狐が炎や神通力を使おうと包囲しようとする。しかし次の瞬間、彼の姿はかき消えていた。目標を見失い密集陣形に陥った妖狐の群れへ、エウロペ・マリウス(揺り籠の氷姫・f11096)が告げる。
「戯れに命を弄ぶことは、許されないことだよ」
 【創造せし凍結の世界】の発現。高速詠唱で冬の空気よりも凍てついた魔力が凝集し、氷の魔弾が結実した。妖狐の群れのただ中へ叩きこむ。逃げ遅れた一匹が直撃を食らって凍りつき、陽に当たった氷のように消えていった。
「例えどのような場所でも、善良な人々は守られるべきです。あらゆる手段を用いて必ずここで食い止めます」
 エウロペの言葉に賛同しつつ、飼葉の山の陰でミスティ・ミッドナイト(霧中のヴィジランテ・f11987)はセミオトマチーック・ピストルを抜いた。頭がないというのは銃を扱う者にとって厄介だ。妖狐と言ってもどこまで生前の状態を残しているかわからない。
 幸い妖狐たちの注意は、上空をとっているエウロペや地を驚くべき速度で駆けまわる刀也に向いているようだ。
「……心を読んでくるようですが、逆に利用できるかもしれません」
 身を隠し距離を詰め、扱い慣れた相棒を握る。刀也の動きを読もうとしていると思しき個体の背後へ忍び寄ると、ミスティは引鉄を絞った。サプレッサーでほとんど音もたてず放たれた弾丸は、妖狐の息の根を止めタ。
 次の標的を定めたエウロペが再び高速詠唱で魔力を結ぶ。魂までこごえるような魔弾を撃ち込もうにもしかし、目の前の妖狐は心眼を使っているようだ。
 と、察したミスティが馬車の陰へと回りこみ、飛び出して妖狐に陽動を仕掛けた。驚いたようにバックステップする一瞬、魔弾を撃ち込み凍りつかせる。

 畑の脇の薄野原で妖狐の挟撃を受けた刀也は、実際のところさほど困っていなかった。相手の動きさえ見切れていれば、傷を負うようなことはない、が。心眼もち二体を同時に相手どるのはなかなかに難しい状況だった。
「失礼、お邪魔しますね」
 目の前の妖狐に突然砲撃が降りそそぐ。咄嗟に鬼火での相殺を試みる妖狐だったが、ビスマスの支援砲火は勢いを増した。
「妖狐さんも悪く思わないで下さいね……鬼は必ず潰しますから」
 元凶の鬼を引きずり出す為にも。ビスマスの砲撃が妖狐を吹き飛ばした。動きを封じられた妖狐に一瞬で肉薄した刀也が、不敵な笑みのまま逆袈裟に斬って捨てる。頭が無いのでは断末魔すらも読み取れず、消えて行く妖狐を見下ろし呟いた。
「どっちが本当の鬼か、教えてやらないとな」
 跳ねまわる妖狐と相対するミスティは村はずれの木陰に飛び込んだ。追って放たれた鬼火で木が焦げつく。素早くマガジンを交換して構え直す――瞬間、目の前に妖狐がいた。
 引鉄をひくより早く炎が収束するのが見える。
 しかし一瞬早く、氷の魔弾が妖狐を貫いた。ばきばきと音をたて氷がもがく体を侵していく。振り返るとエウロペが佇んでいた。
「後悔も、懺悔もいらない。ただ静かに死という闇に沈んでいけばいい」
 凍りついた地に君臨するエウロペは、自身の魔力をこめて編み上げられた白銀のヴェールも相まって氷の女王さながらだった。かつて信仰を集めた妖狐だったかもしれないが、もはや村人を焼き殺すことを躊躇しない何かになり下がっている、それが現実だ。
 こういう輩に手心を加えるつもりはない。
 頷いて、ミスティは少しずつもがく力が落ちてゆく妖狐の胸に愛用の銃を押しあてた。
 小さな発砲音のあとには、朝露が輝くように儚い光が瞬いて消える。
「――では、迎撃開始といきましょう」

 妖狐の全個体、殲滅。そして村の被害はゼロに抑えられた。村の外にあった物置小屋が木端微塵になったことは免責事項であると言えよう。
 手際よく撹乱と仲間との連携を徹底し、各個撃破をしていった猟兵の勝利だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『幸せを喰らうモノ』

POW   :    破断掌
【掌底】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    鬼神一閃
【斬馬刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    魂食呪体
対象の攻撃を軽減する【喰らってきたモノの怨念を身に纏った状態】に変身しつつ、【呪詛が込められた斬馬刀】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はベール・ヌイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●闇よりも尚
 異形といえば異形。しかし姿はおおむね、人か羅刹を模しているようにも見える。
 落ち武者の如く見えるのは、血にまみれた斬馬刀に問題があるのだろうか。血に染まっているようにも、赤糸威のようにも見える大袖や佩楯のせいだろうか。鬼と言うに相応しい牙や、二本の角のせいかもしれない。
 いずれにせよ、それはいつの間にか村の前に居た。
 猟兵たちが全ての妖狐を討ち滅ぼし、炎のひとひらも見えなくなってから。
『いるな』
 ぎょろりと目を剥きだして猟兵たちを睥睨する。大柄で歪んだ体に見合った胴間声。村とそれの間を隔てるものは、猟兵以外なにもない。
『わかるぞ。幸せなものが、いるな』
 この場にかつて己が救った子供がいることなど、知ってか、知らずか。
 張りつめる空気は一瞬で爆ぜた。
『幸せなものは喰らおう。不幸せなものは残そう。いざ、いざ、いざ!』
 風をまいて斬馬刀を振り上げ、幸せを喰らうモノは猟兵たちへ迫りくる。
ビスマス・テルマール
出てきましたね
貴方が不埒な鬼ですか
……貴方のコレ以上の狼藉は此処で終りです

●POW
真の姿『ビスマス結晶の竜騎士』になり

その上から
トリニティ・チルドナメロウで
防御力重視で発動

冷やし孫茶バリアを纏い
鬼に体当たりと冷凍クロマグロソードによる『2回攻撃』

その後も鬼にまとわり付き
冷凍クロマグロソードと
ディメイション・チョップスティックで『武器受け』

なめろう水餃子の鎧装と
冷やし孫茶バリアで『盾受け』
鬼の攻撃を阻害する様立ち回る
※破断掌には『盾受け』『武器受け』併用

なめろうフォースセイバーとディメイション・チョップスティックを連結させたのと冷凍クロマグロソードで『2回攻撃』
しつつ

※アドリブ掛け合い絡み大歓迎


エウロペ・マリウス
キミのそれは、他人の幸せに嫉妬しているだけに見えるよ
哀れだね

行動 WIZ【全力魔法】【誘導弾】【高速詠唱】【属性攻撃】【礼儀作法】
使用ユーベルコード
【射殺す白銀の魔弾(ホワイト・フライクーゲル)

【全力魔法】と氷の【属性攻撃】で火力を
【高速詠唱】で手数を
【誘導弾】で命中率を共に強化して攻撃するよ

戦闘を始める前に、【礼儀作法】で丁重にお辞儀
キミが幸せなものを喰らうというならば、ボクは幸せなものを守ろう
不幸せなものを残すというならば、ボクは不幸なものに生ある喜びを甘受させよう
いざ、尋常に

キミのそれは、まるで幸せに嫉妬しながらも、それが欲しくて泣いているように聞こえるよ


御剣・刀也
幸せが許せないねぇ
どこぞの怨念か?まぁ、なんであれ、お前は潰す
かつて何だったかは知らねぇが、不幸をばらまかせはしねぇよ

破断掌は間合いに入らないように注意する
鬼神一閃は相手の方がリーチが長いが、重い分取り回しがきかないはずなので空振りを誘って懐に飛び込む
相手が強引に返しの刃を振るってくるなら獅子哮で受け止めて威力に逆らわずそのまま力に乗って距離を取る
魂食呪体を使われたら此方の攻撃は軽減されるが、向こうも命を削るので恐れず突っ込んで攻撃する
「戦場に立った時点で俺は死人。死人が死を恐れるわけがねぇだろ」


クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎

「その右腕、頂かせて貰いましょうか」

以下で狙撃。
・【SPD】
・事前準備:偵察用の飛行ドローンを用いて偵察
・攻撃方法:スナイパーライフル型アームドフォートを用いた狙撃
・狙撃箇所:敵の右腕(斬馬刀を持っている腕
・技能:(UC(狙撃)に以下を利用)スナイパー、視力、暗視、先制攻撃。(ドローン偵察に以下を利用)メカニック。

(UCセリフ)
「CODE:ARTEMIS。月と狂気の女神よ、我に汝の敵を討たせたまえ」


ベール・ヌイ
「鬼退治の時間だ…キミはボクを忘れていても、ボクは忘れない、復讐を始める」
陰白・幽(f00662)と一緒に行動します。 喋り方は普通で、目つきは鬼を睨んでます
再演・鬼殺を使って真の姿になり、【殺気】を込めた【捨て身の一撃】で鬼の首を狩ろうとします。
ダメージに関しては【激痛耐性】とUCの防御力で無理やり耐えようとしますが、幽に護られた際には鬼が幽を追撃しようとするなら【武器受け】でそれを邪魔しようとします。
追撃しないなら一瞬の迷ったあと、幽の心配を優先し、無事が確認取れれば【武器受け】を使って防御をしながら幽と一緒に鬼退治を行います


陰白・幽
ヌイ・ベール(f07989)と一緒に行動する。
ついに鬼のおでましだ……さすが鬼だね、凄い迫力……でも……人の幸せを奪う鬼を、このままにはできない、よ
「さっきはぬいぬい大丈夫って言ってたけど……ボクに、何かしてあげれることは……あるのかな」
ヌイの様子を心配しつつも、戦いに向けて集中していく

戦闘方針は攻撃の当たらない距離から鎖の攻撃で敵の動きを阻害し、ヌイや他の仲間のサポートをする
ヌイの危ないときには【勇気】を出してUCの瞬間移動を使用して敵とヌイの間に割り込んで【かばう】技能を使い攻撃からヌイを守る。かばった後動けるようなら大丈夫なことを伝え、ヌイと一緒に鬼に攻撃する(蹴りなどの近接技)


神城・澪
真の姿を開放、と言っても瞳の色が金に変わるわずかなものですが。

一気に行かせてまいります。
間合いを詰め巫覡載霊の舞で攻撃いたします。
相手の攻撃は【残像】で受けながし、呪詛は【破魔】の力でもって【なぎ払い】ましょう。

幸せであることがなぜいけないのですか?
ひとは大なり小なり幸せを求める生き物。
そうして生き、命つなぐのです。
決して貴方が勝手に摘み取って良い物ではありません。
…かつてのあなたもまた同様に求めて良かったものです。

……戯言が過ぎました。
さぁ他の方に気を取られず、私の命尽きるまで【誘惑】にのってくださいな。


コンラート・シェパード
(※アドリブ、マスタリング歓迎)

お前が何を好み、何を喰らおうが勝手だが、此方にも譲れぬものはあるというもので。
食事の機会はまたにしてくれ。
―――悪いな。

◆戦闘
仲間との連携を意識

HPの低い者(村人がいるなら村人を)を優先的に【かばう】。
攻撃は可能な限り得物で【武器受け】して受け流し、直撃を避ける。

【スナイパー】【だまし討ち】で命中率を補強しつつ、
ユーベルコード「氷竜飛翔」を発動。
その際【暗殺】【串刺し】で威力を出来うる限り高めつつ、【2回攻撃】で発動回数確保に努める。


ミスティ・ミッドナイト
…なるほど。私とは相容れませんね。絶対的に。
その考え方、醜悪です。

あの斬馬刀が厄介そうです。
なるべくハンドガン(装備)で遠距離から攻撃したいところですが、弾数が心許ありません。いざという時のプランも考えておきましょう。
ステップ1:
接近されたのなら近接格闘術(UC)で応戦。人外相手に使ったことはありませんが、人の形を模しているのなら骨や筋肉、腱があるはず。試してみる価値はありそうです。
ステップ2と3:
隠し持っていたタクティカルライト(装備)で【目潰し】、斬馬刀と掌底の回避を狙います。伸び切った腕の上腕骨の隙間にツールナイフ(装備)の【傷口をえぐる】でえぐってしまえば斬馬刀も握れなくなるでしょう。



 鬼の口上を黙って聞いていたエウロペは、距離はあれど向き直ると、丁重にお辞儀をして見せた。これが名乗りであるならば、応じるのがエウロペだ。
「キミが幸せなものを喰らうというならば、ボクは幸せなものを守ろう。不幸せなものを残すというならば、ボクは不幸なものに生ある喜びを甘受させよう。いざ、尋常に」
『勝負!!』
 呼ばわる大音声ばかりか巨躯を前にしようとも、ビスマスが怯むことはなかった。
「出てきましたね、貴方が不埒な鬼ですか……貴方のコレ以上の狼藉は此処で終りです」
 真の姿を解放し、ビスマス結晶の竜騎士へと変ずる。七色の輝きをたたえた彼女を見て、鬼は愉しげな笑い声をあげた。
『これはまた、毀し甲斐のあるものよ』
「Namerou Hearts Chilled! 冷製なめろう武装転送っ!」
 鎧装が音をたててカードを受け入れ、装備を転換する。防御力の強化を選んで冷やし孫茶バリアを纏うと、ビスマスは懐へ飛び込むように体当たりを食らわせた。小柄な身体からは想像し難い力に、鬼がたまらずたたらを踏む。姿勢が戻るより早く、鬼の腹を冷凍クロマグロソードの一閃が切り裂いた。
 その隙を見逃さず、エウロペも高速詠唱で一気に魔法を編み上げる。
「幸運の白い薔薇を持たぬあなたは、ただ魔弾に貫かれるだけの運命」
解き放たれた【射殺す白銀の魔弾】は百にも届かんばかりの氷の魔弾へと変じ、雨の如く降り注ぐ。全身を凍りつかせながら浴びた鬼は、咽喉の奥で笑いをもらした。
『ほう、面白い』
「幸せが許せないねぇ。どこぞの怨念か?まぁ、なんであれ、お前は潰す」
 自身の不屈を映したように輝く獅子吼を構え、真正面から向きあう刀也に鬼が牙を剥くようにして笑ってみせる。
『出来るのか?』
「かつて何だったかは知らねぇが、不幸をばらまかせはしねぇよ」
 呵々と笑う鬼の斬馬刀が空を切り、刀也も獅子吼で迎え討つ。耳障りな音をたてて両者の刃が互いを弾いた一瞬を見据え、踏み込みからの竜槍グリィズルーンの刺突を見舞ったコンラートも眉をしかめた。
「お前が何を好み、何を喰らおうが勝手だが、此方にも譲れぬものはあるというもので。食事の機会はまたにしてくれ」
 斬馬刀の一閃で突き刺さっていたグリィズルーンが跳ねあげられる。
『喰らうことをこそ譲れぬな!』
 暴風のような斬撃が、再び刀也とコンラートを襲う。暴れ回る鬼を眺めて、幽は茫洋と、しかし危機感をこめて呟いた。
「ついに鬼のおでましだ……さすが鬼だね、凄い迫力……でも……人の幸せを奪う鬼を、このままにはできない、よ」
 もとよりベールに傍観するつもりはない。ユーベルコードは【再演・鬼殺】。
「鬼退治の時間だ……キミはボクを忘れていても、ボクは忘れない、復讐を始める」
 復讐を誓っていた。常ならまどろむ心も、この鬼を前にしては眠気も寄らない。その殺気を察知して、鬼は体躯の割に敏捷に地を蹴り、ベールの前へ飛び降りた。
 かつて対峙した両者が見える。
「ボクは鬼を殺す者、すなわち桃から産まれぬ狐姫。桃太郎になれぬ桃姫也」
 ベールが真の姿を顕わす。手には鬼殺しの刀、長い白銀の髪を一つにまとめて武者さながらの出で立ちだ。けれどこの姿でいることは、彼女の寿命を削ること。
『来い。不幸せでないなら喰らうまでだ!』
 防御も何も考えず、鬼殺しの刀を構えてベールが斬りかかり、咆哮する鬼が斬馬刀で迎え撃つ。躊躇なく挑む彼女の背を、幽は見つめるしかなかった。
「……さっきはぬいぬい大丈夫って言ってたけど……ボクに、何かしてあげれることは……あるのかな」
 いつになく冷静さを欠いている彼女が心配だ。鬼の足をとるべく龍爪の鎖を操り、波状攻撃を仕掛けていく。一瞬は足をもつれさせるものの鎖に気づくと、鬼は斬馬刀を振り回して鎖を払い落していった。
「あの斬馬刀が厄介そうです」
 独りごちてミスティはハンドガンの残弾を確認した。あの暴虐を相手どるには弾数が心もとない。距離を詰められたら近接格闘術で応じるしかないだろう。鬼といえど人の形を模しているのなら、骨や筋肉、腱があるはずだ。それらは構造的な弱点たりうる。
「では右腕の破壊を狙った狙撃を行います」
 クネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)が狙撃型のアームドフォートを携えて狙いを定める。偵察用のドローンを放つと鬼が不思議そうに見上げ、回避行動のあいまに追い払おうと斬馬刀で払った。
「CODE:ARTEMIS。月と狂気の女神よ、我に汝の敵を討たせたまえ」
 【ARTEMIS】起動。ドローンとのリンクで正確に位置を割り出した鬼めがけ、AFゲオルギウスが砲撃を食らわせる。
『むおっ! どこだ、一体――』
「悪いな」
 応えは間合いのうちから。踏み込んだコンラートのドラゴンランスが光を帯びる。至近距離からの【氷竜飛翔】は貫通しないまでも、鬼の腹に穴をあけんばかりの一閃を叩きこんだ。よろける鬼へもう一度、エウロペの魔法が空すら凍りつかせるほどに降り注ぐ。
 その轟音の中、ミスティは一気に鬼の懐へ飛び込んだ。
「ステップ1、観察。ステップ2、殺意をすり抜ける。ステップ3、驚異の排除」
 鳩尾へ叩きこまれる打撃の重さに、鬼すら苦鳴をあげた。眩暈に襲われたのか、二、三歩退いて頭を振る。
 瞳の色が緑から赤へと変じ、真の姿を現し舞う澪の身体が神霊体へと変わった。
 携える薙刀が下段から跳ねあがるや、放たれた衝撃波がざっくりと鬼の胸から肩を切り裂く。痛みに顔をしかめるどころか愉しげに笑う鬼へ、澪は問わずにいられなかった。
「幸せであることがなぜいけないのですか? ひとは大なり小なり幸せを求める生き物。そうして生き、命つなぐのです。決して貴方が勝手に摘み取って良い物ではありません」
『黙れ!!』
 咆哮をあげて振り回される鬼の斬馬刀を受け止めて、ベールが一太刀浴びせようとした一瞬。鬼は驚くべき瞬発力で彼女の背後へ回りこんだ。
 斬馬刀がベールの背を割らんとした、その時。一刀を浴びたのは【永眠龍の夢現】で瞬間移動し、身を捻じ込んだ幽だった。
「ゆうゆう!」
 血飛沫にベールが悲鳴をあげる。ぐるり、重い刃を利して回転させ、再び上段から斬りつけようと鬼が振りかぶった斬馬刀を、今度はベールが受け流した。
『ちい!』
 惜しげな鬼が唸った瞬間、血にまみれた幽が鮮やかなハイキックをお返しに食らわせる。意表を突かれた鬼の反応が遅れた一瞬、懐に刀也が踏み込みがらあきの体へ【剣刃一閃】を食らわせた。ざっくりと横一文字に胸を薙ぎ払い、退く鬼を追って刀也が駆ける。
 立ち上がる幽に手を貸し、ベールは心配そうに問いかけた。
「ゆうゆう、怪我は?」
「うん、大丈夫……ボクも、サポート頑張るから……」
 いつものようにのんびりと幽が答える。決して軽い傷ではないが、戦えないほどの傷でもない。龍爪の鎖は少なからず、動きを牽制できているはずだ。

 血にまみれてきた鬼は、低い笑いをもらすと斬馬刀を握ったまま仁王立ちになった。気合でも入れるように腹から声を吐きだす。と、黒々とした靄のようなものが鬼の体から染みでてくるのが見えた。
「【魂食呪体】、だな」
 仲間との間に立ちはだかるコンラートが槍を構え直す。
 【魂食呪体】によって鬼がまとったのは己が喰らってきたものの怨念だ。近寄り難さや圧迫感すら感じる怨念は、鬼が持つ斬馬刀に呪詛までもかける。その切っ先を向け、鬼は刀也に牙をむき出して笑いかけた。
『おまえも物好きだな。死を恐れぬか?』
「戦場に立った時点で俺は死人。死人が死を恐れるわけがねぇだろ」
 不敵な笑みで応えた刀也が斬りかかる。耳障りな金属音をたてて互いの刃と刃が噛みあい、斬撃の応酬が始まった。
 空を薙ぐ刃、相手の肉を裂く刃先。間合いへ引き込まれた己めがけ、左から掌底が繰りだされることに刀也は気づいた。空を打たせてバックステップ。
「天武古砕流に小細工はねぇ。相手が避けようとするならそれより早く斬り捨てる。それだけだ」
『む?!』
 いつの間にか間合いに入りこんでいた澪の薙刀が一閃し、深々と斬馬刀を持つ腕に傷を刻みつける。にたりと唇の端を吊り上げ、鬼が笑った。両端からこぼれる乱杭歯、嘲るような表情を目の当たりにしながらつけ加える。
「……幸せは。かつてのあなたもまた同様に求めて良かったものです」
『我を憐れむか』
 言下に否定した鬼は、澪めがけて両断せんばかりの上段からの斬りおろしを見舞った。紙一重で滑りこんだコンラートがなんとか一撃を受け止める。とはいえグリィズルーンは軋み、支えるコンラートの腕もまた痺れに襲われた。
 かつて人であったなら、という澪の考えは、そう外れたものではなかったらしい。激昂したのがその証拠だ。
「……戯言が過ぎました」
 どうあれこの鬼が人に戻れるわけではない。ここで命尽きる運命も変わらない。
「さぁ他の方に気を取られず、私の命尽きるまで誘惑にのってくださいな」
 妖狐なればこその誘惑が鬼の頭を掻き乱す。あがる叫びは怨念に満ちていて。
 まるで春の前に降る氷雨のような魔弾を撃ち放ったエウロペが、そっと告げた。
「キミのそれは、まるで幸せに嫉妬しながらも、それが欲しくて泣いているように聞こえるよ」
 もはや鬼がまともに立っていないのは、誰が見ても明らかだった。狂気に蝕まれたような咆哮をあげて、なお斬馬刀を振り回す。
『喰らうのだ。他者の上に坐して得た幸せを喰らい尽くしてくれる!』
「……なるほど。私とは相容れませんね。絶対的に」
 ミスティの呟きを鬼が聞いたのは、目が強い光で焼かれた時だった。咄嗟に放った一閃は空振り、伸びきった右腕の上腕骨の隙間にツールナイフが突き刺さる。
「その考え方、醜悪です」
 異形といえど腕を動かすのは骨と肉、無傷ならまだしも幾度となく猟兵の攻撃を受けた肉体が抵しうるはずもない。ばつんと音をたてて筋が断ち切られ、斬馬刀が手から滑り落ちる。
「その右腕、頂かせて貰いましょうか」
 だらりと下がった腕を狙っていては外しようもない。クネウスのAFゲオルギウスが発射した弾は狙い過たず、腱から骨を破壊して肘から下を吹き飛ばした。これでもはや鬼が斬馬刀を握ることはありえない。
『まだだ、まだ我は喰らうのだ!』
 叫びに色濃く浮く狂気に眉をひそめ、ビスマスは肩から体当たりを仕掛けてくる鬼を冷やし孫茶バリアとなめろう水餃子の鎧装でブロックした。相殺しきれない勢いは自身も回転しながら逃がし、上体が泳いだ鬼の腿へ冷凍クロマグロソードの斬撃を見舞う。
 遂に動きを止めた鬼の前に、ベールが立った。
『……ふは。覚えておるとも。忘れようはずもない』
 乾いた笑いは邪な愉悦に酔っている。
『いずれおまえが満ちた時、喰らおうと思っていた。だから見逃したのだ。おまえは』
 ベールを見下ろし、自身の血にまみれた鬼は腹から響くような声で笑った。
『……おまえは、不幸せだったからな』
 ベールは刀を構えた。
 一閃。袈裟がけの一閃は鬼の肩から脇へと抜ける。一拍の間をおいて噴き上がった血が雨のごとくベールへ降りかかった。
 ずしんと音をたてて鬼が膝をつき、左手をつき、もう一度地響きを立てて倒れ伏す。そしてそれきり動くことはなかった。
 【再演・鬼殺】を解いたベールは、半ば茫然としてその死を見届けた。
 いつか遂げなくてはならなかった復讐の終わり。
 為した誇りもあったけれど――鬼に抱く想いは決して殺意と怒りだけではなかったのだと、今ここに至って思い知る。
「……ぬいぬい」
 言葉もなく立ち尽くしていたベールに、幽がそっと寄り添う。穏やかな彼の声でやっと憑き物が落ちたように、ベールは頷いた。

 かくて、村を死で舐め尽くす暴威は朽ちた。
 猟兵たちによって首のない妖狐たちの群れと首魁である鬼は討ち取られ、危機は去ったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『今宵は夜宴の時なり』

POW   :    豪快に一気食いや一気飲みに挑戦する。もしくは美味しいお酒や食べ物に舌鼓を打つなど

SPD   :    素早く一気食いや一気飲みに挑戦する。もしくは皆の前で芸を披露するなど

WIZ   :    賢く一気食いや一気飲みに挑戦する。もしくは月や星を眺めて風流に浸るなど

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●生ける者たちの宴
 猟兵たちによって村が守られたことを知ると、村人はできる限りのもてなしで感謝を表したいと申し出た。猟兵たちが少なからぬ傷を負っていることはもちろんだが、村の外の惨状を見ればいかに激しい戦いだったかは思い知る。
 村長だという老人が音頭をとり、村の蔵が開かれた。

 宴の準備が始まる。村には大きな建物が蔵ぐらいしかないので、村の広場に茣蓙と敷物を敷いて酒宴の席を設え、料理やら酒の準備やらで大人たちが駆けずり回った。男たちはここぞとばかり酒の飲み比べをしたがるだろうし、女たちは腕によりをかけて料理を作ってくれている。
 子供たちは魑魅魍魎と戦ったという猟兵たちの話を聞きたそうにうずうずしていて、今日は少しの夜更かしも許されそうだった。
 ひと時彼らと宴を囲み、寛いで時を過ごしていけそうだ。
神城・澪
蔵って備蓄とかあるものだと思ってるから、ちょっと下手に食べすぎたら怖いなと思いつつ、素直に歓待を受けよう。
でもこの時ほど自分が20歳越えてないのが悔やまれる事はないね。
月見酒とかすごく良さそうじゃない。
ほんとなんでまだ19なのか…。
成人した暁には…(拳ぐぐっ

お茶をお供にいくつか料理をつまもう。
美味しいのがあったら作り方聞いておこうっと。
ふふ、これでも女子力というか家庭的というかそういうのはあるんだからね。
レパートリー増やす事はいいことだもんね。

…所帯じみてるとか言われた事思い出したわぁ…(ぐす


他の方との絡みOKです。


御剣・刀也
POW行動

おお、酒か。
良いねぇ。一勝負終えた後は一杯やりたくなるもんだ
いや、ここは一杯といわず瓶一本行こうか。ただ酒だしな

うわばみなので豪快に酒を飲む。飲んでもあんまり酔わない
酒をかっくらい料理を食べて宴を満喫する。
「ふーん。なぁ、これなんて料理なんだ?よかったら作り方教えてくれよ。」
と、自分が見たことない料理があったら作り方などを教わる
戦闘時の苛烈な顔は鳴りを潜めて親しみやすそうな兄貴分のような感じで祭りを楽しむ


エウロペ・マリウス
そうだね……。
ボクは月や星を眺めて風流に浸るとしようかな。

行動 WIZ

まずは、他の猟兵達の傷を癒やすことから始めようか
せっかくの宴も、傷が痛む状態では楽しめないだろうしね
それに、村人達からすれば、ちょっとした芸に見えるかも知れないだろうからね
使用するユーベルコードは、【メメント・モリ】
その聖句にもあるように、皆、いつかは訪れる死を忘れてはいけないよ
けれども、それは誰しもに訪れる、逃れられない死のこと
今回のような理不尽なものではないよ
それまで、皆が精一杯楽しんで生を紡げるように、ボク達猟兵が頑張るとするよ


ベール・ヌイ
陰白・幽と行動します
宴の最中は刀を抱えて幽の隣でぼんやりとしています。
宴が終わりに近づけば幽に近くを歩かないかと誘います。
ある程度宴から離れたところで今日のことについて謝罪を「ボクを護ってくれてありがとう…。ボクの代わりに傷つけて、ごめんなさい」
そう言って頭を下げて
「今日、来てくれて、嬉しかった。ゆうゆうがいなかったらたぶん、ボクは復讐を果たせなかった」
「ゆうゆうが居てくれて、ボクは心強かった」
「改めて、お礼したんだけどいいかな?」
そういって問いかけて、頷いて貰えれば、近づいて幽のほっぺにキスをします
「初めて、こういうのしたけど、結構恥ずかしいね」顔を紅くしながら微笑みます


陰白・幽
ぬいぬいが無事に鬼との戦いを終えれたことに安堵しています。宴会の時もヌイと一緒に過ごします。
傷の治療をしたあと、出されたご馳走を少し貰って、宴会場の隅っこの辺に座って皆を眺めながらご馳走を食べます。「村の人も……ぬいぬいも無事でよかったよ~」

ヌイに散歩に誘われたら一緒に散歩するよ。
「ボクはいつもぬいぬいに貰ってばっかりだから……少しでもお返しが出来たなら、よかった……かな」
お礼をしてもよいかと聞かれ
「……いつもなら、ボクの方がお礼を言わなくちゃって思うんだけど…………うん、大丈夫だよ~」
ヌイにお礼をされた後、幽は顔を赤くして照れる。自身でもよく分からないけど、暖かい気持ちでいっぱいになります


コンラート・シェパード
(アドリブ歓迎)
【WIZ】
わざわざもてなしを有難うの礼と、いただきますの挨拶をしてから舌鼓を打つ。
食事も酒も味わって食べつつ、周りへの気遣いも忘れずに。
話し相手も喜んで。

楽しい空気を乱さぬよう密かに席を立ち酔いざましに外へ。

――テスにも何かお土産に持って帰れたらなあ。
予知、いつもお疲れ様。有難う。
お菓子とか好きなら、今度何か差し入れでも持参しようか、なんて考えつつ
竜槍の子竜と共に夜空を見上げながらふたりぼっちでのんびりと。


ミスティ・ミッドナイト
異世界の酒、料理…いいですね。
食文化からその国の特色を感じ取れるといいますし。
今後の猟兵活動で、現地の方々と連携する場合もあるかもしれません。
ここは異文化飲みニケーションということでひとつ。
【礼儀作法】で皆様とご一緒させて頂きますね。

…え? 飲みくらべ? …いいでしょう。
私とてバーテンダーの端くれ。それなりにアルコールの知識と耐性があると自負しております。――勝負…!

とはいえ、さすがに明日も仕事がありますし。
【見切り】で支障がでないところで止めておきましょうか。


…一人で飲むのもいいですが、賑やかな場所で頂くのも良いですね。



 料理や酒が出揃うまでの間寛いでくれと言われて酒席へ案内された一行だったが、まず幽とエウロペが仲間の傷の治療を始めた。怪我をしたままでは宴も楽しめないだろうという想いもあったけれど、実はエウロペは治療も村人たちを楽しませられるかもしれないと思ったから、という理由もあったりする。
 村人たちが見守る中、二人で仲間の傷を癒していくとどよめきが上がった。
「見たか、傷が塞がったぞ!」
「上様のお墨付きを持ってる人らってのはやっぱすげえな!」
「ねえ、今唱えてたのはどういう意味?」
 無邪気に喜ぶ村人たちのなかで、首を傾げて問いかけてきた少女にエウロペは説明をしてやった。いつかは訪れる死を忘れてはいけないよ、と。それには村人たちもしんと静まりかえったものだが。
「けれども、それは誰しもに訪れる、逃れられない死のこと。今回のような理不尽なものではないよ」
 続けて言うと、皆が安堵してぱっと明るい顔になった。魑魅魍魎や妖怪の出現はこんな田舎の村ですら怯えさせていて、だからこそ猟兵たちは頼りにされている。
「それまで、皆が精一杯楽しんで生を紡げるように、ボク達猟兵が頑張るとするよ」
「守ってくれるってことね? やったあ!」
 エウロペの首にかじりついて少女が嬉しそうな声をあげた。そこへ酒樽を抱えた村の男たちがぞろぞろとやってくる。樽が結構な数なので、澪はちょっと心配な気持ちになってきていた。勢い余って食べ過ぎて備蓄まで喰いこんだら怖いなとか思ってしまう。けれど折角の歓待だし、と気を取り直した。
「料理はおっつけ来るから、先に酒だけで始めちまうかあ」
 相談する男たちの声で振り返った刀也が破顔する。
「おお、酒か。良いねぇ。一勝負終えた後は一杯やりたくなるもんだ」
「いいねえいける口だね兄さん。よしよし飲もう!」
 さっそく男たちが樽や瓶の封を開けた。度数がきつめの清酒や甘めのどぶろくなどが並ぶのを見て刀也は更に上機嫌になった。
「いや、ここは一杯といわず瓶一本行こうか。ただ酒だしな」
「そうとも、ぱーっといこうじゃないか」
 村人も相当な飲ん兵衛と見えて大盛り上がりだが、一方で澪はだんだん悲しい顔になっていった。なにしろ彼女は未成年だ。空にかかる月を肴に月見酒、とか風流な酒の楽しみ方に憧れはするが、ここはぐっと我慢、なのだ。
「ほんとなんでまだ19なのか……成人した暁には……」
「そうか。気を落とさないようにな」
 悲しみに拳をぎゅーする澪を慰めるコンラートの隣で、ミスティは近づいてくる美味しそうな料理の匂いもキャッチしていた。
「異世界の酒、料理……いいですね。食文化からその国の特色を感じ取れるといいますし」
 今後の猟兵活動で、現地の方々と連携する場合もあるかもしれない。そう、ここで美味しく食べて飲むことは両者の将来のためなのだ。
「ここは異文化飲みニケーションということでひとつ、ご一緒させて頂きますね」
「遠慮なんかいらないよ、村の恩人なんだからね!」
 豪快な笑い声をあげたのは大きな鉢で料理を運んできた村長の娘だった。次々と夕飯のおかずや酒のアテが運ばれてくる。
「いただきます」
 几帳面に手を合わせて挨拶をしてから、コンラートは取り分けられた料理を受け取った。基本的に農村らしい素朴な料理が並んでいる。中でも大事な客が来た時に作るという、鶏肉とたっぷりの野菜を入れた鶏ガラ出汁の鍋が刀也は気になった。根菜が多いのは土地柄当然だが、鶏の出汁が実にいい。
「ふーん。なぁ、これなんて料理なんだ? よかったら作り方教えてくれよ」
「あっ、それ私も聞きたい!」
 さっき一杯貰って気になっていた澪がはいはいと手をあげた。料理自慢だという村長の娘に不思議そうな顔をされる。
「おや、巫女さんも料理をなさるんですか?」
「ふふ、これでも女子力というか家庭的というか、そういうのはあるんだからね」
「そりゃすごい、巫女さんやめても料理上手な美人ときたかね」
 村一番の料理上手に褒められれば悪い気はしない。若いうちはあまり作らないような、里芋の煮物なども本当に美味しく、お茶を片手に食が進んだ。レパートリーが増えるのもいいことだもんね、と呟いたところで、ちょっとブルーな事を思い出してしまう。
「……所帯じみてるとか言われた事思い出したわぁ……」
「気にすることはない。家庭的なのはいいことだ」
 せつない顔で意気消沈する澪をコンラートが微笑んでフォローした。ついでに力づけるように鶏の炭火焼も手渡す。そして宴会場の隅へ目をやった。
 村人たちと猟兵の喧騒の中、ベールは刀を抱えてぼんやりと座っていた。その様子をみれば何かあったのだろうと村人たちも察しはつき、彼女をそっとしている。
 大盤振る舞いの料理を二人分ずつ貰っては、幽が戻って彼女の傍にずっとついていた。
「村の人も……ぬいぬいも無事でよかったよ~」
 時々料理を口に運びながら幽はしみじみと呟く。ベールが無事に鬼との戦いを終えることができて、心の底から安堵していた。ひどい怪我もなく因縁を断てて、戦いで誰ひとり犠牲が出ずに済んだたことが一番だから。

 
 杯を重ねていると横顔にやたら熱い視線を感じて、刀也やコンラートはそちらを向いた。村の子供たちが目をきらきらさせて二人を眺めている。
「おお、どうした?」
 刀也が笑って手招きをすると、子供たちがわっと集まった。
「なあなあ、おばけってどんなだったの?」
「おいらも退治できるようになる?」
「そうだな、退治は俺たちに任せとけ」
 戦っている時の苛烈なさまはすっかり鳴りをひそめて、刀也は顔なじみのような親しみやすさで笑ってみせた。まとわりつく子供たちにコンラートも笑いかける。
「危ないことはしないようにな。話が聞きたいのか?」
「うん、聞きたい!」
 子供たちから歓声があがる。なにぶんここにいる猟兵で男性は大柄な二人と幽だが、幽は子供たちと同じぐらいの年頃だ。武勇伝なら二人に聞きたくもなるだろう。それにどうやら、戦いの話を聞きたいのは子供だけではないらしい。大人たちも興味津々なので、結局語って聞かせることになった。
 刀也が杯を重ねるペースは早く、瓶も樽も次々空になっていく。
「なんだよ、降参か?」
 豪快に飲んでいるはずだがあまり酔った様子がない。食欲も一向に落ちず、よく食べてよく飲む彼に付き合った村の男たちは見事に潰れていった。
「と、とんだ……うわばみだ……おえ」
 仲間がばたばたと倒れていくが、村人もただで引っ込むことはできない。まだ勝負になりそうな相手を見つけて身を乗り出した。ミスティである。
「姉ちゃんもいい呑みっぷりだな。俺と飲み比べしようぜ!」
「飲みくらべ? ……いいでしょう」
 ひと呼吸と置かずの応えに、大酒飲みを自任する男たちが喜びの声をあげた。女に負けられないという気概だろうが、あいにくミスティとてバーテンダーの端くれ。酒に関してはそれなりに知識と耐性があるという自負もある。
「――勝負……!」
 かくて始まった飲み比べは、半刻もすると村の男3人を昏倒させて4人目に「降参」を言わせたミスティに軍配が上がった。
「ま、まだ終わったわけじゃねえ、ぞ……えっぷ」
「さすがに明日も仕事がありますし。この辺りで終わりとしましょう」
「……めっちゃ強……っう」
 明日に支障が出ない所で見切りができるのも、バーテンダーのスキルというもの。それにしても潰れた村人たちも周りも本当に楽しそうで、思わず呟きが漏れる。
「……一人で飲むのもいいですが、賑やかな場所で頂くのも良いですね」
 見ていた刀也がからからと笑って、ミスティに掲げた杯を干した。
 ひとしきり飲んで食べたコンラートは、宴の空気を乱さぬようにそっと席を立った。酒盛りの輪の端では、エウロペが静かに空を見上げている。コンラートが歩み寄ると、彼女は美しい灰色の瞳で夜空を見上げたまま呟いた。
「……いい月だね」
 季節柄、寒さは当然だが、そのおかげで星も月も凛として見える。彼女も風流を楽しんでいるのだろう。
 村のはずれへ向かうと冷たい夜気が酔いを醒ましてくれて、コンラートは息をついた。
(「テスにも何かお土産に持って帰れたらなあ。いつもお疲れ様。有難う――」)
 お菓子とか好きなら、今度何か差し入れでも持参しようか。呟きながら、いつも一緒のふわふわの子竜と寄り添って、共に満天の星を見上げる。

 村人のなかに酔い潰れて眠る人が増えて、宴も終わりに近づきつつある頃。仲間たちと村人の交流をぼんやりと眺め続けていたベールが幽に囁いた。
「ゆうゆう、ちょっと……二人で歩こうよ」
 こくりと頷いた幽が、彼女に続いて宴の席をそっと出る。
 喧騒を離れて村はずれを歩くと、ひんやりとした夜気と静けさが二人を包んだ。他に大した明りのない村では、月の光は余計に明るく見える。
 連れ立って少し歩いたベールは、おずおずと口を開いた。
「ボクを護ってくれてありがとう……。ボクの代わりに傷つけて、ごめんなさい」
 突然頭を下げられて幽がもの問いたげに彼の隣で足を止めて、目を伏せながら小さな声でつづけた。
「今日、来てくれて、嬉しかった。ゆうゆうがいなかったらたぶん、ボクは復讐を果たせなかった」
 あの鬼は祖父母の仇だった。けれど、それだけの単なる敵ではなかったから。
「ゆうゆうが居てくれて、ボクは心強かった」
 噛みしめるようなベールの穏やかな表情を見れば、ついてきた意味があったのだと幽にもよくわかった。
「ボクはいつもぬいぬいに貰ってばっかりだから……少しでもお返しが出来たなら、よかった……かな」
 いつものようにおっとりと語る彼への想いがいっぱいになって。
「改めて、お礼したんだけどいいかな?」
「……いつもなら、ボクの方がお礼を言わなくちゃって思うんだけど……うん、大丈夫だよ~」
 幽が頷きを返す。ベールは側に近寄ると、彼の頬にそっとキスをした。目を瞠っている彼と視線が交わって、二人の頬が紅く染まる。
「初めて、こういうのしたけど、結構恥ずかしいね」
 恥ずかしそうに微笑むベールに、照れた顔の幽が笑みを返した。この気持ちを何て言ったらいいかよく分からないけれど――なんだか、とても暖かい気持ちでいっぱいで。
 顔を見合わせて、二人は微笑みあった。

 輝く月と満天の星は、街の明かりに慣れた目には穏やかに、冴え冴えと見える。
 ささやかな宴は夜半まで続き、村人と猟兵たちは大いに楽しんで眠りに落ちた。かくて怪異は討ち取られ、村は元通りの平穏を取り戻したのである。

 村の男のほとんどがどえらい二日酔いで畑仕事どころでなかったのは、また別の話。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月28日
宿敵 『幸せを喰らうモノ』 を撃破!


挿絵イラスト