【Q】波濤に群がるは海猫か、木枯らしか
サムライエンパイアに姿を現したレディ・オーシャン撃破により、いよいよもって外海への興味は尽きぬものであった。
加えて、エンパイアウォーに於いて接収した「鉄甲船」の修復も完了したその矢先、船の舳先からは不気味な光が遥か海の果てを指示したという。
不気味な「紫の光」は全ての鉄甲船の艦首から、おそらくは同じ方向を指し示している。
その先にあるのが、噂のグリードオーシャンというものなのか……。
世界危機の戦争を経て、世直しの戦いに明け暮れていた猟兵たちのもとへ、ふたたび冒険の予兆をもたらす気配が、潮風を伴ってやって来る。
「お集まりいただき、感謝します。今回の依頼は、長らく謎に包まれていた外海へ乗り出すものになります。何が起こるのか、今はほんの少ししかわかりませんが……」
グリモアベースはその一角。刹羅沢サクラは、自分の出身でもあるサムライエンパイアの依頼でありながら、言葉を濁す。
そこに住まう者ならば、長らく世界の謎として居座っていたものに一石を投じる内容だけに、未知の世界でもある船旅というのは、どう説明したものか迷っているようであった。
海の向こうには何もない。それはサムライエンパイアの者としては常識であったはずだ。
しかし、いままで誰も見つけることができなかっただけという事も……。
ひとまずサクラは考えを整理しつつ、依頼の話を始める。
「今回、皆さんには鉄甲船に乗り込み、その艦首の指し示す光の先を目指してほしいのです。しかしながら、それは容易い航海とはならないようです」
サクラの予見した内容に依れば、外洋に出ようとすればすぐさま天候が悪くなり、凄まじい大時化に見舞われるようである。
肌に痛いほど打ち付ける雨と、うねるような大波。凄まじい暴風が船体を襲い、鉄甲船でもなければあっという間に海の藻屑と消える様な悪天候である。
この海洋災害をなんとかして凌ぎつつ、紫の光を辿って船を進めても、今度はその光が牙をむき始める。
「あの光は、どうやらオブリビオンを呼ぶようです。海猫のような声が聞こえ始めたら、その先触れでしょう。
一体一体は大した能力を持たぬようですが、嵐の最中で戦うことになりますので厳しい戦いが予想されます。
しかし、皆さんならきっと大丈夫です。逆にその状況を利用して戦いを有利に進める手立てもあるかもしれません」
それを抜ければ、船はやがて光の導く先へと辿り着く。
嵐の中に見たのは、艦首から伸びる紫色の光と同じ洋上に浮かぶ「巨大な紫色の光球」であるという。
しかし、その光もまた猟兵たちに牙を剥く。
「嵐の中で、そこから現れるのは、それまでよりも強力な相手となることでしょう。
木枯らしと共に現れるかの者の正体は判然としませんが、皆さんで力を合わせれば倒せぬ相手ではないはずです。ご武運を祈るほかありません」
目的の地へは、それらオブリビオンの襲撃を乗り越えねばならないようである。
洋上の災害、そしてオブリビオンへの対応、これらがカギとなりそうだ。
そして依頼の説明を一通り終えると、サクラは居並ぶ猟兵たちを見回す。
「まことしやかに囁かれるグリードオーシャン。その所在は、皆さんの冒険にかかっているといっても過言ではないでしょう。ひとまずは……船酔いに注意、ですかね」
小首をかしげつつ、サクラは今までと同じようにぺこりと頭を下げるのだった。
みろりじ
どうもこんばんは、流浪の文章書き、みろりじと申します。
もう生放送の予定が立っているというのに、今からQだって?
できらぁ!
必要数とか、そういうのは考えず、やりたいだけのような雰囲気ですが、いつもこんな感じなので、のんびりやっていきましょう。
さてさて、船旅につきものの大時化でございます。このひどい状況に対応するようなプレイング、もしくは逆に利用してしまうようなプレイングを頂きますと、戦いが有利になるかもしれません。
みなさんと一緒に楽しいリプレイを作ってまいりましょう。
第1章 冒険
『脅威の海洋災害』
|
POW : 肉体の力で体力任せに海洋災害に立ち向かいます
SPD : 素早い行動力や、操船技術で海洋災害に立ち向かいます
WIZ : 広範な知識や、素晴らしいアイデアなどで海洋災害に立ち向かいます
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ルナリリス・シュヴァリエ
ここはサムライエンパイア
あの高名な正義のちりめん問屋様と、ばったり遭遇したりできないでしょうか。
そんな私も世直し道中一人旅
ゆえにこの身が役に立つというのなら、協力は惜しみません!
えっ人柱になる……のですか?
わかりました、私の命でみんなが救われるというなら……やりましょう。
まさか、このような形で神の御許に召されようとは……。
悲壮な覚悟でロープでグルグル巻きにされた私は#祈りと共に荒波にダイブ。
(だがUC#超絶美少女が発動して濡れ透け姿で生還、生け贄には向いていなかったようで)
もしや清らかな乙女ではなかっただか……って、今言ったのは誰ですか?!
と、そんな遣り取りで皆の緊張くらいは解せたと信じたい。
陽の高い時間、陽光に照らされ黒光りする鉄甲船は、その船体をゆるりと揺らしながら港を出た。
多くの船大工や冶金職人の手によって蘇った鋼鉄の装甲を持つ船は、押し寄せる波をものともせずに掻き分け、まるで導かれるかの如く紫の光の指し示す方角へと進んでいく。
爽やかな潮風と緩やかな揺れ、あちこち忙しなく甲板を動き回る船乗り達に混じり、ルナリリス・シュヴァリエ(変態殺しの聖剣使い・f25397)はまっすぐと光の指し示す方向へ目を向けていた。
「ここはサムライエンパイア。かの高名な正義のちりめん問屋様と、ばったり遭遇したりできないでしょうか」
正直言って、そんなところに突っ立っていられると結構邪魔なのだが、
陽光を浴びてきらきらと光を含む長い金髪が潮風に嬲られ、具足姿で仁王立ちする姿は実に絵になり、この先に起こりうる障害に対抗するために乗船した猟兵という立場もあってか、彼女に文句を言う者は一人もいない。
それどころか、見目に麗しい異邦の姿をしているルナリリスの立ち姿は、荒くれぞろいの船乗り達にとって、若干目の毒になりうるほどですらあった。
異邦の船には、水瓶を抱えた乙女などの意匠を添える文化が見られることについて疑問視する職人もいたものだが、それがわからぬではない事を再認識するものである。
ひょっとしたら戦う以上の何か……そう、彼女はこの船旅を安全に進める幸運の女神足り得るのやも……。
美人の戦着は民を鼓舞するというが、船乗りたちはすっかり乗り気になっている。
いい旅になりそうだ。
荒くれたちの心に穏やかなるものが宿っていたのは、ほんの、太陽が曇天に覆われるまでの半時程度だった。
ぽつぽつと船体を雨が穿ち始めたと思った矢先には、もう風雨と共に海原がうねりを伴い始めていた。
「雲行きが怪しくなってきやがった……おい、嬢ちゃん。こりゃあでかい時化がくる」
「何か手伝えることはありませんか? この身が役に立つというのなら、協力は惜しみません!」
「うーん、つったってなぁ……」
やる気に満ち溢れ、きらきらとした目を向けるルナリリスの剣幕に、船乗りは気圧されてしまうが、次の瞬間、大きな波が船体を大きく揺るがした。
風雨に滑りやすくなった船体が大きく傾いて、熟練の船乗りすら体勢を崩す中、戦士として鍛えられた体幹を持つルナリリスは踏ん張るのみでそれに耐える。
「うー、いてて……こりゃ海神さまのお怒りでもかったかねぇ……」
「海神様ですか……?」
「そういう言い伝えの二つ三つくらいは、どこにでもあらぁな。昔ァ、人柱を捧げたりって話も聞いたが……」
「え、人柱……ですか?」
「いやしかし、そんなもんは眉唾ってやつで……っておい、あんた、何処に行くんだ!? あぶねぇぜ!」
船体につかまりながら腰をさする船乗りの言葉を受けてルナリリスは「わかりました」と決意に口を引き結んで、その身に纏った装備をイジェクト、収納して近くにあった停泊用のロープを手に取る。
「私の命でみんなが救われるというなら……やりましょう」
「おおおおい、まてまてまて! 何をするってんだ!?」
なんかもう、自分の世界に入り込んでしまい、自己犠牲精神に陶酔するようなまっすぐな眼差しで目指すは、荒れ狂う海原。
ただならぬ雰囲気のルナリリスの奇行に、さしもの荒くれたちも声を荒げるものの、熟練の船乗りですらまともに動けない今、彼女を止められるものは居なかった。
「まさか、このような形で神の御許に召されようとは……」
全身ロープでグルグル巻きに……どうやって自分で巻いたのかわからないが、とにかく自分を縛り上げたルナリリスは、悲壮な決意と共に荒波へと身を投げた。
「うわぁー! なにやってんだぁー!」
こぼれた涙か、潮の味か、怒号のような悲鳴のような船乗りの言葉はすぐに風雨と水泡に消える。
ここサムライエンパイアにどのような神がおわすのか存じないが、それでもルナリリスはひたむきに、激動の波濤の中、この嵐に身を捧げる代わり、旅の安寧を神に希うのであった。
哀れ、人柱として身を捧げた一人の少女の願いは水泡に……
帰するという訳でもなく、彼女の持つ強い生存本能はその心根の清らかさや信念すらも捻じ曲げて、ユーベルコード【超絶美少女】を発動させてしまう。
海面が光を放ち、まるで吐き出されるかのようにして、凄まじい生存本能を発揮したルナリリスは、本能的な身体能力で自らの拘束を引きちぎり鍛え上げられた背筋のみの筋力で甲板に舞い戻ってきた。
それは本人すら無意識のうちの行動であった。
「あ、あっれぇー!?」
驚きうろたえたのは、船乗りだけでなくルナリリス本人もまた同じであった。
それはそうだろう。思い込みが強いとはいえ、本人はあくまでも本気で人柱になるつもりで海に飛び込んだのだ。
ただ、運命と本能がそれを許さなかった。
決して、大自然が清らかな乙女でないと判定したわけではない。たぶん。
「……って、今言ったのは誰ですか?!」
誰も言っていませんよ。
そうして海に飛び込んだせいか全身ずぶぬれで、ちょっとあられもない恰好になりつつあったルナリリスだが、そんな猟兵の不死身っぷりには、船乗りたちも勇気づけられるものがあったようである。
「よーし、野郎ども、気合を入れなおすぞ! 大丈夫だ、俺達には嬢ちゃんがついててくれる! 落っこちても、拾ってきてもらえるはずだ。みんな見てたろ!?」
「おお! 死ぬ気でやるぜ!」
奇行は奇行であったが、ルナリリスの献身はそれでも船乗りたちの心持をいくらか安心させることにはなったようである。
大成功
🔵🔵🔵
リューイン・ランサード
大海原に乗り出し、未知の世界を目指す。
海洋冒険譚にの王道ですね。
僕もそれに参加できて幸せ、な筈でした・・・。
(大時化の船酔いで死んだようになりながら呟く。)
アルダワ戦争で様々な形態の大魔王と戦い、トラウマを乗り越えて新しい自分になれると思っていましたが、戦争より今の方が苦しいです<泣>。
等と泣き言をこぼし、吐き気に耐えつつも、UCで左手をブラックホールに換えて、雨と風を吸い込んで船が沈没しない様がんばる。
波まではどうしようもなく、船酔いは解消されないので、船縁を掴んで死にそうな表情で耐えるリューインでありました。
時々、平気な顔で行動する他の猟兵さんを羨望と少しばかりの妬ましさを籠めて見つめる。
ごうごうと轟くような暴風雨が黒塗りの鉄甲船を打つ。
船出した当初とはまるで違う海上の環境の変動に、船に乗り込んだ者たちは一喜一憂、騒然と対応に追われる。
穏やかな波の間であっても、船に揺られる環境というのは慣れない者にはそこそこ過酷なものであった。
まして、大時化に見舞われた現状ともすれば、足場も三半規管も安定しない状況は身も心も荒天状態と言える。
リューイン・ランサード(竜の雛・f13950)もまた、未知の海を夢見て船に乗り込んだ猟兵の一人であったが、アルダワ育ちの彼にとって船旅は過酷なものとなっていた。
「大海原に乗り出し、未知の世界を目指す。
海洋冒険譚の王道ですね。
僕もそれに参加できて幸せ、な筈でした……」
ヘビィ級ボクサーのパンチを喰らってロープにくぎ付けにされたような、さながらパンチドランカーの如く船のへりに体を押し付けるようにして揺れに耐えながら、リューインは青い顔でぶつぶつと呟く。
文章でのみ知っている広大な海を開拓する冒険譚。想像の翼を広げる限りに夢見たものは、多くの苦難を当然のように乗り越えてゆくサクセスストーリーであることが、実感を伴って理解できた気がした。
物語と実際に体験するというのは違う。
想像が過ぎて体に変動をきたすほどの人物もいるにはいるが、経験に勝るものはなかなかないのかもしれない。
アルダワの戦争を経て、大魔王とも対峙して自身のトラウマを克服したとも思っていたが、それは思い上がりだったのだろうか?
戦いに身を置いていれば、それを乗り越えるために仕方がないと覚悟を決めることはできる。
それは前向きな逃避でもあるかもしれないが……自然災害ばかりは、実力で圧倒するというのはなかなかに厳しい。
すくなくとも倒せば終わるという明確な目標の無い現状の方が、リューインにとっては辛い現実であった。
「おーい、坊主。顔色が悪いな。船ん中に入っとくか?」
「い、いえ、お構いなく……僕も、何か……手伝います」
心配になって話しかけてくる船乗りのおじさんの提案をやんわりと断り、リューインは震える足腰に気合を入れなおす。
このままでは船が転覆してしまいかねない。
魔道に通じる端くれとしては、それを活かした方法で何かしらの活路を見出すのが猟兵の仕事と言うものだろう。
情けないところばかり見せるのも、恰好が付かない。
何かの書物で読んだ気がする。
船の揺れにあまり意識を向け過ぎてはいけない。気を紛らわせるために、友人や恋人と会話を絶やさないことで三半規管を誤魔化すというのは、なかなか馬鹿にできない効果があるらしい。
……さすがに、こんな荒天に恋人を連れてくるというのは、なんだか悪い気がするなぁ。
しかし、思いを馳せるというだけでも、少しは前向きになっただろうか。気を重くしないだけでも、いくらか気が紛れる。
「事、此処に至ったならば、とりあえず吸い込んで解決しましょう……!」
元気な姿で帰らなくては。
船べりを支えに立ち上がり、リューインは掲げた左手をユーベルコードによって、高重力の塊へと変換させる。
魔術的に置換した特殊なマイクロブラックホールを生成する【ブラックホールクリエイション】によって変貌した左腕は、
荒れ狂う暴風雨を吹き荒れる傍から吸い込んでいく。
風や雨を定点から吸い込むという、自然界ではあり得ない環境変動ではあったが、それを可能とするのもまたユーベルコード、そして猟兵と言う存在である。
打ち付ける暴風雨は、その方角を一点に留め、船に受ける筈のそれがリューインの片腕に集束すれば、雨風に打ち付けられるばかりだった船員はその奇妙な現象に小首をかしげる。
「こ、これで……少しは転覆の可能性は落ちる筈……」
「おお! ぼうずがやってるのか!? こりゃあ、すげぇ!」
暴風を片腕一本で受ける状況というのは凄まじい反動があるが、ドラゴニアンの肉体は幾度の戦いを経てなおも強靭である。
ただ、荒れ狂う海ばかりはどうしようもない。相変わらずの大波に船は激しい揺れに抱かれている。
そしてリューインは船旅に長けているわけではない。
「うーぐぐぐ……僕、船乗りには、向いてないかも……しれませんね」
喉元までせり上がるものを堪えつつ、顔色は青色を通り越して土気色になり始める。
雨風にさらされ続けるよりかはだいぶマシだが……。こんな冒険を乗り越える勇者たちの活躍というのは、改めて果てしないことを思い知る。
「うわー、誰か海に飛び込んだぞ! と思ったら、戻ってきた! すげーっ!」
どこかで船員の声が聞こえる。他の猟兵が活躍しているのかもしれない。
こんな困難な状況で元気に活躍できるなんて、すごいなぁ。
あこがれてしまう。
と同時に、こんな状況でも平然と行動できるという存在に、自分自身の不器用さと、若干の妬ましさに苛まれてしまう。
いや、気持ちが沈んでしまうのは船酔いによろしくはないのだが……。
「ぼうず、平気か? 梅干しくうか?」
「梅干し……効くんですかね?」
「気休めだがな!」
今にも魂がまろび出てしまいそうな顔色を見かねた船員に梅干しをプレゼントされ、リューインは自身に活を入れなおす。
実際問題、唾液を分泌させて自律神経を刺激するほか、胃の消化を助ける梅干しは、船酔いには効果的と言われている。
大成功
🔵🔵🔵
カイウス・ヘーゲン
……世界を海により渡ることになるとは……俺も驚く……(無表情)
〈全力魔法、動物使い〉
来い、【エリキシル】
万災を乗り越えるお前こそ、この時に相応しい
船に装備するが如く張り付けさせ、災害により形を変え、船を守護させる
波には〈盾受け、かばう〉能力を使用
前方へと伸び、防波堤に体を変化
硬化させることで波の衝撃を受け止めさせる
……オブリビオンさえ生じさせる紫の光……
この光が何を示すか……時を費やせば解ること。
ならば俺は……この時を全うするだけだ。
怒号のような雨風の最中、実際に怒号を発して船員たちはそれぞれに担った役割のもと、劣悪な環境に身を置いてすら、仕事を全うする。
激しい暴風や荒波で船体が嬲られる最中で、鉄甲船が転覆しないよう操舵士は舵を切り、流され過ぎればスパンカーも利用して波に切り込むように操船する。
航海に必要な資材などを固定する人員や、操船に駆り出される船員、けが人を回収するための人員など、とにかく人の手が必要な状況であり、船上はまさに戦場の有様だ。
「……世界を海により渡ることになるとは……俺も驚く……」
そんな人が行き来する甲板で、カイウス・ヘーゲン(爆ぜる爪・f11121)は、ちっとも驚いたような素振りすら見せず、猛烈な暴風雨の中で曇天を見上げていた。
うねるような波を幾つも乗り越える鉄甲船の上は、激しい揺れに苛まれているものの、カイウスにそれを気にした素振りはなく、ただマイペースに己にできることを考える。
そして彼のプランは、己の従えるものの中でも災害を乗り越えるに相応しいものの力を借りることに思い至る。
「来い、【エリキシル】万災を乗り越えるお前こそ、この時に相応しい」
濁った土留色の液体がつまった小瓶の口を開けば、カイウスの呼びかけに応じてその色が世界を侵食するかの如く広がって質量を帯びる。
【万霊水魔エリキシル】の顕現により、周囲の船員は目を見張るものだったが、風船のように大きく膨れ上がったかと思えば、そのスライムは船べりを伝って船体を薄く広く伸び始め、色を薄くする。
やがて黒光りする鉄甲船の船体に目立たないほどにまで広がったエリキシルは、ふりかかる巨大な波が迫ると、膜のように広がっていた体を集束して盾になるようにして波から船体を守る。
過酷な波に上下左右に揺られていた鉄甲船は、エリキシルが緩衝材のように合間に入ることによって、軋みを上げることなく保護され、とくに最も波の影響を受ける船首のほうでは、防波堤のように伸びたエリキシルが船体を守っており、これによって船体の大きな揺れはだいぶ緩やかになっていた。
波を切って進む鉄甲船とはいえ、複雑に形を変えて流れる波に対しては、常に一方向を剥き続けるのは難しい。
そこへ自在に形状を変化させて硬化させたりもできるエリキシルは、波の衝撃を緩和して受け流し、船体にかかる負担を和らげ、かつ船の進行を補助する結果となっていた。
「おお、こりゃあいい……舵が大分、利くようになったぞ」
操舵を担う船員たちの歓声を背に、カイウスは一人無表情のまま船首から伸びる紫色の光を見つめる。
そんな彼の足元で、船全体にまで伸びたエリキシルの一部が、サムズアップするような形を見せた。
「うむ……引き続き、彼らを守り、手伝ってやってくれ」
静かに首肯し、言葉少なにエリキシルを労う。
ビーストマスターにして精霊術士であるカイウスにとっては、顕界獣とは使役するだけの獣ではない。
彼らにも意思はあり、尊重すべきものは確実にある。
ただし、召喚する側であるカイウスも、される側の彼らも、大概にマイペースではあるものの不思議と気があうというだけなのかもしれないが。
それにしても、と、紫の光を再び見やる。
オブリビオンをも生じさせる紫の光……。
今はまだその素振りを見せてはいないが、こうして光の先を目指せば、そのうち何かを示す事だろう。
すべては時が知らせてくれる。
「時を費やせば解ること……時か」
外套の内に納めた愛用の拳銃が固い感触によって存在を主張したように感じた。
彼の用いる顕界獣とは、時と自然の心が形を変えて姿を成したものであるという。
「ならば俺は……この時を全うするだけだ」
必要な時がやって来るまで。
赤い髪、赤い翼、そして赤い髪に泳ぐように咲く黒い蓮を雨風に濡らしながら、カイウスは、その時が来るのを静かに待つことにした。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『異国のカンフーにゃんこ』
|
POW : にゃんこ流一本釣りにゃ
レベル×1tまでの対象の【衣服(棒の先に引っ掛けることで)】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD : これがにゃんの超速戦闘術にゃ
自身の【装備する鈴】が輝く間、【鈴の音が一切聞こえない無駄のない体術で】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : にゃんにとってはこの世の万物が武器となるのにゃ
自身からレベルm半径内の無機物を【使い捨ての自身の装備武器】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:ひろしお
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
にゃー、にゃー……。
鉄甲船が沖に出てからかなり時間が経った頃、風雨に混じって猫のような鳴き声が聞こえ始めた。
ウミネコだろうか。
しかしそれならば、おかしな話だ。
ウミネコは陸地に近い場所でその声を聞く筈。
ならば、陸地が近いのか?
そもそも、この暴風雨の中でそれが近くに聞こえるというのは、違和感でしかなかった。
鳥も飛ばぬ大時化。
その最中でありながら、猫の声は次第に大きく近く、そして増えていく。
「にゃにゃー!」
そうして船員の耳にも明らかに猫とわかるほどの声が聞こえ始めると、鉄甲船の船首から伸びる紫の光の中から、複数の影が飛び出し、甲板に降り立つ。
足音のしないしなやかな身のこなし。それに反して身に着けた鈴がりりんと鳴れば、手にした棍が甲板に固い音を響かせる。
「ふっふっふ、船旅はここまでにゃ。この船を近づけさせるわけには行かないのニャア」
異邦の装束を纏った、猫の姿をしたオブリビオンが、その縦に割れた瞳孔をぎらつかせ、丸みを帯びた口元に笑みを浮かべる。
獰猛な肉食の獣そのものの形相……にしてはちょっと愛嬌があり過ぎる気もするが、
「みーにゃごろしニャ!」
その殺意は本物のようである。
ファンゴ・ネラロッサ(サポート)
●基本行動
本体は人形の中や外で人形を操っているブラックタール
明るく社交的で日常会話や噂話を装った情報収集も得意
NPCと接する時は大体「人形ムーブ」
敵しかいない時は「本体ムーブ」もあり
情報収集を【ベリッシモ/ベリッシマ】で、戦闘を【コンパーニョ】でと場面に応じて人形と本体を使い分ける
人形は戦闘時に中に入る事で盾にしたり、遠隔操作で囮にして不定形の本体は隙間や物陰を利用して潜入・奇襲したりと「本体」と「人形」が別々に動ける事を最大限に活かす
●口調
人形ムーブは僕、君、呼び捨て
本体ムーブはオレ、キミ、年上は~さん、年下は~くん
早臣・煉夜(サポート)
わ、わ、敵がいっぱいです
どんな方だろうとも、容赦なんてしませんですよ
僕はそのために作られたんですからね
妖刀もしくはクランケヴァッフェを大鎌にかえて
どちらかもしくは両方を気分で使って攻撃です
妖剣解放を常時使用して突っ込みます
怪我なんて気にしません
この身は痛みには鈍いですから
死ななきゃいいんです
死んだらそれ以上倒せなくなるので困るです
僕は平気なのですが、なんだかはたから見たら危なっかしいみたいですので
もし、誰かが助けてくださるならお礼を言います
ありがとーございますです
勝利を優先しますが、悲しそうな敵は少し寂しいです
今度は、別の形で出会いたいですね
なお、公序良俗に反する行動はしません
アドリブ歓迎です
風雨が止まない船上は、戦うには極め不向きな状況であったが、それでも光の中から飛び出したカンフーにゃんこたちは、そのしなやかな身のこなしで、この悪環境の中でも平然と、
「うにゃー、風がー!」
一部例外もありつつ、各々に如意棒のような武器を振り回して船員を威嚇して回っていた。
見た目にはかわいらしいが、それでもオブリビオン。その戦闘能力は一般人のそれを上回っている。
屈強な海の男たちとはいえ、慎重が二倍以上も小さいにゃんこの棒に打ち据えられると、たまらず転げるようにして船内へと逃げ込む。
そんな中、二人の猟兵が逃げる船員と入れ替わるようにして甲板に姿を現した。
「わ、わ、かわい……もとい、敵がいっぱいです。
でも、どんな敵だろうとも、容赦なんてしませんですよ」
可愛らしい見た目に思わず頬が緩みそうになるのを引き締めつつ、それが敵であることを改めて思い直すと、早臣・煉夜(夜に飛ぶ鳥・f26032)は妖刀を抜き放つ。
「僕はそのために作られたんですからね」
そうして機械の如き冷淡さでもって身を翻すようににゃんこへと飛びかかった。
全力で斬り付ける事を最優先に置いた、防御を顧みない大胆な飛び込み。
それは、煉夜自身の痛覚の鈍さ、そして死生観に依るものであった。
「にゃにゃ! やるにゃ、少年! 浮葉の如き身のこなし、そして死を厭わぬ覚悟……しかし、うちらも負けないニャ!」
少年の身の丈にやや余る妖刀を片手で力任せに振り回すのは、雑に扱っても折れないという自信と信頼、丁寧に使わずとも当たれば切れるという経験則からくる我流の剣術に依るものである。
全身甲冑の相手ならいざ知らず、布生地の服しか着ていないカンフーにゃんこにとって、それに触れればあっさりと腕の一本や二本はもっていかれるだろう。
小さな体からは想像もつかないほどの妖刀の連撃を棒でいなし、カンフーにゃんこは、その口元を緩める。
「フッ、お前とは別の形で会いたかったニャ。そしたら、きっといいライバルに──」
にゃんこがかっこいいセリフを言い終える前に、突風が甲板を吹き抜ける。
「うわぁっ!」
「にゃー!?」
暴風雨にあおられ、お互いの武器をかち合わせた状態から二人は引き離される。
空中でバランスをとってなんとか着地するにゃんこに対し、煉夜は無防備なまま船室の方へと吹き飛ばされる。
あわや、そのまま激突と言うところで、星空のような一幕が少年を受け止める。
星空を切り取ったかのようなそれは、一枚の外套。そしてそれを纏い、煉夜を丁寧に甲板に降ろすのは、線の細い印象の男性。その顔にヴェネチアンマスクを被った紳士……の人形であった。
「危ないところだった……。大丈夫かい、少年」
「ありがとーございますです」
演技がかった口ぶりで気遣う紳士ことファンゴ・ネラロッサ(『正体不明』のヒーロー・f17584)にお礼を言いつつ、煉夜はなおも武器を手に敵に突撃しようとする。
それをやんわりと制しつつ、ファンゴは自身の纏う星空のマントを大仰な仕草で脱ぎ捨てる。
「おじさん一人で、やるつもりですか?」
「どうみてもお兄さんだが、そうじゃない」
チッチッ、と指を立てるファンゴ。その策とは、彼の正体に依る。
実はセレブなスーツに身を包んだ怪盗のような姿は魂の入っていない人形で、彼の本体は纏っていたマントや人形の内部に潜むブラックタールであるという。
そして、大仰な仕草でマントを脱ぎ捨てたように見せたのは、にゃんこたちに気づかれぬよう、自身の体を甲板に這わせるため。
「さあ、歩いてみた感じはどうかな?」
「わ、さっきより踏ん張りがききますです!」
「風の影響はなんとかできそうだな。では、今度はこれを悪用してみよう!」
「あっ! わかりました!」
自在に形を変えるブラックタールならではの効能で、煉夜の踏みしめる甲板にグリップを持たせたファンゴは、人形に悪戯っぽい笑みを浮かばせ、煉夜とともに甲板を走る。
迎え撃つにゃんこたちは、その足元にファンゴの本体が潜んでいるとも知らず、武器を手に手に飛びかかってくる。
その足が甲板につくと、ブラックタールのファンゴが牙を剥き、その足を絡めとる。
「にゃっ!? あ、足が!?」
そこへすかさず、煉夜が妖刀でその首を刎ねれば、にゃんこはすぐさま黒い霧となって消えていく。
ほかのにゃんこも、人形のファンゴが放つワイヤーに首をくくられ、絶命と共に同じように黒い霧へと変じていく。
「まだまだ、来るようだね」
「まだまだ、斬る用意がありますですよ」
暴風の最中、全身びっしょりになりながら、二人は密かに勝気な笑みを共有する。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リューイン・ランサード
「僕、今とても機嫌が悪いんです。
ここで襲うというなら僕の方もうっぷん晴らしでやり返しますよ。」
と船酔いを戦意でごまかしつつ戦闘突入。
UCにより(風の精霊力で)攻撃力強化。
空中に舞い上がって【空中戦】で自在に空を飛び、【第六感、見切り】で敵攻撃を読んで回避、避けきれない攻撃は【ビームシールド盾受けとオーラ防具】で防ぐ。
相手の棒が衣服に引っ掛かったら、【空中戦の限界突破】による一瞬の高速移動で棒を振りほどく。
遠距離では【風の属性攻撃、全力魔法、高速詠唱、範囲攻撃】による真空刃で纏めて斬り刻みます(船を巻き込まない様、注意する)。
近接戦では剣による【2回攻撃、風の属性攻撃】で1体ずつ確実に斃します。
「僕、今とても機嫌が悪いんです。
ここで襲うというなら僕の方もうっぷん晴らしでやり返しますよ」
暴風の最中、そんなものなど構わぬかのように船べりに突っ伏すようにしてぐったりしていたリューイン・ランサードは、敵の出現に辟易とした目を向けつつも、行動の指標が出来上がってしまったことで、淀んでいた思考は徐々にクリアになっていく。
そうだ、船による冒険。その中で、自分の役割は、襲ってくる敵と戦い、船員の安全を守ること。
役割をこなせるという事は、しばらく船の上で何もせず揺られる必要が無いという事だ。
徐々に湧いてきた闘志のまま、よろける両足に活を入れると、なんだかんだで船の揺れによる三半規管の混乱は気にならなくなってきた。
「ニャニャ、こいつもうヘロヘロにゃ! おいら達の敵じゃないニャ!」
激しい風に嬲られてふらふらとバランスをとるリューインの姿を頼りないと感じたのか、カンフーにゃんこたちはこぞって罵声をあびせる。
だがそれも、
「力を、貸してください……!」
吹き荒れる暴風、それを風の精霊にコンタクトをとることで掌握を図る。
ごうごうと吹き荒れる天災。そのすべてを掌握することは、あまりにも無謀。
だが、精霊の加護を得た装備を身に着けるその身の周辺だけは、リューインの影響下に置きやすい。
船全体を襲う風をその身に受けながら、その身に降りかかる風だけを瞬時に味方につけるリューインは、やがてその身を宙に浮かべる。
「にゃっ!? 飛んでるニャ! この風の中で、どうやって……!?」
その現象を理解できないにゃんこたちは、思わずたたらを踏んで、浮かび上がるリューインを見上げる形となる。
しかし、浮かび上がるという事は、それだけ目につきやすいという事でもある。
にゃんこたちは、リューインを叩き落とそうと手にした棒を伸ばす。
「にゃ、にゃ! 降りて来ーい、にゃー!」
しかし悲しいかな、その体格ではリューインまで届かない!
癇癪を起して、牙を剥いてうなりを上げるにゃんこたちに構わず、掌握できた分の風の精霊から受けた暴風を真空の刃を変じ、足元のにゃんこたちに放つ。
「うわぁ、カマイタチにゃー! いててて、皮を剝がれるにゃー!」
寄せ集まったところを一網打尽にしてやろうと踏んだが、この暴風の中でもにゃんこたちの戦いの勘は冴えているのか、範囲まるごと殲滅という訳にはいかない。
そこで、討ち漏らした猫たちは、甲板に降りて、ルーンソードで確実にとどめを刺す。
「くっ、まずいな……戦っていないと、気持ち悪さがぶり返してきそうです……」
胃の中が空っぽになった状態で、飛んだり跳ねたりは、ちょっときつかったろうか。
「うにゃー! 三味線にされるー!」
とはいえ、風の魔法であちこち禿げができたにゃんこたちは、単体ではそれほど苦戦するほどでもないのが幸いだったろうか。
もってくれ、僕の胃袋!
大成功
🔵🔵🔵
ルナリリス・シュヴァリエ
あれは猫ですね。
ウミネコかと思ったら猫……まんま、猫です。ふ、ふ、ふふふっ♪
と、とても面白いのですが……クスクス、皆殺しなんて私が許しません
せ、正義の名のもとに、クスッ……も、もう笑わせないでください、クスクス♪
く、苦しい……でも猫まんまって、フ、フフッ♪
――さて、冗談はここまで。
#船上戦の華は一騎打ち、醍醐味は#地形の利用と#空中戦にあり
障害物や高所を生かして#ダッシュや#ジャンプで猫さんを翻弄しながら戦います。
ときに勢い余って船から落ち?いえ#空中浮遊で危機一髪
猫さんを船縁の方に#おびき寄せ、海に#吹き飛ばして落としていきます
ギリギリ踏ん張った猫さんも、手近な何かを#投擲して落とします。
猟兵たちの活躍により、船首の怪しい光から飛び出してきたカンフーにゃんこはだいぶ数を減らしたものの、それでもまだ結構な数のにゃんこたちが船に入り込んだようだ。
幸いにも船員たちが逃げ込んだ船室にはまだその手は及んでいない。
それもそのはず、船室の扉の前に仁王立ちするルナリリス・シュヴァリエが彼らの侵入を阻んでいるからだ。
平素ならそんな場所で仁王立ちされればかなり邪魔だが、今こそはその雄姿が頼れるというものである。
「あれは……どう見ても猫ですね」
現実感の無い光景、には何度もあってきたという自負がある。
しかしながら、あちこちから聞こえる鳴き声や、今しがた目の前で棒を構えてふしゃーっと威嚇の声を上げるのは、見紛う事無く猫である。
「ウミネコかと思ったら猫……まんま、猫です。ふ、ふ、ふふふっ♪
と、とても面白いのですが……クスクス、皆殺しなんて私が許しません」
ひとまず敵とあらば倒すほかないのだが、目の前の愛らしい敵の存在に、というか、ホントに猫が出てくるとは思いもよらなかったらしく、ルナリリスはほんのりツボにはまっていた。
いつもなら決まっている筈の名乗りも、ちょっとタンマとばかり頭を抱えて間を置くほどであった。
「せ、正義の名のもとに、クスッ……も、もう笑わせないでください、クスクス♪
く、苦しい……でも猫まんまって、フ、フフッ♪」
何しろ、カンフー服に棒を持って直立した猫である。ケットシーの親戚だろうか。
しかもこんな嵐の中で水も苦手だろうに、どうしてわざわざ来ちゃったんだろう。
それを思うと、戦意を固めようとするよりも、微笑ましい気分が勝ってしまいそうになる。
だってもう、目の前で威嚇するにゃんこだって、もう可愛いんだもんよ。
「ぬぬぬ、隙ありだにゃー!」
そんな無防備な少女らしさをさらけ出したルナリリスに、にゃんこは容赦なく飛びかかってくる。
ツボにはまったルナリリスは、ジャンプで加速した振り下ろしをまともに……、
「──アストライア、貴方の力を貸してください」
それでも戦う意思を放棄してはいないルナリリスは、ユーベルコード【セレスティアル・フレア】を発動し、振り向きざまに自身の師でもあるという聖剣を横薙ぎに払う。
いつもより多少腰が引けてはいたものの、その威力は十分であり、凝縮した光そのもののような輝きを帯びた剣は、その切っ先の伸び行く先にいるにゃんこまでも光の奔流にまきこんで消し飛ばしてしまう。
「ふう──さあ、冗談はここまで」
光の粒子が花弁のように散る中で、落ち着きを取り戻したルナリリスが、とんと甲板を蹴りつけるようにして船室の屋根に飛び乗る。
「まだやる気があるのなら、お相手しますよ。猫さん」
そうして人差し指で自信を仰ぐようにして周囲のにゃんこたちを煽ると、その挑発に刺激されたにゃんこたちがルナリリスに殺到する。
「こっちこっち!」
そうして挑発に乗るままやって来るにゃんこの繰り出す棒を回避し、時には剣で受けて体勢が崩れたところを体当たりや蹴りなどで吹き飛ばす。
暴風吹き荒れる中で吹き飛ばされたにゃんこは、あーれーっと荒れ狂う水面に落とされていく。
それでも数多く殺到するにゃんこたちを捌くために、時に屋根の上を全力疾走し、ついでに走り過ぎてルナリリス自身も海に投げ出されそうになるが、
「ふんっ!」
空中を蹴りつける事で、無理矢理方向転換して言うなれば空を歩行、もとい飛行して落下を阻止する。
事象と概念に影響を及ぼすという加護を得ているからこその荒業である。飛行、飛行である。
だが、そんなゲームの中にしか存在しないような装備をにゃんこが持っているわけもなく、素直にルナリリスを追いかけてきていたにゃんこはそのままの勢いで屋根から転げ落ちそうになってしまう。
「にゃっ、にゃっ!?」
屋根の縁を片足立ちで手をパタパタさせて踏み止まる姿は、写真に撮っておきたいほどだったが、相手はオブリビオン。ここで放置するわけには行かない。
可哀想だが、ルナリリスは手近にあった漁師用の浮き球を拾い上げてそれを放り投げ、踏ん張っていたにゃんこに引導を渡してやる。
「にゃあーん!?」
遠ざかる悲鳴に、申し訳程度の鎮魂を送り、ルナリリスは再び甲板に向き直る。
「さあ、まだまだやりますよ!」
大成功
🔵🔵🔵
ティエル・ティエリエル
SPDで判定
ぐらぐら揺れてるけど、せっかくの船旅をこれ以上邪魔させないぞー☆
【ライオンライド】で呼び出した体長40cmほどの子ライオンくんに「騎乗」して船室から飛び出すよ!
「動物使い」と「動物と話す」技能のおかげでライオンくんとのコンビネーションはばっちり!
にゃーにゃーないてる猫さん達に対抗してライオンくんががおーって叫んじゃうよ!
猫さん達がビクってなったらその隙に突撃―☆
ライオンくんのかぎ爪とボクのレイピアでぐさぐさーっとやっつけていっちゃうね♪
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
「くっ、こいつは劣勢ニャ……! みんな、水夫を狙うニャ!」
戦いは決しつつあった。
しかし、お気楽な見た目に反して、カンフーにゃんこの中にも聡い者がいたようで、彼らの注目は船員の逃げ込んだ船室の方に移った。
先ほどまでは強そうなやつが陣取っていたが、今はあちこち動き回っているから、侵入するなら今しかない!
いち早く船室の扉に近づいたカンフーにゃんこが、その手に握った棒で扉を破壊しようとしたその瞬間、タイミングよく開いた扉がにゃんこを叩きとばす。
「ぐらぐら揺れてるけど、せっかくの船旅をこれ以上邪魔させないぞー☆」
扉を開けて飛び出してきたのは、一人と一匹の……なんだかちんまりとしたシルエットだった。
ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)がライオンライドによって呼び出したのは、妖精であるティエルのその約二倍程度の、ほんの40センチほどの子供ライオンであった。
子供なれど、その立ち姿は王者の風格を漂わせるほど堂々たるもので、子供ながらに既に鬣も生えそろっている。
ただ、子供なので目つきはちょっとあどけなくてキラキラしているぞ!
「にゃ、にゃあー……お前もネコ科かにゃ!?」
「がおん!」
「にゃーと鳴かない!?」
ネコ科です。
何者かよくわからない小さなライオンの堂々たる佇まいと、その背に跨る妖精の姿に異様なものを覚えたにゃんこたちは、はやくもコンタクトに失敗する。
どうでもいいが、にゃーと鳴くネコ科の方が実は少なかったりするが、それはまぁ、ほんとうにどうでもいい。
「こ、こいつ、なんだか逆らっちゃいけない気がしてきたニャ……」
「いや、見たところ、子供に見えるニャ。大勢で畳みかければワンチャン」
「オイラはワンチャンじゃないにゃ!」
「落ち着くにゃ! こういう時は、グルーミング……」
戸惑うにゃんこたちは、ひとまず気を取り直すために一斉に顔を洗い始める。
それにつられるようにして、ライオンくんも顔を洗い始めるが、それはティエルによって制される。
どうでもいい話だが、ライオンの檻に子猫を入れたら、ちゃんと育てるらしいぞ。
それはともかく、鮮烈な登場に戸惑いを隠せない様子を感じ取ったティエルは、ライオンくんの鬣に手を添えて話しかける。
動物との会話に長けているティエルとライオンくんは既に以心伝心だ。
「みんな驚いてる。君が王様だって、わかるんだ。もう一声かけて、やっつけちゃおう♪」
「ぐおぉー!!」
ティエルの号令と共に雄たけびを上げたライオンくんの声は、果たしてその狙い通りにカンフーにゃんこたちの体をほんの一瞬だけ硬直させる。
それは、一人と一匹にとって十分な隙であった。
「よーし、突撃だー☆」
レイピアを振り上げ、ティエルが叫べば、ライオンくんは小さな体に似合わず、風のように駆けだす。
雨風に濡れた甲板の上でも、獣の走駆にはしっかりと爪が食い込み、そしてそれは同時に鋭い武器にもなった。
「にゃにゃー! ごめんなさい、ごめんなさい!」
子供とはいえ、その狩猟の手腕は荒れ地でならしたそれである。
爪が、牙が、人相手の技をものともせずに蹂躙し、また彼が討ち漏らしたにゃんこたちも、たたらを踏んだところをティエルのレイピアが突くことで排除する。
野生を捨てた猫たちの前に、剥き出しの野生……ただし子供のそれが襲い掛かり、その暴力的なまでの自然の掟の前に敗北する。
数分と経たず、甲板から猫たちは姿を消していた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『木影流忍者・凩』
|
POW : 木影流忍法・風速移動の術
【動きが風の速度となる忍術】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : 木影流忍法・木の葉の舞
【両手で印を結ぶこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【大量の刃のように鋭い木の葉の斬撃】で攻撃する。
WIZ : 木影流忍法・木槍乱舞
レベル分の1秒で【木でできた鋭い槍】を発射できる。
イラスト:安子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「葉隠・翠」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
にゃんこたちの襲撃を退け、なおも船を進める一行は、やがて嵐の果てに紫色の球体を見る。
船を丸々飲み込んでしまいそうなほど巨大な球体から放たれる明かりは、船の船首から伸びる光と酷似しているもので、その光もまた、球体の奥を目指しているようだった。
気が付けば、いつしか雨は止み、風ばかりが強く吹き付け、濡れた一行の衣服や飛沫に襲われ続けた鉄甲船の甲板を乾かし始める。
だが、風ばかりは一向に止む気配がない。
そればかりか、乾いた風に混じって、枯葉が風に運ばれて吹き付けてやって来る。
はて、この大海原のいったいどこに、そんな枯葉を蓄えた木々があろうか。
困惑する一同は、その風の源流、もっとも風上にあるものが何なのかをすぐに感じ取る。
風は紫の球体から吹き付けていた。
そして、枯葉交じりの木枯らしが球体から生み出されていることに気づくのと同時に、その一部が膨れ上がって黒い影を吐き出してきた。
それは船首へと飛び乗り、やがてその影が人の形を成す。
「これより先、生者の踏み入る道理無し……排除する」
言葉少なに、冷たい女の声が、その影を成す。
吹き上がる木枯らしと共に、殺気が膨れ上がった。
氷咲・雪菜(サポート)
人間のサイキッカー×文豪、13歳の女です。
普段の口調は「何となく丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
独り言は「何となく元気ない(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、かしら?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
氷や雪が好きな女の子で、好きな季節は冬。
性格は明るく、フレンドリーで良く人に話しかける。
困っている人は放ってはおけない。
戦闘は主にサイコキャノンを使って戦う。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
姫神・咲夜(サポート)
桜の精の死霊術士×悪魔召喚士、女性です。
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
片思いの人には「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
清楚で女流階級風の口調で、お淑やかな性格です。
基本的に平和的な解決を望みますが
戦わざるを得ない時は果敢に戦いに向かう勇敢さを持っています。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
嵐の渦中にいるかのような向かい風。
それほどまでに風が吹き付けていながら、船は徐々に球体に向かって進んでいくようだ。
それはまるで、何かに呼ばれているかのようでもあり、それを阻むように出てきた凩という忍者は、さながらその番人のようでもあった。
もはやそこいらの一般人が入り込めるような領域ではないのかもしれない。
鉄甲船の船員たちも、その忍が放つ強大な気配を前に居竦まったようで、球体から吹き付けられる風に押されるままに船尾へと追いやられているようだった。
「なんという気配……もはや、戦う他に道は無いのでしょうか」
船員を守るかのように甲板に出た猟兵の一人、姫神・咲夜(静桜・f24808)が、枯葉交じりの風に眉を寄せ、穏やかな口調をわずかに翳らせる。
春を感じさせる桜の精である咲夜のその頭部から生える桜の枝も、強風にあおられてその花びらをいくつか泳がせる。
「ここは逃げ場がないですからね。安全を思えば、倒すしか……!」
咲夜に応えるように、同じく前に出た猟兵の一人、氷咲・雪菜(晴天の吹雪・f23461)は、立ちはだかる忍者に強い視線を向ける。
こちらはすっかり冬の装いだが、やはり強風にあおられてお気に入りの帽子が今にも吹き飛ばされそうである。
「木枯らしの中で、眠れ」
戦う意思を固める二人の存在を確認した凩は、両手の指を絡めて印を結ぶ。
強大な力を持つゆえか、船員ではなく、戦う力を持っている者から先に排除することを選んだらしい。
その術が成ると、吹き抜ける風が二人の猟兵を中心に渦巻き始める。
「風……いや、この葉っぱが……」
直感的に何かを感じ取った雪菜がその手を掲げると、身に着けた手袋が氷の盾となって立ちはだかった。
そこへ殺到する風に泳ぐ葉っぱが、まるで手裏剣のように次々と突き刺さる。
「雪菜さん……!」
「大丈夫、です! 咲夜さんも、お怪我はないです?」
「大事ありません。それにしても、木の葉をこのように使うとは……」
「そうですよ。私はもっと先の季節の方が、好きです!」
「まあ、意見が合いますね」
強風の最中であっても、どこかほのぼのとした会話を交わすと、改めて凩に向き直る。
おそらくは、好きな季節は違うのかもしれないが、共通の相手を前にしている以上は、細かいことは置いておこう。
「飛んでくるものが厄介です。こっちも手数を用意しましょう」
「心得ました。では、少々、幽霊さんのお手を拝借しましょうか」
自身の氷の魔力を強化するブリザードキャノンを腕にはめ込みつつさりげなく雪菜が援護を要請すれば、咲夜は穏やかに微笑んで触媒替わりの桜の枝を振るう。
死霊術士でもある咲夜の召喚術に応じてその周囲に現れた死霊兵がそれぞれに武器を手に前進すれば、それに合わせて雪菜も氷の銃弾を発射する。
吹き荒れる刃物と化した木の葉は氷の銃弾に撃ち砕かれ、死霊兵の全身を助ける。
「……雑兵め」
手数を真っ向から塞がれ、木の葉では効果が薄いと感じたか、凩は手の内の木の葉をより巨大な木の根のような槍に変じて射出する。
さすがにそれは、氷の銃弾でも簡単には砕けない。
死霊の何体かは樹の槍に貫かれて動けなくなり、全身を行えない者も出たが、それでも凩のもとへと到達した何体かがその武器を振るう。
しかし、元は卓越した戦士の霊とはいえ、その攻撃を凩は持ち前の身軽さで巧みに躱し続ける。
まさに風に揺れる木の葉の如く。
だが、回避した先には既に雪菜が回り込んでいた。
「一つ、聞きたいのですが……船上で忍者が忍べるんですかね?」
構えたブリザードキャノンの銃口から魔術で構築した氷の弾丸が放たれる。
そして、雪菜の質問に合わせて、空いた手に持った書籍から情念の獣が飛び出す。
銃弾がその正中を捉え、獣がその首筋に食いついた。
さしもの忍者とて、回避の直後は無防備となっていたようだ。
「是とする」
静かな返答と共に、凩の体が大量の木の葉に変じて崩れた。
そして少し離れた船首の方に、いつの間にか凩の姿があった。
「なるほど……悔しいけど、納得しちゃいました」
なんと忍らしい答え方だろう。
質問に答えられたことで、情念の獣はその姿を消すが、雪菜は、
そして咲夜もまた、その目から戦う意思を引っ込めてはいなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
カイウス・ヘーゲン
…この光球、そこから現れた忍。ここまでの旅、この船は正しい時を全う出来たのだな…
であれば、俺もこの瞬間を全うする…貴様を倒すという猟兵としての時を!
鈴剣、炸霊銃連結。全力魔法による顕界獣召喚。鳴り響け哭爪、現れろ天狼!
木の葉を運ぶ風を第六感で感知し、騎乗・動物使いの技術により天狼と共に木の葉を掻い潜る
こちらの反撃には天狼と俺の剣、双爪による2回攻撃を仕掛ける…!
道を拓く事こそは生者が持つ力……それを阻む道理こそ有りはしない…
未来へ時を進めることは…何者にも止められはしない……!!
際限なく光球から溢れては吹き荒れる枯葉の最中、視界は風雨にさらされるよりも困難になりつつある。
それこそが、凩の狙い。
視認性を悪くすればするほど、開けた甲板の上でもその姿はやがて霞に消えるかのようにおぼろげに見えてくる。
だが、防壁のように吹き荒れる木の葉を鋭い剣閃が薙ぐ。
そこだけ風の流れが変わったかのように分かたれて散る枯葉たち。
そしてその中心にいるのは、鉄甲船に乗り付けた猟兵の一人、カイウス・ヘーゲン。
「……この光球、そこから現れた忍。ここまでの旅、この船は正しい時を全う出来たのだな……」
音叉に似た刀身、鈴のような意匠の剣を片手に呟くカイウスは、巡らした視界の終着点を船首に立つ凩へと定め、すらりとしたその姿を見上げるようにその鈴剣を向ける。
「であれば、俺もこの瞬間を全うする。……貴様を倒すという猟兵としての時を!」
しゃらり、と鈴剣を鳴らし、もう片手に握った精霊銃オルドルクとを連結させる。
己の全力を以て、従える同胞、顕界獣を呼び出すときの、言うなれば必要動作である。
自身と一心同体、同じ翼をもつ友を呼ぶには、カイウスの操る得物の力を最大限に引き出す必要がある。
「その時に非ず」
風の中で鈴剣が鳴る。召喚の儀式の最中で、そうはさせまいと凩の操る木の葉が刃となって襲い掛かる。
まさに雨あられと降り付ける刃の暴風に、身動きの取れないカイウスは回避する手段を持たない。
だが、押し寄せる木の葉の暴風を切り裂くように、赤い翼が大きく広がる。
「──鳴り響け哭爪、現れろ天狼!」
鉄甲船から真上に駆けあがるかのように飛び上がる翼と、獣の咆哮。
暗雲のもと、暗がりの中ですらその銀色の体毛は、星の煌きのようでもあった。
天を突くかのような飛翔から体を反転させ、カイウスを背に乗せた銀の毛皮を持つ巨大な獣が翼をたたんで滑空する。
「あの風がまた来る……突っ切るぞ、グレイガル。病める過去へ牙を剥け! 逆巻く時に爪を立てろ!」
迎え撃つ凩が木の葉の刃を再びけしかければ、カイウスはその風を読んで鈴剣を掲げる。
一心同体であるカイウスの意思を汲むように、空中で跳躍するようにして木の葉の刃を掻い潜ると、銀色の獣グレイガルは、その爪で、その牙で以て凩に肉薄する。
しかし、その身軽な見た目に偽ることが無い凩は、そのいずれも滑るような足運びで躱し、宙返りを打つようにしてすり抜ける。
「狗に討たれる道理無し──」
だが、近づいたのはグレイガルのみではない。その背には剣を構えたカイウスが跨っている。
「狗に非ず!」
二段構えの二、カイウスの剣が凩を捉える。獣奏器としての側面の強い変わったデザインの剣だが、その役目は十分に果たす。
それを示すかのような手ごたえを確かに感じたが、次の瞬間には凩の身体は木の葉に紛れて消える。
追撃は……間に合わないか。
しかし、やや離れたところに再び姿を現した凩は、着物の胴が裂け、出血していた。
出血していることよりも、一撃貰ったことへの驚きが、凩の顔に初めて表情を作らせていた。
「道を拓く事こそは生者が持つ力……それを阻む道理こそ有りはしない」
甲板に降り立ったグレイガルに跨るカイウスがそれを見下ろす。
「未来へ時を進めることは……何者にも止められはしない……!!」
血の残滓をわずかに残す剣を向ければ、それを見上げる凩の無機質な目が強い敵意に据わり、周囲の木枯らしがざわめきを増した。
大成功
🔵🔵🔵
緋薙・冬香
今からでもお役に立てそうかしら?
それならいきましょう
推して参る、ってね!
風の速度で移動しようとも
真っ正面から受け止めるのが女の嗜み
行くわよ!
血統覚醒で戦闘能力の底上げ
そこから命中率重視の『魅せる脚』で仕掛けるわ
風が速く動く場所が彼女の居場所
なら第六感を頼りに彼女の居場所を見切って
蹴り技で仕掛ける!
そこから蹴りによる2回攻撃を早業で出し続けて
凩とダンスといきましょう
どこまで凌げるかわからないけど
攻撃を受けたとして態勢だけは崩さないように
運良く凩の攻撃をかわせたらそのまま決めにいくわ
「知らなかった?風で消えない火は燃え盛るのよ?」
冬の香りがもたらすのは風の終わりよ?
ティエル・ティエリエル
WIZで判定
むむむー、もう少しでゴールなのに邪魔なんてさせないぞ☆
ライオンくんに騎乗したままニンジャを迎え撃つね!
「動物使い」と「動物と話す」技能でライオンくんにお願いして
ニンジャの周りをぐるぐる回ってもらいながら飛んでくる木の槍を避け続けるよ!
当たらない槍に焦れて近寄ってこようとしたところを【妖精姫の括り罠】ですっころがしちゃえ!
足を取られて身動きできなくなったチャンスにライオンくんに乗ったままレイピアを構えて突撃!
レイピアでぐさっといっちゃうよ!
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
ざわざわと騒めく枯葉の嵐。それがもはや鉄甲船にかぶさる波濤なのか、木の葉のさざめきなのか判別できない。
それでも目の前にいる凩という忍者は、いまだに健在である。
武器らしい武器を持たず、人らしい顔も見せず、それでも人の姿をしていながら天変地異の如く立ち塞がる。
この嵐そのものが彼女の防壁であるかのように、木の葉のさざめきは敵意を隠そうとしない。
しかしながら猟兵たちもそれを前にひるむことはできない。
戦える自分たちが引き下がるようなことがあれば、同乗している船員たちは瞬く間に殺されてしまう。
何より、この先にあるという新世界の輝き。そこへ至る冒険心を、抑えることができようか。
少なくとも、
「むむむー、もう少しでゴールなのに邪魔なんてさせないぞ☆」
甲板の上で子供ライオンに跨ったままの小さな妖精ティエル・ティエリエルは、身を乗り出すようにしてびしっと指さす仕草で、その不満を隠すことなくぶつける。
その無邪気にも見える敵意が、凩の敵意とぶつかり合う。
それは感覚のみで、お互いが敵であるという認識がなされる。
一見子供であっても、それが己を打倒しうる存在、猟兵であるかどうかは感覚で判別できていた。
「よし、こっち向いた。ライオンくん、もうちょっとがんばろ!」
強い風の中、凩の興味を引くことに手ごたえを得たティエルは、くしくしと顔を洗うライオンの鬣をもふもふして語り掛けると、二人で迎え撃つ準備を終える。
既に渇き始めている甲板をライオンの爪が掻きながら駆ける。
最初はそれを迎撃すべく凩は葉っぱをけしかけるが、ティエルの手にするレイピアは風の加護がある。
生半可な質量ではライオンの突撃を止めきれない。
「なれば、槍にて穿つ」
木の葉では止められぬと判断した凩は、忍術で御する木の葉をまとめて木の槍を作り上げて、それを射出し始める。
「右、飛んで!」
「がうっ!」
変換される傍から穿たれる槍の応酬。さすがにそればかりはレイピアの魔法でも逸らすのが間に合わない。
鋭く尖った木の切っ先を動物的な反射神経で横に跳んで回避すると、甲板に突き刺さった槍が木の葉となって散る。
咄嗟の事ではあったが、単発ならば避けることは不可能ではない。
だが、続けざまに放たれれば、近づくのも容易ではなくなる。
何故ならば、近づくほど槍の放たれる間隔は短くなるし、回避が難しくなるからだ。
それでも、お互いに近づかねば、必殺の攻撃とはなるまい。
一定の距離を保って、距離を詰めようとしたところが付け入る瞬間となるはずだ。
それまではと、凩を囲うように円を描くように回避しながら移動し、ティエルはその瞬間を窺う。
だが、なかなか焦れてくれない。
忍耐という言葉にも忍びという字があるように、相手はあくまでも冷静だ。
早くも攻めあぐねたと思ってしまうのは、本来は遊びたい盛りの子供ゆえのせっかちな部分があるのかもしれない。
「ううー……もう、突っ込んじゃおうかな」
ぐぬぬ、と口を引き結ぶティエルは、体温が上昇し始めるライオンくんを案じるのもあって、ちょっと焦れ始めていた。
「あらあら、騒がしい。手が足りないみたいじゃない?」
膠着状態へ陥りかけた戦場によく響く艶のある声。
強風に泳ぐ黒髪を撫でつけつつ唐突に甲板に硬質な靴音を響かせるのは、緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)。
「美人のおねーさんだ!」
「ふっふっふ、今からでもお役に立てそうかしら?」
「大歓迎だよー☆」
「それならいきましょう」
膠着状態に一石を投じるかのように綺麗な姿勢で、そのグンバツなスタイルを惜しむ事無くやってきた姿にぱっと表情を明るくするティエルに応えるように、冬香は眼鏡をはずしてしまいこむ。
そして密かに、その身に宿るヴァンパイアの血統の混ざりこんだ力を呼び起こすと、タイトなスカートをちょこっとたくし上げて、構えをとる。
「推して参る、ってね!」
誘うような笑みと共に、甲板を固い靴音が鳴らせば疾風の如く冬香が身を低く踏み込む。
「説破とする」
無手のまま飛び込んでくる冬香の男らしい様に応えるつもりなのか、凩もまた風のように足音鳴く加速する。
暴風の如き踏み込みと、冬香の踏み込みが真正面からぶつかる……かに見えたが、風のように動く凩の残像がまるですり抜けたかのようなしなやかな動きで冬香の背後に回り込んでいた。
風の止んだ虚空に冬香の長い足が、その膝に体重を乗せる様な飛び膝蹴りを繰り出すが、既に凩は真後ろ。
凄まじい身のこなしを誇る凩の体術に、生半可な技は通用しない。
しかし、それが生半可な人間でないのならば、話は変わってくる。
ヴァンパイアの血の覚醒を既に行っていた冬香の瞬発力と感覚は、風のように動く凩のその機先を読んでいた。
この嵐の中でも、風と同等に動くその機先、ヴァンパイア動体視力が無ければ反応はできまい。
既に繰り出した飛び膝は空を狩る。敵は背後。ならば今こそ、という段階で、冬香はユーベルコードを使う。
「行くわよ!」
伸びきった軸足。白魚のような艶やかさすら思わせるそれを振り上げるようにして全身のバネをつかって身体を空転させる。
振り上がった脚と、反転する身体の動きは全て一つの打点へめがけたエネルギーとなる。
円を描き、軸足だったその足のつま先が、まるで鉈のように半月の軌跡を描いて、背後にいた凩の脳天へと振り下ろされる。
「ぐ……!」
不意打ちを返された凩が辛うじて両手を交差させて受けるが、最初の蹴りが当たった時点で、既に折りたたんでいたもう片方の足も突き出していた。
弾かれたようにお互い飛び退いて、すぐさま起き上がって手足の届く間合いに駆け寄る。
まるでペアでアダンスをしているかのように、技の応酬を仕掛ける二人だが、そこに徐々に優劣が生まれていく。
おそらくは、素手であっても、携行できる暗器の一つや二つは、お互いに有しているのかもしれない。
だが、それが無粋とばかり、肉と肉、骨と骨とが激しく衝突する。
蹴りを主体とする冬香のまさに【魅せる脚】が鞭のように撓って凩の外腿を捉えるのと、疾風のような凩の貫手が冬香のみぞおちに突き刺さるのは、ほぼ同時だった。
手傷は明らかに冬香の方だが、その顔は不敵な笑みを浮かべる。
そこで初めて、冬香の手が凩の手を掴む。
「知らなかった? 風で消えない火は燃え盛るのよ?」
意図を図りかねた凩だったが、すぐに背後を振り向くが──、
腕をとられ、振り向きがてら持ち上げようとした凩の足が持ち上がらず、思わずたたらを踏む。
動かない足。そこには、こんな船の甲板にある筈のない草を結んだような括り罠が、凩の足を封じていた。
「いくぞー!」
まずい、と思って振り向いた時には、ライオンに乗ったままレイピアを突き出すティエルの姿が迫っていた。
体が拘束された状態で、その突撃を躱すことは不可能。
顔面を貫かんとするレイピアの一撃をかろうじて顔を逸らすことで避けようとしつつ、拘束された腕を振り払い、拘束された足を手刀で躊躇なく斬り落とすと、凩は転げまわるようにして窮地から脱する。
「驚いた……でも、色々壊れちゃったんじゃない?」
刺された腹部を抑え、なおも構えをとろうとする冬香が改めて切り落とされた片足を見れば、生々しい筈のそれが木の葉となって飛び散る。
「忍術って、そこまでできるわけ?」
半ば呆れる冬香ではあったが、油断なく敵を見据えるティエルは、斬り落としたはずの足が完全に元通りでなく、ダメージを負っていくことを看破する。
そして、何よりも、頭部を抑える凩の片目を抉った手ごたえは、突き刺した本人が一番よくわかっていた。
「大丈夫、このまま追い詰めよう!」
「ええ、そうね。冬の香りがもたらすのは風の終わりよ」
体勢を崩しながらも、まだ戦意の落ちていない凩を前に、二人……と一匹は、油断なく構えるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リューイン・ランサード
(忍者に)「格好良さげなセリフを吐けば、騙されてくれると思ったら大間違いです!そんな訳の分からない道理で排除されるのは嫌なので、ここで倒します」とツッコム。
相手は木の槍を連射してきそうなので、船員さんを巻き込まない様、翼と【空中戦】で空に舞い上がり、【風の属性攻撃、高速詠唱】で自分の周囲に風の防御壁を構築し続けて木の槍等の攻撃を弾きとばす。
防御壁を越える攻撃は【ビームシールド盾受けとオーラ防御】で防ぐ。
相手の動きを【見切り】、【スナイパー】で補足して、UC:罪砕乃炎を発動。相手だけを焼く。
相手が高速移動しても【見切りとスナイパー】で都度捕捉して逃がしません。
終わったら梅干しをもう一つ食べます。
ルナリリス・シュヴァリエ
あれは何?まさか……伝説のニンジャですか?!
よく見える場所に相手を#おびき寄せて戦いたいですね
詳しい事は覚えていないのですが、ニンジャは汚いと聞いた事があります
きっと、お仕事が忙しくて余りお風呂に入れていないのでしょう
気の毒ですから、少し間合いをあけて戦ってあげます。
こんな格好です、動きが鈍いと思いましたか?
相手の素早い動きに#ダッシュと#ジャンプで応じます。
様子見に敵が仕掛けてくれば#見切って#カウンター
飛び道具は#地形を利用して防ぎます。
後れを取るつもりはありませんが、船員を狙われると弱いですね
UC#聖域を利用して#かばいながら、チャンスを待って反撃します。
[アドリブ&協力歓迎・NGなし]
「うっぷ……うーん、雨が止んで、だいぶマシになりましたかね……」
船尾の辺りまでにゃんこ退治に勤しんでいたリューイン・ランサードは、船の周囲の雰囲気が一変し、強敵が現れたらしいことに気が付いていたが、連戦は多少辛かったのか、誰か他の猟兵が戦闘をしているらしいことを確認すると、少し休憩して体力の回復を待っていた。
「あれは何? まさか……伝説のニンジャですか!」
ぎりぎりまで鉄甲船じゅうを駆けまわってカンフーにゃんこを退治と残党の確認、船員の無事を確認して回っていたルナリリス・シュヴァリエもまた、船首に近い甲板での戦闘には乗り遅れていた。
そして、船首付近での戦いを劣勢と判断したらしい忍者のオブリビオン、凩が鉄甲船の頂点まで飛び上がって着地するのと、リューイン翼で上空へと飛び上がり、ルナリリスが最上の甲板に上りきったのはほぼ同時だった。
「これは奇遇……いいえ、良く見える場所まで誘き出されましたね!」
既に負傷して片目を失っている凩とばったり会う形になったルナリリスが、さも必然と言わんばかりに指を突きつける。
無論、ルナリリスが人目を引く程度の見た目をしているとはいえ、一番上まで凩が移動したのは偶然である。
だがそんなことはどうだっていい。結果が伴えば同じことだ。
「問答は不要なり」
血液に染まる枯葉が、ざらざらとけたたましい音を上げながら吹き荒れる。
にもかかわらず、静かな語り口の凩の言葉は異様によく聞こえる。
吹き付ける枯葉の嵐で翻弄しつつ、その身を風のように躍らせて肉薄し、鋭い貫手を放つ。
激しい金属音が、それを受け止める。
ほぼ視界を封じられた状態での不意の手刀。それをルナリリスは聖剣の胴で受けていた。
「こんな格好です。動きが鈍いと思いましたか?」
羽のようなドレスに板金を重ねた白銀の鎧は、見た目以上に重い筈だが、それ以上に重そうな聖剣で受け流すようにして構えるルナリリスの顔には余裕が窺える。
無言のまま、凩はそれでも続けざまに攻撃を繰り出すが、ルナリリスはそれを冷静に下がりながらそれらを受け流す。
角手という指にはめ込む武器を用いた体術を素早く、その手数を受けきるのは至難の業である。
いくらかは届かせないよう下がるしかないのだが、鉄甲船のてっぺんは、それほど広くはない。
あまりに連撃が続けば、ルナリリスは足場を失った瞬間から受けきれなくなってしまう事だろう。
だがそれよりも前に、風の刃が木の葉の嵐を引き裂く。
切り裂かれた木の葉の防壁が凩の姿を露わにし、攻勢を欠いた凩は技の切れ目で距離をとる。
「僕を忘れてもらっちゃ、困りますよ」
空中で足がつかないことがリューインにとっては船上よりも安心するのか、だいぶ血色が戻りつつある顔で、凩を見下ろす。
暴風の中で飛び続けるのはなかなか根気がいるが、それでも激しい雨が止んだ今なら邪魔をするものは無い。
距離ができたことで間が生まれると、そこで珍しく凩が自分から言葉を発する。
「ここより先は修羅の領域……それすらも、もぎ取りに往くか……強欲なり猟兵。
汝らに、踏み入る道理無し」
「格好良さげなセリフを吐けば、騙されてくれると思ったら大間違いです! そんな訳の分からない道理で排除されるのは嫌なので、ここで倒します」
意味深な言葉は試すようでもあり、絶対不可侵を警告するようでもあったが、もはやこの段階で引き返せも何もないだろう。
リューインは普段の臆病さも引っ込めて啖呵を切る。
吹き付ける木枯らしは風の魔法による障壁で逸らす。もはや空中にいるリューインを邪魔することは、枯葉の嵐ではできぬと判断した凩は、操る枯葉を固めて木の槍に作り変える。
吹き付ける嵐に鋭い木の槍が混じり始めると、風の障壁では守り切れなくなり、ビームシールドを展開せざるを得なくなる。
決定打とはならぬものの、これでは防戦一方になってしまう。
だがそこへ、
「おっと、今度は私をお忘れじゃないですかね?」
剣閃が木の槍を薙ぎ払う。
リューインとの攻防の合間に踏み込んだルナリリスの剣が、リューインを狙う攻撃を打ち払い、続けて凩に斬りかかると、その木枯らしの攻勢はわずかに弱くなる。
それはわずかではあったが、リューインに反撃の余地を更生させるのに足る。
「詳しい事は覚えていないのですが、ニンジャは汚いと聞いた事があります。
きっと、お仕事が忙しくて余りお風呂に入れていないのでしょう」
嵐の防壁を打ち払いながら、ルナリリスはちょっとずれたことを聞いてしまう。
踊るように力強く振るわれる聖剣が煌く度、木の槍や木の葉が無残に砕けて飛び散る。
どうでもいいが、戦国において効率化の権化のような存在だったという忍者は、その素性を容易に悟られぬよう旅人や商人に化けることが多かったらしい。
きっとその都度、わざと汚したり綺麗にしたりはしていたのではないだろうか。
そもそも汚いの意味が違うというのは、もはや言うまでもないことかもしれない。
もはやリューインばかりを狙うのは効率が悪い。そう判断した凩は、木の槍をルナリリスにも向ける。
さすがに散々見た攻撃を今更受ける道理はない。と言いたいが、遠距離に対応する攻撃をルナリリスは今のところ持っていない。
そこで、ルナリリスは敢えて飛んでくる木の槍を、敢えて甲板から飛び降りることでやり過ごした。
狭い甲板に居座らず、一段低い甲板に降りて回り込み、反撃の一撃を見舞う。
行き当たりばったりに剣を振っていたようで、ルナリリスも船上の地形をよく見ていたのである。
「うぐ……」
「気の毒ですから、少し間合いをあけて戦ってあげます」
聖剣の切っ先が凩を捉えた。致命打ではないが、それも時間の問題であろう。
何よりも、凩は既にこれまでの戦いで消耗していたらしく、その体捌きにもキレが感じられない。
それを、まさか本当に気の毒に感じたわけではない。
ネットゲームなどでは、こんな腹芸……いや煽り合いなど日常茶飯事だ。
ルナリリスは、攻防を繰り広げる中で敢えて言葉も用い、頃合いを見計らっていたのだ。
敢えて相手の有利を誘う。敢えて剣を立てるようにして受ける姿勢をとる。
手負いの凩は、必殺の木の槍を撃ち込んでくるに違いない。
その時には、足は止まる。
準備は整ったとばかり、ルナリリスはユーベルコードを発動させる。
「災厄よ、退きなさい!」
燐光を帯びる聖剣と聖鎧が、清冽なまでの空気を作り出す。
【聖域】を作り出すそのユーベルコードによって、ルナリリスは絶対防禦の領域を構築すれば、解き放たれた木の槍や刃のような木の葉の嵐は泡と消えた。
そして、追い打ちをかけるようにして、
「冥府の罪人を焼霞する紅蓮の炎よ、我が元に来りて現世の罪人を昇華せよ」
リューインのユーベルコードもタイミングを同じくして発動する。
足を止め、攻撃を展開した凩のその瞬間を見計らったかのように、二人の猟兵は同じタイミングに狙いをすましていた。
【罪砕乃炎】によって召喚された冥界よりの紅蓮の炎が凩に収束する。
それは身も魂も焼き尽くす。何者も例外なく。
だが、船一帯は聖域と化し、招かれざる客以外の一切を護っている。
逃げ場を亡くした紅蓮の炎が柱となり、その柱の向こうで凩は黒い影となり、それもやがて消えうせた。
そうして敵の気配が消えうせるのを確認すると、リューインの呼び出した炎は昇天するようにして消えていき、その先から雲が切れ間を見せ始めた。
「……っはは、晴れました!」
雨も風も、吹き荒れていた木枯らしも消え、心地よい海風だけが残り、その穏やかさに猟兵たちは思わず頬を緩める。
「ふぅ……今度は、激しく揺れないといいんですけどね……」
一仕事終えたリューインが船に降り立ち、貰った梅干しを気つけ代わりに口に放り込む。
すっぱい! だが、どこか食欲を刺激するような鮮烈な香りが、気持ちを落ち着かせてくれる。
かくして、波濤に切り込む鉄甲船に群がったウミネコと木枯らしは消え、猟兵たちを乗せた船は光の玉の向こうへと、進んでいく。
その先にあるのは、本当に修羅の領域なのかどうなのか……。
だが、勝利を勝ち取った猟兵たちの胸の内には、新たな世界への希望と探求心が満ち満ちていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2020年04月01日
宿敵
『木影流忍者・凩』
を撃破!
|