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誰がために拳は握られる

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●己のために
 最初に感じたのは、足枷が皮膚と擦れてジンジンと腫れていくような痛み。
 目を開けるが、赤黒い視界に気分が滅入る。体が重いと感じる。
 猛烈な、という程はないが、無視できない吐き気を感じて余計に鬱屈した気分になり、さらにその鬱屈とした者が喉からせり上がってくるような負の循環に陥ってしまっている自覚があった。
 ああ、と思う。
 最初から最後まで自分のためだけに生きたなぁ。
 自分勝手だった。けれど、この荒廃した世界ではこれが正解なのだ。そう自分に言い聞かせた。
 己の子のため、親のため、親しい者のため、愛おしい者のため。
 そう言ってきた者たちを、全て踏み潰してきたこの人生は、間違いではない。間違いではない。間違いではないと思っているが、どこか違った生き方が出来たのではないかと思ってしまう。

 ―――ああ、いつか、自分が踏みにじってきた生き方をしてみたい。
 けれど、そんな機会は、訪れることなく己の人生は幕を閉じるのだ。

●誰がために
 アポカリプスヘル。それは荒廃した世界。オブリビオンストームに苛まれ、文明という文明は灰燼に帰した世界。
 だが、そんな世界であっても、未だ人類の灯火は消えていない。細々とではあるが、人類は滅亡しきっていない。未だ見ぬ明日を迎えるために、もがき苦しみ、それでも次へと繋ぐために必死で生きている。

 だが、その必死さを嘲笑うようにオブリビオンは略奪を暴虐を重ねる。無慈悲な暴力は嵐のように人々を苦しめる。なぜこんな理不尽な目に合わなければならないのか。どうして、こんな目に合わなければならないのか。
 それほどまでのことをしてしまったのか、人類は。

「いいえ。生命とは、常に希望を抱くからこそ、紡がれるものなのです。皆さん、どうか彼らを救ってください」
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちをグリモア猟兵であるナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)が出迎える。
 頭を下げ、微笑みを持って猟兵を迎えるも、微笑みはわずかにこわばっていた。

「今回の事件は、アポカリプスヘルです。ご存知かもしれませんが、アポカリプスヘルはオブリビオンストームによって文明が荒廃しています。人類は拠点を構え、崩壊した文明の痕から物資を回収しながら生活しているのですが……オブリビオンと化した野盗たちによって略奪と暴虐に常に晒されています」
 アポカリプスヘルの復興は未だならず、文明再建には未だ遠い。
 物資の困窮もそうなのだが、問題が深刻なのはオブリビオンによる人攫いや、それに付随した襲撃による人的被害の多さだ。
 物資が潤沢に用意できても、それを扱う人間がいなければ、元も子もない。

「はい……オブリビオン拳士たちの軍団「拳帝軍」と呼ばれるオブリビオンの集団はご存知でしょうか?今回はその拳帝軍の拳闘士の要塞を攻略し、拐かされ、奴隷にされている人々の救出をお願いしたいのです」
 オブリビオンたちは、どうやら人々をさらい、要塞に設けられたコロシアムでの殺し合いに興じているようだった。
 さらってきた人々を奴隷とし、コロシアムでの殺し合いに参加させたり、猛獣をけしかけてのショーを行ったりと、許されざる蛮行に及んでいるのだ。

「まずは、皆さんがコロシアムに潜入していただくことになるのですが……闘士として潜入して、オブリビオンの興味を引いてください。この要塞の主である幻鏡拳のミラというオブリビオンを引きずり出して倒さねばなりません。もちろん、彼女は強敵です。油断なりません」
 コロシアムに潜入するのはいいのだが、要塞内部のコロシアムでは奴隷同士の殺し合いを前座として行うようで、最初の相手は奴隷の一般人になってしまう。
 彼らを傷つけず、如何に鎮圧するのかが、この後の展開に重要なファクターになる。

「奴隷の方々は一般人です。皆さんにとっては、問題にならない障害ですが……彼らもまた人類再建には不可欠な方々。どうか傷つけずに場を収めてほしいのです」
 奴隷を傷つけずに、拘束または鎮圧する。そこまではいいが、当然そんなことをすれば、オブリビオンの不興を買うだろう。

「それもまた一つの狙いです。オブリビオンと化したフラスコチャイルド。彼らが集団でコロシアムに殺到することでしょう。奴隷の皆さんを制した後ですので、彼らを守りながらの難しい戦いになることが予想されます。彼らを倒した後、幻鏡拳のミラが現れますので、撃破をお願いいたします……」
 厳しい戦いになることは承知の上で、ナイアルテは頭を下げる。

 どうか、彼らを救ってください。お願いいたします、とナイアルテは再度猟兵たちに頭を下げるのだった。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はアポカリプスヘルの事件になります。前章全て戦うシナリオになりますので、思いの丈を存分にプレイングに託していただければと思います。

●第一章
 潜入編ですが、皆さん問題なくコロシアムに闘士として潜入できています。
 戦う相手ですが、アポカリプスヘルの拠点から攫われてきた老若男女問わず奴隷としてコロシアムに投入される人々になります。
 一般人ですので、猟兵に敵うことはありませんが、親しい者たちを人質に取られ、不退転の覚悟で襲いかかってきますので、傷つけずに拘束、峰打ちなどしていただくと、続くシナリオで彼らが助けてくれることでしょう。

●第二章
 集団戦になります。奴隷たちを傷つけずに倒した皆さんを不審に思ったオブリビオンが投入してくるフラスコチャイルドがオブリビオンになった敵です。
 彼らはオブリビオンでありますので、救うことは叶いませんが、躯の海へと疾く返すことが最善かと思われます。
 一見、非戦闘員に見えますが、戦闘力はオブリビオンですから、油断なりません。

●第三章
 集団戦を制した後に現れるボス、拳帝軍』幻鏡拳のミラ。彼女は素早いスピードを生かした高速戦闘を得意としています。
 自身の幻影を生み出したり、ユーベルコードをコピーして使用してきたりとボスにふさわしい戦闘力を持っています。
 また第二章で救出した奴隷たちがいれば、コロシアムの地形を熟知しているので死角を教えてくれたり、武器を取って支援してくれたりもします。
 ただ、一般人なので無理はできません。

 それでは、荒廃した世界での猟兵の戦いを綴る一片となれるように、いっぱいがんばります!
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第1章 冒険 『ザ・コロシアム』

POW   :    とにかく力押しで目立つ!

SPD   :    とにかく素早い技で目立つ!

WIZ   :    とにかく変わった能力で目立つ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 コロシアムの中は血の匂いがこびり着いているような、そんな匂いが充満していた。
 それはコロシアムの中心に向かえば向かうほど濃くなり、嗅覚に優れた者であれば、そのあまりの濃さにコロシアムで流れた血の量を想像することは、難しくない。

 だからこそ、と想うのは義憤ではないだろう。救えなかった生命は、今を生きる命を守ることで手向けとするしかない。
 この場にいる奴隷たちは、誰も彼もが誰かのために、その生命を投げ出そうとしている。
 自分ではない誰かが、自分の大切な人たちを守ってくれますようにと、願いを託して。

 ならば、猟兵は応えなければならない。
 託された願いを、次の生命に繋ぐために―――!
アメリア・イアハッター
ダンスとかを見られるのは好きだけど、こういう見世物は気分悪いなぁ
観客を盛り上げる必要もないし、不興を買った方がいいってことだから、さっさとお相手さんを制圧しちゃおう!

観客にはあまり顔を見せぬよう、帽子を深く被り入場
戦闘相手には大丈夫だよという気持ちを込めて笑顔を見せ、戦闘開始まで静かに佇む

戦闘では相手が踏み出すと同時にUC発動
自分の足元から相手の足元までの地面を氷で覆い、氷上を滑走して相手へ接近
相手が足を滑らせたところをケガさせないようにキャッチ
そのまま氷の上でくるくる回して、相手の目が回ってきたところで地面に俯せに押し倒し制圧を狙う

後は任せて、と相手の耳元で囁いた後、審判へ勝利宣言を行おう



 コロシアムの熱気は、これから繰り広げられる血と虐殺の匂いを感じ取って最高潮に達しようとしていた。コロシアムの観客はどれも彼もオブリビオンである野盗、レイダーたち。ならず者たちが血気盛んに耳を覆いたくなるような声を上げている。
 これもまた人間の一つの側面なのだろうか。かつて在りし者たち、オブリビオン。今を侵す過去の化身たち。彼らの視線は今まさにコロシアムの中央にいる者たちに注がれていた。

「ダンスとか見られるのは好きなだけど、こういう見世物は気分悪いなぁ」
 ぼそり、と小さくつぶやいたのは古びた赤い帽子を目深にかぶった女性……アメリア・イアハッター(想空流・f01896)。観客は女性の闘士という思わぬ見世物に興奮を隠しきれない様子だ。
 対するはアポカリプスヘルの住人であろう成人の男性だ。これまで此処に触られるまでに抵抗していたのだろう、青あざや擦り傷が痛々しい。だが、その瞳に宿るのは純然たる決意。
 あの瞳は、このコロシアムの熱気に飲まれる者たちとは違う瞳だとアメリアは笑顔を浮かべる。こんな荒廃した世界でもなお、あんな瞳が見られるなんて、と思わず笑顔になってしまった。

「観客を盛り上げる義理なんてひとつもないし……だいじょうぶ」
 目深にかぶった赤い帽子は、きっと対戦相手の奴隷にだけ見える笑顔を観客からは隠したことだろう。
 大丈夫だよ、と慈愛すら感じる笑顔でアメリアは、これから殺し合いをしようと向かい合う奴隷へと安心して、と場違いな表情を向けたのだ。
 困惑する奴隷。まさか、そんな笑顔を向けられるとは思いもしなかったからだ。

 審判が開始を告げる。奴隷が足を踏み出した瞬間、すでに決着は着いていたのかもしれない。
 アメリアのユーベルコード、氷上妖精(フィギュアスケート)が発動し、一瞬で奴隷の足元までを氷結する。一瞬で表情を滑走し、接近を果たす。
 あまりのスピードにコロシアムに渦巻いていた血の匂いは地面へと吸い込まれてしまうような錯覚。奴隷の瞳には、赤色の髪をなびかせ、こちらへと襲い来る……いや、ただ、滑走するアメリアの姿が写っていた。
 こんな状況でなければ、美しいとさえ思ったであろう彼女の姿が一瞬で視界から消えると同時に、視界が流転する。
「おっと、危ない。怪我したら大変だからね。そうじゃなくって、君、怪我だらけじゃない」

 アメリアは一瞬で奴隷の男を表情で回し、地面へとうつ伏せに押し倒す。どれだけ暴れても少しも動けない。次第に疲れて奴隷は手足を動かす抵抗すらできなくなってしまう。
 そんな彼の頭の上から、声が落ちる。
 ああ、こんな優しい声、久しぶりに聞いた。涙が出そうになった。死を覚悟していたのに、どうしてもまた親しい者たちに会いたいと願ってしまうほどに。
 後は任せて、と耳元でささやくアメリアの声は、彼にとって、どれほどの価値があっただろうか。
 彼の絶望を、少しでも慰めることができただろうか。ぽろぽろと溢れる涙が、きっとその証。

「審判。私勝っちゃった。もうこの子、動けないし、私の勝ちよね?」
 文句はないよね?と念押しして、審判を睨むアメリア。審判は流血を望んでいたが、奴隷の抵抗が望めない以上、アメリアの勝利を宣言するしかなく―――

 特大のブーイングを持って、アメリアの試合は幕を閉じたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

迅雷・電子
【心情】ひっどいね…一般人に戦いを強いるなんてさ…こんな酷い見世物を止めるためにもなんとかしなきゃね!

【作戦】格好はイェカと同じ。相撲の動きで戦うよ!戦わされてる人達は傷つけない事を重点的に考え、彼らの攻撃は【見切り】でよけつつ、張り手による【気絶攻撃】で気絶させるよ!「申し訳ないね…でもこの場所をぶっ潰すためなんだ!」



 コロシアムに一風変わった闘士が入ったという噂は、すぐにならず者たちレイダーの間で広まった。
 曰く、防具らしい防具もつけずに徒手空拳で戦うのだという。重火器やチェーンソー剣など嘗ての文明から拝借してきたものを改造するなりして戦うならず者たちからすれば、一笑に付すものだったのだろう。
 失笑と共にその噂は広まり、そいつのショーはいつだとコロシアムのそこかしこで噂されるようになった。
 どうせ物珍しさだけで、すぐに消えていく者だろうと高を括っているのだ。
 奴隷のように素手で猛獣の相手をさせられることもなければ、大抵は武器の一つも用意される。
 だから、迅雷・電子(女雷電・f23120)が武器の受け取りを拒否した時、審判は軽く目を見張ったのだ。こいつが噂のイカれたやろうかと。
 だが、彼女の姿は想像以上だった。素手であることはもちろん、防具らしい防具もない。裸足に徒手。まわしにさらしと明らかにそこらの奴隷よりも装備は劣る。
 何を考えて主催者は、こんなのを、と訝しむ。

「まあ、御託並べんのはさ、いっぺん見てから言った方が良いさ」
 軽く息を吸う。たったそれだけで彼女を取り巻く空気が変わったような気がした。
 雷子の心中は今まさに荒れ狂う嵐。ひどいことをするねぇ…一般人に戦いを強いるなんて。こんな酷い見世物はさっさと止めなければならないね、と。
 だが、実際にコロシアムの中心に連れてこられたのは、雷子の想像以上の相手だった。

「……っ!」
 思わず息を飲む。老若男女問わずに集められていると聞いてはいたが……雷子の目の前にいるのは、やせ細った少女。その手には余るような重量であろう分厚い刃のコンバットナイフ。ガチガチと歯の根が合わないのだろう。
 普通の世界ならば、雷子の様子に怯むことはないだろう。年頃の女子高生なのだから。だが、アポカリプスヘルでは違う。相対する少女にとって、目の前の雷子は未知の存在。

 もう雷子には言葉がなかった。ただただ、その身を焦がしてしまいそうな、名前の通りの感情が渦巻いている。許せないという思いは、自身から溢れてしまいそうだった。
 審判の開始の声がする。ふざけるな。腰を低く落とす。待ったなし、どころではない。地面を掴まんばかりの勢いで最速最短で雷子が駆ける。
 やせ細った少女は声も挙げられぬまま、雷子の迫る掌を見ていた。涙を浮かべながら、これから訪れるであろう痛みを、死を、受け入れようとして―――

「申し訳ないね……でも、この場所をぶっ潰すためなんだ。少しだけ辛抱しておくれ」
 その優しい声が聞こえて、涙で売るんだ瞳が雷子の瞳を捉えた。
 派手な音は、雷子が大地を蹴った音だけ。驚くほどに優しく、けれど、たった一瞬で少女の意識を落とす張り手が打ち出される。
 見ていたならず者たちからは、少女の首が消し飛んだようにも見えただろう。
 だが、少女には傷一つなく、寸止めの衝撃だけで彼女の脳を揺らして、意識を断ったのだ。
 ぐったりとした少女の体を抱いて、コロシアムを後にする雷子。その背中に審判も制止することはできなかった。

 彼女の背中からは、明らかな怒気。
 今まさにオブリビオンは、虎の尾を踏んだのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ジルモント
◆SPD
全く、酷いにおいだ
この下らない見世物の為に一体どれだけの血が流れたのか…

銃は抜かずに戦う、奴隷として捕らわれた者の血をこれ以上流したくはない
まず相手の攻撃をひたすら回避する
相手が疲労してきた頃を見計らって『カウンター』で武器を蹴り上げ弾き飛ばし
そのまま足を払って転倒させ拘束を試みる
疲れさせたのは拘束後に抵抗させない為だが、まだ抵抗するなら声をかけて止める
「もういい、動くな。あんたを殺すつもりも、殺させるつもりもない」

拘束による戦闘不能をもって決着としたい
もし審判がこれ以上を求めても、戦う相手が居ないのではどうしようもないと言い張り応じない
それとも、あんたが相手をしてくれるのか?…冗談だ



 血の匂いというのは、どんな時でも同じである。だが、この場所だけは別格だ。
 流れる血は常に弱者の血。本来ならば、守られるべき弱者たちの血で染まったコロシアムは、血の匂い以上に酷い匂いがする。
 一方的に追いやられ、責め立てられ、その血を流してもなお、守られぬ生命があるというのなら、それこそ下らない見世物だと言う他ない。

 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)の鋭い嗅覚は、コロシアムの中に充満する血の匂いに敏感であった。あまりにも下らない見世物だと唾棄すべきところなのだが、今は目的を達するために、この興行に付き合わねばならないことに多少の苛立つものもあるというものだ。

「……で、俺の相手というのは」
 短く審判に尋ねるシキ。審判は面白がるように視線をコロシアムの中央に向ける。
 そこにいたのは、震える足で立つ青年……にはまだ達していないであろう少年。衣服はボロボロである上に、最低限の武器にと小銃を持たされている。
 だが体躯の小さい彼に、その銃はまともに扱えないだろう。そこまで計算づくなのだ、ここのオブリビオンは。彼の体で撃てば、きっと肩は外れ痛みに悶え苦しむことだろう。その姿を滑稽だと笑いものにしながら死に至らしめることが目的なのだ。
 それがわかる。冷静に、現状を把握する。冷静に。息を吐き出す。

「さっさと始めてくれ。俺は待つのが嫌いなんでね」
 そう急かすなよ、と審判の下卑た笑みが耳障りだった。
 審判の開始の合図は短く、コロシアムの見物客のならず者たちレイダーは、これから行われるであろう少年のショーを今かと楽しみに野次を飛ばす。
 まずは、とシキが先に動く。元は相手の攻撃を見極め、披露させるつもりだったが、気が変わった。無駄に痛みを与えるのも、得策ではない。
 距離を詰め、少年の頼みの綱である小銃を蹴り上げ、弾き飛ばす。そのまま足を払って転倒させるも、少年も死にものぐるいでシキへとつかみかかる。

「いい動きだ。悪くない。それに度胸もある。惜しいな」
 こんな状況でなければ。そう言葉を付け足すも、シキは少年の攻撃を避け続けるばかりで反撃しない。ブーイングが飛び交う。チンタラするな、早くぶち殺せ!
 少年の目を見ればわかる。自分がシキに敵うことはできないこを承知の上で掴みかかっているのだ。ならば、そうそうに終わらせるのまた慈悲だろう。

 少年の疲労にもつれた足を払って、転倒させ地面に押さえつける。暴れる姿はひどく痛ましいが、彼にとっては不退転。諦めるわけにはいかないのだ。

「もういい、動くな。お前を殺すつもりも、殺させるつもりもない」
 少年にだけ聞こえるように小さくつぶやく。え、と動揺する声をかき消すようにシキは審判に問う。
「もう良いだろう。これで決着としたい……こんなやりがいのない相手を用意されても困る……次の相手に期待するさ……それとも、あんたが相手をしてくれるのか?」
 審判が食い下がろうとするも、有無を言わさぬ言葉。シキのプレッシャーに一歩後ずさる審判を背に、軽口を叩くように、

「……冗談だ」
 だが、次は冗談ではない。そうシキの背中が言っているようにも思えた……

成功 🔵​🔵​🔴​

政木・朱鞠
「私の試合にケチを付けるなら…遊んであげるから降りてきなさい!」
無傷で試合を終わらせるのなら、顔を隠したとしても目を付けられるだろうからワザと派手に観客を挑発してオブリビオン達にターゲットとして覚えて貰わないとね。

【SPD】
武器は打咎鞭『九尾〆下帯』をチョイスして対戦相手の拘束を目指すよ。
序盤はユーベルコード『柳風歩』を使って回避して観客を焦らしながら相手の攻撃後の隙を狙わせてもらおうかな…。
回避後は【鎧砕き】で相手の得物を叩き落とし、鞭で絡めて【気絶攻撃】する戦法で相手に重度の怪我をさせないように心がけるよ。
できれば気絶させる時に事件解決を誓う言葉をかけておきたいかな。

アドリブも連携もOK



 彼女の姿はおおよそ、コロシアムという場所には似つかわしい姿だったのかもしれない。彼女の美貌はそれだけ際立っていたからだ。
 きっと彼女の姿を見たならず者ならば、下世話なことを想像しただろうし、実際そういう行為に及ぼうと画策するものもいた。
 だが、彼女もまたコロシアムのショーを彩る闘士の一人ともなれば、おいそれと手を出すことなど叶わない。なぜなら、美しい薔薇に棘があるように、彼女―――政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)にもまた鋭い棘があるのだから。

「我が身は枝垂れる柳葉…風の吹くままにそよぎ…向かう刃は我が身に届かぬ…」
 すでにコロシアムでは彼女の試合というにはあまりにも一方的すぎる展開が続いていた。ユーベルコード、柳風歩(リュウフウホ)によって、相手である女性の必死の攻撃は僅かな衣擦れの音でさえ、攻撃を予測され回避されてしまう。
 何度も何度もナイフが宙を切る。
 なんで!どうして!どうして当たらないのと、涙をこらえながら朱鞠に斬りかかる女性は、絶望的な戦いに身を投じていることがわかっているのだろう。
 だが、どうしてもなさねばならぬのだ。我が子のため、少しでも彼女は長く生きねばならない。自分が死ぬのが早ければ、幼い我が子をショーの見世物にするとイワれているのだ。
 子のために力を振り絞らない親などいない。たとえそれが、どんなに許されざる行為であったとしても。

「観客を焦らして喜ばせるっていうのもね……あんまり趣味じゃないっていうか……でも、っ、と!」
 朱鞠の武器、打咎鞭『九尾〆下帯』が女性の手首をたたき武器を振り落とす。同時に絡みついて、自身の方へと強引に引き寄せる。できる限り相手に怪我をさせないようにと心がけたつもりではあったが、女性の必死さにたじろいだのだ。
 きっと何か事情があるのね。彼女の憂いを断ってあげたい。そう思い、引き寄せ耳元に囁く。

「だいじょうぶ。きっと助けてあげるから。あなたも、あなたの大切な人も。だから、ちょっとだけごめんなさいね?」
 朱鞠の腕の中で女性が困惑するも、すぐに軽い衝撃によって彼女の意識は途絶える。気絶させることなど訳もないのだが、コロシアムの観客からは当然のようにブーイングが飛ぶ。
 今までの試合を見ても、流血が一切ないのだ。血生臭いショーを期待していた荒くれ者達からすれば、フラストレーションが溜まっていて当然だ。
 そんな彼らを睨めつける朱鞠。

「私の試合にケチを付けるなら…遊んであげるから降りてきなさい!」
 鞭が地面に叩きつけられる音がコロシアムに響き渡る。腕の中の女性は、すでに気絶している。だが、その表情は未だ硬い。目が覚めたとしても、己の子の無事を真っ先に願うであろうことだけは、簡単にわかる。だから、朱鞠はわざと派手に観客を挑発する。

「降りてくる度胸もないんだったら、大人しくすっ込んでることね!」
 これだけ煽れば、オブリビオンの興味は自分に向くだろう。間違っても、この女性と、その子たちに向くことない。危険な挑発ではあったが、彼女たちを危険に晒すよりはマシだ。
 それが、子を想う母への朱鞠ができるたった一つのやり方だったからだ―――!

成功 🔵​🔵​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘NG
グロNG
WIZ

吸血鬼 ルルちゃん参上!
お待ちかねの過激なやつ披露するわね❤

観客にウィンクや投げキッスをして入場!
対戦相手には嘲笑と罵倒の言葉を

運が無かったわね、人間。
私は貴方達が大嫌いなの(本心)

ギリギリ当てないように【属性攻撃】の落雷。
思い切って接近してきても
悲愴の剣の【衝撃波】で吹き飛ばし
『愛の想起・妖狐烈刃乱舞』で
明日香の放つ360本の鋏が相手の周囲の床に刺さり爆発

哀れ人間は木っ端微塵……と思わせて
実は私のマントの中に★
爆発の瞬間【念動力】で引き寄せて助けたの

私はグロも大嫌いなの!!
エロの方が楽しいわ。約束通り過激なやつ行くわよ❤

服を脱ぎ
明日香とイチャコラして
観客や審判を【誘惑】



 コロシアム会場のフラストレーションは、最高潮に達していた。
 原因は明らかだった。猟兵たちと奴隷たちの試合は、これまでそのどれもが流血が起こらず、それどころか、相手の生命を奪いことすらなかったからだ。暴虐の限りを尽くしてきたオブリビオンのならず者たちからすれば、期待はずれのショーばかりになってしまったからだ。
 審判もこれには慌ててしまう。そうでなくても、この興行次第で自身の首も飛ぶやもしれぬのだから。
 だが、猟兵たちにとって、そんなことはどうでもいいことだった。このコロシアムを潰す。ただそれだけのために集まったのだから。

 しかし、ここで審判の顔が明るくなる。
 コロシアムにまた一人女性が入ってくる。観客にウィンクや投げキッスなどをしながら、サービスたっぷりに入場してきたのは、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)。
 自信満々な傲岸不遜とも取れる態度は、闘士としてはどうなのかと思われたが、観客の反応は上々だ。今までの試合のフラストレーションのせいもあって、ドゥルールのパフォーマンスは好評だった。

「あらぁ、これまた貧相な相手ねぇ。あはっ、まったくもって運が無かったわkね、人間。私は貴方達が大嫌いなの」
 心からの言葉。偽りのない本音がドゥルールから放たれる。放たれた相手―――ぼさぼさの頭髪の少女とも少年とも取れないような幼い子供が、その偽りのない言葉によって体をこわばらせる。
 怖い。大人の女性ではあるが、綺麗だけれど、怖い。そうでなくても、このコロシアムの異様な雰囲気に気圧され、今にも泣き出しそうだ。
 けれど、泣けない。泣いてはならない。泣いてしまえば、コロシアムのどこかに収容されている母親を心配させてしまう。それだけは、だめだ。
 う、うぅ、と声にならない声をこらえながら、電流ほとばしりスタンガンを構える。使い方はよくわからない。でも、これをあの女の人に突き立てれば―――

「あら、生意気。そんな物騒なもの、私に向けてどうしようというのかしら?」
 目の前を掠るようにしてドゥルールの落雷が落ちる。あまりの衝撃に尻もちを着いてしまう。足の震えは大きくなって、さらに動けなくなる。でも、と立ち上がり、ふらつきながらも落雷の攻撃を避け……ているつもりで走り、ドゥルールに迫る!

「そんな汚いなりで私に近づこうなんて、人間はつくづく愚かねぇ♥」
 悲愴の剣が振られ、ただの風切音と共に衝撃波が少女を襲う。あまりの衝撃に転げるようにしてコロシアムの端へと追いやられると、会場からは嘲笑の声が響き渡る。いいぞ!もっと痛めつけろ!一思いに殺すなんてもったいない!
 そんな声に益々恐怖に顔が怖ばる。あれだけ決意したのに。その決意すらも、たやすく砕かれそうになる。でも、いやだ。お母さん!お母さん!お母さん!

「愛の想起・妖狐烈刃乱舞(リザレクトオブリビオン・シザース・ダイアキュート)……まったくもってみていられないわ」
 ドゥルールのユーベルコードがついに発動する。妖狐「明日香」を召喚し、その妖艶ながらも美麗な姿を顕にする。その手には鋏。狐火を纏ったその鋏が信じられない本数生み出される。
 コロシアムを覆うほどの大漁の狐火をまとう鋏は、一切の躊躇なく少女へと殺到する。360本の鋏は過たずコロシアムの床を盛大に爆発させ、奴隷の少女の姿を粉微塵にしてしまった―――

 かのように見えたが、爆発のタイミングで少女を念動力で引き寄せ彼女のマントの中に隠したのだ!
 小さな声でマントの中の少女にささやく。私ね、人間もそうだけれど、グロいのも大嫌いなの。
 少女をマントに包んで念動力でコロシアムの外に運ぶと、コロシアムの中央で召喚した妖狐と共に始めるのは、ストリップショー。
 望外のショーの始まりに観客は湧く。妖艶な二人の営みは、コロシアムを熱狂の渦にへと巻き込んでいく。

 そう、マントにくるまれた少女が、無事に危険の及ばぬ場所まで運ばれるまで、そのショーは続いたのだった……!

成功 🔵​🔵​🔴​

ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・連携歓迎

つまるところ世界はステージ!
そのステージの上で今日もエンターテインメントが繰り広げられている!
さぁ、今日も楽しませてよ!

って言いたいところなんだけれど
んもー
これじゃ盛り上がらないよ!

何?こども相手に気後れしてちゃあ、この先大変だよ?
と挑発して一発攻撃してもらおうかな
そのときにまたはその隙に、球体を一個奴隷くんの服の中に仕込もうか

やったなー!倍返しだー!
とおーっきな球体を取り出して観客席に向けてドーンッ!
球体で引っ張って奴隷くんには何度も避けてもらうよ
何度か繰り返してすっきりしたら目を回した奴隷くんのうえに腰を下ろして勝ち誇る!
やほー!みんな楽しんでくれたー!😊



 笑い声が響き渡る。子供らしい笑い声。こんな声、久しく聞いていない。荒廃した世界では、子供が子供らしく生きることすら難しい。
 誰も彼もが必死であるがゆえに、人間らしさは摩耗していく。明日を繋ぐために、さらに明日から続く更に向こうに繋ぐために、人間らしさを担保にして、明日の生命を買わなければならない。
 だから、彼、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の笑い声はコロシアムにおいては、異質だった。
 本来、子供とはかくあるべしというような純粋無垢な笑顔。その容姿は人目を引くが、眼帯やテーピングは逆に、此処、コロシアムらしさを表しているように思えたからだ。
 だからこそ、その笑顔が、楽しげな笑顔が、奴隷たちの心をかきむしるのだ。己の子らに、あんなふうに笑うことを許せない自分たちの現状が、許せない。

「あははは!いいね!世界はステージ!今日もエンターテインメントが繰り広げられている、世界サイコー!さぁ、今日も楽しませてよ!」
 ロニがコロシアムの中央で相対するのは、彼よりもずっと年上の中年の男性。中年と言っても、アポカリプスヘルにおいて、この年まで五体満足でいられるのは、その無駄なく削ぎ落とされた恵まれた体あってのことだ。
 だが、彼もまた誰かのために拳を握る者。自身の子供、もしかしたら孫ほども年の離れたロニに対して、ためらいが生じているのだ。
 コロシアムからは奴隷の彼に対して、臆病者だとか、でかいのは図体だけかだとか、そんな罵声が飛び交う。どうしてもできない。我が子の顔が、ロニの顔に張り付いているような、そんな錯覚さえ覚えてしまっていた。

「んもー、これじゃ盛り上がらないよ!楽しまなきゃさー!人生!ね!世界はこんなにもサイコーなのにさ!何?子供相手に気後れしてちゃあ、この先大変だよ?ボクみたいな姿をしていたって、凶悪なさー……君の子供を痛めつけるようなやつだって、いるんだから―――」
 ロニの挑発に奴隷が動く。最後まで言葉を紡がせない。鋼鉄のナックルを握りしめた拳が、ロニの顔面へと振り抜かれる。しまった、と頭に血の登った奴隷は青ざめる。
 だが―――

「あは!ようやくその気になったー?やればできんじゃん!いいね!いいね!躊躇なく顔面狙ってくる気概!」
 その小節はロニの眼前で止まる。ロニの人差し指が、拳を一本で止めていたのだ。
 その隙にロニの周りを浮遊していた球体郡のうち一つが奴隷の彼の服の中に仕込まれる。にへ、と笑うロニ。

「やったなー!倍返しされても文句は効かないからねー!あ、そーれぇ!」
 さらに大きな球体郡がロニの周りに現れ浮遊する。その巨大な球体が、奴隷目掛けて打ち出される!
 だが、奴隷は見事な動きでそれを回避する……回避すれば、当然のその大きな球体の行く先は……観客席だ!凄まじい音を立てて、観客だったオブリビオンたちが悲鳴を上げて潰れる。

「おー!避けたなー!まてまてまてまてぇー!ひゃーほー!」
 奴隷がまた球体の攻撃を避ける。観客席に突っ込む球体。聞こえるのは、オブリビオンの悲鳴と混乱の声ばかり。審判が止めようと入ってくるも、テンションの上がったロニには届かない。届くわけがない。だって聞いてないから。

「あ、それー!はいやー!せいやー!あはは!楽しいねぇ!みんな楽しんでくれたかなー!?」
 何度かそれを繰り返してすっきりした顔で疲労で倒れた奴隷の上に腰を下ろすロニ。あんな攻撃を何度も避けられるはずがない奴隷がなぜ……?
 それは、ロニが奴隷の服の中に仕込んだ小さな球に理由がある。彼の仕込んだ球体をコントロールすることによって、ロニの攻撃を回避する行動を強制的に取らせていたのだ。

 ……その分奴隷は目を回してしまって、三半規管を揺さぶられてしまったのだが。

「でもまー、いいよね。覚悟を決めた男の拳とはいえ、神であるボクに拳を向けたんだし。……良い拳だったよ。ふふ、楽しんでくれたかなー?」

 ロニの笑顔とは裏腹に、コロシアムは大混乱に陥っていた―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『フラスコチャイルド再現型オブリビオン群』

POW   :    Quiet noise
【静穏型ガトリング砲から発射された砲弾 】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    戦術:欺瞞情報拡散
戦闘力のない【情報収集型無人機とダミーオブリビオン 】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【偽情報の流布などを行い、市民からの援助】によって武器や防具がパワーアップする。
WIZ   :    AntieuvercodePulse【AP】
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【疑似代理神格型演算支援システム 】が出現してそれを180秒封じる。

イラスト:弐尾このむ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 はじめに彼らを見た時は、何も感情も抱かなかった。
 波すら立たなかったと言っていい。けれど、次第に。
 次第に。
 許せないという気持ちが、荒波のように、ささくれた木の表面のように、自分たちの心の中を支配していく。
 
 彼らは誰も彼も傷つけなかった。一人も殺さなかった。一滴の血すら流さなかった。
 自分たちとは違う。
 目の前に立った瞬間、またたく間に殺した。できるだけ残酷に。できるだけたくさんの血が流れるように。

 それが、間違ったものだと見せつけられた。あんな生き方があるのだと、こんな世界であっても、あんな生き方をすることができるのだと。

 ―――許せない。あんな綺麗な生き方、到底許せない!!

 コロシアムは猟兵たちの活躍によって、大混乱に陥っている。奴隷たちは誰も彼も無事だ。一人も傷つけられていない。だが、この場所も安全とは言い難い。
 コロシアムになだれ込んでくるオブリビオンの集団。彼らは猟兵も奴隷も見境なく攻撃を放ち、虐殺を実行するだろう。
 ただオブリビオンを倒すだけなら、難しくない。だが、猟兵の背後には、傍らには、守るべき尊い生命がある。
 荒廃した世界であっても、他者のことを慮れる生命。これこそが、この世界を少しずつでも良い方向へと転換していくための鎹。

 ―――ならば、守らねばならない。許されざる暴虐を退けてでも!
シキ・ジルモント
◆POW
随分と殺気立っている、そんなに俺達が気に入らないか

奴隷は保護し最優先で守る
さっきはすまなかったと声をかけ、敵意が無い事を言葉と態度で示す
敵のガトリング砲を警戒、撃ってくるなら奴隷を抱えて一緒にその場を離れ回避を図る
危険が迫れば庇い、多少自分が被弾してでも守る
言っただろう、お前を殺すつもりも殺させるつもりもない

敵を近付けさせないようハンドガンで攻撃、牽制しつつ数を減らす
多数の敵に囲まれたらユーベルコードを発動、『範囲攻撃』を行い包囲する敵を狙い撃つ
攻撃の際は苦痛が少なく済むよう急所を狙い手早く倒す

どんな戦い方でも文句を言う者はいないだろう
ここは既に、娯楽の為のコロシアムではないのだからな



 コロシアムになだれ込んでくるのは、フラスコチャイルド再現型のオブリビオン群。
 かつて在りしフラスコチャイルドを再現したオブリビオンだが、その数は猟兵達の数を圧倒する。重火器を持ち、数の暴力で猟兵たちを圧殺しようというのだ。

「許せない。そんな綺麗な、そんな綺麗な……!」
 幽鬼のように誰も彼もが恨めしい瞳を猟兵たちに向ける。なぜ。なぜ。なぜ。と疑問と怨嗟が混ざりあった視線がいくつも刺さるようだと、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は思った。

「随分と殺気立っているな。そんなに俺たちが気に入らないか」
 視線の先には静かな音を立てるガトリングガンをこちらに向けるフラスコチャイルド型オブリビオン。気に入らないとも。そんな生き方していいなんて、教わっていない。荒廃した世界で、そんな綺麗なものは許されないのだと、答えの代わりに銃弾が炸裂する。

「―――っ!」
 ばらまかれるように銃弾の雨が降り注ぐ。後先考えないような戦い。シキの後ろに奴隷たちがいようといまいとお構いなしの銃撃。フラスコチャイルド型オブリビオンの憎悪の瞳に映っているのは、もはや猟兵だけだ。
 奴隷たちの悲鳴があがる。よければ、背後の奴隷たちに銃弾が注がれる。避けなければ、自分が蜂の巣。
 ならば。

「さっきはすまなかったな」
 短く声をかけ、彼らを抱え、その場を走り抜ける。多少の被弾は計算積みだ。自分に当たれば、多少のダメージで済む。戦力の低下は否めないが、誤差だ。それよりも。

「お、お兄さん……!血、血が……!」
 抱えていた奴隷の一人、試合でシキに取り押さえられた少年が、シキの肩から流れる血を見て、血相を変える。こんなときにも自分ではない誰かの心配をするのかとシキは肩をすくめる。
「言っただろう。お前を殺すつもりも、殺させるつもりもない、と」
 だから、これは計算のうちだ。予定のうちなのだ。だから、お前が気に病むことはない。そういうように軽く頭に手をやる。

 盛大に破壊されていたコロシアムの観客席の瓦礫を盾にハンドガンで牽制する。
 牽制であっても、多少の効果は望めるはずだ。ハンドガンの放つ銃声とガトリングガンの銃声とでは、あまりにも数が違いすぎる。
 このままでは数で包囲され、シキも奴隷たちも穴だらけにされてしまうのは、時間の問題だった。

 だが、何も悲観することはない。猟兵とはそういうものだ。世界に選ばれたオブリビオンを滅する戦士。この程度の逆境、跳ね返せなくて何が猟兵か―――

「安心しろ。俺は言葉を違えるつもりはない」
 視線を巡らせる。撃つべき者を捉え、引き金を引く。単純なことだ。何も誇るべき技量でもない。だが、シキの心に去来するのは、僅かな誇り。彼の言葉を違えずに、実行するという正しさに後押しされた、自分の選択。

 ユーベルコード、ブレイズ・ブレイクが発動する。盾にしていた瓦礫から飛び出すと当然のようにガトリングガンの射線が殺到する。しかし、ガトリングガンから銃弾が放たれるよりも早く、シキのハンドガンから放たれる銃弾がフラスコチャイルドたちの眉間を一撃で貫いていく。
 一射一殺。
 ただの一撃でフラスコチャイルドたちを打倒していく様子は、まるで魔法かなにかを見ているようだった。

「……どんな戦い方でも文句を言うものはいないだろう。苦痛少なく、流す血も最小に……」
 周囲にいた最後のフラスコチャイルドの眉間が撃ち抜かれる。
 怨嗟の声も届かぬほどに、瞬く間に彼らの歪んだ願望を、生き方を、うち貫いたのだった。

 どんな死に方でも、どんな生き方でも、誰も否定できない。
 ここはもう娯楽の為のコロシアムではないのだから―――

成功 🔵​🔵​🔴​

政木・朱鞠
私達の戦い方で相当心が動いていたんだね。
でも、悲しいね…心が無いまま命を奪うために産み落とされるなんて…。
そう考えると同情する所はあるけど、今は君達には捕らわれた人達を手にかけ、死の恐怖を与えた咎の清算とその苛立ちを心に刻んで貰って骸の海にお帰り頂くよ。

戦闘【SPD】
相手は多勢…手数で押し負けないようにしないとね。
牽制武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして、『忍法・狐龍変化身』を使用して仮初めだけど真の姿の足部分を再現して機動力に特化した強化状態で翻弄しながら隙を狙い、機を見て蹴り技メインで【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使い【傷口をえぐる】でダメージを与える戦法を取ろうかな。

アドリブ連帯歓迎



 崩壊しかけたコロシアムは、すでにフラスコチャイルド再現型オブリビオン群がなだれ込む事によって、混戦の様相を呈してきていた。
 乱戦となって有利となるのは、当然フラスコチャイルドたちだ。なぜならば、猟兵たちは、今足枷がなされているような状態も同然だからだ。
 足枷……つまりは、奴隷として攫われてきた人間たちだ。彼らを守りながら、一体ではなく複数のオブリビオンを相手取らねばならない。

 その様子にフラスコチャイルドたちは、より一層苛立ちを見せる。なぜ。なぜ。なぜ!なぜ見捨てない!なぜ投げ出さない!全てのフラスコチャイルドたちが、一様に見せるのは怒り……
 だが、本当に怒りなのだろうか。そう疑問に思ってしまうのは、政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)だ。

「許せない!なぜ、あなた達はそんなにきれいなのか!そして、私達はどうして、そうじゃないのか!なぜ!なぜ!」
 戦闘力のない情報収集型無人機とダミーオブリビオン が召喚される。無人機とダミーオブリビオンによって、さらなる数で圧倒する戦法を取るようになったオブリビオン!このままでは数で圧倒されてしま上に、朱鞠はその背に、試合で気絶させた女性を抱えている。

「……私達の戦い方で相当心が動いていたんだね」
 同情するかのような言葉。憐憫すら感じる言葉は、余計にフラスコチャイルドたちを苛立たせる。そんな感情、一度だって向けられたことなどなかったのに。
 だから、なおさらに。同情してしまう。悲しいということを、悲しいと言える。けれど、悲しみだけでは、その空っぽの心は救えない。

「でも、悲しいからって、生命は帰ってこないんだよ。絶対に」
 彼女のユーベルコードが発動する。真の姿が、限定的ではあるが開放される。
 ユーベルコード、忍法・狐龍変化身(ニンポウ・コリュウヘンゲシン)……彼女の真の姿である具足に包まれた足が狐火を纏う。
 その変化に、背に負った女性が意識を取り戻す。あ、気がついた?と朱鞠が優しく微笑む。先程まで明らかに敵意を向けていた相手に向ける笑顔ではなかった。
 少なくとも女性はそう感じ、どうにか彼女に謝罪したいと思うもうまく言葉が紡げない。

「舌、噛むといけないから……でも、安心して。きっと守って見せるから!」
 次の瞬間には駆け出す。機動力に特化した状態へと強化された彼女のスピードは、数で封殺できるものではない。牽制、と彼女は言っていたが、拷問具『荊野鎖』が振り乱される度にフラスコチャイルドたちが生み出したドローンやダミーが次々と吹き飛んでいく。
 まさに目にも止まらぬ速度でオブリビオンたちの数的優位を突き崩していく!

「ここなら、安心だから……じっとしておいて?」
 背負っていた女性を戦闘圏内から外れた場所に下ろして、再び戦場に戻ろうとした彼女の手を掴む女性。何?と視線で問う。今更だけれど、先程の試合の続きだろうか。

「ごめんなさい、ありがとう……!」
 相反するようで、似た言葉が女性から紡がれる。貴方に敵意を向けたこと、貴方に救われたこと。同時に二つ。けれど、朱鞠は何でもないことのように笑っていうのだ。

「生きてればそういうことだってあるよ。だから、次は貴方が誰かのためにそうしてあげてね?」
 それが、フラスコチャイルドたちと、奴隷であった彼女たちとの違い。
 一刻も早く、オブリビオンである彼らを、骸の海へと返さなければならない。奴隷である彼らと、フラスコチャイルドたち両方のためにも。

 そして、一刻の後……
 朱鞠は、まさに昇竜を思わせるかのようにフラスコチャイルドたちを骸の海に返すのだった。
 その姿を高見で見る者がいた……全てを弄ぶかのように見下ろす何者か……そう、この要塞の主、幻鏡拳のミラ―――!

成功 🔵​🔵​🔴​

迅雷・電子
【心情】なんかたくさん来たね…ようやく思いっきり戦える相手のようだよ。…?なんか怒ってるのかい?まあいい、残ってる一般人を守りつつ倒させてもらうよ!(四股を踏みつつ)

【作戦】敵の攻撃は背後に一般人がいなければ【見切り】で回避し、背後に一般人がいればつっぱりでガトリングの向きを変えて回避するよ!そして隙が生まれればひとりの敵を掴んで相撲投げで攻撃したり連続つっぱり、そして【2回攻撃】の雷電張り手で【吹き飛ばし】たりするよ!もし、一般人にどうやっても当たるようなら仕方ない…体張って守ろうかね!(絡み・アドリブOK)



 重い音がその場にいた者たちの体の芯にまで響く。何か重い物を空から落としたような音。地鳴りがするかのような、音。
 怒りに歪む者たち―――フラスコチャイルド再現型オブリビオン郡たちは、その音にビクリと足を止める。―――ズシン。
 また、音が響く。まさか、と思った。力強く大地を踏む所作。まるでそれは、このコロシアムの地に染み込んだ死したる奴隷たちの魂を鎮めるかのような神聖さえあった。

「ようやく来なすったねぇ……ようやく思いっきり戦える相手だ。何をそんなに怒ってるんだい……来なよ」
 フラスコチャイルドたちの眼前には、迅雷・電子(女雷電・f23120)が地均しのように四股を踏む姿があった。一種の荘厳ささえも感じさせる彼女の所作は、遠巻きに見守っている奴隷たちですら見惚れさせる何かが宿っていたのだ。

 しかし、その神聖ささえも、オブリビオンにとっては意味をなさない。理解しようにも理解を拒む。自身たちの人生においては、絶対に訪れないであろう境地。
 そこに至る猟兵たる雷子に憎悪にも似た感情を爆発させる。その感情はガトリングガンの銃弾となって雷子に降り注ぐ。
 だが、見合った時点でおそすぎるのだ。彼女のぶちかましは、銃弾の雨が着弾する前にオブリビオンの顎を割る。一体が吹き飛び、すぐさま別の群体の一人が雷子に銃口を向ける。

「遅い!遅すぎるんだよ!それに、銃口!そっちに向けんじゃない!」
 このままでは射線は奴隷たちを捕らえてしまう。雷子の張り手がガトリングの向きを強制的に変え、銃弾があらぬ方向へと打ち出される。そのまま、背後のフラスコチャイルドの首を掴んで、遠方の敵へと投げ飛ばす。
 二人まとめて吹き飛ばされ、直近のフラスコチャイルドに彼女のユーベルコード、雷電張り手(ライデンハリテ)が炸裂する。
 雷撃を纏った張り手が、空気の壁をぶち破り、雷鳴のような音を立ててフラスコチャイルドを打ち倒す。

「おねえちゃん!うしろ!」
 遠くから、試合で自身が相手をした少女が注意を促す。怖い思いをしたであろうに、それでも雷子の身を案じてくれる。だが、それが悪かった。少女の声に反応したフラスコチャイルドのガトリングガンの銃口が、少女に向けられる。
 位置が悪すぎる。雷子の背後にも銃口、少女にもまた別の銃口。どちらかしか選べない。自身の身を守ろうとすれば、少女が。少女を守ろうとすれば自身が。
 ならば、答えは。

「決まってるだろう!」
 一瞬の判断。少女を庇うように彼女を胸のうちに隠す雷子。その背にオブリビオンの銃弾が打ち込まれる。苦痛に喘ぐ声は、喉の奥に押し込んだ。出す声は、それではない。
 なんのために。一体なんのために、自身が稽古を積んでいるのか。この二つ名は、なんのために。もう知っている。

「女雷電……!伊達に呼ばれてはいないんだよ!」
 振り向きざまに張り手一閃。少女を守り、オブリビオンを滅するその姿は、まさに無双力士雷電そのものだった―――!

成功 🔵​🔵​🔴​

アメリア・イアハッター
許せない、ね
別に貴方達に許してもらう必要なんてないし、私達だって、許さないんだから!
この子達はもう傷つけさせないわ、絶対に!

戦闘では頼りになる猟兵達がいる
私は他の猟兵が憂いなく戦えるよう、この子達を守ろう
UC発動、自身は風の舞台上でダンスを繰り広げ、奴隷達をメインに風を纏わり付かせて外部の攻撃から守る
UCが発動している間に、奴隷達には守りやすい場所へと移動してもらえるように声をかける
例えば壁際や、控え室に入れるのならそれでも良い
少なくともまとまってもらえれば、他の人たちも守りやすいかな

自分はそれまで敵を挑発しながら踊りましょう
声をかけるわけじゃなく、ただ只管に楽しく踊れば、それが挑発になるかな



 始めてみた瞬間から、それは今までの人生において一番の異質なモノだった。煌めく赤髪が舞い上がるのを見た。
 それは心に落ちた一つのシミのようなものだった。じわりじわりと心の中を侵食していくそれは、己の欲望を否定するたった一滴の水。
 ただの一滴であっても、それは水面に波紋を広げる。ざわつく心。そもそも心なだとという上等なものさえあったのかという驚きと嘆き。
 だからこそ、許せない。
 このまま終わらせてくれていれば、あんなキレイなものを知らずにいれたのに。

「だから、許せない!あんな綺麗なモノが存在していいわけがない!そんなものがあるから、絶望する!希望を持ってしまう!どうあがいても私達には、生命には絶望しか待っていないというのに!」
 フラスコチャイルド再現型オブリビオン群たちが一斉に声を上げる。あまりにも揃ったその言葉は、大合唱となってコロシアムを震撼させる。
 それは怨嗟の声。よくも私達に希望を見せたな、と。よくも奴隷たちに希望をもたせたな、と。

「だから何。別に貴方達に許してもらう必要なんてないし、私達だって許さないんだから!傷つけなくてもいい人たちを傷つけて!この子達はもう傷つけさせないわ!」
 アメリア・イアハッター(想空流・f01896)の赤い髪が風になびく。フラスコチャイルド再現型オブリビオンたちにとって、もっと忌むべき色となった赤色。
 あれだけはさらに暗き血色に染めなければ、自分たちの存在すらも否定されるような気がしてしまう。
 戦闘力のない情報収集型無人機とダミーオブリビオン が一斉に召喚され、アメリアと、その背に庇う奴隷たちを囲む。数の優位は元からなかったが、ここまで囲われれば、奴隷たちを守って戦うのは至難の業どころではない。土台無理だ。
 だから奴隷たちは口々に言う。自分たちのことはいいと、せめて貴方だけでもと。

「もう傷一つだって貴方達にはつけさせない、絶対に!All Right ! Let's Dance !」
 だから安心して。私のことも、貴方達自身のことも。その思いを載せて、アメリアのユーベルコード、Winds Dance On Stage(ウインズダンスオンステージ)が発動する。
 風が舞い上がる。荒廃した世界には似つかわしい、清涼な風。それは舞台のようにせり上がり、アメリアと奴隷たちを守るように空へと浮かべる。
 まるで舞台のように吹く風の上でアメリアは舞う。戦闘のさなかであっても楽しげに、それこそ戦いなど無意味だというように。

「―――!また、その顔をする―――!」
 オブリビオンたちのガトリングガンが一斉にアメリアへと向けられる。銃弾の雨が上空に向かって放たれ、まるで流星のように殺到する。
 だが、分厚い風の加護に阻まれて、一発の銃弾も彼女に到達できずに地面へと落ちていく。奴隷たちが纏う風も同様だ。アメリアの言葉通りに傷一つつけられない。

「さ、君たちは少しでも安全な場所に隠れておいて?後のことは私達ががんばるから。貴方達は、生きることをがんばって」
 ダンスという非戦闘行為に没頭することによって、彼女のユーベルコードは持続する。だから、銃弾が尽きるまで。オブリビオンが気力を無くすまで。
 それまで彼女は踊り続ければいい。
 もはや言葉は必要ない。ただただ、人生は、生命は、こんなにも美しいのだと、体で表現すればいい。

 ―――そう、絶望の最中であっても希望は灯る。小さな燈火であっても、次代につなげていけば、きっと大きな篝火となるのだから。
 アメリアの赤い髪は、きっと一つの灯火のようにコロシアムで燃え続けたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・連携歓迎

濫入だって?いいじゃない!盛り上がってきた!
ボクにはよく分かるよ。つまり君たちは……
とんでもなく退屈してたんだね!
目的も、生きる目標も無い!
何年も何年も大した刺激も無く、変わることの無いぼんやりした毎日!
そう、つまりきみたちが求めていたのはエンターテインメント!
そして、剥き出しの情熱のぶつかりあうこのとき!これこそ本当のエンターテインメント!
楽しんでね?

攻撃を第六感頼りに球体群で防ぎながらまっすぐ突っ込んでいってそのまま次々吹っ飛ばしていって
最後はUCでどーんッ!と勝負

あ、奴隷くんはすっぽり隠れられるくらいの球体で守るよ
巻き添えにならないよう気を付けてね?



 コロシアムを崩壊へと招いた張本人、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は高らかに笑う。
 あまりに楽しげに笑うものだから、奴隷たちも困惑してしまう。こんな状況であんなふうに笑うことができるなんて、と。
 それを意に介する様子もなくロニは、楽しげだ。こんな状況であっても世界は未だにステージそのもの。なだれ込んできたフラスコチャイルド再現型オブリビオン群達を見てもなお、顔色一つ変えない。
 むしろ、大歓迎だ!

「いいじゃない!盛り上がってきたよ!いいねいいね、数が多いって言うのは良いことだよ!元気いっぱいだね!君たち!」
 楽しいねぇ!とっても!もっと幾らでも湧いてきていいんだよ!全部全部受け止めて、ぶっ飛ばしてあげるからね!ロニの金色の瞳が爛々と輝く。その様子にフラスコチャイルド型オブリビオンたちは、苛立つ。
 何がそんなに楽しいのだと。この荒廃した世界に、楽しいものなど何一つない。あるのは暴力と絶望だけだ。

「いやぁ、ごめんごめん。でも、ボクにはよく分かるよ。つまり君たちは……とんでもなく退屈してたんだね!目的も、生きる目標もない!何年も何年も!」
 ロニに向けれたガトリングガンの銃口が揺らぐ。放たれる銃弾は狙いが定まっていないものの、打ち込まれる数は圧倒的すぎる。
 それにロニの後ろには奴隷たちがいる。避けるわけにはいかない。彼らはすでにロニの操る巨大な球体が盾となって流れ弾すら当たらないように配慮されている。

「そんな攻撃されてもね。当たらないよ。片手間で動かしていても、きっとボクには届かないんじゃないかなぁ?」
 第六感とも言うべき、恐るべき戦闘センスによって銃弾は全てロに球体群が弾いていく。静かに、本当に歩いているのかと疑わしいほどの速度でロニはオブリビオンたちとの距離を詰めていく。

「何年も何年も大した刺激もなく、変わろうともせず。変わることのないぼんやりとした毎日を積み重ねてきたんだ。そんな君達が求めていたのはエンターテインメント!」
 一歩、一歩、けれど徐々にスピードが上がっていく。その度にオブリビオンがまた一体、また一体と吹き飛ばされていく。まっすぐに、ひたすらにまっすぐに進むロニの進撃を誰も止められない。

「剥き出しの情熱のぶつかりあうこの時!これこそ本当のエンターテインメント!さあ、楽しもう!ボクもキミも!一緒に!」
 最後の一体の前にロニの楽しげな顔が迫る。情熱、とわけの分からぬものを見たような顔とロニの顔が相対する。

 ロニのユーベルコード、神撃(ゴッドブロー)が炸裂する。あまりに重い衝撃がオブリビオンの背後に突き抜けていき、瓦解していたコロシアムをさらに崩壊へと導く。
「どーんっ!」
 その一撃は、オブリビオンを骸の海へと返す一撃。信仰なきオブリビオンであっても、その一撃はまさに神々しさを感じせるものであっただろう。人生の幕を下ろすその最後にいたってようやく、すがるべき神を見出したのであった。

「ボクを崇めてもいいんだよ!神様だからね!」
 なんて、最後に奴隷たちにガッツポーズしてしまうところが、ロニらしいといえば、ロニらしかった……

成功 🔵​🔵​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘NG
過度なグロNG
POW

綺麗な生き方が許せない?
違うでしょう?
貴女達も綺麗に生きたかった。
でも、荒廃した世界で生き延びる為に
汚れる道を選んだ

ただ生きる為の生に幸福なんて無い。
理想を貫いて死ねたなら
貴女達も本望だったでしょうに

哀れむように語りかけ
銃を向けられて構えるけど
さっきの人間が戻ってきて
咄嗟に【オーラ防御・激痛耐性】で庇い、負傷

なんで戻ってきたのよ……
馬鹿な子……

灰となって散るも『永劫火生』で強化復活。
真の姿で背中に黒炎の翼

永遠の愛と温もり。それが私の理想にして
きっと貴女達も望んでいたもの

【歌唱】による【誘惑・催眠術】で魅了。
母のように抱きしめ
髪を撫でて【慰め】苦痛も無く【生命力吸収】



 コロシアムでの戦いも最終局面を迎えようとしていた。猟兵たちの活躍により、オブリビオンの要塞であるコロシアム会場も崩落し、なだれ込んできたフラスコチャイルド再現型オブリビオン群の数を減らしていた。
 戦闘の音は次第に収束するように小さくなっていく。奴隷たちの犠牲もなく、猟兵たちは本来の目的を達成しようとしていた。

「まだ一滴も血を流していない!なぜ!なぜまだそんなに綺麗なままなのか!私達はこんなにも汚れているというのに!」
 オブリビオンが怨嗟の声を上げる。未だ足枷となる奴隷たちを見捨てることもなく、放り出すこともせず、さりとて一人の犠牲も出すことなく戦い続けるその生き方に、憤りを感じる。
 どうにかして、あの綺麗なものを汚さなければならない。あんな綺麗なものは、この世界に存在してはならないのだ。

「綺麗な生き方が許せない?はん、違うわね」
 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の声が、心底呆れたように響く。違う。違わない。荒廃したこのアプカリプスヘルの世界を見ればわかる。生き延びるためには汚れる道を選ぶしか無かったこと。
 けれど、とドゥルールは告げる。事実を。

「ただ生きるための生に幸福なんてない。わかるでしょう。あの人間たちの生き方を見ていれば。見ているようで、何も見ていなかったのね、貴方達。開いた眼は、閉じていたも同然だったのよ。貴女達も理想に殉ずる心があれば、その死もまた本望だったでしょうに……」
 人間嫌いを自称する彼女にとって、オブリビオンは慈悲の対象なのだろう。哀れむ言葉は、一欠片の虚偽もない。しかし、今の彼女とフラスコチャイルドは、猟兵とオブリビオン。
 銃口が自身に向けば、身構える。防御も回避もできる。だが―――

「おねえ、さん―――!これ―――!」
 ドゥルールは驚愕する。こんなにもコロシアムは崩落しているのに、試合でマントに包んで逃した少女がこちらに駆けてくるのだ。
 なんで?その感情は、ドゥルールもオブリビオンもまた共通の感情だった。なぜ。なぜと少女に問われれば、彼女はきっとこう答えただろう。
 お姉さんの大事なものだったら困るから。
 なんの変哲もない外套だ。ただ薄汚い人間の少女を包んで捨てただけだとドゥルールならば、答えたかもしれない。
 だが、それは銃声によって遮られる。駆け寄ってきた少女に向けて、オブリビオンのガトリングガンが放たれる。咄嗟に足が動いていたことを、この後きっとドゥルールは誰にも言わないだろう。事実を語るつもりもない。

「ぐっ―――!!」
 オーラ防御で少女を庇うように胸に抱いて、背中にガトリングの銃弾が何百発となく打ち込まれる。オーラは削れ、その背中には無数の傷跡が刻み込まれていく。
 けれど、その胸に抱いた少女には一つのかすり傷もない。
 本当に、本当に馬鹿な子。そんな外套一つ、ただの気まぐれに過ぎなかったのに。
 みすぼらしいから見るに絶えなかっただけだから、早くその外套で身を隠しなさい。

 その言葉は灰となって消えていく彼女の口からは溢れることはなかった。

「おね、え―――さん……!い、いやだ!やだぁ!」
 少女の鳴き声がコロシアムに響き渡る。フラスコチャイルドは、次なる生命を絶やさんと銃口を少女に向け、放った。

 しかして、その銃弾は彼女に届かない。空中で溶けるようにして銃弾事態の存在が蒸発する。理由がわからないのならば、その閉じた眼を、真に開くがいい、オブリビオン!

「私は過去も未来も超越した、永遠の女神……ならばこそ、現在という今という刹那に私の理想を与える者」
 顕現するのは、永劫たる火よる出る神。黒炎の翼を広げ、再臨するドゥルール。
 ユーベルコード、永劫火生(エターナル・ブレイズ)!強化された炎は、たやすくすべててを燃やし尽くす。
 絶望も、怨嗟も、何もかも。

「永遠の愛と温もり。それが私の理想にして、きっと貴方達が望んでいたもの……ならば、それを与えるわ。それが私が貴方達に送る……―――」
 最後の言葉は聞き取れなかった。炎の翼は母の抱擁のように、苦痛もなくかき消えるようにしてオブリビオンたちは骸の海へと返された。

 本当に馬鹿な子たち。愚かだけれど、愛おしい。荒廃した世界に、また一つ、愛が生まれては、泡沫のように消えていく……

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『拳帝軍』幻鏡拳のミラ』

POW   :    幻鏡双神拳(ミラージュ・ダブル)
【左右が反転した自分の幻影】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD   :    幻鏡円舞陣(ミラージュ・ロンド)
【相手の周囲を高速で旋回しながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【自分の幻影】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ   :    幻鏡反鏡殺(ミラージュ・リフレクター)
【円舞陣の圏内】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、円舞陣の圏内から何度でも発動できる。

イラスト:えんご

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフローラ・ソイレントです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 フラスコチャイルド再現型オブリビオン群は、すべて骸の海へと返っていった。
 何かを感じることもあったかもしれない。しかし、それを深く考える時間はなかった。
 猟兵たちはついに、この要塞であるコロシアム……その主である『拳帝軍』幻鏡拳のミラを引きずり出したのだ。
 この戦いに勝利してこそ、本当の奴隷にされた人間たちの開放となるだろう。

「大したものですね。猟兵。さすがは世界に選ばれた私達オブリビオンの敵。その強さ、称賛に値します。けれど、『アレ』らは本当にだめですね。誇りある『拳帝軍』の末席にくわえておくのも恥ずかしいくらい」
 荒廃した世界、アポカリプスヘルには似つかわしい容姿の女性。彼女が幻鏡拳のミラ。心底がっかりしたように肩をすくめる彼女の言う『アレ』ら、というのは、フラスコチャイルド再現型オブリビオンたちのことだろう。

「強さこそが、この世界においての絶対的価値であるというのに、あくまで生き方にこだわったことこそ、唾棄すべき弱さ。あなた方の生き方に対する憎悪がそれを補ってくれるかと思いましたが、それもどうやら無駄のよう。やはり、感情一つでは、絶対的な強さには敵うべくもない……」
 ですが、と微笑む様子はあまりにも邪悪。わかってしまう。いくら見目麗しくとも、彼女とてオブリビオン。その本質は決して、猟兵たちとは相容れない邪悪そのmの。
 弱者を蔑み、強者であることこそが絶対の価値であると揺るぎない本質。

 だが、猟兵たちは知っている。
 弱きを踏み台にした強さなど、強さではない。ただの傲慢であると!
アメリア・イアハッター
価値観の違いは人それぞれだからどーこー言わないけどね
こだわりと感情を無駄って切り捨てるのは、ちょっと腹がたつかな
無駄なものなんてないってこと、教えてあげる!

ここまで誰も傷つけずにきたけれど、この元凶にはやっぱり一発拳を叩き込んであげなきゃね
縛霊手「Vanguard」を装着
拳を握りしめ敵と向き合う
高速で敵が回転していても最後はこちらに向かってくるはずだし、頭上をとれば攻撃は困難なはず
焦らず敵が接近した所で跳躍し踏みつける
幻影であればすかさず跳躍しもう一つの方へ
踏みつけて動きを一時的でも止めた後、UCを発動
私と、猟兵達と、そして虐げられた子達の感情、怒りを込めた一撃を、とくとその身で味わいなさい!



 相容れぬ者同士が相対した時、彼らに残された決着は、互いの価値と意思でもってつけられる。
 それは単純な力であったり、それ以外のなにかであったり。そして、勝利と敗北に分かれる。故にアプカリプスヘルにおいて、勝利とは絶対的な力の誇示であり、強さによってそれを得ることができる。
 強ければ強いほど、自らが欲するものを望むだけ手に入れることができる。それが当然の理。
 拳帝軍はそういうオブリビオンたちの集団である。目の前の彼女、幻鏡拳のミラもまたそうであった。

「価値観の相違、ですね。どちらにしても猟兵である以上、相容れるものではありませんが。貴女もそう思いませんか?赤い髪の人」
 ミラが呼びかけるのは、アメリア・イアハッター(想空流・f01896)……古い赤い帽子を目深にかぶる赤い髪の彼女だった。手に装着された縛霊手が輝く。
 祭壇の火を思わせる輝き。神を祀る装飾は、彼女の意思を受けて、燦然と輝く。

「そうね。価値観の違いはひとそれぞれだから、どーこー言わない」
 けどね。こだわりと感情を無駄と切り捨てるのは、ちょっと腹が立つ。それは無駄ではないからだ。それがなければ、人間は人間ではない。ヤドリガミである自分だってそうだ。
「教えてあげる!無駄なものがあるんじゃない、無駄だと思う価値観があるだけだって!」
「そうですか、やはり猟兵ですね。とても愚かです」

 互いの視線が交わる。消して相容れぬ瞳が交錯し、互いの意思が火花を散らす。刹那、二人の体が崩落したコロシアムを駆ける。どちらも身軽さを信条とするのならば、その戦いは相手のスピードを上回ったときが決着だろう。
 アメリアの周囲を高速で駆けるミラ。まさに幻と名が付くだけのことはる超スピードは、目にも留まらぬ速さ。
「そう来て、はい、そうですかって、追いかけるわけじゃないのよ!」
 腰を低く構え、それが合図になったようにミラが突っ込んでくる。必ずこちらに向かってくるという確信が合った。どれだけ早く動こうが、最後には直接打撃をくわえてくると。

「―――っ!」
 ミラの拳がアメリアへと吸い込まれようとして、逆にその拳を踏み台にして空へ駆けるアメリア。赤い髪が舞い散り、ミラよりもはるか高い頭上へと飛ぶ。しかし、さらにその上に、ミラの姿がすでにあった―――!

「幻鏡双神拳(ミラージュ・ダブル)……早く動くだけが取り柄の女ではありませんよ、私は」
 その微笑みが、アメリアよりもはるか頭上から降り注ぐ。先手を取らせたはずだった。だが、それを上回る後の先。本来なら、ここで決着だったであろう。
 頭上を取るミラと地上で待ち構える幻影のミラ。幻影と本体の挟み撃ちにあうのだから、アメリアに攻撃を防ぐ余地はない。

 だが、オブリビオンであるミラは忘れていたのだ。自身が絶対的強者であるがゆえに、忘れていたもの。いや、無駄だと切り捨てたものの存在を。

「撃て!撃て撃て撃て!あの赤い人を助けるんだ!当たらなくていい!あの人に当たらなければ、それで!」
 地上の幻影のミラへと打ち込まれる銃弾。なぜ、誰が?と考えるよりも、その声にアメリアは微笑む。ほら、無駄なんかじゃなかった。
 地上のミラへと銃弾を打ち込んでいるのは、試合で助けた奴隷。彼が仲間と共に武装を集めて援護してくれているのだ。
 今度は俺たちが!本当ならあの時死んでいたはずなんだ!いけいけ!と仲間と共に駆けつけてくれたのだ。オブリビオンに敵うことはできないまでも、その銃弾はミラの動きを止めるには十分だった。

「っ、十分すぎるよ!道を拓く!これが―――!」
 銃弾で動きを止められたミラの幻影を踏みつける。良い足場、と微笑む。上空のミラを見据え、拳を握りしめる。誰がために拳を握るのか。その問いに彼女ならこう応えるだろう。

「私と、猟兵たちと、そして虐げられた子達の感情……怒りと悲しみのために!これ以上悲しい思いをさせないために!」
 アメリアのユーベルコード、先駆けの光(ヴァンガード)が発動する。縛霊手「Vanguard」による一条の光が、拳より空へと放たれる。
 拳の一閃は、たしかに幻鏡拳のミラを捉えた。しかし、それ以上に人々は見るだろう。

 アメリアのはなった輝きは、たしかに淀んだ雲を切り裂いて、その先に広がる蒼穹を彼らに希望として見せたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

迅雷・電子
【心情】あんたが黒幕か…なかなかに良い性格してるみたいじゃないか…(相撲の最初らしく両拳を地面に付け)言葉はいらない、待ったなしだ…行くよド腐れ女!

【行動】攻撃は【見切り】で対処。幻影が出てきたら2人纏めて攻撃できる連続つっぱりか、相撲投げで片方を投げてもう一人にぶつけるという形で攻撃するよ!敵がコピーした技をぶつけてきたらあえて受け、「はっ…効かないねぇ…確かに動作も完璧だ…でもその攻撃には信念も心もなにも感じないただの模造品だ…本当の攻撃ってのはこうやるんだよ!!」と【2回攻撃】の雷電張り手を食らわせるよ!「一般人にも手は出させないよ!」



 常にオブリビオンは、怪事件の裏にいる。糸を引き、隠れ、人々を虐げる。それが己の欲望のままに行動するということだ。
 ならば、猟兵は何を成すというのか。世界の危機に駆けつけ、オブリビオンを打ち砕くだけか。いや、そうではない。
 構える。何度も、何十回も、何千回、何万回と繰り返した反復動作。はじまりの所作にして、全ての起点。四股を踏み、地鎮はすでに済んでいる。角力たる所以。
 邪を払い、討ち滅ぼすゆえの角士―――迅雷・電子(女雷電・f23120)が、構えたのだ。

 その黒髪は長く、溢れ出る気迫によって逆立つよう。けれど、低く、低く構えたその姿は、これまでの試合を高見から見ていた幻鏡拳のミラにとっても、未だに異様なものだったのだろう。
「珍しいスタイルの闘士とお見受けしますが……流派をお伺いしても?」
 単純な興味だろうか。それとも、紫電迸るような、雷子の視線から逃れるためか。
 しかし、雷子は意に介さない。その言葉に律儀に応える必要もない。女同士とはいえ、同じ土俵の上に上がった以上、語る言葉もなければ、駆け引きすら必要ない。

「言葉はいらない。構えな。物言いは無しだ。わかってるんだろう、待ったなし!行くよド腐れ女!」
 代わりのに雷子の大地を蹴った轟音が響き渡る。空気の壁をぶち破る音。猟兵である彼女の突進は、空気の壁を突き破るほどの速度に達する。
 つまりは、音速。ならば、その速度に載せて打ち込まれる張り手は、無手でありながら、一撃必殺。
 雷子の張り手は、まさに目標過たずにミラの顔面をうち貫く!

「ド腐れ、とはあんまりな言い方ですね?では、こちらも……そんな単純な攻撃が当たるわけないでしょう!この直線馬鹿が!」
 雷子の張り手が貫いたのは、ミラがユーベルコードで生み出した幻影。は、と気がついた瞬間に、側面からの蹴りが雷子の顔面を捉え蹴り飛ばす……が、首はわずかに傾くのみ。
 鍛え方が違うのだ。ぶちかましによって、首が反り返らぬよう、鍛えに鍛えたその肉体はまさに金剛石。

「そういうセリフは、ド三流が吐くことだって、言うんだよ!確かに動作も完璧だ。けどね!あんたの蹴りには信念も心も感じない模造品だ……」
 この距離ならば、幻影を生み出したとしても間に合うまい。
 距離を取ろうとしてミラが背後に飛び退るが、それこそ悪手。雷子の踏み込みの速さは、随一。その体で逃げられる間合いなどではない。

「奴隷たちにも手を出させない!誰の血も流させない!これが私の信念!本当の攻撃ってのは……!」
 ミラが幻影を生み出す。関係ない。意味がない。彼女の言葉だ。そう、雷子のユーベルコード、連続つっぱり(レンゾクツッパリ)の前には、意味がない。
 幻影ごと、ミラを張り手が襲う。一撃目は耐えた。二撃目は踏ん張った。三撃目は、こらえることができなかった。

「なっ―――!こん、な!ただの、っ、拳がっ、ぁ―――!」
「こうやるんだよ!あんたには拳を握るまでもない!どすこいどすこいどすこい!!」
 四撃目からは、数えることもできなかった。超高速の連続張り手が巨大な岸壁のようにミラへと襲いかかり、言葉を発することもできずに、壁へと吹き飛ばされる。
 正面からは張り手による打突によって、背面は壁にしたたかに打ち付けられ、吐血するミラに向かって雷子は高らかに宣言する。

「決まりては、押し出し。綺麗な電車道じゃあないか。あんたは顔じゃないんだよ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

政木・朱鞠
【POW】で行動
やっと、ボスのお出ましか…。
お説教するガラじゃないけど…アンタが蔑む人達は理不尽に抗う術がないだけで決して弱いわけじゃないよ…むしろ、恨みを晴らすためでなく悦に入るために人達を手にかけ、不安撒き散らしたアンタの方が小さい存在だと思うんだけどね…。
牙無き人等を弄んだ咎はキッチリと清算してから骸の海に帰って貰うよ。

戦闘
二身相手はちょっと翻弄されそうだけど、『忍法・煉獄炮烙の刑』の炎で曲がった価値観ごと丸焦げにしてやりたいな…。
武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使い敵の体に鎖を絡めつつ【傷口をえぐる】で絞め潰すダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎



 荒廃した世界、アプカリプスヘルにおいて強さとは絶対的な価値である。肉体的な強さ。精神的な強さ。そのどれもが、この荒廃した世界では価値あるものだからだ。
 物資を廃墟から探し出し、持ち帰る肉体的な強さ。
 決して諦めずに、弛みなく集中する精神的な強さ。
 どちらが欠けても、生きることは難しいだろう。そういう世界なのだ。
 幻鏡拳のミラのいうことは、ただの一側面でしかない。弱肉強食。
 強くなければ生きられない。

 だが、と政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は思う。強くなければ生きていけないが、優しくなければ生きる資格すらないのだ!
「やっと、高みの見物から降りてきたようね……試合の時からずっと見ていたみたいだけれど、気が付かれないとでも思っていたわけ?」
 自身が感じていた視線の主である幻鏡拳のミラを正面から見据え、蔓薔薇のようなスパイクのついた鎖の持ち手を向ける。
 別段語り合いたいわけではないが、これだけは言わなければならないと朱鞠は視線を鋭くする。お説教する柄じゃないんだけど、と前置く。

「いえ、あからさまな視線を送っておりましたので、逆に気が付かれなければ、どうしようかしらと思っていたぐらいです。柄でないのであれば、なんだというのです?」
 ミラはすでに猟兵達と一戦交えた後である。本来なら逃がすような時間を与えるべきではない。だが、それでも言わなければならない。ただ、討ち滅ぼすだけでは許せない。

「アンタが蔑んだ人たちは理不尽に抗う術がないだけで、決して弱いわけじゃないよ。むしろ、恨みを晴らすためでなく、悦に入るために人たちを手に掛け、不安を撒き散らしたアンタの方がよほど小さい存在だと思うんだけどね……」
「そういう戯言は、一矢でも報いてから言うべきではありませんか?力なき者の言葉もまた、悪であると思うのですが―――」
 最後までミラの言葉を聞いてやるほど殊勝ではない。朱鞠の武器、荊野鎖がうねる大蛇のように走る!
 しかし、その攻撃は速度を持って、強さとするミラの回避に追いつかない。さらに彼女の幻鏡双神拳(ミラージュ・ダブル)によって幻影が生み出され、逆に翻弄される朱鞠。

「力なき正義は、ただの偽善にも劣る劣悪!力あるものが正義であり、力なき者は、すなわち悪!価値は常に流転するのです。力あるものへと正義という標は流れ、その下でしか、己の正当性は証明出来ない!」
 幻影と本体から放たれる鋭い拳や蹴りに朱鞠は追い詰められていく。翻弄されるだけではなく、圧倒的に手数が違う。なんとか荊野鎖で絡め取ろうとするも、幻影を掴まされてしまう。
 ジリジリと体力をすり減らされていくのを感じる。このままでは―――!

「さあ!私の強さの証明たる礎となって、骸をさらしなさい、猟兵―――!」
 ミラの攻撃が挟撃する。拳が、蹴りが、鋭い打撃となって朱鞠の生命を刈り取らんと迫り……だが、その一撃は打ち込まれることなく空を切った。
 朱鞠の瞳には、映っていただろう。本体と幻影のミラの体に飛びかかる嘗ての奴隷たちの姿を武装もなければ、防具もない。着の身着のまま。その中には朱鞠が助けた女性の姿もある。
 やはり、と微笑んだ。あまりにも場違いな微笑みだった。いつだってそうだ。正しいのは、こういうことだ。

「なっ―――!貴様たちは―――!?」
 ミラが驚愕する。大地を踏みしめる衝撃波で奴隷たちが吹き飛ぶ。生命に別状はないだろうが、それでも早くミラを彼らから引き離さなければならない。一刻の猶予もない。
「強さとは、明日を切り拓くためのものだよ!正当性を示すものじゃない!誰かを虐げるものじゃない!アンタが蔑んだものにアンタは足を取られた!」
 朱鞠のユーベルコード、忍法・煉獄炮烙の刑(ニンポウ・レンゴクホウラクノケイ)によって炎を帯びた拷問具『荊野鎖』がミラの体を雁字搦めに捕らえ、奴隷たちから引き離す。空に舞うミラの体、それを睨めつける朱鞠の視線は、苛烈そのものだった。

「私の紅蓮の宴…篤と味わいなさい…貴方の罪が煉獄の炎で燃え尽きるその時まで…」
 鎖鞭から走る炎がミラの体を焼く。まさにそれは、煉獄の炎。彼女たちが貶めた生命たちからの報復。
 炎に包まれたミラの絶叫が響き渡り、その体は崩落したコロシアムの瓦礫へと打ち投げられる。

「牙無き人達を弄んだ咎、煉獄の炎できっちりと精算してから骸の海へと帰って頂戴……!」
 きっと、煉獄の炎は、ミラが骸の海へと帰されるまで消えることはないだろう。失意と無念のうちに散らされた生命への、せめてのもの手向けとなることを、朱鞠は祈らずにはいられなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・連携歓迎

出たね!へっぽこプロモーターさん!
まっくもう!周りを見てみなよ!
ガッラガラの客席!冷めきったオーディエンス!
彼女たちの方がよっぽ立派なエンターテイナーだったね!

とはいえ油断はしないでいこう
くっそこはせめて左右反転してなきゃどっちが本物なんだーで盛り上がるのに!
第六感も使って攻撃を見切って球体で防いでから、カウンターで幻影の方はおっきな球体で押さえつけてカウンターで本体にUCをどーんっ!
って感じで行こう

アハハッ!またくるといいよ!
君が何度も失敗を繰り返しては骸の海のドン底へ転げ落ちていく様を楽しませてよ!

あ、全部終わったら後でコロシアムは特大の鉄球で潰しておくね



 がらり、と嘗ては要塞であったコロシアムが音を立てる。すでに、嘗ての熱気と殺気が渦巻く盛況さはどこにもない。
 ここまでめちゃくちゃに破壊されるとは、誰も思わなかっただろう。堅牢そのもの、奴隷たち自身から見れば、ここは檻であり、自分たちの処刑台と変わらなかった。
 それを打ち砕き、破砕したのは他ならぬロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)その人だった。
 あるものは膝を突き、あるものは祈りを捧げる。破壊の神のような力を振る舞いながらも、その姿は枷に嵌められたものたちにとっては、自由の神そのもの。
 再生の後に破壊があるように、破壊のあとには再生がある。だからこそ、奴隷たちは祈らずにはいられない。
 あの破壊の神が、この忌まわしきコロシアムの記憶を尽く破壊せしめんことを―――!

「あはは!出たね!へっぽこプロモーターさん!」
 軽快に笑いながら、幻鏡拳のミラと対峙するロニ。その姿は対称的だ。片や楽しげに。片や忌々しげに。
「へっぽことは、随分な良いようですね?貴方も随分と満喫されていたようですが……?」
 じり、とミラの足が砂を噛む音が響く。それを全く意に介していないロニは、大仰な手振りと身振りで持ってミラに応えるのだ。

「まったくもう!周りを見てみなよ!ガラッガラじゃない、客席!冷え切ってるでしょ!オーディエンス!観客なしのショーなんて、つまらないでしょ!」
 世迷い言を、とミラが吐き捨て、彼女の幻影と共にロニを挟撃する。一辺倒だなぁ、とロニは嘆息する。それ、何回目?飽きたよ、と。
「それに、せめてさ、左右反転した幻影じゃないと。どっちが本物なんだー!って盛り上がれないじゃない」
 左右同時からの挟撃すらもロニは見切る。拳と蹴りが空を切る。背を反って、動物じみた反射速度で攻撃を回避する様子は、あまりにも理不尽。態勢が不安定になったところに踵落としと肘が振り下ろされる。
「そんな獣のような戦い方で!私の幻鏡拳が破れるとでも―――!」

「あはは!思ってるんだなぁ、これが!」
 ロニの操る球体群が攻撃を完璧にガードする。幻影だと見切ったミラの肘落としを特大の球体がカウンターで抑え込み、その上に跳ね上がるロニ。小さな体が軽々と宙に舞う。軽く、軽く羽根のように舞い上がる姿は、人間が積み上げてきた練磨の技術とは対極だった。

「神様は、いつだって天上から見下ろすものさ!キミだって同じだよ、ボクにとってはね!そういう意味では、彼女たち……フラスコチャイルドのあの子達のほうがよっぽど立派なエンターテイナーだったね!」
 ユーベルコード、神撃(ゴッドブロー)がはるか上空から放たれる。天上からの一撃。雷鳴にも似た一撃が、幻鏡拳のミラへと打ち込まれる。
 その一撃に込められた想いはなんだったのだろうか。神たる身だるロニの考えに及ぶ者は、この場にはいない。気まぐれだったのかもしれない。でたらめだったのかもしれない。
 だが、ただ一つだけ確かなことは、神たるロニの不興をミラは買ったのだ。

 直撃したミラの体を衝撃波が突き抜け、かろうじて無事だったコロシアムの床すらも打ち砕き、崩落していく。ミラもまた、その崩落した穴へと叩き落されるのだ。

「アハハッ!またくるといいよ!何度でも何度でも叩き落としてあげる!キミが何度も失敗を繰り返しては骸の海のドン底へ転げ落ちていく様を楽しませてよ!ボクとの約束だよ!忘れないでね!忘れたら―――」

 どこまでも追いかけて、さらにドン底に叩き落として上げるから!ロニの楽しげな、本当に楽しげな笑い声がコロシアムに響き渡るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ジルモント
◆SPD
もう奴隷たちが戦う必要はない、隠れている事も逃げる事もできる
…だが、それでも何かしたいと言うなら無理に止めない
その行動には、相応の働きをもって返そう

敵の不意を突ける死角から、本体を狙ってユーベルコードで狙撃を試みる(『スナイパー』)
倒しきれなくても、負傷によって行動速度と精度を落とす事ができればいい

ダメージで鈍った動き、その隙を攻撃の好機として利用する
幻影を使おうが高速で動こうが、目で追えるなら逃がさない
本体を『追跡』し視界に収め、再度ユーベルコードで追撃する

強さ強さと吠えてはいるが、その誇る強さの使い方がこれでは“拳帝軍”とやらも大したことは無いな
このコロシアム諸共、潰させてもらう



 いつだってそうだ。生者とは常に戦いの日々である。死者とは、すなわち敗北者のことである。故にアプカリプスヘルは、強さこそが至上のものであるのだ。
 弱ければ守れず、強くなければ得ることはできない。単純明快な弱肉強食。
 オブリビオンの言うことはわからないでもない。だが、騙されることはない。
 それはただの側面でしかない。自分たちの視界は常に一辺倒。多角的に物事を見ることなど、不可能なのだ。
 故に、正しさと正しさがぶつかり合うのに、強さという要因が必要になるだけの話。

「もうおまえたちが戦う必要はない。隠れていることも、逃げることもできる。自由にするがいいさ」
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は静かに保護した奴隷たちに語る。彼らは戦闘の圏外まで移動させるのには骨が折れたが、彼らを巻き込むことは本位ではない。むしろ、自分の仕事を達成するためには、これが最良だ。
 あのオブリビオンであれば、遠回りな上に骨折り損の草臥れ儲けと言うことだろうな、とは思った。違う。遠回りこそが、最短のルート。

「でもっ、あんなやつ一人なんて……!俺たちもなにかできるこは……!」
 助けた一人の奴隷が言う。少年と言っていい年頃。最初の試合でシキが取り押さえた少年だ。彼を庇うことで傷を負ったが、それは些細なことだ。
 そんなことで負い目を感じることなどないとシキは言う。周囲の大人の奴隷たちも口々に言う。役に立ちたい。あんたの助けになりたい。

「……無理には止めない。だが、できることをできるだけやれ。できないことはやるな。後は……俺の仕事だ」
 そう言ってぶっきらぼうに、その場から離れる。崩落したコロシアムの穴から這い出るオブリビオン―――幻鏡拳のミラの姿をシキは捉える。
 猟兵達の攻撃によって、動きが鈍っている。これで止めを欲は出さない。やつの動きの精彩を欠かさればいいのだ。

「はぁ―――はぁ―――!くっ、猟兵共め……!どこだ!どこにいるのです……!」
 幾多の攻撃に晒され、ボロボロの姿のミラ。瓦礫に囲まれ、周囲に視線を巡らす。隠れているはずであろう猟兵を探しているのだ。
 だが、彼女の視界にシキの姿は捉えられない。ガラッ、と瓦礫が崩れる音がしたほうに視線を向ける。今度は逆方向からも瓦礫が崩れる音。
「……!?気配はある……なのに、数が、多い……!?」
 そう、コロシアム……すでに崩落して瓦礫ばかりとなった場所。その物陰に潜む気配は感じる。だが、多すぎる。背後で音がすれば、すぐさま逆方向で物音がする。位置が、特定できない。
 相手は歴戦の猟兵。ならばこそ、うかつな行動が取れない。そう思って、慎重にならざるを得ない。

「……容易いものだな。強さ、強さ、と……随分と吠えていたが。その程度か」
 シキの独白はコロシアムを包む雑音にかき消される。そう、奴隷たちの協力があってこその戦法。彼らにシキが託したのは、瓦礫に隠れて物音を常に立てるというもの。
 きっとすぐにミラに気づかれてしまう。だが、その一瞬の隙が命取りだ。
 シキならば、その一瞬を永遠にも代えがたい価値に変えることができる―――!

「“拳帝軍”……強さを誇っていても、実力があっても……使い方がこれではな。大したことはないな」
 静かに、無音にも勝る刹那の隙を持って、シキのユーベルコード、ブルズアイ・エイムが発動する。息を飲み込む。
 この瞬間、彼の一撃は不可能を可能にする。両手で構えた白銀のハンドガンでは、確実に届かぬ距離。だが、それを可能にするのが、彼のユーベルコード。距離など無意味。

「―――そこ、か!猟兵!!」
 シキの策に気がつくミラ。しかし、もう遅い。コロシアムのはるか後方から、こちらに狙いをつけるシキを睨めつける。睨みつけた瞬間、すでにもう引き金は引かれていた。
 銃声が遅れて聞こえるほどの速度で飛来した銃弾が、ミラの体を打ち貫く。声にならぬ悲鳴が、遠くシキに耳に届く。

「お前が侮った弱さ……それでもって、このコロシアム諸共潰させてもらう―――」
 散っていった生命への手向けのように、もう一度、銃声がコロシアムに鳴り響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ジルモント
◆POW
後、もう一押し
真の姿を解放し、撃破を狙う(※月光に似た淡い光を纏う。犬歯が牙のように尖り瞳が輝く)

敵の幻影は左右の反転という特徴をよく見れば判別は可能だ
本体の位置を把握しておき、『フェイント』として幻影に銃口を向ける
幻影を撃つとみせかけて、引き金を引く瞬間に本体へ向き直り、油断した本体へユーベルコードで攻撃を試みる

重視するのは、完全勝利
奴隷として捕らわれていた者たちに拳帝軍の崩壊を明確に示す為だ
自分達を押さえつける存在は消え去り、自由になったのだと強く意識させる事が、彼等の解放には必要だと判断したからだ
後はオブリビオンのボスに立ち向かった気概があれば、この世界で十分に生きていけるはずだ



 強さとは何ぞ。
 その問いに答えるもは数あれど、真を突く者はおらず。穿った答えを持つ者はあれど、真理には及ばず。
 ならばこそ、その答えは数多ある一つのものであって、唯一ではなく。
 だからこそ、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)の答えは―――

「後、もうひと押し……」
 2発の銃弾は、幻鏡拳のミラにとって致命傷であっただろう。だが、止めには足りない。もうひと押ししなければ、窮鼠猫を噛む……ではないが、虎が噛み付いてくることは容易に想像できた。
 狙撃のポイントを捨てる。今、この場で止めを決めきれなかったのは誤算だった。
 コロシアムの瓦礫には、あちこちに奴隷たちが点在している。彼らをミラが苛立ち任せになって、自棄を起こさない可能性もない。
 ならば!

 シキの真の姿が開放される。月光淡く輝く光。犬歯は牙のように戸狩、瞳が爛々と輝く姿はまさに、猟犬そのもの。
「それが猟兵たる貴方の真の姿ですか……!」
 ミラが態勢を整える。時間がない。彼女に態勢を整えさせるわけには行かない……が、先にミラが動く。
「幻鏡双神拳(ミラージュ・ダブル)―――!」
 幻影と共にミラがシキへと遅いかかる。挟撃は意味がないと判断したのだろう。狙いを定めさせないと言わんばかりに幻影と本体が交錯してシキへと迫る。
 シキの銃口が揺れる。照準を合わせる間も与えぬとばかりに、圧倒的なスピードで迫るミラにシキは皮肉げに微笑んだ。
 輝く牙が一層強く光ったような気さえした。

「甘いな……貴様のユーベルコード……幻影は左右反転している。よく見れば判別は可能だが……今までは、そのスピードでごまかしていたのだろう」
 銃口は幻影を捉えている。にぃ、とミラが笑う。甘い、甘い、甘い!
 見きれるものならば、見切るがいい!

「その程度のことで、勝ちを宣言するなど―――!」
「ああ、生ぬるい」
 フェイント……幻影に向いていた銃口が、一瞬で本体を見抜いて照準に収める!ハンドガンの中で特別な弾丸が装填される音が響く。
 デストロイ・トリガー!シキのユーベルコード……特注の、それも炸薬量の大幅に増した特注の弾丸が装填される。

「今のアンタにふさわしい弾丸だ。味わうといい―――!」
 ミラの拳とシキのハンドガンが交錯する。銃口がミラの眉間に突き立てられる。
 勝負合ったな、と互いの視線が交錯した瞬間、炸裂した火薬が星の輝きじみた光を放出する。ミラの拳はシキの頬をかすめ、彼女の体は骸の海へと還る……

 コロシアムの主を撃破した瞬間だった。
 奴隷たちが瓦礫の隙間から顔を出す。本当に?と半信半疑な表情は、しかし、徐々に明るいものへと変わっていく。
 シキは思う。自分が最もこだわったのは、完全勝利。なぜなら、奴隷として囚われていた者たちに示す必要があった。
 拳帝軍の崩壊を明確にし、自分たちを押さえつける存在はいなくなったと、自由になったのだと強く意識させたかった。
 真に彼らを開放するには、それが必要だったのだ。後は、彼らの気概があれば、この世界で生き抜くことは十分にできるはずだ。
 他者を思い、自身を顧みない。誰かのために何かを成すことができるのだから。

 誰がために拳は握られる?
 この問に答える者は、もう答えを持っていた。なぜなら―――

 シキの、猟兵達の握った拳は、勝利を示すように天に向かって握られていたからだ―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月17日


挿絵イラスト