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怨恋オペラシヲン

#サクラミラージュ #幻朧戦線 #影朧甲冑

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#サクラミラージュ
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#幻朧戦線
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#影朧甲冑


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●乙女、追想
 ――ねぇ、先生。
 私、先生のことをとってもお慕いしていたの。
 しがない田舎娘の私を気にかけて、広い世界のことを語り聞かせてくれた貴方。
 優しい瞳で「あずみさんは見込みのある女学生だ」と笑いかけてくれた貴方。
 ひとときも、忘れはしないわ。
 先生が都会へ帰ってしまってからも、毎晩夢に見るのよ。

 甲冑の操縦桿を握り、私は目の前の帝都第壱ホテルを見据えた。
 嫌らしいほどに贅を凝らした権力の象徴を、私は今日この手で壊す。
「あずみさん。もうすぐ貴女の望みは叶うのです」
 共に戦う仲間が、私に語り掛ける。
 そう、この下らない世を、帝都を、破壊すれば。
 きっと先生は、田舎へ戻ってくる。
 都会のしがらみは疎ましいって、貴方ずっと零していたもの。
「今、迎えに行きます。先生……!」
 竜が吠えるように、エンジンが音を立てた。

●夢の終わり
「……惚れたが悪いか、というやつかな。お可哀想に」
 クロード・キノフロニカ(物語嗜好症・f09789)が、溜息をつきながらグリモア越しの光景を語る。
「幻朧戦線の一団が、ある晩餐会の会場を襲撃する計画を立てているよ。彼等の目的は不明だけれど……ここで誰か要人が殺されでもしたら、政財界に少なからず影響が出るのだろうね」
 惨劇の舞台となるは、由緒ある華族の者や成金ブルジョワジィの集う宴。
 誰が凶弾に倒れても、世の中に混乱がもたらされることは必至であろう。
「敵の作戦の要は『影朧甲冑』。影朧を燃料として、搭乗者の命を蝕みながら戦う強力な兵器だ」
 歴史の闇に葬られたはずの、あまりにも残酷な兵器。
 幻朧戦線はこれを再び現代に蘇らせ、武力として用いているのである。
「彼等は非常に強い武力を持っているのだけれど……その力を信じ切っているせいか、作戦自体はシンプルな正面突破を選ぶようだ。入り口で食い止めれば、参列者や従業員たちを裏口から逃がすことはできるはずだよ」
 幻朧戦線の面々は、ユーベルコヲドを持たぬ普通の人々だ。
 武装しているとはいえ、猟兵が力と知恵を尽くせば悲劇を防ぐことは容易であろう。
「まずはグラッジ弾で武装した兵士たちが、道を切り拓こうと先行してくるよ。彼等から一般人を守ることが、最初の仕事だ」
 グラッジ弾に撃たれた者は強い呪いを帯び、影朧をその身の周りに呼び寄せてしまう。
 絶対に、被害を出すわけにはいかない。
「力で食い止めるのが苦手な人は、ぜひ避難誘導に手を貸してほしい。皆がスムーズに逃げられるに越したことはないからね」
 そうして被害者となる人をすべて逃がしてから、影朧甲冑を倒せば事件を食い止めることができるだろう。
「それから、影朧甲冑の搭乗者についてだけど……あぁ、この人についてこれ以上深く語るのは控えておこう。分かり合えない敵、と思っておいたほうが余計な感傷を抱かずに済むからね」
 ――影朧甲冑に乗ったが最後、搭乗者はもう生きて降りることはできないのだから。
「同情心が湧いてしまう人もいるとは思うけれど……被害者を出さないことが今回の大目的だ。それを見失ってはいけないよ」
 どんな顛末になっても、共に受け止めるからと。
 強い瞳で、クロードは猟兵たちを送り出すのだった。


椿初兎
 椿初兎です。
 よろしくお願いします。

●第一章について
 幻朧戦線を食い止める係と避難誘導をする係、どちらでもお好きなほうでご参加ください。
 どちらが多くても成功度に影響はありません。

●幻朧戦線について
 彼らも影朧ではなく普通の人なので、なるべく殺さず捕まえるほうがベターです。

●影朧甲冑の搭乗者
 予知部分で触れられていたような考え方の女性です。
 既に甲冑に身体を蝕まれてしまっているので、助けることは不可能です。
 それでもよければ……対話することは可能です。

 プレイングお待ちしております。
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第1章 冒険 『幻朧戦線の襲撃』

POW   :    襲い来る幻朧戦線の一般兵を肉壁となって阻止し、重要施設や一般人の安全を守ります

SPD   :    混乱する戦場を駆けまわり、幻朧戦線の一般兵を各個撃破して無力化していきます

WIZ   :    敵の襲撃計画を看破し、適切な避難計画をたてて一般人を誘導し安全を確保します

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第四『不動なる者』盾役でありまとめ役
一人称:わし 二人称:貴殿 古風
対応武器:黒曜山(今回は盾)

思うことはあるが、今はまず止めることを考えねば。
わしはできるだけ傷つけぬよう、盾にて防ぎ殴るのよ。
まあ、囮役であるな。
本命は…


第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
対応武器:漆黒風

本命は私の方でしてー。
暗殺の要領で、背後からの奇襲ですよー。
といっても、主に手刀で意識を刈り取っていくだけですよー。
誰の命も奪わせない。それが『私たち』の総意ですからー。


幸徳井・保春
幻朧戦線の排除は我々の仕事だからな。一學徒兵として、猟兵達の手を借りっぱなしはいかん。

すぐに【応援要請】を出して周囲の同僚を集合させ、現地で幻朧戦線との対処にあたらせよう。

当然私も呼ぶだけではなく戦線に加わらせてもらう。この二刀流が飾りの付け焼き刃でないことをしっかりと証明させてもらおうではないか。

相手が銃を向けてきたとしても撃ってきたとしても二刀の元に斬り伏せ(切り込み、捨て身の一撃、武器落とし)、無力になったところで捕縛させていただこう。

さて、この一団の主力・首謀者はどこにいる?



『こちら幸徳井。帝都第壱ホテルで事件発生、至急応援を要請します』
 夜の帝都に幸徳井・保春(栄光の残り香・f22921)の通信が響く。
 敵は集団、動ける人員は多ければ多いほど好ましい。
 要請に応じた學徒兵たちも、すぐ保春の意図を汲み動き始めた。
「俺たちが奴等を食い止める。その間にそちらは民間人の避難誘導を」
 保春自身もまた、學徒兵の一人として戦線に加わる。
 學徒兵を追おうとする幻朧戦線の一群の前へ、すらりと二刀を抜き放ち立ちはだかった。
「お前達の排除は我々の仕事だ」
「その制服……學徒兵か。とんだ邪魔が入ったな」
 吐き捨てながら、兵士が保春へ銃口を向ける。
 だがその引き金が引かれる寸前、保春の小太刀が敵の右手を捉えていた。
「遅すぎる!」
 銃を取り落とし怯んだ隙に、退魔刀の一閃で切り伏せる。
 帝都桜學府で磨かれた戦闘術の前では、ただ銃を手にしただけの素人など赤子も同然なのであった。
「チッ! お前ら、やっちまえ!」
 學徒兵に組み伏せられながら、斬られた男が叫ぶ。
 一対多ならば保春を御せる、他の學徒兵はそこまでの使い手ではない。そう判断したのだろう。
 だが、この場に駆けつけた武人は、保春だけではなかった。
「守る事ならば、わしに任されよ」
 金属を叩くような甲高い音が、ぱらぱらと響く。
 馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)の黒盾が、學徒兵を狙うグラッジ弾の雨を防ぎきったのであった。
「ここから先は、一歩も通さぬ」
 落ち着き払った様子で、幻朧戦線の面々に向き直る。
 静かに、しかし隙の無い佇まいであった。
「わしらとて無用な戦いは好まぬ。引き下がってはもらえぬか」
「馬鹿にしやがって……!」
 窘めるような、それでいて挑発するような義透の言葉。
 それに乗せられるように、敵のひとりがナイフ片手にこちらへ駆け出す。
「まるで戦い慣れておらぬのだな」
 しかし義透はその突撃を軽くいなすと、盾で押し込むように殴り返した。
「さぁ、今だ」
「あぁ。この二刀流が飾りの付け焼き刃でないこと、しっかりと証明させてもらおうではないか」
 義透の盾の影から保春が躍り出る。
 命までは奪わぬよう、だが確実に無力化できる部位を的確に狙い刀を振るう。
 もはや立つことすら叶わなくなって兵士たちが、てきぱきと動く學徒兵に捕縛されていった。
「さて、この一団の主力・首謀者はどこにいる?」
「お前らなんかに言うもんかよ……ぐえっ!?」
 反撃の素振りを見せた敵が、情けない悲鳴と共に意識を失う。
 見れば、大勢の兵士が辺りに昏倒していた。
 義透が素早く静かに敵の背後に近寄り、手刀の一撃で次々と昏倒させていったのだ。
「お前、さっきと戦い方が変わってないか?」
「本命は私のほうでしてー」
 保春が抱く当然の疑問に、飄々とした態度で義透が応える。
 そう、彼は四人で一人の複合型悪霊。
 不動の守護者であり疾き忍者でもある、それが馬県・義透という存在なのだ。
「だが助かった。皆、こいつらを捕縛するぞ」
「どういたしましてー。起きる前にやっちゃいましょー」
 意識は奪ったが殺してはいない。それが『義透たち』の総意なのだから。
 猟兵と學徒兵たちの手により、幻朧戦線の第一陣はあっけなく捕らえられたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

日下部・舞
一駒さん(f01005)と参加

「フォローは任せてください」

彼の狙いは侵攻の阻止
その上で自ら囮役も兼ねるつもりかしら

罠を仕掛ける手際に感心しながら、私は【影身】を使い頭数を補う
一駒さんの取り零しをフォローするけど、

「躊躇がなさ過ぎる」

躊躇いは隙を生むけど、彼の思い切りの良さは

【目立たない】よう、時に彼の盾となりこの身で弾丸を受け止める
【肌】は痛覚を遮断、【継戦能力】を発揮する

「問題ありません。このまま一気に」

彼の一騎当千の働きに、敵は崩れつつある
無理に殺す必要はない
退路を絶たずに、敵が退却するなら逃げるに任せる
一般人に被害が及ばなければいい

「一駒さんの信頼が重いです」

冗談めかして微笑みかける


一駒・丈一
舞(f25907)と、敵の食い止め役に回る。
互いに説得は得意ではないので、この方が立ち回りし易い。

敵が正面突破か。対処は易い。
先ずは正面入口に、装備の鋼糸を張り巡らし、縄罠として侵攻速度を遅らせる。
足を引っ掛ける奴とかが出て陣形が崩れれば重畳。

その後は抜刀し、一般人を守るように前へ出て【戦闘知識】でクラッジ弾の弾道軌道を【見切り】、【武器受け】で刀身で弾き軌道を逸らしつつ前進して切り込んでいく。

…ただ、俺が全てを捌ききるのは難しい。
後方で、俺が対処出来なかった取り零しを舞の方で対処してくれる。
それ故に、遠慮なく前へ進める。フォローは任せた。

良いじゃないか。使命感と信頼は、重い方が良いものだよ。



 幻朧戦線第一陣壊滅の報を受け、第二陣が帝都第壱ホテルの前へ寄り集まる。
「警備にユーベルコヲド使いが複数いるとの報あり。気をつけなければ」
 厳重に陣形を組み、兵士たちは一気にエントランスへなだれ込もうとする。
 だが一歩足を踏み入れた瞬間、先頭の数名が何かに躓きバランスを崩した。

「まさかここまで簡単に引っかかるとはな」
 陣形を大きく乱した幻朧戦線たちの前に、一駒・丈一(金眼の・f01005)が躍り出る。
 多少でも歩みを遅らせられればと意図して仕掛けた罠は、丈一の思っていた以上に効果的であったようだ。
「ここから先は一歩も通さん」
 抜刀し、真正面から兵士たちへ向き合った。
 敵群のほんのわずかな動きも見逃さぬよう、神経を研ぎ澄ませる。
「ぐっ……だが多勢に無勢だ。全員でかかれば何てことはない」
 油断しきった様子で、数名の兵士がグラッジ弾を放つ。
「さて、それはどうかな?」
 だが素人の射撃など、歴戦の兵である丈一から見れば児戯も同然。
 複数の射線を素早く見切り、弾を刀身で弾きながら丈一は敵群の中へと踏み込んだ。
「ひっ……」
 息つく暇も与えず、切り込んでいく。
 確実に戦闘力を削がれた兵士が、怯えたように後ずさった。

「この隙に、俺たちが中へ……」
「そうはさせません」
 どさくさ紛れに侵入しようとする兵士の前に、ふたつの影が現れた。
 日下部・舞(BansheeII・f25907)と、彼女の影法師。
 牽制するように、舞たちは長剣の切っ先を兵士へ向けた。
「まさか、こちらがたった一人だとでも?」
 じりじりと、兵士たちを追い詰める。
 出し抜くことなど不可能。そう悟らせるように、ふたつの影は隙のない構えで丈一の後ろを陣取った。
「フォローは任せてください」
「あぁ。助かる」
 舞へ頷き返し、丈一は眼前の敵群へと立ち向かっていく。
 既に大勢の兵士が戦意を喪ったにも関わらず、向こう見ずな一団は出鱈目にグラッジ弾を乱射している。
「しつこいな。だが……」
 飛んでくる弾をものともしない様子で、丈一は刀を振るい続ける。
 一騎当千のその動きは、戦う者としての最適解ではあるのだけれど――。
「躊躇がなさすぎる」
 瞬間。
 彼の死角から、弾を放つ者がいた。
「っ……!」
 素早く駆け、舞は丈一の盾となる。
 人造の皮膚が、ごく僅かな傷だけ残して弾を跳ね返した。
「舞!?」
「問題ありません。このまま一気に」
 痛覚を遮断した肌は、『護る』ことに一切の問題は無し。
 丈一が躊躇なく戦えるよう、舞は強い瞳でそう伝える。
「よし。取り零しは任せたぞ」
 前のめりに、丈一は敵へ飛び込む。
 ただ目の前の敵とひたすら切り結ぶ丈一の背に、一切の迷いはなく。
「一駒さんの信頼が重いです」
「良いじゃないか。使命感と信頼は、重い方が良いものだよ」
 冗談めかして微笑みながら、舞ももう一人の自分と共に後方支援の陣形を組む。
 撤退か、倒され官憲に突き出されるか。
 目の前の幻朧戦線兵たちには、その二択しか既に残されていないのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オーガスト・メルト
詳しい話なんて聞く気はないが…色恋沙汰の成れの果てか。
実に鬱陶しいな。
そして…それを利用しようとする馬鹿共は許す訳にはいかないな。

【POW】連携・アドリブ歓迎
デイズ、ナイツ、【竜鱗飛甲】を召喚しろ。操作は任せる。『うきゅー』『うにゃー』
敵集団の動きと攻撃を【見切り】、UC【触糸爆弾】で敵を無力化する。
捕らえきれなかった者は竜鱗飛甲の【シールドバッシュ】の【気絶攻撃】で対処する。

俺は今、とても機嫌が悪い。
だから貴様ら口を開くな。手加減を間違えてしまうからな。



 幻朧戦線第二陣が、エントランスでの戦闘を繰り広げている頃。
「戦況は不利か……加勢に行くぞ!」
 駆け付けようとした敵の援軍の前に、突如として白黒のまんまるい不思議生物が現れた。
『うきゅー』『うにゃー』
 オーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)の使役する、竜であった。
「デイズ、ナイツ。竜鱗飛甲を召喚しろ」
 二匹の竜はオーガストの声に頷くように宙を跳ね、螺旋を描くようにくるくると飛び回る。
 螺旋はやがて大きな太極図となり、陰陽二枚の盾が空中に現れた。
「ユーベルコヲド使いだか何だか知らねぇが、馬鹿にしやがって……!」
 感情任せの動きで、兵士が銃を構える。
 だがその右手を、オーガストの放つ鋼糸が捉えた。
「うるさい」
 不機嫌そうに呟き、鋼糸塊を撒き散らす。
 無数の塊が兵士たちへ霰のようにぱらぱらと降り注ぎ、やがて硬く丈夫な捕縛糸へと姿を変えた。
「ナメた真似を……!」
 柄の悪い悪態をつく兵士を、オーガストは冷ややかな眼差しで見下した。
「俺は今、とても機嫌が悪い。だから貴様ら口を開くな」
 色恋沙汰の成れの果て、ひとりの一般人が影朧甲冑に乗り込むことを選んだのだと聞いた。
 そして今、彼女を利用しようとする馬鹿共が目の前にいる。
 騎士道を重んじるオーガストにとって、許し難いことであった。
「理想の世界のために、ここで屈するわけには……」
「口を開くなと言っただろう」
「ぐぇっ!?」
 鋼糸の拘束を抜けようとした兵士の顔面に、竜鱗飛甲の一枚がクリーンヒットする。
「……手加減を間違えてしまうからな」
 その感情に呼応するように、デイズとナイツも兵士へ突撃する。
 自らの騎士道の名のもとに、オーガストは目の前の幻朧戦線兵を一人残らず捕まえてしまうのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

白斑・物九郎
●WIZ



(料理が盛られた大皿片手、ムシャムシャ食いながら立ちはだかる)
王の夕餉を邪魔しようたァふてえ輩っスね
っつっても、カタギを逃がすのが先ですわな

相手ンなってやりまさァ


・サーチドローン「茶斑の三毛」を飛ばし、屋内構造を全把握(撮影+情報収集)
・敵の襲来方角/規模は片端から【野生の勘】で看破

・そして【ワイルドドライブⅢ】発動
・敵戦線の進行と射線を遮断すると共、一般人を護りつつ避難経路を往かせる形の迷宮通路を構築する(地形の利用)

・モザイク空間からの出し入れ自在の我が魔鍵は、ワイルドドライブⅢ下では「宙にいきなり出現する」凶悪な高命中率兵器と化す
・敵勢に魔鍵を【精神攻撃】として挿し、戦意を折らん



 エントランスを守る猟兵たちの手によって、幻朧戦線兵のほとんどが捕縛あるいは撤退を余儀なくされていた。
 だが、僅かながらも建物内への侵入に成功してしまった兵士たちがいる。
「よし、もうすぐ会場だ。一気に突入するぞ……うわっ、なんだ何だ!?」
 しかし、兵士たちの歩みは、突如として現れたモザイク状の壁に阻まれることとなった。

「王の夕餉を邪魔しようたァふてえ輩っスね」
 大皿に山盛りのご馳走を頬張りながら、白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)は猫型ドローンから受け取った映像を観察する。
「っつっても、カタギを逃がすのが先ですわな」
 正面エントランスからこのホールへの道筋も、裏手へ繋がる避難路も把握済み。
 ならば――後は、仕掛けるのみ。
「相手ンなってやりまさァ」
 ニヤリと悪戯っぽく笑い、物九郎はホテル全体にモザイク空間を展開した。

「そのまま道なりに逃げな。余裕がある奴ァ女子供くらいおぶってけ」
 戸惑う民間人たちに声を掛け、物九郎はモザイクの迷路を逆走する。
 甲冑の進入路を確保するための突入ならば、敵は極力大きな廊下を選んでこちらへ向かうはず。
 ならば、敵の行動は既に読めたも同然。
「ンなら、こっちを通るのがまァ筋ですわな」
 物九郎は、複雑怪奇に色彩を変える迷路を一気に逆走するのだった。

 暫し後。
「ここを曲がれば宴の場……だよな?」
 迷路探索に疲弊した様子の幻朧戦線兵が、物九郎の視界の先に現れる。
「手前らが宴をブチ壊す不届き者ってワケか」
 兵士たちを視界に捉え、念じる。
 次の瞬間。
 身の丈ほどはあろうかという巨大な魔鍵が、敵の頭上に突然現れた。
「抉れ」
 鍵の先が、兵士へと落下する。
 脳天から足元まで串刺しにするように、鍵はその身体を貫き通した。
「おい大丈夫か!? ……無傷、だと……?」
「ひっ……もう嫌だァァ!」
 刺された兵士が、腰を抜かしてヘナヘナと崩れ落ちた。
 心を貫かれ、戦意を完全に失ってしまったのだ。
「逃げんなら止めませんぜ。だが戦うってェなら……」
 物九郎の意志に応じ、魔鍵はモザイクのどこからでも現れる。
 ほどなくして全ての幻朧戦線兵たちが逃げ出し、入り口に待ち構える學徒兵に捕縛されたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『影竜』

POW   :    伏竜黒槍撃
【影竜の視線】が命中した対象に対し、高威力高命中の【対象の足元の影から伸びる黒い槍】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    影竜分身
【もう1体の新たな影竜】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    影界侵食
自身からレベルm半径内の無機物を【生命を侵食する影】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 幻朧戦線の面々が捕縛され、あるいは逃走した後。
 帝都第壱ホテルの前に、巨大な竜の影が現れた。
「何が起こったの? 約束と違うじゃない!」
 竜の中から女の声がする。
 影は影朧の影法師。
 甲冑が、燃料として取り込んだ影朧の姿を纏っているのだ。

「あなたたちが邪魔をしたのね。許さないわ……!」
 女の声に呼応するように、影竜が吠えた。

●マスターより補足
 第一章での皆さんの活躍により、影朧甲冑が建物内に侵入することは未然に防ぐことができました。
 なので、ここからは屋外戦闘になります。
 駆け付けた學徒兵の皆さんが人払いを行ってくれたため、通行人を巻き込む心配もなしです。
エル・クーゴー
●POW



(屋外戦闘待ってましたとばかり、プラズマジェットで空飛んで第壱ホテルの屋根を跨いでエントリー)


ホットゾーンの移行を確認しました

躯体番号L-95
当機は屋外・空対地戦闘に高い適性を発揮します
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します


●【嵐の王・蹂躙円舞】発動
・空からエントリーし【空中戦】を敢行
・敵コードに対しては戦速をガンガン上げることで対抗、回避に専心

・目視し辛い高速機動
・また、影より己へ槍が襲い来るとして、空に布陣する己の「影」は遠き地面にある
・遠い始点から伸び来るまでのラグを、槍の到来の察知・回避の為に利する

・攻撃はフルオートで放ち続ける【誘導弾】による【蹂躙】に依存



「ホットゾーンの移行を確認しました」
 プラズマジェットの出力を上げ、エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)がホテルの屋根越しに躍り出る。
 建物内の仲間からの通信によれば、宴客も従業員もすべて避難済みとのこと。
 つまり――フル出力での爆撃OK、というわけだ。
「これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します」
 影竜に近接するように旋回しながら、エルは全身に纏う武装を展開した。

『邪魔よ……やっちゃいなさい!』
 影竜の中から、声が聞こえる。
 その声に呼応するように吠えると、影竜はエルを目で追うように顎を上へ向けた。
「ジェット出力上昇。回避に専念します」
 音速をゆうに超えるスピードで、エルが飛翔する。
 攻撃をフルオート誘導弾に任せ、影竜の視界に入らぬよう回避に意識を集中。
 敵の視野を目測で読みながら、不規則な動きで飛び回る。
「敵性体の視野角は一般的な爬虫類相当と類推。ならば」
 敵の視界から外れるように、エルはぐるぐると飛翔する。
 彼女を捉えようと首を動かしていた影竜が――不意に、その動きを止めた。
 瞬間。目と目が合う。
「敵ユーベルコード起動確認。槍先の到達タイミングを予測します」
 エルの影から、黒槍が伸びる。
 だが、空中高く飛び回るエルを追うには、影の槍は短すぎる。
「槍の飛来まで3・2・1……」
 素早く冷静に分析し、軌道を変更。
 炸裂する誘導弾が爆炎を放ち、影が形を変えた。
『何で、どうして!? これなら必殺必中って聞いてたのに!』
 ヒステリックな声を気にすることなく、エルは誘導弾を連射し続けたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて。

まあねえ。色恋沙汰を利用することについて、『私は』何も言いませんよー。言える立場じゃないですしー。

あれはー…つまりは視線が武器になりますかー。屋外で建物を遮蔽物にしても、限られますねー。厄介ですねー。
こういうとき、一般人避難済みはありがたいですねー。

(語尾伸ばし消失)
UC発動。相手が目で追えなくすればいい。その上で、死角からの属性攻撃(風)。
それに、発生させた弱めの雷であろうと、痺れるでしょう?呪詛もつけましたし。
許す許さないの話ではない。ただ、あんたは利用されてるだけだ。
…たぶん、あんたはそれを理解しないだろうけれど。



「まあねえ。色恋沙汰を利用することについて、『私は』何も言いませんよー。言える立場じゃないですしー」
 爆風に紛れ、『疾き者』義透(f28057)が影竜へと密やかに距離を詰める。
「あれはー……つまりは視線が武器になりますかー」
 先に刃を交える仲間との戦いぶりを見るに、敵のユーベルコードは視線を向けただけで発動する様子。
 遮蔽物に隠れてのヒット&アウェイ戦法も取りづらい、厄介な攻撃だ。
 ならば……と、義透は自らの心の内へ意識を集中する。
「……こういうとき、一般人避難済みはありがたいですねー」
 僅か覗く義透の瞳に、光が宿る。
 次の瞬間。義透は、翼の生えた虎に姿を変えていた。
「視線で攻撃するのならば」
 窮奇。伝説に聞く、怒りの獣。
 その素早い飛翔は、まるで雷霆の如く。
「目で追えなくすればいい」
 死角をとるように、義透は縦横無尽に飛び回る。
 その姿を捉えようと、影竜が頭を動かす。
『何やってるのよ! 早く、あれを退治して!』
「退治されては困りますね。先に仕掛けてしまいましょう」
 義透の羽ばたきが、雷を帯びた旋風となり影竜を襲う。
 風が影を揺らし、空間にぴりぴりと小さな稲妻が光った。
「痺れるでしょう?」
 呪詛を帯びた雷に打たれ、影竜は身動きひとつとれない様子。
 苛立たし気に吠える竜に、義透は更に風を浴びせかける。
『嫌ぁ! なんで酷いことするの!? 私はただ、想いを叶えたいだけなのに!』
 荒げる声に、義透は動じない。
 つとめて冷静に、攻撃を続ける。
「ただ、あんたは利用されてるだけだ。……たぶん、あんたはそれを理解しないだろうけれど」
 そんな言葉など聞きたくないとでも言うように、影竜が吠えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

オーガスト・メルト
許されるつもりはないが、許すつもりもない。
無関係な人々へ牙を剥いた以上、迎撃をされるのは必然だ。

【SPD】連携・アドリブ歓迎
デイズは【竜鱗飛甲】を維持、ナイツはバイクモードに変形だ。飛ぶぞ。
『うきゅー!』『うにゃー!』
ナイツに【騎乗】し、敵の攻撃を【見切り】つつ、ヒット&アウェイで牽制。
分身するなら【敵を盾にする】ように動き、互いの身体が邪魔になるように立ち回ろう。
隙を見せたら一気に接近し、竜鱗飛甲やナイツの車体を足場に加えつつUC【竜神乱舞】で乱反射斬撃。

お前が惚れた男の自由のため、お前というしがらみは消えなきゃな。
…介錯してやる。かなり痛いが我慢しろ。



「飛ぶぞ、ナイツ」
『うにゃー!』
 宇宙バイクモードのナイツに騎乗し、オーガスト(f03147)は影竜との距離を詰める。
 どのような事情があろうと、あれは人々を脅かす影朧。
 決して容赦はしない覚悟の瞳で、オーガストは巨大な影へと立ち向かった。
『嫌! 来ないで!』
 女の声と共に、竜の影がゆらりと揺れる。
 瞬きをする間に、影はふたつの影竜となりオーガストへ爪を伸ばした。
「無関係な人々へ牙を剥いた以上、迎撃をされるのは必然だ」
 二体の攻撃を素早く掻い潜り、返す刀で反撃の一閃。
 デイズの操る竜鱗飛甲がオーガストを守るように飛び回り、更なる攻撃から主を守る。
『うきゅー!』
「ありがとう。さぁ、こっちだ!」
 二体の影竜を攪乱するように、トリッキーな軌道でバイクを走らせる。
 迂闊に殴ればもう一方の影竜を巻き込んでしまうよう位置取り、挑発するようにちらりと顔を覗かせる。
『あぁ、もう! どうすればいいの!?』
 影竜本体の中から、苛立った声が聞こえる。
 明らかに戦い慣れてはいない、ただの女のヒステリー。
 彼女の何を知っているわけではないオーガストにも、彼女の焦りが伝わってくるようで。
「……介錯してやる。かなり痛いが我慢しろ」
 その隙を突くように、オーガストはナイツの車体をぐっと足で踏み込む。
 炎の足場を宙の足掛かりに。竜鱗飛甲の表面を踏み台に。
 乱反射する斬撃を、影竜めがけ一気に叩き込む。
「お前が惚れた男の自由のため、お前というしがらみは消えなきゃな」
 あくまで影竜を切るのだと、自分に言い聞かせて刀を振るう。
 痛みに叫ぶように影竜が吠え、傷口から怨みの炎が噴き上がった。
『なんで邪魔をするの……? 許さない、みんな許さない!』
「許されるつもりはないが、許すつもりもない」
 中にいるのが女性とはいえ、放置すれば世界を脅かすモノを許すわけにはいかない。
 自らの躊躇ごと切り伏せるように、オーガストは影竜へ刀を向けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

一駒・丈一
舞(f25907)と参加。

前に出て奮闘する舞の姿を見て…
俺も人のことは言えんが、躊躇が無さすぎじゃないか…?

ならば、今回は俺がフォローに回ろう。

先ほどは僅かながらではあるが舞に傷を負わせてしまい、その負目もあるが故に。
それに、信頼は重い方が良いが、自分自身が重荷になるのは紳士として気が引けるしな。

俺は、舞へ接近する影竜に対し、【早業】にてUC【罪業罰下】を繰り出し、視界上の影竜を分身体含め一気に両断するとしよう。
敵の用いる影竜分身は、行動範囲が広く、こちらの虚を突かれる可能性があるが…敵の行動範囲と俺の間合い、果たして何方が広いか勝負といこう。

先ほどの借りが返せたのであれば良いのだがね。


日下部・舞
一駒さん(f01005)と参加

「私が前に」

影朧甲冑を認めると、彼にそう告げて前に出る
夜帷を抜いて【先制攻撃】
受け止める腕にも構わずに【怪力】でなぎ払う

【暗黒】を発動

搭乗者である彼女の、あずみさんといった──命を蝕んでいく
私たちが手を下さなくても、遠からず彼女は死ぬ
それでも、だからこそ

「邪魔する私たちが憎いでしょ? 遠慮なくかかってきなさい!」

侵食する影のダメージは【肌】の機能で痛覚を遮断
【継戦能力】を発揮する

「彼女にはもう何もない。ないんです。せめてその悲しみくらいは……」

受け止めるなんて、自己満足で感傷と言われたらそう
でも、いいじゃないですか、私たちは猟兵だから
一駒さんには気苦労をかけます



『どうして皆、私の邪魔をするの!? 私はただ、報われたいだけなの!』
 女が叫び竜が吠えると、周囲のガス燈が質量を持つ長い影へと姿を変える。
 周り全てを巻き込もうとする影竜を止めるように、舞(f25907)が躍り出た。
「私が前に」
 己めがけて倒れ込む影の塔をかいくぐると、素早く長剣を抜き放ち影竜へと斬りかかる。
「くっ……止めさせ、ない!」
 刀身を掴む腕を、力で強引に薙ぎ払う。
 殴りつけるように振り下ろされるガス燈の影も、痛覚を遮断した舞には障害ではなかった。
「邪魔する私たちが憎いでしょ? 遠慮なくかかってきなさい!」
『えぇ。憎いわ。邪魔だわ。ひどい人たち!』
 咆哮と共に、影竜の姿がふたつに分裂する。
 頭上から舞へ噛み付こうと迫る分身を、丈一(f01005)の刀が食い止めた。
「俺も人のことは言えんが、躊躇が無さすぎじゃないか……?」
 巨大な影の竜に臆せず向かっていく舞の姿は、潔くて危うくて。
 彼女がもう要らぬ傷を負わないように、丈一は意識を研ぎ澄ませ影の不意打ちに警戒する。
「彼女にはもう何もない。ないんです。せめてその悲しみくらいは……」
 覚悟を決めた瞳で、舞が呟く。
 受け止めるつもりなのだと、その戦いぶりが語っていた。
「なるほど。ならば、今回は俺がフォローに回ろう」
 迫り来る分身を牽制し、襲い来るガス燈の影を切り払う。
 畳みかけるような攻撃は舞へ届くことなく、黒い染みとなって地面へ溶けた。
「これで、先ほどの借りが返せるのであれば良いのだがね」
 自分自身が重荷になるのは、気が引けるから。
 信頼を向けられているからこそ、それに応えるのが紳士というものだ。
「充分です。それでは……斬るわよ」
 丈一に目礼をして、舞は影竜へ向き直る。
 反撃しようと敵が腕を上げた隙を突き、その腹を真一文字に切り結んだ。
『くっ……動きなさい! 動きなさいよ!』
 ヒステリックに、中の女が叫ぶ。
 が、影竜は動かず、苦しそうに呻いている。
「ただの自己満足かもしれないけれど……」
 猟兵が手を下さなくても、女――あずみは甲冑に命を蝕まれ命を落とすだろう。
 でも。だからこそ。
 舞は、ただ彼女を捨て置くことなどできなかった。
『何これ……力が抜けていく』
 影竜に刻んだ死の刻印が、あずみへも届いたのだろう。
 動きを止めた本体を守るように、分身が動いた。
「おっと危ない。最後まで気は抜けないな」
 丈一が、咄嗟に刀を振り抜く。
 影の胴体が一刀両断され、塵と消える。
 呆然と立ち尽くすように、影竜はじっとその場に佇んでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

幸徳井・保春
幻術……ではないな、燃料の力で次の燃料を召喚したか。中の者のやる気を削がなければあちらは延々と影朧を集めることが出来るということか……それは色々と面倒くさい話だな。

まずは女がなぜ堕ちたのか、敵の攻撃を受け止め避けながら見出していくとするか。声明が出てない故、目的が何かは分からんが自分が正しいと心底思っているなら、聞かれればペラペラと喋りだすはずだ。

そして、その内容に落ち度や不可解な点があればそこを一気に掘り起こして口撃する。相手が怒って攻撃が雑になった瞬間を狙うのが【九箇之太刀】の真髄。逆に懐に飛び込んで切り払わせていただこう!



 最後の力を振り絞るように、影竜が吠える。
 影の中から呼ばれたように、瓜二つの分身体が現れた。
「幻術……ではないな、燃料の力で次の燃料を召喚したか」
 状況を冷静に分析し、保春(f22921)が動く。
 搭乗者の気力を削がない限り、延々と影朧が召喚される仕組みなのだろう。
 ならば――と、保春は敢えて影竜の正面へ立った。
『次から次へと、みんな私の敵ばっかり! どうして皆、私を許してくれないの?』
 涙混じりの声。それに応じるように、分身体が鋭い爪を振り下ろす。
「事情も離さず暴力に次ぐ暴力。そんな態度では何も分からないぞ」
 分身体の攻撃を難なく受け止め、保春は女に言い放つ。
 どうやら敵は、自らが正しいと信じて疑わない様子だ。
『チュウオウシュウケンがなくなれば、先生は帝都に住まなくて済むの! そうすれば、私とお付き合いしてくれるはずなのよ!』
 叫ぶ女の言に、思想はない。
 政治のことなど何も分からず、感情を利用された。恐らくそんなところなのだろう。
『田舎にさえ戻ってきてくれれば、先生は私を選んでくれるわ。私は優秀な女生徒なのだもの!』
「まるで論理が通っていないな」
 女の主張を、保春はすげなく切り捨てる。
「先生とやらは、この宴に呼ばれる程の地位なのだろう? 田舎の女生徒など相手にするものか」
 わざと冷たい言い回しで、女を挑発する。
 影竜の分身体が女の感情に呼応して動くことに、保春は気付いていた。
「大体、先生と呼ばれる立場の者が一介の生徒を異性として見るなど、それこそ大問題だろう?」
『そんな、こと……』
 怒りに震えるように、影が揺らめく。
 分身体と本体が、同時に腕を振り上げる。
「隙あり、だ」
 その瞬間。
 本体の懐に入り込むように、保春が動いた。
「切り払わせていただこう!」
 闇を裂く光条のように、刀が閃く。
 影の竜は粉々になり、塵と消えたのだった。

 影竜が打ち倒された後の、夜空の下。
 影朧のヴェールを剥がされた甲冑が、月の光に照らし出されていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『影朧甲冑』

POW   :    無影兜割
【刀による大上段からの振り下ろし】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    影朧飛翔弾
【甲冑の指先から、小型ミサイルの連射】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    影朧蒸気
全身を【燃料とされた影朧の呪いが宿るドス黒い蒸気】で覆い、自身が敵から受けた【影朧甲冑への攻撃回数】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●モノロォグ
 私、ずっと頑張ってきたのよ。
 一人娘として立派であれって、期待にもちゃんと応えて。
 地元でいちばんの女学校に入って、成績もずっと3番より下になんてなったことなくて。
 これだけ頑張ったのだから、ご褒美が貰えるのは当たり前なのに。
 それなのに、先生は帝都に戻ってしまったのよ。
 こんなの……世の中が悪いに決まっているじゃない!

●幕引き
 影朧甲冑越しに聞こえる、女――確か「あずみ」と呼ばれていた――の声。
「将校様に言われたの。帝都をめちゃくちゃにすればいいのだって。チュウオウシュウケンが、ギカイセイジが、先生を私から奪ったのだって」
 だから奪い返すのだ、と。
 一緒に田舎へ帰るのだ、と。
 どうやら彼女は、この甲冑の仕組み――搭乗者の命を蝕み動く非道な絡繰にも、気付いていない様子。
 慈悲を向けずにただ倒すか、最後に言葉を交わすか――。
 選択は、あなた次第。
白斑・物九郎
●POW



夢があったんスか
ンで相応に努力だってしたんですわな
ただ悲しい哉、ちょいとばかし視野が狭かった

次に輪廻でもしたときゃ、悪い大人に引っ掛からねえように努々気ィ付けるんですわな

――エル、火力支援


・無影兜割に後手で対抗

・敵の挙動は「大上段の構え」と「振り下ろし」、その剣の軌跡を読むこと自体は容易だろう
・故に【野生の勘】を初太刀の剣速の多寡の察知に傾注
・無手と見せ掛けて『モザイク状の空間』から出し抜けに取り出したる魔鍵『心を抉る鍵(真)』を【怪力】で支え【武器受け】を

・己の魔鍵と敵の刀が接触した瞬間を以って【砂嵐の王と狩猟の魔眼】発動
・刀の構造上の弱点「平や棟」へエルの狙撃/火力支援を送り込まん



「……夢があったんスか」
 影朧甲冑と真正面から向き合い、物九郎(f04631)は中のあずみへ語り掛ける。
 彼女が何を思い、なぜ馬鹿げた偽りの甘言に乗ってしまったのか。
 先の独り言で、充分すぎるほどに分かってしまった。
「ンで相応に努力だってしたんですわな」
 甲冑を見上げる物九郎の手には、ひとつの武器もなく。
『そうよ。私すごく頑張ったの。なのに報われないなんてひどいじゃない!』
「……ただ悲しい哉、ちょいとばかし視野が狭かった」
 周りが見えない。思い込みが激しい。
 ただそれだけの『個性』があったが故に、道を踏み外した女。
 それは憐れむべきことだが――甲冑に乗ってしまった以上は、敵だ。
 虎縞模様の刻印を全身に疾らせ、物九郎は目の前の鉄塊を睨み付けた。
『ひどいわ。そんな悪口言う人、叩き潰してあげるんだから!』
 あずみが叫び、巨大な刀が大上段に振り上げられる。
 刀身の重みをそのままぶつけるような乱暴な一撃が、物九郎の頭上めがけて振り下ろされる。
 だが。
「ンな感情任せの一撃、バカ正直に食らうわけねーんスわ」
 瞬時にモザイク空間から魔鍵を取り出し、甲冑の斬撃を受け止めた。
 甲冑の出力をそのまま乗せたような重さを押し返すように、物九郎は鍵を持つ手に力を込める。
『もっと! もっと出力……えっ、これで最大!?』
 焦るあずみの声。だがもう既に形成は物九郎の優位。
「――エル、火力支援」
 上空から、誘導弾の雨が降り注ぐ。
 狙いは刀の弱点――平や棟の、中心の一点。
 最も強度の低い部分を集中攻撃された刀が、真っ二つに折れた。
『うそ……どうして? 何が悪かったの? 私、こんなの聞いてない!』
「……次に輪廻でもしたときゃ、悪い大人に引っ掛からねえように努々気ィ付けるんですわな」
 パニックに陥ったように叫ぶ女に、弾雨が降り注いだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

オーガスト・メルト
全く…どうして一度の失恋に固執するんだ。
その鎧に乗った時点で、帝都どころか生まれ故郷すら敵にしたんだぞ。
ああ、ここまで行動パターンが義妹に似てるととことん腹が立つな!

【POW】連携・アドリブ歓迎
デイズ、ナイツ、【竜鱗飛甲】での援護を頼む。『うきゅ!』『うにゃ!』
俺は【焔迅刀】を構えて徒歩で接近して戦う。
敵の動きを【見切り】、【怪力】を乗せた【吹き飛ばし】攻撃で態勢を崩す。
隙が出来たらUC【赤光一閃】で手足の一本も斬り飛ばすつもりで攻撃する。

義妹はな、惚れた男に返り討ちにあって死んだよ。世界の敵としてな。
お前も…そうなる。殺すのは俺たちだがな。
迷わず成仏するといい。


馬県・義透
引き続き『疾き者(忍者)』で、口調は『複合型悪霊』。

…やはりあんた、利用されているだけだ。
その甲冑、生きて降りれないことを知らない。教えられてない。
(慈悲ではなく、ただ動揺させるためだけの言葉)

私たちは悪霊で、だからこそ呪詛も見える。
あんたはもう、帰れないんだ。
…どこにも帰れない。

【それは雷のように】で攻撃を避けつつ、呪詛つきの雷と風(属性攻撃)で攻撃を。
許す許さないもない。ただ、それは事実だ。
恨むのなら、恨んでもいい。

※他三人(武士)
「えげつない」



「……やはりあんた、利用されているだけだ」
 馬県・義透(f28057)が、翼持つ虎の姿のまま甲冑の前へと降り立つ。
 伝説の霊獣を模したその瞳には、怒りも憐みも今はなく。
「その甲冑、生きて降りれないことを知らない。教えられてない」
 淡々と、告げる。
 それは憐憫でも悲哀でもなく、ただ揺さぶりをかけるだけの言葉。
『うそ……降りられない、なんて……嘘よ!』
 激昂した女が操縦板を叩き、ぼろぼろになった大刀を義透めがけて振り下ろす。
 その太刀筋を、竜気纏う白黒の陰陽魚が受け止めた。
『うきゅ!』『うにゃ!』
 一対の盾を操る二匹の使い魔が、甲冑へ立ち向かう主を護衛するように後ろへ退く。
 その主――オーガスト・メルト(f03147)の表情は、怒りとも悲しみともつかぬものであった。
「全く……どうして一度の失恋に固執するんだ」
 恋破れ、ただの仕返しや八つ当たりで済めばまだ良かったものを。
「その鎧に乗った時点で、帝都どころか生まれ故郷すら敵にしたんだぞ」
『もう知らない! 帝都も、私を認めてくれない故郷の人も……私を騙した将校様も、みんな私の敵だもの!』
 自暴自棄になったように、力任せに甲冑が刀を振り回す。
 その単純な動きをオーガストは難なく見切り、ガラ空きの胴体を当て身で突き崩した。
『きゃ……! 私を邪魔する貴方たちも、みぃんな敵よ。許さないわ!』
 バランスを崩しながら恨み言を叫ぶ女に、バチバチと雷を帯びた旋風が襲い掛かる。
「許す許さないもない。ただ、それは事実だ」
 冷めた口調で告げながら、義透は攻撃の勢いを強める。
 大刀に入った亀裂が深まり、ぽきりと中心で折れた。
「あんたはもう、帰れないんだ。……どこにも帰れない」
 えげつないことを言う――と、義透の中の武士たちが口々に呟く。
 だが、『疾き者』の言葉を遮る者はひとりもいない。
 甲冑を、女を取り巻く救えないほどの呪詛の強さを、4人ははっきりと感じ取っていたのだから。
「恨むのなら、恨んでもいい」
『うぅっ……こうなったら、全部ぜんぶ壊してやるわ!』
 殴りつけるように、甲冑は折れた刀を猟兵ふたりめがけて大上段に振り上げる。
 それが、彼女の隙だった。
「ああ、とことん腹が立つな!」
 甲冑の懐に、小太刀を構えたオーガストが飛び込む。
 その泣き言も、行動も、そしてこれからの末路も――。
 似すぎている。世界の敵となり想い人に討たれた義妹に、あまりにも似すぎている。
「迷わず成仏するといい」
 焔色の刃を、甲冑に浴びせかける。
 刀の残骸を握りしめた右腕が、鈍い音を立て地面へ落ちた。
『やだぁ……まだ、まだ戦えるもん……』
 童女のように泣きじゃくる女の声が、甲冑越しに響いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

一駒・丈一
舞(f25907)と応戦する。

一度その手を血に染めたのならば、最早一線は超えている。
その一線を超えたならば、もう二度と安寧は手にできない。
残念だが、此処で終いだ。

舞と共に前に出て、カバーしながら戦おう。
UC【間断無き断罪】を発動させる。これは敵のミサイル対策の為だ。
先ずは、【早業】にて回避を試みる。そして前へ。
そして、抜き放った刀にて迫るミサイルを【咄嗟の一撃】で正面から叩き斬る。そして更に前へ。
敵と距離を詰めた後、影朧甲冑の蒸気パイプを両断し、敵の起動力を削ぐ。
こうすれば、舞も戦いやすかろう。

幸せの形は皆似ているが、不幸の形は人それぞれだなと、ふとそんな言葉が頭を過るのだった。


日下部・舞
一駒さん(f01005)と参加

「嘘よ」

残された時間はあと僅か
彼女に真実を告げるのは残酷だろうか

「先生は自分の意思で帰っただけ」

あずみさん、あなたは騙されて利用された
その鎧はあなたの命を糧に動いてるの

夜帷を抜いて【黄昏】を発動
呼び声にかつてのUDCである彼女が目覚めると禍々しい圧を放つ
ミサイル群を夜帷で【受け】ながら突進【なぎ払う】
一駒さんと連携、お互いの隙をカバーして戦う

「感傷的だと思いますか?」

彼はどう思っているのか
咎を潰すことだけを己の使命としているのだろうか

ダメージは【肌】の痛覚遮断で【継戦能力】を発揮

「あなたはここで死ぬ。先生と再会することもない」

せめて最後を看取るわ
私たちは猟兵だから



『最後まで戦うのよ、せめて先生を都会の悪者たちから解放するのよ……!』
 残された甲冑の左手が、丈一(f01005)と舞(f25907)を狙うように伸ばされる。
 その指先から放たれるのは、無数のミサイルの雨霰。
『田舎で暮らしたいって、言っていたのだもの。先生を縛るしがらみなんか、この手でぜんぶ破壊して……』
「嘘よ」
 舞の長剣が、ミサイルを堰き止めるように跳ね返す。
 夜帷の守護者――剣を形作る嗜虐的で強欲な存在が、その衝撃すら喰らわんとするように禍々しい圧を放っていた。
 負けじと攻撃を続けるあずみに、舞は静かに告げる。
「先生は自分の意志で帰っただけ」
 大人なら言うであろう建前、社交辞令。
 きっとあずみは、それを真に受けてしまっただけなのだ。
 それに気づかせてしまうのは――残酷なことだろうか。
『ひどいこと言わないで……!』
 金切り声で叫びながらも、あずみはミサイルの一斉掃射を止めない。
 舞の夜帷が逃した弾を、丈一の刀が両断した。
「残念だが、此処で終いだ」
 一度その手を血に染めたのならば、最早一線は超えている。
 仮に彼女が甲冑から解放されたとしても――その先に、安寧などないのだ。
 だから。
「俺たちが、その咎を斬る」
 懐に飛び込むように、丈一は大きく踏み込む。
 狙うは甲冑の背後、黒煙を上げる動力部だ。
『来ないで!』
 丈一へ向けられる左手を、舞の剣が押し留める。
 刃を当てられた腕がぎりぎりと軋む音を立て、鋼の機体に深い刀傷が残った。
「あなたはここで死ぬ。先生と再会することもない」
『分かってる! けど……そんなこと、信じたくないのよ!』
 あずみが、声を荒げる。
 夜帷の刃に喰いつかれた左腕は、ミサイルの発射機構をボロボロに潰され使い物にならなくなっていた。
「早く楽になりたいなら……潔く自分の罪を受け入れることだ」
 丈一の刀が、甲冑の蒸気パイプを切断する。
 左右のバランスを欠いた甲冑が、後ろ倒しにバランスを崩した。

『私は悪くない……周りが私を不幸にするんだからぁ……』
 満足に身動きも取れない甲冑の姿は、どこか哀れに見えて。
「……感傷的だと思いますか?」
 痛覚を遮断したはずの舞の胸が、なぜか痛む気がした。
「幸せの形は皆似ているが不幸の形は人それぞれだなと、そんなことを思ってただけさ」
 丈一が、深い深い溜息を漏らす。
 せめて最期を看取るのが猟兵である自分たちの役目なのだと。
 言葉にせずとも、二人はそう覚悟を共にしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

幸徳井・保春
そうかそうか頑張って勉強してきたのか。

で?

机の上の書物だけ読んで、口にも出さなければ足も動かさなかった輩が何をほざく? 好いていることを言わず、すぐに後を追おうともしなかった弱虫が? 「先生」とだけ呼んで彼が何をするために中央に行ったのかも考えず知ろうとせず?

そんな大局が読めぬ馬鹿だから詐欺師にひっかかるんだよ。

生半可な知識で外に出ようとした井の中の蛙に教えてやる。その甲冑は死ぬまで永久に脱げぬ呪われた兵器だ。

誰の子も孕めず、冷たい金属の中で、愚かな自分を呪いながら死ね。

ここまで一息に言って激昂するか消沈するかは知らぬ。もし暴徒と化すようなら【顕現・保元物語下巻】に呑みこんで地獄を見せるのみだ


フローリア・ヤマト(サポート)
『大丈夫よ、私達に任せて』
『うるさいわね……ちょっと黙らせるわ!』
呪いにより余命少しの、クールな美少女です。
口調は上記のように少しツンとした感じですが、人間が嫌いなわけではなく、仲間や人々のことを心の底では大切に思っており、戦闘でもうまくサポートしようと立ち回ります。
また、敵に対しても怯むことはなく、時には挑発めいたセリフも交えながら、死角や弱点を突いて確実に仕留めることを狙って戦います。
フローリアのUCは、嵌めている「呪いの指輪」から黒い糸や影を放つ……みたいなイメージなので、そのように描写していただけると嬉しいです。



「馬っ鹿みたい!」
 フローリア・ヤマト(f09692)が叫び、右手に漆黒のオーラを漲らせる。
「恋しい人を地元に呼び戻したい? そんなことのために命を捨てるなんて!」
 甲冑に乗った女にも、彼女を大事に思う家族や友人がいるだろうに。
 遺された者の気も知らず自らの命を粗末にするような人は、癇に障る。
「あなたみたいな人、嫌いだわ。ほんっと、見ててイライラする!」
『知らなかったのよ。教えられてなかったんだもの。私は騙されただけなの!』
「そうかそうか。……で?」
 冷ややかな眼差しで、幸徳井・保春(f22921)が甲冑を見る。
 口を開けば保身と被害者意識ばかり溢れる、哀れな女。
「机の上の書物だけ読んで、口にも出さなければ足も動かさなかった輩が何をほざく?」
 確かに、彼女は自分なりに努力を積んできたのだろう。
 だが、それだけだ。
「好いていることを言わず、すぐに後を追おうともしなかった弱虫が? 『先生』とだけ呼んで彼が何をするために中央に行ったのかも考えず知ろうとせず?」
 挑発するように、言葉を続ける。
 戦意を喪うか、激昂して襲いかかってくるか――冷静に、様子を伺う。
『うるさい! うるさいうるさい! みぃんな敵なら、全部ぜんぶ壊れちゃえ!』
 自暴自棄になったような、女の叫び。
 水平に掲げた手の先が、エネルギーを帯び真っ赤に燃える。
 蒸気ミサイルのフルパワー一斉掃射まで、3・2・1――。
「止めなさい、人形たち」
 灼けた鋼鉄の指先が、有機的に動く影に覆われる。
 フローリアの纏う影が、小さな黒子人形となって力ずくでミサイルを堰き止めているのだった。
「……私も人のことは言えないけど、ね」
 フローリアの操る影は、命を蝕む呪い。
 彼女もまた、愛のために余命を捨てた者なのだ。
 もう長くは生きられない身。その絶望と葛藤を一時でも味わったフローリアだからこそ、分かる。
 破壊の力を纏ったこの女をここで止めなければ、捨て鉢の心のままに破壊の限りを尽くすのだろう、と。
「『先生』は帝都に来るべくして来たのだ。そんな大局が読めぬ馬鹿だから詐欺師にひっかかるんだよ」
 霊符を破り、保春が冷たく告げる。
 封印を解かれ顕現するは、物語に描かれる大魔縁の怨念。
「誰の子も孕めず、冷たい金属の中で、愚かな自分を呪いながら死ね」
 わざと露悪的に、冷酷に言葉を投げる。
 帝都に生まれ自らの望む道を歩んできた保春には、田舎娘の気持ちは分からない。
 分からないからこそ保春は――生半可な共感よりも、突き放すことを選んだ。
『ひどいわ。最後までこの世界は、私の敵なのね――!』
 叫びを呑み込むように、甲冑を呪いが包む。
 黒き影と怨念の嵐が止む頃には、甲冑は静かにその動きを止めていたのだった。

 街道が、静寂に包まれる。
 皆、女――あずみの末路を、悼んでいた。
「……本当に許せないのは、この事件を仕組んだ誰か」
 誰のものともつかない呟きが、闇に溶ける。
 唆す者がいなければ、彼女は戦いに巻き込まれたりはしなかったのだから。
 涙のようにはらはらと、幻朧桜が花弁を落としていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年09月20日


挿絵イラスト