60
踏もうぜRhyme! 刻むぜRap!

#キマイラフューチャー #シナリオ50♡

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー
🔒
#シナリオ50♡


0




●アップしようぜ
 キマイラフューチャーの公園の夜は今宵も最高潮だ。
「YO執事の私が今魅せる そう質疑の応答をしてみせる!」
「なんなんだコイツ……! 俺がラップで負けるなんて無いはずなのによ……!」
 中心に立ってビートを刻んでいるのは執事の格好をしたオブリビオン。
 彼は既に他の一般人たちとのラップバトルで派手に勝利し、そのすごさを世に知らしめるための動画を挙げていた。
「ラップはせずともアップはするぜ ネットに広がるワックな醜態 えっと? 家に帰って眠りなグンナイ」
「ク……ッ! こいつ、俺の名前さえ覚えていやがらねえってのか……!」
 オブリビオンのラップはさらに勢いを増して、良い感じに会場を盛り上げていく。キマイラフューチャーのこの町は良い感じの気温に保たれているのでフロアは既に熱いほどだった。
「汗かいてんなアゴにしこたま 浴びたりないのかAgonyひたすら 精神的苦痛受けて立つ君 Say新鋭のヤツにウケで負くるキミ」
 ウオオオオーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 歓声は既にキマイラフューチャーの世界中にとどろくかとどろかないかといったところ。とどろかないかな。どっちかというとね。
「聞こえてんだろ猟兵のソウル! あるなら受けな小生のコール! YO!?」
 オブリビオンのラップバトル動画は、既にキマイラフューチャー世界でそこそこの人気を誇っている様子。
 このままにしておく訳にはいかなかった。

●ラップしようぜ
「ラップバトルしてきてくれ。キマイラフューチャーで」
 納・正純(インサイト・f01867)はそんな感じで言った。
「いや本気なんだ。怪人がラップバトルで各地のラッパーたちを破る動画が、今話題になっててな」
 話を聞くところによると、どうやらこのオブリビオンはラップで負けない限りは自分の負けを認めようとはしないらしい。
 ラップにも勝ち、オーディエンスの人気を掻っ攫ってやらないことには、あちらも本気での勝負に乗ってこないだろう。
「ということで、悪いがコイツをラッパーとして倒してきてくれ。もちろん、ラップバトルの後にはしっかり倒してやってくれよな」
 よろしく頼む。正純はそんな感じで頭を下げて、猟兵たちを見送るのだった。


ボンジュール太郎
 ラップです。
 ストリートスタイルとフリースタイルの二本立てとなっております。
 もうほとんど台詞で良いですよ。
 ラップバトル皆好きでしょう? 語彙を全部使ってラップバトルに勝って見せてください。
222




第1章 冒険 『クラップ・ラップ・パーク!』

POW   :    韻とか良いから魅せてみろ、ボディランゲージラップ!

SPD   :    純粋なラップへの愛をみせろ、正統派原理主義ラップ!

WIZ   :    世論への不満をぶちまけろ、社会風刺ラップ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

四軒屋・綴
(ユーベルコードを使用し防御力重視の蒸気機関車ヒーローに、ついでに防具改造で頭にヘッドホンと星形サングラス、両肩にラジカセを取り付ける)
この日に開くフロア光る街にフォロミッ!
奇々怪々なキマイラ=フューチャーッ!
スクラップ クラッシュし響けクラップウィーハンドッ!
ステップインザスカイにストリップザハートッ!
ユアペインイズマイン魅せろユアアートッ!
揺蕩うソードイズディーヴァのサウンドッ!
喰らい尽くせ世にクライ尽きるまでッ!
芸の無いゲーム楽勝ワンコインでッ!
さぁカモン怪人返せねぇならゲラウトッ!


改変アドリブ絡みオーケーです


荒谷・つかさ
ラップバトル。
つまり「ピッと引っ張ってバッと包んでパリッとカット」すればいいのね。
……え、違う?

まあそれはそれとして。
リズムに合わせて歌いながら踊ればいいのね。
やってみるわ。
(演舞として【荒谷流乱闘術奥義・明王乱舞】を発動)

(大剣ぶん回して踊る)
私のブレイド とってもグレイト 一振りフライト とてもストレート
得意はサポート 貴方へアラート 一撃アボート 私はスマート
巡る日はサウザン 見上げるクレッセン 降臨アドヴェン 下るジャッジメン
真紅のスカーは辛苦のスカーレット 私のブレストでヘイトをバーストしな
ハートのビートをアクセプト 言葉のコメットをみんなにシュート
(びしぃ!と剣を突きつけ〆)


パウル・ブラフマン
『MC jailbreak』いっきまーす☆(凶悪スマイル)
宇宙バイクで現場に乗りつけ宣戦布告。
持参のハンドマイク(サウンドウェポン)握り締め参戦。

【SPD】
aiight!
呼ばれて参上、あわや惨状?シロートイェーガー!
胸お借りします…とか言えんがええかァ!?

Drive byビビってんじゃねーぞairhead
エセ執事はsucker三下以下
オレはイカじゃねェぜオクトパス
テメェはオレのスキルに臆しパス!?
オレらが集えばkick your ass!!


■共闘&アドリブOK!
同時に到着した味方のヴァースには聴衆を煽って盛り上げる。
両腕とタコ触手をアップダウンさせてput your hands up!!


白神・杏華
来たぜ猟兵がキマイラフューチャー アンタら旧人類バックトゥザフューチャー
時代錯誤なそんな色彩じゃ 遠退いてくステージオブメジャー

今日は私が沸かすぜ観客 その人気も今日つく一段落
キマイラ達みんな見てる端末 追い抜くアンタの動画難なく

オーディエンスの声は聞こえるかい? すぐにバレる天網恢恢
独りよがりな旧人類愛 じき下る猟兵の制裁

その前にまずはライムでスライス 平らげてやるその頭のアイス
お菓子両手に不審者スタイル 主人もいない執事はremoval!

……と、いうような具合で怪人にラップバトルを挑むよ……。
見様見真似だし恥ずかしいよ……。


メルノ・ネッケル
・心情
フィメールフォックスラッパー、MCメルノ推参や!
配信するなら好都合、皆のソウルを【誘惑】するフォックスラップ!とくと聞けやwack怪人!

・行動
〈SPD〉要所要所でヘッズに語りかける正統派ラップや!

・ラップ
e-yo,こちらキマフュー自由な大地、イカれたオブリビお呼びでないし!
そこらかしこでコンコンコン、うちら妖狐もコンコンコン、沸けよ観客Call Call Call!

yeah,猟兵ラップは剃刀rhyme、怪人ラップはお疲れtime?
キマイラヘッズは気合十分、お前ら上げてけ気炎十分!

放つは言葉のブラスター、立つはこの場のスターダム!
止まらんJAEGERじゃ堪らねえな?尻尾撒いたらお家帰りな!


桜庭・英治
hey yo!
そこの怪人!
侵略順調?
ちょっと増長?
猟兵参上!

呼ばれてきたぜ俺たち猟兵
揃えた戦力これで公平
いまから始まる逆転Show!
聞かせてやるぜ俺らのSoul!

そこの怪人教えてやるよ
あたま灰燼なるまえによ
俺の名前は桜庭英治
お前のRhymeなんだかLazy
だってオブリビオンOldAge
俺ら猟兵It'sNewAge


…頭爆発しそうなんだけど
あと技能の鼓舞とパフォーマンスでなんか超盛り上げるぞ!!


虜・ジョンドゥ
やぁやぁボンジュールたr…げふっ、ボンジュール!
ここらで一つ、火遊び(アバンチュール)!
ヤケドにご注意 執事さん
このまんまじゃ羊さ ジンギスカン!

ボクは振り撒く エモの感染症
痺れんなよほら 聞こえねぇかキマイラ達の歓声を
I'm a Jaeger 愛もねぇか?
ダセぇんだよ通り魔 焼けた羊の数でもかぞえてやがれ!

(背後に連れるは『MY AVATAR』の二人
ボイパ等でボクのラップの手助けをするよ
ラップ『バトル』は立派な『戦い』さ)

ンな甘ったるいオツムなんざかったるい
受けてやったぜテメェのCall 返答次第じゃテメェは凍る
何故なら? ボクは独りじゃない
見える世界はキミよか広いんじゃない?

アドリブ歓迎!


石動・劒
【POW】
ラップなんざ俺の世界にゃねえものだ。
だから俺は、俺の世界にあった物で勝負するぜ!そう、この都々逸文化でな!!
三味線はねえからせめて三の糸を掻き鳴らしながら都々逸を歌うとしよう。

花道歩み 俺の出番だ 都々逸ご存知? 教えるぜ!
これはラップだ ラップの一種 さあ聞いてけよ 和のラップ!
お前のラップは 韻を踏むだけ 忘れてきたのか? 詫びとサビ!
薄っぺらいな お前の主張 手前の言葉で 語りなよ!
負け犬ほどに よく吠えたてる お前らみんな 井の蛙!

こんな感じで挑発と時間稼ぎをしていくぜ。

三千世界の 鴉を殺し 後に残るは 祭り跡 ――ってな。


バル・マスケレード
ラップだァ?
ヒハハッ、音楽なんて柄じゃねェが……
正々堂々、真正面からオブリビオンを貶していいってのは。
そいつばかりは、悪くねェなァ!?


ブチかましてくぜ俺はMask
ブチのめすべきテメエにAsk
猟兵相手にラップをDoしてBattleときたか?
横柄ついでにアップした動画がBuzzるとしたら?
明かされるぜテメエの正体!
晒されるぜテメエの醜態!
所詮は終わった過去のPrototype!
緒戦でかますぜ俺らのShow time!

ラップで勝てりゃあそれでいいが
どうせぶつかり合うが俺らの因果
ビビッと来たならその武器抜けや
ビビッていたならテメエの負けだ!


ってな調子で。
【挑発】混じりのラップをくれてやらァ。


ジン・エラー
ブバハハハハハ!!!
面白ェーことやってンじゃン
オレも混ぜろよ

何でも救うオレの名ジン・エラー
お前の名前はどォーでもいいな

天国地獄?決めるのカミサマ
とか思ってンのか大馬鹿頓馬

オイオイさっきの威勢はどうした?
お前にゃ一切敵わぬ相手だ
ノリもライムも流され放題
さっさとオレに救われるのどォーだい?

いい気になるなよポッと出執事
オレは聖者で普通の出自
おっとォ!
違うぜ悪ィなsorry
ホントの生まれはso holy

お前の目玉は節穴かァ?
突いて潰すぜオレの光が
そもそもお前にゃ足りてねェーのか
崇めて讃えろコレが救いだ


リンネ・カーネーション
はぁ? ラップだ? What's happened? 
任せておきなキマイラ共 負かしてやるよキモいラッパー
愛のないバトルさ アイスヘッドバトラー
ガキじゃあるまいし 粋じゃない そんなラップ 損さShut Up

おやビビったかい執事 まあ仕方ない必然
あたしゃリンネ、イカしたナイスキャット 
あんたはチンケでイカれたアイスヘッド HAーHAー!

(宇宙バイクに跨がって生まれながらの光でセルフライトアップ。
派手なアロハを翻しグラサン越しの眼光と唐突なラップで怪人に喧嘩を売りにいくよ。とにかく勢いよくラップっぽく捲し立てていくさ。ラップだろうとなんだろうとビビらせたらこっちの勝ちさ)


松本・るり遥
(キュッて感じの渋い顔)

(でも負けられない気がした音楽好き男子)
(ラップは専門外だが歌詞とリズムのコツは同じ)

(爆音。持ち前の声圧は厚く)
(凡庸な体躯から放たれるは、激しいシャウト交じりの)

ハァァァア!!!?!オマエのRhymeにゃ情熱が無ェなあ
この世のStyleにJOYin us the Future!!!
吼えてみろってcheapなBOWWOW!!
聴いて嗤えやDEEPなGO WAY、
I am CHICKENなBarking JOHN DOE!!!!!

貶すだけじゃ足りねえよ Hunger
浴びるダウトに媚び売ってMonger
躓く泥の味覚えたか Loser?
貫く言の葉革命するBRAKER!!!!!


秋稲・霖
ラップで勝負か!やったことねえけど声使うんだ、やってやれないことはないはず?多分
人気になれるように…あと、高速ラップでびっくりさせちゃうぜー!捲し立てんのは得意なんだよな!
…あ、いんだはーうす、とか言った方がカッコつく?
【言いくるめ】と【パフォーマンス】が役に立ちそうかもな!
いくぜ!サウンドウェポン起動!

しっかり見とけよ俺らはイェーガー
うっかりミスする未来見えてんなWack風情が
すっかり黙ってあれもう降参?そうなりゃ解散?
まあまだ見てけや俺のFlava
こんこんと鳴くだけが能じゃねえんだ

ディスっちゃってごめん!って最後に謝ることも大事
ほら、やっぱリスペクトって必要っしょ?

※アドリブ、絡み歓迎です


壥・灰色
さあさ今から始めるフロウ
耳かっぽじってよく聞けブロー
お前のビートじゃノれないキッズ
ジャストミートでノせるぜヘッズ
Oh yes おれのライムにお前は嗚咽
ザックリ削るぜおまえのheart
ゲッソリする程ココロはhurt
オーケーそいつでかまやしねえ
ソーリー言わねえおれ負けねえ
付いてこれるかthis flow
付いてこれんならlet's follow
足引っ張るディスダルいぜワック
立ち会ってるヤツいるから勝負
忘れてんなよリスペクト
でなきゃおまえはR.I.P

(終始無表情)
(で? もう殴っていいんだっけ?)
(え? まだ? そう……)


皐月・灯
ハッ 馬鹿にしてんのも大概
バッタバッタと薙ぎ倒すBad guys
勝ったつもりでcheapなHands up
油断大敵 キメるぜカウンター

ただのLuckで詰め込むlyric
見てらんねーなお粗末なrhyme
てめーは所詮コスプレのbutler
それっぽく重ねた哀れなpolymer

くだらねーぜHA んな虚仮威しじゃ動かねー誰もNo one cause
上っ面だけ固めた連中 てめーと同じの氾濫構図

本物を知りたい連中はいねーか?
チキン野郎共と心中してーか?

迸れ喉バラせyour bullet set
即ぶちかませよ今じゃねーのかYo!


キャナリニア・カルコメラン
お呼びでありますか 猟兵参戦
オブリビオンの未来 ここで終点
魅せるであります 胸がすくRAP
怪人刈り取る 己がSCRAP

執事がラップ? どこか不釣り合い
ザクザク刻んだRHYME 無駄遣い
熱くなって溶けかけてる頭に
ぱらぱらかけてる方が お似合い

蔓延る悪党 滅びるのが世
覚悟はいいか いくでありますYO

………っぷはぁ!脳みそがあったら沸騰しているところであります!
スクラップでアート的オブジェを作って鼓舞でもしておくであります!


ウルフシャ・オーゲツ
 たまにはノリノリでいってみようかのう?
 さぁついてこれるかあ!
「イイネ、スゴイネ、言えるかお前ら! あいつらいつでも言ってるキマイラ!」
「どうせお前らディスられクラクラ! だったらたまには褒められフラフラ!」
「さあ楽しもうぜキマイラフューチャー! ここではみんながお前のティーチャー!」

ん?キャラが違うじゃと?
ラップゆえ致し方なし、じゃ!

アドリブなんかはいくらでもカモンじゃな!


陽灯乃・赤鴉
はぁ、猟兵を舐めてもらっちゃ困るわね
この程度、出来て当然よ
所詮オブリビオンね、過去の存在。
私達猟兵は未来へ進むの。

「小生のコール。 どうみてもフール。
執事? 小生? 言ってる事が古臭い
コスプレみたい 勘違い
何言ってもバカみたい
貴方と私は段違い 猟兵が作る新時代。
見せるわ必殺パンチライン
躯の海に帰って寝てなバイバーイ」



●【 Jaeger SIX-SIXth VS O-blivi ON STAGE 】
 喧噪響くキマイラフューチャー、ここは通りに面したデカい公園。
 軽快に響くウィットに富んだリリックが跳ねて回って大騒ぎ。
「ッヘ~~~~~イ!? こんなもんかよ大したこたねえな お前らじゃ所詮役不足だBoogie-New-Bie」
「ちくしょう……! ラップバトルで無敗だった俺達の誰もが勝てないだなんてよ……ッ!」
「言うな……ッ! ラップバトルで途中で詰まっちまった俺達が何を言ってもヨ……ッ! 負け犬の遠吠えだ、ゼ……!」
 執事姿のオブリビ(オブリビオンのこと)は益々テンションを上げて会場を盛り上げていく。
 手に取ったマイクはまるで言葉の洪水を引き起こす魔法の杖。
「そこのオブリビッ(オブリビオンのこと)! ちょっと待ったッ! 来たれッ! マァイボディーッ!」
「アア~~~~~イ?」
 今もマイクを握って離さない執事の前に、ステージ横から颯爽と現れたのは四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)。
 彼が会場入りしたことで、彼らの上に飾られていたデカいモニターの表示も変わっていく! 無数に現れた彼らの名前は、6を二つ掛け合わせて正にム限なデカいグループ! その名も……!
 良いか!? 今日のJoke upは豪華だぜお前ら!この時を見逃すんじゃねえぞB-BOY! 今日の主役たちの登場だ! 【 Jaeger SIX-SIXth VS O-blivi ON STAGE 】!!
「この日に開くフロア光る街にフォロミッ! 奇々怪々なキマイラ=フューチャーッ!」
「その耳に聞くホラ怒るガチにフォーミー 聞き飽きたなお前らYour turn」
 颯爽と登場したMC.TDR! ヤツァ自前のユーベルコード【蒸騎構築】を使用し、防御力マシマシな蒸気機関車ヒーローに姿を変身ッ!
 ついでに防具改造で頭にヘッドホンと星形サングラス、両肩にラジカセを取り付けると、マジなBump Upを遂げやがったッ!
「スクラップクラッシュし響けクラップウィーハンドッ! ステップインザスカイにストリップザハートッ! ユアペインイズマイン魅せろユアアートッ! 揺蕩うソードイズディーヴァのサウンドッ!」
「フラックスラッシュし磨けルーザーズキーワード Step out of lineなFlow is the hurts 不安定ILL Line 失せろ Your art 楽々綻びる死に場所R(ラウンド)」
 しかし、執事のヤローも綴のCallに対して真っ正面から受け止める構えだぜッ!
 こいつァ俺達とんでもねえもんを見ちまってンのかもしれねえなッ!!??
「喰らい尽くせ世にクライ尽きるまでッ! 芸の無いゲーム楽勝ワンコインでッ!」
「スタイル? ウケ? 鬼辛い申し伝え ペンと紙照れて爆笑社交辞令で」
 でもよォ! 特筆するべきはあのMC.TDRのハートのデカさと分厚さだぜッ!? アイツあずき色のヘルメットに汗一つかいてやがらねえッ!
 ラップは初めてっぽいのによォ~~~ッ! とんだBig Guyだぜッ!
「さぁカモン怪人返せねぇならゲラウトッ!」
「ばらかもん配信耐えれねえならGet out!」

「……ラップバトル。つまり「ピッと引っ張ってバッと包んでパリッとカット」すればいいのね……え、違う?」
 綴も健闘しているが、徐々に執事に押され始めてしまった! しかし、猟兵は独りではない! 一人でダメなら二人で! 二人でダメなら∞!
「リズムに合わせて歌いながら踊ればいいのね。やってみるわ」
「荒谷さんッ! いやッ! MC.アラヤッ! 後は頼むッ!」
 綴とハイタッチして新たに登場するのは荒谷・つかさ(護剣銀風・f02032)!
 彼女は初っパナから執事とガンガン斬り合うようなライムを披露していくッ!
「私のブレイド とってもグレイト 一振りフライト とてもストレート」
「果たし状Raid 法華経よりLate 視聴率迷子 燃え要素盈虚」
 彼女の凄まじいところは、ラップを口ずさみながらも演舞として自身のユーベルコード、【荒谷流乱闘術奥義・明王乱舞】を発動していることだ!
 全ての装備武器を利用しての乱舞を放ちながら、それでいてリズムを崩さずビートを刻み続けられるのは正に神業! 明王をその身に宿したような彼女はまさにCome in What Zap!?
「得意はサポート 貴方へアラート 一撃アボート 私はスマート」
「そうしたらよほど Unknown cannae Loud 意味消し DA Lyric WOW 確かSmurf?」
 しかし、やはり不慣れなのか!? 彼女のリリックが少しだけ速度を落としたのを、執事のオブリビは見逃さなかった!
「ヘ~~~~イ……アンタよォ、もっとできるはずだろ? 何良い子ちゃんぶってんだ? 出しなよ……アンタのマジもんをよォ……」
 曲の合間に挑発を繰り返すオブリビ! ラッパーとしてのリスペクトを彼女に捧げつつ、つかさがまだ本領を出しきっていないことを見抜いたのだ!
「巡る日はサウザン 見上げるクレッセン 降臨アドヴェン 下るジャッジメン!」
「手ぬるいOne Pattern 仕掛けるプレゼン 強引野暮天 ズバズバ死線」
 オオイやべえぜお前ら!? MC.アラヤが更にラップのリズムを高め、しかも手に持った大剣をガンガンにぶん回して踊りはじめやがったぜッ?!
 それを避けながら詠う執事も大概だが、やっぱあの女の子とんでもねェんじゃァねェかァ~~~ッ!?
「真紅のスカーは辛苦のスカーレット 私のブレストでヘイトをバーストしな ハートのビートをアクセプト 言葉のコメットをみんなにシュート!」
「シンクロTogetherは流行りののウォレット ネットでえっと? を連呼しな 俺のFacerollはFASTEST 愚か者HEADSは引退ルート」
 執事にびしぃ! と剣を突きつけ〆に入ったつかさの後ろから鳴るのは轟音! 誰だお前はステージにGO on!

「『MC jailbreak』いっきまーす☆ (凶悪スマイル)」
 オオオオオオオオイ!?!? ありゃ……ありゃパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)じゃねえか!?
「aiight! 呼ばれて参上、あわや惨状? シロートイェーガー! 胸お借りします……とか言えんがええかァ!?」
「ayeite! 応晴れて登場、Power band 見所見せ場は腕をまき散らしなよ 自然なDRIFTER O-Hell-Yeah」
 あのクソデケえ音は何だと思ったらよォ! 当然だぜ! ありゃアイツの宇宙バイクだ! 
 ステージにそのまンま乗りつけて来やがったんだ!! ちっくしょォ~~~! イカす登場じゃねえか! 宣戦布告まで付いて完璧だゼ!
「Drive by ビビってんじゃねーぞairhead エセ執事はsucker三下以下」
「のらりくらり Check it out & アテンション ベビドラはさっさとLANCIAしな」
 Bさん出ました! ヤツの詳細データです! 
 おせえよスットコ! これだからお前に会場の司会任せたくねえ……ン、だ……ってお前! 全然情報がねえじゃンかよ!?
 ヤツの称号がDevilfishだってコトくらいよォ、この辺の界隈の奴はみんな知ってるぜ?!
 知らねェのはモグリなナードだけさ!
「オレはイカじゃねェぜオクトパス テメェはオレのスキルに臆しパス!? オレらが集えばkick your ass!!」
「お前のイカしたタコの脚 ちと足りねえようだな酒とヤニ いや待てU未経験か恋と愛 集まったらキスしな俺の脚に」
 持参のハンドマイク(サウンドウェポン)を握り締めて参戦し、あっという間に会場の熱気を高めていくパウル!
 彼のライムはケツの音が同じなため、オーディエンスも乗りやすいらしい! パウルがハンドマイクを客に向けるたびにすぐさまCallが返ってくるのがその証拠だ!
「YO-行くぜお前ら オレらの味方だ その登場にCallしな! 次の出番はコイツだぜ! MC.Kyoだput your hands up!!」
 ウオオオオーーー!!
 声にならないほどの歓声がパウルの煽りに呼応して更にデカくなっていく! 
 ヘッ……アイツ、自分のリリックを聞かせるだけじゃなくて、味方に気まで利かせるとはよ……。やるじゃねえか……。
 これには司会のBもニッコリ。パウルは両腕とタコ触手をアップダウンさせて客を煽り、味方のヴァースに乗りやすくした!
 次の主役がステージに上がっていく!

「来たぜ猟兵がキマイラフューチャー アンタら旧人類バックトゥザフューチャー 時代錯誤なそんな色彩じゃ 遠退いてくステージオブメジャー」
「だれだテメエは平凡なSoldier 見たとこどうやらTeenager 色褪せない魅力を浴びせるぜPleasure 乗り遅れるな俺の波にChallenger」
 パウルとハイタッチを交わし、自然なトーンでラップに参加するのは白神・杏華(普通の女子高生・f02115)!
 都立津美高等学校の制服に身を包みながらも、その口で刻むビートは一筋縄じゃいかねえぜッ!
「今日は私が沸かすぜ観客 その人気も今日つく一段落 キマイラ達みんな見てる端末 追い抜くアンタの動画難なく」
「今宵集まる我らが観衆 眼中にもないぜお前の郷愁 足りねえな緩急 してやるぜ監修 無理すんじゃねえ無ェんだろ慣習」
 しかし、どうやら彼女もまたラップは不慣れな模様! そこに付け込む執事のオブリビ! Bさん! こりゃもしかして、あの子ボコボコにされちまうんじゃないですか!? オレ、もう見てらんねェ!
 バカヤロウ! 黙ってみてやがれ! 分かんねえゼ……! こういう初々しいグルーヴは……時折会場に引き起こすんだ……波をヨ……!
「オーディエンスの声は聞こえるかい? すぐにバレる天網恢恢 独りよがりな旧人類愛 じき下る猟兵の制裁」
「BØY全部の心が見惚れる「I」 映し出せるぜ現状SKY HIGH Copy catは疎にして漏らさず 今始まるのは会場の再生」
 その時不思議なことが起こった! 先ほどまで執事の応援一辺倒だった観客の一部が、猟兵たちの頑張りに感化されたのか、杏華をDisるようなラップを刻む執事に反感を持ち始めたのだ!
 来やがった! 来やがったぜ! 並の騒ぎじゃねえ波だ! 見ろよスットコ! さっきまではオブリビ一色だったこの会場に……! アイツ、火を付けやがったゼッ!?
「その前にまずはライムでスライス 平らげてやるその頭のアイス お菓子両手に不審者スタイル 主人もいない執事はremoval!」
「覚悟あんならやれよSacrifice 言わせて見なよこのHEADSにIrie Date a lamentなこのカッコはシャギー O.K. High way I don't give a f●ck DragなTrackにDONハマり? Sell out でもしてやるぜBusta」
 MC.TDRが突っ込み、MC.アラヤが斬りこんだ! MC. jailbreakが包囲網を突破して、その穴をMC.Kyoがデケえムーブに変えようとしてやがる!
 この勝負……! ラップ史の新聞がありゃ、一面の大見出しになっても不思議じゃねえ事態になってきやがった……!
「うう……こんな感じで挑んでは見たけど、ラップバトルは見様見真似だし恥ずかしいよ……」
「大丈夫やで杏華ちゃん、あとはお狐様にお任せや!」
 恥ずかしげな表情を見せる杏華を助けるように、会場に着いた火をデカくするように!
 ステージ裏から飛び出す一つの尻尾があった!

「フィメールフォックスラッパー、MCメルノ推参や! 配信するなら好都合、皆のソウルを誘惑するフォックスラップ! とくと聞けやwack怪人!」
「来いよ猟兵~~~、何人でもかかってきな! 俺の語彙の泉はまだ尽きる事がねえぜアァ~~~~イ!」
 そう言って飛び出してきたのはメルノ・ネッケル(火器狐・f09332)! 彼女はMC.Kyoに代わってマイクを受けとると、執事のオブリビに向けて自慢のビートを刻み始める!
「e-yo,こちらキマフュー自由な大地、イカれたオブリビお呼びでないし! そこらかしこでコンコンコン、うちら妖狐もコンコンコン、沸けよ観客Call Call Call!」
「Ay-Oh! そちら所謂自分探しに? キラキラFunny Bunnyを呼んではないし Socialiteで綿々々、初陣若人綿々々、続けろよFoxy Oh-my-men!」
 要所要所でヘッズに語りかける正統派ラップ! これには観客も体を動かさざるを得ない!
 会場の空気がまた一つ猟兵の味方になったのは、メルノの魅了の「タマモ」のか、それとも彼女のラップの腕によるものか!?
「yeah,猟兵ラップは剃刀rhyme、怪人ラップはお疲れtime? キマイラヘッズは気合十分、お前ら上げてけ気炎十分!」
「Ya-攻撃Wackはもう良いぜWipe フォックスファイアは弾切れBoot? R&Bなんてもう旧聞、能文磨いたらまた来なGiven(戯文)!」
 Bさん! 見てくださいよアレ! あのMC.メルノッてヤツ、会場の空気をドンドンあっためて……! 司会の俺らまでアツくなってくるみたいだ!
 ああ、アイツはもしかして……そうか! 「その手」があったか! 離れてる客を引き戻すには、冷えた空気をあっためなきゃいけねえ! まさかとは思ったが……! アイツ!自分のラップでこの会場に付いた火を大きくするつもりだ!
「放つは言葉のブラスター、立つはこの場のスターダム! 止まらんJAEGERじゃ堪らねえな? 尻尾撒いたらお家帰りな!」
「お前の言葉届いてねえな A.K.A.な語彙なら早く魅せな! メルノってNameはもしかして替え名? うちに帰って俺の名を称えな!」
 両者一歩も譲らねェ~~~~~ッ! ヤバくねこれ!? ヤベくねこれ?!
 っていうかあのMC.メルノって人マジ可愛くね!? ヤッベ俺ファンになったかもだわ! しかも超ウメェしよォ!
 オオ、マヂアガんぜこれな! 何つーかヨォ?! こいつァ正に名勝負って奴じゃねェの!?
 例えるならキマフューの2019年、新年ラップバトルの時のJun対Enemimの時の突発バトルみたいだぜェ~~~~~~ッ!
 会場のオーディエンスたちも、メルノと執事のアツい掛け合いにどんどん縦ノリを激しくさせていく! 特に男性中心にメルノの人気が高まっていくようだ!
 そんな会場に静かに、しかして堂々と登場するのは一人の男! 新顔だ!

 メルノとラップバトルを繰り広げる執事に近付くもう一人の影! それがステージに上がった瞬間、会場の女性たちはにわかに黄色い声援を上げ始めた!
 アレ……?! ねえ由美、あの人ちょっとカッコよくない???
 えっ、誰よ? うわ、マジだ……! なにあのファッション、相当好きじゃないとできないスタイリッシュさ全開ジャン……!
「hey yo! そこの怪人! 侵略順調? ちょっと増長? 猟兵参上!」
「A~~~i! So この感じ! 計略快調 その力は超常? 正兵Check it out!」
 メルノが温めた会場に新たな時代の風を吹き込むのは桜庭・英治(NewAge・f00459)!
 彼は自信にあふれた表情のままにHOLLISTERを纏って現れた!
 彼女から軽くパスされたマイクを自分のサイコキネシスで操り、自然な動作で手に収めると、彼はメルノと対照的なCoolなリリックを唄い始めやがった! WOW!
「呼ばれてきたぜ俺たち猟兵 揃えた戦力これで公平 いまから始まる逆転Show! 聞かせてやるぜ俺らのSoul!」
「Say Hey(精兵)並べても俺は静平 大兵引き連れてそれで衡平? 軽捷な俺が鳴らすぜ警鐘 認めてやるぜお前の甲斐性」
 ……気付いてるか? スットコ。
 はい……! あのAgeって名前のMC……! ビビるくれエ会場の空気を読んだラップっすヨ……! 人前に出るのに慣れてなきゃああは中々……!
 バカヤロウ、そこじゃねェ! そこもあるが! アイツ……! 恐ろしいぜ、このラップバトルのほんの何回かの返しで周りの奴を鼓舞しながら、女性人気までも掻っ攫っていきやがる……!
「そこの怪人教えてやるよ あたま灰燼なるまえによ 俺の名前は桜庭英治 お前のRhymeなんだかLazy だってオブリビオンOldAge 俺ら猟兵It'sNewAge」
「Prestigeかかった俺のMessage こいつは古いんじゃねえぜVINT-AGE 嬰児も俺様にはEngaged 舌噛んでねえか要るかBandage 加速していくぜRhymeのVOLT-AGE」
 キャーーーーーッ!!
 さくらばくーーーーん! Age---!
 気付けば会場の既に1/3ほどは猟兵を応援し始めている! 最初は冷え切っていた猟兵への態度が、見えない力でこじ開けられるようにどんどん軟化していくではないか!
「……頭爆発しそうなんだけど……。ま、男子的にはこういうのもたまには良いか」
 そのまま自分の右手からサイキックエナジーによる炎を放ち、パフォーマンスとして会場を盛り上げていく英治!
 フォックスファイアが燃やした男性人気という会場の種火へ向けて、そこにさらに女性人気という燃料を放りこんで点火していく!
 会場のボルテージは上がっていく一方だ!

「やぁやぁ、さっそく前口上を始めようか!』」
 メルノと英治がアツくした空気をそのまま活かすようにするりと会場入りするのは虜・ジョンドゥ(お気に召すまま・f05137)!
 MC.John Doeとして登録されている彼の名前が電光掲示板に上がり、ジョンドゥはそのまま英治のサイコキネシスでパスされたマイクをキャッチすると前口上と称してラップバトルに参戦してきた!
「やぁやぁボンジュールたr…げふっ、ボンジュール! ここらで一つ、火遊び(アバンチュール)! ヤケドにご注意 執事さん このまんまじゃ羊さ ジンギスカン!」
「What’s up? John Doe? Chillax Ya-? Anonymousとは洒落たCaricature HardcoreにShadyお前さん 早く本性見せなよF●ck'nA!」
 ……!!!!
 アレッ!? アイツ……最初噛みましたッ?! ほら、Bさん! アイツ、今ミスって……。
 黙ってなスットコ! ……今のは違うぜ……! アイツ、今日のここの司会が俺だってことまで把握したうえで、最初ワザと噛みやがったんだ! あえて失敗したかに見せかけて、オーディエンスの目を惹くためにな!
 その証拠に聞きやがれ! アイツのラップは洗練されてやがる……! さっきの炎の演出ですら、自分のラップに組み込んでやがンだ! 見ろよ客の若い奴らの面を! まさに「骨抜き」って感じだゼ!
「ボクは振り撒く エモの感染症 痺れんなよほら 聞こえねぇかキマイラ達の歓声を I'm a Jaeger 愛もねぇか? ダセぇんだよ通り魔 焼けた羊の数でもかぞえてやがれ!」
「挑発威嚇 目の子算検討 一元化しろよ言葉の波を 理路整然な勇み肌で自己満Say Wow? バーチャルなピエロにゃ語彙もねぇか? DW 落ち着いて辺りを見ろよ そうじゃなきゃ寝てなGLHF & Gnite」
「Boon Tik Tiko Boon Boon Boom Ah Tik Tik K.K. Yeah Now Here We Go Come On Baby O-Hell-Yeah」
 ジョンドゥの後ろで8bitサングラスを装着しながら、逆に目立たないようにボイパでオーディエンスを煽りつつジョンドゥのラップを良きように盛り上げるのは、彼のユーベルコード、【MY AVATAR】で生み出された分身たち。
 緑髪ピンク目の男の子の“ジョンドゥ”と、ピンク髪緑目の女の子の“ジョンドゥ”。彼らを背後に引き連れたジョンドゥは、会場の男女を問わず若い年齢層の観客をその腕前と中性的な魅力で魅了していく!
「ンな甘ったるいオツムなんざかったるい 受けてやったぜテメェのCall 返答次第じゃテメェは凍る 何故なら? ボクは独りじゃない 見える世界はキミよか広いんじゃない?」
「横おる姿勢でも分かるぜSquall 冴え凍る会場の波が滞る 凍み氷るSteeloじゃNOT=Be Cool お気に召すままDreaMinTrip? いつまでも夢見てんなよ昨日はAll? かけてやろうかWake-up Call」
 執事のオブリビも猟兵たちのラップに負けじと真正面から受けては返していく! 最初は一方的だった勝負が最早今では分からない!
 会場の波は時に猟兵に、時にオブリビに揺れ動いては返すさざ波のよう! もはやここまでくると、どちらのファンだとかそう言う次元の話ではない!
 純粋に、どこまで良いラップが聞けるのか!? その一点で、このラップバトルの勝敗は決するだろう!
「ラップ『バトル』は立派な『戦い』さ。 なら、自分に配られたCardでCallしないとね?」

「うう~ん……お父さん? 最近のらっぷ? っていうのはむずかしいんだねえ……」
「そうだねえ母さんや……。若い時を思い出せるかと思ってきたけど、やっぱり儂らみたいな年寄りには付いていけないかもしれんな……。特にあの執事さんが言うことは難しくてわかりにくいよ……」
 今日ラップバトルの会場に足を運んでいたのは若者たちばかりではない。平均的なキマイラ年齢をはるかに超えた、いわゆる「お年寄り」たちもこの会場には顔を見せていた。
 そんな彼らの脚を止めたのは、べべんべんべんと不思議と響き渡る良く聞いたあのSound。聞きなれているあの音は正にジジババにとってはFeel So Good。
「ラップなんざ俺の世界にゃねえものだ。だから俺は、俺の世界にあった物で勝負するぜ! そう、この都々逸文化でな!!」
 ジョンドゥが盛り上げた会場の熱、若者たちの熱。それを体に受けながらも、自分の持ち味を活かした立ち回りをするべく動いたのは石動・劒(剣華上刀・f06408)!
 三味線はねえからせめて三の糸を掻き鳴らしながら都々逸を歌う。そう決めた彼の音が、彼の声が、ジジババの身体を否応なしに昂らせる! これこそまさにMC.ツルギのなせる技であった!
「花道歩み 俺の出番だ 都々逸ご存知? 教えるぜ! これはラップだ ラップの一種 さあ聞いてけよ 和のラップ!」
「ちょぼくれちょんがらちょんがらちょぼくれ そもそもわっちと言いたいとこだが この会場の真ん中の 赤い道から飛び出す意気は 侍の国のお客様 着ているおべべはえんじ色 ただの赤じゃあござんせん そうあれなるは紅の 八塩の色だよさあ聞いた」
 な……なんじゃ……!?!? この、体の内から湧き上がるような振動わ……!
 お父さん、あたしもですよ……! まるで若い頃に戻ったみたいです、これならもう、ラップは未知のものじゃありませんよ!
 応とも! 若いもんに負けてられるかい! 未知を知り、未知を斬る覚悟で生きねば長い老い先どうするってなもんでぃ!
「お前のラップは 韻を踏むだけ 忘れてきたのか? 詫びとサビ! 薄っぺらいな お前の主張 手前の言葉で 語りなよ!」
「粋でいなせないなせで粋な 腰に獲物は差しちゃあいるが 今日の刀は舌で振る お侍には付き物の 斬り捨てごめんの一幕も無し 薄い礼儀は承知の上で 祭囃子に一言頂戴」
 良いぞうお兄さん! そんなしようのない執事だかはアンタの言葉で斬っちまいねえ!
 そうですよお侍さん! ほら、年寄り共もアンタの言葉に踊らされちまってるんです! その責任は取ってもらわなくっちゃあ!
「負け犬ほどに よく吠えたてる お前らみんな 井の蛙!」
「後生御利益大きな利益 都々逸節たあ乙なもんだね 私もアンタも二人で吠えたら とんからとんのどんがらどん どんがらどんのとんからとんの ずんどんがらりの大騒ぎ この会場のそのまた隣の じいちゃん婆ちゃん腰を抜かして 空言譫言口に出すから 三軒隣の青年までもが さて大変だと腰を上げては さあさ祭りだ 祭りださあさあ 立てる者なら寄っといで ここはキマイラフューチャーの 巷一番大賑わいのその中心だよ寄って出で」
 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
 会場はいよいよ老人まで取り込み、老若男女を問わずの大騒ぎだ。それぞれの猟兵がそれぞれの層に受け、次はだれがどんなラップを見せてくれるのかと観客に注意が執事から猟兵へと移り変わっていく。
 所詮執事がスゴ腕でも、一人で繰り出せるラップには限界があるのだ。個性豊かな猟兵たちが会場のバイブスをGetしていくのも納得と言える。 
「三千世界の 鴉を殺し 後に残るは 祭り跡 ――ってな」
「良いぞう! よく言ったやんぐなぴいぽお!」
「これならアタシ達もらっぷのびいとに乗れますよお父さん! あの人に感謝ですねまったく!」
 会場の光景を見て、執事もこれには焦らざるを得ない。思わず劒の挑発に乗って都々逸調で唄い始めるが、それが劒の繰り出した時間稼ぎであることに彼は気付いていなかった!

「ラップだァ? ヒハハッ、音楽なんて柄じゃねェが……」
 劒の策略にまんまと乗ったオブリビを横目に、猟兵たちの間でマイクは次々と移動していく。
 いくら敵が強大でも、協力試合、自分の得意なことを示していける猟兵の力はまさに無限大だ。
「正々堂々、真正面からオブリビオンを貶していいってのは。そいつばかりは、悪くねェなァ!?」
 劒のマイクを受けて立つのはバル・マスケレード(エンドブリンガー・f10010)。彼は自分自身の憎悪のままに、感情を派手なリリックへと昇華させて執事へと思い切りぶつけていく!
「ブチかましてくぜ俺はMask ブチのめすべきテメエにAsk 猟兵相手にラップをDoしてBattleときたか? 横柄ついでにアップした動画がBuzzるとしたら?」
「*透く見えてるぜお前のRisk 煤く言葉は掃除だTask すくすくおよすくGrotesque* 食いしばるなよさっきから 粘るなよそんな角ばる唄で さっさとくたばるかつくばることさ」
 これに反応したのは、会場の隅の方で固まっていたヤンキーキマイラたちだ。仲間内で固まっていた彼らは、バルのラップに不思議と聞き入る。
 ……オイ、なんかよォ? このMC.Baruってヤツの……。
 アア、分かンぜ。詩がイイよな。淡く神秘的な……それでいて凶々しいような……。
 ……乗る、か? 俺達も……猟兵たちのラップの流れにヨ……。
 ハッ、ハァ!? バカ言うんじゃねえぜ! 確かにコイツの詩は響くぜ? ビビっとくるさ。でもよ、何か今から乗るってのもヨ、今更っつーか……。
「明かされるぜテメエの正体! 晒されるぜテメエの醜態! 所詮は終わった過去のPrototype! 緒戦でかますぜ俺らのShow time!」
「リアタイで流れても気にするかMy Time 衰退も酔態もするかよ大体 そもそも今宵はRun Time するわけねえのさMisstype」
 先ほどから隅の方で身体も揺らさず駄弁っていたヤンキーたちが、バルのライムに惹かれ始める。
 老若男女問わず盛り上がりを見せ始めたこの会場で、跳ね返りの彼らは今更猟兵の流れに乗ることを躊躇っているようだ。
 常に彼らは執事にも猟兵にも乗ってこなかった。それは自分たちだけが乗って周りにダセえと思われることを避けるためだったが、結局乗らなかったことが彼らに取って重圧になってしまっている。
 ビビっているのだ。新しく聞こえ始めた流れに乗って、それで周りから今更? と叩かれることを恐れているのだ。しかし、そんな彼らにも等しくバルのライムは届いていくーー!
「ラップで勝てりゃあそれでいいが どうせぶつかり合うが俺らの因果 ビビッと来たならその武器抜けや ビビッていたならテメエの負けだ!」
「爪牙は抜かねえ高雅に仰臥 動画の撮影すでに忘我 Bidすんなよ楽にしなVivid また次の幕で会おうぜBringer とりあえずここはEnding」
 そう言って挑発混じりのラップを執事にぶつけてやるバルが、一瞬だけヤンキーたちの方へ視線を送った。
 彼の詩が、リリックが、ライムが、彼らの心に響き渡る!
「お……俺! やっぱ乗ってくるわ! MC.Baru-! マジビビっときたぜそのリズムーー!!」
「……俺も行く! ビビってちゃツマンネエよ、こんなデケぇ波が来てんだ! 恥なんか捨てて乗らなきゃ損だぜ!」
 ヤンキーたちはオーディエンスの中にそれぞれ散らばると、バルに向かって大きな声で声援を送り始めた。
 猟兵たちの味方はどんどん増えていく。その速度は加速度的に高まって、熱気と活気を伴って会場を包み込もうとしていた。

「ブバハハハハハ!!! 面白ェーことやってンじゃン? オレも混ぜろよ」
 そう言ってマスクの中で高笑いしながら、バルからマイクを渡されて新しく韻を踏み始めるのはジン・エラー(救いあり・f08098)。
 ピンクの瞳に藍色の髪、極端に黒い肌はそれだけでオーディエンスの注意を惹く。そしてその口から紡がれるラップに、観客たちは耳をそばだてた。
「何でも救うオレの名ジン・エラー お前の名前はどォーでもいいな 天国地獄?決めるのカミサマ とか思ってンのか大馬鹿頓馬」
「BPM高いThugなラッパー Whisperで囁けDay Tripper 上から目線のMr.Reaper Disりてえのかfrom Skyscraper」
 ……なぁに、この声……それに、このリズム……。
 あ、分かる……。なんか、ちょっと惹かれるっていうか、うん、この人の声……救われる? 感じがする……。
 ……………………こんな自己表現も、あるんだ……。
「オイオイさっきの威勢はどうした? お前にゃ一切敵わぬ相手だ ノリもライムも流され放題 さっさとオレに救われるのどォーだい?」
「正大なWackに盛大に感謝 席題即題言いたい放題 地獄の沙汰も金次第 阿弥陀の光もノリ次第 閑話休題しても良いかい? ダメで元々どうせTo Die」
 ラップを聞きに来るのは、決して満たされた者たちばかりではない。学校で、職場で、家の中で。救いのない自分を取り巻く環境から抜け出したくて、音の海に自分を沈めたくてラップを聞きに来るキマイラたちも当然多くいる。
 今までの彼らにとって、ラップとはただ日常を忘れるための音楽。とにかくノリに騒いで曲に乗って、ストレスを忘れられればそれで良い代物だった。しかし、ジンのライムは、そんな「救われないような」気分を日常で味わっている人々の胸に刺さっていく。
「いい気になるなよポッと出執事 オレは聖者で普通の出自 おっとォ! 違うぜ悪ィなsorry ホントの生まれはso holy」
「活字の勝負は卒爾みたいだな そろそろ述べるぜお前に訣字 受け取れねえよ木折りな煽り 撓(しおり)なんて見せるかDon't worry」
 ……MC.jin_error……。この人、そういう名前なんだ……。
 わた、わたし、ちゃんと今までラップって聞いてこなかったのに……なんか、すごい……。涙が、あふれて……!
「お前の目玉は節穴かァ? 突いて潰すぜオレの光が そもそもお前にゃ足りてねェーのか 崇めて讃えろコレが救いだ」
「潰されちゃ困るNo doubt 仄かにわかるぜLyric Like a 大のか 死んで花実が咲くものか 新入りを称えて堪るものか」
 ジンのラップの特筆すべきはその歌詞だ。今まで決断を流されるように誰かの判断にゆだねてきた一部の観客に、彼のライムは正に救いとなって染み込んでいく!
 彼のおかげで眠れる巨人だった、一部のオーディエンスたちは完全に「救われた」。
 ラップは時にノリであり、時に勢いであるが……。時と人によっては、元気と勇気を貰える救いでもある。それをジンはこの会場で証明して見せた。
 熱狂的な猟兵たちのファンとなった彼らは、この日のLiveを二度と忘れたりしないだろう。

「はぁ? ラップだ? What's happened? 任せておきなキマイラ共 負かしてやるよキモいラッパー」
「He-He-He-Hell yeah Wrapped Up in The Harpoon? 囲まれて墜ちなMissileの雨 怪しげ聖者はイモいババア」
 ジンからマイクを貰って、宇宙バイクに跨がって【生まれながらの光】でセルフライトアップを行うのはリンネ・カーネーション(爆走猫車・f08650)。
 ゴミ溜め生まれ戦場育ちのクソババア、自由気ままな猫妖精。そんな彼女はライムグリーンのグラサンを光らせながらギンギンなビートを刻んでいく。
 その口から迸る言葉の渦は、年を感じさせない見事なものだった。しかし、そんな彼女に難色を示すのが、真面目にコツコツ働いてきたキマイラ会社員だ。
「愛のないバトルさ アイスヘッドバトラー ガキじゃあるまいし 粋じゃない そんなラップ 損さShut Up」
「O.M.G. I got a aging harassment? まあアンタに比べりゃ確かにElement アンタの域ってもうDocument ババア乗れてないぜMovement」
 な、なんだね……! あの猫のラップは! MC.RINNEとか言ったか!? アレはこの会場に本当に似つかわしいものなのかね!? 取り締まってもらった方が良いんじゃないかね!?
 し、しかしですね、部長……! 若者たちには、現にこうして受けているわけですから……! できれば、もうすこしだけ聞いていっていただけると……!
 フン! キミねえ、私より若いからって感性がいつまでも若いと思ってやしないかい? こんなラップ、私が気に入る、訳……?
 そう言ってリンネのラップをハナから認めようとしない妙齢のキマイラ会社員の視界に、派手なアロハを翻しグラサン越しの眼光と唐突なラップで怪人に喧嘩を売りにいくリンネの姿が入る。
 その姿はどこまでも気儘で、どこまでも自由だった。
「おやビビったかい執事 まあ仕方ない必然 あたしゃリンネ、イカしたナイスキャット あんたはチンケでイカれたアイスヘッド HAーHAー!」
「Wow-Li-Li-Li Like a (Lyrical) Murderer 古風なWardが響くぜ哀然 へえ輪廻転生? Reincarnation? Bomb“cat” “Cats”-up My Line! Answer, Danke もう枯れたPussycat  I went through Speed YO-HO!」
 内容にかかわらず、とにかく勢いよくラップっぽく捲し立てていくリンネ。
 その堂々たるしぐさからは、自分のラップだろうとなんだろうとビビらせたらこっちの勝ちと信じて疑わない自由な強さがあった。そしてその何物にも自分を曲げようとしない姿は、キマイラ会社員の心を揺れ動かした!
「……フ、フン! まあ、聞けば悪くないではないか! ……通報は待ってやろう! 別に、あの猫のラップをもっと聞きたくなったとかそう言う訳ではないぞ!」
「ッ! 部長~~! ありがとうございます!」
 凝り固まった考えと頭を崩すのは、自由な発想から生まれるリリックとブレない姿勢から繰り出されるリズム感だ。
 リンネが人知れずファンを増やしたころ、会場に響くのは猟兵コール。嵐のような観客たちの声が、執事よりも猟兵に流れが来ていることを教えてくれていた。

「Hey Jaeger、そろそろマンネリ化してねえか? 俺はまだまだ行けるがよォ~~?」
 執事のオブリビは多くの猟兵たちの言葉を受け止め、そしてラップの上でとはいえマジに返していく。
 DisやThugなLyricも時にあり、New-Bieを労わるような環境でないことは確かだ。ただし、彼のラップに対する愛情は本物に見える。
 それを裏付けるのが、彼のテンションだ。これだけたくさんの猟兵たちから多くのラップを喰らっても、彼は楽しみながらそれを返し続けているように見える。
 会場の人気を取り返されても、それでこそと言いたげに迷わず言葉を綴っていくのだ。
「ハァァァア!!!?! オマエのRhymeにゃ情熱が無ェなあ この世のStyleにJOYin us the Future!!!」
「What's up! お前もかIt's a Boisterous Jaeger この頃SwipeなVibes in da house」
 キュッて感じの渋い顔をしながら、松本・るり遥(不正解問答・f00727)はリンネから投げ渡されたマイクをキャッチする。
 その顔は渋く、重い。迷っているようでもある。しかし、それでも彼がラップを読むのは、内に秘めた闘志が叫ぶから。負けられない気がした音楽好き男子は、だからこそマイクを握って今叫ぶ!
「吼えてみろってcheapなBOWWOW!! 聴いて嗤えやDEEPなGO WAY I am CHICKENなBarking JOHN DOE!!!!!」
「越えてみろってPeaceなManual イイネ貰えやListen Up O.A. 吐き出す自刃さDarling Dope BOOM!」
 ラップは専門外。だが、彼の中では一つの指標となるものが確かに存在していた。そう、今まで聞いてきた幾百の唄が、幾千の音が、歌詞とリズムのコツは同じということをるり遥に教えてくれている!
 ワイヤレスイヤフォンで耳にした全ては感情のひとかけら。言葉にできる気持ち、言葉にできない思い、その全てを詩に変えて、シャウトに乗せて響かせる。そうした彼はもう迷うことなどない。
 この時だけ、彼は猟兵のるり遥ではなく、この時だけはMC.遥として、思いの全てを爆音に変えて放つのだった!
「貶すだけじゃ足りねえよ Hunger 浴びるダウトに媚び売ってMonger 躓く泥の味覚えたか Loser? 貫く言の葉革命するBRAKER!!!!!」
「かなり肥えてるがなり声Tell You 贅肉だらけの32G Bite U 泥啜って登りなWardのCho Oyu 絞りゃ悪くないぜMerveille」
 会場に響く爆音は、るり遥の喉から発せられたもの。持ち前の声圧は非常に厚く、魔力を載せたその声は、会場のどんなキマイラの耳にも澄んで聞こえた。
 凡庸な体躯から放たれるは、激しいシャウト交じりの音の波。彼もまたNew-Bieではあり、その腕前は依然として粗削りだが、オブリビオンもこれには彼を認めざるを得ない。
 この人物も、他の全ての猟兵とも劣ることのない素晴らしいラッパーだ、と。
 素晴らしいラッパーの条件? ラップが好きか、ラップに興味があるか、ラップを読んでいるか! その中の一つがありゃ良いだけさ!

「ラップで勝負か!やったことねえけど声使うんだ、やってやれないことはないはず? ……多分。そんじゃいくぜ! サウンドウェポン起動!」
 秋稲・霖(ペトリコール・f00119)は不安そうに声を上げながらも、しかし次の瞬間にはハイテンションのままにニカっと笑ってステージに上がっていく。
 るり遥から手渡されるマイクを手に取って、目指すはこの場の人気者。捲し立てて掴もうとする野望、希望、願望を手にすべく、今彼はマイクに向けて叫ぼうとする!
「しっかり見とけよ俺らはイェーガー うっかりミスする未来見えてんなWack風情が」
「酸いも甘いも見極めりゃSuger それが出来なきゃ酸っぱいぜVinegar 軽い挑発じゃ引かねえぜTrigger Vulgarな詩じゃ重いぜFinger」
 霖はまるでざあざあ振りの雨のような高速ラップで執事に挑んでいく! 彼の言葉はまるで弾丸の雨嵐のように、オブリビを捉えて離さない!
 言いくるめるような歌詞を丸ごとのっけてガンガン攻め込む彼の姿勢からは、音楽への愛がにじんで見えるかのよう。
 彼がもし音楽を好きでいなければ、高度な高速ラップを経験も無しに即興で作ることは相当厳しかったはずだ。
「すっかり黙ってあれもう降参? そうなりゃ解散? まあまだ見てけや俺のFlava こんこんと鳴くだけが能じゃねえんだ」
「俺のRapでお前ら潰散 シャンとしてなよお稲荷さん 勝算計算再三降参? 離合集散? するなよ逃散」
 彼の刻むビートは、なぜだか会場のオーディエンスに良く響く。
 歌で人を応援したい、勇気をあげたい。そんな彼の思いが乗っているからか、やはり人々は攻撃的な執事のRapよりも霖にだんだんと惹かれていく!
 最後の〆に観客に向かってブレイクダンスのパフォーマンスを行い、Hands-upのモーションを取ると、会場の中に腕で作るウェーブが霖を祝福するように帰ってきた。もちろん、歓声のオマケつきだ! 
「ディスっちゃってごめん! ……あ、いんだはーうす、とか言った方がカッコついたかな?」
「……ヘッ、憎めねえB-BOYじゃねえの。平気だ、言わなくてもカッコ良かったぜ。……他の猟兵みてェによ」
 観客には聞こえないようにマイクをはずしてオブリビオンに最後に謝る霖。ほら、やっぱリスペクトって必要っしょ? と言いたげな緩い表情の彼に、思わず執事も気が抜けて小声で返す。
 ラップの読み合いはいつもリスペクトあってこそだ。口では薄汚く相手のことを罵っていても、根底にあるのは返した相手への尊敬。
 それを知っている彼は、もはやただの初心者ではない。周りの新顔猟兵たちと同じく、期待の新星だーー!

 灰色が躍る。踊っている。もちろん本当に「彼」がダンスをしている訳ではないのだが、彼はぼさぼさで灰色の髪を振り乱して、灰色の瞳で観客を見て、それがまるで「灰色」が踊っているようだった。
 霖の手から「彼」に渡ったそのマイクは、しっかと握りこまれて「彼」の声をハッキリと会場に届けていく。また一つの伝説が幕を開けようとしていた。
「さあさ今から始めるフロウ 耳かっぽじってよく聞けブロー お前のビートじゃノれないキッズ ジャストミートでノせるぜヘッズ Oh yes おれのライムにお前は嗚咽」
「言葉の回廊でするなよ蹌踉 明朗なだけじゃ見えないぜ高楼 深みがないならアガるぜOdds 出番じゃねえぜ座ってなWhiz kids Oh fine(灰) 皆が見てるぜ? Let’s Rec」
 その人物とは壥・灰色(ゴーストノート・f00067)。終始無表情かつ無抑揚のまま、音程も合えて付けずに読む彼のスタイルは、まさに「お経系」。
 お行儀良いとは言えない見た目から繰り出されるブッダでソワカなサウンドに、観客はまたしてもくぎ付けだ!
「ザックリ削るぜおまえのheart ゲッソリする程ココロはhurt オーケーそいつでかまやしねえ ソーリー言わねえおれ負けねえ」
「もっと投げなよ言葉のDarts  無くしちまったか心回路のKey parts 時経て認めな敗北がMoney 待てねえなら止めねえDon't worry」
 灰色のラップにタイミングを合わせて乗る執事も相当な腕前ではあるが、驚嘆すべきはこの大一番でお経スタイルを持ち出してきた灰色の心臓の強さだろう。
 すでに会場には独特の横ノリが満ち溢れ、灰色とオブリビの刻むビートに合わせて皆が揺れるその様は正に天上の極楽。
 会場のキマイラ・オーディエンスの全員が、アルカイックスマイルを浮かべながら悟りを開き、ノリながら右手の施無畏でHand-Upする様はまさに必見であった。
 ふと見やると中には左手で与願印を取っている客までいる。浄土である!
「付いてこれるかthis flow 付いてこれんならlet's follow 足引っ張るディスダルいぜワック 立ち会ってるヤツいるから勝負 忘れてんなよリスペクト でなきゃおまえはR.I.P」
「俺を尊老しなよ白面郎 心労溜まってんのか灰色の煩労 お経系RapたぁまたManiac 惹句に自信ならやれよHijack 会場のJackは待ち望んでるぜ あとはAceで【Blackjack】」
 淡々と盛り上げ、場の流れをコントロールするのは灰色。執事は既に彼の生み出すGreat Buddhaスタイルに為すところを無くし、彼の流れに乗ることしかできなくなっている!O-仏壇の八艘Got Wow!
 しかし、灰色が内心で? もう殴っていいんだっけ? と思っていることは内緒であった! 知られたら舌斬りの末に地獄行きなのであった!
 え? まだ? そう……。はい、まだなんです。もうちょっとだけ続くんじゃ。

「ハッ 馬鹿にしてんのも大概 バッタバッタと薙ぎ倒すBad guys 勝ったつもりでcheapなHands up 油断大敵 キメるぜカウンター」
「Ai yo 欄外で吠えても意味ないぜ抗い 険害なRapじゃ出すだけ被害 あとに残るは血みどろちんがい 慮外 惨害 奇想天外? 透けるぜ門外今度は言外」
 次に登場して灰色からマイクを貰うのは皐月・灯(灯牙煌々・f00069)。彼は初っ端からフルスロットルで飛ばし、執事のオブリビに向かって思い切りしゃべくり始めて止まらない!
 まるでRap以外のことが頭から吹っ飛んでしまったかのような彼の言葉は、灰色と似たスタイルながらもそのペースの面においては上であった!
 灰色が一定のリズム、同じ音程で続けるスタイルがお経系スタイルなら、灯のRapはまさにマシンガンスタイルである!
「ただのLuckで詰め込むlyric 見てらんねーなお粗末なrhyme てめーは所詮コスプレのbutler それっぽく重ねた哀れなpolymer」
「重ねて磨いた言葉のPolymer さては読んでねえだろRapのPrimer 言葉の海を泳ぎなヨSwimmer そしたらまた来いNewcomer」
 薄青と橙、二色の瞳が夜の会場に煌々と光る。既に長く続いたラップバトルもそろそろ終盤だというのに、会場のオーディエンスは眠気を見せるどころか更にバイブスをアゲて熱狂の渦にハマりこんでいく!
 マシンガンスタイルのラップの魅力は正にそこだ! 人をノらせ、勢いの渦に惹きこむことにかけて、灯は今日一のラッパーと言って過言ではなかった!
「くだらねーぜHA んな虚仮威しじゃ動かねー誰もNo one cause 上っ面だけ固めた連中 てめーと同じの氾濫構図」
「三日坊主じゃダメだぜ坊主 窮すれば通ず 一念天に通ず うずうず顔を出すぶっきらは供ず 意地を張るのは然もあらず」
 魔術に魅せられたように観客たちは灯と執事のバトルに夢中になっていく。すでに上げ続けた腕は千切れそうに疲れて、飛び跳ね続けた両脚は棒のように重い。
 しかし、しかし! それでも、目の前で猟兵とオブリビがバトッてる限り、彼らは飛んで、跳ねて、腕を振り上げて枯れそうな声を絞りだして、ステージの二人を鼓舞していく!
 今この時ステージは一つであり、それはオブリビと猟兵が生み出す見事なラップ・バトルの賜物である!
「本物を知りたい連中はいねーか? チキン野郎共と心中してーか? 迸れ喉バラせyour bullet set 即ぶちかませよ今じゃねーのかYo!」
「太ったRhymeじゃしねえぜFit お前がPoetならやりなDiet そうすりゃ出るぜBenefit WitなRhymeなら So Fat!」
 YeahhhhhhhhhH!!!
 灯が最後の一息とばかりにぶつけたCallを何とか執事が返して、ひと段落した瞬間。
 会場の声は一つになっていた。執事は灯のことを見やると、指を鳴らして人差し指を向ける。
「良いバトルだったぜ」。 そう言っているようなしぐさだった。

 ピンクの髪に色白の肌、人離れしたその美しさ。
 機械仕掛けの屑鉄騎士を率いて進み、ステージに一人で潔く立つ彼女はキャナリニア・カルコメラン(スクラップドール・f07077)だ。
「お呼びでありますか 猟兵参戦 オブリビオンの未来 ここで終点 魅せるであります 胸がすくRAP 怪人刈り取る 己がSCRAP」
「興を醒ますなよ? JaegerのMass 舷舷相摩すこのバトル 俺はお前らに砂噛ます 思い増すラップをブチかます 益々Lyric研ぎ澄ます」
 灯が握っていたマイクを今度は彼女が握り、自分自身の立ち位置や境遇まで練りこんだ自慢のLyricで執事に殴りこむ。
 普通の人間には到底出せないような安定感、一度聞けばわかるグルーヴ感。これこそまさにキャナリメニアの真骨頂である。
「執事がラップ? どこか不釣り合い ザクザク刻んだRHYME 無駄遣い 熱くなって溶けかけてる頭に ぱらぱらかけてる方が お似合い」
「こいつは客の奪い合い 票の食い合いてんてこ舞い 俺は受けてるRapの寵愛 角突き合いで勝てると思うかい? 良い潮合いだ引っ込みな幕間」
 特徴的な語尾さえも上手くキャッチーに使いこなし、ラップの頭に使っていくことで観客の意識を物にした彼女の雰囲気に、もはや会場は呑まれるしかない。
 執事のオブリビすら、キャナリメニアの独特かつ新鮮なLyricに翻弄され、彼女に合わせた詞を返すことしかできていないほどだ。
 これが彼女の魅力なのか……! なるほどなー……!
「蔓延る悪党 滅びるのが世 覚悟はいいか いくでありますYO」
「浮世は有らぬ世 この世は常世? 窮余の一言それじゃ不名誉 朧月夜に失いな声誉」
 雲がわずかに会場を照らす月を隠して、そうしてできた月光の影を浴びながら、二人のラッパーは互いの健闘を視線でたたえ合う。
 執事はキャナリメニアに、彼女はオブリビに。言葉こそ交わさないが、ラッパーのリスペクツ-ソウルは目線だけで通じるものだ。
「…………っぷはぁ! 脳みそがあったら沸騰しているところであります!」
 緊張の糸がようやく切れたのか、キャナリメニアは一つ大きな呼吸を行うと、何やら次の猟兵のためになにがしかを行い始めた。
 執事もそれが攻撃ではないと分かっているからこそ、彼女の行動を見逃す。
 ラップとは気遣い心遣い。それを互いが理解しているからこそできる、一瞬の平穏であった。

「たまにはノリノリでいってみようかのう? さぁついてこれるかあ!」
 キャナリメニアがスクラップでアート的オブジェを作り、次の猟兵への鼓舞を行っている。がんばれー、がんばれーと舞台袖から聞こえる声は、きっと彼女の声だろう。
 その鼓舞とマイクを受け止めて、颯爽と現れるのはウルフシャ・オーゲツ(ヤドリガミのフードファイター・f00046)。
「イイネ、スゴイネ、言えるかお前ら! あいつらいつでも言ってるキマイラ」
「彼等(あいら)に言えンなら言えるさIrie イイネならしてるさ此処いらでリスが」
 焦茶色の肌にピンク色の髪、そして小紅色の着物が見目麗しい。彼女は得意の阿波弁を語彙の押し入れの奥底に放り込むと、ノリノリなビートを刻み始めた!
 彼女にかかればラップもお手の物の様子。執事のオブリビも彼女のペースに乗せられてか、それとも連戦のペナルティからか、イマイチ乗り切れていないようだ。
 連戦ペナルティ結構でかいもんね。
「どうせお前らディスられクラクラ! だったらたまには褒められフラフラ!」
「お前のRhymeは所詮鈍ら 文字は読めるかい明き盲 期待しておくぜ三日見ぬ間の桜」
 しかし、そこは執事の腕の見せ所。いくら猟兵たちとのラップバトルが延々と続いたとしても、彼がその語彙を枯らすことはない。
 なぜならば、彼はラッパーだから。ラッパーは魅せるものであり、楽しませるものであり、表現者であり受け取り手でもある。
「さあ楽しもうぜキマイラフューチャー! ここではみんながお前のティーチャー!」
「筋は悪くねえEye catcher 勉強してきな文字たちのLigature してやろうかなんならLecture」
 そんなラッパーであることを自認している彼が、疲れているからと言ってウルフシャのラップを蔑ろにすることがあるだろうか? いや、ない(反語)。
 全てのラップを愛し、ラップに愛された男。そう、彼こそはーー。
「ん? キャラが違うじゃと? ラップゆえ致し方なし、じゃ!」
 ラップなので色んなことはあります。でもそれもラップの懐の大きさ故よね! ウフフ!

「はぁ、猟兵を舐めてもらっちゃ困るわね。この程度、出来て当然よ」
 そしていよいよ最後のCallになった。
 ウルフシャが仰々しく渡すマイクを軽そうに受け取ると、こんなことはなんでもないとばかりに振舞う最後の猟兵が姿を現した。
 陽灯乃・赤鴉(ピカピカ光る。・f00221)、ON Stageだ。彼女に届くまでの17人分のソウルが籠ったマイク片手に、彼女は今ビートを刻む!
「小生のコール。 どうみてもフール。 執事? 小生? 言ってる事が古臭い コスプレみたい 勘違い 何言ってもバカみたい」
「この格好がおめでたい? この服はこう言うんだぜ全い 揺蕩い 沈滞 独り舞台 お前のLineにゃ必要だな忍耐 Disがヒドくて嫌になるぜ倦怠 避退 凡退 まさに死に体」
 連戦に続く連戦の執事は、それでも尚赤鴉の繰りだすリズムに合わせてAnswerを返していく。……が!!
 彼の疲れは既に明らかであった! 手に持ったマイクは震え、足は生まれたての小鹿のようにガタガタ踊り、口は辛うじて回っているだけだ!
「所詮オブリビオンね、過去の存在。私達猟兵は未来へ進むの」
「……待ちなよ、……姉ちゃん……、俺も連れてきな……! 置いて枯れる訳にはいかねえぜ!」
 それでも彼が刻むのは、ラップを読んでいる猟兵が目の前にいるからこそ。敵に弱った姿は魅せられない。自分が好きなラップバトルならなおさらだ。
 二人のバトルを応援する観客は、もはや「どっちを」ではない。「どっちも」応援している!
 既にバトルの枠組みには収まらない、何かでかいムーブメント! その序曲が、今終わろうとしている!
「貴方と私は段違い 猟兵が作る新時代。 見せるわ必殺パンチライン 躯の海に帰って寝てなバイバーイ」
「お前から言ってくれるとは恩貸 そう俺のLineは正に真諦 千姿万態 幽玄体 後ろめたいがそろそろ引っ込みな もうすぐ〆る時間帯……!」
 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
 会場から聞こえる歓声は今日一番。
 猟兵18人と、執事のオブリビのラップバトルは、ここで第一章の幕とするようだ。
 ラップを読み続ける彼らの冒険は続くーーーー。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『フリースタイルオブリビオン(キマイラ編)』

POW   :    ハードコアなスタイルで勝負します。

SPD   :    ぶっ飛んだキレのあるスタイルで勝負します。

WIZ   :    知性溢れるクールなスタイルで勝負します。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●刻みなお前らの好きなヤツ
「Hey……猟兵ども。いい勝負だったぜ? それこそ、勝ち負けなんざどうでも良くなるくらいにな……」
 執事のオブリビはそう言ってわずかに溶け始めた頭のアイスをぬぐう。
 猟兵たちをラッパーとして認め、好敵手として認めたようだ。
「どいつもこいつも素晴らしかった。マジでな。ちょいと口が悪すぎたりもしちまったが、そこはラップバトルってことで水に流してくれ」
 さて。そう言って執事は話題を変えると、猟兵たちにマイクを突き付けてこう叫んだ。
「でもよォ!! まだまだまだまだまだまだまだまだ読み足りねェよナ!? だってよォ! お前らのことを俺は何にも知ってやしねェ!」
 っつーーーことでェ! 執事は先ほどの試合の興奮冷めやらぬといった様子で、自分の手袋の片方を脱いで猟兵たちに投げつけた。決闘の合図である!
「次のラップバトルはテーマ性出してきな! 自己紹介、自分の好きなもの、得意なこと、語りたいこと、思い出、etc etc etc!!」
 何でも構わねえ! 次のラップは個人で決めたテーマに沿って読んでもらおうじゃねえか! ……と、いうことらしい。
 言い終えた執事はステージの真ん中でキミたちを、キミたちのアツいLyricを待っている。
 あ、難しければ都々逸とかでも全然大丈夫という事です。むしろ歓迎です。何人でも来いやの気持ちで怪人は待ってます。
レトロ・ブラウン
(ミサイルを撃ち込み爆炎から登場)

ヤァヤァ、皆さンお元気そウで何ヨリでス。とコろで……

Did somebody said "Old Age"'n'"Vintage"!?
It's my advantage you Mr.wreckage!
年月重ネた僕ニゃ蔑視モ効カねぇ 押シ突き返サレたアナタじゃバッシュし返せネェ
キマイラフューチャーでジャンクショップ営ムこの僕ニ お前ラのフィーチャー弱(ジャク)ちョッと意図足りヌこのボークに
モダン理解せン怪人に居場所ネぇ モうダウン?二回戦開戦にNO?しょウがネぇ!

アハハ、久々にヤりマした。難シイですネやっパり。
ジャンク屋オールドデイズ。ご来店オ待ちシてまース。


煌希・舞楽
マイラはマイラよ かわいいキマイラ
好きなのは自分 マイ・ラブ・キマイラ
どんな動物も虜にしちゃうの。
あなたもきっと好きになっちゃうの!
マイラの瞳を見て見てキラキラ
こっちに一人で来て来てハラハラ
見つめちゃったでしょ? もう夢中なの!
そうでもないの? もう、味気ないの!
それじゃあ今度はあなたを教えて?
だってこんにちは、初めてだもの!

自分大好きラップを語り尽くしたら適当な誰かを捕まえて次の舞台に引きずりあげて、次のラップを歌わせるの。
マイラってば、進行のことまで考えて気配りさんね、にふふ。

……ラップが苦手?
問題ないの、マイラが目覚めさせてあげる!


虜・ジョンドゥ
オブリビながら礼儀を重んじる…気に入ったよ
MC.John Doeのリリック、その身に刻みな!

ボクはこの名の通りAnonymous ミステリアスを醸し出す
性別?ノンノン!気になりゃ損損!
まずは聞いてけよ このSongを

\ウェーーーーーイ!!/
(MY AVATARがオーディエンスを盛り上げる)

今にも飛び交う数々の暴論
ヤバいだろ流石にnice boat.
お任せあれ炎上 ネットミーム駆使しEnjoy!
なんたってボクはバーチャル!なんだってやってやる!

はい調子いい? 合うかい帳尻?
ピエロだし引きずり込むぜ溝の中
新鮮かい? この未曾有の中
待てないのなら果てないのなら一つ聞かせよう

―ボクという沼に溺れなよ!


蛇崩・京次郎
ギャハハハハ!! オレサマのことを知らネェ? だったらここで覚えときナァ! 神をも殺す煙の鏡、天下無敵のトシュカトル様をヨ!
(武器『煙鏡九十九相』を無骨なマイクに変形させてラップ開始)

オレサマこそがDestroyer カミサマ殺すTraitor
支配をbreak 自由をmake
正義なんて柄じゃネェ したいようにするだけダ
善意なんてありゃしネェ 欲に正直なだケ!

分からネェ? つまるところHERO
あぁ違ェ!! 忘れんなよDARK
JAEGER SIXTHのオレサマ参上!! 絶望すンならいまのうちだゼ?
歯向かうならTrash! 楯突くならClash!
オマエじゃオレサマに届かネェ!

※アドリブ、絡み歓迎


パトラ・ペレテムヘル
「実技で魅せる執事へ出陣、私にとっちゃ所詮迷える羊……」
秤のヤドリガミ、パトラ a.k.a MC.Libraがエントリーだ!
「すぐに鳴らせ八小節、つまりパトラ最強説?テーマならもう決まったLibraのlife line、スイーツなら任せな至高のlove time」
「罪(crime)に刑期、下す私は事務次官、クレープとケーキ、その後食べる自由時間、罪人をchaseする暇は無いです、unchainで探すアイスとパフェ!」


メルノ・ネッケル
OK、バトラー。アツいAnswer感謝や!
さあてフリースタイル、〈SPD〉の切れ味鋭い【誘惑】Rhyme!
精は精でもSayのSay、感謝に応援笑い声!
こいつがうちの好きなもん、この一時にぶち込むで!

・ラップ
妖狐の好きなもん、やっぱ精?
No、ここは粋なもん ya-ha "Say"!
精だからって not sexual!
Say だからくれ脳にsignal!

誰かのThankyouが原動力、だからか暗愚じゃ幻想欲?
No!走って転んで当たって砕けろ、合法showなら go for broke!

自己満足でも構わねえ、GIG 安息でも届かねえ!
お前らのSaysがうちの精髄、Sameなら世紀に声上げろぉぉっ!!


馬駒・つの
おー!これがSNSで話題のラップバトル🎤
いい波乗ってる~!つのにもできるかなあ?
考えるよりも飛び込んじゃおっ🌊🏂

ここで参戦🙋聴いてっ🎧What do U know?
次世代flow♥️ぶっこむつの!
ここはDance floor👠回そTurn table💿
つのの独・壇・場だ!まだまだ行くよお🌼

clap👏clap👏ぷちょへんざ的な感じで
like💟like💟どんどんバズの予感して
みんな知ってる!illなチャンネル📺😻
つのの公式アカウントはこちらー!🤗💖

ってゆう、つのの宣伝ラップでした🎀
執事さんとコラボ記念に良かったら一緒に写真取ろ!
縦+横はー?はい、まんじー卍✨😋


リダン・ムグルエギ
当方ラップ初心者言葉欠くトーク
同胞ラップSHOW信者ごとバッと獲得

熱いサウンド凄いしボルテイジ
キツイわうんと語彙絞り提示

ラップ負けるわ正攻法
きっと吐けるわSay投降

でも行動はとっくに終わってる
コードはロックに決まってる

最初のラップバトル 盛況の裏で
内緒でハッピ作る 大量の服ね
使うわ技能 アートと防具改造
気遣うわフォロー ハートのロック開錠
客に配ったわ猟兵応援のクロス(合わせ衣装)
逆に終わったわ横柄公演のクローズ

このステージは余興
これクレイジーな布教
一体感あれば勝ち
一体誰決める価値?
それはリスナー異称は審判
アタシデザイナー衣装でワンパン
染めるわトレンド辞めなよフレンド 怪人応援 灰塵OhYeah


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
レペゼン・アルダワ、MCネームは……うむ、司会の人が決めてくれ! 俺ネーミングセンスないのだ!

さあ来い、お前も怪人ならラップできるだろう?

check it out!
ここで参上 気分は上々 rapも上等 ヴァーリャが通るぞ そこをどけ
ice girl,ill girl,in da house,kick your ass!
美しく滑るアイスライン 芳しく魅せるパンチライン
華麗なスピンrhyme 当てろライムライト
この俺のdefなice flow 転ぶ奴はwackなmo fo
さあついて来てみろ flyしてみせろ
お前のチンケなice flava 味合わせてみせろ

(アドリブ大歓迎)


リンネ・カーネーション
あたしのLike? 決まってるさそりゃ キマってるだろホラ自慢のBike!
ご機嫌なSpeedで危険なDead Heat だけど堪らない猫も止まらない
肉球のCatにゃCan'tて思うかい? Fuck you! HotなBeatで無問題!
ぶっとんだPolicy ぶっちぎるPolice!
あたしは聖者のケット・シー みんなはsay the Pussy Cat!
てめえが楽しきゃAll OK 手の平ターンしたって知ったこっちゃねぇ!
軽蔑するかいお集まりのKids? 幻滅したかいOldAge?
どうでもいいさ それでもIt's Me!
それがリンネのLife Style! これが本音のLive Stage!


パウル・ブラフマン
絡み&アドリブ歓迎!

大丈夫?タオル(新品の営業用)使う?
フリースタイルも愉しんでこ!
女性MC陣には気遣いを
まだ元気なヘッズにゃ鼓舞を。

【SPD】
From エイリアンツアーズ!
MC. jailbreak in da house!!

Big up!ご搭乗マジセンキュー
キスよりすげーのくれてやる Three knee deep

PENのKINGもストリートじゃnew jack
Dograceならお手の物
だが望んでたのはDrive & Raise
Green lightだ
トバすぜ、ついてきな!

Say “ jailbreak”!
(マイクを客席へ向け)
pump!it! up!!
(指先廻してサークルモッシュを煽る)


白神・杏華
申し遅れて大変失礼 私の名前は白神杏華
教師の評判大抵常に 課題特になし平均評価

事実私は平凡なsoldier 私立に通うそもそもがScholar
資質ありとは定論が言うが 響く荷重さ猟兵の凄さ

無理をしてでも飛び込む暗中 でなきゃ人々晒される寒流
いらないな監修 歴史の残物 ラップバトルも仕事の範疇

怪人帝国神様侍 毎日オブリビオンが集まり
解離していく日常遥かに 生憎元の自分にゃ戻れない
お呼びとあらば即時参上だ ここにいるのはMC.Kyoだ!

と、まぁ……自己紹介的な感じのテーマでやろうかな……。なんか暗いかな? 大丈夫かなぁ……。


ウルフシャ・オーゲツ
「BIGUP!溶けかけの執事!Harry UP!溶けきる前に!
 ウチ歌うそれはレリックからのリリック、百あるリリックの思いはミスティック
 社会は常に動きっぱなしボロ屋に泊まって今日も休みなし
 寂しい夜に雨が降りしきり、雨漏りに濡れて今日も一人きり!」
「今の時代に通じる叫び呆れかえって止まらぬあくび
 受け止めきれるかウチらの歌を、歌う間に増えゆく終わらぬ歌を!」

上記超意訳解説:あんたすごいぜでも急がないといくらでも増えるよ猟兵rap
うちが唄うは百人一首、昔から伝わる思いをどうぞ。
秋の田の かりほのいほの とまをあらみ わが衣手は つゆにぬれつつ
いざ語ってみると現代人にも伝わる哀愁があるねぇ。


秋稲・霖
自己紹介?任しとけって!ちぇきらー!
レペゼンサムライエンパイア!東っぽいとこ!


俺は秋稲・霖だぜWhat's up?
a.k.a. MCいなりとでも覚えとけHeads

本職歌い手それともイェーガー Whatever!
こうなりゃ目指すぜ Lyrical Murderer

ジャンル拘んなBeats刻めばCharts要らずの俺だけのフェスタ
音を楽しめりゃみんなダチっしょ?
言葉通りの意味示すshow time!これが俺のfreestyle!
けど俺だけが楽しむんじゃbogus
聞かせてみろコーレス!

※アドリブ歓迎です


徳川・家光
yeah〜!!
とうとう俺の登場! かますナマステ!
俺こそジェネラル! 下がれど平民!
きまいらふゅーちゃー?なんぼのもんじゃ?
何だかんだで結局地元! お前youknow「結局地元」!?
所詮は怪人、征伐対象!
だがまあ、「死ぬ程詫びれば埋蔵金を恵んでやらなくもねぇーぜ!!!!!」


アノルルイ・ブラエニオン
音楽とは異なる音の調和
対立を越えた調和を望むか、怪人よ
ならば友だ――だが、今は敵として闘おう

テーマは竜退治の英雄譚
聞け、ラップ調での
吟遊詩人の語りを!

彼方の空よりドラゴン参上
焔の吐息で街を焼く惨状
誰もが絶望したその時
勇者は雄々しく跳ね起き
弓に矢つがえてこれを射る
されどドラゴン平然として居る
その鱗はげに堅牢なる守り
勇者は神に頼みて祈り
最後の一矢放つ腹積もり
矢よ、風を斬って貫けよ
その一射はまさに疾風(Aellō)
ドラゴンの鱗には綻び有り
古の闘いで受けしもの也
最後の矢こそsoul eater
その場所を貫いた
響くドラゴンの叫び声が
まさに天を焦がす憤怒(anger)
威容は地に堕ち
ドラゴンは息絶えたり


ミア・ウィスタリア
(ユノ・ウィステリアとは双子の姉妹)
hello world crazy ice menー!
ほら、ユノもマイク握って握って!

遅れて登場 真打登場 だってそれは金科玉条
これよりお前を鎧袖一触
お前のrhymeは猿猴取月
耳があるなら覚えておきな! 馬耳東風は許さねぇ

(ユノPart)

異体同心 一心同体
二人合わせりゃVibes二倍
お前の奮闘 精衛填海

(ハモるとこ)アタシら星海彷徨う幽霊船ー!


ユノ・ウィステリア
(ミア・ウィスタリアとは双子の姉妹)
えぇえ待ってミアちゃん私ラップとか分かんない!?
(マイクを握らされる)
あ、こ、これ読めばいいの!?良いのね!?

(ミアPart)

これより語るは三世十方
永永無窮を彷徨う二人
鵬程万里 暗中模索
探し求めよ UDC

四六時中 常にこれに夢中
魑魅魍魎は 腹の中
お前も何れは 呉越同舟

(ミアPart)

(ハモるとこ)アタシら星海彷徨う幽霊船ー!


荒谷・つかさ
都々逸……なるほど、その手があったわ。
(大剣を左手で逆手に持って身体の前に、右はその辺で拾った栓抜きを手に掻き鳴らす。スコップ三味線スタイルだ)

テーマは……私の里に伝わる、武勇伝よ

さあさ聞きなせ これより語るは とある羅刹の 武勇伝
いずこの世界か はては異境か 世界正義の 大一番
ここで敗れりゃ 人類全て 怪人達の 仲間入り
そんなことには させるかと 先陣斬ったる 小柄な娘
率いる兵力 四千余り 狙うは敵陣 ど真ん中
一気呵成に 雪崩れ込み 見事斬り捨て 大悪魔
敵陣真ん中 塗り替えて 戦を勝利に 導いた
悪魔の力 刃に宿す この大太刀は その証
(大悪魔斬「暁」を抜いて見せる)


ジン・エラー
ギャヒヒヒヒヒ!!!いいねェ!!

お前怪人 オレ聖人
GoodにBadも そンなのあるか?
Rhyme刻めばオレらはRival
まだまだ行けるぜお前とこれから!!

さァさァ!行くぜM C! jin_error!
救うぜWorld!変えるぜFlow!
ここから絶対見逃すなよOK?


よ う こ そ 我が領域へ
ここは 救いの場 オレが聞いてやろうお前の罪を but
ただ ただ 救うだけじゃ つまらない
お前の 全てを知らなければ 腑に落ちない
生きるために 死ぬために
オレらは生まれてきたンじゃない

もっと ぶつけろ お前の意地を
オレは 救うぜ お前の意思を


シャレム・アルカード
らっぷ……流石の我も触れたことのない文化だな。
ふっ、良かろう!この我の溢れんばかりの才覚をもってすれば、未経験の分野だろうと十全にこなせることを証明してやろう!フハハハ!

更なるライバル求めcalling
呼び声答えて我が降臨!

我が名はシャレム・アルカード
高貴な血筋のダークロード!

見た目で判断するなWarning
舐めてかかれば即座にdying!

見るがいい我が武装!
ロマン満ちる男の理想!
『ヘカトンケイル』
我の技術の結晶
圧倒的な火力で快勝!


ボドラーク・カラフィアトヴァ
ふむ……ラップバトルとは……私が本来得意とするのは剣での斬り合いなのですけれどね。
しかし云うなればこれもまた言葉の刃での斬り合い。ここはひとつ、お相手願いましょうか。

残念ながら私はど素人。そんな私にどうしろと?
そんな私が何を言おうと。プロたる貴方に届きましょうか?
けれどそれでも紡ぎましょうか。剣と変わらぬ言の葉、言の刃。
心はいつもとさして変わらず。斬って、斬って、斬り捨てるまで。
声枯れるまで、剣折れるまで。成程これでは、いつもの戦技と違いはなし。
――生き残れば、いつもの剣技と同じ話。

……こんな感じでしょうか。ええ、見様見真似ですけれど。
なるほど、これはなかなか奥深いですねえ。


四軒屋・綴
《アドリブ改変絡み歓迎》

貴様敵なれどその気概高く
志高く憎み切れぬ敵役

なれど定められた我らファイター

なれば演じようライクサンデイ・セブンーエイトッ!

そう此所に集うクルー個々にソークール

ラップ、都々逸、どいつもクレバー

重ならず異なるそのスタイルに憧れ
未だ未熟なれど願うcome in
『三千世界の 鴉の一羽 今空繋ぐ 絶え間無く』
そう此所に立つッ!願いそれひとつッ!
願うは星に?否このマスクにッ!

(ユーベルコードで20体の分身を呼び出しロボットダンスしながら)


水衛・巽
リリカルだか何だか知らないけど
受けて立とうじゃないの!
はっきりきっぱりさっぱりわかんないけど!!(開き直った

式神従えにしひがし
古神追ってきたみなみ
吉兆卜占(ぼくせん)いまむかし
昨今とんと流行りゃせん

人心信義はお水物
家名しがらみ油物
継ぐ者なけりゃ取り潰し
先代健在籠の鳥

時代遅れと言うけれど
変われぬ信に否やなし
すがる手払い進んでも
未来志向に意味はなし

ひとり産まれのおのこのさだめ
今更恨む気あらしません
あまた広がり選べる道も
とうの昔に、(ぱっ、と両掌を開く)

自己憐憫に自己嫌悪
そんなものなどあらしまへんえ
自分で選んだ自分のいきざま
胸を張らにゃあ罰当たり

札付き跡取り言われても
譲れぬものはここにある


松本・るり遥
(心臓が鳴る。これ怪人の熱気にめちゃくちゃ巻き込まれてるな)
(渦巻く熱をシャウトで届ける!自己紹介をしよう!)

出遅れ上等松本ルリ遥!!!!!!!!!!!

夜更かし狭量いつものWe are here
耳貸せListen to Mashup.GROOVer!

No BRAVE!臆病者!
No KIND!極悪非道!
No SORROW! 楽観ヤロウ!
No REGRET.斬り込み隊長!
4人分の声聞いていけ!!!!

余韻じゃん?変わる人間性
TadadaDahhhhN!がなる騒音系
32GIGA耳塞いで 散々議題踏み躙って
怖い辛いのも置いて来た
お前とRhymeを踏みに来た!!!

俺はJUKEBOX松本ルリ遥!!!!!!


星鏡・べりる
えっ、ラップで戦うの?
そういうルールなの、ふーん
そんじゃ、いっちょやりますかー!

【テーマはお仕事と得意な事!】
気合入れちゃお ここは戦場
アガった舞台に私参上
オブリビオンの挑戦状って
ここで逃げたら大炎上

年頃JK MCべりる オブリビ狩るのがお仕事です
キミのラップはイイけれど 本来のキミは過去の存在
ここにいるだけで大問題
満足したら消えるのかい キミの気持ちはどうなんだい?

ここのAnswer間違えたなら すぐさま始まる大乱闘
見せる暴力 猟奇な行動 それじゃあ問答
お返事どうぞ?


桜庭・英治
やるじゃんお前見直した
熱いアンサー胸に来た
俺はお前倒しに来たけど
最後の最後まで親友だぜ
俺を知りたいなら教えてやるよ

UDCアースの高校生
かつてはただの優等生
猟兵で変わった方向性
切った張ったの攻防戦

やれんのか喧嘩noob
舐めんな男子のガッツ

やらなきゃ人が泣くってんなら
何でもやるのが猟兵さ

でもよ
暴力以外で戦えるオビリビ
大好きだぜ


ニコ・ベルクシュタイン
ふむ、一際賑わっている所に興味を惹かれてやって来たら
何やら大変な試練を課せられる事になってしまったな

此れも身体持った運命(さだめ)故か
人間(ひと)としての暮らしも悪くない
されどまだまだ知らぬ事多く、俺の世界への興味は尽きず
例えばお前、そうお前だ怪人
何故にアイス?溶けかかったアイス?
我思う故に我在り、よもやお前は愛する者か
言葉を弄し、そして楽しむ
最早俺の知る怪人の域では無く
理解し合う等詮無き事と、知れど一度乗った勝負である
俺は時計、懐中時計
お前はアイス、愛する者よ、ラップなるものを愛する者よ
今こそ認めん、大した奴よ。

…横文字はどうにも苦手でな、此れが精一杯だが
少しでも通じるものがあれば幸いだ。


壥・灰色
おれの得意は火付けと壊し
そこに否定は一つとしてなし
Butお前のライムに火付けられ
もっとここで韻を踏み始める
Hey, yo おまえ名前はなんてーの
おれの名前はナナシノハイイロ、生まれたときからノーネイム
作られ生まれた名無しの灰色、それでもここで刻むSo,Rhyme
生きてる意味は自分が決める、生きてく理由刻むLet's Sing
おれは猟兵、おまえを倒す
けどもHey,Say
忘れやしないぜ
アツいリズム刻んだお前
合わせラップ踏んだおれ

きっと死ぬまで忘れやしねえ
ブロー
お前のアッパーテンション!

(手に装填した衝撃を手先で炸裂させ、パーカッシブに音を鳴らす。リズムトラックを作りながらのハイスピード・ラップ!)


陽灯乃・赤鴉
【SPD】
中々やるじゃない。
アイスみたいな頭をしている割にね
最後に私の名前を刻んでおくといいわ。

「私は赤鴉。宇宙(スペース)生まれ。あなたにはない大きなスケール。
弾丸ライナーのようなrhymeで着火するわファイアー。
宇宙船で育った光より早い武勇伝持つダンサー。
未開の地? 期待通り、いや期待以上の未知の土地
あなたに感嘆だけど私は淡々 聞かせてあんたのアンサー」

「終わりの時が来るわ、だけどあなたのrhymeは永久(とわ)にここに。
あなたと感じた一体感を自画自賛。
悲惨な未来と支配にサヨウナラ」


ヴィクティム・ウィンターミュート
テーマは【ハッキング】だ!

俺は超絶技巧のハッカー!
間抜けなテメエにはマザーファッカー!
電子の海で俺に勝てるか?
部屋の隅で震えてるだけか?
腰抜けのお前に教えてやるよ
俺の華麗なテクをさぁReadyGO!

お前のターンテーブルにいざ侵入!
ハックできねえものはないぜチップ・トゥルース!
ニューロン唸れば輝くシナプス!
正論かますな大事なのバイブス!
クソダセえDJにはバイバイ!
アゲていこうぜテンションはフライハイ!

フロア中に響くぜトラックとラップ!
奇襲に成功!トラトラトラ!
オーディエンスの頭をクラック!
燃え尽きんじゃねえぞグッドラック!


どーよ、初めてにしちゃ中々のもんじゃねーの?
アガってきたぜ!もっと来いよ!


祷・敬夢
ハッ!ラップだろうがなんだろうが俺の力を持ってすれば余裕である!
もちろん、テーマは「俺様の魅力」だ!

俺様の名前は祷・敬夢
巷で噂のプレイ・ゲーム
俺様に勝てるやつは皆無
お前もこの後苦虫を噛む

俺様の魅力はゲームのウデマエ
だけじゃないそれを魅せてやるぜ
見てわかるだろうクールな振舞い
容姿・声そう全てが完璧

負けを想像、それはfool
持つのは自信、繋がる勝利
俺の思考はbest cool
常に確信、俺の勝利

俺は最高のラップをplay
お前は震えて神にpray
勝利の余韻を俺様joy
お前は家でひっそりcry

聴いて惚れたか俺のラップ
魅せてやったぞ俺の攻略

韻律刻む完璧な歌詞
戦慄しただろ俺様の才



●【 Jaeger SIX-SIXth & O-blivi ON STAGE !!】

「ハッ! ラップだろうがなんだろうが俺の力を持ってすれば余裕である! もちろん、テーマは「俺様の魅力」だ!」
 日も暮れた街に喧噪響くキマイラフューチャー、ここは通りに面したデカい公園。
 軽快に響くウィットに富んだリリックは、とどまることを知らずに加速し続けては勢いを増していく!! その喧騒の中にあってもうハチャメチャに目立っている一人の男がいた!!!
「俺様の名前は祷・敬夢 巷で噂のプレイ・ゲーム 俺様に勝てるやつは皆無 お前もこの後苦虫を噛む」
「新顔じゃねえか欲しいのはFame? そうなら魅せなよお前のPerform ただし注意しなよここはAway Game 韻踏み外すなよLike a Platform Game」
 誰も彼も、一般的には自分のことは自分が一番知っているもの!
 しかし、彼の自信は最早そんな領域の話ではない!!
「俺様の魅力はゲームのウデマエ だけじゃないそれを魅せてやるぜ 見てわかるだろうクールな振舞い 容姿・声そう全てが完璧」
「高邁なやつだ褒めてやるぜOh my 口が上手いのは嫌いじゃねえ 狭い世間で見事な身仕舞 早く決めてやるぜ爽昧の前に 終い 毎々 総仕舞」
 MC.Gamerとして参戦した彼は、凍てつくようにCoolなLineに言葉を乗せて、俺の魅力は俺が一番知っているというアツい思いの中で煌めいていた!!
 そう!! 月と星と観客を前にして一歩も引かない彼の名は!! 祷・敬夢(プレイ・ゲーム・f03234)である!! ウルトラカッコイイぜ!!
「負けを想像、それはfool 持つのは自信、繋がる勝利 俺の思考はbest cool 常に確信、俺の勝利」
「じゃあ創造してみなお前の実像 群像に示せよお前の音像 それとも 虚像 残像 それとも幻像? ギザ付いてんぜ液晶の解像度 アゲたら魅せな全体像」
 キマッタァーーーーーーーッッッッッ!! 1コンボ、2コンボ、3コンボ!
 痺れるほど華麗なるコンボテクニックで、敬夢はオブリビとガンガン火花を散らしてスパークしていく!
「俺は最高のラップをplay お前は震えて神にpray 勝利の余韻を俺様joy お前は家でひっそりcry」
「上手く言うじゃねェかよWell-Made-Play 出来たら教えなG.G.Play そろそろ替わりなOverstay ここで停止しとけよOut of play」
 最初は新顔の登場に不安そうにしていた観客たちも、彼の自信に乗せられてか、彼の腕前に魅せられてか、LyricのPlay Setに惹かれていく!
 ラップバトルの第二幕は、カンペキな敬夢の自己紹介からその幕を開けたのだ!
「聴いて惚れたか俺のラップ 魅せてやったぞ俺の攻略 韻律刻む完璧な歌詞 戦慄しただろ俺様の才」
「ああ堪能したぜありがとう ビックリするほど受けたよ薫陶 祝祷 黙祷 加持祈祷 独りよがりで良いと思う? とお前に問うぜToo---Long!」
 休憩を挟んだオブリビも、新たな難敵の勢いにやや押されがちである! まさに「Play-Kill」!
 見事執事を攻略して見せた敬夢は、最後に指を観客の方に向けてより煽ると、次に控える猟兵にマイクを手渡すのだった!

「俺は超絶技巧のハッカー! 間抜けなテメエにはマザーファッカー! 電子の海で俺に勝てるか? 部屋の隅で震えてるだけか? 腰抜けのお前に教えてやるよ 俺の華麗なテクをさぁReadyGO!」
「やりなよHack'in The King-maker そうすりゃなれるぜPeace-maker Ah 狙いはこっちかHit-maker? 少なくとも今はGame-maker けれどもなるなよTrouble-maker 目を光らせてるぜMatch-maker」
 敬夢からのマイクを受け取ったのは、MC.Arseneである! 腕利きの端役を自称する彼は、Hot-DoggerらしいSkillを惜しみなくPlayしていく!
 観客の波が、声が、怪人のリズムと歌詞が! 全てを見通しているかのように、彼はイカした電子音をバックに見事なRollを見せた!
「お前のターンテーブルにいざ侵入! ハックできねえものはないぜチップ・トゥルース! ニューロン唸れば輝くシナプス! 正論かますな大事なのバイブス! クソダセえDJにはバイバイ! アゲていこうぜテンションはフライハイ!」
「デカく出やがったBig-mouth テメエが選んでちゃPost-truth 俺も昔はそうだったYouth 悪くないLyricだ近いぜGoal-mouth 客共今頃Natural-high 正しく唱えなよActive-high」
 彼の名前はヴィクティム・ウィンターミュート(ストリートランナー・f01172)! Rapのテーマにハッキングを選んだ彼は、オブリビの頭のIceを溶かす勢いで攻め込んでいく!
 ストリート育ちのフリースタイルラップが、刻一刻と執事の足元を削っていくのが見えるようだ!
「フロア中に響くぜトラックとラップ! 奇襲に成功!トラトラトラ! オーディエンスの頭をクラック! 燃え尽きんじゃねえぞグッドラック!」
「だがお前のRapはBeginner's-luck 気を抜きゃハマるぜHard-luck 頼ったらどうだCombat-Drug 所詮まだまだ言葉のPotluck 俺からも祈るぜGooooooooooood-luck」
 フラットライン寸前にまで執事を追い詰める彼のRap捌きは、まさにICE Breakerと呼ぶに相応しい!
 これまでにないタイプのLyricに、観客たちも興味津々で身を乗り出しては、ヴィクティムの名前をまるでヒーローのようにCallしていく!
 それこそ、彼のRapの腕前が証明された証。会場はもう一面ヴィクティムコールでいっぱいだ!
「どーよ、初めてにしちゃ中々のもんじゃねーの? アガってきたぜ! もっと来いよ!」
「確かに、初めてにしては相当いいとこまで来てやがるな……。ストリート上りのRhymeは久しぶりに受けたぜ? 応ヨ、飛ばしていくから乗り遅れるンじゃねーゼ!」
 会場からの黄色い声援を背に受けながら、ヴィクティムは執事のオブリビに挑発していく。それは彼らの高い技量があってこその、互いへのリスペクト。
 いわゆる「お前なんかクソゴミさ」という挑発ではなく、「もっとやれるだろ?」という彼の言葉は、挑発というよりもむしろ叱咤であった!
 猟兵たちと出会う前のオブリビであれば、ヴィクティムの発言をDisと受け取って罵詈雑言で返していただろう。
 しかし、今はもう違う! このステージは、もはや「VS」ではなく「&」となったのだ! 猟兵とオブリビオンのお祭り騒ぎは、熱気を伴ってさらに続いていく!

 ヴィクティムと執事が言葉を交わしている最中、そこに飛び込んでくる影が一つある。
 満月の夜の向こうから、星を突っ切り雲を飛び越え、海も山も見下しながら飛来してくる一つの影がある!!
 アレはなんだ!? 鳥か!? 飛行機か!? L・カゼイ・シロタ株か!?
 いやーーーー違う! 「アレ」は!! ブラウン管やああああああああああああああ!!!
「ヤァヤァ、皆さンお元気そウで何ヨリでス。とコろで……」
 Ka----Boooooooooom!
 ミサイルの爆炎から颯爽と登場してきたのは、9型サイズのブラウン管テレビ! 三等身のその姿はヴィンテージなシロモノである!
「Did somebody said "Old Age"'n'"Vintage"!? It's my advantage you Mr.wreckage!」
「U are crossing My Limit Gage! Arouse Linkage Of Language! 「I」&「U」 are One package!」
 MC.Brownを名乗る笑顔を忘れないCoolなタフガイの名は、レトロ・ブラウン(ダイヤルの付いたテレビ頭のテレビウム・f07843)!
 彼は会場に降り立つや否や、ビビるほどに繊細でかつ厚みのあるLyricを披露していく!
「年月重ネた僕ニゃ蔑視モ効カねぇ 押シ突き返サレたアナタじゃバッシュし返せネェ キマイラフューチャーでジャンクショップ営ムこの僕ニ」
「手の施しようがないブラウン君? 敢え無い 冴えない たわい無い 芸がないテメェは見るに堪えない 始末に負えない歴史の残骸」
 彼の言葉の一つ一つは、異様な重みを持って執事に飛び掛かっていく!
 そりゃそうだ! なぜかって? そいつはまさに亀の甲より年の劫! ブラウンの経た長い年月分の重みが、彼のモノラルな声にたっぷりと詰まっているのだ!
「お前ラのフィーチャー弱(ジャク)ちョッと意図足りヌこのボークに モダン理解せン怪人に居場所ネぇ モうダウン?二回戦開戦にNO?しょウがネぇ!」
「表情少ないお前に比べて 見とけよ俺様如才ない 過不及ないし類がない どうだ参ったか苦しゅうない ここで倒れても構わない 早くお休みGood night」
 ムッ!? ここで新たな情報だ! なになに……? なんだとォ!? Old Daysを過ごしてきたアイツは、自分の店を構えているとのことだゼ!
 役立たズ・壊レた物・誰かの思イ出を中心に取り扱ってる彼の店! なんとマフラーもあるんだなこれが! 皆検索してみてくれ!MC.Brownの店の名前はーーーー!
「アハハ、久々にヤりマした。難シイですネやっパり。ジャンク屋オールドデイズ。ご来店オ待ちシてまース」
 そう! ジャンク屋オールドデイズだ! 御用のある方は今すぐGo! 御用が無くても、レジカウンターでうたた寝している店主にいつでも声をかけてやってくださいとのことだ!
 このラップ会場は、御覧のスポンサーの提供でお送りしているぜ(画面にたくさんの店の名前が並ぶ)!

 宣伝も済んだブラウンが満足そうにステージを降りると、次に現れたのは緑色の瞳に白い髪、色白の肌とふさふさの耳が目に映える女の子だった!
 彼女はマイクをブラウンから譲り受けると、一つだけ呼吸をゆっくり取って、そして一気に言葉たちを放っていく!
「マイラはマイラよ かわいいキマイラ 好きなのは自分 マイ・ラブ・キマイラ どんな動物も虜にしちゃうの。あなたもきっと好きになっちゃうの!
「どうのこうのとCallをどうも 声が特徴的だなMiss.マイラ 着ている衣装はまさに綺羅 赤裸なRhymeが並ぶぜ棋羅棋羅 Smile-UpするぜKiller-Tune 目指してみなよGiant-Killer」
 オウオウオウオウオウオウオウ! なんだィあのかわいこちゃんは! 誰だ誰だ誰なんだ!??! 俺はああいうキマイラの子に目がねエんだ!
 オイコラスットコ! ボヤボヤしてねえでさっさとあの子の情報を出しやがれ! 今やってるテーマは「自己紹介」だろうが!
 俺らが捕捉を挟まねえでどうするんだアアハ~~~~~~~~~ン!??! MC名からスリーサイズまで、余すとこなく早く出しやがれ!
「マイラの瞳を見て見てキラキラ こっちに一人で来て来てハラハラ 見つめちゃったでしょ? もう夢中なの! そうでもないの? もう、味気ないの!
「カレンな視線がいざなうValhalla でもこれは俺の話さ専ら 俺が返せるものは指の腹だけ 夢中になるのはRapだけ 痛いぜ片腹 立てるなよ業腹」
 すいませんBさん今でやした! 今刻ンでるあの女の子、名前は煌希・舞楽(ヴィクトリカチャイルド・f08029)! MC.Mairaで登録されてるみたいッす!
 オイオイオイオイオイオイオイ……名前までカワイイと来たかよ……。天の原みたいな響きだぜ……。ちょっとBさんガチ恋しちゃうかもだワ……。
 しかもこれお前追加情報に「皆が価値があると思っているもの」に価値を感じてるってお前……。じゃあ絶対Rapも大好きじゃン……知らんけど……。
 司会のBも骨抜きになるほどの甘やかなLyric-Line! 自分の魅力を知っているものが自分のことについて上手く語れるのは当然のことだが、舞楽のそれはもうそういう域を越えている!
 あれこそまさに、自分大好きRapの神髄的なサムシングの奴である!
「それじゃあ今度はあなたを教えて? だってこんにちは、初めてだもの!」
「聞いてな俺こそUnpredictable 負けず劣らずお前にAdorable」
 上手いこと執事も彼女のCallに返してはいるが、頭のIceがデロデロになっている所から見ると舞楽の魅力にヤラレチャッタ! しているのは周知の事実であった!
 執事を羨ましそうにけしからん的な表情で睨むBを尻目に、当の舞楽は歌い終わった後に次の出番待ちしていた猟兵をStageに上げてくれている!
 すっげえ! マイラちゃんってば、進行のことまで考えてるのかヨ! 気配りさんかオイ~~~~惚れちゃう~~~という言葉がどこかから漏れ聞こえる!
 どこからかっていう部分は具体的にどこなの? っていう質問にはちょっと明言したくないですね! 身バレの危機があるので!
「……ラップが苦手? 問題ないの、マイラが目覚めさせてあげる! さあ、マイクを受け取って!」

「オブリビながら礼儀を重んじる…気に入ったよ! MC.John Doeのリリック、その身に刻みな!」
 マイラに手を引かれてStageに上がり、慣れた手つきでマイクを握ってCallブチかますのは虜・ジョンドゥ(お気に召すまま・f05137)!
 やはりラップバトルも第二幕目ともなると、その経験が如実に出るのだろうか。彼は堂々たる構えで執事と対面し、自身ありありといった顔で軽快なRapをブチかます!
「ボクはこの名の通りAnonymous ミステリアスを醸し出す 性別? ノンノン! 気になりゃ損損! まずは聞いてけよ このSongを」
「Hey また会えたなAndrogynous 再戦も許すぜ俺はGenerous Fabulous Sensuous Melodious 良いLyricだ慣れてきたなMarvelous」
 \ウェーーーーーイ!!/
 \Yeahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!/
 彼の中性的な魅力が健在なのはもちろんのこと、ジョンドゥのユーベルコード、【MY AVATAR】で召喚された「“ボクたち”」の名アシストもやはり彼の魅力だろう!
 ガンガンに分かりやすくオーディエンスを盛り上げていく二人のJohn DoeとJane DoeのCallが合間合間で的確に挟まり、観客たちは熱に浮かされたように彼らのバトルに熱中していく!
「今にも飛び交う数々の暴論 ヤバいだろ流石にnice boat. お任せあれ炎上 ネットミーム駆使しEnjoy! なんたってボクはバーチャル! なんだってやってやる!」
「言わせてもらうぜ少しSerious その歌詞はちょっとDangerous Unconsciousなら注意しとくぜ Scandalousは避けてけB-BOY 抱いてんだろAmbitious」
 Now Loadingのの文字もなく、ただただ盛り上がりの波がオブリビと猟兵との間を行き来するその会場はシームレスな有様だ!
 ラップバトルを読む彼らのLineを詠みこんで、老若男女を問わずに声を合わせていく会場のB-BoyとB-girl! 彼らが不思議とジョンドゥの声に乗るたびに、体が若返っていくような錯覚を覚えたのは言うまでもないだろう!
「はい調子いい? 合うかい帳尻? ピエロだし引きずり込むぜ溝の中 新鮮かい? この未曾有の中 待てないのなら果てないのなら一つ聞かせよう」
「I 歌うぜ語彙はGorgeousに 足りてねえな洗練Amorphous 俺たち二人で作り出すPrecious そうすりゃ掛け合いはガンガンLuminous」
 どこまでも気まぐれなMC.John DoeのRapに、執事のオブリビはお喋りと甘いもの(頭のアイスなど)で対抗していく!
 すでに二回目の応酬である彼らの間には、どことなく敵意という物は存在しない奇妙な空間が出来上がっていた。
「――ボクという沼に溺れなよ!」
「問いかけってンなら応えてやるぜ 俺は知性に溺れたい 齧り付きたいのはGolden-Delicious!」
 禁断の果実である知性の林檎を齧ったかのように、彼らの語彙は尽きることを知らない!
 こんこんと言葉が溢れ出す湖にオーディエンスが足を踏み入れたその時、湖はジョンドゥと執事のラップバトルの沼へと姿を変えて彼らを飲み込んでいく!
 Rapの魅力は底知れず、彼らの勝負もまた底なしに続くのであった!

「ギャハハハハ!! オレサマのことを知らネェ? だったらここで覚えときナァ! 神をも殺す煙の鏡、天下無敵のトシュカトル様をヨ!」
 豹の如き金眼を光らせて、ジョンドゥとハンドサインを交わしながらステージに上がるのは蛇崩・京次郎(トシュカトル・f05525)!
 A.K.A MC.Toxcatlのお通りだ! 黒曜石の如き装束を身に纏い、夜闇の中の踊り場に駆け込んだ彼は、傲岸不遜な態度を隠さずに執事へと挑む! Jaguar in the Darkな勝負が、今幕を開けた!
「オレサマこそがDestroyer カミサマ殺すTraitor 支配をbreak 自由をmake 正義なんて柄じゃネェ したいようにするだけダ 善意なんてありゃしネェ 欲に正直なだケ!」
「こりゃまた吠えるなGladiator うるせえ噛ますぞIsolator 通しなFilter 見てなよMonitor 気取るんじゃねえぜAgitator 過剰なThug Lifeはお断り 勢いしかねえぜEliminator」
 オイオイ!? なんだあのヤロウ!? たしかMC.Toxcatlとか言ったな!? あのクソいかつい無骨でCoolなマイクは誰製だヨ!? 俺も触りてえぞアレ!
 分かりましたッすよBさん! アリャMC.Toxcatlの持ち込みッス!
 でも待てよそいつはおかしいぜ!? 持ち物検査の時にはアイツそんなもん……ッ! まさか!? アイツ、マイクを今、あそこで用意したってのか!?
「分からネェ? つまるところHERO あぁ違ェ!! 忘れんなよDARK JAEGER SIXTHのオレサマ参上!! 絶望すンならいまのうちだゼ?」
「テメエが気儘なら俺ァAccommodator それともあるいはInterceptor 言葉の紛争地帯で騒ぐなよTezcatl & Poca Originator下がりなよ 鏡が煙で覆われたなら きっとお前はしちまうぜポカ」
 司会が狼狽え、観客が骨太なRapに酔いしれているのも無理はない! 京二郎の持つマイクは、正真正銘彼専用の特別製なのだから!
 彼の用いる武骨なマイク、その正体は自らの武器、『煙鏡九十九相』が変形した姿! ディストーションを掛けた彼の声は、歪み交じりにパワーあふれるラップを次々に言い放っていく!
「歯向かうならTrash! 楯突くならClash! オマエじゃオレサマに届かネェ!」
「喉乾いてんのかToxcatl 一度引いときなってTo Shut Call 「他人を見下すようなヤツは小さな芸術家」サ From 【Der Schauspieldirektor】 Yo!」
 ……最初はアイツのRap、執事を貶すDisかとも思ったけどヨ……、アレは間違いなくRapだ。現に、このLyricは自己表現のそれだぜ!
 攻撃的な歌詞も、聞きなれてくればどこか吸い寄せられるような魅力を持ってやがる……!
 まるで痛いほどの辛さを知ってるのに、激辛の料理を食べたくなっちまう、みたいな感じだゼ……! 奥深い歌い方しやがるッ!
 京二郎と執事はまるで互いに競い合うように言葉でお互いを殴っていく! クラヤミの中のダークヒーローは、オブリビと一歩も引かない良いバトルを行っている!!

「実技で魅せる執事へ出陣、私にとっちゃ所詮迷える羊……」
 京二郎が語彙の力に任せて執事との剣戟を繰り広げるその中で、静かにステージに立つ女性が一人。
 彼女の名前はパトラ・ペレテムヘル(審判の劔・f00195)。パトラは執事を少しだけ見やると、まるで見定めは終わったと言いたげに参戦してきた!
 聞いてるかオーディエンス、見逃すなよこれから! 秤のヤドリガミ、パトラ a.k.a MC.Libraがエントリーだ!
「すぐに鳴らせ八小節、つまりパトラ最強説? テーマならもう決まったLibraのlife line、スイーツなら任せな至高のlove time」
「次の相手はお前かNew-Bie スイーツは好きだぜ特にPieがな そうAs easy as apple pie! よく喋る子だ Chatter Like a Magpie どうせこの世はAs sweet as pie? 期待外れで悪いなSweetie pie」
 マイクスタンドのマイクを手にした彼女は、京二郎と視線を交わして彼のラップが終わったタイミングで奇麗に割って入った!
 スットコ、資料! ハイ! もうここにあります!
 何々……? 何だこりゃ?! お前、資料っつってもデータがMC名と星座くらいしかねえじゃねえか! 増えた情報としちゃ、カノジョがてんびん座ってことくらいしかねえぞォ!?
「罪(crime)に刑期、下す私は事務次官、クレープとケーキ、その後食べる自由時間、罪人をchaseする暇は無いです、unchainで探すアイスとパフェ!」
「それじゃしてもらおうかGo on Circuit 【巡回裁判】お手の物だろ? 場所はここだぜ Chitlin Circuit しかしこなれたもんだなMC.Libra そのうち打てるぜHit For The Circuit 一位目指してみなよTake The Biscuit」
 でも、なんつーか……「上手い」な。カノジョ。自分の仕事と好きなものの両方を一気にテーマに盛りこんじまったら、普通はまとめるのが相当大変なはずなのに……。
 韻の踏み方が相当イイぜ。特にテーマの選択が良い。罪と甘いもの、か……。
 彼女自身が好きなものだからこそうまく踏めてるってのもあるとは思うが、相手の執事の見た目的に奇麗にハマってやがる。ありゃ見た目以上に手慣れてやがるぜ!
「ヘイ、やるじゃねえかMC.Libra? どっかで勉強でもしてきたみてえな言葉の取捨選択だな」
「私は審判者ですよ? 選択選別はお手の物、『死者の魂に然るべき救済を、執事のIceにしかと祈るR.I.P.』……なんちゃって♪」
 彼女が持ち得るケルゥの羽根の効果がわずかに表れているのか、それとも元からパトラのラップセンスがずば抜けているのか、それは分からない。
 しかし、彼女が執事と互角に戦えていることは、会場の誰の目にも明らかだった。パトラはオブリビからの言葉を反射して、的確に返していく!
 二人のバトルに判決を下すラップの神も、この名勝負を見てしまっては甲乙つけがたいと悩むことだろう!

「OK、バトラー。アツいAnswer感謝や!」
 パトラからマイクを貰ってステージにあがるのは一尾の妖狐。
 赤い火も青白い狐火も持ってはいないが、彼女が持つのは自慢の練り物、つまりは渾身のRhymeである!
「妖狐の好きなもん、やっぱ精? No、ここは粋なもん ya-ha "Say"! 精だからって not sexual! Say だからくれ脳にsignal!」
「粋なこと言うなよ「白面」書生 割と嫌いじゃないぜ青雲之志 気付けば何だか生気溌溂? そうでなきゃしてたぜ大喝一声! こんなに会場が湧いてんだ! もっと上げていこぜMC.メルノ!」
 さあてフリースタイルだと気合いを入れてきたのだろう、彼女が口頭のブラスターから放つのは、先ほどよりもスピードの乗った、切れ味鋭い誘惑Rhyme!
「精は精でもSayのSay、感謝に応援笑い声! こいつがうちの好きなもん、この一時にぶち込むで!」
 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
 メルノさああああああああああん!!
 メッチャファンっす!! MC.メルノのリリックラインに惚れましたーーーーーーーッ!
 彼女が一度口を開いて切れ味鋭くラップを斬りこむと、会場にいる男性たちは魅了されたように狂喜乱舞しては彼女のライムを押し上げていく!
「誰かのThankyouが原動力、だからか暗愚じゃ幻想欲? No! 走って転んで当たって砕けろ、合法showなら go for broke!」
「静寂閑雅 凄凄切切 イヤなら止めるなFoxy-Betty! Rhymeは清濁併呑したって構わねェ Rapの懐は広いのさ! それこそ海か空みてえにな Shot ya!」
 それに感化されたように、男性中心だったファン層もいつしかどんどんと広がって行く。
 女性たちまでも巻き込んで、彼女はこの会場に一大ムーブメントを巻き起こして見せたのだ!
「自己満足でも構わねえ、GIG 安息でも届かねえ! お前らのSaysがうちの精髄、Sameなら世紀に声上げろぉぉっ!!」
「コイツは正に雨過天晴 心配だったが青天霹靂 良くなってきたな清音幽韻! Rapperとしては誠歓誠喜! Oh-Boom-Shorty! Hell-YeaH!」
 MC.メルノーーーーーーーッ! スゲえぜ! さっきよりも格段にラップが上手いぜ!! これが狐の音返しってヤツか!?
 これからも頑張ってくださいッすーーーーーーーッ! MC.メルノさんにマジMadッすわーーーーーーーッ!
 司会席の二人もマイクに自分の好きを載せて大きな声でメッセージを送る。
 会場の彼らと司会席の二人にメルノはわずかに視線を送ると、ふわふわの尻尾を翻してステージ裏に戻っていく。
 引き際は肝心とばかりに下がる彼女は、去り際に会場に向けてウインクを送る。誘惑されたオーディエンスたちは大盛り上がりだ!

「おー! これがSNSで話題のラップバトル🎤 いい波乗ってる~! つのにもできるかなあ? 考えるよりも飛び込んじゃおっ🌊🏂」
 #マジやばい!!🤣🤣🤣 ここで現るのはそう流星🌠🌠 アンテナ立てて📡 みんな聞いてね🤩
 馬駒・つの(◊♛タッタ・ラッタ♛◊・f00249)🌀のお通りだあっ💘
「ここで参戦🙋 聴いてっ🎧 What do U know? 次世代flow♥️ ぶっこむつの! ここはDance floor👠 回そTurn table 💿 つのの独・壇・場だ! まだまだ行くよお🌼」
「ここで張っておくからな防衛線🙅 聞かずとも分かるぜ🎶 As You Know! A Young Fellowは 💔 Like a 葦角 Don't Darken My Door💥 少し時間をくれよAdaptable👋 俺が付いていけねえ・なんて・冗談だ! 少しで良いから待ってくれよお👅」
 司会のBで~~~す!😎 やばたにえん~~!💓💓💓
 会場のみんなも見てるよねこれ!? もうさっきまでと全然違うっていうか……あげパーティ👨‍👩‍👧‍👧ってかんじじゃない?!💥
 でもでも、なんかこういうのも良いよね!🎺🎺 会場~! 盛り上がってるか~~!👨‍👩‍👧‍👧
「clap👏 clap👏 ぷちょへんざ的な感じで like💟 like💟 どんどんバズの予感して みんな知ってる! illなチャンネル📺 😻 つのの公式アカウントはこちらー!🤗 💖
「Hand-Up🙌 Hand-Up🙌 Put Your Hands Up……? ッて、そんな嘘だろ俺が負けてる?! 泣く😭 泣く😭 ガンガンHEADが痛くて……? Peeps知ってる! Kickin’Channel🎊🎁 Join Us The Joint This Funky Beat🌈😎 ……ハッ?!」
 えっまじあのりり(リリックのこと)すこみざわなんだけど😊😊 つのタンまじ良い波乗ってんね🌊🏂
 スットコ!🤗 アンタもそう思うっしょ???🤔🤔
 そだねー😏
 ちょっと💢💢💢 なんで💢💢💢 アンタ急に調子乗ってない💢💢💢
「ってゆう、つのの宣伝ラップでした🎀 ねえ、執事さん! コラボ記念に良かったら一緒に写真取ろ!」
「え~ほんと?!あげみざわ~~!💖💖 アッちょっと待ってね今……(アイポジを整える)🍨🍨🍨 いいよ~~!」
 あっ!👏 やばみ~~! シツジちゃんとつのタン自撮りすンじゃん!📸📸
「縦+横はー?はい、「まんじー卍✨😋」」
「見せてつの~!😂 あっ😥😥 やば😥😥 めっちゃ半アイス目なんだけど😥😥 もっかい撮ろ! はーいっ🌼360度↻どこから見ても~、Iceー!💝」
 あっ! そろそろ時間⏰みたい😜 会場のみんな、今の失敗のことは内緒🤭だかんね🐱
 次のラッパー🎶🎶 いっくよ~!🎤🎤

 なんだか会場全体が夢を見ていたような気がする。ふわっとしたなんかを。楽しかったけど。
 リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)は、ステージに上がるとつのからマイクを受け取って気だるそうに、しかして自分の言葉の糸を繰っていく。
「当方ラップ初心者言葉欠くトーク 同胞ラップSHOW信者ごとバッと獲得 熱いサウンド凄いしボルテイジ キツイわうんと語彙絞り提示」
「ちょっと待ってな少しだけCross talk💫 ……もう大丈夫だ気付いたぜ有所得 A Deadly Woundが響いちまった コイツはお前のAdvantage してくれるなよ深掘りは 今俺様は相当低次」
 MC.GOATiaとして参戦している彼女のRhymeは、強烈なパワーこそないものの、何か統制された意志のようなものを感じる歌。
 それは彼女の楽しいことに対する秘めた情熱からくるものなのだろうか、気付けば言い表しようのない何かの意思は会場に伝播していく!
「ラップ負けるわ正攻法 きっと吐けるわSay投降 でも行動はとっくに終わってる コードはロックに決まってる」
「どういうことだその鋭鋒!? 焦らせるなよ溶けるぜ面向! ……待て! 説明はするなよ言い当てる! お前の勝機今探し当てる!」
 そして繰り出す彼女の必殺Rhyme。
 見た者に暗示をかける魔性の衣装をはためかせ、冥底/酩酊の葉巻の煙を口に泳がせるリダンの隣で、執事は彼女の思惑を当てるべく思案を広げる。
「最初のラップバトル 盛況の裏で 内緒でハッピ作る 大量の服ね 使うわ技能 アートと防具改造 気遣うわフォロー ハートのロック開錠」
「まさか嘘だろ分かるぜ悟る 俺がしゃべくるその隙に繰る それこそ好機 これこそ勝機 観客たち今こそこぞって蜂起 恐ろしいほど手の込んだ構造 仕掛けてやがったいつの間にClaw 名状しがたいこの塊状」
 そして、会場に伝播していた何らかの意思が顕在化して、そこで彼はようやく気付く。法被だ。いつの間にやら渡されたのだろう法被を、会場のオーディエンスたちが着こんでいるのだ!
 それにしてもこれだけの量を作成できたのは、トレンドを一瞬で染める彼女の武器、ミシンオブゴートと驚異的な彼女のセンスがあって成し得る技だと言わざるを得ない!
「客に配ったわ猟兵応援のクロス(合わせ衣装) 逆に終わったわ横柄公演のクローズ」
「既に俺心に錠を下ろす 時間のLossが響くぜ全く もう良いだろう終わろうぜ幕下ろす」
 合わせ衣装を用意しながらラップまでこなし、配布も現地のコネとキマイラフューチャーのトレンド、実況、SNSに瓦版で募った協力者たちに頼んで終わらせる。
 会場の「一体感」は、まさに最高潮である。これを受けて、執事もいよいよ降伏を認めざるを得なかった。
「このステージは余興 これクレイジーな布教 一体感あれば勝ち 一体誰決める価値?」
「負けたぜお前に戦戦恐恐 ……だが聞こえるぜ俺にも浮声切響 虚堂懸鏡な頭のIceに デカく響くは石破天驚」
 しかし、自分から降伏を認めた執事はもう一度心を奮起させる。
 先ほどから自分は猟兵の流れに翻弄されていることをしっかりと自覚した彼は、そこで思わぬ行動に移った。
「それはリスナー異称は審判 アタシデザイナー衣装でワンパン 染めるわトレンド辞めなよフレンド 怪人応援 灰塵OhYeah」
「批判に評判はこの際論判 押すしかねえなこのHipに太鼓判 ダメで元々直談判 俺も混ぜてくれ一味連判 忘れていたぜこのGroove 大事なのはOne-Posse-Homies」
 なんと執事はリダンに頭を下げて、法被を一着頂けないかと直談判を始めたのだ。オブリビオンが猟兵に頭を下げ、頼みごとをする光景に思わず観客もその様子を固唾をのんで見守る。
 その結果は最早口に出すのも野暮だが、会場は更に一体感を高めて次のラップバトルにのめり込んでいったということだけ、ここでは伝えおくこととする。

 10人の猟兵と執事のCallを受けて、会場は落ち着くどころか更に盛り上がっては規模を高めていく。
「レペゼン・アルダワ、MCネームは……うむ、司会の人が決めてくれ!  俺ネーミングセンスないのだ! さあ来い、お前も怪人ならラップできるだろう?」
 そこに現れた新顔はヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)。
 薄氷の髪が風に揺れ、菫の瞳が執事を見やり、頭に乗せたゴーグルがスポットライトに反射して輝く。
 相手がIceで甘いものならお手の物だと飛び出して着た彼女は、リダンからマイクを直接手渡されると天真爛漫に駆け出していった。
「check it out! ここで参上 気分は上々 rapも上等 ヴァーリャが通るぞ そこをどけ」
「NX Rapper In Da House! 煕煕攘攘な会場へようこそ 冗句からして光焰万丈 俺らで作るぜ余韻嫋嫋」
 ヘ~~~~イ!! スットコ! あの子を見たか?!
 え? は、はあ、まあ。誰ッすか? 知ってるンすかBさん?
 ハアアアアアアア!??! あの子はヴァーリャだゼ!? 別名スピン・オン・アイスだ!
 氷上の妖精とうたわれた彼女の初ラップが聞けるなんてヨ……! ファンクラブ会員番号No.1の俺としちゃマジ感激だゼ……!! MC.ネシュの言葉回し、必見だぞ!
「ice girl,ill girl,in da house,kick your ass! 美しく滑るアイスライン 芳しく魅せるパンチライン 」
「【Aswirl & Awhirl】 Birl-B-GIRL? 見極め甘いぜSnow line 教えてやるから行くぜFräulein!」
 テンションのアガっている観客と司会を横目に、先ほど猟兵に敗北したことをはっきりと認めた執事はヴァーリャのLyricにしっかりと丁寧についていく。
 その詠み方は慎重であり、もはや最初の頃にあった上から目線の嫌な感情は見受けられない。彼女が初心者であろうとなかろうと、良い所は見習い、そして悪い所は指摘しようとする気概すら感じる。
「華麗なスピンrhyme 当てろライムライト この俺のdefなice flow 転ぶ奴はwackなmo fo」
「客が求めるのはBe In Full Flow 耳に入れてえのはA Blazing Row Rhyme選びは悪くねえ 次で出してみなA Crushing Blow!」
 巧みに言葉を選んでラップを刻んでいくヴァーリャに対し、オブリビはもっと、もっととリスペクトの意思を前面に出していく。もしかしたら、ヴァーリャのまっすぐなRhymeがそうさせたのかもしれない。
 リダンの整えた一体感は観客席までのものであり、それもまた素晴らしいものだった。そして今、猟兵とオブリビオンの間にさえも、グルーヴが生まれようとしている。複数の猟兵たちでなければできなかったお手柄だ!
「さあついて来てみろ flyしてみせろ お前のチンケなice flava 味合わせてみせろ」
「PerfectなLyricだA Carpet Of Snow! 最後に決めたなA Hard Act To Follow! 客の方見な最後はScrape And Bow」
 それは敵としてのものではなく、尊敬しあえるライバルとしてのような感情に近かっただろうか。
 二人そろって観客に向き直り、右足を引いておじぎするヴァーリャと執事に、観客からの万雷の拍手が送られる。
 ラップが、今まさにここにいる全員を一つにしたのだ。

「あたしのLike? 決まってるさそりゃ キマってるだろホラ自慢のBike! ご機嫌なSpeedで危険なDead Heat だけど堪らない猫も止まらない」
「Oh-Li-Li-Li-Like a Cat on a Hot Tin 「Stage」! 言葉を又借りNightなStyle Come in DA It's 雌猫RINNEの人生観 Edge利かせてくれよ Q-So-Cynical Bikeに跨りKidsにはばかりここで猫様韻を噛む!」
 ヴァーリャの次にステージに取り掛かったのは、リンネ・カーネーション(爆走猫車・f08650)。
 リンネはMC.RINNEとしてサングラスをもう一度ギラギラに光らせながら、ヴァーリャからマイクを受け取ると自信満々に笑って吠えていく! 
「肉球のCatにゃCan'tて思うかい? Fuck you! HotなBeatで無問題! ぶっとんだPolicy ぶっちぎるPolice!」
「Oh-My-Baby! 良いねえRINNE! 結構毛だらけ猫灰だらけ だらけて伏せねえアンタにゃ参るぜ あげたいくらいさ摩訶曼陀羅華」
 うおおお! なんだあのババア! めちゃくちゃに上手いぜあの踏み方!? ちょっと正直ナメてたけどよ、MC.RINNEの実力はあれ本物だぜ!?
 Bさん! ヤバいッす! 資料届いたんですけど、何か中身が潰されてて……!
 マジじゃねえか! データがほとんど読めねえじゃねえの!
 あ、待てよなんか書いてあんぞ一文だけ。何々……? 「ババァじゃない、お嬢さんだよ。覚えときな糞餓鬼共!」!? マジか! あのババアおもしれえ~~!! 自由すぎんだろ!!
「あたしは聖者のケット・シー みんなはsay the Pussy Cat! てめえが楽しきゃAll OK 手の平ターンしたって知ったこっちゃねぇ!」
「良く鳴く猫は鼠を捕らぬ! かくしてアンタは違うらしいな 上手の猫が爪隠す! 一線画すぜ Bye-Bye 粃」
 リンネのRhymeにどことなく観客が惹かれるそのわけは、とにかく筋が通っているからだ。彼女は外聞も構わず、自分の言いたいことを言い、歌いたいことを歌う。
 思うままにBeatを刻み、悪い風評もどこ吹く風と勝手気儘にRapを刻む。その生きざまをカッコいいと言わずして何と言おうか。
「軽蔑するかいお集まりのKids? 幻滅したかいOldAge? どうでもいいさ それでもIt's Me!それがリンネのLife Style! これが本音のLive Stage!」
「本音のRhymeにトンでるLyric! コイツがありゃあ世は太平さ 猫の額で刻んだBeatが ドデカい箱の中身を揺らして 猫も杓子もお祭り騒ぎ!」
 観客たちがどんな反応をしても、きっとリンネは気にしなかっただろう。しかし、会場のオーディエンスたちは彼女の予想をあるいは裏切った。
 ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
 そう、大盛り上がりである。一体感を増した観客たちは、すでに詰まらない意地や見栄を気にすることはない。
 どこまでも本音で、どこまでも自分に真摯なRINNEの歌詞は、まさにRapだ。自己表現として完璧な姿を見せた猫妖精は、観客からの歓声ですらどこ吹く風。
 揺れない自分を持っているからこそできるそのスタイルに、執事はただただ感心する他なかっただろう。

「大丈夫かいお嬢さん? タオル使う?」
「ヘッ、口の達者なガキだね! 貰えるモンなら貰っとくよ!」
 パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)はステージ裏に戻ってきたリンネに、新品の営業用タオルを手渡す。
 もちろん、司会たちみたいなクソのように彼女をババアと呼ぶ無礼などはしない。
 年頃の女性に対する敬意の払い方と何一つ変わらない動作で、パウルは周りの猟兵たちと観客を紳士的に気遣っていく。
「From エイリアンツアーズ! MC. jailbreak in da house!! Big up!ご搭乗マジセンキュー キスよりすげーのくれてやる Three knee deep」
「HeyYO 言葉にゃ気を付けな つまりこいつはBass-Ackwards! どうせだったらこのA Round of Cards 派手な札だしなよACE-OF-SPADES! さあ来なよLast man standin' From Wrong World!」
 マイクをリンネから受け取り、執事と再びラップバトルを繰り広げていくパウル。
 彼もまた他の猟兵と同じように嫌みのないラインで歌詞を刻み、あくまでも自分の表現と感情の吐露としてのラップを詠んでいく。
 あっ! Bさん、MC. jailbreakッすよ! やっべえマジアガる! 俺さっき見てファンになったんすよねーッ! 何つーかこう、俺と似た所があるっつーか……!
 ……スットコよォ、多分だけどな、その似たとこっつーの分かった気がするわ。確かお前彼女出来たこと無かったろ。その割に女性への気遣いが人一倍できる辺りが……うん。良いよな、青臭い感じがして。 jailbreakの奴も触手の持ち腐れだろうに、もったいねエ……。
「PENのKINGもストリートじゃnew jack Dograceならお手の物 だが望んでたのはDrive & Raise Green lightだ トバすぜ、ついてきな!」
「与太与太歩きのOn Penguin Legs マシになったかJack the Lad? I'm all right, Jack, LET'S Deal Cards. なって魅せなよBig Willie!」
 誰かが歌い上げるLyricには、その人間が歩んできた今までの道が見えるという。
 パウルのLine運びは彼の見た目以上に繊細で、時に遊び心があり、そして何よりも相手に敬意を忘れない音の運びを見せる。
 彼の見た目は確かに厳ついが、それでもどこか愛嬌を感じさせるRapに、オーディエンスの評判も上々だ。
「フリースタイルも愉しんでこ! まだ元気なヘッズ! 声出し行くぜ、叫べよデカく! Say “ jailbreak”!」
 Yeah“ jailbreak”! Yeah“ jailbreak”!!
 マイクを客席へ向けて観客を煽りまくるパウル。彼も心で理解しているのだろう。
 Rapは皆で楽しむものであり、Live中に行われるアーティストとオーディエンスの間に生まれるグルーヴ感は、何物にも耐えがたい幸福感があるということを。
「Yeah パンピーも回りな Move-Up!」
「Say Pump!it! up!!」
 二人の掛け合いが最高潮に達し、パウルがオーディエンスを乗せた時、執事が動いた。オブリビの身体能力でこそできる超高速ブレイクダンスを行いながら、観客に会場で回るように煽ったのである。
 それに乗らないパウルではない。指先廻してサークルモッシュを煽ると、ステージの二人のしっかりとした主導によるサークルモッシュが出来上がっていく!
「おいそこ! お婆ちゃんをいたわりな!」
「怪我やっちまったら下がるぜテンション! ブチアゲるためにやってんだ、互いにリスペクトしていけよな!」
 オブリビオンと猟兵の的確なダブルチェック体制の中、夜の公園内はもうお祭り騒ぎなんてものじゃない。ここはもう言葉とノリの紛争地帯だ。
 そう言えば、今回のラップバトル会場設営のスポンサーに、ギャラガー卿という名前もあったという事を補足しておく。詳細は不明である。

 サークルモッシュは流れを終わらせる時が一番難しく、またケガ人も出やすい。
 過剰なアドレナリン分泌により足への疲労を感じなくなっていても、流れに合わせて回ったり跳ねたりするのはやはり負担がかかるもの。
 終わり際になって噴出する足への疲れやもつれが転倒という形で現れた場合、倒れた人が後続に踏みつぶされたり、巻き込み事故を起こしてしまう件も多いのだ。
「申し遅れて大変失礼 私の名前は白神杏華 教師の評判大抵常に 課題特になし平均評価」
「良い挨拶だBonjour 成長してんな言葉のDownpour 好感が持てるぜそのCandor どこからでも来いよAt Any Hour」
 だが、猟兵たちはサークルモッシュの切り上げと会場の再統合を容易に行う。
 それを可能にしたのは、先ほどよりも一段と理路整然として芯の通った白神・杏華(普通の女子高生・f02115)のRhymeによるところが非常に大きいだろう。
 ステージ裏から大きな目線でオーディエンスをチェックするパウルの協力もあり、執事と杏華主導によるサークルモッシュのフィナーレは恙なく終了した。
「事実私は平凡なsoldier 私立に通うそもそもがScholar 資質ありとは定論が言うが 響く荷重さ猟兵の凄さ」
「別にしなくて良いさLive On The Edge 戦闘が猟兵のRough Edge? でも平穏な暮らしもNot Grow On Every Hedge 「玄」にお前はSoak Up Knowledge」
 観客が一斉に足を止めたのは、やはり杏華のRapが超成長を遂げているからだろう。
 先ほどは真摯でひたむきなリズムを奏でていた彼女が、今では確かに会場を率いている。先ほどまでは観客が杏華に味方して上手く乗せていたという図式だったが、今ではもう、MC.Kyoが観客たちをノラせているのだ!
「無理をしてでも飛び込む暗中 でなきゃ人々晒される寒流 いらないな監修 歴史の残物 ラップバトルも仕事の範疇」
「夢中で走って五里霧中? でも良く吠えたな秀外恵中 お前が暗中模索したその先に 現れてくるさ囊中之錐」
 非常に速い速度で上達した彼女の唄から伝わってくるのは、自分に対する自信の向上とラップバトルへの前向きな姿勢。
 自分主導で「ラップを楽しむ」、その心があれば! その心が中心にあり、ラップの根幹を成しているのならば! 観客がその波に乗るのは、火を見るよりも明らかな話だ!
「怪人帝国神様侍 毎日オブリビオンが集まり 解離していく日常遥かに 生憎元の自分にゃ戻れない お呼びとあらば即時参上だ ここにいるのはMC.Kyoだ!」
「何て言ったか名前は確か そうか思い出したぜお前は杏華 だがどうやら無駄だな俺の威脅 覚悟決めたのなら今日だけは MC.KyoのRhymeも一興!」
 執事も彼女の成長には目を見張る。Iceから香り立つオレンジの香りがそれを裏付けていた。
 前を行かれたことによる僅かな悔しさも無いわけではない。だが、それと共に確かに胸の内から湧き出るのは、ラップ仲間の成長を喜ぶ心。バニラの芳醇な香りがそれを物語っていた。
「と、まぁ……自己紹介的な感じのテーマでやろうかな……。なんか暗いかな? 大丈夫かなぁ……」
「……Coolだったぜ、New jack。 超良かったってなァ! そうだろテメェら! 誰のLyricga良かったか叫んでみやがれ!!」
  Iiiiiiiiiiiiiiit's Is MC.Kyooooooooooooo!!
 会場に鳴り響く、MC.KyoのCall。自信なさげな杏華は、彼らの応援を受け取ると、満足そうに手を振りながらステージ裏に戻っていった。

 ウルフシャ・オーゲツ(しょしんしゃ・f00046)はステージ裏に戻る杏華とハイタッチを交わすと、マイクパフォーマンスを行いながらの登場を見せた。
 先ほどのラップ以上に自信の言葉に思いを込めて、放っていくのは千の理万の意図。もしかしたらそんなに多くないかな? どうだろう。ちょっとわからないです。でも気持ち的にはそれくらいあるよってことを言いたかった。
「BIG UP! 溶けかけの執事! Harry UP! 溶けきる前に! ウチ歌うそれはレリックからのリリック、百あるリリックの思いはミスティック」
「Say-Ho Buttercup 二度目だな Be Dolled-UpなカッコにBrush-upしたRhyme 育ちが見えるぜBe Well Brought Up? 思わずしちまうBack-Up」
 その時でた! 超盛り上がってる時だけに見えてる人だけは見えてるという噂のラップの神様だ! 一部の人には見えている!
 フォッフォッフォ……ウルフシャちゃんかわかわじゃのう……。
 しゃーなしなので儂が上記超意訳解説を挟んでいってやろうじゃないか……。感謝しとけよこのドぐされ下人どもめが……。
 彼女が歌ってる意味はつまりこうじゃ! キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!
「あんたすごいぜでも急がないといくらでも増えるよ猟兵rap うちが唄うは百人一首、昔から伝わる思いをどうぞ」
 その時でた! ラップの神様だけが放てるRapスペシャルビーム(超解説ビーム)! 会場に広がる副音声めいた音声と字幕的な奴! すごい!
「社会は常に動きっぱなし ボロ屋に泊まって今日も休みなし 寂しい夜に雨が降りしきり、雨漏りに濡れて今日も一人きり!」
「稼ぐに追いつく貧乏なし そんな事言っても俺には甲斐無し 落花情あれども流水意無し 御構い無しに宣うのなら 耳に入れてやるぜ仕方なし!」
 フォッフォッフォ……ウルフシャちゃんきゃわたんじゃのう……。ブーツが良いよね……。
 ムムッ?! こうしちゃいられんわい! ウルフシャちゃんがまだ歌っとるじゃないか! ホイアアアアアアアアアアアダッチュアシテアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!
「秋の田の かりほのいほの とまをあらみ わが衣手は つゆにぬれつつ」
 Go-Run-GA! 彼女が歌っている内容は何とあれだ! あれだよ百人のIsh的な奴! いわゆる一つのフューチャリング! 俗にいうところの現代解釈!
 それを即座にラップの神様による超意訳ビームで理解していくキマイラたち! すごいぞ! キマイラフューチャーなので! エモエモのエモだね!
「今の時代に通じる叫び 呆れかえって止まらぬあくび 受け止めきれるかウチらの歌を、歌う間に増えゆく終わらぬ歌を!」
「どれだけ人が詠んだとしても 全部返すさそれが俺! 受け取ったならば投げ返すから、しっかり聴けこのAnswer Song!」
 フォッフォッフォ……執事のしょうもなクサクサラップに比べてウルフシャちゃんのRhymeには艶があるのう……。
 ウッグウウウウウウウウウウウウウウここで持病のヘルニアが!!! ラップ界に帰りたいこの突然のYo-2! しかし最後の意訳は何としてでも挟ませてもらうぞ!! ッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
「いざ語ってみると現代人にも伝わる哀愁があるねぇ」
 なんということだろうか。ウルフシャは往年のGood-song的な奴を自分の解釈のままに新しくリメイクして公開したのだ。その心意気……。ヘッ……おみそれおみそれだゼ……。
 ラップの神様👴🏿は帰ったのでこれからはいつも通りに行きます。この会場時折ミーム汚染的な奴がすごい。絵文字の時とか。

「自己紹介?任しとけって!ちぇきらー! レペゼンサムライエンパイア!東っぽいとこ!」
 ステージ裏で登場の準備を整えているのは感覚はラッパーの一人。
 紫の瞳で見据えるのは目には見えない会場の響きたち。漆黒の髪を音に揺らして、彼は今ステージに上がる!
「俺は秋稲・霖だぜWhat's up? A.k.a. MCいなりとでも覚えとけHeads 本職歌い手それともイェーガー Whatever! こうなりゃ目指すぜ Lyrical Murderer」
「男子三日とよく言うが、居成りのままじゃ無いようだ 盗人を捕らえて見れば我が子なり! 「けちな稲荷」かと思いきや、大した生業持ってンな! 遠鳴りにしなよ胸の高鳴り 会場に伝えろお前の名乗り」
 期待の新星こと秋稲・霖(ペトリコール・f00119)がウルフシャとハンドサインを交わして登場すると、会場は彼の再登場を待ってましたと手を叩いては口をそろえてこう叫ぶ!
 MC.いなり! MC.いなり! MC.いなり! MC.いなり! それを扇動しているのはなんと執事だ。
「オラオラ声が小せええええぞお前ら! コイツの名前をもっとデカく呼びやがれ! 今日喉を潰して帰らなかったらブッ飛ばすからなーーーーーーーッ!」
 先ほどのラッププレイングと、相手に対するリスペクトを見せつけた霖に対し、MCとして、音楽を愛するものとして彼なりに認めた、という事だろう。
 霖はその様子を見て少しだけゆるちゃらに笑い、陽キャらしい振る舞いで自信満々にラッパーとしての本領を発揮していく!
「ジャンル拘んなBeats刻めば Charts要らずの俺だけのフェスタ 音を楽しめりゃみんなダチっしょ?」
「I & Uの二枚鉋 揃えばここはWardの御留場 狩らせんンゃねえぜ俺らのVista 一人の欠所も補うぜ一緒」
 二人で奏でるラップは正に自由でどこまでものびやかにあり、言葉狩りなどという単語はこの場所ではもはや鳴りを潜めて自由な言葉で会場をアツく揺らしていく!
 互いに競い合い、音楽仲間として、ラップを詠み合う仲として切磋琢磨する二人のビートは、観客のハートに響きを届けてWitなWardでハコをビビらせ続ける!
「言葉通りの意味示すshow time!これが俺のfreestyle! けど俺だけが楽しむんじゃbogus 聞かせてみろコーレス!」
「声枯れるまで騒げChorus! Callに返せよCool strings In Style 見逃さずに In Fine Style! Don't Chill Till-Yah Cinderella Time!」
 ステージ上の二人の勢いを助けるかのように会場席から飛び出してきたのは、それぞれ手に楽器を持った音楽隊のキマイラたち。
「アンタらの「音」に惚れた! 頼む!! パーカッションは良いとして、弦楽器隊は時折裏でやらせてもらうだけで良い! 演奏らせてくれ!」
「断る理由は……!」
「ああ! 俺らにはないぜ!」
 会場は遂に生音源のリズムセッションとストリングスを引き入れ、音は厚みを増して更に響く。
 屋台骨と言っても良い安定感を誇ってラップを支える彼らを呼び寄せたのは、二人の活躍の賜物だ!

 ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!
 会場に響くスゲえ超ド級の歓声! っていうか悲鳴なそれはNotorious Kingがこの会場にINしてきたことを如実に物語っていた!!
 全員耳の穴かっぽじってよおく聞きやがれ!! Mad MC.上様In Da House! HardcoreなHG(ハイグレードの略で他意はありません)の参上だ!!
「yeah〜!! とうとう俺の登場! かますナマステ! 俺こそジェネラル! 下がれど平民!」
「Ahhhhhh YeahhhhhhhhhhH! ここじゃ挨拶はCallだぜ番頭 会場の熱気も相当奔騰 言い捨てごめんの核弾頭!」
 キマイラフューチャーに古来より伝わる古文書、『Cool Jiggy』や、『Man-Your-Shure』などには「ウタ-ガッキー」という文化が、旧人類が古代大陸でマンモスを追いかけてた時から存在していたという事を証明している!
 実際にその様子を描いた壁画も存在しているのだ! 疑いようのない事実である! 故に、徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)がラップを詠んでいたとしても不思議なことは何一つとしてないのだ!!
「中々やるじゃねえか! 俺が直々にお前のフレンド力を測ってやるぜ……ッ!?!? バカな! 300……500……?! い、いや……まだ上がるだと!? 1000を越えて……1500万近くだと!? このフレンド測定器壊れやがった!」
 会場の湧きに執事も慄かざるを得ない! 手に持っていたスカウティングマシンでフレンド力を調べると、なんと1000万以上は理論的に表示されないはずのマシンに表示されたのは1488万(当時調べ)!
 執事のフレンド力は65万(当時調べ)だが、これには彼も驚いた! 一猟兵の身でここまでの知名度を誇る人物など、他にいないであろうからだ!
「きまいらふゅーちゃー? なんぼのもんじゃ? 何だかんだで結局地元! お前youknow 「結局地元」!?」
「なに言ってンだよごじゃごじゃと だが応えてやるぜ選者殿 言葉が達者ならわかるだろ? ここじゃ返事を「こう」言うのさ 「お家に帰りな「帰宅OG」」
 スゲエ! なんか良く分からないけども時の将軍がラップを嗜まれておられるのだ! キマイラたちもこれにはマジっすか的フェイスを隠しきれていない!
 だってここ公園のステージなのになんかもうすごいことになってるよな的な気持ちも彼らにはあるだろうが、それはそれとしてとりあえず盛り上がれるならそれで良いかなって感じだ!
「チッ……認めざるを得ないようだな……! お前の魅力……! その人気……!」
 生放送見ました! WP(ウェルプレイ)をありがとう 上様! 頼むからどうか押韻を!
 出来るならどうかその韻を心行くまで踏まれ遊ばせ頂きたく候! 
 今もLive配信されている会場の動画にも、異常な勢いでコメントがついていく! それくらいビビったのだ!
「所詮は怪人、征伐対象! だがまあ、「死ぬ程詫びれば埋蔵金を恵んでやらなくもねぇーぜ!!!!!」
「Wow-Boom-What!? TightでPhatな提案だがな させてもらうぜ口返答 俺は名誉のために孤軍奮闘 目指すはそうさ下剋上!」
 しかし、金の魅力に自分を揺らす執事のオブリビではなかった! 確かに目の前のこの人物はすごい。それは彼も心から認めている様子。だが、今はラップのバトル中!
 鳴らすのは銭の音ではなく言葉の響き! 交わすのは山吹色のお菓子ではなく金色に輝く言葉なのだ!
 会場は大盛り上がりを見せながら、ステージを去る家光を見送るのだった!

「音楽とは異なる音の調和 対立を越えた調和を望むか、怪人よ ならば友だ――だが、今は敵として闘おう」
 アノルルイ・ブラエニオン(変なエルフの吟遊詩人・f05107)ステージに上がると、オーディエンスの熱気を一目見、執事のオブリビに視線を移しながらこう言った。
「上等じゃねえか、嬉しいね。応とも、調和させようぜ? 好きにやりな! 合わせてやるよッ!」
 彼はマイクを構えて何種類かの赤が使われている自分の服と金髪を会場の活気に浸すと、一つ大きく深呼吸をして、先ほど執事に語り掛けた声の何倍も通る声量で会場に語り掛ける!
 吟じるとはこういうことだと堂に入った姿である!
「テーマは竜退治の英雄譚……。 聞け、ラップ調での吟遊詩人の語りを!」
 少し毛色が違うのかな? とキマイラたちが首をかしげたのもほんの一瞬のこと。観客たちは、想像以上のスケールを持ったアノルルイの語る物語に耳を傾けざるを得ない!
 おどけた男言葉で伝わる彼の声は、会場の一人一人の心をつかんで離さない。それほど彼の語り方には何かカリスマに近い響きがある。
「彼方の空よりドラゴン参上 焔の吐息で街を焼く惨状 誰もが絶望したその時 勇者は雄々しく跳ね起き 弓に矢つがえてこれを射る されどドラゴン平然として居る」
「違う世界から集まる猟兵 俺のハコに現れ So Wow Hey(横柄) 執事呆然としたその時 目覚めた一つの魂(Soul)の導き 俺それまで自己に酔っていた だが気付いたそのRapは So-ILL」
 これこそまさにテーマソングとして完成されているラップだと言えるだろう。都々逸のリズム的な雰囲気もわずかに備えたそのラップに、観客たちはただただ聞き入るしかない。
 会場は水を打ったように静まり、アノルルイの声以外に聞こえるのは執事の声と楽器隊の奏でる音楽だけだ。荘厳な雰囲気を保ったまま、会場は更に次のステージに上がろうとしていたーー!
「その鱗はげに堅牢なる守り 勇者は神に頼みて祈り 最後の一矢放つ腹積もり 矢よ、風を斬って貫けよ その一射はまさに疾風(Aellō)」
「俺はただ一人でILLだけの蝙蝠 でもそれってただの挙げ足取り その汚名はこれから雪ぐつもり 猫を追うより魚をのけよ 俺よ今まさに俺を超えろ」
 弦楽器隊のリュート弾きがアノルルイの言葉を彩って、情景鮮やかな彼のラップに音の奥行きを与えていく。
 まるで自分が直接見てきた記憶を、その日の夜に酒場で話すような鮮明さ。執事も負けてはいられないと発奮し、BGMの合唱をせんと続々集まってきた一般キマイラたちに頼み込んで良きところで角笛を鳴らしてもらう。
「ドラゴンの鱗には綻び有り 古の闘いで受けしもの也 最後の矢こそsoul eater その場所を貫いた 響くドラゴンの叫び声が まさに天を焦がす憤怒(anger) 威容は地に堕ち ドラゴンは息絶えたり」
「己を知りうる者は賢者なり 人は誰でも過去に傷あり でもまだ決められるぜ「Buzz」er Beater 堅いHeadはほぐしていくが 感謝しておくぜ Blues Singer 人を貶してちゃ二枚落ち Rapの真髄に我至り」
 互いにテーマを設け、そのテーマの中で自己表現を見事に行っていくステージ上の二人。アノルルイは自身の吟遊詩人としての立場を示し、執事は事故の成長を滔々と語っていく。
 歌い終わった彼らを待っていたのは、神聖な静寂。そして、一拍遅れて割れんばかりの賞賛の拍手が会場中に響いていく。思わず座って聞き入っていた観客たちはスタンディングオベーションだ。
 ーーあれはまさに「芸術」だった。司会のBは後にそう語ったという。

「hello world crazy ice menー! ほら、ユノもマイク握って握って!」
 アノルルイから目線で次の出番だ、と促され、ステージ裏から勢いよく、そして前のめりに駆け出してくるのはミア・ウィスタリア(天上天下唯画独尊・f05179)。
「えぇえ待ってミアちゃん私ラップとか分かんない!? あ、こ、これ読めばいいの!?良いのね!?」
 そして、彼女に手を引かれるように一緒に会場入りするのはユノ・ウィステリア(ヤドリガミの電脳魔術士・f05185)。彼女はミアに比べてやや緊張の色が見える。
 だが、彼女ら二人は一双のマイクを手に取ると、いつも無線で話しているような気楽さで、手慣れたように語りだしていくのだった! いざゆかん、言葉の大海!
「遅れて登場 真打登場 だってそれは金科玉条 これよりお前を鎧袖一触」
「ささくれだったFlow Lapper In Da House 勉強してきたのかKick-Ass Rhyme?」
 ムムムムッ!? こりゃビビったゼ! あの双子……! 知る人ぞ知る深度外宇宙生命体探索船IKAROS-βの奴らだ!
 マジすかBさん!? あのU-Tubeって動画サイトのコメントで、宇宙を股にかけてるって噂になってる、あの?!
 ああ、そのまさかだゼ! 二人とも桃色の神に、そして金銀の瞳! 間違いねえ! あいつらのRhymeを聞き逃すなよ……! 
 星のかけらの流星群みたいに、幾つもの言葉が群れを成して雪崩れてくるぜ! Yo Check it up! 要チェックや!
「お前のrhymeは猿猴取月 耳があるなら覚えておきな! 馬耳東風は許さねぇ」
「K.K 分かったぜ話しなよKick It 二人の挑戦Lyricist その意識の高さにRespect」
 先に捲し立ててRapを刻むのはミア。双子と言えでもやはり性格は違うらしく、彼女は物怖じせずに夜の会場に光ってまぶしい言葉の弾丸を次々と放っていく。
 その様子はまるで暗い空間を照らして進むのは慣れたものだと言いたげでもある。そしてミアは一息つくと、すぐ隣のユノに手番を回した!
「これより語るは三世十方 永永無窮を彷徨う二人 鵬程万里 暗中模索 探し求めよ UDC」
「何となくは分かるさSay-Zip-Wow! 意味詰め込んできたな延々と Ho-Tell-Bang-Wit Until-Move-Suck 教えてくれよWhat Do U Mean?」
 自身なさげだったユノも、渡されたカンペの歌詞をよどみなく的確に、リズムに乗って歌い続けていく。
 素人なはずの彼女が、それでも韻とリズムを外さずに詠めるのは驚嘆としか言いようがない。実に見事な言葉の操縦テクだった。
「四六時中 常にこれに夢中 魑魅魍魎は 腹の中 お前も何れは 呉越同舟」
「記憶の塊 思い出きらり 確かに俺は Represent Mukuro Shortyはやめとけ 闇の海」
 ウオオオオオオオオオオオオオオオオ! Bさんマジやっべっすねあの双子! しかも超かわいいし! 俺彼氏に立候補しちゃおっかなー!
 別に構わねエけど、あの子達6歳だゼ。
 ……えっ。マジすか?!! 6歳の若さであのBeat刻み!?!? ……尚更マジやっべええええええ! めっちゃファンになっちゃったすわやっば! クソエモ~~!!
 司会席で盛り上がっている二人は置いておくが、会場のHeadsたちもMC.IKAROSの二人を称えるように声援を送っていく!
 ユノは観客の皆に礼儀正しく手を振ってお礼を返すと、ミアに手番を渡しては彼女たちのラップは続いていく。
「異体同心 一心同体 二人合わせりゃVibes二倍 お前の奮闘 精衛填海」
「仲良きことはなんとやら 実に結構共同体 見ろよ会場こんなにも噴騰 お前らのおかげだ Say-Yeah-Tech-I そろそろキメだトチるなよQT's‼」
 ユノから回された手番を大事に歌い上げるミア。彼女たちの連携は完璧だ。文句の付け所がないという言葉は、彼女たちを指して言うのだろう。
 執事は天性のラップ勘でそろそろ彼女たちが締めに入ることを察知すると、自分の返しの最後で彼女たちにエールを送る。
「お願いミアちゃん!」
「うん! 行くよユノ!」
 それを受け、双子たちは一瞬だけ言葉を交わすと、背中合わせに体を互いに預けたままで指をオーディエンスの方に向かって指し、決め台詞を放つのだった!
「「アタシら星海彷徨う幽霊船ー!」」
 YeahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhH!!
 会場は彼女たち二人の魅力にメロメロだ。それを見て執事も満足そうにIceのフレーバーを頷かせる。
 だが、猟兵たちのLiveはまだ終わらない!

 ミアとユノの二人が会場を沸かせて、そして次のバトンを受け取るのは荒谷・つかさ(護剣銀風・f02032)。
 彼女は小柄なその身体の中に、故郷の唄と思いを秘めてステージに立つと、先ほど都々逸を行っていた猟兵に感化された様子でこう呟いた。
「都々逸……なるほど、その手があったわ。テーマは……私の里に伝わる、武勇伝よ」
 オーディエンスはつかさが先ほどと同じように演舞を繰り広げながらのラップを見せてくれると期待して待っている。
 だが、彼女はここに来て観客たちをいい意味で裏切って見せた! そう、手法を変えたのである!
「さあさ聞きなせ これより語るは とある羅刹の 武勇伝 いずこの世界か はては異境か 世界正義の 大一番」
「唄の浮世よ 浮世は唄よ 遠い世界のわずかな残滓 魂気持ち感情心 大小種類何処はあれど その時強く燃ゆるのは 夢と希望のカケラたち」
 つかさは大剣の柄を自分の左手で逆手に持ち、身体の前にでんと構えると、右手は栓抜きを持って派手にちゃきちゃきと音を掻き鳴らしては語っていく。
 べべんべんべんとは行かないが、スコップ三味線スタイルを取る彼女の唄と小気味良く響く金属音は見事にマッチして、執事と観客の度肝を抜いて見せた!
「ここで敗れりゃ 人類全て 怪人達の 仲間入り そんなことには させるかと 先陣斬ったる 小柄な娘」
「夢の現世 現世は夢 阿頼耶識その真っただ中で 覚えのあるよな娘が一人 裡に宿すは羅刹の魂 黄昏夜影を友にして」
 だが、それに黙っていないのは執事だ。確かに衝撃は受けたが……ならば! と彼も楽器隊に頼み込んで伴奏を付けてもらうと、彼女の都々逸に合わせて唄を返していく。
 見よ! そして聞け! 執事が歌う歌詞は何の根拠もないリズムを重視したもののはずなのに、何故だか彼らの音色は調和していくようではないか!
「率いる兵力 四千余り 狙うは敵陣 ど真ん中 一気呵成に 雪崩れ込み 見事斬り捨て 大悪魔」
「彼女が目にした悪魔とは 身に纏うのは黄金の 蒸気と波濤の序列持ち 正に今こそ斬り捨てごめんと 彼女は踏み込み鞘走らせる」
 げに恐るべきは都々逸の懐の深さである! 7と5の言葉たちが寄り添い集まり踊り出すようではないか!
 どんな話もリズムに乗せれば楽しく聞けるということで、観客たちも歌詞の細かな意味までは分からないながらに手拍子でステージの二人を盛り上げてくれている!
「敵陣真ん中 塗り替えて 戦を勝利に 導いた 悪魔の力 刃に宿す この大太刀は その証」
「左から右へ 右は左へ 抜く手も見せぬ稲光 悪魔どもの血を貫きて 今継がれしは その刃」
 つかさのフィニッシュに合わせて同時に都々逸を締めた執事が見たものは、つかさが大悪魔斬「暁」を抜いて見せるその姿。
 月の光に照らされて、薄く煌めくその輝きは、幾億の言葉を使ったとしてもたとえようのない美しさであった。
 その剣に魅せられたように、都々逸を詠めたことのうれしさに、執事はほう、と一つ感嘆の息を上げて次の参加者を待つのだった。

 つかさからマイクを受け取って現れた男、ジン・エラー(救いあり・f08098)。彼を見て、司会席はにわかにザワ付いた。
「ギャヒヒヒヒヒ!!!いいねェ!!」
 よォ、お前……ヤツを知っているか? アイツだよ。泥みたいな色の肌に笑顔のマスクでよ、桃と金のオッドアイのアイツさ。
 さっきのを見たろ。会場にいた「満たされない奴」を、アイツがまとめて救っちまったのを。
「お前怪人 オレ聖人 GoodにBadも そンなのあるか? Rhyme刻めばオレらはRival まだまだ行けるぜお前とこれから!!」
「言ってくれるのは嬉しいが 俺は昔人 お前現代人 でも待てよ違うな確かにそうだ 自ずから諦めたならただの出し殻 Rap詠んでるこの時だけは 出して魅せるか法(ノリ)の力!」
 ……ラップを聞きに来る奴にはよ、いるんだ。満たされなくて、自分を見失って、それでもなんとなくラップに共感したくて来る奴。自分の「こうしたい」って気持ちを胸の内に仕舞い込み過ぎて、心を開け放てなくなってる奴がいるんだよ。
 それを、アイツは……。ジンって野郎はまとめて音の波に乗せちまった。それはとんでもねえことなんだよ。アイツは救いを求めてラップを聞きに来た奴らの期待に応えたんだ。それは、信じられねえほどすげエんだゼ。
「さァさァ! 行くぜMC! jin_error! 救うぜWorld! 変えるぜFlow! ここから絶対見逃すなよOK?」
「そうさ俺は詰め物じゃねえ つまり俺様NOT Filler これからガンガンノるぜTrailer 撃つぜ言葉の弾丸の雨 4Kで視とけ俺のPPK」
 ラップとは自己表現であり、感情を音楽という名の器に落とし込むことができるもの。日常で救われない思いをしてしまうと、誰しもが感情を自分自身の檻に入れてしまう。
 その状態から救われるには、誰かに共感するか、自分で気持ちをブチまけて感情を出し切るしかない。
「よ う こ そ 我が領域へ ここは 救いの場 オレが聞いてやろうお前の罪を but ただ ただ 救うだけじゃ つまらない お前の 全てを知らなければ 腑に落ちない 生きるために 死ぬために オレらは生まれてきたンじゃない」
「Yo-U-Kool-So この展開は思いがけない きっと前の俺なら味気ない 歯牙にもかけない違いない でも今は違うんだ分かるだろ? なぜかは俺にも分からない でも話したい事はいとまがない 泣くに泣けないIce-Headの しげない話を聞いてくれ」
 他を寄せ付けなかった頃の執事であれば、ジンのラップを貶して落とし、サゲてDisっていただろう。
 しかし、ジンの言葉をきっかけに、彼は澱のように縮こめていた自分の感情にようやく気付いた。執事が人のラップをサゲるのは、自分に自信がなかったから。
「もっと ぶつけろ お前の意地を オレは 救うぜ お前の意思を」
「誰もが独りじゃ笑えない 他人と競えるこの時が宝 まだ言い足りないぜ俺は詩を 放したくないんだ同好の士を」
 頭のIceが僅かに溶けてステージに雫を落とす。猟兵に触れ、競い合えるライバルを得て、執事は一ラッパーとして成長した。
 彼がしたかったこと。それは、ラップバトルで他人を貶めるのではなく、他人と競い合うことだった。それに気付いた執事は、ジンにサムズアップを掲げて見せる。
 会場にいた最後の要救助者が、確かに救われた瞬間であった。

 ステージに背を向けて交代するジンから20人分の思いが詰め込まれたマイクを受け取ったのは、パッと見お子様のダンピール。
 血のように赤い瞳がステージ裏で爛々と輝き、彼は自信満々に高笑いしながらステージに入場していく!
「らっぷ……流石の我も触れたことのない文化だな。ふっ、良かろう! この我の溢れんばかりの才覚をもってすれば、未経験の分野だろうと十全にこなせることを証明してやろう! フハハハ!」
 次の参加者は、シャレム・アルカード(小さな暴君・f09897)!
 見た目によらない年齢の彼は、本音を吐露したことで更に一回り大きくなった執事のオブリビを見据えると、新たな「ライバル」として彼の前に立ちふさがった!
「更なるライバル求めcalling 呼び声答えて我が降臨!」
「来臨されるとは誠に感謝 Rapper集まるこれこそ有隣 今の俺らは「車の両輪」 二人の歌を届けるぜ玉輪」
 月の下でオーディエンスからの声を受け、星を見上げてマイクに唄う彼は、まさに夜の支配者と呼ぶにふさわしい!
 執事も猟兵たちが繰り出す音に一段と強く付いていくようになり、二人は息の合ったラップバトルを展開していく!
 月よご照覧あれ! これなるは言葉のカーニバル!
「我が名はシャレム・アルカード 高貴な血筋のダークロード! 見た目で判断するなWarning 舐めてかかれば即座にdying!」
「So 俺の名前は オブリビ Wow 元々ただのBlank card ケド俺はなったぜWild card 尊敬忘れたRapperはDamn Thing 教えてくれたJaeger'sのFollowing」
 自己紹介をテーマにシャレムは70年で貯め込んだ語彙を惜しみなく使って執事に言葉の杭を突きささんと挑みかかる!
 だが、執事ももはやそれを一笑に付して無効化するなどという塩対応を取ることは無い!
 ラップバトルの神髄とはこれだと言わんばかりに、シャレムの繰り出す口撃をすんでのとこまで引き付けては真正面から受け止めていく! ブラッドオレンジのフレーバーを零してしまいそうなこのギリギリの勝負こそ、執事が本当に心の底から求めていたものだった!
「見るがいい我が武装! ロマン満ちる男の理想! 『ヘカトンケイル』我の技術の結晶 圧倒的な火力で快勝!」
「見事な返唱痛み入る熱唱 スゲえ武器だなその棺 容易に想像万象の破壊 これには俺もロマン賛頌 震悚一撃タル「タロス」逝き」
 ラップの最後にシャレムが構えるのは、武装収容棺『ヘカトンケイル』の名前が付いた棺。彼の寝床でもあるこの棺の技術力の高さに、執事もハッキリとリスペクトを返していく!
 彼らは互いを高めるように、そしてライバルを倒すべく本気での勝負を繰り広げていく!
 本当のラップバトルが、今幕を開けた!

「ふむ……ラップバトルとは……私が本来得意とするのは剣での斬り合いなのですけれどね。しかし云うなればこれもまた言葉の刃での斬り合い。ここはひとつ、お相手願いましょうか」
 『汝戦を欲さば、平和への備えをせよ』。ボドラーク・カラフィアトヴァ(さまよえる微笑み・f00583)の持つ欠けた弾丸に刻まれた警句だ。
 それをこの場に相応しい言葉に置き換えると、こうだ! 『汝ラップバトルを欲さば語彙の備えをせよ』!
「残念ながら私はど素人。そんな私にどうしろと? そんな私が何を言おうと。プロたる貴方に届きましょうか?」
「素人玄人意味無いさ 違いはちょろと唄えるかの差 それでアンタはここにいて 俺としてるだろRhymeの応答 どんな言葉も届くさ拾うさ 俺はProだぜ返すさ高歌」
 今行われるのは言葉の斬り合いという名の真剣勝負であることなど、二人はとうに知っている。
 相手を貶めることに意味がないことも、一人で言葉の刃を振り回すだけでは手応えがないことも。
 剣を受けてくれる相手がいるからこその立ち合い、言葉を返してくれるライバルがいてこそのラップバトル! 斬り合いと返歌はこの場においては同じものである!
「けれどそれでも紡ぎましょうか。剣と変わらぬ言の葉、言の刃。 心はいつもとさして変わらず。斬って、斬って、斬り捨てるまで」
「俺はオブリビあんたは猟兵 違いが生み出す相乗効果 言葉の剣閃交えりゃ豪華 人は単語のみにて生くる者に非ず この瞬間を刻もうぜ Beatにしたなら骨の髄まで」
 ボドラークが灰色の髪をなびかせる度、右腕の刺青がチラついては言葉の刃が執事を襲わんとする!
 突き、逆銅、袈裟斬り、斬り上げ。手を変え品を変えては刃を振るうボドラークの言葉たちを、オブリビは同じく言葉の剣で受けては返す刀で斬りこんでいく。
 言の葉に乗せられた力は彼らの間で過不足なく循環し、そのやり取りが二人に音のグルーヴ感を与え、オーディエンスはそれを受けてまたステージに声を返してくれる。
「声枯れるまで、剣折れるまで。成程これでは、いつもの戦技と違いはなし。 ――生き残れば、いつもの剣技と同じ話」
「下駄を履くまで心行くまで 飽くまでできればこの上は無し Todayの後には今日は無し しかして時間も迫ってる 今は是迄 また会う日まで」
 執事からボドラークへ、ボドラークから執事へ、ステージからオーディエンスへ、オーディエンスからステージへ。
 言葉の力は会場全体を取り巻いて、調和の取れた一つの力となっていく。このライブ感は凄腕同士のラップバトルでしか生まれ得ないものである!
「……こんな感じでしょうか。ええ、見様見真似ですけれど。なるほど、これはなかなか奥深いですねえ」
「だろ? でもよ、アンタの言葉の刃も切れ味スゲかったぜ」
 ステージの二人は互いの健闘を称え合い、またラップに対して理解を深めるのであった。

 会場を取り巻く力は渦となって集約し、音と言葉、ノリとリズムのパワーサウンドはまだまだ続く。
 深夜に近付いてきた真夜中ほどの公園で、二度目のステージに立つのはこの男!
「貴様敵なれどその気概高く 志高く憎み切れぬ敵役 なれど定められた我らファイター なれば演じようライクサンデイ・セブンーエイトッ!」
「これで二度目かMC.TDR 刻むRhymeは練ったか考覈 しっかり込めろよ言葉の装薬 俺を越えて成ってみろVictor 休日の今はHero Timeさ 役目を果たせよPull One's Own Weight」
 本体は一フィート程しかないが、心に込めた熱は測定不能! 鉄と蒸気に身を包み、もう一度執事に挑まんとするのは四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)だッ!!
 空に輝く銀色の星が流れ、金色の時計の針が時を刻んでいく! そしてステージの彼らはBeatを刻む! これ以上のラップを詠むに相応しい舞台があるだろうか! いや、無い!
「そう此所に集うクルー個々にソークール ラップ、都々逸、どいつもクレバー 重ならず異なるそのスタイルに憧れ 未だ未熟なれど願うcome in」
「ここに来るだけでスゲえこと まだ気付いてないのかStage-Diver 周りを見て自分の未熟を悟る それこそ一歩目のEndeavor」
 二度目の参加を決めた他の猟兵たちと同じく、綴のラップの腕前も明らかに向上しているッ!
 それを証明するのは彼の繰り出す言葉たちと、そしてもう一つある! 綴が魅せる秘策とは、このことだッ!
「よし、まだまだ行くぞッ! 在・倍・列・車ッ!」
 そう! 彼は自分の持つユーベルコードで20体の分身を呼び出すと、総勢21体で一糸乱れぬロボットダンスを行い始めたのだ! クレイジー!
 複雑極まる速度の速いラップを口にしながら、動きにメリハリを付けなくては成立しないアクロバットなロボットダンスをダンスっちまうなんて、正気の沙汰じゃねえぜッ!?
「『三千世界の 鴉の一羽 今空繋ぐ 絶え間無く』 そう此所に立つッ! 願いそれひとつッ! 願うは星に? 否このマスクにッ!」
「『言葉の翼で Disは打ち消して 主らと朝寝がしてみたい』 So 鳥達はいつか巣へと立つ だが今は集まり心は一つ 願う? 拝む? 冗談言うなよ 掴み取るのさHumoresque」
 でも見ろッ! 綴のやつ、ロボットダンスの振り付けを一つもトチっちゃァいねェ~~~~~ッ!!!!
 しかも、執事までがロボットダンスのムーブメントに乗り始めやがった! 観衆もだ! 何で皆出来るんだよってツッコミはこの際野暮天だぜッ!
 そして最後は分身たちを足場に飛びあがって……加速したッ?! Crack-Upしながらの大ジャンプッ! そしてヒーロー着地ッ! たまんねえ! この何が起こるか分かんねえ感じこそ生Liveの醍醐味だゼッ!
 とにもかくにも、綴の魅せたロボットダンスとラップによって、会場は熱気を加速させていく! こうなれば、最後までクライマックスだ! 

「リリカルだか何だか知らないけど 受けて立とうじゃないの! はっきりきっぱりさっぱりわかんないけど!!」
 水衛・巽(鬼祓・f01428)は開き直って壇上に上がると、綴からマイクを受け取って自分のリズムを刻みだす。
 そのリズムは誰にも真似できない。彼だけが持つ言葉によるものだ。
「式神従えにしひがし 古神追ってきたみなみ 吉兆卜占(ぼくせん)いまむかし 昨今とんと流行りゃせん」
「時の流れは気の流れ 過去は昔よ未来が今よ 移り行くのは流行りと廃り 去りとて流れに残るものあり 幾年月を重ねども」
 男の身ながら女物の服に袖を通し、彼が語るは昔話。巽が何を詠もうと何を着ようと、この会場の観客も執事も全てそれを受け入れていく。
 誰かの自己表現を止める権利など、この世に存在しないからだ。執事と巽が織りなす言葉の布きれが、会場を包んで温めていく。
「人心信義はお水物 家名しがらみ油物 継ぐ者なけりゃ取り潰し 先代健在籠の鳥」
「さあさお聞きよ 急急如律令 ここにいるのは御姉に非ず そうして無論道化にも非ず 翼はためかす空の鳥 嘴鳴らした囀りを 耳にお入れよさあ聞いた」
 彼が語るのは、恐らく彼自身の身の上話。それを理解しているからこそ、執事は茶化すことなく観客たちにコールを続ける。
 巽が歌いたい内容に集中できるよう、観客の流れをコントロールする腹積もりのようだ。
「時代遅れと言うけれど 変われぬ信に否やなし すがる手払い進んでも 未来志向に意味はなし」
「信じた道のその先に 風雲急を告げれども まっすぐ歩むは信の道 陽も暮れた夜に光が一つ 意味はないとは申しまするが 意思を宿した街灯一つ 歩く道のり照らすは心 先行き見えない一つの道に セントエルモの火が灯る」
 二人が奏でるのは、流れが心地よい言葉の応酬。巽が投げては執事が返し、同じ数だけの言の葉を使って紳士は真摯に向き合っていく。
 誰かの自己表現に対する心からの肯定の姿勢。それが、オブリビが行きついたラップの心だった。
「ひとり産まれのおのこのさだめ 今更恨む気あらしません あまた広がり選べる道も とうの昔に、」
「雲散霧消の分岐路は 今は乗れない終列車 サザンクロスに石炭袋 夜の海へと繋がる道は 幾億の道へ列車を運ぶ 行く先々は星の果て 今は届かぬ夜の星くず」
 巽がぱっ、と両掌を開いて言葉を止めると、執事がその合間を埋めるように言葉を繋げる。
 執事は巽の過去を知らない。だが、思いを馳せ、思いやることはできるのだ。
「自己憐憫に自己嫌悪 そんなものなどあらしまへんえ 自分で選んだ自分のいきざま 胸を張らにゃあ罰当たり」
「胸を張っては心の裡の 意地と誇りと信を従え 行き様生き様お逝き様 選んで進むは荒れ野原 進めた足取り振り返る時 自分の道と思いかもねむ」
 オブリビとしては、巽に抱く感情はいかほどであっただろうか。未来へと、先へと進む猟兵たちに、彼は何を思うのだろうか。
「札付き跡取り言われても 譲れぬものはここにある」
「聞かせて頂き恐悦至極 オブリビオンの身共には 過去の話がIceに沁みる 聞いたからこそ思いける 人の言葉に歴史あり」
 答えは単純だ。ただただ、紛れのない感謝である。
 彼らがここに来てくれて、一ラッパーとして自分に足りなかったものを気づかせてくれた。そして今、対等に言葉を交わすことができている。そのことに、ラッパーとしては感謝以外の感情はなかっただろう。

 どく、どく、どくん。ステージ裏で誰かの心臓が鳴る。大きい音だ。といっても、聞こえているのは当人だけだろうが。
 ーーこれ、怪人の熱気にめちゃくちゃ巻き込まれてるな。早鐘を打つ心臓の持ち主はぼう、とそんなことを考える。
 目の前で巽の出番が終わり、次の――彼の出番が回ってくる。巽からマイクを受け取ると、松本・るり遥(不正解問答・f00727)はまっすぐ歩き始めた。
「出遅れ上等松本ルリ遥!!!!!!!!!!! 夜更かし狭量いつものWe are here 耳貸せListen to Mashup.GROOVer!」
「音量アゲなまだ足りないぜ デカく叫んで掴めAtmosphere もっと重ねろ心のSound Over×SoulのGroup up」
 色んな事を考えていたはずなのに、マイクの前に立つと頭に何も残っていない気がする。まっしろで、ただただ熱気にあふれて、目の前でたくさんのキマイラが嬉しそうにしている。
 その時、るり遥が心に決めていたことは一つだった。自分の心に渦巻く熱をシャウトで届ける! 自己紹介をしよう!! ……失礼、二つだったかも。でも、おおよそこの通りのことしか彼は考えてなかった。だから、あとは彼が叫ぶだけ。心の底から、腹いっぱいになるまで!
「No BRAVE! 臆病者! No KIND!極悪非道! No SORROW! 楽観ヤロウ! No REGRET.斬り込み隊長! 4人分の声聞いていけ!!!!」
「勇気に悩んで優しさ溶かして それでも良いだろ人間なんだ 哀しみ沈めて後悔をくべて 青い感情詩に変えて 重ねた思いを響かせな!」
 執事は思っていた。ここまで多種多様な感情を抱き、それを言葉に変換できるのが、猟兵という生き物なのだと。
 改めて考えてみると、自分にはラップで得たいくつかの気持ちしかない。元々は二つきりしかなかった。他者に対する優越と侮蔑。でも、今はもう少しだけある。即ち、楽しさとーー猟兵に対する羨ましさ。
「余韻じゃん? 変わる人間性 TadadaDahhhhN! がなる騒音系 32GIGA耳塞いで 散々議題踏み躙って 怖い辛いのも置いて来た お前とRhymeを踏みに来た!!!」
「踏んでくれるぜYo 韻を 人間は前に進む生き物 変わる戸惑いがなりに代えて 卑屈な心を皆に晒せ 燦燦輝くStageで 燻る気持ちを吐き出したなら もう一度言えよお前の名前を テメエは一体誰なんだ!!!!!!!!!!!!!」
 がなり、叫び、すでにるり遥の声は擦り切れる直前だ。魔力を乗せた心の声を技術で濾過することなく、本日二回も喉から放っているのだから無理もないこと。
 でも、ここでコイツを黙らせる訳にはいかない。もっとコイツの声を聴きたい。そう思ったのは誰だったのだろう。観客席にいるキマイラたちの声だったか、ステージの上に立つ執事だったのか? 今となっては些細な問題だ。
「……ッ、俺はJUKEBOX松本ルリ遥!!!!!!」
「極まったぜRock! Hold-Up! イカれるくらいにBadだぜBaby!」
 やられたな。執事は心の底から、Iceの内側から本気でそう思う。猟兵の皆が繰り出すRhymeを、いつの間にか好きになってしまっていたことに、一心不乱に歌う目の前の男に気付かされたのだ!
 彼は自分の感情を歌いきったるり遥を称え、握手を求めた。そして、次の猟兵が舞台に上がる!

「えっ、ラップで戦うの? そういうルールなの、ふーん。そんじゃ、いっちょやりますかー!」
 胡桃色の跳ねっ毛と、まんまるエメラルドの奇麗な瞳。るり遥をねぎらうようにハンドサインを送り、マイク片手に次の相手をするのは星鏡・べりる(Astrograph・f12817)だ。
 彼女のラップのテーマは、どうやらお仕事と得意な事らしい。べりるは準備万端という姿勢で、オブリビ相手に言葉を放とうとしている。今か今かと待って、楽器隊がBGMを転調させた。ーー今だ!
「気合入れちゃお ここは戦場 アガった舞台に私参上 オブリビオンの挑戦状って ここで逃げたら大炎上」
「誰も叩きやしないぜ一筆啓上 返事を返すぜ受け取れ言上 お前の挑戦俺には吉上 形而上的な無意識の声を 確かなLyricで送るぜ雲上」
 確かに今回、猟兵を呼び寄せたのは執事の仕業である。しかし、今ではもはやどちらがどちらに挑戦状を投げつけたかなど些末な問題だ。
 執事は心の底から楽しそうにベリルの言葉を良く聞いては、言いたいことをLyricに詰め込んで返す。
「年頃JK MCべりる オブリビ狩るのがお仕事です キミのラップはイイけれど 本来のキミは過去の存在 ここにいるだけで大問題 満足したら消えるのかい キミの気持ちはどうなんだい?」
「これは丁寧なSelf-Introduction 礼儀知ったるAstrograph 満足したなら消えてやるとも ただ残念俺は欲張りなんだ どうやら少し満ち足りない まだ俺はお前らとRapを刻みたい!」
 そして、べりるもまた執事の言葉を受け止めてはRhymeに乗せて口に出していく。
 だが、ここで彼女が投げ込んだボールは、執事の意識の裏をかく変化球だった。
「キミの全部を私に見せて!」
 ベリルはその言葉を口に出していないが、確かに執事はその言葉を耳にしたという。
 猟兵というのは、何故オブリビオンの自分に対してここまで興味を示すのだろう。不思議に思いはしたが、彼はひるまずに本音を隠さず伝えていく。
 この時間を終わらせたくない、永遠にラップを刻んで楽しさに酔っていたい。執事のオブリビが望むのは、ただそれだけ。
「ここのAnswer間違えたなら すぐさま始まる大乱闘 見せる暴力 猟奇な行動 それじゃあ問答 お返事どうぞ?」
「禅問答だな応えるぜ即答 Answer Songは決まってるのさ ここじゃ狂気の力は無法な力 Body-BlowよりHook-Flow この解答でご名答? 言い足りないぜこのBeat! Rhymeに乗せてブッ放す!」
 正真正銘、混じりっけなしの本音100%。心の裏側までひっくり返して、執事はべりるに礼を告げる。
「ありがとうよMC.べりる! おかげで本音が言えたってもんだ! ……さあッ! 来いよ次のヤツ! もっとかき鳴らしていこうぜ心の声! Audienceに聞かせてやろうぜ!」
 べりるのおかげで、執事はさらにラップに対してまっすぐに進んでいく。本音を隠すことをしなくなった彼のRhymeは、ここに来てまた一段と強くなった。

 桜庭・英治(NewAge・f00459)はステージの裏で執事とべりるのラップバトルの様子を見ている。
 その表情はどこか穏やかで、これから戦いをしに行くような色はそこにはない。その時の彼の顔は、仲の良い友達の家に遊びに行くような年頃のものだった。
 べりるとハイタッチを交わしてステージに入場する英治に、二つの反応が返ってくる。
「キャーーーーーッッッッッ!!! 桜庭クーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!」
「……よう、遅かったな?」
 一つは先ほど彼のファンとなった会場の女性が中心メンバーとなって今しがた結成された、Fun Club桜庭の面々からの黄色い声援。
 もう一つは英治に向けた執事からのハンドサインだった。英治はそれらに平等に答えるため、気合いを入れてマイクを握りしめる!
「やるじゃんお前見直した 熱いアンサー胸に来た 俺はお前倒しに来たけど 最後の最後まで親友だぜ 俺を知りたいなら教えてやるよ」
「もうNew-Jackは卒業かJiggy そんな言葉は照れくさいぜBuddy 水臭いこと言ってんじゃねえぜ ここは自分を曝け出す場さ 知りてえから宣え お前のPast!」
 英治にも他の猟兵たちと同じように最大限のリスペクトを示す執事。彼のラップはもう自分一人のIceを見せびらかすようなものではなく、猟兵たちを活かし、自分も活かす、真のラップへとそのスタイルを完全に変えていた。
 そんなオブリビオンに思うところがあったかどうかは分からないが、英治もまた真剣に楽しみ、全力でラップを刻んでいく!
「UDCアースの高校生 かつてはただの優等生 猟兵で変わった方向性 切った張ったの攻防戦」
「別世界では隠してたNeck しかして舵切るReckless 命賭けてるRisk One's Neck 変わる生活正にBreak-neck」
 英治が語るのは、猟兵になる前と猟兵になった後の自分の話。相当に変わったこともあっただろうし、恐ろしい思いもしてきたかもしれない。
 それでも、英治は何も隠すことなく、自分の今の状態に誇りを持って執事に気持ちを吐露していく。執事もそれが本気だと分かるからこそ、それに理解を示していく。無論、こちらも本気でだ。
「やれんのか喧嘩noob 舐めんな男子のガッツ やらなきゃ人が泣くってんなら 何でもやるのが猟兵さ」
「涙を止めるが猟兵のWork でも今は違うだろNOT Wack 鳴かしてみなよAudience 何でもやりなよNew-One-Rapper!」
 ーーそうだろ、観客どもォ! 猟兵の桜庭・英治はもちろんだが! MC.Ageにも、今もう一回歓声を送りやがれェ!!
 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
 英治の語る独白を受けて、執事は観客を煽る。今だけは、猟兵とオブリビオンという関係ではなく、ただのラッパー同士として。彼なりのリスペクトを払った行動だ。
「何でもやるのが猟兵でもよ……俺は暴力以外で戦えるオビリビ、大好きだぜ」
「……止しな。別れが辛いゼ」
 吠えるように大歓声を叫ぶ観客には聞こえない声で、ステージの上のNice Guyたちが静かに言葉を交わす。
 別れの時まで、もう少しだ。

「ふむ、一際賑わっている所に興味を惹かれてやって来たら……何やら大変な試練を課せられる事になってしまったな」
 英治からマイクを受け取り、自分の番が来たとステージ裏から姿を現すのは、ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)。ピッタリ時間厳守の会場入りだ。
「此れも身体持った運命(さだめ)故か 人間(ひと)としての暮らしも悪くない されどまだまだ知らぬ事多く、俺の世界への興味は尽きず」
「物に宿った人格者 宿る神には意思がある 物の定めさ形の老朽 しかし過ごした時の悠久 猟兵となったその身に宿す 語彙を使って語りなよ」
 彼は精悍な体つきと、礼儀正しく真面目で几帳面そうな話し方をするヤドリガミ。だが、その豊富な語彙は彼の口に留まることなく、会場へと流れていく。
 執事もこれには望外の喜びと言わんばかりに、頭のIceをひと撫でして整えると、しっかりとニコを見据えてラップを返していくのだった!
「例えばお前、そうお前だ怪人 何故にアイス? 溶けかかったアイス? 我思う故に我在り、よもやお前は愛する者か」
「耳に聞こえたCogito-ergo-sum Somewhere SoundにCrazy For Love つまり俺はもうBatshit 刻むRapに首ったけ」
 次にニコが問いかけるのは単純な質問ではあるが、それゆえに奥深いもの。「お前は、愛するものか?」
 しかし、執事はもう自分の好きなこと、自分が望んでいたことをハッキリと見定めている。彼に取って他者を傷つける道具だったラップが、人とのコミュニケーションツールとしての本来の使われ方を見せている。それが揺るがぬ証拠だった。
「言葉を弄し、そして楽しむ 最早俺の知る怪人の域では無く 理解し合う等詮無き事と、知れど一度乗った勝負である」
「言葉の勝負は世界を広げる 相互理解が生み出す星は 敵意を空から消していき 音に聞こえた虹の魔法が 俺らを誘うSky High」
 二人の豊富な語彙は次々と色を変え、七色に光っては観客たちを魅了する。
 色取り取りの応酬が高速で行われている様は、彼らが卓越したラッパーであることの証。
「俺は時計、懐中時計 お前はアイス、愛する者よ、ラップなるものを愛する者よ 今こそ認めん、大した奴よ」
「愛は豊穣 「I」はIcing 降らせてみようぜ言葉の雨を 晴れたら架かるさ七色の橋 Timeを刻んだ月の満ち欠け よりも刻んだBeatの引き金」
 二人が交わす言葉のバトル。知性があり、語彙があり、そして語るべきことと、相手がある。
 十分だ。もう何も彼らを止める理由など、ここにはない。
「……横文字はどうにも苦手でな、此れが精一杯だが……。少しでも通じるものがあれば幸いだ」
「……何、ああ、ゲホ……。分かってるさ。何も言わなくていい。もうアンタは謙虚で、繊細で、自己表現できる立派なRapperだよ。自信を持ってほしい」
 皆! ここにいるMC.Nikolausに祝福を!
 執事が会場の観客に締めのCallを投げかける光景も、恒例となってきた。観客は慣れた手つきでニコと執事を称え、そして口々にこういう。
 とても良かった、最高だった、と。

「おれの得意は火付けと壊し そこに否定は一つとしてなし Butお前のライムに火付けられ もっとここで韻を踏み始める」
「そこまで言われちゃ否応なしに 詠むしかねえな引っ切り無し 逆だぜ猟兵そいつは違う 俺こそ点火させられた お前らに転化させられた!」
 壥・灰色(ゴーストノート・f00067)。一度目の登場時は特徴的な抑揚の取り方で会場を沸かせた彼だが、執事の熱に当てられたか、それとも彼のうちに眠る何かが目覚めたのか、ここに来てスタイルを変更したようだ。
 そんな彼を見て、連戦に次ぐ連戦の執事もまた、死灰復燃ゆといった様相を呈している。30人の思いが籠ったマイクをニコから受け取った灰色は、超ハイスピードでのラップを展開していく!
「Hey, yo おまえ名前はなんてーの おれの名前はナナシノハイイロ、生まれたときからノーネイム 作られ生まれた名無しの灰色、それでもここで刻むSo,Rhyme」
「Hey,Mr.No.6 上等じゃねえか灰色の 俺は所詮某関係ねえさ それなら名乗るかA.K.A 生まれも個性も十人十色 良いも悪いもないはずさ 何一つねえぜ必要が忌む」
 パッと聞きだけでは塵も灰も付かぬ印象を受ける灰色の声。しかし、執事はその本質を理解していた。灰色が示す感情は、執事への興味とーーそれからリスペクト。
 一ラッパーとして名誉な感情を向けられていることを自覚した執事は、例えようのない喜びにIceを震わせる。今からコイツと、死ぬまで言葉をぶつけあいたい。そんな考えが一瞬頭をよぎる程であった。
「生きてる意味は自分が決める、生きてく理由刻むLet's Sing おれは猟兵、おまえを倒す けどもHey,Say 忘れやしないぜ アツいリズム刻んだお前 合わせラップ踏んだおれ」
「応これから生きて死んでいくまで 忘れんじゃねえぞ今このTell You 俺はオブリビ、過去に死ぬ だからこそ今は未来へ向けて Rapに乗せる溢れる血潮 受け取ったら離すなFunky Beat!」
 灰色は護拳のように手に装填した衝撃を手先で炸裂させると、パーカッシブに音を鳴らす。
 弾けて音を鳴らすのは出力を最大限に伝導した魔力の塊。灰色が指を打ち鳴らすたびに、見えない魔力が空で弾けては、リズムトラックを作り出していく!
 音楽隊も彼の主導するパーカッションに合わせて音を奏で、グルーヴは会場全体を包み込んで灰色のハイスピード・ラップを後押ししていく!
「きっと死ぬまで忘れやしねえ ブロー お前のアッパーテンション!」
「Attention All! 途中下車なんて許してねえぜ 最後まで付き合え Attaboy!」
 彼らはもう、蛇の目を灰汁で洗うような善悪の所在を問う事はしない。執事は思う。こんなことがあって良いのだろうか、と。
 オブリビオンとしての自分へ、こんなに大勢の猟兵が言葉をかけてくれている。そして、あろうことか興味とリスペクトを向けられているのだ。
 嬉しい気持ちももちろんあるが、どこか胸が痛いのは怪人の性だろうか。キリキリと響く痛みに耐えながら、それでも目の前で唄う猟兵を称えるべく口を開いていく。
「……ハァッ、ッグ、素晴らしいプレイを見せた、MC.Ashに最大限の賛辞と歓声を!! 頼むぜAudience!」
 返すのはもちろん、アンサーソングだ。31人。充分返しただろう。すでに彼の声は掠れかけ、腕にも足にも疲労はたまり、頭のIceは熱気でクタクタだ。
 けれど、目の前で詠った猟兵たちに応えるために。そして、まだ残っている猟兵に答えるために。ここで倒れるわけにはいかない。
 孤独なオブリビオンは満足そうに立つと、灰色にハンドサインを送る。そのハンドサインはまるで、仲間が仲間に送るもののようだった。

「中々やるじゃない。アイスみたいな頭をしている割にね。最後に私の名前を刻んでおくといいわ」
「ゲッホ、ガッハ……! ……ヘッ、アンタか。良いぜ、教えてくれよ。アンタの、名前……ッ! 全力で返すからよォ!!!」
 すでにオブリビは満身創痍。身体中は痛み、喉は声を出すだけで千切れそうだ。腕も足も鉛が込められたかのように重くなって、欲を言えばすぐにでも倒れ伏したいところ。
 しかし、目の前には猟兵がいる。陽灯乃・赤鴉(ピカピカ光る。・f00221)が、灰色から31人分の思いが詰まったマイクを持って立っている。
 今まで受けてきた猟兵たちの思い。それが籠ったマイクから放たれる赤鴉の思い。それに返すためならーー。執事は無限に立ち上がり、声を轟かすことができるのだ! 何故ならば、彼はラッパーだから!!
「私は赤鴉。宇宙(スペース)生まれ。あなたにはない大きなスケール。弾丸ライナーのようなrhymeで着火するわファイアー 宇宙船で育った光より早い武勇伝持つダンサー」
「最後はお前かB-girl 解放されたぜ長患い 今までの俺はつまりは井蛙 井戸の中から空見てた だからこそ最後に伝えたいんだ 聞いてくれるか俺の声 光よりまぶしい心の声を」
 赤鴉がここ一番で選んだテーマは、前半を聞く限りはどうやら自分の自己紹介。
 それに返していくべく、もう何も隠す小物のない執事は全ての言葉を尽くして返答していく。すでに服もよれよれで溶けたIceまみれ、足元もおぼつかないようだ。
「未開の地? 期待通り、いや期待以上の未知の土地 あなたに感嘆だけど私は淡々 聞かせてあんたのアンサー」
「エモくさせれたらRapper冥利 心配すんなよ伝わってるぜ 大事なのは言い方じゃない どれだけ心を明け渡すかさ」
 だが、マイクスタンドに齧りついてでも彼は返す。返していく。
 受けた言葉はすでに数十、数百、もしかすれば千に届くかもしれない。だが、その全てに「間違い」はないのだと、今になって執事はそう思う。
 その場に応じた正解のラップなんて、もしかしたら無いのかもしれない。けれど、「間違い」のラップだって無いのだ。ラップは自己表現なのだから、それを否定することは何にもできやしない。
「終わりの時が来るわ、だけどあなたのrhymeは永久(とわ)にここに。あなたと感じた一体感を自画自賛。悲惨な未来と支配にサヨウナラ」
「ゲボッ……、……きっとコイツが最後のAnswer バカ騒ぎにも幕の時間だ 全員揃ってCurtain Call その前に伝えたい一つのCall……!」
 ーーーーテメエら全員、乗ってくれてありがとう。
 執事は絞り出すように最後の自己表現の言葉を口にする。それは感謝の言葉。一ラッパーとしての、紛れもない猟兵たちに対する最大限の謝辞であった。
 全ての言葉を返した執事は、満足そうにステージの上で仰向けに倒れ込む。もうすぐ〆る時間帯だ。観客たちは今も大盛り上がりできっと退場を渋るだろうけど、そろそろここは締めなくちゃいけない。
 全員に日常があり、明日がある。英気を養ったら、明日を向かねばいけないのだ。
 --しかし、なにもかもが円満に済むかと思ったその時。異変は起こった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『カロリー執事』

POW   :    血糖覚醒
【自らの野望の為 】に覚醒して【全身が高カロリーな食べ物】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    カロリーボム
【口に向けて一日分超の高カロリーな食べ物 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    お食事会
いま戦っている対象に有効な【相手が好みそうな食べ物(カロリー激高) 】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●【/ge//SI////X/h // Oblivion ///】
「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!!!」
 ステージの上で仰向けになっていた執事が、突如として吠える。
 その原因は明確だ。彼の身体は怪人の身体。彼がどこまでいってもオブリビオンであることに変わりない。
 今までは一ラッパーとして自己を定義することで何とか抑え込んでいた彼の怪人の側面が、強烈な激痛を伴って執事を襲ったのだ。
「イイイイイッダ……! アッツツツツツギイイイイ……!! ……お、お前ら……! 早く……!! アアアアアアアアアア!!」
 前兆はあった。終盤に近付くにつれ、彼は猟兵へと理解を示していった。……示してしまった。あまつさえ共感まで、羨ましいとまで思ってしまった。
 最終盤の執事を襲っていた要因の内訳は、疲労以上に激痛が大きかったのだろう。それでも彼が痛みに耐えてラップを刻み切ったのは、ラッパーとしての矜持を果たすため。
 しかし、その忍耐ももはや限界だ。彼は意味にならない悲鳴を上げながら、ステージ上をのたうち回っている。
「アアッッッッッグウウウ……! お前らァ! ……最高、だったゼ! ギイイイイ……ッ、頼みがある……ッ! 俺を倒せ! できれば、オブリビオンとしてではなく! ラッパーとして! 俺の自我が完全になくなる前に! ……俺はァ!! Rapper仲間のお前らに倒されてェンだ!!」
 それを最後に、執事のオブリビは最早意味のある言葉を発さなくなってしまった。
 それどころかステージ上で暴れまわり、機材をなぎ倒しては吠えて叫んでやりたい放題だ。あれだけ大事そうに握っていたマイクも、もういつの間にか彼に踏み潰されて粉々になっている。
 ここにいる猟兵は、目の前のOblivionを淡々と倒すことも出来るし、目の前のRapperにリスペクトを込め、介錯してやることも出来るだろう。
 武器を振るう以外、全ては自由だ。韻を踏む、踏まない、ラップを詠む、詠まない……。
 目の前の敵は倒さなくてはいけない敵。執事のオブリビではなく、Oblivionなのだ。
 だがせめて、倒す方法だけはどこまでも自由でありますように。全ては君たち猟兵の手にかかっている。猟兵の皆の思うように、行動して欲しい。
メルノ・ネッケル
……OKや、バトラー。
せめて、アンタの願いにこのアンサーを返す……!
本当は複数相手の技やけど……敢えて、これで。
今から降るは銃弾熱線、手向けのRhymeの雨あられ!
降り注げFlow、『狐の嫁入り』!

うちが始めるこの一巡、撃ち方始めるその一瞬!
Take my turn & Turning Revolver!Riflingから放てRhyming!

アイツの攻撃を【見切り】、跳躍!

うちらもアンタもFeeling good!
宇宙の数多もHeeling!
受けきれるかこのHeatin'Groove?
受け取れ、うちのFinish Move!

『狐の嫁入り』……うちの全て、この銃撃とRhymeに乗せて、届けぇっ!


荒谷・つかさ
執事、貴方……
忘れていたわ。貴方がオブリビオンであったこと。
だから、って訳じゃ無いけれど。

魂(ソウル)通じた 仲間の願い 付き合いましょう 最期まで(大剣を構える)

発動UCは【五行同期・精霊降臨術】(攻撃力強化)
都々逸のリズムで剣戟を繰り出しながら詠唱。
執事の身体に五芒星の陣を刻むと同時に発動よ。
以後、強化された能力で押していくわ。

木は火を生みて 火は土を生み 土は金生み 金は水生む
そして終いに 水は木生みて 星の理 ここにいざ!
五行同期の 精霊降臨! 森羅万象 我の手に!(発動)

命果てても 想いは死なず 我らが魂 共に在り
祭り(フェス)の余熱に 包まれて ゆるりと眠れ 我が強敵(とも)よ


シャレム・アルカード
・アレンジ協力歓迎

我は怪人としてではなく、己の性に抗う一人のRapperとして、敬意をもってお前を倒そう

見事なanswer 認めよう我がloser
故に見ていられないその醜態
止めて見せようshooting time

ヘカトンケイルの内蔵武装で砲撃、牽制。イダテンで距離を詰め【血統覚醒】の膂力で襟首を掴み地に叩きつける。

見よ上がり続けるこのvoltage
我らとお前で作り上げたこのstage

soul震わしたお前のrapに
今会場を震わす心からのclap
何も感じないならばもはやお前はただのscrap

我が認めたのだ!意地を見せろよ!rhymeを踏み、rapを詠め!皆の心にお前のsoulを刻み付けて見せよ!


煌希・舞楽
マイラったら、初めてラップってやってみたけど、面白いのね
何か言ったら、それに帰ってくる言葉、中々心地よかったの。
大丈夫、ここでお前が刻んだライムはちゃんと心に残ってるの。
安心してお逝きなさい。ん……いえ、駄目ね、化物のママで終わるなんて、こんなに楽しいお祭りのあとに悲しいのは寂しいものね。

ユーベルコード《才能開花+》をオブリビに使ってあげる
最後の最後、お前の残滓がこの世から消えるその前に、大好きなRuppを歌うだけの力をあげるの!


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
執事……!アイツ、ラップを愛する善良な心と怪人としての悪しき心の狭間で、苦しんでいる……!

執事! 君、俺のラップのライム、一言一言を大事にして噛み締めて、真摯にまっすぐなラップで返してくれたよな? あれ、とってもとっても嬉しかったぞ!
ラップを愛する者は皆友達、ラップを愛する心を持つ者同士の間に、壁なんて一つもない。ラッパーには善も悪もない、皆平等なんだって、君は俺たち猟兵にラップを通して教えてくれたのだぞ!
その『友達』の願い……叶えてやらない訳にはいくまい!(武器を構え)

【2回攻撃】+氷の【属性攻撃】で手数を稼ぎつつ状態異常を狙い、そのままの流れで【先制攻撃】+『亡き花嫁の嘆き』を当てるぞ!


星鏡・べりる
結局、オブリビオンはオブリビオンかぁ
いつも通り始末しちゃおっか

…………不思議だなぁ
こんなのいつもと変わらないのに、やりづらいや
もっとさぁ、オブリビオンって、違うじゃんね

私は【竜騰虎闘】を使って、爆発は最小限にキミを抱きしめるよ
優しく、強く、ギュッと、ギューッとね
はい、これでキミと私は竜気で繋がれました
少し私と同じ動きをしてもらうよ

clap hands!Hands up!
せーので、アーイ🙌
keep it real‼my men‼

正真正銘、全部を見せてくれたキミに私からのお礼だよ
OblivionじゃなくてRapperとして骸の海へ還りなよ
――とっても、熱いステージだったよ


スカル・ソロモン
拍手を。
実に、実に良い言葉の応酬だった。
だからこそ私は悲しい。
ここからは力の応酬だ。
故に――いつかは終わりが来る。
生きていれば言葉は尽きないが、死んでしまえば一方通行だ。
だからそうなる前に、私は言葉を投げよう。
まだ君に返す言葉があると信じて。
どうか、ラッパーとして君が死ねますように。


さあ どうやら出番のようだ
出遅れたけれど 失礼するよ

君の言葉 もう聞けないのか? 実に残念だ
さっきまでの威勢 一体全体 どこいったんだい

そんな 乱暴な 吠えた叫びじゃ
一切合切 『私には、届かない』
(魔王特権で敵のユーベルコードを相殺しつつ攻撃)

意地があるだろ 男の子
心無くすのは もってのほか
まだまだ間に合う 大往生


リンネ・カーネーション
オブリビオンじゃなくラッパーとしてだ? 
オブリビオンだろうとラッパーだろうが!
死にたがりの介錯なんてごめんだね
知ったかぶりの解釈なんてごまんとあるさ!
てめぇの生き様片手落ちか?てめぇの生き方語らずオチか?

情けないこと言ってんじゃないよ!情け容赦無く言ってやるよ!
あんたが何を泣き言言おうが、あたしたちゃ泣く子も黙るJaeger!
ぶっ倒すのは端から前提 ぶっ飛ばすさアクセル全開で!

立てよ最後のStageだ 歌えよ最高のStardomで!
Lime刻んで掛かってきな、OblivionRapper!
Lyric効かせて行ってきなJaegerRapper!

(生まれながらの光で猟兵達の疲労を掻き消し送り出す)


松本・るり遥
ジン・エラー】

『お前はラッパーだろ!!
それなら俺たちは友達だろ!!!』
がなれ『Immortal』
共感してみろよ!!!!

《思い出語り》で、奴が踏み潰した《マイク》を複製

無くすなよ、ジン
流すは感情を叩き付ける騒音
これが俺たちの出逢い
脳髄に流し込む、感情の増大

怪人にマイクを突き付ける
血反吐吐いても[独白]してやる
[このままじゃ終われねえだろPosse]!?

[この導き先 GO to Heaven
こんな見世物しょうもないゼェ!
活きて魅せろよ オレら歌えば
お前に響かせる
M!C!ジン!!!遥!!!
テメエ取り巻く悲劇にthe END!!
刻んだだろう魂に DIVE!!!]

『テメエは一体誰なんだ!!!!!!!』


ジン・エラー
【松本・るり遥】
ブバハハハ!!
倒すゥ???
まァさか!!!!
一回救ったヤツをもう一回なンてよォ
出来ねェワケがねェ〜〜〜のさ

オイ、るり……
いいや、MC.遥!
持ってンだろ?
片方貸せよお前のイヤフォン
あァ??二人で救うからに決まってンだろ
一番やべェーの、よろしくゥ

マイクがあンならまァだ終わりじゃァねェーよなァ!!

お前の行き先 Hell or Heaven
もっかい見せろよ Show yourself
逝かせてやるかよ オレら二人が
ラッパー救うは?
M!C! ジン!!!遥!!!

オレらが見せる救いは Light!!
刻ンでやるぜ魂に Rhyme!!


『テメエは一体誰なんだ!!!!!!!!!』


ボドラーク・カラフィアトヴァ
舞台の上で言葉交わした。
心交わした、だとしても。
貴方は矢張り、オブリビオンで。
私は結局、猟兵で。

舞台の上で言葉交わした。
心交わした、それ故に。
貴方を殺す。Rapperとして。
最後の願いを、聞き入れて。


介錯、それが私の解釈。
貴方の言葉をひとつ拝借。
『私もPro故、痛みは一瞬』
振るえば必中、当たれば必殺。
この一太刀に懸けるはわたしの全霊。この場の人達と駆けたあなたへの返礼。


――永き宴もいつしか終わる。
祇園精舎の鐘の聲。
夢まぼろしは朝陽に溶けて。
諸行無常の響きあり。


ヴィクティム・ウィンターミュート
ユーベルコードで味方の回復をして、前線維持の【時間稼ぎ】だ。【早業】で回復は手早く行うぜ

その、やっぱ最期はラップで終わりてえ。無理と疲労を承知で、アンサーができるくらいに回復させたい。マイクがなくたって、俺はあいつの為に詠む


こんな終わりでいいのかお前は
どうせ最期なら盛大に行こうや
お前の生き様刻んでくれよ
オレ達のソウルにさぁガッツリと
イカしたFlowで
オーディエンスBlowして
アドレナリンがOverflow
これこそラッパーの最期だろう?
故に死因は全て音楽の過労!
融けないお前のI Scream
聞かせてくれよ 俺たちゃPeeps
そろそろ時間だ アンサー構えな
先に言っとくぜ Rest in Peace


祷・敬夢
俺は最強のGamer
それを決めるのはただ一人自分
お前は最高のRapper
それを決めるのはただ一人お前
魅せて見ろお前が認めるお前の姿

難しいことなんて要らねぇ!
観客、悔い、己、情熱で燃やせ!
血肉滾らせ!限界壊せ!
最後にステージで一発決めてやれ!

残せName! 整えろEquip! 
楽しもうぜTime! 巻き起こせClap!
やろうぜGame!吹き飛ばせHardship!
踏もうぜRhyme! 刻むぜRap!


お前とのRap、最高に楽しかったぞ!またな!!


パウル・ブラフマン
【SPD】
アドリブ&絡み大歓迎!

再度握るマイクは“オレの心臓”(サウンドウェポン)。
『先制攻撃』『高速詠唱』を活かし
初めて発動させるぜ、ユーベルコード!
外れたって停まらねーぞso fuck'n what!
零距離でIceさん(オブリビ)に掴み掛かって
全身全霊のリリックを捧げてェ。

レペゼンMC.Ice!
So you are History―だが栄光不滅のLegendary!
143 CandyなIce 愛す オレらのrhyme
r.i.pよりもripだ
テメェとのposse cut
忘れねぇぜmy men――peace!!


Iceさんのマイクの残骸を探し周って、拾って持って帰りてぇ。
涙で世界が滲んでらぁ。


水衛・巽

ああ、嫌だ嫌だ。
憐れだとか思っちゃいけないのに。
猟兵とオブリビオンがわかりあえるはずもないのに
もしかしたら、もしかするんじゃないかって
そんな馬鹿な幻想抱くなんて。

でもそんな馬鹿な夢でも、悪くはなかったよ。
もし私たちが猟兵じゃなかったなら。
もしあなたがオブリビオンではなかったなら。
そんな風に思うくらいには。

猟兵ではない方法であなたを送れたなら
それが最高だったんだろう。
でも私にそんな方法はない。

せめて私の本質に一番近い
騰駝の炎であなたを見送ろう。
浄化すらない、すべてを無にする炎で
旧い時間に『あなた』が還らないように。
二度と『あなた』が骸の海から蘇らないように。


リダン・ムグルエギ
アタシが苦手なラップに参加した理由
それはアナタの歌にリスペクトに値する輝きを感じたから
実際に対峙してそれはよくわかったわ
だから

アタシは今宵アナタをRedone(修復する)
操るわ辛いアナタの五感
ハッピーに消し飛ばしてみせるそのpain
ハッピに仕込んだ見せるそのsignで
キャッチーな頭を冷やしてみせるこの催眠で

ここがアナタのGoddammGoal?
違うでしょここからCurtainCall!
O-blivi ON STAGEのFinale飾るのはBattleじゃないわ
オブリビオンとしてはFailureなButlerがいいの
ここからアナタのFinalLap!

MCの皆
最後に繋げていくわよ!(MSへ無茶ぶり


アノルルイ・ブラエニオン
この歌を、我が友オブリビに捧ぐ。



旧世界最強Rapperオブリビ
語彙力・発想・情熱を完備
世界を照らす熱き篝火
ここに刻むお前への賛美

お前と過ごした時間は甘美
素人同然の俺newbie
お前は真摯に答えた様式美

初めは確かに不備
けど間違いは正せるhuman being
お前が見せた成長は優美

I wanna be
like a オブリビ
俺がこれから過ごす日々
お前との思い出常備

俺達もたらす 有終の美……。



●行動
歌はサウンド・オブ・パワーとして自身と味方を強化。以後は弓での【援護射撃】を【鎧砕き】を狙いつつ行う。
近寄られたり、攻撃目標になったら【ダッシュ】【ジャンプ】で距離を取る


秋稲・霖

…ったく、こんな終わり方嫌すぎんだけど
これ以上暴れられねえように、俺らの手で終わらせねえとな

アイツが強くなったとしても、当たらなけりゃなんてことないっしょ!式神に戦わせるのが俺の戦い方だからな。燃やして溶かしてやれ、相棒!
…けど、ちょーっとぐらいはぶん殴ってやりたかったな
戻らないっつーのは分かってるけど、さ

answerねえのは百も承知
bitter乗り越えてsugaryな感じ?
honor込めた一撃お見舞い

韻は踏まずに普通に倒すって思ってたんだけどなー。楽しかったのが抜けなかった的な?
敵だったのが残念だけど…あんた、最高のクルーだったぜ!


桜庭・英治
短いあいだだったけどお前は最高だったぜ
みんなもそう思うだろ?

だから俺はオーディエンスのみんなに頼みたい
こいつを応援して欲しい
こいつが最後の瞬間までラッパーとしていられるようにな
ついでに教えてやるよ
ラッパーってのは、ステージで応援されてる限り無限に強くなるんだぜ


お前に送るパフォーマンス
ここのグルーヴバージョンアップ
五分五分ぶつかる
本能矜持
鼓舞鼓舞励ませ
ラッパー執事

お前巷で噂の怪人
おかげで猟兵多数の動員
ぶつかるRhyme
ステージはVive
LyricはCrime
Dead or Alive


お前言ったよな
別れが辛くなるって
そんなことなかったよ
お前がお前でなくなる前にお別れだ

あばよ親友
このパンチは手向けだ


壥・灰色
踏み砕かれたマイクの欠片
網解け散るマイクのグリル
あんなに熱く歌ったのに
こんなに強く応じたのに

「ブロー。お前がそこにいるうちに。おれが終わらせてやる」

Hey bro おれは言ったよ
おれの得意は火付けと壊し
そこに否定は一つとしてなし

ばばばば、ばあん!
乱舞する衝撃音、リズムトラックのように跳ねる破裂音!
音は踏み込みの音。鳴る度に加速し近接

おれは拳を強く握る、兄弟を葬送るための拳を

おれは殺すために生まれた
殺す以外に、存在価値の証明の仕方を知らなかった!

けど、
おれは歌ってもいいんだな。
それをお前が教えてくれた。

なあ、またいつか
巡り会えたら、おれとビートを刻んでくれ

放つ拳は衝撃を乗せ
最高速の別れの歌を刻む


雷陣・通
俺の父ちゃん言っていた でも父ちゃん居なくなった
親父の言葉は覚えてる アンタの言葉も覚えてる
ここで介錯 ここで斟酌 ここで全力!
お前はラッパー ノー怪人!
俺はトール ノータリン!
だけど、覚えてるは空手ソウル
おまえ、残ってるラップソウル
耳で聞け、音で聞け、ハートで聞け In my soul

ここがお前の分岐点
ここが俺の分岐点

お前の願いは今聞いた
親父の言葉は前聞いた

「お前のソウル救うため 怪人ソウル打ち砕く」

俺は雷陣! 雷神! 雷刃!
ライジング ライジング ライトニングエッジ!

ユベコの決まったお前のソウル
届いているのか俺のソウル
応えてみろよ執事ソウル!


四軒屋・綴
……アイスがアツくなったから溶けた、道理だな。
そして猟兵はオブリビオンを倒す、これも道理だ。

……行くぞッ!カロリー執事ッッ!!
武装の一斉発射で前線の味方を援護しながら接近ッ!敵の反撃を凌ぎつつ徒手空拳の間合いまで詰めたら【怪力】【グラップリング】【手を繋ぐ】【生命力吸収】で相手と組み合い味方の攻撃を補助出来るよう動きを止めるッ!

拘束を解かれたら距離を取りつつユーベルコード発動ッ!ヒーローらしい技を食らわせてやるッ!

「……『あのFlavor、味わえぬForever、なればこそ刻もうMemory of Villain』……随分と甘かった、嫌いじゃない。」


陽灯乃・赤鴉
まだ言葉は届くのかしら。
出来ることなら最後まで正気を保った貴方と決着を付けたかったものだけど。
ラップバトルなんて初めてやったから上手に出来たかは分からないけれど、楽しかったわ。

今から刻むrhymeが最後の言葉
ここで得た称賛が最強の称号だ
ここで退場、でもこれは明星のように照らす煌々

あなたとのラップバトルをリスペクト
皆の心に切々と。貴方は安心して眠ってろ

駄目ね、アンサーがないと盛り上がらないわ。
そろそろ終わりの時間みたい。

出来る限り全力で貴方を倒しに行くわ。



●決戦
 もうここにいるのは猟兵とオブリビオンだけ。
 会場の観客も、司会も、音楽隊も、既に避難を済ませると、安全な場所からモニターで猟兵たちの安否を心配そうに見ている。
 今モニターに映っているのは、ステージ上で暴れまわるオブリビオンの前に立ちふさがった一人の男。壥・灰色(ゴーストノート・f00067)の姿だった。
「ブロー。お前がそこにいるうちに。おれが終わらせてやる」
「Jaeger……。……グ、ウ、ウアア、ギャアアアアアアアアアア!!」
 暴挙によって踏み砕かれたマイクの欠片、網解け散るマイクのグリル。あんなに熱く歌ったのに、こんなに強く応じたのに、オブリビオンがゴミのように踏みつぶし、ボロボロになった破片はどこまでも無残で、だからこそ灰色はーー。
「Hey bro おれは言ったよ おれの得意は火付けと壊し そこに否定は一つとしてなし」
「なし成し為し梨生し無し……亡し……亡すべし、No.6……! お前に……生きる価値など……ナシ!!」
 言葉を綴り、声に気持ちを乗せる灰色の思いなどに一切興味などない、不愉快だと言った風情で、オブリビオンはただただ愚直に突っ込んでくる。
 技術も思いやりも何もない、本能と破壊衝動だけに囚われた攻撃だ。
 力任せの踏み込みによる轟音を立てながら走り寄ってくるオブリビオンを、灰色はどこまでも静かに、しかし真剣に見つめていた。
「おれは殺すために生まれた 殺す以外に、存在価値の証明の仕方を知らなかった!」
 B-B-B-B-Blam! 灰色がラップを詠み始めたその瞬間、オブリビオンの突撃の音に合わせたような、乱舞する衝撃音が会場に鳴り響く。
 リズムトラックのように跳ねる破裂音を立てているのは、灰色の踏み込みである。ステージの上を一歩、また一歩。
 左の足が地面を蹴って加速したかと思うと、右足の踵がすでに一歩進んだ先の地面を捉え、彼は破裂音を鳴らす度に加速し、加速し、加速し、ーーそして拳を強く握る。
「おれは拳を強く握る、兄弟を葬送るための拳を」
「鼓舞し拳コブシ……! ア、エ、アアア、ウオガアアアアア!」
 それは兄弟を葬送るための拳。敵を殺すのではない、仲間を送るための拳だ!
 込めるのは思い。握りこむのは感情。破裂させるのは伝えたい声。練り上げた魔力は言葉にならない全てと共に回転しながら洗練され、灰色の拳に集まっていく!
「けど、おれは歌ってもいいんだな。 それをお前が教えてくれた。 なあ、またいつか巡り会えたら、おれとビートを刻んでくれ」
 ーー良いに決まってるさ言ったろAsh それがお前のあだ名だろ? 生きてく理由をしっかと刻めよ 持って生まれた鎖なんか捨てて きっとRapはいつだって、刻みたいやつの味方だぜ また会えたならその時は 笑って俺に詠んでくれ。
 ……あれ、変だな、声が……、上手くーー。なあ、俺の声、お前に届いてーー。
「ギイィィィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
 灰色が放つ拳は衝撃を乗せ、最高速の別れの歌を刻む。【壊鍵起動・壱式】。オブリビオンが思い切りブン回す菓子による攻撃をスウェーですり抜けて、彼は仲間に対する哀別の一撃を放ったのだ。
 肺腑のひと呼吸を吐ききって、ひねりを加えながら肩からまっすぐ伸ばされた右拳は、オブリビオンの腹を奇麗に捉えた! 仲間だからこそ、彼の思いを汲むという気概が乗った、灰色なりの答えであった!

 灰色から受けた攻撃の衝撃は著しく、その衝撃を少しでも紛らわそうとオブリビオンは目に付いたマイクスタンドを折り、音響器具に八つ当たりし、ステージさえも壊さんと大量のIceを召喚しては暴れている。
 彼は猟兵たちの姿を目に捉えると、むしろ苛立ちや不快感を増したように一心不乱に突撃を開始した。その姿はまるで、この痛みは猟兵を貶め、殺すことでしかなくならないと妄信しているようだった。
「俺の父ちゃん言っていた でも父ちゃん居なくなった 親父の言葉は覚えてる アンタの言葉も覚えてる ここで介錯 ここで斟酌 ここで全力!」
「尺灼釈借杓爵しゃくシャク……癪ゥ! キキキ、キエ、エエエル、ル、ルルル、ロォォォ……猟兵、ゴトキガァァァァッァァッァァ!!」
 それを止めるべく立ちふさがるのは、雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)。既に理性もなくしてしまった様子のラッパーに向かい、予備のマイクを片手に叫んでいく!
 その言葉は憎むべき敵に投げつけるような言葉ではない。むしろ逆だ。どこか暖かく、優しさすら感じる言葉だ。傷付け、殺し、貶める響きはそこに一切ない。学び、受け入れ、その上で越えるーー。ライバルに向けて言うLyric-Lineのそれだった!
「お前はラッパー ノー怪人! 俺はトール ノータリン! だけど、覚えてるは空手ソウル おまえ、残ってるラップソウル 耳で聞け、音で聞け、ハートで聞け In my soul」
 ここがお前の分岐点、ここが俺の分岐点。通はそのことを心のどこかで理解していたのだろう。目の前の暴走した男を、猟兵の敵、オブリビオンとして倒すのか。それとも、ラッパー仲間であるオブリビとして倒すのか。彼なりに出した答えを乗せて、通の周りに雷気が収束していく!
 お前の願いは今聞いた、親父の言葉は前聞いた。だからこそ、通はウルトラサンダーボルト雷神丸を鞘から抜き放ち、稲光をその刃に集めていく! 月の光を煌々と浴び、蒼と紫の雷電を帯びたその刀を目の前のオブリビオンに向け、彼は叫んだ!
「お前のソウル救うため 怪人ソウル打ち砕く!」
「駄句ダク諾々濁だく……砕く、砕く、砕く、砕くゥゥゥ……! ギアアアア!!」
 通が上段に刀を構えるのと、怪人が全身をIceに変え、通を捩じり殺そうとして腕を伸ばしたのは、ほとんど同じタイミングのことであった。
 右足を踏み込むと同時に、天から地に向けて落ちる雷のように烈しい通の一閃が、オブリビオンの胸を斬り裂いて焦がしていく! 灰色のボディブローが与えた衝撃の差で、通はオブリビオンに打ち勝ったのだ!
「俺は雷陣! 雷神! 雷刃! ライジング ライジング ライトニングエッジ! ユベコの決まったお前のソウル 届いているのか俺のソウル 応えてみろよ執事ソウル!!」
 ーー聞こえているぜお前の鋭刃 荒いが筋の通った初陣 勿体ねえぜこんな怪人に 男を売るやつの多いこと 恩を売られちゃ返したいんだが もはや俺の言葉は形を得ることーー。
「Thu……guaaaaaaaaaaaaaaa!!」
 オブリビオンの胸に、灼けるような熱い衝撃が走る。灰色の拳と、通の刃。彼らの言葉が突き刺さって、一瞬オブリビオンは懐かしさを求めるような色をその目に映す!
 しかし、まだ足りない! 彼はまだ暴れたままだ! 彼の言葉が聞こえることは、もう二度と無いのだろうかーー!

「……アイスがアツくなったから溶けた、道理だな。そして猟兵はオブリビオンを倒す、これも道理だ」
 通の繰り出す上段からの斬り下ろし一閃。それはオブリビオンの心中を一息に切断し、彼に確実にダメージを与えていく。通の一撃はそれだけに留まらず、足元を崩してはオブリビオンの足元を不安定にさせた。
 常であれば敵も軽いフットワークと言葉選びで「これくらいなんでもない」と返しそうなものだが、現在の敵はーー。
「G……GGggggggagaaaaagagaggagagaaa!!」
 ーー彼の口から漏れ出る音に、もはや意味はほとんどない。重ねる言の葉も、織りなす意味も、その全てが無くなってしまった。恐らく身体中を襲う激痛で、思考すらまともに行えていないのだろう。
 その証拠に、敵は先ほどから通の作り出した悪い足場に引っかかっては姿勢を勝手に崩している。もはやーー。
 四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)はオブリビオンのその様子を目にしながら、しかし、それでも武器を構える。それが。それこそが、望みならばーー! 敵としてではなく、友として答えてやらねば! ヒーローとしての名が廃る!
「……行くぞッ!カロリー執事ッッ!!」
「GYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaAAAAAAAAAA!!!!」
 しかし、オブリビオンも理性を失ったとはいえ何もせずにいるわけではない。彼は両手を高く天に掲げると、ステージ上部に超々巨大なVanillaのIceエネルギーを作り出していく!
 このまま振り下ろされてはステージごと全壊の危機にも成りかねないその攻撃を見て、猟兵たちは的確に体を動かしていく。巨大なカロリーが相手なら、そもそも行動の起点を潰してやるまでだ!
 綴は自身の持つ武装の一斉発射で、至近距離に位置する通と灰色が一度距離を取るのを援護しながら敵に接近していく!
 黒煙連射ケムルシューター、ジョークアームズからの熱炭投射アッツィーコウル、二挺の蒸射煙斬モックズブッパ。綴の織りなす全力射撃は、まるで彼の抱く感情の嵐。
 大量の黒煙が、熱気と伴った石炭が、電子精霊を宿したハンドライフルの銃弾が。綴の思いと、覚悟を載せてオブリビオンの退路を塞いでいく!
「蛇邪車者ジャ社……じゃ、邪魔、邪、魔、邪魔ァァァァッァァッァァ!! ナ、んで、オ、おれのジャマ、すんだよよォォォォアアアア!!」
 オブリビオンは癇癪を起したように叫び、綴の弾丸をその身に受けながらも、掲げた両手にエネルギーを貯めることを止めない!
 応酬もなく、ただただ一撃で決めるつもりだ! ーーしかし、それを見逃すような猟兵たちではない! 先ほどまでは延々と言葉の応酬をやっていたのだ、オブリビオンのリズムなら、彼らはもう人一倍熟知している!
「いまだ! 独りよがりな攻撃じゃ、俺達には通じねえってこと、教えてやるぜ!」
「今のお前は生きてるんじゃない。息をしてるだけだ。……今から、お前を殴る。受け取りな、ブロー」
 綴の弾幕が途切れた頃に走りこんだのは通と灰色の二人! 彼らはそれぞれ手刀と拳打の構えを取ると、オブリビオンに出来た隙に捩じりこむように、敵の呼吸の隙に合わせて攻撃を放つ!
「……OKや、バトラー。せめて、アンタの願いにこのアンサーを返す……!本当は複数相手の技やけど……敢えて、これで!」
 オブリビオンの隙を綴がこじ開け、通と灰色がねじ込んだ。そこにさらに言葉を重ね、熱を重ねるのはメルノ・ネッケル(火器狐・f09332)! 彼らの息は当然のように合っている! 当然だ! 同じ会場で、同じマイクで! ラップを詠んだ仲なのだから!
「今から降るは銃弾熱線、手向けのRhymeの雨あられ! 降り注げFlow、『狐の嫁入り』!」
 メルノは苦し紛れに放たれる、Iceの薙ぎ払いを見切りながらバックステップで回避すると、ひざを曲げて腰を落とし、一度手を地面についてーー! そして、彼女は空高く跳んだのだ!
「うちが始めるこの一巡、撃ち方始めるその一瞬! Take my turn & Turning Revolver! Riflingから放てRhyming!」
 ーー上手くなってるぜお前の語順 洗練されてまさに至純 見事な唄と銃でのCross over どうやらいよいよTurn-over こりゃ避けきれねえだろ最高にClever 俺の意識はここでGame-Over……。
「ナンデ!!! オレハァァア!! オブリビオンナンダヨォォォォォォォアアアアアアアアアア!!」
 R&Bなんて、もう旧聞。そう言われたからこそ、メルノはオブリビオンに、彼に、この銃での攻撃を届けんとす。空中で縦に一回転した彼女は、アサルトリボルバーの銃弾も込みでオブリビオンに伝えきれないほどの言葉と銃弾の雨嵐を放つ! 【狐の嫁入り】だ!
 避けきれないほど厚い弾幕、涙が出そうなほどにアツい言葉たち! その攻撃を受けたオブリビオンは、内からの痛みと外からの痛みに耐えるように、自分の中の無意識の言葉を口にする。してしまう。
「……『あのFlavor、味わえぬForever、なればこそ刻もうMemory of Villain』……随分と甘かった、嫌いじゃない。……だから。だからこそッ!!」
  ーーやっぱお前はHave a Distinctive Flavor そろそろお前にWith Favor 積んできたんだろEndeavor 応、刻め、生きろ、名を馳せろ。 そうしてくれれば、俺はお前らのどこにでも 言葉の端に、いつだってーー。
「うちらもアンタもFeeling good! 宇宙の数多もHeeling! 受けきれるかこのHeatin'Groove? 受け取れ、うちのFinish Move!」
 メルノの放つ【狐の嫁入り】の弾幕に合わせるように、綴も【炉勁列車】を発動して敵に突っ込んでいく! メルノを信頼し、弾幕の中を駆け抜けると、綴はオブリビオンの掲げた両手を降ろしにかかった!
 敵のエネルギー弾が放たれるのを防ぐつもりだ! それを察知した灰色は通の作り出した足場の脆くなっている部分を狙い、衝拳でオブリビオンの足元を破壊する! 足元を破壊され、思わずよろけたオブリビオンの腕を綴がガッチリとロックした! 羽交い絞めの形である!
「オレハァァア!! 一人じゃ……一人ジャアアアアアアアアア!!」
 【炉勁列車】は、両腕に装着した蒸気機関車型装備をオブリビオンに発車し、遠隔操作で命中させる技! つまり綴の操作はいらないのだ!
 ガッチリとグラップリングされて動けないオブリビオンに、メルノと綴の総攻撃が向かっていく!
「『狐の嫁入り』……うちの全て、この銃撃とRhymeに乗せて、届けぇっ!」
「ヒーローらしい技を食らわせてやるッ! 炉・勁・列・車ッ!!!」
「ナンデ……!! フザケンナアアアアアアアア!!」
 四人の猟兵たちが、オブリビオンの体制を崩し、エネルギーの集約を阻止し、そして言葉と共にダメージを与えていく。ダメージが与えられていくごとに彼の身体は傷付いていくが、同時に言葉も少しずつ取り戻していくようだ。怒りに染まってしまった彼を、少しでも早くーー。
 その攻撃は、どことなく切なく、寂しく、そして、優しく。どことなく、甘い香りがしたという。

「執事……!アイツ、ラップを愛する善良な心と怪人としての悪しき心の狭間で、苦しんでいる……!」
「執事、貴方……。忘れていたわ。貴方がオブリビオンであったこと。だから、って訳じゃ無いけれど」
「オレハ……ゲエエエッ! ゴゥオ……ガハァァッ! 猟兵……! オマエラガ……ニクイ! 憎ィ……ィィィィィィ……! 俺ニナイ物ヲ! 未来ヲ持ッテイルオ前ラガアアアアァ!」
 しかし、オブリビオンはまだ倒れない。ダメージを与えられたことによってさらに苛立ち、見境を無くしてしまっているかのよう。
 ダメージは確実に敵の身体に蓄積している。そのはずなのに、オブリビオンは怯まず臆さず、自分の傷など顧みず。その姿はまるで、猟兵たちから受け取った思いの返し方が分からず駄々をこねる子供のようだった。
「魂(ソウル)通じた 仲間の願い 付き合いましょう 最期まで」
「執事!  君、俺のラップのライム、一言一言を大事にして噛み締めて、真摯にまっすぐなラップで返してくれたよな?  あれ、とってもとっても嬉しかったぞ!」
 ーー嘘だ、憎いだなんてーー。俺は、ただ、これからもお前たちと一緒にラップを刻んでいたかったと、そう思っただけなのにーー。
「Gyyyyy……ウルセエ! ウルッセエエエ!! 未来ニ進メル、オ前ラニ!! 過去ニトドマリツヅケル、オレノ、ナニガ……! 今ガ楽シクッタッテ……先ニ進ムオ前ラハ、イツカ俺ノコトヲ忘レチマウカラ! ……AA……!! AAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
 思いは慟哭に変わり、意味は形を成さずステージの空気に溶けて消える。オブリビオンはカチコチに凍った頑強なIceの鎧を纏ったような姿に変身すると、猟兵たちに危害を成すべく走り出した。
 彼の狙いは荒谷・つかさ(護剣銀風・f02032)。つかさはオブリビオンに自身の持つ大剣を構え、全身を、心を、本音を包み込んで隠してしまったオブリビオンに相対する!
「木は火を生みて 火は土を生み 土は金生み 金は水生む そして終いに 水は木生みて 星の理 ここにいざ!」
「ラップを愛する者は皆友達、ラップを愛する心を持つ者同士の間に、壁なんて一つもない! ラッパーには善も悪もない、皆平等なんだって、君は俺たち猟兵にラップを通して教えてくれたのだぞ!」
「ラッパーノ話ダ! ソレハヨォ! チクショウ、チクショウ……! ドコマデイッテモ、俺ハオブリビオンダロウガ!! テメエラトハ、……チガウ存在ナンダヨオオオオオオオオ!!」
 全身をIceの鎧に包んだオブリビオンの身体の動きが先ほどよりも鈍くなっていることを察知したつかさとヴァーリャは、あえて超々至近距離での決闘を敵に挑む!
 まず突っ込むのはヴァーリャだ。彼女はスノードームとメチェーリの二振りに氷の魔力を纏わせ、更に手数を多くしてオブリビオンの場所を問わず連続で攻撃を行っていく!
 メチェーリの刃は、まるで先ほどのヴァーリャのラップのように真っ直ぐ、そして連続で回転しながらオブリビオンの纏う鎧を少しずつ剥がしていく! どこまでもひたむきなその刃は、ヴァーリャ自身を表しているかのようだった!
「ウゼエ……ンダヨォッ!」
 ヴァーリャを振り払おうとして大きく腕に纏わせたIceを振り回すオブリビオン。だが、やはりその動きは先ほどに比べ明らかに緩慢だ! ヴァーリャの冷気による効果も少なからずあるのだろう!
 この期を逃す他はないと、つかさは敵の右拳による拳打を最小限の動きで避け、胴薙ぎ、袈裟斬りの二連攻撃。しかし、オブリビオンも堅牢なIceの鎧に守られているために怯まない。すかさず返しで左足からの蹴りを放とうとするが、つかさは更に踏み込むとオブリビオンの懐に入り、すんでの所で蹴りを避ける。
 そして半歩下がりながらの斬り上げ、斬り下ろし、もう一度踏み込んで鋭角な角度で入った逆風。都々逸のリズムを口ずさみ剣戟を繰り出しながら、オブリビオンの身体に五芒星の陣を刻む! そして、つかさのユーベルコード、【五行同期・精霊降臨術】が発動した!
「五行同期の 精霊降臨! 森羅万象 我の手に!」
「例えお前がどう思っていたとしても、俺に取ってお前はもう『友達』だ! その『友達』の願い……叶えてやらない訳にはいくまい!」
「効カネエエエエエ!! 意味モネエエエエエエ!! ナンデ、ナンデ……ッ! 友達ダナンテ、ドウシヨウモナイオブリビオンノ、俺ニ……ッ、モウヤメロォ! 俺ニ、ヨリツクナァアァァァァアァ!!」
 自身の強化された身体能力を活かして、更に手数を稼がんとするつかさ!
 剣舞の最後に置き土産と、彼女はまだオブリビオンの攻撃を至近距離で見切りながら隙を狙う! 狙うは剣閃で描いた五芒星の中心、オブリビオンの鎧の胸部分!
 敵の放つボディブロー。刃でいなして、まだ待つ。速度を上げた敵の前蹴り。ステップでオブリビオンの体の内側に入り、難を逃れる。まだ待つ。そして、オブリビオンが焦れて力任せのボクサーパンチを放とうとしたーー今だッ!
 つかさは腰を引いて腕をたたむと、肩から肘へ、肘から手頸へ、一切の矛盾も手心もない、純然たる力を身体から刀身へまっすぐ伝えていく! そして無理やり突きをねじ込むと、オブリビオンの堅牢な鎧にヒビが入った!
「命果てても 想いは死なず 我らが魂 共に在り 祭り(フェス)の余熱に 包まれて ゆるりと眠れ 我が強敵(とも)よ」
「よそ見なんてするな、俺を見ろ! お前の友達は、ここでこうしてお前を見てるんだ!!」
 彼女たちの言葉を受けてか、つかさの攻撃に怯んだのか、攻撃の手を止め、目の前の猟兵すらも直視できず、ただただ狼狽えるオブリビオン。
 そこにヴァーリャもタイミングを合わせて自分なりの全力をブチ込んでいく! 靴裏に氷のブレードを精製し、踵落としの要領でオブリビオンの頭にかかとのブレードを打ち込んだ! 彼女のユーベルコード、【亡き花嫁の嘆き】である!
 そしてそのままオブリビオンの頭部に、ダイヤモンドダストのような冷気を浴びせるヴァーリャ! それは彼女なりの頭を冷やせというメッセージなのだろうか!
 ーー大盛況だなこの夜は オブリビの俺には勿体ねえ 所詮過去の遺物の俺に お前らは夢を見せてくれた 一夜限りの夢の中 俺はめちゃくちゃ楽しかったぜーー。
「俺ノ!! 俺ノアタマニ!! 俺ノココロニ!! フミコムンジャネエエエエエエエエエエエエエ!! 希望ヲモッタトシテモ……ッ! ……俺ハ! オブリビオンダカラ……ッ! 俺、ナンカジャ……」
 猟兵たちの働きのおかげか、先ほどよりもオブリビオンは少しだけ言葉を介し、意味のあることを話し始めるようになった。
 夜はまだまだこれからだ。まだ、この夜を終わらせるわけにはいかない。ステージの上でのダンスパーティは、終幕のベルを知らずに盛り上がり続ける。今は悲劇の唄だって、ハッピーエンドにできるはずなんだ!

「我は怪人としてではなく、己の性に抗う一人のRapperとして、敬意をもってお前を倒そう」
「マイラったら、初めてラップってやってみたけど、面白いのね。何か言ったら、それに帰ってくる言葉、中々心地よかったの」
 シャレム・アルカード(小さな暴君・f09897)と煌希・舞楽(ヴィクトリカチャイルド・f08029)もまた、つかさと同じくオブリビオンに相対する。マイクはなく、音響機材も足場も壊れ、既にそこがステージでなくても。
 観客たちが遠くに行ってしまったとしても、声を聞かせ合うのが演者しかいないとしても! 夜の支配者であるシャレムの雄姿を、シャレムの心意気を! 夜空に浮かんだ星と月はハッキリと見ていた! 無垢な挑戦者だった舞楽の優しさを、舞楽の許しを! モニター越しに観客と司会達はしっかと見ていた!
 つかさの剣舞に対抗しようと無理に体をうならせるオブリビオン! すでに胸部分に入ったヒビ以外にも、彼の纏った鎧は動くたびにどこかが軋み、堅いはずなのに、同じくらいのもろさを感じさせていた!
「見事なanswer 認めよう我がloser 故に見ていられないその醜態 止めて見せようshooting time」
「嫌ナラ二度ト見ルンじゃネエ! 俺ガ嫌イナこの俺ヲ! オブリビオンのこノ俺ヲ! 所詮俺ハオブリビオンサ、仲間ニなるなンテデキヤシネエ!!!」
 オブリビオンが心からの思いを隠さず叫ぶ度に、纏った鎧にヒビが入る。それは彼の発する声があまりにも大きいからか、それとも澱んだ思いを吐き出すことで、自らの壁を壊しているからか。
 シャレムはその様子の彼を見て、少しだけ何か思うような表情を見せた。しかし、それもまた一瞬のこと。彼は武装収容棺『ヘカトンケイル』をオブリビオンに向け、内蔵武装で砲撃を行い、敵の行動を牽制していく。
 しかし、頑強な鎧を纏ったオブリビオンは彼の攻撃を受けながらも無理に突撃を開始した! 蒸気式ガトリングガン『イチイバル』の銃弾の雨を腕の払いで弾き、多連装ミサイルランチャー『ヒュドラ』のホーミング機能付き小型ミサイルは更にIceを召喚して投げつけ、相殺していく!
 猟兵からの攻撃を受け続け、しかし鎧は中々傷付かない! それほどに防御力が高いのだろう! だが、シャレムも怯まない! 牽制の効果がさほど無いと悟るや、彼は88mm内蔵砲『タロス』の一撃を放つと共に前進を開始し、同時にLyric-Lineを刻み始めた!
 舞楽もシャレムの狙いを察知して、彼の攻撃に合わせて“Unpredictable”のビームを放つ! その時である!
「大丈夫、ここでお前が刻んだライムはちゃんと心に残ってるの。安心してお逝きなさい。ん……いえ、駄目ね、化物のママで終わるなんて、こんなに楽しいお祭りのあとに悲しいのは寂しいものね」
「見よ上がり続けるこのvoltage 我らとお前で作り上げたこのstage soul震わしたお前のrapに 今会場を震わす心からのclap 何も感じないならばもはやお前はただのscrap」
「……うる……セエエエエエエエエ!! 感じない訳ネエ!! 何も!! 感じないハズが無いダロウガ!!! でも駄目ナンダ……ッ! 破壊したくねエのに! 体ガ、止まっテくれネエ……ッ!」
 オブリビオンが大きく怯んで足をもつれさせ、鎧に入っていた胸のヒビがさらに大きくなったのは、喰らったものを一撃で奈落へ誘うタロスの一撃を受けたからか、それともシャレムの言葉を耳にしたからか。それはもう、誰にも分かることではなかった。
 だが、オブリビオンの隙を見逃す猟兵ではない! シャレムは加速推進装置『イダテン』で急加速し、オブリビオンへと距離を詰めると、ユーベルコード【血統覚醒】を発動する!
 そしてそのまま体勢を崩したオブリビオンの襟首をガッチリと掴むと、強化した自身の膂力とイダテンのブースターを全速でブン回すことで、オブリビオンの凝り固まったIceを地に叩きつけた! 
「我が認めたのだ! 意地を見せろよ! Rhymeを踏み、Rapを詠め! 皆の心にお前のsoulを刻み付けて見せよ!」
 シャレムに顔面を叩きつけられても、なおオブリビオンは破壊衝動に身を浸している! 無理に腕を振り回すと、ステージを叩きつけた反動を利用して飛び上がり、ステージに足を付けて猟兵をブン殴ろうと走ってくる! だが、そのオブリビオンに向けて次に放たれるのは、攻撃ではない、舞楽の光だった!
「最後の最後、お前の残滓がこの世から消えるその前に、大好きなRuppを歌うだけの力をあげるの!」
 その希望の名は、その切り札の名は! 【《才能開花+》】! 本来は味方に使う技なのだろう、秘めた才能を覚醒させ、己の手番を譲る事で攻撃を行う舞楽のCodeだ!
 彼女の杖に集まっていく光は煌めく言葉たちの残滓! 会場に散ってバラけた思いのカケラを、舞楽はより集めては一つの光にしてオブリビオンに届ける!
 ーー言ッ……て、くれるゼ……! こちとらもう、自分の意思だけじゃ、意味のない叫びを抑えるので精いっぱいだってのによ!
 ……でも、まあ…… せっかく、俺なんかのために言葉を送ってくれやがった馬鹿どものために……! 上等だ……やッてやらア! オブリビオンの部分なんぞに負けるかよ! 見せてやるぜ、ラッパーの意地!!
「オ、レは生来破カイノ傀儡……! 今生をモッテ終わリノ身! 当来の到来は期待でキず、この身の衝動が大きラい! 向来世話になッタな兄弟! さア! 早く殺せヨこの俺ヲ! 心マデ、オブリビオン「だけ」になる前に!! ……ウアアアアア!!!」
 その時、奇跡が起こった。思いを乗せた灰色の拳が、通の踏み込みが、綴とメルノの一斉攻撃が。
 ヴァーリャのあったまった頭を冷やす冷気が、つかさの魔を払うような斬り裂きが、シャレムの放ったオブリビオンへ叩きつける一撃が、才能を活かす舞楽のユーベルコードが! そして何よりも、彼らの声が!
 何が直接的な原因となって、執事の中のオブリビオンの因子を弱めたのか、心の鎧の扉を開けたのか、それは分からない。
 しかし、現にオブリビオンはもう一度言葉を取り返すことができたのだ! 湧き上がるような怒りはまだある。抑えられない破壊衝動は今も八つ当たりのように噴出している。だが、それでも。
 執事のオブリビオンは、ここにもう一度Rapperとして立ち上がった。今もまだ暴力の化身ではあるが、言葉は、言葉だけは取り戻したのだ!

「拍手を。 実に、実に良い言葉の応酬だった」
 そこに立つのは髑髏を模したヒーローマスク。その声は紳士的で、低く、しかし不思議とよく通る。オブリビオンに向けて伝えられるその言葉は、もう観客もいない静かなステージの上でよく響いた。
「だからこそ私は悲しい。ここからは力の応酬だ。故に――いつかは終わりが来る。生きていれば言葉は尽きないが、死んでしまえば一方通行だ」
 その声の主はスカル・ソロモン(目覚める本能・f04239)。彼は無駄な気負いもなく、殺意もなく、ただそこにいる。その声から感じとれるのは他者へのリスペクトと、そして別れへの哀しみ。
 彼は先ほどまでのオブリビオンの暴れる姿を見ても、漆黒のヒーロースーツ、スカルコートに袖を通し、オブリビオンに声を投げかけるだけ。そしてそれで十分だという顔をしている。何故なら、目の前のオブリビオンがラッパーだと、彼は信じているからだ。
「だからそうなる前に、私は言葉を投げよう。まだ君に返す言葉があると信じて。どうか、ラッパーとして君が死ねますように」
「結局、オブリビオンはオブリビオンかぁ。いつも通り始末しちゃおっか」
「オウ、そうダぜ……さっさと殺しな。俺ハ、お前らのことを好キニなっチまッタ……。ダカら、ああ、アアアアアアアアアアアアア!!」
 星鏡・べりる(Astrograph・f12817)もまた、スカルと同じくこのステージに残ったCandyの一人。オブリビオンは彼女を見て、すこしだけ笑う。
 しかし、執事はやはり自分の中の破壊衝動を抑えきれていない様子。猟兵のことを思い、オブリビオンである自分の身を思うたびに、彼の身体には激痛が走り、脳みそは一つのことしか考えられなくなる。
 猟兵を破壊してやる、と。彼の一オブリビオンである心が、一ラッパーとしての心を蝕む。相反する信条が、彼を傷付けているのだ。
「…………不思議だなぁ。こんなのいつもと変わらないのに、やりづらいや……。もっとさぁ、オブリビオンって、違うじゃんね」
「グウウウ、ギ、ギギ、ゲ、……ヘッ……物好キなヤツらだゼ、ホントうに……。猟兵ドモは、これだから……! 違、ワネえさ……。俺はオブリビオンなンダから……! しっカリ避けロ、よ……!!! Gyyyaaaaaaaaaaaaaa!!」
 執事はまたべりるたちに意味のある言葉をわずかに口にすると、両手に出来た新しいCandyを振り被ると、自分の腕へかかる負担さえも気付いていないかのように縦横無尽に振り回す。何もない空間を彼のCandyが裂く度に、彼の腕からはみしり、という痛ましい音が響く。
「さあ どうやら出番のようだ 出遅れたけれど 失礼するよ 君の言葉 もう聞けないのか? 実に残念だ さっきまでの威勢 一体全体 どこいったんだい」
「うウウ……うルセえ奴ばかり現れル夜だ こっチも厳しい身の上ダけドな 少しくライは返スぜ答礼 均斉もクソもねエンだよ 音勢も取れネエこンナ体じゃ 恨めシイ限りサ己の生まれェェェ……! EEEEEEEEEEEEeeeeeeeeeeeeaaaaaaaaaaaa!!」
 その攻撃を真正面から挑発交じりのラップで誘導し、自分へと矛先を向けようとするのはスカルだ。執事が常であれば冷静にラップを返すところだが、今の彼はオブリビオンとしての破壊衝動をコントロールできていない。
 何とかかんとか、という体で暴れながらスカルへの返しを行うと、次の瞬間にはその口から叫び声をあげて彼へと殴りかかっていく。まるでラップバトルに負けたラッパーが場外で暴力に頼るかのごとく、その行動には哀しいものがあった。
「そんな 乱暴な 吠えた叫びじゃ 一切合切 『私には、届かない』」
「黙レ……叫びたくて叫んでルンじゃネエよ……! 自分の生マレが嫌イで、自分を許セナくテ、愛セネエから……! だから、叫んデルんだ……ッ! ちくしょおッ! 俺だって! 俺だってなアアアアア!!」
 そしてスカルが発動するのは、ユーベルコード【魔王特権】。『私には、届かない』という言葉を受けた執事は、その両手から狂気の象徴たる凶器を奇麗に全て失ってしまう。スカルの放った言葉が、執事のユーベルコードを消し去ったのだ!
 執事に取って、「乱暴な叫び」じゃ「届かない」と言われるのは、極めてクリティカルな言葉だったのだろう。スカルは一瞬で構えを取ると、武器も持たずにただただ腕を振り回して突撃するオブリビオンの鎧に更に攻撃を重ねていく!
 鉄塊剣。無骨な鉄塊のようなその巨大剣は、スカルなりの感情を乗せて空間をひた走る。エンディングをエンチャントしたその剣は、悲劇を終わらせるための一閃を空に描いて執事の纏う鎧を斬り裂いていく!
「チィィィィィ……!! 構やしネエダロウが! たかがオブリビオン一人……! 斬り捨てて、ソレで忘れロよ! ナンで、なンで! そンナニ優しいんだ! そんなに優しくされたって……こッチは辛いンだよ! お前ラアアアアアアア!!」
 スカルにはもはや攻撃は当たらない。たとえ放ったとしても、武器を出した瞬間にまた消されてしまう。執事が紅く血走った理性で考えるのは、猟兵をどう殺すかの算段だ。自分の中のオブリビオンという生まれを否定し、憎めば憎むほど、彼は殺意と憎悪に心を浸していく。
 次に執事が狙うのはべりるだ。もう一度手元に凶器に成り得るCandyを召喚すると、ただまっすぐに走りこんで、ただまっすぐに振り下ろした。
 べりるは子供の我が儘のようなその攻撃を、自身の機械鏡《ヤタ》で真っ正面から受け止める。まるでラップバトルの時のように、お互いの言葉をまっすぐに受け止めたように。そしてその隙に、べりるは【竜騰虎闘】を発動する。
「ナ、なニヲ……ッ! 危ねエぜ、離レろ……ッ! ハヤく、攻撃シロよ、俺を……ッ!」
 彼女が取った行動は、鉄火鳴り響く戦場において似つかわしくないとも取れる行動。即ち、抱擁であった。彼女の【竜騰虎闘】は、確かに抱擁でも発動可能。
 しかし、ユーベルコードの発動条件や、そんなことは一切関係なく、その抱擁は感情にあふれていた。ユーベルコード故に避けられない爆発は最小限に、優しく、強く、ギュッと、ギューッと執事を抱擁するべりる。
「はい、これでキミと私は竜気で繋がれました。少し私と同じ動きをしてもらうよ」
 彼女の行動に詰まった感情故にか、それともごく最小の爆発故にか、執事のオブリビの纏っている鎧にまた一つひびが入っていく。
 余りに咄嗟な出来事に一瞬動きを止めた執事を、互いの意思で引き寄せる事ができる竜気でべりるは操る。彼女が彼に望むのは、自分と全く同じ行動。
「clap hands!Hands up! せーので、アーイ🙌 keep it real‼my men‼」
「……Good-job UR Show-Up お前らのおかげで少し見付けたぜ「I」🙌 俺の心はPick-Up Now We got so LET'S Start-up Yo! ……ヘッ……、ガハッ、ゴホ……でも、やっぱダメかもなア……もう……」
 武器を捨てて手拍子を一つ。そして手を上に上げて、お互いに手を伸ばし、ハイタッチ。そして互いに下がりながら、ハンドサインと視線で足りない言葉を補い合う。
 痛みに耐えて一説を唄いきった彼は、べりるのユーベルコードが切れると、やはり途端に苦しそうな表情に戻り、体を振り回しては怒りを止めどなく発散させる方法を探している。
「正真正銘、全部を見せてくれたキミに私からのお礼だよ。OblivionじゃなくてRapperとして骸の海へ還りなよ……――とっても、熱いステージだったよ」
「意地があるだろ 男の子 心無くすのは もってのほか まだまだ間に合う 大往生」
 べりるとスカルが最後に呟いた言葉は、猟兵としての言葉だったのか、友人に対しての言葉だったのか。それは各々が判断すれば良いことだった。

●【 Jaeger SIX-SIXth With O-blivi ON STAGE 】
 スカルとべりるが交戦しているのを見て、リンネ・カーネーション(爆走猫車・f08650)はゆっくりと現れる。
 怒りに身を任せ、破壊衝動のままに暴れまわる執事を見て、彼女は何を思ったのだろうか。すでにマイクはないが、オブリビオンに声を届けるだけなら自分の声だけで事足りる。
 リンネは一つだけ深く息を吸うと、思い切り自分の感情をこめて、もう一度ラップを詠み始めた! 観客は目の前にいるオブリビオンただ一人! そして、それだけで充分だ!
「オブリビオンじゃなくラッパーとしてだ? オブリビオンだろうとラッパーだろうが! 死にたがりの介錯なんてごめんだね 知ったかぶりの解釈なんてごまんとあるさ! てめぇの生き様片手落ちか? てめぇの生き方語らずオチか?」
「……ッッッッッ?! ち……くシょォ……! 仕方ねエだろうが……! 自分の嫌いな部分が、自分を苦しめて仕方ねエのさ! 「仕方ねェ」だろウが! 結局オブリビオンじゃ、最後までラッパーなンてやってられねエんだよ! 見ろよ、こうしてなにもかも破壊しちまって、それでーー!」
 リンネのどこまでもまっすぐで自分に正直なラップが、執事に刺さる、刺さる、刺さりまくる! 自分が否定していたオブリビオンの部分を認めて、しかもその上でラッパーとしてもやれ? いい加減だ、どこまでも傲慢で気儘な欲張りすぎる意見だ!
 ーーでも、そんなこと。思ってもみなかったーー。そんな表情を見せたオブリビオンの鎧は、もう今にも壊れてしまいそうなほどにボロボロだ。そこに、更に彼に声をかける人物が現れる!
「待ちな!!!!! 『お前はラッパーだろ!! それなら俺たちは友達だろ!!!』 がなれ『Immortal.』 共感してみろよ!!!!」
「ブバハハハ!! 倒すゥ??? まァさか!!!! 一回救ったヤツをもう一回なンてよォ 出来ねェワケがねェ〜〜〜のさ」
 リンネの後ろからさらにステージに上がってきたのは、松本・るり遥(不正解問答・f00727)とジン・エラー(救いあり・f08098)の二人組。
 彼らもまた、他の猟兵と同じくオブリビオンをラッパーとして見てくれている。そして、あろうことか彼ら三人は、全員が全員オブリビオンを攻撃するつもりが「ない」らしいのだ!
「意味……分かんねェ! もう……もう良イだろうが! 攻撃しテ来いよ! 俺がラップを詠めなくったッて構わねエだろうが! オブリビオンラッパーなんざ、端ッから土台無理な話だったんだよ……ッ! 結局、こうして戦い合うことになっちまうンだからよォ!!!!」
 オブリビオンの声はどこまでも悲痛で、暗く、諦めに満ちていた。結局自分が嫌いで、好きになれなくて、オブリビオンだから、だから、だから、だから……。しかし、しかし、しかし! 「そんなこと」を気にしないようなヤツらがいる!
「情けないこと言ってんじゃないよ! 情け容赦無く言ってやるよ! あんたが何を泣き言言おうが、あたしたちゃ泣く子も黙るJaeger! ぶっ倒すのは端から前提 ぶっ飛ばすさアクセル全開で!」
 リンネは、最初からオブリビオンを倒すのは前提だとラップを詠む。当然だ、それこそが猟兵の仕事なのだから。どこまで行っても、結末は変わらない。「結末」だけは、決して変えられない。だから。だからこそ、伝えたいことがある!
「オイ、るり…… いいや、MC.遥! 持ってンだろ? 片方貸せよお前のイヤフォン あァ?? 二人で救うからに決まってンだろ 一番やべェーの、よろしくゥ!」
「無くすなよ、ジン 流すは感情を叩き付ける騒音 これが俺たちの出逢い 脳髄に流し込む、感情の増大」
 きっとるり遥もジンも、最終的にオブリビオンとは離れ離れになることは分かっているだろう。当然だ、それを分かっていない猟兵はいない。しかし、彼らがイヤフォンを共有して、同じリズムに乗り、オブリビオンに言葉を送るのはーー!
 きっと、「結論が変えられなくても、その過程を全力で楽しむため」! そして、それは恐らく他の猟兵たちも全員同じ思いのはずだ! オブリビオンに攻撃を送った猟兵も、言葉を送った猟兵も! リスペクトを持たない猟兵はここに一人もいなかったはずだ!
「立てよ最後のStageだ 歌えよ最高のStardomで! Lime刻んで掛かってきな、OblivionRapper! Lyric効かせて行ってきなJaegerRapper!」
「オレハ……!! 俺はァ!! クソがァァァァ!! 「俺」は!! 「OblivionRapper」で良いんだな!? 上等だぜババア! もう迷わねえ、俺は俺だ! 俺はオブリビオンで、そんでもってラッパーだァァ!」
 その時、リンネの言葉が執事に届いた! 自分と周りの繋がりを否定するように纏っていた強固な鎧はバラバラに砕け、あとに残ったのは独りのオブリビだけ! 猟兵たちが与えてきたダメージが、ようやく形となって現れたのだ!
 オブリビオンとして暴れることと、ラッパーとしてライムを刻むこと! その二つは決して相反しない! それに気付いた時、執事のオブリビは完全に立ち直った! 鎧は失い、もう二度と変身できないが、それで良い! 暴れるにもやり方がある、問題はその破壊衝動を何に向けるかだ!
「分かったぜババア! 俺はオブリビオンだ、そこは変えられねえ! だからこそ! 尊敬してるお前たちに向けて、俺は攻撃をぶっ放す! そしてその上で! 俺はラップも刻んでやるぜ! 俺を超えろ、猟兵! 未来に進め、JaegerRapper! Jaegerとして、Rapperとして、俺の暴力を! 俺のラップを! 全部ひっくるめて、持っていきやがれェェェ!!」
 JaegerRapperに相対する目覚めた怪人は、もはやOblivionでもRapperでもない! 暴れ、詠み、挑み、競う、OblivionRapperだ!
「怪人にマイクを突き付ける 血反吐吐いても[独白]してやる [このままじゃ終われねえだろPosse]!?」
「マイクがあンならまァだ終わりじゃァねェーよなァ!! 救ってやるから返してみろよ!」
 リンネの放つ【生まれながらの光】が、周りのラッパー達の疲労を掻き消していく!
 るり遥の思いと魔力を込めた【Immortals.】が、彼の渇望の限りを込めた歌詞に共感する全ての存在を癒していく!
 ジンが体から放出する光は、全てを救うという傲慢・驕傲・不遜を聖者の輝きとして昇華させたもの! 彼のユーベルコード、【オレの救い】だ!
 序盤の戦いでオブリビオンの因子を弱め、そして鎧をまとった執事に声をかけ続け、最後は彼のオブリビオンの部分ごと認めて鎧をブチやぶった猟兵たち全員の活躍によって、ここに一人、確かに救われた人物がいる!!
 今までの過程はすべて間違いではない! すべてが正しいからこそ得ることのできる「今」がある! 誰がこの戦いの行動の一部でも否定できようか! そんな奴がいたら俺がぶん殴ってやる!
「[この導き先 GO to Heaven こんな見世物しょうもないゼェ! 活きて魅せろよ オレら歌えば お前に響かせる」
「お前の行き先 Hell or Heaven もっかい見せろよ Show yourself 逝かせてやるかよ オレら二人が ラッパー救うは?」
「これから先はDo or Die だから見せてやるよShot Ya Time! 今までありがとうよNice Dogs お前ら全員いてくれたから 俺は嫌いな自分も認めてやれた!」
 るり遥は、【思い出語り】でオブリビオンが踏み潰した《マイク》を複製する。【思い出語り】は、「るり遥が思い入れるもの」を作った場合のみ極めて精巧になるユーベルコード。
 執事のオブリビは彼から「壊れる前と何も変わらないマイク」を受け取ると、るり遥とジンにラップを詠み始める! もちろん、その間も攻撃の手は緩めない!
 しかし、もう無駄な破壊や力任せの攻撃などはしない! 執事のオブリビは、猟兵をラッパーのライバルとして、そして倒すべき敵として認めたのだ!
 暴れ方にもやり方があり、技術がある! 自分を越えていけるような猟兵たちが相手ならば、自分の全力を出した攻撃を出さなくて何とすると言いたげに、執事のオブリビは技術も熱意も敵意も全部ひっくるめて猟兵たちに戦いを再開した!
「M! C! ジン!!! 遥!!! テメエ取り巻く悲劇にthe END!! 刻んだだろう魂に DIVE!!!]」
「M! C! ジン!!! 遥!!! オレらが見せる救いは Light!! 刻ンでやるぜ魂に Rhyme!!」
 リンネの回復で力があり余っている二人組はオブリビオンが投げつけるIceを巧みにステップとスウェーで避けては、ラッパーとして向けられた言葉に息を合わせて返していく!
 そうして互い違いのイヤホンを耳にかけながら、知恵と魔術式のリスニングを耳に捉えて二人同時にオブリビオンラッパーに問う!
『『テメエは一体誰なんだ!!!!!!!!!』』
「俺は俺さ!! 俺のことは俺が許す!! 俺はOblivionRapper! 本気になった俺が怖くねえ奴からかかってきやがれェェェェェ!!」
 自分の一部を否定するのではなく、清濁併せた自分の全てを認めた執事は、強い。自己表現者としては、最高の精神といって良いだろう!

「舞台の上で言葉交わした。心交わした、だとしても。貴方は矢張り、オブリビオンで。私は結局、猟兵で」
「そうさやることはいつもとさして変わらず! 声枯れるまで、剣折れるまで! 競い合って高めるだけだ!」
 オブリビオンとして、ラッパーとして、表現者として。猟兵たちの言葉でまた一つ成長できた執事の前に現れるのはボドラーク・カラフィアトヴァ(さまよえる微笑み・f00583)。
 彼女はその微笑みを絶やさず、その上で自分の愛刀を抜き放つ。今度振るうは本物の刃。しかし、それが言葉の刃での斬り合いと何が違うのだろう?
 真剣勝負も言葉の競い合いも、結局は競い合い、試し合う相手がいなければ成立しないのだから。
「舞台の上で言葉交わした。心交わした、それ故に。貴方を殺す。Rapperとして。最後の願いを、聞き入れて」
「上等だぜおてんばGirl! オブリビオンとして、ラッパーとして、お前の刃も言葉も受けてやる! かかってこいよJaegerRapper! 斬っては詠んでお前の全てを見せてみな! オーディエンスを呼び戻そうぜFloorによ!」
 単素粒子鋳造刀『無銘』。超科学的技術でただひとつの素粒子を成形し作られた、物理的に折れない刀。その刀身はどこまでも美しく、硬く、折れず。まるでボドラークの精神を表しているかのよう。
 ボドラークの刀に対してIceを盾にして受ける執事は、しかし自分のIceが彼女の一刀のもとに断ち切られていくのを見ると、すぐさま受ける方法を変えた。
 B-B-B-B-Blam! 瞬間、辺りに響く破裂音! 聞き覚えのある弾ける音は、執事が生み出したポップロックキャンディ入りのIceから聞こえてくる!
 意識がもうろうとしていたとしても、彼は今まで受けてきた猟兵たちの攻撃を覚えていないわけではない。むしろ逆だ。「鮮烈で真摯な一撃」だったからこそ、「紳士としては鮮明に覚えている」!
「介錯、それが私の解釈。 貴方の言葉をひとつ拝借。 『私もPro故、痛みは一瞬』 振るえば必中、当たれば必殺。 この一太刀に懸けるはわたしの全霊。 この場の人達と駆けたあなたへの返礼」
「気にすんなよ言葉の貸借 光ってやがるぜ刃が赫灼 俺もお前もプロ同士、英俊なしで飛び込むぜ火中 明察なお前ならわかるだろ これで終わりさ流麗な殺陣 締めにしようぜ玲玲たる唄!」
 まともに受ければ斬られてしまうのなら、振り下ろされる刃を破裂する衝撃で受ければいい。執事が取った方策はほぼ完ぺきなものであった!
 しかし、元の攻撃がどれだけ優れていたとしても、所詮彼が繰り出せるのはこの瞬間に見よう見まねで作り出したワザ! 完成された猟兵の技ではない! ポップロックキャンディに込められた魔力にムラがあることを見抜いたボドラークは、スゥ、と一つ息を吸うと、深く吐きながら突撃を開始した!
「――永き宴もいつしか終わる。 祇園精舎の鐘の聲。 夢まぼろしは朝陽に溶けて。 諸行無常の響きあり」
「……チィ、やっぱ猿真似じゃダメか……やるじゃねえか、B-girl……!」
 【無形殺人刀・零式】。彼女の繰り出す必殺剣は、オブリビオンの生み出した破裂する魔力すら斬り裂いて彼に一撃を与えていく!

 ボドラークと斬り合う執事は、徐々に徐々にではあるが彼女に押され始める。今まで猟兵から喰らった攻撃のダメージが、そして自分で自分を痛めつけた痛みが、彼の動きをやや鈍くさせる!
 ……しかし、妙だ。いくらボドラークの剣技が秀でたものだったとしても、彼女もまた執事の攻撃を所々で受けているはず。それが、なぜ、こんなに前衛で出張っていられるーー?
「そういうことかァ! Hoooooooly S-H-I-T! テメエから先にやってやるぜUhhwee! マジ勝負だからガチに行こうぜ! さあ本気出せよUp Yours!」
「こんな終わりでいいのかお前は どうせ最期なら盛大に行こうや お前の生き様刻んでくれよ オレ達のソウルにさぁガッツリと」
 ボドラークを始めとした前衛の猟兵たちの傷を人知れず癒していたのは、ヴィクティム・ウィンターミュート(ストリートランナー・f01172)である。
 彼のユーベルコード、【Not Ready to Die】は死神に別れのキスをプレゼントする癒しのWIZARD。手早く味方の回復をして、前線維持の時間稼ぎを行っていた彼は、まさに超一流の端役と言える活躍を見せていた!
「イカしたFlowで オーディエンスBlowして アドレナリンがOverflow これこそラッパーの最期だろう? 故に死因は全て音楽の過労!」
「今からお前に教えてやるよ 俺の華麗なテクをReadyGO! ……ってな! 行くぜ超絶技巧のSUPER-Hacker! そうさ死ぬまで詠んで戦うぜ! 巻き起こしてやるGive The Fire A Blow!」
 ヴィクティムがあえて攻撃に参加せず、味方の傷を癒し続けていたのは、やはり最期はラップで終わりたいと、そう彼自身が願っていたから。
 だからこそ、彼はユーベルコードの無理と疲労を承知で、周りが、そして執事が、アンサーを返せるくらいに回復させたいと願い、そして実行に移していたのだ。
 マイクがなくたって、俺はあいつの為に詠む。そんなヴィクティムの思いを汲み取りながらも、執事は攻撃の手を緩めない! そしてアンサーソングの切れ味も増してやる! それが、OblivionRapperとしての彼なりの返答であった!
「融けないお前のI Scream 聞かせてくれよ 俺たちゃPeeps そろそろ時間だ アンサー構えな 先に言っとくぜ Rest in Peace」
「掴めない俺のAmerican dream だけどそれでもAdvance With Firm Steps だからこそ本気で戦いな 後悔するぜHold One's Peace 思いも心も全てくべたら全部を出してかかってきなよ!」
 執事が召喚して飛ばすのは、「稲光」の意味を持つあのお菓子! 猟兵との戦いでインスピレーションを受けた、電気を纏ったéclairだ! ヴィクティムはそんな彼の攻撃を避けながらも韻を踏み、そして執事も同様にそれに返していく!
 éclairの弾をスライディングで避け、余波の稲妻をエクス・マキナ・カリバーンで受け、猟兵とオブリビオンの戦いはさらに激化していく!
 そして、同様に! ラッパーとしての競い合いも、ここに、このステージに! 激しさを増して復活したのだった!

 誰もいないステージに響くのはウルトラカッコイイ口調のラップ! 観客がいなくてもはばかることなく歌うのは、そう! 祷・敬夢(プレイ・ゲーム・f03234)だ!
 彼は執事が言葉を取り戻し、自分を取り戻し、自信を取り戻したのを見るや、もう一度とどこかから取り出した最高にカッコイイマイクを片手にラップを刻み始める!
「俺は最強のGamer それを決めるのはただ一人自分 お前は最高のRapper それを決めるのはただ一人お前 魅せて見ろお前が認めるお前の姿」
「俺の魅力はRhymeの口前 だけじゃないオブリビを魅せてやるぜ 見てわかるだろうIceな振舞い Answer Battleそう全てが完璧! 俺は唯一無二のOblivi-Rapper!」
 それに返すのは執事のオブリビだ! 執事は猟兵たちから受けた言葉も攻撃も、その全てを覚えている! だからこそ、その全てを活かして彼は戦う!
 このステージに立って得た全てを、尊敬できる相手にぶつけてやる! 彼が思うことは、ただそれだけだった!
 そして自分用のマイクを取り出して歌い始めるのは、なにも敬夢だけではない! Herzを手にして心の所在を示すように歌い始めたのはパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)だ! 
「初めて発動させるぜ、ユーベルコード! 外れたって停まらねーぞso fuck'n what!」
「MC. jailbreak In Da Hoooooouse! Vibesアゲたらさっさと来なァ! Red-Lightでもトバすぜ、ついてきなァ!」
 彼ら二人がまたマイクを持って歌い始めたことで、にわかに会場に変化が起き始める。
 ボドラークとの剣舞と言葉の応酬。ヴィクティムとの全力で行った韻の競い合い。そして、敬夢とパウルがもう一度マイクを握って歌い始めたことで、避難していた観客たちが戻ってきたのだ!
「難しいことなんて要らねぇ! 観客、悔い、己、情熱で燃やせ! 血肉滾らせ! 限界壊せ! 最後にステージで一発決めてやれ!」
「随分簡単に言うなよねんね! 観衆、後悔、俺、賛同! 全てを認めて受け入れて、突破してやるぜ表現者のステージ! 俺はそうしてガチになるから、テメエらも俺を越えてみやがれェ!」
 最初は標的を選ばずに暴れるばかりだった執事も、もう自身の闘争本能を完全にコントロールできている! 戦うのも、詠むのも、猟兵相手だけで充分!
 そんな執事の様子を、初めは怯えたように見ていた観客たち。しかし、気付いた。これは敵意丸出しの戦闘行為ではないことに。これは、まるでライバル同士が自分の技術を示し合うような、そんな戦いなんだと!
 互いにリスペクトし合い、殺すのではなく活かす戦いなのだと! 現に、今執事の放つ攻撃はブランデーにまみれた小型Iceの雨嵐!
 それをフランベのように強く炙ると、アルコールに引火したIceの大小さまざまな火炎弾が猟兵たちを襲っていく! あの技は、彼が前半に食らった狐火と熱の合わせ技に酷似していた!
「残せName! 整えろEquip! 楽しもうぜTime! 巻き起こせClap! やろうぜGame! 吹き飛ばせHardship! 踏もうぜRhyme! 刻むぜRap!」
「残しなFame! 止めときなQuip! 競うぜGame! 本気をSwap! 踏もうぜRhyme! 刻むぜRap! 無駄じゃなかったぜFriend-Ship! 俺のワザを頼むぜManship-Yo!」
 あの…………カッコ……いい……。……良い……ぞ……。良いぞ……! スゲえぞ……!
 ーーどっちも一歩も引かねえ! ーースゲえバトルだぜこれ! ーーどうなっちまうんだよ、一体!
 ーーしかも、全員がラップ詠んでるんだろ?! ーー前半の人達もすごかったよな! ーーどっちも頑張れーーー!!
 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
 会場の中にもう一度観客たちの熱が燃え始める! それがオブリビオンを倒す猟兵に惹かれてか、それともオブリビを救う猟兵に惹かれたのか、それは分からない。しかし、今のこの盛り上がりを見れば、そんなことはもはや気にせずとも良かった!!
「レペゼンMC.Ice! So you are History―だが栄光不滅のLegendary! 143 CandyなIce 愛す オレらのrhyme r.i.pよりもripだ テメェとのposse cut 忘れねぇぜmy men――peace!!」
「俺は未来にはAbsence だが今俺は立ってるぜAccurately ! 乱暴なPlayに A Polite-Reply 飛ばすVoiveは言葉のCyme Kickin’Ishな猟兵とのJoint 繋いで行けよ未来にRespect Soul!」
 敬夢が攻撃の方向をその存在感で引き受けている横で、ボドラークの剣が一方向から飛来する炎と熱を打ち消していく!
 パウルがオブリビに迫っては無理やりに襟首をつかんで、至近距離で全身全霊のリリックを捧げていくのを、ヴィクティムの回復がサポートする!!
 思い思いに繰り出される技は思わぬところで調和を果たし、この夜限りの戦闘は七色に光って空を駆ける! 思い出となって光って消えるこのひと時に、観客が出来るのは応援することだけ!
「お前とのRap、最高に楽しかったぞ! またな!!」
「なに、別にまだまだ終わっちゃいねえさこのBattleは! でも、そうだな……。 「また」な!」
 ウオオオオオーーーーーーッ!!
 猟兵ーーーーーッ!! オブリビーーーーーッ!! 両方カッコいいぜーーーーーッ!!!! 
 猟兵たちの協力による攻勢に、いよいよ執事が倒れた! 体にダメージを喰らい、服はボロボロに破け、既に満身創痍の彼は、しかし立ち上がって満足そうに笑む。
 その表情は全力を出して良い勝負を楽しんでいるような子供のそれであり、子供や弟子の成長を間近で見て喜ぶ大人のようでもあった。
 いつの間にか戻ってきたのだろうスタッフたちが、猟兵たちとオブリビにスポットライトを当てていく。飛び交う歓声と白い光の中で、彼らは今「競い合い」という形で観客たちを「魅せていた」!

●【On-Stage】
「ああ、嫌だ嫌だ。憐れだとか思っちゃいけないのに。猟兵とオブリビオンがわかりあえるはずもないのに もしかしたら、もしかするんじゃないかって そんな馬鹿な幻想抱くなんて」
「ああ、とことん言いな物哀れ だけどな人は人で我は我 確かに俺はオブリビオンで、そしてお前らは猟兵さ 俺も思ったさこの先も ずっと同じでいれたらなってよ」
 大歓声がステージの届く。音響機器はもう破壊されてしまったけれど、音楽隊は戻ってきた。生音源でのLiveStageの幕が今上がる。
 執事は行く。オブリビオンとして手段を選ばず、自分の闘争本能をまっすぐ猟兵というライバルに向けながら。ラッパーとして言葉を選ばず、伝えたい気持ちをかき鳴らしながら。
 少し達観したように笑うそんな執事に、水衛・巽(鬼祓・f01428)は訥々と語りかける。それはIFの話。もしも、執事がオブリビオンではなく、猟兵たちと同じ立場であったならばの希望の話。
「でもそんな馬鹿な夢でも、悪くはなかったよ。もし私たちが猟兵じゃなかったなら。もしあなたがオブリビオンではなかったなら。そんな風に思うくらいには」
「でもこんな短い間でも 分かり合えたのは夢じゃねえ 俺の思いがお前らに お前らの言葉が俺に響く それだけでこの場は十分なのさ! 笑いなBaby! Rock 'n' Roll!」
 彼の言葉はどこまでも執事を思っていてくれて、執事のIceにも思わず涙がこぼれそうになる。しかし、「そう」はならなかった。ならなかったからこそ、「今」を最大限やるのだ。
 きっと少し前までであれば、執事も巽の言葉に同調していただろう。あまつさえ、恥も外聞もなく泣き出していたかもしれない。しかし、彼は今立って猟兵の敵に、そしてライバルになることを選んだ。
 「それ」が、オブリビオンとしての自分であり、ラッパーとしての自分なのだから。恥じない自分を選んだ以上、巽の前で格好悪い所は魅せられないのだ!
「猟兵ではない方法であなたを送れたなら それが最高だったんだろう。でも私にそんな方法はない」
「俺はオブリビオンで良かったぜ そうじゃなきゃお前らと出会えなかった! アツいRapを刻めなかった! だから頼むぜ猟兵ども! 俺へのトドメは全力で来な!」
 執事はステージの上で取り分け頑強なIceを召喚すると、自分の右腕に搭載する。本来は全身を変身させるか、他の猟兵たちの攻撃にリスペクトを払いたいのだが、もう彼にそこまでの余力はない。だからこそ、終盤は自分の最も信頼できる力にて。
 対する巽が発動するのは、ユーベルコード【騰蛇奈落】。 十二神将の一、炎に包まれ羽の生えた蛇の焔。凶将・騰駝の炎が、巽の周りに寄り集まって形を成す。黒に染まったその炎は、夜闇にあって煌々と燃え盛る。
 その黒炎を見ても、執事はもう怯まない。避けようともしない。彼が考えているのはただ一つ。「真正面から受けてやる」!
「せめて私の本質に一番近い 騰駝の炎であなたを見送ろう。浄化すらない、すべてを無にする炎で 旧い時間に『あなた』が還らないように。二度と『あなた』が骸の海から蘇らないように」
「それがお前の最高ならば 受けて立つぜお前の本気! 帰るところももはやいらねえ 俺はこの先も生き続けるから! お前らが俺を覚えてる限り、俺はお前らの胸にあり続ける! だからこそ俺は鮮烈に、鮮明に心の火を灯す! さあ勝負だぜ、腹括れよ巽!」
 黒炎の波とIceの右拳。その二つが互いを食い合ってちぎれ、燃えては凍り、そして溶けたIceが炎にあぶられ蒸気となりーー。
 白いケムリの中で、立っていたのは巽だった。執事はその右腕を失い仰向けになって転がりながらも、ニヤリと笑って彼にこう伝える。彼もまた、自己表現を見せてくれた一流のProだから。
「ーーアツくて最高じゃねえかお前の炎。気にすんな、俺はこういうやつなのさ。お前はお前の行動を選んで未来に進んだ。それだけで充分、価値があるーー」

「へ、へ……ッ! 待ってな、ちくしょうめ、今立ってよ、お前らと戦ってやるからよ……任せろ、俺はオブリビオンでラッパーだぜ? 無理なんて事は俺に何一つねェ、俺はできるって俺は信じてる! だから……!」
「……アタシが苦手なラップに参加した理由……。それはアナタの歌にリスペクトに値する輝きを感じたから。実際に対峙してそれはよくわかったわ。だから……」
 リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)は冥底/酩酊の葉巻を吸いながら静かに現れると、無理やり立ち上がろうとする執事に向かってユーベルコードを放つ。
 【ゴートリック・ファウスト】。彼女の纏うGOATiaの服に仕込んだ暗示を見た執事の脳へと特殊な信号を放つそのユーベルコードは、対象の五感に嘘の情報を流し込むことが可能であり、そして戦闘行動を封じることができるのだ!
「……ッ?! なんだ……? お前の仕業、みたいだな……身体から、痛みがなくなったみてえだぜ……! 戦闘は厳しいけどよ、俺はまだ……立って詠めるって訳だ! ラッパーとしては本望だぜ……!」
 執事は痛みを忘れたかのように立ち上がると、左手にマイクを持ちかえてリダンに勝負を挑む。もちろん、ここでいう勝負とはラッパーとしての勝負である!
 戦闘行動が最早厳しいとしても、立てるのであればそれで良い。マイクもあり、口もまだ動く。充分だった。
「アタシは今宵アナタをRedone(修復する) 操るわ辛いアナタの五感 ハッピーに消し飛ばしてみせるそのpain ハッピに仕込んだ見せるそのsignで キャッチーな頭を冷やしてみせるこの催眠で」
「心配ご無用No Harm Done もう俺は何にも辛かねえ ちとよろけてるがコイツはFordone やってみせるさWell-Done ああ……しかしこいつはOver-Done まだ動けるみてえだTill Dawn!」
 リダンと執事のラップバトルを、観客たちは歓喜の中でしっかと見守っている。彼らは確かに何もできないが、それでも応援を送ってくれている。猟兵とオブリビオンの両者の健闘を称える声援を、観客は口々に叫んでくれている!
 執事はその歓声を受けながら、リダンとのラップバトルの最中に意識を集中させていく。
「ここがアナタのGoddammGoal? 違うでしょここからCurtainCall! O-blivi ON STAGEのFinale飾るのはBattleじゃないわ オブリビオンとしてはFailureなButlerがいいの ここからアナタのFinal Lap!」
「言ってくれるぜGOATia-Jaeger 俺は一流のRapperだがな 一流のButlerでもあるんだよ! オブリビオンにはオブリビオンの! 意地があんだぜナメんなよ! 気遣ってくれてアリガトな!」
 と、そこでリダンがマイクに常よりも大きな声で叫んだ!
「MCの皆! 最後に繋げていくわよ!」

 それに反応したのは司会のBだ! ーーやーーやべエ! あの野郎、MC全員に回すCallだと!? なんて無茶なーー!
「待ちなGOATia。そのマイクは俺が貰うぜ! 俺が理性を失ってた間、言いたいことをぶつけてくれやがった奴らに! 一言言わせてもらおうかListenUp!
 Ash! 誰に頼まれなくったって、お前はお前の唄をやれ! ナイスパンチ! Thor! 父ちゃんの言葉と俺のSoulを忘れんな!
 TDR! 味わえないなんて決めつけるな、その先はお前が作るのさ! メルノ! 全部受け取ったぜ、だから全部覚えとけ!
 つかさ! もってってくれよ俺の魂 無くしやがったら承知しねえぜ! シャレム見てるか俺の意地! どうだよ、これで満足だろうが!
 Maira! ありがとうよ、俺の才能を見捨てねえでくれて。 ネシュよォ、ダチ公の頼みを聞いてくれて嬉しかったぜ!
 べりる! こっちこそだぜ、良いステージだった、感謝する! Skull! さっきは届かなくてもよ、今の俺の声はお前に『届く』かよ?
 ここに来やがった物好きなヤツら! オブリビラッパーから言っとくぜ! 『全員、メチャクチャサンキューな!』」

 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
 執事の返しで大いに沸く会場の観客たち。リダンのユーベルコードの効果が切れた後も、フラフラになりながらもなんとか立っている執事の前に、一人の男が現れる。
 既にステージは無理にでも立って戦おうとする執事と、それを見守る猟兵たちという構図になっていた。声援が立場の異なる両者を平等に肯定し、ステージはもう一度盛り上がりを見せていく。
 イチイの弓を構えて、執事と言葉と矢を交わそうと試みるのはアノルルイ・ブラエニオン(変なエルフの吟遊詩人・f05107)。
 言葉、攻撃、その全てに意志が介在する彼らの戦いが、今始まる。
「この歌を、我が友オブリビに捧ぐ。聞いてくれるかい?」
「貰えるものなら貰うさ、何でもな。歌いな詩人。そのついでだ……踊ろうぜ、好敵手」
 アノルルイが語る歌を媒介に、彼のユーベルコード、【サウンド・オブ・パワー】が発動する。
 その清廉なる歌声は、アノルルイ自身と味方の猟兵、執事と観客まで、分け隔てなく共感の渦に巻き込んで、その全てを強化していく!
 彼の吟遊詩人としてのプライドが、会場の全てを魅せたのだ!
「旧世界最強Rapperオブリビ 語彙力・発想・情熱を完備 世界を照らす熱き篝火 ここに刻むお前への賛美 お前と過ごした時間は甘美 素人同然の俺newbie お前は真摯に答えた様式美」
「無げの遊びと思っていたが 聞こえてきたのさ清美なRap 気付いたら俺はそいつらを称美 反省したぜTo Beef 雄叫びあげたがそれも昔 今ではこうしてまた叫び 声を届けていくのさB-boy」
 自身の肉体を強化したアノルルイは、一定のリズムでラップを刻みながらも弓での射撃を的確に放っていく。執事の服で脆くなっている所へと過たず吸い込まれていく彼の矢を受けながらも、しかし執事も負けてはいない。
 もう執事の身体は戦闘できるような状態ではない。だが、アノルルイの唄声が、彼を走らせ、またラップを詠ませてくれる。ならばと自分もオブリビオンとしての責務を果たさなければと、執事もまたアノルルイに向けてまだ無事な足での蹴りを放とうとする!
「初めは確かに不備 けど間違いは正せるhuman being お前が見せた成長は優美 I wanna be Like a オブリビ 俺がこれから過ごす日々 お前との思い出常備 俺達もたらす 有終の美……」
「悲壮美気取る訳じゃねえんだ 今のお前らは闇夜の灯火 筆の運びももはや黒帯 俺はお前らに倒される きっとそれは変えられない でも今なら言えるぜハッキリと 俺を越えてくれてありがとよ わが人生は愛と喜び」
 左手にマイクを持ち、右腕をなくした執事にとって、もう取れる行動は足での攻撃以外にない。ユーベルコードすら、もはや執事は発動するのに時間を要する有様だ!
 そんな単調な動きに捉えられるアノルルイではない。これは真剣な競い合いなのだから。加速度的に闘争面で追い詰められていく執事は、しかしそれでも、アノルルイ達猟兵に礼を伝えるのだった。

「……ったく、こんな終わり方嫌すぎんだけど……。これ以上暴れられねえように、俺らの手で終わらせねえとな」
 先ほどからステージ上で行われている猟兵と執事の戦いを見ているのは、秋稲・霖(ペトリコール・f00119)。
 彼も他の猟兵と同じく、執事の理性が失われたままで倒すことを是とはしない人物であった。しかし、その様子を見て執事が叫ぶ。
「ヘッ……お前も、お優しいことで。……観客、聞こえてるだろうが! さっき言ったろ!! 喉潰して帰らなきゃブッ飛ばすってなア! MC.いなりの再登場だ!!」
 執事が観客に呼びかけると、雪崩れるように起こるのはMC.いなりCall。紛れもなく、霖を呼ぶ声だった。ステージに上がってきた彼を、執事は見て、マイクを持った左手で「かかって来いよ」とハンドサインを送る。
 オブリビオンと猟兵の戦いは、もうそろそろ終わりを迎えようとしていた。
「アイツが強くなったとしても、当たらなけりゃなんてことないっしょ! 式神に戦わせるのが俺の戦い方だからな。燃やして溶かしてやれ、相棒!」
 霖が執事に向けて連続で放つのは、【祓い彩れ、桔梗花】。紙人形を依代にした式神を次々と投げると、その式神が当たったところはぼう、と勢いよく燃え盛る。
 執事は自身に向けられた式神のいくつかを払いのけ、回避する。時には足の先に召喚したIceで式神を斬り払ったりなどの行動もとるが、しかし数が多すぎる!
「ぐお……っ! 上等だぜ……中々アツいけどよォ……!! だが、全ッッ然効かねえなァ!? もっと本気でアツい一撃かましてみろよ! 「直接俺をブン殴りてエ」って面に書いてあンぜェ!? 来いよ!!」
「……へ、バレてたか。ちょーっとぐらいはぶん殴ってやりたかったなって思ってたとこだぜ」
 もちろん、効いていないというのは執事なりの虚勢だ。霖の式神たちは執事の脚を、胴を、左腕を、Iceを。至る所をその青紫色の炎で染め上げ、彼を溶かしていく。
 しかし、執事は目の前の猟兵がやりたいことを我慢しているというのが我慢ならなかったのだ! だからこそ、霖を見え見えの挑発で誘う!
 彼らが過去に囚われ、遠い未来で後悔することのないように。猟兵の選んだ行動はすべて間違いではないという事を伝えたいがため。そして、霖はその言葉を聞いてーー執事に向けて、走り出した!
「answerねえのは百も承知 bitter乗り越えてsugaryな感じ? honor込めた一撃お見舞い」
「そのRapに返すぜPowerとAnswer 予期せぬCounterにビビったかい?だがもうそろそろ限界なのさ Dishonorの前に頼むぜFriend」
 走りながら息も切らさずに韻を踏めるのは、もう霖が初心者の域を脱した証拠だ。執事はアンサーソングを口にしながら彼の成長を心から喜ぶように笑い、迎撃態勢を取る。
 霖の武器はその拳。何でもない、ただの拳だ。ただ、少々思いが籠っているというだけの代物! 対する執事の獲物は、左手に纏うIceでの殴打。
 彼らは互いに走りこみ、そして同時に拳を放った! そして両者の拳は同時に相手の顎に届く! 「クロス・カウンター」だッ! そして一人が倒れる音。ステージの上で立っていたのはーー!
「韻は踏まずに普通に倒すって思ってたんだけどなー。楽しかったのが抜けなかった的な? 敵だったのが残念だけど…あんた、最高のクルーだったぜ!」
 立っていたのは、霖であった! Iceで固めた拳よりも、彼の思いを握りこんだ拳の方が早く、鋭かった!
 この結果に会場も大盛り上がり。頭のIceを揺らされてグロッキーになっている執事も、ゆっくりと立ち上がってサムズアップを霖に返すのだった!

「短いあいだだったけどお前は最高だったぜ。みんなもそう思うだろ?」
 YeahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhH!
 ーーもちろんだーーーーーッ!!
 ーー桜庭クーーーーーーーーーーーン! 私たちもそう思うーーーーー!!
 ーー猟兵もスゴかったぜ! でも、MC.Ageが言うとおり、執事のヤロウも最高だったかもな!!
 ーーどっちも超々最高だった!! このステージにいれて良かったよ、心からそう思ってる!!
 霖と執事が殴り合いをしている間、横でオーディエンスを温め続けているのは桜庭・英治(NewAge・f00459)だった! 彼は猟兵の、執事の、演者全員がどうだったかを観客に問うていく!
 帰ってくる答えは、もちろん大盛況だ! 英治はその様子を見て、更にオーディエンスに言葉を投げかけていく!
「だから俺はオーディエンスのみんなに頼みたい。こいつを応援して欲しいんだ。こいつが最後の瞬間までラッパーとしていられるようにな」
 会場は一瞬静まり返ると、一拍置いて今日一番、最終盤での応援をステージ上の猟兵たち、そして執事へと送っていく!
 グロッキーになっていた執事がようやく正気に帰ると、そこに広がっていたのは歴史に残るくらいの大盛況! 老若男女を問わず、キマイラ種を問わず、肌の色も言葉も問わず、今、会場はラップで一つになっていた!
「ついでにお前にも教えてやるよ。男子ってのは、いや……。ラッパーってのは、ステージで応援されてる限り無限に強くなるんだぜ?」
「…………よォ……。遅かったな? ……ヘッ……。ありがとうよ。俺はオブリビオンでラッパーだから……! お前らの前で、もう少しだけ口を動かしていたい……! 最後まで、付き合ってもらうぜ……!」
 もう執事は生命力を失いかけ、体の端々は徐々に消滅していく有様だ。しかし、それでも。オブリビオンであることを認め、コンプレックスを解消しても、それでも。
 ーーそれでもやはり、彼の本質はラッパーだった。観客たちの応援で気付いたのだ。自分のラップが、人に望まれている、と。で、あれば。で、あるならば! やることはもう決まっている!
「お前に送るパフォーマンス ここのグルーヴバージョンアップ 五分五分ぶつかる本能矜持 鼓舞鼓舞励ませラッパー執事」
「俺とお前らのConcordance 互いに成長してったなAdvance コツコツ積み上げた言葉と魂 お前らに託すぜJaegerRapper」
 踏もうぜRhyme! 英治と執事は互いに韻を踏みながら、全力を出し切って口を動かし、頭をフル回転させて歌を詠んでいく!
「お前巷で噂の怪人 おかげで猟兵多数の動員 ぶつかるRhymeステージはVive LyricはCrimeDead or Alive」
「ここまで来てようやく癒えたぜ本心 観客たちは超満員 Aggressiveなお前らの言葉に 答えたくなったのさAssertive」
 刻むぜRap! 二人のBeatに観客たちの中には涙を流しているものさえいる。このステージが終わってしまうことへの哀しさからだろうか!
「お前言ったよな 別れが辛くなるって そんなことなかったよ お前がお前でなくなる前にお別れだ」
「……ああ、それなら良かったぜ。頼むわ。もう、ほとんど……体も動かねえ……。満足だ……」
 最後に英治が用いたのは、【テレパス】。彼の力は精神感応能力。人の願いを背負う力。
 それは自身を応援する者が多ければ多いほど、自身の体にサイキックエナジーを充填させて超強化していくユーベルコード! 今、英治の力は最高潮にまで高まっていた!!
「あばよ親友。このパンチは手向けだ」
「……ああ……。楽しかった、ゼ……」
 英治と執事は、お互いにグータッチを交わす。もはやそれだけで事足りた。執事の身体は、すでにほとんど消滅しかけている。

「まだ言葉は届くのかしら。出来ることなら最後まで正気を保った貴方と決着を付けたかったものだけど。ラップバトルなんて初めてやったから上手に出来たかは分からないけれど、楽しかったわ」
 ステージの上。消滅していく執事のオブリビ。彼を見て、少し残念そうに言葉を送るのは陽灯乃・赤鴉(ピカピカ光る。・f00221)。
 観客たちは、ステージのバカ騒ぎの終焉を静かに、いよいよなのかという顔で見つめていた。
「……ア、あ、アア……。マ、……、まだ、オ、れ、は……詠める……! だから、唄イナ……! オブリビオンとしての俺は、お前ら猟兵が倒してクレた……。だから、最後はラッパーとして……オレを……」
 赤鴉に向かって、すでに体の大部分を失ってしまった執事が声を枯らせて思いを伝えていく。彼の声量はもうほとんど聞こえないほどに小さい。
 赤鴉が、執事の言葉を最初から最後まで耳にしたかどうかは分からない。だが、彼女は彼の思いを受け取ると、マイクに向かって堂々と歌い始めた!!
「今から刻むrhymeが最後の言葉 ここで得た称賛が最強の称号だ ここで退場、でもこれは明星のように照らす煌々」
「………………最後、ガ、歌で終わるとは……思っても、見なかった、ゼ……。猟兵、ありがとう……。お前らのおかげで、俺は自分の嫌いな自分を、認めてやれたんだ……。未来がなくったって、俺は、この満足できる「今」を手にしたんだ……! 悔いなんて、何一つ、無ェ……な……」
 執事が語る声は、もう会場の誰にも聞こえていない。もはや声なのかも、口から漏れ聞こえる息なのかも判別の付かないほど小さく、か細い声だからだ。
 しかし、彼の思いは会場にいる全ての人に届いていたはずだ。自己表現として選んだ言葉、選んだ行動に、何一つとして間違いは無いのだと。
 自分の一面が嫌いだとか、不慣れなことをするのが恥ずかしいだとか、そんな感情さえ、声に、行動に出してしまえば昇華できるのだと。
「あなたとのラップバトルをリスペクト 皆の心に切々と。貴方は安心して眠ってろ」
「……アア……。もう………………。マンゾク、ダ……」
 観客の中からすすり泣く声が聞こえる。オブリビオンに対する猟兵の真摯な行動が、態度が、思いやりが。その全てが、今回の事件での宝物だ。
 きっと、今日この会場でこのLiveを見ていた彼らは、今日のことを忘れないだろう。
「駄目ね、アンサーがないと盛り上がらないわ。そろそろ終わりの時間みたい」
 赤鴉のコールに、もう執事は返せない。彼の身体は、既に全てが光のかけらとなって空へと昇っていったからだ。
 消滅してしまったラッパーがコールを返せないのは道理。……しかし、聞こえる声がある。会場からだ。
「ふ、……踏もうぜRhyme、刻むぜRap……」
「そ、そうだ! 踏もうぜRhyme! ……刻むぜRap! ほら! 皆も!」
「ああ! 恥ずかしくなんか無いさ! 誰だって最初は初めてなんだから!」
 踏もうぜRhyme! 刻むぜRap! 自分の弱さを出してけBad! 弱さは強さになるのさCool! 皆で弾けろSound-Beat!
 会場の中で、ラップのコールがどこまでも響いていく。観客たちもまた、ラップなんて詠んだこともないはずなのに、それがどうしたと言わんばかりに自己表現の手段として、コミュニケーションの一環としてラップを詠む。
 猟兵に向かって投げかけられるレスポンスは、その日、明け方まで続いたというーー。

●The end
 それから。
 執事が壊したステージは、一度全て取り壊しとなるらしい。どうやら、損壊した部分が多すぎたという事だった。
 だが、その場所には以前よりも一回りも二回りも大きな野外ステージ会場が作られるという事。
 あの夜のことは「伝説」となり、執事が持っていたマイクのかけらは多くの人物の手に渡ったという。
 ラップの魂は、自己表現の魂は、確かにキマイラフューチャーに根付いていた。
 だが、人々の記憶するあの夜の主役は「執事」ではない。
 あの夜の主役、それは、きっとーーあそこに参加した、その全員が、「そう」なのだろう。祭りが終わった。しかし、猟兵の日々は、自己表現はーーこれからも、どこまでも続いていく!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月26日


挿絵イラスト