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【Q】近くても、遠くても

#サムライエンパイア #【Q】 #鉄甲船 #宿敵撃破

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●彼の地を思い続けるわ
「皆さん、海に行きましょう」
 桃色髪の少女、花園・桃姫の体を借りたミルケン・ピーチ(魔法少女ミルケンピーチ・f15261)が唐突に言った。いやちょっとまだ海水浴には早いんじゃ……という視線が突き刺さる。
「ち、違います! あのですね、この度皆さんの活躍で『レディ・オーシャン』が倒されました。それに伴いかつてエンパイア・ウォーで引き上げた鉄甲船が、謎の紫の光を放ち始めたのです。その光は一様に同じ方向に向かって伸びておりまして、その向かう先は恐らく……」
 グリードオーシャン、と誰がが呟く。エンパイア・ウォーとレディ・オーシャン、その二つを結ぶ言葉であり、まだ見ぬ新世界と思われる場所だ。
「はい、ですので私もこの度鉄甲船を一つ貰い受けまして、それに乗ってグリードオーシャンを目指そうと思ったわけなのです」
 ミルケンはそう言ってから一度言葉を切り、集まった猟兵たちを見回す。
「船は多くの猟兵に与えられていますので、識別のためにも名前を付ける必要があります。この度は私の一存で名前をつけさせていただきました。その名も『黍団号』!」
 得意げに言うミルケン。かなり自信作な名前らしいが、その評価は猟兵それぞれが心の中にしまっておくのが吉というものだろう。
「しかし、新世界への航海がそんなに生易しいものなわけありません。外洋の波は荒々しく、巨大な鉄甲船とはいえ波の大きさによっては直撃を受ければバランスを崩してしまうかもしれません。さらにもう一つ、この海域には流木がやたらと多く、波の勢いで叩きつけられたそれが鉄甲船にダメージを与えてくることもあります。ですので皆さんには、どうにかして波を躱したり突っ切ったり……あるいはもしできるのならば、波を破壊してしまったりして先に進んでいただきたいのです」
 普通に考えれば無茶苦茶な提案だが、人知を超えた猟兵とユーベルコードの力ならば、あるいはそれも可能にしてしまうのかもしれない。どんな手段でどうかわすか、全ては猟兵の腕と知恵にかかっている。
「また、波をどうにかして進んでも、その後で何かしら別の問題……恐らくはオブリビオンでしょう。それが襲ってくるという予知も出ています。一筋縄ではいかない航海となるでしょうが、どうか皆さん、よろしくお願いします」
 そう言ってミルケンは一礼し、『黍団号』の出港準備を始めるのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢でございます。
 今回は船に乗って荒波を超え新世界への旅です。

 まず第一章では、流木交じりの荒波を乗り越えていただきます。躱す、突っ切る、抑え込む、持てる技を存分に活かして対処していってください。
 第二章ではアレな忍者がいっぱい出ます。
 第三章では強い忍者が一人出ます。

 方向性としてはプレイング次第でもありますが、割かし軽いノリで冒険を楽しんで行こうかと思っております。

 今回は事前情報少な目ですが、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『脅威の海洋災害』

POW   :    肉体の力で体力任せに海洋災害に立ち向かいます

SPD   :    素早い行動力や、操船技術で海洋災害に立ち向かいます

WIZ   :    広範な知識や、素晴らしいアイデアなどで海洋災害に立ち向かいます

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●大胆に行く
 鉄甲船『黍団号』が出航ししばらくは穏やかな公開が続いたが、外洋に出たところで状況は一変する。
 波が荒くなり、船は上下左右に揺れ、気を抜けばすぐに転倒、下手をすればそのまま船外に放り出されかねない。おまけに波には大量の流木が混じり、船体にゴンゴンとぶつかってくる。一般船員たちは船が波にのまれないようにするので精一杯だ。
 この荒波を乗り越え先に進むためには猟兵の力が不可欠である。猟兵よ、いざ荒波に立ち向かえ!
葉隠・翠
【心情】新世界へと航海し、その上忍者が出ると聞いてきたのでござるが…ものすごい波でござるー!!こ、ここまで揺れがすごいと口からなにか出そうでござるな…うっぷ…こ、この忍者りょきょきゃ…緑影…この程度では負けぬでござる…

【作戦】と、とりあえず波をなんとかするでござる!拙者のユーベルコードで使えそうなのは…こ、これでござる!緑光波手裏剣!これで波を切り裂き、破壊するでござるー!(絡み・アドリブOK)


夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎

■行動
これはまた、大変な海域ですねぇ。

【紘器】を使用、『F●S』3種のコピーを形成しましょう。
『FRS』は「射撃」による「流木の破壊」、『FSS』は「破片等からの防御」を中心に行って時間を稼いでいる間に、強化された『応用性』を使用して『FBS』を「黍団号」に嵌められる形状に調整しますねぇ。
「鎖状に繋げて複数個所を留める」等の形が良いでしょうかぁ。
準備が出来ましたら、『FBS』の「飛行具」としての機能を使い「黍団号」自体を浮遊させ、高波の上を運びますねぇ。
跳ね上がって来た流木等が有れば、『FRS』で迎撃しますぅ。

ずっとは難しいですが、出来る限り進めましょうかぁ。


在原・チェルノ
「きびだんごう」って、行先は鬼ヶ島?
まぁ、それはおいといて
船の先頭に立って【聞き耳】や【第六感】で波の様子を感じ取って大きな波が近づいてきたら船のみんなに警告
流木は【雷刃無尽】で細かく砕いて船へのダメージを軽減させる
大きなものは【念動力】で進路を変えて進路を逸らす
それにしてもグリードオーシャンってどんなところなんだろ



 荒れ狂う海を進む鉄甲船『黍団号』。その甲板に、三人の猟兵の姿があった。
「これはまた、大変な海域ですねぇ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は船に押し寄せる波と、それに乗って激突してくる多量の木材を見て言う。
「『きびだんごう』って、行先は鬼ヶ島?」
 在原・チェルノ(流星忍姫チェルノ・f06863)は船の名前から連想される物語を思い浮かべ、鬼が出るか蛇が出るかも分からぬ道の先を見て首を傾げる。
「新世界へと航海し、その上忍者が出ると聞いてきたのでござるが…ものすごい波でござるー!!」
 そして葉隠・翠(緑影・f22215)は、あまりの波の荒さに全身を揺さぶられ、思いっきり船酔いしていた。
「こ、ここまで揺れがすごいと口からなにか出そうでござるな……うっぷ……こ、この忍者りょきょきゃ……緑影……この程度では負けぬでござる……」
 忍者としての意地か色々リバースしそうになるのを必死で堪える翠。なお自分の名前を噛んでいるのは普段からの癖であり船酔いのせいではなかったりする。
 三人ともが10代のうら若き女性猟兵であり、これで進んでいるのが穏やかなリゾートの海でもあればさぞ絵になる光景であっただろう。しかし現実としては彼女たちは皆新世界への道を開くために集まった猛者であり、今もその忍の真っ只中なのである。
 そんな緊張感ある船旅を続ける中、舳先に立って波の様子に聞き耳を立てていたチェルノが表情を変えた。
「これは……皆、大きいのが来るよ!」
 荒れ狂う波の音の中、遠方より微かに聞こえた地鳴りのような低い音。それを今までよりもはるかに大きい波が近づいてくる予兆だと直感したチェルノは、戦いの構えを取りながら仲間に警告を発した。
 それを受けた翠とるこるも、それぞれに波の襲来に備える。
「大いなる豊饒の女神、その『祭器』の真実の姿を此処に」
 るこるはすぐさま【豊乳女神の加護・紘器】を発動。浮遊兵装を大量に複製して展開した。
「と、とりあえず波をなんとかするでござる! 拙者のユーベルコードで使えそうなのは……こ、これでござる!」
 翠もそこは猟兵であり忍者、船酔いを振り払って立ち上がり、波に対応するためのユーベルコードをいつでも放てるよう準備する。
 そして少しの時間がたち、聞き耳を立てなくともわかる程大きくなった音と共に、船を飲み込むほどに巨大な波が黍団号へと迫ってきた。
「よーし、行くよ! 闇を斬り裂け、雷の刃よ!」
 まず動いたのはチェルノ。【雷刃無尽】で雷撃の手裏剣を形成、波に向けてそれを放った。
 280本の手裏剣は巨大な波一面に散らばり、突き刺さる。それは水そのものを破壊することはできないが、その中にある流木を次々と打ち砕き、無害な木屑へと変えていった。
 さらに手裏剣では破壊できないほどの巨大なものは念動力でその軌道を逸らし、波より上へと持ち上げる。
「はい、それじゃあこちらはお任せをぉ」
 その巨大な木は、るこるの展開した『FRS』の一斉連続砲撃によって、粉々に砕かれた。さらに船を覆うように広げられた『FSS』のビームシールドが、降り注ぐ破片をも防ぐ。
 そして残る兵装『FBS』は、普段自身の飛行に使う技術を応用して黍団号の随所に取り付け、船そのものを水面から浮かび上がらせた。
 波に揺られなくなったことで一気に足場は安定し、猟兵たちも全力を出せる状態となる。
 そして最後の一手は翠が放った。
「今こそ好機! 切り裂け! 緑光波手裏剣! でござる!」
 翠の手にした手裏剣が緑色の光を纏って巨大化する。その手裏剣を船の眼前まで迫った大波のど真ん中に向かって、渾身の力で投げつけた。
 回転し飛んでいく手裏剣が波の中央に触れる。そして次の瞬間、波はズパッと真ん中から真っ二つに裂けた。
「やったでござる!」
 翠の歓喜の声の前で、二つに分けられた波は流れる方向を変えられ、そのまま勢いを失って潰れていく。波の中に内包されていた流木も破壊しつくされ、波の破壊の余波で流れ弾になることもない。その間を、宙に浮いた黍団号は悠々と進んでいった。
 それはまるで海を割って進んだいずこかの予言者を彷彿とさせるような、猟兵にしか作りえぬ壮大な眺めでもあった。
「ずっとは難しいですが、出来る限り進めましょうかぁ」
 るこるは脳波コントロールでFBSを操作し、光が指し示す方向へ黍団号を進めていく。
「うん、それにしてもグリードオーシャンってどんなところなんだろ」
 チェルノはこの先にある新世界について想像をめぐらせた。
 そして翠は、
「とりあえず、今のうちに回復を図っておくでござるよ……」
 船が再び荒れる海に着水する前に、少しでも船酔いを覚ましておくべく甲板に横になるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『『豚房流忍者』子豚・牡丹』

POW   :    豚房流忍術・乳手裏剣の術
自身が装備する【手裏剣を乳を揺らして射出、飛来するそれ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    豚房流忍術・乳分身の術
レベル×5体の、小型の戦闘用【の忍者刀を乳に装備した己の分身】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ   :    豚房流忍術・乳遁の術
自身と自身の装備、【乳に挟んだ】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。

イラスト:すねいる

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●パイパニック
 荒波を乗り越え進んでいく鉄甲船『黍団号』。
 その舳先より放たれる紫の光の中から、多数の肉玉が……もとい、多数の忍者が現れ甲板へと飛び乗ってきた。
「我ら、『豚房流忍者』子豚・牡丹! が高度な術によって生み出した実体ある分身! 提携先忍軍の上意によりこの船沈めに参った!」
 名前から出自に目的までべらべら喋る忍者としてどうなんだという一団。
「それと乳ある女性は捕まえて豚房流の下忍にしてもいいと言われているでござるよ。いんせんてぃぶでござる!」
 さらにどこで覚えたのか横文字を無理矢理ねじこんで追加報酬までバラす忍者。
 あまりにも緊張感のない軍団だが、それを可能とするだけの実力を備えているのは確かである。
 とぼけた忍者を打ち倒し、船と船員を守り抜くのだ!
追記:この状態でも荒波と流木は襲い掛かってきます。戦闘に注力する必要があるため第一章のように波そのものを抑え込むことは出来ませんが、波は敵にも無差別に襲い掛かるので利用することもできるかもしれません。うまく使ってみてください。
ラムダ・ツァオ(サポート)
A&Wの遊牧民出の自由人。
見た目からダークエルフと揶揄されることもあるが、当人は特に気にしていない。普段は外套と丸サングラスですっぽりと身体を覆っているが、外套の下はかなり身軽。
なお、見た目は怪しいがわりと気さくな性格。
臨機応変に動くが、完全勝利よりは条件達成を目指す。

行動指針としては以下の3通りが主。
1.潜入・変装・尋問等で確実な情報一つの入手を試みる
 (または情報の裏を取る)
2.斥候・探索役として周囲を探り、情報収集を行う。
3.戦闘にて囮役または攻撃補助に徹する。

台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。


ミラリア・レリクストゥラ(サポート)
やや戦いの不得手なクリスタリアンの旅人です。唄を得意とし、必要であれば口だけではなく全身を震動させ発声します。また、ユーベルコードとして唄う場合は様々なサポートをします。
性格としておっとりしている所はあるものの、尊厳を卑劣に踏みにじる行為を見ると許せないと憤怒します。
ビーストマスター適性はかなり限定的で、『地母の恵み』で活性化した大地の恩恵を求め集まったものと一時的な協力関係が築かれます。
食事も呼吸も不要で、大地の放射エネルギーを糧とします。このためスペースシップワールドには適性がありながら苦手意識が強く、近寄りたがりません。

『お祝いですね!一曲唄わせてください!』
『あら?お困りでしょうか…』


レシア・ラミリィズ(サポート)
ダンピールのプリンセス、レシア・ラミリィズと申しますの
皆様どうぞよしなに

生き血を求める魔剣『鮮血剣カーミラ』を振るう剣士ですわ
魔剣の欲求に従い積極交戦致しますの

剣の意思に身を委ねる事で
わたくしの拙い腕前でも達人の如く剣を振るう事ができますの
反面、防御が不得意かつ敵味方を識別できなくなりますわ
護衛等は不得手ですわね

ほぼ全ての攻撃は【捨て身の一撃】になり
【生命力吸収】で傷を塞ぎながら戦うスタイルとなりますの

サポートは荒事専門
冒険日常は他の方にお任せしますわ

言葉遣いは上品に優雅に、されど戦は熱狂的に…
華々しく戦わせて下さいませ

尚、わたくし自身による吸血行為は全てNGと致しますの

連携アドリブ歓迎ですわ



「はあ、これはまたふざけた客だこと」
 船内に乗り込んできた子豚・牡丹の軍団を見て、ラムダ・ツァオ(影・f00001)はため息をつく。だがどんな敵であれ対処はしないと、そう思い構えたところに、さらに二人の猟兵が現れた。
「あら? お困りでしょうか……」
 ミラリア・レリクストゥラ(目覚めの唄の尖晶石・f21929)は荒事の気配を感じ取ったか、少し緊張した面持ちで尋ねる。ラムダは船を沈め、場合によっては誘拐もたくらんでいる侵入者が来たと簡潔に答えた。
「まあ、それは……いけないことですわね」
 あくまで穏やかな口調ではあるが、ミラリアの声にはっきりと怒りの色が混じる。その経歴から誘拐のような個人の尊厳を踏みにじる行為に怒りを覚える彼女に、この侵入者たちの行動は決して許せるものではなかった。
「まあ、そうですの。ああ、申し遅れました。わたくしダンピールのプリンセス、レシア・ラミリィズと申しますの。皆様どうぞよしなに」
 レシア・ラミリィズ(鮮血剣姫・f24125)が相槌を打ちながら、ふわりと自己紹介をする。そして優雅な所作を崩さぬまま、たおやかな外見にそぐわぬ禍々しき深紅の剣を抜き構えた。
「戦いますわ、わが愛しき剣が求める儘に」
 そのあまり堂に入っているとは言い難い構えから、達人の如き威圧感が振りまかれる。
 その威容から彼女が戦いの主力となり得ることを察し、ラムダは前へ、ミラリアは後ろへ、各々の得意とする間合いを取り、即興の陣形を完成させた。

「纏え」
 最初に動いたのはラムダ。敵陣に切り込みつつ、【纏衣無縫】を発動、呼び出した衣装に一瞬にして着替えた。その衣装は白のビキニ水着。昨年の水着コンテストで着用したのと同様のものだ。
 しなやかな肢体を見せる水着姿で敵陣を駆け回りつつ、細かな一撃を入れては離脱を繰り返す。案の定牡丹たちはそのラムダに引き付けられ、分身を多数展開して包囲にかかった。
 素早く多方から追い込みをかける牡丹の軍団によって、徐々にラムダが追いつめられていく。やがて甲板の縁まで追い込まれ、一斉に飛び掛かる……と思われた瞬間、包囲の後方から鮮血が巻き上がった。
「さあ、わたくしと踊りましょう?」
 その大元にいたのは、吸血姫としての姿を解放し黒翼を生やしたレシアであった。ラムダに気を取られすっかりお留守になっていた背後から、『鮮血剣カーミラ』の無慈悲な一撃にて切りかかったのだ。
 そのまま敵の群れの中に踊り込み、舞うような剣戟で次々と牡丹たちを切り伏せていく。
 一礼をするように振り下ろして縦割りにし、手を差し伸べるかのように胸の真ん中を突き刺し、抱き寄せるように首を刎ねる。【咲けや誇れや血薔薇の剣姫】、その度に噴きあがる血がレシアを濡らし、その身を赤く染めていった。
 されど、その剣は防御を省みぬ狂気の剣。投げられる手裏剣は払わず、繰り出される透明な刃はその身に赤い線を刻ませるがままにさせておく。レシアを濡らす赤に、己から流れ出たものが徐々に混ざり始めた。
「♪ Ahーーーーー.........」
 そこに響いたのが、大地を賛美するミラリアの歌声。今戦っている場所は大海原の上だが、この航海の先には未知の大地がある。その大地を目的にこの船に集った猟兵たちには、この歌声の中に何かしら通ずるものがあって当然だろう。
 そしてそれは、剣に振り回され振り回すレシアも例外ではなかった。
 見る間にレシアの傷が塞がり、流れる血も止まっていく。
 それを確認しながらミラリアは、口だけではなくスピネルの全身を震わせ、体全てが声帯になったかのようにより一層歌声を響き渡らせた。
 【地母の恵み】に満ちた歌声が朗々と響き、仲間たちの負傷を癒していく。ならばこの癒し手を封じねば、と牡丹たちは疲労を覚悟で姿を消し、回り込んでミラリアに向かおうとするが、そこに念動力で操作された白黒の刃が飛び回って行く手を阻んだ。
 ラムダの放った剣の複製が牡丹を攪乱し、嫌がおうにもその術者の存在を気にかけさせる。
 荒ぶる攻め手がいるから囮に専念できる。癒し手がいるからいつまでも自らを省みず戦い続けられる。気を引いてくれる者がいるから敵の的にならず回復を続けられる。今日初めて会い、この場でとっさに組んだだけの連携は、しかして互いを補い合う強靭なチームとして完璧に機能していた。
 やがて曲のフィニッシュを飾るかのように、レシアの大きな切り上げが真下から牡丹を両断した。それと共にミラリアの歌声もやみ、ラムダも動きを止め、二人の元へ戻る。
「いい仕事ができたよ、感謝するわ」
「ええ、皆様とても優雅で、上品で……熱狂的でしたわ」
「後でお祝いですね! 戦いのない場所で一曲唄わせてください!」
 三人の手が打ち合う音が、荒波の海に響いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
忍びの訓練をされたにしては、随分と迂闊な方々ですねぇ。
そして、オブリビオンの方々に提携先が?(ぷるぷる)

船を巻き込むわけには参りませんし、『FBS』を四肢に嵌めて飛行能力を確保、【耀衣舞】を使いましょうかぁ。
『FRS』『FSS』を「エネルギー供給」に回せば『光の結界』の出力も上がりますし、全方位を覆う『結界』を纏い、しかも『光速の突撃』中となれば多数の手裏剣であっても通すのは難しいでしょう。
幾ら忍びの方とはいえ、波の高い荒れた海に突き落とせばただでは済まないでしょうし、仮に無事でも、数を減らした後で海に向けて『FRS』の射撃で上空から追撃すれば落とせるのではないかとぉ。


葉隠・翠
【心情】むむっ!?胸に手裏剣…!?珍妙な忍び達でござる…しかし、拙者も同じ忍びとして負ける訳にはいかぬ!いざ勝負!

【作戦】手裏剣攻撃はクナイと忍者刀の【武器受け】で対処するでござる!分身してきたら【見切り】で回避しつつこちらも分身の術を用いて分身達を一体ずつ倒していくでござるよ!そして隙をつき手裏剣の雨や緑光波手裏剣で一網打尽でござる!(絡み・アドリブOK)



「忍びの訓練をされたにしては、随分と迂闊な方々ですねぇ。そして、オブリビオンの方々に提携先が?」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は子豚・牡丹たちのセリフを聞き、ぷるぷると震える。それはオブリビオン同士の協力体制を恐れてか、忍者とは思えぬ口の軽さに驚いてか。
「むむっ!?胸に手裏剣……!? 珍妙な忍び達でござる……しかし、拙者も同じ忍びとして負ける訳にはいかぬ! いざ勝負!」
 一方で葉隠・翠(緑影・f22215)は同じ忍びとして対抗意識を燃やしていた。
 珍妙な格好、奇怪な行動、いずれも相手を幻惑するための忍びの術かもしれない、そう考えれば油断などできず、むしろ忍者として一層気が引き締まるというものだ。
「ぬぬ、なんと見事な乳……これは中忍、いや上忍さえ狙えるやもしれぬでござる」
「それだと拙者たち部下にならねばならぬでござるよ」
「大丈夫でござる、拙者もちゃんと上級の忍びでござるよ! 我らは単なる分身でござるが!」
 るこるを見ながら好き勝手に言葉を交わす牡丹の軍団。どうやらその胸に自分と同等以上のポテンシャルを勝手に感じているらしい。さらに翠にも視線を移すが、すぐにとても残念そうな顔をして申し訳なさげに声を出した。
「……申し訳ないがそちらはこの度は採用を見送らせていただくでござる。今後ますますのご活躍をお祈り申し上げ候」
「いや別に拙者仲間になりたいとか一言も言ってないでござるよ!?」
 勝手な物言いに思わずツッコミを入れる翠。牡丹たちの自分の胸を見る目がとても悲しく、哀れむようなのはこの際気にしないことにした。
「ともかく、捕まるわけにも船を沈められるわけにもいきません。大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて舞を捧げましょう」
 るこるはこれ以上収拾がつかなくなる前にと、戦闘態勢に入り【豊乳女神の加護・耀衣舞】を発動する。浮遊する戦輪を四肢にはめて飛行しつつ、その身が光の結界に包まれた。
「ぬ、浮遊の術とは小癪な。されどどこに逃げようと我が術の前には無意味! 豚房流忍術、乳手裏剣!」
 牡丹たちが一斉にその胸を揺らし、巨大な手裏剣を射出する。巨大な手裏剣が高速で飛び、さらにはその軌道上で無数に分裂しるこるを襲う。
「無駄ですよぉ、てやっ!!」
 だがるこるは結界を纏ったまま突進、手裏剣を弾きつつ空中を光速で移動し、そのまま牡丹の一団へと体当たりをぶちかました。
「な、なんとぉ!?」
 たまらず吹き飛ばされ、船外へと叩き落とされる牡丹。荒れ狂う波は彼女たちをあっという間に飲み込み、そのまま海中へと沈めていった。
「くっ……こやつ、できる! 先にあちらを狙うでござるよ!」
 その状況を見て、メインターゲットを翠へと移す牡丹たち。再び胸から手裏剣を飛ばし、緑へ攻撃を仕掛ける。
「おっと、そのくらい簡単でござるよ!」
 クナイを投げて相殺し、忍者刀で攻撃を受けて凌ぐ翠。忍者として鍛えられた身のこなしは、念動力で飛ぶ手裏剣さえもその軌道を読み、先んじて叩き落とすほどの技の冴えであった。そのまま翠は次々と手裏剣を叩き落としていく。だがその手裏剣に紛れ、牡丹の一体が忍者刀を手に翠の背後へと回り込んだ。
「お命頂戴!」
 勝利を確信した声と共に忍者刀が突き出される。が、それは横から現れた別の忍者刀に阻まれ届くことはなかった。
「分身を使えるのはそちらだけではないでござるよ!」
 自信を守った分身と共に、そのまま攻勢に転じる翠。分身と連携を取り、一体一体牡丹たちを仕留めていく。
 そしてある程度数が減った所で、手に持った手裏剣に緑色の波動を籠め始めた。
「これで決めるでござるよ、切り裂け! 緑光波手裏剣! でござる!」
 放たれた大きな緑色の手裏剣が牡丹の群れを襲う。牡丹たちも手裏剣を放ち撃ち落とそうとするが、大きさも威力も段違いな緑光波手裏剣に簡単にはじき返され、威力を弱めることすらままならなかった。
「む、無念……!」
 一気に両断され、骸の海へと消えていく牡丹たち。残った者たちもその余波で吹き飛ばされ、次々と海に転落していった。
「ぬ、ぬぬ……急いで戻らねば……」
 落水するも溺れるのを免れた牡丹たちは再び船に取り付き、乗り込もうとする。が、その頭上にるこるの浮遊砲台『FRS』が回り込んだ。
「残念ですが、乗船拒否ですよぉ」
 連続した砲撃が牡丹たちを水へと沈めていく。
「任務失敗でござる……申し訳ありませぬ、上忍殿……!」
 こうして子豚・牡丹の一団たちは海の藻屑と消えたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『木影流忍者・凩』

POW   :    木影流忍法・風速移動の術
【動きが風の速度となる忍術】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    木影流忍法・木の葉の舞
【両手で印を結ぶこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【大量の刃のように鋭い木の葉の斬撃】で攻撃する。
WIZ   :    木影流忍法・木槍乱舞
レベル分の1秒で【木でできた鋭い槍】を発射できる。

イラスト:安子

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は葉隠・翠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●大海に着く
 子豚・牡丹の群れを撃退し進んでいく『黍団号』。舳先から伸びる紫の光は、やがてその終着点とも言える場所にたどり着いた。
 それは洋上に浮かぶ、巨大な紫色の光球であった。
 この光球は一体何か……詳しく調査しようと船をより近づけていくと、突如光球の中なら何者かが飛び出し、甲板の上へと降り立った。
「彼女たちは失敗したみたいね。腕は立つと思ったが所詮は他流の者、ということか……」
 静かにそういう女のいで立ちは、またしても忍者らしきそれ。だが今回は群れを成さず一人であり、それでいて先の集団をも凌駕する力量をを感じさせる圧力があった。
 女が指で印を組むと、その後ろから突如強い風が起こり、さらにそれに乗って木の葉や木片が舞い散る。
 その様はこの海域の過剰な荒波や流木も、あるいはこの女の仕業であったようにも見せるものだが、いかに強力なオブリビオンとてこれだけ広い大海を自由にする力などあるまい。恐らくは自身の能力に合った場所を戦場に選んだだけのことだろう。逆に言えば、今回も使い方次第では波や木をこちらの味方につけることもできるということだ。
「このくらいは教えてあげるわ。我が名は木影流忍者・凩、冥途の土産に覚えおけ!」
 一際強い風を呼び戦いの構えを取る凩。
 さあ、目的地はすぐ目の前にある。木影流忍者を討ち光の終着点へと辿り着くのだ!
虎熊・月霞(サポート)
「まー焦らずのんびり行こー。とりあえず昼寝しよぉ」

 面倒臭いけど、僕とーじょーってねぇ。いつもどーり野太刀でバッサリと斬り捨てちゃうよぉ?
 伊吹流から派生した雷鳴を組み込んだ伊吹"雷切"流、僕の場合は『紫電』を利用した剣術を使ってー雷の速度で近付いてー敵さんを真っ二つにするよぉ。まぁ面倒臭くなったら首刎ねちゃえばいっかぁ、そうすれば大体の生き物って死んじゃうよねぇ?
 首の無い敵さん?……うん、まぁそこは高度な柔軟かつ臨機応変に対応していこー。
 あ、あとお願いされたら他の猟兵さん達と共闘もするしぃ、お手伝いもするよぉ。ご飯一回奢ってくれるならね!

アレンジ・共闘可


護堂・結城(サポート)
『外道殺すべし、慈悲はない』
どの世界でも、外道であれば殺す
オブリビオンはただの異物、過去に終わりを迎えたものが今を生きる者に影響を与えてはならん

【世界知識・戦闘知識・野生の勘】を利用しUCを選択
戦場に合わせた【属性攻撃】を武器に纏わせる

対集団には【念動力】で【浮遊】させた無数の刀を振るい【怪力・衝撃波・範囲攻撃】

タイマンなら【怪力】で氷牙のランスをもって全力【ダッシュ】の【ランスチャージ】だ

「外道に遺言なぞいらん、疾く死ね」
「散々人を食い物にしてきた外道ならば、次は貴様が食われるのも道理よな」


アス・ブリューゲルト(サポート)
「俺の姉と妹を見なかったか?」
いつもクールに、家族と思っている二人を探しつつも、事件に参加する流れになります。
戦いや判定では、POWメインで、SPDの方がクリアしやすいと判断したら、そちらを使用することもあります。
UCも状況によって、使いやすいものを使う形です。
ヴァリアブル~は、サイボーグになってる脚部が展開し、ランチャーやら弾幕が出る雰囲気です。
他人の事は気にしない素振りを見せますが、基本、不器用なので、どう接したらいいのかわからない感じです。
ですが、合せるところは合せたり、守ってあげたりしています。
特に女性は家族の事もあり、守ってあげたい意欲が高いです。
※アドリブ・絡み大歓迎、18禁NG。



「外道殺すべし、慈悲はない」
 護堂・結城(雪見九尾・f00944)は木影流忍者・凩を前に、冷然とそう言った。彼にとってオブリビオンは常に排除すべき異物。新世界が目前であろうと、その行動に揺らぎはない。
「同意はする。だがこれだけは聞かせてもらおう。俺の姉と妹を見なかったか?」
 アス・ブリューゲルト(蒼銀の騎士・f13168)も油断なく構えながら、己にとって最も重要な事柄について凩に尋ねる。彼にとっては新天地への旅もまた、一縷の望みをそこに託してのものであった。だが凩も構えを維持したまま何も答えない。これが『知らない』という返答であることは、アスはこれまでの経験上理解していた。
「まー焦らずのんびり行こー。とりあえず昼寝しよぉ」
 二人の男が緊張感を張り詰めさせる中、それを破るように気の抜けた女の声が聞こえた。虎熊・月霞(電紫幻霧・f00285)がのんびりと、あくびをしながら前に出る。
「ま、手伝ってあげてもいいけどね。ご飯一回奢ってくれるならね!」
 月霞はそう言って、四尺はあろうかという野太刀を抜き放った。やる気の感じられない口調とは裏腹に、その構えには隙は無い。
 一瞬訪れる静寂。そしてその次の瞬間に、戦いの火蓋が切って落とされた。
 最初に動いたのは結城。『氷牙』を構え、凩めがけて一直線に突撃する。甲板を踏み抜かんばかりの足音は、そこに込められた強烈な脚力を物語っていた。
 その突進を凩は横に動いて躱すが、そこにアスのブルーブラスターより放たれたレーザーが襲い掛かる。
「早い……けれど、これなら! 木影流忍法・風速移動の術!」
 レーザーが着弾する瞬間、凩は自らの手足に風を纏い、それを動力にして高速で移動し熱線を躱した。さらにそのまま床を蹴り、まさに風の速さで三人へと迫る。
「この速さ、躱せるか!」
 そして速さを保ったままの超高速連撃。だがそれは、同等の速さで繰り出された無数の斬撃に悉く弾き飛ばされた。
「開け紫清の花、幾太刀の重斬で咲き誇れ――さぁて、僕は何回斬ったでしょー?」
 相変わらずのんびりした口調の月霞だが、その紫電を纏った斬撃は雷の如く早い。疾風と迅雷の神速での打ち合いが、船上に止まぬ閃光と轟音を轟かせる。
「速きが自慢か。だが外道に遺言なぞいらん、疾く死ね」
 止まらぬ、止められぬ連撃がせめぎ合う場所に、結城は災厄を呼び寄せた。それに呼応し速さを増して連撃を終わらせ、月霞はその場から一歩引く。
 そして災厄は巨大な土塁の形を取り、凩に向けて襲い掛かった。本来ここにはないはずの土の大波が、敵を埋め尽くさんと雪崩れ落ちていく。
「我が怒り、天地崩そうとも、この災厄とどまること許さず」
 その言葉通りとどまらぬ土の波を、凩はその側面を蹴って駆けあがる。だがいかに鍛えられた忍びであれ、流れる土の上を走るなど容易なことではない。ましてや土は凩の機動力の元である風をせき止め、その力は削がれているのだ。
「散々人を食い物にしてきた外道ならば、次は貴様が食われるのも道理よな」
 土の波に喰らわれ飲まれてしまえ、結城の冷徹な声はしかし決してただの恫喝では済まぬ、覚悟と凄味に満ちていた。
「……ならば!」
 凩はコンマ1秒にも満たぬ速さで木の槍を飛ばし、土の波に突き立てた。五行相克、木は土の力を奪う。木の槍は次々と土に刺さり、忍びにならば十分すぎる程の足場となっていった。
「面倒くさいなぁ……首刎ねちゃうよ?」
「ならば俺も合わせよう」
 月霞が連続で斬撃を繰り出し、それに合わせアスも銃撃を放つ。そのいずれもを凩は槍の上を素早く動いて躱していくが、避けるたびに槍は破壊されていき、立てる場所は少なくなっていく。そして足場がほとんどなくなった時、ついに着地しようとした槍を月霞の紫電の刃が先んじて切り落とした。
「うぬっ!?」
 早さで先回られるとは思わなかった凩が、思わず下の土に足を突っ込ませ、ついにバランスを崩す。そしてそれはアスの待っていた瞬間であった。
「撃ち貫け、イーグルショット!!」
 サイボーグ化されたアスの脚が開き、巨大な弾丸が一発撃ちだされる。それは体勢を崩していた凩の胸にまっすぐ着弾し、その体を後方へ吹き飛ばした。
「がはっ……!」
 口から血を吐きながらよろめく凩。
 これだけの大技を急所に食らいながらまだ生きているのは、さすがは上級のオブリビオンといったところであろう。だがそのダメージは到底無視できるものではない。
 凩は自身の周りに巨木を複数召喚、自身の体を押し潰すかのように自分に向かって倒れ込ませた。
 何もさせぬと氷牙、紫電、熱線が一瞬でその木の山をなぎ払うが、その後にはもはや凩の姿はなくなっていた。
「木遁の術、か。外道らしい苦し紛れだ」
 結城が吐き捨てるように言う。
 だがとどめこそ刺し損ねたが、相手に深手を負わせこの場の勝利を得たことは間違いなかった。
「そうだな……ああ、そうだ。一応聞いておくが、二人とも俺の姉と妹を見なかったか?」
 この場は収まったと見たアスは、装備をしまいながら二人に聞く。それに対し結城は黙って首を横に振った。
「ん~、知らないけど、良ければ探すのお手伝いするよ? ご飯もう一回、合わせて二回奢ってくれたらね!」
 そう言って月霞は指を二本立て、にやっと笑った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
此方の方が雇用者、ですかぁ。
邪魔をされるのでしたら、排除させていただきますぅ。

【燦華】を使用、全身を『光』に変換しますねぇ。
『光』の性質として空中を移動出来ますから『FBS』を含めた『F●S』三種は全て攻撃と防御に回し、相手の逃げ道を塞ぎつつ狙いましょう。

そして「風の速度」とは言え「光速」には及びません。
そもそも実体の無い『光』を斬れるかは不明ですが、可能性が有る以上相手の攻撃は光速で回避、停止出来ない隙に此方の攻撃を行いますぅ。
攻撃の際は「所持している『刀』」のみ変換を解除、振るう側が『光速』の特性を使えることを利用し「光速の斬撃」を「側面」や「背後」から、ですねぇ。


葉隠・翠
【心情】ぬう…戦いには勝ったのに色々負けたような…(さっき不合格と言われたのを気にして胸を見つつ)ええい!気を取り直していくでござる!…なにやら強そうな者が…木影流!?遥か昔、わが葉隠流を下したとされる自然を操る流派…その流派の者がまさかオブリビオンになっていたとは!ええい!ご先祖様たちの為にも負けられぬでござる!

【作戦】
木の葉の斬撃、槍はクナイと忍者刀の【武器受け】や【見切り】で回避し、そのまま凩に影の二閃や緑光波手裏剣を浴びせるでござるよ!
風速移動の術の時はできれば【見切り】と【残像】で避け、攻撃が止まったらその隙に敵の懐に近づきいずな落とし改を食らわせるでござる!!(絡み・アドリブOK)



「ぬう……戦いには勝ったのに色々負けたような……」
 子豚・牡丹の群れを撃退した葉隠・翠(緑影・f22215)は、しかしなぜか虚しさを感じていた。それはまるで胸の何かが満たされないような、あるいは茫洋とした何もない平原にただ佇むような、そんな虚無感であった。
 しかしそんな感傷は目の前に敵が現れたことで一瞬で消し去られる。
「……なにやら強そうな者が……木影流!?」
「此方の方が雇用者、ですかぁ。邪魔をされるのでしたら、排除させていただきますぅ」
 驚いたような声と共に構える翠の隣で、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)も今までよりも緊迫した面持ちで、油断なく兵装を展開する。ここにいる敵は先ほどの軍団とは格が違う、猟兵としての経験が二人にそう告げていた。
「木影流……遥か昔、わが葉隠流を下したとされる自然を操る流派……その流派の者がまさかオブリビオンになっていたとは!」
 翠が目の前で名乗った木影流忍者・凩を見て声を荒げる。木影流、それは緑の光や炎を忍術に取り込んだ葉隠流とは異なり、木と風、自然現象の操作に特化した似て非なる流派。二つの流派はかつて争い、木影流が勝利を収めた。葉隠流は絶やされる事こそなかったが、その屈辱はいかばかりか。そしてその末裔が今度は猟兵とオブリビオンとして相まみえる、この運命を何と表するべきか。
「葉隠流……? なるほど、まだ消えていなかったとはね。ちょうどいいわ、ここでその命脈を絶ってあげる」
「ええい! ご先祖様たちの為にも負けられぬでござる! 葉隠流忍者緑影、参る!」
 猟兵として、葉隠流忍者として、負けられない戦いが始まった。
「それじゃあまずは小手調べね。木影流忍法・木の葉の舞!」
 凩が両手で印を結ぶと、その周囲に大量の木の葉が舞い散る。それらは凩が巻き起こす風に乗って縦横に舞い、その縁を刃のように鋭くして翠とるこるに襲い掛かった。
 翠はクナイと忍者刀を振るい、その木の葉を次々と切り裂いていく。その速さは風に乗る木の葉を完璧に捕らえ、まさに疾風の如し、と表すにふさわしいものであった。
「大いなる豊饒の女神、その象徴せし欠片の一つを我が身へ」
 るこるもまた【豊乳女神の加護・燦華】を発動。その身を光へと変え、非物質となって木の葉を躱す。さらには兵装部分だけは元に戻し、『FBS』での切り裂きに『FRS』での砲撃、『FSS』での防御と三種兵装をフル稼働し相手の攻撃を無力化していった。
「なるほど、昔よりはマシになったようね。なら今度はこれよ。木影流忍法・木槍乱舞!」
 次いでコンマ以下の速度で連射られる木の槍も、二人はそれぞれに迎撃し、躱す。
「なればこちらも、切り裂け! 緑光波手裏剣!」
「通りませんよぉ!」
 緑の光を籠められた巨大な手裏剣が木の槍を纏めてなぎ払い、それによって貫通力を失った槍は全て『FSS』に弾かれていく。お遊びは通じない、二人の鉄壁の対応は凩にそのことを知らしめるには十分すぎる程であった。それが証拠に、槍の連射を止めた凩の顔に笑みはもうなかった。
「……分かったわ。ならばもう手加減は無し。来なさい猟兵、そして葉隠流。木影流忍者・凩、参る! 木影流忍法・風速移動の術!」
 凩が全身に風を纏い、その速さを己のものにする。そして瞬時に突風の如く翠に詰め寄り、その体を一閃した。
「……残像にござる」
 切り裂かれた己の姿の逆側から、翠の忍者刀が凩に向けられる。しかしそれも返す刀で軌道を変えられ、続けざまの斬撃が翠の姿をまた切り裂く。
 風速の連撃と現れては消える残像、余人には視認しえぬ忍びの戦いは、しかしもう一人の猟兵には捕らえ能うものでもあった。
 るこるは光となった体で凩に迫り、その攻撃の合間をついて所持している刀のみを実体化させる。
 風と光、どちらが早いかは明白であり、いかに熟練の忍びであれどその攻撃を躱しきることは難しかった。
 この割り込みを、凩は卑怯とは言わない。人数がいるならそれは活かすべきであり、勝つために全てを用いるのは至極当然のこと。翠もまた、宿敵である木影流との戦いに猟兵の仲間と共に挑むことを、頼もしく感じることこそあれ厭うことはなかった。
 るこるは二人のその意思を感じ取り、躊躇なく凩の背後に回りこんで、その刀を突き出した。光速の斬撃は止められぬ連撃の隙間を突き、凩の動きを一瞬止める。
「翠さん……今です、宿縁を終わらせてください!」
 るこるの声を受け、翠は両足で凩の体を挟み込んだ。そのまま空中へと飛び上がり、体をひねって上下を入れ替える。
「葉隠流の技、受けてみよ! つかんで! 捻る! でござる!」
 先祖より受け継いだ技に想いを籠め、【いずな落とし改】が放たれる。
 轟音を立て、古きから続く因縁を断ち切るかの如く、凩の頭部が黍団号の甲板へと突き立てられた。
「見事なり、葉隠流。見事なり、忍者緑影……! 無念……!」
 自らを倒した相手を一言称え、忍びらしく屍を曝すことなく、凩は風となって消滅した。
 るこるは光の姿から戻り、その風に撫でられながら翠を見る。
 そして翠は頼もしき仲間に一度頷きを返した後、忍者刀を持った手を高く突き上げた。
「……木影流破れたり!」
 ここに遥か過去より続く二つの流派の戦いと、一人の猟兵と一人のオブリビオンの宿縁が終わりを告げた。
 二つの因縁を切り裂き、黍団号は未知なる地へと進む。
 新天地までは、あともう少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月20日
宿敵 『木影流忍者・凩』 を撃破!


挿絵イラスト