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止海の脅威~ツジギリトビウオ襲来~

#サムライエンパイア #【Q】 #鉄甲船

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#【Q】
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●冒険への誘い
 一隻の船がある。大きな船だ。その船体は鉄板で覆われ威容を放っている。
 鉄甲船。かつてこの国を滅ぼさんとしたオブリビオンフォーミュラー、織田信長の手の者により生み出された暴虐の船は、しかし猟兵達によってそれを阻止させられた。誰の命を奪うことなく終わりを迎えたかの船は、同じ猟兵達の手によって引き上げられ、命を奪うはずだったサムライエンパイアの民の手により生まれ変わり、『現在』を塗りつぶす『過去(のろい)』から解き放たれた。
 そして今、船は新たな『物語(みらい)』を紡ぎ始める。
 船は港に係留されていた。沖へ向けられたその艦首からは不可思議な紫色の光が発せられ、途切れることなく水平線の向こうへと伸びている。ある日突如として起きた謎の発光現象。それはまるで何者かの導きのようだった。
 「銀翼女鹿丸」、そのように名付けられた船は外なる海へ、この光の謎を解くべく旅立つ仲間を待っていた。

●静なる海、動なる魚
「お手隙の猟兵の皆さん、お力をお貸しいただけませんか?」
 グリモアベースで真月・真白(真っ白な頁・f10636)が声を上げる。その声に足を止めた猟兵へ真白は礼を述べると本体である本を開き説明を始めた。
「鉄甲船、という船をご存知ですか?」
 サムライエンパイアで起きた戦いの折に回収された船舶、それに異変が起きた。突如として全ての鉄甲船船首から紫の光が放たれたのだ。恐らくその全てが同じ場所を指示している。
「光の先に何があるのか、それを皆さんに調査してほしいのです。ただ、サムライエンパイアの外洋には一筋縄ではいかない危険が潜んでいます」
 海洋災害とでもいうべき脅威は容赦なく鉄甲船を襲う。猟兵達はそれに対処しながら航海を続ける必要があるだろう。
「皆さんに乗り込んでいただきたい鉄甲船。『銀翼女鹿丸』の航路に待ち受けるのは、止海と呼ばれる海域です。そこはとても静かで穏やかな海なのだそうです」
 そう聞くととても災害と呼べる場所とは思えないが、何かがあるのだろうと油断しない猟兵達に真白は言葉を続ける。
「穏やかと言えば聞こえはいいのですが、その海域では風が吹かないのです。いえ、正確には風は吹いているそうなのですが風同士がぶつかり合い事実上の無風になっているのだとか。つまり帆を使っての航海が難しくなります。また止まっているのは風だけではなく海流もです、これも潮の流れ同士が干渉しあい事実上流れが生まれていません」
 船にとっての足となる力が失われた海域、まさに止海にして死海、そういう場所なのだという。
「そしてこの海域には特殊な魚が生息しています。海の上に跳躍で飛び出し、発達したヒレで滑空する……」
 トビウオという奴か、と猟兵の一人が頭に思い浮かべた。
「……そして頭についているまるで刀のような鋭い突起で船や船乗りを突き刺し切り裂く。人読んで『ツジギリトビウオ』という危険生物です」
 俺の知ってるトビウオと違う……しょんぼりする猟兵。
「鉄甲船自体は櫂もありますし船員も乗り込むので風や海流が無くても全く進めないわけではありません。また名の通り鉄板による装甲もあるのでツジギリトビウオによるダメージもある程度防げるでしょう」
 だがそれでは時間もかかるし船員達に余計な疲労や被害をもたらす。猟兵達の手で『進まない船』と『飛んでくる危険な生物』の二つに対処する必要があるだろう。
「また道中ではオブリビオンが出現します。海洋災害に対処しつつオブリビオンと戦う必要も出てきます」
 最も、海洋災害は別にオブリビオンに味方しているというわへではなく、分け隔てなく影響を与えるので、もし利用できるならそれはそれで対オブリビオン戦に有利に働くだろう。
「サムライエンパイアは、外洋の先には何もない世界だと思われてきました。けれど、そこには『物語(何か)』がある。新しい『物語(出会い)』が貴方達を待っているのでしょう。どうか、それを見つけるために未知なる海を切り拓いてください。よろしくお願いします」
 本を閉じた真白は、集まった猟兵達に深々と頭を下げ転送の準備を始めた。


えむむーん
 閲覧頂きありがとうございます。えむむーんと申します。

●シナリオの概要
 冒険、集団戦、ボス戦のシナリオフレームです。
 鉄甲船の導きに従い、サムライエンパイアの外洋へ冒険に出かけましょう。
 海洋災害と呼ばれる危険が皆さんを待ち受けます。今回の災害は大きく二つ。
 1.風も海流も無い海で船の進みが遅くなる。
 2.動きがのろいいい的になった船へツジギリトビウオという危険な魚が飛び込んでくる。
 ツジギリトビウオはOPにも書かれているように鋭い突起を頭にもっていて、人体や木材なら簡単に突き刺したり切り裂いたりできます。鉄甲船の装甲でも場合によっては傷つけられるレベルです。
 船の進みを早くする対策や、ツジギリトビウオをどうにかする対策をお願いします。プレイングでは『魚』と一文字で書いて頂いて構いません。
 二章、三章でもこの海洋災害は続き、その中でオブリビオンとの戦いとなります。一章に引き続く対策や、逆にオブリビオンが海洋災害に巻き込まれるような作戦は有効打となるでしょう。

●合わせ描写に関して
 示し合わせてプレイングを書かれる場合は、それぞれ【お相手のお名前とID】か【同じチーム名】を明記し、なるべく近いタイミングで送って頂けると助かります。文字数に余裕があったら合わせられる方々の関係性などもあると嬉しいです。
 それ以外の場合でも私の独断でシーン内で絡ませるかもしれません。お嫌な方はお手数ですがプレイングの中に【絡みNG】と明記していただけるとありがたいです。

 それでは皆さまのプレイングをおまちしております、よろしくお願いします!
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第1章 冒険 『脅威の海洋災害』

POW   :    肉体の力で体力任せに海洋災害に立ち向かいます

SPD   :    素早い行動力や、操船技術で海洋災害に立ち向かいます

WIZ   :    広範な知識や、素晴らしいアイデアなどで海洋災害に立ち向かいます

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルナ・シュテル
この導きの先に果たして何があるのか。興味は尽きないところですね。

さて、海洋災害への対処ですが。
止海への対処は他の方にお任せするとし、私はツジギリトビウオへの対処を。
銃火爛漫にて呼び出した簡易量産機を鉄甲船の縁に配置、それっぽい魚が飛び出してき次第内蔵機銃で撃墜するよう指示しておきます。
私もAnti-Aresを用い迎撃に尽力を。特に、船員の皆様が傷つけられることのなきよう重点的に警戒できればと。

後は余力あらば、船内に飛び込んだ後に仕留められたトビウオを捌いて【料理】できないか試みてみようかと。あれだけの動きをする魚、身は引き締まっていそうに思いますがどうでしょうか。



●ご奉仕開始
「この導きの先に果たして何があるのか。興味は尽きないところですね」
 穏やかに進む船の縁に手をかけて、船首から伸びる紫光を見つめ呟くのはルナ・シュテル(Resonate1120・f18044)だ。鼻腔をくすぐる海独特の趣がある潮風に、二つに分けられた淡い紫髪が踊る。純白のスーツに包まれたその体は、女性らしい豊かさを保ちながらも神秘的な程に美しく白く、そして前方を見つめる前髪から覗くその瞳は対照的に赤く際立っていた。
 どこか人間離れした雰囲気を漂わせる彼女は船乗りの男達の興味を引いた。海岸の漁村で海と太陽と共に生き続けた彼らは冬にあっても尚健康的な褐色の肌をしていて逞しい。村の女達も海にこそ出ないが似たようなものだ。故にルナの美貌は眩しく映った。彼らは口々に、あれが東北のモチ肌娘だろうか、いやいやことによると雪山に住む雪女という奴かもしれん。なぁに人だろうが物の怪だろうが構いやしねぇ、あちらにおわすは上様より天下自在府を戴いたいぇいがぁ様だ。俺達の救い主の頼みに応えない海の男なんざいるものかよ!
 そのような益体も無い雑談が耳に届いたのかは定かではないが、表情一つ変えずにいたルナの眉がぴくりとあがる。二つ髪の踊りが終わった。凪だ。
 船乗りたちは慌ただしく動き始める。止海に入ったぞ! 帆を降ろせ! 櫂を出せ!
「さて、海洋災害への対処ですが」
 船の縁からいつの間にか波一つ立たなくなった海面を見つめ続けるルナ。止海への対処は他の者に任せて現れるであろうツジギリトビウオへの警戒を強める。
「標的、確認しました」
 凪いだ海面が僅かに揺らいだ、それは徐々に数と勢いを増す、日差しを照り返し銀に輝く海面から飛び出す影がある。まるで刃のように鋭く尖った頭部突起を持つ魚、ツジギリトビウオの群れだ。
「LNA-1120より応援要請。ルナ・トルーパーズ、出撃願います」
 ルナの、否LNA-1120とナンバリングされた高機能型バイオロイドからの要請を受けて、何処からともなく無数の人影が現れる。それはルナによく似ているが、比較してみると彼女より小柄な印象を受ける。
「LNA-1120よりの応援要請受諾しました。ルナ・トルーパーズ現着。指示願います」
 そのうちのの一人が発する言葉にうなずくルナ。
「全機、内蔵火器にて接近する脅威群、識別名称ツジギリトビウオの迎撃及びせん滅願います。私たちの存在意義を実行してください」
「了解しました。火器フルオープン。私たちの存在意義は人類への奉仕です」
「「「「「「誠心誠意ご奉仕致します」」」」」
 ルナ・トルーパーズは全機一斉に首筋から胸元までスーツを開く。露わになるルナと変わらぬ白い肌の鳩尾には機械的なレンズが在った。次に彼女達は両腕を前に突き出す。染み一つ無いその腕に唐突に亀裂が生まれ、展開する。武骨な銃口が顔を覗かせた。
 迫りくるツジギリトビウオの大群へ、ルナ・トルーパーズ各機の溝尾からビームが、両腕の機関銃から無数の実弾が放たれる。雨あられと降り注ぐそれに、跳躍して空中にあったツジギリトビウオが幾匹も薙ぎ払われ蜂の巣にされ、紺碧の海は瞬く間に朱に染め上げられていく。
「す、すげぇ……雪女じゃなくて絡繰りのねえちゃんだったのか……おわっ!?」
 ルナ・トルーパーズの猛攻に船員の一人が思わず足を止めて見惚れていると、急に腕を引っ張られ体勢を崩す。そして今さっきまで彼の頭があった場所を一匹のツジギリトビウオが通り抜けた。
「緊急事態につき失礼いたしました。お怪我はありませんか?」
「あ、あぁ、助かったよありがとう」
 船員はどこかぼんやりした様子で此方を見るルナへと礼をする。彼女が咄嗟に腕を引っ張り助けてくれたのだ。
 ルナ・トルーパーズによりツジギリトビウオの大半は船に辿り着くことなく倒されている。しかし運よく銃弾の間隙を突いた個体や、直前まで海中に没し不意に飛び出した個体等が僅かに甲板へと飛び出してきたのだ。ルナはその可能性を考慮に入れていて、船員が傷つけられぬように重点的に警戒を行っていた。そのおかげで船員をあわやという所で助ける事ができたのだった。
「私も迎撃に尽力を」
 ルナは船員を掴んでいない方の手を突きだす。ひらかれた五指の先端から暗い赤色の光線がほとばしった。それはルナ・トルーパーズの弾幕を超えてきたツジギリトビウオ達を的確に襲う。その危険な先端部を。
 象徴ともいうべき突起部を失い、もはやただのトビウオと化したツジギリトビウオ達は虚しく甲板でのたうつ。
 片手のレーザーで次々に飛び込んできた個体を攻撃しながらルナは一匹手に取ってみる。
「あれだけの動きをする魚、身は引き締まっていそうに思いましたが予想通りでしたね」
「本当かい? どれどれ……へぇ、なるほど、こいつぁ美味そうだな。おい! 手空いてる奴は手伝え! 絡繰りのねえちゃんが何とかしてくれたトビウオを生け簀に放り込むぞ!」
 ルナに助けられた船員も興味深そうにのぞき込むと彼女の考えに同意を示す。長き時を海に抱かれて育ったサムライエンパイアの民にとって、海の生き物はまず基本的に食べられるかどうかが重要なのである。
 船員の命を守るだけでなく食糧確保も出来ると、ルナとルナ・トルーパーズ達のご奉仕には更に熱が入るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

幻武・極
へえ、風も海流もないなんて航海じゃ積んでる状態じゃん。
でも、実際にはないわけじゃなくて、±0になっているってことでしょ。
じゃあ、そこに新たな流れを作ったらどうなるかな?
トリニティ・エンハンスで攻撃力を強化して、風の魔力を纏った一撃を帆を目掛けて撃ち込むよ。
ボク自身の攻撃じゃ、船は動かないけど、力が拮抗している所に新たな流れが生まれれば、拮抗していたバランスが崩れ、溢れた風が船を押してくれるはずさ。
まあ、大自然の大きな力に干渉するんだから、初撃は限界突破する必要がありそうだけどね。



●穿つ風
 猟兵の助力によりツジギリトビウオによる被害は殆ど抑え込まれていた。だがもう一つの海洋災害、止海たる無風無海流海域は以前として船に大きな影響を与えていた。船員達も櫂を繰っているが、元々大きな船である事に加え、鉄甲を纏っている事が災いしその歩みは遅い。
「へえ、風も海流もないなんて航海じゃ積んでる状態じゃん」
 幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は深刻な内容をしかし焦りの色など一切含まぬ声色で言った。不敵に笑い細められたその赤い瞳には燃え盛る炎が宿っていた。この難事も最高の武術を追い求める彼女にとって丁度よい特訓なのかもしれない。
 周囲に視界を配る。無風な状態において無用の長物となってしまった帆を降ろそうとしている船員達の姿が映り込む。
「おーっと、ちょっとまってもらえる?」
「おわ!? アンタいつの間に!?」
 不意にすぐ傍で声をかけられて驚いた船員は音も無く忍び寄っていた極に驚いて目を白黒させた。
「風が吹かないから帆をしまおうとしてるんだよね? でも、実際にはないわけじゃなくて、±0になっているってことでしょ」
 じゃあ、そこに新たな流れを作ったらどうなるかな? 極の言葉に意図が理解できず首を傾げる船員。すると共に帆を降ろしていた別の船員がはっとした顔になる。
「羅刹の嬢ちゃん、アンタなら風を吹かせられるってことかい? いぇいがぁの妖術とかそんなので」
「ふふふ、ボクの武術を見せてあげるよ!!」
 この止海で風が吹かないのは風同士が絶妙なバランスで拮抗してしまっているから。ならばそこに新たな風が吹き付ける事でその拮抗を崩せる。もちろんそれほどの風を生み出すには並の手段では不可能だ。人間が仰いだ所で無駄だろう。けれど、極ならば、彼女ならば。
 船員達に離れるように指示し、極は構えを取る。瞳を閉じ呼吸を整え己が内にある魔力を練り上げ始める。
 己の進むべき道を見失い行き詰っていたかつての極。その彼女に天啓を与えた不可思議な夢の旅路にてさまざまな武術に触れた極は最高の武術に至る為二つの流派を習得した。今回用いるのは魔法拳の方だ。
「……っ!」
 全神経を集中させる極。知らぬ間にその額からは玉の様な汗が伝う。やがて握りこんだ拳の周りに風が起きる。ふわり。極の鮮やかな青髪が揺れた。
「っ! はあああっ!!」
 開眼。極の拳は帆に向け突きつけられる。そこから放たれるは虚空切り裂くつむじ風。螺旋描く風の刃は
力なく垂れていた帆を大きく膨らませる。
「(ボク自身の攻撃じゃ、船は動かないけど、力が拮抗している所に新たな流れが生まれれば、拮抗していたバランスが崩れ、溢れた風が船を押してくれるはずさ)」
 極の思惑通り、彼女の生み出すつむじ風を中心に、今まで全く感じる事の無かった風のうねりが現れだす。鉄甲船の帆はそれも受け止め、船の速度が徐々に増し始める。
「っ、は、はぁ、はぁ……」
「おおお! すげぇぜ、流石はいぇいがぁだ! だが大丈夫か?」
「はぁはぁ……大自然の大きな力に干渉するんだから、んっ、初撃は限界突破する必要があったのさ。ふぅ……うん、大丈夫、息も整った」
 ただ、極の干渉が終れば時間を置いて再び風は消えてしまう。彼女は再び構え次の一撃を放つ準備に入るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ポノ・エトランゼ
風も海流も無い航海。まさに人力……!
外洋の先にどんな世界が待っているのかしら
楽しみね

【WIZ】
話を聞くに風と風が牽制しあっているのかしらねぇ……

船員さんたちの体力も心配だし、ここはUCを使って風を起こしてみましょう

突風とか、風の津波とかどうかしら
帆にあたるように風を吹かせてみるわ
船を痛めるわけにもいかないから、暴走させないよう気を付けるわね

基本仲間にお任せするけど、魚の対処はエルフボウで射落とし
って、生け簀でちゃんと食糧として備えられてる……!
海の人は逞しいわね~

あ。バディペットのニワトリを放しても大丈夫かしら?
朝には卵を産んでくれるだろうから食糧として提供
木箱に、藁を敷いて寝床にしましょう



●踊る風
「風も海流も無い航海。まさに人力……!」
 慌ただしく作業を続ける船員達を見つめるポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)はこれから始まる冒険に期待と興奮に胸を膨らませていた。
 そのアメジストの宝玉を思わせる瞳は、船首から真っすぐに伸び水平線の彼方へと消える光を見つめていた。
 深く佇む紺碧と澄み透る玻璃。そしてその紺碧を割り進む木と鉄。ここには彼女の故郷とはまた趣の違う自然と造られたものの調和が在った。
「外洋の先にどんな世界が待っているのかしら
楽しみね」
 沸き立つ気持ちを隠さず笑顔を見せながらもポノの両手はエルフボウで的確にツジギリトビウオを射落としていく。例え視線が別の方を向いていたとしても、エルフ特有のその大きな耳は僅かな水音を、そして風を切り裂く滑空音を聴き逃す事はない。
「海の人は逞しいわね~」
 他の猟兵が落した物も含めてツジギリトビウオを船員が生け簀へ食糧として蓄えていくのを見て感心して一言。
 とはいえいくら逞しくとも船の動力を続けるのは厳しいだろう。船員達の体力を心配したポノはツジギリトビウオの迎撃をある程度他の猟兵に任せる事にする。
「話を聞くに風と風が牽制しあっているのかしらねぇ……」
 ポノは、他の猟兵が風の均衡を崩して風を吹かせたのを見て己の推測が正しいと確信を抱く。
「突風とか、風の津波とかどうかしら」
 ポノの美しく白くて細い指が中空を踊る。その動きに合わせて放たれた魔力は波打つ動きを取り、周囲の空気がまるで滑るようにそのラインにそって蠢動を始める。
 波打つような風の流れはポノを取り囲み、緑の衣服と金色の髪を揺らす。一回り。二回り。ポノの周囲を風が駆けまわる度にそれは強く大きく激しくなっていく。そして十分に大きくなったところでそれは放たれた。
「お邪魔するわね、貴女はそっちよりこっちを走った方がいいんじゃないかしら?」
 ポノの魔力によって生み出された風の津波ともいうべき波打つ突風が帆へと激突する。風同士の均衡が更に崩され、まるで追従するように、あるいは引き寄せられるように帆を膨らませる風の流れが生まれていく。
「帆を痛めるわけにもいかないから暴走させないよう気を付けないといけないわね」
 中々根気のいる作業になりそうだ。ポノは船倉にいるはずの相棒たる鶏、コタマエッグランティア1世の事を思いながら気合を入れ直す。マイペースな相棒の事だ、この騒ぎの中でも出港前に作った寝床(木箱に藁を敷いた物)の中でのんびりしているのだろう。
 相棒は朝には卵を産んでくれるだろう。船の上で相棒の玉子を食す事を楽しみにしながらポノは風津波の制御にいっそう神経を集中するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
銀翼女鹿丸
あなたの銀の翼が海の蒼に羽ばたく為に水流をつくる

船を引き上げた時のように【白銀の仲間】で巨大水竜を呼び出す
覚えてる、あの時の様に船をゆっくり押し上げ進ませて?

船員の人達の中に、引き揚げの時に見知った人がいたら挨拶

ん、船の下に位置取る水竜がかきわける力で水流を発生させてみる
だけど、波に乗るのは船の力が何よりも必要

障害するものもあるけど、それはわたし達に任せて
船も、皆もしっかり守り、退治する

船頭に幅広の大剣にした灯る陽光を立て
そこからオーラ放出
船全体を薄らオーラで纏い拠点防御
第六感も働かせ、トビウオが突撃する箇所にオーラを移動させ守りを厚くする

さあ、飛び立って
初めての海へ、未来へ向かって



●踏み出される一歩
 時は出向前に遡る。
「お久しぶり、今回はよろしく」
「おぉ、あの時のいぇいがぁ殿!」
 木元・杏(杏どら焼き・f16565)は船の周りで準備をしている中に、以前鉄甲船引き上げ時に居た兵士を見かけて声をかけていた。幕府が徴取した鉄甲船には、生粋の船乗り以外に兵士も乗り込むようだ。
「障害するものもあるけど、それはわたし達に任せて」
 船も、皆もしっかり守り、退治する。兵士は自分の子供と同じくらいの少女がする宣言を笑うことなく首肯を返す。
「我々も全力でご助力いたしますぞいぇいがぁ殿!」
 そして今、杏は有言実行していた。ツジギリトビウオが飛び交う中、彼女は船首へと走る。肩にかかる程度に伸ばした黒髪は、それを彩る髪飾りと共に彼女の挙動に合わせて弾み踊る。
 他の猟兵達の手が回らぬ個体、船員へ襲い掛からんとする個体へその手にある白銀の輝きを振り抜く。非物質たる変幻自在の刃はツジギリトビウオを一切の抵抗なく両断し、また振られる度に舞い散る花弁の如く舞い散る暖陽の彩が貫いていく。
「かたじけない、いぇいがぁ殿!」
 出向前に挨拶した兵士が援護をしてくれた杏へ感謝を述べつつその槍でツジギリトビウオを串刺しにする。その姿を横目でみつつ、ん、と吐息を吐く様に返事をした杏。奔る勢いを乗せて船首までの残り距離を一気に跳躍した。
 和と洋を融合させた黒を基調とした彼女の装い。そのスカートの裾を空いている手で押さえつつ落下し船首に着地した杏は、愛剣たる灯る陽光を大剣に変えて置く。
「お願い」
 主の声に白銀のオーラが船全体を包むほどの大きさへと広がる。ツジギリトビウオの突進を完全に防げはしないが勢いを殺し対処を用意にした。さらに危険を感じた個体には杏の支持でより強固な集中させた守りを展開する。
 他の仲間の対策と合わせてこれでツジギリトビウオに関しては問題ないだろう、と一息つく杏。次の問題は移動速度だ。杏は変わらず紫光を放つ船首を撫でる。
「銀翼女鹿丸。あなたの銀の翼が海の蒼に羽ばたく為に水流をつくる」
 瞳を閉じる杏。その脳裏に描くは海の中。頭上に影が差す。見上げればそこには大きな木の塊、この船の底だ。『あの時』押し上げてあげた死せる鉄と木の塊。あの時生まれなおした水の子。『もう一度あの時の様に助けてあげよう』
「……静かにね」
 微笑み瞳を開く杏。船の下には巨大な白銀の影が泳ぐ。彼女の異能が生み出した彼女の仲間。巨大水竜がその巨体をくねらせ、ゆっくりと優しく推し進ませる。
「ん、ありがとう。波もお願い」
 巨大水竜が海をかきわけると水流が発生し始める。
「だけど、波に乗るのは船の力が何よりも必要」
 杏の防御により余裕が出来て彼女の元へ駆け寄ってきた兵士へ告げる。その言葉を聞いた兵士は船乗り達へ声を張り上げる。
「お前達! いぇいがぁ殿が波を作ってくださっているぞ! 風もある! さぁ船を進ませるのだ! 船乗りとしての意地を見せて見よ! 止(死)の海何するものぞ!」
 船乗り達は各々が、おお! と大きく声をあげて作業に取り掛かる。
 世界の敵となるべく産み落とされ一度死し、再誕を果たした銀翼女鹿丸。そこに船乗り達という魂が入れられ今こそ新たな役目を果たさんと一歩を踏み出した。
 そんな船の船首で、紫光の先を杏は見つめ続けていた。
「さあ、飛び立って。初めての海へ、未来へ向かって」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『水晶宮からの使者』

POW   :    サヨナラ。
自身に【望みを吸い増殖した怪火】をまとい、高速移動と【檻を出た者のトラウマ投影と夢の欠片】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    夢占い
小さな【浮遊する幻影の怪火】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【鍵の無い檻。望みを何でも投影する幻影空間】で、いつでも外に出られる。
WIZ   :    海火垂る
【細波の記憶を染めた青の怪火】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。

イラスト:葛飾ぱち

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●止海を征く
 旅は概ね順調だった。サムライエンパイアの港を出発して既に数日が経過している。その間海洋災害は常に銀翼女鹿丸を襲った。風も海流も無い止海にて、止まる事無きツジギリトビウオの襲来。
 けれど同乗した猟兵達がしっかりと対策をとり、交代しながら対処することで被害はほぼ無い状態を維持できていた。
 さらに持ち込まれた食材と、猟兵の一人が連れてきた愛鳥たる鶏が生む新鮮な玉子と、なにより引き締まった身を持つツジギリトビウオが無限に供給される事で、猟兵はもとより船員や兵士達の健康も全く問題なかった。
 故に次に船を襲った試練は全く別な物となった。
 ある夕暮れの事だった。沈みゆく日の光に一面が茜色に染め上げられる中でも、決して色を失う事無い不可思議の紫光。そこから突如として、何の前触れも無く無数の影が飛び出した。
「バケモンだ! バケモンが出たぞ!」
 船員達の叫びに猟兵達は即座に甲板に集まる。そこで彼らが見たものは、空中をふわふわと漂うクラゲの様なオブリビオンだった。船員達を退避させながら戦闘準備を始める猟兵達の目の前で、オブリビオンの一部が飛び込んできたツジギリトビウオに切り裂かれた。海洋災害はこのオブリビオンとは無関係なものなのか、その影響は猟兵、オブリビオン双方にかかるのだろう。
 ならばこれまで通りにきちんと対策をしつつ戦う。あるいはいっそこれを利用してオブリビオンに害を与えつつ戦う事で、この場の戦況を非常に優位に持っていくことが出来るだろう。
 猟兵達は各々ツジギリトビウオをどうするかと考えつつオブリビオンへと立ち向かうのだった。
ポノ・エトランゼ
そういえばトビウオって逃げるために跳ぶんだっけ?
船や人を襲うのは凶暴性もあるんだろうけど、防衛本能っていうのもあるのかな?
……と、航海中に魚の観察をしとくわね
何やら親しみを感じつつあるのよね。美味しいし

護符揃えに『ツジギリトビウオ』って書いた護符をバディペットに貼る
こう、魔法的な感じで擬態できないかしら、って考えで【変装】ね

あとは【ブームの仕掛け人】!
さあ行くのよコタマエッグランティア1世!
羽撃きの弾丸で魚さんたちと一緒にばんばん敵を攻撃してね
それこそ敵UCを打ち砕く勢いで

私も弓矢で応戦しながら船員さんを守るわ
魚さんたちがブームに乗ったら、きっと揃った動きになって綺麗なんだろうなぁとか思ったり


ルナ・シュテル
あれは…どちらかといえば、精神を損ねてくるタイプのオブリビオン、ですね。
船員の皆様はお下がりを。これは、私達が対処すべき脅威です。

再び銃火爛漫を発動、トルーパーズの半数には引き続きツジギリトビウオへの対処を、もう半分にオブリビオンの迎撃をそれぞれ指示します。
私も前に出て、Anti-Aresでの攻撃を。敵は仲間の治療が可能なようですので、適宜トルーパーズに指示を出し、攻撃を集中させ回復される前の撃破を狙ったり、回復を行った個体を優先的に狙うなどして確実に敵数を減らしていこうかと。
船に近い敵を優先的に撃破し、残る敵を海上に留めておければ、トビウオの狙いをそちらに向けさせることも可能でしょうか。



●銃弾によるご奉仕
 ルナの瞳が冷静にオブリビオンの体を見通す。
「あれは…どちらかといえば、精神を損ねてくるタイプのオブリビオン、ですね」
 であれば、と現状でとれる最善の行動を瞬時に判断したルナは、ふよふよ漂うオブリビオンの群れを警戒する船員達の前に立つ。
「船員の皆様はお下がりを。これは、私達が対処すべき脅威です」
「すまねぇいぇいがぁのねえちゃん。その代わり俺達は命にかけて船を進ませるぜ! そっちは任せてくれ!」
「かしこまりました。誠心誠意ご奉仕させていただきます」
 船員達が投げかける言葉を背に受け彼らを守る決意を強めるルナは再びルナ・トルーパーズを召喚する。
「半数は引き続きツジギリトビウオへ対処を、残りは私と共にオブリビオンの迎撃を願います」
 ルナの支持を受諾したトルーパーズは迅速に二手に分かれる。一団は手慣れたように船に近づくツジギリトビウオを撃ち落とし始める。残りはルナの周囲に展開し浮遊するオブリビオンへ射撃と砲撃を始めた。
 抵抗もせずに次々に撃ち抜かれていくオブリビオン。しかし別の個体が近づき、その触手に青の怪火を灯して傷口を一撫ですると、まるで映像を巻き戻したかのうように傷が消えてしまう。
「……なるほど、オブリビオン迎撃部隊各機へ通達。敵は仲間の治療が可能なようですので、攻撃を集中させ回復される前の撃破を狙います。私のマーカーを情報共有しますので集中攻撃願います」
「了解いたしました」
 ルナの指示により、それまで広範囲に広がっていた火線は狭まり、確実に一体ずつオブリビオンを屠っていく。
 一方船へ迫るツジギリトビウオを迎撃していた方も戦果を挙げていたが。
「……味方識別マーカーを検知、あれは友軍です」
 一部のツジギリトビウオを意図的に砲撃から避けていた。その理由は。
「さあ行くのよコタマエッグランティア1世!」
 トルーパーズがスルーしたツジギリトビウオ集団の先頭へ声援を送るポノ。すると魚であるはずのそれは
「コケコッコー!!」
 と元気よく返事を返したのだ。

●羽ばたけコタマエッグランティア1世!
 話は数日前に遡る。他の猟兵と交代し非番なポノは相棒のコタマエッグランティア1世と共に海を眺めていた。視界の先には空を舞うツジギリトビウオの群れがある。
「そういえばトビウオって逃げるために跳ぶんだっけ?」
 ごく一般的なトビウオに関して彼女が見聞きした事をふと思い出す。ではあのツジギリトビウオはどうなのか? 船や人を襲うのは凶暴性もあるのだろうが、防衛本能もあるのだろうか?
 ふと湧いた疑問はポノの中で大きく膨らみ、航海の間彼女は暇さえあればツジギリトビウオを観察する事
にしたのだ。
「あくまで私の推測なのだけれど……」
 とある夕食にて、ポノは自身の推測を猟兵や船員達に語り始めた。
 ツジギリトビウオは、元々この止海には居なかったのかもしれない。別の、例えば藻などが入り組んだ海にいたのではないか。そういう障害物の多い海で脅威から逃げる道を切り開くために先端の突起が生まれたのかもしれない。
「これだけ美味しいのだもの、多分大きな魚によく狙われていたと思うのよ」
 焼き魚にしたツジギリトビウオを箸で丁寧にほぐしてパクっ。美味しい。ポノはすっかりツジギリトビウオに親しみを覚えていた。
 ポノの観察によって見てきたこともある。外敵から逃げる為、そして眼前の障害物を突破する為、ツジギリトビウオは集団となって泳ぐ習性がある。その際にその集団を率いるリーダーになる個体がいるようなのだ。それはどうやら集団の中で最も飛距離を得る個体がリーダーになれるようだ。
 あくる日の昼下がり、ポノは相棒のコタマエッグランティア1世に一枚の護符を張る。それには『ツジギリトビウオ』と書かれている。この護符によって魔法的にツジギリトビウオへ擬態が出来ないかと考えたのだ。
「さあ、頑張って飛んできて!」
 果たしてツジギリトビウオ達は颯爽と現れた新入りの、まるで本当の鳥のように優雅にエラを羽ばたかせ生み出した驚異的な飛距離に本能的に彼に従いはじめた。
「コケコッコー!!」
「これは有効な作戦ですね。コタマエッグランティア1世と率いる集団に友軍マーカーをセットし、フレンドリーファイアが起きないようにしておきます」
「ルナさんありがとう!」
「コケコー!」

 そして今日、遂にやってきたオブリビオンに対して、コタマエッグランティア1世と彼に追従するツジギリトビウオの群れが脅威となって襲い掛かる。
 ポノは船員が襲われないよう、船内へ侵入を狙うオブリビオンを弓矢で射落としていく。
「コケー!」
 その間にもコタマエッグランティア1世の羽ばたきに追従したツジギリトビウオの集団が、一糸乱れぬ連携を見せてオブリビオンの群れを寸断していく。夕日に染め上げられた茜色の魚群。その揃った動きは、ポノが事前に思い描いていた通りとても綺麗だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

幻武・極
さて、新たな障害はオブリビオンか。
どうやら、ツジギリトビウオから受けた傷の回復で忙しそうだし、トビウオも合わせて、一気に畳み掛けるかな。
幻武百裂拳をツジギリトビウオ諸共に打ち込むよ。
漁夫之利って感じだけど、気を抜くとボクも襲われるからオーラ防御でしっかり防御もしておくよ。



●幻なる武
「さて、新たな障害はオブリビオンか」
 極はツジギリトビウオによってボロ雑巾のようになったオブリビオンに目をやり独り言つ。そのまま消滅するかと思われたオブリビオンだが、被害を免れた仲間が近寄り、たちまちのうちに青の怪火で癒していく。癒し手の方はそれなりに疲弊しているようだが、如何せん数が多いのでこの調子で回復を続けられるのは面倒だろう。
「どうやら、ツジギリトビウオから受けた傷の回復で忙しそうだし……」
 拳を握り駆け出す極。気付いたオブリビオンが怪火を纏ってキラキラと光る欠片を放射してくる。極は僅かに右へ跳躍し初撃を避け、上半身を倒して体を縮めると膝に力を籠め前方へと跳んだ。彼女の加速にオブリビオンの攻撃は対応できず後方へと流れていく。
「トビウオも合わせて、一気に畳み掛けるかな!」
 極に気を取られていたオブリビオンへ、真横からツジギリトビウオの群れが激突した。その混乱の中へみずから身を投じる極。
「これがボクの百裂拳だっ」
 常人には捉える事が叶わぬほどの高速の突きが連続で繰りだされる。鋭い突きの連撃によってズタズタに切り裂かれるオブリビオン。
 漁夫の利を狙った極にも等しくツジギリトビウオの洗礼が降りかかるが、幾重にも強固なオーラを纏ったその突きに掃われ、先端を折られていく。無防備になったツジギリトビウオの体にも突きが叩き込まれるが、ツジギリトビウオはオブリビオンへのそれと違い切り裂かれる事無く甲板へと、あるいは甲板を飛び越えて海中へと没する。
「……といってもさすがにボクでも百を超える突きは同時に出せないから水増しさせてもらったよ」
 心身の鍛錬によって至った物理的な連続突きに、魔法の修行により会得した幻影。虚と実が入り混じる。これぞ幻武流『幻武百裂拳』だ。
 上々の戦果に気を良くしながらも極は油断なく次のオブリビオンを屠りに翔けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
いぇいがーの皆にも船員さんにも見知った人達がいて
ふふ、たまこ(飼い鶏)に似た鶏さんもいる、勇気出るね

あ、あと、わたしの名前、杏
名を教えるのは信頼の証
ん、皆で対処すれば何も怖くない

ふわふわ浮遊するクラゲの使者
その周囲に浮かぶ青い光は…海ほたる?
刺激を与えれば更に光を増す

ん、うさみん☆、トビウオの背をジャンプし飛び移りながら、傷付いたトビウオから順に、海ほたるに突撃するように誘導して?
トビウオ、美味しく頂く以外は無駄に傷付けては駄目
それが自然の摂理

使者が疲弊してきたら【華灯の舞】
ふよふよ逃げられないように頭を狙い撃つ

船員さん達、船の進路を確保出来れば全力前進
素早く先に進めるように船を操って?



●白銀の桜
 オブリビオンと遭遇する数日前。杏は鉄甲船の甲板を歩いていた。その足取りは軽く、知らず鼻歌が漏れている。
「ふふ……」
 この鉄甲船。銀翼女鹿丸に同乗した猟兵には見知った者達がいた。船員達の中にもだ。更には家で飼っている鶏のたまこに似た鶏まで船旅の仲間となっていた。
「勇気出るね」
 誰かと出会い、知り合って、仲良くなって繋がっていく。その縁が杏に勇気を与える。だから彼女はまだ知らぬ船員達にも積極的に話しかけた。
「あ、あと、わたしの名前、杏」
「杏か、いい名前だなぁ。あ、俺は弥助ってんだ」
 名を教えるのは信頼の証、とにっこりと微笑み合う杏と船員だった。

 そして現在。後退して距離を取ろうとする船員達と彼らに迫るオブリビオンの間に割り込んだのは杏だった。
「杏ちゃん!」
「ん、弥助、皆で対処すれば怖くない」
 ここは自分達に任せて。船の進路を確保出来れば全力前進。素早く先に進める様に船を操って? 杏の要請に弥助始め船員達は力強く応じる。
「応! 船の事は任せてくれ!」
 船員達が撤退するのを確認した杏は、相棒である人形、うさみん☆を繰り出す。折よく飛んできたツジギリトビウオの一団へ向けて跳躍するうさみん☆。うさ耳を揺らしメイド服をはためかせてトビウオの背に飛び乗ったうさみん☆。次のステップで一つ前へ、次のステップでまた前へ、華麗に舞うその姿はまるでダンスの様だ。
 すると先頭に従って飛んでいたツジギリトビウオの一部が進行方向を変えてオブリビオンの方へと突っ込んでいく。偶然ではない、うさみん☆が飛び乗る時に衝撃を与えて誘導しているのだ。
「トビウオ、美味しく頂く以外は無駄に傷付けては駄目」
 それが自然の摂理だ、と杏はうさみん☆に誘導させる個体を選別していた、より傷ついているツジギリトビウオを優先するのだ。恐るべき海洋災害であるツジギリトビウオ、だがそれはあくまで現在を生きる一つの種だ、軽々に全滅させていいものではないと考えたのだろう。
 オブリビオンはツジギリトビウオに傷つけられ、あるいはそれを回復しようとして疲弊していく。不利と判断したのか杏から離れて距離を取ろうとする。
「射て」
 次の瞬間オブリビオンの一体が吹き飛んだ。杏はそいつに向けていた指を別の個体へと動かす。
「逃がさない」
 杏の指先に白銀の光が集い、放たれる。桜の花弁を思わせるそれはオブリビオンの頭部を的確に撃ち抜いていく。
「まるで桜吹雪だぜ」
 安全な場所まで退避していた船員達は、海上では普通ならば見る事の出来ない光景に誰知らず見入っていた。本土であるサムライエンパイアより一足早い春の花。それは彼らの航路を切り拓く弾丸となった。
「ん、今!」
「合点承知! おらおらいくぞぉ!!」
 華灯りの舞の中、討ち取られ退けられるオブリビオン達。船の進むべき紫光の筋の先への道が拓いた。
 猟兵と船員達の協力により、船の足を奪う海洋災害止海は突破され、オブリビオンもまた撃破されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『人祓い妖狐』いずな』

POW   :    雷調演舞『青雷龍縛』
自身に【触れた者を感電させ動きを封じる青き雷】をまとい、高速移動と【螺旋を描き対象を追跡する青雷の龍】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    人祓儀式『怨霊殺界陣』
【人祓いの儀式】を披露した指定の全対象に【この場に近づきたくないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ   :    狐火『狐怨蒼炎砲』
【美しさに反応する狐火】が命中した対象を燃やす。放たれた【青の炎彩の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。

イラスト:つかさ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●拒絶する白
 オブリビオンの集団を排し、尚も続く海洋災害を乗り越えて進む船。やがて彼らは旅の終着点へとたどり着いた。
「ありゃなんだ……? 光の球?」
 船員達が困惑と共に見上げていたのは、巨大な光球だった。紫色の発光をするそれは洋上に浮かび、船首から伸びる紫光はその光球へと続いていたのだ。
「見ろ! 何か出てくるぞ!」
 鉄甲船の到来を待っていたかのように光球の中から人影が現れる。それは妖狐の少女に見えた。白い毛に覆われた尻尾を揺らめかせる彼女は、血の様に赤い瞳を船上の人間達に目を向けると不愉快そうに眉を顰める。
「人間! あの島の中で好き放題するだけに飽き足らず、こんな所まで出てきたの!? もう、いい加減にしてよ!」
 巫女装束らしき装いから取り出した御幣を振るうと少女の周囲に青い狐火が灯り、雷がその体を走る。
「人間なんて嫌い! あたしにしたように祓ってあげる! そうしたら世界の穢れは綺麗になるに決まってるもん!」
「ぐ、なんだこりゃ……足が勝手に」
 御幣を向けられた船員達の心の中に唐突に近づきたくない、離れたいという強い感情が湧きたち、意思を無視してその体はじりじりと後ろに下がっていく。その歩みは止まる様子を見せない、このままいけば船の縁を超えて海へと落ちるだろう。
 猟兵達はすぐさま飛び出し、船員達を助け出すと船の中へと避難させる。
「お、思い出した、ありゃ人祓い妖狐だいぇいがぁさん!」
 助けられた礼をしながら叫ぶ船員。それは民間で囁かれる怨霊の話なのだという。
 悪さをして巫女に払われた悪戯妖狐が人間を逆恨みし、怨霊となり、人間の方こそ払われれば世界の穢れが消えるなどと身勝手な結論に達して人を襲うのだという。
 恐らく実際には怨霊なのではなくオブリビオンとして蘇った目撃例が誤解されたものだろう。
 海洋災害は今なお続くが、対策は万全だ。ここはこの強力なオブリビオンへの対策を重視する方がいいだろう、猟兵達は手に手に武器を構えて甲板に降り立ったオブリビオンと相対した。
ポノ・エトランゼ
アドリブ・連携歓迎

私たちの知らないうちに世界が滅びる可能性もある
新しい世界への道が拓かれているというのなら、行くっきゃない

船員さんたちに船の中へと避難してもらったから、思いっきり!
UCで敵を攻撃
人祓い妖狐への攻撃はもちろんだけど、延焼に動く炎を氷の矢で消していくわね
鉄甲船は頑丈だけれども、帆とか、燃え移ったら危ないし
立ち位置は船の中へと通じる道を塞ぐように

妖狐は悪さをしすぎて祓われちゃったのかしらね
禍福は糾える縄の如し――いつか、妖狐が、穢れを知らぬ真白な未来となりますよう

氷の矢とエルフボウで、仲間が攻撃しやすいように援護メインで動くわね



●真白き未来への氷(いのり)
 ポノは甲板に降り立った人祓い妖狐を油断なく視界に収めつつ、その背後に浮かぶ紫光球を見る。
 怪しく揺らめく光球の奥には未だ何も見通せない、だが。
「(私たちの知らないうちに世界が滅びる可能性もある。新しい世界への道が拓かれているというのなら、行くっきゃない)」
 それはかつて故郷の森を抜けた時に覚えたモノに近いかもしれない。あの向こうにはまだ私の知らない何かが待っているという感覚。
「こんな船なんか燃やしちゃうんだから! 狐怨蒼炎砲!」
 妖狐の周囲を漂う狐火が、彼女の号令に合わせて船へと襲い掛かる。鉄を纏いし鉄甲船といえど、その本質は木造船だ。そして全てが鉄板で覆われているわけではない。狐火達は各々尾を引き、青の炎彩を宙に描いて着弾。船の木材がむき出しの部分を燃やし始める。
「鉄甲船は頑丈だけれども、帆とか、燃え移ったら危ないわ」
 ポノは船の中へと通じる道を己の体で塞ぐように立ちはだかり、弓を構えると静かに語り始める。
「ねぇお願い、遠いお空のあなた、空と大地と海を巡るあなた、常に形を変わり続けるあなた、今はそのままここまで降りてきてちょうだい」
 魔力に乗せらたそのささやきは、空気を伝わる振動よりも強く、遠くへ届く。船の遥か上空、空の高き所、地上より太陽に近いはずの其処は、それでいて地上よりはるかに冷たく寒い。そこには彼女達が、氷を司る者達がいるからだ。本来気まぐれに地上へ落ちれば彼女達は水となる。けれど魔力を帯びた力あるポノの言葉は彼女達を包み、そのまま降ろす。
 氷を司る者はポノの弓へと宿り、そこに氷でできた矢を生み出す。
「射よっ!」
 ポノによって放たれた氷によって生まれし魔法の矢は放たれた中空で二つ、四つ、八つと増えていく。それらはそれ自体に意思があるかのように、妖狐によって起こされた延焼部分へと着弾、炎と氷は相争い、互いに互いを呑み、やがてそこには水だけが残される。
「もーもーもー! 邪魔してー!!」
「(妖狐は悪さをしすぎて祓われちゃったのかしらね)」
 更に繰り出される狐火を氷の矢で防ぎながらポノは思いを馳せる。
「禍福は糾える縄の如し――いつか、妖狐が、穢れを知らぬ真白な未来となりますよう」
「うるさいうるさい! 余計なお世話! っていうか全然攻撃当たんないじゃん、へっぽこー!」
 祈りを込めながら放たれるポノの氷の矢、それを妖狐は避けて悪態をつく。けれど彼女は気づいていない。ポノは他の猟兵が攻撃しやすいように援護に徹している事を。あえてそのように戦っている事を。本気になれば妖狐では避けようのない程の苛烈な弓技を繰り出せる事を。妖狐が意識しないままに、ある地点へと誘導されている事を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

幻武・極
やれやれ、逆恨みもいいところだね。
元々人に祓われたのはキミがいけないのに、それを人に押し付けるなんてね。
まあ、オブリビオンになるまでの執念はすごいと思うけど、ここで再び祓わせてもらうよ。
ボクは巫女じゃないからうまくできるかわからないけどね。

さて、その儀式は厄介だね。
まあ救いなのは沸き起こる感情が離れたいじゃなくて近づきたくないってところかな。
距離を保ったまま攻撃をかわし続けてウォーミングアップをするよ。
ある程度体が温まったら帆をよじ登り、落下からの一撃を打ち込むよ。
沸き起こる感情は勇気と空中で体勢が取れないことでカバーだね。



●勇気ある落下
「やれやれ、逆恨みもいいところだね」
 飛び交う狐火を避けながら極はあきれ返っていた。元々人に祓われたのはキミがいけないのに、それを人に押し付けるなんてね、と。
「まあ、オブリビオンになるまでの執念はすごいと思うけどっ」
 右足を踏み込み左へ跳躍。飛び込んできた狐火をすんでで躱す。
「ここで再び祓わせてもらうよ!」
 足を前後に開き全身を低くして頭に直撃するはずだった狐火をやり過ごす。
「ボクは巫女じゃないからうまくできるかわからないけどね」
 ウィンク一つを残し後方へ、バク転を繰り返して距離を取る。
「さて、その儀式は厄介だね」
 実を言えば極は狐火を避けながら常に攻撃の機会をうかがっていた、だが前へ出ようとする度に、つまり妖狐に近づこうとする度に目に見えぬ抵抗を受けていた。妖狐の行う人祓い儀式の影響だ。
「まあ救いなのは沸き起こる感情が離れたいじゃなくて近づきたくないってところかな」
 流石に船員達のように足が後ろに動くような事は無かったが、攻撃の精彩を欠きかねないレベルではあった。
「ま、それならそれでやりようはある。ウォーミングアップも十分だしね」
 他の猟兵が行っているの射撃攻撃に妖狐は気を取られている、あれを援護として自分は自分のやるべきことを成そう。極は狐火の回避で十分に温まった体に力を籠める。一本下駄が船の甲板を蹴り体は風を切る。 武を修めるに辺り会得した歩法、その絶技は一切の足音を発さず妖狐に極の行動を気づかせない。
「それっと」
 一呼吸の内に帆柱へと辿り着いた極は、船員が昇る為の手すりを掴み、するするとその上へあがっていく。
「よしよし、こんな所かな?」
 巨大で重い鉄甲船の推力を生み出す為の帆、それを張る帆柱は長く高い。大人でも震え上がりそうな高所にあって極に怯えの色はない。
 下をみれば相変わらず妖狐は眼前の猟兵へ攻撃を行いこちらに気付く様子はない。
「確かに近づきたくないという感情を与えられるのは厄介だ、だけど、これなら関係ないよねっ」
 極は狙いを定めて中空にその身を委ねる。重力の鎖に引かれ落下していく極。その内に妖狐に近づきたくないという感情が湧き上がるが、もはや自身の意思で止まれない。
「後は勇気で、カバーだね!」
「何か上の方から、ぎゃあああっ!?」
 勢いよく落下してきた極に妖狐が気づいた時にはもう回避は不可能だった。落下速度を乗せた渾身の蹴りがさく裂する。
 大ダメージを受けて甲板に倒れ伏す妖狐。極を苛んでいた近づきたくない感情がすっと消える。人払いの結界が維持できなくなったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルナ・シュテル
成程、詰まる処勝手に此処は己の領域と主張しているのみの輩ですね。
では、掃除の仕上げと参りましょう。

まず船員の皆様には、可能な限り彼女を直視しないようお願いを。
その上で、敵に対しAnti-Aresの【乱れ撃ち】で攻撃を行い、相手に足を止めさせず人祓いの儀式を妨害しつつダメージを与えていきます。
敵が儀式の遂行を諦め直接攻撃に移行したならば紅蓮の蠍火を発動、強化したAnti-Aresで撃ち抜きにかかります。

海は誰のものでもなく我らにとっても此処は通過点。邪魔するものは、排除するのみです。



●青き雷竜と紅蓮の蠍火
「うぎぎぎ……こし、腰折れるぅ……もー! 術も解けちゃったじゃん! こうなったらもう一回人祓い儀式しちゃうんだから」
「成程、詰まる処勝手に此処は己の領域と主張しているのみの輩ですね」
 悪態をつきながら再度術を発動させようとする妖狐へ、ルナが声をかける。
「なによ、そうやって注意を引き付けようたってそうはいかないんだから!」
「では、掃除の仕上げと参りましょう」
 ルナを無視して妖狐が御幣を降り始めたのを見て、船員達に「可能な限り妖狐の方を直視しないように」とお願いをして避難を終えた彼女はすぐさま攻撃態勢に入った。
「あちちちちっ! 何々なんなのよー!?」
 指を開いて両手を前に突きだすルナ。その十指全てから光線が放たれる。間断無く乱れ撃たれる光線の雨あられに妖狐は晒される。御幣は燃え尽き、白い装束のあちらこちらに黒い焼け焦げが残る。さらにはフサフサで白い毛並みが自慢の尻尾まで焼かれ、遂に妖狐は人祓いの術を発動させる儀式を諦める。その代わりに怒りの表情を浮かべる妖狐の周囲では、青い雷がその激しさを増していた。
「敵、エネルギー急速上昇」
「そうよ!これで滅茶苦茶にしてやるんだから!」
 妖狐の周囲で発生する青い雷はやがて一つになり、渦を巻く青い雷の龍へと変貌する。それがギロリとルナを睨みつける。
「あんたのその妙な光の術、熱かったけど、どのくらいの威力かよくわかったわ! コイツならいくら撃たれても耐えられる、あんたの負けよ!」
 高らかに宣言し龍を解き放った妖狐。その宣言通り青雷の龍はルナの指に内蔵されたAnti-Aresからの光線を物ともせず、それを浴びながらルナへと向かってくる。ルナは光線を放ちながら横へ移動し回避しようとする。すると龍は意思を持つようにルナを睨みつけながら向きを変え、彼女を追跡しはじめる。
「あーはっはっはっ! ムダムダ! そいつは当たるまで追いかけ続けるんだから!」
 勝利を確信した妖狐はルナを嘲り嗤う。対するルナはどこまでも冷静だった。
「通常出力では対応不可能と判断。Anti-Ares正面戦闘モードへ切替、出力上昇」
 一度一気に距離を離したルナは、青雷の龍と正面から向き直る。突っ込んでくる龍に対してルナは合掌し十の指を全て龍へと向けた。
「今更拝んでも駄目なんだか……え?」
 十指から同時に放たれた光線は、青雷竜を遥かに超える、一つの巨大な柱の様になり螺旋描いて、飲み込んでいく。正面先頭モードとして威力を3倍にした出力で放たれた光線が十本。すなわち先ほどの300倍の威力があるのだ。
 その勢いは衰えることなく、射線の先に居た妖狐をも飲み込んだ。
「そんなあああぁ!?」
「海は誰のものでもなく我らにとっても此処は通過点。邪魔するものは、排除するのみです」
 悲鳴を上げながら焼き払われていく妖狐へ、3倍出力で稼働させたAnti-Aresの自動冷却を行いながらルナは言い切るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
陸まであともう少し
妖狐はいぇいがぁが何とかする
弥助、それに船員さん達、隠れてて

狐耳にはうさ耳で対抗する
ん、【うさみみメイドさんΩ】
うさみん☆、メイドさんズを引き連れて妖狐へ突進

人祓の儀式は人形なうさみん☆達には通じない
でも、わたしは少し感じ入ってしまう
悪戯して追い払われた狐さん
でも、もしかしたら人と仲良くなりたくて悪戯した?
なのに、妖しというだけで無下に祓われた、そう思ってる?
それなら拒絶する気持ちもわかる…
でも、わたしは引かない
祓い合う過去ではなく、ちゃんとあなたとぶつかって、一緒に笑い合う未来を見つけたいから

うさみん☆達、妖狐を思いっきりくすぐり倒して笑わせて?

笑顔忘れないで
また会おうね



●笑顔を求めて
「(陸まであと少し)」
 海面に浮かぶ謎の紫光球。その先に待ち受ける存在への確信を抱く杏は、船内に避難している船員達を安心させようと声をかける。
「妖狐はいぇいがぁが何とかする。弥助、それに船員さん達、隠れてて」
「あぁ、杏ちゃん。信じてるぜ!」
 船員達へ笑顔を送り、杏は飛び出した。
「狐耳にはうさ耳で対抗する」
 杏の細く白い指がしなやかに踊る。指先から繋がる銀糸によって相棒たる人形、うさみん☆が飛び出した。うさみん☆の周囲には似たようなうさみみメイドさんの人形達が多数出現し、杏の念力によって動き出す。
「ん、うさみみメイドさんΩ、いってらっしゃい」
「く、このっ!」
 妖狐はメイドさんズの接近に気付き、咄嗟に人祓いの行おうとする。だが、他の猟兵の攻撃による妨害で不完全な物しか出来ない。さらに。
「人祓の儀式は人形なうさみん☆達には通じない」
 得意げな顔で言う杏。その言葉通りに、メイドさんズは一切の抵抗を受けることなく妖狐の周囲を取り囲むことに成功した。
「く、これまでか……ええい、殺すならさっさろ殺せ!」
「……」
「な、なによ?」
 もはやこれまでかと観念した妖狐。しかし当の杏は何やら感じ入った様子で神妙な顔をしている。
 妖狐も杏の態度を不振がり始める。
「悪戯して追い払われた狐さん……でも、もしかしたら人と仲良くなりたくて悪戯した?」
「は、はい?」
 急な話を持ち出されて思わず素っ頓狂な声をあげる妖狐。
「なのに、妖しというだけで無下に祓われた、そう思ってる?」
 それなら拒絶する気持ちもわかる。と続ける杏。彼女の言葉は真剣だった。そしてそれは妖狐にも伝わった。故に妖狐はこちらを見てくる杏を睨み返す。
 しばしの沈黙が場を包む。その沈黙を破ったのは妖狐だった。
「はっ! それで? お優しい猟兵様はどうしようってわけ? もう過去は変えられない。あたしは人間が嫌い! 生意気な事言うあんたも嫌い! あっち行け! 引っ込んでろ!」
「でも、わたしは引かない!」
 強い拒絶の言葉に、杏は真っ向から立ち向かった。
「祓い合う過去ではなく、ちゃんとあなたとぶつかって、一緒に笑い合う未来を見つけたいから」
「……っ! は、はん! 笑いあうだなんて、猟兵(あんた)とオブリビオン(あたし)でどうやってさ!」
「それは……」
 にらみ合い続ける二人の少女。杏は糸と念力でメイドさんズを動かす。
「ちょ、何を!?」
 妖狐はメイドさんズによって甲板に仰向けに倒され、腕を頭の上にあげた状態で手足を押さえつけられる。さらには履いていた下駄も脱がされた。ちょっと想定外の展開に戸惑う妖狐をスルーして杏。
「うさみん☆達、妖狐を思いっきりくすぐり倒して笑わせて?」
「は? ……あひゃ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!?」
 杏の言葉に一瞬ぽかんと呆ける妖狐だったが、次の瞬間盛大に顔を歪ませて叫び始める。手の空いているメイドさんズが一斉に妖狐の脇やら下駄を脱がされた足の裏やらといった諸々をくすぐりはじめたのだ。
 大胆に強引に触れてきたかと思えば、途端に触れるか触れないかの絶妙な距離感で撫で上げる。そうした緩急をつけたくすぐりを体中でランダムに行われるため、妖狐の体には休みなくくすぐったが電流の様に駆け回り暴れ出しそうになる。メイドさんズ(操っている杏)もそれは先刻承知でがっちりと抑え込み、短い丈の着物が捲れてしまわないように抑える心遣いも欠かさない。結果としてくすぐったさの衝動は抑えられていない顔へと集結するのだ。
「うひゃひゃひゃひゃ! さ、さっきまでの、あひゃひゃひゃひゃ! し、真剣な雰囲気は、おひゃひゃひゃひゃ! なんだったのよぉ!?」
 盛大な前振りです。
「だ、だめ! あひひひっ! ひ、ひぬ! ふひ! わらいしひぬうっ!」
 涙を流して爆笑し続けた妖狐は、ついに呼吸困難で倒されてしまったのだった。

「笑顔忘れないで、また会おうね」
「い、いい話風に……はひ、しめるんじゃ、はぁはぁ、ないわよ……っ!」
 笑顔ってそういう意味じゃねぇだろ、と消滅しかかり薄くなりながらも律儀に突っ込む妖狐。だが酸欠になるほど大笑いしたせいか、もう消滅を避けられないからか、どこか妙にさっぱりとした様子だった。
「……あのさ、あんた確か船の中の人間から杏とかって呼ばれてたっけ?」
「うん、妖狐。わたしは木元杏」
「妖狐妖狐って、あたしだっていずなって名前がある」
「ん、いずな」
「杏。あたしはここでやられて消える。でもいつかそのうちまた骸の海から還ってくる。オブリビオン(あたしたち)はそういう存在(もの)だから」
「ん」
「だけど、その時還ってきた別のあたしが、このことを覚えてるかはわかんない。だから『笑顔を忘れない』も『また会おう』も多分無理」
「ん」
「あたしは人間(あんた)達が嫌い。だからあんた(杏)の思い通りになんてなってやらない。『未来』で一緒に笑ってなんてやらない。ざまーみろ、だ」
 人間が嫌いな人祓い妖狐いずなは、自分を看取るように顔の傍で膝を突いていた杏へ、舌を出してあかんべぇをした後、意趣返しをしてやったと言わんばかりに、最高に楽しそうな笑顔を『現在』の杏に遺して消えた。

●新たなる船出
 オブリビオンという脅威が去ったのと同時に、海上に浮かぶ紫光球に変化が生じた。その不気味な紫の光が、僅かにだが白へと変化したのだ。そして白い光をその一部分に、どこか別の場所の景色が映し出されていた。温暖な気候を感じさせる様子のいくつもの、まるで南国とでもいった雰囲気の島々だ。
「グリードオーシャン……」
 銀翼女鹿丸に乗り合わせた猟兵が、誰となく呟いた異世界の名。それこそが今映し出されているあの光景の場所なのだと、皆確信していた。
 おのが世界を害する為に生み出され、それを成す前に命を絶たれ青く深い海という棺に納めれた鉄甲船。
 再びの命を与えられ初めての航海で、銀翼女鹿丸は遂に目的地に到着した。それは同時に新たな世界への船出の始まりをも意味していたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月01日
宿敵 『『人祓い妖狐』いずな』 を撃破!


挿絵イラスト