●迷宮は言の葉とともに
ダンジョンメーカー、それは迷宮世界の叡智。
大魔王が封印されていた「ファーストダンジョン」最深部、巧妙に隠された階段の先にその装置はあった。
究極の地下迷宮アルダワを造りあげた「最初の魔法装置」であるこの機械が、大魔王の消滅と共に「封印装置」としての役割を終え、本来の機能を取り戻したという。
本来の機能とはずばり、強大な災魔を1体強制召喚し、その周りに「迷宮」を造ってしまうという何とも奇天烈なもの。
これを利用すれば、地下迷宮に隠れている災魔を引っ張り出し、1匹ずつ退治することも可能になるだろう。
「つまりコイツで好き勝手にダンジョンを造っちまおうって寸法さァ」
橙色の扇を開いて、宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)はからからと笑う。
自分たちで造り上げたダンジョンを攻略する。 冒険心ある者にとって、何とも浪漫溢れる響きだろう。
ダンジョンは創造主の思念に反応して組み立てられる仕組みのようだが、今回はちょっとしたルールを用意したと十雉は言う。
「普通に造ったって面白くねぇからな。 ここは一つ、言葉遊びをしようぜ」
彼が言うにはこうだ。 造りたいダンジョンを3つの言葉で表現して欲しいらしい。
例えばあちこちで炎の燃える熱いダンジョンにしたいなら、『燃え盛る』『魔神の』『溶岩洞窟』と表現するといった具合。
難しく考えず、なるべくカッコいい言葉で表現してみて欲しいと十雉は言う。
「そうそう、今回引っ張り出す災魔はマッド・メイズ・メイカーってヤツだ。 なんでもテメェはその場から動かねぇで、罠や配下を使ってきやがる厄介な相手らしい。 くれぐれも油断はすんなよ」
期待してるぜとひらり手を振って、十雉は猟兵たちを送り出すのだった。
茶バシラ
ご無沙汰してます、茶バシラです。
ダンジョンメーカー!楽しそう!と勢いで出したシナリオになります。
プレイングは好意的に判定しますので、気軽に楽しんでいただけると嬉しいです。
(ただし、公序良俗に反するプレイングは不採用となります)
●おおまかな流れ
第1章:『ダンジョンをつくる』
2章以降で攻略することになるダンジョンを皆でつくりましょう。
オープニングでも説明があったように、どんなダンジョンをつくりたいかを3つの言葉で表現してください。
例)
1『ほの甘い』 2『夢見心地の』 3『わたぐも迷宮』
のように、3番目に入る言葉を1と2で修飾する感じだと何となく上手くいくかもしれません。
第2章:『ダンジョンを探索する』
完成したダンジョンを実際に歩いてみましょう!
道なりに行くもよし、ツルハシなどで壁を掘るもよしです。
第3章:『ボス戦』
ダンジョンの奥でマッド・メイズ・メイカーと戦います。
冒険のラストを彩るボスをカッコよく倒してください。
●プレイングの受付について
1章はオープニング公開直後から受付開始します。
2章以降の受付については、マスターページでお知らせする予定です。
それでは、皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
第1章 冒険
『ダンジョンメーカー』
|
POW : 肉体や気合で突破するタイプのダンジョンを創造してみる
SPD : 速さや技量で突破するタイプのダンジョンを創造してみる
WIZ : 魔力や賢さで突破するタイプのダンジョンを想像してみる
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鈴桜・雪風
先に容れ物を作って、そこに災魔を入れてしまおうというのは面白い試みですね
封じた災魔に対し有利となれるような構造で、かつわたくし好みの形にしようと思うと……
このような塩梅になりますでしょうか
『咲き誇る』『厳格な』『謎掛け図書館』
この表現が通れば、恐らくリドルをかけてくる迷宮になるでしょう
厳格な、と指定したので迷宮の構造や法則を改変しようとする行為……例えば別の罠をしかける等に厳しくなるはずです
基礎構造に図書館を指定したのは、リドルが知識系に寄ると見てのことと、あそこがマナアの厳しいところですので
あとは咲き誇る、で迷宮の強制力が強まると見ていますが、さてどうなりますでしょうか
●いざやあまねし知識の泉
地下迷宮に吹く春の風。桜柄の傘をくるりと回して、鈴桜・雪風(回遊幻灯・f25900)は階段の先へと降り立った。
彼女が探すまでもなく、『それ』は見つかったことだろう。
我が物顔で鎮座する面妖な装置を捉えると、娘はほわりと笑む。
「先に容れ物を作って、そこに災魔を入れてしまおうというのは面白い試みですね」
得体の知れない機械の前に立ちながらも、雪風は尚穏やかな笑顔を崩さない。まるでこの状況すら楽しむ余裕を持ち合わせているようだった。
さて、確かこの機械でダンジョンを造るのだったか。創造の鍵となる3つの言葉に、桜の精は思いを馳せる。
彼女が迷宮に求めるのは、まず封じた災魔に対し有利となれるような構造。そして折角ダンジョンを造ることができるのだ、やはり形は自分好みがいい。
「……そうなると、このような塩梅になりますでしょうか」
そ、と頬に片手を添えれば、傘から垂れた飾りがしゃらりと揺れる。
『咲き誇る』『厳格な』『謎掛け図書館』
雪風の中にこれらの言葉が揃った瞬間、ダンジョンメーカーがぴこりと電子音を吐いた。
それと同時、装置の真上に浮かぶように立体映像が生成されてゆく。
どうやら、この映像はダンジョンの完成イメージらしい。猟兵たちが言葉を入力するたび、このイメージはより複雑に混ざり合い、更新されていく。言わば現時点でのサンプルのようなものだろう。
そして全ての猟兵が言葉を入力し終えた時、一際目を引く赤いスイッチを押すことで、初めて本物のダンジョンが造られる仕組みのようだ。
パズルが組み立てられるように生成されていく立体映像は、やがて雪風の見守る前ではっきりとした形になる。
それは紛れもなく図書館であった。数えきれない程の本棚が壁のように立ち並ぶ様は実に壮観だろう。
淡いピンク色の花を咲かせた本棚たちは、まるでそれぞれが一本の桜の樹のようにも見える。しかしどのような姿であれ、その身いっぱいに書物を蓄えた彼らが本棚であることは間違いない。
図書館とは厳格な場所だと雪風は思う。
お喋りをしてはいけない、飲食をしてはいけない、本を破ってはいけない――図書館は訪れる者にマナーを求める。
だからこそ、迷宮の構造や法則を改変しようとする行為に対しても耐性を持つ筈だと考えた。
よく目を凝らして見ると、何箇所か本棚が門のように立ち塞がっている場所があるようだ。
恐らくその場所を通るためには何らかの手段が必要になることだろう。例えばそう、侵入者を試すリドルのような。
「さてどうなりますでしょうか」
ひとまずの形となったダンジョンを眺め、雪風はころころ笑う。
かくして猟兵たちの言の葉紡ぎは、咲き誇る花と共に幕を開けた。
大成功
🔵🔵🔵
星時雨・ルビィ
私はやっぱゲームに関するものが欲しいなー。
というわけでこんなのはどうかな?
『UDCアースっぽい』『水族館風の』『ゲームセンター』
ゲームの台を調べると、吸い込まれて、ゲームキャラみたいになって(なりきりは同姓)与えられた条件を満たすことで先へ進むためのパスワードのヒントを得られるって感じがいいかなー。
ジャンルはそれぞれがいくつか混ざったみたいな感じで、横スクロール弾幕シューティング+RPGとか、落ち物パズル+横スクロールアクションとか、ステルス+対戦格闘+音ゲーとか、サンドボックス+ハンティング+シミュレーション+ノベルゲーとかってどうかな?どうかな?
●電脳時空のオーパーツ
続いて現れたのは星時雨・ルビィ(ミレナリィドールのバトルゲーマー・f09705)だった。
ゲームを好むと自称する彼女は、一種のテレビゲームめいたその装置に爛々と目を輝かせている。
「私はやっぱゲームに関するものが欲しいなー」
そんな彼女が思い浮かべた言葉は、やはり大好きなゲームに関係するもののようだ。
『UDCアースっぽい』『水族館風の』『ゲームセンター』
ぴこんと鳴った音は入力完了の合図。ダンジョンメーカーはすぐに迷宮の新たな姿を弾き出し始める。
一度ぐにゃりと形の歪んだ立体映像は、粘土が捏ねられるように次第に目的の形に近付き、そしてついに一つのダンジョンとなった。
ルビィは背伸びをするようにつま先で立ち、出来上がったイメージ映像を覗き込む。
見れば本棚の隙間や部屋の隅などに、先ほどまでは無かった機械が点々と設置されていた。
それはどうやらゲームの筐体のようだ。主にUDCアースのゲームセンターという施設で見かけるものに形が似ている。
海のような青一色でデザインされた台、その画面にはドット絵風の文字で『Welcome to our aquarium ! 』そして続けて『touch screen』と表示されている。
彼女の思念がそのまま反映されているのであれば、恐らくこの画面に触れる者は筐体に吸い込まれ、一時的にゲームをプレイすることになる。
そしてゲーム中で与えられた課題をこなすことで、先へ進むための何らかの鍵を手に入れることができるだろう。
挑戦することになるゲームも筐体によって異なるようだ。
そのジャンルは横スクロールアクションにパズルゲーム、RPGからシミュレーションまで実に多岐に渡る。
一方で世界観はどれも共通しているらしい。どの筐体でどのジャンルのゲームをプレイしても、熱帯魚やイルカの泳ぎ回る水族館が舞台となっている。
「ふふー、これは攻略しがいがありそう!」
バトルゲーマーの血も騒ぐというもの。完成したダンジョンを見て、ルビィのゲーマー魂もワクワクと弾み始めた様子だ。
花咲く図書館の片隅で、小さな水族館が君の挑戦を待っている。
大成功
🔵🔵🔵
檪・朱希
【WIZ】
……ダンジョンを造る言葉を紡ぐなら、私にも出来る。
……生き残るためには、『知恵』や『気付き』は大事。
力も必要かもしれないけれど、知恵の前に敗れる奴を見てきたから……。
だから、紡ぐのは、
『知を持って制する』『静寂な』『ギミックルーム』
……に、なるかな。
必要以上に大きな音があれば、そこに『何か』があるきっかけにもなるだろうしね。
……まぁ、静かな方が考えやすいのもあるけれど。
どんな罠でも……攻略する糸口が必ずある。
罠があるなら逆手に……なんて発想もいいかも知れない。
●取り残されし残響
かつては静寂に包まれていたのであろうこの部屋は、今では迷宮作成装置の僅かばかりの稼働音と、猟兵たちの話し声に支配されている。
そんな中、言葉少なに赤と黒のオッドアイが揺れる。檪・朱希(旋律の歌い手・f23468)の耳にはまた別の音も聞こえていた。
『雑音』――猟兵を生み出す実験の副作用であるそれは、すっかり彼女には慣れっこであったけれど。
朱希が一歩ずつ歩み寄れば、機械の発する音もより近く聞こえた。
「……ダンジョンを造る言葉を紡ぐなら、私にも出来る」
上目に見上げた少女の視線の先では、造りかけの迷宮の立体映像がゆらゆらと漂っている。
今すべきこと、そして出来ることは、これに朱希の内の『何か』を足すこと。
生き残るためには、『知恵』や『気付き』が大事だと少女は思う。それは彼女が今まで知恵の前に敗れる者を多く見てきたから。
だから、彼女の紡ぐ言葉は――
『知を持って制する』『静寂な』『ギミックルーム』
朱希の静かな思念を、ダンジョンメーカーは聞き届けた。
例の如く立体映像が形を歪め、より洗練された姿へと更新されていく。
やがて出来上がった映像を確認すると、一見特に変化は見られないかもしれない。しかしその実確かに『何か』が変わっていた。
図書館内を支配するのは静寂。しかしそれは無音という意味ではない。
確かに何かしらの音は聞こえているのだが、その中にあってもどこか身の引き締まるような空気が流れている。
ダンジョンの中で声でも発すれば、まるで誰もいない広い洞窟でそうした時のように反響することだろう。
この方が朱希にとっては好都合なのだ。静寂の中にあってこそ思考も知恵も結ばれやすい。
また、そんな静寂の中で音は重要な判断材料ともなる。異様に大きな音、耳障りな音が聞こえたならば、そこには仕掛けられた『何か』があるという印かもしれない。
「どんな罠でも……攻略する糸口が必ずある」
仕掛けられた『何か』を逆に利用してやるのもまた一興であろう。さらりと揺れる髪の間で蝶が舞った。
英知を司る迷宮図書館に、また更なる知と静寂が生まれた。
大成功
🔵🔵🔵
ユニ・エクスマキナ
ふむふむふむ
ユニたちでダンジョン造れちゃうなんて面白いのねー!
どんなダンジョンがいいかなぁ?
うーん……(悩)
『キラキラ』『ふわふわ』『春色迷宮』!
キラキラは光とか、宝石とか?
あ、水もキラキラするのね!
ふわふわは、雲とか、羽とか、綿あめとか
ふわもこ動物ちゃんとかもふわふわ!
で、春!
だって今ちょうど春だし!
ピンクとか黄色とか白とかなんかカワイイ感じになりそうかなぁって
テキトーに思いついたのだったけど
なんかユニの好きな感じのダンジョンが出来そうなのねー!
…むむ
ちょっと待って
これ、もしかしてこの後の探索大変じゃない?
だって、ユニ好みってことは
寄り道しちゃうっていう最大の罠が待ってることになるのねー!?
●綿菓子模様 夢模様
到着して早々、好奇心に瞳を煌めかせた少女が1人。あまいあまいスイーツにも似た彼女はユニ・エクスマキナ(ハローワールド・f04544)だ。
「ふむふむふむ」
あっちこっち、あらゆる角度からダンジョンメーカーを眺めてみるユニ。構造や仕組みはさっぱりだが、とりあえずこれが凄い機械であることはよく分かった。
「ユニたちでダンジョン造れちゃうなんて面白いのねー!」
これは造ってみるっきゃないない。
どんなダンジョンがいいかなぁ? と、頭をひと捻りふた捻り。
まるでお出かけのコーディネートを選ぶように楽しげな彼女からは、これまた楽しげな言葉が生み出されたようで。
『キラキラ』『ふわふわ』『春色迷宮』
ぴこりと返事をしたダンジョンメーカーは、またもや迷宮のイメージ映像を更新し始める。
わくわくと足をぱたつかせながら待つこと暫し、出来上がりの合図に誘われて視線を上げると、そこに浮かぶダンジョンはすっかり様変わりして見えた。
図書館はキラキラに、そしてふわふわにデコレーションされていたのである。
壁に埋め込まれた宝石たちは色とりどりに輝き、缶から飛び出したドロップのようにダンジョン内を可愛らしく彩っている。
また、図書館内に咲く桜の花からは雫型の小粒の宝石が垂れ下がり、まるで朝露のようにも見える。
そしてふわふわの要素は足元に。なんと床全体が雲になっている。ふわふわもこもこの雲は夢のような踏み心地。寝そべっても心地いいだろうし、端っこをかじれば幸せな甘さが広がることだろう。
また、読書スペースの椅子にはどうぶつのぬいぐるみがいい子で座っている。こちらももちろんふわふわだ。
ふわふわたちはピンクに白に黄色。優しくあたたかな色合いで、桜と一緒に春を運んでくれる。
ダンジョン内を探してみれば、もしかするとこれ以外にもキラキラでふわふわな春が見つかるかもしれない。
「テキトーに思いついたのだったけど、なんかユニの好きな感じのダンジョンが出来そうなのねー!」
嬉しそうに楽しそうに、ぴょんこぴょんこと飛び跳ねていたユニは、しかしぴたりと唐突に動きを止めた。
「……むむ、ちょっと待って。これ、もしかしてこの後の探索大変じゃない?」
そう溢す彼女は何やらいつもより真剣な様子。もしや重大な欠陥でも見つかったのだろうか。
「だって、ユニ好みってことは、寄り道しちゃうっていう最大の罠が待ってることになるのねー!? 」
がーん、と頭を抱えるユニ。まさか最大の敵は自分自身だったとは。
ともあれ、ユニ好みのキラふわダンジョンはこうしてひとまずの形となった。
彼女がキラふわの誘惑に負けず探索を終えられるかどうか、それはまた別のお話し。
大成功
🔵🔵🔵
クロード・クロワール
エレステイル(f14363)と。
ふ、あまりに〆切が僕に追いつくのが早かったから散歩に来て見たんだが…
ダンジョンを自分で作れるとは面白いな
つまり…〆切的に楽園が生まれるんじゃないのか?
いや、攻略するんだったか
どうせなら好きなもので作ればいいんじゃ無いのか?
いや、足らないだろう。それだと
もう少し情緒のある言葉をだな…どうせなら浪漫があるものが良いだろう
海…猛る海とかな
ちゃんと船も想像の中に入れておけば…
おい待てそのままだと…!
泳ぐ気なのか。君は泳ぐのか!?
よし沈む、沈むな!
わたげおまえ…!(チョコまみれなのを救出しつつ
白馬でエレ君の所まで行くさ。いいか、チョコの海なんて波でも来たらどうするん…(ぁ
エレステイル・テイル
クロードくん(f19419)と
へえぇ、しめきりさんってあしがはやいんだねぇ。
ダンジョンを自分でつくれるってすごいねぇ。
ボクはねー、チョコレートがいいなあ。
(わたげを頭に載せ、うーんと悩みつつ)
『すっごく大きい』『チョコレートのダンジョン』
え、これじゃみっつになってない?
おー、さすが文豪さん!
じゃあ、
『すっごく大きい』『たけるうみの』『チョコレートのダンジョン』
これですごいいきおいで流れてくるチョコレートでおよげるよ!
ぐるぐるーってうずまいたりね!
たのしそう!
ボク、およぐのとくいだからねっ(えっへん)
もしものときもボクとべるからだいじょうぶ!!
あーわたげーまってー
あー!クロードくんーーー!!
●カカオの波にさらわれて
男は作家だった。普段は机に向かい、創作に没頭するのが常であろうクロード・クロワール(ロールシャッハ・f19419)は、ゆらゆらとこの地下迷宮に足を踏み入れる。
「ふ、あまりに〆切が僕に追いつくのが早かったから散歩に来て見たんだが……」
散歩をするには少々殺風景が過ぎる気もするが、そんなことは些細な問題だろう。
今は〆切から逃避できればそれでいいのだ。
「へえぇ、しめきりさんってあしがはやいんだねぇ」
のんびりとした調子でひょこりと顔を覗かせた少女、エレステイル・テイル(ドラゴニアンの聖者・f14363)
彼女もクロードについてダンジョンまでやって来ていた。
そういう問題じゃないとクロードが言うも、エレステイルはきょとんと不思議そうに首を傾げる。
幼い彼女が2回り近く歳の離れた物書きと歩く姿は、まるで仲の良い親子のようにも見えるかもしれない。
そんな彼らの凸凹珍道中、さっそく目の前に現れた珍妙な装置。恐らくこれが件のダンジョンメーカーというやつだろう。
作家としての好奇心が擽られたのか、クロードは未知なる機械を観察してみる。エレステイルも一緒になってそれを見つめて。
「ダンジョンを自分でつくれるってすごいねぇ」
長い竜の尾を揺らしながら、少女は楽しげに笑顔を咲かせた。そしてそれに首肯したクロードにもたらされる、1つの閃き。
「つまり……〆切的に楽園が生まれるんじゃないのか?」
〆切は怖い。とにかく怖い。なんとかなるのなら是非ともなんとかしたいところだが、すぐに浮かんだ案を打ち消すようにかぶりを振った。
そういえば造ったダンジョンは後ほど攻略するという話だったか。
装置の上には、既に何名かの猟兵たちによって造られたダンジョンのサンプルが立体映像として浮かんでいる。
どうやらここにダンジョンの要素を足していけばいいらしい。
「どうせなら好きなもので作ればいいんじゃ無いのか?」
はて、自分の好きなものは何だろうと、しばしのシンキングタイムに入る2人。先に沈黙を破ったのはエレステイルの方だった。
「ボクはねー、チョコレートがいいなあ」
甘くておいしいチョコレート、その要素が加わればきっとステキなダンジョンになるに違いない。
さっそく3つの言葉で表現してみようと、うーんと悩み始めるエレステイル。頭の上に乗せた兎の「わたげ」も、彼女と一緒になって考えている様子。
『すっごく大きい』『チョコレートのダンジョン』
一瞬反応しかけたダンジョンメーカーだが、またすぐに沈黙してしまう。眠ってしまったのだろうかと、装置をコンコンとノックしてみる少女の後ろ姿へ、クロードが呆れ混じりに声をかける。
「いや、足らないだろう。それだと」
素直な彼女は改めて指折り数えてみた。ひとつ、ふたつ……そこではっと気が付いたようだ。確かにこのままではひとつ足りない。
やれやれと、見兼ねた男は更にアドバイスを続ける。
「もう少し情緒のある言葉をだな……どうせなら浪漫があるものが良いだろう。海……猛る海とかな。ちゃんと船も想像の中に入れておけば……」
さすがは作家といったところ。次々と湧き出すように生まれたアイディアが口をついて溢れてゆく。
その一つ一つを、少女もうんうんと頷きながら聞いていた。
「おー、さすが文豪さん!」
金の瞳に尊敬の色が浮かぶ。じゃあ……と紡ぎ直した言の葉をダンジョンメーカーが拾い上げ始めた。
『すっごく大きい』『たけるうみの』『チョコレートのダンジョン』
「おい待てそのままだと……!」
クロードの制止も虚しく、ダンジョンメーカーは迷宮の再構成を開始した。
再び像が結ばれた時、ダンジョンはすっかり水没……いや、チョコレート没といった方が正しいか。ともかくチョコレートの海に囲まれていた。
チョコレートの海は流れのあるエリア、激しく波打つエリア、渦を巻くエリアなど、エリア毎に様々な表情を見せている。
元あった陸地はチョコレートの海の上で浮島のように点々と存在しており、島と島の間に架かった橋を渡ることで移動できるようだ。
甘いチョコレートに浮かぶ雲の島という取り合わせは、絵本のようにメルヘンチックな雰囲気を醸し出している。
「これですごいいきおいで流れてくるチョコレートでおよげるよ!ぐるぐるーってうずまいたりね!たのしそう!」
一通りダンジョンの映像を見終えてはしゃぐエレステイルとは対照的に、クロードは布越しに呆然とした目を向けていた。
「泳ぐ気なのか。君は泳ぐのか!?」
波でも来たらどうするんだとたじろぐクロードの前で、エレステイルはえっへんと得意げに胸を張る。
「ボク、およぐのとくいだからねっ」
それにもしもの時は飛べるから大丈夫だと少女は言う。
どうやら彼女を止めることは諦めた方が賢明らしい。せめてうっかりチョコレート塗れにならないようにしようとクロードは心に誓うのだった。
今、猟兵たちのダンジョンは蕩けるほど甘い香りに包まれた。
いざゆかん、チョコレートの大海原へ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャム・ジアム
アドリブ歓迎
すごい装置があると聞いたの
好きな場所が作れるんでしょう?
なるほど、災魔を引っ張りこむ『箱』なのね
誰かの言葉とも混ざり合う
じゃあ、ジアムも、たっぷり仕掛けを考えなきゃ
『柔らかな』『水の糸巡る』『インク工場』
片隅にあっても、矛盾が出づらく
色んなユーベルコードに利用できるものって悩んだの
ジアムみたいな電撃を使う者や
魔術を扱う人なら
この糸、うまく使ってくれそうな気がしたの
インク工場は、ふしぎな風景を前に
手記や絵を書きたくなる人もいるんじゃないかって
ほら、攻撃に使えるひともいるでしょ?
柔らかな、とつけたのは
糸で仲間を傷つけたくなかったからよ
少し濡れるかもしれないけどね
ふふ、どうなるか楽しみよ
●色彩出でし雨降り工場
ダンジョンの形を映し出す装置の前で、1人の少女が瞳に興味と好奇心を浮かべていた。
彼女はジャム・ジアム(はりの子・f26053)、花にも似た色の髪に大きな尻尾、そして一際目を惹く植物の羽を持つ少女。
すごい装置があると聞いてやって来た彼女は、さっそく見つけたそれに釘付けになっている。確かグリモアベースでの説明では好きな場所が造れると言っていたはずだ。
物言わぬ機械のボディに手で触れて確かめてみたり、コンコンと叩いて音を聞いてみたり。
「なるほど、これが災魔を引っ張りこむ『箱』なのね」
しかも言葉として表した思念が他の猟兵たちの思念と混ざり合い、最終的にひとつのダンジョンが出来上がるという。なんとも面白い箱ではないか。
「じゃあ、ジアムも、たっぷり仕掛けを考えなきゃ」
ゆらゆらと浮かぶ立体映像を眺めながら、何を加えていこうかとイメージを膨らませ始める。
そうして導かれたものが。
『柔らかな』『水の糸巡る』『インク工場』
物言わぬ装置が、音を立てて動き始めた。
猟兵たちの思念を反映したダンジョンの姿を、再び立体映像という形で再構成し始める。ジャムの思念を混ぜ込んだ、新たな姿で。
チョコレートの海に浮かんだ図書館の小島。その小島の一つに雨が降っていた。
いや、正確には雨ではない。細い水の糸が天井から柔らかに垂れ下がっている。
まるで天の恵みのようにもたらされた糸は美しいが、しかし美しいだけではない。例えば電撃の力を使う者がいたのなら、使い方によっては有利に動くことができるかもしれない。そして何を隠そう、ジャムもまた電撃を扱う者の1人であった。
そしてよく目を凝らしてみると、水の糸が降る島には本棚以外の何かが備えられているようだ。
それはどうやらペンキのようで、缶にたっぷり詰められた赤青緑に黄、紫から桃色に至るあらゆる色が所狭しと並べられている。
ペンキは島の中央に鎮座する錆びた機械から次々に製造されているように見える。
もしもこの迷宮の不思議な光景を目の当たりにしたのなら、それを絵として残したくなる者もいるのではないか。そんな彼女の意図が、この島には反映されていた。
「ふふ、どうなったか実際にこの目で見るのが楽しみよ」
水の糸降るペンキ工場を眺め見て、思わず笑みが溢れる。
もはや、彼女たちがこのダンジョンに足を踏み入れるまで、そう時間はかからないだろう。
大成功
🔵🔵🔵
アニカ・エドフェルト
自由に、作れると、なると、逆に、迷って、しまいます、ね……。
そう、ですね……せっかくですし、トレーニングに、なりそうな、ダンジョンに、してみたい、です。
というわけで、『無限湧きする』『時間耐久型』『闘技場』みたいな、感じで……
いくら、相手を、倒しても、クリアは、出来ませんが、一定時間、一定範囲から出ずに、相手の攻撃を、耐えきれれば、その部屋はクリア、みたいな、ダンジョンを、想像、してみます。
数が、増えちゃうので、適度に、倒す必要は、あるかもですが……
なので、ダンジョンの、構造そのものは、かんたん、ですね。
相手の、いろんな、攻撃を、見られるのは、ちょっと、楽しみかも、しれません。
(アドリブ歓迎)
●闘士の誉れなり
迷宮造りし魅惑の装置、ダンジョンメーカー。その元へ一番最後にやって来たのは幼い少女だった。
アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)の目には、得体の知れないこの装置は新鮮に映ったかもしれない。自分たちの好きに迷宮を造れるとなれば、尚更のことだろう。
「自由に、作れると、なると、逆に、迷って、しまいます、ね……」
何でも造れるということは、選択肢も可能性も無限に広がっているということ。その中から限られた数を選び取るとなれば、途方もなく膨大な作業で。
しかしそれでも、少女は自分なりの選択を見つけることができたようだ。
「そう、ですね……せっかくですし、トレーニングに、なりそうな、ダンジョンに、してみたい、です」
『無限湧きする』『時間耐久型』『闘技場』
外見こそ可憐なアニカだが、実は闘技場の集落出身。格闘や闘争と共に育った彼女らしい言葉選びと言えるだろう。
ダンジョンメーカーはすぐさま迷宮の完成像の再構成を開始した。待つこと暫し、装置が投影する立体映像がダンジョンのイメージを猟兵に見せる。
チョコレートの海に浮かぶたくさんの島。そのうちの一つに変化が起きていた。
他の島とは違い、その島だけは円型の壁で囲われている。その姿はまさに闘技場のよう。
そして、この島にひとたび足を踏み入れた者にはある試練が課されるようだ。
まず退路を塞ぐように鉄格子が下りる。次に現れるのは大量の剣闘士の幻影。幻影たちは無限に数を増やし、倒しても次から次へと補充されていく。
しかし試練とは彼らを全て滅ぼすことではない。彼らの攻撃を避けるなり防ぐなりして、一定時間耐え切ること――それを達成すればクリアとなり、先に進めるという訳だ。
「相手の、いろんな、攻撃を、見られるのは、ちょっと、楽しみかも、しれません」
拳闘士見習いの血が騒ぐのだろうか。闘技場の中で繰り広げられるであろう戦いを思い、アニカは微笑んだ。
「ジュウブンナシネンヲカクニン」
「ダンジョンノセイゾウヲカイシシマス」
機械的なアナウンスと共に、ダンジョンメーカーは迷宮の創造に移った。
突如地鳴りが響き、地形が変形していくかと思えば何もない空間から見覚えのあるパーツが現れ、先ほどまで表示されていた立体映像と全く同じものが目の前に出来上がっていく。
迷宮の完成までは恐らく10分もかからなかったろう。
舞台は整った。
後は生まれたてのこの迷宮を踏破し、奥に潜む災厄を討つのみ。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『『ダンジョンメーカー』ダンジョンの探索』
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POW : 肉体や気合でダンジョンを探索、突破する
SPD : 速さや技量でダンジョンを探索、突破する
WIZ : 魔力や賢さでダンジョンを探索、突破する
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●思念の迷宮顕現す
complete...
ダンジョンメーカーがその動きを止めた頃、猟兵たちの目に映っていたのは完成した一つの迷宮だった。
それは先ほどまで立体映像として表示されていた完成イメージと寸分違わない。違うとすれば、映像だけでなく匂いや音、空気まで感じ取れる部分だろう。
甘く濃厚な香りが鼻をくすぐる。チョコレートの海がそのダンジョン中に広がっていた。
チョコレートの海には流れのあるエリア、激しく渦を巻くエリア、噴水のように噴き出すエリア、荒れ狂うエリアなどが存在しており、一見そこを渡るのは不可能に思える。
しかし不可能を可能にするのが探検家というもの。アイディア次第ではこの海の上を進むことも出来るかもしれない。
また、ダンジョンには海路だけでなく陸路もきちんと用意されている。
チョコレートの海には綿あめにも似た雲の島がいくつもぷかぷかと浮かんでおり、それぞれの島の間に架けられた橋を渡ることで先へ進むことができるようだ。
多くの島には桜の樹を模した本棚が並んでおり、図書館をイメージした思念が色濃く反映されている。
本棚には様々な本が詰め込まれており、中には読書スペースの用意された島もある。桜の花弁の舞う中で、暫し読書に耽るのもまた一興だろう。
図書館を模した島々が浮かぶ中、特殊な趣向を凝らした島もいくつか存在するようだ。
それぞれの島では何らかの試練が課されるため、これらの島を目指して挑戦してみるのもいいだろう。
現時点ではこのような島が確認されている。
1. ゲームの筐体が並ぶゲームセンター風の島。筐体を調べるとゲームの世界に吸い込まれ、アクアリウム世界をモチーフにした各種ゲームに挑戦できる。
ゲームのジャンルは横スクロールアクションにパズルゲーム、RPGからシミュレーションまで多岐に渡るため、好きなものを選んで挑戦しよう。
2. 音の無い島。一見図書館島と変わりないように見えるが、全く音がしないことに加えて先に進むための橋もない。
先に進むには、何らかの方法で橋を出現させるギミックを見つけて発動させなければならない。
どうやら音がヒントになるらしいが……?
3. 細い水の糸が天井から垂れ下がった島。インクやペンキを製造する機械が稼働しており、あちこちに色とりどりのインクが入ったフラスコやペンキ缶が置かれている。
黒く塗りつぶされた人型やラクガキのような動物が現れるため、インクやペンキで彩ってやろう。
4. 円型の壁で囲われたコロシアム風の島。次々現れる大量の剣闘士の幻影と戦い、一定時間倒れずに耐え切ろう。
幻影たちは無限に数を増やし、倒しても次から次へと補充されていく。回避や防御が鍵になるだろう。
最深部への一番乗りを目指すもよし、あちこちの島を探検して回るもよしだ。
もちろん、来たるボスとの戦いに向けて利用できそうな地形やアイテムを見つけておくのもいいだろう。
さあ猟兵たち、完成した迷宮を思う存分探索したまえ。
ジャム・ジアム
アドリブ歓迎
チョコの海……とてもいい香り。素敵な所ね
まず水の糸の島を飛び回りたいわ
【ガラス蜘蛛】の力を借りながら
蔦と混じる明色の鳥の羽を伸ばし、
【空中浮遊】を楽しむわ。
飛んで、くるりと仰向けになったりしながら
手で糸を触ってみたいの。
辺りを巡り、工場の様子や
近くの島が見えたらその光景も目に焼き付けたい
海際はどんな地形?崖?砂浜はある?
降り立ったら、ペンキを少し拝借するわ
図書館もあるから、指を口元に
お辞儀をしてからお借りするの
どんな本があるのか、すこし題も覗きながら
溢さないようそーっと。
ペンキを持って、海際に。
ふしぎな子たちもいるのね
春らしい花を書いてあげる
今見てきた感動を、えいっ!と分け合うのよ
●花咲きの春色インク
バーチャルがリアルに変わったその場所で、ジャム・ジアムは甘く波打つ海を見ていた。
「チョコの海……とてもいい香り。素敵な所ね」
目を閉じて息を吸い込めば、鼻腔を抜けるチョコレートの芳香。ダンジョンがここに確かに存在していることを証明しているかのようだった。
好奇心に胸躍らせるジャムが初めに想いを馳せたのは、彼女自身が思い描いた場所――水の糸の島。
実際にこの目で見て、耳で聞いて、肌で感じたいと彼女は思った。
それにせっかくなら陸ではなく、自由な空からがいい。幸いにも彼女にはそれができるのだから。
ふわり、魔力を帯びた銀の薄布が靡く。水蜘蛛の泡にも似たそれの力を借りて、蔦と混じる明色の鳥の羽を伸ばした少女は、小柄な身体で宙に浮かんだ。
今のジャムは、きっと羽よりも軽い。どこにだって行けそうな、そんな心地がするのだった。
天から差し伸べられたような糸の元へ、ジャムは飛んでゆく。近くで見るとより透明なそれは、やはり水に違いないのだろう。
くるりと宙で仰向けになってみながら、指先で水の糸へ触れる。心地よい冷たさがそこにはあった。
一頻り水の糸と戯れて満足げな少女は、宙を泳ぐように辺りを巡ってみる。
「海際はどんな地形? 崖? 砂浜はある?」
真下のインク工場だけでなく、周囲の島まで。このダンジョンが攻略され消えてしまう前に、余すことなく目に焼き付けておきたかった。
やがて、羽を持つ少女は地上へ降り立つ。錆び付いた機械音に、こぽこぽと何かの煮える音。そこはジャムの創造したインク島だった。
彼女がこの島へ来た理由、それはペンキを少々拝借するため。
この島は数えきれない程のペンキ缶やインクのフラスコで溢れかえっている。そろそろ島からはみ出してしまうのではないかと思える程に。恐らくジャムが一つや二つ持っていったところで障りはないだろう。
立ち並ぶ本棚を視界に捉えれば、しーっと口元に指を当てる仕草をする。図書館では静かにしなければいけないと、ちゃんと知っていたから。
目ぼしいペンキ缶の前までくれば、礼儀正しくお辞儀を一つ。それはジャムの髪と同じピンク色。「お借りします」と心の中で誰かに伝えて持ち上げた缶は、見た目よりも軽かった。これなら持ち運びにもさほど難儀しないだろう。
缶になみなみと注がれたペンキを零してしまわぬよう、そっと移動する。その最中、ふと側にあった本棚を見てみた。
『インクの森のユニコーン』『奥深きインクの世界』『人生を変えた! 10分間のインク活用術』『インク占い』などなど、インクにまつわる本が並んでいるようだ。もしかすると、島ごとに違ったテーマの本が纏められているのかもしれない。
本たちに見送られながら海際まで辿り着いたジャム。ほっと一息つく間も無く、彼女を迎えるものがあった。
海から這い出るように現れた黒い影。いや、それはインクで黒く塗り潰されたもののようだった。棒人間のように簡易な人型のそれらは、ぺらぺらの紙のように薄い。海には他にもクレヨンで描かれたようなタッチのイルカも浮かんでいる。
橋の前に立ち塞がるインク人間。何やら「逃さないぞ」とでも言いたげだ。
「ふしぎな子たちもいるのね」
ぱちくりと目を瞬かせたジャムは、彼らの姿を興味深げに眺める。そして。
「春らしい花を書いてあげる」
えいっ!と、手にしたペンキとハケで花を描き始めた。まるで枯れ木に花を咲かせるように、あっという間にピンク色の花で彩ってしまえば、棒人間たちはインクが混ざって溶けるように消えてゆく。
くるくると大ジャンプを見せた後で飛びかかるイルカたちにも、同じく花を咲かせてやった。すっかりキュートな花柄に変身したイルカは、嬉しそうに宙でターンして、そのままチョコレートの海へと帰って行った。
花模様の尾びれへ手を振りながら、ジャムもどこか満足げな様子だった。
このダンジョンで、この島で見てきた光景。それら全てによって彼女が受けた感動を分け合えたような、そんな温かな心地が、じんわりと滲むインクのように胸に広がっていたから。
大成功
🔵🔵🔵
檪・朱希
アドリブ◎
WIZ
何か、色々ある……。
とりあえず、これからに備えて探索して「聞き耳」による「情報収集」を中心にしよう。
自分が作ったダンジョンも気になるし、陸路から向かうよ。
ふわふわしている雲みたいなものは、慎重に渡って……これ、重い敵が乗ったらすぐ落ちそう。
私や皆は、まだ落ちなさそうだけど。
音のない島に着いたら、静かに、周りの音を聞くよ。
それから、違和感を感じたら、その場所に黒蝶を放つ。
近くに罠が仕掛けられていたら、怪我するし。
仕掛けと罠の有無を確認したら、慎重に仕掛けを解く。
この仕掛け、役に立つかな。
他の所も可能なら、体力温存しつつ、無理はしない範囲でやってみるよ。それから最深部に。
鈴桜・雪風
まぁ、チヨコレイトの海に綿菓子の雲ですか
なんて可愛らしい迷宮でしょう
そこに本を詰め込んだ桜の樹が生えている、となると目が回ってしまいそうです
複数人の思念を混ぜ合わせて形作ると、この様な統一感のない混沌としたものが生まれるのですね
さて、折角図書館としての側面をもたせたのです
どの様な蔵書が有るのか見て回るのも一興でしょう
異世界の書物、わたくしに読めるとよいのですけれど
そして謎解きの場所があるのなら、当然挑んでおきます
仕掛けが隠されており、音のないことがその鍵……
わずかに音を発するカラクリを静寂の中から見つけ出せ、ということでしょうか
耳を澄ませて、音のない島を探索してみましょう
●音辿る者
ダンジョンメーカーが停止して暫しの後、檪・朱希は橋繋ぐ迷宮に足を踏み入れていた。
「何か、色々ある……」
先ほどまで空想の中にしか無かったダンジョンが、今この場で確かに存在している。
足で踏みしめた感触に甘い匂い、そしてあらゆる環境音。その全てが「リアル」であることを伝えているようだった。
これから先、ダンジョンの奥に潜む強大な災魔との戦いは避けられない。来る決戦に向け、朱希は利用できそうな地形や仕掛けに当たりを付けておくことにした。
彼女の耳は少々特別で、普段から周囲のあらゆる声、あらゆる音をよく拾う。強化人間となった時の副作用であるそれは、今回のように周囲の情報を探りたい時には役に立った。
カカオとココアバター製の重みのある波音に、桜の枝がしゃらりと揺れる音。ゲームセンターで聞き覚えがあるかもしれない電子音。それからコポコポと煮立ったような音は一体どこから聞こえるものだろう。
音に耳を傾けながら陸路を行けば、島と島を繋ぐ橋に差し掛かった。橋も陸地と同じく、浮雲のようにふわふわとした踏み心地だ。
足音までぼよんとファンシーに弾んでいるような気がする。
「……これ、重い敵が乗ったらすぐ落ちそう」
慎重に渡りながら朱希は思う。上手くやれば、この橋は使えるかもしれない。
橋の情報を頭の片隅に留めておきながら、彼女は更に先へ進むことにした。
●桜花の散歩道
一方その頃、鈴桜・雪風もまたこのダンジョンへとやって来ていた。
「まぁ、チヨコレイトの海に綿菓子の雲ですか。なんて可愛らしい迷宮でしょう」
両手の指先を合わせて微笑めば、ちょこちょこと控えめな歩幅で綿菓子の上を進む。その様は迷宮を探索しているというよりも、まるで春めいた街へお買い物に出かけているかのように優雅で、そして何より夢に溢れていた。
実際に完成した迷宮は、初めに雪風が思い描いたそれからすっかり様変わりして見える。
それは彼女に続いて何人もの猟兵たちの思念が混ざり合った結果で、統一感なく混沌とした出来栄えにもまた、雪風は趣のようなものを感じていた。
「さて、折角図書館としての側面をもたせたのです」
どの様な蔵書が有るのか見て回るのも一興と、探索を始めた彼女の目にさっそく桜の樹が飛び込んできた。
太い幹に詰め込まれた背表紙を指でなぞってゆけば、どうやら雪風にとって見慣れた言語も未知の言語も存在しているようだった。
数ある蔵書の中から、馴染みある文字で書かれた表題をいくつか抽出してみる。
『春と桜と私』『実録 桜と歩んだ人々』『岩岳豪写真集 ー櫻ー』
どうやらこの本棚には桜にまつわる本が集められているらしい。中でも雪風の興味を惹いたものが。
『櫻月館ノ事件簿』
恐らく表題からしてミステリの類なのだろう。少しだけ、少しだけなら。細い指で一冊抜き取ると、好奇心に導かれるように頁を捲る。
彼女は暫し物語の世界へ潜り込むこととなった。
●邂逅は静寂の中で
探索を進めある島へ辿り着いた瞬間、朱希は強い違和感を覚える。
彼女の耳が、急に何の音も拾わなくなったのだ。
これはもちろん彼女の耳が突然調子を落としたのではない。彼女を取り巻く環境が変化したのだと考える方が妥当だろう。
「なるほど、ここが……」
音の無い島。確かにダンジョンメーカーにはそのような島の存在が提示されていた。ならばここがそうなのだろうと朱希は確信する。
その時、朱希の背後から何者かの足音が近付いて来た。音は恐らく一人分。その主を見極めるため、振り返ったその先には。
「ご機嫌よう」
悠々とお辞儀をする可憐な乙女の姿があった。朱希もつられてご機嫌ようと返しながらも、一気に肩の力が抜けたような気がする。恐らく彼女もまた猟兵なのだろうと思ったから。
「ここが例の音の無い島みたいだよ」
「ええ、そのようですね。本当に静かな場所」
二人合わせて耳を澄ましてみても、やはりこの場からは何の音も聞こえてはこなかった。
「……音が無いことに、何か意味があるのかな」
ぽつりと溢した朱希の呟きを、雪風が拾い上げる。よくぞ聞いてくれましたと、そんな声が聞こえてきそうだ。
「ちょうど同じことをわたくしも考えていたのです。そしてひとつ閃きました」
確か音がヒントになると、ダンジョンメーカーの情報にはあったはず。何らかの仕掛けが隠されており、音のないことがその鍵――そこから導き出される一つの推理。
「わずかに音を発するカラクリを静寂の中から見つけ出せ、ということなのでしょう」
朱希の口から小さく感嘆の声が漏れる。確かにその線はありそうだ。
「じゃあ、私の得意分野だ」
ここは任せてと、朱希が音に集中し始めたのを見れば、雪風も静かにそれを見守る。
再び場を支配する静寂。途方もないそれの中に潜む小さな違和感を、朱希の耳は探り出した。
彼女が首の後ろに触れると、そこから黒い蝶が現れる。違和感の元へ迷うことなく飛んでいった黒蝶を、朱希と雪風もそっと追いかけた。
やがて、ある切り株の上で蝶は羽を休める。少女たちは仕掛けを発動させてしまわないように慎重に、細心の注意を払って切り株を調べ始めた。
「……あら?」
雪風が少し力をかけると、それに合わせて切り株もずれる。どうやらこの切り株は根を張っている訳ではなく、持ち上げれば簡単に退かすことができるようだ。
そろりと紛い物を持ち上げた瞬間、時計の秒針に似た音が耳に届いた。この切り株、防音の性能は抜群だったらしい。
そして中に仕掛けられているのは爆弾のようだ。人が近付くとカウントダウンが開始され、時が来れば爆破する仕組みなのだろう。大きさからして、恐らくこの島ごと軽く吹き飛んでしまうに違いない。
「さすがに爆発物の処理は専門外だな」
「諦めてはいけません。きっとどこかに解除の糸口が……」
二人、ほぼ同時に気が付いた。『解除』と書かれた赤いボタンの存在に。
ここまで分かりやすいと罠の可能性もあるだろうが、既に残された時間は少ない。意を決してボタンを押した。
――――
しん、と静かな時間が返ってくる。どうやら爆発はしていないらしい。それに喧しい時計の音も消えていた。
「やった……のかな?」
「ええ、そのようですね」
緊張の糸が解れたのを感じながら、二人でその場に座り込む。何とか事なきを得た。
カウントダウンの止まった爆弾を見て、朱希は思う。これからの役に立つのではないかと。
万が一また動き始めればすぐに音で分かるだろう。ひとまずこの爆弾も慎重に持って行くことにした。
「これからどうするの? えっと……」
そういえば相手の名前も聞いていなかった。ちらりと目の前の彼女へ助けを求めるような視線を向けると、意図を察したように笑顔が返ってくる。
「雪風と申します。わたくしは他の島も見て回ろうかと」
相手の名を聞けば、同じく朱希も名乗り返した。
「そっか。じゃあもう少し一緒に行動してみる? 私も最深部に行く前に島を回ろうと思って」
「ええ、喜んで。旅は道連れと言いますもの」
かくして、音の無い島の試練を乗り越えた二人の探索はもう少しだけ続くのだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クロード・クロワール
エレステイル(f14363)と。
ふ、とうとう始まりの海を生んでしまったか
……いや、溺れるのでは?
ありがとう、エレ君。
とはいえ頼りっぱなしも大人の沽券に関わるからな
移動手段だ。
くまくま海賊団を召喚する
海賊船は足に、くま達は……まぁ役に立つだろう
しかし変わった島だな。
そうだな。花や星とか良いんじゃないのか?
…いやここは翼もあった方が良いかもしれないな、周りがチョコ海だしな
ふ、赤か。添削じゃない赤がこんなに平和とはな
……なんて、純粋な花丸(う
この世に、こんな純粋な赤があるとは……っ
く、何故この世界の外には、〆切が
ありがとう、エレ君。
そうか、わたげ…どやってるなキミ
いやまて、撫でさせてくれ(もふ…
エレステイル・テイル
クロードくん(f19419)と
チョコすごいねー(指先で掬って舐めてみる)
うん、ほんものだよ!
おぼれたら、ボクがたすけにいくよ?
このおふねすごいねーおっきい!クマさんもかわいいね。
わたげもこうふんしてるよ!(威嚇?)
これならおおうずもあんしんだねー
わー、いろんないろがビンにはいっててキレイだね!
このインクでぬりえすればいいのかな?
かわいくしてあげればいいんだよね?
ほしとか、おはなかいたり?
はねがあるほうがべんりだもんねー
クロードくん、赤がすき?
なら大きくはなまるあげるんだよっ!
〆切さんって足も速くて、つよいんだねぇ。
クロードくん、わたげなでてみる?
ちょっと心がやすまるらしいよ!(わたげ鼻ふんす)
●でこぼこ冒険記
迷宮に広がる大海原――茶色く濃厚、スイートでちょっぴりビターなそれを眺める二つの影があった。
「ふ、とうとう始まりの海を生んでしまったか」
元々海の無かった迷宮内にそれを生み出したのは、他でもないこの二人。クロード・クロワールとエレステイル・テイルだ。
海といえば生命の根源。チョコレートで出来ているとはいえ、時に母なる海とも呼ばれる大きな存在を自分たちの手で生み出してしまった事実に、クロードは笑みを浮かべる。
そんな彼の隣でちょこんとしゃがみ込むエレステイル。
「チョコすごいねー」
海の凄さはぴんとこないけれど、チョコレートの凄さはよく分かる。だって覗き込んだ海面はこんなにも美味しそうで。ついつい味見してみたくなってしまうのも仕方のないこと。
そっと指で掬って舐めてみれば、幸せな甘さが口いっぱいに広がった。
「うん、ほんものだよ!」
おっこちてしまいそうなほっぺたに手を当て、嬉しそうに笑顔を咲かせるエレステイル。
やはりここにあるのは本物のチョコレート。本物の海。本物。本物……
「……いや、溺れるのでは?」
クロードは急に我に返る。海は海でも、目の前にあるのは気分屋の海。荒波や渦潮が侵入者を手厚く歓迎してくれることだろう。それはもう手厚く。
これはとんでもないものを生み出してしまったと、彼は頭を抱えた。
感情のせわしない彼の顔を覗き込むエレステイル。布で隠れてはいるけれど、なんとなくクロードの気持ちは伝わってくるようで。
「おぼれたら、ボクがたすけにいくよ?」
純粋な瞳で覗き込んだまま、こてりと小首を傾げるのだった。
「ありがとう、エレ君」
目の前の少女がとても頼もしく映る。
「とはいえ頼りっぱなしも大人の沽券に関わるからな。移動手段だ」
海を移動する手段といえば、やはり船だろう。
クロードがぱちんと指を鳴らせば、どこからともなく海賊船が現れた。
彼らはクマのきぐるみを着た幽霊たちの海賊団。クロードが必死に考えた絵本の登場人物である。
海賊船は足になり、くまたちも何らかの役には立つだろうとクロードは思った。
さっそく二人が船に乗り込めば、海賊船はふわりと浮き上がって空を行く。荒れ狂う海だってなんのそのだ。
「このおふねすごいねーおっきい! クマさんもかわいいね」
遠くなった海と地上を見下ろしながら、エレステイルがはしゃいだように言う。
「わたげもこうふんしてるよ!」
いつも一緒の兎を見れば、くまたちの前でぼわわと全身の毛を膨らませていた。
興奮しているというより威嚇しているのではとクロードは思ったが、ここは黙っておくことにした。
やがて海賊船はある島に着陸する。
そこは色とりどりのインクを製造する工場の島だった。
「わー、いろんないろがビンにはいっててキレイだね!」
ビーカーやフラスコ内で造られたインクは最終的に瓶詰めとなって並んでいるようだ。
あらゆる色の入った瓶が並んでいると、まるで虹のようにも見える。
「しかし変わった島だな……ん?」
迷宮内でも異質を放つこの島をクロードが見回したその時、地面に黒い墨溜まりのようなものが現れる。そこからずるりと飛び出てきたのは、真っ黒なインクで塗り潰されたような、ペラペラの棒人間だった。
そして彼らが現れたのに合わせ、いつの間にかラクガキの動物たちもやってきている。ラクガキたちはクレヨンでぐちゃぐちゃに塗られたようなタッチをしており、クジラやライオン、それにユニコーンまでいた。
どうやら島へやってきた人間への試練が始まったらしい。
「このインクでぬりえすればいいのかな?」
かわいくしてあげればいいんだよね? とエレステイルが手に取ったのは桃色インクと星色インク。インク瓶のそばにはちゃんと絵筆も置かれているようだ。
きゅっと瓶の蓋を開けば絵筆を浸けて、それからえーいと描き始めた。
クジラのボディに黄色いお星様、ライオンは可愛らしく花柄に、そして棒人間には愛嬌のある顔を描き込んで。
「良いんじゃないか? ……いやここは翼もあった方が良いかもしれないな、周りがチョコ海だしな」
今まで静観していたクロードも絵筆を手に取る。空色インクを選べば、それぞれに翼を描いてやった。
「はねがあるほうがべんりだもんねー」
言ってぱちぱちと拍手を送ったエレステイルも、もっとたくさんのインクを開けて、可愛いものや楽しいものをたくさん描き込んでいった。
やがて、ラクガキたちはなにやら嬉しそうに飛び跳ねると、そのままダンジョン内の空へ飛び立っていった。クロードの描いた立派な翼で。
その様子を見て、クロードもどこか満足げな様子。そんな彼へ、にこにこ顔のエレステイルが赤インクを手にちょこちょこ寄ってきた。
「クロードくん、赤がすき? なら大きくはなまるあげるんだよっ!」
はいっとクロードの頬へ真っ赤なはなまるを贈った。
きょとんとした様子を見せたクロードも、ふっと笑みを浮かべて。
「赤か。添削じゃない赤がこんなに平和とはな。……なんて、純粋な花丸」
思わず目頭を押さえかけるクロード。
「この世に、こんな純粋な赤があるとは……っ」
そして突然苦しみ始めた。彼の脳裏に浮かんだのは〆切の存在。何故この世界の外には〆切などというものがあるのか。こんな時にまで苦しめられるなんて、おのれ〆切め。
「〆切さんって足も速くて、つよいんだねぇ」
のんびりと言ったエレステイルの中で、〆切のイメージが着実にスーパーヒーローか何かに近付いている。
どうしたら元気になってくれるかなと考えて、そしてぴこーんと思いついた。
「クロードくん、わたげなでてみる? ちょっと心がやすまるらしいよ!」
ふわもこの兎を抱きかかえて見せると、わたげもふんすと得意げに鼻を鳴らして。
「ありがとう、エレ君。そうか、わたげ……どやってるなキミ」
言いながらも、クロードの手はすすすとわたげに伸び始めている。
「いやまて、撫でさせてくれ」
そのままお言葉に甘えてわたげを撫でさせてもらうことにした。
ふわもこもふもふに癒されて、クロードも暫し〆切の呪縛から逃れることができただろう。
あくまで暫し。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユニ・エクスマキナ
せっかくだし、ぬいぐるみちゃんも一緒に探検しよ?
読書スペースにいたぬいぐるみちゃん(どんな子かはお任せ)を連れて
一緒にダンジョン探検!
わーぉ!
チョコの海に浮かぶ、綿あめみたいなふわふわの島!
これ、食べられるのかな…?(そわっ
ちょっと、味見できないかな…?(そわわっ
やっぱり、思った通りだったのねー!
ユニ満足!
どの島を探検したい?
ユニはねぇ、ゲームとか好きだけど、クリア出来る自信ないから…(凹
あ!ほら、あそこ見て!
ふむふむ、色を塗ってあげればいいのかな?
じゃぁさ、一緒に塗ろう!
何色がいいかなー?
ユニはカワイイ感じがいいのねー!
あ、キミのお友達がいる!
せっかくだしお揃いにしよー!
出来たら写真撮ろ~!
●苺とパフェの大冒険
ふわふわあまあまな迷宮内、誰よりもるんるんとご機嫌なステップを踏む少女がいた。
彼女の名はユニ・エクスマキナ。新しいものと可愛いものが大好きな彼女は今、ダンジョン内部を探検している。
壁を彩る大粒ドロップも綿あめ島も、ユニの思念から生み出されたもの。そして、図書館の読書スペースにお行儀良く座る動物のぬいぐるみたちもまた同じで。
「せっかくだし、ぬいぐるみちゃんも一緒に探検しよ?」
ユニが手を取り、声をかけたのはロップイヤーのウサギ。まっしろボディと苺色のおめめは、なんだかユニの大好きな苺パフェに似ていた。
ウサギはぴょこんと椅子から下りれば、ユニの隣を一緒に歩き始める。どうやらそろそろ読書にも飽き始めていた頃らしい。
小さなお供を連れ、ユニはさっそく探検を開始する。
――その前に、先ほどからずっと気になっていたこの光景。チョコレートの海に浮かぶ、綿あめみたいなふわふわの島。
「これ、食べられるのかな……?」
そわっとチョコの海を見て。
「ちょっと、味見できないかな……?」
そわわっと綿あめ島を見る。そして。
まず指で一掬いしたチョコレートを舐めてみれば、とろけるような甘さが口の中いっぱいに広がった。
次に足元のふわもこを、まだ踏んでいない場所を選んでつまんでみる。舌の上で感じたのは優しい砂糖菓子の味で、どうやら綿あめみたいな島ではなく、本当に綿あめの島だったらしい。
「やっぱり、思った通りだったのねー! ユニ満足!」
幸せなダンジョンスイーツタイムを終え、ユニは軽い足取りで先へ進む。
そしてその道中も、ちょくちょくチョコや綿あめをつまんでいたとかなんとか。
「どの島を探検したい?」
手を繋いで一緒に歩く苺ウサギに聞いてみる。ウサギはきょとんと首を傾げながらユニを見上げて。
「ユニはねぇ、ゲームとか好きだけど、クリア出来る自信ないから……」
言いながらユニがへこんだ様子を見せれば、ウサギは元気出せよとばかりに短い手を振るのだった。
ありがとなのねーとウサギをハグしたその時、視界に入ったとある島。
「あ! ほら、あそこ見て!」
立ち上がって島の方を指差すと、手を離されたウサギはぼとりとおっこちた。
ユニと苺ウサギがやってきたのはインク工場の島。きょろきょろと見回せば、あちこちで色とりどりのインクがつまった瓶やペンキ缶が見つかった。
そしてさっそく忍び寄る探検者への試練。影のように地面に現れたインク溜まりから、ずももと真っ黒なウサギたちが出てくる。その姿は紙のようにぺらぺらで、まるで真っ黒なインクで塗り潰されているようにも見えた。
真っ黒なウサギたちに島中のカラフルインク、ユニと苺ウサギは何か思いついたように目を合わせて。
「ふむふむ、色を塗ってあげればいいのかな?」
それならと、ユニは白の、ウサギは苺色のインク瓶と絵筆を手に取る。
「じゃぁさ、一緒に塗ろう!」
キミのお友達を、キミとお揃いの色に。
えいやーとユニが白で色を塗れば、ホイップクリームのように真っ白になって、それにウサギが苺色のつぶらな瞳を描いていく。それはまるで、苺パフェのてっぺんに大粒の苺を乗せていくよう。
そうやって次々に黒ウサギたちをおいしく可愛くデコレーションしていった。
気が付いた頃には、苺ウサギとおんなじ色のぺらぺらウサギたちがたくさん集まっていて。
ユニと苺ウサギは心地よい達成感に包まれていた。そしてやったねのハイタッチ。
「よ~し、写真撮ろ~!」
みんな並んで並んでーと、自撮りの構えでウサギたちを集めるユニ。
それからパシャリ。
画面の中には笑顔のユニ、そしてどこか嬉しそうなウサギたちの姿が写っていたのだった。
――絶妙にカメラワークがずれていたりするのだが、それはご愛嬌。
大成功
🔵🔵🔵
アニカ・エドフェルト
さて、自分で作った、ダンジョンは、ちゃんと、自分で、攻略、しませんと。
と、いうわけで、4の島、ですね。
真剣な、面持ちで、コロシアムの、中心まで、歩いていって、体を、ほぐしながら、第一陣を、待ちます。
一応、〈オーラ防御〉は、ありますが、相手が、剣を、使うと、なると、基本は、〈第六感〉や〈見切り〉で、避けていかないと、ですね。
相手の、攻撃の筋を、しっかり見ながら、くるくる、ひらひらと、〈ダンス〉を、するように、避けて、いきます。
増えすぎても、いけませんから、時々、攻撃UCも、使って…
無傷で、というわけには、いきません、でしょうが、各種〈耐性〉も、含めて、頑張って、いきますっ
(アドリブ・苦闘他歓迎)
●闘士は戦場に立つ
チョコレートと綿あめのファンシーな迷宮の中、一際異彩を放つ島があった。
「さて、自分で作った、ダンジョンは、ちゃんと、自分で、攻略、しませんと」
ざっと硬い足場を踏みしめれば、薄く砂埃が舞う。島を囲む円型の壁の中へ、アニカ・エドフェルトは足を踏み入れていた。
この島を生み出したのは、他の誰でもないアニカ自身だ。
だから、これから何が起こるかも知っている。
次々と剣闘士の幻影が現れるのだ。それも無限に。挑戦者はそれらと戦い、一定時間倒れずに耐え切らなければならない。
挑戦者とはもちろん、アニカのこと。
少女は真剣な面持ちで「それ」が始まるのを待った。軽く柔軟をし、身体をほぐす様には拳闘士見習いとして幾らかの余裕も感じられる。
そして、間もなくその時は訪れた。
黒い影のような幻影たちが、何もない場所から現れ始める。剣闘士の姿をとる幻影は、剣や斧など、それぞれで違った武装をしているようだ。
既に前後の出口には鉄格子が下りている。
「やるしか、なさそう、ですね」
覚悟を決め、アニカは構えをとった。
耳障りな雄叫びを上げ、幻影たちが襲いかかってくる。一体が振り下ろした剣を、アニカは横に躱した。
身体をオーラで守ってはいるものの、武器を持つ者が相手であればそれも心許ない。そのため、アニカは相手の攻撃を受けるのではなく、避けることを主とすることにした。
あらゆる方向から来る剣や斧を、アニカは巧みに躱していく。
時には槍による突きも来た。高く跳躍するとそれを軽々と飛び越えて、そしてつま先から優雅に地面へと降り立つ。
まるで舞い踊るように軽く、しなやかな身のこなし。それを可能にするのは彼女の拳闘士としての勘と経験だろう。
攻撃を避けてやればそこに大きな隙が生まれる。小柄な体がすかさず懐へ入り込めば、そのまま胸ぐらの辺りを掴んで地面に叩きつけた。
真っ黒な灰が風にさらわれるように消えていく幻影。しかし消えた分を補って余りある数の幻影が、尚も増え続けていた。
――――
一体どれだけの時間戦い続けたことだろう。目の前の戦いに没頭するあまり、時間の感覚が全く無い。
幻影たちの攻撃を避け続け、そしてこちらから反撃もしてやった。だがそれでも幻影の数は一向に減る気配がなく、寧ろ増えているとすら思う。
数が多すぎる。複数による同時攻撃を避け切ることは難しく、どうしても幾らかダメージを貰ってしまうし、次々別の個体に変わる相手とは違い、こちらは一人。次第に消耗が隠せなくなっていた。
「……!」
思考がぼんやりとし始めた時だった。一体の剣を躱すも、同時に繰り出された別の一体の蹴りを避けきれない。勢いよく背中から壁に叩きつけられれば、ずるりと地面に落ちたところで首を掴まれ、小さな身体を軽々と持ち上げられる。
必死にもがけばもがくほど消耗し、意識も遠のくように感じられた。
ならば、一撃で決めるしかない。
全神経を今ここに集中する。そして。
「(今です……っ!)」
自分を持ち上げていた幻影の顎に、膝による一撃をお見舞いしてやった。首を掴む手が離れれば、そのまま猫のように地へ降り立つ。
ちょうどその時だった。幻影のうちの一体がだらりと脱力したかと思えば、手にした武器が重い音をたてて落ちた。
その一体を皮切りに、他の幻影も武器を落としては次々消えていく。
「やった、んですね」
どうやら試練を乗り越えたらしい。緊張の糸が切れたようにへたりと座り込む。
何体もの幻影を相手取り、たった一人で戦い抜いた。
今この場で、彼女は紛れもなく勝者だった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『マッド・メイズ・メイカー』
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POW : 自己防衛機構、起動
自身の【青い巨大コア】が輝く間、【コアから放たれる魔力の砲撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD : 災魔、罠、設置開始
【召喚した大量の災魔や迷宮の罠】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : 迷宮、構築・拡大・変形
戦場全体に、【感覚を狂わせる蒸気を吹き出す魔道蒸気機関】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:純志
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「照崎・舞雪」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●迷宮の守護者 起動
猟兵たちは進む。
いくつもの島を経由しながら、橋を渡って奥へ奥へと。
そうして進んでいけば、やがて全員が同じ場所へ辿り着くこととなる。
一番奥のその島へと繋がる橋は計5本。そのうちのどれかに猟兵が差し掛かった時、迷宮の主は目を覚ますだろう。
青い巨大コアが輝けば、一条の光が地を走る。すんでのところでそれを避けた猟兵の背後で、大きな爆発が起きた。爆風に飛ばされそうになったのを、両足で踏ん張ってなんとか耐える。
どうやら魔力の砲撃が放たれたらしい。マッド・メイズ・メイカーは侵入者に反応して起動し、攻撃を開始したようだ。
橋を渡ろうとする者に、マッド・メイズ・メイカーの攻撃は容赦なく襲い掛かる。
コアから放たれる魔力の砲撃に、召喚される災魔と罠、蒸気を吹き出す魔道蒸気機関。これらをどうにかしなければ、橋を渡ることもままならないだろう。
しかし、マッド・メイズ・メイカー本体は身を守る手段を持たない。つまり、橋を渡り接近さえしてしまえば撃破は容易ということだ。
正真正銘、これが最終決戦となるだろう。
最奥で待ち構える災魔を討ち滅ぼし、ダンジョン攻略を完了せよ。
クロード・クロワール
エレステイル(f14363)と。
大冒険も此処に終了、か。
確かに、また遊びに来たいものだな。
橋を渡るものを攻撃するのであれば、橋を行く彼女自身の道行きを僕が書けば良い
僕の著作は頑丈だからな
朱露の森にて迷宮を描く。身体能力の強化付きだ
我が雪、我が著作が迷宮として壁にな……!?
鎖が、巻き付いている、だと
待てエレ君、僕は走るには向かな……ま、早いなキミは!?
迷宮を上書きされる気配には、我が舞台で対応するが
エレ君が辿り着ければ良い
ふ、感覚が狂っていようが今の僕は引きずられているからな
……どやって言う事でも無いが
エレ君の援護にナイフを投げ、必要であれば壁となろう
冒険って言うのは大団円で終わるものだからな
エレステイル・テイル
クロードくん(f19419)と
たのしかったねーまたあそびにきたいなー。
そのためにはあのこをたおさないといけないんだよねっ!
よーし、ボクがんばるよっ!
まずは、おちないようにボクのオーラをあのこにぶつけて、
ばくはつのすきに、クロードくんのめいろにとびこむよ。
くさりでどーんとつないでいくからまよわないんだよ!
わーい、ゆきだっ(迷宮に尻尾ぱたぱた)
え、くろくん。ひとりでだいじょうぶかって?
うん、クロードくんもくさりでつないでおいたから、いっしょだよ!
(ずるずる)
(話を聴かず)
ひかりはゆうきときあいでよけるんだよっ!
たどりついたら、くろくんをどーんとなげつけるよ
ヒーローとうちゃく、だよ!(どやっ)
ジャム・ジアム
アドリブ歓迎
やっかいな蒸気ね
石橋は叩いてというけれど、長居もできないわ
迷路に出口は必ずあるのでしょ?
護身も兼ね『しっぽの針』を
付近の形状把握に、範囲攻撃で繰り返し放ちつつ
『謎のレモン』の蔦に『護り現』を纏わせ強化
敵の攻撃は、
針と【見切り】で対処
仲間に攻撃を当てる事は絶対ないよう慎重に。
【勇気】をもって蔦を伸ばし続け
【念動力】と合わせ【追跡・偵察・情報収集】
反響でなく
放った方向への手応えと
蔦が実際に伸ばせるかどうか等で判断する
糸口を得たら『猛る毒蔦』発動
一気に蔦を広げ
脱出と共に敵へ【暗殺・先制攻撃】
ありったけを込めるわ
少しでも動きを奪いたい
ねえ、此処は素敵な場所でしょう
あなたの為の罠よ、味わって
檪・朱希
アドリブ◎
SPD
あれが最奥のボス……。
……大丈夫、何とか出来る。
SWT-04SMGで呼び出される災魔を「一斉発射」、「制圧射撃」で攻撃しつつ自身に注意を向けさせる。
「島と島を繋ぐ橋」は、弾みがあるから、ここに誘導してから「蝶の鼓動」。
後でかなり疲れるけど、一気に仕掛けるんだ。
身体能力を上げて、弾みを付けてまず敵を纏めて蹴り飛ばす。
それからもう1回弾みを付けて、敵を踏みつけるとかして本体へ接近するよ。
そこらじゅうに罠を仕掛けてるんだろうけど、「聞き耳」と「情報収集」で、罠がある所は避けて近づかせてもらう。
音のない島で持ってきた爆弾を設置して、すぐ離れるよ。
これで……何とか、なったかな。
鈴桜・雪風
成程、これが中枢
まさに核そのものといった見目の災魔ですのね
あれへたどり着ければ迷宮の攻略も完了、と
よろしいですわ
如何な防衛機構とて、潜り抜ける手段は無限にあるということを証明してみせましょう
魔導蒸気機関を【桜の癒やし】で眠らせ、活動停止に追い込みますわ
惑いの蒸気けぶる機械、破壊は困難なようですが……
不活性化して蒸気を出さなければただのオブジエです
召喚された災魔も巻き添えにできれば最上ですね
そうすれば、後は守るもののない橋を渡るだけです
「ああ、砲撃ですか?――それなら、斬って割れば良いだけのこと」
●朱絽と聖者の場合
最奥まで辿り着いた猟兵たちは、それぞれの思いを胸に5本の橋の前に立つ。
第一の橋に立つのはクロード・クロワールとエレステイル・テイルの二人だった。
「大冒険も此処に終了、か」
まるで物語の一節のように零されたクロードの言葉。エレステイルの頭の中にはこれまでの冒険が蘇るようで。
「たのしかったねーまたあそびにきたいなー」
ほにゃりと頬を緩めながら笑うのだった。
「確かに、また遊びに来たいものだな」
クロードの顔にもふっと笑みが浮かぶ。〆切からの逃避には実に適した場所だったように思う。
しかし、彼がまた来たいと思ったのはきっとそれだけが理由ではないだろう。
「そのためにはあのこをたおさないといけないんだよねっ! よーし、ボクがんばるよっ!」
えいえいおーと拳を突き上げた少女につられてしまった。クロードも緩く拳を作って。
そして、二人は行動を開始する。
今、橋の上は完全に敵のフィールドとなっている。闇雲に飛び込むのは得策ではないだろう。
ならばどうするか。そう、自分たちのフィールドを作り出してしまえばいいのだ。
「橋を渡るものを攻撃するのであれば、橋を行く彼女自身の道行きを僕が書けば良い。僕の著作は頑丈だからな」
どうぞご覧あれ――
クロードの著作『朱露の森』から、雪の降る舞台で出来た迷路が生み出され、橋の上に展開された。
迷路の出口はただ一つ。その一つを目指し、進めばいい。
迷路が完成したのを見れば、すかさずエレステイルがドラゴニアン・チェインを伸ばした。マッド・メイズ・メイカーに命中したチェインは互いを頑丈なオーラの鎖で繋ぎ、同時に繋いだ相手に爆発を起こす。
今だと、エレステイルは迷路に飛び込んだ。爆発が目くらましになり、妨害なく迷路に入ることができたようだ。
「我が雪、我が著作が迷宮として壁にな……!?」
エレステイルが迷宮を抜けるのをその場から援護しようと考えていたクロードに、ある違和感。
なんと、彼女の鎖が自分の体にも巻き付いているではないか。
「クロードくんもくさりでつないでおいたから、いっしょだよ!」
傍らのくろくんに向け、満面の笑みである。
「待てエレ君、僕は走るには向かな……ま、早いなキミは!?」
有無を言わさず、クロードも一緒に走るはめになった。並走するというよりは、ずるずると引きずられる形に近いかもしれないが。
「わーい、ゆきだっ」
雪の迷宮にはしゃぎながらもエレステイルは駆けていく。
ドラゴニアン・チェインはマッド・メイズ・メイカーに繋がっている。つまり、鎖を辿っていけば最短ルートで目的の場所まで辿り着けるはずだ。
しかし、敵もただでは通してくれない。迷宮を作り替える能力でクロードの迷宮を歪ませようと働きかけるが、引きずられるクロードもすかさずそれに対応する。
エレステイルが辿り着ければいいと、にやりほくそ笑んで言ってはみたものの、引きずられた状態ではどうにもしまらなかった。
●はりの子の場合
むこうの橋の上に現れた雪の迷宮を遠目に見ながら、ジャム・ジアムは第二の橋の前に辿り着いていた。
「やっかいな蒸気ね」
視線を目の前の橋に移せば、マッド・メイズ・メイカーの生み出した蒸気の罠が行く手を阻んでいる。
迷路の攻略に手こずり、橋を渡るのに時間をかければかけるほど、敵の攻撃に晒される時間も長くなることだろう。
「石橋は叩いてというけれど、長居もできないわ。迷路に出口は必ずあるのでしょ?」
なら進む他ないと、ジャムは一歩を踏み出した。
進みながら、尻尾に生えた針を繰り返し放っていく。
この針は意思ある「空飛ぶ針」の大群。ジャムのかわいい子たち。彼らはジャムの身を護ってもくれるし、付近の形状把握にも一役買ってくれた。
蒸気の向こうの敵から光が放たれる。しかし、それを素早く察知した針たちがすかさずジャムの盾となった。
その隙に、ジャムはレモン型の豆に手を伸ばす。この豆は魔法の豆。ジャムの意思に呼応して豆の木の蔦が伸びていく。
念を込めて蔦をオーラで包んでやれば、もはやこの蔦を止められるものはいなかった。
いよいよ蔦は蒸気の中まで伸びていく。ジャムは蔦を放った方向への手応えと、蔦が実際に伸ばせるかどうか等を手掛かりに活路を探っていく。
従順に彼女を護る針たちのお陰で、ジャムは蔦の操作に集中することができた。
そして、ついに見つけた糸口。
「さあ、締め上げて」
猛る毒蔦、タランテラ。迷路の形に沿うように、地面に壁にと蔦や葉が周辺一帯に生い茂り始める。
生い茂った蔦は探り当てた魔道蒸気機関にも絡みつき締め上げて、それらを完全に無力化していった。
蒸気が晴れた途端、戻ってきた方向感覚。迷宮内の支配権を得たジャムが出口を見つけるまで、そう長くはかからないだろう。
●旋律の歌い手の場合
「あれが最奥のボス……」
第三の橋の先、根を張ったように動かないそれを、檪・朱希は見つめていた。
長距離の射程を持つ攻撃に加え、罠や配下までけしかけてくる。厄介な相手に思えたが、しかし。
「……大丈夫、何とか出来る」
ここまでやって来たのだ。引き返すという選択肢は、朱希の中にもはや無い。
ヘッドホンの位置を直すと、こちらへ向かってくる災魔たちを真っ直ぐに見据えた。
愛用の銃、SWT-04SMGを構える。集弾性と連撃速度に優れたそれを連射し始めれば、何発かの銃弾が災魔の体を捕らえ、または掠めていく。
朱希を排除すべき敵と見做したのか、蝙蝠に似た羽をもつ災魔たちは、愚直にこちらへ目掛けて飛んでくる。
もう少し――そう、もう少し。こっちへ来い。
まんまと誘導にかかった災魔たちが自分の射程に入るのを、朱希は虎視眈々と待っていた。
そして彼女の狙い通り、災魔たちはやってきた。朱希の手は迷いなく蝶の傷跡へ。
「コード、アイン。リミット……アンロック」
詠唱を終えた頃、彼女の身体能力は爆発的に上昇していた。
それと同時、心臓が早鐘を打つように収縮と拡張を繰り返し始める。体が熱い。体への負担が大きいのが欠点だ。
雲で出来た橋は反動をつけてやればトランポリンのようによく弾む。
弾みを付けて跳ぶと、そのまま敵を纏めて蹴り飛ばした。跳んだ勢いを乗せた蹴りは重く、何体かの災魔を一撃で葬った。
橋の上に着地すると、再度弾みをつけて跳び上がる。
しかし今度は蹴りを見舞うのではない。蹴りに驚いたのか、一瞬動きを止めた災魔たちは足場として最適だ。
彼らを踏みつけるようにして、朱希はマッド・メイズ・メイカー目指し渡っていった。
●回遊幻灯の場合
乙女が立つのは第四の橋。凛と見据えたのはその先で。
「成程、これが中枢」
まさに核そのものといった見目の災魔だと、鈴桜・雪風は思った。
あれこそが猟兵たちの打ち滅ぼすべき相手。あれへたどり着ければ、すなわち迷宮の攻略も完了するということ。
よろしいですわ。言って、桜が咲う。
「如何な防衛機構とて、潜り抜ける手段は無限にあるということを証明してみせましょう」
暴き、突きつける。それこそが探偵の本分なのだから。
彼女を待ち構えるのは蒸気の迷路。魔道蒸気機関から吹き出す蒸気が、迷い込んだ獲物の感覚を情け容赦なく狂わせる。
しかし彼女は表情ひとつ変えず、進む歩幅も悠々と。
雪風を蒸気の群れが包み込もうかという、まさにその時。ひらり、薄いピンクの花弁が舞った。
甘やかな香りを連れ立って、桜の花吹雪がやってくる。遊びましょうと誘うように、花弁が蒸気機関を一撫ですれば、それらはたちまち役目を放棄した。
眠りについた蒸気機関が邪魔立てすることは、もうない。
「惑いの蒸気けぶる機械、破壊は困難なようですが……」
晴れゆく蒸気の中、花が優雅に立っている。
「不活性化して蒸気を出さなければただのオブジエです」
ふっくらと柔らかな笑みを湛えて。
種明かしを終えた探偵は、また満足げに歩き始めた。
すっかり静かになった迷宮内で、彼女の道を阻むものは無いだろう。
●そして彼らは巡り合う
マッド・メイズ・メイカーは動かない。そうせずとも済むはずだったのだ。ここまで辿り着く者など、いはしないと。
災魔の親玉の元へ、毒の蔦が伸びる。
そして蔦に遅れて飛び出した影。明色の羽を背負ったはりの子が、敵が動くより先に針を飛ばした。
場に広がる蔦や葉に絡めとられた災魔は、成すすべもなく針をその身に受ける。
ぷすぷすと黒煙を上げ始めた部位は、どうやら魔道蒸気機関の罠を生み出す役目を担っていたらしい。
「ねえ、此処は素敵な場所でしょう。あなたの為の罠よ、味わって」
その言葉に逆上したかどうかは分からない。しかし、青い巨大なコアが光を集め始めたのは確かだった。
発射までそう時間はかからない。至近距離からジャムを狙って光の砲撃が放たれる。
刹那、砲撃が割れた。真ん中から見事に真二つになった砲撃は、ジャムの左右を抜けて飛んでいく。
「砲撃ですか――それなら、斬って割れば良いだけのこと」
傘に直刀を納めながら、雪風が言う。
にこりと微笑みかけた彼女に、ジャムも不思議と心強さのようなものを感じ、同じく笑みを返す。
「さぁ、反撃とまいりましょう」
「ええ」
共に立つ二人の少女。その瞳に恐れなどなかった。
そんな彼女らが察知した気配。それは前方ではなく背後から突然やってきた。
「いっけー、くろくんっ」
飛来した短槍とナイフが、土台部分のパーツに突き刺さる。
どうやら災魔や罠を設置する機構が破壊されたらしい。更に増した黒煙が被害の甚大さを物語っていた。
楽し気に現れたエレステイルとは対照的に、クロードはどこかやれやれ顔。しかし、そんな彼ももしもの時は壁になろうと覚悟を決めていた。
満身創痍のマッド・メイズ・メイカーに残された攻撃手段は砲撃のみで。ひたすらに砲撃を撃ち続けるも、そのどれもがジャムの針に、雪風の直刀に、エレステイルを庇うように立ったクロードのナイフによって呆気なく無力化されてしまった。
今、マッド・メイズ・メイカーの注意は完全に4人の方へ向いている。その好機を逃さず、接近を試みる猟兵の影。
既に到着していた朱希は、物陰からチャンスを窺っていた。
全てはこの瞬間のため。ターゲットの自己防衛機構が弱り切った、この瞬間。
耳を澄ませて安全なルートを探りながら、死角を縫って敵のすぐ側まで接近する。
そして――
「みんな、島の外まで逃げて……!」
その場にいる猟兵たちに呼びかける。朱希が取り出し設置したのは、音の無い島で手に入れた爆弾だ。
他の猟兵たちが避難したのを確認し、彼女も急いでその場を離れる。
次の瞬間、耳鳴りのような音が猟兵たちの耳をつんざいた。爆風とともに、マッド・メイズ・メイカーの破片が飛び散っていく。
島一つ分は破壊できるほどの威力の爆弾だ。先ほどまで立っていた場所がえぐれるように無くなっているのを、橋を渡り切った先で猟兵たちは見守っていた。
「一件落着、ですわね」
最初に沈黙を破ったのは雪風。こんな時まで落ち着き払った彼女の姿は、他の仲間たちの緊張をすっかりほぐしてしまった。
「うん。これで……何とか、なったかな」
朱希もやっと肩の力が抜けたようだ。爆弾を使ったリスキーな作戦、上手くいくまで気は抜けなかった。
「みんな、無事でよかったわ」
針の生えた尻尾を揺らしながら、ジャムが面々を見回す。どうやら幸いにも怪我人はいないようだ。
「みんなでがんばったもんねっ!」
エレステイルの頭の上にはわたげが、すぐ側にはくろくんもいる。
もちろん彼らだって一緒に『がんばった』仲間だった。
そんな猟兵たちの様子を見て、クロードは満足げに頷く。
「冒険って言うのは大団円で終わるものだからな」
後にはあたたかな談笑が残されて。
かくして彼らの冒険は幕を閉じた。
猟兵たちの得た未知の体験、あるいは心地よい疲労感に達成感。かけがえのない時間。
それら全ては紛れもなく彼らのものだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵