これは旅団シナリオです。
旅団「Dies」の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです。
人類滅亡後の地球(?)らしき惑星、キマイラフューチャー。
人類の遺構に暮らす住民は、一時は惑星が真っ二つに割れる苦難に見舞われたものの、猟兵によって平穏が齎されてからは、いよいよハッピーにゴキゲンに暮らしている。
ポップなアートを描いてSNSにアップしたり。
キャッチーなダンスを踊って動画を撮ったり。
彼等が日々おもしろおかしく暮らせるのは、着るものや食べるものに困らぬ特殊な環境――潤沢な物資供給システムのお陰だろうと、枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)は花脣を開く。
薔薇色の脣は僅かに口角を持ち上げて、
「キマイラフューチャーの住民達が利用しているコンコンコンは、発明者こそ不完全だと言っていたが、他の世界の住民から比べれば、十分に恵まれていると思わないか」
適切な場所を適切なタイミングでコンコンコン。
すると、何故か食べ物やら衣服やら道具やらが出てくる便利システム。
同じ場所では同じ物品しか出てこない為、住民達は欲しいモノは「買った方が早い」と店に向かうらしいのだが、それでもコンコンコンの魅力が薄れる事は無かろう。
帷は緋色の麗瞳を好奇心に輝かせ、言を継ぐ。
「――どうだろう、私達もコンコンコンを体験しに行かないか」
キマイラフューチャー住民に親しまれるコンコンコン。
街に降り立ち、自由自適な住民達の暮らしぶりに平和を見ながら、ポップな壁をコンコンコン、キュートな看板をコンコンコン。
そこから出て来るモノを着たり食べたりして楽しもう、という訳だ。
「もしか私達が想像もしなかった奇抜な食べ物や、斬新すぎるデザインの衣装が出るかもしれないが、それらをクールに受け取り、この世界に馴染んでみようじゃないか」
イカしたシステムを受け止めてこそクール。
狙った物を狙った通りのポイントとタイミングでゲットすればグレイトだし、そうでなくとも魅力的に取り入れて見せればオーサム。
白皙の麗顔にあわい艶笑を差した帷は、ぱちんと弾指してグリモアを召喚し、
「キマイラフューチャーにテレポートする。ぶらり街歩きを愉しもうじゃないか」
と、馴染みの友を光に包んだ。
夕狩こあら
いつもお世話になっております。夕狩こあらです。
旅団「Dies」専用のシナリオをお届けします。
●シナリオの舞台
バトルオブフラワーズを経て、真の平和が訪れたキマイラフューチャー。
蒼穹を突き刺さんばかりの高層ビル群が聳え立ち、巨大液晶広告や立体映像が賑々しく耀くサイバーシティ。
ポップな看板やファンキーなショップが軒を連ねる街並みが、お散歩する足を軽やかに導いてくれるでしょう。
●シナリオ描写について
コンコンコンで出て来る衣装や食べ物、道具類をご指定下さい。
狙った物が出てハッピーになったり、意外な物が出て驚いたり、平和な街だからこそ多彩な表情が生まれると思います。
どうぞ、特別な一日をお楽しみ下さい。
第1章 冒険
『ライブ!ライブ!ライブ!』
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POW : 肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!
SPD : 器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!
WIZ : 知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
一天晴朗――透徹(すきとお)る青が空一面に広がる晴日。
喧噪も雑音も、全てを吸い込む様な蒼穹を仰いだ枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)は、蓋し宣伝トラックより溢れる大音量につられ、地上に視線を結ぶ。
パンチの効いた液晶広告が眼前を過ぎるが、次いで瞳に飛び込む景観も派手だ。
碧落を貫かんばかり聳え立つ摩天楼はポップな看板に身を包み、その頂ではキマイラと思われるホログラムが、大きな身振りで喧伝している。
目を奪うような原色と、ゴキゲンな音に溢れる街。
行き交うキマイラ達のファッションも彩色眩しく、スクランブル交差点に堰き止められた歩行者は、青色信号が点灯するや、濃灰の舗装路を鮮やかな色彩で埋め尽した。
「――賑々しいな」
巨大液晶広告が流行の動画を流す中では、嘆聲も直ぐに掻き消える。
故に帷はやや距離を詰めて説明し、
「キマイラフューチャーの住民達は、適切な場所で適切なタイミングで物品を調達出来るよう、コンコンコンスポットをSNSで共有している」
雪白の繊指をタブレットに滑らせ、アプリを起動する。
然れば画面にはGPSを利用した現在地と周辺地図が表示されると同時、近辺でどんなアイテムがゲットできるか、クチコミがずらりと並んだ。
白銀の睫を伏せて其をざっくりと読んだ帷は、漸う緋瞳を持ち上げて言う。
「興味(おもしろ)いものが沢山で、気が逸るな」
爪先が浮きそうだとは、幾許の自嘲。
あまり足早に歩く性格ではないが、好奇心に満ちた帷は真白の手を差し伸べ、
「さぁ、何処から行こうか」
と、あわく咲んだ。
夏目・晴夜
いいですねえ、この喧騒
では行きましょうか
はぐれないよう御手をどうぞ
よし、此処で初コンいきます
たわし!
たわし
たわし…
はい次
スモアが出ました!一つどうぞ
お、プチケーキも
レッドベルベットが一押しです
多いのでお裾分けですよ
帷さんは何が…アイス!大当たりですね
しかし肉は何処に
野菜?ああ、間に合ってます
オージービーフ!?なんだ、オーバーオールですか
この辺は服が出るようですね
よし、ハレルヤが普通の服を当ててみせます
夜はそれを着て、デザートにアイスが出る店にでもご一緒して下さいよ
もしくは褒めて下さいね
ナース服
着ます?
好きな食べ物
秘密です
…ハンバーグです
目玉焼きが乗ってるやつ
恥ずかしいから隠したかったんですけど
この惑星では、虹すらお行儀良く空に架かるまい。
七色の光は自由に降り落ち、無機質な遺構に精彩を施して、まるで歌うよう。
色としてのパワーを感じる原色が街に満ち、視覚に訴えてくる巨大看板やホログラム、音楽に合わせて踊る飾燈(ネオン)も、生きているように輝かしい。
「――いいですねえ、この喧騒」
全き平和だ、と。
陽気なカラーリングのドローンカーが摩天楼の林叢(ボサ)を潜る――その機外灯火に視線を結んだ夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は、抜けるような青空に歎聲を零した。
悠然と空を滑る飛行体を見送った紫の麗瞳は、漸う大地へと降り立ち、
「では行きましょうか」
と、瞶めるは帷――常闇の世界からやって来た同朋を鮮彩斉放に誘う。
雑踏に身を置いた麗人は、遠慮無しに間際を擦り抜けるキマイラや、膝元を駆けていくテレビウムに微咲を溢しつつ、白手袋の手を差し伸べた。
「はぐれないよう御手をどうぞ」
長躯を屈めて掌は上に。
行き交う若者達に較べると幾分にもクラシカルな紳士に双眸を細めた帷は、彼の繊細な手にそっと手を添え、
「嚮導を頼めるかな」
と、エスコートに随う。
「ご希望は」
「何処へなりとも」
短く言を交し、跫を揃えて。
流行の最先端を行く若者達が気忙しく過ぎる熱鬧を、二人は緩然(ゆっくり)と歩き出した。
†
街の建物をキャンバスに、色彩が躍動するストリートアート。
ハイセンスなグラフィティがキマイラフューチャーのクールカルチャーを発信するだけでなく、コンコンコンスポットの共有に役立っているとは、幾許か漫ろ歩いた頃だったか――不圖(ふと)晴夜の足が停まる。
「この大口を開けたカエルの絵から、生ハムメロンが出てくるそうですよ」
「なまはむめろん」
アプリを手に説明をする彼の隣、帷がおとぼけたカエルの目をじっと見詰る。
その間にも好奇心に押された晴夜は、手の甲を壁に向けて近付き、
「――よし、此処で初コンいきます」
適切なタイミングで、適切なポイントを、コンコンコン。
然れば間もなくカエルは、瑞々しい生ハムメロンを供給……せず、ヤシの繊維を束ねて丸めた茶色いものを排出した。
「たわし」
可怪しい、と眉根を寄せた晴夜が再度コンコンコンを試みる。
先程より速く小刻みにノックした彼は、全く同じ速さでゴワゴワを寄越され、
「たわし!」
「たわしだな」
モノがニュッと現れる感覚に喫驚を覚えた帷も、つられた様にコンコンコンと敲けば、カエルは参加賞か残念賞とばかり、同じモノを二つも出してやった。
「たわし……」
「たわしが四つか……」
まさかの初コンで両手が塞がれる晴夜と帷。
二人が何とも言えぬ表情でたわしに瞳を落していた処、ゴリラのキマイラがトントンと晴夜の肩を叩き、親しげにボディランゲージで何かを伝えようとする。
ぶ厚い手で腕や胸を擦る仕草は、言葉を介さずとも理解が及んで、
「ああ、成る程……この硬度が乾布摩擦に丁度良いと……」
「晴夜、この方に差し上げては如何だろう。彼に使われれば、たわしも報われる」
二人で四つを差し出してみれば、グッとサムズアップした巨猿人が二個ずつ鷲掴みにして笑顔を綻ばせた。
「……モノに満ち溢れているように見える世界にも、補い合う文化があるらしい」
その儘ゴキゲンに去る大きな背中を見送った帷は、若しかゴリラ的なコンコンコンでは出せなかったアイテムかも知れぬ、と考え込む。
時に晴夜は、解放された手に再び帷を導いて歩き出し、
「はい次」
「晴夜」
今度はサメのオブジェをコンコンコン。
たわしのゴワゴワした感触を拭い去るようにコンコンコン。
すると凶悪な牙の間からふうわり甘い薫香が漂うと同時、火を潜らせたばかりのスモアが供給された。
「アタリが出ました! 一つどうぞ」
微塵も躊躇わずサメの口に手を突っ込んで取り出した晴夜は、それから空腹感と冒険心の赴く儘にコンコンコンを敢行し、ドン・フリーダムが開発・構築したというシステムを学んでいった。
「プチケーキもありますよ。レッドベルベットが一押しです」
掌にちょこんと収まる愛らしい色彩はまるで宝石のよう。
キマイラフューチャーらしいSNS映えするスイーツを掌手に集めた晴夜は、飛び切り発色の良いひとつを撮み、帷の繊手にちょんと乗せる。
「多いのでお裾分けですよ」
「晴夜は気前が佳いな」
「勿論ですとも」
当然だと言わんばかりの語調に咲みを溢す帷。
自信家の彼に何か分けて遣りたいと、彼女もまたコンコンコンと傍らのカンガルー像をノックすれば、腹部のポケットからニュッと冷たいものが出て来た。
「これは――」
「お、アイスですね」
コーンの上に乗る三段のカラフルな氷塊。
抹茶を土台にマーブルを描くミントが乗り、雪のように眞白な最上段には、三角の耳が添えられ動物が模してある。
「この円らな瞳は、犬……可愛らしくて食べられないな」
「しかし早く食べないと、溶けて無くなってしまいますよ」
「それは不味い」
晴夜の言に彈かれたように、先ずは耳を舐めてみる。
「…………美味しい」
甘く冷たいヴァニラの風味と、舌に触れるや形を解く儚い感覚に吃驚いた帷は、一瞬、音が出そうなほど瞬いて晴夜を見た。
彼女のいつにない表情を受け取った晴夜は、小気味佳く艶笑って、
「――大当たり。おめでとうございます」
と、皓歯を覗かせた。
†
目下、縦にもスクスク、橫にもムキムキと成長する育ち盛りで食べ盛りな晴夜は、常に肉を屠れるくらいには腹が空いている。
「一体、肉は何処に……野菜? ああ、間に合ってます」
液晶画面を睨むようにスッスッと指を動かしていた彼は、ゴリゴリにマッチョなウサギのキマイラが親指に示して見せるセロリスティックのスポットをスルーし、賑々しい雑踏を逍遥する。
暫しして、突き当たりのT字路に「オー……」と書き始められるストリート系のロゴを見つけた紫瞳は、直ぐさま急かすようにコンコンコン。
「オージービーフ!? ……なんだ、オーバーオールですか」
「これは……ニッキー君が着るには小さいし、君には大きすぎるだろう」
「では帷さんなら」
「私は万能だと」
お互い探るような流眄を繋ぎ合う。
二人が譲り合いをしていると、ふらり現れたオサガメのキマイラが莞爾(にっこり)と笑み掛け、水の流れる如く靜かに滑らかに其を着て去っていった。
泰然と去る亀の甲羅に年の功を見た帷と晴夜は、聢とお見送りした後で口を開き、
「晴夜。どうやらこの辺りは衣類が出るようだ」
「よし、それならこのハレルヤが普通の服を当ててみせます」
的を射る様にコンコンコン。
感覚を掴んで来た手でコンコンコン。
――すると、ビビッドな色が溢れる街には珍しいモノクロカラーの、瀟洒にも淸潔感のあるアイテムがごっそりと出て来た。
「おのぼりさんの私にも優しい全身コーディネートだな」
柔かな風合いのワンピースを我が身に宛がい、サイズを確める帷。
その横顔、鼻梁の正しさや色白の頬に差す薄櫻色を眺めた晴夜は佳聲を編んで、
「夜はそれを着て、デザートにアイスが出る店にでもご一緒して下さいよ」
「晴夜」
「若しくは褒めて下さると嬉しいのですが」
眞面に繋がれる深緋の双眸に、眞直ぐ視線を結ぶ。
時にして須臾――僅かな喫驚に花脣を開いた帷は、然し直ぐに口角を持ち上げた。
「――勿論だよ。どちらも私が希求(のぞ)むものだ」
己が吸血衝動を一瞬でも忘れさせてくれた甘味のアイス。
そして去年の聖夜、森の湖畔で過ごした一時を呼び覚ます科白は、帷の胸奥を鮮やかに色染めていく。
彼女の破顔に是を認めた晴夜は、己もこの街に馴染む服をと手首のスナップを利かし、コンコンコンと軽やかに鳴った信楽焼の狸の置き物は、その外見から全く想像つかぬ純白を供与した。
「ナース服。…………着ます?」
「――君の前だけなら」
裾丈の短さを指差し、今はやめておこうと微笑う帷。
無愛想なようでいて、意外にノリの良い彼女に微咲を返した晴夜は、そっと、キマイラ用に刳り抜かれた尻尾穴を隠した。
この時、帷は街に溢れ返る看板を烱眼に射て、
「扨て、晴夜。好きな食べ物を教えて貰おう」
「好物ですか」
「コンコンコンでなく、ディナーで食べたいんだ」
焼肉、しゃぶしゃぶ、鉄板ステーキ……視線を投げれば陽気に手招きする立体広告に紫瞳を誘導する。
然し彼はこれらを仰ぐや柳葉の眉を顰め、
「秘密です」
、と――。
そう言ったきり、きゅ、と紅脣を鎖してしまう。
蓋し靜かなる抵抗に長らく付き合った帷は、軈て波型に結んだ美脣の彊界がゆるゆると解けるのを聢と見たろう。
玲瓏のテノールはここで初めて言い淀み、
「……ハンバーグです。目玉焼きが乗ってるやつ」
目を泳がせるのも躊躇われるか、何処でもない一点を見つめた儘、更に言はぽつりと零れた。
「……恥ずかしいから隠したかったんですけど」
すこうし上脣を尖らせた様な――其の横顔が「可愛い」と思ったのは秘密。
分別ある大人の様でいて、頑なな子供の様にも見える、晴夜の豊かな個性に触れた帷は、視線を外した儘の彼を宥めるように佳聲を紡いだ。
「其を食べる君の表情を見ても佳いかな」
ゆっくりと語尾を持ち上げれば、晴夜もまたゆっくりと視線を戻して、
「――帷さんの前だけなら」
と、小さく付け足す。
目尻に湛えられる淡い櫻色に強い眩暈を覚えた帷は、嗚呼、今宵この男を褒めるに幾千の語を尽しても足りぬと、心地好い難題を内に秘めるのだった――。
大成功
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