パンドラボックス・パラドックス
#UDCアース
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●箱の中の
一つの大きな箱があった。
2メートル四方の、黒塗りの木箱である。
複数人で協力してそれを運んでいる人々は、禍々しい紋様が描かれた衣服を身に纏っている。――UDCアースに息づく邪教団、その教団員達である。
箱が運び込まれようとしている先には、廃墟の入り口があった。
「やれ、嬉しや」
「我らが神が、これで復活する」
「祝福せよ。祝福せよ。祝福せよ」
教団員達は口々に呟く。箱の中からは……何も聞こえない。
箱は、そのまま廃墟の中へ。
教団員達の望みは、叶おうとしていた。
●彼の依頼
「聞いてくれ、UDCアースで邪神が復活しそうなんだ!」
グリモア猟兵、宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)は焦り気味に切り出す。すーはーと呼吸を整えてから、彼は続けた。
「まず。とある廃墟に、大きな箱が運び込まれたみたいだ。俺の予知によると、その箱が邪神復活のカギになってるみたいでな。中身がなんなのかはまだ分からないけど、祭具とかかもしれないし、何か別のものかもしれない……」
うーん、と拓未は考え込む様子を見せた後、こう言った。
「とにかく、箱を見つけて開けないと、話は始まらないな。皆のことは、廃墟の入り口まで俺がテレポートで送るから、皆は、廃墟の中のどこかにある箱を探して、開けて欲しい。邪神復活の阻止のために、どうかよろしく頼むぜ!」
彼の言う通り、開けてみない限り、箱の中は不明のままだ。
その中身が『希望』であるのかどうか、すらも。
地斬理々亜
地斬理々亜(ちきり・りりあ)と申します。
どうぞよろしくお願い致します。
シナリオの最終目的は、邪神復活の阻止。
第1章は、廃墟に運び込まれた『箱』を見つけて開けるまで、となります。
ご健闘をお祈り致します。
第1章 冒険
『廃墟の探索』
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POW : 障害物を撤去・破壊しつつ、手掛かりを探す
SPD : 聴覚・嗅覚など感覚を働かせ、手掛かりを探す
WIZ : 洞察力を活かし、隠された場所や手掛かりを探す
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ノルナイン・エストラーシャ
なるほど、大きな箱ですか。
中に入っているのは希望でしょうか、それとも様々な悪でしょうか?
何にせよ邪神復活の鍵ならば、無視は出来ません。
調べるなら、一人よりは二人です。
【非認証機能・矛盾存在】を使って、犯罪者(シーフ)としての道を歩んだ自分を呼び出します。
廃墟には恐らく教団員と猟兵しかいないでしょうから、音がすればまず教団員のものだと思われます。なので、私ももう一人の私も、特に聴覚に集中して探索していきたいと思います。
……ああ、あと廃墟なら埃などが積もってはいませんか?
もしかすると、足跡が残っているかもしれません。視界に映るものにも注意しなくてはいけませんね。
痕跡を見つけたら、情報共有もします。
「なるほど、大きな箱ですか」
廃墟の入り口にテレポートで来た、ノルナイン・エストラーシャ(旅する機械人形・f11355)が呟く。
「中に入っているのは希望でしょうか、それとも様々な悪でしょうか? 何にせよ、邪神復活の鍵ならば、無視はできません」
言い、ノルナインは、色白の手を静かに掲げる。
「調べるなら、一人よりは二人です。――ブラックボックス解放。コマンドコード・パラドクス。来なさい、私でない私」
ユーベルコード、『非認証機能・矛盾存在(ブラックボックス・パラドクス)』。その力により、犯罪者(シーフ)としての道を歩んだ、ノルナインではないノルナイン――もう一人の己が現れる。
「廃墟にはおそらく教団員と猟兵しかいないでしょうから、音がすればまず教団員のものでしょう。聴覚に集中して探索しましょう」
ノルナインの言葉に、もう一人のノルナインが頷いた。二人のノルナインが、廃墟に入ってゆく。
廃墟の中は……ただひたすらに、静寂。
「……おかしいですね。教団員もいないのでしょうか」
ノルナインが疑問を口にしたその時、もう一人のノルナインが、ノルナインの肩を軽く叩いた。
彼女が指さす先には、廃墟の埃についた足跡。
いくつも重なっていて分かりにくいが、『奥に進んだ跡』と『外に向かった跡』がある。
「もしかすると、教団員は既に外に出た後でしょうか? まだ一部が中にいる、という可能性も捨てきれませんが……とにかく、このことは他の猟兵にも伝えるべきですね」
考えをまとめたノルナインは、そう口にした。
成功
🔵🔵🔴
花菱・真紀
パンドラの箱は希望が残るんだけどその前にでてくるのは絶望だからな…今回の箱も希望だけが残ればいいってもんじゃないだろうな…。
さっそく、情報共有ありがとよ。さて、俺は奥の方を調べてみるよ。箱があったらいいし無くても手がかりはあるだろう。
俺ももう一人の俺に協力を願おうか…【オルタナティブ・ダブル】で有祈を呼ぼう。あいつの方が俺より冷静だからな何か分かるかもしれない。
「さっそく、情報共有ありがとよ」
花菱・真紀(都市伝説蒐集家・f06119)はノルナインへと礼を言う。
それから彼は、廃墟の奥へと、スクエア眼鏡のレンズ越しに視線を向けた。
「パンドラの箱は希望が残るんだけど、その前に出てくるのは絶望だからな……。今回の箱も、希望だけが残ればいいってもんじゃないだろうな……」
そんな風に言う真紀。
「俺ももう一人の俺に協力を願おうか……」
彼もまた、もう一人の自分――有祈を呼び出した。『オルタナティブ・ダブル』による効果である。
「あんたは俺より冷静だからな。行こう」
無感情な顔をした有祈へと、真紀は笑う。それから、奥へと向かった。
「足跡を追ってみたが、分かれ道で足跡も分かれてるな……」
腕組みして考えた結果、真紀は有祈と手分けし、探索を進めることにした。
「こっちの道は、ハズレか」
真紀が選んだ道の一本は、行き止まり。突き当たりをくまなく探索したが、何もないことが分かった。
「有祈の方は――」
そう言い、振り向いた真紀は、何かを伝えるべく駆けてきた有祈の姿を目にする。
彼によると……『別の道の奥で、何かが動いたのが見えた』と――。
成功
🔵🔵🔴
伊能・為虎
(WIZ)
大きな箱、開けてびっくりなんとやら?
ま、今回の場合はびっくりどころじゃないよね絶対。
なにはともあれ初仕事だ!がんばるぞー♪
僕も足跡をてくてく<追跡>。『外に向かった足跡』に絞って歩いてみよう
僕ら以外に動くものが無いか、様子のおかしなものが無いか見ながら進むね。
足跡が分かれたり、僕の見ていない方向で何かあればわんちゃんの出番かも!見逃さないでね!(首だけの≪追跡する狗霊≫に仮初の体をぺたぺたっ)
「大きな箱、開けてびっくりなんとやら? ま、今回の場合はびっくりどころじゃないよね絶対」
愛らしい衣装に身を包んだ、伊能・為虎(天翼・f01479)は、にこにこして言った。
「なにはともあれ初仕事だ! がんばるぞー♪」
おー! と、為虎は天に勢い良く拳を突き上げる。
それから、ピンクの瞳でじっと見据えた先は、『外に向かった足跡』。
てく、てく、と、追跡の技能を駆使しながら為虎は進んだ。
周囲に、動くものや様子のおかしなものがないか、見回しながら。
その結果……。
廃墟の外、地面がむき出しの場所まではかろうじて足跡をたどれたが、近くの街に続く舗装された道路に差し掛かったところで、足跡は途切れてしまった。
「つまりこれは、箱を廃墟内に置いた後、解散して街の方に帰っちゃったってことなのかな?」
為虎が、妖刀の柄をそっと撫でた、その時。
召喚しておいた、『追跡する狗霊(ゴー・アヘッド)』……首だけの『わんちゃん』を通して、廃墟の裏手で、何者かが逃げ出すのが見えた。有祈が何かを見たのと同じ方向である。
「荒魂等此処へ出で候え、命ずる者を追い給え祟り給え! めんどくさいので以下省略! わんちゃん、行ってこーい!」
改めて詠唱し、為虎は狗霊を向かわせた。
文字通りの『追跡する狗霊』からは……その人物は、逃げられなかった。
それは、邪教団の教団員の衣服を身に着けた、10代半ばの少年であった。
「こ、ここまで来れば……」
立ち止まって荒く息をつく彼は、狗霊に気づいていない。
もはや彼の居場所は猟兵に筒抜け……接触は容易だ。
苦戦
🔵🔴🔴
フロッシュ・フェローチェス
【メカニック】の技術用いて【早業】で作った即席の探知機ガジェット。
アタシお手製のメカゴーグル。
そして【野生の勘】合わせて【追跡】してみれば……手掛かりや教団員を、見つけられるかな?
見つけたなら都合が良い。
悪いけど色々吐いて貰うよ。お前の事情なんか、知った事じゃない。
ああ、逃げても無駄だから。
【ダッシュ】でかなうと思わないでよ?
【残像】と【フェイント】合わせれば囲い込めもする。
【選択したUC】と【地形の利用】で、障害物だって超えてやる。
見つけられなかったなら仕方ない。
廃墟内部で痕跡を【見切り】、手掛かりを見つけてみよう。
【呪詛体制】はあるけれど、逃走も念頭に置くか。
【逃げ足】にも自信あるし。
「見つけたよ」
手製のメカゴーグル――探知機ガジェットを装着した、フロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)が言い放つ。
彼女の前には、教団員の少年が、恐怖の色を顔に貼りつかせて立っていた。
「都合が良い、悪いけど色々吐いてもらうよ」
「嫌、だ……俺は――」
「お前の事情なんか、知ったことじゃない」
何か、自分のことを言おうとしたらしき少年の発言を、フロッシュは切って捨てる。
「く……!」
踵を返して、少年は駆け出した。素早く塀を飛び越え、向こう側へ消える。
「ああ、逃げても無駄だから。ダッシュでかなうと思わないでよ?」
フロッシュは少年を追った。その速度は、神速。
さらに、『スカイステッパー』を発動。地形も利用しつつ跳躍し、空中を蹴ってさらに高く跳び、難なく塀を越えた。
そのまま少年の正面に回り込む……が、それはフェイント。残像を正面に残しながら少年の背後に戻り、囲い込んで、少年の動きが止まったところで、取り押さえることに成功した。
「クソがっ……!! 分かった! 話せばいいんだろ!」
少年は観念し、抵抗をやめた。
「箱は、廃墟の奥に安置されてる。中身は俺も知らない……ただ、そこそこ重かった」
その言葉に、どうやら嘘はなさそうである。
「俺が知ってるのは、その箱をそのままにしておけば、『残響の女神』様が復活するはずだ、ってことだ」
「女神様ねえ……」
フロッシュは知っている。このままでは復活するであろうその存在は、邪神であると。
「で、箱は廃墟の奥の、どの辺にあるのかな?」
「……案内するよ」
少年は目を伏せた。
果たして、少年の後をついて行き、廃墟の奥へ進むと、そこに黒塗りの大きな箱があった。
「さて、あとはこれを開けるだけだね。鍵とか掛かってるかな」
フロッシュは、にっと笑って言った。
大成功
🔵🔵🔵
フロッシュ・フェローチェス
鍵がかかっているなら【選択したUC】をまず使おう。何か出てきてくれると良いけど……出てきて、使い方とか分かるかな?
【メカニック】としての知識と【野生の勘】をフル活動させよう。
一応【呪詛体制】は持ってるから取りあえず開けることに集中。
鍵が掛かっていないなら、【先制攻撃】とばかりに【早業】で開ける。
……躊躇してたって仕方ないしね。
――どちらにせよ、【早業】で【ダッシュ】して逃げられるようにはしておこう。
何出てくる分からないし。
「鍵は……掛かっていない、みたいだね」
メカニックとしての知識、それに野生の勘によって、フロッシュは察した。
「……躊躇してたって仕方ないしね」
フロッシュは木箱の蓋に手をかけ、先制攻撃とばかりに、一瞬で開けた。
箱の中には――。
縄で縛られ、猿ぐつわを噛まされた少女が一人、目を閉じて横たわっていた。
「……っ、ねえ、生きてる!?」
フロッシュは急いで少女を箱から運び出し、頬を軽く叩いてみる。
「……う」
反応があった。生きてはいるようである。
「良かった……」
フロッシュが安堵した、その時。
ヴヴッ、と箱の中から不吉な音がした。
「……逃げるよ!」
少女を抱えて、フロッシュは駆け出した。
箱からは、黒い虫が飛び立った。
無数の、こぶし大の、甲虫である。
虫は、人語で言った。
『生贄ハ持チ去ラレタ』
『代ワリヲココニ』
逃げ遅れて立ち尽くしていた教団員の少年の首に、虫の一匹が止まった。
途端、少年の目が虚ろになる。
「俺が……生贄に……」
光のない瞳が箱を見据え、少年はふらふらと箱の方向へ歩き出した。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『夜の闇の妖虫』
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POW : 実際に騒ぎを起こしてる人々を力づくで止める
SPD : 噂になっている怪しい所に忍び込み情報を集める
WIZ : 怪しい人物や儀式の噂が立っている場所について街で聞き込みを行ったり現地の新聞等を調べたりする
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
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ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
廃墟の近くの街へも、甲虫は向かった。
虫達は、生贄となるべき者達を求める。
すなわちそれは――教団員達だ。
一人一人の首筋に虫はとりつき、その意識を操る。
「我が生贄に……」
「神の生贄に……」
「早く行かねば……」
「生贄にならねば……」
廃墟に向けて、彼らはゆらりと歩み出した。
フロッシュ・フェローチェス
(SPD行動)
あの羽音。十中八九、虫か何かだ。
教団員が生贄として入れたか、それとも……。
少女から何か聞けないかな?
聞けたらそれを元に【電脳搭載・魔導刻印ホロデバイスゴーグル】の機能と、【野生の勘】を合わせて【追跡】しよう。
聞けなかったら忍び込んで、そのままガサ入れたり聞き耳でも立てる。
【早業】で済ませよう。
情報を集めるなら【選択したUC】も使えれば……。
それ以前にバレたなら逃走一択。【ダッシュ】。
【スライディング】で障害物突破、
【選択したUC】で足止めも出来れば御の字、だね。
さて、虫の目あてが教団員ならただの自業自得。
だけど、そうじゃない人が狙われたら……?
まあ寝覚め悪くなるね……ほんの少し。
(「あの羽音。十中八九、虫か何かだ」)
安全なところまで逃げたフロッシュは、考える。
(「教団員が生贄として入れたか、それとも……」)
フロッシュは少女を下ろし、尋ねた。
「何か、知ってることはあるかな?」
フロッシュへと、少女はかすれた声で応じる。
「……あの箱に入っていると、段々具合が悪くなってきて、それから手足がすごく痛くなってきて……。助けてくれて、ありがとうございました……」
少女は顔色が悪いが、それでも丁寧に頭を下げた。
虫については聞けなかったため、フロッシュは怪しい場所に忍び込むことにした。
街の教会だが、かの教団の集会所になっていたという噂がある場所である。
人の気配はないが、フロッシュは念のため早業で調査を済ませることにする。
「これは……」
棚にあったメモには、こう書かれていた。
『箱に命を捧げよ』
『初めは生命力を。次に四肢を。最後に命を捧げよ』
『さすれば、神は復活するであろう』
『神の供物は無垢なる者を捧げるべし』
『しからずんば、神を信ずる者を供物とすべく、漆黒虫は動くであろう』
『漆黒虫は神の忠実なる眷属なり』
「……つまり」
フロッシュはこう結論づける。
「教団員が箱に入って死んだ場合も邪神は復活する、ってことになるのかな……。そうなると、ただの自業自得とか言ってられないね」
成功
🔵🔵🔴
ノルナイン・エストラーシャ
箱には少女と虫が詰まっていたという訳ですか……
フロッシュさんの得たメモを見て考えると、少女が救助された時点で、教団員を生け贄にすべく虫が動き始めた。そして集会所に人がいなかったというならば……
いけません、もう一度箱の方に向かわなくては。教団員が詰まって生け贄になるだなんて冗談じゃありません。
という訳で急いで廃墟に向かいます。道すがら、【世界知識】や【学習力】で、虫の性質を探ります。虫がどういう方法で教団員を集めているか分かれば、対処しやすいはず。
教団員や虫が居れば、虫だけを倒すようにして【クイックドロウ】します。【スナイパー】なので狙うのは得意です。教団員が正気に戻れば、なにか聞けるかも。
「箱には、少女と虫が詰まっていたという訳ですか……」
ノルナインは呟き、考える。手元には、フロッシュの入手したメモ。
(「この内容から考えるなら。少女が救助された時点で、教団員を生け贄にすべく虫が動き始めた。そして集会所に人がいなかったというならば……」)
ノルナインは、はっと顔を上げた。
「いけません、もう一度箱の方に向かわなくては。教団員が詰まって生け贄になるだなんて、冗談じゃありません」
ノルナインは、急ぎ廃墟に向かった。
道すがら、知識や経験を元に、虫について推測する。
(「直接、虫が人間を運搬するとは考えにくいですね。羽虫ですから、人間が空を浮遊するような形になり、目立つはずです。そうなると……」)
ノルナインの機械仕掛けの頭脳は、結論を出した。――虫は、人間に寄生して意識を操るのだろう、と。
果たして。ノルナインが廃墟の奥、箱の前に到着した時には、そこには数人の教団員がおり、それぞれの首筋には虫がとりついていた。
ノルナインは、すかさず『クイックドロウ』。14分の1秒の速さで、熱線銃(ブラスター)を発射し、虫達だけを正確に撃ち抜いた。教団員達は、無傷でその場に崩れ落ちる。
「無事ですか」
ノルナインは教団員の一人を起こした。
「うぐ……これは一体……」
彼は辺りを見回し、箱を視界に入れた。
「……生け贄はどうなった!? サトルが番をしていたのではないのか!」
「サトル?」
ノルナインは、他の仲間から聞いた話を思い出す。確か、教団員の少年が廃墟にいたはずだ。他に教団員はいなかったことから考えて、番をしていたサトルというのは彼のことだろう。
箱が開き、虫が飛び出してきた時、箱のすぐ近くにいたはずだ。
「ということは、まさか」
ノルナインは箱を見やる。
開けたままになっていたはずの箱が、『閉まっていた』。
大成功
🔵🔵🔵
フロッシュ・フェローチェス
ノルナインは箱の方へ向かった様だけど、アタシはどうするか……。
仮に箱をまた開けられたとしても、教団員は複数いる。
――クソ、これじゃキリが無い。丸で質の悪い「いたちごっこ」だね。
箱を壊したいけど、何が起こるか分からない以上それは最終手段。
あの女の子は「手足が痛くなってきた」と言っていたから、
生命力、四肢、命の順で奪われるのは確定か。
なら少しだけ時間がある。
もう少し複数拠点、あるなら探ってみよう。
【ダッシュ】で駆け巡り【早業】で調べるのは変えずに。
時間無いからね。
どうにかしてメガミサマを引きずり出せないかな?
生贄無しで強引に呼び寄せる手段が欲しい。
メモでも、白状させるでも良い……今は強引に行こう。
(「ノルナインは箱の方へ向かったようだけど、アタシはどうするか……」)
フロッシュは考え込む。
仮に、箱に教団員が入ってしまったとして。再び箱を開けて、生け贄になるのを阻止したとしても、複数存在する教団員が、代わる代わる箱に入ろうとするかもしれない。
(「――クソ、これじゃキリがない」)
まるで、タチの悪い『いたちごっこ』。
これを終わらせるための手段。すなわち。
(「どうにかしてメガミサマを引きずり出せないかな? 生け贄なしで、強引に」)
その方法を探すため、フロッシュは再び駆けた。
(「あの女の子は『手足が痛くなってきた』と言っていたから、生命力、四肢、命の順で奪われるのは確定だろうね。……まだ、時間はある。ただ、それは少しだけだ」)
フロッシュは、急ぐ。
教団の、教会とは別の拠点、廃倉庫。
到着したフロッシュは、素早く、中を探索する。
すると、倉庫の隅に、ボロボロの手帳が落ちているのが見えた。
フロッシュは拾い上げて、中身に目を走らせた。
内容は、こうだ。
――教団員に見つかった。私はここまでのようだ。
この手帳を、邪神の完全復活を阻止せんとする者が見つけることを祈る。
箱を、壊せ。
あの中で生け贄が死んだら、邪神が完全復活してしまう。
だが、その前に箱が壊されれば、邪神は不完全な形で召喚されるだろう。
女神を許すな。
奴を倒せ。
後は頼んだ。
私の名は、UDC組織の――。
名前の部分は、赤黒い染みになっていて読めない。
「……」
青い左眼と、一回り大きな緑の右眼を、フロッシュは一瞬だけ閉じる。
「ああ。やってやるよ」
成功
🔵🔵🔴
天都狐・華夜
SPD行動
「んー……これ、もしかして……スティレット02A各機へ情報精査要請」
上空を飛行する【スティレット02A】ガンシップの各種カメラを用いて、周辺廃墟の熱源分布を比較。
人間サイズの熱源が密集している廃墟エリアを特定。もしくは対象エリアに向かう対象を【操縦】を用いて【追跡】する
【スティレット01】を直掩として潜入を行う。(【野生の勘】【迷彩】【地形の利用】【見切り】【空中戦】)
有事の際は、【スティレット02A】からの対地支援の【援護射撃】&【スナイパー】と【選択したUC】を使用して上方と平面の十字砲火を行う。
「んー……これ、もしかして……」
天都狐・華夜(ロジックエラー・f01491)は思考し、やがて作戦行動に出た。
「スティレット02A各機へ情報精査要請」
上空を飛行する、機動兵装群管制端末へと華夜は呼びかける。局地制圧用攻撃機の形状をした超大型アサルトウェポン、その各種カメラによって、廃墟の熱源分布の情報を調査した。
「ここですね」
人間サイズの熱源が密集しているエリアを、特定。誘導爆剣『スティレット01』を上空に周回させながら、潜入した。
エリア内には、倒れている教団員が複数。寄生していた虫がノルナインに撃たれて死に、意識を失っているのである。いずれも禍々しい紋様の衣服を着ている。
それから、意識がある教団員が一人、喚いていた。
「箱を壊すな! 我らが神を完全復活させねばならぬ! 生け贄を捧げよ!」
虫による支配を解かれたばかりで錯乱しているのか、それとも元からこうなのかは不明だ。
(「教団員がああ言っているということは……」)
華夜は全兵装の照準を箱に定めた。
その時、華夜は気づいた。スティレット02Aの情報によると……。
――箱の中に、熱源がある!
今の教団員の発言からして、生け贄の人間だと判断した華夜は、急ぎ、箱に接近し、蓋を開けた。
「ぁあ……ぁ……ぐ……」
教団の服を纏った少年が一人、箱の中でがくがく痙攣している。
彼の左太腿に、ぱっくりと深い傷が口を開けていた。
つべこべ言っている暇はない。華夜は少年を箱の外に引っ張り出した。
「……こんな箱!」
改めて華夜は、空になった箱への『全兵装照準』を始める。
「手腕保持兵装以外の各兵装全自動照準開始。トリガータイミングの同期完了」
〔EXCEED THE LIMIT〕――フルファイア。
「……今!」
轟音と共に、箱へ、上方と平面の十字砲火が開始された。
対UDC用の銃火器によって、箱は蜂の巣になってゆく。
あと一押しで、完全に破壊できそうである。
成功
🔵🔵🔴
月代・十六夜
「こりゃあ事ココに至っては人命優先かね」
「UDCから借りてきた工事現場用ダイナマイト!流石にこれで壊れねぇってことはねえだろ。…ねぇよな?」
信者も箱から運び出されて、ダメージも十分、とくれば後は中に爆発物でも詰め込んで離脱に限る。スカイステッパーでまだ周辺にいる教団員の頭上を飛び越えて箱の中に誰も居ないのを確認したらUDCから借りてきた工事用ダイナマイトをリモート起爆で放り込んで、そのまま「爆発するぞ!」と叫んでそのまま宙を蹴って離脱して遠隔で起爆。周囲の教団員?自業自得なんでまぁ多少はね?
「こりゃあ、事ココに至っては人命優先かね」
茶色の髪を片手で軽く掻き乱し、月代・十六夜(韋駄天足・f10620)は同色の瞳を箱に向ける。
それから彼は、持参した『それ』を取り出した。
「UDCから借りてきた、工事現場用ダイナマイト! さすがにこれで壊れねぇってことはねえだろ。……ねぇよな?」
やや自信なさそうに呟いてから、十六夜は後ろに下がり、助走をつけて跳んだ。
「我らが神を! 復活させるのだ! 箱を壊すな!」
まだ喚いている教団員や、意識を失い倒れている教団員達の上を、『スカイステッパー』で飛び越え、箱の前へ。
まず十六夜は、穴だらけの箱の中に、誰もいないのを目視で確認した。誰かがいる状態で起爆して、『箱の中で誰かが死ぬ』という邪神復活の条件に触れてはいけない、と考えたのだろう。
それから彼は、工事用ダイナマイトを、リモート起爆できる状態で箱の中に放り込んだ。
「爆発するぞ!」
大きな声で叫ぶと、十六夜は宙を蹴って離脱。
意識を失った教団員は、倒れたまま。
意識のある教団員は、ダイナマイトの起爆をどうにか止めようと、箱へ駆け寄っていく。
加えて、箱のすぐ傍には。
「嫌だ……誰か……助けてくれよ」
生け贄にされかけて脚部に重傷を負い、逃げることのできない、教団員の少年――サトルがいる。
「知るか。自業自得だ」
十六夜は、一切ためらわずに、起爆スイッチを押した。
「――はは」
サトルの唇から乾いた笑いが漏れた。
「俺は――」
その言葉が最後まで紡がれる前に、箱から、熱と閃光がほとばしった。
煙が晴れた時には、箱の周囲に、生きている教団員は誰もいなかった。
ただ、箱のあったところには、箱に生命力だけが捧げられて、不完全な状態で復活した『女神』が佇んでいた。
落ち窪んだ眼窩。
口の中には無数の眼球。
土気色の、継ぎ接ぎの両腕。
残響の女神――『UDC(アンディファインド・クリーチャー)』。
この怪物を倒せば、教団の目論見は全て灰燼に帰すのである。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『残響の女神』
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POW : 信者の供物
自身の装備武器に【生贄になった者の身体部位の一部 】を搭載し、破壊力を増加する。
SPD : 叫ぶ
【絶叫 】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ : 凝視
小さな【狂気 】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【トラウマに応じてダメージを与える空間】で、いつでも外に出られる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ナハト・ダァト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フロッシュ・フェローチェス
取りあえず【だまし討ち】の為、多少大回りで現場に向かう。
敵の背後を取ったら――問答無用の【先制攻撃】だ。
首捻ってコッチ向こうが、【ダッシュ】で加速したまま擦れ違い様に蹴ってやる。
ようクソメガミ。気分はどう?
最悪ならそのまま潰えろ。伸びる短刀で口内の眼球を潰してやるから。
悪いけどその刃物を掴んでも無駄だよ、其処に居るアタシは【残像】だから
そのふざけた頭蓋に至近距離から銃で【二回攻撃】叩き込んでやる。
退避は【衝撃波】からの【スカイステッパー】だ。
反撃に叫ぼうとしてる?けど遅い……音が伝わるより、アタシの方が速い。
【選択したUC】は、余程じゃない限りどの距離でもレベル分の1秒で詰めるんだから――な!
硝煙の香りがする廃墟跡を、エメラルド色の疾風が通り過ぎた。
邪神、『残響の女神』の背後へと回り込んだ、その存在の正体は、キマイラの少女。フロッシュである。
女神の首は、キシキシと軋む音を立てながら捻られる。後ろに立つフロッシュの方を向こうと。
その時には、俊足たるフロッシュは既に地を蹴っていた。加速した彼女は、すれ違いざまに、女神へと、まず蹴りの一撃を見舞う。
「ようクソメガミ。気分はどう?」
フロッシュの言葉を聞いた女神は、口を開いた。
意味のある言葉を発そうとしたのか、狂気を溢れさせる叫びを放とうとしたのかは不明だ。
なぜなら、女神が発声する前に、『短刀・碧穿炉』の伸びる刀身が、眼球でいっぱいの女神の口内へと向かっていたからだ。
掌をかざして刃を防ごうとする女神だが……そのフロッシュは残像だ。
今やフロッシュは、跳躍を済ませている。彼女がいるのは空中、女神の真上だ。
散弾銃型ガジェット『刻天炉』の銃口が女神の脳天に向けられる。至近距離から、フロッシュは引き金を二度引いた。銃声が響き渡り、女神の頭蓋に弾丸が穴を穿つ。
上方のフロッシュ目掛けて、女神は長い腕を伸ばす。だが、フロッシュは水平方向に衝撃波を放ち、その反動で女神の腕を避けた。さらに、『スカイステッパー』で空中を蹴り、フロッシュは女神から距離をとった。
体勢を整えたフロッシュの右眼に、女神が再び口を開けているのが映る。
(「叫ぼうとしてる? けど」)
フロッシュの機械ブーツ『衝角炉』は、もう変形を完了している。
(「遅いよ、クソメガミ」)
ユーベルコード、刹砲『トリニダード・スコーピオン』(ヒートストライクトリニダードスコーピオン)。
21分の1秒。つまり、0.05秒に満たない時間で、フロッシュは女神に接近した。
女神は、叫びを上げるどころか、まだ息を吸い込んでいる途中である。
「――飛べ」
そのまま、わずか143分の1秒の間に、フロッシュによる蹴撃が放たれる。
女神は銃弾のように吹き飛び、地面にバウンドした。
やがて、錆びついた機械のようにぎこちない動きで、女神は起き上がる。
目の前の猟兵へ向けて、狂気と苦痛と死を与えるべく、継ぎ接ぎの怪物はなおも動こうとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
霑国・永一
またあの連中はやばいの生み出したもんだなぁ。いつも通り過ぎてある意味安心するけど。
それじゃSPD重視でオルタナティブ・ダブル主体に動いてみようか。
遠距離だろうと中距離だろうと余り猶予与えると面倒そうな相手だしね、予備動作与えないよう分身と別々の方向から同時攻撃ないしタイミングずらしてダガーで刻んでいこうかな。一応【だまし討ち】も使いつつだ。
距離取らされるようならダガーなり礫なり投げて叫びを妨害してやりたいね。
攻撃ついでに【盗み】【盗み攻撃】使いつつ相手の武器があれば奪い取って外、またはあの邪神から遠い位置に投げ捨ててしまおうか。取りに動こうと隙晒すなら勿論攻撃叩き込むけどね
「またあの連中はやばいの呼び出したもんだなぁ。いつも通り過ぎてある意味安心するけど」
眼鏡の位置を直しながら、霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)が呟いた。彼が金色の瞳で見据える先には、『残響の女神』。
「それじゃ、いってみようか」
永一は、『オルタナティブ・ダブル』を発動。永一の分身が、彼の隣に出現した。
(「あまり猶予与えると面倒そうな相手だしね」)
二人の永一は、ダガーを手に女神へと駆け出す。
女神は、口を開け、息を吸い込もうとした。
「させられないね」
永一は柔らかな笑みを浮かべたまま言うと、正面から女神の胴体を刻みにかかった。
女神は飛び退いてそれを避ける。
だが、永一による正面からの攻撃は、囮。
本命の一撃は、分身の永一によるものだ。だまし討ちである。
分身は本体とはタイミングをずらして、女神の斜め後方からダガーを振るった。
刃によって深く刻まれた女神の脇腹から、腐臭のする黒い血液が噴き出す。女神は傷口を押さえ、苦痛に体を折り曲げた。
攻撃の際、永一は瞬間的に、女神が身に着けている布の下に何かがあるのを見抜き、それを奪い取っていた。『盗み』を日常の一部とする彼ならではの芸当である。
永一は、奪ったものに視線を落とす。
……次の瞬間には、彼はそれを思い切り遠くに投げ捨てていた。
放物線を描いて飛び、地面に転がったのは、一本の、人間の腕。
「また貧乏くじだぜ」
粗暴な口調の別人格を発現させた永一が、苦々しく呟く。
「そう言うなって。あれも武器の類だったのかもしれないしね」
永一はまた穏やかな表情に戻って、微笑とともに言う。
もげた人間の身体部位を、武器かもしれないと考えるのは、狂気の沙汰だろう。
だが、狂気に侵された思考は時に、正気の思考を凌駕し、真実を見抜くのだ。
成功
🔵🔵🔴
ジニア・ドグダラ
「……対処に遅れて、申し訳ありません」と詫びながら、走りつつ詠唱します。
相手は生贄により復活した敵です。ならば、この場において、私の使うコレは、真価を発揮するはずです。
魔鉱石の小瓶による【高速詠唱】を行いつつ、敵の行動を警戒しながらワイヤーフックで飛び回って【時間稼ぎ】目的の【逃げ足】に徹します。相手に捕らえれられてしまっても、【呪詛耐性】【激痛耐性】で耐えつつ、確実に召喚できるようにしておきます。
詠唱が終了したら、すぐに召喚。今ここにいた人達は生への執着もあったはず。その分だけ、【呪詛】は強まることでしょう。それを取り込んだ骸骨の霊による【拳】や【怨嗟の声】で相手を弱らせていきましょう。
(「……対処が遅れて、申し訳ありません」)
ネクロオーブがはめ込まれた、身の丈ほどの大きさの棺桶を背負った女性が走る。心の中で、救えなかった者達に詫びながら。
ジニア・ドグダラ(朝焼けの背を追う者・f01191)である。
駆けながら彼女は、魔鉱石の小瓶の力で補助を受けつつ、高速で詠唱を進める。
(「相手は生け贄により復活した敵です」)
ジニアは、残響の女神の肉体を見据えた。おそらくあれは、人間の身体部位が継ぎ接ぎになって構成されている。
ならば、『あと一人分の命』で完全復活する状態になるまで、既に箱に生け贄は捧げられた後だったと考えるのが自然だろう。
その最後の一人になるはずだったのが、救出された少女だったのだ。
(「ならば、この場において、私の使うコレは、真価を発揮するはずです」)
フックワイヤーの発射と巻き取りを繰り返し、ジニアは飛び回りながら時間を稼ぎ、詠唱を続けた。
『……ァァァ』
女神が小さく声を発した。絶叫ではない。
口内の眼球でじっとジニアを凝視し、彼女をトラウマの痛みに溢れた空間に引きずり込もうとしているのだ。
だが、ジニアは動き回っているし、呪詛耐性で抵抗もしている――吸い込めない。
「集え! 己に刃を突き立てた者への惨劇を祈る、怨恨晴れぬ朽ちた者よ!」
ジニアの詠唱は、完成した。『それ』は、召喚される。
『うああ、ああああぁ――!!』
呪詛に満ちた叫びを上げたのは、巨大な影。
死した人々で構成された、はなはだしく大きな骸骨。
『蛾者髑髏襲来(スケルトン・カタルシス)』――死霊術のユーベルコードである。
「生け贄にされた人達は、生への執着もあったはずです」
ジニアは口にする。先刻、爆発に巻き込まれた教団員達は女神を復活させるのが目的だったのだから、女神と戦わせるための召喚には応じないだろう。つまり、女神への呪詛を持つ死者達によって、あの骸骨は構成されているのだ。
『なんで私がこんなことに』
『ボクはもっと生きていたかった』
『バケモノめ、お前さえ、いなければ』
骸骨から、いくつもの怨嗟の声が発せられる。その『声』は、毒のように女神を蝕み、弱らせた。
それから、骸骨は一歩踏み出し、女神に近寄った。
『クソが――クソがクソがクソが!!』
口汚く、骸骨は女神を罵る。骸骨の拳が振るわれ、めぎっ、という音と共に女神の体を吹き飛ばした。ごろごろ転がってから女神は起き上がる。
『信じてれば幸せになれるんじゃなかったのか! 俺を救ってくれるんじゃなかったのか! 騙しやがって!』
年若い少年の声で呪詛を発しながら、骸骨は、女神を幾度も殴りつけた。
大成功
🔵🔵🔵
伊能・為虎
……えっ、わんちゃん何?おいしそう?肉と呪いの匂いがする?
僕はすごく気持ち悪いと思うけれど……わかったわかった(妖刀の柄を撫で)
WIZ重視、【疾駆する狗霊】を使って攻撃に移ろうか
凝視で出る狂気、絶叫とかの予備動作があれば呪詛混じりの咆哮で妨害
増えた身体部位があれば【怪力】の斬撃で取り除く
御札まみれの刀だけど切れるんだよ、一応ね
毒をくらわば……あ、違う?毒を以て毒を。呪いもそんなノリだよね
「……えっ、わんちゃん何? おいしそう? 肉と呪いの匂いがする?」
為虎は、自分の妖刀に向かって話しかけた。
「僕はすごく気持ち悪いと思うけれど……わかったわかった」
妖刀の柄を、動物を可愛がるように撫でる。
それから、御札まみれの刀を抜き放ち、為虎は唱えた。
「荒魂等此処へ出で候え、祟り給え呪い給え! わんちゃん遊んでおいで!」
妖刀から姿を現したのは、首から上だけの狗の霊。
『疾駆する狗霊』である。なお、リードナンテナカッタ。お散歩大好きのわんちゃんだ。
残響の女神は、口を開ける。口内の眼球が、為虎を凝視しようとした。
瞬間、狗霊が、吠えた。空気をびりびりと揺らす呪詛混じりの咆哮に、女神はとっさに口を閉じる。
「毒をくらわば……あ、違う? 毒を以て毒を。呪いもそんなノリだよね」
明るい笑顔のまま為虎は言う。
狗霊は、呪いに満ちた牙で女神に噛り付く。
ジャーキーを食べる犬のように。
本当に美味しそうに、心底嬉しそうに、怪物の肉を食いちぎり続ける。
もしこの狗に胴体があったなら、激しく尻尾を振っていたことだろう。
成功
🔵🔵🔴
フロッシュ・フェローチェス
あと一息、奴に引導を渡す。
最後まで【ダッシュ】を中心とした高速戦を継続するよ。
近づいては蹴り、重量弾を撃ち込み、短刀で地を斬り裂く。
これでも力はある方――メカブーツと【衝撃波】込みで、切り抜いた地面の塊を蹴り飛ばす【地形の利用】をしよう。
【先制攻撃】の応用で、攻撃の起こりを潰せないだろうか。
そしたら短刀で脚を切り、僅かな間でも機動力をそいでやる。
物理的な痛みによる苦痛を知ったな? 人々の怨嗟による苦痛を知ったな?
ならそれを抱えたまま、散り散りに消え失せろ。
……少年が何を言いたかったかはもう分からない。
それでもこんな奴に願わなければ、或いは……。
禍根諸共【選択したUC】で踏み潰そう。
※アドリブ可
「あと一息」
フロッシュが呟いた。
(「奴に引導を渡す」)
決意と共に、メカブーツで地を蹴る。
彼女は接近しては、女神を蹴りつけ、女神の体に重量弾を撃ち込んだ。
それから、ドスでがりがりと地面を切り抜いた。
「これでも力はある方――」
切り抜いた塊を、機械ブーツで女神へと蹴り飛ばす。衝撃波を伴い、飛んだコンクリートの塊が、女神の顔面にぶち当たった。
ぼろりと塊が落ちた時、女神は口を開けていた。
叫ぼうとしている。
「させるか!」
先制攻撃。フロッシュは女神に迫り、脚を短刀で斬りつけた。
痛みに声を詰まらせる女神。その怪物に対して。
「物理的な痛みによる苦痛を知ったな?」
フロッシュは、言う。
「人々の怨嗟による苦痛を知ったな?」
ぐっと、短刀を握る手に力を込めて。
「ならそれを抱えたまま、散り散りに消え失せろ」
ユーベルコードを発動――駿馬蹂躙『スコヴィル・サドンデス』(レッドチャリオット)。
7メートル近い機械馬が二頭召喚された。馬がひく戦車は、刃型。フロッシュはそれに騎乗した。
「禍根諸共踏み潰せ、チャリオット」
フロッシュの命令のままに、馬は金属の蹄で女神を踏みつけ、続けて戦車が女神をひき潰した。
『――ァ』
断末魔を上げることすら、叶わず。潰された女神の体は黒く溶け、蒸発し、完全に消滅していった。
「……」
それを確認したフロッシュは、天を仰ぐ。
爆発のせいで天井さえ吹き飛び、憎たらしいほど満天の星空が広がっていた。
「……そういや」
さきほどジニアが召喚した骸骨が、女神に対して発していた言葉。
――信じてれば幸せになれるんじゃなかったのか! 俺を救ってくれるんじゃなかったのか! 騙しやがって!
「あの声……アイツに似てたな」
複数の死者が召喚されたのだから、気のせいかもしれない。
軽く、フロッシュは息をついた。爆炎による空気の熱さも収まっており、息は白く空中に残って消えた。
猟兵達によって、教団は全滅。
不完全に復活した邪神も倒され、数多くの命が救われた。
無論、その中には、箱に入れられていた少女も含まれている。
しかしながら。
命を落とした少年が、最期に何を言おうとしたのか。
それは、もう分からない。
箱の中が、災厄か希望か分からないのと同様に。
箱の中に入れられた猫の生死が分からないのと同様に。
もう永遠に、分からない。
成功
🔵🔵🔴