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希望の灯を、どうか絶やさぬよう

#ダークセイヴァー #人類砦 #闇の救済者

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 「人類砦」とは、ヴァンパイアに対抗するため各地で闇の救済者を名乗り、活動していた者達が作り上げた、人が人として過ごせる活動圏である。
 連なる木々の尾根が闇を形作る、人里離れた森の奥地にその一つは佇んでいた。
 板や丸太を組み合わせた防壁で四方を囲み、内部の居住区には近隣の村々からの避難民達が身を寄せ合って暮らしている。
 だが、そうして細々と力を蓄え、反攻の機を窺っていたコロニーも、今や消えかける風前の灯火だった。
「ヴァンパイア様ニ歯向カウ者ドモニ……死ヲ!」
 どこから嗅ぎつけて来たか。あるいは人類砦が放っていた偵察部隊が捕らわれたか。
 森の草地を踏みしだき、馬蹄の音を響かせて――夜な夜な、その禍々しき威風の騎士達が砦へ詰めかける。
 漆黒の鎧を纏い、岩をも砕くような長大なランスを手にした彼らの突撃を受ければ、砦の壁など布のように破り倒されてしまう事だろう。
「よりによってこんな時に……!」
 砦のリーダーを務める若者『ショット』は、壁の上に立って敵の軍勢を見下ろし舌打ちする。
 すぐに門扉は閉ざしたが、強度としては壁よりいくらかマシな程度。到底、閉じこもってやり過ごせそうな相手ではない。
「貴様ラ人間ドモハ逃ガサナイ……一匹残ラズ駆除スル!」
「何かすでに勝った気でいるようだが……勘違いするなよ。『逃がさない』のはこっちのセリフだ」
 ショットが振り向けば、そこには村の自警団として共に活動し、ここまでついて来てくれた仲間達が揃い、剣を握って頷いている。
「――戦うぞ! ヴァンパイアに居所を知られるわけにはいかん、奴らを一匹たりとも生かして帰すなッ!」

「猟兵のみんな、よく集まってくれたな! ダークセイヴァーに存在する人類砦が、オブリビオンに狙われているようだぜ!」
 グリモアベースに集まる猟兵達へ『人間のガジェッティア』ロロック・ハーウェイが、事件の発生を告げる。
「今回の人類砦は、ヴァンパイアの圧政を受ける中、立ち上がった村の元自警団が作ったものだぜ」
 森の奥を切り開き、壁を張り、家を建て、人を呼び――その後もさらに奥まった場所へ農作地や牧場を作って生活の基盤を安定させ、そうしてできあがった密かな安息地。
「物資も人もまだ圧倒的に乏しい。けども、そこまで確かな生存圏を打ち立てるには多くの努力と犠牲があったはずだ……彼らのそんな涙ぐましい願いの象徴が、今しも打ち壊されようとしているんだぜ!」
 襲ってきたのは、恐るべき『闇に誓いし騎士』達。およそ数百は数えるだろうこの者どもの突進攻撃は破城鎚の如し。
 おまけに武器のランスを軽々と振り回し、漆黒の霞で覆う事で自己強化もする。
「ヴァンパイアに忠誠を誓っているから、たとえ仲間がやられても、最後の一人になるまで向かって来るだろうな。完全に息の根を止めるまで油断は禁物だぜ」
 砦は東西に門を作っているが、そのうち騎士達は東側から攻めて来る。
「ショットも言ってたけど、間の悪い事に、この東門はただいま改修工事中なんだ。木の防壁から石壁へ変えようとしててさ……」
 なので、現在の砦の東側の壁は解体途中であり、雨風除けの布がかけられた半ばフレームだけのスッカスカなのである。壁の上へ登る程度はできるが、身を守るための防御壁としてはまったく期待できない。
「連中の突撃をまともに受ければ……壁はいくらも保たず崩壊し、砦内になだれ込まれちまうだろう。犠牲を出さないためにも、どうにかして砦の外で全員やっつける必要があるな!」
 住民達の避難は無理だ。逃げ場なんてない。この人類砦は、まさにその「逃げて来た先」の安全な場所であったはずなのだから。
「ショット達戦える戦士は、せいぜい百人足らず……後は女子供の非戦闘員ばかりだぜ」
 士気と練度はそこそこ高いものの、武装が貧弱でユーベルコードも使えないため、正面衝突では玉砕しかねない。
 猟兵達にはこれまでにも幾度か助けられているので、あまり変な指示でなければ従ってくれるだろう。
「状況ははっきり言って、この救いのない世界を体現したような厳しさだ。けどみんなならきっと、決定された絶望と虐殺を覆し、この人類砦に新たな希望の光を灯してくれる……そう信じているぜ!」


霧柄頼道
 霧柄頼道です。よろしくお願いします。

●人類砦
 東門の壁は、『生ける破城鎚』攻撃を数回受けると崩壊します。
 砦内の戦える者は、二隊へ分かれて行動するようです。
 一隊は弓を持って壁の上へ立ち、騎士達へ矢を射かけます。
 もう一隊は決死隊として出撃し、敵を門へ近づけないよう剣や槍で戦います。
 リーダーのショットはこの決死隊に参加しています。熟練した剣技と投げナイフが得意です。
 敵軍には特に戦術はなく、パワーとスピードを頼りに真正面から一斉に突撃して来ます。
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第1章 集団戦 『闇に誓いし騎士』

POW   :    生ける破城鎚
単純で重い【怪物じみた馬の脚力を載せたランスチャージ】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    屠殺旋風
自身の【兜の奥の邪悪なる瞳】が輝く間、【鈍器として振るわれる巨大な突撃槍】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    闇の恩寵
全身を【漆黒の霞】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:すねいる

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

サフィリア・ラズワルド
POWを選択

【白銀竜の解放】で四つ足の飛竜になり戦場へ

『助けに来ましたよ!』

まずは敵の“足”を奪いましょう、炎は……止めておきましょう、森の中ですし万が一村に燃え移ったら大変ですから。
手足や尻尾で敵をなぎ払って体制を崩した奴から食べます。UCを警戒して馬を優先して食べますが余裕があるなら騎手も食べます。

『どんどん来い!私のお腹はまだ空いてますよ!』

ふと我に返って、砦の人達に向かって『グロ注意です。』ちょっと遅い警告をします。

アドリブ協力歓迎です。


藏重・力子
壁の上に立って弓隊に混じり、まずは【鼓舞】である
「心落ち着けて的を射よ。案ずるな、我等は凄腕揃いゆえ!
一矢報いてやろうではないか!」

『司鬼番来・元』!「行くぞ、ぐどう殿!」
ぐどう殿を迫りくる敵に放ち攻撃!体勢を崩させ弓隊の皆に射掛けてもらおう

それと同時に我も戦場に飛び出し、討ち漏らした敵を引き付けて薙刀で戦う
敵の攻撃は【武器受け】し【怪力】で耐え、火の【属性攻撃】よ
狐火を浮かせ空中に描くは、敵を中心とした【存在感】のある的の如き二重丸
ここを弓隊に狙わせ弓を引かせ、隙を作り反撃だ
「善くぞ射った!せぃやぁ!」
増援が来るようなら再びぐどう殿を放つ!

闘志を燃やす我等の灯、蹴散らせるものならやってみよ!


シキ・ジルモント
◆SPD
希望の灯、か
…そうだな、ここで潰させるわけにはいかない

現地部隊に敵を接近させないよう食い止めたい
まず砦へ接近する馬を狙い突進の妨害を行う
ユーベルコードを発動して速度を増大させ、足元に潜り込むように敵に急接近する

馬も防具を装着しているようだが、脚の関節部分はむき出しになっているはずだ
そこを狙って至近距離から銃弾を撃ち込む
馬の脚を破壊すれば、突進も流石に止まるだろう

一体仕留めたらすぐ次へ、速度に任せて出来るだけ多く
粗方馬を落としたら騎士本体との交戦に移る
巨大槍は増大した反応速度で回避、隙を見て銃で反撃する

全て倒しきるまでユーベルコードは解除しない
状況が良くない今、消耗など気にしていられない


ガルディエ・ワールレイド
『逃さない』のはこっちのセリフ……か。ああ、その通りだ。
人様の領域に無断で入っといて、ただで済むと思うなよ。

◆戦闘
武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流。
《武器受け/見切り》を利用して受け流しや弾き返しを行う。

【竜神禁域】で創り出した不可視の魔法陣を、敵の突撃が予想される東側に並べるように設置するぜ。
並べ方は迂回対策として側面側にも幾らか設置。

生ける破城鎚は移動を竜神禁域で止めて、捕縛状態の敵を斬る。
魔法陣を飛び越えようとする敵は《念動力》で引きずり落とすぜ。

常に一般人に気を使い、竜神禁域を仕掛けた場所より前には出ないよう知らせる。
一般人は優先して《かばう》


アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

貴方方が吸血鬼に忠を捧げる騎士であれば、私は人へと忠を捧げる騎士。
私も私の忠のため、貴方方をここで骸の海へと送って差し上げましょう。

敵が軍勢で向かってくるのであれば、こちらも相応の力でお相手致しましょう。
ホワイトナイツ。私の忠実な騎士達よ。これからの未来、希望、そして人々のため力を貸して下さい。
馬上の騎士達を『鼓舞』し、ショットさん達を『かばう』よう前へ出ます。
ショットさん達は討ち漏らした敵の対処を。弓隊は敵の突撃の妨害をお願いできませんか?
敵の槍が届く前に氷魔法で少しでも数を減らし、その後に白兵戦を仕掛けます。
他の猟兵は大丈夫でしょうか?隙があれば、他の猟兵への補助にも回ります。



 敵が来る。人間を狩り尽くさんと、馬を駆って押し寄せる。
 さながら黒い波が詰めかける様相に、砦の壁に立つ弓手らは、ごくりと生唾を飲む。
「俺たち、あんな奴らに勝てるのか……?」
 握った弓はかじかむように震える。別段それは、寒いからだけではないだろう。
「心落ち着けて的を射よ」
 そんな彼らを鼓舞するように、力強く声をかける者がいた。
 何事かと視線を巡らせれば、不安げに雁首揃える弓隊の中心で、薙刀を手にして威風堂々と佇む少女が一人。
「――案ずるな、我等は凄腕揃いゆえ! 一矢報いてやろうではないか!」
 そう気勢を上げる藏重・力子(里の箱入りお狐さん・f05257)の細面には、一片たりとも恐れの色は混じっていない。
 このような少女が自分達の士気を昂揚させんとしているのだ。ならば応じるのが戦士というものではないのか。
 敵の迫る、敗色濃厚な拠点。その不安定で頼りない壁の足場の上。それでも彼らは腕を突き上げ、立ち向かうための勇気を懸命に奮う。
「その意気だ! なれば我も――『司鬼番来・元』!」
 力子の傍らに、一対の碧腕が現れる。黒い騎士達を睨むように拳を握るは、ぐどう殿だ。
「行くぞ、ぐどう殿!」
 力子のかけ声を受け、ぐどう殿が爆進! 高所からまっしぐらに敵陣へと突っ込み、死の戦列を豪快に薙ぎ払う!
 今だ、と続けざまに弓兵達が一斉発射。森から湧き出る敵を近づけまいと、あらん限りの矢の雨を降り注がせる。
 同時に力子も膝を曲げて足へ力を籠め、矢が途切れた瞬間を見計らって壁から跳躍する。
 勢いそのままに地上へ降り立ち、勇んで騎士達へと挑みかかった――。

 開戦の火蓋が切って落とされた。砦から大量の矢が敵へ射掛けられているものの、それだけでは騎馬による猛進を食い止めきる事はできない。
「貴方方が吸血鬼に忠を捧げる騎士であれば、私は人へと忠を捧げる騎士――」
 アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)は叫喚者を両手で構え、自身の魔力を大量に注ぎ込み、ともに戦ってくれる白銀の騎士達を召喚する。
「私も私の忠のため、貴方方をここで骸の海へと送って差し上げましょう」
 馬上の騎士達は整然と隊列を作り、長槍や大剣を携え、一歩一歩を重々しく、やわらかい土を馬蹄で踏みしめさせながら前進を始める。
「――ホワイトナイツ。私の忠実な騎士達よ。これからの未来、希望、そして人々のため力を貸して下さい」
 敵が軍勢で向かってくるのであれば、こちらも相応の力で抗さなければならない。
 アリウムを先頭に騎士達は進み、やがて前線に立つショット達の前へ出た。
「私達が盾となります。ショットさん達は討ち漏らした敵の対処をお願いできますか」
「問題ない。俺らの貧弱な革装備より、あんたらのカチコチな鎧の方が向いてるだろうからな」
 そうショットが頷く。砦の弓隊はすでに援護へ徹してくれているし、後は騎馬戦にて雌雄を決する事になるだろう。
 その矢先、さらにアリウム達の前方へ、一人の騎士が躍り出た。
 彼の甲冑はホワイトナイツとは正反対の、漆黒。闇を塗り固めたかのような色は、敵の纏うものよりもなお深い。
「『逃さない』のはこっちのセリフ……か。ああ、その通りだ。まったく同感だぜ」
 ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)は兜の奥でニヤリと笑い、眼光鋭く敵の群れを見据えた。
 左の手には赤い紋様の描き込まれた魔剣レギア、右手には禍々しき魔槍斧ジレイザをそれぞれ把持している。
「人様の領域に無断で入っといて、ただで済むと思うなよ」
 次の瞬間、ガルディエが展開したのは【竜神禁域】だ。多数の魔法陣が砦の周囲へ配置され、とりわけ敵が襲い来る東側に、その多くが並べられる。
 けれども、魔法陣そのものは不可視――全身を破城鎚と見立てた突撃を敢行する黒い騎士達は、見えない魔法陣を思いきり踏み抜き、瞬く間にその場へ縛り付けられた。
「グオオオォォォォォォッ! 身体ガ、動カン……ッ!」
 敵の騎兵らは釘付けにされたみたいに立ち止まってしまうが、後続はそうはいかない。
「ウオォォォ!? マ、前ノ奴ラ、ジャ、邪魔ダアァァァァッ!?」
 結果として、後列からもランスチャージをしていた黒い騎士達が、追突よろしく前方の仲間と激突。
 血しぶきと肉片と甲冑の欠片が弾け、敵の出鼻をくじく形になる。
「さあて、おっ始めるか!」
 混乱状態に陥る敵勢へと、ガルディエが得物を握って果敢に切り込む。
 よろめく騎士の大上段から魔剣を振り下ろし、兜ごと両断。返す刃で背後から寄り来る敵を、魔槍斧ジレイザで一突きに貫きながら、斧の部分で引っかけるように馬上から引きずり倒す。
「ッらぁ!」
 引き倒した敵を勢いよく魔剣で突いてとどめを刺し、続く複数の敵の接近にはジレイザをぶん回して牽制。突き込まれるランスを弾き返しながら猛然と攻め込む。
「罠ガ仕掛ケラレテイル! 馬デ跳ビ越エロ!」
 敵も竜神禁域に気付いたのか、散開する事で同士討ちを避けつつ、跳躍を繰り返し魔法陣を飛び越して来る。
「させるかよ――!」
 すかさず念動力を放ち、中空で無防備の敵を強引に地上へ叩き落す。ちょうどその場には魔法陣による捕縛のおまけつきだ。動けぬ隙を逃さず魔剣をぶちこんで仕留める。
 けれども仕掛けが看破された以上、それまでのような防壁効果は見込めない。ぽつぽつと魔法陣を突破した黒い騎士達が、ショット達へと殺到する。
「ここは私が」
 そこでアリウムがホワイトブレスを放出し、今しも槍を振りかぶる黒騎士数人を、その体勢のまま凍てつかせて地べたへ転がした。
 これで魔力はもうわずか。後は自らの武と、ホワイトナイツの奮戦が頼りである。
「よし、いくぞ!」
「ええ……!」
 ホワイトナイツを前衛に、ショットと肩を並べて突き進む。
 ホワイトナイツと黒い騎士達が轟音を張り上げて正面衝突し、双方の後続は間合いを測りながら打ち合いを始めた。瞬く間に最前線は混戦の様相を呈する。
「おっと、この近くには竜神禁域が仕掛けられてる。俺より前には出るなよ?」
 気づけばガルディエとも合流し、それからはとにかく無心に剣を槍を斧を振り続けた。
 ショットなど、砦の戦士達は動きが軽いため小回りの利かない敵を翻弄し、援護に向く。だが装甲には期待できないため、アリウム、ガルディエで交互に庇い合いつつ、次から次へと肉薄する騎士の大軍を斬って突いて倒しまくる。
 重装備の騎士を中心とした白兵戦は、押して押されての重量感ある戦いとなっていたが、そのただ中を軽やかに駆け抜ける赤い影があった――力子である。
「堅牢な鎧とて、炎の如き攻めで打ち崩して見せよう!」
 桜色の烈火を灯した薙刀を連続で打ち出し、敵の鎧を溶かしながら柔らかくなった部分を打ち抜き、そのまま相手へ走り込みながら蹴りつけ、踊るように空中へ跳ね上がる。
 そんな力子を叩き落さんと、左右の騎士が長槍を降り抜く。力子もちょうど交錯するように薙刀を叩きつけ、その衝撃でもってくるりと一段、さらに上昇する。
 そうして飛び降りたのは、敵兵達のど真ん中。どこにも逃げ場がない状況に、黒い騎士達が嘲笑う。
「マサニ袋ノキツネ! コレデ貴様モ終ワリダ!」
 でも、力子は不敵に笑って薙刀を真上へ一閃。花火のように一直線に撃ち上がったのは、この暗い空にも青白き光を放つ狐火。
 狐火はゆるやかな円を二つ作る。それが描くは螺旋の二重丸。ぽかんと見上げる騎士達は気づき、息を呑む。その絵柄がまるで、的のようであると。
「ここだ!」
 力子が叫び、すかさずぐどう殿に乗って退避すると同時――砦からこれでもかとばかり、一斉に射撃された矢が飛来してくる。
 狐火の的をくぐり抜けた矢の先には炎が灯り、眼下の黒騎士どもへと突き立つや一層強く発火――局地的な火の海を作り上げ、一網打尽にしてのけた。
「善くぞ射った! せぃやぁ!」
 目論見の成功を見て取った力子が反転し、浮足立つ敵勢に向けて自分ごとぐどう殿を発射!
「闘志を燃やす我等の灯、蹴散らせるものならやってみよ!」
 力子は掲げた薙刀をくるくると器用に回転させながら、火炎逆巻く敵中へ躍り込んでいく――。

「希望の灯、か。……そうだな、ここで潰させるわけにはいかない」
 銃を片手に戦場を見据えるは、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)だ。
 魔法陣を見抜き、同士討ちを避けて散開する敵兵達。そのため人数で劣るショット達だけでは、全てを防ぐ事は難しい。
 けれどもそうした敵めがけ、シキが駆け出す。
 青い瞳が爛々と輝き、熱くたぎる血流が全身を駆け巡り、無意識に歯を食いしばる。
 普段は抑えている人狼の獣性を解放し、肉体のリミッターを外しているのだ。
 限界を超えた身体能力は、それこそ騎兵の疾走にも並ぶ。
 素早く距離を詰めたため、相手も槍を構えてシキを貫こうとしてくる。
 ――瞬間、シキの姿は敵の視界から消えた。動揺したかのように、ランスの穂先が揺れる。
 シキは直前で身を低め、敵の側面へと回り込んでいたのだ。のみならず、互いにすれ違う刹那を縫って、騎馬の脚へと射撃を見舞ったのである。
 いななきを上げて倒れ込む馬。馬上の騎士もまたもつれて地上へ墜落し、首を折ったのか痙攣して動かなくなる。
 やはりだ、とすぐさま次の敵へ向かいながらシキは思った。馬も馬も防具を装着しているが、脚の関節部分はむき出しになっていた。
 ならばそこを狙えば、相手もまた落馬は必至。機動力を大幅に削ぎ、砦への侵攻を遅らせる一助となる。
 無論そのためには、先ほどのような紙一重の攻防を幾度も繰り広げなくてはならない。攻撃のタイミングが早ければ敵を逃し、逸すれば槍の餌食。
 だがしかし、速度と反応が至大に高まった今のシキなら、こなせる。この任務を、完璧に。
 一発一発を精密に浴びせかけ、反撃を躱し、影のように敵の阻害、及び暗殺を繰り返す。
 気づけば周囲には馬を失った騎士達が、徒でシキを包囲していた。彼らも負傷しているが、その戦意は衰えていない。
 シキもまた銃を構え直す。ほんの数分間に潜り抜けた死線は数え切れず、肩でする呼吸は荒く、疲労は溜まり続けている。
 けれどこうして己が遊撃を続けている間は、それだけ味方の被害が減る。
(消耗など気にしていられんな……せめてこいつらを倒しきるまでは)
 四方から叩き込まれる巨大槍。それをシキは跳躍し、転がり、伏せ、駆け、アクロバティックな動きで回避しながら、弾丸を撃ち返して応戦していく――!

 猟兵達の奮闘により、敵の数は減り始めている。されども、いまだ森の奥からは、絶え間なく黒い騎士達が増援に現れているのだ。
 ドカラッ、ドカラッ、と騎馬を疾走させ、一心に砦を狙うその姿は、差し詰め夜の獣。
 猟兵達が一旦は押し戻した戦線も、これではいまひとたび崩壊の危機にさらされてしまうだろう――。
 その矢先、騎士の一人がぴたりと足を止めた。突然、凄まじいまでの羽ばたき音が、耳朶を叩いたからである。
「ナンダ……?」
 振り仰いだ空は暗い。なのに、その――黒い騎士達を覆うほどの、翼を備えた巨大な体躯は、雲に隠れるわずかな月の光を照り返して煌々と光っていた。
「助けに来ましたよ!」
 四つ足の飛竜に変身したサフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)は、地上にて熾烈な戦闘を繰り広げる仲間達へ呼びかける。その一言が、せめて皆の戦意の支えとなるよう願いながら。
「これ以上は進ませない!」
 サフィリアは伸びきった敵の戦線の横っ腹を突くよう、上方から一気に襲い掛かる!
 そのまま狙い定めたのは、騎士達の足――すなわち騎馬である。
 地表すれすれからすくいとるように鋭利な爪を伸ばし、刈り取るかの如く一閃。
 騎士の馬は重量級の防具で身を固めていたが、今のサフィリアからすればそんなものは紙も同然。
 すり抜けざまにやすやすと引き裂き、逆に接近されそうになれば先んじてリーチが長く、そして強靭な尻尾で薙ぎ払う。
 いっそまとめて炎で焼けばもっと手早く済むのだろうが、あいにく周辺は森。迂闊にやろうものなら砦にまで燃え移ってしまいかねない。
 たたらを踏んで落馬した騎士ごと馬へ食らいつき、他の敵の反撃を避けてただちに急上昇。
「なかなかの歯ごたえ……むっしゃむっしゃ」
 上空から黒騎士達の動きを観察しつつ、これみよがしにゆっくり口の中のゲテモノを噛み砕き、肉汁よろしく血の雨を降らせて見せる。
「どんどん来い! 私のお腹はまだ空いてますよ!」
 見上げてくる敵勢からは殺意と怒り――そして確かな恐怖が感じられた。
 この調子で攻め立ててやれば、侵攻の勢いも殺す事ができるはず……。
 そこではたと思い出し、砦の方を振り返る。
「あばばばば……」
 砦の弓兵達は、味方ながらもサフィリアの凄まじい戦いぶりを目にして、中には震えたり腰を抜かしている者もいた。
 サフィリアはできるだけ茶目っ気を含むみたいに前足を頭へ近づけ、こてんと小首を傾げて。
「グロ注意です。てへっ」
 ちょっと遅い警告を飛ばすのだった。
 ――近くにいた敵にとっては、その仕草は可愛いどころかむしろ余計に脅威を呼び起こすものであり、慄然と立ちすくんでいる。
 そんな事はつゆ知らずのサフィリアは、どういうわけか動きの鈍くなった騎士の群れをこれ幸いと食べ続け、敵の戦力へ大打撃を与えたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋翠・華乃音
【星翠】

「……まあ、友達になりたいのなら先ずは武器を置いて貰わないとな」

俺は普通に殺すけど。

「というかこんな奴らとは友達になりたいと思えないが……」

そんな会話を交わしつつも、優れた五感と直感は敵の接近を見逃さない。


狙撃手として壁の上で敵を待ち構える。

「鎧の繋ぎ目や脚、脆弱性の高い箇所を狙え。前線が崩されたら終わりだ、可能な限り援護しろ」
「伏兵や奇策を警戒する必要は無い。真正面から向かってくる相手を狙え」

余裕があれば弓手に指示しつつ、精密な狙撃で敵を屠っていく。
天星とは互いに支援しつつ効率的に戦闘を行う。


天星・零
【星翠】
『あはは…困りましたね。僕は皆さんと友達になれたら嬉しいんですが。』

翡翠さんと話を少し交えつつ

『ふふ、でも…迷惑かける子は放っておけないですよね。戦闘は不得手なんですがね。』

【情報収集】をしておき敵がきたら地形に合わせて零がグレイヴ・ロウで不意打ちできるように

戦闘

enigmaで夕夜も


近接
Ø

遠距離
グレイヴ・ロウ
十の死(斬死、感電死、焼死)
    
十の死は斬撃、雷撃、炎で攻撃(指定以外も対応する攻撃方法で攻撃可)

夕夜
近接
Ø

遠距離
グレイヴ・ロウ
Punishment Blaster
    
敵、味方の動きを追跡し戦況を見ながら相手の死角からの攻撃や不意打ちなど戦闘

可能なら緋翠さんも支援



 猟兵達の活躍により、敵の第一陣はしのぎ切った。
 だが、いまだ襲撃は終わっていない。第二波はより苛烈さを増すだろう。
 早くもその気配が、森の奥から近づいて来る――狙撃手として壁の上に待機する緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は、研ぎ澄まされた感覚で敏感に兆しを感じ取っていた。
「そろそろ、次が来るな……奴らの殺気が濃くなってる」
 そう呟くと、傍らに立つ天星・零(零と夢幻、真実と虚構・f02413)が、困ったような微笑を浮かべる。
「あはは……困りましたね。僕は皆さんと友達になれたら嬉しいんですが」
「……まあ、友達になりたいのなら先ずは武器を置いて貰わないとな。話はそれからだ」
 華乃音はそんな風に肩をすくめて首を振った。
 それに、仮にそうなったとしても――俺は普通に殺すけど、と胸中でつけ加える。
「ふふ、でも……迷惑かける子は放っておけないですよね。戦闘は不得手なんですがね」
 笑い交じりに告げる零だが、開戦前にもっとも戦場の地形や地理を調査し、頭に入れていたのは他ならぬ当人だ。
 よく言う、と呆れ気味の華乃音をよそに、零は身軽に壁から飛び降りる。
 そのまま数歩森へ向かって歩いたあたりで、ちょうど耳をつんざく馬蹄の響きと鳴動を伴って、木立の先から騎士達が飛び出してきた。
 闇に染まり切った彼らの姿は禍々しく、長大な槍は本能的な恐怖を誘う。けれども零はそんな連中を前に、無手のまま警戒する様子もなく歩み寄っていくではないか。
 死にたいのか? 自殺志願者か? 対峙する闇の騎士達はそのような思いがよぎった事だろう。
 華乃音の言う通りだ。例え相手が――零が武器を持っていなかったとしても、この騎士達は主たるヴァンパイアががために、ためらいなく騎士道を曲げ、槍を振るって殺す事だろう。
「そんな奴らとは友達になりたいと思えないが……」
 華乃音がぽつりとぼやく先で、そんな冗談がまるで届いたかのように、くすりと笑った零がわずかに腕を上げる。
 まるで何かを持ち上げるかのように、白く細い指が上向いた――次の瞬間。
 轟音とともに地中から飛び出した十字架の墓石が、最前列を進んでいた騎士達を下方から襲い、まとめて真上へ突き上げたのだ!
「グオオオガアァァァァッ!」
 上がる悲鳴。彼らにとっての視界外。そして意識を零へ注いでいたために、まったくの不意打ちとなって、真下から凄まじい威力の墓石が重装備をものともせず、騎馬をぐしゃりと潰しつつかち上げる。
 騎士らの身が宙へと舞い――。
「俺の出番だな! 派手にあの世へ送ってやるぜ!」
 すでに死角となる茂みへ身を潜めていた夕夜が、ここぞとばかりにPunishment Blasterで砲撃。中空へ吹き飛ばされた騎士達は血の花を咲かせ、バラバラの肉片と化して地上へ戻る事になった。
 おかげで後続の騎士達は驚き戸惑い、馬足が鈍る。
 こうして緒戦の主導権は砦側が握り――。
「鎧の繋ぎ目や脚、脆弱性の高い箇所を狙え。前線が崩されたら終わりだ、可能な限り援護しろ」
 間髪入れず、銃を構えた華乃音が発砲。地上にて騎士達と渡り合う零を狙撃弾で支援し、砲撃を続ける夕夜へ敵を寄せ付けないよう援護する。
 周りの弓隊もそれに合わせて矢を放ち、ショット達地上部隊がスムーズに動けるよう敵を射抜いていく。
 その中の一人がいらだたしげにわめいた。
「ちくしょう、なんて数だよあいつら! どこを見ても敵だらけじゃねぇか、こんなのいくら撃ったって……!」
「深追いするな。伏兵や奇策を警戒する必要も無い。真正面から向かってくる相手だけを狙え」
 弓隊には面での攻撃が期待できる。その戦術が有効に作用するよう、指揮官など厄介な敵を見抜いてピンポイントで撃ち倒すのが自分の役目だ。
 叩き出された弾丸がまた一発、空を裂いて飛来し、こちらへ背を向けていた敵の騎馬を穿つ。
 よろけて倒れ込む敵へ零がすかさず接近し、Øで速やかに喉首を引き裂いた。
 すぐさま敵勢から距離を離し、素早く戦況を確認。
 夕夜は相変わらず遠距離攻撃を続けており、華乃音の援護射撃もあって助けに行く必要はなさそうだ。むしろ危険なのは――。
「射手ダ! 壁ヲ崩シテ奴ラヲ始末セヨ!」
 突破した数体の敵が、砦へと切迫している。華乃音の狙撃をはじめとして弓隊も懸命に応射するものの、それだけでは進撃する敵を討つには足りない。
「言う事を聞かない悪い子は……」
 零は騎士達を追いながら、十の死を出現させる。様々な死に方になぞらえた攻撃をする恐るべき骸だ。
「斬死」
 骸がうごめき、追いつきざまに馬ごと闇の騎士を真っ二つにする。二つに分かたれた騎士の胴体の向こうで、驚いたように別の騎士が振り返り、ランスを構えるのが見えた。
「感電死」
 その鋭利な金属を、骸の放った電撃が走る。得物越しに強烈な電流を浴びせられた騎士はしびれたみたいにびくりと跳ねて硬直し、うめきながら崩れ落ちていった。
 これで砦を狙う敵は片づけたか――ちらりと壁の上を振り仰ぐと、ちょうどそこに立っていた華乃音と目が合い。
 華乃音がぶっ放した銃弾が、零のこめかみをかすりながら通り過ぎ、背後から槍を叩きつけようとしていた騎士の顔面を貫いて屠ったところだった。
「騎士のくせに余裕で後ろから襲い掛かる……とことん友達にはなりたくない相手だな」
「ふふ……」
 溜息をつきながら次弾を装填する華乃音に笑いかけてから、零もきびすを返して戦場へ戻る。
 互いに連携を取る二人の戦いにより、みるみる敵の数は減っていくのだった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
そうだね、世の中…特にこの世界では
気合だけじゃどうにもならない事だらけだけど
それでもまず強い気持ちが無いと何事も成せないからね
確かにリーダーであるショットには
皆の為にも生き延びるという大事な仕事がある
生きるか死ぬかの血腥い戦いは俺達の仕事だ

自身の手を斬りつけUC発動
梓のUCで敵の動きを封じ込んだら
強化した反応速度とスピードを活かして
敵陣に突っ込みEmperorの範囲攻撃で薙ぎ払っていく
巨大槍は当たれば痛いだろうけど
大きい分動きも隙が大きいね
見切って躱したり
予備動作が見えた瞬間に先に攻撃仕掛ける
やたら目立つその赤い瞳が弱点なのかな
瞳目掛けてナイフを投げる(鎧無視攻撃


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
この砦のリーダーは気概があるな!
しかし率先して戦うその心意気は買うが
精神的支柱でもあるリーダーが
生きるか死ぬかの最前線で
戦っているという状況はあまり良くないな
俺達もあそこへ向かうぞ綾

UC発動し、大量の氷のドラゴンを召喚
敵が騎乗する馬の足元を特に重点的に狙い
氷属性のブレスを浴びせる(属性攻撃・範囲攻撃
地面と馬の脚ごと凍り付かせることで動きを抑えこむ
自慢のスピードも突進攻撃も
馬が役に立たないんじゃ最大限発揮出来ないだろう!
足元を封じ込んだら馬の身体や騎士本体にもブレス攻撃
氷の拘束を突破される前にダメージを与えていく
最後は綾の攻撃で確実に息の根を止めてもらう



「この砦のリーダーは気概があるな!」
 敵の攻勢に備え、仲間達へ矢継ぎ早に指示を出すショットを眺め、腕組みをした乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)が言った。
「そうだね、世の中……特にこの世界では気合だけじゃどうにもならない事だらけだけど、それでもまず強い気持ちが無いと何事も成せないからね」
 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)もそう頷き、くすりと笑う。
「しかし率先して戦うその心意気は買うが……精神的支柱でもあるリーダーが生きるか死ぬかの最前線で戦っているという状況はあまり良くないな。――俺達もあそこへ向かうぞ綾」
「うん、確かにリーダーである彼には皆の為にも生き延びるという大事な仕事がある……生きるか死ぬかの血腥い戦いは俺達の仕事だ」
 ショット達の元へ駆けつける二人。彼らの部隊に交じりながら、梓がショットと肩を並べ、声をかける。
「よう、手を貸すぜ! だがこんな無茶な戦いばかり続けてたら身が保たないんじゃないか?」
「そうだな……でもそれは俺の仲間も同じ事なんだ、いつだって綱渡りさ。だったらその先頭は俺が行きたい――それだけだ」
「ますます気に入った! だったらなおさら死なせるわけにはいかないな!」
 森の奥からは、さらなる闇の騎士の集団がわんさと現れ、突撃を開始して来た。
 対して梓がUC『竜飛鳳舞』を発動! 暗い空に大量の氷のドラゴンを呼び出し、騎士の群れへと攻め込ませる。
 ドラゴン達が勢いよく浴びせかけるブレスが、騎士らの馬を襲う。強烈な冷気の塊が馬の脚を凍てつかせ、地面ごと張り付かせるようにして動きを止めたのだ。
「自慢のスピードも突進攻撃も、馬が役に立たないんじゃ最大限発揮出来ないだろう!」
「ショット達が無茶をするなら、俺達がそれ以上に暴れて、みんなの負担を下げればいい……って事だね」
 綾が自身の手をしたたかにEmperorの刃で傷つけ、そのまま迅速に敵陣へと駆け込む。
 影を残すようなスピードで攻め込んだかと思えば、思うように動けぬ騎士達をハルバードの斧部で豪快に薙ぎ払い、馬上から叩き落してさらに身動きを制限させていく。
「巨大槍は当たれば痛いだろうけど、大きい分動きも隙が大きいね――っと!」
 迫りくるランスをくるりとステップで回避し、敵と交差しざまにEmperorで突き倒す。
 その間にも氷のドラゴン達が間断なくブレスを食らわせ続け、半ば氷像と化した騎士達は悲鳴すら上げる事もかなわず砕け散っていく。
 中には抵抗しようともがく敵もいたが、そこは綾が素早く構えを取り。
「やたら目立つその赤い瞳が弱点なのかな」
 コートから抜き出した小型ナイフを投げつける。ナイフは鋭い直線軌道を描いて騎士の顔、まびさしで覆われた隙間から眼球へ突き刺さり。
「グワァァァァァ……ッ!」
 それがとどめとなったのか、凍り付いた頭部ごと崩れ落ちていくのだった。
「大したナイフさばきだ、見習いたいもんだな!」
 綾の技に奮起させられたのか、ショットも同じくナイフを投げつけ、騎士の目を潰して回っている。
 こうして二人の活躍により敵戦力はほぼ壊滅。いよいよこの戦いにも終わりが見えたのだった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツ』

POW   :    ブラッドスピットナイツ……ソノ栄光ハ永遠ナリ!
自身の【五つある脳の一つ 】を代償に、【脳の深層に残る『過去』の呪い】を籠めた一撃を放つ。自分にとって五つある脳の一つ を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    コノ騎獣コソ、ワレラガ最強ノ騎士団デアル証
自身の身長の2倍の【空を翔ける怪馬・スレイプニル 】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    ワレラ騎士団ノ全身全霊、ウケテミヨ!
【全方位へ全武装による一斉攻撃 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:FMI

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナギ・ヌドゥーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ついに最後の闇の騎士が倒れた。荒く呼気を継ぐショットが、味方の被害を確認する。
「――何人死んだ?」
「誰も……誰も死んでねぇよ、ショット! みんな生きてる、信じられねぇ!」
 怪我の大小度合いはあるものの、砦に配置されていた弓隊はもちろん、直接敵中へ乗り込んだ決死隊も、ショット自身を含め死傷者は誰もいなかったのだ。
「そうか……驚いたな」
 思わず本音が漏れる。この戦いは今までで一番辛いものだった。だからてっきり自分達くらいは全滅を覚悟していたのだが――それもこれも猟兵達の奮戦のおかげだろう。
「やったぜ! これでオレら、家族のところへ帰れ――ッ!?」
 安心の余りか、大声を出して喜びかけた戦士の一人が、やにわに青ざめて動きを止める。
 その視線は森の奥へ注がれていた。
 何かが来る。どうしようもない恐怖と絶望の気配を、感じ取ってしまったのである。
「勝ッタ気ニナルノハ、遅イゾ……屑共メラガ」
 果たして、闇から染み出すように、けれど圧倒的威風を伴って現れ出でたのは――ブラッドスピットナイツと呼ばれる、いくつもの死体がより合わさったかのような騎士の異形。
「騎士ヲ倒シタ? 甘イナ……マダココニ、全員残ッテイルトイウノニ」
 かつて、ヴァンパイア領主に刃向かい無惨にも敗北した名うての騎士団。その屍が一つの塊となり復活。
 無念を抱える彼らの魂は領主によって容赦なく闇へ堕とされ、今やその眷属として反逆者達へ死を与える存在と化したものだ。
 そいつらが――否、そいつが握った剣が、槍が、斧がぎちぎちと震える。さながら獲物を喰らう機会を待ちかねるように。
 死してもなお、騎士として主の敵を討つ闘争心と忠義心のみは、濁りきったいびつな形で残っているのだ。
「ヴァンパイア様ノ敵……女モ子供モ皆殺シダ! ココデ死ニ絶エ、朽チテイケ!」

 五つもの脳を備えるブラッドスピットナイツは、その全てを潰さない限り倒す事はできない。屈強な盾と鎧に守られた、異形の身体のどこかにある脳を探り当て、破壊しよう。
 めんどくさければ範囲攻撃とかで全身粉々にしてやってもいい。ちなみにショット達は砦の守りに注力するため、今回は戦いには参加しないぞ。
 敵はまさに一つの騎士団の集合体。これを撃滅し、今度こそ人類砦へ今いっときの安寧をもたらすのだ――!
シキ・ジルモント
◆SPD
全く諦めの悪い…まだ休むには早いようだ
砦の守りはショット達に任せた
その代わりあの敵は俺達で対処する

敵が空を飛ぶなら、こちらは射程距離の長さを活かして対抗しよう
剣や斧で攻撃するなら離れたままではいないだろう、接近してくるタイミングで射撃で反撃する
射撃のたびに狙う部位を変え、何度も繰り返す

狙いが定まらないわけではなく、射撃に対する反応を確認する為だ
特に堅く守ろうとする部位に弱点の脳があると予想している
脳の場所を絞り込み、そこを狙ってユーベルコードで狙撃する(『スナイパー』)
敵の攻撃の瞬間にカウンターを仕掛けるか、味方の攻撃で怯んだ瞬間を狙う

この場で滅びるのはあの騎士だけだ
誰も殺させはしない


灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
この騎士も、もしかしたら『闇の救済者』に
なり得たかもしれないんだよね
同情は覚えるけど、こうなってしまったからには
ただ存分に殺し合おうか

梓と一緒に焔の背に乗り空へ
そこから試しに馬に向けてナイフを投擲
怪馬が傷を負えば騎士もダメージを受ける…
こいつらは一蓮托生、死なば諸共ってやつらしいね

梓の言葉を聞いて、Duoを構え敵に向かってジャンプ
UC発動、更に2回攻撃で馬を集中的に攻撃
頭、首、脚など狙って斬り刻んでいく
その間、騎士に向けて複数のナイフを念動力で放ち牽制
ジャンプして攻撃しては焔の背に戻るという
ヒットアンドアウェイ戦法
弱ってきたらEmperorに持ち替え
力溜め一気に薙ぎ払う


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
複数の死体を一つにするだなんて
相変わらず吸血鬼どもの趣味は最悪だな

スレイプニル…神話に出てくる空飛ぶ馬か
そっちが空を翔けるならこっちも同じ土俵に上がるまで
ドラゴンの焔を成竜に変身させ
綾と共にその背に乗り空中戦を仕掛ける

なるほど、固い鎧や盾に覆われた本体を
相手にするよりも話が早いな
綾!ちゃんとキャッチしてやるから
好きなだけ飛んで暴れてこい!
攻撃し終えた綾の落下地点に先回りして
焔の背で受け止める、を繰り返す
こちらもUC発動、威力を増した焔のブレスを浴びせ
更に炎の継続ダメージを与えていく
弱ってきたら一気に畳み掛けるぞ
弱点の脳が何処にあるかなんて分からん
なら全て燃やし尽くせ焔!



「全く諦めの悪い……まだ休むには早いようだ」
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)はややまぶたを落とし、小さく嘆息する。
 無数の騎士を撃ち倒し、一息つけるかと思った矢先にまた騎士。それも屍が塊となった一人なのか多数なのか分からない相手である。
 だが、とすぐに目を開く。あれが敵の親玉なら、奴を倒せばこの仕事も片付く。
「砦の守りはそっちに任せた。その代わりあの敵は俺達で対処する」
「気をつけろよ」
 ショットの言葉少なな忠告を受け、ハンドガン・シロガネを携えたシキは、前線へと走り始める。
 この場で滅びるのはあの騎士だけだ。今背にしている誰をも、決して殺させはしない――。

「殺ス! 殺ス! 我ハ! 我ラハ騎士ノ中ノ騎士ナリ!」
 荒ぶるブラッドスピットナイツを前に、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は口をへの字に曲げ、不快感を示す。
「複数の死体を一つにするだなんて、相変わらず吸血鬼どもの趣味は最悪だな」
 騎士のなれの果てへではなく、裏でそう仕向けたヴァンパイアに対してだ。
「この騎士も、もしかしたら『闇の救済者』になり得たかもしれないんだよね」
 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)の呟きに、梓も頷く。
「死ぬ前にショット達の仲間になってくれてりゃ、心強かったろうけどよ……」
「同情は覚えるけど、こうなってしまったからには――ただ存分に殺し合おうか」
 後腐れなく楽にしてやろうと、綾が微笑み。――それが開戦の合図。
 屍の騎士がひときわ叫喚を上げた直後、闇の凝る雲の切れ間より身の毛もよだつようないななきを伴って、巨大な怪馬・スレイプニルが駆け下りてくる。
「スレイプニルトハ人馬一体! 我ガ流麗ナル手綱サバキヲ御覧ジロ!」
 騎士は鈍重そうな図体に反したひらりとした身のこなしでスレイプニルへ飛び乗るや、そのまま勢いよく天へ駆けあがっていくではないか。
「スレイプニル……神話に出てくる空飛ぶ馬か!」
 というより走っている。あのスピードで空から強襲を受けようものなら、ひとたまりもないに違いない。
「そっちが空を翔けるならこっちも同じ土俵に上がるまでだぜ――焔!」
 梓の声を受け、その肩口にちょこんと乗っていた赤い小さな竜【焔】が、キューと鳴き声を上げてぱたぱたと飛び立つ。
 そうして凄まじい炎を全身から巻き上げるように発し、それが吹き去った後には、見るも立派な体躯の成竜へと変身を果たしていたのである。
「それじゃ、空中戦といこうかな」
 綾と梓がそれぞれ焔の背へ乗り込み、赤竜は羽ばたきとともに急上昇。
 じっとりと暗い空の下。恐るべき怪馬に騎乗したブラッドスピットナイツと、同じ高度を得たのである――。
「オノレ小癪ナ! ナラバイザ、決着ヲ――ッ!?」
 敵の言葉を最後まで待たず、接近した焔の背より、中腰になって構えた綾がナイフを放つ。
 投擲されたナイフの標的は、ブラッドスピットナイツ――ではなく、騎乗しているスレイプニル。
 狙い過たず、スレイプニルの胴体にナイフが突き刺さる。とっさに騎士が手綱を引いて後退したため浅いが、それでも。
「グオォォォォォッ!」
 痛がるスレイプニルと同様に、騎士もまたうなり声を上げ、胴体らしき部位から黒い血を噴き出す。綾がわずかに口の端を曲げた。
「こいつらは一蓮托生、死なば諸共ってやつらしいね。怪馬が傷を負えば、騎士もダメージを受ける……」
「なるほど、固い鎧や盾に覆われた本体を相手にするよりも話が早いな……!」
 ほんの牽制の一発だったが、有効打となる一手は見えた。
 今度はスレイプニルごと体当たりするように、すかさず肉薄して来た騎士が大剣を振り下ろして来る。
 焔はすんでのところで旋回して避けるが、相手の動きは早く鋭く、そう何度も回避できそうにない。
 現状は敵の背後を取っている格好だ。それなら、と梓が焔の首にしがみつきながら、腕を振って敵を指差す。
「綾! ちゃんとキャッチしてやるから好きなだけ飛んで暴れてこい!」
「りょーかい」
 その隙を突いて、Duoを構えた綾が焔を足場に、思い切り蹴って跳躍。
 高度数十メートルの高さから、さらに数メートルの距離を置いた大ジャンプ。
 しくじれば墜落は必至。しかれども、綾はしっかり敵の位置を見据え、ちょうどスレイプニルの尻部分の上へ着地してのけた。
 同時にUC【キリング・ヘカトンケイル】を発動。身体の何処かにある紅い蝶の跡を輝かせながら、二刀流で握った大鎌を矢継ぎ早に叩き込む。
 降り注ぐ無数の斬撃は全て騎士を無視し、奴が跨るスレイプニルをめがけたもの。瞬く間に怪馬は多くの裂傷を負い、そのダメージは騎士をも苦しめる。
「図ニ……乗ルナ!」
 騎士の上部に引っ付いた異形の両腕が、手斧を振り回して来た。その関節はすでにして人体の構造を無視し、さらには腕の先にも別の手が武器を握っていたりと、変幻自在の技である。
 けれども、綾はスレイプニルを攻撃中に念動力でコート内から複数のナイフを引き出し、それを反対側から打ち出す事で、敵の反撃を妨害していた。
 前からは宙を飛び回るいくつものナイフ。背中ではせっせと馬を斬りまくる綾。ブラッドスピットナイツはその手数でもって守りを固めようとするものの、綾の対応力の方がわずかに勝る。
「これくらいだね……よっと!」
 いよいよ自身まで敵の攻撃が迫って来たと見るや否や、綾はこれまた予備動作なく馬腹を蹴り、何もない空中へ身を投げ出す。
 下方には焔が先回りしており、中空でくるりと宙返りする綾を、そのたくましい背中でしっかり受け止めて見せたのだった。
 このヒットアンドアウェイ戦法なら、優位に戦えるはず――空でのデッドヒートを制した焔が、再びスレイプニルへ近づき、先ほどと同じように綾が飛び乗ろうとする。
 その矢先、馬上の騎士が複数の長槍を突き出して来た。
 しかも狙いは綾ではなく、焔――いきなりの事に回避が遅れ、穂先が今しも突き刺さり。
 ――途端、地上から放たれた銃弾が、迫りくる槍を弾き飛ばした!
「ナンダ!?」
 ぎょっとしたように騎士が下を見れば、そこには銃を構えたシキが、静かに狙いをつけているところだった。
「空中戦に夢中になりすぎたな……そこは俺の射程圏内だ」
 躊躇なく引き金が叩かれ、銃声とともに弾丸が次々と発射される。シャープな軌道を描く対空射撃は騎士にそれ以上の攻撃を許さず、焔はその間に一度間合いを離す事に成功していた。
 続けざまに弾丸を撃ち込んで騎士を怯ませるが、スレイプニルは怒り狂ったみたいに、猛然とシキの方へ突っ込んでくる!
 地面をぶち抜き、クレーターを作り出すほどの突進。当たれば命はないその一撃を、シキは横っ飛びに転がりながら躱し、ただちに射撃体勢を整えて応射。
 腕、胴体、足――射撃の度に狙う部位を変えるが、そのほとんどは強靭な騎士の鎧や盾に防がれてしまう。
「ドコヲ狙ッテイル! 愚カナ!」
 騎士の嘲笑を受けるが、それは違う。別段狙いが定まらなかったり、適当に撃っているわけではない。
 シキが見ていたのは銃撃に対する騎士の反応だ。奴の弱点は脳。であれば、特に重点的に守ろうとする部位にこそ、それは隠されているのではないのか。
(「このまま撃ち続け、絞り込み――そして撃ち抜く……!」)
 とはいえ、敵の足を止められるような攻撃ができているわけではない。多少の銃撃すらものともせず、ブラッドスピットナイツが切迫する――。
 途端、上方から激しい火炎吐息が降り注ぎ、敵を呑み込む。
 シキの危機を見て取り、素早く滑空して来た焔が浴びせたブレスだった。
 まともに受けた騎士とスレイプニルは、言葉にならぬ絶叫を上げてのたうち回る。
 その時、シキは見た。これでもかとぶち込まれるブレスから、騎士が頭部の一つを盾でかばっている瞬間を。
 くしくも、それはシキが絞り込みつつあった部位と一致している――。
 ブルズアイ・エイム――銃を両手で構え、呼気を整えたシキが、精密な一射を放つ。
 叩き出された弾丸が、迷いなく騎士の頭部へ吸い込まれる。それも炎によって脆くなっていた箇所を正確にぶち抜き、内部に守られていた頭蓋を食い進む。
 そしてさらにその奥に隠されていた脳を、見事貫いた――!
「ギャアアアァァァァッ!」
 騎士が金切り声を張り上げる。苦痛のせいか身悶え、完全に無防備だ。
「今だ! 畳みかけるぞ!」
 梓のかけ声を受けて、焔が一層猛烈なブレスを食らわせる。
 綾もまた、Emperorに持ち替えて敵へ飛びかかった。
 騎士と怪馬は身体のあちこちが炎上しており、狂ったように振り回される大量の武器。けれどそれらをすいすいとかいくぐり、懐へ飛び込むや、腰溜めに構えた姿勢から、渾身の横薙ぎを叩きつける。
 ブラッドスピットナイツの巨体が、スレイプニルから離れた。
 これまでに蓄積されたダメージ。そして今度の綾の強烈な一撃を受け、ついに手綱を手放したのだ……!
「俺には弱点の脳が何処にあるかなんて分からん。――なら全て燃やし尽くせ焔!」
 梓の闘志に呼応し、一旦高空まで上昇した焔がすぐ真下へ急降下。十分な飛翔スピードを乗せた砲弾のような火炎を放射し、倒れ込む敵を外から内部から、思うさま焼いたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガルディエ・ワールレイド
醜悪だな。その姿そのものが醜悪なのではない。
騎士達を、そのような姿に変えた吸血鬼の所業が醜悪なのだ。
……なんてことを、今のテメェに言ってもわからねぇか。
だが、かつてのお前達の為にも此処で討ち果たす!

◆戦闘
敵の体勢を崩して【竜神気・禍】を決める事を方針とするぜ
その時に敵を追い込んでUCを誘えていれば、特に理想的と言ったところだ
(発動の代償として捧げられる直前の脳こそが、より致命的な箇所に該当するという判断)
武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流
《見切り/武器受け》による受け流しや弾き返しで防御
斬り合う時には武器から魔力の《衝撃波》を発生させる
《念動力》で足元を妨害。



「――醜悪だな」
 ジレイザとレギアを握ったガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)は、ブラッドスピットナイツを前に、短くそう言い放った。
「ナニヲ抜カス! 主ニ賜ッタコノ身体ヲ、言ウニ事欠イテ醜イナドト!」
 案の定、屍塊の騎士は殺気立ち、憤然とわめく。けれどもガルディエは静かにかぶりを振って。
「その姿そのものが醜悪なのではない。……お前達を、そのような姿に変えた吸血鬼の所業が醜悪なのだ」
「オノレ! 主ヲ侮辱スルカ! 無間地獄ヘ落トシテクレル!」
 地獄にいるのは果たしてどちらなのか。ガルディエは改めて得物を構え直し、切っ先を哀れな敵へとかざす。
「……なんてことを、今のテメェに言ってもわからねぇか。だが、かつてのお前達の為にも此処で討ち果たす!」
 ガルディエが踏み出した直後だった。
 怒り狂う騎士が、突如として凄まじい圧迫感を放ちながら、闇の魔力に包まれる。
 そうして頭上へ大きく振りかぶった大剣へと、濃密な魔力が収束したかと思えば、次の刹那。
 力強く振り下ろされた大剣から獣の咆哮めいた轟音を伴い、巨大な衝撃波が生成。
 それが激烈な速度と勢いでもって、ガルディエに突撃してくるではないか。
 避ける暇はない。反射的にジレイザとレギアを胸の前で交差し、腰を落として防御姿勢を取る。
 果たして、激突してきた衝撃波の威力は桁違いのものがあった。それこそ、先ほど戦った闇の騎士達の突進をも上回っていたであろう。
「……けどよ、耐えたぜ!」
 身体が数メートル後退させられ、両肩から腕までがしびれ、ひやりとしたものを感じさせられたが、ガルディエはその大技を受け切った。
 正確には、受ける間際に己から飛びのく事で、衝撃力そのものを半減させてのけたのである。
 見れば、ブラッドスピットナイツは苦しむようにのけぞり、背中のあたりから大量出血していた。
 恐らく奴は、自身の脳の一つを代償に、深層に残る『過去』の呪いを籠めた一撃を放ったのだ――。
 ともあれ、猛攻をしのいだ事で敵の体勢は大きく崩れている。この機を逃すまいと、ガルディエは四肢に残るしびれや痛みを無視し、如才なく距離を詰めていく。
「ゴアァァァァアアァァッ!」
 ブラッドスピットナイツは聞くに堪えない絶叫を迸らせ、なおも無数の腕が持つ武器をぶん回し、ガルディエを引き裂かんとしてくる。
 ガルディエは落ち着いて取り回しのきくレギアで受け、隙を突いてジレイザで攻め立てる。前から横から斬撃と刺突を織り交ぜ、敵のさらなる苛立ちを誘うのだ。
 やがてブラッドスピットナイツはじれたみたいに、多くの武器をひとまとめに握り込んだ上で、真っ向から唐竹割りに、ガルディエへ叩きつけて来た。
「……甘ェ!」
 寸時、ガルディエは虚空へ向けて得物を振るう。空を切ったジレイザとレギアからは魔力の籠った衝撃波がぶっ放され、先の先を取る格好で敵に十字の傷を刻み込んだ。
 噴水の如く腐った血液をまき散らすブラッドスピットナイツ。だというのに怯む事なく、捨て身の体当たりでガルディエを押し潰そうとする。
「本当に大した執念じゃねぇか……だが!」
 今度はその出足へ対して念動力を浴びせ、敵のバランスを数秒崩させる。その間だけは全ての武器はあらぬ方向へ泳ぎ、反撃もできない状態だ。
 そこへ再び、念動力を叩きつける。
 けれども、今度のそれは【竜神気・禍】――敵の内部深くへ染み込み、致命的な箇所に対して大きなダメージを与える必殺の一撃だ。
 この場合、致命的な箇所へ該当するのは、無論。
「グワゥゥアァァァァァッ!!」
 ブラッドスピットナイツが身体をくの字に折る。その肉体と頑強な甲冑の奥に守られていた脳の一つが、見えざる竜の爪牙により圧壊せしめられたのだ――。
 最初の超衝撃波。そして今の【竜神気・禍】。脳を一気に二つ、いただいた。
 なのに、ブラッドスピットナイツはもがき苦しみながらも、いまだ暴れ狂い続けている。
 早く、終わらせてやらなければ……ガルディエはジレイザとレギアを手に、屍塊騎士とのさらなる熾烈な闘争に身を投じていく――。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリウム・ウォーグレイヴ
【陽氷】

深い闇の気配を前に、足が一歩退きそうになる。
それでも守るべき人々の存在が、隣にいる友人からの言葉が。薄弱な意思に熱を帯び、後ろへ下がる事を赦さない。
ありがとう、貴方の言葉で自分を見失わずにすみました。

藏重さんを『かばう』ように、『属性攻撃』ホワイトマーチにて接近戦を挑みます。『呪詛耐性』があるとはいえ慢心はしません。
藏重さんと合わせるように動き、敵からの攻撃を『見切り』、『武器受け』し、又は『第六感』も総動員し、何としてでも『全力魔法』を使用してでもその時を作ります。
敵の鎧が、体が凍り付き、動きを止めるその時を、その一瞬の隙をなんとしても。

私達の希望は、その灯は、誰にも奪わせません!


藏重・力子
【陽氷】

「我は決して諦めぬ。お主等が何度でも来るなら、何度でも受けて立とう」
斯様な時こそ微笑んで、隣に目をやろう。「さて行くか、アリウム殿!」
共に戦うのは初めてではない。君という御仁の何と心強いことか!
薙刀を構え、いざ参ろうぞ!

【先制攻撃】で『巫覡載霊の舞』を発動!敵に斬り込み【なぎ払い】だ
敵の攻撃は【武器受け】。喰らった分はUCの効果と【激痛耐性】で堪えるぞ
「これしきの事で、世の理を……昇れる日を、止められると思うな!」
アリウム殿がくれた好機を無駄にはせぬ!間髪を容れず炎の【属性攻撃】に加えて【破魔】の気を込めた【衝撃波】を、全力で敵に叩き込む!

我等の力を、輝きを、その目にしかと焼き付けよ!



 眼前のそれは数多の屍をつぎはぎして組み合わせ、一つの怪物として作り上げられたなれの果て、ブラッドスピットナイツ。
 正義のために戦い続けた騎士達の迎えし、残酷な末路が一つである。
 ならば、自分もそうならないとは誰にも言えない。それこそ、もっと悲惨な結末を辿る可能性だって――。
 恐怖はある。もちろんある。だからアリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)は、その深い闇の気配を前に、知らず足が一歩退きそうになっていた。
 するとその時、傍らに――頭一つ分低くも、けれど力強い気配を纏う仲間が立つ。
「我は決して諦めぬ。お主等が何度でも来るなら、何度でも受けて立とう」
 藏重・力子(里の箱入りお狐さん・f05257)だ。途方もない暗黒の気配を感じていないはずがないというのに、相対するその立ち姿に、畏れは見られない。
 力子は微笑み、アリウムへ目線を移す。平時と変わらぬはきはきとした口調で、そのまま言葉を紡ぎ出す。
「さて行くか、アリウム殿!」
 ――どんな信念を掲げようと、怖いものは怖い。
 それでも守るべき人々の存在が。隣にいる友人からの言葉が。
「……はい……!」
 闇に呑まれかけて湿り、凍てつきかけた胸に一筋の灯を呼び起こす。そこから巡る血流がこの身を奮い立たせる。
 確かな熱を帯びる、薄弱な意思。ぽかぽかとした優しい暖かさが、アリウムに後ろへ下がる事を赦さない。
「ありがとう、藏重さん。貴方の言葉で自分を見失わずにすみました」
「なに、共に戦うのは初めてではない。むしろ我こそ礼を言いたい、君という御仁の何と心強いことか!」
 こんな力子でも、困難に対して不安を覚える事はあるのだ。だけど、アリウムならそれを支える事ができる――その思いが、さらに強くアリウムの中の炎を吹き上がらせる。
「ギョボアァァァァッ!! 忌々シイィ! 貴様ラモ、貴様ラガ守ル砦モ! 全テ踏ミ潰シテクレル!」
 ブラッドスピットナイツが吠えた。さあ、戦闘開始だ。
「我が魔力を代償に自らの冬を呼び起こせ!」
 氷華を掲げたアリウムが、魔力を注ぎ込みさらなる冷気を細剣へ宿らせる。はらはらと舞う雪めいた結晶が、かすかな空の光を受けて光る。
「いざ参ろうぞ!」
 力子も神霊体に変身。煌めく火の粉のような神気を発し、薙刀片手に突っかける。
 アリウムと並び、気勢を上げて斬り込んだ。
 するとブラッドスピットナイツは全身に備えた武器を振り回し、二人を迎撃せんとする。
 一見しててんでばらばらの無軌道な剣筋を描くそれらは、けれど実際には精密に計算しつくされた、敵を効率よく追い詰め抹殺する熟練の技。
「私が前へ出ます!」
 瞬時にその危険性を見て取ったアリウムが先行し、力子の盾となるべく氷華をかざして守りの構えを取る。
 アリウムめがけて多数の得物が打ち込まれた。視界を埋める刃の群れ。反射的に打ち返したくなってしまうが、努めて心を落ち着かせながら剣で受け止め、敵の動きを観察する。
 やはり手数が違う。武器による激烈な波状攻撃。しかもその一つ一つはフェイクと言ってもいい程で、時に本命らしき一回りとてつもない威力の一撃が、アリウムの身を襲うのだ。
(「重い……それに速い!」)
 氷華を強化していても、氷の魔力が浸透する前に弾かれてしまう。
 どうにかわずかな間隙を見切って走り出し、暴風のような連撃から逃れる。
 そうしながら敵の周囲を駆けて注意を引き付け、力子が攻める機会を作り出す――。
 されども、アリウムの動きに合わせて側面へ回っていた力子もまた、敵の乱舞攻撃に捕捉され、この上なく押されていた。
「やはり……やる!」
 薙刀を操り致命傷は避けているものの、豪速で吹き荒れる武器の嵐に足を止めざるを得ない。
 アリウムと力子の連携は、これが初めてではない。同じ戦場を駆け、並み居る強敵を相手にその戦術は確かに洗練され続けているのだ。
 だというのに、信じがたい事にブラッドスピットナイツは右半身だけでアリウムを、そして左半身だけで力子を、それぞれあしらっているような状態なのである。
 奴は強い。ならば――とこちらも賭けに出るべく、アリウムが特攻した。
 残る全魔力を噴出させ、弾丸よろしくブラッドスピットナイツへ肉薄する。
 言うなれば玉砕覚悟の凄絶さに、敵もまた武装のほとんどを用い、歩を進めるアリウムへ振り下ろす。
 氷のオーラを宿すアリウムに、数多の刃が叩き込まれ――それらが肌に触れるかろうじて寸前で、ぴたりと止まる。
「ナニッ……!?」
 技術が勝ったか、覚悟の差か、あるいは仲間への信頼が運を引き寄せたか。
 先んじて届いた氷華の切っ先が、ほんの少しだけ敵の体表をえぐっていた。
 かと思えばその部分を中心に、みるみる分厚い氷が広がって、ブラッドスピットナイツの身の半分以上を凍り付かせていくではないか。
「私達の希望は、その灯は、誰にも奪わせません!」
 ほんのちょっぴり。敵に隙が、生まれた。
 その数瞬を逃せば、たちまちアリウムは体勢を立て直した敵に切り刻まれる。
 だから力子は、薙刀を下段に構え、アリウムとは反対側から突入した。
 これも負けず劣らず、防御を捨てた攻めの姿勢。
 ブラッドスピットナイツの、まだ凍り付いていない数本の武器が、力子を左右から挟みこむように襲来する。力子は足を止めず、薙刀でそれらに対応する。
 右から来る剣を打ち返し、左から来る槍を身を低めてやり過ごす。すると正面から、成人男性の背丈ほどもある巨大な斧が振り下ろされて来た。
 禍々しく不吉な闇の魔力を発する異常な武装。同時に騎士の身体のどこかが破裂し、脳漿が飛び散る。
 間違いない。これは脳を一つ犠牲にした、奴の切り札――。
 とっさに薙刀をかざし、全霊を込めて受け止める。ずしん、と大穴に叩き落されるような衝撃が駆け抜けるが、力子は歯を食い締めてこらえ、着実に足を進めた。
「これしきの――事で! 世の理を……昇れる日を、止められると思うな!」
「来ルナ……来ルナァァァアッ!」
 ヒステリックに叫ぶブラッドスピットナイツをよそに、力子は力任せに巨斧を真横へ押しのける。
 視界が開けた。もう奴が振るえる武器はない。アリウムの声が聞こえる。
「――藏重さん! 決めて下さい!」
「応!」
(「アリウム殿がくれた好機を、無駄にはせぬ! いざ、この身を振り絞った全力で!」)
 流れる動作で薙刀を再び下段に構え、踏み出しながら思い切り斬り上げる。
 まっすぐな軌跡からあふれ出したのは――この世界にはまだ、似つかわしくないほどに鮮烈な赤い炎。
「我等の力を、輝きを、その目にしかと焼き付けよ!」
 炎の内側に宿る破魔の気が奔流となって輝き、そうして放たれた一陣の衝撃波が、ブラッドスピットナイツを撃ち抜く……!
「ガ……ァ! 眩……シイ……! コレ、ハ……ワレラ、ガ……失ったはずの、光……」
 かつてその胸にまばゆき灯を抱いていたはずの存在は、まるで地平から昇る太陽のような炎の中で、塵へと還っていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『温泉でのんびりしよう』

POW   :    心行くまで温まる

SPD   :    全身の力を抜いてまったりと

WIZ   :    他者と交流、スキンシップする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ブラッドスピットナイツは猟兵達との激闘の末に撃破され、人類砦には一時の安息が戻った。
 人々は自分や大切な人の命が無事である事に安堵し、それから口々に猟兵達へ感謝の言葉を伝えた。
「まぁ、おかげで命拾いした。俺も、みんなも。大した礼はできないが、この近くに温泉がある。よかったらそこで休息をとっていって欲しい」
 代表のショットが言うところでは、人類砦の裏手には小高い山があって、そこを少し登った先に温泉が湧いているという。
 それも無味無臭、無色透明で癖がなく、疲労回復、怪我の治癒、血行促進、高血圧に動脈硬化、神経痛、冷え性、なんとなくポジティヴになるなど、色々と万能な効能のある秘湯と呼んで差し支えない場所らしい。存分にあったまっていこう。
 村の戦士達も訓練の後や、女衆も疲れた時にはここを利用しているのだそうだ。時間を合わせれば、彼ら彼女らと一緒に入る事もできるぞ。
 他には近隣に生息する動物達――サルやカピバラ、クマなどもよく入っているという。
 人間には興味がなく温泉に集中しているので、喧嘩を吹っ掛けなければ至極無害だ。せっかくなので混浴を楽しむのもいいだろう。
「それから、できれば温泉で汗を流す前に、砦の補修を手伝ってもらえると助かる」
 ショット達の砦を石造に改良するため、石材を運ぶのを手伝ってあげよう。
 重いし、倉庫から砦の壁まで結構な距離を何度も往復するし、運搬用の荷車ももっぱら砦の人間が使うし数も限られているため、アイテムやユーベルコードを駆使するのがいいかもしれないのだ。
 めんどくさければもちろん温泉だけに入ってても構わない。好きにしていい。自分なりのやり方で疲れを癒したり交流とかしてみよう。
藏重・力子
【陽氷】

なんと、温泉とな!【気合い】で、もう一頑張りである!
我は力の子!【怪力】を存分に活かし石を運んで手助けするぞ
「おお、アリウム殿!こちらこそ感謝である!
激戦で消耗しておらぬか?そうだ、君が先に一風呂浴びて来ると良い!
我は一人、後で入る!戻ったら知らせてくれ!ごゆっくり!」

……戦ったばかりの体中に湯が沁みるな
肌の白さで生傷が目立ち、体質なのか打ち身の痕や痣ができやすい
おまけに我は治癒の術を使えぬ。その分、治りは早いのだがな。人に見せられたものではない
「アリウム殿は大丈夫であろうか。我が身を顧みぬ一面があるようだが」
命があれば温泉にも入れる。これからも皆と、我が友と、明日を繋げて生きてゆこう


アリウム・ウォーグレイヴ
【陽氷】

お気遣いに感謝を、藏重さん。
ではお言葉に甘えてお先に入らせていただきますね。
とはいえ自分より年下の女の子を置いて温泉に入る申し訳なさがあります。
ホワイトナイト、私の代わりに藏重さんや村人の手伝いをお願いします。
石材を軽々運ぶ姿を横目で見やりつつ……。
藏重さんは私以上に大丈夫そうですね。
細かな傷はありますが、大きな怪我もなく静かに安堵します。

ご厚意に甘え、静かに湯に入る。
義務とはいえ私の命を懸ける理由が、仕えるべき主がそこにありました。
温泉に浸かるショットさん村人達や、思い返すは年下には思えない器の大きい友人の笑顔。
まだまだ小さいかもしれないこの希望の灯を、絶やさぬよう紡いでいきたい。



 温泉の話を聞いた藏重・力子(里の箱入りお狐さん・f05257)は瞳を輝かせた。
「なんと、温泉とな! ならばもう一頑張りである!」
 結構な死地をくぐり抜けて来た上で、ろくに休む間もなくさらなる肉体労働。並みの者なら音を上げるところだが、どっこい力子は力の子。その名前は伊達ではない。
 砦で鍛えた戦士達でも四苦八苦する石のブロックを、ふんぬと気合一つで抱え上げて見せ、そのすごいパワーでもって長い距離をすいすいと往復し始める。
「藏重さん、先ほどはご協力ありがとうございました」
 そこにアリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)も後ろから合流。
 同じように石材を運んでいる途中だが、力子が両脇にそれぞれいくつも石を抱え、おまけに頭や(狐耳で挟み込んでバランス取ってる感じ)肩にまでどっしりと乗せた珍妙な姿にちょっと面食らう。
「おお、アリウム殿! こちらこそ感謝である!」
 力子がくるりと振り返った拍子に頭や肩の石がぐらっと揺れるが、そこは軽業師も顔負けのバランス感覚ですぐに安定させている。驚きとともにアリウムは小さく吹き出した。
「激戦で消耗しておらぬか? ――そうだ、君が先に一風呂浴びて来ると良い!」
「良いのですか? 藏重さんは……」
「我は一人、後で入る! 戻ったら知らせてくれ! ごゆっくり!」
 普段のアリウムならもう少し遠慮する場面だったが、何分すごい勢いで勧めてくる力子に、これまた思わず微笑して頷いてしまう。
「お気遣いに感謝を、藏重さん。ではお言葉に甘えてお先に入らせていただきますね」
 とはいえ、自分より年下の女の子を置いて一足先に失礼するのは、男としても騎士としても申し訳なさが否めない。
 せめてもという事で、アリウムはホワイトナイトを召喚。自分の代わりに作業を任せ、その場を後にする。
「ホワイトナイト殿、大した力持ちぶりであるな! これは我も負けてられぬ!」
 立ち去り際に横目で見れば、黙々と石を運ぶホワイトナイトに、力子も並んでとことこと歩きながら屈託なく話しかけている。
 和やかな情景に、一抹の懸念もたやすく吹き消された。
「……藏重さんは私以上に大丈夫そうですね」
 服は泥やら何やらで汚れてしまっているし、ぱっと見細かな傷はあるようだが、大きな怪我はなさそうで静かに胸をなでおろす。
 村人に聞いた山へ向かい、お待ちかねの温泉に辿り着くと、鎧や胴着を外してそっと湯に入る。
 温度は熱すぎずぬるすぎず、ちょうど良い湯加減だ。温泉自体も広く、湯気を隔てたそこかしこに村人達の姿もあり、談笑している声が響いている。
 ショットはまだ、砦の方で働いているようだ――何気なく夜空を見上げれば、不意に感傷に似た気持ちと、決意のような感情がともに沸き上がって来た。
 義務とはいえアリウムの命を懸ける理由が、仕えるべき主がそこにある。
 目の前にいる砦の人々や、思い返すは年下には思えない器の大きい友人の笑顔。
「まだまだ小さいかもしれないこの希望の灯を、絶やさぬよう紡いでいかなくては……」
 自然と唇からこぼれた言葉は湯気と一緒に虚空へ舞い上がり、音もなく消えていった。

 アリウムが温泉から上がってしばらく、入れ替わりに力子もやってきた。
「これは見事であるな! 作業中に聞いた話によれば美肌効果もあるというし、これでより完璧なクールビューティーへ近づけるというもの!」
 ぱぱっと衣装を脱いで丁寧に畳み、薙刀を岩陰へ立てかけていざ入浴。
 程よい加減の湯は、いまだ戦闘後の高揚感がくすぶる身体を優しく包み、取り込まれるみたいに肩まで浸かって一息入れる。
「……戦ったばかりの体中に湯が沁みるな」
 なまぬるい感触の中に、ちくちくとしたトゲのような痛みが混じる。肌の白さで生傷が目立ち、体質なのか打ち身の痕や痣ができやすいゆえに、こうした痛痒はもう慣れっこだ。
 おまけに力子は治癒の術が使えない。その分、治りは早いのだが――とても人に見せられたものではなかった。
 とか思っていると、湯気の奥には温泉を堪能しようと集まって来たサルやらカピバラやらクマやらが浸かり、珍しいところでは暇そうなキツネなんかも混じっている。
 こういう動物達になら見られてもなんともない。力子は機嫌よく楽しみつつも、ふと友人の事が脳裏をよぎった。
「アリウム殿は大丈夫であろうか。我が身を顧みぬ一面があるようだが……」
 自分も大概な気はするが、やはり気になるものは仕方ない。
 ともあれ、命があれば温泉にも入れる。おいしいものだって食べられるし、そのままゆっくりおやすみできる。
 これからも皆と、我が友と、明日を繋げて生きてゆこう――先ほどのアリウムと同じように空を見上げる力子の頭上には、うっすらと星が瞬いて見えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シキ・ジルモント
ショット達や砦内の様子を見て、犠牲が出なかった事にひとまず安堵
しかし壁の工事は急いだほうがよさそうだ
砦の改良を少しでも早く完了させる為、進んで手を貸す

石材の運搬なら宇宙バイクを利用して手伝う
車体に石材をまとめて繋いでユーベルコードを発動
バイクを飛行させて石材を吊るした状態で運ぶ
これなら荷車を借りなくても運搬は十分可能だ

運搬の後も必要であればそのまま手伝う
不要になった木の防壁の残骸も撤去しなければならないだろう
一度引き受けたからにはとことん協力する

それに、またいつ今回のような危険が迫るか分からない現状、このまま放ってはおけない
温泉はその後でゆっくり利用させてもらう
疲労回復の効果もあるらしいからな



 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)が確認した限り、今回打って出た砦の戦士達に犠牲者はおらず、また砦内も比較的落ち着いている様子だった。
 訓練されたショット達はともかく、女子供に老人の非戦闘員ばかりな砦の人々まで冷静さを保っているのはある意味意外だ。ショット達を信じていたのか、それともすぐそこまで迫る終わりに対して、悲壮な覚悟ができていたのか。
 いずれにしろ、ひとまずはどこも問題なさそうで安心である。しかしながら、あの砦の壁の工事は急いだ方が良いだろう。
「もしも次に襲撃を受けた時、あんな半端なままだったら、守り切れるとは限らないからな……」
 見上げた砦の壁の状態は相変わらず頼りなく、穴だらけのチーズを連想させる。これらの改修及び改良を少しでも早く完了させるため、シキは手を貸す事にした。
 用意したのは宇宙バイクだ。その車体にロープでくくりつけた石材をさらにまとめて繋ぎ、バイクに跨ってUC【ファイタージェットシステム】を発動。
「うおー、車が飛んでるぞ!」
「すげー」
 石材を縛るのを手伝ってくれた村人達が驚きに目を見開く中で、シキの乗ったバイクはみるみる宙へと浮き上がる。
 吊るした石材が人々の頭をクラッシュしないよう、安全な高度まで浮かび上がり、そこから作業現場を目指してバイクを進ませ始める。
「なるほど、これなら荷車がなくても運搬ができるというわけか」
 少し遠巻きに見ていたショットが呟きつつ、そのまま壁の方まで先行し、シキが降り立てそうなスペースまで誘導してくれる。
 シキもバイクのバランスをうまく取りつつ石材を運び続け、工事のペースは目に見えて上がっていった。
「他に何か手伝える事はあるか? 例えば……そこに積まれた残骸の撤去だ」
 ひと段落したシキが、砦の隅に積み上げられた大量の木材へ目を向ける。
 ショットが頷いた。
「――頼めるか? さっきよりも面倒な作業になるが」
「問題ない。一度引き受けたからにはとことん協力する」
 それに、またいつ今回のような危険が迫るか分からない現状、このまま放ってはおけない。せめて石壁の完成を確認しておくくらいは付き合ってもいいだろう。
「悪いな。せっかくの休める機会を……」
「温泉ならその後でゆっくり利用させてもらう」
 シキは肩をすくめて、少しだけ口角を上げた。
「疲労回復の効果もあるらしいからな……こう見えて楽しみにしている」
 それなら、期待して良い――そんな風にショットもまた、つられてにやりと笑うのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
戦うだけじゃなくてこういう支援も大事だよね
何かあったとしてもまた誰も死なずに済むようにね
と、快く補修の手伝いを引き受ける

歩いて往復すると疲れるし時間もかかるから
UCの飛翔能力を使って移動時間を短縮する
この姿あんまり好きじゃないけど
使えるものは使わないとね
この姿を砦の人達に突然見せたら
吃驚させちゃうかもしれないから先に断っておこう
ねぇ梓…君は自分では運ばないの?

終えたら温泉でくつろぐ
この世界にもこんな心休まる場所があったなんてねぇ
動物達も全然警戒してないし
よっぽど居心地が良いんだろうね
君自身は大して動いてないんだから汗かいてなくない?
なんて軽口を叩いてみたり


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
猟兵もいつでもすぐに
駆け付けられるわけじゃないからな
砦の守りがしっかりしていれば
敵襲にあっても長く持ち堪えられる
というわけで喜んで手伝う

少しでも人手は多い方が良いだろう
人…というかドラゴンだが
UCでドラゴンを最大数召喚
ドラゴンの背中に石材をくくりつけたり
布で包んで口に咥えさせたりして運ばせる
俺は焔の背に乗って上空から指示を出す
司令塔というやつだ
断じてサボっているわけではない

終えたら温泉へ
焔も入ってみるか?…流石に熱くて嫌か
一汗かいたあとの風呂は良いものだな
ここに地酒でもあれば雰囲気も出て最高だったんだが…
やかましい、常に気を張っているんだから汗くらいかく



「猟兵もいつでもすぐに駆け付けられるわけじゃないからな。砦の守りがしっかりしていれば、敵襲にあっても長く持ち堪えられるってもんだ」
 というわけで喜んで手伝うぜ――と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)が腕に力こぶを作って見せた。
「戦うだけじゃなくてこういう支援も大事だよね」
 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)もまた、忙しく立ち働く砦の人々を見まわし、手伝いを快く引き受ける。
「何かあったとしても、また誰も死なずに済むようにね」
「よし――集え、そして思うが侭に運べ!」
 少しでも人手は多い方が良いだろうと、UC【竜飛鳳舞】で呼び出したのはドラゴンの群れ。
 人というかドラゴンだが、細かい事は構わない。周りの人達は驚いているようだが、その分運搬能力に関してはお墨付きだ。
「ちょっと手を貸してくれないか? 大丈夫だ、噛み付いたりしないぜ」
 せっかくなので砦の人々にも協力してもらいつつ、ドラゴン達の背中へ石材をくくりつけたり、布で包んで口にくわえさせる。
 こんな時勢でも子供達は元気なのか、ドラゴンの姿を見て飛び跳ねたり興奮しているのが心温まる情景だ。
 梓が変身した焔の背へ乗って飛び立つと、召喚したドラゴン達もそれを追うようにして次々に上昇し、梓の出す指示に従いすいすいと作業現場へ向かっていく。
 そんな風に焔の背中であぐらを組む梓を見て、子供達が疑問の声を上げたものである。
「おーい、おっさん! あんたは働かないのー?」
「おっさん言うんじゃねぇ! これはアレだ、司令塔というやつだ。――断じてサボっているわけではない」
 うんうんと一人で納得させるように頷く梓。
 一方で綾もまた、石材運びに精を出していた。
「歩いて往復するとさすがに疲れるし、時間もかかるから……」
 ここはUC【オクスブラッド・エンペラー】を発動。紅い蝶の群れを纏い、蝙蝠めいた大きな黒い羽根を生やすと、重量感あふれる大量のブロックを軽々と抱え上げて飛翔した。
「この姿あんまり好きじゃないけど、使えるものは使わないとね」
 もちろん、今のヴァンパイアっぽい綾の姿を人々に突然見せたら、驚いたり混乱するのは目に見えている。
 よってあらかじめ作業員や周辺の民家には断っておいたが、その代わりやたらと若い女性が集まり、綾を見てうっとりしたり黄色い歓声を上げている。
「キャー綾サマ素敵ー!」
「砦を守ってくれてありがとうーっ!」
「あーあ、あたしゃもあと110年若けりゃあね……」
 別の意味で騒ぎになったものだが、そこはにこやかな笑顔を振りまきつつ進み――焔に乗っている梓の隣へ行ってみる。
「ねぇ梓……君は自分では運ばないの?」
「いや、だから……」
「このおっさん全然自分で石運ばないんだよー!」
「綾サマー! こっち向いてー!」
 右から左から子供や女の甲高い声が追いかけてくるので、てんやわんやの中ノルマの分の運搬を終えたのだった……。

「なんとか終わったな……やれやれ、妙に疲れた気分だぜ」
 仕事を済ませた二人は、揃って人類砦自慢の温泉とやらへと足を運んでいた。
 人里から離れた温泉地はかすかな月の光を照り返して輝き、虫の声もほどよく響いてなんとも風光明媚な雰囲気を醸し出している。
「おっ、こいつは良いな……秘湯って感じだ、焔も入ってみるか?」
「キュー」
「ま、流石に熱くて嫌か」
 元の姿に戻っていた焔は適当に羽休めをするようだ。
 梓と綾はそれぞれ温泉へ入浴し、汗を流して疲れを癒す。
「いやあ、この世界にもこんな心休まる場所があったなんてねぇ。……動物達も全然警戒してないし、よっぽど居心地が良いんだろうね」
 サルやカピバラ、クマの群れがそれぞれグループを作ってどっぷり浸かっている。
 たまにやんちゃな子サルが焔へちょっかいをかけてじゃれあったりしているし、眺めているだけで中々に和む光景だ。
「一汗かいたあとの風呂は良いものだな……あー、ここに地酒でもあれば雰囲気も出て最高だったんだが」
「って言っても、君自身は大して動いてないんだから汗かいてなくない?」
 軽口を叩く綾に、梓もわざとらしく咳払いをして見せて。
「やかましい、常に気を張っているんだから汗くらいかく」
「あはは、ものは言いようだね」
 じんわりとした暖かな熱と、さっきまでの騒がしさが嘘みたいな静寂が、二人の肉体と精神を安らがせる。
 絶望ばかりのこの世界の片隅で見つけた、人々にとっての安らぎの場所。
 希望の灯を守り抜いた二人を祝福するかのように、月のわずかな光が降り注いでいた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【天花】

この場所へは零さんとではなく
個人的に偶然辿り着いた前提

力仕事はできないし…後で違う形でお手伝いしておこう
破魔の花畑…お役に立てるかな?
えぇっと、とりあえず脱衣所…あれ?

誰かの気配に振り返ると銀髪の青年が居て首を傾げる

え、ああうん、ごめん…?

かけられた言葉に素直に道を譲るも
不思議な違和感に終始首を傾げながらとりあえず自分もお風呂へ

髪をお団子状に結び服を脱いでお風呂に入り
かけ湯をしつつふと見えた見知った姿に

…もしかして零さん?
いつの間に…あれ、1人?
あのさ、銀髪の男の子来なかった?

零さんの返答に再度首傾げ

おっかしいなぁ…見間違いかなぁ?
あ、隣入っていいー?
わーい動物さん達と混浴ー♪(無邪気


天星・零
【天花】

人の少ない時間を見計らって温泉へ

『どいて…邪魔。』

このタイミングでは真の姿。
少し、泥の付いた髪。顔は髪で隠れて口元しか見えず、栗花落さんには分からないように

廊下の真ん中に立っている彼を冷たく一言放ちお風呂場へ


『はぁ、汚れちゃったなぁ…。最悪…。今回はあまり遊べなかったねウェビル』

指定UCと少し会話しながら一通り汚れを落として湯船に浸かると知り合いの声に気づき

(流石にこのまま他人のフリをするのはリスクがあるな…)

普段の偽の姿に戻り

栗花落さんが再びお風呂に入ってきた時
質問してくるので

『あはは…なんですかそれ?怖いですねー。夕夜も今頃疲れて布団で寝てますしね。』

といつも通りの微笑みで返す



 戦闘後の人類砦に、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は偶然ふらりと訪れた。
 道行く人に話を聞いてみれば、今は敵の襲撃に備えて壁を直したり、めいめい休憩を取っているのだという。
 興味深いところで言えば、少し山を登った先に隠れた温泉があるらしい。
 この時間帯ならば動物達が羽休めに来る憩いの場ともなっているため、せっかくなので澪も覗いてみる事にした。
 とはいえ、夜遅くまで忙しく立ち働く彼らをよそに、ひとり湯を堪能するというのもなんだか気が引ける。
「でも力仕事はできないし……後で違う形でお手伝いしておこう」
 頭の中でその方法を練りつつ、件の温泉へ足を踏み入れたのだった――。

 夜もだいぶ更け、作業中の人々も少しずつそれぞれの家へ戻り、だんだんひと気がなくなって来た頃。
 天星・零(零と夢幻、真実と虚構・f02413)は暗がりを選んで足早に歩を進め、温泉へと向かっていた。
 そのつややかな銀の髪は少し泥がついて汚れ、目元まで伸びた毛先のために口元しか見えない。
「えぇっと、とりあえず脱衣所……」
 ふと、脱衣所に続く廊下できょろきょろとあたりを見回している小柄な影が一つ。
 零は歩調のみを少し緩め、冷ややかで抑揚のない声音を発する。
「どいて……邪魔」
「え、ああうん、ごめん……?」
 目をぱちくりとさせて振り返ったのは、知り合いの栗花落・澪のようだった。
 背後からいきなり声をかけられたからか、澪はびくりと跳ねつつも壁際へ下がり、素直に道を譲る。
 そのまま歩き去る零の背中を、澪は不思議そうに首を傾げて見つめた。
「――今の、って……?」
 何か、違和感がある。うまく言葉にはしづらいものの、と自分も歩き出し、脱衣所へ到着。
 さっきの少年はすでに温泉に入っているらしく、姿はない。
「もしいたら、ちょっと色々聞けたんだけどなぁ……」
 でも何を聞くべきか、それ自体がまだうまく思い浮かんでいなかった。
 頭をひねりつつ髪を可愛らしいお団子状に結び、さらさらと服を脱ぎ畳んでしまうと、脱衣所の扉を開ける。

 その頃零は、桶になみなみと注いだ暖かな湯を頭からかけながら、ふーっと大きく息を漏らしていた。
「はぁ、汚れちゃったなぁ……。最悪……。今回はあまり遊べなかったねウェビル」
「まぁまぁ、気にしなさんな! 明日がある! 次がある! あるあるあーる!」
 ピエロ姿の霊である、変なテンションのウェビルと噛み合っているような合っていないような会話を繰り広げつつ、髪とか手にべったり張り付いた泥やら砂を落として、肩まで湯に浸かってようやく一息入れる。
 ――かと思われた矢先、脱衣所の奥の方から、さっき別れた澪らしき足音が近づいて来るのが聞こえた。
「わあー……すっごい広い。これはゆっくりできそうだね」
 そんな独り言も耳に届く。どうしたものか、と零は思案する。
(「流石にこのまま他人のフリをするのはリスクがあるな……」)
 先ほども疑問を感じていたみたいだし、あまり長く接触しているべきではない。
 という事で普段の偽の姿に戻り(ウェビルが横でおもしろそうに眺めていたが無視して)、立ち上がって自分の方から姿を見せに行く。
 白い湯気の奥、ちょうど澪は桶を使ってかけ湯をしていたところだった。
 きょとんとしたこちらを見る目から頬にかけて、汗と水滴が綺麗な筋を描くように滴り落ちている。
「……もしかして零さん?」
 すでに顔も洗っていたせいか、しとどに濡れた唇がそう言葉を紡いでくるので、零もにこやかに頷きを返した。
「奇遇ですね、栗花落さん」
「いつの間に……あれ、1人?」
 澪はしきりにあたりを見回している。やはり、今の姿で先手を打って出て来たのは正解だったようだ。
「あのさ、銀髪の男の子来なかった? ちょうど零さんと同じくらいの背丈で、ちょっぴりクールな感じの」
「あはは……なんですかそれ? 僕はずっと一人でいますよ……なんだか怖いですねー」
 零はいつも通りに微笑みで返し、自然に歩き出して澪を風呂まで誘導する。
「夕夜も今頃疲れて布団で寝てますしね……ウェビルはいますけど」
「おっかしいなぁ……見間違いかなぁ?」
 その返答に再度、こてんと首を傾げる澪だったが、やがて広々とした湯船まで到着すると、嬉しそうに口元をほころばせて。
「うわ、温かそう! あ、隣入っていいー?」
「ウェヒヒ! 歓迎歓迎!」
 どうぞ、と零が言う前にウェビルが勝手に答えていた。
 そのウェビルは同じように温泉に浸かっていたサルやらカピバラやらクマと仲良くなったのか、トランプで芸を見せたり戯れているようである。
「わーい動物さん達と混浴ー♪」
 澪も無邪気に湯をかき分けてそんな輪へ入っていき、警戒心なく近づいて来たカピバラ親子に湯をかけたりして楽しみを満喫しているようだ。
 その胸中からは【謎の銀髪の少年】の事なんて吹っ飛んでいる様子。零は小さく息をつき、改めて湯の中で身体を休める事に集中するのだった。

 ――ちなみに、お風呂を出て砦へ戻った澪は、破魔の花畑を広げる事で人々に一休みできる場を提供した。
 この枯れた世界に色とりどりの、香り豊かな花畑。破魔の効果でなんとなくネガティヴな気持ちも吹き飛ぶようだ。
 そして肝心の、村人達の評判は。
「寝っ転がるとやわらけえ! あったけえ!」
「疲れが吹き飛んでいきますねぇ……特に温泉に入った後だと、安らぎすぎて急に眠く……」
「この花畑を作ったのは誰じゃあ! すッ、素晴らしすぎるッッッッ!」
 ……とても好評、幸せな休息感が後の作業スピードをぐっと早めたという。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年05月10日


挿絵イラスト