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神魚の池

#アポカリプスヘル #『サダルスウド』

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#アポカリプスヘル
#『サダルスウド』


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●迷妄跋扈
 突如とある池に、異形の小魚が湧いた。
 池の周りに塀を巡らし水を独占していた地主は姿を消した。無人と化した地主の拠点。
 二日後、物々交換に拠点を訪れた人々が池で見たのは、黄色い小魚と……大魚の影。

『その大魚とは神魚であり、地主に罰を下すために遣わされたのだ』
『同じような者を罰するため、別の水源に現れ続けているから神魚は滅多にその姿を現さないのである』
『代わりに神魚は子供を池に残した。この小魚が異形なのは、かの暗黒の竜巻に呑まれた先にある楽園のものだからである』

 時を同じくして謎の教団が現れ、そのような教義を説いていくようになった。
 近くを通る旅人は池に簡単な供え物をするようになった。荒唐無稽。しかしだからこそ噂は人々の心を掴んだのかも知れない。強欲な地主を懲らしめた神魚の噂を聞き、遠くからはるばる池を訪ねて来る者もいた。
 気付けば、池の畔は危険な教団の集会場と化していた。

●カルト退散
「……と、こうなる前に、池を一つ干して欲しいのでござる」
 グリモアベースの片隅。猟兵達の前で言うのは四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)。
「昨夜アポカリプスヘルのとある水源地が、異形の魚の群生地と化したとか。
 池を独占していた地主が落ちぶれたのも、神魚の仕業……との噂が、これから立つ予定にござりまするが。
 この神魚、神は神でも禍津神の類。すなわちオブリビオン魚にござりまする」
 オブリビオン魚(ぎょ)。無表情でさらりとそう発音し、かごめはさらに続ける。
「【黙示録教】とかいう教団が、オブリビオン魚を布教に利用しようとしている、というのが真相にござりまする」
 黙示録教――『世界が滅ぶことでその世界に住まう者は幸福になれる』という教義を掲げる、危険なカルト教団。今回の騒ぎを利用して信者を増やそうとしているのだとか。

「明日、住人が池の惨状を目にし、噂が立ってしまう前に、池の小魚を始末しなければなりませぬ。今回やることは三つ」

 一つ。池の水を抜き、小魚も叩く。
 一つ。黙示録教を叩く。
 一つ。可能ならば、大魚を叩く。

「まずは水抜きから開始する事をお勧めしまする」
 池を泳ぐ小魚は、水の中ではとても素早いためだ。目は無く、齧歯類のような前歯がある。水から跳ねて噛みついて来るため、何らかの対策が必要だろう。
 地主が拠点から去ったのが昨夜遅く。報酬で雇われた守衛も今は一人もいない。事の性質上、住民に助けを求めにくいのが難点だが……周囲は塀で囲まれている上、通りかかる者もいない。
「底が見えるまで水抜きすると良いかと。何処かその辺をうろついていると思しき黙示録教の信者をおびき出すためにも」
 水抜き装置は幾つか用意しておりますれば。そう言うとかごめは傍に纏めて置いてあったホースと電動ポンプを数個、そして重ねたバケツにタライを指し示した。ちなみに抜いた水は何らかの手段で貯めていても良いし、その辺に流し捨てても悪影響は無いのだとか。

 最後に。
「あの世界は既に復興に向けて舵を切っておりますれば、邪悪なカルト宗教の出る幕はありませぬ。
 速やかな文明再建のためにも、まずは池の水と小魚の始末をお願いしまする。にんにん」
 そう言ってかごめが印を結べば、猟兵達を爽やかな風が包むのだった。


白妙
 白妙と申します。宜しくお願い致します。
 今回の舞台はアポカリプスヘル。池の水を抜き、『黙示録教』の思惑を挫くのが目的です。

●第1章【日常】
 何らかの手段で池の水を抜いたり、すばしっこい小魚を捕まえたり。POW・SPD・WIZは参考程度にどうぞ。
 小さなオブリビオン魚は活きが良く食欲旺盛。大きな口と前歯で噛みついてきます。毒はありません。
 水の量は冒頭で用意された電動ポンプフル稼働では若干間に合わないといった所。

●第2章【集団戦】
 『黙示録教の信者』との対決です。

●第3章【ボス戦】
 『???????』と決着を付けます。

 1章のプレイング受付開始は3月12日(木)8時30分より。その後はマスターページを参照くださいませ。
 拙いですが、もしプレイングをかけて頂けるのであれば幸いです。
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第1章 日常 『池の水ぜんぶ抜く』

POW   :    池の水を全部抜いて、死体などを取り除く

SPD   :    周辺住民に宣伝して、協力してもらう

WIZ   :    池の生態系を壊さないように、注意深く作業する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●水抜き作戦
 転送に伴う浮遊感が収まっていく。
 涼やかな風は、すぐさま熱と埃を帯びたものへと。

 猟兵達が立っていたのは、高い塀に囲まれた荒れ地。
 区画の中央に目を向ければ、そこには池が一つ。
 幅は約10メートル程。結構深い。
 青い空と白い雲が映り込んだ水面を猟兵達が覗き込めば……そこには黄色い小魚たち。
 目は無く、大きな口には二本の前歯。金魚にも似た大きなヒレを揺らし、ぴちぴちと暴れ出した。
 オブリビオン魚だ。
 他に魚はいない。オブリビオン魚に残らず食べられてしまったのだろうか。
 それでも水中を静かに揺れる水草が、池の生態系の僅かな名残を示していた。

 出立前に渡された袋の中には……ホースを装着した、スイッチ一つで作動する電動ポンプが数個。
 おそらくこれだけでは、明日までに池を空にするには至らないだろう。
 他にはバケツや大きなタライがたくさん。

 背後を振り返ればそこには拠点の建築物。だが物音一つ響いて来ない。
 ……どうやら本当に無人らしい。改めて池の方に向き直り、猟兵達は作業を開始した。
フェリス・シー
人手いりそうだし軍隊の人に協力してもらうのなの
集合した中隊で米軍歩兵中隊みたいな人を呼んでみるのなの

今回は戦争はいいから池の水を抜いてほしいのなの ポンプ使ったりバケツリレーしたりして頑張ってほしいのなの
あとは、池の中に危険な敵性魚類がいるのでそれは倒しちゃっていいのなの

フェリスちゃんも 軍人さんに混じって一生懸命バケツ運んでみるのなの
 人間サイズに比べたらフェリスのバケツなんてお猪口くらいで焼け石に水だろうけど




 荒れた大地と、地平線を覆い隠す塀。
 区画の中央には、透明な水を満々と湛えた池。
 その池の上をひらひらと飛ぶのは、フェリス・シー(ちっちゃなプレインズウォーカー・f00058)。無邪気に水中を覗き込む彼女のつぶらな青い瞳は、果たして、動き回る黄色い魚の姿を捉えた。
 オブリビオン魚だ。金魚にも似た大きな鰭を左右に揺らし、上空のフェリスに向けて大きな口をぱくぱくさせている。
 そんな彼らを他所に、踵を返して水面を離れるフェリス。
「人手いりそうだし、軍隊の人に協力してもらうのなの。イーグルアーミーの人、協力お願いなの」
 彼女のその言葉と共に、どこからともなくぱらぱらと人影が集まり始め、池の畔に整列した。
 その全員が現代的な軍服とヘルメットを身に着け、ぴしっと背筋を伸ばしている。
 軍人さんだ。規模にして四個小隊。その人数は多い。
「今回は戦争はいいから池の水を抜いてほしいのなの」
 フェリスがてきぱきと指示を出していけば、軍人さん達の大部分は作業に従事するべく散らばっていく。
「あなたたちにはやって欲しい事があるの」
 残った幾らかの人員に対して別の指示を下していくフェリス。水抜きの準備は着々と整いつつあった。

 静かだった池の畔は、一気に賑やかに。
 三個小隊ほどの軍人さんが池の周囲を取り巻き、多くの列を作っていた。
 彼らのバケツリレーを中心に、池の水を人海戦術で抜いていく。大量の人員を確保出来るフェリスならではの戦術と言える。
 数人の兵士が池の傍にしゃがみ込み、電動ポンプを水の中に沈めてスイッチを入れる。水面に広がる波紋。
 途端に水中のオブリビオン魚達が、それまでとは打って変わって強い反応を示した。軍人さんの方に向かってふよふよと近づいて来る。
 ガガガガガガッ!!
 次の瞬間、耳をつんざくような音。残り一個小隊……火器小隊による機関銃支援だ。
 大量の銃弾が水面に向けて掃射され、驚くほどに高い水飛沫が上がる。その水飛沫の中で、ばしゃばしゃと暴れ回るオブリビオン魚達の姿が、はっきりと見えた。
 慌てた様子を見せ、水中に潜ろうとするオブリビオン魚。ぴぃ、と鳴き声を上げて数匹が撃ち抜かれ、水に溶けるように消えていった。
「フェリスちゃんも水を運んでみるなの」
 オブリビオン魚の奇っ怪な姿を目の当たりにしたフェリスだが、特に動じる様子はない。いつもと変わらぬ様子で事に当たれるのは、彼女の強みなのかも知れない。
 フェリスが取り出したのはマイバケツ。人間サイズと比べればその大きさはお猪口かと思えるほどに小さい。それを持って、すい、と水の上に移動すれば、オブリビオン魚が再び反応を示す。
 叩き込まれる銃弾の雨。暴れるオブリビオン魚から離れた所で、ちゃぷ、と妖精サイズのバケツを水面に沈めるフェリス。一生懸命に翅を羽ばたかせ、汲んだ水を運ぶ姿はとてもかわいい。
 そんなフェリスの頑張りと、なおも続く友軍の機関銃の咆哮に勇気づけられるように、バケツリレーを行う兵士たちは作業のテンポを早めていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アメリア・イアハッター
宗教を否定する気はないけれど、世界が滅ぶのを願うのは、ちょっとなぁ
他の人に迷惑をかけないように、ちょっと懲らしめましょうか!

池の水を抜きつつ、信者もおびき寄せればいいのよね
それじゃちょっと派手な水抜きを試してみましょう!
UCを発動し、竜巻を池の内部で発生させ、水を可能な限り巻き上げる
目立つように高ーく水をまき上げた後は、味方の猟兵に水がかからぬように竜巻を調整し、池から離れた場所に水をぶちまける

ぶちまけた跡に赴き、魚も巻き込まれているか確認
流石に地面の上じゃ大したことはできないと思うけど、オブリビオンらしいし用心して近づこう
もし攻撃してくるようであれば…嫌だけど、全部宇宙バイクで轢いちゃおう




 何処までも続く空を映すのは、帽子の庇が作る影に覆われたアメリア・イアハッター(想空流・f01896)の緑色の瞳。
 魅せられたようにアポカリプスヘルの澄み切った青空を眺めていたアメリアだったが、やがて視線を少し伏せぽつりと呟く。
「宗教を否定する気はないけれど、世界が滅ぶのを願うのは、ちょっとなぁ」
 黙示録教の教義は暗黒の竜巻によって世界を一度滅ぼそうというものだ。その宿願叶った暁には、おそらくは頭上に広がる空すらも無事では済まないのだろう。
 今この瞬間の、ありのままの空をもっと知りたい。日頃から強くそう想うアメリアには、受け入れ難い相手だ。
 同時にこの世界の人々にとっても、その教義は真に心の拠り所となるものでは、無い。
「他の人に迷惑をかけないように、ちょっと懲らしめましょうか!」
 気を取り直し明るく頷くアメリア。その視線の先には例の池があった。

「うわぁ」
 アメリアが池に近付いた途端、水の中に棲みついたオブリビオン魚が彼女の傍に近寄り、ばしゃばしゃと水飛沫を上げ始めた。その様はまるでお腹を空かせた鯉のようだ。
 直接踏み込もうものなら噛みつかれてしまう。一旦池から遠ざかり、どうすべきか思案するアメリア。やがて。
「それじゃ……ちょっと派手な水抜きを試してみましょう!」
 何かを思いついたと思しきアメリアの周囲に、風の魔力が収束し始める。
 それまで静かだった池の水面が、ざざ、と渦を巻き、徐々にその大きさを増していく。
 空高く巻き上げられ、なおも激しく旋回する水のうねりと共に姿を現したのは――塀を遥かに超える高さの、竜巻。
 何処までも続く荒野に、巨大な水の塔が出現した。
 竜巻を自在に操るアメリアは巻き上げた水を虚空に留め、纏め、塊にして……その落下地点を調整していく。
 短時間で調整を終え、息を吐くアメリア。
 数拍置いて、池を挟んで真反対の離れた地点に、大量の水が、ざんっ! と、小気味良い音と共に叩き付けられた。
「……」
 アメリアが落下地点に歩いていき、そーっと用心しながら近寄れば……果たしてアメリアの狙い通り、竜巻には多くのオブリビオン魚が巻き込まれていた。
 水浸しになった地面のあちらこちらでバタバタと暴れていたオブリビオン魚だったが、やがて各々がその動きを止め、白い煙となって消えていった。
 水の外では長時間生存出来ないのか、それとも落下時にかなりのダメージを受けたのか。ともかく、直接手を下す必要は無さそうだ。
(「もし手向かうようなら宇宙バイクで轢いちゃおうかと思ったけど……その必要はなさそうだね。良かったよ」)
 なおも空から落ちかかる細かな水滴が赤い帽子を微かに叩く。その音を聞きながら、ほっと胸を撫で下ろすアメリアだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レオンハルト・アウストラリス
【SPD】
たとえ強欲な地主とは言ったって、助けられる限りは見捨てられないしな!

難しくとも近隣住民たちに水抜きを協力して貰えるように頼み込みます。
また性格からか強欲な領主とはいえ放ってはおけないので住民に聞き込みもする。
もし頼んで駄目ならば、水の独占には思う所があるため、ちょっとくらいならバレないんじゃないか?と抜いた水を少しだけ持って帰ればいいと住民を焚き付けます。

小魚に関しては、UCで不定形の水剣と化させた魔剣の刀身の先を捕獲用の網に変え、網漁のようにまとめて捕まえ[2回攻撃]でそのまま処理していきます。
襲い掛かってきた魚は住民に怪我させぬよう片端から切り捨てていきます。

※アドリブ歓迎




 少し離れた位置にある、別拠点にて。
 レオンハルト・アウストラリス(金色の焔・f20419)は、集まって話をしていた少女達を驚かさないように、人懐っこい笑顔を向けて挨拶したところを、取り囲まれた。
「もしかして、奪還者さん?」
「イケメンさんだー」
「かわいー」
 この世界において優秀な奪還者は恋愛対象としても強く求められる。加えてレオンハルトの端麗な容姿と朗らかな雰囲気は、少女達を惹き付けるのに充分だったのだろう。
「何処の拠点から来たの?」
「ここへは何しに?」
 質問責めだ。
「えっと……」
 指で頬を掻くレオンハルト。忘れてはいない。彼の目的はこの拠点の住人の協力を仰ぐ事だ。難しいのは承知の上。それでも貴重な水を出来るだけ無駄にしたくない。
(「それに……領主の事も放っておけないしな」)
 生存に必須である水は多くの世界で貴重品となりうる。レオンハルト自身、水を独占する者とは無縁では居られなかった。そして彼らに思うところがある以上、放っておけないのはレオンハルトの性分でもある。
「あなたたち、外は危ないから家に入りなさい」
 その時、バラック小屋から出て来た一人の若い女性が、穏やかな声で少女たちを叱った。
 ちぇー、と駆け去っていく少女達。
 後に残されたレオンハルトは女性と挨拶を交わす。
「えっと、こんにちは!」
「はい、こんにちは。……奪還者さん? 御免なさいね。今日は男手が出払ってて。それでご用件は?」
「相談と言うか……例の池と、そこの拠点の事なんですが」
 ああ、と女性。
「立ち話もなんですし、こちらへどうぞ」
 そう言ってレオンハルトを小屋の中に案内するのだった。

 バラック小屋の内側には、向かい合わせのソファと、古いテーブルが置かれただけの質素な応接間。
「そ、そうですか。あの拠点、そんなことに」
 ソファに腰掛けたレオンハルトが慎重に言葉を選びながら拠点の現状を説明すれば、女性は若干戸惑いつつも理解を示した。
「そういうことなら、私達で良ければ今日水抜きに行きましょう」
(「やった!」)
 内心で快哉を叫ぶレオンハルト。表情に出たのか、女性が少しだけ顔を赤らめた、気がする。
 レオンハルトにはもう一つ聞きたいことがあった。
「ところで、拠点の地主について何か知っている事はありませんか? 失踪先の心当たりとか」
「あの人について……ですか」
 とはいえ、こちらは芳しい成果を得られそうになかった。
 池を塀で囲み、溜めた物資で傭兵を雇う。恐れるように人前に出るのを嫌い、物々交換の受け渡しにも人を使う。
 皆揃って彼を嫌い、顔の見えない守銭奴と恐れもしたが、実際の所どのような人物で、普段何を語ったかを知る者は殆ど居ないらしい。
「うちの拠点では……あの人の姿を見た人は居ないと思います。何処に行っちゃったんでしょうね」
「そうですか……」
「でもどうしてあの人の事を? もう立ち去ったなら、放っておいても」
「例の地主だって昨夜の事で懲りたでしょうし、今もどこかで反省しているんだと思います。俺、どんな人にも見習うべき所があると思うんです」
 もちろんいい意味で! そう言い添えるレオンハルトを、呆気に取られたように見つめる女性だったが、やがて、ふふ、と微笑み返した。
 殺伐としたこの世界の住民達が忘れかけていたものを、レオンハルトは最も真っ直ぐな形で示したのだった。

 池に戻ると、そこには相変わらず魚達がぴちぴちと元気に泳いでいた。
「わぁ……ほんとに変な魚が湧いてる」
 レオンハルトに付いてきた拠点の少女達は、その手にバケツを持ちつつも引き気味だ。
 今の状況は予知の内容と幾つかの点が食い違う。住人たちはあらかじめ拠点の異変を知らされている点。未だ大魚が居ない点。しかし一番の違いはと言えば。
「じゃあ……危ないので少し下がっていて下さいね」
 優秀な奪還者と目されたレオンハルトの存在だ。彼の強い正義感がリーダーシップとなり、拠点の住人達を勇気づけていたのだ。
 澄んだ水剣と化した魔剣シャクイス。その先端を捕獲用の網に変え、ざばぁ! と水面を薙げば、剣閃の軌道上に居たオブリビオン魚達はあたかも網漁のように動きを封じられる。
 振り切った体勢から逆方向に軽く剣を引けば、不定形の水剣はオブリビオン魚の身体に格子状の裂傷を刻み、そのまま消滅させた。
「今です!」
「奪還者さんすごい!」
「かっこいー」
 他のオブリビオン魚がレオンハルトから距離を取った隙に、少女達は池の水をとくとくとタンクに詰めていく。互いの協力によって、レオンハルトは池の水量を確実に減らしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マディソン・マクナマス
池、堰き止める、お魚沢山……おあつらえ向きの海洋鍋じゃねぇか、俺一人で食うにはちと多いな
よし、これより爆薬を外した自爆特攻中古ドローンにチラシを張って周辺居住地に宣伝を行い、『チャリティー海洋鍋パーティ』開催する

住民が集まってくる前に仕込みを済ませるぜ
まずは池に次々と蒸気爆発手榴弾を投げ込み、水蒸気爆発の衝撃で魚を殺害すると同時に池の温度を上げていく
底の方まで煮えてきたら、暴走アメリカントラックで【運搬】してきた他世界から持ち込んだ野菜各種を荷台から直接池に投入
食欲増進の隠し味に少量のスマートドラッグを入れ、オブリビオンクッキングの完了だ

らっしゃいお客さん! 内臓抜くのはセルフサービスだよ!




 ところで、より大々的に住民の協力を仰ごうとする猟兵が、一人。
 マディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)である。
 水抜き作業は順調に進み、池の水量は残り少ない。
 オブリビオン魚に止めを刺しがてら、普通に水を抜き切ってしまっても良かった、のだが。
「池、堰き止める、お魚沢山……お誂え向きの海洋鍋じゃねぇか」
 あ、そういう事でしたか。
「だが、俺一人で食うにはちと多いな」
 マディソンは手持ちの中古ドローンから爆薬を取り外し、その代わりにチラシをぺたぺたと貼っていった。
「全くいい時代になったもんだ」
 プロペラを回転させ、周辺拠点に散っていくドローン達。
 その光景をどこか満足げに眺めながら、マディソンは仕込みの準備にかかるのだった。

 秘伝の味をご家庭で。
 マディソンが草臥れたレザーコートから取り出したのは、蒸気爆発手榴弾。
 それらを池にぽいぽいと放り込む。
 轟音。
 すっかり小さくなった池に逃げ場は無い。激しい水蒸気爆発により、オブリビオン魚たちは一匹残らず爆殺されてしまった。
「~♪」
 なおも手榴弾を放り込むマディソン。繰り返していくうちに、池の水面からボコボコと泡が立ち始めた。
 ……どうやら煮えて来たらしい。
 頃合いを見計らい、マディソンはその車体に『マディソン清掃サービス』と大書された装甲10tトラックをバックさせる。
 どぼぼぼぼぼぼ。
 他世界の新鮮なお野菜。荷台に積載されていたそれらが、池に向かって直接投入されていく。豪快だ。
 辺りに良い匂いが立ち込めてきた辺りで、仕上げに何やら調味料を投入するマディソン。
 池を干すどころか鍋にしてしまった。その行動力、恐るべしである。
 ふと、マディソンの脳裏にある疑問が湧く。
(「この魚、美味いのかな……」)
 前情報によれば毒は無いとの事だが。
 池に近寄り、オブリビオン魚の尻尾を抓んで、味見をするマディソン。
「――美味い」
 身はみっしりと詰まり食べ応えのある質感。噛めば噛むほど旨味が口の中に染み出す。
 完璧な出来だ。
「よし。改めてクッキング完了だ。それじゃあ」
 ――これより『チャリティー海洋鍋パーティ』を開催する。

 海洋鍋が完成して少し。
 手に手に鍋や容器を持った住民が集まり始めた。
 そこには丸ごと鍋と化した水源と、くつくつと似られている異形の魚。
「なんか……すげえな」
「良い匂いだけど……」
 マディソンはフランクな様子で彼らと会話をし、宥めていく。
「魚が湧くなんて……バチが当たったのかな。あの地主」
「何処行っちゃったんだろ」
 少なくとも噂の引き金と化す筈だったオブリビオン魚は、今やただの食材だ。
 煮られているその姿は、神魚と見間違われるには少々情けない。
「らっしゃいお客さん! 内臓抜くのはセルフサービスだよ!」
 結局……池の中身はその味を絶賛した近隣住民に向けて汁一滴残さず配給され。
 その過程で発生した白煙と匂いは周囲の存在の気を惹くのに大いに役立ったのだとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ連携歓迎
ここがアポカリプスヘル……
故郷と同じく凄惨な世界ね、ここも
だけど、この明るい空は何だか少しだけ羨ましいわ

うん? どうしたの、ヒルデ? 日光?
ああ、ちゃんと日傘も差しているから大丈夫よ

■行動
道具は豊富にあるようだし、後は人手さえあれば何とかなりそうね
ここは【UC】で呼び出したスケルトン達による人海戦術で、
バケツやタライに水を汲ませては捨てて来させるわ

いい? もし魚に噛み付かれても骨の1本や2本、くれてやりなさい
可能ならその隙を狙って、捕まえたら処分よ

後は物音に寄せられてきたり、水量が減って一ヵ所に集まった所へ
生者を束縛する亡者の【呪詛】を流して、動きを止められないかしら




 時は少し戻り。
「ここがアポカリプスヘル……」。
 時折吹き渡る風以外に何もない、荒涼とした風景が広がる大地に。
 レナーテ・フレンベルク(幽玄のフロイライン・f25873)が立っていた。
「故郷と同じく凄惨な世界ね、ここも」
 レナーテの故郷は凄惨な世界だ。
 そして、暗黒の竜巻が発生し続けるこの世界も、また過酷。
 あくまで静かなレナーテだが、同時に、この世界を覆う恐怖を、絶望を、その肌で感じ取ってもいた。
「うん? どうしたの、ヒルデ?」
 後ろに控えていたアンデッド……ヒルデがその巨躯を揺らした。
 何かを察し、日光? と呟くレナーテ。
「ああ、ちゃんと日傘も差しているから大丈夫よ」
 レナーテは日の光を浴びることが出来ない。
 そんな主の身を、ヒルデはこの世界を訪れた時から案じていた。
 従者の心遣いに対してレナーテは淡々と、しかし少しだけ慈しむような表情で応える。
 だけど。と零すレナーテ。
「この明るい空は何だか少しだけ羨ましいわ」
 夜と闇に覆われた空は、確かに彼女の体には好ましい。
 それでも。いや、だからこそだろうか。
 この抜けるような青い空を前にしては、日傘を畳む自身の姿をつい想像してしまう。
 それは故郷では決して味わえなかったもので。
 嘗てのレナーテを旅に誘った憧れは、今も変わらず胸に燻り続けているのだった。

 レナーテが視線を空から地面に落とせば、そこには池。
 中には、太陽の光を浴びてきらきらと輝くオブリビオン魚。
「道具は豊富にあるようだし」
 傍には大量のバケツやタライが置かれている。
「後は人手さえあれば何とかなりそうね」
 レナーテがそう言えば、周囲が急速に死の気配を帯びていく。
 次いで、ぼこぉ、と。
 地中から突き出される何か。
 ……骨の腕だ。
 二本、四本、六本、八本……数え切れない程の腕が、自身の体を力任せに地面から引き抜く。
 気付けば、レナーテの周りをスケルトンの群れが埋め尽していた。
 ゆったりとした動作で道具を持ち上げ、池の畔に歩みを進めるスケルトン達。
「いい? もし魚に噛み付かれて骨の1本や2本、くれてやりなさい」
 術者としての声色で以て号令を下すレナーテ。
 あるスケルトンが骨の脚をその池に突き入れれば、たちまち魚が噛みつき、膝から下をもぎ取っていく。
 ばしゃり、と倒れるスケルトン。だが、横から静かに差し出されるバケツが、その魚を水ごと掬い取る。
 無数の骨の手により、池の水が流し捨てられ、魚が処分されていく。
 一際激しい水音に、ふとレナーテが目を向ければ。
 そこには蹂躙される数体のスケルトン。オブリビオン魚達も一か所に集まり、渋滞を起こしつつある後続のスケルトンにまで被害を及ぼしつつあった。
「……」
 日傘を持っていない方の腕を上げ、その包帯に包まれた人差し指を池に向けるレナーテ。
 亡者の呪詛。
 あまねく生者を竦ませるそれが、ピンポイントで池に流し込まれる。
 ぴくり、と動きを止め、喘ぐような動作を始めたオブリビオン魚達。
 その巨大な鰭を揺らして逃げようとするが、間に合わずにほとんどが捕らえられる。
 脅威を排除されたことで、骨の壁がゆっくりと活動を再開する。

 ――今より此処は死者の町。
 人海戦術。死霊術士レナーテの本領であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『黙示録教の信者』

POW   :    【黙示録教の信仰】我らガ祈りを聞き届ケ給ヘ!
【常人には理解不能な狂った教義と信仰】を聞いて共感した対象全てを治療する。
SPD   :    【黙示録教の崇拝】我ラが願イヲ聞き届け給え!
【常人には理解不能な狂った教義と信仰】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    【黙示録教の殉教】幸福なル滅びト終焉ヲ此処に!!
【心臓と同化したオブリビオン爆弾による自爆】が命中した対象に対し、高威力高命中の【疑似超大型オブリビオン・ストーム】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。

イラスト:嵩地

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達の水抜きは大成功を収め、小さなオブリビオン魚は全て処分された。
『何たル事、何タる事!』
 その時、背後から大声が響いた。
 振り返ればそこには――怪人。
『偉大なル滅ビノ兆しヲ認メぬとは!』
 その身を包むボロボロの黒いローブは、黙示録教の正装だ。
 塀の出入り口からも同じ人影が次々に姿を現す。
 拠点全体が騒がしさを増したのは、いずれ後続が駆けつけてくる前触れか。
『我ラが偉大なル終末を遠のかせてはナらぬ!』
『神魚を守レ! ソして奴ラを滅ビの嵐へト!』
 理解し難い言葉を呪詛の如く垂れ流し、互いの狂躁を高めていく信者達。
 統率も戦略も無きに等しいが、士気はこの上なく高い。
 既に異形と化した両手の長爪を猟兵の身体に突き立てんと、後続も待たずにめいめいが突っ込んで来た。
マディソン・マクナマス
『来た時よりも美しく』と背中に書かれたジャケットを着用
チャリティー海洋鍋パーティの終わった池周辺のゴミ拾い中に、信者達の接近に気付く

……あれ、もうイベント終わっちまったぜお客さん?
……。
…………。
敵かキサマッ!

持っていたゴミ袋から10mmサブマシンガンを【早業】で取りだし、フルオートで手近な敵から【先制攻撃】をカマす
リロードの合間に流れるような手つきでスマートドラッグを飲み干し瓶をポイ捨て、【制圧射撃】で敵を減殺

つーか何言ってるかわかんねーんだよ騒ぐなクソ客が! 
敵UCの発動条件『聞いて共感』を防ぐ為、UC【妨害手榴弾全部乗せ支援射撃添え】を乱発しフラッシュバンの音響攻撃で連中の声をかき消す




 電撃的に開催された『チャリティー海洋鍋パーティー』は盛況のうちに幕を閉じた。
 招待を受けた住民達は一人残らず帰路についている。
 今はもう誰も居ない会場跡で、忙しそうに立ち働くケットシーが一人。
 無事に主催を務め果せたマディソンだ。
「やっぱ残っちまうんだよなぁ。こういうの」
 彼は呑気な様子で時折喋りながら、会場に残されたゴミを火バサミでぽいぽいと拾い、大きめの黒いゴミ袋に放り込んでいた。
 先程は豪快なクッキングを見せたマディソンだが、今現在は『来た時よりも美しく』と背中に書かれたジャケットを身に着け、清掃活動に勤しんでいるのだった。その姿は、とても律義だ。
「……あれ、もうイベント終わっちまったぜお客さん?」
 ふと背後に人の気配を感じたマディソンはゴミ拾いを続けながらも、振り返らずにそう語り掛ける。
 だが、何かおかしい。
 首を回した彼のサングラスに映ったのは……棒立ち状態の黙示録教信者が、三人。
「……」
『『『…………』』』
 互いに見つめ合い数秒。
「敵かキサマッ!」
 喉から酒焼けした気勢を絞り出すと共に、マディソンはゴミ袋に手を突っ込み、勢い良く何かを引き抜く。
 ……大口径のサブマシンガンだ。隠し持っていたその得物を身体に収め、信者達が反応を示すよりも一瞬早く、マディソンは体を後退させた。
 狂おしく振り落とされる異形の爪。
 描かれた弧の外側にマディソンは逃れ去り、そのままサブマシンガンをフルオートで咆哮させた。
「喰らいやがれ!」
『グッ!』
 銃弾を脇腹に叩き込まれて膝をつく最初の信者。彼を尻目にマディソンはリロードに入る。熟練兵の手際だ。
 硝煙と閃光で動きを止められていた信者達がようやく再起動した。
『殺セ!』
『殲滅せヨ!』
 横目で確認したマディソンはリロードを一度中断し、空いた片手で別の動作に移行する。流れるような動きでジャケットから何かを引き抜けば……その手には先程の鍋にも使用した、調味料入りの瓶があった。
 お洒落なデザインの瓶に口をつけたマディソンはなんと、中の液体をものすごい勢いでガブ飲みし始めた。
 二人の信者がマディソンに襲い掛かろうとする最中にも瓶の中身はみるみる減っていく。マディソンが全部飲み終わった時、信者の爪がマディソンの脳天に迫っていた。
 マディソンの方が一瞬早い。カラン、と。空の瓶をその場にポイ捨てて後退すれば、信者の爪は弧を描いて再び空を切り、ぼさぼさの毛並みを掠める。
 見るからに尋常でない色をしていたマディソンのドラッグだが、おそらくはそれに見合う効果があったのだろう。彼は今や別人のような動きのキレを手にしていた。
「おらっ!」
 リロードの残りを一瞬で終わらせ、トドメとばかりにサブマシンガンのトリガーを引き込むマディソン。
 補充の面倒なマイナー弾薬を惜しげも無く使って展開される、制圧射撃。
 薙ぎ払われた三人の信者は後方に吹き飛ばされ、そのまま黒い煙となって骸の海に還っていった。
 辺りに立ち込める硝煙の中でマディソンが視界の端に捉えたのは……今しがた倒した信者の後ろから駆けて来る、増援の姿。
『暗黒ノ竜巻ヨ!』
『我ラが願イヲ聞き届け給え!!』
 口々に理解不能な教義を叫び、互いの戦意を高め合う信者達。銃撃を仕掛けるも、弾雨をものともせずに吶喊してくる。
「つーか何言ってるかわかんねーんだよ騒ぐなクソ客が!」
 ジャケットから何かをむしり取るようにして取り出し、信者の足下に叩きつければ、凄まじい閃光と破裂音が起こった。
『がッ!!』
『グおお!』
 フラッシュバンが強い耳鳴りを引き起こし、スモークグレネードの破裂音が声を遮る。これでは互いを鼓舞するなど不可能だ。
 聴覚と視覚を一度に麻痺させられ動きを止めた信者達に向けて、マディソンのフルオート銃撃が容赦無く降り注ぐ。
 まともに被弾したのか、煙幕の中から上がる苦悶の声。
 再び様々な物品が散乱し始めた戦場内で、マディソンは彼らを押し返すべくスモークの中へと突っ込んで行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ連携歓迎
自分から滅びに向かいたいだなんて、理解し難い人たち……
滅びたいのなら自分たちだけで滅べば良いのに、
迷惑にも程があるわ

■戦闘
統率も戦略もない突進、まるでゾンビね
無駄に数も多いみたいだし、なら本当のゾンビにしてあげる

まずはヒルデにその辺りにある岩を敵集団に向けて
【投擲】させて【先制攻撃】
接近してきた敵もヒルデの【怪力】で【なぎはらい】
その過程で気絶なり、仕留めた敵をそのまま【UC】で操って
周囲を攻撃させるわ

同士討ちで倒れた敵も次々にゾンビに変えていく事で
数の利を得るようにしていきましょう
もし自爆する兆候が見られる敵が接近してきたら
速攻でヒルデに掴ませて敵陣に向けて【投擲】するわね




 拠点の建物から怒号が飛び交い始めた。
 その内容は意味不明だが、要約すると。
『世界が滅ぶことでその世界に住まう者は幸福になれる』
 何のことは無い。黙示録教徒達の掲げる教義だ。
「自分から滅びに向かいたいだなんて、理解し難い人たち……」
 池の畔で日傘を翳し、彼等を遠くに眺めながら静かにそう呟くのはレナーテ。
 もし彼等の目的に教団への勧誘が含まれていたならば、彼女ほどお門違いの人物もそうは居ないだろう。若くして死霊術に精通したレナーテにとって、死とは進んで望むものではなく、ただ訪れるものだ。
「滅びたいのなら自分たちだけで滅べば良いのに」
 信仰するのは勝手だ。歪な形であれ荒廃した世界に救いを求める気持ちも、わからなくも無いが、しかし。
 仮に彼らの教義が達成され、何がしかの幸福が保証されたとして。
 その過程でどれほどの骸が築かれ、どれほどの脅威が新たに世界に解き放たれる事になるのだろう。
「迷惑にも程があるわ」
 肩を落とし、溜息をつく。
 結局の所、現実に起こるのは他者の破滅なのだ。自然の流れに逆らってもいる。彼等の教義に潜む欺瞞が、とりわけレナーテには見えていた。
 過去において彼等は多くの街や人を巻き込み、自らも暗黒の竜巻に呑まれていったのだと。今やオブリビオンとなった彼等がそこに思い至る可能性は、限りなく低い……のかも知れない。

 そんな信者達だが、現在、区画に辿り着いた者から戦意に任せた特攻を行っている。後続を待つ様子すら無い。
 思慮を欠いた正面攻撃は前衛に止められ、あちらこちらで押し返されている。
 だが混戦の中、信者の一部は前衛をすり抜け、後方に向けて迫りつつあった。
「無駄に数も多いみたいだし」
 戦意に加え、彼等は数で勝っている。犠牲を度外視し、押し切るつもりだ。
「お願いね、ヒルデ」
 淡々としたレナーテの呼び声に、それまで背後に控えていたアンデッド――ヒルデが動く。
 池の近くにあった大きな石を幾つか、ヒルデの巨大な腕が、ぐわりと抱え上げた。
 一つ一つの大きさは、人間の頭くらいはあるだろうか。
 ヒルデはその石を、何やら叫びながら此方に突進して来る信者達の一団に向けて、力任せに放り投げた。
 飛ぶ巨石の群れ。
 直撃。
 並の人間からすれば投石機の直撃にも等しい衝撃。鈍い落下音と共に、信者の一団は半分ほどが呆気なく沈黙した。
 だが、倒れた仲間を置き去りに、残りの信者達は息せき切って距離を詰める。
 至近距離にまで達した信者の群れがその研ぎ澄まされた爪をレナーテに突き立てんと腕を振りかぶれば、狂信に染まったその眼差しがフードの奥から覗いた。
 レナーテは微動だにしない。
 爪が迫る、寸前。
 横合いからヒルデがその剛腕を一閃させた。
 吹き飛ばされ、動かなくなる信者達。
「統率も戦略もない突進、まるでゾンビね。ならば」

 本当のゾンビにしてあげる。

 レナーテがそう言ったと同時。
 ゆらり。と。
 倒れた信者が立ち上がった。
 まるで頭の天辺を糸で引っ張り上げられたかのように。
 死霊術――アンデッド化だ。
 今や完全にレナーテの手駒と化した信者達は、覚束ない足取りで前線に向かい始めた。
『貴様、何ヲする!』
『グァァ!!』
 程無くして、戦場のあちらこちらから驚愕の声が響き始めた。
 突如発生した裏切り者をズタズタに引き裂き、返り討ちにしようとする信者達。
 しかしこの裏切り者、何事も無かったかのように再び起き上がり、しつこく喰い下がって来る。
 ただの同士討ちではない事を悟った信者達だが、術者であるレナーテに近寄る事は容易ではない。
「……」
 先程ヒルデの投石で沈黙した一団をレナーテが動く屍と化せば、彼等はたちどころに新たな肉壁と化す。
 彼等に捕まり、揉み合い、力尽きた信者をレナータは新たな手駒に加えていく。時間を稼げば彼女の有利になるばかり。勝敗分岐点は近い。
 だがその直前で文字通り血路を拓き、遂に信者の一人がレナーテに肉薄する事に成功した。彼女を抱擁せんと両腕を広げ、此方に駆けて来る。
『幸福なル滅びト終焉ヲ此処に――!!』
 感極まった信者がそう叫び終わらないうちに。
 その身体を、巨大な腕が掴み上げた。
 ヒルデだ。
 敵の密集地帯に向けて軽々と放れば、信者は綺麗な放物線を描いて高く飛ぶ。
 着弾と同時に、彼の身体を爆心地に超特大の疑似オブリビオン・ストームが発生した。
 黒い嵐に巻き込まれ、多くの信者が跡形も無く消滅する。
 死という事象に深く関わる者同士の戦いだが、その姿勢は対極と言っても良い。少なくともレナーテにとって死とは耽溺するものではなく、深く識り、利用すべきものなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェリス・シー
キマイラフューチャーのギター持った自分のことを悪魔って言ってた人が
「破滅を求めるモノに地獄をくれてやる」
って言ってやかましい音楽ならしてたのなの
(フェリスはきっとロックミュージシャンを見たんでしょう)

だから、こんがり焼いて爆音と衝撃波おみまいしてみるのなの

インシニレイトでこんがり焼いたり
轟音のクラリオンでバカでかい音と衝撃波で薙ぎ払ったりしてみるのなの

悪魔の人と何か違うけどまあきっと大丈夫なの


レオンハルト・アウストラリス
滅びが幸福なんて教義も信仰も理解できないし、したくもない。
この世界の今を必死に生きる人たちの信じる明日を、誰かが勝手に決める道理なんかないんだ!

◆行動
この世界の人たちってみんな強く生きてるんだと実感しています。
多少気恥ずかしい思いもしたが手伝ってくれた人達に礼を言い、
戦闘に巻き込まれぬよう逃がし、自分は信徒たちに正面から立ち向かいます。
既に己の声は届かずとも、啖呵をきって己を『鼓舞』し、信徒の祈りを真っ向から否定する。
【第1の魔剣シャクイス】を振るい、「2回攻撃」で倒していきます。
また信徒の一人へと消えた地主や守衛の安否を問います。

※アドリブ・連携歓迎




 一時は拠点を包囲した黙示録教の信者達。
 彼らは猟兵達の迎撃により、その数を半数以下に減らしていた。
 だが、その戦意は一向に衰えを見せない。

 ガキィンッ!
 爪の一撃が往なされる音。
 魔剣シャイクスを正眼に構え直せば、相手も幽鬼の如き身体をゆらりと立て直す。
 レオンハルトは池を背に、自身を取り囲む残党達と対峙していた。
 自身と打ち合った教徒にレオンハルトは問う。
「ひとつ聞こう。此処の地主と、雇われた守衛は何処へ?」
 地主達の安否を気にする真摯な問いだったが、問われた信者達の答えは興奮の入り混じった「知らぬ」の一点張りだった。
「……」
 レオンハルトには、信徒達が嘘をついているようには思えなかった。
 地主達が彼等に襲われた可能性は低いが、今や行方を掴む事もまた、難しいのだろう。
 願わくば逃げ延びていて欲しい。そう願うレオンハルトだった。
『破滅ヲ受ケ入れヨ!!』
『そシて世界を救う地均しヲ!!』
 口々に理解し難い教義を叫び合う信者達。
 もはや雑音としか捉えられないそれらを、レオンハルトは聞き流す。
 代わりに頭の中を去来するのは、水抜きを手伝ってくれた女性と少女達の、笑顔。
 作業を終え、気恥ずかしさを覚えながらも礼を言ったレオンハルトに向けて、笑顔で手を振り、ここを立ち去った。
 彼女達が今頃は無事に拠点に帰りついている事を、レオンハルトは、祈る。
「……ここで退くわけにはいかないんだ。強く生きてるこの世界の人たちのためにも」
 決意を新たにし、剣の柄に力を籠め直したレオンハルトの後ろに。
 ひらひら、と。妖精が舞い降りた。
「キマイラフューチャーのギター持った人が、自分の事を悪魔って言ってたなの」
「フェリス、きっとその方はロッカーだ……」
 剣を構えたままツッコミを入れるレオンハルト。乾いた池の上を奔放に飛び回りながらもフェリスは続ける。
「その人、やかましい音楽ならしてたの」
 過去フェリスはキマイラフューチャーを訪れた事があるのだろう。
 そしてその世界の誇るロックミュージシャンが、鮮烈な演奏をフェリスの心に刻み込んだに違いない。
 ……ところで、このタイミングでそれを思い出すという事は、つまりはそういうことなのだろうか?
 可愛らしいピンク色の制服の中で手をもぞもぞさせ、果たしてフェリスが取り出したのは、ぴかぴか光るトランペットだった。
 いつもと変わらない様子のフェリスだが、それだけになんとなく嵐の前触れのようなモノを感じなくもない。
「で、その人が言ってたなの」

『破滅を求めるモノに地獄をくれてやる』って。

「――!」
 咄嗟に両耳を覆うレオンハルト。
 フェリスがトランペットを一吹きした瞬間。
 教徒達が吹き飛んだ。
 トランペットから発生した凄まじい音が衝撃波となり、目の前の教徒達を薙ぎ倒したのだ。
 吹き上がる砂煙と、途切れる囲み。
 耳鳴りで身悶えする教徒達の間を、レオンハルトが駆ける。
「滅びが幸福なんて教義も信仰も理解できないし、したくもない」
 信者達の掲げる、救い。
 レオンハルトにとって、それは空虚以外の何者でもなく。
 それに引き換え、絶望の淵に追いやられ、それでも生きるために池の水を集める少女達の姿の、なんと眩しく実感に満ちていた事か。
「――この世界の今を必死に生きる人たちの信じる明日を、誰かが勝手に決める道理なんかないんだ!!」
 教義を真正面から否定するレオンハルト。
 池の中央ではなおもフェリスが演奏を続けている。
 爆音が荒れ狂い、衝撃波が信者達を切り裂いていく。阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
 囲みは今や四散し、信徒達は全くと言って良い程に連携が取れなくなっていた。
 勝機だ。
「いくぞ、シャクイス!」
 ひゅん。
 袈裟斬りで信者の腕を斬り落とせば。
 ひゅん。
 勢いのままぐるりと回し、流れるような逆袈裟が止めを刺す。
 それまでやや粗削りだったレオンハルトの太刀筋が、精度を増した。
 一人、また一人と信徒を打ち倒していく
 彼はまさにその瞬間、剣と『会話』をしていたのだった。
(「我を上手く使うのだな!レオンハルト!」)
 傍から見ていたフェリスにも、ふと、そんな声が聞こえた、気がした。

 掃討が終わりを迎えようとしていた、その時。
 最後の一人がレオンハルトに特攻を仕掛けて来た。
 ――道連れにするつもりだ。
 ぼ、と。
 迫る教徒の目と口の奥に、紅蓮の炎が燈った。
 向けられていたのは、フェリスの小さな指先。
「こんがり焼けたって上手い言い方だと思うの」
 絶叫と共に体内から灼かれる最後の信者。
 高熱により、既に起動したオブリビオン爆弾が心臓ごと溶解し、無力化される。
 紅い炎が燃え移ったローブを吹き渡る風が盛大に吹き散らし、燐光となって教徒の最期を飾った。
「悪魔の人と何か違ったけど……でもまあ大丈夫だったなの」
 自身の思い描いていたものとは何処か違う結果に首を捻るフェリス。
 しかしひとまず邪悪な教団が打倒されたのは、紛れも無い事実なのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『咎忍『布袋葵』』

POW   :    禁呪『発破漁』
【飛ばした鱗】が命中した対象を爆破し、更に互いを【粘液の網】で繋ぐ。
SPD   :    禁呪『磯撫』
【自分のヒレや尻尾】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    禁呪『根流し』
自身からレベルm半径内の無機物を【毒魚の群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:烏鷺山

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は政木・朱鞠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●怪力乱神
 静けさを取り戻した拠点。
 猟兵達が構えを解いた。その時。

 ぞわり、と。
 禍々しい気配に振り返れば。

『――』
 池の真上に、巨大な魚がふわふわと浮いていた。
 これが……神魚なのだろうか?

 ――否。これは『布袋葵』だ。
 漁具を使う咎人殺し。その怨念が形を取ったもの。
 殺人の味を覚え、仲間に成敗され、輪廻の果てに人の心を失い、
 今や空腹の権化となり果てたのだと。

『――』
 池の上で揺れていた布袋葵だったが。
 やがて、その金魚のように巨大な鰭を翻し、悠々と辺りを泳ぎ始めた。
 塀の外に出るのは、時間の問題だ。
アリアケ・ヴィオレータ
アドリブ・連携OK
【POW】
デカい獲物の気配がしたから来たぜ!
ここがアポカリプス・ヘルか。
随分乾いた風の匂いがする世界で
……なんか出汁の香りもしてねえか?
ま、いい。漁師(オレ)がいて獲物(テメェ)がいるならやることは一つ。
漁(ト)るだけだぜ、化け魚!
って、なんだこの鱗、爆発しやがる。
ボンボンボンボン鬱陶しいな発破漁かっての!
『念動力』で弾き飛ばしちまえるか?
鱗や網をしのぎながら接近。

「漁(ト)るぞ、『不知火』!」

手にした銛、メガリスの『不知火』を
投げ付け、命中すればUC【海神殺し】を発動。
あの塀を越えさせねぇ方がよさそうだからな、
『串刺し』にしてやる、落ちろ化け魚!




 先立つのは、大物の予感。
「デカい獲物の気配がしたから来たぜ!」
 期待に胸を高鳴らせ、アリアケ・ヴィオレータ(夜明けの漁り人・f26240)は天を仰いだ。
「にしても、ここがアポカリプスヘルか」
 アリアケの視線の先には、蒼く澄み切った空。
 だが視線を少し下に落とせば、無機質な塀が地平線を覆い隠していた。
 そして足元には、荒れた大地。
 長い青髪を揺らす風が運んで来るのは潮の香ではなく、土埃特有の乾いた匂いと。
(「……なんか出汁の香りもしてねえか?」)
 仄かな良い香り。先程の料理の名残であった。
「ま、いい」
 気を取り直して。
 獲物の位置を見定めるべくアリアケが周囲を見回せば……それはすぐに見つかった。
 今や大地の窪みと化した池。
 そこから少し離れた場所を、巨大な魚がふわふわと漂っていた。
 布袋葵だ。
 その威容を目にするや、アリアケの銛を握る手に力が篭る。
 ざ、と駆け出すアリアケ。布袋葵の近くまで来ると、先程まで担いでいた銛の先端を、びゅんっ、と布袋葵に向ける。
「漁師(オレ)がいて獲物(テメェ)がいるならやることは一つ! 漁(ト)るだけだぜ、化け魚!」
 威勢良く啖呵を切るアリアケ。並外れた大物を前にして衝動を抑え切れぬのは、漁師の性なのだ。
『――』
 ゆらり、と。
 あたかも挑戦と受け取ったかのように。
 布袋葵が、その目の無い頭をアリアケに向けて。
 刹那、全身から何かを飛ばした。
「うおっと……」
 咄嗟にアリアケがサイドステップで飛び退けばそれは後方へと飛び……爆音が巻き起こった。
 続いて、にちゃりと何やら糸を引くような音。
 アリアケが振り返ると、爆心地は粘液滴る沼地と化していた。
「なんだこの鱗、爆発しやがる」
 鱗爆弾。
 その戦い方は、アリアケが知る如何なる魚ともかけ離れていた。まさに化物だ。
 次弾を放とうと身体を震わせる布袋葵。
 だが。
「よし、漁(ト)るぞ、『不知火』!」
 アリアケは達人である。
 相手が鯨だろうが海竜だろうが関係ない。
 何よりその手には、執念を宿した一本の銛がある。
 豪快にぐるりと銛を回し、向かって来る散弾の方へ駆け出した。
 新たな爆音を置き去りに、獲物との距離を急速に詰めるアリアケ。
「ボンボンボンボン鬱陶しいな発破漁かっての!」
 なおも攻勢を緩めない布袋葵。
 巨体から放たれる、三度目の鱗の散弾。
 その射線の隙間に、アリアケが銛を担いだ腕を大きく後ろに引き、半身になった身体を滑り込ませれば。
 体を守るように展開されたオーラが鱗を弾き、アリアケの身体スレスレを掠めていく。
「落ちろ、化け魚!」
 アリアケは渾身の力で、布袋葵のがら空きの腹に向けて『不知火』を投げ放った。
 至近距離から叩き込まれた、重い一突き。
 命中。
『――』
 体を左右に振って暴れる布袋葵だが、その身体に深く喰い入った銛の先端が、なかなか抜けない。
 動きを止められる布袋葵。
「おらっ!」
 アリアケが布袋葵に飛び付き、渾身の力で銛を掴めば、布袋葵の傷口から漆黒の血が滴る。
 その銛の先端は――無数の針と化していた。
 ユーベルコード・海神殺しの真価。
 布袋葵が暴れるたびに、その身体を内側から傷付けていたのだ。
「逃がしゃしねえぜ、化け魚!」
 地面に着地し、布袋葵をその場に縫い留めるべく、なおも奮闘を続ける。

 アリアケ、本日の一番銛であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ連携歓迎
漁具を使う者が魚の姿になるなんて、皮肉な話ね

しかし、あの怨念に塗れた禍々しい姿……
あれを神と呼ぶのは、流石に無理がない?

■戦闘
あの毒魚の群れは厄介ね、死霊の障壁による【オーラ防御】で
防いでも長くは持ちそうにないし……

ここは【UC】で、布袋葵も含めた周囲の毒魚の群れ全てに
激しい【恐怖を与える】事で、身を竦ませて動きを封じさせるわ

……あの怨念の塊にも、恐怖ってあるのかしら
まぁ、もし動けなくなっているようならその隙を狙って
ヒルデで叩き落してあげる

あとは、障壁から元に戻した死霊たちと【呪詛】を
重ね掛けする事で動きを制限させて、隙が出来次第
ヒルデの全力の攻撃で一気に勝負を決めましょうか




 ざぁ、と。
 辺りの岩石は融けるように崩れ、たちまち小魚の大群へと。
 空を埋めつつ全方位から襲い来る重圧。
 瀬戸際で食い止めるのは、死の気配に満ちた障壁。
「漁具を使う者が魚の姿になるなんて、皮肉な話ね」
 無数の死霊を壁として展開し、敵の攻勢を凌ぐレナーテは、白い日傘に黒々と映り込む魚影の流れを読み取りながら、そう独り言ちた。
 まだ咎人使いだった頃の布袋葵の無念さは察するに余りある。
 因果応報とはいえ、自身が魚となって狩られる側になるとは思って居なかったに違いない。それにしても。
 陽射しを受け細まったレナーテの紫眸は、いつしか魚群の奥に潜む布袋葵へと向けられていた。
「……あれを神と呼ぶのは、流石に無理がない?」
 神。
 本来ならば布袋葵もそう呼ばれる筈だったが。
 猟兵達が強引に池から引き摺り出した事で、そうした未来はひとまず回避されたと言える。
 だがどちらにせよレナーテからすれば、その容姿は神とは呼び難いものであった。
 少なくとも先程の信者のように、布袋葵を迷いなく崇める気にはなれない。
 レナーテには馴染み深い死霊とは、似ているようでいてはっきりと違う。
 積み重ねた業の深さを一目でわからせるような。
 そんな容姿を、布袋葵はしていた。
『――』
 布袋葵はあくまで静かだ。だが虎視眈々と此方を狙っている事は間違いない。
 姿こそ魚だが、結局のところあれは――人の心を失った空腹の権化。でなければ。
(「怨念の塊、と見たほうが良さそうね」)
 レナーテがそこまで思い至った時。

 障壁の内部を悲鳴のような声が反響した。
 レナーテが視線を移せば……強固な筈の障壁に、小さな隙間。
 死霊の幾体かが猛毒に耐え切れず、送還されていた。
 冷静に別の死霊に命じて空隙を埋めさせるレナーテ。
 ……だが、突破されるのは時間の問題だろう。
 その時、ぴちゃり、と頭上で音がしたかと思えば。
 隙間から一匹の毒魚がレナーテの日傘に落ちかかり。
 ぱし、と。巨大な腕がそれを払い除けた。
「ヒルデ……」
 依然として沈黙を保っている。
 だがレナーテは知っている。この従者は喋れないだけで自我はある。
 負の感情も常に感じている。今この瞬間にも。
「……あの怨念の塊にも、恐怖ってあるのかしら」
 布袋葵相手には難しいにしても、この魚の群れ相手なら、間違いなく。
 その大人びた、物腰柔らかな所作で、レナーテはヒルデに向き直る。
「お願い、ヒルデ」
 あなたの声を聞かせて頂戴。
 そう呼びかけた瞬間。
 ヒルデの口から、この世とも思えぬ咆哮が放たれた。
 怨嗟と恐怖に満ちた響きだった。
 沈黙を破り放たれた叫びは、長きに渡りその胸に溜め込まれていたもので。
 魚群はたちまち四散した。
 まるで壁が剥がれ落ちるように、気を失って地に落ちる魚達。
 間隙を縫うレナーテはヒルデを吶喊させる。
 ぽかんと口を開けて硬直していた布袋葵へとヒルデが距離を詰め。
 その巨体を横殴りに殴りつけた。
 地面に叩き付けられた布袋葵だが、すぐに再起動。
 体を時計の針のようにぐるりと回し、尾鰭で足払いを仕掛ける。
 ――だがその一撃がヒルデに届く事は無かった。
 突如、布袋葵を金縛りにも似た重圧が襲った。
 無数の死霊達を使役する、レナーテの支援だ。
 一瞬、荒地に縫い留められる布袋葵。
 纏わりつく死霊達を力づくで振り払う直前。
 ヒルデの剛腕が再び、布袋葵の身体に打ち下ろされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェリス・シー
ホテイアオイ?
いけの上に浮いてるお花じゃないの?
何で植物が魚になってるの?
なんか変なの

でもでも、植物?かもしれないのなら蝗害パワーならきっと大丈夫
バッタで群がって攻撃なの

約束の刻で相変異呼び出してホテイアオイを攻撃なの

花か魚かわかんないのに、バッターキックなの 




 ちっちゃな妖精フェリスと、巨大魚・布袋葵。
 その対格差は、圧倒的であった。
『――』
 対格差だけならまだしも、毒魚の集団にフェリスを取り巻かせる大人げなさ――否、徹底ぶり。あたかも兎を倒すのに全力を尽くす獅子が如く、赤く巨大な口を開けてフェリスを威嚇していた。
 一方のフェリスはと言えば。
「ホテイアオイ? いけの上に浮いてるお花じゃないの?」
 ……いつも通りであった。全く動じない。
 ここでフェリスの言う『お花』とは、所謂ウォーターヒヤシンスを指す。水草である。
「何で植物が魚になってるの?」
 別に冗談を言っている訳ではない。フェリスに限らず植物の知識がある者がホテイアオイと聞けば、真っ先に水草を思い浮かべる筈なのだ。
「なんか変なの」
 ホテイアオイ。
 おそらくはオブリビオンとしての異名か何かなのだろうが、それにしても不思議な響きではある。この名前に決まった経緯は、確かに少し気にはなる。
 ……ともかく、植物と魚、そして両者を結びつけるホテイアオイというキーワード。これらはフェリスをして、たちどころにある仮説へと到達させた。
 即ち――『布袋葵は実は植物なのではないか?』
 正誤はさておき、もし花の類であれば身体が赤い説明もつこうというものだ。
「でもでも、植物? かも知れないのなら蝗害パワーならきっと大丈夫」
 蝗害パワー。
 フェリスの口からその言葉が出た時。
 塀の遥か向こうから、何やら音のうねり。
 程無く騒音と化したそれらは、やがて何かの羽音であると知れた。
 空にぽつぽつと無数の点が現れ始める。
 ……蝗だ。その全てが攻撃的な相変異個体で構成されている。
 暗黒の竜巻より遥か昔より存在し、未だ明確な対処法の存在しない、飢餓の波。
 それが今まさに拠点の塀を乗り越え、お世辞にも広いとは言えない区画に雪崩れ込んで来たのだ。
 その狙いは明確。
 茶褐色の波が、布袋葵と毒魚の群れを八方から囲み返す形となった。
「みんなで群がって攻撃なの」
 攻撃命令を下すフェリス。
 ――逃れようのない『約束の時』が始まった。

 それから先は阿鼻叫喚の一言であった。
 毒魚と蝗。群れと群れとのぶつかり合いが展開されたのだ。
 金色に輝く魚達は懸命な抵抗を試みたが、瞬く間に蝗の波に呑まれ、骨と化して荒野にポイ捨てされた。
 魚の毒にやられた蝗も少なくはなかったが、味方の死骸を乗り越え、ひた押しに包囲を狭め続けた。
 やがて完全に駆逐される毒魚の群れ。残った蝗の群れが、遂に布袋葵に着弾した。
 食欲剥き出しの蝗達は布袋葵の身体を瞬く間に覆い尽くす。
 振り払おうとする布袋葵だが、巨大な口に噛み潰されようが、鰭で打ち据えられようが、次々押し寄せる後続がその身体を傷付け、出血させた。
 ……残念ながら、布袋葵は花ではなく魚だったようだ。
 とはいえ、元より魚が蝗害に敵う筈も無い。予想は外れたとはいえ、フェリスの選択は最適に近いものであったと言える。
「花じゃないってわかったけど、バッターキックなの」
 消耗し、地面にへたり込んだ布袋葵。
 腹を満たしたバッタ達はその体を蹴り、けたたましい羽音を残して何処へともなく飛び去って行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レオンハルト・アウストラリス
◎アドリブ・連携歓迎

布袋葵…光を遮り、周囲を枯らして、全てを呑み込む悪魔の花…「まさに」って感じだな。
拠点の人たちも誰も犠牲になんかさせるか!ここで食い止める!

【戦闘】
UC【第4の魔剣】で形態変化した魔剣に【騎乗】し水上と低空を縦横無尽に翔け、
追い縋る毒魚の群れを振り切り天空へと飛翔する。

自分ごと布袋葵目掛けて真っ直ぐに急降下し撫で斬りにする。
可能なら味方と連携し腹が空いているなら腹いっぱいにしてやらんとばかりに、
口の中へと突っ込み、皮を突き破って飛び出す。

【その後】
拠点の女性たちに礼を言いに行きます。
地主と衛兵たちの安否の確認を。
それが叶わないなら、せめてにと祈ります。




「!」
 横合いから迫る魚の一団を、体を屈めて大きく避ける。
 次の瞬間、猛毒を備えた魚の体表は遠く後ろに過ぎ去っていた。
 荒れ狂う魚群の流れを読み取りながら、レオンハルトは大剣と化した魔剣シャイクスの上に両脚を乗せ、サーファーの如く低空を翔けていた。
 なおも執拗に追い縋る魚群を限界まで引き付け、急速に方向転換。
 乱れた魚群の真下に猛スピードで滑り込み、地上スレスレを通過する。
 錯綜した魚群を捲く複雑な飛翔は、魔剣の意思によるものだ。
 激しく重心が移り変わる剣の上で、レオンハルトは視界の中で動くものだけに神経を研ぎ澄まし、敵の攻撃を掻い潜る事に集中していた。
「……今だ!」
 魚群の流れが乱れた瞬間を見計らってレオンハルトが合図を出せば、魔剣がその切先を天高く上げた。
 急上昇。
 追っ手を撒くほどにぐんぐんと高度を上げる魔剣とレオンハルト。
 追い縋る魚群を振り切り、そのまま天空へと。
 上空特有の冷たい空気がレオンハルトの頬を撫で、一際強い風が茶褐色のコートを激しくはためかせる。
 魔剣の上でバランスを取り直したレオンハルトが地上を見下せば。
 そこには、小さくなった拠点の中で金魚のように揺れる、赤い点。
(「布袋葵……光を遮り、周囲を枯らして、全てを呑み込む悪魔の花」)
 レオンハルトの直感は、当たりだろう。布袋葵はオブリビオン。無尽蔵の食欲を満たす為、手当たり次第に災厄を撒き散らす。そしてその災厄の向かう先には。
「……誰も犠牲になんかさせるか!」
 決して死んで欲しくない、掛け替えのない人々も。
「ここで食い止める!」
 改めて不退転の意志を固め、右手で柄を強く握り締めれば。
 魔剣は地面に向けてほぼ垂直、レオンハルトが両脚を乗せていられるギリギリの角度を取った。
 一瞬の浮遊感。
 急降下。
 耳を塞ぐ轟音を手放しに、来るべき瞬間に向けて息を詰めるレオンハルト。
 重力も加勢し、落下速度は増す一方だ。
 見開かれた赤い瞳の中で布袋葵の身体がみるみる大きくなり、視界を埋め尽した、次の瞬間。
『――』
 撫で斬り。
 布袋葵の左鰭が根元から切断された。
 その巨体が、ずん、と音を立てて地上に落ちる。
 地上ギリギリで急旋回を行い、今度は横方向に低空を駆けるシャイクス。そのまま二太刀目を見舞う構え。
「……っ!」
 慣性に振り回されないよう、剣上で体勢を整えるレオンハルト。
 視界の端には、再び浮上しようとする布袋葵の姿。
 今を逃せば次はない。
「頼んだぞ、シャイクス!」
 覚悟を決めたレオンハルトはシャイクスの判断に身を委ねる。
 狙いは、洞穴の如く巨大な口。
 豪速の矢と化したレオンハルトとシャイクスが布袋葵の口に向けて斜めに突入し、その程近い場所――横腹を突き破り脱出した。
『――』
 急所を捉えたのか、藻掻く布袋葵。
 その体を風船の如く数倍にも膨張させたかと思えば。
 瞬間、派手な爆音。
 辺りに黒い怨念を撒き散らし、遂に布袋葵はその体を四散させたのだった。

 ひゅん、と。踵を返し爆発から逃れ去った魔剣シャイクス。
 低空を飛び、やがてゆっくり速度を落とす。
 レオンハルトは再び二本の脚で地上に降り立った。
 魔剣の切先を地に落とし、呼吸を整える。
 ふとレオンハルトが気付けば、辺りを夕闇が覆いつつあった。
(「手伝ってくれた拠点の人たちにお礼を言いに行こう」)
 それと。
 レオンハルトにはもう一つ懸念が。
(「そう言えば……男手が帰って来るって言ってたな。もしかしたら、その人たちが地主についての情報を掴んでいるかも知れない」)
 ……もしそれが叶わなくとも、せめて無事を。胸の裡で呟き、拠点を後にするレオンハルト。
 その後ろ姿を、からっぽの池が見送っていた。

●後日談
 数日後、池の水が再び湧き始めた事を人々は知った。
 周囲の幾つかの拠点が移住を行った結果、それなりの大きさの拠点となった。

 拠点の地主は……結局帰って来なかった。
 きっと何処かに移り住んだのだろう。人々はそう噂し合った。

 池は日々元の姿を取り戻しつつ、人々の生活の基盤となった。
 かつて私欲で築かれた塀は、今や人々を脅威から守る壁となった。

 そしてその陰には、猟兵達の活躍があった。
 ある者は人知れず。またある者は大々的に。
 やり方こそ違えど、彼らの努力は復興への第一歩として実を結んだのだ。
 人々の営みが続く限り、彼らの功績は此処に。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年04月08日


挿絵イラスト