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眠るもの達と福の茶屋

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●花の咲く場所
 山の麓にある、美味しいお茶屋。福寿庵。
 穏やかに咲いた黄色い福寿草が目印のお茶屋は、村人にも、旅人にも愛される小さなお店だ。
 看板メニューはなんといっても大福。
 他にも自慢の団子や梅饅頭などなど、色とりどりのお菓子がある。
 また。雪うさぎの練り切りや冬の花をイメージした和菓子といった、季節限定のメニューも並んでいた。
「うん、新作のお菓子もできたし、今日もがんばるとするかね!」
 看板娘の『お福』は、黒髪を結い上げると笑顔で気合を入れる。
 しかし。
 笑顔が自慢の彼女にも、一つ気になることがあった。
「……そういえば、昨日も帰ってこなかったなぁ。大丈夫かねぇ?」
 店前にでると、道の先にある大きな山。
 彼女はその山を見上げて、不安そうに呟いた。

 実は、数日前に山に登った村人が、下山していないのだ。
 それも1人ではない。
 数名ほど上っているはずだが、帰ってきたのをお福は見てはいなかった。
 山へ続く道は、茶店の前の道1本のみ。
 帰ってきたならわかる筈だが……。

「山の奥なんざ、墓場しかないってのに。……まだ震災の事を引きずってんだろうか」
 震災。
 数年前にこの山が噴火したのだ。
 噴火はたいした規模ではなかったが、2次災害として発生した火事が村の人々を襲った。
 その際になくなった人々が丁寧に葬られているのが、山の奥にある墓場だった。
 以来、墓場の周りには無数の彼岸花が咲き乱れている。
「よし。もし今日も帰ってこなかったら、アタシが調べてきてやろう。村の人たちにも相談したが、待ってるだけじゃ心配ばかりで拉致があかねぇ」
 責任感から決意するお福。
 自分の胸を叩くと、仕事へと戻っていく。

 このときは、まだ。その行動が自分の命を脅かすとは、知らないまま――。

●動き出す猟兵たち
「サムライエンパイアの世界で、失踪事件が起きました」
 静かに語りだしたのは、ヴォント・ヴィーヴィス(人間の死霊術士・f00914)だ。
 手元の光る物体――グリモアを操作する。すると、彼の周囲には、絨毯のように広がった彼岸花の風景が映し出された。
「このまま放置すると、明日には茶屋の娘さんが事件に巻き込まれてしまいます。そうなる前に、皆さんの手で解決してあげて下さい」

 サムライエンパイア。
 日本に似た歴史を持つ島国で、その世界感は時代劇を彷彿とさせる。
 江戸時代が続くこの場所にも、敵であるオブリビオンこと怪異の魔の手が及んでいた。
 彼岸花の咲き乱れる、この山にも。

「犯人はおそらく。魑魅魍魎の1つ、『黄泉の本坪鈴』です」
 『黄泉の本坪鈴』は大きな鈴を抱えた鴉のような、可愛らしい風貌の敵だ。
 しかし、能力は恐ろしい。
 彼らに取り付かれた人間は、自ら命を断とうと操られてしまうのだから。
「今回の場合、震災でできた心の傷に付け込まれた人が、操られていたようですね」
 既に墓場へ向かった人々は、息絶えているだろう。
 だが、これから向かう人々の命なら別だ。
 今日中に敵を倒せれば――明日墓場に来る予定のお福は、死なずにすむ。
 その為には、猟兵の力が必要なのだ。

「猟兵の皆さんが向かう、戦闘地点について説明しますね」
 山の奥にある、彼岸花の咲き乱れる墓場。
 墓場、といっても言われないとわからないほど。現在は花で埋もれていた。
 邪魔な木々も少なく、戦うには十分なスペースがある。
「この墓場は震災でなくなった方を弔って作られました。墓場の最奥には、厄災を沈める為の祠と、その隣に大きな1つの墓石があります。――この石だけは、壊さないであげてくれませんか」
 村の人々が、きっと悲しみますから。
 ヴォントが言う。この墓石の下には、無数の命が眠っているのだと。

「戦い終わったら、山の麓のお茶屋さんに寄るといいでしょう。娘さんが事件を心配しています。あと、あそこの団子は凄く美味しいですよ」
 事件の真相を伝えれば、労いに奢ってもらえるとのことだ。
「敵数は多く、しかも素早いです。大変かとは思いますが、どうか皆さんよろしくお願いします」
 これ以上の被害を出さない為に。

 事件を解決させるべく猟兵達が動き出す――!


滝谷
 花と甘味は別腹です。甘いものが食べたくなって書きました。

 滝谷です、よろしくお願いします。
 敵を倒して美味しいものを食べましょう。今回はそんなお話。
 筆は遅いほうですが、ご縁がありましたら、よろしくお願いします。
 途中参加なども歓迎ですので、どうぞご自由に。

●成功・失敗条件
 敵を全て倒せば成功です。ご褒美に3章で和菓子やお茶を楽しめます。
 失敗は敵に倒される、又は3章を楽しめない場合などです。茶屋は燃やさないであげてください。

●戦地の補足
 戦場には季節はずれの彼岸花が咲き乱れております。
 震災以降、自然と花が咲くようになったのだとか。
 墓場といっても、言われないとわかりにくいです。
 彼岸花の先、山の奥ふかくに大きな墓石が1つ、隣には小さな祠。
 その墓石の下に、亡くなられた方の遺骨が纏めて埋められております。

 広い戦場ですから、大暴れも可能です。
 皆さんは、丁度敵が集っているところに転送されます。

●注意点
 もし、ご友人やグループで参加する場合。
 文章の頭に【友人のお名前や、グループ名】があるとわかり易いです。
 逆に誰とも絡みたくない人は、【×】と書いてくださればソロでの描写を致します。

 何もない場合、こちらの判断で数名纏めての描写を行う事があります。(プレイング次第ですが)
 苦手な方はご注意を。

 ヴォントは不精な人なので、3章でもお誘いがない限り登場することはありません。
 (誘われても、くるかは運と思ってください)
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第1章 集団戦 『黄泉の本坪鈴』

POW   :    黄泉の門
【黄泉の門が開き飛び出してくる炎 】が命中した対象を燃やす。放たれた【地獄の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    人魂の炎
レベル×1個の【人魂 】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ   :    後悔の念
【本坪鈴本体 】から【後悔の念を強制的に呼び起こす念】を放ち、【自身が一番後悔している過去の幻を見せる事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

佑・盾
先に行ってしまった人達を助けられないのは心苦しいけど……
ボクたちが行って犠牲を少しでも減らせるのなら急ぐしかないね。
誤って墓石を壊さないように今回はビーム砲とかドリルとかロケットパンチは使わないでおこっと。

相手が火を使うのならボクが鎮火させてあげるよ。
【BurstBinder】に【BurstFireEngineUnit】を換装。
ユーベルコードも使いつつ、放水銃から高圧水流を使った水の【属性攻撃】で攻撃するよ。
攻撃には【火炎耐性】【呪詛耐性】で対抗してみせるよ


白木院・雪之助
美味しい茶屋があると聞いて来れば厄介なことが起きておるな。……仕方ない、解決しに行くか。そうしなければ茶屋の甘味を味わえないことであるしな。

数には数を、というわけで雪だるまを作り出し戦わせるぞ!
煩わしい術は【破魔】の霊符を投げつけて妨害する。……その雪山の光景をそれ以上我に見せるでない。ああ全く、だから寒いのは嫌である……。


庚・鞠緒
心の弱みにつけこむとか
UDCじゃなくっても変わンねェなオブリビオンのすることなんてよ

飛んでるやつは【Reign in Blood】で血の刃を飛ばして撃ち落とす
血で赤く染めてやるよ
花畑にはお似合いの色になるンじゃねェの?

【なぎ払い】で広範囲な刃を飛ばして確実に当てにいく
外してもウチに有利な地形ができるだけだしな
その場に残った血を鉤爪で吸い上げてまた刃を飛ばすだけさ
ウチの「鉤爪」が届く位置まで下りてくるようなら【2回攻撃】を仕掛ける

奥には絶対行かせねェからな
場合によっちゃァ【捨て身の一撃】だってやってやる

敵の攻撃で一番食らいたくねェのは後悔の念だなァ
【勇気】とか【気合い】でなんとか耐えらンねェかな



●悲しみの眠る場所
 少年少女達が、目的地へ足を踏み入れる。
 真紅の彼岸花の向こうに、ターゲットとする敵がいた。
 『黄泉の本坪鈴』。黄泉へ導く者。
 鴉とも獣とも見れる風貌の敵は、鈴を抱えて次の被害者を待っている。

「美味しい茶屋があると聞いて来れば厄介なことが起きておるな」
 声に出したのは、白木院・雪之助(雪狐・f10613)だ。
 是非お菓子を食べたいところだが――奴らを倒さなければ、甘味を味わうどころではない。
「……仕方ない、解決しに行くか」
 話しかければ、隣にいたドラゴニアンの少女。佑・盾(BurstBinder/JUNE・f11075)が頷いた。
「ボクたちが行って犠牲を少しでも減らせるのなら、急ぐしかないね!」
 先に行ってしまった人達を助けられないのは心苦しいけど……と言う言葉は胸に秘め。
 彼女は前進する。前向きな思いとともに。
 さぁ、戦闘開始だ!

●紅
 急な訪問者の襲撃に、敵は不意打ちを食らう形となった。
「心の弱みにつけこむとか――変わンねェなオブリビオンのすることなんてよ!」
 鉤爪で敵をなぎ払う、庚・鞠緒(喰らい尽くす供物・f12172)。
 素早く踏み込んでの一撃に、敵は対応できない。
 瞬く間に血しぶきが飛ぶ。
 逃げ遅れた本坪鈴が弧を描いて宙を舞った。
「――!!」
 残りの敵がすぐさま四方にばらけた。
 警戒して鞠緒と距離をとる。
 鈴を鳴らせば現われる、無数の人魂の炎。
 その火を周囲に纏わせて、別の本坪鈴が突進をしてきた。炎で爪ごと焼くつもりか。
 ……だが、そう簡単に彼女の攻撃はかわせない。
 鞠緒は鉤爪だけでなく、滴る血さえも武器にするのだから。

『お似合いの色にしてやるよ』

 Reign in Blood(レイン・イン・ブラッド)。爪から放たれた血の弾丸が再び敵を貫いた。
 勢いで敵を彼岸花の中へ叩き付ければ、飛び散った血は更に花を深い赤に染めてゆく。
「花畑にはお似合いの色になンじゃねェの?」
 強気な鞠緒。それでいて、警戒することは忘れない。
 戦場の血の色で、更に火力を高めてゆく。

「おおー! これは負けてられないね!」
 鞠緒の戦闘をみた盾が、意気揚々と武器を構える。
 その前では、別の本坪鈴達が門を出現させていた。
 開こうとする黄泉の門から炎が零れるのにあわせ、多彩に武器を組み替える。
「相手が火を使うのなら、ボクが鎮火させてあげるよ」
 主戦武器【BurstBinder】へ、放水銃【BurstFireEngineUnit】を換装。
 水圧、OK!
 目標、ロックオン!
 敵が業火の炎を開放するのにあわせ、盾が必殺技を放つ。

『こういう時はこの装備だね!鎮圧するよ!』
 
 豪快な高圧水流によるBurstBinder/code:IMPULSE(バーストバインダー・コード・インパルス)。
 直撃を食らった敵は、水圧で木に打ち付けられる。
 衝撃で硬直する姿の敵に、ガッツポーズの盾。
 さらに敵が放った炎が燃え移った、木や、祠もどんどん鎮火させてゆく。
 炎に水。盾の攻撃は効果覿面と言えた。
 更に水を吸った敵の動きが鈍くなる。
 故に。本坪鈴の多くが彼女を警戒し、真っ先に叩き潰そうと考えた。
 再び現われた人魂の火。一斉に、彼女へ攻撃を放つ!

 だが。
 人魂の火が、盾に届く事はない。
 小さな雪だるま達により、阻害されたのだ。
「数には数を――が鉄則であろう?」
 強気に微笑んだのは雪之助だ。
 彼の雪だるま合戦(ユキダルマガッセン)によって召喚された雪だるま達が仲間をサポートしていたのだ。
 もちろん、守るだけではない。

『行け、我がしもべたちよ!』

 雪之助が追加の雪だるまを召喚すると、反撃とばかりに、雪だるまが敵の懐めがけて体当たりを開始した。
 花の下に隠れていた雪だるまが、ロケットの如く飛んでくる。
 可愛くてシュール。
 しかも痛い。
 数に押されて耐えかねたか。残りの敵が鈴から黒い霧を吐き出し始めた。
 黒い霧……いや、後悔の幻を見せる邪悪な念を。
 気づいた鞠緒が警告と飛ばす。
「幻覚だ! 気をつけろ!」
「――っ!」
 一瞬で。雪之助の周囲は、紅から白の風景へと変わった。
 嗚呼! 確か、この雪はあの時の――!
「その雪山の光景をそれ以上我に見せるでない!」
 とっさに投げつけた破魔の霊符。
 霊符によって傷ついた本坪鈴は、更に雪だるまの追撃で沈んでいった。
 戻った視界に、ホッとしながら。雪を払う仕草をする雪之助。
「ああ全く、だから寒いのは嫌である……」

●隠された謎
 猟兵達は快進撃を続けていく。
 そのすみで、少しだけ早くとろけた雪だるまがいたのは気のせいか。

「うむ、残り5匹かのぅ」
 雪之助が見え隠れする敵を追う。
 と、盾が首をかしげた。
「え? 敵の『気配』は6匹じゃないかな?」
「なんだ、数え間違いかよ――」
 口にする鞠緒。だが、すぐに奇妙なことに気がついた。
 素早く敵で目で追う鞠緒。
 確かに、黄泉の本坪鈴の『数』は5なのだ。

 その小さな誤差が、やけに引っかかる。

「ま、全部倒せば良いだけの事だ」
「よーし! このままいっくよー!」
 疑問はそのままに、再び手に武器を取る3名。
 止まらぬ勢いのまま、猟兵は敵をなぎ倒してゆく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・ディーツェ
【SPD】

墓場しかないか、墓場があってくれたと考えるのか…それが明暗を分けたのかも知れないね

石は確実に、狂い咲いたリコリスもなるべく傷付けないよう立ち回ろうか

【ブラックドッグ】を召喚している時点で難しいかもだけど…わんこ、静かに敵を「食う」んだ
囲まれないよう立ち位置を留意し相対

拷問具の鞭でなるべく複数敵に【属性攻撃】
間合いが近い者は鉤爪型ガジェットで【傷口を抉る】

攻撃動作も見極め回避を試行
後悔している幻を見せるなんて悪趣味だね?

俺の可愛い片割れ、あのこが生け贄に、ばらばらにされた時に悔やんださ…邪魔な者は早く皆殺しにしておくべきだったと、何度も、何度も

同じ痛みを与えてあげよう、肉の塊になるまで


御剣・刀也
彼岸花の咲く墓場。か
死んでいった連中の無念が晴れる訳じゃねぇが、少しは心が癒されるといいな
折角きれいに咲いてんだ。荒らさせやしないぜ

「本当に、侘び寂びのある所にてめぇら出てくんな。まぁ、孫だけ無念も集まりやすいんだろうが」
黄泉の門からの炎、人魂の炎は遠距離攻撃が可能と思うので撃たれたら避けるか斬り払うかしつつ距離を詰める。
避けるのも斬り払うのも間に合わなかったら被弾覚悟で突っ込む
「その程度で止めらると思うな!!」
後悔の念は自分の好きなように、自分で決めて生きて来たので基本無い
最短距離を一気に突っ込んで妖怪を斬り捨てる
「一直線に突っ込むだけだ。お前らの想像より速かったろ?」


赫・絲
断たれるべきは、お茶屋のあの子と此岸の縁じゃない、
お前があの子と結ぼうとしている黄泉路への縁だ。
落とす必要のない命を、黄泉路へは逝かせないよ。
お出で、遊ぼう。

魂が眠る場所で戦うことへは、大地に対して小さく祈りを
彼岸の花も祠も墓石もできる限り荒らさぬように、今は糸は使わない

お出で、お出で――紅藤、白藤、出番だよ。
みんな遊び足りないみたいだ、沢山遊んであげて。

敵の攻撃は油断なく【見切り】の力も使って避け、時に大鋏で捌きながら、
隙と死角を作り出すため、自身の方へ誘うように挑発
作り出した死角から、【属性付与】と【全力魔法】の力で増幅させた炎を牙に纏わせた二匹の狐・紅藤と白藤に仕留めさせる



●深まる謎
「あちゃー……まぁ、こうなるよな」
 額に手を当てるのは、22歳、お兄さん。御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)だ。
 できることならば花を残してあげたかったと悔やむ彼。
「狂い咲いたリコリス。なるべく傷つけたくなかったけど」
 傍で呟いたのは、99歳、お兄さん。ヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)。
 ため息混じりに彼岸花へ目をやれば、既に戦闘で多くの首が折れていた。

 しかし。変わりに気づいたこともある。
 彼岸花の一部が、枯れているのだ。
 屋根の焼けた祠の傍だけ、花が干乾びはじめている。
 現在進行形で、ゆっくりとその数は増えていた。

「こんなの情報になかったけど」
 魂の眠る場所へ、祈りを捧げていた赫・絲(赤い糸・f00433)が口にした。
 予言になかったことでも起こり初めているのか?
「(だとしたら、尚更。祠も墓石も花も、荒らさないほうがいいよね)」
 糸の代わりに大鋏を手にして動き出す。
 ――おいで、おいで。
 絲とヴォルフガングの言葉が重なった。

『おいで、お前たち。あの子を護っておくれ』
 絲の狐月(ファントムロア)。
 静寂の中から、心強い狐霊が生まれ出る。2体の霊は炎を纏い、彼女の傍に寄り添った。

『おいで、わんこ。「墓標」のオレとお散歩だ』
 ゆっくりと漆黒の闇が犬の形を成してゆく。
 ブラックドッグ(ブラックドッグ)。3mを超える狂犬を従え、ヴォルフガングも歩き出す。

「おいで、か……」
 2人の召喚獣を見る刀也。
 一瞬。呼び出す仕草を真似てみた。
 ……うん。やっぱ無理だな!

●戦闘
 敵の動きに合わせ、3人も四方へとばらけた。
 残る敵は、皆素早い固体ばかり。

 しかし、負けず劣らずの速度で、『黄泉の本坪鈴』と渡り合うのはブラックドッグだ。
 ヴォルフガングと力を補いあい、狂犬が敵を追う。
「……わんこ、静かに敵を『食う』んだ」
 鞭で敵を追い込みながら、ヴォルフガングが命令を下す。
 ブラックドックの巨大な牙が、本坪鈴へ噛み付いた。
 抵抗する敵。
 大きな鈴から不気味な闇があふれ出す。
 それは、悪夢を呼び覚ます幻術。ヴォルフガングを巻き込んで、闇に飲まれていく。
 そこで垣間見たのは、大切な『あの子』。
 可愛い可愛い片割れの、憐れな生贄としての終焉を――亡くした時の苦しみを。どうして忘れようというのか。
 あの頃は、悲しみはまだ半分こ。
 けど、今は。涙を分かち合った人はなく――。
「後悔している幻を見せるなんて悪趣味だね?」
 バキンッ!
 ヴォルフガングが言えば、狂犬が敵を鈴ごと噛み砕く。
 すぐに闇は払われたが、彼の目に狂気が宿るには十分だった。
「(ばらばらにされた時に悔やんださ……邪魔な者は早く皆殺しにしておくべきだったと、何度も、何度も)」
 何度も何度も何度も何度も何度もなんどもナンドモ。
「同じ痛みを与えてあげよう」
 ヴォルフガングの攻撃は続く。全てが、肉の塊になるまで。

 奮闘するのは彼だけではない。
「(断たれるべきは、お茶屋のあの子と此岸の縁じゃない。お前があの子と結ぼうとしている黄泉路への縁だ)」
 ならば倒そう。絲は巧みに敵の攻撃を避けながら、本坪鈴を引き付けていた。
 炎で大切なものが壊れぬよう、時に大鋏で切り伏せる。
 敵は前方、後方に1体ずつ。
 もし彼女が1人なら、追い込まれていたことだろう。
 だが。幻術の闇を繰り出そうとする敵に、彼女は不適に微笑んだ。
「――紅藤、白藤、出番だよ」
 刹那。背後にいた敵に、強烈な衝撃が走った。
 狐霊が死角から噛み付いてきたのだ。
 魔力を注ぎ込まれた炎を牙に纏い、高温で敵を引き裂いた。
 完全な不意打ち。敵が闇とともに弾けて消えていく。
 その姿に残された本坪鈴が逃亡を開始する。が――。
「みんな遊び足りないみたいだ、沢山遊んであげて」
 逃亡を許す絲ではない。
 紅藤、白藤が駆け抜けて、敵の背後から飛び掛る。
「落とす必要のない命を、黄泉路へは逝かせないよ」

 残る敵は2体。そのうち1体をきらめく日本刀が切り裂いた。
「本当に、侘び寂びのある所にてめぇら出てくんな。まぁ、そんだけ無念も集まりやすいんだろうが」
 一度眉をひそめるも、残念がっている暇はない。
 刀也が最後の本坪鈴へ狙いを定めた。
 敵は逃げ出そうと距離をとっている。仲間がやられて、敵わないことを悟ったのだろう。
 それでも。事件を終わらせる為に、仕留めなければならない。
 刀也は地を蹴り走り出す。
 彼の前に、本坪鈴は黄泉の門を映し出した。
 門から飛び出す炎が、刀也を、周囲を、焼きつくそうとする。
「その程度で止められると思うな!」
 だが、彼は怯まない。
 自ら炎の弾丸へ飛び込んで、なお加速する!
 踵を返して逃げ出す敵へ振りぬいた刃。
 剣刃一閃。
 抵抗も許さず一刀両断に切り捨てる。
「お前らの想像より速かったろ?」
 日本刀を鞘におさめ、息せぬ残骸へ振り向いた。

 刀也がほっと一息ついたのもつかの間。
「まだだよ。あれを見て!」
 絲からの声に、刀也が祠へ目を向ける。
 と、そこには炎に包まれた祠の存在があった。
「黄泉の本坪鈴の炎が引火したのか?!」
「それもある、けど。明らかに違う炎と殺気が混じっているみたい」
 戦いで傷ついた祠に、注目が集る。

 その気配は、まだ敵がいることを物語っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『荒霊マガツヤマツミ』

POW   :    天焦神火
【周囲一帯を巻き込む大噴火】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    業炎地獄
【火口から放たれる溶岩弾】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を焼き尽くして溶岩地帯へと変化させ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    熔熱変生
自身の肉体を【超高熱で流動するマグマの塊】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ツェリスカ・ディートリッヒです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●新たなる敵
 無事に、黄泉の本坪鈴を倒した猟兵達。
 しかし。戦いの中で傷ついた祠からは、予期せぬ殺気が滲んでいた。
 猟兵達は直感する。
 この地にはまだ、別のオブリビオンが存在しているという事に。

 次第に地面が揺れ、地鳴りは地震に変わり。
 風が熱を持ち、大地は乾いてゆく。
 まるで波紋が広がるかのように、彼岸花達は枯れ果てていった。
 そして。
 祠の手前にあった地面が、ゆっくりと大きく隆起してゆく。

 目の前に現われたのは、『荒霊マガツヤマツミ』。
 時に国をも滅ぼした、火山の化身ともいうべき敵。
 存在するだけで災害を撒き散らす、狂気と恐怖の塊だ。

 感の良い者は気づくだろう。奴こそが、数年前に村を襲った災害の黒幕なのだと。

 しかし、祠に封印されていたせいか。敵の動きはまだ鈍い。
 本格的に覚醒をしていない今がチャンスなのだ。

 惨劇を繰り返さない為にも。この敵を、倒さなくては!
御剣・刀也
ふふふ。俺はついてる
まさかこれほどの相手と斬りあえるとは。冥利に尽きるってもんだ
さて、偽物の神様を斬るとしますか


天蕉神火は強烈で避けるのが難しそうなので予備動作を見たら距離を取る
業炎地獄は溶岩弾を避けるか斬り捨てるかして突っ込む
天蕉神火を打とうとしたら逃げるのが間に合わないときはその場で堪えるために刀を構える
熔熱変生で移動しようとしたら移動先を読んでそっちに移動して待ち構える
「勝てば大勝利、負ければ命がなくなるか。良いね。こんな勝負ができるなんて猟兵冥利に尽きる。さぁ、来いよ。言っとくが、俺は戦場では死人だ。死人は死を怖がらねぇぜ?逃げんじゃねぇぞ?」


赫・絲
成程、前の震災も大方お前の仕業ってコトかな。
何度も思い通りにはならないってこと、思い知らせてあげるよ。

花は枯れてしまったけれど、せめて祠近くの墓石は傷つけないよう常に留意
傷つけてしまいそうになったら、立ち位置を変えたりして被害が出ないように調整

敵の動きが活発になる前に【先制攻撃】を使って積極的に仕掛けていくよ
敵の攻撃は注意深く観察、【見切り】も使ってしっかり避ける

少しずつタイミングをずらしながら両手の鋼糸を全て射出
できる限り糸を絡める位置を合わせ、この後の攻撃の局所的な破壊力を高める

糸が絡んだら【全力魔法】で雷を増幅、雷縫で敵の破壊を狙う
押さえ込むことはできなくても、打ち崩してみせる!


白木院・雪之助
はぁ全く今日は厄日であるな。まさかこのようなオブリビオンに出会うとは……。まぁ出てきたからには打ち倒すまでのことであるがな。

攻撃は他の者に任せて我はサポートに回るか。水や氷の【属性攻撃】で敵の攻撃を防ぐ。
我に守ってもらえるのだ、有り難く感謝するがよい。

敵が術を使いそうになったら護符を投げつけて妨害するか。
ほれ、さっさと攻撃せい。いつまでも止めておくことは出来ないであるぞ。


庚・鞠緒
こいつが全ての元凶ってか!
ずっと眠ってりゃァいいのによ、今度は封印じゃ済まさねェからな
終わらせてやるよこんなクソみてェな災害はよ

【POW】
相手の攻撃のうち二つが火口を基点としてるか
じゃあ火口を切り崩して埋めちまえばどうだろ
ウチの第六感がそう告げてる、気がする

つーことでユーベルコード【Blooddrunk】を使用して【防御力】を強化
鉤爪突き立てて登るなり、強引にでも接近して火口を「鉤爪」で攻撃していく
【2回攻撃】と【力溜め】からの攻撃で削ってやるぜ
崩れてきたら【傷口をえぐる】ぞ

攻撃はいちいち熱そうだけど【火炎耐性】頼りだな
もってくれよウチのジャケット!


ヴォルフガング・ディーツェ
ふうん、人を焼いただけでは飽き足らなかったんだ
封じられた恨みか何かは知らないけれど…やり過ぎたんだ、キミは
災害で終わらせていたら予知されなかったろうに、神殺しなんてされずに済んだろうにね

先ずは【ブラックドッグ】を召喚
さあ、わんこ。今日最後の仕事だよ、頑張ろうね

攻撃を読まれ辛くする為に、異なる方向から攻撃を仕掛けていくよ
オレ自身は魔爪に変じたガジェットで氷の【属性攻撃】、更に【傷口を抉る】で追撃
周囲がマグマ地帯になったらわんこに騎乗、出来る限り接地を避け空中からコンビネーション攻撃

オレがキミを許せないのは唯2つ。
一つは、配下に逆鱗に触れさせた事。もう一つは復讐者の礼儀すらない八つ当たり加減さ



●聳え立つ荒霊
 現われた大型のオブリビオン、『荒霊マガツヤマツミ』。
 その存在を前に、猟兵達の反応は様々だ。

「ふうん、人を焼いただけでは飽き足らなかったんだ」
 苛立ちながら、ヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)はガジェットに氷の冷気を纏わせる。
「(さっきの本坪鈴は、キミの配下だったのかな?)」
 心で問う。しかし、敵に答える口はない。
 もしかしたら偶発的に存在しただけかもしれないが――それは今となってはどうでも良いことだ。
「封じられた恨みか何かは知らないけれど……やり過ぎたんだ、キミは」
 許せない。あふれ出る感情に『ブラックドッグ』が再び姿を現した。

「成程、前の震災も大方お前の仕業ってコトかな」
「こいつが全ての元凶ってか!」
 赫・絲(赤い糸・f00433)に庚・鞠緒(喰らい尽くす供物・f12172)も真相に気づく。
 警戒しながらも、どこから敵を切り崩そうか。
 2人は思考をめぐらせる。

「はぁ全く今日は厄日であるな。まさかこのようなオブリビオンに出会うとは……」
 うって変わってため息をついたのは、白木院・雪之助(雪狐・f10613)だ。
 こんな話は聞いてない。
 それはそうだ、そもそもグリモア猟兵は『祠が壊れた場合』の未来は予測していなかったのだから。
 どうしようか。横目で仲間を見れば、思わずヒィッと1歩引いた。
 視線の先にいたのは御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)だ。
「ふふふ。俺はついてる」
 肩を震わせて笑う刀也。その瞳は戦いへの喜びと執念でギラギラと輝いている。
「まさかこれほどの相手と斬りあえるとは。冥利に尽きるってもんだ!」
 殺る気(やるき)満々の刀也。雪之助も腹をくくって胸を張る。
「まぁ出てきたからには打ち倒すまでのことであるがな。……我に守ってもらえるのだ、有り難く感謝するがよい!」
「さて、偽物の神様を斬るとしますか!」
 戦いの火蓋が気って落とされる。

●苦戦
「(せめて祠近くの墓石は傷つけないようにしないと)」
 絲が戦場に気を配りながら、鋼糸を操った。
 指から放た鋼糸が、少しずつ計算されて絡んでゆく。

 間合いをつめたのは、刀也と鞠緒の2人だ。
 雪之助の投げた御符と共に、素早く敵の岩肌を蹴り武器を構える。
 だが、振りかざす寸前。足場の岩が赤く熱を持った。
「ちっ! 避けろ!」
「何っ?!」
 舌打ちし後方へ下がった刀也。
 遅れて鞠緒が地を蹴ると、次の瞬間には敵は灼熱のマグマと姿を変えた。
「ああ! 我の御符が!」
 雪之助の御符は、マグマに触れる寸前で、冷気が吹き飛び引火する。
「(あっぶねぇ! 流石に火炎耐性でも溶けるところだった)」
 鞠緒が服をはたく。幸いジャケットは無事だ。
「勝てば大勝利、負ければ命がなくなるか。良いね。こんな勝負ができるなんて」
「だが、あのマグマは流石に近づけぬであろう。御符を貼るチャンスがあれば封じてみせるのだが……!」
 意気揚々と微笑む刀也の隣で、雪之助が冷や汗を流す。
 それだけマグマは厄介なのだ。
 仮に温度に耐えられたとしても、足元を火傷すれば機動力はがた落ちしてしまう。
 そうなれば熱に飲まれるのは時間の問題だ。
 今のままでは。刀也と鞠緒の近接攻撃を封じられたも同然だった。 

 唯一この状況で、敵にダメージを与えられているのはヴォルフガングだけと言えた。
 ブラックドックの背に乗り戦場を駆ける。
「(なるほど、嫌なやつだ)」
 伸縮するマグマを巧みに避け。
 数少ない足場を次々と飛びわたる。
 すれ違いざまに。空中で飛び掛るマグマを切り裂くが、致命傷には至らない。
 敵もヴォルフガングを攻撃すべく、再び火山の姿に戻ると溶岩弾を飛ばし始める。
「(……おや、これは)」
 戦いの最中で、ヴォルフガングがあることに気がついた。
 絲の鋼糸を駆け抜ける、『アレ』の存在に。
 きっと地面で出来ている敵には、まだ気づけないものだろう。
「なら、もう少し時間を稼いであげよう。いくよ、わんこ」
 主人の言葉に、狂犬が吼える。

●反撃開始
 敵の炎が猛威となって降り注ぐ。
 戦場は次第と溶岩と化し、猟兵達の行く手を拒んだ。
 このまま。劣勢での攻防が続く――そう思われていた。

 だが。その状況を絲の一撃が打ち破る。 
 熔熱変生により再びマグマと化した敵。
 この瞬間を、待っていた。
「何度も思い通りにはならないってこと、思い知らせてあげるよ」
 準備は出来た。確信して言う絲。
 彼女の手には何本もの鋼糸。そこに溜め込んでいたありったけの魔力を注ぎ込む。

『びりびり、する?』

 次の瞬間。雷鳴が轟いた。
 駆け巡る雷撃は縁断・雷縫(エニシダチ・ナルカミヌイ)。
 増幅した魔力だけでなく、幾重にも編みこまれた鋼糸を通じての攻撃は大いに敵を苦しめた。
 相手が土で出来た火山姿であったら、こうはいかない。
 しかし、マグマなら電撃を通すのだ。
 不適に笑う絲。これでこそ糸を廻らせたかいがあったもの。
「石碑は守らせてもらうよ」
 言い放つ彼女。
 流動する敵はもがき暴れながら、その熱を失ってゆく。

『七星七縛符!!』

 その隙を雪之助は見逃さない。すかさず投げた魔力の護符。
 護符が敵の土肌にはりつけば、染み出た魔力が敵の動きを捕縛していく。
 七星七縛符は寿命と引き換えにユーベルコードを封印するのだ。
 これで敵はマグマを操る事はできない!
「ほれ、さっさと攻撃せい。いつまでも止めておくことは出来ないであるぞ」
 雪之助が仲間へ言う。
 仲間を援護する為の霊符を取り出しながら。今もなお彼の寿命が削れていく。
「任せろ!」
 駆け出したのは鞠緒だ。
 何mとある敵の岩肌を駆け上がってゆく。

『クソみてェな気分だ』

 駆け上がりながら血の力を体中にめぐらせる。
 Blooddrunk(ブラッドドランク)により活力を得た体で、目指すのは1つ。
「(敵の攻撃を封じられるのはあと僅か。その間に)」
 攻撃の基点となっていた火口。そこを切り崩して埋めてしまおうというのだ。
 もしかしたら。弱点でもあるかもしれない危険な場所へ駆け上がる。
「そこをぶっ壊せ――ウチの第六感がそう告げてる、気がする!」
 だが。
 ユーベルコードを封じたところで、全ての行動が封じられた訳ではない。
「くそっ」
 敵が、足場が。大地が揺れる。
「予知されなかったら、神殺しなんてされずに済んだろうにね」
 機転を利かせたのはヴォルフガングだ。
「さあ、わんこ。今日最後の仕事だよ、頑張ろうね」
 鞠緒とは別方向から敵の体を傷つける。
 ブラックドッグの突進もあわされば、荒霊の一部を豪快に抉って見せた。
 敵の動きが、鈍くなる。
「ずっと眠ってりゃァいいのによ、今度は封印じゃ済まさねェからな」
 火口へと。鞠緒が鉤爪をつきたてる。
 めいいっぱい力を溜め込んでの一撃。
 更に体をひねって繰り出した、もう一撃で、確実に岩を抉り取る。
 音を立てて広がるヒビ。
 だが、崩れたのは一部だ。
「くそ、火力が――」
「いかん! 離れろ! 噴火するぞ!」
 雪之助の声。束縛は既に切れていた。
 敵の奥から豪炎が吹き上がってくるのがわかる。

 もうダメか、と思った瞬間。鞠緒が目を見張った。

「さぁ、来いよ」

 噴火せんとする豪炎の中へ、飛び込む男がいたからだ。
 日本刀を構える刀也の目には、絶望なんてものがなかった。 
「言っとくが、俺は戦場では死人だ。死人は死を怖がらねぇぜ? 逃げんじゃねぇぞ」
 迎え撃つ気だ。炎に焼かれようと、火口ごとぶった切るつもりなのだ。
 よく言えば勇気。
 間違えれば無謀。
 そのことは誰より本人がわかっている。 
 それでも刀也は修羅と化す。血が騒ぐ限り。戦いを望む限り!
「俺は神様を切ると言った! 勝負!!」
 第六感。斬るべき場所を見極め素早く剣を振りかざす。
 狙うのは仲間が作った亀裂だ。

『剣刃一閃!!』

 炎が到着する直前。
 刀也の一撃で、火口が崩れ岩に埋もれた。
 吹き出るはずだった豪炎とマグマは出口を失い荒れ狂う。
 敵の体内で暴走したエネルギーは、体中に真紅の亀裂を生み出した。

 あと一押し。
「止めだ!!」
 刀也が刀を。
「打ち崩してみせる!」
 絲が鋼糸を。
「このぉ!」
 雪之助が護符を。
「終わりだ」
 ヴォルフガングが爪を叩き込む。

 そして。
「終わらせてやるよこんなクソみてェな災害はよ!!」
 鞠緒が止めを刺せば、敵は文字通り木っ端みじんに打ち砕けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『茶屋にて一服いかがでしょう?』

POW   :    お茶の味を楽しみながらまったりとする。

SPD   :    和菓子の味に舌打ちながらまったりとする。

WIZ   :    茶屋からの景色を眺めてまったりとする。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●こうして無事に
 脅威は去った。全てのオブリビオンは猟兵の手により倒されたのだ。
 墓場だった山は、少々荒れはしたものの。
 人々が眠る石碑は何とか守られた。

 別れの祈りを捧げるもの。
 勝利を喜ぶもの。
 後始末をするもの。

 それぞれ自分たちのやりたい事を終えて下山すれば、お茶屋でお福がみんなを待っていた。
「凄い地震があったんだけど、大丈夫だったかい?」
 お福に事情を話す面々。
 封印されていた荒神も、それにより起きた事件も。
 そして、これからはもう事件が起きないことも、全て。

 さぁ、これで事件は解決した。
 あとはご褒美のひと時といこう。
 事情を知ったお福が話す。
 お礼に是非うちで休んでいっておくれよ、と。
 この茶屋の名物は大福だが、それ以外にも餡蜜やお団子と言った定番物から、季節の創作菓子までいろいろなものが用意されている。
 中庭を見れば目印である福寿草。他にも梅など季節の花が楽しめる。

 茶を飲むもよし、食うもよし、花を楽しむもよし。
 穏やかな時間が、猟兵達を迎えようとしていた。
庚・鞠緒
はァー……つっかれた……
けどこれで一件落着か、ひとまずアレだな、嬉しい。うん。

ホッとしたら甘いモン食いたくなったし大福……の、前にだ
先に「本来の」食事済ませとくか、甘いモン食った後に不味いの飲みたくねェし

「大福と、あっついお茶頂戴。ウチちょっとだけ席外すから」

そう言ってお福さんには見られない所に隠れて、血液パックから血を飲む
なんやかんや戦えば血使うンだよな……あークソまっず……一気に飲んでさっさと席戻ろ

席戻ったらまずお茶をグっと一杯やって口直ししてお茶おかわり
これでやァーっとゆっくり大福が食えるってワケだ……あー……血じゃなくて餡子で生きれる身体ならなァ


御剣・刀也
POW行動

お、お茶か。良いねぇ。
此処の所のんびり茶を飲んだ記憶がねぇ
今日はのんびり、茶を楽しませてもらおうかな

「あぁ、茶がうまい」
とのんびりお茶を楽しむ
「こういう時間を楽しむためなら、人は命も賭けるんだろうな」
実際命を賭けた本人の言葉とは思えないが。
人が聞いたらお前が言うな。
とか言われそうである。
「ま、こまけぇこたぁいいや。今を楽しむために命を賭ける。それで良いやな」
と、お茶を楽しむ


白木院・雪之助
疲れた時には甘い物!我はこの時を待っておったぞ!

見た目からしておいしそうな菓子ばかりであるな。ここの景色も良い。
せっかくだ、このすまふぉで写真を撮っておくか。
お福も一緒に写るか?今なら神たる我ともつーしょっとができるぞ!

さっきの神と違って我は人畜無害であるぞ?……今はであるが。いや、なんでもないである。

そうだ、菓子を追加してよいか。……後でもう一度墓に行く。そこに供えたくてな。


赫・絲
折角のお誘いだし、ゆっくりしてから帰ろうかな

名物の大福は食べたいし、でも餡蜜も大好きだし、
誰かとわけっこできればいいんだけど……
うーん、悩ましくて決めらんない!

しっかり働いたからか、ぐう、と鳴るお腹にちょっと恥ずかしくなりつつ
思い切ってどっちも頼んじゃおっかな
いっぱい動いたし、たまにはいいよね

中庭で可愛らしく揺れる福寿草を眺めながら
運ばれてきた大福と餡蜜に舌鼓
こんなに美味しいとつい季節のお菓子も食べたくなっちゃう

福寿草って確か、幸せを招くんだっけ
亡くなってしまった人は還らないけど
残された人達のところに沢山幸せが来るといいな

【アドリブ歓迎】



●疲れたときは、甘いもの
「疲れた時には甘い物! 我はこの時を待っておったぞ!」
 うわぁい! と言わんばかりに眼を輝かせたのは白木院・雪之助(雪狐・f10613)だ。
「どれでも好きなものを食べておくれな」
 お福がいえば、満面の笑みが浮かんだ。
「のぅ、みんなは何を頼むのだ?」
 振り返る雪之助。
 和気藹々。お茶の時間が始まった。

 茶屋へと通された猟兵達。
 いぐさの香るの畳の上でのんびりすれば、肩の荷が下りた安心感にホッとする。
「はァー……つっかれた……。けどこれで一件落着か」
 うん、と頷きながら嬉しさをかみ締める庚・鞠緒(喰らい尽くす供物・f12172)。
「(ホッとしたら甘いモン食いたくなったし大福……の、前にだ)」
 本来の『食事』を済ませてしまおう。と、自分の荷物を軽く探った。
 彼女はグールドライバー。
 どうしても、生存には血が必要となってしまう。
 お福をちらりと見て、配慮する。
 隠れて先に『食事』を済ませてしまおう。飲み干す時の鉄臭さは、どうしても慣れないけれど。
「大福と、あっついお茶頂戴。ウチちょっとだけ席外すから」
 言って席を外せば、お店の奥からお福の返事が聞こえてきた。

「いいねぇ。俺もお茶を頼む」
 御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)が追加で注文を出す。
「今日はのんびり、茶を楽しませてもらおうかな」
 のんびりと茶を飲むのは久々だ、と口にする彼。
 うんと背を伸ばす。たまには、こんな日もよいだろう。

「折角のお誘いだし、ゆっくりしてから帰ろうかな」
 と赫・絲(赤い糸・f00433)がメニューを手にして悩むこと数分。
「名物の大福は食べたいし、でも餡蜜も大好きだし……うーん、悩ましくて決めらんない!」
 どれも見た目は美味しそう。勿論味だって格別のはずだ。
 でも、全て食べてしまうには色々気になるお年頃。
 心の中では葛藤でじたばたしたいくらいだ。
「(誰かとわけっこできればいいんだけど……)」
 ちらっと他の猟兵達を見れば、ぐぅっと可愛くお腹がなった。
 思わず頬を染めて小さくなっていると、雪之助と目線があう。
「おぉ、何を頼むのだ?」
「大福と餡蜜で迷っちゃうんだよね」
「餡蜜か! それもよいな……どうだ、我の大福と半分交換せんか」
 既に和菓子のセットを頼んでいた雪之助。
 思わぬ提案に絲の瞳はきらりと光る。
 雪之助の提案にうんと頷く絲。思い切ってどっちも味わってしまおう。
「いっぱい動いたし、たまにはいいよね」

●ご堪能あれ
 輸血パックからの『食事』を終えて鞠緒が席に戻ると、丁度皆のお菓子が届いたところだった。
「(なんやかんや戦えば血使うンだよな……あークソまっず……)」
 舌に残る血の味を洗うように、まずはお茶をグッと飲み干す。
 お茶のお代わりを頼むと、大福に目を向けた。
「これでやァーっとゆっくり大福が食えるってワケだ」
 鞠緒の頼んだ大福は、店の自慢とだけあり、白くもっちもちとした生地が見るからに美味しそうだ。
 味も2種類セットになっており、白い大福の隣には、雪ウサギをイメージした冬限定の大福も添えられていた。
 齧りつけば嬉しい食感と甘すぎない美味しさに、思わず笑みが零れる。
「あー……血じゃなくて餡子で生きれる身体ならなァ」
「ちょっとわかるかも」
 絲が雪之助に分けてもらった大福を口に微笑む。
 好きなものを好きなだけ食べて生きれたら、どんなに幸せだろう。
 もっちりと伸びる大福に舌鼓をしながら中庭を見れば、小さな福寿草が嬉しそうに揺れていた。
「こんなに美味しいと、つい季節のお菓子も食べたくなっちゃう」
「うむ。その辺は我に抜かりないな」
 雪之助の頼んだセットは、大福とミニ団子、そこに鮮やかな季節の花の練りきりがついたものだった。
 今なら絲とシェアした餡蜜だってついてくる。
 ちょっとボリュームがあるかもしれないが、甘いものはなんとやらだ。
「見た目からしておいしそうな菓子ばかりであるな。ここの景色も良い」
 何処から食べようか。ついつい手が迷う。
「確かによい景色だ。『わびさび』ってやつかな。……あぁ、茶がうまい」
 カポーン、と鳴るししおどしの音を耳に、刀也が茶を楽しんだ。
 手入れされた中庭の、和の風景に魅せられる。
 きっと様々な人と、歴史と、技術が詰まったからこそ、この茶飲みの文化はあるのだろう。

「こういう時間を楽しむためなら、人は命も賭けるんだろうな」

「「「お前が言うんかい」」」
 
 刀也の呟きに、全員がつっこんだ。
 忘れてるかもしれないが、一番命がけの行動ばかりとっているのはこの男なのだ。
「え? そんなにか?」
「完全に他人事のようにいったね」
「傍にいるだけで命が足りなくなりそうだったぞ」
「アンタ、もう忘れたのか?」
 無茶しやがって。と仲間に言われて刀也も苦笑する。
「ま、こまけぇこたぁいいや。今を楽しむために命を賭ける。それで良いやな」
 ぱぁんと自分の膝を叩くと、残りのお茶を飲み干す刀也。
 ほろ苦く爽やかなお茶の香りが、鼻の奥を駆け抜けた。
 いいんかいっと言うツッコミを背で聞きながら。彼の挑戦はまだ続くらしい。

「せっかくだ、この『すまふぉ』で写真を撮っておくか。お福も一緒に写るか? 今なら神たる我とも『つーしょっと』ができるぞ!」
 雪之助がお菓子の写真をとりながら、お雪に声をかける。
 はて、こんな田舎にも写真の文化はあるのか否か。
「ほぉ? つーしょっと、ですかぃ?」
 首をかしげたお福に雪之助が笑う。
「一緒に記念を残すと言う意味でな。さっきの神と違って我は人畜無害であるぞ? ……今はであるが。いや、なんでもないのである」
「おぉ、そりゃぁいいね! みんなにも声をかけてくらぁ」
「いや、だからつーしょっととは……!」
 雪之助の不振な言葉もなんのその。
 お福の声に、雪之助のすまふぉには、賑やかな写真が増えたとか。

●茶の終わりに
「そうだ、菓子を追加してよいか」
 みなが食べ終わった頃。雪之助が声をかけた。
「なんだ。まだ食うのか?」
 鞠緒が話かけると、彼は首を振る。
「……後でもう一度墓に行く。そこに供えたくてな」
「なるほど」
 雪之助の優しさに、鞠緒も納得する。
 土の中で眠る者たちも、きっと喜ぶ事だろう。

「俺は次の事件へ行くかな」
 お代わりのお茶を飲み干すと、刀を手に、刀也が腰を上げた。
 悲劇に苦しむ人は、此処だけではない。
 彼はそのことを知っている。

「(福寿草って確か、幸せを招くんだっけ。亡くなってしまった人は還らないけど、残された人達のところに沢山幸せが来るといいな)」
 帰り際。咲き誇る福寿草を眺めながら絲は思う。
 村の人々の幸せと、これからのことを。
 その想いは、きっと届いてくれると心のどこかで感じながら。

 店を後にする猟兵達。見送るように、福寿草は風に揺れた。
 これまでにあった『悲しい思い出』と、これから来る『未来の幸せ』を、静かに抱えながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月23日


挿絵イラスト