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【Q】強欲の大海を目指して~失絆号出航!~

#サムライエンパイア #【Q】 #鉄甲船

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#【Q】
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●サムライエンパイア・鉄甲船「失絆号」
 あのオブリビオン・フォーミュラ「織田信長」が巻き起こした戦争からようやく立ち直ろうとしているサムライエンパイア。だがその戦時中、日野富子の巨万の私財によって建造され、沈没した「巨大鉄甲船」。村上水軍がそれを利用していたが、猟兵がそれを撃退し沈没させ、さらに引き上げて修復した後に再利用したあの船。
 戦後は行き場を失い、放置された状態となっていたが、その艦首から細い「紫の光」が発せられる。すべての船からである。その光はそれぞれが違う方向を指し示してはいるが、おそらく到達地点は同じ場所であろう。そしてそれは新たなる世界の可能性を指し示していた。
 織田信長が口にした新世界「グリードオーシャン」。その入口があるのかもしれないと各々が鉄甲船に乗り、道を切り開くのだろう。
 だがこの鉄甲船「失絆号」が進むのは、雷が走る竜巻が立ち並ぶ魔の荒海。さらに光の中から突如現れるオブリビオン達。しかれども新世界を求めるのならば、来たれ。そう、挑発するかの如く鉄甲船「失絆号」の艦首に設置された銀の乙女は紫の光を遥かなる大洋を指し示している。

●グリモアベース・ブリーフィングルーム
「どうやら、サムライエンパイアで動きがあったようじゃのー」
 そう言ってグリモア猟兵のメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)が電脳ウィンドウを開いて説明に入ろうとしている。
 サムライエンパイアの時に引き上げて修復した鉄甲船が突如、紫の光を発し始めた。か細いながらもそれは一定の場所を指し示しており、そこへ迎えと言わんばかりだ。
 そしてこの光が発生したのが、レディ・オーシャンを撃退してからだという。さらに織田信長が目指していた世界。そのために建造させていたかもしれない船。
「もしかすると、グリードオーシャンへの道が切り開けるかもしれんのー」
 『グリードオーシャン』。話には何度も出てきたが、長らくこの世界に干渉できることはなかった。だがようやくその糸口が掴めたかもしれない。故に猟兵達には鉄甲船が指し示す先に行ってもらいたいということだ。
「今回乗船する船は『失絆号』じゃのー。和名では「しつはん」じゃけど、英名では「ロストリンク」じゃ。僕の命名で悪いがのー」
 艦首に白銀の乙女が取り付けられた武骨な鉄甲船。だがその頑丈な船であってもこの先身は多大なる危険が伴う。遥か上空まで達する竜巻が何本も発生しており、その内部は雷が発生している。突っ込めばただではすまないので、何かしらの対策を講じる必要があるだろう。
「さらにこの海を航行している最中にオブリビオンも襲ってくるじゃろーという予知もでておるから、その中で戦って貰うけー、準備は十分にして行ってくれのー」
 そうメイスンが助言し、猟兵達が頷く。それぞれの準備が万端になったときに、彼女は転移術式を発動する。遥かなる欲望渦巻く大海を目指して今、魔の海を渡るために猟兵達最善を尽くそうとしていた。


ライラ.hack
 ついに大航海時代が幕を開けるのか?
 どうも皆様こんにちわ、ライラ.hackです。

 このたびはレディ・オーシャンの撃退と儀式魔術【Q】の成功により、サムライエンパイアの鉄甲船が紫の光を発するようになりました。その先を目指して進むことで、新たなる世界への道が切り開けるかもしれません。
 ですが立ち塞がるのは、雷が走る竜巻が何本も立ち並ぶ魔の海域です。猟兵達が各々の実力を発揮してその海を突破してください。さらにそれを防ごうと邪魔してくるオブリビオンも出てくるのでそれを撃退もしながら、光の先を目指してください。

 説明は以上になります。それでは皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『脅威の海洋災害』

POW   :    肉体の力で体力任せに海洋災害に立ち向かいます

SPD   :    素早い行動力や、操船技術で海洋災害に立ち向かいます

WIZ   :    広範な知識や、素晴らしいアイデアなどで海洋災害に立ち向かいます

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●サムライエンパイア・鉄甲船「失絆号」甲板
 エンパイアウォーで引き上げられて修理された鉄甲船の一つ、「失絆号」。和名では「しつはんごう」と読み英名では「ロストリンク号」と呼ばれる船は、艦首が白銀の髪の女性の彫刻が取り付けられているのが特徴だ。そしてその艦首の女性の祈るような腕から、か細い紫の光は荒れ狂う海の先を示している。
 この先に新世界「グリードオーシャン」の手がかりがあるかもしれない。だがサムライエンパイアの外側の海は、ひたすら危険な外洋が広がっている。この先は雷を纏った風が柱のような竜巻となって外洋に出ることを阻む海域、通称「雷柱の魔海」と呼ばれる場所だ。その先を突っ切らなければならない。
 だからこそ猟兵達が呼ばれたのだ。通常の船員だけでは足りない。織田信長を倒し、エンパイアウォーを制した力こそ、この危険を切り開く一助となるだろう。
 危険は承知の上。さあ、未知なる世界のために全力を尽くそう。
宮落・ライア
ははははははは!!ボクが来た!
竜巻が邪魔なのであろ?
ならば斬ろう。
道を切り開いて先を示すのが英雄の務め。
さぁ、森羅万象を切り開いてやろう。

船上で力を溜め、人の限界を越えた怪力で竜巻を薙ぎ払う。

向こうから向かってこないし避けもしないのなら、楽なものだな。
横に薙ぎ払い、縦に両断、目測的に近いものから斬っていこうかな。

それにしても本当にグリードオーシャンなのか?
だとすると、この鉄甲船も向こうと関係あるものだったのかなー。



 サムライエンパイア。その島国は呪術法力文明によって栄え、徳川幕府の元で安寧に暮らしている。そして外の海に出ることはない。
 その理由として、外海の先に何もないことが証明されているということもあるのだが、もう一つの理由が海に出ようとするものを阻む荒れ狂う海域である。
 各海域には常識というものが通用せず、また海域ごとにそれぞれどう荒れているのかも違う、まさしく魔性の海。得るモノなく挑もうとするには危険すぎる海なのだ。
 
 そして今、その海に挑もうとする鉄甲船「失絆号」。艦首の白銀の乙女が指し示す紫のか細い光の先にあるのは、雷の竜巻がいくつも立ち並ぶ海域「雷柱の魔海」。
 だがこの先に織田信長やレディ・オーシャンが口にしていた新世界「グリードオーシャン」の手がかりがあるかもしれない。その想いを胸に宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は船へと乗り込んでいた。
「ははははははは! ボクが来た!」
 凄まじいハイテンションで艦首の傍に立ち、雷の竜巻を見つめるライア。恐怖というものは彼女には存在しない。そもそも、多くの願いを胸に創られた我が身は、未知への世界への希望が上回り、そんなことを考えている余裕などない。
 だが立ちはだかるは、雷鳴と吹き荒れる風の嵐。このまま突っ込めば、雷によって鉄甲船であっても損害は逃れられず、突風によって転覆してしまうのは必死であろう。
「この竜巻が邪魔なのであろ? ならば斬ろう」
 この圧倒的災害を前にしてもライアは何するものぞと言わんばかりに、白くどこか触りがたい剣を構える。甲板の上で常人ならざる力を溜め、一気に解放する為に。ライアは風雷の柱を見据え、笑う。
「道を切り開いて先を示すのが英雄の務め。さぁ、森羅万象を切り開いてやろう!」
 時間にして10秒。その溜めの後に裂帛の気と共に放たれるは、「森羅万象断(シンラバンショウダチ)」。振り抜かれた剣撃は大気を切り裂き鳴動させ、放たれた斬撃は地平線まで切り開くという。そのライアの渾身のの一撃は、雷を断ち風を引き裂く。目の前にあった自然災害は消失し、光の先には海が現れる。
「向こうから向かってこないし避けもしないのなら、楽なものだな」
 そう頼もしい笑顔を浮かべるライア。竜巻を両断しても油断はしないのが英雄の証左である。近場の雷の竜巻が近寄ろうとするのを防ぐために再び森羅万象を断つ斬撃を横薙ぎに放つ。そうやって自身の力が尽きるまで、竜巻を寄せ付けないつもりだ。
「それにしても本当にグリードオーシャンなのか? だとすると、この鉄甲船も向こうと関係あるものだったのかなー」
 剣を振るいながら何気ない疑問が頭を過ぎる。確証はない新世界への導。だがこの船がそれに繋がるものだと信じてライアは力を振るうだけである。
 失われた絆を取り戻す為に英雄は力を尽くす。物語のプロローグに相応しく、ライアの奮闘により、魔の海域を突破の為の航海は好スタートを切ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

穂照・朱海
ろすとりんく号…
善き船、善き船首像で御座いますね
彼女の行く手に立ちはだかる障害は、すべてあけみが斬り捨てませう

雷柱の魔海…
まさに魔の住む海域ですね
されどこの身もただの人にありませぬ

此度、妖の力を借りてこの嵐を平らげませう。
化けますは、女天狗

女天狗とは優美な女性の姿を持ちながら翼を有し神通力を発揮する天狗の類
合わせて妖刀は羽団扇に変じており
これを用いて竜巻に旋風を起こすのです
気流の流れを操作して仕舞えば竜巻は抑えられるでせう
雷雲すらも吹き飛ばして仕舞えばもつと楽に進めませう

たとえ自然の驚異とて
この穂照を止めること能はず

いざ、嵐を越えて



 鉄甲船「失絆号」はさらに雷の竜巻が吹き上げる魔の海域を進む。凌いでもまた次々と襲い掛かってくるのが魔の海域と呼ばれる所以である。
 その明けることのない嵐の連続に何度も海に繰り出そうとした男達は折れてきた。得られるものは未知であり、危険は大きく隣に居座っている。
 この状況で挑めというのは酷な話である。だが銀の乙女の艦首が示す光の先に、まだ見ぬ世界があるのであれば、それを頼りに進むしかない。それを可能にする力を持つ者こそ、猟兵なのだ。
「ろすとりんく号……善き船、善き船首像で御座いますね」
 そう呟きながらサムライエンパイア出身の女形役者、穂照・朱海(妖刃飛翔・f21686)は微笑む。なぜか耳障りのよい名前、そして銀の乙女の艦首に感銘を覚える朱海。その船を守りたいと思う気持ちが湧き出てくる。その力こそ、この乱れた嵐の海を乗り切る力となる。
「彼女の行く手に立ちはだかる障害は、すべてあけみが斬り捨てませう」
 そう言って手にある妖刀・朱天狗の切っ先を竜巻に向ける朱海。だが如何に朱海が凄まじい妖刀を保持しているとは言っても今の状態で雷を纏う風の暴威を斬れるはずもない。素手で自然災害に挑むのと同じである。
 眼前に迫る雷鳴の風柱に対して、朱海は不敵に微笑む。
「雷柱の魔海……まさに魔の住む海域ですね。されどこの身もただの人にありませぬ」
 そして妖刀から光を放つ。朱海の能力「艶姿百鬼変化」が解き放たれる。刀と同化するように朱海の体も光と同化していく。
「此度、妖の力を借りてこの嵐を平らげませう。化けますは、女天狗」
 そして現れたるは艶やかな格好をした女天狗が一人。この能力は己が知る妖怪に変化し、妖怪が持つ能力を行使することができる。
 朱海が演じる女天狗とは優美な女性の姿を持ちながら翼を有し神通力を発揮する天狗の類。役者故にその能力を十全に引き出すことができる。
 朱海が変じた女天狗は宙を舞い、羽団扇に変じた妖刀を振るう。雷の竜巻に対して巻き起こるは強烈なる神風。その旋風が激突し、竜巻の中に入り込んでいく。
 神通力で操ったその風は朱海の意に沿って竜巻の威力を弱めるように気流を操作・誘導していき、内部から強烈な雷柱を解体していく。
 さらに雷の元になっている雲を羽団扇の一閃によって突風を巻き起こして消し飛ばしていく。まさしくその姿は神風を意のままに操る天狗そのものであった。
「たとえ自然の驚異とて、この穂照を止めること能はず」
 風を操り嵐を退けて、鉄甲船「失絆号」の航路を作り出していく。優美なる女天狗・朱海の活躍に心なしか、艦首の銀の乙女も微笑んでいるようであった。
 そして朱海は天狗を演じる。力の限り、嵐を踏破するまでその力を尽くすことを決意を込めて、遥か彼方の海を指し示す。

「いざ、嵐を越えて」

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋奈森・鈴音
船は良いわよねー。のんびり過ごしながら目的地に着けるからー。
水着で頭にバンダナ巻いて、気分だけでも船乗りっぽく……あれ? 海賊っぽい?
じゃー、おねーさん、ここで頑張るからー。わー、この女性かわいー。名前とか有るのかしらー?(艦首付近でだらだら)

水と風の魔力を周囲に展開し、進行方向からの悪影響を和らげることに注力するわねー。(その為に艦首に居る)
魔力任せだけじゃなく見切りと地形を利用しつつ、船へのダメージを抑えるわー。
船の前面を魔力でカバーするから、海中とかに異変があっても気付けるよう頑張る!

絆を失うって悪いイメージだけど自由になると思えば良いわよねー。
おねーさん、この名前好(途中で波飛沫を被る



 「雷柱の魔海」と言っても四分六中嵐が襲いかかってくるわけではない。気は抜けないとはいえ、この危険な海域でも構わず乗り込んでくれた鉄甲船「失絆号」のクルー達がなるべく安全なルートを取り続けているのである。それ故に何もなくのんびりと海風を堪能できる時間もあると言うわけだ。
 その数少ない凪の時間。まさしく、クルーにとっても猟兵達にとっても貴重な休息時間になる。最低限の警戒要員を残して、各々が英気を養う。
「船は良いわよねー。のんびり過ごしながら目的地に着けるからー」
 そう言って海上の日向ごっこを堪能しているのは緋奈森・鈴音(妖狐の化身忍者・f03767)。悪戯スマイルがよく似合う妖狐は、雷の竜巻が乱立する海域を進んでいるとは思えない穏やかな海で一時の休息を楽しんでいる。
 鈴音の今の姿は赤の水着に身を包んでいる。腹部の半分が月に隠れたように欠けた、中々に刺激的な水着ではあるが、さらに頭にバンダナを巻いて気分は船乗りだ。
「……あれ? 海賊っぽい?」
 自分の様相に何気にそんな感想を漏らした鈴音に側にいたクルー達も苦笑気味だ。そんな彼女は基本艦首付近でダラダラしている。
「わー、この女性かわいー。名前とか有るのかしらー?」
「この船に名付けた人によると、えみ、いやえいみって言うらしいですぜ?」
「ふーん……」
 サムライエンパイア世界のクルーがそう答える。洋名には慣れていないであろうことを考えて、正確な名前は後でグリモア猟兵にでも聞いてみようと思い、クルーに微笑む鈴音。
「じゃー、おねーさん、ここで頑張るからー」
 そう言って再び銀の乙女の艦首付近でダラダラし始める鈴音。だが彼女はただ怠けているわけではない。今も「トリニティ・エンハンス」を発動し、水と風の魔力を周囲に展開し続けている。
 水の魔力をもって水流の流れを調節し、風の魔力によって気流に干渉して風の流れを押し留める。鉄甲船の先頭でもある艦首でそれを行うことで、進行方向の悪影響を和らげることに注力しているのだ。
 実際にこの平穏な時間が長く続いているのは鈴音のおかげでもあるが、彼女は決して口にはしない。むしろ怠けているようにのんびりしている。
 飄々としていても頑張っている鈴音。船の前面を魔力で包み込んで、海中に異変がないか探索しながらも艦首にしがみ付いて海の先を見る。
「絆を失うって悪いイメージだけど自由になると思えば良いわよねー。おねーさん、この名前好っ!」
 鈴音がそう言い切る前に波飛沫が顔面にかかる。その光景にクルーや猟兵達からも笑顔が溢れる。鈴音も悪戯っぽく舌を出しながら笑う。

 まもなくこの平穏な時間は終わり、また激しい嵐の航海になるだろう。だがこの穏やかな休息をより長く楽しむ為に、鈴音は努力を惜しまないのであった。
 それはクルーは勿論、猟兵達にとっても素晴らしい休息の一時になっただろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オードリー・マクリーン
「『絆を失う』なんて縁起の悪そうなネーミングだけど、何か曰くがあるのかしら?」
首を傾げる。

船を守るにあたり、船首近辺に赴き、【クライシスゾーン】を利用して海水の一部を超次元竜巻に変える。
これで行く手を遮る雷風の竜巻をことごとく消し飛ばす……と威勢良く言いたいところだが、流石にそれは望みすぎだろうと考えている。出来て、多少の衝撃を相殺させることくらい。
ゆえに積極的にぶつけにいくのではなく、船の周囲に壁役として配する感じ。
「私にできることは知れてるわ。風の読み方や操船技術については、結局は私よりも船乗りの皆さんの方がずっと優れてるんだから、頼りにしてるわよ?」
と、非猟兵の船員たちも鼓舞する。



 風も嵐もない平穏な時間は終わりを告げ、再び雷鳴が轟く竜巻ぐ吹き荒れる魔の海が帰ってくる。荒れた風と万物を打ち砕く雷がこの海域を航海する者を沈めんと迫ってくる。その中を鉄甲船「失絆号」は進む。艦首の銀の乙女は未だに遥か先に紫のか細い光を放っている。
 この先へと進めと先導する乙女の導きに従うように進む鉄甲船。それに乗る猟兵達も、クルーも嵐の中をどう凌ぐかに全力を尽くしている。
「『絆を失う』なんて縁起の悪そうなネーミングだけど、何か曰くがあるのかしら?」
 そんな中でダンサー衣装のエルフ、オードリー・マクリーン(踊る門には福来たる・f25189)は乗船から疑問に思っていたことを口に出す。船乗りというのは厳を担ぐということもあり、ずっと気になっていたのだ。
 だが近くで話を聞いていたクルーの一人が朗らかに笑いながら首を傾げているオードリーの疑問に答える。
「ハハハッ! それは逆さ、お嬢ちゃん。『失った絆』を取り戻すという意味で『失絆号』って命名したらしいぜ? 難を転じて福となすという奴さ」
「……へぇ、面白いわね。この航海で絆を取り戻すというわけね」
 ここでいう絆とは、グリードオーシャンとの繋がりでもある。踊りで幸福を呼び込もうとしている自分のポジティブな思考にもマッチしている船の名前にオードリーはよりテンションが上がってくる。
 だがその願いを成就させる為にもこの魔の海域を抜けなければ話にならない。立ち並ぶ雷の竜巻が眼前に迫ってきても、オードリーは怯むことはない。
「まずはこの嵐を抜けないとね。始めるわ!」
 船を守るにあたり、船首近辺に赴き、嵐を沈める為に舞う巫女のように踊り始めるオードリー。彼女のダンスは人々に力と勇気を与える。そしてその溢れる力を持って「クライシスゾーン」を発動させる。舞いに同調するように海水を超次元の竜巻へと変じさせていく。
 海水という無機物はこの大海には山ほどある。この超次元竜巻をもってオードリーは行く手を遮る雷風の竜巻をことごとく消し飛ばすべく、激突させる。
「……と威勢良く言いたいところだけど、流石にそれは望みすぎね」
 勿論すべてを吹き飛ばすというのは理想論だが、雷の竜巻は吹き飛ばしたとしても、いくらでも発生する。そしてオードリーの力は無限ではない。力押しに頼るには効率が悪すぎる側面がある。実際出来て、多少の衝撃を相殺させることくらいである。
 ゆえに積極的にぶつけにいくのではなく、船の周囲に壁役として配置していくオードリー。まさしく船を守る為に出現した神風達が、鉄甲船「失絆号」の周りを守護する。
 そして竜巻を制御し、踊りながら力を与えているオードリーは、さらにクルー達を鼓舞する。
「私にできることは知れてるわ。風の読み方や操船技術については、結局は私よりも船乗りの皆さんの方がずっと優れてるんだから、頼りにしてるわよ?」
「おお、任せとけ! こんな別嬪さんの踊りを見せられて奮い立たなきゃ海の男とは言えねえな、野郎共!」
 船長らしき男の檄にクルー達が雄叫びを上げる。オードリーはその男達の気勢を微笑みながら見守り踊り続ける。
 超次元竜巻の盾は、雷柱から鉄甲船を守る。クルー達もその衝撃をうまく利用して荒れ狂う海を巧みに、力強く航海していく。
 オードリーだけの力でない、鉄甲船「失絆号」の全てを結集して、「雷柱の魔海」を攻略していく。それはまさしく、未知を踏破せんとする者達の確かな歩みであった。

 こうして猟兵達の力強い支援によって、この雷の竜巻が吹き荒れる海域を進むことができた。確実に紫の光の先へと近づくことができたであろう。
 このまま順調に行ってくれれば、とオードリーも願わずにはいられなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『荒ぶるカマシシ』

POW   :    アオの寒立ち
全身を【覆う和毛を硬質の毛皮】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    神鳴り
自身に【紫電】をまとい、高速移動と【電撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    影より出づる藤波
【自身の影】から【召喚した藤の花】を放ち、【絡みつく蔓】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:笠見諒

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 「雷柱の魔海」の脅威を、搭乗する猟兵達が各々の方法で退けて航海を続ける鉄甲船「失絆号」。艦首の銀の乙女は祈りを捧げて、道を切り開くように紫の光を指し示している。
 確かに雷の竜巻は厄介であるがこのまま行けば海域の先の光の終着点に辿り着けるのではないか、と思われた。
 だが苦難というのはさらに襲いかかってくるものである。海面を疾駆するような生物が見える。はじめは魚かと思ったが、それは違った。まさしく海の上を駆けているのだ。
 その生物はカモシカのようではあったが、角は雷を放っている。そもそも海の上を走っている時点でタダの生物ではない。そして雷の竜巻に気軽に侵入し、その雷を吸収して目の輝きが増す。
「ギョエエエエエエエエエ!」
 「雷柱の魔海」もこの雷獣達には最適な環境なのだろう。そしてその楽園に踏み込みし生物に容赦するほど彼らは温厚ではない。大切な食事の時間を邪魔されて気が立っているようだ。
 だがここで迂回する時間も、足止めする時間などあるはずもない。邪魔する者は力づくで排除する他ない。猟兵達は己が武器を手にとり、嵐と共に襲いかかる雷獣と対峙する。
宮落・ライア
あっは!雷獣かな?
雷の竜巻の次は雷獣だなんて………ははっ。
ここは海の上。船上。逃げる場は無し。
背には護らなければいけないもの。
はっはっは!背水の陣!いいじゃないか!楽しいじゃないか!

船を飛び出し【怪力・気合い・ダッシュ】で無理やり水の上を走る。
近いものから【殺気】を当てて、相手の危機感を煽りUCを誘発させる。
UC使用中で動けない相手を【ジャンプ】から【グラウンドクラッシャー・鎧砕き】直当てで海中深くまで叩き落す。
その後、そのままUC【空蹴】で別個体に突っ込み
【限界突破・二回攻撃】で同じ事を繰り返す。
【空蹴】の回数が無くなるまで繰り返す。

雷が当たったら?
【激痛耐性・捨て身の一撃・継戦能力】で



 雷鳴轟く竜巻が立ち並ぶ海域「雷柱の魔海」。どんな頑丈な船であろうとも、一度その竜巻に巻き込まれれば雷と暴風によって破壊され、沈没することになる。それは自然の摂理であり、道理であった。
 だがそんな海域を何事もなく闊歩し、水浴びをするが如く竜巻の中に突っ込んで気軽に雷を取り込む生物が、鉄甲船「失絆号」の前にいる。雷獣「カマシシ」は群れを成し、紫の光の先を進もうとする船の航路を阻んでくる。
 自身のテリトリーに踏み込まれることを許容しないのは獣の性でもある。雷獣達は鉄甲船に気づくと、その赤い目が敵意の光に染まる。ただで通行させて貰うことは不可能だと思うのに時間はいらなかった。
「あっは! 雷獣かな? 雷の竜巻の次は雷獣だなんて………ははっ」
 そんなクルー達が絶望と恐怖に顔を染め上げているにも関わらず、宮落・ライアはこの状況を笑わざるを得なかった。眼前には吹き荒れる雷の嵐に、敵意をむき出しにする数多の雷獣。
 こちらは荒れる海の上におり、船上で逃げ場などあるはずもない。さらにライアの後ろには護らなければいけないものがある。未知の世界へと導く船と、そのクルー達。
「はっはっは! 背水の陣! いいじゃないか! 楽しいじゃないか!」
 だからこそ燃える者もいる。不利な状況を笑い、己を奮い立たせる者。そんな状況だからこそ、最大級の力を発揮できる者。ヒーローとは、そんな危機的な状況を逆転する者なのだ。
 そうだからこそ、ライアは笑う。困難な災害だろうと、相手が強大だろうと、何するものぞと笑う。笑い飛ばしてこそ、ヒーロー。乗り越えてこそヒーローなのだ。
 そして鉄甲船を飛び出し、その強靭的な脚力で海面を蹴り強引にその海原を疾駆するライア。武骨なる骨肉の剣を背負い、近場のカマシシに強烈な殺気を与える。
「さあさあ! 侵入者のお出ましだ!」
 笑いながら殺気を飛ばすライアに対し、カマシシは全身を覆う和毛を硬質の毛皮へと変える。鉄よりも硬くなったその和毛は並大抵の攻撃では突破することはできない。攻撃を受け止め、雷撃で反撃する。カマシシ達の必勝戦法だ。
 だがライアは笑いながら天高く飛翔する。その手の剣に込めるは「グラウンドクラッシャー」。単純で重い、全身全霊の剣の一撃だ。
「海底によろしく! それじゃ吹っ飛べー!」
 その瞬間、海面が爆裂する。ライアの剣撃はもはや爆撃ともいえるほどの威力を誇り、硬質の毛皮を撃ち砕きカマシシの頭を潰すだけではなく、海底まで身体を叩きつけるほどの威力を誇った。水飛沫が舞う中、ライアは再び海面を蹴り、次のカマシシに再びグラウンドクラッシャーの一撃を喰らわせる。
「ひゃっほーーーー!」
 海面が爆裂する音はその後何度も鳴り響き、カマシシの鉄壁防御を突破して粉砕して、海底へと叩き落していく。ライアを止めるべく、電撃を放つカマシシもいるが、それを食らってもライアは一向に怯まない。身体のリミッターはすでに外してある。カマシシ達では彼女は止められない。
「おっと! あれに突っ込んじゃ危ないな」
 だがカマシシ達も馬鹿ではない。すかさず雷の竜巻の中に退避して、ライアを誘い込もうとする。さすがのライアであってもあの中に入り込んで雷獣達と戦うには分が悪すぎる。
 それに海面を無理矢理蹴って疾駆するのにも体力がいる。やむを得ず「失絆号」へと帰還するライア。
「でも大分数は減らせたな!」
 ライアの言う通り、付近のカマシシ達の大部分を一掃し、一気に包囲されて沈没されるという状況はなくなった。それだけでも大戦果である。

 こうしてライアの獅子奮迅の働きにより、この危険地帯を脱する為の橋頭保がまず確保されたのだ。それはライアの英雄的突進によるものであり、彼女の勇気が成し得たものだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オードリー・マクリーン
「ふむ、私は討って出るのが上策かしら?」
船に乗り込まれたら厄介。
ゆえに、仮に他の猟兵が船から遠距離攻撃を仕掛けるにせやよ、海上で暴れて注意を引く役を負う者がいると良いだろう、と判断。

「はぁい、鬼さんこちら」
【スカイステッパー】でカマシシの攻撃を回避しつつ海上を跳び回る。多角度の跳躍を駆使し、的を絞らせない。
時に高高度から下方に向かって跳躍することで高速急降下キックをぶち当てたり、カマシシにしがみついた状態で跳躍することで抱え上げ、別のカマシシ目かけて投げ落としたりする。
「ろーりんぐ・さんだーっ!」
技名はいい加減。
回数制限で海に落ちたら悲惨なので、適宜カマシシを足場にしたり船に戻るなりする。



 雷の竜巻が立ち並ぶ海域を進む鉄甲船「失絆号」。ただでさえ自然の猛威が吹き荒れるこの状況で、今は雷獣であるカマシシ達が船を沈めんと虎視眈々と狙いを定めている。
 一時は猟兵の攻撃により蹴散らしたとはいえ、かの獣は諦めてはいない。そもそもテリトリーに入って来たのはこちらだ。その侵入者を見逃すほど、その雷の海域に住まう者達は優しくはない。
 クルー達も奮戦して鉄甲船を進めているとはいえ、交戦は避けれない状況になってきた。そしてクルー達がどんなに頑張ってもカマシシ達を撃退はできないであろう。
「ふむ、私は討って出るのが上策かしら?」
 そんな中で気軽に舞おうかというステップを踏みながら艦首付近に近づくオードリー・マクリーン。雷を放つカマシシがこの船に乗り込んでくれば、クルーに被害が出るのは必至。そしてそうなれば「失絆号」は禄に動けなくなり、雷の竜巻の前に動けない棺桶に早変わりする。
 ゆえに、仮に他の猟兵が船から遠距離攻撃を仕掛けるにせやよ、海上で暴れて注意を引く役を負う者がいると良いだろう、と判断するオードリー。
「そういうことなら私の出番よね。舞ってくるわ!」
 空で舞うことこそ、スカイダンサーの本領。美しい跳躍は弧を描くように滑らかな軌道を描き、海面へと吸い込まれる直前に空を蹴るオードリー。能力「スカイステッパー」の本領発揮である。
 空高くダンスするように滞在するオードリー。海であろうと、空であろうと、この海域で自由である者など、雷獣達は許しはしない。カマシシ達は身体に紫の雷を纏うと、それをオードリーに向かって放射しようとする。それを上から眺めていたオードリーは投げキッスをして挑発する。
「はぁい、鬼さんこちら♥」
 気楽な口調でありながらも、軽やかなステップによってカマシシの放電を回避するオードリー。空中を蹴り、高度を保ちつつ自分の優位な場所を崩さない。海上を跳び回りつつ、多角度の跳躍を駆使し、的を絞らせないオードリーはカマシシ達の隙を伺う。
「そこ、隙だらけよ!」
 放電を避けられて隙が出来たカマシシに高高度から下方に向かって跳躍することで勢いを増した高速急降下キックをお見舞いする。オードリーのその蹴りはカマシシの首の骨をブチ折り、その瞳に光が消える。
 そしてその近くにいたカマシシにしがみついた状態で跳躍することで抱え上げる。狙うは、その先にいる放電間近のカマシシ。
「ろーりんぐ・さんだーっ!」
 技名はいい加減なれど、その威力は本物。投げ落としたカマシシは回転しながら激突し、紫電がその身体を焼き尽くす。その焦げた身体にトドメを刺すように、スカイステッパーの回数が切れそうになったオードリーが踏みつけて、両方の首を折る音が響き渡る。
「さて……もうひと暴れしてから戻るとしますか」
 回数制限をしっかり守らなければ、海に落ちてしまう。そうなっては悲惨なので、カマシシを足場にしたり、空中を駆けながら雷獣を蹴散らす。そして進路上のカマシシを排除したと見計らって鉄甲船へと戻る。
 船に戻ったオードリーはクルー達にこの海域を出ることを指示する。今ならばカマシシに邪魔されることなく、雷の竜巻を避けながら海域を進むことができる。

「とはいえ、少し頑張り過ぎたかもね」
「ありがとよ、嬢ちゃん。後は任せとけ!」
 そういうクルー達が今のうちにと働き始める。あれだけの舞いを見せられて戦うオードリーに勇気を当たられた結果だった。
 その様子を見ていたオードリーは微笑むように見守りながら、雷嵐の中を進む。雷獣達がひるんでいる隙を狙って航海する船は大きく光の先へと前進したのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋奈森・鈴音
……いったいどーいう動物なのかしら。
とりあえず航海の邪魔になるならどーにかしないとねー。

おねーさんは舳先にいるまま戦闘参加!
怖いのは藤の花で船の動きが封じられることよねー。
そこに雷とか大波が近づいてきたらすごく危険だし。

だから狐火を全力で船の周囲に展開して守るわー。
船に近づく花と他の猟兵に近づく花を優先して炎属性攻撃して動きが封じられないようにするわー。
万が一、おねーさんが絡まって動きを封じられても操作はできるからその時はすぐに燃やすわねー。
「おねーさんは縛られない!」
火が船に移りそうな時はすぐに消すわねー!

守りに余裕ができたら炎や鉄腕(手裏剣)飛ばして攻撃したり足場の援護したり頑張る!



 雷の竜巻を避け、雷獣カマシシ達を退けて、鉄甲船「失絆号」は進む。紫の光は今やか細い光ではなく、強い光を放っている。つまりこの先に光の果てがあることを示している。
 それが防衛を続ける猟兵達や、船を操舵するクルー達を勇気づける。だがここはあくまで、カマシシ達の海域。竜巻はより勢力を増し、雷は獣達に力を与える。そしてテリトリーを侵す者達を排除しようと動き始める。
 四つ足は海面を闊歩し、雷の角は身体を守るように雷を放っている。まさしくこの「雷柱の魔海」を縄張りをするにふさわしい魔獣とも言える。
「……いったいどーいう動物なのかしら」
 そう言いながら苦笑しながら、緋奈森・鈴音はカマシシ達を見る。どういう理屈で海の上を歩いているのか、雷を放つ角というのはどういうモノなのか。興味は尽きることはないが、捕獲できる存在でもないし、そんな状況ではない。
 鈴音は再びいつもの悪戯っぽい笑みを浮かべ、妖狐の本領を発揮する。
「とりあえず航海の邪魔になるならどーにかしないとねー」
 鈴音は艦首近くにいたまま、戦闘を開始する。カマシシ達は雷や船に直接乗り込むことを警戒して、自身の影から藤の花を召喚する。その藤の花は絡みつく蔦を伸ばし、そこから鉄甲船を拘束しようという狙いだ。実際動けなくなった船は竜巻に飲み込まれて沈没する他なくなる。
「怖いのは藤の花ねー。実際、雷とか大波が近づいてきたらすごく危険だし」
 だからこそ、妖狐である鈴音の本領発揮である。「フォックスファイア」を発動し、自分の意のままに操れる狐火達を召喚する。艦首の銀の乙女の傍に立ち、自身がこの船の守護神足らんとする決意を旨に、船へと狐火を配置する。
 優先目標は船に近づく藤の花、そして主戦力である猟兵達に近づく花。これらを狙って狐火による炎で次々と燃やしていく。蔦も延焼させて、欠片すらも残さない狐火。
 だがカマシシ達もそんな鈴音の動きをしっかりと見ている。狐火を操っているのは彼女だと定め、藤の花の蔦が鈴音へと殺到する。身体に絡みつき、拘束する蔦。そこに雷獣の雷が放射されようとしている。
「おねーさんは縛られない!」
 鈴音はそんなことは百も承知と言わんばかりに、近くにいた狐火を結集させて蛇のような炎で蔦をかみ砕いていく。何者も彼女を縛ることはできない。そんな意志表示を感じさせる暴れっぷりであった。
 そして拘束を解いた後、カマシシの放電を飛んで躱す。そして攻撃が終わって隙だらけのカマシシの頭を狐火の蛇の顎が喰らう。噛み砕かれた頭は、その毛皮ごと一瞬で燃やされ、頭蓋骨すら黒炭になったカマシシが海へと沈む。
「こういう火力が高いのはいいけど、船に移りそうな時はすぐに消さないとねー」
 鈴音は自身を律する。鉄でできているとは船には変わりない。火災が大敵だと知っている鈴音はしっかりと気を使う。その隣の銀の乙女に対して船は燃やさないことを決意すると、再び狐火に藤の花や蔦を燃やすように指令を出す。
 そして余裕ができた鈴音は、炎の蛇と共に自身の鉄腕を飛ばして、進路を邪魔するカマシシ達を駆逐していく。炎に対しては雷も効果はなく、また鉄の腕は容赦なくカマシシ達の身体を粉砕していく。
「おねーさんが乗る船の邪魔はさせないわよ!」
 その気合はクルーにも伝播し、雷獣何するものぞの気持ちが湧き出てくる。そして雷の竜巻も見事にギリギリ回避する航海術を見せつけ、鈴音の守護に応えるように鉄甲船は光の先に進む。

 鈴音が燃やした藤の花は海へと落ちていき、カマシシ達も死屍累々の山を築き上げる。それらを乗り越え、光の終着点は徐々に近づいてきている。あと一歩で、ゴールが近いかもしれない。その予感に鈴音や猟兵達はもちろん、クルー達も心躍ることであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

穂照・朱海
この海域に住まいし「おぶりびおん」ですか……
されど我々は止まる訳にはいきませぬ

妖刀を抜き放ち船上に立って【殺気】を向けて迎えうつ構え

敵の雷撃を受けたら、衝撃で船から落ちたように見せかけまする
その際、敵の視界を船で遮るようにします

海に落ちた、と見せかけたあけみは海面すれすれの「空間を蹴って」全速力で敵に追いすがります
そしてすれ違いざまに横薙ぎの斬撃を放ちます

「八艘跳びとはかくのごときもので御座いませうか?」

以後は船から離れつつ離れすぎない位置で同様に敵に斬りかかります

いかなる存在であれ、彼女の航行を阻むのならば……
その意思を、否定する


メンカル・プルモーサ
ふむ……あの先に何があるか、楽しみだけど…
…まずはこのカマシシをどうにかしないとね…
…手始めに【彩り失う五色の魔】を【起動:応用術式『拡大』】で範囲拡大…
視界内の船や船員を含めて雷に対する耐性を高めて安全をある程度確保…
…あとはカマシシだね…高速で移動してくるなら…
……【狩り立てる嵐の魔犬】で魔方陣から誘導弾を連射して撃破しつつ生き残りを追い立てよう…
…そして【撃ち貫く魔弾の射手】で誘導弾から逃れた奴を狙撃…
他の人が数を減らしてくれたし、この方法で残りを殲滅していこう…
…さて、邪魔になるのがこれだけで済めば良いのだけど、ね……もう一波乱ぐらい何かありそうだな…



 「雷柱の魔海」の内、雷獣であるカマシシの領域に入ってもう何時間経過したか。ようやくその支配領域を突破できるところまで航行してきた鉄甲船「失絆号」。ここさえ抜けてしまえばもう大規模な集団は存在しないという海域に近づいてきている。
 だがこれだけ自分達の海域を荒らされたのだ。カマシシ達もただで通すわけもない。そこを突破させまいと厚い獣達の壁を築いている。さらに隙間には雷の竜巻が立ち塞がっており、死角はない。
 ここを迂回しようにも、これ以上竜巻と雷獣を回避する航行をするのにはクルー達の体力も限界を迎えようとしている。つまり、否応なく最短距離を突っ切って、この海域を突破しなければ活路はないのだ。

「ふむ……あの先に何があるか、楽しみだけど……まずはこのカマシシをどうにかしないとね…」
 そう言って黎明剣【アウローラ】を構えるメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)。新世界への興味は尽きることはないが、それでも今はこの雷獣達の壁を突破しなければ意味がない。
「この海域に住まいし『おぶりびおん』ですか……されど我々は止まる訳にはいきませぬ」
 そして隣の穂照・朱海も艶やかな着物を雅に着こなしながらも、妖刀「朱天狗」を抜く。まずは船上の艦首付近に立って、強烈な殺気をカマシシ達に飛ばす。
「我が護りよ、削れ、防げ。汝は喪失、汝は絶壁。魔女が望むは五色届かぬ防魔の理……」
 その後ろでメンカルがアウローラを掲げて詠唱を始める。魔法陣が朱海はおろか、鉄甲船すべてを包み込み始める。だがカマシシ達も一斉に殺気を放った朱海に対して、放電を放つ。殺到する雷の群れに朱海は避けもせずに直撃する。
 強烈な雷の獣の攻撃を受けたのだ。その衝撃で足がふらつき、船から滑り落ちる朱海。カマシシ達は船で隠れて朱海の姿が見えなくなるが、結末は同じことだろうと、今度は船に対して一斉放電を放つ。
 再びの落雷。クルー達ももうだめだと目を瞑る。だが衝撃の後に目を開けると、鉄甲船は一切の損害を受けていない。よく目を凝らすと薄い光の膜が「失絆号」を包み込んでいるではないか。
「……その程度の落雷じゃ、私の護りは突破できない」
 そう言ったのはメンカル。そう、彼女の最初の魔法陣こそ「彩り失う五色の魔(ロスト・カラーズ)」。電撃を含む5つの属性に対して強力な加護を得る術式。それを魔法陣による効果の拡散範囲展開することで、船全体に強力な対電撃防御結界を構築したのだ。
 まさかの電撃が無効になったことに首を傾げるカマシシ達だったが、ならば高速移動して船内で暴れればいいと思い、海面を蹴ろうとした瞬間―――鈴の音が鳴り響く。
「八艘跳びとはかくのごときもので御座いませうか?」
 眼前に現れたのは、海面に落ちたはずの朱海。だがカマシシ達はそれを認識したと同時に首を妖刀によって刎ねられる。放電も、高速移動も放つ暇もなかった、まさしく奇襲の一撃。
 実は朱海は電撃を直撃していたが、メンカルの「彩り失う五色の魔」の防御結界によってダメージは一切なかった。だが敢えて強力な電撃で焼け焦げて海に落ちた哀れな被害者、を演じたのだ。そして海面すれすれのところで「スカイステッパー」の能力で「空間を蹴って」全速力で敵に追いすがったというわけだ。
 メンカルがカマシシ達の電撃を受けてくれたことでより意識が船に向かい、朱海の奇襲も多大なる戦果を挙げた。その横薙ぎの斬撃は多くのカマシシ達の首を海へと落としたのだ。空中を蹴るたびに足に着けた鈴が雅に鳴る。
 だがカマシシ達もそんな朱海に襲い掛かろうと海面を蹴り襲い掛かろうとする。そんなカマシシ達に無情に飛来して肉体を爆ぜさせたのは、メンカルの船上からの魔法誘導弾だ。
「…高速に移動しても無駄。援護は、任せて…」
「これは、ありがとうございませう」
 防御結界とは別に広大な魔法陣を空中に展開し、敵を誘導する魔法弾を放ち続けるメンカル。地獄の猟犬の如く、その攻撃はカマシシ達を追尾して被弾する。その混乱した海上を朱海は空を華麗に舞う。
「いかなる存在であれ、彼女の航行を阻むのならば……その意思を、否定しませう」
 そして斬り刻まれるカマシシ達。朱海の妖刀の切れ味は持ち主に呼応するが如く、その威力をいかんなく発揮している。スカイステッパーが切れそうになったら、メンカルの弾幕に乗じて船に戻り、また船の行く手を阻むカマシシ達を斬り伏せる朱海。
 隙間を縫ってくる相手もメンカルが容赦なく魔法弾で潰していく。そして雷の竜巻は、メンカルや朱海の必死の防衛に応えるように、クルー達の巧みな操船によって躱していく。

 そしてついに突破するのも難しいと思われたカマシシ達の壁を突き破る鉄甲船「失絆号」。引き離されたカマシシ達はもうこちらを追ってくることはないことを確認したクルー達は歓声を上げる。
 朱海もその様子を肩に息をしながら見守りながら、艦首の銀の乙女の傍で身体を休める。メンカルはその紫の光の先を見据えていた。
「…さて、邪魔になるのがこれだけで済めば良いのだけど、ね……もう一波乱ぐらい何かありそうだな…」
 強大な雷獣の群れは突破することはできた。だがこれで済むほどこの魔海は易しくないだろう。メンカルはそんな予感を感じ、より身を引き締めた。

 こうして「雷柱の魔海」の中でも、雷獣カマシシ達が住まう海域を無事抜けることに成功した鉄甲船「失絆号」。艦首の銀の乙女が発する紫の光はより強くなっており、ゴールは近いこと予感させる。
 そのことを喜びつつも何が起こってもいいように備える、猟兵達であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『最強無敵究極天魔城』

POW   :    最強無敵究極天魔拳
単純で重い【拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    最強無敵究極天魔忍者隊
【城内から忍者軍団】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    最強無敵究極天魔砲
【両肩の砲身】を向けた対象に、【最強無敵究極天魔砲】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:8mix

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠砲撃怪獣・ガンドドンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 雷獣であるカマシシ達のテリトリーを抜け、「雷柱の魔海」の奥まで進む鉄甲船「失絆号」。生息領域は完全に脱したようで、もう姿も見えない。追手も来ないようだ。
 もちろん未だ雷の竜巻は吹き荒れ続けているが、クルー達の奮戦の航行技術と、猟兵達の力で嵐をねじ伏せ、時には華麗に回避し、紫の光の先へと進む。

 そしてついにその紫の光の終着点へとたどり着く。艦首の銀の乙女が指し示した光の先には、天高く洋上に浮かぶ「巨大な紫色の光球」が存在した。
 それを形容するとすれば、紫の太陽といったところか。この巨大光球こそが、新世界「グリードオーシャン」へと繋がる鍵なのか。
 そんな疑問を猟兵達が抱いていると、突如光球から、強烈な光が発せられる。目もくらむような紫の光。今までの艦首の銀の乙女が発していた光とは比べ物にならないほどだ。

 その光の後にその巨大光球から現れたのは、巨大なる城の如きからくりの巨人機兵。しかも雷の竜巻を取り込んで動力としているようで、この雷の竜巻渦巻く中でも悠々と動くことができるようだ。
 鉄甲船を上回る巨躯の身体。洋上に現れた巨大なる存在。その腕で薙ぎ払われたり、砲撃など食らえば、いくら鉄甲船であっても沈没は逃れられない。
 いずれにしてもこの巨大なる機械兵こそ、紫色の光球が生み出した番人。これを倒さずにして、新世界の手がかりは得られない。
 やるべきことはきまった。船を沈められる前に、敵機械巨兵を破壊せよ。猟兵はその目標に向かって戦いを始める。洋上に吹き荒れる嵐の中、最後の決戦の幕が上がる。
穂照・朱海
はじめに言ふておきます

彼女は… ろすとりんく号は
我々猟兵と新しい世界との絆を結ぶ
新たな絆はけして失われることはない!

・戦法
まずUCで変化
化けまするは……「ぬらりひょん」
誰にも気づかれぬうちに家に上がり込む妖怪
その能力を使い、城の内部に入り込みます
正体はタコやクラゲという説があり、泳いで近づきます

此度の変化は二段構え
奥に侵入し、誰もいないところで再び変化

その姿は「長壁姫」
城に住み着き、城主に城の運命を告げると言ふ

ゆえに宣言する!
この城は間もなく滅ぶ

また城に怪異を起こす妖でもある

ここは海
人の世に非ず、妖の世
怪異を起こせば…
海の妖が大挙して来ませう

自らも長壁姫の眷属、蝙蝠を機械に入り込ませ妨害工作を


オードリー・マクリーン
「あら……私のゲンコツじゃ利きそうにないわね」
やや怯んだような様子を見せるが、即座に気を取り直す。
「基本に忠実に攻めるわ。デカブツはまず足を狙え、ってね」

【クライシスゾーン】で天魔城の足下の海を竜巻に変え、バランスを崩す。拳を振るうにせよ砲を撃つにせよ、足元がおぼつかない状況ならば思うようにポテンシャルを発揮できまい。
その場合『実は飛べる』だったら怖いが、そのときは射撃姿勢の所に砲に竜巻をぶち当てるなどして嫌がらせ。

攻撃する際は、狙いを関節などの駆動部とする。構造上、他の部分よりは脆くならざるを得ないはずだし。
派手に吹っ飛ばすほどの火力は望めなくとも、地道にコツコツとダメージを稼ぐ。



 雷の竜巻が今だ吹き荒れる海域。「雷柱の魔海」を進み、雷獣を退け、艦首の銀の乙女が指し示すか細い紫の光を追って航海を続けた鉄甲船「失絆号」。
 その果てに現れた巨大なる紫色の光球。だがその光球は、船を拒むように強大なる守護者を召喚する。
 それは城という建築物が集合し、一個の機械兵器として起動したような姿だった。何の原理かはわからないが海面へとそびえ立つ巨大なる機兵。究極の城とは兵として動くという現れなのか、無敵という胸の文字を誇示するかの如く、からくりの歯車の音が響き渡る。
 このサイズの敵に踏みつぶさるのはおろか、拳を叩きつけられるだけで鉄甲船は沈没するだろう。あまりの出鱈目な出来事に、ゴールが見えて心躍っていたオードリー・マクリーンは呟く。
「あら……私のゲンコツじゃ利きそうにないわね」
 猟兵とはいえ、個人でどういうできるレベルを超越している。その巨大さにさすがのオードリーもやや怯んだような様子を見せるが、即座に気を取り直す。敵に飲まれるわけにはいかないと、気を張ったからだ。
「……はじめに言ふておきます」
 妖刀「朱天狗」を掲げ、女形役者の穂照・朱海は天魔城を見据える。挑むはいくつもの城が合体した存在なれば、その意志があるかどうかも定かではない。だが役者ではない、自分の魂の声が荒海に響く。
「彼女は……ろすとりんく号は、我々猟兵と新しい世界との絆を結ぶ。新たな絆はけして失われることはない!」
 失われた絆は取り戻さようとしている。だからこそ、今こそ障害となる存在を乗り越えていくべし。朱海の言葉に、オードリーも生来の陽気さを取り戻し微笑む。
「そうね。あんな巨大なでくの坊に邪魔させるものですか!」
 そして雷の竜巻が吹き荒れる中でも、オードリーは華麗なる舞いを魅せる。そんな中で巨大なる天魔城はその肩に乗った巨砲を「失絆号」へと向ける。両肩の砲身が、その鉄甲船を希望ごと撃ち砕こうとせんと砲撃を放とうとする。
 だがオードリーの舞いは「クライシスゾーン」の発現をより、海水と荒れる風を使って巨大なる竜巻を生み出し、その足元を強襲する。如何に天魔城が強大なる存在とはいえ、バランスを崩しては当たる攻撃も当てることはできない。さらに狙いとする鉄甲船は自身より小さき標的なのだ。
「基本に忠実に攻めるわ。デカブツはまず足を狙え、ってね」
 その言葉通りの攻撃を実行したオードリー。バランスを崩した天魔城の砲撃は鉄甲船に当たることなく、海水へと着弾する。巨大な水柱が上がるものの、すでに雷の竜巻にて荒れた海。クルー達に動揺はない。
 実は飛べることも考慮してオードリーは射撃態勢のところに竜巻を当てるなどして嫌がらせ対策を施す予定ではあったが、それは杞憂だったようだ。足元を突き崩されてバランスを喪失している天魔城は、オードリーの竜巻に苦心しているようだった。

「此度あけみが化けまするは……ぬらりひょん」
 そしてオードリーの竜巻が天魔城を突き崩している今こそ、朱海にとってはチャンスである。能力「艶姿百鬼変化(アデスガタヒャッキヘンゲ)」で妖怪「ぬらりひょん」へと化ける。その能力は朱海の役者としての能力も相まって、仕草すら妖怪そのものであった。
 ぬらりひょんとは誰にも気づかれぬうちに家に上がり込む妖怪。故に、その能力を全開にしてオードリーの竜巻が襲い掛かっている天魔城の足元の城門へと泳いで侵入する朱海。その正体はタコやクラゲという説があり、滑らかに泳ぎ、さらに城門もするりっと隙間を縫うように入り込んでいく。
 だが異物の侵入を許すはずもない天魔城。曲者を排除するために、城内の忍者軍団が動き出す。兵までも動員できるその巨大戦力に、召喚されたとは思えない存在の得体の知れなさに舌を巻く朱海。
「此度の変化は二段構えでございます」
 そしてぬらりひょんの姿から朱海の姿に戻り、また新たな妖怪が姿を現す。そこに現れたるは、美しき妖の姫「長壁姫」。
 かつて城に住み着き、城主に城の運命を告げると言う、蝙蝠を眷属する女妖怪。故に彼女に成り得た朱海は、城内の忍者軍団が襲来する中、力強く宣言する。
「この城は間もなく滅びまする」
 艶やかな声と共に響き渡る波。その声に同調するように現れるは、海の物の怪達。彼女「長壁姫」は城に怪異を起こす妖でもある。この洋上は、人の世に非ず、妖の世界。つまりは海とは妖怪の住処でもある。そこで怪異を起こすとなれば、海の化生をおびき寄せてしかるべきである。
 こうして蛸やイカなどの海の化け物達が城内に入り込み、忍者軍団を巻き込みながら破壊を巻き起こさんと暴れまわる。さらに朱海も「長壁姫」の権能を駆使して、蝙蝠を歯車などに入り込ませるなどの破壊工作をしながら、城を脱出する。
 破壊を巻き起こした元凶を排除しようと天魔城も動き出すが、オードリーの竜巻が動きの悪くなった天魔城の関節部に突き刺さり、派手に破壊を巻き起こす。朱海の長壁姫が呪詛が効いている上に、関節などの駆動部は脆い。そこを意図的に狙ったオードリーの狙いは見事に的中した。
「派手に吹っ飛ばすほどの火力は望めなくとも、地道にコツコツとやっていけば、巨人といえども倒れるわよ?」
 そうして内部と外部からの連携攻撃によって、天魔城は洋上で膝をつかざるを得なくなる。朱海とオードリーは人間一人としては、かの天魔城の大きさには遠く及ばない。
 だがその二人が巻き起こした破壊はまさしく、天魔城にとっては大いなるダメージとなって今、その醜態をさらす結果となっている。

 巨大なる敵に対しても怯まない攻撃をもって、希望を塞ぐ敵を倒す一打となす。初戦は大いなる戦果をもって、鉄甲船に乗るクルーにも大きな希望を与える結果となったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋奈森・鈴音
大きな相手で大変そうー。

敵の攻撃の前に全力で狐火を海面に叩きつけ水飛沫や水蒸気で煙幕を作り、一時的にでも船の姿を隠すわー。
攻撃に間に合いそうになければ最大限の狐火で攻撃を相殺するか逸らすかで初撃だけは防ぐ!
姿が見えなければ小さな船に攻撃は難しいでしょうし、大きな相手の位置は凡そわかるはず。
隠れてる間に狐火を操作し砲身が有ると思われる付近にそっと飛ばしておくー。
霧が晴れて向こうが攻撃態勢を取ったら砲身の中に狐火を入れて、相手の攻撃のタイミングを見切ってカウンターの要領で内部で爆発させるわ。
おねーさんだけじゃ火力不足だし相手の力も利用させてもらうわよー。
「可愛い女の子に手を出したら火傷するわよ?」



 荒れ狂う海の上にそびえ立つ、巨大なる城の塊とも呼べるからくり機兵・天魔城。もはや海上の攻城戦とも呼べる戦いの様相を得ているその決戦は、足元を崩され、城内の軍団は海の妖によって蹂躙されている状態にある天魔城の不利な形勢であった。
 だが一つでも間違えればここまで紫のか細き光の導きに従って航行してきた鉄甲船「失絆号」は沈没させられるほど、現在は危うい状況なのである。それほど天魔城とかの船の大きさには差があるのだ。
 攻撃を受ければたちまち危機的な状況に陥るということで、クルーも緊張感を持って雷の竜巻を避けながら天魔城の攻撃に備えている。
「大きな相手で大変そうー」
 そんな緊張感のない声を上げるのは緋奈森・鈴音。どんなに巨大な敵であろうとも、どんなに危機的な状況であろうともこの妖狐の悪戯っぽい笑顔を消すことは叶わない。
 だがマイペースである彼女でも、好むものに対してはとことん動く。鈴音にとって銀の乙女の艦首を要するこの船はお気に入りの一つとなっているのだ。故にそれを排除しようとする天魔城に立ち向かう理由になる。
 そして足元を崩されている天魔城は砲撃にてその船を沈めんと、両肩の砲身が動き出す。強力な天魔砲をもって、鉄甲船を吹き飛ばそうという算段であろう。
「そうはさせないわー!」
 鈴音は「フォックスファイア」による狐火を展開し、出来る限り結集し海中へと叩き込む。消えることのない全力の狐火は、太陽のように燃え盛る。そして海水を次々と蒸発させて水飛沫や水蒸気を発生させ、霧という名の煙幕が鉄甲船の周囲を覆いつくす。
 その濃厚な霧に船影は見失った天魔城ではあるが、それでも構わず天魔砲を発射する。さきほどまで砲門を向けていた方向に砲弾が飛来する。初撃を防ぐことに専念にしていた鈴音はもう一つの狐火の塊をそちらにぶつけて、何とか軌道を逸らす。そして濃霧の中、爆裂する水音と上がる水柱。だがそれでも船は健在であった。
「何とかなったわー。これで一先ずは安心ね」
 そう言った鈴音の言う通り、初撃こそが最大の山場であった。霧に隠れているとはいえ、最初はある程度狙いを定められている。そこそこの命中精度の中でどうにか鈴音の手の内で回避する必要があった。だが、それを凌ぎ霧の中を航行し始めた「失絆号」を、外にいる天魔城が捉えられるはずもない。それほど深い霧の中にあるのだ。狙いも定まるはずもない。
 だが吹き荒れる雷の竜巻が立ち並ぶこの海域では長くは霧の維持は難しい。それ故に鈴音は攻撃へと移る。とはいえ、あれほどの巨大な相手では狐火単体の攻撃では効果は望めないだろう。故に策を弄する鈴音。

 そしてついに霧が薄れ、天魔城の前に姿を現した鉄甲船。それを発見した天魔城は砲門を向ける。機械的な駆動音と共に、砲身が定めるは猟兵達の希望。そんな中でも鈴音は艦首の銀の乙女の傍にいた。
 クルーが目を閉じる中、天魔砲が発射される。直後、響き渡る爆発音。それは砲弾を発射した音ではなかった。クルー達が目を開けると、そこには右肩の砲門がが破壊され右肩が爆発と煙をあげる天魔城の姿があった。
 誰もが驚きの表情を浮かべる中、鈴音だけは当然といった表情をしている。
「おねーさんだけじゃ火力不足だし、相手の力も利用させてもらうわよー」
 実は霧の中で姿を隠している間、鈴音は天魔城の砲身付近に狐火を飛ばしていたのだ。濃霧であっても敵影が見えるほど相手は巨大故に、それほど苦労はしなかった。そして砲撃態勢を取った瞬間、砲身の中に狐火を侵入させてカウンターの要領で砲撃タイミングで爆発されたのだ。暴発した右肩の天魔砲は盛大に爆発を起こし炎上。その破壊は肩部分にまで及び、その衝撃で態勢を崩された左肩の砲撃も明後日の方向へ飛んでいく。
「可愛い女の子に手を出したら火傷するわよ?」
 そう言って艦首の銀の乙女に抱きつく鈴音。爆発と共に後ろ向きに倒れ込む天魔城。巨大であっても、その船を沈めることは能わず。そう言わんばかりに、天魔城が起こした水飛沫が舞い、天魔城の装甲が飛び散る。

 主砲の一つを完全破壊し、右肩から炎上している天魔城。強烈な打撃は1人の妖狐によって齎された。そしてその勝利の瞬間はもうまもなく訪れようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クラリス・シャルトリューズ(サポート)
おそらく足手まといになる可能性が高いので、他の方の邪魔にならないように注意しつつ、ユーベルコード「生まれながらの光」で傷病者の救助や治療に専念します。



 洋上に現れた天魔城。その巨大な身体は天を覆いつくし、雷の竜巻すらものともせずに、雷を飲み込んで力としている。まさしく嵐に屹立する巨大な紫色の球体の守護番人ともいえる存在。
 猟兵達が攻撃し、その巨大な天魔城は破壊されていき、巨大砲の一つは完全に崩壊した。それでも巨大な砲「天魔砲」はまだ一門残っている。それが狙いを定めているということだ。
 そして天魔城を攻撃するのが猟兵ではない。鉄甲船「失絆号」を守るという役割も重要だ。美しき翼を羽ばたかせ、クラリス・シャルトリューズ(エクソシスト見習い・f11270)は祈りを捧げる。
「皆様、大丈夫ですか?」
「ああ、だが砲撃も避けなきゃならん。怪我人も収容せにゃならんし、雷の竜巻も対応せんと船が沈む! とにかく手に足りねえ!」
 猟兵達が必死の攻撃で天魔城を攻略しようとしているが、それでも鉄甲船のクルーの対応も必死だ。あの巨大砲の砲撃を避けるだけでなく、雷の竜巻が吹き荒れる「雷柱の魔海」を航行しないといけない。その際、風に煽られて負傷した者や、落雷に被弾した者、砲撃によって船が揺れて身体を痛めた者などの負傷者が続出しているのだ。
 それだけの負傷者が増えれば航行に携わるクルーが減り、移動速度や反応速度がどんどん落ちてしまう。このままではいずれ鉄甲船は動くことすらままならない状態になってしまうだろう。
「船長様、負傷者の方々を一室に集めて頂けますか?」
「あん? ……何か策があるって顔だな?」
 クラリスの決意に満ちた顔を見て、「失絆号」の船長は近くにいたクルーに指示を出して負傷者を大きな区画の船室に集めさせる。負傷の度合いは違えど、すでに航海任務に就けることができないほど傷ついた者達だ。
「うう……」
「痛えよ……」
「くそっ……死にたくない……」
 だがそんな戦場病院のような船室の光景を見てもクラリスは絶望しない。自身の力はとても非力で、あの巨大な天魔城を倒すことなどできはしない。だがそれでもやれることはある。鉄甲船「失絆号」を沈めないために力を振るう。
「桜花の花吹雪よ、全ての命あるものに癒しと安息を与えんことを……」
 そして発動するは「桜花の舞風(スリジエ・フルリール)」。船室に景観にそぐわない桜の花吹雪が舞う。そしてそれに当てられた者は安らかな寝息と共に深い眠りに落ちていく。
「こいつは……」
 クラリスが起こす様を隣で見ていた船長。その受けた負傷はみるみると回復していくのが見える。まさしく奇跡の御業ともいえる。そして傷が癒え切った者から目を覚ましていく。
「あれ……ここは?」
「痛みがない?」
「野郎共! 寝ている場合じゃねえぞ! とっとと持ち場に戻りやがれ!」
 そんな寝坊助のクルーに対して船長が檄を飛ばす。その声に反応して即座に身体が反応し、各々の仕事に戻っていくクルー達。その様子を眺めていた船長が、クラリスの方向へと向き直る。
「ありがとよ。嬢ちゃんのおかげでまだこの船は持ちそうだ」
「私は自分の仕事をしたまででございます。お気になさらず」
 そう言ってふわりと優しい笑顔を浮かべるクラリス。そしてその船室の窓から戦況が見える。すでにこの荒天の中で、他の猟兵達が天魔城と激戦を繰り広げている。
 鉄甲船のクルーが回復していくと共に、まだこの「雷柱の魔海」にも天魔城の砲撃にも耐えることができる。クラリスは運び込まれてくる負傷者を回復させながら、祈りを捧げる。

「どうか皆様、勝利を」

成功 🔵​🔵​🔴​

メンカル・プルモーサ
……ふむ……もうちょっと、かな……
【未だ至らぬ賢者の石】により鋼鉄製の巨大魔人像を作成…【浮かびて消える生命の残滓】でパワー重視で命を与える…そして水上歩行の術式をかけて準備完了…
…私は肩に乗って…巨大には巨体…魔人…ゴー…
…(少年の心を忘れてない船員大歓喜な)がっつりとした巨体同士の殴り合い……細かく指示を出して有利に立ち回ろう…
…援護に出てくる忍者達は【空より降りたる静謐の魔剣】で迎撃…
…左の砲塔はオーラ防御による障壁で防御…
…胸に仕込んだ遅発連動術式【クロノス】の印から出現するワンダレイの砲塔…すなわち【起動:海神咆吼】によって天魔城に主砲を叩き込んでトドメとするよ…


宮落・ライア
んー、どうやって壊すかなー。
……やっぱりド派手に両断かな。

【自己証明】【止まる事なかれ】で身体能力強化。
【空蹴】【限界突破・ダッシュ・ジャンプ】で強化を乗せた超加速で
水上を駆け天魔城の元まで一気に接近。
【殺気】でもって最優先排除と無理やり認識させる。
忍者は手裏剣ならそのまま無視して上へ。
毒が仕込まれていれば毒耐性で無視。
鎖は怪力任せで引き千切って無視。
通せんぼなら、速度を乗せた吶喊で四散させる。

とにかく天魔城の頭上まで駆け上り、さらにその上に跳ぶ。
そして【力溜め・気合い・薙ぎ払い・鎧砕き・森羅万象断】で
頭から股まで両断する。

天魔か……。
ははっ!英雄の獲物にしてはいい名前じゃないか。



 鉄甲船「失絆号」の動きが精彩を取り戻したことで、さらに天魔城は攻撃を当てることが難しくなってきている。この雷の竜巻が吹き荒れる海を縦横無尽に駆け巡り、砲撃を避け続ける。
 一方の天魔城は巨大な大砲「天魔砲」は片方は爆発して失い、足関節は破壊されて動きが悪くなり、忍者軍団も相当に消耗している。その巨大なる牙城は、まさしく崩壊一歩手前といった感じだ。
「……ふむ……もうちょっと、かな……」
 そう言ってメンカル・プルモーサは天魔城をこう評す。彼女の眼鏡が嵐の中でも冷静に巨大なる敵性存在を見定める。故にわかる。物言わぬ敵ではあるが、確実に焦りがある、と。
「巨大には、アレかな……では行く、よ……」
 自らが取り入れた世界技術の知識を結集し、メンカルは艦首の銀の乙女の隣で、濃紺の刀身を持つ黎明剣【アウローラ】を天に掲げる。発動するは「未だ至らぬ賢者の石(ラピス・フィロソフォルム・レプリカ)」。
「万物の素よ、変われ、転じよ。汝は霊薬、汝は真理。魔女が望むは焦がれ届かぬ秘奥の技……」
 詠唱を完了した時、鋼鉄が生まれ出で、形を成していく。積み上がっていく鉄の塊達。そして海に屹立するは、巨大なる天魔城に勝るに劣らない、鋼鉄製の巨大魔人像。
 その内部はメンカルが知識として得たモノを総動員して創られたガジェット動力を有している。そしてそこに膨大な魔力を注ぎ込むことによって巨大なる鋼鉄の魔人は動き出す。最後の仕上げと言わんばかりに、足元に水上歩行の術式を施しメンカルはその肩に飛行で飛び乗る。
「……巨大には巨体…魔人…ゴー……」
 突如現れた鋼鉄の魔人。その雄姿に少年の心を忘れていない海の男達は大歓声を上げる。そしてあれならば倒せると希望を与える。その魔人に目を輝かせる少女が、船上に一人いる。
「メンカルは派手だなー! いいなー!」
 宮落・ライアは武骨な骨肉の剣を肩に乗せて、少年のようにキラキラした視線を魔人に対して向ける。がっつりとした巨体同士の殴り合いは心躍るモノがある。天魔城のからくり仕掛けの城の拳と、メンカルの鋼鉄の魔人の拳が激突するたびに、巨体が揺れ、風圧が吹き荒れる。
 天魔城と魔人像の殴り合いはほぼ互角。ならばと天魔城は、城内で待機している忍者軍団を操者であるメンカルへと放ってくる。
「それは……予測済み……」
 そう言ってメンカルはアウローラから術式を発動させて、魔法の剣を大量発生させて忍者軍団に対して飛ばして迎撃する。だが忍者の対応に魔力を使っていては少なからず魔人像の操作にも支障がでるであろう。それを見逃すライアではない。
「天魔か……。ははっ! 英雄の獲物にしてはいい名前じゃないか。いざ!」
 自身の力を信じ、思うがままに船から飛ぶライア。鋼鉄の魔人像を足場にして、忍者軍団へと立ち向かう。メンカルへ向かおうとする忍者軍団を、自身が発する恐るべき殺気でこちらへと狙いを向けさせる。
「忍者如きに、英雄は止められないな!」
 飛び掛かってくる忍者軍団をライアは力のままに振るった骨肉の剣の回し斬りで一斉両断する。斬った勢いで落下するも、水面を限界突破した力で蹴り上げ、再び空中飛翔する忍者を斬り断っていく。
「……ライア、ありがと……」
 忍者軍団をライアが引き受けている内にメンカルは再び魔人像の操作に集中する。天魔城の拳が迫るのに、うまく拳を合わせてクロスカウンターを炸裂させる。轟音と共に破壊されたのは、左肩に乗っていたもう一つの天魔砲であった。砲身が折れ、砲撃機能を司る機関部が爆発したのか炎と煙が上がる。
 それを見たメンカルは天魔城の両腕を、魔人像の腕で抑え込む。拳と拳を握り込み、がっぷりよつになる状態。だがこの状態こそ、メンカルが持ち込みたかった状況だ。残っている魔力をすべて注ぎ込み、胸に仕込んだ遅発連動術式【クロノス】の印からガジェットを起動。そこから現れるは、ワンダレイの砲塔。
「……疑似起動:海神咆吼……発射……」
 飛空戦艦ワンダレイの主砲を模した砲撃が、両腕を塞がれた天魔城のがら空きの身体に突き刺さる。その砲撃は胸に風穴を開けるほど突き刺さり、そのまま紫の球体の隣を掠める。
 だがこの渾身の一撃すらもトドメとはならない。この先は通さんと言わんばかりに天魔城は踏みとどまり、魔人像を抑え込み押し返さんと力づくで迫る。魔人像の巨体が揺れ動きながら、メンカルはその火事場の馬鹿力に軽く驚く。
「……しぶとい……だけど……」
 そう言ってメンカルは魔人像の下へと視線を向ける。そこには忍者軍団と交戦を続けるライアの姿が。そしてライアもまた、砲撃を食らっても倒れない天魔城をどう攻略するか悩んでいた。
「んー、どうやって壊すかなー。……やっぱりド派手に両断かな」
 あのワンダレイの砲撃すらも耐えきるならばそれしなかい、とライアは決断し忍者軍団を無視して天魔城の頭を目掛けて突き進む。だが上に進もうとするライアを見逃す忍者達ではない。手裏剣を放ち、毒苦無を投げ、鎖で拘束せんと投擲する。
 しかしライアは止まらない。手裏剣や苦無は弾き飛ばすし、傷を負っても全く気にしない。毒も自らの身体が作り出す抗体で耐え、己の身体に巻き付く鎖も怪力で無理やり引きちぎる。止まらない、止まる気もないライアはすべてを無視して天魔の頂きへと迫る。
 最後に自らの身体を盾にして止めようとする忍者軍団を、速度を乗せた吶喊で四散させ、ついに頭上へと到達する。そしてその頭を蹴り、さらに天高く飛び上がる。
「鋼も、山も、海も、空も、空間も…断ち切ったあの記憶にはまだ届かない。それでも『まだ』だ!」
 さらなる高みへと、未知なる世界への道を切り開かんと。ライアの「森羅万象断(シンラバンショウダチ)」が炸裂する。裂帛の気と共に振り下ろされる斬撃。すべての猟兵と、鉄甲船「失絆号」の想いを乗せた一撃は、天魔城の頭から股まで両断するほどの威力であった。
 真っ二つにされた巨体がズレ落ち、崩れていく天魔城の二つに別れた身体。そして直後に起こる大爆発と共に、爆発四散して海の藻屑となって消えていく天魔城。

「うわーーーー! 助けてーーーメンカルーーーー!」
「……ライアは……詰めが甘い……」
 その残骸が海へと沈んでいき荒れていく海。斬った衝撃で海に落下したライアが壮大にその崩壊に巻き込まれようとしているのを、魔人像を操作して掬い上げて救出するメンカル。そのご愛敬と言える光景を見ながら、他の猟兵達やクルー達は勝利したこを確信し、歓声が上がる。

 そして全員が鉄甲船「失絆号」の艦首の銀の乙女の光が指し示した、紫色の光球の変化を目にする。その紫の光の中に僅かな「白い光」が混ざり、そこからある光景が映り込む。
 それはこのサムライエンパイアとは違う雰囲気の、「南国の島々」のような風景であった。この世界とは思えない、別世界の光景ようだった。
 これこそが噂の新しい世界「グリードオーシャン」なのだろうか。今はそれはわからない。だが確実に鉄甲船「失絆号」はその道を切り開き、その世界への絆を繋ぐ一助となるだろう。
 まだ多くの鉄甲船の力がいるのかもしれない。だがこの「失絆号」をここまで導いた猟兵達に対し、クルー達は最大級の賛辞ともとれる敬礼を持って出迎えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月15日


挿絵イラスト