剣と魔法と竜の世界。猟兵達からは『アックス&ウィザーズ』と呼称される世界。
その辺境に、雲を突き抜け高く聳える山がある。魔力を帯びた希少金属の産地としても知られ、武具職人界隈では知らぬ者はいないと言われる土地であった。
だが、そんな土地に……異変が生じていた。
──バサッ! バサッ!
吹き付ける吹雪の中、空を切る羽撃き音が響く。
その羽撃きの音源は一つではない。風雪の音を掻き消すかの如く、無数の羽撃きが鳴り響いていたのだ。
──ギャァァァァ!
巨大な翼、鋭き爪牙、強靭な尾。叫ぶ声に乗って炎が漏れる。
群れを成す彼らに、個別の名は無い。だがそれでも、彼らの存在がこの世界における圧倒的脅威であるのは、事実である。
彼らの名は、『竜』。アックス&ウィザーズにおける絶対強者に連なる存在だ。
……嘶く、名も無き竜の群れ。
空を舞い飛ぶ彼らの動きは、どこか規則的。まるで何かを守るかのように、円を描いて飛ぶのだった。
●
「お集まり頂きまして、ありがとうございます」
グリモアベースに集まる猟兵達を、銀の髪のグリモア猟兵が迎える。
常に微笑を絶やさぬヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)の表情は、今回はどこか引き締まったもの。
どうやら今回の依頼は一筋縄ではいかなさそうだ、と。猟兵達は、どこか予感染みた物を感じていた。
「今回皆さんに赴いて頂きますのは、『アックス&ウィザーズ』世界の辺境。希少金属の産地として知られる山地です」
魔力を帯びた希少金属の産地として知られるその山は、現地世界の武具職人の間では知らぬ者は無いと言われる程の土地なのだとか。
だがそんな土地に、最近異変が生じているのだと言う。
「どうやら、その地に……竜の群れが、棲み着いてしまっているようなのです」
長きに渡る猟兵達の冒険の結果、アックス&ウィザーズ世界に対する最大の脅威である『群竜大陸』の在処が明らかになったのは、記憶に新しい所だ。
だが、その存在が世に明かされてしまった影響か。モンスター達の活動も活発になっているようで……結果、今回の事態を招いてしまったらしい。
「棲み着いた竜をこのまま放置する事は、出来ません。今回皆さんにお願いしたいのは、この竜の群れの討伐となります」
彼らが麓の村落を襲撃しないという保証は無いし、希少金属を確保出来ない事で発生する周辺諸国の経済的損失も無視出来ない。
……この地に生きる人々の未来の為に、棲み着いた竜達を見過ごす訳にはいかないのだ。
「とは言え、ただ『竜を退治する』、という訳にはいかないのが難しい所でして……」
ヴィクトリアの表情が、僅かに曇る。
戦場となる地は、真下に雲の海が連なる程の高所となる。時期も悪く風雪が吹き荒れ、猟兵達の体力を着実に削っていくのだという。
更に、その上で厄介なのが……
「この山地全域が、高濃度の魔力に覆われておりまして……」
魔力を帯びた希少金属の影響か、それともこの魔力があるから希少金属が生み出されたのか。何にせよ、山地全域には高濃度の魔力が満ちているのだという。
強すぎる魔力は、定命の身には毒となる。多分に漏れずこの山地の魔力もそうであり、風雪と共に、猟兵達の身体を毒の様に蝕んでいく事だろう。
……それなら、消耗を抑える為に戦場となる場所に直接転移をすればいいのでは、と。
とある猟兵の口から溢れた言葉には、ヴィクトリアが首を横に振る。
「私も可能ならそうしたいのですが……山の麓に皆さんを送り届けるまでが、精一杯なのです」
どうやら、現地に満ちる魔力が障害となっているようで。山地の麓に転移をするのが精一杯であるらしい。
風雪と魔力が吹き荒れる過酷な環境での山登り、そしてその末の竜との戦い……成程、これだけ厄介な案件であればヴィクトリアの表情も引き締まるというものだ。
「厄介かつ面倒な案件になると思います。ですが、皆さんの力であれば……きっと、務めを果たせるはずです」
皆さんのお力を、お貸し下さい。
そう告げて、ヴィクトリアは丁寧に頭を下げると……猟兵達を現地へと送り出すのだった。
月城祐一
暦の上ではもう春ってホントですか?
どうも、月城祐一です。ウッソだろまだ寒いじゃん……(寒がり)
今回は魔力満ちる雪山にチャレンジして頂く依頼です。
以下、補足です。
第一章は冒険。竜の群れが屯する山頂を目指し、登山に挑んで頂きます。
転移場所は山の麓。その辺りはまだ大した事はありませんが、山頂に進むに連れ、吹雪や足元の凍結、低音と言った冬の山特有の現象が猟兵達を襲います。
また、OPで触れられている通り現場の山は高濃度の魔力で満たされています。
強い魔力は毒の様に猟兵達の身体を蝕みますので、その辺りに対する対策も考えると良いでしょう。
(それぞれの対策が万全なプレイングには、ボーナスが加算されます)
第二章は集団戦。『竜の群れ』が相手となります。
相手の能力や詳細な状況などは、二章への進行時に開示されます。
ただし、第一章での対策次第で、第二章開始時の状況に変化が生じます。そういった意味でも、一章での対策は入念にすると良いかも知れません。
第三章は現時点でお知らせ出来る情報はありません。
章の進展時に情報開示を行いますので、ご了承下さい。
風雪と魔力、竜の群れが待ち受ける霊峰。立ち塞がる障害を、猟兵達は越えていけるのか。
皆さんの熱いプレイング、お待ちしております!
第1章 冒険
『遥かなる霊峰』
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POW : 高濃度の魔力に耐えながら、じっくりと探索する。
SPD : 鉱脈が存在しそうな場所を絞り込み、素早く探索する。
WIZ : 比較的魔力が薄い場所を確認しながら鉱脈を捜索する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メンカル・プルモーサ
登山とか魔力とか……障害が多い山だな…
まず防寒具や登山用具は万全にして圧縮格納術式【アバドン】に格納、適宜取り出し…
…箒に乗って地面すれすれを飛びながら登っていこう…
【闇夜見通す梟の眼】により解析用ガジェットを召喚…魔力や気候のデータを解析させて置こう…
…そして吹雪そうなら地形を利用して凌ぎながら先を目指すよ…天候が荒れ始めたら飛ぶの諦めて徒歩だな…
…休息は扉型の魔方陣を出して【旅人招く御伽宿】中で休憩…
…強い魔力に対しては医療製薬術式【ノーデンス】で抗魔力剤を生成して飲んで対策…
…引き続き徒歩で移動しながらガジェットによる解析で魔力の流れや分布を解析、魔力の低い場所を辿っていこう…
アイン・セラフィナイト
高濃度の魔力に満ちた山、この世界ならではの場所だね。竜の群れがそんな場所で発生してるとなると、強い個体が増えちゃいそうだし……早めに対処したほうが良さそう。
高濃度の魔力に関しては、【魂魄転換】を使用して、周囲の魔力を自分の魔力に変換しながら進んでいこう。足元の凍結は『神羅の鴉羽』で僅かに飛んで『空中戦』、『神封の書』で周囲の空間を歪ませて吹雪から『オーラ防御』だ!
荷物とかはあんまり持っていかないほうが良いかな?吹雪による視界不良とかはボクにはどうしようもないから、他の猟兵さんと一緒になれたら補助に回るよ。
(アドリブ・共闘歓迎です)
●
グリモア猟兵の導きにより現地に降り立った猟兵達が最初に見たのは、未開発の自然と、申し訳程度に広がった道だった。
舗装など、当然されていない。獣道同然のその道の奥を覗こうと視線を動かせば……雲を貫く様に聳え立つ峻嶺の姿が、目に入るだろう。
「高濃度の魔力に満ちた山。この世界ならではの場所だね」
そして同時に、アイン・セラフィナイト(精霊の愛し子・f15171)の様に感覚に優れた者ならば。空気に漂う魔力の濃さに、気付くだろう。
漂う魔力はその濃度が濃くなればなる程に、定命の者にとっては毒へと変じていくのだという。猟兵達も定命の存在である以上、例外ではない。
だが、しかし……この世界のオブリビオンである、モンスター。それも生態系の頂点に位置する、竜種ならば、どうだろうか?
強力な魔力の毒を飲み込んで、一際強い個体へと成長しない保証は無いではないか。
「……早めに対処したほうが、良さそうだね」
脳裏を過る不安を打ち消す様に、口から溢れたのは決意の言葉。アインの金の瞳もまた使命感に燃えていた。
「とは言え、登山とか魔力とか。障害が多い山だな……」
そんなアインの隣で、空飛ぶ箒に横乗りに腰掛けたメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の表情は、常と変わらぬ眠たげな表情だ。
ガジェット研究者の一族であるメンカル。出自と経歴からしてインドア派に見える彼女にとって、この環境はどちらかという厳しい物であるかもしれない。
しかし、その印象はあくまでも外から見ただけの物。知識欲と好奇心が強く、実は意外と行動派であるメンカル。そんな彼女にとって、中々体験出来ぬこの環境は、まさしく未知のもの。
無表情なその瞳に、ほんの僅かに好奇心の光を滲ませて。
「それじゃ、行こうか」
「はい!」
地面すれすれを浮かぶように翔び、進むメンカル。そんな彼女のすぐ後ろに、背中に黒い翼を羽撃かせたアインが続く。
……二人の雪山への挑戦が、始まった。
●
……メンカルとアイン。二人の道程は、順調であった。
未舗装の獣道を飛ぶことで回避し、メンカルの放った解析用ガジェットによって地形や周囲の魔力の流れと言った必要な情報を収集。
疲労は最小限に、効率は最大限に。二人の山登りは、ここまではまさに完璧の形であると言えた。
……だが。
「……ん。ちょっと冷えてきた、かな……」
高みへ登れば、周囲の空気は冷え込んでいく。酸素も薄くなっていく。
更にこの山の頂上は、雲を貫く程の高みにある。必然登れば雲の中へと突っ込んでいく事になる訳で……視界も閉ざされ、判断力も低下していく。
「……アイン、そっちは大丈夫?」
「えぇ、なんとか……」
袖口の異界から防寒具を取り出して着込みつつ尋ねるメンカルの声に、応えるアインの声。その声色から感じられる疲労の色は、薄い。
ここまで二人は完璧な形で来れているというのは、既に触れた通りである。だが、ここから先は下界とは違う、一層過酷な環境となるはずだ。
……特にアインは、ここまで周囲に漂う魔力を自身の魔力へと変換し、その魔力で空を飛んだり、空間を歪ませる事で、環境に適応してきた訳だが……
(……ここで一旦、装備の面も整えた方が良い)
軽装のままのアインをチラリと見やり、メンカルは思う。
ここから先へ進めば進む程、風雪は強くなり視界も遮られる事は多くなるはず。迂闊に空を飛べば風に流されかねないし、視界を失えば遭難の憂き目は避けられない。
いくらアインが魔力で身を固めていようとも、自然環境は甘くはない。万が一、という事態に備えて……物理的な備えは、しておくべきだろう。
「──憩いの場よ、開け、招け」
ふぅ、と息を吐き。描き喚び出すのは扉型の魔法陣。開いたその先に続くのは、メンカルのユーベルコードによって生み出された温泉付きの宿屋だ。
「……一旦休息して、装備を整えよう」
変わらぬ表情のまま、扉の先へと脚を進めるメンカル。振り返って手招けば、アインもその後ろに続いていく。
そうして二人が扉の先へと姿を消せば……雪山には、吹き荒ぶ風雪の音ばかりとなるだろう。
……結果として、この休憩は二人にとって最良の選択となった。
装備を整え、軽度ではあったが確かにあった心身の疲れもしっかり回復する事が出来たのだ。
また道中得られた情報を活かした抗魔力薬の生成にも無事に成功し……もはや、道中で恐れる事など何も無いと言った具合である。
「……それじゃあ、山登りを再開しよう」
魔法陣を抜け出たメンカルのその姿は、まさしく完全防備。続くアインも、メンカルに装備を借りて備えは十分だ。
……見上げれば、まだまだ先は長そうだ。だがその道すらも楽しめそうな程……二人の心には、大きな余裕が生まれていたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ガルディエ・ワールレイド
この寒さは故郷を思い出すが、魔力の影響を考えると故郷以上か。
竜の領域って奴は、どこも理不尽な場所ばかりで困るぜ。
【POW】
【竜神領域】を使用して行動。
ただし飛行用途よりも、《念動力/オーラ防御》の力場で風雪や魔力から自分を守護するのが第一目的だ。
下手に飛んで体温の急激な低下や、変な魔力の流れに呑まれるのが怖いからな。
飛行は緊急時の最終手段だ。
落下防止や、自分の居場所を見失った時に一時飛翔で方向確認等に使用するぜ。
また、極寒の辺境で育った経験を活かして、UC以外でも防寒対策は行っておく。
防寒着や雪上用の靴を用意し、今回は普段着用している鎧を外すぜ。
そうやって、山頂を目指す。
ベリオノーラ・アンフォール
対策①
今回の雪山を登っていく上での問題点である凍結や低温、高濃度の魔力に対しては炎の精霊の力を借りて可能な限り対応できれば、と考えています。(指輪の『環境耐性』)
対策②
精霊術師として普段から魔法に慣れている私であれば、魔力の流れをきちんと見て、より安全な道や場所を選んで動けるはずです。
また、他の方の消耗が激しいようであればユーベルコードを使うことで他の方の負担をこちらで肩代わりし、皆さん揃って無事に目標に届くことができるように頑張りましょう。
今回登る山で取れる魔力を帯びた金属は精霊さんと私にとっても、良い効果の期待できる鉱物ですので、せっかくの産地がダメになってしまうのは避けたいですね。
●
ザクリ、ザクリと。雪を踏みしめる音がする。
現在地は山の七合目辺りであろうか。雲海の中を進むガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)の視界は白に染まり、足元も岩と氷雪に覆われていた。
(……この寒さは故郷を思い出すが、魔力の影響を考えると故郷以上か)
極寒の地で育ったというガルディエにとって、防寒の術は身に染み付いた物。その知識を活かせば冬山の環境はそこまで苦ではない物だ。
だが、そんな彼をして、この地の環境を『厄介だ』と思わせるのは……やはり、身体を蝕む魔力の存在だった。
身体を包む強力な念動力と竜としての権能を纏った今の状態であっても、魔力はじわりじわりと身体を冒す。もし備えをしていなければ、この後に控える戦いまで身体は保たなかった事だろう。
(まったく、竜の領域って奴は、どこも理不尽な場所ばかりで困るぜ……うん?)
面倒極まりないこの地の地勢に内心毒づくガルディエだったが、背後に生じた僅かな変化を感じ取る。押し寄せる波の様に絶えなかった魔力の流れが、変わったのだ。
振り返って目を凝らせば……見えてくるのは、煌々と燃え立つ様な紅の色。魔力の流れはその紅に吸い寄せられているようだ。
紅は、まっすぐこちらへと進んでくる。その正体が気になり足を止めて待ってみれば……すぐに、その正体は明らかになる。
「……あら? 貴方も猟兵ですか?」
「あぁ。……成程、炎の精霊か」
魔力を吸い上げ煌々と燃え立つ炎の精霊を先導者とし、歩みを進めてきたのはキマイラの女性。
名を、ベリオノーラ・アンフォール(キマイラの精霊術士・f08746)。彼女もまた、ガルディエと同じくこの地に挑んだ猟兵の一人である。
この地に降り立ってから、ベリオノーラが最初にした事は炎の精霊を喚び出す事だった。精霊は周囲に満ちる魔力を吸い上げその力を増し、ベリオノーラに加護を与え……その力を活かすことで、彼女はここまで歩みを進めてきたのだ。
……ベリオノーラは、猟兵としての戦闘力はそれほど高いレベルでは無いという。だが彼女の真価は直接的な戦闘力ではなく、精霊と意識を通わせ、魔力の流れを見極める『精霊術士』としての力にあり……その事を、自分自身でよく理解している事が彼女の強みであるのだ。
「……見事なもんだな」
「ふふ、ありがとうございます」
歴戦の猟兵であるガルディエからすれば、ベリオノーラはまだまだ力に劣るだろう。だが自身の持ち味を十全に活かし、ここまでスムーズに歩みを進めてきた事に……ガルディエの口から溢れたのは、素直な賞賛の言葉。その言葉を受ければ、ベリオノーラの表情もふわりとした微笑みが浮かぶだろう。
袖擦り合うも、と言う言葉もある。合流した二人は、そのまま即席のタッグを組んで雪山を進む。
ベリオノーラが魔力の流れを読み、炎の精霊の暖かな加護が力を与えれば。ガルディエは培った経験を活かし道を拓き、足元に潜む危機を未然に防ぐ。
「この山で採れるという金属は、精霊さんと私にとっても良い効果の期待できる鉱物ですので……」
折角の産地がダメになってしまうのは、避けたいですね。
道中のベリオノーラの呟きに、そうだな、と頷きを返しつつ。ガルディエの視線は、高みへと上がる。
麓から見上げた、雲を貫く峻嶺。視線の先にあるその頂きには、確かに近づいている。
それは同時に、この世界の生態系の上位に座する存在との戦いの時が近づいている事も意味している。
……ぶるり、と。ガルディエの背に、武者震いが走る。死闘の時は、近い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アテナ・アイリス
ドラゴン退治なら任せてよ。えっ、その前に寒い中山登りなの・・・。
しょうがないわね、準備万端で行きますか。
寒いのは厚着していけばいいし、足元はブーツの効果で問題なさそうね。
方向も【第六感】で何とかなりそうね。念のため、「シークレットレシピ」と【料理】を使って体が温かくなる食べ物・飲み物も持っていきましょうか。じゃあ、やっぱり問題は魔力の方ね。
オーラ防御で魔力の影響を減少させながら、UC『ノルンの悪戯』をつかって、状態異常力を強化して高濃度の魔力に耐えながら登っていくわ。
さあ、若さを武器にこんなところ踏破してみせるわよ。
●
吹雪く雪山。視界を封じ、気力と体力を奪う厳しいその環境も何のそのと、若く溌剌とした足音が雪を踏む。
「ふふん。若さを武器に、こんなところ踏破してみせるわよ!」
そう豪語するエルフの少女。その正体は……アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)。
アテナは今、己のユーベルコードを使うことで自らの姿を少女の頃の姿へと変じていた。少女特有のバイタリティと、経験を重ねて得た防御術を重ね合わせる事で、この霊峰に満ちる魔力への備えとしているのだ。
(……それにしても、寒いわねぇ)
魔力に対する備えは、少々疲労感を感じてはいるが、概ね問題は無い。それよりも問題なのは……この寒さだ。
足元こそ愛用のブーツの魔力で何とかなってはいる物の、この寒さは多少の厚着では防げぬ程。現時点でこれでは、ここより更に高所に進んだ場合はどうなるか。想像するだけでげんなりとしてしまいそうだ。
「……まぁ、その為の準備はしてるんだけどね」
そう呟いて荷物から取り出したのは魔法瓶。蓋を開け、中身を注げば……湯気立つ芳しい香り。仄かに鼻を刺激するのは生姜の匂いだろうか?
「念の為、用意してきて良かったわ……ん、美味しい」
口に含んで飲み下せば、暖かな茶の熱と生姜の薬効が身体に染み入る。
アテナが用意したのは、身体を温める生姜茶だ。寒い時期に良く飲まれる典型的な物ではあるのだが……料理上手なアテナの手に掛かれば、そんなシンプルな物も極上の逸品へと変わるのだ。
(寒い中の山登りは面倒だけど、ドラゴン退治の為ならしょうがないわね……)
ほうっと息を吐けば、暖かな熱はすぐに白の風雪の中に溶けて消えていく。その様子に苦笑を浮かべながら……アテナの視線は山頂へ向く。
そこにいるのは、この世界の生態系の上位に座する者たち。名もなき個体ばかりとは言え、その強さは恐らく並大抵の物ではあるまい。
だが、そんな相手に怯んでいては……『帝竜』と謳われる、頂点に挑む事など出来はしないはず。
「……さてっ。もうひと踏ん張り、頑張りましょうか!」
ぐっと拳を握りしめ、アテナは再び歩みを進める。
その瞳に滾る戦意の炎は、周囲の風雪を溶かす程に熱く滾っていた。
大成功
🔵🔵🔵
鬼柳・雄
※アドリブ絡み歓迎
ドラゴン退治か、久しぶりだな。あいつらなんでこういう行きにくい所に住み着くんだか。まぁ気軽に街に来られても困るか
転移前に説明は聞いてるけど、一応現地住民から山について「情報収集」。登るルートや気を付ける場所とか聞いとく。
寒さ対策に防寒具や雪山装備は持ってくけど、このベルト(ダイモンドライバー)があれば大体耐えられるし、シア呼べばなんとかできるだろ。あれでも氷と炎操る悪魔だしな。
魔力の方もダイモンデバイス通してシアに回せれば魔力の大幅節約になるかもな。
あとは山の「地形を利用」して登るだけだな。やばそうな奴は手を貸して、「気合」と「覚悟」で乗り切るか。
ティエル・ティエリエル
WIZで判定
ミフェット(f09867)と一緒に山登りだー♪
山の上は寒いと聞いて、もふもふコートを用意して準備万端!
ミフェットと一緒にふもとの村で「コミュ力」を使って「情報収集」!
希少金属の回収に使っているルートとかを教えてもらうよ♪
登山を始めたら風に流されないように注意しながら飛んでいくよ☆
魔力が濃くなってきたらミフェットと交互に【フェアリーランド】の中で休憩しながらどんどん進んでいくね♪
フェアリーランドの中には毛布や温かい飲み物を用意してゆっくり回復できるようにするね♪
もし他の猟兵さんとばったり遭遇したら一緒に休んでもらってもいいかも!
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
ミフェット・マザーグース
冬の山はまもの!
本やデータでたくさん知ってる、バナナでクギがうてる寒さ!
いつもの服の上に、ふかふかダウンをしっかり着込んでいくね
ティエル(f01244)と一緒に行動するよ
WIZで判定
麓の村で、「コミュ力」で登山ルートにくわしい人をさがして「情報収集」して、しっかりルートを決めてから安全な道を登山するね!
ミフェットは、髪を触手にして「ロープワーク」で上手く使って山を「クライミング」。「怪力」で岩を掴んで慎重にちょっとづつ昇っていくよ
疲れたらティエルの「フェアリーランド」でひとやすみ
ティエルが休んでる時はミフェットがツボを持つから、落とさないようにお腹側にリュックで留めて、交代で山頂を目指すぞー!
●
氷雪が吹き荒び、体を蝕む魔力満ちる霊峰を、猟兵達は次々に突破していく。
そんな中、他の猟兵達から一歩遅れた動きを見せた者達がいた。
(あいつら、なんでこういう行きにくい所に住み着くんだか……)
はぁ、と一つ溜息を零して、鬼柳・雄(チンピラサマナー・f22507)の視線が前へ向く。そこにいたのはティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)とミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)の仲良し年少コンビに、雄の相棒である大悪魔マルコシアスと言った面々の姿。
(……随分と仲良くなっちまって、まぁ……)
グリモア猟兵による転移後、雄が最初にしたのは登山では無かった。彼がしたのは、付近の村落に住む現地住民への情報収集。普段から鉱物収集の為に登山慣れしている現地の者なら、安全なルートや魔力に対する対策を心得ているだろうと考えたのだ。
そんな雄と同様に、ティエルとミフェットの二人も動いていた。そして三人は偶然、近くの村で顔をあわせる事になり……そのまま行動を共にしていたのだ。
「山の上は寒いって聞いてたけど、そんなに寒くないね♪」
「油断したらダメだよティエルっ。冬の山はまものだもん!」
バナナでクギがうてる寒さなんだよ! と本で知った知識を披露するミフェット(ふかふかダウン着用中)に驚くティエル(もふもふコート仕様)。マルコシアスも目を見開いて驚きを顕にしていた。実はティエルが寒さを感じていないのは、マルコシアスの権能による所なのだが……そこはまぁ、置いておこう。
マルコシアスは精神年齢的に年少組に近い所があるのだろうか? 三人の関係は悪くないように、雄には感じられていた。
(シアは氷と炎を操る悪魔だし、寒さと魔力対策で喚び出してたが……まさかここまで、って所だな)
女子供には怖がられがちな、鋭い目つきの雄である。村への情報収集でも少々怖がられたりはしたものの、山の環境への対策として喚び出していたシアを間に通す事でティエルとミフェットの助力を得て、状況は一変。
無事に村人たちから風を避けつつ進む事が出来るルートを始めとした、様々な情報を得て……今、目的の場所に辿り着いたのだった。
「さて、村人が言ってたのはここだが。こいつは中々……」
「うわー! すごーい☆」
「まるで、壁みたい……!」
三人の前に立ち塞がったのは、剥き出しの岩壁だ。角度はほぼ垂直に近いが、村人が使っているのだろう登攀用の綱が張られていた。
……村人が言うには、この岩壁を突っ切って行くのが山頂への一番の近道なのだとか。ところどころに見える出っ張りが上から吹き降りる風を防ぐ盾となるそうで、体力も温存出来るらしい。
素人目には、危険極まりないルートの様に見える。だが、普通に行けば頂上への道はかなり遠回りとなる上に常に風雪に身体を晒し、忍び寄る魔力も気に掛けねばならない。それならば、現地民が言うルートを信じてみようと……三人は、この道を行く事を決めたのだ。
「よーし! それじゃあ山登りの始まりだねっ☆」
「頑張ろうね、ティエルっ!」
えいえいおー! と拳を振り上げるティエルの腰に、ミフェットの髪の触手がうにょーんと巻きつく。『命綱』ならぬ『命触手』の完成だ。
岩場があるとは言え、万一突風が吹き荒れればティエルの小さな身体は簡単に吹き飛ばされてしまう。だがそんな事が起きたとしても、ミフェットの命触手があれば安心だ。これで心置きなく、ティエルは山登り……いや、岩壁上り(ロッククライミング)にチャレンジする事が出来るだろう。
「面倒だが、ここは覚悟を決めるか」
その横では、相棒を一旦送還した雄が着込んだ防寒具や荷物を繋ぐ紐、そして肝心要のダイモンデバイスとドライバーに緩みが無いかを確認していた。
自分より一回りは下の少女たちが、この岩壁に果敢に挑もうとしているのだが。年長者として、怯んではいられないと……指を指し、ミスが無いことを確認すれば。己の頬をパンッ、と軽く叩いて気合を入れる。
「……うっし、行くか!」
太く頑丈な綱を握り締め、岩壁に挑む雄。その隣ではティエルが翼を羽撃かせ、ミフェットの登攀をサポートしている。
鋭く切り立つ岩の壁。危険なその道に、三人は怯むこと無く果敢に挑む。疲労を感じれば適切に休憩を挟みつつ、着実にその道を進み続ける。
……結果として、三人の行動は最良の形に結びつく事となる。最後発でありながら、三人は最も早く、かつ疲労も少ない状態で頂上へと辿り着く事となるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『竜の群れ』
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POW : 竜の爪
敵を【竜の爪】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
SPD : 竜の尾
【竜の尾】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ : 竜の吐息
【竜の吐息】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
風雪が吹き荒れ、身体を蝕む魔力の毒の中を、猟兵達はそれぞれの工夫で切り抜けて。遂に、山の頂きへと踏み込んだ。
……眼下には、白の雲海。その中に跡切れ跡切れに見えるのは、自然が生み出した緑と、人の営みの証である人工物の塊。
まさに、絶景。思わず見入ってしまうその風景に、猟兵達の心が一瞬釘付けとなる。
──ギャアッ! ギャアァァァァ!!
その時だった。頭上から、威嚇するかのような奇声が響いたのは。
声に気付き視線を向ければ……そこにいたのは、巨大な翼と鋭き爪牙、強靭な尾を持つ巨大な姿。その口から溢れる赤は、強力な熱を帯びた炎の吐息。
……そこにいたのは、この世界の圧倒的強者の一角に座する者。名も無き竜が、群れを成して、そこにいた。
──ギュォォォォン!!
言葉を解する事無く、ただ猟兵達への敵意を剥き出しにするその様子を見れば……彼らに知性は、感じられない。
恐らく、その力は竜としては低位であるだろう。だがそれでも、竜は竜。難敵で有ることは、変わらない。
猟兵達は、それぞれに武器を構え……竜退治に、挑むのだった。
====================
●第ニ章、補足
第ニ章は集団戦。
雪の霊峰に巣食う、『竜の群れ』が相手となります。
『竜の群れ』は個体名を持たない低位の竜が群れを成した存在です。
そのため、竜としての実力はやや低めですが……並の敵よりは強敵であり、難敵です。
戦場は、雪の霊峰の山頂。良く開けた岩場となります。
足元はゴツゴツと硬く、また凍結等もあります。また山の頂上という事もあり強風等も起こるでしょう。
これらの状況に注意するか、または逆手に取るか。それぞれの機転が試されます。
また第一章の結果、猟兵達の消耗は最小限の状態で戦闘を迎える事になります。
万全の状態での、竜退治をお楽しみ下さい。
それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしております!
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メンカル・プルモーサ
……ふむ(竜の群れを見上げつつ)
…冒険者ギルドでこんな言葉を聞いたな…「空を飛ぶなんて馬鹿な奴らだったな…」…と。
…高空を飛んでいる竜を視界に捕らえて【世界鎮める妙なる調べ】を発動…
…眠らせることで(運が良ければ低空の竜を巻き込みつつ)地面に落下させるよ…
…地面はゴツゴツと固い上に凍結しているからね…
…ついでに山頂なら当然遠くは斜面になっている…これらの地形は存分に利用させて貰おう…
…この調子で眠らせて行動可能な敵の数を減らしていって…
…まだ息のある竜や低空の竜には【狩り立てる嵐の猟犬】により誘導弾を連射してトドメを刺しに行くか他の猟兵に任せよう…
ベリオノーラ・アンフォール
皆さん無事に目的地にたどり着けたようで何よりです。
いよいよ竜たちとの戦いになりますが、できるだけ負傷者がでないような結果になるよう頑張りましょう。
登山の際と同様に、指輪に来ていただいている炎の精霊さんの力を借りて、防寒と戦いやすい環境の準備しておかないといけませんね。
あまり戦う力は強くないので皆さんの回復やサポートを中心に動いていきます。
竜の吐息に関しては攻撃力の大きさを考えて避ける事を優先しますが、いくつかの情報が集まれば視覚的にどれを重視したものか判別できるかもしれないので、場合によっては回復を使うことで無理やり突破して他の方のサポートにすぐ向かうことも頭のすみっこに置いておきましょう。
鬼柳・雄
※アドリブ絡み歓迎
おいでなすったな竜ども。悪ぃがここはお前らの住む場所じゃねーんだ。
言葉がわからなくても通じる万国共有の言語、NAGURIAIで片つけようぜ。……変身!
UCを用いた後は「戦闘知識」「先制攻撃」で先手を取ります。
足元が悪いのなら「ジャンプ」からの飛翔による「空中戦」で対応。
「地形の利用」で強風も利用しつつ「グラップル」による格闘で殴る蹴る。かーらーの、相手を捕まえて地面に叩きつけるフェイバリットその名もドラゴンメテオをお見舞いします。
「オラオラどうした!テメェら竜なんだろうが、もっと気合入れてかかってこいや!」
●
地に立つ小さな者達──猟兵を見下ろしながら、名も無き竜達が嘶く。
常人であるならば……いや、熟練の冒険者であっても怯むようなその光景。
だが、度重なる苦難を乗り越えてきた猟兵達が、そんな虚仮威しに怯む事など、ありはしない。
「……ふむ」
群れを成し飛ぶ竜の群れを見上げて、メンカルの口から小さな吐息が溢れた。
メンカルは、かつて聞いたとある言葉を思い出していた。とある冒険者ギルドで聞いたその言葉とは……
「空を飛ぶなんてバカな奴らだったな、か……」
空を飛ぶ。高所を取り、機動力を活かして一方的に相手を攻め立てるその行為は、戦術上では確かに強力な行為であろう。
だが、強力であればある程。それに付随するデメリットがある事もまた、忘れてはならないのだ、と。その教訓を、メンカルはかつて聞いた事があるのだ。
「──誘う旋律よ、響け、唄え」
ぼんやりとした青の瞳が、一団の内でもっとも高所を飛んでいた竜へ向く。
紡ぐ言葉は、とある魔術の鍵となる詠唱。歴戦の猟兵の中でも最精鋭の一人であるメンカルの紡ぐ魔術であるならば。
「汝は安息、汝は静穏。魔女が望むは夢路に導く忘我の音」
竜をその術で捉える事など、実に容易い事。その竜が、名も無き低位竜であるならば、術の成功はまさに約束された様な物である。
紡がれた詠唱、練り上げられた術式が解き放たれる。その術が齎す効果は……強烈な眠気を誘うという物。
術の対象は、群れでもっとも高所を飛んでいた数体の竜。空を飛ぶ彼らが眠気に誘われ、抗えずに意識を落とせばどうなるだろうか?
……答えは、簡単だ。
──ッギャ!? ガァァァッ!?
飛行中に意識を喪った事で、数体の竜の身体が真っ逆さまに落下していく。今までの飛行速度と高所から重力に引かれた速度が加わった事で、その落下速度はまさに流星の如く、と言った所。
そんな物体が、高所から竜の群れを直撃する。まさか頭上から同胞が降り注ぐなど想像もしていなかったのか、竜達は対応を取る事も出来ずに巻き込まれ……更に数体がバランスを崩し、共に地へと堕ちていく。
……これこそが、空を飛ぶ事のデメリット。何らかの事情で飛行を維持できなくなると、簡単に死へと直結しかねないという事なのだ。
「……地面はゴツゴツ固い岩場な上に、凍結までしているからね」
頭から地へと堕ちた竜達が起き上がる気配は、無い。恐らくは首を折るか頭蓋を割るかしたのだろう、その生命は絶たれていると見て良いはずだ。
いくら強固な鱗を持っていようと、この固い岩場に激突した衝撃を無力化は出来ないはず。そう踏んだ自らの考えは間違いでは無かったらしいと感じれば、無表情なメンカルの口元も小さく笑みの形へと変わるだろう。
──グォォオオオ!!
だがそんなメンカルの元へ、幸運にも被害を受けなかった数体の竜が翼を羽撃かせて迫る。
低位とは言え賢明で知られる竜種らしく、この混乱を招いたのがメンカルであるという事を即座に見抜いたのだろう。強烈な尾と鋭き爪牙で血祭りに挙げんと、その目は怒りに煌々と燃えていた。
迫りくる、圧倒的な暴力の一撃。
「オォォォォォ!!」
だが、その一撃は。咆哮を上げつつ横から飛び込んできた青と橙の一撃によって、防がれた。
「──おいでなすったな、竜ども。悪ぃがここは、お前らの住む場所じゃねーんだよ」
振るわれた尾を、爪を。その身体で受け止めながら、竜たちへ向けて啖呵を切ったのは……大悪魔マルコシアスの変じたスーツを纏い、人魔一体と化した雄だった。
登山途中で取り込んだ魔力のお蔭か、マルコシアスの力は常以上。その力の高まりは、身に纏った今の雄ならば分かるだろう。
……この力ならば。竜との真正面からの殴り合いも問題は無い!
「とは言っても、引かねーのは判ってるからよ……言葉がわからなくても通じる万国共通の言語で語ろうじゃねーか!」
必殺の一撃を真正面から受け止められ、困惑する竜達。そんな彼らに向けて、雄が右の拳を握り締め……掬い上げる様な軌道で、振り抜いた!
──ッドン!!
響く炸裂音。衝撃波が生じて広がる程に強烈な一撃が竜の腹を穿けば。あまりの衝撃に白目を剥いた竜の躰が、宙を舞う。
……強烈な拳の一振り。たった一撃で、殴られた竜はその意識を半ば手放したが……雄の言う所の、万国共通の言語(NAGURIAI)は、終わらない。
「オラオラオラァッ!」
追撃する様に雄の身体が跳び上がれば、大悪魔の魔力を受けてその身体が空を駆ける。吹き荒ぶ強風を背に受けて、瞬きの内に竜の懐へと潜り込み……拳を振って腕を絶ち、脚を振るって尾を潰す。
「どうしたどうした! テメェら竜なんだろうが! もっと気合入れてかかってこいや!」
一瞬でその強靭な躰をズタズタにされ、地へと堕ちていく竜。その光景を見て、漸く雄を脅威であると認識したのだろうか。追い掛ける様に、眼下の竜達が空へと舞い上がる。
舞い上がろうとする竜の口元から、朱の色が漏れる。次の瞬間──!
──ゴァァァァ!!!
ゴウッ!! 冷気を切り裂く、強烈な熱が放たれる。竜の代名詞足る吐息が、雄の身体を包み込んだのだ。
氷雪漂う霊峰。極寒のその地に、遠くから見れば朱色の花が咲いたかの様に見えるだろう。だが咲き誇るその花は、万物を死へと至らしめる凶悪な一撃だ。
……定命の者であるならば、欠片も残すことも出来ぬだろうその一撃。
「──効くかよッ!」
その一撃を、雄は真正面から突破する! 雄が纏う、大悪魔マルコシアスの力。炎と氷を扱う大悪魔である彼女の権能が、竜の吐息から雄の身体を守ったのだ。
……だが、しかし。雄の身体を守ったのは、マルコシアスの力だけでは無かったのだ。
(あなたの苦しみ、私が引き受けます……!)
爆炎に塗れて目立たないが、今の雄の身体はうっすらとした光の膜で覆われていた。その光の正体は……ベリオノーラの、精霊の光だ。
ベリオノーラの生命力を対価に発せられるその光は、光を浴びた存在の傷を癒やす癒やしの光。その光を浴びた事で、雄は傷を負っても即座に回復する事が出来ていた。
高まる力と、再生力。この二つがあってこそ、雄は恐れを知らずにその力を振るう事が出来るのだ。
「私は、戦う力は強くはない。ですが……!」
高まる疲労感に、ふらつく身体。だがここで倒れる訳にはいかない、と。己を奮い立たせる様に、ベリオノーラは奥歯をグッと噛み締める。そんな彼女を支えるかの様に、指輪に据えられた赤の宝石が輝きを放つ。
……確かに、ベリオノーラの直接的な戦闘能力は他の者と比べれば劣るかもしれない。だがそれでは、猟兵として役に立てぬのかと言うと……そうではない。
『自分自身の特徴を、どれだけ正確に理解できているか』。その要素こそが、猟兵の戦いにとって最も重要な要素なのだ。
登山の最中もそうだった。ベリオノーラは精霊の加護と魔力の流れを見極めるという、己に出来る事を十全にこなしていた。今回もまた、他者のサポート役に徹する事で戦局を優位に導いている。
……活躍の場面は少ないかもしれない。だがベリオノーラの様に自らをしっかりと理解した物が、支えてくれるからこそ。
他の猟兵達が、その務めを果たす為に。全力を尽くす事が出来るのだ。
「ウッラァァァァァ!」
飛び上がってきた竜の吐息を正面突破した雄が、竜に取り付きその首を締め上げ……地面に叩きつける様に急降下を見せれば。
「無防備に飛び立つなんて、学習能力が無いのか……」
誘う旋律よ、響け、唄え、と。再び力ある言葉を響かせて、メンカルがまた一体の竜を地に落とす。
竜という、この世界の生態系の頂点に座する者達。その群れを相手に力を見せつける二人と、支える一人。
三人の活躍で、猟兵達は優位を掴むのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
アテナ・アイリス
「太陽」
また、一緒になったわね。ミフェット、ティエル。もちろん一緒に戦ってくれるんでしょ。さあ、行きましょうか。
UC『守護女神の煌めき』を使って、【竜の爪】【竜の尾】【竜の吐息】をかわしながら、「2回攻撃・範囲攻撃・乱れ撃ち・早業・鎧砕き・残像」の持てる技能の全てを使って、水の剣と光の剣の二刀流で竜たちを攻撃する。
ミフェットの歌が聞こえてきたら、それに合わせるように剣舞をおこない、「見切り・第六感」で風を読んでその力を利用し、ブーツの力で足場に影響を受けずに機敏に移動していく。
剣の軌道の美しさと強さ、両方を見せつけてあげるわよ。
ミフェット・マザーグース
「太陽」
アテナとティエル、二人と一緒に戦うよ
ミフェット一人じゃ戦えないから、二人が一緒してくれてよかった!
ミフェットとティエルはアテナのふぉろー!
ティエルを頭の上にのせて、風で飛ばされないように髪の毛で「手をつなぐ」ね。攻撃がきたら触手で「盾防御」して「庇う」よ!
UC【嵐に挑んだ騎士の歌】
アテナが全力を出せるように「歌唱」で「鼓舞」するね
♪
見よ 女神の翼は剣に宿り
閃く刃は光の瞬き その輝きは女神の示す指先へ
奔る刃は一陣の風 その剣先は何ものにも止められず
燃え盛る炎を裂いて 振り抜く尾を掻い潜り
唸るカギ爪 火花散らして刃先でそらし
竜の頂上そのこうべ目掛け 雷火となって打ち下ろす!
ティエル・ティエリエル
【太陽】
WIZで判定
ようし、アテナとも合流したから3人集まれば百人力だー♪
ドラゴンの群れなんてボク達が全部やっつけちゃうぞー☆
風が強いからミフェットの頭の上に乗って支えててもらうね♪
その場で固定砲台みたいになって襲い掛かってくるドラゴンを【お姫様ビーム】でどかんどかんと撃ち落とすよ!
こっちに向かってくるのとかアテナの頭上から襲い掛かろうとしてるのとかを優先して狙っていくね♪
竜の吐息で攻撃してきたら吹きすさんでいる風も利用した風のオーラを広げて「オーラ防御」だ!
明後日の方向に全部逸らしちゃうよ♪
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
●
──見よ 女神の翼は剣に宿り
──閃く刃は光の瞬き その輝きは女神の示す指先へ
──奔る刃は一陣の風 その剣先は何ものにも止められず
ミフェットの歌声が、戦場に響く。
轟々と響く風雪、竜の咆哮。様々な雑音に満ちた戦場にあって、普通に歌うだけならば歌は即座に掻き消されてしまうだろう。
だが、何故か。ミフェットのその歌は掻き消されること無く、戦場に響く。
(ミフェット一人じゃ、戦えないから。ティエルとアテナ、二人が一緒してくれて良かった!)
ミフェットの心に燃えるのは、大切な友人である二人への厚い信頼だ。
数多の苦難を共に乗り越え、絆を育んできた大事なヒト達。紡いだその友情が燃え上がれば、苦難に挑む仲間の背を押すこの歌も自然と熱が籠もるというもの。
……響き渡る歌に籠もる、共感する者の力を増すという不思議な力。その効果を本能的に感じ取ったか、竜の群れの口腔から朱の色が漏れて。
──ゴウッ!!
一条、二条、三条……炎の息吹が、ミフェットの身体を飲み込もうと吹き付けられる。
糸を引くように伸びるその火線の熱は、鋼すらも容易く溶かすほどの高温だ。そんな物を真正面から受け止めれば、ミフェットの液体の身体も簡単に蒸発してしまう事だろう。
迫る、死を招く熱。その姿を目の前にして、ミフェットが動じる様子は無い。何故ならば……
「そんなもの……」
ミフェットの頭上から響く、甲高い声。腰にミフェットの『命触手』をぐるぐる巻きにしたままの、ティエルの姿がそこにはあった。
ティエルの腕が、左から右へと動く。その動きに応じるかの様に、吹き荒ぶ風の流れが変わり……
「全部、逸らしちゃうよっ♪」
迫りくる火線の流れを遮るかのような『風の壁』を作り出すと……迫る業火を、言葉通りに受け流す!
……ティエルは、その背の翅で自由自在に空を飛ぶ妖精(フェアリー)だ。当然、風の流れについてはお手の物であるのだが……いくら何でも、この冬山の冷たい風を自由自在に操る程の力は、持っていない。
ならば何故、こんな事が出来たのか。その理由は、簡単だ。
「ミフェットのお歌に、アテナの剣! ボク達が3人集まれば百人力だー♪」
信頼する仲間が、ティエルと共にある。そんな仲間たちと共に、無数の竜に挑むこの構図は……まさに、ティエルが心惹かれる『英雄譚』そのもの。
憧れのシチュエーションにミフェットの力を引き出す凛々しくも雄々しい歌、更に登山で体力を温存出来た事も相まってか。ティエルのテンションの針は既に振り切れんばかりだ。
そうして滲み出た活力が、ティエルの風を操る力を飛躍的に高めていたのだ。
「ドラゴンの群れなんて、ボク達が全部やっつけちゃうぞー☆」
楽しげに響く小さな妖精姫のその声を受ければ、アテナの口元にも笑みが浮かぶ。
(ふふっ、そうね。わたし達が集まれば、向かうところ敵なし、よ!)
伸びる火線を、振り降ろされる鋭い爪を、全て打ち壊す頑健な尾を。切り裂き、潜り抜け、受け流す。
何者かに導かれたかのようにも視える一切の無駄の無いその守りの術は、まさに剣舞の如く。
アテナが長年鍛錬を積み、洗練させてきた技術の結晶は、戦場の中にあっても不思議と目を惹かれる程、美しかった。
──燃え盛る炎を裂いて 振り抜く尾を掻い潜り
──唸るカギ爪 火花散らして刃先でそらし……
その姿を見たミフェットの歌が、続く。チラリ、と年下の友人たちへと視線を向ければ……二人は力強く、大きな頷きを返す。
「……美しさと強さ、両方を見せつけてあげるわよ!」
高まる力に身を任せ、タンっと足音も高くアテナは地を蹴ると、空を飛ぶ竜へ向けて跳躍する。
無論、このままでは竜には届かぬだろう。竜の側もそれを理解しているのか、その眼に浮かぶのは嘲笑の色だ。
……だが、次の瞬間。その眼は驚愕に染まる事になる。
「──いっちゃえー! アテナっ♪」
──竜の頂上そのこうべ目掛け 雷火となって打ち下ろす!
ティエルの操る風が、また吹いた。風の軌道はアテナの身体を押し上げるように動き……竜の下へと、加速させる!
更に響くは、ティエルの歌だ。竜との決着を歌い上げるその歌詞に、アテナの身体に眠る力は限界を越えて活性化する。
風に乗って、アテナが竜へ迫る。水と光、二振りの魔剣をその手に携えて、竜を討たんと刃を振り被り……
──ザザンッ!!
銀閃が、瞬いた。竜の頸が、胴が、手が、翼が、脚が……ありとあらゆる部位が細切れの如く切り分けられて、竜の躯が堕ちていく。
……聞こえた刃鳴りは、ただの一度だけだった。だがその一度の中で、アテナは二度、三度、四度……持ち得る剣技の全てを振るったのだ。
何という剣の冴えか。そして堅牢な竜の鱗をこうも容易く砕くとは、何と言う剛剣だろうか。まさに『勇者の見届人』の面目躍如、と言った所であろう。
「……次は、っと!」
堕ちゆく竜の躯を足場代わりに蹴り飛べば、更に一匹、もう一匹と。アテナの刃が閃く度に、名も無き竜の躯は増えるばかり。
だが、名も無き低位竜と言えど、竜は竜。この世界の生態系の頂点に座する存在が、やられっぱなしという訳が無い。
吹き荒ぶ氷雪を物ともせず、翼を羽撃かせ。アテナを包囲するかのように、竜達が動く。
ユーベルコードの準備があればともかく、今の状態で攻撃を受けてしまえば回避はままならないだろう。アテナの痛い所を突くかのような竜達の動きは、中々に堅実であると言えた。
……だが、だ。彼らは何か、忘れてはいないだろうか?
「うーー……」
そう。この場には、他にも猟兵がいると言うことを!
動いたのは、ミフェットの頭の上でウズウズとしていたティエルであった。
先にも触れた通り、ティエルのテンションは既に針が振り切れそうな程に高まっていた。その上で、アテナによる英雄譚の主人公の如き竜退治の様を見せられていたのだ。
……ティエルのテンションが爆発するのは、当然のことであった。
「──どっかぁーんっ!!!」
指し向けられる、ティエル愛用の細剣の切っ先。その切っ先が瞬けば……ティエルの身体に宿る魔力が、高まるテンションと相合わさって、極太の光の奔流が撃ち出される!
撃ち出された光の奔流は、氷を溶かし、風を切り裂き。今まさに空中から落下を始めたアテナの身体に爪を突き立てんとした一匹の竜の身体を飲み込み光へと還す。
「どっかーん! つづけてどっかーんっ!! さらにもういっちょう、どっかぁーん!!!」
弾けたティエルのテンションは収まる所を知らず。立て続けに撃ち出された光の奔流はアテナを包囲しようと動いた竜達を次々に飲み込み、掻き消していく。
気付けばアテナを包囲しようとしていた竜達は、影も形も無くなっていた。
「二人とも、すごかった!」
落下するアテナの身体をうにょーんっと伸ばした触手で保護しつつ、ミフェットの浮かべた表情は満面の笑み。その笑顔を見れば、アテナもティエルもまた笑顔へと変わる。
ミフェットとティエルとアテナ。三人の信頼と連携は、竜の群れを見事に打ち破ったのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
アイン・セラフィナイト
こんな場所で竜の討伐なんてやったことないなぁ……アルダワの迷宮とかだと罠ばっかりだけど、こういう場所でもうまく立ち回らないとね。
UC発動、『白翼の杖』に【シルフ・リジェクト】を纏わせて全方位に拡散させる。竜の吐息は風の防壁を構築して『オーラ防御』するよ。
その防壁を自分の足場にして『空中戦』、岩肌や凍結を回避する。強風も防壁を張って防いでいこう。
……悠々と空を飛んでるけど、キミ達、ボクのことを防戦一方で雑魚同然、なんて思ってないよね。
防壁を眼前に横向きに薄く展開、それを前方向に拡散させる。擬似的な風のギロチンの出来上がりだよ!これでも喰らえ!(属性攻撃・全力魔法・範囲攻撃)
●
次々と地に堕ちて行く名も無き竜達。戦況の天秤は猟兵の側に傾いているのは明らかであった。
「こんな場所で、竜の討伐なんてやったことないなぁ……っと!」
そんな中、防戦一方と言った状況の者がいた。白の外套を氷雪の風に靡かせる、アインだ。
今、アインは中空にその身を置いていた。愛用の杖に風の防壁を構築する力を纏わせる事で、不可視の防壁を足場として立ち回っているのだ。
(アルダワとかだと、罠ばっかりだけど。こういう場所でも、うまく立ち回らないとね)
蒸気と迷宮の世界と違い、この世界はどこまでも広がる屋外だ。
当然、環境も千差万別。この氷雪の霊峰という中々無い特殊な環境での戦いは、アインにとって良い経験の場になることだろう。
……アインが無事に、この戦いを乗り越えられればの話ではあるが。
──ゴウッ!!
吹き付ける氷雪。極寒の風を溶かす高熱の吐息が、四方八方からアインに迫る。
その全てを、アインはここまで時に躱し、時に防壁で防ぎ、凌ぎ切ってはいたが……攻撃に転じる事は、出来ずにいた。
──ちょこまかと鬱陶しいし、守りの術は中々だが。どうやらこの小さな者は、攻撃に関しては大した事は無いようだ。
──ならば、このまま少しづつ牽制し……逃げ場を無くしてから、灼けば良かろう。
そう思ったかは定かではないが。アインを囲む様に飛ぶ竜達の眼には、どこか相手を下に視る様な嘲りの色が浮かぶ。
その瞳の色を見れば……アインの口の端が、勝利を確信したかのように釣り上がる。
「……悠々と空を飛んでるけど」
キミ達、ボクのことを防戦一方の雑魚同然、なんて思ってないよね?
くるりと杖を廻しながら呟くアインその言葉には、窮地に立たされた焦燥感などは感じられない。その声色から感じられるのは、圧倒的な自信だ。
……そう。ここまでの動きは、全て撒き餌。竜達を油断させ、一網打尽とする為の布石であったのだ。
「……逆巻く波濤、拒絶の大界、翠嵐の谷に斜光が満ちる―――!」
力ある言葉を紡ぎ出せば、一際強い光を愛用の杖が放つ。『白翼の杖』と名付けられたその杖が輝けば、風の防壁の強度は一層強まり……
「──これでも、喰らえ!」
明確な攻撃の意思を示すその言葉に従って、その形状も変わるのだ。
防壁が変じた形は、薄く、頑丈で、広範囲に伸びる円盤状。アインの立つ場所を中心に、不可視のその円盤が音も無く、瞬く間も無く伸びればどうなるだろうか?
──ギャッ!?
──ゴっ……!?
答えは、アインの周囲を飛ぶ竜達の……頸を、胴を、翼を。様々な箇所を斬り飛ばされたその姿が示していた。
アインが操る風の防壁。その姿を変じた薄い円盤は、風の魔力を纏っている。そのせいか、その先端である縁の部分は鋭い刃物も顔負けの切れ味を保持するに至っていた。
その鋭い縁を。アインは擬似的な風のギロチンとして応用に、竜の群れを一息に斬り裂いたのだ。
「……さて、これでこの辺りの竜は……っと!?」
自身の周囲を飛び交う竜の姿が消えた事を確認したアインだが、直後吹き付けた風に顔を守る様に腕を翳す。
……なんだろう、今の風の冷たさは、今までの物よりもまた一段と冷たい様な。気付けば吹き付ける氷雪もその勢いを増している気もする。
(なんだろう。妙な胸騒ぎがする……)
グリモアに選ばれた猟兵としての、直感だろうか。
アインの胸に過ぎったその直感は、決して的外れの物ではなく……まもなく来る、強敵との戦いを知らせる物なのであった。
成功
🔵🔵🔴
ガルディエ・ワールレイド
この環境で当然のように飛ぶとは、流石と言うべきか
名など無くとも、紛うこと無き強者の風格
相手にとって不足は無い
◆戦闘
武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流
《見切り/武器受け》による回避や防御
足場の不安が有るため自分の動きは最小限に抑える。
【竜の爪】対策
【竜神の裁き】による迎撃を主体とするぜ。
敵が地上にいる俺を爪で攻撃するには、高度を下げてくる必要がある筈。
可能な限り敵を引きつけ敵の顔面付近を狙う。
視覚や聴覚にも損傷を与えて墜落しやすい状況を作る。上手く強風が吹くタイミングで狙えれば最上だが、狙いすぎて機を逸し無いようにも注意する。
狙い通り墜落すればすばやく止めを刺す。
●
氷雪の霊峰。その頂きの戦いは終局を迎えつつあった。
状況は、圧倒的に猟兵が有利。あれほどいた竜は尽く岩肌に躯を晒すか、塵へと変じて躯の海へと還っていくばかりだ。
「──ッシ!!」
飛び込んできた竜を、一刀両断。ガルディエの手の魔剣が閃けば、名も無き竜はその生命を氷雪に散らす。
厳しい登山による消耗の影響は、最小限に抑えられていた。故にガルディエは、その驚異的な膂力と武技の冴えを余すこと無く発揮することが出来ていた。
その結果は……彼の周囲で物言わぬ躯と成り果てた、竜の数々が示していた。
(……この環境で当然のように飛ぶとは。流石と言うべきか)
空を見上げれば、残す竜は残り一体。だがガルディエには一切の慢心も無い。
当然だ。名など無くとも、敵はこの世界の生態系の頂点に座する存在である事に代わりはない。勢いを増しつつある極寒の風を物ともせずに飛ぶ力強さから感じるのは、紛うこと無き強者の風格だ。
「……相手にとって、不足は無いぜ」
真っ直ぐに、突き付ける様に。ガルディエは魔剣の切っ先を竜へと向ける。
明確な『挑戦』の意思が込められたその行為を受けた竜。その返答は……空気を震わす様な咆哮と、一直線に翔び来るその姿が示す。どうやらガルディエの挑戦を、真正面から受け止めようと言うらしい。
敵ながら天晴。そう思えるその姿に、ガルディエの口の端が曲がれば。その体の表面に、バチリ、バチリと、赤黒い稲光が輝き出す。
相対する竜は、気付いているだろうか? ガルディエを包み、戦慄く稲光が、彼の戦意と相まって、一つの形を……一匹の巨大な黒竜の如き姿を形作っている事を。
地に立ち構えるガルディエ、滑空し距離を詰める竜。その距離が縮まり……竜にとっての至近の距離まで詰まった、その瞬間だった。
「この雷は、半端じゃねぇぜ!」
ガルディエの裂帛の気合と戦意が弾け、迫り来る竜を稲妻が襲ったのだ。
輝き伸びる稲光は、まさしく閃光となって竜の顔面を叩く。
視覚、聴覚、嗅覚。顔面に集まるそれらの機能を一斉に叩かれた事で、さしもの竜も感覚を失って……
──ガッ、ゴガガガガッ! ガガッ!!
氷雪に埋もれる岩肌を抉るかの様に。墜落し、その身を削る事となる。
──ギィッ……ガァァァァ!!
起き上がろうと藻掻く竜。頑健な鱗を岩肌との接触で失い、剥き出しとなった強靭ながら靭やかな肉からは流れる血が止まらない。
控えめに言って満身創痍、とも思えるその姿。だが既に雷撃で喪われた感覚は戻り始めているのか、威嚇するかの咆哮と視線はしっかりとガルディエを捉えていた。
……そう、竜の瞳はガルディエの姿を捉えていた。自分の懐に飛び込み、その手の魔剣を振り被る、その姿を。
「──覚悟しな!」
振り切られる魔剣。その刃は竜の頸を捉え、僅かに残る鱗を粉砕し、肉を、骨を絶つ。
振り切ったその刃に輝くのは、真紅の液体。血振りをして吹き飛ばし刃を鞘に収めれば……竜の頸は分かたれて、ゴロリと地に転がるだろう。
「これで、終わりか……ッ!?」
周囲に漂う静寂に、戦いの終わりを予感したガルディエ。だが次の瞬間、首筋を走った悪寒にその場を飛び退けば。
──!
直後、ガルディエの立っていた地を。地に転がる竜の躯の数々を。音すらも凍らせる、『絶対零度』の冷気が、吹き抜けた。
『──よもや、この地を突き止められるとは』
天上より響くその声に顔を上げれば、そこにいたのは一匹の竜。
だが、その姿は、その存在感は。今の今までこの場で猟兵達が討ち倒した低位竜などとは比較にならぬ程に強大で、圧倒的な物があった。
『『猟兵』、と言ったか。我が企てを妨げようとした罪、万死に値する……』
この『メルゼギオス』が、自ら血祭りにしてくれようぞ。竜が告げれば、山に吹き荒ぶ極寒の氷雪は更にその強さを増していく。
知識のある者には、分かるだろう。『メルゼギオス』と名乗った眼の前の竜の二つ名を。『氷皇竜』と呼ばれる、その所以の程を。
……氷雪の霊峰を巡る、竜の群れとの戦い。戦いは最終局面を迎えようとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『氷皇竜メルゼギオス』
|
POW : アブソリュート・ゼロ
【物体を一瞬で分子レベルまで氷結させる冷気】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : アイシクル・ミサイル
レベル×5本の【標的を高速追尾する氷結】属性の【鋭く尖った氷の棘】を放つ。
WIZ : アイス・リバイブ
全身を【無限に再生する氷の鎧】で覆い、自身が敵から受けた【負傷を瞬時に回復し更に負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:ハギワラ キョウヘイ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ノエル・スカーレット」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
『──よもや、この地を突き止められるとは』
天上より響くその声に顔を上げれば、そこにいたのは一匹の竜。
だが、その姿は、その存在感は。今の今までこの場で猟兵達が討ち倒した低位竜などとは比較にならぬ程に強大で、圧倒的な物があった。
『『猟兵』、と言ったか。我が企てを妨げようとした罪、万死に値する……』
この『メルゼギオス』が、自ら血祭りにしてくれようぞ。竜が告げれば、山に吹き荒ぶ極寒の氷雪は更にその強さを増していく。
知識のある者には、分かるだろう。『メルゼギオス』と名乗った眼の前の竜の二つ名を。『氷皇竜』と呼ばれる、その所以の程を。
……氷雪の霊峰を巡る、竜の群れとの戦い。戦いは最終局面を迎えようとしていた。
====================
●第三章、補足
第三章はボス戦。
『氷皇竜メルゼギオス』を名乗る、強力な竜が相手となります。
『メルゼギオス』はその二つ名の通り、氷を武器とする強敵です。
寒冷かつ氷雪吹き荒れる雪山は、まさしく彼の特徴が最も生きる環境です。
戦場は、二章と変わらず雪の霊峰の山頂。良く開けた岩場となります。
ただし、『メルゼギオス』の力によって気象条件は悪化しております。氷雪は吹き荒び、身を切るような強風が吹くでしょう。
地の利は『メルゼギオス』の側にあります。この状況を、どう覆すか。それぞれの機転が試されます。
また、『メルゼギオス』が何を企てていたのか等の質問に、彼が答える事は無いでしょう。
それでも何か問い掛けたい事がありましたら、ご自由にプレイングにどうぞ。
ともかく、まずは戦闘に集中して臨んで頂ければと思います。
それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしております!
====================
メンカル・プルモーサ
ふむ……これはメルゼギオスの仕業か……
ならば……【我が手に傅く万物の理】を発動……
…無機物、つまり地面を操作して半径50mのドームを作成して吹雪をシャットアウト…この状態で固定化するよ…
…これでまあ……イーブンには持ち込めるか……
…その後は地形を操作してメルゼギオスの攻撃に対する盾にたり…
…メルゼギオスの動きを制限しつつ…
…重奏強化術式【エコー】により限界まで強化した【尽きる事なき暴食の大火】を発動…全てを飲み込む白の炎をぶつけるよ…
…氷の鎧が無限に再生するなら…無限に燃料にして炎の勢いを増していく…
…そして一気にメルゼギオスを焼いていくよ…
ベリオノーラ・アンフォール
嫌な予感はしていましたが、本当に起こってしまいましたか・・・。
いえ、色々と考えるのは後にして、これ以上の被害を出さないためにも私たちが食い止めなければいけませんね。
今回の相手はとても強力でかなりの激戦になりそうなので、負担は増えますがユーベルコードで一人に一羽ずつ光鳥を傍に置いてすぐに治療できる状態を作り、回復とサポートに徹しましょう。
相手がユーベルコードで傷を治して長期戦になることも考えると、攻撃されるみなさんの負担はなるべく減らして、攻撃に専念できる環境を作るのはきっと大事だと思います。
私はみなさんのお力を借りる事しかできませんが、どうか誰も欠ける事なく無事に終われることを願っています。
●
名も無き竜との戦い。その時よりも、山の頂きに吹き荒ぶ氷雪は一層その強さを増していた。
その原因は恐らく、目の前に降り立った『メルゼギオス』を名乗る巨竜によるもの。彼の身体の表面を覆う氷を見れば、その推測は恐らく間違いないはずだ。
(ふむ……これは『メルゼギオス』の仕業か)
その事を、メンカルは正確に見抜いていた。そして見抜いていたからこそ、今この場に於いて地の利を握っているのは相手の側であるという事もまた、理解していた。
吹き荒ぶ氷雪を自らの力に変える、相手の特性。この天候が続く限り、相手は際限無くその力を増し続けるはず。猟兵達が苦戦する事は、免れないだろう。
……ならば。やるべき事は、一つだ。
「──数多の元素よ、記せ、綴れ、汝は見識、汝は目録。魔女が望むは森羅万物全て操る百科の書」
紡がれる力ある呪いの言葉。その言葉に応じる様に、空気が震える。
(……地震!? いえ、これは……!)
目を見開いたのは、ベリオノーラだ。そう、彼女が驚愕したように、震えていたのはこの場の空気のみに非ず。彼女たちが脚を付けた地もまた、揺れていたのだ。
……この山は、魔力を帯びた希少金属の産地である。その鉱脈の在処は、どこだろうか?
──……ズッ、ズズッ、ゴゴゴゴ……!
答えは、この山の頂き。今戦場となっているこの場の足元に、その鉱脈はある。
メンカルがユーベルコードによって介入し、支配権を握ったのはその鉱脈だ。無機物を操るその術が作用し、メンカルの意思によって蠢いて……
──ッドン! ズドン!
爆音と共に地を飛び出し、舞い上がる鉱物。魔力を帯びた無機物が、戦場一体を覆うように飛び交って。
「すごい、一瞬で壁を……!」
「……これでまぁ、イーブンには持ち込めるか……」
作り出したのは、半径50メートル規模の戦場を覆うようなドーム状の壁だった。
吹き荒れる風雪が敵の力となるのならば、その風雪をシャットアウトしてしまえば良い。メンカルが対策として考えたのは、至極シンプルなものだった。
問題は、シャットアウトする壁を作る為の手段。だがその手段も、メンカルは持ち合わせていたのだ。
……まさに、適材適所。敵の力を封じる、最良の手段であると言えるだろう。
『──面妖な術を使う。だが……』
これだけの規模の術ならば、余力はそれほど大きく有るまい。
続いた『メルゼギオス』のその指摘に、メンカルが答える事は無い。無いが……その指摘は、正しかった。
ただの土塊や岩塊を操作するならいざ知らず、メンカルが今回操作し支配下においたのは……霊峰に眠る、魔力を宿す希少金属が大いに混じる土である。その金属に宿る魔力が影響したか、壁の維持、固定化に思いのほか力を持っていかれているのだ。
──ピキッ……ピキキ……ッ!
『メルゼギオス』の片腕が纏う巨大な氷塊が、その厚みと長さを増す。どうやらその腕を振るって、メンカルを殴り飛ばそうと考えたようだ。
振るわれる竜の巨腕。凍てつく冷気を纏ったその一撃を……
「──貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ……ッ!」
メンカルの生み出した白の炎が、迎え撃つ。如何なる物もその燃料に変えるその炎、事前に強化術式を用いて強化されているとは言え……今のメンカルの状態では、その火力が全力を発揮する事は難しい。振るわれた巨腕を食い止めるので、精一杯だ。
『──止めたか。だが、次は……むっ?』
何とか堪えたメンカルを見下ろして、再度腕を振ろうとした『メルゼギオス』が何かに気付いた様にその動きを止める。
……今の一撃は、確かに耐えられた。だが感じた手応えにしては、眼下の小娘の消耗は激しくなってはいないような……
『──成程、回復の術か』
得心した、と言うように呟く『メルゼギオス』。その視線の先には……メンカルの背後に立つ、ベリオノーラの姿があった。
(色々と考えるのは後にして、これ以上の被害を出さないためにも……)
メンカルの無機物を操る術。その術を見て、ベリオノーラは驚いていた。
だがその驚きは、メンカルの術の規模の大きさに、というだけではない。『自分と同じように、無機物を操った』事に対しての驚きも、大いに含まれていたのだ。
ベリオノーラが今回用いた術は、無機物を操り光鳥を作り出すという術。その効果は、仲間の傷を癒やすという物である。
だが、当然代償はある。その代償は……ベリオノーラ自身の、生命力だ。
「……っ、く……!」
先程の名も無き竜との戦いで、仲間の負傷を肩代わりしていた時に感じたそれよりも重い疲労感に、ベリオノーラの膝が思わず揺れる。
だが、崩れる訳にはいかない。この場で少しでも長くサポートに徹する事が出来れば……その分、仲間たちが攻撃に手を回す事が出来るのだから。
(皆さんの負担を減らして、攻撃に専念出来る環境を作る……!)
直接的な活躍ではない。仲間たちを支え、誰もが欠ける事無く無事にこの戦いを乗り越える。
その為に、ベリオノーラの金の瞳は決意に燃えて。襲い来る重度の疲労感を、歯を食いしばって堪えるのだ。
『──面倒ではある。だが……』
二度、三度。殴り付ければ、耐え切れずに崩れ落ちるだろう。
だがそうする前に、他の猟兵の攻撃を受ければ……地の利を喪いかけた現状、万一の事態は起こり得る。
……直接的な脅威となる術を持たぬ眼の前の二人の脅威度は、低い。
『──貴様達は、他の邪魔者を潰してから叩くとしよう』
『メルゼギオス』がそう判断したかは、定かではない。
だが目の前で起きた事実は、メンカルとベリオノーラに背を向けて他の猟兵の迎撃に移った『メルゼギオス』という姿が示していた。
……兎にも角にも。二人はその行動の主目的をしっかり果たし、先手を取る事に成功したのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アイン・セラフィナイト
(真の姿に変身)
氷を操る竜、ここで何かをしてたみたいだな。
猟兵の仕事は滲み出した『過去』を葬る事。その企みが何かは知らないが、この異常を払うためにお前を倒す!
その氷の鎧、勝手に修復するというのなら、氷の再生と体の回復が追いつかない程の熱量で薙ぎ払うだけだ!
火炎の災禍に呑まれるわけにはいかないな、『神封の書』の力で『オーラ防御』しておこう。
UC発動、【イフリート・フレア】で天空から火球を降らせて『高速詠唱・全力魔法・蹂躙』、炎熱で吹き荒れる風と吹雪を上昇気流として変化させて、山頂の悪天候を防ぐ。
俺の魔術はこれで終わらない。現れろ、火炎の不死鳥!眼前の竜を氷の鎧ごと薙ぎ払え!(属性攻撃・動物使い)
鬼柳・雄
※アドリブ絡み歓迎
氷皇竜たぁ大層な肩書名乗ってんじゃねえか。企みなんてどうせここで暮らす人にとっちゃロクでもねえモンなんだろ。ぶっ潰す。
前回と同じく変身して空中で戦います。
「地形の利用」で強風を利用しつつ相手の攻撃を「オーラ防御」「氷結耐性」「激痛耐性」それとシアの氷の力で耐えつつ「戦闘知識」「第六感」でチャンスを狙う。
その時が来たら「気合」と「覚悟」を決めて全力で突撃。二つ名付きの竜相手だ、舐めたりしねえ!この一撃に全力を込めてぶっ飛ばす!
「氷皇がどうした!こちとら氷と炎の悪魔を使うサマナーだぜ!」
●
猟兵の操るユーベルコードにより、戦場は閉ざされた。氷雪吹き荒ぶ風は遮られ、敵が際限なくその力を増すという事態は防がれた。
だが、敵の力は未だ強大だ。
「氷を操る竜、ここで何かをしてたみたいだな」
「ああ。だがどうせこの世界で暮らす人にとっちゃロクでもねえモンなんだろうさ」
振り返りこちらを見下ろす巨竜のその威容を前に、アインと雄の二人が身構える。
二人の姿は、常と大きく変わっていた。アインは青年へと成長した己、理想とする大魔術師。雄はと言えば相棒である大悪魔マルコシアスの力宿すスーツに身を包んだ姿である。
……この姿こそ、二人がそれぞれに己の全力を発揮できる状態である。だが、しかしだ。
逆を言えば。二人が全力を出せるこの姿を取らねばならぬ程、目の前の巨竜は強敵であるという事の証左であるとも言えた。
『──この『氷皇』を前に、随分と余裕な事だ』
『メルゼギオス』の瞳が、赤く輝く。その輝きは、竜の身体に宿る魔力の輝き。その光に呼応するかのように、アインと雄の周囲に漂う魔力も歪み、周囲の空気を凍らせていく。
……息を吸うだけで、臓腑を凍らせる程のこの冷たさは、まさしく絶対零度。並の存在であるならば、即座にその生命を氷の中に散らす事になるだろう。
だが、その力を十全に振るえる状態のアインと雄であれば……
「『氷皇』が、どうした!」
魂をも凍らす極寒の獄を突破する術は、あるのだ!
裂帛の闘気を全面に押し出し凍れる地を蹴れば。巨竜の振るう力に臆する事無く一直線に、雄の身体が翔ける。
雄の纏う、大悪魔マルコシアス。その権能は氷と炎の制御能力で有ることは、既に触れた通りである。雄は相棒の権能に、全てを賭けたのだ。
……だがそんな雄の思いとは裏腹に、ピキリ、ピキリと。身体に纏う相棒の変じたスーツに氷が這う。
流石の大悪魔とは言え、『氷皇』を名乗る程の存在の力に対しては分が悪かったか……?
「──こちとら、氷と炎の悪魔を使うサマナーだぜ!」
行くぞ、シア! 這い寄る死を呼ぶ冷気に負けじと叫ぶその声に、呼ばれた相棒も奮起を見せる。張り付いた氷を、操る権能の力で剥がし、溶かしてみせたのだ。
そうしてその勢いのままに。極寒の空気を切り裂いて。
「この一撃に全力を込めて……ぶっ潰す!」
『──っ、ぐゥ……』
闘志と覚悟、勝利への意思。その全てが込められた雄の拳が、『メルゼギオス』の左の腕を捉える。
大悪魔の力宿すその拳の破壊力は、まさに爆発的な威力を秘めた一打。『メルゼギオス』の纏う絶対零度の鎧が砕ければ、拳はそのまま鋼の如き巨竜の鱗を穿ち、肉へと食い込む。
だが、次の瞬間。
『──舐めるな、猟兵』
轟ッ! と音を立てて左腕が振るわれれば、雄の身体が吹き飛ばされて、戦場を覆う壁へと打ち付けられる。
『──この程度の攻撃で我が鎧を砕けるなどと思わぬ事だ』
淡々とした口調を崩さぬ『メルゼギオス』。雄の渾身の一撃など無かったかの様に、破壊された氷の鎧は瞬く間に再生され、穿たれた傷も塞がれてしまう。
事実、『メルゼギオス』の能力は圧倒的だ。操る冷気を掻い潜り渾身の一撃を突き立てたとしても、氷の鎧に阻まれて威力は著しく減じてしまう。その鎧を砕き、手傷を負わせても……氷の修復力によって、即座に傷は塞がれてしまうのだ。
実に厄介な、『メルゼギオス』のその能力。
「確かに、勝手に修復するその氷の鎧は厄介だ」
ならば、氷の再生が追い付かない程の熱量で薙ぎ払うだけだ、と。杖を掲げて、アインが叫ぶ。
「深青を摩す炎天、孤剣刻む退廃の疵、地を這う星火の兆しは此処に―――!」
力ある言葉に応えるように、『白翼の杖』が魔力に輝く。浮かび上がる魔法陣は……その数、300。その全てから生み出されるのは、アインの魔力から紡ぎ上げられた、黄金に輝く巨大な火球だ。
アインに必要だったのは、時間だった。『真の姿』を晒す事で飛躍的に高まった己の魔力をこの形へと練り上げる。その為の準備の時間が、必要だった。
……それを雄は直感で感じ取っていた。故に雄は、自身に敵の意識を集めるかの様に派手に立ち回り、正面を突破し……アインが準備を整える為の時間を稼ぐ、捨て身の一撃を見舞ったのだ。
「『メルゼギオス』。お前の企みは知らないが……猟兵の仕事は、滲み出した『過去』を葬る事。この地の異常を払う為に……」
……お前を、討つ!
その宣言が攻撃の合図。振るわれる杖、指し示す先の巨竜へ向けて、火球が次々と飛ぶ。極寒の冷気と灼熱の熱波がぶつかりあい、蒸気へ変わり、戦場を満たしていく。
状況は、まさしく一進一退……
『──ぐッ、ぬぅ……!』
いや、アインの方が僅かに上回ったか。絶える事無く襲い掛かる火炎の災禍を前に、『メルゼギオス』の躰が今、確かに揺らいだのだ。
──勝負に出るのならば、今しかない!
「現われろ! 火炎の不死鳥! 眼前の竜を、氷の鎧ごと薙ぎ払え!」
アインの呼び声に答えて現れたのは、火炎の不死鳥だった。
これこそが、アインの術の本命。金火球により地に魔法陣を描く事で呼び出される、全てを焼き尽くす火炎の象徴だ。
翼を広げ、羽撃く不死鳥。一度、二度と羽撃けば、黄金に輝く翼が更に強い光を放つ。
(──やっちまえ!)
見れば、壁にその身を叩き付けられた雄の掌が不死鳥へと向けられていた。彼の身体を包む大悪魔の力、炎の権能を不死鳥に注いでいるのだ。
……アインと雄、二人の扱う炎が、不死鳥の中で凝縮される。その力が、『メルゼギオス』へ真っ直ぐに迫り……
『──舐めるな、と言った!』
怒りを露わにした『メルゼギオス』のその言葉に込められた、絶対零度の力が迎え撃ち……
──カッ!!
白い光が、戦場に満ちた。相反する二つの力がぶつかりあった事で、対消滅を起こしたのだ。
吹き荒れる烈風。真白い蒸気が掻き回され、押し流されて……やがて、そこに立つ巨竜の姿が見えるだろう。
だが、その様子は大きく変じていた。身に纏う重厚な氷の鎧は剥ぎ落とされ、四肢の至る所に傷を負っていたのだ。
『──よもや、この『メルゼギオス』にここまで傷を負わせるとは。やってくれたな、『猟兵』……!』
ギロリ、と。『メルゼギオス』の瞳が、猟兵達へと向く。その瞳に輝く意思の意味は……猛烈な敵意。
……アインと雄。二人の力は、圧倒的な強さを持つ巨竜にも確かに届いたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ガルディエ・ワールレイド
マジでヤバイ能力だが……初撃で手の内を見れたのは僥倖だったな。テメェにとっては失策だが。
◆戦闘
先ずは【竜威】を発動し、自分という存在を念動力と雷の複合体という超常現象に変換。半ば以上、物質から離れた存在になって攻撃への耐性を高めつつ、機動力を活かして戦闘。
さっき(2章ラストで)感じた悪寒から、敵の攻撃の発動予兆と範囲を《第六感/見切り》で察知し、敵がユーベルコードを発動する寸前、雷の特性である雷速を以て範囲外に離脱。冷気が収まった直後に突進して攻撃するぜ。
攻撃方法は雷の《属性攻撃》そのものと化した肉体による直接攻撃と、《念動力/2回攻撃》で浮かべて操作する魔槍斧ジレイザ及び魔剣レギア。
●
怒りに燃える、『メルゼギオス』の視線が猟兵達に突き刺さる。
まるで物理的な圧迫感すら伴う様な強烈な敵意をその身に受けながらも、ガルディエの浮かべた表情はどこか不敵な笑みだった。
「絶対零度の冷気に、無限に再生する氷の鎧。確かに、マジでヤバい能力だ。だが……」
猟兵達の奮闘もあり、『メルゼギオス』の能力を強めた地の利は崩れ、竜の身体を覆う氷の鎧は剥がれた。
残る厄介な能力は、冷気を操るあの力であるが……
「初撃で手の内を見れたのは、僥倖だったな。テメェにとっては、失策だが」
そう。ガルディエは既にあの絶対零度の力を潜り抜けていた。発動の予兆と有効範囲を体感し、躱すことに成功しているのだ。
一度躱せた物であるならば、二度目も躱せぬ道理は無い。ガルディエが不敵な笑みを浮かべるのは、確かな自信があってこそなのだ。
「原初の自然と純粋な力の具現たる古き竜……」
その一端を少し見せてやるよ、と。呟くガルディエの身体が、変化していく。肉体から立ち上る闘気が……いや、ガルディエの肉体そのものが、バチリ、バチリと迸る稲光へと形を変えていく。
その姿は、まさに人の形をした雷の複合体。物質体の枷から解き放たれた事で、ガルディエの戦闘力は飛躍的に高まっていく。
『──貴様らが如き存在が、竜を語るか。笑わせるな、『猟兵』!』
ガルディエのその姿に、本能的に脅威を覚えたか。語気を荒げながら、『メルゼギオス』の瞳が紅く輝く。
瞬間、ぞわり、と。ガルディエの首筋に戦慄が走る。この感じは、先程感じた悪寒と同種の物……!
『──極寒の獄に囚われるが良い……!』
空気の揺らぎすらも凍らせ、止めてしまうかのような。絶対零度という名の監獄へと囚えるかの様な『メルゼギオス』のその力。
地の利を崩され、氷の鎧を剥がされ消耗しているはずであるのに。その消耗を感じさせない強烈な力は、流石はこの世界の絶対強者に名を連ねる存在である。
だが、しかしだ。
「──言ったぜ? 初撃で手の内を見せたのは、失策だったってな!」
その獄の内側に、ガルディエの姿は無い。聞こえた声は、『メルゼギオス』の力の範囲の外だ。
『メルゼギオス』の力が発動した、その直前。悪寒という形で予兆を感じ取ったガルディエの身体は、一瞬で範囲外へと離脱していた。
先程も述べた通り、ガルディエは既に一度敵の力を垣間見て、躱していた。その経験と、雷へと変じた身体の特性を活かすという、歴戦の猟兵らしい見事な立ち回りの技術であると言えるだろう。
だが、ガルディエの行動はこれで終わりではない。
「今度は……」
呟き、掻き消えるガルディエの身体。そして次の瞬間、その身体は『メルゼギオス』の目の前に現れる。
瞬間移動とすら思える程の、圧倒的なスピード。その速さは、まさに雷速だ。
そして雷の身体が得た特性は、速さだけでは無い。
「……こっちの番だ!」
手刀の形で振るわれるガルディエの豪腕。圧倒的な怪力から繰り出されたその一撃は、触れるもの全てを粉砕する驚異的な威力を秘めた一撃である。その上に雷そのもののスピードが乗れば、その破壊力はもはや破滅的と言っても過言ではないだろう。
圧倒的なスピードからの、強烈な一撃。『メルゼギオス』の対応は、僅かに遅れる。巨竜の右腕、鋭き爪で以て受けようとしたその前に、ガルディエの手刀が振り抜かれ……
閃光が、突き抜けた。
『──グッ、ガァァァァァアア!!?!?』
一瞬の間を置き、戦場に響き渡る咆哮。苦痛の声を上げる『メルゼギオス』の右の腕は、無くなっていた。振り抜かれたガルディエの手刀が、『メルゼギオス』の右腕を半ばから断ち斬ったのだ。
『──グッ、オォ……オノレ、おのレェェ……!』
負傷による痛みのせいか、追い込まれつつある事への怒りのせいか。『メルゼギオス』の言葉に、もはや余裕の色は感じられない。
……氷雪の霊峰の戦い。その決着の時は間近に迫りつつあった。
成功
🔵🔵🔴
アテナ・アイリス
さあ、ついに氷皇竜との対戦ね。わたしの持っているすべての力を使って戦うわよ。
防御は、【武器受け100、見切り100、オーラ防御100、カウンター50】を使いながら、氷皇竜の動きを見極めつつ、反撃していく。
アブソリュート・ゼロをミフェットが止めてくれた瞬間を狙って、
UC『フェニックス・アサルト』を使い「フェニックス」になって、メルゼギオスに体当たりして炎の攻撃で動きを止める。
さあ舞台は整ったわよ。後は任せたわよ、ティエル、やっちゃえー!
ミフェット・マザーグース
「太陽」アテナとティエルと連携するよ
ミフェットが歌でみんなを強化するのも気付いてるよね
だから、ガマンして、アテナと戦う竜の動きを「視力」よく見るよ
追い詰められた竜が【アブソリュートゼロ】を使うのを「見切り」してUC発動!
UC【一人ぼっちの影あそびの歌】
「歌唱」と「楽器演奏」で自分を「鼓舞」しながらみんなの戦いを見て、竜が氷雪を自らの力に変えるのを見て憶えたUCを真似て打ち消すよ
♪
雪の山より冷たくて 吹雪よりも真っ白で
方向はマイナス 冷たく研ぎ澄まして
やがてゼロに辿り着く
凍てつく大気、空気は固まり、水分は結晶、停止する分子
マイナスを掛け合わせて
解ける分子、結晶は砕け、空気は解けて、大気は流れ出す
ティエル・ティエリエル
【太陽】
SPDで判定
引き続き、アテナやミフェットと一緒にドラゴン攻略だ!
高速追尾してくる氷の棘は当たる直前で見切って回避するよ!
高速だからこそ直前で避ければ追尾しきれずに明後日の方向に飛んで行っちゃうよね!
むぅ、それにしてもすごい吹雪で前が見えなくなりそうだよ……!
そうだ!この吹雪に紛れて近づいて必殺のチャンスを窺えばいいんだ!
アテナが火の鳥に変身してぶつかった直後、氷が解けて大量の水蒸気で視界が遮られた隙に
溶けた氷の隙間とかを狙った「鎧無視攻撃」の【妖精の見えざる一刺し】でぐさっといっちゃうよ☆
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
●
『──許さヌ……コの、『メルゼギオス』をコこまデ虚仮にしタその罪、絶対に許サぬ……!』
怒りに燃える『メルゼギオス』の声が、戦場に響く。
度重なる負傷と猟兵への怒り故か。『メルゼギオス』のその声からは荒々しい。
まるで野性、本能に呑まれたかのようだ、と。猟兵達がそう感じた、次の瞬間だった。
──ゴオァァァァァァアアアアッ!!!
魂を凍らせ削るかのような、凄まじい咆哮が響く。
『メルゼギオス』のその咆哮に応じる様に、戦場に漂う魔力がまたも冷気へと変わる。空気を凍らせ現れ出るは、細く鋭い氷の錐。空間を埋め尽くすかのように生成された無数の錐が、一本、また一本と……眼にも止まらぬ速さで、撃ち放たれた。
「わっ! ぅわわっ!?」
飛び交う氷の錐の雨の中を、ティエルは悲鳴を上げつつも何とか凌いでいた。
氷の錐は高速かつ多少の誘導能力を持っていた。だが小柄かつ攻撃を見切る『目の良さ』を持つティエルにとっては、その特性を逆手にとって回避する事は難しい事ではない。ないのだが……
(ま、まるで吹雪みたいで前が見えなくなりそうだよ……っ!?)
問題は、迫りくる錐のこの密度だ。津波の如く押し寄せてくる氷の錐の数々は、一本二本と回避をしても次から次へとやってくる。そうして新たな錐を回避しても、今度はさっき回避して明後日の方へ飛んでいったモノが戻ってきて……正直、キリが無い。
ティエルは、年少ながら猟兵としては最精鋭の力量を持つ猟兵だ。そんなティエルをして、回避行動に専念せざるを得ないとは。
流石は、この世界の生態系の頂点に立つ種族。その中でも上位であるだろう二つ名を持つ存在の力であると言えるだろう。
「だからこそ、相手にとっては不足は無いわ。わたしの持っているすべての力を使って、戦うわよ!」
そんなティエルの状況を打破するべく、瞳に闘志を滾らせながらアテナが動く。滾る闘志と練り上げられた魔力は炎に変わり、アテナの身体を包んで姿を変える。
「不死鳥の力、受けてみなさい!」
煌々と燃える炎の身体。不思議と視るものを惹き付けるその姿は……まさしく神話に謳われる不死鳥(フェニックス)の如く。纏う炎を一層熱く燃え上がらせて、アテナが変じた霊鳥が翔ぶ。
ぞわり。
アテナの、ティエルの、そしてミフェットの首筋に、悪寒が過る。
見れば、『メルゼギオス』の瞳が紅く輝いていた。氷皇竜の片腕を斬り飛ばした竜騎士が感じたモノと同種の、その予兆が意味するモノは……全てを凍り付かせる極寒の獄。絶対零度の術の前兆だ。
……『メルゼギオス』の口元が、禍々しく歪む。まさか、アテナが動くのを待っていたのか? 本能に呑まれたかのような振る舞いは……三人を同時に仕留める為の、フェイクだったとでも言うのだろうか?
「──でも、それはこっちも同じ事よ! 今よ、ミフェット!」
アテナの呼び声に、返答は無い。その代わりに響いたのは……テナーリュートが奏でる伴奏と、ソプラノボイスで紡がれる童歌だ。
──雪の山より冷たくて 吹雪よりも真っ白で
──方向はマイナス 冷たく研ぎ澄まして
──やがてゼロに辿り着く
──凍てつく大気、空気は固まり、水分は結晶、停止する分子
『メルゼギオス』との戦いが始まってから、ミフェットはジッと戦いの様子を見守っていた。仲間たちの力を高める援護の歌を歌うこと無く、竜の振る舞いとそのユーベルコードを観察していたのだ。
(みんなを強化するのは、ガマンして……!)
アテナやティエルのみならず、先に動いた仲間達の戦いの結果を見守り、憶えた風景を練り上げ、仕立て直して。
……そうして紡ぎ上げたのが、この歌だ。絶対零度の術を模倣し、ぶつけ合う事で。
──マイナスを掛け合わせて
──解ける分子、結晶は砕け、空気は解けて、大気は流れ出す
ソプラノボイスが歌い上げる詩の如く。『氷皇竜』の由来ともなったその術の効果は、無力化される!
『──馬鹿な!? 我が力を……ぐっ!?』
驚愕のあまり素に戻った『メルゼギオス』だが、その驚きの声は苦悶によって塗り潰された。再び戦場を満たした高熱の水蒸気に眼を潰され、負った傷口を熱で焼かれたのだ。
(舞台は整えたわよ……)
乱れ飛ぶ氷の錐を一つ残らず蒸気へ変えたアテナの姿が、元の姿へと戻る。その視線が向かう先には……満たされた高熱の蒸気を物ともせず、翅を羽撃かせて翔ぶ小さな姿。
「ティエル、やっちゃえー!」
(……ティエルっ!)
アテナの声援が。ミフェットの祈りが。大事な二人の友達の応援が、ティエルの背を押し、力に変わる。
……巨竜は視界を塞がれ、ティエルの姿を見失っている。今、この状態なら……
「狙った場所は、外さないぞっ☆」
竜にあるという、弱点。逆鱗と呼ばれるその場所を貫く事も、不可能ではない!
小さな身体が、悶える『メルゼギオス』の懐へ取り付く。狙うべき場所は、不思議とティエルには理解出来ていた。愛用のレイピアで突くべき場所は……
「──ここだぁーッ!」
頭と頸の付け根。人の身体で言う、喉仏の辺り。
ティエルのレイピアの鋭い切っ先は、裂帛の気合と共に狙い違わずその場所を貫く!
『──ガッ!? ゴっ、ハッ……!?』
不意に襲い来たその痛みに、『メルゼギオス』の意識が白に染まる。次の瞬間、喉の辺りに感じる熱さと寒さに視界が戻れば……血に濡れた細剣を掲げ仲間の元へと翔んでいく小さな姿が目に映るだろう。
『──馬鹿な。バカな。我が。この『メルゼギオス』が……!?』
少しずつ、視界は黒に染まっていく。ティエルの一撃により遂に限界を迎えたか、メルゼギオスの身体が崩壊を始めたのだ。
その事を悟り、『メルゼギオス』の口から溢れ出たのは……復讐を誓う、恨み言だ。
『──おのれ、我が企みを邪魔するばかりか、この様な辱めまで……! この恨み、この借り、必ずや……』
『氷皇竜』の異名を持つ竜が、復讐の念を燃やしながら消えていく。
……結局、『メルゼギオス』が何を企みこの地に降り立ったのか。その事は分からなかった。
だが、その目論見は猟兵達の活躍により潰えた。この地に生じた今回の異変は、見事に解決されたのだ。
とは言え、『メルゼギオス』が消えていく間際に残した最後の言葉は、気になる所だ。
……いずれ、再戦の時が訪れるかもしれない。その時は……きっと遠からず訪れるはずだ、と。
猟兵達の胸に、確信に似た予感が過るのだった。
成功
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