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ご用意されてもいいじゃない!

#UDCアース #感染型UDC

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#UDCアース
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●徳を積め
 世は無常である。
 勝つものと、負ける者。
 持つ者と、持たざる者。
 そこにはかならず、埋めようのない格差が存在する。
 或る者は己の幸運に喜び、神に感謝の念をささげ、また或るものは己の命運を恨み、涙を堕とす。
 そうしたものが今、またここに――。

「貴女、今なんと仰って?」
「え……次のアニメライブの、席の番号ですけど……」
「その番号、もう一度仰いなさい!」
「えーと……1F席●×群▲席○○番(約束されし神席)」
「はいアウト~ッ! ゾンビーズ、やっておしまいっ」
 突然、白い服を着た女にびしりと指差された。一体何がアウトなんだ、というかこの人は誰なんだ。
 そんなことを問いただす間もなく、女の信派らしい人々に取り囲まれる。あの人はゾンビーズなんてセンスのない名前を呼んでいたけれど、まさかホントにゾンビなんてことは……。
「ってホントに腐ってるー?」
「貴女……こんな噂話を聞いたことない?」

『(お席の用意を)持つ者が、(席の用意を)持たずに死んだ者に襲われる……って噂よ?』

●グリモアベースにて
「いやはや……なんともユニークなオブリビオンを見つけちまったんだわ」
 ジャージ姿で猟兵達を待っていた四辻・鏡(ウツセミ・f15406)は、困ったように頭をかきながら説明を始めた。
「感染型UDCってさ、厄介な奴が現れ始めただろ?」
 それは人の噂をもとに増殖する恐るべき新種の名称だ。それらは実際にそれを見た者、噂として知った者達の精神エネルギーを餌として、大量の配下を生み出すUDCである。一歩間違えれば致命的なパンデミックを引き起こす脅威を秘めており、存在を確認し次第、早急な対応が求められる存在である。
「私が見つけたのもその一つなんだけどさ……そいつらはまぁなんというか、『お席がご用意されなかったヤツ』なんだ」
 は?
 突然訳の分からないことを言い始めた鏡に、一同が疑問の目を向ける。
「いや、イベントとかって、基本人数にキャパがあるだろ? そういう時って大抵、事前抽選で参加権を取るんだが、それの返信にあるんだよ。お席のご用意って」
 用意ができればイベント当選、できなければ落選。シンプルにわかりやすい案件なのである。
「そんで、落選したやつは皆ゾンビになって当選したやつを襲う。チケット下さい席下さいむしろなんでお前がご用意されて俺がご用意されないの的な感じで」
 気持ちは分からなくはないけどな、と鏡は溜め息をつく。
 ちなみに何でゾンビなのかというと、落ちた者は須らくメンタルが折れて(精神的な)死に至るかららしい。
「実際、被害がもう出始めちまっている。ライブで良番当てた大学生女子が、ゾンビに襲われちまっているんだわ」
 UDCの狙いはあくまで噂を広め、餌を大量に得ることだ。正直、このままでも彼女はチケットを奪われるだけで命を落とすことはないだろう。
 しかし、それが噂となってあちこちに伝播し始めたら。イベントあるところに必ずゾンビありという世界になってしまう。
「そんなことになったら、世界の混乱もいいところだ。ついでにイベント系が丸潰れだ。だから、きっちりそいつを助けて、ゾンビどもを撃退して欲しい」
 敵の能力は、妙な噂から生まれたと言っても所詮はゾンビだ。噛みつき、相手の肉を喰うことで己の能力を強化することは変わりないし、襲われたものを仲間にする能力も持ち合わせている。視界に入ってきた生者を無差別に襲ってくるため割り込む分には用意だが、その分無関係の人にまで被害が及ぶ可能性があるだろう。
 ああ、それともう一つ、と鏡は思い出したように付け足した。
「このゾンビ、こっちの簡単な言葉なら理解できるみたいでさ。尚且つすっげーチョロい」
 ちょろい。
「さらにメンタルが豆腐」
 豆腐。つまり脆い。
「ざっくり言うと、なんかしら言葉を投げつつ戦えば相手の行動に支障がでるかもしれないってことだな」
 このあたりは、もしかしたら発生源である大元のUDCとなんらかの関係があるのかもな、と鏡は付け足した。
「おだてるなり、徹底的に心を挫くなり、好きにして構わないぜ、ゾンビだし。とりあえずここで大切なのは、被害者をしっかりと救出して、保護することだ」
 なぜなら被害者は、噂の始まりとなるUDCを目撃している。無事救出に成功すれば、発生源の場所の情報を得ることができるだろう。
「あとはそこへ潜入して、UDC本体の居場所を探す。配下を多く作り出している場所だ、おそらくまともな場所とは言えないだろうな。現地の様子をよく見て、うまく情報を引き出して欲しい」
 UDC本体を場所を辿り着き、あとはこれを駆逐する。
「ちょっとばかし癖の強そうな相手だが、やることは普段と変わらねぇ。UDCアースの平和の為にも、アニメアイドル音楽その他オタク達の安寧の為にも、しっかりと倒してきて欲しい」
 当選できない気持ちは分かるが、過激派はダメ、絶対だからな、と鏡は苦笑を浮かべ、猟兵達を送るべくタブレットからグリモアを起動させるのであった。


天雨酒
 悲しみの分だけ得た時の喜びは大きい、かもしれません。天雨酒です。
 今回はUDCアースよりちょっとあれなシナリオをご案内させて頂きます。
 あれ、つまりネタです。基本自由に、想いの丈をぶつけて頂ければと思います。

●第一章
 ゾンビとの集団戦です。お席をご用意されず悲しみのあまりなんやかんやとゾンビになりました。
 場所は駅から少し歩いたキャンパス通り。学生向けのお店が並ぶ道です。休日の昼間の為、そこまで人は多く無さそうです。不運にも巻き添えをくらった一般人はゾンビ(仮)になるくらいで、あまり深く考えなくても大丈夫です。
 敵は席を求めあちこちをさ迷ってます。悲しみを共有してあげると少し攻撃の手が和らぐかもしれません。(心の)傷をさらに抉っても心が折れて動きが止まるかもしれません。
 ご自由にころころして下さい。

●第二章
 感染源であるUDCがいるアジトへの潜入となります。
 どうやらそこは様変わりしているようですが……?
 詳細は断章にてご案内いたします。うまくUDCまでの道を見つけてください。

●第三章
 UDCとの戦闘になります。あれな噂を作った敵ですので、その詳細は推して量るべし。
 詳細は断章にてご案内します。ネタを存分に撒きながら蹴散らして下さい。

 全章通して敵のチョロさレベルはMAXです。敵は心にある種のダメージを追っているので、そこに付け入る形になるとプレイングにボーナスが入るかもしれません。
 が、全体的に自由に戦って頂ければと思います。

●プレイング受付について
 第一章は受付は3月4日(水)AM8:31~よりと致します。その後の受付締め切り関してはMSページ、Twitterにて明記いたしますので、お手数ですがご確認お願いします。
 それでは、どうか宜しくお願いします。
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第1章 集団戦 『ゾンビ』

POW   :    反射行動
【生者を追うだけの行動パターン】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    活性化
戦闘中に食べた【被害者の肉】の量と質に応じて【興奮状態となり】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    感染増殖
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自身と同じユーベルコードを持ったゾンビ】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。

イラスト:バスター

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ひ、ひいぃー!」
 花の女子大生、神田幸乃(かんだ・さちの)は走っていた。そりゃもう、全力で走っていた。
 一体自分が何をしたというのか。つい数十分前まで、発券後の自分のテンションはそれこそ有頂天だったのに。それか、それで運を使いきったというのか。
 オオンーーオオッーー。
 地の底から響くような声にちらりと後ろを振り返る。
「ひっ……」
 喉の奥から変な声があがった。 
 まず、腐った匂いが鼻をつく。次に視界に飛び込んだのは、追いかけてくる人々の異様な容姿。
 汚れた服装。土気色としか言いようのない死人の肌。彼らは皆、虚ろな目をして唸りながら大群でこちらに向かっている。その光景は少し前に見たゾンビものの映画そのものだった。
 ヨコセ……ヨコセ……
 ソノチケット(神席)ヲ……!
 ……言っている内容は、こう、大変残念だったが。
 しかし負けない、負けてはいけない。何故なら彼女にはやらねばならないことがある。
「当日推しを浴びて死ぬまでは、死ねないんですーっ!」
 ナラチケットヨコセェェ!
「論外!」
 そんな訳で、幸乃は推しキャラ上位報酬のイベントのよろしくゴールの見えないマラソンを絶賛続けているのであった。
ヘルミナ・イェルソン
芸術を愛する私には分かります。生の音楽はとても素晴らしいものです
UDCでは映画館中継などもあるようですけれど、会場の空気、鼓膜から直で響く振動は中毒的な興奮を産むのです

さて、ガジェットを長さ15直径1センチ程の持ち手がある棒状に変形させて光らせます。数は両手に4本ずつ

これを持ってると不思議とブンブン振りたくなりますね!

……あーっと手が滑りましたー!(棒)
やはりストラップが無いと危ないですね!
今は軌道上にゾンビしか居ないのでいいものの!
決して投げつけてなどいませんとも!(棒)
ちなみにそれ衝撃を加えると爆発するのでよろしくお願いしますね!
手元になくなってもガジェットですからいくらでも補充しますよ!


ヴィクトリア・アイニッヒ
推し? 浴びる??
えぇ、と。いまいち良く分かりませんが、オブリビオンより今を生きる人々を守る事は猟兵の務め。
その務めはしっかりと果たさねば、ですね。

まずは、追われている幸乃さんの安全確保が最優先。
【勇気】と【覚悟】を固め、【かばう】様に割って入りましょう。
その上で、主への【祈り】を捧げつつ、『神威の光剣』で、迫るゾンビの動きを止めます。

しかし、どうしてこんな騒ぎに。それほど大騒ぎする事なのですか?
私、こういった(アース系世界の)芸能文化には疎くて。
…あ、成程。その筋には希少価値が高い、と。そしてそれを力尽くで奪おうとした、と。
…これは、ちょっと許せませんね。少し、お灸を据えましょうか?



●超新星
 永い、長いマラソンに終わりが来ようとしていた。
「も、もうダメ……」
 ぜぇはぁと荒い息を吐き、幸乃が力尽きようとしたその瞬間――。
「幸乃さん! こちらです!」
 救いの手は訪れた。
 銀を紡いだかのような美しい髪。静謐の森を思わせるような緑の瞳。戦鎧に身を包み、遠い異国を思わせる斧槍を手にした美女が、幸乃に向けて手を差し伸べていた。
「め、女神様……!」
「えっ? えぇ、と……私は確かに神に仕えた者ではありますが、神自身ではないかと……」
 咄嗟に漏れた譫言(本音)に盛大に戸惑いながらも、ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)は幸乃の手を取り、自身の背後へと回らせる。幸乃は助かったというようにその場に蹲り、必死に身体が求めていた酸素を全力で吸い込んだ。
「ご無事ですか?」
「ま、まだ……生きねばならぬので……」
「は、はぁ……」
 推しが、とか。まだ浴びてない、とか。ぶつぶつと言いながら頷く彼女に怪我がないことを確認にして、ヴィクトリアは改めてゾンビの群れに向き直る。
 チケットォ……。
 ウラメシヤゴヨウイ……。
 ゾンビもゾンビで相変わらず、訳の分からないことを呻きながらこちらに押し寄せている。途中、一般人を襲い仲間にしたのか、その数はちょっと尋常じゃないことになっていた。
 しかし推し、とは。浴びる、とは。
 背後で幸乃が、そして前方で屍達が、ひっきりなしに呟いている言葉に、ヴィクトリアは小さく首を傾げる。
 彼女は猟兵だ。そして、オブリビオンより今を生きる人々を守ることこそが、猟兵の務め。無辜の一般人が襲われていると聞きつけ、その職務を全うせんと駆け付けたのだが、どうやら彼女も、また目の前のゾンビ達も自分とは大きく異なる文化の中で生きているようだった。
「しかし、どうしてこんな騒ぎに……」
 彼女達の言うチケットとは入場券のことだろう。入場とは、一体何に、どうして。
「それほど大騒ぎする事なのでしょうか?」
「説明しましょう!」
「ひゃっ」
 彼女の疑問ににゅ、とヘルミナ・イェルソン(夜を飛び越える・f02267)が割り込んでくる。技術者であり、表現家を事象する彼女にとって、音楽、イベントもまた愛する分野の一つ。UDCアースのジャンルも勿論、熟知しているのであった。
「助かります。私、こういったアース系の芸能文化に疎くて」
 ヘルミナの解説を聞き、ヴィクトリアはふむ、と頷く。
 曰く、チケットはイベントの規模によるが、倍率がとてつもなく高い場合があること。それは度重なる努力(応募券入手)の結果とと、厳選なる抽選という幸運度によって得られるものであるということ。
「……成程。つまりその筋には希少価値が高い、と」
「はい。UDCでは映画館中継などもあるようですけれど……芸術を愛する私にはわかります」
 画面越しでは物足りない。叶うものなら現地で聞きたい。
 それは一度体験してしまえば病みつきになってしまう魅力。会場の空気、鼓膜から直で響く振動は中毒的な興奮を産む。それほどまでに、生の音楽はとても素晴らしいものなのだ。
 中でも、自分が最も好んでいる存在から生の音楽を全身でもって受け取る。それを一部界隈で浴びるというのだとか、いわないのだとか。
「そして、それを彼らは力尽くで奪おうとした、と」
「そうなりますね」
 なるほど、とヴィクトリアは深く、深く頷く。
「……これは、ちょっと許せませんね」
 そしておもむろに、斧槍をゾンビ達につきつけた。
「主の威光よ……」
 ヴィクトリアの祈りがもたらす光の剣が、そろそろ突撃してよいものかとスタンバっていたゾンビ達の足元に突き刺さる。
 理解が出来ればあとは話は早い。
 天からの恵みを暴力で圧伏させ、理不尽に奪う。それは言語道断とも言える悪虐。
 そんな所業、いったい誰が許せようか。いいやヴィクトリアは許せない。
「……少しお灸を据えましょうか?」
 普段は温和な彼女もこれには少々おこなのであった。
「むむっ」
 彼女の静かな怒りを見ていたヘルミナが、その奇跡の所業を見て唸る。
 光る剣、奔る閃光。
 ぴーん、と。
「インスピレーションがきました!」
 ヘルミナの叫びと共に、彼女の脊椎が忙しなく稼働し、ガジェットが変形する。
 彼女の手の中に現れたそれは、おそよ長さ15直径1センチ。下部には持ち手となる部分がある、棒状のもの。スイッチを押すと、多色に、結構眩しく光る。その数は両手に4本ずつ。指の間にそれぞれ挟んで、ばっちり構えた。
 そう、あれである。ライブにはもはや必需品ともいえる、あれである。大きさも光量も、あらゆるレギュレーションをばっちりクリアーできる優れモノだ。
 生み出された新たなガジェットに興奮を隠さず、ヘルミナはその造りを検分した。
 これを持っていると、不思議とブンブンと振りたくなってくる。
 よし、振ろう。
 えいっ、おー、えいっ、おー!
 ノリのよい拍子を刻んで、具体的にヴィクトリアが光の剣を撃ち出すタイミングに合わせてヘルミナは勢いよくそのガシェット……もとい光る棒を力いっぱい振り回した。
 ――ところで、遠心力というものを皆様はご存知だろうか?
 難しいことは省くと、回転の運動をしている物体は、中心から外側へ向かって進もうとする力である。この場合、ヘルミナが力一杯いっぱい振り回せば振り回すほど、光る棒は外側へ飛んで来ようとする力を得る。
 そして、光る棒は大変持ちやすい。ぱっと出してぱっと握ってはい終わりだ。
 その結果、過度に外側へ向く力がかかった光る棒に一体何が起こるか?
「あーっと、手が滑りましたー!」
 答えは、見事に手からすっぽ抜けた。
 そう、その光る棒にはストラップが付いてなかったのである!
 優れモノと見えて飛んだ危険物だった。
「今は軌道上にゾンビしか居ないのでいいものの、やはり危ないですね!」
 決して、決してわざと投げつけたわけではない。たとえその時のヘルミナの言葉た大変、とても、棒読みだったとしても!
 四本の光る棒はというと、綺麗な放物線を描き、ヘルミナに見送られながらゾンビの群れへと吸い込まれていき――。
 ちゅっどーん。
 爆発した。……爆発した!?
「ちなみにそれ、衝撃を受けると爆発するので宜しくお願いしますね!」
 仕様だった。紛うことなき危険物だった。
 ヴィクトリアの光剣により足止めをされていたゾンビ達は、危険物、もとい光る棒の爆風により吹き飛んでいく。
 ヘルミナはその出来に満足したように頷いて――再び脊柱から光る棒を補充した。
 本物の数には限りがあるが、これはヘルミナのガジェットだ。使い捨ててもいくらでも、替えはきく。
 本物の光の乱舞(と爆発)は、これからだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

向坂・要
あー……まぁ席がご用意されねぇんでメンタル死亡ってのは分からなくもねぇですが、それだったらご用意された人達襲うよりも転売ヤー襲った方が早かねぇですかぃ?
お前さん達がご用意されたハズの席をあちらさん達が自分の利益のためにかっさらって転売しているようなもんですし。

……って聞く耳あるんですかねぇ
とかぼやき(一応説得?)試みつつ
UCで呼び出すは冷気を纏った鎌鼬の群れ
ルーンを宿した武器と併せて【属性攻撃】しつつ【足止め】を狙いますぜ

同じゾンビでも推し相手に尊死して墓乱立したい、ってもんでしょうしね
と第六感も活かして一般人(ご用意された人含む)に被害が行かないよう注意
アドリブ
絡み歓迎



●それは許してはいけない
 『ご希望のお席は残念ながらご用意できませんでした』
 一体何度、その文章に涙を飲んだことだろう。そしてあと何度、涙を流せば報いは訪れるのか。
「あー……まぁ席がご用意されねぇんでメンタル死亡ってのは、分からなくもねぇですが」
 そんな悲しき輪廻を永い生の中で知識の端で聞き及んできた気がする向坂・要(黄昏通り雨・f08973)は、ゾンビ達に対して少しばかり同情的だった。
 ただ、だからといって当選したものから奪うことはよくない。それは紛れもなく不正行為だ。
 それに、怨讐の向かうべき場所は別にあるはず。例えば、あれ。
「ご用意された人達襲うよりも、転売ヤー襲った方が早かねぇですかぃ?」
 そう、転売屋。それはいくら限定品に蔓延る害虫のようなもの。
 厳選なる抽選という天の采配を数の暴力で狂わせ、さらには当選したチケット高額で販売し、私腹を肥やす。勿論、その売り上げは微塵も運営には届かない。
 やつらがいなければそのチケットはこちらに回ったかもしれないのに。自らの利益の為にとんびのごとくかっさらっていく転売ヤー。いや、そんな例え方をしたらきっとトンビにも失礼だ。
 当選発表日からネットに出回るオークション画面にどれだけ怨嗟の念を送ったことか!
 ……とか、どこかで聞いたことがあるとか、ないとか。
「……って、言っても聞く耳あるんですかねぇ」
 こちらに気を引くついでに物は試しと説得を行ったところで、要は嘆息した。よくよく考えれば相手はゾンビだ。いくら精神的な死とはいえ、要の言葉を理解しうる理性が残っているのだろうか。
 ニクイ……ウラメシイ……
 ユルスマジ、テンバイヤー!
「あ、理解はできるんですかぃ」
 効果はテキメンだった。
 幸乃に向けて突撃していたゾンビ達はくるりと向きを変えると、憎き仇敵を探すべく四方八方に向けて散り始める。
 その行く先は、こともあろうに通りがかりの一般人であった。
 転売屋という存在を理解する知性はあっても、荒れ狂う無念の感情をぶつける知恵までは悲しきかな、今のゾンビ達にはなかったのである。
 オマエカァァアアア!
 「いや違ぇますって。頭でも冷やしてきなせぇ」
 血迷い、突進し始めたゾンビ達へ向けて、要は冷気を纏った鎌鼬をけしかけた。
 チケ戦争に全敗した時を思わせる、寒さを孕んだ風がゾンビ達の足元を吹き抜ける。刃の如きそれは瞬く間にゾンビ達の足を凍らせ、鎌鼬が遊ぶように切り裂いていった。
 機動力を削がれ、ばたばたと倒れていく前衛のゾンビ達。それに足をとられ、後続が雪崩れていく。
「混雑時は足元にお気をつけてお進みくださいって、言われませんでしたかぃ?」
 その隙に要は悠々一般人を逃し、八つ当たりゾンビからの魔の手から遠ざけていく。
「まぁ……同じゾンビでも、推し相手に尊死して墓乱立したいってもんでしょうしね」
 気の毒、っていう同情だけはしてやりますぜ、と、団子になってもがくゾンビの群れへ向けて要は嘯くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
…オシ?
(相棒の鸚鵡ユキエと首を傾げ)
贔屓役者見に行けなかった、つー感じ?
怖ーなUDC…それで半死人作るとか
あんなヤツレてなあ
何つーか、お気の毒
楽しみの為に毎日頑張ってンのにねー
オレ自分で楽しみ選べなかったからさー
好きな事これって言えんの羨ましーよ?ホントホント
この沙謡鳥たちに言ってみな
紛い物だけど気に入った音、聞かせてくれるかも?
まー偽物は許さん!ってタイプならごめんなー(鳥達はツラいよね、次がある、みたいな慰めを囁く)『唱歌、だまし討ち、時間稼ぎ』
一般人に接近させない為UC鳥で包囲し
…さて
仕事かな
次はイイ席を?
隠し持ったクナイで敵から敵を縫うように斬っていく【追跡/忍び足/暗殺】

アドリブ可



●でも約束はされてないので
 UDCアースの一部コアな文化についてあまり明るくはない鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、聞き慣れない言葉に小首を傾げた。
「……オシ?」
『オシ』
 トーゴがなんとなしに呟けば、腕に停まっている相棒、鸚鵡のユキエも文字通り鸚鵡返しに声真似をする。二人して不思議そうに顔を見合わせていたが、追われていた幸乃が口走る言動と周りの猟兵の反応から鑑みるに、成程、どうやら特定の好きな出演者をそのように呼称するらしかった。
「あー、贔屓役者を見に行けなかった……つー感じ?」
 ソウデスヨォオオ!!
 皆まで言うなとばかりに、トーゴの呟きを聞きつけたゾンビ達が恨めし気な声を上げて彼へと目指し始めた。げっ、と呻きながら、トーゴはユキエを飛び立たせ、自身も退ぎながらゾンビとの距離をとる。
 死人の色をした肌。鼻を突く死臭に、見るも悍ましい容姿と死相。
 よくよく観察してみても、彼の目の前にいる敵は紛うことなきゾンビだった。説明では、彼らは精神的な死だと言ってはいたが、落選してしまった悲しみがここまで立派な半死人を作り出すとか、ちょっとトーゴには理解できない。
「なんつーか、怖ぇーな、UDC……」
 その妄念、恐るべし。
 いや、それ程までの執着がある、というのは悪いことでは無いと思うのだ。娯楽というものは生きる上では必ず潤いとなる。
 自身の出生と土地柄、そんな楽しみの選択肢が限られていたトーゴだからこそ、それは大切なものだとは分かっているつもりだ。正直に言えば此処まで夢中になれるものがあるということ自体は大変羨ましい。ホントホント。
 いやでもちょっとこのレベルになるとさすがに……。
 コノウラミヤツアタリセズニハイラレルカァア!!
「いや八つ当たりって分かってんのかよ」
 さっきっからこのゾンビ達、案外話が解ってるっぽい。
 それなら、とトーゴは一つ思い付き、沙謡鳥たちを無数に口寄せる。
 音真似が得意な『彼女達』はゾンビ達に向かって一斉に飛び立つと、世にも美しい声で囀った。
 はっとしたようにゾンビ達の視線が空中に吸い寄せられる。
「そんなに残念なら、沙謡鳥たちに言ってみなよ。紛い物だけど気に入った音、聞かせてくれるかも?」
 術者の意図を汲んだように沙謡鳥達が歌い出すのは、この世の美しさを歌い上げる旋律――ではなく、ちょっとテクノでアップテンポの音楽。勿論、愛らしい女子達のボーカル(声真似)付きだ。
 コ、コレハデンセツノ……!
 ゴットイズカミキョクッ!!
 うおお、とゾンビ達の間で歓声が上がる。いや、正確には呻き声の筈なのだが、なんかやけに熱が籠っている気がする。ちょっとトーゴの知らない世界がそこにあった。
『ツラかったよね』
『次があるよー』
『だからずっとオウエンしてね』
 歌の合間合間に、少女達の声(声真似)がゾンビ達に向けて慰めの言葉をかけていく。一般人そっちのけで歌に聞き入っていたゾンビ達は、その言葉にぴたりと動きを止めた。
「え」
 何か地雷でも踏んだのかと焦ったトーゴの目の前で、ばたばたとゾンビ達は跪き――。
 ふ、ふえぇええん!!
 咽び泣いた。
「え、待って今の泣き声何」
 ゾンビ(オタク)の悲痛な鳴き声です。
 どうやら自身の(精神的な)死に至った現実に改めて直面し心挫けたらしい。推しの神選曲を聞いてしまったからこそ、それを生で聞けない悲しみは耐えがたいものだったのだろう。
「えーと……まぁ、上手い事足止めにはなったのかねぇ」
 幸乃も、周りの一般人も放り出しておいおい泣き始めたゾンビ達にちょっと引きながら、トーゴは改めてクナイを構える。少しばかり悪い気がしないでもないが、ここからはお仕事の時間としよう。
「楽しみのために毎日頑張ってンのにねー。何つーか、お気の毒」
 次はイイ席ってやつ、取れるといいな。とささやかな祈りの念を送りながら、トーゴは戦意喪失したゾンビ達を倒していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリ・トワイライト
わかる……! わかるよ、その気持ち!!
いくら映画館やサイトで生配信してくれるって言っても、後日アーカイブや円盤が発売されるって言っても、現地参戦の興奮はまた別! 特別だもんね!
でも奪うのはやっちゃいけない!
問題を起こしたファンから、推しの程度も勝手に決められて、推しが迷惑を被るんだよ。

同行募集や正規ルートでの譲渡もあるんだから強く……生きよう?
ゾンビになるならこんなことじゃなくて尊死でなるんだ……
ボクもね……ファンクラブ限定先行もCD先行も一般も全て落ちた……から、次のイベントまでがんばるよ!うっ(涙

心の底からの同意と注意で説得して、【UC】で戦うよ!
推しに迷惑はかけない、いいね?



●同胞よ
 ああ、嘆きの声が聞こえる。
 イベントに行きたかったと。推しに逢う夢を叶えたかったと。つらい現実に打ちひしがれる声が聞こえる。
 それは決して、敵の、他人の声では無い。あれは、自分だ。
「わかる……! わかるよ、その気持ち!」
 聞いているこちらにまで胸にぐさぐさと来る泣き声に、ユーリ・トワイライト(キラキラな毎日・f10658)は拳を握り、唇を噛みしめて呻いた。
 彼には、彼らの気持ちが痛いほどわかっていた。何故ならユーリもまた、彼らと同類であるからだ。
「いくら映画館やサイトで生配信しているって言っても、後日アーカイブや円盤が発売されるっていっても、現地参戦の興奮はまた別……特別だもんね!」
 時にはオペラグラスを使わなければ米粒くらいにしか見えない時もある。ぶっちゃけ後日映像で見たほうが推しの顔が鮮明に見えることもある。行きも帰りも人が多くてもみくちゃになるし、会場が果てしなく遠方の時もある。
 それでも、現地には現地でしか味わえない魅力がある。推しと同じ空間にいて、共有できる時間にこそ価値がある。約束されしご用意とは、あの眩しさを全身を以って浴びることができる時のことを言うのだ!
 だから、ご用意されなかったのは悲しい。本当に絶望してしまうくらい、死に至ってしまうくらい。分かるのだ。その気持ちは非常に、とても、涙がにじんでしまうくらい理解できるのだ。
 でも、だからこそ。ユーリはぐっと歯を食いしばり、呼び出した機械兵器を召喚しゾンビ達へと走らせる。
「でも、奪うのはやっちゃいけない!」
 ユーリは彼らの悪行を赦す事は出来ない。
 問題を起こしたファンがいれば、もしそれが公になってしまえば。それは即ち、一般市民からの推しの『程度』という格付けに直結してしまう。『○○ってファンの民度低いんでしょー、そのレベルってことだよね?』とか何も知らない民に言われてみろ。果たして耐えられるだろうか、いやユーリは耐えられない。
 それは、ファンと名乗るために残さなければならないたった一つの矜持。
「そんな推しが迷惑を被るようなこと、やっちゃいけないんだ!」
 幾ら数が減ってきたとはいえ、ゾンビの群れの数はユーリが召喚した機械兵器のおよそ数倍。しかもそれらは一撃でも攻撃を受ければ消えてしまう存在だ。その戦力差は歴然だろう。
 だからこそ、ユーリはゾンビ達の脚を止めるべく、彼らに対して説得の為の言葉をかけ続ける。
「斯くいうボクもね……ファンクラブ限定先行もCD先行も一般も全て落ちた……から、次のイベントまで頑張るよ……うっ」
 なんだか言っていてだんだん悲しくなってきた。いやホント悲しい、目の前が滲んで見えない。
 自らの言葉で自分の地雷を踏みぬいたユーリは、その場に崩れ落ちながらも必死に訴える。
「同行募集や正規ルートでの譲渡もあるんだから強く……生きよう?」
 その言葉は、果たして同志達に届いた。
 オオォオ……。
 ナカマカオマエェェ……
 機械兵器が次々とゾンビを屠っていく中、彼らは抵抗の意を示さなかったのだ。
 なんかもう、兄弟がそんな断腸の思いで立ち向かうならいいかなって。
 生きる希望を失くし濁っていた彼らの目が、言外にユーリに向けてそう告げているようだった。
「みんなっ……!」
 オマエモ…ガンバレヨ……。
「うん、ありがとう……共に善き戦いを……!」
 無抵抗に攻撃を受け止めた、最後のゾンビが彼にそう言って消えたのを受け止めて、ユーリはそっと涙を拭う。
 これで、彼らの戦いは終わりではない。いや、むしろこれから始まったとも言えるのだ。
 合言葉はそう。
「『推しに迷惑はかけない』、いいね?」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『学生たちは暴走する』

POW   :    怪しそうなサークルに全部参加してしまえ、学生のたまり場に溶け込んで情報収集だ

SPD   :    大学の裏サイトやSNSなどから怪しい噂を集めて絞り込む。学生の所持品やPCなどを盗み見る。

WIZ   :    大学の学生名簿や職員名簿から経歴を洗う。卒論や研究などから異常なものを見つけ出す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●助けられたらこう言えって
「危ないところを助けて頂いてありがとうございました」
 急死に一生を得た幸乃は様式美そのままの台詞と共に深々と頭を下げた。
「これも無事現地で死んでこいという推しのお告げですね!」
 いや、それはどうかと。
 その場にいた一部猟兵が適切な突っ込みをいれるが、本人は全く気にしていない様ある。ちなみに残りの猟兵達がぶんぶんと首を縦に振っているのはこの際放置することにする。
 それよりも、彼らは幸乃に聞かなければならないことがある。
 彼女はどこで何を見て、ゾンビに襲われるに至ったのか。感染型UDCが原因である今回の事件では、その場所こそが肝要だ。
「ああ、それなら……」

●助けたオタクに連れられて
「ツンデレ至高」「いやいやネコミミ属性も捨てたもんじゃないから」「ガチャが……ガチャが……」「百合ちゃんハスハス」「缶バッチブラインドかぁ……箱買いするか」「アクキ神すぎて迷うわ……全部買うか」「ケモがどうしたって?」
 トンネルを抜けたらそこは人外魔境でした。
 幸乃が示した場所、それは彼女を助けたところからそう離れていないとある大学キャンパスだった。どうやらライブのことを話しながら通った際に絡まれたらしい。
「ええぇ……」
 敷地内に入った猟兵達は、目の前に広がる燦々たる光景に誰とも言わず呻き声を上げる。
 大学とは本来勉学を志すものが集う場所ではあるが、一定の共通する趣味を持つものが集まり、共に楽しむサークルというものが存在する。本来ならば、スポーツ、文学、文化をはじめとしてえ、これでいいの、と思える様なテーマと多彩の筈なのだが……。
「次のイベンントガチャ上位報酬両面推しぃい」
「百合ちゃんハスハス」
 そこに集う一般人と思しき人々は何故か全員がオタクになっていた。もはや超弩級オタクサークルである。
 しかも暑苦しい。典型的な感じに、なんか色々痛くて暑苦しい。
「……っていうかこれ、男女比おかしくねーですか」
 そう、暑苦しいのも当たり前だ。何故か超弩級オタクサークルにいるものは何故か男性オンリーだったのである。
 しかし、幸乃は襲われた時、こう言っていた。
『突然女の人に呼び止められて、因縁をつけられた』
 ほぼ100%とも言える男性率の中に存在するというの女性。
 それは紅一点、一輪の花の如き存在となるだろう。
 つまりあれだ、そう。サークルにおけるアレである。おそらくUDC本体にたどり着くためには、その存在へと行き着く必要があるようだ。
 幸い、人外魔境となっている大学キャンパスにいる一般人もUDCの影響を受けて大変ちょろ……誘導をしやすくなっているようだ。パッと見たところ生徒はもとい、大学内の職員までもが一緒にハスハスしていることから、おそらくこの場にいる全員がオタクとなっていることだろう。
 ちなみに幸乃は必要なことだけ言うと『それじゃ、当日まで体調管理に努めますので!』と早々に立ち去っていったのでこれ以上巻き添えになる恐れはない。
 オタクとなった彼らに同調し、情報を集めた上でUDCの居場所を探る。
 これ以上被害者を出さない為に猟兵達はそれぞれ顔を見合わせ、オタクの群れを目指すのだった。
鹿村・トーゴ
…ブジゲンチデシネトオシノオツゲ?
わー全然意味解らねー
この場の言葉も解らんしお手上g
『こらっ』(相棒ユキエが額の角を捩る勢いで齧る)
Σわー?!痛てッてかなんで怒るん?
あ。ハイ任務でした
お前のが真面目だったユキエ…(賢い子撫で撫で)
『ユキエ、異種婚譚いいと思う。鸚鵡も恩返しで嫁したい(←人語

……うん
ユキエは心の嫁な?
『よし卵産む!
ねえ誤解されるから
『でもトーゴは年上のケモミミのが好きね
年上好きだが獣耳娘を好きなワケじゃ…つか性癖みたいにゆーな?!
『年下鳥娘じゃダメ?
ちょ、何でユキエ今日そんな攻めなん?感染?
…あ!あいつらか?

そのまま獣耳萌に合流してみるか
【動物と話す/聞き耳/情報収集】
アドリブ可



●ちょっと日本語でおねがいします
 もはや彼にとって言語からして世界が異なっていた。
「……ブジゲンチデシネトトノオツゲ?」
 意気揚々と去っていく幸乃を見送りながら、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)はぽかんと口を開けて呆けていた。
 わぁ、もう全然意味解らねー。
 いや、正確には言語として認識できるが、内容がさっぱり理解できない。ついでにいうとこの人外魔境たる空気もトーゴにとって未知の領域が過ぎていた。もう訳が分からないよ。
 これからさらに踏み入れるであろう混沌に匙を投げたい気持ちでいっぱいになる。
「もう言葉すら解らんし……」
 お手上げだ、と言いかけて、突然額に激痛が走った。
「痛ってぇ!?」
『こらっ』
 いつの間にかトーゴの頭によじ登っていた鸚鵡のユキエが、トーゴの額の角を捩じるかという勢いで齧ったのだ。
「痛てッて、なんで怒るん――」
『任務っ!』
「あ、ハイ……」
 理解不能の領域に投げやりになる主より、飼い鸚鵡の方が真面目であった。
「んじゃぁ、取り合えず適当なところに合流して……」
 肩へと移動してきた賢い相棒を撫でてやりつつ、トーゴはまだ比較的理解が及びそうなオタクの群を探そうと周囲を見渡す。嗜好を理解することは叶わなくても、自身の知識から多少は話が合わせらるようなところ。例えば和風物とか、巫女とか、忍者とか……。
『異種婚譚イイと思う』
 そう、異種婚姻譚とか……――ん?異種?
「え、待って今誰が言った」
『ユキエ、鸚鵡も恩返しで嫁したい』
 ばりばり隣からの発言だった。
「……ユキエさん?」
 おそるおそる隣をみると、円らな黒い瞳が駄目?と首を傾げてこちらを見ていた。
 …………うん。
「ユキエは心の嫁な?」
『よし卵産む!』
「ねぇ誤解されるから!」
「え、嫁がなんだって? 卵?」
 突然降ってわいてきた混沌発言に力いっぱい突っ込みを入れていると、その言動を聞きつけたオタク達の目が光った。まるで格好の得物を見つけたかのような爛々と輝くそれに苦笑いを浮かべつつ、どうにか距離を置こうとするトーゴ。
『でもトーゴは年上ケモミミの方が好きね』
 鮮やかにそれを裏切る相棒だったはずの心の嫁(鳥類)。
「ほう、ケモミミ姉属性とは分かってる!」
「いや年上好きだが獣耳娘を好きなワケじゃ……」
「おねぇちゃん攻めはいいぞ!」
「性癖みたいにゆーな!?」
 姉萌、ケモミミ、ケモッ娘気付けば幾多のオタクに囲まれたトーゴにはすでに逃げ道などなかった。
『ねぇ……』
 そんな中でもしっかりとトーゴの肩という特等席をキープし続けるユキエがトーゴの赤い髪をくいくいと引っ張り、やけに愛らしい声で囀る。今日の彼女は攻めだった。理由は分からないが、とても攻めていた。ぶっちゃけ、ユキエもこの魔境の熱に多少充てられていたとかそんな真実はあるのだが、今この場でトーゴが由もなかったりする。
『年下鳥娘じゃ……ダメ?』
 トーゴの突っ込みより先にざわりと周囲がどよめく。
「この鸚鵡……あざとい……!」
「王道年下幼馴染路線を押さえつつ敢えて犬猫に走らず純情片思い鳥っ娘……えなにそれエッモ」
「次の薄い本はこれでイける……!」
「これは是非、ネタに飢えている『姫』にお見せしなければ……!」
「ちょ、待って姫ってだれッ――!?」
 こうして妹属性鸚鵡の殺し文句に堕とされたオタク複数の手により、トーゴはサークルの中枢へとユキエともども引っ張られ、運ばれていくのであった。
 ――どうか目的地へ着くまでに彼の身と心が清いままである様、健闘を祈って頂きたい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルミナ・イェルソン
うわっ怖っ(熱狂できる物があるのは喜ばしい事ですね)
おや思わず本音と建前が逆になってしまいました

この手のオタクに対する情報収集はSNSアカウントを特定すれば一発です
ということでスマホゲームの協力プレイをだしに誰か捕まえます
これでも私も女ですからちょっと微笑んだりしちゃえばちょちょいのちょい……のはず!
ま、UDC一般人のセキュリティなんて紙に等しいです、ゲームの裏でハッキング走らせてその人のSNSアカウントを特定します

一人アカウント割れればあとは芋づる
唯一の女性の存在ならば取り巻き達も発言に特徴が出る筈ですから
フォロワーやリプライの発言から例のUDCの手掛かりっぽい情報を収集、分析していきますよ


ヴィクトリア・アイニッヒ
大学。学びの場にしては、その…随分と、空気が浮ついているような。
…あぁ、これもUDCに影響による物でしょうか。一刻も早く影響を取り除く為にも、手早い調査が必要ですね。

しかし、アース系世界の娯楽に詳しくない私では、どうもこの手の人々と話を合わせるのは…
…うぅん、どうしたものでしょう。とにかく、まずはサークルにおけるアレ、ですか? その件についての聞き込みですか。

※アドリブ歓迎です
※本人はマジメに聞き込み調査をしますが、オタク文化をイマイチ理解出来ていません。トンチキ空間で好きなように翻弄してやってください。



●ラスボスは大統領です
 男性率限りなく100%。温度、湿度共に高め。
 そんな無法地帯に、ヘルミナ・イェルソン(夜を飛び越える・f02267)とヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)もまた覚悟を決め、揃って足を踏み入れる。
 途端彼女達を迎えたのは、オタク特有の早口で次々と論議(と言う名の萌え語り)を語り交わすオタク達の声だった。
「うッわ怖(熱狂出来る物があるのは喜ばしい事ですね!)」
「へ、ヘルミナさん……!?」
「おや失礼。本音と建前が逆になってしまいました」
 うっかりうっかり、と棒読み口調のまま笑うヘルミナに突っ込むこともなく、ヴィクトリアはあくまで潜入した大学の敷地内を観察する。
 大学。それはUDCアースにおける成年前後の若者が集う、互いの知を切磋琢磨するための修行場所……と、聞いていた筈だったが。
「学びの場にしては、その……随分と、空気が浮ついているような」
 これも、UDCの影響による物なのだろうか。ヴィクトリアの視界に映る男子生徒の誰もが、どこかこの世のものではない存在に心を奪われ、一心不乱に自身の感情を吐露し、息を荒くしている。
 そうだとしたら、なんて恐ろしい敵なのだろうか。
「一刻も早く影響を取り除き、彼らを正常に戻す為にも手早い調査が必要ですね」
「……まぁ、はい」
 一部の方々はこれが正常な気もしますけれど。
 両手を胸の前で握りしめ、猟兵としての使命に燃える彼女の隣でヘルミナはそっと、胸中に浮かんだ言葉を飲み込んだのだった。


 情報収集にと行動を始めたのはヘルミナだった。
 スマートフォンを互いに見せびらかし熱心に自慢大会をしている集団に、彼女もまた自身のスマホを手に近付いていく。遠目から見える画面は、UDCアースではありがちな複数人で強力なNPCを倒す、マルチプレイをメインコンテンツとしたアプリゲームだ。そしてこの手のゲームは大概においてSNSアカウントと連携を取り、発信することで特典を得ることができたりする。
 見るからにそれをやり込んでいそうなプレイヤー、ちょうど良いカモ……もとい、標的だ。
「あのー……もしかしてその画面って、『レッドブルーワーキング』で――」
「お主、社畜仲間でござるか!?」
「うわ食いつき早っ」
 しかもなんてベタな口調な。ちらりと自身のログイン画面を見せるだけで食いついてきたふくよかなオタクに一歩引きながらも、ヘルミナは精一杯の笑顔を浮かべる。
 芸術的なことに全力で傾倒し、己の人生を思うままに捧げている自覚のあるヘルミナではあるが、彼女とて年頃の女子だ。
 異様な男性率を誇る集団は、必然異性との接触も稀になる。なら、こうして話が合う体を装い、微笑んで見せれば、相手の警戒を解くことなどちょちょいのちょい……の筈。
「ええと、最近始めたんですけどボスの課長がなかなか倒せなくて手伝って貰いたくて……それに」
 さらにもう一押し、とヘルミナは少し離れた位置で待機していたヴィクトリアを手招きして呼び寄せる。一連の行動を不思議そうに見ていた彼女は、何の警戒もなく近付いてきた。
「彼女も最近興味があるっていうんで、無料十連期間に是非! お誘いしたいんですけれど、レクチャーして貰えませんか?」
 ゲームオタクを釣る餌その2。同志(沼)予備軍をちらつかせる。
 でしたよね? と同意を求めるヘルミナの視線に、ヴィクトリアは理解が出来ないながらもとりあえず頷いた。
 なんだか会社とか、上司とかの単語も聞こえているし、おそらく集団組織に置ける立ち振る舞いや礼儀作法の講座の一環なのだろうと推測した。いくらUDCの影響に浮かされていても、真面目な人々はやはりいたのだ、彼らなら敵に繋がる有益な情報を何か知っているかもしれない。
「ご教授、お願いいたします」
 男子集団の中に飛び込む女子二人。尚且つ一人はさっき女神とか言われちゃったお嬢様系。
 これにはオタクたちも堪らない。飛んで火にいるなんとやら、空から降ってくる美少女だ。
「よろこんでー!!」
 こうして集団はあれよあれよとヴィクトリアのスマートフォンにアプリを落し、レクチャーと共にフレンド登録、ボス周回へと向かっていった。
 
 
 小一時間後。
 ゲーム集団と分かれ、目まぐるしいゲームにおける戦闘と無駄知識に目を回して休憩しているヴィクトリアの横で、ヘルミナはとうの昔に特定を済ませていた彼らのSNSをチェックしていた。彼女にとってUDC一般人のセキュリティなど紙と同義だ。ゲームの説明を聞きながらこっそりハッキングを仕掛けるなど、それこそちょちょちょいのちょいである。そして一人が分かればあとは芋蔓式、サークルに繋がるアカウントを次々と攫い、発言をチェックしていく。
「今回のUDCに繋がるのは、この手のサークルにありがちなアレですよ、アレ」
「サークルにおけるアレ、ですか?」
「そう、所謂『オタサーの姫』です」
 それは男子中心のサークルでマドンナ、マスコット的な扱いを存分に受け、庇護的対象となる女性のこと。いわゆる男子集団のなかでちやほやされている女子。幸乃が言っていた女性とは、現状の有様から考えるに彼女で有る可能性は非常に高いだろう。
「そしてその手の存在ならば、取り巻き達の発言にも特徴が出る筈……っと」
 ありました。そう言ってヘルミナが手を止めたのは、多くのサークルに連なる人物からコメント、イイね、リツイートを受けている人物。人物の写真こそ挙げられていないが、時折写真に見える小物や指先などは間違いなく女性のものだ。
「彼女の最近の発言、写真から彼女の行動パターンや行き先を当たってみましょう」
 つい数時間前にSNSに上げられた白ワンピースの裾が映る写真を見て、ヘルミナとヴィクトリアは互いに顔を見合わせ頷いたのだった

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

向坂・要
いやまぁ、人の趣味嗜好はそれぞれ、ってもんで

カオスと化した学園内をどこか物珍しげに、楽しげに眺めつつ

主観や欲望という名の汚れが多そうな噂だなんだは学内に放つUCに任せ【コミュ力】【礼儀作法】を活かして学内図書館あたりをお借りして経歴や論文あたりの調査としましょうかね
ある程度目星やらなんやらつけられりゃいいんですがまぁ、ダメならダメで【第六感】の閃きに期待しつつ地道に調べさせてもらいましょうかね

まぁ、問題としちゃ量より、どれが「異常じゃねぇか」を見定める事な気もしますが
なんて己の感性がズレている事を自認して苦笑しつつ

いやぁ、しかしこれはこれでまた面白い

アドリブ
絡み歓迎



●オタクを隠すならコミケの中
 王道ファンタジーを語る者。異世界トリップのチート性について論議する者。姉属性と妹属性に胸を打たれる者。和服萌えにメイド萌。百合だったり薔薇だったり。
 自由に己の心を解放するオタクたちの群れの隙間を縫うように、闇色の鴉達が飛んでいく。
 それらはカオスの根源ともいえるようなオタクたちの声、その一つ一つを拾い集め、主の元へと届けていた。
「いやまぁ、人の趣味嗜好はそれぞれって、ってもんで」
 欲望と性癖のカオスと化した大学の建物内に潜入した向坂・要(黄昏通り雨・f08973)は、己の影から生まれた鴉を通して伝わってくる光景や談義にくつくつと喉を鳴らして笑っていた。
 個人の見解や諸説もへったくりもない、ついでにオチもない純粋な欲望は、要にとって共感こそは出来ないが、否定する気は別段ない。面白ければそれでいいんじゃないかと思う。
「っても、延々と盗み聞きしている訳にもいきませんかねぇ」
 一通り聞いて満足した所で、要は彼らの会話内にめぼしい情報は無いと判断した。オタクたちからは他の猟兵達がうまく引き出してくれるだろうとあたりをつけ、要は建物内の捜索に向かうことにした。
 とりあえず、と要が向かった先は施設内に設立されている大学の図書館だった。受付係(彼は眼鏡萌えだった)を見学だと適当に言いくるめながら入館し、館内に置かれた文献にUDCの影響を受けたものがないかの確認を行う。
 行う筈、だった。
「……いや、置いているジャンルおかしくないですかぃ?」
 漫画、ライトノベル、コスプレ、ガンプラノウハウ本。ドール写真集、ちょっと公にできない薄い本諸々。
 本来であれば申請で貴重な資料文献が置いてあるはずの本棚には、オタク御用達のありとあらゆる書籍がずらりと並んでいた。特に薄い本などそれだけでシマが形成されてしまいそうな量である。
「いや、人の趣味性癖はそれぞれですけれどねぇ……」
 さすが過激派UDC。魔境とはいえここまでしてしまうとは。苦笑を浮かべながら要は適当にオタク本を手に取り、中身を目でさらっていく。
 王道ファンタジーから異世界トリップ、転生モノ。少し過激な内容を挟むものから、健全な恋愛漫画。かと思うと女性同士の恋愛ものを書いた小説。の隣に男性同士のもの。
 この魔境、男性率の割りにジャンルがかなり手広かった。
「或いは大元のUDCの性癖ってやつですかぃ?」
 もし本当にここまで手広く抑えているのだとしたら、『彼女』はかなりの雑食だろう、いや、悪食と言った方がいいかもしれない。
 まぁ、人の趣味にとやかく言うつもりは無いのだが。
「おや」
 と、要は異様なラインナップの本棚の中でもさらに異色なエリアがあることに気付き、足を止める。
 それはファッション、文化のエリア……なのだろう。
 量こそ多くはないが、並んでいる本は『淑女のたしなみ』『大和撫子完全術本』といったノウハウ本から『春夏秋冬これできまり、純情系清楚コーデ着回し術!』などというファッション集まである。試しに開くと、黒髪に清潔感のある服装の女性がどのページにも映っていた。
 一見オタク魔境とは無関係と思えるようなエリア。異常しかない空間にある、『異様ではない』ジャンル。
 ――或いはこれも、これから戦うべき敵に繋がる情報なのかもしれない。
「気にしておくにこしたことはねぇでしょう」
 と、その時、要の分身たる鴉から、仲間の映像が伝えられてきた。どうやらUCDの居場所に関する情報を掴んだらしい。ならば、自分も『彼女』につながるこの情報を仲間に伝えるべきだろう。 持っていた雑誌をもとの本棚に戻し、要は彼らと合流を図るべく図書館を後にするのであった。
 凄惨たる魔境の光景を目の当たりにしても引くどころか、これはこれでまた面白い、としか思えない自身の感性に苦笑を浮かべながら。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユーリ・トワイライト

幸乃はイベントに備えて次の行動を始めたし
ボクもチケット落選から気持ちを切り替えて情報を集めるよ!

って、それええええ!! ええええ! 見せて!!
すごい……これは激戦ランキング上位報酬の……
こんな感じで動くんだね。うっ、可愛い。

やっぱりこの作品は神。GOD。低身長でも全て同じじゃなくて、幼い子のぷにっとした感じと、細身の子どもの骨と直線的な感じのシルエットと、大人のメリハリのついたシルエットをしっかり描き分けてくれたときにボクは確信した。(早口
最初から神画力だったのに公式どんどん絵がうまくなる……

他のイベント報酬もガチャ産も持ってるって?
見せてください!(真剣

情報収集? 全て見終わるまで待って☆



●復刻が来るとは限らない
 神に祝福された同朋は守り抜いた。
 意気揚々と逃げていく彼女の背中を最後まで見送りながら、ユーリ・トワイライト(キラキラな毎日・f10658)はそっと息を吐いて胸を押さえる。
 彼女の豪運は、ユーリにとって正直喉から手が出るほど羨ましい。けれど、推しを清く正しく推せるファンとして、彼女を妬むことはあってはならないのだ。
 勝者には祝福を。敗者には激励を。未練を断ち切ってこそ、(チケット抽選における)徳は積み重ねられる。諦めるのは最後の手段だけれど。
「幸乃は次のイベントに備えて次の行動を始めたし……ボクもチケット落選から気持ちを切り替えて情報を集めるか!」
 それに、未来の問題よりも目先の問題。イベント中止なんて惨劇を起こさないために、ユーリは
 戦わなければならないのだ。
「この間のイベントは激戦区だった……」
 なにやら興味のある会話が聞こえるが、とりあえずオタクは一時休業。今の自分は、一人の猟兵である。
「でもイベントの演出が神で……あのスチルだけで生き永らえる」
 興味を引く話ばかりにくいついていてはだめだ。此処は鋼の意思で己を制して、感染源に繋がる有益な情報を得なければならない。
「わかる……ストーリーからして……うん、もうヤバみが深い」
 目先の欲に捕らわれず、有益な、情報、を――……。
「おかげでうっかりガチャ産も凸しちゃったし死ぬ気で回して上位報酬も無事凸」
「ってえええ!? 見せてぇぇえ!!」
 猟兵としての情報収集一時休戦。オタク活動復帰。
 ユーリは突風の如き勢いで、某アイドルゲームのアプリゲーム画面を開いていた勇者(ユーリ目線)の腕にしがみついた。文字通り突然湧いてきた小柄な姿に、全力で悲鳴をあげる男であったが、その食い入るような視線に何かを察し、大人しく画面を差し出した。
 ユーリと彼の間で一瞬、視線が交わる。もはや言葉は不要、それだけで意思の疎通は充分だった。
「すごい……これが激戦ランキングの……」
 ライブラリー機能で再生される、限定アイドルのモーション。それはストーリーの断片が切り抜かれた数秒の動画でしかないが、そこに込められた愛は無限大だ。
「こんな感じで動くんだね……うっ、可愛い」
 自然と口から称賛が零れた。こみ上げて来る感情に胸が苦しくなり、鳥肌が立つ。これが、神作画と謳われた公式の本気。
「毎回言ってる気がするけど今回のイベは本当やばかったよな」
「わかる、わかるよ……!最初から神画力だと思ってたんだけど公式ってばどんどん絵がうまくなるんだもん! このキャラの魅力を最大限分かってるっていうか!」
「ガチャ産のモーション見る?」
「見る!」
 先程とは違うアイドル、同じ小柄ではあってもまた年齢も属性も異なるキャラクターの演出をみて、ユーリは再び溜息をつく。なんだこの尊い生物は。
「やっぱりこの作品は神、GOD。低身長でも全て同じじゃなくて、幼い子のぷにっとした感じと、細身の子供の骨と直線的なシルエットと、大人のメリハリのついたシルエットを描き分けてくれた時にボクは確信したんだ」
 例えばそう、ロリ体型と小柄なだけの女性、メリハリナイスバディとマシュマロボディ。男性でいうならショタと美少年。一緒くたにされがちなジャンルの機微な差異を描き分けるからこそ、そこには無限大な可能性が生まれ予想以上の価格反応のエモが……。
 オタク特有の早口でとうとうと語るユーリに対して、対する勇者もうんうんと深く頷く。彼もまた、ユーリととても近い嗜好をもっているようだった。
 同じ性癖のものは惹かれ合う。その典型であるだろう。
 二人の間で固く握手が交わされる。
「他のイベとかガチャ……見るか?」
「見せてください!」
 できればフレンド登録とかも是非!
 自分のスマホを出しながらユーリは真剣な表情で勇者に懇願する。請われた勇者も快諾し、さらに二人は萌談義に話を進めていった。
 すでに猟兵としての情報収集という任務は頭の片隅に追いやられていた。
 しかし、ここまで打ち解けることができた勇者だ。もしかすると、サークルにおいてのアレについても聞けばなにか応えてくれそうな気がしないでもないが……。
 まぁでも、全部見終わってからでいっか。
「じゃあとりあえず最初期のイベントから……」
「あああああぁあコレまだボクが沼落ちしてなかった時のヤツうぅうッ!」
 この後、すっかり意気投合した彼から、「よかったらお前もサークル入らない? 他校とか全然OKだし」と突然のスカウトを貰い、幹部の紹介へと連れられるのはここから一時間後のお話。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『清楚の化身』

POW   :    清楚覚醒
【清楚な心】に覚醒して【清楚神】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    清楚の福音
【全身から滲み出る清楚パワーで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    お前も清楚になるんだよ!
【清楚に対する疑問】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【衣装ケース】から、高命中力の【白いワンピース】を飛ばす。

イラスト:透人

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠カスミ・アナスタシアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●オタサーの姫はご用意されたい
 例えばオタクたちに担がれて貢物のごとくやって来た者。紹介したい、と案内されるように誘われてきた者。或いは彼女の行動の形跡を追い、その場所に行きついた者。
 道中は様々ではあったが、猟兵達は一同、同じ場所へと行きついた。
 そこは、むさ苦しい男性率を誇る大学内の中、唯一というような静寂が降りた領域。ささやかながら敷地内に植えられた木々を眺めることができる、オープンテラス型のカフェテリアで、彼女は上品なブックカバーに覆われた冊子の頁を捲っていた。
 装飾のない白いワンピースと、同色の幅広の帽子。艶やかな長い髪、流行など知らぬというような黒一色。
 純真にして無垢、それが大学内の魔境を統べる者の姿だった。
「とうとう来やが……いえ、いらっしゃったのですね」
 来客の気配を感じた彼女が視線を上げずに言う。
 ちなみにちらりと見えたブックカバーの中身は、やたら顔の良いメンズが大量に描かれている漫画だった。
「貴方達がいずれここに来るということは分かっていました。……いかにも、わたくしがこのサークルの姫にして、一連の事件の元凶です」
 そう自らの存在を明かしておきながら、彼女はやはり視線を上げない。熱心に手元の冊子、もとい漫画へ視線を注ぎ、飾り気のない細い指で頁を捲るだけだった。
 なぜ、このようなことを。
 猟兵の一人が彼女に問いかける。なぜ、こんな恐ろしい事件を起こしたのか。
「何故、ですか……」
 溜息と共に彼女は立ち上がる。しかし、まだ彼女の視線は動かない。
「何故って、その……」
 言いかけて、止まる。冊子(漫画)は離さない。
「……」
 沈黙。彼女の視線は漫画へ以下略。
「――……あ、ちょっとまって今良いところだから。区切りつくまで待ってて」
 どうやらこのUDC、物事を同時に行うことができないようだった。

 
「――ふぅ、尊い話だった……」
 斯くして数分後。ようやく漫画を閉じた彼女は改めて顔を上げ、猟兵達を見渡す。
「いかにも、わたくしがこの事件の元凶にして、オタクサークルの姫です」
 それはさっき聞いた。というか姫って自分でいうのか。
「何故こんなことをしたって……簡単です。ご用意されるものがいなくなれば、わたくしの席のご用意は必然でしょう?」
 けれど、と彼女は困ったように溜息をつく。
「わたくし、見ての通り姫にして清楚系美少女でしょう? 争いごとは好きではないし、はしたないでしょう……?」
 だから一つ、自然とご用意された人がいなくなる仕掛けをさせて貰ったんです。
 何の悪びれもなく彼女――UDCは言う。己の手を汚さずに、彼女は私欲を叶えるべく、災いを撒き散らすと。
「だから貴方たちは邪魔なんです。大人しく清楚なわたくしを姫として奉るか……それともわたくしの清楚パワーの前にひれ伏すか。さぁ、選びなさい!」
 姫と呼ばれたUDCのワンピースがふわりと靡き、眩いばかりの白さと清廉さでもって猟兵達を威嚇する。
 彼女を倒せば、哀しき(精神的な)ゾンビ達の発生は終わり、悲劇を止めることができるだろう。
 これ以上、落選と絶望という悲しみの連鎖を重ねない為に、何よりイベントの中止と言う惨劇を起こさないために。猟兵達は武器を取り、戦いへと望むのであった。
スピレイル・ナトゥア(サポート)
精霊を信仰する部族の巫女姫です
好奇心旺盛な性格で、世界をオブリビオンのいない平和な状態に戻して、楽しく旅をするために戦っています
自分の生命を危険に晒してでも、被害者の方々の生命を救おうとします
技能は【第六感】と【援護射撃】と【オーラ防御】を主に使用します
精霊印の突撃銃を武器に、弾幕を張ったり、味方を援護したりする専用スタイルです(前衛はみなさんに任せました!)
情報収集や交渉のときには、自前の猫耳をふりふり揺らして【誘惑】を
接近戦の場合は精霊の護身用ナイフで【捨て身の一撃】を繰り出します
マスター様ごとの描写の違いを楽しみにしている改造巫女服娘なので、ぜひサポート参加させてくださると嬉しいです!


グァンデ・アォ(サポート)
《アドリブ、連携、苦戦描写、ユーベルコード詠唱変更、その他何でも歓迎です》

「おや? あれは何だろう……ねーねー、そこのオネーさん、これは何なの?」

通常はだいたいイラストの通りのキャラクターです。
好奇心の向くまま、あちこちウロチョロ飛び回っては、なんやかんやで状況を動かします。
念動力でその場にあるものをなんやかんやしたり、ウロチョロ飛び回ってなんやかんやしたり、危険な行為に勇気を出してなんやかんやします。

「サポートAI、『大人の』グァンデです。よろしくお願いします」

マシンヘルムに変形して誰かに装着してもらう(攻性ユニット化)場合に限り、口調と人格が大人のそれになり、装着者の行動をアシストします。



●パスロックは忘れずに
 仲間の助けなれば、と駆け付けてきたスピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)は、火蓋が斬って落とされた異様ともいえる戦いに小さく首を傾げた。
 世界からオブリビオンを失くし、平和な世の中を。そのために戦うのは変わらない。けれど、この戦いはもっと何か、別の大きなものの為に戦っているような、そんな気がする。
「ねーねー、あのおねーさんは何言ってるのー?」
 スピレイルと同じ違和感を感じ取ったのだろう。共にやってきたグァンデ・アォ(敖 広徳・f10200)も、彼女の頭の高さをふよふよと浮遊しながらのんびりとした疑問の声を上げる。グァンデも、清楚やら姫やらと名乗る敵の言っていることがイマイチぴんときていないようだった。
「なんでしょう……?」
 なにか、とても大切なものをかけた戦いの気がするのですが。
 曖昧な返事を返すと、そっかーとグァンデは分かった様な、そうでないような声を上げ飛んでいってしまう。どうやらさらに興味を惹くものを見つけたらしい。
「あれもなんだろー?」
 ふよふよと彼が飛んでいった先は、なんと臨戦態勢をとっている敵の真正面だった。
 いけない、とスピレイルは彼を助けるべく、手に持った突撃銃を構える。
 冷たい鉄の塊であるそれは、民族的な衣装に身を包んだ彼女とは一見相反しているようにみえるが、精霊の力を扱える特別製である。
 好奇心のままに飛んでいくグァンデの道を開けようと、スピレイルが銃口を敵へと向けた瞬間――清楚姫の視線がぎらんとこちらを向いた。
「ちょっと……そこの貴女っ!」
「はいっ!」
 その視線の鋭いこと鋭いこと。思わずぴんと猫の尻尾と背筋を伸ばして返事をしてしまう。
「巫女服に猫耳に、さらにアンバランスに見せかけてその実ベストマッチの重火器……! セーラー服も真っ青な組み合わせ……属性盛りすぎじゃありませんこと⁉」
「え、ええと……」
 一体何事かと思えば、本当に何事かさっぱりわからなかった。
「巫女、そう。それは清楚系のテンプレート……改造がされていても、にじみでるそれは変えようもない、一種のメタファーたるもの……」
「あ、これは自作で。可愛いですよね?」
「ここに着てコスプレもできちゃいますアピール、ですって……おそろしい子っ!」
「そ、そんなことないですよ?」
「くっ、その清純的な反応。やはり侮れないわっ……」
 どうやらライバル認定をされたらしい。スピレイルの一挙一動でなんだか一人で勝手に盛り上がり、百面相を繰り広げている清楚姫だった。
「けれどけれど、白ワンピースこそが清楚の王道。そんなあざとカワイイ清楚なんて、断じて赦しませんわっ」
 王道こそ正義だと言わんばかりに、清楚姫は己の清楚パワーの象徴たる白ワンピースを召喚し、スプレイルへ向けて飛ばす。
「貴女の清楚とはいかなりや……発射!」
「えっと……させません!」
 迎え撃つようにスプレイルの突撃銃の引き金を引き、迫ってくるワンピースを集中砲火する。瞬く間に穴だらけになる白い布、もといワンピース。
「雷の精霊さん、出番です!」
 留めとばかりに、稲妻の矢が降り注ぎ、姫曰く王道の清楚の象徴は独創的なアートの布となった。
「無理強いは良くないと思うんです!」
「ああ……っ⁉」
 そして、悲鳴を上げる清楚姫にさらなる追撃が訪れる。二人が清楚バトル(仮)を繰り広げている間に、好奇心のままに我が道を進んでいたグァンデが、彼女の座っているテーブルにたどり着いたのだ。
「これ漫画? どんな内容だろー?」
 テーブルに着陸した彼は、翼となっている手で器用に清楚柄(姫曰く)のカバーを外していく。
「ア゛ッ」
 控えめを装っている清楚姫の喉から、鈍く、野太い奇声が漏れた。中から現れた表紙とタイトルは――もはや皆まで語るまい。
「なんか男の子が一杯でてるよー?」
「いやっ、あの、だから」
 そんな敵の様子に気にも留めず、グァンデはぱらぱらと漫画の内容を攫っていく。時折彼がセリフを音読するたびに、清楚姫が全自動バイブレーションを搭載したような挙動をしているが、もはや彼を止められるものはいない。
 そしてさらには、その隣にひっそりと置いてあった学生ノートにも手が伸びていったり。
「まってまってそっちは――」
「手書きだけど、こっちは小説なのかなー? えーと……『耐え切れず、白く細い手首を掴んで引き寄せる。そして衝動のままに――』」
「あっ、ちょっ、ア゛――!」
 ――蛙がひしゃげたような断末魔が響いた。
  無垢な一般人と子供の好奇心程恐ろしいものはない。特に、一部コアな性癖をひっそりと持つ者達にとっては。
 

 その後、超清楚神となった姫がグァンデを吹き飛ばす勢いでノートと漫画を奪還したことにより年齢制限地雷諸々の事項は避けられたが、代償として彼女は寿命を削り、その心に大きな傷を負ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

虚偽・うつろぎ
アドリブ連携等ご自由にどぞー

清楚かー
本当に清楚なら清楚ビームや清楚パンチ清楚キックを使ってくるはず
しかし真の清楚は自爆で清楚さを証明する僕なのである

登場即自爆
いや開幕即自爆かな
とにかく開始早々速攻で自爆する
自爆までのスピードこそが重要
台詞も活躍も犠牲にし速攻で自爆することに全力を注ぐ

技能:捨て身の一撃を用いてのオウサツモードによる広範囲自爆
対象は範囲内の敵
強化は攻撃力重視

射程範囲内に敵が入っていれば速攻で自爆するよ
近づきすらせず自爆
敵からすれば突然爆発に巻き込まれる感じだね
射程範囲内にいなくても自爆
爆風でその清楚スカート巻き上げてやるさー

自爆後はボロボロになって爆発四散の戦闘不能、そして退場



●※乱丁落丁ではありません
 炸裂音。
 周囲から立ち昇る煙と、抉れた地面がその威力を言葉よりも如実に物語っていた。
「ま、まさか、捨て身の自爆だなんて……」
 信じられない、と言いながら、オタサーの姫が膝をつく。彼の尊い犠牲は、清楚系オタサーの姫に深手を負わせることに成功したのだ。
 完。


 時間はほんのちょっとだけ巻き戻る。
 彼――虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)にとって、戦闘の開始と終了は同意義である。なぜなら彼が狙うべき攻撃の一手は自爆。とりあえず自爆する。何がなんでも速攻で自爆する。
 自己主張など流動体である身体が描く文字だけで充分だというように、彼の脳内はいかに派手に、高威力に自爆し敵を巻き込むかという事だけに集中していた。彼の心はもはや抜き身のナイフどころか全裸のニロトグリセリンである。実際服とか彼にとって些細なアクセサリー状態だし。
 ――ので、彼にとって残るのは射程の問題だ。だからとりあえず、煽ってみた。
「清楚かー。 本当に清楚なら清楚ビームや清楚パンチ清楚キックを使ってくるはずだよねー?」
「も、勿論ですわ……!」
 シュッシュ、とうつろぎにシャドウボクシングを披露する姫。清楚神となった彼女の拳は異様にキレの良い動きだった。が、見せつけるだけでなかなか近づいてこない。
 自爆しても巻き込めなければ意味がない。いや、べつに意味が無くても自爆はするつもりだったのだが。
 あ、ならもういいのか。
「しかし真の清楚は自爆で清楚さを証明する僕なのである!」
「はっ――?」
 そういう訳で、うつろぎは自爆することにした。何故って爆発はナマモノ。スピードが何より肝心なのだから。
 という訳で、炸裂音。一爆鏖殺。
 眩しいほどに白い清楚の象徴たるワンピースが、爆風に煽られて優雅に揺らめいた。

 ――そして今に至る。
 何よりも火力に特化させたうつろぎの尊き自爆は、致命傷たる間合いから外れた清楚姫にもそれなりの被害を与えていた。具体的には、衝撃に転がり、真っ白だったワンピースが土埃やら煤やらに塗れしまうくらいには。
「あ、貴方! 清楚と潔さを取り違えているのではなくて!」
 うつろぎの突然の自爆に動揺しまくった清楚姫は、立ち上がり汚れたワンピースをはたきながら金切り声をあげる。二度、三度と払うだけで驚きの白さを取り戻すワンピースはUDCたる所以なのだろうか。それともこれこそが清楚パワーなのだろうか。
 それでも、ダメージがあったことには変わりない。そして何よりも、初手からの騒動、そして突然の爆発により今や彼女から余裕の文字は華麗にぶっ飛んでいた。
 その表情が、清楚姫の現在の心境を物語っている。
 ――こいつらヤバい、何するかホントわかんない。
 ……或る意味、彼女の精神に多大なる恐怖トラウマを植え付けることには成功したようだ。
「清楚を格闘技とビームとに取り違えているお姫様には言われたくないなー」
 その様子に満足しながら、お約束通り爆裂四散して飛び散った文字となったうつろぎは、仲間に引きずられて撤退していったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルミナ・イェルソン
この手の相手には煽りに弱い、どこかの文献にも書いてありました
これはマウントを取っていくに限りますね

ということで自分の手帳を確認して「現地」の予定をつらつら読み上げます
世界はあちこちですが三日に一度は現地ですとも!!
チケットがご用意されなければ無数に存在する他の現場に行けばいいんですよ!!
当たるまで申し込めば実質ご用意確定!!覚悟と愛が浅いですねえ!?

動揺した隙にUCで電撃を食らわせます
ふふふふふ、その清楚の象徴を真っ黒に焦がしてやりましょう!
というか清楚パワーってなんですか……?えっ考えちゃいけないやつですかね……
ま、とことん精神攻撃からの遠隔攻撃に徹しますよ



●諦めたらそこで試合は終了です
 自称清楚の権化たる目の前の姫は、自他ともに認めるオタサーの姫である。
 オタサーの姫といったら、男性に囲まれてちやほやとされるのが日常。常に相手の上位にいるのが当たり前。そして、配下の性質からも見られるように、彼女はかなりチョロ……猪突猛進型だ。
 そんな突撃型の相手に真向から迎え撃つ必要など全くない。そもそもそれは自信が得意とする戦闘スタイルでもないし。
 そしてヘルミナ・イェルソン(夜を飛び越える・f02267)は、そんな輩にもっとも有効的な攻撃方法を一つ知っていた。
 ならば。
 ヘルミナはにやりと、悪役顔で笑う。
 それならば自分は後方から、とことん精神攻撃からの遠隔攻撃に徹させてもらおう。
「と、いうわけでここで取り出だしたるはマイスケジュール手帳」
 思い立てば即行動。ヘルミナは懐から自身の手帳を出すと、わざと清楚姫に見せびらかすようにしながらゆっくりと今月の予定が書かれた頁を開く。
「……一体なんのつもり?」
「まぁ、少し聞いてくださいよ」
 事前にびっしりと埋められていた予定に目を通し、満足げに目を細めて――それを一つ一つ丁寧に読み上げた。
「えー、今週金曜日は若手声優陣による文学朗読劇、第1部。翌日昼には都心某イベントホールにてアニメアイドルユニットの新曲リリイベ」
「う゛ッ……!」
「加えてさらに翌日日曜日は先日行われた学園アイドルゲームのラジオ公開収録」
「あ、ま、それっ」
「さらにさらに、飛んで水曜日にはリリイベに参加した声優主催の誕生日イベント……ふふ、リアルが充実していますねぇ」
 ちらりと清楚姫の様子を伺えば、彼女はわなわなと震え、言葉にならない呻き声を漏らしている。
 ヘルミナの知識にあった、彼女に対しての有効的な攻撃方法。――それ即ち、マウント取り。
 この手の相手は、煽りというものにとことん弱いのだ。どこかの古の文献にも書いてあるのだから、間違いない。
 そこを突き、徹底的に煽って相手のメンタルを引っ掻き回し、動揺を誘うのが狙いだった。
「地方世界、場所こそあちこちえすが、三日に一度は現地ですとも!! チケットがご用意されなければ無数に存在するほかの現地に行けばいいんですよ!」
 別に、ちょっと落ちたくらいでうじうじと言っている彼女に対して思うことがあった訳では無い。
「う、それは、そうかもだけど費用とか宿泊とかなんやかんや……!」
「なんやかんやがなんです? 当たるまで申し込めば実質ご用意確定、覚悟と愛が浅いですねぇ⁉」
「う、うぅうう……!」
 ――多分、きっと、おそらく。
 徹底的にマウントを取られ、ぐぅの音も出ずに悶える清楚姫。それを好機とばかりに、ヘルミナは体内で発電した電撃を鋼色の髪から彼女へ向けて放出させた。狙うは清楚姫の清楚たる象徴の白ワンピ―ス。
 必死で抵抗という名の言い訳を考えていた清楚姫は、ヘルミナの行動に気付くのが遅れる。
「くっ……溢れなさい、私の清楚パワー!」
 咄嗟に全身から煌めくオーラのような清楚の力を放出させ、攻撃の回避を試みるが、初動の遅れの差は大きかった。指向性を持った電撃は彼女の白いワンピースを掠め、大きく火花を散らす。
「ふふふふふ、その清楚の象徴を真っ黒に焦がしてやりましょう!」
「服はやめてぇ―! せめて顔にしてぇええ!」
「そこで顔はいいんですね!」
 不敵に笑い、電撃を次々と飛ばしていくヘルミナに、悲鳴を上げる清楚姫。ここまで激しく動揺したら、清楚パワーのもつ回避力も意味を失くしているようで、電撃は面白いくらいにコンボを叩き出していく。
 というか清楚パワーってぶっちゃけなんなんだ。という疑問はあったりするのだが、この際深く考えてはいけないような気がしたので黙っていた。
 何事も、触れてはいけない真実というもの必ず存在するものなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトリア・アイニッヒ
…何と言いますか、うーん…反応に困る手合、ではあるのですが。
その精神性、本質の有り様は今を生きる人々への害意の塊、オブリビオンに相違はありませんね。

UC『神威の光剣』を使用。
主への祈りを捧げて剣を喚び出し相手を牽制しつつ、相手のUCに対する防御手段ともします。

清楚、と言いますが。他者を害して欲しい物を手に入れようとと企むその有り様の、どこが清楚なのですか。
…外見だけを取り繕おうと、貴女の本質はただの邪悪でしかありません。

今と未来を生きる人々の為に…主よ、この邪悪を祓う力を!
(飛び来るワンピースを切り払いつつ)

※アドリブ歓迎です
※とんちき空間に翻弄されつつ、清楚(笑)に聖女ムーブで対抗します



●清楚たるは神聖なりや?
「うっうっうっ、なんなのよぉ……」
 早速だが、清楚姫の心は割と折れていた。いくらチョロくても、こう立て続けにメンタルに響く攻撃を受ければちょっとくらい心は折れる物である。
 普段ちやほやされている分、オタサーの姫はメンタルが豆腐だった。
「わたくしだってご用意されたいのよ、羨ましいって思うことの何が悪いというのです!」
「うーん……何と言いますか……」
 おいおいと嘆く清楚姫の様子にヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)は思わず苦笑を漏らす。此処までくるといっそ気の毒というか……何と言うか、とても反応に困る手合いだった。
「貴女だって同じ清楚系ならわかるでしょう……! 羨ましいけれどキャラ的に口に出せない苦しみ、それでも積み重なる悲しみの二律背反!」
 落ち着いた物腰と、思慮深い翠の瞳。武器と鎧に身を包みながらもあふれ出る気品に、自身の属性に近いものを感じたのだろう。清楚姫は必死に彼女へ向けて同情を訴えかける。
「ひっそりと悲しむことは許されても、清楚たるもの潔く……深追いが出来ない、でも欲しい。なら自然とこちらに転がってくればいいと思いませんこと?」
「いいえ」
 しかし、そんな敵の訴えを、ヴィクトリアははっきりと否定した。
 いくら気の毒でも、同情めいた感情が湧いても、その精神性だけは認めることはヴィクトリアにはできない。彼女の訴えの本質、それは今を生きる人々へのが害意の塊、オブリビオンに相違無い。
 そしてオブリビオンならば――ヴィクトリアにとって、敵だ。
「人々の喜びには祝福を。悲しみには救いの手を。羨望を捨てきれずとも、暴虐などもってのほか」
 陽光よ。ヴィクトリアは静かに祈りの言葉捧げる。病める人、弱き人を暴虐から守るための力を、自身が信ずる太陽神へと希う。
「この身は今と未来を生きる人々の為に。自身の欲の為に動くなど、ありえません」
「ま、まぶしい……⁉」
 虚空から現れた太陽の光を持つ剣の眩しさに、清楚姫は思わず目を覆った。
 ――この時、清楚姫は悟ったのだ。
 同じ清楚『系』なんてとんでもない。目の前の彼女は、真性の清楚にして清純たる乙女。
「これが……噂に聞く聖女様……⁉」
 清楚『系』と、聖女。その差は歴然。似非清楚ムーブが本物に敵うはずがない。
「か、かくなる上は……!」
 清楚姫は覚悟を決めたように、自身が着ているものと同じ白いワンピースを召喚する。
 高位の『聖女』たる彼女を、ワンピースを着せることによりこちらの清楚『系』まで貶める……!
「貴女に清楚系を貫くの苦しみの何が解るかー!」
 太陽の光を反射するような真っ白のワンピースが、ヴィクトリア目掛けて空を駆けた。
「……主よ、この邪悪を祓う力を!」
 しかし、無数の剣がその侵攻を許すはずがない。聖域たる彼女の間合いに触れさせることは赦さないというように、瞬く間に絡め捕られてしまう。
「清楚を貫く……ですか」
 渾身の一撃を防がれた清楚姫に、厳かにヴィクトリアは告げる。
「そもそも清楚、と言いますが。他者を害して欲しいモノを手に入れようと企むその有様の、どこが清楚なのですか」
「そ、それはだって……」
「外見だけを取り繕おうと、貴女の本質はただの邪悪でしかありません」
 今一度、清楚というものを改めて見つめ直しなさい。
 その言葉と共に、太陽神の威光たる剣が清楚姫が呼び出した白いワンピースをバラバラに斬り裂き、ついでに清楚姫の手足を貫いた。
「きゃんっ!」
 やはり、聖女に似非の清楚が適う道理はなかったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

向坂・要
別に空いた席がお前さんの席とも限りませんしむしろ当選者襲撃とか不祥事続くとイベント開催自体や作品の存亡すら怪しくなるんじゃねぇですかぃ?
そんなことしてると徳が積めませんぜ

ライビュとかありやすでしように

なんでツッコミつつお仕事お仕事
呼び出すは雷を内包したふっくらしたシマエナガの群れによるあざとく可愛い【属性攻撃】【範囲攻撃】【マヒ攻撃】

そういやぁあの薄い本はお前さんので?
結構いろんなジャンルのがありやしたねぇ
図書館の一区画を占拠していた例のブツ()にお手元の書籍と似た姿が描かれてましたっけなぁなんて思い出し

いや、この人は何萌えなのかなーと素朴な疑問もとい好奇心


いやいやお仕事はちゃんとやりますぜ?



●クーデレギャップ萌えでした
「いやぁ、面白れぇ面白れぇ」
 飛んだり跳ねたり爆発したり真っ向から聖女力で打ち負かされたりと、七転八倒をしている清楚姫を見て向坂・要(黄昏通り雨・f08973)はからからと笑った。
 何か一つのことに熱中し、一喜一憂する。そんな人の心の機微ですら要にとっては興味の対象であるのに、この清楚姫の挙動ときたらもう。もはや一種の珍獣と言っても過言でないかもしれない。
 直接それを言えばさらに面白いものが見られそうな気もするが、それはそれ。猟兵としての仕事も忘れることもできないので。
「別に空いた席がお前さんの席とも限りませんし、寧ろ当選者襲撃とか不祥事が続くとイベント開催自体や作品の存亡すら怪しくなるんじゃねぇですかぃ?」
 とりあえず、と要は清楚姫の注意を惹く意味も兼ねて、至極真っ当なツッコミを入れてみる。
 イベントの度に何か問題があれば、それこそ呪いの作品なんて呼ばれるのも時間の問題。中止どころか開催の企画すら上がらなくなってしまうだろうと。
「大丈夫よ、作品分け隔てなく襲いますもの! それがデフォになるならイベントは行われる、木を隠すには森ですわ!」
「名案って風に言われても解決になってねぇですから」
 無駄に自信満々に言う清楚姫に要は苦笑する。ライビュという、遠方ながらもリアルタイムでイベントを楽しむ方法もあるのだが、と思ったが、きっとこの様子ではどうしても現地に行きたかったのだろう。間違いなく聞く耳は存在しない。
「そうやって恨んでばっかいるから……そんなことしてると徳が積めませんぜ」
「積まなくてもわたくしのご用意を確定させるので構いません!」
 ここまできたら清楚姫、もはや開き直りの域である。誰が聞いても無茶苦茶な理論を展開させ、それを押し通すべく、白いワンピースを手に要に襲い掛かる。
「これを着ればあなたもすぐに何も感じなくなって納得できるわ……清楚に墜ちて屈服しなさい!」
「ちょいちょい清楚とは程遠い語彙は入ってる気がするんですがねぇ」
 半分苦笑、半分本気でこみ上げて来る笑いをかみ殺しながら、要は飛ばされたワンピースをひらりと躱す。同時に手の中に呼び出したのは、その羽に雷を内包したシマエナガの群れ。
 それらはちぃ、とあざと可愛い鳴き声一つで白ワンピースを雷で撃ち落とすと、そのまま自身とよく似た色を纏う敵目掛けて飛翔していく。
 彼女がそれに対抗しようとした瞬間――。
「そういやぁ、あの薄い本はお前さんので?」
「へっ?」
「図書館の一区画を占拠していた例のブツに、お手元の書籍とよく似た姿が描かれてましたっけねぇ」
 要の容赦のない言葉の爆弾が清楚姫の動揺を誘った。
「いやあのあれは流れで」
「結構色んなジャンルのがありやしたし、そちらも嗜んでいるんですかぃ。さっきのノートからするとご自分でも書いてたり」
 ついでに(敢えて意図的に)忘れかけていた傷口もさっくりと掘り返しにいく。
「ええええといやあの」
「そういやぁ、各ジャンルで同じサークル名の作品があったような……さっき見えたノートに同じ絵柄のイラストが描いてあったような……確か名前は」
「ぐわわわわおやめになってぎゃぁあーー⁉」
 えい、とシマエナガが雷を落す。野太い悲鳴が上がり、彼女の白いつば広帽子が燃えて焦げた。
「ひ、卑怯ですわ……!」
「いやいや、お仕事はちゃんとやらなきゃぁ、でしょう? あ、ついでに何萌えなのか聞いてもいいですかぃ?」
「さらに追い打ちかけるとか外道ーッ!」
 失礼な、これは素朴な疑問ですぜ、と嘯く要に、清楚姫はがくりと項垂れ膝をついてのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
ケモ…萌え…
いくら虎穴に入らずば…が身上の忍びでもだな
なんつーか…大変
持たねーよ心の貞操が危ういっつーの

相棒の鸚鵡『ユキエとつがいになろ?
…それミサキ(初恋の故人)の声で言うなよ色々泣きそ
『泣く?
鬼にも超えちゃいけない一線はある
『ユキエはトーゴと同じ二本足
攻めますなー
…敵前だ話は後な

あんたが親玉?何の本よ…男の?…尊い?(遠い目
姫が棚ボタ強制するってえげつねーお人だ
白い恰好なら清楚てワケじゃねーだろ?
っと(投げられた服をキャッチ
【変装】は忍の十八番オレも化けてやろーか?(ヤケ(白ドレスの少女風に
同時にUC使用
舞い裂く菜の花に紛れ接近→蹴り飛ばし間近でUC解除→クナイで斬り付け【暗殺】

アドリブ可



●それではダイス判定をどうぞ
「ケモ、萌……耳尻尾……」
 譫言のように繰り返し呟きながら、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は少し遅れて清楚姫の元へとやってきた。
 その足取りは既におぼつかなく、ちょっと視線も危うげだ。
 実をいえばここへたどり着くまでの間。こってり漬けられていたのだ、ケモ属性沼の中に。
 掴まったオタクたちの一群にあれやこれや、どの属性はどこがこうこう良くてとか、そんな取り留めのない話を延々と、オタク特有の早口で。
「いくら虎穴に入らずば、が身上の忍びでもだな……」
 相手が虎と思って覗いてみたら深淵の化け物に遭ってしまった。今のトーゴの心情を表現するなら多分そんな感じだろう。
「持たねーよ、心の貞操が危ういっつーの……」
 もう大変どころじゃなかった。それでも、大切なものを守り切ったことは誉めて欲しい。
「で、あんたが親玉?」
 深く息を吐きながら、トーゴは気を取り直してクナイを構える。
 精神的には既に疲労困憊であるが、それはそれ。この混沌を収束させるためには、大本を絶たねば始まらない。そして一刻も早く、トーゴはそれを遂げなければならない。己の心の操の為に。
「何の本よそれ……男の? 尊い?」
「尊き黙示録よ!」
 トーゴの問いに、蹲っていた清楚姫は勢いよく立ち上がり食い気味に答える。いつだって自分の好きなものには一直線。己のエモを語る時は妙に元気いっぱい。まさしく彼女はオタクの鏡だった。
「女性向けの、イケメンが出てくる尊いやつ!」
 ――ちょっと内容も語彙もあれなのはこの際目を瞑るとして。
「……とりあえずそっちは置いといて。姫が棚ボタ強制するってえげつねーお人だ。清楚、なんてとても言えねーだろ」
 そもそも、白い恰好なら絶対に清楚とは限らない。要は内側から滲み出る雰囲気こそが大切なのだ。
「み、皆してわたくしのこと似非、似非って……!」
 トーゴの至極全うな意見に、清楚姫はむぅを頬を膨らます。何度斬り裂かれ、焦がされたか分からない白いワンピース(スペア)を握りしめ、きっとトーゴを睨みつけた。そして、大きく振りかぶると、それをトーゴに向けて勢いよく投げつける。
「じゃあ貴方が清楚になって証明してくださいませ!」
「っと。そういうんならご期待に添えて――」
 清楚パワーに溢れた服をトーゴは見事にキャッチして、編布の外套を翻す。
 変装は忍びの十八番。トーゴだってそのあたりはお手のもので、ついでにこうなったらもう自棄である。外套の影で素早く白ワンピに袖を通し、ついでに手に持っていたクナイを舞い裂く菜の花に変えて身に纏った。
「ほら、清楚になってやったぜ!」
 一面の菜の花の中、真白に輝くトーゴのワンピース。止めというように、鸚鵡のユキエが彼の腕に停まる。帽子はないけれど、真っ白な鳥というアクセントは清楚としてポイントは高いだろう。そもそもいくら幼さの残る顔立ちで小柄な部類とはいえ、女装している段階で清楚に当てはまっているのかの疑問は残るけれど。
「こ、これは……」
 清楚姫の口がわなわなと震える。そのあまりの光景に、逆上したのか、と一瞬トーゴは身構えるが――。
「清楚ではなく萌ーっ!」
 ただのエモだった。どうやら女装萌もあったらしい。
「有りなのこれ……」
 中性的が、とかアンバランスな黄金比が、とか清楚姫が己の内なる衝動にトリップしている間に、
トーゴが元との姿へ戻したクナイで斬りつけても、彼女の悦顔は崩れない。ここまでくるとある意味恐ろしい敵なのかもしれない。
 なぁ、と腕に停まりなおしたユキエにトーゴが問えば。
『ユキエはどんなトーゴも好き』
 オタクと言う感染の中にいる彼女もまた、自分に正直なままだった。ばっちり彼の初恋の声を真似てくるあたり、まだまだ絶好調だ。真の敵は陣中にいるのかもしれない。
『ユキエとつがいになろ?』
「それミサキの声で言うなよ……色々泣きそう」
 それでなくても既にトーゴのメンタルは限界だ。正気度がそろそろ抉れそうである。
「そもそも鳥類にも鬼にも、超えてはいけない一線というものが」
『ユキエはトーゴと同じ二本足。問題ないよ?』
「……攻めますなー」
 ラスボスの居場所は案外もっと近いのかもしれない。色んな意味で。
「人外×人も嫌いじゃないわよ!」
「ほんッと雑食だなあんた!」
 無意味に割り込んできた清楚姫に追い打ちとばかりにクナイを投げつけながら、トーゴは精いっぱいの突っ込みをいれるのであった。
 てゆーか逆だろ、順番が。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリ・トワイライト


確かに見た目は清楚だよ、かわいい。
でも、君のその推しと仲間に迷惑をかける理性のない行動!

そんなので清楚とか解釈違い!
だからボクはどっちも選ばないよ!

【UC】発動!
プロの野球選手も驚きのコントロールで放たれた白いワンピースは、【迷彩・パフォーマンス】で変身風に着用して視聴者を盛り上げちゃうからね☆
ふふん、この格好も似合うでしょ♪

そして『電脳ゴーグル』で男の子がいっぱい登場させた電脳世界を展開!
どの子が好き? どんなシチュエーションが好き?
彼女の反応を見ながら彼女好みに世界を弄って、ボクから気を逸らす作戦だよ☆

夢中になっているところを男の子に攻撃させる!
ヤンデレやバイオレンスはどう? 好き?



●乙女の夢は
「確かにその見た目は清楚だよ。ボクはかわいいって思う」
 ユーリ・トワイライト(キラキラな毎日・f10658)の唯一ともいえる肯定的な言葉は、清楚姫にとって救いのように思えた。
「ああ、やっとわたくしの清楚をわかる方が……!」
「でも」
 目を輝かせた清楚姫の視線を受けつつ、ユーリは一つ声を落とす。かわいい、と言った言葉とは裏腹に、その表情は厳しいものである。
「君の、その推しと仲間に迷惑をかける理性のない行動……その結果どうなるか、考えの及ばない浅はかさ……」
 席を用意されたい。それはその茨の道を歩む者の誰しもが願わずにはいられない希望。けれど、それは、決して他者を呪う源となってはいけない。
 彼女はその、超えてはならない一線を越えてしまったのだ。
 そんな彼女を清らかであると言えるか。
「そんなので清楚とか解釈違い! だからボクはどっちも選ばないよ!」
 びしっ! と指を突き付けて宣言したユーリに、唯一の救いを失った清楚姫が青ざめ、一歩後ずさる。
「そんな……やっと理解者に逢えたと思ったのに……」
「解釈違いは大きな壁。こうなった以上、来世にでもならない和解はできない……分かっているね?」
「ええ……」
 決意を籠めたユーリの目に、清楚姫も意を決した様に頷く。
「解釈が違うなら仕方ないわ……こうなったら」
 そして、小柄なユーリのサイズにジャストフィットする白ワンピを呼び出し、ぎゅっと握りしめめ、半身になり、腕を引く。そのままあらゆる想いを込めて、ワンピースを持った腕を振り上げ――力一杯に投げつけた。
「分かってもらえるまで説得(物理)しかないわ!」
「そういうところだってば!」
 お約束の突っ込みをいれつつ、ユーリは動画撮影用のドローンを召喚し、迎撃体勢をとる。まずは飛ばされたワンピースを難なく躱す――ことはなく、敢えてその身で受け止める。ふわり、きらり、とあざと可愛さを振り撒いて、まるで魔法少女が衣装チェンジをするが如くお着替え完了☆
「ふふん、この格好も似合うでしょう♪」
 ドローンのカメラに向けて、ユーリがぶいっ、と可愛くポーズを決める。撮影と同時にLIVE放送されていたその光景は、多くの視聴者の歓声を生み、ユーリに多くの力を与えるのだ。
 視聴者の応援によりパワーアップを果たした彼は、自身の電脳ゴーグルを片手に清楚姫との距離を詰める。
「な、何するの——っ!」
 驚きの着こなしに唖然としている清楚姫に、無理やりゴーグルを被せてスイッチを押す。自分のデバイスと同期させ、清楚姫とユーリ、二人は同時にとある電脳世界へとログイン。
「さぁ、今度はキミが変身する番だ!」
 そこで、清楚姫を待っていたのは――。
「っ、きゃああああああ!!」
 右から左まで、イケメン、イケメン、ショタ、イケオジ、戻ってイケメン。
 イケてるメンズパラダイスだった。
「さ、どの子が好き? どのシチュエーションが好き?」
 黄色い断末魔を上げる清楚姫の反応を観察しながら、ユーリは巧みに電脳世界を弄り、彼女がより萌えの過剰摂取となるような場面を作り上げていく。
 一見不愛想に見える男子。けれど実は不器用なだけで、二人っきりの時にはふとした瞬間、甘えた一面や弱った一面を見せてくれる。そんな甘酸っぱい学園ラブコメストーリー――。
 即席で入れた声も容姿も、ちらりと見えた漫画や仲間からの情報でしっかり彼女好みに調整済みである。
「ヒンッ……」
 限界突破した清楚姫が謎の鳴き声が漏れた。もうこのあたりには触れないで頂きたい。既に清楚姫はユーリが作り出した世界に夢中であった。
「……じゃあ、そろそろ仕上げかな」
 二人きりのいちゃちゃイベント。甘い言葉を囁くバーチャルな彼に虜にされていると、突然彼が鞄から拳銃を出す。
 えっ、と疑問の声を上げる間も無く、撃たれる清楚姫。白いワンピースが赤く染まり、彼女は地面へと倒れ行く。最期に聞こえたのは、これでずっと俺のものだ、という彼の声で――。
「――っていうヤンデレやバイオレンスはどう?」
 ゴーグルが外され、現実へと戻ってくる清楚姫。しかし、打たれた傷はそのままで、彼女は地に伏したままだった。
 なんてことはない。バーチャルな彼の動きに合わせて、ユーリの機械兵が狙撃を放ったのだ。
「……こんなものを見せられちゃ、私の完敗ね」
 諦めたように笑う清楚姫。身心共に数々の攻撃を受け、とどめのユーリの一撃。彼女はもう限界だったのだ。
「私も、いつかのご用意に向けて徳を積むとするわ……」
 端から塵へ変わり、骸の海へと還っていく彼女。けれど、その顔はどこか清々しい様子で。
「……で、ぶっちゃけ、さっきの好きだった?」
「めっちゃアリ……!」
 ぐっと、親指を上げ、最後の最後まで彼女はオタクの鏡のように笑い、消えていったのだった。
 
 
 こうしてご用意をめぐる哀しき戦いは終結し、イベントの危機は免れた。
 どこかで今日もまた、あらゆるオタクが推しの輝きを浴びることを夢見てチケットを申し込み、グッズを買い漁る。
 どんな苦難があろうと、これがあれば生きる糧となる。だから今日もまた一つ、徳を積み、当選を願う。
 それらを願う全ての人々に、幸運があらんことを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月29日


挿絵イラスト