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ウワサの果てに待つものは

#UDCアース #感染型UDC

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 ――それは、ほんの興味本位のつもりだった。

 マニアの間でもあまり知られていない、いわゆる"穴場"な怪奇スポット。
 昔は恐ろしい言い伝えがあったそうだけど、今じゃ地元の人すらほとんど知らない。
 ただ、そこに入ってはいけない、近付いてはいけないと、禁じられているだけで。

 ひどく曖昧としていて確かな情報が無い。それが逆にあたしの興味を引いた。
 空振りに終わっても"何もなかった"とはっきりすれば、話のタネくらいにはなるし。
 だから興味はあっても期待はしていなかった――それが、まさかあんなモノが。

「――ああ。久しぶりだな。ここにニンゲンが来るのは」

 あたしは逃げた。"ソレ"を見た瞬間、凍りつきそうになる足を必死に動かして。
 正直、なんで逃げられたのか今でも分からない。"アレ"が何なのかなんてあたしには分からないけど、その気になればあたしなんて簡単に殺せたことくらいすぐに分かる。
 狂気、殺気、邪気――そういうのがまるで形を取ったような、おそろしいモノ。
 ねえ、聞いて。お願い聞いて。こんなの、とてもあたしひとりじゃ抱えていられない。

「――そうだ。行け。そして語り伝えるといい、俺の存在を」

「巻き起こる悲嘆と惨禍の渦の中で、きっと、俺の求めるものが――」


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「UDCアースのとある地方都市で、UDCの大量発生を予知しました。どうやらこれは『感染型UDC』と呼称される新種のUDCが発生源となっているようです」
 感染型UDCは人間の『噂』を糧にして増殖する特性を持ち、それを見た人間、それを噂話やSNSで広めた人間、その広まった噂を知った人間全ての精神エネルギーを餌として、大量の配下を生み出す。大至急対処しなければ、手のつけられない惨事になるだろう。

「元凶である感染型UDCを撃破しなければ配下の発生は止められません。しかし、その元凶が何処にいるかを知っているのは、実際にそれを目撃した第一発見者だけです」
 UDCはどうやら意図的に第一発見者を見逃し、自分の噂を広めるように仕向けたらしい。その理由は言うまでもなく、より多くの人々の精神エネルギーから配下を生み出すため――だが、相手にはそれとはまた別の目的もあるようだとリミティアは言う。
「敵の思惑が何であれ、まずは発見者の保護に全力を尽くしましょう。対象は遠からず、噂を知った人々の精神エネルギーから現れた、大量のUDCに襲われることになります」
 現場は市街地。第一発見者の他にも周辺には多数の民間人がいるため、早急に対処しなければ犠牲者が出る。一帯の封鎖と情報統制はUDC組織が行ってくれるため、猟兵達は現地に転移後、敵の撃破と民間人の救助に全力を注いで欲しい、とのことだった。

「噂の拡散によって出現するUDCは大量の『嘆き続けるモノ』。UDC事件の被害を受けた人々の感情が形を成したものです」
 ソレが抱える感情は悲嘆や恐怖、そして救済への渇望。自ら攻撃を行うことは無いが、存在するだけで霊障による被害を発生させるという。人々の精神エネルギーから喚び覚まされただけの不憫な存在ではあるが、躊躇わず鎮圧するのがお互いのためだろう。
「無事に最初の大量発生を退けた後は、第一発見者の方から感染型UDCの所在を聞き出して、そちらに急行してください」
 被害を食い止めても一度広がりはじめた噂の拡散は止められない。次の大量発生が起こる前に元凶である感染型UDCを撃破しなければならない。また、おそらく敵の潜伏地はUDCの影響で怪奇地帯に変貌していると考えられるため、道中でも油断は禁物である。

「もし対処が遅れれば、世界規模のUDCパンデミックによって致命的な事態にもなりかねない事案です。どうか心してかかってください」
 静かな、それでいて真剣な眼差しで猟兵達を見つめながら、説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、最初の対象発生が予知された市街地への道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はUDCアースにて発生した『感染型UDC』の増殖を阻止するのが目的となります。

 第一章では市街地に大量発生した『嘆き続けるモノ』との集団戦になります。
 周辺には感染型UDCの「第一発見者」をはじめ、多数の民間人がいるため、彼らを守りながらの戦いになります。幸い敵は積極的に攻撃を仕掛けてはこないので、巻き込まれないよう配慮すれば標的を誘導することは比較的容易でしょう。

 第一発見者は近所の私立高に通う、好奇心旺盛でオカルト好きな女子学生です。
 オカルトスポット巡りが趣味のどこにでもいる普通の女の子ですが、たまたま行った先が感染型UDCの潜伏場所となっていたようです。『嘆き続けるモノ』を無事に一掃すれば、彼女から話を聞いてその場所を特定することができます。

 第二章では、UDCの影響で怪奇地帯と化したオカルトスポットでの冒険。
 第三章では、発見した『感染型UDC』とのボス戦となります。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『嘆き続けるモノ』

POW   :    何故俺は救われなかった?
質問と共に【多数の視線】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
SPD   :    誰も私を助けてくれない
自身と自身の装備、【自身と同じ感情を抱く】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
WIZ   :    僕を傷つけないで!
【悲しみに満ちた声】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。

イラスト:透人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

オリヴィア・ローゼンタール
人の心を餌にするUDC……悪魔のようですね

聖なる力による障壁(オーラ防御・破魔)を展開し、敵と民間人の間に立ち塞がる(かばう)
ご安心を、私たちは皆さんの救助に来た者です
どうか指示に従って、避難を

聖なる力によって【存在感】を放ち【おびき寄せ】る
その者は墓場を住処とし、誰も繋ぎ止めることができなかった……
まるで数多の悪霊の軍勢、聖なる書物に語られるレギオンのようですね
悲痛な声はしかし、被害を受けた本人そのものではない
一種の残留思念……憐れではありますが、そもそも救われるべき実体がない

【属性攻撃】【破魔】【全力魔法】で【聖天烈煌破】を放つ
せめてこの聖なる光の中で、浄化の熱に抱かれて眠りなさい――!


フレミア・レイブラッド
本来犠牲者である貴方達を倒すのは気が引けるけど…悪いわね。今を生きる者達の為、倒させて貰うわ。
その代わり約束するわ。貴方達を苦しめ、利用した者に必ず報いを受けさせる!だから、もうお休みなさい。

【ブラッディ・フォール】で「黒竜を駆る者」の「ドラゴンテイマー」の姿(フレミアがテイマーの黒衣と剣を装備し、翼が生えた姿)へ変化。
周囲の石ころや 壁等、車等々、幾らでもある無機物を【文明侵略】で黒竜へ変化させ、一般人を守るように一斉に各所にいるUDCへ向けて突撃。
更に【ギガンティックダイウルゴス】も召喚して騎乗。手強い個体に導入するわ。

※第一発見者の子やUDCに怯える子の元へ颯爽と駆けつけて魅了したり…



「なっ、なに!? 何なのよこれっ?!」
「こ、こっちにもいるぞ! ひ、ひぃっ!」

 とある都市の一角で、突如として起こった異形のモノ――UDC怪物の大量出現。
 その渦中に巻き込まれた民間人たちは、今まさに恐怖と混乱の頂点にあった。
 ひとりの女学生を中心として現れたその異形の名は『嘆き続けるモノ』。
 それが、かつて自分たちと同じ被害者であることを、彼女らは知る由もない――。

「た、助けて! お願い、誰か――」
「心配ないわ。もう大丈夫よ」
 パニック寸前の人々の前に颯爽と駆けつけたのは、事件解決を依頼された猟兵たち。
 その一人、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は怯える子らに優しい微笑を見せると、快楽をもたらす魅了の魔眼を発動する。
「落ち着いて、わたし達が貴女達を守るから」
「は、はい……」
 魅了によって恐怖を上書きされた第一発見者、並びに巻き込まれた民間人は次第に落ち着きを取り戻していく。どうやら最悪の事態が起こるのは免れたようだ。

「ご安心を、私たちは皆さんの救助に来た者です」
 さらにオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が聖なる力による障壁を展開し、オブリビオンの群れから民間人をかばうように立ち塞がる。
 光のオーラとなって彼女の身体から放たれる聖なる力は、邪気と妄念によって形作られた『嘆き続けるモノ』の注目を民間人から彼女へと引き寄せていく。
 異形の群れを前にしても一歩も退かないその背中は、人々の目にとても力強く映った。
「どうか指示に従って、避難を」
「は、はいっ」
 修道服を纏ったシスターの言葉に促され、人々は秩序を保ったまま退避していく。
 戦闘区域から離れた人々の保護は、UDC組織の人員が請け負ってくれるだろう。

『あぁぁぁぁあぁぁぁ…………』
 出現した『嘆き続けるモノ』はその場から動くことはなく、ただ悲しみに満ちた声を上げている。その行動に敵意は感じられないが、犠牲者の呪詛の塊である彼らはただ存在するだけで周囲を汚染していく。
「その者は墓場を住処とし、誰も繋ぎ止めることができなかった……まるで数多の悪霊の軍勢、聖なる書物に語られるレギオンのようですね」
 向けられる呪詛を聖なる障壁で祓いながら、オリヴィアは眼前の魔性をそう評する。
 悲痛な声はしかし、被害を受けた本人そのものではない。一種の残留思念に過ぎないことを、彼女は理解していた。

「……憐れではありますが、そもそも救われるべき実体がない」
 今できることはただ、現世に遺された無念を祓い、悲劇の連鎖を断ち切ること。
 金色の瞳に決意をたたえ、オリヴィアは魔を討ち破る聖句の詠唱を紡ぎ始める。
 おびただしい嘆きの呪詛をかき消すように、聖なる輝きはより力を増して――上空へと掲げられた彼女の両掌の上に、大きな光の球を形作っていく。

「本来犠牲者である貴方達を倒すのは気が引けるけど……悪いわね。今を生きる者達の為、倒させて貰うわ」
 一方、哀しげな眼差しを異形に向けるフレミアの外見は【ブラッディ・フォール】によって黒衣と真紅の剣を帯び、背中から六枚の翼を生やした姿に変化していた。
 かつて討伐したオブリビオン『ドラゴンテイマー』の姿を模した彼女は、その力を以って【文明侵略(フロンティア・ライン)】を発動し、黒竜の大群を顕現させる。

「その代わり約束するわ。貴方達を苦しめ、利用した者に必ず報いを受けさせる!」
 だから、もうお休みなさい――誓いと弔いの言葉と共に剣を掲げれば、現れた魔竜「ダイウルゴス」の群れは一斉に『嘆き続けるモノ』に襲い掛かり、その漆黒の爪牙を以ってドス黒い思念の塊を引き裂き、喰らい、蹴散らしていく。
『うぁぁぁぁ……いたい……いたい……』
 【僕を傷つけないで!】と乞い嘆く亡霊の悲鳴は、呪いとなって攻撃を仕掛けたダイウルゴスを破壊するが――周囲の石ころや 壁等、車等々、都市部においては幾らでもある無機物を素材として補充される魔竜の侵略の前には、儚い抵抗だった。

「無窮の光よ! 絢爛たる勝利の煌きで天地を照らし、遍く邪悪を滅却せよ!」
 ダイウルゴスの大群が『嘆き続けるモノ』を散らしていく只中へと、オリヴィアが投げ放ったのは【聖天烈煌破】。その身に宿る聖なる力を、超高密度に圧縮した黄金の光球が、竜に追い立てられた禍々しき異形を纏めて灼き祓っていく。
『きゃあぁぁぁぁぁ……!!』
 太陽の輝きに照らされた影法師のように、甲高い悲鳴を残して消えていく思念の塊。
 さらに地面に着弾した光球は、その周辺を祝福に満たされた領域へと聖別して、オリヴィアにはさらなる力を、そして『嘆き続けるモノ』には浄化をもたらす。
「せめてこの聖なる光の中で、浄化の熱に抱かれて眠りなさい――!」
 燦然たる輝きに包まれて消滅するオブリビオンの群れから、彼女は目を離さない。
 一切の容赦なくその最期を看取ることが、せめてもの情けになるだろうから。

『あぁぁ……どうして……わたしたちは……』
「もう、貴方達が苦しむことはないわ。眠りなさい、永遠に」
 聖光に灼かれてなお原型を保っている、ひときわ強力な個体には、【ギガンティックダイウルゴス】が引導を渡す。複数の大型ダイウルゴスが合体したこの強力な個体の背に騎乗するのは、慈悲の情をその瞳にたたえたフレミア。巨いなる魔竜の顎は、嘆き続けるモノを一呑みで喰らい尽くし――その無念を骸の海に還していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

いわゆる都市伝説か
人の口の端に上らなければ存在できん脆弱な存在ではあるが…
フン、75日待ったぐらいじゃ消えてくれないだろうな、こいつらは

避難する民間人から離すように銃撃
シガールQ1210で弾丸をばらまけば敵を多数誘導できるだろう
さらにダッシュとジャンプを駆使して敵の視線に掴まらないように動き回る

何故救われなかったか、か…この世界は厭になるほど残酷だ
死してなおもお前達を苦しめる程に、な

質問の答えにはならないかもしれないな
敵の視線が命中したら身体を毒霧に変えて攻撃を避けつつ、敵集団を腐蝕毒で攻撃してとどめを刺す

たとえ救われても、失ったモノの方が多い時もある
本当に、厭になる世界だよ…



「いわゆる都市伝説か。人の口の端に上らなければ存在できん脆弱な存在ではあるが……フン、75日待ったぐらいじゃ消えてくれないだろうな、こいつらは」
 UDC組織の元エージェントでもあるキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は、これまでの交戦経験からも『感染型UDC』の脅威をそう評価していた。
 猟兵の攻撃によって一掃されたかに見えた『嘆き続けるモノ』だが、すぐに新たな個体が戦場に出現する。人々の精神エネルギーを糧とする彼らの増殖を完全に阻止するのは、けして容易いことでは無いようだ。

「ここは私達が食い止める。早く行け」
「あ、ありがとうございますっ」
 避難する民間人から敵を引き離すよう、キリカは機関拳銃"シガールQ1210"のトリガーを引く。秘術で強化された銃撃は、無念が形を成した悪霊にも有効なようだ。
 フルオートで派手に弾丸をばらまけば、嘆き続けるモノたちの注目は彼女に引き付けられる。民間人への敵意を逸らし脅威から遠ざけるにはこれが最も得策だろう。

『何故俺は救われなかった?』
 幾つもの顔が寄り集まったようにも見える塊の中から、そんな問いかけが聞こえる。
 同時に射抜くような無数の視線を感じ取ったキリカは、戦場となった市街地を駆けまわり、周辺の遮蔽物も利用して視線に掴まらないように動く。たとえ敵意が無くとも、あの異形の言葉、視線、存在、その全てには他者への呪詛が宿っているのだ。

「何故救われなかったか、か……この世界は厭になるほど残酷だ。死してなおもお前達を苦しめる程に、な」
 銃撃を続けながら街を駆けるキリカの横顔には、やりきれない気持ちや哀しみといった様々な感情が混じりあっている。彼女もまた、世界の残酷さとオブリビオンによって大切なものを奪われ、絶望を味わった者のひとりである故に心中は複雑だろう。
 だが、それでもキリカは戦い続ける。絶望の闇に沈むのではなく、この残酷な世界に抗うことを選ぶ。それが、自分を救ってくれた仲間達から受け継いだ意志だから。

「質問の答えにはならないかもしれないな」
 嘆き続けるモノたちの視線が自分に集まってきたのを察すると、キリカは逃げ回るのを止めて【プワゾン】を発動。薄い紫色の毒霧へと自らの肉体を変化させる。
 プライベートで彼女が愛用する香水と同じ、官能的なまでに甘い香りを漂わせたそれは、視線の呪詛を避けるのと同時にまたたく間に戦場に広がり、敵を包み込んだ。
『う……あぁぁぁぁ……なに……これ……』
 ドス黒い異形の塊が、銃撃を浴びた弾痕の箇所からぐずぐずと腐蝕し崩れていく。
 キリカの調合に応じて様々な毒性を見せるその紫霧は、此度は悪霊たちを天国へと誘う死の香りとなった。

「たとえ救われても、失ったモノの方が多い時もある。本当に、厭になる世界だよ……」
 朽ち果てていくオブリビオンの最期を見届けながら、毒霧の中心でキリカは呟く。
 もう誰にも自分のような悲劇を味わって欲しくないと願っても、現実は残酷だ。
 全てのモノを救うことはできない――だが、それでも、感染する悲劇の連鎖をここで食い止めるために、彼女はここで立ち止まるわけにはいかなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
暗い怨念が…恨みが…街に広がっていく…。
これ以上、悲劇を広げるわけには、いかない…!

家屋やビルの屋上等、周囲を確認しやすい高所から【呪詛、高速詠唱、情報収集】探知術式で広域に拡がったUDCと一般人の場所を探知…。
各所のUDCに【呪詛、高速詠唱】呪詛の縛鎖を一斉に発動して拘束し、一般人の避難の時間を作りつつ、【ソウル・リべリオン】を召喚…。
自身に【呪詛、呪詛耐性、オーラ防御、高速詠唱】呪力防壁を張りつつ、ソウル・リべリオンと凶太刀で高速で各所を回りながら嘆き続けるモノの呪詛・怨念をソウル・リべリオンで喰らい、浄化していくよ…。

怨み、哀しみ、嘆きに囚われた魂達…貴方達の魂、わたしが解放する…!



「暗い怨念が……恨みが……街に広がっていく……」
 市街地にそびえるビルの屋上から、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は増殖を続けるUDCの拡大を観測していた。人々の噂と精神エネルギーを糧とした『嘆き続けるモノ』の大量発生は未だに収まる気配はなく、民間人に対する脅威となっている。
「これ以上、悲劇を広げるわけには、いかない……!」
 見晴らしのいい高所に位置取り、霊魂や魔力を見通す「霊魔のレンズ」を装着した璃奈の目には、出現するUDCや避難する一般人の所在がはっきりと捉えられている。
 これ以上の事態拡大を阻止するため、彼女は自らの呪力を束ねる詠唱を紡ぎ始めた。

『何故俺は救われなかった?』
「し、知らない、そんなの……っ」
 逃げ遅れた一般人の少女に、『嘆き続けるモノ』が問いを投げかけながら迫る。
 ドス黒い塊の中から伸ばされた手が、無辜の人間を捕らえんとする――まさにその瞬間、上空から放たれた呪詛の縛鎖が、異形のオブリビオンを拘束する。
「え……?」
 いったい何が起こったのか分からずに、唖然と目を丸くする少女。事が起こったのはここだけでは無く、璃奈が把握した戦域で一般人を襲っていた全ての『嘆き続けるモノ』は、彼女の発動した呪術によって一斉に封じられていた。

「今のうちに逃げて……」
「え、あ、はいっ!」
 ビルの屋上から音もなく降り立った璃奈は、敵を拘束したまま人々に避難を促す。
 逃げていく者たちをかばうように立つ彼女の手には、加速の力を与える妖刀・九尾乃凶太刀と、呪詛喰らいの魔剣【ソウル・リベリオン】が握りしめられていた。

「怨み、哀しみ、嘆きに囚われた魂達……貴方達の魂、わたしが解放する……!」
 物静かな表情に強い意志を秘め、踏み込んだ璃奈の身体は瞬時に音速を突破する。
 一陣の風と共に肉迫し、ソウル・リベリオンを一閃。呪詛を喰らう刃にて断ち斬られた『嘆き続けるモノ』は、無念の塊から在るべき姿へと浄化され、骸の海に還る。
『ぁ……』
 消えていく亡霊の傍らを駆け抜け、そのまま彼女は戦場の各所を駆けまわり、縛鎖にて捕らえたモノたちを次々と同じように現世から解き放っていく。

『何故俺は救われなかった?』
 まるで壊れたレコードのように、『嘆き続けるモノ』は同じ問いかけを繰り返す。
 今や呪いと化した犠牲者たちの思念を、璃奈はその身に張った呪力の防壁で防ぎながら斬り捨てる。もうこれ以上、彼らが誰のことも呪わなくても済むように。
『……あり、が、と……』
 消滅の間際にソレが口にしたのは呪詛ではなく、安らぎに満ちた感謝の言葉。
 "感染"という望まぬカタチで喚び起こされた彼のモノたちを縛る呪いを喰らい、魂に救済をもたらす――それが呪詛喰らいの魔剣の力であり、璃奈の願いであった。

「どうか安らかに……」
 戦場を舞うように剣を振るう璃奈の腰で、破魔の鈴飾りがりん、と涼やかに鳴る。
 新たなUDCの発生と拡大は食い止められ、その規模は徐々に縮小へと転じ始めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジュリア・ホワイト
無論、ヒーローとしては
一般人の保護に全力を出さざるを得ないとも
「ヒーロー参上!ボクが来たからにはもう大丈夫だよ!」

自前の武装で敵を攻撃しつつ
一般人の皆様を確保してUDC職員に引き渡していくよ
透明化した敵であろうが、UC発動中のボクなら一般人を狙われれば気づく
ボク本体を狙われても簡単には死なないから問題ないしね
「さあ、走って!あちらに行けば保護してもらえる!」
「この化け物はボクが相手するとも!」

一般人を逃しきったら/ボクが注目を集めすぎて一般人に近づくのが不適になったら
敵の殲滅に頭を切り替えて戦闘だ
正面戦闘が一番得意なのでね
あらゆる武装が君達を逃さないとも



 ――猟兵達の奮戦によって、市街地に現れたUDCの大群は数を減らしつつあった。
 だが、感染型UDCが厄介なのは、噂を知った人間の元に"突如"出現するという点だ。
『……ケテ……タスケテ……タスケテタスケテ……』
「ひ……! こ、こっちにもバケモノが……!」
 怯える人々の精神エネルギーを糧として、不意に姿を見せる『嘆き続けるモノ』。
 その存在は今だ避難を終えていない民間人にとって無視できぬ脅威となっていた。

「ヒーロー参上! ボクが来たからにはもう大丈夫だよ!」
 そこで人々の前に現れたのはジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)。
 高らかな名乗りと共に颯爽と現場に駆けつけた彼女は、大きな黒のスコップを『嘆き続けるモノ』に叩きつけて、力尽くで民間人から遠ざける。
「さあ、走って! あちらに行けば保護してもらえる!」
 指差した先には現場封鎖と民間人保護のために派遣されたUDC職員が待機している。
 危ういところを救われたその人は「ありがとう!」と感謝を叫んで逃げていった。

「よし次だ!」
 一般人が無事に保護されたのを確認すると、ジュリアは目の前の敵の相手もそこそこに、次の要救助者がいる場所へと走り出した。
 【明日へ繋げ命の灯! 希望に向かって脱出せよ!】を発動中の彼女なら、民間人を狙うオブリビオンの悪意や、助けを求める人々の声に気付かないはずがない。
「危ないっ!」
 今まさに襲われかかっていた民間人を、駆けつけたヒーローは身を挺して守る。
 蒸気機関車のヤドリガミである彼女の身体は頑丈で、少々のことでは死にはしない。だからこそ多少の無茶でも押し通すことができた。

「この化け物はボクが相手するとも!」
「た、助かった……! 感謝するよ!」
 ほっと胸を撫で下ろしながら、ほうほうの体で戦場から逃げていく一般人。
 それを見た『嘆き続けるモノ』は、すうっと再び姿を消して後を追おうとするが――。
「おっと、この路線は通行止めだよ」
 たとえ透明であろうとも、守るべき人々を襲う脅威をジュリアは見逃さない。
 抜き放った「残虐動輪剣」を虚空に向かって一閃すると、ガリガリガリッ! と鈍い鋸刃の音を立てて、消えていたオブリビオンの異形が真っ二つに切断された。

「ヒーローを無視するなんていい度胸じゃないか」
 バラバラになった異形を置いて、その後もジュリアは一般人の救助活動に奔走する。
 逃げ遅れている一般人の皆々を確保し、邪魔をするオブリビオンを排除し、UDC職員に引き渡す。ヒーローズアースでの活動の賜物か、その手並みは鮮やかなものだ。
 だが、いつしか彼女の元には多数の『嘆き続けるモノ』が集まりつつあった。どうやら救助のために派手に動き回るうちに、敵の注目も引いてしまったようだ。

「君達を引き連れて一般人に近づくわけにはいかないね」
 大方の救助も完了したのを確認すると、ジュリアは敵の殲滅へと頭を切り替える。
 すでに黒のスコップに大型動輪剣、さらに高圧放水銃に大型拳銃型精霊銃『No.4』――人々を脅かすヴィランを制圧するための多種多様な装備が用意されている。
「正面戦闘が一番得意なのでね。あらゆる武装が君達を逃さないとも」
 近付いてくる敵はスコップや動輪剣でなぎ倒し、遠くの敵は放水銃や精霊銃で撃ち抜く。いい具合に化物共が密集している所には、携行式4連詠唱ロケットランチャー「ML106」を叩き込み、爆発で一網打尽に吹っ飛ばす。

『うぁぁぁぁぁぁぁ……?!』
 故郷にて「オーバーキル」とも称された容赦のない戦いぶりを前に、嘆き続けるモノたちは為す術もなく蹴散らされ、悲鳴を上げながら骸の海へと還っていく。
 皆を希望へと運ぶ白い蒸気と黒い鋼の進撃は、誰にも止めることはできないのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

鏡島・嵐
判定:【SPD】
見たことねえモンを見ちまったら、それがおっかねえモンであっても誰かに話したくなるんが、人情ってヤツなんだろうな。
……見てはいけないモンを見ちまったとしても、それを見なかったことにするんがなかなか出来ないってのが儘ならねえとこだけど。

怖ぇけど、最初のここを踏ん張らねーとな。
《残されし十二番目の贈り物》で〈失せ物探し〉を強化し、透明になったUDCの位置を突き止める。
その上で、巻き込まれた人たちや仲間を誤射しねえように〈スナイパー〉で精度を強化した射撃を撃ちこんだり、他の味方が攻撃しやすくなるよう〈援護射撃〉を飛ばしたりして、手早く数を減らして事態を早く収める方に持っていく。


霧島・龍斬
……何故救われなかったか?
『諦めた』からだろ。

お終いだ、と一回でも思ったから、
お前『達』はそうやって救われずに『成り果てた』んだろ。
そんなの、斬ることでしかモノを語れねェ俺にだって、解る。

俺の一撃は一瞬だ。何より『余計な奴』を斬りたくはねェからな。
【早業】から【鎧無視攻撃】【破魔】【マヒ攻撃】を乗せて、
【指定UC】の一発で沈めてやる。

普段ならこんな取るに足らない有象無象に興味は沸かねぇが。
けれど、その嘆きの向こう側に有る者に、
確かに懐かしさと、『もう一度』の願望を覚えて。
「――助けを求めるにゃ、ちょっとやり方が違うと思うぜ」

……救いには程遠い刃だけが、ギラつかされる。
※アドリブ連携可



「見たことねえモンを見ちまったら、それがおっかねえモンであっても誰かに話したくなるんが、人情ってヤツなんだろうな」
 感染型UDCの第一発見者となり、その噂を人々に広めてしまった人間の心理を、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はそのように分析していた。
「……見てはいけないモンを見ちまったとしても、それを見なかったことにするんがなかなか出来ないってのが儘ならねえとこだけど」
 忘れたいと思うような恐ろしいものほど、逆になかなか忘れられなくなるものだ。
 彼はそれをよく知っている。その中には忘れてはいけない事があることも――そんな人の心理を利用して増殖するUDCとは、なんともタチの悪いものだ。

「怖ぇけど、最初のここを踏ん張らねーとな」
 今だ湧き続ける『嘆き続けるモノ』の位置を特定すべく、嵐は【残されし十二番目の贈り物】を発動する。祖母から教わった占いを我流にアレンジしたもので、特に失せ物探しなどには高い効果を発揮するユーベルコードだ。
「占いの真似事なんてガラじゃねえけど……そこにいるな」
 愛用のスリングショットに小石の弾丸を番え、放つ。一見すると何もない場所を狙ったかに見えたその一射は、透明化していた『嘆き続けるモノ』に見事的中した。
『イタイ……イタイ……!』
 無念が凝り固まった漆黒の異形は、悲鳴を上げながらぐるりと嵐のほうを向く。
 その視線、言葉、姿形に込められた呪詛に、背筋が凍えるような恐怖を感じながら――それでも彼は一歩も怯むことなく、次の弾丸を装填する。

「お前の相手はおれ達だ」
 避難する人々を誤射しないよう、慎重に精度を高めた射撃がオブリビオンを撃つ。
 重要なのは敵の注意をこちらに引きつけること。『嘆き続けるモノ』の視線がこちらに集まるのを感じると、嵐は射撃を続けながら民間人とは別方向に移動していく。
 誘導するのは味方の猟兵がいるところ。性格的にも正面切っての戦いをあまり得意としない彼にとっては、仲間を援護する連携戦術こそがベストな戦い方だった。

『何故俺は救われなかった?』
 遠ざかっていく嵐に向かって『嘆き続けるモノ』からの問いかけが放たれる。
 彼らもかつてはUDC事件に巻き込まれた被害者たち。あの時の自分たちはどうして救いの手は差し伸べられなかったのか、なぜこんなバケモノに成り果ててしまったのか――そんな無念や悲嘆の感情が呪詛となって、今を生きる者たちを蝕んでいく。

「……何故救われなかったか? 『諦めた』からだろ」
 嵐に代わってその問いに答えたのは、巌のように重く、刃のように鋭い男の言葉。
 亡霊達が誘導された先で待っていたのは、退魔刀『神凍滅却』を構えた霧島・龍斬(万物打倒の断滅機人・f21896)だった。

「お終いだ、と一回でも思ったから、お前『達』はそうやって救われずに『成り果てた』んだろ。そんなの、斬ることでしかモノを語れねェ俺にだって、解る」
 その男は、決して諦めることを知らなかった。彼が猟兵となる以前、UDCとの戦いで重傷を負った時も、彼はそこで"お終い"にすることを良しとせず、その身をクローンと機械に置き換えてでも戦い続けることを望んだ――それを『救い』と呼ぶかは定かではないが、諦めてしまった者には碌な未来など無いことを彼は知っていた。

「『余計な奴』を斬りたくはねェからな。一発で沈めてやる」
 一足一刀の間合いに入った瞬間、断滅の機人はつまらぬ質問ごと亡霊を斬り捨てる。
 その一撃は一瞬。溶けない氷を用いて鍛えたともされる白銀の退魔刀には、凍てつくような氷の魔力が宿り。亡霊の体ではなく、ソレを現世に留める『歪み』を断つ。
 氷戒葬剣『歪曲凍葬』。冷徹なる一閃を受けた『嘆き続けるモノ』は断末魔の悲鳴を上げる間もなく、霧氷と化して骸の海へと還っていった。

『俺は……なぜ……こんな……』
 問いを否定されてもなお、亡霊たちは壊れたレコードのように言葉を繰り返す。
 そこに撃ち込まれる石礫の弾丸。うごめく亡霊を誘導せんとする嵐の援護射撃だ。
「お前たちも、これ以上長くは苦しみたくないだろ」
 彼の望みは手早く数を減らして、事態を早く収める方に持っていくことだった。
 戦いが長引けばUDCの噂も拡大する。感染阻止の初手でもたつく訳にはいかない。
 的確なスナイピングで嵐が『嘆き続けるモノ』の位置取りを動かせば、すかさず龍斬が距離を詰め、先と同様の一太刀で葬り去っていく。

(普段ならこんな取るに足らない有象無象に興味は沸かねぇが)
 歯応えのない亡霊どもを次々と斬り捨てながら、けれど、と龍斬は思う。
 この嘆きの向こう側に有る者に――噂という形で己の存在を広めようとした何者かの気配に、確かに懐かしさと、『もう一度』の願望を覚える。
「――助けを求めるにゃ、ちょっとやり方が違うと思うぜ」
 厳しい相貌にその時浮かんだ感情は、懐旧か、憐憫か、皮肉か、あるいはどれでもないものか。確かなのは既に、彼はこの戦いの『先』を見据えていたということ。
 だが、何を想おうとも彼の太刀筋には一切の乱れはなく、静かに漲る殺気と闘志の奥に秘めたものを窺うことは難しく――救いには程遠い刃だけが、ギラつかされる。

『あぁぁぁぁぁぁぁ…………』
 石礫の弾丸に誘い込まれ、凍てつく刃に嘆きを断たれ、消えていく亡霊たち。
 噂の蔓延に端を発するUDCの大量発生は、次第に収束に向かいつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
人口密集地で戦闘などと…
一刻も早く事態を収拾しなければなりませんね

聴覚センサーで●情報収集
悲鳴や足音等からUDCに近い一般人の保護へ

しかしこの問い掛け…装甲に亀裂!?

(【賢者の影】に近似のUC、トリガーは視認? 解除方法は…)

(謝罪でも、慰撫の言葉でも自分や民間人への被害は止められない。なら)

「あなたがそこに居合わせ、誰の手も届かなかったからです」

数多の血涙を流す感情の残滓達を斬り捨て至近距離でのUCで止め
視線から一般人をかばいつつ戦闘続行

私は御伽の騎士では無く、騎士であり【今】優先すべきは「今を生きる人々」
天秤に従い何度でも嘆きを踏みにじりましょう

例え、私の手から零れ落ちた声があったとしても



「人口密集地で戦闘などと……一刻も早く事態を収拾しなければなりませんね」
 聴覚センサーの感度を高め、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は避難の遅れた民間人の捜索と、付近に残っているUDCの発見に尽力していた。
 逃げ惑う人々の悲鳴や足音、そしてUDCの放つ嘆きの声を聞きつければ直ちに急行。襲われている人々とUDCの間に割って入り、その巨体を活かして接近を阻止する。

「あ、あなたは……?」
「ご安心下さい。もう大丈夫です」
 目を丸くする人々を背中に庇いながら、穏やかな口調で語りかけるトリテレイア。
 その勇壮なる佇まいと礼節に則った振る舞いは、人々を安堵させるのに充分なもの。彼らに落ち着いて避難するよう促しながら、機械騎士はUDCの群れと対峙する。

『何故俺は救われなかった?』
 嘆き続けるモノと称される彼らは、猟兵にも人々にも直接的な攻撃は仕掛けてこない。
 ただ、その呼び名のとおり悲嘆に満ちた声を上げ、質問と視線を放ってくるだけだ。
「しかしこの問い掛け……装甲に亀裂!?」
 人々を避難させながら敵の出方を窺っていたトリテレイアは、ふいに発生した異常に驚く。攻撃らしい攻撃が無かったにも関わらず、機体がダメージを受けている。
(【賢者の影】に近似のユーベルコード、トリガーは視認? 解除方法は……)
 状況から判断して、原因は『嘆き続けるモノ』の問いかけしか無いだろう。
 呪詛と化した無念の塊が放つ質問。それに正しく答えるまで、この霊障は続く。

(謝罪でも、慰撫の言葉でも自分や民間人への被害は止められない。なら)
 その『答え』を口にするのは、トリテレイアにとっては苦渋の決断となった。
 だが、人々の生命を守るため、事件の拡大を防ぐため――彼は迷いはしなかった。

「あなたがそこに居合わせ、誰の手も届かなかったからです」

 ぴたり、と、亡霊たちの声が止んだ。射抜くような数多の視線が騎士に注がれる。
 トリテレイアはそれ以上何も語ることなく、機体へのダメージが消えたのを確認すると前に進み出た。大盾をかざし、彼らの視線が他の者に向かうことのないように。
 ――きっと、救われなかった者にも、救えなかった者にも、落ち度があった訳では無い。だが不幸の巡り合わせや個人の限界によって、救済の網から零れ落ちる者は必ず出てきてしまう。それが、どうしようもなく残酷な、この世界の事実だった。

(私は御伽の騎士では無く、騎士であり【今】優先すべきは「今を生きる人々」)
 今の自分に手の届くものを救うために、機械仕掛けの騎士は儀礼剣を振るう。
 数多の血涙を流す感情の残滓達は、ばっさりと斬り捨てられ、悲鳴を上げて地に這いつくばった。縋るような視線から目を逸らさぬまま、彼は格納銃器を展開する。
(天秤に従い何度でも嘆きを踏みにじりましょう)
 救うべき者のために救われなかった者に銃口を向ける、【機械騎士の二重規範】。
 乾いた銃声が戦場に木霊すると、亡霊たちの嘆きの声はそれきりピタリと止んだ。

(例え、私の手から零れ落ちた声があったとしても)
 彼はその後悔や無念を抱えたまま、それでも己の騎士道を貫き続けるだろう。
 硝煙を纏った機械騎士の聴覚に、人々の悲鳴や嘆きはもう聞こえてこなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『霊山の樹海』

POW   :    力を活かして樹海を進む

SPD   :    素早さを活かして樹海を進む

WIZ   :    知恵を活かして樹海を進む

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「危ないところを助けてくれて、ありがとうございます」

 怪物の群れから助けてくれた恩人達に、深々と頭を下げて感謝を述べる女学生。
 猟兵の活躍によって感染型UDCの最初の大量発生は駆逐された。これで暫くの間は新たなUDCが現れることは無いだろうが、これで事件が終了したわけではない。
 一度広まってしまった噂は新たな噂を呼ぶ。その大元であるUDCを討伐しなければ、いずれ猟兵でも抑えきれないほどの大規模なパンデミックが起こるだろう。

「私が"それ"と出会ったのは、怪奇スポット巡りで訪れたとある霊山でした」

 感染型UDCの所在を知っている、第一発見者の少女が語るところに曰く。
 その霊山にはかつてひと振りの『剣』が祀られていたと言われ、それを崇拝対象とする教団によって、怪しげな儀式や血なまぐさい生贄などが行われていたという。
 マニアの間でも知られていないマイナーな話で、正直、彼女も信じていなかったのだが――興味本位で向かった山中で遭遇したのは、まさしくその怪奇譚を想起させる存在だった。

「それは人間……のように見えました。でも、そのひとが持っていた『剣』を見た瞬間……あたしは逃げ出しました。一目で分かったんです、それが『この世のものじゃない』って」

 霊感、本能、あるいは魂に訴えかけてくる強烈な邪気から、その少女は逃避した。
 そして、正気を保つために少しでも恐怖を和らげようと、この体験を知り合いに話したのだ。それがまさかこんな事態を引き起こすとは思ってもみないままに。

「私が知っていることはこれで全部です。少しでも事件の解決になれば……」

 恐縮する少女の今後については、UDC組織が請け負ってくれる手筈になっている。
 事件に巻き込まれた他の民間人共々、平穏に社会復帰できるよう取り計らってくれるだろう。噂をこれ以上広めないためにも、事件の記憶は消されるかもしれないが。
 猟兵に求められるのは、早急に件の霊山に向かい、UDCの感染源を見つけ出すことだ。


 ――かくして、猟兵達は忌まわしいウワサの元凶となった霊山を訪れる。
 そこは異様な雰囲気に満ち、鬱蒼とした木々が生い茂る樹海と化していた。昼間でも薄暗いその山中には、何処からともなく嘆きや悲鳴のような声が聞こえてくる。
 どうやらUDCの影響が土地そのものにも現れだしているようだ。一般人であれば近付いただけで気を病みそうな魔境だが、猟兵であれば対抗はできるはずだ。

 邪なる『剣』を持つという感染型UDCは、この奥に潜んでいるのだろう。
 一刻も早い事件集束のために、猟兵達は霊山の樹海へと足を踏み入れた。
フレミア・レイブラッド
あの子、よくこんなトコロ進む気になったわね…。本能的に忌避しそうな気もするのだけど…あの子が入った時はまだ影響が低かったのかしら?

とりあえず、出発前に少女のアフターケア協力として今回遭遇したUDCへの恐怖心を取り除く(薄れさせる)様に【魅了の魔眼・快】【催眠術】を使用して事件の記憶で悩んだり苦しむ事が無い様に計らうわ(副作用?で魅了してしまうが)


その後【ブラッド・オブリビオン】で「荒野に飛来する氷鳥達」の「氷雪の鷲獅子」を召喚。
少女の証言から、大体の場所のアタリをつけ、鷲獅子に【騎乗】して空中から進行・探索。
障害や樹木等は【念動力】や【爪による連撃】で薙ぎ払い、【凍てつく息吹】で排除するわ。



「あの子、よくこんなトコロ進む気になったわね……」
 鬱蒼とした不気味な霊山の樹海を目の当たりにして、フレミアは小さく嘆息する。
 彼女でなくとも、一目見ればここに潜む異様さや怪奇を嫌でも感じることだろう。
「本能的に忌避しそうな気もするのだけど……あの子が入った時はまだ影響が低かったのかしら?」
 その推測は恐らく正しいだろう。逆に言えば第一発見者の少女がここを訪れてから今日までの間に、UDCの影響はここまで強く、そして広がりつつあるということだ。

『話してくれてありがとう。もう怖がる必要は無いわ』
 出発前、フレミアは少女から話を聞いたあと、アフターケアの協力として【魅了の魔眼・快】による催眠術をかけていた。一般人である彼女の心が、異常な事件の記憶に悩まされ、壊れてしまわないように、遭遇したUDCへの恐怖心を薄れさせたのだ。
『あとの事はわたし達に任せて、安心して帰りなさい』
『は、はい……』
 魔眼の副作用(?)により、微笑する吸血姫に見つめられた少女はぽうっと恋する乙女のように頬を赤らめ、すっかり魅了されていた様子だったが。少なくともこれで以後、彼女が余計な苦しみを背負い込むことは無くなったはずだ。

「約束したんだし、頑張らないとね」
 その時の少女の表情を思い返しながら、フレミアは意気込みも新たに【ブラッド・オブリビオン】を発動。過去に血を頂いたオブリビオンの中から「氷雪の鷲獅子」の霊魂に呼びかける。
「血の隷属を用いて命ずる……。フレミア・レイブラッドの名の下に、嘗ての力を以て骸の海より戻り、わたしに力を貸しなさい」
 ひゅうと冷たい風が吹いたかと思うと、勇壮なる翼を持つ幻獣が現れる。血の力によって眷属となった鷲獅子は恭しく吸血姫の前に頭を垂れ、その背を彼女に許した。

「さあ、行くわよ」
 フレミアが命じれば鷲獅子はばさりと翼を羽ばたかせ、霊山の樹海へと突入する。
 アフターケアの際に聞いた少女の証言から、UDCのいる場所には大体のアタリを付けている。地形や景観が変化している可能性は高いが手掛かりにはなるはずだ。
 行く手を阻むのは異常に繁茂した樹木や蔓草に、複雑化した地形といった自然の障害。だが、空中から進行・探索する彼女たちの行く手を阻めるほどのものでは無い。

「悪いけど先を急いでいるのよ。自然破壊もやむを得ないわよね」
 どこからともなく聞こえてくる声には耳を貸さず、邪魔な草木は鷲獅子に飛び越えさせるか、【爪による連撃】や【凍てつく息吹】で排除。UDCの影響を受けたとはいえあくまで普通の植物であるそれらは、あっけなく引き裂かれ、凍りついていく。
 こんな所で立ち止まってなどいられないとばかりに、フレミアは迷いのない眼差しで進路を見据えて、怪奇の樹海に道を切り開いていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジュリア・ホワイト
件の少女がUDCを発見した場所は、当然少女が軽装でたどり着ける程度の場所なわけだ
しかし噂話の拡大でUDCそのものは力を増している、と
「ならば心配すべきは迷うことや単純な障害物ではなく、UDCの放つ瘴気とそれにより変質した植物等の影響だけだね」

ならば覚悟を決めて、歪んだ山の制覇に乗り出すよ
生い茂る弦や根を切り裂き、岩とか砕き、最短最速一直線で目的のポイントまで突き進む!
「それが一番早い。当然さ」

無論、全て力づくで進めるとはボクも思っていない
その為の切り札があるのさ!
【線路開通、発車準備よし!】で地形に線路を上書きして通れるようにしてしまおう
(結局力づくでは?と妖精さんは突っ込んだ)
さあ、出発だ!



「件の少女がUDCを発見した場所は、当然少女が軽装でたどり着ける程度の場所なわけだ。しかし噂話の拡大でUDCそのものは力を増している、と」
 富士の樹海もかくやとばかりに、不気味な雰囲気に包まれた霊山を目の当たりにして、ジュリアは改めてこの先に全ての元凶がいると確信する。第一の発見からさほど時は経っていないはずだが、その間にここまで力が強まるのが感染型UDCの恐ろしさか。
「ならば心配すべきは迷うことや単純な障害物ではなく、UDCの放つ瘴気とそれにより変質した植物等の影響だけだね」
 ならばと覚悟を決めて、ジュリアはこの歪んだ山の制覇に乗り出す。
 道なき地に道を作り出すのもまた、ヒーローたる彼女の仕事のうちだ。

「よし、出発進行だ!」
 景気づけに銀のホイッスルを吹き鳴らし、勢いよく樹海に駆け込んでいくジュリア。その手元では市街戦でも威力を奮った、残虐動輪剣のチェーンが唸りを上げる。
 その前方では森の植物が複雑に絡み合い、まるで悪意を持つかのように行く手を阻んでいるが――彼女は邪魔だとばかりに剣を振るい、弦や根や枝を切り裂いていく。
『力づくだね?』
「それが一番早い。当然さ」
 傍らに付いてくる「運転士精霊さん」のツッコミも気にせず、進路上に転がっていた大岩を見つければ黒のスコップで叩き砕き。障害となる一切合切を粉砕しながら、最短最速一直線で、UDCが目撃された目的のポイントまで突き進んでいく。

 ――無論、そんな力づくだけで全て上手くいくとはジュリアも思っていない。
 奥に進めば進むほど、霊山の樹海は異様さを増し、障害物も多くなる。絶壁や地割れなど、物理的に進むことの難しい地形までもが進路を阻むようになった。普通なら迂回路を探すところだが――しかし彼女はあくまで最短最速という初志を貫徹する。
「その為の切り札があるのさ!」
 高らかに叫びながらユーベルコードを発動すると、開かれた異空間のトンネルから鉄道のレールが高速で射出され、通行止めだった地形を上書きしていく。またたく間に出来上がったのは、寸分の狂いもなく繋がり敷設された一本の線路であった。

「【線路開通、発車準備よし!】 さあ、出発だ!」
 完成した自分専用の線路の上を、意気揚々とジュリアはひた走る。障害となるものや地形は全て線路によって平らに均され、その道行きはこれまで以上にスムーズだ。
『結局力づくでは?』
 と妖精さんは突っ込んだが、果たして彼女はそれを聞いていたのかいないのか。
 だが時には"急がば回れ"よりも、力づくで障害を突破したほうが効果的なケースがあることも、紛れもない事実であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン、樹海か…
肝試しと言うには少々刺激が強すぎる場所だな

マッキナ・シトロンのGPS通信で現在地を確認しながら樹海を探索
UDCが放つ強力な邪気を追跡しながら、ジャンプやダッシュを駆使して進んでいく
道中の邪魔な木々や蔦はナガクニで処理をし、周囲に漂う狂気と呪詛はスクレットコートを着込む事で防ぐ
秘儀を施した金羊の皮革で作られたコイツは半端な呪いなど受け付けんからな

さて、邪気が濃くなってきたか
とは言え、何が立ち塞がろうとも関係は無いがな

道中に強力な呪霊、あるいは蠢く樹木など、こちらを阻む障害が現れたらUCを発動
デゼス・ポアの錆びた刃で全てを切り裂き、邪魔者を排除して、ボスに続く道を作る



「フン、樹海か……肝試しと言うには少々刺激が強すぎる場所だな」
 マシンブレスベルト「マッキナ・シトロン」のGPS通信で現在地を確認しながら樹海を探索するキリカ。彼女の視界に広がっている光景は、一般人なら肝を潰すどころか、そのまま遭難し二度と帰れなくなっても不思議はない、奇怪な緑の迷宮だった。
「噂を広めさせる為にも、最初の目撃者は生かして帰す必要があったのだろうが」
 "感染"の拡大が始まり、UDCの力も増大した今となってはその必要も無いのだろう。
 周辺に満ちる不気味な気配から、既にここが敵の領域であることを彼女は確信する。

「だが、この程度なら問題は無いな」
 樹海化しているとはいえあくまで自然の範疇ならば、猟兵であれば何とでもなる。
 戦場で鍛えられたキリカの足腰は森の悪路をものともせずに駆けていき、道中の邪魔な木々や蔦は短刀「ナガクニ」で処理するか、軽快なジャンプで飛び越える。
 辿るべき道標は、樹海の奥から感じる強烈な邪気。件のUDCから発せられているのであろうそれは、どんなに距離があってもこの森の中ならばはっきりと感じ取れる。
「自分から居所の情報を垂れ流しているようなものだな」
 その影響であろう、霊山一帯は今や狂気や呪詛で満たされ、常人ならば発狂必至の環境だ。自らも汚染されぬようキリカは「スクレットコート」をしっかりと着込む。
 秘儀を施した金羊の皮革で作られたこのコートは、対UDC戦において邪神の狂気や呪詛から着用者を守るために開発された代物だ。半端な呪いなど受け付けはしない。

「さて、邪気が濃くなってきたか」
 奥に進めば樹海はいよいよ異質さを増す。呪詛が可視化された呪霊が徘徊し、獲物を求めるように怪樹が蠢く、この世のものとも思えぬ光景がそこには広がっていた。これまでの自然物とは異なる、明確に侵入者を阻まんとする"障害"の出現である。
「とは言え、何が立ち塞がろうとも関係は無いがな」
 キリカは慌てることなくデゼス・ポアを取り出すと、迫る呪霊や怪樹の蔦に向かってけしかける。錆びた刃を露出させた人形に使わせる技の名は【苦痛の嵐】。
「嗤え、デゼス・ポア。貴様に出会った不運な者達を」
『キヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ』
 不気味な笑い声が樹海に木霊すると、次元を切り裂いて無数の錆びた刃が放たれる。
 それは人形とキリカから一定範囲内であれば、場所を選ばずにあらゆる角度と座標から出現する。錆だらけの刃は邪魔な障害共をひとつも逃さず、微塵に切り刻んだ。

「やはりUDCそのものと比べれば大したことは無いな」
 無数の刃が次元の向こうに引っ込んだ後、キリカの前方はまっさらな更地と化していた。
 UDCの影響を受けた怪異は一掃され、障害となるものはもはや無い。デゼス・ポアによって切り開かれたボスに続く道を、彼女は迷うことなくまっすぐに進んでいく。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
『剣』…魔剣や妖刀の類かな…?それなら、わたしの専門だね…。

霊魔のレンズと探知呪術【高速詠唱、情報収集】で呪いや怨念の中心地、特に強い場所を探して進んでいくよ…。

道中、UDCによる影響を抑え、UDCを倒した後に浄化を促す為、樹海の要所要所で【破魔】による浄化の札と【呪詛】による嘆きや怨念、呪いを集めて急襲する呪力の札を設置…。
更に破魔の鈴飾りと【ソウル・リベリオン】で土地の怨念や呪詛を祓い、清めていくよ…。

UDCを倒しても呼び集められた嘆きや呪詛がすぐに取り払われるとは限らないしね…。
それに呼び寄せられて不幸が起きたら、それを起点に増殖する可能性もあるし、出来る限りの事をやっていこう…。



「『剣』……魔剣や妖刀の類かな……? それなら、わたしの専門だね……」
 呪われし刀剣を祀り鎮める"魔剣の巫女"の璃奈にとって、目撃者の語った話は興味深いものだった。神と崇拝されていたほどの剣ならば、相当強力な魔剣に違いない。
 自身の祀る魔剣と共に樹海を訪れた彼女は『嘆き続けるモノ』との戦いでも使用した霊魔のレンズを使って、一帯に渦巻く呪いや怨念を見定めながら先に進んでいく。

「すごく深い呪い……これも『剣』の力の影響なのかな……」
 より怨念を強く感じる方角、呪いの中心地とも言うべき場所を探して樹海内を進みながら、璃奈はその道中の要所要所でお札を取り出すと、木々や岩に設置していく。
 それは破魔の力を込めた浄化の札と、嘆きや怨念や呪いを集めて吸収する呪力の札。UDCによるこれ以上の影響の拡大を防ぎ、元凶を倒した後の浄化を促す措置だ。
「UDCを倒しても呼び集められた嘆きや呪詛がすぐに取り払われるとは限らないしね……」
 一度大地に染み付いてしまった呪いが、幾年にも渡ってその地を汚染し続けるような事例は、けして珍しいことでは無い。璃奈の危惧は呪術使いとして当然のものであり、然るべき予防策であった。

「こっち……だんだん気配が近くなってる……」
 樹海の奥に進むにつれて、立ち込める怨念や呪いはなおも深くなっていく。
 それを祓い清めるために璃奈が喚び出した魔剣の名は【ソウル・リベリオン】。
「呪詛喰らいの魔剣よ……この地を侵す呪いを喰らい、正しき姿へ戻せ……」
 大気に漂う邪気を一閃し、土地に根付いた呪詛に刃を突き立てれば、辺りに満ちていた重苦しい雰囲気は徐々に薄れていき、本来あるべき清浄な状態に戻っていく。
 その所作はまるで舞うように美しく、魔剣を振るう動きに合わせて破魔の鈴飾りが揺れれば、鳴り響く清めの音色が邪気の残滓までも消し去っていった。

「これで暫くは大丈夫かな……」
 清めの剣舞を舞い終えた璃奈は、ふうと額の汗をぬぐいながら周辺を見回す。
 不気味な雰囲気に満ちた樹海は、木漏れ日の差し込む美しい森に一変していた。
 もし再びUDCの力がこの地に及んだとしても、すぐにまた森が元の状態に陥ることは無いだろう。そうなる前に元凶をどうにかすれば、邪気による汚染も止まる筈だ。

「もしここの呪詛に呼び寄せられて不幸が起きたら、それを起点に増殖する可能性もあるし、出来る限りの事をやっていこう……」
 それからも璃奈は要所にお札を配置し、呪詛喰らいの魔剣を振るって樹海の浄化を続けながら、件の『剣』の気配がする怨念の中心地へと次第に近付いていく。
 魔剣の巫女たる彼女には分かる――この先に待っているものは極めて邪悪で危険なものだと。警戒を訴えるかのように、鞘の内で魔剣達がカタカタと刃を鳴らした。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
第一発見者の少女の証言を元にUDC組織も件の霊山に関する情報を集めている筈 
探索の手掛かりとなるかもしれません

マニアにも知られていない以上、アングラな怪奇サイトでも情報は不正確
ですが「少女の証言」という手掛かりさえあれば絞り込めます

アンカー先端のマルチ●ハッキングジャックでUDC組織の●情報収集システムと同期
UCも併用してこの身を外付け処理装置とし膨大な情報から霊山の伝承や地形、探索に役立つ情報を絞り込み

情報を元に現地を探索
●暗視やセンサーでの情報収集、●怪力で奥地を目指します

不慣れな膨大な情報処理で思考の切り替えも完全終了
犠牲者の拡大を防ぐ為、情報を整理し邁進するのみです



「この先に、感染型UDCの発生源があるのですね」
 センサーの暗視機能をオンにして、薄暗い樹海の中を突き進むのはトリテレイア。
 不穏な気配に満ちたそこは、木々や蔦や地形が複雑に入り組んだ天然の迷宮と化しており、ともすれば進む方角はおろか帰る道さえ分からなくなりそうなほど深い。
 だが彼の歩みに迷いは無く、何処へ向かえばいいのか既に分かっている様子だった。

「円滑に探索を進めるためには、やはり詳細な情報が欲しいですね」
 樹海突入に先駆けて、トリテレイアは現地についての情報収集を行っていた。
 既にそこがUDCの領域と化している以上、万全を期して臨むのは当然のことだ。
「第一発見者の少女の証言を元にUDC組織も件の霊山に関する情報を集めている筈。探索の手掛かりとなるかもしれません」
 彼は事後処理のためにやって来ていたUDC職員の端末に、ワイヤーアンカーの先端部のマルチハッキングジャックを差し込み、組織の情報収集システムと同期する。
 それはウェブ上に散らばる情報や各地のフィールドエージェントが集めてきた情報を蓄積、整理し、UDCに関連する情報を精査する巨大なサーチエンジンであった。

(マニアにも知られていない以上、アングラな怪奇サイトでも情報は不正確。ですが「少女の証言」という手掛かりさえあれば絞り込めます)
 【鋼の擬似天眼】を併用し、自らを外付けの演算処理装置として、膨大な情報の海に潜るトリテレイア。この中から必要な情報を集めるのは並みのハッカーでは困難だろうが、彼の驚異的な演算能力は常人には不可能であろう精密検索をも実現した。
 ほとんど失伝しかけていた霊山の伝承や、衛星写真の解析等も含めた地形情報。その他、探索に役立つと思われる情報を絞り込み、電子頭脳にインプットしていく。


 ――曰く、かの『剣』とは世に禍をもたらす『邪剣』であると。
 ただそこに在るだけで世界を汚染するその性質ゆえに、かの剣は封じられた。
 邪剣の封じを解く唯一の手段、それは生きた人間を"苗床"として捧げること。
 故にかの山に誰も近付けてはならぬ。邪剣の封を破らせてはならぬ――。


「伝承が正しければ、この状況はまさに剣の封印が解けかかっている証でしょうか」
 収集した情報を元に、今トリテレイアは霊山の樹海探索の真っ最中であった。
 邪剣が封じられていたという場所の座標や、そこに至るまでのルートや地形は全て頭に入っている。各種センサーを駆使して現地との情報の食い違いを適時修正しつつ、行く手を阻む障害物をウォーマシンの怪力で押しのけ、先に進んでいく。
 その足取りに迷いはない。不慣れな膨大な情報処理に没頭するうちに思考の切り替えも完全終了したらしい。『嘆き続けるモノ』との対峙で感じた葛藤や情動は、消えたわけで無いにせよ思考の底に留められ、いい意味で現在の任務に専念できている。

「犠牲者の拡大を防ぐ為、情報を整理し邁進するのみです」
 機械仕掛けの騎士として、そして猟兵として、己に為せることを最大限に。
 薄闇の中にセンサーの光を浮かび上がらせながら、トリテレイアは樹海の奥地を目指す。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
血を求める剣と、それ崇拝する邪教……危険ですね

【破魔】の【オーラ防御】を身に纏う
魔境……ダークセイヴァーの異端の神が支配する領域に近い
この世界にとっては劇毒に過ぎます

【悪魔王女の召喚】で【呪詛耐性】【狂気耐性】【環境耐性】を強化
リリム、防御魔法の強化をお願いします
報酬は……UDC組織の方に、アイドルのコンサートチケットを融通してもらいましょう

時々、聖槍で木に傷をつけて目印にして樹海を進む
周辺の被害を考えると、焼き払ってしまうわけにもいかない……厄介なところへ潜んだものです
リリム、この嘆きや悲鳴から敵の根城を探れませんか?
……意味をなさない繰り言ばかり?
先の軍勢の成り損ないといったところですか



「血を求める剣と、それ崇拝する邪教……危険ですね」
 目撃者から聞いた逸話を踏まえ警戒心を強めながら、オリヴィアは樹海に踏み込む。
 鬱蒼と生い茂る木々によって陽光が遮られ、何処からともなく嘆きの声や邪気が漂ってくる薄暗い森。そこは彼女にとって馴染みある別の世界の雰囲気に似ていた。
「魔境……ダークセイヴァーの異端の神が支配する領域に近い。この世界にとっては劇毒に過ぎます」
 このままUDCの感染が広まれば、領域の汚染は霊山だけに留まらないかもしれない。
 一刻も早く元凶を見つけるため、聖槍使いは慎重かつ迅速に探索を開始する。

「父と子と聖霊の御名によって命ずる。悪魔の娘よ、地の獄より来たりて我に従属せよ――!」
 破魔のオーラで樹海の瘴気を防ぎながら、オリヴィアは虚空に魔法陣を描くと【悪魔王女の召喚】を執り行う。儀式に応じて現れたのはオリヴィアを幼くしたような姿の、小悪魔的な衣装を身に纏った女悪魔であった。
「リリム、防御魔法の強化をお願いします」
 魔力増強の術を得意とするこの悪魔に協力を要請すると、リリムは「どうしよっかなぁ」という仕草を見せ、意味深な流し目を送る。「報酬は?」というアピールだ。
「報酬は……UDC組織の方に、アイドルのコンサートチケットを融通してもらいましょう」
 オリヴィアがそう告げた途端、リリムはキラキラと目を輝かせてにっこり頷く。
 魅了の悪魔でありながら国民的スタァに憧れるこの娘は、術に頼ることなく人々を魅せるアイドルを目標に、目下努力中なのであった。

「ありがとうございます、リリム」
 呪詛や狂気、環境への耐性を強化する術をオーラに付与し「こんなもんでしょ」と得意げな女悪魔。彼女に礼を言いながら、オリヴィアは聖槍を片手に先へと進む。
 霊障などの問題はこれで防げるはずだが、天然の迷路と化した樹海は気を抜けば遭難しそうだ。時々、聖槍で木に傷をつけて目印にしながら探索を続けていく。
「周辺の被害を考えると、焼き払ってしまうわけにもいかない……厄介なところへ潜んだものです」
 オブリビオンを討つ為とは言え、流石に森林火災を起こすのはまずいだろう。
 森の奥から件のUDCのものらしき邪気は感じるものの、正攻法での調査はなかなかに難儀しそうだった。

「リリム、この嘆きや悲鳴から敵の根城を探れませんか?」
 後を付いてくる女悪魔にもう一度頼んでみると、「しょうがないわね」と言いたげな顔をしつつ耳を澄ませる。元来が霊的存在である彼女は、同様に霊感も常人より優れている。
「……意味をなさない繰り言ばかり? 先の軍勢の成り損ないといったところですか」
 聞こえてくるのは『たすけて』『いたい』『どうして』といった断片的な言葉の羅列。これらの残留した感情や思念が集まれば『嘆き続けるモノ』となるのだろう。
 現状ではまだ、ここの思念には生者に害を為すほどの力は無い。しかしそれも放置を続け、また噂の"感染"が拡大し始めればどうなるか分からないだろう。

「あまり猶予は無さそうですね」
 オリヴィアは気を引き締めると、リリムの指差す方角に向かって移動を再開する。
 女悪魔曰く、その方向から死者の嘆きが強くなっているとのこと。この渦巻く無念の中心となる場所がオブリビオンの根拠地となっている可能性は高いだろう。
 慎重に、しかし着実に、シスターと悪魔は目的の場所に迫りつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鏡島・嵐
判定:【SPD】
深山幽谷、ってやつか。
せっかく登り甲斐がありそうなイイ山なのに、こんな薄気味悪ィ空気を纏ってるなんて勿体無ぇ話だ。
おれもわりと好奇心は強い方だけど、猟兵じゃなかったらこういう場所は回れ右して引き返してると思う。

多分この悪い空気が濃くなっていく方に件のUDCが潜んでるんだろうな。
こういう場所で《残されし十二番目の贈り物》はあんま使いたくねえけど、しょうがねえ。
ユーベルコードで〈第六感〉を強化して悪い気配の濃淡を認識しながら、中心(って言えばいいんかな)の方向を探って進んでいく。
場の空気に中てられたらこの後が大変だから、〈狂気耐性〉も併用しながら、平常心を保つようにして。



「深山幽谷、ってやつか。せっかく登り甲斐がありそうなイイ山なのに、こんな薄気味悪ィ空気を纏ってるなんて勿体無ぇ話だ」
 旅ガラスとして各地を放浪した経験から、嵐はこの山について残念そうに評価する。
 今はUDCの影響によって恐ろしい樹海に包まれているが、本来ならば霊山と呼ぶに相応しい景観があったかもしれない。元凶が消えればここも元に戻るのだろうか。
「おれもわりと好奇心は強い方だけど、猟兵じゃなかったらこういう場所は回れ右して引き返してると思う」
 当時はまだ汚染が弱かったのだろうが、にしても第一発見者の少女はよくこんな所に入ったものだ。生来の怖がりである嵐としては、尊敬するやら呆れるやらである。

「多分この悪い空気が濃くなっていく方に件のUDCが潜んでるんだろうな」
 意識を集中させて大気の流れを感じれば、邪気の漂ってくる大凡の方角は分かる。
 しかしその気配は曖昧模糊としていて、正確な位置を掴むにはもう一手必要そうだ。
「こういう場所ではあんま使いたくねえけど、しょうがねえ」
 嵐は祖母から学んだ占いの我流アレンジ【残されし十二番目の贈り物】を使って、自らの第六感を研ぎ澄ませる。目では視えないモノを捉える力が高まったこの状態なら、悪い気配の濃淡を認識し、その中心となる場所を探り当てることもできよう。

「……茨の迷宮、百歳の夢、其を切り拓く導を此処に!」
 力強く呪文を唱えると、まるで頭の中にかかった霞が晴れたように、あらゆる物事をよりはっきりと感じ取れるようになる。第六感や野生の勘が強化された証拠だ。
 ――だが、霊的な感覚を高めることは、霊的な影響を受けやすくなることでもある。
 樹海の中を漂う不気味な気配、亡霊たちの嘆きの声、ヒトならざる何かの視線。
 そういった「できれば気付きたくないモノ」まで、まざまざと感じ取れてしまう。

(平常心……平常心だ。こういうのは取り乱したら駄目だ)
 中てられたらこの後が大変だからと、嵐は努めて平静を保つように心がける。
 狂気に呑まれないための耐性は身につけている。落ち着いてやり過ごしてしまえば、この場の空気にヒトに危害をもたらすほどの影響力は無かった。

「山や森をこんな風に歪めちまう『剣』ねえ……一体どんな代物なんだか」
 きっと碌なものでは無いのだろうと確信しながらも、嵐はけして引き返さない。
 これ以上、こんな薄気味悪いものが広がってしまえば「引き返す場所」まで呑み込まれてしまうかもしれない。守りたいものを守るため、彼は懸命に先へと進む。

成功 🔵​🔵​🔴​

霧島・龍斬
さて、こういう面倒も何だろうと『踏み潰す』のが俺だ。
……そうすれば向こうもきっと気付くだろうさ。

【第六感】を活かしながら道を『斬り拓く』。
どうせ辿り着くべき場所は『知ってる』からなァ。
障害は片端から斬り捨てて迎えに行ってやるよ。
【属性攻撃】の氷の刃も、化物を黙らせる為の【破魔】の力も、今の俺は持ち合わせてる。
樹海程度で止まってやらねぇさ。

……噂か。果たして、それは『本当に噂だったんだろうか』
……って、な

※アドリブ連携可



「さて、こういう面倒も何だろうと『踏み潰す』のが俺だ」
 いつもと変わらぬ格好と得物を携えて、のしのしと樹海に踏み入るのは龍斬。
 彼の探索計画はシンプルだった。どんな障害があろうが斬って捨て、邪魔をするものは薙ぎ払い、直感のままに突き進む。慎重さを放り捨ててとにかく大胆に征く。
「……そうすれば向こうもきっと気付くだろうさ」
 この樹海の奥に何が――いや、誰が待っているのか知っているかのように彼は呟き。
 そして冷気を纏わせた機械刀を鞘から抜くと、ずん、と力強く踏み込んでいく。

「回り道なんてまどろっこしいことはしねえ。どうせ行くなら最短距離だ」
 義体化された豪腕を以って振るうは『凍狼孤月』。繰り出す技は氷戒葬剣『破断の絶氷』。その氷の刃に触れたものは樹木であれ大岩であれ、両断されるか砕け散る。
 文字通り道を『斬り拓く』龍斬の足取りには全く迷いがなく、ともすれば帰り道さえ分からなくなるような場所で、最初から行き先を知っているようにも見える。
「どうせ辿り着くべき場所は『知ってる』からなァ」
 迎えに行ってやるよ、と。誰も聞く者のいない樹海の中で、彼はそう呟いた。
 彼方から感じられるのは懐かしい気配。身体が機械と置き換わっても、この直感にだけは間違いは無い。

「だから、邪魔をするなよ」
 樹海の深奥へと近付くにつれて、立ちはだかる障害はより険しいものとなる。
 歪んだ樹木は奇怪に蠢き、嘆きや怨念に満ちた声と共に亡霊達が姿を見せる。
 だがそんなものは関係無い。いち傭兵であったかつてとは違い、氷の刃を生み出す魔術の力も、化物を黙らせる為の破魔の力も、今の龍斬は持ち合わせてる。
「樹海程度で止まってやらねぇさ」
 義体化によって得た数々の機能と、その頭脳に染み付いた歴戦の技術をフルに活かして、樹怪を凍てつかせ、亡霊を祓い清め、跡形も残さずに斬り捨てる。
「――俺の刃はどんな理不尽だろうと、理不尽に斬り潰す」
 刀身に纏う冷気よりもなお凍えるような闘気を帯びて、彼は立ち止まることなく進み続ける。その歩みを阻めるものは、もはや何一つとして存在しなかった。

「……噂か。果たして、それは『本当に噂だったんだろうか』……って、な」
 謎掛けのような言葉を呟きながら、龍斬は目的地が近いことに気づいていた。
 敢えて噂という形を取らせてUDCが存在を広めさせた真意も、彼には薄々分かる。
 その『想い』あるいは『願い』に応えるために辿り着いた先――ウワサの果てに待つものは、ついに姿を現した。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『『邪剣の器』相楽霜静』

POW   :    ……避けて、くれるか?
自身の【邪剣に汚染された右目】が輝く間、【邪剣】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    ――すまん、抑えられん
対象の攻撃を軽減する【邪剣の遣い手】に変身しつつ、【呪詛を吐き出し続ける邪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ……お前は俺を超えられるのか
【邪剣から放たれる居合】による素早い一撃を放つ。また、【邪剣からの強制干渉】等で身軽になれば、更に加速する。

イラスト:純志

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は霧島・龍斬です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「――来たか」

 怪異化した領域を進んだ果て、霊山の樹海の奥地にて「彼」は猟兵達を出迎えた。
 噂にあった通り、それは人間の姿をしていた。乱れた赤髪に黒いコートが特徴的な男性。だがそれ以上に目を引くのは、彼の手に握られている異様な『剣』だろう。
 その剣を見た猟兵達は一様に、計り知れないほどの邪気と狂気を感じる。そして同時に悟る――あの『剣』はそれ自体がUDC。それも邪神級の強大なオブジェクトだ。

「俺の名は相楽霜静。あるいは『邪剣の器』と名乗るべきかもしれない」

 感情を悟らせない抑揚の無い調子で、『邪剣』を携えた男は静かに語り始めた。
 元戦場傭兵であった彼は、とある事件で邪教団の魔の手にかかり、この地に封じられた邪剣復活のための生贄にされたという。

「教団の連中は俺が殺した。だがその時には既に、俺は邪剣の苗床になっていた」

 苗床の血肉と精神を糧として邪剣は成長を続け、時満ちれば完全なる復活を遂げる――それが教団の計画だと知った霜静は、何としても阻止する方法を模索したが、一度定着した邪剣を引き剥がすことは不可能であり、自害することさえできなかった。

「だから……俺はあえて、俺の存在が外のニンゲンに語り伝えられるよう仕向けた」

 それが他ならぬ『邪剣』を利する行為でもあることを理解して、感染型UDCでもあった邪剣の噂を広めた。そうすればUDC怪物の大量発生が起こり、事件解決のためにUDC組織が――そして猟兵が動き出すだろう。霜静はそれに最後の望みを託したのだ。
 全てが手遅れになる前に、自分ごと邪剣を殺す事の出来る存在が、ここに辿り着いてくれる可能性に。

「同情の余地は無いだろう。俺が原因でどれだけの無関係なニンゲンが巻き込まれたかは分かっている。ここに居るのは身も心も邪剣の一部と化した、ただの外道だ」

 冷静沈着な振る舞いのまま、男はすっと邪剣の切っ先を猟兵達に向ける。
 その全身から悍ましいUDCの邪気が放たれ、剣呑極まる殺気が辺りを満たす。

「だから――俺を殺せ。『邪剣』がこの身を喰い破り、完成する前に」

 もはや彼は、自らの意志で邪剣の意志を抑えることができなかった。
 邪剣の器にして遣い手として、邪剣による殺戮を行わせるための傀儡だ。
 この忌まわしき呪物を止めるためには、器である彼ごと破壊する他に無い。

 今この瞬間にも邪剣復活の時は、そしてUDCパンデミックの危機は迫っている。
 噂の果てに待っていた、厄災の元凶を討つために――猟兵達は戦闘態勢を取った。
フレミア・レイブラッド
本来なら既にその魔剣に飲まれても不思議ではないのに…貴方に敬意を表するわ、相楽霜静。
貴方は必ずわたし達が止める…望みは果たしてみせる。
だから、安心して眠りなさい。

彼に最大限の敬意を表しつつ【吸血姫の覚醒】を発動。
敵のUCに合わせて、動きを封じる雷撃や凍結の魔力弾【属性攻撃、高速詠唱、全力魔法、誘導弾】を覚醒した魔力で最低9連射して敵の動きを牽制。近接戦でも魔力弾と【念動力】を織り交ぜ、高速移動からの膂力を活かし、凍結付与した魔槍【怪力、早業、残像】の連撃で徐々に凍結させて動きを鈍らせて追い込んでいくわ。
後は最大威力【力溜め、限界突破】【神槍グングニル】で一気にその剣、叩き折ってあげるわ



「本来なら既にその魔剣に飲まれても不思議ではないのに……貴方に敬意を表するわ、相楽霜静」
 身の毛もよだつような邪剣の波動を肌で感じながら、フレミアは男に呼びかけた。
 常人ならば刹那のうちに精神が崩壊してもおかしくない、邪神にも匹敵する悪意。それを身の内に留めながら今だ自我を保っているのはまさに驚嘆すべきことだった。
 そんな彼の必死の抵抗を、生命を賭けて邪剣を滅する覚悟を無駄にしないために、吸血姫は槍を取る。自分たちが彼の待ち望んでいた"存在"であることを示すために。

「貴方は必ずわたし達が止める……望みは果たしてみせる。だから、安心して眠りなさい」
「感謝する……もうこれ以上は、抑えがきかん……避けて、くれるか?」
 邪剣に汚染された霜静の右目が輝き、剣呑なる殺気を放ちながら構えを取る。
 今や彼は邪剣の遣い手。戦いにおいて手心を期待することはできない――ゆえにフレミアも最大限の敬意を表するために、全身全霊を以って戦うことを決意する。

「我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」

 【吸血姫の覚醒】。真の力を解き放ったフレミアの背からは4対の真紅の翼が生え、身体は17,8歳ほどの外見に成長を遂げる。その身からほとばしる爆発的な魔力は、ヴァンパイアの真祖に連なる絶大なる力の発露。
 互いに真紅に染まった視線を絡み合わせながら、吸血姫と邪剣士は同時に地を蹴った。

「―――疾ッ」
 鋭い呼気と共に振るわれる邪剣。刹那のうちに9度の斬撃が神速の速さで放たれる。
 同時に吸血姫が紡ぐのは雷撃と氷雪の魔法。相手の攻撃に合わせて連続発射された9つの魔力弾が邪剣とぶつかり合い、激しい稲光と氷の破片を戦場に散らした。
「……魔法か」
 それは威力よりも感電や凍結によって動きを封じることに重点を置いている。
 命中してもダメージは小さいが妨害効果は高い。ゆえに霜静も警戒は怠れない。

「出し惜しみはしない。わたしの持てる全てでお相手するわ」
 魔弾による牽制を織り交ぜながら、フレミアは魔槍ドラグ・グングニルを手に接近戦を仕掛ける。覚醒に伴ってパワーもスピードも飛躍的に向上した今の彼女ならば、並みの剣士など鎧袖一触に蹴散らせることだろう――そう、並みの剣士であれば。
「……光栄なことだな。こうなる前に手合わせしてみたかった」
 瞳を真紅に輝かせながら、霜静は吸血姫の魔槍と互角に斬り結んでいた。それは邪剣に与えられた力に依るものだけではない、人として磨いた剣術の技量。元より優れた剣士であった彼が邪剣の器に選ばれたのは、在る種必然だったのかもしれない。

「本当に……こうなってしまったのが惜しいわね」
 膂力と速度ではフレミアの方が勝っている。だが技量においては霜静のほうが上。
 フレミアは惜しみのない賛辞を口にしながら、自らの優位を最大限に活かした強打の連撃で攻め立てる。いかな達人であろうとも捌き切れない重さと手数を以って。
「だけど容赦はしないわ。それは貴方の覚悟への侮辱だから」
 駆使するのは槍術だけではない。呪文ひとつで放たれる魔弾に、さらには不可視の念動力で、多角的に休みない攻撃を仕掛ける。こうなれば邪剣の遣い手も対応は後手に回らずをえず、致命傷にはほど遠いものの徐々に手傷が重なりはじめる。

「……なんだ? 身体が重い……」
 やがて霜静は、思うように動かない自分の身体に違和感を覚えるようになる。
 まだ動きが鈍るほどのダメージは受けていない。にも関わらず拘束具を付けられたようなこの感覚は――寒空の下に長く身を晒したときの感覚に似ている。
「効いてきたようね」
 静かな微笑みと共にフレミアが突き放つ魔槍。その穂先が微かな冷気を帯びている。
 彼女が凍結の力を付与していたのは魔弾だけでは無かった。魔槍による一撃を当てるたびに、傷口から染み付いた冷気は徐々に霜静の動きを鈍らせていたのだ。

「……綿密に、自分の手札を活かしきった戦術だな」
 霜静は冷静な口調でそう評するが、さりとて対抗する術があるわけでは無かった。
 保たれていた拮抗が一度崩れはじめると、一気に彼は劣勢に追い込まれていく。
 その機を逃さず、フレミアは持てる全ての魔力を魔槍に圧縮して注ぎ込んでいく。
「一気にその剣、叩き折ってあげるわ」
 放たれる一撃の名は【神槍グングニル】。膨大な真祖の力によって形成された全長数メートルの長大な真紅の魔槍は、吸血姫のありったけの膂力をもって邪剣に叩き付けられた。

『―――!!!!』

 悲鳴のような亀裂音と共に、霜静の手にあった邪剣の刀身に大きなヒビが入る。
 パラパラとこぼれ落ちる刃の破片は、まるで剣が流す血の雫のようでもあった。
「……これが、猟兵の力か……やはりお前達は、俺が待っていた者だ……」
 神槍の衝撃に吹き飛ばされながら、霜静は感慨に満ちた呟きを漏らす。今までどうあっても壊せなかった邪剣が壊れていく――それはまさに彼が望んでいた瞬間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

何が出るかと思えば、まさかのご同輩とはな
まぁ、あまり気を落とすな…よくある話さ

ナガクニで攻撃
敵の邪剣を武器受けで止めつつ、グラップルで本体を殴りつける
下手な同情や憐れみは無用だ
奴と面識は無いがこの仕事を選んだ時点で、己の屍を戦場で晒す事は互いに覚悟の上だからな

やれやれ…「避けてくれ」と言うなら少しは手加減しても良いと思うが?
こう見えてもか弱いレディなのでな

敵の目が輝いたらこちらもUCを発動
攻撃回数を重視した刃を放ち、邪剣の攻撃を受け止め、9回目の攻撃と同時にシガールQ1210で敵の背後を早撃ち
直前に敵背後へ出現させた刃を使った跳弾で死角から攻撃、敵が怯んだら再度UCで追撃を行う



「何が出るかと思えば、まさかのご同輩とはな」
 同じ戦場傭兵として、そしてUDCに人生を狂わされた者として、キリカが霜静を見つめる視線には親近感と同情が宿っていた。あの邪剣ほどタチは悪くないにせよ、奇妙なオブジェクトに"憑かれた"者としても、他人事とは思えない気分である。

「まぁ、あまり気を落とすな……よくある話さ」
「あぁ……気落ちはしていない。お前達が来てくれたからな」
 短刀「ナガクニ」を鞘から抜いたキリカに、邪剣の器である霜静は刃を向けた。
 その言葉は淡々としているが、どこか希望が含まれているようにも感じられる。
「……ここで俺を終わらせてくれ」
「分かっている。いくぞ」
 下手な同情や憐れみは無用。振り下ろされる邪剣の刃をナガクニで受け止めながら、体術を駆使して本体を殴りつける。体制を崩したところに短刀で斬りつける所作は、一切の躊躇もない殺意に満ちたものだった。

(奴と面識は無いがこの仕事を選んだ時点で、己の屍を戦場で晒す事は互いに覚悟の上だからな)
 戦場に生きるとはそういう事だ。悔いを残さず逝けるならまだ幸福なほうだろう。
 多くの死線をくぐり抜け、死と向かい合ってきた者同士の共感がそこにはあった。
 ふたりの戦場傭兵は短刀と邪剣をもって互いに一歩も退かぬ剣戟を繰り広げる。
「……またこいつが暴れ始めた……避けて、くれるか?」
 ふと死闘のさなかに霜静の右目が輝く。邪剣の発する禍々しいオーラが強まり、剣技の構えも変化する。攻撃の手数を激増させるユーベルコードの前兆だ。

「やれやれ……『避けてくれ』と言うなら少しは手加減しても良いと思うが? こう見えてもか弱いレディなのでな」
「……か弱いレディは、そんな物騒なものを持たないだろう」
 なけなしのジョークに返ってきたのは皮肉混じりの軽口と笑み。違いない、とキリカもまた口元を緩めながら、自身に取り憑く呪いの人形を邪剣の前にけしかける。
「踊れ、デゼス・ポア。貴様を呪う者達の怨嗟の声で」
 演目の名は【バール・マネージュ】。キャハハハハハハ、と愉しげな哄笑と共に放たれた幾つもの錆びた刃が、鈍い金属音を立てて邪剣の連撃を受け止めた。

「……お前も物騒なものを連れているな」
「おかげさまでな」
 霜静の連撃は止まらない。デゼス・ポアも新たな錆刃を次々と放ち対抗するが、卓越した剣士の器を得た邪剣相手に、単独で切り結び続けるのは些か荷が重かった。
 8度目の斬撃で人形の放った刃はすべて切り払われ、続く9度目の斬撃が人形とキリカを真っ二つに両断する――そう思われたまさに刹那、一発の銃声が鳴り響いた。
「……っ? どこを狙って……」
 銃声の元はキリカが早撃ちしたシガールQ1210。反射的に身構えた霜静であったが、銃弾は避けるまでもなく背後に飛んでいく。咄嗟のことで狙いを誤ったか――そんな彼の杞憂はすぐに晴らされることになる。

「キキキキキキキキッ」
 引きつるような甲高い、嘲るような声でデゼス・ポアが笑う。その瞬間、キンッ、と澄んだ音を立てて銃弾が"何か"にぶつかり、霜静の背中に向かって跳ね返った。
「なに……!?」
 外れたはずの銃弾を弾いた"何か"とは、デゼス・ポアが先の攻防に紛れさせて、事前にその位置に配置していた一本の錆刃だった。まったく予期していなかった死角からの跳弾を受けて、霜静がふらりとよろめく。

「……ずいぶんと、息の合った連携だな」
「本意だとはあまり言いたくないのだがな……デゼス・ポア!」
「ヒヒヒヒヒャハハハハハハハハハハハッ!!」
 敵が怯んだ一瞬の隙を突いて、呪われし人形が再び【バール・マネージュ】を舞う。
 放たれる錆びついた刃は飢えた獣の牙のように、次々と標的の身体に突き刺さった。
「……見事だ」
 針鼠のような有様となって、鈍い激痛に歯を食いしばりながら後ずさる霜静。
 だが、今だ邪剣に汚染されていない彼の左目はキリカのことをまっすぐに見つめ、感謝の想いを伝えていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
…承りました、相楽様
人々を守る騎士として、責任をもってその覚悟に応えましょう

…貴方とは、違う形で出会いたかったと恨み言を言わせて頂きますよ

相手の手数に対応する為UC起動

最後に一つだけ
これだけは貴方に知って頂きたい
此度の一件、民間人に未だ「手遅れ」は出ておりません
…始めましょう

向上した機動力で中衛、後衛の仲間を●かばいつつ接近戦を敢行
●限界突破した●怪力による●武器受け●盾受けで攻撃を凌ぎつつ干渉し、相手の連撃の間隔や動作に綻びを生じさせます
生み出された隙を●見切り、邪剣を弾き渾身の●シールドバッシュを

(駆動部が動作不能となり)
…口惜しいですがどうやら私ではここまでが限界のようです…


鏡島・嵐
なあ、おっさん。おれは今までも、そして今も、戦うのが怖くて堪らねえ。
それはきっと、こういう現実が存在するってことを、心のどこかで気付いてたからなんかもしれねえ。
でも……いや、だからこそか。おっさんが覚悟を決めてるって言うなら、それに応えねえと、きっと後悔するんだろうな。
……さあ、悪い夢はここで終いだ。笑い飛ばせ、ラッテンフェンガー!

《笛吹き男の凱歌》で自分や仲間を強化し、〈スナイパー〉や〈フェイント〉で精度を高めた〈援護射撃〉で味方が動きやすくなるよう支援したり、相手の攻撃を〈第六感〉で察知してタイミングよく〈目潰し〉で妨害をしかけたりする。
それでも防げねえ攻撃は〈オーラ防御〉で耐える。



「……承りました、相楽様。人々を守る騎士として、責任をもってその覚悟に応えましょう」
 邪剣を構える剣士に対峙し、騎士の儀礼剣と大盾を手に向かい合うはトリテレイア。
 そのセンサー光の眼差しには、討たねばならぬ敵なれども相手に対する敬意がある。
「……貴方とは、違う形で出会いたかったと恨み言を言わせて頂きますよ」
「すまん……と言うのもおかしいか。今となっては仕様がないことだ」
 邪剣の遣い手として操られる身ながらも、霜静の口ぶりに後悔は無いようだった。
 時の針を逆に回すことはできない。今為せることはただひとつ――彼がその自我すら失ってしまう前に、彼の望みを果たしてやることだろう。

「最後に一つだけ、これだけは貴方に知って頂きたい」
「…………何だ?」
 霜静の沈黙がやや長かったのは、思いつく限りで最悪の報告を予想したからだろう。
 しかしトリテレイアは静かに頭を振ると、感染型UDCの齎した被害を彼に伝える。
「此度の一件、民間人に未だ『手遅れ』は出ておりません」
「……そうか。それは、何よりだ……」
 犠牲となった人々はおらず、UDCの汚染領域も今だ人のいない郊外に留まっている。無論それは猟兵達の迅速な行動と対応によるものだが、霜静にとっては吉報だったろう。感情に乏しい淡々とした口ぶりの中に、僅かな安堵が滲み出している。

「……俺の存在に気付いたのがお前達で良かった。心から感謝する」
「騎士としての使命を果たしただけに過ぎません……始めましょう」
 ああ、と頷いた霜静の右目が紅く染まり、悍ましき邪剣の力が解き放たれる。
 卓越した剣技を可能とする彼のユーベルコードに対抗するために、トリテレイアは【鋼の騎士道】を起動。全格納銃器を強制パージし、近接戦闘形態に変身する。

「なあ、おっさん。おれは今までも、そして今も、戦うのが怖くて堪らねえ」
 向かいあう剣士と騎士の後方から、剣士に向かって静かに呼びかけるのは嵐。
「それはきっと、こういう現実が存在するってことを、心のどこかで気付いてたからなんかもしれねえ」
 戦うことへの恐怖、そして戦いの果てに待っている末路のひとつと対面させられた彼の表情は青ざめ、手足は震えている。彼は恐れていた――自分が死ぬことも、誰かの命を奪うことも。それは彼の弱さでもあり、決して取り去れない心の軸だった。

「でも……いや、だからこそか。おっさんが覚悟を決めてるって言うなら、それに応えねえと、きっと後悔するんだろうな」
 震える手で弾丸を握りしめ、スリングショットに装填すると、それを見た霜静は無言のまま頷いた。それでいいと、勇気を振り絞る若人への穏やかな激励を込めて。
 相手の覚悟に応えるために、なけなしの勇気を心の底から引き出す。どんなに辛くても、苦しくても、怖くても、後悔だけはしたくない。それが嵐の譲れない一線だ。

「……さあ、悪い夢はここで終いだ。笑い飛ばせ、ラッテンフェンガー!」
 恐れを吹き飛ばすように叫ぶと、召喚された道化師が【笛吹き男の凱歌】を高らかに奏でる。勇ましき音楽が戦場に木霊する中、猟兵と邪剣の戦いが再び始まった。

「……いくぞ」
 邪剣に汚染された右目を輝かせながら、稲妻のごとき速さで霜静が邪剣を振るう。
 刹那のうちに9度に渡る超高速の斬撃は、その一撃一撃が必殺の切れ味を誇る。
 トリテレイアは後方の嵐をかばうように立ちはだかりながら、全身全霊を以ってその猛攻に応えた。
「リミット解除、超過駆動開始……!」
 全リソースを近接戦闘に割り振ることで、機動性と運動性は飛躍的に向上。限界を超えた出力で振るわれる儀礼剣は邪剣の刃とも互角に切り結び、身の丈ほどもある大盾はいかなる角度の攻撃も通さない。

「いくぜ……!」
 騎士と剣士が激しい剣戟を繰り広げる中、嵐はスリングショットでトリテレイアの戦いを援護する。敵が攻撃を仕掛けるタイミングを見切って、命中精度を高めた石礫を発射――威力はさしたるものでは無くとも、目を狙えば気を散らすことはできる。
「む……っ」
 的確な狙撃から目を守るために霜静が僅かに身体を反らす。その機を逃さずトリテレイアが一歩踏み込み、怪力と巨体を活かした圧力をかけて相手を押し込んでいく。
 彼らの勇戦を讃えるかのように、道化師の奏でる凱歌はさらにテンポを上げていき、その音色に共鳴する猟兵たちの戦闘力は強化され、攻勢はより激しさを増す。

「良い連携だ……だが気をつけろ。こいつも、昂ぶっていやがる」
 じりじりと後退を強いられる中、霜静の右目がさらなる輝きを放つ。血と魂に飢えた邪剣はいよいよその本性を露わにし、斬撃の苛烈さはいよいよもって頂点に迫る。
 もはや嵐の目では攻撃が見えない。トリテレイアのセンサーでも辛うじて斬撃の軌道が読めるくらいだ。それでも彼らは一歩も退かずに邪剣の猛攻を凌ぎ続ける。

「見えなくても分かるぜ、アンタの殺気は恐ろしすぎてな!」
 第六感を頼りにして嵐が飛礫を放つ。一発目は相手を油断させるためのフェイント。そして間髪入れずに放った二発目が、邪剣の攻撃のタイミングを見事に捉える。
 技の出掛かりを妨害されたことで生じる一瞬の虚。そこにトリテレイアの剣戟が差し込まれれば、綻びはより大きなものとなる。
「出力最大……これが私の騎士道です……!」
 地から天へと切り上げるように振るわれた剣が、霜静の手ごと邪剣を弾き飛ばす。
 その瞬間、がら空きとなった胴体目掛けて、トリテレイア渾身のシールドバッシュが炸裂した。

「――――ッ!!!! 見事、だ!!」
 霜静の口からごぼり、と滝のように血があふれ出す。艦砲の直撃にも匹敵しようかという凄まじい衝撃を受けて、彼の身体は大きく彼方へと吹き飛ばされていく。
 即座に追撃を仕掛けようとするトリテレイアであったが、彼の足はそれ以上前には進まなかった。限界を超えた高速機動の連続に、駆動部の耐久性が保たなかったのだ。

「……口惜しいですがどうやら私ではここまでが限界のようです……」
「無理はするなよ。返り討ちにあったら意味が無いしな」
 駆け寄ってきた嵐が、両膝や腕の関節から煙を上げるトリテレイアに肩を貸す。
 まだ立って歩くことがどうにかできる間に、前線から後退するのが得策だろう。
 反撃を警戒して嵐がオーラの防壁を張りながら、残る仲間に決着を託してふたりは退いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュリア・ホワイト
――成程、事情は把握したよ
ヒーロー・オーヴァードライブ、邪剣の破壊を実行する!
「だが、それとは別に一つ謝罪を、相楽霜静。キミの危機に間に合わなかった」
キミは不要と言うかも知れないが、これがヒーローの性分でね

さ、頭を切り替えて敵を打倒しよう
一刻も早く剣を破壊するべきこの状況……
ならば、最大の物理的威力を持つボクの切り札をぶつけさせて貰う!
本体たる器物の姿に変身して【そして、果てなき疾走の果てに】!
器も、剣も、二度と復活しないよう纏めて砕いて見せようじゃないか
「それが正義と信じて!世界はボクが守ってみせる!」
そうとも、危機は払われたのだと、胸を張って言うために。



「――成程、事情は把握したよ。ヒーロー・オーヴァードライブ、邪剣の破壊を実行する!」
 ヒーローとしての名を高らかに名乗って、邪剣の遣い手の前にジュリアが現れる。
 燃え盛る正義のハートは蒸気となって立ち上り、鋼の心臓が脈を打つ。人々を、そして世界を救わんがため、使命を果たすという彼女の決意に些かの揺らぎも無い。

「だが、それとは別に一つ謝罪を、相楽霜静。キミの危機に間に合わなかった」
「……それは」
「キミは不要と言うかも知れないが、これがヒーローの性分でね」
 虚を突かれたような顔をする男に、ジュリアは優しい笑みを浮かべながら言った。邪剣の器となった彼も、本来なら救うべき人間だった。倒すことに躊躇いは無くとも、こうなる前の彼を救けられなかったのはジュリアにとって謝るべきことだった。

「……律儀なやつだ。なら、これ以上は遠慮するな。怪物(ヴィラン)を倒すのも、ヒーローの仕事だろう」
「ああ。その通りだよ」
 敵を打倒するために頭を切り替えて、ジュリアの表情が好戦的な笑みに変わる。
 ここから先はもう止まらない。いつものように全力かつ最短最速で目的を果たす。
「一刻も早く剣を破壊するべきこの状況……ならば、最大の物理的威力を持つボクの切り札をぶつけさせて貰う!」
 ジュリアがすっと手をかざすと、黄色と黒の警戒色をした踏み切り型の結界が霜静の左右から挟み込むように召喚される。そして彼女自身の身体は真っ白い蒸気に包まれ、ヤドリガミとしての本体の器物のものへと変化していく。

「列車が通過するよ! 線路内への立ち入りはご遠慮願おうか!」
 旧式の蒸気機関車、D110ブラックタイガー号に変身したジュリアが車輪を回す。
 煙突から煙を噴き上げて猛進するその先にいるのは邪剣の遣い手。結界によって移動を制限された彼に残された選択肢は、後ろに逃げるか、正面から迎え討つか。
「……まさか轢き潰されることになるとは思わなかったな」
 霜静が――正しくは彼を操る邪剣が選んだのは前者だった。UDCに汚染された右目が紅い輝きを放ち、身体は1撃9斬の構えを取る。たとえ相手が鋼の列車であろうとも、邪剣はそれを斬り裂くだけの切れ味を備えているだろう。

 それでも列車は止まらない。ジュリアは――オーヴァードライブは臆さない。
「器も、剣も、二度と復活しないよう纏めて砕いて見せようじゃないか」
 たとえそれで相討ちになったとしても、この身をバラバラに斬り裂かれようとも、絶対に成し遂げてみせる。なぜなら自分はヒーローであり、目の前には倒すべきヴィランがいた、この戦いには世界の命運が掛かっているのだから。

「それが正義と信じて! 世界はボクが守ってみせる!」

 警笛の咆哮と共に突撃する蒸気機関車と、神速で振るわれる邪剣が交錯する。
 金属同士がぶつかりあう甲高い音が鳴り響き、黒鉄の破片が戦場に舞い散る。
 それでも――ブラックタイガー号の進撃を阻める者などこの世にありはしない。
「が――――ッ!!!!!」
 【そして、果てなき疾走の果てに】――真正面から機関車の体当たりを受けた霜静の身体は高々と宙を舞い、その手の中で邪剣の刀身が中程からパキンと折れ砕けた。

(そうとも、危機は払われたのだと、胸を張って言うために……)
 疾走を果たした刀傷だらけの蒸気機関車が、人間の少女の姿に戻っていく。
 負った傷は決して浅からぬもの。だが、ぱたりと地面に倒れこんだジュリアの表情は、何かを成し遂げた者らしい、どこか清々しくも寂しげなものだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
もはや「犯人」は誰もおらず、「被害者」のみということですか

白き翼の姿に変身
手法は手放しに褒められたものではありませんが、その覚悟を買いましょう
その邪剣、必ず打ち砕く

速度を極めた一撃を目視で見切るのは至難
故にその起こりを読む
斬撃が放たれる瞬間、膨れ上がる【殺気】や強制干渉の【呪詛】を【第六感】で察知
聖槍を差し挟み受け流す(武器受け・カウンター)

弾いた反動で体勢を崩した隙に、【全力魔法】【属性攻撃】【破魔】により、聖槍に聖なる魔力を圧縮
【嚇怒の聖煌剣】を形成し、【怪力】を以って振り下ろし、邪剣ごと諸共に両断する
聖煌剣よ! 邪悪を斬り裂け!

肉体と精神を奪われ――せめてその魂だけでも救われてあれ



「もはや『犯人』は誰もおらず、『被害者』のみということですか」
 白き翼をまとう天使のような姿に変身して、オリヴィアは破邪の聖槍を突きつける。
 その視線の先、吹き飛ばされた相楽霜静は、折れた邪剣を支えにして立ち上がった。
「そういう、ことだな……そして『被害者』だった俺は今や『加害者』だ」
「手法は手放しに褒められたものではありませんが、その覚悟を買いましょう」
 邪剣の脅威を伝えるために彼が取った行為が、多くの人々を危険に晒したのは事実。
 それでも我が身と共に邪剣を滅ぼさんという覚悟を受け止め、聖槍使いは地を蹴った。

「その邪剣、必ず打ち砕く」
「ああ……お前達なら、俺を超えられるはずだ」
 向かってくるオリヴィアに信頼の眼差しを送りながら、霜静は居合の構えを取る。
 邪剣からの干渉が強まっているのか、その所作はどこか非人間的なものを感じさせ。膨れ上がる殺気から、オリヴィアは敵が本気でこちらを仕留めに来ると悟る。
(速度を極めた一撃を目視で見切るのは至難。故にその起こりを読む)
 第六感を研ぎ澄ませて邪剣の呪詛と殺気を感じ、見切るのは斬撃が放たれる瞬間。
 見えざる緊張感が頂点に達した刹那、オリヴィアは聖槍による最速の刺突を放った。

「……!」
 キンッ、と刃と刃が火花を散らし、神速の居合斬りが聖槍の穂先に受け流される。
 渾身の一撃を弾かれた反動で、霜静の体勢が崩れる。その隙を勝機とすべくオリヴィアは魔を討ち破る聖なる魔力を聖槍へと収束させ、ユーベルコードを発動した。
「無窮の光よ! 絢爛たる勝利の煌きで天地を照らせ!」
 超高密度に圧縮された聖なる力は黄金の光となって聖槍を包み、巨大な光の大剣を形成する。それは万物を斬り裂く【赫怒の聖煌剣】。天使の姿を取った時にのみ発動できる、彼女の切り札のひとつだった。

「肉体と精神を奪われ――せめてその魂だけでも救われてあれ」
 オリヴィアは穏やかな聖職者としての表情で、悪しき邪剣の犠牲となった男を悼み。
 直後、その顔は凛々しくも苛烈なる断罪者のものに変わり――人並み外れた渾身の膂力を以って、必滅の一撃を振り下ろす。

「聖煌剣よ! 邪悪を斬り裂け!」

 昇る太陽のごとき黄金の閃光が戦場を満たし、邪気に汚染された森を浄化していく。
 霜静は咄嗟に受け太刀の構えを取るものの、万全ではない体勢で、しかも折れた邪剣で、その一撃を受け止めきることは不可能だった。
「この……光……邪剣が、恐れている……ッ!!!!」
 口元を歪めながらそう呟いた直後、男の姿は閃光によってかき消されていく。
 そして光の中から、彼とは異なる何者かの悲鳴が――邪剣の魂の絶叫が木霊した。

「――どうか安らかに」
 振り下ろした聖煌剣に確かな手応えを感じ、何者もいなくなった破壊の痕に向けてオリヴィアは静かに告げる。邪気に包まれた霊峰の樹海に、清浄が戻りつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
外道なんかじゃない…剣の意思に逆らい、自分のできる限りをした戦士だよ…。

相良さんだって被害者…ただ切り離すのは難しいけど、魔剣と親和性の高いわたしなら、身代わりも…。
※自身が身代わりになろうとするもラン達が頭によぎり、躊躇い、それでもその身を差し出そうと…

黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、早業】で目晦ましと同時に呪力で剣を侵食…。
更に【力溜め、早業、呪詛、衝撃波】バルムンクの一撃で剣を抑え、【呪詛、高速詠唱】呪力の縛鎖で拘束…。
自身に剣を移せないか試みるよ…。
…後は他の猟兵にわたしを殺して貰えば…

移せなかった時は、凶太刀の高速化と神太刀の力を乗せ、邪剣の核を【神滅】で破壊…。
解放できないか試すよ…


霧島・龍斬
お前がとっくに『喰い破られてる』ならそうしてやったかもしれねェな。
だが、お前が何より知っている筈だ。
つまらない『斬り方』をしに来た訳じゃねェ。お前を『迎えに来た』だけだ。

俺が斬り捨てるのは、その業物(じゃけん)が起こした『歪み』。
その結果、お前が生きてるかは知らねぇが、それでも『連れて帰る』までだよ。よしみでな。

【見切り】【第六感】で剣劇を捌きつつ、
【属性攻撃】【破魔】【鎧無視攻撃】の【指定UC】の一撃を『捩じ込む』。

高速の斬撃だろうと所詮はお前の『手癖』だろ?
それを掻い潜って尚、俺が『斬った』のであれば――
俺達の、勝ちなんだからな。

※アドリブ可



「……これが、俺の最期か……ようやく、だな」
 昏い闇に包まれた霊峰の樹海の最深部。そこに満身創痍となった邪剣の遣い手がいた。
 邪剣に身体を操られるまま、ここまで撤退してきたのもの――猟兵達から受けた傷は深く、そして邪剣本体が受けたダメージはもはや修復の見込みの無いものだった。

「……外道に堕ちた身にしては、なかなか恵まれた終焉だ」
 誰もいない森の奥で、霜静は邪剣と共にひっそりと最期の刻を迎えようとする。
 だが、そこに草を踏む小さな足音が近付いてくる。現れたのは、魔剣の巫女の娘。
「外道なんかじゃない……剣の意思に逆らい、自分のできる限りをした戦士だよ……」
 その娘――璃奈は敬意と哀しみをたたえた瞳で男を見つめながら近付いていく。
 このまま彼を終わらせたくは無い。緊張で高鳴る彼女の胸には、ある悲壮な決意が秘められていた。

「相楽さんだって被害者……ただ切り離すのは難しいけど、魔剣と親和性の高いわたしなら、身代わりも……」
「やめておけ……こいつはもう、完全に俺の一部になっている。それにもし仮にそれが出来たとしても、お前はどうなる」
 魔剣の巫女である璃奈ならば、確かに邪剣の依代となれる可能性はあるかもしれない。だがそれは霜静を救うために璃奈が犠牲になるということ。邪剣に肉体と魂を捧げるということだ。

「お前という新しい器を得た邪剣が復活してしまっては、元も子もないだろう」
「……私に剣を移した後は、他の猟兵にわたしを殺して貰えば……」
 璃奈の頭の中でふと、屋敷で帰りを待っているはずの家族の笑顔がよぎる。
 メイド人形に仔竜にミレナリィドールに演劇少女、みんな世界を超えて出会った大切な者達。もしも璃奈がここで生命を落とせば、彼女らはきっと深く悲しむだろう。
 それでも――救えるかもしれない命を前にして、助けないという選択肢は彼女には無かった。

「駄目だ、危険すぎ……っ!!」
 提案を拒否しようとする霜静の意志に反して、邪剣が彼の肉体を強制的に動かす。
 それは生存本能から来る行動だったのだろう。折れてボロボロになった邪剣が闇色の軌跡を描き、刹那のうちに9度の斬撃が璃奈に襲い掛かる。
「避けてくれ……っ」
「大丈夫……」
 璃奈はさっと呪槍・黒桜を振るい、漆黒の呪力の花吹雪を目眩ましとして放つ。
 舞い散る桜の花びらの中に消えた標的を邪剣が見失う中、彼女は素早く魔剣・バルムンクに得物を持ち替えると、呪詛と衝撃波を帯びた一撃を渾身の力で叩きつける。
『―――!!!』
 霜静の口からではなく、邪剣の刀身から、金属が擦れるような悲鳴が聞こえた。
 竜殺しの魔剣に抑えつけられた剣は、さらに呪力の縛鎖によって縛り上げられ、黒桜の呪力に侵食されることで完全に抵抗力を失う。

「これで後は……剣をわたしに……」
「よせ……っ!」
 霜静の制止も振り切って、璃奈は拘束した邪剣に触れる。その瞬間、神経や血管の一本一本に汚泥を流し込まれたような、凄まじい不快感と苦痛が全身を駆けぬける。
 これまでにも呪われし剣は何本も祀ってきた璃奈だが、その中でもこの邪剣は指折りだと言える。まるで殺戮と破壊の意志が形を成したような、純然たる悪意の塊だ。
 それでも彼女は必死に苦痛に耐え、自らの身体に剣を宿しなおそうと試みるが――。
「ぅ……駄目……なの……?」
 それは巫女としての親和性よりももっと根本的な、猟兵とオブリビオンという相反する存在の反発だった。本来ならば戦いあうはずの存在を身に宿そうという行為は強烈な拒絶反応を生み、璃奈の身体は弾かれるように後ろに吹き飛ばされる。

「痛っ……」
「大丈夫か……ぐぅ……ッ」
 邪剣との接触と拒絶反応ですぐには起き上がれない璃奈に、幽鬼のような足取りでゆらりと霜静が近付いていく。その右目は今だ邪剣の汚染によって紅く輝いていた。
「くそ……誰か俺を……早く俺を殺してくれ……そうすればこいつも……!」
「お前がとっくに『喰い破られてる』ならそうしてやったかもしれねェな」
 表情を歪めることさえできないまま、悲痛さを言葉に込めて絞り出す霜静。
 そんな彼の前にすっ、と立ちはだかったのは――退魔刀を手にした偉丈夫だった。

「お前は……龍斬、か」
「ああ、久しぶりだな」
 外見的にはかつてよりも随分と若返った姿で、サイボーグの男は旧友に手を振る。
 彼と霜静は共に傭兵として戦場を駆けた戦友にして好敵手。あの頃とは互いに変わったところも多かったが、その絆は今も変わらずに残っていた。

「……お前なら来ると思っていた。決着をつける最後の機会だな」
「おいおい、逸るなよ。まだ『食い破られてねえ』んだろう?」
 邪剣の切っ先を向ける好敵手に対し、龍斬は退魔刀を構えながらもそう応える。
 彼がわざわざこんな所にまで足を運んだのは、この男を「殺す」ためではない。
「お前が何より知っている筈だ。つまらない『斬り方』をしに来た訳じゃねェ。お前を『迎えに来た』だけだ」
 『神凍滅却』と名付けられた借り物の刀に冷気を纏わせ、男ははっきりと宣言する。
 これから始めるのは単なる殺し合いではない。友を邪剣から救うための果し合いだ。

「俺が斬り捨てるのは、その業物(じゃけん)が起こした『歪み』」
 氷の魔力を籠めた刀を手に一歩踏み出す龍斬。そこはもう互いの剣の間合いだった。
 殺気に反応した邪剣が霜静の身体を操り斬撃を放つ。常人であれば視ることもできぬ剣速だが、機械化された五感と戦歴に研がれた第六感を持つ龍斬には反応できる。
「その結果、お前が生きてるかは知らねぇが、それでも『連れて帰る』までだよ。よしみでな」
「……お前という、奴は」
 呆れたような、安堵したような。複雑な情感を籠めた吐息が霜静の口から漏れる。
 互いに殺す気としか思えないような激しい剣戟を交えながらも、まるで時代劇の殺陣を見ているように淀みがないのは――恐らくは両者が相手の手の内を知り尽くしているからこそだろう。

「高速の斬撃だろうと所詮はお前の『手癖』だろ? それを掻い潜って尚、俺が『斬った』のであれば――俺達の、勝ちなんだからな」
「……面白い。なら、超えてみせろ、龍斬……!」
 剣士達の剣戟はさらに激しさを増していく。龍斬が霜静の手癖を理解しているように、霜静もまた龍斬の技巧を知り尽くしている。明暗が分かれるとすれば、それは両者の過去との差異――龍斬ならば義体や魔術、霜静ならば邪剣の力が切掛となる。
 遣い手の命すら代償にして繰り出される1撃9斬の猛攻は、技自体は同じでもかつての霜静の実力を超越した技だ。所詮はと嘯きはした龍斬も、徐々にではあるが捌くのが遅れだしてくる。

「思った以上の業物だな、そいつは」
「俺も、散々に苦戦させられた代物だ……!」
 幾十幾百にも渡る交錯の末、ついに邪剣が龍斬の刀をかち上げて体勢を崩す。
 間髪入れずに繰り出される斬撃が、男の腹を両断するかに思われた、刹那――。

「神をも滅ぼす呪殺の刃……かの邪剣に滅びを……!」

 迅雷のごとく駆け込んだのは、妖刀・九尾乃凶太刀と九尾乃神太刀を構えた璃奈。
 苦痛をおして残された力を振り絞り、凶太刀による加速に神太刀の神殺しの力を重ね、繰り出したのは【妖刀魔剣術・神滅】。莫大な呪力をただ一太刀のみに籠めたその斬撃は、霜静を真一文字に斬り抜けていった。
「―――!!」
 かっと目を見開く霜静。だが、斬られたはずのその身体には何故か傷一つない。
 最後の気力を出し尽くした璃奈は、ふっと目元を緩めると、今度こそぱたりと地に倒れ伏した。

「今、俺の中で、何かが……」
 霜静と『邪剣』が動揺した一瞬のうちに、体勢を直した龍斬が再び斬り掛かる。
 再開される好敵手同士の剣戟。しかし今度は斬り結ぶうちに徐々に龍斬の攻撃が霜静を押し返すようになり、双方の攻守はやがて逆転しはじめる。
「何だ? さっきよりも『読みやすく』なったな」
「……邪剣の干渉力が、弱まってきている」
 霜静を斬った璃奈の【神滅】――それは肉体を傷つけるのではなく対象の核や力の根源を断つ剣。彼女はその技を以って霜静に根付いた邪剣の『核』を斬ったのだ。
 結果、肉体の主導権こそ戻らなかったものの霜静の精神がより顕在化。その太刀筋にも影響が生じ――龍斬の言うところの『手癖』がより強く現れる形となった。

「つまり昔のお前に戻りつつあるってことか。だったら負ける訳がねえ」
 邪剣の攻撃速度は大して落ちていない。変わったのは僅かなクセの差だけ。
 にも関わらず攻守が逆転した原因は、龍斬にあって霜静には無かったもの。
 義体、魔術、そして――あの時からなおも積み重ねてきた、経験と技量。
「お前は何年ここでじっとしていた? 俺はあれからもずっと戦い続けてきたぜ」
 邪剣に囚われた者と死に瀕してなお戦い続けた者の間に生じた空白(ブランク)。
 それが、この因縁に結ばれた戦いを決着させる、最後のピースとなった。

「――お前を『元に戻す』。ぶった斬ってでもな」

 邪剣の刃をくぐり抜け、ついに懐に踏み込んだ龍斬の氷戒葬剣『歪曲凍葬』。
 それは万物の『歪み』を正し、あるべき形へと戻す凍てつく刃。
 その瞬間、斬り伏せられた霜静の体の奥から、淀んだ『何か』が消え去り――。

『―――――――――ッ!!!!!!!!』

 魂へと響く凄まじい断末魔と共に、邪剣が「砕け散った」。
 その器と成っていた男は、そのままに。

「……ありがとう」

 邪剣の宿業から開放された男は、言葉少なく旧友に、そして猟兵に告げると意識を失う。
 それが、感染型UDCの終焉――そしてひとりの男にもたらされた救済であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月18日
宿敵 『『邪剣の器』相楽霜静』 を撃破!


挿絵イラスト