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白の歌声

#UDCアース

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#UDCアース


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●白の歌声
『オカルト研究部』
 そんな紙が貼られた、とある高校の一室。
 薄暗い部屋の中、途切れ途切れの歌が響いていた。
「あ、はは……ほ、本当に成功するなんて……」
 制服姿にマントの少女は、火のついた燭台を片手にへたり込む。
 目の前には、白い光に包まれた異形のモノ。それは辛うじて人のような姿をしているが、下半身は木の根のようなものと無数の獣の群れと融合し、一目でまともな生物ではないと分かる。
「こ、この魔導書、本物だったんだ…それとも、私が天才なのかな?…あはは、何にせよ、部員に自慢しなきゃ」
 それを言い終えるより先にもう一度、高く長く、歌声が響き、それに呼応するかのように辺りが白い炎が沸き上がる。炎は少女を飲み込もうと腕を伸ばすも。
「ひっ……!!」
 本能的に恐怖を感じた少女は、慌てて部屋から逃げ出した。
 部屋に、白い異形の神を置き去りに。

●グリモアベースにて
「呼びかけに応えて下さって、ありがとう!」
 グリモアベースに集まった猟兵達へと、イフ・プリューシュ(あなたの『生』に祝福を!・f25344)がぺこりとおじぎをする。
「UDCアースの、とある高校で、邪神の復活が予知されたの」
 イフは広げた地図のとある一点を指さす。私立三沢野高等学校、と書かれたそこは、地方都市に存在するごくごく普通の高校だ。一学年にクラスは7つ程で、生徒数もそれなりに多い。
「この学校で夜な夜な、人魂のような光が彷徨っている、っていう噂がでていたのね。それだけならただの七不思議かな、って感じなのだけれど」
 予知で得た情報によると、それは人魂ではなく、邪神復活のための儀式を行っている灯りなのだという。
「学校の生徒が、偶然にも邪神『白の王』の召喚に成功してしまうみたい」
 復活した邪神とその眷属は、呼び出した生徒を始め、生徒や職員、校舎そのものを取り込み、侵食しようとするのだという。

「まず、学校に潜入して、邪神の召喚される場所を探して欲しいの。これは、火の玉の噂があてになると思うわ。儀式が起こるのは夜だから、昼のうちに潜入して目星をつけておくのもいいかもしれない」
 潜入するなら、学生、あるいは職員の振りをするのも有効だろう、と付け足す。
「夜になって、儀式が始まったら突入よ。邪神の召喚を察知した眷属が妨害しに来る可能性もあるから、十分に注意してね」
 事前に妨害することはできないのか?そう声が上がったが、そうしてしまうと別の場所で儀式が起こる可能性が高くなり、より日時と場所の特定が難しくなるのだとイフは言う。

「この邪神に侵食されるとどうなるか、についてはまだ未知数なのだけれど……場所が場所だもの。完全に復活したら被害は甚大だわ。だから、そうなる前に、みんなに止めてほしいの」
 邪神――その力は強大だが、イフは勝利を疑わない目で集まった猟兵達を見つめると、もう一度おじぎをした。
「どうか、よろしくお願いします。必ず、無事にもどって来てね」


ミチ
 はじめまして、ミチと申します。
 お目にとめて頂きありがとうございます。
 はじめての依頼となりますが、皆さまの物語を素敵に彩れるよう頑張らせて頂きます。
 受付タイミング等について、MSページに説明がありますので、お手数ですがご覧頂けますと幸いです。
 また、章途中からの参加も歓迎です。

 第1章:舞台となる高校への潜入捜査し、儀式の起こるであろう場所を探してください。
 第2章:邪神の復活を察知した眷属との戦闘です。
 第3章:ボス戦です。邪神『白の王』の完全復活を阻止しましょう!

 各章、冒頭に断章を挟んでからプレイング受付となります。
 よろしくお願いいたします。
 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております!
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第1章 冒険 『高校潜入調査』

POW   :    放課後、運動系の部活動に励む学生を対象に調査

SPD   :    学外、バイトをしたり遊んでいる学生を対象に調査

WIZ   :    校内、生徒会活動や勉学に励む学生を対象に調査

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 午後のホームルームの終わりのチャイムが鳴り、教師が教室を出ていった。放課後の始まる。
 教室も廊下もさざめくような喧騒に包まれる。部活へ向かう者、帰宅する者、教室に残って活動する者――向かう先はそれぞれだ。
 この賑やかさの中、紛れ込んでも気付くものはそうそういないだろう。
 さて、どうしようか?

(学校の敷地内での調査となります)
(ちなみに制服は男子は学ラン、女子はセーラー服です。他校制服でも、学校交流の盛んな校風なので問題はありません。)
ティエル・ティエリエル
WIZで判定

学校はみんなで楽しくお勉強するところなんだぞ☆
邪神なんかに好き勝手させないためにも呼ばれて飛び出て即撃破だ♪

ようし、校内をこっそりと動き回って生徒達がしてる噂話を集めて人魂の現れる場所を特定するぞ☆
段ボールの中に入って校内をずるずるずるずると徘徊するよ!

生徒会とか風紀委員とか真面目そうなところにいけば
誰か夜中に忍び込んだりして確認した子とかいないか分かっちゃうかも!?

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



●潜入といえばやっぱり
 学校。それは、青春のひとときを過ごす、神聖な学び舎。
「学校はみんなで楽しくお勉強するところなんだぞ☆」
 ごそ。ごそ、ごそ。
 そんな学び舎の隅で、一つの小さな段ボールが揺れていた。
「邪神なんかに好き勝手させないためにも、呼ばれて飛び出て即撃破だ♪」
 おー!と段ボール箱……いや、その中に潜んだティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は意気込む。
 噂について辿ろうとしたティエルが真っ先に目をつけたのは、生徒会室。ここならば、真面目に噂話について確認した生徒がいるのではと睨んだのだ。生徒会室にたどり着くまでに、学校に住み着いた野良猫と死闘(追いかけっこ)を繰り広げたりと、小さな冒険があったりしたのだが――それはまた別のお話。
 無事にティエルは生徒会室の前までたどり着く。
 放課後の生徒会室には、丁度授業を終えた生徒会の面々がぱらぱらと集まり始めており、人の出入りも激しい。ドアが開いた隙に滑り込むのは容易な事だった。
 ティエルは目立たないよう壁際を伝って、資材の積まれた箱の一角に忍び込む。フェアリーサイズの段ボールが一つ増えている事に、気づく者は幸いいない。
 本日はとくに活動らしい活動もない様子で、集まった生徒達が思い思いにお喋りをしている。今日の授業のこと、友達の起こしたおかしな事件、先生から怒られた話――そして、人魂の噂も。
「最近、よく出るらしいねー、人魂。毎晩らしいじゃん」
「いたずらじゃないの?それか不審者とか」
「えっ、不審者とかやだ」
 露骨に嫌そうな顔をする生徒に、別の生徒がそういえば……と語りだす。
「友達が調べたらしいんだけど、ちゃんと窓もドアも、夜は全部鍵が掛かってたらしいよ!」
「それって、その子が調べたって事?」
「なんか、忘れ物しちゃったんだって。それでどこも開いてなくて、結局事務室の人に鍵開けて貰ったって。めっちゃ怒られたって言ってた」
「あはは、事務室の人たち怖いもんねー」
「でも全部調べるのはやりすぎでしょ」
 生徒達の間に小さな笑いが起こる。その生徒が言うには、壊れて開くような鍵もなかったらしい。
 その友人の話から、やがて話題は別のものへと移っていく。
(ふむふむ、忍び込んだ形跡はなさそうだね☆……となると、鍵を持った誰かか……それとも、内部の犯行なのかな?)
 これ以上ここには収穫はなさそうだ。そう見当をつけると、ティエルはそっと生徒会室を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎
口調:素
眼鏡着用

取り敢えず、邪神を放置する訳にはいかない。なんとしても屠らないと。
【選択UC】で【情報収集】。DDNCなら【目立たない】し、確実にあれこれ見れると思う。ただ、これだけだと見てるだけだし、母校の制服で潜入。学校行事での交流について生徒会との調整、とかそういった名目あたりかな。
他の人が既に生徒会あたりを抑えているなら、文化部同士の交流とかそのあたり。体育会系だとジャージとかユニフォームとかだろうし。
その中で、噂についてそれとなく聞いてみる、といった所かな。そんな噂が流れているようじゃ、交流しようとしている他校からしても気になるのは当たり前だしね。



●埃を被った廊下の奥に
 生徒会室の様子を、窓の外から覗くもう一つの影があった。紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)のDDNC(ダークダイブ・ニュクティコラックス)。智華の作り出す夜烏型ステルス自律兵器だ。
 引き続き生徒会室の監視はDDNCに任せ、智華自身は別の場所に向かっていた。
「取り敢えず、邪神を放置する訳にはいかない。なんとしても屠らないと」
 そう呟くと彼女は母校の制服を纏い、校内へと踏み入れる。部活交流との名目で、潜入する手筈はすでに整えてあった。
 しばし歩いた後たどり着いたのは校舎の2階、『家庭科室』の札の下。この部屋の中で、手芸部が活動をしている筈だ。
 扉を開ければ、部長らしき三つ編みの少女が「あ、部活交流の件ね!」と迎え入れてくれる。どうやら話はきちんと通っていたらしい。
 智華は交流の相談に混じりつつ、そういえば、といった風に噂へと話を向ける。
「そういえば、訊いてみたかったんだけど。人魂の噂って本当なの?」
「ああ、夜の人魂の話?」
「紅葉さんの学校にまで広がってるんだ!」
 どうやらこの学校ではもうすっかり広まった、メジャーな噂であるらしい。見るからに噂好きそうな少女が近づき、話に加わって来た。
「3階だっけ、この真上あたりだよね」
「距離的には近いからねー。なんかやーな感じ」
 堰を切ったように話し始める女子生徒たち。どうやら噂の人魂は校舎の3階の廊下の、一番奥まったエリアによく出現するという。
 よく、という事は、既に複数回目撃されているということだ。
 智華は首を傾げる。
「……3階?そんなところに何かあるの?」
 そう尋ねると、女子生徒は顔を見合わせ、口々に疑問を浮かべる。
「何だっけ……あの辺り、空き教室しかなくない?」
「えー?たしか、どっかのクラブ?が部室にしてるとか聞いた気がするけど」
 どうやら彼女たちにとって、あまり縁のないエリアのようだ。移動教室で使う様な教室もなく、空き教室ばかりが集まっているとのこと。クラブで使われているにしても、余程影の薄いものであるらしかった。
「使われてない教室ばっかりでさ、誰も立ち寄らないの。だから皆面白がって噂してるんだろうと思うけど」
「あんまり行きたくないエリアだよね」
「天井越しに人魂が降りて来たりして!」
 急に大声を上げて驚かす生徒に、別の生徒達がきゃあきゃあと笑い声を上げる。ここに集う顔ぶれは、噂を噂として楽しんでいる者が多いようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレシェイラ・フロレセール
もうすぐ桜が咲いて楽しいお花見の時期になるっていうのに物騒な話!
邪神なんて軽くぶっ飛ばしてしまおうね
初のお仕事頑張ろー🌸

憧れのセーラー服🌸
ベレー帽をかぶって、長い髪はゆるっと三つ編みにして
これでどう見ても学生だよね

準備が出来たら校庭に行ってみようかな
女の子はロマンチストが多いから、花の樹の下辺りで大切な人と二人っきりで内緒話なんてしているんじゃないのかなって
ほら、良く言うでしょ?
内緒話は桜の樹の下で、ってね

お散歩に興じているふりをしてこっそり聞き耳をたてるよ
聞いた話は桜のペンで忘れないようにメモしておこうね

🌸アドリブ大歓迎



●桜の木の下で
 まだ花をつけていない桜の木。その幹に手を当て、セレシェイラ・フロレセール(桜結・f25838)は枝を見上げた。
(もうすぐかな)
 今年の開花予想は確か例年より早かったはず。そんな報せを耳にしたことを思い起こせば、自然とセレシェイラの頬は綻ぶ。
 一年中桜の咲き誇るサクラミラージュと違い、このUDCアースでは桜の時は短い。けれど、そのひとときの儚さも美しさの一つだと、セレシェイラは思う。
 春を心より愛し、そしてその自らも桜の彩をその身に宿すヤドリガミである彼女にとって、桜の木は特別なものだ。
(そんなお花見の時期になるっていうのに、物騒な話!)
 ね、と桜にそう心の中で語り掛けると、セレシェイラは意気を新たにする。邪神なんて軽くぶっ飛ばしてしまおうね、と。ふと吹いた優しい風に木々の枝がさざめいて、まるでそんなセレシェイラを応援しているようだった。
 セレシェイラは学生に扮して学校に潜入していた。淡桜色の長い髪は緩い三つ編みに結って。落ち着いた色のセーラー服をまとい、頭には揃いのベレー帽。憧れのそれに身を包んだ姿は、文学少女といったいでたちでよく似合っている。
「これでどう見ても学生だよね」
 一つ頷くと、セレシェイラは他にも学生の姿はないだろうかと辺りを見回す。
(内緒話は桜の下で、ってね)
 この年頃の少女たちにはロマンチストが多い。だから、こういった密やかでそれでいて甘やかな空気の場所で、内緒話に興じる者がいるのではと踏んだのだ。
 見ると、お誂え向きに近くのベンチに座りお喋りに興じる影があった。
「……桜、早く咲かないかな」
「卒業式までに咲くといいね」
 二人でこそこそと話す少女たちに、セレシェイラは散歩の振りをしつつ、聞き耳を立てる。
「咲かないと、おまじないもできないし」
「ええと確か…だれにも見られないように、好きな人の持ち元を枝に結ぶと、恋が叶うんだっけ」
「そう!でも、誰にも見られないだけじゃだめなの。桜の咲いている、夜の間じゃないと」
 どうやら、彼女たちはもうすぐ卒業式を迎える三年生らしい。恋の話に楽し気に花を咲かせている少女のうち片方が、けれど、と顔をしかめる。
「でも、夜のうちはちょっと怖いよね。ほら、最近あの噂もあるし」
「人魂のうわさ?」
 それを聞いて、大丈夫!ともう一人の少女が笑い飛ばす。
「平気だよ!あの噂、校舎の中にしか出ないって聞いたし」
「でも、不審者とかだったら…危なくない?」
「それなら守衛さんを呼べばいいんだよ!そのぐらいで諦めていいの?」
 心配そうにする少女とそれを励ます少女。恋のお喋りはまだまだ終わらなそうだった。
(それにしても、校内にしか現れない…か)
 ふと耳にした気になる内容を桜の硝子ペンで同じく桜模様の手帳に書き記しながらも、セレシェイラはひとときの学生気分を満喫するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
外部との交流が盛んなのであれば、潜入に苦労しないのは助かりますね。
同校の生徒を装って、見ない顔だと疑われても良くないですし……大人しく学外からの見学者とした方がいいでしょうか。
年齢的にも、中学生が高校見学に来たと思ってもらえれば御の字でしょう。

そうですね……運動部よりも文化部の生徒を狙ってみる方がよいでしょうか。
見学しに行きつつ、雑談している生徒の話に聞き耳を立ててみましょう。
全員が全員、見学者を気にしているわけでもないでしょうし、私語だっていくらかはある筈です。
まぁ、空振りは多いでしょうが……地道に数をこなしていくしかないですかね。



●静かに、確実に
(外部との交流が盛んなのであれば、潜入に苦労しないのは助かりますね)
 シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は小さくため息をつく。
 中学校の制服を身にまとい、シャルロットは校舎の廊下を歩いていた。入学志望者の学校見学を装って潜入するためだ。生徒を装って、見ない顔だと怪しまれるリスクは避けたかった。
 隣には案内役の教師。確か書道を受け持っていると言っていたか。初老の優しそうな男性だ。
(そうですね……部活動にしましょうか。運動部よりも文化部の生徒を狙ってみる方がよいでしょうか…)
 運動部は掛け声を掛け合ったり、グループで練習をしていたり、とにかく賑やかだ。噂について調べるには、こっそり話を聞くには不向きだし、話を聞くにもわざわざ活動を止めて人を集める事になってしまう。それはあまり得策ではないとシャルロットは思った。
「あの、部活……文化部の活動を見学したいのですが。どのような部活があるのでしょう」
 そう伝えると、案内してくれていた教員は嬉しそうに笑う。
「うちの生徒は部活動にも力を入れているからね。部活から同好会まで、色々あるよ」
 僕も書道部を担当していてね、と言いながら一通り紹介をした後、どの部室がどこで活動しているかを書いたメモを校内の地図と一緒に渡してくれた。
 部外者を一人放っておいていいのか。そうシャルロットは気にするも、教員がついて行かない方が部活動の素の雰囲気が分かるだろうという、学校の方針らしかった。
 放課後になったばかりの校内はとにかく人が多い。部活へ向かう者、教室へ戻る者、これから帰宅する者。行き交う生徒の中、彼女の姿はすっかり賑やかな校内の風景に馴染んでいた。
 手始めに、一番近い部活から行ってみようと、近くにあった音楽室で活動している吹奏楽部に向かう。けれど、ここは話を聞くには向かないとシャルロットはすぐに察する。フルートやチューバ、トランペット。部活に力を入れているというだけあってどれも綺麗な音色だが、話を聞くには少し騒がしい。
 将棋部、書道部、美術部。様々な部活を巡り、シャルロットは話を聞いていく。噂についても訪ねてみたが、たまたま噂に詳しくない相手ばかりに当たってしまったのか、あまり芳しい情報は得られない。
「…地道に数をこなしていくしかないですかね」
 肩を落とすシャルロットが次に向かったのは、演劇部。
 演劇に向いてそう、という理由で大歓迎を受けたシャルロットが噂について尋ねると、話好きそうな部長は楽しげに人魂の噂について語ってくれた。
「……それから、それとはまた違うんだけれど」
 最近聞いた噂といえば、と彼女は続ける。
 彼女が話す事には、人魂の噂が流れ始めたのと同時期ぐらいから、ちいさな少女の人形が校内を歩いているのを見た、という噂が出回っているらしい。
「最初は守衛さんが、夜の警備中に見掛けたらしいの。声を掛けたら消えちゃった、って」
「でも、うちの部員でも見た子がいてね」
 聞けば、新入生歓迎会の準備に向けて遅くまで残っていた大道具担当の部員が、廊下を歩いている髪の長い少女の人形を見たのだという。
「同じ人形がふたり…二体っていうのかな。喋ってたんです」
 大道具担当の部員はそう語る。内容はよく聞こえなかったそうだが、見間違いかと目をこすったら消えていたという。
 それも、人魂の噂と同じ、三階。
「何か憑いてるのかもねあの辺……あ、ごめんね、変な話しちゃって。まあ噂だから、あんまり怖がらないでね」
「いえ、ありがとうございます」
 申し訳なさそうに笑う部長に、シャルロットは一礼するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『偽りの心を授けられた人形』

POW   :    我が身を砕かせ敵を討つ戦術
【相手の攻撃に対し、理論上最も有効な反撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    限界を知りつつもそれを超える要求
【身体耐久力の限界を超えて操る邪神の眷属】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ   :    その身を犠牲に得る情報
【全身】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、全身から何度でも発動できる。

イラスト:黒江モノ

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 人魂はここのところ毎晩のように現れること。
 生徒が確かめた限りでは開いている鍵はなかったこと。
 出現する場所は、三階の奥の空き教室が集まったエリアであり、確か使っていたクラブがあるらしいということ。
 人魂は、校舎の外には出現しないこと。
 そして、人魂が現れ始めたのは最近であり、守衛の人が警備中に複数の怪しい人影を見たこと。そしてそれが、明らかに学生……いや普通の人ですらない、小さな人影だったこと。
 猟兵達はこれらの情報を交換しあった。
 
 噂では、毎晩現れるという人魂。恐らく今夜もそれは現れるのだろう。そう目星をつけ、猟兵達は夜の学校に集う。
 学校側も噂については憂慮していたようで、集まった猟兵達を二つ返事で迎え入れてくれたのだった。
 階段をのぼり、暗い廊下を歩く。目指すは、三階の奥、空き教室のあるエリアだ。
 しかし――
 
 かつん、かつん……ひた、ひた。
 こつんこつん……ひたひたひた。
 ふと、ついてくる足音に気づいたのは、いつだっただろうか。
 振り返ると、小さな影。それは少女の姿に見えた――明らかに人の姿より小さい事を除けば。

 淡い色の髪、白いブラウスに暗い色のスカート。
 明らかに学校という場所にそぐわない、そんな姿の少女たちは、じっと猟兵達を見つめ――
『じゃまものだわ』
『じゃまものね』
『白の王様の目覚めをじゃまするものは、排除しなくては』
 口々に、そう囁きあったあと、ぐるりともう一度こちらを見る。
 無数のガラス玉の瞳が、猟兵達を映した。
 
 気付けば、廊下のあちらこちらに、同じ姿をした少女たちが集まって来ていた。
 これが、恐らく噂にあった『人形』――そして邪神の眷属だろう。
 彼女たちが口にしている『白の王』というのが、その邪神の事だろうか。
 人形達は、集まった猟兵達をどうやら敵と認識しているようだった。
 今にも飛びつき、襲い掛かって来ようとしている!
シャルロット・クリスティア
人魂が人形に入り込んだ……なんてことがあるかは知りませんが。
どうにもお友達って雰囲気ではなさそうですね、やれやれ……。

屋内、しかも公共施設となれば、あまり周囲に流れ弾は出せません。
一発ずつ、単射で確実に仕留めて行くしかなさそうですね。
複数対複数の戦闘、ならば私ばかりに構っている場合ではない筈です。
そうして注意の薄い敵を中心に、相手の意識外から撃ち抜いて仕留める。
反撃が強力であれば、そもそも反撃を許さなければいい……。

逆に、こちらを警戒している相手であれば無理に攻め急ぐことはありません、防戦に集中すればいい。
そうすれば、他の猟兵への注意は薄くなるでしょうからね。


ティエル・ティエリエル
SPDで判定

邪神の王様なんて復活してもすぐにやっつけちゃうぞ☆
だからここはさささっと通らせてもらうね♪

背中の翅で羽ばたいて「空中浮遊」して戦うよ!
攻撃は風を纏わせたレイピアによる「属性攻撃」、
「フェイント」を織り交ぜて空中からのヒット&アウェイで1体ずつ倒していくね♪

人形が身体能力を上げて飛び上がって攻撃してきても【スカイステッパー】でひらりと躱して
「カウンター」でお人形の関節部分を狙って破壊しちゃうぞ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



●交錯
「邪神の王様なんて復活してもすぐにやっつけちゃうぞ☆」
 だからここはさささっと通らせてもらうね、と、ティエルは力強い笑みを浮かべる。
『とおさないわ』
『だれもじゃまはさせない』
 軽やかにひらりと透き通った翅を羽ばたかせ、人形達の前に躍り出た彼女は風鳴りのレイピアを構える。その繊細な刀身が微かな月の光を弾いたかと思うと、ふわりと風を纏った。
 フェイントを掛け、風に巻き込み、素早く飛び回るティエルの動きに、人形達は翻弄される。
 素早く強烈な一撃を食らった人形が反撃に転じようにも、腕を振り回してももうそこにはティエルはいない。
 捕まらない、攻撃が当たらない事に焦れた人形は、他の人形を操り攻撃を仕掛けようとする。思考と動作を切り離し別に分担して、人形らしく『操られる』ことで、処理能力を上げようという心算なのだろう。
 しかしその目論見さえ、ティエルの剣技とその翅には敵わない。
 ティエルを捕らえようと飛び上がる人形達の間をすり抜け、壁を蹴り【スカイステッパー】で華麗なターンを決め、掠められることなく避けつつも的確に攻撃を当てていく。風を纏った剣は、一見軽く見える突きでさえその周囲を抉り取り、的確にダメージを蓄積させていく。
(関節を狙うと良さそう…かな?)
 人形である彼女たちは、可動部分が球体関節になっている。ティエルは襲う人形の拳をいなし、その隙を突いて関節を狙い、風をこめた一撃を叩きこんでいく。
「よしっ、当たりみたいだね☆」
『くっ……』
 どうやら、ティエルの予想は当たったようだった。球体関節の部分は他に比べて明らかに脆い。膝や腕を砕かれた人形達の攻撃は、みるみる勢いを失っていった。
 しかし、いかんせん数が多すぎる。もうすでに十数体の人形を葬り、動きを封じて来たが、人形はまだ増えているように見える。
 囲まれそうになったティエルに、死角から拳が迫った。
「あぶな…!」
 それにティエルが気づいた時には、もうすでに拳は目前。
 そこへ、一発の銃声が割り込んだ。
「人魂が人形に入り込んだ……なんてことがあるかは知りませんが」
『だれ?』
『あたらしい敵だわ』
「……どうにもお友達って雰囲気ではなさそうですね、やれやれ……。」
 躊躇なくティエルを襲う人形達を見て、友好的解決は無理だと悟ったシャルロットの銃弾が、ティエルを狙った攻撃を的確に砕く。
 複数対複数の戦闘であれば、自分ばかりに構っている場合ではない筈。シャルロットのその予想は当たった。現に、人形達は新たに表れたシャルロットを見て、明らかに動揺したようだった。
 ティエルを囲んでいた敵の輪が崩れ、そのいくらかの敵意がこちらへ向くのも、シャルロットの目論見通りだ。
「ありがとう!」
「いいえ、こちらこそ。お陰で狙いが定めやすいです」
 視線が合えば、互いに頷き合う。
 ティエルにより関節を砕かれた人形達を、シャルロットの【一発必中】が容赦なく撃ち抜き倒していく。体勢を崩し動きを鈍らせた人形達に、その的確な一撃は覿面に効いた。
 先程までティエルばかりを狙っていた人形達が、こちらに近づいて来る。しかし、シャルロットのところにたどり着くまではまだ些か距離がある。
 それは、シャルロットにとってこれ以上ないほどの好都合だった。
「反撃が強力であれば、そもそも反撃を許さなければいい……」
 何より、動きの鈍った人形だ。急所を狙ったシャルロットの一発一発が、確実に人形達を葬っていく。
 ティエルに集中している敵であれば、撃ち抜く事は容易い。逆にこちらを狙う敵に対しては防戦に集中すればいい。
 人形達がティエルを狙えばそれをシャルロットが妨害し、シャルロットを先にと追いかける人形達を、ティエルの風を纏った剣が刺し貫き砕く。
 見事な連携に、人形は目に見えて数を減らしつつあった。。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

「学生気分もここまで、ですね――(眼鏡を外し、電脳魔術を用いた【早業】で軍服ワンピース姿に早変わりしながら)――さて、猟兵の時間でありますよ」

とはいえ、場所が場所。狭い空間でライフルの類は取り回しが厳しい。『刹那』のような刃付きだとしても、本来は銃な訳で。
そう言った判断を【戦闘知識】から下し、肉弾戦(グラップル)での対応を決断。直感(第六感、見切り)で敵の攻撃を回避し、【カウンター】で【選択UC】による連続攻撃(2回攻撃)を叩き込む。
「本職ではないでありますが、これも昔取った杵柄でありますよ」



●射貫く拳
「学生気分もここまで、ですね」
 紅葉・智華は眼鏡を外した。
 衣装も打って変わって、今まで纏っていた学生服から軍服ワンピースに早変わりする。濃い色に赤いラインの入ったそれは、丈夫かつしなやかな智華の戦闘服だ。
「――さて、猟兵の時間でありますよ」
 人形達を前に、そう呟く。
 昼間は沢山の学生が行き交う校舎は広い。とはいえ、智華の愛銃達を振るうには些か狭く。04-MV[P/MC]マルチロールアサルトウェポン【刹那】等も、刃付きとはいえ元は銃。やはり難しいだろうと実に馴染んだ知識から瞬時に把握した智華は、銃ではなく拳を構える。
 幸い相手も丸腰だ。数はいるとはいえ小柄な人形相手に遅れを取るつもりはなかった。
「こういう事も出来るでありますよ。そう、赤枝流と私の合わせ技ならね!」
 その鋭い直観を武器に人形達の攻撃をいなし、避け、強烈な拳を食らわせる。智華のユーベルコード『赤枝流武術・改【落葉】』は、カウンターで右拳の早打ちと渾身の左拳の二撃を叩き込む連続攻撃だ。
 さすがにこれは堪えたのだろう。人形は周りを巻き込み吹き飛ぶ。
 このままでは敵わないと思ったのだろう。人形達はかたかたと震え、何かをしようとした…が、何も起こらない。智華の放った二撃がすでに人形達のユーベルコードを封じていたのだ。
 智華を睨む人形達の目が悔しそうに見えたのは気のせいだっただろうか。 
「本職ではないでありますが、これも昔取った杵柄でありますよ」
 さあ、まだまだ来るなら来いと、智華は人形達を見遣るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルネ・プロスト
人形系のオブリビオンが出たって聞いたから、来ちゃった
君達の主にも興味はあるにはあるけど
今回はついで、本命は君達
――それじゃ、君達を壊さ(弔わ)せてもらうよ

開幕UC
ルーク2体に死霊憑依&自律行動、盾受け&かばうで守りを一任
抜けてくる敵の攻撃は増幅した呪詛を身に纏ってオーラ防御
その際ついでに相手を呪詛で侵してやれば一挙両得かな

攻撃は所謂、邪視の類で
視線に呪詛を乗せて視界内の敵を徐々に徐々に内から壊していく
無茶しまくりのその身体にはよく効くでしょう?

屋内戦はそんなに得意じゃないんだよね
建物への損傷気にしなくていいなら別だけど
少し手を抜くぐらいが丁度いいかな
校舎の一角を瓦礫の山にするわけにもいかないし



●弔いの少女
 また一人、現れた猟兵に、人形達がざわめく。
 それを前に、銀糸の髪を揺らしルネ・プロスト(人形王国・f21741)は目を細めた。
 人形を愛し、彼女自身もまた人形であるルネは、人形が現れると聞いてここまで足を運んだのだった。
「君達の主にも興味はあるにはあるけど……」
 今回はあくまでそれはついで。本命はこの人形達だ。
「――それじゃ、君達を壊させてもらうよ」
 弔いを、と少女は呟いた。
 全身鎧の重装歩兵人形の構えた大盾による守りは、文字通り鉄壁だ。盾に弾かれルネまで届くことはない。
 時折稀に届く一撃も、ルネ自身も呪詛による固いオーラ防御に守られ彼女を傷つけることはなかった。それどころか、彼女の呪詛に侵され逆に弱らされる事になる。
 【呪力増幅】により大幅に威力を増したルネの呪いは、彼女の瞳にも影響を及ぼす。邪視により呪詛を乗せた視線は、見つめるだけで人形達を内から破壊していく。
 人形をよく知る彼女には、一目見ただけで彼女達の弱っている所を見抜くことが出来た。
 ルーク達の盾に弾かれ、ルネの呪詛に侵された人形達は、もうすでにぼろぼろになりかけていた。
「無茶しまくりのその身体にはよく効くでしょう?」
 弱った箇所を的確に狙ってやれば、人形達はあっさりと崩れ落ちる。
 人形達はすでに敵はその数を大幅に減らしていた。建物への損傷を気遣いつつ100%の力を出さず戦っても十分に対応できるほどに。
『白の王さま……復活……を』
 とぎれとぎれにそう零す最後の一人が倒れ、廊下にルネ達以外に動くものは無くなる。
 折り重なり動かなくなった人形達に、ルネは弔いを捧げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『白の王』

POW   :    魔性
【認識を狂わせ、同士討ちを誘発する催眠の声】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    神性
【体から分離した、無数の獣による突撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を眷属で埋め尽くし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    創世
全身を【燃やし、周囲一帯を白い炎の荒れ狂う世界】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。

イラスト:傘魚

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ヴィル・ロヒカルメです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 人形たちの亡骸はまるで黒い泥のように崩れたかと思うと、床に吸い込まれるように消えてゆき。
 猟兵達以外に動くものがいなくなった廊下は、しんと静まり返っていた。

 ――がたん!!
 その静寂を破るかのように、勢いよくドアの開けられる音、そして悲鳴が聞こえてきた。向かおうとしていた廊下の奥の一室から、火のついた燭台を手にした少女が転がるように飛び出してくる。
「あ、あなたたち、誰…?なんでここに……」
 制服の上からマントを羽織ったその少女は、猟兵達を見つけると、転びそうになりながらも慌てた様子で駆け寄って来る。
 事情を聞けば、学校が終わってからずっと校内に潜んで、見つからないように『魔術』の練習をしていたのだという。
 ばつの悪そうな顔をしながらぽつぽつ話す彼女の表情が、廊下に響いた歌声に怯えの色に変わる。
「ひっ……ご、ごめんなさい、ごめんなさい!」
 顔を覆うように彼女は何度も謝る。
「まさか、本当に何か呼び出せるなんて思わなかったの!」
 異形への恐怖からか、それとも人が来てくれた安堵からか。泣き出してしまった彼女を避難させ、室内を覗き込む。
 
 そこには、『それ』がいた。
 白い光に包まれた異形のモノ。それは辛うじて人のような姿をしているが、下半身は木の根のようなものと無数の獣の群れと融合し、一目でまともな生物ではないと分かる。
 瞳は閉じられ、その色は見えない。が、その身体に融合した無数の獣の瞳が猟兵達を睨んだ。
 高く長く、歌声が響く。それは一見甘やかだが、ひとを狂わせる響きを孕んでいて。
 呼応するかのように、辺りが白い炎が沸き上がった。
火土金水・明
「相手は復活した直後とはいえ邪神、こちらも本気を出して戦わないと危ないですね。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃方法は、【高速詠唱】し【破魔】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『白の王』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【火炎耐性】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも、ダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



●宵闇に踊る
「相手は復活した直後とはいえ邪神…」
 燃え盛る白い炎を眺め火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は呟く。
 壁を床を舐めるように広がっていくその炎は、しかし不思議と校舎を焼くことはない。だがその代わりに壁や床が白く染まっていく。おそらくこれが侵食なのだろう。
「…こちらも本気を出して戦わないと危ないですね」
 白の王は明の気配を察したのだろう、その顔がにわかにこちらを向く。それと同時に、ぶわりと肌を撫でる何か――それはおそらく、殺気とでも呼ぶ物だった。
 白の王の目は閉じられたままだが、明ははっきりと『敵として認識された』ことを理解した。
 一瞬の間すら置かず、敵を包む炎が強さを増した。それは部屋を埋め尽くすほどだったが、明は廊下へと飛び出して逃れる。オーラを壁しに炎を退ければ、炎に耐性を持つ明ならば無傷で逃れるのはたやすい事で。
「やはり、厄介ですね」
 帽子をくいと押さえそう呟くと、明は杖を構えた。それに呼応するように、杖は炎に負けないほどの七色の光を放つ。
「我、求めるは、冷たき力――」
 明の唇が呪文を紡ぐ度、辺りの温度が下がっていく。ぱり、ぱりと甲高い音を立てて氷塊が空気中に姿を現す。それが矢の形を成すまで、ほんの数秒の事だった。
 無数の風を切る音が辺りを満たし、明の『コキュートス・ブリザード』が白の王を襲う。
 部屋を埋め尽くす炎にそのうち幾らかは溶かされたが、それでも溶かしきれない程の幾多の氷の矢が流星のように敵を射る。
 このままでは溶かし切る事は難しいと断じたのだろう、氷の矢を避けようと白の王が身をよじり獣たちが動く。しかし、それすら明の予想の内だった。
「残念、それは残像です」
 逃げ道をふさぐように無数の矢がそれを待ち構えていた。先程の矢は敵を追い込むための囮に過ぎず、二撃目が既に白の王を狙っていたのだ。
 どすり、どすりと鈍い音を立てて氷の矢が刺されば、足元の獣達が幾匹か霧散し、白の王自身も苦し気に身もだえる。
 白の王が高く悲鳴のような歌声を上げる。
 怒りと殺気の滲んだその声は、しかし確実に白の王が傷を負っている証左だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
SPDで判定

大丈夫、悪いヤツはボクがすぐに追い返してあげるよ!

背中の翅で羽ばたいて「空中浮遊」して戦うね!
飛び掛かってくる獣を「見切り」、空中でひらりと回避するよ!
空中からの急降下攻撃で地に満ちる眷属をどんどん倒していくぞ☆

眷属の数が減ってきたら、邪神本体に向かって【妖精の一刺し】で突撃だー!
「捨て身の一撃」でずばっと刺し貫いちゃうぞ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

「過ぎた事は仕方ない、でありますよ」
――今は責任とかそういうものを言っていられる状況ではない。目の前の状況をどうクリアにするか。それが問題だ。
序盤は【選択UC】(第六感、見切り)での回避、【情報収集】、分析に専念。アサルトウェポンの『刹那』を用いた【援護射撃】等も行う。混戦が予想されるが、私の技量(スナイパー)で誤射だけは絶対に行わない。
「――とにかく、今は眠ってろ、オブリビオン――!」
相手に隙が見えるようなら、『刹那』の刃部分での近接戦闘で【串刺し】からの【零距離射撃】でトドメを狙う。



●白の獣たち
 白の王の、見ているだけでも目を灼きそうな白い炎。
 その光から庇う様に、制服の少女の前に立つ二つの影があった。
「過ぎた事は仕方ない、でありますよ」
「大丈夫、ボクたちにまかせて。悪いヤツはすぐに追い返してあげるよ!」
 ――今は責任とかそういうものを言っていられる状況ではない。現に炎による校舎の侵食はまだ続いている。目の前の状況をどうクリアにするか。それこそが問題なのだと、智華は頷く。
 掛けられた声は優しく。突然の余りの出来事に怯えていた少女は幾らか安堵したようで。
「……ありがとう」
 ぽつりと返された応えは、震えた声ながらもそう礼を言った。
「さあ、避難を。こちらへ」
 智華に促され少女は逃げようとする。だが、そこに白の王の歌声が響き、白の王から眷属たる獣が切り離された。獣たちは少女を追いかけようと走る。
 ティエルはそうはさせまいと立ちふさがった。
 小さな妖精の身体、だがそこに秘められた実力は並みのものではないと、これまでの戦いが示している。
 ティエルは華奢な羽を力強く羽ばたかせると、銀の風鳴りのレイピアを振るう。白い光を受け輝きながら歌うレイピアに合わせて飛ぶティエルのそれは、まるで美しい舞の様だ。
 部屋を覆う炎やどこに居ても届く惑わしの声に比べれば、獣の攻撃は直線的かつ動物的だった。見切りの力に長けるティエルや智華であれば、その軌道を見抜き、すれ違い様に一撃を与えるなど容易な程に。
 少女を火の手が届かないところまで逃がして来た智華も、ティエルの戦いを見、それをすぐに理解していた。
 避けた獣のうち匹は、地面にかじりつくとぼこぼこと膨れ上がり、また新たな獣へと分裂する。しかし地面にかじりつく前に一撃を与えてしまえば増殖を防ぐことができるようだった。
 幸い、獣は眷属とはいえ切り離された一部分。二人であれば一撃で十分に霧散させることができた。はじめはその数を増やしていた獣も、徐々に目に見えてその数を減らしてきている。
 そこまで理解した智華達に、もはや獣は敵ではなかった。完全に動きを見切った獣達相手に、智華はアサルトウェポン『刹那』を構え、引き金を引く。未だ混戦の最中にはあるが、この距離と智華の技量であれば、誤射などする筈もなかった。
 鉛の雨が正確かつ的確に敵を射貫いてゆく。壁に流れ弾のひとつ当てることなく。
 やがて二人によって獣達が殲滅されると、手駒を失った事に怒りを覚えたのだろう。邪神は高く声を上げ歌おうとする。
 しかし――
「そうはさせない、であります」
 邪神の喉を、黒い刃が突き立てられる。
 智華の『刹那』の銃身に設えられた黒い刃が、まるでそれを予見していたかのように白の王の喉を貫いたのだ。そのまま引き金を引くと、鈍い音を立てて邪神の喉を撃ち抜く。
 白の王は喉を完全に潰され、歌声も怒りの悲鳴さえも上げる事が出来ないまま。呻こうとしたのだろう、口元をおさえる手にごぼりと、黒いタールのような、血に似た何かを吐き出す。
「よーしっ、ボクも!くらえ、ボクの全力全開っ!!」
 邪神の動きが鈍った。そこに追い打ちを掛けるかのように、ティエルの『妖精の一刺し』が襲う。
 ティエルの身軽さを活かした加速をし、最大の威力を発揮するその一撃。レイピアが白の王の胸に深く深く突き立てられる。
 立て続けに与えられた強烈な二撃に、白の王は癇癪を起したかのように両腕を振るい暴れる。
 それを予見していたティエル達は素早く離脱することで逃れていたが、二人に追いすがる様に再び白い炎が巻き上がる。
 瞳は閉じられているものの、二人へと向けられた表情は、殺気に満ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
起きてしまったことは仕方ありません。
遊び半分だったんでしょうが……予想しろ、というのは難しかったでしょうね。

しかし、規模の大きい戦いを強いられそうです。
周囲の被害をどうこう言っている場合ではなさそうですね。
獣の軍勢……物量で押し込まれるのが最も危険と見ました。
そうなるならば、こちらも殲滅戦で対応せざるを得ません。

エーテル圧縮、精製、陣形構築!
皆さん、一旦私の後ろに。巻き込まれますよ!
オリジナル含め計73門の機関砲、一斉射撃で薙ぎ払う。多少強引ですが道を開けます!

倒せるということは難しいかもしれませんが、この銃火の吹雪、本体にも多少なりダメージも入るでしょうよ!


ルネ・プロスト
獣の群に、白い炎
どっちとっても建物にダメージいくね
……仕方ない、少しだけやる気だそう
手抜きするにはちょっと場所が悪い

開幕UC
増幅した呪詛を全力魔法&範囲攻撃で拡散、触れた子を片っ端から呪殺
本体は兎も角。沸いた有象無象程度であれば、少しだけやる気の呪詛で祟り殺してやる

獣と眷属の始末が終わったら散らしてた呪詛を弾丸の形に整形、呪殺弾として『慟哭』から射出
念には念を。呪殺弾に追加で魔力を注ぎ込んで誘導弾としての性質も付与して確実に撃ち抜く

下半身が獣の群れというと、ギリシアのスキュラを思い出すね
あれは後天的に怪物にさせられた可哀そうな子だけれども
ともあれ
遍く死に貴賤無し
君の命も狩ら(弔わ)せてもらうよ



●そして、希望の白
「遊び半分だったんでしょうが……予想しろ、というのは難しかったでしょうね」
 叫び荒れ狂う白の王を見、シャルロットは目を細める。起きてしまったことは仕方がない、少女を責めても詮のない事だ。それよりも、今はこれ以上の被害を抑えるのが先決だ、と。
 しかし、狭い校舎は場所が悪い。それは並び立つルネも同じ考えのようだった。
「ちょっと、場所が悪いね」
 しかし、二人の表情は暗くはない。白の王もその眷属たちも、先の猟兵達との戦いで徐々に傷を蓄積させてきていた。白の王が明らかに殺気立った様子を見せているのが、しっかりダメージが通っている証拠だろう。邪神と言えど、まだ目覚めたばかり。――大丈夫、とシャルロットは頷いた。
 しかし、敵を取り巻く炎はより一層強さを増していた。室内の侵食も進み、二人の足元まで床が白み熱を帯び始める。
「時間の猶予は少ないようです。こちらも殲滅戦で対応しましょう」
「そうだね……仕方ない、ルネも少しだけやる気出そう。“裡より来たれ、淵より来たれ。幾千数多の怨憎悲嘆――”」
 ルネがその細く愛らしい声で呪力を増幅するまじないを紡いでいく。その声はまるで歌うようで、白の王の歌声と重なり、奇妙な不協和音を奏でる。
 それを横目に、シャルロットも銃を構える。数をいくらか減らしたもののまた徐々に敵の足元から湧き出そうとしている獣達に、この状況下で押し込まれたら危険だと感じた彼女は声を上げた。
「エーテル圧縮、精製、陣形構築!……ルネさん、一旦私の後ろに。巻き込まれます!」
「わかった。でも大丈夫だよ」
 ルネもまた詠唱を終えていた。彼女を抱えたルークが巻き込まれない位置取りまで退避しても、彼女には呪詛と『慟哭』による呪殺弾がある。この距離からでも十分に敵は狙える。
「さあ、蜂の巣です!」
 それを見届けると、シャルロットは腕を振り上げ指揮をする。それにあわせ一斉に火を噴く機関砲。彼女のユーベルコード『吼え猛る銃火の吹雪』は、文字通り吹きすさぶ雪のよう。
 避ける事すら難しいと考えたのだろう、白の王は眷属の獣を壁のように並び立たせ庇わせる。しかしそれすら霧散させ銃弾は白の王を撃ち抜いていく。
 白の王は悲鳴にも近い歌声を上げて、苦し気に震える。身体に纏う獣達を失ったそこに足は無く、木の根のような下半身がより邪神の異質さを際立たせた。それさえ銃弾に削られ、白の覆うはべしゃりと地に堕ちる。
 すでに銃弾の吹雪を抜けていた獣たちも、ルネの呪詛に包まれてどろりと溶けるように消失した。
「下半身が獣の群れというと、ギリシアのスキュラを思い出すね」
 それは「犬の子」を意味する神話の怪物。恋の柵に巻き込まれ、異形と化した少女――だったか。この邪神にも何か物語があったのだろうかと、ふとルネは想う。もっとも歌うばかりで言葉も通じない白の王に、それを伺い知ることは出来そうになかったが。
「ともあれ……遍く死に貴賎なし」
 君の命も狩ら(弔わ)せてもらうよ。
 ルネは純白の魔銃『慟哭』を構える。呪詛で錬成し呪殺弾の形を為した弾を込め、白の王を狙う。念には念を込め誘導弾の性質を籠めたその弾は、ルネが引き金を引けば逃すことなく敵を貫くだろう。 
 もはや逃げる事も獣に庇わせる事も出来ない白の王は、最後に歌声を上げた。これまでとは違う、白を思わせる清廉な歌声は、自らの消失を覚ってのものだったのだろうか。
 ルネが引き金を引く。それに合わせてシャルロットも援護射撃を放つ。
 シャルロットの銃弾の吹雪が逃げ場を奪い、ルネの弾が確実に邪神の額を射貫く。
 やがて歌が止んだ。
 そこに残ったのはどろりとした黒い『邪神だったもの』。それは侵食され白んだ床や壁を覆うように広がると、そのまま溶けて消失した。
 見れば、部屋はまるで嵐が吹き荒れたかのように荒れていたが、侵食の痕は邪神と共に消失したようだった。

 窓の外からは、うっすらと白い朝陽が差し込んでいた。
 それは禍々しい炎の白とは違い、希望を思わせる優しい白。
 こうして、ひとつの邪神事件は、猟兵達の手によって無事幕を閉じたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月21日


挿絵イラスト