●彼は語る
「結論から申し上げますと、皆さんには、死ぬような思いをしていただくことになるかと思われます」
グリモアベースで猟兵を集めた、アウグスト・アルトナー(永久凍土・f23918)はそう切り出した。
それでもその場に残る猟兵たちを見やった彼は、続ける。
「向かっていただく世界は、UDCアース。敵は呪詛型UDC……日常を楽しむ人々を、呪いのようなもので怪異に誘う怪物です」
つまり、人々よりも日常を楽しむことで、呪いを猟兵たち自身に引き寄せ、その奥に潜むUDC怪物を倒す、という作戦である。
「具体的な場所は、とある地方都市にある広い公園の原っぱです。まずは、夜に、そこで寝転んで、星を眺めていてください」
満天の星空の中、特に目立つのは、大きく輝く三つの星を結んでできる『冬の大三角』だろう。運が良ければ、流れ星も見られるかもしれない。
「十分に楽しむことができれば、ふと、見知らぬ人物が傍に現れていることに気づくでしょう。老若男女、様々なようですが、この人物がUDCなのか、操られた一般人なのかは予知では分かりませんでした。なので、すぐに攻撃を仕掛けるのはやめてください」
アウグストは続ける。
「その人物は、にっこり笑って、セロファンに包まれた飴玉を差し出し、食べるように勧めてきます。星空を閉じ込めたような、綺麗な飴ですよ。それを食べてみせれば、UDC怪物は油断するでしょうから、その後の戦いを有利に運ぶことができるかもしれません。もし、食べきったフリをするというのでしたら、バレないように注意してください。ただ、飴を渡した人物がすぐ傍で凝視しているので、それは非常に困難だと思います」
――その飴を食べた場合、どうなるのか? そんな猟兵の疑問に、アウグストは答えた。
「身体に直接の害はありません。ですが……食べた人が抱いている、『死』のイメージ。それがそのまま、食べた人に対して叩きつけられます」
つまり、『死は怖いもの』だと思っていれば、とてつもない恐怖感が襲ってくる。『死は痛いもの』だと考えているなら、幻覚の、想像を絶するような痛みに襲われる。……といった具合だという。
「『死は救い』とか『死は甘美なもの』と考えている方もいるかもしれませんが……その場合は、飴玉を食べた直後に、そのまま死んでしまいたくなる可能性もあり得ます」
死にどんなイメージを持っているにせよ、心を強く持つことが必要だという点は変わりない、とアウグストは述べる。
「まあ、大抵の方にとっては、ひどい『味』だと思いますが」
この場合の『味』は比喩だろう。彼は続ける。
「猟兵なら、それぞれがお持ちの『調味料』でどうにかできるかと」
これも比喩だ。死の恐怖や痛みを紛らわせるもの、という意味に違いない。
「『死』のイメージを乗り越えたなら、UDC怪物が姿を現すはずです。倒してきてください。……それでは、ご武運を」
言ったアウグストの右手で、ふわりと羽根型のグリモアが浮かび、光を発する。UDCアースへの転送が、始まった。
地斬理々亜
地斬です。
よろしくお願いします。
●第1章
日常フラグメント。原っぱに寝転んで星空を眺めていただきます。
(グリモア猟兵のアウグストはいません)
●第2章
冒険フラグメント。『死』のイメージを叩きつけてくる飴を食べきってください。
(SPDの選択肢が『完食したフリをする』となっているフラグメントになりますが、実際に食べた猟兵が多ければ、第3章で敵が油断している度合いが上がります)
●第3章
集団戦。敵の詳細は伏せます。
●備考
プレイング受付はオープニング公開直後から。
各章ごとの締め切りは、ツイッターや自己紹介ページで告知します。
また、『アドリブ歓迎』の方は、プレイング冒頭に『◎』と書いてくだされば対応します。文字数節約にご利用ください。
それでは、ご健闘をお祈りします。
第1章 日常
『星の観測』
|
POW : 星や流れ星を、気合で見つける
SPD : 星や流れ星を、技術で見つける
WIZ : 星や流れ星を、知識で見つける
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●星空
転送が終われば、そこは、広々とした、公園の原っぱであった。
見上げれば、無数の星が空一面に散りばめられている。
原っぱの草は、幸い濡れてはいないようだ。シートを敷いてもいいが、このまま寝転んでしまってもいいだろう。
仰向けに寝転んだなら、猟兵の視界は星々で満たされるのだ。
ジノーヴィー・マルス
SPD
◎
たまにはのんびり星を見てみますか。人生下ばっか向いてちゃ味気ねえし。
でも俺、星の知識ねぇんだよな。
持ってきたタブレットでネット検索してみれば、何かこう、星座とか分かるかね。
まぁ、誰か来てもこんな雰囲気だし、すぐ攻撃仕掛けんのはやめよ。
(原っぱに寝転びながら、タブレットと星空を交互に見てみる)
ほー、あれがこうなって…こうで。
…ってあれ、流れ星だ。
……って思ったら行っちまったよ。まぁいいか、願い事なんて決めてねーし。
記憶の事を星に託すつもりもねぇ訳で…。
●星に願わず
(「たまには、のんびり星を見てみますか。人生下ばっか向いてちゃ味気ねえし」)
ジノーヴィー・マルス(ポケットの中は空虚と紙切れ・f17484)は、猫背をぐっと逆に反らせて上を見てみた。
名前も知らない無数の星たちが、輝いている。
(「……星の知識、ねぇんだよな」)
元より知らないのか、あるいは、他のあらゆる記憶と共に失われてしまったのか。
今となっては、分からない。
(「ま、いいか」)
ジノーヴィーはその場に屈み、ごろりと背中を原っぱに預ける。それからタブレットを取り出し、顔の上にかざした。
(「まぁ、誰か来てもこんな雰囲気だし、すぐ攻撃仕掛けんのはやめよ」)
そんなことを考えながら、指で画面に触れ、ネット検索。
今の季節に見ることができる星座について、タブレットは簡単に答えを導き出した。
(「やっぱ、こういう時は道具が頼りになるな」)
改めて思いつつ、ジノーヴィーは画面と実際の星空を見比べる。
ほぼ等間隔に並んだ三ツ星は、狩人オリオンのベルトにあたる。その下方に見える雲のようなものが、オリオン大星雲。タブレットは、ジノーヴィーが『知らないこと』を教えてくれる。
「ほー、あれがこうなって……こうで」
ジノーヴィーは感心しながら、再び画面に視線をやる。その時、視界の端で、きらりと光が流れた。
「……ってあれ、流れ星だ」
思わず、急いで視線を星空に戻すが、その時にはもう流星は消えていた。
(「まぁいいか、願い事なんて決めてねーし」)
失った記憶のことを、星に託すつもりもジノーヴィーにはないのだ。
向き合うと、決めたのだから。
成功
🔵🔵🔴
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
こういう時出ないと冬の夜空を見るなんてあんまりないからなぁ。なにより寒いし。
一応寒くないよう防寒だけはしっかりして、あとは事前にある程度星図を頭に入れる様にしてっと。途中で灯りつけて見直すと風情がなくなるような気がするし。
有名どころだと冬の大三角形と冬のダイヤモンド、もしくは大六角形か。どっちにもあるのが天狼星…こっちだとおおいぬ座のシリウスか。わかる、あれすごく目立つもんなぁ。
しかし死の味の飴か。味もだけど綺麗だって言うから食べる前に写真で撮れないかな。
●寒空と天狼星
(「こういう時でないと、冬の夜空を見るなんて、あんまりないからなぁ。何より、寒いし」)
黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)はそう心に浮かべ、白い息を吐き出した。春は近づいているが、まだまだ空気が冷たい。
この寒さに備えて、瑞樹はしっかりと温かい格好で来た。何も言われずとも、このように防寒を十分に行うことができるのは、雪国でもある出羽国で過ごした時期が瑞樹にあるからかもしれない。
加えて瑞樹は、星図も頭に入れてきている。星空を見ている最中に灯りを点けて再確認するのは、風情に欠けることのように感じたからだ。
原っぱに寝転び、南東の空を見上げたなら、他の星たちよりも一際輝く星が三つ、大きな三角を描いているのが視界に入る。
(「あれが、有名どころの、冬の大三角形だな」)
瑞樹はその図形をなぞるように、それぞれの星を指さした。
(「で、あれが冬のダイヤモンド、もしくは大六角形」)
少し視野を広げれば、六つの一等星が描いている、冬空にきらめくダイヤモンドが見えた。
(「冬の大三角形と冬のダイヤモンド、どっちにもあるのが天狼星……こっちだとおおいぬ座のシリウスか」)
瑞樹が思い起こすのは、ここ、UDCアースの日本での、星の呼び名だ。それから彼は、小さく笑う。
(「わかる。あれ、すごく目立つもんなぁ」)
青白く輝くその恒星は、地球上から見たなら、太陽を除けば最も明るく見える星だと言われる。
明るい星を結んで星座を作ろうと提案されたなら、きっと自分でもシリウスを使ってしまうだろう、という気がした。
(「しかし、死の味の飴か。味も気になるけど、綺麗だって言うし。食べる前に写真で撮れないかな」)
瑞樹は考えていた――未だ、口元に笑みを浮かべたまま。
大成功
🔵🔵🔵
ネア・ノマッド
◎
【星や流れ星を、気合で見つける(POW)】
敵者を待つ間の時間潰し…他にする事もない
…さて、星など眺めて過すのも久しい
腹が満たされる訳でもなし、金が降って来る訳でもなし
依頼人の羽振りを良くする方便に、枕語りのネタにした事はあったが…
俺自身にとっては意味のないものだ
星に浪漫や願いとやらを見出す人間の感傷というのは…まあ、暢気なものだな…俺には分からん(溜息と共に目を閉じ、草原に横たわる)
(寝付く訳もなく、再び開いた眼に映る一筋の流星)
……。
(願うことなど何もない。何も思い浮かばない。其れを何故か空虚に感じる。…馬鹿馬鹿しい。なんて、馬鹿馬鹿しいこと。)
●うつろ
(「確か、敵の呪いを引き寄せろ、という話だったか」)
ネア・ノマッド(影法師・f16592)は聞いた話を思い返す。そのために、日常を楽しむ必要がある、と言われたが。
(「……星など眺めて過ごすのも久しい」)
彼は、上を見上げる。光っている点々が数多くある、ネアにとってはただそれだけだ。『美しい』と心動かされることなど、ない。
(「腹が満たされる訳でもなし、金が降ってくる訳でもなし」)
依頼人の羽振りを良くするために、星のことを話題として用いたことならばあった。けれど、ネア自身にとっては、星など、何の意味も持っていないものだ。
(「星に浪漫や願いとやらを見出す人間の感傷というのは……まあ、暢気なものだな……俺には分からん」)
痩せぎすのダンピールは溜め息をつくと、金色の両目をまぶたで覆い、原っぱに横たわった。
そよそよと、草が風に揺れる音が聞こえる。
もちろん、これから敵が来るというのに寝付くという油断など、ネアにとってはあり得ない。彼は、何を思ったわけでもなく、再び目を開けた。
まさにその瞬間、ネアの瞳に映ったのは、空を流れる星であった。
「……」
願うことなど、何もない。
何も思い浮かばない。
ネアが、流星を見られた幸運を喜ぶことも、流星が自分を待っていてくれたのかもしれないなどという発想に至ることも、なかった。
――空虚。空虚だ。
『何故』の言葉がネアの脳裏に浮かぶ。美しさに価値を感じないのも、願いなどないのも、今さらのことだ。何故、こんな風に感じるのか。
(「……馬鹿馬鹿しい」)
なんて、馬鹿馬鹿しいことだ、と。ネアは、その虚しさを切り捨てた。
成功
🔵🔵🔴
ヴィリヤ・カヤラ
◎
真さん(f13102)と。
真さんはこういう所に寝転ぶのは大丈夫?
私は大丈夫だけど、たまに苦手な人もいるしね。
こっちでもこんな星空が見えるんだね、
高いビルも明かりも多いからあまり見られないのかと思ってたよ。
って、言ってもダークセイヴァーも曇ってる事が多いから
あまり見えないんだけど。
あ、そういえば昔読んだ本に人が死んだら星になるって
書いてあったんだけど本当だと思う?
もしそうなら見守られてるみたいで良いなって思って。
真さんが信じてたら意外過ぎて少し驚くかも、と笑って。
でも色んな仕事もしてるし恨みの視線もあるかもしれないけど、
それは無視の方向で。
久澄・真
◎
ヴィリヤ(f02681)と
何時もは見えない星、と宣いたい所だが
残念ながら星空見上げるようなセンチな甲斐性は持っていない
死の味の飴は興味あるが星空を楽しめるとは思えなかった
だからこそ楽しんでる様子の連れには感謝のひとつもしてやろうかと
潔癖の気はあるが、別にそこまで神経質じゃねぇよ
倣う様転がり
変わらず燻らせる煙草の煙吐いて視界に映る景色を霞ませる
逆にお前、俺が人が死んだら星になるって信じてたらどう思うよ
自分で想像しても気色悪い
仮にそうだとしたら俺の場合むしろ監視されてんな
自分の血濡れた生き方は自覚してる
つか、お前でもそんなん考える事あるんだな
可愛いらしいことで
視線は星を眺めたままでクツリ、笑った
●星は見下ろす
男が、白磁の髪を風になびかせながら、大して面白くもなさそうな表情を浮かべて遠くを眺めている。青色の髪の娘が、それを見ていた。
「真さんは、こういう所に寝転ぶのは大丈夫?」
『私は大丈夫だけど』と添え、彼女、ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は尋ねる。その男――久澄・真(○●○・f13102)へと。
「別にそこまで神経質じゃねぇよ」
真には、潔癖の気があるという自覚はあったが、ぶっきらぼうにそう答えた。
「こっちでもこんな星空が見えるんだね」
「そうだな」
楽しそうに笑うヴィリヤへと、真は相槌を打つ。
「高いビルも明かりも多いから、あまり見られないのかと思ってたよ。……って言っても、ダークセイヴァーでも曇ってることが多かったから、あまり見えたことがないんだけど」
声を弾ませ、言葉を並べるヴィリヤ。そんな彼女に対して真ができるのは、
「そうか」
と、素っ気なく返すことぐらいだ。
いつもは見えない星……そうヴィリヤに同調したくとも、真には、普段から星空を見上げる趣味はない。そのようなセンチメンタルな性質を、持ち合わせていないのだ。
死の味の飴に興味はあるものの、星空を楽しめるとは、真自身、思えない。……UDC怪物の呪詛を引き寄せられる自信が、真にはない。
だからこそ、楽しんでいる様子のヴィリヤに対しては、真は内心で、感謝のひとつもしてやろうと思っていた。
ヴィリヤを真似るようにして原っぱに寝転がった真は、いつもどおりに煙草へ火を灯し、煙を吸い、吐き出した。
二人の視界の中、紫煙の向こうに、星空が霞む。
「あ、そういえば」
真が喫煙するのを咎めるわけでもなく、ヴィリヤは明るい声を上げた。
「昔読んだ本に、人が死んだら星になるって書いてあったんだけど、本当だと思う? もしそうなら、見守られてるみたいで良いなって思って」
「……逆にお前」
真は煙草を指で挟んで口から離し、ヴィリヤに問い返す。
「俺が、人が死んだら星になるって信じてたらどう思うよ。自分で想像しても気色悪い」
真は、わざとらしく身震いしてみせる。
「真さんが信じてたら? そうだね、意外すぎて少し驚くかも」
気を悪くした様子もなく、ヴィリヤはまた笑った。
「……仮に、お前が読んだ本のとおりだとしたら。俺の場合、見守られてるというより、むしろ監視されてんな」
「そんな恨みの視線は、無視の方向で」
真の言葉に、ヴィリヤは微笑んできっぱりと返す。
真の仕事――血濡れた、真の生き方。そのことは、真自身も自覚しているし、ヴィリヤもまた、ある程度は理解しているのだ。
「つか」
星空に視線を向けたままの真の口元が、ふと弧を描いた。
「お前でもそんなん考えることあるんだな。可愛らしいことで」
クツリと笑った真の、その言葉が、皮肉か、あるいは本心かは、彼自身にしか分からない。
「ありがと」
けれどヴィリヤは、にっこりとして応じたのであった。
並んで寝転ぶ二人を、いくつもの星々が見下ろしている。見守るように――あるいは、監視するように。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『なんでや!?おいしいやろ!!』
|
POW : 根性で完食
SPD : 完食したフリをする
WIZ : MY調味料で味を調えて完食
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●飴
「ねえ」
猟兵へと、不意に声が掛けられる。
いつの間にか、すぐ傍に、見知らぬ人物が立っているのが見えた。
「これ、あげる。食べて」
なんの悪意も感じさせない笑顔で、その人物は、透明なセロファンに包まれた飴を差し出してきた。
夜空のように黒く、中に金銀のきらめきが閉じ込められた飴だ。
――これが、死の味の飴。すなわち、食べた者が持つ『死』のイメージを叩きつけてくる飴だ。
死を恐れる者には、恐怖を。
死の痛みを知る者には、幻覚の激痛を。
死に焦がれる者へは、死への甘い誘いを。
「食べて。おいしいよ」
笑顔と共に、その人物は言う。
猟兵がこれを乗り越え、UDC怪物を倒さなければ、一般人が被害に遭う可能性もあるだろう。
気合いや根性といったもので耐えきるか。あるいは、『調味料』……つまりは、猟兵たちそれぞれが心に持つ何かによって、『死の味』を調えるか。
食べたフリをしてやり過ごすのも、選択肢の一つではあるだろう。バレた場合、どうなるか分からないのが難点だが。
「さあ、早く。食べて」
差し出される飴を、あなたは――。
リズリット・ドート
◎
これはこれで不味そうで嫌やね、口には出さんけど。せやけど、食べるフリなんて芸当はできへん。素直にそのままたべるわ
うちにとっての死って何なんやろ?死ぬって、命が無くなること?それとも忘れること…
知覚した瞬間、ぽろぽろと記憶が溢れていく。飴舐めなきゃ、舐めるたびに失われる
どうしてここにいるんだっけ。なにをしていたんだっけ。
じぶんは、だれだっけ?
足元がおぼつかない、そのまま地面に座り込む。なまえ、思い出せない
『しっかりしろ、リズ!』
………あぁ
強く、そして「優しさ」を感じる声が聞こえる
そっと影に手を伸ばし、友と「手をつなぐ」
消え行く記憶を、消えたはずな記憶を「気合い」で繋ぎ止め
思い出したよ、ラギア
●忘れないで
(「これはこれで、不味そうで嫌やね」)
リズリット・ドート(響く虚ろのノイズ・f08862)は、言葉にはせず、内心で思う。黒を基調とした飴は、食べ物らしからぬ色だ。
(「せやけど」)
食べるフリなどという芸当は、自分にはできないとリズリットは判断した。言われるがまま、飴を、口内に放り込む。
ころころと、リズリットは口の中で飴玉を転がす。
(「うちにとっての死って何なんやろ? 死ぬって、命がなくなること? それとも――」)
――忘れること……。
そう知覚した瞬間に、リズリットは金色の目を見開いた。
大切なことを忘れている気がする。それがなんだったのかすら、もう思い出せない。
ぽろぽろ、記憶が溢れる。まるでジグソーパズルが崩れていくかのように、リズリットの生きる世界が壊れてゆく。
(「飴舐めなきゃ」)
ころり、ころり、飴を舌で転がすたびに、また記憶が失われる。
生きている証が、風化し、消えてゆく。
(「どうしてここにいるんだっけ。なにをしていたんだっけ」)
思い出そうと記憶の引き出しを開けても、中は空だ。
(「じぶんは、だれだっけ? なまえ、思い出せない」)
ふらり、とよろめいた彼は、そのまま地面に座り込んだ。
『――しっかりしろ、リズ!』
強く、優しい声が響く。
顔を上げれば、黒い目隠しをした、影の少年が手を差し伸べていた。
(「…………あぁ」)
そっと手を伸ばして、少年の手を取ったリズリットは立ち上がる。
消えゆく記憶、消えたはずの記憶。それらを、意志の力を楔として、繋ぎ止める。
「思い出したよ、ラギア」
目の前の友に、リズリットは告げた。
独りではない。忘れるわけには、いかない。
成功
🔵🔵🔴
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
綺麗だな。これ写真撮ってからでいいか?そう一応くれた人物に尋ねてみる。OKだったら携帯端末で写真とって、そのあと飴は口の中へ。
可もなく不可もない味。
だって俺にとって死は生の延長で、生もまた死の延長。輪廻転生、どちらも交互に廻るもの。
俺は主の棺桶の中で目覚めて、世界を越えた先のサムライエンパイアで肉体を得た。主の死の先に今の俺の生がある。そうやって俺が死ぬ時は誰かの礎になれたらなと思う。
生きることも死ぬことも同じだと思うものにはどんな味だっていうんだろ。
ただあえて違いを言うならば。生きることは他者と関わるからこその苦しみが、死しては関わりたくともできない苦しみがあると思う。
●廻る
「綺麗だな」
飴を見た瑞樹は、開口一番そう言った。
「これ、写真撮ってからでいいか?」
「ええ。どうぞ」
瑞樹に尋ねられた、飴を差し出す若い女性は笑顔で頷く。短く礼を述べた瑞樹は、携帯端末で飴の写真を撮った。
きらきらした飴の画像を保存し終えた瑞樹は、飴を口に入れる。
(「……こんなものか」)
拍子抜けしたような表情を瑞樹は浮かべた。
瑞樹にとって死は生の延長であり、生もまた死の延長である。輪廻転生。いずれも、交互に廻るものだ。
それにしても、寒い。防寒はしっかりしてきたのに、体が冷える。
(「……これは」)
瑞樹が、サムライエンパイアに呼ばれて肉体を得る前。自我を得て最初に感じたのと同じ感覚だ。
飴による幻覚。すなわち、『冷たい』という感覚である。
かつて、一本のナイフに過ぎなかった瑞樹は、自らを愛用していた主、その棺に納められた。体温のない主の体に密着し、ナイフもまた冷え切っていたのだ。
(「だから、どうした」)
主の死の先に、今の自分の生がある。主の死のイメージを今さらぶつけられたところで、恐れなど瑞樹は感じない。
(「俺が死ぬときは、誰かの礎になれたら」)
そう心から思う。……けれど。
(「誰かの……」)
誰か、とは。他者、とは。
関わりたくてもできない相手、である。
生きていれば、他者と関わるからこその苦しみがある。だが、死んだなら、もう誰とも関われなくなるのだ。
瑞樹の目には、誰の姿も映らない。瑞樹の耳には、誰の声も聞こえない。瑞樹の手は、誰にも触れられない。
「…………」
瑞樹は我に返る。飴玉が溶けきったようだ。
(「これが、死の味か」)
それでも、死の先に、生は廻ってくるのだ、と。瑞樹は、溶かした飴を飲み込んだ。
成功
🔵🔵🔴
ネア・ノマッド
◎「根性で完食(POW)」に挑戦
…栄養になるなら食物の味など気にした事もないが、死の味とはどういうものなのだろうな…
俺にとっての死とは、無だ
先に何もない、途絶した未来だ
最後の救済でもある
確かに過去、幾度も死ぬような目にあったし、死んだ方がマシだと思い煩った事もあった
だが今は。
どこまで生きる事ができるか、俺は俺の手腕に賭けて挑み続ける
くだらない人生の、唯一自身に課した遊戯なのだ
其れを放棄する事は、逃走であり、敗北
何者かに手酷く打ちのめされようと、俺自身に敗北する事は許さん
…故に。この死(アメ)を飲み下し、終焉を否定する
ちり、と口腔に走る刺激だけが、味とも言えぬ、舌に残る感覚
死の先を、見に行こう
●無
(「……栄養になるなら食物の味など気にしたこともないが」)
ネアの、骨張った白い指が、飴を包むセロファンを剥く。
(「死の味とはどういうものなのだろうな……」)
迷いもせずに、ネアは飴を口に放り込んだ。
味は感じない。
それだけでは、ない。周囲の景色全てが真っ暗闇へと暗転し、風が草を揺らす音も消え失せた。
見下ろそうとしてみても、自分の体すら見えない。頭を動かすことができているのかどうかさえ、分からない。
あらゆる感覚が、ない。
(「無、か」)
これがネアにとっての死。先に何もない、絶えた未来である。
(「……」)
過去、ネアは幾度も死ぬような目に遭ったし、死んだ方がマシだと、思いわずらったこともあった。
死は、ネアの人生、その最後に待っているはずの救済でもある。
このまま、この無に身を委ねていれば、もう苦しむことなどないだろう。
(「だが」)
今は、と、感覚のないネアの唇が紡いだ。
(「どこまで生きることができるか、俺は俺の手腕に賭けて挑み続ける」)
それは、ネアが『くだらない』と称する人生において、唯一、自身に課した遊戯。
それを放棄し、このまま死という名の無に身を委ねるのは、ネアにとって、逃走であり、敗北だ。
(「何者かに手酷く打ちのめされようと、俺自身に敗北することは許さん。……故に」)
終焉を迎えるのは、今ではない。ネアは否定する。
彼は、無感覚な舌の筋肉を動かし、死(アメ)を嚥下した。
その瞬間、分厚いカーテンを取り払ったかのように、全ての感覚が戻った。
ちり、と、ネアの口腔に刺激が走る。味とも言えない、舌に残る感覚だ。
(「死の先を、見に行こう」)
金の双眸が、真っ直ぐに前を見た。
大成功
🔵🔵🔵
久澄・真
◎
ヴィリヤ(f02681)と
見た目は、な
それだけ溢せばヴィリヤのあとに続く様口内へ放る飴玉
舌に広がった味は─
いつの間に目を閉じていたのか開いた視界に映ったは
何もない、白
大したリアクションも無く眺める室内は一切と言うほど色が存在しない
ああ、なんだ
やっぱつまんねーじゃねぇか
どの世界どのストーリーでも傍観者でしかない生き方に
死のイメージなんて期待するだけ損なのだ
生きているから死なないだけ
死なないから生きているだけ
ただ事実はそれだけ
死への感慨など、いつかの溝にでも棄てちまったかもな?
ガリッと噛み砕く音で意識が引き戻される
無味がどこまでも広がり“食感”だけが残る
問う連れに、こう答えた
つまんねー味だった
ヴィリヤ・カヤラ
◎
真さん(f13102)と。
名前は物騒だけど見た目は綺麗な飴なんだね、
早く食べてほしいみたいだし食べちゃおう。
いただきます。
感じる死は何も無い暗闇。
父様と母様は死んだ後にいつか会えたらいいなって思うけど。
私が思う死が暗闇なのは自分が死んだ後に何も思えないからで、
このまま闇に溶けて消えて行くんだと思う。
でも、父様を殺しに行くっていう父様の願いを
叶えてないから今はまだ死ねないかな。
死ぬのも消えるのも父様の願いを叶えた後にしないとね。
さて、真さんは大丈夫かな?
このくらいで折れないとは思うけど。
死の味はどうだった?美味しかった?
●死出の飴玉
「見た目は綺麗な飴なんだね」
「見た目は、な」
手のひらの上の飴を眺めるヴィリヤへ、真は言葉を返す。
「早く食べて欲しいみたいだし、食べちゃおう。いただきます」
ヴィリヤはセロファンを外して、飴を口に入れる。彼女に続くように、真も飴を口へ放った。
たちまち広がるその『味』は――。
●闇
気づけば、ヴィリヤの周囲には、果てしない暗闇が広がっていた。
(「父様」)
空中を掻くように、ヴィリヤは手を動かす。
(「母様」)
思わず、走り出す。けれど、どこまでも、どこまでも、暗闇は続いていた。
何もないし、誰もいない。
(「ああ、そうか」)
死んだ後にいつか、父と母に会えたらいい、と思っていたけれど。
自分が死んだ後には、何も思えない。
何も、考えられないし、感じられない。それが、ヴィリヤの『死』なのだ。
(「このまま、闇に溶けて消えていくんだ」)
ヴィリヤは、静かに目を閉じた。
(「……でも」)
そっと目を開ける。辺りは、まだ暗闇だ。
(「父様の願いを叶えてないから、今はまだ死ねないかな」)
――世の中を知って力をつけたら、俺を殺しに来い。
ヴィリヤが猟兵になった日、故郷の城から送り出された時。彼女の父は、そう言ったのだ。
(「死ぬのも消えるのも、父様の願いを叶えた後にしないとね」)
一つ頷くと、ヴィリヤはこくんと小さく喉を動かす。飴を、飲み込んだ。
暗黒が消え去り、視界が開ける。
「真さん、大丈夫?」
最初に発した言葉は、連れを気遣うものであった。
彼は、このくらいで折れない、と信じて。
その彼は――。
●白
いつの間に目を閉じていたのだろうか。
真は、目を開く。
そこは、室内だった。さきほどまで、公園の原っぱにいたにも関わらず、だ。
周囲の色は、全て白。
(「……」)
大きなリアクションもなく、真はただ眺める。
壁も床も、天井も、白。
一切というほど、色が、存在しない。
無色の部屋だ。
(「ああ、なんだ」)
怖いわけでも、痛いわけでもない。ましてや、面白くもなんともない。
(「やっぱつまんねーじゃねぇか」)
分かっていた。
期待するだけ、損であると。
どの世界でも、どのストーリーでも。真にとって、己の生き方は、『主人公』ではなく、『脇役』ですらなく、『傍観者』でしかない。
そんな人間の『死』のイメージなど、こんなものだ、と。真は他人事のように思う。
生きているから死なないだけ。
死なないから生きているだけ。
ただ、事実はそれだけ。
死への感慨などというものは――。
(「いつかのドブにでも棄てちまったかもな?」)
ガリッ。硬い音が、響いた。
●現実への帰還
「……」
ヴィリヤが、自分の顔を覗き込んでいる。意識を現実に引き戻された真が、最初に見た光景は、それだった。
真は、噛み砕いた飴を舌の上で溶かす。どこまでも広がる、無味。
ざらざらとした粉末が口の中で溶けていく、その『食感』だけがある。
「死の味はどうだった? 美味しかった?」
尋ねてくるヴィリヤへと、真は答えた。
「つまんねー味だった」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『楽園の鳥』
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POW : 楽園においでよ、一緒に歌おう♪
自身の身体部位ひとつを【食べた人間】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD : 楽園はすてきだよ、苦しくも悲しくもないよ
【夢と希望に満ちた『楽園の歌』を歌う】事で【高速で空を飛ぶ戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 楽園にいこう、体寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ
【おぞましい叫び声】【楽園を賛美する演説】【食べた対象の知性を真似た声でのお願い】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
イラスト:まつもとけーた
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●楽園への誘い
「乗り越えたんだね?」
声がした。見れば、飴を渡してきた人物がそこにいる。
表情は、相変わらずの笑顔。
……一人だけではない。同じように笑顔を浮かべた人々が、猟兵の周囲を囲むように、たたずんでいた。
「死を、乗り越えたんだね?」
「おめでとう」
「オメデトウ」
「アナタタチニハ、ラクエンニイクシカクガアル」
人々は一斉に、くるりと背を向ける。
……否、正面を猟兵に向けたのだ。
人間のように見えていた、その後頭部にあたる位置に、くちばしが生えている。
そのくちばしをカタカタと開け閉めしながら、そいつらは……UDC怪物は、口々に言う。
「ラクエンハ、ステキナトコロダヨ」
「ツレテッテアゲル」
「アナタタチナラ、ダイジョウブ」
「キット、タエラレル」
……聞こえの良い言葉を吐いているが、要は、今度は本当に死ねという意味であろう。
「ダカラ、ネエ」
「カラダ、ヨコセ」
「寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ」
この『鳥』たちは、猟兵が肉体を差し出してくれると考えているらしい。飴を食べた猟兵が多かったため、油断しているのだ。
UDCが化けていた人物は、おそらくはこの怪物の犠牲者……既にこの世にいないだろう。
これ以上、犠牲を広げるわけにはいかない。
警戒を怠っている鳥たちに対し、猟兵たちはそれぞれ、身構えた。
スピレイル・ナトゥア(サポート)
精霊を信仰する部族の巫女姫です
好奇心旺盛な性格で、世界をオブリビオンのいない平和な状態に戻して、楽しく旅をするために戦っています
自分の生命を危険に晒してでも、被害者の方々の生命を救おうとします
技能は【第六感】と【援護射撃】と【オーラ防御】を主に使用します
精霊印の突撃銃を武器に、弾幕を張ったり、味方を援護したりする専用スタイルです(前衛はみなさんに任せました!)
情報収集や交渉のときには、自前の猫耳をふりふり揺らして【誘惑】を
接近戦の場合は精霊の護身用ナイフで【捨て身の一撃】を繰り出します
マスター様ごとの描写の違いを楽しみにしている改造巫女服娘なので、ぜひサポート参加させてくださると嬉しいです!
グレナディン・サンライズ(サポート)
『ここはこの年寄りに任せてもらおうかね?』
『こう見えても、まだまだ衰えちゃいないよ』
年齢3桁の婆。
スペースシップワールド出身の元宇宙海賊。
主な武装はフォースセイバーとブラスター。
戦闘スタイルは基本的には前衛遊撃。敵を翻弄するような戦いを好む。
グルメではない酒好き。
年齢なりの経験を積んでいるので、冷静さと余裕をなくすことはない。
口調(あたし、あんた、だね、だよ、~かい?)
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK、WIZ
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
わけわかんねぇな。楽園に行く資格だとか、よこせだとか。
…勝手言いやがって。
真の姿に。
命中でUCを封じられるなら、最初から使わなきゃいい。
自身は【存在感】を消して【目立たない】ように立ち回り、隙を見て【マヒ攻撃】を乗せた【暗殺】攻撃を繰り返す。できれば一撃で倒すか、もしくは倒しきれなくともマヒで動きを鈍らせる。
相手の攻撃は【第六感】による感知と【見切り】で回避。回避できないものは黒鵺で【武器受け】し可能なら【カウンター】を叩き込む。
どうしても喰らうものは【オーラ防御】【激痛耐性】で耐える。
●反撃の始まり
「わけわかんねぇな。楽園に行く資格だとか、寄越せだとか」
瑞樹は言い捨てると、腰に差した打刀を抜き、右手で握る。同時に、黒い刃の大振りのナイフ『黒鵺』――すなわち自身の本体も抜いて、左手に持ち、構えた。
「……勝手言いやがって」
瑞樹の瞳の色が、寒色から暖色へと変わる。服装は、着物へ。真の姿を解放したのだ。
「……被害者の皆さんは、既にオブリビオンに殺されていたんですね」
もし人々が操られているだけだったなら、救いたかった。スピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)は、そう考えていた。けれど彼女は、自身の両目に映るその姿を見て、分かってしまったのだ。今ここにいるのは、犠牲者に化けていたオブリビオンでしかないと。
「悲しむのは後にするしかないね。あたしたちは、今できることをしようじゃないか」
スピレイルへと言葉を向けたのは、グレナディン・サンライズ(永遠の挑戦者・f00626)だ。
「さ、行くよ」
言ったグレナディンは、百歳を超える老婆とは思えない俊敏さで駆けた。
赤く不気味に輝くフォースセイバーが、楽園の鳥たちを次々に斬り伏せ、串刺しにしてゆく。
油断していた鳥たちの反応は、遅れた。それでも、一体が、後頭部に人間の顔を浮かばせ、グレナディンに噛みつこうとする。
「そいつは、あたしには通じないよ」
落ち着き払い、グレナディンはブラスターを抜く。自らに迫る口、その奥に銃口を押し込むと、トリガーを引いた。熱線で射抜かれた鳥は、崩れ落ちる。
慌てふためく鳥の群れへ、スピレイルが突撃銃を向けた。
「人々の仇、とらせてもらいますよ」
スピレイルの銃が火を噴く。それは、文字通り『火を噴いた』と言えた――精霊印の突撃銃から撃ち出されたのは、炎の精霊の力を宿す弾丸であったからだ。
高熱を帯びた銃弾に貫かれ、楽園の鳥たちが何体も倒れ伏してゆく。
スピレイルやグレナディンが攻撃を続ける間、瑞樹は存在感を消し、目立たないように動いていた。
彼が用いるのは、主から受け継いだ暗殺術。鳥の頸動脈や、筋肉・神経を断つように、刃を閃かせる。
ある鳥は、何が起きたのか理解する前に命を落とし、別の鳥は、体の自由を封じられた。
「炎の精霊さん」
スピレイルが言葉を発する。精霊魔法の行使によって召喚された炎の精霊は、舞い踊るように敵へ突撃した。瑞樹によって動きを鈍らされた敵へと、燃え盛る炎が、とどめを刺していった。
半ば人間の姿をした鳥が、焼かれてゆく。それはさながら、犠牲者の火葬のようにも見えた。
「下がらなきゃ怪我するよ!」
叫んだグレナディンは、オーラの塊を放った。『理力榴弾』は炸裂し、広範囲の敵を撃ち抜く。
ここで、敵が動いた。
「ギィヤアアァー……!!」
「ラクエンニイケバ、クルシイコトハ、スベテワスレラレルンダ」
「だから、体をちょうだい」
おぞましい叫び声、楽園を賛美する演説、犠牲者を真似た声でのお願い……これら全てを受けた者は、ユーベルコードを封じられてしまう。
これにより、猟兵の戦闘力は削がれる……そのはずだった。
だが、瑞樹は動じない。なぜなら、彼はあえて、ユーベルコードを使っていない……初めから、使うつもりがないからだ。
「この程度か」
呟いた瑞樹は、噛みつこうとする敵の攻撃を見切り、飛び退く。
別の鳥によるくちばしの一撃を、瑞樹はナイフで受け止めた。直後、彼の右手の打刀が、その鳥の胸を貫通する。
瑞樹は、絶命した鳥の亡骸を蹴って刀を引き抜き、周囲に視線を巡らせた。
敵は、個体数を大きく減らしている。
「あと半分、ってとこかね」
「気を抜かずに参りましょう」
グレナディンとスピレイルの言葉に、瑞樹は頷いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ヴィリヤ・カヤラ
◎
真さん(f13102)と。
さっき目覚めは良かった?
目の前に女性の顔があったからドキドキしちゃった?
って、もう少し点数高くても良いと思うんだけど。
敵の顔が自分になるのは嫌すぎるから
噛みつかれそうになったら真さんの人形を盾にしよう。
戦闘中の事故なら人形代請求されないよね?
数が多いから減らしていこうか敵の多そうな所に
【氷晶】を着弾点で爆発させて使うね。
これなら敵が速くても大丈夫そうだし。
近くの敵は黒剣の宵闇で対処、
遠くの敵を攻撃する時と
真さんの人形を引き寄せる時には蛇腹剣にして使うね。
体を渡すのも楽園に行くのも
父様を倒してからじゃないとダメかな。
でも楽園には行けない気がするんだよね。
久澄・真
◎
ヴィリヤ(f02681)
目覚めの景色が綺麗な女の顔っつーのは歓迎するが
満点とってから出直せ、35点
なんてクツクツ笑って
楽園なぁ
胡散くせー案件っつーのは大概そういう単語がついて回るんだよな
天国、楽園、幸福
常套句すぎて溜め息も出ねぇわ
操り糸の先
適当に立たせたマネキン人形は傍らへ置いたまま
死霊蛇竜と死霊騎士呼び出し戦わせる
基本俺は傍観スタイル
動くの面倒
不意にくいと引っ張られる操り糸に何かと視線向ければ
盾として使われる人形
チッ、勝手に使ってんなよ
零すも口元は弧を描く
頭ではしっかりと後程請求する額の算段が進んでいる
クハッ!なんだヴィリヤ、センチか?
お前そんな繊細なキャラかよ
──要らねーだろ、楽園なんて
●楽園観
「さっき目覚めは良かった? 目の前に女性の顔があったからドキドキしちゃった?」
そんなヴィリヤの問いに、真はクツクツと笑った。
「目覚めの景色が、綺麗な女の顔っつーのは歓迎するが。満点とってから出直せ、35点」
「って、もう少し点数高くてもいいと思うんだけど」
言いながらもヴィリヤは、柄が湾曲した黒剣を横薙ぎに振るい、近くの敵を切り払った。
「ラクエンハ! ラクエンハ、ステキナトコロダヨ! イッサイノクルシミガ、ナインダ!」
「楽園なぁ」
楽園を賛美する演説を始めた鳥を、真は冷ややかに見やる。
「胡散くせー案件っつーのは、大概そういう単語がついて回るんだよな。天国、楽園、幸福。……常套句すぎて、溜め息も出ねぇわ」
「ギ……!!」
演説に続けて、叫び声を上げようとした鳥たち。その体が、弾け飛んだ。ヴィリヤの放った氷の刃が、着弾と同時に爆発したのである。
真の手から伸びる操り糸の先には、彼の傍らに立つマネキン人形。それはそのままに、真は死霊蛇竜と死霊騎士を召喚した。
動くのが面倒だとばかりに傍観を決め込む真を場に残し、呼び出された2体のオブリビオンは敵へと向かう。死霊蛇竜は大顎で鳥たちを噛み砕き、死霊騎士は手にした剣で鳥たちを細切れにしていった。
その時、鳥たちのうち2体が、ヴィリヤへと接近した。ヴィリヤはとっさに黒剣を蛇腹剣に変形させ、振るって1体を切り裂く。体を上下に分かたれた鳥は、力尽きた。だが、もう1体は倒しきれない。鋭く尖ったくちばしが、ヴィリヤに迫る。
(「もし私が食べられたら、敵の顔が私になるのかな。嫌だな」)
ヴィリヤは蛇腹剣を再度振るい、真の傍らのマネキン人形に巻き付け、引き寄せた。
操り糸がくいと引っ張られる感覚に、何かと思った真が視線を向ければ、そこには、ヴィリヤの盾となった人形が、くちばしに貫かれる光景があった。
(「戦闘中の事故なら人形代請求されないよね?」)
ヴィリヤは思いながら、『宵闇』を剣の形態に戻し、人形の向こう側の鳥を、真横から貫いた。
「チッ、勝手に使ってんなよ」
真はこぼす。だが、彼の口元は弧を描いていた。
真の頭の中では、しっかりと、後ほどヴィリヤに請求する額の算段が進んでいる。
「お願い、お願い。体を――」
人間の声で懇願する鳥の首が、落ちた。死霊騎士が刃を振るったのである。
「体を渡すのも楽園に行くのも、父様を倒してからじゃないとダメかな」
ヴィリヤは軽く首を横に振り、答えるように呟く。それから、こう付け足した。
「でも楽園には行けない気がするんだよね」
「クハッ! なんだヴィリヤ、センチか?」
真は、いかにも面白い言葉を聞いたかのように笑った。
「お前そんな繊細なキャラかよ」
そう言ってから、真の笑いはすっと消え、彼は真顔に戻る。
「――要らねーだろ、楽園なんて」
ヴィリヤがその真の言葉に返そうとした時、鳥の群れが突撃してきた。
「氷よ射抜け」
とっさにヴィリヤは『氷晶』を放ち、爆発させる。
舞い上がった無数の白い羽根が、空から降るように、ふわふわと舞い落ちた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ネア・ノマッド
◎
「貴様らの殲滅を以て、この死を越える。さあ、互いの命をBETしよう…」
我が身のダメージを省みないような積極攻勢の構えで、敵の注意を引きつけ、有利に立ち回っているような油断を誘う。
楽園の鳥のPOW攻撃に対し、ユーベルコード「ブレイズフレイム」を使用、延焼により敵の回復効率を落しながら殲滅を図る。
敵を撃破する為には負傷も厭わず。
「救済を偽り、浅ましく物乞うた報いの焔。それが貴様らへの報酬だ。受け取るがいい」
死に救済を見出す事は、己の命と引換に得た安息だ
それはただの自己満足でなければならない
其れを他者が身勝手に利用し蹂躙するなら、それもまた身に負うべき業が振りかかる
俺もまた、いつかは
●いつか
「貴様らの殲滅を以て、この死を越える」
ネアは、剣を構えた。
「さあ、互いの命をBETしよう……」
彼がとった体勢は、防御を捨てたように見えるもの。それは、敵に、『自身が有利である』という錯覚を植え付けるには十分であった。
「ラクエンヘ! ラクエンヘ、イコウ!」
何体もの鳥が、ネアへと群がってゆく。その鳥たちは、それぞれ、後頭部に人間の顔を浮かばせていた。
あるものは幼い少女の顔。別の個体は中年男性の顔。あるいは若い女性の顔。
それらが備えた歯が、ネアの肉を食いちぎってゆく。
このまま、ネアは食い尽くされるかに見えた。だが、その時。
鳥が群がるネアの体から、炎が噴き出した。
「ギ……!?」
何が起きたのかも把握できないまま、鳥たちは炎に包まれる。
鳥が離れた後のネアの体にも、炎の色が見られた。けれど、その炎は物質化している――欠けた血肉を埋めるように。
また、ネアの体の一箇所には、切り裂いた跡があった。ブレイズキャリバーである自身を傷つけることで、彼は地獄の炎を、至近距離から鳥たちに浴びせたのだ。
負傷を厭わず、ネアは自分へと鳥たちを引き寄せ、一網打尽にしてみせた。もはや、炎に苛まれていない鳥は、いない。
「救済を偽り、浅ましく物乞うた報いの焔。それが貴様らへの報酬だ。受け取るがいい」
ネアは言い放つ。
「ギィ……ギギ……」
鳥はうめく。くちゃくちゃ、口の中のネアの肉を咀嚼し、回復を試みる……だが、炎が体を焼き焦がし、鳥たちの命を奪う方が早かった。
(「死に救済を見出すことは、己の命と引き換えに得た安息だ。それはただの自己満足でなければならない」)
火の粉が爆ぜる音を耳に、ネアは思う。(「其れを他者が身勝手に利用し蹂躙するなら、それもまた身に負うべき業が降りかかる」)
目を、閉じる。
(「俺もまた、いつかは」)
猟兵たちはやがてグリモアベースに戻り、楽園の鳥たちの死骸はいつしか消え去り。
後にはただ、星空に見下ろされる原っぱだけが残された。
成功
🔵🔵🔴