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それは、必ずしも過去へ向かうとは限らない

#UDCアース #呪詛型UDC

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#UDCアース
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#呪詛型UDC


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●連なり重なる怪異の声
 聞こえますか、聞こえますか。
 ワタシは、ワタシたちは、今、あなたに語りかけています。
 ――そう。あなた、あなたです。
 ワタシは、ワタシたちは、今、あなたに語りかけています。
 聞こえますか、聞こえますか。
 この声が聞こえたのなら、ワタシは、ワタシたちは、きっと、あなたのすぐ後ろ。すぐ後ろに、立っています。

●グリモアベースにて
「おはよう、みんな。今度の予知は、UDCアースの事件だったよ」
 あくびを噛み殺しながら、不知火・イヅル(電脳世界のキオクの守り手・f02177)は言った。
 直前まで眠っていたのだろう。その髪には寝癖がついているが、当人は気にするそぶりもなく、虚空に光のモニターを出現させた。わずかばかり映像が乱れた後、モニターに映し出されたのは、歴史を感じさせる古い町並みだった。
「ここは、山間にある小さな町だよ。うんと昔には宿場町だったらしくて、今は、けっこうな数の観光客で賑わっているみたいだね」
 もちろん、それだけであるならば、事件の気配などはなさそうなものだが、イヅルの予知によれば、そんな観光地の『日常』があるからこそ、今度の怪異は起きるのだという。
「今回の敵になるUDCたちは、この町の日常――観光を満喫しているひとたちを、呪詛で怪異に誘うんだ」
 そう告げて、イヅルは、にこりとする。
「つまり、UDCたちを倒すためには、キミたちは、ほかの誰よりも、この町での観光を楽しまなくちゃいけないってことだね」
 イヅルが事前に調べた情報によれば、この町の観光として人気があるのは、着物や浴衣といった和服を着て、町中を散策することであるらしい。かつて、そこが宿場町であったころに思いを馳せながら、当時の人々が着ていた衣服に身を包むことで、タイムスリップした気分を味わおうという趣旨のようだ。
「でも、一番大切なのは、観光をたのしむことだから、着慣れないひとは無理に和装をしなくてもいいよ。お土産屋さんで髪飾りとか、そういうものを買って身に着けるだけでも、雰囲気くらいは、たのしめるんじゃないかな。ただ――」
 そこで言葉を切り、イヅルは自らの手もとに、光るキーボードを出現させた。
「ほんとうに、タイムスリップしてしまったと思ったら、気をつけて。そこから先は、UDCたちの領域だからね」
 言葉の終わりとともに、とん、と、ひとつのキーが叩かれた。それによって、猟兵たちの前にゲートが開かれる。
「それじゃあ、みんな――『いってらっしゃい』! たのしんできてね!」


フシギ
●ごあいさつ
 ご覧いただきまして、ありがとうございます。フシギです。
 今回は『UDCアース』にある、とある観光地を舞台としたシナリオです。よろしければ、おつき合いいただけますと、幸いです。

 シナリオ構成は、以下のようなものとなります。

●第一章:日常『和の彩』
 和装をしたり、和の小物を身に着けたりして、観光地でのひとときを、おたのしみください。

●第二章:冒険『曰くつき…大丈夫、恐くないですよ?』
 UDCの怪異によって、観光地である町に異変が起こります。おそれず、UDCたちを探すために、進んでください。

●第三章:集団戦『???』
 UDCたちの群れとの戦闘です。がんばって、やっつけてください。

 それでは、みなさまのプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『和の彩』

POW   :    古風な物を選ぶ

SPD   :    華美な物を選ぶ

WIZ   :    個性的な物を選ぶ

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

彩波・いちご
【恋華荘】
セナさんを可愛く着飾るんですね
その企み乗ります!
「理緒さん、どれを着せましょうか?」
2人で見繕って、セナさんを着せ替え人形にしましょう
「着付けは任されました♪」
作法も手順もバッチリ身に着けてますのでっ
丁寧に…緊張しないで大丈夫ですよー?

というわけで、じゃじゃーん
「セナさん、よくお似合いですよ♪」
良家のお嬢様のようなセナさんの振袖姿
これは理緒さんが抱きつくのも無理もない可愛らしさ♪

理緒さんがセナさんハグしてる間に、私も着替えてしまいましょうか
セナさんのともお揃いな感じの赤地に花柄な和風のお姫様、っぽく
「ふふ、似合います?」

さて、こうなると最後は理緒さんも着替えないとですねー?(くすくす


菫宮・理緒
【恋華荘】

今回は気合い満タン!

めいっぱい楽しんでってことだから、
セナさんを全力で大和撫子にしちゃうよ。

お店でセナさんをじーっとみつめて、
あれもこれもと見繕って、着せ替えです。
「いちごさん、着付けはお任せしましたっ!」

そして選んだのは、
セナさんの瞳と同じ、赤地の辻が花柄の着物、
帯は髪の色に合わせた、銀の花喰鳥文柄、
玉簪で髪をまとめて、良家のお嬢さま風にしちゃいます。

これがメインなんだけど……似合いすぎっ。
「あーもう、可愛すぎー!(はぐはぐっ)」

って、気づいたら、
いちごさんもお姫さまに進化してる!

え?なに?わたし両手に花?

って、わたしはほら、似合わないし?
といいつつ、2人に追いつめられます。


セナ・レッドスピア
【恋華荘】
みんなで和装、なのですね
…でもそちらの知識が…
と思っていたら、理緒さんといちごさんがジーっと見回してきて

お二人が着物や小物を見繕ってくれました…!
そうしていただいた事と見せてくれた着物等に
嬉しさとドキドキでいっぱいに…

そして着付けを…いちごさんが!?
…優しく、着付けて下さいね…?
と、その間はドキドキしっぱなしでした…

そうやって完成した姿を見て
別人になってませんか!?
と思うくらい綺麗な姿になっていてすっごきドキドキしていたら
そこに理緒さんが!?

そしてどきどき度は限界突破寸前に!?

こ、今度は理緒さんも‥と言おうとしたら
いちごさんが現れて
その姿に理緒さんと一緒にはわはわしちゃう事に!?



「みんなで和装、なのですよね……」
 観光客用の着物を取り扱う店の前で立ち止まり、セナ・レッドスピア(blood to blood・f03195)は、呟くように言った。観光を楽しむことで怪異に巻きこまれ、その奥に潜むUDCたちを倒す――それが、猟兵であるセナの目的であり役目ではあるのだが、彼女の表情は、いささか浮かないものだった。
 というのも、セナには和装の知識がなかったのである。着物を取り扱う店であれば、その手の知識は店員にあるはずだ。しかし、それでも、セナの足は、どうにもためらってしまう。
 そんなセナの後ろでは、彼女と行動をともにしていた、彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)と、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)が、じっと、その背中を見つめていた。
「――いちごさん」
「わかってますよ、理緒さん。行きましょう」
 理緒の呼びかけに、いちごが神妙な面持ちで、うなずく。そのとき、ふたりをうかがうように、セナが振り返った。
「いちごさん、理緒さん、実は私――」
 和服の着方はおろか、選び方もわからないのだと、そう告げようとしたセナの言葉は、けれど、理緒に背を押されたことで続かなかった。
「セナさん、入ろっか」
「え。ですが……」
「大丈夫ですよ。一瞬で終わりますから」
 にこやかに言うや否や、いちごもまた、セナの肩を押す。何が何だかわからない、といったセナをよそに、いちごと理緒は目配せをし合い、三人で店の中へと入ったのだった。
 店に入った理緒は、店員から声をかけられるよりも先に、素早く着物を物色し始める。そのとなりに、極々自然なようすで並んだのは、いちごだった。
「理緒さん、どれをセナさんに着せましょうか?」
「ここは、やっぱり、大和撫子風でいきましょう!」
 気合いのこもった声で応じた理緒に、いちごは「そうですね」と、賛同の笑みを浮かべる。二人は、ぽかんと立ち尽くしているセナに着物をあてがっては、ああではない、こうではないと言いながらも、着々と物を選んでいった。
 かくして、セナのためにと選ばれたのは、彼女の瞳に合わせた赤い辻ヶ花柄の着物と、髪の色に合わせた銀の花喰鳥柄の帯、そして、一本の玉かんざし。いちごと理緒の見立てで選ばれたそれらに、セナの頬は薄らと染まった。
「私のために、こんな素敵な……」
 うれしさで高鳴る胸を押さえ、セナは、いちごと理緒の顔を見る。ありがとうございますと、そう口にしようとした矢先、理緒がセナをいちごのほうへと押しやった。
「それじゃ、いちごさん! 着付けは、お任せしましたっ!」
「えっ? 着付けを、いちごさんが!?」
「安心してください! 作法も手順も、バッチリ身に着けてますのでっ」
 にこやかに告げたいちごは、店員に更衣室の場所を聞くと、すぐにセナの手を取った。そうして、更衣室へと向かおうとして、そこで、いちごは気がついた。握ったセナの手が、どこか強ばっている。
「セナさん、もしかして、緊張してます?」
「……は、はい」
 頬を赤く染めながら、眉尻をさげて、セナははにかむように笑った。
「あの――やさしく、着付けてくださいね……?」
 そして、いちごもまた、笑った。「もちろんですよ」と。

 ほどなくして、更衣室から戻ってきたセナは、まるで別人のようだった。品のいい着物をまとい、長い髪を玉かんざしでまとめた姿は、まさしく良家の令嬢。理緒が、いちごと一緒に見立てたのだから、当然似合うに決まっているのだが、実際に着替えた姿を見れば、こらえきれないものがある。
「あーもう、かわいすぎー!」
「はわっ!? 理緒さん!?」
 たまらず抱きついた理緒の腕の中から、セナのおどろいた声があがったものの、それを止めようとする者は誰もいない。セナの着付けを担当したいちごも、にこにこと満面の笑みを浮かべている。
「セナさん、よくお似合いですよー。理緒さんが抱きつくのも無理はないですね」
「はわはわわ……!」
「ほんと、かわいいー! もう、ずっとこうしていたい!」
 抱きつかれて、あわてているセナと、幸せそうにしている理緒。そんなふたりの姿を見て、いちごは、くすりとした。
「今のうちに、私も着替えてしまいましょうか」
 そうして、ふたりには気づかれないよう、あらかじめ目をつけていた着物を手に、再び更衣室へと向かう。襦袢の上から、赤地に桜流水柄の着物を羽織り、手早く金の帯を締め、ふたりのもとへと戻れば、セナと理緒が、いちごに気づいて目を丸くした。
「ふふ、似合います? 私は、お姫さまっぽくしてみました」
 いちごが、にこりと笑いかけると、理緒がぽつりと言った。
「え? なに? わたし、両手に花?」
「そうかもしれませんね?」
 と、いちごは、あえて少しおどけてみせる。そして、言うのだ。
「でも、理緒さんだけ、両手に花というのは、ずるくありません? セナさんだって、理緒さんの着物姿、見たいですよね?」
 たちまち、セナの顔はかがやいた。
「み、見たいです……!」
「ええ!?」
 自分では着物を着るつもりはなかったのだろう。理緒の口から、大きな声があがる。反して、いちごは、至極たのしそうに笑っていた。
「こうなると、理緒さんも着替えないとですねー?」
「で、でも、わたしはほら、似合わないし?」
「そんなことないです! 理緒さんなら、必ず、素敵になります!」
 じりじりと後退する理緒を、いちごとセナが壁際へと追い詰めてゆく。そのようすを、店員たちは微笑ましそうに見守っていた。理緒の背が、壁にぶつかるまで――残るは一歩。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四宮・かごめ
※アドリブ・連携歓迎
表情…変わらない
口数…少なめ
好き…個性的な物・体を動かす事

【WIZ】
こういう場所は慣れませぬ。なにぶん山育ち故。
などと言いつつも、あまり緊張した様子を見せずに宿場町を散策するのでござった。にんにん。

何時もの服装で表を歩きながら、ふらふらと店を眺めて回る予定でござる。一応、髪は下ろしておくでござる。珍しい簪が買えるかも知れない。

個性的な小物とか、和を感じさせるアイテムとか。なんでも面白いものを見つければ買って行くでござる。

あれは……宿場町の定番、射的。
見事撃ち抜いて差し上げまする。ばきゅーん、と。



 客引きの声が飛び交う中、四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)は、軒を連ねる土産物屋を、ふらふらと物色していた。常ならば、ひとつにまとめている髪をおろしているのは、あるいは、珍しいかんざしが見つけられるやもしれないと思ってのことだった。
(それにしても、こういう場所は慣れませぬ)
 かごめは、山育ちだ。人で賑わう観光地とは、とんと縁がなかった。とはいえ、彼女は忍者である。緊張したようすを見せることもなく、目についた店へと足を踏み入れた。
 そこは、錺かんざしを専門に扱っている店のようだった。店内に、ずらりと並んだ錺かんざしを、かごめが見ていると、店の奥から、ひとりの老人が姿を見せた。眉間に深いしわを寄せた、いささか気むずかしそうな老人だった。
「……お嬢さん。その服は自前かい?」
 ぽつりと、けれど、不思議ととおる声で問われ、かごめは口を開いた。
「自前でござる。それがしの普段着ゆえ」
「普段着、か」
 老人は厳めしい顔をしたまま、かごめの言葉を反芻する。そして、かごめの立ち姿を観察でもするかのように、じっと見つめた。これに、かごめが違和感を覚えていれば、老人は「ふむ」と、小さくうなった。
「お嬢さん、名前は」
「姓は四宮、名はかごめと申す」
 すると、老人は「少し、そこで待っていなさい」と告げ、再び、店の奥へと姿を消す。怪訝に思いながらも、かごめが言われたとおりにしていれば、ほどなくして、老人が戻ってきた。老人は、かごめの手に一本のかんざしを握らせ、言った。
「これを持ちなさい」
 それは、一見すると六芒星のような文様を透かし彫りにした錺かんざしだった。
「籠目の紋様だ。古来より、この国では魔除けのしるしとされてきた。お嬢さんの力になるやもしれん」
「いいのでござるか」
 かごめの問いに、老人は、かすかな笑みを浮かべた。
「それが言った。お嬢さんのところへ行きたいと」
 老人の言葉に、かごめはしばし沈黙し、それから、深く一礼をした。おろしていた髪を、老人から渡されたかんざしで、手早くまとめあげる。老人は、満足そうにうなずくと、かごめの背を見送った。
 店を出たかごめは、かんざし屋の斜め向かい側に、屋台のようなものが出ていることに気づいた。
「あれは……宿場町の定番、射的」
 射的の景品として並ぶ品々は、子どもが欲しがりそうな携帯ゲーム機や、おもちゃばかりだったが、少し身体を動かすには、ちょうどいい。おろしていた髪もまとめて、普段通りの動きやすさだ。
 かごめは、小銭を払い、射的の銃を手に取った。景品に狙いを定め、銃の引き金を引く。乾いた音とともに飛び出したコルク玉は、巻物をくわえた金色のガマガエルの置物を、見事に撃ち抜いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【POW】(連携/アドリブ可)
「あら、フォルセティの着物姿も素敵ね」
せっかくだから弟と一緒に和装して町の観光を楽しむ
■和装
花柄の二尺袖の着物に袴姿。クラシカルで落ち着いた装い
■行動
「私は目だたないショートブーツだから平気よ」
雑貨屋で髪飾りや簪を試しながら、かつての宿場町の風情を楽しむ
「どう、これ似合う。赤いのとどっちがいいかしら」
心の中ではちょっとデートみたいと気分上々も、あくまで普段通りを装う
弟をあちこち引っ張りまわしてから小さな写真館へ
「せっかくだから記念写真撮ってもらうわよ」
記念の一枚は大事にしまっておかないと…
外にでた後は「お茶にしましょう」とお茶が飲める店を探す


フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(連携・アドリブ可)
【行動】
「ちょっと不思議な着心地だよ」
フィオ姉ちゃんに言われるがままに『紋付羽織袴』を着てみるよ。
草履が歩きにくくて大苦戦と思ったら、フィオ姉ちゃんはブーツ履いているよ
「うわー、フィオ姉ちゃんずるいや」
結局、フィオ姉ちゃんとショッピングすることになったけど
買い物始めると長いんだよね。
「えー、どっちでも…。赤いのが似合うかな?」
どうせ答え決まっているんだから聞かないで欲しいよね。
その後も散々あちこちのお店に寄って写真まで撮って疲れたよ。
でも、フィオ姉ちゃんが楽しそうだからいいかな?
「ボク、喉がかわいたよ」
カフェとかないのかなって周りを探すよ。



「あら、フォルセティの着物姿も素敵ね」
 フォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)が、紋付羽織袴をまとって更衣室を出ると、姉のフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)が言った。落ち着いた花柄の二尺袖の着物に袴を身に着けたフィオリナが、ゆっくりと弟のフォルセティに近づく一方で、フォルセティは自らの服装を、まじまじと見おろしていた。
「ちょっと不思議な着心地だよ」
「すぐに慣れるわよ」
「それならいいけど」
 フィオリナの言葉にうなずきつつ、フォルセティはぎこちなく歩きだす。
 しかし、フィオリナが言うほど、そう簡単に慣れるものではなかった。特に、フォルセティの草履は、しっかり履こうとすれば鼻緒が足の指に食いこみ、かといって、緩くしたら脱げそうになる。
 一方で、姉のフィオリナは、軽やかに歩を進めながら、かつての宿場町の風情をたのしんでいるものだから、フォルセティは置いていかれないようにするので必死だった。
「フィオ姉ちゃん、なんで、そんなに上手く歩けるの?」
「私は目立たないショートブーツだから平気よ」
 くすりと笑い、フィオリナは袴の裾から、ブーツのつま先を覗かせる。たちまち、フォルセティから非難の声があがった。
「うわー、フィオ姉ちゃんずるいや」
「ずるくないわ。フォルセティが事前に調べておけば、よかったのよ」
 くるりと、身軽そうに、その場で一回転し、フィオリナはフォルセティの手を取った。
「さ、行くわよ。気になっている雑貨屋が、たくさんあるんだから」
「ちょっと、フィオ姉ちゃん、引っぱらないでよ」
 フォルセティの抗議は聞こえていないのか、聞こえないふりか。フィオリナは、楽しげに雑貨屋へと足を向けた。
(……とはいえ、フィオ姉ちゃん、買いもの始めると長いんだよね)
 店先に並ぶ髪飾りやかんざしを試しては、鏡を覗きこんでいるフィオリナを見つめ、フォルセティは内心でため息を吐いた。けれど、そんな弟の胸中など知る由もないフィオリナは、黄色いつまみかんざしを髪に差し、フォルセティを振り返る。
「どう、これ似合う? 赤いのと、どっちがいいかしら」
「えー、どっちでも……まあ、赤いのが似合うかな?」
「そう? そうね。じゃあ、これをいただいてこようかしら」
 フォルセティの返事を聞いて、フィオリナは、上機嫌に赤いつまみかんざしを手に取った。「少しそこで待っていて」と、フォルセティを置いて、フィオリナは会計を済ませに行く。
(まるで、デートみたい)
 そんなふうに思いながらも、フィオリナは努めて普段通りに振る舞う。そして、だからこそ、フォルセティも、姉の胸中を知ることはない。
「どうせ、答え決まっているんだから、聞かないで欲しいよね」
 小さくぼやいたフォルセティは、青く晴れ渡った空を仰いだのだった。
 その後。あちこちの店を見て回った二人は、フィオリナの希望で、小さな写真館で記念撮影をした。和装をした姉弟ふたりが、並んでたたずむ、一枚の写真。その場でできあがったそれを、フィオリナは宝物でもしまうかのように、そっと自らの懐へ忍ばせた。
「ボク、喉がかわいたよ」
 慣れない服装で、フィオリナに散々連れ回されたフォルセティは、すっかりくたびれたようすだった。フィオリナも、そのことに気づいたのか、はたまた、自分も喉がかわいていたのか。彼女は、弟を見て「そうね」と微笑んだ。
「お茶にしましょう、フォルセティ。たしか、さっきカフェを見かけたのよ――」
 記憶の糸をたぐりながら、フィオリナは言う。くたくたになっていたフォルセティは、けれど、かすかに頬を上気させている姉の表情を見て、ぼんやりと思うのだ。
(すごく疲れたけど……フィオ姉ちゃんが楽しそうだから、いいかな?)
 と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『曰くつき…大丈夫、恐くないですよ?』

POW   :    恐くない恐くない恐くない恐くない…(気合・自己暗示)

SPD   :    キチンと準備しておけば関係ありませ、ぎゃー!出たー!(脇目も振らずに逃走)

WIZ   :    幽霊なんているわけないでしょ?(存在を信じない)

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 日が暮れ、かつての宿場町は、次第に茜色へと染まってゆく。
 逢魔ヶ時とも呼ばれる、その時間。どこからか、幼い歌声が聞こえていた。
『かごめ、かごめ』
『かごのなかのとりは、いついつ、でやる』
『よあけのばんに、つるとかめとすべった』
『うしろのしょうめん、だあれ?』
 足もとを、風が駆け抜ける。まるで、小さな子どもが、すぐそばを駆けていったかのようだった。
 けれど、振り返ったところで、そこに子どもの姿はなく――否、先ほどまで、道を行き交っていた人々の姿すらもが、なくなっていた。それどころか、歴史を感じさせる観光地であったはずの町は、今や、誰もいない廃墟と化していた。
 朽ちかけた土産物屋の看板が風に倒れ、音をたてる。かつての宿場町に思いを馳せていた猟兵たちは、奇しくも、このとき、自らがタイムスリップしたような気分を味わった。その行き先は、宿場町として賑わっていたであろう過去ではなく、ひどく不気味な未来。
 だが、猟兵たちは知っていた。これは、UDCが引き起こした怪異であり、自分たちはこのような未来を避けるために、存在しているのだと。
彩波・いちご
【恋華荘】
「ここからが本番ですね…2人とも気を付けて」
【異界の猟犬】を放ち、辺りの調査開始です
猟犬の視界に映るモノ、聞こえる音、僅かな手掛かりでも、探しましょう

と、探索はいいのですが…先程から理緒さんの様子が
「怖いのなら、私にしがみついてていいですよ?」
と腕を差し出し…ぎゅっとしがみつかれて
「私が付いていますから、怖がらないで…ね?」
優しく頭を撫でておきます

セナさんも、理緒さんがこうだから無理して気を張ってるようなので
こっそりと耳打ちを
「あまり無理はしなくてもいいですよ。落ち着かないようなら、セナさんも私にしがみつきます?」
なんてくすくすと笑ったり

私は平気な分、2人を支えながら進みましょう


菫宮・理緒
【恋華荘】

これで彼らの領域に入れてもらえたってことなのかな。
このままだと、将来こうなるってことだよね。

いちごさんとセナさんとの思い出の場所を、
こんな風景にするわけにはいかない……んだけど……だけどー!

わ、わたし猟兵だし……怖くない怖くない怖くない。
それにいちごさんがいる、セナさんもいる、
いるもん!そばにいるもん!!

と、ぎゅーっといちごさとセナさんに抱きついて、
呪文のように唱えていたら、撫でられて……真っ赤になりながら、少し安心します。

町を探索で気にするのは音。
声っぽいものや不思議な音が聞こえた方に行ってみよう。

お化け嫌いではないはずなんだけど、
撫でられてても怖いのは、UDCのせい、なのかな!?


セナ・レッドスピア
【恋華荘】
周りが、急に廃墟に…!?
…祖国に廃墟があった町があった事を思い出して
不安になりつつも身構えますが

そこに理緒さんが!?
こわくない、と連呼しながらぎゅーっとされて
別の意味でドキドキしながらも

だ、大丈夫ですっ。私やいちごさんがついてますし
何かあっても絶対守っていきますのでっ!

と、こちらからもぎゅーっとしながらも
不安を抑えつつ励まします

そしてそこに私の不安を察したのか
いちごさんがこっそり耳打ちを…

はわわ、あ、ありがとうございます!
いちごさんの事も守って…って!?

と、どきどきしつつも励まし返します

そんな風に3人ひと固まりになりながら
辺りにUDCがいないか見まわしつつ
廃墟を突破していきます



「周りが、急に廃墟に……!?」
 突如として一変した周囲の景色に、セナは戸惑いの声をあげた。脳裏に、祖国にあった廃墟の町がよみがえり、不安を覚えながらも身構える。
「――これで、彼らの領域に入れてもらえたってことなのかな」
 ぽつりと、理緒が呟いた。
「このままだと、将来こうなるってこと、だよね」
「ええ、おそらくは」
 いちごがうなずき、素早く周囲に目を巡らせた。
「ここからが本番ですね――二人とも、気をつけて」
 いち早く、猟兵の顔つきへと変わったいちごは、詠唱を始める。
「ふんぐるいふんぐるい……時を越えて追いかけ続ける我が眷属よ!」
 いちごの呼びかけに応じ、異界から召喚されたのは、黒い影の猟犬だった。ぐるぐると低くうなるそれに、周囲の調査を指示すれば、異界の猟犬は地を蹴って走りだす。
 五感を共有する猟犬の視界に映ったモノや聞こえた音から、UDCへとつながる手がかりを得ようと、いちごは感覚を研ぎ澄ませた。どこからか、声がする。何者かの声が、響いてくる。
 ――おにさん、こちら。てのなるほうへ。
「あっちですね。理緒さん、セナさん、行きましょう」
 廃墟と化し、おどろおどろしささえ覚える四つ辻を曲がり、三人は領域の奥へ奥へと進んでゆく。
 その一方で、理緒は硬い表情で、しきりに周囲のようすをうかがっていた。
(いちごさんと、セナさんとの思い出の場所を、こんな風景にするわけにはいかない……)
 だけど。それだけれども。
「理緒さん?」
 いちごの呼びかけで、理緒ははっとした。小刻みにふるえる手を握りしめて、いちごを見れば、柔らかい微笑が、そこにはあった。
「怖いのなら、私にしがみついてていいですよ?」
 セナのとなりで微笑みながら、いちごが理緒へと腕を差し出す。たちまち、理緒の中で張りつめていた糸が切れた。
「はわわっ、理緒さん!?」
 セナの、おどろいた声があがる。けれど、理緒はかまわずに、いちごとセナにしがみついた。
「わ、わたし猟兵だし……怖くない怖くない怖くない!」
 ここには、いちごがいる。セナもいる。理緒は、ひとりなんかではない。
「いるもん! ふたりとも、そばにいるもん!!」
 だから、怖くなんてないのだと。ひたすらに、そう繰り返す理緒を見て、セナはこみあげていた自身の不安を抑えこんだ。
「だ、大丈夫ですっ! 私や、いちごさんがついてますし、何かあっても絶対に守っていきますのでっ!」
 精一杯の励ましの言葉をかけながら、セナは理緒をきつく抱きしめ返す。いちごもまた、怯える理緒の頭をそっと撫でた。
「はい。大丈夫ですよ、理緒さん。私たちが付いていますから、怖がらないで……ね?」
「うん、うん……!」
「私も、いちごさんも、ここにいますよっ!」
 うなずく理緒の身体を、セナは抱きしめ続ける。そうすることによって、セナは不安を押し隠し、自分が理緒を守らなくてはいけないと、そう言い聞かせる。否、理緒だけではない。いちごも含めて、セナにとっての大切な人たちを、自分が守り抜かなくてはいけない。
 ところが、そんなセナの心中を見透かしたかのように、いちごが耳打ちをした。
「――あまり、無理はしなくてもいいですよ」
 どきりとして顔をあげれば、そこには笑みをたたえた、いちごがいる。セナは、あわてて口を開いた。
「はわわ! あ、ありがとうございます……! いちごさんのことも、守って――」
「ふふ。落ち着かないようなら、セナさんも私にしがみつきます?」
「えっ!?」
 いちごからの申し出に、セナが顔を赤くすると、くすくすという笑い声が返った。
「冗談……ではないですけど、いつでも頼ってくれていいですからね」
 自然と、セナの胸には、あたたかな気持ちが湧いてくる。悲しげに泣きながら、廃墟を吹き抜ける風の音は、もう、セナの不安を駆り立てることはない。なぜなら、ここにいる誰もが、決してひとりではないのだから。
 廃墟と化した町を進む三人は、ゆっくりと、けれど、たしかにUDCのもとへと近づいていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四宮・かごめ
※連携・アドリブ歓迎
【SPD】
店主に貰った簪を改めて差し直し、もうひとりの自分を呼び出して準備完了。
二人で手を繋いで前へ進むでござる。にんにん。

猟兵としての初仕事があの歌絡みでござった。
『夜明けの晩』とは何か、色々頭を悩ませたもの。『時刻より想いが大事』が答えにござったが。

今回は未来に来たのだから『夜明けの晩』はまさに今で『籠の中の鳥』は既に出てしまったのやも。

【UC】
自分や味方が何らかの危機に陥った際の身代わりただし一回のみ。
童歌のルールに則り、こう言いながら後ろを振り返って貰うでござる。
『後ろの正面、それがし!』

それがし(本体)は脇目も振らずに【逃げ足】【ダッシュ】で逃走。

すたこらさっさ。



 突如として、廃墟と化した町並みを見渡し、かごめは髪から、かんざしを引き抜いた。長い髪がほどけ、さらさらと、その背に流れ落ちる。
「かごめかごめ――猟兵としての初仕事が、この歌絡みでござったな」
 ぽつりと言葉をこぼし、かごめは再び髪をまとめ、六つ目のかんざしを差し直す。
 以前、かごめが猟兵として仕事をしたときは『夜明けの晩』が何を意味するのかと、頭を悩ませたものだった。はたして、今回は何を意味しているのだろうか。
「ここは、いわば未来の光景――あるいは『夜明けの晩』とは、まさに今のことで『籠の中の鳥』は、すでに出てしまったのやもしれぬ」
 そして、その『籠の中の鳥』が、UDCであるのだとしたら。
 どこかで、幼子の笑い声が聞こえたような気がした。しかし、周囲には朽ち果てた町並みがあるばかりで、人影はない。かごめは、小さく歌を口ずさみ始めた。
「かごめ、かごめ。籠の中の鳥は、いついつ出やる。夜明けの晩に、鶴と亀がすうべった――後ろの正面だあれ?」
 それは、忍法四宮流・籠目唄。いわば、かごめのユーベルコードだった。
 かごめが歌い終えるのと同時に、そのかたわらには、影のように寄り添う、もうひとりの自分が現れる。
 二人のかごめは、どちらからともなく、その手を繋ぎ、廃墟の町を進んでゆく。かごめたちが三叉路に差しかかったとき、ふいに、どこからか、歌が聞こえてきた。
『かごめ、かごめ』
『かごのなかのとりは、いついつ、でやる』
 先ほども聞いた、かごめ唄だった。けれど、今度は声が近い。否、それどころか、かごめの周囲を、目には見えない何かが囲っている。
 本能的に、かごめは自らの身に危険が迫っているのを感じた。とっさに、顔を伏せて、目をつむる。かごめのぐるりを周りながら、あどけない声たちは歌った。
『よあけのばんに、つるとかめとすべった』
『うしろのしょうめん――』
 たまゆら、途切れた言葉。
『だあれ?』
 声をそろえて、投げかけられる問い。それに対して、かごめは沈黙した。代わるように答えたのは、かごめが呼び出した、もうひとりの自分。
「後ろの正面……それがし!」
 わらべ唄のルールに則って、もうひとりのかごめが、うしろを振り返る。それまで、固く繋がれていた、かごめたちの手が、するりとほどけた。
 かごめの背後で、鋭く風を切る音がする。先ほどまでの、子どもらの声とは打って変わった、おぞましいほどの笑い声が聞こえる。
 しかし、かごめは振り返らなかった。全力でもって、その場からの逃走を図る。場所は三叉路ではあったが、彼女の野生の勘が、左へ行けと、そう道を教える。かごめは、己が勘を頼りに、左への道を一目散に駆けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『偽りの心を授けられた人形』

POW   :    我が身を砕かせ敵を討つ戦術
【相手の攻撃に対し、理論上最も有効な反撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    限界を知りつつもそれを超える要求
【身体耐久力の限界を超えて操る邪神の眷属】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ   :    その身を犠牲に得る情報
【全身】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、全身から何度でも発動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 宵闇が降り始める中で、白壁の洋館が浮かびあがった。その窓から漏れる光はあたたかで、庭先に植えられた花々を明るく照らしだしている。耳を澄ませば、華やかなオーケストラの音が聞こえた。
 あるいは、そこが高級住宅街や、海を隔てた異国の地であったのならば、それはなんの違和もなかったのだろう。けれど、ここは違う。怪異によって、廃墟となった観光地である。
 一言で表すのなら、異様だった。まるで、この洋館が、町の活気すべてを吸い尽くしたかのようだった。
 豪奢な扉の前に、人形めいた顔立ちのメイドがひとり、ぽつりと立っている。
『ようこそ、いらっしゃいました』
 メイドが、うやうやしく礼をした。
『ワタシは――いいえ、ワタシたちは』
『ずっと、あなたたちをお待ちしておりました』
 突如として、背後から聞こえた声は、ひとつではない。振り返れば、いつの間にか、扉の前にいたメイドと同じ顔をした女たちが――否、球体関節をもった人形たちが、ずらりと並び立っている。
 にこりとすることもなく、扉の前に立つ人形は言った。
『坊ちゃま、お嬢さま。さあ、それでは、ワタシたちと遊びましょう――いつか、あの日、そうであったように』
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※トミーウォーカーからのお知らせ
 ここからはトミーウォーカーの「猫目みなも」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
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フローリア・ヤマト(サポート)
『大丈夫よ、私達に任せて』
『うるさいわね……ちょっと黙らせるわ!』
呪いにより余命少しの、クールな美少女です。
口調は上記のように少しツンとした感じですが、人間が嫌いなわけではなく、仲間や人々のことを心の底では大切に思っており、戦闘でもうまくサポートしようと立ち回ります。
また、敵に対しても怯むことはなく、時には挑発めいたセリフも交えながら、死角や弱点を突いて確実に仕留めることを狙って戦います。
フローリアのUCは、嵌めている「呪いの指輪」から黒い糸や影を放つ……みたいなイメージなので、そのように描写していただけると嬉しいです。


カズマサ・サイトウ(サポート)
普段の口調は「あっし、お前さん、でさぁ、ですぜ、だよ、ですぜ?」、お偉いさん「わたくし、~様、です、ます、でしょう、ですか?」

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、連携の際はライオットシールドで味方をかばう優先。
基本的に己の能力を武器として使用し手に負えない状況にUC使用。
防衛系の戦闘の場合は守備を優先。ただの殲滅の場合、単独または味方が援護系なら突撃する。
近接攻撃を主とする味方が多い場合はライオットシールドで防御しつつ囮になるように行動する。
ガスマスクを装備し耐毒能力を底上げ。



「成程、お嬢さん方がこの『領域』のヌシって訳ですかい」
 ずらりと並んだ無表情な人形たちを前に、カズマサ・サイトウ(長きに巻かれる、おにぎり大好き風来坊・f26501)は片目をつと細めた。
「随分な別嬪さん揃いだが、いやしかし」
「残念ながら、私はあなた達の『お嬢さま』じゃないの。……さあ、さっさとご退場願いましょうか!」
「……ま、そういう事でさぁ。ひとつ殴り合いといきましょうや」
 共に人形に相対する銀髪の少女に一度ちらりと目をやって、カズマサは深く一歩を踏み出した。片や少女――フローリア・ヤマト(呪いと共に戦う少女・f09692)はと言えば、薬指の指輪を軽く左手で撫でて。
(「呪詛に呑まれて、滅びた町とか……そんなの、現実にさせる訳には行かないじゃない」)
 言葉にはせず、ただ胸の内で呟く。同時に指輪から溢れ出した漆黒の呪いは、瞬く間に彼女の細腕を舐めるように覆い尽くし、ひと振りの巨大な剣を象っていく。駆け抜けざまに振るい抜いた黒き刃は、群れ成す人形の胴を軽々と薙ぎ払い、吹き飛ばして、豪奢な扉へと叩き付ける。
 がしゃんと陶器の割れ砕けるような音と共に扉を伝って崩れ落ちた人形は、けれどまるで糸で吊り上げられたかのように再び立ち上がり、フローリアへと手を伸ばす。それを目の端で捉えた瞬間、カズマサの体は動いていた。自ら相手取っていた人形に真正面からライオットシールドを叩きつけて突き飛ばし、半ばその反動に乗せるようにして振り返る。そのまま踏み込んだ男の体が、少女と人形の間に割り込んだ。
「いけねぇなあ、『お嬢さま』と遊ぶにしちゃあ荒っぽすぎやしないかね」
『――遊びましょう。ワタシたちと、ここで、いつまでも』
「……聞いちゃくれねぇってか。分かっちゃいましたがね!」
 やはり眉一つ動かさずに放たれた蹴りを、カズマサは盾の曲面に沿わせるようにしていなす。――思いの他、重く鋭い。或いはこれも、邪神の呪詛の一端だというのか。自らの持つ盾を作り出す『風』を解き放てば、風圧で人形の踵が宙に浮く。目配せひとつで、フローリアはカズマサの意を汲んだようだった。呪詛の覆いを払った手をそちらへかざし、少女は短く凛と叫ぶ。
「貫きなさい!」
 瞬間、銀の指輪が煌いた。一瞬にして練り上げられた呪詛の弾丸は、カズマサの一撃で体勢を崩していた人形の心臓部を正確に撃ち貫き、オブリビオンとしての生を喰らい尽くしていく。内側から割れ砕けて四散する人形を見送るでもなく、ただ互いに死角を補い合うように構え直して、少女と男はごく短い会話を交わした。
「いけるわね」
「無論でさぁ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セナ・レッドスピア
【恋華荘】
たくさんの人形メイドさん…
遊んでそのまま何事も無く…ならいいですけど
周りを廃墟にしちゃってはいけませんから
ここはお引き取り願いますっ!

2人を守るように前に出て、血槍(ランスチャージ)で斬り込みつつ
刻印での攻撃で追撃!
その【吸血】で得られた血を使い
錬血解放「融血浸獣形態」を発動!
強化された血槍で立ち回り
さらに2人に攻撃が向かないようにしていきます!

沢山こちらに攻撃が向かってきたら
すかさず血槍を推盾形態に変え防御!

できそうなら、そこからの【シールドバッシュ】や
理緒さんやいちごさんの攻撃で怯んだ敵にもすかさず追撃を!

…って、理緒さん!?
そこで別の意味での火遊び計画を立てちゃうのですか!?


黒髪・名捨
〇心境
ぼっちゃんねぇ。
…そんなこと言われてたのかねぇ(失った記憶に思いを寄せつつも、首を振り振り切る)
まあ、ココもハズレかなオレの記憶の手がかり的には…。。

〇戦闘

さて、さっさと片付けて帰るか。面倒だしな。

スタングレネードを『投擲』
閃光で『目潰し』して『恐怖を与える』
その隙に『闇に紛れる』と闇に『迷彩』し『目立たない』状態になって、接近。
一体ずつ『ジャンプ』して頭上を『踏みつける』攻撃(UC:陸断)で叩き潰すな。
面倒だが、確実につぶした方がその方が楽そうだし…。
しっかし、人形遊びには心来るものがない。
やはり記憶の手がかりはねーなこりゃ。

〇アドリブ
アドリブ及び他猟兵との連携はOKです。


クロゼ・ラビットクロー
おお、数が多いな。
ちょっと僕には荷が重いというか、
単純に火力が足りない。
あわよくば焼夷弾の炎で数を減らす作戦でいこう。

ん?
こちらの攻撃をコピーして反撃してくるのか?
これは好都合。
グレネードなんて銃弾に比べれば直撃をかわすのは難しくない。
それに発生する炎は敵味方を無関係に巻き込んでいく。
僕は常にガスマスクをしているので、
発生した煙の影響を受けることはない。
炎に囲まれたら戦車“ラビットモービル”で
強引に脱出すればいい。

惜しむらくは人形相手だと炎から発生するガスで倒すという
いつもの手は使えないかもしれないことだな。
その分は相手の自滅に期待するか、
いつもより頑張って動くしかないか。


菫宮・理緒
【恋華荘】

和風の観光地にメイドさんかぁ。
大正浪漫は大好きだし、ギャップとか大好物だし、
UDCじゃなければ、楽しんじゃうかもなんだけどね。

さっきまでは雰囲気で怖かったけど、
いまは相手の姿も見えるし、そんなに怖がらなくていいかな。
……いちごさんにも、セナさんにも、たくさん抱きつけたしね♪

せっかくみんなで思い出のできた観光地。
廃墟になっちゃったら寂しいから、ここはしっかり守らせてもらうよ。

メイドさんが遊んでくれるのか。
そうなるとやっぱり、火遊びがいいよね。
【Nimrud lens】を使って、焼いていこう。

できればちがう火遊びがいいけど、
そこ終わってから、いちごさんとはセナさんとすることにしよう!


彩波・いちご
普通に観光地のままならあるいは…ですけどね
残念ですが、私達はお世話される存在ではないのです
…メイド自体は嫌いではないですが

遊びというなら火遊びはいかがですか?
【異界の深焔】で生きた炎を呼び出してメイドたちを焼いていきましょう
私を守るように炎を展開し、死角から攻撃を加えようとするものから優先的に炎を飛ばします
この洋館自体も怪異なら、一緒に焼いてしまってもかまわないでしょうかね…?

生きた炎は、あらゆる守りを貫いてメイドたちを焼いていきます
どんなに邪神の眷属を呼んで増やしていこうが、全て焼き尽くすまで止まりませんよっ



「まだ数が多いな」
 独力でメイド人形の群れを倒し切るのは骨が折れる。というか難しい。自身の戦闘スタイルを鑑み、クロゼ・ラビットクロー(奇妙なガスマスクの男・f26592)は冷静にそう分析する。
「僕では火力が足りない、が――」
 あくまで『独力で、全てを倒し切るのには』、だ。ピンを抜いたグレネードを人形たちの群れ成す中に投げ込みつつ、クロゼは躊躇なく一体の人形に肉薄していく。彼のユーベルコードを模倣して投げ返されたグレネードをひらりとかわせば、行き場を失ったそれはクロゼと相対していた人形に直撃し、たちまちその身を炎に包む。
 燃え広がる炎が人形の足場を奪い、少しずつ一箇所へと追い込んでいく流れが見える。ならばと黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)も閃光弾を握り締め、炎の揺らめきに紛れるようにして、人形達の視界の外を駆けていく。
「ぼっちゃんねぇ。……そんなこと言われてたのかねぇ」
 人形の口にする呼称に、懐かしさは感じない。失った記憶の断片はここにもないようだと首を振り、名捨は未だ自由に動き回っている人形へと狙いを定めて。
「遊ぼう遊ぼうとは言うが、人形遊びってのはどうもこっちの心に来るものがない。さっさと片付けさせてもらうぜ」
 叩きつけた手榴弾から迸った閃光が、オブリビオンの目を焼き、怯ませる。あまりにも大きな隙ができたその瞬間を逃すことなく、セナ・レッドスピア(blood to blood・f03195)が血槍片手に躍り出た。
「遊んでそのまま何事も無く……ならいいですけど、周りを廃墟にしちゃってはいけませんから……!」
「せっかく思い出のできた場所なのに、廃墟になっちゃったら寂しいもんね」
 頷き、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)もセナの突進とタイミングを合わせてユーベルコードを練り上げる。そうして血槍に足を薙がれた人形の胴を、収束した熱線があやまたず撃ち抜いた。よろめく人形に狙いを定め、彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)が細い手をかざす。
「遊びというなら、火遊びのおかわりはいかがですか?」
 そうして花咲くように掌から零れた炎が、人形の肢体を舐めるように包み込む。残骸すら残さずに焼き尽くされたように見えるのは、或いは彼女がオブリビオンである故だろうか。どうあれ次の敵へと視線を移しながら、理緒は微かに自らの唇を舐めた。
「できればわたしは、ちがう火遊びがいいけど」
「今何か言いましたっ!?」
「ふふ、後で教えてあげる♪」
 それは仕事の後のお楽しみとばかりに片目を瞑り、再び敵へと向き直る理緒の表情になんとなく顔が熱くなるのを感じつつ、セナも気を取り直して血槍を構える。誓って、大切な仲間にこの人形達の手など届かせない。鋭く振り抜かれた人形の一撃を盾に姿を変えた血槍で弾き、更には盾の面で敵を突き飛ばして、彼女はごく短く息を吐いた。
「メイド自体は、嫌いではないですが……あなた達にも、邪神の眷属にも、近付かせはしません」
 高めた妖力を溢れ出す狐火に変え、それを自身や仲間の周囲を舞い踊る『生きた壁』と変えて、いちごも懸命に敵の攻撃を食い止め、同時にその忌むべき存在に攻撃を加えていく。死角へ回り込もうとした人形が揺らめく炎に迎え撃たれ、仕立ての良いメイド服ごと焼かれていった。
「さっきまでは雰囲気で怖かったけど、いまは相手の姿も見えるし、そんなに怖がらなくていいかな」
 呟いた言葉の通り、理緒の動きは軽々と鋭い。炎に耐えて近付いてきた人形の顔に指先を突き付け、至近距離からの熱線で撃ち抜けば、頭部を貫かれた人形は糸が切れたようにその場に崩れた。
 猟兵達の放つユーベルコードの炎が、洋館前を容赦なく朱に染めていく。燃え盛る芝生の上をラビットモービルで強引に踏み越えたクロゼが、己が身を焼かれるのも構わず追ってくる人形を振り返り、ガスマスクの下で口元を歪めた。
「まだ続けます? ……仕方ないな」
 自動運転の小型戦車が、ぐるりと乗り手に添うようにしてボロボロの人形に顔を向ける。そうして急加速した戦車の突撃が、人形をスクラップと変えつつ空の彼方へ弾き飛ばした。
「これで、最後……か!」
 門柱を蹴り、宙に舞い上がった名捨が、眼下に残るただ一体の人形へ声を吐く。遊びましょう、と人形はやはり機械的な抑揚で答えた。
 ――否、それを答えとは呼べないだろう。彼女は彼を、猟兵達を見てなどいない。
 既に援護してくれる他の人形は倒し尽くされている。論理的に予想される直撃地点を避けようと後ずさった人形を、セナの槍がぐいと阻む。ダメ押しとばかりにいちごの燈した炎が人形をぐるりと取り囲んで逃げ場を封じ、理緒の熱線がその片足を射貫いて動きを止める。
 そうして振り下ろされた名捨の踵が、ぐしゃりと人形の頭蓋を踏み砕く。同時に、洋館を覆う宵闇が晴れ――気付けば猟兵達は、賑やかな夕暮れの宿場町へと戻っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月09日


挿絵イラスト