アルダワ魔王戦争8-BⅡ〜宝害
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「飛翔✕飛翔✕飛翔……」
宝石は、使命を繰り返す。
「わたしたち✕使命✕継続……」
造物主は還らず、しかし役目は未だ変わりない。
「探索✕グリモア✕発生源……」
宝石は、ただ時を待つ。
「飛翔✕完成✕あと少し……」
残された時間は、あと僅か。
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「ひとまずは、大魔王の征伐お疲れ様でした」
多くのものの尽力によりついにウームー・ダブルートゥは討たれて、学園を蹂躙せんとした無限災群は止まった。これにより、アルダワ魔王戦争は猟兵達の勝利で幕を閉じる。と、言いたいところだったが、どうやら祝勝会を始めるには時期尚早であるらしい。
ひとまず。それはつまり、災厄の種が未だ残されている事を意味する。
「休む暇もなくて申し訳ないのですが、もう一仕事お願いします。それも、早急に」
カルパ・メルカが示した場所は、ファーストダンジョン内8-Bの区画だ。戦略級殺人鬼グラン・ギニョールを打倒した事により、下層から新たな部屋へと至る道が確認された。秘された領域の名は、宝物庫。
当然ながら、お宝を漁りに行こうなどという話ではない。そこに待ち受けているものはある意味では宝石に違いないが、それはただの貴石ではない。その宝石とは、万能宝石。聞き覚えのあるものもいるだろう。この戦争で、エリクシルの妖精や戦略級殺人鬼が口にしていたもの。無限の願いを叶える恐るべき力。
「名を、宝石災魔。件の宝石と災魔とを掛け合わせた怪物が、今回の敵です」
それがどれ程の脅威か、語らずとも察するに余りあるだろう。現時点では不完全な状態だとされるが、既に魔王らと並ぶ、歴戦の猟兵達に先んずるだけの力を有している上に、完成の暁には『世界を移動する能力』をも手にすると目されている。
しかも、その数は一つや二つではない。これが野に放たれればどうなるか。ただ無差別に暴れ回るだけでなく、最大効率で死を振り撒く能があるとしたら。
故に。今この場で滅さねばならない。確実に。
「全体で二十体程を潰せばどうにかなりそうなので、とりあえず一体叩きましょう」
オーダーはいつも通り。定められた期間内に張り倒し、生きて帰れ。以上。
グリモアが瞬いた。さあ、準備が出来たなら転送を始めよう。
井深ロド
もうちっとだけ続くんじゃ。井深と申します。
真の終戦までお付き合い下さい。
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
第1章 ボス戦
『宝石災魔』
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POW : 龍脈✕女神✕断龍剣
【喰らった者に活力を与える『赤の首』】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【ユーベルコードを吸収する剣】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 瘴気✕屍王✕模倣死者
【敵の肉体をコピーする『青の首』】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【首から下の肉体形状】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 霊紋✕鬼霊✕地獄絵図
レベル×5体の、小型の戦闘用【高速飛翔する『緑の首』】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
イラスト:大希
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エルシー・ナイン
この戦争の総仕上げですね。世界間移動などさせませんよ。
高速飛翔する『緑の首』は、全火器による『範囲攻撃』で、『乱れ撃ち』ながら『一斉発射』して対抗します。何体いようが、ひとつ残らず撃ち落としてみせます。逃げる相手には動きを『見切り』、『念動力』による『誘導弾』で確実に当てに行きます。
念のため、『オーラ防御』で守りも固めておきますよ。
先制攻撃を耐えきったら【高火力制圧用重装形態】に移行し反撃開始です。
宝石災魔の周囲を高速で飛び回りながら、今度は宝石災魔に対して全火器による『一斉発射』で総攻撃を仕掛けます。
敵の攻撃は『残像』を残すほどの高速移動で回避です。
出し惜しみは無しです。一気に畳みかけます!
グラン・ギニョールの宝物庫。ただの貯蔵施設である筈のその場は、しかし奇妙な空気に満たされていた。
未知の感覚ではない。それはエルシー・ナインにとって既知のものだ。例えるならば、殺人鬼の闊歩した地底火山、あるいは魔王の座した玄室に近しい空気。即ち、絶対的強者の間合い。濃密な死の気配に浸された決戦場の佇まい。
「侵入✕形跡✕察知……」
故に、この空間を埋める緑光は財貨の煌めきに非ず。光の尾を引いて宙を舞うそれは富ではなく兇器であり、脅威である。鬼神か羅刹か、人外の力を秘めて飛翔する厄災の首。その数、数十。否。数百。
「接敵✕迎撃✕排除……」
宝石が告げた。
使命を帯びて、緑の破滅が牙を剥く。
ウォーマシンの手の下で多砲身機関砲が唸りを上げた。携行用の小型モデルとは言え、天下に名だたる銀河帝国の超兵器。毎分四桁発に達する砲火の雨は、宝石災魔の猛撃にも引けを取るものではない。緑の一群は秘めた力を発揮する機会を与えられぬまま、蜂の巣と化して壇上を降りる。辛うじて弾幕を掻い潜った個体はサイキックの力場に弾かれて、立て直す暇なく熱線銃の連射に穿たれた。迂回する集団を電子ゴーグルが捉えれば、腰部ミサイルが矢庭に群がって、逃げ延びた死に損ないに念動力の弾丸が止めを刺す。
「させませんよ」
世界間移動など。いや、それだけではない。この戦場で自由になどさせはしない。淡々と、しかし決然と言葉が響き。
「包囲✕爆撃✕実行……」
それすら意に介さぬように、新たな号令が掛けられた。
多少の迎撃など問題にもならぬとばかりに放たれる、全周囲からの飽和攻撃。緑の怒涛が押し寄せて、爆ぜる。乱雑ながらも効果的な、手数による圧倒。
「着弾✕撃滅✕完了……」
災魔は獲物の最期を見届けて、
「全装備火器のリンクを確認」
否。まだ終わりではない。
荒ぶる緑の嵐の只中で、戦闘機械は未だ健在。
当然だ。猟兵とは獲物ではなく、その名の通り狩る側に属するもの。このアンドロイドもまた、総仕上げの舞台に相応しい爪と牙を持って此処にいる。
「これより、高火力制圧モードに移行します」
オーラの残滓を振り払い、鉄騎が駆けた。
緑の波がエルシーへと殺到する。もう何度目かの試行。災魔の見つめる先、仕留めた筈の微笑が今度もまた同じように揺らいで消える。残像。
「索敵✕防御✕迎撃……」
宝石災魔は迷いなく次の手を打つが、しかし遅い。重装形態における各部スラスターの最大稼働は『緑の首』の全速を優に越え、追い縋る事は叶わず。死角を衝いた意識外からの奇襲すら、鉄の使い魔が許さない。
ガトリング砲が、ブラスター銃が、連装ミサイルが、先以上の威力と密度とを以て襲い掛かる。衝撃が、熱波が、爆炎が、あらゆる破壊の力が災魔を包んだ。
「畳みかけます!」
破壊兵器の本領発揮。出し惜しみなしの最大火力。
もはや迎撃は追い付かず、ここに攻守は入れ替わる。
成功
🔵🔵🔴
リューイン・ランサード
厄介な相手ですね。
このままだと色んな世界の人々が犠牲になりかねない。
なら、ここで倒します・・・怖いですけど。
UC対策
敵は大群なので身体に【オーラ防御】、その上に【風の属性攻撃、範囲攻撃】を【高速詠唱】で纏って迎撃体勢を整える。
翼で空を飛んで【空中戦】。
近づいてくる敵群を【第六感と見切り】で躱し、ビームシールドの【盾受け、カウンター】で受けつつ反撃し、それでも近づいてきた敵は先程纏った【風の属性攻撃】に巻き込んで倒す。
※風の属性攻撃、範囲攻撃の迎撃体勢は高速詠唱で何度も張り直す。
UC使用可能になれば、残った敵群と敵本体に向けて【光の属性攻撃、全力魔法、高速詠唱、範囲攻撃】を上乗せして撃ちます。
精霊の衣をはためかせ空を駆けるリューイン・ランサードの尾の末端を、『緑の首』が掠めて抜けた。
あわや、と思う暇もない。航空戦闘機の如きマニューバで竜の仔が跳び上がれば、その残像を呑み込むように翡翠色の波濤が雪崩れ込んだ。嗚呼、大魔王を倒してようやく解放されると思ったのに、全くとんだ延長戦。
「交戦✕殲滅✕開始……」
無機質な声が響けども、宝石災魔の姿は見えず。視界に映るのは、ただ一面の緑、翠、碧。地底の空には余人の想像を遥かに超えた寥郭たる領域が広がっていたが、しかし目に入る場景は一色のみ。只管に続く緑の泥梨。
竜の翼が切り返せば、飢えた首がその残像に喰らい付いた。迷宮の一画にこれ程の空間があったのは幸か不幸か。自由に移動できる広さは有難いようでいて、滞りなく進軍する首の群れを見るに敵方に優位な環境にも思えてならない。まるで同じ河川の上を流されているかのように、どこへ逃げようと追随する緑の濁流。
厄介な相手ですね。リューインはそう内心で独り言ちて、しかし口に出す余裕はない。代わりに発したものは力持つ言葉。呪文と共に失われた風の守りが蘇り、進撃する翠緑の激流を堰き止める。
だが。
「物量✕展開✕圧殺……」
拮抗は一瞬。暴風の攻性防壁は緑首の一群と相打ち、続く追撃が粒子の盾を震わせた。結界を張っては破られ、破られては張る。その繰り返し。詠唱短縮に加えて、五感の全てと第六感、防護盾と魔法剣の合わせ技でどうにか凌げてはいたが、先行きは未だ不透明のまま。一つ一つの攻撃は問題ではないが、一度でも連撃を浴びたなら戦局は容易く覆る。
脅威的な圧力。この前に晒されたなら、多くの世界の住人が等しく犠牲となるだろう。なりかねない、ではなく。確実に。その光景は現実的なものとして脳裏を過った。
焦燥がリューインの胸中を満たす。
そして。
「なら、」
ならば。やるべき事は決まっている。
怖気が足へと纏わり付き、しかしそれは歩みを止める理由になりはしない。
怖い。当然だ。実戦の恐ろしさは誰よりも身に沁みて知っている。故に。だからこそ。それを他人に味わわせない事が己の役目。
「ここで倒します」
言葉は、高らかに響いた。
それは決意の表れであり、何より、もはや呪言の継続が不要となった事の証左。敵群は未だ戦場を埋めて、しかしその壁の向こうに、討つべき災魔の姿が小さく、だがはっきりと見えていた。
「天空の光よ、」
魔法騎士の懐で、彼女の護石から光が溢れる。少年を後押しするかのように。
そして、天上の星が輝いた。
「我が元に来りて、敵を貫く槍と成れ!」
宝石が妖しげに瞬いて、しかし、星光の域に及びはしない。
光が満ちる。煌めく白銀が緑の視界を圧し流し、光芒が災魔の五体を貫き、抉った。
地の底に真昼の空を呼び込むように、世界を上書きするように、流星の雨が降り注ぐ。
成功
🔵🔵🔴
ラナ・アウリオン
追加作戦目標、宝石災魔の攻略を開始しマス!
まずは敵の『首』の迎撃を。
浮遊砲四基を全力稼働し、弾幕を張りマス。
一撃で消滅するとの情報がありマスから、火力ではなく範囲と隙間のなさを重視した戦法デス。
もし接近されたならば、兵仗にて応戦しマス。
敵の攻勢をしのいだら、次は反撃デス。
ユーベルコード起動。
現象〈氷の竜巻〉定義――発動。
極低温と氷による拘束を用い、動きを封殺しマス。
地獄絵図など、決して許しマセン。
ラナがある限り、そのような目論見は阻まれると知るがいいデス!
戦場へと降り立ったラナ・アウリオンを、目に刺さる原色の風景が出迎えた。
視線の先、緑の筆が縦横無尽に空を奔り、地下の暗色を塗り潰していく。おろしたてのキャンバスへと大雑把に絵具をぶちまけたかのような景観は、しかし鑑賞目的に造られたものではない。機械人形の視覚センサーが分析すれば宙を舞う緑は解像度を上げて、その真の姿を現した。それは前衛美術の抽象表現に非ず、より具体的な破壊の顕現。
――地獄絵図。
それは正しく、その名で呼ぶに相応しい光景だった。画布を彩る緑の色材は鬼霊の首。この場が八大地獄の再現ならば、あれらは亡者を責める獄卒の役か。
だが、まだ完成ではない。責め具だけでなく、それを味わう衆生が描かれてこその地獄変相。かの災魔がそうであるように、この地獄もまた不完全。
まだ間に合う。そして、彼女はその為に此処にいた。
「攻略を開始しマス!」
宣言を受けて、四基の浮遊兵装が展開する。
作戦更新。追加目標:合成オブリビオン・宝石災魔。排除開始。
片や数百、片や四。結果は火を見るよりも明らかのように思えて、しかし意外にも戦線は膠着していた。戦場はその九割を鬼の緑で塗られていたが、残る一割の薄い赤色を侵略できない。
ラナの周囲に浮遊する魔法力砲台がその全力で稼働する。極小の弾丸が雨あられとばら撒かれ、額を射抜かれた首が錐揉みして落ち、こめかみを殺がれた首が後続を巻き込んで活動を止めた。
まだ、削れそうデス。
少女が内心で呟くと、火力投射外装ウェヌスの出力が更に絞られた。宿す炎の精霊力が弱まって、弾幕がその薄紅を更に淡いものへと変える。決戦兵器の主力武装としては聊か頼りない火力だが、それで良い。
戦線が動き始めた。力の差は圧倒的なようで、しかし圧されているのは緑の陣。
過剰な威力は必要ない。まず第一に速射性、次が弾速、その後に射程。魔砲は更に回転数を増して、徐々に、だが確実に深緑が勢力を失っていく。九割から八割、やがて七割。序の口に活躍を見せた兵仗と防殻は、どうやら今後の出番を失った。
「戦術✕不適✕変更……」
前線の異常を認識した『緑の首』がその挙動を変えるも、甘い。いかに並ならぬ知能を植え付けられていようとも、災魔には決定的に経験が不足していた。既に幾度かの実戦を通じて更新された対オブリビオン用戦闘教義は、その目論見の一手先を進む。
「反撃デス」
言葉と同時、宝石災魔の躯体が傾いだ。攻勢を強めた敵陣の隙間を縫い、大将へと突き刺さるウェヌスの一撃。突如として弾道を曲げた砲撃に、緑の軍勢が乱れる。そして。
「アクセス権確立。定義開始」
災魔の手番は終わり、作戦は第二フェイズへと突入する。
そして、第三は存在しない。
「分析✕防、」
迎撃を試みた宝石災魔は、しかし成らず。ただ、己が身体の軋む様を見た。否、己のみではない。防御の為に集めた鬼霊の動きが鈍り、止まる。
それは冷気であり、風だ。新たに定義、実体化された氷の竜巻。ただの吹雪ではない。ありとあらゆる全てを氷らせ砕く、埒外の法則。
緑の壁が巻き上げられた。狂える颶風の前には鬼ですら抵抗する術を持たず、ただ微塵となって散りゆくのみ。
「知るがいいデス!」
ラナがある限り、地獄絵図が外世界を蹂躙する日はもはや来ない。絶対に。
凍て付く嵐が吹き荒れた。最新最良の神話が、旧き奈落を駆逐する。
大成功
🔵🔵🔵
シノギ・リンダリンダリンダ
他の方が大魔王と戦っている間に宝物庫に来てみれば。なるほど
お前自身が宝石?それとも万能宝石とやらが埋め込まれている?
ちょっとしたお宝略奪のつもりでしたが……嬉しい誤算ですね?
青の首の攻撃を「戦闘知識」で最小限に、「オーラ防御」と「覚悟」で耐える
目の前のお宝にしか興味がありません。アイツほど「鼓舞」してくれる存在はない
耐えきったら、なんとまぁ。海賊の『海賊版』ですか!?
面白い事しますねぇ?
……舐めてるんですか?逆鱗に触れましたよ?
【飽和埋葬】で死霊を召喚
様々な武器で「傷口をえぐり」「零距離射撃」し「呪殺弾」を放ち「蹂躙」
お前が私でも、数の暴力の前にはどうしようもないでしょう?
さぁ、略奪されなさい
生業に勤しまんと海賊が陸へ上がってみれば、そこには待ち構えていたかのように泰然と佇む人影が一つ。果たしてそれは人か獣か、物の怪か。周回する三つの首に照らされて浮かび上がったその姿は。
「なるほど。お前が?」
三原色の光を浴びて煌めく虹色の肢体。自ずから輝いている訳ではあるまいが、遠目に見る限りでは全身に独特の光沢を帯びているようにも思える。少なくとも標準的なヒト種の肉体とは考えられず、何より纏う空気が木っ端災魔のそれとは遥かに違う。
どうやらコイツが、噂のアレだ。
ならば予定を変更しなくては。一つ二つお宝をくすねて退散するくらいの気だったが、こうなれば全く話が変わる。こちらの方が己が船舶を飾るに相応しい。船長は口角を吊り上げて。
「嬉しい誤算ですね?」
ここに、略奪が開始する。
迎え撃つは不死王の力。屍王の瘴気を靡かせて『青の首』が宙を奔る。恐るべき異能を秘めた宝石災魔の切れる札、その一つ。無視できぬ壁を前にして、だが対する機械人形は一瞥した瞬間それへの興味を失った。
あれは目当てのものに非ず。
攻め手たるシノギ・リンダリンダリンダの目的はただ一つ、財だ。そしてあの首は金にならず、故に対応は無視の一択。培った戦闘知識が青の軌道を導き出せば、最小限の動きで受け流した。被害軽微、多少は痛むが予想の範疇。足の動きには差し障りなく、何より眼前の宝が呼んでいる以上、足を止める理由もない。欲求のまま、前へ。
だが。
「なんと、まぁ」
続く二撃目が強欲の娘を振り向かせた。纏うオーラの防護と衝突したものは、拳。先の空飛ぶ生首には持ち得なかったもの。
「面白い事しますねぇ?」
見開いた視線の先、青の人型が覚えのある構えを見せて、羽織るコートが揺らめいた。それはまるで鏡写しの自分自身。これこそが『青の首』の異能。首から下の肉体を記憶、模倣し己がものとする力。
――そう、首から下を。
目線を上げれば、セーラー服の上に厳つい顔がそのまま乗っかっていた。海賊の海賊版などという冗句が脳裡に去来したが、これはそれより笑えない。頭固定なのは百歩譲るにしても、服まで真似る能があるなら山羊面で誤魔化すなりしてくれても良かったのでは?
「……舐めてるんですか?」
ガチめなトーンで訴えるも返事はなく。
猿真似はただ、チェーンソーを構える事でこれに応えた。
剣戟の音が響く。
傷口を抉らんとする死霊騎士の斬撃を鎖鋸で受け止めて、拳鍔で死霊兵を殴り飛ばし、呪殺弾に欲望の弾丸をぶち当て相殺。元々の戦力が頭抜けているのか、それともコピー元の海賊姫が有能なのか、模倣犯は存外に健闘していた。ドールは内心で舌を巻き。
「どうしようもないでしょう?」
だが、大勢が覆るまでには至らない。
結局のところ、戦いは数だ。多少腕が立とうとも船員のいない船長など鴨に違いなく、オリジナルの側だけが人海戦術を使える以上当然の帰結。【飽和埋葬】の死霊戦団を半分も差し向ければ、もはやシノギがこれを直接相手取る理由はなくなった。
実のところ一時、もしかすると右腕の黄金弾が再現されてたりしないかと期待して手を出してみたものの、残念ながら大方の予想通り徒労に終わった。サメブレードが青かった時点で察するべきだった。お前にはガッカリですよ。暫く死霊と戯れてなさい。
「さて、」
これにて前座の出番は終わり、あとは無防備に晒された真打が独り。
五体全てが宝石なのか、それともどこかに埋め込まれているのか、間近で見ても判然としなかったが、まあ色々試せば良いだろう。とりあえず、孔雀のような羽はお高そうだ。まずはあれから毟ろうか。
「それでは、略奪されなさい」
号令を受け、従者達の残る半数が猛り狂う。
ここから先はお待ちかね。海賊の時間だ。
成功
🔵🔵🔴
茲乃摘・七曜
心情
……さて、まずは目の前のことですね
指針
Angels Bitsとの三重の歌唱で旋律に周囲を震わせる衝撃波を乗せ歌い上げる
※『霊』に対抗し破魔の力を重ね、倒しきれない『緑の首』がいればPride of foolsの射撃で排除を狙う
(数に圧殺されないように位置取りと支援を両立させなければなりませんね
行動
Angels Bitsを自律駆動させ、衝撃波で牽制を行いながら宝石災魔に有効な属性を中距離を維持しつつの射撃戦で確かめてゆく
「完成前に破壊して骸の海に還っていただきましょう
『流転』
攻撃中、目立たないように魔導杭を創り出す浮遊弾を織り交ぜ宝石災魔を囲い仲間の攻撃に合わせるかたちで動きを封じる事を狙う
ホーラ・フギト
絢爛と咲く三色。なんて美しいの!
災魔であることだけが残念よ
緑の首の数と速さ
私では凌ぎきるなんて叶わないわ
魔導燈から解放した火の精霊を誘導弾にして、
自分の周囲を絶え間なく旋回
一体でも多く首を防いでくれれば御の字ね
受けた痛みも防いだ時の衝撃も挙動も学習しながら、
ミレナリオ・リフレクションで首に首をぶつける
一撃で消滅するとはいえ、数は向こうが上だもの
こっちの首は、避けて敵を引き付けることに重点を置きながら相殺
内、数体だけは混戦の中を翔けて災魔本体へ
そのまま災魔へ攻撃できれば良し
できなくても本体への射線が開けた瞬間、
火の精霊に全力で突撃してもらうわ
──あなたをお部屋に飾れたら、さぞ綺麗だったでしょうに
三つの色が瞬いた。
それは、大地の力を汲み上げ明々と灼ける赤。不死の力を満たし水晶の如く煌めく青。そして神霊の力を以て、地の獄を現世に呼び覚ます緑。
「なんて美しいの!」
感嘆の言葉を漏らしたのはホーラ・フギト。
罅割れた四肢、捥がれた翼。死闘の痕は深く深く刻まれて、しかしオブリビオンは未だ絢爛たる光を宿してそこにいる。その佇まいは荘厳さすら感じさせるようで。
嗚呼、これが災魔でさえなければ。残る宝石の部分も曲者には違いないけれど、きっと今よりは穏当に付き合えたでしょうに。そんな風に思い。
だが、その可能性は実現しない。
「……さて、まずは目の前のことですね」
茲乃摘・七曜が呟いた。眼前の色彩は敵が未だ多く破壊の魔力を保持している事の証左であり、即ち彼らが役目を放棄していない事を意味している。綺麗な薔薇には、どころの話ではない。あの光明は、触れればたちどころに死を齎す極彩の劇毒。
そしてきっと、彼らは最後の瞬間まで災魔であり続けるだろう。
「飛翔✕飛翔✕飛翔……」
宝石が、使命を繰り返した。
碧光が溢れる。蝋燭が生命を燃やすように、過去最大の輝きが世界を染めていく。霊力を秘した破滅の色で。
終わりは近いようで、遠い。
歌声が響き渡った。
それは正しく天使の声。甘美な音色と綺羅びやかな翠光とが共演を果たしたこの瞬間はここが屍山血河の戦場である現実を忘れさせるようで、しかし無論この唱声の主、黒衣の淑女の目的は他にある。
共演は一瞬。それは時を待たず対立へと変じ、空を裂く鬼霊が風船のように内から膨れ上がった。狂ったように暴れ幾許かの間を耐えた集団は、しかし凌ぎ切れず、やがて一つ二つと爆ぜて散る。何も不可思議な場景ではない。かの翠光が冥府のものであるならば、この旋律もまた天上のもの。この世ならざるものが互いに喰らい合えば、どちらか一方が亡びる道理。
黒の傍らに控える二機の自律拡声器が、天の歌声を更に一段上の領域へと引き上げる。破魔の色を帯びた調べが迷宮を震わせる度、光輝の群れが次々と墜ちては露と消えた。運良く生き延びた首が機械人形を狙えば、より攻撃的な音色――銃声がその道を塞ぐ。
迎撃を果たし、しかし七曜は油断なく戦局を俯瞰する。黒薔薇の衣、黒水仙の長手袋、黒百合の帽、何れにも汚れ一つなかったが、安心して良い状況には聊か遠い。この戦場は音を最大効率で響かせるコンサートホールではなくあくまで宝物庫、ただ奏で続けるだけで勝ちを拾える筈もなく。未だ数多く並ぶ首に潰されず、且つ仲間の支援にも滞りない、そんな理想の位置取りを選択し続ける必要がある。
さて、どのように動くべきか。二挺の『愚者』を手に思案し、視線を走らせれば、その仲間からの合図が見えた。
緑光の尾を長く引いて、ホーラが駆ける。
輝く道は時に左に流れ、右に揺れて、そして時折短く縮んでは、橙と翠とが混ざり合い娘の影を鮮やかに照らした。それはまるで花火のようで、しかし残念ながら見惚れている余裕は欠片もない。
「引き続きお願いね」
寝床から飛び出した古い馴染みに語り掛ければ、火の精霊は元気良く旋回を再開した。首の一つを叩き落としたばかりだけれど、まだまだ頑張って貰わなければ。背後には握手を求める長蛇の列ができていて、マナーの悪い奴は右から左から、時には上下からも好き勝手に割り込んでくる。我が身一つで捌き切るのは少しばかり無理があった。居合わせた御同輩に約半数を引き受けて貰った上で今この状況なのだから、全く恐ろしい話である。全部を全部自分で凌ぐ状況はあまり想像したくない。
「追撃✕挟撃✕排撃……」
直後。どこからか回り込んだ首が魔導人形の隙を突き、何度目かの衝撃が術士の肢体を上空へと打ち上げた。慣れても特に減る事のないダメージに僅かにかんばせを歪ませて、しかし同郷のお仲間が窺う様を回る視界の中で見付けたから、大丈夫だと身振りで示す。そろそろ攻勢を意識して貰って問題ない頃だ。あまり大丈夫そうな格好ではないけれど、見た目程に酷くもない。特注の服が傷んだのは失態だったものの、ともあれ。
ようやく、覚えた。
「ミレナリオ・リフレクション」
じわり、緑の波が広がって。
新たな地獄が、文字通りに首を出す。
緑対緑。光対光。首対首。
鬼が鬼を呼び、霊紋と霊紋とがぶつかり、互いに喰らい合う。筆舌に尽くし難い光景。正真の地獄と贋物の地獄、その能力は互角。形状も、性能も、挙動も。正確無比の模倣は『緑の首』を完全に再現してのけた。
ならば、数の差が勝敗を分かつ。優勢は災魔。戦力の多くを削られながら、オリジナルの陣容は偽作のそれを圧倒した。いかに埒外の技芸とて、万能宝石が秘めたる無限に並ぶものではない。
しかし。
「被害✕分析✕」
衝撃がオブリビオンの躯幹を殴り付けた。
数を活かすのは、戦術。ならば、一連の戦闘を通じてそれを見せ続けた宝石災魔と、今初めて札を切ったホーラと、そのどちらに分があるかなど考えるまでもなく。今この瞬間ホーラの優位は絶対で、加えて、それが覆るまで待つつもりは彼女にない。
衝撃。災魔の固めた防備が再度引き剥がされた。衝撃。災魔の反撃が遠く離れた天井を揺らす。衝撃。射線が、抉じ開けられる。
宝石は、ここに至って己の失敗を悟り。
「危険✕撤、」
だが、もう遅い。
飛翔を望む宝石を、先の一撃とは別種の振動が襲った。叩き付けるのではなく無理矢理に引き寄せるような衝撃。即ち、離脱を阻むもの。力の出所を探してみれば、眼下、規則的に並ぶ七本の杭。いつの間に? 決まっている。目先の問題に囚われている間に。
それは円環の回路。五行と陰陽とが巡る魔導。万象を縛り止める『七曜』の封印術式。
この機を逃すつもりがないのは、彼女も同じ。
「時間の監獄へ、ようこそ」
そして、さようなら。
「骸の海に還っていただきましょう」
流転する時の中で、宝石災魔はただ終わりが迫る様を目撃した。最期の光景、それは、変わらぬ表情のままそう静かに告げた黒い魔導人形と。
「……残念ね」
地獄の業火より尚赤く燃える精霊の灯。そして。
「飛翔✕ 翔✕飛……」
自らの使命の終わり。
――爆炎が、世界を震わせた。
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斯くて地獄は去り、戦いは終わりを告げる。死地は元の保管庫へと形を戻し、今はただ散らばった深紅の破片が激戦の記憶を物語るのみ。
――あなたをお部屋に飾れたら、さぞ綺麗だったでしょうに。
名残を惜しむように、娘が小さく呟いて。やがて、静寂が訪れた。
大成功
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