アルダワ魔王戦争8-BⅡ〜世界を越えて飛ぶ力
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『飛翔✕飛翔✕飛翔……』
ファーストダンジョンに隠されていた、ある一室。
そこにあるのは、他の災魔とはまた異質の存在。
『大魔王✕無限災群✕壊滅……』
自らを守る者の存在は消え、敵対勢力がこちらに向かってくるのが感じ取れる。
しかし、彼女達の瞳にはいかなる感情も浮かぶことがない。
『わたしたち✕使命✕継続……』
機械的に、全ては己が使命を果たすため。
『飛翔✕完成✕あと少し……』
この身が成すべきことは、ただ一つ。
『探索✕グリモア✕発生源……』
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「みんな、大魔王討伐おっつかれーっ!」
にゃぱっとしたエスペラ・アルベール(元気爆発笑顔の少女・f00095)の笑顔に出迎えられ、猟兵達はお互いの健闘を称え合う。
アルダワ地下迷宮ファーストダンジョンでの戦いは、大魔王を見事討ち倒した猟兵達の勝利という結果に終わった。
―――が、尚もグリモアベースには慌ただしい空気が流れている。
「『宝石災魔』、グラン・ギニョールがこんな言葉を残していったのを聞いた人はいるかなっ?」
巨大なハンマーを振るい猟兵達と戦いを繰り広げたオブリビオン、彼女はダンジョンの隠し部屋にて新たな災魔を作り上げようとしていた。
その存在こそが宝石災魔、災魔と万能宝石を合わせることで造り上げられた怪物。
「グラン・ギニョールを倒したエリアから、その災魔が造られている隠し部屋への道が見つかってね。今のうちに倒しちゃおーっ! ってことで!」
残された言葉から推測するに、宝石災魔は『世界を移動する能力』を使用できるようになる可能性が高い。ここで放置する選択肢はないだろう。
幸い、その力はまだ完成に至っていない。この災魔を叩くならば今が絶好のチャンス。
「未完成の状態であっても強敵と言えるだけの力を持っている相手。みんな、気をつけてね!」
芳乃桜花
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現れたぞ隠しボス! 心躍る言葉だ隠しボス! 芳乃桜花ですっ!
今回は以下の特殊ルールがありますので、ご一読のほどよろしくお願いいたします。
●プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
●3月1日までこの戦場が残っていると、宝石災魔達は「世界移動能力」を完成させ、逃げてゆきます。それまでに、倒し尽くしてしまいましょう。
※20シナリオ程成功すると、この戦場を制圧し、世界移動を阻止できます。
それでは、皆様のプレイングお待ちしておりますっ!
第1章 ボス戦
『宝石災魔』
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POW : 龍脈✕女神✕断龍剣
【喰らった者に活力を与える『赤の首』】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【ユーベルコードを吸収する剣】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 瘴気✕屍王✕模倣死者
【敵の肉体をコピーする『青の首』】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【首から下の肉体形状】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 霊紋✕鬼霊✕地獄絵図
レベル×5体の、小型の戦闘用【高速飛翔する『緑の首』】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
イラスト:大希
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ラリー・マーレイ
放っておいたら別の世界にまで戦火が広がる、って事かな。だったら絶対にここで阻止しないと!
右手に「空の杖」左手に「フレイムタン」を持って緑の首を迎撃する構えを取る。
空の杖の魔力で風を操る。【属性攻撃】【衝撃波】【なぎ払い】【カウンター】を組み合わせて自分を中心に攻撃性の竜巻を起こして迎え撃つよ。
風で消滅せず突破してくる首は小剣で切り裂いて反撃。
敵の先制を凌いだら【発火の呪文】使用。長期戦は無理だ。この一撃に【気合】を込めて威力を【限界突破】させる。
全火球を一点集中。超高熱の弾丸を生み出し、残った首の間をすり抜ける様に【誘導弾】で制御。
災魔本体に叩き付ける。全世界の為に、お前は絶対にここで倒す!
シル・ウィンディア
厄介な能力というか…
これ、残したらグリモアベースがまずい?
…芽は、ここでつぶすよっ!
対敵UC
向こうも速いなら…
【空中戦】で自在に飛び回って【フェイント】のジグザグや宙返りなどの起動を行って【残像】を生み出して撹乱するよ
喰いついて来たら
【第六感】を信じて相手の動きを【見切り】
回避不能な場合は【オーラ防御】で防いで、正面の攻撃は【盾受け】でカバーしつつ【シールドバッシュ】で押し戻すよ
さぁ、今度はこっちの番っ!!
上記機動で動きつつ光刃剣と精霊剣の二刀流で
【二回攻撃】しつつ、切裂いていくけど
本命は、こっちっ!!
【高速詠唱】と【全力魔法】でのエレメンタル・ファランクス…
わたしの全力だ、いっけーーー!
エル・クーゴー
●POW
躯体番号L-95
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します
●対先制
周辺風景を取り込み生成(撮影+情報収集+学習力)する電子【迷彩】を、サーチドローンの『マネギ』へ隠密裏に塗布
そしてアームドフォートの砲塔にマネギを装填
『赤の首』目掛け、マネギを無線誘導で素早く射出します(クイックドロウ+スナイパー+誘導弾)
マネギに『赤の首』をつまみ食いさせます
●反撃
『赤の首』の力を簒奪し、マネギを【攻城級マネギ】へとトランスフォーム(限界突破)
アームドフォート、ライフル、機関砲、アサルトライフル、拳銃、ブラスター……
当機とマネギの連動【2回攻撃】で反転攻勢を開始します(一斉発射+蹂躙)
リリスフィア・スターライト
アドリブOK、他の猟兵たちとの連携も積極的にだね。
いかにも隠しボスな感じだよね。
それなら私も身を隠して行こうかな。
無色変換で自分と装備を消して宝石災魔が出してくる
緑の首に狙われないようやり過ごすつもりだよ。
隠れられても物音を立てないようには注意かな。
気付かれないよう隙を伺って宝石災魔本体に近づき、接近出来たら
剣や至近距離での全力魔法による炎で本体を直接攻撃するよ。
反撃を受けても怯まずにそのまま攻めきるようにかな。
接近中で気付かれたら緑の首の迎撃に専念してせめて
他の猟兵たちが戦いやすく動くつもりだよ。
「災厄を他の世界に移らせるわけにはいかないよね」
「隠れるのはそっちばかりじゃないってね」
塩崎・曲人
オゥイェ
またなんかすげーのが出てきたなオイ
「じゃあ一丁ぶっ飛ばしますかね!ほっといてもロクなことにはならねぇからよ」
とはいえ敵の攻撃どうすっかな
正直オレの体だけコピーしても大して強くないんじゃね?って説は有るが
「とりあえず死ぬ気で躱すしかねぇな!」
【フェイント】やら【激痛耐性】駆使して、最初の一発で戦闘不能にならないよう逃げ回る
何なら一度戦場外に出るぐらいの勢いで逃げる
そして【切り込み隊長】を発動
蒸気バイクっぽいものを調達して舞い戻ってくるぜ
「オレのボディのスペックを覚えてもよぉ~
バイクの性能は計算できねぇだろ?ん?」
相手の想定外の機動力で翻弄しつつ、接近してぶん殴ってやるぜ
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『飛翔✕飛翔✕飛翔……』
「オゥイェ、またなんかすげーのが出てきたなオイ」
赤・青・緑。三色の巨大な首を従えて佇む宝石災魔を前に、塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)はボヤくように吐き捨てた。
「世界を渡る力……放っておいたら別の世界にまで戦火が広がる、って事かな」
「厄介な能力だよね。というか……これ、残したらグリモアベースがまずい?」
事前に受けた説明の内容を思い出し、ラリー・マーレイ(少年冒険者・f15107)とシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は思い至った可能性に顔を見合わせる。
世界移動能力、もしもその力が完成へと至ってしまえば彼らの考えるように、他の世界はもちろんのことグリモアベースさえも危険に陥りかねない。
万が一グリモアベースが落ちることとなれば、事件の予知も世界の転移も出来なくなり、あらゆる世界が滅び消え去ってしまうこととなるだろう。
「だったら、絶対にここで阻止しないと!」
「……芽は、ここでつぶすよっ!」
それぞれ武器を構えて気合を入れれば、応えるかのように宝石災魔が従える青と緑の首が動き出し。
「攻撃、来ます」
「じゃあ一丁ぶっ飛ばしますかね!」
エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)が警告を飛ばすと同時に、猟兵達は迫る攻撃を防がんと一斉に駆け出した。
「躯体番号L-95。これより、敵性の完全沈黙まで―――ワイルドハントを開始します」
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「風よ!」
無数に分かれた緑の首が猟兵達へと迫り、それに対し先んじて前に出たラリーが携えた杖を掲げる。
直後、彼を中心に発現したのは渦巻く竜巻、通常のそれより攻撃性が増された風は、襲いくる首を次々と吹き消していった。
いかに一つ一つの戦闘力が高くとも一撃で消え去るその脆さ、風の防壁を突破するには至らない。
それでも竜巻が風の渦である以上、その上方には隙ができる。必然そこから攻め込もうと首の群れが集まっていき―――。
「させないっ!」
吹き荒れる風の中を自在に飛翔するシルが、その手にした二振りの光刃によって群がる首を斬り裂いていく。
当然、彼女を迎撃しようと動く首も現れるも、その攻撃はシルの残像を貫くのみ。
速度だけならば劣らないはずが、シルの研ぎ澄まされた第六感と戦闘技術が合わさることで追従を許さない。
(それでも、この数は……!)
緑の首の武器は高速飛翔だけではない、真に恐れるべきは視界を埋め尽くさんとする程の圧倒的な数。
数を頼みに面で制圧せんと突撃してくれば回避のしようもない、光盾で受け止め押し返すが、動きが止まったその横を何体もの首がすり抜け竜巻の内部へと突入していく。
焦る表情で追いかけようと振り返り、その背中へと残る首が喰らいつかんと口を開け。
「後ろ!」
「―――っ!」
ラリーの上げた声に咄嗟に身を翻し、寸でのところで牙を回避する。
返す刀で首を消滅させつつ視線を向ければ、ラリーは左手に持った小剣を振るい向かって来る相手を迎撃していた。
緑の首が誇る機動力を活かすには竜巻内部は狭すぎる、上から来るとわかっていれば、数で圧倒されない限り対抗することは十分可能。
「こっちは大丈夫! それよりも……」
「うん、もっと私達で引きつけないと!」
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「敵、青の首がそちらに向かっています」
「は、オレの体だけコピーしても大して強くないだろうに!」
敵の大半はラリーとシルに引きつけられたが、エルと曲人も自由とはいかない。
緑の首の一部と曲人の肉体をコピーした青の首が、二人を迎撃するためにこちらに向かって来ているのを確認する。
エルの放つ砲火が緑の首を迎撃するのを横目に、曲人は襲いかかってくる自分そっくりの肉体と対峙し。
「さあて、こいつをどうすっかな」
敵の注意は確実にこちらに向いている。その隣を僅かな揺らぎが走ったのを確認すると、ニヤリと口元を歪め。
「とりあえず死ぬ気で躱すしかねぇな!」
飛んできた拳をバックステップで回避し、より相手を引きつけようと構えを取る。
しかし、肉体をコピーされている以上スペックは互角、となれば一撃も受けずに倒し切ることはまず不可能だ。
その上、相手は曲人に一撃入れるとより効果的な動きを取り入れ始め、瞬く間に形成は不利に陥っていく。
「ちっ、わかっちゃいたが―――仕方ねぇ!」
一つボヤいて大きく間合いを取ると、大方の緑の首を迎撃し終えたエルへと視線を送り。
「っしゃ、戦略的撤退!」
ダッシュで逃げた。
予想外の行動に青の首は一瞬固まり、すぐ我に返って後を追おうとしたが、その足は目の前に新たな相手が立ち塞がったことによって動きを止める。
「あなたの相手は、これより当機が務めさせて頂きます」
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ラリーとシルは未だ湧き出る緑の首を抑えるので手一杯。
曲人は戦域から離脱し、エルは青の首と戦闘を続けている。
敵の攻撃を凌げてはいるものの、猟兵側も宝石災魔へ攻撃を加えることができないこの状況。
膠着状態―――しかし、災魔はなにか違和感を覚えていた。
猟兵は全員が首を引きつけるように動いている、そうでなければ凌げなかったとしても、果たしてそんな消極的な策に留まるのか―――。
その思考は、一人の猟兵によって遮られた。
「目に見えているモノだけが全てとは限らないよ」
背後から聞こえたその声と同時に、災魔の身体が燃え上がる。
全身を炎で焼かれ、堪らず膝をついた災魔へと剣を向けるのはリリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)。
彼女は戦闘が開始しラリーが竜巻を発現させた直後から、ユーベルコードでその身を隠して災魔へと接近していたのだ。
「隠れるのはそっちばかりじゃないってね」
一人だったならばこうも上手くはいかなかっただろう、他の猟兵達がそれぞれ敵を引きつけてくれたが故の必殺の一手。
ここで決めてみせる、リリスフィアは躊躇うこと無く刃を振るい、災魔の首を落とそうとするが。
『龍脈✕女神✕断龍剣』
「くっ!?」
残っていた赤の首。
その身が一度不自然に傾くと災魔に吸収されていき、同時に災魔の身体には活力が漲っていくのが感じ取れる。
その足掻きに怯むこと無く、より加速させた切っ先は、しかして災魔の手に生み出された剣によって防がれ。
返す刃でリリスフィアを斬り裂かんとした、その時だ。
『猫✕何故✕太……』
災魔の目に飛び込んできたのは、妙に体格の良い羽根の生えた猫。
それは丁度赤の首が存在していたのと同じ場所に位置づけており、思い返せば先程の不自然な傾きはこいつのせいかと思考が至る。
しかしそれだけだ、こんな猫一匹に何ができるというわけでも―――いや待て。
「サーチドローン、ウイングキャット『マネギ』。赤の首の捕食に成功」
淡々と告げられるエルの言葉。宝石災魔はマネギを斬り捨てようと即座に剣を振るうが、その刃はリリスフィアによって防がれ。
「砲撃陣地を敷設します」
その一瞬の間に、エルの指示を受けたマネギの身体が変形していく。
理を書き換えられ、姿はより大きく、力はより強大に。
眩い発光の後に現れたのは―――その体長は実に3メートル、全身にエルと同型の武装を施した、攻城型マネギ。
現れた驚異に対し、災魔のとった選択はエルと対峙していた青の首を下げる一手。
「いけない、リリスフィアさん!」
いち早く相手の狙いを看破したシルが叫ぶ。
青の首が狙うのは宝石災魔と斬り結んでいるリリスフィア、彼女を排することができればユーベルコードを吸収する剣がマネギを斬り裂く。
故に狙いがわかっても彼女は下がれない。エルの使用しているコードを吸収されれば、これ以上敵の攻撃は凌ぎきれないだろう。
そんなリリスフィアの背後に青の首が迫り。
「ヒャッハー!」
突如響いた掛け声と共に、リリスフィアの背後に現れたのは一台の蒸気バイク。
アクセルは当然全開。轢き殺さん勢いで迫ってくるバイクを、青の首は横っ飛びで回避し―――。
「切り込み隊長MAGATO様参上ォ!」
バイクの操縦者、曲人が狙いすましたように鉄パイプを食らわせ吹っ飛ばす。
「オレのボディのスペックを覚えてもよぉ~。バイクの性能は計算できねぇだろ? ん?」
そう、青の首と対峙した時、彼があっさりと戦線離脱したのはこのバイクを調達するためだ。
どれだけ曲人の肉体を模倣・把握したところで、その足が違えば意味はない。
そして情報面でのアドバンテージが無くなれば、歩兵と騎兵の戦力差など語るに及ばず。
「こいつは任せな、ひたすらドツキ回してやるぜ!」
「こっちも片付いた! 後は本体を!」
「敵勢力排除完了……判定攻勢を開始します」
曲人が青の首を追い回し、遂に全ての緑の首を撃破し終えたラリーとシルもこちらへと向かって来ている。
宝石災魔に残されたのは一本の剣のみ、今こそ好機とエルの全武装が一斉に火を吹いた。
無論それを黙って受ける相手ではない、迫る弾丸やブラスターを切り払うが、直後エルの動きをトレースしていたマネギによる第二波が直撃し、その巨体を大きく蹌踉めかせる。
「さぁ、今度はこっちの番っ!!」
「災魔を他の世界に行かせるわけにはいかない!」
そこにシルが飛び込み、二刀を持って災魔の全身を斬り裂けば、リリスフィアも続いて強烈な一撃によって剣を弾き飛ばす。
災魔は辛うじて踏みとどまり、反撃のため拳を振るおうとするも―――。
「させっかよ!」
青の首を倒し戻ってきた曲人がその足を刈り取り、大きくバランスを崩させる。
その隙にシルの口が高速で詠唱を紡げば、彼女の両手に魔力が集まり。
「本命は、こっち! わたしの全力、いっけーーー!!」
至近距離からの魔力砲撃、その大出力の一撃は宝石災魔を地に倒す。
完全に無防備となった災魔へ最後の一撃を放つのは、ラリーだ。
「ラーアリフ・ヘーア・ラーイ・ターザンメ……」
相手の攻撃を凌ぎきったとはいえ、全員がかなりの消耗を強いられてしまっている。これ以上の長期戦は無理だろう。
だからこそ、自身の持てる全ての力……否、それ以上をこの一撃に込めて。
「全世界の為に、お前は絶対にここで倒す!」
生み出された無数の火球が一つとなり、宝石災魔の全身を焼き尽くす。
それは並の相手ならば間違いなく必殺の一撃、この猛火の中で無事で済むはずもない。
―――しかし。
『撤退✕飛翔✕治癒……』
「ちっ、まだ動きやがるか!」
全身を焼け爛れさせながら、それでも辛うじて耐えきった宝石災魔は猟兵達を振り切り、ダンジョンの奥へと逃走する。
撃破まではあと一歩、追撃の選択肢も頭に浮かんだが、こちらの消耗も激しい。反撃を受ければ耐えきるのは難しいだろう。
追撃は後続の猟兵達に後を任せ、彼らは一時グリモアベースへと帰還する。
成功
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宇冠・由
お母様(f00173)と参加
【百火繚乱】にて、炎の剣を盾に見立て多重展開
私やお母様への攻撃をかばい、炎のオーラで防御
緑の首も可能な限り防御し燃やしますが、物量差にどこまで持ちこたえられるか
私は全身が炎のブレイズキャリバー、この全身が、首から下も疑似的な仮初
青の首が私の身体を覚えたのなら、一度炎の身体を解除して仮面だけの姿に
そうすれば覚えた肉体形状は役に立ちません。もう一度攻撃を受けたら、今度は身体を出して、また相手の覚えた形状を回避しましょう
そして展開した盾は同時に剣でもあります
防御して失った剣を再生しつつ、百の剣を相手本体や操る首たちへ向けて放ち、突き刺し燃やして動きを止めてしまいましょう
宇冠・龍
由(f01211)と参加
娘が盾で攻撃を防いでくれますが、数が数なのですべてを防ぐのは難しい
しかしここは地下の最奥、戦闘スペースが広く高速飛翔ができても縦横無尽というわけにはいきません
これでも元冒険家、地形により生じる事象はいくつか体験してきました
洞窟などの閉所では、寒暖差により風穴という気流が生じます
【竜逢比干】で夫の霊を召喚し冷気を全力で放出、私が衝撃波で冷気を拡散
更に由の地獄の炎の熱で気流を発生させ、地下全体に冷気を行き渡らせます
飛翔してももうどこにも逃げ場はありません
宝石は熱や冷気に弱いことも多い。本体が万能でも戦場は違う
敵本体をそのまま地形ごと冷気で包んで身動きできなくしてしまいます
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『治癒✕飛翔✕完成……』
焼け爛れた全身は言うことを聞かない。
迎撃のため復元できたのは青と緑の首のみだ。
『完成✕飛翔✕探索……』
ここまで追い込まれながら、その瞳には怒りも恐れも、いかなる感情も浮かびはしない。
ただ己の使命を果たすためだけに動く、使命を与えた者が既にいなくなっていようとも。
「哀れ―――と、思うところが無いとは言いませんが」
「世界を渡る力、そのような物を与えるわけにはいきません」
宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)と宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)、母娘である二人の猟兵は、宝石災魔へとそれぞれ違う感情の籠もった視線を送りながら言葉を零す。
由が見るのは造られた命、命令通りに動くだけの存在に哀れみを。
龍が見るのは世界を渡る力、その奥に忌まわしき相手を想起し、憎悪とも嫌悪ともわからぬ感情が武器を握る手に力を入れる。
『猟兵✕迎撃✕破壊……』
二人が動こうとした瞬間、それより早く青の首が由の身体をコピーしながら襲いかかった。
猟兵より先に攻撃を仕掛けるその特性、いかに由といえどもユーベルコードを発動するのは間に合わない。
だが、それは彼女にとって予想通り。
「私の『肉体』は覚えられましたか?」
青の首の攻撃は由の腹部を捉えていた。しかし、彼女の身体は全身が地獄の炎で構成されたブレイズキャリバー、その炎をどれだけ物理的に吹き散らそうと致命打には至らない。
そして炎は不定形、どれだけ彼女をコピーし直したところで、姿そのものが代わり続ける相手には効果が薄い。
ならば唯一変わらぬ彼女の本体、マスクを喰い破らんと無数に分かれた緑の首が群がるが―――。
「ごめんあそばせ」
100に渡る炎の剣が、由へと近づく全てを拒絶する。
多層式の盾として展開された剣は、自身は当然、背後に位置する龍へと近づく首をも焼き尽くし。
「強き猛き尊き者―――」
邪魔する者のいない中、彼女が喚びかけるのはかつての伴侶、白き鎧を身に纏う雄々しき竜人。
「―――共に歩みてその威を示せ」
竜人は龍の指示に従い、強烈な冷気を伴ったブレスを周囲へと吹き散らす。
己が言葉に従うのみのその姿に、数瞬なにかを堪えるように瞳を閉じて。
「由、行きますよ」
「はい、お母様!」
心の奥に生じた思いを振り切り構えた槍を一振りすれば、発生した衝撃波が冷気をより広範囲へと拡散。
さらに、無数の首を一手に引き受けていた由が炎を一斉に燃え上がらせると、その寒暖差によって激しい気流が巻き起こり、冷気は戦場の隅々まで行き渡りあらゆるものを凍てつかせていく。
風穴、といわれる現象だ。大きな気温差によって引き起こされる大気の乱れ。龍の元冒険者としての経験は、いかにすればこの空間の大気を操れるかを正確に掴んでいる。
『凍結✕危険✕退避……』
「無駄です」
冷気に包まれ宝石災魔は凍りついていく身体に危機を感じ取り、再び離脱せんと飛翔するが、そこにかけられたのは龍の冷めた言葉。
既に戦場全体が凍てつくような冷気で包まれている。戦場を離脱するための道は全て凍りつき、もはや龍達以外で無事なのは、由によって焼かれている首しかない。
「宝石は熱や冷気に弱いことも多い……あなたはどうでしょうか?」
『排除✕排除✕排除……』
問いかけの答えを待つまでもない。宝石災魔は既にその全身の半ば以上を氷に包まれている。
それでも諦めるという感情を持たぬ身は、冷気の発生源を消そうと龍へと拳を振りかざし―――。
「お母様には、近づけさせません」
その全身を、無数の炎の剣が貫く。
宝石災魔本体さえも凍りつくほどの冷気、それまで由を押し留めていた緑の首達が耐えきれる道理はない。
百の剣が自由となれば、元より力を十全に発揮しきれていなかった青の首が持ちこたえられるはずもなく、必然その炎の刃は本体へ。
『撃退✕完成✕飛翔……』
氷と炎、半身ずつを真逆の力で傷つけられながら、災魔が放つ言葉は変わらない。
母を守るため前に立っていた由へと、焦げ付き動かぬ拳を伸ばし。
「―――」
災魔の身体を貫いたのは、竜人の突き出した風纏う槍。
その瞳に意思はなく、指示を出した龍は既に瞳を伏せている。
『我✕汝✕違―――』
「消えなさい」
最後まで言葉を紡がせることなく。
由の振るった炎の刃が、災魔の身体を両断した。
大成功
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