アルダワ魔王戦争9-A〜魔神のゆりかご
「皆、集まってくれて有難う」
グリモアベースに集まった猟兵へ、ネルウェザ・イェルドット(彼の娘・f21838)が一礼する。こんなに早く攻略が進むとは、と驚きを零しつつ、彼女は改まって語り出した。
「魔王戦争が勃発しているアルダワの地下迷宮、その最終フロアへの道が遂に開かれた」
ふわり、とグリモアが輝いて映し出すのは、今までの大魔王達と同様に身体で煌々と紅を輝かせる四つ足の異形の姿。映像越しでも分かる禍々しさと迫力、畏敬すら誘うその美しさは、大魔王『最終形態』と呼ぶに相応しいものであった。
「名は『ウームー・ダブルートゥ』。こちらが願い、望み、祈る事象を自らの糧とする強力な大魔王だ」
彼女の言葉に続き、グリモアがその戦場全体を映す。地下迷宮の奥深くに広がるエリアの中心には、大魔王の為に用意されたかのような玉座が存在していた。
「敵は既に戦闘の準備を整え、こちらを待ち構えている。先手を打たれても対処できるよう十分に注意して向かってほしい」
そこまでを語ると、ネルウェザはグリモアの光へ手を翳す。くるり、くるりと回る光は迷宮を映すのを止め、猟兵達を大魔王の元へ転送するものへと変化した。
「それでは……アルダワの世界を災厄から護り、救う為――頼んだよ」
祈る彼女の声が途切れるとともに、猟兵達の身体は浮遊感に包まれていった。
●
アルダワの地下深く、迷宮内の最終フロア。
猟兵が降り立ち目を開けば、そこには玉座――と、凄まじい魔力を秘めた影が佇んでいた。
「――来たか」
重く響く声の主が、猟兵の方を向く。荘厳な天使と残酷な悪魔の姿を集め、融合させたようなそれは――大魔王最終形態『ウームー・ダブル―トゥ』であった。
ウームー・ダブルートゥは胸の紅を煌めかせ、神々しく両の翼と手を広げる。
「知的生命体よ、好きに望み、願うが良い」
全てを、汎ゆる希望を受け入れるような言葉。しかし、そこに込められた意志は決して――寛大な神ようなものではなかった。
「我はすべての希望を聞き届け、我が糧とする。我はウームー・ダブルートゥ。汝らが『大魔王』と呼ぶ、この世の全てを喰らうもの……!」
瞳と胸の宝石が、一際強く強く輝く。
アルダワの世界を護るため、大魔王との最後の戦いが――遂に、始まった。
みかろっと
こんにちは、みかろっとと申します。
アルダワ魔王戦争もクライマックスです。
今回は大魔王最終形態『ウームー・ダブルートゥ』との戦いです。
こちらはボス戦一章のみの戦争シナリオとなります。
判定等に関わらず敵は必ず先制してきます。
迎撃・回避するなど、大魔王のユーベルコードへの対処がプレイングに含まれていると有利ですので、是非作戦を練ってご参加ください。
それではご参加、お待ちしております!
第1章 ボス戦
『『ウームー・ダブルートゥ』』
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POW : ホープイーター
【敵対者の願い】【敵対者の望み】【敵対者の祈り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : ホープブレイカー
【敵が恐れる大魔王形態(恐れなければ全て)】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : ホープテイカー
戦場全体に、【触れると急速に若返る『産み直しの繭』】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:hina
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ソラスティベル・グラスラン
やっと…やっと、ここまで来たのですね
何度でも立ち向かいましょう、何度でも倒しましょう!
ここが勇者の張りどころなのです!真なる大魔王よ!!
【オーラ防御・盾受け】で守り【怪力・見切り】で受け流す
【第六感】で察知し可能な限り万全な【継戦】を
耐えて耐えて耐え延びて、只管に前進
攻撃を縫い【ダッシュ】、我が大斧を叩き込む為に!
『願い』は不要
刃を構え、勝利を拾うのは我が【勇気】
『望み』も
傷を癒し、危機を祓うのは我が【気合い】
『祈り』も
賦活を与え、前進せしめるは我が【根性】
『勇者』とは勝利を願われ、望まれ、祈られる者
艱難辛苦が迫り来ようとも逆は無く
わたしだけは!己の力で立ち向かうしかないのですッ!!!
「やっと……やっと、ここまで来たのですね」
玉座へと向かいながら、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が呟き目を輝かせる。強大な敵を前にしても尚彼女の表情は明るく、勇ましく――まるで、冒険譚に描かれる勇者のようであった。
――何度でも立ち向かいましょう。何度でも倒しましょう。そう意気込んだソラスティベルは、堂々たる声でウームー・ダブルートゥへと言い放つ。
「ここが勇者の張りどころなのです! 真なる大魔王よ!!」
「――ならば、その意志をも喰らうのみ」
強靭な四足が静かに、しかし力強く駆け出す。
対するソラスティベルは気を集中させて盾を構えると、果敢に前へと踏み出した。
身を踏み潰さんとする前脚を受け止め、渾身の力で受け流す。素早く続くもう一撃を予測して屈めば、大魔王の脚は手応えのないままソラスティベルの頭上を抜けた。
大魔王の攻撃を凌ぎ、耐えて、耐えて――耐え延びて、只管にその間を縫うように走り抜ける。あと数歩という距離に迫れば、ソラスティベルは大斧の一撃を叩き込むべく力を込めた。
ウームー・ダブルートゥはその身に纏う魔力を形にしていく。目の前の少女が秘める願いを、望みを、祈りを、糧にするべく喰らおうと――したが、しかし。
「何だ、汝の其れは――!」
――喰らえない。
否、彼女の意志を支える『勇者理論』に、大魔王が糧とするものなど存在していなかったのだ。
刃を構え、勝利を拾うのは彼女の『勇気』――故に、勝ちたいと他に『願う』ことはない。
傷を癒やし、危機を祓うのは彼女の『気合い』――故に、苦難を退けて欲しいと『望む』ことはない。
賦活を与え、前進せしめるは彼女の『根性』――故に、『祈る』のは彼女ではない。
勝利を願われ、望まれ、祈られる者。それが『勇者』であり、どんな艱難辛苦が迫り来ようとも自らの心で打ち破らなければならない。
――故に。
「わたしだけは! 己の力で立ち向かうしかないのですッ!!!」
糧を得られぬままソラスティベルの接近を許したウームー・ダブルートゥは、微かに歯を軋らせて両の腕を交差させる。
しかし力強く振るわれた大斧が刃を食い込ませれば、その圧に腕は薙ぎ払われ――重い、重い斬撃が、大魔王の胸を斬り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシェ・ユヴェール
夜と闇の世界しか知らぬ頃、師に出逢う以前の私は
願う事など赦されず
望み得るという事も知らず
祈るような信仰も、対象も持ち得ませんでした
……今更、自らあの頃を蒸し返すのもどうかと思うのですが
この相手には、願わぬ事が有効になり得るならば……
小さく嘆息すれば
常に浮かべる鉄壁の微笑が、ふと抜け落ちるように虚無に
何も願わない
何も望まない
ただ、この身に牙を剥かれるならば
血統の力がこの身を生かす
渇きを潤す血の意味も知らず
それは、生きていると言えるのか
経験から染み付いた、身を守る為の戦い方は
相手の攻撃を受け止めては返すもの
故に、相手が強大であれば多少、分が悪い面もあるけれど
ただ今は、自動的な反射のように杖を振るう
糧を、願いを――ウームー・ダブルートゥは魔力の矛先を探し、眼を動かす。
不意にその視界へ一人の猟兵、ファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)の姿が映った瞬間、大魔王の力は飢えた獣のように牙を剥いて彼へと襲い掛かった。
「さあ、汝の願いを――」
しかし、それが大魔王の糧となることはなく。
魔力が何を喰らうこともなく大魔王の元へと還っていくのを感じながら、ファルシェはぽつり、ぽつりと独白のように語りだした。
それは彼が師と出逢う前、夜と闇の世界しか知らぬ頃。願う事など赦されず、望み得るという事も知らず、祈るような信仰も――対象も持ち得なかった、過去の記憶。
「……今更、自らあの頃を蒸し返すのもどうかと思うのですが」
この戦いに於いて、願いも望みも顕にしないことが有効と成り得るならば。
小さな嘆息が漏れる。
アメシストの瞳が静かに光を失い、弓張月のような唇はその曲線を失って。
――すとん、と抜け落ちるように。常に浮かべる鉄壁の微笑が、仄暗い虚無へ変わった。
「――ならば」
ただ、汝の身を裂くまで。ウームー・ダブルートゥは四つ足で駆け出し、その鋭い爪を勢い良くファルシェの身へ振り抜く。願いを食らえずともその威力は凄まじく、それは微かな真空を生んで風を鳴らした。
ふっ、とファルシェの瞼が瞳を隠す。
直後大魔王を捉えた彼の双眸は、鮮やかな真紅に染まっていた。
――何も願わない。何も望まない。
この身に牙を剥かれるならばと、血統の――吸血鬼の力を滾らせて。
渇きを潤す血の意味も知らず、ただこの身を生かそうと。
それは――生きていると、言えるのか。
単純な力で向かってくる魔王の斬撃と打撃を躱し、刃に変えた杖を振るう。
それは経験から染み付いた身を守る為の戦い方。強大な相手を斃すには多少、分が悪い面はあれど――それでも、ただ。
機械的に、自動的な反射のように。美麗な無表情へと獣脚が迫れば瞬時に刃が真横に構えられ、ガシン! と衝撃を受け止めて震えた。
ファルシェが一瞬に力を込めて押し返せば、ウームー・ダブルートゥはぐらりと仰け反り後足で床を掴む。間髪入れずに真横から伸びる尾を薙ぎ払って、ファルシェは杖を強く握り――胸の紅へと真っ直ぐに、それを突き刺した。
大成功
🔵🔵🔵
ラリー・マーレイ
勇者になるのが僕の望みだ。目の前の大魔王みたいな存在を一騎討ちで倒せる様な。
今だけその望みを押し殺す。勝ちたいという願いも、無事に帰りたいという祈りも忘れる。
一太刀与える。他は全て頭から追い出す。
敵の先制攻撃を【見切り】回避する。ブーツに込められた機動力強化の魔力を活かし【ダッシュ】と【ジャンプ】で全力回避。かわしきれなければ盾で【盾受け】。受け止めるのではなく相手の力を利用して受け流し、飛びすさる様に。
体を縛ろうとする恐怖を【勇気】で退ける。
凌いだら【一の剣】で反撃。今まで培ってきた全てを込めた【気合い】の一撃。
願いや祈りは敵の力になる。重ねた修行の成果を信じて、無心で剣を振り抜くよ。
喰らう願いを得られぬまま、大魔王ウームー・ダブルートゥは傷を負った身で立ち上がる。強靭な四つ足がぐわりと動き、背の翼を広げて向かったのは――猟兵、ラリー・マーレイ(少年冒険者・f15107)の立つ方であった。
汎ゆる希望を呑み込む魔力が、ラリーの身へ襲いかかる。
ラリーの願い、それは世界を破滅へ導かんとする存在――目の前に立つ大魔王のような存在を、一騎討ちで倒せるような『勇者』になること。
しかしそれを胸に抱き挑めば間違いなく、勇者たる強さは大魔王のものとなってしまうだろう。
――故に、押し殺す。
勝ちたいという願いも、無事に帰りたいという祈りも、勇者になるという望みも。
いま、ラリーの心にあるのは『一太刀与える』その想いのみであった。
「――汝も、願いを露わにせぬか」
ウームー・ダブルートゥの瞳が、すうと細くなる。
――小癪な知的生命体共め。そう蔑み苛立ちながらも、大魔王は猟兵の私利私欲の為に願わず望まず挑む姿に鋭い歯を軋らせていた。
糧は、得られず。しかしそれでも、それは大魔王たる強さを秘めて襲い掛かる。一気に距離を詰めたウームー・ダブルートゥは、容赦なくラリーの首目掛け鋭い獣爪を振り抜いた。
瞬時にラリーが身を屈め、その下を潜る。機動力強化の魔力を込めたブーツがそのままラリーの足を素早く前へ動かせば、彼の体は大魔王の巨躯をすり抜け背後へと回り込んだ。
大魔王はすかさず長い尾を鞭のように撓らせる。空気をヒュゥッと甲高く鳴らしたそれは鋭くラリーの胸を射貫こうとした――が、衝撃と共に上がったのは骨肉の砕ける音ではなかった。
「っ!」
ダゴッ!! と硬く、重い音。
ラリーは胸の前、尾の当たる一点へ小盾を構えてその勢いを受け止める。
敢えて抗わず、力の流れに任せて後ろへ。
一度距離をとったラリーは、その手に剣を携えて息を整えた。
一瞬、大魔王と目が合う。恐ろしく禍々しい迫力を感じさせるその視線を、ラリーは勇ましく見つめ返し――ユーベルコードの力を解き放った。
願わない、祈らない。ただ自らが重ねてきた修行の成果を信じ、無心で。
「――はぁっ!!」
気合を込めた『一の剣』が、大魔王の腹へと叩き込まれる。
強靭な異形はぐらりと上半身を傾け、深い傷を負って吹き飛ばされるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
言われずとも。
好きに望み、願い、生きる。これからもそうするため、私はここにいます。
氷の『属性攻撃』で足元を凍らせながら戦闘することで足元が繭に触れるのを防ぎ、敵の攻撃はフィンブルヴェトの『武器受け』で受け流す、あるいは回避して壁に叩きつけられないように。
繭から糸が延びている可能性もありますが、銀蜘蛛の塒で目も慣れました。『第六感』『視力』で伸びた糸を発見し、ナイフの投擲で切断して触れないように。
敵の攻撃をある程度『見切り』できたら【ブライニクル】を。周囲の床や壁を凍結させ繭に触れないようにしつつ、増強された身体能力による接近戦を。銃剣の『串刺し』氷の弾丸の『零距離射撃』で短期決戦を仕掛けます。
願え、望め。大魔王ウームー・ダブルートゥはそう繰り返しながら立ち上がる。
「……言われずとも」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)はひとつ靴音を鳴らし、堅くも凛とした視線で大魔王へと向き直った。
「好きに望み、願い、生きる。これからもそうするため、私はここにいます」
――ならば汝らは何故、此処でそれを露わにしない。
糧を得られず傷を負い続けた大魔王は強くその牙を軋らせ、四つ足を前へ踏み出す。巨躯に大きな両の翼を広げたその姿を見せつけ、畏敬を誘うが如く跳び上がった瞬間――玉座は、突如複雑に入り組んだ迷路と化した。
セルマは紡がれた壁床に触れる寸前、そこに強力な魔力が込められていることを察する。
――触れてはいけない。セルマの手は素早く銃を抜くとほぼ同時に周囲へ幾つもの弾丸を放ち、強固な氷の足場を造り上げた。
かつっ、とセルマの足が前へ進む。ふと、入り組んだ壁の向こうに禍々しい気配を感じれば――セルマは、その手にフィンブルヴェトを携え身構えた。
突如壁から伸びた、獣脚の不意打ち。鋭い爪がセルマの首を裂かんと煌き、激しく空気を轟かせる。しかし――それは見事に受け流されて威力を落とすと、そのまま空を切ってセルマの接近を許した。
ウームー・ダブルートゥは腕を広げ、シュゥッ、と細い音を微かに鳴らす。一瞬周囲にきらりと何かが光ったのをセルマは見逃さず、隠し持っていたナイフに手を伸ばした。
彼女の頭を過ぎるのは此処よりも上層の迷宮フロア、銀蜘蛛の塒。張り巡らされた糸の間にて戦った経験は、この場に於いて有効なものであった。
手や足が触れぬよう、行く手を阻む糸を眼で捉え切り裂いていく。大魔王まであと数歩という距離へと踏み込めば、セルマは銃剣を構え直してユーベルコード『ブライニクル』の力を身に巡らせた。
ふっ、と周囲の繭が魔力ごと一気に凍り付く。阻むものの無くなった迷路を突き進み、セルマはウームー・ダブルートゥに肉薄した。
彼女の眼光は鋭く狙いを定める。フィンブルヴェトを握る手に力を込めた瞬間、その先に煌めく刃がウームー・ダブルートゥの胸に深く深く突き刺さり――銃口を確かに当てた。
凍てつく氷の弾丸が身を貫き抉ると同時、魔力を秘めた繭の迷路はふっとその姿を消してしまう。大魔王の巨躯はそのまま勢いよく飛ばされ、玉座の足元へと強く叩きつけられるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
別府・トモエ
「おうおう、全部を喰らうとか剛毅なこと言うのはよ」
私の願いはテニスしたい
私の望みはテニス楽しみたい
私の祈りは貴方にもテニス楽しんでほしい
「テニスを味わってからにしてもらおうかい」
希望を喰って強くなる大魔王が……みるみる最強無敵のテニス大魔王に変身んしていく
「そそるぜ……!」
テニス大魔王の【先制攻撃サーブ】を【視力】で【見切って】対応
「そこだぁ!」
【ラケット武器受け】からのキツいコースへ【誘導弾ショット】
確実に貴方は私より強い!だが!互いに楽しみたい希望を喰った貴方は一撃で終わらせられない道理!
「ギリギリが!めちゃ楽しいぜ!」
そうなると私はもっと強くなる、応じて貴方も本気出す
「そそるぜこれは!」
凄まじい魔力、恐ろしい異形、張り詰める空気。最終決戦の場となった玉座にて、一人の猟兵が大魔王の前へと躍り出る。
「おうおう、全部を喰らうとか剛毅なこと言うのはよ――」
ぎろり、とウームー・ダブルートゥがその声のする方を睨みつければそこには――スポーツウェアにテニスラケットを構えた少女、別府・トモエ(人間のテニスプレイヤー・f16217)が立っていた。
大魔王の知識にそれが在るのか否かはさておき、彼女は明らかな『願い』を持ち、その瞳へ『望み』を露わにしている。
猟兵から糧を得られずにいたウームー・ダブルートゥは、迷わずそちらへ練り上げた魔力を放った。
「……何だ、これは」
トモエの願いは『テニスしたい』。
その願いが大魔王の魔力を受けて、迷宮の玉座を広いテニスコートへと変える。
トモエの望みは『テニス楽しみたい』。
その望みはどこからともなく、わっと湧き上がるオーディエンスを呼び寄せる。
トモエの祈りは『貴方にもテニス楽しんでほしい』。
……その、祈りは。
――大魔王の手の中へ、一本のラケットを顕現させていた。
「テニスを味わってからにしてもらおうかい」
ウームー・ダブルートゥは、一瞬困惑した表情を見せる。しかし周囲に湧く観客の声がわぁぁっと盛り上がりを見せると、大魔王の胸には――スポーツマンシップ的な、何か熱いモノがこみ上げてきていた。
「……良い度胸だ、知的生命体よ。ならば汝の願い通り――正々堂々、テニスで戦おうではないか」
ヴン、と大魔王の手の上にひとつのボールが浮かび上がる。正々堂々という言葉通り、それはごく一般的な大きさと硬さを兼ね備えたテニスボールであった。
トモエはアルダワを脅かす大魔王――というより、最強無敵のテニス大魔王と化したウームー・ダブルートゥに武者震いして。
「そそるぜ……!」
大魔王がボールをふわと手放す。握られたラケットが勢いよくそれを捉えた直後、ネットの向こうに立つトモエの数センチ手前へと豪速球が放たれた。
「――そこだぁ!」
一歩下がり、確実に返す。ボールは大魔王の巨躯に対してかなりキツいコースへと入っていくが、流石は希望を喰らって強化されただけあってか――見事に、それを打ち返した。
「その程度か!!」
勢いよく直進する球を追い、再び向こうへ打ち返す。経験は無くとも希望を喰った大魔王は間違いなくトモエより実力は上であったが、同時に『楽しみたい』という望みが一撃で終わらせるようなプレイを許さなかった。
一瞬の判断を誤れば敗ける。そんな崖っぷちの試合で。
「ギリギリが! めちゃ楽しいぜ!」
トモエの心は燃え上がり、同時に大魔王の顔にも何やら爽やかな笑みが浮かぶ。
「――そそるぜこれは!」
スパァン!! と、トモエの放ったスマッシュが大魔王の真横を抜けて。
瞬間、オーディエンスがトモエへ割れんばかりの拍手と歓声を浴びせれば――ウームー・ダブルートゥは、燃え尽きたようにがくりと膝をついて項垂れるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ルカ・クルオーレ
【POW】アドリブ連携歓迎
おやおや、あれが大魔王か。
望み、願い…何だろうねぇ。
敢えて言うなら……壊れるまで戦い続けること、かもしれないねぇ。
だからここで壊れるわけにはいかないんだよ。
結構くらってるみたいだけど向こうの動きを見るに先制はできなさそうかぁ。
まあ、それはそれである意味好都合かな。
【戦闘知識】で相手の動きを予測、【フェイント】でぎりぎり動けなくならないくらいの攻撃を受けるように調整するよ。
流れた血が此方の力。
【Fulmine di sangue】
僕を攻撃した分だけ、報いを受けてもらおうか。
「ふふ…行け、死を告げる者。相手が誰であろうとね」
「――おやおや、あれが大魔王か」
満身創痍で我を取り戻したウームー・ダブルートゥ――依然糧とする願いを求める大魔王の姿を見つめ、ルカ・クルオーレ(Falce vestita di nero・f18732)はふと頤に指を添えて呟く。
「望み、願い……何だろうねぇ。敢えて言うなら……」
――その口が、『願い』を紡ごうとすれば。
ウームー・ダブルートゥの牙覗く口が歪み、僅かな笑みを見せる。
傷を癒やし、目の前の猟兵共を斃し、この世界を破滅へ導かんとする為の糧を――ひとつ、手に入れられる。そう魔力を練り上げ、ルカの身を呑もうとした。
「――壊れるまで戦い続けること、かもしれないねぇ」
だから、ここで壊れるわけにはいかない。ルカのそんな願いはウームー・ダブルートゥの『糧』として呑み込まれる――が、それは同時に呪いでもあった。
それでも自らの身に力が滾るのを感じながら、大魔王がその四つ足を踏み出す。溢れ出る魔力を見せつけるように放ち、異形の姿を大きく広げ、強靭な獣脚はルカを切り裂くべく鋭い爪を振り上げた。
ズゥッ!! と重く空気が割れる。直撃すればひとたまりもない一撃を、ルカは僅かに腕へ掠らせて真横へと身を躱した。
更に一撃、もう一撃。爪の斬撃はルカの身を細く、細く傷付けながら苛立ちを見せていく。
掠る、掠る。しかしまともには当たらない。まるで、傷を増やすことが目的のような――。
――不意にルカの双眸が、大魔王の首を捉える。
戦いを楽しむようなその眼に、ウームー・ダブルートゥの眉が僅かに動いた直後。
つうとその白い肌に線を描く赤が、ユーベルコードの力を纏う。
流れた血が此方の力――ルカの狙いは、『Fulmine di sangue』の引き金であった。
「ふふ……行け、死を告げる者。相手が誰であろうとね」
ぞわりと迷宮の空気が震える。ルカの声と同時に現れた彼の幻影は、全身に黒い雷を纏って大魔王へ肉薄した。
「――僕を攻撃した分だけ、報いを受けてもらおうか」
ふっ、とルカが微笑めば。
幻影はルカに刻まれた傷をなぞるが如く、大魔王の全身へと刃を振るう。無数の斬撃を受けた大魔王はくらりとよろめくが、その獣脚は確かに床を踏みしめ、堪えようとしていた。
――しかし、大魔王の身を巡っていた『願い』がそれを赦さない。
「――何」
ずるり、と。傷が刻まれた部分から、大魔王の身体が崩れ落ちていく。
壊れるまで戦い続ける。壊れてしまえば――もう、戦えないのだ。
ウームー・ダブルートゥはその指先が崩れるまで、高く高く天へ――地上へと、腕を伸ばし続けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵